労務資料 『令和7年版高齢社会白書』 内閣府  内閣府では、高齢社会対策基本法に基づき、1996(平成8)年より、高齢化の状況や政府の講じた高齢社会対策の実施の状況などについてまとめた『高齢社会白書』を取りまとめています。  『令和7年版高齢社会白書』では、「令和6年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」、「令和7年度 高齢社会対策」という二つの部分から構成されています。  今号では、『令和7年版高齢社会白書』のなかから、特に高齢者の就業に関する内容について抜粋して紹介します(編集部)。 第1章 高齢化の状況 第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得 (1)労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇傾向  令和6年の労働力人口は、6957万人であった。労働力人口のうち65〜69歳の者は400万人、70歳以上の者は546万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%と長期的には上昇傾向にある(図表1)。  また、令和6年の労働力人口比率を見ると、65〜69歳では54.9%、70〜74歳では35.6%となっており、いずれも上昇傾向である。75歳以上は12.2%となり、平成27年以降上昇している。  雇用情勢について、完全失業率を見ると、60〜64歳では、平成23年以降低下傾向にあったが、令和3年は、前年からの新型コロナウイルス感染症の影響により3.1%に上昇し、令和6年は2.8%となった。また、65〜69歳では、令和3年の2.7%から令和6年は2.5%へ、70 歳以上では、令和3年の1.2%から令和6年は1.1%へそれぞれ低下した。 (2)就業状況 ア 就業者数及び就業率は上昇している  65歳以上の就業者数及び就業率は上昇しており、特に65歳以上の就業者数を見ると21年連続で前年を上回っている。また、就業率については10年前の平成26年と比較して65〜69歳で13.5ポイント、70〜74歳で11.1ポイント、75歳以上で3.9ポイントそれぞれ伸びている(図表2)。 イ 「医療、福祉」の65歳以上の就業者は10年前の約2.3倍に増加  令和6年における65歳以上の就業者を主な産業別に見ると、「卸売業、小売業」が133万人と最も多く、次いで「医療、福祉」が115万人、「サービス業(他に分類されないもの)」が104万人、「農業、林業」が93万人などとなっている。  令和6年における産業別の65歳以上の就業者を10年前と比較すると、「医療、福祉」が64万人増加し、10年前の約2.3倍となっている。次いで「サービス業(他に分類されないもの)」が32万人、「卸売業、小売業」が26万人と、それぞれ増加している。  また、令和6年における各産業の就業者に占める65歳以上の就業者の割合を見ると、「農業、林業」が51.7%と最も高く、次いで「不動産業、物品賃貸業」28.6%、「サービス業(他に分類されないもの)」が22.3%、「生活関連サービス業、娯楽業」が19.6%などとなっている(図表3)。 ウ 60代後半の男性の6割以上、女性の4割以上が就業している  男女別に就業状況を見ると、男性の場合、就業者の割合は、60〜64歳で84.0%、65〜69歳で62.8%となっており、65歳を過ぎても、多くの人が就業している。また、女性の就業者の割合は、60〜64歳で65.0%、65〜69歳で44.7%となっている。さらに、70〜74歳では、男性の就業者の割合は43.8%、女性の就業者の割合は27.3%となっている。 エ 60歳以降に非正規の職員・従業員の比率は上昇  役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性の場合、55〜59歳で10.3%であるが、60〜64歳で41.3%、65〜69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇している。また、女性の場合も、55〜59歳で58.1%、60〜64歳で72.6%、65〜69歳で83.2%となっており、男性と比較して、60歳以降においても非正規の職員・従業員の比率はおおむね高い割合となっている。 オ 現在収入のある仕事をしている60歳以上の者のうち、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答した者が約3割  現在収入のある仕事をしている60歳以上の者については約3割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる(図表4)。 カ 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業は約3割  従業員21人以上の企業23万7052社のうち、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%(23万6920社)となっている。一方で、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の割合は31.9%(7万5643社)となっており、従業員301人以上の企業では25.5%と低くなっている(図表5)※。 ※「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(昭和46年法律第68号)では65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」、「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講ずるよう義務付けている(高年齢者雇用確保措置)。また、令和3年4月1日からは70歳までを対象として、従来の雇用による措置や、「継続的に業務委託を締結する制度」、「継続的に社会貢献事業に従事できる制度」という雇用によらない措置を講ずるように努めることを義務付けている(高年齢者就業確保措置)。 図表1 労働力人口の推移 労働力人口(万人) 労働力人口に占める65歳以上の割合(%) 15〜24歳 25〜34歳 35〜44歳 45〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70歳以上 65歳以上割合(右目盛り) 昭和55(1980)5,650 699 1,438 1,393 1,208 385 248 165 114 4.9% 60(1985)5,963 733 1,261 1,597 1,297 488 288 63 137 平成2(1990)6,384 834 1,225 1,614 1,418 560 372 199 161 7(1995)6,666 866 1,327 1,378 1,616 539 421 253 192 12(2000)6,766 761 1,508 1,296 1,617 666 426 265 229 17(2005)6,651 635 1,503 1,377 1,392 776 465 257 247 22(2010)6,632 544 1,329 1,542 1,343 686 605 312 273 23(2011)6,596 525 