【表紙1】 令和7年9月1日発行(毎月1回1日発行)第47巻第9号通巻550号 Monthly Elder 高齢者雇用の総合誌 2025 9 特集 多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり リーダーズトーク “人”が主体となる企業カルチャーの変革へ 役割・実績重視の人事制度へ刷新 本田技研工業株式会社 コーポレート管理本部 人事統括部長 安田啓一 【表紙2】 10月は「高年齢者就業支援月間」です 高年齢者活躍企業フォーラムのご案内 (高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)  高年齢者が働きやすい就業環境にするために、企業等が行った創意工夫の事例を募集した「高年齢者活躍企業コンテスト」の表彰式をはじめ、コンテスト入賞企業等による事例発表、学識経験者を交えたトークセッションを実施し、企業における高年齢者の雇用の実態に迫ります。「年齢にかかわらずいきいきと働ける社会」を築いていくために、企業や個人がどのように取り組んでいけばよいのかを一緒に考える機会にしたいと考えます。 日時 令和7年10月3日(金)13:00〜16:20 受付開始12:00〜 場所 ベルサール神田(イベントホール) (東京都千代田区神田美土代町7 住友不動産神田ビル2F) ●JR山手線・京浜東北線など「神田」駅北口から徒歩9分 ●都営新宿線「小川町」駅、東京メトロ丸の内線「淡路町」駅・千代田線「新御茶ノ水」駅B6出口から徒歩2分 定員 100名(事前申込制・先着順)会場・ライブ配信同時開催 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) プログラム 13:00〜13:10 主催者挨拶 13:10〜13:40 高年齢者活躍企業コンテスト表彰式 厚生労働大臣表彰および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 13:40〜14:25 高年齢者活躍企業コンテスト上位入賞企業による事例発表 14:25〜14:35 (休憩) 14:35〜15:20 基調講演「シニアのキャリア意識の現状と課題」 小島明子氏 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 15:20〜16:20 トークセッション コーディネーター……内田賢氏 東京学芸大学 名誉教授 パネリスト……………・事例発表企業3社 ・小島明子氏 参加申込方法 フォーラムのお申込みは、以下の専用URLからお願いします(会場・ライブ配信)。 https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html 参加申込締切 〈会場参加〉令和7年10月1日(水)14:00 〈ライブ視聴〉令和7年10月3日(金)15:00 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 【P1-4】 Leaders Talk No.124 “人”が主体となる企業カルチャーの変革へ 役割・実績重視の人事制度へ刷新 本田技研工業株式会社 コーポレート管理本部 人事統括部長 安田啓一さん やすだ・けいいち 1990(平成2)年、本田技研工業株式会社に入社。管理本部人事部グローバル人材開発センター所長、Asian Honda Motor Co., Ltd.(タイ)アジア・大洋州地域本部HR 責任者、Boon Siew Honda Sdn.Bhd(マレーシア)社長、P.T. Astra Honda Motor(インドネシア)社長などを務め、2023(令和5)年より現職。  世界的な自動車・二輪車メーカー、本田技研工業株式会社(以下、「ホンダ」)は、2017(平成29)年に65歳までの選択定年制を導入した、高齢者雇用先進企業。2025(令和7)年6月には評価・処遇制度の見直しを含む新人事制度の導入にあわせ、一部社員を対象とする年齢上限を撤廃した継続雇用制度を開始しました。今回は同社コーポレート管理本部人事統括部長の安田啓一さんに同社の人事制度改革についてうかがいました。 役職者の評価・処遇制度を見直し「脱年功」の人材活用、「脱一律」の処遇に ―貴社では、2025(令和7)年6月に、新たな人事制度を導入されたとうかがいました。人事制度改定のねらいについて教えてください。 安田 大きな背景として、自動車業界は未曾有の競争環境にあることです。電気自動車など、さまざまな事業・製品の「電動化」とともに、「搭載されたソフトウェアが車の価値を決める」といわれるほど「知能化」が進んでいます。さらには電気と関連する周辺の充電ネットワークづくりに至るまで、これまで経験したことがない領域をも視野に入れざるを得ないほど、事業環境の変化が起こっています。  こうした時代にホンダが新しい価値を提供できる存在になるためには、ホンダのカルチャーを含めて変革していく必要があると考えています。当然、その主体となるのは「人」です。社員一人ひとりの内発的動機の喚起や目標に向かって主体的に専門性を高める挑戦を支援する環境を整えることを会社の重要な役割と位置づけ、そのなかの取組みのひとつとして人事制度の刷新を行いました。  人材の活用・処遇においては、さらなる変革やイノベーションの創出に向け、適材適所、実力主義をいままで以上に徹底していきます。具体的には「脱年功」、「脱一律」です。もちろん、これまでのホンダが年功的・一律的だったというわけではなく、一人ひとりの意欲や実力を尊重する仕組みを整えていましたが、経験の積上げで役職に就くために、どうしても一定の年数を要することになっていました。そこで新制度では、役割・実績を重視した脱年功・脱一律の制度へと見直しを行いました。 ―具体的にはどのような見直しを行ったのでしょうか。 安田 役職者の評価・処遇制度を大きく見直しました。開発などの研究領域の役職者は「イノベーション職」(IN級)、それ以外の管理部門や営業、事業開発、生産部門は「トランスフォーメーション職」(TR級)とする二つの給与・評価体系を導入し、IN級は3段階、TR級は8段階に分かれています。  TR級は役割と報酬がダイレクトに連動し、年齢や人ではなく、就いている役割で報酬が決まる脱年功・脱一律の仕組みです。当然ながらその役割を果たせない場合などは役割の変更によって処遇の見直しも発生します。スタートしたばかりの制度ではありますが、すでにそういったケースも生じています。  IN級は研究開発など成果が測りにくい業務が中心であり、役割よりも能力や専門性を重視した評価・処遇制度になっています。  意識の変革という観点から、まずは役職者のみに適用している制度となりますが、今後非管理職層についても、検討していくことにしています。 ―2017(平成29 )年に65歳までの選択定年制を導入するなど、早くから高齢社員の活躍推進に取り組まれています。貴社における高齢者雇用の取組みについてお聞かせください。 安田 当社では、2010年に60歳定年後、希望者全員65歳まで再雇用する仕組みを整え、2017年に65歳までの選択定年制を導入しました。当社の選択定年制は、全員が60歳になる前に定年年齢を本人の希望で選択し、60歳以降も毎年1回、定年時期を変更することができるという仕組みです。個々人の価値観やライフスタイルが異なることをふまえ、定年時期を自分で選べるようにしています。  60歳以降の処遇については、当初は再雇用社員の報酬は60歳定年前の半分程度、昇給もなく、おもな諸手当も適用除外となっていましたが、その後見直しを行い、報酬は60歳前の約8割まで引き上げるとともに、評価に応じた昇給や賞与の支給もあり、諸手当も支給する仕組みとしています。  選択定年制を導入してからは、正社員のまま働けることをポジティブに受けとめる人が多く、対象者の8割以上が60歳以降も働くことを選択しています。 今夏より一部社員を対象に選択定年後の年齢上限を撤廃した継続雇用制度をスタート ―役職定年と役職定年後の役割についてはいかがでしょうか。 安田 原則として60歳で役職定年を迎え、役職定年後はそれまでつちかった経験を活かし、各部署で引き続きご活躍いただいています。そのなかには、次世代育成の役割をになっている方もいます。  例えば、二輪・パワープロダクツ事業本部では、新入社員の育成を強化するために「3Joysカレッジ」と呼ぶ研修を含む新入社員の教育プログラムを整備しています。二輪・パワープロダクツ事業本部に配属後、研究開発業務や工場実習による生産業務、販売業務などについて学習する数カ月間のプログラムですが、プログラム開発のプロジェクトで中心的な役割をになったのが元役職者である3人の高齢社員です。いずれも開発、生産、販売の要職を経験したその道のプロです。3年前に開発に着手し、2年前にプログラムがスタートしましたが、現在もプログラムの充実に尽力しています。 ―2025年6月には、新人事制度の導入にあわせて、一部の社員を対象に、選択定年後に、年齢上限を撤廃した継続雇用制度を導入したとうかがいました。 安田 先ほど、原則60 歳で役職定年と申し上げましたが、じつは現在のポジションと役割を継続できる「特別任用制度」を2017年より導入・運用しています。例えば、進行中のプロジェクトがあるなど、“いま抜けられては困る”といった会社側のニーズがある場合に経営会議の承認を経て役職を継続できる仕組みです。  経営陣の間では、もともと「定年を一定の年齢で区切るのはいかがなものか」という議論もありましたし、引退は基本的には本人の働く意欲や実力、組織への貢献度合いによって決まるべきであり、年齢は関係ないという考え方がベースにあります。  とはいえ世の中の一般的な定年60歳、法律が求める65歳までの雇用確保という流れを見据えつつバランスを取りながら制度を改革してきました。そしていまでは65歳までの雇用があたり前になるなかで、もはや年齢ではなく実力・貢献度を重視すべきという議論をふまえ、一部ではありますが65歳を超えて働ける仕組みを設けました。  年齢上限を撤廃した継続雇用制度は、部署からの推薦をもとに会社が認めた場合に適用され、対象者は特別任用制度の役職者に限定しています。したがって現時点ではそれほど多くはありません。退職金などの関係でいったん退職という形をとりますが、65歳以降の役割や処遇はそれ以前と変更はありません。 短日・短時間勤務制度、キャリア研修などにより高齢社員が意欲的に働ける環境を整備 ―高齢労働者の個々の事情に応じた働き方の多様性や柔軟化の動きも出てきています。その点に留意した施策などがあれば教えてください。 安田 2024年10月から、60歳以降の社員を対象とした短日勤務・短時間勤務制度を導入しています。短日勤務は週3日または週4日のフルタイム勤務から選択できます。また当社の1日あたりの所定労働時間は8時間ですが、短時間勤務の場合は、週5日勤務者については1日あたり7時間、6時間、5時間の短縮勤務を選択することができます。  いずれも育児・介護などの事情に関係なく自由に選択することができます。60歳以降は退職後も含めて自分の第二の人生についていろいろと考える時期でもあります。第二の人生に向けて準備する時間を取ったり、あるいは単純にフルタイム勤務は負担が大きかったり、気力・体力を100%保つのがむずかしいという人もいるでしょう。そうした人たちに働く時間の選択肢を与える目的で制度化しました。 ―自分のキャリアを自ら描く「キャリア自律」が叫ばれています。65歳まで意欲的に働くためのキャリア開発支援などの取組みについてはいかがでしょうか。 安田 対話を通じて自らのキャリアについて考える「キャリア相談窓口」を社内に設置しています。キャリアカウンセラーの資格を持った人が対応し、予約すればいつでもキャリア面談を受けることができます。  また、年代ごとに全員参加のキャリア研修を2018年から実施しています。中高齢層については、以前は55歳時のキャリアプランセミナーしか実施していませんでしたが、現在は29歳、39歳、49歳、59歳と10歳ごとの節目の時期にもキャリア研修を実施しています。特に中年以降はこれまでの自分のキャリアをふり返り、今後のキャリアについてしっかりと考え、今後どうしていくか、自分のキャリアを描く機会になっています。 (インタビュー・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、“年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙の写真:PEANUTS MINERALS/アフロ 2025 September No.550 特集 6 多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり 7 総論 高齢者雇用における多様で柔軟な勤務制度の重要性 独立行政法人労働政策研究・研修機構 多様な人材部門 副主任研究員 森山智彦 11 解説1 短日・短時間勤務制度、フレックスタイム制度の設計・運用と留意点 坂本直紀社会保険労務士法人 特定社会保険労務士 坂本直紀 16 解説2 在宅勤務制度の設計・運用と留意点 株式会社田代コンサルティング 田代英治 20 事例 株式会社NJS(東京都港区) 70歳定年を支える柔軟な働き方と健康経営 1 リーダーズトーク No.124 本田技研工業株式会社 コーポレート管理本部 人事統括部長 安田啓一さん “人”が主体となる企業カルチャーの変革へ役割・実績重視の人事制度へ刷新 24 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 【第3回】 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースを活用しよう! 30 偉人たちのセカンドキャリア 第10回 悪人正機説を提唱した浄土真宗の祖 親鸞 歴史作家 河合敦 32 高齢者の職場探訪 北から、南から 第157回 福井県 株式会社まちづくり小浜 36 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第108回 アベイズム株式会社 パート社員 田所瑞也さん(71歳) 38 がんと就労 −治療と仕事の両立支援制度のポイント− 【最終回】 従業員が、がんに罹患したら 永田昌子 42 知っておきたい労働法Q&A 《第87回》 就業確保措置とフリーランス新法、経歴詐称と内定取消し 家永勲/木勝瑛 46 “学び直し”を科学する 【第4回】 「脳番地」を活かした学び方 加藤俊徳 48 いまさら聞けない人事用語辞典 第61回 「障害者雇用」 吉岡利之 50 労務資料 『令和7年版高齢社会白書』内閣府 54 BOOKS 56 ニュース ファイル 58 お知らせ 令和7年度「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」のご案内 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.355 ミクロン単位の調整で新製品の開発を支える 金型製造工 及川光宏さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第99回]数字ぷちぷち 篠原菊紀 ※連載「日本史にみる長寿食」は休載します 【P6】 特集 多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり  2021(令和3)年の改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となって4年が経過し、多くの企業で高齢者雇用の取組みが進んでいます。70歳就業時代を迎えるなか、高齢者が70歳、さらに70歳を超えて働くことのできる環境を整えていくために、本人の体力や健康問題、家庭の事情など、加齢とともにさまざまな事情が増えていく高齢者が、自身の希望や都合に合わせて働ける、多様で柔軟な勤務制度の整備が重要となります。  そこで今回は、高齢社員の多様で柔軟な勤務制度に焦点をあて、制度を設計・運用していくうえでの留意点などについて、企業事例を交えて紹介します。 【P7-10】 総論 高齢者雇用における多様で柔軟な勤務制度の重要性 独立行政法人労働政策研究・研修機構 多様な人材部門 副主任研究員 森山(もりやま)智彦(ともひこ) 1 多様で柔軟な勤務制度が求められる背景  高齢者が活躍できる場をよりいっそう広げるために、多様で柔軟な勤務制度が求められているとよくいわれます。「多様」ということは、フルタイムの正規雇用労働を典型的とすれば、それ以外の非典型的な働き方のニーズがいくつもあることを意味しています。どのようなニーズがあるのでしょうか。  ニーズは、高齢者本人に起因するものと家族に起因するものに分けられます。前者でまずあげられるのは健康です。体力や精神力は年齢によって変わりますし、個人差もありますので、「高齢者」と一括りにすることはできません。内閣府の2026(令和4)年度「高齢者の健康に関する調査結果」によると、60代後半で健康状態が「あまり良くない」と認識しているのは2割に満たず、4人に1人は通院・往診を利用していません(8ページ図表1)。加齢とともに主観的健康は悪化し、病気症状の出現率も高くなりますが、いつどのような症状があらわれるかは、本人でさえも当然予測が困難です。したがって、働き続けるためには、この予測できないリスクに対応した働き方が必要になります。  働くことに対する志向も、高年齢期には個人差が大きくなります。それまでは、生活のため、家族のために、より安定的に働けることや家事・育児とのバランスを重視して働いている人が多いのではないでしょうか。他方、高年齢期の就労理由として、60代前半は男性の8割、女性の6割が「収入」をあげていますが、年齢が上がるにつれて理由も多様化します(9ページ図表2)。特に「体によいから」働いている人の割合が増えています。働く理由は、資産や世帯全体の収入に依存すると考えられますが、すぐに収入が必要な人以外にも、老後の予測できない支出に対応したいと考えている人や健康維持のため、あるいは仕事を生きがいや社会との接点と考えている人もいるでしょう。若いころにできなかった仕事や地域貢献、社会的活動に従事している人もいると思います。  多様なニーズの背景にある家族要因としては、まず介護があげられます。厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、60代の18.2%、70代の14.1%、80歳以上の8.6%が介護のにない手となっています。要介護者は、60代の8割は親・義理の親ですが、70代以上は大半が配偶者となり、ほぼ全員が老老介護の状況下にあります(9ページ図表3)。  もう一つは育児です。晩婚化が進んでいるため、高年齢期に至っても子どもの教育費がかかる家庭も増えているかもしれませんが、おもには孫の世話です。国立社会保障・人口問題研究所の「第16回出生動向基本調査」によると、最初の孫が3歳になるまでの間に何らかの手助けを行った祖父母の割合は年々増加し、直近(2015〈平成27〉〜2018年生まれの孫)では、祖母の57.8%、祖父の31.5%がサポート経験ありと答えています。なかには、少数ですが、介護と育児の両方を抱えている人もいます。ある国際学会では、これを「サンドイッチ現象」と呼び、問題視していました。  このような多様なニーズは若い年代にもありますが、健康や介護の問題に現実的に直面しやすくなるという点は、高年齢期特有といえるでしょう。また、役職定年や雇用形態の変化をともないながらキャリアを着地させていくなかで、どのような働き方を志向し選択するかにも個人差があります。これらに対して、企業などの需要サイドは、どのような制度を設けているのでしょうか。 2 雇用管理制度の多様性  人手不足を背景に、多くの企業が高齢従業員のための多様な制度を設けています。ニーズに合う選択肢を設けて、高いモチベーションを維持しながら働き続けてもらいたいからです。ただし、正規雇用労働者のみならず、パートタイマーや契約社員として働く人も、それらの制度の対象としているかどうかは、企業によってまちまちです。  正規雇用労働者にとって、定年制度が働き方の大きな分岐点になっていることはいうまでもありません。現在も60歳を定年年齢として定めている企業が最多を占めていますが、最近では65歳定年の会社も増えています。60歳までは、多くの会社が統一的な制度によって人事管理を行い、評価や処遇を決定しています。しかし60歳以降の雇用管理の仕方は、企業によってさまざまです。  厚生労働省の令和6年「高年齢者雇用状況等報告」によると、常用労働者数21人以上の全企業のなかで、定年年齢を64歳以下に定めている企業は67.3%を占めます。これらの企業は、従業員が希望すれば65歳まで継続雇用(再雇用)していると考えられます。また、25.2%の企業は定年年齢を65歳としています。65歳以降は、全体の31.9%の企業が70歳までの就業確保措置を実施しており、その多くを継続雇用制度(25.6%)が占めています。なお、全体の3.9%の企業は、定年制度自体を廃止しています。  さらには、定年年齢を引き上げた際に、再雇用制度も同時に設けておくことで、高齢者に複数の働き方の選択肢を提供している企業もあります。筆者がインタビューを行ったある企業では、再雇用制度を選択したほうが定年延長よりも柔軟な働き方が可能になる代わりに、60歳前後で賃金が大幅に低下していました。このように、根幹的な雇用管理制度において、高年齢期はそれ以前よりも多様な選択肢が設けられているといえます。  ところで、年齢を基準とする企業の制度が働き方やキャリアを強く規定することは日本では常識ですが、国際的に見ると、これは非常にユニークな制度です。ほかの先進諸国では、年金の支給開始年齢がキャリアや引退時期を強く規定しており、定年制度などの企業の制度はそこまで影響力を持っていません。日本の企業自らが高齢者のために積極的に多様な勤務制度を築いているのは、この独自性があるためです。 3 多様な勤務制度の種類  次に、多様な働き方を可能とする具体的な勤務制度について見ていきましょう。短日・短時間勤務制度、フレックスタイム制度、テレワーク、介護休暇制度などがこれに該当します。ただしこれらの制度は、一般的には高齢者のみに適用されているわけではなく、年齢にかかわらず利用可能な制度として設置されています。既存の制度の活用で高齢者のニーズが満たされるのであれば、それで問題ありません。実際に、介護と就労の両立に関して働き手が求めるニーズの多くは、一般的な有給休暇や短時間勤務制度で賄(まかな)えることが指摘されています(池田2023)。  短日・短時間勤務制度は、フルタイム・週5日の勤務から、1日の勤務時間と週の勤務日数のいずれか、または両方を短くして働くことができる勤務制度です。(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の「高齢期の人事戦略と人事管理の実態調査」※によると、58%の企業が65歳以降の社員を対象とした短日・短時間勤務制度を導入しています。そのなかには、勤務日数・勤務時間の上限や下限を定めている企業や、会社が勤務の仕方を複数設定している企業などがあります。ほとんどの企業は、勤務日・時間を高齢者と企業が調整して決定しています。  また、再雇用制度を採用している多くの企業では、短日・短時間勤務制度と組み合わせることで、従業員に柔軟な働き方を提供しています。体調面の変化や介護に対応するために、契約期間を1年単位にするなど短くし、臨機応変に短日・短時間勤務へとシフトできる仕組みを整えています。  ほかの制度に関しては、管見のかぎり、高齢者に限定して導入状況を調べている調査はありません。年齢を限定しなければ、全企業の7.2%がフレックスタイム制(厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」)を、47.3%がテレワーク(総務省「令和6年通信利用動向調査」)を導入しています。