【表紙2】 令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 ご応募お待ちしています 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。多数のご応募をお待ちしています。 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするために、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者が働きつづけられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます 詳しい募集内容、応募方法などにつきましては、本誌52〜53頁をご覧ください。 応募締切日 令和3年3月31日(水) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65頁をご覧ください 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.70 定年延長を選択型定年とセットで導入70歳以上が活躍できる場も整備 住友林業株式会社 理事・人事部長 羽田一成さん はだ・かずなり 1959(昭和34)年生まれ。1991(平成3)年、住友林業株式会社に入社。人事部グループマネージャー、住友林業クレスト株式会社取締役常務執行役員などを経て、2016年より現職。  住友林業株式会社では、2020(令和2)年4月より、定年を60歳から65歳へ引き上げました。また、専門人材の確保と活用を目的に、70歳までの勤務を可能としていた同社独自の制度である「シニア人財バンクセンター制度」の上限年齢を撤廃するなど、シニア人材の活躍推進に向けた取組みを進めています。今回は理事・人事部長の羽田一成さんに、制度導入に至った背景や今後の課題などについてお話をうかがいました。 65歳まで安心して働ける仕組みの整備は企業の社会的責任 ―貴社では2020年4月に、定年を60歳から65歳に引き上げました。制度導入の背景についてお聞かせください。 羽田 大きな社会的背景として、少子高齢化の進展があります。労働力人口が減少し、企業はますます労働力の確保が困難になります。また、社員にとっては、公的年金の給付の見直しにより、長い老後生活への不安が高まります。社員が安心して働けないと、仕事へのモチベーションにもマイナスに作用するので、社員の生活の安定は、企業にとっても重視すべき課題です。  公的年金は老後生活の安心にかかわる基礎的な条件ですが、厚生年金の支給開始年齢の段階的引上げにより、次年度60歳になる男性は、65歳から公的年金が支給されることになります。これからは、65歳まで安定的に収入を確保できるよう、社員が働ける場を用意する責任が、企業にもあります。  社会的背景としてもう一つ、高年齢者雇用安定法の改正があります。すでに企業には、この法律により、本人が希望すれば65歳まで継続雇用する義務がありますが、今年4月からは、それに加えて70歳までの就業確保措置を導入することが企業の努力義務となります。当面は努力義務にとどまりますが、いずれは義務化する可能性もあり、企業にも対応が迫られます。 ―そうしたなかで、すでに貴社には65歳までの再雇用制度がありました。その再雇用制度をあらため、定年を65歳に引き上げたわけですね。65歳定年制にふみ切る企業は、まだ多くありませんが、定年延長を選択した理由についてお聞かせください。 羽田 高年齢者雇用安定法が企業に義務づけている65歳までの雇用確保措置のなかでは、定年後再雇用制度を採用している企業が多く、当社でも2006(平成18)年から再雇用制度を導入していました。しかしこの制度は、60歳定年で会社をいったん退職し、最長65歳まで1年ごとに有期契約を更新する形で再雇用するもので、再雇用後の待遇が、定年までとは大きく異なっていました。  再雇用後の報酬水準は、個別契約なので一概にはいえませんが、大まかにいうと定年直前の40%ほどに下がっていました。公的年金も加えれば、年収は従前の3分の2程度の水準を確保できますが、厚生年金の支給が始まるまでは、勤め先収入だけの生活になります。会社としては、社員を雇用する以上、60歳以降であっても安定した生活のできる報酬を保障する社会的義務があります。そこで、再雇用制度を定年延長に切り換え、待遇の改善を図ることとしました。  また、当社の年齢別人員構成は、46〜60歳までが全体の約45%を占めています。ボリュームゾーンは46〜50歳で約20%。今後この大きなかたまりが15年後には60代に移行し、60歳定年のままだと退職・再雇用となります。一方、国の推計では、大卒新社会人の数は今後10年で約10%、20年で約20%の減少が見込まれ※、定年退職で抜けた人員を新卒採用で補充することが、現状よりさらにむずかしくなります。社会全体が高齢化し、若年労働力の獲得がむずかしくなるなかで、60歳を超えてもペースを落とさずに、社内で引き続き活躍できる仕組みを整備することは、企業にとって喫緊の課題です。  当社では、60歳到達者は、2021年度以降毎年100人規模となり、2024年度には単年度で200人近くになります。直近の再雇用率である8割程度を前提に試算すると、61〜65歳の人員は10年後には700人弱、15年後には800人を超える人数まで増加していきます。定年延長は、このような人員構成の変化を見すえ、労働力不足や優秀な人材の流出防止に備えるための施策でもあります。  また、現在の社員数約5千人のうち、ポストに就いている人は約1100人いますが、今後これを若い世代だけで補っていくのは困難になるため、60歳以降も、やる気のある人にはポストを継続していただかないと、事業継続がむずかしくなるという課題もありました。会社としては、60歳以降もモチベーションを保ったまま、ペースを落とさずに貢献してほしいわけです。そのためには、定年後再雇用ではなく、定年を引き上げることが望ましい。これが定年延長にふみ切った理由です。 定年延長での報酬水準は再雇用時に比べ倍増再雇用者の報酬も同じ水準まで引上げ ―定年延長部分の待遇など、制度内容について教えてください。 羽田 当社は、「能力グレード」と「ポストグレード」の二つのグレード制(等級制度)を採用しています。定年延長者は、60歳になった年度末時点の能力グレードを引き続き継承しますが、ポストグレードは、原則ポストオフとし、後進に道を譲ることになります。しかしながら、後任に適材がいない、余人をもって代えがたい人材など、会社指定により定年延長後も引き続きポスト職を継続、またはいったんポストを外れた後に再度ポストに就くことも可能としています。定年延長後の給与は、60歳になった年度末時点の基本給の70%とし、その後毎年5%ずつ減額となりますが、賞与の算定方式は変わりません。以前の再雇用制度に比べて、報酬水準はほぼ倍増となりました。これに加えて、ポストを継続する場合には、ポストグレードに応じた給与が加算されます。  なお、定年延長にともなう60歳以上の報酬水準の引上げとあわせて、再雇用者の報酬も同じ水準まで引き上げました。これは、同一労働同一賃金という時代の要請に応えるためです。 ―一方で、60歳定年を前提にライフプランを描いている方もいるはずですね。その場合に、退職が先に延びるのは、本人にとって誤算ではありませんか。 羽田 多様なライフプランに対応できるように、定年退職の時期を選べる「選択型定年制度」としました。60歳に到達した翌月以降、65歳年度末までの間は、いつ退職しても定年扱いとします。60歳を過ぎて、健康状態や家族状況など個別事情の変化を理由に、定年を前倒しすることも可能です。  例えば、62歳で退職し再雇用社員として週4日勤務にペースを落として働きたいなど、個別のニーズに対応できます。再雇用社員になると、家族の介護などの事情がなくても、短日・短時間勤務を選択できます。  なお、再雇用社員は、原則として転居をともなう転勤はありませんが、正社員でも年齢などにかかわらず、勤務地限定を選択できる認可型コースがあります。 高スキル人材が65歳以降も働ける独自制度の上限年齢を撤廃 ―貴社には65歳以降も継続して雇用する「シニア人財バンクセンター」という制度がありますが、その上限年齢を撤廃されたそうですね。 羽田 2018年に導入した制度で、会社が必要とし、本人が希望する場合は、65歳以降も継続して雇用を行うという制度で、1年ごとに更新する有期契約ですが、これまで上限年齢を70歳としていました。この上限年齢を、今回の定年延長を機に、撤廃しました。 ―この制度のもとで活躍されているシニアは何人くらいいますか。また、どのような仕事にたずさわっているのでしょうか。 羽田 現在24人で、最高齢は68歳です。職種はさまざまですが、例えば住宅の設計にたずさわる建築士。当社に建築士は数多くいますが、長年の経験に裏づけられた高度なスキルを持つシニアは、お客さまの高度で複雑な要望をデザインに表現できるような、余人をもって代えがたい力をもっています。また、お客さまのニーズを理解して迅速に的確な対応につなげる能力は、コールセンターでも求められるものですが、そこでも若い人に交じって、シニアが活躍しています。住宅事業以外でも、植林や育林の専門家、研究所の研究職、関係会社で監査をしている経理のプロなど、これまでの業務経験を通じてつちかわれた高度なスキルを活かして勤務しています。 ―今年4月から70歳までの就業確保措置の導入が努力義務となりますが、貴社ではいち早く態勢を整えたといえそうですね。 羽田 シニア人財バンクセンターは、従来の上限70歳のままでもクリアできる内容でしたが、より進んだレベルを目ざしました。課題があるとすれば、現行の「会社が必要とする者」という要件です。65歳までは「希望者全員」の雇用確保が法で求められています。将来これが70歳までになった場合に備えることも検討しておく必要があるでしょう。70歳までの就業確保措置では、雇用以外の方法、例えば社会貢献事業での就業も選択肢としてあげられています。当社グループ内で継続して働く場合の選定方法や、社会貢献活動などで働くことを就業確保措置に含めるかどうかを検討し、労働組合と協議していきたいと考えています。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博) ※「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)より 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 2021 March ●表紙のオブジェ イラストレーター 柳田ワタル(やなぎだ・わたる) 1947年 大阪府堺市生まれ。1970年 多摩美術大学卒業。アニメーション制作会社勤務ののち、1974年よりフリーのイラストレーターとなる。1977年よりオブジェ、立体クラフトなどの制作を開始。90年代からは写真撮影も始める。 特集 6 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考える ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム― 理事長挨拶 東京会場 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田慶宏 7 開催レポート 大阪会場 福岡会場 東京会場 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考える〜 8 基調講演 東京会場 高年齢者雇用安定法改正について 〜70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)等について〜 厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用開発審議官 達谷窟 庸野 9 基調講演 東京会場 高齢社員の戦力化に向けた賃金・評価制度 〜合理的な人事管理とシニアに必要な意識転換〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野 浩一郎 12 企業事例発表@ 大阪会場 川崎重工業株式会社 65歳への雇用延長の取組み 労働条件の見直しなどについて 14 企業事例発表A 東京会場 太陽生命保険株式会社 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度、長く元気に働ける環境づくり 16 パネルディスカッション 東京会場 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度 17 企業事例発表B 福岡会場 サントリーホールディングス株式会社 シニア層のさらなる活躍に向けて 65歳定年制、70歳までの再雇用制度を整備 1 リーダーズトーク No.70 住友林業株式会社 理事・人事部長 羽田一成さん 定年延長を選択型定年とセットで導入 70歳以上が活躍できる場も整備 19 日本史にみる長寿食 vol.329 桃の節句のころにおいしくなるハマグリ 永山久夫 20 江戸から東京へ 第100回 駆け込み寺由来 千姫と娘千代 作家 童門冬二 22 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 30 高齢者の職場探訪 北から、南から 第105回 埼玉県 日生工業株式会社 34 高齢社員のための安全職場づくり 〔第3回〕 高齢者の労働災害防止対策について (ハード対策とソフト対策) 高木元也 38 知っておきたい労働法Q&A《第34回》 部門閉鎖と整理解雇、人事考課に基づく降格 家永 勲 42 高齢社員の心理学 ―加齢で“こころ”はどう変わるのか― 【第4回】 高齢社員の仕事と感情機能 増本康平 44 いまさら聞けない人事用語辞典 第10回 「賞与」 吉岡利之 46 労務資料 令和2年6月1日現在の高年齢者の雇用状況 52 令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト募集案内 54 『70歳雇用推進マニュアル』のご案内 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 59 読者アンケート結果 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.314 日本料理の魅力を発信しファンを広げ後進を育てる ホテルニューオータニ幕張 日本料理 顧問 黒田廣昭さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第45回]鏡絵描き 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」は休載します 【P6】 特集 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考える ―生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム―  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発を目的とした「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。今号では、大阪・福岡・東京会場の開催レポートをお届けします。有識者による講演や高齢者雇用における先進企業の事例発表など、参考となる情報が満載です。ぜひご一読ください。 東京 理事長挨拶 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事長 和田慶宏(よしひろ)  健康上の問題で日常生活を制限されることなく過ごせる期間を、「健康寿命」といいます。日本人の健康寿命は男性が72.14歳、女性が74.79歳(2016年調査)となっており、世界第2位の長寿社会を迎えて、さらなる健康寿命の延伸が期待されています。  このような人生100 年時代を見すえ、意欲ある高齢者に働く場を提供することが重要な課題となっております。このため、2020(令和2)年3月31日に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業確保を努力義務とする規定が盛り込まれ、2021年4月1日に施行されます。定年延長、継続雇用の促進に向けて、ますます積極的な取組みが求められているところです。  こうしたなか当機構は、高齢者雇用にかかわる企業の個別具体的な課題の解決の支援に取り組んでいます。本シンポジウムは、その一環として、高齢者の雇用の実態や具体的な取組み、今後の展開について紹介いただき、企業や個人がどのような考え方に立ち、どのような取組みを行えば、生涯現役社会の実現に向けた環境の整備が進むのかということについて、みなさまとともに考え、展望することを主眼として、毎年開催しています。今回は、コロナ禍の影響により例年より規模を縮小した開催となりますが、動画配信といった新たな試みも行っております。  本日の講演、事例発表、パネルディスカッションが、みなさまの高齢者雇用の取組みに資するものになることを期待しております。  最後になりますが、当機構では厚生労働省をはじめ各関係機関と連携し、今後も高齢者の雇用に取り組む事業主の方へのサービス充実に努めてまいります。ぜひ、ご利用いただきますとともに、みなさま方のますますのご健勝を祈念いたし、主催者の挨拶とさせていただきます。 ※シンポジウムの開催の様子をオンデマンド配信中です。視聴は3月22日(月)までとなります。お早目に特設サイトからお申し込みください(https://moushikomi.jeed.go.jp) ※シンポジウムでの配付資料については、当機構ホームページ(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/haifusiryou.html)に掲載しています 【P7】 大阪・福岡・東京会場開催レポート 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考える〜 昨年10月〜12月にかけて全国5都市で開催  当機構では、高齢者雇用に関する理解と認識を深めるイベント、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。  令和2年度は、厚生労働省のほか関係団体の協力のもと、2020年10月〜12月にかけて全国5都市(新潟、愛知、大阪、福岡、東京)の会場で開催しました。  今号では、「高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度を考える」をテーマとした東京・大阪、「高齢社員の戦力化に向けた人事管理を考える」をテーマとした福岡の3会場の開催レポートをお届けします(新潟、愛知会場の模様は、本誌1月号に掲載しています※)。  各会場では、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じたうえで、参加人数を限定し短時間での開催となりましたが、学識経験者による講演や高齢者雇用における先進企業による事例発表などを行い、今後の高齢者雇用の方向性について来場者のみなさまとともに考え、生涯現役社会の実現を目ざすイベントとなりました。 高齢社員が活かされる仕組みづくりや取組みを支援する助成金制度を紹介  高年齢者雇用安定法の改正(本年4月1日施行)により、70歳までの就業機会の確保が努力義務化され、働く意欲のある高年齢者が活躍できる職場環境の整備が求められています。  本シンポジウムでは、この改正法の内容と事業主が留意したいポイントについて、厚生労働省による詳細の説明が行われました。  また、福岡会場では、東京学芸大学教育学部教授の内田賢(まさる)氏による基調講演が行われ、内田氏は「会社の力を引き上げるシニア活用戦略」と題し、高齢者が活かされる仕組みづくりの必要性や具体的な方法、高齢社員の意識改革、70歳までの就業機会の確保などについて述べました。  本誌1月号には、新潟・愛知会場での内田氏による基調講演を掲載しています。  大阪会場では、当機構大阪支部より、65歳以上への定年の引上げや継続雇用制度の見直しを行うなど、高齢者の雇用の安定や推進を目的とした取組みを進める事業主が対象の「65歳超雇用推進助成金」の説明を行いました。  今号では、大阪・東京会場で行われた学習院大学名誉教授・学習院さくらアカデミー長の今野(いまの)浩一郎氏による基調講演と、大阪、福岡、東京会場で行われた高齢社員のさらなる活用に向けて定年の引上げなどに取り組んだ企業による事例発表、東京会場でのパネルディスカッションの模様をお伝えします。 ※ エルダー 2021年1月号 検索 【P8】 東京 基調講演 高年齢者雇用安定法改正について 〜70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずるべき措置(努力義務)等について〜 厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用開発審議官 達谷窟(たがや)庸野(のぶなお)  本日は、4月1日に施行される高年齢者雇用安定法の改正内容と、事業主の方々にご留意いただきたい「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」の概要をご説明します。  現行の高年齢者雇用安定法は、60歳未満の定年は禁止としたうえで、65歳までの雇用確保措置として、65歳までの定年引上げ、定年制の廃止、65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを事業主の方に義務として取り組んでいただくもので、31人以上規模の企業では99・8%の企業においてこれらの措置が実施されています※1。  今回の法改正では、65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業確保措置を講ずることが努力義務として新設されました。この努力義務は、@定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、A70歳以上まで引き続き雇用する制度を除いた継続雇用制度を導入している事業主の方々が対象となります。  この法改正では、人生100年時代を迎えるなか、働く意欲がある高齢者の方々が能力を十分に発揮できるよう、その活躍できる環境の整備を行うために、個々の労働者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上で整えました。  まず、@70歳までの定年引上げ、A定年制の廃止、B70歳までの継続雇用制度の導入。これら三つは、雇用関係のなかで70歳までの就業確保をしていただくものです。  加えて、C70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、D70歳まで継続的に社会貢献事業に従事する制度の導入をする、というものです。このCとDは、雇用関係ではないなかで70歳までの就業機会を確保していただくもので、「創業支援等措置」と呼んでいます。  なお、Bの70歳までの継続雇用制度は、65歳以降70歳未満までは特殊関係事業主※2に加えて、他社で継続雇用を行うことも可能です。  CとDの創業支援等措置について、特にDの社会貢献事業に継続的に従事できる制度の導入は、a.事業主が自ら実施する社会貢献事業と、b.事業主が委託・出資などをする団体が行う社会貢献事業があり、このa、bいずれかに従事できる制度を導入していただくものです。いずれの場合も、有償のもの※3にかぎるとされています。  ここでご注意いただきたいのは、CとDの創業支援等措置は、雇用関係によらない措置ですので、労働関係法令の適用がありません。このため、創業支援等措置を講ずる場合は、創業支援等措置の実施に関する計画を作成し、過半数労働組合等の同意を得て、その後に労働者に周知するという、いくつかの手続きが必要になります。  70歳までの就業確保措置は努力義務ですが、事業主のみなさまにおかれましては、改正法の趣旨をご理解いただき、労使間で十分にご協議のうえ取組みを進めていただきまして、また都道府県労働局やハローワークでは措置の導入に向けた相談支援を行っておりますので、ぜひご活用ください。 ※1 厚生労働省「高年齢者雇用状況報告」(令和元年6月1日時点) ※2 特殊関係事業主……元の事業主のグループ会社のこと ※3 業務に従事することにより、高齢者に金銭が支払われるもの 【P9-11】 東京 基調講演 高齢社員の戦力化に向けた賃金・評価制度 〜合理的な人事管理とシニアに必要な意識転換〜 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎 社員の20%を高齢社員が占める時代に  高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会を確保することが事業主の努力義務として新設されました。その環境を整備する選択肢として、雇用によるものと雇用によらないもの、合わせて五つの選択肢が示されていますが、やはり、雇用によるものが中心になるだろうと思っています。  