【表紙2】 助成金のごあんない 65歳超雇用推進助成金 65歳超雇用推進助成金に係る説明動画はこちら 65歳超継続雇用促進コース  65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、過去最高を上回る年齢に引上げること A定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。また、改正前後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること B1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること C高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)の実施 支給額 ●定年の引上げ等の措置の内容、60歳以上の対象被保険者数、定年の引上げ年数に応じて10万円から160万円 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(賃金制度、健康管理制度等)を実施した事業主の皆様を助成します。 支給対象となる主な措置(注1)の内容 @高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入 A法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%(中小企業事業主以外は45%) (注2)措置の実施に必要な専門家への委託費、コンサルタントとの相談経費、措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費(経費の額に関わらず、初回の申請に限り50万円の費用を要したものとみなします。) 高年齢者無期雇用転換コース  50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)を実施し、無期雇用転換制度を就業規則等に規定していること A無期雇用転換計画に基づき、無期雇用労働者に転換していること B無期雇用に転換した労働者に転換後6カ月分(勤務した日数が11日未満の月は除く)の賃金を支給していること C雇用保険被保険者を事業主都合で離職させていないこと 支給額 ●対象労働者1人につき30万円(中小企業事業主以外は23万円) 高年齢者雇用管理に関する措置(※1)とは (1)55歳以上の高年齢者を対象としたもの (2)次のいずれかに該当するもの (a)職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、(b)作業施設・方法の改善、(c)健康管理、安全衛生の配慮、(d)職域の拡大、(e)知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進、(f)賃金体系の見直し、(g)勤務時間制度の弾力化 障害者雇用助成金 障害者雇用助成金に係る説明動画はこちら 令和6年4月1日改正分 障害者雇用納付金関係助成金等のおもな変更点について New! 障害者雇用相談援助助成金の創設 障害者雇用相談援助事業を実施する事業者が、当該事業を利用する事業主に障害者雇用相談援助事業を行った場合に、助成します。 New! 障害者職場実習等支援事業の創設 障害者を雇用したことがない事業主等が職場実習の実習生を受け入れた場合等に、謝金等を支給します。 整理拡充 ●障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金について、加齢に伴って生ずる心身の変化により職場への適応が困難となった中高年齢等障害者(35歳以上)の雇用継続を図る措置への助成を拡充 ●障害者介助等助成金において次の措置への助成を拡充 ・障害者の雇用管理のために必要な専門職(医師または職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱 ・障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置または委嘱 ・障害者の介助等の業務を行う方の資質の向上のための措置 New! 特定短時間労働者の追加 助成金に共通する事項として対象となる「労働者」に週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者が「特定短時間労働者」として加えられます(対象とならない助成金もあります)。 ※お問合せや申請は、当機構(JEED)の都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照 東京、大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします 【P1-4】 Leaders Talk No.110 シニア人材の活性化に向け定年延長担当業務・役割を明確化し活躍を促進 前澤工業株式会社上席執行役員管理本部長 菊地和信さん きくち・かずのぶ 1987(昭和62)年に前澤工業株式会社に入社。2015(平成27)年より経営管理本部人事部長を務め、2017年に執行役員に就任。2020(令和2)年より管理本部副本部長、2021年より上席執行役員管理本部長を務める(2023年まで人事部長を兼任)。  1937(昭和12)年創業の前澤工業(まえざわこうぎょう)株式会社は、各種水処理施設や、それに関連した機器・装置の設計・製作・据付などを行う、水≠ノかかわる専業メーカー。創業以来つちかってきた高い技術力と開発力で、人々の暮らしを支えている。同社では2018(平成30)年に65歳定年制と70歳までの継続雇用制度を導入している。今回は、同社における高齢者雇用の取組みについて、上席執行役員管理本部長の菊地和信さんに、お話をうかがった。 閉塞感からの脱却を目ざし65歳定年と70歳までの継続雇用制度を導入 ―貴社では、2018(平成30)年6月に、65歳への定年延長および70歳までの継続雇用制度を導入されました。その経緯とねらいについてお聞かせください。 菊地 もともと、60歳を過ぎても元気であればいつまでも働き続けてもらいたいし、以前の定年年齢の60歳が節目である必要はないと思っていました。加えて、事業を継続し発展させていくうえで、技術やノウハウの継承は不可欠です。高齢社員は後進の育成以外にも会社に貢献できるスキルや経験があり、その能力をもっと発揮してほしいという思いもありました。「生涯現役時代」、「人生100年時代」という言葉があたり前になりつつある時期でしたし、60歳、65歳を超えても、まだまだ勉強して成長する可能性はどんな人にもあると思い、制度改定を行いました。  また、もう一つのねらいとして、高齢社員のモチベーション維持の妨げになる要因を排除したかったということもあります。従来の再雇用制度は、1年契約の嘱託社員で処遇もかなり下がります。さらに、60歳まで課長、部長を務めていた管理職が、定年を境に一契約社員になり、元部下の部下になってしまう。環境の急激な変化がモチベーションに悪影響を与えていたことは否めません。当時、社長から「会社の閉塞感を脱却したい、何かよいプランはないか」とたずねられ、評価制度や給与体系の改革なども含めて行ったさまざまな提案のなかの一つとして定年延長があり、これを先行して進めることになったのです。 ―定年を一律に65歳に引き上げるのではなく、60歳、63歳、65歳から選択できる選択定年制を採用していますが、その理由は何でしょう。 菊地 定年を間近に控えた50代後半の社員のなかには、60歳定年を前提に生活設計などいろいろ準備をしていた人もいます。「60歳定年を一区切りにし、セカンドキャリアに踏み出したい」という人もいれば、「もう少し準備が必要だから63歳で辞めたい」という人もいるでしょうし、そういう人たちにとって、一律に定年を延長することが幸せなのかを考えて選択定年制にしました。  制度導入から6年が経過し、現在も選択定年制のままですが、60歳・63歳での定年を選択したのは、制度導入時に数人いた程度で、ほとんどの人が65歳定年を選択しています。なお、2030年度をもって、選択定年制は廃止する予定です。 ―制度改定以降の高齢社員の処遇について教えてください。 菊地 旧制度では、60歳定年以降、処遇は半額程度まで下がっていましたが、制度改定後、60歳以降の賃金水準は60歳時の75〜85%強程度になるように設計しています。当社の基本給は、基礎給(年齢給)と職能給(等級に応じて支給)で構成されており、具体的には51歳以降は基本給を少しずつ減額し、職能給は60歳時の水準を維持します。60歳以降の昇給はありませんが、賞与は60 歳以前と同基準で支給しています。  また、管理職については、組織運営上どうしても必要な人材については、60歳以降も課長や部長として残ってもらう例もありますが、原則的に60歳で役職定年となります。以降は一般職となりますが、管理職経験者には「シニアリーダー」、部長経験者のなかから一部の人材については「シニアマネージャー」という新たな役割を付与しています。  シニアリーダーは、マネジメントが得意な人であれば管理職を補佐したり、知識・技術・ノウハウを活かし後進を指導・育成したり、一プレイヤーとして業績向上に貢献してもったりと、所属部署と話し合ってそれぞれの個性や希望に沿った活躍を期待しています。賃金については管理職を外れるので本来なら職能等級が下がり、職能給も減額されることになりますが、職能等級はそのまま残し、等級に応じて一定額を支給するほか、シニアリーダー、シニアマネージャーの役職手当も支給しています。一方で、身分は一般職になるので残業手当の支給対象にもなります。  退職金については、勤続年数や職能等級に応じてポイントを付与するポイント制としており、60歳以降はポイントの加算はなく、65歳の定年時に退職金を支払っています。 役職定年者の新たな役割「シニアリーダー」、「シニアマネージャー」を創出 ―制度改定後、社員の意識や働く意欲はどう変化しましたか。 菊地 65歳に定年を延長したことで、正社員という安定した状態で将来のライフプランを描けますし、仕事に対する向き合い方も前向きになったと感じています。管理職を降りてもシニアリーダーという一目置かれる立場になり、仕事に対する意欲や質の向上にもつながっていると思いますし、65歳からの継続雇用に向けてスイッチしていく助走にもなっています。 ―65歳以降の継続雇用にあたっては、一定の基準などを設定しているのでしょうか。 菊地 人事評価が著しく悪い、懲戒処分を受けている、あるいは健康上65歳を超えて働くことがむずかしいといった形式的な基準はありますが、基本的には本人が希望すれば、65歳定年以降も1年ごとに契約を更新する継続雇用に移行します。  フルタイム勤務を原則としていますが、家族の介護など、さまざまな事情を抱えている社員もいるので、それぞれの職場で検討し、人事に申請することで柔軟な働き方を認めています。多いのは週4日ないし週3日勤務ですが、所定労働時間はそのままで、出勤・退勤時間を1時間ずつ早めるなどの例もあります。また、家族の介護の関係から定時出勤・退勤がむずかしくなっていた社員に、一時的に月給制から時給制で働くことを認めたケースなどもあります。 継続雇用者向けの新たな評価制度がモチベーション維持・向上のインセンティブに ―継続雇用の社員に意欲を持って働いてもらうために何か工夫していることはありますか。 菊地 1年間に担当する業務やミッション、期待する成果を上司と話し合って記入する「担当業務記述書」に基づいて評価する仕組みを設けています。目標管理制度のようなものですが、プレイヤーとして目ざす数値目標や、「この人を育成します」といった、特に力を入れる項目を記入し、契約更新日にこの「業務成果」と「責任感」、「リーダーシップ」の3点について自己評価と上司評価を行います。この評価結果は継続雇用終了の70歳のときに支給される「功労金」に反映されます。標準のB評価が5ポイント、A評価が20ポイント、S評価が40ポイントになり、1ポイントの単価は1万円です。S評価を取り続ければ5年間で200万円になりますし、働くインセンティブとして機能していると思います。  もう一つ「行動評価シート」というものがあります。「後輩を育てることに熱心ですか」、「後輩の意見や考えに耳を傾けることが多いですか」といった項目を5段階評価するものです。実際の評価にはあまり活用しませんが、周囲の社員が本人の働きぶりをどう見ているのか、ふり返ってもらうためのフィードバックに使っています。 ―高齢社員に明確な役割と目標を明示することは重要ですね。継続雇用は70歳までですが、その先も見すえているのですか。 菊地 制度上は70歳というルールがありますが、じつは70歳以降もそれまでと同じ条件で1年更新で働いている社員もいます。職場のニーズがあり、本人も健康で意欲があり、期待する成果を出すことができる人材であれば、「70歳で終わり」という線引きはしていません。現在の最高齢者は74歳です。将来的にはエイジレスな制度への改定を行う可能性もありますが、いまは制度を変えなくても自然体でうまく運用できていると思っています。 ―65歳定年制を導入する企業はまだまだ少ないのが現状です。定年の延長も含めて65歳以降の雇用に取り組む企業にアドバイスをお願いします。 菊地 業界や業種の特性もありますし、企業が一律にやるべきなのかもわかりません。多くの会社は人材確保を出発点に、支払う賃金の問題も含めて検討に入っていると思いますが、当社も社員に長く勤めてもらうことを前提に検討を行いました。中途採用も増やしていますが、これまで数社の転職を経て入社した人にも、当社を最後に長く活躍してほしいですし、当社での勤務を通じて将来の生活設計を考えることができるような制度をつくってきました。大切なことは「シニアに何を期待するのか」という会社の軸を明確にすることだと思います。それが定まれば、定年延長や継続雇用制度の改定に向けた具体的な検討も進むでしょう。「世の中の動きがこうだから」など、周りに流されたうえでの制度変更は、いずれ無理がくるかもしれません。当社の制度改定も、最初は思いきった決断であり、勇気も必要でしたが、いまでは定着し多くの高齢社員が活躍しており、取組みを進めてよかったと感じています。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラストKAWANO Ryuji 2024 July No.536 特集 6 新任人事担当者のための高齢者雇用入門 7 総論 高齢者雇用の現状と課題 高千穂大学 経営学部 教授 田口和雄 12 解説 1.高齢社員のモチベーションの維持・向上と賃金・評価制度 2.多様で柔軟な働き方の実現に向けて 高千穂大学 経営学部 教授 田口和雄 3.生涯現役で働くための健康と安全の確保 ―エイジフレンドリーな職場をつくる― 産業医科大学高年齢労働者産業保健研究センター センター長・教授 財津將嘉 4.高齢者雇用と助成金65歳超雇用推進助成金について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者助成部 高齢者雇用促進等のためのその他の助成金 編集部 1 リーダーズトーク No.110 前澤工業株式会社 上席執行役員 管理本部長 菊地和信さん シニア人材の活性化に向け定年延長担当業務・役割を明確化し活躍を促進 28 70歳雇用推進プランナー 高年齢者雇用アドバイザーのご案内 29 高年齢者活躍企業事例サイトのご案内 30 読者アンケートにご協力お願い/デジタルブックのご案内 31 日本史にみる長寿食 vol.368 赤いトウガラシの辛い味 永山久夫 32 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 突撃!エルダ先生が行く!ユニーク企業調査隊 《第4回》大和ハウス工業株式会社 「アクティブ・エイジング制度」や「親孝行支援制度」で高齢社員の“リアル” をサポート 38 高齢者の職場探訪 北から、南から 第145回 宮城県 株式会社MAYURA 42 高齢者に聞く生涯現役で働くとは 第95回 奥村印刷株式会社 経営管理本部 藤井淳さん(68歳) 44 知っておきたい労働法Q&A《第74回》 定年後再雇用制度の凍結、受診命令とセクシュアルハラスメント 家永 勲 48 シニア社員を活かすための面談入門 【第2回】 面談に必要なスキルとは? 株式会社パーソル総合研究所 組織力強化事業本部 キャリア開発部 高橋稔明 50いまさら聞けない人事用語辞典 第48回 「役員報酬」 吉岡利之 52 労務資料 生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)内閣府 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.341 伝統の技を活かして目ざす日常使いの器づくり 鎌倉彫職人 遠藤英明さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第85回]漢字パズル「足りない漢字は?」 篠原菊紀 ※連載「学び直し$謳i企業に聞く!」は休載します 【P6】 特集 新任人事担当者のための高齢者雇用入門  今号の特集は、「新任人事担当者のための高齢者雇用入門」と題し、高齢者雇用の現状や課題、取組みを推進するうえでのポイントなどについて、マンガを交えて、新任人事担当者の方にもわかりやすく解説します。  改正高年齢者雇用安定法の施行により70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となって3年。65歳、70歳を超えた雇用・就業確保の実現に向け、新任人事担当者の方はもちろん、ベテラン担当者や経営者の方も含めて、ぜひ本特集をご一読ください。 【P7-11】 総論 高齢者雇用の現状と課題 田口(たぐち)和雄(かずお) 高千穂大学 経営学部 教授 JEED製パン株式会社は従業員約100人の食品製造業。定年65歳、希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入している。 1 はじめに〜5人に1人は高齢社員  「少子高齢化」、「人口減少」の言葉をよく耳にします。日本の総人口は2008(平成20)年をピークに減少傾向に転じたことが理由です。また、労働力人口は1990年の6384万人から2023(令和5)年の6925万人へと増えていますが、そのうち60歳以上の比率は11.5%から21.6%へと拡大しており※1、現在、労働者の5人に1人は高齢労働者の状況にあります。  日本経済の活力を今後も維持するには働き手を増やすことが不可欠であり、わが国の重要な政策課題の一つになっています。さらに、ライフスタイルの変化にともなう個々の労働者の特性やニーズが多様化しているなか、将来も安心して暮らすために長く働きたいと考える労働者も増えており、高齢期になっても能力や経験を活かして活躍できる環境の整備がいっそう求められるようになりました。こうした背景のもと、高齢者雇用に影響をおよぼす高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)は令和期に入った2020年に改正(2021年4月施行)され、新たに「70歳までの就業確保」の努力義務化が企業に課せられ、令和期の高齢者雇用は70歳就業時代に向かうことになりました。マンガに登場するJEED製パン株式会社の雇用制度が「65歳定年+希望者全員70歳までの継続雇用」としているのは、今回の高齢法改正に対応して整備したことによるものです。  この春の人事異動で人事部に着任した焼立さんのように、読者(新任の人事担当者を念頭に置いています)のみなさんは、現在の高齢者雇用を理解するのがたいへんかと思います。そこで、総論では高齢者雇用に影響を与える改正された高齢法の概要をふり返るとともに、政府統計から高齢者雇用の現状を確認し、70歳就業時代に向けた課題を述べていきたいと思います。 2 改正された高年齢者雇用安定法の概要  改正された高齢法(以下、「新高齢法」)のポイントは、事業主(以下、「企業」)が高齢者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳までの就業機会が確保できるよう、旧高齢法の規定である「高年齢者雇用確保措置」に加え、多様な選択肢を制度として設ける「高年齢者就業確保措置(70歳までの就業確保措置)」の努力義務が企業に課せられている点です(図表1)。  旧高齢法の規定は次の二つです。第一に企業が定年を定める場合は60歳以上としなければならないこと、第二にそのうえで65歳までの雇用機会を確保するため、企業に対して図表2の上段に示す三つの制度のいずれかを、「高年齢者雇用確保措置」(以下、「雇用確保措置」)として講じる義務が設けられたことです。つまり、企業は65歳まで自社あるいは自社のグループ企業で「雇用」する場の設置が課せられていました。  新高齢法では、上記の雇用確保措置に加えて70歳までの就業機会を確保するため、企業に対して図表2の下段に示す五つの制度のいずれかを「高年齢者就業確保措置」(以下、「就業確保措置」)として講じる努力義務が新たに設けられました。  旧高齢法と比べた新高齢法のおもな特徴は次の2点です。第一は「自社グループ外での継続雇用が可能になった」ことです。Bの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入について、雇用確保措置では60歳以上65歳未満の雇用は自社と特殊関係事業主(自社の子法人等、親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等)のみでしたが、就業確保措置では65歳以上70歳未満の高齢者に対しそれらに加えて、「他の事業主」が追加されました。すなわち、自社の高齢社員が継続雇用制度で働く場が自社や自社グループにとどまらず他社や他社グループ企業に拡大された点です。  第二は「雇用によらない働き方」が可能になったことです。就業確保措置の@〜Bの制度はこれまでの自社あるいは他社で「雇用される働き方」(以下、「雇用措置」)であるのに対し、CとDの制度は「雇用によらない働き方」で「創業支援等措置」と呼ばれます。