Books 生産性向上への究極の仕事術!「眼前可視化」を今日から実践 とにかく可視化 −仕事と会社を変えるノウハウ− 菊池(きくち)明光(あきみつ) 著/新潮社/880円  会議や商談などでの会話は労働時間の多くを占めているが、本書の著者は、その効率が「圧倒的に悪いというのが企業の生産性に大きな影響を及ぼしている」と指摘する。会議をすると仕事をした気になる一方で、議論の流れが見える形になっていなければやらなかったことに等しく、「長いだけの議論」、「決めたはずが簡単に撤回される」といったモヤモヤだけが残る。また、人によって言葉の定義があいまいで、時間をかけて議論しても話が進まないとか、だれにも伝わっていない、ということもある。  この解決策として「眼前可視化」を提案し、ノウハウを紹介しているのが本書である。「眼前可視化」は会議や商談時、目の前でやり取りしている内容のメモを取り共有して、議論を可視化しつつ進行していく。一見シンプルな術だが、著者がコンサルタントとして支援する企業から「生産性向上への一丁目一番地」と納得され、採用されているという。最大のメリットは、共通言語化できること。「いった、いわない」のトラブルや無駄がなくなり、仕事と会社を大きく変えるという。企業規模や業種を問わず、会議の進行や顧客とのやり取りについて、仕事術を向上させるヒントがつかめる内容である。 「DXって何だっけ?」、「つまずいて休止中…」そんなあなたも、みるみるわかる! いちばんやさしいDXの教本 改訂2版 人気講師が教える ビジネスを変革するAI時代のIT戦略 亀田(かめだ)重幸(しげゆき) 著、進藤(しんとう)圭(けい) 著/インプレス/2090円  DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織、企業文化・風土を変革して新たな価値創出につなげることを意味する。経済産業省が2018(平成30)年に「DX推進ガイドライン」を発表してから6年が経ち、この間、テレワークの浸透や生成AIの登場などによりDXの重要性は高まるものの、理解が追いつかないとか、何をどう始めたらうまくいくのかわからない、という声も聞こえてくる。  本書は、DXに興味があり初めて学ぶ人やアナログの業務を効率化したい人から、企業内でどうすればDXを実現できるのかを知りたい人、あるいは、DX化にチャレンジしたがつまずいてしまったという人まで、専門知識がなくても読み進められる、文字通り「いちばんやさしい教本」である。今回は、2020(令和2)年に発売した同タイトルの書籍の改訂版で、生成AIを活用したDXを進めるノウハウを含め、取り組む際の参考になる先進事例を追加している。  DXを理解し、まずは身近なアナログの業務をデジタル化するところから、DXを実現するノウハウを一つずつ学ぶことができる。 信念に基づきつつも、柔軟に。85歳の大企業元社長が綴る、人生の歩き方 老いた今だから 丹羽(にわ)宇一郎(ういちろう) 著/講談社/1034円  著者は、有名企業の元社長・会長であり、2010(平成22)年には民間出身では初の駐中国大使になった。その後も数々の重責をにない、仕事中心の人生を歩んできた。  本書は、85歳を迎えた著者が、「老いた今」だからこそ感じる、これからの人生の歩き方、日々の味わい方、楽しみ方を綴った一冊。  著者の経歴と85歳という年齢から、近寄りがたいイメージを持つ人もいるかもしれないが、読み始めてすぐ、その思いはよい意味で裏切られる。「格好をつけるなど『嘘』の事物はいっさいありません」と著者が書いているように、正直な思いが凝縮された内容であるからだろうか。  特に興味深いのは、高齢でも現役でバリバリ働いている人たちの紹介や、仕事はあるがマッチングが進まないシニアの仕事事情、起業を考えるなら「一人では何もできない」と知っておくこと、地域の一住民として生きていく以上は自分を変えていく勇気が必要……、など定年退職後の仕事や地域で活動することについての著者の柔軟な思考だ。また、自分の信念に基づいてベストを尽くした結果に「良い、悪い」はないと信じて生きてきて、いまもそれは変わらないと明かす。ポジティブに生きる手本になる。 33人の書き手による、十人十色の「休み」にまつわるエッセイ集 休むヒント。 群像編集部 編/講談社/1430円  「休日の過ごし方がわからない」、「かえって不調になってしまう」など、休むことがうまくできていない人は少なくないようだ。書店に行くと、休み方をテーマにした本がたくさん並んでいる。  本書は、小説家、ライター、声優、詩人、音楽家、イラストレーター、タレントなど多様なジャンルと年代の33人の書き手による「休み」にまつわるエッセイ集。文芸誌『群像』(2024〈令和6〉年1月号)に掲載された作品を中心にまとめた。  休み方のノウハウを紹介する内容ではなく、 「休み」に対する考えや自分なりの休み方、若いときと中高年になってからの感じ方の違いなど十人十色の「休み」が詰まっている。武田(たけだ)砂鉄(さてつ)さんの「一般的な基準で『休み』を考える必要はない」、永井(ながい)玲衣(れい)さんの「休息としてのセルフケアは、人間らしさを取り戻すこと」などユニークな視点や多彩な言葉から、「休み」を考えることは人生を考えることだと気づかされたり、書き手の著作を読みたくなったり。読む人それぞれに得るヒントがある一冊となっている。  うまく休めていないと感じている人をはじめ、定年後の継続雇用などで働き方が変わった、もしくは体調を崩して「これからは休みを大事に考えたい」と思っている人にもおすすめしたい。 年齢とともに「眠り」も変わる。快眠のコツでスヤスヤ幸せ 50歳からのこれでグッスリ!!眠りの習慣 保坂(ほさか)隆(たかし) 著/小学館/1595円  寝つきが悪い、夜中に何度も目覚める、眠りが浅く十分に眠った気がしないなど、人によって睡眠の悩みは異なるが、本書によると、年を重ねると体調全般が変化するように眠り方も変化し、長く眠るパワーが減ってくるという。  そうした変化は「自然なことだ」と大らかに受けとめるのがよいと、精神科医で、睡眠や中高年世代に向けた著書も多い著者は書いている。しかし、60歳以上の3人に1人が不眠に悩んでいるという報告があり、適切なケアが必要と考えてまとめられたのが本書である。  5章立ての第1章では、年齢によってなぜ眠りの質が変わるのかを探るとともに、「睡眠負債」や睡眠と認知症のかかわりなどについて説明。第2章からは、睡眠の悩みを解消し快適に眠るコツを、生活習慣や考え方、食べ物、心身のリラックス法、睡眠の環境づくりなど多方面から具体的にアドバイスする。例えば、正午から午後4時までの間に20分ほどの仮眠を取ることは、午後の仕事の効率をあげるほか、認知症予防の観点からもおすすめだという。  生涯現役を目ざすうえでも、健やかな睡眠は大切だ。本書から自分に合った眠りの質を高める方法を見つけ、実践してみてはどうか。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します