【H2】 高年齢者活躍企業フォーラム 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム WEB配信のご案内 高齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  令和3年10〜11月に全国5都市(岩手・東京・岐阜・大阪・宮崎)で開催したフォーラムおよびシンポジウムの動画配信を開始いたしました(フォーラムでは、高年齢者活躍企業コンテストの表彰式を行い、第二部としてシンポジウム(東京)を開催しました)。  令和3年4月に施行の改正高年齢者雇用安定法により「70歳までの就業機会の確保」が努力義務となったことから、「高年齢者雇用安定法改正」をテーマとして開催しましたシンポジウムの模様を、お手元のパソコンやスマートフォンからお申込み不要にてすぐにご覧いただけます。  法改正の概要や学識経験者の講演、高年齢者が活躍するための先進的な制度を設けている企業の事例発表・パネルディスカッションなど、今後の高年齢者の活躍促進について考えるヒントがふんだんに詰まった最新イベントの様子をぜひご覧ください。  各開催地のプログラムの詳細については、当機構ホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/symposium.html 視聴方法 当機構ホームページ(トップページ)から 高齢者雇用の支援 → イベント・啓発活動 → 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムからご視聴ください。 または jeed シンポジウム 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.81 ワーク・エンゲイジメントを高め活き活き働ける職場づくりを 慶應義塾大学 総合政策学部 教授 島津明人さん しまず・あきひと ユトレヒト大学客員研究員、東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野准教授、北里大学一般教育部人間科学教育センター教授などを経て2019(平成31)年より現職。日本におけるワーク・エンゲイジメント研究の第一人者。『新版ワーク・エンゲイジメント ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を』(労働調査会)、『Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメントできる職場のつくり方』(金剛出版)など著書多数。  「ワーク・エンゲイジメント」という言葉をご存じですか。活き活きと仕事をしている状態をさす言葉で、労働者のワーク・エンゲイジメントを高めることは、パフォーマンスや生産性の向上、ひいては会社の成長・競争力の強化にもつながります。今回は、ワーク・エンゲイジメント研究の第一人者である島津明人さんに、職場のワーク・エンゲイジメントを高めるポイント、シニア人材との関係についてお話をうかがいました。 ネガティブからポジティブへ心理学の潮流が変わってきた ―ワーク・エンゲイジメントとは、どのようなものでしょうか。 島津 平たくいうと、仕事に熱意を持って活き活きと働いている状態をさします。  以前は、働く人の心の状態を表現する言葉として、「バーンアウト」が注目されていました。「燃えつき症候群」とも呼ばれますが、最初は熱意を持って仕事に没頭していた人が、疲れ果て、ろうそくの灯が燃えつきるように生気や活力を失ってしまう状態です。そして、働く人を対象とした心理学の分野では、バーンアウトの状態に陥ってしまった人の心身の不調をどう低減させるか、またはバーンアウトに陥らないためにどのような予防策を講ずるかといったアプローチでの研究が行われてきました。  しかし、2000(平成12)年ごろを境に、このようなネガティブな面だけに着目するのではなく、労働生活の質の向上をもたらすポジティブな要因、すなわち、仕事への満足感や、個人と組織との良好な関係、動機づけなど、人が心身ともに健康で活き活きと働き、喜びや幸福を感じられる要因を扱う研究が行われるようになりました。 ―ネガティブからポジティブへ、研究の潮流が変化したきっかけは何ですか。 島津 特に何かエポックメイキングな出来事があったわけではありませんが、その時期に、産業構造の変化がいっそう顕著になったという背景がありますね。かつては、製造業で機械の操作や、メンテナンスといった仕事に就く人が多かった。時代が変わり、知識を用いて新しいアイデアやサービスを生み出すような働き方を求められるようになりました。新しいアイデアやサービスをつくり出すためには、仕事で疲れ果ててしまう状態ではなく、熱意を持って活き活きと仕事ができる状態であることが必要だと強く感じられるようになりました。  もう一つの背景として、それまでうつ≠ネどネガティブな側面を主に扱っていた心理学への反省の気運が、この時期に広がり始めたことがあります。日本でも、メンタルヘルスは直訳すれば「心の健康」というニュートラルな用語であるのに、心の不調というネガティブな状態をイメージさせる言葉として用いられてきた傾向があります。心理学で、ネガティブな要因にかたよった研究が行われてきたこともその一因です。しかし心理学は、本来人びとの幸福やウェルビーイング※の増進に寄与する学問です。そうした反省に立ち、2000年ごろから、「ポジティブ心理学」と呼ばれるような研究が重視されるようになり、ワーク・エンゲイジメントも、そうした潮流のなかから生まれてきたのです。 ―ワーク・エンゲイジメントを高めるための考え方や手法について教えてください。 島津 これまで取り組まれてきたことと無関係に、イチからつくり直さなければならないというものではありません。いわゆるメンタルヘルス対策として行われてきたことの延長線上に、少しつけ加えるようなイメージを持っていただければよいと思います。  具体的には、個人に向けたアプローチと組織に向けたアプローチがあります。  まず個人として何ができるか。それは、これまでメンタルヘルス対策として重視されてきたセルフケア、すなわちストレスと上手につき合うスキルを身につけることです。ただし、ワーク・エンゲイジメントの観点に立つと、それは単なるストレス対策にはとどまりません。ストレスに早く気づき、上手に対処するためには、時間を上手にコントロールするタイムマネジメントスキル、上司や同僚・顧客などとの人間関係を円滑にするためのコミュニケーションスキル、直面した問題を解決するための問題解決スキル、設定した目標を達成するための目標達成スキルなどが必要です。これらのスキルは、ストレス対策のために求められるというより、仕事を上手に進めるためのスキルそのものだといえます。  これらのスキルを仕事で発揮できたと感じることができれば、仕事への自信、つまり自己効力感を高めることにつながり、活き活きと仕事に打ち込むことができるようになります。ストレスで受けるダメージの回避や修復というネガティブな状態への対策ではなく、仕事で自己効力感を得られるようなスキルを高めることで、ストレスを上手にコントロールしていくというポジティブなアプローチを行うのが、ワーク・エンゲイジメントの立場です。 上司によるフィードバックで自己効力感を高めるようなアプローチを ―他方、組織に向けたアプローチとはどんなことでしょうか。 島津 働きやすい職場づくりへの注力が大事であることはもちろんですが、働く人が「働きがい」を感じられるような環境を整える取組みを強める必要があります。  そのキーパーソンとなるのが「上司」です。ワーク・エンゲイジメントを高めるために、部下の持っている個人の資源をどう高めていけるかがポイントになります。個人の資源とは、その人の強みのことです。それを上司がきちんと見極められるかが要所です。そのために、常日ごろから部下の仕事ぶりや行動をしっかり観察して、何がその人の強みなのか、その人は何を得意としているのかといったことを把握しておかなければなりません。そして、上司が把握したその人の強みを、本人にフィードバックすることが大事です。  フィードバックには、ポジティブなものとネガティブなものがあります。本人の強みについて上司がフィードバックする。これはポジティブなフィードバックです。これが提供されることで、本人の強みが発揮される行動がさらに起きやすくなり、仕事への自信や働きがいを自覚する機会が増し、ワーク・エンゲイジメントが高まる効果を生みます。  ポジティブなフィードバックは、平たくいえば「ほめる」ことです。では、ネガティブなフィードバック、すなわち「叱る」ことをしてはダメかといえば、そうではありません。ネガティブなフィードバックは、望ましくない行動をくり返さないための抑止力となりますから、与えるべきときには与えなければなりません。  ポジティブなものにせよ、ネガティブなものにせよ、フィードバックで大切なのは、どの場面、どの行動という具体的な事実を指摘することです。特にネガティブなフィードバックでは、事実に基づかないと、本人の尊厳を傷つけ、ワーク・エンゲイジメントの減退を引き起こすおそれがあります。ポジティブな場合でも、事実の裏づけがなければ、いわゆるほめ殺しになってしまい、効果が期待できません。 周囲からの尊敬や健康への配慮がシニアのワーク・エンゲイジメントを高める ―シニアが部下や若い人にフィードバックやアドバイスを与える場面では、シニアの過去の成功体験が、今日の環境や技術の変化に通用しない面もあり、気後れする人もいます。 島津 年齢や地位が上だからといって、自分がすべての面で部下より優れていなければならないなどと思わないことです。どちらかが一方的に教えることが教育ではなく、互いに教えたり教えられたりしながら学んでいくものです。自分が得意なことだけではなく、苦手なことからも目をそらさない。そういう自他への寛容さを持つことが大事ではないでしょうか。そのうえで、パフォーマンスを上げるためにチームの資源を最適な形で組み合わせるのが自分の役割であることを自覚できれば、適切なフィードバックができると思います。 ―最後に、シニアのワーク・エンゲイジメントを高めるために、企業が考えるべきことについて教えてください。 島津 行動経済学で、努力と報酬が不均衡(きんこう)だとストレス反応が起きるというモデルがあります。がんばったのに報われないという感覚がストレスをもたらすということですね。いまのシニアは役職を解かれ、給料も大きく減るなどという状態に置かれている人も多いと思います。  しかし、報酬には、経済的報酬(金銭)、キャリア(仕事の安定性や昇進)のほかに、心理的報酬(自尊心)の三つがあります。はじめの二つを満たすための制度設計の工夫はいろいろ行われていると思いますが、企業は心理的報酬についても考えるべきです。例えば、その人のこれまでの功績や貢献などを組織内に知らしめ、敬意を表する取組みなども効果があるでしょう。  また近年、産業保健の分野で、生活習慣がワーク・エンゲイジメントに強く影響しているとの研究成果が相次いでいます。運動や食事・睡眠に問題があると、ワーク・エンゲイジメントが低下するというものです。これは個人として気をつけるべきことですが、企業としても、健康経営の一環として、この点を十分に念頭に置いて取り組んでほしいですね。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、“年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2022 February No.507 特集1 6 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム −岩手会場・宮崎会場開催レポート− 7 開催レポート 岩手・宮崎会場 令和3年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜「高年齢者雇用安定法改正」70歳までの就業機会実現のために〜 9 基調講演 宮崎会場 シニア層を活かした企業の発展とこれからの働き方改革 〜時代を先取りする70歳雇用〜 東京学芸大学教育学部教授 内田賢 10 企業事例発表@ 岩手会場 シニア層のさらなる活躍に向けた取組み 明治安田生命保険相互会社 人事部人事制度グループ審議役 刈谷忠弘 12 企業事例発表A 岩手会場 高齢者が活躍できる職場「そこになくてはならない存在」となるために 株式会社ベルジョイス 人事教育室ゼネラルマネジャー 久保田一男 14 パネルディスカッション 岩手会場 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて 18 企業事例発表B 宮崎会場 高年齢者雇用安定法改正〜70歳までの就業機会実現のために〜 生活協同組合コープみやざき バックアップ本部 本部長 小山田浩 20 企業事例発表C 宮崎会場 地域で一番貢献するシニアを目指して! 株式会社セキュリティロード 代表取締役社長 齊藤慎介 22 パネルディスカッション 宮崎会場 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて 特集2 26 多様化する退職金・企業年金制度 27 総論 生涯現役時代の退職金・企業年金制度 クミタテル株式会社 代表取締役 向井洋平 31 企業事例@ 三谷産業株式会社(石川県金沢市) 年齢上限なしの継続雇用制度の導入と同時に 長年の貢献に報いる第二の退職金≠整備 34 企業事例A 飛島建設株式会社(東京都港区) 65歳定年制にシフトして年金と評価制度を改革 シニア層のモチベーションを高め活躍を後押し 1 リーダーズトーク No.81 慶應義塾大学 総合政策学部 教授 島津明人さん ワーク・エンゲイジメントを高め活き活き働ける職場づくりを 37 日本史にみる長寿食 vol.340 大豆ミートの人気と日本人の長寿 永山久夫 38 江戸から東京へ 第111回 井戸の水になれ 北条幻庵 作家 童門冬二 40 高齢者の職場探訪 北から、南から 第116回 静岡県 浜名梱包輸送株式会社 44 シニアのキャリアを理解する 【第2回】キャリア理論でみたシニア 浅野浩美 48 知っておきたい労働法Q&A《第45回》 休職期間中の定年到来、兼業と懲戒処分 家永勲 52 退職者への作法 【第3回】三つの工夫で退職後も良好な関係を保つ 川越雄一 54 いまさら聞けない人事用語辞典 第21回 「戦略人事」 吉岡利之 56 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテストのご案内 58 BOOKS 59 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.316 「型吹き」の技術を活かし数々のヒット製品を開発 ガラス吹工 田嶌文男さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第56回]平成の出来事 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」は休載します 【P6】 特集1 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム −岩手会場・宮崎会場開催レポート−  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発を目的とした「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。2021(令和3)年度は、全国5会場で実施し、学識経験者による講演や、先進的な取組みを行っている企業の事例発表・パネルディスカッションを行いました。  今回は、昨年10月14日(木)に開催された宮崎会場、10月28日(木)に開催された岩手会場の模様をお届けします。ぜひご一読ください。 【P7-8】 岩手・宮崎会場開催レポート 令和3年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜「高年齢者雇用安定法改正」70歳までの就業機会実現のために〜 昨年10月〜11月にかけて全国5都市で開催  当機構では、高齢者雇用に関する理解と認識を深めるイベント、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。  令和3年度は、厚生労働省のほか関係団体の協力のもと、2021年10月〜11月にかけて全国5都市(東京、宮崎、岩手、岐阜、大阪)の会場で開催しました。  各会場では、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じたうえで、参加人数を限定して開催し、WEBでのライブ配信と、その後You Tubeにおいてオンデマンド配信を行いました。  今号では、「『高年齢者雇用安定法改正』70歳までの就業機会実現のために」をテーマとした岩手・宮崎の2会場の開催レポートをお届けします(東京会場の模様は本誌1月号をご参照ください。岐阜会場・大阪会場の模様は3月号でお届けします)。 70歳までの就業を視野に入れ高齢者雇用の具体的な取組みを紹介  高年齢者雇用安定法の改正(令和3年4月1日施行)により、70歳までの就業機会を確保することが努力義務として新設され、働く意欲のある高齢者が企業の戦力として、あるいは社会貢献事業に従事するなどして活躍できる環境の整備が求められています。  本シンポジウムでは、この改正高年齢者雇用安定法の内容を解説する講演を皮切りに、高齢者雇用に先進的に取り組んでいる企業の事例発表や、学識者による講演、パネルディスカッションなどが行われ、70歳就業を視野に入れた今後の高齢者雇用の方向性や高齢者の活躍促進に向けた展望について考え、生涯現役社会の実現を目ざすイベントとなりました。 【岩手会場】  10月28日(木)、いわて県民情報交流センター「アイーナ」において開催。開会のあいさつに続き、高年齢者雇用安定法改正について、岩手労働局職業安定部職業対策課高齢者対策担当官の鈴木良夫(よしお)氏が、事業主に対して70歳までの就業確保措置が努力義務として新設された改正法の内容とポイント、留意点などを解説しました。続いて、東京学芸大学教育学部教授の内田賢(まさる)氏による基調講演が行われ、「高齢者の新たな活躍が期待できる職場環境に向けて〜高齢者の『強み』を活かす視点」をテーマに、働く意欲のある高齢者を活かしていく高齢者雇用の取組みについて、多様な事例を交えて語られました。  続いて行われた高齢者雇用の先進事例発表では、明治安田生命保険相互会社人事部人事制度グループ審議役の刈谷(かりや)忠弘氏、株式会社ベルジョイス人事教育室ゼネラルマネジャーの久保田一男氏の順でそれぞれの取組みを発表。休憩をはさんで行われたパネルディスカッションは、事例発表の刈谷氏と久保田氏に加え、65歳超雇用推進プランナーの松浦正志氏をパネリストに迎え、コーディネーターとして内田賢氏が登壇。高齢者雇用を進める際の注意点や70歳までの就業に向けた準備などが語られ、拍手に包まれながら3時間にわたるシンポジウムは閉会しました(事例発表は10〜13頁、パネルディスカッションは14〜17頁をご覧ください)。 【宮崎会場】  10月14日(木)、宮崎市民文化ホールにおいて開催。開会のあいさつに続き、高年齢者雇用安定法改正について、宮崎労働局職業安定部長の小川(おがわ)和人(かずと)氏が「生涯現役社会の実現に向けた対応について」と題し、70歳までの就業機会を確保する多様な選択肢や取組みを進めるうえでの留意点などを解説しました。  続いて、東京学芸大学教育学部教授の内田賢氏による基調講演「シニア層を活かした企業の発展とこれからの働き方改革〜時代を先取りする70歳雇用〜」(概要は9頁に掲載)、高齢者雇用の先進事例発表として、生活協同組合コープみやざきバックアップ本部本部長の小山田(おやまだ)浩(ひろし)氏、株式会社セキュリティロード代表取締役社長の齊藤慎介氏の順で行われました。休憩をはさんで開かれたパネルディスカッションは、事例発表の小山田氏と齊藤氏に加え、65歳超雇用推進プランナーの本嶋(もとしま)有二郎(ゆうじろう)氏をパネリストに迎え、コーディネーターとして内田賢氏が登壇。70歳就業を見すえた企業の対応や考え方などが語られました(事例発表は18〜21頁、パネルディスカッションは22〜25頁をご覧ください)。  続いて、65歳超雇用推進助成金などの説明が行われた後、当機構宮崎支部で活躍中の6人の65歳超雇用推進プランナーが紹介され、拍手のなかでシンポジウムは終了しました。 写真のキャプション 岩手会場の様子 宮崎会場の様子 【P9】 宮崎会場 基調講演 東京学芸大学教育学部教授 内田賢 シニア層を活かした企業の発展とこれからの働き方改革 〜時代を先取りする70歳雇用〜  本日は、高年齢者雇用安定法の改正をふまえ、シニア層を活かした企業の発展とこれからの働き方についてお話ししたいと思います。  法改正では、従来の「65歳までの雇用機会確保」から、努力義務ではありますが、「70歳までの就業機会確保」が示されました。65歳から70歳へと5歳延びたわけですが、もう一つ、「就業」という言葉がポイントになっています。雇われて働くのが「雇用」ですが、雇われて働く以外の働き方も想定して「就業」という表現が用いられました。つまり、年齢を5歳延ばす一方で、より多様な働き方のスタイルを、できれば会社から提供していただける努力をしてもらいたい、というのが法律の主旨だと思います。  多くの会社では現在、65歳までの雇用確保の制度などを整えて、定年60歳、その後65歳まで継続雇用という形が多いと思います。新たに70歳までを目ざすとき、いまのスタイルをあと5年延ばすのか、あるいは定年延長により65歳までの正社員化を図り、その後5年間を継続雇用にするのか。いずれにせよ、雇う側と雇われる側の双方にとってどうすることが望ましい形なのか、考える必要があると思います。  そこで私は、「戦略的高齢者雇用」を目ざして、自社の長期的成長と高齢者活用を結びつけることがよいのではないかと考えています。高齢者の人たちを本気で活用して、会社が儲けられるような仕組みにしていくのです。そうすれば会社にとってもメリットがありますし、頼りにされる高齢者も活き活きと働くことができます。  「戦略的高齢者雇用」を実現するためには、まず、経営者のリーダーシップで定年廃止や定年延長を進めていくという、経営者の意識の強さが大事になると思います。例えば、定年延長をするとして、それにともない、賃金を年功的に引き上げるという法律はありません。それより、「戦略的高齢者雇用」を進めるうえでは、がんばった人には年齢にかかわらず貢献度に応じて報酬を支払い、がんばらなかった人には差をつけて教育訓練の機会を与えながら、がんばりをうながす仕組みにしていく。高齢者だから人事考課のない一律賃金にするのではなく、きちんと評価して個別賃金にしていくことを提案します。  高齢者にがんばってもらうためには、体力の低下という高齢者の弱点を補う職場環境の整備も考えたいところです。