特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介  高齢者雇用を進めるためのポイントは、業種や業態によって違いがあります。そこで当機構(JEED)では、産業別団体内に推進委員会を設置し、高齢者雇用に関する具体的な実態を把握するとともに、解決すべき課題などを検討して、高齢者雇用を推進するために必要な留意点や好事例を「ガイドライン」として取りまとめています。  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、労働者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  2021(令和3)年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、各企業には70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が設けられました。高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、能力開発、健康・安全対策などの仕組みづくりがますます重要となります。  しかしながら、産業ごとに労働力の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、JEEDでは「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての方策・提言からなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用をいっそう効果的に推進することを目的としたものです。  この事業では、毎年1月に高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募しており、本事業の目的に合致した産業別団体を複数選定し、JEEDと契約(2年以内の委託事業)を締結しています。現在までに建設、製造、情報通信、運輸、サービスなど、多岐にわたる産業で、96業種がこの事業に取り組んでいます。 JEED 委託 産業別団体 「ガイドライン」の策定/普及・啓発 ○○○業 高齢者雇用 推進ガイドライン 会員企業 改善 高齢者の活用・戦力化 ガイドラインの策定  ガイドライン策定への具体的な流れは、産業別団体内に大学教授などの学識経験者を座長として、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者などで構成される高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置し、各年度4回程度委員会を開催します。  初年度の委員会では、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。高齢者雇用における課題は何かを検討し、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケート調査や先進的な企業へのヒアリング調査を実施します。2年度目は、初年度の調査結果で浮き彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点をおもな課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実践的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生 ・作業施設等の改善 ・定年前の準備支援  ガイドラインは高齢者雇用に対する理解を深め、活用してもらえるよう会員企業に配付します。  さらに、普及・啓発活動として会員企業に対し高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに企業への浸透をうながしています。  実際にガイドラインを読んだ会員企業へのアンケート調査結果では、9割ほどの会員企業から「ガイドラインは役に立った」または「役に立ちそうだ」との回答があり、「業界における高齢者雇用の動向を知ることができた」、「高齢者雇用の課題や解決方法がわかった」など、好評をいただいています。 業種を超えたガイドラインの活用  JEEDホームページでは、これまでに策定したガイドラインをはじめ、高齢者を雇用するうえで実際に役立つワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。ガイドラインは業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くありますので、ぜひご覧いただき高齢者雇用の取組みにお役立てください。  次ページより、2023年度に策定した五つのガイドラインを紹介します。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 産業別高齢者雇用推進ガイドライン一覧 (2020〜2022年度に策定したガイドライン) 建設業 とび・土工工事業 高齢者がバトンをつなぐ未来のガイドライン 〜人生100年時代!活躍の場・生きがいを求めて!〜(2022年) 機械土工工事業における高齢者活用推進のためのガイドブック 〜高齢従業員の活躍と若手従業員の定着に向けて〜(2022年) 建設業基礎工事における高齢技能労働者の活躍ガイドライン(2022年) 製造業 工業炉製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍を企業成長に生かす〜(2020年) 鉄リサイクル業 その経験、活かせます!