Cは会社から独立して起業した者やフリーランスになった者と業務委託契約を結んで仕事に従事してもらう方法、Dは企業が行う社会貢献活動に自社の高齢社員を従事させる方法です。働く人たちの多様なニーズに応えた働き方が誕生していますが、高齢者でも同様のニーズが高まることも考えられ、今回の改正で創業支援等措置が新たに設けられました。この創業支援等措置を導入する場合、企業は過半数労働組合等※2の同意を得て導入することが求められます。  このように65歳以降は自社(自社グループ)での「雇用」に限定せず、他社での雇用やフリーランスとしての業務委託などの働く場の選択肢が示されていることから「就業」と呼ばれています。 3 高齢者雇用の現状〜雇用と就業の状況  高齢者雇用の現状を政府統計から確認してみます。図表3は高齢法の改正にあわせた2006年(2004年改正の「高年齢者雇用確保措置義務化」の施行年)、2013年(2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の施行年)、2021年(2020年の「高年齢者就業確保措置の努力義務化」の施行年)の3時点の高齢者の雇用と就業の状況を整理したものです。  企業の雇用状況について、高年齢者雇用確保措置を実施している企業(高年齢者雇用確保措置実施企業)の割合は右肩上がりの拡大傾向にあります(2006年:84.0%、2013年:92.8%、2021年:99.9%※3)。特に2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」は実質65歳定年制※4に向けた転機となり、ほとんどの企業で65歳までの雇用環境が整備されました。こうした動きにあわせて希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合(2006年:34.0%、2013年:62.4%、2021年:83.5%)も右肩上がりの拡大傾向にあり、2021年では約8割の高水準にあります。なお、70歳以上まで働ける企業の割合は低い水準(2006年:11.6%、2013年:16.7%、2021年:35.7%)にあるものの、70歳就業時代に向けて着実にその割合は増えており、2021年では約4割に達しています。  次に高齢者の就業状況を確認すると、60歳から64歳までの「60代前半層」の推移は2006年(52.6%)、2013年(58.9%)、2021年(71.5%)と右肩上がりの増加傾向にあり、そのなかでも2013年から2021年までの7年間の上がり方(58.9%↓71.5%:12.6ポイントの増加)は2006年から2013年へのそれ(52.6%↓58.9%:6.3ポイントの増加)と比べて大きく、多くの企業で一般的な定年年齢の60歳を迎えた高齢者が引き続き働いている状況にあることがわかります。実質65歳定年を迎えた後の60代後半層(65〜69歳)の3時点の就業状況の推移についても、60代前半層と同じ傾向(@右肩上がり増加傾向、A2006年から2013年の上がり方に比べた2013年から2021年までの上がり方が大きいこと)が確認されます。60代前半層の就業状況が増えているのは年金受給開始年齢の引上げがかかわっていますが、それだけではなくライフスタイルの変化もかかわっており、60代後半層の就業状況の推移――水準は60代前半層より低いものの、増加傾向にあること――を物語っています。2021年現在、65歳以上の約4人に1人(25.1%)が、70歳以上は約5.5人に1人(18.1%)が働いている状況にあり、これからの高齢者雇用は70歳就業時代に向けた対応が求められています。 4 おわりに〜経営成果に貢献し続けるためのキャリア支援と職務開発  大きな社員集団となっている高齢社員が65歳まで働くことが日常の光景となり、しかも60代後半層の約半数が就業している今日、70歳までの就業環境の整備が企業にとって喫緊の課題となりつつあります。そこで、最後に高齢者雇用の今後のおもな課題を取り上げると、次の2点です。  一つは、キャリア支援体制のさらなる拡充です。70歳までの就業環境の整備に必要なのは、まずは70歳まで就業できる雇用制度の整備です。例えば、「65歳定年制+希望者全員の70歳までの継続雇用制度」に見直した、マンガのJEED製パンの雇用制度改定です。さらに、それにあわせて人事処遇(賃金・評価)制度の見直しも必要になります(解説1であらためて紹介します)。  雇用制度と人事処遇制度の改定に取り組めば70歳までの就業環境が整備されたというわけではありません。高齢社員には、その環境のもとで活躍するという意識と業務に必要な知識・スキルや技術を習得してもらうことが必要になります。というのも、高齢社員の多くは元管理職であり、定年退職で管理職を離れ、継続雇用後は現場に戻って活躍するというのが一般的な高齢期のキャリアであるため、現場で活躍するために必要な知識・スキルや技術が不足しています。旧高齢法のもとでは、定年後の65歳までの継続雇用の5年間はこれまで積み上げてきた知識・スキルや技術で活用すること(以下、「現有能力の活用」)ができましたが、70歳就業となるとその期間が10年に延びてしまいます。しかも「10年」という期間で社会をはじめ市場や技術は変化するので、現有能力の活用だけで継続することが困難になります。また、組織運営上の観点から役職定年を導入する企業が大企業を中心に普及しています。例えば、役職定年の年齢を55歳とした場合、現場での就労期間が15年に延びます。そのため、今後は70歳まで活躍できるよう、キャリア教育や現有能力の更新・進化に向けたリスキリングなどのキャリア支援体制のさらなる拡充が求められることになります。  二つめは、仕事内容の棚卸し(職務開発・職務再設計)です。継続雇用後の高齢社員の仕事内容は定年時の仕事を継続するのが基本です(管理職は離れるので職責は変わります)。企業、高齢社員双方にとって最も合理的であるからです。高齢社員にとっては、これまでつちかってきた知識・スキルや技術を活かすことができますし、企業にとっても新たな仕事、定年時の仕事とは異なる仕事を担当させる場合の必要な知識・スキルや技術を習得するための能力開発コストが不要になります(ただし、現有能力の更新・進化で発生する能力開発コストは別です)  しかし、高齢社員の仕事内容が変わることがあります。加齢にともなう身体機能の低下により継続できない場合などが代表例です。加齢にともなう身体機能の低下は、避けることのできない現象です。JEED製パンのように製造業など身体的負荷をともなう業務の職場は、高齢社員の労働災害の発生リスクがある職場です。高齢社員はこれまでのように経営成果への貢献を継続することがむずかしくなります。労働災害を予防し、高齢社員に活き活きと活躍してもらうには、職場環境の改善が必要になりますが(解説3であらためて紹介します)、やはり限界があります。その対応策として、高齢社員の戦力化を進めている企業では、長年の職業人生を通して積み重ねてきた能力・スキル、経験・ノウハウなどを蓄積している高齢社員の優位性を活かして、若手社員の指導や育成を担当させています。高齢社員が活躍できるよう新たに仕事を用意すること(「職務開発」)、仕事内容を見直すこと(「職務再設計」)などの仕事内容の棚卸しが求められます。 ※1 総務省統計局「労働力調査」 ※2 過半数労働組合等……労働者の過半数を代表する労働組合がある場合には労働組合を、労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者をそれぞれさす ※3 2021年は51人以上の規模の集計が行われていないため、31人以上の規模企業の値 ※4 60歳以降は必ずしも正社員ではなくほかの雇用形態に変わることもあるが、65歳まで働くことができるため「実質65歳定年制」と呼んでいる 図表1 新高齢法と旧高齢法の比較 《旧高齢法》 〈義務〉 高年齢者雇用確保措置 (65歳までの雇用確保措置) 《新高齢法(2021年4月施行)》 〈義務〉 高年齢者雇用確保措置 (65歳までの雇用確保措置) 〈努力義務〉 高年齢者就業確保措置 (70歳までの就業確保措置) ※筆者作成 図表2 新高齢法の概要 制度 内容 高年齢者雇用確保措置 (雇用確保措置) 〔義務〕 @65歳までの定年引上げ A定年制の廃止 B65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主〔子会社・関連会社等〕によるものを含む) 高年齢者就業確保措置 (就業確保措置) 〔努力義務〕 @70歳までの定年引上げ A定年制の廃止 B70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む) 雇用措置 (雇用される働き方) C70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 D70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入  a.事業主が自ら実施する社会貢献事業  b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業 創業支援等措置 (雇用によらない働き方) (注)「特殊関係事業主」とは自社の子法人等、親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等を示す 出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法改正の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/11700000/001245647.pdf)をもとに筆者作成 図表3 高年齢者の雇用状況と就業状況 (単位:%) 2006年 (平成18年) 2013年 (平成25年) 2021年 (令和3年) 2004年改正の「高年齢者雇用確保措置義務化」の施行年 2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の施行年 2020年改正の「高年齢者就業確保措置の努力義務化」の施行年 雇用状況 高年齢者雇用確保措置実施企業 84.0 92.8(92.3) (99.9) 希望者全員が65歳以上まで働ける企業 34.0 62.4(66.5) (83.5) 70歳以上まで働ける企業 11.6 16.7(18.2) (35.7) 就業状況 60〜64歳 52.6 58.9 71.5 65〜69歳 34.6 38.7 50.3 65歳以上 19.4 20.1 25.1 70歳以上 13.3 13.1 18.1 (注)「雇用状況」は51人以上規模企業。( )は31人以上規模企業で各年6月1日時点の割合、2021年は「51人以上規模企業」の集計は行われていない。「就業率」は1年の平均値 出典:厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」、総務省統計局「労働力調査」をもとに筆者作成 【P12-15】 解説1 高齢社員のモチベーションの維持・向上と賃金・評価制度 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 本誌の「人事制度・人事評価制度の見直し」「賃金制度の見直し」についての記事はJEED ホームページからご覧いただけます。 「人事制度・人事評価制度」:https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/bunrui/bunrui02_01.html 「賃金制度」:https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/bunrui/bunrui02_02.html 「人事制度・人事評価制度」 「賃金制度」 1 高齢社員の戦力的活用とモチベーション低下の問題  総論で紹介したように、企業の労務構成で高齢社員が大きな集団となっている今日、「高齢社員の戦力的活用」は高齢社員活用の基本方針の標準となっています。定年を迎えた高齢社員は、マンガに登場するJEED製パン株式会社のように雇用形態は継続雇用に切り替わったものの、職場で正社員と一緒に活き活きと活躍している姿が多くの企業でみられます。しかし、その一方で定年前の正社員時代は活き活きと仕事に取り組んでいた社員が、継続雇用に切り替わったあと仕事への取組み意識が下がってしまう「高齢社員のモチベーション低下の問題」に悩まされている企業がみられます。継続雇用後の仕事内容は定年前とほぼ同じにもかかわらず、処遇などが大きく変わることへの不満がその背景にあります。危機感を持った企業は高齢社員のモチベーションの維持・向上を図るために、仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める賃金・評価制度への見直しを進めました。JEED製パンも以前の旧制度でこの問題に悩まされていました。企業にとって欠くことのできない重要な戦力となっている高齢社員のモチベーションの維持・向上は、70歳就業時代における高齢者雇用の重要な課題です。解説1では賃金・評価制度の視点からこの課題を考えてみたいと思います。 2 人事管理と賃金・評価制度  賃金・評価制度を考えるには、その基盤とする人事管理の基本原則を理解することが必要です。賃金・評価制度は企業の人事管理の個別施策(仕組み)の一分野であり、人事管理は経営方針・戦略に基づいた人材活用の基本方針に沿って整備されているからです(図表1)。さらに、人事管理はこの基本原則に加えて労働法制を遵守することが求められます。例えば、労働基準法は使用者に対して法定労働時間を超えて労働者を労働(時間外労働、いわゆる「残業」)させたり、法定休日に労働(休日労働)させたりするためには、労働者の代表と時間外・休日労働協定(いわゆる「36協定」)を締結し、割増賃金を支払うことを使用者に義務づけています。2024(令和6)年4月1日から建設業・ドライバー・医師などの時間外労働の上限規制の適用による物流や地域医療への影響などに支障が生じると指摘されている、いわゆる「2024年問題」は、労働基準法が改正されたことによるもので、解説2にもかかわる労働法制上の課題です。  高齢社員の賃金・評価制度についてもこの人事管理の基本原則をあてはめて考えることが必要になり、なかでも労働法制では高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)を遵守しつつ、経営方針・戦略に基づいた高齢社員活用の基本方針に沿って高齢社員の賃金・評価制度を整備していくことが求められます。 3 平成期における企業の賃金・評価制度の対応をふり返る  マンガに登場するJEED製パンで継続雇用の高齢社員に対して「全員一律の賃金、賞与なし」の賃金・評価制度がとられていた背景を、企業の高齢者雇用に影響をおよぼす国の高齢者雇用政策との関連でふり返ってみたいと思います。  平成期における国の高齢者雇用政策には大きく二つの動きがみられました。一つは平成期前半の65歳までの雇用推進です。この時期に3回の高齢法改正が行われました。定年到達者が希望する場合の定年後の継続雇用の努力義務化を企業に課した1990(平成2)年改正、60歳定年が義務化された1994年改正、そして定年の引上げ等による高年齢者雇用確保措置の努力義務化を企業に課した2000年改正です。  こうした国の高齢者雇用政策の推進を受けて、企業は65歳までの雇用推進に向けた人事管理の整備に取り組みました。多くの企業で整備された雇用制度は「60歳定年制+基準該当者の再雇用制度(継続雇用制度)」です。総論で紹介した現在の高齢法とは異なり、当時の高齢法は、65歳までの雇用確保が努力義務であり、再雇用(継続雇用)の対象者に基準を設けることができました。また、高齢社員の人数も、従業員の労務構成において大きな集団となっている現在に比べて当時は少ない状況でした。そのため、仕事の成果を求める正社員とは異なり、高齢社員に対して仕事の成果を求めない福祉的雇用の活用方針がとられ、それに基づいて賃金は「全員一律の基本給、昇給なし、定額の賞与」の対応がとられ、評価については不実施、あるいは継続雇用者用の評価制度を整備して実施の対応がとられ、マンガに登場するJEED製パンでもこうした動きにあわせて同じ対応がとられていました。  二つめの動きは平成後半期の実質65歳定年制の整備です。2004年に高齢法は改正され、それまで努力義務であった高年齢者雇用確保措置が義務化されました。つまり、定年を迎えた社員が希望すれば、65歳まで働くことができる雇用環境――実質65歳定年制――が整備されました。  しかし、平成期前半で福祉的雇用の活用方針をとった企業は「高齢社員のモチベーション低下問題(継続雇用後の仕事内容は定年前とほぼ同じにもかかわらず、処遇などが大きく変わることへの不満)」に悩まされていました。企業は高齢社員に対して「仕事の成果を求めない」とは伝えていませんが、継続雇用後の賃金・評価などの処遇が定年前と変わっていることでそれを認識していました。社会情勢は少子高齢化がさらに進む一方、厚生年金の受給開始年齢が引き上げられたため、65歳まで働くことを希望する高齢社員が増え、企業の労務構成において大きな集団となり、この問題は全社的な経営課題となりました。  そこで、企業は活用方針を福祉的雇用から定年前の正社員と同じように仕事の成果を求める戦略的活用に転換し、それにあわせて高齢社員の人事管理の見直しが進められました。賃金・評価制度では仕事の成果を処遇に反映するよう基本給は一律定額から定年時の職位・等級などにリンクした水準に、昇給は不支給(なし)から支給(あり)へ、賞与は定額から正社員と同じように人事評価を反映した決め方にそれぞれ見直され、人事評価は正社員と同じ仕組みが用いられるようになりました。さらに、マンガに登場するJEED製パンは70歳までの就業確保措置の努力義務化を企業に課す2021年の改正高齢法施行にあわせて65歳定年制を実施したため、高齢社員のモチベーション低下の問題は解消されました。 4 70歳就業時代の高齢社員の賃金・評価制度をどう考えるか  これまで述べてきたように、企業にとって欠くことのできない重要な戦力となっている高齢社員に活き活きと活躍してもらうためには、仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決めることが求められます。しかし、「仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める」といっても、70歳まで就業できる賃金・評価制度をどのような仕組みにすればよいかが問題になります。というのも、賃金・評価制度は雇用制度に連動して形成され、しかも、その雇用制度も、総論で述べたように高齢法に則して多様な選択肢があるからです。選択する雇用制度によって、「仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める」ための賃金・評価制度の仕組みが異なります。  現在、多くの企業で一般的となっている「60歳定年+希望者全員の65歳までの継続雇用」の雇用制度(実質65歳定年制)を例にすると、65歳以降の雇用制度をどの制度にするかを決めることからはじめます。60代前半層に適用している現行の制度(希望者全員の65歳までの継続雇用)と同様にするのか、別な制度にするのかです。さらに、60代前半層についても、現行の制度を継続するか、あるいは別な制度に見直すかを確認する必要があります。2023年4月に国家公務員の段階的な65歳への定年年齢の引き上げが施行され、65歳定年制導入の動きが今後、本格化することが予想されるからです。60代前半層の雇用制度を見直さず、60代後半層の雇用制度だけ整備したとしても、近いうちに65歳定年制導入を準備することになり、雇用制度の見直しに要する労力が大きくなります。マンガに登場するJEED製パンは現行の雇用制度(65歳定年+希望者全員70歳までの継続雇用)の整備を一緒に実施したことで、労力を最小限にとどめることができました。  このように仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める賃金・評価制度を整備する際には、まず70歳まで就業できる雇用制度の基本設計(どの雇用制度にするか)を決めたうえで進めることが求められます。  こうした高齢社員のモチベーションの維持・向上を図る賃金・評価制度の整備の事例としてA社の取組みを紹介します。この事例の特徴は、正社員と継続雇用者の雇用制度の見直しを一緒に行い、それにあわせて賃金・評価制度も見直している点です。 事例1 総合工事業A社 継続雇用後も同じ業務をフルタイムで続ける場合、正社員と同じ賃金・評価制度を適用  県内に3カ所の事業拠点を展開する総合工事業A社は、主力として活躍しているベテラン社員が長く活躍できる就労環境の整備と若手社員への伝承を進めるため、2019年に現行の雇用制度(定年年齢63歳、希望者全員の65歳までの継続雇用)を見直し、定年年齢を65歳、継続雇用の上限年齢を70歳へとそれぞれ引き上げました。継続雇用制度の賃金・評価制度については現行の制度を引き続き継続し、現職継続のフルタイム勤務の場合、基本給は定年時の賃金水準を維持し、評価制度は正社員と同じ制度が適用されています(出典‥(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〔2023〕『70歳雇用推進事例集2023』)。 図表1 人事管理の基本原則と高齢社員の人事管理のとらえ方 【人事管理の基本原則】 経営方針・戦略 《人事管理》 人材活用の基本方針 個別施策 (賃金・評価制度等) 労働法制 【高齢社員の人事管理のとらえ方】 経営方針・戦略 《人事管理》 高齢社員活用の基本方針 個別施策 (賃金・評価制度等) 労働法制 (高齢法など) ※筆者作成 図表2 国の高齢者雇用政策と企業の賃金・評価制度の対応 平成期 前半 後半 国の高齢者雇用政策 65歳までの雇用確保の努力義務化 65歳までの雇用確保の義務化 企業の対応 雇用の基本方針 65歳雇用の推進 実質65歳定年制の整備 高齢社員の活用方針 福祉的雇用 戦略的活用への転換 賃金・評価制度 ・基本給:全員一律(昇給なし) ・賞与:定額 ・評価:不実施、もしくは実施(継続雇用者用) ・基本給:職位・等級等リンク(昇給あり) ・賞与:人事評価反映 ・評価:実施(正社員準拠) ※筆者作成 【P16-19】 解説2 多様で柔軟な働き方の実現に向けて 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 本誌の「労働時間・休暇制度・勤務形態の見直し」「短時間勤務制度の導入」についての記事はJEEDホームページからご覧いただけます。 