【表紙1】 画像のため加工できませんでした。 【表紙2】 高年齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップ  高年齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま! 改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされ、高年齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  JEEDでは各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) 専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組みなど】 事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ディスカッション など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください ■開催スケジュール ※ で記載されている北海道、青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、福井、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、山口、福岡、長崎、鹿児島、沖縄については、ライブ配信やアーカイブ配信等の動画配信を予定しています。 ※開催日時などに変更が生じる場合があります。詳細は、各都道府県支部のホームページをご覧ください。 都道府県 開催日 場所 北海道 10月25日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月17日(木) アピオあおもり 岩手 10月22日(火) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月15日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月29日(火) 秋田県生涯学習センター 山形 10月17日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 10月23日(水) ビッグパレットふくしま 茨城 10月18日(金) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月17日(木) とちぎ福祉プラザ 群馬 11月5日(火) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月10日(木) さいたま共済会館 千葉 10月8日(火) ホテルポートプラザちば 東京 10月15日(火) 日本橋社会教育会館 神奈川 10月31日(木) かながわ労働プラザ 新潟 10月10日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター 富山 10月22日(火) 富山県民会館 石川 10月11日(金) 石川県地場産業振興センター 福井 10月16日(水) 福井県中小企業産業大学校 山梨 10月31日(木) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月17日(木) ホテル信濃路 岐阜 10月22日(火) 長良川国際会議場 静岡 10月16日(水) 静岡県コンベンションアーツセンター 愛知 10月11日(金) 名古屋市公会堂 三重 10月15日(火) 津公共職業安定所 都道府県 開催日 場所 滋賀 10月18日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 京都 10月11日(金) 京都経済センター 大阪 10月22日(火) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月17日(木) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月24日(木) かしはら万葉ホール 和歌山 10月22日(火) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 10月25日(金) 鳥取職業能力開発促進センター 島根 10月18日(金) 松江合同庁舎 岡山 10月11日(金) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月25日(金) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月4日(金) 山口職業能力開発促進センター 徳島 10月16日(水) 徳島県JA会館 香川 10月23日(水) サンメッセ香川 愛媛 10月25日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月21日(月) 高知職業能力開発促進センター 福岡 10月29日(火) JR博多シティ 佐賀 10月25日(金) アバンセ 長崎 10月24日(木) 長崎県庁 熊本 10月11日(金) 熊本県庁 大分 10月7日(月) トキハ会館 宮崎 10月16日(水) 宮崎市民文化ホール 鹿児島 10月23日(水) かごしま県民交流センター 沖縄 10月18日(金) 那覇第2地方合同庁舎 各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更があった場合は各都道府県支部のホームページでお知らせします。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 【P1-4】 Leaders Talk No.113 歯の健康は働く意欲の源 地域の歯科医療を全力でサポート 針ヶ谷歯科醫院 院長 針ヶ谷光正さん はりがや・みつまさ 1993(平成5)年に東京都大田区に針ヶ谷歯科醫院を開業。当時は珍しかった夜間・土日祝日診療を行うなど、患者視点での歯科経営を実践。大森歯科医師会部会長、大田区の介護認定審査会委員のほか、近隣の学校の校医を務めるなど、さまざまな形で地域に貢献している。  生涯現役時代を迎え、高齢者が活き活きと働き、活躍していくために心がけたいのが「歯の健康」です。歯の健康を損なうことは、食事に影響を及ぼすだけでなく、さまざまな病気を引き起こす要因となる場合もあります。  今回は、町の歯科医として、60歳を超えたいまも現役で活躍中の針ヶ谷光正さんにご登場いただき、歯の健康の秘訣や、地域に貢献する歯科医としての思いなどについて、お話をうかがいました。 生まれ育った地域社会への恩返しのため夜間・土日祝日診療の歯科医院を開業 ―針ヶ谷先生は、東京都大田区の大森で歯科医院を開業され、平日の夜間診療や土日祝日の診療も行うなど、地域の歯科医療に積極的に取り組んでおられます。大森で開業するきっかけとは何だったのでしょうか。 針ヶ谷 私は生まれも育ちも大森なのです。地元の小学校・中学校を卒業し、裕福な家庭ではなかったので、高校・大学もずっと国公立でした。大学で6年間勉強し、すぐに勤務医として働き始めました。卒業後は医局に残り、研究者を目ざす人が多く、私も残りたかったのですが、経済的に厳しかったので働く道を選びました。7年間勤め、1993(平成5)年、33歳のときに大森で開業しました。開業の手続きや歯科医師会の入会など、何も知らないなかでの開業だったことに加え、開業の1年前に父が亡くなり、私自身も開業準備中に胆石の手術で入院するなど、たいへんなスタートになりました。  大森を選んだのは、生まれ育った地元に愛着があったからです。夜9時まで、土日祝日も診療するという方針は、開業前から決めていました。私は、会社を経営するうえで重要な要素が二つあると考えています。一つは地域社会に貢献すること、もう一つは従業員の家族も含めて従業員を幸せにすることです。私の場合は大森のみなさんに育ててもらい、そして国公立の学校で学び、歯科医にしてもらいました。私立大学で学び医師になるには、6年間で5000万円の学費が必要といわれますが、当時の国立大学の学費は年間15万円。その恩義を返していくためにも、地域社会へ貢献したいと思っています。だからこそ、患者さんの利便性を考え、夜間・土日祝日も診療し、地域の歯科医療に全力で取り組んでいこうと開業前から考えていました。 ―夜間・土日診療は、当時は珍しかったでしょうね。患者さんも喜ばれたと思います。 針ヶ谷 周りの歯科医師からは批判的な声もありました。「あまり派手にやらないでくれ」と直接いわれたこともあります。でも患者さんには喜ばれました。帰り際に玄関扉の前から、治療室にいる私に聞こえるように、「ありがとうございました」と大声でいってくれる人もいます。本当にうれしいですし、励みになります。言葉だけではなく、飲食物などの差し入れをいただく機会もたくさんあります。病院は新規の患者さんも大切ですが、「再診の人数が多い医院が、よいクリニック」といわれています。ありがたいことに、当院の再診率は非常に高いのです。 ―先生は60歳を超えたいまもご活躍されています。その秘訣とは何でしょう。 針ヶ谷 私は、体が動くうちは働いたほうがよいと思っています。「早期リタイアして趣味に生きる」という人もいますが、毎日を趣味に費やすのも限界があるし、しばらく休むと仕事をしたくなるものです。人間の本能には食欲、睡眠欲、性欲の三つがあるといわれますが、もう一つ、「人の役に立ちたい」という貢献欲もあると思います。若いときはそうでもないですが、年をとると「何かしら人の役に立ちたい」という思いがふつふつと湧いてくるのです。患者さんのなかには、「最近、寝たきりの人にお弁当を届けるボランティアを始めた」と、楽しく話す人がいます。「だれかの役に立つ」という行為が、自分自身の満足感や充実感にもつながっていると思うのです。  仕事を通して地域や社会に貢献していくためにも、健康が重要であり、特に歯は非常に大切です。高齢者の「齢」の字にも歯が入っていますが、歯が丈夫であることは何より重要なのです。歯が丈夫ということは、「しっかりと噛める」ということ。口は命の糧が入るところですが、噛めなければ固形物をそのまま飲み込むことになり、そうなれば胃だけではなく膵臓、肝臓、腎臓などの臓器に過重な負担がかかり、必ず大きな病気の原因になります。  しっかり噛めば噛むほど脳が活性化し、認知症の予防になるともいわれています。また、噛むことで耳の下の耳下腺と舌の下の顎下腺から唾液が分泌されるのですが、高齢になると唾液が少なくなり、口内が乾燥し、口腔内感染症という病気に罹りやすくなります。唾液が虫歯予防とも関連するといわれていますし、しっかり噛むことが病気の予防になります。例えば、寝たきりで胃から食べ物を入れる胃瘻(いろう)の人がいますが、訪問診療などを通して、口の中を手入れし、少しずつ食べ物が噛めるようにしてあげると、寝たきりではなくなるという実例もたくさんあるのです。 “口の中の状態が人生を左右する”歯の健康を保ち日々の暮らしをポジティブに ―しっかり噛める歯を保つことが高齢になっても元気でいられるということですね。 針ヶ谷 極端にいえば「口の中の状態が人生を左右する」ということです。しっかり噛める人は高齢者でもエネルギッシュで元気な人が多いですし、逆に噛めなければ食べる喜びを失い、外で人と食事をしたくなくなり、ふさぎがちになります。私は健康と要介護の中間の心身の活力が低下する「フレイル」は、歯を失い、噛めなくなるところから始まると感じています。物が食べられなかった人が食べられるようになると笑顔になりますし、歯がきれいだと思いきり笑うことができ、日々の暮らしに前向きになれます。スタッフたちには「私たちの仕事は笑顔をつくりだす“笑顔創造産業”だよ」と話しています。  歯の健康でもっとも大事なことは、歯を支える根っ子にある骨を守ることです。多くの人が「歯」に目を奪われがちですが、見えている歯や歯茎の下に根っ子を支える骨があります。顎の固い骨のなかに根っ子が埋まっており、そこにしっかり支えられているからこそ「噛める」のです。極端にいえば、歯が全部なくなっても根っ子がしっかりしていれば、歯医者はいくらでも治せます。歯が抜ける理由は虫歯ではなく、歯茎の下にある骨が溶けることです。その原因が歯周病です。歯肉が炎症を起こす病気を歯肉炎、歯肉の下にある骨が溶ける病気を歯槽膿漏といい、その二つをあわせて「歯周病」と呼びます。物を食べれば口の中に汚れがつきます。汚れが歯茎に溜まるとばい菌が悪さをします。ばい菌も生き物ですから人間と同じように老廃物を排出し、それが毒素となって歯茎を痛めて出血する。これは治りますが、問題は歯茎に浸みこんだ毒素が、歯茎の下の骨を溶かし始めることです。これが、歯がグラグラして抜けるというメカニズムです。こうなってから、歯医者に来て「元通りにしてくれ」といわれても、骨をつくることはできません。 ―歯槽膿漏を防ぎ、骨を守るにはどうすればよいですか。 針ヶ谷 高齢になったら歯を守る以上に骨を守ることを心がけるべきです。歯の磨き方について、アメリカや日本の大学でも共通で教えている磨き方が「スクラッピング法」です。歯ブラシの腹ではなく、毛先を歯と歯茎の間の縁に軽く押しつけ、小刻みに振動させながら磨き、縁の汚れを取る方法です。歯磨き粉は必ずしも必要ではありません。患者さんには、「お風呂に歯ブラシを1本置いて、湯船に浸かりながら磨いてもよいでしょう」と話しています。ばい菌が毒素を出すまでには、それなりに時間もかかります。1日1回、お風呂のなかで磨けば、骨は溶けません。また、歯の磨き方のくせは人によって違いますし、汚れがどこに残っているかは、本人にはなかなかわかりません。数カ月〜半年に1回は、歯医者さんに診てもらうことをおすすめしています。口を開けるだけでプロの目には歯の状態が一瞬でわかります。かかりつけのお医者さんを見つけて、しっかりとメンテナンスしていくことが大切です。 ―先生は診療の合間をぬって、現在も大学の臨床専科生として勉強されているそうですね。 針ヶ谷 やはり「人の役に立ちたい」、「学びを通して少しでも役に立つものがあれば地域の患者さんに還元したい」という思いがあります。大森という町が好きですし、新しい技術を患者さんに提供し、喜んでもらえれば私もうれしいですね。 高齢従業員が活き活き働ける環境の実現に向け会社で定期的な歯科検診の実施を ―最後に、歯科医の立場から、高齢従業員を雇用する企業へのアドバイスをお願いします。 針ヶ谷 高齢従業員に意欲を持って元気に働いてもらうためには、「歯の健康」にも留意してほしいと思います。年1回の定期健康診断に合わせて、歯の検査も加えてみてはいかがでしょうか。経費はかかりますが、一定の年齢になったら検査を義務づける、あるいは会社で歯科医院と交渉して、1人あたりの金額を安くするなどの工夫はできると思います。物をしっかり噛むことができ、歯が丈夫であることは、従業員の仕事に対する意欲の向上にもつながりますし、会社で「歯の検診」に取り組むことは、とても画期的な取組みになるのではないでしょうか。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、“年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト KAWANO Ryuji 2024 October No.539 特集 6 次世代への技術・技能継承や高齢社員を戦略的に活用する企業が集結 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 7 審査委員長からのメッセージ 東京学芸大学 名誉教授 内田 賢 8 最優秀賞 株式会社 植松建設(佐賀県鹿島市) 12 優秀賞 株式会社 久郷一樹園(富山県富山市) 株式会社 ドリーム(静岡県浜松市) 20 特別賞 株式会社 ヤオコービジネスサービス(埼玉県川越市) カナタスタイル 合同会社(富山県富山市) 金城電気工事 株式会社(沖縄県那覇市) 32 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 入賞企業一覧 1 リーダーズトーク No.113 針ヶ谷歯科醫院 院長 針ヶ谷光正さん 歯の健康は働く意欲の源 地域の歯科医療を全力でサポート 34 高齢者の職場探訪 北から、南から 第148回 福島県 国見まちづくり株式会社 38 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第98回 株式会社旭フーズ 場内整備作業員 川口弘幸さん(84歳) 40 学び直し$謳i企業に聞く! 【最終回】大樹生命保険株式会社 44 知っておきたい労働法Q&A《第77回》 従業員が死亡した場合の退職金の支給対象者、副業先の時間外労働 家永 勲 48 シニア社員を活かすための面談入門 【第5回】シニア社員の不安や不満を解消する行動 株式会社パーソル総合研究所 組織力強化事業本部 キャリア開発部 長野朋子 50 いまさら聞けない人事用語辞典 第51回 「エンゲージメント」 吉岡利之 52 お知らせ 令和6年度 「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」のご案内 54 「データでみる 70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫」のご案内 55 日本史にみる長寿食 vol.371 「赤まんま」で健康管理 永山久夫 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.344 伝統技法を守りながら美しい色と柄を追求 型染め・紅型 作家 山本加代子さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第88回]ブドウ算 篠原菊紀 【P6】 特集 次世代への技術・技能継承や高齢社員を戦略的に活用する企業が集結 令和6年度 高年齢者活躍企業 コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、厚生労働省との共催で、「高年齢者活躍企業コンテスト」を毎年開催しています。本コンテストは、高齢者が年齢にかかわりなく生涯現役で活き活き働くために、人事制度の改定や職場環境の改善などに、創意工夫をして取り組む企業を表彰するものです。 令和6年度は、厚生労働大臣表彰6編、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞11編、特別賞9編、クリエイティブ賞2編の受賞が決まりました。 本誌では、10月号と11月号の2回に分けて、コンテスト表彰企業の取組みを紹介します。 今号では、厚生労働大臣表彰受賞企業の取組みを紹介します。 【P7】 審査委員長からのメッセージ 生涯現役で高齢者が活き活きと働ける職場づくりに取り組む企業を表彰 東京学芸大学 名誉教授 内田(うちだ)賢(まさる)  「令和6年度高年齢者活躍企業コンテスト」の審査が終了いたしました。審査委員を代表し、応募いただきましたすべての企業・団体関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。今回は全国から69編の応募を受け、厳正な審査の結果、厚生労働大臣表彰は、最優秀賞1編、優秀賞2編、特別賞3編、また、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰は、優秀賞11編、特別賞9編、クリエイティブ賞2編が入賞を果たしました。  最優秀賞の株式会社植松(うえまつ)建設(けんせつ)は、経営理念に「互恵(ごけい)」を掲げ、定年制の廃止をはじめ、だれもが活躍できる職場環境の実現に注力。個々の社員の体力や健康状態に配慮した柔軟な勤務制度や健康管理体制の整備、若手への技能継承など、豊富な知識・経験と高い技術を持つ高齢社員を、事業を支える重要な戦力として尊重し、各種制度を整備していることが高く評価されました。  優秀賞を受賞した株式会社久郷一(くごういち)樹園(じゅえん)の創業は古く、江戸時代から続く歴史と伝統、そのなかでつちかわれてきた高い造園技術の継承に、全社をあげて取り組んでおり、その中心的な役割を高齢社員がになっています。年齢にかかわらず昇給可能な賃金体制なども高く評価されました。  同じく優秀賞を受賞した株式会社ドリームは、警備業を中心に、防災・防犯事業、福祉事業など幅広い分野の事業を通して地域に貢献。社名の通り、社員の“夢”を後押しするため、生涯現役で活躍可能な職場づくりに取り組み、モチベーション高く働ける環境を整えています。  特別賞を受賞した株式会社ヤオコービジネスサービスは、スーパーマーケットの店舗警備など、後方支援をになう企業として成長してきました。全社員の8割を60歳以上が占めており、継続雇用の年齢上限の廃止をはじめ、高齢社員が安心して働ける制度・環境づくりに注力しています。  同じく特別賞受賞のカナタスタイル合同会社は、2018(平成30)年に創業し、2020(令和2)年に施設を開業したばかりの新しい会社ですが、高齢者を積極的に採用し戦力化を図るとともに、年齢にかかわらず公平・公正な賃金制度を整備。ITツールの活用なども推進しています。  同じく特別賞受賞の金城(きんじょう)電気(でんき)工事(こうじ)株式会社は、「働きがいのある職場をつくること」を経営理念の一つに掲げ、創業70年超の歴史のなかでつちかってきた技術を次世代に継承していくために定年延長などに取り組み、長く安心して働ける職場づくりに邁進しています。  60歳から65歳、70歳と就業期間の延伸とともに、高齢社員のなかにも多様性が生じます。加齢とともに体力が低下するといわれていますが、その程度は人それぞれですし、仕事一筋でがんばる人もいれば、地域活動にも力を入れたい人、家族の介護がある人などさまざまです。そうしたなかで、高齢社員の活躍をうながし、会社に貢献してもらうための仕組みをつくることが必要です。会社によって置かれている状況は異なりますが、受賞企業をはじめとした、いろいろな会社のさまざまな取組みを少しずつ取り入れ、自社に合ったオーダーメイドの高齢者活用・戦力化に取り組んでいただければと思います。 【P8-11】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 定年制を廃止し、だれもが生涯現役を目ざせる職場環境を実現 株式会社 植松(うえまつ)建設(けんせつ)(佐賀県鹿島(かしま)市) 企業プロフィール 株式会社 植松建設 (佐賀県鹿島市) 創業 1933(昭和8)年 業種 建設業 社員数 40人(2024年4月1日現在) 60歳以上 10人 (内訳) 60〜64歳 6人(15.0%) 65〜69歳 2人(5.0%) 70歳以上 2人(5.0%) 定年・継続雇用制度 定年なし。最高年齢者は75歳 T 本事例のポイント  株式会社植松建設は、1933(昭和8)年に土木工事を生業とする「植松組」として創業。以来、主たる事業である土木工事を中心に事業を展開し、現在では下水道の維持・管理業や不動産業にも業域を拡大するなど、地域のインフラ整備に貢献してきた。また、地域の学校と連携し、工事現場見学やインターンシップの受入れなど、地域社会を支える人材の育成にも寄与している。  同社では、事業を支える貴重な戦力として高齢社員を尊重し、2022(令和4)年に定年制を廃止。だれもが活躍できる職場環境の実現に注力してきた。その背景には、会社にかかわるすべての人が幸せになることを目ざす「互恵(ごけい)」という経営理念がある。 POINT @だれもが働きやすい職場環境の実現に向け、定年制を廃止するとともに、個々の体力や健康状態に配慮した柔軟な勤務制度を構築した。 A経営者がつねに現場を回り、社員とのコミュニケーションを図っており、社員が自らの考えを伝えたり、提案しやすい雰囲気が醸成されている。これが組織内の改善活動を活性化し、業務の効率化や品質向上の実現につながった。 B現場で直接指導を行うOJT制度により、高齢社員が持つ技術や経験を若手社員に継承している。また、会社が費用を負担する資格取得支援制度を導入しており、社員一丸となってスキルアップに取り組んでいる。 C機器のコードレス化などにより、高齢社員の負担を軽減するとともに、作業効率と安全性が向上。また、すべての社員の健康意識の向上を図り、きめ細やかな健康管理体制の整備を推進している。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1933年に植松組の名で創業された。