【P6】 特集 ベテラン社員もDX! Digital Transformation  少子高齢化による人手不足などを背景に「DX」が注目を集めています。生まれたころからデジタルツールを活用してきた若手に比べると、「デジタルツールは苦手」とされがちなベテラン世代ですが、役職定年や定年後再雇用などにより、立場や役割が変わっていくなかで、現場の一戦力として活躍してもらうためには、ベテラン社員自身がデジタルスキルなどについて学び、活用していくことは欠かせません。  そこで今回は「ベテラン社員もDX!」と題し、DXが求められる背景やベテラン世代がDXに対応していくことの重要性などについて、先進的に取り組む企業の事例を交えて解説します。 【P7-10】 総論 DX(デジタル・トランスフォーメーション)(デジタル・トランスフォーメーション)って何? 日本生産性本部 コンサルティング部 主任経営コンサルタント 高橋(たかはし)佑輔(ゆうすけ) 1 はじめに―「DX」とは  DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。X(トランスフォーメーション)は「変革」の意味ですから、DXとはデジタル変革のことです。  このような「X」はほかにもあります。例えば脱炭素社会を目ざす「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」や、社会問題の解決を目ざす「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」です。グリーンもサステナビリティもデジタルも、大きな社会課題であり、どの企業にとっても他人事ではありません。  この点を本稿の主題である「デジタル」に絞って考えてみましょう。いまや市場の主役は「Z世代(1990年代後半以降生まれ)」です。Z世代は生まれたときからデジタルツールに親しむデジタルネイティブであり、今後の社会活動・経済活動にデジタルは欠かせないインフラです。また、わが国は人口減少・働き手の不足に苦しんでいます。人口増加の展望が容易に見えないなか、デジタルによる人的作業の置換は急務でしょう。反対に新興国では人口が増え続けており、急激な都市化とデジタルの発展が経済成長を牽引しています。デジタルは世界経済が新陳代謝する原動力になっているのです。  デジタルという変化の波は不可逆的に世界を覆っています。デジタル化を忌避するのではなく、一刻も早くデジタル時代に適合したビジネスモデルを構築すべきです。  DXの取組みは業種によって差があります。総務省の調査※1によると、情報通信業、金融業、農業・林業で比較的DXが進んでいるのに対して、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業などでは「実施していない」(「実施していないが、今後実施を検討」、「実施していない、今後も予定なし」の合計)との回答が8割を超えています(図表1)。  今後は人手不足が外発的圧力となって、どの産業でもデジタル化が加速するとみられます。デジタルによる業務の自働化(人間とデジタルが協働することで効率化や付加価値向上を志向するアプローチ)は、新しい業務習得を容易にし、異なる業種間での労働力の移動を円滑化するため、性別・年齢を問わず労働力の有効活用につながることが期待されます。 2 シニアとデジタルの親和性を高める「慣れ」と「期待感のデザイン」  一方で、新しい社会問題として「デジタルデバイド(情報格差)」がいわれています。デジタルツールを使いこなせる人と使いこなせない人の間にある社会的・経済的格差のことです。この問題は、組織におけるシニア人材の活用にも関係します。  NRI社会情報システム株式会社が実施した50〜79歳の3000人への調査※2によると、「社会のデジタル化に期待していない」(「あまり期待していない」、「全く期待していない」の合計)と回答した割合は32.7%に及びます。すでにデジタルは社会インフラといえますが、そのことを前向きに受けとめられない層が相当数あります。その理由として、女性で多かった回答は「新しい技術や機器を使いこなせる自信がない」で40.3%(男性17.2%)。男性では「生活が便利になるとは考えにくい」が31.8%(女性18.0%)でした(図表2)。DXにシニアを巻き込むには、デジタルツールへの「慣れ」と「期待感のデザイン」の二つが課題といえそうです。  一つめの「慣れ」については、デジタルツールへの接触機会の拡大が欠かせません。実際、同調査では農林漁業や生産業務などの「技能的職業」に従事しているシニア層と比べ、デジタルツールを活用する機会が多いと思われる「管理的職業」に従事しているシニア層のほうが、デジタル社会への期待感が高いことが示唆されています。だれしも不慣れな道具を扱うのは不安です。日ごろからデジタルツールと接点を持てる業務環境の構築が必要でしょう。その際には、デジタルツールを一方的に押しつけるのではなく、ユーザーエクスペリエンス(UX:利用者の体験価値)への配慮が大事です。シニアが快適に使えるように、画面のボタンの大きさや、名称の工夫(わかりにくい横文字ではなく、日本語表記にするなど)といった外形上の改善に加え、操作を習得するための支援の充実などを行いましょう。  二つめの「期待感のデザイン」には、より組織的な取組みが求められます。「期待理論」という考えでは、モチベーションの高さは「報酬の魅力」、「報酬を得るためのハードルの高さ」、「ハードルを乗り越えられる可能性」の3点で決まります。仮に賞与アップに魅力を感じるシニア社員がいたとします。同社員をデジタル活用に動機づけるには、賞与アップとデジタル習熟の因果関係を組織が保証し、かつその達成を信じられる環境を提供することです。具体的には、「スキルマップ(従業員が習得すべきスキル項目を一覧化したもの)」におけるデジタルツール習熟の評価が「良」になれば賞与査定をアップすると明言し、かつ、その挑戦を支援するためのOJTや社外研修会への参加機会を提供します。努力しても成果が出ないことが予想される場合はモチベーションが高まりません。がんばれば届くところに目標を設定し、またその達成を組織がバックアップしましょう。  なお、デジタル活用に抵抗感があることを理由に、「シニアにはできることだけをやってもらう」という考えもあります。その結果として、単純作業やスポット的な作業をまかせるケースが増えるのであれば、注意が必要です。「職務特性理論」では、組織や顧客への貢献度合いが見えにくい仕事は魅力度が低く、モチベーションを損なうことが指摘されています。恒常的な人手不足の時代にあって、シニア人材は短期間の助っ人ではなく、長く頼りにすべきパートナーです。ていねいなフォローや教育を惜しむべきではないでしょう。 3 シニアのDXを推進するプロセスとは  以上をふまえ、最後に、DXにシニアを巻き込むプロセスを整理します(図表3)。 @バリューチェーン分析  最初はバリューチェーン分析です。これは、自社が付加価値を生み出す流れをまとめたものです(図表4)。ここから、自社の「稼ぐ力の源泉」はどこにあるのかを分析します。販売時のコスト競争力に強みがあるなら、それを支える「調達」や「製造」が稼ぐ力の源泉かもしれません。人材に強みがあるなら、教育や採用を行う「人事・労務」が源泉かも知れません。  こうした分析に不慣れなうちは、ChatGPTに「○○事業のバリューチェーン分析をやって」のように指示し、出てきた案を参考にするとよいです。このステップは経営戦略に近い領域なので、経営層を中心に検討します。 Aアナログのデジタル置換  稼ぐ力をより高めることを念頭に、アナログをデジタルに置き換えます。目的は効率化&省力化です。業務の負荷を減らし、より「稼ぐ力」に集中できる体制を整えます。