【表紙2】 65歳超雇用推進助成金のご案内 (平成31年4月から一部コースの見直しを行いました) 〜65歳超継続雇用促進コース〜 65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施する事業主のみなさまを助成します。 主な支給要件 ●労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、旧定年年齢※1を上回る年齢に引上げること。 ●定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。  また、改正後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること。 ●1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること。 ●高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置※2を実施すること。 支給額 実施した制度 65歳への定年引上げ 66歳以上への定年引上げ 定年の廃止 66〜69歳の継続雇用への引上げ 70歳以上の継続雇用への引上げ 引上げた年数 5歳未満 5歳 5歳未満 5歳以上 4歳未満 4歳 5歳未満 5歳以上 60歳以上の被保険者数※3 1〜2人 10 15 15 20 20 5 10 10 15 3〜9人 25 100 30 120 120 15 60 20 80 10人以上 30 150 35 160 160 20 80 25 100 ■1事業主あたり(企業単位)1回かぎり (単位:万円) 〜高年齢者評価制度等雇用管理改善コース〜 高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(高年齢者雇用管理整備措置)を実施した事業主のみなさまを助成します。 措置(注1)の内容 ●高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入 ●法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%《75%》、ただし中小企業事業主以外は45%《60%》 (注2)措置の実施に必要な専門家ヘの委託費、コンサルタントとの相談経費(経費の額にかかわらず、初回の申請にかぎり30万円の費用を要したものとみなします。) 〔《 》内は生産性要件を満たす場合※4〕 〜高年齢者無期雇用転換コース〜 50歳以上かつ定年年齢未満の有期雇用労働者を無期雇用契約労働者に転換した事業主のみなさまを助成します。 申請の流れ @無期雇用転換制度を整備 A高年齢者雇用推進者の選任および高年齢者雇用管理に関する措置※2を1つ以上実施 B転換計画の作成、機構への計画申請 C転換の実施後6カ月間の賃金を支給 D機構への支給申請 支給額 ●対象労働者1人につき48万円 (中小企業事業主以外は38万円) ●生産性要件を満たす場合※4には対象労働者  1人につき60万円 (中小企業事業主以外は48万円) ※1 旧定年年齢とは……  就業規則等で定められていた定年年齢のうち、平成28年10月19日以降、最も高い年齢 ※2 高年齢者雇用管理に関する措置とは……  (a) 職業能力の開発および向上のための教育訓練の実施等 (b) 作業施設・方法の改善 (c) 健康管理、安全衛生の配慮  (d) 職域の拡大 (e) 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進 (f) 賃金体系の見直し (g) 勤務時間制度の弾力化 のいずれか ※3 60歳以上の被保険者とは……  当該事業主に1年以上継続して雇用されている者であって、期間の定めのない労働協約を締結する労働者または定年後に継続雇用制度により引き続き雇用されている者にかぎります。 ※4 生産性要件を満たす場合とは…… 『助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、その3年度前に比べて6%以上伸びていること』(生産性要件の算定対象となった期間中に、事業主都合による離職者を発生させていないこと)が要件です。 (生産性= 営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)雇用保険被保険者数 (企業の場合) ■お問合せや申請は、都道府県支部高齢・障害者業務課(東京、大阪は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします(65頁参照)。  そのほかに必要な条件、要件等もございますので、詳しくはホームページ(http://www.jeed.or.jp)をご覧ください。 【P1-4】 Leaders Talk No.56 「仕事か家庭か」のシングルトラックでは人生100年時代を持ちこたえられない 元・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 元・株式会社資生堂代表取締役執行役員副社長 岩田喜美枝さん いわた・きみえ 1971年に労働省(現厚生労働省)に入省し、雇用均等・児童家庭局長などを務め、2003年に退官。同年、資生堂に入社し、取締役執行役員CSR部長などを経て、2008年に代表取締役執行役員副社長に就任。2012〜2016年まで同社顧問を務める。現在、住友商事、味の素、りそなホールディングスの社外取締役、東京都監査委員などを務める。  職場の生産性向上を図るためにも、高齢者や女性をはじめとする多様な人材がもつ多様な価値観の活用に向けた、「ダイバーシティ」の視点が欠かせない時代を迎えています。今回は、官と民、双方の立場から、長く女性の活躍推進にたずさわってきた岩田喜美枝さんに、生涯現役時代における女性の活躍推進、そしてキャリアアップの形について、お話をうかがいました。 男女平等、仕事・子育て両立支援の次は「キャリアアップ」が最大の課題に ―岩田さんはこれまで、官民それぞれの立場から、女性活躍推進にたずさわってこられました。女性を取り巻く雇用環境のこれまでの経緯と現状を、どのようにご覧になっていますか。 岩田 私は三つのステージに分けてこの問題をとらえています。  1986(昭和61)年に男女雇用機会均等法が施行され、雇用の分野での男女差別解消が進みました。大卒募集は男性のみとか、定年、教育訓練、賃金の取扱いなどが男女で異なるといったあからさまな待遇の差別が、形のうえでは見事なまでに姿を消しました。この時代が第1ステージです。差別禁止は進みましたが、だからといって女性活躍が進んだとはいえず、依然として結婚や出産を理由に退職する女性が大多数でした。  出生率の低下が進み、将来の労働力人口の不足が明らかになると、人口対策の面から、仕事と子育ての両立を図る政策が前面に出るようになりました。これが第2ステージで、育児休業法(1992〈平成4〉年施行(現育児・介護休業法))、次世代育成支援対策推進法(2005年施行)が登場しました。特に後者は、就職氷河期が終わり、優秀な学生を確保したい企業のニーズが高まる時期と重なったこともあり、効果がありました。採用を有利に進めるために「くるみん※1マーク」を取得しようと、仕事と子育ての両立を支援する施策を推し進める気運が広がったのです。その結果、少なくとも大手企業では結婚・出産を理由に退職する女性は減少し、育児休業を活用して働き続けるのが普通になりました。女性労働力のM字型カーブの底も、かなり上がってきました。  そして現在は、女性活躍推進を経済の成長戦略と位置づける第3ステージを迎えています。女性活躍を進めるうえで大きな課題が二つありました。一つは仕事と子育ての両立、もう一つは育成・登用です。前者は第2ステージでほぼ目途(めど)がつきましたが、育成・登用、すなわちキャリアアップという課題が残っていました。2016年に女性活躍推進法が施行され、いよいよここが動き始めています。 ―キャリアアップについては、どのような課題が残されていますか。 岩田 例えば、管理職に占める女性の比率が、日本では12%にとどまっています。役員では3〜4%※2です。この水準は、発展途上国を含めて、世界のボトムクラスです。日本は管理職昇進までの育成に長い時間をかける傾向があり、女性活躍推進に取り組んでも、急速にはその効果が出にくいことがその理由の一つとなっています。  また、両立支援策の拡充が図られた時期に、育児休業や育児短時間勤務の期間は、長ければ長いほど女性にとって望ましいと考える傾向が見られました。しかし、継続的にキャリアアップを図るには、できるだけ早くフルタイムの働き方に戻り、経験を積む必要があります。それが可能になるよう、男女を問わず、フルタイムで働く正社員の働き方それ自体を見直さなければなりません。 「残業や転勤があたり前」という働き方の常識を変える ―岩田さんも、かつて国家公務員として、子育てをしながら激務をこなされていました。当時のご苦労は、いまとは比べものにならなかったと思います。 岩田 女性が仕事で正当な評価を受けるには、男性の働き方の常識に合わせて働くしかないと当時は思っていました。忙しいときにはほとんど家に帰れないこともありましたが、もっと苦労したのは転勤問題でした。  残業を前提とした長時間労働や、定期異動での遠隔地への転勤といった働き方が標準で、それに合わせなければキャリアアップできないという常識そのものを変えていく必要「残業や転勤があたり前」という働き方の常識を変えるがあります。いまでは共働きがあたり前で、家事・育児・介護などの家庭の責任を男性も等しくになうことが求められる時代ですから、かつて女性労働問題といわれた内容は、実は男性の生き方・働き方の問題でもあるのです。  これからは、フルタイム社員であっても、原則定時退社で残業なし、転勤はない、そんな一般職の働き方を標準として考えるべきです。そして事業活動上どうしても転勤が必要だという場合には、企業が一方的に異動の発令をするのではなく、本人が同意したうえで赴任するような仕組みに変える。もちろん転勤にともなう生活面での不利益は企業が十分補償し、転勤先で能力が高まれば昇進の可能性も高まる。そんな制度にあらためるべきです。 ―企業から海外勤務のオファーがあったとして、女性がこれに応じるのは、まだまだむずかしいでしょうか。 岩田 赴任まで十分な準備期間がとれるのであれば可能だと思います。それと発令のタイミングですね。例えば、出産や育児をする時期はむずかしいかもしれませんが、それよりも前の若い時期や子どもが大きくなった後の時期であれば十分応えられるのではないでしょうか。また、子育て中であっても、単身赴任か家族帯同かの二者択一ではなく、例えば子どもだけを連れて赴任する選択肢もあっていいと思います。それと、社員や家族が生活設計しやすいよう、赴任期間のおおよその見通しはあらかじめ伝えてほしいですね。 ―政府の「成長戦略実行計画」で、70歳までの就業機会の確保の方針が示され、高齢者雇用も新しい段階を迎えようとしています。 岩田 これまでの高齢者雇用対策は、高度経済成長期に確立した制度の根幹を維持したまま、それに接(つ)ぎ木(き)を重ねてきたようなものです。60歳への定年延長でも、65歳までの雇用確保措置でも、学校を卒業して入社した企業に定年まで勤め上げるモデルを前提にしていました。  私は、人生100年を25年ずつに4分割して、25歳から75歳までの50年間は働くことを前提に人生設計を考える時代になったと考えています。75歳までの雇用を実現するためには、65歳までの現在のやり方に接ぎ木するのではなく、定年や役職定年、給与など、年齢を基準にした人事労務管理は撤廃すべきです。  働く期間が50年にもおよぶと、その全期間を一企業に勤めるモデルは、現実的なものではなくなります。私が社外取締役などとしてかかわっている企業のほとんどで、すでに1年間の採用者のうち、中途採用者が3割程度を占めるようになっています。  近い将来、新卒定期採用者を中心に人材を確保する考え方は大きく変わり、新卒者も中途採用者も同じ土俵で採用する方法が主流になるでしょう。中途採用者は通年採用ですから、新卒採用者も4月入社にかぎらず通年で行われるようになる。そして同じ土俵で採用することになれば、職務遂行能力が未知数である新卒者は、中途採用者に比べて苦戦を余儀なくされると思います。  個人の側から見ると、75歳まで働くことを前提とすれば、途中で企業を変わるのはあたり前になりますから、ほかの企業でも通用するような能力を身につけるために、または75歳から後の人生を心豊かに過ごすために、75歳までの間に学び直しの機会を持つことも大切です。 ―働く女性も高齢化していきます。 岩田 男性は50代になると企業での立場も先が見えて、くたびれてしまいがちですが、50代の女性は不完全燃焼感を持つ人が多い。9月に公表された21世紀職業財団の調査※3でも、そのような特徴が浮き彫りにされています。女性は、働きがいのある仕事にめぐりあえないまま50代を迎えることが少なくありません。50代になれば、もう子どもは自立して、これからはもっと自由に働けると意欲を燃やしています。この先、始まりも終わりも予測できない親の介護の問題が潜在的にはありますが、それが現実のものとなっても、身近な人と協力し、社会的サービスを上手に使って条件を整えることができれば、彼女たちの高いモチベーションを、企業も社会も大いに活かすことができるはずです。 高いモチベーションを活かすべくシニアの女性に能力開発の機会を ―その高いモチベーションを活かすには、 新たなステージへの能力開発が必要ですね。 岩田 企業は50代・60代の女性に対し、これまでは教育を十分にしていませんでした。いまからでも、仕事を通じて育成してほしいと思います。人が成長するのに年齢は関係ありません。何を始めるにせよ、遅すぎることはないのです。  人生は1回かぎりですが、やりたいことは複数あるはずです。仕事か家庭かという二者択一のシングルトラックではなく、仕事、家庭、学習、趣味、社会貢献活動などマルチで考えてほしい。そうでなければ、人生100年を持ちこたえられません。90歳を過ぎても世の中の役に立っているロールモデルとなる人は多くいます。何歳になっても自分が役に立つ場所があるのは大切なことです。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一、撮影/中岡泰博) ※1 くるみん……次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」として厚生労働大臣が認定する制度 ※2 ILO「『A quantum leap for gender equality: For a better future of work for all』(2019年) ※3 公益財団法人21世紀職業財団「〜均等法第一世代が活躍するために〜女性正社員50代・60代におけるキャリアと働き方に関する調査―男女比較の視点から―(2019年度)」 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2019 December ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集 6 70歳雇用先進企業はこうしている 7 特別インタビュー 70歳雇用の大前提として65歳定年の実現と高齢者の能力活用を 日本私立学校振興・共済事業団 理事長 清家 篤氏 11 解説 「70歳までの就業機会の確保」に向けた方向性とは 労働ジャーナリスト 溝上憲文 13 企業事例@ トラスコ中山株式会社 「人生雇用」(就業年数60年)を見据えて社員が安心して働ける制度と環境を整備 17 企業事例A 株式会社はるやまホールディングス 60歳以降は1年単位で上限なく再雇用 年齢を重ねても活躍できる組織 21 企業事例B 株式会社テクノスチールダイシン 毎日の張合いと働く目標につながった70歳定年制 25 企業事例C 富国生命保険相互会社 80歳まで勤務可能な環境を整備し“外”に目を向けるため「プロボノ」を活用 1 リーダーズトーク No.56 元・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長 元・株式会社資生堂代表取締役執行役員副社長 岩田喜美枝さん 「仕事か家庭か」のシングルトラックでは人生100年時代を持ちこたえられない 29 日本史にみる長寿食 vol.315 八代将軍が名づけた小松菜 永山久夫 30 江戸から東京へ 第87回 黄門様の失敗 徳川光圀 作家 童門冬二 32 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第68回 株式会社サンリッチ三島 パートタイム従業員 鈴木美知子さん(68歳) 34 高齢者の現場 北から、南から 第91回 大分県 くにみ農産加工有限会社 38 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 第2回 檜山 敦 42 知っておきたい労働法Q&A《第20回》 労災保険給付、年次有給休暇と時季変更権 家永 勲 46 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復[第7回] 渡辺恭良 48 特別寄稿 働くシニアの健康を守るために ―よく噛んでゆっくり食べよう― 50 労務資料 令和元年版高齢社会白書 56 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト募集案内 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.307 いまの暮らしに寄り添う伝統の技とモダンデザイン 鎌倉彫作家 木内小夜子さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第31回] 漢字ジグソーパズル 篠原菊紀 【P6】 特集 70歳雇用 先進企業はこうしている  70歳までの就業機会の確保の方針を掲げた「成長戦略実行計画」が閣議決定され、高年齢者雇用安定法の改正に向けた検討が進められるなど、高齢者雇用は新しいステージを迎えようとしています。  そこで今回は、高齢者雇用の一つの転換点ともいえる「65歳までの雇用確保措置」導入の経緯やその影響、今後の展望などについて、日本私立学校振興・共済事業団理事長の清家(せいけ)篤(あつし)氏にうかがうとともに、すでに70歳雇用を実践している高齢者雇用先進♀驪ニの取組みをご紹介します。65歳を超える高齢人材の活用・活躍促進に向け、ぜひご一読ください。 【P7-10】 特別 インタビュー 70歳雇用の大前提として65歳定年の実現と高齢者の能力活用を 日本私立学校振興・共済事業団 理事長 清家 篤氏  「成長戦略実行計画」が掲げる70歳までの就業機会の確保を実現するうえで、企業には、どのような対応が求められるのだろうか。長きにわたって日本の高齢者雇用にまつわる議論をリードしてきた清家篤氏に、2004年の高年齢者雇用安定法改正以降の高齢者雇用の動向、現在の課題、今後の展望などについて、お話をうかがった。 「超高齢社会」の到来に向け2004(平成16)年に高齢法を改正 ―そもそも日本が高齢者雇用を進めていく方向に向かうようになったのは、いつごろからでしょうか。 清家 日本で高齢者雇用を推進しなければならないという機運が出てきたのは、1970年代半ばごろからです。高齢人口比率7%以上を「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」、21%以上を「超高齢社会」といいますが、日本は1970(昭和45)年に7%に達し、「高齢化社会」に突入しました。人口構造の変化というのは、非常に確実な変化です。その後、急速に高齢化の進むことは明らかでしたので、70年代半ばから80年代初めにかけて、高齢化の問題が具体的に議論されるようになりました。  そして、1994年に高齢人口比率が14%を超え、日本は「高齢社会」になりました。1970年に7%を超えてからその倍の14%になるまでたった24年というのは、日本より先に高齢化の進んでいたヨーロッパの2〜4倍のスピードですから、危機感も高まりました。  政策的には、1986年に高年齢者雇用安定法が成立し、60歳への定年延長が段階的に進められてきました。いまでは考えられないことですが、当時は定年が55歳の会社もあったわけです。そこから定年が段階的に引き上げられ、1998年に60歳定年が実現しました。 ―そして、2004年の高年齢者雇用安定法改正により、企業には65歳までの雇用確保措置の導入が求められるようになりました。この改正の背景と狙いを教えてください。 清家 1998年に法律上の定年下限年齢が60歳となりましたが、では「60歳まででよいのか」ということは、当然考えられていました。当時から、2000年代半ばには高齢人口比率が21%を超え、いよいよ「超高齢社会」が到来することは確実でした(実際には2007年に到達)。それを見据えて、2000年度の厚生年金法改正で公的年金の支給開始年齢の65歳への段階的引上げが決定されたので、少なくとも65歳までの雇用確保措置を講じる必要が出てきたというのが、法改正の背景でありねらいです。 ―この法改正が、高齢者の雇用にもたらした影響はどのようなものでしたか。 清家 極めて顕著な効果がありました。改正法施行直後の2007年から、60代前半の就業率が急上昇しました。2006年には、60代前半の就業者が427万人、就業率は52・6%だったのが、法改正が効果を表す2007年になると一気に466万人(55・5%)まで高まり、その翌年には511万人(57・2%)と、500万人台の大台に乗りました※1。就業率が1年で2〜3ポイント上昇するというのは、通常はないことです。  これはやはり、政策の進め方、特に労・使・学識者の三者構成の審議会の有効性を示すものだったと思います。65歳までの雇用延長をルール化することについては、当時、使用者側の抵抗もかなり強かったわけです。私などは、むしろ思い切って定年を延長すべきと申しましたが、労使学識経験者の話合いの結果、@定年を廃止する、A定年を延長する、B定年は60歳のまま何らかの形で継続雇用を行う、という三つの選択肢を認めたわけです。  日本の使用者は真面目ですので、三者がギリギリ、「これならなんとかできるだろう」、「理屈にも合うだろう」と約束したことについてはきちんと守ります。この結果を見ますと、研究者には中途半端に見えても、三者がよく話し合って約束をしたからこそこれだけの効果があったのだと思います。 65歳までの雇用があたり前に定年延長企業も徐々に増加 ―2013年の改正では、企業に希望者全員65歳までの雇用が義務づけられました。2004年改正以降の雇用環境の変化や法改正のねらいなどを含め、高齢者の雇用に与えた影響についてご意見をお聞かせください。 清家 一番大きな効果は、60代前半の雇用があたり前になったことです。これは、過去の例でいえば、1998年の60歳定年の法制化に匹敵する影響といえると思います。  しかし、残念ながら、定年を延長する企業は少数にとどまり、多くの企業は再雇用、あるいは継続雇用という形で雇用確保措置を講じました。  ただ、その後を見ますと、まず人材確保がむずかしくなってきた中小企業から定年延長が進み出し、大企業のなかでも、高齢者雇用に見識のある優良な企業が相次いで定年を65歳に延長するようになってきました。そしてとうとう昨年、人事院勧告に合わせて、国家公務員の定年を65歳に段階的に引き上げることを人事院が政府に求めました。私は、これはとてもよい傾向ととらえています。 ―早くから著書などで、先を見据えた提言をされてこられましたね。 清家 私は、80年代から高齢者雇用の問題を研究してきました。著書としては、1990年の『高齢者の労働経済学』(日本経済新聞社)が最初で、その後、労働関係図書優秀賞をいただいた『高齢化社会の労働市場』(1993年・東洋経済新報社)、『生涯現役社会の条件』(1998年・中公新書)、山田篤裕氏と共著で日経・経済図書文化賞をいただいた『高齢者就業の経済学』(2004年・日本経済新聞社)を著しました。 ―企業としては、かつては、先生が提言されてきたような定年の廃止や延長は受け入れがたかったものの、時代も進み、実際にやってみたら問題なくできたということでしょうか。 清家 90年代の企業は、「中長期的には必要だとしても、まだまだむずかしい」という反応だったと思います。当時は、バブル経済が崩壊し、日本経済も厳しい時代でした。人余りの状況もあり、そこで定年延長を決断するのはなかなかむずかしいという状況がありました。  その後、法改正の効果により65歳までの雇用は進みましたが、人を雇ううえでは、どんなときも「問題なくできる」などということはありません。賃金の仕組みを見直すなど、各社がいろいろな工夫や苦労をしながらそれを実現しているわけです。そうした仕組みづくりには、高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施している高年齢者雇用開発コンテスト、65歳超雇用推進プランナーや高年齢者雇用アドバイザーによる相談・助言なども役立っています。 70歳雇用の大前提として65歳定年の実現を ―「成長戦略実行計画」では、70歳までの就業機会確保の方針が示されました。現在の高齢者雇用にまつわる課題とはどのようなものでしょうか。 清家 先ほどお話ししたように、60代前半の雇用はあたり前になりましたが、今後について考えると、65歳でよいのかが論点になります。平成30年簡易生命表によれば、65歳時点での平均余命は、男性約20年、女性約24年です。65歳で引退した場合、大まかな計算でいえば20代前半から60代半ばまで約40年強社会を支え、残りの20年は現役世代に支えられることになり、バランス的にはかなりきつい。