【表紙2】 『65歳超雇用推進事例サイト』がリニューアルオープンしました! https://www.elder.jeed.or.jp スマートフォンからも見やすい! リニューアルオープン 82社91事例を豊富なキーワードで簡単検索 66歳以上まで働ける企業 定年が61歳以上 制度改善 or 条件を変更する イベントの案内、研究資料など「65歳超雇用推進」関連情報をまとめて見られます! jeed 65歳超 事例サイト 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.elder.jeed.or.jpであることを確認のうえアクセスしてください 雇用推進・研究部 研究開発課 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.58 「CSよりもまずES」の理念を掲げ高齢者の働きがいと生きがいを実現 株式会社共同 代表取締役社長 有賀公哉さん ありが・きみや 1964(昭和39)年生まれ。静岡県浜松市出身。1989(平成元)年、株式会社共同に入社。2005年、同社社長に就任。グループ会社の株式会社リアル、株式会社エヴァーブルーの社長も兼務。アルバイト時代から数々の役職を経験し、従業員の気持ちがわかるトップとして社員をけん引している。座右の銘は「百折不撓(ひゃくせつふとう)」。  株式会社共同は、第9回(2019年)「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で、厚生労働大臣賞を受賞しました。雇用の年齢上限を設けず、CS(顧客満足度)よりもES(従業員満足度)を重視する経営理念を掲げ、高齢者を含む従業員が、活き活きと働き続けられる職場環境の整備に努めています。今回は同社代表取締役社長の有賀公哉さんに、同社の高齢者雇用とES向上のための取組みについて、お話をうかがいました。 ES(従業員満足度)を高め、生きがいを持って働ける職場づくり ―貴社では、高齢者や障害者の雇用に積極的に取り組み、昨年の第9回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で厚生労働大臣賞を受賞されました。現在、高齢従業員の人数はどれくらいですか。 有賀 当社はビルメンテナンス業として1978(昭和53)年に創業しました。従業員数は約400人(2020〈令和2〉年1月現在)。また、分譲マンションの管理と警備業の2社を加えた共同グループの従業員数は、現在約500人です。その多くは契約先の施設などの日常清掃業務に従事しています。60歳以上の高齢従業員は265人で、全体の約67%を占めています。そのうち70歳以上が122人、80歳以上が5人。最高齢者は85歳です。  もともとビルメンテナンスの仕事は社会的地位が高くないイメージを持つ人が多く、若者の職業選択先として敬遠され、逆に第一線を退いた高齢者が多いという特徴があります。私が入社した30数年前の高齢従業員の場合は、「生活のために働かないといけない」という人が多かったのですが、最近は「まだ元気だから働きたい」という人も増えてきました。寿命の延伸などにより、漠然とした将来の不安を抱き、元気なうちは将来に備えて働こうという人が増えています。昔ほど悲壮感を持って働く仕事ではなく、明るいイメージでとらえられる業種になってきました。 ―高齢従業員が持っている力を存分に発揮し、生きがいを持って働くようにするためにどのような取組みをしていますか。 有賀 私が共同グループの社長に就任した2005(平成17)年に、「CSよりもまずES」の経営を目ざそうと考えました。お客さま第一主義も大事なことですが、昔はお客さまのちょっとしたわがままや理不尽なクレームがあると、その都度、会社からは「とりあえず謝って来い」といわれたり、あるいは経緯などとは無関係にクレームを発生させた責任だけが問われていたものです。その結果、この仕事が嫌になり退職した仲間もいました。  しかし私は、大事なお客さまに喜んでもらうサービスを提供するのが従業員の仕事であるならば、何より従業員の満足度を上げるのが大事であると考えたのです。従業員が会社を好きになってくれれば、仕事に対する意欲もわき、お客さまからも高い評価を得られるはずです。従業員が働きやすい環境を整えることで帰属意識が高まれば、定着率も上がり、業務の安定や品質の向上につながり、最終的にお客さまへのサービス向上になると考えました。 ―ESを向上させるために、具体的にどんな取組みをしているのですか。 有賀 一つは本人の希望や事情に応じて、働く時間や勤務日を柔軟に設定していることです。高齢従業員のほとんどが、週2日から3日、あるいは店舗の閉店後、早朝の清掃に従事するなどパートタイムで勤務しています。フルタイムであっても50 歳を過ぎれば、親の介護が必要になるケースもあります。例えば本社の始業時間は8時30分ですが、親を施設に送り届ける必要がある従業員の場合、出勤時間を9時30分にするなど、個々の従業員の状況に応じて柔軟に対応してきました。  また、従業員は約150カ所の契約先で働いており、直行・直帰の人がほとんどです。本社のスタッフがシフトの作成などの労務管理を担当し、頻繁にコミュニケーションをとるようにしています。例えば、定期的な巡回に加え、『共同ニュース』という社内報を毎月発行し、給与明細と一緒に必ず手元に届くようにしています。従業員のなかにはそれを楽しみにしている人も多く、「ファイルしたニュースが180号になったよ」と嬉しそうに話してくれる人もいます。そのほか、日報とタイムカードを、毎月本社に持ってきてもらうようにお願いしており、その日は本社のスタッフと雑談するなど、コミュニケーションのきっかけにしています。  また、私の携帯番号を記した「ブレイブラインカード※1」を全従業員に配付しています。勤務先での困りごとがあれば、通常は担当スタッフに相談するのですが、私にも直接コンタクトを取れるようにしています。専用の携帯電話を持って24時間受けつけていますが、多いときは月に5件ほど連絡があります。社長就任時からの取組みですが、私自身、社長の姿が見えない会社にはしたくない、社長とつながっているという安心感を与えたいという思いで始めました。 高齢従業員が会社の主力として活躍その貢献に応えられる制度を整備 ―高齢従業員の年齢構成を見ると、雇用の上限年齢はないように思えます。処遇を含めた仕組みはどうしていますか。 有賀 社長就任以来、雇用の上限年齢は設けていません。高齢従業員が働く理由は、「元気なうちは働きたい」、「生活の不安があるので働きたい」などさまざまです。また、会社も高齢従業員に助けられて存続してきました。将来の不安が高まるなかで、せめて収入源が閉ざされることがないようにしたいという思いがあります。退職していく高齢従業員は、健康上の理由が多いのですが、なかには家族から「そろそろ辞めるようにいってもらえないか」という相談もあります。これまで勤務した最高齢者は88歳、ボイラー技士の方でした。  先日も77歳の人が面接に来るなど、採用時の年齢も問いません。ただし、加齢による体力の衰えなどの事情で実際に作業ができない場合もあるため、「まずはやってみましょう」というところからスタートします。  処遇に関しては、現場で働くパートタイマーは時給制ですが、になう責任と作業内容によって給料も違いますし、賞与も支給しています。マネジメントをになう本社のスタッフは、60歳になると嘱託勤務となりますが、給料はほとんど変わりません。ただし、65歳を過ぎると本人の希望で週3日、あるいは一週間のうち中日(なかび)の水曜日は休みたいという人も増えてくるため、柔軟に対応しています。 ―他社を定年退職した人や、再雇用を終えた人も受け入れているそうですね。 有賀 静岡県は製造業大手の会社が多いのですが、その会社の総務・人事に対し、「当社で働きたいという方がいれば受け皿になります」とPRしています。実際に定年後や再雇用後の65歳以上の方を、年に10人以上受け入れています。働く動機としては、「あと3年は働きたい」、「70歳まで働きたい」、「いままでと違う仕事をやってみたかった」などさまざまですね。私としては人手がほしいということもありますが、それ以上に65歳で仕事から卒業するのはあまりにも早すぎるし、寂しいと思うのです。しかし、永年勤務された方が別の会社に就職しようとしても、違う環境に飛び込むのには勇気も必要ですし、不安もあるはずです。高齢者でも活躍できる当社のような会社があることを知ってもらいたいですし、受け入れることは社会貢献でもあると思っています。 今日行く(=教育)場所≠ニ今日用(=教養)がある≠アとが高齢者の生きがいにつながる ―大手企業出身者のなかには、以前の会社での地位やプライドを引きずっている人もいるかと思います。どのようなメッセージを発信していますか。 有賀 新しく入社する人を対象とする新人研修会を実施しています。業務上の心構えや行動の指針を明確にした、共同グループの「行動指針クレド※2」を直行・直帰の現場の従業員を含めて全員に配付しており、それをベースに新人研修を行っています。  また、「共同グループの歴史と伝統」という社是を社内に掲示しています。そのなかで「共同グループの未来は、創業の精神に基づいてその歴史と伝統の上に立って、現実を直視し、それを育て改革し、適応していく我々従業員の不断の努力の先にあるものである」と謳(うた)っています。たしかにプライドの高い人もいます。そういう人には「あなたの経歴がどんなにすばらしくても、第二の人生を当社の一員として働く以上は、社是にある『現実を直視し、それを育て改革し、適応していく』ために、ぜひわれわれの事業の協力者になってください」とお願いしています。 ―最後に、高齢者雇用に取り組む中小企業にアドバイスをお願いします。 有賀 高齢者が職業人生でつちかった知恵や経験は大きいし、私も勉強になります。私だけではなく従業員やマネージャークラスを含めて、人生の先輩から学びの機会を得ることができるのはメリットの一つです。また、高齢者にかぎらず障害のある人が一生懸命がんばっている姿を見て、若い世代もがんばろうというよい刺激ももらっています。働く環境がある喜びを感じ、活き活きと働いている高齢従業員の姿を見ると、経営者側の私もうれしくなります。若い人には教育≠ニ教養≠ェ必要ですが、高齢者も今日行く場所≠ニ今日用がある≠アとが生きがいにつながるのです。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/上木鉄也) ※1 ブレイブラインカード……従業員の違法行為や怠慢行為を発見した場合や、お客さまから苦情をいわれたとき、担当上司に相談したが回答がないときに、相談・報告をするための窓口として、社長または本社品質管理課のブレイブライン専用携帯電話番号が記載された、名刺サイズのカード ※2 クレド……会社の理念や社長からのメッセージについて記載されている名刺サイズのカード 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2020 February ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集1 6 会社を牽引するベテランプレイヤー 7 総論 高齢社員を戦力化するためのマネジメントとは 武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授 宍戸拓人 11 企業事例@ 株式会社 ペンシル SFOディレクター 金森洋介さん 新規事業を自ら提案し大活躍! 何歳になってもチャレンジする気持ちが大事 14 企業事例A 株式会社 宣通 営業 影山義昭さん 70代にして成績トップの営業マン 残業ゼロのメリハリのある働き方で会社を牽引 特集2 17 人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム― 18 講演 高齢社員の人事管理〜60歳代以降を考える〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎 21 企業事例発表@ 北海道会場 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 企業事例発表A 北海道日産自動車株式会社 企業事例発表B 富山会場 株式会社インテック 企業事例発表C 株式会社パースジャパン 企業事例発表D 香川会場 株式会社穴吹ハウジングサービス 企業事例発表E 株式会社マルナカ 27 パネルディスカッション 北海道会場 「高齢社員を戦力化するための工夫」 1 リーダーズトーク No.58 株式会社共同 代表取締役社長 有賀公哉さん 「CSよりもまずES」の理念を掲げ高齢者の働きがいと生きがいを実現 31 日本史にみる長寿食 vol.317 春は元気の出るアサリ飯 永山久夫 32 江戸から東京へ 第88回 小島蛤 小島蕉園 作家 童門冬二 34 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第70回 テンポスバスターズ川口店 パート従業員 三浦登さん(73歳) 36 高齢者の現場 北から、南から 第93回 鹿児島県 社会福祉法人更生会 40 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 第4回 檜山敦 44 知っておきたい労働法Q&A 《第22回》 労使慣行の変更、賃金の支払いの確保に関する諸制度 家永勲 48 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復 [第9回] 渡辺恭良 50 TOPIC 1 海外からの視察概要【韓国】 52 TOPIC 2 「エイジマネジメント研究会」がシンポジウムを開催 54 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト募集案内 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.309 労をいとわず自由を忘れずありのままの自然をいかす 染織職人 小熊素子さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第33回] かなひろいテスト 篠原菊紀 【P6】 特集1 会社を牽引する ベテランプレイヤー  みなさんの会社では、高齢社員が持つ“武器”を最大限に活かせていますか?それまでつちかってきた知識や経験、技術、人脈は高齢者にとって大きな武器です。  その武器を最大限に活かし、現役社員にも負けない実績を上げるなど、ビジネスの最前線で活躍しているベテランプレイヤー≠ヘ少なくありません。また、ベテランプレイヤー自身が持つ資質はもちろんですが、会社が高齢者を活用するための方針を打ち出し、その資質を活かすためのマネジメントを行っていることも見逃せません。  そこで今回は、会社を牽引するほどの活躍を見せるベテランプレイヤーに焦点を当て、活躍をうながすためのマネジメントのヒントや、実際の活躍事例をご紹介します。 【P7-10】 総論 高齢社員を戦力化するためのマネジメントとは 武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授 宍戸(ししど)拓人(たくと) アンチ・エイジングとアンチ・アンチ・エイジング  アメリカの女性誌『allure(アルーア)』は、2017(平成29)年9月号において、「the endof anti-aging(アンチ・エイジングの終焉)」という特集を組みました。当時72歳であった女優のヘレン・ミレンが表紙を飾り、「『allure』は今後、アンチ・エイジングという言葉を一切使用しない」と宣言したのです。アンチ・エイジングという言葉には、「加齢は抗(あらが)うべきものである」、「若くなければ美しくない」というメッセージが埋め込まれています。『allure』は、アンチ・エイジングという言葉を葬(ほうむ)り去ることを通して、「ありのままを受け入れる」、「女性は年齢を重ねても美しい」という考えを世の中に広めようとしたのです。その結果、白髪染めをやめる「グレイヘア」などの流行が生じました。  「加齢による変化は抗うものなのか、それとも受け入れるものなのか」。この問いは、シニア・マネジメントの問題を考えるうえでも重要な問いの一つとなります。「シニア社員も、現役社員としてほかの社員と同じように働いてもらいたい」という考えは、加齢に抗うアンチ・エイジングの立場に近い考えでしょう。それに対して、「シニア社員は、年齢と経験を重ねた社員として、ほかの社員とは異なる働き方をしてもらいたい」と考えるならば、加齢を積極的に受け入れるアンチ・アンチ・エイジングの立場をとっていると考えられます。  これらのいずれの立場をとるべきかという問題は、会社の文化や職場の風土、シニア社員自身の価値観など、多様な要因によって影響を受け、一概にどちらがよいとはいえません。しかし、どちらの立場をとるにしても、必ず理解していなくてはならないポイントがあります。それは「加齢によって、人にはどのような変化が生じるのか」という点です。加齢による変化を理解しているからこそ、それに抗うことができ、また意識して受け入れることもできるのです。 人生を前から見るか、後ろから見るか  加齢による変化を説明する非常に有名かつ強力な理論の一つに、スタンフォード大学のローラ・カーステンセン※1によって提唱された、「社会情動的選択性理論(Socioemotional Selectivity Theory以下、「SS理論」)と呼ばれる理論があります。この理論を支える根本的な考えは、「若いうちは、人生を前から見ることで残りの人生が無限にあるという感覚を持つけれども、年をとると、人生を後ろから見ることで人生にかぎりがあるという感覚を持つようになる」という考えです。  人生が無限にあると感じれば、将来のためになることに重きを置くため、新しい知識の獲得などを重視するようになります。それに対して、人生がかぎられていると感じれば、いまに重きを置くため、心の落ち着きや、行っていることの意味や意義を重視するようになります。  シニア・マネジメントに関する多くの研究においても、SS理論の予測と一貫する結果が確認されてきました。例えば、人事部で働く方のなかには、シニア社員が研修に対して積極的に参加してくれないことに頭を悩ませている人がいるかもしれません。マリレーナ・ベルトリーノたちは、たとえ自主性と積極性に溢(あふ)れたシニア社員であっても、研修に対しては積極的に取り組まないことをデータで確認しました※2。若手社員とシニア社員の間で、自主性や積極性という言葉の持つ意味が大きく異なることが、その原因です。  SS理論に基づくならば、若手社員にとっての自主性は、積極的に自分のキャリアや成長を目ざすことを意味します。それに対して、シニア社員にとっての自主性は、目の前の意義ある仕事に対して積極的に取り組むことを意味します。したがって、シニア社員は、成長やキャリアアップに焦点を置くような研修に対して、「いまさらそんなことに何の意味があるのか」と感じてしまうのです。  では、SS理論は、日本企業で働くシニア社員のマネジメントに関して、どのようなヒントを示してくれるのでしょうか。この問題を検討するために、筆者が行った共同研究調査の結果の一部を示していきたいと思います。 日本の会社で働くシニア社員に対する定量調査 筆者は、シニア社員に対するマネジメントの問題を実証的に検討するために、株式会社日本能率協会マネジメントセンター(東京都)と共同調査を行いました。「シニア社員は若手社員と何が異なるのか」という問題を分析するために、50歳以上の社員と30代の社員を対象にウェブ調査を行い、それぞれ238名、232名から回答を集めました。  図表1、2は、職務上の役割の遂行や、同僚を助けるという積極的な行動に対して、「外発的動機」もしくは、「内発的動機」が与える影響を示したグラフです。  図表1から、金銭的報酬のために働くという外発的動機は、若手社員に影響を与えるけれども、シニア社員には大きな影響を与えないことがわかります※3。  図表2では、仕事の意義や面白さといった内発的動機の持つ影響が示されています。グラフから分かるように、内発的動機はシニア社員の行動をより大きく改善させるのです。シニア社員にとっては、現在行っている仕事に意義や面白さを感じられるような職場であれば、同僚を助けたいと思える職場になります。それに対して、人生がまだ多く残っていると感じる若手社員にとっては、将来の不安を解消させてくれる金銭的な報酬を得られることが、働くうえで重要なのです。  これらの結果は、シニア・マネジメント上の重要な示唆を与えてくれます。加齢によって、新しい情報に対して柔軟に対処する能力が低下することが、さまざまな研究を通して明らかになっています。その事実に基づき、シニア社員に単純な仕事を任せてしまう会社がありますが、そのようなやり方はシニア社員の行動を大きく損なわせてしまうでしょう。お金になびかないシニア社員にこそ、意義や面白さを感じられる仕事を任せる必要があるのです。  図表3、4は、「上司がどのような行動をとれば、部下であるシニア社員や若手社員が後輩社員の成長をサポートするようになってくれるのか」という問題を分析した結果です。  図表3から、上司が部下の感情に配慮するような行動をとらないと、若手社員は後輩をサポートしなくなってしまうことがわかります。しかし上司の配慮的な行動は、シニア社員にとって特に大きな意味を持ちません。図表4からわかるように、シニア社員にとって大きな影響を与える上司の行動は、倫理的・道徳的な行動なのです。  一般的に、人は加齢とともに、次の世代に何かを残したいという気持ちが強まるといわれています。しかし残念ながら、すべての会社や職場が、そのような気持ちを満たしたいと思える場になるとはかぎりません。上司が金や名誉のために「人としてのあり様」を無視し、道徳的ではない振舞いをする職場では、次の世代に何かを残すことに意義ややりがいを見出すことはできないでしょう。上司自身が世の中のため、未来のために規律を持って働いている職場では、シニア社員も上司と一緒になってその取組みに貢献したいと考えるはずです。  その一方で、若手社員は、シニア社員とは異なり、気持ちに配慮し面倒をみてくれる上司のもとで、自分自身も後輩社員の面倒をみるようになると考えられます。 そして、シニア・マネジメントへ  私たちが行った定量調査全体では、シニア社員は若手社員と何が異なるかを分析したうえで、シニア社員に「任せるべき仕事の内容」や「上司のとるべき行動」といった点以外にも、シニア・マネジメントに関するさまざまなヒントが明らかになりました。それらはすべて、加齢による変化を受け入れ、それに合わせた形でマネジメントを行うアンチ・アンチ・エイジング的なマネジメントです。シニア社員が「独立した社員、そして独立した人として、お金を稼ぐことや上司にかまってもらうことよりも、次の世代に何かを残すことに大きな意義を感じるようになる」という変化は、決して「後ろ向き」で「醜い」変化ではなく、「前向き」で「美しい」変化です。  このようなシニア社員の「前向き」で「美しい」変化については、ほかの研究でもしばしば実証されてきました。例えば、若手社員は、会社に貢献できていないのに高い給料がもらえることに満足を感じますが、シニア社員は、給料に見合う貢献ができていないと職務満足度が悪化するという事実が、トビアス・コールマンたちの研究において確認されました※4。不当に多くのお金をもらっていることに対して、「儲かった」と思うのではなく、「くやしい」と思える人材こそ、会社にとってかけがえのない人材だといえるでしょう。  では、アンチ・エイジング的なシニア・マネジメントとは、いかなるマネジメントなのでしょうか。ここでも、SS理論がそのヒントを与えてくれます。