実際の活用状況は仕事内容などに依存しますので、その点は留意しなければいけませんが、これらを導入している企業では、高齢者もその適用対象となっていることが予想されます。実際に定年後、職務内容や賃金などの労働条件を変更すると同時に、テレワークで働くことを条件に勤務先からの継続雇用の打診を受諾したという記者職の事例もあります。  そのほかにも、高齢者の希望と受け入れる部署のニーズに応じて、自社内やグループ企業で人材の再配置を可能にする制度や、専門知識と経験を備えた人材を紹介・派遣する人材サービスの活用も、高齢者のキャリアや働き方の選択肢を広げることにつながるでしょう。 4 まとめ  年齢が進むにつれて、健康状態の悪化や介護などの予測困難な事態に直面するリスクは高まります。同時に、働き方や生き方に対する志向の個別性が顕著になります。これらに起因する高齢者の多様なニーズに対応するために、日本では、企業自らが積極的に“日本型”の柔軟な雇用管理制度、勤務制度の構築を模索してきました。高齢化が進むなかで、年齢を問わず意欲と能力に応じて働き続けられる社会を実現した国は世界でも例がありませんので、試行錯誤はこれからも続くと考えられます。一つひとつの企業の試みが先進事例となり、それらの蓄積が、高齢者の多様で柔軟な働き方の実現には欠かせません。 【参考文献】 * 池田心豪 2023『介護離職の構造:育児・介護休業法と両立支援ニーズ』(独)労働政策研究・研修機構 ※ 同調査結果は、以下の冊子でご覧いただけます。  『JEED 資料シリーズ6 高齢期の人事戦略と人事管理の実態−60歳代後半層の雇用状況と法改正への対応−』(2023年)  https://www.jeed.go.jp/elderly/research/report/document/copy_of_seriese6.html 図表1 高齢者の主観的健康状態、通院・往診頻度、病気症状 (%) N 主観的健康 通院・往診頻度 良い、まあ良い 普通 あまり良くない、良くない 不明・無回答 週に1回以上 月に1〜3回 年に数回 利用していない 不明・無回答 65〜69歳 515 37.3 46.0 14.8 1.9 4.5 43.1 23.1 25.6 3.7 70〜74歳 718 32.6 43.9 21.3 2.2 4.9 47.4 23.1 21.4 3.1 75歳以上 1,181 27.2 38.5 31.0 3.3 10.8 53.7 13.5 18.1 3.9 N 病気症状 循環器系(高血圧症等) 筋骨格系(痛風、腰痛症等) 目の病気 内分泌・代謝障害(糖尿病等) 呼吸器系(鼻炎、ぜんそく等) 消化器系(胃、肝臓の病気等) 特に病気や症状はない 65〜69歳 515 38.4 18.4 19.8 25.6 13.0 9.9 14.6 70〜74歳 718 45.1 23.3 21.6 23.3 11.0 9.3 9.6 75歳以上 1,181 48.0 26.6 26.6 19.0 9.7 11.5 7.1 注:病気症状に関しては、65歳以上の平均割合が10%を超えているもののみを抜粋している 出典:内閣府「令和4年度 高齢者の健康に関する調査結果」をもとに筆者集計 図表2 収入を伴う仕事をしている主な理由(性・年代別) (%) N 収入のため 仕事が面白いから 自分の知識・能力を生かせるから 仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから 働くのは体によいから、老化を防ぐから 不明・無回答 男性 60〜64歳 172 80.8 3.5 8.1 0.6 4.7 2.3 65〜69歳 133 57.1 3.8 15.8 0.8 18.8 3.8 70〜74歳 111 46.8 6.3 14.4 0.9 27.9 3.6 75歳以上 119 43.7 1.7 16.0 5.0 30.3 3.4 女性 60〜64歳 121 62.8 4.1 14.9 5.0 8.3 5.0 65〜69歳 120 45.8 4.2 15.8 3.3 25.8 5.0 70〜74歳 85 40.0 10.6 7.1 8.2 28.2 5.9 75歳以上 73 41.1 8.2 4.1 2.7 31.5 12.3 出典:内閣府「令和6年度高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」 図表3 要介護者の続柄、年齢(介護者の年齢別) (%) N 介護者からみた続柄 要介護者の年齢 配偶者 父母または義理の父母 その他 40〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75〜79歳 80歳以上 60〜69歳 18,189 18.0 80.2 1.8 2.6 6.8 6.9 2.2 81.5 70〜79歳 14,148 75.5 20.5 4.1 0.6 4.1 13.8 32.9 48.6 80歳以上 8,584 95.4 0.9 3.7 0.2 0.3 0.5 10.4 88.6 出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」をもとに筆者集計 【P11-15】 解説1 短日・短時間勤務制度、フレックスタイム制度の設計・運用と留意点 坂本直紀社会保険労務士法人 特定社会保険労務士 坂本(さかもと)直紀(なおき) 1 はじめに  2021(令和3)年施行の改正高年齢者雇用安定法により、70歳以降も働ける環境づくりが求められています。高齢者の健康や家庭事情などに配慮し、希望に応じた多様で柔軟な勤務制度の導入が重要です。  そこで、本稿では多様で柔軟な勤務制度として、短日・短時間勤務制度、フレックスタイム制度について解説します。 2 短日・短時間勤務制度について (1)基本的な内容  短日勤務制度とは、週あたりの所定労働日数を減らす勤務のことです(例:週3日勤務、など)  そして、短時間勤務制度とは、1日の所定労働時間を短くすることです(例:1日6時間勤務、など)。  この二つの制度を柔軟に組み合わせ、社員が「働く日数」、「働く時間帯」の両方を調整する場合もあります(例:週3日勤務かつ1日6時間勤務、など)。 (2)制度設計・運用上の留意点 @社会保険  定年後再雇用で有期契約の嘱託社員として勤務するなどの際、社員が短日・短時間勤務制度を選択することにより、社会保険の適用から外れることがあります。現在、従業員数51人以上の企業等で働く場合の社会保険適用基準は次の通りです。 ・週の所定労働時間が20時間以上であること ・所定内賃金が月額8.8万円以上であること ・2カ月を超える雇用見込みがあること ・学生でないこと  そして、従業員数50人以下の場合は、次のいずれにも該当する場合は、被保険者になります。 ・1週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上 ・1月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上  こうしたことから、勤務時間の長さなどで、社会保険加入資格が得られなくなる可能性があることに留意しておく必要があります。 A雇用保険  雇用保険の適用事業所に雇用され、次の労働条件のいずれにも該当する労働者は、原則として被保険者となります。 ・1週間の所定労働時間が20時間以上であること ・31日以上の雇用見込みがあること  したがって、短日・短時間勤務制度により、週の所定労働時間が20時間未満となれば、雇用保険の被保険者から外れることについても注意が必要です。 B労働基準法 ・年次有給休暇  週30時間以上勤務、または週5日以上勤務する場合は、通常労働者扱いとなり、短時間勤務制度を利用している場合も、通常の社員と同様に年次有給休暇を取得することになります。  一方で、週所定労働日数が4日以下、または年間所定労働日数が216日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、比例付与により、年次有給休暇の付与日数が少なくなります。したがって、短日・短時間勤務制度により、適用した後の基準日において年次有給休暇の付与日数が少なくなることもあります。 ・休憩時間  労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は、少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を付与することとされています。したがって、短時間勤務により所定労働時間が少なくなれば、休憩時間の減少または付与しない取扱いが出てくる場合も生じます。 C同一労働同一賃金  同一労働同一賃金とは、同一企業におけるいわゆる正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者など)との間の不合理な待遇差の解消を図るものです。  したがって、短日・短時間勤務制度を適用する社員についても、同一労働同一賃金があてはまりますので、注意が必要です。 (3)短日・短時間勤務制度に関する規程例  高齢者を対象とした短日・短時間勤務制度の規程例を紹介します。 (目的) 第1条 本規程は、満60歳以上の嘱託社員(以下「嘱託社員」という)が、健康状態や生活設計に応じて勤務日数・勤務時間を柔軟に選択できる「短日・短時間勤務制度」の運用に関し、必要な事項を定めることを目的とする。 (適用範囲) 第2条 本規程は、次のいずれかに該当し、会社と雇用契約を締結した者に適用する。 (1)定年到達後に再雇用された者 (2)60歳以上で新たに嘱託社員として採用された者 (勤務形態の選択) 第3条 嘱託社員は、次の勤務形態から一つを選択できる。 (1)短日勤務:週3日(原則:月・水・金)、1日8時間 (2)短時間勤務:週5日、1日6時間(9:00〜16:00、休憩1時間) (3)組合せ勤務:週4日、1日5時間(10:00〜16:00、休憩1時間) 2 前項の週の所定労働日数、1日の所定労働時間数、曜日、時間帯は、嘱託社員と所属長と協議のうえ、会社が必要と認めた場合は変更することができる。 (申請・承認および変更制限) 第4条 勤務形態の選択は、「短日・短時間勤務申請書」を原則として、就業開始希望日の30日前までに人事部へ提出するものとする。 2 原則として、前項により決定した勤務形態は、次回の嘱託契約更新時まで変更できない。ただし、本人の病気治療・家族の介護その他やむを得ない事情が生じた場合で、本人が変更を申請し、所属長が認めた場合は、変更することができる。 (年次有給休暇) 第5条 週30時間以上勤務、または週5日以上勤務する嘱託社員には、正社員と同様に年次有給休暇を付与する。週所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の場合は、次表の通り、勤続年数に応じた日数の年次有給休暇を付与する。 年次有給休暇比例付与表(略) 週所定労働日数 年間所定労働日数 雇入れの日から起算した継続勤務期間に応ずる日数 6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月 4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日 3日 121〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日 2日 73〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日 1日 48〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日 (基本給) 第6条 嘱託社員の基本給は月給制とし、次に定める方法で基本給を決定する。 (1)基準月額:週5日・1日8時間勤務を前提とした「賃金表」に定める金額である。当該基準月額に基づき、次号以降における短日・短時間勤務者の基本給を定める。 (2)短日勤務者の基本給:基準月額×(週所定勤務日数÷5) (3)短時間勤務者の基本給:基準月額×(1日の所定労働時間÷8) (4)組合せ勤務者の基本給:基準月額×(週所定勤務日数÷5)×(1日の所定労働時間÷8) (通勤手当) 第7条 通勤手当は、原則として、定期券購入費に相当する金額を毎月支給する。ただし、通勤交通費を計算した結果、通勤交通費にかかる実費が定期券購入費を下回る場合は、原則として実費を支給するものとする。 (附則)  本規程は、〇年〇月〇日から施行する。 3 フレックスタイム制度について (1)基本的な内容  図表1の通り、通常の労働時間制度では、労働者はあらかじめ定められた始業・終業時刻に基づき、勤務することが求められています。  一方、フレックスタイム制度では、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が自ら、日々の始業・終業時刻および労働時間を決められることを特徴としています。  また、いつでも出社または退社してもよい時間帯をフレキシブルタイム、必ず勤務しなければならない時間帯をコアタイムとして定めることができます。 (2)制度設計・運用上の留意点 @労使協定  フレックスタイム制度を導入するには、労使協定で次の事項を定めることが必要です。 (a)対象となる労働者の範囲  「全従業員」、「〇〇部に所属する社員」のように対象となる労働者の範囲を定めます。 (b)清算期間  フレックスタイム制度において、労働者が労働すべき時間を定める期間のことを意味します。清算期間を定める際は、清算期間の起算日(例:毎月1日)を決めておく必要があります。 (c)清算期間における総労働時間  清算期間における総労働時間とは、労働者の勤務が義務づけられている所定労働時間です。  そして、月単位を清算期間とした際の、清算期間における総労働時間を定めるにあたっては、図表2に示す通り、法定労働時間の総枠の範囲内とする必要があります。また、総労働時間を、「1日の所定労働時間に清算期間における所定労働日数を乗じて得られた時間数」のような定め方をする場合もあります。 (d)コアタイム(任意)  コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働くことが義務づけられている時間帯です。コアタイムを設ける場合は、その時間帯の開始・終了の時刻を労使協定で定める必要があります。 (e)フレキシブルタイム(任意)  フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯です。フレキシブルタイムを設ける場合においても、その時間帯の開始・終了の時刻を労使協定で定める必要があります。 Aそのほかの留意点 ・フレキシブルタイム時間帯の会議  フレキシブルタイムの時間帯に、例えば、「〇時に出社しなさい」といった命令はできません。  したがって、例えば、朝9時から10時まで会議を開催する場合、フレキシブルタイムの時間帯であれば、原則として、会議の出席を強要できません。会議という事情を説明して、会議の時間帯に出社を依頼して同意を得る対応になります。 ・年次有給休暇の取扱い  フレックスタイム制の対象労働者が、年次有給休暇を1日取得した場合、その日については、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱うことになります。 (3)フレックスタイム制に関する規程例 (目的) 第1条 本規程は、〇〇株式会社(以下「会社」という)の就業規則に基づき、フレックスタイム制で業務に従事する従業員(以下「フレックス勤務者」という)について必要な事項を定めることを目的とする。 (適用対象者) 第2条 フレックス勤務者は、管理監督者及びアルバイト社員以外の全社員を対象とする。 2 フレックス勤務者の始業及び終業の時刻については、フレックス勤務者の自主的決定に委ねるものとする。 (清算期間) 第3条 清算期間は1か月間とし、毎月1日を起算日とし、当月末日までとする。 (所定就業日) 第4条 フレックス勤務者の所定就業日は、就業規則に定めるところによるものとする。 2 会社は業務の都合上、必要がある場合は、休日を所定就業日に振り替えることがある。 3 休日を振り替える場合は、前日までに振り替える休日を指定し、フレックス勤務者に通知する。 (総労働時間) 第5条 一清算期間における総労働時間は、1日の所定労働時間に、清算期間における所定労働日数を乗じて得られた時間とする。 (標準となる1日の労働時間) 第6条 標準となる1日の労働時間は、8時間とし、年次有給休暇、積立年次有給休暇など有給で付与する休暇については1日につき8時間の労働があったものとして取り扱い、通常の賃金を支払うこととする。 (コアタイム) 第7条 コアタイム(フレックス勤務者が必ず就業しなければならない時間帯)は、10時から15時までとする。 (フレキシブルタイム) 第8条 フレキシブルタイム(業務計画に合わせて就業時間、始業・終業の時刻を自主的に選択できる時間帯)は、次の通りとする。 (1)始業時間帯=7時から10時までの間 (2)終業時間帯=15時から20時までの間 (休憩) 第9条 休憩時間は、12時から13時までとする。 (労働時間の清算) 第10条 清算期間における労働時間数が第5条に定める総所定労働時間を超過した場合は、当該超過労働時間に対して時間外勤務手当を支給する。 2 第5条の総労働時間に不足する時間については、基本給、手当のうちその満たない時間に相当する部分の額は支給しないものとする。 (フレックスタイム制の一時解除) 第11条 突発的業務、緊急事態の発生その他の都合により会社が必要と認める場合には、フレックスタイム制の適用を解除する場合がある。 (労働時間の管理) 第12条 フレックスタイム制の労働時間の管理は、次の通りとする。 (1)フレックス勤務者は、各日の労働時間を会社所定の方法で記録しなければならない。 (2)フレックス勤務者は、月間総労働時間に著しい過不足が生じないようにしなければならない。 (健康管理) 第13条 フレックス勤務者は、健康管理、ワークライフバランスの観点から、休日労働、深夜労働は、なるべく行わないように努めるものとする。 (適用解除) 第14条 会社は、合理的理由がないにもかかわらず、月間総所定労働時間に著しい過不足を発生させる勤務不良者についてはフレックスタイム制の適用を解除し、通常勤務に変更することがある。 (附則) 第15条 本規程は、〇年〇月〇日から施行する。 図表1 フレックスタイム制度と勤務時間 <通常の労働時間制度> 勤務時間 休憩 勤務時間 始業時刻 勤務が義務づけられている時間帯 終業時刻 <フレックスタイム制度> フレキシブルタイム コアタイム 休憩 コアタイム フレキシブルタイム 出社自由な時間帯 勤務が義務づけられている時間帯 退社自由な時間帯 ※厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」P.3の図を筆者が一部修正・加筆 図表2 清算期間の暦日数と法定労働時間の総枠 1カ月の法定労働時間の総枠 清算期間の暦日数 31日 177.1時間 30日 171.4時間 29日 165.7時間 28日 160.0時間 ※筆者作成 【P16-19】 解説2 在宅勤務制度の設計・運用と留意点 株式会社田代コンサルティング 田代(たしろ)英治(えいじ) 1 はじめに  昨今の人手不足の状況下、シニアに対する多様で柔軟な勤務制度の整備は、重要な雇用施策となっています。なかでも、加齢による体力の低下に対応でき、多様で柔軟な働き方を可能とする在宅勤務制度は、有望な選択肢の一つです。  ここでは、在宅勤務制度の概要やメリット・デメリット、制度設計・運用していくうえでの留意点および就業規則の規程例についても解説します。 2 テレワーク(在宅勤務)の定義と形態  在宅勤務はテレワークの一種です。このテレワークは、英語の「tele =離れた所」と「work=働く」をあわせた造語で、自宅など、会社以外の場所で情報通信機器を活用して働くことをいいます。  テレワークは、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、子育て世代やシニア世代、病気治療中や障害のある方も含め、一人ひとりのライフステージや生活スタイルに合った多様な働き方を実現するものです。  テレワークは、「雇用型」と「非雇用型(自営型)」に分類されます。  このうち、企業に雇用されている状態でのテレワーク(雇用型)は、業務を行う場所によって「在宅勤務」、「モバイルワーク」、「施設利用型勤務」の三つに分けられます。 @在宅勤務  在宅勤務とは、「自宅を就業場所として業務にたずさわるスタイル」のテレワークです。在宅勤務の場合、子育てや家族の介護、急な病気やけがなどでオフィスに行くことが困難な人でも仕事を続けられるため、柔軟な働き方を促進する制度として注目されています。  企業によって、すべての労働日を在宅勤務にあてる場合もあれば、週に数日だけテレワークを利用できるといったルールを設けている場合もあります。 Aモバイルワーク  モバイルワークとは「施設に依存せず、いつでも、どこでも仕事が可能な働き方」のことです。モバイルワークの例としては、カフェでの仕事や新幹線で移動中に仕事をすることなどがあげられます。 B施設利用型勤務  施設利用型勤務とは「サテライトオフィス、テレワークセンター、スポットオフィスなどを就業場所とする働き方」のことです。 3 在宅勤務制度のメリット・デメリット  高齢者雇用において、今後活用が期待できる在宅勤務制度について、メリット・デメリットとして、次のようなことが考えられます。 (1)在宅勤務制度導入のメリット・デメリット  会社側からみた場合には、ワーク・ライフ・バランスが最適化されることによる生産性の向上や、優秀な人材の確保を期待できることがメリットとなります。  社員側からみた在宅勤務のメリットは、通勤時間が発生しないことです。通勤ラッシュによる負担やストレスもありません。また、育児や介護をしながら仕事ができることも大きなポイントです。  一方、デメリットとして、家庭内雑務に気をとられたり、ワークスペースが狭かったりといった条件が重なって、円滑な業務遂行への影響が考えられます。また、作業時の電気代をはじめとする業務上のコストと生活費とを切り分けづらいため、社員がコストを自己負担するケースもあります。 (2)高齢者雇用における在宅勤務制度  経験豊かな高齢者は企業にとって貴重な存在ですが、体力や身体機能の低下は避けては通れません。この点、在宅勤務制度の導入は、業務に熟練した優秀な人材をつなぎ止め、仕事と介護などとの両立を容易にするメリットがあります。  高齢者の勤務形態の柔軟さや働き方の工夫は、全社員にとって働きやすい環境となり、若者や女性の人材確保にも大いに役立つでしょう。  このように、在宅勤務制度は高齢者雇用にとってメリットをもたらす一方、懸念されるのが在宅勤務に欠かせない高齢者のITのリテラシーです。  企業としても、在宅勤務制度の円滑な運用のために、デジタルスキル(ITを使いこなす知識・能力)向上に向けたシニア層の支援が求められます。 4 在宅勤務制度を設計・運用していくうえでの留意点  会社が在宅勤務制度を円滑に運用していくためには、以下の点に留意し、在宅勤務のルールを就業規則(「在宅勤務規程」など別規程として)に定め、周知することが必要です。 (1)在宅勤務の対象者  在宅勤務を適切に導入・実施するにあたっては、本人の意思を尊重することが重要ですので、本人の希望も対象者の要件とします。  円滑な運用とするためには、会社の許可がある場合にかぎって利用できるような制度の枠組み(許可制)としたうえで、事前の許可の期限とだれの許可が必要か(例えば、1週間前までに所属長の許可を要するなど)を決めておく必要があります。  また、いったん許可を与えた場合でも、(不適切な利用をしている者などに)いつでも取消しなどができる旨の規定を設けておくほうがよいでしょう。 (2)在宅勤務時の服務規律  就業規則本文などに定められている遵守事項以外で、情報通信機器や情報そのものの取扱いに関する事項など、在宅勤務に必要な服務規律を定めます。  