1962年に有限会社化し、1992(平成4)年に株式会社植松建設を設立。創業当初は土木工事が主たる事業であったが、徐々に業容を拡大し、現在は土木・建築工事のほか、下水道の維持・管理業(下水道管テレビカメラ調査、管洗浄、補修など)や不動産業などを幅広く営んでいる。  経営理念に「互恵」を掲げ、会社にかかわるすべての人が幸せになることを目ざしながら、地域貢献を進めてきた。社内、社外を問わず教育投資に積極的で地域の人材育成も視野に入れ、さまざまな取組みを展開している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  建設業界においては、人手不足の恒常化とともに働く人たちの高齢化が進行しており、同社でも近年は社員の高齢化が進みつつあった。そこで、新たな人材獲得のために地元のテレビでCMを展開するなど、積極的に若手の採用に取り組んできた。その結果、社員数は倍増し、10代・20代の社員が、全体の約3割を占めるまでになった。一方、従来の定年年齢は65歳であったが、定年後継続雇用で65歳以上の社員も在籍していたこともあり、実態に合わせて2022年に定年制を廃止。高齢社員を含めた社員全員が働きやすい職場環境の構築に邁進してきた。現在60歳以上の社員が全体の25%を占めており、最高年齢者は75歳である。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制の廃止  旧制度では定年65歳、継続雇用の上限年齢を70歳としていたが、2022年に就業規則を改定し、定年制を廃止した。制度改定の中心的な役割をになった総務課長自身が、70歳という継続雇用の年齢制限を2年後に迎えるタイミングでの制度改定であったこともあり、「定年がなくなることで、気持ちに余裕ができて、今後の人生設計をしっかり考えることができる」と、職務に対し気持ちが前向きになったと話している。 A人事評価  社長との年1回の面談を実施し、高齢社員の思いや願いを直接聞いている。また、年齢にかかわりなく、評価に応じた昇給を行っている。なお、新入社員には、入社後1・3・6・12カ月の年4回の社長面談を行っている。 B柔軟な勤務制度  定年制廃止にともない、勤務形態の見直しに着手。個々の体力の低下や健康状態などを考慮し、柔軟に働ける勤務制度を構築した。短日勤務制度・短時間勤務制度を設け、本人の希望に応じて働ける仕組みとなっている。また、自身の病気や家族の介護、出産、子育てなど、本人の申し出に応じて柔軟に勤務形態を変更することが可能で、人材の定着と離職防止につながっている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @職場コミュニケーションの推進  年に1回、社員全員から社内設備の充実や機材購入の提案を募っており、この取組みにより社員も意見や提案がしやすくなり、積極的に意見を出し合う雰囲気が醸成されている。高齢社員はコミュニケーションの活性化に一役買っており、日常業務や研修において、豊かな経験を活かしてサポート・フォロー役をになっている。また、組織活性化プロジェクトを立ち上げたり、佐賀県の多文化共生さが推進課とともにチームビルディング研修などに取り組んでおり、チーム間の連携やコミュニケーション能力の向上を図っている。 AOJT制度による効果的な技能継承の取組み  後継者育成のために若手社員からの希望を聞きとり、身につけたい技術について、現場で直接指導することで技能継承を行っている。例えば、型枠大工や左官、石積みなどの分野では、若手社員が希望する技術を高齢技術者のもと、習得する仕組みを整えている。 B資格取得支援制度  高齢社員も含めた全社員を対象に「資格取得支援制度」を導入しており、資格取得に必要な講習代や教材、交通費などの費用を会社が負担している。資格取得者が増加することでサービス品質や安全性の向上、工事受注数の向上が図られている。 Cペア就労で双方向の知識共有が実現  施工管理の分野では、高齢社員と若手社員がペアを組んで工事を担当することで、高齢社員の負担軽減を図るとともに、若手社員にとっては高齢社員から仕事を学ぶ機会となっている。一方、IT機器については、若手社員が高齢社員に操作手順などを教えており、双方向の知識共有が実現している。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善 ▼軽量機器の導入と機器のコードレス化  高齢社員のリクエストに応えた機材を選定することで効率的かつ安全に作業を行える環境が整備された。また、作業で使用する機器のコードレス化を進めており、コードがないことで機器を持って移動する際の転倒や転落のリスクが軽減され、安全性が向上しただけでなく、転倒災害の防止に配慮したコードの配線作業そのものも省略することができ、作業も効率化した。 ▼コミュニケーションツールの導入  情報共有が大きな課題であったため、パソコンやスマートフォンで利用可能な建設業向けコミュニケーションツールを導入した。これにより社内のスケジュール管理だけでなく、重機の予定管理、案件のデータ、写真・動画共有、進捗管理など、業務の共有や情報の一元化が可能になった。当初は戸惑う社員も多かったが、高齢社員も徐々に使い方に慣れてきて、生産性の向上につながっている。 A健康管理の徹底  腰痛予防や身体負荷の軽減を目的に、アシストスーツ※の導入を進めている。これにより、長時間同じ姿勢を維持する作業でも快適に行えるようになり、体力消耗が抑制され、作業効率が改善した。  また、熱中症予防対策として、当初は電動ファンつき作業服を支給したが、近年は各社員が自分に合った対策を取れるよう、熱中症対策費を6月〜9月まで毎月定額で支給している。  社員の健康状態を維持することが戦力の維持につながると考え、全国健康保険協会佐賀支部の「がばい健康企業宣言」にエントリーし、優良企業として認定されている。60歳以上の社員には骨粗しょう症検査を無料で実施しているほか、就業時間内での二次健康診断・特定保健指導の実施、血圧計の設置などに取り組んでいる。また、年に1回開催している「健康研修」には全社員が参加し、専門家による講習を受けるなど、多彩な健康管理の取組みにより、社員の健康意識が向上した。 B安全管理の推進  毎日、安全朝礼を実施しており、社長が訓示を行った後、社長自ら気になる社員に声をかけている。ラジオ体操を朝礼のスタートにすることで、朝礼の雰囲気が一新された。 (4)その他の取組み @農業法人の設立  「地元の耕作放棄地を有効活用できないか」という問題意識から、2023年に農業法人を設立。負担が決して軽くはない建設現場で業務を行う高齢社員にとって、「建設現場と農作業を行き来しながら仕事ができる」、「建設現場から徐々に農作業へ無理なく移行していける」という職場環境づくりを目ざしている。 A若手の採用  高校生の会社訪問や工事現場見学、インターンシップの受入れを積極的に実施している。実績はまだ出ていないが、高卒から建設系専門学校への進学のための奨学金制度を設けており、会社の姿勢を社内外に示している。 (5)高齢社員の声  堤(つつみ)直弘(なおひろ)さん(71歳)は58歳のときに入社。入社以降、工務課で建築の施工管理業務に従事している。  「会社という組織では多くの場合、自分の考えをいえないことも多いのですが、この会社は思っていることを言葉にして話すことができます。風通しがよい職場で、社員の資格取得にも積極的であるなど、社員に対する会社の想いを感じながら毎日働いています」  建設現場の作業員として働く田口(たぐち)恵司(けいじ)さん(62歳)は入社して10年。  「定年がなくなって、身体が動くかぎり仕事ができることになったのでよかったです。自分に合った方法で使用できる熱中症対策費は、おもにドリンクに使っています」  同じく建設現場で働く中村(なかむら)茂春(しげはる)さん(61歳)は「入社して10年になります。休みが取りやすいのでとても助かっています」と話す。 (6)今後の課題  今後、人事評価制度と賃金制度をさらに改善し、若手人材の確保・育成に向けた取組みに注力していくことを掲げるとともに、設立した農業法人の業務の拡大を目ざしていくという。農業法人事業は、将来的に高齢社員の活躍の場となることを見すえた取組みであり、超高齢社会における対応策の一環と位置づけられている。  高齢社員はもちろん、だれもが働きやすい職場環境を構築し、経営理念である「互恵」の精神の具現化を目ざして、同社の飽くなき挑戦は続く。 ※ アシストスーツ……身体に装着し、モーターや外骨格などで身体の動きをサポートし負担を軽減する器具 写真のキャプション 株式会社植松建設 現場作業で使う機器のコードレス化を推進 「がばい健康企業宣言」優良企業認定証 堤直弘さん(71歳) 田口恵司さん(62歳) 中村茂春さん(61歳) 【P12-15】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 高齢社員が技術指導を牽引し高度な技術の次世代継承を実現 株式会社 久郷一(くごういち)樹園(じゅえん)(富山県富山市) 企業プロフィール 株式会社 久郷一樹園 (富山県富山市) 創業 1875(明治8)年 業種 造園緑化工事・土木工事 社員数 25人(2024年4月1日現在) 60歳以上 9人 (内訳) 60〜64歳 4人(16.0%) 65〜69歳 0人(0.0%) 70歳以上 5人(20.0%) 定年・継続雇用制度 定年なし。最高年齢者は74歳 T 本事例のポイント  株式会社久郷一樹園は、1875(明治8)年創業で、2025年に創業150年を迎える。創業以前の江戸時代のころから富山城の庭園造成や剪定などを手がけており、長い歴史のなかで蓄積されてきた高い技術の継承に邁進している。現在は、県内の公共工事をはじめ、県内外の造園工事、環境緑化工事にも力を注ぎ、地域の環境整備に貢献している。  「優秀施工者国土交通大臣顕彰」を受賞した3人のベテラン社員が先頭に立って若手に技術指導を行い、社員が一丸となって技術の継承に取り組んでいる。ここ数年離職者が皆無である背景には、技術集団として互いを尊重し合う職場風土がある。そのなかで定年制を廃止し、高齢社員が活躍できる職場環境づくりを進めてきた。 POINT @定年制を廃止するとともに、高齢社員のモチベーションアップのために年齢にかかわらず昇給できる賃金体系を導入した。 A次の世代につながる技術の伝承はもちろん、業務に必要な感性の引き継ぎのために、高齢社員と若手社員の同行作業を推進している。「優秀施工者国土交通大臣顕彰」の受賞者3人が、若手への技術指導にあたりながら、高い技術力を次世代へ伝承している。 B安全に働けるように安全対策のポイントを定期ミーティングで確認し、毎年社外研修も実施。安全を最優先する風土を構築している。 C作業効率の高い機械を導入し、作業負担の軽減に努めている。従来の手作業を機械化することで、勤務シフトにも余裕が生まれ、身体的・精神的な負担の軽減につながった。 U 企業の沿革・事業内容  1875年に創業され、4代にわたって家業を連綿と引き継いできた。創業以前の江戸時代から、富山城の庭園の造成、剪定などを代々手がけるなど、富山城址にほど近い地に根を張って事業を発展させてきた。富山県の公共工事および県内外の民間造園工事に数多くかかわり、公園の緑化整備・管理をはじめ、和風庭園の造作など多岐にわたる造園工事を通じて、地域の環境整備に貢献している。また、同社は県内外の8企業・団体で構成する特定目的会社の代表企業をにない、富山県のほぼ中央に位置する常願寺川公園での、バーベキュー施設を核としたにぎわいづくりに積極的に参画するなど、地域の活性化のために全社をあげてさまざまな取組みを推進している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員の約4割が60歳以上で、74歳の最高齢社員が、現在も正社員としてフルタイム勤務で働いている。  一方で、若手の採用はままならず、外国人を多く採用することで人手不足を補っている(20・30代社員8人のうち、7人が外国人、うち1人は班長として活躍)。こうした新たな人材を確保したことで、技術伝承が必要となったものの、高度な技術を伝えるには長い年月が必要となる。そこで、技術伝承の中心的な役割をになう高齢社員に長く働き続けてもらうための環境づくりが喫緊の課題となっていた。そのため、年齢にとらわれず60歳以降も昇給可能な賃金制度を整備するなど、高齢社員が長く働ける仕組みを構築。また、技能伝承を通じて、高齢社員と若手・外国人社員の絆が深まることで、一体感の強い職場風土が醸成され、社員全体のモチベーション向上につながっている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制の廃止  2010(平成22)年に定年を70歳に引き上げているが、社員の高齢化が進展していることを受け、2019年に、社員がより長く働き続けることのできる環境の構築を目ざし、定年制を廃止。これにより、3人の「優秀施工者国土交通大臣顕彰」の受賞者が働き続けることが可能になり、先頭に立って若手に技術指導を行っている。若手社員の技術向上に加え、指導する高齢社員の活力もアップするという相乗効果も生まれた。 A賃金体系の改善  定年制を廃止する以前から月給額の計算は、日額(最終的に代表取締役が決定)×24日×精勤加算1.15(24日と1.15は社員一律)とし、シンプルで明確な賃金制度を導入している。昇給については、代表取締役から直接本人へフィードバックする。ベースとなる日額は、年齢にとらわれず業務の貢献度に応じて決定しているため、60歳以降も昇給が見込めるわかりやすい制度となっており、高齢社員はもとより、社員全体のモチベーションアップにつながっている。70歳以降は、本人の健康面への配慮などから減額するケースもあるが、職務内容によっては金額が維持されることもある。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @代々続く人材育成  これまで造園技術の修業の場として多くの若手を受け入れ、一時は約40人の社員が在籍していたこともある。先代の社長は、社員の独立をうながし、起業させることで、富山県の造園業者のすそ野を広げることに尽力してきた。また、現社長は富山職藝学院(大工と庭師の専門学校)の理事長を務めており、同社の人材育成マインドが連綿と継承されていることがわかる。学院の卒業生の1人は同社の現場で高齢社員とともに働き、技術を身につけている。  また、造園の仕事は植栽の剪定だけではなく、縁石の設置なども含めた土木工事など作業の幅が広いため、社員にさまざまな資格の取得をすすめており、資格取得にかかる費用は全額会社負担としている。 A高齢社員と若手社員の同行作業の推進  創業から長い歴史と伝統を持つ同社は、県内の県立高校の樹木の雪囲いなどの作業をすべてになっている。各高校には地域や学校のシンボルとなっている樹木がたくさんあり、雪囲いは大切な作業である。雪囲いでは樹木の高さに応じた高い支柱を必要とし、柱の先端から各枝へと放射状に縄を張るなど、樹木の状態に応じてさまざまな技法があり、造園業者のなかでも高い技術が必要とされているが、難度の高い作業に対応できる同社に地域の信頼は厚い。  その信頼を支えているのが、技術と誇りを体現する「優秀施工者国土交通大臣顕彰」の受賞者3人であり、この3人が外国人を含め若手社員とペアになって現場で仕事をし、技能の伝承を行っている。作業マニュアルも整備しているが、造園業においては、例えば1本の木を植えるだけでも、角度や見せ方によって景観が大きく変わるなど、芸術性などの感性を磨く必要もある。そうした書面化できない技能・技術の伝承のため、高齢社員と若手社員の同行作業を重視している。  また、高齢社員の体力的な負担を若手社員がカバーすることもでき、互いに補完し合う関係が生まれている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善  造園業の仕事そのものが簡素化や合理化ができない繊細な作業が多いなか、芝刈りについては厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」※を活用して自動芝刈機を導入。これにより作業効率が飛躍的に向上した。従来、刈り取った芝草を手作業で袋詰めして、人力でトラックに積み上げていたが、刈り取った芝は集草機に送られ、トラックの荷台への排出も軽いハンドル操作で可能となっており、長時間作業による疲労が軽減された。現場の勤務シフトにも余裕が生まれ、身体的・精神的な負担の軽減にもつながっている。また、斜面の芝刈りもラジコンで簡単に操作でき、肉体的負担が劇的に改善された。 A安全対策  平均勤続年数が24年と熟練作業員が多く在籍している同社では、長年の経験があるがゆえに生じる気のゆるみが引き起こす労働災害を防止するため、安全対策を最重要課題ととらえている。高齢社員に安全に働いてもらうために、現場での安全対策のポイントをミーティングで確認しているほか、定期的に社外研修を実施している。  また、転倒防止についても細やかな対策をとっている。本社の2階へ入室するには屋外の階段を利用するが、建物に挟まれているために日中でも暗いことから人感ライトの電灯を設置したほか、社外から休憩所への入口の段差をなくすスロープを設置するなどの対策を行っている。そのほか、社内の階段の数カ所に転倒の注意喚起を呼びかけるポスターを掲示している。さらに階段には健康促進のため消費カロリーも掲示するなど工夫を凝らしている。  高木剪定作業時の墜落防止用器具の着用についても、着用者自身の確認と同行者による不備がないかのダブルチェックを実施するなど、全社をあげて安全対策に力を注ぎ、安全意識の向上に取り組んでいる。 B健康管理  だれもが長く活き活きと働き続けられるために、社員の健康管理を重視している。定期健康診断以外に、健康状態に応じて各人のオプション検診を実施しており、50歳以上の男性は前立腺がん検診、女性は婦人科検診の受診を行っているが、費用は全額会社負担としている。  日々の社員の健康状態の把握を適切に行うことは家族的な社風を誇る同社では決して特別なことではなく、安心して働ける職場環境を維持してきた。現在、70代の社員が5人在籍しているが、いずれもフルタイム勤務で健康状態も良好であり、短時間勤務などの特段の配慮も必要としていない。また、全国健康保険協会富山支部の「とやま健康企業宣言」に参加し、労働安全衛生を含めた健康経営○R(★)に取り組んでいる。 C福利厚生  社員の親睦を深めるために、年1回、2泊3日の研修会を実施している。社員間のコミュニケーションの一環としつつ、緑化フェアなどの視察も兼ねており、自由参加としているが、毎年ほぼ全員が参加している。 (4)その他の取組み  創業以来、一貫して造園業を通した優れた景観づくりに取り組んでいる。豊かな環境を維持していくことへの思いは強く、現社長は日本ビオトープ協会の会長を務め、生物が共存・共生できる生態系の維持活動に力を注いでおり、SDGsの達成目標を掲げ、二酸化炭素排出力の削減や、緑豊かな生活環境の創造に取り組んでいる。 (5)高齢社員の声  同社で企画・設計室長を務める高橋(たかはし)宣和(のぶかず)さん(74歳)は、企画や図面作成、積算見積りのほか、若手技術者の指導などを担当している。「私たちのような高齢者と若手社員が、和気あいあいとつながり、一緒に仕事ができる雰囲気があることが、この会社の魅力です」と話す。 (6)今後の取組み  企業理念に掲げる「環境緑化の情報発信基地として来るべき造園新時代に挑戦し続ける」の精神に基づき、国連が提唱するSDGsを事業活動につなげ、持続可能な社会の実現に取り組んでいく。そのためにも、全国社会保険労務士会連合会の「社労士診断認証制度」を利用して、「職場環境改善宣言企業」、「経営労務診断実施企業」、「経営労務診断適合企業」の認定を受け、残していきたい企業、大切にしていきたい企業であることを積極的にPRしていくという。  高齢社員が働きやすい環境づくりをいっそう進めるなかで、高齢社員と若手社員が切磋琢磨することで高度な技能・技術を次世代に継承し、将来的に世代交代を図れるよう、同社は次の高みに向かって新しい一歩をふみ出した。 ※ 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)……勤務間インターバル制度(勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図るもの)の導入に取り組む中小企業を対象とした助成金 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 写真のキャプション 株式会社久郷一樹園 高齢社員と若手社員の同行作業の様子 入口に段差をなくすスロープを設置 高橋宣和さん(74歳) 【P16-19】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 一人ひとりの能力や個性を尊重し働きがいのある会社づくりを推進 株式会社 ドリーム(静岡県浜松市) 企業プロフィール 株式会社 ドリーム (静岡県浜松市) 創業 1998(平成10)年 業種 その他の事業サービス業(警備保障業、福祉事業) 社員数 74人(2024年4月1日現在) 60歳以上 47人 (内訳) 60〜64歳 9人(12.2%) 65〜69歳 18人(24.3%) 70歳以上 20人(27.0%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。希望者全員75歳まで継続雇用、その後運用により希望者全員を年齢上限なく勤務延長。最高年齢者は93歳 T 本事例のポイント  株式会社ドリームは1998(平成10)年に静岡県浜松市で警備会社として創業した。その後、2015年4月に緊急一時保護施設「ドリームハウス相生(あいおい)」を立ち上げ、ホームレスに宿泊施設と仕事を提供し、自立を支援するなど、福祉事業にも業容を拡大。現在の事業内容は多彩で、警備業を中心に、防災・防犯用品の販売を手がける防災・防犯事業、歩行訓練特化型デイサービスなどの運営にたずさわる社会福祉事業など、幅広く展開しており、さまざまな分野で地域に貢献している。社名のごとく夢を後押しすることを会社の使命ととらえ、だれもが生涯にわたって活躍できる仕組みづくりに邁進している。 POINT @「健康であれば生涯現役で働いてほしい」という会社の方針のもと、希望者全員の年齢上限のない勤務延長を実現した。 A高齢社員の生活環境や健康状況、個々の要望などに合わせて、勤務時間の弾力的な変更が可能である。 B 雇用形態や年齢にかかわらず、努力が確実に評価され、昇給につながる「キャリアパス制度」を導入した。 C社員の夢を叶えるための社内コンサルタントを配置。 D徹底した教育訓練と資格取得支援など、向上心を持って業務に取り組むためのサポート体制を構築している。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1998年に警備会社としてスタートした。以来業容を拡大して現在は、@警備業(安全提供サービス事業、防犯・防災事業)、A介護事業(福祉サービス業)、第二種社会福祉事業(生活困窮者自立支援)、Bモノづくり事業(100%子会社ワイヤーハーネス製造工場)の3事業を中核としている。何歳になっても目標を持って成長し続けることができる「働きがいのある」会社を目ざすことを企業目標に掲げ、「夢をマネジメントする会社」を自らの使命としてとらえ、多彩な取組みを展開している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員40人のうち60〜64歳が12.2%、65〜69歳が24.3%、70歳以上が27.0%で、60歳以上の社員が6割強を占めている。高齢社員が働きやすい職場であるため離職が少なく、その結果、社員の高齢化が進んでいる側面もある。警備業にかぎると、平均年齢は60代後半で、93歳の最高年齢者も活き活きと働いており、生涯現役を体現している。  高齢社員の配置に関しては、遠距離や夜間業務を避けるなど、管制担当者が希望を確認し、極力、負担がかからないよう努めている。「働くことで健康状態がよくなっている」と話す高齢社員も多い。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年・継続雇用制度  以前は定年60歳、希望者全員65歳までの継続雇用制度であったが、社員の高齢化が想定されていたことに加え、65歳以降も雇用契約を結び多くの人材が働いていたことから、2022(令和4)年に制度を改定し、定年70歳、希望者全員75歳まで、その後も運用により希望者全員年齢上限なく働ける継続雇用制度を導入した。 