また、高齢者のさまざまなニーズに応えるような、柔軟で多様な勤務形態も必要かと思います。そして、70歳雇用を見すえて、とりわけ重視したいのが、労働災害防止と健康管理への対応といえるでしょう。  最後にご提案したいのは、それらの仕組みや支援策などを、運用ではなく、制度化(明文化)することです。例えば、65歳定年で70歳まで何も問題がなければ継続雇用を認めるといったことを、就業規則に明記する。すると、働く側は安心できますし、そうしたことからさまざまな効果が生まれてくると思います。 【P10-11】 岩手会場 企業事例発表1 シニア層のさらなる活躍に向けた取組み 明治安田生命保険相互会社 人事部人事制度グループ審議役 刈谷忠弘 65歳定年制に続き70歳までの継続雇用制度を導入 ●2019年4月、定年を60歳から65歳へ延長 ●2021年4月、継続雇用の上限年齢を70歳に引き上げ シニアのキャリアを支援する研修を充実 ●モチベーション向上を図るキャリア研修 ●デジタルスキルアップ研修など  当社は、1880(明治13)年創業の安田生命保険と1881年創業の明治生命保険が、2004(平成16)年に合併して発足しました。105支社と1047営業所などを拠点とし、また、20の法人部があり、地域社会に密着して生命保険を軸としたサービスを展開しています。  従業員数は、約4万7000人。うち、MYライフプランアドバイザーと呼んでいる営業職員が約3万6000人を占めています。この営業職では、2004年の発足当初から65歳定年制をとっており、定年後も再雇用嘱託という形で、最長75歳までの継続雇用を行っています。  本日は、営業職を除いた約1万人の内勤職員に関するシニア層活躍の取組みについてお話しします。内勤職員の構成は、約9割が総合職、約1割が契約社員です。ここ数年、契約社員の正社員化に取り組んでおり、このような構成になっています。 65歳定年制の導入に続き70歳までの継続雇用制度を整備  当社における高齢者雇用の取組みをふり返ると、2006年に60歳定年後の再雇用嘱託という継続雇用を開始しました。当時は条件を設けていましたが、2013年からは希望者全員を65歳まで継続雇用する「エルダースタッフ」という制度を導入しました。  その後、処遇面の見直しや職務範囲の拡大に取り組み、2019年に総合職の定年年齢を60歳から延長し、65歳定年制を導入しました。さらに、2021(令和3)年4月、継続雇用の上限年齢を引き上げて、最長で70歳まで嘱託として継続して働くことができる制度を整えました。  65歳への定年延長は、社内の要員構成や業務量増加といった内部事情と、ビジネス環境の変化や社会的要請などを背景に、働き手の不足や働き手の多様化の促進を課題としてとらえ、いくつかあるメニューのなかから中高年層の活躍支援に取り組んだものです。  とりわけ強く課題として認識していたのが、要員構成上の課題です。当社は、40代後半から50代の社員が多い一方でその次の世代が少なく、10年後には50歳以上の社員が過半数になると見込まれる年齢構成でした。他方、業務内容が高度化、専門化していくなかで、シニア層の活躍は不可欠という課題認識から取組みを進めてきました。  また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材が意欲と能力を最大限発揮できる環境整備や仕組みづくりと、多様性を受容して働く仲間が相互に成長できる風土醸成を目ざして取組みを進めています。  シニア層の活躍促進に向けて、60歳以降も知識や経験を活かし戦力としての活躍を期待する一方、特有の課題も想定しました。大きく分けて、「処遇」、「職責」、「ライフプラン」、「マネジメント」、「周囲への影響」の五つです。これらに対応しながら取組みを進めていくためには、シニア層だけでなく、全世代の人事制度やマネジメントを変革していく必要があるとの観点から、人事マネジメント改革と称して、これらの諸改革に段階的に取り組んできているところです。  「処遇」に関しては、その役割や責任の大きさに応じた処遇体系を目ざすことを方針とし、「職責」もあわせて、全体として納得感が高まる処遇制度の改正に取り組んできました。「ライフプラン」については、シニアに多様な働き方が可能となる選択肢を用意しました。「マネジメント」に関しては、本人のマインドセットとともに、上司のマネジメント力の強化に取り組んでいます。最後の「周囲への影響」については、「処遇や職務面で、シニア層の改正を若年層へ影響させない」という方針で取り組んでいます。 研修やポータルサイトを設けてシニアのキャリア開発を支援  65歳定年制は、60歳を超えても60歳未満の職員と同等の活躍を期待し戦力としての位置づけを強めたもので、そのために処遇を相応に引き上げて、シニア層の意欲向上を図る制度としました。60歳以降も総合職のままとし、60歳から65歳までは総合職の「シニア型」という職種を新設し、ライフプランや転勤の負担などを考慮して、60歳から65歳までは希望勤務地での勤務を原則としています。職務に関しては、役割に応じた処遇水準を設定しています。  一方、定年退職して退職金を受け取り、再雇用で働きたいというニーズもあることをふまえ、「MYシニア・スタッフ」として嘱託で雇用する仕組みもあります。健康面やご家族の事情などで大きな職責を果たせないといったときにも対応できるように、特命業務から補佐業務まで多様な業務を設定し、短時間・短日数の働き方を選ぶこともできます。  65歳定年制に続き、2021年4月から、従前は65歳としていた定年後嘱託再雇用の上限年齢を70歳に延長しました。改正高年齢者雇用安定法の施行と同じタイミングでしたが、定年延長などに取り組むなかで「65歳以降も勤務し続けたい」という声が一定程度聞かれていたことと、経験や能力、専門性の発揮が引き続き期待できることから、元気で意欲の高いシニアのより長い活躍を後押しすべく実施したものです。  ただ、高齢になるにつれ、さまざまな面で個人差が拡大していく傾向にありますので、65歳時点での再雇用基準を設定しています。健康状態や意欲、能力を確認する内容です。  最後に、シニア層のキャリア開発支援についてお話しします。当社においては、「キャリア研修」、「キャリア相談・キャリア開発」、「リカレント」の3本柱でキャリア開発支援を行っています。研修では、50歳を対象にさらなる挑戦や役割発揮に向けて実施する「キャリア開発研修」、58歳を対象に自身の強みを活かした今後のキャリアプランニングを行う「キャリアデザイン研修」を行っています。  これらとは別に、リカレントとして、デジタルスキルアップ研修を今年度からオンラインで実施しています。非対面会議ツールの活用方法やOAスキルを中心にした実践的な研修です。  これらの取組みはまだ道半ばではありますが、本日ご清聴のみなさまのお役に立つことができれば幸いです。 【P12-13】 岩手会場 企業事例発表2 高齢者が活躍できる職場「そこになくてはならない存在」となるために 株式会社ベルジョイス 人事教育室ゼネラルマネジャー 久保田一男 60〜65歳の選択定年制を導入 ●2019年3月、定年を60歳から65歳へ延長 ●本人の意思により定年年齢を選択できる選択定年制 モチベーションの向上に向けて ●60歳になる半年前に個人面談を行い、選択定年や賃金制度などについて十分に説明し、理解を深めている ●若手社員への技術継承と教育面の役割をになってもらう  当社は1928(昭和3)年に創業して、今年で設立94年になります。2016(平成28)年3月に、株式会社ベルジョイスと株式会社ベルプラスが合併して、新たなスタートを切りました。本社は盛岡市にあり、岩手県を中心に宮城県、青森県に食品スーパーマーケットの「ジョイス」、「ビッグハウス」、「ベルプラス」、「スーパーロッキー」、「スーパーアークス」、「ビッグプロ」を展開し、あわせて58店舗を運営しています。社員総数は4595人(2021年7月末現在)。構成は社員が1106人、パートナー社員が3489人です。  当社では、2019年3月に定年年齢を60歳から65歳に引き上げました。社員の高齢化が進み、60歳以上の社員が全社員の約3割を占めていること、また、ベテラン社員の持つ経験が店舗運営に大きく貢献していることがわかったことが主な理由です。実際に店舗で65歳を超えて働いている社員が相当数おり、もし彼らがいなければ店舗運営が機能しない状況になっていました。  また、高齢社員が長年つちかった技能、技術を活かしながら安心して働き続けることは、働きがいやモチベーションアップにつながり、会社にとっても有益と考え、定年の引上げを決めました。  当社における高齢者雇用は、「長年の経験、能力・技術を活かし、中堅から若手社員のレベルアップを目的とした教育、技術指導をになっていただき、組織強化を図ること」を目的に推進しています。当社の基本理念である「そこになくてはならない存在」となるために、ベテラン社員が率先して中堅社員や若手社員を指導し、相互研鑚(さん)により、全社員が魅力ある人材になることを目標に掲げて進めてきました。 定年年齢が選べる選択定年制や全社員に対し連続休暇制度を導入  高齢者の活躍のための制度改革として、65歳への定年の引上げは、選択定年制として導入しました。原則は65歳定年ですが、本人の意思で満60歳、61歳、62歳、63歳、64歳での定年を選択できる制度です。定年に達した社員が、引き続き就業を希望した場合は、退職金を清算したうえで、希望者全員を1年単位の契約更新で満65歳の誕生月末日まで雇用します。また、65歳定年を迎えた社員が、再雇用を希望した場合は、原則として年齢の上限なく有期雇用契約社員として再雇用することとしました。  高齢社員のモチベーション向上に向けた取組みとして、60歳を迎える半年前に個人面談を行い、選択定年、賃金制度、職務内容、有給休暇、雇用保険などについて十分に説明し、理解を深め、不安を解消するように努めています。また、高い技能・技術を持つ高齢社員には、店舗での若手やパートナー社員の指導を行うリリーバー※としての新たな役職を設けました。高齢社員を引き続き戦力化するため、定年延長となった期間は、若手社員への技術継承と教育面の役割をになってもらいます。  また、IT機器を使用する作業が増えてきたため、マニュアル整備を行うとともに、トレーナーが全店舗で説明会を実施し、高齢社員の支援を行いました。IT機器の操作が苦手な高齢社員もおり、時間をかけて説得をしながら進めていきました。  そして、社員の高齢化にともない、勤務形態の見直しも行いました。会社の意向を伝えながら、本人の希望にできるだけ沿うように、働く時間、働く時間帯、勤務日数などを確認して雇用契約を締結します。例えば、本人から家族の介護についての相談があれば、勤務時間短縮などに対応できるようにしています。  それから、高齢化の進展にともない、労働災害件数が増えてきたことから、「安全推進活動チェック表」を活用し、4S活動、作業マニュアルの教育、ヒヤリハット活動を通して職場の安全衛生活動に対応しています。事故防止対策として、労働災害記録簿を作成し、各会議で情報を共有し、事故防止対策を徹底しています。  また、社員の心身のリフレッシュを図ることも重視し、働き方改善に向けて連続休暇制度を2019年4月に導入しました。上期・下期に、3連休を必ず取ってもらう制度です。そして、2021年には3連休を5連休に拡大しました。全社員に計画を出してもらい、取得を促進しています。  活躍中の高齢社員の一例を紹介します。ある67歳のパートナー社員は、定年後、長年の経験と能力を高く評価され、現在は店舗の統括の重責をになっています。クレーム対応や夜間の店舗の管理まで行い、「なくてはならない存在」として頼られています。  デリカ担当の71歳のパートナー社員は、立ち仕事が多いのですが、「ここで働くのは楽しい」と先頭に立って仕事をしています。若手への指導もにない、見た目に美しく衛生的な商品陳列をはじめ、作業の段取り、社会人としての心構えまで教育しており、親しみを込めて、若手社員から「先生」と呼ばれています。 70歳までの雇用を見すえる労働災害の防止対策などが課題  今後の課題として、一つめは、定年延長にともなう退職金制度の改定です。二つめは、改正高齢法への対応として、70歳までの継続雇用制度の導入を見すえ、定年を65歳に延長した制度改定と同じような内容で、70歳まで引き上げる方向で検討を始めたところです。  三つめは、安心して働ける職場環境の整備です。器具備品を使用した作業の簡略化や、作業マニュアルを動画にするなどの再整備、それから、労働災害防止対策として、動画配信による対策の周知などに努めています。転倒による打撲、骨折、作業姿勢や過重な箱の運搬などによる腰痛の労災が増えているので、滑り止めのついた靴や腰痛防止のベルトなどを用意していますが、今後も対策の強化、徹底に力を入れていく所存です。また、2022年には、パートナー社員も人事評価制度の対象とすることを検討しています。 ※ リリーバー……以前は、同社の店舗などで人員が欠けた時のリリーフ役の意味。現在は、若手社員の技術・技能の指導役としても期待されている 【P14-17】 岩手会場 パネルディスカッション 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて コーディネーター 内田賢氏 東京学芸大学教育学部教授 パネリスト 刈谷忠弘氏 明治安田生命保険相互会社 人事部人事制度グループ審議役 久保田一男氏 株式会社ベルジョイス 人事教育室ゼネラルマネジャー 松浦正志氏 65歳超雇用推進プランナー 企業プロフィール 明治安田生命保険相互会社 ◎創業 安田生命保険相互会社 1880年 明治生命保険相互会社 1881年 合併:明治安田生命保険相互会社 2004年 ◎業種 生命保険 ◎社員数 46,928人 (うち営業職員「MYライフプランアドバイザー」35,995人)(2021年3月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 2019年、定年を60歳から65歳へ引き上げる65歳定年制を導入。2021年、継続雇用の年齢上限引上げ(最長70歳まで)。「人事マネジメント改革」を通じてシニアの活躍を支援 株式会社ベルジョイス ◎創業 1951(昭和26)年(1928年に鶏肉店として創業) ◎業種 スーパーマーケット ◎社員数 4,595人(2021年7月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 2019年、定年を60歳から65歳へ引き上げる65歳定年制を導入。原則は定年65歳だが、60歳以降、定年年齢を選択することができる制度も設けた。60歳以降の高齢社員は、指導役としての役割を明確にし意識向上を図っている 岩手県の企業における高齢者雇用の状況 内田 はじめに、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の65歳超雇用推進プランナーとして、企業の高齢者雇用の相談に応じ、技術的な助言を行われている松浦正志プランナーから、岩手県の高齢者雇用の取組み状況をお話しいただきます。 松浦 本日は、2021年7月からさかのぼり私がプランナーとして約2年間で訪問し、調査をした岩手県内171社の状況について報告いたします。国が公表した数字や各企業の最新情報とは多少異なるところがあると思いますが、ご理解のほどお願いいたします。  まず、定年年齢ですが、全体の70%から85%の企業が60歳であり、業態によっては63歳、65歳定年を導入した企業があり、特に建設業、小売業において、65歳定年を実施した企業が多くなっています。全体としては14%強の企業が定年を延長し、そのうちわずかですが70歳定年とした企業もあります。  定年以降の継続、あるいは再雇用制度については、ほとんどの企業で65歳まで制度化されており、雇用はしているものの制度化はまだという企業がわずかにあり、取組みの推進をお願いしているところです。一方、定年後70歳までの雇用を制度化した企業が全体の約26%。制度化はされていませんが、優秀な人材の確保のために本人から退職の申し出があるまで働いてもらう、という企業もありました。国は65歳以降の制度化も示していますので、現在は努力目標ですがぜひ前向きに検討していただければと思います。 内田 ありがとうございます。 高齢者雇用を推進する際次の世代のモチベーションにも配慮 内田 続きまして、事例発表をされた明治安田生命の刈谷さん、ベルジョイスの久保田さんの順で、お話をお聞きしていきたいと思います。  まず、高齢者雇用を進めるうえで気をつけたことについてお聞かせください。 刈谷 当社におきましては、シニアの方々の活躍のために、いかにモチベーションを上げてもらうか。同時に、現役世代のモチベーションが低下しないようにという、この2点の両立を意識して取組みを進めました。特に、定年延長を行った際は、60歳以上もそれまでと同等の戦力であるということにこだわり、制度設計もそうですし、同じような役割をになっていただくことで意欲向上を図りました。現役世代のモチベーションについては、一定のコストはかかりますが、60歳未満の処遇には手をつけないように処遇制度を設計しました。また、職務登用、ポストへの登用についても、高齢者と若者の両方のモチベーションを下げないように、バランスよく取り組めるように努力しています。 久保田 当社も同様ですが、高齢社員が活躍してその職位にずっといると、若手が昇格できないということがありました。そこで、高齢社員には、リリーバーという役職を任せて後進の指導にあたってもらうことにより、モチベーションを高めて、若手も空いたポストに昇格してモチベーションを保てるようにしました。 内田 定年後の高齢者本人の懸念などを想定しつつ、高齢社員が若手や中堅の模範になれるようにするには、処遇や意識づけの面でも入念な準備が必要ということですね。経営側からすると、トータルのコストの問題も含めて考えなくてはいけないわけですが、それらに対応してきたということです。  一方で、高齢者雇用を進めてみたら、想定外で「実はこんな効果もあった」ということがあれば教えてください。 刈谷 65歳への定年延長を行った際、60歳で退職金を受け取りたいというニーズは相応にあるだろうと想定し、嘱託再雇用の受け皿を用意して、60歳で退職金を受け取ってもらう道を用意しました。しかし実際のところ、その道を選んだ社員は想定していたよりも少なく、65歳定年まで総合職で働こうという社員が多かったのです。60歳を超えた方の就労意欲は思っていたよりも高く、65歳を超えても働きたいという声が一定数出てきたところで、最長70歳までの継続雇用の道を開くことにつながりました。 久保田 リリーバー制度の導入により、シフトの空いたところに入ってもらうだけではなく、そこで働いている若手やパートナー社員の指導も行ってもらえるようになりました。そうしたなかでちょっとしたことですが、ビジネスマナーなどについても高齢社員が教えるといった様子もみられ、周囲の成長をうながしていることが、副産物としてあげられます。 内田 ありがとうございます。 健康増進や労働災害防止対策と70歳就業への対応について 内田 次に、労働災害防止対策についてお聞きしたいと思います。 刈谷 当社は、生命保険を中心とした金融サービス業ということもあり、社員の健康を重視しています。事業として、お客さまや地域のみなさまの「みんなの健活プロジェクト」という取組みを推進しており、「お客さまとともに社員も健康になっていく」という観点から健康増進に取り組んでいます。具体的には、前年の健康診断結果を指数化して確認し、それぞれ社員自身に健康増進のためのアクションプランを立ててもらいます。社員が各種健康データを確認できるインフラの整備なども行いました。また、病気の治療と仕事の両立にも今後注力していきたいと考えており、休暇制度の拡充や罹患者ネットワークの構築などを進めていく予定です。 久保田 毎月の店長会議において、労働災害の情報共有を行っていますが、社員一人ひとりにまで伝わるように、昨年から毎月の各部門会議でも人事担当者が話す時間をつくってもらい、労働災害の情報を伝えることとしました。また、各部門の毎月の衛生委員会でも情報共有を図り、注意喚起を行います。日常的には、前年度の労働災害の事例も含めて、例えば、雪が降ると転倒が増えてくるといった情報も含めて話をします。こうした取組みの成果として、2021年度3〜9月の実績では、労働災害を半分まで減らすことができました。 内田 健康の問題、安全の問題は、いろいろな工夫が各社でなされていると思います。高齢者雇用の推進のなかで、この問題には今後も特にご注意いただければと思います。  続いて、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳就業が示されました。このことについてどのように考え、準備をされているのでしょうか。 刈谷 当社は2021年4月に嘱託再雇用の年齢上限年齢を70歳に引き上げ、すでに65歳を超えて働いている社員がいます。今後、必要な環境整備や支援策などを、様子をみながら検討していきたいと考えているところです。 久保田 65歳超の方々には契約社員専門の役職で、1年ごとの契約で雇用を継続しています。契約更新の前に個人面談を行い、健康面を含めて確認していますが、今後もていねいに続けていきたいと考えています。 内田 体力であれ、意欲であれ、急激な変化をされる方もいらっしゃるでしょうから、やはり重要なのは、密なコミュニケーションなのだろうと思います。 高齢社員の活躍に向けて取組み推進のアドバイス 内田 最後の質問ですが、これから高齢者雇用を進めようとしている企業へのアドバイスをお願いいたします。 刈谷 定年延長という制度改正に取り組んでみて実感したことは、シニア層の方々に対して、会社は戦力として期待しているというメッセージを出し、そして、実際に活躍の場を与えて、それに相応する処遇をすることが非常に大事だということです。それによって、モチベーションが目に見えて高まったと感じており、活躍につながっていると思います。間違いなく、取り組む効果はあると思いますので、お考えになっている企業のみなさまにおかれましても、ご検討いただければと思います。 久保田 反省を含めて申し上げますと、制度化の前にできるだけ多くの高齢社員の意見を聞くことと、そこで出てきた課題などをできるだけ集約し、解決したうえで制度化を図るといったスタンスで向かっていくとうまくいくのだろうと思います。 内田 試行錯誤し、何か問題が起こるかもしれないけれど走りながら考えていく。いま、高齢者雇用の渦中にある方々のご意見をうかがいながら、その方々が一つの実証の対象になって、その方々のご意見がまた次の新しい制度の改正につながっていく、そういう継続的な取組みなのではないのかと思います。ありがとうございました。  最後に、松浦プランナーから岩手県内の高齢者雇用の今後の課題をお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 松浦 本日の2社の取組みをうかがいまして、定年前の教育が大事だとあらためて実感しました。