【表紙2】 NEW さまざまな事業所の好事例を掲載しています! 『70歳雇用事例サイト』 https://www.elder.jeed.go.jp さまざまな条件で検索できる! 122社の事例を豊富なキーワードで簡単検索 70歳以上まで働ける企業 定年が61歳以上 or 条件を変更する イベントの案内、研究資料などの関連情報をまとめて見られます! jeed elder 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.elder.jeed.go.jpであることを確認のうえアクセスしてください 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.82 希望者全員の70歳雇用を実現 ベテランと若手の協業を積極的に推進 ダイキン工業株式会社 常務執行役員 人事本部長 ダイバーシティ推進グループ長 佐治正規さん さじ・まさき  1988(昭和63)年4月ダイキン工業株式会社へ入社。人事部課長、人事部長、人事本部長などを経て2014(平成26)年に執行役員に就任。2021年6月より現職。  1990年代に希望者全員60歳超の雇用を実現するなど、高齢者雇用先進企業として知られるダイキン工業株式会社。2021(令和3)年4月からは希望者全員70歳までの再雇用制度を導入し、ベテラン人材のさらなる活用と活躍に向けた取組みをスタートさせました。今回は、同社常務執行役員人事本部長の佐治正規さんに、ベテラン人材の活用と活躍戦略、若手との協業例などについて、お話をうかがいました。 会社の礎を築いてきたロイヤリティの高いベテラン層の活躍に期待 ―貴社が掲げられている「人を基軸におく経営」の考え方について教えてください。 佐治 「人を基軸におく経営」は創業以来の企業文化です。代々の経営トップが社員に「働く人を大事にする」といい続けてきました。創業者の息子である山田稔も、社長時代に「人を大切にするといわない会社は1社もないが、人を大事にするという点において、わが社はその本気度でどこにも負けない」といっています。現会長の井上礼之(のりゆき)は「企業の経営はいろいろな要素で成り立っているが、やはりそこで働く人の力が企業の力の源泉である。経営は人の営みであり、理論や数字だけでは語れない。人間がやっている以上、働く人の力の総和で企業の競争力が決まる。人が成長し、本当に力を発揮できるようにすることが経営者の責務である」と話しています。  その大前提として「人は変わる」という考え方があります。「人、モノ、カネが経営の3要素といわれるが、モノやカネはさほど変わらないものの、人はとんでもなく化ける。人は必ず成長したいと思っているし、人の力は想像もつかないくらい大きくなる。人の持つ無限の可能性を信じて思い切ってやらせることが大事」というものです。 ―高齢者雇用においても、これまで法律に先駆けて率先して取り組んでこられました。2021(令和3)年4月からは希望者全員70歳までの再雇用制度を導入されています。 佐治 歴史的には60歳定年が義務化された1998(平成10)年より前の1979(昭和54)年に、定年を60歳に延長しました。さらに、1991年に希望者全員63歳までの再雇用制度を導入し、2001年にはそれを65歳まで延長しています。今回の再雇用の上限年齢70歳への引上げは、70歳までの就業機会の確保を努力義務とする高年齢者雇用安定法の改正も背景にありますが、一方で、当社が掲げている5年間の次期戦略経営計画「FUS―ION25」の実現に向けてチャレンジしていくための人材確保という側面もあります。人手が足りなければ外部から採ることが一般的ですが、現在のベテラン層は会社の発展の礎を築いた人たちですし、専門のスキルや知識、経験、人脈などさまざまな強みを持っています。外から採用した人が会社に対してロイヤリティを持ってくれるかどうかはわかりませんが、ベテラン層はすでに十分なロイヤリティを持っていますし、もっと力を発揮してもらえるのではないかと考えたのです。  また、健康寿命が延びており、10年前に比べて10〜15歳若返っているといわれています。10年前に50歳の人がいまは60歳ですから、まだまだ活躍してもらえるはずです。働く場を提供することで会社はもちろん、働く人やその家族にとってもよいことだと考えました。 ―希望者全員の再雇用は珍しいのではないでしょうか。 佐治 制度設計にあたっては、事業の最前線で働く社員にもヒアリングしました。「能力のあるベテランが一定の年齢になるといなくなるのは惜しい」という声がある一方、「ベテランのスキルが陳腐化していけば、新しいアイデアや仕事のやり方に影響があるのではないか」という声もありました。また、65歳以降も働く仕組みとして、本人と会社の合意による会社選択の「シニアスキルスペシャリスト契約社員」制度がすでにありましたので、「65歳以降は健康状態や意欲などの個人差が広がるため、会社選択のままでよいのではないか」という意見も出ていました。そうした議論のなかで、65歳を超えてもこれまで以上に意欲を持って取り組み、成果を上げてくれるのであれば希望者全員でよいのではないかという結論に至ったのです。 60歳以降の処遇制度の見直しを実施 成果に応じた報酬でモチベーションを向上 ―再雇用制度の見直しと同時に60歳以降の処遇制度の見直しも実施されていますね。 佐治 再雇用制度の導入時は、60歳定年以降も引き続き働く人は、管理職・非管理職問わず処遇もリセットし、「だれもが同じ条件でリスタートになる」という考え方でした。その後、全員一律の報酬に起因するモチベーションのギャップも出てきたので、成果に応じて若干の加算をする仕組みを整備しましたが、加算を受けるのは一部の人のみであったため、上司が思い切った評価をつけるのがむずかしいという課題もありました。  そこで、今回の再雇用年齢の引上げにあわせて処遇も見直しました。具体的には、年収水準は従来と同様ですが、賃金や賞与への配分を厚くしたことと、成果を出す人にさらに報いるため、賞与において思い切って評価差を反映する仕組みにしました。原則一律だった賞与について4段階の評価ランクを設け、評価結果がよければ従来の標準額の最大1.6倍の金額差がつく形にしました。標準評価を100%とすると、A評価で160%、B評価130%、C評価115%です。また、上司が評価しやすいように評価調整基準を示し、標準評価を超えるABCいずれかの評価がつく人が、従来に比べて大きく増えるように設計しました。その結果、最初の2021年夏の賞与では従来に比べて上がった人が増え、「がんばった成果が報われた」という声も聞こえてきています。65歳以降は報酬の水準が多少下がるものの、評価分布など評価の仕組みや考え方は変わりません。 ―退職金制度も2021年6月から従来の確定給付年金(DB)60%と企業型確定拠出年金(DC)40%で構成していたところを、DC100%へ移行したそうですね。 佐治 新入社員はDC100%になりますが、60歳未満の社員の過去分のDBは積立凍結の形で残し、将来分はDC100%に切り替えました。これまで60歳以降の再雇用者は定年時に退職金を受給し、それ以降の報酬を再雇用後の退職金と賃金・賞与に分けて支払う形でした。今回DC100%に移行したことにともない、DCについては現在の法律上の加入上限年齢である65才まで加入できることとしました。DCを個人でうまく運用し、自助努力で老後生活の備えを豊かにできるよう、投資教育にも力を入れています。 若手との協業、AIツールの活用でベテランの経験から新しい価値を創造 ―事業の発展には高齢社員の豊富な経験と知識を活かしていく必要もあり、また高齢社員と若手社員の協業も重要ですね。 佐治 若手社員との協業はこれまでもありましたが、さらに促進させたいと思っています。例えば、エアコンの故障予知はできても、発生した故障箇所の特定は現場に出向かないとわかりません。それを蓄積されたデータを基にベテランと、AIやIoTを学んだ若手がタッグを組んでそれぞれの強みを活かし、ピンポイントで故障箇所を特定する試みを行っている例もあります。  技能伝承の面でいえば、これまでは、高い技能を持つ人がノウハウを後輩に教え、後輩はそれをもとに技術の進歩を多少取り入れながら得られたノウハウを次世代に伝えていくのが一般的でしたが、これも限界があります。例えば、製造の技能の一つの「ろう付け」という作業では、火で炙ったときの色、材料の溶ける時間など、勘と経験値で仕上げる神様のようなベテランがいます。そこで、色やプロセスをAIに覚えさせることで、若手が同じことを再現できるようになることを目ざしています。  しかし一方で、原理原則を受け継ぐ人がいないと、AIに頼るだけではスキルが陳腐化していきます。つまりベテランが自分の経験に基づいて教える段階から、AIという新しいツールを活用することで、ベテランが教えるべき内容が何であるかが明らかになりつつあるということです。ベテランと若手がタッグを組むことで、驚くような製品やサービスができ上がるという事例も出てきています。いまはその方向で、むしろ意識的にベテラン層のチャンスをつくり、うまく合致する事例をつくっているところです。 ―高齢社員が意欲を持って働くための今後の課題について教えてください。 佐治 再雇用者約500人全員を対象に、約5カ月間かけて研修を実施しました。自分自身についてふり返ってもらい、自分にはどのような強みがあるのか、今後、組織のなかでどういう役割や貢献を果たしていきたいのかについて、グループ単位でディスカッションしながら考えるというものです。研修を通じて気づいた自分の思いを上司に伝え、そこから今後の仕事内容や働き方について、上司・部下で考えるきっかけにもなっています。  会社や人事がいかにすばらしい制度をつくっても、ベテラン層自身の納得性、そして上司を含めた周りの理解と納得を得たうえで現場での仕事の拡大などの工夫がなければ、何も変わりません。ベテラン層を活用することで本当に誇りある職場をつくることにつながるのか、いまの仕事を後の世代まで発展させながら継承できるのか。現場が納得し、働いている人たちの思いがつながる仕組みにしていくことがもっとも大事だと思います。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/安田美紀) 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2022 March No.508 特集 6 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム −岐阜会場・大阪会場開催レポート− 7 開催レポート 岐阜・大阪会場 令和3年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜「高年齢者雇用安定法改正」70歳までの就業機会実現のために〜 8 基調講演 岐阜会場 「三世代同居の大家族のような会社運営ができる人材管理を考える」 〜岐阜県下における労務管理の課題から〜 65歳超雇用推進プランナー(アームス経営工房・吉村社会保険労務士事務所 所長 特定社会保険労務士・中小企業診断士) 吉村庸輔 9 基調講演 大阪会場 「70歳までの就業確保実現のための人材活用戦略」 〜高齢者戦力化へ向けた賃金制度と評価制度の構築〜 65歳超雇用推進プランナー(杉原社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士) 杉原彰 10 企業事例発表@ 岐阜会場 昨今の高齢者は若い、高齢者は貴重な戦力 セントラル建設株式会社 代表取締役社長 阿部伸一郎 12 企業事例発表A 岐阜会場 シニア人財の活躍と安全確保の両立を目指して 西濃運輸株式会社 人事部部長補佐 渡邉久人 14 パネルディスカッション 岐阜会場高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて 18 企業事例発表B 大阪会場 高年齢層の活躍推進に向けて 株式会社りそなホールディングス 執行役 人財サービス部担当 新屋和代 20 企業事例発表C 大阪会場 「生涯現役社会の実現に向けた取り組み」について 間口ロジスティクス株式会社 取締役社長執行役員 望月彰 22 パネルディスカッション 大阪会場 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて 1 リーダーズトーク No.82 ダイキン工業株式会社 常務執行役員 人事本部長/ダイバーシティ推進グループ長 佐治正規さん 希望者全員の70歳雇用を実現 ベテランと若手の協業を積極的に推進 26 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介 31 日本史にみる長寿食 vol.341 青魚を代表するサバの長寿効果 永山久夫 32 江戸から東京へ 第112回 自分自治をつらぬく 北条政子 作家 童門冬二 34 高齢者の職場探訪 北から、南から 第117回 愛知県 株式会社三洲ワイヤーハーネス 38 シニアのキャリアを理解する 【第3回】 転機(トランジション)とシニア 浅野浩美 42 知っておきたい労働法Q&A《第46回》 定年後の労働条件提示、ハラスメントと調査対応 家永勲 46 退職者への作法 【最終回】退職日に花道を用意しよう 川越雄一 48 いまさら聞けない人事用語辞典 第22回 「セルフ・キャリアドック」 吉岡利之 50 特別寄稿 「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」結果 (独)労働政策研究・研修機構(JILPT)調査部主任調査員 渡邊木綿子 55 BOOKS 56 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテストのご案内 58 ニュース ファイル 59 読者アンケート結果発表 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.317 長年の経験と熟練の技で機械の故障を未然に防ぐ 機械保全工 千葉喜一さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第57回] 記憶力テスト 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」は休載します 【P6】 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム −岐阜会場・大阪会場開催レポート−  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発を目的とした「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。2021(令和3)年度は、全国5会場で実施し、学識経験者による講演や、先進的な取組みを行っている企業の事例発表・パネルディスカッションを行いました。  今号では、2021年11月18日(木)に開催された岐阜会場、11月26日(金)に開催された大阪会場の模様をお届けします。ぜひご一読ください。 ※ 10月6日(水)の東京会場の模様は本誌1月号、10月14日(木)の宮崎会場、10月28日(木)の岩手会場の模様は本誌2月号に掲載しています 【P7】 岐阜会場・大阪会場開催レポート 令和3年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜「高年齢者雇用安定法改正」70歳までの就業機会実現のために〜  当機構では厚生労働省のほか関係団体の協力のもと、2021年10月〜11月にかけて全国5都市(東京、宮崎、岩手、岐阜、大阪)の会場で、「令和3年度生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を開催しました。  今号では、岐阜・大阪の2会場の開催レポートをお届けします。各会場では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策を講じたうえで、参加人数を限定して開催し、WEBでのライブ配信と、その後YouTubeにおいてオンデマンド配信を行いました。 70歳まで働ける仕組みなどを発表  高年齢者雇用安定法の改正(2021年4月1日施行)により、70歳までの就業機会を確保することが努力義務として新設され、働く意欲のある高齢者がより長い期間活躍できる環境の整備が求められています。  本シンポジウムでは、講演や事例発表、パネルディスカッションなどにより、70歳就業を視野に入れた高齢者雇用の方向性や高齢者の活躍推進に向けた取組みなどについて考え、生涯現役社会の実現を目ざすイベントとなりました。 【岐阜会場】 11月18日(木)、長良川(ながらがわ)国際会議場メインホールにおいて開催。開会のあいさつに続き、岐阜労働局職業安定部職業対策課高齢者対策担当官の葛西(かさい)俊夫(としお)氏が「改正高年齢者雇用安定法の概要について」と題し、同改正法を解説しました。続いて、基調講演(概要は8頁に掲載)と先進事例発表が2社から行われ、休憩をはさんで開催されたパネルディスカッションでは、多様なニーズに対応する高齢者雇用の実現などについて意見などが交わされ、拍手のなかでシンポジウムは終了しました(事例発表は10〜13頁、パネルディスカッションは14〜17頁をご覧ください)。 【大阪会場】 11月26日(金)、ヴィアーレ大阪・ヴィアーレホールにおいて開催。開会のあいさつに続き、大阪労働局職業安定部職業対策課高齢者対策担当官の上野(うえの)誠治(せいじ)氏が「改正高齢法施行後の高齢者雇用の現況説明」と題し、同法の対応状況などを解説しました。続いて、基調講演(概要は9頁に掲載)と先進事例発表が2社から行われ、休憩をはさんで開催されたパネルディスカッションでは、70 歳まで働く仕組みづくりなどについて考え方や取組みなどが語られました(事例発表は18〜21頁、パネルディスカッションは22〜25頁をご覧ください)。最後に、当機構大阪支部から「65歳超雇用推進助成金のご紹介」が行われ、拍手とともに閉会しました。 【P8】 岐阜会場 基調講演 65歳超雇用推進プランナー (アームス経営工房・吉村社会保険労務士事務所 所長 特定社会保険労務士・中小企業診断士) 吉村庸輔(ようすけ) 「三世代同居の大家族のような会社運営ができる人材管理を考える」 〜岐阜県下における労務管理の課題から〜  本日は、三世代同居の大家族のような会社運営ができる人材管理を念頭に置きつつ、今後の高齢者雇用について考えてみたいと思います。  まず、使用者と労働者が交わす「労働契約」ですが、@使用者が労働者に求める姿を示し(指揮命令)、A労働者がそれに応えて労務提供し、Bその結果としての対価を得ることを合意することで、成立します。労働契約の遂行においては、年齢にかかわらず、どんな場面でもこの@ABの関係がポイントになります。  しかし、ベテランになるほど使用者側からのアクションが薄らいでいって、指揮命令が弱くなる傾向があります。若い人から中堅、ベテランのそれぞれに至るまで、会社としてどのように働いてほしいのか、その指揮命令をしっかり行うことが労働契約上とても重要なことです。  高齢者雇用を進める際に取り組みたいのは、高齢社員の活躍はどの仕事、どの場面で必要になるのかを明確にすることです。今後の採用見込みと社員の年齢構成の変化を予測し、それに応じていまから準備できることを、計画的に進めることではないでしょうか。そして、高齢社員の活用で何が課題になるのかをまず明確にしておくことです。  次に、会社の方針を明確にし、高齢社員へ十分な説明を行います。方針決定にあたっては、現場の管理者や高齢社員を巻き込むということも大切だと考えます。また、役割に応じた処遇を決める際は、役割の定義をどのように表現するかが大切になります。労働契約の話に戻りますが、どのように働いてほしいのかということを十分に説明するということです。  継続雇用でいくのか、定年延長するのかといった制度の見直しは、以上のことが整理された段階で考えることだと思います。まずは、いまいる人材をどう活かしていくか、どうやって自社の5年先、10年先を描いていくのか、そこから進めていくのがよいのではないでしょうか。  