【表紙2】 10月は「高年齢者就業支援月間」です 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ  毎年ご好評をいただいている「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を、本年度も開催します。  本年度は、令和3年4月からの改正高年齢者雇用安定法施行により、70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」になったことにともない、高年齢者雇用安定法改正をテーマとして、10月〜11月にかけて全国5都市(東京・宮崎・岩手・岐阜・大阪)で開催します。  内容は、学識経験者による講演をはじめ、高齢社員の戦力化に取り組んでいる企業や継続雇用・定年延長を行った企業の事例発表、学識経験者をコーディネーターとしたパネルディスカッションが中心です。  高齢者が活躍できる環境整備の必要性や今後の高齢者雇用について、みなさまとともに考える機会にしたいと思いますので、ぜひご参加ください。 開催スケジュールは、以下の通りです(主な内容は、54、55ページをご覧ください)。 他会場のスケジュールは、次号でお知らせします。 なお、ご不明な点は、当機構 雇用推進・研究部 研究開発課までお問い合わせください。 参加無料 東京 日時 令和3年10月6日(水) 13:00〜16:00 場所 日本教育会館一ツ橋ホール 東京都千代田区一ツ橋2-6-2 詳細 今号の54ページをご覧ください ※東京開催のシンポジウムでは、第一部(11:00〜11:40)として、高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)を開催します。 宮崎 日時 令和3年10月14日(木) 13:30〜16:35 場所 宮崎市民文化ホール 宮崎市花山手東3-25-3 詳細 今号の55ページをご覧ください 岩手 日時 令和3年10月28日(木) 13:00〜16:00 場所 いわて県民情報交流センター(アイーナ) 盛岡市盛岡駅西通1-7-1 詳細 今号の55ページをご覧ください お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 ※新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、開催日などに変更が生じる場合があります。当機構ホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 ※シンポジウムについては、開催当日のライブ配信のほか、後日YouTubeにおいてオンデマンド配信を行います。当機構ホームページでお知らせしますので、ご確認ください。 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.76 激動の時代を乗り越えてきたシニアの知識・経験を確実に次世代へ 京葉銀行 執行役員 人事部長 渡辺聡子さん わたなべ・さとこ 1990年、京葉銀行稲毛支店に入行。翌年より人事部に異動し、人事管理業務に従事。2015年に発足した女性活躍推進チームのチームリーダー、人事部副部長などを経て、2020(令和2)年に人事部長、2021年より執行役員に就任。  女性の活躍推進や男性の育児休業取得をはじめ、働きやすい職場づくりに注力している京葉銀行。高齢者雇用でも先進的な取組みを行っており、1993(平成5)年に60歳以降の継続雇用制度をいち早く導入し、2018年には、それまで運用により行っていた65歳以降の雇用を制度化し、「シニアスタッフ行員制度」を開始しました。今回は、渡辺聡子人事部長に、同行の高齢者雇用について、お話をうかがいます。 運用で行っていた65歳以降の雇用を制度化、再雇用基準と期待役割を明確に ―2018(平成30)年7月から、70歳を上限とする新たな継続雇用制度「シニアスタッフ行員制度」を導入されました。導入のねらいについて教えてください。 渡辺 当行の定年は60歳ですが、継続雇用制度は1993年から導入していました。「スタッフ行員制度」と呼んでいます。導入後に上限年齢を徐々に延ばし、法律が定めたスケジュールより早く、希望者全員を65歳まで継続雇用していました。  かつての銀行業界では、60歳定年制度下でも、55歳前後で他社に転籍させる前提で人事管理を行うところが多かったようですが、当行にはそうした慣行がなく、ほぼ全員が定年まで勤め上げ、その後もスタッフ行員として働き続けるのがあたり前という風土が定着していました。 ―希望者全員65歳までの雇用確保措置を義務とする法改正が行われたのは2012年(2013年4月施行)ですが、先駆的に取り組まれることとなったきっかけを教えてください。 渡辺 その背景には、平成初期に新卒者の大量採用が続き、指導者が足りないという声が各部署から上がっていたことがあります。60歳定年を迎える年代の行員は、業務経験が長く、また役職定年制により55歳で役職を離れており、若手の指導をお願いするにはうってつけの条件を備えていたのです。  スタッフ行員制度は、60歳の誕生月の翌月から1年ごとに契約を更新し、65歳に到達するまでという年齢上限を設けてはいましたが、実際には配属部署からの要請がある場合に、個別対応で65歳以降も継続雇用を行っていました。しかし、その運用を部署ごとの判断に委ねることで不公平感が生まれる懸念がありましたので、継続雇用の基準や、65歳以上のスタッフに期待する役割、そのほかの勤務条件などを明確にするために、70歳までの「シニアスタッフ行員制度」として制度化したのです。  制度化される前に65歳以降も継続雇用されていたシニアは「OBパート」と呼ばれていましたが、制度発足時にその方々もシニアスタッフ行員に移行できることとし、かつ、すでに当行を退職した70歳未満のOB・OGもこの制度の対象としました。 ―65歳以降、シニアスタッフ行員として再雇用される際の基準は、どのようなものなのでしょうか。 渡辺 基準として7項目を明示しています。例えば「スタッフ行員として65歳の雇用契約期間満了まで勤務実績があること」、「継続して勤務する希望があること」、「前年の評定が一定以上の評価であること」などのほか、健康状態や出勤率といった内容で、ほとんどの人が達成可能なレベルです。これまで継続勤務を希望された方のほぼ100%がシニアスタッフ行員として雇用されています。 変化の激しい時代をくぐり抜けたシニアの知識・スキルを、若手にしっかりと伝えてほしい ―シニアスタッフ行員はどのような業務を担当し、どのような役割が期待されていますか。 渡辺 60歳からのスタッフ行員も、65歳からのシニアスタッフ行員も、業務内容は原則としてそれまでと変わりません。現場も、業務の経験を活かして貢献してほしいという要望を持っています。もちろん本人にとっても、経験のある仕事のほうがパフォーマンスを上げやすく、モチベーションを維持しやすいことは間違いありません。  シニアスタッフ行員に期待する役割としては、@経験豊富な行員として業務面で後輩のよき手本となる、Aつちかった知識・技能伝承のにない手となる、そしてB金融市場における競争力を維持するための高度専門家としての貢献――この3点をあげています。  いまの60代後半の方々は、1970年代後半に入行し、その後、オンラインシステムの急速な発展、バブル崩壊と不良債権問題への対応、規制緩和やグローバル化、業界の再編など、目まぐるしく厳しい「変化」をくぐり抜けてきました。そうした大きな環境変化を背景に、融資判断や回収手段などの業務知識にも、常に新しいものが求められてきました。  例えば融資の可否について、近年は、スコアリング※など外見の指標を重視して判断する傾向が強いですが、経験豊富なシニアはそれ以外の観点からも若手に助言をするなど、後輩の育成に貢献しています。  また、銀行業務のオンライン化が進み、お客さまと対面で接する頻度が以前ほどではなくなっていますが、そんな世の中になっても、やはり直接お客さまのお話をうかがい、ニーズを理解し、最適な提案をするという対面でのコミュニケーションが銀行業務の基本です。シニアがつちかってきたコミュニケーションのスキルは、若手にもしっかり伝えてほしいと思います。  また、業務上の必要性から、ファイナンシャルプランナーや中小企業診断士、社会保険労務士のような高度な資格を持っている方も多く在籍していますので、引き続き専門知識を活かした仕事に就いて、銀行の競争力の維持に努めてほしい。こうした役割も期待しています。  このように、変化の大きな時代を乗り越えてきたシニアの経験や高度な知識・技能を、確実に次の世代に伝承すること。これが先にあげた三つの役割に込めた思いです。これからも銀行を取り巻く環境は変わっていくと思いますが、過去の変化をどう受けとめ、どのように理解し、行動してきたか。その先輩たちの知見に学ぶことは、次世代をになう行員が、これからさらに複雑化する時代を乗り越えていくうえで、とても大事なことだと考えています。 「期待されている」からモチベーションが向上成果の評価を処遇に反映させることが課題 ―スタッフ行員もシニアスタッフ行員も、業務内容は原則として定年前と変わらないということですが、働き方や賃金などはどうなりますか。 渡辺 スタッフ行員は原則としてフルタイム勤務(月150時間)ですが、業務内容または本人の希望によりミドルタイム勤務(月105時間)となる場合もあります。シニアスタッフ行員は、原則がミドルタイム勤務となり、場合によってはショートタイム勤務(月75時間)とすることも可能です。時間数の違いは出勤日数の違いであり、月の所定労働時間が短くても、1日の勤務時間はフルタイムと変わらないので、期待する役割の遂行に影響はありません。  また、店舗間異動はありますが、転居をともなう転勤はありません。もともと当行では現役行員でも、転居をともなう転勤はほとんどありません。最近はお客さまとの長いお付き合いを重視する地域密着型の営業が重要になっていることもあり、短期での店舗間異動は減る傾向にあります。  賃金面では、スタッフ行員とシニアスタッフ行員の給与は職務給だけになります。6〜7ランクの等級があり、業務内容に応じてランクを決めますが、ランクが異なっても、水準の差はそれほど大きなものではありません。能力評価は行いますが、職務給なので、仕事が変わらなければ、評価の結果でランクが上下することはありません。  なお、給与形態は、スタッフ行員は月給制で、シニアスタッフ行員は時給制になります。職務給のランクが同じであれば、時給換算した給与額は、スタッフ行員もシニアスタッフ行員も同水準です。  定年退職後の継続雇用期間については、退職金はありません。また、現役時代に支給していた業績評価に基づく賞与もありません。その代わりに、スタッフ行員・シニアスタッフ行員の仕事の成果に対する処遇として「メリット配分」と呼ぶ報奨制度があります。金融商品の販売、新規法人の開拓実績などの成果に対して、1回50万円を上限に年2回支給する仕組みです。 ―シニアスタッフ行員制度を導入して3年が経ちました。成果と今後の課題をお聞かせください。 渡辺 65歳を過ぎても職場で役割を持ち、期待されているという点で、シニアのモチベーション向上の効果が表れています。職場からも、指導員として若手行員とペアを組ませることで渉外業務などの技能継承が効果的に行われていると好評です。  今後の課題は、人事評価によって仕事の成果が給与に反映されない現状をどう考えるかということです。65歳を超えると、健康状態やキャリア観などについて個人差が目立ってきます。それに基づく仕事への熱量の違いなどが、成果の違いにも表れます。このような成果の差を処遇に反映させるかどうかも、モチベーションに大きく影響しますから、今後の検討課題です。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博) ※ スコアリング……企業の決算書の数値や市場動向などをもとに信用を採点・格付けしたもの 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2021 September 特集 6 “働き続ける”ための仕事と介護の両立支援 7 総論 介護離職を防止するために 独立行政法人労働政策研究・研修機構 主任研究員 池田 心豪 11 解説@ Q&Aで学ぶ育児・介護休業法 社会保険労務士(社会保険労務士事務所あおぞらコンサルティング) 上野香織 15 解説A 仕事と介護の両立支援のポイント 特定社会保険労務士(社会保険労務士事務所あおぞらコンサルティング) 池田直子 19 事例@ 日本ユニシス株式会社(東京都江東区) ダイバーシティ施策の一環として仕事と介護の両立を支援 23 事例A 有限会社COCO-LO(群馬県桐生市) 独自の休暇や意識改革の教育などにより仕事を続けたい従業員の思いに応える 1 リーダーズトーク No.76 京葉銀行 執行役員 人事部長 渡辺聡子さん 激動の時代を乗り越えてきたシニアの知識・経験を確実に次世代へ 27 日本史にみる長寿食 vol.335 サツマイモを食べて長生き 永山久夫 28 短期連載 マンガで見る高齢者雇用 エルダの70歳就業企業訪問記 《第5回》株式会社きむら 34 江戸から東京へ 第106回 楽しきかな、隠居の城造り・街づくり 佐竹義重 作家 童門冬二 36 高齢者の職場探訪 北から、南から 第111回 石川県 株式会社森八 40 高齢社員のための安全職場づくり 〔第9回〕 腰痛災害の防止A 高木元也 44 知っておきたい労働法Q&A《第40回》 退職金の支払い根拠、喫煙防止と職務専念義務・労働時間管理 家永 勲 48 生涯現役で働きたい人のための NPO法人活動事例 【第4回】 特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター 50 いまさら聞けない人事用語辞典 第16回 「役員」 吉岡利之 52 TOPIC 50代からは「社会参加」で生きがい若者世代を応援する存在に 人生100年時代未来ビジョン研究所レポートより 54 お知らせ 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 56 お知らせ 65歳超雇用推進助成金のご案内 58 BOOKS 59 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 目ざせ生涯現役! 健康づくり企業に注目! 【第2回】 株式会社ローソン(東京都品川区) 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第51回]穴埋め問題 篠原菊紀 【P6】 特集 “働き続ける”ための仕事と介護の両立支援  人手不足、多様性の時代にある昨今、社員が長く安心して働ける職場環境を整えるためには、「仕事と家庭の両立」を支援する制度の整備が欠かせません。特に家族の「介護」の問題を抱える社員は、働き盛りで経験豊富な40〜60代が多く、少子高齢化による人手不足が懸念されるなか、介護疲れによる生産性の低下や介護離職を予防するためにも、「仕事と介護の両立支援」は、企業にとって欠かせない取組みです。  そこで今回は、介護離職から社員を守り、“働き続ける”ための「仕事と介護の両立支援」について解説します。 【P7-10】 総論 介護離職を防止するために 独立行政法人労働政策研究・研修機構 主任研究員 池田 心豪(しんごう) 1 介護は育児と違う  介護離職防止策の柱として、育児・介護休業法は、介護休業を企業に義務づけています。しかし、実際は、多くの介護者が介護休業は取らずに仕事を続けています。反対に、介護休業の必要性とは別の理由で離職する介護者もいます。これまで介護休業の取得者が一人もいない企業で、ある日突然、従業員が介護離職を申し出ることがあります。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。  育児・介護休業法は、1991(平成3)年制定の育児休業法に介護の規定を加えて1995年に制定されました。介護のための制度は先行してつくられた育児のための制度をひな形にしています。育児休業と同じように、介護にも長期休業が必要だろうという類推のもとに介護休業制度はつくられています。勤務時間短縮等の措置も、もともと育児のためにあった制度です。年5日の介護休暇も、これに先だって子の看護休暇がありました。  しかし、介護は育児と似て非なるものです。家族のケアという意味では同じでも、乳幼児のケアと高齢者介護はかなり性質が異なります。そのため、育児と同じ発想でつくられた「仕事と介護の両立支援制度」は、働きながら介護をになう当事者のニーズとしばしば乖離(かいり)しています。  例えば、育児においては産後に子どもを預ける保育サービスを確保できなければ復職することはできません。そのため、子どもが法定の1歳に達するまでに保育所が決まらなかった場合、1歳6カ月さらには2歳まで育児休業(育休)を延長することができます。一方、高齢者介護においては、介護保険制度に基づくサービス(介護保険サービス)の利用開始までに、法定の93日(3カ月)もかかりません。  しかし、時間の経過にともない、在宅介護から施設介護への移行、新たな疾患の発症にともなう入院、最期が近づいてきたときのホスピスへの入所など、改めて介護休業を取る必要が複数回生じることがあります。育児の場合は、時間の経過とともに子どもは自立して親の手を離れていきますが、反対に高齢者介護は、時間の経過とともに要介護状態が重くなり、依存を強めていきます。そうした違いを考慮して、2016年改正の育児・介護休業法は、介護開始時(始期)に1回という想定でつくられた介護休業を3回に分けて取得できるようにしました。  さらに、育児・介護休業法では、介護の終わりまで所定外労働の免除が認められますが、短時間勤務は義務化されていません。育児においては、3歳未満の子育てのための短時間勤務制度を企業に義務づけています。しかし、介護においては選択的措置義務であり、企業は短時間勤務の代わりにフレックスタイムや時差出勤あるいは介護サービスの費用補助の制度を導入してもよいことになっています。  これも育児と異なる介護の性質をふまえています。近年、独身の介護者が増えていますが、彼(女)らの多くは自らの収入で家計を支えながら介護をする必要があります。短時間勤務のように収入の減少をともなう両立支援制度は、家計にやさしくありません。同じことは一人親世帯にもいえますが、育児より介護の方が、ケアに費やす時間の確保と家計維持のための収入の確保という問題は一般的になりつつあります。そのため、なるべく所定労働時間は働ける方がよいという発想で、フレックスタイムや時差出勤制度を利用する選択肢を残しています。そのうえで、所定外の残業や休日労働は免除されて介護の時間を確保できるという考え方です。  長期休業や大幅な労働時間の短縮は、所得の減少(所得ロス)だけでなく、仕事の責任を果たしキャリアを形成する機会を制約すること(キャリアロス)にもつながります。その意味でも、なるべく普段通りに勤務しながら介護に対応できた方がよいといえます。介護に費やす時間をなるべく多くするのではなく、なるべく仕事をしながら柔軟に介護に対応するという考え方のもと、2016年の育児・介護休業法改正においては仕事と介護の両立の実態を検討し直し、図表1のような制度設計になりました。その前提にあるのは、介護は育児とは違うということです※。 2 出勤していれば問題ないといえるか  介護においては、育児と異なり、両立支援制度を利用しないで通常勤務をしているケースが少なくありません。介護休業や介護休暇の代わりに年次有給休暇(年休)を取り、わざわざ所定外労働免除を申請することなく、自らの裁量で残業調整をして介護に対応しています。  そのようにいうと、介護は仕事と両立しやすいと思われるかもしれません。しかし、そうではありません。仕事を休まず、短時間勤務もしないで、普段通りに出勤していても思うように働けないということが介護では起きます。勤務時間外の介護負担が仕事に悪影響を及ぼすことがあるのです。  典型は介護疲労の問題です。通常勤務で出退勤ができても、帰宅後や休日の介護を継続的にになうことで心身の疲労が蓄積していくのです。そのような状態で仕事と介護の疲労が二重に蓄積する生活が続けば、体力や集中力の低下は避けられないでしょう。結果として、仕事の能率が低下する可能性があります。好ましくない健康状態で出勤して仕事に従事することを、一般に「プレゼンティーズム」といいますが、介護疲労によるプレゼンティーズムという問題に視野を広げると、仕事と介護の両立は決して容易ではないといえます。  特に深夜の介護は睡眠に悪影響を及ぼし、深刻な問題につながるおそれがあります。深夜介護による睡眠不足から仕事中に居眠りをしてしまうことがあります。それが、業務中の居眠り運転による事故、つまり労働災害(労災)をもたらした事例もあります。特に近年は、認知症による昼夜逆転が介護者の睡眠に影響する例が目立ちます。介護疲労は要介護者への暴力や介護者の自殺など痛ましい事件の原因として語られますが、そのような介護生活のなかで、仕事だけは普段通りにできるということはありません。  もう一つ、この問題が示唆する重要なポイントは、介護離職をしていなければ問題がないとはいえないことです。介護による健康状態の悪化が就業を困難にし、介護離職につながることはあります。しかし、介護疲労が蓄積し、思わしくない健康状態であっても、多くの介護者は何とか仕事を続けられるように努力します。その努力と格闘の過程で仕事の能率低下という事態を招くのです。つまり、離職には至っていない状態で起きている問題にも目を向ける必要があります。その意味で、介護離職がゼロになっても、仕事と介護の両立困難を抱える介護者がゼロになるわけではないのです。また、介護離職をゼロにするためには、介護疲労が仕事に及ぼす悪影響に留意し、離職に至る健康状態の悪化を未然に防ぐことが重要であるともいえます。  しかし、普段通りに出勤していると、その疲労に上司や同僚も気づかないことがあります。特に育児と同じ発想で介護を考えていると、介護者の健康問題を見過ごしてしまうでしょう。育児・介護休業法は育児の発想を介護に応用していると前述しましたが、その根幹にあるのは仕事と家庭の両立を生活時間配分の問題としてとらえる発想です。