例えば、カーステンセンたちが行った研究では、若い人であっても、エイズに侵され、その症状に悩まされている場合、歳を重ねた人と似たような考え方を持つことが確認されました※5。別の研究では、歳をとった人でも、長生きできる薬が開発されたことを医者から伝えられたら、若い人のように振る舞うことが明らかになりました※6。すなわち、SS理論において、実際の年齢自体は問題ではありません。あくまでも、残りの人生の時間に対する眼差(まなざ)しが問題なのです。したがって、アンチ・エイジング的なシニア・マネジメントとは、シニア社員に人生を前から見るようにうながし、残りの人生がこれからも続いていくと感じてもらうマネジメントだといえるでしょう。これは、いわゆる「人生100年時代」という考え方そのものであり、今後このような考えを持つシニア社員は増えていくと考えられます。  みなさんの会社で働くシニア社員は、年を重ねたひとりの人として、自分の人生にどのような眼差しを向けているでしょうか。彼らは、残りの人生の短さを受け入れたからこそ、一層輝きを増すような社員かもしれません。もしくは、人生を改めて前から見ることで、まだまだ多くのことをやり切れると奮い立つような社員かもしれません。シニア社員のマネジメントを行う際に、アンチ・エイジング的なアプローチをとるべきなのか、それともアンチ・アンチ・エイジング的なアプローチをとるべきなのか。そのような問題に関して、本稿がみなさんのヒントになれば幸いです。 宍戸拓人(ししど・たくと)  武蔵野大学経営学部経営学科准教授。一橋大学大学院商学研究科博士課程修了[博士(商学)]後、一橋大学商学部特任講師を経て現職。専門は組織行動論。研究にあたっては、アカデミックな背景だけではなく、現場の具体的な悩みから研究課題を抽出することを重視している。現在は、職場における対立・衝突のマネジメントや、シニア・マネジメント、研修効果の改善、組織文化の普及などの課題について、定量研究を行っている。 ※1 ローラ・カーステンセン……心理学者、スタンフォード大学長寿研究センター所長 ※2 B ertolino, M., Truxillo, D. M., & Fraccaroli, F(. 2011). Age as moderator of the relationship of proactive personality with training motivation, perceived career development from training, and training behavioral intentions. Journal of Organizational Behavior, 32(2), 248-263. ※3 グラフ内のシニア社員を示す線が水平に近いということは、横軸(図表1では外発的動機)が増加しても縦軸(業務遂行・周囲への支援)は増加しない、すなわち、横軸の影響が小さいことを意味する。それに対して、若手社員を示す線が右上がりであることは、横軸が増加すると縦軸が増加する、すなわち横軸はポジティブな影響を縦軸に与えることを意味する ※4 Kollmann, T., Stockmann, C., Kensbock, J. M., & Peschl, A(. 2019). What satisfies younger versus older employees, and why? An aging perspective on equity theory to explain interactive effects of employee age, monetary rewards, and task contributions on job satisfaction. Human Resource Management . ※5 C arstensen, L. L., & Fredrickson, B. L(. 1998). Influence of HIV status and age on cognitive representations of others. Health Psychology, 17(6), 494-503. ※6 F ung, H. H., Carstensen, L. L., & Lutz, A. M(. 1999). Influence of time on social preferences: Implications for life-span development. Psychology and Aging, 14(4), 595-604. 図表1 モチベーションの影響(外発的動機) 業務遂行・周囲への支援 外発的動機(金銭的報酬) シニア 若手 筆者作成 図表2 モチベーションの影響(内発的動機) 業務遂行・周囲への支援 内発的動機(仕事の意義・面白さ) シニア 若手 筆者作成 図表3 上司の影響(感情的配慮的行動) 後輩社員の育成・サポート シニア 若手 上司の行動:感情配慮的行動(心理的な気遣い、相談に乗る など) 筆者作成 図表4 上司の影響(倫理的行動) 後輩社員の育成・サポート シニア 若手 上司の行動:倫理的行動(誠実さ、利益よりも倫理・道徳観を重視 など) 筆者作成 【P11-13】 企業事例@ 株式会社ペンシル (福岡県福岡市) SFОディレクター 金森(かなもり)洋介さん 新規事業を自ら提案し大活躍!何歳になってもチャレンジする気持ちが大事 ダイバーシティ経営推進としての「アクティブシニア採用」第1号  福岡県福岡市を拠点に研究開発型WEBコンサルティング事業を展開する、株式会社ペンシル。スタッフ数140人の小所帯ながら、WEBサイトの売上拡大を図るコンサルティングなどが高い評価を得て、多数の大手企業をクライアントに持つ。  3年前に入社した金森洋介さん(65歳)は、大手電機メーカーを定年まで勤め上げた後、関連会社での継続勤務を経て同社に転職した。前職では、営業、SE、開発、企画などさまざまな業務を経験。東京で長く勤めた後、地元・福岡に戻り、ある大きなプロジェクトに関わっていたが、そのプロジェクトが東京に移ることになった。家族の介護のために福岡を離れられない金森さんは転職を決意し、2016(平成28)年9月、62歳のときにハローワークで紹介されたペンシルに入社した。同社の「アクティブシニア採用※1」第1号である。  同社の定年は60歳で、その後は、年齢の上限なく継続雇用する。金森さんが入社したときは65歳が上限だったが、アクティブシニア採用を進める過程で上限を撤廃した。現在、60〜64歳が2人、65歳以上が3人の高齢社員が活躍中。最高齢は72歳である。  シニアの採用を始めたきっかけは、「ダイバーシティ経営」の推進だった。佐伯(さえき)史織(しおり)パフォーマンスマネイジメント部D&I推進室室長は、「当社は1995年の創業時から、年齢や性別にかかわらず、『この人と会社を築きたい』と思った人材を採用してきました。その結果、従業員の半数を女性が占めています。そして、創業20周年を機に、高齢者、障害者、外国籍の方など、これまで以上に多様な人材に活躍していただきたいと考えました」と説明する。同社のダイバーシティの取組みは社外からも高く評価され、経済産業省より「平成29年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定されている。 経営理念に共感して入社シニアの視点を活かす新事業を提案  金森さんが同社に関心を持ったのは、求人票に「高齢者歓迎」と書かれていたことや、前職との業種的なつながり以外に、大きな理由が二つある。一つは福岡近郊で働けること。もう一つは経営理念への共感だ。「知人にペンシルを知っている人がいて、面白い会社だと聞きました。また、以前働いていた会社と経営理念がよく似ており、そこに共感しました」という。  実際に入社した感想も、「アカデミックであり、オープンな社風。個人個人の能力を発揮できる環境があります。時代の先端をになうITの分野でコンサルティングを行う企業ですので、新しいものを創造していく面白さがあります」と、やりがいを感じている。  金森さんの労働時間は、1日8時間・週4日勤務。1日の労働時間はフルタイムだが、週1日は家族の介護に充てられるようにした。同社は主婦やパートタイマーも多く、以前から、介護や通院など個々の事情に応じた柔軟な勤務を認めてきた。また、会社との話合いにより、随時、働き方を見直すことができる。働く場所にも自由度があり、テレビ会議システムを利用して壱岐島(いきのしま)(長崎県)で在宅で働いている人もいる。  金森さんの業務の一つは、会社の主力事業であるITコンサルティングの補佐業務。資料作成などを受け持ち、社内の若いコンサルタントたちを支えている。  そしてもう一つが、金森さんの発案で始まった「SFО(シニア・フレンドリー・オプティマイゼーション)」という新事業。シニアの視点からWEBサイトの「使いにくい」や「分かりにくい」を診断し、クライアントに改善策を提案するサービスだ。「最初の半年ほどは学びながら仕事をしていましたが、そのなかで、当社のクライアントに、健康食品やサプリメントなどシニアのユーザーが多くを占めているWEB通販の会社が多いことに気づきました。当時の従業員の平均年齢は35〜36歳(現在は38歳)でしたので、クライアントの顧客と同じシニアの視点が役に立つと考えました」と金森さんはいう。  同社には「とにかくやってみよう。やってダメだったら見直せばいい」と考える風土があり、金森さんの提案も積極的に受け入れられた。2018年2月に事業化し、翌年3月には、金森さんを中心に「SFОラボ」を立ち上げた。5人のシニアが所属し、全国に200人のシニアモニターを抱える。金森さんは、ラボのメンバーをまとめつつ、自社のコンサルタントがクライアントにSFО的な視点で提案ができるようにするため、社内セミナーなども行っている。  金森さんは、従業員に幅広い学びの場を提供する「おとな塾」という勉強会で、マネジメント研修などの講師も担当している。前職で大勢の部下をまとめてきた金森さんの話は、若いマネージャーたちにも大いに響き、「金森さんの話を聴けてよかった」という声が多い。 チャレンジする気持ちで経営にも社会にも貢献していく  いまでこそシニアのスタッフも増えてきたが、金森さんが入社した当初は、周りは若いメンバーばかり。そのなかで金森さんが心がけたのは、「上から目線にならないこと」。「この業界では私は素人です。プロとして仕事をしている人たちから知識を早く吸収し、役に立ちたいという思いがありました。話しにくい雰囲気ができてしまうと、お互いにとってマイナスです。また、せっかくなので、私の知識や経験を活かしていきたいとも考えました」という。そんな金森さんのフランクな人柄に触れ、若手スタッフも気軽に悩み相談などをするようになった。  同社には、社内のコミュニケーションを促進する施策が多い。例えば、月1回、各部署が持ち回りで料理をつくってふるまう「ペンシルキッチン」という企画には、金森さんも気軽に参加し、若いスタッフとコミュニケーションを取っている。また、さまざまなスタッフにインタビューをしてイントラネット※2に載せ、ともに働く仲間のことを知る機会としている。  制度面で有益だったのは、自己研鑽(けんさん)に対して会社が費用を補助する「匠(たくみ)制度」。挑戦したい資格などを自分で見つけてきて補助を申請できる。社長が率先して自己研鑽に励むので、従業員にも自ら学ぶ風土が浸透している。金森さんは、一昨年、この制度を利用して一般社団法人高齢社会共創センターの「高齢社会エキスパート※3」の認定を得た。  「クライアントに提案したことが実現すると、やりがいを感じます」という金森さん。今後の目標は、SFОサービスを事業として拡大していくこと。「経営に貢献するにはまだまだです。少子高齢化によって将来への不安が広がるなか、われわれ高齢者が自ら考え、世の中を少しでもよくしていくことに貢献できればと考えています」と抱負を語る。  「いままでの経験を基に、『自分はこうだから』と決めつけて周りに押しつけたり、『年を取っているから仕方ない』と諦(あきら)めてしまうのは、仕事のうえでもマイナスですし、人生においてもマイナスです。世の中には、やらずにノーという人が多いですが、やってみて分かることもあります。例えばセミナーの講師をすることも、私自身にとってプラスになりました。チャレンジする気持ちを持っていることは、何歳になっても大事です」(金森さん) シニアの採用は会社にもプラス身構えずにやってみる姿勢が大事  金森さんが入社したことは、同社にとっても大きなプラスになっている。佐伯室長は「SFОは金森さんなしでは進みませんし、経験を基にした考え方、プレゼンテーション、資料作成など、学ぶところが多いです。クライアントからもお褒めの言葉をいただきます。若いスタッフの質問にも快く対応してくださって、本当にありがたいです」と高く評価している。  ちなみに、金森さん以外のシニアも、社会科が専門の元教師や会社経営者など、多彩な人材が揃っている。消費者目線で提案できることが大事なので、パソコンやITの知識・スキルよりも、そのような判断ができる経験をしてきていることを重視して採用しているそうだ。  佐伯室長は、「初めてシニアを採用するときには、不安があると思います。私も、うまく馴染めるかな、どんな配慮が必要かなと身構えてしまった部分がありましたが、いざ入社したら、ごく自然に身近な存在になりました。特別な配慮はいらない、むしろ、ほかの人と変わらないように接することが大事だというのが、アクティブシニア採用を行ってみた感想です」と振り返る。  同社の安田智美(ともみ)執行役員CCОパフォーマンスマネイジメント部ゼネラルマネージャーも、同じ考えで「多様な人材を活用し組織の成長に結びつけることはむずかしいと思われる企業が多いかもしれませんが、個性を活かし活躍してもらえることが実はたくさんあります。多様な人材を採用することには、メリットしかありません」と語る。  企業にとっては、高齢者が働きやすい制度や環境を整備することも大切だが、「まずはやってみる」という姿勢も大事なポイントといえるだろう。 ※1 アクティブシニア採用……自分なりの価値観を持ち、他社で定年退職後にも仕事や趣味に意欲的で、社会的に対してもアクティブに行動するシニアを積極的に採用する制度 ※2 イントラネット……インターネット機器などを利用した組織内ネットワークのこと ※3 高齢社会エキスパート……(一社)高齢社会共創センターが認定する民間資格。高齢社会を熟知した証や、エキスパート間の交流の一助となるもの 写真のキャプション 金森洋介さん(左)と、パフォーマンスマネイジメント部D & I 推進室の佐伯史織室長 【P14-16】 企業事例A 株式会社宣通(せんつう) (愛知県名古屋市) 営業 影山義昭さん 70代にして成績トップの営業マン残業ゼロのメリハリのある働き方で会社を牽引 地域との「共生」を目ざす広告代理店営業の主力を高齢社員がになう  株式会社宣通は、1990(平成2)年2月に創業し、2020(令和2)年に創業30周年を迎える地域密着型の広告代理店だ。地域との「共生」をコンセプトに、地域に根ざした企業向けの広告媒体を独自に開発して成長。この間、中部地区から全国へとマーケットを拡げ、規模を拡大している。同社では、地方紙や全国紙の地方版に掲載する連合(名刺)広告のほか、公共施設などへ広告付きAEDやデジタルサイネージ※の設置、各自治体内の広告を取りあつかっている。また、医療業界に特化した広告を取りあつかう部署もある。  同社はこれらの広告の営業を、電話で行っている。企画に該当する地域の企業・団体や病院などに営業の電話をかけて商品をアピールし、契約を取りつけるが、その主力となるのが、50〜70代の高齢社員が主力をになう内勤の営業部隊だ。  「25年ほど前に電話営業のスタイルを取り入れることを決めました。『テレフォンアポイントなら女性がよいのでは』という感覚で、60歳くらいの主婦を数人採用したところ、すぐに成果が出たので、高齢者の採用を積極的に行ってきた結果、気づけば契約社員はほぼ全員がシニアになっていました」と山下正義(まさよし)営業1部部長は経緯を説明する。  61人いる社員のうち、41人が契約社員で、そのうち60〜64歳は22人、65〜69歳が14人、70歳以上が5人で男女比は同じだ。以前は求人の年齢上限を68歳にしていたが、制限の必要性を感じなかったことから、「社員の平均年齢66歳」と募集要項の記載を変えた。  なお、正社員は20〜30代が中心と非常に若く、企画のほか、契約社員が電話営業で販売した契約の締結を担当するなど、役割の棲(す)み分けがなされている。  同社の門を叩く高齢者は、女性の場合は子育てを終えた主婦が多く、男性は営業経験者もいるが、サービス業や市役所を定年退職した人など、前職の業種はさまざまだという。  電話営業を担当する高齢社員たちは、活力に溢(あふ)れている。契約社員の勤務時間は午前9時から午後5時まで。短時間・短日勤務も可能だが、ほとんどがフルタイムでの就業を希望するという。津田郁夫代表取締役社長は「弊社で働く高齢社員は、とにかく『働きたい』という意欲の塊。営業先リストを片手に、7時間めいっぱい電話をかけて営業しています。なかには電車を乗り換えながら1時間以上かけて通勤する人もおり、私はもちろん、管理職にとっても、働く姿勢を学ばされる存在です」と高齢営業マンたちの意欲と体力に舌を巻く。  高齢社員たちが「働く目的」は、生活のためというケースはもちろんあるが、必ずしもそれだけではないという。例えば、「営業職ならではの成果主義にやりがいを感じる」、「聞く、読む、話すことが仕事なため、認知症予防にうってつけ」、「毎日通勤することは健康によい」なども「働く目的」にあがる。しかし、山下部長が特に感じているのは「彼らにとっては、職場こそが自分の居場所であり、会社から期待されていることが原動力になっているように感じます。実際、会社にとって本当に必要な存在ですから」と話す。  広告営業という業種で、会社が求めていることは売上げであり、仕事での成果だ。同社は3カ月ごとの業績に基づき時給が変わる「3カ月変動時給制」を導入している。成果を出してくれる人材を年齢に関係なく優遇し、成果が出なければ、給料が減ることもある。現役時代はトップ営業マンだったと意気揚々と入社した人が、電話営業という異なるスタイルの壁に阻はばまれ、結果を出せず辞めていくケースもあるという。しかし、津田社長は「体力的な負荷が少なく、電話で営業を進めるこの仕事は、高齢者に向いていると思います」と話す。 成果に基づく70代のトップ営業マンの評価がやりがいに  12年前に入社して以来、常に上位の営業成績をキープする影山義昭さん(75歳)は、平均で1日2本程度の広告契約を獲得している。「毎月100万円の売上げを目標にしてやっています。目標に届かない月もありますが」と謙遜するが、取材した11月は年末の需要もあり、すでに目標を大きく上回る実績を上げていた。  穏やかな語り口ながら、聞き取りやすいはっきりとした口調で話す影山さんに営業のコツを聞くと、「決定権を持っている“責任者”と話すことが第一です。はじめて電話をかけたときは責任者はまずいませんから、不在だった場合は提案の概要を記した紙をファクスで送っておき、当日中か、遅くとも次の日の朝までにはかけ直して、責任者と話すようにしています。この仕事はナマモノなので、スピードが勝負なのです」と返ってきた。先方からもらう答えはシンプルで、イエスかノー。とにかく責任者と速やかに接触して答えをもらえるように考えて動いている。  電話営業ならではの苦労として、「電話応対した人が、責任者まで話を通してくれないことがあります。ここできちんと取り次いでもらえるような工夫が重要です。具体的には契約の決め手なのでここでは明かせません(笑)」と厳しい競争に身を置く営業マンらしい答えが返ってきた。  この仕事の魅力について、「企業のトップと話せることは貴重な体験だと思います。契約の話だけでなく、社会情勢や政治の話などをすることもあります」という。  津田社長は「影山さんは長い人生経験があり、話の引き出しが多い方です。若手では、企業の社長と会話が弾むような場面はなかなかありません」と一目置く。  影山さんのモチベーションの源泉は、自身の成果とそれに基づく会社からの評価だという。「モチベーションは与えてもらうものではなく、自分で見つけていかなくてはならないと思っていますので、成果を出せば出すほど増える報酬は、モチベーションの源になります。その分、毎日プレッシャーを感じていますが」と、常に上位の成績をキープしている営業マンの気概と苦労を口にした。しかし、血色のよい顔と穏やかな表情に潜むキリッとした佇(たたず)まいから、プレッシャーが日々の張り合いとなっていることがうかがえた。  同じ部署の同僚は社内ではお互いに競争意識を持ったライバルだが、会社を出れば気が合う同世代。金曜の夜は連れ立って飲みに行き、会社を背負って立つ現役世代さながらに、仕事や家庭の話に花を咲かせながら懇親を深めているという。一方で、毎日きっちり定時の17時には退社し、帰宅後はジムに行ったり、散歩をしたり、晩酌を楽しむなどオフタイムを過ごしており、メリハリのある生活を送っている。  「残業は体力的にも高齢者には向きませんので、契約社員には定時に退社するようにうながしています。時間にゆとりを持ってもらうことは、シニアに仕事をしてもらうためには必要でしょう」と津田社長は説明する。 成果主義の給与体系のなかで高齢社員に配慮  宣通では3カ月変動時給制を取っているが、月単位にせず3カ月というスパンを取ったのには訳がある。高齢社員は手術のために入院したり、病気を患って数週間休んだりすることがある。1カ月単位の業績で時給を決定すると、長期病欠した月は時給が格段に落ちてしまうため生活に支障が出る可能性が高い。3カ月間という一定の期間をとって、査定期間を設定することで時給の変動を抑えるよう配慮している。  また、今年度も高齢社員の健康管理の一環として、インフルエンザの予防接種を半額会社負担で実施するなど、高齢社員の活躍推進に向け、さまざまな視点からサポートを行っている。  人事も兼務する山下部長は「10年前は契約社員の求人に対して、高齢者の応募が100人ほどありましたが、最近は激減して応募者が数人のときもあり、採用には苦労しています。高齢社員は若手社員と比べると格段に定着率がよいのですが、やはり体調面を理由に退職する人が多く、介護など家庭の都合を理由に辞める人もいます。現在70歳の社員が10年後にいるかと考えたら、それはむずかしいでしょう。当社にとって高齢社員は生命線ですから、常に人員を確保していくほかありません」と、高齢社員確保に向けた対策を探っていた。  今後も年齢や雇用形態にかかわらず、それぞれが自分の役割を成果主義のなかでまっとうすることで、会社の成長につなげていくことだろう。 ※ デジタルサイネージ……液晶ディスプレイやLEDなどの映像表示装置を使い映像や文字を表示する情報・広告媒体 写真のキャプション 山下正義部長 津田郁夫代表取締役社長 トップ営業マンの影山義昭さん 【P17】 特集2 人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム―  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発、生涯現役を目ざす職場づくりに向けた先進事例の紹介を目的に、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。今年度は厚生労働省のほか関係団体の協力のもと、「人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ」をテーマに、昨年の10月から12月にかけて、全国6カ所の会場で開催しました。  