日本史にみる長寿食 FOOD 364 サクラエビは美味しい長寿食 食文化史研究家● 永山久夫 不老長寿のシンボルといえばエビ  エビが古くから長寿のシンボルとして、お祝いの献立などに用いられてきたのは、長いヒゲと腰が曲がった、その体形によります。つまり不老長寿の老人を連想させ、海の「翁(おきな)」にみたてて、「海老(えび)」になったようです。  海老に独特の旨味や甘味があるのは、グリシンやべタインといったアミノ酸が豊富に含まれているためです。タンパク質が多いわりには、カロリーが低いために、肥満の予防やダイエットにはもってこいの食材といってよいでしょう。  また、血管を丈夫にして、動脈硬化や高血圧の予防、あるいは疲労回復やイライラを防ぐなどの効果で注目されているタウリンも、イカやタコに次いで、たくさん含まれています。 春は何といってもサクラエビの季節  花見どきになると、水揚げの最盛期を迎えるのがサクラエビです。静岡県の駿河湾(するがわん)の特産で、富士山を背景にして、日干しにしますが、日光にあたると美しい淡紅色になります。水揚げ後、すぐに天日でよく干した素干しのほかに、煮干し、釜揚げなどの加工食品もつくられています。産地は、由比(ゆい)や蒲原(かんばら)などで、サクラ色の干しエビは、東京などでも年中入手できます。サクラエビの美しい色素は、アスタキサンチンという抗酸化成分から成ります。紫外線などで、体内に発生しやすい活性酸素は、ガンや動脈硬化、老化などの原因となるといわれていますが、その予防対策として、カロチノイド系の色素成分をとることが効果的です。なかでも抗酸化パワーが強いといわれているのが、このアスタキサンチン。サクラエビのほか、サケやサケの卵のスジコやイクラ、タイやキンメダイなど赤い魚の皮の部分にも含まれています。また、ニンジンなどに多く含まれるカロテン以上の抗酸化力があるといわれ、人生100年時代に心強い食品です。  素干しのサクラエビには、長生きを支える骨の原料となるカルシウムもたっぷり。100gのなかに2000mgも含まれており、理想的なカルシウム食品です。トランキライザー(精神安定剤)としても働き、長い人生をニコニコしながら楽しく暮らすためには欠かせません。また、インフルエンザなどの感染症予防に役立つミネラルの亜鉛も豊富です。亜鉛には意欲を高めてくれる効果もあるといわれ、まさにサクラエビは働く人たちの免疫力アップにも役立つ食品といってよいでしょう。