70歳くらいまでは、社会を支える側にいてもらう必要があります。この点は、すでに政策的措置が講じられつつあります。雇用保険の適用は70歳までに拡大され、厚生年金のくり下げ支給では70歳まで年金額が増額されます。70歳までの雇用確保は、当然進めなければなりません。  そのためには、大前提として、まず65歳までは普通に働く―再雇用などではなく、定年をしっかりと65歳に引き上げることが大切です。2025年までには、65歳定年化を進めるべきでしょう。そのうえで、65〜70歳のところは、多様な就業形態であっていい。現在の60代前半の働き方を、60代後半にもっていくというイメージです。 ―60歳定年のまま、70歳までの10年間を再雇用などでつなぐ形ではいけませんか。 清家 高齢者の能力活用やモチベーションの面で望ましくありません。再雇用制度は65歳までの雇用確保を進めるための短期的な経過的措置としてはよかったと思いますが、今後はしっかりと定年を延長すべきです。 企業には、高齢者の能力活用と生涯能力開発が求められる ―定年延長以外では、企業にはどのような対応が求められますか。 清家 一番大切なのは、高齢者の能力をいかに活用するかです。「就業機会を確保する」というと、なにか無理をして雇う印象を受けるかもしれませんが、それは違います。労働力不足の進むなか、高齢者の活躍は、企業の成長にもつながります。ポイントは、高齢者をただの「人手」として扱うのではなく、つちかった能力や経験を活かして、より付加価値の高い仕事をしてもらうこと。高齢者の能力をどのように活用するかを、企業は考える必要があります。  高齢者の能力を特に活用しやすい分野は、製造業でいえば受注生産です。決まった物を安くたくさんつくる仕事は、経験のない若手や機械にもできるかもしれませんが、いままでにない製品をつくり上げるといったことは、高齢者の経験が活きる仕事です。もう一つ、ベテランの人たちが上手なのは、仕事の管理です。いま、若い人たちがITベンチャーなどでがんばっていますけれども、彼らは、ITの技術やアイデアは豊富にあるものの、生産管理や人事マネジメントなどについては、ベテランに「一日の長」※2があります。  それから、今後、日本経済の中心になっていく高度なサービス―観光や医療・介護などの対個人サービスにおいても、高齢者は、きめの細かいサービスを提供できるでしょう。  また、高齢者を活用するうえで大切な条件となるのが、柔軟な働き方です。長時間ではなく、もう少し短い労働時間。65歳以上は年金と合わせて短時間で収入を確保する柔軟な働き方や、在宅勤務制度などもあってよいでしょう。 ―高齢者のより一層の活躍推進に向けた展望について、考えをお聞かせください。 清家 われわれの研究からも明らかですが、高齢者が働き続けるうえで大きなネックになるのは、健康状態です。政府が進めているように、若いうちから生活習慣病の予防に取り組み、健康寿命を延ばすことはとても大切です。  もう一つ、職業寿命を短くする要因が、仕事の能力の陳腐化です。経験や技能はあっても、新しいテクノロジーを使いこなせないためにそれを活かせないこともあります。そうならないように、生涯にわたる能力開発の仕組みを実現していくことも大切です。  意識の改革も大切です。例えば、統計の用語で、15〜64歳を「生産年齢人口」といいますが、65歳以降もこんなに多くの人が働き続けているのに、おかしいでしょう。そういうところから意識を変えるべきです。 ―生涯能力開発は重要だと思いますが、どのように行えばよいのでしょうか。 清家 仕事の能力開発の場は、やはり職場です。高齢者は、物をつくる、仕事の管理をする、きめ細かいサービスをするといった能力が蓄積しています。ただ、それを具現化する方法―例えばパソコンをはじめとするICT機器は技術の進歩によって変わっていきます。つちかってきた能力を発揮できるように、技術の進化にキャッチアップしていく必要がありますが、それは個々の仕事によって違いますから、企業のなかで高めていくべきでしょう。生涯にわたって能力を高めていくことができることは、これからますますよい仕事・職場であることの条件となっていくでしょう。 高齢者の活躍は、高齢者だけでなくすべての世代の利益に 清家 幸いなことに、日本の高齢者は、働くことに生きがいを感じる人が多く、健康や収入のためにも働きたいと考えています。つまり、高齢者の活躍が進むことは、高齢者自身の幸せにもつながります。  また、高齢者が社会保障制度を支えてくれれば、若い世代の負担はぐっと軽くなりますし、子育ての時間なども確保できるようになり、仕事と生活を両立できる働き方も可能になります。  高齢者の活躍は、生産と消費の両方の面でマクロ経済にプラスに働きます。生産面でのプラスはもちろんのこと、働いている人は、働いて得た収入で消費をしますから、高齢者が働き続けることは、消費の面でもプラスになります。これは当然、企業の収益につながります。そしてなにより、社会全体の活力、持続可能性も高まります。  今日の日本において、高齢者の活躍をうながすことは、社会を構成するすべての人にプラスに働くわけです。高齢者のより一層の活躍推進は、企業にとっても、日本の経済社会全体にとっても不可欠なのです。 清家 篤(せいけ・あつし)  日本私立学校振興・共済事業団理事長。1992年慶應義塾大学商学部教授を経て、2009年5月から2017年5月まで慶應義塾長を務め、退任後、慶應義塾学事顧問。2018年4月より現職。内閣府の社会保障制度改革推進会議議長、経済社会総合研究所名誉所長、ILO仕事の未来世界委員会委員などを兼任。主な著書に『雇用再生』(NHKブックス・2013年)、『金融ジェロントロジー』(編著・東洋経済新報社・2017年)など。 ※1 総務省「労働力調査」より ※2 一日の長……知識や経験、技能などが他者と比較して優れていること 写真のキャプション 清家 篤氏 【P11-12】 解説 「70歳までの就業機会の確保」に向けた方向性とは 労働ジャーナリスト  溝上(みぞうえ)憲文(のりふみ) 「70歳までの就業機会の確保」を目ざす成長戦略実行計画(政府)を策定  65歳から70歳までの就業機会の確保を目ざす法制度の検討が、厚生労働省の労働政策審議会(職業安定分科会雇用対策基本問題部会、以下、「労政審」)で始まりました。65歳までの雇用確保を義務づけた現行の高年齢者雇用安定法を改正し、来年の通常国会に事業主の「努力義務」を盛り込んだ法案を提出し、いずれは義務化も視野に入れています。  今後、高齢者人口が増大し、2040年にはその伸びは落ち着くものの、現役世代人口の急減は免れないことを前提に、より多くの人が意欲や能力に応じて社会のにない手として長く活躍できる環境整備が必要との認識がその背景にあります。政府は2019(令和元)年5月15日の「未来投資会議」(議長:安倍晋三首相)で、70歳までの就業機会の確保に向けた法改正の方針を打ち出し、「成長戦略実行計画」(6月21日閣議決定、以下、「実行計画」)に制度内容が盛り込まれ、法制化の方向が決まりました。  実行計画によると、70歳までの就業機会の確保は二段階に分けて法整備を進めます。第一段階の法制では企業に選択肢を明示し、70歳までの就業機会確保の努力規定を設ける。また、必要がある場合は厚生労働大臣が、事業主に対して、個別労使で計画を策定するよう求め、計画策定については履行確保を求めるとしています。  第二段階の法制では、第一段階の進捗をふまえて現行の高齢法のような企業名公表による担保(いわゆる義務化)のための法制化を検討します。この際は、かつての立法例のように、健康状態がよくない、出勤率が低いなどで労使が合意した場合は、適用除外規定を設けることについて検討することにしています。 70歳までの就業に向けて示された雇用以外≠含む七つの選択肢  今秋から年末にかけて労政審の審議を経て、2020年の通常国会に第一段階の法案を提出。続いて進捗状況を見て、第二段階の義務化の法改正を検討するとしています。その時期については高齢法の労使協定による基準の経過措置の施行が完了する2025年までは法改正を検討しないとしています。実行計画の工程表ではKPI(目標達成指標)として65〜69歳の2025年の就業率を51・6%に設定しています(2018年:46・6%)が、目標達成をふまえ、早ければ2026年度に検討に着手するとも読み取れます。  努力義務から義務化の流れは従来の高齢法改正と同様ですが、これまでと違うのは従来の雇用確保措置に加えていくつかの選択肢を設けていることです。それは以下の七つです。 @定年廃止 A70歳までの定年延長 B継続雇用制度導入(現行65歳までの制度と同様、子会社・関連会社での継続雇用を含む) C他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現 D個人とのフリーランス契約(資金提供など企業が支援) E個人の起業支援(企業が支援) F個人の社会貢献活動への従事(資金提供など企業が支援)  企業は労使で十分な話合いのうえで@〜Fのなかから採用する措置を提示し、個々の高齢者との相談を経て適用する(努力義務)ことになります。そして「選択肢の具体的検討にあたっては、各選択肢における企業が負う責務の程度など、企業の関与の具体的なあり方について今後慎重に検討する」とし、その検討が労政審に委ねられました。  ただし@〜Bの従来の65歳までの雇用確保措置とCの他企業での再就職は、雇用関係にありますが、D〜Fの三つは非雇用であり、Fはいわゆるボランティア活動です。個々の高齢者の能力・事情に応じた活躍を図るためにほかの選択肢を用意したものですが、実際に労使で話し合って決めるにしてもD〜Fを含めた選択肢をどのような方法で決定し、また企業がどこまで責任を持ち、支援すべきなのか、現時点では不明確です。  9月27日に開催された労政審の第一回目の審議でも「七つの選択肢のイメージだけでは、企業がどのような対応をすればよいか見えない」、「雇用ではない選択肢については、高齢者にさまざまな希望があるなかで、企業がすべて受け止めるのはむずかしい」という意見も出されました。  こうした意見をふまえて10月25日に開催された二回目の審議で、厚労省事務局は七つの選択肢の「措置として事業主が実施する内容」について提起しています(「高齢者の雇用・就業機会の確保に関する主な検討課題」)。  定年廃止、定年延長、継続雇用制度の導入については、「65歳までの雇用確保措置と同様の法制上の措置が考えられるのではないか」と述べています。次にCの「他の企業への再就職の実現」については「特殊関係事業主による継続雇用制度の導入と同様のものが考えられるのではないか」と述べています。特殊関係事業主とは、子会社や関連会社などのグループ企業のことであり、事業主と特殊関係事業主との間で引き続き雇用する契約を締結すればグループ企業での継続雇用が可能になる仕組みです。これを他企業への就職でも同じ契約を締結することで認めようというものです。  個人とのフリーランス契約と個人の起業支援については「事業主からの業務委託により就業することが考えられるのではないか」とし、また「個人の社会貢献活動参加への資金提供」については「事業主が自らまたは他の団体等を通じて実施する事業による活動に従事することが考えられるのではないか」と提起しています。さらに厚労省の事務局は、業務委託に関しては70歳までの就業を意識して継続的に続けられること、社会貢献活動も事業主の適切な関与が重要である、と言及しています。  66歳以上の就業について非雇用の選択肢を認めても、結果的に早期退職につながると70歳までの就業を達成できません。努力義務であっても事業主の履行確保を図るための行政措置の仕組みについても今後検討していく予定です。  企業としては、法制化の動きをふまえつつ、65歳までの自社の雇用制度を再検証する必要があります。そのうえで60歳から70歳までの10年間を見据え、シニアのモチベーションを高め、いかに戦力化していくのか、具体的な制度設計の検討に早期に着手するべきでしょう。 【P13-16】 企業事例1 定年65歳・雇用年齢上限75歳 トラスコ中山株式会社 (東京都港区・大阪府大阪市) 「人生雇用」(就業年数60年)を見据えて社員が安心して働ける制度と環境を整備 プロツールの専門商社として日本のモノづくりを支える  トラスコ中山株式会社は、工場や生産現場で使われるWプロツールWと呼ばれる工具や屋外作業用品を扱う卸売企業。1959(昭和34)年の創業以来、日本のモノづくりの現場に、「必要なときに」、「必要なものを」、「必要なだけ」届けることを使命とし、取扱いアイテムの拡充や自社ブランド商品の開発、独自の商品供給体制の構築などにより、ニーズに応えている。  現在の仕入れ先は2500社を超え、自社ブランドを含めて210万点超の商品を取り扱う。約5300の販売店を通じて、100万以上の現場を支えているという。東京と大阪に本社を置き、全国に支店69カ所、物流センター17カ所、ストックセンター7カ所を有する。  従業員数は約2800人。60歳以上の従業員は113人。そのうち、65歳以上は29人、70歳以上は11人、最高齢社員は、事務職に就いている74歳となっている。 定年を65歳に引き上げ、雇用延長とパートで75歳まで働ける会社に  同社は、2012(平成24)年に定年年齢を60歳から63歳に、2015年には65歳へと段階的に引き上げた。役職定年は現在62歳となっている。  定年引上げと同時に、雇用延長制度(1年契約)の上限年齢を引き上げて、2015年には条件を満たす希望者全員が70歳まで働ける制度とした。また、70歳以降もパートタイマーとして75歳まで働けるようにした。これにより、65歳までは正社員、以降は1年毎に更新の契約社員、70歳からはパートタイマーとして、最大75歳まで働ける環境を構築した。現在勤務する70歳以上の従業員の11人は、正社員を定年後、雇用延長の契約社員を経てパートタイマーになった。  一方で、定年までの勤務や雇用延長を希望せず、新しい分野への転進を望む社員に対して金銭面から支援をすることを目的として、早期退職制度も設けた。53歳以上59歳未満の正社員を対象にした制度で、希望者には年齢と等級職掌(しょくしょう)に応じた特別退職金が支給される。 安心して長く働ける環境が就業意欲の向上につながる  同社の定年年齢などの引上げは人手不足が要因ではなく、「安定的な雇用の保障と、社員の安心感とモチベーションの向上を目的に実施しました。もちろん、キャリアを積んだ人たちは戦力になると考えました」と、総務部人事課ヘルスケア課の平山貴たか規のり課長は話す。  長く働ける雇用環境を実現するうえで想定していた課題についてうかがうと、平山課長は、「高齢の従業員は増加傾向にあり、雇用延長者は今後増加していくことが考えられ、定年の引上げにより人件費の増額が見込まれました。しかし定年引上げを見送るのではなく、長く働ける環境を整えることで社員の安心感を高め、就業意欲を向上させることが業績拡大の原動力になると判断し、実施しました」と振り返る。 360度評価を全従業員に適用公平・公正な制度でやる気をアップ  同社では、つちかった知識や能力を発揮してもらうため、雇用延長後の職場と仕事内容は、基本的に定年前と同じとしている。  そうしたなかで、役職に就いていた人は役職定年の62歳から、監督職の一般従業員は58歳から、定年の65歳まで部長や課長ではなく、「○○コーチ」と呼ぶことにした。今後は指導役となることを本人が意識し、周囲にも認識してもらう目的から決めたという。  また、役職定年後や雇用延長者の課題として、一般的にモチベーション低下の懸念があげられるが、同社では全従業員を対象とした独自の評価制度を2003年に導入した。公平で客観性の高い評価を行うことを目的とした「オープンジャッジシステム」という、360度評価制度だ。2015年には定年引上げと同時に、パートタイマーにも適用。業績、姿勢、能力についてそれぞれ5段階で評価し、結果を時間給や賞与、昇格にかかわる人事考課に反映する。  「すべての従業員が公平に評価を受けることができる形になりました。上司だけでなく、周囲の従業員が評価し合うことにより、納得感が生まれますし、常に評価されることを意識することで緊張感が生まれます。また、がんばることが評価されるため、やる気の向上につながり、結果的に業績の向上に結びついています」と、平山課長は独自の評価制度の効果を話す。  同社の給与は、58歳から毎年等級が下がることに合わせてゆるやかに下がる仕組みとなっている。65歳定年時の平均年収は約670万円。雇用延長後は少し下がり、約470万円。70歳以降は、パートタイマーとして、いずれも人事考課が給与に反映する仕組みとなっており、モチベーション向上の原動力として、公平な評価制度の存在は大きいといえるだろう。  このほか、長く働いている従業員へのインセンティブ制度がある。60歳を迎えた従業員に還暦祝いとして東京ベイコート倶楽部1泊宿泊と交通費および現金10万円をお祝い金として贈呈。65歳の定年時にはカタログギフト5万円分とリフレッシュ休暇をプレゼント。雇用延長して70歳で満了を迎える従業員には表彰と100万円のお祝い金を贈呈。70歳以前の退職でも、66歳以降は年齢に応じた祝金を贈呈している。 雇用延長を70歳まで引き上げて4年新たに選択制の勤務形態などを導入  定年65歳、希望者全員70歳まで働ける雇用延長制度を整えて4年。雇用延長者は毎年増えていて、今後さらに増加することが見込まれる。このことから、よりよい制度構築に向けて、現在の雇用延長者の声などを聞いて、新たに次の二つの制度や条件を加えた。 @短日数・短時間勤務制度の導入(選択制)  当初は、雇用延長後も週5日・フルタイム勤務を基本としていたが、65歳過ぎの雇用延長者の体調管理などに配慮して、2019年6月1日から、「週5日フルタイム勤務(9時〜17時30分の7・5時間)」、「週4日フルタイム勤務」、「週5日・毎日朝夕いずれか1・5時間短縮」の3パターンから選択できるようにした。  始まったばかりの制度のため、現在は従来通りの週5日フルタイム勤務者がほとんどで、週4日の短日数勤務、短時間勤務の選択者は少数だが、歓迎の声は多い。他方、周囲の従業員からも、特に困ったという声も聞かれていない。というのは、同社ではもともと女性活躍推進に力を入れており、また、安心して働ける制度の導入は高齢者にかぎったものではないとの考えのもと、法律を上回る育児休業制度や、子育て・家族の介護・本人のけがなどを理由に勤務時間を1日最大3時間短縮できる制度(2001年に導入)などを整備していたからである。その実績があるので、雇用延長者の時短も何の問題もなく受け入れられている。 A雇用延長希望者の再雇用に一定条件を付加  雇用延長者の活躍状況について、平山課長は、「長いキャリアでつちかってきた経験や知識は一朝一夕に身につくものではなく、若い従業員の足りない部分を補ってくれています。しかし、例えば物流センターでは自動化が進み、データ管理、システム管理は数十年前とは異なります。それらの慣れない業務に対しても、努力して取り組んでいるところも見られます。いくつになっても、それぞれの現場では常に成長が求められているのです」と現状を話す。  自動化などの進化は、今後さらに加速していくことが見込まれる。そうしたことをふまえて、このほど雇用延長の仕組みを見直し、再雇用は希望者全員ではなく、一定の条件を満たすことを求めることとした(適用は2020年10月より)。  一定の条件とは、@人事考課で一定基準を上回ること、A雇用延長の登用試験を受けること、B上司の推薦の三つである。  「登用試験といっても、会社のことを理解できていれば解答できる内容です。向上心を持ってますます会社に貢献してもらうことを目的として条件を見直しました」と平山課長は説明する。  「とりあえずやってみて、走りながらブラッシュアップしていくのが当社の社風」と平山課長。よりよい雇用延長制度の構築に向けて、今後も柔軟に対応していく構えである。 雇用延長により活躍するシニア常にその時の自分の立場を受け入れる  東京商品部PB(プライベートブランド)品質保証課に所属する木村順一さんは勤続46年の大ベテランで、現在67歳。2017年1月に65歳で定年を迎えた後、雇用延長を希望して、定年前と同じ仕事を続けている。業務は、自社ブランド商品の品質向上に向けた不具合対応や含有物調査対応など。雇用延長当初は週5日のフルタイム勤務だったが、今年6月に新しい制度ができてから短日数勤務を選び、週4日勤務している。  現在の仕事について木村さんは、「知識や経験を活かして働く舞台があるという感謝の気持ちが、まず一番です。舞台があることは最高の幸せです。自分の仕事が業績向上に結びつくように、責任を持って取り組むことがやりがいの源。若手社員から担当職務で頼られるのは当然ですが、それ以外のことでも頼りにされたり、相談されたりするときに、自分の立ち位置を改めて理解します」と話す。  木村さんは、以前はブロック長を務めた職責経験者だが、その役割は変化して、「現在は、補佐役として活躍しています」と平山課長が誇るシニア従業員の一人である。  役割や立場が変わってもやりがいを持って働き続けていくことについて木村さんは、「常に、そのときの自分の立場を受け入れることだと思います。過去を振り返っても将来を変えることはできませんが、将来を考えていまを変えることはできます。自分を変え続けたことがよかったと思います。また、会社からの最大の支援として、雇用延長でも特別扱いをせず、自然体で仕事を継続させてくれたことをありがたく感じています。自分が雇用延長であることを感じることはまずありません」と自らの姿勢と現在を話す。  また、健康に長く働き続けるために、「体力が落ちると仕事に集中できないため、体調管理に注意して体力を落とさないこと。運動を心がけ、休日に時間があるとひたすら歩きます。趣味を持つこと。家庭が円満であること。年齢をいい訳にしないこと。ワーク・ライフ・バランスをうまくとること」を心がけていると話してくれた。 トラスコ中山健康保険組合を設立長く安心して働ける会社を目ざす  木村さんのように活躍するシニアの存在は、「若い世代にもよい影響を与えている」と平山課長は見ている。「若い従業員も老後のことを考えています。具体的なモデルができ、将来のイメージを描くヒントにもなっていると思います。また、長く安心して働ける制度は、就職活動をする学生の目にも留まると思います」  一方で、65歳、70歳を超えた従業員への対応として、今後はさらに健康管理が重要になってくると課題をあげた。  「65歳を過ぎると不調が出やすくなります。そこで短日数・短時間勤務を導入しましたが、高齢の従業員が増えていますので、健康管理はより重要になってきます。当社はもともと健康経営に取り組んでおり、健康経営優良法人※の大規模法人部門・ホワイト500に認定されています。健康管理については、高齢者にかぎらず、人間ドックの受診を毎年全員に義務づけて受診率は100%です。治療と仕事の両立にも、就業制限をかけることや時短制度を臨機応変に活用して取り組んでいます。  社員が長く安心して働き続けられるよう、当社に適した疾病予防につながる取組みをさらに充実させていくことも目ざして、今年4月には単一のトラスコ中山健康保険組合を設立しました。今後も従業員がより安心して、長く働ける環境づくりに取り組んでいきます」と平山課長。  さらに、「最近の気象状況の変化により、熱中症など労災のリスクが、高齢の従業員の増加にともない高まるのではないか、といった危惧はあります。現状、体調不良や労災のリスクが高まっている状況ではありませんが、気を引き締めて、エアコンや製氷機の設置などの環境整備や、働きぶりを見て負担を軽減できるよう配置換えを行うことにも随時対応していきます」と加えた。  トラスコ中山の社名は「TRUST(信頼)+COMPANY(企業)」を意味している。人々から信頼され、成長し続ける企業として、その原動力となる従業員が安心して長く働き続けられる制度や職場環境をこれからも追求していく。 ※ 健康経営優良法人……健康経営の普及促進に向け、経済産業省が健康経営に取り組む優良な法人を認定する制度 写真のキャプション 総務部人事課ヘルスケア課の平山貴規課長 コーチとして職場の指導役もになう木村順一さん 【P17-20】 企業事例2 定年60歳・雇用年齢上限なし 株式会社 はるやまホールディングス (岡山県岡山市) 60歳以降は1年単位で上限なく再雇用年齢を重ねても活躍できる組織 60歳定年以降は上限なく再雇用長く働いてもらうことが基本  ビジネスウェアを中心としたアパレル商品の開発・販売を行うはるやま商事株式会社は、1955(昭和30)年、岡山県玉野市に洋服専門店として創業。1974年に株式会社関西地区はるやまチェーンを設立し、紳士服専門店「はるやま」のチェーン展開を開始した。現在は、「はるやま」に加え、20〜30代向けビジネスウェアを中心とした都市型店舗「P.S.FA(ピー・エス・エフエー)」、大きいサイズの専門店「フォーエル」の3業態を中心として、全国で464店舗を運営している。「より良いものをより安く」の創業理念のもと、付加価値の高い商品の開発を行っており、近年は、紳士服だけでなくレディース商品の展開にも力を入れている。  2017(平成29)年に持株会社体制へ移行し、持株会社である株式会社はるやまホールディングスのもと、はるやま商事株式会社(同年新設)を中心とする各グループ会社が事業を展開している。嘱託社員を含むグループ従業員数は約1500人。パート・アルバイトを含めると、3000人以上に上る。  同社は、創業当時から、シニア社員の働く意欲を尊重し、その活躍を後押ししてきた。はるやまホールディングスマーケティング部の横山健一郎部長は、「従業員に長く働いてもらうことが基本です。創業者は、20年以上前から、折に触れてそう話していました。二代目である現社長も同じ考え方であり、従業員を大切にする風土が受け継がれています。