55歳、あるいは60歳前に時間をつくり、今後どういう道を歩むのか、会社と社員とで情報交換をしてほしいと思います。そうすることで、生涯設計計画といったものも立てやすいのではないでしょうか。一方で、会社から「こういうところを直してもらわないと困るよ」などといわれるかもしれませんが、そうした話をする機会としても、実施していただけるとよいのかなと思います。  もう一つ、企業は高齢者雇用を制度として確立し、働く側に処遇などを含めて明確に示して理解してもらわなければ、これからはむずかしい時代になるのではないでしょうか。いずれは、さらに多様な働き方が出てくると思います。そうしたことも検討しながら、ぜひ制度をつくっていただきたいと思います。 内田 ありがとうございます。企業にとってはそれが自社の成長につながっていく、そういう制度づくりが必要なのだと思います。そういう経緯で実現した制度は、あるいは、高齢者雇用というのは、社員全体に対する会社のメッセージであると思います。高齢社員だけでなく、高齢期前や高齢社員とともに仕事をされている方々にとっても、会社がどういう高齢者雇用の施策を打っているのか、それが自分の将来につながりますから、信頼の置けるものなのかどうかが重要です。そういう観点から、しっかりと制度をつくっていただければと私も考えています。 写真のキャプション コーディネーターを務めた内田賢教授 松浦正志65歳超雇用推進プランナー 株式会社ベルジョイス久保田一男人事教育室ゼネラルマネジャー 明治安田生命保険相互会社刈谷忠弘人事部人事制度グループ審議役 【P18-19】 宮崎会場 企業事例発表3 高年齢者雇用安定法改正 〜70歳までの就業機会実現のために〜 生活協同組合コープみやざき バックアップ本部 本部長 小山田浩 65歳以降も働き続けることができる制度を整備 ●2020年3月、定年を60歳から65歳へ延長 ●65歳以降、希望者は選考のうえ、サード職員として再雇用 年齢や雇用形態にかかわらず全員の活躍を目ざす ●職員総会を2回にわけて開催し、全職員が出席 ●全職員に裁量権を持たせる ●技術検定、レベルアップチェックの機会がある  当生協は、1973(昭和48)年に設立され、まもなく50周年を迎えます。設立当時の組合員数は690人でしたが、現在は26万人を超えています。事業は、食品や生鮮品、雑貨、衣料品を中心とした共同購入事業と店舗事業が中心で、店舗の遠い地域や年配の方のご利用が多く、ライフライン的な役割も果たしています。  当生協は、組合員が暮らしに必要なものを買うためにつくった組織で、「組合員さんが欲しい商品を購入することに応える」ことを目的とし、「私たちの供給する商品を中心に家族の団らんがはずむことをめざします」をスローガンに掲げて仕事をしております。 年齢や雇用形態に関係なく全職員に裁量権を持たせる  職員数は、パート、アルバイトなどを含めて約2200人です。共同購入にたずさわる職員が約500人、店舗が約1700人です。  毎年12月に、翌年の仕事の指針となる「基本方針」を冊子にして全職員に配付します。例えば、仕事を進めるうえで大事なこととして、「嘘を言わない・言い訳をしない」、「自分の失敗成功を、他人のことのように研究する」、「相手の気持ちになって考える」、「人の喜ぶことをする」などの内容が書かれています。1月には総会を開催します。その日は全店休業し、全職員が一堂に会して「基本方針」を確認します。そこで時間と空間をみんなで共有することを、大事にしています。また、組織図には、年齢や雇用形態にかかわりなく、2200人全職員の名前を掲載しています。  2月には、各所属長と全職員との面談を行い、ふり返りと今後の目標を話し、見習いたい職員を3人あげて書面に記します。そして、見習いたい人として多くの職員から選ばれた人を、3月に表彰しています。これらは半年ごとに行っており、9月にも全職員の面談を実施します。  また、総代会という株主総会のようなものを毎年6月に開催しており、そこで使用する議案書を全職員に配付し、感想を寄せてもらいます。78歳の職員の感想には、「昨年はコロナ禍で、オーナーオーダー(別注文の意味)のキャンセルが多かったのですが、今年に入って少しずつ組合員さんからの注文も入り、喜んでいるところです。生協があるおかげで、わたしの人生は、楽しいと感じてもらい、生協で働いているわたしは幸せと、感謝の日々であるように努力していきます」とありました。また、71歳の職員は、「仕事を楽しくする。毎日の仕事は、平坦で地味な苦労、努力をともなうもので、『楽しい仕事がしたい』を、『楽しく仕事をする』に。人に喜びと感動を与え、自分の成長をつくる。一人ひとりが組合員さんや職場の仲間と一緒に、感動できる仕事を目ざします」という感想を寄せてくれました。  毎月の部内報では、共同購入と店舗でのすぐれた実践例を取り上げたり、「こんなことで喜ばれて嬉しい」といった職員の事例を掲載したりして、全職員に届けています。  また、全職員に裁量権を持たせていることも、当組織の特徴の一つだと思います。値引きや返品、それから、8枚入りの商品を4枚入りに変更して売るといったことなどを、店長の判断を待つのではなく、その場の職員の裁量で行動できるようにしています。  加えて、感謝状制度があり、職員が職員に贈ったり、組合員さんが職員に贈ったりと、だれでも贈ることができます。また、だれもが提案することができる「気づいたことカード」というのもあります。  そして、職員の技術や学んだことなどを評価する機会として、刺身の盛りの水産技術検定や、チェッカーレベルアップチャレンジという、レジの対応の検定などを行っています。 60歳以上の職員は全体の30.5%65歳定年退職後はサード職員に  2020年3月、それまでの60歳定年を改め、65歳定年制を導入しました。その背景には、組織全体として人手不足の問題があります。また、60歳を過ぎても貴重な経験を積み重ね、スキルも持っていますので、退職されてしまうのはもったいなく、若い職員にスキルを引き継いでもらいたいということも考えました。  定年到達者が65歳以降も引き続き勤務を希望したときは、選考のうえ、定年退職の翌日から「サード職員」として再雇用します。サード職員の雇用期間は、1年を超えないものとします。ただし、当生協が必要と認めた場合は、さらに1年ごとに契約更新することができます。「選考のうえ」といいましたが、希望者ほぼ全員を再雇用しています。  当生協には、65歳定年退職後についての就業規則があります。65歳定年となる以前には60歳以降の再雇用制度がありましたので、定年65歳に移行に関する内規として、以前は全員が時給職になるという運用をしていましたが、現制度では2020年3月15日までに採用された総合職員と専任職員は、60歳以降もそのまま総合職員と専任職員として勤務するか、勤務時間を短縮して時給職のパート職員になるか、選択することができるようにしています。  現在、60歳以上の職員は職員全体の約30.5%です。70歳以上は44人働いています。最高年齢者は79歳で、いまは1人ですが、もうすぐ2人になる予定です。  当生協では、高齢者雇用に特に力を入れてきたわけではなく、雇用形態や年齢にかかわらず、高校を卒業したばかりの10代から70代の職員まで、全員にきちんと情報を伝え、評価をし、裁量権を持たせて自分の意思で働いてもらっています。こうした通常業務の積み重ねにより、結果的に60歳を過ぎても仕事を継続していただいているのではないかと思っています。そしてこれからも、年齢に関係なく、より多くの職員が、組合員さんの気持ちになって、人に喜んでもらえることをして、やりがいを持って仕事をしていくことのできる環境を整えていきたいと思います。 【P20-21】 宮崎会場 企業事例発表4 地域で一番貢献するシニアを目指して! 株式会社セキュリティロード 代表取締役社長 齊藤慎介 70歳を超えて働ける制度を整備 ●管理スタッフの定年は65歳、希望者は70歳まで嘱託社員として継続雇用 ●警備スタッフの定年は70歳、希望者は75歳まで嘱託社員として継続雇用 シニア社員の活躍のために ●ITを導入。苦手なスタッフには手厚くフォロー ●健康診断後のフォロー、三大疾病サポート保険加入などにより健康への配慮を強化 ●互いを認め合う文化の醸成 ●納得性の高い人事評価制度を導入  当社は、1987(昭和62)年に私の父が創業しました。現在は宮崎、熊本、鹿児島県に11営業所を運営し、建設現場の道路交通誘導警備やイベント警備、飲食店などの駐車場警備、学校や病院などで人的警備を行う施設警備などを行っています。現在、630人を超える社員が日々活躍しており、総務や経理などをになう管理スタッフが50人、現場の警備スタッフが580人ほどとなっています。60歳以上の社員数は全体の51%。一方で、20代から30代が15%と少なく、特に警備スタッフに若い人材が少ないことが弊社の課題の一つとなっています。  警備業の特性ですが、弊社における2020(令和2)年の警備スタッフの退職者数は79人でした。このうち、1年未満の退職者が37人です。社員数は年々増えていますが、定着という点では改善すべきことが多いのが現状です。弊社がメインとする交通誘導警備は、特に離職率が高く、私見ですが、賃金が低く、日給制がほとんどで、出勤日が変動しやすいことなどが要因として考えられます。しかし、そうした状況下でも、シニア層には警備スタッフとしてがんばっている人がたくさんいます。 シニア層が安心して働ける環境づくり  次に、シニア層が安心して働ける環境づくりの取組みについてお話しいたします。  一つめは、ITの導入です。「シニア層はついていけないのでは」と危惧される方もいるかもしれませんが、システムの担当者を決めて、パソコンの苦手なスタッフをフォローする仕組みにしています。こうした取組みにより、年齢に関係なく作業効率を高め、さまざまな負担を減らす効果を実現しました。事務処理では、ソフトウェアロボットを使っている業務もありますし、手書きの書類をできるだけ減らすクラウドシステムも導入しています。警備スタッフ向けにはスマートフォン向けアプリを使い、翌日の現場指示伝達、出勤、退勤の報告に使用しています。LINEと連携させ、LINEの使用経験があれば問題なく使えます。今後は、LINEをさらに活用して安否確認機能を追加したいと考えています。  二つめは、健康への配慮と障害者への理解です。現場の警備員には、ファンつき空調制服を無料で配付しています。夏の屋外の警備業務は、炎天下かつアスファルトの照り返しもある過酷な環境ですので、熱中症や体調不良の予防のため導入しました。また、新型コロナウイルス感染症対策として、抗原検査キットを各事業所で常備し、必要に応じて検査ができるようにしています。スタッフ本人の安心につながるよう、福利厚生の一環として導入しました。  また、治療と仕事の両立支援を目的とした保険に加入しています。がん、急性心筋梗塞、脳卒中を発症した際の休職などにともなう費用を支払うもので、万が一の場合、費用の負担を少しでも会社がサポートしたいという思いから加入しました。これらに加えて、健康診断とその受診後を重視し、フォローアップ体制を強化しました。本社と営業所の双方で定期的に確認を行い、健康不良による離職者を出さないという思いで取組みを進めています。  障害者への理解では、今年1月に関連事業として、大人の発達障害に特化したプログラムで発達障害者の就職活動をサポートする事業を開始しました。企業として障害者への理解を深めることにより、さらに多くの人が企業で働ける環境づくりを行っていきたいと思っています。 納得される人事評価制度を導入定年後も評価を継続して成長をうながす  シニア社員の活躍に向けて、互いを認め合う文化の醸成にも取り組み、5年ほど前に「プロフェッショナルレポート」というツールを導入しました。管理スタッフが、警備スタッフや一緒に働く同僚に向けて、感動や感謝の気持ちを伝えるものです。現場の警備スタッフは、常に上司に見られているわけではなく、ほめられることもほとんどありません。そこでこうしたツールを活用し、見られること、認められることが活き活きと働くきっかけになると信じて、この取組みはずっと続けていきたいと思っています。  2019年には、人事評価制度を導入しました。それまでは、経営者や幹部のさじ加減で昇給や賞与を決めており、当時の社員アンケート結果には、「評価基準がわからない」といった厳しい意見が多くありました。そのようななかで出会ったのが、「株式会社あしたのチーム」(本社:東京都)の人事評価制度です。部署や年齢に関係なく、本人も納得する正当な評価を目ざす内容で、導入後は離職者が減り、給与に対する声も減ったように感じています。  この評価制度は定年後の社員にも継続して行い、定年後嘱託社員となってもさらなる成長をうながし、会社に貢献する意識を持ち続けてもらうように実施しています。  就業規則の見直しも行いました。管理スタッフの定年は65歳とし、希望者は70歳まで1年ごとの更新で嘱託社員として継続雇用します。警備スタッフの定年は満70歳とし、希望者は75歳まで、1年ごとの更新で嘱託社員として継続雇用します。契約の際は、体調や働く意欲の確認を行います。  最後に、シニア社員の活躍のための今後の課題として、@徹底した健康管理、A企業内教育・支援の強化、Bスキルを活かした適材適所の配置を考えています。健康管理は今後、デジタルを活用したより効力のある方法を確立していきたいと考えています。企業内教育・支援の強化では、特に中途入社のシニア層のスタッフに対する教育のフォロー体制を構築したいと思います。スキルを活かした適材適所の配置については、社員一人ひとりが力を発揮できる多種多様なステージと働き方を提供できる企業となることを理想に掲げ、社員が組織内で目標を持ち、安定的に長く働ける環境をつくっていくことを目ざしていきたいと考えています。 【P22-25】 宮崎会場 パネルディスカッション 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて コーディネーター 内田賢氏 東京学芸大学教育学部教授 パネリスト 小山田浩氏 生活協同組合コープみやざき バックアップ本部 本部長 齊藤慎介氏 株式会社セキュリティロード 代表取締役社長 本嶋有二郎氏 霧島人事総研代表 65歳超雇用推進プランナー 企業プロフィール 生活協同組合 コープみやざき ◎創業 1973年 ◎業種 各種商品小売業 ◎職員数 2,200人(2021年3月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 2020年3月、定年を60歳から65歳へ延長。定年後、希望者は選考のうえ、サード職員として再雇用する。最高年齢者は79歳。やる気を引き上げる多様な仕組みがある 株式会社 セキュリティロード ◎創業 1987年 ◎業種 警備業 ◎社員数 630人(2021年4月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み 2020年、管理スタッフの定年を65歳とし、希望者は70歳まで継続雇用。また警備スタッフの定年は70歳、希望者は75歳まで継続雇用とした。人事評価制度を定年後も継続 宮崎県における高齢者雇用の課題 内田 本日のパネルディスカッションでは、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の65歳超雇用推進プランナーとして、企業への制度改善の提案や相談・助言を行っている本嶋有二郎プランナーから、はじめに宮崎県における高年齢者雇用の取組み状況と課題をお話しいただきます。 本嶋 県内企業における65 歳以上定年の実施率は、ハローワーク管内別の平均をみると26.7%となっています。相対的に高齢者が多いこともあり、実施率が高く、じわじわ増えてきています。業種別にみると、高い順に「サービス業」が34.9%、「建設業」が34.3%、「医療・福祉」が31.0%となっています。企業規模では、規模が小さいほど実施率が高くなっています。宮崎県ではほとんどの業種において人手不足となっていることから、今後も定年を65歳以上とする企業は確実に増えると考えられます。  こうした状況やこれまでの取組みの経過、また、企業の方々から受けた質問や考えなどをふまえて、県内における高齢者雇用の課題をいくつかあげてみます。  一つは、「定年65歳」と「希望者全員65歳までの継続雇用」の違いについてです。希望者全員65歳までの継続雇用を実施している企業に定年65歳の制度化をすすめると、労使双方から、「定年65歳と継続雇用はどう違うのか」と聞かれます。根本的には、賃金体系そのものの見直しが必要となってくることだと思います。また、定年65歳を実施する場合は、トップ主導も大事ですが、社員を巻き込んで、「わがこと」として考えてもらうことが大事ではないかと思います。  二つめの課題は、高齢社員の意欲についてです。モチベーションについては相変わらず根強くある問題です。このことは、「目標の設定」、「評価」、「フィードバック」、「役割の自覚」などがキーワードになるのではないでしょうか。そして、コミュニケーションをしっかりとることが大事だと思います。  また、定年延長を見すえた人事・賃金制度の構築、定年後の賃金や退職金についても課題です。そして、健康不安への対応や、労働災害防止対策は、いちばんの課題といえるものです。また、当機構のツールを用いて県内企業の雇用力評価を行った結果をみると、「60歳以降の高齢期も含めたキャリアを考える機会を提供している」という項目の評価が共通して低く、高齢社員の能力開発も今後の課題の一つと考えています。 内田 ありがとうございました。 健康増進、労働災害防止対策の工夫 内田 では続いて、事例発表をされたコープみやざきの小山田さん、セキュリティロードの齊藤さんにお話をうかがいたいと思います。  企業が高齢者雇用を進める背景には、人手不足の問題やキャリアを活用したいという考えなどがあると思いますが、実際に取り組んでみて、思わぬ効果といったようなものを実感されたことはありますか。 小山田 おそらくですが、店舗内で高齢職員が若手職員の相談相手になるという、そういった関係ができているのではないかと思います。 齊藤 模範となる行動をとる高齢社員が多くいます。社用車などを必ず清掃して返却したり、時間があると営業所周辺の草むしりやゴミ拾いなどを率先して行っているのです。本人が、これまでの人生で学んできたことなどを行動に移しているのだと思いますが、周囲によい影響を与えており、企業内のCSR活動の発端となることもありました。 内田 ありがとうございます。やはり、人生経験を積まれた方は、一挙手一投足がお手本になる部分があるのでしょう。そのことが会社の予想を超えて、若い人たちに対する教育効果として出てくるのではないかと思います。  続きまして、先ほど本嶋プランナーから課題の一つとしてあげられた、健康や労働災害防止への対策についてお聞きしたいと思います。高齢になると、注意をしていても体が追いつかず、けがをすることもあり、労働災害の発生頻度が高くなりがちです。実際のところ、労働災害防止について、どのような対応をされていますでしょうか。 小山田 一つは、何か起きたらそのことを必ず周知します。具体的な注意事項をその都度、部内報などで案内しています。それから、高齢者にかぎったことではありませんが、出退勤のシステムは全員が必ずその画面を見るので、最近起こった事故などの情報をその画面から見られるようにしました。これは、先月から始めたことです。また、「ここで転倒がありました」といった注意喚起をするポスターを壁に貼るなど、労働安全衛生委員会と話し合いながらできることを実施しています。 齊藤 当社も同じような取組みですが、事故があった場合は広報で注意喚起を行います。また、事故事例の教育などを定期的に行います。健康については、先ほどの事例発表でお話ししたことですが、健康診断後の再検査を徹底しています。それから、無理のないポジショニングをとることも大事にしています。 内田 ありがとうございます。やはり、いろいろな工夫をして取り組まれていますね。会社を訪問すると、休憩室に畳を敷いて、横になれる休憩スペースを設けているところがけっこうあります。疲労回復のための工夫ですね。 70歳就業への対応について 内田 2021年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳就業の話が出て、努力義務ではありますが、これから世の中のスタンダードになってくるのかもしれません。70歳就業への対応についてお聞かせください。 小山田 当生協には、70歳以上の職員が40人ほどおり、パートタイム勤務で店舗のマネージャーを務めている職員もいます。今後、マネージャーにも60歳を超える職員が増え、バリバリ働く職員もいると思いますので、賃金体系などの制度改革について検討を始めたところです。  また、回答から外れるかもしれませんが、長く働いてもらう制度の一つとして、カムバック制度を設けています。時給職の職員は、就職してから10年間は時給が上がります。しかし、子育てや介護などで勤務がむずかしくなり、一度辞めたとしてもまた就職したいという場合は、8年目で辞めた人は、再就職の際に7年目の職員の時給から働くことができる制度です。 齊藤 5年後、10年後のシニア層は、ITやデジタルに慣れている人が多いと思いますので、将来のためにいま、社員のITリテラシーを高めることに力を入れています。 内田 ありがとうございます。高齢になると、突然辞めざるを得なくなるということがよくあるようです。本人が健康を害して辞める場合と、もう一つ、家族の介護などの事情が生じた場合があります。高齢者雇用には、そういうリスクが出てくるという課題はあります。一方で、状況が改善して、職場に戻れる可能性が出てきたとき、気兼ねなく戻れる仕組みが用意されているといいなと思いました。そういう仕組みがあると、口コミなどで評判を呼び、多くの人に目を向けてもらえたり、採用活動が円滑になったりすることもあると思います。お二人のお話をうかがいながら、そのようなことを感じました。 会社と社員に求められること 内田 これから高齢者雇用を進めようとする企業の方々へ、アドバイスをお願いします。 小山田 60歳になってもやりがいを持って、いかに活き活きと働いてもらえるか。このことが大事だと思います。就業規則をつくり、こうしたことを明文化することが、職員が安心して働き続けられる職場づくりにつながると思います。 齊藤 高齢者も若手も、きちんと評価することが大切だと思います。また、定年後の雇用の場合、役割やポジションが変われば雇用の仕方は変わりますが、そうであっても評価することは必要だと考えています。人は見られること、認められることがなくなったら、モチベーションが下がってくると思いますし、目標を持ってもらうことが大切です。その人を必要としていることを、会社の姿勢として見せることが大切ではないかと考えています。 内田 ありがとうございます。法人として、組織として、社員に求めるものは何なのかをまずハッキリさせて、それを達成できているかどうかが評価の尺度となる。