「労働時間等」:https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/bunrui/bunrui02_05.html 「短時間勤務制度」:https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/bunrui/bunrui02_06.html 「労働時間等」 「短時間勤務制度」 1 進む働き方の柔軟化  人手不足の時代のなかで、多くの企業で社員のライフスタイルの変化に対応した多様な働き方が整備されるようになりつつあります。解説2のテーマである「働き方」は勤務制度をもとにしています。  マンガに登場するJEED製パン株式会社の勤務制度はフルタイム勤務のほかに、短日・短時間勤務が整備され、製造部門(工場)に所属する高齢社員の三戸さんは、持病の通院のために短日勤務をしながら仕事を続けています。高齢社員の戦略的活用を進めている企業がとる継続雇用の高齢社員の働き方は、定年前の正社員と同じフルタイム勤務を基本としています。しかし、JEED製パンの勤務制度がフルタイム勤務のままでは、三戸さんは仕事を続けることがむずかしい状況でした。柔軟な勤務制度が整えられていたことで、三戸さんは働き続けることができたのです。  こうした勤務制度の多様化は平成期に入ってみられる動きです。解説2では平成期以降に進められた勤務制度の多様化の動きとそのもとでの高齢社員の勤務制度をふり返り、令和期の働き方を考えてみたいと思います。 2 勤務制度の基本原則  まず勤務制度の基本原則の確認からはじめます。正社員の勤務制度は「1日8時間、週休2日制」というのが読者の一般的な認識ではないでしょうか。これは労働基準法の「1週の労働時間の上限を40時間とすること」、「1日の労働時間は8時間を超えないこと」、そして「休日を1週に1日以上与えること」をもとにしています(同法第32、35条)。この労働時間を「法定労働時間」、休日を「法定休日」と呼んでいます。「1日8時間、週休2日制」は1日の労働時間を「8時間」とした場合の勤務制度※1で、フルタイム勤務はこの「1日8時間、週休2日制」という働き方をさしています。  この法定労働時間の枠のなかで企業は自社の労働時間を自由に定めることができ、定めた労働時間は「所定内労働時間」と呼んでいます。企業は自社の所定内労働時間を6時間、7時間のように、法定労働時間の上限より短く設定することができるのですが、ほとんどの企業が1日の労働時間を「8時間」としています。法定労働時間の枠のなかで最も長く設定できる時間だからです。さらに「1日8時間」の労働時間についても、企業は始業時間と終業時間を定めています。こうした労働時間制度を「一般的な労働時間制度」と呼ぶことにします。  このように1日8時間、週休2日制の「フルタイム勤務」の、会社が始業・就業時間を定める「一般的な労働時間制度」の勤務制度が、多くの企業でとられている標準的な制度です。 3 平成期以降の勤務制度の変化の動き〜「柔軟化」  こうした勤務制度は昭和期を通して形成され、標準的な勤務制度となりました。しかし、平成期になると勤務制度に変化の動きがみられました。その動きの特徴は勤務制度の「柔軟化」です。図表はその概要を整理したものです。大きく三つの変化がみられました。  第一の動きは、平成期前半の「労働時間制度」の柔軟化です。先に述べた「1日8時間、週休2日制」は1987(昭和62)年の労働基準法改正で週48時間であった法定労働時間を週40時間に段階的に変更したことがベースになっています。さらに、この改正では法定労働時間の短縮とともに労働者の生活の質的向上を図るためにフレックスタイム制などの変形労働時間制度の導入が整備され、労働時間の柔軟化への動きがはじまりました。平成期に入ると経済活動のグローバル化や情報化等の進展、労働者の就業意識の変化などがみられました。  こうした時代の変化に対応した労働時間などの働き方に係わるルールの整備が求められるなか、1993(平成5)年改正では、週40時間労働時間制の実施、変形労働時間制度の拡充、裁量労働制の規定の整備などが、1998(平成10)年改正では企画業務型裁量労働制の導入が、2003(平成15)年改正では裁量労働制の改正がそれぞれ行われました。こうした一連の法改正を受けて、平成期前半ではフレックスタイム制、変形労働時間制度、裁量労働制の導入などによる労働時間制度の柔軟化が進められました。  この時期の継続雇用後の高齢社員の働き方は福祉的雇用のもと、高齢社員に求められる役割が正社員時代に求められた企業の中核人材として基幹業務をになう役割から、パート社員と同じ補助業務を担当して正社員を支援・サポートする役割に変わったため、短日・短時間勤務などの柔軟な働き方が中心でした。  第二の動きは平成期後半の「労働時間・労働日数」の柔軟化です。政府が取り組む働き方改革の一環として推進されている「多様な正社員制度」のなかの「短時間正社員」の導入が進められました※2。働き方改革は少子高齢化にともない生産年齢人口が減少するなか、ライフスタイルの変化による就労ニーズの多様化に対応した多様な働き方を選択できる社会の実現を目ざした取組みです。企業は正社員に対して原則としてフルタイム勤務を求めていますが、短時間正社員は育児・介護などと仕事を両立したい社員など、さまざまな人材に勤務日数や勤務時間をフルタイム勤務の正社員よりも短くしながら活躍してもらうための仕組みです。  この時期の高齢社員の働き方は戦略的活用が進むなかで、求められる役割が正社員に近い役割(基幹業務をになう役割)に変わったため、平成期前半の短日・短時間勤務中心から正社員と同じフルタイム勤務中心の働き方に変わりました。もちろん、企業は引き続き短日・短時間勤務の働き方を選択できるようにしていますが、高齢社員を貴重な戦力として期待しているためフルタイム勤務の働き方を高齢社員に求めています。JEED製パンの高齢社員の三戸さんは戦力として期待されていることから、持病の治療のための通院をしながら短日勤務で働いているのです。  第三の動きは、「働く場所」の柔軟化です。平成期の勤務制度の変化は勤務する「時間(労働時間制度、労働時間・労働日数)」の柔軟化でしたが、令和期の勤務制度は勤務する「場所」の柔軟化が特徴です。通常、労働者は仕事をする場合には会社に出勤します。職場でほかの社員と協力して仕事をするからです。デジタル化が進展するなかで時代が新たな働き方として在宅勤務(テレワーク)が情報サービス業や裁量労働制が適用されている社員を中心に広がりましたが、社会全体からみると限定的でした。しかし、令和期の新型コロナウイルス感染症対策として産業全体に広がり、収束後は育児や介護などのライフスタイルの多様化に対応する働き方として位置づけられるようになりました。ただし、JEED製パンのように同じ会社でも経理部の石窯さんは在宅勤務を利用することができますが、工場勤務の三戸さんはむずかしいと思われます。製造部門の仕事は、会社(工場)に来ないとできない特性を持つ仕事だからです。 4 働き方の柔軟化と労働時間管理  このように勤務制度の柔軟化は病気の治療や家族の介護などライフスタイルが多様化する高齢社員にとっても、会社にとってもよい動き(変化)です。高齢社員は個人の事情で退職せずに働き続けることができますし、人手不足に悩まされている会社は経験やスキルを持つ戦力(高齢社員)を失わずにすみます。  JEED製パンのように高齢社員の就労ニーズにあわせて選択できる多様で柔軟な働き方の実現に向けて、短日・短時間勤務の勤務制度や在宅勤務制度を設けることが求められます。また、こうした多様で柔軟な働き方を求めるニーズは高齢社員だけではありません。フルタイム勤務をしている定年前の正社員のなかにも育児や親の介護、本人の病気治療の健康問題など、さまざまな事情を抱えている者もいます。JEED製パンのように多様で柔軟な働き方を実現できる勤務制度は高齢社員だけで限定せずに、すべての社員に広く適用することが求められます。  最後に、在宅勤務制度を設ける場合には、同制度を利用する社員の労働時間を正確に把握することが求められます。フルタイム勤務をはじめ、短日・短時間勤務の場合、働く場所は「会社」なので、会社は社員の働いた時間(労働時間)を正確に把握することができますが、働く場所が「自宅」の在宅勤務の場合、実際の仕事の開始時間と終了時間を管理する勤怠管理は最終的に社員本人に委ねるため、実際に働いた時間を会社と同じように正確に把握することがむずかしいからです※3。そのため、サービス残業や長時間労働、中抜けなどの問題が生じるおそれがあります。在宅勤務制度を設ける場合には、こうした問題を発生させない勤怠管理体制の拡充が求められます。  このような多様で柔軟な働き方を可能にする勤務制度の事例として、B社の取組みを紹介します。この事例の特徴は、高齢社員をはじめ社員の事情にあわせて柔軟な勤務体制を整備している点です。 事例2 製造業B社 柔軟な勤務体制の整備  本社近郊に4カ所の事業所を持つ製造業B社は、継続雇用の社員が働きやすく負担とならないように、柔軟な勤務体制を整備しています。具体的には、勤務日を週2〜6日の選択制とし、出退勤時間はフレックスタイム制としています。さらに、通院や家庭の事情、雨天時の通勤負担を考慮した出勤日の振替調整や、定年前の正社員を含めて育児などの事情にあわせた在宅勤務への切り替えを可能としています。 (出典‥(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〔2024〕『70歳雇用推進事例集2024』を一部修正) ※1 なお、同法ではこの原則を法定の条件内で変更できることを認めており、「変形労働時間制」と呼ばれている ※2 多様な正社員制度には、短時間正社員のほかに、担当する職務内容が限定されている「職務限定正社員」、転勤範囲が限定されていたり、転居をともなう転勤がない「勤務地限定正社員」の二つのタイプがある ※3 もちろん、会社は在宅勤務の勤怠管理ルール(例えば、勤怠管理システムへの利用、メールやチャットなどによる報告など)を整備して、社員に在宅勤務をさせている 図表 平成期以降の勤務制度の柔軟化の取組み 平成期前半 平成期後半 令和期 取組み内容 概要 労働時間制度の柔軟化 労働時間・労働日数の柔軟化 働く場所の柔軟化 おもな内容 変形労働時間制度、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制の整備・拡充 短時間・短日勤務(短時間正社員制度) 在宅勤務 高齢社員 活用の基本方針 福祉的雇用 戦略的活用 戦略的活用 働き方 短時間・短日勤務中心 フルタイム勤務中心 フルタイム勤務中心 ※筆者作成 【P20-23】 解説3 生涯現役で働くための健康と安全の確保 ―エイジフレンドリーな職場をつくる― 財津(ざいつ)將嘉(まさよし) 産業医科大学高年齢労働者産業保健研究センター センター長・教授 本誌の「労働安全衛生制度の見直し」についての記事はJEED ホームページからご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/bunrui/bunrui02_12.html 1 はじめに:少子高齢化時代  少子高齢化が進む日本では、2040年には1000万人分の労働力不足が見込まれ、生産年齢人口の低下にともない、労働力確保が喫緊の課題となっています。  2023(令和5)年に発表された最新統計によれば※1、高齢者の人口が1950(昭和25)年以降初めて減少しましたが、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.1%と過去最高を記録しています。また、75歳以上の人口が初めて2000万人を突破し、10人に1人が80歳以上となっており、日本の高齢者人口の割合は世界一です。  職場の状況を見てみると、高齢者の就業者数は19年連続で増加し、約912万人と過去最多となっています。就業者総数に占める高齢就業者の割合も13.6%と過去最高で、就業率も65〜69歳が50.8%、70〜74歳が33.5%と過去最高となっています。  また産業別に見ると、医療や福祉などで高齢就業者は10年前の約2.7倍に増加し、高齢の就業希望者のうち、希望する仕事の種類は、専門的・技術的職業とサービス職業が最多となっています。 2 労働中のけがや事故:労働災害のデータを読む  労働中の死亡事故(死亡災害)は年々減少していますが、高齢者の労働中のけがや事故を含めたすべての労働災害は増加しています。厚生労働省が発表した2022年の労働災害発生状況によると※2、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の高齢者の割合は28.7%まで上昇し過去最高になっています。また、60歳以上の労働災害の発生率を30〜34歳代と比較すると、男性は約2倍、女性は4倍になっています。  それでは、どのようなタイプの労働災害(事故の型)が多いのでしょうか。2022年の労働災害発生状況によれば、休業4日以上の死傷者13万2355人のうち、「転倒」が3万5295人(27%)と4分の1以上を占めており、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」の16%と合計すると全体の4割を超えます(図表1)。年齢別で見ると、60歳以上の休業4日以上の転倒災害の発生数は、男性が5169人(36%)、女性が1万290人(49%)と非常に多く、全体の4割強を占めます。さらに、高齢労働者を年齢別に見ると、60〜64歳、65〜69歳、70歳以上のグループで、ほぼ3分の1ずつ転倒災害が発生していることがわかります(図表2)。また、若年層の20〜24歳のグループと比べると、男性では60〜64歳で3.5倍、65〜69歳で4.3倍と増加し、女性では60〜64歳で12倍、65〜69歳で16倍と急激に増加します(図表3)。  2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、事業主は65歳までの雇用確保の義務に加えて、70歳までの就業確保の努力義務が課せられました。統計データを科学的に読むと、高齢者を雇用する場合は、まずは転倒災害の予防の意識を強く持つ必要があることがわかります。転倒リスクが急上昇する60代後半では対策の優先度を高くする必要があります。「転ぶ」こと自体は、子どものころにだれでも経験します。労働者のなかでも、若年層では転倒で大けがには至らない場合が多く、軽度な問題と考えられがちです。しかし、高齢者が転倒すると、骨折や頭部外傷などの重大なけがにつながるため、決して軽んじてはいけません。転倒災害は労働災害であるというマインドセットが何よりも重要です。 3 加齢による身体機能の低下  高齢者雇用に関する課題は多岐にわたりますが、加齢にともなう身体機能の低下はそのなかでも最も顕著なものの一つです。人は、年齢を重ねると筋力や柔軟性が低下し、体力の減退やバランスの悪化などが起こります。これは自然の摂理であり、「自分だけは大丈夫」ということは決してありません。労働者の身体機能に関して、若年齢と高年齢の労働者を統一指標で直接比較した場合※3、20〜24歳を100%とすると、55〜59歳で心肺・代謝機能80〜90%、敏捷(びんしょう)性・運動調節能力60〜80%、関節可動域60〜90%、筋力60〜70%、認知機能50〜60%、そして感覚・平衡機能が30〜50%まで低下します。  注目すべきは、高齢者は視覚、位置覚、平衡覚などの平衡機能の低下が著しいことです。健診項目には平衡機能検査は入っていません。自動車製造業車両製造部所属の20〜64歳の2592人を対象とした調査では※4、20代のバランスと比較すると、60代で敏捷性が69%、閉眼片足立ち機能が28%まで減少しています。高齢労働者は、ふらつきが大きく、視覚を使わない反射的な危険回避が苦手になっているといえます。転びそうになっても、咄嗟に反対側の足でふん張れず、受け身がとれずに頭から転倒し大けがにつながります。 4 エイジフレンドリーガイドラインをふまえた職場での工夫やポイント  国の政策としても2020年に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)※5が示されており、第14次労働災害防止計画(2023〜2027年度)でも高年齢労働者の転倒対策があげられています。それでは、どのようなポイントに気をつければよいでしょうか。例えば、転倒災害には以下の四つがあげられます※4※6。 ■社会管理的要因(環境)…整理・整頓、焦り・規則違反、職場風土など ■外的要因(環境)…床面摩擦凹凸・段差、手すり、照明、通路幅など ■内的要因(個人)…運動機能低下、視覚機能低下、身体・精神的疾患、服薬状況など ■傷害増幅要因(個人)…身体強度・耐性、回避能力(敏捷性)、骨強度、内臓耐性など  何よりも最初は環境側面からのアプローチが必要です(社会管理的要因、外的要因)。例えば、「走ると危ないので走らない」、「床に物やコードが散乱しているとつまずくので整理整頓」、「床が濡れていれば(雨の日なども)滑るので掃除」、「階段の移動は手すりを持つ」、「段差があれば段差をなくす(むずかしい場合はトラテープなどの目印)」、「薄暗ければ照明をつける」などです。このようにあたり前のことをあたり前にすることが重要です。  一方で、労働災害の発生確率そのものが悪化している場合もあることがわかっています※7。そのため、個人の側面(内的要因、傷害増幅要因)、心身機能低下なども考慮した総合的な対策を行いましょう。例えば、健康診断の結果に基づき、きちんと指導を受けることは重要です。健康イベントなどで身体機能の実測値と自己認識値のギャップを知るのもよいでしょう※8。身体機能の実測値が自己認識よりも低くなると、労働災害が発生する可能性が高くなります。加齢により、閉眼バランスや敏捷性のギャップが顕著になるため、自分の身体機能をきちんと知り、リスクを正しく恐れることが重要です。エイジフレンドリーガイドラインなどを参考に、環境改善の第一歩に取り組んでみてください。 5 おわりに  70歳までの就業確保措置が進むなか、ますます高齢者の労働力が重要になっています。高齢者の雇用は、企業の持続可能な成長に欠かせません。一人ひとりの健康状態や能力を、労働者も事業者も相互的に正しく把握し理解し、個別の状態に合わせた適切な業務の割り振りや作業環境の調整が必要となります。働き手の多様性を尊重し、幸せ・働きがい・生産性向上のために高齢者雇用を考えていただければと思います。 ※1 総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者−「敬老の日」にちなんで−」(2023年) ※2 厚生労働省「令和4年労働災害発生状況」(2023年) ※3 斎藤一「向老者の機能の特性 停年制問題を背景に考えて」『労働の科学』22号(1967年) ※4 川越隆「転倒災害の現状と対策」『日本転倒予防学会誌』6巻3号(2020年) ※5 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10178.html ※6 永田久雄『「転び」事故の予防科学』(労働調査会・2010年) ※7 津島沙輝ら「労働災害の年齢調整発生率の推移:公開統計を用いた分析」『産業医学ジャーナル』46巻4号(2023年) ※8 財津將嘉「高年齢労働者の労災防止対策- 産業医はココに注意」『日本医事新報』 5170号(2023年) 図表1 労働災害のタイプ別の割合 転倒 27% 動作の反動・無理な動作 16% 墜落・転落 15% はさまれ・巻き込まれ 10% 切れ・こすれ 6% その他 26% ※厚生労働省「令和4年労働災害発生状況」より筆者作成 図表2 年齢階級・性別の転倒災害(2022年) 年齢 男性 女性 全体 全体,n 14,365 20,930 35,295 15〜39歳 2,792(19%) 1,755(8%) 4,547(13%) 40〜59歳 6,404(45%) 8,885(42%) 15,289(43%) 60歳以上 5,169(36%) 10,290(49%) 15,459(44%) 60〜64歳 1,951(14%) 3,908(19%) 5,859(17%) 65〜69歳 1,510(11%) 3,154(15%) 4,664(13%) 70歳以上 1,708(12%) 3,228(15%) 4,936(14%) ※パーセンテージの総和は四捨五入により100%にならない場合がある ※厚生労働省「令和4年労働災害発生状況」より筆者作成 図表3 各年齢階級の労働者の転倒災害(千人率) 15〜19歳 女性0.20 男性0.29 20〜24歳 女性0.16 男性0.24 25〜29歳 女性0.15 男性0.21 30〜34歳 女性0.17 男性0.24 35〜39歳 女性0.21 男性0.28 40〜44歳 女性0.30 男性0.33 45〜49歳 女性0.43 男性0.40 50〜54歳 女性0.84 男性0.53 55〜59歳 女性1.42 男性0.66 60〜64歳 女性1.96 男性0.84 65〜69歳 女性2.61 男性1.03 70〜74歳 女性2.84 男性1.17 75〜79歳 女性2.67 男性1.31 80〜84歳 女性2.06 男性1.38 85歳〜 女性1.45 男性0.83 【P24-26】 解説4 高齢者雇用と助成金 65歳超雇用推進助成金について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)高齢者助成部  「65歳超雇用推進助成金」は、65歳以上への定年引上げ等を行う事業主、高年齢者の雇用管理制度の整備を行う事業主、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する事業主に対して、国の予算の範囲内で助成するものであり、「生涯現役社会」の構築に向けて、高年齢者の就労機会の確保および雇用の安定を図ることを目的としています。  