また仕事ぶりや業績についても、現在勤めているシニア社員は、期待以上の高いパフォーマンスを発揮して活躍しています」と満足気に語る。  同社の定年は60歳。その後は、1年ごとの契約更新で嘱託社員として再雇用するが、雇用年齢の上限は設けておらず、毎年本人と面談をして、働き方や働く条件、いつまで働くのかを個別に話し合って決めていく。現在の最高齢者は、パートタイマーとして働く75歳の女性。男性の最高齢者は71歳の嘱託社員で、2人とも店舗の販売職として活躍している。  60歳以上の従業員数は178人(役員除く、嘱託、パート・アルバイトを含む)。 これまでつちかってきた経験を活かせる仕事を継続し、活躍してもらう  同社では、60歳で定年を迎えた後も、職種変更などはせず、それまでと同じ仕事を継続する人が多い。本部で働いていた人は本部で、店舗で働いていた人は店舗で、それぞれの専門的知識・スキルや、つちかった経験を活かして働いてもらうのが原則である。そのため、70代になっても販売職として店頭に立つことが珍しくない。  以前は、定年を迎えてもしばらく役職を継続するケースもあったが、現在は、定年と同時に役職を外れ、それと同等の役割に位置づけられる「シニアアドバイザー」などの肩書に変わる。横山部長は、「経験のある方には、それを活かした意見も期待しているので、『シニアアドバイザー』という立場をになってもらっています。豊富な現場経験を基に、専門性を発揮しながら、現場で知識や経験を後進に伝えてもらいます。また、健康面や環境面に配慮し、単身赴任者は60歳になると地元に戻す形にしています」と説明する。  1日の労働時間は、本人が希望すれば個別に対応するが、基本的にはそれまでと変わらない。ただし、休日の日数については、土曜日は隔週での休日から毎週休日にするというように、年間で20数日増やした。通常の社員の休日数は年106日が基本だが、60歳以上の社員平均休日数は129・5日、パートタイマーの平均は152日(1年間在籍社員のみの平均)である。体への負担などに配慮し、バランスの取れた働き方ができるようにしている。それ以外の面では特別な配慮はしていないという。定年予定者や満59歳の社員を対象に、年金受給に関する説明や、継続雇用に関する意向確認を行う「ワークライフバランスシニア研修」を実施するくらいで、例えば、高齢社員と若手・中堅社員とのコミュニケーションの円滑化を図るための工夫や、高齢社員の活躍をうながすための特別な取組みなどはない。「先輩に対する礼節はわきまえなければなりませんが、業務面では、むしろ分け隔へだてない対応をするほうがよいと考えています」(横山部長)と話す。 店長・マネージャー経験者を対象に「グランドキャリア制度」を導入  販売職や専門職の方たちの多くは「店舗で働きたい」と希望するが、2018年には、定年を迎えるまで従事していた販売職や専門職以外にも、特定の業務(職種)で、いままでのキャリア(経験・知識)を活かして活躍できる仕組みとして、「グランドキャリア制度」を導入した。  対象となるのは、60歳以上のマネージャー、または店長経験者。雇用形態は、本人の希望をベースに、嘱託社員またはパートタイマーとなる。  グランドキャリア制度では二つの職種(担当業務)を設定している。一つは、「品質管理」。お客さま対応の経験を活かし、お客さま目線に立った商品確認(色ムラ・縫製・匂いなど)を、全国数十カ所にある取引先の出荷場に出向いて定期的にチェックする。機械的な品質管理は従来から行っていたが、お客さまが購入時に気にされるところをベテランの目でチェックし、さらなる品質向上を図る。  もう一つは、「内部監査」。全国の地域店舗(10〜20店舗を予定)に配置し、これまで各店舗で年1回行っていた内部監査を年2〜3回実施し、コンプライアンスを強化する。内部監査のないときは販売を担当してもらう。  「店舗では、日々入ってくる商品に異常がないかを確認してから売り場に並べますが、経験を積んだ方は、一目見ただけで、『何か変だぞ』と異常に気づきます。勘といえば勘ですが、そういう商品は、よくよく調べてみるとだいたい問題があるものです。何万着も見てきたベテランの鼻、かぎ分ける力は、品質管理に大いに役立ちます。内部監査についても、店舗で何十年も働いてきた方は、内部で不正が起きるときの手口やタイミングなど多くの事例を知っています。また、現場では、何らかの不具合が原因で、本来の取扱いと異なるやり方が定着し、それがその職場のルールになってしまっていることがあります。それを正し、効率的なオペレーションのアドバイスをしてもらうことも期待しています」と横山部長はいう。どちらも、その人がつちかってきた経験を活かそうとしていることが分かるだろう。  いまのところ、みんな「店舗で働きたい」と、販売職を選択しているが、シニアのキャリアとしてこうした活躍の道も用意されていることは社員にとってのメリットになる。今後も、従業員と社会のニーズに対応しながら、一人ひとりが活躍できる環境の整備に取り組んでいく考えである。  また、現在は、高齢になって病気を理由に退職する人がいるため、そのサポートのために何らかの制度や補償ができないかを、人事部門で検討しているところである。 知識と経験を持つシニアがプレーヤー兼アドバイザーとして活躍  はるやま商事商品部シニアエキスパートの高渕(たかぶち)淳也(じゅんや)さんと、同じく店舗開発部管理シニアアドバイザーの重森(しげもり)俊宏さんは、ともに1953年生まれの66歳。それぞれの部署で専門性を発揮しながら、後進の指導にあたっている。2人が65歳を過ぎても働き続けるのは、使命感とやりがいがあるためだ。  高渕さんは、もともとは広島に本社を置くスーパーマーケットチェーンに勤務し、紳士服などの衣料品の仕入れを担当していたが、20年ほど前、地元である岡山に戻りたいと、転職を決めた。入社後は、商品部や商品管理部で、商品の仕入れや店舗の在庫管理などを担当してきた。  「私の場合、定年後も2年間は部署の責任者を継続し、3年目から、商品部と商品管理部を兼ねるアドバイザー的なポジションになりました。みんなにきっちりやってもらわないと会社が回っていかないという使命感と、若い人を育てていくということがモチベーションになっています。衣料品は素材と縫製がポイントになりますが、それがいま、どんどん変化しています。素材の面では、天然素材だけでなくいろいろな合繊(ごうせん)素材ができていますし、縫製については、工場が中国へ出ていき、いまは東南アジア諸国へと移っていっています。はるやまとしてどういうスタンスでものをつくっていくのか、その組立てをどうするのかといったところは、経験をふまえて教えていく必要があります」(高渕さん)  一方、重森さんは、岡山市内のデパートにある大阪の紳士服メーカーの店舗の販売員として勤務していたが、大阪転勤の話を受け、地元の岡山にとどまるため、20数年前に同社に入社した。入社後は、店舗の賃貸借契約の商談や更新手続きなどを担当している。  「店舗の賃貸借の契約というのは、契約期間が長く、何年も先を見越して仕事をしないといけません。個人の地主さんもいますし、高額な取引きになるので、見知った顔ですと、相手は安心感を覚えるようです。契約から何年も経ってから『重森さんいますか』とたずねてこられる方もおりますので、長くいる人間が役に立ちます。そういうなかで、『もう少し働いてもらえますか』と会社から提案があり、その流れで働かせてもらっています。若手も入ってきますが、ケースごとに事情が異なりますので、一朝一夕にはいきません。次に似たケースが起きるのが1年先だったりしますので、少しずつ教えています。目標としては、体系化してシステムとして確立したいと考えています。人が途切れても、仕事が途切れるわけにはいきませんので、次の人に引き継げる形にしていきたいです」(重森さん)  2人が長く働くうえで気をつけているのは、ストレスをためないことと、体を動かして健康を維持すること。実は2人はゴルフ仲間で、よく一緒にコースを回るのだとか。 自ら専門性を発揮しながら知識と経験を後進に伝えていく風土  高渕さんは、これからシニアになる人たちへのアドバイスとして、「私のように実務を離れてアドバイザー的な立場になると、どこまで自分でやるのか、何を助言するのかがむずかしいところです。後進を成長させるためには、出すぎてもダメですし、出なさすぎてもダメ。バランスを考えて、自分で発言や行動をコントロールすることが大事だと思います」と話す。  重森さんもこれに同意し、「育てるためには少し引いていかないといけませんが、そのやりようを次の人が感じてくれたらいいですね。私が出ずに引いた、自分は託されたということを理解してもらえると、成長意欲にもつながりますので、そういう進め方を心がけています」と付け加える。2人に共通するのは、後輩たちの成長を願う思いだ。  知識と経験を持ったシニアが自ら活躍しながら、後進を育てていく組織を築けている秘訣について、横山部長は、全員が長くプレーヤーとして働いている点をあげる。「期せずしてなのか社風なのかわかりませんが、当社は、マネージャーがいてプレーヤーがいるというより、基本的にオールプレーヤーなのです。部長職であっても、長くプレーを続けます。そこにはノウハウと経験が凝縮されていますので、急に抜けられては困ります。そのため、『スロー継承』とでもいいますか、60歳でいったん区切りをつけた後、時間をかけて継承していくことが風土として根づいています」という。  「当社は、偉そうにいえることは何もしていませんが、いまの高齢者はとにかく元気です。年齢という物差しだけで、通常の業務から外してしまうのはもったいない。柔軟に話し合いながら、活躍をうながしていくとよいと思います。従業員を本当に活用できているかについては、当社としても、常に意識を持って考えています。制度は、経営環境や社会情勢などに応じて、時代に合わせて変化していくもの。時代に合わせて、求められる形に柔軟に変化することが大事だと考えています。当社はやっと60歳以上の従業員が増え出してきて、これから高齢者雇用を真剣に考えなければいけない段階です。これからも、試行錯誤しながら取り組んでいきます」と続ける横山部長。  一人ひとりの活躍をうながし、長い経験のなかで身につけた知識やスキルを後進に伝えていく同社の取組みは、これからも続く。 ※ 取材にご対応いただいた方の役職は2019年10月末時点のもの 写真のキャプション マーケティング部の横山健一郎部長 重森俊宏さん(左)と高渕淳也さん(右) 【P21-24】 企業事例3 定年70歳・雇用年齢上限なし 株式会社 テクノスチールダイシン (栃木県宇都宮市) 毎日の張合いと働く目標につながった70歳定年制 社員の安定した雇用環境を整え高品質な製品の製造体制を構築  株式会社テクノスチールダイシンは、2001(平成13)年9月に石田裕之(ひろゆき)代表取締役が、鉄骨施工図・現寸業の「大進工業」として創業。同年12月に宇都宮市内に工場を設立。今年18年目を迎えた、鉄鋼事業者である。建築鉄骨の製作を事業の柱に、建築耐震補強工事、橋梁(きょうりょう)工事、プラント工事なども手がけている。  2007年、大進工業から「株式会社テクノスチールダイシン」に改組し、2008年に国土交通大臣認定工場の鉄骨製作工場性能評価「Rグレード」※1を取得。翌年の2009年7月には「Mグレード」に昇格した。そして、さらに一つ上の等級である「Hグレード」を目ざし、社員の安定した雇用環境の整備・改善を行い、資格取得を奨励するなど、企業の成長に向けた改革に取り組んできた。Hグレードを取得している企業は国内で260社ほどしかなく、認証取得企業は超高層ビル以外のあらゆる建築物の施工が可能になる。  8年間の取組みを経て、2017年8月に念願のHグレード認証を取得。これにより、鉄骨溶接部の性能、あるいは検査体制が認められ、耐震性に優れた鉄骨を提供できる鉄骨製作工場として信頼性が高まった。さらに、取引企業の幅が広がり、現在は栃木県内を主軸に、関東圏、南東北圏を商圏として展開し、事業規模を拡大している。  同社はかねてより高齢者雇用の促進に努めており、2016年には高年齢者雇用開発コンテスト※2厚生労働大臣表彰優秀賞を受賞している。現在、60歳以上の社員は12人、そのうち65歳以上が9人おり、彼らは戦力としてだけでなく、社員の精神的な支えとして、相談役として、かけがえのない役割をになっている。 70歳への定年引上げと各種施策の導入で高齢社員のモチベーションが大きく向上 ■70歳定年延長と退職金制度の新設  2015年8月に定年を70歳に延長し、その後の雇用継続には年齢の上限を設けないことを就業規則に明文化した。定年延長の背景には、2010年ごろの業績低迷による危機的状況があった。「根本的な改革なくして企業の存続はない」と判断し、企業の成長に向け、Hグレードの取得を目ざし、雇用環境の改善を含めた大幅な見直し策を講じた。それが、「新たな企業風土の構築」、「人員不足の解消」、「資格保有者の増員」、「技術の伝承」である。  「人員不足の解消」の具体策の一つが、定年年齢の延長であった。石田裕次専務取締役は「当社で働いている高齢社員は仕事に対して意欲的で、非常に元気があり、65歳での定年は早すぎるという意見でまとまりました。さらに年齢上限を設けないという意見も出ましたが、退職金制度の導入を優先することにしました」と、70歳定年とした理由を説明する。  大手企業では導入が一般的な退職金制度であるが、中小企業には退職金制度そのものがない会社は少なくない。そのため、同社は退職金を「地域の水準よりも大幅に高い金額」に設定しており、高齢社員のモチベーションの一つになっている。このように退職金制度の導入により、高齢者の働く意欲もより増したという効果が得られた。  石田専務取締役は「70歳定年は高齢社員にとって『70歳までがんばる』という張合いであったり、目標になったりしています。そのかいあってか、世間的な定年年齢である60歳、65歳を超えても変わらず、週5日、フルタイムで精力的に勤務し、会社に貢献してくれます。ただ、定年の70歳を迎えると再雇用を選ばず退職する人が多いですが、その後1年ほどで再雇用を希望して戻ってくる人が何人もいます」と70歳定年の効用と再雇用の傾向を説明する。  70歳以降の再雇用は本人と面談のうえ、勤務形態を「短日勤務」、「時短勤務」など本人の希望に沿う形とするなど、フレキシブルに対応している。 ■人事評価と賃金制度  定年延長と退職金制度で社員のモチベーションがアップし、社内の活性化につながったテクノスチールダイシン。賃金・評価制度については、能力と評価結果に応じて賃金を支払う制度を整備した。  まず2016年度から、70歳までの全社員を対象とした人事評価制度がスタート。自己評価をもとに上司が評価を行い、目標管理制度を実施している。人事評価制度を導入した際は職種ごとの貢献度の比較がむずかしく給与体系に結びつけていなかったが、現在は評価結果と給与体系の接続を実現。年度始まりの4月と、賞与前の夏期・冬期に個人面談を実施して評価を行い、能力と貢献度によって給与・賞与がアップする仕組みに改定した。もともと60歳まで定期昇給を行う年齢給を取り入れており、それ以降も60歳到達時の基本給を維持するため、賃金が下がることはない。改定によって60歳以降も賃金アップが望めるようになり、高齢社員のやりがいの一つになっている。  70歳以降については、時間給に切り替わり、出勤日数がそれぞれ異なるので一概にはいえないが、70歳到達時の基本給と同等の時間給となっている。 高齢社員から若手への技能の伝承が安全な職場環境の構築につながる ■若手育成と技能伝承  会社をあげてHグレードの取得を目ざし、社員の資格取得に注力してきた同社。「従業員の成長とともに発展し続ける」をかけ声に、Hグレード取得後も全員参加の勉強会を変わらず定期的に実施している。外部講師を招き「技能の検証」、「検査体制の見直しと強化」などを学ぶほか、高齢社員が講師として技能指導を行うこともある。  月1回程度の定例勉強会のほかに、必要に応じてその都度OJTや講習を実施。鉄骨業はとりわけ溶接、ガス溶接、ガス切断の技能が求められることから、熟練工である高齢社員がそれぞれつちかった技能を伝えるべく、言葉では表現しづらい音や光、色などで見極める感覚的な技術を実践して指導。「熟練工から若手」、「先輩から後輩」と、高齢社員が日々の勤務を通じて技能伝承を行うことで、若手の溶接工育成の一翼をになっている。  技術講習以外にも、安全作業を徹底するための講習会を開催。これは高齢社員が中心になって指導役を務めている。石田専務取締役は「高齢社員がケガをしたという話はほとんど聞いたことがありません。なぜなら、物の置き方や台座の配置など、安全確保のコツを経験から習得しているからです。私たちは重い鉄骨を扱いますから安全面の指導は重要です。ベテランから若手社員にコツを伝授してもらうことで、安全な職場環境の整備、改善活動を推進しています」と説明する。 ■職場環境に関する改善  鉄工所の作業現場は概して乱雑になりがちであるが、「品質向上はきれいな現場から」を合言葉に、2013年4月から「5S活動」に注力し、安全で安心な職場環境づくりを推進している。「5S」とは整理、整頓、清掃、清潔、躾(しつけ)を意味し、経営コンサルタントの指導を受け、5Sを徹底している企業を視察して学んできた。高齢社員も経験に基づいたアイデアを出すなど5S活動に積極的に参加している。全社をあげて徹底した活動を実践したことで、工場内の美化が進み、明るい雰囲気に様変わりした。2019年からはさらに進化させ、「職場の安全(Safety)」を追加して「5+1S活動」としている。安全作業を周知し、社内安全大会を開催するなど、不安全行動の撲滅を目ざして活動を推進中である。  また、同社はよりよい製品の提供と、生産性の向上を目ざし、各ラインに積極的に自動化機器を導入してきたが、それにともない工場を増設することで、密集していた現場作業が余裕を持って行えるよう改善され、整理整頓が進み安全な通路が確保された。 ■未経験者を含めた高齢者の新規雇用  未経験者を含め65歳を上限に新規社員の募集を、間口を広く行い、60歳以上の高齢者を5人ほど新規採用した実績がある。例えば異業種他社で定年退職した高齢者を新規で採用し、社員送迎バスの運転業務をメインに、工場内の軽作業も任せるなど、新たな職域を創出した。  未経験者を受け入れる一方で、高齢者を含め同業経験者の応募に期待している。同業出身の経験者は即戦力となるほか、技術を持った人材には若手社員が自然とついていくことから、おのずと師弟のようなよい人間関係が生まれ、コミュニケーションもスムーズだからだ。  また、長年つちかったネットワークから新たな人材の紹介が期待できるなど、ベテラン採用ならではのメリットがある。 若手からの信頼の厚い鉄筋ひとすじ50年の熟練工  68歳の郡司孝一さんは、56歳で同社に入社した。入社以前も同業で働いていた「鉄筋ひとすじ50年」の熟練工である。鉄鋼事業部に所属し、建築資材である鉄骨の組立てを行っている。製品によって異なるが、一日10回ほど同じ工程のサイクルをくり返すという。「単純作業をくり返すと飽きてしまう方もいますが、製品が出来上がるのが楽しく、私はこの作業が大好きです」と終始笑顔だ。  石田専務は「徒弟制の師匠のようなもので、若手がつまずいたら、その答えを持っている人。決していばったりせず、人望があるのでおのずと人が寄って行きます」と、絶大な信頼を寄せている。  郡司さんは日々、作業中に若手から質問を受け答えることで、郡司さんの技術・技能を伝えている。「若いといっても、だれもがある程度の技術を持っています。寸法の誤差を指摘すると、次か、その次にはできるようになっている。だから今度はまた別のことを教える。そうして若い人が少しずつ技術を習得して成長していくのを見るのは嬉しいです」と若手育成について語る。「熱いし、寒いし、たいへんな仕事ですが、嫌いになってほしくない。例えば、車を買うため、家を買うため、何でもいいから何か一つ働く目標を見つけることが大事。これが仕事を続けたり、技術を習得したり、仕事を好きになるきっかけになる」と手に職をつけるためのアドバイスを贈る。  仕事で大事にしていることは、「工場内全体を見渡すこと」。納期に間に合うか、だれか調子が悪い者はいないかなど、全体を見て把握し、何か気がかりなことがあれば上長に報告する。最近は工場が増設され、会社が拡大したことでこれまでのようには会社全体を見て把握することがむずかしくなったが、テクノスチールダイシンの成長をいつまでも見届けたい気持ちは変わらない。  65歳から年金の受給が始まった。この区切りを迎えるにあたって、以前は仕事を続けるかどうか迷うこともあったが、いざ65歳に到達してみると、それまでと同様に働く毎日を過ごしていて、特に変化はなかったという。今後についても「70歳以降もフルタイムで週5日働き続けます。日々のペースが変わったら身体の調子が狂ってしまいそうです。私はとにかくモノをカタチにする仕事が好きなんです」と笑顔で締めくくった。  若手社員のほかに外国人技能実習生も在籍しているが、郡司さんはお花見など日本の文化を体験できるレクリエーションを自発的に企画するなど、社員の気持ちを一つにまとめようとする心配りをここにも見ることができる。 すべての社員が安心して働ける職場にこそ高齢社員が欠かせない  会社の歴史が浅く、社員の多くは中途採用であるなか、経験と技術を持ち、予期しない事態にも慌てず冷静に解決策を提示する高齢社員は、若手・中堅社員から「親方」あるいは「師匠」のように尊敬され、また「父親」のように慕われ、社員の心の拠より所になっている。このように、高齢社員の存在が尊重される社風は、すべての社員が安心して働ける居心地のよい職場環境を実現している。今後もさらに同社が掲げる目標を達成するために、高齢社員の活躍が欠かせないことだろう。 ※1 Rグレード……鉄骨溶接構造5階建て以上の建築物(延床面積3000u以内、高さ20m以下)、400N級および490N級炭素鋼で板厚32mm以下の鋼材、原則下向き溶接の製作が可能 ※2 高年齢者雇用開発コンテスト……企業が行った、高齢者が活き活きと働くことのできる職場づくりの事例を募集・収集し、優秀事例について表彰を行っている。厚生労働省と当機構が主催 写真のキャプション 株式会社テクノスチールダイシン本社 石田裕次専務取締役 「鉄筋ひとすじ50年」の熟練工、郡司孝一さん 【P25-28】 企業事例4 定年65歳・雇用年齢上限80歳 ※営業職員の場合 富国(ふこく)生命保険相互会社 (東京都千代田区) 80歳まで勤務可能な環境を整備し外≠ノ目を向けるため「プロボノ」を活用 最大80歳まで勤務可能定年後も「ライフワーク」として勤務  全国に支社62カ所、営業所464カ所を展開する富国生命保険相互会社。1923(大正12)年の創業以来、「相互扶助」の精神で事業を展開し、2023年の創立100周年に向け、次代の相互扶助を探求する「100周年プロジェクト」に取り組んでいる。  職員の構成は、社内で事務や営業を行う「内務職員」と、お客さまに対して営業活動やアフターサービスを行う「営業職員」の二つに分かれており、内務職員はパートなどを含めて全国に約3500人、営業職員は委託を含めて約9000人が在籍している。  定年は、内務職員が60歳で、営業職員は65歳。営業企画部営業企画グループの國見(くにみ)善行(よしゆき)課長は、「内務職員は60歳で定年を迎え、希望者全員を65歳まで再雇用しています。営業職員の場合は、定年の65歳を迎えると定年退職金が支払われ、そこで退職する方もいますが、定年後も継続して勤務することが可能であり、多くの人が仕事を続けています」と話す。  営業職員の定年後の仕事の続け方は、2パターンある。  一つは、定年前と同じように週5日、毎日9時30分から16時30分まで勤務する「勤務延長」。ただし、一定水準の営業成績を保っていることが必要で、体力や能力的に従来通りの活動ができることが条件である。実績を上げていれば、最大で80歳までの勤務が可能である。以前は年齢制限を設けていなかったが、高齢者の体力や安全、お客さまへの対応などについて配慮し、2011(平成23)年10月より80歳という上限を設けた。  もう一つは、出勤義務のない「委託職階」への移行である。國見課長は、「委託職階への移行は、『65歳を超えると、さすがに週5日のフルタイム勤務は体力の負担が大きい。でも、これまで担当してきたお客さまのフォローは続けたい。保険を検討したいというお客さまがいるならこれからも営業を続けたい』という職員のための働き方です」と説明する。  10年以上勤めている方は委託職階へ移行可能で、勤務延長より条件のハードルが低い営業成績で働き続けることができ、こちらも最長で80歳まで働くことが可能となっている。  現在、65歳以上の営業職員は、勤務延長が536人、委託職階への移行が596人。計1132人が、定年後も活躍している。  同社の営業職員とお客さまとの関係は密接であり、本人だけではなく、子や孫の代まで長い期間のつき合いになることも少なくない。  「営業職員も、お客さまとの関係を続けていきたいという思いから、定年後も働きたいという人が多いのだと思います。  当社では、例えば営業職員が担当しているお客さまが引っ越しをして遠くに行った場合でも、しっかりフォローできるような仕組みになっています。  もちろん働く目的は人それぞれですが、『お客さまの期待に応えたい』、『お客さまをフォローしたい』といった思いから、収入を得るという目的以上に、仕事が自分のライフワークになっている営業職員が多いですね」(國見課長)。 アクティブシニア研修で「プロボノリーグ」を活用  同社では、経営幹部候補の育成をはじめ、多様な人材育成プログラムを通して、職員が育ち、活躍できる組織づくりに取り組んでいる。その一環として、これから増えていくシニア層が「ライフ」と「ワーク」の両面でやりがいを持って活躍できるよう、2016年度より「アクティブシニア研修」をスタートさせた。  アクティブシニア研修は、同社の人材開発本部が打ち出したもので、50歳以上の総合職を対象とし、自分から手をあげてもらう公募型の研修。