そのことを明文化することによって、そのなかにあてはまる人たちは必ず対象になるという安心感を得てもらう。明文化の際は、評価を行うことを含めると、貢献度によって処遇が変わることを社内に浸透させることにもつながります。  一方で、シニアの人たちの多様性に応じたさまざまな制度を用意することも必要になるでしょう。本人が変わる努力をうながす取組みも必要だと思います。教育訓練などで気づきの機会を与え、必要な準備をする期間をつくり、力を発揮してもらえるような仕組みです。  最後に、本嶋プランナーにおうかがいしたいと思います。法改正によって、今後は70歳までの雇用を見すえた人事制度の構築をする必要が生じるかもしれませんが、そうすると第一線での活躍期間が長くなります。そのことに対して、会社、社員のそれぞれに求められることは何でしょうか。 本嶋 まずは、定年まで自分で心身のコントロールをしていくことが大事だと思います。それから、自分を磨いていくこと。一方、会社のほうは、まず、持続できる会社であること。宮崎県内にも戦後に起業して70年ほどが経ち、この先100年企業を目ざそうという会社があります。そのためには、リソース(資源・資産)が必要です。なかでも、人材が一番大事なリソースではないでしょうか。むずかしい質問ですが、トップの哲学と管理者の意識改革、会社にとってはそれらが必要な最低条件ではないかなと思います。 内田 ありがとうございます。会社の成長とともに、これからの会社には社会貢献が求められてくると思います。改正高齢法ともかかわってくるテーマで、企業が単独、またはいくつかの会社などと共同で社会貢献事業にたずさわり、そこで高齢者に働いてもらう。会社にとっては社会貢献になり、働く人はその場でまた活き活きと働くことにつながっていく。今後、このような事例が増えていくのだと思います。 写真のキャプション コーディネーターを務めた内田賢教授 本嶋有二郎65歳超雇用推進プランナー 生活協同組合コープみやざき小山田浩バックアップ本部本部長 株式会社セキュリティロード齊藤慎介代表取締役社長 【P26】 特集2 多様化する退職金・企業年金制度 高齢者雇用を考えるうえで重要なテーマの一つが「退職金・企業年金制度」。定年廃止や定年延長、再雇用制度により就業期間の長期化とともに、働き方の多様化が進み、高齢者のキャリアも多様化していくなかで、退職金・企業年金制度の役割・位置づけも変わってきています。そこで本企画では、生涯現役時代における退職金・企業年金制度のあり方について解説するとともに、高齢者雇用制度の見直しにあわせて退職金・企業年金制度の見直しを行った企業の事例をご紹介します。 【P27-30】 総論 生涯現役時代の退職金・企業年金制度 クミタテル株式会社 代表取締役 向井洋平 はじめに  退職金制度や企業年金制度(以下、「退職給付制度」)は企業が任意に設けることができる報酬制度の一つであり、日本では多くの企業が何らかの退職給付制度を実施しています。定年延長などの高齢者雇用制度の見直しは、退職金・企業年金の支給時期など退職給付制度設計の見直しにも直結します。それだけでなく、就業期間の長期化による雇用やキャリアに対する考え方の変化は、退職給付制度のあり方をも転換させるものだといえます。  本稿では、60歳定年引退を前提とした従来の退職給付制度が果たしてきた役割をふり返ったうえで、定年延長や再雇用制度の拡充にともなう対応について解説します。さらに、個人のキャリアが長期化・多様化していくなかで、どのような思想で退職給付制度を設計し、従業員に提供していくべきかについても考えていきます。 60歳定年引退時代の退職給付の役割  60歳以降の雇用確保が企業に義務づけられる以前、すなわち60歳から(特別支給の)老齢厚生年金が支給されていた時代においては、退職給付は公的年金と相まって、主に60歳以降の収入を確保するための手段として位置づけられていました。新卒採用により入社した社員が定年まで勤め上げるというキャリアを前提として、引退後の生活に困らない水準の退職給付を設けることで、老後に経済的な不安を抱えることなく仕事に打ち込める環境を提供してきました。  その後、60歳定年後の再雇用制度が設けられるようになっても、退職給付の性格が大きく変化することはありませんでした。老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられるのにともない、その穴埋めとして限定的な処遇のもとでの再雇用が一般的だったからです。退職給付は依然として60歳定年時から支給され、60歳以降の大幅な賃金低下を補うことで高齢期における収入を一定程度確保してきました。  このように、これまでの退職給付制度は、新卒採用により入社した社員が、60歳定年とともに引退、もしくは限定的な役割に退くというキャリアを標準的なものと想定し、そうした想定を実現可能なものとするための制度であったということができます。そのため、退職給付制度の設計においては、新卒採用者が定年に到達するまでの昇給・昇格モデルを設定し、そのモデルに対していくらの退職給付を支払うかという観点で給付水準を検討することがいまなお一般的です。通常、報酬制度の設計においては年収ベースでその水準を考えますが、同じ報酬でも退職給付だけはほかと切り離されて設計されてきたわけです。  しかし、個人のキャリアが長期化・多様化していくにつれて、画一的なキャリアの想定のもとで退職給付制度を設計する意義は薄れつつあります。 定年延長時の退職給付制度の対応  とはいえ、退職給付は長年の勤務に対して積み上げられるものであり、給付の内容や性格をいきなり変えてしまうことは、現実的には困難をともないます。特に、高齢期を迎えようとしている社員はこれまでの退職給付制度を前提として、今後の生活設計を考えているでしょうから、制度の見直しを行う際にはこの点を考慮する必要があります。  定年延長を行う場合、原則として退職給付の支給時期も後倒しされることとなります。2012(平成24)年の高年齢者雇用安定法の改正により、企業には希望者全員の65歳までの雇用確保が義務づけられたことから、定年年齢を60歳に定めていても実質的な定年は65歳だといわれることもありますが、退職給付の支給時期という点では明確な違いがあります。そして、高齢期における収入の確保という観点で退職給付を考えた場合、定年延長によって、現役並みかそれに近い給与水準が保たれることになれば、退職給付の役割はむしろ縮小することになります。「60歳以降の大幅な賃金低下を補う」必要がなくなるからです。  これが最も典型的に表れるのが、確定給付型の企業年金で終身年金を設けているケースです。定年延長にともなって支給開始年齢を引き上げることで、平均的な年金支給期間は短くなります。加入期間が60歳以降に延びたとしても、年金額が変わらないかそれほど大きく増加しなければ年金の支給総額は減少し、企業が負担すべき退職給付にかかるコストも減少します。つまり、定年延長にともなう給与改善の原資の一部を退職給付から賄うことができます(図表)。なお、この場合企業年金は「給付減額」となり、加入者の3分の2以上の同意が法令上必要となるため※1、給与改善によって総収入は増加することを説明するなどして、社員の理解を得ていく必要があります。  一方で、退職一時金や確定年金タイプの企業年金は一時金ベースで設計されており※2、定年を延長するからといって支給額を削減することは、既得権を侵害することになるため、基本的には行いません。ただ、給与改善により収入が十分に確保されることになれば、60歳以降の勤務に対してさらに退職給付を積み上げる必要性はないため、支給額は60歳時点の金額で固定するといった対応がとられることになります。ただし確定給付型の企業年金においては、支給総額が減少しない場合でも支給時期が後倒しになることで、給付の「現在価値」が減少し、給付減額と判定され加入者の3分の2以上の同意が必要となる可能性がある点に注意が必要です。  なお、定年延長後も給与の水準が60歳前と比べて大きく低下するような場合には、退職給付の支給時期が遅れることで社員の生活設計に影響を及ぼす可能性があります。こうした場合は、定年延長後も従前通り旧定年に達した時点で退職金相当額を支給することが考えられますが、税制上これを退職所得として取り扱ってよいかは、事前に税務当局に確認しておくのがよいでしょう※3。 退職給付を報酬の一部と考えた場合  退職給付の役割を引退後の収入の確保と考えれば、前述の通り雇用期間の延長や高齢期における給与面での処遇改善によってその役割は縮小するため、あえて退職給付を上積みする必要はない(むしろ減額もあり得る)ことになります。  一方で、退職給付は各期の報酬の一部を積み上げたものであり、賃金の後払い(受給のくり延べ)だと考えた場合には別の見方ができます。まず、60歳までの勤務期間に対する退職給付は60歳到達時点で確定します。そして、60歳以降の勤務期間に対する退職給付は、報酬全体のうち、いくらを退職給付に振り分けるのかによって決まります。税負担の観点からは、一般的には後払いにして退職時(雇用期間の終了時)に受け取ったほうが本人にとって有利であり、月々の生活費を余裕をもって賄(もら)えるようであれば、退職給付を厚くして引退後資金を充実させたいというニーズもあるでしょう。  したがって、定年延長や再雇用制度の拡充を行う際には、こうしたニーズを考慮して、給与改善の一部を退職給付に振り分けることも考えられます。定年後再雇用の場合は、定年退職時にいったん定年までの勤務期間に対応する退職金を支給し、再雇用期間の終了時に定年後の勤務期間に対応する退職金を別途支給する方法もあります。  ただし、報酬水準や家計の状況については個人差があり、報酬全体のうちどれだけを退職給付に振り分けたいかは社員によって異なります。ですから、報酬の全体額を定めたうえで、本人の選択によりその一部を退職給付へ配分できるような設計とすることも考えられます。  具体例として、企業型確定拠出年金を実施している企業において、60歳以上の従業員も加入対象としたうえで、給与のうち確定拠出年金の事業主掛金に充当できる金額について、いくつかの選択肢を用意し、そのなかから本人が受け取り方を選択するという方法があります※4。なお、企業型確定拠出年金の加入対象はこれまでは原則として60歳未満(ただし60歳前と同一事業所で引き続き使用される者にかぎり最長65歳未満とすることが可能)とされていましたが、法改正により2022(令和4)年5月以降は厚生年金被保険者(70歳未満)であれば加入対象とすることができるようになります。  このように、給与と退職給付の配分を柔軟に選択できるようにした場合、その配分によって、税金のほか社会保険料や老齢厚生年金などの社会保険給付、時間外手当などにも影響を及ぼす可能性があります。  制度設計にあたってはこうした点を考慮するとともに、社員に対しても十分な説明を行うことが重要になります。 キャリアの長期化・多様化をふまえた退職給付のあり方  ここまでは、すでに高齢期を迎えようとしている社員を念頭に、高齢者雇用制度の拡充にともなう退職給付制度の対応について考えてきましたが、より若い世代に対してはどう考えればよいでしょうか。もし従来の延長線上で考えるなら、60歳定年モデルで設計していた退職給付制度を、就業期間の長期化にあわせて、65歳や70歳で退職するモデルに引き直せばよいことになりますが、それは今後想定される社員の長期的なキャリアに沿ったものだといえるでしょうか。  企業や職種によっては、引き続きそうした考え方が有効な場合もあるかもしれません。しかし、より多くの人が長く多様な形で働く社会となっていくなかで、社員に画一的なキャリアをあてはめることはむずかしくなっていくでしょう。退職給付に求められる役割やニーズも多様化しますから、画一的な制度設計ではなく個別にカスタマイズできるような仕組みが求められます。具体的には、企業型確定拠出年金および確定給付企業年金と前払い退職金(在職中の給与や賞与への上乗せ)との選択制や、企業型確定拠出年金におけるマッチング拠出(社員が自分の給与から掛金を上乗せできる仕組み)などは、個別のカスタマイズが可能な仕組みだといえます。  高齢期における収入の確保はこれからも退職給付の重要な役割です。ただしそれは社員が一律の年齢で引退できるようにするためのものではなく、多様なキャリアを持つ従業員が高齢期において自ら望む働き方や生き方を主体的に選択できるようにするためのものとなっていくでしょう。  したがって、先に述べた退職給付を報酬の一部ととらえる考え方を現役世代にも拡張し、年間報酬の総額のうち一定額を退職給付として積み立てるための仕組みを退職給付制度として用意しておくという考え方に、徐々にシフトしていくことが考えられます。このとき、それぞれの特徴をふまえて制度構成を考えることが重要となります。  例えば、退職一時金は年齢にかかわらず退職時に一括で支給されるため、早い段階での主体的なキャリア転換を後押しすることもできる反面、老後資金を継続して積み立てることには不向きです。これに対して確定拠出年金はポータビリティを備えており、職業が変わっても積み立てを継続することができますが、原則として60歳まで資金を引き出すことができません。また、確定給付企業年金は中途退職時に一時金で受け取ることができるほか、確定拠出年金に資金を移して積み立てを継続する選択肢もあるなど、受給方法を柔軟に選択することができます。  前払いも含め、これらの制度を適切に組み合わせることでキャリアの多様性に対応した退職給付制度を構築するとともに、社員がこれらの制度の特徴を理解して自らのキャリアプランやライフステージに合わせて有効に活用できるよう、教育の機会を設けるなどして、支援を行うことも企業としての重要な役割となります。 【注釈】 ※1 加入者の3分の2以上の個別同意、および加入者の3分の1以上で組織する労働組合がある場合にはその組合の同意(ただし、加入者の3分の2以上で組織する労働組合がある場合には、その労働組合の同意で加入者の3分の2以上の個別同意に代えることができる) ※2 確定給付型の企業年金における確定年金は、実質的には一時金の分割払いとなっている ※3 退職所得となるのは退職に起因して一時に支払われる給与であり、引き続き勤務する者に支払われる給与はその名称を問わず原則として給与所得となる。ただし、定年後再雇用者に対する定年到達時の退職金や、定年延長した場合に旧定年に達した従業員に対して退職金として支給されるものでその支給をすることにつき相当の理由があると認められるものは退職所得として取り扱われる。また、確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金は退職等の時期にかかわらず退職所得として取り扱われる ※4 確定拠出年金の加入対象とする場合、事業主掛金を0円とすることはできないため、最低でも月額1000円程度の掛金を設定しておく必要がある 図表 定年延長(60歳から65歳)にともなう終身年金の支給開始年齢の引上げ 【定年延長前】 60歳〜65歳 給与(再雇用) 60歳〜 企業年金(終身) 【定年延長後】 60歳〜65歳 給与(正規雇用) 退職給付の減少分を給与改善の原資に充当 65歳〜 企業年金(終身) ※筆者作成 【P31-33】 企業事例1 年齢上限なしの継続雇用制度の導入と同時に長年の貢献に報いる第二の退職金≠整備 三谷(みたに)産業株式会社(石川県金沢市) 首都圏、北陸、ベトナムが拠点商社とメーカーの複合企業  三谷産業株式会社は1928(昭和3)年に、石炭の卸売として石川県金沢市で創業した。現在は、首都圏、北陸地方、ベトナムに拠点を持ち、化学品、樹脂・エレクトロニクス、情報システム、空調設備工事、住宅設備機器、エネルギーの六つの分野で事業を展開する複合企業に成長した。同社は複合企業として総合力、発想力、技術力をもって、時代の流れをくみとりながら年々複雑化していく顧客の課題解決に取り組んでいる。  社員数は、609人、国内グループ連結で1176人、60歳以上の高齢社員数は38人(単体)、82人(連結)となっている(2021〈令和3〉年11月現在)。 ベテラン社員の活躍推進に向け無期限の継続雇用制度を導入  創業以来、社員との信頼関係を大切にし、社員が働きがいを持って仕事に取り組めるように、働きやすい環境づくりを進めてきた同社は、2021年4月1日、豊かなノウハウとスキルを持つベテラン社員のさらなる活躍推進に向け、雇用の上限年齢を設けない無期限の継続雇用制度を導入した。  従来、同社の継続雇用制度では、60歳で定年を迎えた社員は全員、グループの子会社に転籍し、三谷産業に出向する形で業務にたずさわる形を取っている。この点は新制度でも変更はないが、定年後は嘱託社員だった雇用形態を「マスター正社員」に変更。1年ごとに行っていた契約更新をなくし、正社員として継続雇用することでモチベーションアップを図った。さらに、66歳年度以降は「マスター嘱託社員」となり、健康状態や家庭の事情などにあわせて1年ごとに契約更新を行い、昇給はなくなるものの、賞与は引き続き支給される。また、継続雇用制度の見直しにあわせて、60歳での役職定年制度も導入した。同社の佐藤正裕(まさひろ)執行役員人事本部長は、新制度について次のように話す。  「定年は人生の節目となるもの。自分の仕事ぶりや今後の働き方を見つめ直すタイミングととらえ、三谷産業としての定年は60歳のままとしました。また、役職者はこれまでつちかった成功体験やノウハウを後進に伝える機会として、原則60歳の役職定年制を導入しました。定年後、役職定年後も引き続き、体力や知力の自己点検と同時に、仕事ぶりを評価する目標・考課をすることで、その実力を正しく測り、成果に見合った賞与を支給していきます」 定年後の長い継続勤務を想定し「第二の退職金制度」を新設  同社では、無期限の継続雇用制度の導入と同時に、退職金制度の見直しを行い、60歳定年時に支給する退職金とは別に、「第二の退職金」を支給する制度を新設した。60歳以降、人材区分別にポイントを積み立て、積み立てられたポイントに応じて、退職時に支給する仕組みだ。  定年後の「マスター正社員」は、管理職経験者などの「熟達者V」、定年前または定年時に担当していた業務を継続する「熟達者U」、そして定型の事務業務に従事する「熟達者T」の三つの区分がある。それぞれの区分に設定したポイントを1年ごとに付与していき、退職時、その人の累計ポイントに1000円の単価を掛けた額を「第二の退職金」として支給する。  「熟達者V」は、独自の販路を有する営業のスペシャリスト、組織における一部機能のマネジメントを代行する人材など、会社への貢献度が高いことから、もっとも設定ポイントが高い。次にボリュームゾーンの「熟達者U」、そして負荷の少ない仕事をになう「熟達者T」の順にポイントが設定されており、仕事内容がポイントに反映される仕組みだ。60歳の定年以降も十数年という長い年月を働くことが前提になると、次に退職する際にも何かしら労(ねぎら)いをしたいという考えから導入されたものだ。  「第二の退職金の金額自体は、決して大きいものではありません。例えば、区分のポイントが50ポイントなら、定年後10年働いた場合、50ポイント×10年×1000円=50万円が第二の退職金になります。およそ1.5〜2カ月分の賃金です。会社としては、長く働いてくれた労いの意味で渡す功労報奨金のような意味合いです。また、第二の退職金は定年後の転籍先での退職金として申告でき、退職所得控除が適用されるので、社員は税制の優遇を受けることができるメリットがあります」(佐藤本部長)  一方、60歳で支給する退職金は従来通りで変更はない。旧継続雇用制度の内容を検討していた際、60歳で退職金を精算する必要性についての検討を行ったが、当時の社長(現・会長)の三谷充みつる氏の「60歳はまとまったお金が欲しい時期だろう」という社員のライフプランに寄りそった意向が大きく働いた。これもグループ会社への転籍による退職金扱いになるので、課税の優遇を受けることができる。 企業負担の大きい適格退職年金から確定拠出年金へ全面移換  三谷産業およびグループ各社では、三谷産業グループ企業年金として確定拠出年金を採用している。以前は、適格退職年金(以下、「適年」)であったが、2007(平成19)年度に資産を全面移換した。  適年から確定拠出年金に移換した理由を聞くと、「適年は2012(平成24)年3月31日に廃止が決まっていたため、他の制度へ移換することが求められていました。他の制度とは、厚生年金基金・確定給付年金・確定拠出年金・中小企業退職金共済があり、中でも厚生年金基金は、2003(平成15)年4月に当社が加入していた北陸石油業厚生年金基金の解散にともない清算した経緯があったこと、中小企業退職金共済は企業規模から対象外となりました。  次に適年とよく似た退職給付型を検討しましたが、将来の退職金額が決まっている制度設計のため、会社の運用リスクを避けられず、適年のときにも各事業年度末の決算にて年金資産の積立不足(退職給付債務)を補填してきた苦労から、会社の運用リスクを避けるため確定拠出年金への全面移換を決めました」(佐藤本部長)  移管にあたり社員に説明をしたポイントは次の通りである。 @がんばった人に報いるため、年功序列型から成果型給与に比例する掛金を拠出すること A適年当時の退職給付見込額の同等以上を目ざした運用予定利率と拠出率を設定すること B会社の退職給付債務がなくなることで収益が安定し、賞与原資が確保できること C資産運用は自己責任となるが、定期的な資産運用の情報提供に努めるとともに、資産運用に関する教育機会を設けること D転職しても積み立てた年金資産を持ち運びできること  なお、適年制度に移行し退職給付債務がなくなった分、実際に賞与を増額するなど、社員への還元に努めている。  現在の確定拠出年金法では、企業型確定拠出年金の加入可能年齢は原則60歳未満までで、特別な規定により延長できる場合も65 歳未満までとなっているが、2022年5月からは厚生年金被保険者であれば70歳未満まで加入できるようになる。  しかし、前述したように退職金を60歳のタイミングで清算することから、同社では60歳で掛金の拠出を停止することから変更はない。 「出来高払いオプション」などさまざまな取組みで高齢社員を後押し  このような退職金制度の見直しのほかにも、同社では高齢社員の活躍推進に向けて、さまざまな取組みを行っている。「出来高払いオプション」は、元上級管理職を念頭においた制度である。本業以外でつちかったスキルと経験を活かす社内副業を選択して務めることができ、社内外講師、営業紹介、技術指導、システムコンサルタント、企画・業務系コンサルティング・キャリアアドバイザーの職務を用意。時給は通常の給与の2〜3倍の設定になる。今後はそのほかの職務も加えていく方針だ。  また、66歳年度以降の「マスター嘱託社員」においては、契約更新のための評価基準を厳格に設けた。評価は、@直近1年間の勤務評定がBランク以上、A産業医による直近の健康診断のデータ確認と面談を実施し、就業上支障がないと判断されること、Bキャリアドックの実施、C定年後、「譴責(けんせき)」以上の懲戒処分がないこと、D人材区分別職務給に同意すること、E人材区分の見直し(熟達者Vは熟達者Uか熟達者Tに、熟達者Uは熟達者Tに限定して再区分する)などで行う。