では、「65歳以上の高齢社員の人事管理をどう構築するか」ということが課題となるわけですが、その際の人事管理は、60代前半層の人事管理をきちんと行っていれば、65歳以上も同じであると私は考えています。本日は主に65歳までの人事管理についてお話ししますが、ここをしっかり構築しておけば、65歳超にも十分に対応していくことができるということです。  高齢社員の人事管理を整備するうえでまず念頭に置いていただきたいことが、高齢社員の割合です。約5人に1人、つまり、社員の20%は60歳以上の高齢社員である、ということ。会社に占める高齢社員の割合は、こんなに大きくなっているということです。この人たちにがんばってもらわないと、経営上、企業は深刻な状況に陥ることになります。  もう一つ認識しておきたいのは、60歳を超えても働き続けることが、もはや普通のことになっている、ということです。私は、生涯働く「自営業主型働き方」への回帰であるといっているのですが、昔はみな、農業や自営業で年齢に関係なく働いていました。それが、高度成長期以降、急速に組織で働く雇用者が増えて、定年制度などができ、定年=引退というような社会ができました。そこからまた、年齢にかかわりなく働くようになってきたというわけです。  これらのことをふまえると、まず、これだけ大きな社員集団となった高齢社員の重要性は、企業経営にとって、とても大きな存在となりました。つまり、高齢社員の活用について、企業も労働者も本気になって向かっていく必要がある、そういう心意気を持っていただきたいと思っています。 人事制度は社員に対するメッセージ  現状では、60歳定年が主流であり、定年以降は再雇用で継続雇用する制度が一般的となっています。  人事管理をみると、多くの場合、60歳前は正社員で、再雇用後は嘱託などの非正社員となり、正社員用の人事管理と、60歳以降の非正社員用の人事管理を共存させる「1国2制度型」の人事管理となっています。このこと自体に問題はないと思いますが、再雇用後の高齢社員に対応する人事管理がなかなかむずかしく、現状では、問題があるように見受けられるケースが少なくないように感じます。  多くの企業では、再雇用後、同じ仕事を継続して担当してもらっていますが、職責や成果期待は下がり、残業や転勤はもうしなくてもよいといった制約的な働き方をしています。一方、処遇の面では、定年到達時の賃金を一律に下げて、その後はそのままにして、働きぶりを評価しないというような賃金設定をしている企業が少なくありません。  どんなにがんばっても賃金は同じ、働きぶりをみる前に定年到達時から一律に賃金を下げるというのは、もはや賃金とはいえないと思います。人事制度というものは、社員に対するメッセージの一つです。このような処遇は、「高齢者には成果を期待しない」、「定年前並みの活躍を期待しない」といったメッセージを発している人事制度ということになります。働くことを期待しないのは、雇用とはいいません。私は「福祉的雇用」と呼んでいます。  当然ながら、こうした制度の適用を受ける高齢社員はやる気を持つことはできないでしょう。こうした社員が千人中1人や2人ならよいでしょう。しかし、社員の5人に1人が高齢社員ですから、千人の企業であれば200人です。その人たちがみんなやる気をなくしたら、経営はたいへんなことになるでしょう。ですから、この5人に1人の高齢社員をしっかりと戦力化するということが企業経営にとって重要になっているのです。 「再雇用」は雇用契約の「再締結」  では、高齢社員を戦力化する人事管理をどう構築するのか。「定年+再雇用」を前提に、まずは高齢社員の活用についてお話しします。  定年後の「再雇用」は、定年を契機にした雇用契約の「再締結」ということです。このとき、企業は「高齢社員から何を買うのか」、高齢社員は「会社に何を売るのか」を明確にして、それらに基づくニーズのすり合わせを通して活用の仕方を決めることが必要となります。  例えば、「わが社ではいまこういう業務をしているからそれを満たす人材がほしい。高齢社員のなかにそうした人材はいるだろうか」といった姿勢で、企業は人材を探し、高齢社員と雇用の再締結をする。  これは、高齢社員のために仕事をつくる「供給サイド型」の施策ではなく、労働サービスを必要とする側から、高齢社員の活用を考える「需要サイド型」の施策です。こういう心構えで雇用契約を再締結しないと、先ほど述べた「福祉的雇用」になってしまいます。高齢社員も、やはり必要とされる場で働くということがとても重要であり、こうした活用施策が基本的な考え方として大事になります。  処遇については、高齢社員は短期雇用型の特性に対応する「仕事ベースの賃金」が合理的な選択です。仕事の重要度に見合った賃金設定にするということです。  また、高齢社員の場合は残業も転勤もしないという制約社員として、その分賃金を調整する。つまり、短期雇用型で制約社員というタイプに合わせた処遇制度を設計していくことにより、合理性がある処遇が決まるといえます。  ただ、このような合理性のある賃金制度を設定しても、定年を契機にして、賃金が下がることがほとんどとなります。同じ分野の仕事をしても、定年を契機に職責が落ちれば仕事の重要度が落ちますから、賃金が下がることになるわけです。しかし、人間はそんなに合理的ではありませんので、「賃金が下がったことにはやっぱり不満だ」という思いが、どうしても高齢社員には残ってしまいがちです。その思いが強いと、高齢社員のモチベーションに影響を及ぼしますので、対応策を考えておくことも大事です。企業はまず、高齢社員に対して戦力化するための合理的な人事管理について一生懸命説明し、高齢社員の納得を得ることが重要になります。  それでもなお高齢社員に不満が残るなら、今度は高齢社員自身に変わってもらうことが求められます。再雇用は、定年を契機にした雇用契約の再締結ですから、一種の社内中途採用といえます。例えば、中途採用試験を受けて働こうとするとき、「私はこういう能力を持っていて、こういうことで会社に貢献します」とアピールするでしょう。つまり、高齢社員も、どのような役割を通して会社や職場に貢献するか、きちんと考えることが求められます。会社が仕事を用意してくれるのは当然だ、という意識ではなく、ぜひとも意識転換していただきたいということです。 キャリア・役割転換にともなう意識転換を  60歳を超えて、65歳、70歳まで働く、もしかしたら生涯働く、ということを想定すると、働く期間はとても長くなります。  長期化して、最後まで若いときのようにより高いポジションを目ざしてがんばるという「上り続けるキャリア」はあり得ません。どこかで転換して、少しキャリアを下に向けていく。そこを上手に、下に向けることができれば、年齢に関係なくずっと働き続けられるのだと思います。  いずれにしても、働く期間が長くなると、ある時点を超えたときに、会社で求められる役割が代わり、キャリアが変わります。そのことを理解して受け入れることが高齢社員に求められることの一つです。  例えば、管理職として責任ある仕事をしてきたけれど、これからは転換して、一担当者のプロとして仕事をしていく。そうした場面で、きちんと意識転換ができるかどうか。このことがいくつになっても活躍していくためのキーポイントだと思います。したがって、企業はこのような意識転換を促進するとともに、意識転換を支援する体制も組んでいただきたいと思います。 60歳定年制の機能を認識する  現在、多くの企業では定年を60歳としていますが、改正高齢法はすでに希望者全員65歳までの雇用を求めています。つまり、定年延長・再雇用にかかわらず、日本はすでに「実質65歳定年時代」といえるのです。  今後、定年を延長する企業が増えてくると思いますが、定年延長をしてもしなくても、60歳以降の高齢社員に戦力として活躍してもらうための人事管理は、先ほどお話ししたことと基本は同じです。  ただ、注意したいこととして、「定年の機能変化」を頭に入れておいていただければと思います。現在の定年制は、定年を一つの契機として、「キャリア転換促進」の機能が主流になっていると思います。先ほどお話ししたように、職業生活が長くなると、どこかでキャリアを転換する必要が出てくるので、それを促進する機能が現在の60歳定年制ということです。定年を延長するにあたっては、この「キャリア転換促進」機能が、定年延長によって失われるので、「定年延長で何をねらうのか」を真剣に検討しながら、「60歳定年」に代わるキャリア転換装置の構築をセットで考える必要があります。 【P12-13】 大阪 企業事例発表@ 65歳への雇用延長の取組み労働条件の見直しなどについて 川崎重工業株式会社 人事本部 労政部 労政企画課課長 川内(かわち)寿夫(としお)  当社は、創業者である川崎正蔵(しょうぞう)が船造りを始めたことからスタートし、1896(明治29)年の設立から124年※1となります。現在は大きく分けて、航空宇宙、エネルギー・環境プラント、精密機械・ロボット、船舶海洋、車両、モーターサイクル&エンジンの六つの事業を展開しています。従業員数は、単体で約1万7千人。うち、管理職が約4千人となっています。  当社では2004(平成16)年の早い段階で、一般従業員の定年を60歳から63歳へ段階的に引き上げ、63歳以降は65歳までの再雇用制度を設けました。以降徐々に一般従業員の高齢者層の賃金水準の改善に取り組み、2019年4月に、一般従業員の定年を65歳に延長しました。  そして2021(令和3)年4月には、一般従業員の処遇制度を新たに見直す予定です。年齢給の廃止や評価制度の見直しといった大きな改定です。また、管理職の定年年齢を現在の60歳から65歳へ延長することも検討しています。 人事制度全般を見直すなかで定年延長や賃金設定を行う  2004年の早い段階で当社が定年延長にふみ切った背景には、いくつかの事情がありました。一つは、いわゆる団塊世代の大量定年退職により、社内の労働力が大きく減っていくことが目に見えている一方で、大型プロジェクトの受注が決まり、高度な技量を要する多種類の職種が必要であり、高齢者の活用を考えざるを得ないという状況がありました。  昭和50年代後半〜60年代の造船不況時に採用を絞ったことから、35〜45歳くらいの層が極端に少なくなっていました。このことから採用というのは、どんなに不景気でもやり続けないといけないと、身に沁みて感じています。  また、60代前半層の雇用義務化といった雇用環境の変化もあるなか、単に高齢層のところだけを改革するのではなく、人事制度全般の見直しによる労務費の変動費化に着手するなかで、定年延長を行いました。  継続雇用ではなく定年延長としたのは、正規従業員としての雇用によるモラルアップ、各種人事制度改定の代償措置としての位置づけや、1999年から労働組合と定年延長の検討をしていたこと、さらに、退職給付債務(勤務費用)の軽減といった理由からでした。  そして、人事制度全般について七つの項目の見直しを行いました。基本的には労務費を変動費化させるということで、成果主義、実費主義、自助努力といったものを強める制度にしました。従業員としては、がんばらないと賃金が上がりませんし、当初は社内に不安の声が上がりました。そうしたなかで、定年延長にふみ切ったわけです。  定年延長に関連する取組みで実際に行ったのは、定期昇給制度の見直し、高齢・高職給化した昇給原資の適正化、青天井の昇給制度からレンジ(職能資格ごとの上限)のある昇給制度への変更、加点主義の導入でした。  退職金制度は、管理職はDC制度(確定拠出年金制度)を導入しました。退職金の一部を前払いしてPBO※2のオフバランス化を図るものです。また、キャッシュ・バランス・プランの導入、死亡退職金の年金化、60歳到達時点での退職金の一部前払いの実施を行うことにしました。 年齢にかかわらず成果を重視新人事制度を協議中  当初の63歳への定年延長は、2年に1歳ずつ延ばしていき、2009年に63歳となりました。  2019年4月には、さらに65歳まで定年を延長し、基本的に再雇用制度はなくなる方向となっています。  定年延長を導入した当初の賃金は、60歳到達時点の5〜6割程度に設定し、毎年の査定昇給を実施しました。賞与は60歳未満と同算式で計算。退職金は毎月5千円増額。福利厚生は従来と同じとしました。  定年延長にともなう退職金の一部前払いとして、60歳到達時点で本人の希望・選択により、300万円以内の任意の金額を受取り可能としました。ただし、これは退職金にはなりませんので、一時所得として課税されます。希望者は非常に少なかったです。  一方で、賃金減額に対する不満はとても大きなものでした。そのため、高齢社員活用ニーズの高まりや分社化した会社の再統合などを背景に、高齢社員の労働条件の改善に取り組み、それまで58歳時に給与が減額されていたことを改善するとともにLS手当※3を60歳以降も支給することとし、賃金水準を改善。現在は、60歳以降緩やかに減額し、64歳で7割ほどになります。  また、意識づけとして、55歳に到達した幹部職員を対象にしたキャリアセミナーを1泊2日で行い、いままでの会社人生の棚卸しと今後の会社人生の目標設定と老後の生活設計を行う機会としています。55歳に到達した一般従業員には気づきセミナーとして、会社制度の説明と老後の生活資金の説明などを3時間ほどで行っています。  現在の年齢構成は、従来に比べればいびつさが改善されました。そうしたなか、技能伝承のため、伝承すべき技能を持ち、後進育成の資質を有する56歳以上の社員を「範師(はんし)」として認定する「範師制度」を導入しました。任期は1年。技能伝承奨励金を支給します。現在、全社で約30人が活躍中です。  また、2021年4月からの実施に向けて、新人事制度を協議しています。協議している項目の一つは、職能資格制度です。同じ仕事でなんとなく報酬が上がっていく仕組みではなく、幹部職員については役割等級制度を再構築し、一般従業員も大きな括(くく)りのコース管理を導入しブロードバンド化を目ざしています。  肝は、評価制度の改定です。現在は相対評価で運用していますが、絶対評価を導入し、結果をフィードバックして賞与に反映する、これを進めていきたいと思っています。年齢を極力排除した制度にして、いわゆる昇進・昇給の停止年齢の廃止を検討中です。  給与体系については、管理職は年俸制から月給制へ、一般従業員はLS手当を廃止し、成果と職責により報酬が上がる仕組みにし、退職金も勤続要素から成果加算への組み替えや、PBOの圧縮も検討しています。  また、管理職も一般従業員と同じような考え方で、65歳への定年延長を検討しています。 高齢社員の戦力化に向けて 定年制度 ●一般従業員は2004年に60歳から63歳へ、2019年に65歳へ延長 ●管理職は、定年60歳、その後は上限5年の再雇用制度があるが、65歳へ定年延長を協議中 高齢社員の労働条件を改善 ●2011年度に賃金水準などを改善 55歳到達者に対する研修 ●幹部職員対象キャリアセミナー ●一般従業員対象気づきセミナー 範師制度 ●56歳以上の社員を「範師」として認定 ●伝承すべき技能を後進に指導する ※1 本シンポジウム開催時(2020年11月12日) ※2 PBO……Projected Benefit Obligation(退職給付債務)のこと ※3 LS手当……ライフステージ手当。18歳から65歳まで設定している年齢給のこと 【P14-15】 東京 企業事例発表A 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度、長く元気に働ける環境づくり 太陽生命保険株式会社 人事部 人事課長 一番ヶ瀬(いちばがせ)智彦  当社は1893(明治26)年に創業して、2020(令和2)年で127年目を迎える会社です。2004(平成16)年には、大同生命およびT&Dフィナンシャル生命とともに、持ち株会社であるT&Dホールディングスを設立しました。  当社は、多くの保険会社が企業を中心に営業活動を行うのに対し、家庭を一軒一軒訪問して商品を販売する、家庭マーケット中心の販売戦略をとっています。現在、人生100歳時代を先取りした商品・サービスをご家庭にお届けすることにより、より多くのお客さまの安心で豊かな暮らしをサポートすることを目ざして事業展開を行っています。  2020年3月末時点の従業員数は、内務職員が2333人、営業職員が8071人となっております。内務職員については、2017年4月に定年を60歳から65歳に延長し、最長70歳まで働ける継続雇用制度を導入しています。営業職員については2005年に70歳定年を導入しており、1年契約の更新により最長80歳まで働ける環境を整えております。  当社では「健康寿命の延伸」という社会的課題に応えるため、「従業員」、「お客様」、「社会」のすべてを元気にする取組み「太陽の元気プロジェクト」を推進しています。社会やお客様を元気にするにあたって、まずは従業員が元気でなくてはならないと考え、2016年6月から、さまざまな施策に取り組んでいます。  なかでも一番大きな施策が、雇用を確保して、従業員が安心して老後を迎えられる環境をつくるということです。内務職員を対象に、処遇を維持したまま定年を65歳に延長し、定年退職後は最長70歳まで働ける継続雇用制度を導入しました。また、当時57歳としていた役職定年制度・特別職員制度を廃止しました。  定年と継続雇用年齢を引き上げた背景には、従業員の高齢化・晩婚化が進んだことや、生涯未婚の従業員も増え、経済的な不安を訴える者が増えてきたことなどがあります。また、高年齢者雇用安定法改正などの国策と企業への要請、加えて、年金の支給開始年齢が引き上げられるということも考慮しました。  さらに、当社の課題として、人員構成上の大きな山と谷があり、適切な管理職体制の維持とシニア層の活性化が求められた、ということもあります。60歳以上のシニア層の従業員は、65歳定年とした2017年4月の段階では40〜50人でしたが、現在は100人ほどになっています。制度導入から10年後の2027年4月には、総合職約1200人のうち約300人が60歳以上となる見込みです。シニア層に従来通り活躍してもらわないと会社として健全な成長ができないという課題があり、定年延長と継続雇用年齢の引上げを行いました。 新入社員から65歳まで同じ人事処遇体系を実現  当社では人事諸制度を、この4年間で2度改定しています。1度目の2017年4月の改定では、先ほど説明したように内務職員を対象に65歳定年制度を導入し、新入社員から65歳まで同じ人事処遇体系を実現するとともに、最長70歳まで働ける継続雇用制度を導入しました。また、役職定年と特別職員制度を廃止し、年齢による一律の処遇引下げをなくすことで、競争意識を持ち意欲的に活躍できる仕組みを構築しました。  同時に、初任給の引上げ、福利厚生制度の充実、健康経営を推進し、若手からシニアまで、年齢にかかわらず高い意欲で能力や成果を発揮できる環境を構築する、全世代型プロジェクトとして改定を進めました。  当社では退職一時金についてはポイント制を採用していますが、定年年齢を65歳に引き上げたことにともない、ポイントの付与は60歳までとし、支給時期を65歳としました。61歳から65歳までの賃金が大幅に上昇するため、60歳時点の金額としています。退職年金については、支給開始年齢は65歳とし、支給方法は10年保証期間付確定給付型終身年金を維持し、支給金額は旧制度と同額としています。  2度目の人事諸制度の改定は、2020年4月に実施しました。  メリハリのある人事運用を行うため、評価項目・評価基準の明確化を行いました。また、評価乗率を見直し、職位に応じて人事評価の処遇反映を最大2倍程度引き上げ、より成果が反映しやすい処遇を実現し、従業員のモチベーション向上を図りました。このほか、昇降格要件の明確化・早期化・厳格化、給与テーブルの見直しを行い、固定部分を縮小し、変動部分を拡大することで、成果発揮や管理職登用、上位管理職ほどインセンティブがより働く処遇体系とするなど、1度目の改定から3年経過したところで、成果に対して、より一層評価を反映できるような体系に改めました。 仕事と生活の両立支援の充実と従業員の健康増進にも取り組む  65歳定年制度を導入し、長く働ける就労環境が整備されたことにともない、仕事と生活の両立支援制度の充実と従業員の健康増進に関する取組みも推進しています。  両立支援制度の充実としては、最長3年間取得できる介護休業や年30日間有給で取得できる介護休暇、子が小学校卒業まで利用できる短時間勤務制度、男性従業員の育児休業の取得促進、不妊治療およびがん治療による通院休暇を導入したほか、介護やがん治療を要件として週3〜4日勤務ができる制度も導入しました。  従業員の健康増進については、@健康増進セミナーの実施やクアオルト※を活用したウォーキングなどの予防・意識向上に関する取組み、AMCIスクリーニング検査の実施などの認知症の早期発見に関する取組み、B再検査や精密検査の100%受診の徹底などの重症化予防に関する取組みで、人事部が中心になって進めています。  人事制度の改定にとどまらず、福利厚生制度の充実、健康経営の推進とも合わせて、全世代型の取組み「太陽の元気プロジェクト」を通じて、従業員が長く元気に高い意欲で働ける環境を構築しています。 高齢社員の戦力化に向けて 65歳定年制度を導入 ●内務職員(約2300人)の定年を60歳か65歳へ延長。処遇は60歳到達時を維持 最長70歳までの継続雇用制度を導入 ●定年退職後、最長70歳まで嘱託社員として働ける継続雇用制度を導入 役職定年・特別職員制度を廃止 仕事と生活の両立支援制度を充実 従業員の健康増進に取り組む ※営業職員は、2005年1月に定年年齢を70歳とし、最長80歳まで働ける制度を導入済み ※クアオルト……「クア(治療・療養)」と「オルト(場所・地域)」を合わせた「療養地」という意味のドイツ語 【P16】 東京 パネルディスカッション 高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度 【コーディネーター】 学習院大学名誉教授 学習院さくらアカデミー長 今野浩一郎氏 【パネリスト】 川崎重工業株式会社 人事本部 労政部 労政企画課課長 川内寿夫氏 太陽生命保険株式会社 人事部 人事課長 一番ヶ瀬智彦氏 今野 両社の事例発表では、定年延長にともなう処遇や評価制度の改定についてお話がありました。まずは、この点からお聞きしたいと思います。 一番ヶ瀬 当社の場合、部長と課長、支社長と次長など管理職の年次が逆転する事例も多く、いわゆる成果主義型の人事制度が徹底されています。一方で、少数精鋭であり、一度降職をしても再度成果をあげれば、何度でも上位職に登用されるチャンスがあります。こうした年齢によらない成果に応じた人事運用が徹底されていることが成功の一番の要因であると認識しています。 川内 当社も2021(令和3)年4月から、年齢という要素を排除するという仕組みに変えていく方向で新制度を検討しています。年功で昇格せず、基本的に能力と役割を見て処遇を決めていくという内容で、全世代に対して、同じ考えで進めていきたいと考えています。 今野 考えてみればあたり前のことですが、成果に見合った給料で、年齢にかかわりなく働いてもらう、ということなんですね。 川内 はい、まさにそういうことです。 一番ヶ瀬 おっしゃる通りだと思います。 今野 すると、制度をそこまでどう持っていくか、ということが重要になってくるのでしょう。  これから定年延長を考えている会社に向けて、これだけはいっておきたい、ということをお聞かせください。 川内 定年延長にだけ取り組むのではなく、「トータルの人事処遇制度を見直すなかで定年延長もやっていく」、という取組みがよいのではないかと思っています。また、定年延長はコストアップにつながる施策であるという認識で躊躇(ちゅうちょ)される会社もおありかと思いますが、トータルパッケージとして考え、従業員に強いメッセージとして伝えていくことも大事なことではないかと思います。 一番ヶ瀬 当社では経営トップの「人件費はコストではなく投資である」という価値観を大切にし、65歳定年制度、役職定年や年齢による処遇の切り下げなどの廃止を行い、新入社員から65歳まで同じ人事制度のなかで成長し合える環境を整えました。今後、定年延長を検討されている企業のみなさまにおかれましても、法令で定年が65歳以上となり追い込まれてからではなく、定年延長を前向きにとらえて自社に合った制度を検討いただければと考えます。 今野 ありがとうございます。短い時間でしたが、高齢者雇用を進めるうえでのキーコンセプトが示されたように思います。 【P17-18】 福岡 企業事例発表B シニア層のさらなる活躍に向けて65歳定年制、70歳までの再雇用制度を整備 サントリーホールディングス株式会社 ヒューマンリソース本部 人事部部長 兼 ダイバーシティ推進室長 千 大輔  当社は、1899(明治32)年に「鳥井商店」として開業しました。ワインから始まり、ウイスキー、ビール、烏龍茶などの酒類・飲料の製造事業を行っています。2014(平成26)年にはアメリカの蒸留酒メーカーであるビーム社を買収し、同社と共同開発したジンを世界で展開するなど、ここ数年はグローバル化を進めています。現在、グループ会社は300社、従業員数は約4万人で、そのうち約半分が国内の従業員です。成長の原動力は、創業者である鳥井信治郎が口癖のようにいっていた「やってみなはれ」という挑戦の精神です。  当社では、2013年4月に当時の60歳定年を延長し、65歳定年制を導入しました。