プログラムは、認定NPO法人サービスグラント(東京都渋谷区)が主体となって実施している「プロボノリーグ」を活用したもので、異業種他社の人たちとチームを組み、課題を抱える実際の団体(NPOなど)へのヒアリングやフィールドワークなどを通して、その課題解決を図る、という内容となっている。  「プロボノ」とは、ラテン語の「Pro Bono Publico」を語源としており、専門的なスキルや経験を持って仕事をしている人が、自分のノウハウを無償で提供して行う社会貢献活動のこと。もともとは弁護士など法律にたずさわる職業の人々が無報酬で行うボランティアから始まったといわれており、その公益性の高さに加え、業種の枠組みを超えて社会的課題の解決にたずさわれることから、人材の育成効果も高く、近年では、「プロボノ」を人材育成に活用する企業が増えてきている。  人材開発本部の坂井賢一郎副部長は、「この研修には、中堅社員向けとシニア社員向けがあり、異業種の合同チームによるプロボノ活動を通じて、『社会感度や自己の能力・スキルの向上』、『異業種・異分野とのコラボレーション力の研鑽(けんさん)』などにより、これからの社会に求められる革新的な人材を育成することをねらいとしています。特にシニア社員の場合は、異業種の人たちから刺激を受けることで仕事の活力としてもらいたいことはもちろんですが、他者と接点を持ち、公益性の高い課題に触れることで、定年退職後にどんな生き方をしていくかを考えるきっかけにしてほしいと考えています」と話す。  プロボノリーグの期間は1カ月間におよぶ。そのうち集合形式で行うのは4日間のみ。集合形式は4日間連続ということではなく、例えば1週間に1回というような設定になっており、集合研修以外の日には、参加者がそれぞれ自宅などで必要な作業を行う。  「基本的に1社から3人が参加し、他業種の人たちと4〜6人で一つのチームをつくります。例えば、当社から3人参加したら、同じチームではなく、一人ずつ3チームに分かれ、違う業種の人たちと組みます。そして、課題を抱えている支援先団体に対し、複数のチームで支援を行います。ヒアリングを行って課題を整理して解決策を探り、最終的にそれぞれのチームが課題解決のための成果物の提供を目ざします」(坂井副部長)。 異業種交流により視野が広がり自分の強みを再認識  プロボノリーグには、坂井副部長と、営業企画部営業情報グループの西潟(にしかた)純一副課長も参加した。  西潟副課長は、プロボノリーグに参加した経緯について、「私が参加したのは、2018年度、53歳のときです。坂井さんから『行きませんか』と声をかけてもらったのがきっかけでした。正直なことをいうと、それまでプロボノに興味を持ってはいませんでした。ただ、自分の年齢を考えると、退職した後の生き方も考えなければいけない時期であり、『自分は、会社以外のことはあまり知らないな……』とおぼろげに思っていたのです。そんなときにこの研修の話をいただいたので、『それじゃあやってみようか』となったわけです」と話す。  「私たちのチームは、社会福祉協議会で業務をされている区役所の方、システム開発会社の総務の方、大手IT企業のOBがメンバーでした。業種も職種も異なるので、仕事の進め方も異なれば、ものの見方や発想も違います。そういった、それぞれのノウハウを持つ人が集まって、支援先の課題解決のために、いろいろ知恵を出し合いました。私自身もたいへん勉強になりました」(西潟副課長)。  西潟副課長たちが支援したのは、美容・健康関連のNPO法人。デイサービスなどの老人介護施設を利用している高齢者に、化粧やハンドマッサージをしたり、アクティブになれるパーソナルカラーや服装のアドバイスなどを行っている団体である。  「NPO法人とはいえ、一般の企業と同じで、活動資金が安定していないと十分な活動はできません。その活動を充実させるために何が必要なのかを提案することが、私たちに課せられた課題でした」(西潟副課長)。  そこで、集合研修の形で、プロボノの基礎を学ぶオリエンテーションや支援先団体へのヒアリング、実際に行っている活動の体験(フィールドワーク)などを行い、それ以外の期間は、インターネットを活用した情報交換をしながら、各自が自宅作業を行い、最終的に提案する「成果物」の作成を進めた。  「私たちのチームは、企業の研修やイベントなどに同NPOが持つノウハウを提供したらどうか、ということを提案しました。チームのメンバーが会って一緒に活動する期間は4日間だけですが、一緒に見聞きしたことを基に、それぞれが考え、情報収集したものを、インターネット上の会議室で話し合いながら、作業を分担して成果物につなげていくわけです。  ほかのチームでは、お金の収支計算表をつくるなど、私たちとはまったく違う提案をしていました。自分の得意なスキルを駆使した結果、同じ支援先に対して異なるアプローチをしているのです。視野が広がると同時に、自分の強みを再認識する機会にもなりました」(西潟副課長)。  同研修の受講後、西潟副課長は地域活動に参加するようになったという。「私は単身赴任であちこち回っていたこともあり、これまで、自分が住んでいる地域の人たちとの交流はまったくありませんでした。この研修を通して、自分の人生を考え、地域の人たちとの交流も大事だということを改めて実感しました。そこで自治会活動に積極的に参加したり、自治体でスポーツの指導やアドバイスなどを行うスポーツ推進委員などをやったりもしています」と、西潟副課長は自身の変化を語る。 ベテランの労をねぎらう表彰や「ライフプランセミナー」も実施  同社では、アクティブシニア研修のほかにも、高齢職員のより一層の活躍に向け、さまざまな取組みを行っている。「永年勤続者表彰」もその一つ。勤続15年、20年、25年、30年、35年、40年の節目のときに対象者を表彰するもので表彰状と記念品を授与する。「表彰式は、全国の支社ごとに行っています。表彰を楽しみにしているベテランの方も多く、長く勤めるうえでモチベーションにつながっています」と、営業管理部の長谷川克人(かつひと)副部長(兼営業人事グループ課長)は話す。  さらに、勤続25年の営業職員については、研修や情報交換会も実施している。「勤続25年の節目のとき、年に1回、北海道から沖縄まで全国の営業職員に本社へ集まってもらい研修を行っています。研修後は、情報交換会を開催しています。社長をはじめ役員も出席し、営業職員のテーブルを回って労をねぎらいます。生命保険の営業職員は、お客さまと長いおつき合いになりますので、長く勤務し続けてもらうことに大きな意味があります。そのための制度を整えることも大切です」(長谷川副部長)。  一方、内務職員に対しては、50歳以上の職員を対象に「ライフプランセミナー」を実施している。  「ライフプランセミナーは、アクティブシニア研修と同様、公募型の研修です。以前は52歳の職員を対象に、全員参加の研修として実施していましたが、受講者から『なんだか、肩をたたかれているような印象がある』という意見が出たこともあり、2016年度から公募型に変更しました。  同セミナーは、『人生設計』と『新しい生き方の提案』の2本柱で、退職後の暮らしや生き方について考えるきっかけとしてもらうための内容としています。内務職員は『総合職』と『エリア職』にわかれており、エリア職はほとんどが女性です。将来について男性は割と無頓着な人が多く、エリア職の女性たちのほうが高い関心を示しており、参加者も年々増加傾向にあります。具体的には、退職金の計算を参加者自身にしてもらったり、2018年度のセミナーでは、新しい取組みとして『プロボノ』を紹介しました」(坂井副部長)。  同セミナーの受講者のほとんどは、プロボノリーグを体験していない。プロボノリーグに参加した西潟副課長は、「プロボノを体験すると、視野が確実に広がります。将来の生き方はもとより、いまの自分の仕事にどう活かしていくかということも考えるようになります。『もっと、自分の世界をあちこちに広げていかなければいけないな』と感じたことが一番大きかったですね」と、あらためてプロボノの効用を強調する。プロボノは、支援先の課題解決を通して、参加者の社会課題に対する関心の向上や、自分の強みの再発見、新しい生き方に気づくことなどにきわめて有効である。  高年齢者雇用安定法の改正に向けては、70歳までの定年延長や定年廃止だけではなく、起業や社会貢献活動を含めた多様な選択肢を整えることが検討課題とされている。定年後もライフワークとして勤務可能な制度を整え、プロボノを通して外に目を向けるきっかけを提供する同社の取組みは、これからの高齢者雇用の見本となるものといえるだろう。 写真のキャプション 左から西潟純一副課長、坂井賢一郎副部長、國見善行課長、長谷川克人副部長 【P29】 日本史にみる長寿食 FOOD 315 八代将軍が名づけた小松菜 食文化史研究家● 永山久夫 将軍、小松菜によろこぶ  「小松菜」の呼び名の由来については、面白いエピソードがあります。江戸時代の八代将軍・徳川吉宗(1684-1751)が、その名づけ親だというのです。  吉宗というと「鷹(たか)将軍」と呼ばれるほど鷹狩りが好きで、よく現在の東京都江戸川区に訪れています。この辺りは、当時は湿地が広がり、ツルなどの鳥類が飛来するよいお狩場で、小松川という村がありました。  狩りは数日間続きます。その間、将軍の世話をしたのが近くにあった神社の神主さんで、食事づくりをすることもありました。  ある日、昼食に餅の入ったすまし汁に地元でとれた青菜をあしらってさし上げたところ、たいへんお喜びに。  特に、青菜のみずみずしい香りとさわやかな味わいに感動し、菜の名前を土地の者にたずねます。「名前はありません」と聞くと、吉宗は、「ここは小松川だから、“小松菜”と呼んだらどうか」と、名づけてくれたというのです。それ以来、「小松菜」は呼び名として定着し、現在でも用いられています。 人生100年時代を支える栄養成分  いまでは、関東地方を中心に周年栽培されていますが、「冬菜」とか「雪菜」などとも呼ばれるように、寒さが加わってくると、味が濃くなり、格段においしさがきわだってきます。  葉の緑色の濃さから見ても分かるように、代表的な緑黄色野菜です。  なにしろ、体細胞の酸化、つまり、老化をはねかえす抗酸化パワーの強いβ(ベータ)-カロテンの宝庫なのです。  同じように酸化防止効果があるというビタミンCは、ホウレンソウよりも多く含まれています。若返り成分を含むビタミンEも豊富ですから、相乗効果で、若さを維持するうえで大変に役立ち、人生100年時代を支える理想的な野菜といってよいでしょう。  また、小松菜の特色にカルシウムの多さがあります。100g中に170mgも含まれていて、ホウレンソウの約3倍。カルシウムはストレス予防作用もあり、イライラするときは、小松菜をさっと油炒めにして食べるのがおすすめです。 【P30-31】 江戸から東京へ [第87回] 黄門様の失敗 徳川光圀(みつくに) 作家 童門冬二 黄門様の悩み  水戸黄門(徳川光圀)については、このシリーズでも時折登場してもらった。新ネタを見つけたので、ご紹介する。  水戸黄門こと、水戸藩主の徳川光圀は、1690(元禄3)年の10月に隠居した。翌日、権中納言(ごんちゅうなごん)に任ぜられた。古代中国の唐では、中納言のことを「黄門」とも呼んだので、その習慣が日本にも採り入れられたのだ。  隠居した光圀は、いまの茨城県太田市に隠居所を設け、西山荘(せいざんそう)≠ニ名づけた。この地域は、旧主であった佐竹家を慕っていたので、勢い、徳川家にはあまり好感を持たなかった。光圀は、いわば一人で敵中に落下傘(らっかさん)降下したのである。住民たちの気持ちを徳川家にも向けてもらうために、いろいろな工作をした。隠居所をここに設けたのもその一つで、やがて母親の墓をこの地に移す。また、かれの大事業であった『大日本史』の編纂(へんさん)もここで行うようにした。またかれ自身は、壁に九カ条の戒(いまし)めを書いた。次のようなものだ。 一 苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし 一 主人と親とを無理なるものと思うこと 一 子ほどに親を思え。子のない者は、子のある者を手本とせよ 一 掟を恐れよ。火を恐れよ。分別のないことを恐れよ。恩を忘れるな 一 欲と色と酒とを敵と知れ 一 朝寝をするな。長話をするな 一 小さなことにも気を配れ。大きなことに驚くな 一 九分は足らず、十分は余ることと知れ 一 分別は堪忍にあると知れ  古歌にいう。「事足りれば足りるに任せよ。事足りぬとも、足りたると思え」、「人の世は草の葉に置かれた露が落ちると同じことだ」。  これらはおそらく自戒の言葉だろう。一読して、(光圀という人は、かなり短気だったのだな)と感じさせる。  隠居すると間もなく、光圀は農の請作(うけさく)(小作のこと)を始めた。周りの者が驚いて、  「何のために、そこまでなさるのですか?」  と訊いた。光圀は、  「農民が米をつくるときの苦労を、自分で味わうためだ。したがって、単に米をつくるだけではない。役所には年貢も納める。地主には礼として米を持って行く。余ったら、この隠居所の費用に充てる」  と答えた。周囲の者は呆れて顔を見合わせた。しかしいい出したら聞かない光圀のことなので、みんな黙って引き下がった。かれが隠居したときの理由は、  「健康上のことである」  と告げている。特に、  「腕が痛くなって、なかなか思うように使えない。現職であれば、まだ腕を使わなければならぬ仕事が多いので、役に立たぬ腕を抱えていたのではお上のためにもならぬ。したがって、職を退く」  といった。しかし矛盾している。つまり「請作」は、腕が丈夫でなければ務められない仕事だ。ほかに理由があって、「腕が使えなくなった」というのは云訳でつくった理由だろう。 人の心を溶け合す汁講(しるこう)  隠居所にはいろいろな人が出入りした。こういう人々には、壁に書いた「自戒」の九カ条を読ませ、次のような話をした。  「昔は汁講というのがあって、集まる人がそれぞれ飯を持って来る。集まる家では、ふるまいとして汁だけを提供する。これによって、汁と飯が一緒になるように、人々の心が一緒になった。そして、その時々の困った問題などを話し合った。みんなで知恵を出せば、意外にもその問題が早く片づいて汁講の効果が十分に上がった。しかも、非常に楽しい集まりだったよ」  光圀は病気が重くなって、1700(元禄13)年12月6日に死ぬ。73歳である。そのときまで10年間、かれはこの「汁講」の話をし続けた。しかし、話を聞いても、周りの者は一度も西山荘で汁講を開くことはなかった。臨終のときに、光圀はポツンといった。  「この家で、汁講が一度も開けなかったのは残念だな」  光圀は、自分の言葉に託した重みを知っていたが、周りの者にはその真意を理解することができなかった。  光圀は家臣たちが自分の話にヒントを得て、自発的に働きかけて汁講を信じ、太田の住民と心を溶け合せることを期待したのだ。自分の指示によるのではなく、現場の武士たちの努力を頼みとしたのだ。  光圀は徳川側の人間は、太田側の人間が佐竹氏を慕う気持ちを理解し、太田側の住民には「領主交代」という、厳しい現実を理解してほしかった。そして両者が互いに折り合える和解の道を発見してほしかったのだ。それを直接顔を合わせる現場から始めてもらいたかった。  命令しないのは、その方が意識改革が身につくからだ。しかし徒労に終わった。光圀の真意はやはり複雑で説明不足だった。  「やはり、わしが先に立って、汁講の集いを催すべきだった」  あの世への旅の途中で、光圀はつくづくそう思った。そして、  「人間の考えを変えることは、世の中で一番むずかしい」  と改めて思った。 【P32-33】 高齢者に聞く生涯現役で働くとは 第68回  鈴木美知子さん(68歳)は、25年の長きにわたり、入浴介助の仕事一筋に歩いてきた。利用者の心に寄り添う介護サービスの提供を目ざして奮闘する鈴木さんの姿は、ともに働く若い職員のよいお手本となっている。人のために役に立ちたいと願う鈴木さんが生涯現役で働く喜びを語る。 株式会社 サンリッチ三島 パートタイム従業員 鈴木(すずき)美知子(みちこ)さん 施設の開設とともにデビュー  私は、静岡県駿東郡(すんとうぐん)長泉(ながいずみ)町の生まれです。駿東郡は三島市と沼津(ぬまづ)市に挟まれていますが、三島市内の商業高校に進んだこともあり、私は生粋(きっすい)の「三島っ子」を自認しています。高校卒業後、東レ株式会社の協力会社に事務員として就職、その後結婚と同時に退職しました。6人兄弟で4番目の私は、2人の弟たちのためにも早く家を出るのが親孝行と思い、結婚を急いだのかもしれません。21歳のときのことです。  嫁ぎ先は家族ぐるみで食堂を経営しており、私たち夫婦も手伝うことになりました。夫の両親や兄弟が高齢化していくなかで、いつの間にか私たちに経営が任され、将来を考えた私は、30代初めに独学で調理師免許を取得しました。20代、30代は家業と子育てに追われましたが、とても充実した日々でした。そのうち、食堂経営が先細りになる一方で、子どもにお金がかかるようになってきて、何か新しい仕事をしなければと考え始めました。ただフルタイムで働くのはむずかしく、自分の生活に合った仕事がないかといろいろ探すなか、新設の介護付有料老人ホーム「サンリッチ三島」の従業員募集広告が目にとまりました。それからもう25年。43歳からの人生を会社の発展とともに歩いてきました。  「サンリッチ三島」は、平成30年度高年齢者雇用開発コンテスト※1で優秀賞を受賞。介護サービスの向上と合わせて高齢者が働きやすい職場環境の構築を目ざす同社の画期的な取組みは、県内外の注目を集めている。 「入浴介助」という天職との出会い  運命的な出会いというものが、ときにはあると私は思います。そのころ町内会ではボランティア活動が活発になり始め、私も積極的に参加するなかで、何か新しい仕事に就くなら、少しでもだれかの役に立つ仕事がしたいという気持ちが強くなっていました。  サンリッチ三島は、要介護の人はもちろん、自立した生活を望む人たちにもサービスが提供できるという点で、従来の老人ホームと大きく違っていました。また、開設の3年前に温泉が湧出(ゆうしゅつ)、利用者は施設内の大浴場で温泉を楽しめるというのも画期的でした。その大浴場での入浴介助の仕事があり、まだ入居者も少ないため、1日1時間からでも勤務できるという募集内容に私の心は決まりました。運よく採用していただき、以来25年間、入居者の入浴介助を担当しています。  最初は1日1時間、週3日というサイクルで勤務が始まりましたが、とにかく大浴場での入浴介助の経験者がほとんどおらず、マニュアルもなかったため、一緒に作業する仲間たちと相談しながら、どうすれば利用者の方に気持ちよく入浴してもらえるか、そのことを一番に考えて方法を工夫しました。大切なのはまず頭の中でイメージをつくることです。頭で考えた介助の方法に心を添えてサービスを提供する姿勢は、入社以来変わっていません。  利用者の心に寄り添い、きめ細やかな介護サービスを提供するサンリッチ三島の存在はゆっくりと地域に浸透していき、施設の見学会にも多くの人が足を運ぶなか、次第に入所者が増えていった。それに比例して鈴木さんの勤務時間も少しずつ増えていった。 利用者さんの笑顔に支えられて  現在は月・水・金の週3日、午前2時間、午後3時間の勤務体制で、午前中は特殊入浴の介助をしています。特殊入浴とは、機械を使ってベッドのまま入浴してもらうことで、つねに6、7人の入居者を1人ずつ、2人のスタッフで担当しています。午後からはサンリッチ三島ならではの大浴場で、入浴を介助しています。  初めて大浴場で入浴の介助をした方のことは、よく覚えています。入浴用の車椅子から降りていただき、大きな浴槽に入っていただくのですが、立つのが困難な方でしたから、浴槽から出ていただくときがたいへんでした。それでも温泉は気持ちがよいですから、とても喜んでいただきました。そのときの笑顔はいまも忘れられません。  また、大浴場に入ることに抵抗がある入居者の方もいて、脱衣所までいらしたものの、脱ぐのが嫌だといわれて困り果てたこともありました。そうした方でもいまでは楽しみに待っていると話してくださることも多く、本当に嬉しいかぎりです。  70代を目前にしたいま、体力的にキツイと感じることもありますが、入居者の方の笑顔が日々の励みとなり、25年の間、一度も辞めようと思ったことがありません。また、入浴介助はペアで行うのですが、若い人と組むことが多く、彼女たちからたくさんエネルギーをもらっています。一方、経験だけは若い人に負けないので、私が会得(えとく)してきたことはすべて次の世代の人たちに伝えていこうと思っています。マニュアルに頼らず、一人ひとりの状況をきちんと理解してていねいに対応することの大切さを折に触れ話しています。 100歳まで働ける職場とともに  ここで働くまで介護の世界は未経験だった私ですが、職場では資格取得を奨励しており、ヘルパー2級※2の資格を取りました。向学心のある若いスタッフの存在が、私をはじめ高齢の従業員のモチベーションアップにつながっています。本当は介護福祉士にも挑戦し合格したかったのですが、あと一歩というところでおよばず、残念ながら諦めてしまいました。  「どうぞ100歳まで働き続けてください」と、いつも笑顔で声をかけてくれる福家(ふけ)英也(ひでや)社長はアイデアマンで、日常ではできない体験をする「異日常体験」を自ら企画し、赤坂離宮迎賓(りきゅうげいひん)館の内覧や東京消防庁防災館での各種訓練の体験、あるいは観劇会や旅行など多彩なイベントを定期開催しています。  高齢者に優しい職場で悩みも特にありませんが、まず自分が健康であるよう心がけています。介護の仕事は腰を痛めやすいので、自分流のストレッチで身体をほぐしていますし、身体を動かすことが好きなので、ソフトバレーボールやミニテニスなどスポーツを楽しんでいます。思えば健康であるから働くことができ、働いているから健康でいられるのかもしれません。  実はいま、私の娘が同じ職場で入浴介助の仕事に就いています。子育て中なので短時間勤務ですが、私がいきいき働いている姿を見て同じ仕事を選んでくれたのだとしたら、やはりうれしいです。  人の役に立ちたいとの思いから飛び込んだ介護の世界は、まだまだ学ぶことがたくさんあります。これからも生涯現役の心意気で元気にレベルアップを目ざしていきます。 ※1 平成30年度高年齢者雇用開発コンテストで、高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞の受賞企業として、本誌2018年11月号で紹介されている ※2 ヘルパー2級……日本国内で介護のスキルを証明するために実施されていた、訪問介護員2級養成研修の別称。現在の介護職員初任者研修に相当 【P34-37】 高齢者の現場 北から、南から 第91回 大分県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー※1(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 食品加工の現場を支える働く意欲にあふれる高齢従業員 企業プロフィール くにみ農産加工有限会社(大分県国東(くにさき)市) ▲創業 1981(昭和56)年 ▲業種 農産物の冷凍乾燥加工事業 ▲従業員数 79人 (60歳以上男女内訳) 男性(12人)、女性(11人) (年齢内訳) 60〜64歳 15人(19.0%) 65〜69歳 4人(5.1%) 70歳以上 4人(5.1%) ▲定年・継続雇用制度 定年60歳、65歳まで希望者全員を再雇用。非正規従業員は75歳まで希望者全員を再雇用する  大分県は「アジアの玄関口」である九州の北東部に位置し、北側は周防灘(すおうなだ)、東側は伊予灘、豊後(ぶんご)水道に面しています。海や山などの豊かな自然と、温暖な気候に恵まれ、そのなかで育まれた新鮮で安全な「関アジ・関サバ」、「豊後牛(ぶんごぎゅう)」などのブランド食材をはじめ、カボスやシイタケなど四季折々の食材も豊富です。  久住(くじゅう)高原やタデ原湿原などの美しい山並み、城下町の風情を残す天領日田(てんりょうひた)の豆田町(まめだまち)や杵築(きつき)、また宇佐(うさ)神宮や国宝の臼杵石仏(うすきせきぶつ)など、歴史文化資源にも富んでいます。そして、なんといっても「おんせん県おおいた」。県内全域に広がる温泉は泉質に恵まれており、源泉数、湧出量ともに日本一で、別府温泉や由布院(ゆふいん)温泉に多くの観光客が訪れます。  2019(令和元)年の秋にはラグビーワールドカップが開催され、国内外から訪れたサポーターで賑わいました。  同県には、鉄鋼、石油化学、自動車、半導体など、さまざまな業種の企業がバランスよく立地しています。県中部の大分市は国内有数の製鉄所と石油化学コンビナートを備えた臨海工業地帯を擁(よう)し、県北部の中津市、宇佐市、豊後高田市は自動車産業などの第二次産業が盛んで、就業者の割合は22・3%を占めています。概して、地場企業と進出企業が共生・発展する産業集積が進み、製造品出荷額等は九州第2位となっています。  当機構の大分支部高齢・障害者業務課の西本千景(ちかげ)課長は「県内の従業員31人以上の事業所を対象とした高年齢者雇用状況報告(大分労働局・2018年6月1日現在)では、『66歳以上働ける制度のある企業』、『70歳以上働ける制度のある企業』がいずれも全国2位と、高齢者雇用について先進な取組みが進んでいます。当支部では、大分労働局・ハローワークと連携して定年年齢の引上げ、継続雇用制度導入を目ざして相談・助言活動を実施し、あわせて、昨年度から取り組んでいる『高齢者戦力化のためのご提案』により、制度導入についての進め方を案内しています」と話します。  今回は、同支部で活躍するプランナー・山田美詠子(みえこ)さんの案内で「くにみ農産加工有限会社」を訪れました。 原料の品質追求と新しい試み  くにみ農産加工有限会社は、1981(昭和56)年、国見町※2の出資を受け第三セクター※3として設立。