66歳年度以降は評価基準をやや厳しくし、特に働く意欲を見極めていく方針だ。評価をもとに毎年契約更新を実施するが、今後、対象者が増えていくことが予想され、キャリアがある高齢社員と面談する人材の確保も課題となっている。  第二の退職金制度により、会社への貢献に応える仕組みを整えると同時に、高齢社員自身にも一定の努力を求めそれを評価する仕組みを導入した同社。生涯現役時代における会社と社員の関係のあり方が見える取組みといえるだろう。 写真のキャプション 佐藤正裕執行役員人事本部長 金沢本社外観 【P34-36】 企業事例2 65歳定年制にシフトして年金と評価制度を改革シニア層のモチベーションを高め活躍を後押し 飛島(とびしま)建設株式会社(東京都港区) 年齢構成のバランスを是正するため65歳までの定年延長は不可避だった  1883(明治16)年に創業し、140年近い歴史を持つ土木主体の老舗、飛島建設株式会社。青函トンネルや本州四国連絡橋、東京湾アクアラインなどのビッグプロジェクトにも参画している。  近年では、「New Business Contr actor」を標榜し、建設業に留まらない幅広い分野に事業を展開。建設現場に精通した建設技術者とIT技術者がチームを組んだ「IT監督」と建設ITシステム「e−シリーズ」の提供により、「建設DXプラットフォーマー」への企業変革に注力している。  社員数は1372人(2021〈令和3〉年12月1日現在)。そのうち1183人が正社員であり、181人が60歳以上のシニア層となっている。正社員の年齢構成は中高年齢層(50歳以上)や若年層(20歳代)が多い一方で、中堅層(30歳前後から40歳代前半)が少ない、といった特徴がある。この傾向は数年前から続いており、こうした年齢構成では、コンスタントな採用を続けたとしても、年代による層の厚さの違いは解消できず、しかも基幹的な社員である総合職は増えていかないという危機意識が社内に生まれていた。  また、社会的な流れとしても65歳の年金受給や65歳までの雇用義務化の法整備が進み、2016(平成28)年ごろから同社でも定年延長への議論が進められた。  その議論の中心は、60歳以降のシニア層の活躍と若年層の育成を両立させることだった。それまで同社では60歳で定年となり、その後1年ごとに契約を更新していく再雇用制度を導入していたが、この対象者をサポート役としてではなく仕事の第一線で働ける人材として活用する一方、若年層の早期育成を進めることで組織としての力を維持・発展させていく、というものだ。そのためには、処遇の改善や就業環境の整備を進めることで、シニアになっても「安心して働ける飛島」を目ざし、人材確保・モチベーションの維持を図る必要がある。そこで、早期に「65歳定年制」を導入することが不可欠であるという結論に至り、2018年に基本方針を策定し、2019年7月より65歳定年制を採用することとなった。  こうした一連の動きにかかわった濱田洋一管理本部人事部担当部長は、「制度としては60歳定年でしたが、実質的には60歳を超えても同じように活躍していただいている方が多く、会社としてもそれを求めていたという実態があります。特に当社はゼネコンですので、社内のポスト以外に作業所における役職もあります。例えば現場の所長などは、60歳を過ぎても第一線でがんばってもらわないといけないという状況が少なからずありました」と実情を語る。  そのため、定年延長に至る議論のなかで、もっとも大きな声として上がってきたのは、それまでの制度では定年後も所長などとして現場で働いている以上、仕事の中身と責任は変わらないのに所得水準だけが下がるという不満だった。  「聞けばもっともな話ですし、やはり責任がともなうことであれば処遇を見直さなければいけません」と、濱田担当部長は当時の議論をふり返る。その結果、処遇の基本方針として定められたのが、@年収ベースで旧定年再雇用制度を上回る水準とする、A60歳未満の処遇は引き下げない、の二つの柱だ。 定年延長にあわせて処遇を改善 新たな退職金制度と評価基準の一本化  こうしたことをふまえて、大きく見直されたのが退職金制度と評価制度だ。  同社ではそれまで退職金を企業年金としていて、確定給付企業年金(以下、DB)と確定拠出企業年金(以下、DC)で運用してきていた。  これを、定年延長の際に、年金の加入期間は従来通り60歳までとし、その時点で受給権(一時金での受領または有期年金での受領)が発生することとし、DCは自己での運用継続が選択可能となっている。DBは60歳以降新たな拠出はないが、60歳到達時の仮想個人勘定残高にCBプラン※で設定した再評価率(最低保障1.5%)に応じた利息ポイントが加算されていくという仕組みだ(図表)。  DB、DCいずれの場合も60歳到達時点で年金一時払いで受領することを想定していた社員も多かったため、定年を65歳に伸ばしても旧定年である60歳時点で受給権が得られるようにしている。その一方、定年延長になっても一時金を60歳時点で受領できるという制度を設計する際に議論になったのが税金の問題だ。  「退職金は税金が優遇されるので、定年が65歳に延長されているのに60歳で受領する一時金が退職所得として認められるのかどうか、ということです。そこでこの制度の運用を委託している信託銀行から税務署に問い合わせてもらい、65歳まで定年を延長しても旧定年(60歳)で退職年金制度加入が終わり、仕事を続けても退職所得として税的優遇が受けられると確認しました」(濱田担当部長)  こうした裏づけ作業などの準備を十分に行ったうえで、同社の退職金制度は再整備された。  そして、処遇改善のもう一方の柱が評価制度改革だ。それまでの制度では60歳の定年から1年ごとの有期労働契約を結び、その後はシニア層に限定した特別な評価・判定基準が設けられていたうえ、定年前とは別の賃金表を適用して給与は低い水準に抑えられていた。これを、有期労働契約書は廃止、職員と同じ判定基準での評価、さらには65歳まで全社統一基準の諸手当の適用と、できるだけ60歳までとの差異が少ない制度へと改革を行ったのだ。この結果、年収ベースで旧定年再雇用制度では60歳到達時の約60%だった賃金が、新制度では70%にまで引き上げられた。  「それまではシニア層に限定した複雑な評価基準と賃金表を適用していましたが、これをほかの職員と同じものにしたわけです。その結果、人事考課などの運用もわかりやすくシンプルになり、人事関連業務の効率化にもつながりました」と、管理本部人事部の森義之部長は制度改革の副次効果を語っている。 ライフプランセミナーで定年前研修100歳までの生活設計を身近なものに  さらに同社では、定年後の生活を豊かに送ってもらうために、2017年度から60歳手前の職員を対象に開催するライフプランセミナーに取り組んでいる。これは定年制などの社内制度の説明に加え、外部講師を招いて年金・保険・資産形成・運用などを解説するというもの。外部講師の指導によりパソコンを使ってリタイア後の具体的なマネープランをシミュレーションするため、職員が自分のライフプランを考え始めるよいきっかけになっているという。  「外部講師には金融機関の方をお招きしています。一人ひとりのライフプランがシミュレートできるため100歳まで生きる前提で毎月の生活費や、『いつ車を買い替えるか』、『自分が何歳のときに子どもが結婚し、そのときどれだけの費用を補助するか』など、細かい条件を入力するとその結果がグラフになって出てきます。例えば自分の想定するライフプランでいっても生涯十分な資産を残せるという人もいれば、このままでは早々に資産がマイナスになってしまうという人もいます。資産や年金の話はとっつきにくく、苦手な人も多いですが、具体的に、簡単に自分のシミュレーションをしてみて、結果が出てくれば興味を持ちやすく、理解もできます」(森部長)  同社ではこうした新しい試みも導入しながら、シニア層ができるだけ長く活躍できるようにさまざまなバックアップを行っている。  その一方で、「そうはいってもいつまでもシニア層に頼っているわけにはいかないですし、やはりできるだけ早く若者に活躍してもらえるように技術の伝承も行っていきたい」と森部長は危機感を口にする。高年齢者雇用安定法の改正により70歳までの就業機会確保が努力義務となるなど、社会の流れとしてさらなる雇用延長も想定される。70歳までシニア層のモチベーションを維持して、会社の業績に貢献できるという役割をになってもらうためにどうすればよいのかを考える日々だ。  「シニア層に長く当社で活躍していただくこと、一方で早期に若手を育成・抜擢し世代交代を図っていくこと、それを両立するための考え方や仕組みをつくっていくことが今後の課題です。この解決策を見いださないかぎり時代が変革するスピードにはついていけません。むしろ、われわれ飛島が時代を先導していくくらいの存在にならなければ会社の発展はない、といった気持ちで取り組んでいます」と森部長は新たな課題への挑戦を語ってくれた。 ※ CBプラン……キャッシュバランスプラン。「確定給付型」と「確定拠出型」の両方の特徴をあわせもち、制度上は確定給付型に分類されるが、将来の給付額が市場金利等に左右される 図表 退職金制度のイメージ 仮想個人勘定残高 20 21 22 23…30 1−5等級 30 … 35 6等級 36 … 40 7等級 40 …… 50 8等級 50 … 58 59 60 9-10等級 61 62 63 64 65 満年齢 定年延長 対応案の検討 職員 会社 @掛金拠出の継続 ・職員は退職金増でメリット大 ・会社は退職給付債務のリスク大 ○ × A利息ポイント付与/拠出金無し ・長く勤務すると退職金は増加 ・退職給付債務のリスク小 × △ 採用案 B60歳支給で終了 ・定年延長でも退職金は現状維持 ・職員はメリットを感じない × ○ ▼60歳で資格喪失 DB設計モデル 繰下げ分に利息ポイントを付与長期の勤務で退職金が増加 DC設計モデル マッチング拠出 DCは70歳まで据置き可 (口座維持手数料は自己負担) ◇DB・DCは60歳で資格喪失。 ◇DBは繰下げ分には利息ポイントを付与。 従来通り c2019 TOBISHIMA Corporation 資料提供:飛島建設株式会社 写真のキャプション 濱田洋一管理本部人事部担当部長(左)と森義之管理本部人事部長(右) 【P37】 日本史にみる長寿食 FOOD 340 大豆ミートの人気と日本人の長寿 食文化史研究家●永山久夫 豆腐は「ホワイト・ミート(白い肉)」 大豆のタンパク質でつくった代替肉(だいたいにく)の大豆ミートの人気がとまりません。動物性タンパク質から、植物性タンパク質へのチェンジが、世界ではじまっているのです。  地球環境を考えて登場した大豆ミートですが、日本では古くから豆腐や味噌、納豆、きな粉などがつくられてきました。日本は、大豆活用の先進国なのです。  なかでも世界的に人気なのは「豆腐」で、アメリカやヨーロッパでは「ホワイト・ミート」とも呼ばれ、長寿や若さを意識する人たちの間で、評判はよくなるばかりです。  「みずみずしくて、美しい肌と世界トップレベルの長寿を誇るジャパニーズ・ウーマンの美容食」として、その人気は定着しているのです。  豆腐はふわふわしていて、頼りなさそうですが、「豆腐力」とも呼べるすばらしいパワーがあります。その力はどこから来ているのかというと、原料となる大豆で、肉を超えたタンパク質源として脚光を浴びています。 世界トップの高齢社会  大豆に含まれているタンパク質は約35%で、この量は牛肉の約2倍。大豆がよく「畑の肉」と呼ばれる理由もここにあります。  肉のように高タンパク質の大豆を食べやすく加工し、しかも美味で消化吸収しやすいスタイルにつくり替えたのが豆腐。赤ちゃんから超高齢の方々まで、だれの胃にもやさしいのが豆腐なのです。  現在、日本の65 歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合は約29%。3 人に1 人が高齢者という、世界一の高齢社会です。最近の高齢者はとても元気で、生涯現役を続け、仕事を持っているケースも増えています。消費マーケットでも主役で、いまや世の中の元気を支えているのは高齢者といってもよいでしょう。  現役を続けていくための体力と頭脳力を強化するうえで、ピッタリなのが豆腐。老化を防いで若さを維持するために欠かせないタンパク質とカルシウムなどのミネラル、それにビタミンEがたっぷり含まれています。 【P38-39】 江戸から東京へ 第111回 井戸の水になれ 北条幻庵 作家 童門冬二 愛民≠フ目付役  北条(ほうじょう)幻庵(げんあん)は北条(ほうじょう)早雲(そううん)(後北条氏の祖)の子だ。説はいろいろあるがその一つに、明応二(一四九三)年生まれで、天正十七(一五八九)年死というのがある。これに従えば満九十六年生きたことになり、しかも天正十七年は関白秀吉が後北条氏征伐のために、二十万の大軍で海陸から小田原城を囲む前年だ。翌十八年後北条氏は降伏し、五代百年にわたる早雲以来の愛民(特に敬老)≠フ善政を閉じる。  この長い間、幻庵は何をしていたのか。公職としては箱根権現の別当(べっとう)(寺の事務長官)を務めていた。が、実際には後北条氏の治政の目付役であり、進行管理役だった。歴代の当主が始祖早雲の信念である愛民≠守っているかどうかの検証役だ。だから当主や首脳部は、幻庵の眼を恐れた。  幻庵が生きていたら後北条氏も秀吉と折合う妙手も考え出したかも知れない。幻庵はその住居が小田原の久野(くの)にあるため、久野のご隠居≠ニ呼ばれ、一族の長老として何かにつけて相談に乗っていたからだ。  そしてこの役は早雲が命じたことでもあった。物心つくころ、早雲は幻庵を箱根権現の僧坊に入れて修行させた。  「お寺は血なまぐさい合戦にはかかわるな。清浄に身を保て」  と云った。  「家の庭にある井戸水になれ」  とも告げて、つぎのように言葉を加えた。  「井戸水はいつも恒温(こうおん)だ。だから夏暑いときに川の水が温(ぬる)くなっても、井戸水は冷たい。逆に冬川の水が冷たくても、井戸水は温かい。それを心がけよ」  恒温というのは冷静で公正だということで、そういう姿勢で、後北条政治を凝視せよということなのだ。早雲は、  「そのためには長生きをせよ」  と云った。早雲自身も満八十七年生きた。  長生きするために、庭に梅の木を植えさせ、花が散って枝に実った実(み)を梅干しにすることを教えた。また唐(とう)から渡った外郎(ういろう)という薬を常用することも教えた。幻庵の長寿は父の生活指導によるところが大きい。  「井戸水が恒温を保つためには、いつも気持ちをおだやかにせねばならぬ。そのためには古今和歌集をよく読め」  とも云った。ほかの指導者のように「論語」や「孟子」も読めと云われないだけ助かった。 父早雲の戒めをこえる  後世になるにしたがって後北条氏も、前北条氏(鎌倉時代の)との関係(まったくない)をあいまいにしていたが、前北条氏の姓に深い関心を持っていたのは父の早雲だ。  源氏系の将軍が三代で絶えた後、京都から公家(藤原氏)の子を迎えて名目上の将軍にし、実質的な政治を担当したのは執権の前北条氏だ。その政治力にひどく感心し、  「前北条氏に学ぼう」  と云って、姓を北条氏に改めたのは早雲だ。しかし早雲は、自分を決して北条とは名乗らなかった。伊勢新九郎と云っていた。幻庵には、  「わしの力はとても北条氏に及ばぬ。北条氏を名乗るのは名を汚すことになる。ただ子孫には名乗らせたい。その資格があるかどうか、お前がしっかり見定めるのだ」  と告げた。謙虚な性格だった。  幻庵はその謙虚さを多分に受け継いでいた。父がつけてくれた名は菊寿丸(きくじゅまる)。おめでたい名だ。長寿を希(ねが)っている。  しかし幻庵は住居に付したげんあん≠通称にした。洒落(しゃれ)てげんなん≠ニ称することもある。父から一族の監視役を命ぜられて幻庵は、  「存在を無にしよう、いてもいないことにしよう」  と心をきめた。父が役割を一族に告げたとき、幻庵はあいさつ代わりに、  「そういう次第で父上の命に従いますが、どうかみなさん方は、私がいない者とご認識ください。いても目に見えない者としてお扱いください」  と告げた。みんな笑った。笑ったが警戒した。しかしその後、幻庵が父の命に忠実に従ったことは一度もない。つまり早雲の信条である愛民≠ノそむく施策だと云って、その治政にクレームをつけたり、注意したりすことはまったくなかった。逆に、  「みごとだ。早雲様もおよろこびになる」  と、早雲が死んだ後も、ホメ言葉だけを伝えた。久野のご隠居≠フ評判はよく、一族のだれもが、  「いつまでもご長命で」  と長寿を希った。これはお世辞抜きの本心だった。早雲は幻庵に、  「井戸水のような恒温を保て」  と云ったが、幻庵はこれを止揚(しよう)(アウフヘーベン)して、「静意(せいい)」とした。発する文書には必ずこの二文字を彫りこんだ印を押した。受け取った相手はこれだけで幻庵の意志を理解し、時には、  「久野のご長老は怖い」  とおそれた。 【P40-43】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第116回 静岡県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 65歳定年への延長は社内に自然に浸透高齢従業員も戦力として柔軟に働く 企業プロフィール 浜名梱包(はまなこんぽう)輸送株式会社(静岡県浜松市) 創業 1962(昭和37)年 業種  道路貨物運送業 従業員数 1044人(うち正規従業員数614人) (60歳以上男女内訳) 男性(116人)、女性(68人) (年齢内訳) 60〜64歳 105人(10.1%) 65〜69歳 49人(4.7%) 70歳以上 30人(2.9%) 定年・継続雇用制度 定年は65歳。定年後は1年ごとの更新で規程上は86歳まで継続雇用。最高年齢者は79歳の元ドライバーで現在は倉庫作業に従事  静岡県は、太平洋に面して日本のほぼ中央に位置し、南には遠州灘(えんしゅうなだ)、駿河湾、相模灘に沿った約500qの海岸線、北には富士山をはじめとする3000m級の山々からなる山岳地帯が広がり、バラエティに富んだ自然豊かな風土を擁ようしています。北部山岳地帯を除けば、全般的に温暖な海洋性気候です。  東海道新幹線や幹線道路が東西に走る立地環境から、「産業のデパート」といわれるほど多様な産業が集積し、なかでもオートバイ、ピアノ、プラモデルの輸出量は日本一を誇ります。また、水揚げ額が全国1位の焼津漁港や、静岡茶、みかんの生産など第1次産業も盛んです。東西交通網や港湾を利用した6次産業化も進んでいます。加えて、富士山、韮山反射炉(にらやまはんしゃろ)などの世界遺産や伊豆半島ジオパーク、熱海温泉、浜名湖など多くの観光地・観光資源に恵まれています。  当機構の静岡支部高齢・障害者業務課では、労働局およびハローワークと連携し、県内大手企業や首都圏に本社を持つグループ企業、各地の地域密着企業など多様な産業のそれぞれの事業所の実情に合った相談・助言活動に日々努めています。同課の伊東正人課長は、最近の取組みについて次のように話します。  「2021(令和3)年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行を受けて、事業所からの問合せや相談・助言活動における訪問要請が増えています。そこで、70歳までの就業機会確保(努力義務)についての進め方や関連する課題などについて、リニューアルした当機構の『雇用力評価ツール』を適時活用するなど事業所の状況を把握し、制度改善提案などに取り組んでいます」  今回は、同支部で活躍するプランナー・小山敞二さんの案内で、「浜名梱包輸送株式会社」を訪ねました。小山プランナーは、相談・助言および制度改善提案を意欲的・計画的に進めており、その提案を受けて「検討を進めた」という企業は7割を超えています。「的確に企業の状況を把握したうえで制度改善提案を行っており、企業から信頼を得ています」と伊東課長。浜名梱包輸送もそのなかの1社です。 定年65歳、86歳まで勤務可能な継続雇用制度  浜名梱包輸送は、1962(昭和37)年、主に楽器輸送を扱う会社として創業しました。「お客様の要請に誠意をもって応え、企業の発展と社員の豊かさを追求し、地域社会に貢献する」を企業理念に掲げ、現在は、輸送業・倉庫業・引越し事業の三つの事業を柱に、多数の営業拠点を持つ大規模物流企業として成長しています。  同社の近況や人材に対する考え方について、春田(はるた)知実(ともみ)総務・人事部次長は、「コロナ禍や半導体不足の影響はありますが、県内外で1年に1拠点を増やして業容を拡大しています。すぐに機械に置き換わる業種ではないので、人材はたいへん貴重なものと考えています。この10年ほどで、従業員の年齢に対する考え方は柔軟になり、年齢が高く未経験の方も採用しています」と話します。  小山プランナーは、2019年8月に初めて浜名梱包輸送を訪問しました。  「とりわけここ数年の同社は、毎年50人ほど従業員数が増え、事業も多角化して目覚ましく成長しています。訪問時は、近況をうかがいながら、高齢従業員は戦力として期待されているか、役割・任務は明確か、高齢従業員の就業条件や仕事内容の決め方などについてお聞きし、現状把握に努めました」と小山プランナー。その内容をもとに同年11月の2回目の訪問の際、当時「定年60歳、希望者全員65歳まで継続雇用」としていた同社の規則について、「定年65歳、基準該当者を70歳まで継続雇用」への見直しを提案しました。  小山プランナーの提案を受けて、同社では定年や継続雇用制度の見直しを進めて2020年4月、定年を65歳に延長。定年後は、1年ごとの契約更新で規程上86歳まで基準該当者を継続雇用することとしました。定年延長の背景には、「年齢で一律に区切るのではなく、元気であれば継続して働いてほしい」との思いと、世の中の流れを勘案したうえでの判断があったといいます。  定年延長にあたって考慮したことやその後について、春田次長は次のようにふり返ります。  「1年に1歳ずつ定年年齢を引き上げていく方法もありますが、だれがいつ定年を迎えるのか、職場内でわかりにくくなってしまうため、当社では一気に5歳引き上げる方法を選択しました。しかし、すぐに該当する年齢の従業員への配慮が必要です。従来の60歳定年で人生プランを立てている従業員もいると考え、退職金については、制度改定から5年間は希望に応じて60歳時点で受け取ることも可能としています。ただ、案じたほどの混乱はなく、65歳定年は自然に受けとめられたという印象です」 活き活きと活躍するベテラン従業員  伊藤二三男(ふみお)さん(70歳)は、56歳で浜名梱包輸送に入社して14年。フォークリフトの運転免許を持ち、現在は倉庫営業グループ高薗(たかその)倉庫部に所属して出荷・搬出、積み替えなどの作業を担当しています。  入社当初は倉庫管理をにない、部署全体の準備・段取りも行っていましたが、60歳定年後(当時)は継続雇用で契約社員となり、フルタイム勤務で現在の仕事内容に。