ベテランの活躍が鉄リサイクル業の未来を拓く(2022年) 歯車製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニアの技を次世代にバトンタッチ、皆が活躍できる職場作り〜(2022年) 情報通信業 情報サービス業(情報子会社等)におけるシニア人材活用に関するガイドライン(2020年) 運輸業 ハイヤー・タクシー業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜公共交通機関として安全・安心輸送のために〜(2020年) 不動産業 マンション管理業 高齢者活躍に向けたガイドライン(2020年) 生活関連サービス業 葬儀業における高齢者活用推進のためのガイドライン 〜高齢者の活用による業務スタイルの変化への対応〜(2020年) 医療、福祉 病院における高齢医療従事者の雇用・働き方ハンドブック(2020年) 患者等給食業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍で安全・安心な食事の提供を〜(2021年) 保育サービス業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを保育施設の運営に生かす〜(2021年) サービス業(他に分類されないもの) 廃食用油リサイクル業における高齢者活躍に向けたガイドライン(2021年) 食品リサイクル業 高齢者の活躍に向けたガイドライン(2022年) ※( )内はガイドライン策定年度を表します 【P25】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン1 組込みシステム業 高齢者雇用推進の手引き  一般社団法人組込みシステム技術協会では、2013(平成25)年ならびに2021(令和3)年の高年齢者雇用安定法改正後に、会員企業とその技術者を対象に、高齢者雇用に関するアンケートおよびヒアリング調査を実施。年齢分布や就業の現状といった基本的な設問に加え、直近の調査では、65歳までの雇用形態や、70歳就業を見すえた環境整備などの設問を新たに追加している。また、企業へのヒアリングなどを通して、70歳就業に向けた具体的な施策例などについても調査を行った。これらの調査結果とヒアリングをもとに、本ガイドラインを取りまとめ、高齢者の活躍推進に向けた参考になる内容となっている。  本ガイドラインの巻末には関連法令などの情報を網羅しており、経営者や人事担当者はもちろん、現場で働く技術者にとっても参考になる手引き書である。 「T 70歳就業時代≠めぐる環境の変化と改正高齢法の内容」では、厚生年金の支給開始年齢の引上げなど、高齢者の活躍が求められる背景について触れるとともに、改正高年齢者雇用安定法による70歳までの就業確保措置の内容を解説している。  「U 高齢者雇用の現状と高齢者雇用・就業に向けた考え方」では、2022年に実施した上述のアンケート調査の結果を図表を交えて提示し、組込みシステム業における高齢技術者の雇用の現状や、高齢者雇用・就業に向けた考え方を示している。特に、定年後のキャリアについてなど、企業と技術者の回答を比較して差異を明示した図表は、働きやすい環境づくりのヒントになるものといえる。  「V 70歳までの就業機会の確保の努力義務化と高齢技術者への対応」では、近年本格的に定年到達者が出始めていることをふまえ、高齢技術者の活躍機会を増やしていくことの重要性や、そのための人事制度見直しの進め方、高齢技術者の労働条件の決定方法などについて、会員企業の事例を交えて解説している。定年後再雇用を機に、労働条件の見直しが行われる企業が多いこともふまえ、働く際の納得性を高めるための定年前の話合いの進め方について解説した図表は体系的にとらえられて活用しやすい。  「W 年齢にかかわりなく技術者が活躍できる環境づくり(社内体制・しくみづくり)」では、技術者のキャリア形成、これからの時代に求められる賃金・処遇制度のあり方などについて、会員企業の事例を交えて整理・解説している。  巻末の「参考資料」では、2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法の概要をはじめ、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付制度のしくみ、同一労働同一賃金などの関係法令について解説するとともに、継続雇用における雇用契約書(例)や、高齢者雇用に関する助成金、高齢者雇用に関連する課題解決に向けて相談ができる支援機関を紹介している。 一般社団法人 組込みシステム技術協会 連絡先 〒104―0042 東京都中央区入船1―5―11弘報ビル5F TEL 03―6372―0211 FAX 03―6372―0212 HP http://www.jasa.or.jp 【P26】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン2 倉庫業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニア人材の強みを生かす〜  倉庫業界においては、売り手市場による新卒社員の採用難、雇用の流動化にともなう若手人材の流出、フォークリフト技能者不足などの課題に加え、運送業界でクローズアップされている2024年問題※が、倉庫業界の人手不足に拍車をかけると予想され、高齢者の活用は会員事業者にとっても喫緊の課題となっている。  こうした状況をふまえ、高齢者がやりがいをもって活躍できる環境づくりの推進のため、日本倉庫協会では、会員企業における高齢者雇用の実態把握のためのアンケート調査およびヒアリング調査を実施。調査結果をもとに本ガイドラインを取りまとめた。  「T.倉庫業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、倉庫業界において高齢者のいっそうの活躍が求められている背景をふまえ、次章で取り上げている「6つの指針」を効果的に実践するための考え方や姿勢を簡潔にまとめている。  