ただし、職務専念義務(「勤務中は職務に専念すること」など)については、就業規則本文に定めがあっても、あえて在宅勤務規程にも職務専念義務について定めることで、注意喚起する効果を期待することができます。 (3)在宅勤務時の労働時間  通常の労働時間制度(毎日9時から18時までという定まった時間帯に業務を行う形)を在宅勤務に適用する場合には、在宅勤務者も通常のオフィスで業務を行うときと同じように勤務しなければなりません。つまり、始業および終業の時刻、休憩時間は、オフィスで勤務するときと同じ扱いとなります。  当然のことながら、在宅勤務中でも勤怠管理(始業および終業の時刻の把握)は必要であり、一般的には、始業および終業の際に上司に電話や電子メールで連絡を入れるという方法がとられています。  いわゆる中抜け時間についても、取扱いを定めることが望ましいです。在宅勤務では、一定程度業務から離れる時間が生じることが考えられ、このような中抜け時間については、労働基準法上、会社は把握することとしても、把握せずに始業および終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよいとされています。中抜け時間を把握する場合、その方法として、例えば一日の終業時に、従業員から報告させることが考えられます。  一方で、柔軟な勤務制度が有効とされるシニアに対しては、みなし労働時間制の適用を可能としておくことも考えられます。ただし、みなし労働時間制は情報通信機器が常時通信可能な状態におかれていないこと、業務が会社の随時具体的な指示に基づいて行われない場合にかぎって適用可能である点に留意する必要があります。 (4)在宅勤務における費用負担  在宅勤務にかかわる通信費や情報通信機器などの費用については、労使どちらが負担するか、また会社が負担する場合における限度額、さらに従業員が請求する場合の請求方法などについては、あらかじめ労使で話し合い、規程などに定めておくことが望ましいです。  なお、在宅勤務者による水道光熱費や通信費用の自己負担などにかえて、一定額の手当(在宅勤務手当)で補う場合には、当該手当は割増賃金の算定基礎に算入しなければなりませんので、割増賃金の算定基礎の規定もあわせて変更する必要がある点に留意が必要です。 5 在宅勤務制度を導入する場合の就業規則(在宅勤務規程)の規程例  最後に、在宅勤務制度を導入する場合に必要となる就業規則(在宅勤務規程)の規程例を上記4で指摘した留意点に沿って、示していきます。 (1)在宅勤務の対象者と承認プロセス 第〇条(在宅勤務の対象者)  在宅勤務の対象者は、就業規則第△条に規定する従業員であって次の各号の条件を全て満たした者とする。 (1)在宅勤務を希望する者 (2)自宅の執務環境及びセキュリティ環境が適正と認められる者 2 在宅勤務を希望する者は、所定の許可申請書に必要事項を記入の上、1週間前までに所属長から許可を受けなければならない。 3 会社は、業務上その他の事由により、前項による在宅勤務の許可を取り消すことがある。 4 第2項により在宅勤務の許可を受けた者が在宅勤務を行う場合は、前日までに所属長へ実施を届け出ること。 (2)服務規律条項 第〇条(在宅勤務時の服務規律)  在宅勤務に従事する者は、就業規則第△条及びセキュリティガイドラインに定めるものの他、次に定める事項を遵守しなければならない。 (1)在宅勤務中は職務に専念すること (2)許可申請書に記載された就業場所以外での業務を行わないこと (3)会社から貸与されたPC及び情報通信機器を用いて業務を遂行すること (4)会社から所定の手続を経て持ち出した情報、及び在宅勤務における作業の経過及び成果について、第三者(家族を含む)が閲覧・コピーしないように最大限の注意を払うこと(ディスプレイ表示をしたままの離席やセキュリティガイドラインに反する複写・複製は行わないこと) (5)会社から所定の手続を経て持ち出した情報、及び在宅勤務における作業の経過及び成果については、紛失、棄損しないように丁寧に取り扱い、セキュリティガイドラインに則って保管・管理すること (3)在宅勤務時の労働時間 第〇条(労働時間)  在宅勤務時の労働時問については、原則、就業規則第△条の定めるところによる。 2 前項にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。 (*)事業場外みなし労働時間制を適用する場合の規定例 3 第1項にかかわらず、在宅勤務を行う者が次の各号に該当する場合であって会社が必要と認めた場合は、就業規則第△条に定める所定労働時間の労働をしたものとみなす。この場合、労働条件通知書等の書面により明示する。 (1)従業員の自宅で業務に従事していること (2)会社と在宅勤務者間の情報通信機器の接続は在宅勤務者に任せていること (3)在宅勤務者の業務が常に所属長から随時指示命令を受けなければ遂行できない業務でないこと 第〇条(休憩時間)  在宅勤務者の休憩時間については、就業規則第△条の定めるところによる。 第〇条(所定休日)  在宅勤務者の休日については、就業規則第△条の定めるところによる。 第〇条(時間外及び休日労働等)  在宅勤務者が時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は所定の手続を経て所属長の許可を受けなければならない。 2 時間外労働、休日労働及び深夜労働について必要な事項は就業規則第△条の定めるところによる。 3 時間外労働、休日労働及び深夜労働については、給与規程に基づき、時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当を支給する。 第〇条(中抜け時間)  在宅勤務者は、勤務時間中に所定休憩時間以外に労働から離れる場合は、その中抜け時間について、終業時にメールで所属長に報告を行うこと。 2 中抜け時間については、休憩時間として取扱い、その時間分終業時刻を繰り下げること。 (4)費用負担 第〇条(費用の負担)  会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は会社負担とする。 2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。 3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は会社負担とする。 4 その他の費用については在宅勤務者の負担とする。 (*)在宅勤務手当を支給する場合の規定例 第〇条 在宅勤務者が負担する自宅の水道光熱費及び通信費用のうち、業務負担分として毎月月額○○○○○円を支給する。 【P20-23】 事例 株式会社NJS(東京都港区) 70歳定年を支える柔軟な働き方と健康経営○R(★) 新たなビジネスモデル構築に挑む上下水道の建設コンサルタント  株式会社NJSは1951(昭和26)年に設立された上下水道分野に特化した建設コンサルタント企業。「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」というパーパスを掲げ、上下水道などのインフラに関するコンサルティング、調査、設計、施工管理、経営コンサルティングなど、多岐にわたる事業を展開している。  同社の執行役員管理本部人事総務部長の細谷(ほそや)守生(もりお)さんは、事業の現状・展望について次のように話す。  「従来、当社は上下水道の設計や計画を手がけ、自治体のアドバイザーとしての立場で受託業務を中心に事業を展開してきました。近年は、政府主導でウォーターPPP※が推進されており、全国の事業体で導入可能性調査や導入検討が始まっています。この変化を受けて、当社も従来のアドバイザーの立場に加え、事業運営をになう民間プレイヤー側にも積極的に参画し、事業領域の拡大を図っています。キャッチフレーズとして掲げている『水と環境のオペレーションカンパニー』を目ざし、設計・計画業務に加え、DXの活用による施設運営管理の効率化、低コスト化を実現する提案を行うなど、新たなビジネスモデルを構築しています」 2019年に70歳定年制と年齢上限のない再雇用制度を導入  同社では、2019(平成31)年4月、従来の60歳定年・65歳までの再雇用制度を改定し、70歳定年制を導入。70歳定年後は、1年更新の契約社員となり、本人の健康状態や能力、会社の業務状況によっては、年齢上限なく働くことも可能となっている。  経営トップの「会社の競争力は“人”である」という強い意志のもと、2018年に高齢人材活用の検討がスタート。改革のコンセプトとして「ワーク・ライフ・イノベーション(仕事と人生の充実)」を掲げ、「働き方改革による70歳定年の実現」、「創造性と生産性の向上」、「人材育成の基盤強化」の3本柱で検討を重ねた。当初は65歳定年、70歳までの再雇用制度も検討されていたが、「ダイバーシティ推進のため、女性や障害者、外国人と同じように、高齢人材の活用を積極的に行いたい。そのためにも70歳定年制を実現したい」という経営トップの意向により、70歳定年制を前提とした抜本的な人事制度改革に方針を転換した。  こうした背景には、建設コンサルタント業界全体が抱える慢性的な人材不足がある。上下水道の設計には技術士をはじめとして国家資格が不可欠であり、シニア人材を含むこれらの資格者数が企業の競争力を左右する。また、「シニア社員」が長年の経験でつちかった技術的知見やノウハウは、会社にとって貴重な財産であり、その継承が重要な経営課題となっていたという。  定年を60歳から70歳へ延長したことで、「シニア社員」の知見をより長く組織内に留めることが可能となり、技術継承を着実に進める体制が整った。社員は70歳まで安定した収入を得られるようになり、将来の生活設計が立てやすくなるという安心感を得て働くことができるだけでなく、70歳以降も実力と健康状態次第で契約社員として継続して勤務ができることがやりがいにつながっている。  同社管理本部人事総務部課長の中塚(なかつか)理子(さとこ)さんは、制度改定後の高齢者雇用の状況について、次のように話す。  「2025(令和7)年3月に70歳定年制の導入以降、初めて4人の方が定年を迎えました。全員が契約社員として継続雇用され、それぞれの方がご自身の技術力を活かして、変わらずご活躍されています。2019年の制度改定以来、自治体OBの技術職や、民間企業での定年・再雇用を経て当社に入社していただく方も増えています。『まだまだ自身の能力や経験を活かして貢献したい』、『長く働ける点が魅力』という声が届いています」 希望や都合に合わせて働ける多様な勤務制度を整備  同社では、社員の生涯現役を実現する重要な要素として、自由度の高い働き方を掲げ、本人の希望や都合に合わせて働ける制度の整備に取り組んでいる。  「フレックスタイム制度」は、コアタイムを10時〜15時30分と定め、社員が自身の都合に合わせて勤務時間を調整することができる。毎日利用可能で、通院時間の確保や体調変化に合わせて早めに帰宅できるなど、自身の体調管理や家族の介護に活用できるほか、朝の通勤ラッシュを避けたオフピーク出勤や孫の保育園の送り迎えなど、個人の事情に柔軟に対応できる制度として活用されている。  「在宅勤務制度」は、週2回を上限として導入している。設計業務は、おもにパソコン上で行うため在宅勤務にも適していることから、シニア社員の多くが在宅勤務制度を活用しており、「通勤の体力的な負担を軽減しつつ、集中して業務に取り組める」と好評だ。家族の育児や介護を行っている社員については、在宅勤務制度が週2日から3日へ拡充される。  また、例えばがんの治療などを行っている社員については、個別に治療と仕事の両立支援プランを立て、完全在宅勤務や通院時間確保のための中抜けをプランに組み込むなど、個々の状況に合わせて柔軟な対応を行っているそうだ。  また、本人の申し出により契約社員に切り替えることも可能となっている。契約社員に変更すると、個別の労使間協議により完全在宅勤務のほか、短日・短時間勤務など、正社員よりもさらに柔軟で自由度の高い働き方が可能となる。契約社員への切り替えは、年2回実施する上長との面談で相談することができ、ライフプランに合わせた自由な働き方として、60代前半の社員が移行したケースもあるそうだ。 柔軟な処遇制度とポストオフ制度の導入  シニア社員を戦力として活用している同社では、柔軟で多様に働ける仕組みだけではなく、評価・処遇制度においても、柔軟に対応する仕組みの整備に取り組んでいる。  管理職である「マネジメント(M職)」、専門職をさす「エキスパート(E職)」、プレイヤーをになう「プロフェッショナル(C職)」、一般職の「アソシエイト(A職)」の4職群による複線型キャリアパスを整備。例えば、総合職で入社する技術者の場合は、C職から始まり、人事評価や会社指定の資格取得の有無などでC1→C2→C3に昇進し、条件を満たしたところでエキスパート(E職)とマネジメント(M職)に分かれる。エキスパートとマネジメントは役割の違いであり上下の差はない。  60歳以降は「シニア職」に位置づけられ、「シニア等級」に再格付けが行われる。例えば、60歳到達時点でE3に相当すると判断されれば、「S−E3」という等級に格付けされる。2019年4月の人事制度改定から5年が経過し、さまざまな課題が見えてきたため、2024年4月にシニア職の処遇制度については見直しを行った。  まず、60歳到達時に一律の比率で決定していた年収を個々の貢献度に合わせて変動するように変更した。  「60歳以上のシニア社員は原則として賞与はありませんが、年収ベースで処遇が決定されるため、賞与分が月給に上乗せされることで、月々の給与が上がるケースもあります」(中塚課長)  評価制度については、自治体を顧客とする入札型受注が事業の基本であるため、一般的な個人別売上げ目標による定量評価の適用が困難であったことから、現場ヒアリングを実施し、技術者に求められる具体的な行動を職種別に明示した「役割行動評価」を導入している。今回、この人事評価に基づくシニア職の昇格についてもルールを見直した。  「60歳以降も条件を満たせば昇格が可能で、実際に昇格したシニア社員もいます。これは、従来なかったがんばりを評価する仕組みとした成果だと考えています」(細谷部長)  また、65歳到達時に一律で職責を軽くしていた制度も見直した。  「従来の制度では、65歳到達時に面談・仕事内容の見直しと再格付けを行い、原則として1等級ダウンと業務負荷の軽減をルールにしていました。しかし、モチベーション、体力、スキルなど個人差が大きく、一律の対応では適切な処遇ができないと判断し、本人の希望、貢献度、上長の推薦に基づき、同等の職責を継続できるようにしました。新制度では、役職や責務の重さも考慮しながら、直近の人事評価結果を活用して処遇を決定します。会社への貢献度が大きい方については、年収が変わらずに維持するケースもあります」(中塚課長)  また、組織の持続的発展と人材育成を目的として、同時に「ポストオフ制度」を導入した。従来は60歳以降もマネジメント職(M職)継続が可能であったが、後進育成と計画的な世代交代を推進するため、60歳となりシニア職に移行する際は、原則として役職から離れ、専門職(E職)に移行し、経験と知識を活かす仕組みに変更した。  ポストオフ(役職定年)というと、モチベーションの低下も懸念されるところであるが、同社では複線型キャリアパス制度を採用しており、マネジメント職コースと専門職コースの処遇(給与・地位・評価等)に大きな差を設けない設計としていることから、役職定年を迎えた管理職が専門職へ移行した場合でも、処遇水準を維持することができるため、モチベーション低下を抑制できているという。 シニア人材の活躍と健康管理の取組み  長年の経験と専門知識を持つシニア社員は、設計の最終チェックを行う「レビューアー」として品質管理業務において非常に重要な役割をになっている。土木、建築、機械、電気の知識と、経験からくる「勘どころ」と呼ばれる直感的な判断力を活かし、設計の間違いや不具合防止に貢献するほか、新人や現役社員のサポート役として、つちかってきた技術を継承しつつ、後進育成に努めているシニア社員も多い。  各分野で活躍するシニア社員が、長く安心して働き続けられる環境を整備するため、同社では健康管理にも力を入れている。2018年に健康宣言を発表して、社員の健康づくり強化に取り組み、2021年から2024年まで、健康経営優良法人(大規模法人部門)に毎年認定されている。  具体的には、産業医、社内保健師による面談、社外のカウンセリング窓口の設置などを実施している。  「健康管理に対する意識が低い傾向にある社員層の場合、健康診断の数値が悪化するケースが多く見られ、将来的な健康リスクを懸念しています。特に疾患の予備軍に対するアプローチが重要だと認識しており、健康保険組合と連携したコラボヘルスに取り組んでいます。例えば、健康診断後に二次受診が必要とされた社員の受診率を上げるために、積極的に受診勧奨を行ったり、健康診断結果をもとに、特定保健指導を健康保険組合の協力のもと手厚く行い、生活習慣病が原因となる疾病を未然に防ぐことを意識しています」(中塚課長)  長く働くことで、その間に疾病にかかるリスクも上がることから、2025年3月からは、がんなどの三大疾病に備える団体生命保険を新たに導入している。また、病気の治療中の社員に対しては、保健師や上長が協力して「治療と仕事の両立プラン」を作成し、通院や服薬の時間を確保しながら仕事を続けられるようサポートしている。  細谷部長は、シニア社員の活用・戦力化と、健康や働き方の問題について次のように話す。  「シニア社員の専門知識と経験は、当社における重要な財産です。特に設計・計画分野での暗黙知を形式知化し、新たな事業領域に活用することが求められる現在においては、若手社員の新分野への挑戦に、ベテランの知見を組み合わせることで、競争優位性を確保していきたいと考えています。  一方で、シニア社員が持続的に活躍するためには、健康面への配慮や、無理なく働ける仕組みづくりが不可欠です。健康経営を重要な経営戦略と位置づけ継続するとともに、シニア社員の体力やライフスタイルに応じた柔軟な働き方を引き続き推進して、シニア社員が専門性を発揮できる環境を整備し、組織全体のパフォーマンス向上を図っていきます」  フレックスタイム制度、在宅勤務制度、契約社員への転換による短日・短時間勤務等の活用などの取組みにより、多様で柔軟な勤務制度を充実させ、シニア社員が個人の体調や家庭事情、ライフプランに応じて選択できる環境を整備した株式会社NJS。評価・処遇制度を含め制度の見直し・改定に取り組みながら、包括的に生涯現役にアプローチしている取組みは、多くの企業にとって大いに参考になるだろう。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 ※ウォーターPPP……上下水道など、水インフラの整備・運営に民間資金や技術を取り込み、官民連携を促進する国の政策 写真のキャプション 執行役員管理本部人事総務部細谷守生部長(左)、管理本部人事総務部中塚理子課長(右) 【P24-28】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 第3回 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースを活用しよう! 〈前回までのあらすじ〉 株式会社ジード製作所は製造業を営む中小企業。このたび、高齢者雇用を推進するためエルダのもとを訪れ、65歳超雇用推進助成金の利用をすすめられた。 ★ このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです 図表 計画申請から支給までの流れ <計画の実施期間が2026年4月1日〜2027年3月31日の場合> 2025年10月1日 3カ月 計画申請期間 (6カ月前〜3カ月前) 雇用管理整備計画書 提出期間 2025年10月1日〜2026年1月1日 1月1日 計画認定 2026年4月1日 開始日 終了日 計画実施期間 (1年以内) 雇用管理整備計画 実施期間 2026年4月1日〜2027年3月31日 2027年3月31日 確認期間 (6カ月) 実施確認期間 2027年4月1日〜2027年9月30日 10月1日 2カ月 支給申請期間 (2カ月以内) 支給申請書 提出期間 2027年10月1日〜2027年11月30日 2027年11月30日 ※1 前回(2025年8月号)は、JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202508/index.html#page=32 ※2 今号の特集「多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり」(6ページ〜)も、ぜひご一読ください。 ※3 JEEDホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202507/index.html#page=8 次号につづく 【P29】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 解説 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 第3回 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースを活用しよう!  高齢者雇用を推進していくうえでは、就業規則の見直しおよび賃金制度や労働条件の見直し、安全・健康管理をはじめとした職場環境の改善等の検討は欠かせません。  特に就業規則の改正には、企業の実情に合わせた制度設計やコンプライアンスの観点から社会保険労務士などの専門的な支援が必要とされますが、そのための経費も発生します。決して小さくはないその負担を軽減できるのが、「65歳超雇用推進助成金」です。今回は、そのなかの「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」についてご紹介します。 Check1 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  高年齢者の雇用の推進を図るために雇用管理制度(賃金制度、労働時間制度、健康管理制度など)の整備にかかる措置を実施した事業主に対して、措置に要した費用の一部を助成します。 【支給額】  支給対象となる経費は、@雇用管理制度の導入などに必要な専門家に対する委託費、コンサルタントの相談に要した経費、A雇用管理制度の実施にともない必要となる機器等の導入に要した経費です。  支給対象経費(上限50万円)に60%(中小企業事業主以外は45%)を乗じた額を支給します。 ※初回の支給対象経費は、当該措置の実施に50万円の費用を要したものとみなし、中小企業事業主なら30万円、中小企業事業主以外の場合は22万5000円を支給します。 Check2 雇用管理制度の整備例 @意欲や能力に応じた適正な配置・処遇を行うため、高年齢者の職業能力を評価する仕組みやそれを活用した賃金・人事処遇制度を導入または改善する A短時間勤務制度や隔日勤務制度など、高年齢者の希望に応じた勤務を可能とする労働時間制度を導入または改善する B高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度を導入または改善する C高年齢者が意欲と能力を発揮して働くために必要となる知識を付与するための研修制度の導入または改善を行う。なお、研修は下記のいずれにも該当すること  ・業務遂行の過程外で行われる研修であること  ・1人につき4時間以上の研修制度等であること  ・高年齢者雇用等推進者も同じ研修を受講すること D高年齢者の意欲と能力を活かすため、高年齢者向けの専門職制度の導入など、高年齢者に適切な役割を付与する制度を導入または改善する E人間ドックまたは生活習慣病予防検診など、高年齢者に対する法定の健康診断以外の健康管理制度を導入するとともに、費用の半額以上を事業主が負担し、健康管理制度や費用負担について労働協約または就業規則に明示すること F上記@〜E以外に、高年齢者の雇用の機会の増大のために必要な高年齢者の雇用管理制度を導入または改善する お問合せ JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課) ※各支部の問合せ先は65ページをご参照ください。 