ここでのデジタル化には、手書きのチェックシートをタブレット入力にしたり、定型的な入力作業をロボットで自働化したりするなどがあります。最近の飲食店では、卓上のタブレットやゲストの携帯電話でオーダーするシステムを見ます。これらの店では「オーダーをとる作業」をデジタルで省人化し、余力ができた分を「料理の説明やお客さまへの細やかな応対」にふり分けることで稼ぐ力を高めています。  アナログをデジタルに置換するには、「業務の棚卸し(自分たちの業務を、かかっている時間や頻度とともに書き出してみること)」を実行し、そこから改善する業務を選定します。業務負荷の大きさ、改善の実現容易性などを参考にデジタル化する業務を決めます。悩んだ際はWebなどで「先行事例」を探しましょう。ほとんどの場合、類似の先行事例が見つかるはずです。先行事例があればコストとリターンを見積もりやすくなるので、投資の意思決定が楽になります。  成功のコツは、「複数の小さなヒット」をねらうことです。いきなり大きなデジタル化を進めるより、現場の意見を聞きながら、チェックシートのデジタル化のような小規模な挑戦を、スピード感をもって重ねていくことが有効です。現場にいるシニアの意見は積極的に取り込んでください。「自己決定理論」によると、自分の行動を自分で決めていると感じられることは達成意欲を高めます。最初からデジタル化に乗り気なシニアは少ないかもしれませんが、デジタル化することへの意見を求めたり、デジタル化した後にもフィードバックを求めたりすることで、「この会社のデジタル化に自分は主体的にかかわっており、影響を及ぼしている」と感じてもらうことができます。DXとは単なるデジタル化ではなく、このような文化的変容をともなう「変革」なのです。 B稼ぐ力をデジタルで強化  Webを検索すれば、いろいろなデジタル化の成功事例が見られます。介護事業の例では、利用者の移動を検知するセンサーを設置して思わぬ転倒やけがの予防につなげていたり、画像認識AIを用いて異常の早期発見につなげていたりする例があります。このように、稼ぐ力(ここでは「介護力」)をデジタルで強化するのが最後のステップです。  このステップでは、現場の観察や担当者からの聞き取りがより大事になります。シニア社員は日常の業務において、どのような面に問題や改善の余地を感じているのか? シニア社員に対してどんな支援があれば稼ぐ力はいっそう高まるのか? そんな視点でていねいに現場と意見交換してください。  アナログのデジタル置換がある程度進んでいれば、シニアもデジタル化の効果を実感し、前向きな意見が増えてきます。シニアは若年層と比べて「デジタル技術」には詳しくないかもしれません。しかし、顧客理解や業務そのものへの理解が劣っているわけではありません。むしろ過去の業務経験や自らの人生経験に照らして、新しい発見を自社のビジネスにもたらしてくれる可能性があります。介護事業のように、シニア社員の目線が主要なユーザー層と近い場合はもちろん、おもな顧客層が若年層であっても同様です。  団地で一人暮らしの85歳(当時)の女性がYouTubeを始め、登録者数8万人の人気者になったというニュースがありました。動画制作や投稿をサポートしているのは15歳(当時)のお孫さんです。シニアの意見を若者が拾い上げて実現する、というあり方には、超高齢化社会のわが国にあって、あらためて評価されるべき戦略的価値があるように思います。 ※1 総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」(2021年) ※2 NRI社会情報システム株式会社「変わるシニア世代の就業意識・行動調査」(2021年) 図表1 業種別のDX取組み状況 2018年以前から実施 2019年度から実施 2020年度から実施 実施していないが、今後実施を検討 実施していない、今後も予定なし 情報通信業 34.9% 9.0% 7.1% 17.0% 32.1% 金融業・保険業 32.2% 6.7% 5.8% 19.7% 35.7% 農業・林業 22.7% 9.1% 13.6% 4.5% 50.0% 生活関連サービス業・娯楽業 11.8% 3.5% 3.0% 15.3% 66.5% 宿泊業・飲食サービス業 10.0% 3.7% 2.7% 17.8% 65.8% 医療・福祉 5.4% 1.9% 2.0% 12% 78.7% ※総務省「デジタル・トランスフォーメンションによる経済へのインパクトに関する調査研究」(2021年)を基に筆者作成 図表2 社会のデジタル化に期待しない理由〈デジタル化に期待していない人に限定〉(複数回答) 男性 女性 個人情報が漏洩されるリスクが高くなると思う 45.5% 53.1% 今の生活に不自由はない 34.0% 40.8% 監視社会になることが不安 35.3% 28.5% 新しい技術や機器を使いこなせる自信がない 17.2% 40.3% 生活が便利になるとは考えにくい 31.8% 18.0% 人のリアルな交流が少なくなると思う 19.4% 23.6% 実現には時間がかかると思う 22.7% 18.1% 特に理由はない 10.2% 5.7% デジタル化というものがよく分からない 4.2% 7.4% その他 3.8% 1.3% ※NRI社会情報システム株式会社「シニア世代のデジタル化に関する意識・行動と課題」(2021年)を基に筆者作成 図表3 DXの進め方 DXの進め方 小さな成功をスピーディーに追求する @バリューチェーンの検証 現状&未来の評価 経営層が戦略的観点から検討 Aアナログのデジタル置換で効率化 現場のシニア人材を巻き込む! B稼ぐ力をデジタルで強化 シニアの発想を付加価値に変える! ※筆者作成 図表4 バリューチェーン分析の進め方 ■支援活動 全般管理 人事・労務 技術開発 調達活動 ■主活動 調達 製造 出荷 販売 サービス 利益 ※筆者作成 【P11-14】 解説 DXに向けたベテラン人材へのリカレント教育 テックガーデンスクール代表 高橋(たかはし)与志(よし) 1 企業とベテラン社員が持つべきマインドセット  本稿では、「デジタルが苦手」とされるベテラン人材に、デジタルスキルを学んでもらうための指導・教育のポイントについて解説します。  企業もベテラン社員も「DX化」や「リカレント教育」が必要なことを頭では理解しているものの、「プログラミングはミドル・シニアには無理」と、内心は思っているのが現実ではないでしょうか。  リカレント教育に取り組んでもらい、業務のDX化を推進する戦力となってもらうためには、企業側とベテラン社員側が以下のマインドセットを共有することが重要です(図表1)。 マインドセット@…DX化、DXスキルはビジネスを持続可能にするために必須 マインドセットA…ミドル・シニアのビジネス・実務経験がDX推進には必須 マインドセットB…社会で活躍し続けるセカンドキャリアを目ざすならDXスキルは必須  自社の事業と実務に詳しいベテラン社員がDXスキルを持てば、DXを推進できる人材として生まれ変わり、企業に貢献することができます。  人生100年時代に、社会の第一線で活躍し続けるセカンドキャリアを目ざすためには「経験×IT」を武器とするDX人材として学び続け、成長し続ける必要があることをベテラン社員にまず認識してもらう必要があります。 2 業務との関係を伝え学習ロードマップをつくる  次に、ベテラン社員に対して実際にDX研修への参加をうながす場合の注意点についてお話ししていきます。  いきなり動画教材などでプログラミングやデータ分析、人工知能などの学習を開始しても、「これって、業務にどう活かせるの?」と疑問を抱いてしまいます。業務に活かすイメージが湧かないまま学習を開始してしまうと簡単にモチベーションが低下するので要注意です。  