安全衛生の取組みについては、高齢社員と若手社員の情報共有がますます大事になってくるという観点から、ある会社の事例をご紹介します。ヒヤリハットの経験とそこで気づいたことを付箋(ふせん)に書いて、だれもが目にする資料に貼りつけて体験を共有しているのです。  こうした取組みにより、ベテランの考えが若手に伝わったり、そこから会話が生まれたりということも出てきます。このような情報共有の工夫を、今後さらに考えていく必要があるでしょう。  会社が社員を使用するという指揮命令とは、社員の強みと弱みを理解し、会社がやってほしいことを社員に理解してもらう双方向のやり取りが基本になると思います。高齢者雇用もこの基本に力を入れて、使用者・労働者の双方が「生涯現役で力を発揮している」と感じられる職場づくりをしていくことが必要なのではないかと思います。 【P9】 大阪会場 基調講演 65歳超雇用推進プランナー (杉原社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士) 杉原彰 「70歳までの就業確保実現のための人材活用戦略」 〜高齢者戦力化へ向けた賃金制度と評価制度の構築〜  2021(令和3)年4月1日施行の改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が努力義務として示されました。  同時に企業に突きつけられているのは、2025年度からは男性は原則65歳まで老齢年金が支給されず、あわせて65歳まではすべての労働者が、希望すれば継続雇用されるということ、それからパートタイム・有期雇用労働法が2020年4月から適用されており、同一労働同一賃金、いわゆる均衡待遇・均等待遇が未整備の場合は、労使間の紛争トラブルの発生が予想されるということです。  現在はまだ多くの企業で、60歳定年後1年更新などで65歳まで継続雇用する再雇用制度が主流となっていますが、定年後再雇用者にとって、年金受給開始年齢(原則65歳)まで、何らかの雇用措置義務が会社にあるため、いままで通りの仕事をしていてもあたりまえに給料を下げてもよい、という考えはNGとなります。パートタイム・有期雇用労働法の均衡待遇・均等待遇規定は、「不合理と認められる相違を設けてはならない」、「差別的取扱いをしてはならない」と定めています。  こうしたなかで、これからの高齢者の働き方に関する視点として、@その会社の高年齢労働者の活用方針、A高年齢労働者の定年後再雇用への意識の改革、B年齢層や雇用形態の多様性と公平性、の三つをあげたいと思います。  @は「60歳定年制+再雇用」を、定年を契機とした労働契約の再締結ととらえるならば、業務のニーズに応じた人材を高年齢労働者から確保・配置するという「需要サイド(会社)優先型」が望ましいということ、Aは高年齢労働者にも変わってもらい、変化に対応したスキルや考えを身につける必要があるということ、Bは正規・非正規といった雇用形態、若手や中堅、シニアといった年齢層を超えて、働くことの価値観は近年多岐にわたっていることへの対応です。  よって定年後再雇用者の賃金は、会社全体の賃金課題の一つを検討することにすぎません。まず会社の活用方針、たずさわる仕事の内容、そして本人の働き方の選択に応じて決定していく、こういう枠組みを大きく構築することが肝要かと考えます。  最終的にクリアすべきは、活用方針のもと、仕事内容や働き方によっては定年後再雇用の待遇が変わることについて不合理な待遇差ではない理由を説明できるように準備することや、高年齢労働者に働く意識と行動を変えてもらえるよう企業からの働きかけを行うことが大切です。そして総額人件費の考え方においては、高年齢労働者を戦力化せざるを得ない状況が迫り来るなかで、業務サイドニーズに合わせた「コストから生産性を上げるための投資へ」といった認識を高くを持つことが重要になってくると思います。 【P10-11】 岐阜会場 企業事例発表1 昨今の高齢者は若い、高齢者は貴重な戦力 セントラル建設株式会社 代表取締役社長 阿部伸一郎 70歳超の人材も活躍中 ●2018年11月、60歳定年を65歳に引き上げ、希望者全員70歳までの継続雇用 ●業務運営上必要と認める場合は70歳超も雇用 ●農業に進出し、高齢社員が自じ 然ねん薯じょの栽培で活躍 ●60歳以上も採用し、勤務時間などは柔軟に対応  本日は、高齢社員に貴重な戦力として当社で働いてもらっている事例をお話いたします。  当社は、五つの会社で構成する「セントラルグループ」の中核として、舗装・土木工事、アスファルト合材の製造販売ならびに建設廃材のリサイクル処理、砂の採取、交通警備業、それから農業で自然薯の栽培を行っています。1868(明治元)年の創業で、私で5代目になります。  「建設業の会社がなぜ農業をしているのか」と思われるかもしれませんが、20年ほど前、建設の仕事が激減したときに、リストラをせずに社員に働き続けてもらうために、農業分野へ進出し、逆にそこから社員を増やしてきました。現在の社員数は、当時の2倍以上になっています。また、建設業は秋から3月までは繁忙期ですが、4〜6月は閑散期になります。そこで、この時期を補うための仕事を模索して、自然薯の栽培に行きあたりました。ちょうど4〜6月が種の植つけ期なのです。農業のプロの方が1人で1カ月かかっていた自然薯の畑づくりが、当社の建設重機を使って2人で作業をすると2日でできたのです。生産効率が15倍です。そのため、これは建設業がやるべき仕事だと思い、開始しました。当社の高齢社員のうち希望される方には、この自然薯の栽培、または交通警備の仕事をしてもらっています。 本人の体調などを考慮し職務を変更してより長く働ける環境整備  当社の建設業では、山や川、道路、病院、学校、住宅など地域を現場としています。グループ会社では介護事業も行っており、まさに地域そのものが私たちの働く現場であり、海外に生産拠点を移すことも、販路を海外や全国に伸ばすこともできません。また、自然災害が起これば、間髪を入れずに地域住民の安全、生命、財産を守ることが使命です。この使命を果たすために、地域の方々に信頼され、共生していくことが大切です。  企業理念は、「企業は人なり 人は姿勢なり 姿勢は心なり」。約束を守る、時間を守る、礼儀を正す、身なりをしっかりする、きちんとしたあいさつができる。こういうことをもっとも大切にして、この価値観を共有する方々と一緒に働いています。  当グループの社員数は152人。そのうち60歳以上が47人です。47人のうち、75歳以上が3人。昨年、76歳で入社した社員もいます。70歳から74歳は7人。65歳から69歳は12人。合わせて22人が65歳以上という会社です。  社風も経営も家族的で、夫婦で勤務している社員が3組おり、社内結婚です。親子も3組、兄弟も2組います。いずれも過去3年の数字です。このように身内を歓迎して採用し、いったん退職し復職した社員もいます。  定年年齢は、2018(平成30)年11月に60歳から65歳に引き上げました。先般、他社を定年退職された60歳の方が当社の面接に来て、「こんな歳でよろしいでしょうか」というのですが、「うちに来れば60歳なんて青年部ですよ」と返答しました。  定年を65歳に延ばすと同時に、希望者全員70歳までの継続雇用制度を整備しました。実際のところ、70歳以上でも希望者は雇用しており、現在の最高年齢者は80歳です。  また、同一労働同一賃金で、職責業務内容に応じた賃金を支給しています。安全衛生面では、産業医にメンタルケアなどもしっかり対応していただいています。  建設の仕事に負担を感じ、本人が希望される場合、交通警備の仕事をする、あるいは自然薯づくりに移ってもらうということを行っています。60歳過ぎの人も採用しており、これらの仕事に就いてもらっています(図表)。 農業や警備で活き活きと働く高齢社員の声を紹介  最後に、60歳を機に建設の現場の仕事から農業の仕事に移った社員と、交通警備の仕事で新規に採用した70代の社員の声を録音してまいりましたので、ぜひ聴いていただきたいと思います。 ●建設現場の仕事から移り、現在、自然薯栽培に励んでいる男性社員の声  「畑に畝(うね)をつくるときに、建設業でずっと扱ってきた重機で仕上げるんです。建設業での経験が活きています。農業の楽しみは、自分で植えたものが商品になり売り出されることです。やってよかったと思いますし、体が動くかぎり続けたいと思っています。現在はマイペースにやっていますが、この仕事が事業として伸びていくように、元気なうちに若い人へ技術やノウハウを伝えていきたいと考えています。60歳でこの仕事に移ったとき、家族は喜んでくれました。建設の現場に出てけがをするということがないですから。よいタイミングで農業にたずさわれたことを本当にうれしく思っています」 ●現在、警備員として働いている男性社員の声  「新型コロナウイルス感染症の影響で前の会社を退職しました。体も元気なので、73歳ですが働いてみようと思い、ハローワークを通して就職活動を始めました。コロナ禍で高齢者にかぎらず相当厳しい状況でしたが、セントラル建設で面接を受けることができ、勤務については柔軟性を持って対応していただけると聞いて、入社しました。現在は、週2〜3日勤務です。私にとって働きやすい環境をつくっていただけたことにたいへん感謝しています。健康状態が良好であれば、これからもこの仕事を続けていきたいと思っています」 図表 シニア層の活躍を進めてきた背景 シニア層の活躍を進めてきた背景 在職の建設現場社員 新規高齢者採用 中山道じねんじょ農園 交通警備事業部(交通誘導員) ※作成:セントラル建設株式会社 【P12-14】 岐阜会場 企業事例発表2 シニア人財の活躍と安全確保の両立を目指して 西濃運輸株式会社 人事部部長補佐 渡邉久人(ひさひと) 定年を65歳に引き上げ、65歳以降は複数の選択肢を整備 ●60歳定年を段階的に引き上げて、65歳定年に ●非ドライバー職への変更制度あり(定年到達前から対応可能) ●ドライバー確保に向けた賃金改定を実施 ●乗務社員にかかわる血圧、血糖、BMI基準値による健康・安全確保 ●65歳定年後、時間帯契約社員・アルバイトなど複数の道を用意  当社は、カンガルーをトレードマークにしたトラックで運送事業などを行っている会社です。創業は1946(昭和21)年。北は青森県から南は山口県まで拠点を展開しています。  カンガルーマークのトラックは、北海道や沖縄県でも走っていますが、例えば、北海道の「北海道西濃運輸」など、グループ会社のネットワークを全国に張りめぐらせています。岐阜県内にも「東海西濃運輸」、「濃飛(のうひ)西濃運輸」があります。運送においてはカンガルーブランドで統一していますが、法人としてはいくつかの形態をとっており、本日は、カンガルーブランドのなかから「西濃運輸」の取組み事例をお話しさせていただきます。 雇用の基本は「社員の幸福の実現」柔軟に働ける時間帯社員を設ける  当社の企業理念は、「輸送立国」です。創業者の田口(たぐち)利八(りはち)名誉会長が事業を興した際に心した想いを表した言葉で、「物流を通じて、お客さまに喜んでいただける最高のサービスを常に提供し、国家社会に貢献する」という意味があります。具体的には、「社会の大動脈という本業をもって、経済活動に貢献することのみならず、企業市民として常に交通安全に心がけ、また環境問題にも積極的に取り組む姿勢を基本とする」という内容です。  経営理念に「会社を発展させ社員を幸福にする」を掲げており、幸福の三本柱として、「経済問題」、「誇り」、「将来性」と定義づけています。将来の夢が持てるような希望に満ち、人生を託す価値のある企業こそ、働く社員の将来があるということです。  社員数は約1万3000人です。職種別にみますと、中核であるドライバー職が全体の約7割強を占めています。  当社のビジネスモデルの特徴として、例えば東京から大阪、名古屋から広島といった拠点と拠点を運ぶ路線職のドライバーと、その拠点から先は営業乗務職のドライバーが商品や荷物を運ぶという役割分業を行っています。路線職が約2200人、営業乗務職が約6300人、また、短時間勤務ができる時間帯社員が200人強となっています。  高齢者雇用のスタンスは、「社員の幸福の実現」を基本としてとらえています。実は、1951年に岐阜県大垣市に「スイトタクシー(現・スイトトラベル)」という会社を創業者が創立しています。1996(平成8)年には、「セイノーセキュリティサービス(現・セイノースタッフサービス)」という警備会社を設けました。これらは、社員が長く働けるような場をつくりたい、という思いからであったと思います。  現状の認識として、物流業界では、ドライバーの確保、特に路線職(大型ドライバー)の採用が非常にむずかしいという課題があります。また、安全の確保も常に重要な課題です。  そうしたなかで定年年齢を徐々に引き上げて、2021(令和3)年に65歳としました。満60歳以降については、定年退職日を選択することができます。さらに、何歳であっても、非ドライバー職へ変更することを可能とした制度もあります。  これから先、高齢社員を含めて、いかに長く活躍してもらうかということで、「時間帯契約社員」という職種を設けました。フルタイムではなく短時間勤務ができる職種で、館内配送などの業務をにないます。  また、賃金制度の改定にも取り組みました。特に、大型ドライバーの路線職は、60歳を超えても60歳到達前の100%の賃金を支給するかたちで運用しています。 ドライバーの健康と安全確保に向けて血圧、血糖値などの基準値を示す  さらに、安全確保への取組みとして、血圧と血糖、BMIの数値について、社内のドライバーに具体的な基準を設けました。「この基準を超えたら仕事をさせない」ということが目的ではなく、「みなさんがドライバーとして入社して、自分の幸せを享受しようとがんばっているけれども、この数値を超えてしまうと、“勧告”というかたちでドライバーの職を降りてもらわなくてはいけない」ということを示すためのものです。雇用は守りますが、ドライバー以外の仕事に移ってもらわなくてはいけない、ということになります。その場合は賃金水準が下がることもあります。やはり、健康で長く働いていただきたい、そういう思いを込めてあえて数値化しました。  このような取組みは、いま、いろいろな企業で行われていると思います。当社のやり方が正しいかどうかはわかりませんが、「まずは始めよう」ということで、血圧、血糖、そしてBMIの基準を示しました。これは「乗務社員服務規程」にも記載することにしました。  さて、65歳の定年到達後は、時間帯契約社員、アルバイト、または関連会社「セイノースタッフサービス」の派遣社員になる道があります。  65歳過ぎの社員の現在の働き方をみると、時間帯契約社員が50数人、アルバイトが約850人、セイノースタッフサービスの派遣社員が約70人となっています。このように、65歳以降も働き続けられる環境を整えています。  最後になりますが、セイノースタッフサービスに所属する、ある派遣社員にまつわる話をしたいと思います。  私の義理の母が病気を患っており、介護サービス事業者の車に乗って送迎を受けているのですが、たまたまそこのドライバーさんと話をしていたら、元西濃運輸のドライバーだったそうです。65歳まで働き、定年後に関連会社のセイノースタッフサービスに転籍し、介護サービスの送迎の仕事をしているそうです。元西濃のOBだったということを母が喜んで私に話をしてくれたとき、非常に誇らしい気分になりました。  以上、ご清聴ありがとうございました。 【P14-17】 岐阜会場 パネルディスカッション 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて コーディネーター 内田賢氏 東京学芸大学教育学部教授 パネリスト 阿部伸一郎氏 セントラル建設株式会社 代表取締役社長 渡邉久人氏 西濃運輸株式会社 人事部部長補佐 吉村庸輔氏 65歳超雇用推進プランナー 浅野りよ子氏 65歳超雇用推進プランナー 企業プロフィール セントラル建設株式会社 ◎創業 1961(昭和36)年4月 ◎業種 建設、建築、土木、警備、農業 ◎社員数 152人(2021年10月現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  段階的に定年年齢を引き上げ、2018年より65歳定年、希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入。運用で70歳超も雇用。建設から農業や警備の仕事に移り、活躍している高齢社員が多い 西濃運輸株式会社 ◎創業 1946(昭和21)年11月 ◎業種 陸運業 ◎社員数 約1万3000人(2021年10月現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  2021年に定年を60歳から65歳へ延長。65歳以降は、時間帯契約社員、アルバイト、関連会社で派遣社員として継続して働くことが可能。安全確保の取組みにも注力している 多様なニーズに対応する高齢者雇用の実現を考える 内田 はじめに、事例発表を行われた2社から、なぜ高齢者雇用の取組みをスタートさせたのか、改めてお聞かせいただければと思います。阿部さんからお願いします。 阿部 一つは、自然薯栽培を始めたことがきっかけです。当社のような地域密着型産業は、地域住民の安全と財産を守るためにも、人材を確保しておきたいのですが、建設業には閑散期があるため、その対策として農業に取り組みました。また、警備業はその地域のボトルネックを解消したいという目的で始めた事業で、そのための人材が必要でした。会社の方向性によって人材の需要が生まれ、高齢者、外国人、女性にこれまで以上に頼ったということになります。特に、高齢者のウエイトが高いというのが現状です。 内田 ありがとうございます。続いて渡邉さん、お願いします。 渡邉 当社では社員の約7割強がドライバーですが、2007(平成19)年に運転免許の法律が変わり、中型免許が新設されました。当社の業務では中型車以上が主流で、このことにより当社が得意とする領域においてのドライバーの確保が一段と厳しくなりました。そこで、従前から勤務している社員に長く働いてもらえる場を提供していく取組みとして、高齢者雇用を推進しました。 内田 ありがとうございます。高齢者雇用を進めるうえで、特に注意されたことはありますか。 阿部 えてして、高齢社員はがんばりすぎてしまうのです。「会社に入れてもらったんだからがんばらなきゃいかん」という気持ちはありがたいのですが、それでは長くは続きません。そこで、会社側から気軽な気持ちで仕事ができるように呼びかけるなど気を配っています。 内田 ありがとうございます。吉村プランナーはどうお考えでしょうか。 吉村 昨今はとにかく70歳まで働いてもらうということが高齢者雇用のテーマになっています。しかし、それぞれの会社の風土に合ったかたちで、5年後、10年後の社員の年齢層などをふまえて考えていくところから始めて、「それではここで制度を変えよう」、「こういう使い方をしよう」といったアプローチをしていかないと、なかなか高齢者雇用というのは企業の方々に受けとめていただけないものだと痛感しています。  取組みが進んでいなくても、会社と働く人の双方がハッピーであればそれでよいという考え方もあるわけです。プランナーとしては、その会社の風土に合ったかたちのものをご提案するということを心がけて取り組んでいます。 内田 ありがとうございます。渡邉さんはいかがでしょうか。 渡邉 吉村プランナーのいまのお話に通じるかもしれませんが、当社では60歳定年制から、63歳、64歳と段階的に定年年齢を引き上げ、2021年より65歳となりました。定年年齢が引き上がることで、63歳、64歳、65歳と、働く社員のゴールも引き上げられます。しかし、なかには、60歳を区切りとして少しインターバルを置きたいという人も一定数いるのは事実だと思います。  これはプランナーの方々にご指導いただくのがよろしいのでしょうが、当社の場合、退職金の設計は60歳で止まっていて、支給は60歳という運用になっています。いろいろ議論するところだと思いますが、それぞれの資金繰りがあるとか、原資を活用して「家族と旅行して、1年ぐらいしてから働きたい」といったニーズもあると思います。また、当社の場合、規模が大きいということもあって、「隣の支店勤務はどうですか」、「派遣会社でどうですか」というように、いくつか選択肢があることも含めて定年後を考えていくことができます。