BOOKS 現代の企業環境に適したマネジャーのスキル向上・能力の再開発に役立つテキスト マネジメントのリスキリング ジョブ・アサインメント技法を習得し、他者を通じて業績を上げる 大久保(おおくぼ)幸夫(ゆきお)著/経団連出版/2750円  働くことをめぐる環境が大きく変化して、マネジメントすることの難易度が格段に上がっているという。本書によると、マネジメントに自信を持っているマネジャーの割合は、4人に1人にすぎないそうだ。そこで、マネジメントスキルの再開発・再教育が企業にとって喫緊の課題になっていると本書の著者は綴り、「マネジメントスキルを習得し、マネジメントが楽しくできるようになれば、企業の生産性は大きく向上し、働く人々のワーク・エンゲージメントも高まる」とその重要性を表現している。  本書は、マネジャーの役割は「他者を通じて業績を上げる」ことであり、日常のマネジメントの行動は「ジョブ・アサインメント(JA)」に集約されるという。そして、四つのプロセスと各八つの行動で構成される32のJAの解説を中核にすえて、マネジメントのポイントをテーマ別に整理し、JAの各項目とつないで詳しく、かつ読みやすい文章で説明している。  マネジメントスキルを高めたいと願うマネジャーの自己啓発書としておすすめできるとともに、マネジメント研修のサブテキストとして、また、多面観察評価後の内省機会における思考の整理にも役立つ内容となっている。 退職した個人と企業がその後良好な関係性を築き、双方が価値を得るには? アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値 鈴木(すずき)仁志(ひとし)・濱田(はまだ)麻里(まり)著/日本能率協会マネジメントセンター/2200円  「アルムナイ(alumni)」は、英語で「卒業生」を意味するが、企業の「退職者」に対しても使われている。近年、急速に注目されるようになった。  終身雇用制が長く定着してきた日本では、転職や独立のための「退職」や「退職者」に対してネガティブな印象を持ちがちだが、働き方の多様化が進み、職業人生が長くなってきた現在、転職や起業、学校に通い学び直すなど、退職を選ぶ理由も多様化し、退職者のなかには、辞めた会社とよい関係を築く人もいる。また、アルムナイとよい関係が築ける企業もあるという。  本書は、アルムナイと企業の関係構築が注目されている理由をはじめ、アルムナイとよい関係を築くうえでの考え方や方法を解説。2人の著者が所属する会社では、アルムナイを貴重な人的資本ととらえる企業に対して、自社のアルムナイと関係を構築するための支援を行っており、本書ではよい関係性を築いたことで得られている双方にとっての価値などの事例も紹介している。また、ミドル・シニア人材の再躍進に向けたプログラムに、アルムナイがかかわるといった取組みも始まっているという。  アルムナイとの関係づくりなどを考えている企業の担当者らにおすすめしたい一冊である。 コミュニケーションなどの「ノンテクニカルスキル」が事故を防止する! 産業現場のノンテクニカルスキル2.0の取り組み ―事故防止教育の新展開 南川(みなみがわ)忠男(ただお)著・堤(つつみ)克一路(かついちろ)著・野田(のだ)誠司(せいじ)著・井上(いのうえ)哲夫(てつお)著/化学工業日報社/4400円  産業現場における事故は、技術的な面(テクニカルスキル)によるものより、ノンテクニカルスキルによるものが増加しており、事故防止を図るうえでも、ノンテクニカルスキルの向上を目ざす教育が強く求められている。  ただ、コミュニケーションやチームワークなどが主要な要素とされるノンテクニカルスキルの教育は、年月を要することや成果がなかなか表れないといった課題が聞かれていた。  本書は、ノンテクニカルスキル教育の成果を向上させるにはどうしたらよいか、課題解決に向けて産学のメンバーで取り組んだ活動から生まれた「ノンテクニカルスキル2.0」という新たな概念の提唱と、その概念に基づく教材の開発の経緯や内容などを詳解している。  本編は3部構成で、第1部では新たな概念を提案した動機とその構成要素について、第2部では開発された教材の開発背景やねらい、内容、活用方法をていねいに記述。第3部は、ノンテクニカルスキル講座の実績や体験教室の実績、コンテンツ提供教室の参加者からのふり返りシートの抜粋などの記録集となっている。  ノンテクニカルスキル教育の手引書ともいえる内容で、幅広い業界での活用が期待される。 毎朝5分手帳に書くだけ!仕事もプライベートも充実する方法 「時間不足」解消! 誰でも目標・夢を達成できる 朝5分だけ段取り手帳術 鈴木(すずき)真理子(まりこ)著/実務教育出版/1760円  現代は、デジタル手帳を使う人も増えているが、本書が伝授する「手帳術」は、紙の手帳が主役である。紙の手帳は、スケジュールを管理するだけでなく、書くことによって段取り力が養われ、目標や夢が実現できる将来の可能性を広げてくれる最強のツールなのだという。  本書は、かぎられた時間をコントロールして、自分の時間を増やすために、手帳を使った段取りのよい仕事の進め方の紹介と、段取り力を磨くための考え方、ハウツーを盛り込んだ一冊。ビジネス書ではあるが、簡潔な文章とたっぷりのイラストで構成され、楽しい気分で読み進めることができる。タイトルの「段取り手帳術」とは、「仕事の予定を書くだけでなく、そのための事前準備も含めて、やることを『見える化』し、優先順位にしたがって1日の戦略的な計画を立てること」。1章から6章までは「仕事編」として、朝5分で、手帳を使って1日の計画を立てる方法を伝授。最終章は「応用編」として、プライベートを含む目標の立て方から、毎日をご機嫌に過ごすためのワザも紹介している。  手帳や時間の使い方に興味がある人をはじめ、定年を迎えて働き方や生活が変化したというシニア世代にも多くのヒントを与えてくれる。 高齢者の「からだ」と「こころ」について楽しく学べる、必携の一冊 イラストでわかる 高齢者のからだ図鑑 kei著・長島(ながしま)佳歩(かほ)著・稲川(いながわ)利光(としみつ)監修/メディカル・ケア・サービス/1980円  年齢を重ねるにつれて、人のからだは変化していく。本書は、高齢者のからだの変化や動作のこと、病気や薬、認知症、こころのケアについて、「からだの仕組み」、「からだの機能」の視点から、理学療法士がわかりやすく解説。また、リハビリテーションや介護にかかわる著書・共著を持つ医師が、監修を担当した。  本文はイラストやマンガで説明したり、ポイントを簡潔にまとめていたりといった工夫がなされ、関心のあるところから気軽に読むことができる。高齢期のことやかかわり方について理解を深めることができ、高齢者と信頼関係を築くうえでも助けになる内容である。  例えば、高齢者の転倒リスクの見きわめには、筋力・感覚・バランス能力の変化だけでなく、飲んでいる薬の影響にも注意が必要だという。さらに、高齢者の転倒が多い場所や状況、リスクを減らすためにすぐできることなども説明している。また、転倒や転落、急変などの緊急時にもスムーズに対応できるよう、知っておきたいこと、準備しておきたいことも紹介している。  はじめて高齢者とかかわる人や医療・福祉などの現場に立つ人、高齢者が働く職場のリーダーらにもおすすめしたい良書である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します