ITへの苦手意識を持つとともに、目的志向の強いベテラン社員に対しては、いきなりプログラミングを学ばせるのではなく、まず「DXの全体像と自社業務との関係」を伝え、必要性を自分事として腹落ちさせることが重要です。  彼らが得意な「自分の業務とその課題」について考えてもらい、その解決手段の一つとしてDX化の話につなげていくとよいでしょう。  その際、 ・ITによる業務改善の切り口を探すことが大切であること ・必ずしも彼らがプログラミングをしてDX化を行う必要はないこと ・ITを学ぶのはエンジニアやデータサイエンティストとのコミュニケーションの土台をつくることが目的であること を理解してもらうようにしてください。  DXの全体像は業界、業種によって千差万別ではありますが、データドリブン経営※を例とした全体像を図表2に示しますので、みなさんのイメージづくりにお役立てください。  次に、業務での課題解決のゴールを設定し、「業務から逆算した」学習ロードマップを作成することをおすすめします。そうすることで、途中で不安になりがちな学習を安心して継続できるようになると思います。図表3に例を示します。 3 安心感のある学習環境づくり  作成した学習ロードマップにしたがって、DX研修を開始するわけですが、その際ベテラン社員にとって安心感のある学習環境を用意することを意識していただきたいと思います。 ・若い世代の社員とは分けて研修を行う ・リアルで質問できるコーチ・メンターの用意 ・ITリテラシー(パソコン・インターネットの使い方)の土台を固める など、ベテラン社員の「プライド」や「ITリテラシー」に配慮することがポイントです。  また、ベテラン社員はいわゆる同期や同年代に対しては心を開きやすく、弱みも出し合いながら助け合える傾向にあります。同世代社員のコミュニティを形成すれば、より安心して学習を進めることができるでしょう(図表4)。 4 学習を継続し業務に活かすまでのサポート  学習を継続してもらい、業務に活かしてもらうために、次のような方法でDX研修を業務や職場と結びつけることも有効だと思います。 ・DX研修と結びつけた業務のゴールを設定する ・職場の上司、部下を巻き込んで、サポートする ・業務OJTの際も、引き続き専門家によるサポートを行う ・業務に活かす前提での学習とし、業務時間内の学習も認める ・成果を評価に反映させ、人事制度も進捗管理に活用する  研修のサイクル終了後は、フォローアップとして、「次のDXのステップに進むために不足しているスキル」を洗い出し、さらに学習とスキルアップを継続すると、より効果的です。 5 企業とベテラン社員がWin−Winの関係へ  ベテラン社員にとって学習を継続しやすい環境と仕組みを整え、DX研修と実務OJTというインプットとアウトプットのサイクルを成功に導くことができれば、企業にとっては ・事業のDX化の促進 ・業務効率化とベテラン社員の活用による人手不足解消 という成果が得られます。  ベテラン社員にとっては、 ・60歳以降も自分の経験を活かし、活躍し続けるためのスキルの獲得 ・セカンドキャリアでも活かすことができるDX実績の獲得 という自己成長に結びつけることができ、企業とベテラン社員がWinーWinの関係になるリカレント教育が実現できます(図表5)。  ペーパーレス化などのデジタル化(いわゆるデジタイゼーション)止まりでは不十分であり、自社の事業・業務への深い理解に基づいたイノベーションこそが真のDX化といえます。ベテラン社員にDX教育を施すことで、自社の事業・業務への深い理解を持つ彼らが、イノベーションを起こすことを促進することもできると考えます。  また、2023(令和5)年3月決算以降より人的資本の情報開示が義務化され、「人材育成方針」が項目の一つに含まれるようになりました。今後、人的資本を通して事業の成長を実現する企業が投資家や従業員からの支持を得られる傾向がいっそう強まることが予想されます。  これまで論じてきたように、ベテラン社員へのDX教育は、効果的にデザインすればリターンを得られやすいため、人的資本への有効な投資方法の一つであるといえるのではないでしょうか。 図表1 企業とベテラン社員が持つべきマインドセット 企業 ベテラン社員 よくあるマインドセット DXなんてIT部門の仕事でしょ プログラミングは若くないと無理! セカンドキャリアには関係ないよね! 社会的要請 人手不足DX化 70歳就業時代 人生100年時代 リカレント教育 持つべきマインドセット @DX化、DXスキルはビジネスを持続可能にするために必須 Aミドル・シニアのビジネス・実務経験がDX推進には必須 B社会で活躍し続けるセカンドキャリアを目ざすならDXスキルは必須 ※筆者作成 図表2 データドリブン経営の全体像 ビジネス ビジネスにフィードバック 業務アプリやWebサイト ビジネスデータ (会員情報・売上情報) Web解析データ (アクセス数・クリック数・アクセス元) 課題設定 データベース データ集計 ビッグデータ:Python、BIツール+RPA(自動化) 小規模データ:エクセル+VBA(自動化) データ抜き出し・成形・作成 機械学習 ノーコード:AzureML・TensorFlowなど コード:Python 可視化 ノーコード:BIツール・エクセル コード:Pyhton 予測結果 可視化 データ収集 → データ分析 → 機械学習 経営者 意思決定 経営判断 図表3 データ分析・機械学習の学習ロードマップ例 業務上のゴール1 営業成績のダッシュボード作成 〇〇支店 今月の営業成績 逆算 業務上のゴール2 気温による売上予測 気温による商品別売上予測 逆算 PowerBIによるデータ前処理・可視化 コードなし Pythonによるデータ前処理・可視化 コード有 Pythonによる機械学習・予測 コード有 ※筆者作成 図表4 ベテラン社員のための学習環境と仕組みづくり 継続し成果を出すための仕組み作り 現場でのOJTもセットで 成果評価に結びつける DX研修も業務と位置づける 上司、部下を巻き込んでサポート 脱落しにくい学習環境を用意 若い世代とは別に実施 コーチ・メンターを用意 同年代社員との学習コミュニティ ITリテラシー(パソコン・インターネットの使い方)の土台を固める ※筆者作成 図表5 DX研修におけるインプットとアウトプットの関係 上司 同僚・部下 進捗共有評価 支援 ベテラン社員 実務から逆算して学ぶインプット(DX研修) 成長 成果 アウトプットしながら学ぶ実務OJT 企業 【P15-18】 事例1 シニアの自発的学びがDX戦略を草の根で動かすきっかけに 花王株式会社(東京都中央区) DXの推進により「よきモノづくり」の進化を目ざす  界面化学をコア技術として、洗剤やシャンプー、化粧品などの生活に身近な商品群を柱とする大手化学メーカーの花王株式会社。同社は洋小間物問屋から始まる、100年以上の歴史を持つ老舗企業であると同時に、研究開発に力を注ぎ、職場でも新しい挑戦を志向する、草の根的なチャレンジ精神を企業風土としている。  中期経営計画「K27」では、「グローバル・シャープトップ」を旗印に掲げ、創造と革新で唯一無二を目ざしており、DXを進める人財の拡充を重点施策の一つとしている。  同社のDX推進に向けた本格的な取組みは、2018(平成30)年にDX推進や先端技術の活用などをになう「先端技術戦略室(SIT)」を設置したところからスタートした。2022(令和4)年にはDX推進を専門に扱うDX戦略部門を設立。また、顧客との双方向デジタルプラットフォーム「MyKao」の運用もスタートさせた。  DXを深化させる究極の目標は、従来のモノづくりに「UX(顧客体験)サービス」をプラスして、企業理念である「よきモノづくり」をより進化させること。