今号では、北海道・富山・香川の3会場の開催レポートをお届けします(東京・大阪・福岡会場の様子は次号で掲載します)。高齢社員を戦力化するための土台となる人事管理に関する講演や、高齢者の活躍推進に取り組む先進企業の事例発表など、高齢者雇用の取組みのヒントが満載です。ぜひ参考にしてください。 ※シンポジウムでの配付資料については、当機構ホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/haifusiryou.html)に掲載予定です。 【P18-20】 講演 高齢社員の人事管理 〜60歳代以降を考える〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野(いまの)浩一郎 企業も労働者も「本気になれ」  日本では労働力人口の減少下において、働いている人の5人に1人が60歳以上の高齢社員となっています。100人規模の企業では20人、1000人規模の企業では200人が60歳以上という、高齢社員はこれほど大きな集団になってきたのです。この人たちがサボったら企業はもちませんので、企業経営にとって、このことの重要性はとても大きく、高齢社員の戦力化と活躍は不可欠という状況にあります。  組織で働いている人は、少し前までは60歳で定年を迎え、60歳以降は働くにしても引退モード、といった人たちが多くいました。しかしいまは、60歳以降であっても戦力としてしっかり働くことが求められます。個人(労働者)にとっても、状況が変わったわけです。  これらのことをまず頭に置いていただきたいと思います。つまり、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)で希望者全員を65歳まで雇用することが義務づけられているから仕方なく取り組むといった「やらされ感」で高齢者雇用に対応できる時代ではなくなったわけです。企業は本気になってこの問題に向き合わなければなりません。高齢者も労働者として本気になってこのことに向かっていく。このような気持ちや態度がないと、どのような人事管理の施策をつくってもうまく機能しないと思います。 賃金は能力や成果に対応して決めるもの  現状では、60歳定年が主流となっており、定年以降は再雇用で継続雇用する制度が一般的です。また、多くの場合、60歳前は正社員で、再雇用後は嘱託などの非正社員となり、正社員用の人事管理と、60歳以降の非正社員用の人事管理を共存させる「1国2制度型」の人事管理となっています。定年前と定年後を別扱いにする、というもので、それ自体に問題はないと思いますが、現在の多くのケースでは、別扱いの仕方≠ノ問題があるように見受けられます。  多くの企業では、高齢社員に再雇用後、同じ仕事を担当してもらっていますが、職責は落ちています。つまり、会社の期待する役割は変わっています。また、残業や転勤はしなくていいといった、制約的な働き方となっています。  一方で処遇の面では、定年到達時の賃金から一律に3〜4割下げて、65歳までそのまま、というような賃金決定が多くみられます。その背景には、それぞれの働きぶりを評価しないという会社が、まだかなりあるという現状があります。  「がんばろうが、がんばるまいが、賃金は変わらない」、「よくわからないまま3割、4割下がる」。これでは賃金とはいえません。賃金は、仕事や能力、成果に応じて決めるものです。能力や成果に対する期待が感じられない現状の再雇用制度を、私は「福祉的雇用」といっていますが、これでは高齢者の戦力化は無理でしょう。先ほど話したように、5人に1人が高齢社員の時代です。社員の5人に1人にモチベーションの問題があれば、その影響はほかの社員にも及んでしまいます。 高齢社員の二つの特殊性に注目  では、高齢社員に活躍してもらう人事管理をどう構築するのか。まず、考慮すべき高齢社員の二つの特殊性に注目します。  一つは、定年後65歳まで働くと考えても5年間ですから、「いまある能力をいま活用し、いま払う」という「短期雇用型人材」ととらえること。つまり、長期雇用型人材の定年前社員との違いをふまえた人事管理の構築が必要で、先ほど話をした「1国2制度型」でよいのです。  もう一つの注目点は、転勤や残業はせず、短日・短時間勤務を選択するケースも多くなる高齢社員は「制約社員型」である、ということです。子育てや介護と両立させながら働いている社員、病気の治療をしながら働いている社員も制約社員です。現状として、日本では制約社員の比率が増加していますから、その人たちが活躍できる人事管理を構築することが、多くの企業の課題になっています。要するに、高齢社員の人事管理を考えるということを、会社全体の重要課題の一部であるととらえて取り組むことが大事です。 再雇用は、雇用契約の「再締結」  次に、高齢社員の活用と処遇について話をします。基本となる視点は、定年後の「再雇用」は、定年を契機にした雇用契約の「再締結」ということです。そこでは、企業は「高齢社員から何を買うのか」、高齢社員は「会社に何を売るのか」を明確にして、それらに基づくニーズのすり合わせを通して活用の仕方を決めることが必要となります。基本的なことですが、これがたいへん重要です。  現状として、「仕事は会社が用意してくれるもの」、「好きな仕事を続けられるのが当然」といった意識を持っている高齢社員が少なからずいます。しかし、中途採用の面接でそんなことをいう求職者が現れたら、会社は採用しないでしょう。  つまり、労働サービスを供給する側の高齢社員のために仕事をつくる「供給サイド型」の施策ではなく、会社の業務上のニーズを満たす人材として再雇用をする「需要サイド型」で雇用契約を再締結するという構えが基本的な考え方として大事になります。  処遇については、短期雇用型の特性に対応する「仕事ベースの賃金」が合理的な選択です。また、残業も転勤も日曜出勤もするという無制約的な社員ではなく、高齢社員は制約社員ですから、両者が同じ仕事をしても賃金差をつけることには合理性があるということになります。  仕事ベースの賃金とは、例えば、Aランク、Bランク、Cランクの仕事があり、ランク別に賃金が決まっています。ただし、高齢社員は制約社員なので、正社員(=無制約社員)と同じランクの仕事に就いても、制約がある分だけ賃金は下げることになります。下げ方はさまざまですが、この考え方が高齢社員の賃金を合理的に決める基本となります。高齢社員を上手に活用している会社では、たいていこのような考え方を基に制度設計を行っています。 キャリアは下がることを意識する  変わらなければならないのは、企業の人事管理だけではありません。高齢社員自身にも変わってもらうことが大切です。  高齢社員に活躍してもらうための合理的な人事制度が構築できたとしても、定年後の賃金が下がり、下がったことに納得が得られなければ、高齢社員のモチベーションに大きな問題が生じることは想像の通りです。制度上は合理的に設計したとしても、人の気持ちは合理的ではないからです。  では、どうしたらよいのか。会社としては、人事制度を合理的に設計したことをていねいに説明していくことが基本となります。さらに、しっかりと納得してもらうために、高齢社員が自分のキャリアを見直して、気持ちの切り替えをすることが必要です。  そこで重要な点の一つは、会社から求められる雇用の意味を再認識すること。もう一つは、キャリアはどこかでピークを迎え、どこからか下がることを意識することです。新人のころからずっと上へ上へと登ってきたわけですが、職業生活が長くなると、高齢になってからも登り続けることは、体力的なことなどを考慮しても無理といわざるを得ません。  実は自営業の人たちは、このことを意識することによって、定年なしの働き方を実現しています。元気のよいときは商売を大きくし、体力が落ちてきたら縮小していく。そういう意味で高齢社員は、「組織内自営業主型」の働き方を求められているといえます。  問題は、例えば課長を降りて一般の担当者になった際、一人のプロとしての働く意識と態度が保てるかどうか。このとき、「働く意識・行動と能力の再構成」が求められることになります。  もちろん、そう簡単なことではないでしょう。いま、ようやくそういう流れが生まれ始めてきたところです。これから少しずつ、みんながそういう「下がるキャリア」を積み重ねていくことにより、やがて、それがあたり前になっていくのだろうと思います。  こうした取組みが進むなかで、若い上司の下で一担当者として高齢社員が勤務することが普通になってくるでしょう。長年がんばって働いてきて、課長や部長を経験した側にとってみれば戸惑いはあると思います。ですから、「働く意識・行動と能力の再構成」は、高齢社員にとっても会社にとっても、とても重要になります。 定年延長を検討するときの注意点  ここまで再雇用の話をしてきましたので、最後に、定年延長について話をしたいと思います。  いま、多くの人が現状の定年年齢は「60歳」と認識していると思いますが、それには注意が必要です。高齢法下で、原則、希望者全員65歳までの雇用が義務づけられ、いまの日本は実質「65歳定年時代」となっているのです。  そうしたなかで、定年制の機能は、「雇用終了機能」から、60歳を契機にしてキャリアを見直す、仕事を再配置するという「キャリア転換促進機能」へと変化しています。  つまり、定年を延長して、例えば65歳定年にするということは、「キャリアを見直してもらう機会を制度的には失う」ということに注意する必要があります。「もうすぐ定年だから、キャリアを見直すか」といったきっかけがなくなるわけです。ですから、定年延長を行う場合は、同時に、「キャリア転換促進機能」を別途考える必要がある、ということにも留意することが重要です。  賃金の決め方については、定年延長の場合も再雇用の場合も、理屈からすると変わりはありません。実際に、定年延長している企業でも再雇用の場合と同様に、賃金を下げる会社もあります。また、再雇用でも下げない会社もあるわけです。本質的な問題は、「定年延長」か「再雇用」かではなく、「60歳以降の賃金」をどう決定するのか、ということなのです。  みなさんの会社ではすでに、実質65歳定年制度を導入しているのと変わりないのですから、それをふまえて、高齢社員を戦力化するための人事管理の構築に取り組んでいただきたいと思います。 【P21】 企業事例発表1 人事制度、職務開発、研修を3本柱に中高年社員の活躍を推進 北海道会場 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ主査 ライフデザインチーム 立花一元(かずもと)  SOMPOホールディングスグループは、損害保険ジャパン日本興亜を中核に、国内生保、国内損保、海外保険、介護・ヘルスケアの4事業を展開しています。損保ジャパン日本興亜の社員数は約2万6000人。女性の比率が6割を超えており、女性活躍推進が当社の重要な経営課題の一つになっています。  私は入社から32年間、営業や営業推進部門などの現場を経験し、55歳から人事部に所属、60歳定年まではマネージャーとして、その後2018(平成30)年3月末までの5年間は、再雇用嘱託として勤務しました。さらに2018年4月、70歳までの再雇用延長制度を導入し、私はその一期生として、本年度で再雇用延長制度2年目を迎えました。現在67歳です。  60歳までは管理職に就き、定年後は同じグループで担当者となり、現在も同じ仕事をしています。私が所属するライフデザインチームは、中高年社員の活躍推進を担当する部署です。  中高年社員の活躍推進策は現在、人事制度、職務開発、研修の3本柱で構成されています。  「人事制度」では、社外での活躍の場を提供する社外転進制度と、定年退職後満65歳年度末までの再雇用制度を設けています。再雇用制度の賃金形態には、月給制と時給制があります。さらに、再雇用満了者の一部を対象にした再雇用延長制度もつくり、加えて2019年4月より、再雇用者を対象に短日・短時間勤務や副業の解禁もトライアルで始めました。また、従来から全社員を対象に推進している、テレワークやシフト勤務に、この短日・短時間勤務制度を組み合わせることで、さらに柔軟な働き方ができることを私自身がいま実感しています。  2本目の柱の「職務開発」は、自己選択型の社内公募制度として「ジョブ・チャレンジ制度」があります。現在約500のポストの公募があり、そのうち再雇用者用のポストも少しずつ増えてきています。まだ道半ばではありますが、キャリア開発を自分で考え、自分で決めて進めていくための制度です。また、中高年者の経験・スキル・人脈を活用するためのポスト開拓にも取り組んでいます。  3本目の柱の「研修」は、ワーク・ライフデザイン研修、キャリア開発G50研修、両立支援セミナー、能力開発支援などがあります(左表)。  また、研修とリンクして、ワーク・ライフ応援デスクという、社員のキャリア自律を応援することを目的とした相談デスクも用意しました。この流れをセルフ・キャリアドック※につなげていきたいと考えています。 ※セルフ・キャリアドック……企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などと組み合わせて、体系的・定期的に実施することを通して、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組みのこと 研修・自己研鑽 @ワーク・ライフデザイン研修 35〜60歳対象、希望者応募型。2泊3日で、これからのワーク&ライフを考える。 Aキャリア開発G50研修 50代前半対象、全員参加。1日研修で、今後のセカンドキャリアを考える。 B両立支援セミナー 「仕事と介護」・「仕事と健康」の両立を目ざして、自身のキャリア開発を考える。 C能力開発支援 自己研鑽や研修を通して一人ひとりの強みの発揮を目ざす。 【P22】 企業事例発表2 定年延長の取組みについて高齢社員の意欲・活力を引き出すための待遇とは 北海道会場 北海道日産自動車株式会社 総務部人事採用・教育グループ 課長代理 石田嗣武(つぐむ)  当社は、日産車の販売・整備を続けて、2019(平成31)年2月で創立72周年を迎えました。社員数368人のうち、正社員が316人と、正社員が中心の長期雇用を前提としている会社です。企業理念は、近江(おうみ)商人の心得にならった「社員良し、お客さま良し、会社良し」です。「社員良し」を最初にもってきているところに社長の思いが込められており、また、同様に、お客さまに貢献し、きちんと利益を上げて社会貢献できる会社でありたいといった思いが込められています。本日は、2018年度に実施した定年年齢の引上げについてお話しします。  旧制度は、60歳定年退職後再雇用制度でした。しかし、高年齢者雇用安定法の経過措置を利用した制度であることや、基本給は60歳到達時の60%を支給するといった処遇であったこと、また、社員の年齢構成などの課題もあり、社長より今後を見据えた制度改定を2017年度に投げかけられたことが、制度改定の出発点でした。  まず、当時の制度の問題点を洗い出すと、年金支給年齢が上がると無年金期間が長期間発生するため、受給開始までの収入が著しく低下することや、管理職の大量定年が控えており、退職されると極めて深刻な人材不足になることなどがあがりました。対応を考えるうちに定年年齢の延長案が浮上したのですが、ノウハウがなかったため、高年齢者雇用アドバイザー※に相談し、以降、他社事例にも学びながら、制度改定を進めてきました。  検討段階では、再雇用制度改定案と65歳への定年延長案の2案を並行して検討しましたが、最終的にトップの決断により定年延長をすることに決まりました。定年延長により、正社員として65歳まで働いてもらえること、原則として年齢に関係なく処遇、労務などを取り扱うこととするので、本人のモチベーションを維持しやすい、ということが最大の決め手であったと思います。  さらに、退職金は60歳で支給することとして必要な手続きなどを行い、賃金については60歳以降の正社員基本給の取扱いを新設するといった考え方で、60歳到達時に基本給の8割を新基本給とする規程を整備しました。また、旧定年年齢を前提とした個々の人生設計に配慮して、定年年齢の選択制を導入しました。  新制度の導入から1年半が経過した現在、設定した定年年齢の上限以下の年齢を選択した者はいまのところいません。ただ、私傷病などが原因で休職や退職した者が数名おり、健康管理に一層のサポートが必要であると感じています。 ※ 高年齢者雇用アドバイザー……高齢者雇用に関する専門知識や経験などを持つ専門家。当機構からの委嘱により、事業主に対し高齢者雇用にかかわる具体的な制度改善提案や相談・援助を行っている 定年延長制度の概要 新制度の主な内容 ●定年年齢65歳 →希望者は6カ月前までに申し出ることにより、定年年齢を60〜64歳の1歳刻みで選択可能 ●退職金は従来通り60歳で精算・支給 ●60歳以降の賃金は、60歳到達時の80%を新賃金とする 【P23】 企業事例発表3 現行の再雇用制度の処遇改善とキャリア支援策の導入を検討 富山会場 株式会社インテック 人事本部 働き方改革推進室長 兼 健康管理室長 増田 忍  当社は、1964(昭和39)年、情報処理産業の黎明(れいめい)期に、「いつでもどこでもだれもが自由に」コンピューターの恩恵を受けることができる、コンピューター・ユーティリティ社会の実現を目ざしてスタートしました。17人で歩み始めた社員数は、いまでは3700人を超え、その約8割がエンジニアの技術者集団となっています。事業領域も当初は情報処理サービスが主体でしたが、ICTコンサルティング、ソフトウエア開発、システムインテグレーション、システム運用・保守など幅広くなっています。事業拠点は富山、東京、大阪、名古屋ほか全国20拠点。海外にも武漢(ぶかん)(中国)、ホーチミン(ベトナム)、シリコンバレーの3拠点があります。  少子高齢化による国内の生産年齢人口の減少は著しく、今後10年で働き手が大きく減るといわれています。また、IoT・AIなどによる技術の劇的な変化のなか、生産のにない手を確保するためには、シニアの活躍を推進する環境整備が不可欠です。そこで当社では、現行の60歳定年後の再雇用制度の処遇改善とキャリア支援策について整備し、早期に導入することを喫緊(きっきん)の課題ととらえ取り組んでいます。役職定年(55歳)は設けていますが、今年度の人事制度改革により、役職定年者の給与を一律で減給するそれまでの制度を廃止しました。しかし、60歳以降の現行の再雇用制度は、単年度契約、かつ賃金はそれまでの資格給から一定比率を減額した固定給としており、継続雇用の法律の義務化に対応することを目的とした制度になっていることは否めません。再雇用者にとって、モチベーションが上がりにくい状況になっています。  そこで、シニア全体に対して画一的な施策で活躍をうながすのではなく、メリハリをつけて対応することが必須と考え、シニア人材を大きくみるとA群(当社を牽引していってほしい人材)、B群(プレイヤーとして当社を支え続けてほしい人材)、C群(当社への帰属意識が希薄になってしまった人材)とがあり、それぞれに適した施策を検討していくことが、会社と社員の双方にとって有益であると考え、検討を進めています。  また、キャリア支援がたいへん重要であると考え、スキル転換・学び直しのための研修やライフプランセミナー、キャリア相談の機会をつくり、シニア社員が自らの能力や専門性に応じて働くことができ、業績貢献の実感を持てるよう具体化していく、こうした方針に基づく施策の導入を検討しています。 社員のマインドを下支えするキャリアデザイン研修 さまざまな研修制度 1.キャリア自律動機づけのためのキャリア研修(49〜50歳) 2.スキル転換・学び直しに向かうためのキャリア研修(53〜54歳) 3.ライフプランセミナー(55歳) 4.定年退職者説明会(57歳)+再雇用オリエンテーション(60歳) 5.キャリア相談 (内部配置/キャリアコンサルタントの育成) 【P24】 企業事例発表4 高齢者パートタイマーの活用の工夫と戦力化に向けて 富山会場 株式会社パースジャパン 取締役 管理部長 石塚信彦  当社は、病院のニーズに合わせて、「床頭台(しょうとうだい)」という、病室のベッドサイドに設置されている家具調キャビネットにテレビ・冷蔵庫・金庫などを組み込んだ「テレビレンタルシステム」のサービスを中心に手がけている会社です。1984(昭和59)年の設立以来、この分野の先駆者として邁進してきました。本社は東京にあり、事業所が国内に20カ所。北陸営業所は金沢市にあり、富山県、石川県、福井県のおよそ60施設(病院)では、50人の従業員がサービスを提供しています。  全従業員数は680人ですが、このうち正社員は約100人で、そのほとんどが営業担当者です。580人はパートタイマーで、当社契約先の病院に常駐し、床頭台の掃除やメンテナンスの仕事をしています。580人のうち、60歳以上が47・4%と半分近くを占めており、最高齢者は男性が84歳、女性が78歳。60歳以上の男女比は男性23%、女性77%。平均勤続年数は、パート全体では3年11カ月ですが、60歳以上では4年6カ月となっており、高齢者パートタイマーは当社にとって、とても重要な存在です。  正社員については、定年の60歳を迎えた者はまだ2人しかおりません。再雇用希望者に対し、@シニアマネジメント職群、Aシニア専門・熟練職群、Bシニア基本職群の3区分に基づき検討した処遇などの条件を提示し、対象者も合意した場合に1年更新の契約社員として再雇用契約を結ぶ社員再雇用制度を設けています。実績としては、2人とも@です。  パートタイマーの話に戻りますが、勤務は曜日や時間帯を選べるシフト勤務が一般的で、チーム体制で病棟を巡回し、床頭台や洗濯機などをきれいにしてメンテナンスを行います。営業社員が基本マニュアルに沿って説明・指導し、先輩パートタイマーもOJTを行い、慣れるまでフォローをします。全国の営業所で実施したアンケート調査の結果によると、パートタイマーの定着状況は、若い人より高齢者、男性より女性のほうがよく、職場の人間関係が定着率に影響することがわかりました。また、高齢者を戦力化するためには、敬意と感謝の気持ちを持ってていねいなコミュニケーションを図ること、適切なフォローをすること、無理をさせない、急がせないことが一番のポイントです。さらに、長く働き続けてもらうために、本年度より永年勤続表彰を実施しています。  今後も高齢者パートタイマーを戦力化して、病院内でより快適な医療環境の充実を目ざしていきたいと思います。 高齢者戦力化のためのポイント 高齢者活用の工夫 ●敬意と感謝の気持ちを持って、ていねいなコミュニケーションを図り、信頼関係を高める。 ●職場の人間関係に留意し、適切なフォローをする。 ●体力的な面での配慮をして、無理をさせない、急がせない。 【P25】 企業事例発表5 高齢社員が意欲を持ってより長く働いていこうと思える職場を目ざして 香川会場 株式会社穴吹ハウジングサービス HG管理本部人事グループ サブマネージャー 福川朋孝(ともたか)  当社は、35社で構成するあなぶきグループのなかで、不動産管理に特化して事業を行っている会社です。1983(昭和58)年に高松市と岡山市で業務を開始し、現在は高松市と東京都港区に本社を構えており、分譲マンションなどの建物管理事業、賃貸仲介・開発事業、パーキング事業などを展開しています。従業員数は2941人(社員807人・管理員2134人)です。  マンション管理業は、もともと高齢の方に活躍していただくケースが多く、今も変わりません。当社でマンションの管理員として働いている社員は約2000人にのぼり、このうち66歳以上の管理員は1000人を超えています。  管理員にとって最も大切なことは、お客さまとの信頼関係を築くことで、単にサービスを提供するだけでなく、住民の変化に気がついたり、建物の変化に気がついたりといった力も求められます。