A評価制度の整備  2023年より年功序列制度を廃止し、評価制度を刷新した。「コア・バリュー体現支援シート」を使い、年4回の自己評価を実施したうえで、上司による評価とのすり合わせを行い、社長に提出。後述する「キャリアパス制度」と連動して、給与を決定する。自分の能力や成果を客観的にみられるため、自己肯定感が上がると社員から好評である。 Bキャリアパス制度  2023年より全社員を対象としたキャリアパス制度を開始。上司から高い評価を得るとステップアップし、昇給につながる。同社はリーダー育成に力を注いでおり、ステージが上がると役職が上がっていく。努力と成果が確実に評価され、給与にも反映されるため、モチベーションが上がり、一人ひとりのスキルアップにも直結している。 C賃金・各種手当  賃金制度は基準内賃金(基本給、出勤報告手当、残業手当、休日出勤手当)と基準外賃金(資格手当、能力手当、ヒヤリハット提出手当、交通費等)から構成される仕組みを、キャリア制度と連動する形で構築。雇用形態や年齢による区別はないことから、キャリアパス制度による評価が給与に反映される。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @社員の夢の実現を支援する社内コンサルタントを配置  「従業員の夢を叶えるための手伝いをしたい」という思いから、2022年にスタートした制度。個々の社員が描いた夢の実現を会社が支援するというもので、民間団体が認定する社内コンサルタントを配置。年齢や在籍年数、役職などは問わず、希望者は月に1度の個別面談とグループワークを実施し、本人の思いや希望に耳を傾け、夢の実現を会社全体でバックアップしている。 A新人教育の充実  警備業法で定める20時間の法定研修時間に加え、その内容を深掘りして10時間をプラスした計30時間の新任教育を実施している。また、入社3カ月後を目途に、経営方針や社内制度の理解を深めてもらうため、地元の寺にて2泊3日の研修を実施している。法定時間を上回る教育を実施する背景には、他社を定年退職して初めて警備業界に入る人たちの不安を払拭するというねらいがある。 B資格取得支援と資格手当の支給  同社は資格取得にかかる費用として、受講料や受験会場までの交通費、日当を全面的にバックアップしており、必要に応じてマンツーマン指導なども行う。資格取得後は資格手当も支給しモチベーションアップを図っている。 C師弟制度  警備業においては、マニュアル化しづらいような判断や柔軟性が現場で求められることがある。そこで高齢社員をはじめとするベテラン社員が長年つちかった経験や知識を伝承するため、「マスター」と呼ばれる上長と、直下の部下を「パダワン」とする師弟制度を導入し、技能の伝承を行う仕組みを構築している。「パダワン」は同社の「コア・バリュー」を意識して業務を行い、「マスター」に日々の報告を行う。 D配置転換や担当業務の変更  高齢社員の健康に配慮して、配置転換や担当業務の変更を行うことがあることを就業規則に定め、警備員が高齢になり足腰が弱くなった際には、座ったままでもできる施設警備の仕事を増やすなどの配置転換を行っている。また、警備業務をになうことがむずかしくなった社員には、できる仕事を提案。当社が運営する介護事業所の清掃やグループ会社のワイヤーハーネス工場で働いてもらうなど、就業が途切れないようサポートを行っている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @健康管理・メンタルヘルス  高齢者が多い職場であるため、産業医と連携するとともに、定期的に開催する勉強会のなかで体操を兼ねた規律動作の研修を実施しているほか、インフルエンザの予防接種に関しては費用の補助を行うなど配慮している。メンタル不調者は少ないが、日ごろから個人的な雑談をはじめ、キャリア面談などを通して、社員一人ひとりの声に耳を傾け、配置場所を調整するなど、円滑な人間関係のもと、臨機応変に対応している。 A安全対策の推進  週1回、幹部が現場を巡回し、声がけや聞き取りを行い、その都度必要な対策につなげている。熱中症には特に気をつけており、ファンつき作業着の貸与、氷水の配付、長袖シャツの着用を徹底している。夏場は氷水もすぐに溶けてしまうため、ポータブル冷蔵庫も設置している。 BIT化への対応  アルコールチェッカー使用報告をスマートフォンにて実施している。ペーパーレス化および情報を本部に一元化するため、スマートフォンの使用教育を必要に応じて行い、そのためのマニュアルをつくり、報告のために会社独自のアプリを作成した。スマートフォンは、アルコールチェッカーの使用報告以外にも業務連携で使用している。 Cアニバーサリー休暇  「警備業は低賃金」などのイメージによる結婚への懸念を払拭し、「結婚を後押ししてお祝いしたい」、「家族との有意義な時間を過ごしてほしい」という思いから、アニバーサリー休暇を新設。誕生日や結婚記念日を自己申告することで、特別休暇を取得できるもので、高齢者はもちろん、若手採用のきっかけの一つにすることもねらいとしている。また、休暇を取得する人のフォローや穴埋めを円滑にすべく、業務の標準化やスキルの向上効果もあり、「お互いさまの関係」を築く相乗効果も生まれている。 (4)その他の取組み @避難所としての役目  社屋の2階が「災害時地域避難所」として認定されている。非常用発電機および非常用ガス発電機の2種類を備えており、災害時は地域住民の受入れが可能なように備蓄品も保管している。 A防災用品の設計・販売  「警備の延長に防災あり」の考えのもと、2010年に防災事業部を立ち上げている。その1年後に東日本大震災が発生し、津波から逃れた人の話を聞き、非常用持ち出し袋「キズナックス」を設計し、これまでに1万6000個を販売している。 B社会貢献  会社外の草取りや地域清掃を実施しているほか、小学校でのあいさつ運動や防犯教室などの独自の取組みを行うなど、地域社会貢献に積極的に取り組んでいる。 (5)高齢社員の声  最高齢社員の永田(ながた)逓児(ていじ)さんは、2024年9月に93歳を迎えた。2023年には、交通誘導警備2級を取得している。きっかけは、当該資格を取得していないとできない業務があったためである。学科試験では満点を取るなど、周囲の人たちの挑戦意欲に大きな影響を与えている。資格取得時の年齢が注目され、取材のほか、同業他社からの問合せも多い。永田さんは「資格取得者は証明書と腕章を身につけます。同じ業界の人は見てわかるので、声をかけてくれるようになりました。社長や上司からの言葉は力になります。みなさんに感謝したいです」と語った。 (6)今後の課題  高齢者雇用はもちろん、地域・社会貢献など、多彩な取組みを展開する同社では、今後の目標として、若者の自立支援学校の設立を掲げている。不登校やひきこもり、発達障害、スマートフォン依存などの若者を支援するためのアカデミー「耕せにっぽん!!浜松校」の設立に向け、現在準備を進めている。生きづらさを抱える若者たちに、さまざまな体験をしてもらうのがねらいで、同社グループでは、警備業、介護事業、製造業など、さまざまな職業を体験できることから、自分にできることを見つけ、人の役に立つ喜びや、人から感謝される喜びを知ってほしいと願いながら、若者が社会とつながるための橋渡し役となることを標榜している。安心・安全を提供するエッセンシャルワーカーグループとして、未来の社会を支えていく子どもたちや若者に、年齢に関係なく活躍している高齢社員の姿を示し、すべての人が夢に向かって進めるような世界の創造に努めていく。 写真のキャプション 株式会社ドリーム 夢を叶えた社員を紹介する掲示物 社員教育のなかで実施している救命講習会の様子 永田逓児さん(93歳) 【P20-23】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 社会保障の充実や柔軟な勤務制度を整備 働く意欲を支援する職場づくりを実現 株式会社 ヤオコービジネスサービス(埼玉県川越(かわごえ)市) 企業プロフィール 株式会社 ヤオコービジネスサービス (埼玉県川越市) 創業 2010(平成22)年 業種 警備業、保険代理店、店舗施設管理ほか 社員数 66人(2024年4月1日現在) 60歳以上 51人 (内訳) 60〜64歳 3人(4.5%) 65〜69歳 27人(40.9%) 70歳以上 21人(31.8%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。一定条件のもと年齢上限なく継続雇用。最高年齢者は75歳 T 本事例のポイント  株式会社ヤオコービジネスサービスは、親会社の株式会社ヤオコーが100%出資して、2010(平成22)年に創業した。以来、ヤオコーのグループ会社としてスーパーマーケット店舗における店内保安警備や店舗駐車場の警備などを担当している。  2022(令和4)年に継続雇用の年齢上限を撤廃し、高齢社員が活躍できる環境づくりを推進してきた。社員の8割近くを60歳以上が占めることから、社会保障の充実や勤務体制の整備に注力し、経験豊富な高齢社員が長く働き続けられる会社を目ざしている。  また、心身健康で働く意欲を持ち続ける高齢社員が社会に貢献できるよう、全社をあげて生涯現役で働ける職場づくりに取り組んでいる。 POINT @継続雇用の年齢上限を撤廃したことにより、生涯現役で働ける職場を実現している。 A有期雇用契約で採用を行うものの、2年目から無期雇用転換とすることにより、高齢社員の安心感の醸成と複数年かけたキャリア形成を支援している。 B警備業法で定める法定研修時間を超える研修を行うことにより、外部労働市場から未経験者の積極的な採用と定着を図っている。 C年齢にかかわらず業務評価による賃金決定を実施することで、社員のモチベーションアップを目ざしている。 D働く意欲を維持するために資格取得を費用と時間の両面から積極的に支援しており、資格取得者には資格手当として賃金に反映している。 U 企業の沿革・事業内容  株式会社ヤオコービジネスサービスは、埼玉県を中心に関東圏でスーパーマーケットを展開する株式会社ヤオコーが100%出資し、2010年に創業した。以来、ヤオコーが食生活提案型スーパーマーケットとして、より効果・効率的に業務に注力できるよう、店舗関連業務を中心に、後方支援をになう企業として成長を遂げている。  親会社である株式会社ヤオコーが展開するスーパーマーケットの店内保安警備や店舗駐車場警備を通して、お客さまの安全・安心を確保し、快適な空間の提供をになうことで食の拠点として地域に貢献してきた。現在は店舗の施設管理や社員向けの自動車保険・医療保険など、各種保険の代理店業務も行っている。60歳以上が社員の8割近くを占める会社として、高齢社員が働きやすい職場環境の構築に社員一丸となって取り組んでいる。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  従来より70歳定年制を導入していたが、70歳以降はアルバイトとなり、75歳まで1年ごとの有期雇用契約(雇用上限75歳)で継続雇用していた。しかし、採用難による人材不足が課題となっていたことから、2022年に定年70歳以降の継続雇用の年齢上限を撤廃。70歳以降はパートナー社員となり、心身が健康で優秀な高齢社員に引き続き働いてもらい、その経験やノウハウを活かして、警備業務などの内製化による店舗関連業務を中心とした後方部分の強化、維持を行うことを同社の課題にすえている。  また、年齢にかかわらず業務評価により賃金を決定することで生涯現役で働ける職場を実現している。継続雇用の年齢上限の撤廃は、社会に貢献できる実感や自覚がやりがいにつながったと社員から好評を得ているほか、外部労働市場からの採用へも好影響をもたらしており、過去3年間で70歳未満の高齢者を25人採用している。ヤオコーグループとして、警備部門の内製化を進めているが、同社における高齢者雇用に関するノウハウはここでも活かされていく見込みだ。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年年齢の見直し  2021年までは定年70歳、その後、アルバイトとして1年ごとに契約更新を行う75歳までの継続雇用制度を導入していた。しかし、昨今の人手不足のため、心身が健康で優秀な高齢社員に引き続き経験やノウハウを活かしてもらえるよう、2022年に継続雇用の年齢上限を撤廃し、生涯現役で働くことのできる職場環境を実現。同社では、採用後1年は有期雇用契約であるが、2年目以降は無期雇用に転換されることから、長期的なキャリア形成が可能となり、高齢社員の安心感につながっている。 A業務評価を昇給に反映  社員のモチベーションを高めるため、本人との話合いにより目標設定を行い、勤務体制を整備した。毎年4月に、指導員と社員の話合いで目標設定を行う。賃金は時給であるが、業務評価により毎年昇給額、ボーナス支給額を決定している。店舗の繁忙曜日は時給のアップなども行っている。 B柔軟な勤務体制  1日の所定労働時間は8時間であるが、週2〜5日まで、自分のライフプランに合った働き方を選択することができる。また、1カ月ごとのシフト制で、前月までに勤務日の希望を申請することにより、自分の予定に合わせた働き方を可能としている。一人ひとりの生活に合わせた働き方が選択できるようになり、ワーク・ライフ・バランスの調和が図られ、社員の満足度は高い。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @教育訓練の充実  警備員として勤務する社員は、採用後、法定20時間の新任教育を行う以外に、さらに2日間かけて、店舗で警備をになう心構えなどの社内教育および店舗でのOJTを行い、ハイクオリティな業務遂行を目ざしている。また、単独で業務にあたる警備員を定期的に指導員が巡回し、さらなる技能と技術の向上のための個別指導を行い、安心して働ける職場の実現および未経験者の定着率向上に努めている。 Aキャリア形成支援  意欲的な社員に対しては、年齢にかかわらず就業時間内で交通誘導2級の資格取得を費用面や技能面(2日間の技能指導)でサポートしている。資格取得者には資格手当を支給する。資格取得者が増えることで、サービスの安全向上につながっている。 B業務改善のためのボトムアップ型職場風土の形成と社内研修の実施  お客さまからの意見のほか、店舗を巡回する指導員や、社員自らの気づきなどにより業務における課題を抽出し、3カ月ごとに全社員を2回に分けて招集し、課題解決のための社内研修を実施している。研修では、抽出された課題について、パワーポイントツールを活用して話し合い、快適な買い物空間の提供ができるよう警備技術の向上を図っている。これは、日々各店舗で単独で警備する社員の、コミュニケーションの場にもなっている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @健康管理  ヤオコーグループは健康経営に取り組んでおり、以下の取組みを実施している。 ・定期健康診断において法定項目以外も受診対象とし、40歳以上の社会保険加入者は2年に一度人間ドックを活用でき、会社と健康保険組合から一部補助を実施 ・健康保険組合とのコラボヘルス※推進 A安全衛生  同社では屋外作業が中心であるため、夏はファンつき作業着や経口補水液の支給をはじめ、熱中症対策研修を行っているほか、日よけの設置や店舗の冷房のある休憩室の利用を可能とするなど無理なく働けるよう配慮している。冬場においては、使い捨てカイロの支給や店舗休憩室の利用のほか、今後に向けてヒートベストの導入を検討中である。  また、店舗で体調不安が起こった際は、店舗責任者に相談すれば、同社に連絡が入る連携体制を整備している。また、警備などの現場で発生したヒヤリ・ハットは、日報などにより積極的に報告・情報共有している。 B福利厚生  年1回、全店舗休業日を利用し、ヤオコーグループでの運動会を開催。店舗の地区ごとに競い合い、社員間の交流を図っている。 (4)その他の取組み @警備員指導教育責任者の配備  警備員指導教育責任者3人がOJTや業務評価を行っている。それぞれが前職の経験や知識を活用し、警備上の技能・技術を若手の責任者に伝承している。 A社会貢献活動  経済的に困難な家庭やひとり親家庭の子どもたちへ物資などを提供する子ども支援、および生活困窮者に無料で食料を提供するフードパントリー活動に取り組んでいる。 (5)高齢社員の声  入社から約4年の道さ祖土(いど)昭彦(あきひこ)さん(64歳)は、これまで複数の店舗での勤務を経験している。「それぞれ店舗によって違いがあり、来店時にお客さまと接するなかで、顔見知りになることもあり、毎日がおもしろく充実しています。70歳を超えていても社会保険に加入することができ、疾病手当金など生活保障があることや、継続雇用も年齢上限がないことはとてもありがたく、身体が続くかぎり仕事を続けたいと思っています。現在は週5日勤務ですが、身体がきつくなってきたら週4日勤務などへ変更し、余暇を楽しみたいと考えています」と話す。  勤務歴約7年の渡邉(わたなべ)博(ひろし)さん(74歳)は、採用当初は未経験であったことや年齢を考慮し、週2日勤務のアルバイトとして店舗駐車場の警備に就いた。2022年の継続雇用制度の改定にともない、本人の意欲をふまえて週4日勤務のパートナー社員となった。「毎日意欲をもってお客さまとコミュニケーションを図り、元気に働かせてもらっています」と話した。 (6)今後の課題  同社では、高齢社員を中心とする社員がより働きやすい職場環境の実現に向け、ワークシェアリングの活用や、介護離職防止に向けた両立支援の取組み、転倒をはじめとする労働災害防止など、今後も各種取組みに注力していく方針を掲げている。 ※ コラボヘルス……保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、加入者の予防・健康づくりを効率的・効果的に実行すること 写真のキャプション 株式会社ヤオコービジネスサービスが入る株式会社ヤオコー本社ビル 社内研修の様子 社内実務研修の様子 暑さ対策のための日よけの設置(渡邉博さん〈74歳〉) 道祖土昭彦さん(64歳) 【P24-27】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 若手社員とのペア就労で高齢社員が活躍できる職場環境を構築 カナタスタイル 合同会社(富山県富山市) 企業プロフィール カナタスタイル 合同会社 (富山県富山市) 創業 2018(平成30)年 業種 介護事業 社員数 35人(2024年4月1日現在) 60歳以上 11人 (内訳) 60〜64歳 2人(5.7%) 65〜69歳 6人(17.1%) 70歳以上 3人(8.6%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。一定条件のもと年齢上限なく継続雇用。最高年齢者は74歳 T 本事例のポイント  カナタスタイル合同会社は、2018(平成30)年に設立された。その後、施設建設などの準備期間を経て、2020(令和2)年に高齢者向け複合施設「シニアタウン龍宮」を開業した。介護サービスつき高齢者向け住宅としての機能のほか、通所介護サービス「デイサービス百(もも)たろう」、「フィットデイ筋(きん)たろう」、訪問介護サービス「ホームヘルプサービス乙姫」が併設されている。また、「ラウンジ華(か)ぐや」という名の地域交流スペースも開設され、地域に貢献できる介護サービスを目ざしている。  「シニアタウン龍宮」は桜並木が美しいいたち川沿いにあり、「利用者はゆったりした環境で自分らしい生活を過ごすことができる」と、地域の評価も高い。高齢社員を積極的に採用しており、現場では、経験豊富な70代の社員が活き活きと働き、若手社員と協力し合って開業6年目の若い施設を支えている。 POINT @経験豊富な高齢社員を採用した際、そのメリットが大きかったことから、2021年に定年を65歳から70歳に引き上げた。70歳以降は本人が希望する働き方での継続雇用を可能とした。 A社員間の処遇の納得感を高めるために、社会保険労務士のアドバイスを受けながら役割等級制度を軸とした人事管理制度を導入した。 B高齢社員と若手社員がペアで就労することで、高齢社員のモチベーション向上と若手社員の人材育成という相乗効果が生まれている。 C音声入力で介護記録が可能となる介護ソフトを導入したことで、作業負担の軽減につながっている。文字入力が苦手だった高齢社員からも歓迎され、現在は全員がタブレットを気軽に活用できるようになった。 U 企業の沿革・事業内容  同社は2018年10月に設立された。2020年4月に地上10階建ての高齢者向け複合施設「シニアタウン龍宮」を開業し、介護サービスつき高齢者住宅とあわせて、デイサービスや訪問介護事業を展開している。これまでの車中心の郊外型の生活から、快適で利便性の高い「まちなか居住」への動きが広がるなか、中心市街地でもゆったり散策などが楽しめる川沿いに位置し、社員一同「明るく・自分らしく・夢をもって」の理念に基づき、入居者や利用者が安心して自分らしい生活を送れるようサービスを展開している。設立から6年、組織運営を続けていくなかで、社員の納得感をどのように高めていくか、それをどのような仕組みに取り入れていくか、顧問の社会保険労務士がつねに経営者に寄り添い、話し合いながらよりよい職場環境づくりを目ざしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  2020年の「シニアタウン龍宮」開業を機に、徐々に入居者や利用者が増えてきたころから、社員が長く働き続けられる環境の構築への取組みを開始した。制度面の改善などを社会保険労務士に相談し、定年延長や社員の処遇の納得感を高めるために給与規程や人事管理規程を整備、役割等級制度と人事評価制度を導入した。  また、制度をしっかりと機能させるためには、「会社の理念を社員に浸透させることも必要」という施設入居者からのアドバイスをヒントに、「明るく・自分らしく・夢をもって」という会社の理念をつくりあげた。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年年齢の見直し  当初は65歳定年としており、人材確保のために50〜60代の人材を多く採用していた。そこで、施設利用者と世代が近く意思の疎通が図りやすい、人生経験が豊富でトラブル時の対応に安心感があるなど、高齢社員が戦力として活躍してくれたことから、2021年に70歳に定年を延長。社員から「65歳でやめなくてはいけない」という意識がなくなり気持ちに余裕が出てきただけでなく、他社を退職した新たな高齢人材の採用にもつながっている。現在、20〜30代の社員は13人(うち5人は外国人)で、各フロアでは高齢社員と若手社員が一緒に就業しており、利用者とのコミュニケーションなど、若手社員の経験が不足している部分を高齢社員が補い、その様子を見せることで人材育成にもつながっている。 A役割等級制度の整備  賃金制度については、「どのような仕事の責任をになうか」という点を処遇の基準とする役割等級制度を導入している。一般社員の1等級から管理職の4等級まで4段階で区分しており、現在は施設長のみ5等級に位置づけている。社員は、「役割貢献評価シート」に、業務スキルと組織行動の各項目についてSABCDの5段階で自己評価を行い、それを上司と管理者の2段階で評価を行う。評価は半期ごとに行い、半期の評価はそれぞれ夏季と冬季の賞与に反映される。それらを総合した年間の総合評価では、5段階の評価に応じて基本給の号俸改定と昇格を行う。上半期と下半期の評価で5段階評価の評定が異なる場合は、評価者の上司が被評価者の意見を聴取して総合評価を行うこととしている。 B柔軟な勤務形態  定年年齢を引き上げた際、高齢社員の体力の低下および健康状態を考慮し、勤務時間の希望に対応するため55歳以上の社員を対象に短時間勤務制度を内規として制定した。具体的な時間の基準を決めているものではなく、本人の希望と状態に応じて毎月のシフトに反映させる形をとっており、平均するとおおむねフルタイムの7割の労働時間となっている。  また、仕事と介護の両立で悩む社員をサポートするため、介護短時間勤務の規程を整備。そのほか、それぞれの作業負担を考慮して、肉体的負荷の高い床掃除や入浴介助などから、食事の配膳などに職務を切り替えることもあり、年齢にかかわらず社員から歓迎されている。職務が切り替わっても賃金が変わることはなく、異動後の人事評価において査定している。