日本史にみる長寿食 FOOD 371 「赤まんま」で健康管理 食文化史研究家● 永山久夫 「小豆迎(あずきむか)え」の行事  昔は、神事などで神様をお迎えすることを「小豆迎え」といったものです。小豆はハレの日に、欠かすことのできない食材だったのです。  神様を勧請(かんじょう)するときの飯は、ふだんとは色の違うものにしなければ、神様に人間側の心が伝わりません。そこで太陽の光をあらわす赤い小豆を用いて、お赤飯にしたのです。  これを、神様をお迎えするときの飯という意味で、「勧請めし」とも呼びました。小豆の赤い色は、日本人にとって神聖な色であると同時に、流行病などに負けない疫病除けのパワーのこもった守護色でした。  神社の鳥居などが赤色(朱色)にしてあるのも、災いが入り込むのを防ぎ、穢(けが)れのない聖域を守るためといわれています。 「赤まんま」の時代  ついこの間まで、日本各地の農村には、毎月の1日と15日には、「赤まんま(赤飯)」と呼ぶ小豆ご飯を炊き、神様にお供えしてから、家族揃って食べる習慣がありました。  農作業などで、働きづめの疲れた体を元気にし、同時にインフルエンザなどにかからないように、免疫力を高めるための大切な行事だったのです。  1日と15日というと、旧暦では新月と満月にあたります。月の満ち欠けを目安に、小豆ご飯をちょうだいすることによって健康管理をする、長寿民族である日本人の知恵といってよいでしょう。  小豆には、疲労回復に役立つビタミンB1がたっぷりあります。  脳のエネルギー源はおもに、ご飯などに多い炭水化物ですが、そのスムーズな代謝に欠かせないのがビタミンB1です。情報化時代の勝者になるために大切なビタミンB1が、記憶力と卓越した発想力をもたらすのです。  ビタミンB1が不足すると、イライラしたり、無気力になったりするだけでなく、記憶力の低下につながりかねません。  小豆には、少量ですが抗酸化成分のアントシアニンも含まれ、老化を防いで若さを保つ強い作用があるといわれています。  そう、いまや「赤まんま」の時代が来たのです。