「良い製品はよい原料から」、「地域とともに」という方針のもと、業務用のバジルペーストやソテーオニオンなどの冷凍加工野菜、フライドオニオン、フライドガーリックなどの乾燥食品を製造しています。  「畑から営業まで」をキャッチフレーズに六次産業※4化にも着手し、契約農家とともに、地域の農産物に新たな付加価値を生み出す取組みを行っています。具体的には、バジルはやわらかい穂先近くのみを収穫するなど、効率よりも品質のよさにこだわった商品開発・製造を行い、取引先のニーズにこたえています。  2017(平成29)年には、敷地内で第二工場が竣工。食の安全を保証する国際規格であるFSSC22000※5の認証を取得しています。  最近の取組みとしては、大分県産業科学技術センターの協力を得て、農薬を散布する走行ドローンを開発中とのこと。農薬散布の自動化が実現すれば、人員不足の解消や作業効率アップのほか、作業者の身体への影響を防ぐことができ、早期の実用化が期待されています。 非正規従業員は75歳まで希望者全員を雇用  くにみ農産加工の正規従業員の定年年齢は、60歳。希望者全員を65歳まで再雇用し、パート従業員、嘱託従業員、アルバイトの非正規従業員は、希望者全員を75歳まで雇用することを就業規則で定めています。総務経理課の吉丸(よしまる)喜美代さんは、「当社は60歳以上の従業員が3割を占めており、高齢従業員がいないと事業が成り立ちません。特に近年は、現場の主なにない手だった高校新卒者が減っていますから、現場での高齢従業員の役割は増しています」と説明します。  会社を支える存在の高齢従業員が働きやすいように、もっとも気をつけていることは「無理をさせない」こと。スケジュール、体調管理、作業負担など、あらゆる面において、無理をしない範囲で仕事を任せることが高齢従業員にとってもっとも重要であるという考えのもと、取組みを展開しています。  例えば、休暇を申請しやすいように、ホワイトボードに希望日を記入することで休暇を取得できるようにしているほか、作業補助の機器を導入して身体的負担を軽減する、重いものを扱う作業は50歳を過ぎたら若い世代の従業員に引き継ぐようにするなど、さまざまな取組みを行っています。一定の年齢で作業の引継ぎを行うことにより、若い世代は仕事を覚え、技能の継承が行われる仕組みです。  世代間のコミュニケーションも、ごく自然にとれているとのこと。「高齢従業員が人生の先輩として、若手・中堅従業員の相談にのっているようです。逆に、若手のなかには仲のよいベテラン従業員のことを『◯◯ちゃん』と親しみを込めて呼ぶ人もいて、呼ばれた当人はまんざらでもない様子で嬉しそうにしています」と吉丸さんは話します。 パワフルで働く意欲にあふれる高齢従業員  山田プランナーは、2019年1月に初めて同社を訪問しました。その2カ月後の3月に高齢者を戦力化するための提案に訪れ、高齢従業員が安心して働けるよう、正規従業員の定年年齢の65歳への引上げと、希望者全員を70歳まで継続雇用をする制度の導入を提案しています。山田プランナーは「多くの会社で人手不足が深刻化しており、同社が所在する国東市も若年層の確保がむずかしい状況にあります。若年層の雇用確保と高齢者の就業促進は並行した課題ですが、同社は高齢者雇用に理解があり、また、働く高齢従業員はパワフルで労働意欲の高い人が多くいましたので、今後は高齢従業員のがんばりを評価し、モチベーションアップが図れるような評価制度を提案したいと考えています」。  そこで今回は、バジルの選別作業で「ゴールデンコンビ」と呼ばれて一目置かれている、パワフルなお2人にお話を聞きました。 スピーディで正確な仕事に高評価  週3日、8時から17時まで勤務する立川(たつかわ)久子(ひさこ)さん(71歳)と、伊美(いみ)留易子(るいこ)さん(67歳)は、冷食課に所属し、バジル、大根、セロリ、ニンジンなど季節の野菜を冷凍加工する工程にたずさわっています。  選別、洗浄、撹かく拌はん、カット、充填(じゅうてん)などの工程は野菜ごとに異なりますが、バジルの選別作業では2人がコンビを組んで大活躍。入荷が多いときには2tにもなるバジルを、ていねいに、しかも素速くさばくことから、上長に「ゴールデンコンビ」といわれるほど、信頼されています。  目視で行う選別作業は、製品の品質にかかわる重要な工程で、後に異物感知機にかけるとはいえ、あらかじめ異物を取り除いておくことがクレームゼロの安心・安全な製品づくりに不可欠です。  生産者から搬入されたばかりのバジルには、異物などが混ざっていたこともあったそうです。小さな虫などの細かい異物は探知がむずかしいため、何度もバジルを混ぜ返すなど、自分たちで考えた工夫を凝らして取り除いています。大事な工程を任されている立川さんと伊美さんは「食の安全にたずさわっていることにやりがいを感じます」と語ります。 この職場で75歳まで仕事を続けたい  立川さんは、20年ほどレストランで働いた後、くにみ農産加工でイチゴのヘタ取りのアルバイトをしたことをきっかけに、継続して働くようになりました。バジルの選別で大活躍ですが、特に好きな仕事はバジルの栽培なのだそう。くにみ農産加工では生産者によいタネや育て方などを指導するために、試験的にバジルの栽培を行っています。社内で希望者を募り、畑を割りあて、収穫分を買い取るという仕組みにしています。ここで一番広い畑を任されているのが立川さんです。「手間ひまをかけて育てるのは楽しいです」とニコニコ顔で話します。立川さんと同等の面積を担当する筋骨隆々の20代男性従業員をおさえて、収穫量も1位を獲得しました。  自他ともに認める体力の持ち主で、昔から体を動かすことも大好きです。風邪もひかず、丈夫で健康そのもの。「最低でも75歳まで働きます」と頼もしい抱負を聞かせてくれました。  伊美さんは、47歳で入社して勤続20年の大ベテランです。以前は、学校給食の調理補助をしていました。5〜6年ほど勤めて調理師免許を取得。くにみ農産加工の役員をしていた知人から紹介されて入社しました。「パート従業員でも入社時から健康保険に入ることができ、有給休暇も取得できるなど、福利厚生のよさが魅力でした」と振り返ります。  いまは仕事が楽しくて仕方ないという伊美さんですが、入社したころは、人間関係で気苦労があったそうです。「いつか後輩ができたときは接し方に気をつけようと心に決めたものです」と当時の気持ちを打ち明けてくれました。  まわりの従業員から「優しい人」と評判の伊美さん。かつて心に決めたことを実行し、新しい仕事に四苦八苦する新人に「いまはたいへんだけど慣れれば大丈夫だから」と励まし、「嫌な思いをしていない?」と聞くなどの心配りをしています。冷食チームは3グループに分かれ、毎日メンバーが変わりますが、メンバーのだれもが気持ちよく仕事ができるよう気を配り、与えられた仕事を毎日無事に終えたときに充実感を感じるといいます。「仕事が楽しく、会社に行くのが楽しみなので、健康なうちはできれば75歳まで働きたいですね」と笑顔で締めくくりました。  くにみ農産加工は、会社を支える高齢従業員に、これまで通り元気で、これから先も長く働いてもらうための工夫や機器導入などを、前向きに検討していくそうです。(取材・西村玲) ※1 65歳超雇用推進プランナー……当機構では、高年齢者雇用アドバイザーのうち経験豊富な方を65歳超雇用推進プランナーとして委嘱し、事業主に対し、65歳を超えた継続雇用延長・65歳以上への定年引上げなどにかかわる具体的な制度改善提案を中心とした相談・援助を行っています ※2 2006年に国見町、国東町、武蔵町、安芸町が合併し国東市が誕生 ※3 第三セクター……国や地方公共団体と民間企業との共同出資によって設立された事業体のこと ※4 六次産業……一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業としての流通・小売業などの事業との総合的・一体的な経営形態のこと ※5 FSSC22000……消費者に安全な食品を提供することを目的とした、食品安全マネジメントシステムに関する国際規格 山田美詠子 プランナー(50歳) アドバイザー・プランナー歴:4年 [山田プランナーから] 「事業所とのおつき合いは面談のアポイントを取るところから大切にしています。顔が見えない電話対応になりますので、失礼がないように気をつけています。訪問の際は、初対面にもかかわらず、賃金などの労働条件や処遇、就業規則などについてお聞きするので、堅苦しくはなりすぎずかつ節度ある態度で話をうかがうように心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆同課の西本課長は、「山田プランナーは、当支部唯一の女性プランナーです。やさしく、まじめな性格で、事業所と一緒に考えるスタンスで、各事業所に適した、高齢者の戦力化のための提案資料を準備して提供しています。事業所から『もっと相談したい』と信頼されているプランナーです」と話します。 ◆大分支部はJR鶴崎駅から徒歩約8分、乙津(おとづ)川に面するポリテクセンター大分内にあります。支部のある鶴崎地域は、古くから瀬戸内海航路の拠点として栄えており、大分県を代表する盆踊り「鶴崎踊り」は、400年以上の歴史があり、地元のみならず県内外より多数の踊り手や観客が訪れています。 ◆現在6名の65歳超雇用推進プランナーが在籍しており、昨年度は270社超の事業所への相談・援助業務を行いました。そのうち65歳以上への定年年齢の引上げ、あるいは65歳を超えた継続雇用延長をすすめる制度改善提案を100件以上実施しています。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●大分支部高齢・障害者業務課 住所:大分県大分市皆春(みなはる)1483-1 ポリテクセンター大分内 電話:097(522)7255 写真のキャプション 大分県 2017年に竣工した第二工場 マスコットキャラクターの「バジルくん」を紹介する総務経理課の吉丸喜美代さん いつも元気に活躍し、職場の雰囲気を盛り上げている立川久子さん だれもが働きやすい職場づくりに努めている伊美留易子さん 【P38-41】 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜山(ひやま) 敦(あつし)  生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、高齢者から始まる働き方改革≠フ姿です。 第2回 AI・ICTの可能性としての「モザイク型就労」 複数人で一人分の仕事を分担する「モザイク型就労」  前回、人口ピラミッドを逆転して描くことで、大勢の元気高齢者が不安定な就労環境のなかを生きる若者を助ける、という新しい社会構造をイメージしました。当事者であるシニアも、「働けるうちはいつまでも働きたい」と就労に意欲的であり、働くうえで重視することがそれぞれに異なるシニア像も見えてきました。また、2012(平成24)年の総務省による「就業構造基本調査」では、6割の65歳以上の未就労者はパートタイムなどの柔軟に働ける環境を求めていることが報告されました。  そのような背景のもと、ICTを活用したシニア層が活躍する新しい社会構造を模索し、研究開発を進めていくなかで、具体的な構想として浮かび上がってきたのが、「モザイク型就労」という働き方です。これは、「空いている時間」に「好きな場所」から「自分の得意な能力」を活かして、無理なく活躍する環境をICTによって構築しようというものです。一人ひとりがフルタイムで雇用されて働くのではなく、複数人で一人分の仕事を分担してこなす働き方に対して、一人ひとりをモザイクのピースと見立てて「モザイク型就労」と名づけました。  「空いている時間に好きな場所から自分の得意な能力を活かして」というように、モザイク型就労の形として、三つのモザイク要素を提唱しました。一つめは一人ひとりのシニアが働くことのできる時間を組み合わせて、複数人でフルタイムの仕事をこなす「タイムシェアリング」の要素。二つめは、インターネットを通じてロボットやアバターの身体を遠隔操作して行う「遠隔就労」の要素。三つめは一人ひとりの得意なことや興味関心に応じてマッチングする要素です。働き方改革という言葉もまだないころでしたが、社会の中でシニアから柔軟な働き方を実践していくことを目ざしていきました。  一般的な労働市場においてシニア人材のジョブマッチングを行おうとしても、フルタイムで何でもそつなくこなす人材を求めている企業からすると、働き方の条件面で合致させるのはむずかしくなります。また、年齢の問題から時間をかけて会社のやり方に合うように育成することもできないので、即戦力としてどれだけの仕事をこなすことができるのかを事前に知る必要もあります。そのため、人材側、企業側の条件を細かく精査し合わせていく作業にコストをかけなければなりません。さらに、柔軟な働き方を取り入れようとすると、マッチングの頻度が必然的に高くなるので、そのコストがさらに高まります。  だからこそ、お互いの求めている条件を可視化してモザイクのピースを効率よくあてはめるために、AI・ICTの活用が効果的なのです。働きたい時間、就労のために移動できる範囲、働きたい仕事、それらの情報を集約して地域における潜在的な求人情報とつき合わせていく作業を瞬時に行えるようにすること。これがモザイク型就労の実現へ向けたAI・ICTの役割になります。 モザイク型就労の支援に向け「GBER」が誕生  私たちは、2011年の研究開発の当初より東京大学高齢社会総合研究機構が開催する就労セミナーを通じて集まった、定年退職をして地域での就労を希望している千葉県柏市の住民を対象に、ジョブマッチングにおけるAI・ICTの可能性と試作システムの紹介とその評価に取り組んできました。2013年には、セミナー参加者を母体として柏市でのシニア就労の活性化を目ざして設立された「一般社団法人セカンドライフファクトリー」(千葉県柏市)との連携を開始しました。会員である地域住民との議論を重ね、試行錯誤を行いながらメンバーのモザイク型就労を支援するシステムの研究開発を進め、2016年に誕生したのが「GBER(ジーバー)」というプラットフォーム※2です。GBERとは「地域の元気高齢者を集める」という意味の英語、「Gathering Brisk Elderly in the Region」の頭文字を取って名づけられました。GBERはまさに当事者である地域のシニアを交えたインクルーシブデザイン※3の過程で形づくられていきました。  GBERを活用しているのは、セカンドライフファクトリーのなかで地域の植木の剪定(せんてい)の仕事を請け負っている、30名ほどのコミュニティです。地域住民から寄せられる依頼に応じて、参加するメンバーをGBERで調整し、地域の現場に出動するモザイク型就労を実践しています。小規模なコミュニティではありますが、運用開始から2019(令和元)年10月までの3年半で、延べ3441人がGBERを通じて社会参加を達成しました。特にこの半年で延べ800人ほどの就労実績が伸びるほど活発に活用されており、この連載が終わるころには4000人を超えそうな勢いです(写真)。 「時間」と「場所」、利用者の「情報」をもとにマッチングを支援  GBERには三つの機能が用意されています。一つめが最も基本となるカレンダー機能です。カレンダー上の日付をタップするだけで、この日は「1日中空いている」、「午前だけ」、「午後だけ」、「空いていない」という情報を登録することができます。それにより迅速に就労チームを編成することができます。  二つめは地図機能で、現在募集されている仕事の地理的関係を把握することができます。  三つめはQ&A機能です。現在は植木の剪定の仕事に限定されていますが、将来、たくさんの職種や地域活動が登録されるようになったときに、そのなかから手をあげたくなる仕事を効率よく探し出すことが必要になります。その際に、利用者が応募する可能性が高そうな求人を優先的に表示することができれば、利用者は就業先を探しやすくなります。しかし、利用者が何に興味を持っているかをリサーチするためには情報が必要です。さらに、多くのシニアはインターネット上に自分の情報を発信することには慣れていません。そこでこのQ&A機能を開発しました。潜在的な地域活動をいくつかのカテゴリに分類し、そのカテゴリごとの興味関心の有無をシステムの方から「はい」か「いいえ」で答えられる質問として投げかけるようにしました。そうすると時間のあるときに随時回答を発信してもらえるようになり、地域活動を推薦するに十分な情報を集められるようになりました。技術的な工夫としては、質問は一度聞いたら終わりではなく、その後の応募活動によって、利用者の事前の意思表示と実際の行動との食い違いを修正していくモデルを組み込んでいることです。例えば、クラシック音楽に興味があるといっているのに、もっぱらコンサートに行くのは演歌だったりするような場合に対応して、実際の行動のトリガーとなる情報を重視していく仕組みになります。 就労から地域活動まで幅を広げた熊本版「GBER」もスタート  3年を超えて活発に利用してもらえると、セカンドライフファクトリーのメンバーからシステムの使い勝手に関するフィードバックが集まりました。また、他地域の方の目にもとまるようになり、「地域で扱っている仕事や働き方に活用できないか」といった問合せも受けるようになりました。そこで、多くの方の声をふまえて、画面をぱっと見て得られる情報や必要な操作をイメージできるように、新しいGBERのデザインを進めています。新しいGBERではカレンダー機能で午前・午後以上に細かい時間帯を扱えるようにし、地図機能やQ&A機能も見やすく、操作しやすいようにリニューアルしました。この新しいGBERは、今年の9月から熊本県で社会実装が本格的に動き始めました。熊本版GBERでは、県という自治体が運用主体に入ってくることで、前回お話しした、ボランティアや生涯学習など就労にとどまらない、地域活動への参加の活性化につながる展開を、具体的に実証することができるようになります。熊本では現在、「一般社団法人夢ネットはちどり」(熊本県熊本市)における介護周辺領域の仕事のマッチングから始めつつ、地域活動の情報についても県の協議会から広く発信できるように体制を整えています。  GBERのようなプラットフォームに求められるのは単純なビジネス上のマッチング機能ではないと考えています。地域のなかで100年の人生を生きるにあたり地域とどのようにかかわっていくのか、一日一日の人生をどのようにデザインしていくのか、利用者の生き方に寄り添う機能だと考えています。  シニアにとっては「今日行くところ」という意味のキョウイク≠ニ、「今日用があること」という意味のキョウヨウ≠ェ大事とよくいわれます。その二つをサポートしつつ、そこに地域というステージをからめ、イベントなどに参加することを通じて地域を知り、そこで自分はどのように参加していきたいかイメージを膨らませやすくすることを目標に、熊本モデルの構築を進めています。現役時代の延長線上で与えられた仕事をこなすだけでなく、自分たちの住む地域を活気づけるような活動に参画していくことができたら、それこそ充実した退職後の生き方につながるのではないでしょうか。 大切なことはAI・ICTを活用してどんな未来を描いていくか  定年退職した柏市の住民が就労に求めることのうち、健康が維持できることを重要視する人の割合が高かったことは第一回で紹介した通りです。一人ひとりの就労の先に求めるものが多様化していることは、一人ひとりの価値観を見出し、それに沿って地域活動を推薦するAI・ICTが必要になってくることを示しています。現在、日々参加している地域での活動がどれくらいの健康活動に相当するのか、自分の身体のコンディションからするとどの程度身体的な負荷がかかる地域活動が適しているのか、マッチング機能に新たな視点を加えるべく、社会参加を通じたヘルスケア機能をGBERに追加していく研究に取り組んでいます。これからは、ウェアラブル機器※4を通じて集められるヘルスケアデータと組み合わせることで実現することができそうです。  もう一つ、熊本県でのGBERの展開をはじめるきっかけとなった出来事として、2016年に発生した熊本地震があります。観測史上で初めて震度7の地震に2回見舞われ、県のシンボルである熊本城も大きく崩れる大災害でした。震災直後にベンチャー企業が救援物資やボランティアのマッチングを行うツールをつくり現場に持ち込んでいたようですが、混乱している現場では新しいツールを取り入れる余裕はなく、その効果は限定的だったと聞きます。  しかし、例えばGBERのもつ三つの機能が、ボランティアとのマッチングや、救援物資のニーズ発信、ボランティアのスキル抽出などに適用できるように設計しておけば、普段から使い慣れているものがそのまま災害時にもライフラインとして機能させられるようになるのではないかと考えています。災害時に心身への負荷が大きくかかるシニアだからこそ、日常的に活用できるICTプラットフォームが必要だと感じています(図表)。  今年は関東に二つの大きな台風が上陸し、千葉県をはじめ複数の都県で大きな被害が発生しました。そのようなときに、柏市のセカンドライフファクトリーのシニアたちがGBERを通じて、台風で荒れた地域住戸の庭の片づけなどで活躍していました。ICTを通じて、地域のなかでシニア同士が支え合う未来は、確実に近づいてきています。  テクノロジーの発展に対して、「AIは人の仕事を奪うのか」という議論が世界中で巻き起こっています。しかし、視点を変えれば逆にGBERのようにAI・ICTは人と仕事、人と社会をつなぐテクノロジーとして成長させることができます。本当に議論すべきことは、私たちが発展するテクノロジーを活用してどのような未来を描いていくか、そこにあるのではないでしょうか。 ※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称 ※2 プラットフォーム……コンピュータにおいて、ソフトウェアが動作するための土台(基盤)のこと ※3 インクルーシブデザイン……高齢者や障害者、外国人など、社会的弱者やマイノリティを、各種サービスのデザインプロセスの上流から巻き込んでいく手法 ※4 ウェアラブル機器……衣服状や腕時計状で、装着・着用できるコンピュータのこと 図表 熊本版GBERの三つの機能とライフラインとしての活用可能性 出典:筆者作成 写真のキャプション GBERを活用して地域で活躍するセカンドライフファクトリーのメンバー 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第20回 労災保険給付、年次有給休暇と時季変更権 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 従業員が就業中にケガをしました。どのような手続きを取ればよいのですか  従業員から、就業中にケガをしたと申告がありました。これまで、そういった出来事がなかったので、どういった手続きを取ればよいのかわからないのですが、どうすればよいのでしょうか。  労災保険等から支給があった場合には、会社が補填する必要はなくなると考えてよいのでしょうか。 A  業務上の事由により生じた負傷、疾病、障害、死亡等に関しては、労働者災害補償保険からの保険給付が実施されますが、労働者からの申告等を前提にしています。会社としては、当該申告に協力する立場になります。  なお、業務上の事由であることが認められて保険給付が実施された場合でも、すべての損害が補填されるわけではないため、補充する必要がある費目もあります。 1 労働災害について  労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して、保険給付を行うことを定めています(第2条の2)。  業務上の事由による場合は「業務災害」、通勤による場合は「通勤災害」と呼ばれており、これらの二つをまとめて「労働災害」と呼んでいます。  ご相談の例は、就業中のケガであるため、いわゆる「業務災害」に該当するといえます。  業務災害が発生した場合、事業主は労働基準法により補償責任を負わなければなりませんが、労災保険法に基づく保険給付が行われる場合、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます(ただし、休業する際の休業1〜3日目の休業補償は、労災保険から給付されないため、労働基準法で定める平均賃金の60%を事業主が直接労働者に支払う必要があります)。初めて労働災害が起きた際は、請求の流れや、労働災害として認定されなかった場合の手続きを把握しておく必要があります。  また、事業主には、労働災害による死亡や休業の発生時には、「労働者死傷病報告」の提出が義務づけられており(労働安全衛生法100条および同法施行規則97条)、当該報告を行うことなく、いわゆる「労災隠し」を行った事業主に対しては、罰金50万円以下という刑罰も用意されています(労働安全衛生法120条)。 2 労災保険給付の当事者  労災保険給付を請求する当事者は、労働者自身であり、使用者である会社ではありません。労災保険法施行規則23条第2項は、「事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない」と定めており、会社は当該労災保険給付に必要な証明に協力する立場となります。  ケガをした労働者は、労働基準監督署宛てに、所定の書式を提出することになりますが、当該書式には、会社の労働保険番号の記載や「災害の原因及び発生状況」などに関する事業主の証明欄への記名押印が求められているため、会社へ協力を求めてくることになります。  この際、労働災害としての申告をされて、労災保険が給付された場合(労働災害が存在すると労働基準監督署に認められた場合)には、労働基準監督署の調査を受ける場合があることや、労災保険料の増額が生じる恐れがあることから、労働災害として認めることなく、労働災害としての申告をさせないために証明を避けることを考えているとのご相談を受けることがあります。  