【表紙2】 『65歳超雇用推進事例サイト』がリニューアルオープンしました! https://www.elder.jeed.or.jp スマートフォンからも見やすい! リニューアルオープン 82社91事例を豊富なキーワードで簡単検索 66歳以上まで働ける企業 定年が61歳以上 制度改善 or 条件を変更する イベントの案内、研究資料など「65歳超雇用推進」関連情報をまとめて見られます! jeed 65歳超 事例サイト 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.elder.jeed.or.jpであることを確認のうえアクセスしてください 雇用推進・研究部 研究開発課 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.59 脳の力は年齢とともに伸び続ける「報酬予測」が新規学習の意欲を引き出す 公立諏訪東京理科大学 工学部 情報応用工学科 教授 医療介護健康工学部門長 篠原菊紀さん しのはら・きくのり 1960(昭和35)年生まれ。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを用いた脳活動の研究などに従事。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)ほか、本誌「イキイキ働くための脳力アップトレーニング!」(64頁掲載)など、著書多数。  加齢による影響は身体機能の変化だけではありません。「脳」機能にも変化が起こることをご存じでしょうか。記憶力などの一部の機能は衰えることもあるようですが、語彙(ごい)力など60歳を超えても伸び続ける機能もあるといいます。今回は、本誌の人気連載、「イキイキ働くための脳力アップトレーニング!」の執筆者で脳科学に詳しい篠原菊紀さんに、脳科学の視点から高齢者と仕事について、お話をうかがいました。 加齢により低下する「流動性知能」と加齢により伸びる「結晶性知能」 ―脳はさまざまな機能を持っています。加齢によって、脳の機能はどのように変化するのでしょうか。 篠原 人間の脳は年齢とともに衰える一方だと考えがちですが、そうではありません。脳が持つ機能はたくさんあります。研究報告※によると、「情報処理能力」と「記憶力」のピークは18歳前後、名前を記憶する力はそれより少し遅く22〜23歳がピークとなり、その後落ちていきます。  一方、「集中力」は若い人が優れていると思われがちですが、そのピークは43歳です。また、顔の微妙な表情からその人の感情を読みとる「感情認知能力」のピークは48歳。「基本的な計算能力」は50歳。「新しい情報を学び、理解する能力」のピークも50歳です。これは仕事のなかでつちかった知識や経験を、異なる業種・仕事でも活かす力です。さらに「語彙力」のピークは67歳で、これも年齢とともに蓄積されるので若い人に劣ることはありません。しかも、これらの能力のピークはあくまで平均値にすぎませんし、鍛えれば伸びるのです。  人間の脳には、計算力や暗記力、思考力など、経験とは無関係な「流動性知能」と、知識や経験などの蓄積により、累積的に伸びていく「結晶性知能」の二つの機能があります。いわゆる「知能テスト」は、この二つのうち、「流動性知能」を調べるためのものですが、実は、知能テストをくり返すと成績が向上することがわかっています。知能テストの経験が累積され、結晶性知能が働くからです。  一方で、結晶性知能の代表ともいえるのが「語彙(ごい)力」ですが、「頭ではわかっているのに、言葉が出てこない」といったことがあります。これには、知識を引き出すための「流動性知能」の衰えが影響しています。  つまり、「加齢により脳の力が衰える」、というのは間違いで、「衰える部分もあれば、伸びる部分もある」、というのが正しい答えです。  人間の脳は知恵、知識、経験を溜め込んでいく「メモリー・マシン」です。記録された情報が増えるほど性能が向上し、結晶性知能は基本的に増加します。同じ仕事を長く続けていれば性能が落ちるわけがありません。実際に90歳、100歳になっても能力を高く保っている人もいます。近年では、90歳を過ぎてからでも、脳細胞が新たに生まれてくるという研究結果も出ています。  とはいえ、記憶力のような流動性知能は落ちていきます。だからこそ、流動性知能の一種のワーキングメモリー(脳の記憶力)を鍛えるトレーニングをすることが大切なのです。 ―認知症予防も含めて、ワーキングメモリーを維持するにはどんな訓練や生活習慣が望ましいのでしょうか。 篠原 認知機能低下や認知症予防については、WHO(世界保健機関)が2010(平成22)年にガイドラインを出しており、2019(令和元)年にはその最新版が出ています。それによると、若いときから続けるべきと強く推奨されているのが「運動」と「禁煙」。条件つきで推奨されているのが認知トレーニング、いわゆる「脳トレ」です。そのほか健康的でバランスのよい食事も推奨されています。どれも、いわゆる健康維持のために重要とされていること。結局、脳も体の一部ということです。  記憶力を維持するのに一番役に立つのは、まずは運動、というのが脳科学者の常識です。有酸素運動をすると、記憶系を司る新しい神経細胞が生まれ、記憶をつくりやすくすると考えられています。また最近の研究では、運動をすると骨に刺激が加わり、これにより「オステオカルシン」という物質が分泌され、脳機能を高めることも知られています。骨折して寝たきりになると途端に骨に刺激がいかなくなるので、認知症が急速に進行することなども、いまではわかっています。 運動、禁煙、脳トレ、食事若いころからの習慣が脳機能の低下を予防 ―「人生100年時代」、「生涯現役」という言葉が聞こえてきます。長く働き続けることは、脳にどのような影響を与えますか。 篠原 脳の話でいえば、働くことはよいことです。30年ぐらい前は、親が年を取ると引退してもらい、楽をさせてあげるのが親孝行だといわれました。しかし、それでは脳の力がどんどん低下していくという実験結果が出ています。例えば、60歳や65歳の定年でリタイアすると、それを境に明らかに脳の力が落ちていきます。単純にいえば、長く働き続けることは脳を使うということです。人とコミュニケーションをとり、役に立っているという実感を持つことが、脳の機能低下の予防になります。脳の健康を保つためには働いたほうがよいのです。  ただし、働くといってもルーチンワークの仕事をやっているだけでは、実は脳の活動がそれほど高くならないことも知られています。脳のトレーニングとして仕事が役に立つという前提を担保するには、少しでも新しいことにチャレンジすることが必要です。  例えば熟練者がむずかしい作業をしているのを見ると、「複雑な仕事をこなしているから、さぞかし脳が活性化しているのだろう」と思うかもしれませんが、手慣れた人にとっては脳の活動は小さいのです。むずかしい仕事でも本人が鼻歌交じりにできる仕事は、たいして脳のトレーニングにはなりません。  新しい仕事といっても、現実的に本人のレベルを超えた仕事をやらせるのは問題ですが、「挑戦すればできそうだ」というレベルの課題を与えることが、実は重要なのです。 ―これまでにつちかった技術や経験に基づいた仕事をするだけではなく、新しい技術を学び、自分の仕事を進化させていく。これが同時に脳の活性化につながるというのは興味深いですね。 篠原 もちろん何もしないのが一番ダメですが、以前と変わらない仕事を続けるのもよくない。少しクリエイティブで新しいことにチャレンジすることです。定型業務をやらせるにしても、そのうち2時間程度はいままでやったことのない仕事を集中的にやってもらう。また、仕事のなかでも、事業の将来を考え、どこに投資すべきなのかを考える人や、人の仕事を調整することで高いパフォーマンスを上げる人、経営・マネジメント領域の仕事をする人、それからコミュニケーションなど対人スキルが求められる仕事をしている人は、認知機能が高く保たれることが知られています。  ただし、人の仕事の調整をルーチンのようにやっていた部長が、そのままいまの仕事を続ければよいのかというと疑問です。まったく違う部署に異動させて、ゼロからコミュニティをつくり直すようにすることで脳は活性化するでしょう。 新しいチャレンジが脳を活性化させ行動に対する「報酬」が学習意欲を高める ―新しい業務にチャレンジさせるにしても、年輩の社員や高齢者のなかには、腰が重い人もいます。モチベーションを高め、やる気を引き出すにはどうすればよいですか。 篠原 脳のなかでモチベーションと関係するのが「線条体(せんじょうたい)」です。運動の開始・持続・コントロールにかかわる器官ですが、線条体とつながるドーパミン神経系に「側坐核(そくざかく)」と呼ばれる快感中枢があり、行動と快感を結びつけています。線条体の特質の一つは、予測的な活動をすることであり、つまり「この仕事をすれば給与が上がる」、「褒められる」、「人に認められる」といったことがくり返されると発火(活性化)します。それがやる気の正体だと考えられています。また、「直感」もやる気と構造的には同じと考えられています。「この仕事をすればよいことが起こりそうだ」という予感=直感は、線条体と側坐核の働きによるものです。  逆に、例えば高齢者に新しい仕事にチャレンジしてもらおうと考えても、線条体が活性化しなければ学習効果は上がりません。新しいことをやってもらうには、「給与が上がりそうだ」、「人の役に立ちそうだ」、「褒められそうだ」という予感を持たせることが必要です。特に、新規学習や再学習では、側坐核の快感中枢の働きを止めると、とたんに学習効果が下がってしまいます。 ―ベテラン社員の働き方を考えるうえで非常に示唆的です。意欲を持って新しいことにチャレンジしてもらうには、何らかの報酬の予感が必要ということですね。 篠原 新規学習をする場合は快感の支えがないとむずかしいでしょう。報酬はお金だけではありません。給与以外にも、褒められたい、人の役に立ちたい、という人もいます。また、高齢者に意欲を持って新たなチャレンジをしてもらうには、楽しさや快感を予測できる状況にあることが重要になります。その仕組みをうまくつくることが高齢社員の戦力化につながるはずです。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/福田栄夫) ※ 認知科学研究者のジョシュア・ハーツホーン(マサチューセッツ工科大学)らの研究より 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2020 March No.485 ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集 6 人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム― 7 理事長挨拶 東京会場 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田慶宏 8 講演 東京会場 高齢社員の人事戦略と人事管理 ―戦力化に向けた仕事・賃金・キャリア― 千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授 藤波 美帆 11 企業事例発表 @ 東京会場 株式会社ポーラ 12 パネルディスカッション 東京会場 ポーラ・損害保険ジャパン日本興亜・日本クッカリー 人事担当者に聞く 「高齢社員を戦力化するための工夫」 16 パネルディスカッション解説 東京会場 パネルディスカッションの論点 日本クッカリー株式会社 伊勢崎工場 管理部長 小西 敦美 18 講演 大阪会場 高齢社員の戦力化と人事管理の整備 ―「知る」仕組みと「知らせる」仕組みの整備― 玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 大木 栄一 21 企業事例発表 A 企業事例発表 B 大阪会場 株式会社島屋 レンゴー株式会社 23 パネルディスカッション 大阪会場 島屋・レンゴー 人事担当者に聞く 「高齢社員を戦力化するための工夫」 27 企業事例発表 C 企業事例発表 D 福岡会場 イオン九州株式会社 株式会社ケアリング 1 リーダーズトーク No.59 公立諏訪東京理科大学 工学部 情報応用工学科 教授 医療介護健康工学部門長 篠原菊紀さん 脳の力は年齢とともに伸び続ける「報酬予測」が新規学習の意欲を引き出す 29 日本史にみる長寿食 vol.318 カブは万能の野菜 永山久夫 30 江戸から東京へ 第89回 老年に知る師の心 河合曽良 作家 童門冬二 32 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第71回 株式会社三菱ケミカルリサーチ 首席研究員 田川徹さん(73歳) 34 高齢者の現場 北から、南から 第94回 沖縄県 株式会社薬正堂 38 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 第5回 檜山敦 42 知っておきたい労働法Q&A《第23回》 家永勲 46 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復[第10回] 渡辺恭良 48 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 55 BOOKS 56 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト募集案内 58 ニュース ファイル 59 読者アンケート結果 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.310 細かな模様や形を表現する独特の「戻し吹き」技法 鋳込工 近藤幸男さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第34回]一筆書き 篠原菊紀 【P6】 特集 人生100年時代 高齢社員戦力化へのアプローチ ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム―  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発、生涯現役をめざす職場づくりに向けた先進事例の紹介などを目的に、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。  今号では、東京・大阪・福岡の3会場の開催レポートをお届けします。高齢社員の人事管理について有識者の講演、生涯現役に向けた取組みを始めている高齢者雇用先進企業による事例発表・パネルディスカッションなど、参考となる情報が満載です。ぜひご一読ください。 ※シンポジウムでの配付資料を、当機構ホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/haifusiryou.html)に掲載しています。 【P7】 東京会場 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 理事長挨拶 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田慶宏(よしひろ)  日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えており、今後のさらなる健康寿命の伸長も期待されています。このような人生100年時代を迎え、意欲ある高齢者に働く場を準備することは非常に重要な役割となっております。このため、2019(令和元)年6月に閣議決定された成長戦略実行計画において、定年延長や個人の起業など、70歳までの就業機会の確保に向けた多様な選択肢を法制度上準備し、企業がどのような選択肢を用意するか、労使が話し合う仕組みなどを検討することとされています。  こうしたなか、当機構は、高齢者雇用にかかわる企業の個別具体的な課題解決の支援に取り組んでいます。本シンポジウムは、その一環として、企業の人事労務担当者や学識経験者などから、高齢者の雇用の実態や具体的な取組み、今後の展開について紹介、議論をいただき、企業や個人がどのような考え方に立ちどのような取組みを行えば、生涯現役社会の実現に向けた環境の整備が進むのかということについて、みなさまとともに考え、展望することを主眼として、毎年開催しています。  本日は、人事管理がご専門で、高齢者雇用に深い知見をお持ちの、千葉経済大学経済学部准教授の藤波美帆(みほ)先生からご講演をいただきます。また、定年延長や継続雇用に取り組まれている企業の人事責任者の方から具体的な事例を発表していただきます。さらには、事例を深く掘り下げるために、パネルディスカッションを行っていただきます。ご登壇されるみなさまにおかれましては、非常にご多忙なところ、本シンポジウムで発表、議論をしていただくことに感謝申し上げます。  最後になりますが、当機構では、厚生労働省をはじめ各関係機関と連携し、今後も高齢者の雇用に取り組む事業主の方へのサービス充実に努めてまいります。引き続き、みなさまのご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。 写真のキャプション 和田慶宏(当機構 理事長) 【P8-10】 東京会場 講演 高齢社員の人事戦略と人事管理 ―戦力化に向けた仕事・賃金・キャリア― 千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授 藤波(ふじなみ)美帆(みほ) 高齢社員人事制度の基本戦略  労働力人口に占める60歳以上人口の割合は、すでに5人に1人となっています。65歳以上では、およそ10人に1人。つまり、高齢者雇用は、もうあたり前の時代になっています。そうしたなかで、どのように人事管理を整備したらよいのか。本日は、高齢社員の人事戦略と人事管理について、最新の研究成果をふまえてお話しします。  高齢者雇用があたり前になってきた時代の人事管理は、まず、「高齢社員は戦力である」ということを経営方針としてきちんと位置づけたうえで考えることが重要です。  日本ではいま、基本的にほぼすべての企業が65歳まで希望者全員を雇用しています。しかし、活用方針をみると高齢社員を「現役社員・定年前と同様に活用する」のか、あるいは「定年前とは異なる活用をする」のか、大きくこの2タイプに分かれます。多くの会社では後者を選択します。  本来であれば、仕事や役割を社員の能力や希望に応じて個別に決めて活用する、そういう方法がとれればよいのですが、雇用人数が増えてくると、個別対応では手間ひまがかかってしまいます。そこで「定年後の働き方はそれまでとは少し違いますよ」、という方針で活用し、定年前の人事制度を変更することなく、「まずは65歳まで雇用を確保しましょう」、といった全員一律型の活用が、これまでは多かったわけです。  しかし、この全員一律型にはいろいろな問題があります。そこで、高齢者雇用の先進企業では、仕事や役割に応じて人事制度をタイプ分けしたり、定年前とは異なる人事制度とするものの、高齢社員の働きに応じた報酬を支払う仕組みを導入する、といった活用を選択するようになっています。 人事管理の整備が高齢者活用につながる  高齢社員の活用課題を解決するうえで忘れてはいけない視点は、会社のパフォーマンスが向上する人事管理制度を整えていく、ということです。高齢者雇用においてポイントになるのは、高齢社員のモチベーションと生産性向上、ともに働く若年社員のモチベーション、それから人件費(コスト)です。  先進企業が実際にどのように取り組んでいるのか、これまでの研究でわかっていることをお話しします。  企業のなかで高齢社員が増えると高齢社員の戦力化が進み、人事管理が整備されるようになります。人事管理は、働き方や労働時間を管理する「雇用管理」と「報酬管理」の大きく二つに分けることができます。第1段階で整備されるのは「雇用管理」です。その後、第2段階として、基本給や手当・賞与などの「報酬管理」を整備する、こうした流れで整備される傾向が見られます。  「報酬管理」の分野が整備されると、定年延長や定年廃止を検討する企業も出てきます。つまり、65歳までの人事管理をしっかりと整備すると、65歳以降の雇用についても見据えることが可能になります。 現役社員と高齢社員では異なる人材活用戦略  高齢社員の人事管理を考えるうえで最も大事なことは、高齢社員は「社員」であり、会社にとって重要な戦力であると位置づけることです。そして、その方針を本人たちにきちんと伝え、適正に活用することです。そのために二つの仕組みが必要です。第1は戦力の対象となる高齢社員の能力・意欲を「知る」仕組みです。高齢社員が活躍できる場所や、これまでのキャリアなどを把握する必要があります。第2は会社として期待する役割を本人に伝える、「知らせる」仕組みです。  これらは特別なことではなく、例えば、60歳以降にどのような役割をになってもらい、どのような成果をあげてほしいかを、面談などを通じて調整すればよいのです。定年前の社員に行っている、いわゆる「目標管理」のようなことを、高齢社員にも実施するということです。  ただし、高齢社員と定年前の社員では、人材活用戦略が異なります。定年前の社員は、基本的に長期雇用を前提とした、育成しながら活用する人事管理です。一方で、高齢社員は、60歳から仮に5年間の雇用と考えると、いまの能力を、いま活用し処遇する、という短期雇用型の人事管理となります。このため、高齢社員の能力や意欲を把握しておくことが、非常に重要となるわけです。  このように、一つの企業のなかに異なる人材活用戦略、人事制度が存在することを、「一国二制度型」と呼んでいます。この活用を前提に個別の人事管理を整えることがこれからは大事になります。  また、整備した制度はスムーズに運用されなければなりません。支援施策をセットで考えることも重要です。高齢社員に対しては、作業負荷の軽減を図るために、作業環境を整備することが大事になってきます。加えて、期待役割の変化に適応するために、高齢社員への意識啓発や、キャリアを再認識してもらう仕組みの整備も大切です。高齢者雇用がうまくいっている企業では、若いうちから、高齢期の働き方などについて、自分で考えるための研修の機会を複数回にわたって提供しています。  さらに、高齢社員の活用を現場の管理職に任せきりにするのではなく、人事部門が支援することも必要です。将来的に、高齢社員や年下の上司が同じ職場にいることがあたり前になってくれば、人事部門が関与する必要性はなくなるでしょう。しかし、いまは高齢者雇用の過渡期です。高齢社員にしっかり活躍してもらうためにも、高齢社員の意識啓発をはじめ、管理職への支援、また、一緒に働く社員に対しても、お互いに助け合い、協調して働いていくための環境づくりを進める、そのための仕組みを整備することもポイントになります。  高齢者雇用がうまくいっている会社は、こうした取組み・制度構築に時間をかけています。 「一国二制度型」の人事管理  「一国二制度型」の人事管理について、もう少し詳しく説明します。  一つの会社のなかに二つの制度を設ける理由は、定年という仕組みを維持しながら、退職するまでの期間、企業と高齢社員、双方にとって有効な働き方を考えるためです。  例えば、定年前と同じ仕事をしてもらう場合、専門のスキルを活かして働いてもらう、あるいは、管理職の仕事をしながら若手の育成をしてもらう、といったケースが考えられます。いずれも、プロフェッショナルとして持っている能力をベースに働いてもらうということです。  また、60歳以降になると、自分の健康状態だけでなく、家族の介護をすることもあり、いろいろな事情から働き方に制約が生じやすくなります。このため、配置や異動を定年前の社員とは分けて考える必要があります。特に高齢社員の場合は、キャリアアップを念頭に置いて働いているケースはほとんどありません。会社はいまの能力を活かす、という視点から人材の配置を考えていくことになります。  