このためには日ごろからの人と人とのつながりが大切で、人生や社会人経験の豊富な高齢者に適している仕事といえます。  管理員に長く働き続けてもらうことが当社のサービス品質の維持・向上にとってたいへん重要なことであり、今後も活躍し続けてもらえるよう、次の4点に取り組みました。  一つめは、2017年4月に管理員の定年を65歳から70歳へ引き上げました。さらに、希望に応じて再雇用も実施しています。  二つめは、フレキシブルな勤務形態を可能とし、管理員は生活や体力に合わせた柔軟な働き方ができる体制をつくりました。  三つめは、社会保険加入者以外(75歳以上)の方も、週30時間以上勤務する者は会社負担で健康診断を受診してもらっています。  四つめは、定期的に管理員研修を行い、業務内容や健康面を含む安全意識の徹底と、管理員同士で情報共有や意見交換できるよう、グループミーティングの機会を設定しています。  これらに加えて現在、当社グループ内で連携し、働きたいと望んでいる高齢者の方に対してグループ全体で仕事をマッチングしていく取組みや、働きながら健康を維持・増進するためのヘルスケアサービスなどの取組みを試行しています。  これらの施策も含めて、働くことを希望する高齢者が生きがいを感じ、意欲を持ってより長く働いていきたいと思える職場になるよう、今後も積極的に取り組んでいきたいと思います。 高齢者雇用の課題 生涯現役社会の実現に向けた高齢者雇用の課題 @労働意欲と労働条件のギャップの解消 A体力や健康不安への対応 B仕事を通じての生きがいの醸成 →これらの課題に対して2019年、あなぶきグループ内で連携してプロジェクトを立ち上げた。 【P26】 企業事例発表6 定年延長+パートタイマーの上限年齢引上げによりだれもが活き活きと働き続けられる会社へ 香川会場 株式会社マルナカ 人事教育統括部 人事部 人事課 主任 岡達也  私たちマルナカは、四国と淡路島に144店舗のスーパーマーケットを展開している企業です。基本理念に「お客さま第一」を掲げて、2020(令和2)年には、おかげさまで創業60周年を迎えます。スーパーマーケットに加え、マルナカグループとして食品製造、旅行業、介護事業も展開しています。  社員数は2677人。パート・アルバイトを含めると、1万1000人超となります。  小売業を取り巻く環境はスピード感を増して変化し続けており、勝ち組といわれてきた企業でさえ苦境に陥るという厳しい環境変化が生じています。背景には人口減少と少子高齢化、インターネット通信販売の拡大、業態内・業態間の競争激化といった問題があります。  こうした環境のなか、当社の従業員構成は、60代以上の社員比率は5・1%ですが、40代以上の比率が高くなってきています。特にパートタイマーに目を向けると60代の比率が30%を超え、中心層として活躍しています。こうした状況から今後を見据え、2018(平成30)年度の労使交渉において、社員の定年延長およびパートタイマーの雇用上限年齢引上げについて協議し、合意しました。  その結果、社員の定年年齢を、60歳から延長して65歳としました。60歳以降の雇用形態は選択可能とし、希望を確認のうえ処遇を決定することとしています。パートタイマーの雇用の上限年齢は、70歳から75歳へ引き上げました。65歳定年を迎えた社員に対し、以降はパートタイマーとして、それまでのキャリアを活かし活躍できるようにと考えたためです。定年を延長してから65歳を迎えた社員はまだいませんが、65歳以降の柔軟な働き方の設計も行っています。  定年延長のメリットは、技術やマネジメントなどに長(た)けた人材に、引き続き活躍してもらえること、そして、そのような人材と若手が一緒に働くことで技術・経験の継承につながっていくことなどです。  今回の制度改定について、60歳を迎えた社員18人にアンケートを実施したところ、「60代はまだ若くて元気。定年延長には賛成」、「まだまだ上を目ざしてがんばりたい」という意欲的な意見が多くありました。  人生100年時代といわれるなかで、仕事以外の、人生を充実させるための時間も大事になると思います。定年延長は、まだ改革の第一歩です。だれもが活き活きと働ける、働き続けられる会社を目ざして、今後も取組みを進めていきたいと考えています。 定年延長の目的 定年延長の目的 スキルを活かす + スキル・経験を伝える ↓ 永続的な競争力の確保 働きがい、生きがいの向上 【P27-30】 北海道会場 パネルディスカッション 「高齢社員を戦力化するための工夫」 コーディネーター 今野浩一郎氏 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 パネリスト 村田雅義氏 北海道日産自動車株式会社 執行役員 総務部長 立花一元氏 損害保険ジャパン 日本興亜株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ主査 ライフデザインチーム 企業プロフィール 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 ◎創業 1888年 ◎業種 損害保険業 ◎従業員数  2万6108人、女性比率61.1%(2019年4月1日時点) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 中高年社員の活躍推進策として、「社外転進制度」、「ジョブ・チャレンジ制度」(社内公募制度)を整備。60歳の定年退職後は、65歳までの再雇用制度に加え、満70歳までの再雇用延長制度も導入。 北海道日産自動車株式会社 ◎創業 1947年 ◎業種 小売業(自動車関連・輸送用機器) ◎従業員数  368人、うち正社員316人(2019年4月1日時点) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 60歳定年後再雇用制度について将来を見据えて見直しを実施。退職金制度や賃金設定をあらためるといった課題を一つひとつ乗り越え、2018年4月、定年を65歳に延長。 60歳を迎える一人ひとりと対話し将来的にどう働きたいのかを聞く 今野 定年延長であっても再雇用でも、60歳ごろを契機とした人事管理を考えるとき、「賃金をどうするか」ということも重要ですが、まず、「何をしてもらうのか」、ということがあります。役割や仕事内容をどのようにして決めているのか、まずはこの点からお聞きしたいと思います。 村田 当社では、旧制度の再雇用のときも定年延長をしたいまも、原則として、60歳到達時の仕事を継続します。ほかの仕事をしてもらうというケースは、いまのところはまったくないという状況です。 今野 原則から外れる、ということもあり得るのでしょうか。 村田 店長の職種に関しては、ほぼ変更はないのですが、本社内の課長職に関しては、将来的にはあり得ると考えられます。そのことが少々、悩みになっています。 今野 どう悩んでいるのですか。 村田 現時点では、同じ仕事、職場が望まれていてほぼ実現できていますが、これから高齢社員の人数が増えてくると、それがむずかしくなる可能性があることです。いま私は、60歳を迎える一人ひとりに対し、遠方であっても出向き、時間をかけて話をしています。将来的に自分がどう働きたいのか、どう生きたいのかというところまで掘り下げて対話し、いまの職場がよいのか、それとも変えたほうがよいのかということもたずねたりします。また、今後、定年年齢の65歳に到達する者も出てきますので、同様に個別に話を聞き、いまの職務内容でよいのか、聞いていかなくてはいけないと思っているところです。 再雇用者が行う仕事の割り振りはマネージャーが個別に対応して決める 今野 立花さんの会社では社内公募制を導入されていますが、全員が社内公募というわけではないでしょうから、やはり個別の対応においてご苦労もあると思います。いかがですか。 立花 当社では、56歳年度末で役職定年となる制度を運用しています。53歳や54歳で役職定年により担当者になる社員もいます。一方で、マネジメント能力のある社員や管理職として適性がある社員には、引き続きマネージャーを続けてもらうこともあります。 今野 役職以外の人はどうなっていますか。 立花 基本的に同じ職場でその仕事を続けます。 今野 同じ職場でも、むずかしい仕事から定型的な業務までいろいろあると思いますが、どういう割り振りをしていくのですか。そこは、各職場ごとに対応する、ということでしょうか。 立花 そうですね。各職場のマネジメントのなかで、本人の希望を確認し、職場の事情も加味して決めていきます。 今野 職場のマネージャーが個別に対応をしていくしかない、ということでしょうか。そのとき、どのような仕事をするかによって給料が変わる可能性があるとすると、再雇用者にしてみれば、真剣になりますね。そうしたことも含めて、職場で調整するということになると、マネージャーはたいへんですね。 立花 はい、これからはそういう時代なのだと思います。多様な一人ひとりにきちんと対応していくことが、マネージャーの大切な仕事になっていくのではないでしょうか。 やりたい仕事に手をあげていく社内公募制度には将来性がある 今野 立花さんの会社の社内公募制は、社内で「こういう業務があります」、「こういう人を求めています」という求人情報を出すわけですよね。そこに、再雇用者が求職者として、手をあげて、マッチングする。規模がそんなに大きくない事業所でも導入可能な取組みです。みなさんの参考になると思いますので、社内公募制を敷かれたときのこと、よい点、苦労している点をお話ししていただけますか。 立花 課題も含めてお話しすると、現在は約500ほどのポストが出てきていますが、導入直後は2桁程度で、社員もマネージャーもこの制度のことを最初は十分理解できていませんでした。マネージャーが理解していないと、社員が相談しても適切な対応ができません。そんなケースもあったと思います。徐々に制度理解も浸透してきましたが、まずは社員もマネージャーも制度を知ること、知らせることがポイントになると思います。 今野 ジョブ・チャレンジ制度は、職場を越えていくときに使われる、と考えてよいのですか。 立花 はい。自分のやりたい仕事が社内でできることはすばらしいことだと思いますし、そのための仕組みとしてよい制度なので、将来的にも拡大していくことになると思います。 今野 例えば、ある職場のマネージャーが、「うちの職場ではいま、この仕事がとてもたいへんで、引き受けてくれる人が必要です」となったとき、中途採用により人材を探すことも一つの方法ですが、それを社内のジョブ・チャレンジ制度の活用により実現する。それが効果があるということが浸透していくと、どんどん広がっていきそうですね。 年金受給を含む将来の生活について具体的に示し、情報を提供していく 今野 続いて、60歳を超えてからの評価制度や賃金の仕組みなどについて、課題に感じていることがありましたら、お聞きしたいと思います。 村田 60歳に近い年齢の社員と話をしていると、自分の年金や給料について十分に理解していないという人が意外に多かったため、給料・賞与などから計算し、具体的な数字を割り出してパワーポイントで説明する、ということを行いました。それによって納得感を得ることができ、再雇用の契約ができたりしましたので、今後も同じようにしていこうと思っています。ただ、時間を要するので、そのための時間と個別の対話の時間を確保していくことが課題ですね。 今野 ありがとうございます。立花さんはいかがですか。 立花 重要なことは60歳定年までは、「あそこへ」、「ここへ」というふうに、社員の働く場所を会社が決めていました。一方定年は、その後の進路は自分で決める「強制的なキャリアチェンジ」という大きな職業人生の転機です。50代の研修では、このような考え方を早めにしっかり伝え、必要な情報もきちんと提供することが大切です。 60歳を超えても活き活きと働く秘訣は仕事を好きでいること、プロ魂を持つこと 今野 社内にはすでに多くの60歳を超えている社員がいると思います。「わが社のいちばんがんばっている高齢社員はこんな人」というモデルがありましたら、お聞かせください。 村田 モデルという話ではないのですが、定年延長をしてから、いまも働いている人たちに共通していえるのは、シンプルに「仕事が好きだ」ということ。みんなが「いまやっている仕事が好きなので続けさせてください」といいます。仕事が嫌であれば、選択定年制で手をあげ、「定年退職します」といえるのですが、現時点まで1人もおりません。 立花 村田さんがおっしゃるように、私も仕事への「思い」、あるいは「プロ魂」みたいなもの、本気で働くといった気概といったものが、最も大切ではないかと思います。また、これまで活躍されている高齢社員を見ていて、好奇心が旺盛であること、そして、老若男女を問わないコミュニケーション能力も不可欠ではないかと思います。 最も大事なことはコミュニケーション75歳までの25年間を大切に考えよう 今野 最後に、これだけは強調しておきたい、ということをお聞かせください。 村田 当社は360人余の会社ですので、人事担当者は、社員みんなの顔がわかっています。最も重要なことは、やはりコミュニケーションをとることだと感じます。こちらから出向き、「あなたのために時間を割いて来ました」ということをアピールしながら、仕事や生活の将来像について、シミュレーションを示し、話をする。このことは、私がいちばん大事にしていることです。だれもが会社から去らなくてはいけないタイミングが来るわけですが、そこまでどう働くか、このことがビジョンとして成り立っているかどうかが重要だと思います。  定年を迎えた人たちと話をすると、モチベーションの高い人ばかりで、今後も働きたいという思いが伝わってきます。単に、ペーパーの案内だけ出していたのでは、そういう気持ちになりにくいのだろうと思います。じっくりと対話をしていって、一人ひとりの将来への結論を導き出していく。これからも、このように取り組んでいきたいと思っています。 立花 人生100年時代といいますが、一生に一度きりの「50歳から75歳の25年間をどう生きるのか」が、75歳以降の人生に大きく影響するのではないか、当社の研修ではこんな話をしています。50歳以降は、いろいろなしがらみもなくなり、一般的には子育ても終わり、好きなことができる時間が持てるようになります。この時間を楽しまなくてどうするのか。そのためには、働くことだけではなく、「働く、学ぶ、生きる」ことについて、この大切な25年間をどう過ごしていくのかを真剣に考えよう、ということを最後に申し上げたいと思います。 今野 ありがとうございました。本日は、お2人から、定年延長や再雇用からの働き方について、こういう工夫をしている、こんな苦労がある、というお話をしていただきました。「これ、うちでも使えるぞ」とみなさんに有効な情報として持ち帰っていただけましたら、このディスカッションは大成功であったのかなと思います。 写真のキャプション コーディネーター今野浩一郎氏(学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長) 村田雅義氏(北海道日産自動車株式会社 執行役員 総務部長) 立花一元氏(損害保険ジャパン日本興亜株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ主査 ライフデザインチーム) パネルディスカッションの様子 【P31】 日本史にみる長寿食 FOOD 317 春は元気の出るアサリ飯 食文化史研究家● 永山久夫 アサリは“春告げ貝”  春は潮干狩りの季節。島国に住む日本人の春先の楽しみの一つです。  貝類のなかで人気があるのが、アサリやハマグリ。アサリの語源は「漁(あさ)る」から来たといわれるほど、各地の河口や遠浅の海で、ザクザクと採れたものでした。  春の濃厚な味わいを感じさせるアサリを好んだのが、江戸の町の庶民たち。江戸後期の風俗を伝える『守貞謾稿(もりさだまんこう)』は、アサリについて「江戸深川に、この貝を漁するものが、はなはだ多し」と記しています。  アサリは安価だったため、盛んに食べられていましたが、アサリ汁で困るのが貝殻が山ほど出ること。これを捨てるために、家族は貝殻を入れるための摺(す)り鉢を囲んで食べています。そこで、次のような川柳が作られました。  「摺り鉢を 取りまいて食ふ あさり汁」  さらに面白い作品もあります。  「今朝かった 浅利の中に 迷い蟹」  アサリのなかに、カニが迷い込んでいて、子どもたちが大はしゃぎしている様子です。 江戸っ子の“元気めし”  本場の深川では、多彩なアサリ料理も登場しています。汁物はもちろん、煮物やどんぶり物、炊き込みご飯などです。  なかでも庶民の間で人気になったのが「深川めし」。幕末近くの江戸の町に、屋台料理として登場し、大評判となりました。  むきみのアサリに油揚げ、ざく切りのネギを加え、みそや醤油で味つけして、熱々のご飯にたっぷりかけ、かっこみ食いをするのが深川めしで、「アサリ飯」とか「深川どんぶり」などとも呼ばれました。  深川めしは、昭和の初めまで浅草近辺の屋台に出ていたそうです。最近では、下町ブームで人気を盛り返し、深川では町を代表する人気メニューになっています。  アサリには、独特のうま味を出すコハク酸やグルタミン酸が豊富に含まれています。注目したいのはアサリに多いタウリン。疲労回復に役立ち、やる気が出ます。深川めしは、江戸っ子の“元気めし”だったのです。 【P32-33】 江戸から東京へ [第88回] 小島蛤(はまぐり) 小島(こじま)蕉園(しょうえん) 作家 童門冬二 高齢者の効用  会ったことがなくても、遠くの方から学べることが、この世の中にはたくさんある。聖路加(せいるか)国際病院の日野原先生は私にとってその一人だ。先生はよく、  「健康保持のためには、肉をた くさん食べなさい」  とおっしゃっていた。私はこれを守っている。また先生は、高齢なので実際の医療の仕事には携(たずさ)わらず、病室を歩いて患者たちに励ましの声を投げていたという。患者たちは、先生のこの一声にどれだけ勇気づけられたかわからない。  先生は、「治療以外の人間愛」によって、その存在そのものが患者たちに大きな勇気を与えていた。私にはとてもそういう能力はないが、歴史上の人物でそういう仕事をし抜いた人物がいる。小島蕉園だ。  蕉園は、江戸末期の文政年間に一橋家から代官を命ぜられた。蕉園はそのころ旗本だったが小普請(こぶしん)(無役)の場に置かれ、20年ぐらい経っていた。前役は、同じ一橋家の甲州代官だった。しかし若く正義感も強かったので、任地で起こった農民の高い年貢反対運動の先頭に立った。それに一橋家は怒り、  「年貢を徴収すべき代官が、その減免運動の先頭に立つとは何事か!」  と、直(ただ)ちに蕉園を江戸に呼び戻して代官職を剥(は)ぎ取ったのである。以来、20年ぐらい蕉園は役無しで暮らしてきた。そして食うために、甲州で覚えた貼薬の術を活用し、町医者となった。それが20年経ってまた同じ一橋家から代官を頼まれたのだ。蕉園は固辞したが、一橋家では「ぜひ」といって引き下がらない。蕉園は52歳になっていた。  (それほど、懇望されるのなら、やはり武士としてその職を受けるべきだ)  蕉園はそう覚悟して、承諾した。 高齢者代官の覚悟  任地に赴く前に、かれは心構えを立てた。それは、  「あくまでも住民に寄り添う代官になる」ということである。このとき蕉園が立てた心構えは次の通りだ。 ・住民に寄り添う代官を実証するためには、現地に骨を埋める覚悟がいる。つまり、任地に永住する。 ・家族にはそのことを話し、一緒に行きたい者は同行し、江戸に残りたい者はその希望を叶える。 ・52歳の高齢なので、もう新しいことはできない。身の丈に合った(能力に見合った)仕事をする。 ・身の丈に合った仕事というのは、住民に寄り添うために、何よりも住民一人ひとりの悩みごとの相談を受けることだ。そして、病人には覚えた貼薬を提供して治癒にあたる。 ・俳句が好きで、特に松尾芭蕉を尊敬しているので、住民たちの心にゆとりを持たせるために俳句の指導もあわせて行う。  ざっとこんなことだった。  任地に行った。任地は、遠江の国相良(さがら)(静岡県牧之原市相良)だ。2万石程度の領地である。赴いた蕉園はさっそく方針通り行動した。次第に成果が上がっていった。住民たちは、  「今度のお代官は、親身な人だ。われわれの立場に立って政務を考えておいでだ」  と噂し、次第に蕉園の評価は高まっていった。副次的に行う貼薬の効果もかなりあり、その面でも評判を高めた。ある日、住民代表がやって来て袋を差し出した。  「何だね?」  と訊くと、  「蛤です。お代官がお好きだとうかがいました。でも、この土地では蛤は獲れません。桑名から買ってきました」  といった。蕉園は微笑んだ。そんな噂がすでに流れていたのか、と住民たちの自分に対する関心の高さに胸を打たれたからである。蕉園は袋を受け取り、中に入っている蛤を一つ取り出した。そしていった。  「一つだけ貰うよ。あとは海に撒(ま)きなさい」  「え」  と見返す住民に、蕉園はいった。  「たしかに、焼いた蛤は旨(うま)い。しかし、店で買った蛤よりも、自分たちで育てた蛤の方がなお旨い。ここの海で蛤を育てなさい。その蛤は、海に帰して育てよう」  住民たちは顔を見合わせた。蕉園の才覚に感心したのである。  しかし、その年の蛤の養殖は失敗した。落ち込んでやって来た住民たちに蕉園はいった。  「1年や2年で、いままで育たなかった蛤が育つわけがない。諦めずに、さらに続けよう。  これは蛤を仕入れる元手だ。使ってくれ」  といって、貼薬で得た金を渡した。住民たちは感動して戻って行った。  翌年も駄目だった。しかし3年目に、住民代表が目を輝かせて飛んできた。  「お代官、蛤が育ちました! これです、見てください」  と、言葉に喜びを飛び散らせながらいった。見事な蛤を差し出した。蕉園も感動した。  (住民たちは決して負け犬ではない。一度や二度の失敗に落ち込むような人間ではなかった。これは嬉しいことだ)  蕉園は、自分が決めた住民に寄り添う代官≠フ仕事の一つとして、新しく蛤の養殖を伝えた自分の才覚にも感動していたのである。つまり、「自分で、自分を褒めてやりたいこと」が実践できたのだ。蕉園がすすめた蛤の養殖はその地帯で広まっていった。 【P34-35】 高齢者に聞く 第70回 生涯現役で働くとは  三浦登さん(73歳)は、かつては舞台監督や照明マンとして華やかな世界に生き、いまは厨房機器リサイクル販売員として多忙な日々を過ごす。定年制を撤廃し、高齢者雇用を推進する会社で生涯現役を目ざす三浦さんが、働き続けることの 喜びを語る。 テンポスバスターズ 川口店 パート従業員 三浦登(のぼる)さん 自分の力を信じて  私は愛知県宝飯郡(ほいぐん)(現・豊川市(とよかわし))で生まれました。両親が早逝し、小学校に上がったころから五つ違いの兄と2人で生きてきました。父の記憶はなく、思い出のなかの母はいつも病床にいました。幸い、家や田畑を遺してくれたので、兄と2人で農作業をし、親戚の力も借りながら高校まで郷里で過ごしました。  高校を卒業すると、東京の代々木に住んでいる母方の伯母を頼りに、思い切って東京の大学に進みました。伯母には本当にお世話になりました。  兄は私と違って優秀で、ある大手企業へ就職が決まりかけたのですが、面接で落とされてしまいました。当時は片親だと大手企業への就職がむずかしい時代。両親不在だとなおのことでした。悔しい思いをした兄は、私に「登、人を頼るな。自力で何か仕事を始めなさい」と強くすすめました。その言葉にしたがい、私は大学卒業後22歳で舞台制作の会社を起業しました。幸運にも、大学時代のアルバイト先の先輩が相談に乗ってくれたばかりか、資金面も援助してくれたのです。  私は幼いころの不幸にとらわれ、世の中を斜めに見ていましたが、伯母や先輩のように手を差し伸べてくれる人がいたのです。人生は捨てたものではありません。  自力で会社を興して波乱万丈の人生が始まるが、困ったときには必ず助けてくれる人が現れた。