“生涯現役”を支えるお仕事 第5回 シニアの求職者と求人企業をつなぐキャリアアドバイザー&カスタマーサポート 株式会社シニアジョブ キャリアアドバイザーチーム マネージャー 松澤(まつざわ)裕介(ゆうすけ)さん カスタマーサポートチーム 鈴浦(すずうら)拓巳(たくみ)さん  人生100年時代を迎え、多くの高齢者が長く働き続けることができるのは、高齢者の生涯現役を支えている人たちの活躍があるからともいえます。このコーナーでは、さまざまな分野や場面で働く高齢者、そして“生涯現役社会”を支えるお仕事をしている人々をご紹介します。  シニアが「働きたいとき」に働ける社会を目ざし、50歳以上に特化した就業支援を展開する株式会社シニアジョブ。「シニアが選ぶ人材会社No.1」として、年間500人を超える転職支援実績があります。今回は、同社のキャリアアドバイザーチームでマネージャーを務める松澤裕介さんと、新卒入社2年目でカスタマーサポートチームを牽引する鈴浦拓巳さんに、シニアの求職者と求人企業をつなぐ仕事の醍醐味を語っていただきました。 転職はシニアにとって「人生の一大事」 ターニングポイントを支援する仕事のやりがい ―シニアジョブでは、50歳以上の方を対象とした有料職業紹介と人材派遣に加え、求人メディアなども展開されているとうかがっています。シニアの求職者と求人企業をつなぐなかで、キャリアアドバイザーチームが果たす役割、具体的な仕事内容について、教えてください。 松澤 一般的な人材業だと、リクルーティングアドバイザー(RA)と呼ばれる法人営業が求人を獲得し、キャリアアドバイザー(CA)がそれを求職者に紹介するといった構造になっている会社が多いのですが、当社のキャリアアドバイザーチームでは、それを「両面型」で行っています。ふだんの業務の根幹として、一番ウエイトが大きいのは、求職者との面談。面談のなかで、職歴や本人の希望を詳細に聞いて、「じゃあ、こういう条件で仕事を探しましょう」と、方向性を明確にするのが最も大切なプロセスです。希望条件などがまとまったら、今度は対企業で、「こういう条件で仕事を探している人がいらっしゃるのですが、どうですか?」と売りこむかたちになります。 ―求人があって、それに合った求職者を探すという形ではないのですね。 松澤 そうですね。どうしてもシニア世代の就職活動でありがちなのが、「履歴書が読まれない」という問題です。求人に応募しても「名前から年齢を見ただけで弾かれてしまい、通らない」ということが少なくありません。ですから、先に企業側に「こういう人材です」ということをお伝えし、そのうえで「どうですか?」と話をまとめていく流れをとっています。 ―カスタマーサポートチームでは、どのような仕事をされているのでしょうか。仕事をするうえで心がけていることなどはありますか。 鈴浦 カスタマーサポートの仕事は、求職者や企業からの入電対応など、いわゆる営業事務が中心になります。求職者の登録情報を確認し、不足していることがあれば、こちらで聞きとるなどしながら、キャリアアドバイザーチームでの面談日程を組むのも、カスタマーサポートの仕事です。  求職者のなかには、まだ在職中で「迷っている」という人、転職に「不安を感じている」という人もいるので、当社は希望条件などをしっかり聞いたうえで、力になることができるということを伝え、ていねいに対応するよう心がけています。 ―シニアジョブで仕事をするようになったきっかけを教えてください。 鈴浦 もともと営業の仕事をしたいと考えていたのですが、就職活動で出会ったキャリアアドバイザーに親身になってもらい、こういう仕事をしたらおもしろいかなと思ったのがきっかけです。大学主催の就活イベントに参加したとき、当時の人事部長に声をかけられたのですが、興味を持っていた人材業界だったことに加え、私が祖父母と一緒に暮らしていたので、祖父母世代の人たちの転職を支援できることに魅力を感じました。 松澤 私も転職活動をしていたときに、転職エージェントの人と話をしていて、「この人、すごい!」と思ったのが、人材業界に入るきっかけになっています。実家が高齢者施設の多い地域にあったので、高齢者とのかかわりは子どものころからとても多く、小学生のときは、道端で高齢の女性を手助けして、表彰されたこともありました。  シニアにとっての転職は、若い世代以上に、「人生の一大事」になります。30年、40年と積んできたキャリアを変えて転職することは、人生の大きなターニングポイント。そこを支援できるのが、私たちの仕事の醍醐味であり、勉強にもなるところですね。 シニア求職者と「ぜひ一度、会ってみて」「採用しないのは、もったいない」 ―これまでの転職支援で、印象に残っている事例などはありますか。 松澤 私が担当した最初の成功事例で、60代前半の男性のケースです。医療事務の管理職での転職でしたが、本人が希望する年収では、一般的な相場から見て、むずかしい状況でした。しかし、面接をしたいという医療法人が一つあり、案内したところ、面接を受けた男性からは「楽しかった」という報告があったのです。じつは、男性と病院の院長の母校が同じで、話に花が咲いたそうです。それで「すぐに来てほしい」という話になり、年収も希望額の約1.5倍で内定が出ました。男性の経歴がマッチしたということでもありますが、こういうことが起こり得るのだと、この仕事はおもしろいなと、その後のやりがいにもつながりました。 ―シニアの転職支援を通じ、「生涯現役」を支える立場から、企業の経営者や人事担当者にメッセージをお願いします。 松澤 企業の人事担当者に伝えたいのは、「ぜひ一度、会ってみてください」ということです。年齢がすべてではありません。紙一枚の履歴書でわかることには、限度があると思います。 鈴浦 シニアを受け入れるということに、不安を感じる人もいるかもしれませんが、不安定要素があるのは、私たちのような若い世代も同じです。シニアの人たちのなかには、新しい環境に慣れるため、たいへんな努力をしている人、熱意にあふれる人も多いので、採用しなければもったいないと感じます。私も、シニアの求職者に対する固定概念を打破できるような仕事をしていきたいと思っています。 (取材・沼野容子) 写真のキャプション 株式会社シニアジョブ キャリアアドバイザーチーム マネージャー 松澤裕介さん(左)カスタマーサポートチーム 鈴浦拓巳さん(右)