【表紙2】 65歳超雇用推進助成金のご案内 (平成31年4月から一部コースの見直しを行いました) 〜65歳超継続雇用促進コース〜 65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66 歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施する事業主のみなさまを助成します。 主な支給要件 ●労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、旧定年年齢※1を上回る年齢に引上げること。 ●定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。  また、改正後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること。 ●1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること。 ●高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置※2を実施すること。 支給額 実施した制度 65歳への定年引上げ 66歳以上への定年引上げ 定年の廃止 66〜69歳の継続雇用への引上げ 70歳以上の継続雇用への引上げ 引上げた年数 60歳以上の被保険者数※3 5歳未満 5歳 5歳未満 5歳以上 4歳未満 4歳 5歳未満 5歳以上 1〜2人 10 15 15 20 20 5 10 10 15 3〜9人 25 100 30 120 120 15 60 20 80 10人以上 30 150 35 160 160 20 80 25 100 ■1事業主あたり(企業単位)1回かぎり (単位:万円) 〜高年齢者評価制度等雇用管理改善コース〜 高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(高年齢者雇用管理整備措置)を実施した事業主のみなさまを助成します。 措置(注1)の内容 ●高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入 ●法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%《75%》、ただし中小企業事業主以外は45%《60%》 (注2)措置の実施に必要な専門家ヘの委託費、コンサルタントとの相談経費(経費の額にかかわらず、初回の申請にかぎり30万円の費用を要したものとみなします。) 〔《 》内は生産性要件を満たす場合※4〕 〜高年齢者無期雇用転換コース〜 50歳以上かつ定年年齢未満の有期雇用労働者を無期雇用契約労働者に転換した事業主のみなさまを助成します。 申請の流れ @無期雇用転換制度を整備 A高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置※2を1つ以上実施 B転換計画の作成、機構への計画申請 C転換の実施後6カ月間の賃金を支給 D機構への支給申請 支給額 ●対象労働者1人につき48万円 (中小企業事業主以外は38万円) ●生産性要件を満たす場合※4には対象労働者  1人につき60万円 (中小企業事業主以外は48万円) ※1 旧定年年齢とは……  就業規則等で定められていた定年年齢のうち、平成28年10月19日以降、最も高い年齢 ※2 高年齢者雇用管理に関する措置とは……  (a) 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施等 (b) 作業施設・方法の改善 (c) 健康管理、安全衛生の配慮  (d) 職域の拡大 (e) 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進 (f) 賃金体系の見直し (g)勤務時間制度の弾力化 のいずれか ※3 60歳以上の被保険者とは……  当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって、期間の定めのない労働協約を締結する労働者または定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者にかぎります。 ※4 生産性要件を満たす場合とは…… 『助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること』(生産性要件の算定対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないこと)が要件です。 (生産性= 営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)雇用保険被保険者数 (企業の場合) ■お問合せや申請は、都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします(65頁参照)。  そのほかに必要な条件、要件等もございますので、詳しくはホームページ(http://www.jeed.or.jp)をご覧ください。 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.55 「働きがい」改革が、わが社の働き方改革シニアの活躍に向けて段階的に定年を延長 株式会社オカムラ 執行役員 コーポレート担当 (人事・人財開発・お客様相談) 佐藤喜一さん さとう・よしかず 1982(昭和57)年、株式会社岡村製作所(現・株式会社オカムラ)入社。経営情報システム研究所、経営管理部を経て、1999年に岡村製作所労働組合中央執行委員長に就任。2009年総務部長、2015年人事部長、2017年理事を経て、2019年より現職。  オフィス家具や店舗用什器(じゅうき)の分野で、国内トップクラスのシェアを誇る株式会社オカムラ。業界最多のグッドデザイン賞受賞をはじめ、国内外でさまざまな表彰・認定を受けるなど、革新的なモノづくりに取り組んでいます。同社では、2018(平成30)年から1年ごとに1歳ずつ定年を延長する、段階的な定年延長を実施しました。今回は、同社執行役員の佐藤喜一さんに、定年延長の背景や課題などについて、お話をうかがいました。 従業員の年齢構成が大きく変化するなかで事業の継続的な成長にはシニアの活躍が不可欠 ―貴社は、2018(平成30)年3月より定年を毎年1歳ずつ引き上げ、2022(令和4)年3月に65歳定年とする段階的な定年年齢の引上げに取り組まれている最中です。定年延長にふみ切った理由とは何でしょう。 佐藤 当社では、定年で退職した社員を再雇用する「セカンド・キャリア社員制度」(以下、「SC社員制度」)を1990年にスタートし、近年では定年を迎える社員の90%以上が定年後もSC社員として働いています。さらに、当社の年齢構成からみて将来的には60歳以上の社員が大きなウエイトを占めることになります。会社が今後も成長を続けていくには、シニア世代にがんばってもらう必要があるのです。  ただし、SC社員制度の場合、給与水準は60歳退職時の50%に下がります。SC社員からは「やっている仕事は大きく変わらないのに報酬だけが半分になる。成果も半分ぐらいでいいのか」という声もありました。60歳以降の社員が増えるなか、モチベーションが下がれば、会社の発展に影響をおよぼすおそれもあります。一方で、「生涯現役社会」といわれるなかで、2025年には公的年金が65歳完全支給(女性は5年遅れのスケジュール)になり、国も70歳雇用の方針を掲げています。そうした流れも含め、トップの英断もあり、65歳定年制に向けてふみ切ったのです。 ―たしかにシニア人材のモチベーションをうながすには、処遇制度が重要ですね。60歳以降の人事・処遇制度について教えてください。 佐藤 SC社員制度では、現役時代の資格等級を新たにSC1〜6の等級につけ替え、各等級の給与は60歳時の約50%とし、引き続き定年前と同じ仕事に従事することにしていました。今回は定年延長なので、60歳以降もその前の等級を継続しますが、基本給については60歳時点の75%に固定しています。  また、定年延長にともない、管理職は60歳で役職を降りる役職定年制を導入しました。役職を外れた社員は全員、新たに設けた「シニアエキスパート」という等級に入ります。役職を外れると給与が大幅に下がるのが一般的ですが、当社の管理職層は、役職見合いを基本給に組み込んだ職務・役割給にしているので、役職を降りても、他等級と同様の75%となります。さらに、管理職の一部にかぎり、余人をもって代えがたい社員は、60歳以降も役職を継続してもらいます。その場合の基本給は95%になります。  評価制度自体は、60歳以降も同様です。行動評価と個人業績評価を年2回実施しており、個人業績評価は賞与に反映されるので、年収ベースでは75%を上回る社員も出てきます。一方の行動評価は、本来、昇給に反映されるものですが、60歳以上の基本給は75%に固定しています。それでも行動評価を行うのは、資格等級に見合った働き方をしているのかを厳格にチェックするためです。もし等級と働き方が見合っていなければ降格もありうる、と社員には伝えています。 ―段階的に定年を延長したのはなぜですか。 佐藤 最も大きな理由は、すでに再雇用で働いているSC社員の存在です。再雇用となったSC社員を正社員に戻すことは、管理上の混乱も予想され現実的ではありませんでした。そこで、2017年度に定年を迎える世代を最後のSC社員とし、その一つ下の世代が実質的に65歳定年となるよう、1年ごとの段階的な定年延長としたのです。  しかし、定年延長により基本給が50%から75%に上がるわけですから、SC社員のなかに不公平感が生まれてしまうことは避けられません。この不公平感をなんとか解消することはできないかと、いろいろ検討した結果、65歳の退職時に、差額分の25%相当額を退職金として支払うことで納得してもらいました。月例給の50%であれば「高年齢雇用継続給付」※1の受給が可能ですが、75%になれば受け取れませんし、自分の取り分が増えるわけでもありません。むしろ退職金で受け取ったほうが退職所得控除を受けられます。 段階的な定年引上げを進めるうえで「退職金」が大きな検討課題に ―定年を延長するうえで、退職金の取扱いは検討課題の一つですね。 佐藤 そうですね。定年延長者の退職金をいつ支給するかは、定年を延長するうえで一番のポイントでした。退職金を60歳で受け取ることを前提に人生設計を考えている社員もおり、65歳支給にすると、そのプランが変わることになります。一方で、従来通り60歳で支給すると、税制優遇を受けられるのか、という問題もありました。調べてみると、60歳で退職金を支給することを労働協約や就業規則に明記していれば、退職所得控除の対象になることが判例で確認でき、60歳時に退職一時金を支給することにしました。企業年金は確定拠出年金を導入しており、60歳で掛金拠出も終わります。 ―65歳定年制にともない、マインドセット※2などの施策を実施していますか。 佐藤 定年延長と同時に56歳と59歳の社員に絞った、新たなキャリア研修をスタートさせました。60歳から65歳までどういう働き方をするのかを考えてもらうこと、そして、これまでの仕事や人生を振り返ってもらい、家庭生活も含めて今後の人生をどう設計するのかを、自身で考えてもらうことが目的です。59歳の研修ではこれに加えて年金などのお金の話もしています。  研修の場では、私からも毎回話をさせてもらっています。定年延長の背景について説明し、56歳であれば65歳まで9年間あること、ひょっとしたら9年後には70歳雇用になっているかもしれないことなどをふまえ、長く働き続けることを視野に入れて考えてほしいと伝えています。  そしてもう一つ伝えているのが「創造性」を発揮してほしいということです。創造性というと、若い人に向けたメッセージと受け取られがちですが、私は新しいものをつくりだす際には、これまでつちかってきた経験や知識の裏づけがあるからこそ、創造性を発揮することができると思っています。ですからシニアに向けて、「むしろ、みなさん方が持っている知識や技術をベースに創造性を発揮して、会社の成長につながる新しいものをつくってほしい」と伝えています。 つちかってきた知識・経験の裏づけがあるシニアにこそ「創造性」の発揮を期待 ―まさに最前線での活躍を期待しているのですね。すでに定年延長して2年目を迎えますが、みなさんの働きぶりはいかがでしょう。 佐藤 もともと60歳を過ぎても継続して働くことがあたり前の社風なので、大部分の社員が以前の職場で働いており、現役社員も先輩と一緒に働くことが普通だと思っています。職場が唯一変わるのは管理職の一部です。管理職でも専門的な知識を持っている技術・開発系は、役職を外れても同じ部門に専門職として残り、後輩の指導にあたってもらっています。それ以外の管理職の場合は、新しい職場や仕事に移ってもらいます。例えば営業系の支店長だった社員の場合、売上げ目標の数字を持たずに営業時代につちかったお客さまとの人脈を活かせるような仕事を任せています。やはり前任の管理職が同じ職場にいると、後輩の管理職もやりづらい部分が出てくることが考えられるためです。ただ、管理職を外れた社員の一部は、「自分のやっている仕事の成果が出し切れているのか」と、不安を感じているようです。その部分のケアは今後の課題といえるでしょう。  現時点では定年延長者の配置はうまくいっていますが、今後さらに人数が増えてきたときに、になってもらう新しい仕事をどうするかについては、現在検討を進めているところです。 ―65歳、さらには70歳雇用になると個々人の体力や家庭状況によって柔軟な働き方が求められてくると思います。働き方改革も重要ですね。 佐藤 当社の働き方改革を進めるために、社長をリーダーとした「WiL−BE(ウィル・ビー)」を経営の重点施策として、2018年6月から実施しています。「ライフ(人生)の要素の中の一つにワーク(仕事)がある」という当社が提唱する「ワークインライフ」をベースに、働くことの喜びや働きがいを感じることができる人材の育成、新しいワークルールの策定、職場環境などの充実を図るというものです。  ワークルールでは、週1回を限度に育児・介護中の社員の在宅勤務を推進しています。シニア世代は親の介護も発生し、実際に介護による在宅勤務を利用するシニア世代も増えています。  女性活躍にかぎらず、定年延長もそうしたダイバーシティーの一つとしてとらえています。当社の働き方改革は「働きがい」改革です。一人ひとりが働きがいを持てる会社になることを目ざして、活動を進めていきます。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) ※1 高年齢雇用継続給付……高年齢者の就業意欲を維持・換起し、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的とする給付。60歳到達時に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の一般被保険者に支給される ※2 マインドセット……物事を判断したり行動する際の基準となる考え方 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2019 November ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集 6 高齢者が働く職場の創意工夫が集結! 2019年度 高年齢者雇用開発コンテストU 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰受賞企業事例から 6 2019年度「高年齢者雇用開発フォーラム」を開催 8 優秀賞 社会福祉法人 洗心会(栃木県小山市) 株式会社 シーピーユー(石川県金沢市) 有限会社 ダイケイ(福井県坂井市) 株式会社 TFF(岐阜県岐阜市) 社会福祉法人 あいの土山福祉会(エーデル土山)(滋賀県甲賀市) 山陰松島遊覧 株式会社(鳥取県岩美郡) 株式会社 元禄(愛媛県西予市) 1 リーダーズトーク No.55 株式会社オカムラ 執行役員 コーポレート担当 (人事・人財開発・お客様相談) 佐藤喜一さん 「働きがい」改革が、わが社の働き方改革 シニアの活躍に向けて段階的に定年を延長 36 江戸から東京へ 第86回 生涯現役家老 大屋遠州 作家 童門冬二 38 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第67回 共同エンジニアリング株式会社 顧問 杉村卓治さん(69歳) 40 高齢者の現場 北から、南から 第90回 熊本県 株式会社一休本舗 44 新連載 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 第1回 檜山 敦 48 知っておきたい労働法Q&A《第19回》 求人広告と労働契約、パワハラの防止義務 家永 勲 52 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復[第6回] 渡辺恭良 54 お知らせ 2019年度生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 56 日本史にみる長寿食 vol.314 ニンジンを食べて今日も元気 永山久夫 57 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.306 フランス菓子文化の伝道者 日本最高峰の技と味を形に 洋菓子職人 藤生義治さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第30回] お散歩物語迷路 篠原菊紀 【P6-7】 特集 高齢者が働く職場の創意工夫が集結! 2019年度 高年齢者雇用開発コンテストU 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰受賞企業事例から 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、厚生労働省との共催で「高年齢者雇用開発コンテスト」を毎年開催しています。 コンテストでは、職場環境の改善や新たな仕事の創出により、生涯現役で働ける職場を実現している事例や、高齢者が身につけたスキルを十分に発揮できる職場環境を創意工夫して整備した事例などを募集し、優れた取組みを表彰しています。 「厚生労働大臣表彰」受賞企業を紹介した前月号に続き、今月号では、当コンテストの表彰式を行った「高年齢者雇用開発フォーラム」とともに、「当機構理事長表彰優秀賞」を受賞した七つの企業や団体の取組みをご紹介します。 2019年度 「高年齢者雇用開発フォーラム」を開催 高齢者雇用先進企業30社を表彰  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構は10月3日(木)、厚生労働省との共催で、「2019年度高年齢者雇用開発フォーラム」を開催した。  同フォーラムは、高齢者が年齢を問わず能力や意欲を向上させ活躍する「年齢にかかわらずいきいきと働ける社会」に向けた、高齢者の雇用促進にかかる取組みの一環として開催。会場には、企業の人事・労務担当者ら、約350人が全国から参集した。  同フォーラムでは、「2019年度高年齢者雇用開発コンテスト」の表彰式をはじめ、諏訪(すわ)康雄(やすお)法政大学名誉教授による記念講演やコンテスト入賞企業・団体による事例発表、トークセッションが行われた。  はじめに、加藤勝信(かつのぶ)厚生労働大臣と当機構の和田慶宏(よしひろ)理事長による主催者挨拶があり、その後に行われた表彰式では、厚生労働大臣表彰として、最優秀賞は医療法人社団五色会、優秀賞は株式会社建設相互測地社、松川電氣株式会社、社会福祉法人いろどり福祉会 ケアハウス・在宅複合施設花紬(はなつむぎ)、特別賞は株式会社ムジコ・クリエイト、株式会社アパレルオオタの6社に加藤大臣より賞状が授与された。次に、当機構理事長表彰では、優秀賞の社会福祉法人洗心会をはじめとする7社、特別賞17社に和田理事長より賞状が贈られた。  表彰式後の記念講演で諏訪氏は、「シニア就業の自助・共助・公助〜人生100年時代に向けて〜」をテーマに、職業人生が長期化していくなかで、働く人々と企業などの組織、国や地方自治体にはどのような対応が求められているのかについて語った。諏訪氏は、中高年齢層がこれまでにたどってきた組織内での位置づけなどを振り返りつつ、企業における60歳代以降の雇用確保措置の状況と企業規模別の年齢構成、いまや46歳となっている通年の企業勤務者の平均年齢の現状を説明するなかで、働く人々の仕事への姿勢やキャリア形成に着目。「年代別の仕事上の重視事項」について、40代までは1位が「給与・賃金」であるのに対し、50代以降は「仕事のやりがい」が最も重視されているという調査結果を紹介しつつ、企業は中高年齢層の社員に対して「やりがい」を重要視する必要があると述べた。また、生涯学習の時代といわれるなか、中高年層の学びについて、自身による「自助」努力も必要だが、同時に、これからは地域や職場・企業などによる「共助」や国・地方自治体による「公助」における対応を高めていくことが重要課題の一つではないかと唱えた。  その後の事例発表では、入賞企業から医療法人社団五色会、株式会社建設相互測地社、松川電氣株式会社の3社が自社の取組みの内容や制度などを紹介した。  続いて行われたトークセッションでは、内田賢まさる・東京学芸大学教育学部教授をコーディネーターに迎え、事例発表した3社の代表者がパネリストとして登壇(五色会・佐藤仁ひとし理事長、建設相互測地社・安孫子(あびこ)健一代表取締役、松川電氣・小澤邦比呂(くにひろ)代表取締役)。「高齢社員活用の最前線〜コンテスト表彰事例から探る〜」をテーマに、高齢社員の持っている能力・技術・経験を活かす工夫や長く働き続けられる職場づくりなどについて、各パネリストが取組みを語り、フォーラムは盛況のうちに閉幕した。  なお、記念講演とトークセッションの詳細は、本誌2020年1月号で掲載する予定。 写真のキャプション 挨拶に立つ加藤勝信厚生労働大臣 挨拶に立つ当機構の和田慶宏理事長 記念講演を行った諏訪康雄氏 【P8-11】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 長く働き続けられる職場環境を整備し高齢職員の活躍の場を確保 社会福祉法人 洗心会(栃木県小山市) 企業プロフィール 社会福祉法人 洗心(せんしん)会 (栃木県小山(おやま)市) ◎創業 1981(昭和56)年 ◎業種 社会保険・社会福祉・介護事業(障害者支援施設、老人ホーム、保育園など) ◎職員数 295人 (内訳) 60〜64歳 15人(5.1%) 65〜69歳 16人(5.4%) 70歳以上 12人(4.1%) ◎定年・継続雇用制度 定年65歳。定年後は一定条件のもと、上限年齢なく再雇用。現在の最高年齢者は80歳 T 本事例のポイント  社会福祉法人洗心会は、1981(昭和56)年2月に法人設立の認可を受け、同年4月に「こばと保育園」を栃木県小山市に開園。その後、1988年4月には障害者支援施設「サンフラワー療護園」を、2003(平成15)年4月には養護老人ホーム「サンフラワーガーデン」を開設した。その後も複数の施設を開設し、現在は小山市内で12施設を運営している。  創業当初から、「働ける人は拒まない」という方針をかかげて高齢者も積極的に採用していたが、将来の人口減少に備え、独自に職員確保のための働きやすい職場づくりや、一人あたりの業務負担の軽減を図ってきた。計画的に多様な施設づくりも進め、高齢者が働きやすい職場環境を創出している。  2007年に事務職において定年を60歳から65歳に引き上げ、活躍の期待が大きい高齢職員に長く働いてもらうために、柔軟な雇用制度や福利厚生の充実を図ってきた。 《POINT》 (1)「豊かな福祉の実現をめざして」を基本理念に、高齢者が長く安心して働くことができる雇用制度や職場づくりに取り組んでいる。 (2)65歳定年制を2007年に導入。それ以降は本人が希望し、理事長が必要と認めた者は上限を設けることなく継続雇用。 (3)高齢になり、いままでの仕事に従事するのが体力的にむずかしくなっても、さまざまな部署に異動できるため、常勤、非常勤にかかわらず職員が安心して働き続けることができる。 (4)現場の介護職員の負担を減らすために、業務内容を整理し、専門知識が必要な業務とそうではない業務に分け、高齢職員には、シーツの交換、室内の清掃、食事の準備など、それぞれができる業務を担当してもらっている。 (5)職員の健康診断は、同法人敷地内にあるクリニックで、全職員が年2回ずつ受診しており、費用は同法人が負担。また、50人以上の事業場ごとに義務づけられているストレスチェックも、50人未満の事業場も含めて全職員を対象に実施している。 (6)2017年より、理事長と全職員が参加する意見交換会を実施している。職員が出席しやすいように年5回場所を変えて行っており、職員は自分の都合に合わせ、年1回参加している。仕事に対する提案や職員の本音を聴く機会となっているとともに、法人としての考え方を職員に伝える貴重な場にもなっている。 U 企業の沿革・事業内容  1981年の創業時に開園した「こばと保育園」を皮切りに、障害者支援施設、デイサービスセンター、養護老人ホーム、居宅介護支援、訪問介護、認知症高齢者グループホームの運営などさまざまな事業を展開しており、現在では、保育サービス(3施設)、障害者サービス(2施設)、高齢者サービス(4施設)、そのほかに子どもの運動遊び場(屋内)や入浴施設、カフェレストランなどを運営している。小山市を中心に近隣地域の児童、障害者、高齢者などに、多様な福祉サービスを提供している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  職員数295人のうち、60歳以上は43人で全体の約15%を占めている。60歳以上の年齢構成は、60〜64歳15人、65〜69歳16人、70歳以上12人。  「長く働いてくれる職員を大事にしたい」との思いから、同法人では職員が高齢になり、いままで通りの仕事ができなくなっても、管理者の判断でさまざまな部署に異動できる仕組みがある。そのため、職員は安心して長く働き続けることができる。「勢いのある若い職員も必要ですが、利用者の話を親身になってしっかり聞くことができる高齢職員も必要です。両者のバランスを大切にしたい」と大木(おおき)元(げん)理事長は語る。また、職員の資格取得についても本人の希望や業務の必要性に応じて取得をうながしており、費用は同法人が一定額負担している。  深夜の当直業務については、高齢職員が担当する回数を減らすなどの配慮をしているが、体力的にどうしても深夜業務がむずかしい場合は、管理者の判断でデイサービスなど、昼のみの業務に異動させることもある。「年齢に関係なく、職員が働きやすい環境を今後も整備していきたい」と小川慶太朗事務長は話す。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・定年制度  2007年4月に、まず事務職に65歳定年制を導入し、翌年1月には、介護職員などにも導入した。当時は定年引上げの法的な義務はなかったが、中途採用者や永年勤続者などの豊富な経験を長く活かせる体制を考えたときに、60歳定年制が壁となったため、導入を決定。定年後も慣習で希望者には健康状態や能力に応じて、年齢に上限のない継続雇用を実施してきた。パート職員は、希望する者は年齢に上限なく継続雇用することを就業規則に定めている。また、長く働き続けることができるように、本人や家族の要望に応じた短時間・隔日勤務など柔軟な勤務体系も導入している。  また、年2回の健康診断の実施やストレスチェックの実施に加えて、「元気であれば希望する者はいくつになっても働ける」と、理事長や施設長から周知されており、定年後も継続雇用することが慣習として根づいている。 ・高齢者の職域拡大  高齢者の介護や障害者の支援、子どもの世話などは、体力が必要とされる業務であるため、年齢を重ねて従来の業務ができなくなっても、無理をせずにできる業務に移れるように、高齢職員でも従事可能な職域の拡大や仕事の創出を進めてきた。また、介護職員の採用がむずかしい時代になってきたため、スタッフ一人あたりの負担を軽減する改善策を現場と一緒に検討した。  具体的には、介護職員が行う業務と専門知識や経験がなくてもできる業務に分け、シーツの交換や室内の清掃、食事の準備などについては介護職員以外のスタッフに担当してもらうこととした。その結果、介護職員の負担が減って本来の仕事に専念できるため、ミスの防止や無駄な動きの削減などの効果があり、サービス利用者はもちろん利用者の家族にも、いままで以上にきめ細かなサービスが可能となった。それにともない、施設の評価も向上して入居率もアップし、職員の定着率の改善、さらには収益の増加や総人件費の削減にもつながっている。 ・施設設備などの改善  施設開設時から使用していた「旧式のベッド(昇降を手動で行う)」は、介護の際、腰や身体全体への負担が非常に大きいため、2018年から2年計画で、100床あるすべてのベッドを電動ベッドに切り替えている。また、車椅子の方用のリフトも導入した。ボタン一つで自由に上下動ができるため、介護職員が無理な姿勢で利用者をサポートすることがなくなった。腰痛が緩和され、腕や肩の疲れを軽減できるため、職員からはとても好評である。 (2)資格取得やキャリア形成支援の取組み  「人材は人財」と考える同法人では、「介護福祉士」や「ケアマネジャー」などの資格取得を目ざす職員をサポートしており、社会福祉充実計画※1の職員育成事業において、資格取得のための研修費用や受験料などを一定額支給している。また、資格取得後は介護福祉士で3万円、ケアマネジャーで5万円など、資格の難易度に応じて報奨金を支給している。費用を負担してもらえ、資格取得時には手当もあることから、資格取得を目ざそうとする意欲を持つ職員が増えてきている。 (3)意識・風土面の改善  今後介護職員が高齢化して、体力などの面で現在の業務がむずかしくなることを想定し、50代の指導的立場の職員を「介護実技支援アドバイザー」として養成するスキーム(やり方、仕組み)構築を進めている。長年仕事をしてきた高齢職員が介護実技の支援を行い、若手職員や外国人労働者を育てることで、特定の高齢職員が特定の若い人材などを育てるペア就労を実施することにもなり、いわゆるメンター制度※2も実現した。この取組みにより、実際に新規入職職員の定着率がアップしている。教える側の高齢職員にとっても、教える喜びや問題・課題を知ることができ、自身のスキルアップにつながっている。これが職員の教育訓練とキャリア形成にもつながり、若い人材の育成や技能の承継を円滑に行うことが可能となった。 (4)健康管理体制  健康診断は、同法人敷地内にある医療法人が運営するクリニックで、職員全員が毎年2回ずつ、同法人の負担で受診している。業務時間内でも敷地内で受診できるため、職員からも好評である。50人以上の事業場ごとに義務づけられているストレスチェックも、50人未満の施設も含めて全職員を対象に実施している。また、健康診断の結果を受けて、部門ごとに方法は異なるものの、検査結果にともなう受診の確認を必ず行っている。毎年2回の健康診断は、深夜業務従事者を除けば法定以上の頻度であり、職員の健康に配慮した取組みであると自負している。  この取組みにより、いままで発生していた突然の病気や重篤(じゅうとく)な病気の発症が減少し、想定していない欠勤や遅刻なども激減した。その結果、職員のローテーションの突然の変更がなくなり、勤務計画通りに仕事が回るようになった。高齢職員からは、「高齢になると急な体調不良によって職場の同僚に迷惑をかけ、肩身の狭い思いをしていたが、安心して仕事ができるようになった」という声もある。 (5)従業員の反応・声  神山(かみやま)悦子(えつこ)さん(65歳、女性)は、勤務13年になるベテランスタッフ。長い間非正規職員として働いてきたが、正規職員として働きたいと決意し、50歳を過ぎてから介護福祉士の資格を取得し、同法人に就職した。養護老人ホームで4年、障害者支援施設で5年働いた後に、現在は訪問介護事業所に異動し、サービス提供責任者として働いている。「違う部署で働くことも無駄な経験にはなりません。施設によって利用者もいろいろです。コミュニケーションのとり方や、自分の身体の使い方を工夫するのがとても勉強になります」と神山さん。利用者だけでなく、スタッフからも頼りにされている神山さんは、今後について「私のような年齢の者がいることで、若いスタッフと利用者の間を円滑につなげられるような気がしています。自分が重ねてきた年齢を活かせることと、利用者から『ありがとう』という言葉が聞けることが一番のやりがいです。幸いまだ健康ですので、可能であれば70歳くらいまで、いまの職場で介護や福祉関係の仕事を続けたいです」と話してくれた。 (6)今後の展望  社会福祉事業を柱に、さまざまな施設を運営している同法人は、今後も先進的な取組みを行うことで、栃木県南地域だけでなく、県央や県西地域、さらには隣接する茨城県の他企業へと波及していくことも期待している。それにより、地域住民の利便性と福祉環境が好転し、自社の事業もさらに発展するとの思いからだ。利用者の心に寄り添うサービスを充実させていくために、全社をあげての挑戦が続く。 ※1 社会福祉充実計画……社会福祉法人が保有する財産のうち、事業継続に必要な「控除対象財産」を控除してもなお一定の財産が生じる場合に、「社会福祉充実財産」を明らかにしたうえで、社会福祉事業などに計画的に再投資をうながすとともに、公益性の高い法人として説明責任の強化を図るために策定するもの ※2 メンター制度……会社や配属部署における上司とは別に指導・相談役となる先輩職員が新入職員をサポートする制度のこと 写真のキャプション 社会福祉法人洗心会が運営する、サンフラワー療護園 小川慶太朗事務長 2018年から導入した電動昇降ベッド。職員の腰痛や腕の疲れが大幅に軽減された 車椅子用のリフト。職員の負担軽減につながる 神山悦子さん 【P12-15】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 「生涯現役」を理念に掲げいつまでも働ける職場づくりに挑戦 株式会社 シーピーユー(石川県金沢市) 企業プロフィール 株式会社 シーピーユー (石川県金沢市) ◎創業 1982(昭和57)年 ◎業種 情報サービス業(ソフト開発、販売) ◎従業員数 157人 (内訳) 60〜64歳 7人(4.5%) 65〜69歳 2人(1.3%) 70歳以上 2人(1.3%) ◎定年・継続雇用制度  定年65歳。就業規則により希望者全員を年齢の上限なく再雇用。現在の最高年齢者は76歳 T 本事例のポイント  株式会社シーピーユーは、1982(昭和57)年にパソコンショップ「CPU」を開店以来、未開の分野であった「パソコン用建築CADソフト」の開発に取り組み、1983年には建築CADシステム「まどりくん」の開発に成功した。翌年には株式会社シーピーユーを設立し、以降、販売拠点の拡充によって業容を拡大してきた。  「社員と家族の幸せ」を企業理念に掲げ、創業以来「いつまでも長く働ける」職場環境づくりに取り組んでいる。「生涯現役」があたり前という社風のもと、高齢従業員の活躍がよりよい職場づくりの構築に大きな役割を果たしている。 《POINT》 (1)「いつまでも働ける」職場環境づくりを実現するため、定年を61歳から65歳に引き上げ、さらに上限年齢のない再雇用制度を制定した。 (2)60歳以上の高齢従業員が、長年の経験を活かし、管理部門や営業部などで熟知した仕事を継続しており、60歳以前と変わらずに活躍している。 (3)在宅勤務によるテレワーク制度を導入するとともに、短時間・短日勤務など柔軟な働き方を実現した。 (4)全従業員を対象とする人事評価制度を導入。従業員のスキルレベルを業務ごとに記載し、総合スキルを可視化したスキルマップや人事考課表を改め、評価基準を一新した。 (5)屋上を利用した菜園や、新規多目的スペースを設置し、高齢従業員と若手従業員、また社内全体のコミュニケーションの場を積極的に設けている。 U 企業の沿革・事業内容  1982年にパソコンショップCPUとしてスタートし、翌1983年に国内初となるパソコンによる建築CADシステム「まどりくん」を開発。1984年に株式会社シーピーユーを設立した。以後、金沢本社のほか、北は北海道から南は福岡県まで、日本各地に12の支店・営業所を持ち、業界のパイオニアとして業容を拡大してきた。  現在は、建築・土木業向けのソフトウェア開発を中心に、ホームページ作成ツールの販売や、地域ICTプラットフォームサービスアプリ「結ゆいネット」の配信など、幅広いサービスを提供している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  従業員数は157人(2019(平成31)年4月1日時点)。全体の7%にあたる11人が60歳以上で、そのうち4人が65歳定年後の再雇用者である。世代別の割合は、40代が35・7%(56人)で最も多く、次いで30代が24・8%(39人)という構成となっている。  採用状況については、創業以来、中途採用が多く、同業他社を定年退職した高齢者を再雇用した例もある。  宮川昌江社長の「今いる社員を大事にする」精神のもと、在宅勤務によるテレワークや、短時間・短日勤務など柔軟な働き方を構築してきたことが、従業員の勤続を支え、高齢従業員の経験と知識の蓄積、活用につながってきた。「実年齢よりも重要なのは健康年齢。元気なかぎりは仕事を続けてほしい」という同社の考えに基づき、60歳以上の高齢従業員は、管理部門や営業部で長年の経験を活かした仕事を継続している。また、最新の技術・知識が必要となる開発部門でも、高齢従業員が責任ある仕事をになうこともあり、今年定年を迎える、64歳のプログラマーが活躍している。  業務に精通した高齢従業員が職場にいることで周囲に安心感を与えると同時に、若手従業員を大いに鼓舞している。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制と再雇用制度  「世の中の高齢化を見据えれば、いずれ定年は65歳になる」という宮川社長の先見のもと、同社は2009年に定年を61歳から65歳に引き上げた。65歳定年の後も運用により希望者全員を再雇用していたが、その実態をふまえて、2016年に上限年齢のない再雇用制度を制定した。制度上は、日ごろの働きぶりなどを考慮して再雇用の是非を決めることとしているが、近年は再雇用不可とした従業員はおらず、特に2012年以降に定年を迎えた従業員は、全員が再雇用により活躍している。雇用形態は原則として契約社員で、期間は1年更新としている。 A処遇(賃金)と人事評価制度  賃金は、50歳までは毎年ベースアップするように設計されており、勤続年数に応じて上昇する。再雇用者は定年時の賃金を考慮し、フルタイムで働く人は現役時代から下がらないよう配慮されているため、モチベーションが維持されている。  また、人事評価制度では、年齢や性別にかかわらず従業員の仕事ぶりを評価しており、2019年4月からは、評価基準を時代に合ったものに一新した。具体的には、部署内の業務および必要なスキルについて、従業員のスキルレベルを業務ごとに記載し、総合スキルを可視化したスキルマップと、人事考課表の2種類の改定を行い、新制度の対象は60歳以上の高齢従業員も含む正規従業員全員とした。 B柔軟な勤務形態の運用 ・短時間勤務、短日勤務  家庭の事情や、通院が必要な従業員のため、短時間勤務や短日勤務などの柔軟な働き方が可能な制度を構築している。原則、本人の希望に沿った形で勤務日などを決定し、不在となる期間については、従業員同士が計画的にフォローを行う。一例としては、他社を定年退職後、同社に再就職した65歳の再雇用者の場合、前職での人脈が豊富で他社とのパイプ役として大いに活躍しているが、持病があるため短日勤務で通院と仕事を両立させている。また60歳の従業員が、小学生の孫の世話をするために短時間勤務を利用し、家庭と仕事を両立して働いている例もあり、従業員一人ひとりの事情を汲くんだ働き方が生み出されている。 ・テレワーク制度  1993年には、時代に先駆けて在宅勤務によるテレワーク制度を導入した。これは自宅から会社のネットワークにアクセスし、日報により業務内容を把握するもので、導入のきっかけとなったのは、結婚によって同社から車で2時間を超える地域へ転居を余儀なくされた女性従業員の存在であった。この従業員は、同社の創業期から製品のマニュアル作成を手がけていたが、業務の知識や文章能力の高さは余人をもって代えがたい存在であり、61歳になる現在まで26年間に渡り、テレワーク制度を活用、現在も戦力として活躍している。  その後も在宅勤務は、さまざまな家庭の事情を抱えた従業員の勤続を支えてきた。在宅勤務から通勤に戻った従業員もおり、個々の希望に合わせて柔軟に運用している。 (2)高齢従業員を戦力化するための工夫 ・社内システムの担当者を任命  社内システムについては、初期設定やエラー時の対応などは、システムに詳しい人があたっていたが、担当者の不在時には解決がむずかしくなるほか、担当者自身も、本来の業務が頻繁に中断されるという弊害があった。また、高齢従業員の場合、業務自体は熟知しているにもかかわらず、新しいソフトウェアのインストールや初期設定がスムーズにできないことによって、作業の入口の段階でつまずいてしまう人が多く見られたことから、従業員のなかから、各フロアに社内システム担当者を任命し「セキュリティチーム」を発足。メンバーが業務のかたわら、社内システムに関するサポート・問合せ窓口となり、役割を明確にした。これにより、トラブルの解決がスムーズとなり、高齢従業員が本来の業務に集中できるようになったことで、組織全体の業務の効率化につながった。 ・中高年従業員の新規採用  他社の早期退職者や、定年退職者を積極的に新規採用している。中途採用者は採用時点で豊富な人脈を持っており、総務や営業などでコネクションを活かして活躍し、管理職になった例もある。 (3)意識・風土の改善 ・屋上を利用した菜園づくり  喫煙所としてのみ使われていた屋上の有効活用と、コミュニケーション円滑化のための取組みとして、数年前から屋上を利用した菜園づくりに着手。トマト、ナスなどを栽培している。菜園は若手従業員が当番制で手入れをし、家庭菜園の経験豊富な65歳の本社管理部門の従業員が、収穫の時期などをアドバイス。日常業務から離れた共同作業をすることで若手従業員と高齢従業員の世代を超えた交流が生まれている。また、収穫物は、社内の人ならだれでも持ち帰ることができ、屋上菜園は社内全体のコミュニケーションの場となっている。 ・多目的スペースの設置  本社1階の管理部門では、71歳の再雇用者を含め高齢従業員が複数人働いているが、1階に休憩スペースがなかったことから、受付近くの場所を一部改装し、従来の来客用の待ち合わせ場所としての用途に加え、従業員の休憩スペースとしても利用できるように改善した。受付横ということで最初に目につく場所にあり、自動販売機も設置しているため、外出先から戻った際など、従業員同士のコミュニケーションの場としての役割も果たしている。 (4)能力開発に関する改善  業務に関連する資格取得を推奨しており、試験の内容、難易度によっては受講費用を会社負担としている。また、2015年度からは、資格手当の支給を開始した。資格取得は年齢にかかわらず推奨しており、近年では国家資格である衛生管理者試験に高齢従業員が合格。従業員全体のモチベーションアップにつながった。 (5)健康管理・安全衛生 ・時間外労働の削減、有給休暇の取得促進  同社では、2019年3月から2021年3月までの行動計画をホームページなどで公表しているが、そのなかで、所定外労働時間の削減や有給休暇取得促進のための措置を取ることを目標に掲げている。  行動計画に基づき、業務に比較的余裕のある時期には、積極的な休暇取得や定時退社を推奨しており、各部長へ呼びかけるなど、従業員の健康的な職業生活の構築に向けて着手したところである。一カ月あたりの平均時間外労働は2017年以降徐々に減ってきているが、今後一層の成果が期待される。 ・健康管理体制の強化  高齢従業員も安全衛生委員会のメンバーとなっており、安全衛生委員会では、医師からのアドバイスなどを全員で共有している。また、所定外労働時間の削減方法についての検討や全フロアに温度計を設置し従業員の体調管理に務めるなど、健康経営に積極的に取り組んでいる。 (6)今後の展望  2019年4月、正規従業員に対する人事評価制度を導入したが、今後65歳以上の非正規従業員に対しても拡大していくことを視野に置いている。「世の中の高齢化を見据えれば、いずれ定年は65歳になる」という宮川社長の先見の明のもと、全社をあげた「いつまでも働ける」職場環境づくりは着々と進められており、さらなる高みを目ざして同社の挑戦は続く。 写真のキャプション 株式会社シーピーユー本社 高齢従業員のアドバイスによって栽培している屋上菜園 改装して誕生した本社1階の多目的スペース 【P16-19】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 高齢職員が活き活き働ける職場づくりを進めよりよい介護サービスの提供を目ざす 有限会社 ダイケイ(福井県坂井市) 企業プロフィール 有限会社 ダイケイ (福井県坂井市) ◎創業 1950(昭和25)年 ◎業種 社会保険・社会福祉・介護事業(デイサービス、有料老人ホーム) ◎職員数 40人 (内訳) 60〜64歳 4人(10.0%) 65〜69歳 9人(22.5%) 70歳以上 2人(5.0%) ◎定年・継続雇用制度  定年65歳、定年後は希望者全員70歳までの雇用を明文化。現在の最高年齢者は70歳 T 本事例のポイント  有限会社ダイケイは1950(昭和25)年に細幅織物(ほそはばおりもの)業※1として創業するが、その後業態を変え、2009(平成21)年に高齢者のデイサービス事業所「笑楽日(わらび)」を開設。2015年に有料老人ホームを併設した建物を新設した。  同社は豪雪地帯にあり、開設当初は若手職員の人材確保が困難であったため、必然的に高齢職員の活用にシフトしていった。就労を希望する高齢者も多く、年齢や雇用形態にこだわらずに人材を確保し、高齢職員が活き活き働ける職場づくりに取り組んできた。 《POINT》 (1)高齢化の進む地域で、地元に必要とされる介護施設を地元の高齢者が働き手として支えている。 (2)高齢職員の意見を参考に、無理せず働ける環境を実現するために、施設を設計し、設備も導入して建物も新設。 (3)施設を支える次世代の職員に、高齢職員がノウハウを伝えている。 (4)最新のツールが苦手な高齢職員に対応して、紙ベースのマニュアルや広報手段を用意している。 U 企業の沿革・事業内容  1950年に細幅織物業として創業、1988年に有限会社化した。その後業態を変え、2009年に高齢者のデイサービス事業所「笑楽日」を開設。「笑楽日」には、「一人ひとりの笑顔と健康を第一に考え、スタッフの献身的なケアで、安心と潤いある生活を送ることができるように」、という思いが込められている。2015年には建物を新設し、有料老人ホーム事業をスタートさせた。現在、本業であった織物業は外注に切り替えている。  介護の仕事に関心があった大蔵富宏社長は、大学卒業後の10年間、ほかの介護施設で働いていたという。しかし、身体拘束をともなう従来の介護スタイルに違和感を覚え、自身の考えるスタイルでの介護施設運営を開始すべく、祖父の代から営んでいた織物業の工場用地で介護事業に着手した。住民360人程度の地域は、高齢化が進んでいるにもかかわらず、地区内に介護施設がなく、高齢者がサービスを利用するためには遠方へ出かけるか、地域を離れなければならない状況であり、それを解消したいという思いから出発した挑戦であった。