解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 突撃! エルダ先生が行く!ユニーク企業調査隊 第1回 高齢社員は会社のお荷物ではない!    「パラダイス社員制度」で生涯現役第1回 第2回 高齢従業員が、出産・育児を手助け!    「イクじい・イクばあ休暇」で自身もリフレッシュ 第3回 「生涯プロエンジニア」という働き方で 若手社員から高齢社員まで活躍する労働市場を創出 第4回 「アクティブ・エイジング制度」や「親孝行支援制度」で 高齢社員の“リアル”をサポート 第5回 多様な人材が活躍するシャッターメーカー 長く、楽しく、生涯現役で働ける職場を実現 最終回 主役は笑顔いっぱいの高齢スタッフ! 「生きがい」を持って働けるおそば屋さん 第1回 高齢社員は会社のお荷物ではない! 「パラダイス社員制度」で生涯現役第1回 企業プロフィール 株式会社テンポスホールディングス(東京都大田区) 創業1997(平成9)年 中古厨房機器販売、飲食店経営支援、飲食店経営  1997年に中古厨房機器の販売を行う、株式会社テンポスバスターズを創業。その後、店舗数を拡大しながら、飲食店経営、飲食店経営支援にも事業を拡大し、2017年に持株会社体制に移行し、株式会社テンポスホールディングスに商号変更。2024(令和6)年4月1日現在、全国に66店舗を展開している。  創業当初から、年齢にかかわらず人材を登用する制度を掲げており、実質的に年齢上限のない雇用を行っていたが、2005年には就業規則から定年に関する記載を削除し、生涯現役で働ける仕組みを整えている。 「パラダイス社員」制度  60歳以上の正社員を対象に、本人の希望があれば正社員のまま、業務上における目標や課題を緩やかに設定し、短時間勤務や週4 日勤務も可能とする制度。“会社に長く貢献している人材に報いる”ために導入された仕組みだが、認定にあたっては「勤務年数10 年以上」といった条件のほか、「意欲を持って働いてほしい」という思いから、「活き活きと前向きで仕事に取り組めること」を掲げている。 「パラダイス研修」制度  いくつになっても能力開発を行うという同社のポリシーから生まれた研修制度で、60歳以上の社員(※パラダイス社員以外の従業員を含む)を対象としている。参加希望者を募り実施しており、ふだんは違う職場で働く同世代の仲間と交友を深めながら、全国各地にある店舗を視察し、意見交換を行いながら、それぞれが働く店舗における業務改善や、これからの働き方などについて考える場となっている。 第2回 高齢従業員が、出産・育児を手助け! 「イクじい・イクばあ休暇」で自身もリフレッシュ 企業プロフィール 株式会社サタケ(広島県東広島市) 創業1896(明治29)年 食品産業総合機械、プラント設備および食品の製造販売  1896年に日本で最初の動力式精米機を開発して以来、1世紀以上にわたって米、小麦、トウモロコシなどを中心とした穀物加工技術分野の研究・開発を重ね、世界約150カ国に製品や技術を提供する「米と食のリーディングカンパニー」。  いち早く女性の活躍推進や従業員のワーク・ライフ・バランスの充実に取り組んでおり、20年以上前から時短勤務制度や社内保育室を整えるとともに、男性の育休取得の推進など、仕事と家庭の両立支援に注力。2016(平成28)年からは、孫が生まれる従業員を対象とした「イクじい・イクばあ休暇」を導入している。 「イクじい・イクばあ休暇」  孫が生まれる従業員が、出産する家族をサポートするために生まれた休暇制度。孫の出生日から10 日以内に3日間の特別有給休暇を取得することができ、年次有給休暇と組み合わせて取得することも可能。すでに子どもがいる家庭などでは、安心して子どもの世話を任せることができ、ご家族からも喜ばれる制度となっている。 高齢者雇用制度  同社では、60歳定年、希望者全員65歳までの継続雇用制度を導入している。本人が希望し会社が認める場合は、65歳以降も働き続けることができ、有資格者を中心に70歳を超えて働いている高齢従業員も多い。 サタケカレッジ  2015年に開校した社内大学。創業120年を超える同社の歴史や、穀物加工技術をより多くの従業員に伝えるために設立されたもので、高齢従業員を中心としたベテラン従業員が講師役を務める。