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @高齢社員と若手社員とのペア就労  高齢社員と若手社員がペア就労することにより、入居者との接し方、挨拶、言葉づかい、掃除の仕方などを高齢社員がさりげなくカバーし、手本を見せることで、若手の育成に大きな効果をもたらしている。  また、入居者が立ち上がる際などに、どのように補助してほしいのか、歩くスピードはどのくらいにすればよいのかを高齢者目線で指導することができるほか、食事を拒否されるケースなどでは、高齢社員が一緒にサポートし、食事が進む言葉がけのコツやコミュニケーションが実践的なお手本となっている。若手だけではなく、外国人社員とのペア就労も実践的な教育の場となっており、双方の働く意欲の向上につながっている。 A高齢社員の教育訓練計画  教育訓練の面においても給与面と同様に、高齢社員だから行わない、もしくは別メニューということは一切なく、担当する仕事に応じ、若手・中堅社員と同じように受講する機会がある。各人のスキルの習得状況などから、年度初めに教育訓練計画を立てており、高齢社員のうち、介護福祉士、正・准看護師などの有資格者は実務的な内容を、経験の少ない高齢社員は初任者向け研修を受講することができる。また、よりよいサービスを提供するため、社員の接遇研修に力を入れており、社内セミナーのほか、コンサルタントによる個別指導を全社員が受けることができる。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業負担の軽減 ▼介護ソフトの音声入力  これまで手書きで行っていた介護記録を、タブレットを用いた音声入力によって行えるよう、介護ソフトを導入した。元々、社内の情報共有については、利用者の多いSNSと連動しているサービスを利用しており、使用方法に親和性があると考え、介護記録を音声入力による作成方式にあらためた。最初は戸惑う社員もいたが、使用方法が複雑ではないため、いまでは利用が浸透している。 ▼移乗サポートロボットの導入  高齢社員は、一人で立ち上がることがむずかしい入居者の、ベッドから車いすへの移乗や、着替えなどの際の立位保持を人力で行う介護技術をマスターしているものの、体力を使う仕事であり、くり返すことで腰痛などを発症するおそれがある。そこで、2023年10月に移乗サポートロボットを導入し、研修を実施して高齢社員に操作方法をマスターしてもらい、実務で使用。介護業務の身体的負担の減少につなげている。高齢社員からは、「力を使うことが少なくなったので、楽になった」と好評であり、腰痛などの労働災害防止につながっている。 A健康管理  高齢社員の生活習慣病予防のため、就業規則を2023年に改定し、55歳以上の社員について「胃がん検診」、「肺がん検診」、「大腸がん検診」のうち一つ以上、費用は会社負担で受けられるようにしている。 (4)その他の取組み @希望休制度  勤務シフトの作成にあたっては、月ごとの業務の繁閑に合わせ業務効率を優先して組むのが基本であるが、社員の働きやすさを優先し、希望休制度を取り入れている。各社員が翌月に休日として休みたい日を所定のカレンダーに記入し、副施設長がこれをもとに勤務シフトを作成する。対象は全社員であるが、高齢社員からも「余暇の計画が立てやすい」、「通院などの時間が確保できる」と好評である。あらかじめ休日希望日をチーム内で共有することで、助け合い意識の醸成につながっている。 A高齢社員のアイデアの活用  定期的に行う全体ミーティングにおいて、高齢社員から意見やアイデアを募っている。「デイサービス利用者の座席表やラベル、レクリエーションで使うホワイトボードの文字が小さく、利用者に見えにくいはずなので、もっと大きくすべきである」との意見が出たことから、全員が文字の大きさに気を遣うようになった。 (5)高齢社員の声  松井(まつい)優美子(ゆみこ)さん(73歳)は入社して4年目を迎えた。週5日、食堂の配膳を担当している。「とてもよい職場だと思っています。いつまでも働けるかぎりは働き続けたいです」と話す。  塚田(つかだ)知英子(ちえこ)さん(74歳)は最高齢ながら、いまもフルタイムで勤務している。73歳で介護福祉士の資格を取得した努力の人で、「利用者のみなさんの気持ちに寄り添って仕事ができる素敵な職場です」と話す。  濱谷(はまたに)勢子(せいこ)さん(73歳)は2023年に入社。週3日の勤務で、デイサービスで看護師を務める。「この会社では、自分自身の年齢を意識することがほとんどありません。会社の方針がみんなに浸透していて、同じ方向を見て一緒に仕事ができることがうれしいです」と力強く語る。 (6)今後の課題  高齢者を雇用することに多くのメリットを感じている同社。年齢にかかわらず、全世代を通じて同じ基準で、公平な処遇を実現することが、高齢社員のモチベーションの点から重要だと考えている。一方、年齢による身体能力などの低下は避けられない面があり、高齢社員の持つ能力を最大限に発揮してもらうためにも、安全、健康、疲労などへの配慮は欠かせない。高齢社員をさらに戦力化していくため、今後も、高齢者世代の積極的な採用や公平・公正な処遇制度の運用・ブラッシュアップをしていくという。 写真のキャプション カナタスタイル合同会社が運営する「シニアタウン龍宮」 負担を軽減する移乗サポートロボットを導入 松井優美子さん(73歳) 塚田知英子さん(74歳) 濱谷勢子さん(73歳) 【P28-31】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 高齢社員が長く安心して働ける職場環境を整備 長くつちかった高度な技術・技能を若手社員へ継承 金城(きんじょう)電気(でんき)工事(こうじ) 株式会社(沖縄県那覇(なは)市) 企業プロフィール 金城電気工事 株式会社 (沖縄県那覇市) 創業 1953(昭和28)年 業種 電気・設備工事業 社員数 38人(2024年4月1日現在) 60歳以上 9人(23.7%) (内訳) 60〜64歳 4人(10.5%) 65〜69歳 3人(7.9%) 70歳以上 2人(5.3%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員70歳まで継続雇用、70歳以降は運用により一定条件のもと、年齢上限なく継続雇用。最高年齢者は74歳 T 本事例のポイント  金城電気工事株式会社は1953(昭和28)年4月に沖縄県那覇(なは)市において創業し、2023(令和5)年に創業70周年を迎えた。経営理念の一つ「働きがいのある職場をつくること」に基づき、雇用の安定と技術継承の両立を目ざし、定年延長や職場環境改善に取り組むとともに、生産性と信頼性を高めるためのシステム化を推進。また、高齢・中堅・若年層の連携がより働くグループ編成を意識しペア就労を導入するなど、技術の継承をうながしてきた。 POINT @2019年に高齢者雇用制度を改定し、65歳定年および希望者全員70歳までの継続雇用を就業規則に明記。70歳以降も運用により年齢上限なく働ける仕組みとしており、70歳超の社員2人が、現場から内勤に転換し活躍している。 A定年延長により、60歳以降も昇給や賞与があり、60歳未満の年齢の社員のモチベーションアップにもつながっている。 B「高齢社員やベテラン社員」と「若手社員」とのペア就労では、それぞれのスキルレベルを考慮しながら、現場ごとに組合せを決定し、技術や交渉力の継承に結びつけている。若手社員は先輩社員から長年の経験に基づく図面の読解力、施工手法や安全管理の知識を継承する一方、高齢社員は若手からデジタル機器の使い方を学ぶなど、双方向でWin−Winの効果をもたらしている。 C社員が一丸となって業務遂行できるよう、定期的に研修会や交流会(親睦会、観月会、野球大会など)を開催している。 U 企業の沿革・事業内容  1953年に創業した電気工事請負業および電材販売業の金城電気商会を前身とし、工事部門が独立して1973年に設立された。県内で事業活動を展開し、設計から施工、修理・メンテナンスに至るまで、すべて一社で賄える「ワンストップ工事」を強みに、県内の公共・民間電気設備工事を行っている。  第一牧志(だいいちまきし)公設市場(こうせついちば)や、焼失した首里城(しゅりじょう)復旧のための木材倉庫といった、重要な公共電気設備工事を手がける一方、ホテルやマンションといった民間施設などでも電気設備工事一式を請け負っている。2021年からは新たに電気保安管理業務を開始し、文字通り、ワンストップサービスを具現化。また、電気工事士や電気工事施工管理技士といった、社員の難関国家資格取得に向けたバックアップ体制も確立している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員38人のうち、60歳以上は9人と全体の約24%を占めている。旧制度では、定年60歳、希望者全員65歳までの継続雇用制度を導入していたが、事業遂行には高齢社員の能力・知識・技術が必須であり、慣例的に60歳の定年を超えても働いてもらっていた。だが、今後の安定した若手社員の育成や人材確保の観点から、定年延長は必要不可欠と判断し、2019年7月に定年を65歳に延長、定年後の継続雇用を希望者全員70歳までとすることを就業規則へ明記。役職定年も65歳まで延長となった。  また、定年延長にあたっては、定年延長者の昇給・賞与の原資確保が課題ではあったが、旧制度では60歳定年後、昇給・賞与なしのためモチベーションの低下が生じており、定年延長者への賞与の導入にもふみ切った。これにより、中堅以下の社員の将来への不安も解消され、全社的な士気も上がり、生産性向上に結びついている。さらには高齢社員が指導者として技術やノウハウの継承をにない、若手人材を育てる時間を安定して確保することもできるようになった。  また、定年後継続雇用の高齢社員だけではなく、同業他社を退職した経験豊富な高齢技術者を安全・教育担当として迎え入れるなど、高齢社員を通して、技術の向上に取り組んでいる。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年後の勤務形態等  定年後は勤務内容・形態を変えずに働き続けることが可能である。ただし、本人からの希望があれば、短日勤務などにも柔軟に対応。若手への技術継承やバックアップに注力できるよう、業務の見直しや負担軽減の調整も行っている。  現在、70歳以上の社員は2人在籍しているが、2人とも希望に合わせ現場から事務所での内勤(施工図作成、図面・工程確認などの事務的作業)へ転換し、つちかったスキルを最大限に発揮。直接作業はしないながらも、ときどき現場へ赴き、若手へ工程管理や仕事の進め方のアドバイスもしている。鋭くかつやさしく伝えてくれるため、若手の育成において重要な役割をになっている。 A年1回の定期的な面談の実施  年齢によらず、同社では年1回、社員との面談・意見交換を行う機会を設けており、体力面やメンタル面で問題がないか、社員の意見を聞いている。また面談の際に本人から希望があれば、勤務状況や体調などを考慮したうえで、本人の意見を尊重した配置転換や勤務日数調整、業務内容変更を行っている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @役割の明確化  「重量物の運搬や高所などでの危険作業は若手社員が担当する」、などと役割を明確にしたことで、高齢社員が負い目を感じることなく働けるようになった。また、高齢になると介護や健康面など生活上のさまざまな事情が発生することも多くなるが、柔軟な勤務時間で働く社員がすでにおり、相談しやすい環境であることから安心して働くことができている。 A若手社員への技術継承  同社の事業遂行には幅広い分野の知識が必要であり、多くの資格取得や協力会社との折衝力が求められるなど、高齢社員の存在感は大きい。マニュアル化できない技術の継承は喫緊の課題だったため、高齢社員と若手社員を同じ現場に配置するペア就労、技術・技能伝承を企図したOJTを実施してきた。工期終了後には反省会を行い、次回以降につなげている。  なお、ペア就労を行う際は、あえてペアを固定せず、毎回、個々のスキルレベルに合わせた組合せを考え、配置している。高齢社員が長年の経験をもとにした図面の読解力・施工管理の手法や安全管理の知識などについて指導する一方で、若手社員からはデジタル機器の使い方を学ぶなど、双方にとってよい効果をもたらしている。 B定期的な研修会・交流会の実施  社員が同じ方向を向いて仕事ができるよう、定期的に経営方針発表会や安全衛生大会を実施している。また社員が一丸となって業務遂行できるよう、定期的に交流会(親睦会、観月会、野球大会など)を開催。屋上で観月会(バーベキュー)ができる新社屋を建てるなど、社員同士の交流・コミュニケーションに力を入れている。 C業務に関する改善提案制度と相談窓口の設置  社長との距離が近いのも同社の強みであり、職務や社歴は関係なく、だれでもコスト削減や職場のモチベーション、会社のイメージアップなどに関して、社長に改善提案を行うことができる。業務における相談があった場合、各部門のリーダーに相談できるほか、総務部課長も相談窓口となっており、健康面での相談だけでなく、労働条件や職場内の規律、定年制度や再雇用制度についても相談できる体制となっている。 D資格取得の奨励、各種表彰、祝い金の支給  施工管理の仕事に従事するためには、国家資格である電気工事士、電気工事施工管理技士をはじめ、多くの資格が必須となる。同社では社員の資格取得に力を入れており、社内勉強会の開催、受講先の斡旋や申込みなどのサポートを行ったうえで、受講費用の一部を会社が負担している。また、社員のモチベーションを上げるための各種表彰や祝い金制度も充実させ、社員の努力指標にもなっている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @勤怠システム導入による各種届出の簡素化  従前は紙ベースで勤怠管理をしており、紙で提出された届出を集計して給与システムに入力する方法で管理していたが、個人のパソコンやスマートフォンから勤務状況の届出ができるよう改修した。 A図面管理システム導入によるデータの蓄積  図面管理システムとは、CADで作成した図面、完成図書、設計資料といった図面の一括管理・蓄積を可能にするものであり、設計ミスや非効率的な業務を避けるために活用している。システム導入により、複数の社員間でのデータ共有に時間がかかる、紛失や誤廃棄のリスクといった、紙で管理していたときのデメリットが克服されただけでなく、システムのルールに則り管理する必要があるため、属人的になりがちだった図面の管理方法が画一化され、技術継承が容易になるなどメリットも大きかった。  また、高齢になるとITへの対応がむずかしい部分があるため、直感的に操作ができるものを導入することにしている。IT化についてはミスや事務負担が減るといった直接的なメリットがあり、高齢社員も好感触であったため、今後もフォローを行いつつ進めていく予定である。 B朝のラジオ体操で健康チェック  毎朝のラジオ体操時に管理者が個々の表情や顔色などを見ながら声がけすることで、社員の体調を把握している。社員も自身の健康管理に留意するようになり、体調管理に万全を期して勤務するようになった。 C高齢社員が働き続けるための業務上の配慮  たずさわる業務に応じて十分な休憩時間を設け、疲労やだるさを感じた場合、いつでも休憩を取りやすい環境づくりに取り組んでいる。さらには高所作業や重労働など、高齢社員にとってリスクの高い作業は行わないようにし、心理的ストレスを与えないように業務を計画している。 D高齢社員が働き続けるための作業負担の軽減  加齢にともなう体力の低下を考慮し、安全かつ身体的負担の少ない作業を主とするなど、負担軽減を行っている。また、図面作成・工程管理など事務的な業務を切り出して配置することで、技術継承に集中できるようにしている。 (4)その他の取組み社外活動応援制度  同社独自の取組みとして、社員と家族(同居する2親等まで)が参加するスポーツや文化・芸能などの社外活動において、地域の代表として派遣が決まった場合には支援を行う(給付金支給)制度を設けている。実際に社員がバレーボールの選手となった際や社員の家族が野球の代表選手となった際に活用し、会社をあげて社外活動への参画を応援している。  沖縄県においても、「令和4年度沖縄県人材育成企業」に認証されている。孫世代育成の観点から、沖縄こども未来プロジェクトのほか、さまざまな団体に寄付を行っており、誇りを持って勤務できる環境に結びつけている。 (5)高齢社員の声  入社33年の大ベテラン、末吉(すえよし)栄剛(えいこう)さん(65歳)は、店舗やテナント、個人宅の小口工事を担当しており、若手社員とペアを組んで現場調査や施工管理などを担当している。「若手社員が成長していく姿を見るのはうれしいですね。若手社員が積極的な姿勢で仕事に臨んでいると、教えがいがあります」と話す。 (6)今後の課題  若手社員以上にモチベーションが高く、活き活きと働いている高齢社員が多いが、本人も気づかない健康面の問題が発生することがあるため、今後は健康面のサポートをいっそう充実させる方針だ。生産性の向上には高齢社員の高い技術を継承していくことが不可欠なので、若手・中堅社員とのコミュニケーションを深め、いつまでも一緒に活き活きと働ける職場環境を目ざしていく。 写真のキャプション 金城電気工事株式会社 ペア就労の様子 末吉栄剛さん(65歳) 【P32-33】 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 入賞企業一覧 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 佐賀県 株式会社 植松(うえまつ)建設(けんせつ) 優秀賞 富山県 株式会社 久郷一樹園(くごういちじゅえん) 静岡県 株式会社 ドリーム 特別賞 埼玉県 株式会社 ヤオコービジネスサービス 富山県 カナタスタイル 合同会社 沖縄県 金城電気工事(きんじょうでんきこうじ) 株式会社 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 北海道 釧路(くしろ)スバル自動車(じどうしゃ) 株式会社 東京都 株式会社 新日東電化(しんにっとうでんか) 神奈川県 まいばすけっと 株式会社 長野県 宮田(みやだ)アルマイト工業(こうぎょう) 株式会社 三重県 社会福祉法人 名張育成会(なばりいくせいかい) 滋賀県 株式会社 平田自工(ひらたじこう) 京都府 社会福祉法人 青谷学園(あおだにがくえん) 広島県 リライアンス・セキュリティー 株式会社 長崎県 社会福祉法人 恭敬会(きょうけいかい) 特別養護老人ホーム黎明館(れいめいかん) 熊本県 株式会社 ケイ・エフ・ケイ小川(おがわ) 熊本県 医療法人 祐基会(ゆうきかい) 特別賞 北海道 ケイセイマサキ建設(けんせつ) 株式会社 秋田県 株式会社 リチャードソンイトウ 栃木県 株式会社 猪股建設(いのまたけんせつ) 山梨県 ジット 株式会社 滋賀県 特定非営利活動法人 のどかの家(いえ)高木(たかぎ) 香川県 末澤緑地(すえざわりょくち) 株式会社 高知県 紀和工業(きわこうぎょう) 株式会社 宮崎県 株式会社 アキタ製作所(せいさくしょ) 宮崎県 株式会社 難波江商店(なばえしょうてん) クリエイティブ賞 大阪府 双葉電気通信(ふたばでんきつうしん) 株式会社 鹿児島県 内村建設(うちむらけんせつ) 株式会社 【P34-37】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第148回 福島県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 高齢社員の誠実な働きぶりや仕事を通じて成長する姿が、地域の人々の手本に 企業プロフィール 国見(くにみ)まちづくり株式会社(道の駅「国見あつかしの郷(さと)」) 創業 2015(平成27)年 業種 小売業、宿泊業 社員数 61人(うち正社員数9人) (60歳以上男女内訳) 男性(5人)、女性(15人) (年齢内訳) 60〜64歳 7人(11. 5%) 65〜69歳 8人(13.1%) 70歳以上 5人(8.2%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員を70歳まで継続雇用。嘱託社員、パート社員は年齢に関係なく1年契約で働くことが可能。現在の最高年齢者は75歳  福島県は、47都道府県のなかで北海道、岩手県に続く3番目の面積を有しています。県内は会津(あいづ)、中通り、浜通りの3地域に大別され、地域によって気候が異なり、会津は山間部を中心に豪雪の地域、浜通りは温暖で雪の少ない地域、中通りは中間的な気候の地域となっています。  JEED福島支部高齢・障害者業務課の中島(なかしま)貴史(たかし)課長は、福島県の近況を次のように話します。「東日本大震災や原発事故の影響がいまなお残り、避難を余儀なくされている方や、避難指示解除後の地域でも生活インフラなどが不十分で、帰還に迷っている方などもいる状況が、依然として続いています。  震災や原発事故で深刻な被害を受けた浜通りの産業の回復に向けて、『福島イノベーション・コースト構想』が国家プロジェクトとして進められており、2023(令和5)年4月には、創造的復興の中核拠点として、浪江町(なみえまち)に福島国際研究教育機構(F(エフ)−REI(レイ))が設立されました。  一方で、県内の中小企業では、若年者の採用が厳しく、社員の高齢化、人手不足の問題を抱える事業所が多く、相談・助言活動においては、各事業所の課題に沿って、具体的な解決方法の提案を心がけています」と話します。  同課では7人のプランナーが活躍しており、実情に即して定年制度や継続雇用制度の提案、制度改善の支援を行っています。その一人である木村(きむら)智彦(ともひこ)プランナーは、特定社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの資格を活かし、人事労務管理や職場改善分野を中心にていねいな支援を行い、多くの事業所の力になっています。  今回は、木村プランナーの案内で、「国見まちづくり株式会社」を訪れました。 町が100%出資した株式会社  国見まちづくり株式会社は、国見町(くにみまち)の100%出資により、2015(平成27)年3月に設立されました。福島県の最北端に位置する国見町では、「1000年のまち。これから100年のまちづくり基本計画〜里まち文化交流都市構想〜」を策定し、町の復興のシンボルとして「道の駅」の開設を計画。その運営主体として、国見まちづくり株式会社が設立されました。  同社は社是に、「『たからもの』を見つけ、育て、伝え、つなげることで、まちづくりに貢献します」を掲げ、2017年5月に道の駅「国見あつかしの郷」をオープン。国道4号線沿いの広大な敷地に波型の屋根のモダンな駅舎をつくり、特産品の桃をはじめ、採れたての新鮮な野菜、くだものが並ぶ「くにみ市場」、レストラン、カフェ、広場、宿泊施設などを併設。多彩なイベントも開催し、「ひと・もの・食・歴史・わざ、すべてが集まる『交流の場』」として年間100万人を超える人が足を運ぶ、町を代表する観光交流拠点となりました。 高齢社員の働き方の希望は「多様」  木村プランナーが同社を初めて訪問したのは2021(令和3)年9月のこと。「鈴木(すずき)亮一(りょういち)代表取締役・総支配人は、つねにお客さまや社員と接し、営業やイベント企画、人事運営・人材開発の最前線に立たれており、その実行力に感じ入りました」とふり返ります。高齢者雇用の状況などについて確認するとともに、業務改善に向けた相談を受けました。プランナーの提案に基づき、2021年に高齢者雇用制度を改定し、62歳だった定年を65歳に引き上げるとともに、希望者全員70歳までの継続雇用制度を整備しました。  国見まちづくりの鈴木代表は、「町が出資して立ち上げた会社なので、株式会社でありながら公共性の強い会社です。利益を追求するとともに、地域の雇用も大切です」と同社の特徴を説明します。人材については、「元気でやる気がある方であれば、年齢は問いません。道の駅にはさまざまな世代が訪れますが、比較的高齢の方が多く、世代の近いスタッフがいると質問や話がしやすいという声を聞きますので、高齢社員も若い社員も会社にとってどちらも重要です」と語ります。  社員数61人のうち60歳以上は20人。定年後は嘱託社員またはパートタイム社員となり、1年ごとに契約を更新します。契約更新時には、各職場のリーダーと面接し、翌年度の働き方を検討します。フルタイム勤務のほか、短時間・短日数勤務など、可能なかぎり社員の希望に応じた働き方を実現できるように努めています。  