そして、これらに合わせて、仕事や働きぶりに応じた賃金制度を整備することが重要です。定年制度があると賃金の決め方や水準を変更しやすくなります。なぜなら、定年は、定年前までの貢献に対する支払いを清算する役割があるからです。定年後は、仕事や働きぶりに合わせて、改めて賃金制度をつくることができます。  ですから、定年制度をなくすことだけが高齢者雇用を進める道ではなく、定年制度があることによって、定年後は、「いまの働きに対して、いま支払う」、という制度を導入できます。現状では完全に仕事給ベースの基本給を導入する企業は少ないです。しかし、賞与にいまの仕事や働きぶりを反映させる、という企業は多くあります。  また、高齢社員の賃金が一度下がったとしても、再び上がるチャンスがある、そういう評価の仕組みをつくっておくことも大切です。戦力として活用するわけですから、結果を評価して賃金に反映させる、その仕組みが大事です。  さらに、市場価値を反映させることも必要になります。仕事の価値には、社内価値と、一般の世間相場のような外部労働市場の価値があります。パートやアルバイトの賃金は、たいていの場合、市場価値を意識して設定されていると思います。高齢社員の、特に継続雇用者の場合、多くの会社では非正社員に切り替えており、正社員とは異なる活用としています。ですから、賃金制度を考えるとき、定年前の仕組みから単につなげて考えていくのではなく、定年を機に1回リセットされたと考え、ほかの社員との均衡を意識しながら改めて仕事や働きぶりに合わせて賃金制度を設計する、ということが重要です。 個人差が大きくなる65歳以降の人事管理  さらに、65歳以降を見据えた雇用を考えると、健康管理が重点課題になります。65歳以降になると体力などの個人差が大きくなります。個人差をふまえて、配置や異動などを考えていく必要があります。  とはいえ、先ほどお話ししたように、65歳までの人事制度をきちんと整備しておけば、それを65歳以降の人事制度の設計に応用することができます。  65歳以降は、全員が会社に残るわけではありません。どういう人に残ってほしいのか、あるいは、残ってもらったときにどのように働いてもらうのか、そういった調整のための仕組みを整備することが重要になります。  また、65歳以降については、仕事に対して本人の満足度が高いから、やる気があるからといっても、いつまでも働いてもらえるわけではないことに留意する必要もあります。いろいろな事情から急に退職をする、というケースが出てきます。そのようなことになっても問題が生じないよう、世代交代に備えた仕事の与え方を考える、そうした視点も大事です。 【P11】 東京会場 企業事例発表1 シニアの活躍支援 ―新しい継続雇用制度と研修について― 株式会社ポーラ 経営企画部(CSR・秘書)チームリーダー 佐藤幸子(さちこ)  当社では、主に女性向けの化粧品を製造・販売しています。1929(昭和4)年に創業し、ポーラレディーによる訪問販売から、現在は店舗型の「ポーラ・ザ・ビューティー」というビジネスモデルに変化していますが、4万5000人のビューティーディレクター(個人事業主)が全国におり、この方々も含めた女性活躍推進も当社のミッションの一つです。  ビューティーディレクターには、90代以上が約270人おり、2019(令和元)年には99歳の女性が、美容に奉仕する活動を続けている最高齢の女性ということでギネス世界記録の認定を受けました。ほかにも、生涯現役のロールモデルとなるような方が大勢活躍しています。  従業員数は約1700人。60歳以降も活き活きと働く時代への対応として、2018年に継続雇用制度を改定し、継続雇用制度の年齢上限を撤廃、健康・能力・意欲次第で65歳以降も年齢にかかわらず働ける制度としました(旧制度は定年60歳、希望者全員65歳まで再雇用)。  継続雇用者には、一人ひとりに対して会社全体を通じて期待をかけそれを実感してもらうとともに、持っている能力を存分に発揮してもらうことで組織の成長を加速させ、その活躍が評価・処遇に反映される制度にしました。評価の仕組みも見直し、期待役割に基づいて、一人ひとりに合った行動評価、評価基準を設けて、しっかりと評価していく内容に改めました。報酬についても、期待役割に基づいた処遇に改め、段階的に少しずつ上げています。一人ひとりを評価していくためには、コミュニケーションが重要ですから、マネージャー・管理職が一人ひとりと向き合う制度設計としています。  新制度では、継続雇用後に五つのコース(下表)を設定しています。コース決定は、60歳になる2年半前に意向を確認し、以降の2年間を判定評価期間とし、60歳直前にコース判定と最終意向を確認します。いずれも、上長がコミュニケーションをとって行います。  また、2018年に57歳から60歳の社員を対象に、ライフプランセミナーを実施しました。2019年は56、57歳を対象とし、いまはもっと早い段階から実施したほうがよいと感じています。自分の人生100年を考える内容の研修ですので、「人生を振り返る、とてもよい機会になった」との感想が聞かれています。  継続雇用にかぎらず、一人ひとりが活き活きと、自分らしく働くことが、幸せな人生への道ではないかと思います。よりよい取組みを目ざして、今後も追求し続けていきたいと思います。 〈新・継続雇用制度の概要〉 定年60歳、以降の継続雇用社員(1年ごとに更新)の仕事・コースを見直し、次の5コースを設定している。 @部門マネジメントコース Aチームマネジメントコース マネジメント経験・能力を活かす Bアドバンスコース 伝承と後進の育成をにないつつ、プレーヤーとして実務にあたる Cシニア実務コース プレーヤーとして実務にあたる Dサポートコース サポート業務をになう ※コースは定年の2年半前の時点で本人の意向を確認し、その後の2年間の評価で決定する 【P12-15】 東京会場 パネルディスカッション ポーラ・損害保険ジャパン日本興亜・日本クッカリー 人事担当者に聞く 「高齢社員を戦力化するための工夫」 コーディネーター 藤波美帆氏 千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授 パネリスト 佐藤幸子(さちこ)氏 株式会社ポーラ 経営企画部(CSR・秘書) チームリーダー 立花(たちばな)一元(かずもと)氏 損害保険ジャパン 日本興亜株式会社 人事部 ダイバーシティ推進グループ主査 ライフデザインチーム 小西敦美(あつみ)氏 日本クッカリー株式会社 伊勢崎工場 管理部長 企業プロフィール 株式会社ポーラ ◎創業 1929年 ◎業種 化粧品製造・販売業 ◎従業員数  1,621人(2018年12月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  60歳定年後の継続雇用制度を2018年に改定し、五つのコースを設定し、評価制度、コース決定の仕組みなどを整備。行動評価により、年齢上限なく継続して働けることを可能とした。 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 ◎創業 1888年 ◎業種 損害保険業 ◎従業員数  2万6,108人(2019年4月1日現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  中高年社員の活躍推進策として、「社外転進制度」、「ジョブ・チャレンジ制度」(社内公募制度)を整備。60歳の定年退職後は、65歳までの再雇用制度に加え、満70歳までの再雇用延長制度も導入。 再雇用後の評価と報酬について 藤波 本日のパネルディスカッションでは、事例発表をしていただいた株式会社ポーラの佐藤さん、損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、損保ジャパン)の立花さん(事例発表の内容は、本誌2月号21頁をご覧ください)に加え、人事労務分野に長くたずさわり、高齢・障害・求職者雇用支援機構の研究業務や『エルダー』への執筆もされている、日本クッカリー株式会社の小西さんにご登壇いただきます。みなさん、よろしくお願いします。  さっそくですが、会社では再雇用の方たちにどのようなことを期待されているのか、そして働きに見合った報酬をどのように設定しているのか、この2点について教えてください。 佐藤 当社では、再雇用社員が持つ知見や人柄を発揮していただくということを第一に考えています。新しい役割や新しい地域でということではなく、慣れ親しんだところで活躍してもらうということをベースに置いています。  報酬制度については、継続雇用後に五つのコースに分かれます。そのほかにも細かい係数がかかるような項目もありますが、基本的には、この5コースごとに賃金の設定をしています。 藤波 それぞれのコースのなかでも、評価が行われるのでしょうか。 佐藤 そうですね。最も重視しているのは行動評価で、この行動評価が基準を満たさない場合は、翌年の契約を見直すという場合もあり得ます。もちろん、これだけが判断基準というわけではありませんので、一人ひとりに対し、上長を通じて本人の意向なども確認しながら、ていねいに対応していくことを心がけています。 藤波 損保ジャパンさんではいかがですか。 立花 再雇用者は、基本的には定年になった職 場で、引き続き担当者として勤務してもらうケー スが多いですが、異動になる場合もあります。  報酬については、定年前の3年間の行動評価のポイントにより、月給制または時給制に分かれます。再雇用制度では、四つの基本テーブルがあり、毎年の評価によってこのテーブルがアップダウンします。再雇用後も年収が毎年変わります。再雇用者は、仕事の目標を基にする仕事評価と、能力の発揮度を見る行動評価の両方で評価が決まります。 藤波 2社ともに、高齢社員の評価をされていて、それが処遇などに反映される仕組みがあります。  ここで小西さんに人事のプロとしてのご意見をうかがいたいのですが、定年前と比較して賃金が下がる場合、高齢社員は気持ちを切り替えるのがむずかしいと思うのですが、どのように進めていくとよいのでしょうか。 小西 私は、継続雇用に移行する社員に対しては、こんな風に話をしています。「あなたは定年退職をしました。今後はパートやアルバイトと同じように、社外の労働市場で働くことになります。つまり、あなたを雇うとしたら、期待役割や仕事内容、活用方法はこれまでと少し変わり、これだけの報酬になります。これは仕事基準で格付けをした結果としての金額です」と。これが、合理性がある説明ではないかと思います。 藤波 いまのお話で大事なポイントは、定年により雇用関係がいったん終了しているというところで、それ以降の期待役割などが変わることと、報酬についての説明をきちんとされるということですね。 小西 はい。ただ、どんな制度を入れたとしても、定年退職して処遇が下がるということに関しては、なかなか納得してもらえないものです。説明をして、理解はしてもらえるのですが、納得という点では永遠の課題なのかもしれません。 藤波 客観的なデータなどを示して説明をすることが必要になるということですが、その前提として、高齢社員に今後どのように働いてもらうのか、そこをきちんと決めることがまず大事になるわけですね。 高齢社員のキャリア支援 藤波 次に、高齢期以降も活躍するためのキャリア支援についてお聞きしたいと思います。ポーラさんでは、定年を迎える方の働き方の希望などをどのように把握されているのですか。 佐藤 弊社の継続雇用者はいま70人ほどで、これから定年を迎える人たちもそんなに規模が大きくないので、一人ひとりのキャリアの把握はあまりむずかしいことではありません。定年前にライフプランセミナーを実施していますので、そういった研修などを通じて、直接対話をしながら、個々の社員の情報の把握に努めています。  毎年研修をしながら思うのは、59歳、58歳、57歳、56歳と、年齢が1歳違うだけで心がまえやキャリアのとらえ方が全然違うんですね。そのなかで人事として学ぶことも多くありますし、それなら55歳や50歳の人にどういうことを知ってもらい、考えてもらうことがベストだろうかと、最近そんなことも考えています。 藤波 損保ジャパンさんはいかがでしょうか。 立花 弊社では、「マイチャレンジシート」を、再雇用者を含む全社員が毎年作成します。このシートには、自分の強みや課題、どんな仕事をしてきたのか、今後どういう仕事をしたいのかなどを記入します。また、42歳以降は毎年、社外への転進についての興味の有無についても必ず回答してもらっています。こうしたデータを元に、社員と上長が毎年定期的に面談を行い、面談後のコメントを、上長がそれぞれのマイチャレンジシートに記入し、その情報を人事部と共有しています。  これにより、社員が再雇用を希望しているのか、社外転進に関心があるのかなどを把握することができ、社員のキャリアを人事部も一緒に考えていくことができます。  一方で、マイチャレンジシートに自分の強みや課題をいざ書くとなると、意外とむずかしいものなんですね。そこで、社員が自己理解を深めるためにも、キャリア研修は有効だと考えています。 藤波 2社とも研修をされているということで、ぜひお聞きしたいのですが、キャリア研修の効果を上げていくために、どんな工夫をされているのですか。 佐藤 再雇用社員にかぎったことではないのですが、一人ひとりにモチベーションをどう持ってもらうか、ということに尽きると思います。先ほど立花さんもお話しされていた「自己理解」がとても大事で、ベテランだから自己理解が進んでいるだろうと思っていたのですが、「忙しくて自分自身のことを考えたり、振り返ったりする時間は意外となかった」と、キャリア研修を受けたほとんどの社員が話していました。ですから、自分自身を考える時間、またディスカッションする時間などを増やして、自己理解に能動的になれる研修にすることを心がけています。 立花 これからのセカンドキャリアを考える研修は二つあり、一つは、@35〜44歳、A45〜54歳、B55〜60歳の3グループに分けた希望者応募型の「ワーク・ライフデザイン研修」、もう一つは、50代前半を対象にした全員参加型の「キャリア開発G50研修」です。  ワーク・ライフデザイン研修は、45歳で全員参加型など、過去いろいろやってみましたが、応募型にしたら、もっと早く受けたいという声があり、現在は35歳以上を対象にしています。ワーク・ライフデザイン研修は、2泊3日の研修ですが、この10年間だけでも5000人を超える社員が受講しています。  これまでの受講者アンケートなどを分析の結果、研修内容に@人事制度、Aキャリア開発ややりがい、Bキャリア開発目標シートの作成、この3点をセットで行うと、研修の効果が上がることがわかりました。何よりも、受講者自身が考え、気づいて行動をすることが重要です。佐藤さんもお話しされていましたが、たとえ1日でも、社員が自分自身についてゆっくり考える場を提供することが大切ではないかと思います。 藤波 どちらにも共通しているのは、会社側が個人にキャリアを考えてもらう機会を用意していることですね。  一方で、自身のキャリアを考えた結果、大きなキャリアチェンジを求める人もなかにはいらっしゃるかもしれません。小西さんは、ご自身でNPO法人を立ち上げて、50代を対象としたセミナーなどをされていますね。 小西 中央職業能力開発協会のキャリア・シフトチェンジ研修のインストラクター養成セミナーを受けて、そのときの仲間とNPO法人を立ち上げました。長年企業で働いてきた50代の方を対象に、マインドチェンジのためのカウンセリングやセミナーなどを行っています。50代から高い意識を持ち、地方創生など、社外に活躍の場を求めるなど、自ら動いている人はたくさんいらっしゃいますね。 藤波 会社が研修という形でキャリアを考える場を提供することはもちろん大切ですが、社外にそういった相談や研修の場もあるということを会社から情報提供するなど、外部の資源を有効活用していくことも重要な視点だと思います。 これからに向けて 藤波 最後に、これは伝えておきたいということを、一言ずつお願いします。 佐藤 人事や経営企画という部門を通じて、企業の力を活かし、よりよい社会にしていくということについて、もっとできることがあるのかなと感じています。この会場にも、何か弊社と一緒にやっていただける方がいらっしゃいましたら、絶賛募集中ですので、どうぞよろしくお願いいたします。 立花 定年というのは一つの関所だと思いますので、定年が60歳でも65歳でもあった方がいいのかなと私は思っています。その定年に向けて、50歳という節目で会社側が場と情報を提供し、社員本人が考えることが大切だと改めて思っています。 小西 65歳以降も働くことが、今後は必然になってくると思います。そこに対して、高齢者が増えるんだなと思っていながら、本気で手を打っていない会社がまだ多いように思います。高齢者といわれる世代の労働意欲は本当に高いので、この労働意欲とうまくマッチングできるような仕組みも重要ではないかと思います。 藤波 ありがとうございます。本日は、3人の方からたいへん貴重なお話をいただきました。会場にお越しのみなさま方の、職場における取組みのヒントになれば幸いです。 写真のキャプション コーディネーター藤波美帆氏(千葉経済大学 経済学部 経営学科 准教授) 佐藤幸子氏(株式会社ポーラ 経営企画部(CSR・秘書)チームリーダー) 立花一元氏( 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 人事部ダイバーシティ推進グループ主査 ライフデザインチーム) 小西敦美氏(日本クッカリー株式会社 伊勢崎工場 管理部長) 【P16-17】 東京会場 パネルディスカッション解説 パネルディスカッションの論点 日本クッカリー株式会社 伊勢崎工場 管理部長 小西敦美(あつみ) 1 高齢者が活き活き働ける人事制度を考える  65歳以降も、現役時代と変わらぬ気概で働き続けるには、高齢者雇用(60歳以降を「高齢者」という)の仕組みを整備する必要があります。この考えに基づき、60代の「人事賃金制度」と「キャリア管理」に焦点を絞り、高齢者が活躍中の企業の事例報告をもとに議論することとしました。 (1)登壇企業の特徴  両社とも、60歳の定年以降は、現役の人事制度とは異なる処遇で再雇用を行う「一国二制度」方式です。  定年後は、会社が期待する役割・仕事の内容に基づき処遇します。高齢者は、意欲と能力を発揮して、成果を上げることが求められます。会社は毎年人事評価を行い、65歳まで契約を更新します。結果次第で報酬が上下することになります。高い意欲と成果を継続すれば、65歳以降も働ける点が共通しています。 (2)人事部門担当者へのメッセージ  就業者の5人に1人が60歳以上という日本では、「高齢者雇用」は本気で取り組まなければならない最優先の課題です。しかしながら、高齢者のなかには、「会社が何とかしてくれる」という意識の人も少なくなく、人事部も、高齢者の活用には消極的です。今後は意欲と能力を兼ね備えた高齢者が活き活きと働けるように、真剣に60歳以降の労働者を支援する人事制度を考え、ていねいに対応しなければならないと考えます。 2 高齢者雇用の対応策(人事賃金制度の観点から) (1)働きに見合った報酬制度の整備  再雇用制度を導入した多くの企業で、当初「在職老齢年金」や「高年齢雇用継続給付」の受給を見込んだ給与額の設定を行いました。60歳が通過点となった今日、給与水準が見直されることの合理性を理解してもらわなければ、高齢者の戦力化はかないません。  今回提案するのは、「仕事」を処遇の基準とする「職務等級制度」です。  「仕事」基準とは、その「仕事」に対して、会社がどれだけの報酬を支払えるか、ということです。「仕事」が報酬の決定要因であることに異論はないと思います。特に、仕事の領域と成果が明確な高齢者には、合理性が高いといえます。  「職務等級制度」では、各人の職務を評価し格づけを行います。評価結果を点数化し、点数を括(くく)って等級を定める方法が一般的です(「要素別点数法」※の職務評価の仕組みを厚生労働省のHPからダウンロードできます〈図表〉)。  評価結果に基づく報酬は、会社が決めることですが、現役社員と比べて「期待度」や「人材活用の方法」が変更になることをていねいに説明し、理解を得る必要があります。また高齢者に代わる人材を外部労働市場から採用すると報酬はどれくらいになるか、という視点も合理性を持たせるうえで有効です。 (2)職務等級制度運用の課題 ●格づけの問題点と対応策  職務評価は、異なる職種、例えば営業と経理の仕事を同じ評価項目で評価するため、点数に差が生じることがあります。会社方針・考え方を明確にし、定義やウェイトを自社流にアレンジし、部門間の目線合わせを行う必要があります。  また仕事を評価するはずが「人」を評価し、過去の功労や役職に引きずられ、職務価値が高くなることがあります。  高齢者の役割を明確にし、「職務評価委員会」などを設置し、評価の公正性を担保することが求められます。また契約更新の際に、人事評価を実施し処遇を見直すなどの方法で高齢者のモチベーション維持を図る必要があります。 ●格づけ基準の変更による社員の反応と対策  日本の多くの企業は人事制度に「職能資格制度」を採用しています。「職能資格制度」は、職務遂行能力に基づき処遇を行うので、若手社員を定期的に採用し、長期的な視点で育成する企業に向いています。  この制度で働いてきた人が、定年を機に、職務に基づき処遇するといわれても、理解は得られません。給与がダウンするとなれば、なおさらです。  現役のころから、役割や職務を基準とする処遇を受けていれば、処遇への納得度は高まると考えます。ただし再雇用後の仕事が変わらない現状であれば、「仕事が変わらないのに、何で給与が下がるのだ」といわれることは想定しておく必要があります。  「職務」が大きく変わらないとしても、「人材活用の方法」は変わっているはずです。「転勤がない」、「出張がない」、「会議に出席しない」など、広義での職務内容は変わっています。問題なのは、理解なく一方的に報酬を下げることです。 3 今後の人事管理の方向性  上述の通り、若手社員を定期採用する企業では、「職能資格制度」が有効です。「職能資格制度」では、人事評価結果は、職能給の昇給や昇格に反映され、競争をうながしますが、若年期は処遇に大きな差はつきません。このいわば「見極め期間」を経て、企業は能力や貢献度に応じて役割を付与します。その後は、各人の価値観や働き方を考慮したうえで、「役割」や「仕事」に基づく処遇に切り替えるべきと考えます。  これ以降は、自身の能力が最大限発揮できる仕事に就くことが、「生涯現役」を実現するうえで重要です。そのためには、「損害保険ジャパン日本興亜」さんと「ポーラ」さんのように、自身のキャリアに責任を持ち、活躍するフィールドは自ら開拓することが求められます。  両社とも、キャリア研修とチャレンジする機会を提供し、高齢者一人ひとりと真摯(しんし)な対話を行っています。これに応える「高齢者」となるために、現役のときから、将来を見据えた能力開発、専門性の強化が求められます。「生涯現役」の実現には、高齢者の意識改革がともなうことは申し上げるまでもありません。 ※ 要素別点数表……職務評価を項目ごとに点数化し比較する手法 図表 職務(役割)評価表 【スケール】B「専門性」の例 5……担当分野において高い専門性が必要とされ、かつその周辺分野においても高い専門性が必要とされる仕事 4……担当分野において高い専門性が必要とされ、かつその周辺分野においても平均的な専門性が必要とされる仕事 3……担当分野において高い専門性が必要とされる仕事 2……担当分野において平均的な専門性が必要とされる仕事 1……それほど専門性が必要とされない仕事 評価項目=職務の構成要素 ウェイト=評価項目の重要度 ポイント=ウェイト×スケール ポイント総計=職務(役割)ポイント=職務の大きさ 評価項目 定義 ウェイト スケール ポイント @人材代替性 採用や配置転換によって代わりの人材を探すのが難しい仕事 1 2 2 A革新性 現在の方法とは全く異なる新しい方法が求められる仕事 1 1 1 B専門性 仕事を進める上で特殊なスキルや技能が必要な仕事 2 2 4 C裁量性 従業員の裁量に任せる仕事 1 1 1 D対人関係の複雑さ(部門外/社外) 仕事を行う上で、社外の取引先や顧客、部門外との調整が多い仕事 2 2 4 E対人関係の複雑さ(部門内) 仕事を進める上で部門内の人材との調整が多い仕事 1 3 3 F問題解決の困難度 職務に関する課題を調査・抽出し、解決につなげる仕事 2 1 2 G経営への影響度 会社全体への業績に大きく影響する仕事 1 1 1 18 出典:厚生労働省『職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル』(2019年3月) 【P18-20】 大阪会場 講演 高齢社員の戦力化と人事管理の整備 ―「知る」仕組みと「知らせる」仕組みの整備― 玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 大木栄一 高齢社員を戦力化するために−期待・役割が異なる高齢社員−  本日は、60歳以降の高齢社員に対して企業が投資し、どのような仕組みを整備していくと、企業として高いリターンを得られるのか、ということについてお話しをしたいと思います。  注目する仕組みは、「知る」仕組みと「知らせる」仕組みです。企業が「高齢社員にどのようなことを期待しているのか」を明確にしたうえで、それを高齢社員に知らせ、他方、「高齢社員がどんな能力やどの程度の意欲を持っているのか」を正確に把握するための仕組みです。  これらの仕組みの整備が必要な理由は、企業経営を取り巻く環境が大きく変わりつつある、あるいは、速いスピードで動いているので、市場と企業が従業員に求めることが、確実に変化してきているからです。  これは、どの年代の社員にもいえることです。しかし、60歳未満(現役正社員)に期待する役割と、60歳以降の高齢社員に期待する役割は異なる可能性が高くなります。そのため、現役正社員と高齢社員は分けて考える必要があります。もちろん、高齢社員にほかの社員と同じように第一線で働くことを期待するのも間違ってはいません。しかし、例えば高齢社員の場合、本人だけでなく、家族の健康などの事情により突然辞める可能性があります。その仕事を効率よく引き継ぐことを考えると、組織としては高齢社員には第一線というより第一・五線ぐらいの期待で、常にほかの人への引継ぎができる体制をつくっておく必要があります。そうなると、現役社員の役割とは変わってくることになるでしょう。  また、60歳以降になると、意欲が現役時代とは変わる可能性もあります。学習により能力や保有資格が変わることもあります。それらについても企業は把握しておくことが必要となります。  一方、高齢社員からみると、期待される役割が変わるため、「企業が高齢社員に期待する役割」を知り、他方では「高齢社員の持っている能力や意欲」を明確にしたうえで、それを企業に知らせることが必要となります。こうした仕組みは、高齢社員自身にとっても、65歳以降も働き続けていくためにも重要であると思います。 「知る」・「知らせる」仕組みづくり企業・高齢社員とも肯定的意見が多い  「知る」仕組み、「知らせる」仕組みの整備状況とその評価について企業と60代前半層の高齢社員を対象にアンケート調査を実施しました。  まず「知らせる」仕組みについてみてみましょう。期待役割の伝達状況については、7割強の企業が高齢社員に期待する役割を「知らせている」と考えており、7割強の高齢社員が「知らされている」と感じていました。企業と高齢社員双方が肯定的にとらえていることがわかりました。一方で、「期待する役割」の明確化の必要性を感じている企業は7割を超え、高齢社員も6割弱に達しています。  次に、高齢社員に役割を「知らせる」プレイヤーとして、上司(管理職)の役割の発揮状況をみてみましょう。「重要な役割を果たしている」と「ある程度重要な役割を果たしている」の合計は、企業・高齢社員ともに7割強と、ともに高く評価しています。  また、企業から管理職への高齢社員の活用に関する情報提供について、「行っている」と「ある程度行っている」の合計は、企業は6割、高齢社員では5割となっています。高齢社員のほうが、企業から管理職への情報提供が不足しているのではないか、と考えていることがわかりました。 上司の負担を軽減する仕組みの整備が必要  「知る」仕組みについてもみてみましょう。高齢社員の能力や適性について、企業は8割ほどが「把握している」と考えています。同様に、高齢社員も企業や上司が能力や適性を「把握している」、「ある程度把握している」と評価している合計が6割にのぼり、企業、高齢社員ともに肯定的にとらえていることがわかりました。  では、高齢社員の能力や適性はどのように把握しているのでしょうか。企業は、「上司の評価」と「仕事の実績」を中心として、「契約更新時の面接で」や「自己申告」、「同僚の評価」で補完していると回答しています。一方で、高齢社員は企業よりも、「上司の評価」、「契約更新の面接で」、「自己申告」および「社内外の資格の取得状況」が活用されていないと考えており、特に「上司の評価」が十分ではないと考えている、という結果でした。  考えなくてはならないことは、能力や適性を把握するためには上司が最も重要な存在なのですが、上司だけに依存し過ぎていないか、ということです。いま、職場の上司(管理職)は、たいへん多くのことを要求されています。上司だけに任せると、上司に多くの負担をかけることになります。そのため、補完的でもよいので上司以外が「知る」・「知らせる」仕組みを整備することが必要です。  企業全体で上司の人事管理の負担をなるべく軽減する、そういう仕組みをつくっていくことも重要になってきているのではないかと思います。 仕組みが整備されれば高齢社員・企業の満足度が高まる  また、今回の調査では「知る」・「知らせる」仕組みの整備状況と、「企業の高齢社員の働きぶりの満足度」との間に、非常に密接な関係があることがわかりました。仕組みが整備されることにより、高齢社員の満足度が高まり、それが高齢社員の高いパフォーマンスにつながり、企業の高齢社員の働きぶりに対する満足度が高まる、と考えられます。  さらに、企業の70歳雇用を推進していくためにも、こうした仕組みを整備していく必要もあります。  いまは少子高齢社会ですから、若者の人口がこれからますます減る状況にあります。私の勤めている大学も危機感を持っていますが、企業も若い人が採用できないとなったとき、どういう人に働いてもらうかを考えると、一つはその企業で長く働いてきた高齢社員に働いてもらう、となります。若年、中堅、高齢期という三つの時期によって、企業が期待する役割はおそらく異なります。そこで、高いパフォーマンスを上げてもらうためには、「長年勤めている高齢社員だからもう何も伝えなくてもよい」というわけではなく、若年であろうと中堅、高齢期であろうと、期待役割を伝えていくことが必要となります。  また、企業は働いている人たちの能力や意欲を知る必要があります。特に高齢期になると、個人差が出てきます。「知る」仕組みをつくるだけにとどまらず、より強化していく必要があるのです。その際、くり返しになりますが、職場の上司(管理職)に依存し過ぎない仕組みをつくっていくことが大切になります。 高齢社員だけではなく現役世代にも目を向けた仕組みづくりを  最後に、「知る」・「知らせる」仕組みを整備している企業について分析したところ、次の点が明らかになりました。  一つめは、「知る」・「知らせる」仕組みを整備している企業は、高齢社員を活用するための方針を明確にし、それを現役社員に浸透させているということです。高齢社員は、企業の一員であることに変わりはありません。社内で方針を明確にし、高齢社員にも高いパフォーマンスをあげて働いてもらうことを現役社員にも伝え、浸透を図ることが重要です。  二つめは、「知らせる」仕組みを整えた企業では、45歳以上の正社員に「60歳以降の職業生活を考えてもらう場」を多く用意するとともに、「60歳以降の職業生活の相談やアドバイス」の仕組みも整備していることです。つまり、45歳くらいになったら、60歳以降のことを考えてもらう機会をつくる、そういう仕組みやアドバイスをする体制の整備も重要であるということです。  三つめは、「知る」仕組みを整備している企業は、これまでの職務経歴や教育訓練歴に関する情報を把握しているとともに、45歳以降の正社員に対し「60歳以降の職業生活の相談やアドバイス」を行うための仕組みを整備していることです。つまり、高齢期になると、期待する役割が変わる可能性が高いので、45歳くらいになったら、企業としては「知る」仕組みを用意するとともに、アドバイスをしていくことが大事になるということです。このときにアドバイスをするのは、上司が中心になりますが、上司だけに依存せず、人事部など、上司以外のだれかが45歳以降の社員に対して、相談やアドバイスができる仕組みを整備していくことも大事になります。  本日の話のまとめとして、三つのポイントを整理しました(図表)。  これらを整備していくと、高齢社員を含めた社員の戦力化を図ることができるとともに、企業として高いパフォーマンスをあげていくことができるのではないかと思います。 ※文中のデータの出所は、高齢・障害・求職者雇用支援機構(2011)『60歳代従業員の戦力化を進めるための仕組みに関する調査研究報告書』、および藤波美帆・大木栄一(2012)「企業が『60歳代前半層に期待する役割』を『知らせる』仕組み・『能力・意欲』を『知る』仕組みと70歳雇用の推進―嘱託(再雇用者)社員を中心にして」『日本労働研究雑誌』No.619による 図表 70歳雇用を推進していくためには 1.高齢社員を活用するという方針を明確にし、それを現役社員のなかに浸透させることが重要である。 2.1.を基本にしたうえで、高齢社員を対象にした「知る」・「知らせる」仕組みを整備する。 3.現役正社員(特に45歳以降)に対する「60歳以降に期待する役割を知らせる」仕組み、現役正社員の「能力・意欲を知る」仕組み、現役正社員に対する「60歳以降の働き方を相談・アドバイスする」仕組みを整備していくことが必要である。 【P21】 大阪会場 企業事例発表2 島屋におけるキャリア・ライフプラン支援再雇用制度について 株式会社島屋 人事政策 兼 人事・採用育成担当部長 松室(まつむろ)伸生(のぶお)  当社は1831(天保2)年に創業し、百貨店業を生業(なりわい)として、現在は国内19店舗、海外4店舗を展開しています。単体の従業員数は8835人、うち4731人が正社員です。  再雇用制度は、2001(平成13)年に導入しました。60歳定年後、再雇用希望者はその基準に沿ってコースに分かれ、1年ごとの有期契約で65歳まで再雇用します。契約社員、パート社員も同じで、全従業員に占める再雇用者比率は約13%となっています。  当社では、定年後を見据えて、個々のキャリア形成が確実に図られるよう、キャリア・ライフプラン支援に力を入れています。人事情報調査、面談、セミナーの三つを適切なタイミングでくり返し実施し、本人の意向と目標を確認しながら行うもので、多くの時間と労力をかけています。面談は、30・40・50・55歳と定年6カ月前の全正社員に、キャリア・ライフプランセミナーは40・50・55歳を対象に実施しています。再雇用後は主に六つのコースに分かれますが、これらの支援を受けながらキャリア形成をするなかで、一つの道として決まっていくという流れで取り組んでいます。  コースについては、プロフェッショナル人材のコースとして「専門嘱託員コース」(対象は部長以上、専門分野のプロとして能力を発揮)、「スーパーセールスコース」(プロの販売営業職)、「技術・技能コース」(特定の技術・技能で組織に貢献)の3コース。そして、通常の再雇用コースとして「キャリアコース」(フルタイム勤務)、「シェアードコース」(短時間勤務)があります。「キャリアコース」にはレギュラーコース≠ニ、ノウハウの継承といった役割もになうマスターコース≠ェあります。また、「グループ内再就職支援コース」として、出向先で定年を迎え、その後も出向先で活躍するコースもあります。  再雇用後も、定年前と同様に考課を年2回実施します。取組み・成果を評定し、給与・賞与の決定と、コースの転換基準としています。再雇用社員を取り巻く環境は毎年変わりますので、短時間勤務からフルタイム勤務に戻る、あるいはその逆、という希望も出てきます。  今後は、能力開発と同一労働同一賃金への対応として一部の制度改正を予定しています。また、当社におきましても定年延長、あるいは再雇用年齢の引上げについても、法改正内容もふまえた検討が必要と認識しています。 〈再雇用コース別の雇用者数実績(過去5年間)〉 プロフェッショナル人材 専門嘱託員コース 29人 スーパーセールスコース 23人 技術・技能コース 13人 キャリア マスターコース レギュラーコース 413人 シェアード レギュラーコース 220人 アドバンスコース 44人(55歳以上社員も含む) グループ内再就職支援コース 23人 【P22】 大阪会場 企業事例発表3 「生涯現役」を目ざして 〜処遇を変えずに65歳定年を実現〜 レンゴー株式会社 人事部長※ 玉置(たまき)克己(かつみ)  当社は2019(平成31)年4月、定年を60歳から65歳へ引き上げました。本日は、その経緯や内容についてお話をさせていただきます。  当社は1909(明治42)年に日本で初めて段ボールを事業化した会社です。以来、日本の段ボール業界のリーディング・カンパニーとして、日本経済の発展に寄与してまいりました。レンゴー単体の従業員数は4474人、うち正社員は4047人。60歳以上の社員は全体の約4%です。再雇用制度は2001年に導入し、2013年から希望者全員を65歳まで再雇用する仕組みとなり、再雇用率は約8割で、2019年3月時点の再雇用者は195人です。  再雇用者は戦力になっていたと考えていますが、再雇用後の賃金低下などによるモチベーションのダウンが一部に見られました。また、人材の確保ということが重要課題として浮上し、2017年に労使共通のスローガンとして「生涯現役」を掲げて、社員のモチベーション維持を最優先にした65歳定年の検討を始めました。2018年3月に労働組合に改定案を提示し、6月に合意。2019年4月からの実施に向けて、社員への説明を進めて実現しました。  当社の65歳定年制の特徴をひと言でいえば、再雇用制度とは異なり、処遇は変わらず役職定年は設けない、というものです。基本給を下げず、賃金改定は59歳までの計算式と同じとし、発揮能力に応じて64歳まで昇給可能で、賞与も59歳までの計算方法と同じです。退職金はポイント制で、毎年ポイントを付与し、累積ポイント分を退職時に支払います。ポイントは60歳までは従来通りに付与して固定し、その後は利息ポイントが付与されます。  人件費は相応のアップとなりますが、企業のパワーアップに資するということで、決断しました。また、社員を「65歳まで生涯現役でがんばろう」という気持ちに変えていくことが大切と考え、機運を盛り上げるためのさまざまな取組みも実施しました(下表参照)。  今後の課題は、長時間労働の是正、職場環境と設備の改善です。この2点は、すべての社員が働きやすい職場づくりにつながり、必要不可欠であると認識しています。また、65歳以降の継続雇用制度の構築も検討課題の一つです。  以上のような課題はありますが、65歳定年の導入により、社員がパワーアップし、会社の持続的な成長、発展につながることを会社は期待しています。今後ともみなさまのご指導・助言をいただきながら、前向きに取り組んでいきたいと考えています。 〈「生涯現役」の機運を盛り上げる取組み〉 @労使共催研修  対象は57〜59歳の組合員79人。会社・組合からの期待を伝えるほか、健康づくりのためのラジオ体操講習などを実施。 A労使共催「ポスターコンクール」  65歳定年、生涯現役をテーマにしたポスターを募集。特選・優良作を全国の事業所に掲示。 Bレンゴーはつらつ健康宣言  2019年1月に策定・公表。これを機に、健康経営を本格的にスタート。 ※ 現在はレンゴー・トッパンコンテナー株式会社専務取締役 【P23-26】 大阪会場 パネルディスカッション 島屋・レンゴー 人事担当者に聞く 「高齢社員を戦力化するための工夫」 コーディネーター 大木栄一氏 玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 パネリスト 松室(まつむろ)伸生(のぶお)氏 株式会社島屋 人事政策 兼 人事・採用育成担当部長 玉置(たまき)克己(かつみ)氏 レンゴー株式会社 人事部長※ ※ 現在はレンゴー・トッパンコンテナー株式会社専務取締役 企業プロフィール 株式会社島屋 ◎創業 1831年 ◎業種 百貨店業 ◎従業員数  8,835人(うち正社員4,731人) (2019年2月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  60歳定年後、それまでのキャリアと本人の希望などにあわせて選択できる、多様な再雇用コースを設定。また、定年後も見すえたキャリア・ライフプラン支援も充実させている。 レンゴー株式会社 ◎創業 1909年 ◎業種 紙・紙加工品製造業 ◎従業員数  4,474人(うち正社員4,047人) (2019年9月現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  「生涯現役」を掲げて2019年4月、65歳定年を実現。社員のモチベーション維持・向上を最優先し、処遇は変更せず、役職定年も設けず、活躍を推進する内容を実現した。 現行の制度と課題 大木 事例発表に続き、島屋の松室さん、レンゴーの玉置さんにお話をうかがっていきたいと思います。はじめに、それぞれの会社の高齢者雇用制度の概要から教えてください。島屋の松室さんからお願いします。 松室 当社の正社員、契約社員、パート社員の定年は一律60歳です。再雇用は希望者全員が対象で、これも一律65歳までとしています。現在、社内におきまして、定年延長、または再雇用年齢の引上げについても、法改正内容もふまえた検討が必要という認識です。 大木 島屋さんでは正社員以外の契約社員の方も多く働いていると思いますが、来年度以降、再雇用制度のなかにも、同一労働同一賃金の問題が出てくると思います。そのあたりで、すでに取り組んでいることなどがあれば教えてください。 松室 当社では、契約社員・パート社員についても賞与を支給しており、来年度からは福利厚生や各種手当についても均等待遇を導入していく予定です。将来的に70歳までの雇用を見据えたときに、モチベーションや生産性向上などを考えると、契約社員・パート社員についても、正社員の制度をふまえた対応をしていく必要があると考えます。 大木 では、レンゴーの玉置さん、お願いします。 玉置 当社は2019(平成31)年4月に定年を65歳に延長しました。60歳以降の再雇用社員のモチベーションアップをどう図っていくかということと同時に、後輩世代への影響を最小限にするという視点で、労使で議論をスタートしました。人材の確保という課題も出てきたなかで、60歳までがんばってきてくれた社員にもうひとふん張りしてもらおうという判断から65歳定年を決断しました。 大木 65歳定年ということですが、定年後の60代後半層の継続雇用もあるのでしょうか。 玉置 少数ではありますが、余人をもって代えがたい人材については、65歳以降も継続雇用しているという実態はあります。ただ、一方で課題となるのはやはりモチベーションです。特に60代後半以降は気力・体力の個人差も広がるので、65歳までのような一律の処遇はむずかしくなるでしょう。そういった意味でも65歳以降については、これからの課題だと考えています。 中高年からのキャリア開発・研修制度 大木 続いて、45歳ごろからの社員への能力開発、キャリア開発についてうかがいたいと思います。島屋さんからお願いします。 松室 当社では、年齢軸ごとに全員参加のセミナーを実施しています。40歳でキャリアプランセミナー、50歳と55歳でライフプランセミナーを行います。50歳になるとやはり、健康や介護、資産形成といったライフプランに対してセミナーでの関心の度合いが高くなってきます。そういうなかで、一人ひとりのモチベーションを保ちながらキャリア形成を進めていくわけですが、50代になると、昇進がない、職務が固定化される、がんばっても相応の評価がされない、といった不満が芽生えてくるのではないかと考えました。  そこでこの4〜5年は、課長以上について職務管理を強化し、目標の持たせ方とそこから出てきた成果、それに対しての処遇のメリハリをつけることで、やる気を引き出すようにしています。このことが、一人ひとりのブラッシュアップ、キャリア形成と相関するのではないかと思っています。評価と処遇が一体となった形でのキャリア形成なり、キャリアプランを考えていく時期にきていると思います。  以上の通り人事管理の軸については、係長までは職能資格等級、職務管理をベースにしていますが、現在、課長以上につきましては職務管理を強化しています。同時に、40歳、50歳代の能力開発について、いま、新たに取組みを進めている状況です。 大木 レンゴーさんでは、社員の約半数が現業職ということですが、どういう点に注意されて教育されているのでしょうか。 玉置 それぞれの現場に任せているというのが現状です。職制である主任、係長に上がれる者はひと握りです。また、転勤もありませんから、特定の年齢層が集中している工場もあります。そういうなかで、特に、高齢社員のモチベーションを維持するというのは、むずかしい問題だと感じています。  大木先生の講演のなかで、「期待する役割をきちんと伝えることが大事」というお話があり、本当にその通りだと思いました。  当社では定年延長にあたり、労使共催で研修を実施しました。57歳から59歳の組合員を対象にしたものです。定年延長によって、定年のゴールが直前で5年先に延びてしまった、という社員層です。1泊2日の日程で温泉に行き、本人たちには内緒で、上司からの期待を書いたレターと、同僚からの応援レターを用意して、その場で渡しました。サプライズでしたので、涙ぐんでいる社員もいました。大半の社員が、ずっと同じ仕事に就いていますが、上司からの具体的な評価や「がんばれ」といったメッセージ、同僚からの「お手本にしています」といった言葉が書かれており、これによって、研修参加者のやる気も上がったと思います。  当時、60歳前後でいかにモチベーションと能力を維持してもらうかを考え、あの手この手で取り組んだことですが、大木先生のお話と符合(ふごう)すると思い出しながら、期待を伝えることの重要性を再認識することができました。 処遇のバランスについて 大木 次に、処遇についてうかがいます。先ほども少しうかがいましたが、今後は同一労働同一賃金への対応という問題が出てきます。正社員と契約社員の人たちとの違いは、例えば異動の有無が大きいと思いますが、異動するということによりどれだけ処遇の差をつけていくのか。高齢社員だけの話ではないのですが、松室さんの考えをお話ししていただけますでしょうか。 松室 労働判例を見ていますと、いわゆる賃金格差について、「合理的な根拠を述べよ」とあります。いまご指摘にありましたように、一つは「広域配転義務」の有無、そしてもう一つが「仕事の中身」です。管理職を委ねているか、特にマネージメントの管理職を委ねるかどうかということが大きな要素かと思いますが、この二つの要素が合理的な格差の理由なのだと思います。人事管理のなかで、これらを具体的に示していくことが人事の仕事だと感じています。 大木 60代前半の再雇用者の処遇と、契約社員の処遇のバランスはどうされていますか。 松室 当社の再雇用コースの「レギュラーコース」につきましては、契約社員との間には賃金格差のほとんどない状態と理解していただければと思います。