BOOKS 新たな法改正に対応、把握しておきたいポイントを弁護士がわかりやすく解説 第4版「労働時間管理」の基本と実務対応 中井(なかい)智子(ともこ)著/労務行政/3740円  おもに人事労務担当者に向けて、複雑化する法律の解釈と実務上のポイントをわかりやすく解説する一冊。2009(平成21)年3月に発行されて以来、好評を得て、法改正などに対応して版を重ねている実務書の第4版である。  最新刊の本書は、第3版を発行した2019(令和元)年6月以降、新たに改正された法律、規則、指針、通達などをふまえて、2024年4月1日施行の裁量労働制の見直しのほか、2022年・2023年施行の改正育児・介護休業法などに対応。また、コロナ禍により、多くの企業で急速に普及したテレワークや、副業・兼業についての説明も追加している。  本書は、「労働時間制度の全体像」から、「変形労働時間制、フレックスタイム制」、「みなし労働時間制等」、「時間外労働・休日労働」、「割増賃金」、「年次有給休暇」、「母性保護、育児・介護休業、罰則その他」までの7章で構成。  弁護士である著者が人事労務担当者の実務に役立つようにと、読みやすい文章に図表を交えて、労働時間制度の基本と実務対応を説いている。実務でよくあるQ&Aと、「法令遵守チェックシート」が章ごとについており、自社の現状を確認しながら、理解を深めることができる。 バブル世代のためのセカンドキャリアの指南書 まだまだ仕事を引退できない人のための50代からのキャリア戦略 バブル入社組≠フリアルな声から導き出した3つの答え 元永(もとなが)知宏(ともひろ)著・野田(のだ)稔(みのる)監修/翔泳社/1760円  日本のバブル期は、1986(昭和61)年12月に始まり、1991年2月に終わったとされる。この時期に入社した世代が、現在50歳前後となっており、定年退職年齢が近づいてきている。  バブルに乗って、引く手あまただった就活から30数年、「バブル入社組」はこれからどのように働き、生きるのか。会社から離れても、肩書きがなくなっても、明るく楽しく生きるために、いまから備えておくべきこととは何か。本書は、バブル世代の著者が、同じ「バブル入社組」に発信する、セカンドキャリアの指南書である。  時代をふり返りつつ、取材を通じて得た50代会社員の転職の現状や、早めに会社を退職して大学院で学び直し行政書士として独立した人、留学して語学力を磨き外資系企業などを転々として活躍している人など5人の体験談を、生き方を変えた決断やその後の苦労も含めて紹介。それらをふまえ、会社員が人生を変えるために必要な方法として、「学び直す」、「働く場所(働き方)を変える」などの三つの方法をあげて、50代からのキャリア戦略を解説する。  時代が変わっても、働くことを通じて、自らの変化や成長を楽しみながら生きていこう、そんな勇気と元気が湧いてくるような内容である。 76歳で起業。経験を糧とし、知見とスキルを積み重ねていく姿に学ぶ 大器晩成型キャリアのすゝめ 76歳で上場を果たした遅咲き社長 広瀬(ひろせ)克利(かつとし)著/幻冬舎/1650円  幼いころから科学者になりたかった著者は、大学院を卒業後、化学会社の研究部に就職した。希望を叶えたものの、3年後に異動を命じられ、生産や人事の仕事を担当し、その後は営業開発課長になるなど、やりたくない仕事や向いていないと思う仕事をする日々に。それでも全力を注いでいると、そうした仕事もだんだんおもしろいと感じられるようになっていった。  やがて転機が訪れ、43歳で研究開発会社を起業。会社員時代の多様な経験が活きて、外回り営業や経理、事務を自分で行うことができた。会社が成長するなかで、研究への思いがよみがえり、55歳で大学院を受験し、入学。ここでも多様な経験をして、農学博士号を取得した。  76歳のとき、起業した会社は東証マザーズ上場を成し遂げた。本書を出版する時点で、著者は81歳。すでに第一線を退き、「すばらしい人生を過ごせたと感じている」と晴々とした気持ちを綴っている。道のりは決して平たんではなかったが、すべての経験を糧とし、さまざまな知見とスキルを自身に積み重ねていった。著者の仕事観は、現在の役職などに不満を抱えていたり、キャリアに悩んだりしているビジネスパーソンに有用なヒントを与えてくれるだろう。 ジョブ型人事の実態と、日本企業の導入事例をその後の状況もふまえて紹介 ジョブ型・マーケット型人事と賃金決定 人的資本経営・賃上げ・リスキリングを実現するマネジメント 須田(すだ)敏子(としこ)著/中央経済グループパブリッシング/3190円  働き方に対するとらえ方の多様化などから、欧米で主流とされるジョブ型人事への関心が日本でも高まり、日本で主流とされる「メンバーシップ型」と呼ばれる雇用方法から、ジョブ型へ切り替える企業が増えてきているという。  さらに本書の序章で著者は、政府が2023(令和5)年6月、「新しい資本主義」の柱として、「リスキリング(学び直し)」、「転職しやすい労働市場改革」、「職務給の導入」(=ジョブ型人事)を一体的に進めることを掲げたことについて、これらは互いに補完性を有するものであるため、「一体に進めることの方針は正しいものであろう」として、「日本でもジョブ型人事へ本格的に転換する機運が出てきているようだ」と説明。本書は、豊富なデータをもとにジョブ型人事の実態を紹介し、ジョブ型が普及するとどのような変化が起こるのかを概観。  ジョブ型人事になると、マーケット型人事となり、これらは一体となるという。そしてジョブ型・マーケット型人事への転換は、人的資本経営の実現や賃上げ、リスキリングなど、現在の日本の課題を解決するものになると提唱する。  加えて、日本企業5社のジョブ型人事の導入事例を紹介。実践内容と変化に触れている。 生涯現役で働いて人生を輝かせるシニアの生き方、考え方に学ぶ 人生は80歳からがおもしろい 吉川(よしかわ)幸枝(さちえ)著/アスコム/1540円  著者は、レストラン経営などを手がける会社の現役社長で、本書発行時の年齢は88歳。テレビ番組などにも出演して人気者になり、全国にファンがいるという。幼少時に苦労をしながらも、料理上手な母に学び、生き方のヒントをもらい、飲食業を始めて成功している。  本書は、経営者として、人として、さまざまなことを学び経験してきた著者が、80歳を超えても成長し、人生を輝かせる知恵を伝授する。  考え方やお金、健康など多様なテーマを取り上げているなかで、特に興味深いのは、「『80歳はもう働けない』という固定概念を外したほうがよい」として、時代の変化をとらえて自らの考え方を変え、「ずっと働くこと」を読者にすすめていること。歳をとって働き続けることは「大変」としながらも、「生きがい」を見つけることは「それ以上に大変」だという。「しかし働くことで、だれかに必要とされていることを感じられることは、生きる力になる」と働くことの意義を語る。また、「雇ってくれるところがない」と嘆くのではなく、自分のペースでいいから、少しでも歩いて行動しようと呼びかける。  著者が目の前で話しているような文章には、生涯現役で働くためのヒントとエールが満載だ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します