この選択肢を広げるというところを意識しました。 内田 ありがとうございます。それでは浅野プランナー、お願いいたします。 浅野 高齢者雇用で初めに行っていただきたく、また、もっとも大事だと思うことは、会社がまず、高齢社員にどういう役割で働いてもらうのかをしっかり決めて、それをメッセージとして発信し、会社全体に伝えていただくことです。  高齢社員のなかには、特に定年を過ぎてしまうと、「役職も外れたしどう働いたらいいんだろう」、「会社は何を求めているのだろう」と内心迷っている方が非常に多くいらっしゃいます。周りも、どう接してよいのかわからないこともあります。後進の指導をしてもらうのか、目の前の仕事をこなしてもらうのか、道筋をつけていただくと、高齢社員も考えを変えなくてはいけないとか、新たな条件を受け入れなくてはいけない、といったことを意識します。それができていれば、あとは進みやすいと思います。ぜひ、そこから始めていただきたいと思います。 内田 ありがとうございます。みなさまから、盛りだくさんのお話がありました。まず大前提として、「高齢者」とひと口にいってもさまざまな方がいます。働き続けたい人もいれば、「ほどほどにしたい」とか、「もういいや」という人もいる。会社側からするとご苦労ではありますが、それぞれに応じたメニューを用意していただくことが必要なのではないかと思います。  例えば、お話にあった退職金をあげると、定年を65歳に引き上げても、以降は何歳で辞めても定年退職扱いとして退職金が出るという会社もあれば、60歳で退職金を支払うという会社もあります。仕事についても、本人の意向を聞いて、それに応じたアドバイスなり選択肢なり、その可能性を提供すべきなのではないかと考えます。  そのときに申し上げたいのは、気づきの機会を与えることです。会社の求めることを話す一方で、本人からも話を聞き、すり合わせながら、「60歳以降はこんな役割をお願いしたい」など、事前に話をしておくことで、「60歳以降の自分はどういった場面で活躍しているのか」を前提として、そのための準備に向けた心構えができてくるのだと思います。 高齢者雇用が会社の評判を高める社内のコミュニケーションに変化も 内田 高齢者雇用を進めていくなかで生まれた副産物や、思わぬ効果などはありましたか。 阿部 当社は、地域の方々と良好な関係を結んでいかなければ成り立ちません。そういうなかで、高齢者を積極的に採用していることは、会社のよい評判につながるということが、最大のメリットになっていると思います。 渡邉 数値上の裏づけはいまのところないのですが、65歳以上の方が多い職場は、相対的に社員の定着率が高い傾向にある、ということが当社のなかでは見受けられます。今後深掘りしなくてはいけないのですが、一つの仮説として、多世代が共存する職場でコミュニケーションが多様化されていると、若い人からすると、「話してみると新たな発見がある」といった気づきが、職場で起こるのではないでしょうか。  世代間のコミュニケーションが広がるなかでコミュニケーションが深まって、それが多面的に、いろいろな切り口から自分の見識や知見が広がっていく。そういった職場というのは、相応に居心地がよいから定着率が高まる、そういう私なりの仮説を立てています。 内田 ありがとうございます。セントラル建設のように地域密着で経営されている会社は、立ち居振る舞いというのがその会社の評判につながってくるのだと思いますが、それは人を大事にする姿勢というところでも結実するものだと思います。  一方で、西濃運輸では若者と高齢者のコミュニケーションに取り組んでいます。ともすれば「高齢社員は話が長い」と思われがちです。ただ、話が長い理由は、経験が豊富なだけにそれらを話してあげたいからで、実は、若手にそういった高齢者の行動や思考パターンを知ってもらったうえで接してもらうと、いろいろなことを学べるのではないかと思います。 70歳までの就業を見据えた取組み推進のアドバイス 内田 最後に、これから高齢者雇用を進めようとしている企業へのアドバイスやエールをお願いします。 阿部 世代間の価値観の違いを心配されている企業の方も多いのではないかと思います。いまから5000年ほど前の文字が彫られたロゼッタ・ストーンという石がエジプトで発見されていますが、そこには「いまの若い者はなっていない」と書かれていたそうです。もう5000年も前から、若い人と年配者の価値観は違っていたのです。「所詮そんなもの」という気持ちで一緒に仕事をすれば、互いにスムーズにいくのではないでしょうか。その先は、走りながら考えるということが大切だと思います。 吉村 高齢者雇用は「人」のことですから、人事や総務がかかわるにあたって、「現場100回」という言葉を大切にしてほしいと思います。現場の人の動きを見て、現場の人の声も聞いて、これから会社が存続していくために、どのような人のありようがあるのかを考えていくことが大切になるのではないでしょうか。70歳就業はまだ努力義務ですから、じっくり考える時間はあると思います。 渡邉 事例発表で、安全のために乗務員の基準をつくったというお話をしました(12〜13頁参照)。実は、手探りで取り組んだもので、とりあえずやってみようというところから始まりました。結果として、やはり「努力して健康でいよう」という息吹が生まれたと感じています。走りながら考えるということも、これから先はより必要になってくるのではないか、そのように感じています。 浅野 70歳までの役割・働き方を考えて、全社員に発信していただくと、高齢社員だけでなく、定年前の社員にも、「わが社はこういうことを考えているんだ」と伝わり、自分の将来のビジョンを持って働きながら、「あの先輩みたいになるためにがんばってみよう」というように、将来に夢を持てるような70歳雇用をじっくり考えていただけたら非常によいのかなと思います。 内田 みなさま、ありがとうございます。高齢者雇用は、高齢者のみを対象にしているのではなく、若手や中堅の人たちも、自分の将来のことと思ってとらえています。そういう意味では、高齢者雇用はすべての社員に対する会社のメッセージになると思います。想像力を巡らせ、走りながら考えて取り組んでいただけるとよいのではないでしょうか。それが結果として、会社を強くすることになるのではないかと感じました。 写真のキャプション コーディネーターを務めた内田賢教授 セントラル建設株式会社 阿部伸一郎代表取締役社長 西濃運輸株式会社 渡邉久人人事部部長補佐 65歳超雇用推進プランナーの浅野りよ子氏 65歳超雇用推進プランナーの吉村庸輔氏 【P18-19】 大阪会場 企業事例発表3 高年齢層の活躍推進に向けて 株式会社りそなホールディングス 執行役 人財サービス部担当 新屋(しんや)和代(かずよ) 65歳までの選択定年制、70歳までの継続雇用制度を導入 ●2019年10月、継続雇用の上限年齢を70歳に引き上げ ●2021年4月、60歳〜65歳の選択定年制を導入 ●60歳以降も評価により給与・賞与が変動 ●節目の年齢を迎えた全社員にキャリア研修を実施 ●個人の事情に応じて柔軟な働き方をサポート  当社は、銀行業を主とする金融グループで、持株会社の傘下に、りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらいフィナンシャルグループなどがあります。特に、中堅・中小企業のお客さまや、個人のお客さまなどのリテールの分野に注力しています。当社では継続雇用の上限年齢を70歳へ引き上げました。2017(平成29)年ごろから検討を開始し、2019(令和元)年10月に実施しました。それまでは、60歳定年、継続雇用の上限年齢は65歳でしたが、検討を始めた当時、働き方改革の一環として70歳までの就業機会確保に関する議論が世の中で活発化してきた時期であったこと、また、厚生年金の支給開始年齢の引上げも進行していました。  一方、当社では毎年、社員の意識調査を行っており、「何歳まで働きたいですか」という質問に対して、「65歳を過ぎても働きたい」と答える人の割合が年々増加している状況もありました。こういったことから、70歳雇用への検討を始めた次第です。検討段階では、人件費の検証、全体の年齢別の人員構成の変化の推移、また、高年齢層のモチベーションなどさまざまな議論を重ねました。  当社では高年齢層の社員を「シニア社員」と呼んでいますが、これほどのスピードで高齢化が進むなか、雇用年齢の延長というのは必ずどこかの段階で考えるべき問題であり、いずれ考えることであるなら、シニア社員の経験・ノウハウを活かすことに早めにトライしてみたほうがよいのではないか、そのように考えて、2019年に制度の見直しを実施したところです。  現在、65歳を迎えた社員の約7割が継続して働くことを選択しています。長く働く環境が整ったことに対して、社員は非常に前向きに受けとめてくれていると考えています。 60歳以降も評価に応じて給与・賞与が変動  続いて、2021年4月に導入した新しい人事制度についてご説明いたします。シニア層だけをターゲットにした制度改定ではありませんが、結果的に、シニア層の活躍推進にもつながるものと考えています。  当社では、多様な人財が活躍し、多様な価値観が混ざり合う「ダイバーシティ&インクルージョン」に取り組んでおり、個人と会社がWin−Winの関係になることを新制度の基本コンセプトとして、「複線化」と「全世代活躍推進」を大きな柱として制度設計をしています。  「複線化」とは、銀行では、従来は支店長などのマネジメント職に就くことが目ざすキャリアの大半を占めていましたが、従来業務のほかに、IT、DX※といったコースも含めて、全部で19コースを用意し、全員がいずれかのコースでプロを目ざすという体系にしています。こうしたプロとしての強みを持つことは、長く活き活きと活躍を続けるということにも大きく寄与するのではないかと考えています。  もう一つの柱である「全世代活躍推進」は、年齢にとらわれずに評価・処遇を行い、適材適所の登用・配置で、人事運営をしっかり行っていくということです。この全世代活躍推進の一環として、65歳までの選択定年制を導入しました。  従来は60歳定年でしたが、この選択定年制は、60歳から65歳までの間で、定年の時期を社員に自ら決めてもらうというものです。選択肢として、@定年を延長して「社員」として60歳前と同じフルタイムで必要に応じて時間外勤務もある働き方、A自分で決めた年齢、例えば、60歳でいったん退職して、継続雇用で「シニアスマート社員」として働く。このいずれかを選択してもらう仕組みになっています。シニアスマート社員は、フルタイムのほか、指定日での勤務も選択が可能ですし、基本的に時間外勤務はなく、ワークライフバランスをより重視した働き方となっています。  収入のイメージですが、シニアスマート社員はいったん退職するので、企業年金や公的年金の要素も加味されますが、トータル収入はより重い役割をになう定年延長の社員のほうが多くなる設計としています。  評価制度については、「60歳以前の社員」、「定年延長を選択した社員」、「シニアスマート社員」、いずれも人事評価の基本的な枠組みは同一です。具体的には、バリュー評価(主に職務給に反映)と業績評価(主に賞与に反映)の2軸で評価をしています。60歳以降も評価に応じて、給与・賞与が変動しますし、昇級・降級もある仕組みにしています。 節目の年齢を迎えた全社員にキャリア研修を実施  各年代の社員のモチベーション向上に向けた取組みとして、キャリア研修を実施しています。従来から50代前半と50代後半の社員を対象に行っており、キャリアのふり返り、スキルの棚卸しのほか、60歳以降のライフプランやマネープランを考えたり、60歳以降も活躍している先輩社員と座談会を行うなどの内容で、生涯にわたって活き活きと活躍するためのイメージを持ってもらうための研修としています。  また、シニア人財が活躍のステージを広げていくためには、より若い年齢から長期スパンで自分のキャリアを考え、強みを磨いていくことが望ましいと考え、新しい人事制度を導入したタイミングでキャリア研修を拡充し、若いときから節目の年齢を迎えた全社員向けにキャリア研修を実施しています。  シニア人財のモチベーション向上に向けてもう1点、柔軟な働き方のサポートも重要な要素と考え、自身の健康やご家族の介護など、個人のさまざまな事情に応じて柔軟な働き方ができるように、働き方の選択肢の幅をなるべく広げられるようにしています。例えば、60歳時点で65歳まで定年を延長すると選択した場合でも、その後の事情の変化に応じて、62歳でシニアスマート社員に変わるといったことも可能です。  今後、シニア層の活躍をさらにうながしていきたいと思っていますが、そのためには、年齢で先入観を持たないよう、全社員の意識を変えていくことも必要だと思っています。 ※ DX……デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術による生活やビジネスの変革 【P20-21】 大阪会場 企業事例発表4 「生涯現役社会の実現に向けた取り組み」について 間口(まぐち)ロジスティクス株式会社 取締役社長執行役員 望月彰 シニア社員の戦力化に向けて65歳定年制を導入 ●2020年4月、60歳定年を65歳に引き上げ ●70歳までの再雇用制度を整備 ●シニア向け合同企業説明会に積極的に参加 ●安全POPなどを掲示して安全対策を強化 ●倉庫での作業をサポートする機器の開発に協力  当社もその一員である間口グループは、純粋持株会社間口ホールディングス株式会社の25社のグループ事業会社で構成される総合物流企業です。1901(明治34)年に創業し、2021(令和3)年で120周年の歴史を持つ会社です。経営理念は「社会に貢献 社員の幸せ」。社是は「天の時は地の利に如かず 地の利は人の和に如かず」。チャンスよりも環境よりも、人の和が重要、という意味です。  当社は2017(平成29)年に設立してまだ4年ですが、間口グループで、国内の内陸物流センター運営をになって50年の歴史を有する会社です。社員数は3322人で、内訳としては正社員が163人、スタッフ社員(パート・アルバイト)が2433人、固定パートナー社員(派遣社員)が726人。事業所は大阪の11拠点をはじめ、全19拠点となっています。 65歳以上社員の66%が10年以上勤務 新入社員の指導役としても活躍  当グループは、2020年4月に定年制度を改定し、定年年齢を60歳から65歳に引き上げました。目的は主に、多様な経験と能力を有する社員に戦力として活躍してもらうこと、安定して長く働いてもらうための環境整備、社員のモチベーションアップです。当グループには総合職社員、専従職社員、リージョナル社員、スタッフ社員という社員区分があり、この4区分で引き上げました。  定年後は、70歳までの再雇用制度も採用しました。65歳到達翌年度の処遇は、総合職社員のSグレード以上は嘱託社員(年俸制)、専従職社員・リージョナル社員・スタッフ社員はスタッフ社員(時間給)となります。基本的には、65歳でポストはいったん停止しますが、新しいシニアポストに任命もできるかたちも整えているほか、シニアの等級のなかでも、年度ごとに昇級も可能な報酬体系の整備も進めています。  当社の60歳以上の社員数は617人で、全体の26%を占めています。このうち65歳以上が340人で、女性が158人(46%)、男性が182人(54%)です。70歳以上も90人が働いています。  65歳以上の勤続年数は、224人(約66%)が10年以上となっています。意欲を持った健康な方が長く勤続されておりますので、そういった方々をさらに採用する取組みとして、2018年度からシニア向け合同企業説明会に参加しています。そうしたなかで、NHKから、シニア世代が長く働く工夫などについて取材を受け、テレビで放映されました。これらを機に、高齢者の活躍推進に対する管理者の意識が大きく変わったことも感じています。  また、当社では採用した社員に長く勤めてもらうために、入社時の研修に力を入れています。@基本ルールの説明、A品質改善道場での業務説明、B管理者によるマンツーマン指導、Cベテランスタッフによるマンツーマン指導、D「新人指導記録表」作成、E「作業観察記録表」作成まで6項目あります。  Cのベテランスタッフによるマンツーマンの指導では、シニア社員が多くたずさわっています。そこではスキルのあるシニア社員が人に教え、「その人の成長を見られることが嬉しい」と、活躍をみせています。非常によい状況で、採用した方の年齢にかかわりなく、安心して働ける環境が整いつつあると実感しています。 厚労省のガイドラインに沿って安心して働ける職場づくりに注力  物流センターでは、一方でフォークリフト、一方でパソコンなどを扱いながら多くのシニアが活躍しています。これらの業務を行うためのスキルを有したシニア社員がいるのはもちろんですが、新たな業務・役割にチャレンジしているシニア社員もいます。  このようにシニアが大勢いる職場ですので、安心して働ける環境づくりと労働災害防止の観点から、厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」を組織的に理解し、各職場で実施していく取組みを進めています。  安全対策の例としては、事業所内の各危険箇所に模造紙ほどの大きさで「飛び出し注意」などと書いた安全POPを見えやすい場所に掲示しています。また、フォークリフト運転時の危険予知マップや、過去の労災がどこでどのように発生したか、もしくは発生しそうな場所をヒヤリハットマップにして注意をうながしています。それから、「通行禁止」などの文字とイラストで注意を呼びかける安全発信ボードも掲示し、情報共有を図っています。  こうした環境面の整備に加えて、管理者のマインドの向上、管理意識改革も重視し、管理者向けの「労務勉強会」を開催し、管理者自らが不足している課題を抽出し、勉強を重ねています。大切な人財を守る、辞めさせないという教育を今後も進めていきたいと思います。  先日、がんばっている全社員や得意先など総勢4200人のみなさまへ、感謝の意を込めてお菓子をお渡しするハロウィンイベントを開催しました。小さなイベントですが、社員間のコミュニケーションツールにしてほしいと思い、実施した次第です。  そのほかの取組みとして、大阪市の企業とコラボレートし、物流センターで大がかりなスペースがいらずに人手不足や高齢化をサポートしてくれる「半自動けん引搬送ロボット」の開発に取り組んでいます。今後も物流のニーズ、新たな企業価値創造、そして、社会に貢献したいと考えています。  生涯現役で多くのシニアに活躍していただくために、管理者として大切な心構えは、しっかり社員と向き合うことであると思っています。また、「エイジフレンドリーガイドライン」に沿った対策の推進や、作業軽減のマテリアルハンドリング機器※の独自開発などを進めてまいります。  そして、人とともに生きる物流業界で、財産であるスタッフを守り、物流の下支えをしっかりと行っていくために、社員が明るく元気に働きやすい環境づくり、制度づくりをこれからも目ざしていきたいと思います。 ※ マテリアルハンドリング機器……原材料・仕掛品・完成品を移動させるために利用され、物流業務を効率化するために用いられる作業機械の総称 【P22-25】 大阪会場 パネルディスカッション 高齢者の意欲・能力を活かした職場環境の実現に向けて コーディネーター 藤村博之氏 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 パネリスト 新屋和代氏 株式会社りそなホールディングス 執行役 人財サービス部担当 望月彰氏 間口ロジスティクス株式会社 取締役社長執行役員 杉原彰氏 65歳超雇用推進プランナー 企業プロフィール 株式会社りそなホールディングス ◎創業 2001年(平成13年)12月 ◎業種 銀行業 ◎社員数 1,153人(2021年3月末現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  2019年に継続雇用年齢の上限を70歳に引き上げ。2021年には全世代活躍推進に向けた取組みの一環として、60歳から65歳までの選択定年制を導入。60代の働き方は社員自らが選択する 間口ロジスティクス株式会社 ◎創業 2017(平成29)年8月 ◎業種 物流、運輸 ◎社員数 3,322人(2021年8月現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  2020年に定年年齢を60歳から65歳に引き上げ。