全社DX推進部戦略企画室の吉岡(よしおか)光司(こうじ)室長は、DX推進のねらいについて次のように話す。  「花王は、たくさんのデータを蓄積していますが、十分に利活用が進んでいないという課題がありました。そこで私たちは「よきモノづくり」をいまよりさらに一歩先に進めていくという意味でも、DXの推進に取り組んできました。DXを進めることで、身の回りの業務改善について、データを扱いながら改善を実現していくという流れをつくれています。現在はこの流れをサポートするために必要な環境を情報システム部門と連携して整備しています。しかしながら、DX推進の鍵は、実際に作業を行う社員にあります。DXを組織に定着させるためには、社員が能動的にかかわっていくことが必要です。いままで以上にデータの利活用を推進していける環境を整備し、その成果を生活者に還元していきたいと考えています」 DX推進のポイントは先端技術教育プログラムによる底上げ  具体的な取組みとしては、全社員を対象に実施している、IT技術の基礎的理解からトップクラスのスキルまで習得するための「DXアドベンチャープログラム」があげられる。  DXを進めるためには、人財育成がきわめて重要なポイントとなる。2023年から展開している「DXアドベンチャープログラム」は、全社員のDXスキルのアセスメントを実施して、それぞれに合わせた学習プログラムを提供する。@全社員、A部門DX推進者、B全社DXリーダー、の3段階で構成しており、すでに約1万人の社員が、全社員向けのプログラムを受講している。2024年からは第2段階として、部門別に求められるDX人財像に合わせてカスタマイズした、部門DX推進者向けのプログラムを実施しているところだ。今後は、さらに、社外リソースも活用した上級レベルのプログラムで、全体のDXリーダーの育成を目ざすという。  モチベーション高く取り組んでもらうための仕組みとして、プログラム修了者には、国際的な技術標準規格に沿った、社内外で通用するデジタルスキルの履修証を付与する。デジタルのバーチャルな証明書「オープンバッジ」で、初級の「DX Beginner」から、「DX Inter mediate」、「DX Advanced」、「DX Expert」、「DX Leader」まで、細かく5段階で設定されている。全社員向けプログラムを修了した約1万人が「DX Beginner」を取得しており、中期計画が終了する2027年末までに、DXリーダー150人、部門別DX推進者300人の育成を目標としている。  吉岡室長は、「『DXアドベンチャープログラム』は、全社員を対象に、段階的なレベルアップを図るためのものです。花王グループ全員の力の底上げの部分とともに、スペシャリストもきちんと育成していく必要があります」と第2段階に入ったプログラムの意義を強調する。 草の根的DX推進を生んだ職場レベルの課題解決  じつはこのプログラムを始める前に、IT技術者ではないものの、ITツールを活用して、自分の職場・現場の課題を簡単なプログラム開発などによって改善する取組みが、さまざまな部署で草の根的に広がっていた。「シチズン・ディベロッパー」と呼ばれる人たちで、現在では、それぞれの職場で約1500人が活躍している。いまでは、全社的な取組みとして、2027年までのシチズン・ディベロッパーの育成目標を3000人と設定している。また、サポート体制として、活動を発表して共有する場の「シチズン・ディベロッパーEXPO」や、交流のための「コミュニケーションサイト」が立ち上げられている。  DXというと、きわめて技術的なことととらえて、DXの専門人財の確保・育成が必要と単純に考えてしまいがちだが、花王の取組みがきわめてユニークなのは、職場レベルでのDX人財の育成と職場・現場の問題解決を組み合わせた点だ。  全社的に広がった「シチズン・ディベロッパー」の動きの起点となったのは、一人の定年後継続雇用者のアイデアだったという。それが、主力工場である和歌山工場の工場長を勤め上げ、2019年に定年後の継続雇用として、設立まもない「先端技術戦略室」に移った松下(まつした)芳(かおる)さんだ。松下さんは、職場・現場のさまざまな問題の解決策を模索するなかで、ITツール活用のアイデアをつかんだという。 自発的リスキリングが思いを形に  松下さんが、初心者でも簡単にプログラムが作成できる、マイクロソフトのローコード開発ツール「Power Apps」に出会ったのが、そもそもの発端だ。解説書を丸々一冊読み込む自発的リスキリングで、職場で使える簡単なアプリの作成に着手した。最初につくったのは、研究所の研究員用の防災確認届けのアプリだった。それまでは、最後に実験室を出る人が「研究機器等の安全確認をすべて完了しました」などと紙ベースで届け出て管理していた。これを、研究員各自のスマートフォンのアプリで届け出をすることができるようにした。実験室に残っているかどうかもリアルタイムでわかり、現場では非常に重宝されたという。ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行した時期で、社員同士の接触を減らす工夫をする必要もあったころだ。  現在、全社DX推進部先端技術戦略室の戦略コーディネーターを務める松下さんは、「ワクワクしながら楽しく取り組ませてもらっています。職場の課題解決につながり、いろいろな人の役に立つことがとても大切なことを実感しています」とふり返り、ラインの仕事から離れたシニアの仕事には、このワクワク感≠ニだれかの役に立つこと≠ェ重要だと話す。  「ずっと頭の中にやりたいことがありました。それを実現することができるツールに出会ったときにひらめいて、思いを実現することができました。いろいろな思いや夢をずっと持ち続けることが重要なのだと思います。それがあれば、ちょっとしたきっかけで夢の実現に向けて自分のエネルギーを集中発揮することができます」と話し、「シニアにとっては会社から与えられた環境だけで、自分を奮い立たせるのはむずかしいでしょう。身近な職場・現場の課題を考えて、つねに問題意識を持つことがスタート地点だと思います」と強調する。  こうした松下さんの取組みに刺激を受けた社員たちの間に、自発的にシチズン・ディベロッパーの活動が広がり、それを会社側も認知して、サポート体制を整備した。  一般的に、職場における非IT技術者のDX活用といえば、汎用のRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)や情報通信システムなどを導入して、カスタマイズするケースが一般的で、自分たちでアプリやRPAを作成するシチズン・ディベロッパーの育成に取り組むのは珍しい。草の根的な職場レベルでの活動が活発な社風がなせる技ともいえ、花王の組織としての強みといえるだろう。  人財育成で効果を上げるためには、社員の納得性が鍵となる。その意味で、社員が自発的かつ積極的に、職場・現場の課題に取り組む文化があることは、納得性を生み、人財育成がうまく回ることにつながる。企業文化をどのように醸成するかが、その業績や、企業組織の存続に大きくかかわるともいわれている。  企業PR戦略部の鈴木(すずき)千賀子(ちかこ)さんは次のように話す。  「当社では、花王の精神をまとめた企業理念である『花王ウェイ』を、創業以来受け継いできました。「花王ウェイ」を拠りどころとすることで、社員一人ひとりの目線を合わせることが可能となっています。『よきモノづくり』も、基本となる価値観として、みんなが意識しながら、日々の仕事を行っています」  目につくところには必ず、「豊かな共生世界の実現」の使命のもと、「よきモノづくり」、「絶えざる革新」などを「基本となる価値観」とする「花王ウェイ」が掲げられており、日々の業務で「花王ウェイ」を実践するためのプログラムも行われている。