【P30-31】 偉人たちのセカンドキャリア 歴史作家 河合(かわい)敦(あつし) 第10回 悪人正機説を提唱した浄土真宗の祖 親鸞(しんらん) 法然(ほうねん)のもとで頭角を現すも流罪で越後の地へ  親鸞は1173(承じょう安あん3)年に貴族の日野(ひの)有範(ありのり)の子として生まれ、9歳のときに比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)にのぼって20年間修行に励みましたが、さまざまな迷いが生じ、山を下りてやがて法然のもとへ出向きます。  法然は「念仏(南無阿弥陀仏)を唱え続ければ、人は往生できる」と説きました。厳しい修行を必要としないことから多くの人びとを惹き付けていました。親鸞はすぐに法然を信用せず、100日の間通って、その人柄を見極めました。結果、親鸞は「念仏は浄土に生まれる種なのか、それとも地獄に落ちる業なのか、私にはあずかり知らぬこと。でも、たとえ法然にだまされ、念仏して地獄におちたとしても後悔しない」と法然を心から信じて弟子になり、めきめき頭角を現していきました。  一方、比叡山延暦寺や奈良の興福寺(こうふくじ)は、法然の信者の増大を懸念し、朝廷に念仏停止を訴えました。1207(承元(じょうげん)元)年、後鳥羽(ごとば)上皇はこれを取りあげ、念仏を禁じ、法然と弟子たちを配流(はいる)したのです。このとき親鸞も連座して越後に流されることになりました。親鸞が恵信尼(えしんに)を妻としたのは、この前後のことだといわれています。 教義が共感を集め門徒が急速に拡大したが…  7年後、親鸞は赦免されましたが、京都へは戻らず、しばらく越後にとどまった後、関東の笠間郡稲田郷(茨城県笠間市)に庵を結びました。流罪という困難を仏の愛と深い配慮の賜物として受け取り、関東という新天地で人々の救済に取り組もうと不退転の決意をしたのです。  親鸞は「たった一度だけ、心から念仏(南無阿弥陀仏)を唱えたら、人は必ず極楽往生できる」と唱えました。しかも「阿弥陀様は、悪人を率先して救ってくれる」と断言したのです。これを悪人正機説(あくにんしょうきせつ)といいますが、親鸞のいう悪人は、悪い人間という意味ではありません。どうしても煩悩を捨てきれず、自分の力では悟りを得られないと自覚した者をさしているのです。「自力ではどうにもできない」という自覚を持った人間は、全面的に仏の力にすがろうとします。だから阿弥陀如来も、悪人のほうが救いやすいというわけです。  さらに親鸞は「私は妻をもち、僧でなくなったのだから在家(一般人)と変わらない。それに、私のもとに集まった人々は、私の力で念仏をとなえるようになったわけではない。すべては阿弥陀様のお計らい。だからどうして彼らを弟子などといえようか。私には一人の弟子もいない」と語り、信者たちを「御同朋(おんどうぼう)」、「御同行(おんどうぎょう)」と呼びました。  このように肉食妻帯(にくじきさいたい)を許し、仏のもとの平等を説いたうえ、たった一度、心から念仏を唱えたら極楽へ行けるという教義は、当時の人びとにとって極めて魅力的なものでした。このため親鸞のもとには大勢の人びとが救いを求めて殺到するようになりました。  熱心で有力な門徒たちは、親鸞の教えを貪欲に学んで道場(他宗でいう寺院)を開き、信者を集めました。こうして教団が強大化した1235(嘉禎(かてい)元)年、親鸞は20年近く住んだ関東を去って、にわかに故郷の京都へ戻りました。63歳でした。  関東を離れたのは、鎌倉幕府が念仏に警戒の念を向け始めたからだといいます。  信者のなかに悪人正機説を都合よく解釈し、悪さをしたり酒飲肉食をしたり、平然と異性とみだらな行為にふける者が現れたのです。領主に反抗して年貢を納めぬケースもあり、幕府も看過できなくなったようです。親鸞はこうした信者たちを「獅子身中の虫」、「地獄にも落ち、天魔ともなり候」と非難しますが、異端的な行為は下火にならず、権力の弾圧を避けるため、仕方なく京都へ拠点を移したようです。親鸞が去ると、門徒は寄りどころを失って、ますます異端は増加し、道場主と呼ばれる有力門徒らが勢力争いや信者争奪戦を始めました。 息子・善鸞(ぜんらん)との対立を経て亡くなる直前まで読経  老齢の親鸞は関東へ下って事態を沈静化する体力はなく、息子の善鸞を派遣しました。  善鸞は父の期待にこたえるため、異端の者を改心させようと努力しますが、成果があがりません。焦った善鸞は、禁じ手を使ってしまいました。  「道場主から伝えられた親鸞の教えは間違いだ。萎れた花のようなもので、ただちに捨てなければならない。じつは私は、親鸞から直接秘伝(法文)を授けられている。これを知らなければ、あなたがたは決して極楽に往生できぬ」  もちろん、秘伝など存在しません。善鸞は人々を惹きつけるためウソをいい始めたのです。ただ、善鸞の言葉は絶大な効果をもち、たちまちにして大教団をつくりあげてしまったのです。関東の各道場主たちは驚き、京都にいる親鸞に訴えました。親鸞はまさか我が子が異端思想を広めているとは信じられず、「そう考えるのは、お前たちの信心が足りないからだ」と逆に道場主たちを叱責しました。けれどしばらくすると、親鸞も事実だとわかってきました。  そこで親鸞は、激しく言葉で善鸞を叱りつける手紙を送りましたが、善鸞はごまかしやいい逃れでうまく父をあしらい、その言動を改めません。それでも親鸞は何度も手紙で息子を諫(いさ)めようとします。すると善鸞は開き直り、鎌倉幕府に対し「念仏の道場主たちは、信者たちを扇動して風紀を乱している」と訴えを起こしたのです。こうして関東の道場主たちは、数年にわたる法廷闘争を余儀なくされました。  ここにおいて親鸞は、意を決して1256(康元(こうげん)元)年5月29日に善鸞と親子の縁を切る義絶状を送ったのです。「私に虚言をいうのは、父を殺したのと同じ。お前がしたことを伝え聞くに、その浅ましさはいうことができないほどだ。もう私はお前の親ではない。お前を子と思わない。悲しいことである」と記されていました。  そして親鸞は、義絶した事実を全国の門徒たちに伝え、事態の収拾をはかりました。まさに苦汁の選択でした。このとき親鸞84歳。本来なら善鸞に関東のことはすべてゆだね、京都でゆっくり余生を過ごせていたはずです。  親鸞はその後、正しい教えが伝わるよう著述に没頭し、己の著書を有力門徒たちに送付しました。門徒の質問に対しても、書簡を通じて正しくていねいに回答するようにしました。こうした生活が数年続き、1262(弘長(こうちょう)2)年11月になると、親鸞は念仏以外に何も言葉を発しなくなり、同月28日、低くとなえ続けた念仏が途絶え、頭を北にし顔を西側に向けたまま絶命しました。90歳という、当時としては大往生でした。 【P32-35】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第157回 福井県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 高齢従業員の働きやすさを支えるコミュニケーションと環境整備 企業プロフィール 株式会社まちづくり小浜(おばま)(福井県小浜市) ▲設立 2012(平成24)年 ▲業種 観光施設運営(宿泊・飲食・小売) ▲従業員数 77人 (60歳以上男女内訳)男性(5人)、女性(15人) (年齢内訳)60〜64歳 8人(10.4%) 65〜69歳 7人(9.1%) 70〜74歳 4人(5.2%) 75歳以上 1人(1.3%) ▲定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員をパートまたは契約社員として65歳まで継続雇用。最高年齢者は調理を担当する78歳  福井県は本州の日本海側に位置し、越前(えちぜん)から若狭(わかさ)まで南北に広がる変化に富んだ地形が特徴です。北部には越前海岸や白山(はくさん)山系(さんけい)の山並みが連なり、南部は若狭湾の穏やかな海と里山に囲まれた自然豊かな環境が広がります。  歴史的には越前松平家による城下町文化や、京へ海産物を献上した若狭の食文化など、多彩な地域性を育んできました。越前和紙、若狭塗、越前打刃物(うちはもの)といった伝統工芸がいまも息づいています。  JEED福井支部高齢・障害者業務課の斎藤(さいとう)朋子(ともこ)課長は、福井県の産業と支部の活動について、次にように話します。  「県内のおもな産業としては、繊維産業、眼鏡産業、機械産業、そして原子力発電所によるエネルギー供給があげられます。特に、眼鏡枠の生産は全国シェアの9割を占め、繊維産業は総合産地を形成しています。また、原子力発電所は関西経済圏へのエネルギー供給基地としての役割をになっています。  当支部は労働局やハローワークと連携して、より多くの企業に対して制度改善提案ができるように力を注いでいます。プランナーを中心とした制度改善提案が、実際の制度改善にすぐにつながらなかったとしても、企業内で検討するきっかけとしていただくために取り組んでいます」  同支部で活躍するプランナーの一人、國久(くにひさ)弘敏(ひろとし)さんは、高年齢者雇用アドバイザー・プランナー歴7年。社会保険労務士として活躍し、多様な事業所に対して状況に応じた労働時間制度および賃金制度に関する助言を行っています。気さくな語り口ながら、専門知識に基づいた説得力ある提案、助言で多くの経営者、企業の担当者から信頼を得ています。  今回は、國久プランナーの案内で「株式会社まちづくり小浜」を訪れました。 「食のまちづくり」を推進する観光複合企業  日本版DMO※登録法人の株式会社まちづくり小浜は、2012(平成24)年に道の駅「若狭おばま」の運営会社として誕生しました。当初は4〜5人で運営を行っていたそうですが、いまでは77人にまで拡大。道の駅のほか、町家を再生した宿泊施設「小浜町家(おばままちや)ステイ」、コロナ禍で閉業した旅館を買い取りリノベーションした「若狭佳日(わかさかじつ)」、地元食材を活かしたレストラン「濱(はま)の四季」の四つのブランドを運営しています。  雇用形態は非正規従業員が7割、うち60歳以上が20人で、レストラン部門では60〜70代が9割を占め、最高年齢者は78歳の調理担当者という「高齢者が主役」の職場です。  「小浜は古代から御食国(みけつくに)として京の都に海産物を献上してきた食の都です。穏やかな湾と山並みが育む米どころで、若狭牛、梅、牡蠣、ふぐ、わかめなど豊かな味覚がそろっています。福井県唯一の国宝建造物である明通寺(みょうつうじ)本堂や国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定された西組(にしぐみ)の町並みが点在し、海水浴や釣りが楽しめ、自然と文化に恵まれています。私たちは『小浜を一流の観光地にする』というビジョンのもと、食の町づくりに取り組んでいます」と話すのは、同社の経営企画室副室長経理課長(CFO)、小浜町家ステイ管掌商品開発部の藤本(ふじもと)隼人(はやと)さんです。  施設運営のほか、地域活性化の取組みとして「まち歩きマルシェ」を2021(令和3)年からスタートしました。歴史的町家が連なる西組地区のおよそ2kmの通り全体を市場に見立て、空き家や既存の店舗の軒先、建物の一部を活用し、地元はもちろん県内外から集まった出店者が雑貨や食べ物、工芸品などを販売するイベントです。毎年、紅葉が映える秋ごろに開催しており、参加者は古い町並みをそぞろ歩きしながら、ショッピングや旬のグルメ、交流を楽しみます。町全体を活用するこのイベントは、新たな店舗の出店につながっており、マルシェ出店をきっかけに常設のカフェや飲食店が誕生した事例もあり、観光と暮らしを結ぶ地域づくりの実践例として注目されています。 2カ月に1回アンケートを実施し体調と業務負担感を把握  同社の定年は60歳、希望者全員65歳までパートタイマーや契約社員として働くことが可能です。その後も運用で積極的に継続雇用する方針で、新規採用も行っています。  「高齢従業員が特に活躍するレストランは、市が運営していたころから在籍している方や他施設からの引継ぎで、60歳以上のスタッフが自然と増えてきました。ベテランの方々は本当に作業の手が速くて驚きます。元気な方にはぜひ働き続けてほしいと思っています」(藤本さん)  高齢者の新規採用では、面接時に一人ひとりの希望、体力、得意分野をしっかりヒアリングし、適した部署、体力負担の少ない業務、勤務時間を考慮しているそうです。ただ、このように適正なマッチングを心がけても、次第に担当業務が負担になり退職を願い出る人がいます。そうした際は早々に面談のうえ、別施設の異業種に配置転換することで、いまも継続して勤務している人もいるそうです。  ほかにも、レストランのメニューを変更してから、業務量が増え、従業員からさまざまな声が届くようになった時期がありました。  「疲労が要因と考えられるミスの増加もあり、勤務シフトや体制を見直しました。人員を増やして、週4日勤務から週3日勤務に減らし、連続勤務を避け疲労を軽減する対策をとったところ、従業員の健康状態が改善され、ミスがなくなりました」と藤本さんは話します。  これらの経験をふまえ、同社では2カ月に1回従業員にアンケートを実施しています。従業員の健康状態、仕事量に無理がないかを把握するためのもので、スマートフォンを使って数分で回答できる簡易なアンケートです。スマートフォンを使えない従業員には、直接対話で状況を確認しています。回答率は80%以上と高く、結果がよくない人には個別で声かけをするなどきめ細やかに対応し、必要に応じて仕事量を調整しています。  設備面でも高齢従業員に負担がないよう、客席に返却口を設けてセルフスタイルに改善を図ったほか、手元ライトや明るいLEDで視認性を確保し、高齢従業員が働きやすい環境整備に取り組んでいます。さらに、現場の意見を吸い上げるため、月1回のミーティングを実施し、できるだけ要望に応えるよう努めています。  当面の課題は、夏季の草刈りの体力作業。暑さによる負担が大きいため、業者への外部委託を検討中とのことです。  國久プランナーは、同社のこうした取組みについて、「すでに高齢従業員が働きやすい工夫を随所に取り入れています。多様な施設を運営している分、適材適所の配置が可能だと思います」と評します。  今回は、高齢従業員が活躍するレストランで店長を務めている方に、お話をうかがいました。 名物店長が築く“食と観光一体”の店づくり  レストラン「濱(はま)の四季(しき)」の店長を務める西本(にしもと)一郎(いちろう)さん(71歳)は、大学卒業後、敦賀(つるが)市にある水産物加工メーカーから誘いを受けて就職し、35年にわたって勤めました。その後、ドライブインでの勤務を経て、2018年にまちづくり小浜に入社。同時に、現職に抜擢されました。  食品と観光に一貫してたずさわり、食品メーカー時代には工場見学やちくわ・かまぼこづくりの体験コーナーを設けて観光客誘致に成功するなどの実績もあります。「味わうことは、まちを旅すること」、そんな感覚で西本さんは“食”を“観光”と一体化させてきました。「食品と観光は自分のなかでは一つです。この分野の知識と経験、あとは口だけで生きてきました。これが私のすべて」と笑う西本さん。場を一瞬で和ませる名物店長です。  西本さんは人間味あふれるマネジメントでもスタッフの信頼を得ています。「人間関係というのは、組織の一つの大きなコミュニケーションになるわけです。気分よく働いてもらうのが第一」と語る通り、スタッフそれぞれの個性や状況を把握し、特に深入りはせずに相手を尊重する距離感を大切にしています。  毎年、地元高校の食物科からインターンシップを受け入れており、過去にはインターン生がそのままアルバイトとして定着したこともあるそうです。若いスタッフの育成にも意欲的です。  藤本さんは、特に西本さんと調理長との絶妙なコンビネーションが店づくりに活きていると話します。  「西本さんと調理長は20歳近く年が離れていますが、同じ高校の先輩と後輩という間柄もあってか息がぴったりです。ホールを店長が、調理場を調理長がまとめ、互いの持ち場を尊重して、意見を出し合いながら協力しています。夏場の繁忙期は、ホールと厨房の連携が特に重要になりますが、事前に打合せを念入りにし、注文が一気に集中する時間帯でも互いの動きに呼応する“阿吽(あうん)の呼吸”で乗り切っています」(藤本さん)  「厨房とホール、どちらかが詰まると店全体が止まってしまいます。だから調理長とはよく話します。ちょっとでもお客さんをお待たせしたくないですから」(西本さん)  来客アンケートでは「接客が印象的だった」との声も多く、おいしい食事はもとより、名物店長率いるホールスタッフの接客が満足度につながり、リピーターの獲得および売上げ増に寄与しています。  「売上げ、来客数は伸びています。ですが、絶好調時が一番危ないと思っています。守りに入らず攻めの姿勢を維持して、若手へ現場を託す準備を進めていきたいです」と西本さんはふと厳しい表情で方針を語りました。  まちづくり小浜は、2024年に敦賀まで延伸した北陸新幹線を追い風に冬の閑散期をなくすことを次なるテーマに据えています。藤本さんは、「高齢の方々には観光客や若手社員に、小浜の魅力や歴史、食文化を伝えてほしいです」と、小浜を一流の観光地にするため、高齢従業員が果たす役割に大きな期待を寄せていました。  取材後、國久プランナーは、以前から提案している定年年齢を65歳、ならびに継続雇用の年齢を70歳へ引き上げることについてふれ、「いまは全従業員の約7割が非正規雇用であり、定年到達者が少ないため、定年制度の実感は薄いかもしれませんが、定年や継続雇用制度の見直しを含め、より長く安心して働ける環境づくりを今後とも支援していきたいです」と語りました。  観光客の通年化が実現すれば雇用もより安定し、定年年齢を65歳に、70歳までの継続雇用の本格検討も現実味を帯びるかもしれません。ベテランの地域知を観光客の食文化体験に転換し、若手へ技術と文化を継承する挑戦はこれからが本番といえそうです。(取材・西村玲) ※DMO(ディーエムオー)……Destination Management/Marketing Organizationの略称。「観光地域づくり法人」と訳される。地域の官・民・事業者を束ね、科学的なデータとマーケティング手法を用いて観光地全体をマネジメントする役割をになう 國久弘敏 プランナー アドバイザー・プランナー歴:7年 [國久プランナーから] 「初対面のケースが多いため、できるだけ懇切丁寧に説明し、情報は惜しみなく提供しています。相手の立場に立って考えることを心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆福井支部高齢・障害者業務課の斎藤課長は國久プランナーについて「明朗・明解、元気な語り口や親身な姿勢は、訪問先の企業やほかのプランナーなどから厚い信頼を得ています。プランナーなどのミーティングでは、効果的・円滑な事業所訪問につながるよう積極的に課題の提起・解決に向けた発言に努めています」と話します。 ◆福井支部高齢・障害者業務課は、越前市の福井職業能力開発促進センター(ポリテクセンター福井)内にあり、ハピラインふくい(元JR北陸本線)王子保(おうしお)駅から徒歩18分程度です。越前市は、関西・中京圏などの主要都市や福井市・敦賀市など周辺都市との交通の要衝となっており、北陸新幹線の延伸により、関東圏とのアクセスも便利になりました。 ◆同県では5人のプランナー・高年齢者雇用アドバイザーが、精力的に活動を行っています。2024年度は175件の相談・助言、50件の制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●福井支部高齢・障害者業務課 住所:福井県越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 電話:0778-23-1021 写真のキャプション 福井県小浜市 道の駅「若狭おばま」 藤本隼人経営企画室副室長経理課長 接客をするレストラン「濱の四季」店長の西本一郎さん 【P36-37】 第108回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  田所瑞也さん(71歳)は、半世紀を超えて印刷業界ひとすじに歩いてきた。高校卒業後に就職した会社で腕を磨き、たえず新しい技術力が求められる業界で切磋琢磨(せっさたくま)の日々を送ってきた。立場が変わった現在も、任された仕事に変わらぬ情熱を注ぐ田所さんが、生涯現役で働くことの喜びを語る。 アベイズム株式会社 パート社員 田所(たどころ)瑞也(みずや)さん アナログの世界の楽しさに出会って  私は福島県いわき市の生まれです。いわき市には常磐(じょうばん)炭鉱があり、父は炭鉱夫でした。石炭産業は戦後の日本の産業を牽引しましたが、私が高校を卒業するころには閉山していましたので、町はかつての賑わいを失っていました。高校には東京の企業から求人情報が数多く届いており、印刷業がどのような業界かわからぬまま、横浜にあった阿部(あべ)写真(しゃしん)印刷(いんさつ)株式会社(アベイズム株式会社の前身)に就職しました。大企業といわれる印刷会社からも複数の求人がありましたが、この会社を選んだのは縁があったからだと思います。70歳を超えたいまでも、現役で働き続けられる日常を思えば、18歳のときの私の選択は正しかったといえるかもしれません。  当時、横浜の工場には、大きく分けて印刷と製本の部門があり、私は製本の部門に配属されました。何の知識もなく、いきなり現場に出され、先輩の職人の背中をのぞき込みながら、身体で仕事を覚えていきました。製本の仕事をしながら、印刷の仕事にも興味がわき、ほどなく印刷の部門に移りました。  印刷の世界は日進月歩(にっしんげっぽ)といいます。こんなにも急速に変化した業界はないと私は思います。そのころはマニュアルもなく、まったくのアナログの世界でしたが、自分の力が試されるやりがいのある時代でもありました。  現在の社名「アベイズム」は「確固たる哲学を持つ会社」という強い意志を表しているとのこと。定年後も、その哲学とともに歩き続ける田所さん。ユーモアたっぷりの話しぶりから、会社の風通しのよさが伝わってくる。 神奈川の横浜市から千葉の長南町へ  最先端の印刷の現場で経験を重ねて17年ほどが過ぎたころ、会社が千葉県からの誘いを受けて千葉県長南町(ちょうなんまち)の長南工業団地に1991(平成3)年に工場が移転しました。「農村地域工業等導入促進法」によって、かつての農村地域に工業団地が次々に造成されていった時代です。高校を出て勤め始めた横浜市には「都会の香り」があふれていましたが、外房(そとぼう)線の茂原(もばら)駅から車で20分ほどの工業団地を訪れたときは、たいへんな所に来てしまったと思いました。しかし、豊かな自然に囲まれた広大な新工場は、私には新鮮でもありました。新しい印刷機械も次々と導入され、自分も技術力を磨かなければならないと、気を引き締めたことを覚えています。  そうこうしているうちに、私は製造部門のトップを任されることになりました。学歴のない自分を評価していただき、まじめに働いていれば報われることもあるものだと、ますます気合が入りました。  取材は長南工業団地の一角にある社屋で行われた。工業団地ができてから30年以上が経つが、白亜(はくあ)の社屋はいまも美しい。外観はもちろん、社内のレイアウトにも、同社のセンスのよさが感じられた。 再び製本の世界へ  製造部門のトップとして150人以上の部下たちの先頭を走り続けてきた自分も気がつけば定年を迎える年齢になっていました。当社は60歳で定年、その後は再雇用という立場で65歳まで働き続けることができました。65歳で退職して、さあ、憧れていた悠々自適の日々が待っているとわくわくしたものです。ところが、いざ退職してみると、退屈な毎日が続きました。