共通の要件は、雇用保険適用事業所の事業主であること、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第8条、第9条第1項の規定に違反していないこととなります。  この助成金は次のT〜Vのコースに分けられます。 T 65歳超継続雇用促進コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、次の@〜Cのいずれかを就業規則等に規定し、実施した場合に受給することができます。 @65歳以上への定年の引上げ A定年の定めの廃止 B希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入 C他社による継続雇用制度の導入 ◆支給額  実施した制度、引き上げた年数、対象被保険者数に応じて図表1・2の額を支給します。 U 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、高年齢者の雇用の推進を図るために雇用管理制度(賃金制度、健康管理制度等)の整備にかかる措置を実施した場合に、措置に要した費用の一部を助成します(図表3)。  なお、あらかじめ雇用管理整備計画書を提出し、認定されていることが必要です。 ◆支給額  支給対象経費(上限50万円)に60%(中小企業以外は45%)を乗じた額を支給します。初回の支給対象経費については、当該措置の実施に50万円の費用を要したものとみなします(2回目以降は50万円を上限とする実費)。 V 高年齢者無期雇用転換コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者を転換制度に基づき、無期雇用労働者に転換させた場合に、対象者数に応じて一定額を助成します。  なお、あらかじめ無期雇用転換計画書を提出し、認定されていることが必要です。 ◆支給額  対象労働者1人につき30万円(中小企業以外は23万円)を支給します。 助成金の詳細について  この助成金の支給要件等の詳細は、JEEDホームページをご確認ください。  また、JEEDホームページから、各コースの申請様式や支給申請の手引きをダウンロードできます。そのほか、制度説明の動画も掲載しています。  この助成金に関するお問合せや申請は、JEEDの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課、連絡先は本誌65ページ)までお願いします。 https://www.jeed.go.jp JEED 高齢助成金 検索 助成金の説明動画はコチラ https://www.youtube.com/watch?v=Qvls2Wo9mVU 図表1 65歳超継続雇用促進コース定年の引上げまたは定年の廃止、継続雇用制度の導入 措置内容 対象被保険者数 65歳への定年の引上げ 66〜69歳への定年の引上げ 70歳以上への定年の引上げ(注) 定年の定めの廃止(注) 66〜69歳への継続雇用の引上げ 70歳以上への継続雇用の引上げ(注) 5歳未満 5歳以上 1〜3人 15万円 20万円 30万円 30万円 40万円 15万円 30万円 4〜6人 20万円 25万円 50万円 50万円 80万円 25万円 50万円 7〜9人 25万円 30万円 85万円 85万円 120万円 40万円 80万円 10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円 160万円 60万円 100万円 (注)旧定年年齢、継続雇用年齢が70歳未満の場合に支給します。 図表2 65歳超継続雇用促進コース他社による継続雇用制度の導入(上限額) 措置内容 66〜69歳への継続雇用の引上げ 70歳以上への継続雇用の引上げ(注) 支給上限額 10万円 15万円 ※ 申請事業主が他社の就業規則等の改正に要した経費の2分の1の額と表中の支給上限額いずれか低い方の額が助成されます。対象経費については申請事業主が全額負担していることが要件となります。 (注)他の事業主における継続雇用年齢が70歳未満の場合に支給します。 図表3 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者雇用管理整備措置の種類 高年齢者に係る賃金・人事処遇制度の導入・改善 労働時間制度の導入・改善 在宅勤務制度の導入・改善 研修制度の導入・改善 専門職制度の導入・改善 健康管理制度の導入 その他の雇用管理制度の導入・改善 支給対象経費 ●高年齢者の雇用管理制度の導入等(労働協約または就業規則の作成・変更)に必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントと の相談に要した経費 ●上記の経費のほか、左欄の措置の実施にともない必要となる機器、システムおよびソフトウェア等の導入に要した経費(計画実施期間内の6カ月分を上限とする賃借料またはリース料を含む) 【P27】 高齢者雇用促進等のためのその他の助成金  当機構(JEED)の「65歳超雇用推進助成金」のほかにも、高齢者を雇用した場合の「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)、(成長分野等人材確保・育成コース)」、高年齢労働者の賃金の増額などを行い、高年齢雇用継続基本給付金の受給総額を減少させた場合の「高年齢労働者処遇改善促進助成金」があります。いずれも都道府県労働局やハローワークが支給窓口となります。 編集部 特定求職者雇用開発助成金 (特定就職困難者コース)  高齢者や障害者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に支給されます。この助成金の対象となる高齢者は、60歳以上の方です。  高齢者を雇い入れた場合の助成対象期間は1年間で、支給対象期(6カ月間)ごとに支給されます。支給額は「短時間労働者以外」(1週間の所定労働時間が30時間以上)と「短時間労働者」(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)で異なり、中小企業が短時間労働者以外を雇用する場合、60万円を2期に分けて30万円ずつ(中小企業以外は50万円を2期に分け25万円ずつ)支給されます。  中小企業が短時間労働者を雇用する場合は、40万円を2期に分け20万円ずつ(中小企業以外は30万円を2期に分けて15万円ずつ)支給されます。 特定求職者雇用開発助成金 (成長分野等人材確保・育成コース)  【成長分野】と【人材育成】の二つのメニューがあり、【成長分野】は、高齢者や障害者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により雇い入れて、「成長分野の業務※」に従事させ、人材育成や職場定着に取り組む場合に支給されます。【人材育成】は、未経験の就職困難者を、ハローワークなどの紹介により雇い入れて、人材開発支援助成金による人材育成を行い、賃上げを行った場合に支給されます。  いずれも特定求職者雇用開発助成金のほかのコースの1.5倍の助成金が支給されます。 高年齢労働者処遇改善促進助成金  就業規則や労働協約の定めるところにより、60歳から64歳までの高年齢労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブル(以下、賃金規定等)を増額改定し、高年齢雇用継続基本給付金の受給総額を減少させる事業主に対して支給されます。  支給額は、賃金規定等改定前後を比較した高年齢雇用継続基本給付金の減少額に以下の助成率を乗じた額となります。 ・2/3(中小企業以外は1/2)  (注)100円未満切り捨て  なお、支給にあたっては、算定対象労働者の1時間当たりの賃金を60歳時点の賃金と比較して75%以上に増額する措置を講じていること、増額改定後の賃金規定等を継続して運用していることなど、いくつかの要件を満たしている必要があります(2024〈令和6〉年度末で終了予定)。  それぞれの詳細については、最寄りの労働局またはハローワークへお問い合わせください。 ※次のアとイが該当します  ア「情報処理・通信技術者」または「その他の技術の職業」 (データサイエンティストにかぎる)に該当する業務  イ「研究・技術の職業」に該当する業務 (脱炭素・低炭素化などに関するものにかぎる) 【P28】 70歳雇用推進プランナー※ 高年齢者雇用アドバイザーのご案内 70歳までの就業機会の確保(令和3年4月より努力義務化)などに向けた高齢者の戦力化のための条件整理について、ご相談ください! なぜ高齢者の戦力化が必要なの? ●急速な高齢化による生産年齢人口の減少 人口統計によれば、今後、生産年齢人口(15〜64歳)は減少の一途をたどり、企業の人材確保はますます困難になっていきます。 ●高齢者の高い就業意欲 60歳以上への意識調査では過半数の人が「65歳を超えても働きたい」と回答しています。 70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーとは 高齢者の雇用に関する専門知識や経験などを持っている専門家です。 社会保険労務士 中小企業診断士 経営コンサルタント 人事労務管理担当経験者 など 相談・助言 無料 高齢者の活用に必要な環境の整備に関する専門的かつ技術的な相談・助言を行っています。 ▲人事管理制度の整備に関すること ▲賃金、退職金制度の整備に関すること ▲職場改善、職域開発に関すること ▲能力開発に関すること ▲健康管理に関すること ▲その他高齢者等の雇用問題に関すること 提案 無料 70歳までの就業機会確保などに向けた高齢者戦力化のための定年引上げや継続雇用延長などの制度改定に関する具体的な提案を行っています。 ▲課題の洗い出し ▲具体的な課題解決策の提案 ▲制度見直しのメリットを見える化 ▲制度整備に必要な規則例などの提供 その他のサービス 無料 ◆雇用力評価ツールによる課題などの見える化 簡単なチェック内容に回答いただくだけで、高齢者を活用するうえでの課題を見出し、解決策についてアドバイスします。 ◆他社の取組みにおける好事例の提供 同業他社の取組みが気になりませんか? ほかの会社がどういった取組みを行っているのか、貴社の参考となる事例を提供します。 企画立案等サービス 有料 専門性を活かして人事・労務管理上の諸問題について具体的な解決策を作成し、高齢者の雇用・活用等を図るための条件整備をお手伝いします。 中高齢従業員の就業意識の向上などを支援するために、貴社の要望に合った研修プランをご提案し、研修を行います。(経費の1/2 を機構〈JEED〉が負担します) ※令和5年4月より「65歳超雇用推進プランナー」から名称変更しました。 お問合せ先 JEED都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問合せください。 【P30】 読者アンケートにご協力をお願いします! いつも本誌をご愛読いただき、ありがとうございます。 『エルダー』では、よりよい誌面をつくるため、読者アンケートを実施しています。 みなさまの声をお待ちしています! 回答方法 今号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、Faxにてお寄せください。 Fax番号はこちら → 043-213-6556 Webでの回答も可能です コードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/elder_enqueteであることをご確認のうえアクセスしてください 本誌はデジタルブックで読むことができます! スマートフォンやパソコンでいつでも無料でお読みいただけます。ぜひ、ご利用ください! ★最新号は毎月5日ごろにアップされます。 自由に拡大できて便利! 読みたいページにすぐ飛べる! ★高齢者雇用のさまざまな課題などをテーマに現状と対応策などを紹介 ★高齢者雇用に取り組む経営者、人事労務担当者、いきいきと働く高齢者本人の声を紹介 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/index.html JEED エルダー 検索 〈お問合せ先〉企画部 情報公開広報課 TEL:043-213-6200 【P31】 日本史にみる長寿食 FOOD 368 赤いトウガラシの辛い味 食文化史研究家● 永山久夫 辛くて涙ポロポロ  トウガラシは、中南米を原産とするナス科の植物。ペルーでは紀元前8千年から7千500年の昔から栽培されていたと伝えられているほど、歴史の古い香辛料の原料です。いまでは、世界中の人々の味覚を楽しませています。  それにしても、トウガラシはじつに辛い。食べ過ぎると涙ポロポロですが、その激辛がたまらないのです。  トウガラシは、赤い乾果を粉にして使う場合が多く、七味唐がらし、カレー粉、ソース、漬け物などに使用されています。  トウガラシの辛味の成分はカプサイシンで、発汗や保温、食欲増進、免疫力強化、疲労回復などの働きがあります。  新陳代謝を活発にして、脂肪の燃焼を促進させたり、ホルモンの活性を高めて、意欲を強めたりなどの効果も期待されています。 七味唐がらしの登場  トウガラシを食べていると、体温が上昇したり、汗をかいたりするのも、エネルギーの代謝が向上するためで、脂肪が燃焼され、肥満防止にも役に立つといわれています。  トウガラシには、頭の回転をよくし、記憶力の向上に関係のあるビタミンB1 も含まれており、情報化時代に用いる香辛料としても理想的です。またトウガラシには、カロテンやビタミンCも含まれていますから、上手に活用すれば、老化を防ぐうえでも役に立ちます。  トウガラシの激烈な辛さを中和して、マイルドな薬味にするために考案されたのが「七味唐がらし」。江戸の町人に喜ばれ、大ヒット商品となり、現在も人気のある調味料です。  江戸時代後期の『続(ぞく)飛鳥川(あすかがわ)』という書物には、張り子のトウガラシをかついだ行商人が「とんとん唐がらし、ひりりと辛いは山椒(さんしょう)の粉、すはすは辛いが胡椒(こしょう)の粉、七色唐がらし」と歌いながら、竹筒に入れて売り歩いていたと伝えられています。  ほかにも、黒ゴマや青海苔、シソ、陳皮(ちんぴ)(ミカンの皮)などが使われます。いずれも健康効果の高い材料といわれていますので、上手にとり入れましょう。 【P32-36】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 突撃! エルダ先生が行く!ユニーク企業調査隊 第4回 「アクティブ・エイジング制度」や「親孝行支援制度」で高齢社員の“リアル”をサポート 大和ハウス工業株式会社(大阪市北区) ※「健康状態」や「上司の推薦」、「職種」など 図表1 ワーク・ライフ・バランス推進に関するおもな制度 有給休暇積立制度 法定上失効する有給休暇を最大100日まで積み立てて、必要に応じて使用できる制度 時間単位有給休暇 年次有給休暇を1時間単位で使用できる制度 ホームホリデー制度 家庭サービスや自身のリフレッシュ、自己啓発などを目的として年次有給休暇を計画的に取得する制度 連続休暇 (Re(アールイー)休暇) 有給休暇を複数取得し、定休日を含め連続5日以上の休暇を取得することを推奨する制度 介護休業制度 仕事と介護の両立を図るための制度で、介護休業の終了事由が生じるまで無期限で取得可能 親の介護に係る旅費支援補助金制度 (親孝行支援制度) 遠方にいる要介護状態の親の介護に関わる理由で親元へ帰省する際の交通費相当額として、年4回を上限に、帰省距離に応じて「親孝行支援補助金」を支給する制度 テレワーク 場所に囚われることなく、自宅やサテライトオフィス、3rdオフィスなどで勤務ができる制度 フレックスタイム制度 1日の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度 在宅勤務手当 在宅勤務を行う際の水光熱費補助のための手当 資料提供:大和ハウス工業株式会社 継続雇用制度(アクティブ・エイジング制度) 正社員 65歳定年 70歳 アクティブコース(週4日勤務)(70歳まで) 現役同等コース<技術職対象>(年齢上限なし) 図表2「親孝行支援制度」における支給額 片道距離 支給金額/回 200km未満 支給しない 300km未満 15,000円 400km未満 20,000円 600km未満 25,000円 800km未満 30,000円 片道距離 支給金額/回 1,000km未満 35,000円 1,200km未満 40,000円 1,400km未満 45,000円 1,600km未満 50,000円 1,600km以上 55,000円 (参考:東京-大阪間の場合 約500km 支給額25,000円) 資料提供:大和ハウス工業株式会社 図表3「親孝行支援制度」利用の流れ @ 社員本人の情報、介護の対象となる方の情報、片道の距離などを申請してもらう ↓ A実際に親元に帰省後、補助金申請 ↓ B申請の翌月に距離に応じた金額を支給 図表4 仕事と介護の両立支援に関するその他の制度 制度名 内容 介護休業制度 仕事と介護の両立を図るための制度で、介護休業の終了事由が生じるまで無期限で取得可能 家族の看護休暇 子、配偶者、父母、祖父母、および配偶者の父母、配偶者の祖父母の看護のために、1年間に5日を限度として休暇を取得できる制度 資料提供:大和ハウス工業株式会社 ※親(配偶者の親を含む)が要介護認定(要介護1〜5)を受けていること。盆・正月の帰省は支給の対象外 つづく 【P37】 解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 突撃! エルダ先生が行く!ユニーク企業調査隊 第4回 「アクティブ・エイジング制度」や「親孝行支援制度」で高齢社員の“リアル”をサポート 企業プロフィール 大和ハウス工業株式会社(大阪府大阪市) 創業1955(昭和30)年 建築・土地開発事業等  従業員4万8483人(連結、2024[令和5]年3月31日時点)、全国に54の事業所を展開する、国内トップクラスの大手ハウスメーカー。戸建住宅事業をはじめ、賃貸住宅事業やマンション事業、商業施設などの建築事業、環境エネルギー事業など、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、人々の暮らしを支えている。  2013(平成25)年に65歳定年制を導入し、2015年には65歳定年以降の再雇用制度である「アクティブ・エイジング制度」を導入するなど、高齢者雇用先進企業としても知られており、高齢社員が生涯現役で活き活きと働ける職場環境の実現に向け、さまざまな取組みを展開している。 65歳以降の再雇用制度「アクティブ・エイジング制度」  経験豊富な人財の確保およびシニア層のモチベーション向上を目的に、2013年に65歳定年制を導入。シニア人材の活躍といった成果が出ていたことをふまえ、65歳定年以降の勤務を可能とする再雇用制度「アクティブ・エイジング制度」を2015年に導入した。健康状態などの一定の条件はあるものの、年齢制限なく働くことのできる仕組みを構築するなど、まさに「生涯現役」を実現する制度となっている。 「親孝行支援制度」  遠方で暮らす親の介護を行っている社員を支援するための制度。介護のために親元へ帰省する際の旅費などの負担を軽減することを目的としたもので、距離に応じて最大5万5000円を、年4回を上限に支給している。社員の両親だけではなく、社員の配偶者の両親の介護を行う場合も利用可能とするなど、社員とその家族を支援する仕組みとなっている。 ワーク・ライフ・バランスの充実  シニア世代を含む全社員のワーク・ライフ・バランスの充実に注力しており、フレックスタイム制度やテレワークといった柔軟に働ける勤務制度のほか、時間単位有給休暇やホームホリデー制度などの休暇制度も充実。多様な人財の多様な働き方を実現している。 【P38-41】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第145回 宮城県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 制度化=見える化で実現する 一生涯働くことができる職場づくり 企業プロフィール 株式会社MAYURA(まゆら)(宮城県仙台市) 設立 2011(平成23)年 業種 障害福祉サービス事業 社員数 30人(うち正社員数13人) (60歳以上男女内訳) 男性(10人)、女性(4人) (年齢内訳) 60〜64歳 3人(10.0%) 65〜69歳 3人(10.0%) 70歳以上8人(26.7%) 定年・継続雇用制度 定年は70歳。以降は運用により年齢の上限なく継続雇用  宮城県は東北地方の中東部に位置し、栗駒山(くりこまやまや)蔵王(ざおう)連峰を擁する奥羽山脈がそびえる県西部を山形県、南は福島県、北は岩手県・秋田県に接し、太平洋に面する東側は、三陸海岸南部のリアス式海岸および親潮と黒潮が交わる海流などのおかげで世界有数の豊かな漁場となっています。また、県北部に東北最長の北上川、南部に東北2番目の阿武隈川が流れ、県中部には日本三景に数えられる松島のほか、伊達政宗が開いたとして知られる東北唯一の政令指定都市である仙台市があります。  JEEDの宮城支部高齢・障害者業務課の浅井(あさい)鉄也(てつや)統括は「東日本大震災から13年が経過し基幹インフラである道路、河川、鉄道、港湾、空港とも100%復旧、防潮堤も99%の整備が完了しています。県全体の製造品出荷額は、内陸部の自動車関連が後押しし震災前の122%となっていますが、沿岸部だけでみると震災前の84%にとどまっています。水産業・水産加工業では、県内主要4漁港(気仙沼(けせんぬま)、女川(おながわ)、石巻(いしのまき)、塩釜(しおがま))の年間水揚量(2023〈令和5〉年)は20.3万トンで震災前の2010(平成22)年(31.3万トン)の65%であり、2022年12月時点で再開を希望する水産加工施設の98%が事業を再開しましたが、生産能力が震災前の8割以上まで回復した県内企業は68%、売上げが8割以上まで回復した企業は52%にとどまっています。また、売上げが戻らない理由として、人材の不足、原材料の不足、販路の不足・喪失があげられています。