当初は現社長とその母、看護師や織物業時代からの職員などの少人数でデイサービスから始め、実績を積んだ後、有料老人ホームを開設した。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  現在、全職員40人のうち、60代は13人(男性3人、女性10人)、70代が2人(女性のみ)となっており、60歳以上が37・5%を占めている。平均年齢はスタッフ全体ではおよそ40歳、パートタイマーの平均は50歳以上になる。職種内訳は、ドライバー3人、厨房5人、清掃2人、事務員2人、看護師4人、リハビリ担当3人、統括部長、看護主任、リハビリ主任、そして介護スタッフ(18人)である。ただし看護師・リハビリスタッフも介護業務を行うなど、必要に応じて職種を越えて働いている。  採用については、学校を通じたインターンシップや求人により応募してくる若者もおり、将来の事業として、空き家を活用した高齢者と若者のシェアハウスや、農業に従事する高齢者を若者が見守る仕組みなどを構想している。若手職員が安く住めるような社宅の建設を計画しており、福井大学や県立病院の介護職に興味のある若者に働きかけている。  一方、高齢職員の活躍の場を創出するために設備投資に注力しており、利用者の機能回復を、高齢職員を含めた全職員が安全で効率的に進められるよう環境整備に努めている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・定年延長、継続雇用制度の改善  2014年に、定年を60歳から65歳に延長した。前身の細幅織物業時代は、定年は60歳、以後はパートタイマーに移行するという形を維持してきたが、2014年当時、すでに60歳を超えた職員が多く、今後高齢者に働き続けてもらうのは自明であったため、65歳定年の導入にふみ切った。また、定年到達後は希望者全員70歳までの雇用を明文化した。 ・人事評価制度  週に20時間以上働く職員全員を人事考課の対象としており、時給や賞与にその結果が反映される。また、以前は一般的な企業の評価表に基づく人事評価も試行していたが、評価者によって評価点がばらつくため、人事評価の見直しを図った。当機構の高年齢者雇用アドバイザーの助言を得て、厚生労働省の「職業能力評価基準」を参考にした評価表をもとに、社内の主任会議での提案を経て最終決定した。  賃金については、賞与は経験と人事考課に基づいて年2回支給、金額に差がつく理由も各人にフィードバックしている。継続雇用者の時給も人事考課の結果であり、時給のベース額に研修に参加した回数、日ごろの働きぶりなどを点数化して加算している。 ・柔軟な雇用形態と業務の可視化  職員の家庭の状況などに応じて、柔軟に働ける体制を整えている。短時間勤務は明文化されていないが、必要に応じて職員の希望を受け入れているほか、タイムスケジュール表を毎日作成し、だれが不在になるか、だれが代行できるかを「見える化」。この表により、業務の担当状況の明確な把握が可能となり、居場所を探すなどの時間が省けることで、業務の効率化につながった。また、子どもの学校が臨時休校のときなどは、子連れの出勤を認めており、将来的には託児所の設置も検討している。 (2)高齢職員を戦力化するための工夫 ・作業環境改善  現在の建物を新築する際、施設全体の設計にスタッフの意見を積極的に取り入れた。例えば、調理の負担を軽減するための厨房への「スチームコンベクション」※2の導入や、身体的負担を軽減させるための椅子型の介護入浴用リフトの採用など、現場の意見を取り入れたものも多い。また、二つの風呂場をつなげて職員一人で利用者2人を同時に見守れるようにしているほか、利用者がつかまりやすい格子型手すりや溝がついたバスタブの設置、トイレは車椅子のまま方向転換なしで入ることができ、おむつが詰まった場合に備えて便器横に取り出し穴をつけるなど、さまざまな工夫を凝らしている。  さらに、夜間の見守りを手厚くするため、入居者の個室内に人感センサーをつけ、ベッドの周囲などから身体がはみ出した場合はスタッフが携帯しているタブレットに通知が届き、画面上で部屋の様子を確認することもできる。  同社がスタッフの意見を参考に大手住宅メーカーに粘り強く交渉して実現した施設は、県内外から大きく注目され、介護関係者の見学が後を絶たないという。 (3)意識・風土面の改善 ・「ありがとうカード」の活用  職員同士が仕事を進めるうえで、何かをしてもらって嬉しかったときに感謝を示す「ありがとうカード」という施策を取り入れている。もともとは新入職員の教育の一環として始められたものだが、最近は若手職員から高齢職員に向けての「ありがとうカード」が増えている。会社として強制はしないが、部門担当主任が「ありがとう」の気持ちを率直に言葉に表すよう周知しており、壁に貼られたカードは高齢職員を励ますと同時に若手職員の意識向上に役立っている。 ・ワイガヤ会議  スイーツやコーヒーでリラックスしながら仕事をテーマとした意見交換を行う「ワイガヤ会議」を実施している。部署も年齢も関係なくさまざまな職員が参加することで、相互理解の向上につながっている。 ・役割分担の促進  身体的負担から、年齢によってはむずかしいと思われるケアの方法があるため、職員をグループ分けし、高齢職員には当該業務を免除、代替の業務を適宜割り振っている。若手職員は負担の少ない身体の使い方など、自身が研修で学んだことを高齢職員に伝え、高齢職員は親や祖父母の介護を経験していることから、余裕を持って利用者を見守る姿勢を若手職員に学んでもらえるよう努力している。 (4)能力開発 ・研修参加の促進  食中毒や認知症などをテーマに月に1回、社内研修を実施している。また、都合により当該研修に参加できない職員のための「スタディウィーク」という制度を設け、翌々週の勤務時間中に同じ内容の研修を受講できる体制を構築している。そのほか、高齢職員向けには、同年代のグループで参加可能な外部研修への参加を奨励している。 ・マニュアルづくり  従来、パソコンとタブレットで業務マニュアルを整備してきたが、タブレット操作が困難である高齢職員のため、紙ベースのマニュアルも作成している。マニュアルは、写真を多く取り入れており、可視化したことで「わかりやすくなった」と高齢職員から好評である。 (5)健康対策 ・健康管理  希望者全員に、腰痛防止ベルトや冷感マフラーを配布している。また、インフルエンザの予防接種については費用の半額を会社が負担しており、全員が接種している。 ・相談窓口の設置  高齢職員と若手職員それぞれに相談窓口を設置、相談担当者には同年代の役員を配置し、話しやすい環境が整備された。何でも気軽に相談できることでメンタルヘルス不調の改善にも役立っている。 ・通勤への配慮  同社事業所は山中に位置するため、高齢職員にとっては、マイカー通勤の際の危険も想定される。そこで、デイサービスの送迎バスを利用した通勤を認めている。職員がバスに同乗することは利用者を車内で見守ることにもつながり、また、利用者とのコミュニケーションも増加するという副次的効果も生まれている。 (6)高齢職員の声  Aさん(70歳・女性)は、看護職として月80時間の勤務をこなしている。現在の「笑楽日」の職場風土の土台を築いた人物で、看護と介護の両方の観点から利用者の体と心のケアを担当している。「みなさんが笑顔になってくれるよう、その人に合ったお世話を心がけています」とのこと。  Bさん(68歳・男性)は62歳のときドライバーとして採用された。「送迎は笑楽日の最前線である」をモットーに、利用者の家族はもとより、地域の人たちとも交流を深め、大きな信頼を得ている。 (7)今後の展望  同社で働く高齢職員は「年齢的に引退を考えてもよいが、『これからも働いてほしい』といってもらえること、そして、無理せず働ける環境が整っているので、当面はがんばっていきたい」と会社の施策を支持している。仕事の簡略化や地域全体の高齢者を対象とした活動の拡大、さらなる社会貢献など、同社の目標は大きく、「一人ひとりの笑顔」をキーワードに理想の介護を追求しながら、高齢職員が活き活き働ける職場環境づくりにまい進していく。 ※1 細幅織物業……主に綿糸や絹糸、麻糸、合成繊維などで、幅13.0cm未満の細幅織物を製造する事業 ※2 スチームコンベクション……スチーム(水蒸気)と温風を用いて調理を行うオーブン 写真のキャプション 高齢者のデイサービス事業所「笑楽日」 壁に貼られた「ありがとうカード」 「ワイガヤ会議」 【P20-23】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 農業・福祉・高齢者雇用の連携で高齢者や障害者の活躍の場を創出 株式会社 TFF(岐阜県岐阜市) 企業プロフィール 株式会社 TFF (岐阜県岐阜市) ◎創業 2009(平成21)年 ◎業種 食料品製造業(菌床シイタケ、黒ニンニクなどの栽培) ◎従業員数 39人 (内訳) 60〜64歳 3人(7.7%) 65〜69歳 6人(15.4%) 70歳以上 2人(5.1%) ◎定年・継続雇用制度  定年65歳、就業規則により希望者全員を70歳まで再雇用。現在の最高年齢者は71歳 T 本事例のポイント  株式会社TFFは、2009(平成21)年に障害者福祉サービス事業所として創業された。現在注目を集めている農福連携※1に10年前から着目しており、高齢従業員を活かした障害者に対する就労支援などをスタート。翌年には就労継続支援A型事業所※2でシイタケ栽培を開始した。農業分野と福祉分野が連携した「農福連携」であれば、人生経験豊かな高齢従業員の特性を活かしつつ、障害者の就労支援も行えるのではないかと考えたからであった。確固たる信念に基づき、高齢者が障害者とともに生涯現役で働ける職場づくりを進めてきた。 《POINT》 (1)創業当初から定年65歳、希望者全員70歳まで再雇用。また、高齢従業員の希望を取り入れ、柔軟な勤務体系(週5日/7〜16時)を導入した。 (2)「農福連携」の取組みにより、高齢者と障害者の協働職域の開発を実現した。 (3)仕事に関する責任感の向上や売上げを意識させるため、従業員自らが生産量・売上げの年間目標を決定し、目標達成時には賞与に成果が反映される。 (4)高齢従業員と若年従業員がペアとなり支援員として指導役を担当。施設や利用する障害者とのチームワークを発揮して農作業を進めている。 (5)高齢従業員がこれまでつちかったノウハウや得意分野、人間性を活かすことにより、ストレスの少ない職場づくりを実現した。 U 企業の沿革・事業内容  創業者である田中文子氏の「高齢者がやりがいを持って生涯現役で働き、障害者も生きがいを持って自立できるよう働ける職場をつくりたい」という思いが設立のきっかけとなっており、そのためにいち早く「農福連携」に注目。2009年に障害者福祉サービス事業所として創業し、2010年には就労継続支援A型事業所「ひなたぼっこ園」を設立し、シイタケ栽培をスタートさせた。事業は「高齢従業員+次代のにない手である若手従業員+施設利用者の障害者」でチームを編成し、従業員全員が平等な立場で作業を行うという体制をとっている。若手従業員と人生経験豊富な高齢従業員が支援員という指導役の立場として、チームを支えている。2017年には農林水産省の「農山漁村振興交付金(農福連携対策)」を活用し、加工施設を整備。近隣の耕作放棄地で野菜(ニンニクなど)の生産を開始している。現在、精神・知的・身体障害者26人が同社の施設を利用している。  同社における農業の特徴は、あえて機械化をせず、支援員と施設利用者の障害者が手作業で行っており、これにより雇用が確保されていること。また、施設外就労(支援員1人、利用者5人)として、近隣スーパーから野菜の袋詰めなどを依頼されており、地域に密着した事業を展開している。  2012年には、障害者がともに生活するグループホーム「おひさまハウス」を開設。就労継続支援A型事業所の利用者を中心に、家庭での生活がむずかしい障害者に対して、生活の場や食事の提供を行っている。さらに2013年には相談支援センター「さんさん」を開設し、同施設を利用する障害者のご家族の相談業務を行っている。センターには就職や今後の生活についての不安など多くの相談が寄せられている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  創業当初から、リタイア後の高齢者の経験や技術・技能を活用すべく、ハローワークからの紹介を受けて、60歳以上の高齢者を積極的に雇用し、現在(2019年4月1日時点)、全従業員中、高齢者の割合は28%を占めている。一方、従業員の高齢化や、体力が必要な仕事もあることから、2年前より若年者の採用も始めている。  障害者とともに働くということは、人間性や経験が求められる業務ともいえるが、高齢従業員にとっては、これまでつちかったスキルや経験を活かしながらも、身体的な負担が少なく、長期間の就労が可能な職場となっている。「ひなたぼっこ園」では、高齢従業員7人(最高年齢70歳)と若手従業員が支援員として施設利用者の障害者とともにチームを組んで農作業を進めている。設立当初から同社の事業に参加しており農作業を熟知している利用者が多く、広々とした作業環境のなかでチームワークを発揮している。  支援員の主な仕事は、シフト調整や作業指導、在庫管理、日報報告などで、障害者の作業を見守ることに重点がおかれており、障害者への支援や農業の経験がない高齢者でも就労が可能であることが、新たな雇用に結びついている。  一方、グループホーム「おひさまハウス」では、高齢従業員3人(最高年齢71 歳)の女性がグループホームの支援員として勤務している。また、相談支援センター「さんさん」では、60代1人が支援員として勤務している。  同社で働く高齢従業員の共通点は、リタイア後も何らかの形で社会に貢献したいという考え方を持っていることで、障害者のみならず、若手従業員からも大いに頼りにされており、同社にとって欠かすことのできない人材となっている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・定年制度  設立時より定年は65歳で、就業規則により希望者全員を70歳まで雇用している。70歳以降も本人の希望に応じて勤務日数を調整し、継続雇用している。 ・処遇  定年後は非正規従業員となるが、正規従業員と非正規従業員の違いは、正規従業員が無期雇用であるのに対し、非正規従業員は1年ごとの更新という点のみであり、給与などの処遇においての差は設けていない。 ・勤務時間など  高齢従業員の希望を取り入れ、勤務時間を7〜16時としたことで、通勤ラッシュの回避や朝と午後の商品出荷をスムーズに行うことができるようになった。また、早朝からの勤務で退社時間が早いため、夕方の時間を通院などにあてられるという利点もある。地域活動に取り組んでいる高齢従業員も多く、勤務時間の変更によってプライベートの面での充実につながると好評である。  勤務日は週5日としているが、若手従業員が敬遠する土日勤務についても、高齢従業員が快く勤務に応じてくれるため、シフト調整がしやすくなっている。また、時間単位での有給休暇取得も可能となり、柔軟な働き方が従業員の就労意欲向上につながっている。 ・目標管理  従業員に仕事に関する責任感の向上や売上げを意識させるため、目標管理を行っている。年1回、従業員自らが生産量・売上目標を定め社長に提出し、目標を達成した場合は、成果が賞与(年2回)に反映される。一人ひとりが仕事を任せられたことで責任感がめばえ、売上げを意識し始めたことが収益の向上につながった。 (2)高齢従業員を戦力化するための工夫 ・作業場の設置  高齢従業員は、これまで福祉施設で働いた経験のない人が大半ではあるが、それぞれが長年つちかってきたノウハウや経験が、現場で大いに役立っている。例えば、同社の主力商品であるニンニクを熟成させるためには、熟成庫が必要であるが、前職で電気関係の業務にたずさわっていた支援員のAさんが指導役を買って出て、従業員の総力で黒ニンニクの熟成庫設置工事を実施した。作業通路や作業場所、屋根の補修など、随所にAさんの経験が活かされている。 ・農福連携による高齢者と障害者の協働  就労継続支援A型事業所「ひなたぼっこ園」は、福祉分野と農業分野が連携した「農福連携」の取組みにより、障害者雇用や、就職に向けてのトレーニングの場だけでなく、高齢者の生きがいの場として運営されている。障害者の就労支援は、ともすれば作業そのものが重要視され、作業効率の向上が求められることが多いが、同社では人生経験が豊富な高齢従業員を支援員として活用し、障害者が自主的に業務ができるような体制づくりに取り組んできた。支援員が一緒に作業しながら障害者の仕事を見守り、反復練習をうながし障害者が自主的にできるまで見守るといった体制を構築することで、すべての従業員のモチベーションが向上している。 (3)意識・風土の改善 ・コミュ二ケーションの推進  各自がどのように仕事を進めればよいのかを考える姿勢や、助け合い、相手を思いやる心を大切にしている。このため、人生経験の豊富な高齢従業員は若手従業員・施設利用者からの相談を受けることも多く、社内のコミュニケーションを円滑に行うため欠かせない存在となっている。社長に対しても従業員が日常的に何でも報告・相談できる信頼関係が築かれており、日帰りの社員旅行、バーベキュー、忘年会などの実施により従業員同士の連帯感が強まっている。 ・地域貢献  時間にゆとりができたときには、従業員全員で地域の草取りを手伝うなど、地域との関係を大切にしている。従業員一人ひとりに仕事が任され、自主的に働ける環境になったことで、地域の人たちに働きぶりが評価され、交流も深まった。地域住民による耕作放棄地の提供や商品の購入など関係も密になっており、また、近隣の高齢者を雇用する場としても地域から歓迎されている。 (4)能力開発に関する改善  自発的に仕事を進める姿勢を大切にしており、高齢従業員には特別な研修は実施せずとも、自発的に業務上必要な知識を得る風土が醸成され、若手従業員のよい手本となっている。そのようななかで、現地視察による研修、近隣農家との勉強会、現地で専門家の指導を受けることで問題点が浮き彫りになり、その解決への努力が収益増につながった。近隣農家とは地域作物による新商品の開発についてなど、活発な意見交換を行っている。 (5)健康管理・安全衛生  日常的な観察により、健康状態の確認を行っている。また、有給休暇は時間単位での取得を可能としているため、通院が必要になった場合などに活用でき、働き方の柔軟性が高まっている。また、機械化に頼らず手作業を多くしていることで、高齢者が苦手なパソコンや機械操作などの作業が不要となり、ストレスの軽減に役立っている。 (6)高齢従業員の声  Aさん(70歳・男性)は、ニンニクの生産や黒ニンニクの加工などの業務に従事している。前職の技術を活かして加工機械などを製作、その技術を若手従業員に伝えている。  Bさん(65歳・男性)は野菜生産や集荷の業務を担当している。障害者に対する温かくていねいな指導ぶりには、定評がある。  全体の3割弱を占める高齢従業員からは、自分のペースや体調により、勤務日・時間が選択でき、働くことで地域社会につながっている意識を持つことができるため、安心して長く働き続けられるとの声が上がっている。 (7)今後の展望  仕事を求めている高齢者や障害者がもっと活躍できる場を増やすために、事業所の拡充を視野に置いている。外に向かっての発信が重要であり、地域住民、農業従事者、大学や商工会などと連携して、地域の宝を発掘・商品化し、雇用拡大のためのプロジェクトを立ち上げた。今後も「農業」を核に、時代が求めている高齢者雇用の推進と障害者の就労支援が両立できる職場として、さらなる充実を目ざす。 ※1 農福連携……農業分野における高齢者や障害者の活躍を通じて、自信や生きがいを創出し、社会参画をうながす取組み ※2 就労継続支援A 型事業所……企業への就職が困難である障害者に対して、雇用契約に基づく就労の機会を提供するとともに、就労に向けて必要な知識・能力の向上のために必要な訓練や支援を行写真のキャプション ひなたぼっこ園入口の看板 高齢従業員Aさんが製作した、黒ニンニクの熟成庫 作業場の通路。高齢従業員が屋根の製作・修繕を行っている 農場の除草作業をするAさん 【P24-27】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 「残業」、「腰痛」、「メンタル不調」のトリプルゼロへの挑戦 社会福祉法人 あいの土山福祉会(エーデル土山) (滋賀県甲賀市) 企業プロフィール 社会福祉法人 あいの土山(つちやま)福祉会(エーデル土山) (滋賀県甲賀市) ◎創業 1996(平成8)年 ◎業種 社会保険・社会福祉・介護事業(介護老人福祉施設) ◎職員数 80人(2019年4月1日時点) (内訳) 60〜64歳 3人(3.8%) 65〜69歳 9人(11.3%) 70歳以上 3人(3.8%) ◎定年・継続雇用制度  定年70歳。70歳以降については、制度はないが運用により一定条件のもと、年齢の上限なく再雇用する。現在の最高年齢者は72歳 T 本事例のポイント  社会福祉法人あいの土山福祉会(エーデル土山)は、1996(平成8)年に設立。滋賀県甲賀市土山町において、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、ショートステイサービスセンターなどを運営している。  同法人では、「高いレベルの介護サービスを提供するためには、スタッフ一人ひとりが大切な資産であり、その能力を最大限に活かして活躍できるフィールドを作ることが法人の責務」ととらえ、可能なかぎりスタッフが長くやりがいを持って働き続けることができる職場の提供を心がけている。 《POINT》 (1)2017年10月、定年を60歳から70歳に延長。70歳以降については、制度はないが、一定条件のもと、年齢の上限なく再雇用している。また毎月の給与は、65歳までは60歳到達時の水準を据え置き、モチベーションの維持・向上を図った。 (2)ワーク・ライフ・バランスや健康の重要性を理解させるため、『ワークライフバランスの栞(しおり)』や『健康経営 2020』という小冊子を作成し、全職員に配布した。 (3)介護職員をはじめとするスタッフが高齢になっても働き続けることができるように、@残業、A腰痛、Bメンタル不調の三つの負担の完全撤廃に向けて、「トリプルゼロ」と銘打ち、徹底した対策を講じている。  @では、出退勤時に館内に音楽を流したり、ミーティングの簡略化、伝達ツールの改良などを実施。Aでは、移乗用リフトや浴室用吊上げ式リフトの導入による「抱えない介助(ノーリフト)」を推進するとともに、職員向けに酸素カプセルやウォーターベッド型マッサージ機を設置し、心身のリフレッシュを図れるようにしている。Bでは、上司との「トーキング」(面談)などにより、一人で悩みを抱え込まない体制を整えている。 U 企業の沿革・事業内容  滋賀県南部に位置する甲賀市土山町は、かつて宿場町として栄えた場所。郷土の人たちは、愛着を持ってこの地を「あいの土山」と呼ぶ。鈴鹿馬子唄(すずかまごうた)によって唄いつがれてきた言葉だ。  この「あいの土山」を法人名に冠した社会福祉法人あいの土山福祉会(エーデル土山)は、1996年に認可を受け、1997年にデイサービスセンター、1999年に特別養護老人ホーム、ショートステイサービスセンター、2000年にケアプランセンターを開設。80人の職員が、入居者の豊かな生活をサポートしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  60歳以上の職員は15人(男性6人、女性9人〈2019年9月時点〉)。最高年齢は72歳で、介護職として活躍する70歳の職員もいる。  職員全体の男女比は4対6程度で、女性が多い。平均年齢はおよそ45歳。若者からシニアまで幅広い年齢層の職員が働いている。  なお、職員のなかには介護職の未経験者も多く、高齢になってから採用された人も少なくない。しかし、教育プログラムが整備されており、新人には1年間、年齢の近い先輩職員がメンター役としてつくので、未経験でも困ることはない。  