Books 定年後再雇用の雇用契約締結から雇用終了まで、トラブル対応が事例でわかる! 実際の相談事例でわかる! 高年齢者雇用のトラブル対応実務 小林(こばやし)包美(かねよし) 著/第一法規/2970円  65歳以上の就業者数が2023(令和5)年時点で20年連続して増加を続けているなか、高齢者雇用に関するトラブルも発生している。  本書は、高齢者雇用をめぐるトラブルとどう向き合い、どのように解決していくかについて、特定社会保険労務士で、東京簡易裁判所民事調停委員などを歴任し多くの事案の解決にたずさわってきた著者の経験をもとに、有効な対策とその進め方を提示する一冊。  本文は3章構成で、第1章「高年齢者雇用の現状」では、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況や、企業における定年制の状況などを分析。第2章「高年齢者雇用の人事・労務管理の留意事項」では、実務的見地から、労働条件の明確化や無期転換ルールとその特例、労働・社会保険の適用など、特に留意したい点についてていねいに説く。第3章「高年齢者雇用のトラブルと対策」では、定年後再雇用の雇用契約締結から雇用終了までのトラブル防止などについて、対策、解決方法、予防措置などの実務ポイントを事例に即して解説している。  簡明な文章なので、企業の人事労務担当者の実務に役立つとともに、高齢者雇用に関する基礎知識を身につけたい人にも手に取りやすい。 弁護士が監修、企業のリスクマネジメントに役立つ一冊 事業者必携 知っておきたい! 最新 法務リスクとトラブル予防の法律知識 木島(きじま)康雄(やすお) 監修/三修社/2420円  企業にとって、トラブル発生とその後の対応は将来を左右しかねない一大事といえる。長年築いてきた信頼も崩れるときは一瞬で、取引先や消費者の信頼を取り戻すには多くの時間を要することが珍しくない。  本書は、企業活動を行ううえで事業者が知っておきたい法務リスクとトラブル予防の法律知識について、弁護士監修のもとにまとめられた。  残業代不払い、ハラスメント、解雇、秘密保持契約などの労務関連の問題をはじめ、個人情報や企業の営業秘密の漏えいなどの情報管理の問題、製造物責任法や独占禁止法、下請法、景品表示法などの法令違反の問題、知的財産権侵害など、企業活動で生じるさまざまな法律問題と対策を幅広く取り上げている。「社会保険料逃れにならないようにするための手続きについて知っておこう」、「パワハラ対策としてどんなことをすればいいのか」など平易な言葉と図表、Q&Aが織り交ぜられており読みやすいことも特徴だ。カスタマーハラスメント、内部告発など法改正や最近問題になっているテーマについても取り上げていて、最新のポイントがわかる。  企業のリスクマネジメントに関心を持つ人たちにとって、必要な知識が身につく一冊である。 失業者の心理と求職行動の分析をふまえた、再就職支援のための16の提言 研究双書 失業の心理学 ―失業から再就職への橋渡し―榧野(かやの)潤(じゅん) 著、西垣(にしがき)英恵(はなえ) 著/独立行政法人労働政策研究・研修機構/3850円  本書は、労働市場の構造的問題に注目し、1930年代にはじまった失業の心理学研究の蓄積と、著者が積み重ねてきた実証的研究成果をもとに、失業者の心理と求職行動を科学的に分析。それらをふまえ、効果的な支援を実現するための新しい研究アプローチを提示するとともに、「心理的・社会的困難への支援」など再就職支援の実務に資する16の提言を行っている。  著者の榧野氏は、(独)労働政策研究・研修機構の労働大学校でハローワーク(公共職業安定所)職員向けの研修を担当し、研修を通じてハローワーク職員が直面する課題や、年齢、スキル不足、育児や介護の責任、病気などさまざまな困難を抱える失業者の事例に触れた。同時に、職員の親身な支えと本人の努力によって再就職を果たした人々の感動的な事例を学び、困難な状況に直面した人が、「再就職」という新たな希望を見出していく過程の心理を理解し、効果的な再就職支援の方法を研究している。  16の提言は、再就職支援にたずさわる人々や、失業問題に取り組む研究者、政策立案者に向けたものだが、労働者が望む労働や職場環境、良好な雇用関係の構築を目ざす事業主にとっても、新たな示唆を得る手がかりとなるだろう。 いますぐできる9つの習慣で、脳が喜び認知症を予防! 脳が喜ぶ9つの習慣 老化を予防し若返る! 篠原(しのはら)菊紀(きくのり) 監修/ナツメ社/1430円  高齢化が進む日本では、認知症になる人が増えていくことが予想されている。一方で、生活習慣などの改善によって、その発症リスクを抑えられることが最近わかってきた。  本書は、そうした報告や世界保健機関(WHO)が推奨する認知症予防のための生活習慣を前提として、老化をくい止め、病気予防にもつなげていく「9つの習慣」を説いている。  9つの習慣は、「脳トレ」、「運動」、「睡眠」、「食事」、「余暇活動」、「全身の健康管理」、「人との交流」、「ストレスのコントロール」、「脳にいい言葉」。それぞれについて、効果的な習慣や効果の根拠となるデータなどをオールカラーの紙面で簡潔に説明し、日常生活で実践しやすい運動や食習慣、脳にいい言葉を口にする習慣づくりなどを紹介。例えば、複数の作業を並行して進める家事は、最高の脳トレになるという。ただ、慣れたことをするときに脳は活性化しないため、いつもと「順番を変える」、「スピードを上げる」などの工夫を加えるとよいそうだ。本書の監修は、本誌(64ページ)で「脳力アップトレーニング!」を連載している篠原菊紀氏が務めている。それだけに脳の老化予防に関心がある人には、一読の価値があるだろう。 健康情報の真偽を解説。科学リテラシーを高めたい人にもおすすめ よく聞く健康知識、どうなってるの? 坪井(つぼい)貴司(たかし) 著、寺田(てらだ)新(しん) 著/東京大学出版会/2750円  生涯現役を実現するには、元気に動ける体づくりが大切だ。そう思い健康情報を集めてみると、なかには「これって本当?」、「売るために誇張している?」と疑問を抱くものも……。  本書は、世の中に広く流布している「よく聞く健康知識」を取り上げて、科学的な根拠や理論を紹介しながら、その真偽をわかりやすく解説していく。  著者の2人は東京大学大学院教授で、それぞれ生命科学、スポーツ栄養学を専門としている。本書では「食と栄養」、「運動と体」に関する情報を取り上げて、「糖質制限食って優れたダイエット法なの?」、「有酸素性運動で脂肪を使わないと痩せないの?」など20の疑問について詳解している。また本書は、さまざまなメディアから発信される情報をうのみにせず、自分の頭で考えて判断できるよう一般の人たちの科学リテラシーを高めることにも役立つ内容にしたい、という著者の思いも込められてまとめられた。  ところどころむずかしい内容もあるが、わかりやすい文章で書かれている。気にせずに読み進めていけば、読み通したころにはよりよく生きるための科学リテラシーが身についている、そんなことも期待できる良書だ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します