そのほか、2021年に復旧対象農地の100%が営農可能となっています。  観光分野では、2019年に観光客数が過去最高を記録したものの、近年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け震災前の水準を割り込んでいます※」と説明します。  同支部で活躍する氏家(うじいえ)明子(あきこ)プランナーは、企業の人事部門を経て、社会保険労務士の資格を取得。社会保険労務士事務所に勤務して研鑽(けんさん)を積んだ後に独立しました。もっぱら人事労務分野でつちかった経験と資格を活かしてプランナー活動を行っています。  今回は、氏家プランナーの案内で「株式会社MAYURA」を訪れました。 60歳以上が約半数、70〜80代も大活躍  株式会社MAYURAは、2011年に創業。宮城県仙台市内で複数の障害福祉サービス事業所を運営しています。パンの製造・販売を行う就労継続支援A型事業所「Petit Eclair(プチエクレア)」と就労継続支援B型事業所「青い鳥」を併設した多機能型事業所「Petit Eclair」をはじめ、同じく多機能型事業所の「いろはまるごと仙台港」、「Ma Rue(マル)」などを開設し、地域に根ざした複合的な障害福祉サービスを提供しています。  MAYURAで活躍する社員の約半数が60歳以上。代表取締役社長の千葉(ちば)真由美(まゆみ)さんは、高齢社員に対する期待と安心感を次のように語ります。  「例えば配達業務で納品や返品に出向いた際、若手社員は荷物を置いてくるだけのところを、高齢社員は先方としっかりコミュニケーションをとって戻ってきます。社外に出ればみんな会社の顔、会社を代表する社員ですから、その点で高齢社員は安心して仕事を任せることができます。また、子育て世代の場合、子どもの学校行事などの日程が重なってしまうことも少なくありません。高齢社員を含め多世代が働く職場であれば、子どもの行事や急な病気などで欠勤の人がいても補うことができます。さまざまな面で頼りになるので、今後も60歳以上の人材を積極的に採用していきたいと思っています」  専務兼部長の原(はら)豊樹(とよき)さんは、「当社では、働き方改革推進の旗振り役として安全衛生推進プロジェクトチームを立ち上げ、障害者と高齢者にやさしい職場づくりを目ざし活動してきました。例えば蛍光灯をすべてLED化したほか、社用車を安全性能の高い同一メーカーの車両に入れ替えたり、階段に手すりを設けるなどの対策を行っています」と話します。  そのプロジェクトチームを牽引する管理者の本間(ほんま)淳史(あつし)さんは「60代後半で入社して、いまは70歳以上の高齢社員が多く、しかもみなさんまだまだ元気です。75歳を超えている方もおり、私たちも負けていられないので、高齢社員のみなさんを見習っています」と頭が上がらないという面持ちでした。 制度改正に対応して「働きやすさ」を見える化  同社は2023年9月に定年制度を改定し、定年を65歳から70歳に延長しました。  「定年撤廃も視野に入れて検討していたのですが、顧問の社会保険労務士から『定年という区切りを設けて、その後の働き方などについて意思確認をすることも大切』とアドバイスを受け、70歳までの定年延長としました。70歳で一区切りつくとはいえ、それ以降の継続雇用でも処遇に変更はありません。70歳定年時には、体調や勤務継続の意思確認なども含め、対話をする機会にしています」(千葉社長)  また、2021年には、生涯現役で働きたい社員を支える制度として、病気の治療と仕事の両立を支援するための仕組みを整えました。本人同意のうえで診断書を提出してもらい、面談を通して病状などに配慮した支援計画を立てます。これについて氏家プランナーは、「病気休暇10日間を有給とするすばらしい取組みです。会社としては負担が大きいので、無給で導入する企業もありますが、会社に在籍し続けること自体の障壁を減らし、生涯現役で働き続けることができるようにという配慮が感じられ、社員を大切にしていることが伝わってきます」と驚いていました。  「病気の場合、先行きが見通せないことも少なくないので、治療に専念し、安心して職場に戻ってこられるように、制度化することで社員に見える化≠キることが大切だと思います。社員が困ったときや相談を受けた際に、『こんな制度があります』、『この制度を使いましょう』と示せるようになりました」と、千葉社長は成果についての手応えを述べました。  今回は、年齢を感じさせない働きぶりで会社に貢献している2人にお話を聞きました。 「生涯現役」を抱負に日々楽しく指導にあたる  藤井(ふじい)義雄(よしお)さん(79歳)は3年ほど前から、就労継続支援B型事業所「青い鳥」で職業指導員として働いています。もともと千葉社長とつき合いがあり、直接スカウトされたそうです。  「職業指導員の仕事は素人でしたから、若い世代と一緒になって仕事を覚えました。毎日、通所者と一緒に4時間ほど作業をしています。通所者の方には感情のコントロールが苦手な人もおり、たいへんなときもありますが、『今日も来て楽しかった』と、思ってもらえたら私の仕事はそれで完了です」と藤井さんは話します。  明るく闊達な話しぶりからも、80歳間近とは思えないバイタリティが垣間見えます。人づき合いが好きで、若いころから営業やタクシードライバーなど、人と接する仕事に就いてきたそうです。  「多方面においてスキルを持った方で、特に教えることがうまく、周りからとても頼りにされています」(原専務兼部長)  「仕事中はまったく年齢を感じさせないところがすごいと思います」(本間さん)  藤井さんは9時30分〜15時30分までの週4日勤務で、「時間帯がちょうどよい」と話し、無理なく働けているとのこと。「仕事は生きがい。規則正しい生活が送れて毎日楽しく、生涯働くつもりです」と抱負を話してくれました。 パンづくり一筋、パワフルに働く82歳  小野(おの)四市(よいち)さん(82歳)は、就労継続支援A型事業所「Petit Eclair」の工房で、パンづくりを通して通所者の就労支援を行っています。仕事は6時から12時まで。出勤するとまずサンドイッチ用の食パンをスライスし、その後パン生地の成形を通所者とともに行います。「決まった時間までにパンを焼き上げるのがたいへんです。生地は毎日状態が異なるのでそこがむずかしいところ。きちんと時間内に終えられると楽しいと感じます」とキリッとした面持ちで語ります。小野さんは製パンメーカーを定年退職後、小学生の交通誘導の仕事をしていたところ、通勤中の原専務と顔見知りになりました。原専務がたまたまPetit Eclairのパンを手渡す機会があり、「以前はパンづくりの仕事をしていて」と打ち明け、トントン拍子でMAYURAで働くことになりました。「MAYURAで働き出してもう13年。仕事を任せてくれるのでやりがいがあります」と小野さん。  「販売スキルが非常に高く、車で販売に出ると必ず完売して戻ってくるので驚いていました。年齢的に車の運転がむずかしくなってきたこともあり、本人も会社も泣く泣く販売業務を卒業し、成形の仕事に変更しましたが、生産量の増加におおいに貢献してくれています」(原専務兼部長)  工場長の伊藤(いとう)千秋(ちあき)さん(73歳)は、「小野さんはパンづくりの経験が長く、成形の手さばきが違います。やさしい人柄で怒らずに教えてくれるので、通所者のみなさんもわからないことがあれば、小野さんに質問に行くのです。業務の引継ぎもていねいで、さじ加減がポイントになる工程も含め、簡潔で正確に要所を説明してくれます」と高く評価していました。  伊藤さん自身も70代ということで話を聞くと、「会社には同世代の人が多く、みんな『年寄り』という感じはあまりありません。私はもともとパティシエとして働いていたので、おいしいものを提供することはやりがいです。これからも通所者一人ひとりに、技術をしっかり覚えてもらって、一人前になって社会に出られるよう力を尽くしたいです」と話してくれました。  今回の取材を終え氏家プランナーは「高年齢者雇用安定法改正に合わせて制度導入を実施する事業所は多いですが、導入した制度をどうすれば実際に活用できるのかというところまで落としこむ考えがすばらしいと感じました」と語り、今後の高齢者雇用の取組みにも期待を寄せていました。  将来的には定年撤廃も見すえているMAYURA。高齢社員のみなさんのますますの活躍が期待されます。(取材・西村玲) 氏家明子 プランナー アドバイザー・プランナー歴:3年 [氏家プランナーから] 「プランナーとして各方面の事業所を訪問し、高齢者雇用の取組みについて直にお話をうかがえることはとても貴重な機会となっています。そのなかで会社の取組みや理念、販売している商品などのファンになってしまう事業所は増える一方です。次の訪問が楽しみになっています」と話します。 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆宮城支部高齢・障害者業務課の浅井統括は氏家プランナーについて、「2021年度から当支部で活躍し、人事労務管理、職域・職務開発などを得意分野としています。高いコミュニケーション能力を有し、事業所訪問では担当者の雰囲気にも気配りしながら、現行制度に寄り添い、現状に即して無理なく実現できる制度改善提案に心がけ活動してくれています」と話します。 ◆宮城支部高齢・障害者業務課はJR仙石線多賀城駅より南東へ徒 歩約20分に位置する宮城職業能力開発促進センター(ポリテクセ ンター宮城)内にあります。立地する多賀城市は、古代に陸奥国府(むつこくふ)が置かれた地で、今年創建1300 年を迎えます。 ◆同県では、7人の70歳雇用推進プランナーが活動し、2023年度は364件の相談・助言業務を行い、115件の事業所に制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●宮城支部高齢・障害者業務課 住所:宮城県多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 電話:022-361-6288 ※復興庁宮城復興局「宮城県の復興の現状−東日本大震災から13年−」(2024年3月) https://www.reconstruction.go.jp/topics/20240311_miyagikennohukkonogenjou.pdf 写真のキャプション 宮城県仙台市 Petit Eclair併設のベーカリーカフェ店内 原豊樹専務兼部長 通所者に寄り添って軽作業を進める藤井義雄さん パンの成形工程で作業を手助けする小野四市さん 【P42-43】 第95回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは 奥村印刷株式会社 経営管理本部 藤井(ふじい)淳(じゅん)さん  藤井淳さん(68歳)は、大学卒業後に入社した印刷会社で、現場の進行および管理部門一筋に歩いてきた。定年後も経験を活かし職場環境充実のために挑戦を続けている。仕事がおもしろくてたまらないと笑みがこぼれる藤井さんが、生涯現役で働くことの楽しさを語る。 伊豆大島から新しい世界を求めて  私は伊豆大島(いずおおしま)で生まれ、地元の中学校を卒業後、東京都下の秋川(あきがわ)市(現あきる野市)にあった全寮制の男子校、東京都立秋川高等学校に入学しました。大島にも高校はありましたが、その高校に父が国語教師として勤務しており、同じ高校へ進学することに抵抗があったのだと思います。当時唯一の全寮制の普通科高校の新設が世間の注目を浴びたのか、1965(昭和40)年に秋川高校が開校したことが新聞でも報道されました。その記事を目にした小学校3年生の私は、「将来自分もここに進みたい」と漠然と決めたように思います。全寮制のため住む所の心配がないのも魅力でした。また、新しい学校だったので進取の精神が旺盛で寮生活もとても楽しいものでした。残念ながら2001(平成13)年に廃校になりましたが、同窓会や同期会は連綿と続いていて、かつての仲間たちとはいまも親交を深めています。  高校卒業後は埼玉大学に進み、新しい学問として人気が出始めた文化人類学を専攻しました。結局私は新し物好きなのかもしれません。世の中では「モラトリアム」という概念が流行し、卒業してもすぐに就職しない若者が闊歩しており、私も大学時代から始めたアルバイト先でそのまま気楽なアルバイト生活を送っていました。  「モラトリアム」とは心理学の領域では「アイデンティティ確立のための猶予期間」をさす。流行の波に乗って就職せずにのんびりと青春を謳歌していた藤井さんに、ついに父親の叱声が飛び、モラトリアムからの脱却を図ることになった。 成長し続ける時代とともに  アルバイト先は水文(すいもん)※の研究をしているおもしろい会社でしたが、理系でない私は一介のアルバイトに過ぎず、いつまでもふらふらしている私を見かねた父が奥村印刷株式会社を紹介してくれました。地元の高校で進路相談を担当していた父は、成長率の高い会社として、奥村印刷に島の高校生を何人か送り込んでいました。ありがたいことに私も採用され、社会人としてやっと第一歩をふみ出すことができました。28歳の遅い出発でした。  印刷の分野だけでなく日本の産業が活力のあった時代で、私の入社と同じ年に会社が輪転機を導入し、埼玉県川越市に工場が新設されました。私は工務進行という部署で、製版工程の進行管理の業務に就きました、輪転機が本格的に稼働するとどんどん注文が増え続け、工程管理の仕事は息つく暇もないほどでした。いまの時代に大きな声ではいえませんが、家に帰れば日付が変わるような日々が続いたものです。このころ、最も販売促進効果があるといわれたチラシの注文が殺到し、有名企業のチラシ印刷を受注した営業マンはとても誇らしげでした。また、不動産関係の週刊誌も印刷していたので、社内中みんな目が回る忙しさでしたが、現場は活気にあふれていました。人より少し遠回りして入社した私ですが、いまも同じ会社で働かせてもらえているのですから、出会いに感謝しています。  「入社したときに仕事を教えてくれた先輩は、三つ年下の後輩でした」と、藤井さん。よい意味での「島育ち」の鷹揚(おうよう)さが言葉の端々に表われる。藤井さんは3人兄弟で、弟さんの友人の一人も入社してきた。島の若者が都市部で活躍の場を得られたよき時代であった。 失敗を恐れずに  もともと印刷業に興味があったわけではありませんでしたし、製版工務という仕事に対してもまったくの無知でした。それでもいま思えば半年ほど経ったときには一人前の口をきいていたような気がします。つまり、毎日が本当に忙しかったため、場数をたくさん踏み、経験を重ねられたのです。やる気次第でどんどん成長することができたのは幸せでした。  もちろん失敗もたくさんしました。私のミスで商品が刷り直しになったこともあり、落ちこむことも多かったです。ただ、失敗したときにそれをどう乗り越えるかというプロセスが大切だと私は思います。失敗を力にして、この40年間懸命に歩いてきました。  28歳で入社して製版工務の仕事を25年ほど務め、その後は業務・品質管理の仕事に就きました。60歳で定年退職し再雇用となり、いまもフルタイムで働いています。結婚が遅く、子育ての時期が人より遅かったこともあり、定年でのリタイアなど考えたこともありません。現在、3カ月に1回、雇用契約の更新を行っていますが、これが自分のことを見直せるよい機会だと前向きにとらえています。  奥村印刷株式会社は、長年の技術を駆使して完成した「折り紙食器」で被災地を支援しており、いま、マスコミから注目されている。また、品質マネジメントシステムの確立でも業界に先駆け、その部分を支える一人に藤井さんがいる。 よりよい職場環境づくりに注力  「折り紙食器」のことは多くの方が関心を持ってくださっています。ご興味ある方は当社のホームページをぜひご覧ください。  一方、会社は品質マネジメントシステムの確立に力を入れてきました。現在三つのISOを取得しており、私はISOの事務局も担当しています。  また、個人情報を適切に取り扱っていると評価された事業者だけが使用できる「プライバシーマーク」の認証を取得しています。この認証については私も事務局を手伝ってきました。  さらに、森林管理の国際規格であるFSC認証の取得については導入の推進委員を務め、早い時期からかかわってきました。FSCとは、森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら、適切に生産された製品を消費者に届けようというものです。  代表的なものだけをあげましたが、私の最近の仕事は品質マネジメントシステムのそれぞれの規格が要求することを社内でどのように展開していくか、そのお手伝いをすることです。幸い、現場のこともよくわかっており、ISOの認証などにかかわってきたので、この仕事は自分に合っていると密かに誇らしく思っています。もともと前に立って「さあ、行くぞ」と人を鼓舞するタイプではなく、だれかに「さあ、行くぞ」といわせるために緻密な計画を立てるほうが私には合っているのです。よりよい職場環境の実現に向け会社の役に立てると思えば自然にモチベーションも上がります。  高校時代の仲間と年に一度同期会で会うたびに、年々リタイアした人が増えています。私はリタイアは先延ばしして、もう少し、大好きな仕事と一緒に日々を過ごしていこうと思います。 ※水文……地球上の水の循環などを対象に研究する学術分野 【P44-47】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 《第74回》 定年後再雇用制度の凍結、受診命令とセクシュアルハラスメント 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 経営状況の悪化により定年後再雇用制度を凍結した場合、再雇用はしなくてもよいのでしょうか  会社の経営状況の悪化を理由に、定年後再雇用制度を一時的に凍結することが定められました。この凍結期間に定年退職に至った場合には、継続雇用の対象外となるのでしょうか。 A  定年後の再雇用の労働条件が特定されていないような場合には、継続雇用をする義務が否定されることがあります。ただし、経営状況の悪化などが具体的に進行しており、そのことの説明が尽くされていることも必要と考えられます。 1 定年後の継続雇用と再雇用拒否が可能な理由  高齢者については、高年齢者雇用安定法により65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務づけられており、@定年の延長、A継続雇用、B定年制の廃止のいずれかの措置を取る必要があります。  ただし、厚生労働省が定める指針(高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針)において、継続雇用制度を適用しないでもよい場合として、「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができる」とされています。  定年をもって、労働契約を終了したことを前提に、定年後の有期労働契約を締結していない場合の取扱いについても、明確な規定はありません。最高裁平成24年11月29日判決(津田電気計器事件)では、定年後に嘱託雇用契約の状態にあった従業員について、継続雇用の基準を満たしていたにもかかわらず、基準を満たしていないものとして扱って再雇用をしなかった事案において、「法の趣旨等に鑑み、上告人と被上告人との間に、嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される」と判断したものがあります。  ただし、この判例は、高年齢者雇用安定法において、継続雇用の基準を定めることができた当時の判断であり、現時点でも通用するのかについては、検討が必要なものといえます。 2 人員整理にともなう高年齢者雇用の凍結に関する裁判例  航空会社において、新型コロナウイルス感染症の蔓延にともない、業績がきわめて悪化し、役員報酬の減額、役員の減員、早期退職の募集、必要不可欠ではない雇用の停止などを実施したうえで、日本以外の国でも多数の従業員を解雇するにいたっていた状況において、日本における定年後の継続雇用制度を一時的に凍結するという決定をし、当該凍結の結果、雇用契約が終了した従業員と紛争になった事案があります(東京地裁令和5年6月29日判決、アメリカン・エアラインズ事件)。  当該裁判例での争点は、@定年後の継続雇用の拒絶について、就業規則上の退職または解雇事由に該当するか否か、A@に該当する場合に解雇権濫用法理が適用されるか否か、B雇用継続への期待可能性が認められ雇止め法理(労働契約法〈以下、「労契法」〉第19条2号)が適用されるか、C津田電気計器事件と同様に定年後に同一条件にて労働契約が成立したといえるか、といった点など多岐にわたります。  事件の当事者となった使用者においては、就業規則に「事業縮小、人員整理、組織再編等により社員の職務が削減されたとき」が退職事由と定められており、裁判例においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により大幅な減便を余儀なくされ、経費削減(関接部門の正社員30 %減員などの労務費削減を含む)に取り組み、あわせて定年退職者の再雇用についても一時凍結したことについては、就業規則に定める退職事由に該当するものと判断しました。  さらに、定年後再雇用の拒絶について、解雇権濫用法理が適用されるかという点については、「定年後再雇用の制度は、期間の定めのない労働者が定年に達した場合に退職の効力を一旦発生させた上で、定年後の労働条件についてあらためて協議・合意して労働契約を締結するという構造の制度」であることを理由に、「解雇がされたものではないのであるから、労契法16条が想定し、同条が規定するいわゆる解雇権濫用法理が適用される枠組みとは事案を異にする」として、解雇権濫用法理の適用を否定しました。この点は、退職事由または解雇事由に該当することが必要であり、かつ、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要と考えられていた従来の厚生労働省のQ&A※で示されていた考え方とは、異なる考え方を採用していると考えられます。  解雇権濫用法理が適用されないということになると、退職事由に該当したとしても、雇用が継続していたというためには、労契法第19条2号による雇止め法理の類推適用を受けるか、もしくは、津田電気計器事件の判例による保護対象となる必要があるということになります。  