「U.倉庫業における高齢者の活躍を推進するための指針」では、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべき課題や方向性を示す「6つの指針」を、次の通り定めている。 指針1 生きがい感や意欲の高い高齢者を活かして業績向上につなげる 指針2 高齢期の生きがい感や満足度に影響する職務と処遇 指針3 高齢者と若手中堅、高齢者と管理監督職のチームワークを強化 指針4 高齢者で特に配慮すべきは「健康」と「安全」 指針5 高齢期になっても会社に貢献できる人材の育成 指針6 高齢者雇用は会社からすべての従業員に対するメッセージ  それぞれの指針ごとに、アンケート・ヒアリング調査から抽出した「企業の意見」、「従業員の意見」、「会員企業の取り組み」、「他業種の事例」がまとめられており、取組みを推進するためのポイントが理解しやすい構成となっている。  「V.アンケート調査結果」では、高齢者雇用の現状と課題、実施したアンケート調査結果の詳細について、グラフを交えて掲載。なお、アンケート調査は、各社の取組みを多面的に把握するため、@企業A60歳以上の従業員B59歳以下の従業員の属性別で実施している。  「W.ヒアリング調査結果」では、6つの指針ごとにまとめられ、各属性による主要な意見から高齢者雇用対策のヒントを得ることができる。  「X.参考資料」では、高齢者雇用に関連した法制度の概要や、高齢者雇用における課題解決に向けて相談ができる支援機関などを掲載。取組みを推進するうえで必要な情報の収集が可能となっている。 一般社団法人 日本倉庫協会 住所 〒135―8443 東京都江東区永代1―13―3 TEL 03―3643―1221 FAX 03―3643―1252 HP https://www.nissokyo.or.jp ※2024年問題……2024(令和6)年4月からの改正改善基準告示の適用にともなう、時間外労働の上限規制(休日を除く年960時間)により、発生する諸問題(売上・利益の減少、ドライバーの収入減少や離職、運賃の上昇など)のこと 【P27】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン3 高齢者も働きやすい介護事業所に向けて 〜在宅介護サービス業高齢者雇用の手引き〜  介護業界で働く職員数は、2019(令和元)年時点で約211万人だが、2040年には約280万人が必要と推計されており(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)、多様な人材の確保・育成の観点から高齢者雇用が推進されている。また、「人生100年時代」を迎え、「働けるうちは働きたい」と考える人が増加している背景をふまえ、在宅介護サービス業の発展に向けて、高齢者の働き手を積極的に受け入れていくことが重要になっている。  本手引きの作成にあたって「60歳以上の職員の雇用に関するアンケート調査」、「ヒアリング調査」を実施したところ、企業ならびに働き手である高齢者それぞれの課題が浮き彫りになった。従来の仕組みのまま高齢者の雇用を推進すると、高齢者が希望する働き方と合わない、条件面での整合性がとれない事態が発生する恐れがあり、企業は高齢者が定着して働き続け、活躍してもらうために、多様な人材が働きやすい制度や仕組みを整える必要がある。一方で、いま在職する職員も高齢になると体力面で変化が生じることに鑑み、従来以上に、企業は職員の安全や健康などを守る取組みを重要視しなくてはならない。また、近年急速に進められているICT機器の導入・活用への対応についても、高齢者雇用の推進にかかわる大きなテーマの一つと考えられている。  そこで本手引きでは、在宅介護サービス業における高齢の介護職員・ケアマネジャーを中心に雇用を推進するうえで大切なポイントをまとめ、事例、関連情報を記している。  「第T章 在宅介護サービス業において高齢者雇用を推進している背景」は、国の高齢化した状況をふまえ、在宅介護サービス業における高齢者雇用の現状と課題について解説している。  「第U章 在宅介護サービス業における高齢者雇用の推進を成功させる3つのポイント」では、調査結果から浮き彫りになった高齢職員の多様なニーズ、および不安に対応し、高齢者雇用の推進を成功させる仕組みづくりのために、次の三つにポイントを整理して解説している。「POINT @高齢の職員も働きやすい雇用管理の仕組みづくり」、「POINT A安全・健康対策」、「POINT BICT機器を職場で定着させる工夫」。各ポイントにかかわる企業事例を囲み記事として紹介し、簡潔な箇条書きの構成は、項目に目が行きやすく読みやすいものとなっている。  「第V章 高齢者雇用を推進している企業事例の紹介」では、大手事業者から中規模事業者まで、高齢者雇用において先進的に取り組む介護事業者6件の事例を紹介。それぞれ特徴ある取組みが明らかになっている。  「第W章 参考資料」では、高齢者雇用の対策に役立つ情報を掲載するウェブサイトなどをピックアップして紹介している。 一般社団法人 日本在宅介護協会 住所 〒160―0022 東京都新宿区新宿1―18―14廣田ビル3F HP https://zaitaku-kyo.gr.jp 【P28】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン4 職業紹介業における高齢者雇用推進ガイドライン  職業紹介業は、近年、ITを活用して求人者の開拓や求職者の確保などの効率化を図っている。しかし、マッチングやレコメンド、選考においては、依然として紹介従事者の判断が重視されており、職業紹介業にとって人材は貴重な財産となっている。  一方、少子高齢化による若年労働力の減少により人手不足が深刻となっており、能力や経験を持つ高齢従業員が、継続して活躍できる環境を整えることが喫緊の課題といえる。  