さまざまな世代の社員が、同じ目標、同じ目線で仕事をしていくためのベースとなっているといえる。 ベテランのワクワク感で職場になじむDXに  シチズン・ディベロッパーの戦略的な意義について、松下さんは「ようやく戦略的なものになってきました。3年前にこの簡単なプログラム(ローコード)を使ってアプリをつくる技術に出会ったときに『これだ!』と思いました。花王には、もともと自分たちでいろいろなものを開発していく土壌があるので、簡単なプログラミング(ローコード)でいろいろなアプリをつくれると知ったときには、いままで外注していたものが内製化できるうえに、そのなかに自分たちの考えやアイデアを入れ込めることに気づきました。つまり、職場・現場で抱えている自分たちの課題がきちんと解決できるということです」と話す。  さらに、「これは、人財育成の課題である技能伝承にもつながっています。若い人は簡単にプログラムの技術は学べるけれど、それだけではよいアプリはできません。じつは、ベテランが持っている経験値をかけ合わせることで、心温まる≠謔、なアプリができるのです。これが実用的で、なおかつ楽しい仕事なのです。ワクワク感を持てる実例を積み上げて広げていくべく、会社側もここ数年でいろいろな仕掛けをしてくれました。そのおかげで、機運が盛り上がり、いまでは全社的な取組みになりました」と話す。  松下さんは、米国の実業家で詩人のサミュエル・ウルマンの「青春の詩」を引用して、「年を重ねただけでは、人は老いません。理想を失うときにはじめて老いがくるのです」と、シニア世代にエールを送る。  全社員を対象とするDX推進プログラムでは、特に高齢社員をターゲットにした取組みを展開しているわけではないが、「高齢社員は経験値が高いことはもちろん、自分たちの職場の課題についても意識が強い。これをうまく若い人たちとマッチングできれば、ワクワクできる活動が職場で広がっていきます。職場でのワクワク感は、つくろうと思っても、簡単につくれるものではありません」(松下さん)との発想が、シチズン・ディベロッパーの活動につながっている。 アイデアを実現する土壌がDXの推進に活かされている  松下さんは、草の根の活動が生まれるような花王の企業文化について、「われわれのコア技術は界面化学の技。コア技術は企業の文化風土にもつながっています。人と人の間にも界面が存在していて、そこに何らかのアイデアや刺激を落とすと、さっと社員間に馴染んでいきます。そんな組織風土がわれわれの強みなのです」と分析している。  花王におけるシニアの働き方について松下さんは、「年齢にかかわりなく、それぞれの個々の人間にそれぞれのよさや考え方があり、その力を発揮できる環境を整えていくのが、基本的な考え方だと思います。社員それぞれがお互いに、積み重ねてきたものに対する尊厳を尊重し合い、それをうまく組み合わせてわれわれの『よきモノづくり』が形になっているのです」と説明する。  最後に松下さんは、働くシニアに対するアドバイスとして、「それぞれの人たちが、それぞれの年齢で、それぞれいろいろなことができるのだと理解することが一番大切だと思います。私の場合は、たまたまそれがアプリ開発でした。それぞれが主人公になって自発的に考え、勉強し、さまざまなものにチャレンジすることが大切だと思います」と強調した。 写真のキャプション 左から企業PR戦略部の鈴木千賀子さん、全社DX推進部先端技術戦略室の松下芳さん、全社DX推進部戦略企画室の吉岡光司室長 【P19-22】 事例2 ベテランも一体となって共有する ビジョン実現手段としてのDX 株式会社フジワラテクノアート(岡山県岡山市) 微生物のチカラを高度に利用するモノづくり  株式会社フジワラテクノアートは1933(昭和8)年の創業から90年以上にわたり、清酒や焼酎、醤油、味噌といった醸造食品の醸造機械、食品機械バイオ関連機器の製造のほか、プラントの設計・施工事業を展開している。醸造工学や微生物の培養条件管理(原料の状態、温度管理、湿度管理など)を産業化する技術と、オーダーメイド生産でつちかったモノづくりの技術を武器に、主要製品である回転式自動製麹(せいぎく)装置は、国内シェア約80%を占める。社員数は約150人で30代以下の社員がそのうちの約5割を占めており、60歳以上は約1割、70代も2人が働いている。  近年、同社ではDXの推進に注力している。同社でDX推進委員会委員長を務める頼(らい)純英(すみえ)さんは「当社は個別受注生産のため、ライン生産ではなく一品ずつ個別に製造し、品質を重視する取引先に選んでいただいています。各工程で機械化はしているものの、ベテラン社員の技術、経験によるノウハウがモノづくりの現場で活用されており、若手が増えるなか、そのスキル・ノウハウの伝承が課題になっています」と話す。  こうしたなかで進めてきた取組みが評価され、経済産業省の「DXセレクション2023」において、最高賞のグランプリを受賞した。そこで同社のDX推進の取組み概要とその成果、今後の展望などについて、お話をうかがった。 2050年にあるべき姿を描いたビジョンを策定  同社では、「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業」という2050年に向けたビジョンを2018(平成30)年に策定した。これがDX推進の発端となったと、頼委員長は話す。  「醸造機械の国内における高いシェアを達成し、そこにあぐらをかき技術力が停滞することを経営陣が危惧していたことから、社内の管理職以上と開発部門を中心に議論を重ね、2050年に向けたビジョンを策定し、各種取組みを展開することとしました」(頼委員長)  具体的には「健康経営○R(★)を含めた働き方改革」、「人材育成」、「技術イノベーション」、「DX」の四つの柱を定め、部門横断の取組みとして各委員会を設置した。その一つが「DX推進委員会(発足当初は『業務インフラ刷新委員会』、2022(令和4)年に現名称に変更)」で、社会全体の要望に対応し、微生物を高度に活用することを実現するためのプロセスを考え「フルオーダーメイドの高度化」と、「新たな価値を創造する開発体制」をキーワードに、2050年ビジョン実現に向けた取組みがスタートした。  「DX≠ニいうと、『自分の仕事が便利になる』、『効率化』というところが注目されがちですが、各部門に向けてはそういった伝え方はせず、策定したビジョンに基づくあるべき姿に向けた全体最適、全社一気通貫を前提にして議論しました。DXを推進するうえでは、システム化するための手間やルールが必要になるので、むしろ仕事が増えます。それでもDXを推進する理由については、経営陣がことあるごとに策定したビジョンと目ざす方向性を示し、何のためにDXをするのか、データ活用の必要性についてくり返し発信し、全社員への浸透を図ってきました」(頼委員長) 社員参加で洗い出した約100項目の課題  頼委員長は、一人ひとりがDXを他人事にすると、推進を妨げるという他社事例を見聞きしていたという。そこで社員に説明して理解をうながすだけでなく、比較的取組みの早い段階でだれもが参加する雰囲気を醸成し、社員全員が「自分事」に感じるような仕掛けづくりに意識的に取り組んできた。  全体最適、全社一気通貫の業務フローおよび仕組みを検討するにあたり、まず各部にヒアリングを実施して、現状の業務プロセスと課題の洗い出しを行った。営業部の見積り提案から、設計、調達、製造、納品、最後は経理部担当の入金まで、部署ごとに業務の流れをまとめ紙に出力すると、畳2畳分の大きさにもなったという。これにより、一つの案件にまつわる自分たちの仕事の全体像が把握しやすくなり、業務フロー図は多くの社員の目に入るコピー機の横の壁に貼り出した。  