BOOKS ミドル・シニアが活躍するためのヒントを、個人、企業、社会の視点から示す 定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図 宮島(みやじま)忠文(ただふみ) 著・小島(こじま)明子(あきこ) 著/日本経済新聞出版/2640円  すべての企業に65歳までの雇用確保が義務づけられ、70歳までの就業機会確保が努力義務となったいま、定年を延長したり、定年そのものをなくしたりする企業が増えてきている。  少子高齢化にともない、働くミドル・シニアの比率は今後も高まることが予想されるなか、本書は、ミドル・シニアの活躍を実現していくためのヒントを個人、企業、社会それぞれの視点から提示する。この世代の活躍促進・支援のためのカリキュラムの開発・運営者と、キャリアや協同労働に関する調査研究者の2人が協力して、ミドル・シニアの働き方の現状について労使双方の課題を浮き彫りにしながら、現場で得られた知見と調査データ等をふまえたキャリア意識の現状、社会構造的な視点を交えて、課題解決に向けたポイントを整理している。  例えば、「働き続けてほしい人」の姿を10のキーワードで示しつつ、シニアの能力と貢献できる領域や、役割について企業側が考える際の視点を提示。また、多様な人材を企業の成長につなげていくために代替可能なミドル・シニア人材の増加を防ぐキャリア形成支援や、労働者協同組合などの新たな働き方も含めて、これからの人事設計のポイントを説いている。 基礎から最新の理論までわかりやすく解説。“キャリア”にかかわるすべての人へ 新時代のキャリアコンサルティング[増補版] 独立行政法人労働政策研究・研修機構(編集・発行)/2200円  働く人のキャリア形成や、必要なスキルを習得する機会の提供などを支援するキャリアコンサルティングは、従業員の定着率向上や生産性向上にもつながることが期待されている。  本書は、企業、ハローワークなどの需給調整機関、教育機関など幅広い現場で活用できるキャリアコンサルティングに役立つ内容として、基礎的理論から新しい理論まで、新旧のキャリア理論、カウンセリング理論を、実践との結びつきを意識して解説。9年ぶりに刊行された増補版で、キャリア理論では、伝統的・基礎的な理論を拡充しつつ、ジョブ・クラフティング、ナラティブ・アプローチなど新たな内容を追加。カウンセリング理論では、近年発展がめざましい認知行動的アプローチと関連が深いマインドフルネス、セルフ・コンパッションなどのカウンセリング技法のほか、基礎的な理論も拡充し、全編で新たに24項目が加わった。ページ数は初版の約1.5倍に増したが、一つの理論を4ページでコンパクトに整理して解説し、どこからでも体系的に読むことができる。  キャリアカウンセラーや職業相談、学校でキャリア教育をになう人、これから学びたい人にも、わかりやすく活用しやすい一冊である。 新たな産業や雇用を生んで世界へ羽ばたき、地域に貢献する福島県の企業を紹介 地域発エクセレントカンパニー 神田(かんだ)良(まこと) 著・井(たかい)透(とおる) 著・一般財団法人とうほう地域総合研究所 著/生産性出版/2860円  進行する日本の人口減少と少子高齢化は、労働のにない手不足や需要の縮小につながり、とりわけ地方経済に深刻な影響を及ぼしている。一方で、逆境にあっても創業の地を大切にしながら県外へ、さらに世界へと羽ばたき、地域に貢献している元気な企業も存在する。  本書は、バブル崩壊、リーマンショックに加え、東日本大震災、福島第一原子力発電所事故などさまざまな困難に遭遇しながらも成長してきた、福島県内の企業をていねいに紹介する。  東邦銀行系のシンクタンクである「とうほう地域総合研究所」は、公益財団法人日本生産性本部との共同企画で、福島県内25社の企業を取材し、成長や変革のポイントなどを伝えてきた。本書はその集大成として、全国および海外にも事業展開する6社を取り上げている。世界最高レベルの最狭隣接間隔で電子部品を実装する技術を持つ企業、林業でつちかったノウハウを活かして成長する企業、老舗旅館を統合して再生を果たした企業などである。  経営の手本となる逆境からの転換、技能伝承、従業員満足度、市場開拓の取組みなどを紹介するほか、6社の成長ポイントを分析し、地域経済の活性化、地方創生の手がかりも示している。 87歳・現役建築士のおりがみ作家と脳科学者が紹介。楽しいおりがみで脳が活性化! 脳科学でわかった!80歳からでも成長する もっと脳活おりがみ 伊達(だて)博充(ひろみつ) 著・西(にし)剛志(たけゆき) 監修/あさ出版/1540円  おりがみを折ると脳が活性化し、楽しんで折っていれば、何歳からでも脳は成長するという。  本書は、「脳活おりがみ」を紹介してシニアを中心に好評を博した書籍の第2弾。87歳で現役の建築士、創作おりがみ作家として活躍する著者と、多数のベストセラーを生み出した脳科学者のコンビが、今回は認知機能の低下を防ぐ著者オリジナルのおりがみ作品や、高齢者の脳活にも子どもの脳育にもよいカンタンおりがみも紹介。スマートフォンで見られる、わかりやすい折り方の動画もついているので、高齢者でもおりがみに親しめる内容となっている。  読むほどにおりがみの効果に引き寄せられるが、むずかしい解説文はなく、80歳からおりがみにはまった著者と脳科学者の会話形式で、指を動かし続けることで眠っていた神経幹細胞が目覚める可能性があることや、折るというちょっとした負荷が認知症のリスクを下げること、あるいは創造力を高めるといった効果を上げ、自然と理解が進むように工夫されている。そして、「紙ヒコーキ」、「ムゲン箱」、「飛ぶ白鳥」などのおりがみ作品に挑戦してみたくなる。  シニア世代の多い職場での話題づくりにもよさそうな、楽しくて為になる内容である。 定年後から輝き始めた元サラリーマンの自己啓発書 人生、本番は六十歳から! 数々の重病に打ち克った私の健康法と考え方 山口(やまぐち)幸広(ゆきひろ) 著/共栄書房/1980円  著者の山口幸広さんは、1954(昭和29)年生まれ。幼いころから身体が弱く、いろいろな病気と向き合う人生を歩んできた。  高血圧の家系であり、サラリーマン時代の47歳のときに脳梗塞(のうこうそく)になったことで、長い間降圧剤を飲んでいたが、ほかの方法を模索し、毎朝のスクワットなどを継続。70歳を過ぎたいま、降圧剤を手放すことができているという。  この体験をはじめ、原因不明の腰痛、胃弱(胃もたれ)、飛蚊症(ひぶんしょう)、うつなど、山口さんが患った病と乗り越えてきた体験にはじまり、第2章では、60歳の定年を見すえて「これからが人生の本番」と考えをあらため、定年後の仕事として行政書士になることを決意。そこから仕事と資格取得のための勉強を両立して5年後、60歳目前で資格を取得した勉強方法や記憶のコツなどを披露している。定年退職後の翌年、山口さんは行政書士事務所を開業。健康第一でこの仕事を続けるために実践しているという、日課の呼吸法や運動、食事にも触れている。  このほか、医者とのつきあい方、おだやかな死への心構え、勇気づけられた言葉などを紹介。ミドル・シニア世代がよりよいこれからを見つけるための気づきやヒントが見つかりそうだ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します