介護職は全国的に人手不足であり、増加する高齢者を支えるスタッフの不足が社会問題となっている。かつては同法人も深刻な人材不足に悩まされたが、人材を大切にする廣岡(ひろおか)隆之(たかゆき)施設長の方針を受け、2014年に「人材確保対策室」を設置。さまざまな改革を行ってきた。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・70歳定年制を導入  従来は、60歳を定年とし、その後は継続雇用としてきたが、2017年10月に、定年を一気に70歳に引き上げた。70歳以降は、制度はないものの、一定条件のもと、年齢の上限なく再雇用する。60歳で退職するのではなく、より長く活躍してもらいたいという思いがベースにある。 ・職員の処遇を改善  賞与は3・6・9・12月の年4回支給し、業績がよければ、別途、年度末にも支給している。非常勤の職員にも、一定の賞与を支給している。  定年延長後の毎月の給与は、60歳時の水準を原則として65歳まで据え置いた。全体の人件費は増加したが、「経験を活かして『現役』として活躍してもらえるなら、問題ない」ととらえている。 ・労働時間短縮とノー残業の徹底  所定労働時間を、1日8時間から7時間30分に短縮し、年間休日も108日から114日に増やした。  また、勤務終了後、次の勤務の開始まで少なくとも12時間の間隔を空けることを義務づける「勤務間インターバル制度」を導入。日勤業務も、原則3日以上連続勤務させないこととした。前月までに翌月の休暇希望を設定する「希望休暇制度」も導入し、休みたいときに休みやすい仕組みを整えた。  また、『ワークライフバランスの栞』という小冊子を作成し、全職員に配布した。ワークライフバランスの大切さや残業撤廃に向けた法人の取組み、産前・産後休暇、育児休暇、介護休暇などの制度、イクメンスタッフのインタビューなどを読みやすくまとめている。  そのうえで、出勤10分前まで入館不可とし、定時10分前に業務終了予告を行う「マイナス10分運動」、役職員が率先して帰宅する「カエル運動」、ミーティングの簡略化などを実践している。  また、以前は、リーダー職員のみにPHSを渡していたが、インカムを介護職全員に配付し、職員間の伝達ツールとすることで、作業時間の効率化・コミュニケーションの円滑化を図っている。  こうした取組みの結果、1人あたりの年間残業時間は0・07時間と、ノー残業をほぼ達成した。 (2)高齢職員を戦力化するための工夫  労働時間については、個人の事情に応じた勤務ができるよう、できるかぎりの配慮を行っている。例えば、家族の介護が必要になったら、本人と話し合い、一定期間は日勤のみにする、週3日勤務や午前のみの勤務にするなど、なるべく休まずに済むようにしている。また、普段から、だれかが急な休みをとっても現場が回る体制を整えている。  一人ひとりの働き方に合った仕事を切り出すのは簡単ではないが、その手間を惜しまないことで、高齢職員をはじめ、障害者など、多様な人材が活躍している。  ただし、労働時間や働き方の面では極力個別の事情を勘案する一方で、高齢になったからという理由で職種を変更することはない。当然、年齢を重ねると体力は落ちてくるので、今後は職種転換が必要なケースが出てくることも想定しているが、職種転換しなくても働き続けられる環境を整えることを目ざしている。それが、本人の能力や経験を活かすことになり、モチベーションの維持にもつながっている。 (3)健康管理・安全衛生 ・移乗用リフト、浴室用吊上げ式リフトの導入  職種転換しなくても働き続けられる環境改善のよい例が、各種リフトの導入による「抱え上げない介助(ノーリフト)」の推進だ。  通常、介護業務では体力が必要な場面が多く、腰痛の原因にもなりやすい。特に入浴介助は、高齢の職員にとって大きな負担であった。しかし、いまでは、人力で抱える介助はほとんどないという。また、腰痛チェックも定期的に行っている。 ・酸素カプセル、ウォーターベッド型マッサージ機の設置  酸素カプセルやウォーターベッド型マッサージ機を職員のために設置した。時間予約制で自由に使うことができる。「疲労が回復し、次の業務への活力源になる」と好評である。 ・健康意識の啓発  70歳まで元気に働いてもらうためには、法人として職員の健康をサポートするとともに、一人ひとりが自ら率先して健康を維持してもらうことが重要といえる。  そこで、『健康経営 2020』という小冊子を全職員に配布した。そのなかでは、健康経営の方針を掲げ、意識啓発を行っている。  @現役70歳まで働ける身体づくり  A職員はもちろん、職員家族の健康増進も図る  B具体的な数値目標とデータの見える化  C生活習慣改善「4つの柱(睡眠、運動、食事、ストレスコントロール)」を理解する  Dあくまで職員主体の健康経営の数値目標を設定。●5がん検診率100% ●職員喫煙率0% ●運動習慣率50% ●定期健康診断における有所見率20% ●メタボ率20% ・トーキングの実施  「メンタル不調ゼロ」に向けた取組みの一つとして、毎月「トーキング」と呼ぶ15分程度の役職員と職員の個人面談を行っている。定期的に顔を合わせて話をするので、悩みを相談しやすい。  スーパーバイザーとして常駐する介護福祉士長や、男女の衛生管理者による「心の相談窓口」に相談することもできる。 ・職員間コミュニケーション  全職員を職員イベントの対象とし、ほかのセクションの職員ともコミュニケーションが取れるようにしている。  職員旅行は、以前は全職員で同じ場所に行っていたが、各人が楽しんで参加できるように、複数の選択肢を設け、小グループごとに実施する形に見直した。 (4)高齢職員の声  介護職員のAさん(66歳・女性)は入社8年目。以前も介護の仕事をしていた経験者である。一時、別の仕事に就いたが、「人とかかわることが好き」との思いから、同法人に就職した。いまも介護の現場で、フルタイムで働いている。  「現在はショートステイの仕事を担当しており、どうしたらみなさんに楽しんでもらえるか、日々工夫しています。みんなでいろいろな作品づくりをするのですが、デイサービスのお迎えに行った職員から、以前つくったクリスマスツリーを玄関に飾ってくださっていると聞いたりすると、うれしくなります。久しぶりにお会いした方に『待ってたわ!』などといわれることも多く、この仕事は、私にとっても楽しみでもあり、生きがいでもあります」  若い職員にも「仕事は楽しんでせんと損やで」とアドバイスをするAさん。長く働き続けるために心がけているのは、自身の健康管理。「最近は犬の散歩をよくします。それと何事も感謝です」と、いつも笑顔を絶やさない。 (5)今後の展望  同法人は、かつては労働力不足に陥っていたが、人材を大切にする数々の取組みを進めてきたことで、最近は入職待ちのエントリーがあるほどの状況になっている。離職率も格段に改善した。新卒者のなかには短期で退職する人もいるが、「やはりここで働きたい」と戻ってくることも少なくない(戻ってきやすいように、3年間有効の「再入職パスポート」を発行している)。  こうした状況を維持し、職員の活躍をより後押しするため、今後は、これまで以上に職員の健康増進に力を入れる。『健康経営 2020』で掲げた数値目標を実現するとともに、70歳以降の雇用も見据え、これからも積極的に取り組んでいく方針である。 写真のキャプション エーデル土山 「抱えない介助(ノーリフト)」のため各種リフトを導入した フルタイムで働く介護職員のAさん 【P28-31】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 だれもが心地よく働ける職場環境を整備し高齢者の雇用を促進 山陰松島遊覧 株式会社(鳥取県岩美郡) 企業プロフィール 山陰松島遊覧 株式会社 (鳥取県岩美郡) ◎創業 1963(昭和38)年 ◎業種 水運業(観光遊覧船、土産品販売、レストラン) ◎従業員数 21人(2019年4月時点) (内訳) 60〜64歳 2人(9.5%) 65〜69歳 3人(14.3%) 70歳以上 2人(9.5%) ◎定年・継続雇用制度  定年66歳。就業規則で70歳までを継続雇用とし、継続雇用後は個別決定としている。現在の最高年齢者は76歳 T 本事例のポイント  山陰松島遊覧株式会社は、1963(昭和38)年3月に海上旅客不定期航路事業に参画して遊覧船運行を開始。1998(平成10)年には、遊覧船による観光・土産品販売や地元の食材を利用したレストランの営業を開始して業容を拡大してきた。昨今のツアーバスの運行規制強化などによって厳しい経営状態が続くなか、同社は高齢人材を有効活用した職場改善対策を打ち出し、「安心して働け・働きやすく・心地よく働ける職場づくり」をスローガンに掲げつつ、全社をあげてよりよい職場環境の実現に取り組んでいる。 《POINT》 (1)定年を66歳に引き上げ、継続雇用年齢を70歳に規定したことにより、就業に対する不安が解消され、高齢者のみならず全従業員のモチベーション向上につながった。 (2)鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会への参加を契機に、「職場改善ワークショップ」による全従業員を対象とした改善提案の実施、また、提案内容に賞金を設定した「企業内表彰制度」の導入により、職場改善の意識が高まった。 (3)「月間目標」の導入により、サービス業で働くうえでの職業意識が向上した。 (4)高齢従業員と若手従業員の協働による「イカ干し作業」は、高齢従業員の作業負担軽減だけではなくコミュニケーションアップにつながった。 (5)調理経験がない高齢従業員でも調理が可能な「作業手順書」を作成するとともに厨房における「作業動線」の改善を実施した。 U 企業の沿革・事業内容  1963(昭和38)年に鳥取県岩美(いわみ)郡にて創業以来、山陰海岸国立公園、山陰海岸ジオパークに指定された浦富(うらどめ)海岸・但馬(たじま)海岸エリアで遊覧船運行事業を展開してきた。浦富海岸の複雑に入り組んだリアス式海岸の景観は「山陰の松島」として人気が高く、現在は8隻の遊覧船運航を柱に、地元食材を利用したレストランの運営や土産物品販売事業などを行っている。  遊覧船(冬季1〜2月運休)の利用者は、2015年ごろからツアーバスの運行規制強化により乗船客が減少し、会社全体の売上げが減少傾向にある。このため2019年5月、地元企業とのコラボレーションによる船上での「お祝い会・女子会」など、新たなサービスを行う「プレミアムクルーズ船」の運行に着手した。  また、地元の名産品である「らっきょう専門店」の開店など、地域貢献を視野に置いた事業を推進している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  60歳以上の従業員7人のうち、5人がレストラン、2人が「らっきょう専門店」で勤務している。創業時から勤続55年を数える70代従業員もレストランで業務を担当しており、正規従業員として事務とレストランの補助を担当している。レストランでの業務には、そのほかパートタイマー4人が働いており、週4〜5日の勤務をこなしている。標準化した作業手順書や調理業務のマニュアル化により、作業負担・コストの軽減を図るとともに、調理経験のない高齢者でも就労が可能な職場環境を整備している。  一方、鳥取産のらっきょうの加工品を販売する「らっきょう専門店」には、パートタイマーの60代と70代の従業員が1人ずつ勤務しており、商品の特徴や調理法などの知識が豊富なため、顧客からの評判もよく、同社にとって欠かせない存在となっている。  近年、遊覧船運行部門の船長2人が退職した。そのころ、社内の意思疎通不足・コミュニケーション不足によるモチベーションの低下が顕在化していたという。そこで、2017年に当機構の企画立案サービスを活用し、「財務的経営協力の強化・維持のためのモチベーションの高い職場・人材づくりと高齢化に対応する職場改善推進の取組み」をスタートさせた。また、同年には「鳥取県地域活性化雇用創造プロジェクト推進協議会」に川口博樹社長が参加し、同社が抱えるコミュニケーション不足などの課題解決に積極的に取り組んだ。具体的な取組みとして、全従業員を対象とした「職場改善ワークショップ」、「職場アワード(企業内表彰)」、「月間目標」などを実施。社長が陣頭指揮をとり、全社一丸となって職場改善を推進している。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・定年制度  2016年に定年を60歳から66歳に延長、定年後は運用により年齢の上限なく再雇用している。さらに、2019年3月には「定年後の継続雇用については、解雇・退職事由に該当しない従業員は、70歳までを継続雇用とし、継続雇用後は個別決定とする」と就業規則に定めた。運用により上限なく再雇用としていたものが、就業規則に規定されたことにより、安心して働く環境が整備された。なお、現在の最高年齢者である76歳の正規従業員は、創業当時から在籍しており、同社における生き字引的存在であることから、本人の希望があるかぎりは雇用を継続していく方針である。  また、定年後は本人と面談し、本人の希望を取り入れた短時間勤務も可能とした。定年の延長や柔軟な勤務形態の整備により、高齢者のみならず全従業員のなかに「生涯現役」の意識が生まれ、就労意欲の向上につながっている。 (2)高齢従業員を戦力化するための工夫 @「職場改善ワークショップ」の開催  昨年から遊覧船の冬季休業期間を利用し、高齢者が「安心して働け・働きやすく・心地よく働ける職場」を目ざして、全従業員を対象とした「職場改善ワークショップ」を開催している。目的は、職場の現状把握と問題点の洗い出しを行うことによる就業意識の向上、職場環境の改善である。ワークショップで、会社の経営理念や求める人材、あるいは月間目標などが明確化されたことにより、従業員の意識が変化し、課題であったコミュニケーション不足を解消させることにつながった。 A「職場改善アワード(企業内表彰)」の実施  2019年2月から職場の活性化・共通目標の共有と促進を目的に、従業員のアイデアを募集する「職場改善アワード」を実施した。賞金を設定したこともあり、多くの応募が集まって、「未来が拓(ひら)けた賞(国内旅行業務取扱管理資格取得)」、「接客大賞(船内等でのお客様案内)」などの賞を授与した。結果、従業員の職場改善に対する意識が大きく向上した。 B高齢従業員と若手従業員のペア就労  知識・経験が豊富な高齢従業員は、マニュアル重視の若手従業員にとって、働くうえでの見本となっている。高齢従業員と若年従業員のコラボレーションによって、斬新なアイデアが生まれ、業務の効率化につながった。 ・「イカ干し作業」を協働により実施  これまでイカの一夜干し商品の加工作業は高齢従業員がすべて行ってきたが、若手従業員からの申し出により、高齢従業員と若手従業員が協働して行う作業に変更した。イカの値づけは価格の判断がむずかしく、高齢従業員の経験により決めているが、イカ干し作業を協働にて行うことにより、高齢従業員からイカの加工・値づけなどのノウハウを得る効果をもたらしている。 C職場改善の実施  社内研修やワークショップにおいて、店内の「動線」を見直したところ、厨房における動線に無駄が多いことが明らかになった。そこで、レジを厨房内に入れ移動距離を短くするとともに、食器を作業台の下などに収納することで動く距離が短縮され、身体的負担の軽減につながった。また、動線の見直しによって「イカ焼き」と「焼き物」の複合業務が可能となり、全体の作業時間の短縮を実現した。  一方、高齢従業員のスキルを活かしてメニューカルテ(作業手順書・原価計算書)を作成、作業の均一化が可能になり、コスト改善意識の向上にも役立った。 (3)意識・風土の改善 ・「経営理念、目標人材、月間目標」の明確化  同社では経営者と従業員間のコミュニケーション不足が課題であった。このため川口社長自ら「生涯現役」で働ける職場づくりを目ざす会社の方針を全従業員に説明し、経営理念や会社が求める人材目標(だれとでもコミュニケーションがとれるなど)、月間目標(心身とも健康でいることなど)について具体的な説明を行った。この結果、従業員は会社が求める方針を理解し、月間目標において毎月の具体的な取組み・個々人の目標の発表を行い、達成状況が評価されることにより、業務への責任感が醸成されるなど、意識改革を図ることができた。 (4)能力開発に関する改善 ・研修制度  レストラン業務における接客については、これまで個々人の判断に任せてきたが、会社として一律のサービスを提供する必要性・高齢従業員の接客技術向上を図るため、会社負担により市町村で開催される接客研修に高齢従業員を参加させているほか、外部講師を招いた研修も実施している。研修に参加することで高齢従業員の意欲が高まり、業務改善に対しても積極的な姿勢が見られるようになった。 (5)健康管理・安全衛生 ・「ストレッチ体操」の実施  同社では、毎日の朝礼時に全職員を対象とした「ストレッチ体操」を実施している。食材や商品の移動、遊覧船の準備など身体的作業も多いことから、始業時に体操することで適度の緊張感がめばえる一方、体がリラックスした状態で作業ができるため、けがの防止にも効果を上げている。 ・休憩室の設置  高齢従業員が勤務するレストランに隣接する場所に、エアコンつきの休憩室を設置した。また、厨房の一角には椅子を配置し、厨房・配膳による立ち作業の多い高齢従業員の負担軽減を図るため、少しの空き時間においても休憩ができる環境を整備した。 ・「菜園」の設置  野菜づくりを趣味としている高齢従業員がいることから、高齢従業員の健康管理の一環として、会社の敷地内に菜園を設置した。菜園の管理は業務の合間に行い、収穫した野菜は会社のレストランに食材として提供される。土に触れ、会話も弾むことでストレス解消に一役買っている。 (6)高齢従業員の声  最高齢のAさん(76歳・女性)は、創業当時からの勤続を誇り、現在も正規従業員として、フルタイムで事務とレストランの補助を担当している。事務の仕事においては若手従業員に教わりながらタブレット端末を使いこなすなど、自ら学び活き活きと働く姿勢が、若い世代のお手本となっている。  また、勤務日や・勤務時間など、生活状況にあわせた柔軟な働き方が可能なことから、「これからも健康であるうちは働き続けたい」と話している。 (7)今後の展望  同社では、今後、「定年制の廃止」も検討していきたいと考えている。  高齢従業員と若手従業員の連携をさらに強化して「お客様の笑顔のために」という経営理念を具体化した事業を展開し、「安心して働け・働きやすく・心地よく働ける職場づくり」を目ざして、全社一丸となった挑戦が続く。 写真のキャプション 飲食店を併設した遊覧船乗り場 高齢従業員と若手従業員が協働するイカ干し作業 外部講師を招いて行っている研修 【P32-35】 2019年度 高年齢者雇用開発コンテスト 高齢・障害・求職者 雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 高齢職員の活躍の場を創出しよりよい職場環境づくりを推進 株式会社 元禄(愛媛県西予市) 企業プロフィール 株式会社 元禄(げんろく) (愛媛県西予(せいよ)市) ◎創業 2009(平成21)年 ◎業種 社会保険・社会福祉・介護事業(介護事業) ◎職員数 53人 (内訳) 60〜64歳 8人(15.1%) 65〜69歳 3人(5.7%) 70歳以上 7人(13.2%) ◎定年・継続雇用制度  定年70歳。定年後は就業規則等により希望者全員を年齢の上限なく再雇用。現在の最高年齢者は78歳 T 本事例のポイント  株式会社元禄は2009(平成21)年の創業以来、認知症対応型共同生活介護や認知症対応型通所介護などの4業態を運営している。認知症対応型共同生活介護は利用者の認知症の進行を緩和し、安心して日常生活を送ることができるよう利用者の心身の状況をふまえ適切に行うことが求められる。同社は、利用者の人格を尊重し、つねに利用者の立場に立ったサービスの提供に努めるとともに、個別の介護計画を作成することにより、利用者が必要とする適切なサービスを提供している。介護業界では人材の確保が困難となるなか、同社は高齢職員を積極的に登用、高齢職員が働きやすい職場環境の整備に取り組んでいる。 《POINT》 (1)「いつまでも働ける」職場環境づくりを実現するため、2017年に定年を60歳から65歳に、2019年に70歳に引き上げた。さらに、上限年齢のない再雇用制度を制定した。 (2)短日出勤や短時間勤務など、高齢職員が働きやすい柔軟な働き方が選択できる雇用制度を整備した。 (3)年齢にとらわれない賃金制度を実施した。 (4)高齢職員と若年職員のペア就労による技術継承に取り組んでいる。 (5)職員が自由に参加できる懇親会の開催でコミュニケーション向上を目ざしている。 (6)高齢職員である看護師が健康相談の窓口となったことで、高齢職員が気軽に相談しやすい雰囲気が生まれ、健康管理対策の充実につながった。 U 企業の沿革・事業内容  2009年に創業され、現在は「高齢者宿泊施設 ねぶの花」、「グループホームひねもす(認知症対応型共同生活介護、介護予防認知症対応型共同生活介護)」、「デイサービス ねぶの花(認知症対応型通所介護)」、「デイサービス ねぶの花(通所介護、介護予防通所介護)」の4業態を運営している。  創業以来、地域や家庭との結びつきを重視した運営を行い、西予市をはじめ、保健医療サービスまたは福祉サービスを提供する他事業者との綿密な連携を図り、総合的なサービスの提供に努め、介護事業を通じての地域貢献を目ざしている。  同社では利用者が生活しやすい環境づくりを進めるために、経験豊かな高齢職員の活躍の場を創出。高齢職員のきめ細やかな対応を若手職員が実際に見聞きして学ぶことで、技術の継承につながっている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  介護業界においては、離職者が増えている状況にある。そこで同社では、将来を見越して早い段階から高齢職員の積極的登用を進めてきた。同社のサービスは、高齢の利用者が多く、高齢職員を介護担当に活用することで、高齢の利用者に寄り添った思いやりのある介護の提供が可能となっている。  現在の平均年齢は51・7歳で、60歳以上が約34%を占めている。職員の最高年齢は78歳。  2019年に定年が70歳に延長され、定年後も就業規則により希望者全員を年齢の上限なく再雇用する制度が整備されたが、7人いる70歳以上の高齢職員は、いずれも60歳を超えてから採用された人材である。働ける期間が長くなったことで、高齢職員の勤労意欲が高まり、高齢職員の健康に留意し気力を持続できるよう努力する姿は、会社全体の士気を高めることにつながった。  同社の代表取締役を務める近藤千鳥(ちどり)社長は、「高齢職員を採用することにより、若手の職員にはなかなかできないような利用者の心に寄り添う接し方ができ、利用者の満足感を高め、居心地のよい生活を支援することが可能になる」と考えている。そこで、部門間の枠にとらわれず意見を聞く仕組みをつくり、高齢職員の意見をしっかり吸収し日々の業務に反映している。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ・定年制度と継続雇用  2009年の創業時は、定年60歳であったが、2017年11月に65歳に延長、さらに当機構の高年齢者雇用アドバイザーからの提案を基に、2019年4月1日に70歳に延長した。また、働きやすい職場づくりを目ざして、70歳に達した職員についても希望者においては上限を設けず継続雇用としている。  定年の延長により、高齢職員は、年齢を心配せずに働くことができるようになり、経済的にも精神的にも余裕が生まれ、周りに対しての配慮など介護サービスにとってもプラスに作用している。 ・賃金と柔軟な勤務形態  定年後も賃金の減額はなく、かつ年齢に関係なく技術水準に応じた賃金体系に変更した。正当性・公平性を持った評価制度を示すことにより、いつまでも年齢に関係ない処遇を得ることができ、職員同士がお互いを尊重しあう職場環境の構築が実現した。  