同時に、70歳までの再雇用制度も整備。その後、65歳以降の昇給も可能な報酬体系の整備を進めている 70歳まで働ける仕組みづくりの考え方や工夫、社内で議論したこと 藤村 はじめに、70歳まで働ける仕組みをつくっていく際に、どういう工夫をされたのか、あるいは議論をされたのかについておうかがいしたいと思います。まずはりそなホールディングスの新屋さんからお願いします。 新屋 定年延長や継続雇用制度を導入するにあたっての議論の中心は、シニアの方々にいかに活躍してもらえるような形で取り入れていくか、ということでした。そういった観点からの工夫として、3点を申し上げたいと思います。  1点目は、人事評価の基本的な枠組みを60歳までの社員と共通にしたことです。具体的には、行動評価と業績評価という二つの軸で評価を行い、給与・賞与に反映させる点を共通化しました。当社の60代の人財活用戦略としては、60歳以前につちかった経験やノウハウを活かせる仕事をしてもらうことが基本的な考え方ですので、人事評価についても、60歳前後で極力変わらないような仕組みとしました。  2点目は、60歳時点における職務で発揮していた専門性の程度に応じて、60歳以降の給与が決まる仕組みにしたということです。2021(令和3)年4月に、社員はいずれかの分野でプロフェッショナルになることを目ざすという、新しい人事制度を導入しました。このときに60歳以前の給与は、その担当する職務分野に求められる専門性の高さとマネジメントの職責の重さという、二つの要素で決定する仕組みに変えています。管理職のポスト数にはかぎりがありますので、多くの場合、60歳までに後進に道を譲っていただくことになります。一方で、プレイヤーとして高い専門性を発揮してもらうということについては、年齢を重ねてもその機会は大きく狭まるものではないと考えていますので、専門性の高さを60歳以降の処遇決定に反映させることにしました。  3点目は、60代の働き方を社員自らが選べる選択定年制にしたことです。60代における働き方の柔軟性を高めるような制度設計をしたということです。  こういった仕組みを取り入れた新制度導入以降、多くの社員が65歳以降も就労を継続しており、経験のある人財を、いままでよりもより活用できているという点では、すでに効果が出ていると感じています。特に、50代、60代の社員の間では、この制度について非常に前向きにとらえていただいており、社員のモチベーションの向上にも寄与していると考えています。 藤村 ありがとうございます。それでは次に、間口ロジスティクスの望月さん、お願いします。 望月 当社の場合は、労働集約型産業で、本当に人が中心です。人が枯渇すると、事業が停滞します。コストを、荷主、元請けに転嫁すると、物流コストが上がると考えたときに、本当のインフラがどのように整備できるのかという議論を重ねて、2020年4月に70歳までの再雇用制度を導入しました。やはり、120年の歴史があり、人とともに歩んできた会社なので、人財の活用、確保をしっかり行い、生産性を上げていくことが大きな目的であると強く発信したなかで、導入にふみ切ったと感じています。  導入にあたっては、短期的な考えではむずかしく、中長期的にこの制度をどう見直していくのかというところも議論になりました。そして、シニアの役割や等級を本人に理解してもらう、向き合って話をすることが非常に重要だと思いました。後進に経験値やノウハウを継承してバトンを渡し、会社の歴史を紡つむいでいってほしい、ということを伝え、みなさんが理解して、組織の再活性につながってきたと思います。また、定年・再雇用年齢を引き上げたことで、新たな人財の採用の向上にもつながっています。 藤村 ありがとうございます。杉原プランナーは、65歳超雇用推進プランナーとしていろいろな会社を訪問されていますが、65歳定年というのは企業にとってハードルが高いといった印象はありますか。 杉原 たしかにそういった印象はあります。しかしながら何らかの形で65歳まで雇用を守る義務が企業に課せられていますので、60歳定年制というのはすでに崩壊しているという見方もできます。今年60歳になる方(昭和36年4月2日以降に生まれた男性)からは、65歳まで原則老齢年金が支給されず、希望すれば全員が65歳まで働けることになります。それでもいまのまま60歳定年制を保ちたいという理由は、60歳の線引きをキャリア転換促進装置として機能させるという意味合いがあるかもしれません。  65歳までの継続雇用ということで考えていくと、定年延長なら何歳まで引き上げるか、一度に引き上げるのか、仕事、役割、役職、労働時間、配置や異動に関してはどうするのか。それから、評価・賃金について、一つずつクリアしながら、65歳定年制に近づけていくことがプランナーとしてのひとつのアドバイスですが、訪問活動の経験上、結果としてトップの決断で65歳定年制にふみ込まれる場合が多いように感じております。 60歳以降の賃金と評価制度、安全を守る取組みについて 藤村 続いて、「給与をどうするか」ということをうかがいます。まずは新屋さんにお聞きしたいのですが、60 歳以降も専門性を維持し、それを高めていくように行動するのであれば、それに合わせて給料も上げるということですが、どのように判断していくのでしょうか。 新屋 専門性については、新しい人事制度を導入する際に、いわゆる「ジョブ型雇用」の考え方で、それぞれのコースに職務等級基準書を細かく設計しています。基準書のどの段階にあるのかということに応じて、専門性の高さを評価する仕組みを設けています。また、そのことを評価する機関として、評価委員会を設けており、透明性を確保しながら評価を行っています。 藤村 ありがとうございます。60歳以降の継続雇用の賃金のあり方として、私は仕事ごとの賃金が、もっとも納得性があるのではないかと考えています。「この仕事を、仮に外部の会社に依頼するとこれだけ払うことになる。あなたはこれをやってくれているから、いくら払いますよ」という決め方です。  望月さんの事例発表では、職場の写真を見せていただき、具体的な仕事をイメージしやすい内容でした。みなさまがどれくらいの給料で働いていらっしゃるのか。金額はいいづらいと思いますが、60歳以降の給料についてどのようにお考えでしょうか。 望月 基本的には、同じ仕事をそのまま継続することがほとんどですので、原則的に賃金が下がるということはありません。当社では、四つの社員区分があり、そのテーブルのなかをある程度維持することで、大きな変動はないということになっています。 藤村 ありがとうございます。杉原プランナーは、訪問先の企業から給料に関する相談が必ず出てくると思いますが、いかがでしょうか。 杉原 そうですね。仕事に見合った賃金を支払うということが、なかなかうまくいっていない印象もあります。それぞれの職域ごとにどこまで賃金を上げられるのか、ほかの職種とのバランスなども含めて、職域分析から始めることも大切かもしれません。また、再雇用された方には変化をおそれずに新しい技術を身につけようという意識に立って、研鑽していただけるような環境づくりも必要になると思います。 藤村 ありがとうございます。現在の労働力の8人に1人は65歳以上となっており、そのなかで労働災害も増えています。安全をどう守るかという点について、望月さんからお聞かせください。 望月 シニアが約600人、事業所が19カ所あり、それぞれ所長一人で管理するなかで、会社の方針をどこまで落とせるのかが一つの課題でした。そこで、安全タスクフォースを設置し、上級者に準ずる者を選任して各事業所に配置するなど、安全と人財を連動した形で事業所内に落とし込んでいます。そして、事業所単体で起きた事例を横展開し、そのなかで新しいヒントが生まれ、吸い上げています。なかなかむずかしいのですが、事業所、経営層が安全巡回で現場を視察しながら取り組んでいます。  安全については、地道な活動が肝心です。タスクリーダーには、それなりの権限があり、リーダーが現地に赴くフレキシブルなところがないと、安全というのは守れないと考えています。 藤村 ありがとうございます。続いて、新屋さんにお聞きします。例えば、基本に忠実に仕事をしていくことがおろそかになったがゆえにミスが起こる、ということがあると思います。特に、60代の方々に第一線で働いていただく場合、そうしたミスをできるだけしない、させないための工夫はありますでしょうか。 新屋 特に、60代以上の方にという工夫ではないのですが、銀行は、そういったミスやリスクに対しては厳しい業種であると思います。事細かなルールのようなものが従前から定められていて、みんなが行っていくという意識づけはできていると考えています。 藤村 ありがとうございます。最後に、これから高齢者雇用に取り組む企業へのアドバイスをお願いします。 新屋 高齢者雇用は、どちらかというとコスト面が強く意識されがちです。当社の議論の過程でもそういうことも出てきましたが、高齢者雇用を前向きな人財投資と位置づけて取り組んできました。そして、社員がポジティブに感じてくれることは、必ず会社にとってよい効果をもたらしてくれる、そのように期待をしています。また、当社は20年ほど前からダイバーシティマネジメントの推進に取り組んできて、シニアの活躍推進もその一環としてとらえています。若手とかシニアといった先入観にとらわれず、社員一人ひとりの個性、力を引き出していくことが重要であると考えています。 望月 制度を変えることは、長い歴史の企業であったり、多種多様の業態があったりするとなおむずかしいことと思いますが、社員がどう幸せを感じるか、そこに魂を置くべきなのだと思いました。シニア層も、自分がどのように変化し、役割をどうになっていくのか、そのことの理解が必要なのだろうと思いますし、会社は「人財」という財産をどう育てていくのか、そのことが非常に大事なのだと感じています。 杉原 本日の2社様の事例発表はたいへん勉強になりました。エンプロイアビリティといわれる、いわゆる「雇用される力」の自覚にも役立ちますし、企業にとっては、高齢者雇用はコストではなく、投資をして成果を上げてもらいましょうという事例でした。制度は、企業の数だけ存在すると思います。雇用形態や年齢など、高齢社員に関することを考えること自体が、会社全体のすべての世代に対する制度を考えることになります。最終的に、生産性の向上につながる処遇のあり方につきましては、試行錯誤を続けることに終わりはないと感じた次第です。 藤村 ありがとうございます。今日のお話を参考に、ぜひ生涯現役で働ける職場の実現に取り組んでいただきたいと思います。みなさま、本日はどうもありがとうございました。 写真のキャプション コーディネーターを務めた藤村博之教授 株式会社りそなホールディングス 新屋和代執行役人財サービス部担当 65歳超雇用推進プランナーの杉原彰氏 間口ロジスティクス株式会社 望月彰取締役社長執行役員 【P26-27】 特別企画 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」のご紹介  わが国では急速な高齢化が進むなか、中長期的に労働力人口の減少が見込まれ、労働者が社会の支え手として意欲と能力のあるかぎり活躍し続ける「生涯現役社会」の実現が求められています。  2021(令和3)年4月1日より改正高年齢者雇用安定法が施行され、各企業には70歳までの就業確保措置を講ずる努力義務が設けられました。高齢者が長年つちかった能力を十分発揮しながら満足感を得て働き続けるためには、賃金・処遇、能力開発、健康・安全対策などの仕組みづくりがますます重要となります。  しかしながら、産業ごとに労働力人口の高齢化の状況や置かれている経営環境、職務内容、賃金制度、雇用形態などには大きな差異があります。このため、高齢者の就業機会の確保を図るには産業ごとに必要な諸条件を検討する必要があることから、当機構では「産業別高齢者雇用推進事業」により産業別団体の取組みを支援しています。 「産業別高齢者雇用推進事業」とは  「産業別高齢者雇用推進事業」は、産業別団体が高齢者の雇用推進のために解決すべき課題について検討し、その結果をもとに高齢者雇用推進にあたっての留意点や好事例等からなる「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」(以下、「ガイドライン」)を策定し、これを用いて会員企業に普及・啓発することで、高齢者雇用を一層効果的に推進することを目的としたものです。  この事業は、毎年1月に高齢者雇用の推進に取り組もうとする全国規模の産業別団体を公募しており、本事業の目的に合致した産業別団体を複数選定し、当機構と契約(2年以内の委託事業)を締結しています。現在までに建設、製造、情報通信、運輸、サービスなど、多岐にわたる産業で、92業種がこの事業に取り組んでいます。 「ガイドライン」の策定  ガイドライン策定への具体的な流れは、産業別団体内に大学教授などの学識経験者を座長として、団体に所属する会員企業の経営者や人事担当者などで構成される高齢者雇用推進委員会(以下、「委員会」)を設置し、各年度4回程度委員会を開催します。  初年度の委員会では、その産業における高齢者雇用の実態把握を行います。高齢者雇用における課題は何かを検討し、あげられた課題をより明確に把握するため、会員企業へのアンケートや先進的な企業へのヒアリング調査を実施します。2年度目は、初年度の調査結果で浮き彫りとなった課題とその解決策を整理し、ガイドラインを策定します。  なお、ガイドラインでは、以下の点を主な課題として取り上げています。いずれを重視するかは産業ごとに異なり、各産業の実態をふまえた実践的な一冊に仕上げています。 ・制度面に関する改善 ・能力開発に関する改善 ・新職場・職務の創出 ・健康管理・安全衛生 ・作業施設等の改善 ・定年前の準備支援  ガイドラインは高齢者雇用に対する理解を深め、活用してもらえるよう会員企業に配付します。  さらに、普及・啓発活動として会員企業に対し高齢者雇用推進セミナーを開催することで、ガイドラインをより効果的に活用できるようにするとともに企業への浸透をうながしています。  実際にガイドラインを読んだ会員企業へのアンケート調査結果では、9割ほどの会員企業より「ガイドラインは役に立った」または「役に立ちそうだ」と回答があり、「業界における高齢者雇用の動向を知ることができた」、「高齢者雇用の課題や解決方法がわかった」など好評をいただいています。 業種を超えたガイドラインの活用  当機構ホームページでは、これまでに策定したガイドラインをはじめ、高齢者を雇用するうえで実際に役立つワークシートやチェックリストなどの各種ツールを公開しています。ガイドラインは業種や時代による変化があったとしても、共通して参考となる点も多くありますので、ぜひご覧いただき高齢者雇用の取組みにお役立てください。  次項より、2021年度に策定した三つのガイドラインを紹介します。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 当機構委託 産業別団体 「ガイドライン」の策定/普及・啓発 ○○○業高齢者雇用ガイドライン 会員企業 改善 高齢者の活用・戦力化 産業別高齢者雇用推進ガイドライン一覧 (2018〜2020年に策定したガイドライン) 砂利採取業 砂利採取業 高齢者活躍に向けたガイドブック 〜多世代共働による職場づくり〜(2018年) 製造業 シニア社員が活躍できるキャリアのつくり方 〜電経連版キャリア再設計研修プログラムの提案〜(2018年) 工作機器製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜次世代に伝えたい、もの創りにかける「心」と「技」〜(2019年) 電子デバイス産業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア期の使えるスキル#ュ見研修プログラム開発手順〜(2019年) 中小型造船業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜造船業界のさらなる発展のために〜(2019年) 工業炉製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍を企業成長に生かす〜(2020年) 情報通信業 情報サービス産業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜未来を見据え、活躍し続けられるIT人材を育成〜(2018年) 情報サービス業(情報子会社等)における シニア人材活用に関するガイドライン(2020年) 運輸業 添乗サービス業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア添乗員の職域拡大を目指して〜(2019年) ハイヤー・タクシー業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜公共交通機関として安全・安心輸送のために〜(2020年) 不動産業 マンション管理業 高齢者活躍に向けたガイドライン(2020年) 生活関連サービス業、娯楽業 旅行業 高齢者雇用推進ガイドライン 〜シニア人材の活躍に向けて〜(2018年) 結婚相手紹介サービス業における高齢者雇用推進ガイドライン 〜結婚相手紹介サービス業のシニア人材活躍サポートマニュアル〜(2018年) ゴルフ場業 高齢者活躍に向けたガイドライン 〜ヘルスケア産業としての健康な高齢者雇用を目指して〜(2019年) 葬儀業における高齢者活用推進のためのガイドライン 〜高齢者の活用による業務スタイルの変化への対応〜(2020年) 医療 病院における高齢医療従事者の雇用・働き方ハンドブック(2020年) ※( )内の数字はガイドライン策定年度を表します 【P28】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン1 患者等給食業高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜高齢者の活躍で安全・安心な食事の提供を〜  病院などにおける治療の一環として、患者へ 食を提供している患者等給食業では、チルド化 や自動化システムといった調理の技術進歩に よって、これまでよりも高齢者の活用が可能と なっている反面、高齢者雇用の継続≠ニいう 部分では体力面での不安といった課題が鮮明と なっている。特に調理業はデスクワークと異な り、長時間の立ち仕事や力仕事といった側面が あり、改めて身体機能の低下を補う対応が求め られている。  また、人手不足が多くの事業所で課題となっており、高齢になっても働き手として多くの従業員に継続して勤務してもらうことが事業経営面でも鍵となる。  本ガイドラインの構成は次の通りである。  「第1章 高齢者雇用施策が求められる背景」では、高年齢者雇用安定法の改正をはじめ、高齢者の活躍が求められる社会的背景を整理するとともに、患者等給食業における高齢者雇用の状況をデータで明らかにしている。患者等給食業で高齢者はすでに貴重な労働力となっていることをふまえ、新たな環境変化への対応として、@「働き方改革」の一環である高齢者の就業促進について、Aチルド化や自動化システムなど調理技術等の進歩による高齢者雇用の側面から見たメリット・デメリットについて、B高齢従事者のデジタル活用スキルについての三つの課題をあげ、これらの課題を解決すべく、すでにさまざまなアプローチや工夫を行っている各企業の声を紹介している。  「第2章 高齢者雇用の推進に向けた視点(取り組みのポイント)」では、各社において高齢者雇用推進施策の検討に役立てることを目的として、患者等給食業の「高齢者の活躍による安全・安心な食事の提供」を可能にしていくため、「視点1 高齢者が働きやすい環境づくり」、「視点2 高齢従事者を含む人材戦略・人材育成」、「視点3 高齢者の意向把握やモチベーションへの対応」、「視点4 高齢従事者が継続して働くことができる取り組み」、「視点5 高齢従事者の働き方の変化への対応」の五つの視点をもとに、取組みのポイントや具体的な課題、参考となる事例などを整理している。なお、企業の規模や事情により課題解決へのアプローチは個々に異なることから、具体的な課題や懸念事項に対して、参考となる事例を体系的に整理することで、参照しやすいように取りまとめている。  