すでに2001年に再雇用制度を導入していましたが、法改正による65歳までの雇用義務化などが見込まれるなか、2010年あたりから新たな制度の検討を始めて、再雇用制度の拡充、あるいは定年の延長について協議し、結果として、65歳への定年延長に至りました。  従前の再雇用制度は、雇用形態が嘱託社員で、対象者は、希望者のうち勤務地までの住居を自ら確保できる者、という内容でした。また、単年度契約で、処遇水準は60歳到達時点の資格にかかわらず基本的に一律で、福利厚生や考課、資格の定義はありませんでした。  これに対して、2013年からの65歳定年制は、対象者は60歳を迎える社員全員、雇用形態は正社員です。処遇水準は、60歳時の資格に応じて3段階とし、一般的なケースで60歳到達時点の6割から7割の水準となるよう設定しました。福利厚生や考課、資格の定義は、社員ですから変わらず適用になるという制度です。  この制度を導入した2013年当時の世間における高齢者雇用対応は、約94%は継続雇用制度導入で、残りの約6%が定年制の廃止、あるいは引上げというものでした(厚生労働省:平成23年「高年齢者の雇用状況」※従業員数301名以上)。当時はまだ、定年の年齢を引き上げる企業はレアだったのです。  当社の従前の再雇用制度を振り返ると、再雇用率は95%前後で、毎年100人前後が再雇用となる状況でした。当時のシニア層の意識調査では、定年が一つの区切りになり、「やはりモチベーションが下がる」といった意見のほか、処遇が一律であったため「成果を出しても給与は変わらない」、「60歳以前と同じ業務継続にもかかわらず、処遇が大幅に下がる」といった不満の声が聞かれました。  あるいは、当社はモノづくりの会社ですから、「技術伝承などをになう役割がある」という気概を持っていたり、「特定の技能があるEP(嘱託)は社員と変わらず活躍している」といった声もあり、再雇用制度の拡充も検討しつつ、トップの判断で、最終的に65歳定年制の導入となりました。 65歳定年制を導入する一方でシニア期のサポート施策を構築  65歳定年制の導入にともない、退職金・年金制度の変更も行いました。まず、年金支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げました。また、企業年金の給付利率を3%から2%に変更し、持続可能な仕組みにしました。月額約1万円程度の支給額減少となるのですが、65歳まで厚生年金保険料を納めた場合、厚生年金の支給額が月額1万円程度増加し、生活を維持できるような仕組みに変えることができたと考えています。  シニア期をサポートする施策も構築し、二つの側面から支援するセミナーを実施しています。一つは、一人ひとりが考える「キャリアドック」という支援で、53歳と58歳で全員参加のセミナーを受講してもらい、成長の再認識などを行います。もう一つは、50〜52歳、58歳、63歳の3段階で行う「ライフプランセミナー」です。今後の処遇、退職金のシミュレーションなどを行い、シニア期に向かって準備を始めるきっかけにしてもらいます。  一方で、シニア期の多様な働き方に応じて、社内外での活躍の支援策といったものも、同じタイミングで少しずつですが導入を始めました。 70歳までの再雇用制度を導入社外転身支援を含むキャリア支援も  シニア層の意識調査では、65歳〜69歳の就労意欲は65%と高く、65歳以降も引き続き働きたいという意欲がうかがえます。また、「働くことで社会とつながっていたい」という声が多く聞かれました。その際の勤務形態としては、週2〜3日勤務で、月10万円程度の給与を望む声が多く、この裏返しで、フルタイム勤務しか選択肢がない場合、希望者は少ないのではないかといった声もありました。  最後に、シニア層のさらなる活躍に向けて、ここ1〜2年の取組みについてお話しいたします。  65歳以上の再雇用制度を、2020(令和2)年9月から開始しました。雇用形態は嘱託社員で、単年度契約、原則として70歳までという制度で、労働時間は週3日、1日6時間勤務をモデルとしています。本人の希望に加えて、部署が推薦することが再雇用の条件になります。  また、45歳以上の社員を対象にしたキャリア支援の拡充にも取り組んでいます。社員一人ひとりが人生後半戦のキャリアを自律的に考え、社外への転身も含めて、キャリアの選択肢を広げるための支援です。  具体的には、ITスキルをはじめ、知識・スキルの継続学習を支援する「リカレント教育」、外部転職会社による相談やセミナー開催による「社外転身支援」、転身後3年以内であれば、サントリーに復職できるという「カムバック制度」の三つの支援制度を導入しました。これらにより、サントリーらしく、シニア層が社内外で活躍できる環境を整えていきたいと考えています。  当社の事例は以上になりますが、まだ模索しながら進めているところです。法令も変わってくるでしょうし、世の中の状況も変化していくなかで、現状がゴールではなく、まさに走りながら制度を変えていく、あるいは、運用を変えていくということを、今後も続けていきたいと思います。 シニア層のさらなる活躍に向けて 65歳定年制を導入 ●2013年4月、定年を60歳から65歳へ延長 70歳までの継続雇用制度を導入 ●2020年9月、定年退職後、最長70歳まで嘱託社員として働ける再雇用制度を導入 シニア期をサポートする施策を構築 ●キャリアドック(53歳・58歳) ●ライフプランセミナー (50歳以降、3段階で実施) キャリア支援策を拡充(対象45歳以上) ●リカレント教育 ●社外転身支援 ●カムバック制度 【P19】 日本史にみる長寿食 FOOD 329 桃の節句のころにおいしくなるハマグリ 食文化史研究家● 永山久夫 婚礼の席に欠かせないハマグリの吸い物  ハマグリは殻が厚く白色で、美しくつやつやしています。2枚の白殻が固く結びついていて、ほかの殻とは絶対に合わないという特徴があります。  このため和合のしるしとして、おめでたい婚礼の席には、ハマグリの吸い物が欠かせません。食べごろの旬となるのは、3月から4月ころで、桃の節句にハマグリの吸い物が出されるのも、「女児が美しく、元気に成長するように」という願いが込められていたからにほかなりません。桃の節句のころが、身もふっくらと肥大してもっとも美味となります。  婚礼にハマグリ汁が出るようになったのは、江戸の下情によく通じていた8代将軍徳川吉宗のお達しという説が有名です。  ハマグリは、三千世界を訪ねても、ほかのハマグリの殻と合うことはありません。ほかの貝殻とは合わない、つまり、一人の伴侶と末長く暮らす仲のよい夫婦の象徴とされてきました。  旬のハマグリは、実に美味。ところが、婚礼用のハマグリの吸い物は、汁だけを味わって、身は口にしないのが習わし。次のような江戸の川柳があります。 蛤(はまぐり)は 吸うばかりだと 母おしえ 蛤の 吸い物を食って しかられる  ハマグリの吸い物は磯の香りがするところから、「潮汁(うしおじる)」とも呼ばれました。  すまし汁仕立てでだし汁を用いず、貝を水から入れて火にかけ、塩だけで味を決めます。ひと吹きして貝が開いたら酒少々を入れて調味し、お椀に盛り、吸い口に木の芽を浮かべて出します。 人気があった千鳥(ちどり)焼き  ハマグリの身を串に数個刺し、味噌をつけて焼く田楽もあり、「千鳥焼き」と呼ばれて江戸っ子に人気がありました。次のような川柳もあります。 蛤も 千鳥と化して 味噌をつけ  ハマグリに豊富なタウリンは心臓の機能を高め、肝臓を丈夫にする働きがあり、うまみ成分はアミノ酸のグリシンやグルタミン酸などです。タウリンは目の老化防止にも役立ち、テレワーク時代をバックアップします。 【P20-21】 江戸から東京へ [第100回] 駆け込み寺由来 千姫(せんひめ)と娘千代 作家 童門冬二 自分の不幸を娘とともにプラスに  千姫といえば豊臣秀頼の妻で、大坂の陣で豊臣氏滅亡後、数奇な生涯を送ったと伝えられる。が、実際には弟の三代将軍徳川家光の威を借りながら、不幸な女性の救済に力を尽くした善行者だ。  祖父家康と関白豊臣秀吉との政略で、家康の三男秀忠の長女として生まれた千姫が秀頼と結婚したのは七歳のときだ。男女のことなど何もわからない。お嫁さんごっこ≠フ遊びだったろう。が、大坂の陣で夫の秀頼が自決したときには18歳。当然失われる生命を助かって父の許(もと)へ。やがて姫路城主の息子、本多忠刻(ただとき)と再婚。一男一女を得た―が夫は急死、一男も夭折(ようせつ)。江戸城へ戻った。弟の家光は大歓迎、千姫は尼となって天樹院(てんじゅいん)と称し、大奥だけでなく表の男社会への干渉を次第に強めた。  彼女には気になる存在がいた。養女の千代だ。秀頼の娘だが、母は別な女性だ。しかし秀頼の子を産まなかった千姫は千代を実子以上に可愛がった。  大坂落城の際は、千代も生命を失う運命にあった。千姫は必死に父秀忠に嘆願し、千代は辛うじて助命された。しかし俗世とは縁を切られ鎌倉の東慶寺に尼として入れられた。天秀法泰(てんしゅうほうたい)が法号だ。幸多いとはいえないその後の人生を送りながらも、天樹院は天秀によく会った。政略結婚だったが天樹院は秀頼と仲がよかった。秀頼も天樹院を愛した。  (あの愛は本物だった)  秀頼亡き後も天樹院はよくそう偲(しの)んだ。  天秀は心がやさしい尼僧(にそう)だった。暴力をふるう夫から逃げてきた女性、舅(しゅうと)の虐待に耐え切れなくなった嫁などのよき相談相手となり、  「どうしても家に戻りたくない女性は、天秀さんが自費でひそかに養っています」  まめに天秀の消息を伝えにくる東慶寺の住職はそう語る。そして  「私の後は天秀さんに継いでもらうつもりです」  と言葉を添えた。天樹院は喜んだ。秀頼の忘れ形見が、そういう形(弱い者の味方)として、この世で活躍してくれることが天樹院にとって何よりも嬉しかったからだ。天樹院も会うたびに天秀に、  「弱い人の支えになってね」  と必ず声をかける。住職の話を聞くたびに天秀が自腹を切っている費用をそっと渡した。  「娘には内緒にしてくださいね」  心での声援は送っても過度の保護はするまい、と決めていた。寺への干渉になるからだ。ただ最近の天樹院は、  「行き所のない、弱い立場にある人々の収容施設が必要だ」と考えていた。天秀がひそかに行っている弱者庇護の話から得たヒントだった。このへんは、やはり一時期天下人(国政担当者)だった秀頼の妻(ファーストレディ)としての、責務感が残っているのだ。 東慶寺を幕府公認の駆け込み寺に  機会がきた。寛永20(1643)年、会津(福島県)の加藤家で、当主の明成(あきしげ)が重心の堀主水(もんど)と争うという事件が起きた。堀は家臣を引き連れて城から撤退し、城に向かって発砲した。江戸に向かい明成の暴挙を公表した。  怒った明成は主水の追伐を命じた。主水は高野山に逃げたが家族は置き捨てにされた。高野山は執拗な明成側の交渉に屈し、ついに主水を会津藩に渡した。明成は家族の捕縛を命じた。  主水の妻は子どもを連れて逃げ回っていたが、ついに窮した。このとき、  「鎌倉の東慶寺さんが、そういう駆け込みをかくまってくださる」  という話を聞いた。主水の妻はためらわずに東慶寺に駆け込んだ。対応したのは天秀で、寺の住職になっていた。  「大名家の争いにはかかわらないでください」  寺の人間の多くがそういったが、天秀は首を横に振った。  「大名の家臣の家族も同じです。救いましょう」  毅然としてそう告げた。すぐ江戸城に向かった。天樹院は、竹橋御門の脇に住んでいた。会って訴えた。天樹院は、  「それでこそわが娘です」  と天秀の勇気を褒めた。そして、  「表(幕府)の問題にします」  と、この問題の表面化を約束した。  吟味が始まった。対決の結果、主水の主張が正しいことがわかった。加藤家は取り潰しになった。主水の家族は救われた。  このとき、天樹院はつちかった政治力をフルに発揮した。東慶寺に  「寺を駆け込み寺とする」  という「寺内法」を用意させ、幕府に公認させた。弟の将軍家光をはじめ、幕府の首脳部が賛同したためだ。  天樹院と天秀は心から喜んだ。  「母上のおかげです」  と天秀。  「あなたのがんばりの成果です」  と天樹院。  数としてはわずかだったが、泣き寝入り≠ノされていた江戸時代の弱い立場の人々≠ェ救われた。そしてそのたびに、同じ人間を苦しめていた悪しき人間の行いが、世の中に告げられた。  天秀はこの2年後に死んだ。36歳。天樹院はそれよりさらに生きて、21年後の寛文6(1666)年に死んだ。69歳。  東慶寺はその後、「縁切寺」、「駆け込み寺」と呼ばれ、名を高めた。 【P22-29】 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 編集部  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、労働者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  2021(令和3)年4月1日より改正高年齢者雇用安定法が施行され、各企業には70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が課せられることになり、高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、能力開発、健康・安全対策などの仕組みづくりがますます重要となります。  しかしながら、産業ごとに労働力人口の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには大きな差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、当機構では「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての留意点や好事例などからなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用を一層効果的に推進することを目的としたものです。この事業は、毎年1月に高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募しており、本事業の目的に合致した産業別団体を複数選定し、当機構と契約(2年以内の委託事業)を締結したうえで取り組んでいただいています。 ガイドラインの策定  ガイドライン策定への具体的な流れは、産業別団体内に大学教授などの学識経験者を座長として、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者などで構成される高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置し、各年度4回程度委員会を開催します。  初年度の委員会では、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。高齢者雇用における課題は何かを検討し、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケートや先進的な企業へのヒアリング調査を実施します。  2年度目は、初年度の調査結果で浮彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点を主な課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実践的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生 ・作業施設等の改善  ガイドラインは高齢者雇用への理解を深め、活用してもらえるよう会員企業に配付します。  さらに、普及・啓発活動として会員企業に対し高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに企業への浸透をうながしています。  実際にガイドラインを読んだ会員企業へのアンケート調査結果では、9割程の会員企業から「ガイドラインは役に立った」、または「役に立ちそうだ」と回答があり、「業界における高齢者雇用の動向を知ることができた」、「高齢者雇用の課題や解決方法がわかった」、「高齢者を雇用する必要性がわかった」など、好評をいただいています。 業種を超えたガイドラインの活用  現在までに建設、製造、運輸、サービス、ITなど、多岐にわたる分野で、90業種がこの事業に取り組んでいます。当機構ホームページでは、これまでに策定したガイドラインをはじめ、高齢者雇用の推進に役立つワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くありますので、ぜひご覧いただき高齢者雇用の取組みにお役立てください。以下、2020年度に策定したガイドラインを紹介します。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 機構委託 各産業別団体 ■ガイドラインの策定 ○○○業高齢者雇用の手引き ■高齢者雇用の普及・啓発 高齢者雇用推進セミナー 会員企業 ■各種改善活動の実施 Plan Do Check Action 高齢者の活用・戦力化 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」一覧 (2017〜2019年に策定したガイドライン) 砂利採取業 砂利採取業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜多世代共働による職場づくり〜(2018年) 建設業 建設揚重業 高齢者の活躍に向けたガイドブック 〜クレーンオペレーターがいつまでも活躍するために〜(2017年) 製造業 フルードパワー産業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜シニアの活力を未来のものづくりに活かすために〜(2017年) シニア社員が活躍できるキャリアのつくり方 〜電経連版キャリア再設計研修プログラムの提案〜(2018年) 工作機器製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜次世代に伝えたい、もの創りにかける「心」と「技」〜(2019年) 電子デバイス産業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア期の"使えるスキル"発見研修プログラム開発手順〜(2019年) 中小型造船業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜造船業界のさらなる発展のために〜(2019年) 情報通信業 情報サービス産業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜未来を見据え、活躍し続けられるIT人材を育成〜(2018年) 運輸業 添乗サービス業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア添乗員の職域拡大を目指して〜(2019年) 生活関連サービス業、娯楽業 旅行業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア人材の活躍に向けて〜(2018年) 結婚相手紹介サービス業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜結婚相手紹介サービス業のシニア人材活躍サポートマニュアル〜(2018年) ゴルフ場業 高齢者活躍に向けたガイドライン 〜ヘルスケア産業としての健康な高齢者雇用を目指して〜(2019年) 医療福祉業 有料老人ホーム事業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜高齢者の持ち味を活かしていくために〜(2017年) サービス業(他に分類されないもの) 職業紹介業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜活躍するシニア5つのタイプ〜シニア人材が企業を強くする〜(2017年) ※(  )内の数字はガイドライン策定年度を表します 1 一般社団法人 日本工業炉協会 工業炉製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍を企業成長に生かす〜  日本の人口が2011(平成23)年から減少傾向に転じるなかで、少子高齢化と人手不足はさらに進展し、安定的な労働力の確保は工業炉製造業における重要課題の一つになっている。この課題を解決するには、これからの工業炉製造業の中核をになう若手社員の確保を進める一方で、現在、工業炉製造業に従事している従業員が安心して活躍できる場の整備・拡充を図ること、そして長年の職業人生を通して、蓄積してきた技術や経験、知識を持つ高齢者のさらなる活用が不可欠である。  業界ではすでに高齢者のさらなる活用を図るべく、定年を迎えた高齢者を引き続き継続雇用したり、定年年齢を引き上げたりするなどの取組みを進めている企業がある。こうした取組みは一定の成果を上げていることからも、業界全体として高齢者の活躍の場を考えていくことが求められている。  本ガイドラインは、高齢者雇用の実態を把握するために行ったアンケート調査やインタビュー調査の結果をふまえて、工業炉製造業における高齢者活用のあり方を取りまとめたものである。  「T 工業炉製造業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、単品オーダーメイド生産や利用年数の長さが特徴的な工業炉の製造において、特に設計をになう技術者を中心人材として重要視する傾向が強いこと、そして高齢者の活躍が求められる背景などを整理し、高齢者の活躍推進に向けた考え方をまとめている。  「U 工業炉製造業における高齢者の活躍推進のための指針」では、工業炉製造業高齢者雇用推進委員会での検討結果をもとに、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべき課題や方向を、次の五つの指針にまとめて紹介している。指針ごとに関係するアンケートの統計データと、他業種の対策事例もあわせて確認でき参考になる。 ●指針1 企業における高齢者活用に対する認識の転換 ●指針2 評価に基づく処遇や賃金整備を通じたモチベーション向上の推進 ●指針3 高齢者にとって、より働きやすい職場の環境整備 ●指針4 組織内への知識・スキル・ノウハウ等の伝承・共有化の推進 ●指針5 若手社員を含めた組織内での能力開発の推進  「V 工業炉製造業における高齢者雇用に関する調査結果」では、同業界における高齢者雇用の現状と課題について、就労の現状や高齢期における就労に対する意識、そして各社の取組みを多面的に把握するために、工業炉製造業高齢者雇用推進委員会が日本工業炉協会会員企業を対象に2019(令和元)年度に実施したアンケート調査結果の概要を紹介している。  巻末には「参考資料」として、高齢者雇用に関する情報一覧を示し、運用上の課題解決に向けて相談ができる関係機関の紹介や高齢者雇用をめぐる今後の政府方針、在職老齢年金と高年齢雇用継続給付の仕組みについて説明している。 一般社団法人 日本工業炉協会 連絡先: 東京都千代田区岩本町3―2―10 SN岩本町ビル4階 TEL:03―3861―0561 FAX:03―3861―7445 HP:http://www.jifma.or.jp/ 2 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 情報サービス業(情報子会社等)におけるシニア人材活用に関するガイドライン  一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の会員企業のなかでも、主に事業会社のIT業務を専門的に担当するために設立された子会社群は「情報子会社」と呼ばれるが、これらの企業の多くは、企業のIT化が本格的に始まった1980〜1990年代に設立され、設立当時に入社した人材がいままさに、シニア人材として活躍し始めている状況にある。今後も拡大が続くIT需要に対応するためには、豊富な経験やノウハウを有するシニア人材に長く活躍してもらうことが極めて重要である。  同ガイドラインは、多くの情報子会社において経験豊富なシニア人材がその経験やノウハウ・スキルを存分に活かして、今後より一層活躍してもらえるように策定されたものだ。  本編の前には、「本ガイドラインの対象読者」である「経営層・人事担当者」、「現場のマネージャー」、「シニア人材としての活躍を目指す方」の各対象者が簡単に索引を引くことができるインデックスページを設けているため、利用しやすくなっている。  「第1章 情報子会社におけるシニア人材活用の重要性」では、シニア人材の活躍に向けて、日本におけるIT市場とIT人材の将来動向を概観する。  「第2章 情報子会社におけるシニア人材活用の実態」では、まず「1 情報子会社の危機意識と人事制度の実態」と題して、本ガイドラインの策定のために実施した調査結果に基づき、情報子会社におけるシニア人材活用の実態と課題について統計データを紹介している。次に「2 情報子会社におけるシニア人材の担当業務」では、人事制度や施策に続き、情報子会社におけるシニア人材の担当業務についての調査結果を紹介している。  