さらに、68歳からはパートタイムで週5日、9時から13時までの勤務となり、無理なく働けています。  仕事で心がけているのは、「間違いなく出荷することと、フォークリフト運転時の安全に注意すること。また、わからないことはきちんと確認することです」とさわやかな笑顔で話す伊藤さん。「体が動くうちは働いていたい」と話し、体力維持のためにウォーキングを続けています。  4年前から一緒に働いている上司の松本賢次次長は、伊藤さんについて、「仕事が的確で、とても信頼できる存在です。経験も豊富なので、トラブル発生時などにアドバイスをもらうこともあります」と話します。また、同社の定年延長について、「いまは60歳を過ぎても若々しい人が多いので65歳定年は妥当だと思います。私自身、安全に配慮し、業務内容をなるべくシンプルにして、勤務時間も短くすることがよいと思い、そのようにしています」と感想と対応を語りました。  金指(かなさし)峰代(みねよ)さん(71歳)は、本社倉庫部パーツセンターで楽器部品の保管、入荷・出荷のピッキング、検品、梱包業務を行っています。ピアノなどの鍵盤楽器や管楽器など大小さまざまな楽器の約5万点もの部品を扱っています。  「毎日の作業では、お客さまにきちんと届くよう十分に確認して進めます。最近、部品管理のシステムが変わり、パソコンとスマートフォンを使うので不安でしたが、研修でていねいに教えてもらいました。まだ十分でないこともありますが、覚えてしまえば作業が早くできるようになるので、少しずつスキルアップしていきたいです」と明るい声で話す金指さん。  以前は大手楽器メーカーに勤務し、40年ほどこの仕事を担当していました。業務が浜名梱包輸送に委託されたことを機に、当初は1年契約で出向して仕事を継続。契約期間終了後、浜名梱包輸送に誘われて64歳で入社し、7年になります。金指さんはだれよりもこの仕事を熟知していますが、管理システムなどが変化するため、そのたびに勉強して対応してきました。  「作業は楽しく行っています。少しでも早くできるとうれしくなるので、これからも努力していきたいです。68歳からはパートになり、週5日、午後だけの勤務になりましたので、無理なく継続できています」(金指さん)  上司の鈴木久美子本社倉庫部係長は、「金指さんは臨機応変に働いていて、向上心もあります。いつも『私がやります』と率先して引き受けてくれるのでとても助けられています」と、金指さんを高く評価しています。 福利厚生の充実に力を入れる  浜名梱包輸送では、高齢従業員の割合が徐々に高くなるにつれ、業務においても高齢従業員の役割が大きくなっており、春田次長は「高齢者雇用は、いまでは特別なことではなくなってきていると感じています」と話します。一方で、若い人にとって祖父母と同年代の従業員も多く、幅広い年齢で構成される部門では、高齢従業員が若手をやさしく指導していて、職場の雰囲気をよくしているともいいます。  しかし、ニーズの多様化やデジタル化などにより、物流を取り巻く環境は激しく変化しているため、現場の仕事のやり方も変わるのが早く、従業員はそのたびに努力が求められます。  「新たなやり方については、研修などで対応しています。そういうたいへんなところもあるなか、この会社で長く働きたいと思ってもらえるように、現在、福利厚生の充実に努めています」と春田次長。  最近の取組みでは、同社の畑をつくり、キャベツ、白菜、大根などを収穫。まだ不格好なものが多いそうですが、従業員に新鮮な野菜を安く提供して喜ばれています。  野菜づくりは、高齢従業員3人と障害のある従業員2人が担当しています。倉庫作業から転身した従業員のほか、「畑作業のできる人」を募集したところ、両親を推薦する従業員が何人かいて、2人を新規に採用したそうです。  小山プランナーは、「毎年二桁の人員が増えるなか、高齢者雇用にしっかりと取り組み、全従業員の福利厚生に力を入れています。人を大切にする企業として、今後も成長されていくと思います」と同社を評価しています。  春田次長は、同社の目標と高齢従業員への期待について、「今後は、県内外で事業所を展開するとともに、地域社会に必要とされる会社となるように、SDGsやCSR活動にも力を入れていきたいと考えています。高齢従業員のみなさんには、業務を推進するための戦力として期待するとともに、若手の育成に力を貸してもらえたらと考えています」と語りました。また高齢者雇用の課題として、「健康管理」をあげ、先進事例などを参考にして取組みの強化を検討したいと話し、小山プランナーは今後もさらに同社を支援していきたいと応えました。(取材・増山美智子) 小山敞二(しょうじ)プランナー(89歳) アドバイザー・プランナー歴:27年 [小山プランナーから] 「企業訪問に際してはアプローチに留意し、相手の話をよく聞くことをモットーにしています。そして、企業の成長性、組織力に注目し、企業の成長に結びつけるような人材活用と人事制度の改善に向け必要な提案を心がけています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆静岡支部高齢・障害者業務課の伊東課長は小山プランナーについて、「豊富な経験と専門家としての相談・助言により、『人事管理制度』、『人事評価制度』、『賃金制度』などとあわせて企業の成長も見すえた制度改善提案を行っています。相談・助言、訪問数はいずれも当支部でトップクラスです」と話します。 ◆静岡支部は、JR静岡駅から南(海側)へ約2.5km、バス(静岡駅南口)で約15分、東名静岡インターより約10分の静岡職業能力開発促進センター(ポリテクセンター静岡)内にあります。 ◆19人の65 歳超雇用推進プランナーおよび高年齢者雇用アドバイザーが在籍し、事業所の相談・援助業務を担当しています。2020年度は、966件の訪問と248件の制度改善提案を行いました。2021年度は、コロナ禍により緊急事態宣言が発令された状況もあったなか、制度改善提案件数は前年度実績件数を超える見込みです。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●静岡支部高齢・障害者業務課 住所:静岡県静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 電話:054(280)3622 写真のキャプション 静岡県浜松市 浜松市浜北区に建つ本社全景 春田知実総務・人事部次長 倉庫でフォークリフト作業を行う伊藤二三男さん 倉庫内で楽器の部品をピッキングする金指峰代さん 【P44-47】 シニアのキャリアを理解する 事業創造大学院大学 教授 浅野浩美  健康寿命の延伸や、高年齢者雇用安定法の改正による70歳就業の努力義務化などにより、就業期間の長期化が進んでいます。そのなかで、シニアの活躍をうながしていくためにも「キャリア理論」への理解を深めることは欠かせません。本企画ではキャリア理論について学びながら、生涯現役時代におけるシニアのキャリア理論≠ノついて浅野浩美教授に解説していただきます(編集部)。 第2回 キャリア理論でみたシニア 1 スーパーの職業的発達とライフ・キャリア・レインボー  ドナルド・E・スーパーは、エリ・ギンズバーグの職業的発達の考えのほか、ロバート・J・ハヴィガーストの発達課題など、それまでの発達理論を整理し、キャリアについての包括的な理論を打ち立てました。  スーパーは、職業的なことだけでなく、ライフをも含めて、キャリアをとらえ、キャリア発達は、「自己概念」を実現するプロセスであると考えました。自己概念というのは、個人が家庭、学校、地域、職場などで体験したことや周りの人からフィードバックされたことからつくられる自己イメージのことです。長い時間をかけて形づくられるもので、肯定的な自己概念は人を積極的に行動させ、否定的な自己概念は人を消極的にするとしました。 (1)職業的発達  また、スーパーはキャリアを、職業選択を行ったあとも、生涯にわたって発達し、変化するものだと考え、次の五つの発達段階からなるとしました。そして、これを「マキシ・サイクル」と呼びました。スーパーは、人は成人になって仕事に就き、キャリアを確立した後も、発達し、変化すると考えたのです。 @成長段階(児童期〜青年前期。14歳ごろまで)  自分がどのような人間であるかを知る。働くことの意味について理解を深める。 A探索段階(青年前期〜成人前期。14〜25歳)  いろいろな職業について知り、絞り込みを行い、その仕事に就くための準備を行う。 B確立段階(成人前期〜40歳代中期。25〜45歳)  仕事に就いて、職責を果たし、能力を高め、昇進していく。 C維持段階(40歳代中期〜退職まで。45〜65歳)  確立した地位を維持していく。 D解放段階(65歳以上)  退職し、新たなキャリア人生を始める。地域  活動、趣味・余暇活動、家族との時間を過ごす。  これをみると、65歳を過ぎると退職し、引退してしまうかのようにみえますが、そうではありません。目安となる年齢は示されていますが、あくまでも、発達段階とゆるくつながったものだとされています。また、解放段階では、労働の役割から完全に解放されるようにみえますが、退職・引退するほか、より深いレベルで自己実現的な仕事を行ったり、仕事量を減らして専門的な仕事だけをする、といったことも含まれています。  さらに、スーパーは、それぞれの発達段階の間には、「移行期」があり、さらに、移行期のなかには、より小さく、また、くり返されるミニ・サイクルがあるとしました(図表1)。つまり、ある発達段階から次の発達段階に進む際などに、新たな成長に向けて、再探索し、再確立する、という小さなサイクルをくり返すと考えました。 (2)ライフ・キャリア・レインボー  スーパーは、キャリア発達の期間だけでなく、「キャリア」という概念の幅も拡げました。キャリアを、職業に関することだけにとどまらず、より広く、「役割(ライフスペース、ライフロール)」と「時間軸(ライフステージ、ライフ・スパン)」の二つの次元でとらえました。そして、これを、ライフ・キャリア・レインボーとして、視覚的にわかりやすく示しました(図表2)。  「役割」は、子供、学生、余暇人(余暇を楽しむ人)、市民(地域活動など地域に貢献する役割を果たす人)、労働者、家庭人、親、その他からなります※1。「時間軸」の方は、発達的なプロセスに焦点をあてたものです。  ライフ・キャリア・レインボーの図は、それぞれの発達段階における役割を視覚的に示したものです。何種類かのヴァリエーションがありますが、いずれも、わかりやすくするために、キャリア・パターン研究をもとに、当時一般的であった者のキャリアについて、発達段階における役割を記載しています。筆者が確認したかぎりでは、いずれも、おおむね65歳から70歳の間のあたりで退職し、年金生活などに入っています。  これをみると、スーパーの概念は65歳以降のキャリアのことを考えていない、70歳まで働くいまの時代に合っていない、という感じがするかもしれません。しかし、当時の平均寿命を考えると、それをだいぶ上回る年齢まで、年齢の目盛を設けています。また、スーパーが1950年代後半に書いた著書※2をみると、「60代半ばごろは、一般に、年を取ることの影響がはっきりわかる年頃、と受け取られている」といった微妙な書き方がされており、70歳近くまで元気に働いている女性のことなどを例に、人によって差がある、といったことを記載しています。  さらに、スーパーは、60歳の者の平均余命は15年くらいだが、今後伸びると考えられるので、65歳以降のことはより重要な問題となる、と書いています。また、退職金制度などもあるのに好んで働いている者、働かざるを得ない者を合わせると、65歳以降の者※3の約半数は雇われている、と記述しています。仕事の内容ややり方を変える者も多くみられるが、外部から役割の変化を強いられるとうまくいきにくい、といったことを書いていて、60年以上前の、別の国のこととは思えない気がします。 (3)キャリア・アダプタビリティ  スーパーは、青年期におけるキャリア発達において、キャリアの問題に取り組もうとする態度や考え方である「キャリア成熟」が重要であることを見いだしました。これに対し、成人期以降のキャリア発達においては、社会環境の変化に対応することが重要であるとし、それを「キャリア・アダプタビリティ」と名づけました。成人になって仕事に就き、キャリアを確立した後も、キャリアは発達し、変化するが、その際に重要なことは、さまざまな変化に適応していく力だということを指摘したのです。  このキャリア・アダプタビリティの概念は、マーク・E・サビカスに引き継がれ、発展していきます。 2 シャインの「仕事・キャリア」の九つの段階モデル  スーパーだけでなく、多くのキャリア研究者が、発達段階モデルを提唱しています。  キャリア・アンカー(個人がキャリアを選択する際に、どうしても譲ることのできない価値観や欲求のこと)などで有名なエドガー・H・シャインも、その一人です。外的キャリア(一般的に現実社会で認知される職業や地位、処遇など外的な基準で示されるキャリア)と内的キャリア(人のキャリアの内的側面、内的価値に焦点をあてる主観的なキャリア)を提唱したことなどでも有名な組織心理学者です。  シャインは、組織内でのキャリア発達について、@垂直方向(係長、課長、部長などの職に就くなど職位や職階を上がる移動)、A水平方向(営業部から人事部へに移るなど横の移動)、B中心方向(支店から本社に移るなど中心に近づき、組織にとってより重要な人物となる移動)からなるとし、それを3次元モデルで示しています。  また、組織と個人のニーズの調和に関して、「仕事・キャリア」のサイクルのほか、「生物学的・社会的」なサイクル、「家族関係」のサイクルについても考える必要があることを指摘しました。そして、それぞれのサイクルは重なり合い、影響し合うとして、これらが相互に作用するモデルを示しましたが、このうち「仕事・キャリア」のサイクルの段階を、九つの段階にまとめています。 @第1段階「探索期」…成長、空想、探究(0〜21歳) A第2段階「参入期」…仕事の世界へのエントリー(16〜25歳)(役割:新人) B第3段階「基礎訓練期」…基本訓練(16〜25歳)(役割:初心者) C第4段階「初期キャリア」…正社員資格の獲得(17〜30歳) D第5段階「中期キャリア」…キャリア中期(25歳〜) E第6段階「中期キャリア危機」…キャリア中期の危機(35〜45歳) F第7段階「後期キャリア」…キャリア後期(40歳〜)(指導者と非指導者に分かれる) G第8段階「下降期」…衰えおよび離脱  (40歳〜。衰えの始まる年齢は人により異なる) H第9段階「退出期」…引退  各段階において、目安となる年齢が示されていますが、衰えの始まる年齢は人により異なる、とされていますし、重複もあります。さらによくみると、組織のなかでの役割も、あわせて示されています。シャインは、年齢と段階を結びつけるというよりも、むしろ組織内の役割と段階を結びつけています。 3 年齢とキャリア発達段階との関係についてどう考えるか  キャリア発達段階モデルに対しては、少子高齢化が進んだ現代では年齢的に違和感がある、年齢に縛られている感じがする、などといった批判もあります。  たしかに、当時のアメリカといまの日本の平均寿命を比べると十数年違います。また、おおよその年齢を念頭に段階が設定されています。しかし、年齢と段階との関係はそこまで強いものではなく、個人差についての指摘もなされています。ほかにも、白人男性が中心なのではないかなどといった指摘もありますが、それよりも、ここでは、変化への適応力や役割との関係が重要であることが指摘されていたことを心に留めておきたいと思います。  キャリア発達については、改めてもう一度考えてみたいと思いますが、さまざまな変化があるなかで、人はどうやって発達し続けるのか、ということも気になります。次回は、そこから考えたいと思います。 【引用・参考文献】 ●Nevill,D.D. & Super,D.E.(1986)The Salience Inventory - Theory, Application and Research-Manual (Research Editi on), CA, Consulting Psychologists Press. ●Schein E. H.(1978)Career Dynamics : Matching individual and organizational needs, Addison-Wesley(エドガー・H . シャイン著、二村敏子、三善勝代訳(1991)『キャリア・ダイナミクス:キャリアとは、生涯を通しての人間の生き方・表現である。』白桃書房) ●Super,D.E.(1957) The psychology of careers; An introducti on to vocational development. Harper & Bros.(日本職業指導学会(翻訳)(1960)『職業生活の心理学―職業経歴と職業的発達』誠信書房) ●Super,D.E.(1985)New dimensions in adult vocational care er counseling. Occasional Paper No.106 Ohio State University, Columbus, National Center for Research in Vocational Education. ※1 役割については、初期のものには九つの役割が記されている ※2 Super,D.E.(1957) The psychology of careers; An introduction to vocational development. Harper & Bros. ※3 男性についてのみ言及している可能性がある 図表1 五つの職業的発達段階 出生 4 成長 14 仮の決定 探索 25 試行と安定 確立 45 保持 維持 65 減速 解放 死 4 11 14 能力 興味 空想 18 25 移行 移行 試行 30 40 移行 45 進歩または不安 堅実 50 60 移行 65 革新的または沈滞または時節にあっている 70 移行 75 退職または専門化 解放 出典: Super,D.E.(1985)New dimensions in adult vocational career counseling. Occasional Paper No.106 Ohio State University, Columbus, National Center for Research in Vocational Education.P.19. 図表2 ライフ・キャリア・レインボー 状況的決定因:間接的―直接的 社会構造 歴史的変化 社会経済的組織・状況 雇用・訓練 学校 地域社会 家庭 ライフステージ 5歳 成長 10歳 探索 15歳-20歳 確立 30歳 維持 45歳 解放 70歳 その他の役割 家庭人 労働者 市民 余暇人 退職 学生 子ども 個人的決定因 気づき 態度 興味 欲求・価値 アチーブメント 一般的・特殊的適性 生物学的遺伝 出典: Nevill,D.D. & Super,D.E.(1986)The Salience Inventory − Theory, Application and Research − Manual (Research Edition), CA, Consulting Psychologists Press.P.4 を一部改訂 【P48-51】 知っておきたい 労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第45回 休職期間中の定年到来、兼業と懲戒処分 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 休職期間中に定年を迎える労働者の扱いについて教えてほしい  現在、定年間近の従業員が、通勤災害が原因でけがをして休職しています。復職に必要な治癒に至ることなく、休職期間中に定年を迎える見込みです。  休職中の従業員が定年を迎えたことを理由に、その従業員を退職したものと扱ってよいのでしょうか。 A  原則として定年退職により労働契約を終了することができると考えられますが、継続雇用の要件を定めている場合には、当該要件に該当しないことも確認してから判断することが適切でしょう。 1 休職制度  休職制度については、本誌2020(令和2)年1月号でも触れたことがありますが、少しおさらいしておきたいと思います。  休職制度は、労働基準法などの法律に基づいた制度ではありませんが、多数の企業で採用されています。その理由としては、私傷病などにより労務提供が一時的に困難になってしまった従業員に対して、復職の機会を確保しておくためであり、使用者の立場からは解雇を猶予して回復を待つという意味合いがあります。  休職制度が解雇の猶予措置であることから、休職期間が満了したときには、退職または解雇措置を取ることが定められていることが一般的です。  以上のような、休職制度の位置づけについては、最高裁平成24年4月27日判決(日本ヒューレット・パッカード事件)において、「診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、被上告人の出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い」と判断されて以来、定着したように思われます。  ただし、業務上の災害(いわゆる労働災害)に起因する休職の場合は、労働基準法第19条により解雇制限が定められています。その内容は休業する期間とそれを終えてから30日間は解雇を禁止するというものです。  解雇と定年では状況は異なりますが、業務上の災害についてはこのような解雇制限もある状況のなか、定年退職は文字通り解釈してもよいものでしょうか。 2 定年と解雇の相違点  定年と解雇の相違点は、使用者の意思表示を必要とするのか否かという点があげられます。解雇の場合は、使用者が、当該従業員を解雇するという意思を本人へ通知する必要がありますが、定年の場合は、極論すれば、使用者が何も伝えなくとも、定年を迎えた時点で、退職扱いとなり、法的には労働契約が終了することになります。  その意味では、解雇の場合は、解雇の意思表示が、使用者による解雇権濫用であるとして無効となれば、退職自体が効力を生じないことになりますが、定年退職の場合は、無効とすべき意思表示がないため、退職自体の効力が生じることを妨げることは困難です。少し説明がむずかしく感じるかもしれませんが、定年の場合は法的には効力を無効としづらいということと労働基準法第19条に基づく解雇制限が定年退職には及ばないということがわかってもらえれば十分かと思います。  定年による退職については、よほどのことがないかぎりは、このような解雇制限があるとしても有効であり、労働契約は定年を迎えたときに終了することになります。 3 定年退職が妨げられる場面  しかしながら、定年退職といえども、万能ではありません。