「私は後ろ向きな性格」と話す三浦さんだが、眼鏡の奥のやさしい目が輝く。 華やかな世界に身を置いて  起業してからしばらくは悪戦苦闘が続きますが、舞台やコンサートの制作という仕事は刺激的で充実していました。大学時代のアルバイト先が後楽園遊園地(現・東京ドーム)で、屋外劇場の企画などを担当させてもらいましたから、まったく未知の世界ではなく、アルバイトで学んだことが力になりました。  当時、国内のサーカスとして人気の高かった木下(きのした)サーカスを後楽園に招聘(しょうへい)するお手伝いもさせてもらいました。狭い業界ですから、舞台監督の仕事などが口コミでぽつぽつと入ってくるようになりました。何の資格もなく始めましたが、照明の世界にも興味がわいて、日本照明家協会で研修を受け、ライセンスを取得しました。その後は少しずつ照明の仕事が増えていきました。  照明マンとしての最初の舞台は、日劇ウエスタンカーニバルです。まだ日本ではあまり使用していなかった特殊照明を手がけ、ステージに登場する豪華な顔ぶれのスターの歌声に胸を熱くしました。思えば人より少し遅い、私の青春時代であったような気がします。  演歌の大御所を担当したこともあります。 NHKホールのリサイタルから全国ツアーまで、すべてのステージの照明を担当しました。もう亡くなられましたが、まるで弟のようにとてもやさしくしていただきました。夢のような思い出です。  会社は3度社名変更したものの、30年ほどもちこたえることができました。しかし、体力的にもきつくなり、そろそろ世代交代をすべきではないかと考えるようになりました。 同窓会での出会い  50代初めのころ、高校の同窓会が東京で開催されたときのことです。久しぶりに出席し、そこで同窓生の一人である株式会社テンポスバスターズの森下篤史(あつし)社長に出会いました。そのころ、森下社長は脱サラの後、食器洗浄機メーカーの経営を経て、日本初といわれる厨房用品リサイクルの会社を創業したばかりでした。いろいろ話を聞かせてもらううちにその斬新な発想に魅せられ、舞台制作の経験がある私にはうってつけの仕事であるような気がしてきました。  リサイクルの商品を買っていただくには、いかにかっこよく展示・陳列するかが大切であり、舞台づくりの仕事に通じるものがあるような気がしたのです。まだその時点では舞台関係の仕事を少ししていたのですが、アルバイトをさせてほしいと申し入れて面接してもらいました。その後、舞台関係の仕事をすべて終えてから、テンポスバスターズのパート従業員として専念するようになりました。  私はいま、川口店(埼玉県)の「調理器具館」のリサイクルコーナーで値づけと陳列を担当しています。東京都内に住んでいるため通勤には往復3時間かかりますが、あまり負担に思ったことはありません。毎日楽しく働いています。親がいないことで自暴自棄になったり、物事を後ろ向きに考えていた時期もありましたが、働き続けてきたことで、ほんの少し前向きになれたような気がします。  「テンポス」は「店舗」の複数形で「バスターズ」は掃除屋を意味する。柔軟な発想でいまも会社の舵を取る森下社長には、本誌2014年7月号にご登場いただいた。 感謝の気持ちで毎日を生きる  勤務時間は朝10時から夜7時まで、休日は月曜日と木曜日です。うちの店舗は業者の方はもちろんですが、登録すれば一般の方も買えるため、お客さまが多い土曜・日曜日は出勤するシフトにしています。  店舗に立っていてうれしいのは、やはりお客さまの笑顔に出会えたときです。「中古とはいえこんなにきれいなのに、安く売ってもらって申し訳ない」などという声を聞くと、ともに働く仲間のことまで評価されたようで、モチベーションも上がります。  照明は、その人が最高に素敵に見えるよう光をあてることに心を配りますが、リサイクル器具も、最も美しく見えるように工夫を凝らします。こんなに楽しい仕事はありません。  かつて若い人の教育を担当していたときによく話していたのは、自らが仕事のなかに楽しみを見つけようということ、また、夢を大きく持ってトライし続けようということでした。それは自分自身にいい聞かせていたのかもしれません。  幸い、テンポスバスターズに定年はありません。現在全国に59店舗ありますが、60歳を超える従業員が3割を占め、身近に80歳の方がいるので、生涯現役のお手本にしています。長く働くためには健康でいたいと、20代のころから朝起きたらコップ1杯の水を飲むことを続けています。  気がつけば、早く逝ってしまった両親の倍も生きています。父と母がくれた命に感謝して、毎日を大切に生きていきたい。兄をはじめ、道を外れそうな折々に貴重なアドバイスや援助をくださった方々に感謝し、亡き父と母が前向きになった私を見守ってくれていることを願って、毎朝2人の写真に声をかけて出かけます。写真から微笑んでくれる2人が、私の元気の源となっています。 【P36-39】 高齢者の現場 北から、南から 第93回 鹿児島県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー※1(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 前職の経験や趣味を活かし、知的障害者と高齢者の生活支援を行う 企業プロフィール 社会福祉法人更生会(鹿児島県南九州市) ▲創業 1971(昭和46)年 ▲業種 障害者福祉事業、高齢者福祉事業 ▲従業員数 330人 (60歳以上男女内訳) 男性(58人)、女性(81人) (年齢内訳) 60〜64歳 36人 (10.9%) 65〜69歳 56人 (17.0%) 70歳以上 47人 (14.2%) ▲定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員を70歳まで再雇用する  鹿児島県は九州の南端に位置し、南北600qにおよぶ広大な県土を有しています。薩摩半島と大隅(おおすみ)半島に挟まれた錦江(きんこう)湾には、いまも火山活動が続く鹿児島県のシンボル、桜島があり、南西部には特異な生態系と優れた自然景観により日本初の世界自然遺産として登録された屋久島のほか、いくつもの小さな島々が点在。ほかにも変化に富む長い海岸線や、源泉数全国第2位を誇る温泉、温暖な気候と海の恵みをもたらしている黒潮など、豊かな自然に恵まれています。  当機構の鹿児島支部高齢・障害者業務課の大城(おおしろ)耕二郎課長は、「鹿児島県は畜産業、農業、漁業が盛んな全国有数の第一次産業立県です。第一次産業の就業者割合は9・5%と全国平均の4・0%を大きく超えています※2。近年は黒牛・黒豚・黒さつま鶏を三大黒ブランドとして売出し中です。2017(平成29)年開催の第11回全国和牛能力共進会では、団体部門で鹿児島県が日本一に輝きました。また、医療・福祉の就業者比率も全国1位(就業者割合16・9%)と高い県です※2。これは10万人あたりの病院数が全国で2番目に多いためです」と説明します。  今回は、同支部で活躍するプランナー・西村和人(かずと)さんの案内で「社会福祉法人更生会」を訪れました。 総合的な福祉の充実・発展に努める  社会福祉法人更生会は、創設者である医師の中村佐吉(さきち)氏が1971(昭和46)年に設立。翌年の1972年に知的障害者更生施設として榎山(えのきやま)学園を開設しました。以来、障害者・高齢者福祉事業を多角的に展開し、現在は、障害者支援施設、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、障害者支援センター、グループホーム、給食センター、福祉ショップなどを運営する社会福祉の総合施設となっています。  中村邦彦(くにひこ)理事長は「社会福祉事業の安定・継続的経営に努め、利用者はもとより地域社会の多種多様なニーズに応え、福祉の充実・発展に寄与できるよう『障害のある人には愛を、お年寄りに真心を』の精神で取り組んでいます」と話します。  地域との交流も重視している更生会は「給食センター・つどい」に、一般の人が利用できる「レストラン・つどい」を併設しました。鹿児島市内の有名ホテルからプロのシェフを招き、本格的な味を提供したところ、地元でも評判のレストランとなり、地域と福祉施設との接点になっています。  なお、給食センターは更生会が運営する施設の利用者と、福祉給食サービスの給食を調理する施設で、施設内に就労継続支援A型事業所を設置して、地域の障害者に就業の場を提供しています。  2014年からは更生保護事業として「自立準備ホーム・きぼう」を設立。罪を犯した知的障害者が、矯正施設を出所した際の緊急的な住居として利用されており、自立支援も行っています。  このような触法(しょくほう)障害者のほか、オリーブの樹事業を開始し、親元や地域で生活すると症状が悪化する人やさまざまな理由により「住む場」や「就労先」を求めている生活困窮者のために、更生会ではほかの地域からも積極的に利用者を受け入れているそうです。 実態に合わせて定年延長制の導入を提案  更生会は2019年1月に就業規則を改定し、定年を60歳から65歳に延長、希望者全員を70歳まで再雇用する制度を導入しました。この定年延長の制度改定は、10年以上前から更生会を訪問している西村プランナーの助言に端を発しているといいます。  「2017年1月に、高年齢者雇用開発コンテストへの応募を提案するために訪問した際、高齢者雇用率が2012年から5年で20%から30%に上昇していることを知りました。今後も高齢従業員の増加が見込まれると考え、65歳定年制の導入と合わせて、65歳超継続雇用の制度化を提案しました」と話します。その後、更生会は顧問の社会保険労務士と検討のうえ、第一段階として希望者全員を68歳まで再雇用する制度に改正しました。  西村プランナーは更生会がコンテストで努力賞を受賞した同年10月にもあいさつを兼ねて再訪しています。「希望者全員の再雇用はほぼ定着し、65歳以上の継続雇用者も増加しているので、安定的な雇用のために65歳への定年延長を改めて提案しました」。こうした熱心な提案もあり、今回の65歳定年制、70歳希望者全員の再雇用制に改定するに至りました。 定年後故郷に戻り、前職の経験を活かす  60歳以上の高齢従業員が40%を超える更生会ですが、現在も高齢者の新規採用を積極的に行っています。「70歳前後の人から、求人に応募したいが年齢が気になるとの問合せもあります。年齢を問わず多くの人材を受け入れたいので、健康であればどんどん採用していきます」と、淵別府(ふちべっぷ)孝(たかし)事務局長は意欲的です。  ただし、高齢従業員の場合は、健康面のフォローが重要とのこと。自分から体調不良を訴えられない人や、気力はあっても体に不調がある人もおり、不調を我慢したことにより脱水症状を起こした人もいたそうです。こうした高齢従業員の対策として、時間単位で休暇を取得できたり、年次有給休暇を取りやすくする制度を取り入れています。  更生会にはこれまでもさまざまな業種で活躍してきた高齢従業員が入職しており、それぞれの経験を活かした仕事を任せています。建設業での経験者は、農道の補修や畑の開拓に重機を操作して大活躍。左官職人は施設の拡張や補修に力を発揮しています。中村建司(たてし)施設長は、「警察官だった方は、定年をきっかけに故郷のこの地に戻り、当法人に再就職しました。更生保護事業における触法障害者への自立支援を担当してもらっており、職場内防犯研修の講師もお願いしています。この方のように、定年後Uターンで戻ったり、Iターンで移住してきた方が、入職されるケースは多いです」と話します。経験を活かし専門的なスキルを発揮している高齢従業員には、「専門職手当」を月に3千〜1万円支給しています。  今回は、障害者支援施設の榎山学園で生活支援員として働くお2人に話をうかがいました。 趣味が利用者の生活支援につながる  藤田穂(みのる)さん(73歳)は、榎山学園のひまわり寮に所属し、利用者が自立した日常生活や、社会生活を送れるようになるための訓練をサポートしています。朝は送迎バスに同乗し、通所利用者の見守りを行い、園に到着すると畑に出向き利用者とともに農作業を行います。  藤田さんは58歳のときに更生会に入職しました。「福祉の経験はなく、生活支援の仕事ができるか不安がありましたが、好きな農作業の仕事ができて嬉しいです。趣味は園芸で、学生のころは園芸クラブに在籍していました」と話します。  午前は農作業ですが、午後はレクリエーションを担当し、自身も一緒になってダンスを踊り、手取り足取り利用者に教えています。実は踊りも藤田さんの趣味なのだそう。「利用者が踊りやすいように、常にアレンジを加えているようで、その熱心さには驚きます」と中村施設長も感心しきりです。「踊れるようになって、喜ぶ利用者さんと家族の笑顔を見るのがやりがいです」と話す藤田さん。ほかにも、地元の公民館で開かれるカルチャー教室に参加し、脳トレーニングなどを習ってレクリエーションに活かしているそうです。  藤田さんは1年ほど前に、週5日から週3日の短日勤務に変更しました。脳梗塞をわずらい、3週間ほど休んだことがきっかけでした。病気をする前は車通勤だったのですが、車の運転ができなくなり、仕事を続けることも諦(あきら)めていたそうです。そんな藤田さんの気持ちを知り、通勤には利用者の送迎バスを利用することを提案。その際、利用者の見守りを任せることにしました。この「送迎バスでの見守り」という新しい業務のおかげで、引き続き勤務することが可能に。藤田さんは「生活のためにもできればあと2年は働きたいです」と話していました。  中村まき子さん(70歳)は、榎山学園すみれ寮に所属し、生活支援員として利用者の衣服の洗濯を担当しています。朝、洗濯機を回して、干し、取り込み、利用者ごとに分けて配ります。毎日、業務用の大きな洗濯機を5台も回すそうです。  中村さんは70歳を超えても8時〜17時30分までのフルタイム勤務を続け、水曜日と、土日に休みをとっています。「水曜日に休むのは、連休にしてしまうと洗濯物が溜まるからです」と仕事への責任感をにじませます。大量の洗濯物を1人で毎日洗濯するのは骨が折れそうですが、「自分のペースで仕事ができて、気楽だし、体も動かせるこの仕事が好きです」と話します。洗濯物のなかにはボタンが取れていたり、ほつれがあったりする物もあるので、気づいたら縫って直しているそうです。裁縫が趣味だという中村さんにとってはお手の物。福留純一主任書記は「着古してすり切れた服に気づいて、新しい服を買うように教えてくれます。『わが子だったら』という視点を持って接してくれている点が、細やかな仕事につながっています」と評します。  仕事のやりがいを聞くと、「直接的な支援ではないですが、影ながらでも力になっていることです」ときっぱり。中村さんを見つけて駆け寄ってきた利用者と仲よく話すその横顔は、はちきれんばかりの笑顔で、愛情にあふれていました。  来年には設立50周年という節目を迎える更生会ですが、老朽化した施設の全面改築など、さらなる質の高い福祉サービスを提供できる人・環境づくりへと邁進(まいしん)しています。(取材・西村玲) ※1 65歳超雇用推進プランナー……当機構では、高年齢者雇用アドバイザーのうち経験豊富な方を65歳超雇用推進プランナーとして委嘱し、事業主に対し、65歳を超えた継続雇用延長・65歳以上への定年引上げなどにかかわる具体的な制度改善提案を中心とした相談・援助を行っています ※2 平成27年国勢調査より 西村和人 プランナー(72歳) アドバイザー・プランナー歴:21年 [西村プランナーから] 「ダイバーシティ経営が企業体質を強化し、生産性の向上、利益の確保につながり、ひいては企業の社会貢献に資するとの観点から、高齢者の戦力人材化が求められていることを経営者と共通の認識にしたいと思っています。訪問の際は、企業の経営課題、とりわけ人事労務管理上の悩みをていねいにヒアリングすることを心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆同課の大城課長は、「西村プランナーは、高い見識からの相談・助言業務に加え、企業診断システムや自作の資料を用いた事業所の特性分析と、それに基づく的確な助言により高い信頼を得ています。2018度の制度改善提案数は29件で、全国トップレベルの実績です。若手プランナーに対して自身のノウハウの伝授を積極的に行うなど率先垂範されています。九州・沖縄ブロックプランナーによる自主研修会の会長も務めています。 ◆新幹線の最南端となる鹿児島中央駅から指宿枕崎(いぶすきまくらざき)線で2駅目のJR南鹿児島駅から徒歩5分。鹿児島市南部の主要道路・国道225号線沿いに立地するポリテクセンター鹿児島内にあります。市中心街に利便性がよく、桜島が正面に見える立地です。 ◆プランナー6名、アドバイザー2名の計8名が在籍しています。2018年度は制度改善の提案を101件、訪問を395件行いました。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 鹿児島支部高齢・障害者業務課 住所:鹿児島県鹿児島市東郡元町14-3 ポリテクセンター鹿児島内 電話:099(813)0132 写真のキャプション 鹿児島県 法人本部 中村邦彦理事長 左から淵別府孝法人本部事務局長、福留純一法人本部主任書記、中村建司施設長 農耕班の支援で苗の植えつけを行う藤田穂さん 利用者の洗濯物を取りこむ中村まき子さん 【P40-43】 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜山(ひやま)敦(あつし)  生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、高齢者から始まる働き方改革≠フ姿です。 第4回 VR・ロボットが変えるテレワーク2・0 テクノロジーを活用したテレワークへの期待  柔軟な働き方を加速するテクノロジーとして、近い将来に社会実装が進むことが期待されるのが、バーチャルリアリティ(VR)やロボット技術を活用した「テレワーク」です。すでに「Skype(スカイプ)※2」や「Zoom(ズーム)※3」などのビデオ通話サービスは日常的に利用できるようになり、簡単な議論は場所を選ばずに進められるようになりました。GoogleやMicrosoftが提供するクラウドサービスにより事務書類は必要な人と迅速に共有して、同時に編集を進めることも可能になりました。  Brookings analysis of O*NET and OES data※4によると、アメリカ産業界における仕事内容の変化として、仕事のデジタル化のさらなる進展が予測されています。2002(平成14)年では、もっぱらデジタルデータを扱う仕事の割合は4・8%程度でしたが、2016年には23%と、急速に延びました。その反面、ほとんどデジタルデータを扱わない仕事の割合は55・7%から29・5%に減少しました。  また、デジタルデータを扱う仕事ほど、高い平均年収を得ていることがわかっています。2016年の調査では、もっぱらデジタルデータを扱う仕事に従事している人の年収は、およそ7万3000ドル(約800万円)であるのに対して、ほとんどデジタルデータを扱わない仕事に従事している人の年収は、3万ドル(約330万円)と倍以上の開きが出ています。  デジタルデータを扱う仕事が増えれば増えるほど、インターネットを介したオンラインで作業を行いやすい業務が増えていきます。このことは、オフィスに出勤しなくとも自宅や旅先で仕事を行えるテレワークを促進する要素になります。  さらに、音声認識や自動翻訳などの技術の発達により、視覚機能や聴覚機能を補助するアクセシブルなインターフェース※5を、作業ツールに組みこめる点で、高齢者や障害者に優しい働き方であるととらえることができます。  テレワークは今後、高齢者や障害者、柔軟な働き方を志向する労働者の間で、高い収入が得られる働き方として急速に増加することが期待されます。 仕事・ツールのデジタル化がテレワークの課題を解消する  テレワークを阻害する要因としては、遠隔であるために働き手が真面目に仕事を行っているのか労務管理をするのがむずかしいことと、働き手の間でのコミュニケーションが希薄になることによる業務効率の低下を懸念する声があげられます。  労務管理に関しては、仕事の報酬の評価基準を従来の仕事に費やした時間分を支払う時間給から、仕事の速さと内容に基づいた報酬体系に転換していくことが一番の解決策になります。働き手にとっては、短時間で求められる成果を出していく方向にインセンティブが働くことになるからです。時間給という報酬体系からの脱却は、テレワーカーにかぎらず、オフィスに勤務する働き手にとっても生産性を向上する方向に変化をうながすと考えられます。  一方で、働き手との間のコミュニケーションの支援については、一緒に働いている感覚を共有するための技術が、働き手同士の心理的な距離を縮める手段となります。企業へのテレワーク導入をコンサルティングしている株式会社テレワークマネジメントでは、「Sococo(ソココ)※6」と呼ばれるオンラインで画面に表示されるバーチャルオフィス環境を紹介しています。VRやロボットは、この働き手との間のコミュニケーションを拡大するもので、遠隔からできる業務を大きく拡大する技術として期待されています。  また、テレワークだけでなく、仕事のデジタル化そのものを阻害する日本特有の要因として根強く残っている判子(はんこ)文化は、事務手続きを効率化させ生産性を高めるうえでいち早く変えていかなければなりません。 ロボットとタブレットの活用で遠隔コミュニケーションを円滑に  テレワークにおけるロボットの活用は、「テレプレゼンスロボット」と呼ばれる、遠隔に存在感を伝えるロボットの研究開発により実現されていきます。従来テレプレゼンスロボットは100万円を超える価格帯で研究開発用に販売されていましたが、2010年ごろに欧米を中心に5〜50万円の価格帯のテレプレゼンスロボットが商品化され、一般にも知られるようになってきました。  Double Robotics社の「Double(ダブル)」というテレプレゼンスロボットは、iPadにセグウェイのような倒立二輪車の足を取りつけることで、iPadがロボットの顔となり、遠隔操作者はiPadのカメラ越しに周囲の様子を見ながら自由に動き回ることができます。Revolve Robotics社の「kubi(クビ)」というテレプレゼンスロボットは、レンズの向きを左右に動かせる台座にタブレット端末を装着することで、卓上の首振りロボットになります。遠隔操作で周辺の様子を見回しつつビデオ通話によりコミュニケーションが可能になります。  2014年から2015年にかけて、これらのテレプレゼンスロボットを駆使して、シニアのテレワーク実験をわれわれの研究グループとIBM東京基礎研究所(東京都)との連携で行いました。テレワークの内容は、宮城県仙台市の仙台シニアネットクラブというシニアのITエキスパートのグループが、兵庫県西宮市清瀬台の老人会の人たちにタブレット端末の使い方を遠隔講習で行うというものでした。  清瀬台のようなニュータウンでは、若い世代の都会への移住が進み高齢化率がすでに30%〜40%に達している地域もあります。清瀬台では周囲にタブレット端末の活用方法を教えてくれるシニア向けIT教室がないのに対し、仙台では仙台シニアネットクラブのようなシニア向けIT教室の草分け的なコミュニティで、多くのIT講師が育ち、活躍の場を求めています。そこでこの二つの地域をインターネット上で結びつけて遠隔講習会を開くことで、互いのニーズを満たすことをねらいました。  遠隔講習会では、仙台側のメイン講師1名と受講生をサポートするサポーター講師2名のチームで講習会を行いました。それぞれが写真1に示すように、異なるテレプレゼンスロボットを活用して遠隔講習を行います。講習は、メイン講師が実演した後で受講生の実習に移る形式で進行。サポーターは2〜3名の受講生の実習時の様子を観察したり、適宜質問に答えます。