「3 情報子会社におけるシニア人材活用に向けた課題」では、右記の調査結果をふまえ、現場で活躍し続けるためのシニア人材の課題について、情報子会社(企業)からの視点と、シニア人材(個人)からの二つの視点から考察。シニア人材になる前に取り組むべき課題などを解説している。  「第3章 情報子会社におけるシニア人材活用のさらなる推進に向けて」では、親会社(事業会社)やグループ会社のためのIT業務を担当する「情報子会社」の特性のほか、それらの特性に基づくシニア人材活用のポイントを紹介している。インタビュー調査などの結果から把握した各社の取組み事例とともに、取組みの指針を提示している。  「第4章 さらなる活躍を目指すシニア人材に向けて」では、シニア人材として現在活躍中の方へのインタビューに基づく活躍事例と、アンケート調査に寄せられた先輩シニア人材からのメッセージを紹介している。  巻末には「参考資料 シニア人材に関する各種制度の紹介」を掲載し、日本の少子高齢化の進展と政府の取組み、年金制度の概要について解説。高年齢者雇用の推進に向けた公的支援制度について参考にできる。 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会 連絡先:東京都中央区日本橋堀留町2―4―3 日本橋堀留町2丁目ビル8階 TEL:03― 3249―4101 HP:https://juas.or.jp/ 3 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会 ハイヤー・タクシー業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜公共交通機関として安全・安心輸送のために〜  タクシー業界では、次のような要因からドライバー不足が慢性化している。 @昭和後期以降に採用されたドライバーが数年前から定年退職を迎えている。 A普通第二種運転免許取得者が減少している。 B若者の就労ニーズが多様化しており、自動車の運転免許を取得しない若者が増加している。 CIT産業など最近発展している業種に若者の就職志向が傾いている。  このような現状において、タクシー事業者が地域に密着した公共交通機関としてのサービスを維持するためには、若者や女性の採用と定着を促進し、ドライバー不足に対応することはもちろん、業務内容を熟知し新たな教育・実習の必要のない、定年後の高齢者の活用とその長期的な活躍についても、現役正社員とのバランスを取りつつ推進していかなくてはならない。  同ガイドラインは、今後の65歳以上のドライバーの雇用について、その活躍を視野に入れつつも、労務管理にも役立つように、ハイヤー・タクシー業の高齢者雇用の現状および今後の課題解決策などをふまえて検討した結果を取りまとめたものである。  「T 高齢者雇用の必要性とその背景について」では、ドライバー不足に直面する業界の現況を示し、高齢者の積極的な活用の必要性について説明している。  「U タクシー業における高齢者雇用の現状について」では、年齢別運転者証公付状況からみた高齢者雇用の状況について、2017(平成29)年と2020(令和2)年の集計データを比較。アンケート調査結果から導き出した高齢者雇用の概要について考察している。グラフや表を大きく掲載し、ポイントはイラストを用いて解説するなど、読みやすく理解しやすい。  「V 高齢ドライバーの雇用の良い点、強み等について」では、アンケート調査から浮かび上がった高齢ドライバーの雇用におけるメリットを7点にまとめている。  「W 高齢ドライバーの雇用上の不安と留意点について」では、事業主側からみた雇用上の不安と留意点を紹介している。  「X 加齢に伴う心身機能の変化に対する健康管理等の対策について」では、高齢ドライバーの雇用に関する不安で最も多い健康問題や、交通事故防止の観点から、健康管理における各社の取組みについて多数の事例を紹介している。  「Y 高齢ドライバーに配慮した交通安全対策について」では、各社が取り組んでいる運転にあたっての注意喚起、安全運転教育、ヒヤリハット事例の報告実施、車両設備の安全化、IT機器などへの対応を紹介。具体的な意見、取組み事例を掲載している。  「Z 65歳以降も元気で、できるだけ長く働き続け、公共交通機関としての責任感を持って仕事をするために(まとめ)」では、高齢者の体力維持と健康確保、交通事故防止対策、運転技能・技術への対策、コミュニケーションの維持について、賃金と年金の関係に配慮した勤務時間や賃金の設定の5点について、提言している。 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会 連絡先: 東京都千代田区九段南4―8―13 自動車会館3階 TEL:03―3239―1531 FAX:03―3239―1619 HP:http://www.taxi-japan.or.jp/ 4 一般社団法人 マンション管理業協会 マンション管理業 高齢者活躍に向けたガイドライン  一般社団法人マンション管理業協会は、高齢者を含めた雇用の実態を把握するために、アンケート調査ならびにヒアリング調査を実施した。その結果、今後の従業員の不足感が現場従業員(管理員・清掃員)だけでなく、技術担当者や営業担当者、事務管理業務の担当者などにも広がっていることがわかった。また、高齢者雇用の推進だけでは人材不足を解消することがむずかしく、高齢者を含め多様な人材を確保していくことが喫緊の課題であることが明らかになったとしている。  同ガイドラインは、マンション管理業界における高齢者を含む多様な人材の活躍のあり方を検討して取りまとめたものである。  「第1章 マンション管理業を取り巻く状況」では、はじめにマンション管理業の主な業務内容・職種を「事務管理業務」、「管理員業務」、「清掃業務」、「建物・設備管理業務」の四つに整理し、次にマンション管理業における高齢者をはじめとする多様な人材のさらなる活躍が求められている背景、そして業界内の従業員の過不足の状況などを整理している。  「第2章 マンション管理業における多様な人材の活躍に向けた視点」では、マンション管理業において多様な人材がさらに活躍していくための三つのポイントとして、第一に、マンション管理業全体として急務になっている人材確保の方針をまとめている。第二に、受託マンションの現場に勤務する管理員・清掃員などと、本社・支社・営業所に勤務する従業員の人材確保と定着に向けた取組み方策は、別々に取り組むことが有効と示し、考えられるポイントを整理している。第三に、地域や各社の取組みの違いにより、外部環境や人材活用の方法が変わることへの留意を求めている。人手不足が深刻化するマンション管理会社各社においては、従来から高齢者が管理業務の主要なにない手であるが、さらなる活躍を推進するとともに、女性や氷河期世代、外国人などの多様な人材の確保・定着を図ることをうながしている。  「第3章 マンション管理業における多様な人材の活躍に向けた取組方策」では、アンケート・ヒアリング調査の結果をもとに、「採用活動の工夫の仕方」、「業務のノウハウを形式知化」、「勤務条件・業務内容・配置の見直し」、「できるだけ長く働き続けるための雇用の仕組み」など第2章で示したポイントについて解説。先進的な取組みを実施するマンション管理会社の「各社の取組例」、現在活躍している高齢者の「高齢従業員からの声」などを織り交ぜて紹介している。  「第4章 参考情報」では、マンション管理業における高齢者雇用の現状をアンケート調査の結果から導き出すほか、65歳超雇用推進助成金をはじめ、特定求職者雇用開発助成金など雇用関係助成金に関する制度の概要、また、よりよい人材の確保に向けた求人方法に関する参考情報を掲載している。 一般社団法人 マンション管理業協会 連絡先:東京都港区虎ノ門1―13―3 虎ノ門東洋共同ビル2階 TEL:03― 3500―2721 FAX:03 ― 3500―2722 HP:http://www.kanrikyo.or.jp/ 5 全日本葬祭業協同組合連合会 葬儀業における 高齢者活用推進のためのガイドライン 〜高齢者の活用による業務スタイルの変化への対応〜  新型コロナウイルス感染症の流行は、葬儀業にかかわる人材が、社会に不可欠な「エッセンシャルワーカー(人々が生活するうえで欠かせない業務に従事する労働者)」であることを改めて確認する機会となった。中長期的に見れば、働き手が不足するなかで、人材の確保は事業の継続・発展を左右する経営課題である。  同ガイドラインは、「60歳以降も働きたい人たちについて、働くことができる環境を提供する可能性を追求し、企業経営の面からもメリットを追求する」ことを意識した内容で構成。各社の経営者や人事担当者が手引きとして利用可能なように、図表を多く用いて、業界内で実際に取り組んでいる事例や工夫などを豊富に紹介している。  本編の前に「検索ガイド」が設けられており、「葬儀業で高齢者を雇うことのメリットを知りたい」、「葬儀業で活躍している高齢者はどんな人たちなのかを知りたい」といった各企業が置かれた状況や抱える悩みから索引が可能となっている。  「はじめに」では、本事業の背景・目的のほか、本ガイドラインの構成、使い方を紹介している。  「T章 葬儀業で高齢者を雇うことの意義・メリット」では、同業界で高齢者を雇うことの意義・メリットについて六つのポイントにまとめて示している。前半三つは、従来から指摘されてきた高齢者活用の意義・メリット、後半三つは、これからの時代に必要となる意義・メリットとなっている。葬儀業界においてこれらの意義・メリットを享受できるよう取り組むことをうながしている。  「U章 葬儀業を取り巻く経済社会環境」では、高齢者の活用が求められる背景を理解できるよう、高齢化進展のデータ、将来予測など、統計データをもとに葬儀業に与える影響について解説するとともに、働き方改革関連法が葬儀業に及ぼす影響を予測している。  「V章 葬儀業における高齢者活用の方策」では、業界を取り巻く社会背景と、現状の高齢者活用の実態をふまえ、今後は一層の高齢者の活用を図る必要があると提言。アンケートやヒアリング調査結果で把握した事業者および従業員の声を用いて、高齢者を活用するためのヒントを紹介していく。葬儀業において高齢者が活躍しやすい具体的な業務を取り上げて高齢者活用のヒントを示すほか、高齢者の活躍を経営パフォーマンスにつなげるための企業の取組みとして、各社の好事例を紹介。今後の葬儀業における発展的な高齢者活用に向けて、新たに業界として推進していくべきポイントを整理している。  「資料編」では、アンケート調査結果から、葬儀業における高齢者雇用に関する制度の導入状況や高齢者活用に関する実態を抜粋しているほか、高齢者雇用にかかわる法制度・支援に関する情報、求人方法に関する参考情報などを掲載している。 全日本葬祭業協同組合連合会 連絡先:東京都港区港南2―4―12 港南YKビル4階 TEL:03―5769―8701 FAX:03―5769―8702 HP:https://www.zensoren.or.jp/ 6 公益社団法人 全日本病院協会 病院における高齢医療従事者の雇用・働き方ハンドブック  公益社団法人全日本病院協会は、2012(平成24)年に「病院経営に必要な高齢医療従事者の活用ガイドライン」を発行し、高齢化に対応した持続可能な人的資源管理システムが必要なことを啓発してきた。そして2019(令和元)年度から2年間にわたり、再度の調査、聞き取りなどを通じて、業務における身体的負担の大きさが、職員、特に看護、看護補助業務にかかわる職員の継続雇用に与える影響が明らかになった。  本ハンドブックは現場の課題をふまえつつ、先進事例や最新の技術を活用しながら継続的な就労を可能とするため、実現可能なアイデアとそれに必要な枠組みについて取りまとめたものである。  「1 高齢者雇用の推進が求められる背景」では、少子高齢社会、政府の高齢者雇用対策の概要、医療業特有の要因、ロボット・ICT普及など、高齢者雇用を取り巻く環境の変化について、医療施設の職員全般について言及し、高齢者の就業促進が求められる背景を概観している。  「2 高齢者雇用の現状」と題した2章以降は、看護師・看護補助職を中心に解説。医療業における看護・介護分野の人材不足は積年の課題であり、少子高齢化が加速していくなかで、看護職・看護補助職が高齢になっても引き続き病院で働き続けるため、または退職者の職場復帰のための方策について紹介している。看護師のセカンドキャリアにおける活躍を目的として、職場環境整備を行っている病院の事例紹介も参考になる。  「3 装着型医療支援ロボットの活用」では、高齢者雇用の推進により人材不足の対応、および生産性の向上が期待できるとし、より一層生産性を向上させるために、ロボット・ICTの活用が有効と考察。装着型医療支援ロボットの導入・運用を通して、勤続年数の長い看護師・看護補助職・リハビリ職を対象に、中腰などの作業における身体負荷の変化についてアンケートとヒアリングを行い、調査結果を紹介。装着型ロボットの効果的な活用方法を紹介している。  「4 アンケート調査の結果概要」では、病院における高齢者雇用の現状や課題を明らかにすることを目的として実施したアンケート調査および分析結果を紹介している。具体的には、看護職などの定年制、継続雇用制度、退職年齢といった高齢者雇用の状況、および看護職・看護補助職の身体的負荷の状況、高齢者雇用に関する課題について調査している。  「5 参考資料」には、医療業高齢者雇用推進委員の安永好宏氏による「医療分野での装着型ロボットの開発と活躍」をテーマにした寄稿文を掲載。中高年者や高齢者の活用を促進する場合の安全な職場整備のために、装着型ロボットを活用する有効性について示唆している。そのほか、医療・介護分野でのロボット活用における政府の取組みや、高齢者雇用に関連する法律、法改正の概要などを取り上げている。 公益社団法人 全日本病院協会 連絡先: 東京都千代田区神田猿楽町2―8―8 住友不動産猿楽町ビル7階 TEL:03―5283―7441 FAX:03―5283―7444 HP:https://www.ajha.or.jp/ 【P30-33】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第105回 埼玉県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 自由を尊重した職場環境づくりで定年後も働き続けたい会社をめざす 企業プロフィール 日生(にっせい)工業株式会社(埼玉県児玉郡) ▲創業 1965(昭和40)年 ▲業種 自動車部品製造、販売業 ▲従業員数 46人 (60歳以上男女内訳) 男性(5人)、女性(0人) (年齢内訳) 60〜64歳 3人(6.5%) 65〜69歳 1人(2.2%) 70歳以上 1人(2.2%) ▲定年・継続雇用制度 定年年齢60歳。平均年齢は44歳。希望者全員を63歳まで、会社の基準該当者を65歳まで継続雇用  埼玉県は関東地方の中央部から西部に位置する内陸県です。秩父山系を源とする荒川と、坂東太郎≠フ異名を持ち日本一の流域面積を有する利根川が流れています。西部に山々が連なり、東にいくにつれて丘陵、台地、低地とだんだんと低くなっていく地勢です。気候は、夏は蒸し暑く、冬は乾燥した北西の季節風が吹くのが特徴です。全国的に見て快晴日数が多く、暮らしやすい気候といえます。  埼玉支部高齢・障害者業務課の柳瀬(やなせ)宏樹課長は、県の産業について次のように説明します。  「東京に本社がある企業の支店や工場などが多くある一方で、関東圏の流通基地としての運輸・倉庫産業やそれらを支えるパッケージ産業、大手メーカーの工場を支える部品製造業が多く所在しています。各市には精密機械や加工食品などを扱う工業団地も散在しており、JAを中核として強い地盤と経済力を持つ農業関連事業、清酒業があります。ほかにも歴史ある金融機関、小売産業も多いのが特徴です。概して、南部は東京との関連が深く、北部や西部は独自の発展を遂げた歴史が深い企業が多いようです。課題としては高齢化、人手不足があります。少子高齢化の流れに加えて『東京都との賃金格差』と『若者の地元離れ』が要因と考えられます。こうした課題は前述の運輸・倉庫業に加え、特別養護老人ホームや介護保健施設など医療・介護の事業所に顕著です」  同支部では事業所から、高齢者の就業意識の維持向上について、同一労働同一賃金の留意点、高齢者の人事評価、選択定年制についてなどの問合せが多く、これらに対して情報提供、助言を行い、 県内事業所の取組みを支援しています。  今回は、同支部で活躍するプランナー・小林秀宏さんの案内で「日生工業株式会社」を訪れました。 高付加価値の試作品、小ロット製品の受託生産  日生工業株式会社は、50年以上にわたり自動車産業向けの精密加工部品の製造を行っています。1965(昭和40)年に東京都千代田区において発足し、2018(平成30)年5月に現在の所在地である埼玉県児玉郡美里町に移転しました。6千坪におよぶ広大な敷地を擁ようする新社屋で、自然豊かな環境のもと、顧客のニーズに的確に応えるため高度な加工技術を研鑽さんし追求しています。  自動車部品のなかでも、加工技術・測定技術と もに高い技能が要求され、エンジン性能の決め手 となるクランクシャフト・カムシャフトの受託製 造が中心という日生工業。強みは少量生産ならで はの高い収益性にあります。大手自動車メーカー から直接依頼される試作品の製造、小ロット生産 に応え、次々と異なる製品をつくることで堅実に 業績を伸ばしてきました。  「当社は必要に応じて適切な設備投資を行い、品質保証体制を整えてお客さまから引き受けた多品種・少量部品の安定的な供給を実現してきました。お客さまからは『供給停止という不安から解放された』と高評価を得ています」と、同社常務取締役の加賀新一さんは話します。  近年は自動車産業が大きな変革期を迎えていることから、つちかった加工技術を応用し、航空宇宙産業や農業機器をはじめ、さまざまな産業機械の精密加工部品の製造を行いながら業務の領域を拡げています。 「同一労働同一賃金」への対応と同時に定年延長  同社の定年は60歳、希望者全員を63歳まで、会社の基準を満たす場合は65歳まで継続雇用していますが、2021(令和3)年4月から定年年齢を65歳とし、65歳以降に入社した従業員については70歳定年とする制度を導入予定です。定年以降は1年毎の契約更新とし、年齢上限なしの継続雇用になります。なお、60歳以降は定年年齢が選択可能で、以前と変わらない働き方を望む人はフルタイム勤務、プライベートを重視したい人は短時間勤務と働き方の選択も可能です。  定年制を改定する理由について加賀常務は「2021年4月からスタートする中小企業における同一労働同一賃金の適用に、どう対応するかというところから、あわせて定年制を見直すことにしました。もともと、いま会社を牽引している40代後半から50代前半の従業員が60歳を過ぎても会社に残ってもらえるような仕組みづくりが必要だと考えていたこともあります」と説明します。  2020年に初めて同社を訪れた小林プランナーは、同社の高齢者雇用の現状について次のように話します。  「いまのところ定年後の再雇用者はいませんが、これから10年後を見すえると、50代の従業員が定年退職を迎えます。そのとき、ノウハウの伝承がきちんとできるか、若手の技術者を育成できるか、中途採用で補充ができるか、といった懸念があったことと、直近で迫っている同一労働同一賃金のスタートにより、現在所属する非正規高齢従業員の処遇の見直しが必要であったこと、そうした懸念があるところにタイミングよく訪問しました。同一労働同一賃金について、賞与、手当、退職金を含めたアドバイスや提案をしたことで高齢者雇用制度の検討が進みました」 高齢従業員の卓越した技術に支えられる  現在働いている、60歳以上の高齢者は5人。彼らの働きぶりについて、佐野洋之製造部長は次のように話します。  「仕事をお願いするときには、こと細かに説明をしなくても何を求められているかをすぐ把握してもらえ、でき上がりにはほぼ問題がないので助かります。みなさんが技術色の強い経歴を持っているので、それを活かしながら当社での仕事に楽しんで取り組んでもらっているように思います」  さらに、「みなさん若手従業員とのコミュニケーションの取り方がうまく、穏やかです。若手の成長を楽しみにしているところがあり、上長に相談しづらい悩みを相談できる存在でもあるようです。以前、離職を考えている若手の相談にも乗ってもらっていました」と話し、今後も若手の相談相手となり、職場の潤滑油としての役割を期待しているとのことです。  今回は、週5日フルタイムで勤務し、会社の期待を背負って活躍している3人にお話を聞きました。 「自由で、人間関係がよい会社」と口を揃える  前田僖義(きよし)さん(74歳)は、2011年から10年間、円筒研削盤(えんとうけんさくばん)の機械を使った加工を担当しています。もともと日生工業の協力会社を経営していたことから、業務委託契約で働くことを会社から提案されました。働き方はほかの従業員と同じで、週5日フルタイムで出勤しています。  前田さんは、「見本に頼らず、自分の頭で考えて作業をする」ことをモットーに、創意工夫を重ねながら日々の仕事に臨んでいます。  「新しいことを考えると老けないですよ。自ら想像して考えるということを、若い人に強くすすめたいですね。この仕事が好きなので、一度も嫌だと思ったことはありません。業務以外の研究も可能で、自由にさせてもらっています。死ぬ前日までここで働きたいです」と笑顔で話します。  長塚(ながつか)秀昭さん(62歳)は、長年、生産設備メーカーで液晶パネルを組み立てる機械の設計に従事。60歳のときに、ハローワークを通じて日生工業に入社しました。仕上げグループに所属し、エンジンのシリンダーの仕上げを担当しています。  「1台のシリンダーは私にとって100個のうちの一つでも、お客さまにとってはかけがえのない一つだと思って、一つひとつ大切に仕事をすることを心がけています」  やりがいは、手仕上げの作業。やればやるほど、自分が上達していくことがわかるそうです。「それが日々積み重なっていることが嬉しい」と、静かに語る長塚さん。  納期を急(せ)かされず、期日が厳しいときには営業担当者もフォローしてくれるとのことで、だからこそしっかりやろうという気持ちがまた湧いてくるそうです。「この会社は人を大切にしてくれる会社です。動けなくなるまで働きたい」と締めくくりました。  柿境(かきさかい)泰(ひろし)さん(64歳)は、フルタイムのパートタイマーとして入社し、4カ月目を迎えたところです。会社を見学してみたところ、工場がきれいで、環境がよいと感じたことが入社の決め手だったそう。  仕上げグループに所属し、完成した製品をオイルで洗浄、梱包するまでを担当しています。手がけている製品は、重いものは20sもあり、これだけの重量物を傷つけずに取り扱うのは神経を使うのだといいます。  日生工業に入社する前は、部品加工一筋のエキスパート。「精密機械を取り扱うのはたいへんな仕事。いまの仕事も楽しいけれど、機会があればかつての経験を活かして、別の仕事にもチャレンジしてみたい」と話します。  また、「人間関係がよい会社」だと感じているそうで、さらにチームワークを高めるために、山登りやバーベキューなど、レクリエーションを提案してみたいと話してくれました。  最後に加賀常務は、「今後も従業員の自由を尊重し、定年後も長く働きたいと思ってもらえる会社にしていきたい」と抱負を語りました。 (取材・西村玲) 小林秀宏 プランナー (56 歳) アドバイザー・プランナー歴:3年 [小林プランナーから] 「企業を訪問する際には、会社の実情に合わせて、取り組みやすく、よりよい提案をするよう心がけています。高齢者雇用にかぎらず、人事労務全般において企業の抱える悩みや課題を聞き出し、自分の持っている経験や知識のなかから具体的な解決方法を探し出してアドバイスしています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆同課の柳瀬課長は、小林プランナーについて、「社会保険労務士としての豊富な知識・経験に加え、コンサルティングスキルを活かした相談・助言、特に『退職金・賃金制度』にかかわる課題のアドバイスは秀逸です。訪問を受けた事業所からは、高齢者雇用にかかわらず労務管理全般に関して、セカンドオピニオンとして非常に有益な助言、情報提供を受けたと、喜びの言葉が多く届いています。またゴルフの腕はセミプロ並みで、埼玉県社労士会の主催するゴルフコンペでは、いつもベスグロなど上位入賞しているスポーツマンでもあります」と話します。 ◆当課は浦和駅からバスで12分ほど。閑静な住宅街と主要国道に挟まれた小高い丘の上にあるため、4階でも体感的には高層階にあるような景色が広がり、西に富士山を望めます。埼玉スタジアム2にまるまるに002公園のすぐ近く。 ◆プランナー14人が在籍しています。2019年度は制度改善の相談・助言を323件行いました。