しかしながら、事業主の証明を受けられなかったからといって、労働者による労災保険の請求が認められなくなるわけではありません。  また、仮に、労働災害としての手続きに協力しなかった場合には、労働者から、会社に対する不法行為または債務(安全配慮義務)不履行責任に基づき、直接賠償請求が行われることにもつながり、本来保険給付で賄われるはずであった補償まで、会社が負担せざるを得なくなることになります。 3 労災保険給付と会社が負担する損害賠償責任の関係  業務上の原因によりケガが生じた場合、労災保険給付のおもな種類としては、図表のような費目があります。ケガの程度にもよりますが、後遺症(障害)が残るような重度のケガである場合には、年金や一時金などの給付も用意されています。なお、業務災害により死亡した場合には、これら以外に、葬祭料、遺族補償給付なども支給されることがあります。  これらの保険給付が実施されたとしても、必ずしも会社が負担すべき損害賠償責任のすべてがカバーされるわけではありません。  例えば、ケガの治療などに通院や入院期間が一定程度ある場合には、会社の負担すべき損害として入通院に関する慰謝料が認められますが、これらに対応するような保険給付はありません。後遺障害が残った場合には、後遺障害慰謝料も会社の責任と認められることになりますが、これも保険給付によりカバーされることはありません。  そのほか、休業補償もあくまでも最大で80%となっているため、会社の責に帰すべき事由が大きい場合には、その差額部分については負担しなければならない場合もあるほか、年金の方法で支給される場合には、未支給部分については、これを原則として控除しないという取扱いとなっているため、将来分については会社が負担しなければならなくなることもあります。 図表 労災保険給付の種類 名称 主な内容 療養補償給付 治療費および通院費 休業補償給付 休業4日目以降の給付基礎日額の最大80%(特別支給金も含む) 傷病補償年金 治療開始後1年6カ月経過後に治癒に至っておらず、障害の程度が重い場合に支給される 障害補償給付 後遺症(障害)が残った場合には、障害の程度に応じて年金または一時金が支給される 介護補償給付 重い後遺障害により家族からの介護や介護サービスが必要となった場合に支給される ※筆者作成 Q2 年次有給休暇の時季変更権について知りたい  使用者に年次有給休暇の消化義務が課されるようになったため、有給休暇の積極的な利用を認める方針を取ろうと思っているのですが、一方で、年次有給休暇を同時期に取得されることで業務に支障が出ることへの懸念もあります。  どういったケースであれば、年次有給休暇に対する時季変更権を行使しても許されるのでしょうか。 A  業務の正常な運営を妨げる場合であれば、時季変更権を行使することができますが、単に代替要員の確保ができないといった程度では許容されません。使用者には、労働者が年次有給休暇を取得したとしても正常な運営が可能な体制を整えることが必要とされます。  一方で、同時取得により支障が出る人数などをふまえた年次有給休暇の取得の運用が労使慣行となっている場合には、その慣行は尊重される傾向がありますので、労使間での調整を重ねながら、運用を固めていく必要があるでしょう。 1 年次有給休暇について  働き方改革の一環として、年次有給休暇が10日以上付与された日から1年間以内に5日間の消化が使用者に義務づけられました。労働者ではなく、使用者に義務づけられた点が特殊ですが、使用者に対する義務づけに加えて、罰則も定められたことから、使用者が、年次有給休暇について、正確な理解と消化日数を把握することが求められるようになりました。  まず、年次有給休暇とはいかなる制度であり、どういった点に注意が必要となるのでしょうか。  有給休暇は、6カ月以上継続して勤務し、出勤率が全労働日の8割を超えている労働者に対して、給与を支給しながら休暇を取得できる権利を与える制度です。なお、年次有給休暇の付与日数は、週の所定労働日数が5日以上または週の所定労働時間が30時間以上である場合は、6カ月の継続雇用の時点で10日付与され、その後徐々に増加し、週の所定労働日数や所定労働時間が少ない場合であっても比例的に付与される制度となっています。  給与の支給がある点が、欠勤とは異なりますし、年次有給休暇の取得が権利である以上、これを取得したことによって不利益な取扱いがなされることも許容されないことになります。 2 年次有給休暇の内容  年次有給休暇は、労働者の権利であると位置づけられていることから、原則として、労働者が取得を希望する時期に与えなければなりません(労働基準法第39条第5項)。ただし、使用者としては、その日に年次有給休暇を取得させたときに「事業の正常な運営を妨げる場合」には、ほかの日にこれを与えることができるとされています。  後者が、使用者による、「時季変更権」と呼ばれるものであり、「事業の正常な運営を妨げる場合」にかぎって、その行使が許されています。  これらの規定から、労働者の年次有給休暇の権利に関しては、労働者が時期を指定した場合に、使用者が時季変更権を行使することなく、これを拒むような行為(例えば、「不承認」として処理するような行為)をしただけでは、年次有給休暇の効力発生を妨げることができないと考えられています。要するに、使用者としては、年次有給休暇の取得日の変更は可能ではありますが、取得自体を妨げることができないということです。  権利の性質上は、労働者による権利行使が優先される内容となっており、年次有給休暇の取得が自由に行われやすいはずですが、現実にはそうなっていません。労働の現場においては、労働者同士が相互に協働して業務遂行にあたっていることも多く、使用者に対する配慮だけではなく、労働者間相互の配慮の結果として、年次有給休暇が取得しづらい場合もあるため、たとえ、権利の性質上は自由な取得が保証されていても、その行使に至らないようなことも多いといえます。 3 計画年休制度の活用  年次有給休暇は、本来的には、労働者からのイニシアチブによって行使されるべきものですが、労働者相互間の配慮もある結果、自由な行使を必ずしも期待できない状態も生じます。  そこで、年間5日間の年次有給休暇を残す形であれば、使用者が設定する日程で年次有給休暇を取得させる計画年休制度も用意されています。この計画年休により取得させた場合は、年次有給休暇の消化義務を履行したものと評価されます。  事業場の過半数労働者との労使協定が必要となりますが、集団的に年次有給休暇を取得させることで、使用者としても業務の計画を立てやすくなり、労働者同士の相互の配慮により未取得も防止することが可能となります。 4 時季変更権が許される要件  年次有給休暇の取得に対して、使用者が時季変更権を行使できるのはどのような場合でしょうか。典型的な事例としては、労働者らによる一斉休暇の申請や、特定の業務を拒否することを目的とした場合などがあげられますが、このような事例は稀有(けう)でしょう。  基本的には、労働者の権利行使に対して、使用者が配慮することが求められており、休暇をとる労働者がいれば、当然ながら、業務への影響は大なり小なり生じることになりますが、これに対して、使用者は、代替要員の配置や業務の割り振りの変更などによって対応できるように備えるような配慮が求められています。そのため、単に業務上の支障が生じるとか代替要員の確保ができないといった理由だけでは、年次有給休暇取得に対して時季指定を行うことはできないと考えられています。  とはいえ、人員配置については、使用者による裁量の余地も広く、労使慣行と認められる程度に一定の基準によって配置が定められ、休暇の取得に関する基準ともなっているような事情がある場合には、恒常的な人員不足により取得が妨げられているような事情がないかぎりは、裁判所もそれを尊重せざるを得ないといった指摘もあるところですので、年次有給休暇取得にあたっての事前申請の時期や代替要員の確保の必要性については、運用を固めておくことは重要でしょう。  また、連続的な年次有給休暇の指定は、「事業の正常な運営」に対する影響は大きくなります。例えば、1カ月間の連続休暇となるような年次有給休暇の取得を求めた事案において、判例では、事業活動の正常な運営の確保に関わる諸般の事情について、これを正確に予測することが困難であることを理由として、蓋然性(がいぜんせい)に基づく裁量的な判断を許容せざるを得ないとして、使用者の判断が不合理な場合にかぎり、違法となると判断したものがあります(最高裁平成4年6月23日判決)。  現実的には、労使間での事前調整の実施とともに穏当な形で落ち着いていることも多いかと思われますが、過去には、使用者から年次有給休暇の取得に対して「非常に心象が悪い」、「仕事が足りないなら仕事をあげる」などと発言して休暇の取得を妨げた事案では、慰謝料の支払いが命じられている裁判例もありますので、コミュニケーションにおいても、年次有給休暇の取得が労働者の権利であることを念頭に置く必要はあるでしょう。 【P46-47】 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復  高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。 国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡辺(わたなべ)恭良(やすよし) 第7回 疲労回復に効果的な日本食 「一汁三菜」はヘルシーメニューの基本  疲労の原因となる「活性酸素(酸素ラジカル)」。体内の活性酸素の発生を抑え、かつ発生した活性酸素を解消するために、あるいは傷ついた細胞を活性化するために有効なのが「食事」であることを前回ご紹介しました。疲労回復に効果的な食事のなかでも、特に注目していただきたいのが「日本食」です。  「日本食(和食)」は、ユネスコの世界無形文化遺産に登録され、世界的にも人気を集めています。これは日本食が栄養面で充実していることに加えて、おいしく、ヘルシーだからです。古来より、日本食はごはんを主食とする「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」を基本にしています。一汁三菜は、主食の「ごはん」と、「汁もの」、「おかず3種」(主菜1品、副菜2品)で構成されています。栄養バランスがよく、ヘルシーメニューのお手本ともいえるものです。一般的な、一汁三菜の組合せは以下の通りです。 ●ごはん:エネルギーの源になる炭水化物(糖質)をとります。これが不足すると、エネルギー不足になったり、集中力がなくなったりします。 ●汁もの:汁物の代表は味噌汁。栄養を補い、水分によって食事の満足感を高める役割を果たすので、食べ過ぎの防止にもなります。 ●主菜:献立の主役で、身体に力をつけるタンパク質をメインとしたおかずです。タンパク質が不足すると抵抗力が低下します。 ●副菜:ビタミンやミネラル、食物繊維など代謝を助ける栄養素をとる役割を果たしたり、不足しがちな栄養素を補ったりするような役割を果たします。野菜、イモ、キノコ、海藻などを使った和え物や煮物などが代表的な副菜です。  このように、一汁三菜は、汁もので水分を、ごはんでエネルギー源となる炭水化物を、主菜は魚や肉を中心にタンパク質を、副菜は野菜や豆、海藻などを使った和え物や煮物などで、ビタミンやミネラルをとれるような組合せになっています。  この一汁三菜にあてはめて献立を考えれば、さまざまな料理法と素材を使うことになるので、味と栄養のバランスが取れた食事になります。日本食は栄養バランスが理想的であり、健康によく、おいしいといわれる理由がここにあります。一汁三菜の組合せと理想的なカロリーは図表の通りです。ぜひ献立の参考にしてください。  一方で、疲れを解消するには、活性酸素の発生を抑え、代謝を助ける栄養素をとって疲労を回復するシステムを修復することが必要です。日本料理の専門家の協力のもと、日本食の特徴を活かしながら、疲労回復に効果がある食材を取り入れたメニューを考えましたので、その一部をご紹介します。 疲労回復に効果があるおすすめ食材とは ■主菜 @鶏むね肉:疲れを軽減させる効果が実証されているイミダゾールジペプチドが豊富に含まれる。アミノ酸バランスのよい良質のタンパク質で消化吸収率がよく、高齢者にもおすすめの食材。 【鶏むね肉のおすすめ料理】 ◇鶏むね肉の梅風味焼き…梅に含まれるクエン酸は疲労回復効果に加えて、カルシウムの吸収を高める効果も。 A牛肉:L−カルニチンやコエンザイムQ10を含み、アミノ酸バランスに優れる牛肉。体や脳を活性化させるアラキドン酸も含む。 【牛肉のおすすめ料理】 ◇サツマイモ入りハンバーグ…さいの目に切ったサツマイモを一緒に捏こねたハンバーグ。サツマイモは代謝のサポート役のビタミンB1や体の錆さびを防ぐビタミンC、ビタミンEを豊富に含みます。たっぷりな栄養素とあわせてボリュームも満点。 ■副菜 @ほうれん草:抗酸化成分であるカロテンや、脂質の分解をうながすパントテン酸、鉄分などのミネラルを豊富に含む、緑黄色野菜の代表格。 【ほうれん草のおすすめ料理】 ◇ほうれん草のツナ缶和え…DHAが豊富なツナに、カロテンやビタミンB群を含むニンジンと一緒にマヨネーズで和えるだけ。栄養豊富なうえ簡単につくれる一品。 Aひじき:不足しがちなカルシウムや鉄分のほか、神経伝達物質をつくるトリプトファンやビタミンB2も豊富に含まれる。 【ひじきのおすすめ料理】 ◇ひじきの五目煮…抗酸化作用のあるゴボウやニンジン、大豆などとあわせる定番料理。タンパク質も補え、抗ストレスの強力な味方になります。 ※レシピ詳細については、左記の参考資料を、ぜひご一読ください。 〔参考資料〕  渡辺恭良、水野 敬、浦上 浩著『おいしく食べて疲れをとる』(オフィス・エル) わたなべ・やすよし 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。 図表 一汁三菜の組合せと理想的なカロリー ごはん+汁もの+主菜+副菜@+副菜A=500〜600キロカロリーの範囲が理想 主菜 副菜@ 副菜A ごはん 汁もの 主菜 約200〜300キロカロリー。体に力をつける「タンパク質」を摂取する。抵抗力をアップ。 ごはん お茶碗1杯100g=168キロカロリー。炭水化物(糖質)を摂取する。エネルギーや集中力の源に。 副菜@ 約20〜100キロカロリー。ビタミンミネラル、食物繊維など、代謝を助ける栄養素を摂取する。 副菜A 約20〜100キロカロリー。副菜@と合わせて、不足しがちな栄養素を補填。 汁もの お碗1杯100g=約20〜40キロカロリー。お味噌汁やお吸い物。栄養を補うほか、水分で食事の満足感を高める役割もあり、食べ過ぎの防止効果も期待できる。 【P48-49】 特別寄稿 働くシニアの健康を守るために ―よく噛んでゆっくり食べよう― 独立行政法人労働者健康安全機構 北海道中央労災病院治療就労両立支援センター 保健師 小宅(おやけ) 千恵子 はじめに  独立行政法人労働者健康安全機構に属する各治療就労両立支援センターでは、働く人々の健康づくりに関するアンケート調査等を実施しています。2015(平成27)年度に北海道中央労災病院治療就労両立支援センターで実施した「勤労者における体組成と生活習慣の関連について」の調査では、女性勤労者と比較して男性勤労者に「早食い」と回答した人が多く、男性勤労者の42・4%を占めていました。年代別に早食いの傾向を確認したところ、30代と40代に早食いの人が多く、50代では食べる早さが「普通」と回答した人が多くなり、また、50代と60代の人は食事量について腹八分目を意識している人が多いことなどがわかりました。  これらのことから、50歳以降の男性勤労者が、「よく噛んでゆっくり食べる習慣」を会得することにより、食べすぎ防止につながり腹八分目の食生活を実行しやすくなる、さらには健康の維持・増進につながる可能性がある、と考えました。  食事に関する先行研究では、肥満が早食いと関係していること※1、早食いが血圧上昇や脂質異常症、血糖値上昇と関連していること※2が報告されています。一方で「肥満症治療ガイドライン2006」では、よく噛んで食べることが肥満治療のための行動療法の一つとして記載されています。  そこで、当センターでは、50歳以上の男性勤労者を対象として、食事量や食事内容については触れずに、「よく噛んでゆっくり食べる」ことを6カ月間支援することによって、身体の変化が起こるかどうかを目標に調査を行いました。 取組み内容  調査は、50歳から68歳の男性勤労者12人(50代7人、60代5人)を対象としました。  当センターで2018年に作成した小冊子『ゆっくり食べてみませんか』※3を用いて面談を行い、一口30回程度噛むか、または一口の噛む回数を従来よりも10回程度増やすことを助言。そのうえで、毎月1回のアンケート(一口の噛む回数、1回の食事時間、ゆっくり食べるために工夫していることなど)、開始前と6カ月後の体成分測定、さらに同意を得た人にのみ血液検査を実施しました。  また、12人の参加者へは、毎日チェックシートで自分の行動を振り返ることをお願いしました。 9割以上で体重減少、5割が体脂肪も低下  6カ月の取組みの結果、体重が減少した人は11人、そのうち体脂肪も減少した人は6人でした(図表1)。また、一口の噛む時間と1回の食事時間について、開始時と6カ月後の変化を図表2に示しています。  6カ月後に体重と体脂肪が減少した6人は、一口の噛む回数が20回程度が5人、30回程度が1人と、開始時と比べて噛む回数が増えています。1回の食事時間も10〜15分が2人、15〜20分が4人と、開始時よりも伸びている人が増えていました。一方、それ以外の6人では、一口の噛む回数が5〜10回程度で、1回の食事時間は6人のうち5〜10分が2人、10〜15分が3人と短い傾向にあります。  ゆっくり食べるための工夫(複数回答可)では、「意識してよく噛む」9人、「口いっぱいにものを詰め込まない」8人、「噛んでいる間箸を置く」4人、「噛む回数を数える」3人でした。体重と体脂肪が減少した6人のうち5人は、意識してよく噛むことに取り組んでいました。  血液検査には10人が同意し、開始時と6カ月後を比べると、正常値の範囲内ですが、総コレステロール値が低下。また個々のヒアリング調査で、「高脂血症の治療を行っていたが、検査結果が落ち着いてきているので、薬の減量調整を行うことになった」、「体重は1s減だが、かかりつけ医から血糖値がよくなっているといわれた」という人もいました。 よく噛んでゆっくり食べましょう  今回12人の男性勤労者を支援した結果、よく噛んでゆっくり食べることによって、体重減少や血液検査結果の改善がみられました。そのなかで、体重と体脂肪が減少した6人は、そのほかの6人と比べて一口の噛む回数が多くなっています。ゆっくり食べるための工夫として「意識してよく噛む」を取り入れた結果です。一口20〜30回程度を目安によく噛むことを続けたことで、自然に食事量が減少し、腹八分目となっていたと考えられます。まずは、いまよりも噛む回数を増やすこと、意識してよく噛んで一口20回以上噛むことが効果的ではないでしょうか。  北海道内のいろいろな事業所を訪問して健康測定などを実施していますが、男性勤労者の方は、「家族にも早いといわれている」、「ゆっくり食べるといいのはわかっているけど……」などと話す人が多くいます。ゆっくり食べることを効果的に取り入れるために、まずは一口20回を目安にして、意識してよく噛む習慣を取り入れることが望ましいと考えます。  新しいことを習慣にするのはたいへんですが、よく噛んでゆっくり食べることを継続し、身体の変化が実感できると嬉しくなるものです。健康づくりの一つとして、ご自身でどのような方法でよく噛んでゆっくり食べるかを決めて、取り組んでみてはいかがでしょう。 ※1 大塚ら.Journal of Ep16(3):117-124,2006. ※2 福元ら.日本未病システム学会雑誌11(1):70-72,2005. ※3 https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/H28-1.pdf 図表1 参加者12人の取組み結果 6カ月間の変化 (体成分測定結果6カ月後−開始時) 年齢 身長 開始時体重 6カ月後体重 体重変化 体脂肪量変化 骨格筋量変化 体脂肪率変化 体重減、体脂肪減 A 58 173 64.3 60.8 -3.5 -3.3 -0.2 -4.1 B 50 179 64.8 62.4 -2.4 -1.1 -1.0 -1.0 C 57 174 79.3 77.9 -1.4 -0.8 -0.4 -0.4 D 68 183 84.2 81.2 -3.0 -1.3 -1.1 -0.6 E 52 176 71.4 69.7 -1.7 -0.2 -0.9 -0.6 F 53 172 72.4 68.7 -3.7 -3.3 -0.5 -3.6 体重減 G 67 160 64.4 63.4 -1.0 0.1 -0.7 0.6 H 64 166 60.1 60.0 -0.1 0.1 -0.2 0.2 I 57 167 59.2 58.9 -0.3 0.9 -1.1 1.7 J 62 167 78.0 76.9 -1.1 0.0 -0.7 0.5 K 68 163 63.3 60.3 -3.0 0.2 -1.5 0.1 体重増 L 54 165 55.3 56.5 1.2 0.6 0.3 0.5 筆者作成 図表2 一口の噛む回数と1回の食事時間の変化 《一口の噛む回数》 5回程 10回程 5回程 10回程 20回程 30回程 開始時 6カ月後 《1回の食事時間》 5分未満 5〜10分 10〜15分 15〜20分 5〜10分 10〜15分 15〜20分 20分以上 開始時 6カ月後 体重と体脂肪減少した6人 体重減少した5人 体重増加した1人 筆者作成 【P50-55】 労務資料 令和元年版高齢社会白書(一部抜粋)内閣府  内閣府では、高齢社会対策基本法に基づき、1996(平成8)年より、高齢化の状況や政府の講じた高齢社会対策の実施の状況などについてまとめた『高齢社会白書』を取りまとめています。  『令和元年版高齢社会白書』では、「平成30年度高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」、「令和元年度高齢社会対策」という二つの部分から構成されています。  本号では、『令和元年版高齢社会白書』のなかから、特に高齢者の就業に関する内容について抜粋して紹介します。(編集部) 第1章 高齢化の状況 第1節 高齢化の状況 1 高齢化の現状と将来像 (1)高齢化率は28・1%  我が国の総人口は、2018(平成30)年10月1日現在、1億2644万人となっている。  65歳以上人口は、3558万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28・1%となった。  65歳以上人口を男女別に見ると、男性は1546万人、女性は2012万人で、性比(女性人口100人に対する男性人口)は76・8であり、男性対女性の比は約3対4となっている。  また、65歳以上人口のうち、「65〜74歳人口」は1760万人(男性840万人、女性920万人、性比91・3)で総人口に占める割合は13・9%、「75歳以上人口」は1798万人(男性706万人、女性1092万人、性比64・6)で、総人口に占める割合は14・2%であり、65〜74歳人口を初めて上回った(図表1)。  我が国の65歳以上人口は、1950(昭和25)年には総人口の5%に満たなかったが、1970年に7%を超え、さらに、1994年には14%を超えた。高齢化率はその後も上昇を続け、2018年10月1日現在、28・1%に達している。  また、15〜64歳人口は、1995年に8716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、2018年には7545万人と、総人口の59・7%となった。 (2)将来推計人口でみる2065年の日本 次に、2017年4月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「日本の将来推計人口」における出生中位・死亡中位推計結果(以下、本節においてはすべてこの仮定に基づく推計結果)を概観する。将来推計人口とは、全国の将来の出生、死亡及び国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて我が国の将来の人口規模並びに年齢構成等の人口構造の推移について推計したものである。 ア 9000万人を割り込む総人口  我が国の総人口は、長期の人口減少過程に入っており、2029(令和11)年に人口1億2000万人を下回った後も減少を続け、2053年には1億人を割って9924万人となり、2065年には8808万人になると推計されている(図表2)。 イ 約2・6人に1人が65歳以上、約3・9人に1人が75歳以上  65歳以上人口は、「団塊の世代」が65歳以上となった2015年に3387万人となり、「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には3677万人に達すると見込まれている。  その後も65歳以上人口は増加傾向が続き、2042年に3935万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。  総人口が減少する中で65歳以上の者が増加することにより高齢化率は上昇を続け、2036年に33・3%で3人に1人となる。2042年以降は65歳以上人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、2065年には38・4%に達して、国民の約2・6人に1人が65歳以上の者となる社会が到来すると推計されている。