TOPIC 「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」 株式会社パーソル総合研究所  政府が2023(令和5)年6月下旬に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」にて、「三位一体の労働市場改革」が掲げられました。その具体的施策の一つが「リスキリングによる能力向上支援」。リスキリング・学び直しにより、自らのキャリアを選択するための能力を磨いていくことが求められる時代がすぐそこまできています。高齢化が進む日本の労働市場においては、ミドル・シニアがリスキリング・学び直しを行うための支援や制度も重要となります。  そこで今回は、パーソル総合研究所が2023年3月に行った「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」の結果のなかから、一部を抜粋して紹介します。 ミドル・シニアの学び直しタイプの割合  ミドル・シニア就業者の中で、学び直しをしている「学び直し層」は14.4%。趣味の学習だけしている「趣味学習層」は8.2%。学び直す意欲はあるが学んでいることはない「口だけ層」が29.8%を占める(図表1)。 図表1 ミドル・シニアの学び直しタイプの割合 全体n=36,537 (スクリーニング調査) 学び直し層14.4% 学び直しをしている 学び直し積極層12.7% 自ら学び直す意欲がある やむなく学び直し層1.7% 自ら学び直す意欲がない 趣味学習層8.2% 趣味の学習だけしている 意欲あり趣味層6.4% 自ら学び直す意欲がある 意欲なし趣味層1.8% 自ら学び直す意欲がない 非学習層77.3% 特に学んでいることはない 口だけ層29.8% 自ら学び直す意欲がある 不活性層47.5% 自ら学び直す意欲がない 学び直しタイプ割合[就業終了希望年齢別]  希望する就業終了年齢(働くことを終えたい年齢)が高いほど、「学び直し層」が増加。「70歳以上」まで働きたいミドル・シニア就業者の19.3%が、学び直しを実行する一方、「口だけ層」も増加(図表2)。 図表2 学び直しタイプ割合[就業終了希望年齢別] 全体n=9,000 就業終了希望年齢 ( )はn数 〜60歳まで働きたい (2,603) 学び直し層12.5% 趣味学習層8.0% 口だけ層26.8% 不活性層52.7% 61〜65歳まで (2,708) 学び直し層12.1% 趣味学習層7.1% 口だけ層27.9% 不活性層52.9% 66〜70歳まで (1,677) 学び直し層15.4% 趣味学習層8.2% 口だけ層31.8% 不活性層44.6% 70歳以上 (2,012) 学び直し層19.3% 趣味学習層9.9% 口だけ層34.8% 不活性層35.9% 現在の年齢別学び直し実施率 学び直し実施率(%) 就業終了希望年齢 〜60歳まで働きたい 61〜65歳まで 66〜70歳まで 70歳以上 35−44歳(2,568) 14.2 19.1 24.4 23.3 45−54歳(2,978) 13.4 13.7 17.1 19.7 55−64歳 (3,454) 6.3 8.4 10.5 16.3 ※性別、年代、雇用形態、業種、職種、企業規模、年収の影響を除去しても、就業終了希望年齢が学び直しの実行を促進(0.1%水準で有意、二項ロジスティック回帰分析) 学び直しの種類  学び直し層のうち、「本業に関する学習」は71.1%が、「本業以外の仕事やキャリアに関する学習」は47.0%が実行。ミドル・シニア就業者の学び直しは、現在の仕事に関する「アップスキリング」が多い傾向(図表3)。 図表3 学び直しの種類 全体 本業(現在の仕事)に関する学習 71.1 本業以外の仕事やキャリアに関する学習 47.0 両方実行 18.0 年代別 学び直し層n=5,277 () (スクリーニング調査) 本業(現在の仕事)に関する学習 35〜39歳(962) 71.1% 40〜44歳(1049) 71.2% 45〜49歳(1030) 70.6% 50〜54歳(882) 71.4% 55〜59歳(736) 69.4% 60〜64歳(619) 73.0% 本業以外の仕事やキャリアに関する学習 35〜39歳(962) 53.6% 40〜44歳(1049) 48.5% 45〜49歳(1030) 45.1% 50〜54歳(882) 44.0% 55〜59歳(736) 46.9% 60〜64歳(619) 41.6% 両方実行 35〜39歳(962) 24.6% 40〜44歳(1049) 19.8% 45〜49歳(1030) 15.7% 50〜54歳(882) 15.4% 55〜59歳(736) 16.3% 60〜64歳(619) 14.6% ※ここでは、「リスキリング」とは仕事のデジタル化において必要となるスキルの習得に限定していない 学び直し肯定意識  ミドル・シニア就業者の70.1%が、「何歳になっても学び続ける必要がある時代だ」に対して肯定的に回答。過半数を超えるミドル・シニア就業者が、学び直しの「必要性」や「意義」そのものは肯定的にとらえている(図表4)。 図表4 学び直し肯定意識 Q.あなたは、仕事やキャリアに関する学び直しについて、どのようにお考えですか。 全体n=9,000 何歳になっても学び続ける必要がある時代だ あてはまる 17.9% ややあてはまる 52.2% あてはまる・ややあてはまる 計70.1% ややあてはまらない 22.3% あてはまらない 7.6% 学び直しは将来のキャリアに役立つと思う あてはまる 12.4% ややあてはまる 50.6% あてはまる・ややあてはまる 計63.0% ややあてはまらない 27.7% あてはまらない 9.3% 学び直しの実利的効果  学び直し層の60.7%が「仕事のパフォーマンスを高められた」と回答。「学びが将来のキャリアに活かされると思う」との回答は68.1%と、多くが仕事やキャリアへの効果を実感している(図表5) 図表5 学び直しの実利的効果 (%)「あてはまる」「ややあてはまる」選択率 学び直し層n=1,800 仕事の成果向上 仕事のパフォーマンスを高められた60.7% 仕事に対するモチベーションが高まった60.4% 任される仕事の範囲が広がった48.7% 任される仕事のレベルが上がった50.7% 収入源の増加 新たな収入源につながった38.2% 自分の転職市場における価値が高まった46.3% 学ぶことによって、将来の生活への不安が減った49.2% 将来のキャリアの向上 学びが将来のキャリアに活かされると思う68.1% 学びが将来、本業に活かされると思う69.2% 自分の将来のキャリアが明確になった53.3% 仕事の意義づけ 仕事の意義が見いだせるようになった56.7% 仕事に対するとらえ方が変わった59.7% 創造性の向上 仕事上の問題に対して、創造的な解決方法を思いついた54.4% 仕事での新しいアイディアを思いつくきっかけになった56.1% 社会関係資本の増加 社会に参加している実感が得られた 45.4% 人間関係が広がった 44.3%