出勤日や勤務時間に家庭の責任を果たす必要が生じることから、休暇や休業、短時間勤務によって時間調整を行う必要があるという発想です。  図表2の白いボックスが示すように、育児・介護休業法における仕事と介護の両立支援制度は、やはり仕事と介護の生活時間配分の観点から設計されています。ですが、介護においては生活時間配分とは別の次元で健康問題が生じます。仕事と介護の時間調整の必要がなくても、勤務時間外の介護負担の蓄積によって心身の疲労が蓄積し、介護者の健康状態が悪化することによって、思うように働けなくなるという問題が生じ得るのです。それが図表2のグレーのボックスです。これらの要因は、育児との関係では問題にされてきませんでした。その意味でも介護は育児と違うという考え方を持つ必要があります。 3 望ましい介護の多様化  介護は育児と違って、先行きの見通しを立てにくい、そのことが介護者の負担感を大きくしています。  生活時間配分の問題として、介護休業や短時間勤務制度は、一時的な事態に対応する手段としては有効ですが、日常的な介護を継続的にになうための利用は望ましくありません。終わりのみえない介護においては、「いつになったら通常の働き方に戻れるのか」という問題が起きるからです。健康との関係でも、心身に疲労を抱えた生活が続くと、介護がいつまで続くのかと途方に暮れてしまいます。  いつまで続くのかわからないのであれば、いつまでも続けられる方法で仕事と介護の両立を図ることが重要です。そのために、要介護者と適切な距離を取り、息抜きをすることも必要です。生活時間配分においても仕事と介護で時間を埋めるのではなく、自分の時間を持つことが重要です。  近年の高齢者介護においては、乳幼児の育児のようなつきっきりのケアを献身的に行うのではなく、ケアが必要であっても要介護者自身にできることは自分でさせる、という意味で要介護者の自立を重視する考え方が広がりつつあります。そのようにして、要介護者と適切な距離を取ることで、生活時間配分の面でも健康管理の面でも、仕事と介護を両立しやすくなっているようです((独)労働政策研究・研修機構2020)。献身的な介護をよいこととする考え方もありますが、望ましいケアのあり方が多様化しているのです。  仕事と家庭の両立に関する議論は、ケアのにない手に焦点をあて、社会的サービスの使いやすさや、家族との分担を問題にしてきました。しかし、介護においては、要介護者をどのようにケアをするかという問題にも目を向ける必要があります。生活時間配分と健康問題の基底に、ケアをめぐる人間関係の問題があることも育児と異なる介護の特徴だといえます。 〔参考文献〕 ●池田心豪(2021)『仕事と介護の両立』佐藤博樹・武石恵美子責任編集、シリーズ ダイバーシティ経営、中央経済社 ●(独)労働政策研究・研修機構(2015)『仕事と介護の両立』労働政策研究報告書No.170 ●(独)労働政策研究・研修機構(2020)『再家族化する介護と仕事の両立』労働政策研究報告書No.204 ※ 池田(2021)は著者『仕事と介護の両立』にて「介護は育児と違う」という視点から、育児・介護休業法を体系的に解説しています 図表1 2016年改正育児・介護休業法における仕事と介護の両立支援制度 要介護状態 (制度利用の申出が可能な状態) ※要介護状態にある対象家族ごとに以下の制度が利用可能 介護終了 (対象家族の死亡) 介護休業(93日) 選択的措置義務★ (介護休業をしない期間利用可能) 93日間 介護休業@+A+B=93日 :現行制度 :努力義務 :改正部分 介護休業@ 介護休業A 介護休業B 選択的措置義務 ★と措置内容は同様(いずれか一つを事業主が選択して措置) 1 週又は月の所定労働時間の短縮措置(短時間勤務) 2 フレックスタイム制度 3 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度) 4 介護サービスを利用する場合、労働者が負担する費用を助成する制度その他これに準ずる制度 3年間の間で少なくとも2回以上利用が可能 所定外労働の免除 介護休暇 (対象家族1人につき年5日、2人以上の場合に10日付与される) 半日単位の取得 (所定労働時間の二分の一) 時間外労働・深夜業の制限 家族を介護する労働者に関して、介護休業制度又は週若しくは月の所定労働時間の短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする時間、回数等に配慮した必要な措置を講ずる努力義務 出典:厚生労働省Web サイト「平成28 年改正法の概要」 (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000132033.pdf) 図表2 仕事と介護の両立相関図 身体介助の必要 緊急対応と態勢づくり 連続休暇の必要 介護休業 退職 通院介助 介護サービスの供給制約 勤務時間 調整の必要 介護休暇・短時間勤務 認知症 疲労 ストレス 健康状態悪化 仕事の能率低下 出典:(独)労働政策研究・研修機構(2015)『仕事と介護の両立』労働政策研究報告書No.170 【P11-14】 解説1 Q&Aで学ぶ育児・介護休業法 社会保険労務士 上野香織(社会保険労務士事務所あおぞらコンサルティング)  本稿では、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で定める基本的な従業員の勤務にかかわるルールについてQ&A形式で解説します。 Q1 介護休業とはどんな制度ですか?  介護休業は、要介護状態の家族を介護するために、労働者の緊急的な対応措置として一定期間の休みを取得できる制度です。例えば、入社1年以上など労使協定等に定めた基準を満たした者が取得できます。  対象となる家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、配偶者の父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫です(図表1)。また、要介護状態とは、負傷、疾病、身体、精神上の障害により、2週間以上の常時介護を必要とする状態をいい、目安は介護保険でいう要介護2以上となります。  休業期間の上限日数は家族1人につき93日です。この日数に達するまでは、対象家族一人につき分割して3回まで休業の申し出ができます。申出は原則、休業開始予定日の2週間前までに書面等で行い、会社としても申出を受領したことなどを従業員本人に通知します。  なお、休業中に賃金が支払われなくても、年齢に関係なく雇用保険に加入している従業員であれば、後で述べる介護休業給付金を受け取ることが可能です。 Q2 介護保険の要介護認定を受けなければ介護休業等の対象家族とはならないのでしょうか?  育児・介護休業法と介護保険法では、要介護の認定の基準が異なるため、介護保険の要介護認定を受けなくても対象家族となる可能性があります。  まず、介護保険法の要介護状態は「身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、原則6カ月にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて、要介護状態区分に該当するもの(要支援区分に該当するものを除く)」と定義されています。実際の介護保険の認定では、要支援も含めて、軽い順から重い順に要支援1から要介護5のいずれかに区分されます。状態の目安は図表2の通りです。  一方、育児・介護休業法の要介護状態は、2週間以上の常時介護を必要とする状態をいいます。介護保険では要介護2以上が相当するものの、育児・介護休業法での要介護状態の基準(図表3)に該当すれば、要介護状態と判断できます。この場合、会社は従業員を通じて状態の確認を行うことで、対象家族か判断することもできます。 Q3 定年後の再雇用で1年更新の嘱託社員は介護休業を取得することはできますか?  1年などの契約期間に定めがある場合でも介護休業の取得は可能です。ただし、申出時点で、引き続き雇用された期間が1年未満である者(※2022〔令和4〕年4月より開始の休業で本要件は撤廃予定)、または取得予定日から起算して93日を経過する日から6カ月を経過する日までの間に労働契約の期間満了が決まっている場合には原則取得はできません。また、ほかに労使協定を締結している場合には契約期間の定めの有無にかかわらず、申出日時点で入社1年未満の者、申出の日から93日以内に雇用期間が終了する者、週所定労働日数が2日以下の者は介護休業取得の対象外となります。  このため実務上は、これまでの通算契約期間が短い場合や労働契約満了をもって雇用の終了がすでに決まっているなどの場合には、対象者とならないケースがあるので注意が必要です。契約期間の定めがある従業員でも誤解なく介護休業が取得できるようにルールの整備をしておきましょう。 Q4 介護休業のときに受給できる介護休業給付金とはどのようなものでしょうか?  介護休業給付金は、介護休業期間である最大93日間(3回まで)受け取ることができる雇用保険の給付金です。1日分の給付額は、およそ1日分の給与(休業開始前の給与6カ月分を180で除した休業開始時賃金日額)の67%です。例えば、平均的な給与が20万円の人が1カ月の介護休業を取得する場合、1支給単位期間(1カ月を30日とした期間)あたり13・4万円程度が受給できます。  なお、受給にあたり、雇用保険に加入していること以外にも、原則休業開始前の2年間に賃金が11日以上支払われている月が12カ月以上あること、1支給単位期間での就労日数が10日以下であること、介護休業期間中に休業開始時賃金日額の8割以上の賃金が支払われていないことなどの要件があります。ちなみに賃金が支払われる場合、一定以上支払いがあるとその分給付は減額されます。また、1支給単位期間の上限額が設定されており、2021年8月1日以降は33万2253円となっています。  このような介護休業給付金ですが、従業員にとっては非課税で所得税などが差し引かれずに受給できるメリットもあり、活用するとよいでしょう。 Q5 介護休暇とはどんな制度ですか?  介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や世話をする労働者が取得できる休暇制度です。介護休業制度と要介護状態の基準や家族の範囲は同じですが、対象家族の通院などの付添い、介護サービスの必要な手続きの代行にも利用できる点が異なります。手続きも、休暇当日の電話での事前申出も可能とするなど、利便性が高いのが特徴です。  介護休暇の取得可能日数は、対象となる家族が1人の場合1年度につき5日、2人以上の場合に10日です。介護休暇の有給、無給は会社が定めます。原則、すべての労働者が取得できますが、労使協定で定めている場合には、入社6カ月未満や週所定労働日数が2日以下の者は取得できません。  従業員から見た介護休暇の利便性は、2021年1月施行の法改正により時間単位の利用が可能となったことでさらに高まったといえるでしょう。時間単位で利用すれば、始業・終業時間で労働時間を短縮できるほか、始業と終業時刻の間に取得すること(中抜け)も可能です。ただし、中抜けを認める制度とするかは、従業員の使い勝手のよさと業務上の影響などから会社が判断します。そもそも、1時間単位の利用は会社側の管理も煩雑になりやすいのでこの点にも注意してルールを決める必要があります。なお、業務の性質や実施体制に照らして時間単位で休暇を取得することが困難と認めた業務に就く従業員がいる場合に、時間単位の利用の対象外とするときは、労使協定を締結する必要があります。 Q6 休業や休暇以外に勤務で利用できる制度にはどのようなものがありますか?  従業員が継続的に仕事と介護を両立するためには、勤務にも一定の柔軟さが求められます。このため育児・介護休業法では休業・休暇以外に、要介護状態にある対象家族を介護する従業員を対象として、次のような勤務制度(図表4)を定めています。 @所定外労働の制限(残業免除) A時間外労働の短縮 B深夜業の制限 C所定労働時間短縮等の措置  次のいずれかもしくは複数から会社が選択 ・短時間勤務制度(1日の所定労働時間を短縮する制度や所定労働日数を少なくする制度など〈所定労働時間が8時間の場合2時間/日、7時間以上の場合1時間/日が目安〉) ・フレックスタイム制度 ・始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ ・従業員が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度(従業員が直接介護するのに代わる介護サービス費として、会社が所定労働日数1日あたり2時間、料金の半額相当を負担するものが目安)  なお、@からBは、利用回数などの制限はないのに対して、Cの措置は利用開始日から3年以上の期間で利用できることを求められています。そのため会社として、少なくとも利用開始日から3年以上の間、いずれかの制度を従業員が利用できるようにします。また、この3年の間に介護休業も取得するというケースを想定し、2回以上の利用ができるようにしておく必要もあります。勤務制度は、仕事を続け一定の収入を確保しながら介護をする従業員にとって大切です。会社が仕事と介護の両立を支えるべく利用できる制度は、わかりやすく「育児・介護休業規程」等で定めておきましょう。 図表1 対象家族の範囲 祖父母 父 祖父母 母 本人 兄弟姉妹 配偶者の父 配偶者の母 配偶者 子 孫 介護関係の「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみ ※厚生労働省の公表資料をもとに筆者作成 図表2 介護保険で認定を受けた場合の状態目安 介護区分 心身状態・運動能力の例 軽 重 要支援1 介護状態とは認められないが、社会的支援は必要とする状態 掃除などの家事で介助が必要。食事やトイレは自分でできる。 要支援2 部分的に介護を必要とする状態(ただし、状態の維持や改善見込みあり) 立ち上がりや歩行が不安定で一部介助が必要。トイレや入浴に一部介助が必要。問題行動や理解の低下が見られることがあり、介護予防サービスを提供すれば状態の維持、または回復が見込まれる。 要介護1 部分的に介護を要する状態 立ち上がりや歩行が不安定で一部介助が必要。トイレや入浴に一部介助が必要。問題行動や理解の低下が見られることがある。 要介護2 軽度の介護を要する状態 立ち上がりや歩行が自力ではできない場合がある。トイレや入浴などに一部または全介助が必要。問題行動や理解の低下が見られることがある。 要介護3 中等度の介護を要する状態 立ち上がりや歩行が自力ではできない。トイレ、入浴、衣服の着脱などに全介助が必要。問題行動や理解の低下が見られることがある。 要介護4 重度の介護を要する状態 トイレ、入浴、衣服の着脱などの日常生活のほとんどに介助を必要とする。多くの問題行動や理解の低下が見られることがある。 要介護5 最重度の介護を要する状態 トイレ、衣服の着脱、食事など生活全般に介助を必要とする。多くの問題行動や理解の低下が見られることがある。 ※あおぞらコンサルティング作成 図表3 常時介護を必要とする状態に関する判断基準 次の状態1〜12のうち、Aが2つ以上またはBが1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。 項目/状態 A B 1 座位保持(10分間一人で座っていることができる) 支えてもらえればできる できない 2 歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) 何かにつかまればできる できない 3 移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 4 水分・食事摂取 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 5 排せつ 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 6 衣類の着脱 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 7 意思の伝達 ときどきできない できない 8 外出すると戻れない ときどきある ほとんど毎回ある 9 物を壊したり衣類を破くことがある ときどきある ほとんど毎日ある 10 周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れがある ときどきある ほとんど毎日ある 11 薬の内服 一部介助、見守り等が必要 全面的介助が必要 12 日常の意思決定 本人に関する重要な意思決定はできない ほとんどできない ※厚生労働省の公表資料をもとに筆者作成 図表4 仕事と介護の両立のための勤務制度(介護休業・介護休暇以外) 制度 概要と対象者 手続き @ 所定外労働の制限(残業免除) ●残業を免除することができる ●要介護状態の対象家族を介護する者が対象だが、労使協定で定めた場合に次の者は対象外 ・入社1年未満の者 ・週所定労働日数が2日以下の者 ・1回の請求につき、1カ月以上1年以内の期間 ・開始日の1カ月前までに、書面等により申出 A 時間外労働の短縮 ●時間外労働(労働基準法で定める時間を超えた時間外労働)を1カ月24時間、1年150時間に短縮できる ●要介護状態の対象家族を介護する者が対象だが、次の者は対象外 ・入社1年未満の者 ・週所定労働日数が2日以下の者 ・1回の請求につき、1カ月以上1年以内の期間 ・開始日の1カ月前までに、書面等により申出 B 深夜業の制限 ●深夜業(22時から翌5時の勤務)を免除できる ●要介護状態の対象家族を介護する者が対象だが、次の者は対象外 ・入社1年未満の者 ・介護ができる(深夜業に従事していない、産休中でない等の)16歳以上の同居の家族がいる者 ・週所定労働日数が2日以下の者 ・所定労働時間の全部が深夜にある者 ・1回の請求につき、1カ月以上6か月以内の期間 ・開始日の1カ月前までに、書面等により申出 C 所定労働時間短縮等の措置 ●短時間勤務制度/フレックスタイム制度/始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ/従業員が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度のうちいずれか(あるいは複数)を利用できる ●要介護状態の対象家族を介護する者が対象だが、労使協定で定めた場合に次の者は対象外 ・入社1年未満の者 ・週所定労働日数が2日以下の者 ・利用開始日から起算して3年以上。2回以上申出可能 ※あおぞらコンサルティング作成 【P15-18】 解説2 仕事と介護の両立支援のポイント 特定社会保険労務士 池田直子(社会保険労務士事務所あおぞらコンサルティング) 1 はじめに  企業が介護離職防止のために両立支援を考えるとき、介護する従業員すべてに適した支援策はないといっても過言ではありません。介護は介護される人の状況や介護する人の事情が多岐にわたります。このような特徴をふまえて、企業が仕事と介護を両立するための支援を検討するうえでのポイントを解説します。 2 両立支援の必要性  仕事と介護の両立支援は、企業と従業員それぞれにとって意味があります。  企業にとっては、従業員が離職することで労働力が不足するのを回避するだけでなく、技術や技能の承継や、管理職が突然離職することによる職場全体の生産性の低下などを避けることができます。  介護する従業員は、肉体的にも精神的にも疲弊します。また、介護離職をすると収入が途絶え経済的にも大きなマイナスとなるほか、キャリアの断絶にもなってしまいます。企業が仕事と介護の両立支援をすることで、介護する従業員を肉体的、精神的、経済的に守ることができます。 3 両立支援の策定手順  両立支援の策定の手順は図表1のように進めていきます。まず、両立支援の目的は、最近では、介護離職防止だけではなく、介護する従業員の働きやすさに重点をおく企業、事前の準備に力を入れ円滑な両立を目ざすことを目的にする企業もあります。  次に、自社の現状やニーズの把握をします。すでに一度、現状把握をした企業であっても状況は変わります。前回から一定の期間が経過している場合は、実施した支援策の効果を含めて現状とニーズを再度把握しましょう。現状把握をしておきたい項目の例は図表2の通りです。最近では、介護を隠すような雰囲気が少なくなってきましたが、個人差もあるので、アンケートをとる際はプライベートな情報に配慮します。  アンケートは、最初に現在の介護の状況、介護の可能性について確認し、その介護の状況にあわせて設問を変えて設定すると効果的です。また、介護の可能性はあっても具体的な介護のイメージがつかない人が多い場合は、アンケートだけではなく、仕事と介護の両立についてのセミナーを実施したうえでアンケートを実施してもよいでしょう。  次に、把握した現状やニーズから両立支援の方向性を決めます。両立支援の方向性は、法律で決められた支援を行うだけではなく利用を促進する運用重視の方針、法律を超える制度を策定し制度の充実を図る方針、法律の支援制度にとらわれず予防から両立まで柔軟な制度を導入する方針など、把握した現状やニーズとほかの人事施策とのバランスを考えて決めていきます。  支援策にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、方針にそって導入を検討し決定します。その後、導入を決めた支援策の策定作業をし、従業員へ周知し、実施していきます。 4 支援の種類とそのメリット・デメリット  図表3は主な支援策のメリットとデメリットを企業と従業員の立場でまとめたものです。  勤務支援は、従業員にとっては選択肢が多いと両立する際に、柔軟な働き方ができる可能性が高くなりますが、企業からみると制度を運用するむずかしさや周囲の従業員の納得度などの問題があります。また、休暇を有給にすれば人件費の増加などにもなります。  例えば、未消化分の年次有給休暇を積み立てる積立年次有給休暇は、介護にかぎらず私傷病などでも利用できるようにすれば、比較的公平性が保たれ、納得度も高くなります。