高齢社員は特に定着率が高く、道の駅オープンから7年が経過し、さらに社員の年齢は上がっています。加齢による身体機能の低下も懸念されることから、高齢社員が安心して働けるような取組みもスタートしました。  「高い位置に物を置かない、連絡事項の貼り紙は文字を大きくして読みやすくするところから始めました。野菜の運搬は台車を使うのですが、店内混雑時は台車が使えず、手で持って運びます。こうした作業が発生した際は、若い社員が高齢社員に代わって作業をしてくれます。高齢社員のなかには『若い社員に負担をかけているのでは』と申しわけなく思う人もいますが、ふだんからそれ以外の部分で大きな貢献をしてくれているので、高齢社員を不安にさせないよう、契約更新時の面談などを通じて、『会社はあなたを必要としている』ということを伝えることに努めています」(鈴木代表)  今回は、道の駅オープン時から働いているお2人にお話をうかがいました。 職場に来ると自然と元気になります  鈴木(すずき)けい子さん(68歳)は、勤めていた会社を定年退職後、「もう少し働きたい」と考えていたところ、「国見あつかしの郷」のオープンと求人を知り、61歳で入社。勤続7年になります。  総務部に所属し、宿泊フロント、窓口、予約受付、顧客情報入力、レジ、客室清掃チェック、パンフレットの在庫管理、観光案内など、多様な仕事を担当。入社当初から週4日、平日は4時間半、土日祝日は6時間半の勤務を続けています。  「観光案内は、入社してからほかの社員の方と一緒に会社で勉強会をしました。地元出身なのですが知らないことも多く、一つずつ覚えました。週末や休日は特に忙しい職場ですが、時間帯によって役割が決まっているので、目の前の仕事に集中して取り組むことを心がけています。観光案内でお客さまに喜んでいただけると『この仕事をしていてよかった』と思うんですよ」とにこやかに話す鈴木さん。  宿泊予約の受付など間違いが生じてはいけない業務も多いため、ミスをしないように大事なことはメモを取ること、確認することを自分に徹底しているとのこと。  鈴木代表は、「ご自身で何重にもチェックをしており、一度もミスはしていないと思います。いつも安心して仕事を任せられる存在です」と鈴木さんの頼もしさを語ります。  「腰痛など、年齢による体の不調を感じることもありますが、職場に来ると自然と元気になります」と鈴木さん。これからも「1日1日を積み重ねて、長く働き続けたい」と語ってくれました。 生産者と消費者をつなぐためにこれからも勉強  「くにみ市場」で働く渡辺(わたなべ)信子(のぶこ)さん(67歳)も、オープン時に入社して7年になります。販売の仕事経験があったため、販売部に配属され、野菜の袋詰めなどの作業や陳列、お客さま対応、レジ打ちなどを担当。入社以来、週5日、8時30分〜17時30分のフルタイム勤務を続けています。  手際よく野菜を並べている渡辺さんに、お客さまから何度も声がかかり、そのたびに穏やかな表情で応えていました。「商品の種類が豊富なうえ、季節によって変わり、新種もあるので、特徴を覚えるのはたいへんです。バックヤードに確認に行くこともあります」と渡辺さん。それでも、「地元の農家の方と知り合い、いろいろ教えていただけるのが楽しいです。お客さまから、『買った野菜がおいしかった』といっていただけることもあります。これからも商品の品質を保ち、農家のみなさんが栽培されたものを、自信を持っておすすめできるよう、勉強を続けます」とほがらかに話します。  体力を要する仕事のため、入社当初は「65歳くらいまでかな」と思っていたそうですが、「気づいたら65歳を超えており、周りに迷惑をかけていないか不安になります。みんなにフォローしてもらってなんとかやっているので、今後は短時間勤務なども考えながら、少しでも長く働いていきたいですね」と話してくれました。  鈴木代表は、「過去の経験を活かすだけではなく、日々新しいことを勉強し続ける姿勢に感服しています。お客さまへのていねいな対応も、何年経っても変わりません」と渡辺さんを評価。続けて、「2人(鈴木さん、渡辺さん)には、この先10年は働いてほしい」と期待を語りました。 高齢社員の仕事ぶりが地域の手本に  道の駅「国見あつかしの郷」には、遠方からの観光客も訪れますが、平日は地域の人たちのコミュニティの場にもなっており、広場では地域のイベントなども行われます。  鈴木代表は「当社は地域コミュニティの場でもありますから、地域の高齢者が役割をになって活き活きと働いている姿は、社内だけではなく、町のみなさんの手本や目標になっていくと思います。高齢社員の誠実な働きぶり、いくつになっても仕事を通じて成長している姿を見習いたい、と思うのは私だけではないでしょう。オープンから7年が経ち、多くのお客さまに来ていただける道の駅になりました。地域の雇用も増えましたが、今後も人が集い育つ場として、多様な世代が希望に合った働き方ができる職場にしていくことが目標です」とこれからの展望を語ってくれました。  木村プランナーは「私自身も国見あつかしの郷のみなさんとともに学びながら、つねに新しい情報を取り入れて、今後もサポートしていきたいと思います」と話していました。 (取材・増山美智子) 木村智彦 プランナー アドバイザー・プランナー歴:4年 [木村プランナーから] 「『一期一会』の精神を持って人と接することを心がけています。出会いを大切に考え、つねに感謝の気持ちを持って企業訪問をしています。企業経営にとって必要かつ有益で、アップデートされた情報を、少しでも多くお届けしたいと思っています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆福島支部高齢・障害者業務課の中島課長は木村プランナーについて、「金融機関勤務を経て特定社会保険労務士として独立し、当支部では2020年から活躍しています。現在、郡山(こおりやま)市と県北地区を担当し、特に、人事労務管理や職場改善分野で力を発揮しています。課題解決にあたっては、企業の視点で真摯に向き合うことで、訪問事業所から信頼を得ており、当支部としても全幅の信頼を置いています」と話します。 ◆福島支部高齢・障害者業務課は、JR 福島駅から徒歩約8分の福島職業能力開発促進センター内にあり、福島障害者職業センターも同一敷地内にあります。北には信夫山(しのぶやま)、西には吾妻小富士(あづまこふじ)などの山々を望むことができます。 ◆同県では、7人の70歳雇用推進プランナーが活動し、2023年度は427件の相談・助言を実施し、158件の制度改善提案を行っています。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●福島支部高齢・障害者業務課 住所:福島県福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 電話:024-526-1510 写真のキャプション 福島県伊達郡 道の駅 国見 あつかしの郷 国見まちづくり株式会社(道の駅「国見あつかしの郷」)鈴木亮一代表取締役・総支配人 宿泊施設のフロントでにこやかに対応する鈴木けい子さん 多彩な野菜やくだものが揃う「くにみ市場」で手際よく商品を並べる渡辺信子さん 【P38-39】 第98回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  川口弘幸(84歳)さんは機械設計畑一筋に歩いてきた。時代の波を受けて苦労も多かったが、70歳で高齢者雇用に理解のある、いまの会社に出会った。以来、段ボール処理や場内清掃に汗を流す日々を送っている。そのときどきの仕事を天職ととらえる川口さんが、生涯現役の魅力を語る。 株式会社旭フーズ 場内整備作業員 川口(かわぐち)弘幸(ひろゆき)さん 機械設計が天職に  私は福岡県柳川(やながわ)市で生まれました。「水郷(すいごう)柳川(やながわ)」といわれ風情ある美しい町です。ウナギ料理でも有名で、私が子どものころは田んぼの水路にいるウナギを捕まえては町の料理店で買ってもらって小遣いを稼いだ記憶があります。家は農家で7人兄弟、家計はたいへんでしたから小学生のころから小遣い稼ぎをしては、自分でグローブなどを買っていました。終戦のときのこともよく覚えています。6歳でしたが、米軍が空からまいたビラの写真が目に焼きついています。  高校卒業まで郷里で過ごした後、大学受験を志して上京しました。生活のために、そのころ叔父が働いていた会社に入社したのですが、遊ぶことを覚えて少しも勉強せず、大学受験は遠ざかりました。ただどうしてもあきらめきれず同級生が大学を卒業する年に念願の大学生になりました。夜間大学の工学部機械科に入学と同時に機械の設計会社に入社しました。働きながら学ぶなかで機械設計の仕事は自分の天職だと思い、大学を卒業して2年後、有限会社を立ち上げて独立しました。幸い世界的なブランドである大手自動車会社の関連会社から外注設計の仕事をいただき、エンジンなど自動車部品の加工機械の設計に没頭しました。時代は高度成長期の真っただ中でおもしろいように注文がきました。機械畑一筋に歩いてこられたことに感謝しています。  「僕はちょっと妙に大人びたところのある子どもでした」と川口さん。ウナギを捕まえては小遣いを稼ぎ、米軍のビラを読んで敏感に何かを感じとった弘幸少年。生まれつきの記憶力のよさ、自立心の強さに磨きがかかった84歳は、ますます意気軒高である。 人生は山あり谷あり  得意先が大手でしたから、高度成長期以降も仕事は増え続け、順風満帆な日々でした。しかし、人生とは何が起こるかわかりません。2008(平成20)年9月、世界的な金融危機(リーマンショック)が起こります。このリーマンショックのあおりを受けて受注がピタリと止まりました。発注元の会社で働く人たちも設計の仕事がなくなるほどの危機のなか、2年ほどはアルバイトで食いつないでいましたが、69歳で思いきって休業することにしました。もう一度きちんと働きたいと、職業安定所(ハローワーク)を訪れる日々が始まりました。機械設計の仕事にこだわってはいませんでしたが、ほかの職種であってもとにかく仕事がありません。条件の多くが65歳までということでした。10社ほど応募して、あきらめかけていたときに、いまの会社の「株式会社旭フーズ」に出会いました。年齢制限がなく60代の人が多く働いていることを知り、すぐに面接していただきました。入社が決まったときは本当にうれしかったです。ただ、体力が必要な仕事に思え、まず2、3年間を目標に働かせてもらおうと思いました。  旭フーズは外食産業などに業務用食材を卸しており、広い敷地内で定期的に即売会を開催、地域とのつながりを大事にしている。高齢者が長く働ける仕組みが整備されており、「当社の定年は高齢社員の方が自らギブアップされたときです」と菊地(きくち)拓也(たくや)社長は笑顔で語る。 再び新たな天職に出会う  2、3年間働くつもりが、気がつけばいつの間にか15年が経ちました。長く働かせてもらい感謝しています。機械設計の仕事はいまでこそコンピュータですが、私たちのころは製図台の前に腰かけてドラフターで線を引いていました。座りっぱなしの仕事で、頭は使うけれど体を動かすことはありません。一方、ここでの仕事はおもに段ボールを処理して場内整備を行うことです。物流センターでは全国各地の仕入れ先から届けられた食材を取引先の企業向けに仕分けし、毎日取引先の業者に向けて発送しています。食材が入っていた段ボールがたくさん出ますから、その段ボール処理が私の仕事です。  働き始めたころは手作業でしたが、途中で大型の段ボール圧縮機が導入されました。高齢者を年齢制限なく雇用している会社は、つねに働く人の負担を減らす機械化に配慮してくれています。自動仕分け機も導入したことから作業効率が上がり、排出される段ボールも増えました。これまでは複数の人がつきっきりで対応していましたが、外国製の大型圧縮機が導入され、いまは私一人で作業をしています。圧縮機は、箱のまま大量の段ボールを投入してシャッターを下ろせば圧縮できるという優れものですが、機械の構造上の欠点が目につくのは設計屋の職業病なのかもしれません。作業しながらついつい「修正すればもっと使い勝手がよくなるなあ」と、そんなことばかり考えてしまいますから困ったものです。  段ボールの処理のほかに発泡スチロールを小さくつぶして機械で処理するのも私の仕事です。また、商品を運ぶパレットの洗浄も担当していますが、一つひとつの工程が機械化されているので、機械に慣れている私にとっては本当に働きやすい職場です。機械設計は天職だと思って生きてきましたが、いまやっている仕事もまた天職だと思うようになりました。  旭フーズは2020(令和2)年に埼玉県の「シニア活躍推進宣言企業 生涯現役実践企業(三ツ星企業)」の認定を受けるなど高齢社員を大切にする風土がある。段ボール大型圧縮機は2台目を購入し、高齢社員の負担の軽減を図っており一人で作業する川口さんの様子を見るために製造元が海外から取材に来たという。 働き続けられることこそよろこび  私はここへ入社してから本当に健康になりました。長く働くつもりがなかったのは、設計の仕事に心が残っていたことと、体を動かさないで仕事をしてきましたから、肉体労働に不安があったのかもしれません。しかし、1年ほど経ったとき、私はずっとここで働きたいと思うようになりました。年齢に合った体の動かし方ができることでみるみる健康になっていったからです。私はもともと食が細かったのですが、食欲も出て、年齢のわりにはよく食べるようになりました。  現在の勤務形態は週5日で会社の始業時間である8時には私も出勤します。コロナ禍以降は退社時間が少し早くなり14時ごろには帰っています。  私は友人や後輩に会うたび、「仕事は引退してはいけない」といい続けています。元気に働き続けられることこそが人間の本当のよろこびだと思うからです。これからも周りの人に感謝を忘れず、私を待っている機械の前に元気に立ち続けたいと思います。 【P40-43】 “学び直し”先進企業に聞く! 最終回 大樹生命(たいじゅせいめい)保険(ほけん)株式会社  「人生100年時代」の到来に向け、学び直し≠支援する先進企業を紹介する本連載。最終回となる今回は、「学習する個・組織」の実現に向けた環境づくりを、人の大樹<vロジェクトとして全社的に進める大樹生命保険株式会社に迫る。「学びの仕組みづくりは、街づくりと一緒」という視点から、独自の「学びMAP」を作成。世代を超えた学び合い、主体性や持続可能性を重視した取組みが特徴だ。 従業員の学びから組織の好循環を「“人の大樹”プロジェクト」  1927(昭和2)年の三井生命保険株式会社発足から90年を超える歴史をもつ大樹生命保険株式会社(東京都江東区)。2019(平成31)年4月の社名変更から、今年で5年目を迎えた。  全国47都道府県に63の支社と433の営業拠点を展開し、従業員数は1万918人、うち内勤職員は3857人。50歳以上の従業員が大きな割合を占めるようになるなかで、企業の持続的な成長と経験豊富な当該層の知識や能力を最大限に活かすことを目的に、2020(令和2)年に65歳定年制を導入している。  同社では、「大樹生命のだれもが働きがいのある職場」づくりを目ざして、2020年度に人の大樹<vロジェクトをスタートさせた。「従業員一人ひとりの成長を通じて、お客さまの満足度向上から企業価値の持続的成長につなげていく好循環を目指す」もので、@上司と部下の関わりの強化、A成長のための主体的な学びの支援、B成長のための土台作り―の三つの柱で構成されている。  プロジェクトでは、研修やeラーニング拡充などのリスキリング施策も進められているが、「研修とは基本的に、会社が指名し、会社が定めた画一的なプログラムなので、受講者にとって必ずしも自己実現のイメージが湧かず、しかも、あまりワクワクしないですよね」と、従来型の学び≠ノ限界を感じると話すのが、人事部人材開発室審議役・CDPプロジェクトリーダーの高橋(たかはし)俊哉(としや)さんだ。高橋さんは、入社10年までの従業員を対象としたキャリアデベロップメントプログラム(CDP)をはじめ、社内全体の人材育成施策をになう人物である。  以前の研修プログラムは、高橋さんが主導して作成していたが、「リーダーシップのような普遍的な考え方やメソッドであっても、研修の場では高揚感や自己変革への意識が芽生えるものの、3〜4カ月後のモニタリングでは具体的な一歩をふみ出せていない受講者も多く見受けられます。期待値が大きいほど、人の意識や行動を変えるのはたやすいことではなく、職場に戻れば、形状記憶合金のように元に戻ってしまう。数年に一度、単発の研修ではどうしても限界があります」とジレンマを口にする。「会社主導で、『自立的な学びを』、『キャリア自律を』と拳を振り上げたところで、一人ひとりを動かすのはむずかしい」と、高橋さんは話す。  人材育成のあり方を大きく見直すきっかけとなったのが中期経営計画だ。2024〜2026年度の3カ年で掲げる人材像は、@デジタルを活用し、仕事を根本からデザインできる人材、A変化に挑戦し、新しいビジネス・戦略を構想できる人材の2点。この方向性をベースに、一般的な企業が抱える「学び直し・リスキリングの壁」の要因分析なども丹念に行いながら、より身近で、持続可能性を重視した内容に再構築した。 「学びの仕組みづくりは街づくり」“学びMAP”で世代を超えた学びを  「いままでは、特定の階層やスキルにフォーカスし、会社の定める方針や人材像に沿った人材育成を進めていた」(高橋さん)という点を見直し、学びの新たなプラットフォームとして2024年4月に打ち出したのが「人の大樹 学びMAP」(図表)だ。職階・施策名を縦に並べた、ありがちな人材育成体系図ではなく、社内外の学びのすべての取組みが一目で体感できるように「4つの大陸」を模したイラストで表現した。イラストは従業員の手によるもので、「“人の大樹”の社風を大切にしつつ、従業員一人ひとりが自分らしさを探究できるように」とのメッセージを込めた「地図」となっている。  「背景にある思想は、“街づくり”です。学びの仕組み自体は、街づくりと共通する部分が多いと思います」と高橋さんは話す。「街づくりではまず、地域性が重要です。地域には歴史や文化、独自の環境がありますが、同じように会社の文化やDNAを大切にし、それを活かすことが重要」と考え、「大樹生命らしさ」を意識した。  さらに、「シニアがいれば若者もいて、パートタイムで働く人も、障害のある人も、多様な価値観や背景を持った人たちが、ともに学び合う環境が不可欠」として、「多様性・自律性の尊重」を一つの大きなテーマとして掲げている。地域の住民が主体的に参加し、意見を出し合って進む街づくりのように、多様な人材が世代を超えて、共通の目標に向かって協力し、互いに学び合えるような風土の醸成を目ざしている。  人材開発室では「学びMAP」と合わせ、「互いに学び合い、成長することの重要性」を従業員に伝えるため、社内向けの動画※も作成した。文書などではなく動画でのメッセージを選んだ理由について、「自分ごととして受けとめてもらうためには共感が土台にないと機能しない」と、高橋さんは話す。  対話を「見える化」するグラフィックファシリテーションの手法で制作した動画は、いわゆる「Z世代」とシニアの会話を軸に構成。「若い世代とシニア世代が一緒に学び高め合うことが、個々の成長・共創につながる」ということを視覚的に訴えている。 組織のトリオで一体研修「関係性向上プログラム」  「学びMAP」は、「キャリアパス・プログラム」、「関係性向上プログラム」、「ブック・コミュニティ」、「ラーニング・スクエア」の四つのセクターで構成され、それぞれが連動する仕組みになっている。そのうち「キャリアパス・プログラム」は、従来からある総合職、エリア総合職の階層別・スキル別研修、DX(デジタルトランスフォーメーション)研修が中心。リーダーシップ開発研修やビジネススキル強化研修などとともに、「プレ・シニア層の個≠活かした多様な活躍」を目ざしたキャリアデザイン研修なども盛り込まれている。  「関係性向上プログラム」は、経営ビジョンの実現に向け、一人ひとりが主役意識を持ち、多彩な能力を最大限に発揮できる企業を目ざす研修プログラムで、2024年度から本社を中心に実施。12の部門から3人ずつ招集し、計3回のセッションの研修を、7カ月にわたって実施する計画だ。研修メンバーは、例えば「部長・グループ長、所属員」のように、同じ組織内の上司と部下のトリオで構成され、三者一体で、個人・グループワークなどを通じて自分の原動力の探求、組織のミッション、未来ビジョンなどを徹底的に言語化・対話を通じて磨き合う。  「従業員の持っている本来的な力は、『本音がいえる』という心理的安全性や、衝突や対立を恐れない対話によってこそ、職場の創発活動や新しい価値の創出につながると思います」と、高橋さん。一定期間をかけ、段階をふんで関係性を高めていくことで、互いへの理解と尊重が生まれる。それによって、生産性が向上し、従業員もそれぞれの自己認知・創造性を高め、イノベーションを促進できる組織風土が育まれる、というのがプログラムのねらいだ。 「本」を通じた身近なリスキリング書籍要約サービスが中高年層にも人気  大樹生命の育成施策のなかでも、もっとも個性的で特徴的な取組みの一つが、「本」、「読書」を通じたリスキリングだ。「学びMAP」では、「ブック・コミュニティ」のセクターに具体的な施策がまとめられているが、同社では2020年から、本の要約サービス「flier(フライヤー)(★)」の法人版を導入。「自分磨き」のツールとして、社内での活用が広がっている。  flier は、株式会社フライヤーが運営する、ビジネス書を1冊10分で読める要約を提供するサービス。「ビジネスパーソンが読むべき本」3700冊超がラインナップされているという。最新書籍や過去の名著から厳選された要約が毎日配信される仕組みや、要約から学んだことを社内で共有するための「学びメモ機能」、通勤中などのすき間時間でも利用しやすい音声機能などがある。  2020年に法人契約した当初の社内の利用者はおよそ100人だったが、現在の登録者数は従業員の約1割まで増加。flier利用者の年代別割合を見ると、40代が約2割、50代が5割近くと、中高年層の割合が圧倒的に多くなっている。  高橋さんは、中高年層のリスキリングや、新たなキャリアへの挑戦について、「ある程度の年齢になると、ずっとつちかってきたコンフォートゾーン(いまあるスキルで対応ができる居心地のよい場所)から飛び出すのは簡単なことではありません」と話す。  そこで注目したのが「読書」だ。新たなキャリアを目ざしたり、資格を取得したり、具体的な挑戦にふみ出すのはハードルが高くても、「読書」であれば身近で手軽に自分を磨くことができる。「50代を超え、人生100年の折り返し地点にくると『ちゃんと地に足のついた大人になりたい』、『教養を身につけたい』という感情が芽生えるものなのですね」と高橋さんは自分自身もふり返り、リスキリングのツールとしての「読書」の有効性を強調。flierで読んだ内容が「心に刺さった」、「顧客との会話で役立った」という利用者も多く、研修との相乗効果もあらわれているという。 民間初の「雑誌読み放題」持続可能な“学び”へのつながりに期待  「学びMAP」で創設された「ブック・コミュニティ」では、flier 利用のほか、読書を軸にしたリスキリングの場として「グローアップ・カフェ」、「ブック・カフェ」、「ブック・ラボ」が盛り込まれている。  「グローアップ・カフェ」は、本の著者を招いたランチタイムセミナーで、有名な著者の肉声を聞くことができる機会となっている。「ブック・カフェ」は、ランチタイムの読書会だ。どちらもZoomで月一回開催しており、全国の従業員が気軽に参加することができる。さまざまな本を通じて、従業員同士が交流を深め、読んだ本からの気づき、学びを共有してもらうのがねらいだという。  「ブック・ラボ」は、ビジネスパーソンから支持を得ている本の著者によるオンラインのワークショップで、総合職、エリア総合職、業務職から参加者を募り、著者の実践知を体感できる学びを展開している。  さらに、本による継続的な学びを後押しするために、2024年5月に「大樹生命電子図書館」を開設。同図書館では、キャリア・仕事術などの自己啓発書だけではなく、絵本から子育て・料理・健康・文芸書や雑誌まで、幅広いジャンルの本を取り揃えており、いつでも好きな時間に、好きな本をWeb上で借りることができる。従業員のみならず、同居する家族の利用も可能だ。コロナ禍の影響や災害被災地での心のケアなどを背景に、自治体などで電子図書館を導入するケースが増えているが、民間企業の導入は大樹生命が全国で3例目だという。  さらに2024年8月からは、同図書館内で「雑誌読み放題」がスタートした。民間企業では初の取組みで、閲覧可能な雑誌は計230誌。