50代のころから漠然と退職後の世界に夢を抱いていましたが、思えば働いていたからこそ見ることができた夢だったのかもしれません。もちろん少しは自由な時間を満喫(まんきつ)しましたが、働きたいという思いは日に日に強くなっていきました。ハローワークに行こうかと迷っていたころ、思いがけなく会社からオファーがありました。もう一度雇ってくれるというのです。退職して8カ月が経った夏、私は再び働く場を得たのです。  8カ月ぶりに戻ったのは、印刷の現場ではなく製本の現場でした。高校を卒業して初めて飛び込んだ世界へ帰ることになりました。印刷部門での仕事が長かったため、ブランクがありましたが、かつて先輩の職人から学んだ技術を身体が覚えていました。とはいうものの製本の世界も近代化され、新しく覚えることが山のようにありましたが、それもまた働くことの喜びでした。  「毎日ふらふらしていた私を見かねた仲間たちが私を会社に戻してくれたのだと思っています」と田所さん。気さくで明るい性格は若い人たちからも愛され、日々の交流がそのまま若手育成にもつながっている。 働き続けるというぜいたく  いまは製本の現場で梱包の作業に従事しています。通常の勤務は8時半から17時半までですが、立ち仕事が多いので、9時から16時までの短時間勤務です。ただ、以前とは異なり、新しい機械が導入されているので、仕事そのものはずいぶん軽減されました。たくさんの若い人たちと一緒に働いていますが、仕事に余計な口出しはしません。作業のマニュアルが完備されていますので、先輩の背中を見て仕事を盗むようなことはなくなりつつあるのです。  くり返しになりますが、印刷業はとても変化が激しい業界です。1991年に長南町へ移ってきたころは250人ほどの従業員がいましたが、その後のデジタル化により、現在は130人ほどの陣容です。慢性的な人手不足が続いた時代とは、隔世(かくせい)の感があります。  高校を卒業してこの世界に入って半世紀が過ぎました。同期入社の4人と、会社が借り上げてくれた寮で生活をともにした日々が懐かしく思い出されます。  私が長く働き続けてこられたのは、モノづくりの現場は苦労も多いけれど、創意工夫によって工程を改善する喜びがあったからだと思います。また、自分たちが手がけた仕事が形になって自分の目で確かめられるところも、モチベーションの向上につながっています。若い人には、少々つらいことがあったとしても、少しがまんして働き続ければ、新しい世界が開けてくるということを伝えたい。  そもそも趣味がない私に、悠々自適の生活など無理があったようです。8カ月でその生活に音(ね)を上げたとき、必要としてくれた会社があったからいまの自分がいます。だれかの役に立っているという自覚こそが、生涯現役を続ける肝(きも)ではないでしょうか。  生涯現役で働くためにまずは健康でいたいと、昼休みには緑豊かな会社の周りをせっせとウォーキングしています。ウグイスの声に聞きほれたり、名も知らぬ小さな花にいやされたり、ぜいたくな時間に感謝して、明日もまた現場に立ち続けようと思います。 【P38-41】 がんと就労 −治療と仕事の両立支援制度のポイント− 産業医科大学 医学部 両立支援科学 准教授 永田(ながた)昌子(まさこ)  二人に一人が罹患するといわれる病気「がん」。医療技術の進歩や治療方法の多様化により、がんに罹患したあとも働きながら治療を続けている人は増えています。その一方で、企業には、がんなどの病気に罹患した社員が、治療をしながら働き続けることのできる環境や制度を整えていくことが求められています。本企画では、その治療と仕事の両立支援に向け、企業が取り組むべきポイントを解説してきましたが、今回が最終回です。 最終回 従業員が、がんに罹患したら 1 はじめに  連載第1回では、がんの罹患率やがん治療の多様化、副作用について、第2回では、治療と仕事の両立しやすさの現状や具体的に企業に求められる取組みについて解説しました。  最終回となる今回は、実際に従業員の方ががんに罹患したと報告があった場合の、両立支援の具体的な進め方とそのポイントをご紹介します★。 2 早期の退職を思いとどまらせ会社の制度などを紹介する  がんと診断された従業員から、「治療のために退職を考えている」と伝えられた場合、上司や人事担当者の最初の対応が非常に重要です。連載第1回でご紹介したように、国立がん研究センターの調査によると、がん診断時に仕事をしていた人のうち、19.4%ががん治療のために退職・廃業しており、そのうち58.3%もの人が治療開始前に退職しています。これは、病気の受入れが不十分な状態や、周囲への迷惑を懸念する気持ちから、性急に離職してしまうケースです。病気が判明してすぐに退職を申し出てきた従業員に対して、まずは退職を保留し、治療を優先して、治療の目途が立ってから決めてほしいとお伝えすることが、本人にとってよりよい選択につながり、企業にとっても人材の確保につながると考えられます。  本人には慰留するとともに、情報提供を行ってください。会社の制度などの私傷病による休業制度や両立支援に関連する制度(時間単位の年次有給休暇、短時間勤務制度、時差出勤制度、在宅勤務制度など)、復職の制度についてです。休業期間、休業期間の手当の有無、傷病手当金の手続きの方法を知ることで、本人は安心して治療に専念することができます。復職の制度を知ることで、復職をぼんやり考え始めたときから、次に取るべき手続きを念頭に置き、本人はあらかじめ備えることができます。  例えば、入院中に退院後の生活指導をたずねたり、主治医に仕事に戻る時期を相談したり、診断書が必要なことを伝えるなどの行動につながります。情報提供とあわせて、今後の連絡のタイミングについて相談しておくとよいでしょう。治療方針が立ったり、治療の目途がついたり、退院した場合、もしくは1カ月に1度は本人から会社に連絡をもらうなどをあらかじめ決めておきます。 3 休業が必要な期間に関する情報をできる範囲で収集する  がんと診断された従業員から治療の報告を受けた際、休業した場合の業務の引継ぎや人員の補充の検討などのために、休業期間や治療の基本的な流れは知りたいものです。休業する期間が1カ月なのか、6カ月なのかで、人員の補充などの検討に影響を与えるでしょう。しかし、休業する期間に影響を与える治療方針や治療計画は、明確に初めから決まることは少なく、検査結果や副作用の出現に応じて適宜変更されるのが一般的です。そのため、入院期間や休業期間を医師に「正しく教えてください」とたずねても、医師は断言できないことがほとんどです。  そこで、患者である従業員には、医師に対して「同じ治療を受ける人は、一般的にどの程度入院するか」、「おおよそどのくらいの期間、仕事を休む必要があるか」などの聞き方で確認してもらうようお願いしてみるとよいでしょう。また、得られた情報も、変更がありうることを理解して、欠員への対応をするように、直属の上司にお伝えください。 4 復職を検討する時期は医療機関との連携を  従業員が治療を終える、もしくは治療を継続しながらも、復職を検討する段階に入ったら、職場は医療機関と連携し、従業員の状況を正確に把握することが重要です。この連携のツールとなるのが「勤務情報提供書」と「主治医意見書」です。 ■勤務情報提供書(39ページ図表1)  従業員本人と職場が共同で作成し、従業員の職種、業務内容、労働時間、職場環境などの情報を主治医に共有する様式です。厚生労働省のホームページ※1からダウンロード可能です。従業員本人の職務内容や勤務形態、勤務時間、利用できる制度に関してチェックします。「振動工具を使った作業はさせてよいのか」、「屋外での警備業務はさせて大丈夫だろうか」などの具体的な懸念がある場合には、その旨を記載してください。また、復帰直後に元の業務とは別の業務を担当させることを検討していたり、元の業務であっても負担を減らす配慮を検討していたりする場合もその旨を記載いただくと、主治医の判断を助けます。  記載例……「デスクワークをメインに仕事をしてもらう予定です」、「元の業務ですが、定数外のスタッフとして業務に入ることは可能」など ■主治医意見書(図表2)  勤務情報提供書に基づき、主治医が作成します。この意見書には、患者の病状や治療内容から、就業上の配慮が必要な事項(例えば、仕事が持病を悪化させるおそれがある場合の就業配慮や、事故・災害リスク予防の観点からの措置)や、望ましい就業上の措置に関する意見が記載されます。  職場と共同で作成された勤務情報提供書に基づき、一定規模以上※2の職場に勤める患者さんについて、主治医意見書を記載もしくは診療時に同席した産業医などに医療情報を職場に提供すると、医療機関はその費用を診療報酬として請求できます。これは、2018(平成30)年度の診療報酬制度改定で新設された「療養・就労両立支援指導料」です。医療機関もしくは医師がこの制度を十分理解していない可能性もあります。職場に必要な情報ですので、職場側から積極的に働きかけを行うことをおすすめします。  主治医意見書の内容をもとに、就業上の措置および治療に対する配慮に関する産業医等の意見聴取を行いましょう。産業医等がいない場合は、各都道府県の産業保健総合支援センターに相談することも可能です。仕事上の配慮を検討するためには、安全配慮義務と合理的配慮と治療を継続するうえでの配慮の三つの視点が重要です。  安全配慮義務とは、就労により病状が悪化したり、再発したり、労働災害が生じたりしないよう、事業者が労働者の疾病の種類や程度に応じた措置を講じる責任です。がん自体が仕事によって悪くなることはほぼありません。しかし、日常生活上で医療機関から禁止されていることは、職場でも避ける必要があります。  例……「骨転移があるから重たいものは持たない、腕を捻らない」、「術後3カ月は重量物の取り扱いは避ける」など  合理的配慮は、患者さん自身が働きやすくなるための工夫です。安全配慮とは異なり、医学的禁忌とまではいえないことがらへの対応です。  例……「下痢の副作用があるので、長距離出張は避ける」、「体力低下があるため、徐々に業務量を増やす」など  治療を継続するうえでの配慮は、おもに、通院や副作用が強い時期のための欠勤を許容する配慮です。  これらの配慮を適切に行うには、労働者の職務内容を記載した勤務情報提供書と、主治医が医学的見地から意見を記した主治医意見書を通じた医療機関との連携が不可欠です。  配慮の検討の際には、配慮が実施可能なものか、配慮を実施するおおよその期間、配慮を実施することで影響を受ける職場の上司や同僚の理解などを考慮するとよいでしょう。 5 必要な配慮とフォローアップ  一度配慮したら終わりではなく、継続的なフォローアップが不可欠です。特に治療を継続している方は、治療の変更、それによる体調の変化などに合わせて、配慮が必要となることがあります。図表3のような視点でフォローアップをするとよいでしょう。  今回は、事例対応の流れとポイントをご紹介しました。がんの事例対応は、事例ごとに必要な対応は異なりますが、基本方針の表明や意識啓発、休業したときに説明する資料などの準備や相談窓口の明確化、短時間勤務制度などの利用できる制度整備などは、共通して必要なことです。  高齢労働者のがんの罹患の頻度は高いこと、「不治の病」から「つき合う病気」へと変化しつつあるがん種も増えており、働けるがん患者が増えています。無理なく働くためには会社の制度など環境整備が重要です。  ぜひ、事例が出る前に、もし事例が出ていれば、その事例を契機に、環境整備をしていただければと思います。  高齢労働者の方ががんになっても、生きがいを持って働き続けられる職場づくりが求められています。 ★ 本連載の第1回から最終回まで、当機構(JEED)ホームページでまとめてお読みいただけます。  https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.html ※1 https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/download/ ※2 衛生推進者が選任されている事業者……常時10人以上雇用している事業場では、労働安全衛生法により、衛生推進者または安全衛生推進者を選任する義務がある 図表1 勤務情報提供書と記載例 勤務情報を主治医に提供する際の様式例 (主治医所属・氏名) 先生  今後の就業継続の可否、業務の内容について職場で配慮したほうがよいことなどについて、先生にご意見をいただくための従業員の勤務に関する情報です。  どうぞよろしくお願い申し上げます。 従業員氏名 Aさん 生年月日 ●年●月●日 住所 ●●●市●● ●‐● 職種 ※事務職、自動車の運転手、建設作業員など 職務内容 (作業場所・作業内容)  倉庫作業 フォークリフト運転 冷凍倉庫での作業もあり □体を使う作業(重作業) □体を使う作業(軽作業) □長時間立位 □暑熱場所での作業 □寒冷場所での作業 □高所作業 □車の運転 □機械の運転・操作 □対人業務 □遠隔地出張(国内) □海外出張 □単身赴任 勤務形態 □常昼勤務 □二交替勤務 □三交替勤務 □その他(      ) 勤務時間 8時30分〜17時30分(休憩1時間。週5日間。) (時間外・休日労働の状況:                    ) (国内・海外出張の状況:  なし                 ) 通勤方法 通勤時間 □徒歩  □公共交通機関(着座可能) □公共交通機関(着座不可能) □自動車 □その他(        ) 通勤時間:(             )分 休業可能期間 ●年●月●日まで(   日間) (給与支給 □有り □無し 傷病手当金 66%) 有給休暇日数 残 14日間 その他 特記事項 利用可能な制度 □時間単位の年次有給休暇 □傷病休暇・病気休暇 □時差出勤制度 □短時間勤務制度 □在宅勤務(テレワーク) □試し出勤制度 □その他(              ) 上記内容を確認しました。 年 月 日 (本人署名) 年 月 日 (会社名) ※厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」の様式例をもとに筆者作成 図表2 主治医意見書と記載例 治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例 (診断書と兼用) 患者氏名 ○○ ○○ 生年月日 ○年○月○日 住所 ○○ ○○ 病名 大腸がん 現在の症状 (通勤や業務遂行に影響を及ぼし得る症状や薬の副作用等)  上記病名に対し、手術を●月●日に施行した。術後の経過は順調で、現時点で症状はありません。 治療の予定 (入院治療・通院治療の必要性、今後のスケジュール(半年間、月1回の通院が必要、等))  今後2週に1度の頻度で化学療法を外来にて、●月まで実施予定である。 退院後/治療中の就業継続の可否 □可(職務の健康への悪影響は見込まれない) □条件付きで可(就業上の措置があれば可能) □現時点で不可(療養の継続が望ましい) 業務の内容について職場で配慮したほうがよいこと(望ましい就業上の措置) 例:重いものを持たない、暑い場所での作業は避ける、車の運転は不可、残業を避ける、長期の出張や海外出張は避ける など 注)提供された勤務情報を踏まえて、医学的見地から必要と考えられる配慮等の記載をお願いします。  薬剤の副作用は、冷たい物に触れると増強します。現在の化学療法を実施している間は、冷凍庫での作業は避けることが望ましいです。 その他配慮事項 例:通院時間を確保する、休憩場所を確保する など 注)治療のために必要と考えられる配慮等の記載をお願いします。  2週に1度外来にて化学療法を予定しています。通院時間の確保をお願いします。 上記の措置期間 ○○年○月○日〜○○年○月○日 上記内容を確認しました。 年 月 日 (本人署名) ●● ●● 上記のとおり、診断し、就業継続の可否等に関する意見を提出します。 年 月 日(主治医署名) ●● ●● (注)この様式は、患者が病状を悪化させることなく治療と就労を両立できるよう、職場での対応を検討するために使用するものです。この書類は、患者本人から会社に提供され、プライバシーに十分配慮して管理されます。 ※厚生労働省「治療と仕事の両立支援ナビ」の様式例をもとに筆者作成 図表3 フォローアップの視点 1.通院しやすさなど、仕事をしながら治療に取り組むことができる状況か? 2.治療中の、体調について自身でコントロールできる状況か? 3.勤怠の乱れがなく、仕事で十分なパフォーマンスを発揮できているか? 4.会社が求める就業レベルが医学的に妥当であるか?  (主治医意見書による必要な配慮とかけ離れていないか) 5.上司や同僚から継続的な理解や支援があるか? 6.職場から支援を受ける姿勢や、周囲への説明力が整っているか? 7.職場の考えと本人の自覚との間にギャップが生じていないか? 8.困りごとの変化や新たな困りごとはないか? 出典:厚生労働省科学研究報告書「治療と仕事を両立する患者に対する継続的な支援の実態と方策の検討」 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第87回 就業確保措置とフリーランス新法、経歴詐称と内定取消し 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲/弁護士 木勝瑛 Q1 70歳までの就業確保措置において、高齢社員に業務委託として就労を続けてもらう際の留意点について知りたい  人材不足が続いており、65歳の定年後も継続雇用をするほか、人材確保のため就業機会確保措置として業務委託契約に基づき就業してもらうことも検討しています。  雇用から業務委託に変更する場合の留意点について教えてください。 A  65歳を超えてから業務委託へ変更する場合にも、フリーランス保護法の適用があること、労働者ではないのであれば、依頼や業務の諾否(だくひ)の自由を確保するようにしておくことは、特に留意しておく必要があります。 1 高年齢者雇用安定法と就業機会の確保  現行の高年齢者雇用安定法においては、70歳までの就業機会の確保が努力義務とされています。また、2022(令和4)年時点の健康寿命も、男性は72歳、女性は75歳を越えており、65歳を迎えても健康的に働くことができる方が増えているというデータもあります。  そのため、65歳を超えてからについては、継続雇用のみではなく、就業確保措置として業務委託などのフリーランスとしての業務を委託することも可能となることから、業務委託契約への切り替えという方法が取られることが増えていくのではないかと思われます。  これらについては、2021年の改正高年齢者雇用安定法の施行時に、厚生労働省から改正の概要に関するパンフレットやQ&Aが公表されており、これらを参考に取り組むことが重要となっています。  当時のパンフレットが作成された時点では、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下、「フリーランス保護法」)が制定される前でした。しかしながら、同法においては、雇用契約からの切り替えであるとしても、適用対象外とするような定めは置かれていませんので、業務委託へ切り替えた場合には、同法が定める内容についても遵守しなければならないということには、あらためて留意しておく必要があります。 2 フリーランス保護法のおもな内容  フリーランス保護法において保護対象とされているのは、従業員を使用していない事業者を意味しています。65歳の定年後に業務委託契約に変更するような場合には、ほとんどの場合該当するはずです。  また、適用対象となる委託業務の内容についても、役務の提供が含まれているため、65歳を迎えて退職する以前と類似または同種の業務を委託するような場合には、通常、該当することになります。  フリーランス保護法の適用対象となる場合には、@業務委託の給付内容、報酬の額、役務の提供場所、報酬の支払い期日などの法定事項を記載した書面または電磁的方法による提供、A60日以内の報酬支払期限、B受領拒否、報酬の(一方的な)減額、買いたたき、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しなどの禁止、C育児・介護等と業務の両立に対する配慮義務、Dハラスメントに係る体制の整備義務などが定められています。  通常、@の書面等による明示事項については、業務委託契約書を作成すれば、含まれるべき内容であり、A報酬支払期限についても、従前の賃金と同じような支給を想定すれば1カ月を超える期間にわたって報酬の支払いが留保されることはないはずです。  また、CおよびDの育児介護への配慮、ハラスメントに係る体制については、労働者と同等の扱いを継続することによって実現することは可能となるはずです。  問題はBの禁止行為の適用対象になるという意識をもって取り組む必要があるという点になるでしょう。下請法類似の規制が業務委託となった高齢者との間で適用される関係となりますので、特に、労働者との間のやり取りであれば業務理解や指導の範疇として許容され得るようなやり取りであっても、不当な給付内容の変更・やり直しに該当してしまうと、禁止行為となり、ハラスメント通報の端緒にもなるような事象となるでしょう。 3 労働者性との関係  フリーランス保護法との関係では、業務委託契約書の法定記載事項を押さえておくことで遵守することができそうですが、他方で、雇用から業務委託への移行に関しては、不利益変更や偽装請負などの観点から労働者性が大きな問題となります。  この点については、厚生労働省が改正法施行時に公表していたパンフレットなどが参考になります。  まず、雇用以外の方法での就業機会の確保については、労使間で合意した創業支援等措置の実施に関する計画を定める必要があります。そのなかには、支払う金銭に関する事項、契約締結頻度、契約変更に関する事項、安全衛生に関する事項などを定めるものとされています。  また、個別に締結する業務委託契約においては、労働者との相違が明確になるようにしておく必要があります。要素として、@依頼や業務の諾否の自由の有無、A指揮監督の有無、B時間的・場所的な拘束性の有無、C代替性の有無などが主要な要素としてあげられています。しかしながら、Cについては、従業員のいない個人への委託であれば代替性は認められにくいはずであり、B時間的・場所的な拘束性も、雇用していたときの業務経験などを活かしてもらうことを想定すると、ある程度の拘束性があることが多くなってしまいがちです。また、A指揮監督の有無というのは、契約上は直接の指揮監督はしないことを明示することになりますが、個人への委託であれば、発注とそれに付随する情報提供と指揮命令の区別は、客観的には必ずしも明確ともいいがたいこともあります。  そうすると、@諾否の自由の有無が決め手になりやすいところになりそうです。業務委託契約の内容については、フリーランス保護法を遵守する内容としつつ、諾否の自由を確保しておくという点が、65歳以降の就業機会確保措置におけるおもな留意事項になるでしょう。 Q2 中途採用として内定を出した人材が経歴を詐称していた場合の対応について知りたい  採用手続きにおける求職者の経歴詐称に対し、どのような対応策が考えられますか。内定を取り消すなどの対応が可能なのでしょうか。 A  詐称された経歴の重要性、詐称の動機、詐称の態様などを考慮して内定取消しが客観的に合理的であり、社会通念上相当であると認められる場合には、内定の取消しが有効と判断される可能性があります。経歴詐称による内定取消しを有効とした裁判例としてアクセンチュア事件があります。 1 採用内定の法的性質  日本の採用活動においては、採用手続きの過程のなかで、「採用内定」という手続きが取られることがあります。この採用内定を、法的にどのようなものと理解すべきでしょうか。  この点について最高裁は、「具体的事案につき、採用内定の法的性質を判断するにあたつては、当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即してこれを検討する必要がある」と判示しています(最高裁昭和54年7月20日判決、大日本印刷事件)。つまり、個別の事案によってその法的な性質を決定するものとされているのです。