介護休業を法律で定められた期間より長くする場合は、法律を超えた期間分は雇用保険の介護休業給付金が支給されません。このため、せっかく介護休業を長くしても思いのほか活用されない場合があります。また、法律で定めた介護休業期間に会社が給与を全額支給すると、雇用保険から給付金が支給されませんので注意が必要です。  在宅勤務は、介護も仕事も両立しやすいと思われがちですが、実際は問題もあります。本来、在宅勤務は勤務する場所が会社ではなく自宅で仕事をすることをいい、仕事中に介護をしてよいということではありません。また、仕事中に介護をすることで、業務が捗(はかど)らず深夜に仕事をするなど、本人が無理をして健康を害する場合もあります。在宅勤務はあくまで、通勤時間がないことをメリットととらえ、勤務時間中は、自宅でもしっかり働くことができる環境をつくるようにしましょう。  介護する従業員の経済的な負担を軽減する支援策を検討する場合、導入時点では対象者が少なくても将来的には対象者が増えることも想定して導入を検討してください。今後は介護をする従業員が増加することが予想されます。慎重に検討していきましょう。  なかでも注意が必要なのが、介護休業中の本人負担分の社会保険料を、本人に代わり会社が負担する支援です。基本的に介護休業中は給与が支給されませんが、本人は社会保険料を負担しなければなりません。それを本人から保険料を徴収せず、会社が負担する支援です。企業によっては、これを介護支援制度と意識せず、社会保険料を負担している場合もみられます。介護する従業員にとって、給与が支給されず、収入が雇用保険の介護休業給付にかぎられるときに会社が社会保険料を負担してくれると「助かる」、「ありがたい」と考える人は多いと思います。しかし、社会保険料の負担の仕組みをよく理解していない従業員も多く、保険料が徴収されないのはあたり前だと誤解していたり、会社の負担のわりに介護する従業員は効果を感じないケースも見受けられます。この支援は、平均的に対象者の給与水準が高い場合が多く、標準報酬月額50万円の場合、協会けんぽ(東京都)で介護保険料も含めると月額約7万5000円が会社の負担となります。このほか、所得税の取扱いは、慶弔見舞金などのように非課税扱いではなく、会社が負担した社会保険料は給与として、税金の対象となるので注意しましょう。  そのほか、仕事と介護に関する情報提供や相談体制も必要です。情報提供などは企業の費用や運営などの負担がありますが、企業側が導入を決めれば比較的短期で導入することができます。ただ、求められる介護の情報は多岐にわたるため、すべての人に効果的な情報提供をすることがむずかしく、また、期待する効果が短期的にはわかりにくいところがあります。 5 支援策検討のポイントと注意点  支援策を検討する場合、介護は育児と違い、導入する支援策を介護する人みんなが利用できる場合は多くありません。また、介護する従業員が少ない場合はたくさんの支援策を導入し、働きやすくすることがよいように思いますが、利用者が増えた場合、周囲の理解を得ることが課題となります。仕事と介護の両立には支援策の充実を検討することも大事ですが、支援策を運用可能とする職場環境をつくることも重要です。仕事と介護の両立が可能な職場環境づくりは、介護だけではなく、仕事と育児の両立やハラスメントの予防にもつながります。仕事と介護の両立が可能な職場環境とは、多様性を受け入れ、情報の共有や連携が円滑で、業務が可視化され、多能工化され、ほかの人の業務支援がスムーズにできる職場づくりともいえます。 6 職場環境づくりと相談窓口の設置  仕事と介護の両立を円滑にするには、支援策の充実だけではなく、職場環境づくり、従業員の意識改革が重要です。2021(令和3)年に成立し、2022年4月に施行される改正育児・介護休業法では、育児休業が取りやすい環境整備のための研修や相談窓口などの設置、妊娠や出産を申し出た従業員に対して個別に意向の確認をするなどの措置が義務づけられました。  現在、介護については、法律で介護休業などの制度の利用や相談したことによる不利益な取扱いや、就業環境を害するハラスメントがないように相談体制を整備することが義務づけられています。現時点では育児が先行していますが、今後は仕事と介護の両立においても、環境整備のための研修や相談窓口の設置など、介護休業や介護の支援制度を利用しやすい雇用環境の整備が求められるでしょう。  仕事と介護の両立を支援するための相談体制では、ハラスメントなど両立を阻害する原因を排除するためだけではなく、仕事と介護の両立のための情報提供や相談も行います。具体的には、介護に関する会社の勤務措置、休業、休暇のほか、介護保険の利用方法やサービス内容、仕事と介護の両立の考え方などです。相談体制を構築する際は、相談事案の取扱いと相談の範囲に注意が必要です。相談内容によっては、人事部門や上司と連携し対応する必要があります。このような場合は、事前に本人へ情報を共有することの了解を得て、連携した上司が誤解して不利益な行動をとらないように注意します。  仕事と介護の両立の相談は、介護サービスやケアマネジャーに対する困りごとなどの介護自体の相談や家族とのトラブルの相談に発展する場合もみられます。介護が円滑にできないと従業員の介護負担が大きくなり、仕事と介護の両立ができない場合も出てきます。そのため、仕事と介護の相談は境界線がむずかしくなるので、介護自体の相談は原則、介護の専門家に任せ、会社側は家族の問題には介入しないようにします。ただ、人事担当者や管理職も介護がわからずには相談対応ができませんので、介護に関する基本的な知識があるとよいでしょう。  職場環境づくりでは、従業員の意識改革も必要です。まず、仕事と介護の両立に関する情報提供から始め、介護離職をしないことの意味や一人で抱え込まず多くの支援を活用することが大事であることを伝えます。また、ロールプレイングなどを通じて、介護の現実を具体的にイメージしてもらうことで、職場での「お互いさま」の意識を引き出すことにもつながっていきます。  仕事と介護の両立の支援は、制度の充実から運用しやすい環境づくりへと変化をしてきています。介護離職を防止するためには、それぞれの企業にあった支援策と環境整備を一歩ずつ進めていくことが大切です。 図表1 両立支援策定の手順 PDCAで見ること 目的の検討・決定 現状把握 ニーズの把握 介護施策等の方向性の決定 支援策の検討・決定 ニーズとのマッチング 支援策決定 支援策の策定作業 実施 ・実際の介護経験者 ・全員…介護での不安や直面の状況 ※介護に関する情報提供を実施後にアンケートを行う場合もある ・現状での職場満足度 「情報提供」 「環境整備」 「勤務支援」 ※あおぞらコンサルティング作成 図表2 介護に関する実態把握の項目例 従業員の状況把握 従業員の介護の可能性や状況 □従業員の属性   □親の年齢 □親と同居か別居か □現状の介護状況 □介護の将来の可能性 自社の両立支援 □現状の両立支援の認知度 □両立支援の利用予定 □両立支援を利用するうえでの不安 □両立支援への要望 介護について □介護に関する基礎知識の有無 □介護全般に関する不安・要望 介護経験者への確認 □現状の両立支援の利用経験 □現状の両立支援の使い勝手 □必要だと思う両立支援 自社の状況把握 □現状の両立支援の利用率 □介護離職の状況 ※あおぞらコンサルティング作成 図表3 介護支援施策の例 勤務支援 勤務措置 メリット デメリット 従業員 会社 従業員 会社 介護休業 ・急な介護の発生等緊急な対応ができる ・介護初期の介護体制づくり期間として有効 ・雇用保険の給付を利用し従業員の給与補てんが可能 ・休業期間内に介護が終わらない場合がほとんど ・休業中の給与補てんがない場合は経済的不安 ・休業中の労働力低下と休業期間によっては代替要員確保が必要 介護休暇 ・さまざまなケースに利用しやすい ・手続きが簡易 ・周囲への業務負担少 ・本格的な介護には日数が不足する可能性 ・業務上、休業より影響は少ないが労働力は低下 積立年次有給休暇 ・抵抗感が少なく、使いやすい ・手続きが簡易 ・「介護」と特別視されにくい ・周囲への業務負担少 − ・失効年休の管理が煩雑になる可能性 ・取得事由を増やすことで消化率があがりコスト増 短時間勤務 ・勤務時間が短縮されることで心身の負担が軽減 ・デイサービス等の利用がしやすい ・周囲への業務負担少 ・業務分担の見直しや予定が立てやすい ・勤務時間短縮にともない給与補てんがされない場合は経済的不安の可能性 ・業務上、休業より影響は少ないが労働力低下 フレックス勤務 ・従来通りの労働時間を確保するため経済的不安が少ない ・介護を中心とした勤務体制づくりが可能 ・労働力を確保しつつ、勤務可能 ・労働時間を減らすことなく介護をするため、本人の身体・精神的負担が大きくなる可能性大 ・職種や部門によって、フレックスタイム勤務制度の導入が困難 ・会議や打ち合わせの時間が制約される可能性 在宅勤務 ・通勤時間がなく介護時間を確保しやすい ・介護中心の生活をしながら業務の遂行がしやすい ・労働力を確保しつつ、継続勤務が可能 ・仕事と介護のメリハリがつけづらい ・労働時間も介護時間も減らすことなく両立する場合は本人の身体・精神的負担大 ・勤怠管理、セキュリティ対応等の在宅勤務の導入コスト、管理負担が必要 その他の支援 費用補てん等 ・介護費用の負担が軽減され、従業員への効果大 ・周囲を気にせず利用しやすい − ・費用補てんの対象となっている内容の利用がなければ効果なし ・効果の高い費用補てんの項目の廃止・見直しが困難 ・コスト負担 ・介護をしていない従業員との待遇格差が明確になりやすい 見舞金制度 ・介護費用の負担の緩和 ・介護以外の用途での利用も可能 − − ・介護をしていない従業員との待遇格差が明確になりやすい ・支給基準の判断がむずかしい 再雇用制度 ・退職後の再就職不安が軽減される ・雇用リスクの軽減とともに雇用確保の手段として有効 ・仕事と介護の両立ができない ・労働力の損失が大きい ・再雇用基準の判断がむずかしい ・再雇用後の処遇、復帰プログラムの検討が必要 ※あおぞらコンサルティング作成 【P19-22】 事例1 日本ユニシス株式会社(東京都江東区) ダイバーシティ施策の一環として仕事と介護の両立を支援 システムインテグレーターから社会的価値創出企業へ  日本ユニシス株式会社は、1958(昭和33)年に設立。日本初の商用コンピュータによって今日の情報社会を拓(ひら)き、以来60年以上にわたりシステムインテグレーターとして顧客課題を解決し、社会や産業を支えるシステムを構築してきた。この経験と実績をバックボーンに、業種・業態の垣根を越え、さまざまな企業をつなぐビジネスエコシステム※をつくる中核となり、顧客・パートナーとともに、社会を豊かにする新しい価値と持続可能な社会の創出に取り組んでいる。  2022(令和4)年からは、会社名を日本ユニシス株式会社から「BIPROGY(ビプロジー)株式会社」に変更する予定だ。新社名の由来は光が屈折したときに見える色の英単語(Blue、Indigo、Purple、Red、Orange、Green、Yellow)の頭文字を使った造語で、いくつもの色が組み合わさり、一つになるという点で多様性を表現している。一社では解決できない社会課題に、さまざまなステークホルダーと連携して社会課題を解決していく企業を目ざし、これまでの取組みを加速させ、社会的価値創出企業に変革していくという。  日本ユニシスの正社員の平均年齢は約46歳。社員の6割強がシステムエンジニア職で、男性が8割を占める。定年年齢は60歳で、雇用延長制度により基本的に希望者全員を65歳まで雇用する。2020年からは雇用延長制度を改定し、定年後も社員の価値観を尊重した多様な働き方を選択できるコースを用意している。フルタイム・週5日勤務という、定年までと変わらない働き方ができるコースは、定年時の評価により給与額を設定。毎年実施する評価を給与に反映し、モチベーションの維持と向上につなげている。そのほか、週2〜3日勤務するコース、週1日勤務するコースがあり、兼業や社会貢献活動といった会社以外での活動を重視する社員が選択できる。  日本ユニシスには雇用延長制度の改定前から、「シニアエキスパート制度」という仕組みがあった。特別な技能を有し、会社に認定された人材にかぎり、最長70歳まで雇用延長できるというものだ。さらに、仕事と介護の両立支援制度、疾病の休暇制度といったライフイベントとの両立を支援する制度を早くから取り入れ、高齢社員が働きやすい職場づくりを整備してきた実績がある。 介護休暇制度と積立特別有給休暇で最長72日間の長期休暇も可能  日本ユニシスでは介護関連制度を、20年ほど前から導入している。現在は、法定を超える年間12日の介護休暇制度に加えて、積立特別有給休暇を組み合わせて取得ができるようになっている。積立特別有給休暇は、介護、育児、私傷病、社会貢献活動など会社が認める用途で利用することができる。年次で付与される未消化の有給休暇を最大で60日間まで積み立てることが可能だ。2021年からは、介護休暇については時間単位で取得できるようにもなっている。  介護休業制度の取得者は年間数人程度で、2020年度はコロナ禍によるテレワークの拡大もあり取得者数はゼロだった。コロナ禍におけるテレワーク勤務の場合、要介護者がいれば、介護を行いながら業務を行ってよいという柔軟な姿勢をとっていることがその要因のようだ。  同社では働く場所、時間を含めて働き方の多様性と柔軟性を高めることを目的として早い段階からテレワークを取り入れ、整備を進めていた。2020年東京五輪・パラ五輪が本社の近隣で開催されることにともない、五輪開催中の交通混雑を避けるために、2017(平成29)年からテレワークを順次拡大。よって、2020年以降、新型コロナウイルス感染症感染拡大により緊急事態宣言が発出された際も、全社スムーズにテレワークへ移行することができたという。現在も継続してテレワークを推奨しており、出社率を3割以下に抑えている。  一方、積立特別有給休暇を取得する社員は多く、この数年間は年間100〜200人が介護目的で制度を活用している。積立特別有給休暇と介護休暇や通常の有給休暇を組み合わせて介護にあたっている社員もいるそうだ。  そのほかにも、柔軟な働き方を支援する制度として、短時間勤務制度とフレックスタイム制度を整えている。短時間勤務制度は、1日の規定勤務時間が7時間30分なのに対し、10分単位で1日最大2時間まで短縮できる制度。1日2時間を越えた不足分は月内の所定労働時間外で相殺することができる。介護や子どもの送迎など、朝夕の決まった時間に行わなければならない事柄に活用しやすい制度だ。  フレックスタイム制度は、コアタイムとして定められた時間に就業していれば、各自で自由に始業・終業時間を決められる。原則として全社員が利用可能。一カ月間あたりの勤務日数×一日あたりの所定の就業時間が所定の時間を満たしていればよいので、計画的に利用するだけではなく、家庭の突発的なトラブルに対応することも可能だ。  このように柔軟に働ける制度を取り入れていることも、介護休暇の取得者が少ない要因の一つになっているようだ。人事部ダイバーシティ推進室室長の宮森(みやもり)未来(みらい)さんは「介護休暇制度の利用者は一定数いますが、介護休業の利用者は少なく、介護離職をする社員はほぼいないので、介護をする社員に必要な制度が不足しているわけではないと考えています。しかし、制度や仕組みの整備だけではなく、それらを利用しやすい風土の醸成も含め、今後、より支援内容を充実させていくために、もう少しふみ込んで個々の社員の状況などを分析し、よりよい制度設計や施策の見直しを強化していく必要があると感じています」と話す。 全社員向け・管理職向けの二つの介護セミナーを実施  2015年度からは毎年、全社員を対象とした介護セミナーを実施している。イントラネットで告知して参加希望者を募り、100人規模で実施可能な社内の研修室を利用し、外部の講師を招いて開催してきた。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響でオンラインでの実施となった。参加者のほとんどは介護経験がなく、介護についての予備知識がほぼないという人も多い。参加する社員の年齢層は30代から60代までと幅広いが、介護に直面する可能性が高い50代がボリュームゾーンだという。セミナーの内容は、介護のもっとも基礎的な解説になっており、初心者向けにわかりやすく伝えられる。宮森室長は「介護について事前に備えておくべきことから、いかに介護で離職せず、長期休業をしないで、仕事と介護を両立させていくかを伝えています」と説明する。参加者からは、「介護についての知識を得ることができた」、「これまでは介護に対して不安しかなかったが、対策を知ることができて認識が変わった」、「まず何を考えたらよいかを知ることができて、自分のこととして考えられるようになった」などの感想があがっている。  2016年度からは、管理職向けのダイバーシティ・マネジメント研修の一環として、介護をテーマとした研修をスタートした。毎年開催しており、新任管理職は受講することが義務づけられている。  「管理職向けの研修のポイントは二つあります。一つは仕事と介護を両立する部下と、その組織をマネジメントすることの意義を理解してもらうという点。そしてもう一つは、チームのマネジメントをになうような年代は自身が介護に直面する可能性があることから、自身の仕事と介護の両立について備えるという点。この二つの目的で研修の受講を必須にしています。  具体的には、今後、仕事と介護を両立する部下が増えた場合の心構えや、生産性を保って組織運営をするためのポイント、実際に部下から相談された際の対応などを学んでもらいます。ダイバーシティの推進には、管理職の理解や意識改革が非常に重要です。介護や育児といったライフイベントと仕事の両立を支援するためのダイバーシティ・マネジメントを実践できる管理職の育成のため、今後も注力していく予定です」(宮森室長)。 両立支援のハンドブック配布と相談窓口による個別対応  2017年には『仕事と介護の両立支援ハンドブック』を作成し、40歳以上の全社員に配付した。社員が介護に直面する前の備えと、仕事と介護の両立を実現することを目的としてとりまとめたものだ。  内容は「介護に備える」、「介護に直面したら」、「仕事と介護の両立のためのマネジメント」、「各種チェックシート」、「会社の制度紹介」の五つのカテゴリーで簡潔に章立てされ、社員自身の状況に応じて必要なところから読み進めることができる。図表を多用しているので理解しやすく、書き込み式シートやチェックリストなども盛り込み、自習形式で自身の状況が把握できるように工夫がされている。さらに、介護に関する公的制度・社内制度に関する情報などもまとめられている。  社員にとって、将来的に介護の可能性がある両親や家族と話し合うきっかけとして、また介護が必要になった際に各種制度や利用方法などの参照ツールとしても活用してほしいと考えているそうだ。  また、介護や育児について相談ができる「両立支援窓口」を社内に設けて、悩みを抱える社員に対し、対面、メール、オンライン、電話で対応している。両立を支援する知識と経験のある社員と外部の契約カウンセラーが相談にあたる。いまのところ、育児の相談に比べて、介護の相談は少ないようだが、今後増加する可能性があるとみている。  例えば、遠方に住む親の介護が必要となって困っているという相談があった場合、全国にある同社の九つの支社・支店のうち、親の居住地に近く介護が可能な支社・支店の転勤を、現場の管理職を交えて調整するケースもある。このように介護離職を防ぐために、相談窓口が関連部署と連携し、柔軟に対応を行っている。  転勤のない地域限定の働き方を選択できる制度もあり、相談窓口では各種制度を活用して仕事と介護の両立を実現できるようアドバイスしている。人事部ダイバーシティ推進室主任の藤田葉子さんは、「介護のことは直面してみないとわからないところがあります。いかに事前に介護とその支援施策について知ってもらうかが課題と考えています」と話す。 社員アンケートを実施し施策の強化・見直しへ 同社が実施している仕事と介護の両立支援の取組みは、「多様な個性を持つ社員が、個人の能力を最大限に発揮し、イノベーションが起こりやすい風土を醸成する」と掲げているダイバーシティ推進の方針のもとに実施している施策の一つだ。ダイバーシティ推進を含む風土改革は、同社の2018〜2020年の中期経営計画において重点施策の一つと位置づけられ、取組み指標および目標を設定して取り組んできた。  ダイバーシティ推進室は、2013年に組織として設立以来、女性、障害者、育児・介護中の社員など多様な人材が、それぞれのキャリアを向上させ、能力を発揮しビジネスに貢献できるような環境を整備するため、必要な支援を積極的に実施している。  宮森室長は「ダイバーシティ推進施策の一つである仕事と介護の両立支援については、当社にとってもこれから重要な問題になってくるのではないかと考えています。これまで介護の状況把握については2015年、2018年、今年度(予定)と社員のアンケート調査を実施しています。介護休業や介護休暇の取得状況だけでは見えてこない介護予備軍や介護にまつわる実態を調査し、経年で変化を見ています。アンケート調査結果をふまえ、施策の見直し、強化を図っていきます」と今後の方針を語った。 ※ ビジネスエコシステム……企業や顧客をはじめとする多数の要素が集結し、分業と協業による共存共栄の関係 写真のキャプション 宮森未来人事部ダイバーシティ推進室室長(左)と藤田葉子人事部ダイバーシティ推進室主任 介護セミナーの様子(2019年度。2020年度はオンラインで開催) 「仕事と介護の両立支援ハンドブック」 【P23-26】 事例2 有限会社CОCО(ココ)-LО(ロ)(群馬県桐生市) 独自の休暇や意識改革の教育などにより仕事を続けたい従業員の思いに応える 「心と心をつなぐ」という方針のもと介護サービス事業を展開  群馬県桐生市に本社を置く有限会社CОCО−LОは2005(平成17)年、雅樂川(うたがわ)陽子代表取締役社長が訪問看護ステーションを主な事業として起業し、その後順調に事業を拡大。いまでは、通所介護、居宅介護支援、フィットネス事業なども手がけている。  