総人口に占める75歳以上人口の割合は、2065年には25・5%となり、約3・9人に1人が75歳以上の者となると推計されている。  65歳以上人口のうち、65〜74歳人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後に2016年の1768万人でピークを迎える。その後は、2028年まで減少傾向となるが再び増加に転じ、2041年の1715万人に至った後、減少に転じると推計されている。  一方、75歳以上人口は、2054年まで増加傾向が続くものと見込まれている。 ウ 現役世代1・3人で1人の65歳以上の者を支える社会の到来  65歳以上人口と15〜64歳人口の比率を見てみると、1950年には1人の65歳以上の者に対して12・1人の現役世代(15〜64歳の者)がいたのに対して、2015年には65歳以上の者1人に対して現役世代2・3人になっている。今後、高齢化率は上昇し、現役世代の割合は低下し、2065年には、65歳以上の者1人に対して1・3人の現役世代という比率になる。 エ 年少人口、出生数とも現在の半分程度に、生産年齢人口は4529 万人に  出生数は減少を続け、2065年には56万人になると推計されている。この減少により、年少人口(0〜14歳)は2056年に1000万人を割り、2065年には898万人と、現在の半分程度になると推計されている。  出生数の減少は、生産年齢人口にまで影響を及ぼし、2029年に6951万人と7000万人を割り、2065年には4529万人となると推計されている。  一方、65歳以上人口の増大により死亡数は増加、死亡率(人口1000人当たりの死亡数)は上昇を続け、2065年には17・7になると推計されている。(以下略) 第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得(1)〜(5)略 (6)労働力人口に占める65歳以上の者の比率は上昇  2018年の労働力人口は、6830万人であった。労働力人口のうち65〜69歳の者は450万人、70歳以上の者は425万人であり、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は12・8%と上昇し続けている(図表3)。  また、2018年の労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)を見ると、65〜69歳では47・6%、70〜74歳では30・6%となっており、いずれも2005年以降、上昇傾向である。75歳以上は9・8%であり、おおむね8〜9%で推移している。  雇用情勢を見ると、2008年から2010年は経済情勢の急速な悪化を受けて60〜64歳の完全失業率は上昇していたが、2010年をピークに低下し、2018年の60〜64歳の完全失業率は2・6%と、15歳以上の全年齢計(2・4%)とほぼ同水準となっている。 (7)就業状況 ア 年齢階級別の就業率の推移  年齢階級別に就業率の推移を見てみると、60〜64歳、65〜69歳、70〜74歳では、10年前の2008年の就業率と比較して、2018年の就業率はそれぞれ11・6ポイント、10・4ポイント、8・4ポイント伸びている。 イ 男性は60代後半でも全体の半数以上が働いている  男女別、年齢階級別に就業状況を見ると、男性の場合、就業者の割合は、55〜59歳で91・3%、60〜64歳で81・1%、65〜69歳で57・2%となっており、60歳を過ぎても、多くの人が就業している。他方、60〜64歳の2・4%、65〜69歳の1・7%が完全失業者である。また、女性の就業者の割合は、55〜59歳で72・0%、60〜64歳で56・8%、65〜69歳で36・6%となっている。さらに、70〜74歳の男性の就業者の割合は38・1%、女性の就業者の割合は23・1%となっている(図表4)。 ウ 60歳を境に非正規の職員・従業員比率は上昇  役員を除く雇用者のうち非正規の職員・従業員の比率を男女別に見ると、男性の場合、非正規の職員・従業員の比率は55〜59歳で12・0%であるが、60〜64歳で50・5%、65〜69歳で70・8%と、60歳を境に大幅に上昇している。一方、女性の場合、同比率は55〜59歳で61・1%、60〜64歳で77・1%、65〜69歳で83・3%となっており、男性と比較して上昇幅は小さいものの、やはり60歳を境に非正規の職員・従業員比率は上昇している(図表5)。 エ 「働けるうちはいつまでも」働きたい60歳以上の者が約4割  現在仕事をしている60歳以上の者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答している。70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる。 オ 希望者全員が65歳以上まで働ける企業は7割以上  従業員31人以上の企業約16万社のうち、高年齢者雇用確保措置※を実施済みの企業の割合は99・8%(15万6607社)となっている。また、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は76・8%(12万596社)となっている(図表6)。 カ 65歳以上の起業者の割合は上昇  継続就業期間5年未満の起業者の年齢別構成の推移を見ると、65歳以上の起業者の割合は2007年に8・4%であったが、2017年は11・6%に上昇した。また、男女別に65歳以上の起業者の割合を見ると、男性は2007年8・9%、2012年11・8%、2017年13・2%と上昇しているが、女性は2007年6・8%、2012年8・6%、2017年7・2%となっている。 (以下略) ※「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に「定年制の廃止」、「定年の引き上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じるよう義務づけている 図表1 高齢化の現状 単位:万人(人口)、%(構成比) 平成30年10月1日 総数 男 女 人口(万人) 総人口 12,644 6,153 (性比)94.8 6,491 65歳以上人口 3,558 1,546 (性比)76.8 2,012 65〜74歳人口 1,760 840 (性比)91.3 920 75歳以上人口 1,798 706 (性比)64.6 1,092 15〜64歳人口 7,545 3,818 (性比)102.4 3,727 15歳未満人口 1,542 789 (性比)104.9 752 構成比 総人口 100.0 100.0 100.0 65歳以上人口 (高齢化率) 28.1 25.1 31.0 65〜74歳人口 13.9 13.7 14.2 75歳以上人口 14.2 11.5 16.8 15〜64歳人口 59.7 62.1 57.4 15歳未満人口 12.2 12.8 11.6 資料:総務省「人口推計」平成30年10月1日(確定値) (注)「性比」は、女性人口100人に対する男性人口 図表2 高齢化の推移と将来推計 平成30年以前実績値 平成30年以降推計値 昭和25(1950) 総人口8,411万人 不詳0人 0〜14歳2,979万人 15〜64歳5,017万人 65〜74歳309万人 75歳以上107万人 30(1955) 総人口9,008万人 不詳0人 0〜14歳3,012万人 15〜64歳5,517万人 65〜74歳338万人 75歳以上139万人 35(1960) 総人口9,430万人 不詳0人 0〜14歳2,843万人 15〜64歳6,047万人 65〜74歳376万人 75歳以上164万人 40(1965) 総人口9,921万人 不詳0人 0〜14歳2,553万人 15〜64歳6,744万人 65〜74歳434万人 75歳以上189万人 45(1970) 総人口10,467万人 不詳0人 0〜14歳2,515万人 15〜64歳7,212万人 65〜74歳516万人 75歳以上224万人 50(1975) 総人口11,194万人 不詳5万人 0〜14歳2,722万人 15〜64歳7,581万人 65〜74歳602万人 75歳以上284万人 55(1980) 総人口11,706万人 不詳7万人 0〜14歳2,751万人 15〜64歳7,883万人 65〜74歳699万人 75歳以上366万人 60(1985) 総人口12,105万人 不詳4万人 0〜14歳2,603万人 15〜64歳8,251万人 65〜74歳776万人 75歳以上471万人 平成2(1990) 総人口12,361万人 不詳33万人 0〜14歳2,249万人 15〜64歳8,590万人 65〜74歳892万人 75歳以上597万人 7(1995) 総人口12,557万人 不詳13万人 0〜14歳2,001万人 15〜64歳8,716万人 65〜74歳1,109万人 75歳以上717万人 12(2000) 総人口12,693万人 不詳23万人 0〜14歳1,847万人 15〜64歳8,622万人 65〜74歳1,301万人 75歳以上900万人 17(2005) 総人口12,777万人 不詳48万人 0〜14歳1,752万人 15〜64歳8,409万人 65〜74歳1,407万人 75歳以上1,160万人 22(2010) 総人口12,806万人 不詳98万人 0〜14歳1,680万人 15〜64歳8,103万人 65〜74歳1,517万人 75歳以上1,407万人 27(2015) 総人口12,709万人 不詳145万人 0〜14歳1,589万人 15〜64歳7,629万人 65〜74歳1,734万人 75歳以上1,613万人 30(2018) 総人口12,644万人 0〜14歳1,542万人(12.2%) 15〜64歳7,545万人 65〜74歳1,760万人 75歳以上1,798万人 令和2(2020) 総人口12,532万人 0〜14歳1,507万人 15〜64歳7,406万人 65〜74歳1,747万人 75歳以上1,872万人 7(2025) 総人口12,254万人 0〜14歳1,407万人 15〜64歳7,170万人 65〜74歳1,497万人 75歳以上2,180万人 12(2030) 総人口11,913万人 0〜14歳1,321万人 15〜64歳6,875万人 65〜74歳1,428万人 75歳以上2,288万人 17(2035) 総人口11,522万人 0〜14歳1,246万人 15〜64歳6,494万人 65〜74歳1,522万人 75歳以上2,260万人 22(2040) 総人口11,092万人 0〜14歳1,194万人 15〜64歳5,978万人 65〜74歳1,681万人 75歳以上2,239万人 27(2045) 総人口10,642万人 0〜14歳1,138万人 15〜64歳5,584万人 65〜74歳1,643万人 75歳以上2,277万人 32(2050) 総人口10,192万人 0〜14歳1,077万人 15〜64歳5,275万人 65〜74歳1,424万人 75歳以上2,417万人 37(2055) 総人口9,744万人 0〜14歳1,012万人 15〜64歳5,028万人 65〜74歳1,258万人 75歳以上2,446万人 42(2060) 総人口9,284万人 0〜14歳951万人 15〜64歳4,793万人 65〜74歳1,154万人 75歳以上2,387万人 47(2065) 総人口8,808万人 0〜14歳898万人 15〜64歳4,529万人 65〜74歳1,133万人 75歳以上2,248万人 高齢化率 (65歳以上人口割合) (平成29年推計) 昭和25(1950)4.9% 30(1955)5.3% 35(1960)5.7% 40(1965)6.3% 45(1970)7.1% 50(1975)7.9% 55(1980)9.1% 60(1985)10.3% 平成2(1990)12.1% 7(1995)14.6% 12(2000)17.4% 17(2005)20.2% 22(2010)23.0% 27(2015)26.6% 30(2018)28.1% 令和2(2020)28.9% 7(2025)30.0% 12(2030)31.2% 17(2035)32.8% 22(2040)35.3% 27(2045)36.8% 32(2050)37.7% 37(2055)38.0% 42(2060)38.1% 47(2065)38.4% 65歳以上人口を15〜64歳人口で支える割合 昭和25(1950)12.1% 30(1955)11.5% 35(1960)11.2% 40(1965)10.8% 45(1970)9.8% 50(1975)8.6% 55(1980)7.4% 60(1985)6.6% 平成2(1990)5.5% 7(1995)4.8% 12(2000)3.9% 17(2005)3.3% 22(2010)2.8% 27(2015)2.3% 30(2018)2.1% 令和2(2020)2.0% 7(2025)1.9% 12(2030)1.9% 17(2035)1.7% 22(2040)1.5% 27(2045)1.4% 32(2050)1.4% 37(2055)1.4% 42(2060)1.4% 47(2065)1.3% 資料:棒グラフと実線の高齢化率については、2015年までは総務省「国勢調査」、2018年は総務省「人口推計」(平成30年10月1日確定値)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果。 (注1)2018年以降の年齢階級別人口は、総務省統計局「平成27年国勢調査 年齢・国籍不詳をあん分した人口(参考表)」による年齢不詳をあん分した人口に基づいて算出されていることから、年齢不詳は存在しない。なお、1950年〜2015年の高齢化率の算出には分母から年齢不詳を除いている。 (注2)年齢別の結果からは、沖縄県の昭和25年70歳以上の外国人136人(男55人、女81人)及び昭和30年70歳以上23,328人(男8,090人、女15,238人)を除いている。 (注3)将来人口推計とは、基準時点までに得られた人口学的データに基づき、それまでの傾向、趨すう勢せいを将来に向けて投影するものである。基準時点以降の構造的な変化等により、推計以降に得られる実績や新たな将来推計との間には乖離が生じうるものであり、将来推計人口はこのような実績等を踏まえて定期的に見直すこととしている。 図表3 労働力人口の推移 万人 昭和55(1980) 労働総人口5,650万人 15〜24歳699万人 25〜34歳1,438万人 35〜44歳1,393万人 45〜54歳1,208万人 55〜59歳385万人 60〜64歳248万人 65〜69歳165万人 70歳以上114万人 60(1985) 労働総人口5,963万人 70歳以上137万人 65〜69歳163万人 60〜64歳288万人 55〜59歳488万人 45〜54歳1,297万人 35〜44歳1,597万人 25〜34歳1,261万人 15〜24歳733万人 平成2(1990) 労働総人口6,384万人 70歳以上114万人 65〜69歳165万人 60〜64歳248万人 55〜59歳385万人 45〜54歳1,208万人 35〜44歳1,393万人 25〜34歳1,438万人 15〜24歳699万人 7(1995) 労働総人口6,666万人 70歳以上192万人 65〜69歳253万人 60〜64歳421万人 55〜59歳593万人 45〜54歳1,616万人 35〜44歳1,378万人 25〜34歳1,327万人 15〜24歳886万人 12(2000) 労働総人口6,766万人 70歳以上229万人 65〜69歳265万人 60〜64歳426万人 55〜59歳666万人 45〜54歳1,617万人 35〜44歳1,296万人 25〜34歳1,508万人 15〜24歳761万人 17(2005) 労働総人口6,651万人 70歳以上247万人 65〜69歳257万人 60〜64歳465万人 55〜59歳776万人 45〜54歳1,392万人 35〜44歳1,377万人 25〜34歳1,503万人 15〜24歳635万人 18(2006) 労働総人口6,664万人 70歳以上253万人 65〜69歳268万人 60〜64歳447万人 55〜59歳820万人 45〜54歳1,361万人 35〜44歳1,413万人 25〜34歳1,480万人 15〜24歳622万人 19(2007) 労働総人口6,684万人 70歳以上262万人 65〜69歳287万人 60〜64歳486万人 55〜59歳812万人 45〜54歳1,347万人 35〜44歳1,456万人 25〜34歳1,429万人 15〜24歳607万人 20(2008) 労働総人口6,674万人 70歳以上268万人 65〜69歳298万人 60〜64歳533万人 55〜59歳769万人 45〜54歳1,333万人 35〜44歳1,491万人 25〜34歳1,394万人 15〜24歳589万人 21(2009) 労働総人口6,650万人 70歳以上266万人 65〜69歳313万人 60〜64歳565万人 55〜59歳722万人 45〜54歳1,332万人 35〜44歳1,523万人 25〜34歳1,364万人 15〜24歳565万人 22(2010) 労働総人口6,632万人 70歳以上273万人 65〜69歳312万人 60〜64歳605万人 55〜59歳686万人 45〜54歳1,343万人 35〜44歳1,542万人 25〜34歳1,329万人 15〜24歳544万人 23(2011) 労働総人口6,596万人 70歳以上288万人 65〜69歳296万人 60〜64歳637万人 55〜59歳655万人 45〜54歳1,333万人 35〜44歳1,569万人 25〜34歳1,291万人 15〜24歳525万人 24(2012) 労働総人口6,565万人 70歳以上299万人 65〜69歳310万人 60〜64歳627万人 55〜59歳629万人 45〜54歳1,346万人 35〜44歳1,577万人 25〜34歳1,261万人 15〜24歳514万人 25(2013) 労働総人口6,593万人 70歳以上307万人 65〜69歳345万人 60〜64歳602万人 55〜59歳620万人 45〜54歳1,380万人 35〜44歳1,582万人 25〜34歳1,239万人 15〜24歳518万人 26(2014) 労働総人口6,609万人 70歳以上322万人 65〜69歳377万人 60〜64歳575万人 55〜59歳620万人 45〜54歳1,406万人 35〜44歳1,576万人 25〜34歳1,214万人 15〜24歳518万人 27(2015) 労働総人口6,625万人 70歳以上334万人 65〜69歳413万人 60〜64歳556万人 55〜59歳617万人 45〜54歳1,439万人 35〜44歳1,558万人 25〜34歳1,191万人 15〜24歳516万人 28(2016) 労働総人口6,673万人 70歳以上336万人 65〜69歳450万人 60〜64歳541万人 55〜59歳619万人 45〜54歳1,482万人 35〜44歳1,527万人 25〜34歳1,180万人 15〜24歳539万人 29(2017) 労働総人口6,720万人 70歳以上367万人 65〜69歳454万人 60〜64歳536万人 55〜59歳628万人 45〜54歳1,526万人 35〜44歳1,497万人 25〜34歳1,167万人 15〜24歳545万人 30(2018) 労働総人口6,830万人 70歳以上425万人 65〜69歳450万人 60〜64歳539万人 55〜59歳636万人 45〜54歳1,567万人 35〜44歳1,469万人 25〜34歳1,160万人 15〜24歳583万人 65歳以上割合 昭和55(1980)4.9% 60(1985)5.0% 平成2(1990)5.6% 7(1995)6.7% 12(2000)7.3% 17(2005)7.6% 18(2006)7.8% 19(2007)8.2% 20(2008)8.5% 21(2009)8.7% 22(2010)8.8% 23(2011)8.9% 24(2012)9.3% 25(2013)9.9% 26(2014)10.6% 27(2015)11.3% 28(2016)11.8% 29(2017)12.2% 30(2018)12.8% 資料:総務省「労働力調査」 (注1)「労働力人口」とは、15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせたものをいう。 (注2)平成23年は岩手県、宮城県及び福島県において調査実施が一時困難となったため、補完的に推計した値を用いている。 図表4 55歳以上の者の就業状態 男 55〜59歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口6.3% 完全失業者2.1% 従業上の地位不詳0.5% 役員8.4% 役員を除く雇用者72.4% 自営業主・家族従業者10.0% 就業者(91.3%) 60〜64歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口16.5% 完全失業者2.4% 従業上の地位不詳0.5% 役員9.0% 役員を除く雇用者59.0% 自営業主・家族従業者12.5% 就業者(81.1%) 65〜69歳 就業状態不詳0.2% 非労働力人口41.0% 完全失業者1.7% 従業上の地位不詳0.4% 役員7.2% 役員を除く雇用者35.2% 自営業主・家族従業者14.4% 就業者(57.2%) 70〜74歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口61.1% 完全失業者0.5% 従業上の地位不詳0.3% 役員6.3% 役員を除く雇用者18.8% 自営業主・家族従業者12.8% 就業者(38.1%) 75歳以上 就業状態不詳0.0% 非労働力人口85.2% 完全失業者0.1% 従業上の地位不詳0.1% 役員2.9% 役員を除く雇用者4.1% 自営業主・家族従業者7.7% 就業者(14.8%) 女 55〜59歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口26.7% 完全失業者1.3% 従業上の地位不詳0.3% 役員2.9% 役員を除く雇用者62.6% 自営業主・家族従業者6.3% 就業者(72.0%) 60〜64歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口41.9% 完全失業者1.3% 従業上の地位不詳0.3% 役員2.6% 役員を除く雇用者46.3% 自営業主・家族従業者7.5% 就業者(56.8%) 65〜69歳 就業状態不詳0.2% 非労働力人口62.8% 完全失業者0.4% 従業上の地位不詳0.2% 役員2.5% 役員を除く雇用者25.8% 自営業主・家族従業者8.2% 就業者(36.6%) 70〜74歳 就業状態不詳0.0% 非労働力人口76.9% 完全失業者0.2% 従業上の地位不詳0.2% 役員2.3% 役員を除く雇用者13.2% 自営業主・家族従業者7.4% 就業者(23.1%) 75歳以上 就業状態不詳0.0% 非労働力人口93.5% 完全失業者0.0% 従業上の地位不詳0.1% 役員0.7% 役員を除く雇用者2.2% 自営業主・家族従業者3.4% 就業者(6.5%) 資料:総務省「労働力調査」(平成30年) (注)四捨五入の関係で、足し合わせても100%にならない場合がある。 図表5 性年齢別雇用形態別雇用者数及び非正規雇用者率(役員を除く) 男 55〜59歳 合計276万人 60〜64歳 合計222万人 65〜69歳 合計161万人 70〜74歳 合計72万人 75歳以上 合計29万人 非正規の職員・従業員の割合 55〜59歳12.0% 60〜64歳50.5% 65〜69歳70.8% 70〜74歳75.0% 75歳以上72.4% 女 55〜59歳 合計239万人 60〜64歳 合計179万人 65〜69歳 合計126万人 70〜74歳 合計57万人 75歳以上 合計24万人 非正規の職員・従業員の割合 55〜59歳61.1% 60〜64歳77.1% 65〜69歳83.3% 70〜74歳82.5% 75歳以上70.8% 資料:総務省「労働力調査」(平成30年) 図表6 雇用確保措置の実施状況の内訳(企業規模別) 31〜300人 定年制の廃止2.9% 65歳以上定年19.0% 希望者全員65歳以上の継続雇用制度57.3% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)*20.6% 高年齢者雇用確保措置未実施企業0.3% 301人以上 定年制の廃止0.5% 65歳以上定年9.8% 希望者全員65歳以上の継続雇用制度46.5% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)*43.2% 高年齢者雇用確保措置未実施企業0.0% 31人以上 定年制の廃止2.6% 65歳以上定年18.1% 希望者全員65歳以上の継続雇用制度56.1% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)*22.9% 高年齢者雇用確保措置未実施企業0.2% 定年制の廃止と65歳以上定年と希望者全員65歳以上の継続雇用制度の合計76.8% 定年制の廃止と65歳以上定年と希望者全員65歳以上の継続雇用制度と基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)*の合計99.8% 資料:厚生労働省「平成30年『高年齢者の雇用状況』集計結果」(平成30年)より内閣府作成 (注)継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。