まず、労契法第19条2号の適用について、適用の前提となる要件の充足があれば適用可能性があること自体は肯定されましたが、労働契約更新への期待可能性について、「期間の定めのない労働契約が定年により終了した場合であっても、労働者からの申込みがあれば、それに応じて期間の定めのある労働契約を締結することが就業規則等で明定されていたり、確立した慣行となっており、かつ、その場合の労働条件等の労働契約の内容が特定されているということができる場合」には、期待することにも合理的な理由があり得ると判断しました。  しかしながら、当該事案における具体的な判断としては、就業規則などに再雇用後の労働契約が特定されていたわけではなく、個別の協議で定まるとされていたことや、会社の経営が急激に悪化している状況などを社内メールで全員に配信するなど説明をしていた状況をふまえて、一定の期待を有していたとしても、そのことが合理的な理由に基づくものとはいいがたいとして、労契法第19条2号の適用もないと判断されました。  そして、津田電気計器事件の判例による保護対象となるかについても、同事案は、雇用基準を定めており、当該基準を満たしていた者を更新しなかったというものであり、かつ、すでに嘱託社員としての労働条件が定まっていた労働者に関する事案であるから、本件とは事案を異にするものと判断されました。  本裁判例からは、退職事由または解雇事由がある場合には、必ずしも客観的かつ合理的な理由が必要と判断されるとはかぎらない場合がありそうですが、継続雇用の具体的な労働条件が特定されている場合には、本件のような結論とはならない可能性があるという点などには、留意しておく必要があると考えられます。 Q2 体調不良や精神疾患がうかがわれる社員に医療機関への受診を命令することはできるのですか  最近、仕事でミスが多くなり、身だしなみも整わず、体重の減少などもあるようにみえる社員がいるので、精神疾患に罹患しているのではないかと心配しています。医療機関への受診を命じ、早めに対処したいと思っているのですが、社員が異性でもあるため、体重の減少を直接話題に出すのは、セクシュアルハラスメントにあたるのでしょうか。また、受診をうながした場合の費用の負担は会社が行うべきでしょうか。 A  就業規則の根拠を確認したうえで、受診を命令しなければならない必要性および相当性を検討したうえで、受診を命じることは可能ですが、体重の減少などを理由とすることは控えることが望ましいでしょう。なお、費用負担をする義務はありませんが、実務上は受診を実現するために費用負担をせざるを得ないこともありえます。 1 受診命令の根拠  会社が、労働者に対して受診命令を行うことができるか否かについては、最高裁昭和61年3月13日判決(帯広電報電話局〈NTT〉事件)において、判断されたことがあります。この事件は、就業規則を構成する健康管理規程において、労働者の健康保持の努力義務や健康回復を目的とした健康管理従事者の指示に従う義務があることなどが明記されていました。このような明示の根拠がある場合には、会社による受診すべき旨の指示に従い、病院ないし担当医師の指定および健診実施の時期に関する指示に従う義務があると判断されています。  端的にいえば、就業規則に定めがあるかぎりは、健康管理上必要な事項については、受診を命じる必要性および相当性が認められれば、病院の指定や医師の指定も含めて命じることができると考えられます。なお、このような就業規則の規定がない場合についても、当該事件の事情に照らして医師の判断を仰ぐ高度の必要性が認められたことを理由に、信義則ないし公平の観念に照らし合理的かつ相当な理由のある措置として受診を命じることができると判断した裁判例もあります(東京高裁昭和61年11月13日判決、京セラ〈旧サイバネット工業〉事件・控訴審)。  受診を命ずるにあたっては、治療にあたる医師を選択する自由が労働者にもあることには配慮が必要です。例えば、労働安全衛生法第66条1項は、事業者に労働者に対する健康診断を義務づける一方で、同条5項ただし書きにおいて労働者が選択した医師による健康診断の結果を提出することは許容されています。医師選択の自由が保障されていることは重要であり、受診命令を根拠づける就業規則の合理性が肯定される根拠にもなりますので、自ら選択する医師による診察を受けることを制限するものではないことも就業規則に明記しておくとよいでしょう。  なお、受診命令の必要性および相当性も問題となります。「仕事のミスが多くなり、身だしなみが整わず、体重の減少も見受けられる」とのことですが、加えて、欠勤や遅刻の増加などの勤怠不良が生じていないか、本人と面談を行って心身の不調に関する本人の認識や原因の聴取なども行っておく方が適切でしょう。 2 セクシュアルハラスメントとの関係について  過去の裁判例においては、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではなく、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となるというべき」(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日判決、金沢セクシュアルハラスメント事件。上告審においても判断是認)とされた裁判例があります。  当該事件の事情から「男性の上司が部下の女性に対し」という前提になっていますが、重要なのはここで掲げられている考慮事由の内容です。このような裁判例の考慮事由をふまえて、「太ってるんだから」、「ダイエットするためにうちの店で働くって決めたんでしょ」などの発言を、業務とはまったく関係のないものであるとして、セクシュアルハラスメントに該当すると判断されている事例もあります(例えば、東京地裁平成27年10月15日判決)。  違法な言動になるか否かについては、業務との関連性も考慮され、当該言動の必要性や相当性も評価されることになります。そのため、受診命令を行う必要性があったのか否かという点と、体重の減少といった話題を出す必要性は重なり合う部分があるといえるでしょう。  前述の通り、受診命令の必要性および相当性にあたっては、欠勤や遅刻の頻度など客観的な事情も加味して判断すべきですので、体重といった話題を出すことなく、受診を命じることが可能であれば、その方が望ましいと考えられます。仮に、そのような話題を出さざるを得ないとしても、多少の体重の変動というよりは、客観的に見ても極度にやせ型になっており、従前の状況との大きな変化があったような場合に限定することが望ましいと考えられます。 3 受診命令にともない生じる費用の負担  受診命令にともなう費用負担に関しては、健康診断の費用負担に関する考え方が参考になります。  労働安全衛生法第66条に基づく健康診断の義務に関して、厚生労働省は、事業者に法律上義務づけられた健康診断の費用であることから、当然に事業者が負担すべきものとの見解を示しています。他方で、法令上の義務ではない健康診断の費用に関しては、事業者が当然に負担すべきとは考えられていません。  このような考え方を参考にすると、精神疾患への罹患が疑われている状況については、事業者において労働者を医師に受診させる義務を負担させるような法律上の根拠はなく、このような場合の受診や検査費用については、特段の決まりはありません。そのため、いずれが負担するかについては、労使間の協議により定めるべき事項であり、必ずしも事業者が負担しなければならないとはいえないでしょう。  ただし、実務上の判断としては、本人の意思に委ねていては受診もままならない状況で推移してしまい、休職に必要な判断材料が入手できないという状況に陥ることもあり、指定医による診察を受けてもらうことは会社の判断に資する部分が大きいこともふまえて、指定医における受診に関しては、会社において費用を負担することを明示して診察を命じることによって、医師の診断書の獲得に向けて動くことも選択肢に入れて、診察をうながさざるを得ないこともあるでしょう。 【P48-49】 シニア社員を活かすための面談入門 株式会社パーソル総合研究所 組織力強化事業本部 キャリア開発部 高橋(たかはし)稔明(としあき)  長年の職業人生のなかでつちかってきた豊富な経験や知見を持つシニア社員。その武器を活かし、会社の戦力として活躍してもらうために重要となるのが「面談」です。仕事内容や役割、立場が変化していくなかで、シニア社員のやる気を引き出し、活き活きと働いてもらうための面談のポイントについて、人と組織に関するさまざまな調査・研究を行っているパーソル総合研究所が解説します。 第2回 面談に必要なスキルとは? はじめに  独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果※1によれば、社員の能力開発・キャリア管理のための施策に注力する企業の58.5%が、「管理職によるキャリアに関する部下との個別面談」を実施しています。また、株式会社パーソル総合研究所が2021(令和3)年に実施したアンケート調査※2では、企業に勤める60代の社員が何歳まで働きたいかという設問に、54.1%が「69歳まで」、41.4%が「70歳」あるいは「それ以上生涯働けるまで」と回答しています。  働きたいと思うシニア社員の方々が、職場で活き活きと働き、組織に貢献し続けるうえで、キャリアに関する面談の重要性は今後さらに高まると考えられます。「シニア社員を活かすための面談入門」第2回では、上司と部下とのキャリア面談を中心に、必要なスキルの一部をご紹介します。 キャリア面談とは  キャリア面談は、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成と、中長期的な社員の活躍を実現するための面談です。その人が過去から築いてきたその人らしさ、蓄積してきた知識やスキル、いまの仕事のとらえ方、感じているやりがい、さらに、その人にとってよりよい未来に向かううえでどのような目標を立て、行動に移せればよいか、といったことを話し合います。一定期間における面談相手のパフォーマンスに焦点をあてる評価面談と異なり、面談相手である「人」に焦点をあて、過去・現在・将来にわたる会話をします。面談相手を主役とし、その人とその話に関心を寄せながら、その人のキャリア形成を支援する「支援者」としての姿勢が上司には求められます。 キャリア面談に必要なスキル  面談を始めるときには「伝える」スキルを使います。例えば「今日はお時間をいただきありがとうございます。〇〇さんが毎月の事務処理を間違いなく進めてくださるので、たいへん感謝しています」といったように、シニア社員の方に対する敬意や、日ごろの貢献に対する感謝の言葉を具体的に伝えます。「自分の仕事は認めてもらえている」と感じられたら、社員の方の気持ちもほぐれ、話し合いやすくなります。また、「今日は○○さんのキャリアについて一緒に考えていくためにお時間をいただきました」といったように、面談の目的を伝え、キャリアについて会話する心の準備をお互いに整えます。もし2回目以降の面談であれば、前回の会話の内容をふり返ったうえで、「今日の面談では○○さんの今後の希望についてうかがいたいと思います」といったように、今日の面談の目的を伝えます。  面談中、特に重要なスキルは「傾聴」と「問いかけ」のスキルです。「傾聴」には、話し手が話を続けることを励ます効果があるといわれています。相手の話に聞き入りながら、相槌を打ったり、「…ということがあったのですね」と相手の言葉をくり返したり、「たいへんなご苦労があったのですね」と相手の話を受けとめたりします。  パーソル総合研究所の調査結果によれば、部下の話を傾聴できている・しようとしているという上司の認識は、部下より約1.5倍高い傾向にあるそうです(図表)。上司の方はよりていねいな傾聴を心がける必要があるかもしれません。  「問いかけ」の代表的なスキルには、「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」があります。例えば、相手の話を広げたり、深掘したりするときには、「もう少し詳しく教えていただけますか?」といったように、相手が自由に話せるオープン・クエスチョンを使います。相手の話を要約して整理したいときには「いまのお話はつまり、…ということで合っていますか?」といったように「はい」か「いいえ」で答えられるクローズド・クエスチョンを使います。  上司としての期待やフィードバックを伝えたいときは、上から目線にならないように、例えば「いまの仕事は、○○さんなら充分期待に応えていただけると思うし、○○さんのこれからにとってもプラスにもなると私は思っているのですが、○○さんはどのようにお考えですか?」といったように、「私」を主語にして肯定的なニュアンスを含めて問いかけます。もし気持ちや考えにギャップがあっても、すぐに埋めようとせず、「わかりました。では、〇〇さんのお気持ちやお考えをあらためて聞かせていただけますか?」と問いかけ、次回の面談の約束を得るなど、結論を急がないようにします。  面談を終えるときには、今日の会話をふり返り、会話を通じて立てた目標や、次の面談で話し合う内容、今後の進め方などを整理して伝えます。 シニア社員との会話で留意すること  シニア社員は、健康状態については特に留意する必要があります。過去から長時間働くことを美徳とされ、無理を重ねてきた方も多いのではないでしょうか。また、役割の変更によって、仕事の量や質、職場の人間関係がこれまでと変わっている場合もあります。このようなことが強いストレスとなり、心身に不調をきたした場合、仕事ぶりに表われるまでは気づきにくいものです。ある管理職の方は、シニア社員と会話する際に、「最近パソコンの文字が見えづらくなりました。〇〇さんはいかがですか」と笑顔で先に自己開示することで、「じつは私も…」という自己開示を引き出しているそうです。このような年長者に対する敬意を交えた会話の工夫や、普段の様子から面談前に聞きたいことを整理しておくといった事前準備、いつもと異なる様子が見られたときのタイムリーな声がけといった日常からのかかわりも、相互理解や信頼関係を築くための重要なスキルといえそうです。 ※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構『労働政策研究報告書 No.196』「日本企業における人材育成・能力開発・キャリア管理」(2017年) ※2 株式会社パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」(2021年) 図表 傾聴行動についての上司と部下の認識ギャップ 上司 n=635 部下 n=2327 あてはまる計(%) 上司側に約1.5倍の過剰認識 部下の話を【最後まで丁寧に聞く】 部下認識56.0% 上司認識84.7% 部下の思いや意見を【いったん受け入れようとしている】 部下認識 57.6% 上司認識 86.3% 出典:パーソル総合研究所「職場のハラスメントについての定量調査」(2022年) 【P50-51】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第48回 「役員報酬」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、役員報酬について取り上げます。 役員報酬には支払い方法の種類が複数ある  役員報酬とは、簡単にいうと「役員に求められる役割・業務遂行等に対する対価」のことです。役員とは、取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事および清算人という幅広い対象者となります※1。ただし、役員の対象によって支払い条件に異なる部分があることや、対象者数として最も多いのが取締役であることから、本稿では取締役に対する報酬≠中心に解説していきます。  最初に、役員報酬の種類について押さえていきます。役員報酬は、毎月の給与に該当する基本報酬とあらかじめ設定した条件(利益目標の達成や成長率等)を達成することで支払われるインセンティブ、退職時に支給される退職慰労金に大別されます。基本報酬は原則、毎月一定額で支払われることから固定報酬、インセンティブは支払い有無や支払額が条件達成度合いで異なることから変動報酬と呼ぶこともあります。  ここまでだと従業員の給与・賞与・退職金の関係に近くイメージしやすいと思いますが、従業員の給与等にあまりみられない支払い方法として、非金銭報酬というものがあります。従業員の場合は労働基準法上、給与は現金で支払うことと定められ、役員報酬でも基本報酬は現金(金銭報酬)で支払われることが多いのですが、インセンティブについては、上場企業の場合は会社の業績・成長と株価の関連性が強いことから、自社株式の付与をもって報酬とする株式報酬(非金銭報酬)を用いるケースが多くみられます。 役員報酬には税法上の制約もある  従業員の場合には、労働基準法等に定められている事項を遵守すれば給与・賞与等は会社毎のペイポリシー(支払いに対する基本的な考え方)に従って自由に設計でき、支払額については原則、法人税法※2上の損金(経費)として算入(損金算入)できますが、役員報酬の場合には次のいずれかの支払い方法に該当しない場合には損金算入が認められない※3という制約があります。 @定期同額給与・・・1カ月以下の一定期間ごとに同額で支給するもの。 A事前確定届出給与・・・所定の時期に確定額の金銭または確定数の株式等を支給することを事前に定めた届出書を税務署に提出し、届け出た時期と金額通りに支給するもの。 B業績連動給与・・・業務執行役員※4に対して業績に連動して支給するもの。利益の状況や株式の市場価格の状況などを示す指標を基礎として、支給額の算定方法が客観的に定められ、有価証券報告書などにより開示されていることなどの条件を満たす必要がある(有価証券報告書等の開示が条件となるため実質的には上場企業にしか使えない)。  なお、役員報酬の支給額や算定方法については、定款または株主総会決議によって定め、定期同額給与額に変更がある場合は事業年度開始から3カ月以内に支払いを開始、事前確定届出給与を支払う場合は定められた期限内に税務署に届出をする必要があるなど(詳細は国税庁ホームページ等を参照)の報酬決定・支給プロセス面での制約もあります。  このように役員報酬の支払い方法にはさまざまな制約がありますが、決算を見越した過大・過小な支払いを認めてしまうと、利益や支払うべき税金が調整できてしまうからだといわれています。 近年の役員報酬の傾向  最後に、役員報酬の近年の傾向についてみていきましょう。まずは水準感ですが、規模別や役位(ポジション)別にいくつかの統計が存在します。しかし、役員の報酬に対して社外に開示したくないという意識の企業も多く、各統計とも回答母数が少ないのが実情です。比較的母数が多い(企業規模計・1123社)統計が図表の「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査」の結果で、ほかの統計の数値と比較しても乖離がないため、おおよそこのくらいの水準感と認識してよいと思います。  同統計の第5表(報酬月額の改定状況)をみると、2022(令和4)年に増額改定した企業は42.5%(減額改定6.9%)、2023年増額改定(予定を含む)は31.4%(減額改定〔予定を含む〕5.4%)という状況です。上場企業については1億円超の報酬額が支払われる役員については、個人名と支払額等を有価証券報告書等で開示するように企業内容等の開示に関する内閣府令で定められていますが、2023年3月期決算の公表では、対象者717人(東京商工リサーチ調べ)と開示人数が過去最多と話題になりました。これらのことから、役員報酬水準は増加傾向にあるといえます。  支払い方法については、上場企業を中心とした株式報酬の導入増加が傾向としてあげられます。日本企業の役員報酬の特徴として固定報酬の比率が高くインセンティブ部分が薄いため「攻めの経営」ができていないという指摘があり※5、かねてより年度利益に連動した賞与の導入など短期インセンティブの拡大を図る企業は多くありました。しかし、短期的な業績向上だけではなく、中長期的な企業価値の向上を見すえた経営を促進するための仕組みの整備も必要との方針が日本再興戦略(平成27〈2015〉年6月30日閣議決定)で打ち出され、以降、中長期インセンティブとして株式報酬を導入する会社は年々増加し、一般社団法人日本経済団体連合会によると2015年時点で592社だった導入企業は2023年7月1日時点で2321社と4倍近くになっています※6。  次回は、「裁量労働制」について取り上げます。 ※1 各々の役割・設置条件については、本連載第16回「役員」(2021年9月号)を参照 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202109/html5.html#page=52 ※2 法人税……法人の企業活動により得られる所得に対して課される税。法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となる ※3 役員報酬の損金算入が認められないと損金と認められる額が小さくなり、課税対象となる所得が大きくなる ※4 業務執行役員……会社内での担当業務の責任者等として遂行における中心的な役割をになう立場の者 ※5 「『攻めの経営』をうながす役員報酬〜企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引〜」(経済産業省・2023年3月時点版)に詳しく記載 ※6 「役員・従業員へのインセンティブ報酬制度の活用拡大に向けた提言」(一般社団法人日本経済団体連合会・2024年1月16日) 図表 企業規模別、役名別平均年間報酬 役名 役名 役名 役名 役名 役名 役名 役名 役名 役名 役名 会長 副会長 社長 副社長 専務 常務 専任取締役 部長等兼任 監査等委員 監査役 専任執行役員 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 企業規模 全規模 6,391.1 5,821.5 5,196.8 4,494.4 3,246.9 2,480.0 2,086.6 1,746.2 2,054.0 1,694.9 2,368.9 3,000人以上 9,305.8 *7,579.4 8,602.6 6,008.8 4,545.0 3,354.8 2,990.8 1,968.6 2,965.4 2,692.9 3,469.0 1,000人以上3,000人未満 5,813.1 *6,205.7 5,275.6 3,947.9 3,343.6 2,464.2 2,100.3 1,743.3 1,810.5 1,657.5 2,156.9 500人以上1,000人未満 5,636.4 *3,062.6 4,225.5 3,510.6 2,543.4 2,154.4 1,836.6 1,707.7 1,587.4 1,326.8 1,701.6 「*」は、集計実人員が20人以下であることを示す。 