また、高齢者が働きやすい職場環境の構築を目ざして、自分の生活パターンに合った出勤日数や勤務時間の選択を可能とし、柔軟な雇用形態を導入した。これにより職員各々の生活状況に合わせた勤務スケジュールを組むことができ、職員が遠慮したり無理せずに、仕事に向かえるなど余裕ができるようになった。  高齢職員にとっても、体調に合わせた労働時間の設定が可能となったことから、日々の作業にも精神的な余裕が生まれ、サービス向上に一層注力でき、単純なミスも減少した。さらに、突発的なことに対しても、交代勤務・増員体制などの変則対応が柔軟にできるようになり、職員が休暇を取得しやすくなった。 (2)高齢職員を戦力化するための工夫 ・生産性向上  施設の利用者は高齢者が多いことから、積極的に高齢職員を介護担当として活用することで、利用者に寄り添った介護を行うことができるようになった。  例えば、高齢職員を送迎担当に配置することにより、利用者の目線に立ち、乗車や下車時に細心の注意を払うといった、質の高いサービスの提供が実現している。  高齢職員の活用は利用者だけでなく、若年・中高年職員の意識向上にも役立っており、机上のセミナーなどで学ぶことと違い、高齢職員の経験から生まれた知恵を、身近で見聞きできることで、若手職員たちのモチベーションがアップし、その結果、全体の生産性向上につながっている。 ・安全衛生管理における高齢者の知恵の活用  同社では入所者が居住スペースで快適に過ごせるよう、好天の日には、職員同士が声をかけ合って布団を天日干しすることを励行している。発案したのは高齢職員だが、入居者全員の布団を干すためには大変な労力を要することから、若手職員が率先して行っている。布団の天日干しは入居者に快適さを提供するだけでなく、インフルエンザの発症がまったくなくなるという副次的効果もあった。  また、高齢職員の提案により厨房部門は終業時、毎日、床面や水周りに熱湯をまき、消毒を行うことを徹底しているが、これが食中毒発生の防止につながっている。 (3)意識・風土の改善 ・「なぁなぁの日」の創設  福利厚生の一環として、毎月7のつく日(7・17・27日)を「なぁなぁの日」と称し、就業後に食事会を兼ねた職員の交流の場を設けている。会場のカラオケ店には職員はもちろん、経営者や幹部職員も参加し、遠慮のない意見交換をすることで、職場における問題抽出のための格好の場にもなっている。  原則自由参加としているが、徐々に参加人数が増えてきており、参加者同士がいろいろな悩みを相談しあい、ストレスを解消する場となっている。また、若手職員が高齢職員から仕事上のアドバイスを受けることもあり、さらに経営者にとっては情報収集の場でもあることから、「なぁなぁの日」は職場コミュニケーションの推進に大いに役立っている。 (4)能力開発に関する改善 ・ペア就労による技術継承  若手職員は時に、掃除や洗濯の仕方で不手際を起こすことがあった。そこで、掃除・洗濯担当を、若手職員と高齢職員とのペア就労にしたことにより、若手職員が高齢職員のテクニックをマスターすることができ、居室の掃除や洗濯物のたたみ方などの作業において、時間短縮、整理整頓などの技術が向上してきている。  また、送迎時においても、高齢職員と若手職員がペアで利用者へ対応しており、実際に対応時の留意点を目の当たりにできることから、若手職員からはとても分かりやすいと歓迎されている。  さまざまな場面で若手職員と高齢職員がペアで働くことによって、若年層のスキルアップを図ることができ、職場全体においてもレベルアップが図られ、利用者からも好評である。 (5)健康管理・安全衛生 ・健康診断の実施と看護師相談の活用  看護師として施設利用者の調剤などに従事する高齢職員が、健康診断の結果に対してアドバイスを行うなどの健康相談の窓口となっていることで、気軽に相談できる雰囲気が醸成され、職員の健康意識の向上に役立っている。 ・インフルエンザの予防注射実施  2018年度より、契約している医療機関が来所してすべての職員にインフルエンザの予防接種を行っている。2017年度は5人が罹患したが、全員の予防接種実施によって、2018年度のインフルエンザに罹患した職員は1人もいなかった。 ・休憩時間の確実な履行  十分な休憩が取りにくい業種であることから、就業規則に決められた休憩時間をとるよう、各部署が意識して声かけ運動を実施。また、休憩時間の取得を毎日チェックするようにしたことで、休憩を確実にとれるようになり、職員の集中力が高まり、業務中のケアレスミスが発生しにくくなっている。 (6)従業員の声  2015年度入社の看護師のAさん(63歳・女性)は正規職員としてフルタイムで勤務。看護師経験を活かしたきめ細やかなサービスが、利用者から好評を得ている。「高齢社会に適合した新たな環境で、これまでの経験と知識を活かすことができ、やりがいを感じます」とAさん。  また、同社の最高年齢者Bさん(78歳・女性)は週3日、1日5時間の勤務を元気にこなしている。創業当初から施設の清掃を担当。そのていねいな仕事ぶりは利用者に喜ばれるだけでなく、若手職員のスキル向上につながっている。 (7)今後の展望  人材確保が困難な介護業界にあり、高齢職員の豊かな経験を活用することは、今後ますます必要不可欠であると考え、高齢者雇用を人事戦略の一環として位置づけている。  具体的施策として、社内に「働き方改革担当」(仮称)を設置。健康で働くことで、だれもが生きがいを感じることができる人事制度の仕組みと、意識啓発を図っている。高齢職員の戦力化促進の高い峰を目ざして、同社の新たな挑戦が続く。 写真のキャプション 株式会社元禄の「ねぶの花」 「なぁなぁの日」の案内ポスター(左)と当日の様子(右) 高齢職員と若手職員がペアとなり仕事をしている様子 【P36-37】 江戸から東京へ [第86回] 生涯現役家老 大屋遠州(おおやえんしゅう) 作家 童門冬二 隠居後が本番です  大屋遠州は、最初は八代将軍徳川吉宗の小姓(こしょう)※1をしていた。ヤンチャ者で人気があった。吉宗に可愛がられた。吉宗がやがて自分の息子たちに田安(たやす)家・一橋(ひとつばし)家などの分家をつくらせると、遠州は田安家の家老になった。田安家に定信という七男が生まれると、遠州は定信に異常な愛情を注いだ。兄たちがいたが、定信の方が賢くまた周囲の人気を集めていたからである。遠州は心のなかで、  (定信さまは必ず次の将軍におなりになる)  と期待していた。が、一橋家の政治工作が成功して、次の将軍候補者は一橋家から選ばれた。しかも、定信は奥州白河(福島県白河市)の松平という小さな大名の養子に入れられてしまった。遠州は、  (田安家の人々はみんな誠実なので、一橋家や幕府首脳部の策謀に引っかかってしまった)  と嘆いた。が、そんな経緯もあって、松平と姓を変えた定信は白河藩主になり、善政を行ったので、やがて幕府中央に乗り出し、老中首座(総理大臣)になった。老中になった定信は寛政の改革≠展開し、弱い立場にある人々のための善政をたくさん行った。やがて、老中を退いて隠居した。しかし、遠州は定信に呑気な生活を送らせなかった。  「これからが本番ですよ」  といった。  「隠居したのに何をすればよいのだ?」  定信が訊く。遠州は、  「私も老いました。これからは、白河藩で大いに老人のための政策を行ってください」  といった。  定信は眉を寄せて、  「一体何をさせる気だ?」  と訊く。遠州はニコリとして、 「まず、毎月年寄りの会≠お開きください。70歳以上の老人を全員城の広間に呼んで、ご馳走をするのです」  「そんなことをして何の役に立つ?」  「いま、この白河藩ではあまり年寄りの意見を首脳部が聞きません。いけないことです。年寄りは伊達(だて)に皺(しわ)を寄せているわけではなく、皺と皺の間には経験という大切な宝石が挟まれています。これを大いに活用しましょう」  「なに?」  定信は訊き返したが、しかし遠州の言葉には胸に残るものがあった。皺と皺の間には経験という宝石が挟まれている=Aという言葉が気に入ったのである。 いまに残る老人の知恵  そこで、遠州のいう年寄りの会≠開いた。年寄りたちは、殿さまがご馳走をしてくださるというので喜んで城にやって来た。遠州のいった通りだった。年寄りたちは単にお酒を飲んでご馳走を食べるだけが目的ではなかった。日ごろから藩政について考えている意見を次々と出した。  ある農民がお米の増反(ぞうたん)※2を提言した。お米を沢山つくれば、農民も生活が楽になるが、同時にお城の方も年貢の額が上がるので財政が豊かになるという意見だ。定信が、  「増反のためには新田の開発が必要だが、それには灌漑(かんがい)用水のための水源も必要だ。第一そういう工事に従事してくれる労働力が沢山要(い)る」  と告げた。酒を飲み、ご馳走を食べていた老人たちが箸を止めて、たちまちあちこちで手をあげた。水源には、城のはずれにある南湖という沼が適当だし、労働力は城下町に失業した若者や壮年者がたくさんいる、と告げた。さらに、  「新田の水源になる南湖を、公園にしてくだされば城下町の農庶民たちが、憩いの場として使えます」  という。さらに、  「春夏秋冬に花を咲かせる植物を植えてくだされば、一年中藩民が楽しめます」  ともいった。定信は考え込んだ。脇に居た遠州を見た。遠州はニコニコ笑っている。しかし目は、  「いかがですか? 私のいった通りでしょう」  と、得意気に鼻をうごめかしていた。定信は家臣に老人たちの意見をまとめて計画にさせた。そして実現した。新田開発によって、米の収穫が増え、農民も豊かになり、藩の財政もかなり楽になった。そして、灌漑用水の水源になった南湖は公園になり、藩民の憩いの場として喜ばれた。失業者も、関係工事に動員されて賃金を得、いわゆる雇用の創出も行われた。  水源の南湖は現在も健在で福島県立公園になっている。江戸時代に、はじめて民のために設けられた公立公園第一号だ。そして月に一回開く「年寄りの会」は、現在の「敬老の日」の先取りをしたものともいえる。  遠州は大満足だった。隠居の定信も、そんな遠州につくづくと温かいものを感じ、  「おまえが居てくれるおかげで、わしも善い政治が行える」  といった。遠州は、  「それはその通りですよ。これからも、大いに気張りますからね」  と、皺だらけの腕を自慢そうに叩いた。 ※1 小姓……武将の身近に仕え、もろもろの雑用をつとめる者 ※2 増反……田畑の作付面積を増やすこと 【P38-39】 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第67回  杉村卓治さん(69歳)は、プラントエンジニアとして新設プラント建設や業務改革のプロジェクトにたずさわり続けてきた。定年後は経験を活かし、新卒社員を技術者へと育成するため、新しい職場で力を注いでいる。人材育成の道をまい進する杉村さんが、生涯現役で働く心意気を語る。 共同エンジニアリング株式会社 顧問 杉村(すぎむら)卓治(たくじ)さん 先輩の励ましに支えられて  私は山口県徳山(とくやま)市(現在の周南(しゅうなん)市)で生まれ、小学校へ入るころに岩国(いわくに)市へ転居しました。地元の工業高校化学科を卒業後、JXTGエネルギー株式会社の前身である興亜石油株式会社麻里布(まりふ)製油所へ入社、同社は、山口県最東端の和木(わき)町で1943(昭和18)年に操業を開始した歴史ある製油所でした。  高卒の新入社員はまずプラントの運転を担当することになり、2カ月の研修期間を終えると三交替の厳しい勤務が待っていました。夜勤もつらかったですが、そのころは職人肌の社員も多く、大きな声で怒鳴られるたびに、何度辞めようと思ったかわかりません。そんな私を見守っていてくれた4歳年上の先輩が「お前は見どころがあるのだから、辛抱しなくてはいけないよ」と折に触れ励ましてくれました。思えば技術だけではなく、物の見方や考え方など、すべてのことをこの先輩から学ばせてもらいました。自分のことをちゃんと見ていてくれる人がいると思うと、俄然やる気が出てきて、プラント運転という仕事がだんだん楽しくなってきました。  聴音棒(ちょうおんぼう)※1を手に現場を歩き、配管の振動や温度を体感しながら、腐食の進行を発見し対応できたときは本当に嬉しかったです。  何度も辞めようと思いつつ、いつしか「プラントの現場で超一流になる」というスイッチが入った。恩人の先輩とは、いまも親しい交流が続く。 独自のリスク分析手法を立案  さまざまなプラント運転を経験するなかで、28歳のとき班長になりましたが、歴代で一番若い班長といわれたときは嬉しかったです。それから10年間は、現場責任者として充実した日々でした。  その後39歳で大規模な新設プラントプロジェクトを担当、2年の歳月を経て試運転にこぎつけたときの喜びはいまも覚えています。  順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の会社生活でしたが、46歳のとき、部下が重度のやけどを負う火災事故に直面しました。当時係長の私は、70人いた部下たちのためにリスク管理という考え方を職場に根づかせなければという思いから、問題解決のためにEM法※2を学び、独自のリスク分析手法を立案しました。  正直なところ、それまでは安全課の指示にしたがっていれば安全は守れるものだと考えていました。現場係長は省エネや効率化を考え収益を上げていけばよいのだと。しかし、現場が安全をないがしろにしたら必ず事故が起きることを知り、目が覚めました。  上に立つ者が安全について確固たる信念を持たなければと、安全に関する講演会があると聞けば自費で大阪や東京へ出かけました。リスク分析手法により、事故後10年間の課長時代には1件も労働災害を出さなかったことを、いまも誇りに思っています。  興亜石油株式会社は2002年に統合によって新会社となり、その後も変遷を経て現在に至る。円滑な事業展開のために改革プロジェクトが発足、杉村さんは定年まで参画し、啓蒙活動のため全国を飛び回った。 次代のにない手たちに伝えたいこと  人生一寸先はわからないというのは本当で、59歳のとき、がんを患いました。ステージ3を宣告され、2年間の闘病生活の後、職場復帰が叶いましたが、大病は人生観を変えました。60歳で定年を迎えた後、高圧ガス保安協会や日本ボイラ協会などで安全に関する講演活動をしていましたが、これまでの実績を活かしてさらに社会貢献ができないかと模索していた折、建設業界に特化した技術者派遣・受託事業を展開している共同エンジニアリング株式会社に声をかけていただきました。とりわけ、人材不足解消のため、未経験の中途採用者や新卒社員を技術者として育成することに注力していることを知り、自分がつちかってきた経験を次世代に継承できるのではないかと、61歳で入社しました。当初は若手幹部のマネジメント指導などを担当していましたが、2015年から、未経験者がプラントエンジニアを目ざす新入社員の研修が加わりました。  数日間の新入社員研修では、「スキル」よりも「ウィル」ということを伝えています。ウィルとは「やる気」という意味ですが、同僚や職場を大切にする心を忘れず、協力して合議する姿勢だと私は解釈しています。現場にかかわる人間一人ひとりが、未然に事故を防ぐための知恵を出し合い、安全意識を高め合うことの大切さをくり返し話しています。私が一方的に話をするのではなく、チームで合議した結果を発表し合うスタイルで自発性を引き出しています。また、研修では技術論だけでなく、自身の健康管理やお金の管理、10年後の自分の未来を管理できる力を身につけてもらおうと、仕事とライフスタイルを考えた夢のある人生設計を指導しています。  実は、私は25歳のころから日々の記録を大学ノートにつけています。ノートは3種類あり、1冊はスケジュール管理、もう1冊には仕事に関することはもちろん、日ごろ感じたことや感銘を受けた言葉など、あらゆる事柄を記します。その2冊からさらに重要なことをB4の大学ノートに書き写し、10日ごとに自分のやってきたことを振り返っています。いつの間にか300冊近くになった大学ノートは、私の大切な財産です。読み返せば頭が整理でき、伝えたいことを喚起してくれるので、研修のときに大いに役立っています。 生涯現役で社会に貢献を  未経験の中途採用者や新入社員の研修は4年目を迎えました。当初は2カ月に一度、私が住んでいる岩国市に近い広島支店で実施していましたが、現在は月に一度、私が東京へ出向いています。現在25期生になりますが、研修が終わってもSNSでつながり、いつでも相談にのれるようにしています。私が講義した若手エンジニアの離職率が低いとの話を聞き、少しはお役に立てているのかと嬉しくてなりません。  私たちを取り巻くリスクは時代とともに変わっていきます。私自身もさらに勉強する必要があり、時間があれば地元の図書館に通っています。これからの業界をになう人たちに、私が知っていることすべてを伝えていくためにも、健康で長く働き続けたいと思います。  岩国市は自然も豊かで、日々のウォーキングや、ときにはキャンピングカーで中国山地のキャンプ場をめぐって気分転換を図っていますが、研修で出会う若い彼らからもらうパワーこそが私の元気の源かもしれません。  まだ見ぬ若い人たちとの出会いに胸を弾ませながら、生涯現役を目ざします。 ※1 聴音棒……給水管などの露出部に金属棒の先端を接触させて漏水音を聴く調査機器 ※2 EM法……考える力を習得し、実践に結びつける研修プログラム 【P40-43】 高齢者の現場 北から、南から 第90回 熊本県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー※1(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 明るく元気にみんなで活き活きといつまでも働ける職場環境を整える 企業プロフィール 株式会社一休(いっきゅう)本舗(熊本県熊本市) ▲創業 1963(昭和38)年 ▲業種 飲食料品小売(和菓子の製造・販売・卸売、甘味処一休庵の経営) ▲従業員数 76人 (60歳以上男女内訳) 男性(4人)、女性(44人) (年齢内訳) 60〜64歳 16人(21.0%) 65〜69歳 26人(34.2%) 70歳以上 6人(7.9%) ▲定年・継続雇用制度 定年66歳。定年後は、就業規則により希望者全員を70歳まで再雇用する。運用により、その後も希望者全員を年齢上限なく再雇用する 和菓子をつくって56年。一休本舗の自社店舗は熊本県下に14店舗ある  熊本県は九州のほぼ中央に位置し、世界最大級のカルデラを有する阿蘇くじゅう国立公園、大小120の島々からなる雲仙天草(うんぜんあまくさ)国立公園をはじめとする自然や一級河川、地下水などの水資源にも恵まれています。これらを背景に多彩な農畜産物や海産物が生産され、トマト、すいか、いぐさの生産量は日本一です。また、全国に先駆けてクルマエビの養殖も盛んです。  「平成29年工業統計調査結果(確報)」から熊本県の製造業をみると、製造品出荷額は「電子部品」、「輸送用機器」、「生産用機器」の3業種で全体の40%以上を占めています。  熊本県内においても全国と同様に人手不足の状態が続いており、そうしたなかで60歳以上の労働者数が年々増加しています。企業の制度にも変化がみられ、「平成30年高年齢者の雇用状況」(熊本労働局)によると、66歳以上まで働ける制度のある企業は27・1%、70歳以上まで働ける制度のある企業は24・9%となっています。  当機構の熊本支部高齢・障害者業務課の村松一貴(かずき)課長は、「県内事業所をくまなく訪問して、高年齢者の継続雇用について相談・助言を実施できるよう計画的に進めています」と、注力している取組みを話します。  今回は、同支部のプランナー・島本浩幸さんの案内で「株式会社一休本舗」を訪れました。 創業56年の愛される和菓子店  一休本舗は1963(昭和38)年に熊本市で団子やまんじゅうを製造・販売する会社として創業しました。「私達は、食という文化を通じ、人様、地域、社会から必要とされる企業で有り続けます」との経営理念のもと、高い意識を持って技術向上に励むとともに、創業当初から、本社工場で製造した菓子を各店舗へ輸送する際の鮮度や美味(おい)しさの保持に注目し、研究を重ねて独自の冷凍保存技術を確立。また、日本穀物検定協会食味ランキング※2で最高評価の特Aを連続受賞している「七城(しちじょう)米」や、阿蘇のチーズなどのこだわりの原材料を使用し、機械のみに頼るのではなく、職人の手と目、経験による手づくりの味を守り、創業56年のいまも地域に親しまれる和菓子の提供を続けてい ます。本社工場と13の直営店を営業するほか、九州地方のスーパーなどに販路を拡げています。  島本プランナーは2017(平成29)年9月に初めて一休本舗を訪問しました。熊本県では前年の2016年4月14日と16日、2度にわたり最大震度7の地震が発生し、多くの命が奪われ、また、避難を余儀なくされた人々が多数いました。  「一休本舗さんでは本社・工場ともにダメージを受けていましたが、訪問したのは順調に回復している時期でした」と島本プランナーは振り返ります。  一休本舗の本社・工場は、震源地だった益城町(ましきまち)の近くにあり、かなりの被害を受けたといいます。また、何千回もの余震が続くなか、「ガスの復旧まで2週間ほどかかり、工場で製造を再開できたのはそのころからでした。その後、全国からご注文やご支援を賜り、回復することができました」と木功一代表取締役。支援に対する感謝の思いをにじませながら静かに語りました。 希望に応じた働き方に対応  一休本舗を最初に訪問したときのことを、島本プランナーは次のようにも語りました。  「創業当初より高齢者雇用に取り組み、現社長もその姿勢を受け継いで、訪問時はすでに定年の引上げも行われており、相談・助言を行うというより、お話しをうかがうことが主になりました」  先代は、「可能なかぎり長く働いていてほしい」と社員に望み、実現できるよう社員に寄り添い、以前から高齢社員が多くいたといいます。  木代表取締役は「和菓子の製造や販売は、伝統や風習、習慣とかかわりが深く、人生経験の長い高齢者の知識は業務に役立ちます。また、年配のお客さまも多く、高齢社員の接客を好まれる方も多々あり、そうしたことが社員のやりがいや、お客さまからの信頼につながっていると感じます」と高齢社員を評価しています。  同社では、社員が安心して長く勤めることができる職場環境を整えたいと考え、2015年に60歳としていた定年年齢を65歳に引き上げ、2017年にも1歳引き上げて66歳としました。さらに、定年後はパートタイム社員として本人が希望するかぎり働けることとしています。  定年後の勤務時間や仕事内容については、短時間勤務も可能としています。また、通院や家庭の事情などを考慮して、何かあればその都度休めるような対応に努めています。  同時に、新聞折込みによる求人募集を行い、「60代スタッフも活躍中」、「希望の勤務時間相談可」などと明記すると、多数の応募があり、元気であれば70歳以上の人も採用。また、子育て世代にも同様に「勤務時間相談可」として募集をしたところ、30代前後の採用につながり、現在は人材が充足しています。このことにより、シフトが組みやすくなるとともに、残業がほとんどなくなるという効果が得られたそうです。 達成手当や手厚い医療保険を整備  定年後は、基本的に時間給となります。同社では、モチベーションアップのための取組みとして、店舗の売上げ目標達成に応じた「達成手当」を3年前から支給しています。「基本給(パートの場合は勤務時間数)×達成割合」をプラスで支給する仕組みです。  また、店舗ごとのお客さまからの声や成功体験を、「通達」として発信し、全社員で共有する取組みも行っています。以前はFAXで発信しましたが、いまはSNSを活用して共有しています。  一休本舗ではここ数年、スマートフォンの活用を促進し、それまで文書で伝えていた作業マニュアルを、各店舗に配置したスマートフォンのSNSアプリを使って動画で発信するようにしたところ、社員の使いやすさが増し、「動画はわかりやすい」と評判もよく、情報共有が図りやすくなったという成果も得ているといいます。  