一方で、専門嘱託員コース、スーパーセールスコース、技術・技能コースといった特定のコースについては差をつけているという状況です。 大木 レンゴーさんは、65歳に定年延長をされたときに、総額人件費の問題はどのように調整をされたのかお聞きしたいと思います。定年延長については、総額人件費の問題があって悩まれている会社が多いと思います。お話しできる範囲でけっこうですので、考え方や裏話などがありましたら教えてください。 玉置 最終的には、社長の決断です。当社社長の大坪は、関西生産性本部※の会長も務めており、80歳になりますがとても元気で、「生涯現役」のお手本のような人物です。  定年延長によりかかる具体的な金額は申し上げられませんが、それなりのコストになります。しかし社長は、人は「コスト」ではなく、「パワー」であり「投資」であると。そういう考え方を明確に示したうえで、最終的な決断をしてくれました。 今後に向けた課題とアドバイス 大木 最後に60代を含めて、高齢社員を活用していくうえでのアドバイスなどをお2人から一言ずつお願いしたいと思います。 松室 働く場を提供することが私たちの責務の一つではありますが、一方で、生活の観点から、どういう選択肢を持てばどの程度の収入が得られ、どの程度の年収になるのか。そういう多様な選択肢を会社が提示していく、もしくは、わかりやすく制度のなかに組み込んでいくことが大切です。このことが、今後の人生100年時代の当社の大きな課題であると思います。 玉置 今日ここにお集まりの方々は、高齢者の活用に関していろいろ悩まれていると思います。私も、人事部長の立場で新制度を導入するにあたってはずいぶん悩みましたし、意見が衝突することもありました。しかし、社長による最終決定が出た後はスッキリしました。「もうやるしかない」と。そうすると、残った課題が明確になります。当社でいえば、あとは健康面と環境の整備です。そしていま、健康経営に力を入れています。  さまざまな選択肢があると思いますが、決断をした後は、残された課題にどう対応していくか、あるいは、選んだ選択肢をどう有効につなげていくか、その点が非常にクリアになります。悩まれている方、検討されている方は、まずは決断をして、いち早く次の課題に取り組まれたらよいのではないかというのが、私のアドバイスです。 大木 たいへん参考になるお話を、どうもありがとうございました。 ※ 公益財団法人関西生産性本部……労・使・学が協力して推進する「生産性向上運動」の関西におけるセンター 写真のキャプション コーディネーター大木栄一氏(玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授) 松室伸生氏(株式会社島屋 人事政策 兼 人事・採用育成担当部長) 玉置克己氏(レンゴー株式会社 元人事部長) パネルディスカッションの様子 【P27】 福岡会場 企業事例発表4 年齢にとらわれない働き方 イオン九州株式会社 執行役員 管理本部人事教育部長 工藤洋子(ようこ)  当社は1972年(昭和47)年に設立し、九州エリアで総合小売店舗のイオンやホームワイドなど126店を展開する企業です。社員数は約1万200人、正社員が約2800人、時間給の社員(パートタイマー)が約7400人(8時間換算)です。  社員の定年は65歳です。高年齢者雇用安定法が改正された2006(平成18)年までは定年が60歳でしたが、その年に65歳まで継続勤務できる制度をつくり、2008年には社員の定年を65歳に延長しました。65歳まで一気に延長することができた背景には、給与は資格ごとに異なり、試験により昇給・昇格し、年齢給的な要素が少ないという人事制度があります。時間給制の社員の給与も、資格給に部門給や能力給、地域給、時間帯加給が付加される仕組みで、毎年評価をして能力給が決定されます。  こうした制度のもと、さらに70歳までは元気に働いていただきたいということから、正社員については、現在65歳定年ですが、2018年9月より、70歳まで働ける再雇用制度を導入しました。65歳以降は1年ごとに契約更新する嘱託社員で、職務・職位は担当者です。65歳まで店長や部長だった者も、再雇用後は担当者として勤めます。月給は16〜20万円ほどで賞与はありません。労働時間は年間1984時間以下としていますが、短時間勤務などの柔軟な体制をとっています。時間給制の社員については、2019(令和元)年9月に定年を70歳に延長しました。給与ダウンなどはなく、単に定年を延長したという形です。  定年延長にあたり工夫していることは、一定の基準はありますが、希望者はだれでも働ける制度にしたこと、従前のスキルを活かして同じ部署で継続勤務すること、再雇用者は自宅から通勤できる店舗へ配属することなどです。教育については正社員・時間給社員関係なく、機会は均等にしています。モチベーションアップは、好事例発表会や技能コンクール、社内表彰の「ありがとう大賞」などをつくり、年齢に関係なく発表・受賞できる環境になっています。  当社の場合、時間給制の社員が全社員の約8割を占めています。お客さまに最も近い現場で活躍している社員ですので、パートタイマーの場合は60代で入社する人もいますが、年齢にかかわらず、しっかりと教育をしています。  現在の課題は、70歳以降の雇用延長についてです。70歳を超えて働きたいという声はたくさんあります。また、すべての社員が働きやすい職場環境整備への取組みもさらに目ざしていきたいと考えています。 〈社員区分と雇用年齢上限〉 70歳まで働くための制度 ●社員(定年65歳)  再雇用制度 2018年9月より実施  ・雇用上限 70歳  ・契約期間 1年ごとに契約更新(嘱託社員)  ・職務、職位 担当者として ●時間給制の社員(パートタイマー)  定年延長 2019年9月より70歳 【P29】 福岡会場 企業事例発表5 高齢者雇用の状況と生涯現役への取組み 株式会社ケアリング 専務取締役 岡部廉(ただし)  当社は、訪問介護や居宅介護支援、デイサービス、グループホームなどを展開する介護事業を行う会社です。2000(平成12)年に創業し、福岡市を中心に現在七つの支店があり、従業員数は299人、うち正社員が143人です。平均年齢は50歳。全従業員における60歳以上の占める割合は約30%となっています。  当社はもともと、定年制度を設けておらず、75歳以上のホームヘルパーがあたり前のように働いている会社でした。2014年に65歳定年制度を設けましたが、実態としては65歳を超えても働き続けているヘルパーがたくさんいます。  正社員の賃金は、65歳を超えても基本的に定年前と同じとしています。ボーナスの評価は年2回ですが、年金受給などを考慮し、若手を優遇した原資配分となっています。若手といっても40代で、子だくさんの者が多いという背景もあり、高齢社員にも理解をしてもらったうえでの対応です。これらは、人手不足が続いている介護の職場の特殊な状況といえるかもしれません。  このようななかで、一人ひとりを積極的に評価して、高齢社員の能力を最大限に活かしていきたいと考え、日ごろから取り組んでいます。  定年制度を設けた6年前に従業員アンケートを実施し、「何歳まで働きたいか」をたずねた結果、「65歳」が10%、「66歳から69歳まで」が約16%、「70歳以上」が19%のほか、「会社が必要としてくれるなら体が元気で働ける限り」という回答が53%あり、非常にありがたいと思いました。65歳以上の方に働きやすい環境について尋ねると、「働く時間・日数を短縮するなど就労負担の緩和」が最も多く31%でした。また、「65歳からの区切りで新たな専門性を学び、仕事で発揮できる研修の環境」を望む回答も7%ありました。介護の仕事は、年齢に関係なく技術を身につけていけば、よりよい介護につながります。アンケート結果をふまえて、能力開発の機会を充実させていくことが重要だと思っています。  今後の課題ですが、やはり人手不足は深刻で、外国人や障害者、服役した方が働ける場としての雇用も行っています。加えて、今後の介護事業は地域の人々に支えられることも大切です。介護保険の利用者自身が働き手となる、仕組みづくりも重要と考えています。  介護とは、介護する側もされる側も幸せになる関係であると、私たちは思っています。おばあちゃんがひ孫のような若い介護職員を見てほほ笑み、それに応えて楽しそうに介護をする、こういう関係を社会全体につくることができれば高齢社会は変わりますし、その一助をになっていきたいと思っています。 〈ケアリングの高齢者雇用の特徴〉 ■60歳以上の職員が多いのは、夜勤勤務者、認知症グループホーム常勤者、デイサービスの看護師、訪問介護ヘルパーの非常勤職員 ■特に、訪問介護ヘルパーの非常勤職員は、経験年数10年以上のプロフェッショナルが大半 ■ケアリングの介護サービスを支えたのは、高齢の女性の非常勤ヘルパー 【P29】 日本史にみる長寿食 FOOD 318 カブは万能の野菜 食文化史研究家●永山久夫 飢えを救うカブ  カブは食用価値のきわめて高い万能野菜です。葉は幅が広く大きく、ほかの野菜に負けない食べごたえがあります。  肥大した白い球根は、多肉多汁で大きく、煮ると甘味があり、満腹感を得やすいのが特徴です。このため、古くから葉も茎も球根も、汁物、煮物、漬物の材料として親しまれてきました。  緊急のときには、そのまま生食もできます。昭和20年代までは、体が温まり、米の節約にもなることから、よくカブ雑炊を食べたものです。  『日本書紀』にも、「凶作などで五穀が不足した場合の飢えを救うための作物としてカブ栽培をすすめる」とあります。五穀と同じ働きまでする力を持つのがカブだったのです。  古くは「あおな」といったら、カブのことでした。球根も葉も利用できるので、それだけ評価が高かったのです。カブは野菜のなかでも代表的な存在だったのです。  戦国時代になると、下級武士は朝も夕もみそ味のカブ雑炊がほとんどでした。こうなると、たまには米だけのご飯が食べたくなります。  武士の息子は、猟をかねてよく山に、鉄砲うちに出かけました。そのときだけは弁当に米飯だけのにぎりめしを持参します。妹たちもおにぎりをもらえるために、くり返し兄に鉄砲うちに行ってくれとせがんだと『おあん物語』という江戸時代中期の書物にあります。 葉はビタミンCの宝庫  江戸時代になってもカブは好まれ、江戸武家屋敷などでも、庭先に畑を開いてカブをつくり、みそ汁の実やぬか漬けの材料にしています。  球根にはビタミンCに加えて消化酵素のアミラーゼが多く、胃もたれや胸焼けを防ぐ効果があります。  葉は立派な緑黄色野菜で、若返りビタミンのカロテンを豊富に含みます。風邪などに対する免疫力の強化に欠かせないビタミンCは、ホウレンソウの2倍以上含まれています。  また、老化を防ぐことから美容ビタミンとも呼ばれるビタミンE、それに骨を丈夫にするビタミンKもたっぷり。植物なのにカルシウムが多い点にも注目です。葉も大いに活用したいものです。 【P30-31】 江戸から東京へ 第89回 老年に知る師の心 河合曽良(そら) 作家 童門冬二 おくのほそ道の供をする  河合曽良は、元禄時代の武士で俳人だった。松尾芭蕉の弟子だ。身分は伊勢(三重県)桑名の松平家の家臣だった。彼の俳句好きを家中もよく知っていて、芭蕉がおくのほそ道≠フときに、望んで同行を求めたのに対し、理解を示してくれた。つまり曽良は芭蕉のおくのほそ道≠フ旅の供をしたのである。  芭蕉は曽良が歴史に明るく、特に日本の各地域の神社仏閣の歴史に詳しいことを知っていた。そこで東北から北陸を歩く今度の旅程中、由緒の深い神社仏閣の由緒を、調べてメモしてほしい≠ニ頼んだのである。それを、旅の先々で参考にするつもりでいた。  しかし、曽良の知るかぎり、せっかく曽良がつくったこのメモを、芭蕉が旅で大いに活用したという形跡はあまりなかった。その不満が高じたわけではないが、曽良は旅が関東地方から東北に至り、東北を巡って日本海側に出、北陸路を辿って加賀(石川県)の山中温泉まで着いたとき、ついに我慢できなくなって、  「体調が思わしくありません。お師匠さま、申し訳ございませんがここから帰国させていただきます」  といって芭蕉と別れてしまった。  理由がある。曽良は、几帳面な性格で、仕事のうえでも調査魔だった。正確を期す。したがってこのおくのほそ道≠フ旅でも、その日の天候や、地域の特性や、あるいは芭蕉の行動などを克明にメモした。  ところが芭蕉が2、3年経って発表したおくのほそ道≠ニいう紀行記は、必ずしも正確な旅の記録ではない。曽良が後に読んだかぎりでは、  「先生の記述には、かなり誇張があり、あるいは全然違ったことが書かれている」  と思えた。 見えないものがなぜ見える  一番引っかかったのが、有名な、 「荒海や 佐渡に横たふ 天の川」  という句である。  曽良の記憶では、その日は雨が降っていた。そして、地元の物知りに訊いたかぎりでは、その宿泊地(寺泊)から見た佐渡の上空には、天の川は流れていない。  つまり芭蕉は、雨で見えない空に天の川を見、しかも存在しない佐渡の上空にそれを見たのである。こういう虚構は、曽良が最も嫌うところだった。調査魔のかれは正確を期すから、やはり、  「日々の出来事は、事実を大事にしなければならない」  と思っていた。  芭蕉と別れた後の曽良は、殊更(ことさら)に調査を重んずる仕事に取り組み、やがて幕府から九州の対馬地方の調査を命じられた。この件については、後に研究者たちが本当かどうか疑念を持っているが、従来の説に従っておく。  日本のはずれ(対馬)まで行って、曽良はなぜか考えが変わった。それは、  「自分の目には見えなかったけれど、お師匠さま(芭蕉)の目には、本当に佐渡の上空に天の川が見えたのかもしれない」  という考えが湧いてきた。そして曽良にとってそれは、  「お師匠さまの見えない空に見えるところが、お師匠さまの凄(すご)いところなのだ。自分には到底追いつけない。まだまだ自分は未熟なのだ」  という自覚である。  これはそうかもしれない。すぐれた芸術家である芭蕉には、見えない処(ところ)にも空を流れる天の川が確実に見えたのだ。つくりごとではない。それが芸術の精神だろう。  おくのほそ道の旅に同行した曽良は、事実だけを追い求めてそういう芭蕉の高い心を理解できなかったのだ。そのために、芭蕉のつくる俳句に誇張や、虚構を感じ、正直にいえば嫌になって師匠を置き去りにしてしまったのだ。  日本の端の島にいて、高齢になった曽良はようやくそのことに気づいた。それまでないがしろにしてきた師への礼を欠いたことなどを反省した。そして取り返しのつかない思いに胸をかきむしられたのである。 【P32-33】 第71回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  田川徹さん(73歳)は、研究職の経験を活かし、現在も情報のスペシャリストとして第一線で働いている。新しい分野に配属されるたび、それを自分の天職ととらえて挑戦し続けてきた。常に前向きな田川さんが、生涯現役の極意を語る。 株式会社 三菱ケミカルリサーチ 首席研究員 田川(たがわ)徹(とおる)さん 研究者としての日々  私は兵庫県西宮(にしのみや)市で生まれ、中学3年生のとき父の転勤にともない、神奈川県鎌倉(かまくら)市に転居しました。県内の高校を卒業後、早稲田大学理工学部に入学。小さいころからものづくりに興味があり、気づけば理系の道を目ざしていました。機械屋だった父の影響が少しはあるのかもしれません。そのまま大学院に進み、1975(昭和50)年に三菱化成工業株式会社に入社しました。  最初に配属されたのは、横浜にあった総合研究所でした。面接のとき、大学で高分子(プラスチック)の研究をしていたことを話したので、その方面の研究ができると勝手に思い込んでいましたが、「界面(かいめん)化学」という未知の分野に従事することになりました。  「界面化学」とは、文字通り二つの物質が接する境界に生じる現象を扱う化学の1分野です。  会社にとっても界面化学は新しい分野で、私が入社したころに着手したばかりでした。それまでの専門とは違いましたが、新しい世界での研究・開発の仕事はやりがいがあり、何よりも面白味がありました。  界面化学との出会いがあったからこそ、73歳になるいまも現役で働けるのかもしれません。若いときは、目の前に与えられたチャンスに臆せず挑戦していくことがいかに大切かが、いまになるとよくわかりますし、そのチャンスをもらえたことに感謝しています。  入社してすぐに、それまでなかなかうまく作動しなかった分散機※の装置を改良し、生産にこぎつけたときは本当に嬉しかったです。経験の浅い私が、ほんの少し発想を転換しただけのことでしたが、簡単にあきらめず、さまざまな角度から試してみる姿勢は、いまも変わっていません。  40代半ばには、3年ほど経営企画室で事業戦略の策定に従事。「まったく違う分野だからこそ大いに勉強になりました」と田川さん。この積極性が田川さんの真骨頂である。 定年を新たなスタートに  経営企画室にいたころ、三菱化成は三菱油化と合併し、三菱化学と名前が変わりました。私は横浜総合研究所に戻ることになり、シュガーエステル(食品用界面活性剤)やイオン交換樹脂、凝集剤(ぎょうしゅうざい)などの研究開発を担当しました。「凝集剤」というのは沈殿をうながすための添加物で、例えば泥水に入れれば泥を取り除くことができます。  化学は、いかに世の中に役立つかということが常に問われていると私は考えます。化学の力を借りて、自分も社会に貢献したいという思いでこの道を歩き続けてきました。  横浜総合研究所の研究計画室長となったころから管理部門に移り、その後いったん退職の形を取ってから現在の会社に迎えてもらい、調査コンサルティングの仕事に就きました。その後常務を拝命し、64歳で役員定年を迎え、現役に戻って今日に至っています。三菱ケミカルリサーチは、私が新卒で入社した三菱化成特許部の情報調査部門から独立して設立されました。合併や社名変更など目まぐるしく変容しながら、調査コンサルティング企業として40年以上の実績を誇ります。  現在、私は週の半分を本社で過ごし、もう半分は横浜センターに通っています。「研究所」から「センター」へと名称は変わりましたが、青春時代を過ごした同じ場所でまた働けるのは幸せなことです。  三菱ケミカルリサーチは、関連会社で研究開発やビジネスの最前線で従事した人材を、調査コンサルティング部門などで活用している。生涯現役を応援する土壌がここにある。 研究開発の経験を活かして  本社での仕事は基本的に「コントラクトリサーチ」という分野で、官公庁などからの受注に際してのサポート業務です。各部から出された提案書をチェックして修正をかけ、よりよい形にし、受注につなげていくという役割をになっています。氾濫する情報のなかから有益な情報を迅速に抽出するとともに顧客の要望を的確に把握し、助言を行うことが私の仕事です。  一方、横浜センターでは主として研究者のサポート業務を担当しています。現代では、例えばある技術テーマについて検索すると、千件以上がヒットしてくることもあります。そこで、研究の効率化のために情報を絞り込んで提供していくのです。対応するScience & Innovation Center には若い技術者が多く、話をする機会があるたびに、若いときこそ発想の転換が大切であることをくり返し伝えています。  研究者として長く現場に立ってきましたので、本社でもセンターでも、これまで蓄積してきた知識が活かされ、技術的な経験も役立っています。また、経営企画室で学んだ事業戦略の立案や業界の動向の把握などに関する経験もいまの業務に活かされています。思えば、役に立たない経験などないのかもしれません。 知識欲を支えに生涯現役の道を  再雇用から早いもので9年が経過し、1年ごとに更新しており、勤務時間はほかの正社員と同様、9時から5時45分までで、週休2日です。現在趣味といえるのはゴルフ(テレビ視聴と実践)で、昔はそこそこのスコアで回っていたのですが、年を取ると段々下手になってきました。大学時代にやっていたテニスもしばらく続けていましたが、管理部門に移ったころから忙しくなり、足が遠のいてしまいました。  そんななか、運動不足になりがちなので、1日7000歩を歩くようにしています。本当は1万歩を目ざせばよいのでしょうが、少しハードルを下げた方が継続できると思いました。これも私流の発想の転換です。  本社には客員研究員といわれる方たちがいて、私より高齢な方も多いのですが、共通しているのは旺盛な知識欲でしょうか。私たちの仕事は、特許や文献を調べて読み込み、市場調査も必要ですから、常に情勢の変化を敏感にとらえることを自らに課しています。  最近は仕事がデスクワークにかぎられるため、ときどき「研究したい」と思うことがあります。役職者であったころ、やはり夜遅くに実験したことなどが懐かしく思い出されます。  くり返しになりますが、化学は本来、人間が豊かに生きることを支えるために存在すると私は確信しています。  化学とともに生きてきた誇りを胸に、これからも化学に寄り添い、微力でもだれかの役に立てるよう、生涯現役の道をしっかり歩いていこうと思います。 ※ 分散機……気体・液体のなかに、別の物質が粒子状に散らばって存在する分散状態をつくる装置をいう 【P34-37】 高齢者の現場 北から、南から 第94回 沖縄県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー※(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 年齢や個々の事情にかかわらずその人に合った働き方が実現できる職場へ 企業プロフィール 株式会社薬正堂(やくせいどう)(沖縄県沖縄市) http://www.sukoyaka.cc ▲創業 1984(昭和59)年 ▲業種 保険調剤薬局の経営、介護福祉事業・サロン事業・保育事業の運営 ▲従業員数 451人 (60歳以上男女内訳) 男性(9人)、女性(24人) (年齢内訳) 60〜64歳 11人(2.4%) 65〜69歳 10人(2.2%) 70歳以上 12人(2.7%) ▲定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員65歳まで継続雇用。以降も1年ごとの有期雇用契約社員として継続雇用する慣行がある  沖縄県は、九州と台湾の間に位置し、広大な海域に点在する大小160の島々からなっています。一年を通して気候は温暖で、色鮮やかな熱帯魚、サンゴ礁が息づく青く透き通った海、イリオモテヤマネコやノグチゲラなどの貴重な動植物が生息する森林など、豊かな自然環境に恵まれています。  また、独自の歴史・文化を有し、国内有数の観光地として人気を博しています。沖縄県の人口は、2020(令和2)年1月1日現在の推計で約146万人。沖縄県の人口は増え続けており、都道府県別の人口増加率(2010年から2015年まで)でみると、沖縄県は2・9%と全国で最も高い増加率となっています。  当機構の沖縄支部高齢・障害者業務課の都倉(とくら)智史(ともふみ)課長は、「沖縄県の産業は、第3次産業の割合が高く、第1・2次産業の割合が低いことが特徴で、現在の県経済を支えている大きな産業は観光産業です。沖縄県を訪れる観光客数は、国内外を問わず年々増え続けており、2018年度には年間約999万人を超えています。この数字はアメリカのハワイに匹敵するものであり、世界的にも注目されている観光地です」と話します。  こうした状況を背景に、県の経済規模が拡大するなか、同支部では「沖縄県内の約1700社において65歳超の雇用が促進されるよう、沖縄労働局やハローワークと連携して取組みの促進を図っています」と都倉課長。離島に所在する事業所への相談・助言活動も積極的に実施しています。  今回は、同支部で活躍するプランナー・青山喜佐子(きさこ)さんの案内で、「株式会社薬正堂」を訪れました。 地域の健康サポート薬局≠目ざして  株式会社薬正堂は、1984(昭和59)年に個人薬局として創業して以来、「創造と奉仕」の経営理念のもと、地域社会・地域医療に貢献できるかかりつけ薬局≠目ざして邁まい進しんし、2019年に35周年を迎えました。