1,291 1,569 1,333 655 637 296 288 24(2012)6,565 514 1,261 1,577 1,346 629 627 310 299 25(2013)6,593 518 1,239 1,582 1,380 620 345 307 26(2014)6,609 518 1,214 1,576 1,406 620 575 377 322 27(2015)6,625 516 1,191 1,558 1,439 617 556 413 334 28(2016)6,678 539 1,182 1,529 1,484 619 541 450 336 29(2017)6,732 543 1,173 1502 1,529 629 537 454 366 30(2018)6,849 580 1,168 1,477 1,573 638 540 450 423 令和元(2019)6,912 598 1,158 1,442 1,619 647 544 438 466 2(2020)6,902 584 1,158 1,397 1,636 663 545 424 495 3(2021)6,907 580 1,161 1,371 1,661 663 545 410 516 4(2022)6,902 572 1,151 1,346 1,671 678 557 395 532 5(2023)6,925 586 1,156 1,319 1,665 700 569 394 537 6(2024)6,957 595 1,168 1,297 1,653 721 576 400 546 13.6% (年) 資料:総務省「労働力調査」 (注1)年平均の値 (注2)「労働力人口」とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。 (注3)平成23年は岩手県、宮城県及び福島県において調査実施が一時困難となったため、補完的に推計した値を用いている。 (注4)四捨五入のため合計は必ずしも一致しない。 図表2 年齢階級別就業者数及び就業率の推移 (万人) (%) 65〜69歳の就業者数 70〜74歳の就業者数 75歳以上の就業者数 65〜69歳の就業率(右目盛り) 70〜74歳の就業率(右目盛り) 75歳以上の就業率(右目盛り) 平成26(2014) 365 189 129 40.1 24.0 8.1 27(2015) 401 194 136 41.5 24.9 8.3 28(2016) 438 187 145 72.8 25.0 8.7 29(2017) 444 207 155 44.3 27.2 9.0 30(2018) 441 246 174 46.6 30.2 9.8 令和元(2019) 428 275 188 48.4 32.2 10.3 2(2020) 413 296 194 49.6 32.5 10.4 3(2021) 399 314 196 50.3 32.6 10.5 4(2022) 386 316 211 50.8 33.5 11.0 5(2023) 383 303 228 52.0 34.0 11.4 6(2024)(年) 390 292 248 53.6 35.1 12.0 資料:総務省「労働力調査」 (注1)年平均の値 (注2)「年齢階級別就業率」とは、各年齢階級の人口に占める就業者の割合をいう。 図表3 主な産業別65 歳以上の就業者数及び割合(平成26(2014)年、令和6(2024)年) (万人) (%) 主な産業別65歳以上の就業者数 平成26(2014)年 主な産業別65歳以上の就業者数 令和6(2024)年 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 平成26(2014)年(右目盛り) 各産業の就業者数に占める65歳以上の就業者の割合 令和6(2024)年(右目盛り) 農業、林業 99 93 47.1 51.7 建設業 59 80 11.6 16.8 製造業 75 88 7.2 8.4 情報通信業 4 7 2.4 2.0 運輸業、郵便業 30 40 8.9 11.6 卸売業、小売業 107 133 10.1 12.7 金融業、保険業 7 8 4.5 5.2 不動産業、物品賃貸業 25 40 22.1 28.6 学術研究、専門・技術サービス業 23 37 10.8 14.1 宿泊業、飲食サービス業 46 58 11.9 14.3 生活関連サービス業、娯楽業 38 45 16.0 19.6 教育、学習支援業 21 37 7.0 10.6 医療、福祉 51 114 6.7 12.5 サービス業(他に分類されないもの) 72 104 18.0 22.3 公務(他に分類されるものを除く) 6 14 2.6 5.5 図表4 何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか(択一回答) 全体(n=2,188) 65歳くらいまで23.7% 70歳くらいまで20.0% 75歳くらいまで13.7% 80歳くらいまで5.3% 働けるうちはいつまでも22.4% 仕事をしたいとは思わない11.3% 不明・無回答3.6% 70歳くらいまでから働けるうちはいつまでもの合計61.4% 収入のある仕事をしている者(n=935) 65歳くらいまで12.9% 70歳くらいまで22.8% 75歳くらいまで20.1% 80歳くらいまで7.4% 働けるうちはいつまでも33.5% 仕事をしたいとは思わない1.5% 不明・無回答1.8% 70歳くらいまでから働けるうちはいつまでもの合計83.7% 資料:内閣府「令和6年度高齢社会対策総合調査(高齢者の経済生活に関する調査)」 (注1)調査対象は、全国の60歳以上の男女 (注2)四捨五入の関係で、足し合わせても100.0%にならない場合がある。 図表5 70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業の内訳 全企業(31.9%) 定年制の廃止3.9% 定年の引き上げ2.4% 継続雇用制度の導入25.6% 創業支援等措置の導入0.1% 301人以上(25.5%) 定年制の廃止0.7% 定年の引き上げ0.7% 継続雇用制度の導入24.0% 創業支援等措置の導入0.1% 21〜300人(32.4%) 定年制の廃止4.1% 定年の引き上げ2.5% 継続雇用制度の導入25.7% 創業支援等措置の導入0.1% 資料:厚生労働省「令和6年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果」より内閣府作成 (注1)「創業支援等措置の導入」とは、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第10条の2に基づく、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度及び70歳まで継続的に社会貢献事業(事業主が自ら実施する事業又は事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う事業)に従事できる制度の導入を指す。 (注2)本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、「創業支援等措置の導入」については、小数点第2位以下を切上げとしている。