ビジネス誌はもちろん、旅行や鉄道、バイク、カメラなど中高年層に人気の雑誌も豊富にラインナップされている。「雑誌には刺激があふれていて、仕事でも、生活でも、いろいろな意味で、最新のヒントを得ることができます」と、高橋さん。雑誌が発信するアイデアや視点によって、若手からシニア層まで、創造性や思考力が刺激され、継続的な学びにつながるとの考えだ。  また、特に、人口の少ない地域などにある営業部や支所では、書店の閉鎖が進み、気軽に雑誌を手に取ることができないケースもあるという。  電子図書館が、そうした地域でのリスキリングの活性化やQOL(生活の質)の向上にも、一役買うことが期待される。 「学びMAP」で自分の「宝島」へシニアのキャリアにも新しい要素を  「学びMAP」ではそのほか、「ラーニング・スクエア」のセクターで、公募型・選択型の10のプログラムを提供している。「研修」といっても、従来のeラーニングに並んでいるようなメニューとは趣が異なり、「人間力やウェルビーイングの探究」、「おもしろさ」、「ワクワク感」にもこだわった内容となっているのが特徴だ。例えば、2024年は、「心を突き動かすメッセージング技術」、「自分らしさを育む感性開発ワークショップ」といったラインナップで、各分野の専門家から学ぶことができる。  同社は、この「キャリアパス・プログラム」、「関係性向上プログラム」、「ブック・コミュニティ」、「ラーニング・スクエア」の4セクターを、それぞれに連動させることで、持続的な新しい学びにつなげ、多様性に富んだ人材の育成をさらに進めていく。  「中高年世代の従業員にも、DXを含めて、自身のフィールドから一歩ふみ出して新しい興味・関心を、自分のキャリアに取り込めるような、そんな学びの場を広げていきたい」と話す高橋さん。最後に「この学びMAP≠手に、自分で行けるところ、目ざすもの―自分の『宝島』を探してほしい」と語ってくれた。 ※ https://www.youtube.com/watch?v=AgTBhpPX3cI ★ 「flier」は株式会社フライヤーの登録商標です 図表 人の大樹 学びMAP ※資料提供:大樹生命保険株式会社 写真のキャプション 人事部人材開発室審議役・CDPプロジェクトリーダーの高橋俊哉さん 【P44-47】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第77回 従業員が死亡した場合の退職金の支給対象者、副業先の時間外労働 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 従業員が死亡した場合、退職金の支給対象はだれになるのか  従業員が亡くなったのですが、当社では死亡による退職時にも、退職金支給が行われます。このたび、相続人であるという従業員のご兄弟から連絡があったのですが、支払いを行っても問題ないでしょうか。支払うにあたって、確認しておくべき事項はありますか。 A  死亡退職金の支給対象者は、相続人とはかぎらず、自社の就業規則などを慎重に確認する必要があります。支払いにあたっては支給対象者に該当するか否か確認すること、および代表者にまとめて支払うことについて、全員の了承が得られているのかなども確認しておくべきです。 1 退職金制度  退職金制度を導入するか否かは、各社の裁量に委ねられており、そもそも制度を設けるか否か、設けるとしてもどういった支給基準(計算方法)を採用するか、死亡時の退職金の支給対象者(支給順位)をどのように定めるかなど、退職金制度の設計において各社ごとに内容が相違することが多くあります。  各社の裁量に委ねられているとはいえ、労働基準法(以下、「労基法」)が退職金についてまったく触れていないかというとそういうわけではなく、「退職手当」という用語で、図表1のような規定が設けられています。  また、通常の賃金の場合は、退職した後に請求された際には7日以内に支払わなければならないと規定されています(労基法第23条)が、退職手当については、退職前においては退職事由次第では支給されないこともある停止条件付債権であり、支給するか否かも含めて使用者が条件を定めることができることから、通常の賃金と異なり、あらかじめ特定した支払い期日が到来するまでは退職金を支払わなくとも差し支えないと解釈されているという特徴もあります。  退職金制度を自社のみで準備することもあれば、独立行政法人勤労者退職金共済機構の中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」)を用いる場合もあります。中退共においては、中小企業退職金共済法に基づき、加入者に対して退職金の支給が行われることになりますが、「被共済者がその責めに帰すべき事由により退職し、かつ、共済契約者の申出があつた場合において、厚生労働省令で定める基準に従い厚生労働大臣が相当であると認めたときは、機構は、厚生労働省令で定めるところにより、退職金の額を減額して支給することができる」と定められており(同法第10条第5項)、一定の場合には退職金が減額されることが想定された停止条件付債権となっています。 2 死亡退職金の支給にあたっての留意事項  従業員の死亡時に退職金を支給するにあたっては、その支給対象者を確定する必要があります。この点、留意しなければならないこととしては、必ずしも相続人が退職金の受給対象者となるとはかぎらないという点です。  例えば、中退共による退職金の支給については、法令においてもその受給者の順位が定まっており、図表2のような定めとなっています。  この規定では、配偶者が第一順位とされており、そのほかの相続人と相続分に応じて分けることにはなっていないことや、第2項が死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していたものを優先する内容となっており、たとえ子であるとしても、生計を維持した兄弟姉妹が存在する場合には、相続とは異なり優先されないといった相違があります。  また、就業規則においては、労働災害補償法第16条の7(生計を維持していた兄弟姉妹は優先しない点で中退共による支給と相違する)を引用している事例も多くあります。  したがって、自社の死亡退職金の支給対象者がだれになるのかという点は、就業規則などに定められた内容を確認しなければ確定しないことになります。また、中退共による支給や労働災害補償法第16条の7を引用しているような場合には、子、孫、父母などであることの確認に加えて、「生計を維持していた」か否かについても確認が必要ということになります。基本的には住所が同一であったか否かといった方法で確認することになりますが、相続とは大きく異なる点ですので、注意が必要です。  また、同順位の受給者がいる場合には、各人に分割して支払っていくか、もしくは受領する代表者を定めて支給するということになりますが、後者の場合には、代表者以外のほかの受給者も含めて、代表者を選んだことに各自が同意しているかという点にも留意する必要があります。同意したか確認することなく、代表者に全額を支払ってしまった場合には、ほかの受給者から自身の受給予定額を請求されたときには、二重払いをせざるを得ない(その場合、代表者から返還してもらうようにしなければならない)というリスクもあります。  なお、過去の裁判例においては、受給者の順位を定めていなかった事例では、遺族固有の権利とする合理的な根拠もなかったことから、相続財産に含まれるものとして相続人が支払いを求めることができると判断しているものがあります(大阪地裁平成22年9月19日判決、大阪産業大学事件)。したがって、受給者の順位を定めていない場合には、相続順位にしたがって支給対象者を検討することになりますが、代表者への支払いについては同様の事項に留意することが必要です。 図表1 労働基準法による退職手当の規定 第89条第3の2号 (就業規則に)退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項 第143条 第115条の規定(時効)の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。 ※筆者作成 図表2 中小企業退職金共済法が定める遺族の範囲と順位 (遺族の範囲及び順位) 第十四条 第十条第一項の規定により退職金の支給を受けるべき遺族は、次の各 号に掲げる者とする。 一 配偶者(届出をしていないが、被共済者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。) 二 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの 三 前号に掲げる者のほか、被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族 四 子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹で第二号に該当しないもの 2 退職金を受けるべき遺族の順位は前項各号の順位により、同項第二号及び第四号に掲げる者のうちにあつては同号に掲げる順位による。この場合において、父母については養父母、実父母の順とし、祖父母については養父母の養父母、養父母の実父母、実父母の養父母、実父母の実父母の順とする。 3 前項の規定により退職金を受けるべき遺族に同順位者が二人以上あるときは、退職金は、その人数によつて等分して支給する。 ※筆者作成 Q2 従業員が副業をするにあたり、副業先での時間外労働の取扱いと、当社で留意すべき事項について知りたい  当社は副業を認めており、ある若手従業員が副業の申し出をしてきました。ところが、副業先が就業規則の作成や36協定の締結・届出をしているかもわかりません。副業であることから時間外労働が生じることも考えられるのですが、問題ないでしょうか。 A  副業先において、就業規則および36協定が作成・届出がなされていないとすれば、副業先において時間外労働をさせることができないということになります。そのため、副業先における時間外労働の可能性をふまえると、副業先における36協定提出完了を確認させておくことが望ましいでしょう。 1 副業・兼業について  副業・兼業については、厚生労働省が、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定しており、原則として、副業・兼業を認める方向とすることが適当と示しています。  副業・兼業については、労働者にとって、離職せずとも別の企業でのスキルや経験を獲得できること、所得が増加することなどのメリットがある一方で、就業時間が長くなる可能性があることから健康管理も一定程度必要とされ、その把握や管理の方法が課題とされています。  ガイドラインにおいては、就業時間の把握や管理方法以外にも、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務との関係なども整理されています。また、厚生労働省のホームページには、これらに則したモデル就業規則、届出書、労使間で締結することを想定した副業・兼業に関する合意書の様式、ガイドラインのQ&Aなどが公表されており、参考になります。  なお、副業先における働き方が、雇用ではなく準委任契約等である場合には、労働時間管理には影響は与えないと考えられます。 2 副業・兼業と労働時間の管理  労働者が、副業・兼業を実施する場合の労働時間管理については、時間外労働時間の計算方法に特徴があります。  まず、自社と副業先の労働契約の成立日の先後関係を把握する必要があります。副業の申出を受けたということは、自社が先に労働契約を締結していたものと考えられます。  副業時の時間外労働時間の把握については、@所定労働時間の通算とA所定外労働時間の通算の問題があり、@については、労働契約を後に成立させた副業先において、両社の所定労働時間を通算して法定労働時間を超えた部分について、時間外割増賃金を負担しなければならないことになります。例えば、自社において7時間、副業先において3時間の所定労働時間となっている場合には、所定労働時間の通算結果は、合計10時間となり、労働契約を後に成立させた副業先において2時間(法定労働時間8時間を超過した部分)の時間外労働をさせるという取扱いとなります。このような場合、副業先は36協定の作成および届け出を行っておかなければ、想定していた3時間働いてもらうことは労基法違反となってしまいます。  Aについては、@の方法で計算した所定労働時間の通算に加えて、自社において所定外労働時間が生じた場合に、労働契約の先後関係ではなく、所定外時間労働が生じた順番(労働時間の先後関係)をもって、法定労働時間を超えたか否かを判断することになります。例えば、所定労働時間の通算においては、合計8時間以内におさまっているような場合であっても、自社の出勤前に副業先で働いているようなケースにおいては、自社の所定外労働時間となった部分については、時間外労働として把握する必要があります。  したがって、これらの計算を行うためには、そもそも、労働契約の先後関係はどのようになっているのか、副業先における所定労働時間がどの程度であるのか、時間帯が自社よりも早いのかについて把握しておく必要があります。  これらの把握や通算が煩雑な場合には、厚生労働省が紹介している簡便な労働時間管理の方法「管理モデル」を採用することも考えられます。自社および副業先の双方において、時間外労働が労働時間の上限規制(単月100時間、複数月80 時間未満)を下回るように、それぞれにおける時間外労働の上限をふり分けたうえで、各社が定めた上限を遵守しているかぎりは、それぞれの事業場で行った時間外労働に対して割増賃金を支給することをもって、労基法違反を回避することができるというものです。  なお、副業先が労使協定を届け出ているとしても、原則として労使協定において月45時間未満の時間外労働という上限が定められ、労基法が定める上限である単月100時間、複数月80時間となるような時間外労働が可能となるような特別条項の適用は年6回を上限とするように労使協定に定められていることが一般的です。したがって、上限規制を遵守するということだけではなく、特別条項の適用回数について留意する必要はあります。 3 健康管理  副業を行う場合には、どうしても通算した労働時間は、1社で働いている場合よりも多くなりがちです。  労働災害との関係でいえば、複数の事業場における労働時間は通算したうえで、精神障害や脳・心臓疾患の発症と業務の関連性(業務起因性)が判断されることになります。その際には、過剰な時間外労働や連続勤務が重要な要素とされています。  他方で、長時間労働者を対象とした産業医による面接指導や自社における健康確保措置の対象者について、法制度上は、労働時間を通算することが前提とされていません。しかしながら、労災認定の基準が緩やかになるわけではなく、事前予防の機会を失うことにもなりかねません。  したがって、たとえ、管理モデルを採用して、副業先の労働時間を積極的に把握する必要がなくなったとしても、健康管理の観点から、どの程度の労働時間となっているのか、連続勤務の状況(休日が確保されているか)については、定期的に本人の申告を受けたり、本人の心身の不調が疑われるときには、副業先の労働時間を含めた状況の把握が必要になるでしょう。また、産業医による面接指導の機会についても法制度上の義務であるか否かにこだわりすぎずに、自社内での健康管理について、副業を行っている場合には定期的に実施したり、自社内での時間外労働時間数のみによることなく実施対象にするなど、事前予防の機会を失わないように配慮しておくことが望ましいでしょう。 【P48-49】 シニア社員を活かすための面談入門 株式会社パーソル総合研究所 組織力強化事業本部 キャリア開発部 長野(ながの)朋子(ともこ)  長年の職業人生のなかでつちかってきた豊富な経験や知見を持つシニア社員。その武器を活かし、会社の戦力として活躍してもらうために重要となるのが「面談」です。仕事内容や役割、立場が変化していくなかで、シニア社員のやる気を引き出し、活き活きと働いてもらうための面談のポイントについて、人と組織に関するさまざまな調査・研究を行っているパーソル総合研究所が解説します。 第5回 シニア社員の不安や不満を解消する行動 はじめに  本連載の第1回※1で、シニア社員との面談には定年前面談や定年後再雇用面談など、特定の時期に行われるもの、評価フィードバックやキャリア面談など、定期的に行われるものがあることはお伝えしました。  自律的なキャリア開発を推進する企業が増えてきたいま、上司と部下の間でキャリア面談や1on1でキャリアについて語る機会が増えています。第2回※2ではキャリア面談に必要なスキルについて解説しました。スキルを学んでも、さまざまな経験を積んだシニア社員との面談はイメージ通りに進まなかったり、相手の気持ちが読み取れず不安に感じたりする方もいるのではないでしょうか。  面談をする側だけでなく、シニア社員自身もキャリアについて語るのに不慣れで、自分の想いを上司や組織に理解してもらえるのか不安に感じるものです。  第5回ではこのようなシニア社員の不安や、上司や組織に理解されていないという不満をどのように解消していくかを考えます。 キャリア面談をどう思っているか  まず、シニア社員は面談についてどう思っているのでしょうか。株式会社パーソル総合研究所では、キャリア面談について「部下側からの視点」で実態を明らかにすることを目的として、2023(令和5)年に「部下のキャリア面談に関する定量調査」と題する調査を行いました。その結果、40代以降はキャリア面談をポジティブに受け取っている人は減少しており、ミドル・シニア社員の面談への苦手意識がうかがえます(図表1)。 キャリア面談の機会をポジティブに転換するには  さらに、同調査ではキャリア面談をポジティブな印象にうながす上司の行動を分析しました。その結果、「キャリアに関する助言、気づきがもらえる」、「あなたの話をしっかり聞いてくれる」という上司の行動の影響が特に大きいことがわかりました(図表2)。経験豊富なシニア社員に対して「助言や気づきを与える」のはむずかしく思えるかもしれません。ただ、相手の「話をしっかり聞く」ことは少しの努力でできるのではないでしょうか。  また、独力で支援するのではなく、適切な第三者にリファーすることは、シニア社員にとっても面談対応者にとっても有益です。調査では「参考になりそうな先輩を紹介してくれる」とありますが、「先輩」の部分は、自身の上司や、シニア社員と同じ経験をした人、シニア社員が知りたい情報の専門家など、相手のニーズによって読み替えてください。  本調査はキャリア面談について分析していますが、定年前面談や定年後再雇用面談、評価フィードバックにおいても、シニア社員自身の想い、キャリアについて話す機会はあるため、同様の効果があると考えられます。 シニア社員の不安や不満を解消する行動  最後に、調査結果をヒントに、シニア社員の面談への苦手意識を低減させ、想いを引き出す接し方や話し方について解説します。  「何を話せばよいのか」とシニア社員に不安を抱かせないよう、面談冒頭で『今日の面談の目的(テーマ)』と、面談の目的に応じて『相手に話してほしいこと』を伝えます。「自由に話してください」といわれると単なる雑談になったり、何を話してよいかわからず話しにくくなる可能性があります。  シニア社員が話し始めたら、相手の話すペースに応じてうなずきや相槌(あいづち)を入れ、「話をしっかり聞いている」姿勢を見せてください。  定年前面談や定年後再雇用面談、評価フィードバックでは相手の話を聞くだけでなく、組織として伝えなければならないこともあります。その場合も、一方的に話すだけでなく、話した内容について「どう思うのか」シニア社員の気持ちを聞きます。もし、そこでこちらの考えやシニア社員への期待がうまく伝わっていないとわかったら、「相手の理解が間違っている」と否定せず、あらためてていねいに組織からのメッセージを伝えましょう。  最も大切なことは、「組織全体で支援する姿勢を示す」ことです。組織で支援してもらえるとわかれば、シニア社員も安心して自己開示できます。 ※1 『エルダー』2024年6月号 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202406/index.html#page=51 ※2 『エルダー』2024年7月号 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202407/index.html#page=51 図表1 部下は、キャリア面談をどう思っているのか 20代、30代は、66%が役立つ機会とポジティブに受け取っているが、40代、50代と下がっていく 自分のこれからのキャリアにとって役立つ機会である 20代 強くそう思う12.1% 少しそう思う54.0% 30代 強くそう思う16.9% 少しそう思う49.2% 40代 強くそう思う14.3% 少しそう思う48.4% 50代 強くそう思う11.1% 少しそう思う37.3% 出典:株式会社パーソル総合研究所「部下のキャリア面談に関する定量調査」(2023年) 図表2 キャリア面談をポジティブ印象にうながす上司の行動 キャリア面談の目的を話してくれる +0.091* あなたの話をしっかり聞いてくれる +0.203** キャリアに関する助言、気づきがもらえる +0.282** 社内でのキャリアの選択肢を教えてくれる +0.153** 参考になりそうな先輩を紹介してくれる +0.133** 自分のこれからのキャリアにとって役立つ機会である ■重回帰分析 統制変数 従業員数・年齢・性別・未既婚・子供有無・キャリア面談回数(1回以上)・キャリア面談時間n=500 *:5%水準で有意 **:1%水準で有意 出典:株式会社パーソル総合研究所「部下のキャリア面談に関する定量調査」(2023年) 【P50-51】 いまさら聞けない 人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第51回 「エンゲージメント」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、エンゲージメントについて取り上げます。 エンゲージメントは組織と個人の双方向の関係で成り立つ  エンゲージメントの定義をインターネットで検索してみると、さまざまな表現の内容が出てきます。公的な資料の定義を引用すると、『経済財政運営と改革の基本方針2022について』※1という資料では、エンゲージメントは「働き手にとって、組織目標の達成と自らの成長の方向が一致し、仕事へのやりがい・働きがいを感じる中で、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を示す概念」と記載されています。また、厚生労働省の『働き方・休み方改善ポータルサイト』※2では、「エンゲージメントは、仕事にやりがい(誇り)を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ている状態をさし、個人と仕事との関係に着目したワークエンゲージメントと、所属組織への貢献意欲をさし、個人と組織との関係に着目した従業員エンゲージメントの二種類がある」としています。  これらとインターネットでみられる定義も含めて一致しているのは、「組織」と「個人(働き手)」の双方向の関係が主体的な組織や仕事への貢献意欲などに影響を及ぼすという点です。従業員満足度や企業へのロイヤリティ(忠誠心)と混同されることもありますが、個人から組織への一方向的な思いである点や、主体的な貢献意欲などにつながるかどうかまではわからない点に違いがあります。また、個人が目標に向けて主体的に行動するワークモチベーションとも双方向性という観点から異なる用語です。ただし、エンゲージメントの向上が、従業員満足度やロイヤリティ、ワークモチベーションにも好影響を及ぼすともいわれているため、各々関連している用語といってもよいと思います。 エンゲージメントの現状  エンゲージメントは概念的な用語ではありますが、現状を測定し数値化することは可能とされています。メディアなどでよく取り上げられるのは、ギャラップ社※3のState of the Global Workplaceで、“日本の従業員のエンゲージメントは低い”という調査結果を聞いたことがある読者の方も多いのではないでしょうか。最新の「2024 Report」を参照するとエンゲージしている日本の従業員は6%と東アジア地域で最低水準にあります(高水準はモンゴル41%、中国19%です)。