入社2年目以降の希望者を対象としており、基礎コースと中級コースにわかれ、穀物加工の知識や技術、プラント施設の運営、企業法務、経理などの講座が用意されている。 第3回 「生涯プロエンジニア」という働き方で若手社員から高齢社員まで活躍する労働市場を創出 企業プロフィール 株式会社メイテック(東京都台東区) 創業1974(昭和49)年 エンジニアリングソリューション事業  約8000人のエンジニアを正社員として雇用する、日本最大規模の“プロのエンジニア集団”、株式会社メイテック。大企業から新進気鋭のベンチャー企業まで、さまざまな分野・業界にエンジニアを派遣し、設計・開発領域の技術サービスを通して顧客や社会が抱える課題解決に貢献している。  定年制は設けているものの、一定条件のもと「生涯プロエンジニア」として、年齢の上限なく働ける仕組みがあり、設計・開発にかかわる「技術力」と「人間力」を磨きながら、若手からベテランまで、多くのエンジニアが活躍している。 生涯プロエンジニア  「生涯にわたってエンジニアとして活躍してほしい」という願いと敬意をこめて、60歳以上でも第一線で活躍しているエンジニアを「生涯プロエンジニア」と呼んでいる。同社の定年は60歳だが、顧客との契約が継続するかぎり、正社員として年齢の上限なく働ける仕組みとなっており、2024(令和6)年3月末時点で、延べ600人以上の「生涯プロエンジニア」が誕生。生涯にわたりエンジニアとしてものづくりにたずさわることのできる機会と場の提供に努めている。 「技術力」と「人間力」を磨く、豊富な“学びの機会”  高いパフォーマンスを発揮し、成果を上げ続けるために重要な、「技術力」と「人間力」を磨くため、600 講座以上の研修を整備。各営業拠点では、エンジニア自身が主催する勉強会も日常的に行われており、若手からベテランまで、年齢を問わず多くの人材が自己研鑽に努めている。ベテランエンジニアは、自ら学ぶだけではなく勉強会で講師を務めるなど、後進育成にも大きく貢献している。 60歳を迎えた社員に贈るオリジナル冊子  60歳を迎えた生涯プロエンジニアに向けて、同社が作成・進呈する一人ひとりオリジナルの冊子。本人へのインタビューや職歴をまとめたもので、本人やご家族にとって記念になるだけでなく、若手・中堅社員にとっても、生涯プロエンジニアを目ざしてキャリアを歩んでいくうえで参考になる内容となっている。 第4回 「アクティブ・エイジング制度」や「親孝行支援制度」で高齢社員の“リアル”をサポート 企業プロフィール 大和ハウス工業株式会社(大阪府大阪市) 創業1955(昭和30)年 建築・土地開発事業等  従業員4万8483人(連結、2024[令和5]年3月31日時点)、全国に54の事業所を展開する、国内トップクラスの大手ハウスメーカー。戸建住宅事業をはじめ、賃貸住宅事業やマンション事業、商業施設などの建築事業、環境エネルギー事業など、「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、人々の暮らしを支えている。  2013(平成25)年に65歳定年制を導入し、2015年には65歳定年以降の再雇用制度である「アクティブ・エイジング制度」を導入するなど、高齢者雇用先進企業としても知られており、高齢社員が生涯現役で活き活きと働ける職場環境の実現に向け、さまざまな取組みを展開している。 65歳以降の再雇用制度「アクティブ・エイジング制度」  経験豊富な人財の確保およびシニア層のモチベーション向上を目的に、2013年に65歳定年制を導入。シニア人材の活躍といった成果が出ていたことをふまえ、65歳定年以降の勤務を可能とする再雇用制度「アクティブ・エイジング制度」を2015年に導入した。健康状態などの一定の条件はあるものの、年齢制限なく働くことのできる仕組みを構築するなど、まさに「生涯現役」を実現する制度となっている。 「親孝行支援制度」  遠方で暮らす親の介護を行っている社員を支援するための制度。介護のために親元へ帰省する際の旅費などの負担を軽減することを目的としたもので、距離に応じて最大5万5000円を、年4回を上限に支給している。