現在では、地域の人々の健康を支える健康サポート薬局≠目ざして、沖縄県内に39店舗の「すこやか薬局」を展開しています。加えて、2005年から介護保険事業にも取り組んでいます。また、リラクゼーションサロン事業、保育事業も立ち上げて、役割の幅を拡げながら、地域の人々の心と体の健康を守る事業活動をすすめています。  すこやか薬局では常に、「相手の視点にたった薬局づくり」を追求し、専門性の高いサービス提供だけでなく、車から降りずに窓口で説明を受けて薬を受け取ることができる「ドライブスルー薬局」や、薬を受け取る待ち時間が短縮される「処方せん送信アプリ」、薬局内で親切に対応する「フロアコンシェルジュ」などを導入して、顧客満足度を上げるサービス提供にも果敢に取り組んでいます。 一人ひとりに合わせた働き方を考える  薬正堂の社員数は、451人(うち、正社員数は272人)。このうち、薬局スタッフが283人(うち、薬剤師が82人)と最も多くを占めています。また、社員の約8割が女性で、女性が就業を継続し活躍できる雇用環境の整備として、充実した社内キャリア研修制度や柔軟な働き方への対応を実現しています。  同社常務取締役の古堅(ふるげん)春樹さんはこうした取組みについて、「女性が多いから行っているのではなく、社員一人ひとりの強みや弱み、事情はいろいろですから、その人に合わせた工夫や配慮をするように努めています。例えば、子育てをしている社員には無理なく働き続けられる勤務時間を工夫するとか、障害があるため高い所に手が届かないという社員には周りの者が手助けをする、あるいは、若くて体力があってもうっかりミスをしがちな社員に対しては周りの者が二重のチェックをするなど、それぞれに合わせた工夫や配慮を店舗ごとに話し合い、実行しています。過去には、聴覚障害のある社員に、ほかの社員に手話を指導する役割をになってもらうなど、それぞれの強みを活かす取組みを行っています」と説明します。  こうした対応は最初からできたわけではなく、店舗ごとに話し合い、どうしてもサポートがむずかしい場合は、ほかの店舗と調整するなど、探りながら一つひとつ進めてきたといいます。「100年続く企業を目ざそう」という将来の目標を掲げ、話合いをするときは、目の前の課題だけでなく、100年先を見据えた工夫などをみんなで考えているそうです。  青山プランナーは、「それぞれにあった柔軟な働き方がしやすい職場環境の整備は、これからますます必要になる視点です。そのベースとして薬正堂さんでは、一人ひとりの社員を見るための、契約社員やパート社員も含むすべての社員を評価する制度を整えています。基本的なことを評価する内容とのことですが、大事な取組みだと思います」と同社の取組みを評価します。  同社の60歳以上の社員数は33人。60代や、薬剤師では70歳を超えた人材も採用しており、今後は高齢社員が増えていくことが見込まれています。  今回は、同社のすこやか薬局でフロアコンシェルジュとして活躍している大城(おおしろ)美佐子さん(67歳)に、お話を聞きました。 だれかの役に立ちながら働けることに感謝  大城さんは、週5日、9時30分から17時30分まで、「すこやか薬局西原店」で、フロアコンシェルジュとして働いています。「フロアコンシェルジュは、銀行のフロアにいらっしゃる案内の方と同じような役割で、薬局の店舗内に立ち、患者さまの接客をする係です。お茶をお出しし、ご案内だけでなく、世間話をすることもありますし、薬剤師から薬の説明を聞くときに必要に応じて患者さまのそばにいてサポートすることもあります」と大城さん。  現在、21人のフロアコンシェルジュが各店舗で活躍しています。古堅常務取締役は、「フロアコンシェルジュには、患者さまの気持ちをくめる人材を採用しています。大城さんは、医療事務経験者で、笑顔がとてもよく、彼女なら気配りもできると直感し、配属しました」と話します。その直感の通り、大城さんは「お客さまからのお褒めの言葉が断トツに多い社員です」と古堅常務取締役。今年度の同社の功労賞を受賞しました。「恐縮しましたが、人生の表彰と思い、感謝いっぱいの気持ちでいただきました」と大城さんはうれしそうに振り返りました。  大城さんは、56歳までの26年間、個人病院に勤務して医療事務を担当していましたが、お母さまが病を患い、退職。看取りを終えて、58歳で同社に再就職し、9年が経ちました。仕事では、「患者さま一人ひとりの体調や様子などに気づけるよう心がけて、家族のように思い接しています。そうしたなか、患者さまのお役に立てたと感じられることがやりがいであり、私のパワーになっています」とやさしい表情で話します。  また、「『体調や健康に気をつけて、一日でも長く働いてください』と、会社のみなさんからいってもらえることも励みになっています。ここは、社員の健康を大事にしているすばらしい会社です。その一員として、だれかの役に立ちながら働けることに感謝し、人生の充実をはかり、年を重ねられたらと思います。理想は70歳手前くらいまで現職を継続し、その後は健康状態や会社のニーズもあると思いますが、別職種で75歳くらいまで働き続けられたらよいなと考えています」と将来の抱負を話してくれました。 人が集まりたくなる企業になるために  同社では現在、76 歳の薬剤師が現役で活躍しています。ほかの会社を75 歳で退職後、薬正堂で採用したそうです。長く学術的な仕事に就いており、同社に入社してからは、その力を活かしながら薬局での業務を勉強し、いまは助っ人的な立場でいろいろな店舗で働いているとのこと。「『仕事が楽しい』といって、活き活きと働いています。向上心を持ち、コンピューターの扱いなどは若い社員から学んでいて、その姿にまわりの社員がよい刺激を受けていると聞いています」と古堅常務取締役。また、次のように課題をあげています。  「薬剤師は、体力も神経も目も使いますし、正確さ、スピードも求められます。60歳以上の社員は、1年ごとの更新時に健康状態や本人の希望と店舗ごとのニーズによって継続の可否や働き方を確認します。継続者に共通しているのは、学ぶ姿勢でしょうか。若い世代との支え合いが自然にうまくいっているようにみえます。ただ、高齢社員が増えているので、健康管理に対してさらなる努力が必要であると感じています」  この課題について、青山プランナーはこのほど、当機構の「健康管理診断システム」を同社に実施しました。「従業員の健康維持・増進のため、どのように企業として必要な体制を整備すべきか」という観点から、検討事項を明らかにするシステムです。社員からのアンケート調査をもとに、これから結果を分析するそうです。  また、同社の依頼を受けて、青山プランナーが講師になり、近く「就業意識向上研修」を実施する予定とのこと。将来の人生設計について考える機会となるもので、「こういう研修があることを知り、やってみたいと思いお願いしました」と古堅常務取締役。続けて、同社の今後について、次のように話しました。  「少子化時代が続き、若い人がいないのですから、『これからはおじい・おばあが、おじい・おばあに接する時代が来るよ』と社員によく話しています。年齢や障害などにかかわりなく、ここで働きたい・働いてほしい、と思った人を迎えて、縁を大切にして、その人に合った働き方を実現できる職場環境にしていきたい。当社社長は、『人は集まりたいと思うところに集まる』といっています。温かいものがあり、人が集まるところになるために、いまできることからまずやってみようと社員に話し、取り組んでいるところです。結果的にこれらの動きが、社会のニーズや動きに則しているとよいなと思います」(取材・増山美智子) ※65歳超雇用推進プランナー……当機構では、高年齢者雇用アドバイザーのうち経験豊富な方を65歳超雇用推進プランナーとして委嘱し、事業主に対し、65歳を超えた継続雇用延長・65歳以上への定年引上げなどにかかわる具体的な制度改善提案や、相談・助言等を行っています 青山喜佐子プランナー(71歳) アドバイザー・プランナー歴:14年目 [青山プランナーから] 「プランナー活動では、企業に対して70歳雇用導入のヒントになる情報提供を心がけています。訪問時には、事業所の現状を聞き、取組みのよい点を見つけて評価するとともに、高齢者雇用のメリットや問題になると思われる点などを確認し、課題解決の取組みについてマニュアルや事例集で紹介します。企業には制度導入を助言し、社員を対象としたライフプランのための意識向上研修をおすすめしています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆沖縄支部の都倉課長は、青山プランナーについて次のように話します。「相談活動では、各事業所の高齢者継続雇用にかかわる課題を即座にとらえ、豊富な経験に基づき、ていねいかつ適切な助言を行っており、事業所からの信頼も厚いプランナーです。また、あらゆることに前向きで積極的に対応する姿から、沖縄県のプランナー・アドバイザーのまとめ役となっています。沖縄県の社会保険労務士で知らない人はいないというほど、県内において頼りにされている存在です。研修の講師としての評価も高く、当支部にとってなくてはならないプランナーの一人です」 ◆沖縄支部高齢・障害者業務課は、4人の65歳超雇用推進プランナーと2人の高年齢者雇用アドバイザーの体制で、沖縄県内(離島含む)の事業所約1700社を対象として、高齢者雇用に関する相談・助言を行っています。2018年度は377件の相談・助言を実施しました。 ◆沖縄支部は、県庁所在地の那覇市おもろまちに、ハローワーク那覇、沖縄障害者職業センターとともに「沖縄職業総合庁舎」内にあります。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●沖縄支部高齢・障害者業務課 住所:沖縄県那覇市おもろまち1-3-25 電話:098(941)3301 写真のキャプション 沖縄県 沖縄市に構える本社ビルは窓に緑化を施した熱環境に優しい建物 沖縄県内に39店舗を展開している「すこやか薬局」 薬正堂の古堅春樹常務取締役 薬局でフロアコンシェルジュとして笑顔で接客をする大城美佐子さん 【P38-41】 AI・ICTで働き方が変わる ―高齢者から始まる働き方改革― 東京大学 先端科学技術研究センター 講師 檜山(ひやま)敦(あつし)  生涯現役時代を迎え、就業を希望する高齢者は、今後ますます増えていくことが予想されます。そんな高齢者の就業を支援するうえで期待が集まるのが「AI・ICT」※1。AI・ICTの活用で、高齢者が持つ知識や技術、経験を効果的に活用できる働き方が実現すれば、現役世代の負担軽減につながります。それが、高齢者から始まる働き方改革≠フ姿です。 第5回 ジョブの開拓と就労観の転換 「働く」=社会参加の形の一つ AI・ICTがシニアの社会参加を活性化  ひとりの一生が100年もの長さになってきたといわれる今日、高齢期の時間をどのように過ごしていくかを考えることは、生きるうえで一大テーマとなります。退職後の心身の健康維持向上には、社会とのつながりを持ち続けることが鍵となっています。  「働く」ということは、わかりやすい深いレベルでの社会参加の形です。これまでの連載で取り上げてきたように、インターネットを中心にした情報通信技術の発達が、シェアリングエコノミーという新しい柔軟な働き方を生み出し、広がり始めています。仕事のデジタル化もますます加速していくと同時に、ロボット技術とVR技術が発展していくことで、従来のテレワークでできる仕事の領域が急速に拡大されていく可能性も見えてきました。一人ひとりが心身のコンディションや生活する環境に合わせて、無理なく不安なく働けるように、新しい柔軟な働き方を支援するツールは発展し続けるでしょう。  当連載の第2回で紹介した、シニアの社会参加・就労を活性化するマッチングプラットフォーム「GジーバーBER」も、そのようなツールの一つとして研究開発を進めています。これまで実証実験として、「一般社団法人セカンドライフファクトリー(千葉県柏市)」では4年にわたって運用を続けており、熊本県では自治体と連携した広域展開を始めています。柏市や熊本県での運用がきっかけとなって、現在多くの自治体やシニアコミュニティ、民間企業から、地域でのGBERの展開を希望する問合せが集まってきています。教育研究活動の一環で行っているため、なかなかみなさまの要望にお応えできていない面がありますが、これからはシニア就労とGBERの活用に関心のある自治体、シニアコミュニティ、企業とコンソーシアム※2を形成し、GBERを社会実装するスタートアップを立ち上げることも考えていく必要があると感じています。 多様化するシニアのニーズ 単一のコミュニティでは対応できない  30名以上のメンバーを抱えて、仕事などの地域活動への参加に積極的に取り組んでいるコミュニティは、活動を活性化させるツールとしてGBERを展開しやすい環境にあるといえます。地域のシルバー人材センターなども、登録している会員が自ら興味のある仕事を探して応募するマッチングのフローを効率化する意味で、導入しやすい環境といえるでしょう。  その一方で、地域のシニアコミュニティやシルバー人材センターへのヒアリングを行っていると、「定年退職していく人が年々増加しているにもかかわらず、新規会員登録者数の減少が課題となっている」と耳にすることがあります。シニアの社会参加に対する多様なニーズに応えることが、一つのコミュニティではカバーできなくなってきているのです。  例えばシルバー人材センターの場合、その仕事は「臨・短・軽」といわれる簡易な仕事が中心となりますが、それではシニアの参加意欲をかき立てられないことが課題といわれています。シニアの働き方を考える際、「臨・短」であることは柔軟な働き方を志向するうえでは欠かせない視点なのですが、いまの日本の労働市場においては、臨・短の二つを決めると、必然的に軽微な仕事になってしまう傾向があります。軽微な仕事では、今日のバイタリティあふれる多くのシニアの労働意欲を刺激することができなくなってきているのです。  かといって、より高度なスキルが求められるシニア向けの仕事となると、「臨時で短期の経営相談」のように、極端に高度なスキルが求められる仕事になってしまいます。多くのシニアが満足できる「適度なレベルの仕事の開拓」も大きな課題の一つです。 適度なレベルの仕事の開拓≠阻害する日本式就労観  「適度なレベルの仕事の開拓」という課題は、シニア就労にかぎらず、現役世代の働き方改革や、ライフイベントに直面している労働者、障害のある労働者にとっても、働き続けることに対する大きな壁として存在しています。その壁をつくっている根源的な要素が、日本における就労観の特徴でもあります。  その就労観の要因の一つが、給与体系が仕事の内容に対応した「職務給」ではなく、働く役職によって決まる「職位給」となっていることです。職務定義が曖昧であるため、現役世代はあらゆる業務をこなせる人材であることが要求され、フルタイムで何でもできる人材でないと、就労機会を得づらい社会であるといえます。人件費を職務単位で計算できないため、職務の分担がやりにくくなり、働き手の減少が進む現役世代においてはその負荷が高まっていきます。  職位給を支える就労観が、新卒一括採用、年功序列、終身雇用という、流動性の低い単線型の労働市場です。かつての高度経済成長期においては、効率的に機能していたシステムが、今日では成長を抑制する仕組みとなっています。こうした就労観のもとで会社のメンバーとして社員を迎え入れるということは、逆にフルタイムでどんな仕事でもこなせる働き方ができなくなると、単線的なキャリアパスからはじき出されてしまうということであり、一旦はじき出されると元に戻りにくいということでもあります。  本来であれば、非正規雇用という仕組みが柔軟な働き方をサポートするシステムとして機能することが期待されるわけですが、その仕組みが「非正規」雇用と名づけられたこと、そして「働き方改革」という言葉と概念が世の中にさらに遅れて出てきたことによって、そのプラスの側面に日が当たりにくくなり、労働格差を生み出し、ますます働き手を企業メンバーとしての正社員に固執させる悪循環を生み出しています。 多様な働き方に関する意識調査労働格差の拡大で既存の就労観に固執  われわれの研究グループで、多様な働き方に関する800名規模の意識調査を行ったことがあります※3。  調査の結果からは、男女とも「仕事を通した技能や経験の獲得への関心」などのキャリア志向が高い人材ほど、副業・複業・兼業に対する関心が高く、フレックスタイム制度・育児休業・テレワークなどの柔軟な働き方を支援する仕組みを「利用したい」、「利用したかった」という回答が多くなりました。逆にキャリア志向が低い人材は「利用したくない」、「知らない」という回答が多くなりました(図表)。  また、現在正社員である人、役職についている人、キャリア志向が高い人ほど「可能な限り正社員が良い」という考えに賛同し、仕事に対する自信・積極性が高い人ほど反対する有意な関連が見られました。さらに、小学生以下の子どもがいる人、健康に不安がある人ほど、「職務単位での働き方」や「主体的なキャリア形成」に消極的であることがわかりました。  「非正規雇用」と呼ばれている制度が、自分の経験やスキルに自信があって、積極的にキャリアを開拓していきたい人材の活躍の場を広げるためのものとして紹介されたなら、労働格差は拡大する方向ではなく是正され、生産性は高まったのかもしれません。  現実には、職務給を導入することなく職位給を維持したまま非正規雇用が拡大し、正社員との間の労働格差が広がってしまいました。本来は無理なく仕事とのつながりを維持したいと考えている人ほど、そのための柔軟な働き方を支援する制度の情報を知ることができにくいこと、労働格差のなかで自己を守るために既存の就労観に固執してしまう傾向に陥りやすいことが示唆されています。 働くシニアのキャリア構築に向け日本式就労観からの転換を  話をシニア就労に戻すと、よく耳にする「役職定年」や「定年延長」、「再雇用」というシステムは、既存の働き方や給与体系にメスを入れることなく、従来の就労観を維持する方向で考えられたものだといえます。  リクルートワークス研究所が注意喚起した「次世代シニア問題」という言葉があります※4。現在のシニアは、日本が世界第2位の経済大国である時代にキャリアを形成し、いまの若い世代よりも多くの貯蓄を形成することができました。昨年の金融庁の報告書から老後30年の必要資金2000万円問題がメディアを賑わすようになりました。現在保有している貯蓄から、さらに追加で2000万円の資産を形成する必要があると解釈している人もいるでしょう。2015(平成27)年の総務省の家計調査によると、60歳以上の平均貯蓄額は2396万円で中央値は1592万円となっています。ということは、貯蓄額の中央値で考えると65歳で定年退職してから30年生きるとした場合、30年間で400万円程度稼ぐ必要が出てくることになります。つまり1カ月あたり1・1万円の収入を得ることで、老後資金2000万円を準備することができることになり、試算をするとそれほど非現実的なことではないということがわかります。  ただし、国際競争力と労働生産性の低迷が、キャリア形成と重なってしまった世代にとっては状況が変わってきます。老後の備えが十分にできていないと感じているだけでなく、職位給の仕組みのなかで、管理職以上に多くの人材が詰まってしまい、昇進・昇級の機会が減っていることが、労働意欲の減退を引き起こしています。これからのシニアが定年退職するときまでに、いかに健康的なシニア就労市場を形成できるかがポイントになります。  2019(令和元)年には、経団連会長やトヨタ自動車社長が相次いで「終身雇用の維持はむずかしい」ということに言及しました。人材派遣会社との議論のなかでは、新卒でいきなり派遣労働を選ぶ若者が出始めたという話も聞いています。  雇用側としても、旧来の就労観を維持していくことに限界を感じているし、労働者側も旧来の就労観に基づく働き方からの脱却を求め始めています。それにもかかわらず、旧来の就労観を手放すことに対しては、根強い不安感が渦巻いていることで、双方とも最初の一歩をふみ出すことができないようです。 シニア世代のジョブ開拓が現役世代の働き方改革につながる  企業の一員として就職するという従来の就労観から、職務単位での就労への転換を進め、シニアが働く意欲をかき立てるジョブ開拓を広げていくためには、各企業や組織において仕事の目標を明確に定めつつ、いま現在取り組んでいる作業を一つひとつ明文化していくことが必要になります。そして、その一つひとつの作業に対し、目標を達成することに必要な作業なのか、逆にほかに実施するべき作業はないかを吟味します。次に、現在の組織内の人材の力を集中させるとよい作業は何で、外部人材の助けを借りた方が効率がよい作業は何なのか判断します。  たいへん手間がかかる作業ではありますが、組織内の仕事分析を行っていくことがはじめの一歩と考えています。新たな求人を出すタイミングで、あいまいなコミュニケーション能力を求めて、応募する人材が組織のなかでの役回りを見出すことに期待するのではなく、具体的な作業を提示して遂行可能かどうかを判断してもらうところから始めるとよいでしょう。  多様な人材の多様な働き方を広げていくシステムの研究開発に一緒に取り組んでいる、同じ先端科学技術研究センターの近藤武夫先生は、上述のジョブ開拓方法を開発し、障害者が無理なくできる仕事をできる範囲で従事することを助ける「超短時間就労」を提唱しています。川崎市や神戸市などでは、フルタイムでの就労や組織内のコミュニケーションを苦手としている人材に適した作業を発掘することで、障害者の就労機会を広げていっています。  この手法をツール化し、シニアや柔軟な働き方を求める若手人材に広げていくことで、一人ひとりが前向きに取り組むことのできる仕事や働き方に結びつけていけると考えます。  若手人材に対しては、社会の多方面に影響を与えられる人材を正社員として企業が無理をして抱え込むのではなく、社会のなかのさまざまなプロジェクトに従事し、複数の企業でイノベーションを起こすことを推進するインディペンデントコントラクター※5としての活躍を助けることに寄与するでしょう。  シニア世代は、現役世代の成長とキャリア形成のために集中できるとよい職務をサポートできる頼もしい人材です。シニアの多くは特に、現役時代につちかってきた経験も活かせるようなホワイトカラーの仕事を求めています。ホワイトカラーの仕事の開拓は現役世代の働き方の改革と車輪の両輪を成す形で進んでいくものになるでしょう。 ※1 AI・ICT……AI(Artificial Intelligence)は人工知能、ICT(Information and Communication Technology)は情報や通信に関連する科学技術の総称 ※2 コンソーシアム……同じ目的を持つ、二つ以上の個人や企業、団体からなる団体 ※3 菅原育子、今城志保、檜山敦、秋山 弘子「多様な働き方への態度とその関連要因」、産業・組織心理学会第35回全国大会(2019年) ※4 リクルートワークス研究所 2014年度『Works Report』より ※5 インディペンデントコントラクター……高度な知識や専門性を持ち、複数の企業と契約して仕事を請け負う働き方をする人、個人事業主 図表 多様な働き方を支援する制度の利用経験・利用希望 育児休業 現在利用している3% 過去利用した6% 利用したい(したかった)49% 利用したい(したかった)と思わない32% 制度を知らない10% 介護休暇 現在利用している0% 過去利用した2% 利用したい(したかった)55% 利用したい(したかった)と思わない28% 制度を知らない15% 病気療養の休暇 現在利用している1% 過去利用した1.1% 利用したい(したかった)51% 利用したい(したかった)と思わない24% 制度を知らない13% 短時間勤務制度 現在利用している2% 過去利用した3% 利用したい(したかった)51% 利用したい(したかった)と思わない28% 制度を知らない16% フレックスタイム制度 現在利用している4% 過去利用した5% 利用したい(したかった)50% 利用したい(したかった)と思わない24% 制度を知らない17% テレワーク 現在利用している2% 過去利用した2% 利用したい(したかった)49% 利用したい(したかった)と思わない28% 制度を知らない19% 副業・複業・兼業 現在利用している7% 過去利用した6% 利用したい(したかった)46% 利用したい(したかった)と思わない28% 制度を知らない14% 資料出典:産業・組織心理学会第35回全国大会講演資料(2019年)「多様な働き方への態度とその関連要因」菅原育子、今城志保、檜山敦、秋山弘子 【P42-45】 知っておきたい 労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第23回 労働条件の不利益変更、試用期間の法的な位置付け 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 賃金の見直しは労働条件の不利益変更にあたるのでしょうか  これまで職能給制度のもと、年功序列による昇給を実施してきましたが、同一労働同一賃金への取組みとともに、職務給および成果主義による賃金制度への変更を計画しています。  