高年齢者雇用安定法は、65歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけており、60歳で定年を迎えたとしても、本人が希望し解雇に相当する程度の理由がないかぎりは、継続雇用制度などにより雇用を継続すべきことを義務づけています。このことからすると、たとえ、休職期間中であるといえども、雇用を継続すべきであるといえそうです。  過去の裁判例で、類似の状況における判断がなされたものがあります(京都地裁平成28年2月12日判決)。当該裁判例は、通勤災害が原因で骨折などの負傷を負った従業員との間で、定年退職を理由とした労働契約の終了が争われた事件です。裁判所は、「原告と被告との労働契約が終了していないとしても、被告の就業規則上、原告は、定年によって退職することとなったと認められるから、定年時以降の労働契約上の地位確認及び賃金支払請求が認められるためには、定年時以降も原告と被告との間で労働契約が維持ないし再締結された蓋然性が認められることが必要である」として、定年による労働契約の終了が原則として認められると判断しました。そのうえで、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用の義務は、どのような措置を取るかについては、事業主に委ねられているから、定年時以降も労働契約が維持ないし再締結された蓋然性があると認めることはできない、としています。  この事件の使用者は、高年齢者雇用安定法およびその指針が定める解雇事由または退職事由に該当するものを定める労使協定として、「定年後の継続雇用制度の選定基準に関する協定書」を締結していたところ、具体的な判断にあたっては、同協定に「過去3年以内に健康上の理由による休職及び1ケ月以上に及ぶ長欠なく、直近3年以内の定期健康診断の結果において業務遂行に支障がないと診断されている者」と定められていたことを理由に、継続雇用の蓋然性があると認められないと結論づけて、定年退職が有効と判断されました。  定年退職による労働契約の終了を妨げること自体はむずかしいといえますが、その判断にあたっては、自社の継続雇用制度において定年後の継続雇用を行わない場合に該当することを確認してから判断することが適切でしょう。 4 休職合意や休職命令を行う際の留意事項  実は、上記の裁判例では、使用者において、休職期間の起算日を誤っていたことから、休職命令および休職合意自体の有効性が否定されています。休職期間として算定できるのが、欠勤から1カ月後からであるにもかかわらず、欠勤開始日から起算して休職期間を設定したことが原因で、就業規則よりも労働者に不利益な合意や取り扱いをすることができないとして、休職合意や休職命令の効力が否定されています。休職制度を活用する機会は少ないかもしれませんが、自社の就業規則の解釈があいまいになっていないかという点も確認しておくことが望ましいでしょう。 Q2 無許可での兼業が発覚した従業員への処分について知りたい  自社で雇用している従業員が、競業他社の取締役に就任し、報酬を得ているという情報に接しました。また、当該競業他社の登記に取締役としての登記もなされていることが確認できました。本人からは、その許可を求められたことはなく、申請を受けたこともありません。  自社の営業に関する情報などが当該競業他社へ融通されるおそれもあり、懲戒解雇を検討していますが、問題ないでしょうか。 A  競業避止義務違反が認められる場合には、懲戒処分の対象とすることは可能と考えられますが、守秘義務違反のおそれにとどまる場合には、懲戒解雇処分を行うことは不適切と考えられます。 1 副業・兼業ガイドライン  厚生労働省が定める「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が2020(令和2)年9月に改定されたころから、兼業や副業に対する考え方が変化してきました。  基本的な方向性としては、労働者の経済的自由・職業選択の自由を尊重する方向性であり、副業・兼業を妨げるべきではないという考え方を基本とするように転換しつつあるといえるでしょう。  一方で、副業・兼業が完全に自由なのかというと、そういうわけではありません。例えば、厚生労働省が公表しているモデル就業規則が定める副業・兼業に関する規程は図表のような定め方がなされています。  第1項で、原則として「勤務時間外」であれば自由としつつも、第2項が会社への届出を義務づけている点では完全な自由とは異なります。また、第3項では、禁止または制限できる場合を列挙しており、これらのなかには、「競業により、企業の利益を害する場合」には、副業・兼業を認めなくてもよいとされています。 2 競業避止義務違反と懲戒処分  就業規則において、モデル就業規則のような規程が定められており、懲戒処分の根拠として位置づけられている場合には、懲戒処分を行うことが可能です。ただし、問題となるのはその処分の程度でしょう。  兼業・副業に関する規程が、労働者の権利を制約しない範囲に限定するよう求められている状況からすると、懲戒処分の実施やその程度も謙抑的に運用することが望ましいといえます。  業務の支障への程度が小さい場合や発覚して間もなく解消されたような場合には、懲戒処分としては、再発防止のために必要な程度として、戒告や減給処分程度が相当と考えられる事例が多いと思われます。 3 懲戒解雇が許容された裁判例  過去の裁判例のなかで、副業・兼業における競業避止義務違反を根拠として、懲戒解雇が有効と判断された事例があります。  事案の概要としては、システム開発などを行う会社(Y社)に雇用されていた従業員Xが、Y社に秘して、同様にシステム開発などを行っている他社(a社)で約3年程度にわたって業務委託の形式または取締役に就任して毎月25〜30万円の報酬を受領しており、取締役退任後も業務委託を受けて毎月30万円を受領し続けていたというものです。この期間中に、Xは、Y社内で展開されていたメールの内容を、a社の営業担当者に共有して助言するなど、競業他社のために自社の秘密を利用することも重ねていました。  裁判例では、XがY社に在職中、「その勤務時間を含め、同業者であるa社の取締役又は業務委託の受託者として、a社の業務に従事し」ていたと認定されたうえ、その活動を秘していたと判断されました。  さらに、「a社の業務のために被告の情報を提供しているから、被告に対する背信的行為であって、被告の企業秩序を乱すものであるし、原告が被告の職務に専念せず、他社から報酬を受領することにより、原告の労務提供に格段の支障が生じている」として、Y社の営業にかかわる情報を守秘義務に反して利用したことの悪質さも考慮されました。  これらの違反事由が重なったことが考慮され、「兼業の内容が就業時間に競業他社の業務を行うだけでなく、被告の業務で知り得た情報を利用するという被告への背信的行為であるという内容に照らせば、本件解雇は社会通念上も相当なもの」として、懲戒解雇が有効となると判断されました。 4 懲戒解雇実施時の留意点  副業・兼業禁止の違反に基づく、懲戒解雇を行う場合であっても、通常の解雇処分と同様に、解雇権を濫用してはならず、解雇には、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が求められることになります。  無許可の兼業については、悪質さが目立つうえ、直感的には重たい判断を検討しがちですが、原則として自由であるという点をふまえて、冷静に判断することが求められます。  重視すべき事項の一つは、勤務時間中のものであるか、勤務時間での労務提供に支障をきたすものではないかという点です。紹介した裁判例においても、勤務時間中に兼業先での職務遂行を行っていたことが重視されています。労働者の基本的な義務である労務提供義務や職務専念義務に違反していることは、悪質さを基礎づけることになります。  次に、競業といえるほどの業務内容の重なりあいがあるか否かです。この点は、自社の秘密を漏えいされた場合の被害の大きさ(逆にいえば利用価値の高さ)にも影響することになります。  これらに加えて、報酬受領の有無や届出制に違反しているか否かも考慮されることになります。  逆にいえば、裁判例で挙げられた特徴にあるような、勤務時間中の副業・兼業ではないケースや、競業というほどの会社ではなく秘密保持義務違反もともなわないようなケースなどでは、懲戒解雇が有効となる可能性は高くないといえるでしょう。 図表 モデル就業規則が定める副業・兼業規程 (副業・兼業) 第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。 3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。 @労務提供上の支障がある場合 A企業秘密が漏洩する場合 B会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 C競業により、企業の利益を害する場合 出典:厚生労働省「モデル就業規則(令和3年4月)」 【P52-53】 退職者への作法 社会保険労務士 川越雄一  生涯現役時代を迎え60歳、65歳を超えて働くことがあたり前となり、多くの高齢者が知識や技術、経験を活かして会社に貢献しています。とはいえ、そんな高齢者もやがて退職するときを迎えるもの。それまでの貢献に感謝を示し、気持ちよく退職をお祝いしたいところですが、ちょっとした行き違いにより“退職トラブル”が起こってしまうこともあります。本連載では、退職時の手続きやトラブル防止のポイントについて、社会保険労務士の川越(かわごえ)雄一(ゆういち)氏が指南します。 第3回 三つの工夫で退職後も良好な関係を保つ 1 はじめに  従業員との雇用関係は退職日をもって終了します。しかし、長年勤務してくれた従業員との関係がプツンと切れてしまうのはもったいないものです。  なぜなら、その人たちはだれよりも会社のことを思ってくれていることが多く、退職後も良好な関係を保つことにより、何らかの形で会社をサポートしてもらえる可能性があるからです。退職者との良好な関係は、いずれ定年を迎える従業員にとってもよい影響をもたらします。そのための取組みとして考えられることを三つご紹介します。 2 顧客などへ差し出す退職挨拶状  従業員が定年などで退職するときには、顧客などへ退職挨拶状をメールや手紙で差し出します。会社にとって大切な従業員であることを社内外に示すとともに、長期勤務者が退職する場合は、顧客などに不安を与える可能性があるので、このようなことが必要なのです。 ●会社が差し出す退職挨拶状とは何か  退職挨拶状というのは、営業職など外部との接触が多かった従業員が、定年などにより退職する際、顧客などへ差し出す手紙です。A4サイズ1枚で退職日の1カ月くらい前に差し出します。社長など、役員変更の際にも挨拶状を出しますが、あのようなイメージです。手紙に盛り込む内容は、退職日、退職理由、そして後任者名や今後の体制などです。 ●顧客との関係に影響を及ぼす長期勤務者の退職  幹部や長期勤務者の退職というのは、「何かあったのか」、「あの人が辞めて、会社は大丈夫か」など、顧客や取引先との関係に影響をもたらしかねません。もちろん、退職の挨拶回りをすれば不安は払拭されるかもしれませんが、コロナ禍ではそれもままなりません。 ●三方よし≠フ退職挨拶状  退職者にしてみれば自分の退職にあたって、会社がわざわざ退職挨拶状まで出して花道をつくってくれれば悪い気はしません。また、在籍している従業員にとっても「明日は我が身」です。先輩が退職する場合に、会社がこのような対応をすれば安心感を持ちます。会社としても、退職挨拶状を差し出した顧客などから「キチンとした会社だ」という印象を持たれ、評価が高まります。つまり、三方よし≠ネのです。 3 雇用終了後もコミュニケーションを大切に  退職日をもって雇用関係は終了しますが、人間関係まで終了するわけではありません。ですから、研修などの講師としてお招きするのもよいのではないでしょうか。 ●知識や経験を現役社員に還元してもらう  定年退職者は、豊富な経験を持っています。そこで、管理職研修や新入社員研修の際に、講師としてお招きします。長年の勤務経験のなかでつちかってきた知識や経験は、後輩である現役社員や新入社員にとって大きな学びになるはずです。また、退職日の翌年くらいまでは懇親会などへお招きすることも一案です。今般のコロナ禍では懇親会自体の開催がむずかしいですが、そんなときは誕生日にお花を贈ってはどうでしょうか。 ●プツンと切れるのは寂しいもの  定年退職した人から「会社を辞めたら人と会う機会が減って寂しい」という話をよく聞きます。個人差はあるものの、仮に65歳くらいであればまだまだ体は元気です。それなのに、社会とのかかわりがプツンと切れて、急に隠居のような生活はつらいものです。退職者のなかには会社一筋だったという人も多く、地域社会とのかかわりも少なければなおさらです。 ●コミュニケーションのなかに意外な情報がある  退職後も会社とのコミュニケーションを大切にする人は、会社に対して友好的な場合が多いので、意外な情報提供があるかもしれません。ある建設会社では、新築やリフォーム工事につながりそうな情報を後輩社員に教えてくれるといいます。もちろん、成約につながれば紹介料もお支払いしています。まさにWin-Winの関係です。 4 退職後も立ち寄りやすい環境をつくる  退職者には「お近くに来られることがありましたら、お立ち寄りくださいね」と言葉をかけると思います。それを社交辞令ではなく、本当に立ち寄りやすい環境をつくります。 ●親身に寄り添う体制をつくる  在職中に会社が行っていた税金や社会保険の手続きですが、退職後は自分で行わなくてはなりません。そのような場合に親身に相談に応じてくれる体制があるとありがたいものです。また、特段、相談することはなくても、会社に顔を出した際に「こんにちは、ようこそ」と、優しく出迎えてもらえるというのは嬉しいものです。 ●ちょっとした「わからない」に対応する  税金や社会保険のことはちょっとしたことが わからないものです。総務関係部門に在籍していた人であればともかく、一般の人にとっては「わからないことがわからない」状態かもしれません。ですから、役所から何らかの封書が届くと驚き、だれかに見てほしいのです。こうしたときに親身に対応することで、退職した後もつながりを大切にします。 ●情けは人のためならず  人は大切にされるから人を大切にします。退職したらそれっきり、という会社も多いのですが、「情けは人のためならず」です。退職後も親身に対応しておけば、在職中、何らかの不満を持っていたとしても、そう変なことはできません。年をとればとるほど、このような優しさに弱いものです。 図表 良好な関係を保つ三つの工夫 退職を堂々と伝える 顧客などへの退職挨拶状 定年退職者を頼る 雇用終了後もコミュニケーションを大切に 親身に対応する 退職者が立ち寄りやすい環境 ※筆者作成 【P54-55】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第21回 「戦略人事」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は戦略人事について取り上げます。1990年代にアメリカの経済学者であるデイビッド・ウルリッチ教授が『MBAの人材戦略』という書籍のなかで提唱した考えで、戦略的人的資源管理ともいいます。提唱されてから30年ほどの歴史がありますが、人事部門の方が聞いたことがあるくらいの一般に浸透しているとはいいがたい用語だと思います。しかし近年、再度着目されているため、本稿で取り上げることとしました。 戦略人事とは何か  戦略人事の解説に入る前に、いまさらながら経営戦略とは何かについてみていきたいと思います。こちらは毎日のように目にするくらい浸透していて、インターネットなどで探してみると、さまざまな定義が出てきますが、筆者は「企業が継続・成長という目的を達成するための基本的な方針」と整理しています。この経営戦略に基づいて、3年から5年後の企業の成長の姿や実施すべき施策をまとめた中期経営計画やそれを1年ごとに分解した年度計画が策定され、従業員が日々取り組むべき具体的な実行策や行動に落とし込まれていきます。逆にみると、日々の事業活動を通して達成すべきものが経営戦略ともいえます。  さて、前振りが長くなりましたが、戦略人事に戻りたいと思います。戦略人事とは、経営戦略を実現するために人事面から深くかかわり、推進していくことをさしています。例えば、計画をいくら立てても、実行に移す人材が不足していると計画は実現できません。そこで実現に向けて必要なスキル・能力や人員数を定め、活躍をうながす組織や労働条件、働き方を整備する必要が出てきます。戦略人事ではこれらのことを従来の方策やルールの延長線ではなく、人事部門が経営者や現場からのニーズをふまえながら、最適な施策を意思をもって企画し推進していくことが求められています。  戦略人事を行うためには、次の四つの機能が必要といわれています。 ・HRビジネスパートナー(HRBP)…経営陣や事業活動を推進する部門の責任者のパートナーとして人事面からサポートする機能 ・センター・オブ・エクセレンス(CoE)…人事に関する高度な専門的知識・知見をもとに制度設計や人事施策の企画を行う機能 ・組織開発・人材開発(OD&TD)…組織や従業員のパフォーマンスを向上させる取組みを牽引する機能 ・オペレーションズ(OPs)…給与支払いや労務管理、入退社手続きなどの実務を正確かつ効率的に処理する機能 戦略人事の再注目の背景と取組み  本稿の冒頭で、戦略人事が再度着目されていると述べました。これには近年の社会環境の変化が関係しています。日本を取り巻く大きな環境変化として、企業のグローバル化の進展、事業環境のスピードの加速化、少子高齢化があげられます。多くの企業にとって、これらの環境変化に対応することが必要不可欠であり、人事面での対応も迫られています。ここからは各々の環境変化に対する戦略人事の取組み例についてみていきたいと思います。  まずはグローバル化の進展ですが、海外企業を買収したり海外拠点を設立する企業はかなりの数に上っています。従来は各国の拠点の事情に即した人事制度で運用し、日本企業から幹部を派遣して運営することが一般的でした。しかし、マーケットが広くなればなるほど競争優位性を保つためには、国籍を問わず優秀な人材を幹部登用していくことが必要となります。その実現を図るために有効な施策として重視されているのが、全拠点統一の人事制度を導入し、共通の基準で人材を抜擢・育成する仕組みの導入です。海外拠点の従業員が日本本社の幹部や社長に抜擢される事例も出てきており、今後もこの流れは強まっていくことが想定されます。  次に事業環境のスピードの加速化ですが、日本企業における従来の人事部門の役割の多くは先にあげたオペレーションズ≠ナした。労務・給与・採用の実行チームはあるものの企画をする機能はなく、経営で決まったことを粛々と実行する人事部門も多くみられました。しかし、これではどうしてもスピード感に欠けることと事業の実態に合わないことがあります。そこで、オペレーション機能を集約や外注することで施策を企画できる時間と人材を増やし、現場のニーズを満たすために有効な組織編成や人材配置などを立案、経営陣に提言することを人事部門のおもな役割として再定義する動きがあります。CHRO(最高人事責任者)という役員相当の人事全般を掌握するポストを設け、社長の補佐として機能させている会社もあります。  最後に少子高齢化ですが、企業にとって深刻な課題となっています。労働力人口が減少する前であれば、事業の拡大や欠員に対して採用すればこと足りました。しかし、現在は募集しても人が集まらないという状況が通常になっています。そこで、近年は少ない人手のなかで生産性を高めながら業務を遂行する方向に多くの企業が舵を切り始めています。多くの人手を要した定型作業は自動化し、従業員はより専門的で難易度の高い業務の遂行にシフトしていきます。人事部門には少ない人材で事業運営が可能となるために必要なスキルの洗い出しと保有する人材の採用や教育、人材配置などを企画し推進することが強く求められ始めています。 高齢者雇用と戦略人事  高齢者雇用も戦略人事のテーマの一つといえます。従来は法令遵守を主な目的として継続雇用し定型業務をメインに従事させていた福祉的雇用から、シニア人材の熟練技能や知見を最大限に活かして重要な役割や高度な業務に従事することで計画達成の貴重な戦力とする戦略的雇用に考えが切り替わりつつあります。継続雇用から定年延長への切替えや65歳超の人材の雇用についても、政府が推進しているから=A他社がやっているから≠セけではなかなか検討が進まない部分がありますが、自社の経営戦略達成に向けたシニア人材の活躍が必要不可欠かどうかの認識が固まれば、方向性はおのずと定まってくるのではないでしょうか。  次回は「セルフキャリアドック」について取り上げます。 【P56-57】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  高年齢者活躍企業コンテストは、高年齢者が長い職業人生のなかで培ってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度(特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)の導入 A創業支援等措置(70歳以上までの業務委託・社会貢献)の導入 B賃金制度、人事評価制度の見直し C多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 D各制度の運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組み @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組や高齢従業員の役割等の明確化(役割・仕事・責任の明確化) A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み(技術指導者の選任、マイスター制度、技術・技能のマニュアル化、高年齢者と若年者のペア就労) B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(職場のIT化へのフォロー、力仕事・危険業務からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施(キャリアアップセミナーの開催) E高齢従業員による多様な従業員への支援の仕組み(外国人実習生や障害従業員等への支援・指導役、高齢従業員によるメンター制度) F新職場の創設・職務の開発 等 高年齢者が働き続けられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善(高年齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮、創業支援等措置対象者への作業機器の貸出) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化(健康管理体制の整備、健康管理上の工夫・配慮) B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。