出典:人事院「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査」2024(令和6)年2月29日掲載 https://www.jinji.go.jp/kouho_houdo/toukei/0321_yakuinhousyu/0321_yakuinhousyu_ichiran.html 【P52-55】 労務資料 生活設計と年金に関する世論調査 (令和5年11月調査) 内閣府  内閣府では、生活設計と年金に関する国民の意識を把握し、今後の施策の参考とするため、2023(令和5)年11月に実施した「生活設計と年金に関する世論調査」の結果を公表しました※。  同調査は、全国18歳以上の日本国籍を有する者5000人を対象に、老後の生活設計や公的年金・私的年金への意識やニーズについて調査したもので、有効回収数は2833人でした。今回は同調査の結果を抜粋して紹介します(編集部)。 1 老後の生活設計について ●何歳まで仕事をしたいか、またはしたか(図表1)  何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいと考えるか、既に退職し、今後働く予定のない場合は、何歳頃に収入を伴う仕事を退職したか聞いたところ、「50歳以下」と答えた者の割合が7.8%、「51歳〜60歳」と答えた者の割合が14.8%、「61歳〜65歳」と答えた者の割合が28.5%、「66歳〜70歳」と答えた者の割合が21.5%、「71歳〜75歳」と答えた者の割合が11.4%、「76歳〜80歳」と答えた者の割合が6.1%、「81歳以上」と答えた者の割合が3.6%、「これまで働いておらず、これから働く予定もない」と答えた者の割合が2.0%となっている。  性別に見ると、「51歳〜60歳」と答えた者の割合は女性で、「66歳〜70歳」と答えた者の割合は男性で、それぞれ高くなっている。  年齢別に見ると、「51歳〜60歳」と答えた者の割合は50歳代で、「61歳〜65歳」と答えた者の割合は18〜29歳から50歳代で、「66歳〜70歳」と答えた者の割合は60歳代で、「71歳〜75歳」と答えた者の割合は70歳以上で、それぞれ高くなっている。 ●その年齢で退職したい、またはした理由(図表2)  収入を伴う仕事を「61歳〜65歳」、「66歳〜70歳」、「71歳〜75歳」、「76歳〜80歳」、「81歳以上」までしたい、またはしたと答えた者(2016人)に、その年齢まで働きたい理由は何か、既に退職した場合は、退職した年齢まで働いた理由は何か聞いたところ、「生活の糧を得るため」を挙げた者の割合が75.2%と最も高く、以下、「いきがい、社会参加のため」(36.9%)、「健康にいいから」(28.7%)、「時間に余裕があるから」(14.6%)などの順となっている。(複数回答の質問、選択肢の上位4項目まで掲載)  性別に見ると、「いきがい、社会参加のため」、「健康にいいから」を挙げた者の割合は女性で高くなっている。  年齢別に見ると、「生活の糧を得るため」を挙げた者の割合は40歳代、50歳代で、「いきがい、社会参加のため」を挙げた者の割合は50歳代、60歳代で、「健康にいいから」を挙げた者の割合は60歳代で、「時間に余裕があるから」を挙げた者の割合は60歳代、70歳以上で、それぞれ高くなっている。 ●老後の生活設計の中での公的年金の位置づけ(図表3)  老後の生活設計の中で、公的年金をどのように位置づけているか聞いたところ、「全面的に公的年金に頼る」と答えた者の割合が26.3%、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と答えた者の割合が53.8%、「公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考える」と答えた者の割合が11.7%、「公的年金には全く頼らない」と答えた者の割合が1.6%となっている。  性別に見ると、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と答えた者の割合は女性で、「公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考える」と答えた者の割合は男性で、それぞれ高くなっている。  年齢別に見ると、「全面的に公的年金に頼る」と答えた者の割合は70歳以上で、「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と答えた者の割合は40歳代から60歳代で、「公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考える」と答えた者の割合は18〜29歳から40歳代で、それぞれ高くなっている。 ●老後に向け準備したい、またはした公的年金以外の資産(図表4)  老後に向け、公的年金以外の資産をどのように準備したいと考えるか、または、準備をしてきたか聞いたところ、「預貯金」を挙げた者の割合が67.6%と最も高く、以下、「退職金や企業年金」(32.9%)、「NISAと呼ばれる少額投資非課税制度」(20.9%)、「民間保険会社などが販売する個人年金」(14.5%)などの順となっている。なお、「老後に向けた資産形成はしない、またはしなかった」と答えた者の割合が12.5%となっている。(複数回答の質問、選択肢の上位4項目まで掲載)  都市規模別に見ると、「預貯金」を挙げた者の割合は中都市で、「NISAと呼ばれる少額投資非課税制度」を挙げた者の割合は大都市で、それぞれ高くなっている。  性別に見ると、「預貯金」、「民間保険会社などが販売する個人年金」を挙げた者の割合は女性で、「退職金や企業年金」を挙げた者の割合は男性で、それぞれ高くなっている。  年齢別に見ると、「預貯金」を挙げた者の割合は18〜29歳で、「退職金や企業年金」を挙げた者の割合は18〜29歳、40歳代、50歳代で、「NISAと呼ばれる少額投資非課税制度」を挙げた者の割合は18〜29歳から40歳代で、「民間保険会社などが販売する個人年金」を挙げた者の割合は30歳代から50歳代で、それぞれ高くなっている。  性・年齢別に見ると、「預貯金」を挙げた者の割合は女性の18〜29歳から50歳代で、「退職金や企業年金」を挙げた者の割合は男性の40歳代から60歳代、女性の18〜29歳で、「NISAと呼ばれる少額投資非課税制度」を挙げた者の割合は男性の18〜29歳から40歳代、女性の18〜29歳から40歳代で、「民間保険会社などが販売する個人年金」を挙げた者の割合は女性の30歳代から60歳代で、それぞれ高くなっている。 2 公的年金制度への意識・ニーズについて ●厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方(図表5)  厚生年金を受け取りながら会社などで働く場合、一定以上の収入があると、受け取る年金額が減ることとなる。厚生年金を受け取る年齢になったとき、どのように働きたいと思うか、また、既に厚生年金を受け取っている場合は、現在の就労状況に近いものはどれか聞いたところ、「働かない」と答えた者の割合が23.6%、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と答えた者の割合が44.4%、「年金額が減るかどうかにかかわらず、会社などで働く」と答えた者の割合が14.0%、「会社などで働かず、自営業主・自由業などとして働く」と答えた者の割合が9.1%、「厚生年金の加入期間・加入予定がなく、受給する見込みがない」と答えた者の割合が3.7%となっている。  都市規模別に見ると、「働かない」と答えた者の割合は中都市で高くなっている。  性別に見ると、「働かない」、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と答えた者の割合は女性で、「年金額が減るかどうかにかかわらず、会社などで働く」と答えた者の割合は男性で、それぞれ高くなっている。  年齢別に見ると、「働かない」と答えた者の割合は70歳以上で、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と答えた者の割合は18〜29歳から50歳代で、それぞれ高くなっている。  性・年齢別に見ると、「働かない」と答えた者の割合は男性の70歳以上、女性の60歳代、70歳以上で、「年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く」と答えた者の割合は男性の18〜29歳、30歳代、50歳代、女性の18〜29歳から50歳代で、「年金額が減るかどうかにかかわらず、会社などで働く」と答えた者の割合は男性の40歳代、60歳代、70歳以上で、それぞれ高くなっている。 3 私的年金制度への意識・ニーズについて ●加入している、またはしていた私的年金(図表6)  現在、私的年金のいずれかに加入しているか、また、現在60歳以上で国民年金・厚生年金の被保険者でない場合は、以前私的年金のいずれかに加入していたか聞いたところ、「厚生年金基金#1」を挙げた者の割合が35.7%と最も高く、以下、「国民年金基金#2」(18.6%)などの順となっている。なお、「#1から#5のいずれにも加入していない、または加入していなかった」と答えた者の割合が41.4%となっている。(複数回答の質問、選択肢の上位2項目まで掲載)  都市規模別に見ると、「国民年金基金#2」を挙げた者の割合は小都市で高くなっている。  性別に見ると、「厚生年金基金#1」を挙げた者の割合は男性で、「国民年金基金#2」を挙げた者の割合は女性で、それぞれ高くなっている。  年齢別に見ると、「国民年金基金#2」を挙げた者の割合は70歳以上で高くなっている。  性・年齢別に見ると、「厚生年金基金#2」を挙げた者の割合は男性の60歳代、70歳以上で、「国民年金基金#2」を挙げた者の割合は男性の70歳以上、女性の70歳以上で、それぞれ高くなっている。 ※ https://survey.gov-online.go.jp/r05/r05-nenkin/ 図表1 何歳まで仕事をしたいか、またはしたか (%) 50歳以下 51歳〜60歳 61歳〜65歳 66歳〜70歳 71歳〜75歳 76歳〜80歳 81歳以上 これまで働いておらず、これから働く予定もない 考えたことがない 無回答 (該当者数) 総数(2,833人) 7.8 14.8 28.5 21.5 11.4 6.1 3.6 2.0 3.1 1.1 〔性〕 男性(1,336人) 4.8 12.1 29.0 24.4 12.0 7.7 4.6 0.7 3.4 1.2 女性(1,497人) 10.5 17.2 28.0 19.0 10.9 4.7 2.7 3.1 2.9 1.1 〔年齢〕 18〜29歳(279人) 12.5 15.8 34.1 17.9 4.7 2.2 1.8 0.4 10.8 − 30〜39歳(309人) 10.4 15.9 36.2 19.4 7.1 3.2 2.3 0.3 4.5 0.6 40〜49歳(400人) 12.0 10.8 35.3 21.0 8.5 3.5 3.8 0.8 4.6 0.3 50〜59歳(498人) 4.4 23.7 32.7 19.1 9.6 4.4 2.0 0.6 3.2 0.2 60〜69歳(540人) 5.6 12.0 26.5 34.1 11.9 4.3 2.2 2.0 0.6 0.9 70歳以上(807人) 6.7 12.4 19.0 17.0 17.6 12.3 6.6 4.6 1.1 2.9 図表2 その年齢で退職したい、またはした理由 (%) 収入を伴う仕事を「61歳〜65歳」、「66歳〜70歳」、「71歳〜75歳」、「76歳〜80歳」、「81歳以上」までしたい、またはしたと答えた者に、複数回答 総数n=2,016人、M.T.=185% 生活の糧を得るため75.2 いきがい、社会参加のため36.9 健康にいいから28.7 時間に余裕があるから14.6 定年退職の年齢だから10.6 職場に頼まれたから8.8 その他6.5 特に理由はない1.9 無回答1.5 図表3 老後の生活設計の中での公的年金の位置づけ 全面的に公的年金に頼る 公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる 公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考える 公的年金には全く頼らない 考えたことがない 無回答 (%) (該当者数) 総数(2,833人) 26.3 53.8 11.7 1.6 4.8 1.7 〔性〕 男性(1,336人) 25.8 51.8 13.0 2.7 4.8 1.9 女性(1,497人) 26.8 55.6 10.6 0.7 4.8 1.5 〔年齢〕 18〜29歳(279人) 8.2 47.3 24.7 4.3 13.3 2.2 30〜39歳(309人) 10.4 54.7 25.9 1.9 6.1 1.0 40〜49歳(400人) 16.3 60.3 15.0 1.8 5.8 1.0 50〜59歳(498人) 24.7 58.4 9.6 0.6 5.0 1.6 60〜69歳(540人) 28.5 59.1 7.2 0.7 2.4 2.0 70歳以上(807人) 43.2 46.2 4.5 1.7 2.4 2.0 図表4 老後に向け準備したい、またはした公的年金以外の資産 (複数回答) 総数 n=2,833人、M.T.=187.5% (%) 預貯金67.6 退職金や企業年金32.9 NISAと呼ばれる少額投資非課税制度20.9 民間保険会社などが販売する個人年金14.5 NISA以外の株式や債券、投資信託などの証券投資11.7 国民年金基金11.6 iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金8.9 不動産投資2.9 その他2.0 老後に向けた資産形成はしない、またはしなかった12.5 無回答2.0 図表5 厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方 (%) 働かない 年金額が減らないように、就業時間を調整しながら会社などで働く 年金額が減るかどうかにかかわらず、会社などで働く 会社などで働かず、自営業主・自由業などとして働く 厚生年金の加入期間・加入予定がなく、受給する見込みがない その他 無回答 (該当者数) 総数(2,833人) 23.6 44.4 14.0 9.1 3.7 2.2 3.0 〔性〕 男性(1,336人) 21.0 41.9 18.4 12.0 2.3 1.6 2.8 女性(1,497人) 26.0 46.6 10.2 6.6 4.9 2.7 3.1 〔年齢〕 18〜29歳(279人) 15.1 57.7 15.1 8.6 1.4 1.1 1.1 30〜39歳(309人) 11.3 64.1 14.2 6.8 2.3 0.3 1.0 40〜49歳(400人) 11.3 57.8 13.8 12.0 2.0 1.0 2.3 50〜59歳(498人) 14.9 58.6 12.2 8.2 3.2 1.0 1.8 60〜69歳(540人) 25.9 40.4 16.3 8.3 3.9 2.6 2.6 70歳以上(807人) 41.3 19.5 13.4 9.9 5.9 4.3 5.7 図表6 加入している、またはしていた私的年金 (複数回答) 総数n=2,833人、M.T.=121.5% (%) 厚生年金基金#1 35.7 国民年金基金#2 18.6 企業型DCとも呼ばれる企業型確定拠出年金#3 12.0 iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金#4 6.7 DBとも呼ばれる確定給付企業年金#5 5.3 #1から#5のいずれにも加入していない、または加入していなかった 41.4 無回答 1.8 【P56-57】 BOOKS チームの新しいスキル習得を先導する、リーダーのための手引書 リスキリングが最強チームをつくる 組織をアップデートし続けるDX人材育成のすべて 柿内(かきうち)秀賢(ひでよし)著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1760円  リスキリングというと、個人のキャリアアップのために行うものという印象があるが、本書の著者は、いま求められているリスキリングは、「組織を変革するリスキリング」であると明言。しかし企業からは、「リスキリングといっても何をどうすればよいかわからない」といった声や、一口にリスキリングといっても、「生産部門などでデジタル活用をどのように推進すべきか」、「ミドルシニア層のフォローアップをどうすべきか」など、企業の戦略や組織の構造などによってさまざまな課題があるという。  本書は、このような組織のリスキリングの課題を解決し、成果を最大化するためのリスキリングのメソッドをまとめた一冊となっている。  チームのリスキリングを成功に導く原動力となるのは、「現場のチームをマネジメントするリーダー」であると著者。本書は、この役をになうリーダーの手引書として、求められるリーダーシップやリスキリングを成功させる四つのステップを解説。実際の多くの企業で起こりうる状況や立ちはだかる課題などを、事例を交えたストーリーとともに学べる構成となっている。  組織・チームのためのリスキリングを推進する管理職やマネジャーにおすすめしたい。 組織内のエネルギーを高めるコミュニケーションの方法とは? 組織を変える5つの対話 対話を通じてアジャイルな組織文化を創る Douglas Squirrel・Jeff rey Fredrick(著)、宮澤(みやざわ)明日香(あすか)・中西(なかにし)健人(けんと)・和智(わち)右桂(ゆうけい)(訳)/オライリー・ジャパン/2860円  「対話というものは、自己開示と他者理解を重視して臨めば偉大な力を発揮する」、「対話というものが単なるおしゃべりではなく、スキルを要するものであることを学べば、素晴らしい成果がついてきます」と著者は指摘する。そのうえで本書では、組織内の対話を見直し、改善して対話力を高めることで、迅速な意思決定と主体性を育む即応性の高い組織文化への変革を目ざす実践的な方法を解説する。  具体的にはまず、対話による自己開示と他者理解をより高める手法として、「4R」(記録、内省、改訂、ロールプレイ)と「対話診断」を紹介。次に組織変革に向けて、5つの対話ステップ(信頼関係の構築、心理的安全性の確立、目的の共有、コミットメントの構築、説明責任の遂行)を提起する。この5つは、チームが現代的な人間中心の手法を最大限に活用するために必要な要素をすべて扱っているという。5つの要素をどう改善していけばよいのかについて、実例とともに解説し、日々のコミュニケーションを通じて組織内のエネルギーを高めて革新をうながす方法を示している。  経営者やリーダーをはじめ、職場風土の改善に関心のある人に手に取ってほしい良書である。 キャリアカウンセリングの変遷を知り、未来への実践へ 日本キャリアカウンセリング史 正しい理解と実践のために 渡部(わたなべ)昌平(しょうへい)、浅野(あさの)浩美(ひろみ)、立野(たつの)了嗣(りょうじ)、小澤(おざわ)康司(やすじ)、下村(しもむら)英雄(ひでお)、三村(みむら)隆男(たかお)著/実業之日本社/2420円  産業構造や働き方が変化するなかで、働く人や企業に求められること、それを支援する取組みも変わってきている。キャリアカウンセリングについても、時代や社会の変化に合わせて、さまざまな理論や技法が生み出されてきた。本書は、そんな日本におけるキャリアカウンセリングのこれまでの実践や研究、歴史を整理した一冊である。  大きく2部で構成されており、第1部では、まず、戦後の職業能力開発行政の歩みとともに、キャリアコンサルタント制度の歴史をたどる。政策面のルーツを知れば、最近よく聞くリスキリングとの関係も理解しやすいだろう。キャリアカウンセリングの基盤を築いた組織や研究会の歴史についての記述も興味深い。  第2部では、それ以前の労働・教育分野における「人事相談」や「職業指導」から説き起こし、キャリアカウンセリングが現在の姿になるまでを整理している。  副題にもあるが、キャリアカウンセリングについて、正しい理解と実践のために、過去の歴史を学ぶことで「よりよい未来を考える」ことができる。よりよい実践に取り組む人の支えとなる有益な書である。 知りたい項目から読んでもOK、職場に置いておきたい一冊 健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目 永田(ながた)宏(ひろし)著/講談社/990円  健康管理を経営的な視点でとらえる「健康経営○R」(★)に取り組む企業が増えている。働く高齢者が今後も増えていくと予測されるなか、高齢者が安心して安全に働ける職場づくりが企業に求められている昨今でもある。  職場で毎年実施する健康診断は、健康状態や変化を把握し、病気の予防あるいは悪化を防ぎ、そのことが労働災害防止にもつながる大切な機会となっている。とはいえ、診断の結果を十分に活かせているだろうか。  本書は、健康診断の結果を受けて、気にしたほうがよい数値なのか、気にしなくてよい項目なのか、数値の変化が意味することや基準値の話など、診断結果の読み方を解説する。肝機能や糖尿病、痛風など臓器別・病気別に解説されているので、気になる項目だけ確認するという読み方もOKだ。