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●埼玉支部高齢・障害者業務課 住所:埼玉県さいたま市緑区原山2-18-8 ポリテクセンター埼玉内 電話:048(813)1112 写真のキャプション 埼玉県児玉郡 6千坪におよぶ敷地に建つ社屋 加賀新一常務取締役 熟練の技術で研削機械を操る前田僖義さん 丁寧(ていねい)に手で仕上げ作業をする長塚秀昭さん 注意深く完成品を洗浄する柿境泰さん 【P34-37】 高齢社員のための安全職場づくり −エイジフレンドリーな職場をつくる− 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域長 高木元也  生涯現役時代を迎え、60歳、65歳を超えて、より長く活躍してもらうためには、企業が職場における安心・安全を確保し、高齢社員が働きやすい職場環境を整えることが欠かせません。本連載では、高齢者の特性を考慮したエイジフレンドリー≠ネ職場の実現方法について、職場の安全管理に詳しい高木元也先生が解説します。 第3回 高齢者の労働災害防止対策について(ハード対策とソフト対策) 1 はじめに  前回は、2020(令和2)年3月、厚生労働省が発表した「エイジフレンドリーガイドライン(高齢者の健康と安全確保のためのガイドライン)」の概要を紹介しました。そのなかで、事業者は、事業場に潜む危険な芽を摘むため、リスクアセスメントを実施し、優先的にリスク低減対策を講じるべきものを定め、それを基に、心身機能の低下を補う設備・装置の導入(主にハード面の対策)、および高齢者の特性を考慮した作業管理(主としてソフト面の対策)が求められています。本稿ではそれらの具体例を紹介します。 2 ハード対策  心身機能の低下を補うハード対策により、職場環境を改善します。例えば、脚筋力の低下による転倒災害を防止するためには、つまずくものがないように通路を整えることが必要ですが、その通路は、若者にとってもつまずかないものとなります。このように、心身機能の低下を補うハード対策のほとんどは、高齢者だけではなく、そこで働くすべての人々にとって被災しにくい職場環境となります。  具体的なハード対策は35・36頁の通りです。 3 ソフト対策  ハード対策とともに、高齢者の特性を考慮した作業管理などのソフト対策が必要になります。ポイントは以下の通りです。 @勤務形態、勤務時間の工夫  筋力や運動能力は加齢とともに低下し、個人差が大きくなります。年齢だけでなく、個々人の特徴を把握して作業内容や作業時間などの調整を行います。短時間勤務、隔日勤務、交替制勤務などの導入も検討します。  加齢とともに、昼から夜、あるいは夜から昼といった勤務シフトの変更に体を慣らすことがむずかしくなるため、夜勤について十分な配慮を行います。図表2は、老人福祉施設における夜勤の勤務時間短縮の例です。  疲労感は、作業内容だけではなく、休憩の間隔や長さによっても大きく変わるため、適度な休憩を取れるようにします。  そのほか、加齢とともに、高血圧や高脂血症など、何らかの疾患を持つ人が増え、定期的に病院に行くことも多くなりますので、通院の時間を取りやすくします。 Aゆとりのある作業スピード  高齢者は若年者に比べ、時間に追われるような仕事には慣れにくく、またミスもしやすいことが知られています。作業者が自主的に作業負荷をコントロールできるようにします。 B無理のない作業姿勢  加齢による筋力、関節の動き、柔軟性などの低下は避けられません。身体の曲げ伸ばしやねじれ姿勢など不自然な作業姿勢を減らします。また平衡感覚も低下するのでバランス感覚も落ち、身体の安定がとりにくくなります。このため長時間の立位作業を減らします。  そのほか、加齢により関節の動く範囲が狭くなり、無理に手を伸ばしてバランスを崩すこともありますので、身体をねじる作業を減らすようにします。 C注意力、集中力などを必要とする作業への配慮  監視作業や製品検査など高度な集中が必要な作業は、例えば一連の作業時間が長くならないように、ローテーションによって作業を分担します。注意力や判断力の低下による災害を避けるためには、複数の作業を同時進行させないよう配慮します。また、反応動作が低下してきた高齢者には、素早い判断・行動を要する作業を少なくするよう配慮します。高齢者は若年者に比べて、仕事の量や内容の急な変更に適応しにくいため、作業の進み具合を自ら確認できるようにします。 D腰への負担軽減  高齢者の筋力の低下に応じ作業内容を変えたえり、補助具を用いたりするなどの配慮をします。見た目以上に重いものを急に持ち上げるような作業は腰痛に直結します。ソフト対策としては数値や色彩などで具体的に重さがわかるようにします。 E身体負荷の大きな作業への対応  身体負荷が大きな作業では、職場で疲労回復を図れるよう快適に休憩できる十分な広さのスペースを設けます。 4 おわりに  以上、今回は、エイジフレンドリーガイドラインに基づき、事業者に求められる心身機能の低下を補うハード対策、ソフト対策の具体例を紹介しました。次回からは、労働災害の種類別に、その実態、効果的な労働災害防止対策などについて詳しくみていきます。 ※ 前回までの内容は、ホームページでご覧になれます。 エルダー 高齢社員のための安全職場づくり 検索 ハード対策のポイント @照度の確保  暗い場所で視力が著しく低下(低照度下視力)する高齢者には、職場の照度の確保が重要です。 A階段対策など  高齢者は、バランス感覚の低下、筋力の低下、とっさにうまく動けないことなどにより、階段から転落しやすく、ちょっとした段差につまずきやすくなります。  階段には手すりをつけ、たとえバランスを崩しても、それにつかまることにより転落を防止し、わずかな段差も解消するなど、つまずくものを除去する対策が効果的です。 Bすべり防止対策 a 床材  小売業などでは、新店舗の設計で光沢があり見栄えがよい床材が採用されがちですが、そうした床材はすべりやすく、転倒災害が多発している事例が見受けられます。対策には、光沢をおさえたすべりにくい床材の採用が求められます。 b 防滑靴  すべりによる転倒災害防止には、耐滑性にすぐれた靴の着用が有効です。事業者が労働者にそのような靴を支給し、着用を徹底することが求められます。 c 床の水・油の除去  水に濡れた床、油のこぼれた床をそのままにせず、すぐにそれらをふき取ることが重要です。  また、機械清掃ではどうしてもふき残し箇所が出てきます。このため、機械清掃時にふき残しがないかチェックし、見つけたらすぐにモップなどで拭き取るようにします。 C墜落制止用器具等の着用  墜落防護措置のない高所作業では、事業者は、労働者に墜落制止用器具を使用することを指示し、労働者に使用を義務づけます。 D安全標識などの掲示  工学的対策などリスク低減効果の高い対策を講じることがむずかしい危険箇所については、安全標識、トラテープなどを貼付し注意喚起を行います。 E警報音などの対策  高音域の音が聞き取りにくい高齢者には、中低音域の警報音、パトライトの点滅などにより警告・注意喚起を行います。これは、高齢者特有の対策といえます。 F介護作業などへの対応  介助者の腰痛は非常に多く、腰痛防止にはリフト、スライディングシート、移乗支援機器などを導入します。 G重量物取扱い対策  過度に重い物を持ち上げ腰痛になることを防ぐため、重量物の取扱いを抑制します。  また、柔軟性が低下している高齢者には、腰、背中などへの負荷の少ない作業姿勢をとることや、身体をかがめる姿勢、ねじる姿勢にならないようにするため、作業台の高さや、作業対象物の配置を改善します。  重量物を持ち上げる作業での負荷軽減のため、身体機能の補助機器(パワーアシストスーツなど)の装着も推奨されます。 H熱中症対策  熱中症災害は、高齢者の発生率が高く、その対策は重要です。涼しい休憩場所を整備し、そこに十分な水分、塩分がとれるような飲み物を備えます。また、通気性のよい服装の着用も推奨されます。  熱中症の初期症状を把握するため、脈拍数、体温などが計測できるウェアラブルデバイスなどのIoT機器の利用が推奨されます。しかし、熱中症の発症を正確につかむために必要な深部体温(身体の内部の温度)は計測できませんので、あくまでも初期症状(熱中症の疑いがあるかどうか)を見つけるために活用します。 I情報機器作業への対応  パソコンやタブレットを用いた情報機器作業については、厚生労働省から「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(図表1)が示されています。ハード対策としては、ディスプレイの明るさ、情報機器・机・椅子の選定、メガネの用意などがあげられます。 図表1 「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の枠組み 作業環境管理 情報機器作業を行う環境の整備方法について説明しています。 (例:ディスプレイの明るさ、情報機器や机・椅子の選び方) 作業管理 情報機器作業の方法について説明しています。 (例:1日の作業時間、休憩の取り方、望ましい姿勢) 健康管理 情報機器作業者の健康を守るための措置について説明しています。 (例:健康診断、職場体操) 労働衛生教育 上記の対策の目的や方法について、作業者や管理者に理解してもらうための教育について説明しています。 出典:厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」リーフレット 図表2 夜勤の勤務時間見直しによる業務分散の例 16:30 離床介助 夕食介助 臥床(がしょう)介助 21:30 夜間排泄介助 体位変換 離床介助 朝食介助 9:30 見直し前 日勤16:30まで 夜勤16:30から9:30まで 日勤9:30から 見直し後 日勤16:30まで 夕勤16:30から21:30 夜勤21:30から9:30まで 日勤9:30から 出典:厚生労働省「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」パンフレットより抜粋 【P38-41】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第34回 部門閉鎖と整理解雇、人事考課に基づく降格 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 部門閉鎖により整理解雇を行わざるを得ないときの留意点について知りたい  経営状況悪化にともない、事業部門を一つ閉鎖することを予定しています。部門閉鎖とあわせて整理解雇を実施しなければ、事業継続はむずかしいと考えているのですが、部門に所属する従業員を解雇することは可能でしょうか。 A  判例上、整理解雇の4要件(要素)が確立しており、それらの要件に則した検討が必要となります。また、部門に所属する従業員全員を解雇するためには、人員削減の必要性が高く、解雇回避努力を尽くしたうえでなければなりません。 1 整理解雇の4要件(要素)  労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。この規定は、経営上の理由により、整理解雇する場合であっても適用されるものと考えられています。  整理解雇における、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を判断するにあたっては、四つの要件(要素)を考慮して判断されることが一般的となっています。@人員削減の必要性、A解雇回避努力、B人選の合理性、C手続きの妥当性が、四つの要件(要素)として考慮されます。本稿では、これらがいかなる内容を意味しているのか整理したうえで、実際の裁判例を紹介していきたいと思います。 2 人員削減の必要性  かつては、人員削減をしなければ企業存続の危機に瀕する状況にあることを求めるような時代もありましたが、近年では、そのような差し迫った状況であることまで求めるものではなく、企業の運営上合理的な判断としてやむを得ないものと評価されるものであれば、基本的には経営者の判断が尊重される傾向があるといわれています。  とはいえ、人員削減の必要性については、具体的な根拠をもって示さなければ、客観的かつ合理的な理由があるとは評価されません。  人員削減を行う一方で、新規採用を行っているような場合や、経営上赤字ではないような状況においては、人員削減の必要性は否定されることが多いと考えられます。  後述Bの「解雇回避努力」とも関連しますが、裁判所においては、当該事業部門の人数が少数である場合などには、解雇以外の選択肢をとることができなかったとは思われないといった心証を開示されることもありますので、対象人数が少ない場合には、人員削減以外の方法がとれない理由も重要になります。  一例として、職種限定がなされていることから異動などの選択肢が取れないことなどが考えられますが、その場合でも、合意による異動の打診などは検討することが適切でしょう。 3 解雇回避努力  できるかぎり、解雇以外の方法で、企業経営を立て直すことができないか検討することが、解雇回避努力の要素となります。  解雇によって経営の危機的状況などを回避することがねらいとしてあるわけですが、その前に残業代の抑制、余剰人員の出向や配転、希望退職者の募集、退職勧奨による人員削減、役員報酬の削減などが一般的な解雇回避努力の例としてあげられます。  どの企業においても検討することが必要となることで比較的多いのは、希望退職者の募集や退職勧奨の実施です。解雇回避努力の一環として希望退職者の募集や退職勧奨を実施することは、必然的に整理解雇の必要性の説明内容や、どのような理由でだれを選択するのかということを検討することにもつながるため、後述Cの「人選の合理性や手続きの妥当性」にも関連する事項であり、しっかりと整理解雇の要件(要素)を検討するためにも、希望退職者の候補などを慎重に検討すべきでしょう。 4 人選の合理性と手続きの妥当性  人選の合理性を判断するにあたっては、例えば、過年度の勤務成績が低いものを選択することや、勤続年数、労働者の生活への影響の大きさなどをふまえて決定することが考えられます。万能の基準を想定することはできず、会社の雇用している従業員の人数や年齢、家族構成、勤続年数などの構成をふまえて、検討する必要があります。  比較的共通しやすい要素があるとすれば、人事考課上の評価や勤務成績といったものがありますが、人事考課や勤務成績の基準が客観的ではなく主観的なものである場合や、評価基準が不合理な場合にはそれに依拠することが否定される可能性があります。したがって、人事考課や勤務成績についても定量的な要素により客観性が保たれていることを留意すべきでしょう。  なお、国籍、信条、社会的身分、性別、婚姻・妊娠・出産、育児・介護、労働組合員であることなどを人選の基準に加えることは、法律上禁止されている差別的取扱いになるため許されません。  手続きとして想定されているのは、労働協約や就業規則の根拠に協議条項がある場合には、協議を前置することなどが典型的です。ただし、そのような根拠となる規定がない場合においても、誠実に協議することが求められる傾向があることから、根拠の有無にかかわらず、労働組合や解雇対象となりうる労働者に対し、事前協議や解雇の必要性に関する説明を尽くす必要があります。  協議や説明にあたっては、人員削減の必要性、解雇回避努力の手法、人選基準などについてできるかぎり納得を得られるように誠意をもって対応することが求められます。 5 整理解雇が認められた近時の裁判例  東京地裁平成31年3月28日判決は、部門の閉鎖にともなう整理解雇が、整理解雇の4要件(要素)に照らして、有効と判断された事例です。航空会社において、旅客数がおよそ半減するほど人気が低下した路線となった結果、業務量が減少した部門について、減少前の業務量に相当する賃金を支払い続けていたことから、部門削減によるコスト削減が実現できることを理由に、人員削減の必要性を肯定しました。  また、解雇回避努力の措置および手続きの妥当性に関して、労働組合に対して、通常の退職金に加えて特別退職金として20カ月分の賃金相当額を加算して支払う旨を提案するほか、配置転換による勤務の継続を提案してきたことが相当な内容であったと評価されました。  人選の合理性については、部門に所属するもの全員を対象とするものであることから不合理な点は見当たらないと評価されています。  比較的高度な人員削減の必要性がある状況のなか、解雇回避努力および手続きの妥当性について十分な措置をとってきたことが、整理解雇の結論を左右したといえる事案であると考えられます。 Q2 人事考課に基づく降格の有効性について教えてほしい  人事評価の結果をふまえて、給料の減額をともなう降格処分を行うことを検討しています。人事権の行使の一環であることから、裁量の余地が広いと考えて問題ないでしょうか。 A  減給をともなう降格には、就業規則上の根拠が必要であるほか、処分の合理性が求められます。  処分の合理性を判断するにあたっては、人事考課基準自体の合理性や降格処分に至るまでの指導経過などもふまえて評価されることから、その経過を記録しておくことが重要です。 1 賃金の減額をともなう降格に必要な根拠  企業内においては、人事評価の仕組みを構築し、賃金体系を定めることになりますが、その制度は、各企業においてさまざまです。  あえて分類すれば、人が身につけた能力を評価して賃金を定める「職能給」と、人がになう役割や職務の内容に則して賃金を定める「職務給」の2種類の考え方があります。  日本においては、「職能給」としての賃金制度が広く定着しており、基本的には、能力が減衰することはないという前提のもと、原則として、賃金の減額は想定されていない制度として運用されています。したがって、「職能給」を前提とする賃金体系においては、労働契約や就業規則において、明確な降格の根拠規定がないかぎりは、降格を実施できないと考えられています。  一方で、「職務給」としての賃金制度を採用している場合には、職務の変更をともなう場合には賃金も変更されることが前提とされており、その意味では降格の裁量の余地は広いといえます。しかしながら、賃金の減額という不利益をともなう以上、たとえ「職務給」を採用している場合においても、明確な根拠規定は必要と考えられています。逆説的な発想ではありますが、そもそも職務の変更にともない賃金の減額を行いうることが就業規則や賃金規程において表現されていないような場合は、「職務給」制度を採用していると評価されずに、一般的に定着している「職能給」として判断される可能性もあることから、「職務給」制度を採用していることを明確にする趣旨からも、降格の根拠規定を置くことは重要といえます。 2 人事権の濫用  降格の実施にあたっては、根拠規定が存在することが前提となりますが、その判断は、人事評価という過程を経て行われることになります。人事評価の過程において、著しい不合理な評価によって判断された場合には、その人事権を濫用したものとして降格が無効になると考えられています。  濫用となるか否か判断する際に重視される観点としては、「公正な評価」がなされることが必要という考え方がなされています。例えば、東京地裁平成16年3月31日判決においては、賃金の減額をともなう人事権の行使に関して、「労働契約の内容として、成果主義による基本給の降給が定められていても、使用者が恣意的に基本給の降給を決することが許されない」としたうえで、「降給が許容されるのは、就業規則等による労働契約に、降給が規定されているだけでなく、降給が決定される過程に合理性があること、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞く等の公正な手続が存することが必要」としています。ここで、注目されるべきは、評価の過程までを人事権濫用の判断要素として含めたうえで、その過程が従業員に告知されてその言い分を聞くなどの手続きを求めているという点です。人事権の行使に関しては、経営者の判断が尊重されるべきではありますが、評価の過程については説明をしておくべきでしょう。  なお、同判決は「降給の仕組み自体に合理性と公正さが認められ、その仕組みに沿った降給の措置が採られた場合には、個々の従業員の評価の過程に、特に不合理ないし不公正な事情が認められないかぎり、当該降給の措置は、当該仕組みに沿って行われたものとして許容されると解するのが相当である」とも判断しており、企業の判断を尊重する姿勢も同時に示しています。 3 実務上における問題点  人事評価に基づく人事権の行使にあたっては、その過程の記録が十分に残されていないことが多くあります。  定量的な評価を行っている場合には、比較的記録として残りやすいため、証拠化することができます。一方で、人事評価は、どうしても定性的な評価もともなうものであり、一定期間における定性評価について、結果だけを記載しても印象論や主観的な評価と判断されるおそれが強いといえます。  実際に、人事評価に基づく降格が有効と判断されている裁判例においては、主観的な評価に陥りがちな部分に関して、従業員へのフィードバックなどの記録が残っている場合などが比較的多くみられます。  例えば、先述の東京地裁平成16年3月31日判決においても、目標管理制度が採用されており、目標設定が従業員との面談を通じて設定され、評価にあたっては自己評価も行い意見を述べる機会が与えられていることなどから、人事評価過程の透明性をふまえた判断がなされているように見受けられます。また、大阪地裁令和元年6月12日判決は、賃金減額をともなう降格の有効性が争われた事案ですが、各年度の重点業務を示したうえで、その結果を報告させる制度において、その内容をふまえた人事評価を行うことについては、基本的には合理性を認めています。これらの事案においては、従業員自身がいかなる要素に基づき評価されるのか認識し、その評価の説明を受けたうえで、自身からの意見を述べる機会が与えられていることが、重要な判断要素としてあげられていると考えられます。  なお、大阪地裁令和元年6月12日判決では、人事評価の過程で業務改善を目的とした面談を行いつつ、その面談における指摘に対して、従業員が「すいません」、「これは私のミスなんですけども、そこまでやらなあかんという認識がありませんでした」など、具体的な発言が認定されています。これだけの具体的な発言を立証するためには、面談の記録を保存しておく必要があるでしょう。  人事考課に基づく降格を行うにあたっては、人事考課の結果を立証するのみでは足りず、対象者にとって、降格に至る過程の透明性が確保されており、評価が低くなる理由を認識して、それを改善する機会があったことも判断要素としては重視される傾向にあると考えられます。 【P42-43】 高齢社員の心理学 ―加齢でこころ≠ヘどう変わるのか― 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 准教授 増本康平 第4回 高齢社員の仕事と感情機能  高年齢者雇用安定法の改正により就業期間の延伸が見込まれるなかで、高齢者が活き活きと働ける環境を整えていくためには、これまで以上に高齢者に対する理解を深めることが欠かせません。そこで本稿では、高齢者の内面、こころ≠ノ焦点を当て、その変化や特性を解説します(編集部)。 高齢者は怒りっぽい?  「歳をとると怒りっぽくなる」ということを聞くことがありますが、本当にそうなのでしょうか? そう思ってしまう理由は三つあります。一つは、怒りっぽい高齢者の割合は以前と同じでも、高齢者人口が増えたため、怒りっぽい高齢者が目立つようになった。二つ目は、昔よりも寿命が伸びたため、感情のコントロールに支障をきたすタイプの認知症の方が増加した。三つ目は、独居高齢者の増加、年金などの経済的な不安、長寿による健康不安といった高齢者を取り巻く環境が以前と比べて厳しいため、怒りっぽい高齢者が増えた。ただ、これら三つの理由は、歳をとったことが直接的な原因ではありません。むしろ、感情のコントロールをになう感情機能は、若年者よりも高齢者の方が優れていることを心理学や脳神経科学の研究は示しています。 歳をとっても衰えない感情機能  高齢期は、得るものに対して失うものの割合が多くなる時期です。長く生きればだれもが、何らかの体の不調による「健康の喪失」、両親や友人、配偶者の死による「人間関係の喪失」、引退や子どもの自立などによる「役割の喪失」といった大きなストレスをともなう出来事を、多かれ少なかれ経験します。ですが、高齢者が不幸なわけではありません。図表にあるように、年齢を重ねると幸福感が高まることが示されています。  喪失の時期である高齢期の幸福感が、ほかの世代と比較して高いという矛盾は「エイジングパラドクス」と呼ばれ、この矛盾が生じる理由を解明しようと、これまでに多くの研究が行われてきました。そして現在では、感情をコントロールする脳のネットワークは加齢の影響を受けにくいこと、加齢とともにネガティブな情報ではなく、ポジティブな情報を重視する情報処理にシフトすることが明らかになっています。そのため、若いときよりもストレスフルな状況に上手に対処することができ、幸福感が高くなると考えられているのです。では、感情機能は仕事においてどのようなメリットをもたらすのでしょうか? 仕事のパフォーマンスと感情機能  これまでの連載のなかで、高齢社員の認知機能と仕事のパフォーマンスの関係については、歳をとると情報処理のスピードは低下し、頭のなかの作業スペースも小さくなるため、新しい状況での迅速な判断が求められたり、複雑な推論が必要となったりする場合、仕事のパフォーマンスが下がることを説明しました。一方で、経験から得られる知識や技能に関する記憶は高齢になっても維持されるため、経験が重視される仕事に関しては、高齢社員でも仕事のパフォーマンスが低下しないことも紹介しました。  このように、一人で行う作業のパフォーマンスは、こうした認知機能の状況によってある程度説明することができます。