また、2023年版の資料※4に経年の推移が載っているのですが、2012年から2022年にかけてグローバルの13%〜23%と右肩上がりの水準に対して、日本は7%〜5%と低水準を推移している状態にあります。  また、国内の調査では、少々古いですが、『令和元年版 労働経済の分析』※5にエンゲージメントの詳しい解説と分析が載っています。ここでは、エンゲージメントは「活力」、「熱意」、「没頭」の三つが揃った状態とし、これらを測定するための質問回答に基づきエンゲージメントスコアを算出し、日本における働きがいの現状を示しています。概況の一部を抜粋したものが図表です。特徴的なのは加齢または職位・職責の高まりにともなって、スコアが高まっている点です。特に、60歳以上のスコアがほかの年齢層と比較して、突出して高い数値となっており、高齢者雇用の推進はエンゲージメントの高い社員の活用につながる点がうかがえます。一方で、これから長い職業人生における活躍が期待される若手層のスコアが低い点が課題ともとらえられます。 エンゲージメント向上に向けた取組み  労働経済の分析のなかで、エンゲージメントを向上させることは、個人・企業の労働生産性の向上につながる可能性や、「職業人生は可能な限り長い方が望ましい」と感じる労働者の増加につながる可能性が示唆されています。このため、エンゲージメントの向上は、現在の日本の大きな課題である労働生産性の向上や人手不足の解消策の一部としてとらえられ、政府としても『経済財政運営と改革の基本方針2022について』のなかで、「人的資本投資の取組とともに、働く人のエンゲージメントと生産性を高めていくことを目指して働き方改革を進め」としています。  また、企業業績の向上や人材の定着につながるとして、エンゲージメントの向上施策に具体的に取り組んでいる企業も多くあります。『令和元年版 労働経済の分析』のなかにエンゲージメントの高い勤め先企業で実施されている雇用管理という調査(第2−(3)−20図、P213)がありますが、「能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ」、「有給休暇の取得促進」、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」、「人事評価に関する公正性・納得性の向上」、「仕事と育児の両立支援」などが実施率の上位に入っています。また、『働き方・休み方改善ポータルサイト』で、各社の具体的な取組み事例をみることができます。多くの企業に共通しているのは、調査ツールやアンケートを用いてエンゲージメントの実態を把握し、その結果に基づき施策を実施することを継続的にくり返していることです。エンゲージメントは持続的かつ安定的な状態をとらえる概念ともいわれており、一過性の対応ではなかなか向上にはつながらない点に注意が必要です。  次回は、「労働基準法」について取り上げます。 ※1 『経済財政運営と改革の基本方針2022について』(令和4年6月7日閣議決定) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2022/2022_basicpolicies_ja.pdf ※2 「ワークエンゲージメントとは」『働き方・休み方改善ポータルサイト』https://work-holiday.mhlw.go.jp/work-engagement/ ※3 ギャラップ社……アメリカ最大の調査会社。世論調査や従業員意識調査などを実施 ※4 『2023年版 ギャラップ職場の従業員意識調査:日本の職場の現状 リーダーのための5つの洞察』 ※5 『令和元年版 労働経済の分析 ─人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について─』(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html ここでは、ワーク・エンゲイジメントと表現されているが、本稿ではエンゲージメントで統一した 図表 エンゲージメントスコアの概況(抜粋) (スコア) 熱意 没頭 エンゲイジメント・スコア 活力 全体 3.92 3.55 3.42 2.78 性別 男性 3.85 3.50 3.39 2.81 女性 4.02 3.60 3.45 2.73 年齢 29歳以下 3.85 3.37 3.29 2.66 30歳台 3.90 3.51 3.38 2.73 40歳台 3.94 3.55 3.42 2.76 50歳台 3.94 3.59 3.44 2.78 60歳以上 4.08 3.82 3.70 3.19 居住地 三大都市圏 3.95 3.55 3.43 2.79 地方圏 3.91 3.54 3.40 2.77 役職 役職なし 3.88 3.46 3.33 2.66 係長・主任相当職 3.94 3.54 3.40 2.72 課長相当職 3.91 3.59 3.45 2.85 部長相当職以上 4.14 3.86 3.76 3.26 勤め先企業の規模 20人以下 3.92 3.50 3.40 2.77 20超50人以下 3.97 3.61 3.47 2.28 50超100人以下 3.91 3.52 3.39 2.76 100超300人以下 3.86 3.49 3.35 2.71 300超1000人以下 3.91 3.44 3.36 2.72 1000人超 3.74 3.41 3.27 2.65 資料出所(独)労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(正社員調査票)」(2019年)の個票を厚生労働省政策統括官付政策統括室にて独自集計 (注)エンゲイジメント・スコアは、調査時点の主な仕事に対する認識として、「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(活力)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(熱意)、「仕事をしていると、つい夢中になってしまう」(没頭)と質問した項目に対して、「いつも感じる(=6点)」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とした上で、「活力」「熱意」「没頭」の3項目全てに回答している16,579サンプルについて、1項目当たりの平均値として算出している。 出典:『令和元年版 労働経済の分析』厚生労働省 【P52-53】 令和6年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高年齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされ、高年齢者の戦力化について各企業においてさまざまな施策が展開されています。  「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」では各企業の人事担当者の方々に関心の高いテーマごとに、講演や事例発表、パネルディスカッションなどを実施し、高年齢者の活躍促進にむけた展望について、みなさまとともに考えます。 参加無料・ライブ配信 ※事前申込制・先着各500名 「ジョブ型」人事から考える 〜シニア人材の戦力化  いわゆる「ジョブ型」人事を導入している企業において、職務の明確化や、それに応じた処遇についてどのように対応しているのか、制度導入の背景や経緯、導入における工夫や制度を浸透させるための苦労、運用上の課題等についてご発表いただき、高齢社員も含めた全世代の社員を活かす「ジョブ型」人事について考えます。 日時 令和6年10月10日(木)14:00~16:30 〈プログラム〉 【基調講演】 今野浩一郎氏 学習院大学 名誉教授 【事例発表】 谷圭一郎氏 株式会社資生堂 人財本部 変革推進グループ マネージャー 神山靖基氏 株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部 ジョブ型人財マネジメント推進プロジェクト シニアプロジェクトマネージャ 廣川英樹氏 三菱マテリアル株式会社 人事労政室 室長 【パネルディスカッション】 コーディネーター 今野浩一郎氏 パネリスト 事例発表3社 申込 申込締切 各開催日 当日15時まで ※専用フォームからの申込がむずかしい場合、左記お問合せ先にご連絡ください。お電話で対応させていただきます。 ※申込みの際に取得した個人情報は適切に管理され、当機構(JEED)が主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用します。利用目的の範囲内で適切に取り扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供することはありません。 お申込み案内ページ https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html 役職定年見直し企業から学ぶ シニア人材の戦力化  多くの企業で浸透していた役職定年制については、70歳までの就業確保措置が努力義務化されて3年が経過し、そのあり方が課題となっています。本シンポジウムでは、役職定年を廃止した企業の事例を紹介するとともに、それらの企業の処遇のあり方(役職定年廃止の実際の運用や導入の苦労)や世代間のバランス、若年層や高齢層に企業としてどのようなメッセージを発しているか、などについてディスカッションを行います。 日時 令和6年10月25日(金)14:00~16:30 〈プログラム〉 【イントロダクション】 大木栄一氏 玉川大学 経営学部国際経営学科 教授 【事例発表】 佐治正規氏 ダイキン工業株式会社 常務執行役員 人事 担当 人事本部長 委嘱 菊岡大輔氏 大和ハウス工業株式会社 経営管理本部 人財・組織開発部長 中村幸正氏 株式会社リコー 人事総務部 C&B室 室長 【パネルディスカッション】 コーディネーター 大木栄一氏 パネリスト 事例発表3社 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略  人生100年時代に向けて個人が働く期間が長期化した現在、中高年齢層においても、キャリア形成やキャリア形成のための支援が重要となっています。本シンポジウムでは、「キャリア」や「リスキリング」を切り口として、中高年齢層の社員も含めた社員に対してキャリア研修と能力開発機会の提供を一体的に進めている先進企業からの事例発表、制度導入の苦労や課題、中高年齢層の社員の意識の変化やモチベーションへの好影響などについてディスカッションを行います。 日時 令和6年11月28日(木)14:00~16:30 〈プログラム〉 【基調講演】 小島明子氏 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 【事例発表】 荻野明子氏 アズビル株式会社 アズビル・アカデミー 学長 戸井浩氏 株式会社明治 人財開発部 DE&I 推進G 専任課長 宮島忠文氏 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役 【パネルディスカッション】 コーディネーター 小島 明子氏 パネリスト 発表者3名 お問合せ先 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 【P54】 「データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫」のご案内  JEEDでは、「データでみる70歳以上の定年・継続雇用制度の導入効果と工夫」を発行しました。本書は、2022(令和4)年度に高年齢者雇用状況報告にて70歳以上の定年年齢または希望者全員70歳以上の継続雇用制度(定年なしも含む)を導入する企業(配布は20,000社)を対象に行った調査結果をとりまとめた冊子であり、70歳以上の定年・継続雇用制度の導入理由・効果や65歳以降社員(59歳以下では正社員)の活用状況・活用上の工夫等の概況等を掲載しています。 【本書の構成】 1.政府統計からみる高齢化の状況と高齢者雇用の状況 2.定年制度・継続雇用制度の導入理由と効果・課題 3.65歳以降社員の雇用状況と評価 4.65歳以降社員の人事管理 (1)社員区分・人事評価 (2)仕事内容・労働時間 (3)賃金管理 5.人材活用上の工夫 ■定年制度・継続雇用制度の導入理由(単位%、N=6,349)  現行の制度を導入した理由を調査全体でみると、人手不足対応が約58%、高齢者の技術・技能の活用が約41%となっており、定年制別でみると、「定年なし・定年70歳以上」※では人手不足対応がわずかに高くなっています。 ※定年制を廃止した企業及び70歳以上の定年制度を導入している企業。 人員不足に対応するためである どちらかといえば、人員不足に対応 どちらかといえば、高齢者の優れた技術・技能の活用 高齢者の優れた技術・技能を活用するためである 無回答 全体(N=6349) 23.6% 34.5% 29.0% 12.2% 0.7% 定年なし・定年70歳以上(N=2091) 26.9% 33.0% 25.8% 13.1% 1.2% 定年65〜69歳以下&継続雇用70歳以上(N=3134) 23.0% 35.2% 29.8% 11.6% 0.4% 定年60〜64歳以下&継続雇用70歳以上(N=1124) 19.1% 35.7% 32.7% 12.3% 0.3% ■定年制度・継続雇用制度導入・選択の効果(単位%、E〜Gの集計母数は4,993社、それ以外は6,349社)  現在の制度を導入・選択した効果として、「高齢層が雇用の不安なしに安心して働けるようになった」(80.5%)、「人手を確保することができた」(78.7%)とする企業が多くなっています。 非常にあてはまる ある程度、あてはまる あまり、あてはまらない 全くあてはまらない 無回答 @人手を確保することができた 20.9% 57.8% 16.0% 4.2% 1.1% A貴社で働くことを希望する若手社員が増えた 0.8% 12.2% 50.4% 35.2% 1.4% B社外から貴社で働くことを希望する中堅・高齢の社員が増えた 2.9% 29.1% 42.4% 24.1% 1.5% C高齢層が雇用の不安なしに安心して働けるようになった 16.7% 63.8% 14.2% 4.1% 1.2% D若手社員や中堅社員の定着率が高まった 2.2% 27.2% 51.0% 18.3% 1.2% E「65歳以降社員」の仕事への意欲が高まった 5.0% 52.2% 35.9% 5.9% 1.0% F「65歳以降社員」が知識や経験を若者に伝えるようになった 5.1% 45.9% 40.6% 7.4% 0.9% G管理職が「65歳以降社員」を戦力として活用するようになった 8.0% 48.8% 34.1% 8.1% 1.0% H職場の生産性が向上した 2.7% 37.7% 48.2% 10.0% 1.4% I製品やサービスの品質、顧客満足度が向上した 2.0% 35.3% 50.2% 10.9% 1.6% 注:E〜Gは、「65歳以降社員」が在籍する企業のみ集計 ■65歳以降社員の評価(単位%、N=4,993)  「65歳以降社員」※※による専門能力・技術、知識、指導力の発揮状況をみると、「発揮している」37.1%、「ある程度、発揮している」53.9%となり、肯定的評価は全体の91.0%を占めています。 ※※:59歳以下では正社員として雇用し、65歳以降も正社員または非正社員として雇用する高齢者(役員や派遣・請負は除く)。 発揮している 37.1% ある程度、発揮している 53.9% あまり、発揮していない 7.4% 発揮していない 1.2% 無回答 0.5% お問合せ:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL 043-297-9528 【P55】 日本史にみる長寿食 FOOD 371 「赤まんま」で健康管理 食文化史研究家● 永山久夫 「小豆迎(あずきむか)え」の行事  昔は、神事などで神様をお迎えすることを「小豆迎え」といったものです。小豆はハレの日に、欠かすことのできない食材だったのです。  神様を勧請(かんじょう)するときの飯は、ふだんとは色の違うものにしなければ、神様に人間側の心が伝わりません。そこで太陽の光をあらわす赤い小豆を用いて、お赤飯にしたのです。  これを、神様をお迎えするときの飯という意味で、「勧請めし」とも呼びました。小豆の赤い色は、日本人にとって神聖な色であると同時に、流行病などに負けない疫病除けのパワーのこもった守護色でした。  神社の鳥居などが赤色(朱色)にしてあるのも、災いが入り込むのを防ぎ、穢(けが)れのない聖域を守るためといわれています。 「赤まんま」の時代  ついこの間まで、日本各地の農村には、毎月の1日と15日には、「赤まんま(赤飯)」と呼ぶ小豆ご飯を炊き、神様にお供えしてから、家族揃って食べる習慣がありました。  農作業などで、働きづめの疲れた体を元気にし、同時にインフルエンザなどにかからないように、免疫力を高めるための大切な行事だったのです。  1日と15日というと、旧暦では新月と満月にあたります。月の満ち欠けを目安に、小豆ご飯をちょうだいすることによって健康管理をする、長寿民族である日本人の知恵といってよいでしょう。  小豆には、疲労回復に役立つビタミンB1がたっぷりあります。  脳のエネルギー源はおもに、ご飯などに多い炭水化物ですが、そのスムーズな代謝に欠かせないのがビタミンB1です。情報化時代の勝者になるために大切なビタミンB1が、記憶力と卓越した発想力をもたらすのです。  ビタミンB1が不足すると、イライラしたり、無気力になったりするだけでなく、記憶力の低下につながりかねません。  小豆には、少量ですが抗酸化成分のアントシアニンも含まれ、老化を防いで若さを保つ強い作用があるといわれています。  そう、いまや「赤まんま」の時代が来たのです。 【P56-57】 Books 生産性向上への究極の仕事術!「眼前可視化」を今日から実践 とにかく可視化 −仕事と会社を変えるノウハウ− 菊池(きくち)明光(あきみつ) 著/新潮社/880円  会議や商談などでの会話は労働時間の多くを占めているが、本書の著者は、その効率が「圧倒的に悪いというのが企業の生産性に大きな影響を及ぼしている」と指摘する。会議をすると仕事をした気になる一方で、議論の流れが見える形になっていなければやらなかったことに等しく、「長いだけの議論」、「決めたはずが簡単に撤回される」といったモヤモヤだけが残る。また、人によって言葉の定義があいまいで、時間をかけて議論しても話が進まないとか、だれにも伝わっていない、ということもある。  この解決策として「眼前可視化」を提案し、ノウハウを紹介しているのが本書である。「眼前可視化」は会議や商談時、目の前でやり取りしている内容のメモを取り共有して、議論を可視化しつつ進行していく。一見シンプルな術だが、著者がコンサルタントとして支援する企業から「生産性向上への一丁目一番地」と納得され、採用されているという。最大のメリットは、共通言語化できること。「いった、いわない」のトラブルや無駄がなくなり、仕事と会社を大きく変えるという。企業規模や業種を問わず、会議の進行や顧客とのやり取りについて、仕事術を向上させるヒントがつかめる内容である。 「DXって何だっけ?」、「つまずいて休止中…」そんなあなたも、みるみるわかる! いちばんやさしいDXの教本 改訂2版 人気講師が教える ビジネスを変革するAI時代のIT戦略 亀田(かめだ)重幸(しげゆき) 著、進藤(しんとう)圭(けい) 著/インプレス/2090円  DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織、企業文化・風土を変革して新たな価値創出につなげることを意味する。経済産業省が2018(平成30)年に「DX推進ガイドライン」を発表してから6年が経ち、この間、テレワークの浸透や生成AIの登場などによりDXの重要性は高まるものの、理解が追いつかないとか、何をどう始めたらうまくいくのかわからない、という声も聞こえてくる。  本書は、DXに興味があり初めて学ぶ人やアナログの業務を効率化したい人から、企業内でどうすればDXを実現できるのかを知りたい人、あるいは、DX化にチャレンジしたがつまずいてしまったという人まで、専門知識がなくても読み進められる、文字通り「いちばんやさしい教本」である。今回は、2020(令和2)年に発売した同タイトルの書籍の改訂版で、生成AIを活用したDXを進めるノウハウを含め、取り組む際の参考になる先進事例を追加している。  DXを理解し、まずは身近なアナログの業務をデジタル化するところから、DXを実現するノウハウを一つずつ学ぶことができる。 信念に基づきつつも、柔軟に。85歳の大企業元社長が綴る、人生の歩き方 老いた今だから 丹羽(にわ)宇一郎(ういちろう) 著/講談社/1034円  著者は、有名企業の元社長・会長であり、2010(平成22)年には民間出身では初の駐中国大使になった。その後も数々の重責をにない、仕事中心の人生を歩んできた。  本書は、85歳を迎えた著者が、「老いた今」だからこそ感じる、これからの人生の歩き方、日々の味わい方、楽しみ方を綴った一冊。  著者の経歴と85歳という年齢から、近寄りがたいイメージを持つ人もいるかもしれないが、読み始めてすぐ、その思いはよい意味で裏切られる。「格好をつけるなど『嘘』の事物はいっさいありません」と著者が書いているように、正直な思いが凝縮された内容であるからだろうか。  特に興味深いのは、高齢でも現役でバリバリ働いている人たちの紹介や、仕事はあるがマッチングが進まないシニアの仕事事情、起業を考えるなら「一人では何もできない」と知っておくこと、地域の一住民として生きていく以上は自分を変えていく勇気が必要……、など定年退職後の仕事や地域で活動することについての著者の柔軟な思考だ。また、自分の信念に基づいてベストを尽くした結果に「良い、悪い」はないと信じて生きてきて、いまもそれは変わらないと明かす。ポジティブに生きる手本になる。 33人の書き手による、十人十色の「休み」にまつわるエッセイ集 休むヒント。 群像編集部 編/講談社/1430円  「休日の過ごし方がわからない」、「かえって不調になってしまう」など、休むことがうまくできていない人は少なくないようだ。書店に行くと、休み方をテーマにした本がたくさん並んでいる。  本書は、小説家、ライター、声優、詩人、音楽家、イラストレーター、タレントなど多様なジャンルと年代の33人の書き手による「休み」にまつわるエッセイ集。文芸誌『群像』(2024〈令和6〉年1月号)に掲載された作品を中心にまとめた。  休み方のノウハウを紹介する内容ではなく、 「休み」に対する考えや自分なりの休み方、若いときと中高年になってからの感じ方の違いなど十人十色の「休み」が詰まっている。武田(たけだ)砂鉄(さてつ)さんの「一般的な基準で『休み』を考える必要はない」、永井(ながい)玲衣(れい)さんの「休息としてのセルフケアは、人間らしさを取り戻すこと」などユニークな視点や多彩な言葉から、「休み」を考えることは人生を考えることだと気づかされたり、書き手の著作を読みたくなったり。読む人それぞれに得るヒントがある一冊となっている。  うまく休めていないと感じている人をはじめ、定年後の継続雇用などで働き方が変わった、もしくは体調を崩して「これからは休みを大事に考えたい」と思っている人にもおすすめしたい。 年齢とともに「眠り」も変わる。快眠のコツでスヤスヤ幸せ 50歳からのこれでグッスリ!!眠りの習慣 保坂(ほさか)隆(たかし) 著/小学館/1595円  寝つきが悪い、夜中に何度も目覚める、眠りが浅く十分に眠った気がしないなど、人によって睡眠の悩みは異なるが、本書によると、年を重ねると体調全般が変化するように眠り方も変化し、長く眠るパワーが減ってくるという。  そうした変化は「自然なことだ」と大らかに受けとめるのがよいと、精神科医で、睡眠や中高年世代に向けた著書も多い著者は書いている。しかし、60歳以上の3人に1人が不眠に悩んでいるという報告があり、適切なケアが必要と考えてまとめられたのが本書である。  5章立ての第1章では、年齢によってなぜ眠りの質が変わるのかを探るとともに、「睡眠負債」や睡眠と認知症のかかわりなどについて説明。第2章からは、睡眠の悩みを解消し快適に眠るコツを、生活習慣や考え方、食べ物、心身のリラックス法、睡眠の環境づくりなど多方面から具体的にアドバイスする。例えば、正午から午後4時までの間に20分ほどの仮眠を取ることは、午後の仕事の効率をあげるほか、認知症予防の観点からもおすすめだという。  