「心と心をつなぐ」という思いを社名に冠した同社は、利用者とその家族はもちろん、自社にかかわるあらゆる人の心を大切にする方針。「従業員一人ひとりにとっても、自分らしくいつまでも輝ける場所であるように」と、ワーク・ライフ・バランスやキャリア支援の取組みを充実させてきた。従業員100人ほどの中小企業ながら、働き方改革やダイバーシティ推進などに関して、群馬県、内閣府、厚生労働省、経済産業省、中小企業庁などから数多くの賞を受賞しているので、ご存じの方も多いだろう。 人材の確保を目的として育児との両立支援からスタート  いまでこそ全国的に知られるようになった同社だが、創業当初は知名度もなく、スタッフの確保に苦労したという。そのことが、同社が仕事と家庭生活の両立支援に取り組むきっかけとなった。「当時はまだ、家庭で女性だけがになう役割が多く、家事や育児はもちろん、介護も女性が行うのがあたり前という時代でした。そして、『家庭が成り立たないなら、女性が働くのはむずかしい』という考え方が一般的でした」と雅樂川社長はふり返る。  初めに取り組んだのは、育児との両立支援だ。看護師資格を持つ人材を必要としていた同社が注目したのが、子育て中の看護師だった。「専門職である看護師は転職が比較的容易なので、子育て中は仕事を辞める人が多い」という話を聞いた雅樂川社長は、実際に子育て中の看護師に会い、どんな形であれば働きたいかヒアリングした。すると、「家庭を犠牲にしてまで働く気はないが、子どもが保育園や小学校に行っている間であれば働ける」という答えが返ってきた。そこで、その時間帯だけ働ける柔軟な勤務形態を設けた(図表1)。  すると今度は、「子どもが熱を出したら、休みたい」という要望があがってきた。いつ熱が出るかは予測できないので、急に休むことになる。それが可能になるようシフトや人数を見直し、対応できる体制をつくった。  その次に取り組んだのは、特別有給休暇の充実。スタッフにアンケート調査を実施したところ、子どもの病気や行事などで年次有給休暇が不足し欠勤する人が多いことがわかり、保育参観休暇、授業参観休暇、パパのための産休など、独自の特別有給休暇を導入した。子どもの預け先に困っている人のために、事業所内託児所も設けた。 「働き続けたい」、「介護もしたい」という声を受けて取組みを開始  介護との両立支援に取り組み始めたのも早い。最初に話が出たのは創業後3〜4年目だった。あるスタッフが、「仕事は辞めたくないけど、親の介護もしたい。どうしたらよいですか?」と涙ながらに訴えてきた。雅樂川社長は、不安に押しつぶされそうなスタッフの心に寄り添いながら、勤務時間や休暇制度を整えたり、デイサービスの利用や家族との分担などについてアドバイスして「働き続けたい」、「介護もしたい」という本人の思いに応えていった。  介護と育児の違いに、介護はいつまで続くかわからないということがある。いつ通常勤務に戻れるか、いつまで支援が必要かわからないため、法定以上の支援に二の足を踏む企業もあるだろう。しかし、雅樂川社長の考えは違う。  「いつまで続くかわからないからこそ、自分の生活は大事にしたほうがよいのです。全身全霊をかけて介護をしていると、どこかで息切れしてしまいます。また、かつては『仕事のためなら生活を犠牲にしてあたり前』、『仕事だから仕方ない』という考え方が主流でしたが、私は『仕事だから』というのはそこまで許される言葉ではないと思います。自分にとって生活が優先されるべきものであれば、『介護があるから』、『育児だから』、あるいは『行きたいところがあるから』と堂々といっていい。むしろそこをベースにするほうが、人間が生きていくうえで自然ではないでしょうか」 独自の特別休暇――初期の準備や病院つき添い、息抜きの休暇も  同社の取組みのなかで特にユニークなのが、独自の特別有給休暇である。雅樂川社長のコメントとともに紹介しよう。 ・「介護すぐ取って休暇」  「一緒に日常を送っていた家族が急に入院すると、それまでと同じ時間軸では動けなくなります。病気の心配、病院とのやり取り、家庭内のルーティンワークの変更の三つが必ず起きます。余裕がないなかで仕事をしてもミスが増えますので、とりあえず1週間休んでこの三つを整えてもらいます」 ・「介護定期受診付添休暇」  「群馬県の特性もあるかもしれませんが、高齢の家族などが病院に行く際に、自動車で送り迎えをする必要があり、スタッフの要望を受けて特別休暇を設けました。受診の頻度は人によって異なりますので、『月1回まで』といった上限回数は定めていません」 ・「介護楽しんで休暇」  「ずっと介護をしていると疲れますし、たまには遊びたくなり、自分の時間がほしくなるのが普通だと思います。そこで、月1回まで介護している家族を会社で預かり、自分の時間に充ててもらうようにしました。自分が働く会社なので融通も利きます」  なお、「介護すぐ取って休暇」であれば「今後、介護をする可能性があります」、「介護定期受診付添休暇」であれば「こういう頻度で定期受診します」というように、事前に申請してもらうことで、会社としてもある程度心づもりができるようにしている。 意識改革の教育――スケジュールや自分の思い、役割を事前に認識させる  教育に力を入れているのも特徴だ。社内勉強会では、独自のシートを作成し、自分の時間を確保すること、あらかじめ思いや役割を確認しておくことの重要性を伝えている。 ・「介護時間割表」  「『デイサービスを利用するから大丈夫』などと思ってスケジュールを立てずに介護を始めると、自分の時間が置き去りになり、結果として介護に時間を合わせなければならなくなり、ストレスを抱えることになります。この時間割表では、各曜日の0〜24時のマスに、まず『私』の時間(仕事や習い事などの予定)を入れます。7時に出勤し19時に帰宅するのであれば、その時間を先に確保する。『私』一人ではなく家族と一緒に介護をするなら、その人たちの予定も入れる。そして、だれもいない時間帯について、『〇〜〇時はデイサービスに頼もう』というように設計していきます。緊急時に頼める場所も用意しておきます。このように、まず自分の時間を優先して1週間のスケジュールを立てると、無理がなくなります」 ・「思いの確認シート」  「よくあるのが、家族間の『思い』の違いです。介護をすることになったとき、どんな介護をしたいか、仕事をどうしたいかなどを事前に確認しておくことが大切です。仕事を続けたいのであればそれはなぜか。休職したいのであればそれはなぜか。『だって家族だから』では、家族のせいにしがちになります。また、介護をするにあたって不安なことも列挙してもらいます。明確にすると、アクションを考えられるようになります。同時に、介護するにあたって楽しみなことも確認します。継続するには、絶対に楽しみが必要です。例えば、『ついでにヘルパーの資格を取ろう』というのは、楽しみのよい例です。介護の経験はその後のキャリアや生き方にも影響しますので、それを自覚してほしくてこのシートをつくりました」 ・「役割確認シート」  「家族や親せきがかかわるなどいくつか対応のパターンが考えられますので、パターン分けをして役割を確認します。例えば、介護サービスの相談役は、ケアマネージャー1人なのか、近所の人や民生委員、ほかの家族がいるのか。お金の相談役、日常の介護の相談役、自分時間はいつ取れるかといったことも、事前に確認しておくと慌てずに済みます。毎日の食事やトイレの世話も、長く続くとたいへんですので、認識しておく必要があります。『何とかなる』と考えている人が多いですが、『何とかなる』でがんばれるのは3日程度。4日目には『いつまで続くの?』となります。また、大事なのが介護にかかる費用の認識です。『私は、介護が必要になったら施設に入れてもらうからいいんだよ』といいながら、施設に入るのにいくらかかるか把握していない人も多いものです」  ここまで確認しておくと、介護と仕事をうまく両立できる可能性が高まるという。 従業員の困りごとに全力で向き合いトライ・アンド・エラーを継続  ここまで見てきたように、同社は、「働いてもらうにはどうすればよいか」という視点で課題になっていることに一つずつ手を打ち、両立しやすい環境を整えてきた。中小企業の場合、「〇〇さんはこうしていい」、「△△さんはこうしよう」というように個別対応をすることも考えられるが、そうすると不公平感が生じるので、同社では会社の仕組みとして制度や施策を整備してきた。  同社が取り組み始めたころは、世の中ではまだそこまで両立支援に前向きな企業は多くなかったが、「私は作業療法士としてリハビリの仕事をしていました。リハビリの対象の方たちは、手が思うように動かない、一人でお風呂に入れないなど、いろいろな『できない』があります。それに対して、『では、どうしたらよいか』と考えるのがリハビリのプログラムの一つです。経営においても、それと同じ考え方で、『働いてくれる人が困っている。じゃあ、どうしよう』と考えて取り組んできました。私のなかではすごくシンプルなんです。会社の運営においては、働く人の安全性が大事だと思っています。その人が生活のなかで抱えた課題は、会社ができる範囲のことであればなるべく早い段階で解消し、心理的に不安定な状態から安全地帯に持っていってあげるべきです」と雅樂川社長は語る。そのように積極的に取り組んできたことで、よい人材が集まり、従業員のモチベーションや定着率も向上し、会社の成長にも結びついたのだろう。ちなみに、初めに雅樂川社長に介護について相談してきたスタッフは、10年ほど仕事と介護の両立を続け、いまも同社で活き活きと働いている。  もちろん、これまでの取組みがすべてうまくいったわけではない。例えば、介護をしている人が自分の時間を持てるようにと、雅樂川社長の発案で、「介護楽しんで休暇」以外にも特別有給休暇を導入したことがある。ところが、「休むと現場がわからなくなるので、来られるときは来たい」という反応が多く、結果的に従業員の了解を得て廃止した。また、当初は、育児や介護をしていない従業員たちから、「どうして私たちばかりに負担がくるのか」と不満の声があがった。「では、どうすればよい?」と聞くと、「旅行に行くために休みがほしい」というので、旅行休暇や費用補助を設けた。その後も、従業員の要望を受けてさまざまな制度を設けた。ただ、そうやって設けた制度のなかにも、あまり使われず、廃止されたものがある。  しかし、雅樂川社長は、こうしたトライ・アンド・エラーは無駄なことではないととらえている。「従業員が困っていることに会社が全力で向き合う姿勢が大事なんです。従業員からの声を無視しない、いったんは受けとめる会社であると示すことを心がけています」という。トライ・アンド・エラーをくり返し、よりよい形を模索してきた結果が同社の成長につながっているのだ。  雅樂川社長は、これから介護との両立支援策を充実させていきたい企業へのアドバイスとして、以下の3点をあげる。 ・従業員教育を行い、スケジュールや思い、役割を認識させる ・従業員とコミュニケーションを取り、何に困っているかを経営者が聞く(直接聞くのがむずかしければアンケートでも可) ・従業員の声を聞いたら、実行しない場合も含め、まずは受けとめたことを伝える  雅樂川社長は、介護の考え方やお役立ち情報をYouTubeで発信しているほか、他社の社員教育の講師も積極的に引き受けている。また、他社の活動を支援するためにコンサルティング事業を立ち上げた。「自分のところだけがんばっていても日本の働く環境は変わりませんので、社会全体がよくなるように、ヒントを伝えていければと考えています」と意欲をみせる雅樂川社長。同社の経験や知見がシェアされ、多くの企業の両立支援が進んでいくことを期待したい。 図表1 柔軟な勤務制度 区分 勤務時間 正社員 8:30〜17:30 (8:00〜18:00の間で調整可能) 短時間正社員 小学校入学前までの子を持つ方 8:30〜17:30の間の4.5時間以上 準社員 小学生の子を持つ方、または同居家族の介護を行っている方 8:30〜17:30の間の4.5時間以上 パートタイマー 8:30〜17:30の間の4時間、週3日以上 ※上記は現在の仕組み 【P27】 日本史にみる長寿食 FOOD 335 サツマイモを食べて長生き 食文化史研究家●永山久夫 「お助けイモ」として凶作を救う  中南米生まれのサツマイモが、日本に渡来したのは江戸時代の初期。その普及が早かったのは、調理が簡単でホクホクと食感がよくて甘みがあり、満腹感が得やすかったからです。また、単位面積当たりの収穫量も多く、育て方も比較的容易なことから、各地で栽培されるようになりました。  日本は昔から天候不順の年が多く、米の不作や凶作がよく起こる国でした。そのようなときにサツマイモは「お助けイモ」として、飢餓を何度も救っています。  終戦直後の食糧難のとき、学校のお弁当はふかしたサツマイモ。先生も生徒も学校の廊下を歩くたびに、よくおならが出たものですが、みんな平気でした。  最近では秋から冬にかけて、焼きイモはナチュラルフード(自然食)として人気。代用食どころか、「長寿食」として注目されているのです。 長寿成分もたっぷり  サツマイモの切り口からにじみ出る白い乳液はヤラピンと呼ばれる成分で、便をスムーズにする作用があります。豊富に含まれている食物繊維とともに、便秘の予防や改善、それに日本人に増えている大腸ガンを防ぐうえで効果を発揮するといわれています。大腸ガンは、高タンパク、高脂肪、低食物繊維の食生活によって引き起こされることが多いことがわかっており、健康長寿に食物繊維は欠かせません。全身の免疫力をになっている元気な腸内細菌を増やすためにも、サツマイモなどからコンスタントに食物繊維を摂取することは重要です。  免疫力の強化には、ビタミンCも大切な成分です。サツマイモにも豊富に含まれており、しかもサツマイモのデンプン質で包まれているために、加熱しても壊れにくいという特徴があります。ビタミンCはコラーゲン生成にも不可欠で、肌の若さを保って、しわを防ぐために重要なビタミンです。  このほか、ビタミンEもたっぷり含まれています。ビタミンCとEは、どちらにも強い抗酸化力があり、体細胞や血管などの酸化、つまり老化を防いでくれる効果があります。また、ビタミンBグループの葉酸も含まれており、こちらは認知症の予防で注目されています。だからといって食べ過ぎは肥満のもと。ご用心を! 【P28-32】 短期連載マンガで見る高齢者雇用 エルダの70歳就業企業訪問記 第D回 株式会社きむら(香川県高松市) 継続雇用の上限年齢をなくし、高齢従業員の経験と技術を積極活用! ※ 本連載は、厚生労働省と当機構の共催で毎年実施している「高年齢者雇用開発コンテスト」(現・高年齢者活躍企業コンテスト)受賞企業における取組みを、応募時点の情報に基づき、マンガとして再構成しています。そのため、登場人物がマスクをしていないなど、現時点の状況との違いがあります 【P33】 解説 マンガで見る高齢者雇用 エルダの70歳就業企業訪問記 <企業プロフィール> 株式会社きむら(香川県高松市) 創業1907(明治40)年 生鮮食品中心のスーパーマーケット  株式会社きむらの定年は60歳。60歳以降は正社員・パートタイマーを問わず、本人に働く意欲があるかぎり年齢上限なく継続雇用しています。60歳定年以降も役職を継続できるほか、定年時の賃金水準の維持、継続雇用中の昇給制度などもあり、高齢従業員がモチベーション高く働ける各種制度が整備されています。こうした取組みが評価され、平成29年度高年齢者雇用開発コンテスト※で、厚生労働大臣表彰最優秀賞を受賞しました。 内田教授に聞く 株式会社きむらのココがポイント! 現場の最前線から人材育成まで、高齢従業員の活用が経営戦略のカギに  スーパーマーケットを展開する株式会社きむらの強みは、同業他社の追随を許さない生鮮品売場の充実です。この売場を支えるのが経験豊かな高齢従業員です。生鮮品は新鮮さが勝負、市場で活きのいい魚や採れたての野菜を見極める「目利き」でなければ担当は務まりません。そのため、経験がものをいうこの世界で生きてきたベテランが重宝されます。  一方、会社は急成長し、人材育成が追いつかなくなっていました。ここでも即戦力として頼りにされたのが高齢従業員でした。会社は高齢従業員のいっそうの活用のため、継続雇用の上限年齢を撤廃しました。定年後の起用に加えて外部からの高齢者採用も増え、高齢従業員が会社の中核人材、成長エンジンになっています。  きむらで働く高齢従業員は最前線に立つだけではなく、次代をになう若手従業員の指導役としても活躍しています。会社の強みである生鮮品の目利き人材の育成が欠かせないからです。きむらでは高齢従業員と若手が一緒に市場で買いつけを行っていますが、このスタイルは技能伝承に効果のある「ペア就労」の実践です。  がんばっている高齢従業員が、モチベーション高く働き続けることができる仕組みも重要です。きむらでは継続雇用時の賃金が定年前と変わらず、人事考課による昇給も可能となっています。また、高齢従業員に体力負担をかけないために魚の調理現場ではオートメーション化が進んでいます。  さらに注目したいのは、事業多角化と高齢従業員の働く場の開拓を結びつけていることです。川下産業であるスーパーが、川上にある魚市場経営に多角化することで、本業を強化できるだけではなく、高齢従業員が活躍できる場を生み出しています。きむらでは企業の成長に向けた経営戦略に、高齢従業員を含めた人材確保・高度化を明確に組み込んでいます。 《プロフィール》 内田 賢(うちだ・まさる) 東京学芸大学教育学部教授。 「高年齢者雇用開発コンテスト」(※現・高年齢者活躍企業コンテスト)審査委員(2012年度〜)のほか、「65歳超雇用推進研究委員会」委員長(2016年度〜)を務める。 【P34-35】 江戸から東京へ [第106回] 楽しきかな、隠居の城造り・街づくり 佐竹義重(よししげ) 作家 童門冬二 常陸での佐竹人気  常陸国(ひたちのくに)(茨城県)・水戸といえば、黄門様≠フ徳川光圀(みつくに)の人気が高く、庶民のヒーローになっているが、潜在的にはもう一人、別な人物の人気がいまだ消えない。光圀の生家徳川家の前に、この地方の領主だった佐竹家への追慕(ついぼ)だ。  源氏の血統で源頼朝に仕え、功があったので常陸国内に領地を与えられ、以来数百年その治政は地に浸みた。1600(慶長5)年の関ヶ原合戦直後、徳川家康によって突然秋田に移封された。家康にも石田三成にも味方しなかったからだ。  当主は佐竹義宣(よしのぶ)三十歳、隠居の父・義重五十歳だった。伏見城に呼び出された義宣はこのことを家康から宣告されると、承知し故郷(水戸)の父に手紙を書いた。  「伏見から秋田に直行します。父上は先行し、新しい城の候補地、城下町の計画、家臣団の選定などをお手配ください。細部はお任せします」  義重は思わず「ウヒヒ」と喜んだ。  義重は独特な隠居観≠持っていた。  「男は隠居後に本当にやりたいことができる」  現役(当主)のあいだはルーティン・ワークに追われて、本当にやりたいこともできない。だから早く隠居する、という考えだ。だから四十二歳のときに早々と隠居した。やりたいことをやるには金が要る、といって二十万石余の隠居料は確保していた(当時の佐竹家の収入は六十万石余)。  が、今度の移封で佐竹家の収入はどのくらいになるのか見当がつかない。すべて家康の胸三寸だ。  (あのタヌキおやじめ)  家康は義重より五歳年長だ。関ヶ原合戦で敵対した大名の領地は没収した。味方した大名に大盤振舞をしただけでなく、自分の収入も増やした。総計四百万石から六百万石だといわれる。いまいましい。しかし、いままでの経験でこんなときに腹を立てても何もならないことを義重は知っている。いまは隠居料のヘソクリを活かして、息子の要望に応えてやるだけだ。  それに今度の仕事は「これこそ俺が本当にやりたかった男の仕事だ」と思っていた。いままでは気ばかり焦って、そういう機会にも事業にも出会えなかった。息子の義宣が結構器用にこなしていたからだ。 ウヒヒの連続  義重は普通の高齢者とは違う。どんなときにも前向きだ。健康でもある。勇んで秋田に急行した。@城は秋田の久保田という岡を選んだ。A城下町は麓の川を挟んで計画した。入口に寺を構え町の護持院とした。B川の岸は花街とし飲食や夜の歓楽街を予想した。C義宣に頼まれた家臣団の異動表を作成した。この作成が実は一番楽しい。トップにとって一番嬉しい作業だ。特に今回はおそらく収入減になるだろうから、秋田へ赴く者と、水戸に残す者に選り分ける。水戸にいればああでもない、こうでもない、と重役たちがうるさい。  今回は秋田の地で義重はほとんど一人で、「息子のために役立つ人事表」をつくることができた。  (ついでに侍女(じじょ)の表もつくってやろう)  侍女たちの容姿を思い浮かべながら余計なことまでした。家族がバラバラにされた家もある。特に父と子、兄弟は裂かれた。  (俺はどうするかな)  もちろん秋田でも隠居料を確保し、自分のやりたい仕事≠ノ力を注ぐつもりでいる。盆栽いじりや碁将棋で時間を潰す気は毛頭ない。頭のなかには家康への対抗意識がある。  (あの爺にもあるはずだ)  義重はそう思っている。いままで佐竹家の経営を安定させるために、義重はかなり苦労してきた。そのために本当にやりたい仕事≠ェできなかった。  家康は底意地が悪い。秋田転封は命じたが、収入についてはまったく示さない。秋田の郡村のどこで、何万石なのか数字を出さない。佐竹家では記録を調べ、  「大体二十万石程度ではなかろうか」  と推測しているが、それも当たっているかはずれているか、確証はない。  ある夜、義重は作業で働く職人の頭(かしら)から帆立貝の殻を鍋代わりにして、なかにハタハタ(魚)と野菜を煮立てる料理を教えられた。食って、これはイケると喜んだ。  明治維新後、奥羽・北陸地方の大名家は同盟を組んで新政府に抵抗した。秋田藩だけが新政府に味方した。ハタハタは元々太平洋の魚で、移封時に佐竹家が移したという説もある。  またこのとき移住した水戸方面からの女性の一部が、秋田美人≠フはじまりだ、という説もあるが、これはかなり俗説を採り入れる私も信じない。  この地方は日本海を海の道として、かなり古くから都との交流が繁(しげ)かったからだ。  佐竹義重の案は義宣がかなり修正した。人事もそうだったし、藩政運営も日々「日記」を残した。その現物を私は県の資料館で見たことがある。近くに甲子園で高名な金足農業高校があった。 