これらの取組みの結果、社員の定着率が上がり、特に高齢社員については、ここ3年ほどは退職者がなく、島本プランナーは、同社の取組みの数々の成果がここに表れていると評価しました。  ほかにも、同社では突然の病気やけがに対処できるよう、週20時間以上勤務する社員を対象に会社による費用負担で、民間の医療保険に加入しています。一人暮らしをする高齢社員が、何かあったときに休んでも困らない備えとして整備したものです。  今回は一休本舗の本社工場で菓子製造を担当し、木代表取締役が「各業務をテキパキとこなし、お彼岸などの多忙な時期には早出の勤務にも対応してくれる頼もしい社員です」と話す、高齢のパートタイム社員2人にお話を聞きました。 無理なく働き続けられる職場  人気商品の「熊本焼きのり団子」などの団子製造を主に担当する大住(おおすみ)久美子さん(65歳)は、一休本舗に勤めて27年。週5日、フルタイムで働いています。機械で製造する串団子などを店舗へ送る木箱に並べたり、製造が終わるたびに機械をばらし、部品を洗浄して、翌日はその組立て作業から開始する、という仕事を担当しています。  製造する菓子数は日によって異なり、種類は季節によって変わります。特別注文が入る日もあるため、「間違いのないように作業することを心がけています」と大住さん。  一休本舗に勤めたのは、「近所」という縁からで、「早朝出勤をする日もあるのですが、そのときは早めに帰れるように配慮していただけます。時間的に無理なく働けることがいままで続けられている理由ですね」と職場を語り、「仕事をしていると生活にリズムが生まれますので、健康のためにももう少し働いていたいと思います」と話してくれました。 日々の達成感がやりがいに  中路(なかじ)由美子さん(65歳)は、一休本舗に入社して14年、まんじゅうなどの蒸し物を担当し、蒸し器で仕上げたり、菓子の袋詰めをしたり、週4日、フルタイムで勤務しています。  「菓子製造は未経験でしたが、それでも大丈夫とのことで働かせていただきました。立ち仕事で、慣れるまでは大変と思うこともありましたが、いまは仕事が時間内に終わったときの達成感がやりがいになっています。おいしいという評判を聞くことも多く、喜びも感じます」と中路さん。  中路さんのお母さんが隣の市で一人暮らしをしていて、月2回ほど顔を見に行っているとのこと。「母が元気なうちは、ここで働いていたいと考えています」と話してくれました。  2人とも一休本舗の和菓子が大好きで、実家へ帰るときには購入してお土産にしているとか。中路さんは「甘酒まんじゅう」、大住さんは「みたらし団子」が特に好きなのだそうです。 高齢社員の活躍は会社の誇り  一休本舗は、平成30年度の「高年齢者雇用開発コンテスト」で、高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰特別賞を受賞しています。木代表取締役はこのことについて次のように話しました。  「特別賞の受賞は嬉しいですし、励みになります。高齢の社員がときどき、『こんな年齢で働いていてよいのかしら』と不安そうにたずねてくるのですが、私は『高齢の方も元気に活躍していることが、当社の自慢の一つ。そのことで賞をいただいたり、メディアからの取材を受けたりしています。当社にとって、みなさんが自慢なんです』と答えています。すると、安心した表情をされます」  また、「年齢の違いにかぎらず、それぞれ異なる事情を抱えている人がともに働く時代ですので、今後もコミュニケーションを大切にしていきます」と語りました。(取材・増山美智子) ※1 65歳超雇用推進プランナー……当機構では、高年齢者雇用アドバイザーのうち経験豊富な方を65歳超雇用推進プランナーとして委嘱し、事業主に対し、65歳を超えた継続雇用延長・65歳以上への定年引上げなどにかかわる具体的な制度改善提案を中心とした相談・援助を行っています ※2 日本穀物検定協会食味ランキング……(一財)日本穀物検定協会が、主な産地品種銘柄について、その供試試料を食味試験した結果に基づいて評価したもの 島本浩幸 プランナー(55歳) アドバイザー・プランナー歴:3年 [島本プランナーから] 「熊本県内は、2016年4月の熊本地震以降、復旧・復興需要もあり、有効求人倍率が高水準を維持し、人手不足の状況が続いています。そうしたなか、65 歳を超える高齢者の活用は増加傾向にありますが、制度がなく運用による継続雇用が多くみられますので、社員が安心して働き続けられるよう規定整備の提案を心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆熊本支部の村松課長は、島本プランナーについて次のように紹介します。「プランナーになられて3年目です。雇用環境の改善、人事管理制度の整備などの仕組みづくりを得意とし、事業所訪問では事業所ごとに誠実・ていねいに対応し、訪問先から頼りにされています。当支部に欠かせないプランナーです」 ◆熊本支部高齢・障害者業務課には、5人の65歳超雇用推進プランナーに本年度より4人の新任高年齢者雇用アドバイザーが加わりました。新任アドバイザーが先輩プランナーの豊富な経験、知識を共有しながらより質の高い相談・助言ができるよう、定期的な打合せの機会を設けるようにしています。2018年度は約370件の相談・助言活動を行い、制度改善提案を58件、企業診断システムの運用を18件実施しました。 ◆熊本支部は、熊本電気鉄道「黒石駅」で下車、徒歩3分です。各事業所の状況に即した相談・助言を無料で実施しています。 ●熊本支部高齢・障害者業務課 住所:熊本県合志市大字須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 電話:096(249)1888 写真のキャプション 熊本県 木功一代表取締役 棟上(むねあげ)式に使用する特注の紅白餅を、真剣な面持ちで運ぶ大住久美子さん 慣れた身のこなしで、店舗へ送るおはぎを運び出す中路由美子さん 【P44-47】 新連載 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜山(ひやま) 敦(あつし)  生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、高齢者から始まる働き方改革≠フ姿です。 第1回 AI・ICTを活用した高齢者への就労支援の意義と課題 若者の働き方を支えるためにW元気高齢者Wの柔軟な働き方の実現へ  今月から6回にわたり、高齢者就労、ひいては日本全体の働き方改革の促進へ向けた情報科学的アプローチの話題を連載することになりました。  筆者は、学生時代から20年にわたり現実世界と情報世界を融合させる「拡張現実感」という技術やそれを実現する装置であるウェアラブルコンピュータ(身につけられるコンピュータ)、いまではIoT(Internet of Things:モノのインターネット)と呼ばれるユビキタスコンピューティング※2の研究開発にたずさわってきました。  超高齢社会にかかわる研究を始めたきっかけは、博士号の取得後に産学連携で立ち上げられた、少子高齢社会を支える情報技術・ロボット技術の研究開発に参画したことです。そこでは、学生時代より研究していた、人の位置に応じた情報提示を行うための屋内測位の技術を用いて、家事支援ロボットやパーソナルモビリティと呼ばれる移動支援ロボットが、人と共生する空間で行動するための位置情報インフラの研究開発に取り組んでいました。この研究を通して超高齢社会について知るうちに、「いまのシニア世代は、どうやら若いわれわれや学生よりも発言力があり、世の中のことをよく知っていて強そうだ」ということや、65歳以上の90%近くは自立した生活を営んでいる、ということが分かってきたわけです。  全人口に占める割合も少なく、人材が流動化する風土を育てないままに拡大する非正規雇用にあえぐ若者が支える社会よりも、逆三角形の人口ピラミッドをひっくり返した大勢の元気高齢者が、不安定な若者を助ける新しい社会構造の方が安定しているのではと思い始めました。そして2011(平成23)年からICT(情報通信技術)を活用して、元気高齢者の柔軟な働き方を実現する研究開発に取り組み始めました(図表1)。 多様化するシニアの就労観に対応可能な就労支援システムを  2014年の内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」によると、仕事をしているシニア(60歳以上)の42%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しました。「70・75・80歳くらいまで働きたい」を含めると、仕事をしているシニアのうち79・7%が働き続けることを望んでいます。  私が高齢者就労の研究を始めた当初、東京大学高齢社会総合研究機構が千葉県柏市在住の60歳以上の高齢者を対象に開催した「就労セミナー」において、実際の定年退職後の就労に関するモチベーションを調査する機会を得ました。その結果から、シニアは収入を得られることよりも、健康維持、達成感、新しい人と知り合いになれること、自己成長や世の中への貢献を重視していることがわかりました(図表2)。  このように定年退職後のシニアの就労意識は多種多様であるため、それぞれのニーズに合った形で仕事とつなぐ必要があることがわかります。そのためには、一人ひとりが仕事を探すにあたって大事にしていることを引き出し、それに見合った仕事を探し出す必要があります。これは手間を要する作業であり、現役世代を対象とした画一的なジョブマッチングのシステムでは対応がむずかしい問題です。  健康が維持できることを特に重視しているシニアが多く、実際に就労をはじめとする社会とのつながりのある活動に参加することは、高齢期における健康維持に寄与するものになっています。  東京大学高齢社会総合研究機構ではフレイル※3リスクと身体活動、文化活動、地域活動との関係の調査分析を行っています。5万人近くのデータ分析結果から、ジムでのトレーニングや散歩など個人で行う要素が強い身体活動に取り組んでいなくても、ボランティアなどの地域活動や文化活動など社会とのつながりのなかで行われる活動に参加している集団の方が、フレイルリスクが低いという結果が得られています※4。  就労することは、社会とのつながりという意味では、ボランティアと比較して責任の重い部類になりますが、ボランティアなどの地域活動や趣味などの文化活動であってもフレイルリスクを抑えることに寄与していることになります。  私は高齢者の就労を考えるときに「就労」という言葉を、「社会参加」という意味にまで広くとらえる必要があると感じています。高齢期においては、一人ひとりの置かれた心身の状況や、経済的な状況、そして社会とのつながりは多様になっています。退職後にいきなり新しい仕事に取り組み始められる人もいれば、起業する人もいる。逆に、新しい仕事や地域社会との関係をどのようにつくればよいのか戸惑う人もいる。一人ひとりの置かれた状況に寄り添い、段階をふみながら社会参加から就労へという流れをつくるシステムが必要だと考えています(詳細については、第2回で解説します)。 シニア人材の知識・経験をホワイトカラーの仕事で活用するためには  将来、企業にとって人材の確保がさらに大きな課題になります。日本はすでに人口減少が始まっていますが、2030年代には年間100万人を超えるペースで人口減少が加速していきます。毎年政令指定都市が一つ日本から消えていくことをイメージすると、そのスピードは驚くべきものでしょう。少ない現役世代の能力を活かすためには、社員の職務の選択と集中が必要です。そして、革新的な人材を正社員として抱え込んで、社会への影響をかぎられた範囲に制限するのではなく、プロジェクト単位で複数の企業の仕事を推進するインディペンデントコントラクターとして働く道筋をつくることが求められます。  そのとき、シニア人材は、現役世代がキャリア形成のために集中するべき職務の周辺作業をサポートできる存在になります。シニア就労というと、企業の状況によっては、企業の経営相談のような非常に高度な仕事か、特にスキルを要しない作業の両極端な業務が求められるケースも少なくありません。しかし、多くのシニアはその中間の現役時代につちかってきた経験も活かせるホワイトカラーの仕事を求めています。ホワイトカラーの仕事の開拓は、現役世代の働き方の改革と車の両輪を成す形で進んでいくものになるでしょう。新しい働き方へ向けた価値観の転換に関するお話しは第5回に詳しくまとめたいと思います。 高齢者の就労支援の成功はITスキルの習得がカギとなる  働きたいシニア、働き手を求める社会、その両者を効率的に結びつけられるICTと、新しい社会を形づくる役者はそろって来ているのですが、なかなか社会全体としてその動きがつながりません。お互いに必要性を感じつつも、向いている方向が違っている印象があります。前述のように求人側がホワイトカラーの仕事の切り出しができていないことが一つの課題です。  もう一つの課題はシニア層へのICTの普及促進です。シニア就労の研究を始めた2011年当初、研究開発したシステムの実証評価で連携している柏市のシニアコミュニティでスマートフォンを活用している人はほんの数%程度でしたが、いまではかなり増えています。ただ、それでもウェブサービスのアカウント作成や、アプリのインストールは敷居の高い作業のようです。  例えば、地域のシニアの社会参加を促進するウェブサービスとして研究開発した「GBER(ジーバー)」(詳細は第2回で紹介)について、熊本県のシニア約30名に対して使い方の講習会を開きました。みなさんご自身のスマートフォンを持って受講されましたが、サービスへのログイン画面で正しく入力しているにもかかわらず、スマートフォンの自動文字校正機能が働いて、近い英単語に変換されたり大文字や小文字に変換されたりするため、入口からつまずいてしまうことがありました。20年後のシニアは使いこなせるかもしれませんが、人口が最も多い現在のシニアの社会参加と健康寿命の延伸が世の中にとっては大きな効用だと考えます。そのためにも全国各地のシニア向けIT教室と連携したサービスの普及促進のモデルづくりにも着手しました。 社会貢献・地域貢献にシニア人材の力を活かす  企業内のホワイトカラーの仕事の開拓も課題ですが、地域コミュニティの活性化・再生へ向けて新しい仕事が地域で創出されていく可能性もあります。すでに高齢化率が30〜40%を超えて将来の日本の姿を先行して見せているニュータウンや、人間ならぬ施設の老朽化に対応した大規模再開発などが進む地域などで少子高齢社会に対応した地域づくりが考えられ始めています。  特に若い人材が都会に流出しているような地域では、ICTを活用したサービスの展開は必要不可欠な状態にあります。インフラなどのハードウェアレベルでのコミュニティ機能の設計に加えて、サービスなどのソフトウェアレベルでの機能設計が模索されています。地域住民同士の助け合いや、地域企業やサービスの活性化のために、そこを生活の拠点としているシニア人材に期待が寄せられています。社会貢献、地域貢献という観点からやりがいを感じさせる仕事が開拓される可能性があります。  すでに人材や求人を抱えている団体や企業に対しては、前述のGBERのようなサービスを比較的展開しやすいのですが、地域コミュニティの活性化に適用する場合はその地域を動かす、熱意のあるキーパーソンの存在が欠かせません。また、持続可能なサービスとして地域に定着させていくためには、人事手続きの簡略化や決済機能の導入など、小規模な店舗や個人が利用しやすい機能の充実が求められる要素としてあります。そのようなサービスを指向し、若い人たちの間で広がり始めているシェアリングエコノミー※5については第3回で解説していきます。 加齢による心身機能の低下をカバーしシニア人材を活用するテレワークの未来  5年後、10年後の未来ではインターネットはさらに高速化し、バーチャルリアリティ技術やロボット技術を駆使して、空間を超えて遠隔地からあたかもその場にいるような感覚でコミュニケーションを取れるようになりそうです。運動機能が衰えてなかなか外出ができなくなっても、諦めることなく社会とのつながりを維持できるようになりますし、好きな場所に旅行を続けながら遠隔地で仕事に従事することができるようになります。その際には、「人間拡張技術」と呼ばれる技術により、衰えた感覚や運動機能を補綴(ほてい)するだけでなく、より高度化する形でロボットの身体やコンピュータグラフィックスで表現された自分の分身であるアバターの身体を通じて拡張できるようになるでしょう。そのためには遠隔地をリアルに体験できるだけの技術の成長はもちろん、手軽に利用できるようになることが求められます。未来のテレワーク※6の姿については連載の第4回で技術開発の動向を紹介していこうと思います。 おわりに  経験と知識が豊富で意欲的なシニア人材が活躍できる環境が整えば、一人ひとりのシニアの生きがいと健康増進だけでなく、地域コミュニティの活性化や若年層の働き方改革の促進を加速する意義があります。そのためにも、従来型の働き方と価値観の変換、馴染みのないICTスキルの習得などの課題を乗り越えようとする、シニア一人ひとりの挑戦を応援していく必要があるのです。 ※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称 ※2 ユビキタスコンピューティング……環境に遍在するコンピュータ ※3 フレイル……加齢により心身が老い衰えた状態 ※4 吉澤裕世、田中友規、高橋 競、藤崎万裕、飯島勝矢「地域在住高齢者における身体・文化・地域活動の重複実施とフレイルとの関係」日本公衆衛生雑誌、2019・66巻・6号・p.306-316 ※5 シェアリングエコノミー……物やサービスを共有・交換して利用する仕組みのこと。自動車を共有するカーシェアリングなどが代表。本企画では、高齢者個人が持つ知識や技能を活用した働き方の形を紹介する予定 ※6 テレワーク……インターネットを介して自宅やサテライトオフィスなどで働く、時間や場所の制約を受けない働き方 図表1 逆転させた人口ピラミッド(2025年の日本の人口) 男性 女性 年齢 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 64 66 68 70 72 74 76 78 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 100 102 104 (千人) 1,000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1,000 出典:国立社会保障・人口問題研究所「出生中位(死亡中位)推計(平成29年度推計)」より作成 図表2 柏市での就労意識調査 あなたが働くとしたら、次にあげる理由はどのくらい重要ですか。 重要でない あまり重要でない ふつう やや重要 とても重要 自分が成長できること 達成感が得られること 周りの人から認められたり、評価されること 収入が得られること 世の中に貢献できること 働く仲間に貢献できること 働いている会社などの組織に貢献できること 健康が維持できること 新しい人と知り合いになれること 0 20 40 60 80 100(%) 出典:檜山敦『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方改革』(平凡社) 【P48-51】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第19回 求人広告と労働契約、パワハラの防止義務 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 求人広告と異なる内容で労働契約を結んでもよいのでしょうか  求人広告を掲載し、採用活動を行い、面接を経て、内定を出しました。ただし、雇い入れるまでの間に、社内の事情が変わったことから、採用の際には求人広告と異なる内容で雇い入れることになりました。労働条件通知書や雇用契約書には、変更後の労働条件を記載しており、労働者もこれに署名押印しています。  労働者から、求人の時と条件が異なることを指摘され、求人通りの労働条件にするように求められたのですが、これに応じなければならないのでしょうか。 A  求人広告や求人票には、雇い入れ時の労働条件を正確に記載しなければならず、これに対する労働者の期待も保護されるべきと考えられています。  求人広告などと異なる労働条件とすることについて、明確に説明を尽くして、労働契約締結に至ったのではないかぎり、求人広告通りの労働条件による労働契約が成立すると判断されるおそれがあります。 1 求人広告について  近年、企業の採用活動は、新卒のみではなく中途採用も頻繁に行われており、雇用の流動化が生じてきているように思われます。  中途採用の場合、多くの企業においては、民間企業またはハローワークなどに求人の掲載を依頼し、それを見た求職者が応募してくるという方法が一般的でしょう。  これまで、求人情報については、採用条件が明確に記載されない場合、採用後に労働条件に関するトラブルが生じやすいことが指摘されてきました。  そこで、職業安定法第5条の3は、「求職者、募集に応じて労働者になろうとする者又は供給される労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定め、求人広告の記載事項について明示義務を負わせています。  さらに、労働契約を締結しようとする場合には、「明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件(以下、この項において「従事すべき業務の内容等」)を変更する場合その他厚生労働省令で定める場合は、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない」とされ、求人情報の変更の際には、変更後の条件を明示する義務まで定めており、求人情報と労働条件の相違がなくなるような施策が採用されています。 2 求人情報の記載と労働条件  求人情報の正確性を保つ施策が採用されているとしても、これは行政上の規制であり、労働契約の成立にあたって、どのような効力があるのかについては、労働契約成立の過程などをふまえた、当事者間の合理的な意思解釈に基づき行われることになります。  過去に、求人票と労働条件が異なることが紛争に至った事件があります。例えば、東京地裁平成21年9月28日判決があります。  当該裁判例は、雇用形態について「正社員」である旨記載された求人票に基づいて応募してきた求職者に対して、会社が「契約社員」としての採用を決定し、その旨を求職者に伝えたうえで、雇用契約の締結に至った事案です。  まず、求人票と労働契約の関係について、「使用者による就職希望者に対する求人は、雇用契約の申込の誘引であり、その後の採用面接等の協議の結果、就職希望者と使用者との間に求人票と異なる合意がされたときは、従業員となろうとする者の側に著しい不利益をもたらす等の特段の事情がない限り、合意の内容が求人票記載の内容に優先すると解するのが相当である」と判断基準を示し、労働条件を知らされてから1カ月以上の検討期間が設けられていたこと、他社に在籍中でもあったことから契約締結を余儀なくされる状況にもなかったことなどから、正社員から契約社員へ労働条件が変更されたとしても、最終的な労働契約の合意が優先されると判断しました。  一方、反対の結論となった裁判例もあります。京都地裁平成29年3月30日判決であり、こちらも正社員としての採用が求人票に記載されていたところ、実際の契約においては契約社員とされたというものです。当該判決は、「求人票は、求人者が労働条件を明示した上で求職者の雇用契約締結の申込みを誘引するもので、求職者は、当然に求職票記載の労働条件が雇用契約の内容となることを前提に雇用契約締結の申込みをするのであるから、求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情のない限り、雇用契約の内容となると解するのが相当である」という判断基準を示しました。