生涯現役を目ざすうえでも、健やかな睡眠は大切だ。本書から自分に合った眠りの質を高める方法を見つけ、実践してみてはどうか。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 2023年度「過労死等の労災補償状況」を公表  厚生労働省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況についてまとめた、2023(令和5)年度「過労死等の労災補償状況」を公表した。  それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は1023件で、前年度と比べ220件増加した。また、「業務上疾病」と認定されたのは216件(当該年度内に「業務上」と認定された件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。以下同じ)で、前年度と比べ22件増加した。請求件数、業務上認定件数ともに2年連続の増加となった。年齢別にみると、請求件数は「50〜59歳」404件、「60歳以上」363件、「40〜49歳」203件の順で多く、支給決定件数は「50〜59歳」96件、「60歳以上」54件、「40〜49歳」53件の順に多くなっている。  次に、精神障害についてみると、労災請求件数は3575件で、前年度と比べ892件増加した。また、「業務上」と認定されたのは883件で、前年度と比べ173件増加している。請求件数は3年連続の増加、業務上認定件数は5年連続の増加となった。なお、精神障害にかかわる労災請求事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至った事案があるが、2023年度は3575件中212件(うち「業務上」と認定79件)となっている。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40975.html 厚生労働省 「2023年簡易生命表の概況」を公表  厚生労働省は、「2023(令和5)年簡易生命表の概況」を公表した。この概況は、2023年1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定したとき、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標で表したもの。0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したもので、保健福祉水準を総合的に示す指標となっている。  平均寿命は男が81.09年(前年81.05年)、女が87.14年(同87.09年)となり、いずれも3年ぶりに前年を上回っている。前年との差を死因別にみると、男女とも悪性新生物(腫瘍)、新型コロナウイルス感染症などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いている。一方、男女とも老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮めている。  男女それぞれ10万人の出生に対して65歳の生存数は、男8万9524人、女9万4371人となっている。これは65歳まで生存する者の割合が、男は89.5%、女は94.4%であることを示している。同様に、75歳まで生存する者の割合は、男75.3%、女87.9%、90歳まで生存する者の割合は男26.0%、女50.1%となっている。  生命表上で、出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される「寿命中位数」をみると、男83.99年、女90.02年となっており、男は2.90年、女は2.88年平均寿命を上回っている。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/ 厚生労働省 「2023年度雇用均等基本調査」結果を公表  厚生労働省は、「2023(令和5)年度雇用均等基本調査」の結果の概要を公表した。「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的としており、2023(令和5)年度は、全国の企業と事業所の管理職等に占める女性の割合や、育児休業制度、多様な正社員制度の実施状況などについて、昨年10月1日現在の状況を調査してまとめている。 【企業調査】 ◇係長相当職以上の女性管理職等を有する企業の役職別の割合は、部長相当職ありの企業は12.1%(前年度12.0%)、課長相当職ありの企業は21.5%(同22.3%)、係長相当職ありの企業は23.9%(同22.9%)。 ◇管理職に占める女性の割合は、部長相当職では7.9%(前年度8.0%)、課長相当職では12.0%(同11.6%)、係長相当職では19.5%(同18.7%)。 【事業所調査】 ◇多様な正社員制度の実施状況は、「勤務できる(制度が就業規則等で明文化されている)」が23.5%(前年度24.1%)。制度ごとの状況(複数回答)は、「短時間正社員」17.0%(前年度16.8%)、「勤務地限定正社員」14.6%(同15.4%)。 ◇同制度を利用した者がいた事業所の割合は、「短時間正社員」34.8%(前年度32.6%)、「勤務地限定正社員」48.6%(同44.8%)。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html 厚生労働省 2023年「労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」を公表  厚生労働省は、2023(令和5)年「労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」をまとめた。  調査は、労働災害防止計画における重点施策を策定するための基礎資料を得ることなどを目的に、事業所が行っている安全衛生管理、労働災害防止活動とそこで働く労働者の仕事や職業生活における不安やストレスなどの実態について、常用労働者10人以上の民営事業所約1万4000事業所とそこで働く労働者および受け入れた派遣労働者約1万8000人を対象に実施した。  事業所調査の「高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組状況」をみると、60歳以上の労働者が業務に従事している事業所のうち、エイジフレンドリーガイドライン(「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」)を知っている事業所の割合は23.1%。うち、高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる事業所の割合は19.3%となっている。  このうち、高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取組み内容(複数回答)をみると、「高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(高齢者一般に見られる持久性、筋力の低下等を考慮した高年齢労働者向けの作業の見直し)」が56.5%と最も多く、次いで「個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応(健康診断や体力チェックの結果に基づく運動指導や栄養指導、保健指導などの実施など)」が45.9%となっている。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50b.html 調査・研究 介護労働安定センター 2023年度「介護労働実態調査」結果を公表  公益財団法人介護労働安定センターは、2023(令和5)年度「事業所における介護労働実態調査(事業所調査)」、「介護労働者の就業実態と就業意識調査(労働者調査)」の結果を公表した。  事業所調査の結果から、従業員の過不足状況をみると、「大いに不足」12.1%、「不足」21.9%、「やや不足」30.7%で、これらの合計は64.7%となっており、前年度(66.3%)より減少している。職種別でみると、訪問介護員の不足感の合計が81.4%(前年度83.5%)で最も高く、次いで介護職員は65.9%(同69.3%)となっている。  労働者調査の結果から、働き続けるうえで役立っている職場の取組み(複数回答)についてみると、「ハラスメントのない人間関係のよい職場づくりをしている」が37.8%で最も多く、「仕事の内容は変えずに、労働時間や労働日を本人の希望で柔軟に対応している」35.9%などが続いている。これを年齢層別でみると、60歳以上の高い年齢層では、「仕事の内容は変えずに、労働時間や労働日を本人の希望で柔軟に対応している」、「職場のミーティング等で、介護の質を高めるための価値観や行動基準を共有している」、「ハラスメントのない人間関係のよい職場づくりをしている」、「現場の裁量で自分たちの創意工夫を活かせられる」などの回答率が高くなっている。 https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai 日本生産性本部 「第15回働く人の意識に関する調査」結果を公表  公益財団法人日本生産性本部は、新型コロナウイルス感染症が組織で働く人の意識に及ぼす影響の継続調査「第15回働く人の意識に関する調査」結果を発表した。  今回は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約1年2カ月が経過した2024年7月、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている1100人を対象に実施した。  調査結果から、テレワークの実施率についてみると、過去最低であった前回1月調査の14.8%から微増し、16.3%。従業員規模別では、1001人以上の勤め先で前回1月調査の29.4%から26.7%へと減少した。一方で、100人以下は同9.4%から10.9%に微増、101〜1000人では同13.4%から17.7%へと増加した。  年代別のテレワーク実施率は、30代が23.3%と前回1月調査13.7%より増加、20代も14.3%と同13.9%より微増した一方で、40代以上は14.8%と同15.4%より減少している。  テレワーカーの週あたり出勤日数は、「3日以上」が前回1月調査50.3%から57.0%に増加となっている。「0日」は同18.4%から16.2%へと減少している。  テレワークの大多数を占める自宅での勤務につて、「効率が上がった」、「やや上がった」の合計は、前回1月調査70.2%から78.9%へと増加し、過去最高となっている。 https://www.jpc-net.jp/research/detail/006970.html 【P60】 次号予告 11月号 特集 令和6年度 高年齢者活躍企業コンテスト 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰受賞企業事例から リーダーズトーク 田中良昌さん(大東建託株式会社 取締役 上席執行役員 業務本部長) JEEDメールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み 株式会社労働調査会までご連絡ください。 電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方 Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS 株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 編集後記 ●9月13日に、厚生労働省と当機構(JEED)が主催する「令和6年度高年齢者活躍企業コンテスト」の受賞企業が発表されました。本誌では、今号と次号の2回に分けて、受賞企業の取組みをご紹介します。最優秀賞を受賞した株式会社植松建設のように長い間、地域に根ざし貢献してきた企業から、創業からの歴史は浅いながらも高齢社員を活用し、地域の雇用・社会を支える会社まで、多くの企業からご応募いただきました。いずれの企業でも、高齢社員が長い職業経験のなかでつちかってきた知識や技術、経験を活かし、事業の最前線で、あるいは次世代へのノウハウの継承などを行いながら活躍しています。  受賞企業の多彩な取組みを参考に、ぜひ読者のみなさまが働く職場でも、高齢社員が活き活き働ける職場づくりに取り組んでいただければ幸いです。 ●10月は「高年齢者就業支援月間」です。JEEDでは「地域ワークショップ」や「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を開催します。詳しくはJEED ホームページ等をご覧ください。 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー10月号 No.539 ●発行日−−令和6年10月1日(第46巻 第10号 通巻539号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200  (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170−0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86788-041-8 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.344 伝統技法を守りながら美しい色と柄を追求 型染め・紅型(びんがた)作家 山本(やまもと)加代子(かよこ)さん(77歳) 「体験教室では、『紅型染めとはこういうものなんだ』としっかり記憶に 残るように、本格的な体験をしていただけるよう心がけています」 「染(そめ)の街」新宿で紅型染めの工房を営む  東京都新宿区の落合・中井界隈は、昭和30年代まで染色関連業が集積し、京都や金沢と並ぶ染色の三大産地だった。そんな「染の街」には、現在も染色にかかわる工房が点在している。紅型作家、山本加代子さんの「おかめ工房」もその一つ。作品をつくるかたわら、紅型染めの教室を主宰している。  紅型は沖縄の伝統的な染色技法で、「紅」は色全般を、「型」は模様や柄を表している。鉱物などから採取された顔料を用いた、鮮やかな色合いが特徴だ。紅型染めの伝統技法を守りながら、現代風の洗練されたデザインを追求する山本さんは、自身の作風を「モダン紅型」と名づけている。  「沖縄の紅型とは少し違い、私は東京で暮らす自分の感性を大事にしています。江戸時代に流行した『雀(すずめ)の羽色(はいろ)』という言葉があります。すずめの羽は白と茶色ですが、そのなかに少しだけ赤を入れるのが江戸の粋と考えられていました。そんな紅型を目ざしていますが、なかなかむずかしいですね(笑)」  紅型との出会いは約40年前。友人に誘われて紅型染めの教室に行ってみたところ、色の美しさに魅了されて習い始めた。1991(平成3)年に染色作家としての活動を開始。以来、伝統技法による作品づくりと教室などを通じて紅型の普及に努めてきた功績が評価され、2023(令和5)年には東京マイスターに認定された。 型紙づくりから表装まで全工程を一人で手がける  現代の染色では化学染料の使用が主流だが、山本さんは昔から紅型染めに使用されてきた天然の顔料にこだわっている。  「私が紅型の色に魅了された理由は顔料にありました。顔料は発色がきれいで、同時に心が安らぐ色でもあります」  顔料ならではの、むずかしさもある。顔料は水や油では溶けないため、大豆を絞ってつくった「呉汁(ごじる)」で溶いて使うことで発色・定着させる。呉汁で溶いて思い通りの濃淡を出すには、ある程度の経験が必要になる。また、顔料は固体のため、しっかり溶いて塗らないと後でムラになりやすい。  紅型染めの工程は「糊置(のりお)き」から始まる。図柄が彫られた型紙を生地に敷き、その上から糊を刷毛(はけ)でまんべんなく置いていく。糊を置いた部分には顔料がつかない。糊置きがしっかりできていないときれいに染まらないため、大事な工程だ。その後の染色は3回に分けて行われる。一度塗りでは全体的に色を薄く塗り、二度塗りでより濃い色を塗ることで発色が強まる。そして三度塗りでは、紅型の特徴の一つである「隈取(くまど)り」を行う。  「最もむずかしいのが隈取りです。はっきりと色分けせず、濃い色を部分的に重ねてグラデーションにすることで立体感を表現します」  最後に色落ち止めの「みょうばん」をかけて、色が定着してから糊を落として完成となる。なお、山本さんは型紙も自分で彫ってつくっている。さらに、表装技能士の資格を持っており、染め上がった生地をかけ軸にすることもある。 さまざまな活動を通じて紅型の魅力を伝えていく  落合・中井地区では、2009年から毎年2月に「染(そめ)の小道」というイベントを開催している。山本さんはこのイベントに初回から、展示や実演、トークショー、体験講座などを通じて紅型染めの魅力を発信している。このイベントにたずさわるようになってから、山本さんの教室の生徒も増えたそうだ。  「子どものころから絵描きと教師になることが夢で、紅型を通じて両方かなえられた気がします。作品ができて生徒さんに喜んでいただけるのはうれしいものです」  また、紅型染めのインテリア製品やかばんなど、和装以外の作品づくりにも挑戦し、紅型のさらなる可能性を追求している。  「いまや着物も染色ではなくプリントが増えてきました。天然の材料を使った紅型染めの文化が失われないよう、いろいろな方法で伝え続けていきたいと思います」 おかめ工房 TEL:090−8043−2758 (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) おかめ工房Webサイト https://www.okamekobo.jp おかめ工房Instagram https://Instagram.com/okamekobo/ 写真のキャプション 糊置きした生地に顔料を塗っていく。まだ一度塗りのため、全体に淡い色合いになっている。顔料を使って思い通りの色に染めるには、経験が必要だという 粉末や棒状の顔料を、大豆を絞ってつくった呉汁で溶いて濃淡を調整する。生地を染める際は、さまざまな太さの「すり込み刷毛」を使う 帯の見本をつくっている生徒さんにアドバイス。生地を染める際は、まず見本をつくり、あらかじめ配色を決めてから本番に臨む 工房の入口にかかる 「のれん」も山本さんの作品。鮮やかでありながら心安らぐ色合いが、山本さんの作風といえる 和装のほか、ランプシェードなどのインテリア製品やかばん、小物などもつくり、「モダン紅型」の可能性を追求している 紅型染めの帯と、その基となった 型紙。渋紙に図柄を彫り、紗張(しゃば)りした型紙は、かつては専門の職人がになう分野だったが、現在は職人がほとんどいなくなり、山本さんが自分でつくっている 花びらや葉の先端、流水などの色の濃い部分が「隈」。部分的に濃い色をグラデーションになるように重ねる隈取りは重要でむずかしく、「隈が命」といわれるほど 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  最近、加齢による身体機能の低下は44歳ころと60歳ころに加速するという研究成果が報道されました。何かを記憶しながら知的作業をするワーキングメモリ(作業記憶)の力も同様で、18〜25歳をピークに40歳ころと60歳ころに大きく低下するといわれています。一方で、ワーキングメモリを使うトレーニングでその力が改善しやすいことも知られています。今回のブドウ算でワーキングメモリを鍛えましょう。 第88回 ブドウ算 目標3分 例のように、となり合った数字を足して、その下一桁を線で結ばれた○の中に記入しましょう。例えば、足した数が8ならばそのまま8を、17ならば下一桁の数の7を記入します。 いちばん上、またはいちばん下にたどり着くまでくり返し足していきましょう。 例 1 2 3 4 5 3 5 7 9 8 2 6 0 8 8 4 2 3 1 7 ○○○○ ○○○ ○○ ○ ○ ○○ ○○○ ○○○○ 5 7 4 9 3 ○ ○○ ○○○ ○○○○ 9 2 5 3 4 「脳のメモ」には限界がある  今回の脳トレ課題や、これまでのワーキングメモリ課題を体験してきたみなさんなら、何となくわかってきたと思いますが、脳のメモには限界があります。  何かを覚えた後でする作業が、一つ、二つなら何とかなります。しかし、三つ、四つと重なってくると厳しいのではないでしょうか。  実際に、私たちの脳のメモはせいぜい3枚か4枚程度であり、「あのこと」、「このこと」、「そのこと」くらいは同時処理や入れ子処理(アレしてからコレして、またアレする…といった処理)は可能です。しかし、それを超えてしまうと、いっぱいいっぱいになり、残りはカッコにくるんで棚上げしておくのが限度です。  したがって、ワーキングメモリトレーニングの目的は、このメモ帳の枚数を増やすことではありません。3枚程度の脳のメモを、きちんと使えるようにしておくことです。  本当のメモや電子メモを併用しながらも、脳のメモもしっかり使えるようにしておくことが大切です。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 4 2 3 1 7 6 5 4 8 1 9 2 0 1 1 6 7 9 3 4 5 2 1 3 2 5 7 4 9 3 3 3 0 8 5 5 1 7 8 7 9 2 5 3 4 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2024年10月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価503円(本体458円+税) 高年齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム  改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされ、高年齢者の戦力化について各企業においてさまざまな施策が展開されています。  生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムでは各企業の人事担当者の方々の関心が高いテーマごとに、講演や事例発表、パネルディスカッション等を実施し、高年齢者の活躍促進にむけた展望について、みなさまとともに考えます。 参加方法 ライブ視聴(※事前申込制・先着500名) 参加費 無料 申込方法 以下のURL へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html ○10月10日(木)14:00〜16:30 「ジョブ型」人事から考える〜シニア人材の戦力化 【出演者】 今野浩一郎 氏…学習院大学名誉教授 谷圭一郎氏 株式会社資生堂 人財本部 変革推進グループ マネージャー 神山靖基氏 株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部 ジョブ型人財マネジメント推進プロジェクト シニアプロジェクトマネージャ 廣川英樹氏 三菱マテリアル株式会社 人事労政室 室長 ○10月25日(金)14:00〜16:30 役職定年見直し企業から学ぶシニア人材の戦力化 【出演者】 大木栄一氏 玉川大学 経営学部国際経営学科 教授  佐治正規氏 ダイキン工業株式会社 常務執行役員 人事 担当 人事本部長 委嘱 菊岡大輔氏 大和ハウス工業株式会社 経営管理本部 人財・組織開発部長 中村幸正氏 株式会社リコー 人事総務部 C&B室 室長 ○11月28日(木)14:00〜16:30 ミドルシニアのキャリア再構築〜リスキリングの重要性と企業の戦略 【出演者】 小島明子氏 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 宮島忠文氏 株式会社社会人材コミュニケーションズ 代表取締役CEO社長 中小企業診断士、MBA(社会的企業のビジネスモデル研究) 荻野明子氏 アズビル株式会社 アズビル・アカデミー 学長 戸井浩氏 株式会社明治 人財開発部 DE&I 推進G 専任課長 2024 10 令和6年10月1日発行(毎月1回1日発行) 第46巻第10号通巻539号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)〈発売元〉労働調査会