「第3章 資料編」では、高年齢者雇用安定法の内容をより深く理解できるように「改正高年齢者雇用安定法のQ&A」を掲載するとともに、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(厚生労働省)や、高齢者雇用の課題解決に向けて相談ができる支援制度、支援機関などを紹介している。 公益社団法人 日本メディカル給食協会 連絡先 〒101― 0033 東京都千代田区神田岩本町15―1 CYK 神田岩本町7階 TEL 03―5298 ―4161 FAX 03―5298 ―4162 HP https://www.j-mk.or.jp/ 【P29】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン2 廃食用油リサイクル業における高齢者活躍に向けたガイドライン  全国油脂事業協同組合連合会は、食品リサイクル法および廃棄物処理法に基づき、食品製造業、食品小売業、外食産業などから発生する廃食用油を、適正に食品循環資源として再生利用を促進する、廃食用油回収再生事業者の業界唯一の全国団体である。各廃食用油発生先からの回収・輸送、それらを再生処理する過程で体力的に負担の大きい作業があるなかで、同業界では従業員の高齢化の波が押し寄せており、高齢者を含む従業員が活き活きと働くことができる職場づくりのための試行錯誤が続けられている。  本ガイドラインは、このような背景のもと、各企業の実情に合わせて高齢者雇用の推進の一助となるように取りまとめたものである。  「T 廃食用油リサイクル業における高齢者の活躍に向けた考え方」では、同業界でさらなる高齢者の活躍が求められている背景を述べたうえで、特に2021(令和3)年に施行された改正高年齢者雇用安定法の概要を紹介し、企業に求められるものが「65歳までの雇用確保」から「70歳までの就業機会確保」へと移りつつあることを解説している。  「U 廃食用油リサイクル業における高齢者活躍推進のための指針」では、廃食用油リサイクル業高齢者雇用推進委員会での検討結果をもとに、業界各社が高齢者の活躍を推進しながら競争力を高めるために取り組むべき課題や方向を、「指針1 一人ひとりの高齢者の状況に応じたきめ細かな配慮」、「指針2 高齢者の生きがいや満足度に影響する『業務内容』と『勤務形態』」、「指針3 安全安心を生む職場環境改善」、「指針4 若手・中堅とペアを組んで高齢者の知恵を伝承」、「指針5 若いうちからの教育で高齢期の仕事の質を向上」、「指針6 『高齢者雇用』は『全ての従業員に優しい会社』を目指したメッセージ」の6項目にまとめて紹介している。  また、より内容を深く理解できるよう、アンケート調査結果を「企業の意見」、「従業員の意見」として取り上げているほか、従業員の高齢化問題に取り組んでいる他業界の事例も参考として紹介している。  「V 廃食用油リサイクル業の高齢者雇用をめぐる現状と課題」では、廃食用油リサイクル業高齢者雇用推進委員会が2020年に実施したアンケート調査やヒアリング調査の概要を紹介している。特にアンケート調査では、全国油脂事業協同組合連合会会員企業へのアンケート調査とならび、会員各社の従業員を対象としたアンケート調査(59歳以下と60歳以上向けの二つの調査)についても実施し、同業界の高齢者雇用の現状と課題、各社の取組みについて多面的な視点から紹介している。  「W 全国油脂事業協同組合連合会のご紹介」では、リサイクル事業を写真つきで紹介している。 全国油脂事業協同組合連合会 連絡先 〒113― 0034 東京都文京区湯島3―6―1 全国家電会館3階 TEL 03―6284 ―4977 HP https://zenyuren.or.jp 【P30】 産業別高齢者雇用推進ガイドライン3 保育サービス業高齢者の活躍に向けたガイドライン シニア人材の強みを保育施設の運営に生かす  公益社団法人全国保育サービス協会は、かねてより保育サービス業における高齢者の活用促進に取り組んでおり、2016(平成28)年度にはシニア家庭訪問保育者の積極的活用のための課題を整理し、必要な取組みをまとめてガイドラインとして公表している。今回策定したガイドラインでは、保育サービス業のなかでも施設型保育をになう保育施設においてシニア人材を雇用し、その強みを活かすための方策についてまとめている。  2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法によって、シニア家庭訪問保育者、そして保育施設の高齢者活用の機会は一層の拡大が見込まれている。本ガイドラインでは、シニア人材雇用のメリットだけでなくデメリットも交えて、シニア人材の活用に向けた指針を掲げ、その背景、今後の対応の方向性を示している。  「T 保育サービス業におけるシニア人材活躍に向けた考え方」では、「高年齢者雇用安定法」の改正を機に、保育サービス業においても高齢者の雇用促進への取組みが一段と求められ、今後60代の従業員の一層の増加が見込まれるとした背景について述べ、さらなるシニア人材の活躍に向けた考え方などを整理している。  「U 保育サービス業におけるシニア人材の活躍推進のための指針と基盤」では、70歳までの就業と組織の持続的発展を目ざした基盤として@組織としてあるべき姿の浸透、Aマネジメント力の強化が必要であるとしている。この基盤のもと、保育サービス業におけるシニア人材の一層の活躍のための六つの指針を示している。「指針0 保育施設で働くことの意識醸成」で、保育施設で働くシニアに対して保育業務の特性を理解してもらうことの意義を示したうえで、「指針1 シニア人材の強みを生かした活躍機会の提供」、「指針2 シニア人材の持つ技能・知恵等の施設への還元」、「指針3 シニア人材のモチベーションの維持・向上」、「指針4 シニア人材にとっても働きやすい職場環境の整備」、「指針5 シニア人材を生かすチーム保育の推進」では、シニア人材の活躍を推進しながら保育の質や組織運営の向上のために取り組むべき課題や方向性について紹介している。また、これらの指針と基盤を一つの図として提示しており、内容をより深く理解することができる。  「V アンケート調査結果」では、保育サービス業における高齢者雇用の現状と課題、各社の取組みを多面的に把握するために、2020年度に公益社団法人全国保育サービス協会会員を対象に実施したアンケート調査結果を紹介している。また巻末には「参考資料」として、高齢者雇用に関する情報一覧を示し、支援機関の紹介や在職老齢年金と高年齢雇用継続給付制度の仕組みなどについて詳しく解説している。 公益社団法人全国保育サービス協会 連絡先 〒160― 0007 東京都新宿区荒木町5―4 クサフカビル2階 TEL 03―5363―7455 FAX 03―5363―7456 HP http://www.acsa.jp 【P31】 日本史にみる長寿食 FOOD 341 青魚(あおざかな)を代表するサバの長寿効果 食文化史研究家● 永山久夫 元気な超高齢者  日本人の人生は、様変わりのステージに入ってきたようです。平均寿命もどんどんのびて「人生100年」もそれほど遠くはない時代になっているのです。WHO(世界保健機関)が昨年に発表した統計によりますと、日本人の平均寿命は男女合わせて84.3歳で、2位のスイスに1歳近く差をつけて、1位に輝いています。  日本では80歳、90歳になっても働いている人が少なくなく、超高齢者になっても、脳力も体力も、衰えない人が増えています。文字通り、生涯現役時代になっているのです。  医療の進歩ももちろんありますが、生涯現役力の最大のサポーターは、日本独自の和食に裏打ちされた食事法であるのは間違いありません。 不老長寿を呼ぶ豊富な成分  和食文化最大の特徴は海産物、なかでも魚の活用です。日本にあるどこの浜でも水揚げ量が多かったのが、安価でおいしく、健康効果の高い青魚で、なかでも人気があったのがサバです。  江戸時代の食物の健康効果を記した『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』に「鯖(さば)は色によって青魚とも書く」とあり、青魚の代表としています。生食はしないで開いて塩干ししたサバが人気を呼んでいました。  脂のよくのった干しサバをこんがり焼いて食べると極めて美味で、ご飯がすすみ体力がつくからです。  サバで着目したいのは、EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の働き。これらの成分は私たちの体内では合成できず、食物から摂取しなければならない必須脂肪酸です。  EPAは血液をサラサラにして血行をうながし、高血圧や動脈硬化の予防、改善に役立つことが知られています。またEPA には脂肪の燃焼効果もあるところから、メタボが気になる方は、積極的に摂った方がよいともいわれています。  一方のDHAは脳の活性化に役立ち、摂取量が増えると脳の情報伝達能力、つまり記憶力や発想能力が高まることが知られています。良質のタンパク質も多く日本人の長寿にも役立っており、サバ缶などでも効果は変わりません。 【P32-33】 江戸から東京へ [第112回] 自分自治をつらぬく 北条(ほうじょう)政子(まさこ) 作家 童門冬二 自治とはみんなのために  自分自治(じぶんじち)≠ニは、「主体性を持って生きぬく」ということで、「好き勝手なことをして生きつづける」ということではない。自利よりも利他を重んじ、自分の属する社会のために生きぬく、ということだ。生き方の底には、多くの人の共感と協力がある。鎌倉時代にそんな生き方をした女性がいる。あらためて、その女性の今日的紹介をしてみたい。  女性の名は北条政子だ。源(みなもとの)頼朝(よりとも)の妻だが、死ぬまで自分の名を大切にした。いまでいえば、「夫婦別姓」を守りぬいたということだ。しかも頼朝は彼女自身が選んだ男性であって、周囲から強要された人物ではない。  「平氏にあらざれば人にあらず(平家一族か平家に従う者以外人間ではない)」という、平家万能の時代に、頼朝の父義朝(よしとも)はこれにそむいて反乱の兵をあげた。そして敗れた。義朝は信頼する部下に裏切られ、殺される。嫡子だった頼朝は伊豆(静岡県)に流罪になる。この反逆者の子≠ナある頼朝を政子は自分の伴侶に選ぶ。頼朝がイケメンでカッコよかったからではない。政子には娘時代から大きな目標があった。それは東国武士の特性≠確立する人物の出現と、その人物による東国の自治の確立だ。  (いまは平氏の世だというが、平氏一族は武士の初心を忘れている。その暮らしぶりは完全に公家化し、柔弱になっている)  というのが政子のみたそのころの武士の実態だ。  そこへいくと彼女の生まれた北条一族をはじめとして、東国の武士はまだ武士の初心≠保っている。武士の初心とは「質実剛健」のことであり、何よりも民に対して「護民官」であることだ。 頼朝に夢を託す  政子が頼朝を選んだのは、頼朝の父義朝が伊豆に近い鎌倉に領地を持ち、その御家人(従う者)が諸所に散在していたからだ。  (いまは流人だが、いずれは源氏一族を集めて平氏を滅ぼし、初心を保つ武士の社会にしてほしい)  というのが、彼女の切実な願いだった。男顔負けの願いだ。願いというより野望だ。しかし政子は本気でそう考えていた。  だからといって流人の頼朝が、接して感ずるかぎりではその資質と能力をそなえているとはいえない。生まれも育ちも京なので、京文化の影響をかなり受けついでいる。政子からすれば、  (その影響が武士に初心を失わせているのだ)  ということになる。しかし彼女は、  (ともに暮らせば寄り添って、その影響を除去し、代わりに東国武士の初心を植えつけてあげる)  と思っていた。平家色に染まっていた父時政の反対を押し切って、政子は押しかけ女房的に頼朝の妻になった。弟の北条義時が支持した。頼朝三十一歳、政子二十一歳のときだ。  やがて頼朝は兵をあげるが敗北。が懲りずにまた兵をあげると、今度は潜伏していた弟の源義経や従兄弟の木曽義仲、東国の源氏や平氏の一族まで味方したので完全な勝利。平氏の残党は義経が壇ノ浦で滅ぼした。  政子の望み通り、頼朝は鎌倉に初心を持つ武士の政権(鎌倉幕府)を樹立した。が、頼朝が急死するとあとを継いだ息子の頼家は、私心をムキ出しにわがままに政治を行う。政子は弟の義時と相談して、十三人の評議員を選び集団指導制とした。それに逆らった頼家は御家人に殺される。あとを継いだ頼家の弟実朝(さねとも)も頼家の子に暗殺される。こういう状況を政子はクールに見守った。  二人の息子より大切なものがあったからだ。  「東国の武士の初心と原点。それを守る鎌倉幕府(夫頼朝が創立した)の恒久的保持」だ。  二人の息子にはその気構えが欠けていた。  鎌倉における不祥事を京では 「武士政権の弱体化」とみた。煽(あお)る者がいて後鳥羽上皇が院宣(いんぜん)(上皇の命令書)を出した。  「義時を討て」  東国武士はどよめいた。ビビる者もたくさんいた。義時も不安に襲われた。だが、政子は動揺しない。まさに鉄の女≠セ。  「私が説得する」  幕府の広場に集まった御家人たちに政子は語りかける。わかりきった内容を、わかりやすく、条理をつくして。その要旨は……。  「あなた方は最近まで京に呼ばれ、貴人に犬のように扱われた。長い任期を罪人のようにこき使われた。解放されて戻るときもボロボロの着物と裸足だった。それを任期を半年に縮め、そのあいだ人間扱いするように改めさせたのは、わが夫頼朝殿だ。その恩を忘れずに鎌倉の武士政権を守りぬくか、それとも昔の犬に戻るか、どちらでも選びなさい」  全身から涙が飛び散るような名演説だったという。集まった武士はシーンとした。すぐ、  「鎌倉を守ろう!」  「二度と犬には戻らぬ!」  などの叫びが次々と起こった。義時が高く叫んだ。  「京に行く! わしに続け!」  全軍火の玉となって京に向かう。そして勝利する。将軍は公家の子に替るが、幕府の実務は北条一族によって支障なく行なわれていく。政子の宝・東国武士の自治精神は長く守られていく。 【P34-37】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第117回 愛知県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 「生涯現役」を期待して働き続けられる環境づくりに努める 企業プロフィール 株式会社三洲(さんしゅう)ワイヤーハーネス(愛知県碧南(へきなん)市) ▲創業 1982(昭和57)年 ▲業種 ワイヤーハーネス製造事業 ▲社員数 35人(うち正社員数32人) (60歳以上男女内訳) 男性(0人)、女性(5人) (年齢内訳) 60〜64歳 4人(11.4%) 65〜69歳 1人(2.9%) 70歳以上 0人(0%) ▲定年・継続雇用制度 定年年齢は60歳。希望者全員を70歳まで再雇用。最高年齢者は検査職の66歳。  愛知県は、日本のほぼ中央に位置し、南は太平洋に面し、西部から南部にかけて濃尾(のうび)平野、岡崎平野、豊橋平野が広がっています。北部から北東部は長野県から木曽山脈が南に伸びて三河高原を形成し、標高1000mを超える山も少なくありません。太平洋、三河湾と接する渥美半島と三河湾、伊勢湾と接する知多半島により海岸線は長く、沿岸一帯は水産資源に富んでいます。  当機構の愛知支部高齢・障害者業務課の奥山俊之課長は、県の産業について次のように説明します。「自動車製造に代表される輸送機械産業が盛んで、2019(令和元)年の製造品出荷額等が47兆9244億円と全国の約14.9%を占めており『日本一のものづくり県』であるといえます。一方で、2019年の年間商品販売額が全国3位、同じく農業産出額が全国8位と、商業や農水産業も盛んで、バランスの取れた産業構造です。このように県内事業所は製造業を中心として、幅広い業種、規模の事業所が存在していることから、高齢者雇用に対する課題も千差万別です。製造業では中小企業を中心に若年者の採用がむずかしいことから、高齢者を活用せざるを得ない状況で、製造業以外のサービス業などでは、定年後の職域開発が課題となっています。当支部では、企業の課題に合わせた支援を行うことに注力しています」  労働安全衛生に造詣が深い65歳超雇用推進プランナーの山本祐子(ゆうこ)さんは、職場における安全衛生に関する情報提供を行うなど、高齢社員の快適な職場環境づくりを提案しています。例えば、産業医を配置していない事業所においては、産業保健師を案内するといった働きかけを積極的に行っています。  今回は山本プランナーの案内で「株式会社三洲ワイヤーハーネス」を訪れました。 医療機器、車など機械装置のワイヤーハーネス製造  株式会社三洲ワイヤーハーネスは、電線の導体を製造する会社の関連会社として、1982(昭和57)年に同社の前身となる中部ワイヤープロセスが創業、1985年12月に現在の社名に変更しました。1987年には長野県に飯田工場を設立しています。「ワイヤーハーネス」とは、チューブなどでまとめられた複数の電線とコネクタで構成され、機械装置内の機器をつなぐ機材です。同社では医療機器、車載、産業機器、一般用パソコン向けなど、多様なワイヤーハーネスを製造し、日々、産業機器の組み立てを便利にする製品を提供できるように取り組んでいます。  最近の事業の動向について、南(みなみ)友樹(ともき)代表取締役社長は、「アウトドアブームを背景にキャンピングカーが人気ですが、コロナ禍のなかでテレワークの場としてもキャンピングカーの活用が広がっています。当社はデスクワークを快適に行えることにウエイトをおいて架装した『ビジネス向けキャンピングカー』のプロジェクトに早期から参画しており、電線配列(架装ハーネス)の役割をになってきました。今後は一層受注量を増やして、この分野のシェアナンバーワン、ならびに車載の試作においてシェアナンバーワンを目ざします」と意気込みを語ります。 「一生働いてもらいたい」  同社は2020年に、希望者全員を70歳まで再雇用する制度を導入しました。  「以前は社員が定年退職すると自宅での内職に切り替えて仕事を続けてもらっていました。ですが、どの人にも、いまの仕事をいつまでも続けてもらいたいと切実に思っていました。退職の際の業務の引継ぎは、かぎられた期間で行わなくてはならず、会社としては大きなプレッシャーでした。引継ぎの負担をなくすために、例えば一生働いてもらうにはどうしたらよいかを考えたところ、社内規程を変えることを思いつきました。独学で勉強して、社労士に相談しながら高齢者雇用制度の整備に取り組んできました」(南社長)  特に、70歳までの再雇用制度を導入したことで、一年は必要とする引継ぎ期間の確保につながったと、南社長は話します。  同社を2014(平成26)年9月に初めて訪問した山本プランナーは、同社の取組みについて次のように話します。  「社員目線での運営を心がけている様子がうかがえました。働きやすい職場環境体制を整えるための情報収集には、労力を惜しまない姿勢に感銘を受けたことを覚えています。  近年は、主にメンタル面での配慮について提案しています。高齢社員は、年齢を重ねることで睡眠の質の低下や疾病・体調不良などをともなうメンタル不調の増加が見られることなどが指摘されていることから、高齢社員をはじめとした全社員向けの心と体の健康づくり計画を策定しました」  数年前には、同社にて南社長と管理職を対象にしたメンタルヘルスのセミナーを行いました。その内容は職場で活用できる心理学で、全社員が活き活きと働くための職場づくりの参考になったようです。 こまめに環境改善を行い安全を確保  同社の高齢社員の働きぶりについて、南社長は「仕事に対する姿勢は、若い世代のお手本です。『もったいない』といって、一つひとつの製品をていねいに扱い、ムダをつくりません。図面の製作においても、ていねいに手書きをして、色鉛筆を使って色分けし、わかりやすくきれいにファイリングするなど、きめ細やかな仕事が目に留まります。みなさん手先が器用ですし、新しいことにもチャレンジしてくれています。タブレットを配付して業務で使用することを決めた際には、使い方をみなさんで教え合いながら情報共有するなど、その適応力には目を見張るものがあります」と話します。  同社では高齢社員の安全対策にも取り組んできました。現場作業は立ち仕事が多いので、高さのあるカウンターチェアを置き、作業の合間に軽く腰かけられるようにしました。