【P36-39】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第111回 石川県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 定年後は無理なく、働き続けやすく短日・短時間を選べる選択制を導入 企業プロフィール 株式会社森八(石川県金沢市) ▲創業 1625(寛永2)年 ▲業種 和菓子製造販売 ▲社員数 140人(うち正規社員数40人) (60歳以上男女内訳) 男性(6人)、女性(17人) (年齢内訳) 60〜64歳 8人(5.7%) 65〜69歳 12人(8.6%) 70歳以上 3人(2.1%) ▲定年・継続雇用制度 定年は60歳。希望者全員を65歳まで継続雇用。平均年齢49歳。最高年齢者は78歳のボイラー技師。  石川県は本州中央の日本海側に位置し、北部に能登半島を有していることから、海岸線は長く約580qに及んでいます。南北に細長く延びる地形で、県北部を能登地方、県南部を加賀地方といいます。気候は地域差があり、気温が低く多雨豪雪の加賀山岳地帯、温和な気候の加賀平野、日本海の影響を強く受ける能登半島に大別されます。  当機構の石川支部高齢・障害者業務課の千田陽子課長は県の産業の特徴、支部の取組みについて次のように説明します。  「業種別の出荷額では機械が約7割を占め、次いで繊維と食料品があげられます。繊維の出荷額は全国上位で、石川県の基幹産業の一つとして重要な位置づけとなっています。加えて、新鮮な食材と豊かな食文化を背景に発展した食品産業や観光業・宿泊業も石川県の特徴的な産業です。  当支部では、改正高年齢者雇用安定法や退職金・賃金に関する相談が多くなっています。県内企業は、中小企業が約9割を占めています。自社で高齢者雇用に関するノウハウを所有していないことで、70歳までの就業機会確保などに向けた高齢者戦力化のための定年引上げや継続雇用延長などの制度改定に至らない企業も多く、プランナーによる具体的かつきめ細かい相談・援助や提案を行っています」  同課に所属するプランナーの一人、岡田和大(かずひろ)さんは、社会保険労務士、ファイナンシャルプランニング技能士の資格を持ち、企業の管理部門で労務管理や人材育成、業務改善などを行った経験を活かし、人事労務の相談・助言を行っています。  今回は、岡田プランナーの案内で「株式会社森八」を訪れました。 働きやすい職場づくりを推進する老舗和菓子店  1625(寛永2)年創業。江戸時代から390年以上にわたって、和菓子の製造・販売業を営んできた株式会社森八は、地元金沢を代表する老舗和菓子店です。金沢城下、大手町に新築移転した新本店をはじめ、市内を中心に路面店を展開するほか、小松空港や関東圏の百貨店にも出店し、直営店は19店舗に上ります。長い歴史のなかで変わらない製法と原料を用いて、伝統的な味をいまに伝えてきました。日本三名菓の一つ「長生殿(ちょうせいでん)」を筆頭に、森八の和菓子は、歴史に裏打ちされたクオリティと高いブランド力により贈答品として選ばれ、金沢を中心に愛されています。  「伝統的な和菓子づくりを後世につなげ、存続させていくために、拡大路線ではなく地元に根ざし、和菓子専門店の特性を活かした販路で、今後も贈答品メーカーとしてお客さまのニーズに応えていきます」と業務統括室取締役室長の森岡(もりおか)晋也(しんや)さんは抱負を語ります。  同社は、2019(平成31)年度高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で当機構理事長表彰特別賞を受賞したほか、石川県ワークライフバランス企業知事表彰受賞(2018年)、金沢市はたらく人にやさしい事業所表彰(2017年)を受賞しており、さらに健康経営優良法人(中小企業法人部門)認定(2021年)、「いしかわ男女共同参画推進宣言企業」、「いしかわ障害者雇用推進カンパニー」に認定されています。  このような働きやすい職場づくりに努めてきた経緯について森岡さんは、「19店舗ある直営店の販売は、ほぼ女性がになっています。女性に長く勤めてもらうために取り組んだ結果、各賞を受賞し、認定されるに至りました。若い女性社員は結婚、出産、育児というライフイベントを機に退職する傾向がありました。さらに、土日、祝日、ゴールデンウィーク、年末年始が多忙なため、休暇が取りづらく、小学生以下の子育てをする若い社員には働きづらいところがありました。そこで20数年前から契約社員の中途採用を行ったところ、子育てが一段落した40歳以上の女性が多く入社し、彼女たちが長く勤めてくれたことで現在60歳以上の方が増え、店舗の主力となって働いてくれています」  同社の定年年齢は60歳。希望者全員を65歳まで毎年の契約更新により再雇用することを規程に盛り込んでいます(就業規則の定めはないが、66歳以上まで雇用する慣行あり)。さらに、定年後は勤務日数と勤務時間をほぼ本人の希望通りに選択できるようにしています。 芸道に通じた中高年層が売り場で大活躍  城下町として栄え伝統文化が息づく金沢という土地柄もあり、中高年者の社員には華道、書道、茶道の師範や経験者が少なくなく、彼女たちのキャリアが店舗で活かされています。「熨斗(のし)を手書きしたり、店に花を生けたり、お客さまにお出しする抹茶を立てたり、和菓子を販売する場において芸道の経験が活かせる場が多く、みなさんが自主性を持って活き活きと働いています」(森岡さん)  また、店舗以外に和菓子製造でも高齢社員が活躍しているといいます。森岡さんは「高齢者は覚えやすい作業や、軽作業を希望する傾向があると思います。例えば、当社には製造工場から各店舗に配送する業務があり、担当する3人全員が60歳以上の男性です。車両の運転と荷下ろし、という比較的簡単な軽作業は、若い世代に任せるとすぐ飽きがくるようで続かないことが多いのですが、高齢者にとっては反対に働きやすく、続けやすいようです」と話します。ほかにも、製造工場での製品の袋詰めや箱詰めなど、くり返しになる単純作業が好まれていて、勤続年数が長くなっているとのこと。こうした年齢層による好み、適性により高年齢層と若年層との棲み分けができているようです。  岡田プランナーは、森八の高齢者雇用の取組みについて、「事業主の多くは60歳から65歳まではフルタイムで働いてほしいと考えますが、同社は定年後、短日・短時間の選択制にする制度が構築されており、柔軟な雇用契約が可能となっています。高齢社員にとってこのような配慮が、長く勤め続けられ、がんばろうと思うポイントになっていると思います。いまの60歳以上の方は一昔前の同年代より健康で若々しいのですが、年々体力の衰えや健康面での不安を抱える方も増えてきています。昨年10月の訪問の際は、その点をふまえ健康面や体力面での配慮や就労場所での安全管理をさらに一歩進めてもらいたいとアドバイスしました」 定年後は希望するペースで勤務が可能  同社でボイラー技師として活躍する最高齢社員、定年後も変わらず本店長の職務を遂行する高齢社員のお2人にお話を聞きました。  松田健一さん(78歳)は、2005年9月に入社し、勤続16年目を迎えました。専光寺工場に勤務する唯一のボイラー技士として仕事を担当しています。毎朝ボイラーを稼働させることから、一日ごとに硬水を軟水にするため水をタンクに貯め、定期的に25sの塩を入れて硬度を下げるのも松田さんの仕事です。25sの塩が入った袋は扱いづらく、簡単な作業ではありません。初めは袋から直接投入していましたが、入れやすくするために、袋から入れ物に入れ替えて、何回かに分けて補充するように工夫をしました。また、部品が劣化しないように、不純物を取り除く薬品を機械に入れてメンテナンスを行っています。  昨年までは週5日勤務でしたが、現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり週4日勤務、朝8時から午後2時までの時短勤務をしています。  同社では最高齢となりますが、仕事はもう少し続けたいと話す松田さん。「いつか後任に引き継ぐことになったら、1〜2カ月、一緒に立って仕事を伝えていきたいですね。和菓子屋さんにとって、ボイラーの温度と水は生命線です。蒸気であんこを炊くので、止めてしまっては工程のすべてがストップしてしまいます。これを忘れないようにすることが一番大切です」と力を込めて話してくれました。  本店長の熊田慎一さん(64歳)は、定年後は継続雇用となりましたが、以前と同じ働き方を希望し、販売担当の本店長として職務内容も変わらず、フルタイムで働いています。長年販売職を続けてきた熊田さんに、仕事のうえで一番大切なことを聞くと、「お客さま相手の商売ですから、相手の立場になって販売することです。お客さまとつながりができて、連絡をいただくこともあり、こうした人とのつながりは人生の財産です」と返ってきました。  最近は仕事を少しずつほかの社員にふり分けているそうです。社員のシフト管理を各店舗に任せたり、卸業務、県外のデパートの発注、催事の販売業務といった外部との連絡窓口の役割などの引き継ぎを行っています。  来年の2月に65歳を迎える熊田さん。これを機に、働き方を見直そうと考えているそうです。「気力、体力が続くかぎり、会社が求めてくれる分は受け入れて仕事を続けていきたいです。いままで通りフルタイムで働くことも選択肢の一つですが、今後の勤務時間については会社と相談していきたいです」と話してくれました。  会社の働き方改革については、熊田さんが入社したときと比べると、大きく働き方が変わったことを実感しているといいます。「休暇は年間で決められた日数がありますが、希望すれば勤務日を減らすといった契約もできます。体の具合が悪いなどの理由で、契約期間中でも週2日から3日など休みを増やすことも可能です。若い人たちも働きやすいのではないでしょうか。環境がよいので、64歳まで働いてこられたのだと思います」  今般の新型コロナウイルス感染症の影響は同社にもありました。一時は全店舗を閉め、再開後もなかなか客足が戻らないという事態になりましたが、この局面を乗り越えるため、高齢社員を含む全社員が一丸となって取り組んできました。「このような災害時にかぎらず、当社は贈答品の扱いが中心ですから、中元、歳暮の時期が繁忙期になり、1年のうちで変動があります。こうした変動にも、高齢社員に柔軟に働いてもらうことで対応してきました。高齢社員のみなさんは弊社にとって重要な存在ですから、これからも長く勤めてほしいと伝えています」と森岡さんは期待を語りました。 (取材・西村玲) 岡田和大 プランナー(52歳) アドバイザー・プランナー歴:5年 [岡田プランナーから] 「プランナー活動では、企業が置かれている状況や担当者の知識や関心をヒアリングして、有益だと感じてもらえるような適切な情報提供をすること、改善課題を発見してもらえるようなアドバイスをすることに努めています。企業とそこで働く社員の双方にメリットがある制度改善、課題解決のための提案ができるように心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆石川支部の千田課長は、「岡田プランナーは、一般企業において管理職として労務管理や人材育成、業務改善などを行った経験を活かし、社会保険労務士として人事労務の相談・助言を行ったり研修・セミナー講師を務めるなど幅広く活躍しています。プランナーとして、豊富な知識や経験を活かし、訪問企業の担当者さまに対して論理的かつわかりやすい説明による助言や提案業務を行っています」と話します。 ◆石川支部は、金沢駅から海側へ約5qのところにある石川職業能力開発促進センター内に設置されています。同支部から3q圏内にある金沢港は、藩政期には金沢の外港として北前船が寄港し、2020年6月には新たに金沢港クルーズターミナルがオープン。石川障害者職業センターや県庁、労働局なども近隣にあり関係機関と連携がとりやすい立地です。 ◆6人の65歳超雇用推進プランナーが在籍しており、2020年度は408社にアプローチし、108件の制度改善の相談・助言を行いました。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●石川支部高齢・障害者業務課 住所:金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 電話:076(267)6001 写真のキャプション 石川県金沢市 金沢市大手町にある本店。美術館なども併設している 業務統括室取締役室長の森岡晋也さん ボイラー技士として働く松田健一さん 本店長としてフルタイムで働いている熊田慎一さん 【P40-43】 高齢社員のための安全職場づくり エイジフレンドリーな職場をつくる 労働安全衛生総合研究所 高木元也  生涯現役時代を迎え、60歳、65歳を超えて、より長く活躍してもらうためには、企業が職場における安心・安全を確保し、高齢社員が働きやすい職場環境を整えることが欠かせません。本連載では、高齢者の特性を考慮したエイジフレンドリー≠ネ職場の実現方法について、職場の安全管理に詳しい高木元也先生が解説します。 第9回 腰痛災害の防止A 1 腰痛予防対策  前号では、腰痛災害の実態や原因などについて解説しました。今回は、厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」を基に、腰痛予防対策について解説します。 @重量物取扱い作業の腰痛予防対策 (a)自動化、省力化の推進 ・自動車組立て工程におけるベルトコンベア、機械組立て工程におけるバランサーなどの導入 ・トラックでは、リフターなどの昇降装置、自動搬送装置の設置(長時間運転直後の重量物取扱いは腰痛リスクあり) ・ローラーコンベア、台車などの補助器具の使用 (b)人力による重量物の取扱い ・取扱い重量の制限(本指針の内容ではないが、20s制限とする大手ゼネコンの建設現場がある)や標準化 ・取り扱う荷物に取っ手などをつけ持ちやすくする(荷物の重心の位置が持つ人に近づくように) ・取り扱う荷物の重量の明示 (c)作業姿勢、動作 ・身体を対象物に近づけ重心の低い姿勢をとる。無理な姿勢を回避しやすい。 ・荷物を持ち上げる場合、片足を少し前に出し、膝を曲げてしゃがむように抱え(図表1ー1)、この姿勢から膝を伸ばすようにして脚・膝の力で持ち上げる。 ・両膝を伸ばしたまま上体を下方に曲げる前屈姿勢は取らない(図表1−2)。 ・荷物を持ち上げたり、運んだりする場合は、荷物をできるだけ身体に近づける(図表1−3)。 ・荷物と身体が離れた姿勢をとらない(図表1−4)。 ・重量物を持ったまま身体をひねって後ろを向く動作は、腰への負担が極めて大きい。身体をひねる作業をなくす。 A立ち作業の腰痛予防対策 (a)作業機器および作業台の配置 ・作業台が低いと前屈姿勢(おじぎ姿勢)となり椎間板内圧を著しく高め腰痛につながるため、作業台を高くする。または、椅子などを用意し腰掛け姿勢がとれるようにする。逆に、作業台が高い場合は足台を使用する。 (b)椅子の配置 ・椅子などを使用し、座って作業できるようにすると、筋疲労の軽減が図れる。 (c)片足置き台の使用 ・片足置き台に両足を交互にのせて姿勢に変化をつけるようにすると、腰への負担が軽減される。 (d)小休止・休息 ・小休止・休息を取り、下肢の屈伸運動を行う。下肢の血液循環改善に有効である。 B座り作業の腰痛対策 (a)椅子の改善 ・椅子に座って腰の角度を90°に固定すると、重心が前方に移るため、腰背筋の活動性が高まり腰痛予防になる。腰痛防止の観点から望ましい椅子は次の通り。 →背もたれは後方に傾斜し、腰パッドを備えていること。腰パッドの位置は頂点が第3腰椎と第4腰椎(下から順に第5、第4、第3、第2、第1腰椎)の間が望ましい。 →座面が大腿部を圧迫しすぎない。 →体格に合わせて、座面高、背もたれ角度、肘掛けの高さ・位置、座面の角度などを調節できるもの。 →作業中の動作に応じて移動可能なキャスターつきで、座面や背もたれの材質は熱交換のよいものが望ましい。 (b)机・作業台の改善 ・適切な座姿勢を確保するため、机・作業台上の機器・用具を適切に配備する。 (c)作業姿勢など ・長時間座っていると、背部筋の疲労により前傾姿勢になり、また、腹筋の弛緩、大腿部圧迫がでてくる。改善には、足の位置を変えたり、背もたれを倒し、後傾姿勢を取ったり、立ち上がって膝を伸ばしたり、クッションなどの腰当てを椅子と腰の間に挿入したりする(図表2)。 (d)座作業 ・直接、床に座る座作業は、強度の前傾姿勢となり、腰の筋収縮が強まり、椎間板内圧が著しく高まる。このため座作業は避ける。むずかしい場合は、作業時間に余裕をもたせ、小休止・休息を長めに回数を多く取る。 C靴、服装など ・転倒を防ぐため、靴は、大きすぎず、足にフィットし、滑りにくいものを使用する。 ・腰椎などへの衝撃を少なくするため、靴底は薄すぎたり、硬すぎたりしない。 ・作業服は、適切な姿勢や動作を妨げることのないよう伸縮性があるものを使用する。 D作業環境管理 (a)振動対策 ・車両系建設機械、トラックなどの振動対策は、座席の座面・背もたれの改善、振動を減衰させる座席への改造、小休止や休息をはさむこと。 (b)寒冷対策 ・暖房設備により適切な温度環境を維持する。 (c)床面対策 ・職場の床面はできるだけ凹凸・段差がなく、滑りにくくする。 (d)照度の確保 ・作業場所、通路、階段などでは、足元が確認できるよう照明を用意する。 (e)十分な作業空間 ・作業空間を十分に確保する。 ・作業場の4S(整理・整頓・清掃・清潔)を行う。 E腰痛予防体操(ストレッチ) (a)ストレッチ効果 ・腰痛予防体操は、ストレッチ主体が望ましく、実施時期は、疲労の蓄積度合いに応じて適宜実施する。 ・ストレッチにより、腰を中心に腹筋、背筋、臀筋などの筋肉の柔軟性を確保し、疲労回復を図る。 ・筋肉を伸ばした状態で静止する「静的なストレッチ」が、筋肉への負担が少なく、筋疲労回復、柔軟性、リラクゼーションが高められる。 ・静的ストレッチのポイントは、図表3の通り。 (b)ストレッチ例  中央労働災害防止協会「運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」から、事務所でできるストレッチ例を紹介します(図表4)。 2 おわりに  今回は、高齢者の腰痛災害を取り上げ、その実態、発生原因、対策などを紹介してきました。ぎっくり腰などは、突然、襲いかかってくるようなイメージがありますが、そうではなく、職場には腰痛が発生する原因が潜んでいるのです。事業者は、高齢者が腰痛にならないような作業環境を整えてその芽を摘み、それとともに職場で腰痛予防体操を推進しましょう。一方、労働者もその腰痛予防体操に積極的に参加することが求められます。 ※ 前回までの内容は、当機構ホームページでご覧になれます。 エルダー 高齢社員のための安全職場づくり 検索 図表1-1 好ましい姿勢 図表1-2 好ましくない姿勢 図表1-3 好ましい姿勢 図表1-4 好ましくない姿勢 出典:厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(別紙「作業態様別の対策について」) 図表2 座り作業の腰痛対策 図表3 静的ストレッチのポイント 1 息を止めずにゆっくりと吐きながら伸ばしていく 2 反動・はずみはつけない 3 伸ばす筋肉を意識する 4 張りを感じるが痛みのない程度まで伸ばす 5 20秒から30秒伸ばし続ける 6 筋肉を戻すときはゆっくりとじわじわ戻っていることを意識する 7 一度のストレッチで1〜3回ほど伸ばす ※厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」より抜粋 図表4 腰痛防止のストレッチ いずれも、20〜30秒姿勢を維持し、左右それぞれ1〜3回伸ばします @事務機材を利用した大腿前面(太ももの前側)のストレッチ A椅子を利用した大腿前面(太ももの前側)、臀部(お尻)のストレッチ B事務機材を利用した下腿後面(ふくらはぎ)のストレッチ C事務機材を利用した上半身のストレッチ 出典:中央労働災害防止協会『運送業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ』 【P44-47】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第40回 退職金の支払い根拠、喫煙防止と職務専念義務・労働時間管理 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 退職金の支払い根拠について知りたい  当社には、制度化した退職金はないのですが、退職希望者から、過去に退職金を受け取った従業員がいると聞いているから、退職金を支払ってもらいたいとの要望がありました。  たしかに、過去には秀でた功労者や長期の勤続を果たして定年退職した従業員に退職金として支払ったことがあるのですが、今後は退職者全員に支払わなくてはならないのでしょうか。 A  退職金支給の根拠となる規定がなく、労働契約においても退職金の支給約束をしていないのであれば、支払い義務はありません。ただし、過去の支給実績などから、退職金の支給ルールが固まっており、労使双方がその基準を認識している場合には、支払い義務を負担する場合があります。 1 退職金の性質について  退職金については、労働基準法において、支払いを義務づけられているような賃金ではなく、各社において自由に制度として用意することができ、または、制度としない自由もあります。  一般的には、就業規則や労働契約で支給の義務を負担しない状態で従業員に退職金を支給するような場合、任意的恩恵的給付であるとされ、労働基準法上の「賃金」には該当しないと考えられています。退職金について、任意的恩恵的給付と判断した裁判例として、東京地方裁判所平成20年6月13日判決(モルガン・スタンレー証券事件)があります。この裁判例では、当該支給額について、使用者が大きな裁量を有していたことを考慮し、労務の対償である賃金には該当しないという評価がされています。任意的恩恵的給付となった場合、使用者は原則として支払い義務を負担するものではないため、従業員から訴訟を通じて支払いを求められたとしても、これを拒否することができます。  