また、当該事件においては、面接時においても求人票と異なる条件の説明はなかったことなどから、特段の事情の存在を認めることなく、求人票記載通りの労働契約が成立したものと判断されました。 3 求人票記載時の留意事項  結論の異なる2種類の判決を紹介しましたが、いずれの裁判例からも求人票記載の際に留意すべき事項は整理することが可能と考えられます。  求人情報の掲載が、労働契約の申込みを誘引するために行われることは疑いないところであるため、特段の変更が示されないかぎりは、誘引の原因となった求人情報と同じ内容での労働契約が成立するというのが自然な流れでしょう。  求人票と異なる労働条件で労働契約を成立させるためには、求人票よりも後の段階で、異なる労働条件の提示がなければなりません。このことは、職業安定法が、労働条件を変更する場合には、変更後の条件を明示しなければならないと定めたこととも相まって、不意打ち的な変更は許されにくい傾向になっていくでしょう。  二つの裁判例の結論を左右したのは、面接の時点やその後の労働条件のやり取りにおいて、変更する内容について提示したうえで、求職者に判断する機会を与えていたことです。  さらにいえば、検討の機会を与えるだけでは不十分な場合もあります。それは、変更の機会を与えられたとしても、選択の余地がないような状況に置かれている場合には、変更された労働条件に応じる以外の選択肢が実質的には存在しないことになるため、前職を退職した後に変更内容を示したり、生活に困窮している状況にある求職者である場合には、求人票通りの労働条件による労働契約が成立する可能性は否定できません。  求人票と異なる労働条件とならないように、変更時点で明示することに留意するとともに、やむを得ず、求人票と異なる労働条件で合意に至る場合には、その旨を明示したうえで、検討の機会を十分に与えることが必要でしょう。 Q2 パワハラの法規制について詳しく知りたい  法改正によりパワーハラスメントについても法律で規制されるようになったようですが、どのような内容なのでしょうか。  また、どのような行為がパワハラになるのか、人間関係が考慮されるというのは本当なのでしょうか。業務との関連性はどのように判断されるのでしょうか。 A  「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正により、使用者に対するパワハラの防止義務が定められました。  過去のパワハラの裁判例では、人間関係をふまえた判断が行われているケースや、業務上の必要性を肯定してパワハラを否定している事例もあります。 1 パワハラ防止に関する法律について  この度、法改正によりパワハラに関する法規制が実施されることになりましたので、改めて、新法の内容と、パワハラの具体的な例や責任を負担する当事者について、裁判例をもとに整理してみたいと思います。  パワハラの防止に関して定められたのは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下、「労働施策総合推進法」)の第30条の2です。  パワハラの定義については、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定められました。優越的な関係を背景とするという点などは、上司から部下に対する権力的な行為にかぎらないという点が明らかにされており、一般的にイメージされるパワーハラスメントのみならず、いわゆる職場におけるいじめのような行為も含んでいます。  また、かつては、「業務の適正な範囲を超えて」行われる行為か否かという基準であった点は、「業務上必要」かつ「相当」という定め方に変更され、適正な範囲よりも検討の要素が明確にされました。 2 パワハラと人間関係の考慮について  パワーハラスメントについては、当事者同士の人間関係から、許容される場合もあるなどといわれることがあり、このことがパワーハラスメントの判断をむずかしくしていることがあります。それでは、実際の裁判例ではどうなっているのでしょうか。  例えば、東京地裁平成27年9月25日判決においては、学内行事の企画について問い詰め、水またはお茶をかけたほか、「あんたはバカなんだから」、「あんたは実力がない」、「あんたなんかいなくたっていい」などに類する発言をした行為に対する降格処分の有効性が争われたところ、当事者の人間関係について、「業務と無関係な私的時間と考えられる場面を含めて原告らと常時行動を共にするなど、少なくとも外見的には原告らと良好な人間関係を保っていた」ことから、「深刻な被害感情を抱いていることにまで思いが至らなかったとしてもやむを得ない面がある」ため、被害感情が必ずしも大きいとは評価できなかったことと相まって、処分量定上十分に斟酌(しんしゃく)する必要があるとされ、降格処分は重きにすぎるとして無効と判断されました。なお、加害者の行為自体がパワハラに該当しないという判断ではないことには留意する必要があります。  また、一方で周囲との人間関係の醸成が十分ではない新入社員に対して、「何でできないんだ」、「何度も同じことをいわせるな」、「そんなこともわからないのか」、「俺のいっていることがわからないのか」、「なぜ手順通りにやらないんだ」など周囲にほかの従業員らがいるかいないかにかかわらず、5分ないし10分程度、大声かつ強い口調で叱責していた行為などについて、「社会経験、就労経験が十分でなく、大学を卒業したばかりの新入社員であり、上司からの叱責に不慣れであった」者に対し、「一方的に威圧感や恐怖心、屈辱感、不安感を与えるものであったというべき」として、悪質性の高い行為として評価されています。 3 業務上の必要性について  違法なパワーハラスメントになるか否かについては、業務上の必要性の程度も考慮されます。  例えば、静岡地裁平成26年7月9日判決では、「指示や叱責等は、原告が主張するようにそれが行き過ぎる場合があったとしても、主として、発足したばかりのデイサービスの経営を軌道に乗せ、安定的な経営体制を構築しようという意図に出たものと推認される」などとして、違法とは評価しなかった事例もあります。  また、医療機関における厳しい指導や指摘に関して、一般に医療事故は単純ミスがその原因の大きな部分を占めることや、それによる損害が非常に重大となりうることをふまえて、「単純ミスを繰り返す原告に対して、時には厳しい指摘・指導や物言いをしたことが窺(うかが)われるが、それは生命・健康を預かる職場の管理職が医療現場において当然になすべき業務上の指示の範囲内にとどまるものであり、到底違法ということはできない」と判断している例もあります。  今回の法制化によっても、業務上の「必要性」と「相当性」という要件が定められていますが、この二つの要件は相関関係にあり、必要性が高度である場合は、許容される指導や叱責の範囲も広くなるという傾向は、今後も変わりないと考えられます。 4 パワハラ防止義務について  今回の労働施策総合推進法において、パワハラ防止の義務が明記されましたが、過去の裁判例においても同様の義務を設定している裁判例もあります。  例えば、東京高裁平成29年10月26日判決においては、「安全配慮義務のひとつである職場環境調整義務として、良好な職場環境を保持するため、職場におけるパワハラ」を防止する義務を負い、「パワハラの訴えがあったときには、その事実関係を調査し、調査の結果に基づき、加害者に対する指導、配置換え等を含む人事管理上の適切な措置を講じるべき義務を負う」として、法制化の前から使用者の義務としてパワハラの防止義務を根拠に、労働者に対する損害賠償責任を肯定した事例もあります。事案に応じた判断は必要ですが、今回の法律と比較すると、適切な措置の内容として指導、配置換え等などの具体例も示されている点は参考になると考えられます。 【P52-53】 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復  高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。 国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡辺(わたなべ)恭良(やすよし) 第6回 疲労の回復に効果が期待できる栄養素  第3回(8月号)でご紹介したように、ヒトが生命活動を行うなかで、全身では多くの活性酸素(酸素ラジカル)が生産されます。この悪玉の活性酸素が、細胞の重要な部品(タンパク質や細胞膜脂質など)を酸化させて一時的に傷つけてしまうことによって、疲労がもたらされるのです。加えて、細胞の傷が修復できないままの状態で残ってしまうと「老化」にもつながることがわかってきています。  疲労の回復のためには、身体のホメオスタシス(恒常性)を維持する仕組みや、質のよい睡眠を十分に取るといった、体内の抗酸化物質の作用からの回復(=細胞の酸化状態からの回復)に努めることが大切です。さらに疲労を解消するためには、@細胞やタンパク質を傷つける活性酸素の発生を抑え、A発生した活性酸素を解消し、B傷ついた細胞を活性化するために必要な栄養素を摂ることで「疲労回復システム」を確実に修復することも必要です。疲労回復システムがスムーズに稼動すれば、疲れにくくなり、疲労の予防にもなります。そこで今回は、食生活の面から疲労回復するための対策として、どのような栄養素が疲れを予防し、疲れの解消に効果を発揮するのかを紹介します。 食事で疲れを取る!  活性酸素の発生を抑え、代謝をよくするカギは、毎日の食事にあります。エネルギーを増大させ、疲労回復に有効な栄養素は図表の通りですが、これらの栄養素をバランスよく摂ることが重要です。 (1)ビタミンB1  ごはんやパンなどの炭水化物は、呼吸から取り入れた酸素を使うことでエネルギー(アデノシン三リン酸、ATP※)となります。その過程でビタミンB1の助けが必須になります。ビタミンB1が不足すると、炭水化物をどんなに食べてもエネルギーに変えることができません。 【多く含まれる食品】うなぎ、かつおなど (2)α−リポ酸  α−リポ酸はビタミンの一種で、ビタミンB1とともに働き、炭水化物のエネルギー代謝を促進させるほか、活性酸素を防ぐ抗酸化作用があります。α−リポ酸が少なくなると、糖がエネルギーとして代謝されず、肥満の原因にもなります。α−リポ酸の抗酸化作用はビタミンCやビタミンEの数百倍もあるとされます。抗疲労の強力な助っ人といえるでしょう。 【多く含まれる食品】じゃがいも、トマトなど (3)パントテン酸(ビタミンB5)  パントテン酸は、ビタミンB2と協力して脂質の分解を促してエネルギーに変えるコエンザイムAの主材料で、必要不可欠の物質です。 【多く含まれる食品】桜えび、ほうれん草など (4)L−カルニチン  L−カルニチンは脂肪燃焼系アミノ酸です。脂肪酸がエネルギー工場のミトコンドリア膜に導入するために必要な物質です。ミトコンドリア膜は糖質や脂肪からエネルギーを産出する細胞小器官で、脂肪酸はそのままでは通過できず、L−カルニチンと結合して初めて通ることができます。 【多く含まれる食品】ラム肉、かつお、赤貝など (5)クエン酸  ヒトには身体を動かすためのエネルギーをつくるシステム(TCA回路)が備わっており、そこではエネルギーとなるATPがつくられています。この回路の動きをスムーズにして、効率よくエネルギーをつくりだす手助けをするのがクエン酸です。 【多く含まれる食品】柑橘類(レモン、グレープフルーツなど)、食酢など (6)コエンザイムQ10(CoQ10)  コエンザイムQ10は、ATPをつくる最終段階に必須の物質です。人の身体に含まれている補酵素ですが、加齢とともに産生能力が減少しますので、高齢者には不足がちで注意が必要です。これが不足するとエネルギーの産出に支障が出るため、食べ物から補うことが大切です。コエンザイムQ10は抗酸化作用も持ち、細胞膜の酸化を防ぎ、酸素の利用効率を高めます。 【多く含まれる食品】牛乳、いわしなど (7)イミダゾールジペプチド  イミダゾールジペプチドは、ヒトや動物の骨格筋にある二つのアミノ酸が結合したものです。渡り鳥が長時間、翼を休めずに飛び続けたり、遠洋回遊魚が長距離を泳ぐ原動力となっていることが知られており、強い抗酸化作用と疲労を軽減する効果が実証されています。 【多く含まれる食品】鶏の胸肉、かつお、まぐろ、かじきまぐろ、くじらなど 栄養はバランスよく!  疲労の原因である活性酸素の害から身体を守るためには、前述した栄養素を十分に摂る必要があります。ただし、一つの栄養素だけ摂れば効果があるというものではありません。栄養素は単独で役割を果たすのではなく、それぞれがお互いに助け合ったり、影響し合ったりして、パワーを発揮するのです。一つの栄養素に限らず、疲労回復に有効な栄養素をいろいろと組み合わせて、バランスよく摂るようにするのがよいでしょう。  また、身体の構成に欠かせない肉類や大豆などに含まれるタンパク質は、毎日、欠かさず摂るように心がけてください。代謝に不可欠な酵素や免疫の抗体なども、タンパク質が主たる材料になっているのです。そして、タンパク質はエネルギー源としても重要です。動物性と植物性のタンパク質をバランスよく摂ることが大切であることも覚えておきましょう。 わたなべ・やすよし 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。 ※ ATP……すべての生物の細胞内に存在するエネルギー分子で、ATP は活性酸素によって傷ついた細胞を修復するときに重要な役割を果たしている 図表 科学的に検証された抗疲労に効く栄養素 抗疲労 ビタミンB1 α-リポ酸 パントテン酸 L-カルニチン クエン酸 コエンザイムQ10(CoQ10) イミダゾールジペプチド 出典:筆者作成 【P54-55】 参加無料 2019年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ  「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を、下記の日程で本年度も開催します。  本年度は、「高齢社員を戦力化するための工夫」、「継続雇用・定年延長制度」をテーマに、全国6都市(北海道・富山・東京・大阪・香川・福岡)の会場で開催。今号では、3会場のご案内をします(他会場はすでに終了しています。開催内容は今後、本誌で紹介する予定です)。  政府においても、令和元年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」において、70歳までの就業機会の確保について定年延長や継続雇用など、企業において高齢者の活躍を促進する環境整備の必要性が示されています。  このシンポジウムでは、高齢者雇用の促進に向け、具体的な定年延長等の進め方、高齢者の活躍の促進(戦力化)について、みなさまとともに考えていきます。なお参加費は全会場、無料となっています(事前申込みが必要)。  高齢者雇用の環境整備に向けた課題へ取り組まれる事業主や、人事担当のみなさまのご参加を、心からお待ちしています。 東京 2019年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ〜 日時 2019年11月13日(水) 13:00〜16:00 場所 イイノホール 千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング (日比谷線・千代田線「霞ヶ関駅」C4 出口直結) 定員 450人(先着順) 《プログラム》 講演 「高齢社員の人事戦略と人事管理―戦力化に向けた仕事・賃金・キャリア―」 千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授 藤波 美帆 氏 企業事例 損害保険ジャパン日本興亜株式会社/株式会社ポーラ パネルディスカッション 「高齢社員を戦力化するための工夫」 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 日本クッカリー株式会社 株式会社ポーラ 申込み方法 シンポジウムのお申込みは、以下の専用URLからお願いします。 参加申込受付は11月11日(月)までの予定です。 https://krs.bz/jeed/m/tokyo-191113 ※申込みの際に取得した個人情報は適切に管理され、当機構が主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用します。利用目的の範囲内で適切に取り扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供しません。 福岡 2019年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ〜 〈高年齢者雇用管理セミナー同時開催〉 日時 2019年11月28日(木) 13:00〜16:30 場所 JR九州ホール 福岡市博多区博多駅中央街1-1 JR 博多シティ9階(JR「博多駅」直結) 定員 250人(先着順) 《プログラム》 講演 「高齢社員の人事管理 60歳代以降を考える」 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎 氏 企業事例 イオン九州株式会社/株式会社ケアリング パネルディスカッション 「高齢社員を戦力化するための工夫」 申込み方法 「参加申込書」を当機構福岡支部ホームページからダウンロードいただき、福岡支部高齢・障害者業務課あてにお申し込みください。 福岡支部ホームページ http://www.jeed.or.jp/location/shibu/fukuoka/elderlyseminar.html 大阪 2019年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ〜 日時 2019年12月3日(火) 13:00〜16:10 場所 ドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)7階ホール 大阪市中央区大手前1-3-49(京阪電車「天満駅」、大阪メトロ谷町線「天満駅」350m) 定員 400人(先着順) 《プログラム》 講演 「高齢社員の戦力化と人事管理の整備―『知る』仕組みと『知らせる』仕組みの整備―」 玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 大木 栄一 氏 企業事例 株式会社島屋/レンゴー株式会社 パネルディスカッション 「高齢社員を戦力化するための工夫」 申込み方法 シンポジウムの参加お申込みは、以下の専用URLからお願いします。 参加申込受付は11月27日(水)までの予定です。 https://krs.bz/jeed/m/osaka-191203 ※シンポジウム申込みによりいただいた個人情報については、当機構が主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用させていただきます。利用目的の範囲内で適切に扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供いたしません。 お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 http://www.jeed.or.jp/ 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 【P56】 日本史にみる長寿食 FOOD 314 ニンジンを食べて今日も元気 食文化史研究家● 永山久夫 江戸っ子は葉も食べていた  ニンジンはセリ科に属し、原産地は中央アジアから北アフリカにかけて、幅広く分布しています。中国経由で日本に入ってきたのは戦国時代で、普及するのは江戸時代になってから。  1697(元禄10)年の『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』という食物事典によると、「人参菜」とあり、葉もほかの葉野菜と同じように、いろいろな料理法で食べられています。根の方は現在と同じ「ニンジン」と呼ばれ、「煮ると甘く、味噌漬けやかす漬けにするとうまい」とあります。  葉には、ビタミンC、E、それに骨を丈夫にするビタミンK、脳の若さを保つ作用で注目の葉酸などが、根よりも多く含まれており、江戸の人たちのように、もっと活用すべきではないでしょうか。  明治になって、ヨーロッパの文化が渡来して、野菜としての地位も向上し、栄養効果も高いことから、広く普及し家庭料理の材料としても人気が出ます。当時のサラリーマンの弁当のおかずとして、ニンジンとゴボウのキンピラが大評判となりました。  ところが江戸時代まで食べられていた葉の方が、明治に入るとなぜか食用とされることが少なくなり、現在と同じように食べるのは根が中心となってしまいます。 油料理で健康効果が高くなる  健康によい野菜というと、まっさきに「ニンジン」をあげる人が多いそうですが、そのくらいに健康野菜として注目されているのです。鮮やかな赤だいだい色からもわかりますが、ニンジンはカロテン含有量が多く、野菜のなかでもトップクラス。ニンジン中のカロテンの大部分は、抗酸化成分として知られるベータ・カロテンで、若返りやガン、動脈硬化などの予防に役立つことが期待されています。  カロテンは油溶性なので、生のまま食べても吸収率は低く、油で炒めたりテンプラにすると、吸収率もよくなり、健康効果も高くなることがわかっています。  油を用いて料理するキンピラは、栄養的にも理にかなっています。ニンジンの葉も立派な緑黄色野菜であり、先述の栄養素に加え、カロテンや食物繊維も多く、テンプラや油炒めなどにすると風味があります。 【P57】 BOOKS 働き方改革関連法にも対応した改訂版、人事労務担当者必携の一冊 就業規則モデル条文 第4版 ―上手なつくり方、運用の仕方 中山慈夫(しげお)著/ 経団連出版/ 4000円+税  法律の改正はもとより、会社の成長や労働環境の変化、営業譲渡や吸収合併などの大きな変化があった場合、さらには助成金の受給など、就業規則見直しの動機はさまざまである。しかし、どのような理由にせよ、コンプライアンス重視の観点からは不断の見直しが必要となる。  本書は2007(平成19)年に初版を刊行してから順調に版を重ねている、定評ある解説書の第4版である。企業実務の立場から、就業規則の作成手続きと効力に関するルールを説き、必要不可欠と思われるモデル条文を掲げて、その意味と現在の労働法令上の根拠を示しており、自社の就業規則のどこを見直せばよいかがわかりやすく整理されている。また、働き方改革関連法にも対応しており、副業、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の確実な取得、ハラスメント対応なども取り上げているほか、職場で生じやすい問題について、過去の判例をもとに詳述。各条文についての「基本的な考え方」を示したうえで、運用上問題となりやすい事項を「チェックポイント」、「問題点」として解説するとともに、「検討を要する実例」もわかりやすく示す構成となっている。人事労務担当者必携のおすすめの一冊だ。 公正な評価と処遇を実現したい担当者のための解説書 同一労働同一賃金の基本給の設計例と諸手当への対応 佐藤 純(じゅん)著/ 公益財団法人日本生産性本部 生産性労働情報センター/ 2000円+税  一連の働き方改革のなかでも関心が高いとされる「同一労働同一賃金」。本誌でも8月号と9月号の「特別企画」において、厚生労働省による解説を掲載した。各企業でも、人事政策の再構築を模索しているのではないかと思われる。  本書は、人事・賃金・評価制度などの設計と運用に精通した、ベテランのコンサルタントによって執筆されたもので、「同一労働同一賃金」のガイドラインに示された、基本給と諸手当の具体的な制度事例がまとめられている。  大きく三つのパートから構成されており、「第1部 概論」では、「同一労働同一賃金」をめぐる法改正の経緯とポイントがわかりやすく整理されている。