さらに主要な項目について、例えば自分の中性脂肪の数値は世の中全体の結果と比べてどうなのか、年代別のデータから知ることもできる。また、糖質ゼロはカロリーゼロなのか、がん検診の利益・不利益など、随所に健康診断にまつわるコラムもあり、健康リーダーとして知識を増やすことにも役立つ。職場のみんなで読みたい一冊である。 フォロワー2万人の高齢女子が綴る、SNS時代のシニアの生き方 70代高齢女子今日も元気で行ってきます。 凛@高齢女子/KADOKAWA/1540円  歳をとると自分に自信がなくなり、いろいろなことをあきらめてしまう、高齢期とはそんなものだと想像している人は少なくないだろう。  本書は、そうした思考やばく然とした不安をゆるやかに吹き飛ばしてくれる一冊だ。著者は、70代でTwitter(現在のX)を開設し、「高齢の私には異次元のむずかしさ」とふり返るも、懸命にスキルを身につけた。投稿を続けると、わずか52日間でフォロワーが2万人に。「私のような杖を片手に歩くおばあちゃんでもいろんなことに挑戦しているのです。いくつからでも諦めず輝く生き方はできる、と思っています」と本書にも綴っている著者の生き方や、介護が必要な夫と暮らす日常に感じたことなどを発信する投稿が共感を集め、顔は知らずとも心を通わせる相手がさらに増えていく。「私の書いたものが、もしかしたら、だれかの支えになれているかもしれない」。この思いが著者にとってXに投稿する原動力であり、フォロワーから声をかけられることが生きがいになっているという。  本書は、Xを通じた心の交流や日々の暮らしのなかで感じること、おばあちゃんの知恵袋などをまとめたもの。SNSの時代を心豊かに過ごす高齢期の生き方のヒントが詰まっている。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 2024年度の雇用関係助成金等 パンフレットを公開  厚生労働省は、雇用の安定、職場環境の改善、従業員の能力向上、退職金制度の確立などに向けた助成金の案内と助成金のおもな問合せ先を掲載した事業主向けのパンフレット「令和6年度雇用・労働分野の助成金のご案内」の詳細版と簡略版をそれぞれ公開した。 T 雇用関係助成金のご案内  (雇用維持関係の助成金/在籍型出向支援関係の助成金/再就職支援関係の助成金/転職・再就職拡大支援関係の助成金/雇入れ関係の助成金/雇用環境の整備関係等の助成金/仕事と家庭の両立支援関係等の助成金/人材開発関係の助成金) U 労働条件等関係助成金のご案内  (生産性向上等を通じた最低賃金の引上げを支援するための助成金/労働時間等の設定改善を支援するための助成金/受動喫煙防止対策を支援するための助成金/産業保健活動を支援するための助成金/安全な機械を導入するための補助金/高齢者の安全衛生確保対策を支援するための補助金/個人ばく露測定定着促進のための補助金/退職金制度の確立等を支援するための助成) ◆雇用関係助成金全体のパンフレット(簡略版) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf ◆雇用関係助成金ごとのパンフレット(詳細版) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/000763045.html 厚生労働省 労働者協同組合の設立状況を公表  厚生労働省は、労働者協同組合の設立状況を公表した。2024(令和6)年4月1日時点で、1都1道2府27県で計87法人が設立されており、新規設立が67法人、企業組合からの組織変更が18法人、NPO法人からの組織変更が2法人となっている(厚生労働省が把握しているものにかぎる)。  労働者協同組合では、荒廃山林を整備したキャンプ場の経営、葬祭業、成年後見支援、家事代行、給食づくり、高齢者介護などさまざまな事業が行われており、多様な事業分野で新しい働き方を実現している。  労働者協同組合は、労働者協同組合法にもとづいて設立された法人で、労働者が組合員として出資し、その意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織。労働者協同組合法は、一部を除き、2022年10月1日に施行された。少子高齢化が進むなか、人口が減少する地域において、介護、障害者福祉、子育て支援、地域づくりなどの多様なニーズに対応することが期待されている。  厚生労働省では、特設サイト「知りたい! 労働者協同組合法」を開設し、労働者協同組合のさまざまな好事例や連携事例、労働者協同組合法の概要説明、設立の流れなどを案内している。 ◆「知りたい!労働者協同組合法」 https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp ◆労働者協同組合の設立状況 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39058.html 厚生労働省 「地域活性化雇用創造プロジェクト」実施地域を公表  厚生労働省は、2024(令和6)年度の「地域活性化雇用創造プロジェクト」として採択した9地域と事業概要を公表した。  地域において、安定的な正社員雇用の場を確保するためには、地勢や産業構造などの違いをふまえた取組が重要となる。同プロジェクトは、地域における良質な雇用の実現を図ることを目的に、都道府県が提案した事業について、第三者委員会の審査を経て採択し、都道府県による事業の実施経費について、最大3年間補助する。 2024年度採択地域・事業は次の通り。 ●宮城県「みやぎ地域活性化雇用創造プロジェクト」 ●秋田県「第2期秋田県ICT人材雇用促進事業」 ●山形県「ものづくり産業次世代人材確保事業」 ●埼玉県「埼玉県地域活性化雇用創造プロジェクト事業」 ●石川県「企業の成長を支える多様な人材の確保支援事業」 ●滋賀県「滋賀の産業ひとづくり推進プロジェクト」 ●兵庫県「兵庫県地域活性化雇用創造プロジェクト(第2期)」 ●山口県「山口県人材確保・育成促進事業」 ●熊本県「新しいくまもと創造に向けた人材確保・雇用創出支援事業」 ◆地域活性化雇用創造プロジェクト実施地域一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147850.html 総務省 人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)を公表  総務省は、2023年10月1日現在の人口推計を公表した。生産年齢人口である15〜64歳は前年と比べ25万6000人の減少の7395万2000人。総人口は1億2435万2000人。前年と比べ59万5000人減少し、13年連続で減少している。  総人口に占める年齢別人口の割合をみると、15歳未満は11.4%、15〜64歳は59.5%、65歳以上は29.1%、65歳以上のうち75歳以上は16.1%。前年に比べると、15歳未満は0.2ポイント低下。65歳以上人口と75歳以上人口がそれぞれ0.1ポイント、0.6ポイント上昇した。  また、総人口に占める年齢別人口割合の推移をみると、15歳未満人口は、1975年(24.3%)以降一貫して低下を続け、2023年(11.4%)は過去最低。15〜64歳は、1982年(67.5%)以降上昇していたが、1992年(69.8%)にピークとなり、その後は低下を続け、2023年は過去最低となった前年に比べ0.1ポイント上昇した。一方、65歳以上人口および75歳以上人口は、1950年(それぞれ4.9%、1.3%)以降一貫して上昇が続いており、2023年は過去最高となった。  65歳以上人口の割合を都道府県別にみると、秋田県が39.0%で最も高く、次いで高知県が36.3%、山口県および徳島県が35.3%などとなっており、36道県で30%以上となっている。一方、東京都は22.8%で最も低くなっている。 https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2023np/index.html 経済産業省 DX支援ガイダンス、別冊事例集を策定  経済産業省は、「DX支援ガイダンスーデジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチー」および別冊事例集を策定した。  いずれも、「支援機関を通じた中堅・中小企業等のDX支援の在り方に関する検討会」における議論などをふまえてまとめたもの。  DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んでいる中小企業の労働生産性や売上高は大きく向上しており、労働力人口の減少や市場縮小などの課題に直面するすべての中堅・中小企業等にとってDXの取組みは必要不可欠とされている。一方で、人材や資金不足などから中堅・中小企業等は独力でDXを推進することはむずかしく、地域の伴走役となる支援機関によるDX支援という「新たなアプローチ」を追求することが有効であるとして、ガイダンスは支援機関が中堅・中小企業等に対して支援を実施する際に考慮すべき事項などについて解説。また、DX支援人材のマインド・スキルセットや人材育成の考え方を提示している。  別冊事例集は、DX支援に積極的に取り組む全国各地の支援機関の16事例を取り上げ、実施内容や苦労、工夫したポイントなどを紹介している。 ◆「DX支援ガイダンスーデジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチー」(本編) https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dxshienguidance.pdf ◆「DX支援ガイダンス別冊事例集」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dxshienguidance_SeparateCasestudies.pdf 日本経済団体連合会 提言・報告書「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」を発表  一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」)は、提言・報告書「高齢社員のさらなる活躍推進に向けて」を発表した。  企業における高齢社員の活躍は、労働力問題への対応の鍵であり、高齢社員のエンゲージメント向上を通じてパフォーマンスを高めることにより、イノベーションの創出や生産性の向上にもつながる。しかし、高齢社員の職務・役割と賃金水準の乖離などさまざまな課題もあるとし、経団連の雇用政策委員会人事・労務部会において企業のヒアリングなどを実施。同報告書は、その成果をまとめたもの。高齢社員をめぐる現状と課題を整理したうえで、課題解決に向けた対応策と今後の方向性を提示するとともに、12社の事例を掲載している。  課題解決に向けた対応の考え方については、「企業は@これまで以上に高齢社員の活躍推進を図り、A能力や知識等に適した職務・役割を割り当て、B成果・貢献度を評価して適切に処遇に反映するとの考え方を基本に、検討・見直しを進めていくことが必要」、「『加齢に伴って能力は低下していく』との従来のイメージにとらわれず、高齢社員の身体能力や心身の変化が就労に与える影響を考慮することが有益(「老年学」の観点)」と示している。  企業事例では、「『イマ』を評価した再雇用後の給与の決定」などに取り組む大和証券株式会社、「65歳以降の雇用ガイドライン」を策定している富士電機株式会社などの事例を紹介している。 https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/033.html 【P60】 次号予告 8月号 特集 ベテラン社員もDX! リーダーズトーク 山中伸枝さん(ファイナンシャルプランナー、一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事) JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み 株式会社労働調査会までご連絡ください。 電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 牛田正史……日本放送協会解説委員室解説委員 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 編集後記 ●新年度のスタートから3カ月。新たに人事担当になった方々も、新しい職場の空気に馴染んできたころではないでしょうか。一方で、不慣れな仕事に加えて、法令の知識などが求められる場合もあり、戸惑いながら日々の仕事に臨んでいる方も少なくないかもしれません。今号の特集企画は、そんな新任人事担当者のみなさんに向けて「新任人事担当者のための高齢者雇用入門」をお届けしました。高齢者雇用の現状や課題などとともに、高年齢者雇用安定法や、高齢者雇用を推進するうえで欠かせないテーマについて解説しています。高齢者雇用を推進する際や、課題が生じた際などに、ぜひ参考にしていただければ幸いです。 ●今号には「読者アンケート」を同封しています。本誌の内容に関する率直なご意見・ご感想などをぜひお寄せください。「こんなテーマの記事が読みたい」、「こんなことに悩んでいるので解説してほしい」などのご要望も大歓迎です。アンケートはWEB上(左下のコード)からも回答できます。みなさまのご意見をお待ちしています。 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー7月号No.536 ●発行日−−令和6年7月1日(第46巻 第7号 通巻536号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境伸栄 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86788-038-8 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.341 伝統の技を活かして目ざす日常使いの器づくり 鎌倉彫職人 遠藤(えんどう)英明(ひであき)さん(73歳) 「ものづくりの過程は試行錯誤の連続で、失敗も数多くあります。しかし失敗は苦痛ではなく、その積重ねが次につながると考えています」 桂の木の持つ「やわらかさ」や「温もり」を伝えたい  「鎌倉彫(かまくらぼり)」といえば、草花などの彫刻を施した漆器のイメージがあるが、鎌倉彫伝統工芸士会の会長を務める遠藤英明さんの作品は、写真のようにシンプルでモダンなデザインの器が多い。  「目ざしてきたのは、鎌倉彫の伝統を大切にしつつ、いまを生きる人々に日常生活のなかで使っていただける器づくりです。そのためには、必ずしもすべての器に彫刻を施す必要はないと考えています」  遠藤さんが大事にしているのは、手で触れたときの心地よさ。お椀のような丸い器はろくろ挽き、重箱のような四角い器は指物(さしもの)※でつくるのが一般的だが、遠藤さんはノミや彫刻刀などを使い、木の塊から削り出して形にしていく。  「鎌倉彫でおもに使われるのは桂の木です。やわらかくて彫りやすいのが特徴ですが、やわらかすぎて、どこかにぶつけるとへこみができてしまいます。でも、そんなふうに相手を傷つけずに自分が傷つくところが私は好きです。また、堅い木と違って、冬になってもあまり冷たくなりません。こうした桂が持つやわらかさや温もりを伝えるには、手で削り出すのが一番よいと思っています」 直線を5000本彫る基礎練習で自信をつけた  遠藤さんは宮城県出身。高校卒業後、東京の企業に就職。5年ほど経ったころ、観光で訪れた鎌倉でたまたま鎌倉彫の店をのぞいたことが、この道に進む契機となった。  「黙々と木や漆に対峙する職人の仕事に憧れ、こういうものをつくる仕事をしたいと思いました」  どこかの工房に入門しようと考えていたところ、「鎌倉彫高等職業訓練校」が開校されることを知り、第一期生として入学。同期には美大出身者もいたなかで、少しでも追いつき追い越そうと努力したのが基礎練習だった。  「鎌倉彫では複雑な彫りを表現しますが、基礎は直線や真円を彫れるようになることです。野球や剣道の素振りと一緒で、その練習をどれだけやったかが将来に活きてきます。これなら私でもやればできると思い、当時は時間さえあれば練習していました」  練習は、1枚の板に3ミリ間隔で直線を130本引き、その線に沿ってひたすら彫るというもの。「5000本彫った」という先輩にならい、5年かけて5000本をやり遂げたことが、その後の自信につながったという。  訓練校を2年で卒業した後は、「翠山堂(すいざんどう)」という鎌倉彫の工房に就職。18年間勤めた後、独立した。  「当時の私が目ざしていたのは、個人ではなく何人かのチームでよいものをつくることでした。分業してそれぞれが高い技術力を持てば、完成度の高いものができると考えていたからです。しかし、現実にはほかの職人と思いを共有することはむずかしく、遅まきながら独立して一人でやってきました」  当時は昭和から平成に変わるころで、冠婚葬祭の引き出物や会社の記念品などの大量注文が減りつつあった。また、家庭で茶托やお盆を使うことも少なくなり、産業として下火になっていることを感じた時期でもあった。独立後は、デパートやギャラリーなどへの出展を通じて一般客から生の声を聞く機会が増え、使い手の立場に立ったものづくりの意識がより強くなったという。 100年後の人たちにも使い続けられる器をつくりたい  独自に考案した模様や色を施した遠藤さんの作品は、鎌倉彫から逸脱していると見られることもあるそうだ。それでも「世の中から手づくりのものがどんどん失われていくなかで、100年後の人たちにも使い続けてもらえるものをつくりたい」という思いのもと、手づくりのよさが伝わる器を探求し続けている。また、次代をになう子どもたちに鎌倉彫の魅力を伝えるため、20年近くにわたり毎年県内の小中学校で出前授業を行っている。  「生きているかぎり鎌倉彫をつくり続けていきたいですし、後継者も育てたいと思っています」 伝統鎌倉彫事業協同組合 TEL:0467(23)0154 https://www.kamakurabori-kougeikan.jp (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※ 指物……釘などを使わず、凹凸のつぎ目をつくり板を組みあわせる技法 写真のキャプション 遠藤さんの作品。上から時計回りに、重箱、鉢、箸箱、名刺盆、ペン皿 使う人が器に触れたときの心地よさを大事にしている。そのため、ろくろ挽きではなく、木の塊をくり抜いてつくることにこだわる 61ページ写真の重箱や箸箱の表面は、刷毛やヘラをつくるための道具「塗師屋(ぬしや)小刀(こがたな)」で複数の傷をつけた独自の模様が施されている 取材時、展示会への出展用に試作していた片口。「軽さを味わってもらいたい」と、桂よりもさらに軽い桐の木を使っている 鎌倉市由比ヶ浜の「鎌倉彫工芸館」。鎌倉彫職人の作品が展示されている 小刀、平刀、丸刀、三角刀など、形状の異なる100本以上の彫刻刀を用途に応じて使い分ける 指物ではなく、木の塊をくり抜いてつくられた重箱。漆に酸化チタン(白い顔料)と少量のベンガラ(赤い顔料)を混ぜ、独特の色合いに。黒や朱が主流の鎌倉彫で、新たな試みの一つ 幅2寸(約6センチ)の叩きノミで削った痕をそのまま活かすことで、おおらかなイメージを表現した鉢。表面の色は、顔料が入っていない漆そのままの色が活かされている 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は、空間認知力と注意の持続力を鍛える問題です。簡単に見つかるときはよいのですが、そうでないときには根気が必要です。注意の持続力は年齢とともに低下しやすい力の一つなのでこういう機会にじっくり鍛えましょう。 第85回 漢字パズル「足りない漢字は?」 左の図にはあるのに、右の図にはない漢字が一つがあります。その漢字を◯で囲んでください。 目標2分 問1 光雲風雨霜霧虹潮波雪雷 光霧雪雲潮虹波雷雨風 問2 卯午寅丑亥酉辰戌申未子巳 戌酉午寅亥辰巳子申未卯 努力をほめるのが認知機能アップにつながる  スタンフォード大学の心理学教授キャロル・S・ドゥエック氏らによる小学5年生400人余りを対象とした実験を紹介します。  子どもたちに比較的簡単なパズル問題を与え、パズル終了後、子どもたちに点数を伝え、ほめました。半分の子どもには、「わあ、90 点だ。あなたは頭がいいんだね」といった具合に、賢さ、その子がもともと持っている能力、素質などをほめます。一方、残りの半分の子どもには、「すごい! 90点だ。一生懸命やったね」などと、努力や直近の行動をほめます。  それから、子どもたちには二種類のパズルを与え、「どちらでも好きなほうをやりなさい」と伝えます。一方は、最初のパズルよりむずかしいけれど、やればとても勉強になるパズル。もう一方は、最初のものと同じように楽にできるパズルです。  結果、賢さをほめられた子どもの7割強が、楽にできるほうを選びました。一方で、努力をほめられた子どもの9割近くが、むずかしいパズル問題にチャレンジしました。  この結果は小学5年生だけでなく、幼児や青年、中高年にもあてはまると考えられています。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 問1 雷雪光雲風雨霜霧虹潮波 問2 巳子卯午寅丑亥酉辰戌申未 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧 ホームページはこちら  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2024年7月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 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高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 2024 7 令和6年7月1日発行(毎月1回1日発行) 第46巻第7号通巻536号 〈発行〉独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈発売元〉労働調査会