小さなものを扱うことから、目に負担がかからないように、従来の拡大鏡からより大きく鮮明に見える電子顕微鏡を導入しました。また、重い電線の束を切る際は、持ち上げてカットしなくてはならないので、負荷軽減のための専用台の設置や、作業場と通路を視覚的に区分するといった環境改善を行っているそうです。今後も手すりの設置、和式から洋式トイレへのリフォームを予定しており、少しずつ進めていくそうです。  「社員に直接不便なところを聞くのが早いと思い、インターネットのアプリケーションを使って意見を募っています。危険場所の改善など、社員からの意見をもとに7件の改善を行いました」  今回は、同社の生産管理部で係長を務めている磯村三枝子さん(64歳)にお話を聞きました。 職場をまとめる頼りになる存在  磯村さんは、同社から内職の仕事を受託していましたが、1994年に社員として入社しました。入社当時は圧着や検査など現場の仕事をしていましたが、生産管理部が立ち上がる際に、事務職に転身して25年ほどが経ちました。現在は、8時から17時までのフルタイムで週5日勤務しています。  磯村さんの仕事は、顧客からの受注業務、進行管理、図面の制作などで、すべてパソコンを使って業務を行っています。短い納期でも職場のみんなで協力して取り組み、納品したときに聞く、顧客からの「ありがとう」の声が仕事のやりがいになっているそうです。最近、会社にタブレットが導入されましたが、普段パソコンを使った仕事をしていることもあり、抵抗なく操作ができているといいます。  年齢が高くなったことで、若い世代に注意をしても角が立たなくなってきたとも話します。  「社長が新しい制度を取り入れながらいろいろな取組みを展開しており、働きやすい環境が整ってきました。社員のみんなも仕事に対して協力的で、社長とも気軽に会話ができる雰囲気があるのも、当社の魅力の一つです」と会社について話してくれました。そして、「一年、一年しっかりと仕事に取り組み、働けるかぎりがんばりたいです」と抱負を語ってくれました。  「磯村さんはコミュニケーションが上手で、私が伝えるよりもわかりやすく社員に説明してくれて、係長として職場をまとめてくれる、会社に欠かせない人材です。生産管理部門の頭脳となってくれています。また、働きやすい職場づくりのためにメンタルヘルスのセミナーを受講し、心理学も勉強してもらいました。本人が希望するかぎり、現在の役職を続けていただきたいし、この先、さまざまな事情でフルタイム勤務がむずかしくなってきたら、短時間勤務でもよいので、ずっと働いてほしいと思っています」(南社長)  同社では毎月の売上げと利益を、全社員と共有して経営の見える化を図り、売上げが減少した際は受注を増やせるよう工夫したり、士気を高めたりするなど社員が一丸となって業績アップに取り組んでいます。このような経営面の取組みが奏功して、2021年度は創業以来初となる上半期での利益目標を達成しました。力を入れている試作品の受注が好調で、既存、新規顧客とも注文が多く取れているということです。  コロナ禍でも仕事が楽しくできているという同社。高齢社員の力を頼りに、今後も好調な業績を維持、向上させていくようなムードが社内全体で高まっていました。(取材・西村玲) 山本祐子 プランナー(52歳) アドバイザー・プランナー歴:9年 [山本プランナーから] 「事業所訪問においては、できるだけ多くの情報をお話いただけるよう、傾聴を心がけています。そして、企業と従業員にとって有益な情報を提供できる有意義な時間をもてるように、事前の備えとして高年齢者雇用のみならず、労務管理全般に関する企業のニーズに対応がとれるように努めています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆愛知支部高齢・障害者業務課の奥山課長は、「山本プランナーは、2013年度より数多くの企業に対する相談・援助・支援を実施しています。特に社会保険労務士として人事労務管理、衛生管理者として健康・安全衛生管理に関する支援を中心に活躍しています」と話します。 ◆愛知支部の最寄り駅は伏見駅(名古屋市営地下鉄)で、かつては繊維問屋街として賑にぎわい、現在、駅周辺は金融街やオフィス街が集中し、劇場や美術館、科学館が存在するなど名古屋市内でも有数の中心街となっています。その伏見駅から徒歩約2分の距離にあり、利用者にとっても非常にアクセスのよい立地です。また、愛知労働局も事務所近くにあるため、行政と効果的に連携した業務展開を行っています。 ◆同課には25名のプランナー等が在籍しており、毎年度約2千件の訪問(31人以上規模の企業数は約8 千社)を実施しています。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問い合わせください。 愛知支部高齢・障害者業務課 住所:愛知県名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 電話:052(218)3385 写真のキャプション 愛知県碧南市 工場を併設している本社社屋 南友樹代表取締役社長 環境整備や作業ごとのチェック項目なども社内に掲示している 社員からの意見・要望を募るQRコードを掲示 生産管理部で進行管理を行う磯村三枝子さん 【P38-41】 シニアのキャリアを理解する 事業創造大学院大学 教授 浅野浩美  健康寿命の延伸や、高年齢者雇用安定法の改正による70歳就業の努力義務化などにより、就業期間の長期化が進んでいます。そのなかで、シニアの活躍をうながしていくためにも「キャリア理論」への理解を深めることは欠かせません。本企画ではキャリア理論について学びながら、生涯現役時代におけるシニアのキャリア理論≠ノついて浅野浩美教授に解説していただきます(編集部)。 第3回 転機(トランジション)とシニア 1 キャリアにおける「転機」の考え方  人は、転機(トランジション)に、選択と意思決定をくり返すことによって発達し続ける、という考え方があります。  本連載第2回のキャリア発達理論で扱った、ある発達段階から次の発達段階への移行についても、転機ととらえることができますが、今回は、転職、失業、結婚、離婚、定年など、人生で起きる出来事を転機としてとらえて、キャリアについて考えてみたいと思います。 (1)ナンシー・K・シュロスバーグ「四つのS」  シュロスバーグは、人生はさまざまな転機の連続からなっており、それを乗り越える努力と工夫を通してキャリアが形成されると述べています。彼女は、長い人生において、キャリアを形成していくためには、キャリア転機のプロセスをよく理解して、キャリア転機を上手に行い、それをマネジメントできるようになることが大切だと考えました。  そして、転機には、@予測していた転機、A予測していなかった転機、B期待していたものが起こらなかった転機がある、と整理しました。そのうえで、重大な転機は、「自分の役割」、「人間関係」、「日常生活」、「考え方」のすべてに影響するものであり、これらのうち一つか二つが変わる程度であれば、重大な転機とまではいえないとしました。  また、転機に対処するためには、キャリア転機がどのようなものであるか見定めたうえで、「Situation(状況)」、「Self(自己)」、「Support(支援)」、「Strategy(戦略)」の四つの資源を点検し、活用することが重要であるとし、頭文字を取って、これを「四つのS(4Sモデル)」と呼びました(図表1)。そして、「四つのS」は、転機を乗り切るために利用できる資源であるとし、これらをそれぞれ点検することを推奨しています。「四つのS」について、順にみていきましょう。 @状況(Situation)  転機の原因は何か、役割・人間関係・日常生活・考え方の変化はどうなのか、転機を予測することはできたのか、期間はどのくらいなのか、これまで経験したことはあるのか、総合的にみてどのような状況なのか、など。 A自己(Self)  仕事はどのくらい重要なのか、仕事とそれ以外のこととのバランスはどうなのか、どのように変化に対応するのか、自分に対する自信はあるのか、人生に対してどのように考えているか、など。 B支援(Support)  他者からの励ましはあるのか、周りの人間関係はよいか、仕事探しなど自分を支援してくれる機関はあるのか、キーパーソンとなる人はいるのか、全体として役に立ちそうな支援はあるのか、など。 C戦略(Strategy)  仕事探しをする、何かを学ぶなど行動しているか、転機を前向きにとらえようとしているか、転機をプラスに変えようとしているか、ストレス解消を図っているか、など。  シュロスバーグは、スーパーのもとで学んだのち、転機への対処に着目しました。この背景には、社会の変化があると考えられます。社会の変化のスピードが速まり、人生においても転機に直面することが多くなったことから、転機のプロセスを理解し、転機に対処するためにどうするか、考えることの必要性が高まったということではないでしょうか。  近年は、シュロスバーグが転機への対処を提唱したころよりもさらに変化が激しさを増しています。シニアについても例外ではなく、予定通り定年を迎え、考えていた通り働き方を変え、地域の活動に軸足を移していこうといった場合(予測していた転機)もありますが、あと数年で定年というところで思いがけず転職することとなった(予測していなかった転機)、定年が延長されてこれまで通り働くこととなった(期待していたものが起こらなかった転機)など、さまざまな転機に直面することが考えられます。いずれの場合であっても、四つのSを用いて転機をうまく乗り越え、新たな展望を切り開いていくことが求められます。 (2)ウィリアム・ブリッジズ「ニュートラルゾーン」  アメリカの心理学者で、コンサルタントとして有名なブリッジズは、転機は変化によって生じるが、変化が外からやってくる外的なものであるのに対して、転機は心のなかに生じる内的なものだとしました。そして、転機は、「終わり(終焉)」から始まって、「ニュートラルゾーン(中立圏)」を経て、「始まり(開始)」という3段階からなるとしました(図表2)。  「終わり」は、何かがこれまで通りいかなくなるときから始まる。そして、「ニュートラルゾーン」を経て、新しく生まれ変わり、「始まり」にたどり着く、というわけです。  ブリッジズは、「『終わり』は、『過去に成功した仕事への取り組み方や達成感を手放す』こと」だともいっています。これに続く「ニュートラルゾーン」は、これまでのやり方などを捨て去ったものの、新たなスタートを切ることができない、という状況です。人々は、混乱したり苦悩したりしますが、新たな始まりのために必要なプロセスであり、この時期をいかにうまくマネジメントできるかが重要であるとしました。  彼は、ニュートラルゾーンをマネジメントする際のヒントとして、七つのことをあげています。 ・ニュートラルゾーンで過ごす時間の必要性を認める ・一人になれる時間と場所を確保する ・ニュートラルゾーンの体験を記録する ・過去を顧みて、これまでどう生きてきたかをふり返る ・この機会に、本当にやりたいことを見い出す ・もしいま死んだら、心残りは何かを考える ・数日間、あなたなりの通過儀礼を体験する  ブリッジズの理論は、転機の心理プロセスを整理し、それによって転機の課題を解決していこうとするものです。  ブリッジズは、「終わり(Ending)は、最終的な終わり(Finality)ではない」、「転機においてまずすべきことは、アンラーニング(学び直し:これまで学んできた知識を捨てて、新しく学び直すこと)」ともいっています。  ブリッジズの七つのヒントには、何かが終わったあと、まだ次が始まっていない時期を大事にする、といった印象があります。何かが終わってから始まる、というのは、逆説的なようですが、変わること、終わることには不安がつきものです。終わらないことには新たなことは始まらない、というふうに考えることには大きな意味があると思われます。  シニアのキャリアにあてはめると、定年や期待される役割の変化などの転機では、過去の成功体験などを一度手放し、アンラーニングする、そのプロセスを大事にする、というふうに考えることができそうです。 (3)ナイジェル・ニコルソン「転機のサイクル」  ニコルソンは、仕事のうえでの役割の移行(Transition〈トランジション〉)について、準備(Preparation)→遭遇(Encounter)→適応(Adjustment)→安定化(Stabilization)→次の準備(Preparation)というサイクルで展開されると考えました(図表3)。 @準備……変化に対応するための準備の段階。  (例)定年を前に心構えを持ち始める、など A遭遇……実際に新しい環境に入る段階。  (例)新たな役割が期待されることとなる、など B適応……仕事や人間関係などになじんでいく段階。  (例)新たな役割に少しずつ慣れる、など C安定化……日常化した段階。  (例)新たな役割にすっかり慣れて落ち着く、など  @の段階では次に向けてどのような心構えを持つか、Aの段階では新たな環境をどのようにとらえるか、Bの段階では新たな役割にどう慣れるか、Cの段階ではどう役割を果たすか、がそれぞれ鍵となるとされています。  ニコルソンのモデルには、一つのサイクルの最後の段階が次のサイクルの最初の段階につながる、前の段階は次の段階に影響を与える、それぞれの段階の体験には特殊性がある、という特徴があります。すなわち、サイクルは何度もくり返され、また、前の段階がうまくいったかどうかで次の展開が影響を受けるとされています。  彼のモデルには、全体として変化に順応していくイメージがありますが、単に順応するだけでなく、それが、次につながっています。シニアは、これまで、大小さまざまな転機に対応してきたと考えられます。それらをもとに、新たな転機に臨み、新たな役割に順応していく、といったところでしょうか。 2 高齢者にとっての転機(定年、退職、働き方の見直しなど)を考える  ここまで、代表的な転機の理論をもとに、転機とキャリアの関係についてみてきました。ざっくりいえば、転機においては、これまでと違う何か新しいことを選び取ったり受けとめたりし、それをスタートさせる、ということが求められます。定年や退職、加齢にともなう働き方の見直しなどは、転機の代表的なものの一つです。  転機には、リスクとチャンスの二つの要素が含まれています。転機を乗り切ることに失敗すると面倒なことになりますが、うまく乗り切ることができれば、新たな展望が開けます。予期できるものであれ、予期できないものであれ、また、何かが生じた場合であれ、生じなかった場合であれ、転機に対して、何らかの対応が必要なことには変わりはありません。自らが置かれた状況と折り合いをつけながら、課題を乗り越えていくことが求められます。  転機には、ライフ・トランジション(人生の節目)と、狭い意味でのキャリア・トランジション(仕事生活の節目)とがあります。両者は、互いに関係しており、サニー・S・ハンセンは、これらを統合した、統合的キャリアプランニングを提唱しています。そのようななか、今回は、狭い意味でのキャリア・トランジションに絞るかたちで理論を紹介しました。今回は外国の研究者を紹介しましたが、日本にも、転機などに着目して、キャリアを検討している優れた研究者がいます。また、年齢を重ねても活躍し、成長を続ける者についてその要因を検討した理論もあります。  次回以降は、これらについてみていきたいと思います。 【引用・参考文献】 ●Bridges,W.(2004)Transitions Making sense of life's changes 2nd ED Da Capo Press.(ウィリアム・ブリッジズ著、倉光修、小林哲郎訳(2014)『トランジション:人生の転機を活かすために』パンローリング) ●Bridges,W. & Bridges,S.(2019)Transitions(40th Anniversary Edition):Making Sense of Life's Changes(English Edition). ●Bridges,W. & Mitchell,S. (2000) Leading transition: A newmodel for change. Leader to leader, 16(3), 30-36. ●Nicholson,N. & West,M. (1989)9 Transitions, work histories, and careers. Handbook of Career Theory, 181-201. ●金井壽宏(2001)「キャリア・トランジション論の展開:節目のキャリア・デザインの理論的・実践的基礎」『国民経済雑誌』184(6),43-66. ●Schlossberg,N.K.(1989)Overwhelmed : Coping With Life's Ups and Downs. New York : Lexington Books.(ナンシー・K・シュロスバーグ著、武田圭太、立野了嗣監訳(2000)『「選職社会」転機を活かせ 自己分析手法と転機成功事例33』日本マンパワー出版) ● Schlossberg,N.K., Waters,E.B., & Goodman,J.(1995) Counseling adults in transition. Springer Publishing Company. ※ Bridges,W.(2004)Transitions Making sense of life's changes 2nd ED Da Capo Press. 図表1 転機のフレームワーク(四つのS) 変化をもたらす出来事が生じる・生じない個人の転機 個人の転機 4S 支援 戦略 自己 状況 転機のプロセス(時間による変化) 出典:Schlossberg,N.K., Waters,E.B., & Goodman,J.(1995) Counseling adults in transition. Springer Publishing Company.p.27 図表2 転機の3段階 終焉 何かが終わる時期 中立圏 混乱や苦悩の時期 開始 新しい始まりの時期 出典:金井壽宏(2001)「キャリア・トランジション論の展開:節目のキャリア・デザインの理論的・実践的基礎」『国民経済雑誌』184(6),43-66. 注)ブリッジズの著作※の考えに基づき、金井が図にまとめたもの 図表3 転機のサイクル 第5段階/第1段階 準備 第2段階 遭遇 第3段階 適応 第4段階 安定化 出典:Nicholson,N. & West,M.(1989) Manegerial job change:Men and women in transition.Cambridge University Press.p.9 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第46回 定年後の労働条件提示、ハラスメントと調査対応 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 定年を迎える従業員に定年後継続雇用の労働条件を提示したところ、拒否されました  定年を迎える従業員に対して、これまでの業務とは異なる業務を行うことを前提に定年後の労働条件を提示しました。賃金については、従前と同様の条件を維持する予定です。ところが、従業員からは拒否されたうえで、元の業務で継続雇用をするよう求められたのですが、応じなければならないのでしょうか。 A  会社から提示した労働条件が合理的なものであるかぎり、従業員の希望に応じる義務はありません。ただし、職務内容の変更が著しく、継続性・連続性が認められず、過小要求のハラスメントに該当するような場合は賠償責任が生じる可能性があります。 1 継続雇用制度と労働条件の変更  高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)は、定年制の廃止、定年年齢の延長または継続雇用制度のいずれかの措置を採用することで、65歳までの継続雇用の実現を義務づけています。  行政解釈として厚生労働省がホームページで公表している高年齢者雇用安定法のQ&Aにおいては、定年後の再雇用における労働条件の変更については、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示することが求められています(Q1-9およびA1-9参照)。