「第2部 基本給の設計例と諸手当への対応」では、基本給の設計の基本と「同一労働同一賃金」に対応する基本給の設計例が示され、「第3部 ケーススタディ編」では、人事労務担当者が疑問に感じることが多いと思われる、基本給や諸手当、福利厚生などに関する25のQ&Aが掲載されている。  賃金制度にはさまざまな種類、多様な選択肢がある。本書はより良い賃金制度を構築するためのたたき台であり、公正な評価や処遇の構築を目ざす担当者におすすめしたい。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 平成30年「雇用動向調査」結果  厚生労働省は、平成30年「雇用動向調査」の結果を公表した。  調査は、全国の主要産業における産業別などの入職者数・離職者数、入職者・離職者の性・年齢階級別、離職理由別などにみた状況を明らかにすることを目的に実施している。調査時期は上半期と下半期の年2回で、今回の調査結果は5人以上の常用労働者を雇用する事業所から1万5291事業所を抽出して行い、8325事業所(上半期)と7658事業所(下半期)から有効回答を得て、2回の調査結果を合算して年計としてまとめた。なお、回答を得た事業所の入職者5万9622人(上半期と下半期の計)、離職者7万8212人(前同)についても集計している。  調査結果によると、2018(平成30)年1年間の入職者数は約767万人(前年約788万人)、離職者数は約724万人(同約735万人)となっている。これを率でみると、入職率は15・4%で前年(16・0%)と比べ0・6ポイント低下、離職率は14・6%で前年(14・9%)と比べ0・3ポイントの低下となった。その結果、0・8ポイントの入職超過となり、6年連続して入職超過となった。  入職率と離職率を性・年齢階級別にみると、男女ともに入職率は24歳以下がほかの年齢階級に比べて高く、離職率は29歳以下に加えて60歳以上も高くなっている。 厚生労働省 「生涯現役促進地域連携事業(令和元年度開始分・2次募集)」の実施団体を決定厚生労働省  厚生労働省は、「生涯現役促進地域連携事業(令和元年度開始分・2次募集)」の実施団体として、4団体の採択を決定した。  同事業は、地方自治体が中心となって労使関係者や金融機関等と連携する「協議会」などが提案する高齢者に対する雇用創出や情報提供などといった高齢者の雇用に寄与する事業構想のなかから、地域の特性などをふまえた創意工夫のあるものを選定し、当該事業を提案した協議会などに委託して行うもの。委託費は、1年度あたり都道府県は4000万円、政令指定都市および特別区は3000万円、その他市町村は2000万円で、事業実施期間は最大3年。  採択された4団体と各事業のタイトル、各事業の対象地域は次の通り。 @陸前高田市生涯現役促進地域連携協議会  「陸前高田市高齢者が生涯現役で活躍できる『ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり』事業」(対象地域:岩手県陸前高田市) A松本市生涯現役促進協議会  「美しく生きる。健康寿命延伸都市・松本〜生涯現役で生きがいの仕組みづくり〜」(対象地域:長野県松本市) B香川県生涯現役促進地域連携事業推進協議会  「ずっとずっとかがやくけん!かがわ生涯現役促進地域連携事業」(対象地域:香川県) C佐賀県シニアはたらきたいけん推進協議会  「佐賀県シニアはたらきたいけん推進事業」(対象地域:佐賀県) 厚生労働省 令和元年度「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」受賞者厚生労働省  厚生労働省は、令和元年度「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」の受賞者を決定した。この表彰は、障害者を積極的に多数雇用している事業所や職業人として模範的な業績をあげている障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行うもの。  今年度の受賞者は、障害者雇用優良事業所が17事業所、優秀勤労障害者が17人となっている。  また、当機構が主催(厚生労働省後援)する「障害者雇用職場改善好事例」の応募事例のうち、特に優秀なものに対して授与する厚生労働大臣賞に、株式会社シーエックスカーゴ桶川流通センター(埼玉県)が選ばれた。同社では、加齢にともない体調を崩すことが増えた従業員に対して通院に配慮し勤務時間を柔軟に設定するなどの取組みのほか、企業在籍型ジョブコーチが障害のある従業員一人ひとりの体調を確認し、持病や服薬状況を含めた配慮事項が一目でわかる「フェイスシート」を作成し、共有するなどの取組みを行っていることが評価された。  同じく、当機構が主催する「障害者雇用支援月間ポスター原画」の厚生労働大臣賞に、絵画の部では、愛知県の鈴木咲乃(さの)さん(小学校の部)、鹿児島県の新倉(しんくら)政亮(まさあき)さん(中学校の部)、岡山県の竹下希(のぞみ)さん(高校・一般の部)、写真の部では、岡山県の合地(ごうち)睦(むつみ)さんが選ばれた。  また、当機構理事長表彰は、障害者雇用優良事業所として30事業所、障害者雇用の促進と職業の安定に貢献した団体・個人として1事業所と1人、優秀勤労障害者として29人が表彰された。 厚生労働省 「平成30年度雇用均等基本調査」  厚生労働省はこのほど、「平成30年度雇用均等基本調査」結果を公表した。  「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に実施しており、2018(平成30)年度調査では、全国の企業と事業所を対象に、管理職に占める女性の割合や、介護休業制度の利用状況などについて、昨年10月1日現在の状況をまとめた。主な内容は次の通り。 【企業調査】 〇係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は10・7%(前年度10・6%)、課長相当職は19・0%(同17・7%)、係長相当職は21・7%(同19・4%)。 〇管理職に占める女性の割合は、課長相当職以上(役員含む)で11・8%(前年度11・5%)。役職別にみると、部長相当職では6・7%(同6・6%)、課長相当職では9・3%(同9・3%)、係長相当職では16・7%(15・2%)。 【事業所調査】 〇育児休業の取得期間は、女性は「10か月〜12か月未満」が31・3%(2015年度31・1%)と最も高く、男性は「5日未満」が36・3%(同56・9%)と最も高い。 〇介護休暇制度の規定がある事業所の割合は60・8%(前年度64・8%)、うち事業所規模30人以上では81・0%(同83・5%)で、前回調査に比べ、それぞれ低下した。 調査・研究 介護労働安定センター 「平成30年度介護労働実態調査」介護労働  公益財団法人介護労働安定センターは、平成30年度に実施した「事業所における介護労働実態調査」、「介護労働者の就業実態と就業意識調査」の結果を公表した。調査は2018(平成30)年10月に実施し、それぞれ9102事業所、2万2183人から有効回答を得た。  まず、事業所調査の結果から、従業員の過不足状況をみると、不足感(「大いに不足」+「不足」+「やや不足」)は67・2%となっており、前年度(66・6%)と比べ0・6ポイント増加し、5年連続して不足感が増加している。  賃金についてみると、月給制の者の平均所定内賃金額は、訪問介護員(いわゆるホームヘルパー)20万6312円(前年度19万8486円)、介護職員(訪問介護以外の介護保険法の指定介護事業所で働き、直接介護を行う者)21万4721円(前年度21万1464円)となっている。  また、介護労働者の年齢割合をみると、65歳以上の割合は12・2%で全体の1割を超え、60歳以上では21・6%と全体の2割を超えている。年齢割合は、40歳以上45歳未満、45歳以上50歳未満に次いで、65歳以上が3番目に多くなっている。  次に、介護労働者の就業意識調査の結果から、労働条件・仕事に関する悩み(複数回答)をみると、「人手が足りない」が54・2%と最も高く、「仕事内容のわりに賃金が低い」39・1%、「有給休暇がとりにくい」31・5%の順となっている。 発行物 JILPT 生涯現役を見据えたパラレルキャリアと社会貢献活動報告書を刊行  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、『JILPT資料シリーズbQ15 生涯現役を見据えたパラレルキャリアと社会貢献活動―企業人の座談会(ヒアリング調査)から―』を刊行した。  「人生100年時代」を見据え、定年退職後も生きがいを感じられる生涯キャリアをいかにつくるかが課題となっている。そこでJILPTでは、実際に企業で働く人々の意識を探るべく、ボランティアや社会貢献活動とキャリアのかかわりについて、調査協力企業2社において座談会形式(グループヒアリング)で調査を実施した。調査協力企業は大手商社A社、大手金融機関B社で、ヒアリングは年齢階層別に5〜9名、各社5グループで構成し、計65名(A社30名、B社35名)が参加。調査は就業時間中に2時間程度の時間を得て、各グループ1回ずつ、計10回行った。  調査結果によると、ヒアリングに参加した多くの人が、退職後の生き方について不安を感じていることがわかった。本報告書は、今後の社会生活を考えるうえで、企業の人事、CSR担当者をはじめ、NPOや社会貢献活動にたずさわる人々に参考資料として活用されることも期待される。  報告書は左記のURLからダウンロードが可能で、購入する際の価格は1000円(税別)。 https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/215.pdf 【P60】 次号予告 12月号 特集 70歳雇用先進企業はこうしている リーダーズトーク 岩田喜美枝さん 元・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 元・資生堂代表取締役執行役員副社長 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには−− 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。   URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder  A1冊からのご購入を希望される方   Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢 春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷 寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本 節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 清家 武彦……一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 上席主幹 深尾 凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員 藤村 博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下 陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア 京子……アテナHROD代表、学習院大学特別客員教授 編集後記 ●10月3日に「高年齢者雇用開発フォーラム」が開催されました。多くの方にお集まりいただき、改めてお礼申し上げます。  当日は、高年齢者雇用開発コンテストの表彰式のほか、法政大学名誉教授の諏訪康雄先生による記念講演、コンテスト受賞企業のなかから「五色会」、「建設相互測地社」、「松川電氣」による事例発表、東京学芸大学の内田賢教授と登壇企業3社によるパネルディスカッションなどが行われました。今後の高齢者雇用、生涯現役社会の実現に向け、さまざまな意見を聞くことができ、非常に有意義な時間となりました。諏訪先生の記念講演、パネルディスカッションの様子は、本誌1月号に掲載する予定です。  また、先月号に続き今月号の特集でも、高年齢者雇用開発コンテスト受賞企業の取組みを紹介しました。業種や業態、会社規模などが異なる受賞企業ですが、各社それぞれが置かれている状況に合わせた高齢者雇用に取り組んでいます。各取組みのなかから、自社の高齢者雇用のヒントを見つけ、取組みの推進につなげていただければ幸いです。 ●今月号より、檜山敦先生の新連載、「AI・ICTで働き方が変わる―高齢者から始まる働き方改革―」がスタートしました。生涯現役時代を迎え、高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」です。AI・ICTの活用により、経験と知識が豊富で意欲的な高齢者が活躍できる環境を生み出すことは、一人ひとりの生きがいと健康増進だけでなく、地域コミュニティの活性化や若年層の働き方改革の促進にも寄与できる意義があります。当連載を参考に、高齢者雇用の取組み推進につなげていただければと思います。また、気になるポイント、知りたいことなど、読者のみなさまからのご意見もお待ちしています。 月刊エルダー11月号 No.481 ●発行日−−令和元年11月1日(第41巻 第11号 通巻481号) ●発 行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2  TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL http://www.jeed.or.jp  メールアドレス elder@jeed.or.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-729-9 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.306 フランス菓子文化の伝道者日本最高峰の技と味を形に 洋菓子職人 藤生(ふじう)義治(よしはる)さん(72歳) フランスの文化を大事にしたい。経験してきた自分の意識や想いに細かなところまでこだわりたい。小さなお店だから徹底できます。 四季を愛し、自然を愛し、お菓子を愛するシェフの店  緑と歴史の街、東京都日野市。高幡不動(たかはたふどう)駅から高幡不動尊へ続く小道に、洋菓子店「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」がある。  「四季を愛し、自然を愛す」とフランス語で書かれている店内のショーケースには季節のケーキ、ガトー・セゾンの棚。春夏秋冬の新作が並び、旬を楽しめる。  クラシックな姿の伝統菓子からは気品と奥深さが香り、定番ものには安心感や再発見がある。  味も見た目も最高峰の生菓子や焼き菓子、約200種類が揃う。 オーナーの藤生義治シェフが、  「隅々(すみずみ)まで目が届くのがいい」という小さなお店。いまもなお現役で厨房に立ちながら、お客さまの目でショーケースを見る。お菓子への愛と厳しさにあふれる藤生さんは、若い職人を鍛えるのも日課だ。  パリで修業する日本人がまだ10人たらずの時代に藤生さんは23歳で渡欧して、パリの有名店ジャン・ミエで修業。その後、ウィーンの老舗ハイナー、スイスの製菓学校を経て帰国。キャリアを重ねた。  パティシエ人生50年。甘さは、時代とともに変わってきたと語る。  「当時のパリでは甘さたっぷりお酒もたっぷりだったのが、いまは健康志向で控えめですからね」  このバランスは味に影響する。甘さを変えず、お酒だけ減らしても味が違う。甘さ控えめで、お酒だけ多いと酔ってしまう。  大切にしてきたのは味だ。  「古典から伝統菓子をつくりますが、現代のほうが材料が良質で昔よりおいしくなる。バターや生クリームは北海道産。ヨーロッパに気候が近いので、おいしいです」  話を聞くほど、藤生さんは甘い物が好きだとわかる。取材中に、少し意外な発言もあった。  「歳のせいか、和菓子の甘さがいいよね。季節を大事にしているのもいい」と。よいものはよいと、素直に感じて、憧れる。自分の味覚にヨーロッパで学んだ技術を重ねたから、ものにできたのだろう、と藤生さんは述懐した。 教えるときに個性は見ません計量や数字、基本が大事です  フジウで学びたいと、専門学校を出た若者が毎年春になると店に入ってくる。  ここにいられるのは5年までだ。藤生さんの横で仕事ができるのは2年目から。先輩と後輩が一緒に作業し、藤生さん直伝の技をしっかりと受け継ぐ。そして、5年目には新作を考えてもらう。これもフランス流でありフジウ流だ。  「どこへ行っても何とかやっていける基礎を身につけさせます。そして、次の段階へ送り出します」  それぞれの個性を見て教えることはしない。必要なことはだれでも同じという信念がある。  「フランス菓子は材料の配合がきちんと書いてある。数字通りに計量することが製菓の基本です」  開店前、準備で忙しくても、その基本は必ず守る。計量や確認ができていなければ、その場で注意が飛ぶ。  数字も工程も、一つひとつすべてに意味があるのだという。 フランス菓子の文化を大切に本物をわかってもらう工夫  朝、藤生さんはスタッフと握手で挨拶する。それもフランス流だ。  開店は朝9時。最初のお客さまが古典菓子「ソーシソン」を購入。100年前のルセット(レシピ)をよみがえらせたおすすめの一品で、名前はソーセージの形が由来だ。  藤生さんがこだわっているのは本物のフランス菓子、フランスの文化だ。いわゆるショートケーキも、フジウでは「フレジェ」といい、生クリームが濃厚でコクのある本格的なフランス菓子である。  そして、お客さまに伝わるよう、読みがなや説明書きは日本語で書かれている。  栗が印象的な「モンブラン」も、由来である山の形を大事にする。焼きメレンゲを土台につくられた本場の味に、期待が膨らむ。  正統なものをつくり、その価値や文化を味で伝えていく精神は、まさにフランスのエスプリだ。 パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ http://chef-fujiu.com/index.html 東京都日野市高幡17-8 TEL:042(591)0121 (撮影・福田栄夫/聞き手・朝倉まつり) ※1 シトロン……レモン味のクッキー ※2 著書『パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウの現代に甦るフランス古典菓子』は、料理分野の良書で知られる柴田書店が制作した。「ソーシソン・オ・パン・ヴリュ」などの古典菓子、「シトロン」をはじめとする定番菓子、「パート・ダマンド・フリュイ」など数々のコンフィズリーのルセットも掲載。アレンジ理由や工程も記載され、本格的なフランス伝統菓子を若手職人に伝える一冊である 写真のキャプション 開店前は多忙を極める。若い職人の仕事ぶりや後ろのオーブンの温度も気にかけつつ、速く正確な手仕事で1 枚ずつシトロン※1に砂糖を塗る藤生さん 縁あって、高幡不動に店を開いて27年。赤いクルマは、藤生さんが店にいる目印 焼き菓子も豊富。マルコナ・アーモンドと北海道産バターでつくるフィナンシェも味わい深い きらびやかで甘いコンフィズリー(砂糖菓子)は元気のもと。著書には、製法やコツも掲載※2 ふちまでおいしいシトロンに仕上げる菓子職人の美しい手仕事 モンブランの絞り出し。先輩後輩の二人一組で作業する 約100年前の菓子ソーシソン(左)。50年前の修業先ジャン・ミエ流のシトロン(右)。味も芸術品 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! 今回は迷路です。物語をたどりながら進めます。 めんどうになっても我慢して、ていねいに進める力を鍛えましょう。 第30回 お散歩物語迷路 ルートが物語になっている迷路です。 ルートをたどり、間違って脇道に進んだら、分岐点まで戻ってゴールを目ざしましょう。正解ルートの物語はすべて憶え、最後に下の設問に答えてください。 目標 5分 入口 ふたんにろがくてしるんだ。にゅう りたとはんこよねそをのらどしんい なびふいだこちるみのフやけベッド くむねり。へか。っのウトース。で なってこむ。っじてにんつつトるね くよちここにろぶさあせんみたべた たねる。。つかりみにでかよを出ら まりどもるかっしがくいんぶん発。 をさまにふ。はもに。つし。きがか 目。すんとうりとわせびろるえりわ する。かおらとたで。つにきがねま ねどふがをあふいそういかれてにき てにとみをんとにてにでつ。しもど っぶんっじにもねどシバかりまそり 。かをとみりどこ。ぽいとふいのま りうてめつま。ろびんぬんどる。ま とっ。るねたねどにさのにも。るね 出口 @洗ったものは? Aみがいたものは? B庭でしたことは? C着替えた服は? D読んだものは? E食べたものは? 不慣れな文章の音読  脳のなかでも「前頭前野」は非常に重要な部分です。人間の思考や記憶、感情や意志と大きくかかわっており、脳の司令塔≠ニも呼ばれています。  しかし、前頭前野は老化とともに萎縮し、その機能は低下してしまいます。個人差はあるものの、年齢を重ねていくうえでは避けて通ることのできない問題であり、前頭前野の活動を維持するためには意識的に刺激し、活性化する必要があります。  そのために効果的なのが不慣れな文章の音読≠ナす。今回の問題のような迷路形式の文章や、初めて目にする文章、むずかしい文章など、自分にとって慣れない文章を音読するときに、前頭前野が刺激され、活発になることがわかっています。  「音読」することが重要であり、視覚が文字をとらえて情報を脳に送り込み、それが声として外に出され、再び耳から入ってくるように、インプット(入力)とアウトプット(出力)が交互にくり返されます。  黙読と音読では、脳が行う処理の複雑さに大きな差があるのです。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK 出版)など著書多数。 【問題の答え】 @かお(顔) Aは(歯) Bたいそう(体操) Cせびろ(背広) Dしんぶん(新聞) Eトースト 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。2019年11月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価(本体458円+税) 『65歳超雇用推進事例集(2019)』を作成しました 65歳以上定年企業、65歳超継続雇用延長企業の制度導入の背景、内容、高齢社員の賃金・評価などを詳しく紹介した『65歳超雇用推進事例集』を作成しました。 継続雇用延長を行った企業の事例を増やすとともに、賃金・評価制度についての記述を充実し、新たに23事例を紹介しています。 23事例を紹介 図表でもわかりやすく紹介 索引で検索 この事例集では、65歳以上定年制、雇用上限年齢が65歳超の継続雇用制度を導入している企業について ●定年、継続雇用上限年齢の引上げを行った背景 ●取組みのポイント ●制度の内容 ●高齢社員の賃金・評価  −などを詳しく紹介しています。 ★制度改定前後の状況について表で整理しました ★企業の関心が高い賃金・評価・退職金などの記載を充実しました! 事例を大幅に入れ替えた『65歳超雇用推進マニュアル(その3)』もつくったよ 事例集は、ホームページでご覧いただくことができます。 http://www.jeed.or.jp/elderly/data/manual.html 65歳超雇用推進事例集 検索 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 2019 11 令和元年11月1日発行(毎月1回1日発行) 第41巻第11号通巻481号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会