一方で、就業規則などによって制度化することにより退職金の支払い義務を負担するようになった場合は、労働基準法の「賃金」となり、同法の規制対象にもなり、直接払い、全額払い、通貨払いなどの原則が適用されると考えられています。また、退職金の支給について、訴訟を通じて請求権を確定させることもできることになります。 2 退職金と労使慣行について  就業規則に定めがなく、労働契約でも支払い約束をしていないのであれば、原則として支払い義務を負担することはありませんが、例外的に、退職金の支払い義務を負担する場合があります。  使用者と労働者の間の権利義務を定めるものは、基本的に労働契約および就業規則ですが、使用者と労働者の間で慣行となっている場合には、法的な意味での拘束力が生じる場合があります。これを「労使慣行」と呼んでいますが、実際、過去の裁判例において労使慣行に基づく退職金請求権の発生を認めた事例も存在します。  東京高裁平成18年6月19日判決(キョーイクソフト(退職金)事件・控訴審)は、内規において、支給基準を定めていたところ、10年以上にわたりその基準にしたがった支給を継続しており、「基本給に支給率(勤続期間10年以上の場合はストライキ期間を除く勤続年月)を乗じた金額に減額措置及び加給措置(いずれも被控訴人については適用がない。)を行った上、餞別金(勤続10年以上の従業員は3万円)を付加した金額を支給額とする」基準が確立していたことなどから、労使慣行に基づく退職金の支給義務を肯定しました。  退職金に関する労使慣行の成立には、単に長期にわたり同じ取扱いがなされていたことだけではなく、@一定の基準による退職金の支給が労使にとって規範として認識されていること、A上記基準により当該事案の退職金額を算出できることが必要と考えられています。そのため、キョーイクソフト(退職金)事件においても、労使双方が、内規に定められた基準を認識していたことを前提として労使慣行の成立が肯定されました。労使双方の認識が共通していることは労使慣行の成立一般についても同様に考えられているところです。  そのほか、東京地裁平成17年4月27日判決においても、退職金支給の規定はあるもののその支給基準を具体的に定めておらず、支給根拠や計算方法の定めに不備があった事案において、就業規則に基づく退職金支払い義務は否定しつつも、退職金支給を受けた者が多数存在しており、そのうち検証可能な者を見るとその半数程度が、内規に定められた同一の算定式から誤差20%の範囲で支給されていたことをふまえて、労使慣行に基づく具体的な退職金支払い義務を肯定しました。これは、使用者側にある不備を理由に、これまで払っていた退職金の支給を拒否しようとしたことから、使用者にとって否定的な評価がなされたともいえます。就業規則を多数見ていると、退職金については別に定めるとしたまま、具体的な就業規則を定めることなく、また、退職金支給のルールも明確にすることなく推移している企業を見かけますが、このような場合に退職金の支給を継続していたときには、思わぬ負担が発生する可能性があります。  また、逆に、内規を基にした労使慣行による退職金支給義務を否定した裁判例として、大阪高裁平成27年9月29日判決(ANA大阪空港事件)があります。過去に作成された「内規」と名づけられた文書において、退職金の計算方法が記載されていたところ、当該内規が、就業規則の一部であるか、労使慣行として使用者を拘束しないかなどが争点になりました。裁判所は、「日本語の通常の意味として、『内規』とは、『内部の規定、内々の決まり』を意味するから、それが就業規則と異なることは明らかである」ことや、労使の合意として書面が作成されていないことなどから、使用者が当該内規にしたがって退職金を労働契約の内容とする意思を有していなかったことが認められるため、就業規則の一部ではなく、労使双方の認識が合致しておらず労使慣行として認めることもできないと判断されました。  したがって、過去の支給自体が、内規で労働契約の内容としているものや労使の合意による書面などの一定の基準を定めたものとして実行されていないかぎりは、たとえ、過去に支給実績があったからといって、ただちに、退職金の支払い義務を負担することにはならないでしょう。  ただし、これまでの実績が統一的な算定式に基づき行われてきたことやそれが労使間の認識として齟齬がないような状況に至っている場合には、労使慣行に基づく退職金支給義務が発生することにもつながりますので、注意しておく必要があります。 Q2 従業員の禁煙を推進するうえでの注意点について知りたい  従業員の健康増進を目的に喫煙者を減らすための施策を検討しています。労働者の喫煙を禁止することはできるのでしょうか。もしくは、喫煙時間を労働時間から除外することはできるのでしょうか。  喫煙自体を禁止したほうが健康確保のためには望ましいと思うのですが、私生活における喫煙も禁止することはできないのでしょうか。 A  労働時間中における喫煙の禁止や喫煙スペースの利用制限を定めることは可能と考えられます。また、労働時間からの除外についても、労務の提供が実行できていない以上は理論的には可能ですが、実際には除外すべき時間の把握に困難がともないます。  私生活における喫煙の制限は、労働契約の限界を超えており、禁止することはできないと考えられます。 1 喫煙時間と職務専念義務の関係  労働契約に基づく義務として、職務専念義務および誠実労働義務があると考えられています。  過去には、判例で「注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないこと」を意味すると判断されています。この言葉通りに職務専念義務を理解すると、些細な休憩すらも許されないとか、職務と並行して行うことが可能な作業などもすべて除外することにもなりかねないため、一般的には、職務の性質・内容、行為態様などの諸般の事情を勘案して判断することが適切と考えられています。  職務専念義務および誠実労働義務の観点からいえば、これらの義務に違反する場合には、喫煙を制限することが可能と考えられますし、これらの義務が尽くされていない時間については労務不提供と評価することも理論上は可能と考えられます。ただし、この場合は、居眠り時間の労働時間からの除外(本誌2021年7月号参照)と同様に、実際の喫煙時間を正確に把握する必要があるため、実行するには困難がともなうでしょう。  職務専念義務違反を検討するにあたっては、喫煙行為の目的およびその必要性とそれが許容される理由を考慮しなければならないでしょう。そのため、喫煙する必要性と禁止する必要性を比較していくことになります。  労働時間中の若干の休息(例えば、トイレへ行くことや席に座った状態でストレッチする行為など)は、だれにとっても共通の生理現象であることや体調や健康の保持のためなど必要性があり、職務専念義務との関係においても、許容されないとは考えがたく、これを労働時間から除外するということも適切とはいいがたいでしょう。  一方で、喫煙は、個人の嗜好であるうえ、健康増進法には受動喫煙防止が定められ、国民の健康の増進が目的とされるなど、その改正により屋内の場所に対する規制の範囲が広がり、多くの事業者が受動喫煙防止措置を義務づけられるに至っています。  また、喫煙の自由に関しては、監獄法に関して争われた最高裁判例で触れられたことがあります(最高裁昭和45年9月16日判決)。同判例では、「煙草は生活必需品とまでは断じがたく、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対しては相当の精神的苦痛を感ぜしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」と判断されている通り、その自由の価値は必ずしも高くないと評価されています。 2 私生活および休憩時間の喫煙  私生活や休憩時間における喫煙まで禁止することができるでしょうか。  職務専念義務があるとはいえ、これは、労働契約に基づくものであり、基本的に使用者が労働者を拘束できるのは、労働時間中の行動に限定されるべきものです。  パワーハラスメントの一種として個の侵害という類型がありますが、私生活への過度な介入や執拗な干渉は、プライバシーの侵害やパワーハラスメントになるおそれがあります。ただし、私生活上においても、会社の信用を毀損するような行為などが禁止行為として許容されているなど、いかなる介入も許容されないわけではありません。  使用者が禁止する必要性と禁止対象による制限の程度などを比較しながら、私生活上の行動を禁止できるかということを考えていく必要があると考えられます。職場での喫煙を禁止することで、労務提供時間の確保や周囲の従業員の健康確保などが叶うという観点からは、労働時間中の喫煙禁止は一定の合理性がありそうですが、私生活においては、会社が守るべきほかの従業員の健康や労務提供時間の確保と無関係になりますので、そのほかの必要性が肯定できるのかという点が問題になります。想定できるとすれば、従業員自身の健康確保にとどまり、喫煙による心身の状態の悪化が明白で業務支障を及ぼすおそれがあるような例外的な事態であればともかく、一般的には、労働時間外の私生活における喫煙を禁止することはできないと考えられます。  また、休憩時間は、労働からの完全な解放が確保されている必要がありますので、私生活と同様に休憩時間中における喫煙を禁止する理由も乏しいといわざるを得ません。 3 喫煙スペースの利用について  現実的には、喫煙は、職場自体というよりも喫煙スペースにおいて行われることが一般的になっており、そこで職務を遂行することは叶わないことが多いでしょう。  喫煙スペース自体を自社で用意しているような場合には、この施設には施設管理権と呼ばれる権限が認められています。施設管理権がある場合、企業秩序の維持に必要な範囲で利用制限などを設けることが許されています。  休憩時間においては、私生活時間中と同様に原則として喫煙に対する制限を設けることはむずかしいと考えられますが、休憩時間に関する行政解釈において、「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り許される」(昭和22年9月13日次官通達17号)と解されていることからすれば、施設管理権に基づく一定の制限は可能と考えられます。  したがって、喫煙スペースの設置場所や利用時間の制限などについては、使用者の裁量が広く認められると考えられ、施設管理権を行使することによって、労働時間や休憩時間中の喫煙時間を制限することも可能でしょう。  このように、喫煙時間の制限や喫煙スペースの利用制限などを組み合わせ、禁煙による健康増進を目ざすこともできるでしょう。 【P48-49】 生涯現役で働きたい人のためのNPO法人活動事例  高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となるなど、生涯現役時代を迎え、就業期間の長期化が進んでいます。一方で、60歳や65歳を一区切りとし、社会貢献、あるいは自身の趣味や特技を活かした仕事に転身を考える高齢者は少なくありません。そこで本企画では、高齢者に就労の場を提供しているNPO法人を取材し、企業への雇用≠ノこだわらない高齢者の働き方を紹介します。 第4回 特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター(東京都千代田区) 地方への移住希望者を手厚く支援  特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センター(略称:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター)は、地方暮らしやI・J・Uターン希望者を支援するために、北海道から沖縄までの移住相談をはじめ、移住に関する情報の発信やセミナー、イベントの開催などを行っている。東京と大阪に「ふるさと回帰支援センター」を開設しており、同2都府を除く45道府県の自治体と連携して各地の情報を提供し、移住相談員が来訪者(現在はコロナ禍のため予約制)の移住相談に対応。希望に応じて、仕事や住まい探しを支援する仕組みも用意している。活動を通して、地方再生や地域活性化にも貢献しているNPO法人である。  「当法人は、いわゆる団塊の世代の定年後を応援する運動として始まりました。この世代の地方出身者の多くは、集団就職というかたちで都会に出てきています。そうした方々を対象に、連合(日本労働組合総連合会)でアンケート調査をしたところ、定年後は故郷に帰って暮らしたいと答えた方が4割近くに上っていました。その思いを応援しようということで、2002(平成14)年に設立しました」と高橋公(ひろし)理事長は設立の経緯を語る。  ふるさと回帰支援センターに寄せられる相談件数は、2008年には約2500件だったが、年々増加して2019(令和元)年は5万件近くに。2020年は、コロナ禍によってセンターが臨時休館するなどして約4万件と減少したが、リモートワークの普及などにともない、以前にも増して真剣な移住相談が増えているという。  相談者の年齢層にも変化があり、設立当初はシニア世代が中心だったが、2008年のリーマンショック以降、地方に活躍の場を見出すことを考える若い世代が増加。最近も、コロナ禍を通しての価値観の転換や、持続可能な地域づくりへの関心の高まりなどから、地方への移住を本気で考える若者からの相談が増えている。 社会貢献につながる職場  同法人の職員数は80人。一般および嘱託職員の定年は60歳で、定年後は希望者全員65歳まで再雇用され勤務が可能。65歳超は、嘱託社員として継続雇用が可能で、上限年齢は定めていない。また、移住相談などに対応する専属職員の定年は65歳で、65歳超は嘱託職員として契約する。現在、60歳以上の職員は10人で、主に専属職員として相談業務で活躍している。  職員の採用について高橋理事長は、「それまでに経験されてきたことや話を聞く力などをみて、適性を判断して決めています」と明かす。  専属職員の経歴は、編集者やテレビ番組の制作、キャビンアテンダント、福祉職員など多様だ。また、「資金が潤沢にある法人ではありませんので、この活動を通して社会に貢献したい、そんな思いを抱いて入職する人が多いと思います」と高橋理事長。さまざまな経験を持つシニアの活躍に、今後も期待しているとも話す。 「人と地域」、「人と人」をつなぐ仕事  福井県専属移住相談員の神林(かんばやし)孝一(こういち)さん(67歳)は、3年前、64歳でふるさと回帰支援センターに入職した。相談員として基本的に週5日、JR有楽町駅前の東京交通会館8階にある「ふるさと回帰支援センター」に勤務。福井県へ移住を考えている人の相談や、自治体・関係団体との連絡調整、情報交換などに対応している。  「私の役割は、人と地域、人と人とをつなぐこと。主に福井県での暮らし全般の相談にのっていますが、相談される方も内容もさまざまで、対応する期間もお一人ずつ異なります。ときにはたいへんなこともありますが、まず、相談される方と私自身がつながり、移住をされてからは地元の方々とつながり、安心して暮らしていらっしゃる様子に触れたとき、私も嬉しくなり、やりがいを感じます。いまここで、この仕事ができることが私にとって喜びです」と神林さんはにこやかに現在の仕事を語る。  神林さんは総合出版社を57歳で早期退職した後、新潟県の移住相談員として転職し、同県のアンテナショップに勤務した(ふるさと回帰支援センターとは別組織)。長年勤めた出版社では、企画部門で地方自治の振興に寄与する業務にたずさわり、全国各地へ出張するなか、一つの地域にじっくりかかわるような仕事がしたいと考えるようになった。新潟県の移住相談員になったのは、そんな気持ちからだった。新潟県の仕事をするなかで、「ふるさと回帰支援センター」をよく知るようになり、前職の任期満了後、現在の職場の求人に応募して採用された。  いまの仕事は、神林さんのキャリアが活かせる内容のうえ、入職後も研修や勉強会、他府県の相談員との交流などでスキルを磨く機会があり、自信を持って臨むことができているという。  定年は65歳だが、継続して働くことを希望する場合、書面で仕事ぶりを自己評価し、センターの上長らとキャリア面談したうえで継続雇用が決まるという。  「移住は、人生にとって一大事です。そのことにかかわる責任の大きさを常に感じる仕事ですが、体力が続くかぎりたずさわっていきたい」と神林さん。誠実に仕事に向き合い、そのなかで出会う人や多様な出来事が、神林さんの人生を一段と豊かにしている。 写真のキャプション 特定非営利活動法人100万人のふるさと回帰・循環運動推進・支援センターの高橋公理事長 福井県専属移住相談員の神林孝一さん。「ふるさと回帰支援センター」には、各都道府県専用のブースがあるほか、移住に関するパンフレットなどが常設されている 【P50-51】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第16回 「役員」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は役員について取り上げます。会社であれば必ず役員はいますし、だれしも聞いたことのある用語だと思います。しかし、具体的にどのような存在でいかなる役割をになっているのか意外と整理されていません。高齢者雇用の観点からは、大手企業の経営幹部や高度な技能を持った高齢者が、中小規模の企業の役員または相当する地位として迎え入れられるケースもみられます。今回は、役員の定義や種類、知っておくとよいテーマについても触れていきます。 役員の種類は法律によって異なる  役員とは何かを辞書でみると、おおよそ「経営の監督」、「業務執行」、「会計監査」などを受け持つ幹部職員といった記載がみられます。役員の種類として最も一般的なのは取締役ですが、役員の範囲は法律によって異なります。  会社の組織・設立・運営管理などを定めた会社法によると、役員の種類は取締役のほか、会計参与・監査役が定義されています。会社の会計などの計算に関する事項について定めた会社計算規則によると、執行役が加わります。さらには、会社法の細かい取り決めをする会社法施行規則によると、これらに理事・監事・そのほかこれらに準ずる者が加わります。誌面の都合上、株式会社の代表的な役員に絞って各々の役割や設置条件をみていきたいと思います。 ・取締役…経営や業務執行に関する意思決定と、それらが適切に実行されるかを監督する役割が基本ですが、実務上は業務執行の役割をになうこともあります。株式会社は必ず1人以上を設置する必要があります。なかでも会社を代表する権限と責任を持つ者を代表取締役といいます。 ・執行役…取締役と役割を分離して、業務執行に特化した役割をにないますが、指名委員会等設置会社という特別な形態をとる会社にのみ設置することができます。この場合、取締役は業務執行を行わず意思決定と監督に専任します。取締役と執行役の兼任も可能です。 ・監査役…取締役の業務執行や会社の会計が適切に行われているかを調査し、不正があった場合は指摘したり止めたりする役割で、原則設置は任意です。ただし、会社の資本金5億円以上、または負債総額200億円以上の大会社では設置が必須です。 ・会計参与…取締役と共同して、会社の会計に関する計算書類などを作成する役割で、公認会計士や税理士の資格を持つ者が就任できます。監査役を置かない会社が会計の正確性の確保を目的に設置することができます。  執行役と似て非なるもので執行役員を設置している会社がありますが、両者は異なる存在ですので注意が必要です。執行役は法律上定められた役員ですが、執行役員には定めがありません。よって、執行役員は設置も役割も会社が自由に設定できます。当初は取締役の意思決定・監督と業務執行の役割を分離したアメリカ企業の役員制度を参考に導入された経緯がありますが、現状では従業員の最高役職や、取締役候補としている会社が多くみられます。 役員について知っておきたいテーマ  ここまで、複雑な話をしてきました。以降はもっと身近な話題について述べていきます。 @社外取締役  大学教授や弁護士、著名人などで「○○株式会社 社外取締役」という肩書をみたことがあるかと思います。親子会社の役員や従業員でない、近い親族でないなどの要件を満たす、会社との利害関係がない社外から迎えた取締役をさします。代表取締役が不正をしたり、適切でない会社方針を執行しようとしたりしても、力関係のなかでほかの取締役が指摘しにくいことが実態としてあります。このような状況を是正するため、客観的な観点で経営を監視し、意見をいうための存在が社外取締役です。例えば株式の上場会社など、経営の透明化がより求められる会社は設置が義務化されています。社外取締役を選ぶのも当該企業であるため、有効性に疑問が持たれることもありますが、例えば2016(平成28)年の大手流通チェーンのカリスマ♂長の退任には社外取締役の役割が大きかったといわれて注目されました。 A役員の役職名  役員の名称として社長や専務といったものをみたことがある方も多いと思います。これらを役職名と呼んだりしますが、実は法律上の定義はありません。役員の経営トップへの近さ(格)を示すものとして一般的に使われています。したがって、この名称の使用有無は会社の自由ですし、専務取締役・専務執行役員のように取締役・執行役員のどちらとセットで表記するのかも会社によります。ただし、社長を会社のトップとした場合、社長への近さは副社長・専務・常務・役職なしが一般的な順番となります。  このほか、CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)といった役職名をみたことがあるのではないでしょうか。こちらも法律上の定義はないのですが、役員としての業務執行上の役割を示す使われ方をします。そのため執行役員とセットで表記されることが多いです。例えば、経営の最高責任者としての役割をになうのがCEOですが、このほかにCOOやCFO(最高財務責任者)、CTO(最高技術責任者)あたりがよく使われます。 B役員報酬  毎年6月から7月にかけて役員報酬が話題になります。上場会社でかつ役員報酬1億円以上の役員については、有価証券報告書で役員の氏名や具体的な報酬額の個別開示が義務とされています。本稿執筆時の2021(令和3)年7月14日時点では個別開示253社、544人という状況です。