「このフロー図を見て、全社員を対象に、業務に対する疑問や意見を付箋に書いてもらい、該当する部門・業務の部分に貼りつけてもらいました」(頼委員長)  これにより、新入社員からベテラン社員まで、それぞれの社員が抱える意見や疑問を別の部署の社員も見ることになり、目の前の自分の仕事だけではなく、俯瞰的に仕事を理解することにつながったという。  業務フロー図の作成と全社員から意見を募ることによって、100項目にも及ぶ課題が見えてきた。その課題をふまえ、DX推進委員会にて、基幹システムとなる生産管理システムの導入に向けた検討を行った。  「DXによって実現したい事柄に優先順位をつけて提案依頼書を作成し、複数のベンダー(販売業者)に送り、提案を受けて比較検討しました。当社が特に重視したのは必要十分な機能とサポート、検討期間の短さ、データ活用の自由度です。さまざまなベンダーにすすめられるがままではなく、自分たちで比較検討する項目をつくりDX委員会で導入するシステムを決めました」(頼委員長) 基幹システムとなる生産管理システムを導入  検討により導入した生産管理システムだが、当初は大きな苦労があったという。  「まず部品一つとっても、同じ社内なのに人によって呼び方が微妙に違うことがありました。そこで部品の呼び名を統一しマスターデータ化に取り組みましたが、膨大な検討項目や作業が発生しました。また、売上げデータなどを旧システムから移行する際は、数字が合わないこともあり、チェックに時間がかかるなど、DX委員会の生産管理システム立上げメンバーはかなり苦労しましたが、みんなで前向きに取り組みました」(頼委員長)  生産管理システムと連動して同時にオンライン発注システムを導入した。約120の主要協力会社には経営者が高齢化した零細企業もあったが、ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行し始めた時期にあたり、オンラインのやりとりが必須の雰囲気があったことから、調達部門が協力会社に「一緒に少しずつDXを実施していこう」と声がけして協力を得た。最終的には9割以上の企業の承諾を得てオンラインの発注に切り替えることができた。  オンライン発注に切り替わって、誤認識や注文情報を再入力する手間が削減(月間400時間)し、ペーパーレス化、通信費の削減を実現。その後、生産管理システムと連動した顧客情報共有システム、図面・文書管理システム、在庫管理システムなども導入し、成果として3年の間に21ものシステムツールを導入した。  「生産管理システムを入れる前に、だれもが利用しているSNSのビジネス版を活用し、社内連絡を掲示板に投稿して閲覧をうながし、デジタルに慣れてもらってデジタル化の不安を払拭したことも効果があったと思います」(頼委員長)  なお、フジワラテクノアートが導入したシステムは、すべて既存のパッケージ商品だそうだ。ゼロから開発すれば自社に合わせて便利で使いやすいものにはなるが、そもそもパッケージはさまざまな企業の意見や使い勝手が集約されて完成した、いわば標準仕様であると考え、システムに合わせて自社の業務の方法を変えることにしたそうだ。アップデートによるトラブル回避のため、極力カスタマイズをせず、設定変更が可能な範囲において反映できることがないかなども調査しながら、運用を行っているという。 社員のDXボトムアップ効果  社外のコンサルティングに頼らず、DX委員会が中心となり社内で検討を重ねながら推進したDX。特別なノウハウがないため、スタート時は苦労が続いたが、取組みを継続するなかで、DX推進委員会を中心に「やればできる」と自信がついた。成果が数字などで目に見えるのもやりがいになったという。また、副次的な効果としてITに興味を持ち自主的に資格取得などの学習に取り組む社員が増加した。IT関係の資格保有者は2018年は1人だったが、2023年には資格取得者や実務での実践者が延べ21人になるなど、DXが社内に与えた影響は大きい。  ITの知識がゼロだったある若手社員は、DX推進委員に選ばれ、その業務でエラーとデータ抽出に試行錯誤をくり返しながら、いまではプロ顔負けにプログラムを自在に組めるまで技術を高めた。  AIとは縁遠かったあるベテラン社員は、次世代醸造プラントに向けて、AIを活用した設備の必要性を感じてPython(パイソン)を学び、その過程で何万回もエラーを出しながらも、いまでは画像認証で杜氏(とうじ)をサポートするAI技術の開発まで手がけるようになった。頼委員長自身もITストラテジストの資格取得の勉強をしながら、業務でDXを実践して学びを活かしてきた。ベテラン勢もDXを拒否することなく、業務に必要なITスキルを習得している。 ベテラン社員のためのサポート  デジタルを苦手とするベテラン世代の社員のサポートについては、導入時に研修会を実施して目的を説明し、細かい操作は各部門のDX推進委員会のメンバーが懇切丁寧にフォローしている。  「当社はフルオーダーメイドの製造ということで、さまざまな経験を経て高いスキルを持つベテラン社員を尊敬する風土が根づいています。そのうえでベテラン社員がシステムの使用に苦労していれば、若手社員が進んで手助けをしています」(頼委員長)  製造部のDX委員である甲元(こうもと)久美子(くみこ)さんは「ベテラン社員からシステムの操作について聞かれたら、まず何をやりたいかを聞きます。一度教えた内容であれば、もう一度復習しながら行います。みなさん少しずつ対応していますし、『わからないことを聞く』ということは、『デジタル化に対応していく意欲がある』ということなので、その気持ちがすごいと思います。私自身あまりITに詳しくないので、どちらかというと、ベテラン社員のみなさんと同じ気持ちでわかりにくい点などに共感しながら話を聞いています」  甲元さんから、システムの操作方法などについて、よく教えてもらっているという、製造部生産管理グループ顧問の谷(たに)幹夫(みきお)さんは、「システムが新しくなり、最初は本当にたいへんでした。そもそも基本的な用語がよくわからず、前に聞いた言葉でもたまに使うだけだと忘れてしまうので、その都度聞いて教えてもらっています。時代とともに仕事のやり方が変化していくなかで、環境は昔には戻りませんから、わからないことも勉強をして、聞いて、覚えて、挑戦する気持ちをいつも持っています」と話す。  谷さんがおもに使っているのは、図面・文書管理システム、そして生産管理システムである。「以前は、他部署に頼んで印刷してもらっていた図面や、実績や調達に関することなど、知りたい情報が自分のパソコンですぐ見られるようになり、仕事はとても効率的になり、業務への向き合い方が未来志向になってきたことを実感しています」(谷さん) DX成功のカギは社員へのビジョン浸透  最後に、DX推進を成功させるためのポイントについて、頼委員長にうかがった。  「DXを推進すれば、それだけで効率化する・便利になる、というわけではありません。当社の場合も、それまで阿吽(あうん)の呼吸で上手くいっていたアナログ作業をデジタル化することで、多くの社員に大きな負担がかかりました。DX推進により確実に効率化はしていますが、全社員がDXの必要性に納得し、さらに、たいへんであっても、その先の未来を楽しみに『DXの推進は将来のため』、『高みを目ざすため』と考えられたのは、経営理念やビジョンが浸透していたからです。DX推進は社員がそのマインドを持てるようになっているか否かがキーになると思います」  DXの力で経営基盤の強化を進めてきたフジワラテクノアート。現在は据付現場での搬入ルートや配管の検討に3Dスキャンを活用する取組みのほか、ベテランのさまざまな経験や知識を全社で活用できるようナレッジデータベースの構築に取り組んでいる。これからもベテラン社員が持つ知見を活かしながら、デジタル化を推進していく方針だ。