さらに、フルタイムから嘱託やパートなどの労働時間、賃金、待遇などについては、事業主と労働者の間で決めることができるとされています(Q1-4およびA1-4参照)。  過去の連載(本誌2021年10月号)においては、定年後の労働条件の提示について、一定の継続性・連続性がない場合は、高齢法の趣旨に反して、違法との裁判例(名古屋高裁平成28年9月28日判決)が現れていることを紹介しました。当該裁判例は、定年後再雇用者に対して、フルタイムから短時間労働への変更を提示したうえで、月収ベースで定年前賃金の25%程度にまで減額される条件を提示した事案ですが、「定年退職前のものとの継続性・連続性に欠ける(あるいはそれが乏しい)労働条件の提示が継続雇用制度の下で許容されるためには、同提示を正当化する合理的な理由が存することが必要である」と判断しており、裁判所の判断も、行政解釈と同趣旨の理解をしています。  これらの再雇用時の条件提示にあたって、適法と認められなかった場合に、どのような結論になるのでしょうか。過去には、最高裁平成24年11月29日判決(津田電気計器事件)が、継続雇用拒否について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとしたうえで、社内で定められていた規程と同条件の雇用契約の存続を認めるという判断をしています。しかしながら、この事件では会社が再雇用を拒否したという点で、再雇用希望に対する労働条件を提示したがこれを労働者に拒絶された状況とは若干異なります。  そのため、労働条件の提示に不合理な点があったことが原因で定年後の再雇用に至らなかった場合において、当然に雇用継続が認められるわけではなく、損害賠償責任が肯定されるにとどまっているものも多い状況です。例えば、前掲の名古屋高裁平成28年9月28日判決においても、損害賠償責任のみが肯定されるに留まりました。 2 再雇用の合意の不成立  定年後再雇用の際に、合理的な条件を提示しつつ、再雇用の労働契約が成立しなかった場合、どのように判断されているのか、最近の裁判例を紹介したいと思います。  紹介する裁判例は、東京地裁令和元年5月21日判決(アルパイン事件)です。定年を迎える労働者に対して、事業部内の若返りを目的として、異動をともなう労働条件(異動以外の賃金や休日などの条件は従前と同一でした)を提示したところ、これに対して、従業員は、従前と同様の部署で働くことを希望して会社からの提示された条件に応じることなく、定年退職の日を迎えてしまいました。会社としては、定年退職後の合意が成立していないことから退職したものとしましたが、従業員は、前掲の津田電気計器事件を例にあげて、従前と同様の労働条件で労働契約が継続しているものとして争ったという事件です。  裁判所は、労働者の主張を退け、定年退職が成立しているものと判断しましたが、その理由としては、「継続雇用後の労働条件は、飽くまで、労使間の合意により定まるべきものであって、労働者が使用者に対して希望すれば直ちにその希望するがままに勤務部署や職務内容が定年前と同じ雇用契約が定年後も継続するというかのような原告の主張には、法律上の根拠がない」という内容でした。  また、この判断の前提として、会社が従業員に提示した労働条件について、従業員としては、契約期間、年間総労働日数、始終業時間、給与については同意していたことをあげたうえで、提示の際に変更された勤務部署、職務内容について、「客観的に見て誰にとっても到底受け入れられないような不合理なもの」であったと認められないとして、会社の提案の合理性を肯定しています。 3 労働条件提示における留意事項  現在の高齢法を前提にすると、過去に労使協定にて人選基準を定めていた場合には経過措置による人選基準の適用の余地がある程度であり、ほとんどの会社においては、希望する定年退職者に対しては、労働条件の提示をしなければならず、定年時において会社が提示することなく拒絶する可能性は低いでしょう。  そのため、津田電気計器事件における最高裁判例のように、継続雇用があったものとみなされる可能性は低くなっています。むしろ、労働条件の提示自体の合理性が重視されるようになっており、継続性・連続性が認められないような条件を提示してはならず、職務内容を大きく変更する場合にはそれに相応する程度の賃金などの条件変更にとどめる(または紹介した裁判例のように条件をできるだけ維持する)といった対応をとることが望ましいといえるでしょう。 Q2 ハラスメント防止措置とは具体的にどのような取組みをすればよいのか知りたい  ハラスメント防止措置が義務化されることや相談窓口の設置をしなければならないことは理解できているのですが、実際に相談がきたときの対応や調査方法のイメージがわきません。また、自分にハラスメントか否かを判断できるのか自信がなく、会社だけで対応しきれるのか心配です。 A  体制整備的な用意も必要ですが、懸念されている通り運用も確立しておくことは重要です。重視すべきは、結論を出すまでの迅速さと正確性を保つ努力であり、外部専門家も活用しながら対応することが重要です。 1 ハラスメント防止措置の概要  ハラスメント防止措置について、中小企業の義務化が2022年4月1日に迫っているなか、「何かしなければならない」ということは理解しつつも、具体的に対応すべき措置の内容や運用方法のイメージがつかめていない企業も見受けられます。  労働施策総合推進法において定められているのは、さほど複雑な内容ではなく、@相談に応じ適切に対応するための体制の整備、A@に定める相談体制の整備以外のハラスメント防止措置を講じること、B@の相談体制への相談や協力に対する不利益取扱いの禁止などです。  詳細は、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省)が定めています。  そのなかで事業主である企業に求められている項目をあげると、(ア)方針等の明確化及び周知・啓発、(イ)相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、(ウ)事後の迅速かつ適切な対応、(エ)再発防止策の実施、(オ)相談者のプライバシーへの配慮、不利益取扱いの禁止の周知、などです。  実務的な感覚としては、(ア)周知・啓発に関連する内容として、従業員や管理職向けのハラスメントに関する社内研修を依頼されることも多く、取組みが具体的に進み始めていることを実感していますが、一方で(イ)相談体制や(ウ)事後対応に関して、具体的なイメージが確立されていない会社が多いように感じています。 2 適切な対応と認められた裁判例  これでもなお抽象的なアドバイスにとどまってしまうところは否めませんので、裁判例で会社のハラスメント対応が適切と判断された事例を紹介しておきます。  東京地裁令和2年3月3日判決(海外需要開拓支援機構ほか事件)では、会社の専務執行役員であった者と専務取締役兼最高投資責任者の地位にあった者による行為が、違法なセクシュアルハラスメントに該当するか、また、会社がこれらに関する相談対応などの就業環境配慮・整備義務を怠っていたか、という点が争われました。  専務取締役兼最高投資責任者が行った行為は、従業員(女性)の肩に手を回そうとしたことおよび複数回肩に触れたことであり、専務執行役員が行った行為は、会社が開催した懇親会において、監査役または自身とともに映画に行くことや手づくりの贈り物をすることなどを内容とするくじ引きを実施したということでした。  前者については、身体的な接触をともなう性的な行動であり、本人の意に反するかぎりはセクシュアルハラスメントに該当するといえること、後者についても本人の意思を問うことなく、実質的に強制される要素があることからセクシュアルハラスメントに該当し、裁判所も両者の行為はいずれも違法なセクシュアルハラスメント(人格権侵害)であると判断し、5万円の賠償責任を負うと判断しました。  これらに関連して会社も賠償責任を負うか問題となりましたが、結論としては、会社の対応やその経緯をふまえて、会社の責任は否定されました。  会社は、社外ホットラインを務めていた弁護士に通報があった後、2日後には通報者から事情を聴取したうえで、関係者からの事情聴取を行い、当該弁護士に助言を依頼していました。ただし、肩を触った疑いのあった専務取締役兼最高投資責任者であった者については、通報時点で退職していたため、本人に対する調査は実施できませんでした。  弁護士からの助言内容は、くじ引きについては、違法なセクシュアルハラスメントには該当しないが、配慮や適切さに欠くものであったという助言を行い、肩を触ったか否かについては目撃証言がなく行為の存在と認定することができないという判断でした。会社は、これらの助言通りに、通報者に対して報告を行い、くじ引きを行った専務執行役員を厳重注意すると伝え、実際に厳重注意を実施しました。  弁護士からの助言およびそれに基づく会社から通報者への報告内容は、裁判所が違法なセクシュアルハラスメントに該当すると判断した結論とは相違しており、会社としてはあたかも判断を誤ったかのように見えるかもしれません。しかしながら、迅速な調査を行う必要があり、裁判のように充実した証拠を基に判断できるわけではないことから、判断が正しかったか否かを問題とすることは、会社に結果責任を負わせることになります。  裁判所は、会社が「原告の意向のままにハラスメントと認定し、原告の望むままの処分をしなければならない法律上の義務はない」と述べたうえ、会社の調査プロセスをふまえると、その調査や判断の過程に不適切な点があったとはいえないとしました。退職済みであった専務取締役兼最高投資責任者の行為に関しても同様です。  判決の結論と相違したことについては、裁判において「不法行為と判断されたことをもって、被告B社の調査や被告C(注:専務執行役員)に対する処分が不合理であったというべき根拠はない」と判断しています。 3 相談窓口と事後の対応の留意点  相談窓口の設置として、外部通報窓口を設置することも増えており、それを法律事務所(弁護士)が受けていることもあります。紹介した裁判例でも弁護士が外部通報窓口として対応しており、さらにその後の助言も行っています。  ハラスメントに該当するか否か、その結論の正しさに気を取られがちですが、会社に求められているのは、結果として必ず正しい判断をすることではなく、適切な対応をすること、そのプロセスが重要です。  プロセスを見るにあたって、裁判例で着目すべきはその迅速さと専門家の活用です。通報の2日後に着手していること、外部専門家の助言を受けていること、そして、その結果を通報者に報告しています。ここまでの一連のプロセスを迅速に対応することを目ざすことが重要であり、ハラスメントに該当するか否か正確に判断することに気を取られすぎてはいけません。調査のプロセスが十分に合理的であれば、会社の責任にまでは至らないこともあります。  ハラスメントの調査にあたっては、結論を決めることに委縮しすぎたり、慎重になりすぎることなく、プロセスを確立して、自社なりの判断を着実に実施することが重要ともいえるでしょう。 【P46-47】 退職者への作法 社会保険労務士 川越雄一  生涯現役時代を迎え60歳、65歳を超えて働くことがあたり前となり、多くの高齢者が知識や技術、経験を活かして会社に貢献しています。とはいえ、そんな高齢者もやがて退職するときを迎えるもの。それまでの貢献に感謝を示し、気持ちよく退職をお祝いしたいところですが、ちょっとした行き違いにより“退職トラブル”が起こってしまうこともあります。退職時の手続きやトラブル防止のポイントについて、社会保険労務士の川越(かわごえ)雄一(ゆういち)氏が指南してきた本連載も、今回が最終回です。 最終回 退職日に花道を用意しよう 1 はじめに  終わりよければすべてよし≠ニいうことわざがあります。物事は最終の結末がもっとも大事であり、途中の過程は問題にならないという意味ですが、雇用関係においても似たようなことがいえます。最終の結末を退職日とすれば、その日は長年の労に報いるためにも花道を用意し、気持ちよく送り出したいものです。 2 退職感謝状に感謝の気持ちを託す  定年まで勤め上げてくれたことに対して、最後の日には感謝の気持ちを退職感謝状にして伝えましょう。長年勤務してくれていると照れもあり、「何もそこまでしなくても」という思いもあるかもしれませんが、最後だからこそ、かしこまって、手紙にしてはどうでしょうか。 ●入社してからうん十年  考えてもみてください。コツコツうん十年♂社に勤め続けてくれたのです。定年退職者は、口にはしないまでも「いよいよ終わりか、これからどうしよう」という不安も少なからずあります。定年まで勤め続けてくれたわけですから、決して少なくはない会社への貢献があったはずです。 ●最後は感謝されたいもの  人に「ありがとう」と感謝するのは大切ですが、たまには人から「ありがとう」と感謝されたいものです。特に、長く働いた会社で迎える定年退職日はなおさらです。また、退職者を陰で支えながら、定年退職日を迎えさせてくれた家族も同じです。家族あっての退職者、退職者あっての会社ですから、キチンとかしこまって感謝の気持ちを伝えたいところです。 ●退職感謝状にジーンとくる  退職感謝状というのは、退職者やその家族に差し出す感謝の手紙です。在職期間をふり返り、「長い間、本当にありがとうございました」のひと言でも、退職者やその家族はジーンとくるものです。もちろん、この手の手紙はトップによる手書きがよりのぞましいでしょう。面と向かうと照れもあって、うまく伝えられない感謝の気持ちを退職感謝状にしたためます。 3 新しい生活様式によりオンライン送別会を開催する  コロナ禍にあり、従来のような対面による送別会開催はむずかしいと思いますが、何もしないのではなく、新しい生活様式により工夫して、何らかの形で開催したいものです。 ●オンラインによる送別会  このご時世、対面による送別会の開催はむずかしいので、オンラインによる開催はどうでしょう。お料理はレストランなどのデリバリーサービスを利用して、参加者の自宅などへ届けます。参加者が同じ時間に同じものを食べることで、対面に近い雰囲気になります。できれば、退職者の家族ぶんも届けましょう。 ●送別会は退職者のためならず  送別会の開催は、本人はもちろん、ほかの従業員にとっても重要です。若い従業員も、いずれは定年を迎えますから、会社が退職者へどのような対応をするかはおおいに気になるところです。表向きはどうであろうと、明日は我が身≠ネのです。つまり、送別会の開催は退職者のためだけではなく、ほかの従業員にも安心感を与えるなど好影響を及ぼします。 ●裏方さんにも心配りを欠かさない  オンライン開催の場合、対面とはまた違った手間がかかります。Webミーティングに不慣れな人へのサポート、開催途中の通信トラブルへの対応など、終了するまで緊張の連続です。  そのような役目をになってくれる裏方さんにも心配りが必要です。「あなたのおかげで立派な送別会ができたよ。ありがとう」。このひと言で裏方さんの苦労も報われます。 4 まさかの演出で退職日を感動の日にする  基本的には、一生に一度しかない定年退職日ですから感動の日にしたいところです。そのためには、それなりの演出も必要でしょうし、そのようなまさか≠ノ感動が生まれるのです。 ●その日が普段通りでは寂しすぎる  退職日は特別な日ですが、終業時刻となり、普段通り「おつかれさま」のひと言で退勤させるのは寂しすぎます。前述したように、会社の対応はほかの従業員も見ていますから、「うちの会社って、ちょっと冷たすぎる」などということにもなりかねません。 ●特別な日を演出する  長年勤めていればいるほど、定年で会社を去る日というのは特別なものです。1日24時間のうち、起きている時間のほとんどを過ごしてきた会社です。もちろん、嫌なこともあり、出勤したくなかった日も数えきれないほどあったかもしれません。しかし、明日からは出勤したくてもできないのです。そのような特別な日ですから何らかの演出が必要です。 ●まさか≠ノ感動が生まれる  人は期待以上のことをされると感動します。ですから、退職者をみんなで拍手をもって送り出すとか、花束を贈呈するとか、何らかの工夫で花道を用意してはどうでしょうか。花束は自宅に持ち帰るでしょうから、家族も感動の余韻に浸ることでしょう。そして、家族からの「長い間おつかれさまでした」のひと言に、つい涙腺も緩みます。 5 おわりに  2021(令和3)年4月から「70歳までの就業確保措置」が会社の努力義務となりました。そのぶん、勤続期間が長くなり、在職期間中の貸し借りも増えますから、ますます退職時の対応が重要になってくるのではないでしょうか。ですから、終わりよければすべてよし≠フ如く、退職時には何らかの花道を用意し、気持ちよく送り出すことが肝要なのです。 図表 退職日に用意する三つの花道 退職 感謝状 (非対面の)送別会 退職日の演出 花道 ほかの従業員 退職者本人 退職者家族 ※筆者作成 【P48-49】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第22回 「セルフ・キャリアドック」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回はセルフ・キャリアドックについて取り上げます。この用語をインターネットで検索すると厚生労働省による特設サイトや資料が多く表示され、普及に関して力が入れられていることがわかります。一方で、現状ではあまり普及しているとはいいがたい制度でもあります。企業内で導入・実践していくとメリットが期待できる仕組みでもありますので、概略を解説していきたいと思います。 セルフ・キャリアドックの定義と意義  セルフ・キャリアドックに関する資料のなかで全体像が把握でき、具体的な事例や導入に際して役立つフォーマットが掲載されているものに「『セルフ・キャリアドック』導入の方針と展開」(厚生労働省)という冊子があります。そこではセルフ・キャリアドックについて「企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の『仕組み』」と定義づけています。まとめると、従業員が主体的にキャリアについて考えることを企業が支援する仕組みともいえます。  ここで、個人の課題であるキャリア形成について、なぜ国や企業が促進・支援していかなければならないのかという疑問が生じるかもしれません。そこで意義を理解するために、導入の背景について触れていきます。  セルフ・キャリアドックについて提言されたのは、第2次安倍内閣における成長戦略をまとめた「日本再興戦略改訂2015」のなかです。ここでは、変化の激しい環境に対応するために、一人ひとりが持てる能力をプロとして最大限発揮することが求められ、そのためには自らのキャリアについて立ち止まって考える「気づきの機会」が必要と提言されています。日本再興戦略2016のなかではその具体策として、セルフ・キャリアドックの導入・推進について述べられています。  連動する形で、2016(平成28)年4月1日施行の改正職業能力開発促進法の第10条の3第1号において、業務の遂行に必要な技能およびこれに関する知識の内容および程度その他の事項に関し、情報の提供、キャリアコンサルティングの機会の確保その他の援助を行うことが事業主に求められるようになりました。これらにより、セルフ・キャリアドックは従業員・事業主の双方が実施に努めるものとして規定されることになりました。 セルフ・キャリアドックの実施内容  国が掲げる目的は理解できたとしても、従業員や企業にとっての導入のメリットがないと導入は進みません。厚生労働省の資料では、次の四つの対象者と期待効果を提示しています。 @新卒採用者…仕事の向き合い方やキャリアパスの明示などを通じて、職場への定着や仕事の意欲が高まる。 A育児・介護休業者…仕事と家庭の両立にかかわる不安の解消や課題解決を支援し、職場復帰を円滑に行う。 B中堅社員…職業人生の後半戦に向けて、キャリアを再構成しモチベーションの維持・向上を図る。 Cシニア社員…これまでのキャリアの棚卸しをし、目標を再設定することで、シニア期の充実した職業・人生の設計を行う。  具体的にセルフ・キャリアドックでは何を行うのでしょうか。大きくは三つの実施事項があります。一つめは、多くの従業員にキャリア形成の重要性を理解し、自身のキャリアの棚卸しやキャリア目標・アクションプランを作成するきっかけとなるキャリア研修を集合形式で実施します。