本判例では、具体的事案を検討して、始期付解約権留保付労働契約と評価されました。 2 始期付解約権留保付労働契約  「解約権留保付」というのは、使用者側において、解約権が留保されているとの意味合いになります(その意味で、「留保解約権」と呼ばれることもあります)。使用者としては、採用面接や採用時の資料など、限られた情報から採否を決定しなければならないことから、採用内定後に判明した事実をもって解約する権利を留保していると理解してよいでしょう。  判例も「試用契約における解約権の留保は、大学卒業者の新規採用にあたり、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他いわゆる管理職要員としての適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集(しゅうしゅう)することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるもの」と述べています。 3 留保解約権行使の要件  始期付解約権留保付労働契約においては、使用者側に解約権が留保されていると説明しましたが、では、この解約権は無制限に行使することが可能なのでしょうか。答えは否です。留保解約権の趣旨から一定の制限を受けています。  上記判例によれば、留保解約権の行使について、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解する」とされています。  つまり、内定時に会社が知り得た事情や、知り得ない事情であっても、その事情を理由に解約権を行使することが不適切な場合には、解約権行使の有効性は否定されることになります。 4 経歴詐称の問題  採用活動において、求職者の経歴は非常に重要視されています。特に、中途採用においては、自社の業務内容や風土とマッチするかどうかを判断するために重要と考えられています。  他方で、使用者としては、基本的に、求職者から提供される情報を基にして採否の判断を行うことにならざるを得ません。経歴についても、履歴書や職務経歴書を提出してもらうことで、採否の判断の一要素とすることが一般的です。つまり、使用者側としては、求職者の提出した資料が正しいことを前提に、内定の判断をせざるを得ない、ということになります。  経歴は、前述の通り採用活動において重視されている一方で、労働者側の申告に依存せざるを得ないため、これが詐称されてしまうと、採用活動そのものが不安定になってしまうことが懸念されます。  また、求職者の経歴は、採否の判断の決め手になることもあるため、経歴詐称が判明した場合には、採用内定の判断が覆る可能性があります。さらに、経歴に関する詐称が判明した場合には、信頼関係に傷が入ることが考えられますので、そのような観点からも採否の判断が覆ることがあり得るでしょう。 5 経歴詐称による内定取消し  中途採用者の経歴詐称に関し、内定取消しを認めた裁判例として、アクセンチュア事件(東京高裁令和6年12月17日判決)があります。本裁判例は、中途採用者として採用内定を受けていた原告が、その後の経歴調査により虚偽の経歴の申告が判明したなどとして内定を取り消されたため、会社に対して、労働者たる地位の確認を求めた事案です。  本裁判例では、上述の一般的な留保解約権の行使に関する基準にとどまらず、中途採用における経歴詐称の事案にプロパーの下位基準として「単に、履歴書等の書類に虚偽の事実を記載し或いは事実を秘匿した事実が判明したのみならず、その結果、@労働力の資質、能力を客観的合理的に見て誤認し、企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるものとされたとき、又は、A企業の運営に当たり円滑な人間関係、相互信頼関係を維持できる性格を欠いていて企業内にとどめおくことができないほどの不正義性が認められる場合に限り、上記解約権の行使として有効なものと解すべき」(数字は筆者追記)と判示している点が注目されます。  本判決では、会社が中途採用者の経歴やコミュニケーション能力を重視していたこと、虚偽の記載がない旨の確認を書面にて受領していたこと、原告が前職での紛争を隠すために経歴詐称に及んだこと、面接の場においても経歴詐称が判明しないよう誤解を招くような受答えに終始していたことなどの事情を重視して、「企業内にとどめおくことができないほどの不正義性」を肯定し、留保解約権の行使を有効と認めました。  本判決の基準によれば、単に経歴詐称があったのみでは内定取消しは有効とはならず、詐称された経歴の重要性、経歴詐称の動機、経歴詐称の態様などを考慮して、事案ごとに有効性が判断されることになります。会社としては、内定者のリファレンスチェックを行うとともに、採用手続きの過程では、求職者からの書面に虚偽の記載がないことの確認を書面にて取得しておく、経歴に不信な点があれば面接時に具体的な質問を行うなどの対応が考えられるでしょう。 【P46-47】 “学び直し”を科学する  ミドル・シニアだからこそできる「大人の学び直し」を、科学的な見地からひも解く本連載。4回目のテーマは“「脳番地」を活かした学び方”です。1万人の脳を診断した脳内科医・医学博士の加藤俊徳先生に、脳のメカニズムを利用した効果的な“学び直し”の方法について、お話しいただきました。 第4回 「脳番地」を活かした学び方 株式会社脳の学校 代表/加藤プラチナクリニック 院長 加藤(かとう)俊徳(としのり) 八つの「脳番地」を理解する  脳には1000億個以上の神経細胞があり、それぞれの細胞は機能ごとに集団を形成し、脳内に拠点をつくっています。例えていうなら、脳の中には会社組織を構成する部署のようなもので、私はこれを「脳番地」と呼んでいます。  脳番地は右脳と左脳に各60ずつ、計120ほど形成されていますが、そのなかでぜひ知っておいていただきたいのが、次の八つの脳番地です。 @思考系脳番地…意思決定をになう「脳の総司令塔」。何かを考えるときに働く。 A理解系脳番地…脳に入ってきた情報を統合する役割をになう。わからないことを理解しようとするときなどに働く。 B記憶系脳番地…情報を整理し、必要に応じて引き出す機能を持つ。ものを覚えたり、思い出したりするときに働く。 C感情系脳番地…喜怒哀楽などあらゆる感情を生み出し、それを管理する領域。生涯にわたって成長を続ける。 D伝達系脳番地…コミュニケーションや情報発信をになう「脳の広報」。ほかの脳番地と密接に連携する。 E運動系脳番地…体の動きをコントロールする役割をになう。すべての脳番地のエネルギー源。脳全体を活性化するための起点にもなる。 F聴覚系脳番地…耳から入ってきた音声情報を処理する領域。言葉や音を解析し、情報をほかの脳番地に伝える役割もになう。 G視覚系脳番地…目から入ってきた情報を処理して脳に伝える機能を持つ。目で見た映像や画像、読んだ文章を脳に集積させる。 脳番地を使いこなし、成長を続ける  八つの脳番地の特性を理解し、使いこなすことができれば、学ぶ力は成長します。ただ脳番地は単独では効率的に働かないため、違う系統の脳番地との間の連携強化が重要になります。  例えば、記憶力を高めるためには、記憶系脳番地を鍛えればよいと思いがちですが、記憶系は単独ではなかなか動きません。記憶系と強くかかわる思考系や感情系と積極的にリンクさせることで、記憶を定着させたり、引き出したりすることがスムーズになります。脳番地は、会社組織などと同じで、それぞれがうまく連携ができれば、より大きな成果が期待できるのです。  ミドル・シニア世代の場合、長く同じ仕事をしていたり、生活がパターン化したりして、偏った脳番地ばかりを使っているケースが少なくないので、ふだん使っていない脳番地を意識し、働かせていくことが重要です。脳番地をまんべんなく使う生活によって、脳全体が活性化します。 「強い脳番地」から学びをスタート  ミドル・シニアの学び直しでは、仕事などで使い慣れた脳番地を利用し、学習を始めるのがおすすめです。例えば営業職の場合は伝達系、研究職なら理解系、秘書であれば記憶系というように、職業により、よく使う脳番地は違います。よく使う脳番地のネットワークは、慣れた経路なのでストレスが少なく快適です。そのため処理スピードも速いので、勉強にも活用できれば、短時間で効率的に学べるということです。  さらに人によって得意な脳番地も違います。なかでも顕著なのが「視覚系」と「聴覚系」です。視覚系が強い人の特徴は「スポーツやゲームが得意」、「文字や数字を映像で覚える」などで、聴覚系が強い人は「人の話を聞くのが好き。聞くのも苦にならない」、「言葉や数字は、口ずさんで覚えることが多い」などです。  ただし、視覚系は「疲労しやすい」といった特徴もあり、特定の脳番地ばかり使い続けることにはデメリットもあります。 学び直しで脳が成長 頭がよくなる  八つの脳番地の特徴を知っておくと、生活のなかで「いまここを使っているな」と意識することができます。脳番地を意識することで脳は成長するため、それはとても大切なことです。  勉強しながら脳番地を意識することも重要です。「今日はこの脳番地を使ったから、明日はあっちの脳番地を使おう」と考えながら勉強をするなど、脳番地をまんべんなく使おうとすることは、学習のマンネリ化を防ぐことにもなります。  以前、高校生から「本当はなぜ、勉強しなきゃならないのかよくわからない。でも勉強したら、自分の頭がよくなるというのならやってみようかな」といわれたことがあります。つまり彼は、勉強は嫌いだけれど、頭がよくなりたいと思っているのですが、これは重要な視点ではないでしょうか。  勉強をしたいと思わなくても、学ぶことで脳が成長し頭がよくなる――。それが学び直しの意義にもなるでしょう。 独自に学ぶ「独学」「学びのスタイルの確立」が重要  ミドル・シニアの学び直しでは、楽に学ぶのではなく、実感を持った学びにすることが必要だと考えています。要するに「独学」ということです。「独学」とは、「独りで学ぶ」ということではなく、「独自に学ぶ」こと。そしてその「独自」とは何かというと、「自分だったらこう学ぶ」という独自の学びのスタイルを確立することです。  10・20代での学びは、学業課題がはっきりしていて、出てくる問題もある程度想定できます。しかし大人の場合はそうではないので、学ぶ課題のつくり方、そして学びの手順も、自分独自に考えなければなりません。自分独自の学び方を確立することと、脳番地を活かすことは一体だということも、ぜひ理解していただきたいと思っています。  人はそれぞれ、「体験してみたらできる」、「本を読んだらわかる」など、得意な学び方は異なります。脳番地を意識し、「自分だったらこれが頭に入りやすい」という勉強法を考えること自体が大切なのです。こうしたプロセスが、ミドル・シニアの学び直しの醍醐味ともいえるでしょう。(取材・文 沼野容子) 【P48-49】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第61回 「障害者雇用」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「障害者※1雇用」について取り上げます。 障害者雇用の理念は「共生社会」の実現  障害者雇用に関する目的や基本理念、義務や責務などの内容は、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に定められています。本法律の第一条の目的には、長文なので一部抜粋となりますが※2、「(省略)雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置(省略)、その職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。」とあります。また、基本的理念のうち第四条には、「障害者である労働者は、職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない。」とあります。  傍線を引いた部分を総合すると、法律の目ざすところは、障害者が能力を発揮し、職業生活で自立できる社会の実現にあることがわかります。そのためにも、障害の有無にかかわらず均等な雇用機会や待遇の確保、能力発揮のための訓練等が必要であるとし、実現するための雇用主や国・地方公共団体の義務や責務に基づく施策を定めています。障害者雇用というと、この施策にいかに対応するかが話題になりがちですが、視野を広げて、希望や能力に応じてだれもが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」への協働としてとらえ直すと、これから説明する障害者雇用の施策に対する理解が深まるのではないかと思います。 障害者の法定雇用率遵守は事業主の義務  では、障害者雇用に関する施策のポイントについてみていきたいと思います。  まず、理解しておきたいのは障害者雇用率制度です。これは、従業員が一定数以上の規模の事業主に従業員の一定割合以上の障害者の雇用を義務づけるものです。ここでいう一定割合を法定雇用率と呼びますが、5年程度で労働状況等に基づき変更されることがあるため、定期的に確認していく必要があります。例えば、本稿執筆時点(2025〈令和7〉年7月)では、常時雇用する労働者のうち民間企業では2.5%、国・公共機関などは2.8%、都道府県などの教育委員会は2.7%が法定雇用率ですが、2026年7月からは、民間企業は2.7%、国・公共機関などは3.0%、都道府県などの教育委員会が2.9%と引き上げられることが決まっています※3。計算式としては「常時雇用している労働者の総数※4×法定雇用率=雇用すべき障害者数(小数点以下切り捨て)」となります。  ここで知識として大切なのは、障害者の雇用者数のカウント方法です。1人を実際に雇用したとしても、障害者区分や週の所定労働時間に応じて「何人雇用したことになるか」の数え方が異なります。障害者の区分のうち身体障害者・知的障害者は、実際に1人雇用した場合、週の所定労働時間が30時間以上の場合には、1人(重度は2人)としてカウントします。20時間以上30時間未満の場合は0.5人(重度は1人)、10時間以上20時間未満の場合は0人(重度は0.5人)となります。精神障害者は、実際に1人雇用した場合、週の所定労働時間が20時間以上であれば1人、10時間以上20時間未満は0.5人でカウントします。前提として身体障害者手帳・療養手帳・精神障害者保健福祉手帳の所有者がカウント対象となります。  法定雇用率の遵守は事業主の義務とされているため、法定雇用率を満たしていない常用雇用労働者100人超の事業主からは不足1人あたり月額5万円の納付金が徴収されます。一方で、法定雇用率を超えて雇用している事業主については、超過1人あたり原則月額2万9千円の調整金と、超過1人あたり原則月額2万1千円の報奨金(常用雇用労働者100人以下の事業主に限る)の支給があります。なお、納付金を支払っても義務を果たしたことにはなりません。未達成の場合にはハローワークより「障害者雇入れ計画書作成命令」が発せられたり、行政指導や企業名公表が行われることもあるため、注意する必要があります。 障害者雇用支援に関する情報や機関の活用  このような取組みのもと、民間企業に雇用されている障害者の数は67.7万人となり21年連続で過去最高を更新し、障害者雇用が着実に進展していることが見てとれます(2024年6月1日時点。厚生労働省「令和6年障害者雇用状況の集計結果」※5)。しかし、実雇用率(常用雇用労働者に占める、障害者である労働者の数)は2.41%、法定雇用率達成企業割合は46.0%とまだ改善の余地があります。「障害者雇用実態調査結果報告書(令和5年6月厚生労働省)※6」の障害者を雇用しない理由別事業所数の割合に関する調査を参照すると、70%の企業が理由として「障害者に適した業務がないから」と回答しています。また15〜20%程度の回答として「障害者雇用について全くイメージが湧かないから」、「障害者の雇用管理のことがよくわからないから」という内容もある一方で、「過去に障害者を雇用したが、うまく続かなかったから」の回答が3〜5%程度にとどまっており、障害者雇用自体に消極的というよりは、情報・理解不足でふみ出せないという企業も一定数あることが推察されます。  じつは、障害者雇用に関する情報提供や支援は充実しており、例えば厚生労働省が発行した令和7年4月1日現在の『障害者雇用のご案内』というパンフレット※7ではわかりやすく、障害者雇用率の説明、雇用に向けたサービス・支援策、助成金等についてまとめられています。また、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が発行している障害者雇用の月刊誌『働く広場※8』では、障害者のさまざまな働き方の実例が掲載されており、障害者雇用をはじめようとする企業のヒントにもなります。また、JEEDでは障害者雇用や能力開発の支援も行っているため、問い合わせてみることも有効な方法です。 ***  次回は、「36(サブロク)協定」について取り上げます。 ※1 障害者には、「障がい者」、「障碍者」などの異なる表記方法もあるが、本稿では法律(障害者雇用促進法)の表記に合わせ「障害者」としている ※2 傍線は筆者加工 ※3 1人以上の障害者雇用を行うべき事業主の範囲は、民間企業の場合、現時点では常用雇用者数40人以上、令和8年7月からは37.5人以上となる ※4 1週間の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される見込みのある、または1年を超えて雇用されている労働者(パート・アルバイト含む) ※5 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47084.html ※6 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39062.html ※7 https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf ※8 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html 【P50-53】 労務資料 『令和7年版高齢社会白書』 内閣府  内閣府では、高齢社会対策基本法に基づき、1996(平成8)年より、高齢化の状況や政府の講じた高齢社会対策の実施の状況などについてまとめた『高齢社会白書』を取りまとめています。  『令和7年版高齢社会白書』では、「令和6年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」、「令和7年度 高齢社会対策」という二つの部分から構成されています。  今号では、『令和7年版高齢社会白書』のなかから、特に高齢者の就業に関する内容について抜粋して紹介します(編集部)。 第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得 (1)労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇傾向  令和6年の労働力人口は、6957万人であった。労働力人口のうち65〜69歳の者は400万人、70歳以上の者は546万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%と長期的には上昇傾向にある(図表1)。  また、令和6年の労働力人口比率を見ると、65〜69歳では54.9%、70〜74歳では35.6%となっており、いずれも上昇傾向である。75歳以上は12.2%となり、平成27年以降上昇している。  雇用情勢について、完全失業率を見ると、60〜64歳では、平成23年以降低下傾向にあったが、令和3年は、前年からの新型コロナウイルス感染症の影響により3.1%に上昇し、令和6年は2.8%となった。また、65〜69歳では、令和3年の2.7%から令和6年は2.5%へ、70 歳以上では、令和3年の1.2%から令和6年は1.1%へそれぞれ低下した。 (2)就業状況 ア 就業者数及び就業率は上昇している  65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると21年連続で前年を上回っている。また、就業率については10年前の平成26年と比較して65〜69歳で13.5ポイント、70〜74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイントそれぞれ伸びている(図表2)。 イ 「医療、福祉」の65歳以上の就業者は10年前の約2.3倍に増加  令和6年における65歳以上の就業者を主な産業別に見ると、「卸売業、小売業」が133万人と最も多く、次いで「医療、福祉」が115万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が104万人、「農業、林業」が93万人などとなっている。  令和6年における産業別の65歳以上の就業者を10年前と比較すると、「医療、福祉」が64万人増加し、10年前の約2.3倍となっている。次いで「サービス業(他に分類されないもの)」が32万人、「卸売業、小売業」が26万人と、それぞれ増加している。  また、令和6年における各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合を見ると、「農業、林業」が51.7%と最も高く、次いで「不動産業、物品賃貸業」28.6%、「サービス業(他に分類されないもの)」が22.3%、「生活関連サービス業、娯楽業」が19.6%などとなっている(図表3)。 ウ 60代後半の男性の6割以上、女性の4割以上が就業している  男女別に就業状況を見ると、男性の場合、就業者の割合は、60〜64歳で84.0%、65〜69歳で62.8%となっており、65歳を過ぎても、多くの人が就業している。また、女性の就業者の割合は、60〜64歳で65.0%、65〜69歳で44.7%となっている。さらに、70〜74歳では、男性の就業者の割合は43.8%、女性の就業者の割合は27.3%となっている。 エ 60歳以降に非正規の職員・従業員の比率は上昇  役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性の場合、55〜59歳で10.3%であるが、60〜64歳で41.3%、65〜69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇している。また、女性の場合も、55〜59歳で58.1%、60〜64歳で72.6%、65〜69歳で83.2%となっており、男性と比較して、60歳以降においても非正規の職員・従業員の比率はおおむね高い割合となっている。 オ 現在収入のある仕事をしている60歳以上の者のうち、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答した者が約3割  現在収入のある仕事をしている60歳以上の者については約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる(図表4)。 カ 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は約3割  従業員21人以上の企業23万7052社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%(23万6920社)となっている。一方で、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は31.9%(7万5643社)となっており、従業員301人以上の企業では25.5%と低くなっている(図表5)※。 ※「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(昭和46年法律第68号)では65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講ずるよう義務付けている(高年齢者雇用確保措置)。