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 写真のキャプション 株式会社フジワラテクノアート本社 頼純英DX推進委員会委員長(左)、谷幹夫製造部生産管理グループ顧問(右) 業務フローの洗い出しを行った畳2畳大のフロー図 【P23-26】 事例3 全員がDX化に対応して業績が飛躍的に向上 従業員の週休3日制・副業可も実現 株式会社陣屋(じんや)(神奈川県秦野(はだの)市) 創業100年を超える老舗旅館 赤字からの脱却を目ざしDXを推進  東京都の新宿駅から小田急線で約1時間。株式会社陣屋が営む「鶴巻(つるまき)温泉(おんせん)元湯(もとゆ)陣屋」は、鶴巻温泉駅から歩いて4分の便利な場所に立地しながら、1万坪の広さを誇る庭園を持つ自然にいやされる老舗旅館。丹沢山塊(たんざわさんかい)の地下深くから湧き出る温泉は、カルシウム含有量世界有数の名湯といわれ、国内外から多くの人々が訪れている。  創業は1918(大正7)年。100年を超える歴史があり、貴賓室「松風(まつかぜ)」は明治天皇の宿泊のため、黒田藩主が大磯に建てたものを移築した部屋で、将棋や囲碁の名棋士が王座を争う舞台としても知られており、これまでに300以上のタイトル戦が行われている。  しかし、バブル崩壊後から売上げが低迷し、一時は償却前利益が年間マイナス6000万円となり、廃業の危機に直面したこともあった。  危機を乗り越えたのは、経営を引き継いだオーナーと女将が夫婦で取り組んだDX化と、それにともなうシニアを含む従業員全員へのデジタルスキルの習得・活用が出発点だったという。 紙の管理からデジタルへ移行し情報の共有化、日常業務の効率化を図る  陣屋の経営を引き継いだ宮ア(みやざき)富夫(とみお)さん(現・陣屋グループオーナー)は、もともと旅館を継ぐ気持ちはなく大手自動車メーカーで技術者として働いていたが、父が急逝し、母が病に倒れて陣屋の経営者が不在となり、急きょ跡を継ぐことを決断。元会社員で当時は出産直後の二児の母だった妻の宮ア(みやざき)知子(ともこ)さんが2009(平成21)年10月、4代目の女将に就任した(現在は代表取締役・女将)。当時は売上げ減少に直面している時期であり、跡を継いだ宮ア夫妻には、早期の業績改善が求められており、すぐに経営改革に着手した。特に課題となっていたのが顧客管理だったという。  旅館経営に欠かせない宿泊客の管理は、手書きの紙の台帳が主体となっており、当時パソコンを使える従業員は夫妻のほかに1人のみ。また、宿泊客の好みや要望などが従業員間で共有されておらず、常連のお客さまに同じ質問を何度もしてしまうということもあったという。  そのほか、従業員の仕事はサービス係、フロント係、調理係などに細分化されているが、フロント係が多忙をきわめていても、別の係は手が空いているといったこともあり、日常的な業務においても非効率的な面が多々あったという。  そうした状況の分析を行い、従業員には事業継続が危機的状況にあることを説明したうえで、経営改善のために同社では次の方針を打ち出した。 @情報の「見える化」 APDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)の高速化 B情報は持つだけでなく活用させる C仕事を効率化し、お客さまとの会話と接点を増やす  これらを推進していくためには、旅館経営を支える基幹システムが必要と判断し、当時市販されていたホテル・旅館向け基幹システムの導入を検討した。しかし、自社に適したものが見あたらなかったことから、独自のシステムを開発することを決断し、システムエンジニアを1人採用した。その結果誕生したのが、旅館業に特化したクラウド型基幹システム「陣屋コネクト」だ。  陣屋コネクトは、予約台帳・顧客台帳をペーパーレス化したもので、タブレットを通じてすべての顧客情報がそれを必要とする従業員と共有され接客サービスの向上につながる。また、仕入れ・原価管理、設備管理、勤怠管理や会計処理などを一元管理することで効率化・最適化も図ることができる、旅館経営を行ううえで画期的なシステムである。 実際に使うことで体得してもらう社内ルールを徹底し例外を認めず  陣屋コネクトを導入したものの、全従業員が使いこなせるようになるまでには、いくつかの工夫と苦労、時間が必要だった。  まず、それまではあたり前だった紙の予定表やメモ書き、ホワイトボードの使用を禁止し、報告や連絡、承認、レポートの提出はすべて陣屋コネクトで行うことを社内ルールとし、情報端末を全員に支給した。勤怠管理も陣屋コネクトで行うため、システムにログインしないとそもそも仕事を始めることができず、全従業員が情報端末を使わざるを得ない状況をつくった。  陣屋コネクトを導入したのは2010年3月のこと。従業員数は80人ほどで、60歳前後から70代の従業員が多かったという。当時はスマートフォンを持つ人はほとんどおらず、パソコンに触れたこともないという人が大半だったそうだ。そうしたなかでDXを推進したため、メモ書き禁止などのルール化に対し、反発は大きかったという。  「『パソコンはこわいもの』、『壊したらたいへん』というイメージを持っているベテラン世代の従業員が多く、『なるべく触りたくない』という雰囲気が当初からありました」と代表取締役・女将の宮ア知子さんは、DX推進に取り組み始めた15年前をふり返る。宮アさんは、「ATMを使ったことがあるなら大丈夫。簡単に壊れたりはしないし、むずかしいものではない」と説明し、実際に使ってもらいながら、「わからないことは、そのつど聞いてください」と、ていねいな説明をくり返し、その浸透を図っていった。  特に陣屋コネクトの使い方教室のような場は設けなかったという。一同を集めて30分間説明をしても、興味がない人には効果がないと考えたからだ。  慣れるまでの時間は人によって違い、同じことを何度も聞く人もいたが、根気よく対応した。取組みの推進にあたり重視したのは、「報告や連絡はすべて陣屋コネクトで送信する」、「手書きでは受け取らない」といった最初に決めた社内ルールの徹底。一人でも例外を許してしまうと、その影響が周囲に波及し、うまくいかなくなると考えた。なかには「自分にはできない」と泣きながら訴える従業員もいたそうだが、ルールに則って仕事をしてもらえるよう、困っている従業員のためのサポート役を決めて、フォローを行うことも徹底した。  サポート役の従業員は、はじめからその担当として役割をこなしていたというわけではなく、元々、同じ質問をくり返しされても、いやな顔をせず応えている若手従業員がおり、わからないことがある人は、だんだんその従業員に聞きにいくことが増えていたという。そこで、その従業員に負担がかかりすぎてはいけないと思い、みんなが慣れるまでのサポート役をになってもらうこととし、評価制度でそのことをプラスに評価することにした。  そのうちサポート役の従業員は手順がわかる写真を貼ったり、苦戦していた従業員たちもそれを写真に撮るなどの工夫をしながら陣屋コネクトの使用を続け、2年半ほどすると全員が問題なく使えるようになっていたそうだ。 便利さを一緒に実感することで新たなツールもスムーズに導入  一方で、陣屋コネクトをより使いやすいツールへとカスタマイズしていくため、現場の声とニーズを把握し、柔軟に改善も行ってきた。  例えば、音声認識ツールを使用して、広大な敷地のどこにいても、館内などの状況を即時に共有できるようにするため、当初は従業員が携帯するタブレット端末とトランシーバーを併用していたが、それでは音声をテキストで記録に残すことができないなどの課題があり、新たな仕組みの導入を検討。その結果、トランシーバーではなく、タブレットにインターカム(以下、「インカム」)を通して発話すると、その声がテキストに自動変換され、即時に共有できる新たなアプリを導入することにした。  この仕組みの導入当初は、高齢従業員から、「インカムの使用は、お客さまに失礼になるのでは」という声があがった。