日本史にみる長寿食 FOOD 368 赤いトウガラシの辛い味 食文化史研究家● 永山久夫 辛くて涙ポロポロ  トウガラシは、中南米を原産とするナス科の植物。ペルーでは紀元前8千年から7千500年の昔から栽培されていたと伝えられているほど、歴史の古い香辛料の原料です。いまでは、世界中の人々の味覚を楽しませています。  それにしても、トウガラシはじつに辛い。食べ過ぎると涙ポロポロですが、その激辛がたまらないのです。  トウガラシは、赤い乾果を粉にして使う場合が多く、七味唐がらし、カレー粉、ソース、漬け物などに使用されています。  トウガラシの辛味の成分はカプサイシンで、発汗や保温、食欲増進、免疫力強化、疲労回復などの働きがあります。  新陳代謝を活発にして、脂肪の燃焼を促進させたり、ホルモンの活性を高めて、意欲を強めたりなどの効果も期待されています。 七味唐がらしの登場  トウガラシを食べていると、体温が上昇したり、汗をかいたりするのも、エネルギーの代謝が向上するためで、脂肪が燃焼され、肥満防止にも役に立つといわれています。  トウガラシには、頭の回転をよくし、記憶力の向上に関係のあるビタミンB1 も含まれており、情報化時代に用いる香辛料としても理想的です。またトウガラシには、カロテンやビタミンCも含まれていますから、上手に活用すれば、老化を防ぐうえでも役に立ちます。  トウガラシの激烈な辛さを中和して、マイルドな薬味にするために考案されたのが「七味唐がらし」。江戸の町人に喜ばれ、大ヒット商品となり、現在も人気のある調味料です。  江戸時代後期の『続(ぞく)飛鳥川(あすかがわ)』という書物には、張り子のトウガラシをかついだ行商人が「とんとん唐がらし、ひりりと辛いは山椒(さんしょう)の粉、すはすは辛いが胡椒(こしょう)の粉、七色唐がらし」と歌いながら、竹筒に入れて売り歩いていたと伝えられています。  ほかにも、黒ゴマや青海苔、シソ、陳皮(ちんぴ)(ミカンの皮)などが使われます。いずれも健康効果の高い材料といわれていますので、上手にとり入れましょう。