しかし、仕事の多くは一人でできるものではありません。部下や同僚、上司との良好な関係、顧客との信頼関係を築くことが必要となります。このような場合、素早く正確に情報を処理するための認知機能よりも、相手に共感したり、苦境にあっても感情的にならず冷静に対処することや、相手に自分の気持ちを伝えるための感情機能が必要となります。そのため、仕事のパフォーマンスに関する研究では、認知機能よりも感情機能の方が重視されることが多いのです。 高齢社員の感情機能  感情機能には、大きく分けると、感情の「知覚」、「理解」、「使用」、「管理」の四つがあります。「知覚」とは、声、表情などから他人の感情状態を把握する能力です。「理解」とは、感情についての知識や、感情やその変化がもつ意味を理解する能力をさします。「使用」とは、目標達成のために感情を利用することで、例えば、課題を達成するために気持ちを焦らせる、などがあります。「管理」は動揺しているときに、自分自身を落ち着かせたり、落ち込んでいる人を元気づけるなど、自分と他者の感情をコントロールする能力です。  これまでの研究は、四つのすべての要素において、高齢者が若年者よりも優れている、あるいは、少なくとも若年者と同等であることを示しています。そのため、高齢社員の方が、仕事によるストレスをうまくコントロールでき、燃え尽き症候群になりにくいとされています。また、自分だけでなく周りに対して気配りができるため、職場での衝突を回避でき、顧客の満足度が高いという結果もあります。一方で、高齢者はネガティブな情報よりもポジティブな情報に注意を向けやすいことから、現状に満足する傾向があり、変化を生み出すことが苦手であることも示唆されています。  認知機能と同じように感情機能にも個人差はあります。それでも、感情機能は経験によって向上し、高齢期でも維持されるため、職場において高齢社員が活躍できる場面は多くあります。年齢とともに仕事のパフォーマンスが低下するという認識は誤りであることを、感情機能に関する研究は示しています。 【参考文献】 増本康平(2018)『老いと記憶〜加齢で得るもの、失うもの』中央公論新社 Baltes, B., Rudolph, C. W., & Zacher, H. (Eds.). (2019).Work across the lifespan. Academic Press. 図表 歳をとるほど幸福感は高まる 縦軸 幸福感 横軸 年齢 出典:Mroczek, D. K., & Kolarz, C. M.(1998). The effect of age on positive and negative affect: a developmental perspective on happiness. Journal of Personality and Social Psychology, 75(5), 1333-1349. 【P44-45】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第10回「賞与」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は「賞与」について取り上げます。意外かもしれませんが、3月は賞与となじみ深い月です。期末(決算)賞与の支給や、翌年度の従業員の処遇について経営側と従業員側が話し合う「春闘」の実施がこの時期にあたるからです。 賞与の目的はさまざま  賞与という言葉よりも、「ボーナス」の方をよく耳にするかもしれません。しかし、人事ではボーナスではなく、賞与という用語を使います。ボーナスは何かよかったときのみ支払われる報奨金的な意味合いであるのに対して、賞与はより幅広い目的で支給されるからです。  目的の確認に入る前に賞与の前提に触れておくと、賞与は労働に対する支給義務が法律上定められたものではありません。そのため、賞与という制度を設けるかどうかは企業の自由です。そして、ここがポイントですが、何のために支給するかの目的も企業の設定次第ということになります。先ほど幅広い目的≠ニ書きましたが、おおよそ次の目的といわれています。 @業績の還元:利益などの業績により賞与が増減する仕組みを用いている場合は、この目的に基づいています。業績に連動させることで、業績悪化時には人件費の負担を抑制し、一方で好調時には従業員へより多く還元したいという意図があります。 A生活給の一部:年末や盆などの、支出の多い特別な時期の生活費を支援することを目的としています。賞与が毎年一定程度支給されている場合は、住宅ローン支払いなどの生活設計と連動させやすくなるため、従業員側にすると生活給としての認識が強くなります。 B給与の後払い:本来は「年俸制」にみられるように、従業員に予定している年収を12カ月で分割して毎月の給与で支給すればよいのですが、あえて分割数を増やして給与分の残りをまとめて支払うのが賞与です。これは目的そのものというよりも、@とAを実現するための手段といった方が正しいかもしれません。 賞与の支給方法は目的によって変わる  賞与の支給方法は目的によって変わります。例えば、業績還元にした場合は、営業利益や経常利益などの賞与の総予算(「賞与原資」ともいいます)を決める「業績指標」を定め、そのうちのどの程度を賞与に配分するかをルール化します。ルールが明確で従業員にもしっかり説明されている場合は、業績悪化時には賞与不支給もあり得ますし、業績好調時には相当額の賞与が支給される場合もあります。一方で、生活給的要素が強い場合は、業績悪化時であっても容易には賞与は減額できないことになります。賞与支給の根拠は就業規則・給与規程などに記載することですが、支給を断定する表現や支給水準が明記されている場合には、業績などの事情によらず、その記載に則って支払うのが基本となります。  しかし、業績か生活給かの両極ではなく、図表にあるように一定程度は生活給として固定的に支払う(=最低支給額を定める)が、残りは業績に連動させるという組合せがよくある運用です。また、賞与の支給回数は夏・冬の2回としている会社が多いですが、事業年度の年度末に「期末賞与」を支給している企業もあります。この場合は、夏・冬は固定的、期末賞与は業績還元として、支給か不支給は業績次第という傾向が強くなります。このため、期末賞与を「決算賞与」と呼ぶこともあります。  さらに、業績還元について一つ触れておくと、企業全体の業績だけでなく、個人の業績貢献度である評価結果を反映させ、個人単位の支給額に差をつけるケースが多く見られます。例えば、標準では基本給の1カ月分相当が支給されるところ、評価の高い従業員は1・3カ月分相当、評価が低い従業員には0・7カ月分相当の支給額となるといったものです。このような差をつけるのは、毎月の給与は従業員の生活の安定の観点から大幅な増減は望ましくないものの、賞与は従業員のモチベーション向上につなげるために、メリハリを持たせた支給を柔軟に行うことができるからです。 高齢者雇用と賞与  賞与は法律的な制限が少ないため、企業の意思次第で目的や支給方法を定められます。そのため、従業員に伝えたいメッセージを表現するのに適しています。また従業員との合意が前提ですが、運用の見直しがしやすいというメリットもあります。  高齢者雇用についても同様です。労務行政研究所「高年齢者の処遇に関する実態調査」(平成31年)によると、再雇用者に対して賞与支給のある企業の割合は約77・5%と、幅広い企業で支給されています。しかし、年間賞与の分布状況を見ると、20万円未満が27・8%と低い水準にとどまります。寸志程度の金額で賞与としている企業も実際には見受けられます。  しかし、これは企業の高齢者雇用へのメッセージという観点からは、工夫の余地があるといえます。定年前と同様、またはそれ以上の成果の創出を期待するのであれば、高評価を受けた場合には定年前と同様か、それ以上の賞与を支給する仕組みが考えられます。またチームワークを重視する場合には、業績還元の期末賞与は定年前の従業員と同額の支給を受けるといった措置も必要だと考えます。再雇用者のモチベーション引上げが話題になることがありますが、本人への期待の伝達とともに、賞与の支給方法を見直すことは有効な施策ではないかと筆者は考えています。 ☆☆  今回は「賞与」について解説しました。次回は、「働き方改革」について取り上げる予定です。 図表 賞与の支給方法 【年間2回支給の場合(例)】 夏賞与(100%) 生活給 固定(50%) 業績還元 業績連動(50%) 冬賞与(100%) 固定(50%) 業績連動(50%) 【年間3回支給の場合(例)】 夏賞与(100%) 固定(100%) 冬賞与(100%) 固定(100%) 期末賞与(100%) 業績連動(100%) *実際は、年間2回支給でも1回は業績連動なし、年間3回支給の場合でもすべて業績連動ありなどの組合せもあります 出典:筆者作成 【P46-51】 労務資料 令和2年6月1日現在の高年齢者の雇用状況 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課  高年齢者雇用安定法では、高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現を目的に、企業に「定年の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を講じるよう義務づけるとともに、毎年6月1日現在の高齢者の雇用状況を提出することを求めています。  厚生労働省より、2020(令和2)年6月1日現在の高年齢者の雇用状況が公表されましたので、その結果をご紹介します。  集計対象は、全国の常時雇用する労働者が31人以上の企業16万4151社。このうち中小企業(31〜300人規模)は14万7081社(31〜50人規模5万6759社、51〜300人規模9万322社)、大企業(301人以上規模)1万7070社でした(編集部) 集計結果の主なポイント T 65歳までの高年齢者雇用確保措置のある企業の状況 @高年齢者雇用確保措置の実施状況  65歳までの雇用確保措置のある企業は計16万4033社、99・9%[前年比0・1ポイント増加] A65歳定年企業の状況  65歳定年企業は3万250社[前年比2537社増加]、18・4%[同1・2ポイント増加]  ・中小企業では2万8218社[同2280社増加]、19・2%[同1・3ポイント増加]  ・大企業では2032社[同257社増加]、11・9%[同1・3ポイント増加] U 66歳以上働ける企業の状況 @66歳以上働ける制度のある企業の状況  66歳以上働ける制度のある企業は5万4802社[同5164社増加]、割合は33・4%[同2・6ポイント増加]  ・中小企業では4万9985社[同4593社増加]、34 ・0%[同2・6ポイント増加]  ・大企業では4817社[同571社増加]、28・2%[同2・9ポイント増加] A70歳以上働ける制度のある企業の状況  70歳以上働ける制度のある企業は5万1633社[同4975社増加]、割合は31・5%[同2・6ポイント増加]  ・中小企業では4万7172社[同4427社増加]、32・1%[同2・5ポイント増加]  ・大企業では4461社[同548社増加]、26・1%[同2・8ポイント増加] B定年制廃止企業の状況  定年制の廃止企業は4468社[同171社増加]、割合は2・7%[変動なし]  ・中小企業では4370社[同161社増加]、3・0%[同0・1ポイント増加]  ・大企業では98社[同10社増加]、0・6%[同0・1ポイント増加] 1 高年齢者雇用確保措置の実施状況 (1)全体の状況  高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」)の実施済企業は16万4033社、99・9%[同0・1ポイント増加]、51人以上規模の企業で10万7364社、99・9%[同0・1ポイント増加]となっている。  雇用確保措置が未実施の企業は118社、0・1%[同0・1ポイント減少]、51人以上規模企業で28社、0・1%[同0・1ポイント減少]となっている(図表1)。 (2)企業規模別の状況  雇用確保措置を実施済みの企業の割合を企業規模別に見ると、大企業では1万7069社、99・9%[変動なし]、中小企業では14万6964社、99・9%[同0・1ポイント増加]となっている。 (3)雇用確保措置の内訳  雇用確保措置を実施済みの企業では、定年制度(@、A)により雇用確保措置を講じるよりも、継続雇用制度(B)により雇用確保措置を講じる企業の比率が高い(図表2)。 @「定年制の廃止」により雇用確保措置を講じている企業は4468社、2・7%[変動なし] A「定年の引上げ」により雇用確保措置を講じている企業は3万4213社、20・9%[同1・5ポイント増加] B「継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業は12万5352社、76・4%[同1・5ポイント減少] (4)継続雇用確保措置のある企業の状況  「継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業(12万5352社)を対象(図表3)。 @希望者全員を対象とする65歳以上の継続雇用制度を導入している企業は9万3333社、74・5%[同1・5ポイント増加] A高年齢者雇用安定法一部改正法の経過措置に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)は3万2019社、25・5%[同1・5ポイント減少] 2 60歳定年到達者の動向 (1)60歳定年企業における定年到達者の動向  過去1年間(令和元年6月1日から令和2年5月31日)の60歳定年企業における定年到達者(36万3027人)のうち、継続雇用された者は31万267人(85・5%)(うち子会社・関連会社等での継続雇用者は1万2932人)、継続雇用を希望しない定年退職者は5万2180人(14・4%)、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は580人(0・2%)となっている(図表4)。 (2)経過措置に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準の適用状況  令和元年6月1日から令和2年5月31日までの間に、経過措置に基づく対象者を限定する基準がある企業において、基準を適用できる年齢(平成31年4月1日以降は63歳)に到達した者(6万3309人)のうち、基準に該当し引き続き継続雇用された者は5万8661人(92・7%)、継続雇用の更新を希望しなかった者は3715人(5・9%)、継続雇用を希望したが基準に該当せずに継続雇用が終了した者は933人(1・5%)となっている(図表5)。 3 65歳定年企業の状況  定年を65歳とする企業は3万250社[同2537社増加]、報告した全ての企業に占める割合は18・4%[同1・2ポイント増加]となっている(図表6)。 ■企業規模別 @中小企業では2万8218社[同2280社増加]、19・2%[同1・3ポイント増加] A大企業では2032社[同257社増加]、11・9%[同1・3ポイント増加] 4 66歳以上働ける制度のある企業の状況 (1)66歳以上働ける制度のある企業の状況  66歳以上働ける制度のある企業は5万4802社[同5164社増加]、報告した全ての企業に占める割合は33・4%[同2・6ポイント増加]となっている(図表7)。 ■企業規模別 @中小企業では4万9985社[同4593社増加]、34・0%[同2・6ポイント増加] A大企業では4817社[同571社増加]、28・2%[同2・9ポイント増加] (2)70歳以上働ける制度のある企業の状況  70歳以上働ける制度のある企業は5万1633社[同4975社増加]、報告した全ての企業に占める割合は31・5%[同2・6ポイント増加]となっている(図表8)。 ■企業規模別 @中小企業では4万7172社[同4427社増加]、32・1%[同2・5ポイント増加] A大企業では4461社[同548社増加]、26・1%[同2・8ポイント増加] 5 希望者全員が66歳以上働ける企業の状況 (1)希望者全員が66歳以上働ける企業の状況  希望者全員が66歳以上まで働ける企業は2万798社[同1877社増加]、報告した全ての企業に占める割合は12・7%[同1・0ポイント増加]となっている。 ■企業規模別 @中小企業では1万9984社[同1761社増加]、13・6%[同1・0ポイント増加] A大企業では814社[同116社増加]、4・8%[同0・6ポイント増加] (2)定年制廃止および66歳以上定年企業の状況  @定年制を廃止している企業は、4468社[同171社増加]、報告した全ての企業に占める割合は2・7%[変動なし]となっている。 ■企業規模別  ア 中小企業では4370社[同161社増加]、3・0%[同0・1ポイント増加]  イ 大企業では98社[同10社増加]、0・6%[同0・1ポイント増加]  A定年を66〜69歳とする企業は、1565社[同123社増加]、報告した全ての企業に占める割合は1・0%[同0・1ポイント増加]となっている。 ■企業規模別  ア 中小企業では1532社[同122社増加]、1・0%[変動なし]  イ 大企業では33社[同1社増加]、0・2%[変動なし]  B定年を70歳以上とする企業は、2398社[同234社増加]、報告した全ての企業に占める割合は1・5%[同0・2ポイント増加]となっている。 ■企業規模別  ア 中小企業では2323社[同220社増加]、1・6%[同0・1ポイント増加]  イ 大企業では75社[同14社増加]、0・4%[変動なし] 6 高年齢労働者の状況 (1)年齢階級別の常用労働者数について  31人以上規模企業における常用労働者数(約3234万人)のうち、60歳以上の常用労働者数は約409万人で12・7%を占めている。年齢階級別に見ると、60〜64歳が約224万人、65〜69歳が約117万人、70歳以上が約68万人となっている。 (2)雇用確保措置の義務化後の高年齢労働者の推移  51人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約370万人であり、雇用確保措置の義務化前(平成17年)と比較すると、約265万人増加している。31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約409万人であり、平成21年と比較すると、約193万人増加している(図表9)。 図表1 雇用確保措置の実施状況 (社、%) @実施済み A未実施 合計(@+A) 31〜300人 146,964 (144,314) 117 (257) 147,081 (144,571) 99.9% (99.8%) 0.1% (0.2%) 100.0% (100.0%) 31〜50人 56,669 (55,231) 90 (173) 56,759 (55,404) 99.8% (99.7%) 0.2% (0.3%) 100.0% (100.0%) 51〜300人 90,295 (89,083) 27 (84) 90,322 (89,167) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 301人以上 17,069 (16,803) 1 (4) 17,070 (16,807) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 164,033 (161,117) 118 (261) 164,151 (161,378) 99.9% (99.8%) 0.1% (0.2%) 100.0% (100.0%) 51人以上総計 107,364 (105,886) 28 (88) 107,392 (105,974) 99.9% (99.9%) 0.1% (0.1%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和元年6月1日現在の数値。 ※本集計は原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、本表の「51〜300人」「301人以上」「51人以上総計」の@については、小数点第2位以下を切り捨て、Aについては、小数点第2位以下を切り上げとしている。 図表2 雇用確保措置の内訳 全企業 継続雇用制度の導入 76.4% 定年の引上げ 20.9% 定年制の廃止 2.7% 301人以上 継続雇用制度の導入 86.9% 定年の引上げ 12.5% 定年制の廃止 0.6% 31〜300人 継続雇用制度の導入 75.2% 定年の引上げ 21.8% 定年制の廃止 3.0% 図表3 継続雇用確保措置のある企業の状況 全企業 希望者全員65歳以上の継続雇用制度 74.5% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業) 25.5% 301人以上 希望者全員65歳以上の継続雇用制度 56.2% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業) 43.8% 31〜300人 希望者全員65歳以上の継続雇用制度 76.9% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業) 23.1% 図表4 60歳定年企業における定年到達者等の状況 企業数(社) 定年到達者総数(人) 継続雇用者数 うち子会社等・関連会社等での継続雇用者数 定年退職者数(継続雇用を希望しない者) 定年退職者数(継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者) 継続雇用の終了による離職者数(人) 60歳定年企業で定年到達者がいる企業等 73,415 363,027 310,267 85.5% (84.7%) 12,932 3.6% (3.9%) 52,180 14.4% (15.1%) 580 0.2% (0.2%) 67,547 うち女性 36,151 118,900 104,157 87.6% (87.0%) 1,466 1.2% (1.2%) 14,563 12.2% (12.9%) 180 0.2% (0.1%) 13,209 ※過去1年間(令和元年6月1日から令和2年5月31日)に60歳定年企業において定年年齢に到達した者について集計している。 ※( )内は、令和元年6月1日現在の数値。 ※「継続雇用の終了による離職者数」は継続雇用制度における上限年齢に到達したことによる離職者の数。 図表5 経過措置に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準の適用状況 企業数(社) 基準を適用できる年齢に到達した者の総数(人) 継続雇用者数(基準に該当し引き続き継続雇用された者) 継続雇用終了者数(継続雇用の更新を希望しない者) 継続雇用終了者数(基準に該当しない者) 経過措置適用企業で基準適用年齢到達者(63歳)がいる企業 12,473 63,309 58,661 92.7% (92.0%) 3,715 5.9% (6.5%) 933 1.5% (1.5%) うち女性 5,380 17,099 16,035 93.8% (92.7%) 881 5.2% (6.3%) 183 1.1% (0.9%) ※令和元年6月1日から令和2年5月31日に経過措置適用企業(60歳、61歳、62歳、63歳定年企業)において基準適用年齢に到達した者について集計している。 ※( )内は、令和元年6月1日現在の数値。 図表6 定年制の廃止および65歳以上定年企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A65歳以上定年 65歳 66〜69歳 70歳以上 合計(@+A) 報告した全ての企業 31〜300人 4,370 (4,209) 28,218 (25,938) 1,532 (1,410) 2,323 (2,103) 36,443 (33,660) 147,081 (144,571) 3.0% (2.9%) 19.2% (17.9%) 1.0% (1.0%) 1.6% (1.5%) 24.8% (23.3%) 100.0% (100.0%) 31〜50人 2,498 (2,367) 12,291 (11,401) 773 (711) 1,224 (1,103) 16,786 (15,582) 56,759 (55,404) 4.4% (4.3%) 21.7% (20.6%) 1.4% (1.3%) 2.2% (2.0%) 29.6% (28.1%) 100.0% (100.0%) 51〜300人 1,872 (1,842) 15,927 (14,537) 759 (699) 1,099 (1,000) 19,657 (18,078) 90,322 (89,167) 2.1% (2.1%) 17.6% (16.3%) 0.8% (0.8%) 1.2% (1.1%) 21.8% (20.3%) 100.0% (100.0%) 301人以上 98 (88) 2,032 (1,775) 33 (32) 75 (61) 2,238 (1,956) 17,070 (16,807) 0.6% (0.5%) 11.9% (10.6%) 0.2% (0.2%) 0.4% (0.4%) 13.1% (11.6%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 4,468 (4,297) 30,250 (27,713) 1,565 (1,442) 2,398 (2,164) 38,681 (35,616) 164,151 (161,378) 2.7% (2.7%) 18.4% (17.2%) 1.0% (0.9%) 1.5% (1.3%) 23.6% (22.1%) 100.0% (100.0%) 51人以上総計 1,970 (1,930) 17,959 (16,312) 792 (731) 1,174 (1,061) 21,895 (20,034) 107,392 (105,974) 1.8% (1.8%) 16.7% (15.4%) 0.7% (0.7%) 1.1% (1.0%) 20.4% (18.9%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和元年6月1日現在の数値。 ※「報告した全ての企業」は図表1の「合計」に対応している。 図表7 66歳以上働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A66歳以上定年 B希望者全員66歳以上 C基準該当者66歳以上 Dその他の制度で66歳以上まで雇用 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 31〜300人 4,370 (4,209) 3,855 (3,513) 11,759 (10,501) 16,053 (14,934) 13,948 (12,235) 19,984 (18,223) 36,037 (33,157) 49,985 (45,392) 147,081 (144,571) 3.0% (2.9%) 2.6% (2.4%) 8.0% (7.3%) 10.9% (10.3%) 9.5% (8.5%) 13.6% (12.6%) 24.5% (22.9%) 34.0% (31.4%) 100.0% (100.0%) 31 〜50人 2,498 (2,367) 1,997 (1,814) 5,262 (4,715) 5,893 (5,537) 4,896 (4,217) 9,757 (8,896) 15,650 (14,433) 20,546 (18,650) 56,759 (55,404) 4.4% (4.3%) 3.5% (3.3%) 9.3% (8.5%) 10.4% (10.0%) 8.6% (7.6%) 17.2% (16.1%) 27.6% (26.1%) 36.2% (33.7%) 100.0% (100.0%) 51〜300人 1,872 (1,842) 1,858 (1,699) 6,497 (5,786) 10,160 (9,397) 9,052 (8,018) 10,227 (9,327) 20,387 (18,724) 29,439 (26,742) 90,322 (89,167) 2.1% (2.1%) 2.1% (1.9%) 7.2% (6.5%) 11.2% (10.5%) 10.0% (9.0%) 11.3% (10.5%) 22.6% (21.0%) 32.6% (30.0%) 100.0% (100.0%) 301人以上 98 (88) 108 (93) 608 (517) 1,838 (1,636) 2,165 (1,912) 814 (698) 2,652 (2,334) 4,817 (4,246) 17,070 (16,807) 0.6% (0.5%) 0.6% (0.6%) 3.6% (3.1%) 10.8% (9.7%) 12.7% (11.4%) 4.8% (4.2%) 15.5% (13.9%) 28.2% (25.3%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 4,468 (4,297) 3,963 (3,606) 12,367 (11,018) 17,891 (16,570) 16,113 (14,147) 20,798 (18,921) 38,689 (35,491) 54,802 (49,638) 164,151 (161,378) 2.7% (2.7%) 2.4% (2.2%) 7.5% (6.8%) 10.9% (10.3%) 9.8% (8.8%) 12.7% (11.7%) 23.6% (22.0%) 33.4% (30.8%) 100.0% (100.0%) 51人以上総計 1,970 (1,930) 1,966 (1,792) 7,105 (6,303) 11,998 (11,033) 11,217 (9,930) 11,041 (10,025) 23,039 (21,058) 34,256 (30,988) 107,392 (105,974) 1.8% (1.8%) 1.8% (1.7%) 6.6% (5.9%) 11.2% (10.4%) 10.4% (9.4%) 10.3% (9.5%) 21.5% (19.9%) 31.9% (29.2%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和元年6月1日現在の数値。 ※66歳以上定年制度と66歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A66歳以上定年」のみに計上している。 ※「Dその他の制度で66歳以上まで雇用」とは、希望者全員や基準該当者を66歳以上まで継続雇用する制度は導入していないが、企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す。 ※「報告した全ての企業」は図表1の「合計」に対応している。 図表8 70歳以上働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A70歳以上定年 B希望者全員70歳以上 C基準該当者70歳以上 Dその他の制度で70歳以上まで雇用 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 31〜300人 4,370 (4,209) 2,323 (2,103) 11,158 (9,980) 15,595 (14,443) 13,726 (12,010) 17,851 (16,292) 33,446 (30,735) 47,172 (42,745) 147,081 (144,571) 3.0% (2.9%) 1.6% (1.5%) 7.6% (6.9%) 10.6% (10.0%) 9.3% (8.3%) 12.1% (11.3%) 22.7% (21.3%) 32.1% (29.6%) 100.0% (100.0%) 31〜50人 2,498 (2,367) 1,224 (1,103) 5,070 (4,563) 5,788 (5,400) 4,856 (4,174) 8,792 (8,033) 14,580 (13,433) 19,436 (17,607) 56,759 (55,404) 4.4% (4.3%) 2.2% (2.0%) 8.9% (8.2%) 10.2% (9.7%) 8.6% (7.5%) 15.5% (14.5%) 25.7% (24.2%) 34.2% (31.8%) 100.0% (100.0%) 51〜300人 1,872 (1,842) 1,099 (1,000) 6,088 (5,417) 9,807 (9,043) 8,870 (7,836) 9,059 (8,259) 18,866 (17,302) 27,736 (25,138) 90,322 (89,167) 2.1% (2.1%) 1.2% (1.1%) 6.7% (6.1%) 10.9% (10.1%) 9.8% (8.8%) 10.0% (9.3%) 20.9% (19.4%) 30.7% (28.2%) 100.0% (100.0%) 301人以上 98 (88) 75 (61) 547 (460) 1,691 (1,487) 2,050 (1,817) 720 (609) 2,411 (2,096) 4,461 (3,913) 17,070 (16,807) 0.6% (0.5%) 0.4% (0.4%) 3.2% (2.7%) 9.9% (8.8%) 12.0% (10.8%) 4.2% (3.6%) 14.1% (12.5%) 26.1% (23.3%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 4,468 (4,297) 2,398 (2,164) 11,705 (10,440) 17,286 (15,930) 15,776 (13,827) 18,571 (16,901) 35,857 (32,831) 51,633 (46,658) 164,151 (161,378) 2.7% (2.7%) 1.5% (1.3%) 7.1% (6.5%) 10.5% (9.9%) 9.6% (8.6%) 11.3% (10.5%) 21.8% (20.3%) 31.5% (28.9%) 100.0% (100.0%) 51人以上総計 1,970 (1,930) 1,174 (1,061) 6,635 (5,877) 11,498 (10,530) 10,920 (9,653) 9,779 (8,868) 21,277 (19,398) 32,197 (29,051) 107,392 (105,974) 1.8% (1.8%) 1.1% (1.0%) 6.2% (5.5%) 10.7% (9.9%) 10.2% (9.1%) 9.1% (8.4%) 19.8% (18.3%) 30.0% (27.4%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、和元年6月1日現在の数値。 ※70歳以上定年制度と70歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A70歳以上定年」のみに計上している。 ※「Dその他の制度で70歳以上まで雇用」とは、希望者全員や基準該当者を70歳以上まで継続雇用する制度は導入していないが、企業の実情に応じて何らかの仕組みで70歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す。 ※「報告した全ての企業」は図表1の「合計」に対応している。 図表9 60歳以上の常用労働者の推移 平成22年 31人以上規模企業 242.8(万人) 51人以上規模企業 221.6(万人) 23年 31人以上規模企業 253.6(万人) 51人以上規模企業 230.8(万人) 24年 31人以上規模企業 264.2(万人) 51人以上規模企業 240.4(万人) 25年 31人以上規模企業 272.0(万人) 51人以上規模企業 246.5(万人) 26年 31人以上規模企業 287.2(万人) 51人以上規模企業 260.2(万人) 27年 31人以上規模企業 304.7(万人) 51人以上規模企業 276.2(万人) 28年 31人以上規模企業 324.5(万人) 51人以上規模企業 294.0(万人) 29年 31人以上規模企業 347.4(万人) 51人以上規模企業 314.9(万人) 30年 31人以上規模企業 362.6(万人) 51人以上規模企業 327.4(万人) 令和元年 31人以上規模企業 386.5(万人) 51人以上規模企業 348.9(万人) 2年 31人以上規模企業 409.3(万人) 51人以上規模企業 369.8(万人) 【P52-53】 令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  高年齢者活躍企業コンテスト※は、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。多数のご応募をお待ちしています。 ※ 令和3年4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正にともない、高年齢者が一層活躍できるよう70歳までの就業確保が努力義務化されたことから、名称を変更しました(旧:高年齢者雇用開発コンテスト)。 T 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度の導入 A賃金制度、人事評価制度の見直し B多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 C創業支援等措置(65歳以上における業務委託・社会貢献)の導入※ D各制度の導入までのプロセス・運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組みや高齢従業員の役割等の明確化 A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(IT化へのフォロー、危険業務等からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D新職場の創設・職務の開発 E中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施 等 高年齢者が働きつづけられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 @作業環境の改善(高年齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化 B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 ※ 「創業支援等措置」とは、以下の@・Aを指します。  @70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入  A70歳まで継続的に、「a.事業主が自ら実施する社会貢献事業」又は「b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会 貢献事業」に従事できる制度の導入 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html)からも入手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日 令和3年3月31日(水)当日消印有効 3.応募先 当機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成30年4月1日〜令和2年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)及び「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)令和2年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和2年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)令和2年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 学識経験者などから構成される審査委員会を設置し、審査します。 Y 審査結果発表など  令和3年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。  また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など  提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課  〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号  TEL:043-297-9527  E-Mail:tkjyoke@jeed.or.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中!ぜひご覧ください!  当機構の「65歳超雇用推進事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」でご検索ください。 jeed 65歳超 サイト 検索 【P54-55】 『70歳雇用推進マニュアル』のご案内 〜改正高齢法や雇用施策の考え方、人事制度改定の手順などを解説〜  2021(令和3)年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法(以下、「改正法」)が施行されます。これにより、70歳までの就業機会を確保する措置を講じることが各企業の努力義務となります。  当機構では、改正法をふまえ「65歳超雇用推進マニュアル」の内容をバージョンアップし、『70歳雇用推進マニュアル』を発行しました。  このマニュアルでは、改正法の内容、70歳までの雇用推進に向けて必要な施策、人事制度改定の手順などのほか、70歳までの就業機会確保措置を講じる企業にとって関心事項になる「賃金・評価制度」、「安全・健康対策」などについて、東京学芸大学教育学部の内田賢(まさる)教授と高千穂大学経営学部の田口和雄教授による詳しい解説を掲載しています。  さらに、企業が自社の高齢者雇用の状況をチェックできる「雇用力評価ツール※」、「賃金用語早わかり」、「パートタイム・有期雇用労働法コラム」など盛りだくさんな内容です。 『70歳雇用推進マニュアル』のポイント (1)改正法を分かりやすく解説(第2章)  改正法では、70歳までの就業機会を確保するための措置(以下、「高年齢者就業確保措置」)を講じることが企業の努力義務となりますが、自社グループ外での継続雇用が可能になったことや、雇用によらない措置(創業支援等措置)が新設されるなど注目ポイントがたくさんあります。  第2章では、改正法のポイント、高年齢者就業確保措置を講じる際の留意点、70歳までの就業確保に実際に取り組む際の考え方などを解説しています。 (2)「70歳雇用」を進めていくにあたって必要な考え方と施策を解説(第3章)  日本では、将来は労働力不足がさらに深刻になると予想され、いまのうちから70歳までの雇用推進を見すえて取り組むことが大切です。  年齢を重ねるほど社員各々の事情は多様性を増し、比例して採るべき方針・施策も多様になっていきます。第3章では、70歳までの雇用推進に向けて必要な考え方と施策を、次の四つのポイントに分けて解説しています。 @トップ自ら高齢者雇用の意義を理解し主導する A高齢者を知る B高齢者が活き活き働ける仕組みをつくる C社員全体の意識啓発をする  また、「賃金・評価制度の整備」の項では、高齢者の能力をどう活かすかにより、「バリバリ活躍型」、「ムリなく活躍型」に分け、会社がどのような制度設計をするとよいか、三つのタイプと考え方を示し、先進事例を紹介しています。「安全・健康対策」の項では、厚生労働省の「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)の流れに沿って、高齢者の多様性や負担のかからない職場環境などの観点から安全・健康対策について解説しています。 (3)人事制度改定の具体的手順を解説(第4章)  定年延長や継続雇用延長など、具体的な人事制度改定に取り組むにあたり、どのように実現まで漕ぎつけるか、 @現状把握 A制度の検討・設計 B実施 C見直し・修正 の四段階で手順を整理し、それぞれ留意すべき点をまとめています。先進企業の取組み事例も掲載しています。 (4)豊富な参考情報を掲載(第5章)  当機構や関係機関が発行した、高齢者雇用に関する資料や公的支援の情報を整理しています。 「70歳までの就業機会を確保する措置」が努力義務に 第1章 高齢者雇用の現状  高齢者雇用の“いま”について、統計データを交え解説。 第2章 改正高年齢者雇用安定法の解説  2021(令和3)年4月1日から施行の改正法をわかりやすく解説。 何を考え、やるべきか 第3章 70歳までの雇用推進に向けて必要な施策  「70歳雇用」を進めていくにあたって必要な考え方と施策を解説。 POINT ▲トップ自ら高齢者雇用の意義を理解し主導する ▲高齢者を知る ▲高齢者が活き活き働ける仕組みをつくる ▲社員全体の意識啓発をする 具体的な手順は 先進企業の事例を紹介 第4章 改正法にともなう人事制度改定の流れ  高齢者雇用施策を実行するにあたり、取り組むべき事項と流れを整理。 1 現状把握 2 制度検討・設計 3 実施 4 見直し・修正 情報収集・現状把握のお供に 第5章 参考資料 ●「雇用力評価ツール」で自社の現状をチェック ●改正高齢法のQ&Aを抜粋 ●公的支援や参考資料の情報を満載 ※ 本誌2月号、61〜63頁でご案内しています 2021.4〜 「70歳までの就業機会を確保する措置」の努力義務が追加 義務 @65歳までの定年の引上げ A65歳までの継続雇用制度の導入 B定年制の廃止 + 努力義務 @70歳までの定年の引上げ A70歳までの継続雇用制度の導入 B定年制の廃止 C創業支援等措置(雇用以外の措置) 『70歳雇用推進マニュアル』は、当機構のホームページよりダウンロードできます。 トップページ>高齢者雇用の支援>各種資料>70歳雇用推進マニュアル https://www.jeed.go.jp/ elderly/data/manual.html 【P56-57】 BOOKS リスクマネジメントの視点を取り入れ、緊急時の対応策を詳解 新型コロナ対応人事・労務の実務Q&A ロア・ユナイテッド法律事務所 編/岩出(いわで) 誠 編集代表/民事法研究会/6000円+税  新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の人事労務管理に大きな影響をもたらした。感染が疑われる社員への対応に頭を悩ませたり、テレワーク導入のために就業規則の見直しに取り組んだ担当者も少なくないのではないか。加えて、最近は自然災害が毎年のように発生しているので、人事労務管理にもBCP(事業継続計画)やリスクマネジメントの視点を取り入れた備えが必要であることはいうまでもない。  本書は、緊急時の人事労務管理に十分な備えをしておきたい担当者に最適な書籍だと思われる。人事労務管理面におけるリスクマネジメント上の課題を、BCPへの対応を含めて多様な視点から具体的な問題として抽出するとともに、企業における実務につなげることを念頭に、新型コロナウイルス感染症感染拡大後、編者に寄せられた相談事例に即して構成されている。236問のQ&Aには、それぞれ「課題への対応策」と「トラブルの予防策」が示されているので、対応のポイントも容易に理解できる。  労働問題を専門に手がける法律事務所が執筆しているだけあって、内容は折り紙付き。平時の人事労務管理上のリスクマネジメントに役立てることも可能な好著である。 問題の全体像から法制度、対応のポイント、予防策まで網羅した入門書 事例に学ぶサイバーセキュリティ 多様化する脅威への対策と法務対応 増島(ますじま)雅和(まさかず)、蔦(つた)大輔(だいすけ) 著/経団連出版/1800円+税  サイバーセキュリティとは「データ、情報システム、情報通信ネットワークを安全に保つための対策を講じて、それを維持する」こと。その対応が後手に回れば経営の根幹を揺るがす事態を招きかねず、まずは組織をあげて取り組むべき課題だと認識することが重要だ。この問題は、とかく技術的な話題に偏りがちになるので、人事労務担当者のなかには「担当外」と認識してしまう人も少なくないと思われるが、本書を一読すればその認識が変わるだろう。  本書は、財務省や金融庁においてサイバーセキュリティ問題を担当してきた弁護士が筆を執り、この問題が組織的な課題であることを前提に、企業が取り組むべきサイバーセキュリティ対策を具体的な事例に基づき解説。組織対応の手順や勘所(かんどころ)、留意すべき法的なポイントがわかりやすく紹介されているので、サイバーセキュリティ問題の全体像を押さえながら、「電子メール等の誤送信」、「内部からの情報持出し」、「ビジネスメール詐欺」、「ウェブサイトへの不正アクセス・改ざん」など多岐にわたるケースごとに、具体的な対応を理解することができる。まず手に取るべき入門書として、人事労務担当者の方々におすすめしたい。 まずは何をなすべきか。悔いなく生きるための道しるべ 60歳からの生き方 もっと身軽に生きてみないか 佐々木常夫 著/海竜社/1300円+税  日本では、60歳を定年としている企業が多いが、60歳を過ぎた人が働いている光景も珍しくなくなった。とはいえ、60歳を人生の大きな節目と考えている人は多くいるだろう。  本書は、「60代に突入したら、まずは何をなすべきか」、「何を捨て、何を身につけるか」を考える力が湧いてくる一冊。還暦以後を悔いなく生きるためのヒントが詰まっている。  著者の佐々木常夫氏は、自閉症の長男と病気の妻を支えながら仕事でも成果を出し、東レの取締役や大阪大学客員教授などを歴任した経歴を持ち、ワーク・ライフ・バランスのシンボル的存在といわれる。