また、定年制度、継続雇用制度及び創業支援等措置について定めている就業規則等の該当箇所の写しを添付してください。なお、必要に応じて追加書類の提出依頼を行うことがあります。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京及び大阪においては高齢・障害者業務課又は高齢・障害者窓口サービス課)にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html)からも入手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日 令和4年3月31日(木)当日消印有効 3.応募先 各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成31年4月1日〜令和3年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)及び「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)令和3年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和3年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)令和3年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.高年齢者が65 歳以上になっても働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※平成24年改正の高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 応募のあった事例について、学識経験者等から構成される審査委員会を設置し、審査します。 なお、応募を行った企業等または取組等の内容について、労働関係法令上または社会通念上、事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される問題(厚生労働大臣が定める「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」等に照らして事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される内容等)が確認された場合は、この点を考慮した審査を行うものとします。 Y 審査結果発表など 令和4年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号 TEL:043-297-9527 E-Mail:tkjyoke@jeed.go.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課  連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中!ぜひご覧ください! 当機構の「70歳雇用事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」でご検索ください。 jeed 70歳雇用 事例サイト 検索 【P58】 BOOKS 職務給の理解から導入、運用時の留意点までわかりやすく解説 職務給の法的論点 人事コンサルタントによる導入実務をふまえた弁護士による法律実務Q&A 久保原和也・西村 聡 共編著/日本法令/2970円  2020(令和2)年4月に施行されたパートタイム・有期雇用労働法が、2021年4月より中小企業にも適用された。同じ企業内で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくし、どのような雇用形態でも納得して働けることを目ざして制定された法律で、企業には処遇改善や適正な雇用管理が求められている。また、人材不足などを背景に定年の延長や廃止を実施、検討する企業も増えるなか、職務に応じて賃金を決める職務給が注目されている。  本書は、人事コンサルタントの著者がこれまで職務基準の人事制度によって組織的公正と労働生産性の向上を実現してきた手法と考え方をベースに、日本における職務給について法的適合性の観点から、Q&A形式で弁護士がわかりやすく解説している。企業などが職務給を設計、導入、運用する際に、押さえておくべきポイントやリスク対策も紹介している。  同一労働同一賃金の実現を図るうえでももちろん、短時間勤務制度やテレワーク制度などの多様な働き方や、定年後再雇者の賃金制度の設計など、高齢者雇用に取り組むうえでも参考になる好著である。 テクノロジーの進化と長寿化が進む時代の新しい生き方や働き方、企業の課題などを示す LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2) 100年時代の行動戦略 アンドリュー・スコット 著・リンダ・グラットン 著/池村千秋訳/東洋経済新報社/1980円  2016(平成28)年に「100年時代の人生戦略」をテーマに掲げてベストセラーになった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』の続編である。本書は、「100年時代の行動戦略」と副題にあるように、前編の実践編として、テクノロジーが急速に進化するなか、長寿化が進む時代を生きる私たちが、それらの恩恵に浴しながら主体的に未来を切り開いていく、個人と社会の行動を考える一冊となっている。  著者の2人は共にロンドン・ビジネス・スクール教授で、未来の働き方を描いた著書もあるリンダ・グラットン氏と、研究や著作が複数の賞を受賞し、個人や社会のさらなる繁栄に向けた情報などを世界に発信しているアンドリュー・スコット氏。本書では、世界各地の年齢や職業の異なる架空の人物を登場させて、それぞれに起きている変化を見つめ、将来を展望し、「新しい長寿時代」をどう生き、どのように働くか、学ぶかを多面的に考察していく。個人のほか、企業などの課題にも言及し、引退の道筋を選択制にするといった「新しい退職の形」や、年齢差別をなくすこと、高齢の働き手の生産性の維持などについての見解も提示。高齢者雇用に取り組む担当者にも興味深い内容である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 2021年度「現代の名工」厚生労働省  厚生労働省は、その道の第一人者と目され、卓越した技能を有する現役の技能者150人を「現代の名工」として決定し、2021(令和3)年11月8日、東京都内で表彰式を行った。  「現代の名工」の表彰制度は、極めてすぐれた技能を有し、技能を通じて労働者の福祉の増進と産業の発展に寄与し、ほかの技能者の模範と認められる現役の技能者に対して、厚生労働大臣が表彰を行うもの。1967(昭和42)年度に第1回の表彰が行われて以来、今年度が55回目となり、今回受賞の150人を含めて、これまで6796人が表彰を受けている。  今年度の主な受賞者は、70年以上にわたり日本古来の手法により刃物の製造を続け、伝統を守り続ける鍛冶工の稲坂コ太郎さん(88歳)、天ぷらの調理技術を進化させ、技を若い料理人に伝授して業界のレベルの底上げと発展に尽力している早乙女(そうとめ)哲哉さん(75歳)、婦人・子供服注文仕立職として長年洋裁技能の研鑽に励み、多彩な手工芸技法を駆使したドレスの製作技能により、全日本洋装技能コンクールで数々の上位入賞を果たしている佐藤千鶴子さん(74歳)、長年にわたり精密金型の開発および精密小物部品の試作品製作に従事し、精密プレス加工のすべての工程を熟知している楠本好行(よしゆき)さん(71歳)、金箔を貼る箔押師(はくおしし)であり、「揉み和紙貼り合わせ引き箔」を考案した製糸工の吹上(ふきあげ)重雄(しげお)さん(71歳)らである。 厚生労働省 「就労条件総合調査」結果の概況  厚生労働省は、2021(令和3)年「就労条件総合調査」の結果をまとめた。  この調査は、常用労働者30人以上の民営企業から約6400社を対象に、2021年1月1日時点(年間については2020年ないし2019年会計年度)の労働時間制度、賃金制度などについて調査を行ったもの。  調査結果のなかから、労働時間制度についてみると、「何らかの週休2日制」を採用している企業割合は83.5%(前年82.5%)、このうち「完全週休2日制」採用企業は48.4%(同44.9%)となっている。また、年次有給休暇の取得状況をみると、1年間の付与日数(繰越分は除く)は労働者1人平均17.9日(前年18.0日)、そのうち労働者が取得した日数は10.1日(同10.1日)で、取得率は56.6%となっており、前年(56.3%)を0.3ポイント上回り、比較可能な1984(昭和59)年以降の過去最高を2年連続で更新した。  次に、変形労働時間制の導入状況をみると、採用している企業割合は59.6%(前年59.6%)となっている。種類別(複数回答)では、「1年単位の変形制」31.4%(前年33.9%)、「1か月単位の変形制」25.0%(同23.9%)、「フレックスタイム制」6.5%(同6.1%)となっている。  勤務間インターバル制度の導入状況をみると、「導入している」が4.6%(前年4.2%)、「導入を予定又は検討している」が13.8%(同15.9%)、「導入予定はなく、検討もしていない」が80.2%(同78.3%)となっている。 調査・研究 東京商工リサーチ 「早期退職やセカンドキャリアに関するアンケート」調査結果  東京商工リサーチは、「早期退職やセカンドキャリアに関するアンケート」の調査結果を発表した。  調査は、2021(令和3)年10月1日〜11日、資本金1億円以上の大企業および1億円未満の中小企業(個人企業等を含む)を対象にインターネットで行われた。有効回答数は9039社。  早期退職・セカンドキャリアに関連する制度について、約9割(構成比89.6%)の8099社が「導入しておらず、今後も検討予定はない」と回答した。一方で、すでに「導入している」は349社(同3.8%)、現在「導入を検討している」は591社(同6.5%)となっている。  企業規模別にみると、大企業は11.2%が「コロナ前から導入している」と回答した。一方、中小企業は1.9%にとどまった。ただ、「導入を検討している」との回答は、大企業が7.2%、中小企業が6.4%と拮抗している。  早期退職・セカンドキャリア制度を導入している企業への質問で、早期退職・セカンドキャリア制度の対象年齢として最も多かったのは「55歳以上」で127社(構成比43.3%)、次いで、「50歳以上」で68社(同23.2%)、「45歳以上」で36社(同12.2%)の順となっている。50歳以上が7割弱(66.5%)を占めているが、外資系企業や製薬を中心にしたメーカー、一部小売などの大企業で、29歳以下も対象にした早期退職・セカンドキャリアの導入が散見されている。 【P60】 次号予告 3月号 特集 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム ―岐阜会場・大阪会場開催レポート― リーダーズトーク 佐治正規さん(ダイキン工業株式会社 常務執行役員 人事本部長) 〈(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415  FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jpでご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長 藤村博之……法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授 真下陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今号の特集は、2021(令和3)年に全国5都市で開催された、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」のなかから、岩手会場、宮崎会場の模様をお届けしました。高齢者雇用に取り組む先進企業の事例発表のほか、企業の高齢者雇用を支援する65歳超雇用推進プランナーを交えてのパネルディスカッションなど、ためになる情報が満載です。各会場の講演・企業事例発表・パネルディスカッションの動画を、当機構のYou Tubeチャンネル(JEED CHANNEL)で公開しておりますので、そちらもぜひご覧ください。 ●特集2では「退職金・企業年金制度」をテーマに、生涯現役時代における退職金制度・企業年金制度のあり方について解説をするとともに、高齢者雇用制度の見直しにあわせて、退職金・企業年金制度の見直しを行った企業事例をご紹介しました。高年齢者雇用安定法の改正や健康寿命の延伸により、就業期間の長期化が進む一方で、定年廃止や定年延長、継続雇用制度、短日・短時間勤務、副業・兼業の解禁など、60歳以降の働き方が多様化しており、退職金・企業年金制度も、それにあわせて見直す必要が出てきます。本企画が、制度の見直しの一つのきっかけになれば幸いです。 ●高齢者が活き活きと働くことのできる創意工夫に取り組む企業を表彰する、「令和4年度高年齢者活躍企業コンテスト」の応募締切りは3月31日です。みなさまからのご応募をお待ちしております。 公式ツイッターを始めました! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー2月号 No.507 ●発行日−令和4年2月1日(第44巻 第2号 通巻507号) ●発行−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−企画部長 奥村英輝 編集人−企画部次長 五十嵐意和保 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-866-1 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.316 「型吹き」の技術を活かし数々のヒット製品を開発 ガラス吹工 田嶌(たじま)文男(ふみお)さん(73歳) 「成形に使う型は千差万別。強めに吹くか弱めに吹くか、また速く吹くかゆっくり吹くか、型に合わせて素早く見極めるのが職人の腕」 職人の手でつくられる「江戸硝子」の窯元  グラスに飲み物を注ぐと、その色に染まった富士山がグラスの底に浮かび上がる「富士山グラス」。観光庁後援の「おみやげグランプリ2015」で観光庁長官賞に輝いた人気商品だ。このほか、同じく富士山をかたどった「江戸硝子富士山祝盃(しゅくはい)」、黒い江戸切子を初めて実現した「黒の江戸切子グラス」など、数々の受賞・ヒット製品を生み出してきたのが、田島硝子株式会社会長の田嶌文男さんだ。  同社は国の伝統的工芸品に指定されている「江戸硝子」の窯元の一つ。江戸硝子は、江戸時代からの伝統的な製法を受け継ぎ、職人の手づくりで製造されたガラス製品で、江戸切子の素材にもなっている。  「機械による大量生産と違い、依頼者や製作者の思いを具現化できることが強み。同じものは二つとないところによさがあります」  そう話す田嶌さんは、ガラス吹工として2019(令和元)年に厚生労働省の「卓越した技能者(現代の名工)」の表彰を受け、2021年には黄綬褒章(おうじゅほうしょう)を受章。現在は経営を息子の大輔さんに委ね、現場で後進を育てながら陣頭指揮を執っている。 さまざまな器の型に合わせて空気の吹き込み方を調整する  江戸硝子にはさまざまな製法があるが、田島硝子では、1350℃の窯で溶かしたガラス生地を職人が竿(さお)で巻き取り、型に入れて空気を吹き込みながら成形する「型吹き」を得意とする。  「型に直接ガラス生地があたると、ガラスの表面は滑らかになりません。そこで、金型の内側に型油※でコルクの粉を塗り、炙(あぶ)ることで、細かい穴のある薄い炭素の層をつくります。そこに水をかけ、高温のガラス生地を入れることで水蒸気の膜ができ、ガラスの表面を滑らかにすることができます。水蒸気の膜ができている間に空気を吹き込み成形しなければいけないので、まさに“瞬間芸”といえます」  その一瞬の間に空気を吹き込む力を、さまざまな型に合わせて調整することが職人には求められる。初めの一、二個を吹いて、どの程度の力で吹けばいいか、すぐにわかるのが一流の職人だという。  田嶌さんは田島硝子の2代目にあたる。父の松太郎さんは戦後、あるガラス会社に事務職として勤めていたが、経営が傾き、そこで働いていた職人たちの面倒をみるために同社を創業した。  「父は現場のことがわからなかったため、一人息子の私に、小さいころからガラスかデザインの勉強をするようにいっていました」  その助言にしたがい工業大学でガラスについて学び、卒業後、別のガラス会社を経て、田島硝子で工場長として働き始めた。  「しかし、いくら職人に注意しても『自分では何もできないくせに』となかなかいうことを聞いてもらえませんでした。そこで、仕事を覚えようと現場に入り、物づくりの面白さに目覚めました」  そして、受注に頼るだけでなく、自ら製品を企画開発するようになる。冒頭で紹介したヒット製品は、大学で修得した専門知識と現場でつちかった技能の融合の賜物といえる。自社製品が増えたことで経営は安定した。そこで、高温の環境下で働く職人のためにいち早く冷房設備を導入するなど、働きやすい職場づくりにも努めてきた。 尽きることのない新製品づくりへの意欲  田嶌さんが生み出した製品のなかでも画期的だったのが、2008(平成20)年に開発した黒い「被(き)せ硝子」だ。切子などの素材となる被せ硝子は、無色のガラスを覆うように色ガラスを重ねて溶着したもの。それまで黒いガラスは、江戸切子で用いられるような0.2oまで薄くすると、透けて黒くなくなってしまうというのが業界の常識だった。しかし、田嶌さんは諦あきらめずにガラス生地づくりの試行錯誤を繰り返し、長年の常識を打ち破った。  「これからも新しい物をつくりたい」と意欲は尽きない。 田島硝子株式会社 TEL:03(3652)2727 https://www.tajimaglass.com (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※ 富士山グラス@ABC、江戸硝子富士山祝盃DE、黒の江戸切子グラスF ※ 型油……松ヤニやニカワなどを原料とした油で粘着力がある 写真のキャプション 一緒に働く職人たちと。後ろの大きな窯のなかには、ガラス原料を溶かすための「るつぼ」が八つあり、チームに分かれてさまざまな製品をつくっている 創業以来、手がけた製品は1万点以上にのぼる 令和3年春の黄綬褒章を受章 令和元年度現代の名工に選定 足下の型のなかに竿で巻き取ったガラス生地を入れ、空気を吹き込み成形する 鉄製の竿を常に回しながら空気を吹き込んで形を整える パフェグラスの脚の先に台をつくる。熟練が求められる技能の一つ 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  昔のことを思い出すとき「なつかしさ」を感じます。この「なつかしさ」には、ほのかな肯定感がともない、ドーパミンの分泌が増し、前向きな気分になります。このとき、脳の奥、大脳辺縁系が活性化し、さまざまな連想が働きやすくなるのです。 第56回 平成の出来事 次の文章は平成の出来事について書かれています。 空欄を埋めてください。 目標 2分 1 平成元(1989)年4月、日本で初めて(A   )税が導入されました。当時の税率は(B   )%でした。その後、平成9(1997)年に5%、平成26(2014)年に(C   )%に引き上げられました。 2 平成4(1992)年9月、日本人初の宇宙飛行士(A        )さんがスペースシャトル(B        )号に搭乗しました。 3 平成18(2006)年2月、イタリア(A     )で冬季オリンピックが開催され、日本人の(B       )さんがフィギュアスケート女子シングルで優勝しました。 昔のことを思い出して、脳を活性化させる  今回の脳トレ問題では、平成の出来事について思い出してもらいました。このように、子どものころの思い出や若いころの流行のファッション、歌謡曲など、昔のことを思い出してみましょう。  家族や同年代の友人と昔の話をするときは、会話が盛り上がるものです。実はこの瞬間、脳もかなり活発に動いています。  これまでの研究から、過去の出来事を回想すると、脳の「海馬(かいば)」や「扁桃体(へんとうたい)」の動きが活性化することがわかっています。  昔の体験を思い出して語ってもらうことは「回想療法」と呼ばれ、実際に施設や病院などで、認知症予防の取組みとしても取り入れられています。認知症予防というほど大袈裟でなく、もの忘れ予防のために、昔に見た青春映画をもう一度観賞したり、歌謡曲を口ずさんだり、意識して「思い出」に浸る時間をつくりましょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 1 → A 消費    B 3      C 8 2 → A 毛利衛   B エンデバー 3 → A トリノ   B 荒川静香 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2022年2月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 ご応募お待ちしています 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかで培ってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。多数のご応募をお待ちしています。 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするために、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者が働きつづけられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1 編 優秀賞  2 編 特別賞  3 編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 詳しい募集内容、応募方法などにつきましては、本誌56〜57頁をご覧ください。 応募締切日 令和4年3月31日(木) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65 頁をご覧ください。 2022 2 令和4年2月1日発行(毎月1回1日発行) 第44巻第2号通巻507号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会