最高額は18億8200万円ですが、上位10人のうち日本人は3人と外国人役員が多くを占めています(東京商工リサーチ調べ)。高額報酬者のうち外国人役員が多くを占めるというのは例年の傾向で、高い報酬額でなければ優秀な役員をグローバルから採用できない、日本の役員の多くは社員との給与の連続性で設定されることが多く、他国と比べて低めの水準になるなどの理由が背景にあります。なお、ここでの役員報酬には給与・賞与・退職慰労金といった現金報酬のほかにストックオプションなどの株式報酬も含まれます。 ☆  ☆  今回は「役員」について解説しました。次回は「時間外労働」について取り上げる予定です。 【P52-53】 TOPIC 50 代からは「社会参加」で生きがい若者世代を応援する存在に 人生100年時代未来ビジョン研究所レポートより  少子高齢化が進む日本では今後、定年後も再雇用や転職で働き続けたり、非営利団体での活動に汗を流したりするシニアが一層増えていくとみられます。そこで本稿では、ミドル・シニア世代に関する調査研究に取り組む「人生100年時代未来ビジョン研究所」が実施した定年後の意識調査を紹介するとともに、シニアが考える生きがいや将来世代への思いについて、同研究所所長で本誌編集アドバイザーでもある阪本節郎氏に解説していただきました(編集部) 中年期からニーズが上昇傾向  調査は40〜70代を対象に、定年後の生活に対してどのような意識やイメージを持っているか実態を把握しようと、2020(令和2)年6月、2021年3月の計2回、インターネット上で実施した。仕事やボランティアといった広義な意味での「社会参加」に対する意識についてたずねたところ、「いつまでも何らかの社会参加はしたい」と回答した人は24・5%で、「特にない」を除くと最多だった(図表1)。また、2番目に回答が多かった「社会参加でいつまでも生きがいをもちたい」も含めると、50代以降は各世代で前向きな回答が40%を上回り、中年期から高齢期にかけて社会参加や生きがいへのニーズが上昇していく傾向も読み取れた。  一方で、3番目に多かった「社会参加はやはりお金を稼ぐことが最大の目的」と回答した人は、50代、60代、70代と徐々に低下。社会参加への動機が経済的な理由ではなく、精神的な充足感を重視している傾向も浮き彫りになった。同研究所は「50代以上の世代はお金が一番というよりも生きがいや、いつまでも社会参加することを求めている。稼げればそれに越したことはないが、年金もあるためではないか」と指摘する。 転職、地域貢献、NPOで、人生経験を活かす  また調査結果からは、大人世代(中高年齢層)が若年層との交流や協力について肯定的にとらえていることも明らかになった。理想的な大人・時代に関する質問で「若者世代を応援することで、若者世代からも新しく社会的にも意義のある文化や潮流が生まれる時代が望ましい」とポジティブに回答した人は計73.3%を占め、なかでも70代が79.4%と突出して高かった(図表2)。  同研究所は調査結果をふまえ、定年後はどのような就業環境であっても「できるだけ若い世代と交流・協力し、何らかのサポートをすることが望ましい」と結論づけたうえで、クロスジェネレーション(世代間交流)を意識した生き方を提言。50代以降は人生経験を活かして社会参加・社会貢献する「ソーシャルフリーランサー」という存在になることで、社会に新たな活力を生み出す原動力になる可能性を示唆している。 「若い気持ち」の50プラス世代若者たちの支え役に  同研究所の阪本所長は、調査結果について以下のように分析する。  「人生100年時代といわれ、50代、60代以降のことをみんなが考え始めました。体も意外に元気で『若い気持ち』もあります。自分の仕事の経験や人生経験を活かしたいし、いままでと違う形で社会にかかわりたいとも思っています。さらに『いまの若者を応援したい気持ち』もあり、それは将棋の藤井聡太棋士や女子ゴルフの渋野(しぶの)日向子(ひなこ)プロへの熱い応援にあらわれています。  そうした気持ちと人生経験を活かして、例えばNPOの経理担当、会社に残るのであればより若い世代のメンター、若者の起業支援、学童保育、若い母親の育児支援ができるかもしれません。定年を延長するならば、仕事と地域貢献と複数の役割をになうことも考えられます。  生産年齢人口が減少していくなか、若い世代がより働きやすく、生産性の上がることが望ましいといえます。全人口の半数を超えていく50代以上が若者の支え役として機能すれば、次の豊かな日本の社会を創ることになるでしょう」 ※レポートの詳細は「人生100年時代未来ビジョン研究所」のホームページ(https://miraivision.net/report)でご覧になれます。 図表1 Q社会参加について最もあてはまるものを選んでください。 いつまでも何らかの社会参加はしたい 社会参加でいつまでも生きがいをもちたい 社会参加はやはりお金を稼ぐことが最大の目的だ 社会参加は地域のためになることをしたい 社会参加はいままでの自分の蓄積をできるだけ活かす場としたい 社会参加でいままで経験しなかったことをしたい 社会参加はより若い世代のためになることをしたい その他 特にない 全体 1270 24.5% 16.7% 9.4% 6.9% 5.5% 5.0% 2.9% 0.5% 28.6% 40〜49歳 314 21.7% 13.4% 16.9% 7.0% 4.5% 5.7% 1.6% 0.3% 29.0% 50〜59歳 319 21.6% 19.4% 11.3% 6.9% 3.4% 5.0% 4.7% 0.9% 26.6% 60〜69歳 316 28.8% 14.6% 7.3% 6.0% 6.6% 5.7% 2.5% 0.3% 28.2% 70〜79歳 321 25.9% 19.3% 2.2% 7.8% 7.5% 3.7% 2.8% 0.3% 30.5% 出典:人生100 年時代未来ビジョン研究所 図表2 Q「大人世代が若者世代を応援することで、若者世代からも新しく社会的にも意義のある文化や潮流が生まれる時代が望ましい」という大人像・時代像について、あなたが「なりたい」「こうありたい」大人像・時代像を思い浮かべて、それぞれあてはまるかどうか答えてください。 全体:1864 あてはまる 13.3% ややあてはまる 60.0% あまりあてはまらない 22.2% あてはまらない 4.6% 男性:932 あてはまる 11.3% ややあてはまる 57.6% あまりあてはまらない 25.2% あてはまらない 5.9% 女性:932 あてはまる 15.2% ややあてはまる 62.3% あまりあてはまらない 19.2% あてはまらない 3.2% 40代:466 あてはまる 9.2% ややあてはまる 57.9% あまりあてはまらない 26.0% あてはまらない 6.9% 50代:466 あてはまる 11.6% ややあてはまる 60.1% あまりあてはまらない 23.4% あてはまらない 4.9% 60代:466 あてはまる 14.8% ややあてはまる 59.9% あまりあてはまらない 21.7% あてはまらない 3.6% 70代:466 あてはまる 17.4% ややあてはまる 62.0% あまりあてはまらない 17.8% あてはまらない 2.8% 出典:人生100年時代未来ビジョン研究所 【P54-55】 10月は「高年齢者就業支援月間」 参加無料 令和3年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  令和3年4月に施行の改正高年齢者雇用安定法により「70歳までの就業機会の確保」が努力義務となりました。  このため、本年度のシンポジウムは「高年齢者雇用安定法改正」をテーマに、全国5都市(岩手・東京(第二部)・岐阜・大阪・宮崎)の会場で開催します。今号では、3会場のご案内をします(他会場のスケジュールは、次号でお知らせします)。  本シンポジウムでは、高年齢者雇用安定法改正の概要、学識経験者の講演、高年齢者を活用するため先進的な制度を設けている企業の事例発表・パネルディスカッションなどにより、今後の高年齢者の活躍促進について、みなさまとともに考えていきます。  なお参加費は全会場、無料となっています(事前申込みが必要です)。  みなさまのご参加を、心からお待ちしています。 東京 日時 令和3年10月6日(水) 11:00〜16:00 (シンポジウムは13:00〜16:00) 場所 日本教育会館一ツ橋ホール 千代田区一ツ橋2-6-2 参加方法 @会場参加(100人)(事前申込制・先着順)、Aライブ視聴 《プログラム》 【第一部】11:00〜11:40 高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式) 【第二部】13:00〜16:00 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高年齢者雇用安定法改正について(厚生労働省) 講演 「高年齢者雇用が企業を強くする」 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 藤村 博之 氏 事例発表 3社 トークセッション 「高年齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて」 申込み方法 特設サイト(https://moushikomi.jeed.go.jp/tokyo/)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 宮崎 日時 令和3年10月14日(木) 13:30〜16:35 場所 宮崎市民文化ホール 宮崎市花山手東3-25-3 参加方法 @会場参加(80人)(事前申込制・先着順)、Aライブ視聴 《プログラム》 高年齢者雇用安定法改正について(宮崎労働局) 基調講演 「シニア層を活かした企業の発展とこれからの働き方改革〜時代を先取りする70歳雇用〜」 東京学芸大学教育学部教授 内田 賢 氏 事例発表 生活協同組合コープみやざき/株式会社セキュリティロード パネルディスカッション 「高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて」 申込み方法 特設サイト(https://moushikomi.jeed.go.jp/miyazaki/)へアクセスし、申込み方法専用フォームからお申込みください。 岩手 日時 令和3年10月28日(木) 13:00〜16:00 場所 いわて県民情報交流センター(アイーナ) 盛岡市盛岡駅西通1-7-1 参加方法 @会場参加(80人)(事前申込制・先着順)、Aライブ視聴 《プログラム》 高年齢者雇用安定法改正について(岩手労働局) 基調講演 「高齢者の新たな活躍が期待できる職場環境に向けて」 〜高齢者の「強み」を活かす視点〜 東京学芸大学教育学部教授 内田 賢 氏 事例発表 明治安田生命保険相互会社/株式会社ベルジョイス パネルディスカッション 「高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて」 申込み方法 特設サイト(https://moushikomi.jeed.go.jp/iwate/)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 研究開発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 ※新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、開催日などに変更が生じる場合があります。当機構ホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 【P56-57】 65歳超雇用推進助成金のご案内 〜概要と申請の流れ〜  少子・高齢化社会の急速な進行により、労働力人口の減少が見込まれるなかで、高年齢者が社会の支え手として活躍していくことが重要であり、意欲と能力があれば65歳までに限らず、65歳を超えても働ける社会の実現に向けた取組みを開始することが必要です。  この助成金は、65歳以上への定年引上げ等を行う事業主、高年齢者の雇用管理制度の整備を行う事業主、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する事業主に対して、国の予算の範囲内で助成するものであり、「生涯現役社会」の構築に向けて、高年齢者の就労機会の確保および雇用の安定を図ることを目的としています。  本助成金は次のT〜Vのコースに分けられます。 T 65歳超継続雇用促進コース  本助成金は、支給要件を満たす事業主が、次の@〜Cのいずれかを就業規則または労働協約に規定し、実施した場合に受給することができます。 @65歳以上への定年の引上げ A定年の定めの廃止 B希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入 C他社による継続雇用制度の導入 ◆支給額  図表1の額を支給します。 U 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  本助成金は、支給要件を満たす事業主が、高年齢者の雇用の推進を図るために雇用管理制度(賃金制度、健康管理制度等)の整備に係る措置を実施した場合に、措置に要した費用の一部を助成します(図表2)。 ◆支給額  支給対象経費(上限50万円)に60%(中小企業以外は45%)を乗じた額を支給します。なお、生産性要件を満たす事業主の場合は支給対象経費の75%(中小企業以外は60%)を乗じた額となります。初回の支給対象経費については、当該措置の実施に50万円の費用を要したものとみなします(2回目以降は50万円を上限とする実費)。 V 高年齢者無期雇用転換コース  本助成金は、支給要件を満たす事業主が、50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者を転換制度に基づき、無期雇用労働者に転換させた場合に、対象者数に応じて一定額を助成します。 ◆支給額  対象労働者1人につき48万円(中小企業以外は38万円)を支給します。なお、生産性要件を満たす事業主の場合は対象労働者1人につき60万円(中小企業以外は48万円)を支給します。 申請の流れ  支給申請の流れは図表3の通りです。UおよびVのコースについては、計画申請書を提出し、認定を受ける必要があります。 助成金の詳細について  65歳超雇用推進助成金の支給要件等の詳細は、当機構ホームページをご確認ください(ホームページを閲覧される場合は「当機構トップページ(JEED 検索)」→「高齢者雇用の支援」→「助成金」とお進みください)。  各助成金の申請様式や支給申請の手引きは、当機構ホームページからダウンロードできます。また、65歳超雇用推進助成金の制度説明動画を掲載しておりますのであわせてご活用ください。  各助成金に関するお問合せや申請は、都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課、連絡先は65頁参照)までお願いします。 図表1 65歳超継続雇用促進コースの支給額 定年の引上げ、希望者全員を対象とする継続雇用の導入、定年の定めの廃止 実施した制度 定年引上げまたは定年の廃止 継続雇用制度の導入 引き上げた年数 65歳 66〜69歳 定年の引上げ(70歳〜)又は定年の定めの廃止 66〜69歳 70歳以上 5歳未満 5歳以上 4歳未満 4歳 対象被保険者数 10人未満 25万円 30万円 85万円 120万円 15万円 40万円 80万円 10人以上 30万円 35万円 105万円 160万円 20万円 60万円 100万円 ※実施した制度、引き上げた年数、対象被保険者(対象となる60歳以上の雇用保険被保険者)数に応じて定額が助成されます 他社による継続雇用制度の導入(上限額) 措置内容 他社による継続雇用制度の年齢・引上げ幅 66〜69歳 70歳以上 4歳未満 4歳 支給額(上限) 5万円 10万円 15万円 ※申請事業主が他社の就業規則等の改正に要した経費の2分の1の額と表中の支給上限額のいずれか低い方の額が助成されます。対象経費については申請事業主が全額負担していることが要件となります 図表2 雇用管理制度の整備に係る措置と支給対象経費 措置の種類 賃金・人事処遇制度の導入・改善 労働時間制度の導入・改善 在宅勤務制度の導入・改善 研修制度の導入・改善 専門職制度の導入・改善 健康管理制度の導入 その他の雇用管理制度の導入・改善 支給対象経費 ●高年齢者の雇用管理制度の導入等(労働協約または就業規則の作成・変更)に必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費 ●上記の経費の他、左欄の措置の実施にともない必要となる機器、システム及びソフトウエア等の導入に要した経費(計画実施期間内の6カ月分を上限とする賃借料またはリース料を含む) 図表3 65歳超雇用推進助成金の支給申請の流れ 事業主 G振込 F支給/不支給決定通知 @事前相談 A申請書提出 B補正依頼 E照会 金融機関 機構 受理点検 都道府県支部 C申請書送付 D照会 審査 機構本部 https://www.jeed.go.jp/ 高齢助成金 機構 検索 制度説明動画はコチラ https://youtu.be/yWjgfKRu-3Y 【P58】 BOOKS 介護離職防止に役立つ情報や考え方も示す 親の介護で自滅しない選択 太田差惠子(さえこ)著/日本経済新聞出版(日経ビジネス人文庫)/935円  「団塊(だんかい)の世代」が75歳に達する2025年以降、介護職員の不足がより深刻になると同時に、働きながら親を介護する人がさらに増えていくと予測されている。  本書は、介護に直面している人や近い将来もしかしたら、と考えている人はもちろん、親を介護する社員の離職を防ぐ手立てとして実用的な情報や考え方に触れておきたいという人事労務担当者にも参考になる一冊である。  著者は、介護の現場を20年以上にわたって取材し、親の介護のために仕事を辞めたことを後悔している人や親の介護をきっかけに兄弟姉妹の仲が決裂した人や、離婚した人に出会ってきた。そうした取材経験などから、自分自身の人生を大切にしながら、「無理をしすぎず」、ときには「割り切って」、「発想を変えて」親を介護する方法を提案している。  介護保険の申請の流れや介護保険のサービス内容、最初の相談窓口となる地域包括支援センターのこと、高齢者施設選びのポイント、介護にかかる費用といった情報とともに、仕事と介護を両立するための体制づくり、介護休業制度の使い方、また、遠距離介護で親を支える方法などもわかりやすく説いている。 最新の研究成果を活用し、現状と課題を提示 テレワーク コロナ禍における政労使の取組 独立行政法人労働政策研究・研修機構編集・発行/1100円  新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、テレワークが緊急避難的に広がった。テレワーク自体は目新しい働き方ではなく、政府も「テレワーク・デイズ」などの機会を設けて普及に取り組み、本誌でも2017(平成29)年12月号の特集でテレワークを取り上げている★。しかし、広がる度合いがあまりにも急だったので、企業の現場で戸惑いがあるのも事実だろう。  本書はこうした現状をふまえて企画されたもの。「テレワークの労働法政策」と「テレワークの現状と今後」という二つのレポートから構成されている。前者は濱口(はまぐち)桂一郎氏の講演を収録し、テレワークをめぐる法制度や政策の歴史的な展開を振り返りながら、今年3月に公表された新たなテレワークガイドラインが策定されるまでの経過と内容が紹介されている。  一方、後者は新型コロナウイルス感染症が企業や個人に及ぼす影響を把握するために実施した各種調査結果をもとにテレワークの活用状況が概観されており、急拡大の反動「揺り戻し」が起きていると指摘されるなか、テレワークが「ニューノーマル」となり得るかどうかにも言及している。手に取りやすいブックレット形式だが、内容は単行本に引けを取らず本格的だ。 ★ 本誌2017年12月号「特集 テレワークが創る多様な働き方」。当機構ホームページでご覧になれます。 エルダー 2017年12月号 検索 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「過労死等の労災補償状況」を公表  厚生労働省は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患、仕事による強いストレスなどが原因で発病した精神障害の労災補償状況についてまとめた、2020(令和2)年度「過労死等の労災補償状況」を公表した。  それによると、脳・心臓疾患の労災請求件数は784件で、前年度(936件)と比べ152件減少した。また、業務上認定されたのは194件(当該年度内に業務上認定された件数で、当該年度以前に請求があったものを含む。以下同じ)で、前年度(216件)と比べ22件減少している。請求件数は6年ぶりの減少、業務上認定件数は4年連続の減少となった。年齢別にみると、請求件数は「50〜59歳」264件、「60歳以上」261件、「40〜49歳」204件の順で多く、支給決定件数は「50〜59歳」65件、「40〜49歳」64件、「60歳以上」44件の順に多い。  次に、精神障害についてみると、労災請求件数は2051件で、前年度(2060件)と比べ9件減少した。また、業務上認定されたのは608件で、前年度(509件)と比べ99件増加している。請求件数は8年ぶりの減少、業務上認定件数は2年連続の増加となった。なお、精神障害にかかわる労災請求事案の場合、精神障害の結果、自殺(未遂を含む)に至った事案があるが、2020年度は2051件中155件(うち業務上認定81件)となっている。 厚生労働省 「裁量労働制実態調査」の結果を公表  厚生労働省は、「裁量労働制実態調査」の結果を公表した。この調査は、専門業務型および企画業務型それぞれの裁量労働制の適用・運用実態や裁量労働制の適用・非適用による労働時間の差異等を把握することを目的とし、2019(令和元)年10月31日現在の状況等について実施した。  