しかしインカムは、公共施設などでも使用されている例があることなどを説明し、一斉に切り替えると、2週間ほどで全員が慣れたという。このツールでは、1人が発信した情報が瞬時に多数の人に伝わるため、以前のツールより断然便利なことが使い始めてすぐにわかったからである。 陣屋コネクトを通じた情報共有でお客さまサービスが向上  陣屋コネクトの導入から全従業員が問題なく使用できるようになる2年半の間には、デジタルスキルの習得に向き合う従業員のモチベーションを高めるできごともあった。  年齢が高くても、新しいことを覚えるのに積極的で向上心のある70代の従業員は、すぐにシステムの使用方法を習得。タブレット端末を使って仕事をする高齢者ということが話題となり、メディアで取り上げられると、それを目にしたお孫さんから、「すごいね、おばあちゃん」といわれ、とても喜んだそうだ。  そこで同社は、積極的に取材を受けるとともに、陣屋コネクトを展示会で発表したり、自治体などが主催する表彰制度に応募したりして、メディアでの露出機会を増やしていくと、それが従業員間はもちろん、宿泊客や取引先の間でも話題となった。  「家族や友人から『すごいね』とほめられるようになり、それが従業員の自信や誇りを高めることにつながりました。人はほめてもらう機会が増えると前向きになれるものです」(宮アさん)  陣屋コネクトを通じた情報共有でサービスの質が向上し、宿泊客が喜んでくれる。それも従業員が前向きになる力となった。 業績改善と組織の成長により週休3日制を実現  陣屋コネクトの導入は、さまざまな効果をもたらした。 ・手書きの手間を省き、作業の重複や漏れなどのトラブルを防止。いつ・だれが・何をしたかの履歴が残る ・女将や従業員の頭の中にしかなかった接客のための情報が、陣屋コネクト上に蓄積 ・スタッフがいつでもどこでも最新情報を共有できることにより、「いった・いわない・聞いていない」のトラブルが解消。部門を越えた情報共有で組織の一体感が向上 ・細やかな「おもてなし」を実現  業務の効率化が進み、サービスの質が向上したことで細やかなおもてなしが可能となり、リピーターの宿泊客が増えて、廃業寸前だった旅館は約3年で黒字経営に転換した。  また、以前は指示待ち体質の従業員が多かったそうだが、DXの推進と同時に、各従業員が複数の業務をこなすマルチタスク化にも取り組み、短期間に変化に対応し続けたことで、従業員が自律的に考え判断する組織に変わったという。  DX推進の取組みを、宮アさんは次のようにふり返る。  「DXは、まさに当社の転換点でした。『何とかして業績を回復させなくては』という思いから始まった取組みですが、システムを開発し、それを従業員が活用し、そこから得たメリットをサービスに転嫁して、こうしていまお客さまをお迎えすることができ、従業員に過度な負担をかけることなく事業運営ができています。ありがたいことに人員が確保できているのも、DXに取り組んでいたからこそだと思っています」  人員の確保については、「旅館を憧れの職業に」という方針を掲げ、働き方改革にも積極的に取り組んでいる。DXの推進により業務の効率化を実現したことで、従業員のプライベートの充実や自己研鑽(けんさん)を奨励し、副業も推奨しており、現在では旅館全体の休館日を設けて、従業員の「週休3日制・副業可」を実現し、全国から注目を集めている。  一方で、独自開発した旅館管理システムである陣屋コネクトを、同業他社へ販売する会社を立ち上げた。また、陣屋コネクトを通じた交流を発展させ、地域全体でマーケティング、集客の強化とDXを推進するための地域観光DXプラットフォーム事業も始動している。 取組みのポイントは、ていねいな説明と理解を得て進めること  2024(令和6)年6月時点の陣屋の従業員数は46人。そのうち正社員が23人、パートタイム従業員が23人で、60歳以上はパート従業員が10人ほどとなっている。最近はスマートフォンを使用する人が増えていることから、採用した従業員が陣屋コネクトに慣れるまでの苦労などは特にないという。  最後に、高齢従業員にデジタルスキルを学んでもらいたいと考えている企業へのメッセージをお聞きすると、宮アさんは「高齢だから苦手と決めつけず、興味を持ってもらうこと、むずかしいものではないと説明すること、同じ質問をされても面倒な顔をしないことがポイントではないでしょうか。会社のメリットだけに注力せず、職場の環境をよりよくし、従業員の業務負荷が軽減されることで、新しいことにチャレンジする時間を生み出していけることなども説明し、理解を得ながら進めることが重要だと思います」と語ってくれた。 写真のキャプション 代表取締役・女将の宮ア知子さん(写真提供:株式会社陣屋) 100年の伝統を持つ元湯陣屋(写真提供:株式会社陣屋) 【P27】 生産性向上人材育成支援センターでは、中小企業等におけるDX人材の育成を支援しています! 生産性向上人材育成支援センターでは、生産性向上支援訓練「DX対応コース」及び在職者訓練「DX対応訓練」により、中小企業・事業主団体等のDX人材の育成≠支援しています。 生産性向上支援訓練「DX対応コース」の概要  生産性向上支援訓練は、あらゆる産業分野の中小企業等が生産性を向上させるために必要な知識・スキルを習得するための訓練です。  DXの推進に資する人材の育成を支援する「DX対応コース」では、共通領域としてDX推進に向けたスタートコース、ネットワーク・セキュリティに関するコースを実施しています。また、DXに向けた3つの課題を設定し、それぞれの課題解決に対応したコースをご用意しています。 共通領域 DX推進に向けたスタートコース DXの推進に必要な知識や導入事例を知りたい⇒【バックオフィス分野】DXの推進 ネットワーク・セキュリティに関するコース 社内ネットワークのセキュリティ対策を進めたい⇒【倫理・セキュリティ分野】脅威情報とセキュリティ対策 3つの課題 デジタル化と新しい生活様式の課題への対応コース 自社業務に適切なITツールを選定したい⇒【バックオフィス分野】ITツールを活用した業務改善 業務プロセスの課題への対応コース システム化に伴うコストの考え方を知りたい⇒【バックオフィス分野】失敗しない社内システム導入 ビジネスモデルの課題への対応コース IoTによるビジネス環境の変化や動向を知りたい⇒【組織マネジメント分野】IoTを活用したビジネスモデル ○受講対象者  事業主の指示を受けた在職者の方 ○訓練日数・時間  おおむね1〜5日(4〜30時間) ○受講料(1人あたり・税込)  2,200円〜6,600円 ○訓練会場  自社会議室等を訓練会場とすることが可能です(講師を派遣します) 在職者訓練「DX対応訓練」の概要  在職者訓練は、設計・開発、加工・組立、工事・施行、設備保全などものづくり分野≠ノおける生産現場の課題を解決するための実習を中心とした職業訓練です。生産性向上、業務改善、製品等の高付加価値化などの生産活動等における課題解決に向け、DXにつながる技術要素(IoT、ロボット、AI等)の導入・活用に対応できる人材の育成を目的とした「DX対応訓練」も実施しています。 多くの方に受講いただいているコースを一部ご紹介します! 3次元CADを活用したアセンブリ技術 機械設計の新たな品質・製品の創造のため、高付加価値化に向けた設計のアセンブリ機能を活用した検証方法を学びます BIMを用いた建築設計技術 建築設計の効率化、適正化、最適化のため、BIMを用いた建築設計に関する技能を学びます 訓練受講ご希望の企業様は、最寄りの生産性向上人材育成支援センターにお問い合わせください。 〜生産性向上人材育成支援センター(生産性センター)は、事業主のみなさまの生産性向上に向けた人材育成を支援しています〜 生産性センターホームページ