すべての従業員について、賃金が上昇することになると人件費の負担が大きすぎるため、新たな賃金制度の導入とともに一部の従業員の賃金や福利厚生面についても見直しを検討しています。  労働条件を変更するためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。 A  労働条件を変更する場合は、合意によって変更することが原則とされています。そして、労働条件の変更の合意については、労働者の自由な意思が確保されていなければなりません。  また、就業規則や労働協約の変更によって、制度自体を変えることで、多数の従業員の労働条件を変更する場合は、変更の合理性が認められなければなりません。賃金制度の変更などにおける合理性の判断にあたっては、従業員全体に対する人件費の総額が維持されるか否かも重視されています。 1 労働条件の変更ルール  従業員との間で労働条件の変更を行う方法には、@同意による方法(労働契約法第8条)、A就業規則の変更による方法(労働契約法第10条)、B労働協約による方法(労働組合法第14条、第16条)があります。  これらの変更方法には、異なる基準によりその変更の有効性が判断されることになりますので、それぞれの留意点を見ていきたいと思います。 2 同意による変更  労働契約法第8条は、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と定めたうえで、同法第9条において、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない」と定めることで、例外的な場合を除いて、合意によって労働条件を変更することを原則として位置付けています。  合意による変更であるため、紛争にはなりにくそうですが、合意が真意によるものであったのかが争われる場合があります。  例えば、合併などにともない退職金の支給基準の変更を署名押印のある書面により明示的な合意で変更した事案である最高裁平成28年2月19日判決(山梨県民信用組合事件)においては、@指揮命令に服すべき立場に置かれていること、A意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることを考慮して、労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきであることを前提として、「変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点」から判断すべきとし、具体的な不利益の内容や程度についても説明を充実することが求められています。  これだけ明示した合意であっても、自由な意思であることが求められることが通常であることから、労働条件の変更に異議を述べなかったことを理由に黙示の合意が認められるのは極めて例外的な場合にかぎられています。  したがって、合意により労働条件を変更するにあたっては、不利益部分に関する説明内容を充実させたうえで、労働者の自由な意思により変更に応じたことを担保するように留意する必要があります。 3 就業規則による変更  就業規則を変更することによって、労働条件を変更することができる例外的な場合として、労働契約法第10条は、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする」と定めています。  手続き的な要件として必要とされているのは、労働者への周知ですが、変更が有効か否かを判断する重要な要素としては、不利益変更の合理性が求められています。  そもそも、労働条件の変更が「不利益」であるか否かは、どのように判断されるのでしょうか。就業規則を変更する場合には、複数の条文を同時に変更することが多く、労働者にとって有利な部分もあれば、不利な部分もあるというのが実情です。このような場合でも、少しでも不利益な変更部分が存在する場合には、不利益変更として評価され、有利な要素があることは合理性の程度として評価されることになります。  近年の成果主義賃金に関する裁判例では、賃金原資総額が減少しない場合という留保をつけつつ、「個々の労働者の賃金を直接的、現実的に減少させるのは、賃金制度変更の結果そのものというよりも、当該労働者についての人事評価の結果である」として、不利益変更の合理性について、やや緩やかに判断した事例があります(東京地裁平成30年2月22日、トライグループ事件)。  なお、当該裁判例においては、昇給、昇格、降給および降格の結果についての平等性が確保されること、人事評価における使用者の裁量の逸脱、濫用を防止する一定の制度的な担保がされていることなどの事情を総合的に考慮して判断すべきとされており、成果主義賃金導入後に人事考課の裁量が広くなりすぎるという問題点への対処は求められています。 4 労働協約による変更  労働組合法第16条は、「労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする」と定め、労働条件の最低基準となることを定め、労働契約に優先する効力を持つと解釈されています。さらに、同法第17条において、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする」とも定め、労働組合の組合員以外への法的拘束力も肯定しており、労働協約を変更することで、多数の労働者との間で労働条件を変更することも可能となっています。  労働協約は、労働組合との合意により成立するものであり、労使間の交渉を経て、条件の調整などを重ねながら最終的な労働協約として整理されるという過程を経ることが多く、当該労使間の交渉が行われることが重視され、就業規則と比較すると、変更の有効性は認められやすい傾向にあると考えられています。 Q2 試用期間を経て本採用を見送る場合に問題はありますか  求人活動を経て、採用に至ったのですが、入社してから協調性のなさ、業務に関する報告が不十分であること、業務のスピードが一般的な採用者と比べても大きく劣っているなど、採用時にはわからなかった能力不足が明らかになってきました。  採用にあたっては、3カ月の試用期間を設けているので、試用期間満了をもって契約を終了しようと思っているのですが、問題があるでしょうか。 A  試用期間の満了による終了においても、解雇権濫用に該当する可能性があります。採用前に判明していなかった事情であるか、試用期間中に解消することができない能力不足であったのかなどを考慮のうえ、本採用拒否の有効性が判断されることになります。なお、試用期間を延長することで対応する方法も考えられますが、その場合就業規則の規定に延長を許容する内容が含まれている必要があります。 1 試用期間の法的性質  多くの企業においては、採用の際に試用期間を設けることが一般的です。期間としては、3カ月から6カ月程度が多いかと思われますが、試用期間中に十分な能力がない場合には、本採用を拒否して、労働契約を終了させる場合があります。  この試用期間の法的性質については、「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇傭された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきもの」として、事案ごとに個別に判断される余地は残しつつも、「上告人と被上告人との間に締結された試用期間を三か月とする雇傭契約の性質につき、上告人において試用期間中に被上告人が管理職要員として不適格であると認めたときは、それだけの理由で雇傭を解約しうるという解約権留保の特約のある雇傭契約」という認定を是認しています(最高裁昭和48年12月12日判決、三菱樹脂本採用拒否事件)。  この説示は、たとえ試用期間中であったとしても雇用契約は成立していることを前提にしているため、本採用の拒否は、解雇に該当するということを示しています。一方で、試用期間中には、解約権が留保されていることから、当該留保された解約権の行使として行われる本採用拒否においては、通常の解雇とは判断基準が異なるという結論が導かれます。  当該判例においては、留保解約権の行使について、「一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性をもつものとしてその効力を肯定することができるというべきである。それゆえ、右の留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない」として、解雇よりは広く行使することが許されると考えられています。 2 解雇権濫用との関係について  試用期間の性質が、留保解約権付の雇用契約であるとしても、ただ自由に本採用拒否できるというわけではなく、同判例においても「留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である」と判断されています。  具体的には、企業が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態などにより、採用の当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合などに、引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、留保された解約権の趣旨、目的に照らして、客観的に相当であると認められる場合であれば、有効な留保解約権の行使と認められると考えられています。 3 試用期間満了と解雇予告について  試用期間後の本採用拒否も一種の解雇であると理解されていることからも、本採用拒否をする場合においても、14日以内の試用期間の労働者を除き(労働基準法第21条第4号)、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない」と定める労働基準法第20条が適用されることになります。  したがって、3カ月の試用期間を定めた場合においても、予告手当を支給しない場合には、2カ月経過するまでの間に、本採用拒否によって解雇するか否かを決断しなければならない場合があります。 4 試用期間の延長について  試用期間中には、留保解約権が企業に残され続けることになるため、一般的には、不安定な地位に労働者を置いていると評価され、あまり長期間になることは許容されていません。あくまでも、試みの期間として合理的な範囲でなければならないということになります。  しかしながら、試用期間を延長して様子を見たい場合も生じることがあります。  過去の裁判例では、「試用期間の趣旨に照らせば、試用期間満了時に一応職務不適格と判断された者について、直ちに解雇の措置をとるのでなく、配置転換などの方策により更に職務適格性を見いだすために、試用期間を引き続き一定の期間延長することも許されるものと解するのが相当である」などと判断されており、本採用拒否を回避する趣旨での延長については許容されているものがあります(東京地裁昭和60年11月20日判決、雅叙園観光事件)。  ただし、就業規則において、延長の規定すら定めていない場合は、試用期間の延長は、就業規則が定める最低基準を下回る(より不安定な地位に長く置く)ことになるため、延長の効力が否定されるとの規制もあるため、延長する前提として就業規則の規定は整備しておく必要があります。 【P46-47】 科学の視点で読み解く 身体と心の疲労回復  高齢者が毎日イキイキと働くためには、「疲労回復」の視点を持つことも重要になります。この連載では、「疲労回復」をキーワードに、“身体と心の疲労回復”のために効果的な手法を科学的な根拠にもとづき紹介します。 国立研究開発法人理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム プログラムディレクター 渡辺(わたなべ)恭良(やすよし) 第10回 心の疲労回復・認知症予防に役立つ取組み 心の疲労回復  みなさんは、仕事が立て込んだときや、難易度が高いプロジェクトに直面したときなどに、心にも疲れを感じるようなことはありませんか。  筆者は以前、慢性疲労症候群の患者さんと健常者の気質と性格を比較・対照した研究を行ったことがあります。その結果によると、慢性疲労症候群になった患者さんの気質や性格は、健常者に比べて、非常にまじめに物事を考え、完璧主義の人が多く、また、几帳面に仕事(学業)に取り組もうとするあまり、通常よりも強いストレスを感じたり、結果にこだわって、くよくよしたりする面が目立つことが明らかになりました。慢性疲労にならないようにするためには、日ごろからの「心の持ち方」も重要になると推測される結果が得られました。  実際、専門医の先生方は、慢性疲労症候群の患者さんなどに対して、認知行動療法(ものの受け取り方や考え方に働きかけて、気持ちを楽にする精神療法)や園芸療法(草花や野菜などの園芸植物や身の回りにある自然とのかかわりを通して、心や体の健康の回復を図る療法)、動物介在療法(犬や馬など動物の力を借り、精神的・肉体的な健康状態を向上させるために実施される療法)などを行うことがあります。要は、目の前の課題がうまくいかなくてもくよくよすることがないように、目標を一段ゆるめて、小さな成果でも毎日の喜びとしてとらえられるように、周囲から指導や助言をすることが大切になると思われます。慢性疲労に対する「一番の薬」は、努力によってもたらされた成果を、親しい人からほめられることなのかもしれません。それも本人が必ずしもベストの結果と思っていなくても、視点を変えることの重要性を感じられるよう寄り添うことが肝要に思えます。  また、人生100年時代といわれるいまの時代、心の疲労を防止し、認知機能の低下を防ぐための取組みとして、理化学研究所革新知能統合研究センター・認知行動支援チームの大武(おおたけ)美保子チームリーダーらが研究に取り組んでいる「共想法(きょうそうほう)」を紹介します。 認知症予防のための認知機能の活用  高齢期に至ってからの健康障害は、喫煙や過度の飲酒など身体に悪いことを積極的にすることに加えて、身体によいことを「積極的にしない」ことでも引き起こされます。このため、高齢期まで健康に問題がなかった人でも、あるとき気づいたら、後戻りができないほど重大な健康障害を抱えてしまっていたということもあり得るのです。  高齢期の代表的な健康障害に、「認知症」があります。認知症のうち、加齢が大きな要因とされている「アルツハイマー型認知症」には発症を防ぐための方策がいくつかあり、そのうちの一つが、加齢とともに衰えやすい認知機能を積極的に活用することだとされています。  認知機能が日常生活のなかで自然に使われる活動には「会話」があります。会話に着目し、認知機能を積極的に活用するような会話を行うことによって認知機能を強化することが、結果的に認知症の予防につながると考えられます。こうした考え方のもと、認知症の発症や進行を防ぐために、高齢で聞くことや話すことが苦手な人であっても、会話を楽しみながら、認知機能を活用することができるように、会話をする際に一定のルールを加えることによって支援する手法が「共想法」なのです。  共想法は、大武先生が、認知症になった祖母との会話をヒントに2006(平成18)年に提唱しました。日本発の会話支援手法とされています。 ◆「共想法」の進め方  「共想法」は6人程度のグループで行います。  会話のテーマは、人と共有しやすく、前向きな気持ちや考えにつながることを意識します。具体的には、「好きなものごと」、「ふるさと」、「旅行」、「近所の名所」、「好きな食べ物」、「季節の楽しみ」などがあります。一方、他人の悪口や噂(うわさ)話など聞いて不快になるような話題や、意見が分かれて口論になってしまうような話題は避けます。  次にあらかじめ選んだテーマに沿って、参加者が写真(または現物)とともに、話題を持ち寄ります。そして、6人の参加者(Aさん〜Fさん)の順番と持ち時間(1人5分〜10分程度)を決めます。1巡目は「話の時間」。スクリーンに参加者が持ってきた写真を映し(または現物を示し)、順番に写真(現物)にまつわる話をします。Aさんの持ち時間が終わったら、次にBさんの写真を映してBさんが話をします。次々に交代して、Fさんまで順番に話をします。話し手は話すことに、聞き手は聞くことに集中するのが1巡目です。そして、2巡目は「質問の時間」。順番にそれぞれの写真(現物)に関する質疑応答を行います。  こうした進め方により、参加者全員に対して、均等に「話す」、「聞く」、「質問する」、「答える」の4種類の機会が与えられます。  仮に、持ち時間を1人5分とすると、1巡目、2巡目とも約30分かかり、所要時間は合わせて1時間となります。なお、持ち時間は参加人数によって調整することができます。大武先生は、この共想法のための司会ロボットも開発しています。 ◆期待される効果  高齢者のなかには、「話しはじめたら止まらない」、「いいたいことがあっても、発言のタイミングがつかめない」、「人の話を聞くと、すぐに発言したくなり、自分の話をしてしまう」という人がいます。共想法は、一定のルールを決めていますので、話す時間と質問の時間を整理することで、参加者全員が均等に参加することができます。このため、認知機能を効率的に強化することが可能です。  さらに、共想法をきっかけとして、高齢者が周囲のものごとに興味を持つようになれば、自然に新しいことを覚えるようになります。このような生活習慣を身につけることで、長期的に高齢者の認知症の発症を防ぐことが期待されます。また、会話によって認知機能を高めることにより、心にも活力を取り戻せるのではないでしょうか。  70歳までの雇用が定着すれば、在職中に認知症や軽度認知障害を発症するリスクも増えます。特に60代後半の高齢者が多い職場では、共想法を取り入れることで、認知症発症のリスクを軽減することができます。休憩時間を活用するなどして、みなさんの職場でも共想法を実践してみてください。 〔参考書籍〕 大武美保子著『介護に役立つ共想法』(中央法規出版) わたなべ・やすよし 京都大学大学院医学研究科博士課程修了、大阪医科大学医学部・講師、大阪バイオサイエンス研究所・研究部長、大阪市立大学大学院医学研究科・教授、理化学研究所分子イメージング科学研究センター・センター長、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター所長等を歴任し、現在は、理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム・プログラムディレクター、理化学研究所生命機能科学研究センター・チームリーダー、大阪市立大学健康科学イノベーションセンター・顧問を兼任。日本疲労学会・理事長。 【P48-49】 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 編集部  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、労働者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、技術・技能の伝承、能力開発などの仕組みづくり、そして、産業全体で高齢者を雇用できるシステムづくりなどを、中長期的な視点で進めることが重要です。  しかしながら、産業ごとの労働力人口の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには大きな差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、当機構では「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての留意点や好事例などからなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を作成し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用を一層効果的に推進することを目的としたものです。  この事業では、高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募し、当機構と契約(2年以内の委託事業)を結びます。現在までに建設、製造、サービス、ITなど、多岐にわたる分野で、85業種がこの事業に取り組み、成果を上げています。 ガイドラインの策定  ガイドライン策定への具体的な流れとしては、初年度に、産業別団体内に高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置します。大学教授などの学識経験者を座長とし、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者など10数人程度で構成。年4〜5回程度委員会を開催し、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。  委員会ではまず、高齢者雇用における課題は何かを検討します。そして、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケートや先進的な企業へのヒアリングといった調査を実施します。  2年度目は、初年度の調査結果で浮彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点を主な課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実用的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・作業施設等の改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生  ガイドラインは、会員企業に配付し、理解を深めるためのものであるため、企業担当者などが参照しやすいよう編集しています。  さらに、普及・啓発活動として全国で高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに、企業への浸透をうながしています。  50頁より、今年度に策定した五つの新しいガイドラインをご紹介します。 業種を超えたガイドラインの活用  当機構ホームページでは、ガイドラインをはじめ、実際に活用できるワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。  ガイドラインは、業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くあります。ぜひご覧いただき、高齢者雇用の取組みにお役立てください。