メイン講師の講師用ロボットはIBM東京基礎研究所が研究開発したもので、講師はロボットの操作ではなく、説明に専念できるようにハンズフリーで自動的に作動する仕組みになっています。 ロボット(タブレット画面)の目線の動きがコミュニケーションの肝(きも)  写真2は、講師用ロボットの遠隔操作を行っている様子です。メイン講師が遠隔地の様子を映すディスプレイを窓と見立てて、のぞきこみたい方向が見えるように顔を動かすと、ディスプレイ上部のカメラが講師の顔の動きを計測し、その動きからのぞきこもうとしている方向に、講師用ロボットの首を振ることでカメラを動かします。そうすると講習会会場側では、講師が見ようとしている方向にロボットの画面に映し出された顔が向くので、受講生が講師の目線を意識しやすくなり講師の存在感が感じられるようになります。2名のサポーター講師は前述の市販されているテレプレゼンスロボットのDoubleとkubiを用いました。  遠隔講習におけるテレプレゼンスロボットの効果を評価するにあたり、一般に浸透しているSkypeで同様に遠隔講習会を行った場合とで比較を行いました。Skypeを使った遠隔講習では、仙台側のサポーターは、カメラ映像だけでは受講生が困っているのかどうか判断しにくいことや、受講生の注意を自分に向けさせることのむずかしさを感じていました。テレプレゼンスロボットを活用した場合では、仙台側のサポーターは一人ひとりの受講生にロボットを向けて様子をうかがえるようになりました。清瀬台側の受講生もロボットの動きで仙台側の講師やサポーターが自分に注意を向けているのかどうかがわかり、お互いが会話をするタイミングをつかみやすくすることができました。  実際に講習時間中にテレプレゼンスロボット を活用した方が、Skype使用時よりも仙台 側と清瀬台側とでコミュニケーションの頻度が 増加することが確認されました。結果として、 講習の内容に関する会話だけでなく、雑談も講 師・サポーターと受講生との間で見られるよう になりました。空間を超えて心理的な距離が近 づくようになり、講習会の終わりには写真3の ように、テレプレゼンスロボットを通して遠隔 地にいる講師と記念撮影を行う受講生も見られ るようになりました。  当初は欧米を中心にテレプレゼンスロボットの商品化が先行していましたが、現在は日本を中心に首振りだけでなく身振り手振りを使って作業ができるテレプレゼンスロボットの商品化を進める企業が登場するようになりました。  Telexistence株式会社は、1980年から「テレイグジスタンス」という、あたかも現場で作業をしているかのような臨場感を持って遠隔操作を行う技術を研究開発されてきた舘ワ(たちすすむ)東京大学名誉教授によって設立され、テレイグジスタンスロボットの商品開発と実証実験を進めています(https://tx-inc.com/en/home/)株式会社メルティンMMI(東京都)では、巧みな手の動きを伝達し遠隔作業を行えるロボットの商品化を行っています。(https://www.meltin.jp/)。  株式会社オリィ研究所(東京都)では、「OriHime(オリヒメ)」と呼ばれる遠隔コミュニケーションロボットを商品化しています(https://orylab.com/)。OriHimeは主に障害者のコミュニケーション支援や社会参加支援を対象として開発されました。現在、カフェなどで障害者が自宅からOriHimeを遠隔操作して接客の仕事を行う実証実験などが行われ、メディアからも注目されています。 身近になったVRゴーグル拡張していくバーチャル空間  もう一つ、世の中の変化として注目しておきたいことがあります。これまで研究開発用途が中心で数百万円の価格帯で販売されていたVRゴーグルが、数万円で一般向けに販売されるようになり、2016年はVR元年と呼ばれるようになりました。学生の間では、手ごろに入手できるVR機器を使ってVR chatというバーチャル空間での遠隔コミュニケーションを楽しむ姿が研究室でみられるようになってきました。離れた場所にいる学生同士が、バーチャル空間で思い思いのアバターという3次元CGの姿に変身して、身振り手振りを交えながら会話をすることができます。  そして、2019(令和元)年12月14日には、バーチャル学会という、完全にバーチャル空間のなかだけで参加してプレゼンテーションを行う学会が開催されるようになりました。当研究室の稲見(いなみ)昌彦教授もバーチャル空間のなかで基調講演を行いました。完全にバーチャル空間でのコミュニケーションになると、生身の身体にとらわれる必然性がなくなります。若者のアバターを使って若返った気分で遠隔就労したり、性別を変えたり、SFのキャラクターに外見を変えることができます。  さらには、音声変換技術を活用することで自分の声を変えて話をすることができるようになりました。最近ではバーチャルなキャラクターに変身したYouTuber※7であるVTuber※8として活躍する人も見られます。  2030年ごろには、ロボットの身体を通じて経験を積んだ高齢の職人が、遠隔から技能伝承を行うようになるかもしれません。そしてますます社会的な活動がバーチャル空間に広がっていき、心身に不安を抱えていても働く機会を得て、社会とのつながりを維持できるようになっていくでしょう。 ※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称 ※2 Skype……マイクロソフト社が提供するインターネット電話サービス ※3 Zoom……Zoom社が提供するインターネットを活用したWeb会議ツール ※4 Brookings analysis of O*NET and OES data……アメリカ合衆国労働省が運営する職業に関するデータベースに対するブルッキングス研究所(アメリカ合衆国のシンクタンク)による分析 ※5 インターフェース……異なる機器・装置をつなぎ交信を可能とする装置やソフトウェア ※6 Sococo……バーチャルオフィスを通して、オフィス勤務者と在宅勤務者をつなぐコミュニケーションツール(https://www.telework-management.co.jp/services/tool/sococo/) ※7 YouTuber……動画共有サービスYouTube上で独自に制作した動画を公開している人または組織 ※8 VTuber……バーチャルYouTuberのこと。CGで作成したキャラクター(アバター)を用いて動画を制作・公開しているYouTuber 写真のキャプション 写真1 遠隔講習会で3種類のテレプレゼンスロボットを使用 Double 講師用ロボット Kubi 写真2 講師用ロボットのハンズフリー操作の仕組み 講師の顔の動きを計測するカメラ 写真3 テレプレゼンスロボットの画像に映る仙台側講師との記念撮影 【P44-47】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第22回 労使慣行の変更、賃金の支払いの確保に関する諸制度 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 労使慣行を変更するにあたり、注意すべきことはありますか  長年にわたって、賞与の補充の位置づけで、年度末に一時金の支給を実施してきました。この一時金の支給については、労働契約はもちろん、就業規則にも明記しておらず、事実上支給してきたものです。  このたび、業績の不振や昔と異なり従業員の給与水準が全体的に上昇してきたことから、一時金の支給を廃止して、賞与の支給に統一しようと考えています。  特に、労働契約の内容や就業規則の規定を変更するものではないことから、廃止することは問題ないと考えていますが、変更にあたって注意すべきことはありますか A  たとえ、労働契約や就業規則に明記されていない場合であっても、労使間において事実たる慣習となっている場合や黙示の合意が認められる場合などには、法的に有効な労働条件として拘束力を有することになります。  このため、労使慣行により法的に有効な労働条件を不利に変更する場合には、就業規則の変更と同様に変更の合理性が求められることがあります。 1 労使慣行について  労使間の労働条件を決めるのは、基本的に労働契約に基づくほか、就業規則や労働協約によって定められることになります。  しかしながら、就業場所における細かい ルールまで逐一(ちくいち)定めておくことは、現実的ではなく、一時的な取扱いのつもりで始めることもあるでしょう。  そのようななかで、長期間にわたり、維持され続けることで、あえて廃止する理由もなくなり、その取扱いに依拠(いきょ)した労働者の期待なども生まれてくることがあります。  このような状態に至った場合には、労働者は、これを既得権として意識するようになっていきます。  導入自体も流動的に、特に意識されることなく行われるため、これを廃止する方法についても特に意識されないことが多いように思われます。  労働契約や就業規則などに明記されない形で導入されるルールは、労使慣行などと呼ばれることがありますが、すべてが法的に拘束力を有するとは考えられておらず、労働法上も取扱いがむずかしい問題となることがあります。 2 労使慣行の法的拘束力について  労使間の慣行に関する法的拘束力について判断した裁判例として、大阪高裁平成5年6月25日判決(商大八戸ノ里ドライビングスクール事件)があります。同裁判例は、@同種の行為または事実が一定の範囲において長期間反復継続して行われていたこと、A労使双方が明示的にこれによることを排除・排斥していないことに加えて、B当該慣行が労使双方の規範意識によって支えられていることが必要と整理しました。  さらに、規範意識に関して、「使用者側においては、当該労働条件についてその内容を決定しうる権限を有している者か、又はその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識を有していたことを要する」とされています。要するに、権限のある者が気づいていないルールが継続しているわけではなく、認めたうえで継続していたことが必要とされています。  以上の要件に加えて、「その慣行が形成されてきた経緯と見直しの経緯を踏まえ、当該労使慣行の性質・内容、合理性、労働協約や就業規則等との関係(当該慣行がこれらの規定に反するものか、それらを補充するものか)、当該慣行の反復継続性の程度(継続期間、時間的間隔、範囲、人数、回数・頻度)、定着の度合い、労使双方の労働協約や就業規則との関係についての意識、その間の対応等諸般の事情を総合的に考慮して決定すべき」とされ、「労働協約、就業規則等に矛盾抵触し、これによって定められた項を改廃するのと同じ結果をもたらす労使慣行が事実たる慣習として成立するためには、その慣行が相当長期間、相当多数回にわたり広く反復継続し、かつ、右履行についての使用者の規範意識が明確であることが要求される」としています。  明文の規定に抵触しても成立する可能性があるため、就業規則の明文にないルールだからといって、法的拘束力がないわけではありません。また、今回の一時金の支給は、権限者が支給に関与していないとは考えられないため、使用者側の規範意識を有していたといえ、長期にわたり事実上継続してきたことからも法的拘束力のある労使慣行になる可能性があります。 3 労使慣行の変更や廃止について  労使慣行については、法律の明文でその有効となる要件が定められているわけではありません。そのため、労使慣行を変更する要件も定められていません。  労使慣行の成立要件は裁判例で一定程度整理されているものの、変更についてはどのように考えればよいのでしょうか。  京都地裁平成24年3月29日判決(立命館(未払一時金)事件)においては、労使慣行の不利益変更の有効性が問題となりました。  同判決では、「労使慣行の変更が許される場合とは、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該変更の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有する必要がある」とされ、就業規則の不利益変更と同趣旨の判断基準を示しました。一時金という賃金に関連する事項については、「当該変更が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のもの」にかぎられました。  同裁判例が示すように、一時金のような賃金と関連する制度の廃止を行うためには、高度の必要性がなければならず、高度の必要性が存在していない場合には、個別の同意を得たうえで、変更していくほかないということになります。 Q2 賃金の支払いが遅れる場合の罰則や労働者への支援などについて知りたい  賃金の支払いが遅れそうな状況なのですが、賃金の支払いができなかった場合には使用者へのペナルティなどはあるのでしょうか。  もし、このまま支払うことができなかった場合には、労働者に対する生活保障はあるのでしょうか。 A  賃金請求権は、労働者にとって重要な権利であるため、未払いに対する罰則が用意されているほか、支払いをうながすための通達も定められています。  なお、支払うことができない状態となった場合でも、破産手続が開始されるなど、一定の状況に陥った場合には、賃金の立替払い制度が用意されています。 1 賃金未払いへの制裁について  労働基準法は、賃金の支払いに関して、いくつかの原則的なルールを定めています。主なルールとして、@通貨払いの原則、A直接払いの原則、B全額払いの原則、C月一度以上の定期払いの原則があげられます。  まず、@の原則は、現物支給を避け、通貨という生活の糧を支給することを確保させています。Aの原則は、労働者供給や職業仲介人による中間搾取などを生じさせないために定められたものであり、Bの原則は、使用者による不当な控除を回避することを目的としています。Bについては、社会保険料や所得税の源泉徴収などの一部の例外はあるものの、貸金や賠償金などの名目で賃金から相殺することを禁止するという機能も有しています。また、Cについては、支払時期を不当に長期にすることで、労働者に対する拘束を強めることを回避する機能を有しています。  これらのルールは、労働者の賃金を確保するために歴史的な意味でも重要と考えられてきた内容であり、労働基準法は、これらの違反に対して罰則をもって制裁を予定しています。罰則の内容は、30万円以下の罰金という内容ですが、賃金の支払い原則に関する労働基準法違反に対しては、社会通念上なすべき最善の努力をしていない場合には、労働基準監督署長は使用者に対して期日を指定してそれまでに賃金を支払う旨を厳重に確約させ、この確約に応じないときまたは確約を履行しないときは事件を地方検察庁に送致すべし、との通達が出されており、労働基準法上最も厳守することが求められているルールであるといえます。  したがって、賃金の支払いが遅れないように厳守することは強く求められており、できれば、賃金の支払いが遅れないようにほかの債務の支払いとの調整を試みるべきでしょう。 2 労働者がとりうる手段について  労働者は、使用者からの未払い賃金債権について、その支払い確保のために一般先取特権という担保権を有しています。  この一般先取特権は、債務者である使用者の総財産に対して効力を有しているため、労働者の立場からは、判決を得るまでもなく、使用者の財産に対して担保権の実行を裁判所に申し立てて、使用者の財産を換価することを求めることができます。  実際に実行される事例は少ないものの、労働者の権利が十分に保護されていることを示した制度であるといえそうです。 3 未払い賃金に対する遅延利息について  賃金の支払いをうながす法律は、労働基準法のみではありません。賃金の支払いの確保などに関する法律には、未払い賃金に対する遅延利息が高率となるよう定められています。適用されるのは、退職した労働者にかぎられていますが、未払い賃金が生じた結果、労働者が退職に至った場合、未払い賃金に対しては、年14・6%の割合の遅延利息が付されることになっています。  この規定は、退職後の未払い残業代を請求される場合にも適用されることが多く、未払い残業代を生じさせた場合には、想定以上の金額を支払わなければならなくなる場合もあります。なお、未払い残業代に対しては、労働基準法は付加金による制裁も用意しているため、最大で未払い残業代と同額の付加金支払いを命じられる場合があります。結論として未払い残業代および同額の付加金を負担しなければならなくなり、想定していた残業代の2倍を負担させられるおそれがあります。  これらの規定は、賃金や残業代の請求などが行われる場合には、適用される可能性が高い内容であり、未払い賃金に関する制裁として機能する基本的な制度として位置づけられるでしょう。 4 未払い賃金の立替払い制度  労働者災害補償保険の適用事業者(農林水産業の一部を除き、1人以上の労働者を使用する事業はすべて、強制的に適用事業であるため、ほぼすべての事業者が該当します)であって、1年間以上の事業活動を行っていた場合で、次のいずれかに該当する場合には、立替払い制度が行われています。 @破産手続開始の決定を受け、または特別清算の開始命令を受けたこと A民事再生手続開始の決定、または更生手続開始の決定を受けたこと B中小企業の場合、事業活動が停止し、再開の見込みがなく、かつ賃金支払い能力がないことが労働基準監督署に認定されたこと  使用者がこれらに該当することを前提に、支払われる範囲にも限定があります。まず、退職した労働者が対象となりますので、いずれかの要件を充足するとともに、労働者に対する解雇などにより退職が完了されていなければなりません。  次に、立替払いされる賃金は、退職日の6カ月前の日以後立替払いの請求日の前日までの期間において、支払期日が到来している定期給与および退職金で、総額が2万円以上のものについて、それらの8割に相当する額が支払われます。ただし、図表のような年齢に応じた上限額の設定もあります。  賃金を支払うことができなくなってもなお、事業活動を継続しようとする経営者があげる理由の大きな部分は、労働者たちの生活への影響が大きすぎる点を心配することも多いです。  しかしながら、賃金の立替払い制度の存在を知らない場合も多いように思われます。また、破産手続が開始された後においても、破産開始決定前3カ月間の賃金については、財団債権といって、破産手続において優先的に弁済をしなければならない債権とされており、使用者の財産がまったくないような場合はともかく、財産を換価したのちには、賃金の支払いを受ける可能性があります。  事業活動の廃止に向けて検討するにあたっては、これらの制度の内容をふまえたうえで、方針を定めることは重要であると思われます。 図表 未払賃金立替払制度の上限額 退職労働者の退職日における年齢 立替払いの上限額 45歳以上 296万円 30歳以上45歳未満 176万円 30歳未満 88万円 筆者作成 【P48-49】 科学の視点で読み解く  高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。 身体と心の疲労回復 国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡辺(わたなべ)恭良(やすよし) 第9回 アクティブレスト(積極的休養)のすすめ  読者のみなさんのなかには、仕事で多忙な日々を過ごしている方も少なくないと思います。働き方改革の浸透にともなって労働時間の管理は厳しくなったとはいえ、その分生産性の向上が求められるという場合もありますから、仕事をする際に感じる疲労度は以前とそれほど変わらないと感じている人もいるでしょう。  仕事が忙しくて疲れがたまったときの休日、「外出は控えて、家のなかでゴロゴロしていたい」、「平日に備えて寝だめをするために、いつまでもベッドのなかにいる」という人はいませんか。ところが、こうした休日の過ごし方は疲労回復には効果的ではなく、むしろストレッチやウォーキングなどの軽い運動に取り組むことで身体のコンディションを整え、疲労回復を図れるという考え方があります。これを「アクティブレスト(積極的休養)」といいます。  アクティブレストは、日常的にハードなトレーニングを重ねているプロのアスリートも実践している休養の取り方です。アクティブレストを日常生活で実践することで、効果的に疲労回復を図ることができます。  そこで今回はこの、アクティブレストについて紹介します。 「アクティブレスト」の考え方  アクティブレストは、疲労しているときに身体を軽く動かすことで血流の改善を図ることにより、このことで体内の疲労物質の体外への排出をうながして、疲労回復の効果を高めるとする考え方です。日本語では「積極的休養」と呼ばれており、安静や休養、睡眠などといった「静的休養」とは対になる考え方です。  アクティブレストは、すでにプロスポーツの世界ではかなり浸透しているといえます。プロスポーツでは、コンディションの整え方によって成績が左右されますから、次の試合に備えるための、試合の翌日の過ごし方が重要だとされています。  サッカーのJリーグでは、以前は、試合の翌日を「完全休養日」とすることが常識とされていましたが、アクティブレストの考え方を取り入れたチームが徐々に増え、現在では、試合の翌日にメンバーに集合をかけて、軽い運動に取り組むチームが多いといいます。その効果として、アクティブレストがチームに定着するにつれて、選手のコンディションは向上し、ケガも減ってプレーの質も向上する、という好循環が生まれていったそうです。 アクティブレストのメカニズム  それでは、アクティブレストがもたらす体の作用について考えてみましょう。一つめは、ストレッチや歩行などの軽い運動により、交感神経系が活動し始め、脳機能の鮮明化とともに血流が上がるので、疲労で溜まった老廃物や錆さびついた物質を体外に排出する機能が働くことです。  二つめは、睡眠やソファーでの休息などは同じ姿勢を続けることになるため、身体はそれほど動いていなくとも、逆に、身体のいくつかの部分を圧迫し、その部分の血流を低下・停滞させることになります。これを解除するために身体を軽く動かすことで、より多くの身体の部分に血流が増え、栄養物を運ぶとともに、やはり、老廃物などを排出することを促進します。  一つめと二つめの機序(仕組み、メカニズム)は、一見すると同じように見えますが、交感神経系などの自律神経系の活性化による「神経的血流改善」と「物理的血流改善」の双方が重要なメカニズムになっていると考えられます。  アクティブレストはデスクワークを行うときなどにも適用できます。デスクワーク中にときどき、身体を動かしたり、歩いたりすることで疲労が回復し、高い効率で仕事を続けることができるようになります。  講演会などで、多くの聴衆を集める評判のよい講演者のなかには、講演の途中に、ときどき聴衆に身体を動かしてもらったり、軽めの体操をやってもらったりしながら、聴衆を飽きさせることなく講演する人がいます。アクティブレストのメカニズムをよく理解している人といえるかもしれません。 職場や生活のなかでの実践  このように、アクティブレストは、軽めの運動を行うことによって疲労回復を図る取組みです。トレーニングウェアに着替えて、「さぁ、運動をしよう!」と身構える必要はありません。職場や日常生活のなかで気軽に取り入れてみることも可能なのです。 例えば、 ・パソコン作業の途中で、こまめに身体をほぐしてみる。また、作業の小休止の時間に、簡単にできる体操を取り入れてみる。 ・プリントアウトした書類を取りに行くときや、給湯室に飲み物などを取りに行くときなど、席を離れるときに、簡単なストレッチをする。 ・軽いヨガなどを立ったままでも行えるようなスペースと鏡を用意する。 ・エスカレーターやエレベーターを使わずに、数フロアだけ階段を使って上ってみる。 ・せっけんの泡によって軽い力でマッサージができるので、入浴したときに、手のひらでせっけんを泡立てて筋肉をマッサージしてみる。  などがあります。このように、少し工夫することでアクティブレストを実践することができます。  とくに高齢者が多い職場では、全社的な取組みとして、就業時間中にアクティブレストに取り組む時間を意識的に設けてみてはいかがでしょうか。アクティブレストが疲労回復を実現し、健康状態の改善、さらには生産性の向上につながるかもしれません。みなさんの職場でもぜひ、アクティブレストを試してみてください。 〔参考書籍〕  山本利春著『疲れたときは、からだを動かす! ―アクティブ レストのすすめ』(岩波書店) わたなべ・やすよし 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。 【P50-51】 TOPIC 1 海外からの視察概要【韓国】  「高齢化」は、日本だけでなく諸外国でもみられる問題であり、当機構においても、高齢者雇用推進の取組みについてのヒアリングを目的とした諸外国からの視察があります。  今回は、昨年ヒアリングに訪れた韓国からの視察団の様子とともに、参加者にお聞きした日本の高齢者雇用の取組みにおいて注目していることなどをご紹介します。  2019(令和元)年11月14日(木)、大韓民国企画財務省課長の金ヨンミン氏を団長とした視察団が、独立行政法人労働政策研究・研修機構(以下、「JILPT」)副統括研究員の呉学殊氏とともに、当機構を訪れました。  今回の視察の目的は、当機構(以下、「JEED」)の「高齢者雇用のために企業と労働者の方に行う支援の内容」、「高齢者雇用に関連して優秀な事例を開発・普及するために行っていること」、「高年齢者雇用アドバイザーの支援活動の内容とその成果」などのヒアリングです。  JEEDの森川善樹(よしき)理事より業務概要のほか、65歳超雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザー(以下、「プランナーなど」)による相談・援助の例や、高年齢者雇用開発コンテストによる表彰、好事例の収集・提供などについて紹介。その後の質疑応答では、視察団の方々からプランナーなどによる相談・助言の効果や各サービスの詳細について質問が挙がるとともに、「高齢社員の戦力化を図るうえで大事なこととは何か」といった高齢者雇用全体の視点などについても質問が熱心に寄せられ、高齢者雇用についての関心の高さがうかがえる視察となりました。 視察団に聞きました! Q1 韓国の高齢者雇用について、課題と考えられることは何ですか。 ◆韓国では法的に定年が60歳と定められている状況で、年金制度の改編により国民年金受給年齢が段階的に上がり(現在62歳、2033年65歳の予定)雇用と年金の制度的ミスマッチが発生しています。また、硬直的な年功賃金体系のため、企業は高齢者の雇用延長に、人件費の増額という負担を感じています。賃金体系改編、柔軟な労働時間制度、高齢者に最適な職務の開発など、高齢者の人事労務システムを合理的に改編しながら、高齢者の雇用延長を通じて、雇用と年金を制度的に連携させることが必要であると思います。 ◆韓国は世界で最も急速に高齢化が進むなか、最近発表された将来人口の特別推計によると、2025年には超高齢社会(65歳以上の高齢者が全人口に占める割合が21%)に突入すると予測されるとともに、2018年をピークに生産年齢人口(15〜64歳)の減少も進むことがわかりました。こうした人口構造の変化、生産年齢人口の減少という問題に対応するためには、高齢者の労働市場への参加拡大が重要な課題であると思います。  高齢者の労働市場への参加を拡大するためには、定年延長がまっ先に考えられますが、韓国では60歳以上の定年義務化が全面施行されてから3年も経っておらず、まだ有効性の検証がなされておりません。また、若年者の雇用の問題が深刻な状況であることを鑑(かんが)みると、定年延長よりも、高齢者には継続雇用を通じて長く働いてもらうように進めていくことが現実的な選択であると思います。そのためには、高齢者が現在の企業で長く働くことができた場合、企業にインセンティブを与えること、労働者が退職前に再就職支援を受けられるように支援すること、退職した高齢者層に特化した雇用のセーフティネットを構築することなどが重要な政策課題であると考えます。 Q2 日本の高齢者雇用の取組みで注目していることはありますか。 ◆日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」や高齢化対策と事業に注目しています。高年齢者雇用確保措置は定年延長、定年廃止、継続雇用制度の導入など、さまざまなオプションを与えながら65歳までの高齢者の雇用確保を図っており、企業の高年齢者雇用確保を制度的に要求しながらも、選択肢を多様化して企業の負担を軽減しています。また、「高年齢者雇用確保措置」が段階的に導入され、高齢者の雇用延長が現場でソフトランディングするようにしている点も印象的です。最近、日本の未来投資会議で、70歳までの雇用確保を模索しながら考察した、多様な方策などについても注目しています。また、JEEDが高齢者の雇用に関連して展開してきたさまざまな事業や活動にも関心を持っています。 ◆日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」の推進過程と政策的効果、そして同制度の実現のために、政府が企業のために支援した政策と事業に注目しています。  「65歳までの高年齢者雇用確保措置」は、定年制廃止、定年延長や定年を変更しない継続雇用制度の導入のいずれかを企業が採用するようにして65歳までの雇用を確保するための制度であり、継続雇用制度の導入の場合は、労使協定で基準を決めれば対象者を選別可能でしたが、2012(平成24)年の高年齢者雇用安定法改正により、希望者全員を対象に、雇用確保措置を義務づけました。韓国も短中期的には「65歳までの高年齢者雇用確保措置」と同様の制度の導入を検討している状況です。日本の「65歳までの高年齢者雇用確保措置」が段階的に導入され、高齢者の雇用延長が現場で定着している点に注目しています。 Q3 今回の視察の感想をお聞かせください。 ◆今回の視察を通じて、日本の高齢者雇用政策と事業について多くのことを学ぶことができました。日本政府とJEEDなど関連機関が、高齢者雇用の問題に積極的に対処している姿が印象的でした。政策企画者や事業の担当者が、いずれも担当業務について任せられた役割を、責任感と熱意を持って果たしているという印象を強く受けました。 ◆今回の視察は、韓国より高齢化が先に速まった日本の先進的な高齢者雇用政策と事業について学ぶことができました。今後の韓国の高齢者雇用政策を企画・立案するために多くの示唆が得られたと考えています。日本政府とJEED、JILPTなどが、高齢化問題を克服するため、実態に基づくきめ細かな制度を設計し、その制度を積極的に推進する姿が印象的でした。 写真のキャプション 視察団のみなさんと当機構の森川理事ほか 【P52-53】 TOPIC 2 「エイジマネジメント研究会」がシンポジウムを開催 「高齢者が健康・安全に働くための職場づくり」をテーマに発表  2019(令和元)年11月13日、公益社団法人日本産業衛生学会エイジマネジメント研究会が主催、栃木労働局が後援するシンポジウムが栃木県宇都宮市で開催された。テーマは「高齢者が健康・安全に働くための職場づくり」。高齢者雇用において欠かせない高齢者の健康と安全確保について、各方面からの報告が行われた。 ◇ ◇ ◇ 胎児期から関係するエイジマネジメントの重要性を示唆  メインシンポジウムの第一部に登壇したのは、千葉大学大学院医学研究院で環境労働衛生学の講師を務める能川(のがわ)和浩氏。能川氏は「生涯現役社会のエイジマネジメント」と題して発表を行った。高齢者の身体機能などについては、平均をとればその傾向を導き出せるものの、身体疾患の観点、身体機能・認知機能の観点、生活習慣・社会的環境の観点(食事、運動、家族構成など)で、個人差が大きいことが特徴と述べた。  次に、予防医学とは曝露(ばくろ)(危険因子)をできるだけ制御することを推進する医学と説明し、血圧、コレステロール、タバコという三代危険因子による病気の発症率の高さを示したうえで、世代ごとの特徴に合わせた適切な産業保健活動の重要性を示唆した。  最近話題の研究の一つとして、妊娠初期の胎児の際に経験した飢餓は、人生のなかでさまざまな体質変化や病気の原因になるという説を引き合いに、エイジマネジメントは胎児のときから必要であり、働く妊婦は母子保健だけでなく、産業保健も必要との考えを示した。  また、米国における予防医学のトピックスとして小児期の睡眠に関する研究を紹介。小児科学会が子どもに8〜10時間の睡眠を推奨しているアメリカでは、推奨される睡眠を取らせるために学校の始業時間を遅らせた州で、成績の向上と出席率の向上が見られたという。このことから、子どもの健康を守るためには学校保健と産業保健の連携が重要と述べた。  最後に、大手企業が実施した定年退職後の健康追跡調査の結果を報告し、在職中の健康づくりは退職後の健康にもつながると結論づけた。 多発する高齢労働者の転倒災害の分析と取組みを発表  第二部に登壇したのは、株式会社東芝人事・総務部総務企画室安全保健担当の羽深(はぶか)勝也(かつや)氏。「多発する高年齢労働者層の労働災害の実態と取組み」をテーマに、東芝グループの現状として、業務上災害発生件数のデータと傾向を発表した。労働災害のなかでは突出して転倒が多く、しかも年齢分布では45歳以上に顕著であると説明し、高年齢労働者の労働災害の防止にあたっては転倒対策が重要だと指摘。そこで、同グループの取組みとして、安全衛生推進計画を3段階にまとめ、グループ内でチェックシートを使って点検を実施。点検結果から5S※1、荷物などの置き方、転倒パターンを分析し、転倒リスクの要因を状態面(通路、階段、天候、履物)と行動面(体勢・姿勢・加齢、柔軟性、行動・経緯)に分類、これらを転倒災害防止のためにチェックする必要がある注意喚起を行った。  さらに同グループが「エイジアクション100」(中央労働災害防止協会)※2を活用して実施した取組みを紹介。まず、管理者にヒアリングするなどして現状の把握とチェックを行い、次にエイジアクション100のチェックリストを使って、溶接部門や組立て部門、関係会社など各事業所で点検を実施した。点検の結果、改善点や良好な点の洗い出しにつながったと述べ、エイジアクション100活用の有効性を示した。また同グループで新たにスタートした30、40、50代の年代別の定期健診について触れ、健康推進の取組みについての報告を行った。最後に、安全・健康の提供が企業の使命であるとして、発表を締めくくった。 高齢者を活用する全国の中小企業の事例を紹介  第三部には、当機構の前雇用推進・研究部長で、現在、厚生労働省栃木労働局の浅野浩美局長が登壇した。「高齢者活用企業に学ぶ安全・健康に働き続けるための取り組み・工夫」と題し、全国での中小企業の好事例を紹介した。  高齢者の強みはスキル、経験などであるが、一方で個人差、モチベーション、健康面が課題になることがある。こうした特徴を持つ高齢者が働きやすい職場づくりの工夫、また健康で安全に、より長い期間働いてもらうための工夫として、勤務時間や、多能工化、業務内容の見直しをしている企業があることなどを紹介。  さらに栃木県で高齢者が活躍している企業事例として、製造業、運送業、印刷業、社会福祉法人、卸売業、警備業の事例を報告。また、全国から職場環境の整備や、徹底した健康管理支援や安全教育、体力的負担の軽減を行っている会社などを紹介した。  まとめとして、当機構の調査結果をもとに人事管理制度を整備し、処遇・人事評価を改善するほどに、高齢従業員のモチベーションの課題は減少し、健康面が課題になると述べた。 ◇ ◇ ◇  同シンポジウムを主催したエイジマネジメント研究会は「加齢に伴(ともな)う諸機能の変化を知り、適切な対応・対策を行うことで暦年齢にかかわらず、活き活きと働くことができる力」を「エイジマネジメント力」と位置づけ、労働者の健康度や生活機能、労働適応能力の保持・増進にはどのような取組みが必要なのか学術的、実務的な観点から検討している団体。  今回のシンポジウムはエイジマネジメント研究会が一般に向けた情報発信を目的に開催しているもので、これまでに20回、秋のシンポジウムは7回目を数える。メインシンポジストの報告後は、総合討議と一般演題の発表が行われるなど、さまざまなプログラムが開催され、シンポジストの軽快な語り口に時折会場内が笑いに包まれるなど、終始和やかな雰囲気のうちに閉幕した。 ※1 5S……整理、整頓、清掃、清潔、しつけ ※2 エイジアクション100……高年齢労働者の安全と健康確保のための100の取組みを盛り込んだチェックリストを活用して、職場の課題を洗い出し、改善に向けての取組みを進めるための「職場改善ツール」 写真のキャプション 会場の様子 【P54-55】 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる職場づくりの事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用環境整備への具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度の導入 A賃金制度、人事評価制度の見直し B多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 C各制度の導入までのプロセス・運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏 まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組み @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組みや高齢従業員の役割等の明確化 A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(IT化へのフォロー、危険業務等からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D新職場の創設・職務の開発 E中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施 等 高年齢者の雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善(高齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化 B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/r2_koyo_boshu.html)からも入 手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日 令和2年3月31日(火)当日消印有効 3.応募先 各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成29年4月1日〜令和元年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)平成31年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和元年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)平成31年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、希望者全員が65歳まで働ける制度には該当しないことから、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 学識経験者などから構成される審査委員会を設置し、審査します。 Y 審査結果発表など 令和2年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課  〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号  TEL:043-297-9527  E-Mail:tkjyoke@jeed.or.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課  連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください!  当機構の「65歳超雇用推進事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。「jeed 65歳超 事例サイト」で検索いただくか、URL:https://www.elder.jeed.or.jp/をご指定ください。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」で検索いただくか、URL:http://www.jeed.or.jp/elderly/data/pamphlet_company70/index.html をご指定ください。 jeed 65歳超 事例サイト 検索 【P56-57】 BOOKS 人材喪失リスク低減のために必要な知識を過不足なく網羅 認知症介護と仕事の両立ハンドブック 角田(つのだ)とよ子 著/ 経団連出版/ 1500円+税  要介護認定者数の増加にともない、親の介護を行う社員の人材喪失リスクに危機感をおぼえる企業が増えてきているという。企業規模にかかわらず、介護離職防止対策の構築が、今後の事業の安定的な継続のカギになるといえるだろう。  こうした動きをとらえ、本書は認知症介護に特化した介護離職防止対策の入門書として刊行された。全体の構成は「認知症の基礎知識」、「介護をプロジェクトにする」、「実践 認知症介護」、「公的支援の仕組みと介護休業法」、そして「認知症予防、症状改善Q&A」の5章からなり、介護にかかわりがなかった人にも理解しやすい、平易な言葉でまとめられている。  一読して実感したのは、介護を「個々の家族の問題と考えずに、上の世代を下の世代が支える世代交代の儀式」ととらえることの重要性だ。介護に悩みを抱え、孤立しがちな人に寄り添ってきた著者ならではの思いが込められているのであろう。企業の人事労務担当者はもとより、中高年の従業員が本書を読むことで、万一の場合の備えができる好著としておすすめしたい。  なお、認知症の医療にかかわる解説は、日本老年精神医学会指導医の須貝(すがい)佑一(ゆういち)氏が監修を務めており、本書の信頼性を一層高めている。 企業がとるべき対応策をわかりやすく解説 働き方改革関連法 企業対応と運用の実務がわかる本 佐藤広一(ひろかず) 著/ 日本実業出版社/ 1700円+税  多様な働き方の実現や長時間労働の是正などを目ざして2018年に成立した「働き方改革関連法」が、昨年4月より順次施行されている。労働力人口の減少が加速するなか、企業が持続可能な成長を遂げるためには、働き方改革の推進が不可欠といわれるが、複数の法律が対象となり内容が多岐にわたることなどから、対応に苦労している企業が多いともいわれている。  本書は、特定社会保険労務士として多くの企業の人事労務相談や人事労務領域のコンサルティングにかかわる著者が、働き方改革関連法に関して企業として知っておくべきことや、準備しておきたい対応策をわかりやすく説いている。労働施策総合推進法、労働基準法、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、パートタイム・有期雇用労働法、労働者派遣法の六つの法律の改正事項を取り上げており、例えば、パートタイム・有期雇用労働法の章では、正社員と非正規社員との不合理な待遇差の禁止について、実務上での注意点を解説。定年後に再雇用された有期雇用労働者にも触れている。  「働き方改革関連法」施行に際し「対応策を知りたい」と悩む経営者や人事労務担当者にとって、実用的な一冊といえよう。 あきらめずに働き続けたい人に贈る実践の記録 未来を見つめて がんと共に生き、考え、働く 治療と仕事の両立を目指して 石川邦子(くにこ) 著/ 方ほう丈じょう社/ 1500円+税  著者の石川邦子氏は、本誌2018年11月号「リーダーズトーク」に登場していただき、キャリアカウンセラーとしての視点から「人生の転機との向き合い方」について語っていただいた。そこでも触れられているが、著者は58歳のときにがんに罹患し、それ以来、がん治療と仕事の両立を実践している。本書には、病気という大きな転機と向き合い、仕事との両立を実践してきた経験がまとめられている。  本書は、近年のがん治療における基礎的な知識の紹介に始まり、がんと告知されたときに実践してほしいこと、がんサバイバーとしてのキャリアデザイン、がん治療におけるお金の話、そして治療と仕事の両立が可能になる職場づくりにおける現状と課題などを取り上げ、それぞれ具体的な取組みとともにまとめられている。  治療と仕事の両立は、高齢期まで働くためにクリアすべき課題の一つである。高齢期には、がんにかぎらず、だれもが予期せぬ病気に罹患する可能性が高まる。そのときに安易に仕事を手放さないことが、これからの高齢者雇用の充実につながると思われる。人事労務担当者ばかりでなく、中高年期以降の働く人にもぜひ手に取ってもらいたい。 人事労務管理、職場のマネジメントのすべてに「プラスの視点」を入れる ここからはじめる 働く人のポジティブメンタルヘルス ―事例で学ぶ考え方と実践ポイント 川上(かわかみ)憲人(のりと) 著/ 大修館(たいしゅうかん)書店/ 1700円+税  マイナスをゼロに戻すようなネガティブな心の健康状態への対応とは異なり、プラスの視点を持って、より広い範囲の人を対象とする「働く人の『ポジティブメンタルヘルス』」が、職場のメンタルヘルスの新しい考え方と対策として注目されている。従業員のポジティブな心理状態を高めることを目的とした活動で、メンタルヘルス不調の予防や生産性向上を図る対策として、大きな可能性を持つとされている。本書は、22の事例を交えて、ポジティブメンタルヘルスの考え方から始め方、実践のポイントをわかりやすく解説。人事労務担当者や管理監督者に役立つ一冊となっている。  ポジティブメンタルヘルスの取組みは、すでに行っている施策に「ポジティブな視点」を入れることから始めることができ、例えば多様な従業員の存在に配慮した取組みやワークライフバランス施策、チームワークに着目した評価制度も、従業員のポジティブメンタルヘルスを向上させてくれるものになるという。  職場のメンタルヘルス対策の基本的な考え方やポイントをまとめた、著者の前著『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』(本誌2017年12月号参照)とともに参照してほしい。 年間3千件超の経営相談をこなす著者が明かす、企業経営に欠かせないエッセンス 「小さくても強い会社」の社長になる! めざせホワイト企業!会社のブランド力の高め方 村松(むらまつ)貴通(たかみち) 著/ ごま書房新社/ 1500円+税  著者は、社会保険労務士として年間3000件以上の経営相談を行い、顧問先は約300社、自らも人事コンサルティング会社を経営しており、その18年間の体験と実績を通して得た、「小さくても強い会社」をつくるための実務、法律知識などを、本書を通じて伝えている。  本書で対象としている会社は、経営者と従業員とを合わせて10人から300人ほどの規模。