また、令和3年4月1日からは70歳までを対象として、従来の雇用による措置や、「継続的に業務委託を締結する制度」、「継続的に社会貢献事業に従事できる制度」という雇用によらない措置を講ずるように努めることを義務付けている(高年齢者就業確保措置)。 図表1 労働力人口の推移 労働力人口(万人) 労働力人口に占める65歳以上の割合(%) 15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上 65歳以上割合(右目盛り) 昭和55(1980)5,650 699 1,438 1,393 1,208 385 248 165 114 4.9% 60(1985)5,963 733 1,261 1,597 1,297 488 288 63 137 平成2(1990)6,384 834 1,225 1,614 1,418 560 372 199 161 7(1995)6,666 866 1,327 1,378 1,616 539 421 253 192 12(2000)6,766 761 1,508 1,296 1,617 666 426 265 229 17(2005)6,651 635 1,503 1,377 1,392 776 465 257 247 22(2010)6,632 544 1,329 1,542 1,343 686 605 312 273 23(2011)6,596 525 1,291 1,569 1,333 655 637 296 288 24(2012)6,565 514 1,261 1,577 1,346 629 627 310 299 25(2013)6,593 518 1,239 1,582 1,380 620 345 307 26(2014)6,609 518 1,214 1,576 1,406 620 575 377 322 27(2015)6,625 516 1,191 1,558 1,439 617 556 413 334 28(2016)6,678 539 1,182 1,529 1,484 619 541 450 336 29(2017)6,732 543 1,173 1502 1,529 629 537 454 366 30(2018)6,849 580 1,168 1,477 1,573 638 540 450 423 令和元(2019)6,912 598 1,158 1,442 1,619 647 544 438 466 2(2020)6,902 584 1,158 1,397 1,636 663 545 424 495 3(2021)6,907 580 1,161 1,371 1,661 663 545 410 516 4(2022)6,902 572 1,151 1,346 1,671 678 557 395 532 5(2023)6,925 586 1,156 1,319 1,665 700 569 394 537 6(2024)6,957 595 1,168 1,297 1,653 721 576 400 546 13.6% (年) 資料:総務省「労働力調査」 (注1)年平均の値 (注2)「労働力人口」とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。 (注3)平成23年は岩手県、宮城県及び福島県において調査実施が一時困難となったため、補完的に推計した値を用いている。 (注4)四捨五入のため合計は必ずしも一致しない。 図表2 年齢階級別就業者数及び就業率の推移 (万人) (%) 65〜69歳の就業者数 70〜74歳の就業者数 75歳以上の就業者数 65〜69歳の就業率(右目盛り) 70〜74歳の就業率(右目盛り) 75歳以上の就業率(右目盛り) 平成26(2014) 365 189 129 40.1 24.0 8.1 27(2015) 401 194 136 41.5 24.9 8.3 28(2016) 438 187 145 72.8 25.0 8.7 29(2017) 444 207 155 44.3 27.2 9.0 30(2018) 441 246 174 46.6 30.2 9.8 令和元(2019) 428 275 188 48.4 32.2 10.3 2(2020) 413 296 194 49.6 32.5 10.4 3(2021) 399 314 196 50.3 32.6 10.5 4(2022) 386 316 211 50.8 33.5 11.0 5(2023) 383 303 228 52.0 34.0 11.4 6(2024)(年) 390 292 248 53.6 35.1 12.0 資料:総務省「労働力調査」 (注1)年平均の値 (注2)「年齢階級別就業率」とは、各年齢階級の人口に占める就業者の割合をいう。 図表3 主な産業別65 歳以上の就業者数及び割合(平成26(2014)年、令和6(2024)年) (万人) (%) 主な産業別65歳以上の就業者数 平成26(2014)年 主な産業別65歳以上の就業者数 令和6(2024)年 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 平成26(2014)年(右目盛り) 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 令和6(2024)年(右目盛り) 農業、林業 99 93 47.1 51.7 建設業 59 80 11.6 16.8 製造業 75 88 7.2 8.4 情報通信業 4 7 2.4 2.0 運輸業、郵便業 30 40 8.9 11.6 卸売業、小売業 107 133 10.1 12.7 金融業、保険業 7 8 4.5 5.2 不動産業、物品賃貸業 25 40 22.1 28.6 学術研究、専門・技術サービス業 23 37 10.8 14.1 宿泊業、飲食サービス業 46 58 11.9 14.3 生活関連サービス業、娯楽業 38 45 16.0 19.6 教育、学習支援業 21 37 7.0 10.6 医療、福祉 51 114 6.7 12.5 サービス業(他に分類されないもの) 72 104 18.0 22.3 公務(他に分類されるものを除く) 6 14 2.6 5.5 図表4 何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか(択一回答) 全体(n=2,188) 65歳くらいまで23.7% 70歳くらいまで20.0% 75歳くらいまで13.7% 80歳くらいまで5.3% 働けるうちはいつまでも22.4% 仕事をしたいとは思わない11.3% 不明・無回答3.6% 70歳くらいまでから働けるうちはいつまでもの合計61.4% 収入のある仕事をしている者(n=935) 65歳くらいまで12.9% 70歳くらいまで22.8% 75歳くらいまで20.1% 80歳くらいまで7.4% 働けるうちはいつまでも33.5% 仕事をしたいとは思わない1.5% 不明・無回答1.8% 70歳くらいまでから働けるうちはいつまでもの合計83.7% 資料:内閣府「令和6年度高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」 (注1)調査対象は、全国の60歳以上の男女 (注2)四捨五入の関係で、足し合わせても100.0%にならない場合がある。 図表5 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の内訳 全企業(31.9%) 定年制の廃止3.9% 定年の引き上げ2.4% 継続雇用制度の導入25.6% 創業支援等措置の導入0.1% 301人以上(25.5%) 定年制の廃止0.7% 定年の引き上げ0.7% 継続雇用制度の導入24.0% 創業支援等措置の導入0.1% 21〜300人(32.4%) 定年制の廃止4.1% 定年の引き上げ2.5% 継続雇用制度の導入25.7% 創業支援等措置の導入0.1% 資料:厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」より内閣府作成 (注1)「創業支援等措置の導入」とは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第10条の2に基づく、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度及び70歳まで継続的に社会貢献事業(事業主が自ら実施する事業又は事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う事業)に従事できる制度の導入を指す。 (注2)本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、「創業支援等措置の導入」については、小数点第2位以下を切上げとしている。 【P54-55】 BOOKS ミドル・シニアが活躍するためのヒントを、個人、企業、社会の視点から示す 定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図 宮島(みやじま)忠文(ただふみ) 著・小島(こじま)明子(あきこ) 著/日本経済新聞出版/2640円  すべての企業に65歳までの雇用確保が義務づけられ、70歳までの就業機会確保が努力義務となったいま、定年を延長したり、定年そのものをなくしたりする企業が増えてきている。  少子高齢化にともない、働くミドル・シニアの比率は今後も高まることが予想されるなか、本書は、ミドル・シニアの活躍を実現していくためのヒントを個人、企業、社会それぞれの視点から提示する。この世代の活躍促進・支援のためのカリキュラムの開発・運営者と、キャリアや協同労働に関する調査研究者の2人が協力して、ミドル・シニアの働き方の現状について労使双方の課題を浮き彫りにしながら、現場で得られた知見と調査データ等をふまえたキャリア意識の現状、社会構造的な視点を交えて、課題解決に向けたポイントを整理している。  例えば、「働き続けてほしい人」の姿を10のキーワードで示しつつ、シニアの能力と貢献できる領域や、役割について企業側が考える際の視点を提示。また、多様な人材を企業の成長につなげていくために代替可能なミドル・シニア人材の増加を防ぐキャリア形成支援や、労働者協同組合などの新たな働き方も含めて、これからの人事設計のポイントを説いている。 基礎から最新の理論までわかりやすく解説。“キャリア”にかかわるすべての人へ 新時代のキャリアコンサルティング[増補版] 独立行政法人労働政策研究・研修機構(編集・発行)/2200円  働く人のキャリア形成や、必要なスキルを習得する機会の提供などを支援するキャリアコンサルティングは、従業員の定着率向上や生産性向上にもつながることが期待されている。  本書は、企業、ハローワークなどの需給調整機関、教育機関など幅広い現場で活用できるキャリアコンサルティングに役立つ内容として、基礎的理論から新しい理論まで、新旧のキャリア理論、カウンセリング理論を、実践との結びつきを意識して解説。9年ぶりに刊行された増補版で、キャリア理論では、伝統的・基礎的な理論を拡充しつつ、ジョブ・クラフティング、ナラティブ・アプローチなど新たな内容を追加。カウンセリング理論では、近年発展がめざましい認知行動的アプローチと関連が深いマインドフルネス、セルフ・コンパッションなどのカウンセリング技法のほか、基礎的な理論も拡充し、全編で新たに24項目が加わった。ページ数は初版の約1.5倍に増したが、一つの理論を4ページでコンパクトに整理して解説し、どこからでも体系的に読むことができる。  キャリアカウンセラーや職業相談、学校でキャリア教育をになう人、これから学びたい人にも、わかりやすく活用しやすい一冊である。 新たな産業や雇用を生んで世界へ羽ばたき、地域に貢献する福島県の企業を紹介 地域発エクセレントカンパニー 神田(かんだ)良(まこと) 著・井(たかい)透(とおる) 著・一般財団法人とうほう地域総合研究所 著/生産性出版/2860円  進行する日本の人口減少と少子高齢化は、労働のにない手不足や需要の縮小につながり、とりわけ地方経済に深刻な影響を及ぼしている。一方で、逆境にあっても創業の地を大切にしながら県外へ、さらに世界へと羽ばたき、地域に貢献している元気な企業も存在する。  本書は、バブル崩壊、リーマンショックに加え、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故などさまざまな困難に遭遇しながらも成長してきた、福島県内の企業をていねいに紹介する。  東邦銀行系のシンクタンクである「とうほう地域総合研究所」は、公益財団法人日本生産性本部との共同企画で、福島県内25社の企業を取材し、成長や変革のポイントなどを伝えてきた。本書はその集大成として、全国および海外にも事業展開する6社を取り上げている。世界最高レベルの最狭隣接間隔で電子部品を実装する技術を持つ企業、林業でつちかったノウハウを活かして成長する企業、老舗旅館を統合して再生を果たした企業などである。  経営の手本となる逆境からの転換、技能伝承、従業員満足度、市場開拓の取組みなどを紹介するほか、6社の成長ポイントを分析し、地域経済の活性化、地方創生の手がかりも示している。 87歳・現役建築士のおりがみ作家と脳科学者が紹介。楽しいおりがみで脳が活性化! 脳科学でわかった!80歳からでも成長する もっと脳活おりがみ 伊達(だて)博充(ひろみつ) 著・西(にし)剛志(たけゆき) 監修/あさ出版/1540円  おりがみを折ると脳が活性化し、楽しんで折っていれば、何歳からでも脳は成長するという。  本書は、「脳活おりがみ」を紹介してシニアを中心に好評を博した書籍の第2弾。87歳で現役の建築士、創作おりがみ作家として活躍する著者と、多数のベストセラーを生み出した脳科学者のコンビが、今回は認知機能の低下を防ぐ著者オリジナルのおりがみ作品や、高齢者の脳活にも子どもの脳育にもよいカンタンおりがみも紹介。スマートフォンで見られる、わかりやすい折り方の動画もついているので、高齢者でもおりがみに親しめる内容となっている。  読むほどにおりがみの効果に引き寄せられるが、むずかしい解説文はなく、80歳からおりがみにはまった著者と脳科学者の会話形式で、指を動かし続けることで眠っていた神経幹細胞が目覚める可能性があることや、折るというちょっとした負荷が認知症のリスクを下げること、あるいは創造力を高めるといった効果を上げ、自然と理解が進むように工夫されている。そして、「紙ヒコーキ」、「ムゲン箱」、「飛ぶ白鳥」などのおりがみ作品に挑戦してみたくなる。  シニア世代の多い職場での話題づくりにもよさそうな、楽しくて為になる内容である。 定年後から輝き始めた元サラリーマンの自己啓発書 人生、本番は六十歳から! 数々の重病に打ち克った私の健康法と考え方 山口(やまぐち)幸広(ゆきひろ) 著/共栄書房/1980円  著者の山口幸広さんは、1954(昭和29)年生まれ。幼いころから身体が弱く、いろいろな病気と向き合う人生を歩んできた。  高血圧の家系であり、サラリーマン時代の47歳のときに脳梗塞(のうこうそく)になったことで、長い間降圧剤を飲んでいたが、ほかの方法を模索し、毎朝のスクワットなどを継続。70歳を過ぎたいま、降圧剤を手放すことができているという。  この体験をはじめ、原因不明の腰痛、胃弱(胃もたれ)、飛蚊症(ひぶんしょう)、うつなど、山口さんが患った病と乗り越えてきた体験にはじまり、第2章では、60歳の定年を見すえて「これからが人生の本番」と考えをあらため、定年後の仕事として行政書士になることを決意。そこから仕事と資格取得のための勉強を両立して5年後、60歳目前で資格を取得した勉強方法や記憶のコツなどを披露している。定年退職後の翌年、山口さんは行政書士事務所を開業。健康第一でこの仕事を続けるために実践しているという、日課の呼吸法や運動、食事にも触れている。  このほか、医者とのつきあい方、おだやかな死への心構え、勇気づけられた言葉などを紹介。ミドル・シニア世代がよりよいこれからを見つけるための気づきやヒントが見つかりそうだ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P56-57】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表  厚生労働省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況についてまとめた、令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表した。  それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は1030件で、前年度と比べ7件増加した。また、業務上認定されたのは241件(当該年度内に業務上認定された件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。以下同じ)で、前年度と比べ25件増加している。請求件数、業務上認定件数ともに3年連続の増加となった。年齢別にみると、請求件数は「50〜59歳」411件、「60歳以上」348件、「40〜49歳」213件の順で多く、支給決定件数は「50〜59歳」129件、「40〜49歳」60件、「60歳以上」44件の順に多くなっている。  次に、精神障害についてみると、労災請求件数は3780件で、前年度と比べ205件増加した。また、業務上認定されたのは1055件で、前年度と比べ172件増加している。請求件数は4年連続の増加、業務上認定件数は7年連続の増加となった。なお、精神障害にかかわる労災請求事案には、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至った事案があるが、2024年度は3780件中202件(うち業務上認定88件)となっている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html 厚生労働省 「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和6年度)」を公表  厚生労働省は、都道府県労働局や公共職業安定所(ハローワーク)における「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和6年度)」を公表した。  それによると、障害者差別および合理的配慮の提供に関する2024(令和6)年度の相談件数は438件で、前年度に比べて193件増加した(対前年度比78.8%増)。相談者の内訳は、障害者からが391件、事業主からが32件、その他(家族等)が15件。相談内容をみると、障害者差別に関する相談は98件、合理的配慮の提供に関する相談は340件となっている。  障害者差別に関する相談内容についてみると、「募集・採用時」が最も多く全体の28.2%、次いで「配置」、「解雇」がどちらも同14.6%。合理的配慮の提供に関する相談内容についてみると、「上司・同僚の障害理解に関するもの」(全体の27.4%)、「相談体制の整備、コミュニケーションに関するもの」(同15.7%)、「業務内容・業務量に関するもの」(同13.2%)が多かった。  また、都道府県労働局長による紛争解決の援助申立受理件数は2件、障害者雇用調停会議による調停申請受理件数は11件となっている。  障害者雇用促進法は、すべての事業主に対して、募集・採用、賃金などの雇用に関するあらゆる局面において、障害を理由に不当な差別をせず、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するべく個別の対応や支援を行うことを義務づけている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58773.html 厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表  厚生労働省は、令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表した。同調査は、企業が実施した教育訓練、キャリア形成支援などについて、常用労働者30人以上の企業および事業所、またそこで働く労働者を対象としている。  調査結果をみると、教育訓練の実施状況は、計画的なOJTを実施した事業所割合は、正社員では61.1%(前回60.6%)、正社員以外では27.1%(同23.2%)となっている。  技能継承の取組みを行っている事業所の割合は84.6%となっており、産業別にみると、「製造業」(94.9%)、「建設業」(94.3%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(93.4%)で9割を超えている。取組み内容の内訳をみると、「中途採用を増やしている」(56.4%)が最も多く、次いで「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」(49.6%)、「新規学卒者の採用を増やしている」(33.8%)と続いている。  また、2023年度に自己啓発を実施した労働者の割合は、36.8%(前回34.4%)となっている。雇用形態別の実施率は、正社員45.3%、正社員以外15.8%となっている。年齢別にみると、30歳以上では、「30〜39歳」(45.0%)、「40〜49歳」(38.3%)、「50〜59歳」(31.4%)、「60歳以上」(20.6%)と、年齢階級が高くなるほど実施率が低くなっている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00202.html 内閣府働く女性の更年期症状に関する調査結果を発表  内閣府経済社会総合研究所(ESRI)は、働く女性の更年期症状に関する調査結果と分析内容を発表した。  日本では45〜54歳の女性の就業率が80%を超え、職場における健康課題として更年期対策が必要になっているが、働く女性の更年期症状の改善や予防に役立つエビデンスの蓄積は少ないことなどから、同調査と研究は2021(令和3)年9月、民間調査会社に登録している45〜56歳の働く女性を対象に実施。有効回答から2731人を分析対象とし、働く女性の更年期症状に有意に関連する因子などについて検討した。  それによると、「更年期症状の症状がない〜軽症」に分類されるSMI(更年期症状の程度を評価するための簡略更年期指数)25点以下は、2731人中1638人(全体の60.0%)。「中等症〜重症」とされるSMI26点以上は、1093人(同40.0%)であった。また、更年期症状の緩和や予防のため、市販薬を含む医薬品等を使用する人は530人(同19.4%)で、更年期症状に対する医薬品等を使用しながら働く女性は少なくなかった。  「中等症〜重症」に影響を及ぼす因子として、個人の身体状況に関連する3因子(肥満度、閉経移行期・閉経状態、婦人科疾患の既往歴)と、労働環境に関連する2因子(5s以上の重量物の持ち上げが1日1回以上ある、月に1回以上の深夜勤務)との有意な関連が認められたとしている。 https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/e_dis/2025/e_dis401.html 調査・研究 マイナビ 「シニア(本調査では65歳以上)のアルバイト調査(2025年)」の結果発表  株式会社マイナビは、「シニアのアルバイト調査(2025年)」結果を発表した。  調査は、アルバイト就業中の65歳〜79歳の男女を対象として実施。有効解答数は1446件。  それによると、65歳以上のアルバイト就業者の3人に2人が、雇用形態において希望通りの働き方であることがわかった。アルバイトの目的は「生活費のため」が46.9%で最も高く、次いで「健康維持のため」が38.1%、「健康的な生活リズムを作るため」が33.7%となっている。  