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 機構委託 各産業別団体 ■ガイドラインの策定 ○○○業 高齢者雇用の手引き ■高齢者雇用の普及・啓発 高齢者雇用推進セミナー 会員企業 ■各種改善活動の実施 Plan Do Check Action 高齢者の活用 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」一覧 (直近3年間に策定したガイドライン) 採石、砂利採取業 採石業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜高齢者の持つ貴重な経験を現場で活かし、かつ、次世代に伝える〜(2016年) 砂利採取業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜多世代共働による職場づくり〜(2018年) 建設業 建設揚重業 高齢者の活躍に向けたガイドブック 〜クレーンオペレーターがいつまでも活躍するために〜(2017年) 製造業 バルブ製造業 〜会社と従業員がともにつくるベテランがいきいきと活躍できる会社〜(2016年) フルードパワー産業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニアの活力を未来のものづくりに活かすために〜(2017年) シニア社員が活躍できるキャリアのつくり方 〜電経連版キャリア再設計研修プログラムの提案〜(2018年) 情報通信業 コンピュータソフトウェア業 高齢者雇用推進ガイドライン(2016年) 情報サービス産業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜未来を見据え、活躍し続けられるIT人材を育成〜(2018年) 生活関連サービス業 ブライダル業 高齢者雇用推進の手引き 〜知識と経験はブライダル業の宝〜(2016年) 保育サービス業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニアベビーシッターのイキイキ積極的な活用に向けて〜(2016年) 旅行業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア人材の活躍に向けて〜(2018年) 結婚相手紹介サービス業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜結婚相手紹介サービス業のシニア人材活躍サポートマニュアル〜(2018年) 医療福祉業 有料老人ホーム事業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜高齢者の持ち味を活かしていくために〜(2017年) サービス業(他に分類されないもの) 製造請負・派遣業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜今から求められる高齢者の活躍〜 (2016年) 職業紹介業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜活躍するシニア5つのタイプ〜シニア人材が企業を強くする〜(2017年) ※( )内の数字はガイドライン策定年度を表します 【P50】 1 一般社団法人 日本工作機器工業会 工作機器製造業高齢者の活躍に向けたガイドライン  〜次世代に伝えたい、もの創りにかける「心」と「技」〜  「工作機器製造業」は、広範な需要がある要素部品や器具を製造・供給する役目をになっている。工作機器産業がこれからもタイムリーかつ安定的に製品を供給するには、製造や営業、開発現場の経験豊かな従業員が長年つちかってきた有形無形の人的ノウハウを活用し製品を生み出すことが鍵になる。  日本工作機器工業会は、改正高年齢者雇用安定法の施行を契機に工作機器業界の実情に即した新しい高齢者雇用システムを提示すべく、企業と従業員の双方を対象としたアンケートおよびヒアリング調査を行い、両者の意識の比較をはじめ、業界特有の課題を洗い出し、業界全体で取り組むべき方向を示した六つの指針からなるガイドラインを取りまとめた。  「T 工作機器製造業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、工作機器製造業においてさらなる高齢者の活躍が求められる背景を述べたうえで、高齢者の活躍に向けた考え方を整理している。 「U 工作機器製造業において高齢者の活躍を推進するための指針」では、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべき課題や方向を、以下の通り六つの指針としてまとめている。 指針1 次世代に伝えたい、もの創りにかける高齢者の「心」と「技」 指針2 業務と貢献度に応じて評価し処遇する 指針3 高齢期の「生きがい」に影響する「業務内容」と「勤務形態」 指針4 高齢者への役割や期待を明確化して多様なメニューを用意 指針5 強みを発揮する高齢者を生む高齢期前の研修制度 指針6 「高齢者雇用」は会社から現役従業員へのメッセージ  各指針において「企業の意見」、「従業員の意見」として、ヒアリング調査の結果を紹介しているほか、高齢者雇用に取り組む他業界の好事例も紹介されており参考になる。  「V 工作機器製造業における高齢者雇用をめぐる現状と課題」では、会員企業ならびに各社の従業員を対象としたアンケート調査(59歳以下と60歳以上向けの二つの調査)とヒアリング調査の結果、得られた示唆について述べている。各調査結果をふまえ、高齢者の活躍に向けた課題として、高齢者雇用を高齢期以降の問題としてのみとらえるのではなく、社員だれもが到達する道筋として、トータルな人事施策として位置づけることの必要性を提言するなど、工作機器製造業における高齢者雇用の現状と課題、各社の取組みを多面的にとらえた内容となっている。  また、「参考資料」として、高齢者雇用に関する情報一覧を示し、運用上の課題解決に向けた相談のできる支援機関を紹介。高齢者雇用をめぐる今後の政府方針や在職老齢年金と高年齢雇用継続給付の仕組みなどについても紹介している。 一般社団法人 日本工作機器工業会 連絡先:東京都港区芝公園3―5―8 機械振興会館2階 TEL:03―3431―4103 FAX:03―3434―2613 HP:http://www.jmaa.or.jp/japan/index_j.html 【P51】 2 一般社団法人 日本中小型造船工業会 中小型造船業高齢者雇用推進ガイドライン 〜造船業界のさらなる発展のために〜  「中小型造船業」は、高齢者が増加しており、現場作業を技能・技術に優れた高齢者の再雇用に頼っている傾向がある。さらに、研修・教育のにない手としての活躍も高齢者に期待している。例えば、近年増えている中途採用者や転職者向けの社内研修の講師、若年層の技能向上と待遇改善を推進するために、現在実施を検討中の「造船技能評価基準に基づく社内検定」の検定員、あるいは40〜50代の中核社員を各社から派遣してもらい実施している「社員造船技能研修センター」での新入社員研修などの講師や指導員などである。  本ガイドラインでは、造船業にかかわる仕事のノウハウや経験を身につけた高齢者の意欲を高め、能力を最大限に引き出すことが企業の発展や将来性に大きく影響することを示し、定年延長、再雇用の延長等を行い高齢者の就業を増やすことにより、社内研修やOJT等の分野において指導・育成に寄与してもらうための方策を取りまとめている。  「本編」では、高齢者の活躍を促進するための三つのポイントを掲げて解説している。  「1 体力・健康面に配慮した職場環境の見直し・改善」では、定年後の従業員を活用する際の配慮として、高齢者に顕著にみられる体力・健康面の個人差を把握するポイントや、無理をさせないための休憩・休暇の取り方・働き方、また、多能工化と配置転換しやすい環境づくりを進めるほか、体力負荷の少ない職場環境の整え方を紹介している。  「2 モチベーションの維持・向上」では、定期的に話合いの場を設けることを提案しており、話合いによる高齢者の意向確認の仕方や、会社が伝えるべき項目を取りまとめている。また、多様なワークスタイルへの対応を可能とするためにも、就業規則や契約書を整備すること、そして賃金設定と人事評価の重要性についても解説している。  「3 技術・技能伝承の円滑化」では、伝承すべき技術・技能を「見える化」してコツやポイントをまとめることを推奨している。また、後進指導の依頼を具体的にする、人材配置、コミュニケーション促進、ギャップを解消する、あるいは高齢者への教育のための時間を設ける、といった項目を技術継承のポイントとしてあげている。  「調査資料編」は、2018年度に実施した中小型造船業高齢者雇用実態調査の結果をまとめた報告書で、本編の内容の根拠および補足となる内容である。  「参考編」の「参考編T 高年齢者の雇用、年金、保険、公的給付・助成金に関する情報」では、気になる年金、保険、各種公的助成策、65歳超雇用推進プランナーや高年齢者雇用アドバイザーによる相談・援助の実施といった、企業と従業員の双方に役立つ情報を掲載。「参考編U 高年齢従業員を対象とする労働契約書・就業規則等の例」では、実際に高年齢従業員を継続雇用する際の、定年退職後の労働契約書・就業規則の例を紹介している。 一般社団法人 日本中小型造船工業会 連絡先: 東京都千代田区霞ヶ関3―8―1 虎ノ門三井ビルディング10階 TEL:03―3502―2061 FAX:03―3503―1479 HP:http://www.cajs.or.jp/ 【P52】 3 一般社団法人 日本電子デバイス産業協会 電子デバイス産業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア期の使えるスキル#ュ見研修プログラム開発手順〜  一般社団法人日本電子デバイス産業協会(NEDIA)は、いわゆる業界団体とは異なり、「電子デバイス産業」の川上から川下にわたる広い分野をつなげる横断的な戦略組織である。同業界は知識・技術の専門分化が進んでいるが、高齢者が持つ専門分化以前の総合的な知識や技術、あるいはレガシー分野※の専門性へのニーズも高く、多くの高齢者が活躍している。しかし、その一方で高齢者の就業にあたり、従前の仕事・役割を変えて働くケースも多く、その際に「どんな知識やスキルが活かせるのかわからない」と悩む企業・高齢者も少なくない。  本ガイドラインは、業界初となる高齢者雇用の実態と課題についての調査結果を示すとともに、調査結果をふまえた高齢者活躍のさらなる推進に向けた取組みとして、「高齢期の活躍ステージで使えるスキル≠発見する方法」と、この手法をベースにした各種研修の開発手順を紹介している。  「第T章 本業界の高齢者雇用の特徴と取組課題」では、同業界における高齢者雇用を取りまく特徴として、シニア社員を活用している企業が多いとし、さらに、シニア社員の持つ古くからの技術・技能のほか、「人を育てる力」、「人脈」、「交渉力」を活かせる場があることや、同一企業内にとどまらず産業内で技術を活かせることなどから、シニアが活躍できるチャンスがあると述べている。そのため、大半の企業がシニア社員を雇用することにメリットがあると考えているが、シニア社員の活躍に向けた取組みはこれからという状況にあるとしている。  「第U章 シニア期の『使えるスキル#ュ見法』について」では、直近のキャリアにかぎらず、これまでのキャリアや仕事経験を振り返り、いまも使えるスキルを見つけることを「使えるスキル#ュ見法」と定義している。特に優先度が高い取り組むべき事業(テーマ)からシニアが持つ技術の掘り起こしを行うなど、「使えるスキル#ュ見法」のねらいと基本について概説している。  「第V章『使えるスキル#ュ見法』をベースとする研修プログラムについて」では、第U章で示した「使えるスキル#ュ見法」をベースとした研修プログラムの概要(プログラムの名称、対象者、目的など)と、個々の企業において研修プログラムを開発するための手順を示している。研修で配付資料として使えるフォーマット(案)は、各社の状況に合わせて手を加えても、そのままでも活用可能となっている。  「第W章 データ:本業界における高齢者雇用の状況(アンケート調査結果)」では、電子デバイス産業における高齢者雇用の状況について、2018年度に電子デバイス産業協会の正会員を対象に実施した、高齢者雇用にかかわるアンケート調査とヒアリング調査の結果により概観する。これにより、高齢者雇用の実態に加え、制度や取組みの導入状況、今後の高齢者雇用推進に際しての課題などを明らかにしている。  巻末の「資料編」では、高齢者雇用推進に取り組む際に役立つ公的な支援策や相談窓口などの情報を掲載している。 一般社団法人 日本電子デバイス産業協会 連絡先:東京都千代田区神田佐久間町 竹内ビル202 TEL:03―5823―4465 FAX:03―5823―4475 HP:http://www.nedia.or.jp/ ※ レガシー分野……新技術が登場したため、相対的に古くなった分野のこと 【P53】 4 一般社団法人 日本添乗サービス協会 添乗サービス業高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア添乗員の職域拡大を目指して〜  添乗サービス業界で働く添乗員の年齢構成は、2005(平成17)年度時点で30代までが76・8%と若手が主軸であったが、2018年度になると40代以上が73・6%と上昇し、とりわけ50歳以上が主力となり、業界の中心をになっている。  本ガイドラインは、同業界の会員事業者を対象にしたアンケート調査とインタビュー調査の結果を引用し、シニア添乗員の職域拡大を推進する取組みの手引きとして編纂(へんさん)されたものである。全編を通しイラストを効果的に使い、読みやすくまとめられた一冊になっている。  「T 添乗員の高齢化の様子とシニア添乗員の積極的活用のための着眼点」では、急速に高齢化が進む添乗サービス業の高齢化の状況をデータで確認するとともに、派遣会社のシニア添乗員に対する期待などのほか、プレシニア添乗員ならびにシニア添乗員から見た業界の現状などを紹介している。  また、シニア添乗員は添乗稼働量が低下しがちであるものの、彼らが持つ経験・知識を最大限に活かし、労働力の有効化を図るための職域拡大の推進について着目し、シニア添乗員の職域拡大に関する、旅行会社や派遣会社の声を紹介している。  「U シニア添乗員の職域拡大を目指して」では、職域拡大を推進する際に求められるスタンスや留意する点、必要な取組みについて5テーマに分けて解説している。  「1.シニア添乗員の活躍が期待できる職域の例を見てみましょう」では、添乗以外の職域例として、(1)MICE※サポート業務、(2)インバウンド業務、(3)地域創生事業のサポート業務、(4)旅行会社での内勤業務、(5)旅行会社の店舗等での顧客対応業務、を取り上げている。  「2.シニア添乗員の職域拡大を推進するための着眼点」では、「メイン顧客である旅行会社の組織図と業務内容を把握する」、「派遣先の人材ニーズを的確にとらえる」など、職域拡大を推進する際に、派遣会社はどのようなスタンスが必要なのか、着眼点を示唆している。  「3.シニア添乗員の職域拡大に役立つ資格やスキルとは」では、観光案内通訳士などの資格や、パソコン操作・入力といったスキルなど、職域拡大に役立つ具体例を上げている。  「4.シニア添乗員の職域拡大の成功事例を積極的に発信しましょう」では、その成功事例を豊富に用意し、社内および添乗員に発信することが重要だと説明している。  「5.従業員への面談内容をより充実させましょう」では、高齢化する添乗員の戦力化に向けた面談の進め方のポイントを整理している。  また、最後に掲載されている資料編は二つに分かれており、「資料編@」では、職域に求められる能力やスキル、当人の現状の能力・知識のレベルの充足度合いが点検できる「チェックリスト例」を紹介。各社の事情に応じて職域ごとに改善活用しやすいリストになっている。  「資料編A」では、当機構の活動内容がまとめられ、高齢者雇用に関するさまざまな企業支援について、活用を呼びかけている。 一般社団法人 日本添乗サービス協会 連絡先:東京都港区芝1―10―11コスモ金杉橋ビル6階 TEL:03―6435―1508 FAX:03―6435―1509 HP:http://www.tcsa.or.jp/ ※ MICE……「Meeting(会議、研修)」、「Incentive tour(招待旅行)」、「ConferenceまたはConvention(学術会議、国際会議)」、「ExhibitionまたはEvent(展示会、イベント)」の頭文字を合わせた言葉。ビジネストラベルの一つの形態 【P54】 5 一般社団法人 日本ゴルフ場経営者協会 ゴルフ場業高齢者活躍に向けたガイドライン 〜ヘルスケア産業としての健康な高齢者雇用を目指して〜  「ゴルフ」というスポーツ、そして「ゴルフ場業」において、経験と知識に基づいた接遇スキルや、良好なコース・コンディションを維持する技術・技能を持った経験豊かな「人材」は、何ものにも代えがたい財産である。若年者の採用がむずかしい時代に直面しているいま、多様なスキルを持った人材を育てることはもちろん、性別・年齢・キャリアにこだわることなく、多様性を重視した人材戦略を策定し、実行していくことが求められている。  同ガイドラインは、ゴルフ場業における高齢者の活用の現状をふまえて、各社が人手不足の状況のもと、高齢者の活躍を推進しながら、高齢者が持つ技能・技術を後進に伝承して競争力を高めるために取り組むべきポイントをまとめている。  本編の前に「本書の使い方」としてインデックスページを設けており、各ゴルフ場の状況に合わせて、興味のある項目・優先度の高い項目から参考にできるようになっている。  「T ゴルフ場業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、ゴルフ場業において、高齢者の活躍が求められる背景を述べたうえで、ゴルフ場業における高齢者の活躍に向けた考え方を整理している。  「U ゴルフ場業における高齢者の活躍方策」では、ゴルフ場業高齢者雇用推進委員会での検討結果をもとに、業界各社が人手不足の状況のなか、高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべきポイントを、「ゴルフ場全体で取り組むこと」に加え、「コース管理」、「キャディ」、「レストラン」、「事務・営業」の四つの職種別に分けて紹介している。  また、全国のゴルフ場を対象とした「ヒアリング調査結果」のなかから、各職種に沿ったものを企業事例として紹介している。さらに、要所で表による解説を行っており理解の手助けとなる。また、「健康経営」や、若手・中堅社員向けの「高齢社員と一緒に働くための心がまえ」、高齢社員向けの「職場で必要とされるための心がまえ」をテーマとしたコラムを掲載するなど、高齢者雇用を進めるうえで必要な情報をコンパクトにまとめている。  「V ゴルフ場業における高齢者雇用の現状」では、当事業において2018年度に実施したアンケート調査結果の概要を紹介している。特にアンケート調査では会員企業へのアンケート調査とあわせて、会員各社の50歳代・60歳以上の従業員を対象としたアンケート調査を実施したことで、ゴルフ場業界の高齢者雇用の現状と課題、各ゴルフ場の取組みについて多面的にとらえている。  また、巻末には「参考資料」として、日本の少子高齢化の現状や高齢者雇用にかかる今後の政府方針、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付の仕組みについて説明。高齢者雇用に関する情報一覧を示し、運用上の課題解決に向けた相談のできる支援機関を紹介している。 一般社団法人 日本ゴルフ場経営者協会 連絡先:東京都千代田区神田司町2―7―6鈴木ビル3階 TEL:03―5577―4368 FAX:03―5577―4381 HP:http://www.golf-ngk.or.jp/ 【P55】 BOOKS 働き方改革時代に求められる知識を過不足なく提示 新しい人事労務管理 第6版 佐藤博樹(ひろき)、藤村博之(ひろゆき)、八代(やしろ)充史(あつし) 著/有斐閣(ゆうひかく)/2100円+税  1999(平成11)年の刊行以来、人事労務管理論をはじめて学ぼうとする人向けの入門書として好評を博してきた書籍の最新版が刊行された。働き方改革の時代を迎え、企業の人事労務管理に影響を与える労働市場や働く人たちの就業意識の変化、さらには労働法の改正内容の反映など、2015年以降の新たな情報が過不足なく盛り込まれた。入門書として版を重ねてきただけあって、日本企業の人事労務管理の実態をふまえつつ、その基本的な考え方や機能がわかりやすく整理・解説されているところに本書の特徴があるといえるだろう。  本書全体は、「企業経営と人事労務管理」、「雇用管理」、「職能資格制度と職務等級制度」、「賃金管理」など11の章からなり、さらに各章ごとに「キーワード」、「演習問題」、「文献ガイド」などが用意されているので、初学者でも人事労務管理論が効果的に学べるだろう。さらに、「副業」や「健康経営」といった最新の話題は、「コラム」を設けて取り上げられており、読者の理解をより深める手助けとなっている。  人事労務担当者のみならず、管理監督者が一読することで、日常業務遂行の際に必要な知識を身につけることができるだろう。 企業が抱える課題を克服するために必要な働き方改革の実践を紹介 中堅・中小企業のための働き方改革実践40 浅香(あさか)博胡(ひろき)、白石(しらいし)多賀子(たかこ)、山田晴男(はるお) 著/日本生産性本部生産性労働情報センター/1500円+税  混沌(こんとん)とする経営環境のなかにあって、中小企業は、人材の確保と定着、技術力の維持向上、新規事業の創出など、さまざまな課題に直面している。中小企業がそうした課題を克服するためのキーワードは「人の力」。「人の力」を最大限に発揮させるためには、働き方改革の実践も重要な要素となるだろう。  本書は、働き方改革の実践が企業にとっての好機になるととらえている3人の著者が、経営者や人事労務担当者に向けて、法令改正に対応するだけの対症療法的な取組みにとどまることなく、「人の力」を最大限発揮させるような、働き方改革の実践をまとめた一冊である。  40の実践はそれぞれ実状を反映したものであり、労働時間の削減と業務の効率化、社員の定着と活躍の促進など幅が広い。例えば、「人生100年時代の高齢者の活用」(第24話)では、シニア対象の意識調査結果や企業の取組み事例をもとに、従来の再雇用制度の見直しと高齢者の戦力化に向けた取組みが急務となっている現状を指摘しながら、企業で高齢者に活躍してもらうためのポイントをわかりやすく示している。