同ガイドラインは、職業紹介業の持続的な発展のために、業界で働く高齢従業員の活躍のみならず、職業紹介を利用して求職活動を行う高齢求職者が、就業先で活躍するための環境整備についても言及。職業紹介事業所で働く従業員が高齢期も活き活きと働き続けるためのポイントなどについてまとめるとともに、近年増加傾向にある高齢求職者が活躍できる場の拡大を目ざして、実態調査を行い、結果をふまえて検討した内容となっている。  「第1章 〔概要〕職業紹介業における高齢者活躍のポイント」では、業界における高齢従業員と高齢求職者の活躍に向けた取組みについての考え方を提示し、高齢従業員と高齢求職者、双方が活躍するための観点から、ガイドラインのポイントを簡潔に要約している。章末では、同章の内容を体系的な図にまとめてあり、取組みのポイントを俯瞰(ふかん)して把握することができる。  「第2章 職業紹介事業における高齢者活躍の課題と取組」では、2022(令和4)年度に実施した実態調査の結果をもとに、職業紹介事業で働く高齢従業員の活躍の現状と課題について図表を交えて紹介するとともに、高齢従業員のよりいっそうの活躍に向けた取組みの方向性を示している。現在は高齢従業員がいない紹介所も含め、高齢従業員の活躍を「わがこと」としてとらえるよううながし、高齢者活躍のイメージを持つことや、ITツールなどに強い若手とコミュニケーション能力のある高齢従業員が協業することの重要性などについて解説。合間には、参考情報として職業紹介業で活用できるITツールの一覧表などを掲載しており、高齢者雇用推進の一環として導入・検討する際の参考になる。  一方、高齢求職者の活躍に向けては、ITツールを利用した求職者の獲得や、事業者に高齢求職者を受け入れてもらうためのポイント、マッチングの成功例など、企業事例や関連コラムを交えながら紹介している。  巻末には、資料編として、高齢者雇用にかかわる法制度や支援に関する情報を収録しているほか、本事業における実態調査結果の詳細データなどを掲載。高齢者雇用推進にかかわる公的支援策として、助成金情報なども掲載している。 公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会 住所 〒113―0033 東京都文京区本郷3―38―1本郷信徳ビル5F TEL 03―3818―7011 HP https://www.minshokyo.or.jp 【P29】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン5 警備業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜社会の安全・安心を支えるため、高齢者の活躍に向けて〜  一般社団法人全国警備業協会が、2010(平成22)年に高齢者雇用推進ガイドラインを策定してから十余年が経過した。その間、社会情勢は大きく変化し、高齢化がいっそう進展していることから、あらためて実態把握を行い、より現場に即した方策をガイドラインとして取りまとめた。  警備業は従来から高齢者の雇用割合が高い産業であり、約2人に1人が60歳以上(46.1%)、約5人に1人が70歳以上(19.2%)である。このため、本ガイドラインは「60歳以降も働きたい人たちが長く活躍できる職場にする」ことを目ざした内容となっている。  「T 警備業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、同業界において、さらなる高齢者の活躍が求められる背景や考え方などを整理している。  「U 警備業における高齢者の活躍を推進するための指針」では、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべき課題や方向性を6つの指針にまとめて提示し、それぞれ関連するアンケート調査やヒアリング調査、他業種の取組み事例をあわせて図表で解説している。警備業界に特化したチェックポイントや方向性の提示は示唆に富む。  「指針1 高齢者ニーズの把握と企業の意向のすり合わせ」では、高齢者とのコミュニケーションの取り方、面談のポイントがわかる。  「指針2 高齢者を意識した健康管理の強化」では、職場でのコミュニケーションを通じた高齢者の健康管理のポイントを紹介している。  「指針3 高齢者が安全かつ安心して働ける環境の整備」では、業務の性質上、発生が懸念される労働災害について、データをもとに課題を抽出しながらていねいに対応策を示している。災害発生事例とその対策がひと目でわかる一覧表を掲載するほか、労働災害対応の方向性として、安全衛生教育マニュアルの活用、写真や映像を使った安全教育、ヒヤリハット情報の社内での共有・活用などについて詳しく解説。労働災害防止対策の一助となる内容となっている。  「指針4 高齢者のモチベーション向上」では、警備員のためのスキルマップ・シートの作成と活用のメリットを紹介。図表「警備員のためのスキルマップ・シート(例)」は使い方の説明つきであり、面談にそのまま活用することができる。  「指針5 高齢者の強みの周知」では、高齢者の知識・経験を若手や中堅警備員へ継承するための事例を紹介している。  「指針6 将来にわたり高齢者が活躍する職場環境の整備」では、警備業のイメージアップを含め、社内コミュニケーション(風土)の改善、職員の健康管理の重視など、警備員の働きやすさの向上を図るとともに業界の特徴と魅力をアピールする方向性を示している。  「V 参考資料」は、運用上の課題解決に向けて相談できる支援機関の紹介や高齢者雇用に関する制度などがまとめられており、取組みの策定に役立つ内容となっている。 一般社団法人 全国警備業協会 住所 〒163―0632 東京都新宿区西新宿1―25―1新宿センタービル32F TEL 03―3342―5821 FAX 03―3342―6074 HP https://www.ajssa.or.jp