BOOKS ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 法令解釈の誤りやすいポイントを厳選し、Q&Aでわかりやすく解説 担当者の共通の悩みはコレ! 条文だけでは分からない 労働安全衛生の実務Q&A 改訂版 中山(なかやま)絹代(きぬよ)著/第一法規/3740円  労働安全衛生法は、働く人々の安全と健康を守るとともに、快適な職場環境をつくることを目的としている。近年は、働き方改革やDX化、新型コロナウイルス感染症による就労環境の変化、高齢の就労者が増えて働く人の年齢層が広がっていることへの対応など、企業で安全衛生業務にたずさわる担当者にはさまざまな課題への解決力や対応力が求められている。  本書は、企業の実務者に向けて、労働衛生コンサルタントである著者が、第一法規の運営するWEB上の「安全衛生セレクション」の相談機能に寄せられた2000件超の相談から厳選した相談内容をベースにして、実務上の対応や判断基準をQ&A形式で解説する。法令解釈を誤りやすい事案、解釈ができないために方針を決めることができずに悩んでいる事案など、110の質問を掲載し、回答している。  2024(令和6)年4月1日から、事業者には化学物質の自律的管理に向けた実施体制の確立が求められているが、この内容もフォローした改訂版である。  実務をになう初心者からベテランまで、判断に迷うような法令解釈上の疑問などを解決してくれる心強い一冊といえるだろう。 トレンドや実践例から学べる「持続可能な働き方」で人生を輝かせる! 最新のHRテクノロジーを活用した 人的資本経営時代の持続可能な働き方 民(たみ)岡良(おかりょう)著/すばる舎/2750円  「持続可能な働き方」について本書では、「自らが持てる『強み』によって自然な形で組織や社会に貢献し、不必要な『無理』を強いられることなく、適度なパフォーマンスを持続的に発揮し続けていけるような働き方」と説明する。また、その実現にはHRテクノロジーを活用し、豊富な経験などを持つ「人間」との協働が必要になる、という考え方を示している。  本書は、「持続可能な働き方」を実現し、すべての人々が強みを発揮して活き活きと生きるための考え方と具体的な方法を提示した一冊である。第1章では、これからの人事に求められる役割や機能について、第2章では、日本企業で持続可能な働き方を阻害してきた要因や日本企業の強みに触れたうえ、第3章のHRテクノロジーの活用の仕方の紹介につなげていく。第4章では、個人としてはどのようなスキルを身につけてキャリア自律を実現し、「持続可能な働き方」につなげていくか、また企業側、人事部門としては、これらをどのように支援し、持続可能な組織づくりや社会の構築に寄与していくか、その姿を示し、具体的な取組みを例示する。  経営者や人事担当者のみならず、よりよい働き方を目ざす個人にとってのヒントも満載。 人事のプロが実体験から語る、「個」が活きる組織とは 人事変革ストーリー 個と組織「共進化」の時代 倉(だかくら)千春(ちはる)著/光文社/990円  いま「人的資本経営」、「リスキリング」、「ウェルビーイング経営」など人事関係の話題が注目されている。30年近く複数の外資企業、日本企業で人事制度改革などに取り組んできた著者の倉千春氏は、いまほど人事のテーマが注目された時代はなかったのではないか、と現在を記す。だが同時に、単に流行として取り入れるだけになっていないだろうか、と心配もしている。  人的資本経営を持続的に実現するためには、「社員がやりがいや生きがいを感じながら働ける状態を目指して、エンゲージメントの向上はもちろん、プライベートの充実も図っていく。そういうウェルビーイング経営の実践を通じて、活力にあふれたすべての社員が企業活動に参画できるオープンで前向きな風土をつくっていく必要がある」と著者は綴る。今後は、個人と組織がともに成長して進化していく時代であるという。本書は、著者が紆余曲折を経て取り組んできた人事変革と、企業人事はいま何を問われ、今後はどうあるべきなのか、人の生き方に直結する「人事」に求められているものを考え、示していく。具体例などから学ぶことが多いうえ、人事担当者に必要とされるマインドについても触れるなど、ぬくもりも感じる良書である。 つらい気持ちや悲しみをときほぐしていくプロセスを描いた「読む処方箋」 ココロブルーに効く話 精神科医が出会った30のストーリー 小山(こやま)文彦(ふみひこ)著/金剛出版/2970円  精神科医として30年以上のキャリアを持つ著者の小山文彦氏は、読売新聞社の医療サイトで「ココロブルーに効く話」を連載している。小山氏が診療や相談の現場で多くの人の悩みやストレスを聴き、かかわった事例を題材に書いているものだ。  本書は、それらのなかから30の事例を選び、小山氏がそれぞれの過程のなかに見いだせた「心のありか」に主眼を置き、同サイトでは書き切れなかった著者の心情などを交えて再編し、書籍化した一冊である。  ある50歳の男性は、仕事をしながら週末は隣県に住む母親の世話をすることが大事なライフワークになっていた。しかし、母親が突然他界。心にぽっかりと穴があいてしまったが、昔から親しんでいた音楽を再び楽しむことが、うつの解消につながっていく。人は一生のうちに何度か、この男性のような経験をするという。家族との死別、退職、子どもの自立など、そのような時期に、「心の穴」を広げないために大切なことが、本書に示されている。  30のストーリーは、似たようなことが自分に起こった場合の参考になるとともに、読むことで安堵感を覚えるような内容となっている。 医療・介護の現場で活躍中の93歳!!毎日を明るく生きていくための心得を伝授 93歳、支えあって生きていく。 細井(ほそい)恵美子(えみこ)著/Gakken/1650円  著者の細井恵美子氏は、1931(昭和6)年生まれの93歳。17歳から医療・看護の現場で働き、身体拘束のない看護に取り組んだほか、在宅療養部の開設や病院ボランティアの導入にも尽力した。70歳で特別養護老人ホームの施設長に。81歳から同顧問となり、現在も現場で活躍する生涯現役の実践者である。  本書は、「110歳人生を目指し、いきいきと暮らしていきましょう」と語る著者が実践している、毎日を明るく楽しく生きていくための心得帖。健康のこと、人とのつながり、仕事に対する思いを、みずみずしい表現で綴っている。「高齢者の幸福とは働けること。働けることは自由の源です」、「定年は人生再構築の出発点≠ナす。自分にできる働き方に、どんどん挑戦を」、「心に桜の花を咲かせましょう」など読者の背中を押してくれる言葉や心身の健康づくりのヒントが詰まっている。そこには、だれもがかかる可能性がある認知症の予防や向きあい方、支える家族の苦悩について、また、すべての人に訪れる人生の最期について、エピソードを交えながら自らの考えも示されている。本書のタイトルにある「支えあって生きていく。」、この姿勢が読むほどに心に染みる。