通読することに加えて、必要に応じて参照しても役立つ好著である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します 【P56-57】 令和2年度 高年齢者雇用開発コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる職場づくりの事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用環境整備への具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度の導入 A賃金制度、人事評価制度の見直し B多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 C各制度の導入までのプロセス・運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組み @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組みや高齢従業員の役割等の明確化 A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(IT化へのフォロー、危険業務等からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D新職場の創設・職務の開発 E中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施 等 高年齢者の雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善(高齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化 B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(http://www.jeed.or.jp/elderly/activity/r2_koyo_boshu.html)からも入手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日 令和2年3月31日(火)当日消印有効 3.応募先 各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成29年4月1日〜令和元年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)平成31年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和元年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)平成31年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、希望者全員が65歳まで働ける制度には該当しないことから、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 学識経験者などから構成される審査委員会を設置し、審査します。 Y 審査結果発表など 令和2年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 みなさまからのご応募をお待ちしています ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課  〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号  TEL:043-297-9527  E-Mail:tkjyoke@jeed.or.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課  連絡先は65頁をご参照ください。 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください!  当機構の「65歳超雇用推進事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。「jeed 65歳超 事例サイト」で検索いただくか、URL:https://www.elder.jeed.or.jp/をご指定ください。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」で検索いただくか、URL:http://www.jeed.or.jp/elderly/data/pamphlet_company70/index.html をご指定ください。 eed 65歳超 事例サイト 検索 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果  厚生労働省は、11月の「過重労働解消キャンペーン」の一環として昨年10月27日に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめた。  それによると、寄せられた相談件数は合計269件。相談内容の内訳をみると、「長時間労働・過重労働」に関するものが90件(全体の33・4%)と最も多く、「賃金不払残業」69件(同25・6%)、「休日・休暇」31件(同11・5%)、「パワハラ」29件(同10・7%)などが続いている(1件の相談で複数の相談内容が含まれているものがある)。相談者の割合は、「労働者」が180件(全体の66・9%)、「労働者の家族」53件(同19・7%)、「その他」20件(同7・4%)。主な事業場の業種は、「商業」32件(全体の11・8%)、「保健衛生業」32件(同11・8%)、「製造業」28件(同10・4%)。  同省では、これらの相談のうち労働基準関係法令上の問題があると認められる事案は、相談者の希望を確認したうえで労働基準監督署に情報提供して、必要な対応を行った。労働条件に関する相談は、今後も都道府県労働局や労働基準監督署、労働条件相談ほっとラインで受けつける。 ●労働条件相談ほっとライン(相談は無料) [電話番号]0120-811-610  携帯電話・PHSからも利用可能 [相談対応曜日・時間]  月〜金曜 17時〜22時  土・日曜、祝日 9時〜21時 厚生労働省 「21世紀成年者縦断調査(2012年成年者)」結果  厚生労働省はこのほど、第7回(2018年)「21世紀成年者縦断調査(2012年成年者)」結果を公表した。同調査は、同じ集団を対象に毎年実施し、結婚の状況、出生の状況、就業の状況などを継続的に調査して、少子化対策などの基礎資料を得ることを目的としている。今回の結果は、2012年10月末に20〜29歳であった全国の男女(およびその配偶者)のうち、第5回または第6回調査で協力が得られた6900人を対象に実施した。本調査の対象者年齢は26〜35歳である。  結果のなかから、この5年間に子どもが生まれた夫婦(出産前に妻が会社等に勤めている)について、妻の就業形態で利用可能な育児休業制度の有無別に、出産後の妻の就業状況をみると、「制度あり」と回答した378人のうち、304人(80・4%)が「同一就業継続」と回答。一方、「制度なし」と回答した70人のうち、「同一就業継続」と回答したのは10人(14・3%)であった。また、「制度あり」の場合でも、「利用しやすい雰囲気がある」(263人)では、222人(84・4%)が「同一就業継続」と回答。一方、「利用しにくい雰囲気がある」(38人)では、28人(73・7%)が「同一就業継続」と回答した。  また、育児休業制度の利用にあたっての雰囲気を2002年成年者と比較すると、「利用しやすい雰囲気がある」と回答した割合は、2002年成年者が56・3%だったのに対し、2012年成年者は69・6%と、10年前に比べて「利用しやすい雰囲気がある」と答えた割合が高くなっている。 調査・研究 金融広報中央委員会 「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」結果  金融広報中央委員会(事務局:日本銀行情報サービス局内)は2019(令和元)年11月18日、「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」(2019年)の結果を公表した。調査は、同委員会が、家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握し、これらの公表を通じて金融知識を身につけることの大切さを広報することと、家計行動分析のための調査データを提供することを目的として毎年実施している。本調査対象者数は8000人で、3222人から回答が得られた。  調査結果から、老後の生活への心配についてみると、「心配である」(「非常に心配である」と「多少心配である」の合計)と回答した世帯は81・2%で、前回調査(2018年)の79・2%に比べて割合が高くなっている。他方、「それほど心配していない」は18 ・3%で、前回調査の19・8%より低下している。  老後の生活費の収入源については、「公的年金」が79・1%(前回調査79・6%)。「就業による収入」は48・2%で、前回調査の45・7%より高くなっている。「企業年金、個人年金、保険金」は38・4%(前回調査37・8%)となっている。  また、60代の金融資産保有額(金融資産保有世帯)は、平均値2203万円、中央値1200万円となっている。2000万円以上を保有している世帯は32・1%となっている一方で、1000万円未満の世帯が37・2%となっている。 読者アンケートにご協力いただき、ありがとうございました  いつも本誌をご愛読いただき、ありがとうございます。2019年7月号で実施しました「読者アンケート」には、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。 非常に参考になる20.9% 参考になる71.2% あまり参考にならない3.95% 参考にならない0.0% 無回答3.95% ◎本誌に対する評価 「『エルダー』は参考になっていますか?」の質問には、「非常に参考になる」20.9%、「参考になる」71.2%と、9割以上の読者から前向きな評価をいただきました。 ◎参考になった記事とその理由 【特集】 ・高齢者雇用に関する取組み・課題などがわかりやすく整理されている。社内の制度や仕組みを検討するうえで参考になる。 ・定年延長に関係する施策づくりの参考になった。 【リーダーズトーク】 ・高齢者雇用において先進的な企業の状況を知ることができる。 ・職員が働きやすい職場づくりのヒントになる。 【知っておきたい労働法Q&A】 ・実務で直面しうる事例を解説しているので参考になる。 ・人事部門として必須の知識が身につく。 【高齢者に聞く 生涯現役で働くとは】 ・実体験の記載で、さまざまな人生ストーリーがあっておもしろい。新しいことに挑戦していく姿勢に勇気づけられる。 ・生涯現役を応援する会社や人脈、本人のがんばりなどについて、生きた意見を広く聞くことができる。 【高齢者の現場 北から、南から】 ・全国のさまざまな会社での取組みや現場の話は、高齢者を雇用していくうえで参考になる。 【技を支える】 ・高齢者の技術、知恵、人間性など、国の財産ともいえる学びがある。 ◎もっと充実を図ってほしい記事や内容 ・7月号特集「あなたの会社は大丈夫?トラブルから学ぶ高齢者雇用入門」では、さらに詳しい他社事例が知りたかった。また、解説もマンガにするとわかりやすいのでは。 ・「技を支える」は、比較的特殊な分野の技術を取り上げることが多いようだが、身近に感じる技をもっと取り上げてほしい。 など ◎今後取り上げてほしい内容などのご要望 【特集や連載テーマに関するご意見】 ・高齢者雇用と生産性向上の両立を考察してほしい。 ・定年後も現場の戦力として期待する場合、モチベーションを維持できる給料設定が知りたい。 ・高齢者の機能低下にともなう補助機器、ツール、アプリなどの紹介や、企業の取組み事例を教えてほしい。 ・定年制度を廃止した成功モデル、好事例を取り上げてほしい。 ・労使ともにメリットがある高齢者雇用のあり方について解説してほしい。 ・高齢者本人の意識改革など、心の根幹にかかわる内容を取り上げてほしい。 など 【その他のご要望・ご意見】 ・自社の状況と合致する内容が少ないので、多くの業種について取材してほしい。 ・高齢者雇用を促進しなければいけないと考えさせられるような分析・調査をしてほしい。 ・中小企業に特化したコーナーを増やしてほしい。 ・文字が多すぎるので、写真やイラストを増やしてほしい。 など 【P60】 次号予告 4月号 特集 中高年期の女性社員の仕事意識と企業の支援 リーダーズトーク 西村美奈子さん(株式会社NextStory代表取締役) 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttp://www.jeed.or.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。   URL http://www.fujisan.co.jp/m-elder  A1冊からのご購入を希望される方   Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 清家武彦……一般社団法人日本経済団体連合会 労働政策本部 上席主幹 深尾凱子……ジャーナリスト、元読売新聞編集委員 藤村博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア京子……アテナHROD代表、学習院大学特別客員教授 編集後記 ●今回の特集は、前号に引き続き、当機構で実施した「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の模様をお届けしました。後編の今回は、東京・大阪・福岡の3会場で行われた、講演、企業事例発表、パネルディスカッションをレポートしました。  高齢者雇用を推進するうえで大きな課題となるのが、処遇をはじめとした人事管理と、40〜50代の定年前からのキャリア構築支援です。パネルディスカッションでは、特にその2点を中心に、高齢者雇用先進企業の人事ご担当者の方にお話をうかがいました。東京会場のパネルディスカッションについては、当機構の研究事業などにもご協力いただいている、日本クッカリー株式会社の小西敦美氏にご登壇いただき、人事のプロとしてのご意見をうかがったほか、パネルディスカッションの論点にもなった人事管理のあり方についての解説記事をご執筆いただきました。ぜひご参考にしていただき、自社の取組みに活かしていただければ幸いです。 ●当機構では、各産業別団体による高齢者雇用推進の課題解決に向けたガイドラインの作成を支援する「産業別高齢者雇用推進事業」に取り組んでいます。2019 年度は、工作機器製造業、中小型造船業、電子デバイス産業、添乗サービス業、ゴルフ場業の5業界のガイドラインを作成しました。特別企画では、各業界のガイドライン概要について紹介しています。そのほか、当事業で作成した85業種のガイドラインは当機構Web サイトで公開中です。 ●昨年7月号で実施した読者アンケートには、読者のみなさまからさまざまなご意見をお寄せいただきました。59頁にご紹介していますので、どうぞご覧ください。ご協力ありがとうございました。引き続き、みなさまからのご意見をお待ちしております。 月刊エルダー3月号 No.485 ●発行日−令和2年3月1日(第42巻 第3号 通巻485号) ●発 行−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−企画部長 片淵仁文 編集人−企画部次長 中村雅子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2  TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL http://www.jeed.or.jp  メールアドレス elder@jeed.or.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5  TEL 03(3915)6401  FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-733-6 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61】 技を支える vol.310 細かな模様や形を表現する独特の「戻し吹き」技法 鋳込(いこみ)工 近藤幸男(ゆきお)さん(88歳) 鋳造はさまざまな製品を形にできる楽しい仕事です。世界でも珍しい「戻し吹き」の技術を、より多くの人に知ってもらいたい 「戻し吹き」の技で70年以上現役を続ける「現代の名工」  鉛にアンチモン※1、錫(すず)を混ぜた合金をアンチモニーという。その地金(じがね)を溶かして鋳ちゅう造ぞう・加工した製品が「東京アンチモニー工芸品」である。明治初期、維新によって武具づくりの職を失った鋳物師(いものし)や彫刻師らによって製法が確立された。それ以来、東京の地場産業として、装飾品や置物、賞杯など、さまざまな製品が生産されている。2015(平成27)年には経済産業大臣から伝統的工芸品に指定された。  「多くの金属は鋳造後に冷やすと収縮しますが、アンチモニー合金は逆に膨張します。そのため、鋳い型がたに彫刻された細かな模様や文字を鮮明に出せるのです」と話すのは、東京アンチモニー工芸品を中心とした貴金属製品の鋳造を70年以上にわたり手がけてきた近藤鋳造所の近藤幸男さん。長年の功績により、厚生労働省より2019年度の「卓越した技能者(現代の名工)」の表彰を受けた。  アンチモニー製品の製造工程は、原型づくり、鋳型づくり、鋳造、バリ(余分な部分)取り、はんだづけなどの加工、メッキなどに分かれており、それぞれ専門の職人が存在する。鋳造にはいくつかの方法があり、近藤さんは「戻し吹き」という方法で鋳造を行う。  「鋳物の多くは、炉で地金を溶かした湯≠鋳型に流し込んで成型しますが、戻し吹きは湯を鋳型に流し込んだ後、なかの湯を外に出し、鋳型の内側に張りついて残った部分を取り出すと製品になります。このような技法は、ほかではほとんど見られません」  戻し吹きは幅広い製品に対応でき、効率よく鋳造できる。また、できあがった製品は中が空洞になるため、見た目よりも軽量化でき、材料の節約にもつながる。 長年の経験から体得した感覚で均一の厚さを実現  鋳型に湯を注ぎ込み、中の湯を炉へ戻すまでの時間は、わずか数秒。製品の形状によって、湯を戻すタイミングを変える。  「湯を戻すタイミングが早すぎると、厚みが足りず加工の段階で穴が空いたりしてしまいます。逆に遅すぎると、余分な厚みが出て重くなり、材料も無駄になります」  また、鋳型に張りつける湯の厚さを均一にすることも重要だ。近藤さんは、長年の経験のなかでその技を体得した。  「戦後から1960年代にかけて輸出が盛んで忙しかったころは、何万個もの数をこなさなくてはならなかったため、素早く鋳造する技術を鍛えられました。また、さまざまな形の鋳型を扱ってきた経験から、新たな依頼がきても『この形ならこれくらいかな』という感覚で対応することができます」  近藤さんが鋳造した同一の製品は、重さがほぼ均一であることも、その腕のたしかさを物語っている。  豊富な経験を持つ近藤さんは得意先からも頼りにされており、「こんなものができないか」と新たな製品づくりについて相談を受けることも多いそうだ。  新素材を使った製品の鋳造にも積極的  近藤さんは10代のころ、創業者である父を手伝いながら戻し吹きの技術を学び、職人の道へと進んだ。戦後はテーブルウェアなどを中心に輸出用の需要が多く、近藤鋳造所でも職人を3〜4人雇い、忙しい毎日だったという。しかし、1970年代以降は円高で輸出が激減。その後は国内向けにシフトしたが、業界全体での受注量は減少している。そんななか近藤さんは、近年敬遠されがちな鉛の代わりに錫をベースにした新素材「エテナ※2」の開発に協力し、エテナ製品の鋳造も手がけるなど、新たな試みにも積極的に取り組んでいる。  「毎日いろいろな形の物づくりにたずさわれるので、この仕事は楽しいですよ。私が形にした製品を手にした人たちに喜んでいただけるとうれしいです。戻し吹きは世界的にも珍しい技術ですから、より多くの人々に知っていただき、再び世界で売れる製品が生まれてほしいと思います」 近藤鋳造所 TEL:03(3802)0533 (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※1 アンチモン……金属元素の一つ。銀白色でもろい、レアメタルの一種 ※2 エテナ……東京都立産業技術研究センターと東京アンチモニー工芸協同組合が協同開発した鋳造錫合金 写真のキャプション 近藤さんのお子さんも戻し吹きの技術を習得している。普段は近藤さん一人で作業しているが、忙しい時期は、休日に喜んで手伝ってくれるそうだ @炉で300〜320℃に溶かした地金の湯を鋳型に注ぎ込む。炉の温度管理も大切な要素の一つだA注ぎ込んだ湯を鋳型の内部全体に行きわたらせた後、余分な湯を炉に戻す。そのタイミングの見極めが重要になる 工場内に残るたくさんの鋳型が、手がけてきた製品の多さを物語る 製品の原材料となるアンチモニー合金の地金。冷えても収縮しないため、鋳造で細部を表現しやすい特徴を持つ 競走馬キタサンブラック引退の際に製作された記念品 プロ野球のゴールデン・グラブ賞のトロフィーに用いられる、ボールを載せるための台座 坂本竜馬像。着物の折り目までしっかりと表現されている 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  認知症や軽度認知障害では、記憶力の低下が起こることがよく知られています。記憶に関係する海馬が、アミロイドβベータなどによってその働きを低下させるからです。一方、海馬は空間認知にかかわることも知られています。空間認知課題の問題を解いて、がっちり鍛えましょう。 第34回 一筆書き 次の図形を一筆書きで描いてみてください。 ※回答は一通りではない場合もあります。 目標 4問5分 @ A B C 空間認知力を鍛える「一筆書き」  目で見た情報は後頭葉でキャッチされ、空間認知にかかわる頭頂葉に送られて処理されます。一筆書きで図形を描こうすると、後頭葉と頭頂葉の働きにより、図形の全体像を把握したうえで、どのようになぞれば一筆で描けるのかを考えます。そのため、視覚処理にかかわる後頭葉や頭頂葉だけでなく、作業プランを立てることにかかわる前頭葉も大いに活性化します。  さらに、ペンで紙に図形を描くことで、プランに沿って手を動かすように指令を出すことが必要となり、それにかかわる運動野もフル回転するため、「一筆書き」は脳をまんべんなく使うことができる、実によい脳トレといえます。  また、図形を描くときに必要な空間認知力は、ものごとを俯瞰(ふかん)でとらえる力や自分自身を客観的に認知する能力(メタ認知)などともつながっています。メタ認知能力は、人とコミュニケーションをとったり、仕事や家事などの目標を定めたりするときに必要となります。空間認知力を鍛える「一筆書き」で、メタ認知能力も高めていきましょう。 【問題の答え】 @ABC 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 ※ 篠原菊紀さんには、今月号の「リーダーズトーク」(1頁〜)にご登場いただいています。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2020年3月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 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1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.希望者全員が65歳まで働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 ※応募資格の詳細は、本誌56〜57頁をご覧ください。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 詳しい募集内容、応募方法などにつきましては、本誌56〜57頁をご覧ください。 応募締切日 令和2年3月31日(火) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65頁をご覧ください。 2020 3 令和2年3月1日発行(毎月1回1日発行) 第42巻第3号通巻485号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会