BOOKS チームの新しいスキル習得を先導する、リーダーのための手引書 リスキリングが最強チームをつくる 組織をアップデートし続けるDX人材育成のすべて 柿内(かきうち)秀賢(ひでよし)著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1760円  リスキリングというと、個人のキャリアアップのために行うものという印象があるが、本書の著者は、いま求められているリスキリングは、「組織を変革するリスキリング」であると明言。しかし企業からは、「リスキリングといっても何をどうすればよいかわからない」といった声や、一口にリスキリングといっても、「生産部門などでデジタル活用をどのように推進すべきか」、「ミドルシニア層のフォローアップをどうすべきか」など、企業の戦略や組織の構造などによってさまざまな課題があるという。  本書は、このような組織のリスキリングの課題を解決し、成果を最大化するためのリスキリングのメソッドをまとめた一冊となっている。  チームのリスキリングを成功に導く原動力となるのは、「現場のチームをマネジメントするリーダー」であると著者。本書は、この役をになうリーダーの手引書として、求められるリーダーシップやリスキリングを成功させる四つのステップを解説。実際の多くの企業で起こりうる状況や立ちはだかる課題などを、事例を交えたストーリーとともに学べる構成となっている。  組織・チームのためのリスキリングを推進する管理職やマネジャーにおすすめしたい。 組織内のエネルギーを高めるコミュニケーションの方法とは? 組織を変える5つの対話 対話を通じてアジャイルな組織文化を創る Douglas Squirrel・Jeff rey Fredrick(著)、宮澤(みやざわ)明日香(あすか)・中西(なかにし)健人(けんと)・和智(わち)右桂(ゆうけい)(訳)/オライリー・ジャパン/2860円  「対話というものは、自己開示と他者理解を重視して臨めば偉大な力を発揮する」、「対話というものが単なるおしゃべりではなく、スキルを要するものであることを学べば、素晴らしい成果がついてきます」と著者は指摘する。そのうえで本書では、組織内の対話を見直し、改善して対話力を高めることで、迅速な意思決定と主体性を育む即応性の高い組織文化への変革を目ざす実践的な方法を解説する。  具体的にはまず、対話による自己開示と他者理解をより高める手法として、「4R」(記録、内省、改訂、ロールプレイ)と「対話診断」を紹介。次に組織変革に向けて、5つの対話ステップ(信頼関係の構築、心理的安全性の確立、目的の共有、コミットメントの構築、説明責任の遂行)を提起する。この5つは、チームが現代的な人間中心の手法を最大限に活用するために必要な要素をすべて扱っているという。5つの要素をどう改善していけばよいのかについて、実例とともに解説し、日々のコミュニケーションを通じて組織内のエネルギーを高めて革新をうながす方法を示している。  経営者やリーダーをはじめ、職場風土の改善に関心のある人に手に取ってほしい良書である。 キャリアカウンセリングの変遷を知り、未来への実践へ 日本キャリアカウンセリング史 正しい理解と実践のために 渡部(わたなべ)昌平(しょうへい)、浅野(あさの)浩美(ひろみ)、立野(たつの)了嗣(りょうじ)、小澤(おざわ)康司(やすじ)、下村(しもむら)英雄(ひでお)、三村(みむら)隆男(たかお)著/実業之日本社/2420円  産業構造や働き方が変化するなかで、働く人や企業に求められること、それを支援する取組みも変わってきている。キャリアカウンセリングについても、時代や社会の変化に合わせて、さまざまな理論や技法が生み出されてきた。本書は、そんな日本におけるキャリアカウンセリングのこれまでの実践や研究、歴史を整理した一冊である。  大きく2部で構成されており、第1部では、まず、戦後の職業能力開発行政の歩みとともに、キャリアコンサルタント制度の歴史をたどる。政策面のルーツを知れば、最近よく聞くリスキリングとの関係も理解しやすいだろう。キャリアカウンセリングの基盤を築いた組織や研究会の歴史についての記述も興味深い。  第2部では、それ以前の労働・教育分野における「人事相談」や「職業指導」から説き起こし、キャリアカウンセリングが現在の姿になるまでを整理している。  副題にもあるが、キャリアカウンセリングについて、正しい理解と実践のために、過去の歴史を学ぶことで「よりよい未来を考える」ことができる。よりよい実践に取り組む人の支えとなる有益な書である。 知りたい項目から読んでもOK、職場に置いておきたい一冊 健診結果の読み方 気にしたほうがいい数値、気にしなくていい項目 永田(ながた)宏(ひろし)著/講談社/990円  健康管理を経営的な視点でとらえる「健康経営○R」(★)に取り組む企業が増えている。働く高齢者が今後も増えていくと予測されるなか、高齢者が安心して安全に働ける職場づくりが企業に求められている昨今でもある。  職場で毎年実施する健康診断は、健康状態や変化を把握し、病気の予防あるいは悪化を防ぎ、そのことが労働災害防止にもつながる大切な機会となっている。とはいえ、診断の結果を十分に活かせているだろうか。  本書は、健康診断の結果を受けて、気にしたほうがよい数値なのか、気にしなくてよい項目なのか、数値の変化が意味することや基準値の話など、診断結果の読み方を解説する。肝機能や糖尿病、痛風など臓器別・病気別に解説されているので、気になる項目だけ確認するという読み方もOKだ。さらに主要な項目について、例えば自分の中性脂肪の数値は世の中全体の結果と比べてどうなのか、年代別のデータから知ることもできる。また、糖質ゼロはカロリーゼロなのか、がん検診の利益・不利益など、随所に健康診断にまつわるコラムもあり、健康リーダーとして知識を増やすことにも役立つ。職場のみんなで読みたい一冊である。 フォロワー2万人の高齢女子が綴る、SNS時代のシニアの生き方 70代高齢女子今日も元気で行ってきます。 凛@高齢女子/KADOKAWA/1540円  歳をとると自分に自信がなくなり、いろいろなことをあきらめてしまう、高齢期とはそんなものだと想像している人は少なくないだろう。  本書は、そうした思考やばく然とした不安をゆるやかに吹き飛ばしてくれる一冊だ。著者は、70代でTwitter(現在のX)を開設し、「高齢の私には異次元のむずかしさ」とふり返るも、懸命にスキルを身につけた。投稿を続けると、わずか52日間でフォロワーが2万人に。「私のような杖を片手に歩くおばあちゃんでもいろんなことに挑戦しているのです。いくつからでも諦めず輝く生き方はできる、と思っています」と本書にも綴っている著者の生き方や、介護が必要な夫と暮らす日常に感じたことなどを発信する投稿が共感を集め、顔は知らずとも心を通わせる相手がさらに増えていく。「私の書いたものが、もしかしたら、だれかの支えになれているかもしれない」。この思いが著者にとってXに投稿する原動力であり、フォロワーから声をかけられることが生きがいになっているという。  本書は、Xを通じた心の交流や日々の暮らしのなかで感じること、おばあちゃんの知恵袋などをまとめたもの。SNSの時代を心豊かに過ごす高齢期の生き方のヒントが詰まっている。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。