次に、定年退職経験者に、定年後の仕事内容や働き方に関する「イメージギャップ」を聞いた結果についてみると、「思ったより給料が少ない」が45.0%で最も高く、「思ったより年収が下がった」が43.7%、「思ったより仕事の自由度が高い」が42.4%。また、「思ったより仕事にやりがいがある」が40.7%、「思ったより責任が軽い」が40.0%となっており、収入面ではネガティブなギャップがみられる一方で、自由度ややりがいといった項目に関してはポジティブなギャップもうかがえた。  調査担当者は、「多面的な実態を踏まえると、人手不足が進む中で、シニア就業を単なる労働力確保と捉えるのではなく、個人の生き方や社会との関わりを支える重要な役割として捉える視点が、より一層求められると考えます」と述べている。 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250626_97147/ 発行物 生命保険文化センター 小冊子『ねんきんガイド−今から考える老後保障−』を改訂  公益財団法人生命保険文化センターは、小冊子『ねんきんガイド−今から考える老後保障−』(B5判、カラー68ページ)を改訂した。  この冊子は、老後をどのように暮らしていくのか、そのためにはどのような経済的準備が必要なのかを考えるときに参考にできる最新情報を掲載し、公的年金制度の基礎知識、個人年金保険の仕組みや契約時の注意点などを、図表や具体例を用いてわかりやすく解説している。  改訂(2025(令和7)年6月)のおもなポイントは、次の通り。 ◆2025年度の年金額や加算額などを掲載し、事例計算や年金額早見表などを更新 ◆制度改正などを反映し、最新情報を掲載(育児期間の国民年金保険料の免除、高年齢雇用継続給付の給付率の引下げ、iDeCo(イデコ)の拠出限度額の引上げや退職所得控除額の調整期間の延長、公的年金にかかる所得税など) ◆次期年金制度改正にむけて検討が進められている内容を補足説明(社会保険の適用拡大、配偶者や子どもへの加算の見直し、在職老齢年金の支給停止調整額の引上げなど) ◆掲載データの最新化 ※一冊200円(税込・送料別)。申込みは、左記ホームページから、またはFAX・郵送で。 https://www.jili.or.jp/press/2025/10027.html 【P58-59】 令和7年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 昨年度(2024年度)参加者満足度88% 参加者数1200人超 参加無料 企業の経営者人事担当者必見 さまざまな企業の取組みがわかる  改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となるなか、高年齢者の戦力化は喫緊の課題です。  本シンポジウムでは、企業の人事担当者など関係者のみなさまに向けて、講演、事例発表、パネルディスカッションを通じて、ミドル・シニア層の戦力化に向けた実践的な取組みや課題、今後の展望についてともに考えます。 これからのキャリア形成支援 自律的キャリアはなぜ難しい?―ミドル・シニアの学ぶ意思をどう引き出すか  生産年齢人口の減少やコロナ禍以降の急速なデジタル化は、シニア社員の戦力化や新しいスキルが求められる時代が到来しています。このような環境の変化に適応していくためには、個人の主体的なキャリア形成への支援が重要となります。本シンポジウムでは、リスキリングやキャリア支援に積極的な企業事例を通じて、ミドル・シニア社員の学ぶ意思をどう引き出すか、望ましい支援のあり方を考えます。 日時 2025(令和7)年10月16日(木)14:00〜16:45 ライブ配信 〈プログラム〉 14:00〜14:05 開会挨拶 14:05〜14:35 基調講演 「自律的キャリアはなぜ難しい?−ミドル・シニアの学ぶ意思をどう引き出すか」 小林 祐児 氏 株式会社パーソル総合研究所 主席研究員 執行役員シンクタンク本部長 14:35〜15:35 事例発表 トヨタ自動車九州株式会社 人財開発部キャリア自律推進グループ グループ長 松岡 義幸 氏 株式会社三菱UFJ銀行 人事部企画グループ次長 昇高 慶 氏 西川コミュニケーションズ株式会社 人事広報部長 神谷 昌宏 氏 15:35〜15:45 休憩 15:45〜16:35 パネルディスカッション コーディネーター 小林 祐児 氏 パネリスト トヨタ自動車九州株式会社 西川コミュニケーションズ株式会社 株式会社三菱UFJ銀行 16:35〜16:45 総括 小林 祐児 氏 お問合せ先 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 シニア社員を活性化するための人材マネジメント 組織の活性化に貢献!―シニア社員を活かす 持続可能な人材マネジメントの仕組み  生産年齢人口の減少が進むなか、企業が持続的に成長していくためにはシニア社員の意欲と能力を引き出し戦力化する人材マネジメントが不可欠です。本シンポジウムでは、企業によるシニア活躍の取組事例などを紹介し、持続可能な人材マネジメントのあり方を議論します。 日時 2025(令和7)年10月24日(金)14:00〜16:45 ライブ配信 〈プログラム〉 14:00〜14:05 開会挨拶 14:05〜14:35 基調講演 「シニア社員を活かす人材マネジメントサスティナブル・キャリアの視点から」 山ア 京子 氏 立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 特任教授/日本人材マネジメント協会理事長 14:35〜14:55 講演 「シニアのジョブ・クラフティング−生涯現役を支える組織のあり方」 岸田 泰則 氏 釧路公立大学 准教授 14:55〜15:35 事例発表 三菱UFJ信託銀行株式会社 執行役員人事部長 中村 剛雄 氏 ライオン株式会社 人材開発センター キャリア開発グループ 青木 陽奈 氏 15:35〜15:45 休憩 15:45〜16:35 パネルディスカッション コーディネーターパネリスト 山ア 京子 氏 パネリスト 岸田 泰則 氏 三菱UFJ信託銀行株式会社 ライオン株式会社 16:35〜16:45 総括 山ア 京子 氏 申込方法 申込締切 ライブ視聴:各開催日 当日15時 1 参加イベントを選択 手続き一覧ページから、参加を希望するイベントを選択してください。 2 申込み 「利用者登録せずに申し込む方はこちら」を選択し、利用規約に同意した上で必須事項を入力し、「確認へ進む」を選択してください。 ※入力後、受信したメールに記載されているURLをクリックすると、申請ページが表示されます。 3 申込み確認 入力内容を確認し、「申込む」を選択してください。 ※申込み後、完了メールが届きますので、ご確認ください。 4 当日 申込み完了メールに掲載されているURLから動画を視聴してください。 申込案内ページ https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html ※専用フォームからのお申込みがむずかしい場合、右記お問合せ先にご連絡ください。お電話で対応させていただきます。 ※お申込みの際に取得した個人情報は適切に管理され、JEEDが主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用します。利用目的の範囲内で適切に取り扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供しません。 【P60】 次号予告 10月号 特集 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテストT 厚生労働大臣表彰受賞企業事例から リーダーズトーク 岩本隆さん(慶應義塾大学大学院経営管理研究科講師、山形大学客員教授) JEEDメールマガジン 好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 編集後記 ●今号の特集は、「多様で柔軟な勤務制度を整備し、生涯現役で働ける職場づくり」をテーマにお届けしました。  多様性の時代を迎えたいま、さまざまな事情を抱えながら働いている人が多いのは全世代共通ですが、特に高齢者の場合は、加齢による身体機能の低下に加え、疾病リスクの上昇、家族との関係など、抱える事情の要素が増えるとともに個別化していくといわれています。  そうしたなかで、高齢者が働き続ける環境を整えていくうえでは、その個別性に対応可能な、柔軟に働ける仕組みの整備が欠かせません。今号では、短日・短時間勤務やテレワークなど、時間と場所に焦点を当てた制度について解説しましたが、多様な正社員制度や副業・兼業など、会社と働く人との新しい関係も多様化してきています。  会社と高齢社員を含む労働者の両者がWin-Winとなる多様な働き方の実現に向け、本特集が参考になれば幸いです。 ●10月は「高年齢者就業支援月間」です。JEEDでは10月3日の「高年齢者活躍企業フォーラム」をはじめ、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」(ライブ配信)、47都道府県で「地域ワークショップ」を開催します。みなさまのご参加をお待ちしています。 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー9月号 No.550 ●発行日−−令和7年9月1日(第47巻 第9号 通巻550号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 FAX 043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.355 ミクロン単位の調整で新製品の開発を支える 金型(かながた)製造工 及川(おいかわ)光宏(みつひろ)さん(70歳) 「成果物がうまくできたときの喜びを、若い世代にも知ってもらいたい。その感覚が身につけば、仕事への関心が深まり、技能も上達できます」 金型製造の最終的な調整と組込みをになう  樹脂金型の成形や金属加工などの高度な技術で、自動車や電子・通信、医療など、多岐にわたる製品の試作から量産までを一貫して支援する株式会社クライム・ワークス。同社の製造部金型部門で樹脂成形用金型の組立てや調整を担当しているのが及川光宏さんだ。  上の写真の棚に並ぶ四角い金属は、樹脂の射出成形(しゃしゅつせいけい)に用いられる金型の外側のベースにあたる部分。その内側に、樹脂を成形するための凹凸のある「駒」と呼ばれる金型部品を調整して組み込むのが及川さんの役割だ。  及川さんが特に評価されているのは、電気自動車の部品に用いるバスバー※電極端子生産用のインサート成形の金型の製造技能。インサート成形とは、金属部品と樹脂を一体成形する方法のことだ。  金型の駒は、NC(数値)制御の工作機械で形をつくったあと、及川さんが手作業で細かい調整を行い、数十種類の駒を金型に組み込む。その際に求められるのが、ミクロン単位での調整だ。  「最新の機械を駆使してつくっても、最後は手作業で調整しないと、金型として組み込めません」  例えば、インサート用バスバーを製作する工程で金属を曲げると、その部分にわずかな膨らみが生じる。その膨らみが原因で成形のときにそのまま金型をセットすることはできないため、顕微鏡越しにヤスリなどで金型を削って調整する。この精度が、できあがる部品の品質を左右する。  「これくらいでいけたかな、と思ったところで測ってみると、だいたい合っています。機械で調整すると、手作業よりも時間がかかってしまいます。ですから、機械化が進んだ現在でも、最終的には人の手をかけないといけないのではないかと思っています」 手作業で身につけた匠たくみの技と感覚  及川さんは中学校を卒業後、職業訓練校の機械科で学んだ後、大手企業に就職。しかし体調を崩し、入院先で知り合った人の紹介で金属加工の会社に入社した。そこで、樹脂金型の仕事に出合う。  「溶かした樹脂を流し込んで形ができる射出成形におもしろさを感じました」  当時の町工場には高価なNC制御の機械はなかったため、一から手作業で金型をつくっていた。技能は先輩の作業を見つつ、自分でやりながら覚えていった。  「いまとは違い、徹夜もあたり前でしたが、ものができあがると、ほんとうにうれしかったですね」  いくつかの会社に勤め、株式会社クライム・ワークスに入社したのは67歳のとき。長年にわたる経験でつちかった技能が高く評価された。 ものづくりの喜びを若い世代に伝えたい  同社における後進の育成、技能の継承も及川さんの大切な役割だ。  「私が覚えたことは惜しみなく教えます。昔は『盗んで覚えろ』といわれましたが、それはいまの若者には合わないでしょうから」  マンツーマンで指導しながらくり返し伝えているのは、手を抜かないことの大切さだ。  「面倒くさがって簡単にやってしまうと、そのまま仕事を覚えられなくなってしまいます」  若い世代に感じるのは、技術面よりも仕事に興味を持ってもらうことのむずかしさだという。  「この仕事のやりがいは、うまくできたときの喜びです。若い人たちにも、その喜びを感じてもらいたい。そうすれば、仕事にもっと興味を持てるようになるはずです」  成果物への関心が薄い若い世代との感覚の違いを感じながらも、ものづくりの本質的な喜びを伝えようと努めている。  「人生は仕事と切り離せません。体が動くかぎり、好きな仕事を続けたいと思っています」  70代になっても現場で働き続け、次世代への継承に取り組む姿勢は、日本のものづくりを支えてきた職人の心意気そのものである。 株式会社クライム・ワークス TEL:03(3742)0691 https://www.climbworks.co.jp (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) ※バスバー……大容量の電流を流すための導体 写真のキャプション 機械加工でできあがった金型の駒を調整する。顕微鏡をのぞきながら、サンドペーパーを当てて竹べらでこすりながら削り、ミクロン単位の調整を行う 熟練の技能を持つ及川さんにとって、後進の育成も役割の一つ。現物を見ながら、マンツーマンでていねいに教える 金型を製造するために金属を切断、加工する機械が並ぶ。ここで加工したものを磨き、0.01〜0.02ミリ単位で調整するのが及川さんの仕事だ 及川さんが得意とするインサート成形用の金型は、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池自動車)などのパワートレインやモーター関連の部品開発にも不可欠な技能だ(写真提供:株式会社クライム・ワークス) 同じ職場で働く若手技能者のみなさんと。ベテランでありながら謙虚な及川さんは、後輩たちからとても慕われている 金型をミクロン単位で調整するために使用するヤスリや竹べらなどの道具。竹べらはサンドペーパーで細部を削りやすいように手づくりしたもの(写真提供:株式会社クライム・ワークス) 金属の周囲に樹脂を流し込んで一体化させるインサート成形は、さまざまな部品製作に用いられている(写真提供:株式会社クライム・ワークス) 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は集中力のトレーニングです。歳をとると注意力のうち、特に、注意の持続力が低下したり、根気よくやり続ける力が枯渇したりしやすくなります。加えて、視力が落ちると見間違えも増えてしまいます。それでもがんばって、答えを見つけ続けることで、注意の持続力や集中力アップのトレーニングができます。 第99回 目標 4分 数字ぷちぷち 最初に「1」を探してください。 1を見つけたら、1から順番になるべく早く最後まで数字を塗り つぶしましょう。 19 38 40 27 37 45 29 26 46 18 28 35 36 17 25 16 43 15 31 14 34 47 24 13 30 41 21 2 9 3 8 11 7 12 6 5 22 20 44 1 10 48 4 39 42 23 33 32 「しっかり見ること」こそが集中力の根源  集中力の根源は「しっかり見ること」です。集中力には、脳の「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という部位が深く関係しています。ここは意志力や判断力、感情のコントロールなどをにない、人間らしさの根幹とも考えられる部分です。さらに、この前頭前野には「前頭眼野(ぜんとうがんや)」といって眼球のコントロールにかかわり、注意力、集中力の中枢ともいえる部位があります。  何かに集中しようとしたとき、気が散ってしまう場合は、まず対象をしっかり見ましょう。また、前頭前野の下側には、「がまん」に関連する部位もあります。注意が続かないとき、ここの活動が落ちています。しっかり見る、見続ける、これは訓練で鍛えられます。ですから、「自分には集中力がない」とあきらめる必要はありません。  今回の問題のように、たとえ数分間だけでも目の前の課題に集中することをくり返せば、少しずつ「集中し続ける力」が身についていきます。最初は数分でもかまいません。そこから十数分、数十分と段階的に時間を伸ばしていくのがコツです。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。人システム研究所所長、公立諏訪東京理科大学特任教授。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 一言  最後まで数字を塗りつぶすまでに目標時間以上かかった人は、目標時間内に塗りつぶせるように再チャレンジしましょう。 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。2025年9月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 高年齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップ  高年齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま!改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされ、高年齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  JEEDでは各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月〜11月に各地域で開催 カリキュラム(以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) ▲専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組みなど】 ▲事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ▲ディスカッション など 参加費 無料(事前のお申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください ■開催スケジュール ※  で記載されている北海道、青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、福井、静岡、愛知、大阪、兵庫、奈良、和歌山、岡山、山口、福岡、長崎、鹿児島、沖縄については、ライブ配信やアーカイブ配信等の動画配信を予定しています。 ※開催日時などに変更が生じる場合があります。詳細は、各都道府県支部のホームページをご覧ください。 都道府県 開催日 場所 北海道 10月23日(木) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月16日(木) YSアリーナ八戸 岩手 10月24日(金) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月18日(火) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月21日(火) 秋田県生涯学習センター 山形 10月16日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 10月15日(水) ウィル福島 アクティおろしまち 茨城 10月17日(金) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月23日(木) とちぎ福祉プラザ 群馬 10月30日(木) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月10日(金) さいたま共済会館 千葉 10月9日(木) ホテル ポートプラザちば 東京 10月21日(火) 日本橋社会教育会館 神奈川 10月27日(月) かながわ労働プラザ 新潟 10月9日(木) 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター 富山 10月20日(月) 富山県民会館 石川 10月24日(金) 石川県地場産業振興センター 福井 10月8日(水) 福井県中小企業産業大学校 山梨 11月18日(火) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月22日(水) ホテル信濃路 岐阜 10月15日(水) みんなの森 ぎふメディアコスモス みんなのホール 静岡 10月17日(金) グランシップ 愛知 10月23日(木) 岡谷鋼機名古屋公会堂 三重 10月16日(木) 津公共職業安定所 都道府県 開催日 場所 滋賀 10月9日(木) 滋賀職業能力開発促進センター 京都10月10日(金) 京都経済センター 大阪 10月23日(木) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月16日(木) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月16日(木) かしはら万葉ホール 和歌山 10月24日(金) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 10月29日(水) エースパック未来中心 島根 10月24日(金) 松江合同庁舎 岡山 10月24日(金) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月17日(金) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月17日(金) 山口職業能力開発促進センター 徳島 10月22日(水) 徳島職業能力開発促進センター 香川 10月16日(木) 香川産業頭脳化センタービル 愛媛 10月24日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月27日(月) 高知職業能力開発促進センター 福岡 11月11日(火) JR博多シティ 佐賀 10月24日(金) アバンセ 長崎 10月23日(木) 長崎県庁 熊本 10月22日(水) 熊本県庁 大分 10月7日(火) トキハ会館 宮崎 10月15日(水) 宮崎県立芸術劇場 鹿児島 10月24日(金) 鹿児島県市町村自治会館 沖縄 10月24日(金) 那覇第2地方合同庁舎 各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更があった場合は各都道府県支部のホームページでお知らせします。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 2025 9 令和7年9月1日発行(毎月1回1日発行) 第47巻第9号通巻550号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈編集委託〉株式会社労働調査会