事業場調査の結果によると、適用労働者がいる適用事業場における1カ月の労働時間の状況の平均(1人当たり)は171時間36分、1日の労働時間の状況の平均は8時間44分、1カ月の労働日数の平均(1人当たり)は19・64日となっている。一方、非適用事業場における1カ月の労働時間の平均(1人当たり)は169時間21分、1日の労働時間の平均は8時間25分、1カ月の労働日数の平均(1人当たり)は20・12日となっている。  次に、労働者調査の結果によると、適用労働者における1週間の平均労働時間数は45時間18分、1日の平均労働時間数は9時間0分、1週間の平均労働日数は5.03日となっている。一方、非適用労働者における1週間の平均労働時間数は43時間2分、1日の平均労働時間数は8時間39分、1週間の平均労働日数は4.97日となっている。  また、適用労働者における健康状態の認識状況は、「よい」(32.2%)が最も高く、次いで、「ふつう」(29.4%)となっている。一方、非適用労働者においては、「ふつう」(33.8%)が最も高く、次いで、「よい」(30.0%)となっている。  厚生労働省では、今回の調査結果を基に、裁量労働制のあり方を検討することにしている。 発行物 生命保険文化センター 「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」  公益財団法人生命保険文化センターは、「ライフマネジメントに関する高齢者の意識調査」の結果をまとめた。調査は、高齢者の考え方、生活の実態・意向等を把握し、これからの長寿社会のあり方を検討することを目的として、2020(令和2)年10月、60歳以上の男女約2000人に実施した。  調査結果から、「現在就労している者の退職・引退予定年齢」についてみると、「70歳」が24.6%と最も多く、次いで、「75〜79歳」22.1%、「80歳代」18.7%、「65歳」17.8%となっている。これを年齢別にみると、60〜64歳の回答では、割合の高い順に「65歳」46.2%、「70歳」28.9%、65〜69歳では、「70歳」47.8%、「75〜79歳」26.1%、70〜74歳では、「71〜74歳」22.3%、「75〜79歳」51.1%、75〜79歳では、「80歳代」82.1%と、総じて、現在就労している人は、実年齢より数年〜5年先を、退職・引退予定年齢としている傾向がみられる。  「年収に占める公的年金収入の割合の平均」は、高年齢層になるほど高くなっている傾向がみられる一方で、「年収に占める就労収入の割合の平均」は、「60〜64歳」で71.2%と最も高く、「65〜69歳」で36.2%、「70〜74歳」で24.1%と高年齢層になるほど低くなっている傾向がみられる。  報告書は左記のURLからダウンロードが可能で、購入する際の価格は2300円(税込)。  https://www.jili.or.jp/press/2021/nwl2.html 【P60】 次号予告 10月号 特集 高年齢者活躍企業コンテストT 厚生労働大臣表彰受賞企業事例から(仮) リーダーズトーク 平田麻莉さん (プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事) 〈(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415  FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長 藤村博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●高齢化の進展により、「介護」が大きな社会問題となっています。2000(平成12)年にスタートした介護保険制度をはじめ、介護支援の取組みは進んでいますが、介護による負担は依然大きく、仕事との両立ができなくなってしまい、介護を優先するために退職をする、いわゆる「介護離職」を選択する人も少なくありません。  介護が必要な家族がいるのは、知識や経験を持ち企業で中心的な役割をになっている40〜60代の世代です。この働き盛り世代の介護離職を防止し、業務でその力を存分に発揮してもらうためにも、「仕事と介護の両立支援」の充実は、いまや企業にとって欠かせない取組みといえます。  本特集では、仕事と介護の両立支援の重要性とあわせて、両立支援を進めていくうえで理解していなくてはならない「育児・介護休業法」、両立支援の具体的な進め方などについて解説。また、大企業を代表する企業事例として日本ユニシス株式会社、中小企業を代表する企業事例として有限会社COCO−LOの取組みを紹介しています。企業規模や業態によって従業員の働き方が異なるため、それに応じた取組みが企業には求められます。ぜひ参考にしていただければ幸いです。 ●10月は「高年齢者就業支援月間」です。当機構では、全国5都市でシンポジウム、各都道府県で地域ワークショップを開催します。みなさまのご参加をお待ちしています。 公式ツイッターを始めました! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー9月号 No.502 ●発行日−令和3年9月1日(第43巻 第9号 通巻502号) ●発行−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−企画部長 奥村英輝 編集人−企画部次長 五十嵐意和保 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216(企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-861-6 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 目ざせ生涯現役! 健康づくり企業に注目! 第2回 株式会社ローソン(東京都品川区) 全従業員向けとハイリスク対象者向け 二つのアプローチで健康を推進  生涯現役時代を迎え、企業には社員が安心して長く働ける制度・環境の整備が求められていますが、生涯現役の視点で考えると、「社員の健康をつくる」ことは大切な要素です。  そこで本企画では、社員の健康づくりに取り組む先進企業の事例をご紹介します。 生活習慣改善に必要な6項目をKPIに設定し、支援策を展開  「私たちはみんなと暮らすマチ≠幸せにします」を、企業理念に掲げる株式会社ローソン。同社は2013(平成25)年にコーポレートスローガンを「マチの健康ステーション」に変更※1し、健康に着目した商品・サービスを展開するなど、グループ全体で健康への取組みを本格化した。その一貫として、従業員の健康増進の取組みにも注力している。  従業員の健康増進に取り組む背景について、ローソングループ健康推進センターセンター長代行の四方田(よもだ)美穂氏はこう語る。  「当社の企業理念を実現するためには、まず『従業員が健康であり、さらに加盟店のオーナー・クルーが健康であることが大切である』という考えのもと、グループの従業員を含めた健康維持向上の取組みを推進しています。もともと、生活習慣病リスク因子の高い従業員が多いことが課題となっており、生活習慣を改善するためには、一人ひとりが健康を意識して取り組むことが必要だと考え、取組みをスタートさせました」  同社の健康推進施策は、2018年度までは健康診断結果を元にリスク者を減らすことを目標に実施してきたが、2019年度からは、生活習慣改善のために必要な「肥満」、「血圧」、「肝機能」、「脂質」、「血糖」、「喫煙」の6項目をKPI※2とし、各項目で適正な数値の人の比率を引き上げるための支援策を実施している。取組みの柱は二つ。集団全体へ働きかけを行い、全体の健康リスクを下げる「ポピュレーションアプローチ」と、リスクの高い対象者に絞り込んで支援する「ハイリスクアプローチ」だ(図表)。 生活習慣の定着を目的とした「ポピュレーションアプローチ」  ポピュレーションアプローチには、会社が行う「元気チャレンジ!」と、ローソン健康保険組合が実施する「ローソンヘルスケアポイント」の二つの施策がある。いずれも日々の健康活動や生活習慣の定着を目的とし、参加は任意だ。  「元気チャレンジ!」は、健康診断前・上期・下期の特定の期間(63頁図表)、アプリに日々の食事・歩数・睡眠などの活動を記録して生活リズムを整える活動にチーム(原則として同部署の3〜15人)で取り組み、健康意識を高めようというもの。活動内容に応じてインセンティブとしてPonta(ポンタ)ポイントが付与される。チームで取り組むことのメリットについて、ローソングループ健康推進センターの岸亜妃子(あきこ)氏は「リーダー格の人が、健康意欲の低い人を引っ張ってくれる効果を期待しています」と話す。  日々の活動を記録・管理する「元気チャレンジ!」に対し、生活習慣の定着度合をチェックしふり返るための仕組みが、「ローソンヘルスケアポイント」だ。専用アプリから次のメニューのタスクを実行するたびに、Pontaポイントが付与される。 @健診チェック:定期健康診断の結果をアプリに登録し、自分の健康リスクを確認。 A生活習慣チェック:食事・運動・睡眠に関するアンケートに答え改善点をチェック。 Beラーニング:読み物とクイズで健康について学ぶ。 C健康診断結果ポイント:健康診断でKPIの各項目が適正値であること(項目ごとにポイントを付与)。  ローソンヘルスケアポイントの参加率は、アルバイトも含めた健保組合加入者約1万人のうち約15%にとどまっており、ほかの施策と連携させながら、参加者の拡大に取り組んでいる。 産業保健スタッフの支援を強化した「ハイリスクアプローチ」  ハイリスクアプローチには、ハイリスク者に対し会社が行う健康診断後のフォローと、健保組合が実施する「健康サポートプログラム」(特定保健指導)の二つがある。  健診後のフォローについては、2018年にローソングループ健康推進センターを発足させ、専属の産業医・保健師を配置して対応を強化。その結果、2020年度のフォロー件数は2018年度と比べて13倍に増加している。  「健康サポートプログラム」は、2017年度より特定保健指導※3の名称を変えて実施しているものだ。  「ハイリスク者に対応するため、会社と健保組合の連携により、健診の速やかな受診を働きかけ、対象者を早めに特定し対応しています。ハイリスクの人は、せっかく卒業≠オても数年で戻ってくるケースが多く、ポピュレーションアプローチを強化することで、健康意識を保ち続ける仕掛けも重要だと考えています」(四方田氏) SV(営業職)の肥満解消のためスポーツ大会との連動企画を実施  同社では、肥満(BMI30以上)該当者の3分の2を支店勤務のSV※4(スーパーバイザー)が占めている。原因として、店舗巡回を車移動で行うことが多く、運動不足や生活も不規則になりがちなためではないかとみられている。  2019年下期に、初めて部署別対抗で実施した「元気チャレンジ!」は、4000人を超える過去最高の参加人数を記録したが、その稼働率をみると、本社等の87%に対し、支店は18%と低調だった。そこで2020年は、同社が毎年実施しているスポーツ大会と連動した「元気チャレンジ!」を実施。スポーツ大会は、SVの人たちも一致団結して練習に励むなど、健康増進に積極的に取り組める機会となっているからだ。  コロナ禍のため、同年のスポーツ大会はリモートでの実施となり、新幹線の七つのコースからチームごとに一つのコースを選び、そのコースと同じ距離を56日間で歩くという企画を実施した。コースによって距離が異なり、最長の東北新幹線(674・67km)なら1日の平均歩数は1万5060歩、最短の北海道新幹線(148・79km)なら3321歩となる。  「一律の目標ではなく、各チームで目標を選べるようにしたことで取り組みやすくなり、支店の稼働率は52・1%に向上しました」(四方田氏)  また、SVは車での移動が多く、スマートフォンでアプリを操作するのがむずかしいことから、腕時計型のウェアラブルデバイスを配付し、睡眠や歩数などを見える化する実験を約60人に実施した。その結果、BMI30以上の参加者では平均マイナス4.5kgの減量効果が現れたという。現在もその対象者を拡大し、実験を継続中だ。 「明るく楽しく元気に」健康リテラシーを向上  これらの取組みの成果について、四方田氏は次のように話す。  「取組みの結果、生活習慣の見直しなど、行動変容につながっている社員が増えていることは実感しています。健診も受診時期が早まっているので、健康リテラシーは向上しているのではないかと考えています。一方で、危険因子のKPIは一気に数値が変わるものではありませんので、今後も粘り強く、着実な取組みを積み重ねることで、必ずや成果に結びつくと考えています」  健康増進の取組みで同社が大事にしていることは、強制ではなく支援、そして「明るく楽しく元気に」という姿勢である。「楽しくないと続きません」と四方田氏が話すように、継続した取組みができるよう、従業員をいかに支援できるかが、健康推進のポイントといえそうだ。 ※1 2019年に「マチのほっとステーション」に変更 ※2 KPI……Key Performance Indicator(重要業績評価指標)。目標を達成するための重要な業績評価の指標 ※3 特定保健指導生活習慣病予防健診(特定健診)を受けた後に、生活習慣の改善が必要な人に行われる保健指導 ※4 加盟店の経営コンサルティングを行う職種 図表 健康推進施策の取組みの全体像 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 定期健康診断 ポピュレーションアプローチ ハイリスクアプローチ ●生活習慣改善(ローソンヘルスケアポイント) 健康診断結果チェック ・生活習慣チェック ・e-ラーニング ・健康診断結果ポイント 上期 「元気チャレンジ!」 下期 「元気チャレンジ!」 健康診断前 「元気チャレンジ!」 全日禁煙(加熱式タバコ除く) ・禁煙サポート ●9月〜健康コラム定期配信開始(メンタルヘルス) ●産業医確認(判定) ●緊急対応通知 ●ストレスチェック実施 ●ストレスチェックFB グループ1 面談⇔就労制限 治療状況を確認⇒年度末までフォロー グループ2 面談⇔就労制限 治療状況を確認⇒年度末までフォロー グループ3 治療確認 治療状況を確認⇒年度末までフォロー 再受診 再受診対応 ●健康サポートプログラム(特定保健指導) ●若年層向け保健指導 ●糖尿病重症化予防プログラム ・糖尿病重症化予防 (生活習慣改善フォロー、または主治医との連携による血糖コントロール) 案内 面談 行動目標の実践、途中チェック 案内 面談 行動目標の実践、途中チェック 案内 面談 行動目標の実践、途中チェック 振り返り・評価 出典:『ローソングループ 健康白書2021』 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回はルールを見つけ出す「ひらめき」系の問題です。記憶や情報を組み合わせて考えることにかかわる前頭前野や、さまざまな情報を統合し論理立てて考えることにかかわる側頭頭頂接合部が盛んに使われます。 第51回 穴埋め問題 ある規則にしたがってアルファベットや平仮名が並んでいます。 空欄に入る文字を答えてください。 目標 10分 問題1 a □ c D e F g □ i J k 問題2 Z □ X □ V U □ S 問題3 A C □ G I □ M 問題4 あ お □ こ さ □ た と 問題5 あ う □ か く き さ □ し ときには時間をかけて考えることも大切  物事を順序立てて考えたり、人に説明したりするときには、脳の左側にある「側頭頭頂接合部」という部分が使われています。  また、人の記憶の分類にはいくつかの種類がありますが、「宣言的記憶」と「非宣言的記憶」というものがあります。宣言的記憶は、過去の体験や見たり聞いたりしたことなどを指します。非宣言的記憶は、「一度自転車に乗ったらずっと乗れる」というような、体が反射的に覚えているものを指します。  この宣言的記憶をになっているのが側頭頭頂接合部で、この働きがあるからこそ人は何かを思い出し、それを説明することができます。  今回の脳トレ問題を解く際には、問題をよく理解して、さまざまな角度から考えてみてください。急いで解く必要はありません。@問題を理解する、A関連する過去の記憶をたどる、B柔軟な思考で答えを出す。これらのくり返しが、脳の記憶をうまく組み合わせて、よりよい答えを出す力を生み出します。 【問題の答え】 問題1 → a B c D e F g H i J k アルファベット順で大文字・小文字が交互になっています。 問題2 → Z Y X W V U T S アルファベットを後ろから順に並べています。 問題3 → A C E G I K M O アルファベットが一つ置きになっています。 問題4 → あ お か こ さ そ た と 五十音のア行、カ行、サ行、タ行の最初と最後を並べています。 問題5 → あ う い か く き そ さ す し 「ア段・ウ段・イ段」の順番になっています。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2021年9月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒780-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップのご案内  当機構では各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいきと働いていただくための情報を提供します。各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) ●改正高年齢者雇用安定法【70歳までの就業機会の確保など】 ●専門家による講演【高年齢者雇用に係る現状や各種施策など】 ●事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください(令和3年8月10日現在確定分) ■開催スケジュール 都道府県 開催日 場所 北海道 10月22日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月20日(水) デーリー東北ホール 宮城 11月19日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月26日(火) 秋田市文化会館 山形 10月26日(火) 山形国際交流プラザ 福島 10月21日(木) 福島職業能力開発促進センター 茨城 10月22日(金) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月26日(火) とちぎ男女共同参画センター 群馬 10月21日(木) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月15日(金) 埼玉教育会館 千葉 10月22日(金) ペリエホール 東京 10月19日(火) 東京ウイメンズプラザ 神奈川 11月26日(金) 関東職業能力開発促進センター 新潟 10月21日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター 富山 10月26日(火) 富山県民共生センター 石川 10月21日(木) 石川県地場産業振興センター 福井 10月13日(水) 福井県中小企業産業大学校 山梨 10月27日(水) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月13日(水) ホテル信濃路 静岡 10月13日(水) 静岡職業能力開発促進センター 愛知 10月29日(金) 名古屋市公会堂 三重 10月26日(火) 三重県勤労者福祉会館 滋賀 10月22日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 都道府県 開催日 場所 京都 10月15日(金) 京都労働局 兵庫 10月21日(木) 神戸市教育会館 奈良 10月26日(火) ホテル・リガーレ春日野 和歌山 10月22日(金) 県民交流プラザ 和歌山ビッグ愛 鳥取 10月28日(木) 倉吉未来中心 セミナールーム1 島根 10月20日(水) 松江合同庁舎 岡山 10月15日(金) ピュアリティまきび 広島 10月26日(火) 広島職業能力開発促進センター 山口 11月10日(木) 山口県健康づくりセンター 徳島 10月28日(木) 徳島県JA会館すだちホール 香川 10月18日(月) サンメッセ香川 サンメッセホール 愛媛 10月8日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月26日(火) 高知職業能力開発促進センター 福岡 11月17日(水) JR博多シティコミュニケーションスペース 11月24日(水) KMMビル 12月7日(火) 久留米ビジネスプラザ 12月9日(木) のがみプレジデントホテル 佐賀 10月27日(水) 佐賀市文化会館イベントホール 長崎 10月28日(木) 長崎県庁 大会議室 熊本 11月17日(水) 熊本市国際交流会館 大分 10月18日(月) トキハ会館 鹿児島 10月26日(火) 鹿児島サンロイヤルホテル 沖縄 10月28日(木) 沖縄県立博物館講座室 各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65頁参照)までお問合せください。 ※上記日程は予定であり、新型コロナウイルス感染症の拡大等にともない、開催日時などに変更が生じる場合があります。変更のある都道府県については、決定次第ホームページでお知らせします。 ※青森、栃木、千葉、山梨、静岡、奈良、長崎、熊本、沖縄については、ライブ配信やオンデマンド配信等の動画配信を予定しています。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 2021 9 令和3年9月1日発行(毎月1回1日発行) 第43巻第9号通巻502号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会