社員の両親だけではなく、社員の配偶者の両親の介護を行う場合も利用可能とするなど、社員とその家族を支援する仕組みとなっている。 ワーク・ライフ・バランスの充実  シニア世代を含む全社員のワーク・ライフ・バランスの充実に注力しており、フレックスタイム制度やテレワークといった柔軟に働ける勤務制度のほか、時間単位有給休暇やホームホリデー制度などの休暇制度も充実。多様な人財の多様な働き方を実現している。 第5回 多様な人材が活躍するシャッターメーカー 長く、楽しく、生涯現役で働ける職場を実現 企業プロフィール 株式会社横引シャッター(東京都足立区) 創立1986(昭和61)年 シャッターの製造・販売  スライド式の「上吊り式横引きシャッター」を開発し、日本全国に普及させてきたシャッター専業メーカー。駅の売店やショッピングモール、個人宅のガレージなど、同社のシャッターはさまざまな場所で使用されており、読者のみなさまも一度は目にしたことがあるのではないだろうか。  同社では、多様な人材が生涯現役で活躍できる職場環境づくりに取り組んでおり、「令和4年度高年齢者活躍企業コンテスト」で、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞を受賞。高齢者をはじめとする多様な人材が活き活きと働いている。 生涯現役で働ける職場環境を実現  70歳定年後、年齢上限なく働ける再雇用制度を整備しており、社員が生涯現役で働ける環境を整えている。定年後も給与水準を維持し、本人の希望に配慮した柔軟な働き方が可能で、社員のモチベーションアップと業績向上の好循環を実現している。 充実かつユニークな福利厚生制度  「好きな仲間と楽しく働きたい」という願いの具現化に向け、市川慎次郎代表取締役自らがさまざまなアイデアを出し、福利厚生制度の充実を図っている。社員だけではなく、その家族の分も含めた防災グッズの常備や、全社員へのオーダースーツの支給など、ユニークな取組みも多い。 高齢社員の負担を軽減する独自の取組み  自転車通勤をしている高齢社員は、「雨や雪など天候が悪い場合は出社しなくてよい」というルールを設けるなど、高齢者に安全に働き続けてもらうための工夫を行っている。また、フレキシブルな勤務形態を整え、高齢社員の希望とニーズに配慮した柔軟な働き方を実現している。 最終回 主役は笑顔いっぱいの高齢スタッフ! 「生きがい」を持って働けるおそば屋さん 企業プロフィール 青春のおそばやさん (香川県綾歌郡宇多津町、運営:ココイキ福祉サービス株式会社/香川県丸亀市) 開業2023(令和5)年 飲食サービス業  「60歳以上の高齢者がいきいきと働き、人生の第二章を謳歌できる場所」をコンセプトに、2023年に開業したおそば屋さん。スタッフは全員高齢者で、さまざまなキャリアを持つ高齢者8人(2024年7月現在)が、そのコンセプトに惹かれて入社し、活躍している。  代表を務める白井陽介さんが、飲食店経営のノウハウを活かして経営しており、クラウドファンディングなども活用して資金を募るなど、「青春のおそばやさん」のコンセプトに共感する人たちの支援を得て2023年に開業した。“うどん県”である香川県で、自慢の十割りそばと、活き活き働く高齢者の笑顔を武器に、注目を集めている。 平均年齢69.5歳の高齢スタッフが活躍中  同店では、2024年7月現在、8人の高齢スタッフが活躍している。平均年齢は69.5歳。勤務時間は9時〜14時と、10時〜15時の2パターンがあり、スタッフの都合に合わせて選択することができる。 メニュー数は最少限に  お店のコンセプトとともに、手打ちの十割りそばを“売り”とする同店だが、働く高齢スタッフが覚えやすいようにと、メニュー数は最少限にした。また、高齢スタッフのためのレシピ教育や研修などの機会も設けている。  店内のレイアウトも、スタッフの転倒を防ぐため、動線を広く取るなど工夫がされている。 キッチンカーの導入をはじめ さらに高齢者が活躍できる場を拡大  2024年6月には、キッチンカーによる販売をスタートさせた。こちらもお店のコンセプト通り、高齢者の活躍の場をさらにつくっていくための取組みの一環。将来的にはフランチャイズ店舗の展開も構想している。