本書には、佐々木氏自らの「どん底からはじまった」という60代の体験とともに、60代の後進に向けて、「人としての力はこれからが発揮のしどころ」、「人のために生きてみろ」というエールや、働くことに関しては「給料が下がっても人の価値は下がらない」、「60代の職場は居心地重視で選べ」、「重たい鎧は早く脱げ」などのメッセージを綴っている。  生きることの意義や目的はどこにあるのか。この問いに、「自分を磨くこと」と「何かに貢献すること」と答えている。佐々木氏の人生観から、多くを学べる好著である。 コミュニケーションを円滑にし、生産性を向上させる鍵 「グチ活」会議 社員のホンネをお金に変える技術 仁科(にしな)雅朋(まさとも) 著/日本経済新聞出版/1500円+税  「グチをいっても始まらない」とか、「出るのはため息とグチばかり」などといわれ、そもそも「グチ」は悪いものだと教えられてきた。  ところが、「グチは会社の宝物」、「グチの裏側に会社を変える、大きな財産が隠されている」と著者は肯定的にとらえ、グチに着目したユニークな経営改革を実践し、成果をあげている。本書は、組織変革コンサルタントとして20年の実績を持つ著者が、グチという本音をくみ取り、社内のコミュニケーションを円滑にし、生産性を向上させる鍵となる独自の「グチ活」の手法を解説。「グチ活」会議の手順や具体的な実施方法をわかりやすく紹介している。  成功事例として、先代についてきた管理職と、自分たちの代で新しいことをしたいという新社長がぶつかり、部下がふりまわされていた会社が、「グチ活」によって上司が成長し、部門ごとに人を育てられる組織となり、事業継承もうまくいったという会社や、部署間の悪口を吐き出したら売上げがアップした会社など7社の「グチ活」事例も盛り込まれている。  経営や運営、コミュニケーションに悩むトップや上司をはじめ、会社に不満を感じているビジネスパーソンにも役立つ内容といえるだろう。 社会学の視点から高齢者が抱く幸福感を考察 「幸福な老い」と世代間関係 職場と地域におけるエイジズム調査分析 原田 謙(けん) 著/勁草(けいそう)書房/3000円+税  本書は都市社会学を専問とする著者が、超高齢社会における高齢者の生きがいや幸福感を解明するために取り組んだ研究をまとめたもの。「エイジズム」(年齢にもとづく偏見・差別)をめぐる調査データ分析を通じて、職場や地域などにおける世代間関係が高齢者の幸福感にどのように影響を及ぼしているのかを考察している。  例えば、職場でエイジズムを経験している高齢就業者は仕事に対する満足度が低いということ、上司や同僚によるサポートによってエイジズムが仕事満足度に及ぼす悪影響を緩和していることなどに言及。また、高齢就業者が職場や地域で幸福感を抱くためには、若年者との補完的な関係性を構築することが重要と指摘しており、このような取組みは高齢者雇用の好事例の多くに見出すことができる。  人事労務担当者にとって高齢者雇用の質的な充実は喫緊の課題となっており、高齢就業者にモチベーション高く働いてもらうための方策はますます重要になるだろう。実用書のスタンスとは異なるが、超高齢社会における高齢者の生きがいや幸福感の解明という都市社会学の成果から、70歳雇用を成功に導くためのヒントを得ることも可能ではないか。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「本体価格」(消費税を含まない価格)を表示します 【P58】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果  厚生労働省は、「過重労働解消キャンペーン」の一環として昨年11月1日に実施した「過重労働解消相談ダイヤル」の相談結果をまとめた。  それによると、寄せられた相談件数は合計162件。相談内容の内訳をみると、「長時間労働・過重労働」に関するものが30件(全体の18・5%)と最も多く、ほかでは、「賃金不払残業」が26件(同16・0%)、「その他の賃金不払」が18件(同11・1%)、「その他の労働条件」が18件(同11・1%)などとなっている。相談者の割合は、「労働者」が106件(全体の65・4%)、「労働者の家族」が21件(同12・9%)、「その他」が18件(同11・1%)。主な事業場の業種は、「製造業」が21件(全体の12・9%)と最も多く、「商業」16件(同9・8%)などとなっている。  同省では、これらの相談のうち労働基準関係法令上の問題があると認められる事案は、相談者の希望を確認したうえで労働基準監督署に情報提供して、必要な対応を行った。労働条件に関する相談は、今後も都道府県労働局や労働基準監督署、労働条件相談ほっとラインで受けつける。 ●労働条件相談ほっとライン(相談は無料) [電話番号]0120-811-610  携帯電話からも利用可能 [相談対応曜日・時間]  月〜金曜 17時〜22時  土・日曜、祝日 9時〜21時 厚生労働省 「第9回 健康寿命をのばそう! アワード」受賞企業・団体・自治体を決定  厚生労働省は「第9回健康寿命をのばそう! アワード」表彰式を開催し、生活習慣病予防分野で18企業・団体・自治体、介護予防・高齢者生活支援分野で17企業・団体・自治体、母子保健分野で12企業・団体・自治体を表彰した。  「健康寿命をのばそう! アワード」は、生活習慣病の予防など左記の三つの分野に関して優れた取組みを行っている企業などを表彰する制度。  各分野の内容と今回の受賞企業などは次の通り。 ●生活習慣病予防分野  従業員や職員、住民に対して、生活習慣病予防の啓発、健康増進のための優れた取組みをしている企業などから76件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞1件(株式会社ファミリーマート「ファミリーマートの減塩への取り組み〜『こっそり減塩の推進』〜」)などを表彰した。 ●介護予防・高齢者生活支援分野  地域包括ケアシステムの構築に向け、地域の実情に応じた優れた取組み、かつ、個人の行動を喚起するような取組みを行っている企業などから71件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞1件(毛馬コーポゆうゆうクラブ「学び合い助け合う長屋型大規模マンション」)などを表彰した。 ●母子保健分野  母子の健康増進を目的とする優れた取組みを行っている企業などから98件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞1件(特定非営利活動法人ZEROキッズ「マンションと地域をつなぐ多世代交流事業」)などを表彰した。 発行物 JILPT 『人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査』  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、『JILPT調査シリーズbQ06 人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査』を刊行した。  この報告書は、企業の雇用管理の動向や今後の課題を把握するとともに、労使間で検討することができる資料の提供を目的として実施したアンケート調査の結果をまとめたもの。調査は、企業2万社を対象とし、「企業が予測する『人生100年時代』のイメージ」、「日本企業の雇用管理と長期勤続化の課題」、「キャリア形成のための諸制度とその動向」、「ワークライフバランスに向けた諸対応」などに関し、多岐にわたる設問で行った(回答調査票2640件、回収率13・2%)。  調査の結果から、企業が予測する「人生100年時代」のイメージは、従業員の勤続がより長期化するとともに、従業員の介護負担の増加などから働き方への配慮がより求められるという内容であった。また、AI(人工知能)などの導入が進む技術革新の時代であり、これまでの経験をもとに地道に働く姿勢から、自ら考え行動することのできる能力など、新たな能力を獲得する努力が求められるだろうとの予測も示されている。  報告書は左記のURLからダウンロードが可能で、購入する際の価格は1700円(税別)。 https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/documents/206.pdf 【P59】 読者アンケート結果発表!! ご協力いただき、ありがとうございました  いつも『エルダー』をご愛読いただき、ありがとうございます。今年度実施しました「読者アンケート」では、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。読者アンケートの結果の一部をご紹介します。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。 ご回答者の立場 人事総務部門責任者・担当者 49.2% 経営者・取締役(役員含) 29.7% その他(社会保険労務士、人事コンサルタントなど) 12.6% その他の管理監督者 8.0% 無回答 0.5% 本誌に対する評価 非常に参考になる 19.2% 参考になる 72.3% あまり参考にならない 4.1% 参考にならない 0.3% 無回答 4.1% ◎参考になった記事とその理由 【特集】 ・毎回タイムリーなテーマであり、高齢者雇用の基本的な知識や考え方が掲載されていて、高齢者雇用の参考になる。 ・各社の事例が参考になる。 など 【リーダーズトーク】 ・いつも興味深い内容で楽しみにしている。 ・さまざまなリーダーの話が聞けて働き方の参考になる。 など 【マンガで見る高齢者雇用】 ・マンガなので読みやすく、内容も理解しやすい。 ・登場人物の会話に自社の対応へのヒントがあった。 など 【知っておきたい労働法Q&A】 ・具体的な質問例と判例を用いておりわかりやすい。 ・業務に有益である。 など 【高齢社員の賃金戦略】 ・高齢者の処遇に関して課題を抱えているため参考になる。 ・現場の賃金制度改定について参考になった。 など 【トピック】 ・重要な法令がわかりやすく解説されている。 ・最新情報が掲載されており、参考になる。 など ◎もっと充実を図ってほしい記事や内容 ・他社の導入事例の紹介例や苦労話が知りたい。 ・マンガはわかりやすいので、「マンガで見る高齢者雇用」を長期連載にしてほしい。 など ◎今後取り上げてほしい内容などのご要望 【特集や連載テーマに対するご意見】 ・今後の社員の高齢化に対応して雇用を維持していくよい方法をわかりやすく教えてほしい。 ・70歳以上の人が働く職場と健康増進対策について知りたい。 ・高齢者雇用に関係する労働判例を取り上げてほしい。 ・高齢者を取り巻く社会環境と年金問題などについて知りたい。 ・病気になっても働き続けたいと考える高齢者、実際に働き続けている高齢者の声。 など 【その他のご要望・ご意見】 ・高齢者の話をすると暗くなりがちだが、明るくすこやかに読める誌面づくりを期待。 ・簡単でわかりやすく、すぐ取りかかれる内容を紹介してほしい。 など 興味・関心のあるテーマについては、当機構ホームページに掲載しているバックナンバーもご覧ください。 エルダー バックナンバー 検索 【P60】 次号予告 4月号 特集 人事担当者のための年金入門 リーダーズトーク 田村正之さん(日本経済新聞社 編集委員) 〈高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jpでご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊 律子……読売新聞編集委員 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大木 栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢 春康……サトーホールディングス株式会社人財開発部 人事企画グループ人事企画担当部長 菊谷 寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本 節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長 藤村 博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下 陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア 京子……アテナHROD代表、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今月の特集は、昨年開催された「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」のなかから、大阪・福岡・東京会場の模様をお届けしました(新潟・愛知会場の模様は本誌1月号をご覧ください)。  改正高年齢者雇用安定法の施行を目前に控えた今回のシンポジウムでは、厚生労働省による改正法の解説のほか、今野浩一郎先生による65歳以降の雇用継続を見すえた賃金・評価制度についての講演、高齢者雇用に取り組む先進企業の事例発表などが行われました。  70歳までの就業機会を確保し、高齢者が活躍できる環境を整えていくためには、賃金・評価制度をはじめ、負担を軽減するための環境整備や、個人の事情に合わせて働ける柔軟な勤務制度など、さまざまな取組みが欠かせません。本特集の解説や企業事例などを参考に、高齢者雇用の推進に取り組んでいただければ幸いです。 ●高齢者雇用の取組みにあたっては、産業ごとの特色に応じた対応も重要となります。そこで当機構では、各産業別団体と共同で「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」を策定しています。2020年度は6業界のガイドラインを策定し、22頁から各ガイドラインの概要をご紹介しています。このほかこれまで策定した全90業種のガイドラインを当機構ホームページで紹介しておりますので、ぜひご確認ください。 ●新型コロナウイルス感染症の拡大により再び緊急事態宣言が発出されるなど、読者のみなさまにおかれましては、事業の継続と感染防止対策の間で、多くのご苦労があることと存じます。引き続き感染防止対策に努めていただくために、厚生労働省ウェブサイトの「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業向け)」なども参考としてご覧いただければと思います。 月刊エルダー3月号 No.496 ●発行日−−令和3年3月1日(第43巻 第3号 通巻496号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 早坂博志 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.or.jp ※令和3年4月1日から、メールアドレスはelder@jeed.go.jpに変更となります ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-789-3 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験などを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.314 日本料理の魅力を発信しファンを広げ後進を育てる ホテルニューオータニ幕張 日本料理 顧問 黒田(くろだ)廣昭(ひろあき)さん(66歳) 料理人の仕事は調理場を守ることですが、チャンスがあれば新しいことにどんどんチャレンジして、自分の可能性を広げるべきです 「なだ万」の調理長を務めテレビでも活躍  日本を代表する老舗料亭として知られる「なだ万」で、ホテルニューオータニ店や本店「山茶花荘(さざんかそう)」の調理長、調理本部長などを歴任してきた黒田廣昭さん。迎賓館や総理公邸などで外国の要人をもてなす料理も担当するなど、日本料理の第一線で活躍してきた。また、東京都日本調理技能士会の副会長を務め、後進の育成にも力を注いでいる。メディアでも活躍し、テレビ番組「噂の!東京マガジン」では20年以上にわたって和食のつくり方を紹介するなど、日本料理の普及にも貢献してきた。これらの功績により、令和2年度「現代の名工」を受賞した。  2019年になだ万を退職し、ホテルニューオータニへ移籍。法人向け会員制クラブ「ガーデンコートクラブ」の料理長を経て、昨年9月からホテルニューオータニ幕張の日本料理顧問を務める。これまでの豊富な経験を活かし、レストランや宴会場で提供する日本料理のアドバイザーを務めるほか、料理教室などのイベントを開催している。  「東京の第一線でやることにこだわってきましたが、コロナ禍で営業がままならないなか、幕張で地元の顧客を増やしてほしいという要望を受け、住んでいる千葉県に貢献したいという思いから、喜んで引き受けました。地元の新鮮な素材を活かした料理で、新たなファンを開拓したいと思います」 厳しい親方から学んだ「味へのこだわり」  いまや押しも押されもせぬ人気料理人の黒田さんだが、駆け出しのころは、師事した親方のあまりの厳しさに、一度は修業の道から離れたこともあった。しかし、その後思い直し、料理人の先輩の紹介でたまたま入ることができたのが、帝国ホテルのなだ万だった。なだ万の初代総料理長だった熊野(くまの)保(たもつ)氏のもとで、料理の細やかさ、奥深さを学んだ。  「親父(熊野氏)は50過ぎまで煮方※1としてさまざまな店で修業を積んだ『完璧な煮方』といわれた人で、『うまい』ということにものすごくこだわりを持っていました。例えば、ある日、厨房で慌ただしく朝食の準備をしていると、煮物の上にのせた絹さやを見て、『食ってみろ。うまいか?』と聞くんです。『青味※2ですから、そんなにうまいものじゃないですけど』と答えると、『うまくないと思っているものをなんで客に出すんだ』といって、ごまをすって煮汁で伸ばしたものと絡ませたんです。そうすると、青味の絹さやさえもおいしくなります。このように、どんなときでも、とことん味にこだわる姿勢を教わりました」 厳しさだけではなく楽しさも伝えていきたい  厳しい親方のもとで修業した経験は、その後の自分の「芯」になり、支えになってきたと感謝する黒田さんだが、その一方で、現代の若い料理人に対しては、彼らに合った教え方が必要だと話す。  「調理師を目ざす若者のなかで、日本料理を希望する人は少ない傾向にあります。理由の一つに、洋食やパティシエなどの華やかで楽しげなイメージに対して、日本料理は厳しいイメージが強いことがあげられます。しかし実際には、修業の厳しさはどの業界も変わりません。日本料理といっても、いつも青筋を立てているわけではなく、笑ってやるときだってある。調理師学校などで講師を務めるときは、そんな話をしながら、少しでも間口を広げて、日本料理に進む人を増やしたいと思っています」  現在の職場では、料理長という立場ではない分、若い料理人たちに優しく接しながら日本料理の楽しさを伝え、彼らの成長をサポートしていきたいと考えている。  自身の経験から、「たいへんなときもあるかもしれませんが、だからといって、やめてしまったらそこで終わりです。料理が好きだという気持ちが少しでもあるなら、仮に店は辞めても料理は続けてほしい」と若い世代にエールを送る。 ホテルニューオータニ幕張 TEL:043(297)7777(代表) https://www.newotani.co.jp/makuhari/ (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※1 煮方……煮物を担当する人 ※2 青味……料理の彩りをよくするために使う緑色の野菜 写真のキャプション 巧みな包丁さばきで鯛の薄造りをつくる。愛用の包丁は、なだ万の先輩であり、テレビ番組「料理の鉄人」で知られる中村孝明(こうめい)さんから譲り受けたもの ☆は写真提供 ホテルニューオータニ幕張 料理教室は、参加者から「定期的に開催してほしい」との声が上がるほど人気に ☆ 昨年11 月に初めて開催された「黒田廣昭プレミアム賞味会&料理教室」 ☆ イベントを通じた地元の顧客開拓も黒田さんに期待されている役割の一つ。写真は、なだ万時代の弟子との料理イベントのために考案されたサンプルメニューの数々 ☆ 若手指導にも力を注ぐ。料理教室で助手を務めた西米(にしまい)さん(写真右)は「話の上手さも勉強になります」と語る レストランや宴会場が提供する日本料理全体に目を配る。厨房を手伝うことも多い ホテル内には「千羽鶴」(写真)をはじめ三つの日本料理店がある 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は鏡像です。頭のなかで左右対称をつくり描くとき、空間認知にかかわる頭頂連合野、知的活動にかかわる前頭前野が活性化します。利き手でない方の手で描くのもよいチャレンジです。 第45回 鏡絵描き 左側に描かれた線画を、中心線の反対側に鏡に写したように描き足して、左右対称のイラストを完成させましょう。 目標 1つ3分 合計12分 @木 Aシャツ B花びん Cリボン 感情は大切  「最近、自分の話が通じなくなってきた」、「人の話を聞いてもわからない」といったことが増えてきた人がいるかもしれません。そのような人でも、若いころはいろいろな人ときちんと会話ができていたし、物事の判断もできていたのではないでしょうか。  人は年齢を重ねると、若いときに比べてボキャブラリーが豊富になり、物事に対する知識や経験も蓄えられます。そして物事に慣れていくと、日常生活はほぼルーティンでこなせるでしょう。  しかし、そうした慣れた脳の使い方では、理解力や判断力をつかさどる前頭前野があまり活性化せず、衰えていくことになります。  そこで、今回の脳トレ問題に挑戦して、「できた!」、「わかった!」と感動してください。「惜しかった…」、「解けなかった…」と悔しがってください。そういった感動や悔しさの感情が加わることで、脳に大きなインパクトを与えて、より活性化させることができます。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 @木 Aシャツ B花びん Cリボン 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2021年3月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価(本体458円+税) 東京開催 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 シンポジウム(オンデマンド視聴)申込受付中  昨年12月に東京で開催されたシンポジウムの模様を、オンデマンド配信します。  高齢者が活躍するための「人事管理制度」や「高齢期の賃金・評価制度」をどのようにすべきか、その効果や課題について、学識経験者の講演、企業の事例発表を通してみなさまとともに考え、生涯現役社会の実現を目ざすイベントです。  開催時の雰囲気や盛り上がりを、臨場感のある動画でご実感ください。 視聴申込方法 申込み〆切 令和3年3月22日(月) シンポジウムお申込み専用URL https://moushikomi.jeed.go.jp ※専用フォームからのお申込みがむずかしい場合、下記お問合せ先にご連絡ください。お電話で対応させていただきます。 @ 申込みフォームの表示 【お申込み専用URL】(上記)からお申し込みください。 A 申込みフォームへ入力 各項目を入力し、「個人情報の取扱いに関して同意する」にチェックを入れ、「入力内容の確認画面へ進む」ボタンを押してください。 B 入力内容の確認と送信 入力内容をご確認後、「送信する」ボタンを押してください。ご登録いただいたアドレスに申込確認メールが配信されます。 C 動画視聴 申込確認メールに掲載されているURLから、動画をご視聴ください。 (動画の視聴には、メールに記載されている視聴ID、パスワードが必要です) ※申込みの際に取得した個人情報は適切に管理され、当機構が主催・共催・後援するシンポジウム・セミナー、刊行物の案内等にのみ利用します。利用目的の範囲内で適切に取り扱うものとし、法令で定められた場合を除き、第三者に提供しません。 プログラム 講演1 「高年齢者雇用安定法改正について」 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課 講演2 「高齢社員の戦力化に向けた賃金・評価制度」 講師 今野 浩一郎氏(学習院大学 名誉教授 学習院さくらアカデミー長) パネルディスカッション 《テーマ》 「高齢社員戦力化に向けた活用戦略と賃金・評価制度」 コーディネーター:今野 浩一郎氏 パネリスト:川崎重工業株式会社/太陽生命保険株式会社 申込みお問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課 TEL:043-297-9527 主催●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援●厚生労働省 2021 3 令和3年3月1日発行(毎月1回1日発行) 第43巻第3号通巻496号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会