BOOKS 自社にマッチした「やるべきこと」が見えてくる 図解 人的資本経営 50の問いに答えるだけで「理想の組織」が実現できる 岡田(おかだ)幸士(こうじ)著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2640円  人材を資本としてとらえ、その価値を最大限に引き出すことで企業価値の向上につなげる経営のあり方をさす「人的資本経営」。2023(令和5)年3月期決算以降、上場企業に対して情報開示が義務化されたこともあり、さらに関心が高まっている。  本書は、人的資本経営について、「何をすればいいのか」、「自分の会社は、どこまでできているのか」、「人的資本の開示とは?」など、経営者、人事部門担当者、現場マネージャーが知っておきたい知識をわかりやすく解説する。  著者は、人的資本経営においてやるべきことは、「人・組織としてありたい姿を決めること」、「それを実現するための取り組みを決めて行うこと」の2点に集約されるとし、2点について、それぞれの会社にマッチした内容を明らかにしていくために、「50の問い」を提示。各問いには、「答えの出し方(考え方・フレーム)」を示したうえで事例を紹介しており、この「問い」、「考え方」、「事例」のセットを活用することで、「自社なりの答え」が見えてくるという。  組織に関する課題の解決や、ミドル・シニア層の社員を活かす組織づくりを考えるうえでも、ヒントが得られる良書である。 労働災害が発生した際の手続きの手引書 3訂版元厚生労働事務官が解説する 労災保険実務講座 高橋(たかはし)健(たけし)著/日本法令/2420円  労働災害については、各企業でつねに発生防止のための取組みが積極的に展開されているところだが、業務上や通勤途上などで災害が発生してしまった場合には、労務担当者が迅速かつ適正な労災保険給付の請求手続きを行うことが重要となる。しかし、日常的に取り扱うという事務ではないことから、請求方法などについて熟知している担当者はそう多くはないだろう。  本書は、このような想定をもとにして、会社の労務担当者として、知っておきたい労災保険の知識と実務対応について解説。難解な認定基準の詳解は省き、初心者にもわかりやすいよう、請求書記載例を交えながら、仕組みや実務上のポイントを示している。災害発生の際の担当者の手引書として、また、社内各部署からの問い合わせなどに対応していくための手引書として、大いに役立つ一冊となっている。  本書は、会社で行われる社員研修を想定して書かれており、読者は研修を受講している感覚で読み進めるうちに理解し、学ぶことができる。  著者は、元厚生労働事務官として労災保険の認定事務にたずさわっていた経験を持ち、労災保険給付請求書を受けつけた労働基準監督署における給付決定事務の実際なども解説している。 上機嫌に毎日を過ごすためのヒントが満載 【新装版】 人生は70歳からが一番面白い 弘兼(ひろかね)憲史(けんし) 著/SBクリエイティブ/1430円  『島耕作』シリーズなどで知られる漫画家・弘兼憲史氏による、70歳からの人生がより楽しくなる生き方の指南書。2018(平成30)年1月に刊行された『人生は70歳からが一番面白い』(SB新書)を再編集した一冊である。  弘兼氏は、1947(昭和22)年生まれ。大手企業勤務を経て漫画家としてデビューした。その作品は、人間や社会について深い洞察力を持って描かれていることが高く評価されている。  本書には、「できることなら高齢者になってから周囲に嫌な思いをさせたくないし、家族や社会のお荷物にはなりたくない」と思っている人たちへ向けて、「最期まで上機嫌に人生を歩む」ためのヒントが綴られている。老化現象をプラスにとらえ、上機嫌な人づきあい、上機嫌な「死に方」などについて、弘兼氏の考え方を披露。定年退職後の過ごし方についても、地域のコミュニティに溶け込むためには「過去の肩書や栄光は邪魔になるだけ」、「年齢を重ねてこそ年下に敬語を使う」といった作法を提案する。  また、「頼まれごとで周りの役に立つ」ことをすすめるが、「疲れることはやめよう」というシンプルな判断基準を持つことも提案。心も足取りも自然と軽やかになるような指南書である。 自らの経験知をセカンドキャリアに活かす方法を四つのステップで示す 55歳からのリアルな働き方 田原(たはら)祐子(ゆうこ) 著/かんき出版/1650円  定年を意識しはじめると、再雇用で働き続けるか、それともほかの会社や仕事を探してみようかと考えたり、どちらにしても、この先の自分がどれほどの仕事をできるだろうかと漠然とした不安にかられたりする人は多いだろう。  本書は、人材開発コンサルタントとしてこれまで13万人以上の人材開発を手がけてきたという著者が、より自分を活かすことができるセカンドキャリアの選び方を伝授する。  著者が重視するのは、長年多くの経験を積んだ人が、無意識のうちに使っている「経験知(仕事の実践を通じて蓄積したノウハウ、知識・知恵)」である。本書では、一人ひとりに潜在するさまざまな「経験知」を見える化し、キャリアを切り開いて報酬を得ていく方法を、四つのステップで解説。55歳からの収入プラン、仕事プラン、人生設計の具体化をサポートする。また、同業種でキャリアアップした人、同業種・異職種へキャリアシフトした人、異業種・同職種でキャリアチェンジした人、異業種・異職種へキャリアチャレンジした人など、50代半ばからの転身に成功している実例も多数紹介している。  経験知をどう役立てていくか、自らの未来を自らで考え、切り拓いていく勇気がわいてくる。 シニアがになう小さな仕事や活動に着目するなど四つの解決策を提案 「働き手不足1100万人」の衝撃 2040年の日本が直面する危機と希望 古屋(ふるや)星斗(しょうと) 著、リクルートワークス研究所 著/プレジデント社/1760円  「2040年には働き手が1100万人足りなくなる」…、2023(令和5)年3月にリクルートワークス研究所が発表した未来予測シミュレーション。この内容が、大きな反響を呼んだ。これほどの「人手不足」は、もはや企業の雇用問題にとどまらず、ゴミの処理、災害からの復旧、道路の除雪、保育サービス、介護サービスなど、これまで享受してきたあらゆる「生活維持サービス」の水準が低下し、消滅する危機に直面する問題であると同研究所は危惧する。  本書は、このシミュレーションをもとに、今後日本が直面する「労働供給制約」という不可避の社会課題を明らかにしていく。そして、これから直面する働き手不足の問題を解消するための四つの打開策を提案し、希望を見出す。  打開策の一つとしてあげているのが、「シニアの小さな活動」だ。決まった金銭報酬や決まった日時に実施するわけではないが、例えば、小学生の登下校の見守りなど、シニアがになうことによって現役世代を助けている活動である。すでにこのような活動がさまざまな場やかたちで実践されており、本書の中ではシニアが活動をする理由や活動内容、高齢期の生活と両立する小さな仕事・活動のポイントを掘り下げている。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します