「強い会社」とは、「小さな会社ならではの機動性、意思統一のやりやすさがあり、喜怒哀楽(きどあいらく)を一緒に体験でき、地元に根ざして堅く実績を上げられる会社」だとしている。  第1章では「成長する会社」に共通する特徴や経営の仕方について紹介。「将来にわたり社員の給与体系をオープンにする」、「経営陣を身内で占めず、女性・年配の社員が多い」などを特徴として挙げている。  第2章では業績向上の源として人事制度を明確に構築することの必要性を説き、第3章では労務リスクについて解説。そのうえで、会社のブランド力が高まる「ホワイト企業」(=魅力的な企業)になるための道筋を示している。  企業の経営者や人事労務担当者にとって、参考になる一冊だといえるだろう。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 2020.2 行政・関係団体 厚生労働省 職業能力開発関係厚生労働大臣表彰等を決定  厚生労働省は、11月の「人材開発促進月間」にあわせて2019(令和元)年度「職業能力開発関係厚生労働大臣表彰」の受賞者(24事業所、22団体、119人)と「職業能力開発論文コンクール」の受賞作品(7論文)を決定した。  職業能力開発関係厚生労働大臣表彰は、認定職業訓練の実施状況がきわめて優良な事業所・団体、認定職業訓練の振興・育成に多大の貢献があった人、また、技能検定に関し永年にわたり多大の貢献があり、ほかの模範となる事業所・団体などに対して行われる。今年度の受賞者は、認定職業訓練関係が団体1団体、功労者22人、技能検定関係が事業所20社、団体17団体、功労者97人、技能振興関係が事業所4社、団体4団体となっている。  また、職業能力開発論文コンクールは、職業能力開発にたずさわっている人が執筆した論文のなかから優秀なものを選び成果を讃えるもので、1973年度から実施(第2回の1974年度以降は隔年実施)され、今回で30回目となる。今年度は、厚生労働大臣賞・特選に、山中裕二さん(当機構香川支部四国職業能力開発大学校)の「環境エネルギー技術をアクティブラーニングで学ぶ訓練効果の検証と継続的改善」が選ばれた。  このほか、厚生労働大臣賞・入選2論文、特別賞・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞3論文、特別賞・中央職業能力開発協会会長賞1論文が選ばれた。 厚生労働省 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)を決定  厚生労働省は、2019(令和元)年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」の受賞者を決定。昨年11月25日に開催された「『働く、が変わる』テレワークイベント」(総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省の共催)において、表彰式が行われた。  テレワークとは、パソコンやインターネットなどの情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方をさし、育児などと仕事の両立などワーク・ライフ・バランスの実現や向上に役立つほか、生産性の向上や雇用の創出につながるなど、高齢者雇用推進も含めて、さまざまなメリットがあるといわれ、推進されている。  この表彰制度は、テレワークの活用によって、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現に顕著な成果をあげた企業・団体や個人を表彰するもの。  5回目となる今年度の表彰では、「優秀賞」に1社、「特別奨励賞」に4社、「個人賞」に1人が選ばれた。今年度の受賞者は次の通り。 【優秀賞】  大同生命保険株式会社 【特別奨励賞】  株式会社キャスター  東急株式会社  株式会社リコー  リコーITソリューションズ株式会社 【個人賞】  角(すみ)香(かおり)里氏(特定非営利活動法人チルドリン徳島) 厚生労働省 イクメン企業アワード2019・イクボスアワード2019の受賞企業・受賞者を決定  厚生労働省は、「イクメン企業アワード2019」の受賞企業と「イクボスアワード2019」の受賞者を決定した。これらのアワードは、育児を積極的に行う男性=「イクメン」を応援し、「イクメンプロジェクト」の一環として、働きながら安心して子どもを産み育てることができる労働環境の整備推進を目的に、企業や個人を表彰するもの。 ■イクメン企業アワード2019両立支援部門  男性従業員の育児と仕事の両立を推進し、業務改善を図る企業を表彰するもので、7回目を迎える。今回はグランプリ2社、特別奨励賞2社を選定した。 【グランプリ】  アフラック生命保険株式会社  株式会社コーソル 【特別奨励賞】  全日本空輸株式会社  パシフィックコンサルタンツ株式会社 ■イクボスアワード2019  部下の仕事と育児の両立を支援する管理職=「イクボス」を企業からの推薦によって募集し、表彰するもの。6回目となる今回は、グランプリ2人、特別奨励賞2人を選定した。 【グランプリ】  オリックス・クレジット株式会社 古賀(こが)唯泰(ただやす)氏  株式会社シンコーメタリコン 玉置(たまおき)千春(ちはる)氏 【特別奨励賞】  社会福祉法人あいのわ福祉会 佐野佑(ゆう)氏  都市産業株式会社 藤田勲(いさお)氏 厚生労働省 2019年度「現代の名工」  厚生労働省は、その道で第一人者と目され、卓越した技能を有する現役の技能者150人を「現代の名工」として決定し、昨年11月11日、東京都内で表彰式を行った。  「現代の名工」の表彰制度は、きわめてすぐれた技能を有し、技能を通じて労働者の福祉の増進と産業の発展に寄与し、ほかの技能者の模範と認められる現役の技能者に対して、厚生労働大臣が表彰を行うもの。1967(昭和42)年度に第1回の表彰が行われて以来、今年度が53回目となり、今回受賞の150人を含めて、これまで6496人が表彰を受けている。  今年度の主な受賞者は、織布工(しょくふこう)としてポリエステルやレーヨン、和紙や絹などを織り込んだベルベット生地製造に卓越した技能を有し、後進の指導・育成にも貢献している山ア(やまざき)昌二(まさじ)さん(83歳)、木製建具製造工として「組子細工(くみこざいく)」の製作、特に「三ツ組手亀甲(みつくできっこう)」の技能に卓越、全国建具展示会などで13度の受賞を果たし、また、若年技能者への組子の技能伝承に努めている遠藤清さん(79歳)、美容師として古墳時代から現代の舞妓(まいこ)・芸妓(げいぎ)・嶋原太夫(たゆう)まで多種多様な日本髪の結髪(けっぱつ)、各時代の装束などの知識にかかわる卓越した技能を有し、最高位の芸妓である嶋原「太夫」の結髪を手がける現存唯一の技能者である山中惠美子さん(90歳)ら。  なお、本誌グラビア「技を支える」では、今回の受賞者から、鋳込(いこみ)工の近藤幸男(ゆきお)さん(2020年3月号)、婦人・子供服注文仕立職の小嶌(こじま)美恵子さん(2020年4月号)を紹介する予定。 調査・研究 日本産業カウンセラー協会 「働く人の電話相談室」集計結果  一般社団法人日本産業カウンセラー協会は、2019(令和元)年9月10日から12日までの3日間にわたって実施した「第13回働く人の電話相談室」の集計結果をまとめた。  それによると、正規社員、非正規社員、自営業、専業主婦(夫)、無職など延べ695人から、計1159件の相談が寄せられた。相談者数、件数とも前回2018年に比べて約2割減少したが、正規社員(前回132人、今回165人)と非正規社員(同162人、同171人)からの相談が増加。それを反映して、「職場の悩み」の相談件数が大幅増となり、働き方改革元年に、依然として労働環境や労働条件に関する悩みが顕在化していることが明らかになった。また、20代、30代の相談件数が昨年を上回る結果となった。  相談内容で最も多かったのは、「職場の悩み」(37・9%)、次いで、「メンタル不調・病気の悩み」(16・6%)、「自分自身に関する悩み」(12・0%)、「キャリアに関する悩み」(11・7%)、「家族に関する悩み」(10・2%)、「生活上の悩み」(8・1%)。前回に比べて、「職場の悩み」(前回27・3%)が大きく増加した。「職場の悩み」の内訳をみると、前回に比べて「職場の人間関係」、「パワハラ」、「労働条件」などが増加し、なかでも「パワハラ」は一昨年の集計結果から増加傾向が続いている。年齢別でみた相談者の割合は、昨年までと同様に50代が最も多く全体の3割を占めている。 発行物 JILPT 病気の治療と仕事の両立に関するヒアリング調査報告書を刊行  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、『資料シリーズ bQ18 病気の治療と仕事の両立に関するヒアリング調査―企業調査・患者調査―』を刊行した。  より多くの人々が可能なかぎり支え手として活躍できる社会の実現が喫緊の課題になりつつあるなか、病気を理由に仕事を辞めざるを得ない、あるいは治療と仕事の両立が困難な状況に直面している人も多いといわれている。働き方改革において、治療と仕事の両立にかかわる支援の強化が求められていることをふまえ、厚生労働省からの要請を受けたJILPTでは、がん患者・難病患者など(がん・脳血管疾患・心疾患・肝炎・糖尿病・難病)の就労実態を把握するため、企業と患者のヒアリング調査を実施した。企業ヒアリングは大企業9社に実施し、社員の健康管理体制、治療にかかわる制度、疾患罹患者の就業継続や退職状況などを調査。患者ヒアリングは疾患経験がある20人に実施し、治療、復帰、会社側の配慮の状況や、就業の継続・退職の状況などを調査した。第T部は総論、第U部は企業、患者の事例を掲載。企業での治療と仕事の両立にかかわる施策の企画・立案の参考資料としても活用されることが期待される。  報告書は左記のURLからダウンロードが可能で、購入する際の価格は2500円(税別)。 https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/218.html 【P60】 次号予告 3月号 特集 人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム― リーダーズトーク 篠原菊紀さん(公立諏訪東京理科大学 教授) 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。   URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder  A1冊からのご購入を希望される方   Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 清家武彦……一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 上席主幹 深尾凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員 藤村博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下 陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア 京子……アテナHROD代表、学習院大学特別客員教授 編集後記 ●高齢者が持つ知識や長年の経験などを自社の業務に最大限活かし、高齢社員が現役社員をしのぐほどの実績を上げ続けるなど、ビジネスの最前線で高齢者が活躍している企業は少なくありません。  そこで今号の第1特集では「会社を牽引するベテランプレイヤー」と題し、実際の活躍事例を紹介しました。ベテランプレイヤーがその力を存分に発揮するためには、企業が高齢者を活用するための方針を打ち出し、その資質を活かすためのマネジメントを行うことが不可欠です。「アンチ・エイジング」と「アンチ・アンチ・エイジング」の視点から、シニア・マネジメントについて解説した武蔵野大学経営学部准教授の宍戸拓人先生による総論とあわせて参考にしていただければ幸いです。 ●第2特集は「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」。当機構では、生涯現役社会の普及啓発、生涯現役を目ざす職場づくりに向けた先進事例の紹介を目的に、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。本年度は厚生労働省のほか関係団体のご協力のもと、「人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ」をテーマに、昨年の10月から12月にかけて、全国6カ所の会場で開催しました。  今号では、北海道・富山・香川の3会場のレポートをお届けしました(東京・大阪・福岡会場の様子は次号に掲載します)。高齢社員の人事管理に精通した学習院大学名誉教授の今野浩一郎先生による講演や、高齢者の活躍推進に取り組む先進企業の事例発表など、高齢者雇用に取り組む際のヒントが満載です。 ●令和2年度「高年齢者雇用開発コンテスト」の応募締切は3月31日(火)です。生涯現役で活躍できる職場環境の創出に取り組んでいる、みなさまからのご応募をお待ちしております。 月刊エルダー2月号 No.484 ●発行日−−令和2年2月1日(第42巻 第2号 通巻484号) ●発 行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 片淵仁文 編集人−−企画部次長 中村雅子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2  TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL http://www.jeed.or.jp  メールアドレス elder@jeed.or.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5  TEL 03(3915)6401  FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-732-9 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.309 労をいとわず自由を忘れずありのままの自然をいかす 染織職人 小熊(おぐま)素子(もとこ)さん(70歳) 古い布、焼き物、宝石、ガラスなども好きで見ます。仕事にすぐ結びつかなくても、いろいろ見て目を肥やしたほうがいい。 だれも使わない自然素材ももったいないから使ってみる  東京都練馬区石神井台(しゃくじいだい)の閑静な住宅地に、看板もない工房がある。  しかし、一歩入ると、部屋いっぱいに大きな木製のはた織り機。コルク敷きの床に、二重サッシの窓は、音が響かない防音仕様だ。  棚には白い生糸や、草木で染めた色とりどりの糸、研究ノート、美術書や資料が並んでいる。  この染織工房の主(あるじ)、小熊素子さんは木の枝を折り、染色の材料を準備していた。  「今日は石神井公園でシラカシの小枝を拾ってきました。これを煮出して、糸を渋茶か白茶の色に染めたいと思っています」  草木で糸を染め、和服用の反物を織る。その合間に、きびそ※2やたま糸※3といった通常は絹織物に使わない素材を活かして形にする。「えぼし」や「えまき」のように、ほかのデザイナーとのコラボ作品もある(61頁写真参照)。  実は、この日着ているシャツも生糸の原料となるまゆ≠輸入したときの布の袋から仕立てたもの。藍染めの絣かすりをあててつくろった、デザインもおしゃれ。節約だと笑う小熊さんだが、美意識もエコ意識も若いころからの筋金入りだ。 郡上紬(ぐじょうつむぎ)※4の宗廣(むねひろ)力三(りきぞう)氏に師事さらに京都で復元染めを習う  昔からものづくりが好きだった小熊さん。生活デザインを学んだ短期大学時代には、建築現場で拾った木材をノミで彫ってトーテムポール※5にするなど、周囲から「自由な発想をする人」といわれていた。  やがて、郡上紬を再興した宗廣力三氏(後に人間国宝)のもと、住み込みではた織りを手伝い、仕事を覚えた。当時の仲間とはいまも交流があるという。  「楽しかったですよ。8人ぐらいの共同生活。朝起きてラジオ体操をして、朝食を当番制で準備しました。畑もあって、お茶摘みしたり、柿もぎしたり」  自然豊かな岐阜県郡上八幡(ぐじょうはちまん)で暮らし、自然素材の魅力を確信した小熊さんはその後、京都市の龍村(たつむら)美術織物(明治27年創業の老舗織物会社)に通い、皇室の式典などに使われる品々の復元染めを教わった。ここでは昔ながらの、「わらの灰」などを使って染色した。  自然の色には、人工の色にはない魅力があると小熊さんは話す。  「赤は茜。青は藍。植物からとった色は、赤と青を合わせても反発しないんです。しかも、そのときどきで微妙に色が違う。もし、そのときほしい色が出なかったとしても、その色は後で使えばいいんです」  50年にわたる研究ノートには、材料の重さや染料のパーセンテージなどの数字が細かく並ぶ。  「染めは理科の実験のようでもあり、色が変化していく過程におもしろさもあります。気に入った色が出るまで、次は染料を何%にしようとか考えます」  そして、織りのおもしろさは、織りはじめだと語る。  「経糸(たていと)を櫛状の綜絖にかけて、何を横から入れようかと柄を決めるのが楽しいです」  文様はすべてオリジナル。経糸と緯糸(よこいと)が交差してできる縦横無尽のデザインは尽きることがない。  たいへんなのは、織りの作業だ。高い品質で完成させるには、気持ちの安定が大事だという。  「気持ちが変わると織り目にも表れます。もし、織り目が飛んだり、ひっかかったりすると直せないので、戻ってやり直しです。着尺は織るのに1カ月かかるから、その間は遊びにも行けません」 健康的でストレスのないコンディションづくり  そうして大きな仕事を終えると友人の個展や美術展に足を運び、人と話すという小熊さん。  日々の暮らしでは散歩や草取りのボランティア、スイミングを続けていて、健康的だ。  自然の素材で満ちている工房も心地よく、ストレスを感じない。それを伝えると「気に入らないものは置かないから」と小熊さんは茶目っ気たっぷりに笑って答えた。何よりも、ご自身が自然体だった。 小熊素子染織工房 TEL:03(3928)0795 (撮影・福田栄夫/取材・朝倉まつり) ※1 筬……織り機の付属用具。竹の薄片を櫛の歯のように並べ、枠をつけたもの。織り物の幅と経たて糸いとをととのえ、杼で打ち込まれた緯よこ糸いとを押さえて織り目の密度を決める ※2 きびそ……蚕がまゆをつくる際に、最初にはき出す糸。繊維としては太くて不均一なため、従来はほとんど使われなかった素材。独特の質感と風合いがあり、現在、各方面で注目されている ※3 たま糸……一つのまゆのなかに2匹以上のさなぎが入った「たままゆ」から採った糸のことで、糸に節ができる。節糸とも呼ぶ ※4 郡上紬……岐阜県郡上市八幡町で織られる紬織物 ※5 トーテムポール……北米大陸の北西沿岸部に住む先住民の多くが家のまわりや墓地などに立てた柱状の木造彫刻 写真のキャプション 大判のストール「きびたま えまき」(左)と、紐で留める烏帽子「きびたま えぼし」(右)。暖かく、野趣があり洋装にも和装にも合う 両足で綜絖(そうこう)を上げ下げし、両手で糸と糸の間を杼(ひ)で通して筬(おさ)※1で打ち込む。両手と両足を規則正しく動かし、目はなるべく使わない 緯糸を左右から通す道具、杼。宗廣力三先生の奥様が卒業記念にと贈ってくれた杼をいまも使い続ける 棚の上段の白は、染める前の生糸。中下段が草木染めされたもの 寸胴(ずんどう)鍋で草木を煮出し、糸を染める染め場。力作業だが、特注のバーで絞りやすく工夫 集めた草木を染めの原料にする準備も手作業。一つひとつの自然素材を大事にする小熊さん お気に入りの格子柄。左は野茨(のいばら)の茎と葉で染めた糸から。右は残った糸をひらめきで組み合わせたもの 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は「かなひろい」です。認知機能テストでよく使われるテストの一つです。文章をきちんと理解しながら、指定の文字を数えましょう。脳のメモ帳機能が鍛えられます。 第33回 目標1問2分 かなひろいテスト 下の文章を声に出して読みながら、「あ・い・う・え・お」を見つけて、何個あるか数えてください。 ※数えるときに指を折る、メモをとるなどはしないでください。 問1 にほんのさとやまはきのこのほうこです。やまとさととのきょうかいせんには、ひあたりのよいなだらかなしゃめんがひろがり、ならやくぬぎ、あるいはくりのきなどのぞうきばやしがあります。 永山久夫「日本史にみる長寿食」(『エルダー』2019年9月号)より 問2 えのもとたけあきはばくまつのばくふで、かいぐんのたいしょうだった。しんせいふぐんがえどをそうこうげきしたときには、えどわんにばくふかんたいをひきいてたいきしていた。 童門冬二「江戸から東京へ」(『エルダー』2019年6月号)より 「かなひろいテスト」とワーキングメモリ  今回の脳トレを正解できたとすれば、あなたの脳はよく働いています。1、2個ほど数え間違えたとしても上出来です。しかし、途中で数がわからなくなったり、目標解答時間を大幅に超えてしまったりすると、少し気をつけた方がいいかもしれません。  「かなひろいテスト」では、情報を一時的に記憶(保持)しながら、ほかの作業を行う、脳の同時処理能力が鍛えられます。このとき使われる“脳のメモ帳機能”をワーキングメモリといいます。頭のなかの情報を整理したり、段取りをつけたり、高度な知的活動の中核をになう機能です。この機能が低下すると、日々の仕事や家事などの処理能力が低下してしまいます。  また、今回の脳トレは、時間をおいてから、再チャレンジすることをおすすめします。その際、かなの数を数えると同時に、文章の内容を理解してみてください。両方に注意を向けることで、ワーキングメモリをより鍛えることができます。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 問1→9個 問2→14個 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2020年2月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 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働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするために、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内 容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者の雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 ※応募資格の詳細は、本誌54〜55頁をご覧ください。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 詳しい募集内 容、応募方法などにつきましては、本誌54〜55頁をご覧ください。 応募締切日 令和2年3月31日(火) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65頁をご覧ください。 2020 2 令和2年2月1日発行(毎月1回1日発行) 第42巻第2号通巻484号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会