なお、平成24年度の法改正により、平成25年度以降、制度の適用者は原則として「希望者全員」となった。ただし、平成24年度までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた場合は、その基準を適用できる年齢を令和7年度までに段階的に引き上げているところ(経過措置)。 【P56-57】 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる職場づくりの事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用環境整備への具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度の導入 A賃金制度、人事評価制度の見直し B多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 C各制度の導入までのプロセス・運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組み @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組みや高齢従業員の役割等の明確化 A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(IT化へのフォロー、危険業務等からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D新職場の創設・職務の開発 E中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施 等 高年齢者の雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善(高齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化 B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/activity02.html)からも入手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日  令和2年3月31日(火)当日消印有効 3.応募先  各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成29年4月1日〜令和元年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)平成31年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和元年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)平成31年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、希望者全員が65歳まで働ける制度には該当しないことから、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 学識経験者などから構成される審査委員会を設置し、審査します。 Y 審査結果発表など 令和2年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、 本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとしま す。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課  〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号  TEL:043-297-9527  E-Mail:tkjyoke@jeed.or.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください!  当機構の「65歳超雇用推進事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。「jeed 65歳超 事例サイト」で検索いただくか、URL:https://www.elder.jeed.or.jp/をご指定ください。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」で検索いただくか、URL:http://www.jeed.or.jp/elderly/data/pamphlet_company70/index.htmlをご指定ください。 jeed 65歳超 事例サイト 検索 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 地域雇用活性化推進事業採択地域に14地域を決定  厚生労働省は、今年度新たに創設した「地域雇用活性化推進事業」(令和元年度開始分)の採択地域として14地域を決定した。  同事業は、雇用機会が不足している地域や過疎化が進んでいる地域などが、地域の特性を活かして「魅力ある雇用」や「それを担う人材」の維持・確保を図るために創意工夫する取組みを支援する。地域独自の雇用活性化の取組みを支援するため、地方公共団体の産業振興施策や各府省の地域再生関連施策などと連携したうえで実施する。具体的には、地域の市町村や経済団体などの関係者で構成する地域雇用創造協議会が提案した事業構想のなかから、雇用を通じた地域の活性化につながると認められるものをコンテスト方式で選抜し、その実施を、事業を提案した協議会に委託する。事業規模(委託費上限)は、各年度4000万円。複数の市区町村で連携して実施する場合、1地域当たり2000万円/年を加算(加算上限1億円/年)。実施期間は3年度以内。 採択された地域は、  @北海道南知床(しれとこ)4町(中標津(なかしべつ)町、別海(べつかい)町、標津(しべつ)町、羅臼(らうす)町)、A宮城県気仙沼(けせんぬま)市、B秋田県大仙市、C山形県酒田市、D栃木県茂木(もてぎ)町、E栃木県大田原市、F滋賀県長浜市、G京都府京丹後(きょうたんご)市、H岡山県津山市、I愛媛県宇和島市、J高知県高知市、K福岡県飯塚市、L宮崎県延岡市、M鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市の14地域。 厚生労働省 「平成30年度使用者による障害者虐待の状況等」  厚生労働省は、「平成30年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果をまとめた。  これは、2012(平成24)年10月に施行された「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づき公表するもの。  それによると、都道府県労働局に寄せられた使用者(障害者を雇用する事業主や職場の上司など)による障害者虐待の通報・届出のあった事業所数は1656事業所で、前年度(1483事業所)より11・7%増加している。通報・届出の対象となった障害者数は1942人で、前年度(2454人)より20・9%減少した。  また、使用者による障害者虐待が認められた事業所数は541事業所で、前年度(597事業所)より9・4%減少した(障害者虐待が認められた事業所は、通報・届出の時期、内容が異なる場合には、複数計上している)。  虐待を行った使用者数は563人(前年度比6・6%減)で、内訳は、事業主が476人(全体の84・5%)、所属の上司が67人(同11・9%)などとなっている。虐待が認められた障害者数は900人(前年度比31・2%減)で、就労形態内訳はパート等が507人(全体の56・3%)、正社員が260人(同28・9%)などとなっている。受けた虐待の種別は、経済的虐待が791人(全体の83・0%)と最も多く、次いで心理的虐待が92人(9・7%)、身体的虐待が42人(4・4%)の順となっている(被虐待者の虐待種別については、重複しているものがある)。 厚生労働省 長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果  厚生労働省は、平成30年度に実施した長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果をまとめた。この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としている。  まとめによると、監督を行った2万9097事業場のうち2万244事業場(全体の69・6%)で労働基準関係法令違反が認められた。主な違反内容は、「違法な時間外・休日労働があったもの」が1万1766事業場(全体の40・4%)、「賃金不払残業があったもの」が1874事業場(同6・4%)、「過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの」が3510事業場(同12・1%)。  違法な時間外・休日労働があった事業場のうち、時間外・休日労働(法定労働時間を超える労働および法定休日の労働)の実績が最も長い労働者の時間数が1カ月当たり80時間を超えるものが7857事業場(全体の66・8%)、同100時間を超えるものが5210事業場(同44・3%)、同150時間を超えるものが1158事業場(同9・8%)、同200時間を超えるものが219事業場(同1・9%)となっている。  監督指導を行った事業場における労働時間の管理方法は、2445事業場で「使用者が自ら現認」、9636事業場で「タイムカードを基礎」、5361事業場で「ICやIDカードを基礎」、1万165事業場で「自己申告制」により確認していた。 総務省 「統計からみた我が国の高齢者」  総務省は、敬老の日にあわせて、「統計からみた我が国の高齢者」をまとめた。  国勢調査をもとにした人口推計によると、2019(令和元)年9月15日現在の総人口は、1億2617万人で、前年同月(1億2643万人)に比べ26万人減少した。一方、65歳以上の高齢者(以下、「高齢者」)人口は3588万人で、前年同月(3556万人)に比べ32万人増加し、過去最多となっている。総人口に占める高齢者人口の割合は28・4%となり、前年同月(28・1%)に比べ0・3ポイント増となり、過去最高となっている。また、年齢階級別にみると、いわゆる「団塊の世代」(1947年〜1949年生まれ)を含む70歳以上人口は2715万人(総人口の21・5%)で、前年同月に比べ0・8ポイント増、75歳以上人口は1848万人(同14・7%)で、同0・5ポイント増、80歳以上人口は1125万人(同8・9%)で、同0・2ポイント増となっている。  2018年の高齢者の就業者数は、15年連続で前年に比べ増加して862万人(前年同月807万人)となり、過去最多。同年の高齢者の就業率は、男性は33・2%、女性は17・4%となり、いずれも7年連続で前年に比べて上昇している。年齢階級別にみると、65〜69歳で46・6%(2017年は44・3%)、70〜74歳で30・2%(同27・2%)、75歳以上で9・8%(同9・0%)となっている。15歳以上の就業者総数に占める高齢就業者の割合は12・9%(前年12・4%)で、過去最高となっている。 「生涯現役の日」交流フォーラム2019を開催  一般社団法人高齢者活躍支援協議会などの団体や企業、有識者らが中心となって2018年7月に設立した「生涯現役の日」制定・普及委員会が10月1日(火)、東京都内で「『生涯現役の日』交流フォーラム2019」を開催した。  10月1日は、1990年に国連総会で決議された「国際高齢者デー」であり、同委員会ではこの日を「個人が生涯にわたって自立をめざす記念日」=「生涯現役の日」として、新たな記念日に制定。この記念日の普及を通じて、企業や民間団体、行政や地域組織などによるさまざまな生涯現役社会づくりへの取組みを支援していきたいとしている。  本交流フォーラムは、生涯現役社会の実現に向けて各界の有識者が意見交換を行うと同時に、「生涯現役の日」の認知を広め、交流のネットワークを広げることを目的に開催された。  はじめに主催者代表挨拶があり、同委員会の清家篤議長(日本私立学校振興・共済事業団理事長、元・慶應義塾長)が「生涯現役社会」について、「高齢者の就労機会を拡大することだけではなく、社会活動も含めて、長い人生を豊かに、よりよく生きるための生き方の一つとして注目されているもの。それは、若者から高齢者まですべての世代が自立して活躍でき、何らかの役割を持って支え合う成熟した社会として推進することが求められていると思う」と語り、同委員会ではそうした社会を個人や企業、地域社会、行政などでつくっていきたいと考え、10月1日を「生涯現役の日」と定めたという背景などを語った。続いて行われた講演では、岡山県総社(そうじゃ)市の片岡聡一(そういち)市長が「総社市障がい者千人雇用」をテーマに、同市で就労する障害者が2011年の180人から6年後には1000人超を達成した取組みと障害者雇用が進んでから市内に見られた変化などについて述べた。  その後の意見交換会では、生涯現役社会の実現に関わる四つの側面「健康寿命」、「職業寿命」、「社会活動寿命」、「資産寿命」に対応した五つのテーブル(職業寿命については「雇用」「就労」の二つのテーブルで実施)で、本フォーラムに参集した団体の代表者や有識者、民間企業の代表者らが各テーブル8人ほどのグループにわかれて討論を開始。高齢者の雇用や社会参加、健康、資産にかかわる現状や課題、提案、展望などが活発に語られ、また、それらを通して参加者同士が交流を深められるフォーラムとなった。 写真のキャプション 五つのグループで行われた意見交換会 【P60】 次号予告 1月号 特集 ベテラン社員は育成の主役 リーダーズトーク 細川明子さん(株式会社パソナグループ グループHR部 部長) 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。  URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jpでご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 清家武彦……一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 上席主幹 深尾凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員 藤村博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア京子……アテナHROD代表、学習院大学特別客員教授 編集後記 ●今回の特集「70歳雇用 先進企業はこうしている」はいかがだったでしょうか。6月に開催された政府の未来投資会議(議長:安倍晋三首相)にて、新たな成長戦略の柱となる「成長戦略実行計画」が策定され、その後閣議決定されましたが、同戦略では「65歳以上への継続雇用年齢の引上げについては、70歳までの就業機会の確保を図り、高齢者の希望・特性に応じて、多様な選択肢を整える」としています。加えて、来年の通常国会では高年齢者雇用安定法改正案の提出も予定されており、生涯現役時代における高齢者雇用が今後どのような形態になっていくのか、その動向にいま大きな注目が集まっています。今月号ではすでに70歳雇用に向けて準備・実践している先進企業の取組みに焦点をあてて紹介しました。また、特別インタビューとして、80年代から高齢者の就業問題や社会保障問題について研究し、各種審議会でも政策提言を重ねてきた、日本私立学校振興・共済事業団理事長の清家篤氏にご登場いただき、これまでの高齢者雇用の動向と現在の課題、今後の展望などについてお話をうかがいました。高齢社員のモチベーションの向上をどう実現するか、安心して長く働き続けられる制度の構築や、生涯現役で働ける職場環境の実現のために、読者のみなさまのご参考にしていただければ幸いです。 ●当機構の「65歳超雇用推進事例サイト」がリニューアルオープンしました。スマートフォンからも見やすく、82社91事例を豊富なキーワードから簡単に検索可能になりました。イベントの案内、研究資料など「65歳超雇用推進」関連情報をまとめて見ることもできます。ぜひご覧ください。 ●2020年度高年齢者雇用開発コンテストの募集が始まりました。応募締切は3月31日です。みなさまからのご応募をお待ちしております。 月刊エルダー12月号 No.482 ●発行日−−令和元年12月1日(第41巻 第12号 通巻482号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2  TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL http://www.jeed.or.jp  メールアドレス elder@jeed.or.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5  TEL 03(3915)6401  FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-730-5 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.307 いまの暮らしに寄り添う伝統の技とモダンデザイン 鎌倉彫(かまくらぼり)作家 木内(きうち)小夜子(さよこ)さん(72歳) 彫りは、対話です。もう少し彫ってとか、木地が教えてくれます。その声を聞き、少しずつ手で彫るから、調和のとれた美になります 先代への感謝を忘れず鎌倉随一の木地を揃える  古都、鎌倉。話題の飲食店や、土産物屋が軒を連ね、参詣客はもちろんのこと、多くの観光客で一年中にぎわっている小町通り。  鎌倉彫を天職とし、紺綬(こんじゅ)褒章も受章した名匠、木内翠岳(すいがく)氏が興した店、「一翠堂」はその一角にある。  店に一歩入ると「木地(きじ)の壁」。  まだ彫りも塗りもされていない木製の漆器の原型となる木地が、壁一面を埋めつくしている。  長女の小夜子さんは、女子美術短期大学造形科にて彫塑(ちょうそ)※を専攻。学生時代は店でデザインの下絵をせっせと描いていたという。  「うちは鎌倉彫の愛好家のため、つくり手のために、木地の販売もしていました。まだ何も彫られていない木の器にデザインの下絵をつけると好評で、木地の売れ行きがよかったのです」  幼いころから父の仕事を見ていたという小夜子さん。伝統の技術も良質の木地も引き継ぎ、2008(平成20)年に店を継いだ。 小夜子さんの二つのポリシー「暮らし」と「自由」  小夜子さんが考える、鎌倉彫のあり方。まず一つは、「『暮らし』とともに」である。  時代とともにライフスタイルも変わり、台所はシステムキッチンに、座卓はテーブルになった。食器もデザインや機能がより重視されている。ゆえに、鎌倉彫の器も暮らしのなかで使いやすいように、盛ったお料理やお菓子が美しくおいしく引き立つように、と心がけている。最近のおすすめは、和モダンの食膳。ランチョンマット代わりに敷いて使ってほしいという。  もう一つは、ひらめきを大切にした「『自由』なデザイン」だ。  「よいデザインだと、彫るときもワクワクします」と、小夜子さんはデザインの力を笑顔で語る。ご自身の鎌倉彫のデザインは、鎌倉彫以外のアートや、あちこちで見つけたものがヒントになるという。  三代目になる娘の史子(ふみこ)さんとも、よく旅をするそうだ。ギリシャでは鎌倉彫のモチーフにも使われる麻の葉の文様を見つけ、フランスでは木とは異なる石の文化に触れた。旅先でも、デザインの話になる仲のよい親子だが、互いの個は尊重している。母を「小夜子さん」と呼ぶ史子さんは行動派。自由な気風の持ち主だ。  「私は、デザインと木地の形がうまく合うと気持ちよいですね」と快活に笑う史子さん。  2人ともWデザインが大切Wというが、好みには個性があらわれる。  「私は椿が好きで、娘の誕生時に彫った椿の幾何学模様に特別な想いがあります」(小夜子さん)  「椿よりも幾何学模様の方が好きです。身につけたときのカーブを意識した、流線のモチーフも好きです」(史子さん)  生活のさまざまな場面からアイデアが生まれ、デザインを生み出す力になる。 鎌倉彫のある暮らしをお客さまが教えてくださる  いまのシニアはアクティブだ。外出時の装いも、おしゃれで若々しい人が多い。しかし、金属類のアクセサリーは重くて好まないと聞くこともある。そういう方にぴったりなのが、オリジナルデザインの一翠堂ならではのアクセサリーだ。モダンなデザインながら軽くて気軽に身につけられるので、少しおしゃれして出かけたいときにちょうどよい。  また、抹茶を入れておく棗(なつめ)をはじめ、茶道のイメージもある鎌倉彫だが、器も豊富で、さまざまな料理に合う。あまり堅苦しく考えず、人が集まる場で使ってほしいと2人はいう。  最近、お寿司を鎌倉彫の角皿に乗せた写真を送ってくれた方がいたと、2人は顔をほころばせる。 「とってもおいしそうでした。今度は丸いお皿を買ってみたいとおっしゃってくださって。そういうやり取りが、本当に嬉しいです」  手にした人の心を豊かにしたいという小夜子さんたちの想いは、少しずつ人々の暮らしへと届いていくのだろう。 一翠堂 http://issuido.jp/ TEL:0467(22)3769 (撮影・福田栄夫/取材・朝倉まつり) ※ 彫塑……彫刻と塑像(そぞう・粘土による造形物) 写真のキャプション 椿の文様と菱形の幾何学パターンを合わせた、ユニークな和モダンデザインの角皿は一翠堂二代目木内小夜子さん作(左)。唐草文様の鉢は三代目史子さん作(右) 下絵、彫り、塗りの工程がある鎌倉彫。お店とつながっているスペースで彫りの作業をする小夜子さん 小町通りの店舗。作品展などの催事では併設ギャラリーも開く まるで木地の壁。お盆やお膳、お皿や花入れなどの木地が並ぶ。北海道産の桂が使われる とても軽いペンダントとブローチ。花(左)と、七宝(右)は小夜子さんの作品。流線(奥)は史子さんの作品 愛用の小刀、平刀、丸刀など。彫る前に研ぐのも準備のうち 右手で押し、左手で一定以上いかないように止める。無理なく彫るから、優美な曲線に 「手がけたら、やりきること」。それ以外に娘に教えるのは、姿勢くらいだという 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! 今回は漢字を使って空間認知力を鍛えます。頭のなかで漢字のパーツを組み合わせて、元の漢字を推測しましょう。漢字力アップにもつながります。 第31回 漢字ジグソーパズル 目標 5分 ある漢字が分割されています。 散らばったパーツを組み合わせて、元の漢字が何かを当ててください。 その際、書き出したりせずに、できるだけ頭のなかでジグソーパズルを組み立てるように解いてみてください。 @ 解答 A 解答 B 解答 C 解答 D 解答 E 解答 F 解答 G 解答 WHAT(なに)ルートとWHERE(どこ)ルート  人が視覚から得た信号は、まず後頭葉で処理され、前頭葉に向かって送られていくのですが、それにはおおむね2通りのルートがあります。  一つは、側頭葉を通って前頭葉に上がるルートです。これは「WHAT(なに)ルート」といい、いま見たものは何なのか、という認識や言語的な分析を行います。  もう一つは、頭頂葉に上がって前頭葉に入るルートです。これは「WHERE(どこ)ルート」といい、物の位置関係の把握や、映像・画像の処理を行います。  前頭葉は、この二つの経路を通って集められた「なに」と「どこ」の情報を記憶し、統合して答えを出すという、脳全体の司令塔のような役割を果たしています。  残念ながら、前頭葉は老化にともない、最も衰えやすい部位ですので、この二つのルートを使って、脳のさまざまな機能を幅広く鍛えることが大切になってきます。  今回の脳トレは、図形+漢字の問題であり、図形でWHEREルートを、漢字でWHATルートを使って脳を刺激します。一石二鳥のお得な脳トレにチャレンジしましょう。 【問題の答え】 @賀 A農 B湯 C境 D移 E望 F以 G職 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。2019年12月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価(本体458円+税) 『65歳超雇用推進事例サイト』がリニューアルオープンしました! https://www.elder.jeed.or.jp スマートフォンからも見やすい! リニューアルオープン 82社91事例を豊富なキーワードで簡単検索 66歳以上まで働ける企業 定年が61歳以上 制度改善 or 条件を変更する イベントの案内、研究資料など「65歳超雇用推進」関連情報をまとめて見られます! jeed 65歳超 事例サイト 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.elder.jeed.or.jpであることを確認のうえアクセスしてください 雇用推進・研究部 研究開発課 2019 12 令和元年12月1日発行(毎月1回1日発行) 第41巻第12号通巻482号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会