二つめは、従業員とキャリアコンサルタントが一対一で面談するキャリアコンサルティングを実施します。ここでは、自身の働き方で大切にしていることや企業から求められる役割や責任を確認したうえで、各々にあったキャリアビジョンや行動計画をつくりこんでいきます。三つめはフォローアップです。守秘義務のある個別の内容は除き、キャリアコンサルティング対象者全体のキャリア意識の傾向や組織的な課題がキャリアコンサルタントから事業主へと報告されます。その解決を図るとともによりよい仕組みにしていくために継続的な改善を行います。より具体的な進め方については、図表をご参照ください。 セルフ・キャリアドックの普及はこれから  セルフ・キャリアドックの普及状況については、2020(令和2)年度「能力開発基本調査」(厚生労働省)が参考となります。このなかにキャリアコンサルティングを行う仕組みの導入状況が設問としてありますが、キャリアコンサルティングを行う仕組みがない企業は61.4%にのぼっています。キャリアコンサルティングを行っていない理由のなかで最も多いのは、「労働者からの希望がない」が正社員で48.2%、ほか着目すべき理由として「労働者がキャリアに関する相談をする時間を確保するのが難しい」が25.0%となっています。この結果は、キャリア形成の必要性に関する国と企業・従業員との意識のギャップがまだまだ大きいことを示しています。今後、環境変化はさらに加速化し、職業人生が長期化するなか、自身のキャリアに関する考えにその都度修正が求められていくのは想像にかたくありません。仕組みよりもまずは、セルフ・キャリアドックの意義や必要性をより浸透させていくことが課題と考えられます。  次回は「サクセッションプラン」について取り上げます。 図表 セルフ・キャリアドックの標準的プロセス 1 人材育成ビジョン・方針の明確化 @経営者のコミットメント A人材育成ビジョン・方針の策定 B社内への周知 2 セルフ・キャリアドック実施計画の策定 @実施計画の策定 A必要なツールの整備 Bプロセスの整備 3 企業内インフラの整備 @責任者等の決定 A社内規定の整備 Bキャリアコンサルタントの育成・確保 C情報共有化のルール D社内の意識醸成 4 セルフ・キャリアドックの実施 @対象従業員向けセミナー(説明会)の実施 Aキャリア研修 Bキャリアコンサルティング面談を通した支援の実施 C振り返り 5 フォローアップ @セルフ・キャリアドックの結果の報告 A個々の対象従業員に係るフォローアップ B組織的な改善措置の実施 Cセルフ・キャリアドックの継続的改善 出典:『「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開』(厚生労働省)p.7 【P50-54】 特別寄稿 「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」結果 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT) 調査部主任調査員 渡邊(わたなべ)木綿子(ゆうこ)  2020(令和2)年に施行されたパートタイム・有期雇用労働法により義務化された同一労働同一賃金(中小企業は2021年4月より適用)。定年後継続雇用の高齢社員の処遇とも大きくかかわってくるため、読者のみなさんにとっても興味あるテーマではないでしょうか。そこで本稿では、企業における同一労働同一賃金の対応状況について、調査結果をもとにJILPTの渡邊木綿子氏に解説していただきました。 はじめに  雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けて、2020年4月にパートタイム・有期雇用労働法が施行されました。そこで、(独)労働政策研究・研修機構では、いわゆる「同一労働同一賃金ルール」に企業がどう対応しているかを把握するため、全体的な状況についてはアンケート調査を、また、個別企業の具体的な取組みについてはヒアリング調査を実施しました※1。このうち、アンケート調査については、産業・規模別に層化無作為抽出した全国の10人以上規模の企業2万社を対象に、2020年10月14日〜11月18日に実査しました。偶然にも、調査票の配布時期が待遇格差を巡る計5件の最高裁判決と重なったため、回答企業の関心も高く、9027社(45.1%)の有効回答を得ることができました。本稿では、こうした調査結果を基に、企業の対応状況を見ていきます。 同一労働同一賃金ルールの認知度と対応状況  まず、「同一労働同一賃金ルール」はどの程度、浸透しているのでしょうか。全有効回答企業(n=9027)を対象にたずねると、「ルールの内容を知っている」との回答は64.0%で、「内容はわからないが、同一労働同一賃金という文言は聞いたことがある」が31.4%、「まったく知らない・わからない」が2.7%となりました。結果として、文言のみを含めた認知度は9割を超えますが、内容までの認知度は3分の2弱となっています。属性別にみても、「まったく知らない・わからない」との回答は多くありませんが、「内容はわからない」と回答した割合は「建設業」で39.9%、「宿泊業、飲食サービス業」で37.2%と高く、また「301人以上」で5.2%、「50人以下」で37.0%と、小規模企業ほど高くなっています。  パートタイム・有期雇用労働法に基づく「同一労働同一賃金ルール」は私法上の効力を有する規定であり、待遇差が不合理で法違反と司法判断された場合は、その待遇差が無効になるとともに損害賠償の対象になります※2。事業主がこうしたことを知らずに必要な対応を行わなければ大きなトラブルに発展する恐れもあり、ルールの周知徹底が求められます。  それでは、「同一労働同一賃金ルール」への対応の進捗状況はどうなっているのでしょうか。パート・有期社員を雇用している企業(n=6877)を対象に雇用管理の見直し状況をたずねると、「既に必要な見直しを行った(対応完了)」が14.9%、「現在、必要な見直しを行っている(対応中)」が11.5%、「今後の見直しに向けて検討中(対応予定)」が19.5%で、総じて、「同一労働同一賃金ルール」に対応するために何らかの「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」の企業が、合わせて半数弱となりました(図表1)。他方、「対応方針は未定・わからない」企業は5社に1社ほどであり、「宿泊業、飲食サービス業」(28.0%)などのほか、小規模企業ほど高くなっています(「301人以上」で6.4%〜「50人以下」で21.4%)。また、「従来通りで見直しの必要なし(対応完了)」との回答は3分の1超で、「建設業」(46.2%)や「運輸業、郵便業」(41.3%)などで高く、小規模企業ほど高まる傾向(同順に16.5%〜39.1%)がみられます。  それでは、「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」の企業(n=3152)では、どのような内容の見直しが行われているのでしょうか。複数回答でたずねると、最多は「左記(すなわち正社員と職務・人材活用とも同じ)以外のパート・有期社員の待遇の見直し」(いわゆる均衡待遇への対応)で42.9%となりました。また、その両隣の選択肢を合わせ、「待遇面」での何らかの見直し関連が半数超となっています。そのうえで、これに続くのは「正社員とパート・有期社員の、職務分離や人材活用の違いの明確化」の19.4%であり、大規模企業ほど高まる傾向(「50人以下」で15.6%〜「301人以上」で27.8%)がみられます。  なお、「正社員とパート・有期社員の、職務分離や人材活用の違いの明確化」については「労働条件の明示や説明」、「就業規則や労使協定の改定」などといった選択肢との同時回答が多くなっていますが、これのみの企業も3.6%みられます。正社員の職務などとの完全な分離が進んでしまうと、非正社員の職業能力形成やその後の正社員転換の可能性などの観点からは好ましくない影響も懸念され、その動向は引き続き注視する必要があります。このほか、見直し内容としては、「就業規則や労使協定の改定」が18.6%、「労働条件(正社員との待遇差の内容・理由を含む)の明示や説明」が17.0%、「パート・有期社員の正社員化や正社員転換制度の導入・拡充」が12.8%などとなりました。  そのうえで、「待遇の見直し」関連(56.0%)をあげた企業(n=1765)の具体的な中身をみると、回答割合がもっとも高いのは、「@基本的な賃金の増額や拡充」(43.4%)であり、これに「A昇給の増額や拡充」(33.7%)、「B賞与の増額や拡充」(28.8%)、「C通勤手当(交通費支給を含む)の増額や拡充」(19.7%)、「D慶弔休暇の拡充」(16.9%)などが続きました(図表2)。このほか、退職金・退職手当や住宅手当、家族手当などをあげた企業も一定割合みられ、「同一労働同一賃金ガイドライン」を上回るような見直しも進められている様子がうかがえます※3。  また、こうした結果を大括りに分類すると、何らかの「手当関係」をあげた割合が、企業規模によらず7割を超えています(「50人以下」で77.3%〜「301人以上」で79.5%)。一方、「基本給関係」の回答割合は、小規模企業になるほど高まる傾向もみられます(「301人以上」で41.0%〜「50人以下」で71.9%)。なお、正社員のいずれかの待遇要素の「減額や縮小」「(制度の)廃止」をあげた割合は、「運輸業、郵便業」(同順に23.0%、20.3%)や「宿泊業、飲食サービス業」(同順に20.0%、16.2%)などで高いほか、「(制度の)廃止」は小規模企業ほどやや高く(同順に7.2%〜11.7%)、正社員の待遇悪化につながる恐れも危惧されます。 対応上の課題と活用ツール  ところで、「同一労働同一賃金ルール」への対応にあたっては、どのようなことが課題となっているのでしょうか。「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」に「対応方針は、未定・わからない」を加えた企業群(n=4488)でみると(複数回答)、@「人件費負担の増加、原資の不足・捻出」の47.1%と、A「待遇差が不合理かどうかの判断」の45.8%がともに高く、次いで、B「(人件費に見合う)生産性の向上」(28.4%)やC「ルールの理解(情報収集等)」(26.9%)、D「待遇差の説明のあり方(納得性等)」(25.6%)などがあがり、「特にない」が14.8%となりました。  このうち、「人件費負担の増加、原資の不足・捻出」は、企業規模によらない共通の課題となっています(「50人以下」で43.7%〜「301人以上」で50.9%)。一方で、「待遇差が不合理かどうかの判断」(同順に39.2%〜62.6%)や「待遇差の説明のあり方(納得性等)」(同順に19.4%〜41.0%)などは、大規模企業ほど高くなっています。なお、「その他」の自由記述欄には、待遇改善にともない働ける時間が減少し、人手不足に拍車がかかるという「扶養控除等に伴う年収上限(労働時間制約)」の問題を課題にあげる声などが寄せられ、引き続きの政策課題として注目されます。  それでは、「同一労働同一賃金ルール」への対応にあたり、どのようなツールが活用されているのでしょうか。「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」の企業(n=3152)にたずねると(複数回答)、最多は「社会保険労務士や弁護士等への相談」の47.0%であり、これのみとの回答も15.4%みられました。対応上の課題として「待遇差が不合理かどうかの判断」などが多くあげられていたことと呼応する形であり、「同一労働同一賃金ルール」への対応上、いかに社会保険労務士や弁護士などの先生方の役割が大きいかをうかがわせる結果となっています。この点、ほかの法令とは異なる対応のむずかしさを浮き彫りにしているといえるかもしれません。このほか、活用ツールとしては「ホームページ(厚生労働省のパート・有期労働ポータルサイト等)」(35.3%)や「同一労働同一賃金ガイドライン」(31.1%)、「リーフレット、パンフレット」(24.2%)などが続きました。 労使の話合いの状況と効果  こうしたなか、「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」の企業(n=3152)を対象に、ガイドラインが望ましいとする労使の話合いの状況についてたずねると、「パート・有期社員を含めた労使の話合いを行った(行う)」との回答は3分の1(33.3%)であり、「労使の話合いは行った(行う)が、パート・有期社員は含まれていない」(13.3%)を含めても約半数にとどまりました。労使の話合いを行った(行う)との回答は、大規模企業ほど高まる傾向(「50人以下」で43.6%〜「301人以上」で61.5%)がみられますが、同時に、話合いにパート・有期社員は含まれていない(同順に9.9%〜25.8%)とする割合も高くなっています。  一方、本調査では「同一労働同一賃金ルール」への対応で得られた(得られると見込む)効果についてもたずねていますが(複数回答)、労使の話合いの状況との関係を調べると、「職場の公平・公正化や納得感の醸成」や「働く意欲や生産性の向上」などといった効果の実感は、労使の話合いを行っている企業ほど、さらに、話合いにパート・有期社員を含めている企業ほど高いことが分かります(図表3)。労使の話合いについては、労働組合の有無によらず、非正社員当事者を含めた臨時の委員会や検討会の設置、さらにはアンケートなどの形で対応している企業もみられます。わが国の「同一労働同一賃金ルール」は、「均等待遇」と「均衡待遇」の二本立てで成り立っており、後者についてはどのような待遇差を不合理とみるかの「公平・公正さ」や「納得性」が重要な鍵を握っています。こうした「納得性」を高めつつ、さらに「生産性向上」などのメリットを享受するためにも、「労使の話合い」を推進していく必要があるのではないでしょうか。 継続雇用社員を巡る取組み事例  最後に、当機構労働政策研究所の統括研究員である藤澤美穂が担当したヒアリング調査より、定年後継続雇用の高齢社員の待遇見直しにふみ込んだ取組み事例を紹介します。ネットワーク総合サービスなどを提供するB社では、今後、増加が見込まれる高齢社員にモチベーション高く働いてもらえるよう、待遇改善が必要と考えていたそうです。そこで、パートタイム・有期雇用労働法への対応に向けて、待遇の点検を行い、他社事例を参考にしながら見直しが必要な待遇要素を洗い出し、また、年金制度などとの関連性も確認しつつ見直し案を作成し、委員会も立ち上げて一年にわたる社内協議を重ねました。結果として、定年後継続雇用の高齢社員にはこれまで支給対象外だった「賞与」を「正社員と同様の仕組み(目標管理制度で九段階評価し、評価結果に基づき決定)で支給する」とともに、「単身赴任手当」と「(出張や応援業務など異なる場所での勤務にともなう)日当」も「正社員と同様の基準で支給する」ことを決めました。こうした取組みを通じ、同社は「社員が気持ちよく働ける職場づくりを進めており、満足度向上に寄与するものと期待」しています。 ※1 調査シリーズ214『「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」結果』(https://www.jil.go.jp/institute/research/2021/214.html) ※2 JILPTの第117回労働政策フォーラム「多様な働き方を考える─『同一労働同一賃金』ルールをめぐる現状と課題」の牧野利香・厚生労働省雇用環境・均等局 有期・短時間労働課長の基調講演(https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20211126/video/index.html)参照 ※3 有為人材確保論の進展等にともなう、待遇改善の取組みに対する影響も注視していく必要がある 図表1 「同一労働同一賃金ルール」への企業の対応状況 パート・有期社員を雇用している企業(6,877社) 既に必要な見直しを行った(対応完了) 14.9% 現在、必要な見直しを行っている(対応中) 11.5% 今後の見直しに向けて検討中(対応予定) 19.5% 対応方針は、未定・わからない 19.4% 従来通りで見直しの必要なし(対応完了) 34.1% 無回答 0.6% (単位:%) 回答企業数(社) 具体的な見直し内容(複数回答) 待遇の見直し関連計※ 正社員と職務・人材活用とも同じパート・有期社員の待遇の見直し(いわゆる均等待遇への対応) 左記以外のパート・有期社員の待遇の見直し(いわゆる均衡待遇への対応) 正社員の待遇の見直し(引下げ等) 正社員とパート・有期社員の、職務分離や人材活用の違いの明確化 就業規則や労使協定の改定 労働条件(正社員との待遇差の内容・理由を含む)の明示や説明 パート・有期社員の正社員化や正社員転換制度の導入・拡充 正社員を含めた待遇の整理や人事制度の改定 パート・有期社員に対する相談体制の整備や担当者の設置 パート・有期社員の活用縮小(外注化や機械化・自動化を含む) パート・有期社員と職務や人材活用が類似する、正社員区分(一般職等)の廃止や縮小 その他 具体的な内容は検討中 無回答 「同一労働同一賃金ルール」に対応するため、必要な見直しを行った・行っている、または検討中の企業計 3,152 56.0 18.8 42.9 6.1 19.4 18.6 17.0 12.8 10.7 5.0 1.7 1.0 0.3 8.2 8.7 主たる業種 建設業 205 54.6 17.1 42.0 5.4 8.3 16.1 17.1 6.3 6.8 2.9 2.4 0.5 0.5 8.3 10.7 製造業 579 53.0 18.1 38.3 6.0 18.8 14.9 17.4 10.5 10.4 4.1 3.3 2.1 0.7 9.5 8.8 運輸業、郵便業 118 62.7 22.9 44.1 8.5 12.7 11.9 12.7 3.4 6.8 1.7 2.5 2.5 − 10.2 11.9 卸売業、小売業 480 51.0 14.6 39.8 5.8 20.0 17.1 15.8 13.8 12.7 4.0 1.5 1.5 − 7.5 11.5 医療、福祉 814 58.5 20.0 45.8 5.7 21.1 19.0 16.6 16.5 9.2 5.4 0.6 0.2 0.5 8.7 7.7 サービス業計 640 55.6 19.5 42.2 7.7 22.0 21.7 18.6 13.6 12.8 6.6 1.6 1.1 0.3 6.9 8.0 (うち、宿泊業、飲食サービス業) 208 50.5 22.1 38.0 9.6 24.0 23.1 20.7 19.7 17.8 9.1 0.5 1.9 0.5 7.7 6.7 常用雇用者の規模 50人以下 1,792 55.1 17.2 41.4 5.8 15.6 15.3 16.0 11.0 9.0 4.6 2.0 1.2 0.4 7.9 9.9 51人以上100人以下 581 55.1 21.3 41.8 5.7 21.5 22.5 18.8 17.0 11.7 5.9 1.2 0.3 − 10.2 6.7 101人以上300人以下 492 54.7 19.5 42.5 6.9 26.6 21.5 18.7 13.2 13.0 5.3 1.6 1.2 0.4 8.7 7.5 301人以上 252 65.9 21.4 56.3 7.5 27.8 28.2 18.3 14.3 15.5 6.0 0.4 0.8 0.4 6.0 6.7 ※参考・復元集計 計 55.3 18.3 42.3 5.9 19.5 18.3 17.4 12.5 11.1 5.0 1.8 1.1 0.3 8.4 8.7 中小企業 54.0 18.3 40.7 5.6 19.1 17.4 17.0 12.3 11.3 4.8 1.9 1.2 0.4 8.9 8.9 大企業 62.2 17.2 54.3 6.2 26.5 24.7 18.9 13.9 12.8 6.2 − 0.4 0.7 8.3 6.9 ※アンケート調査の「主たる業種」及び「常用雇用者の規模」の回答を基に、経済センサスの企業分布をベースに復元するとともに、更に、民間信用調査機関のデータベースに登録されている「主たる業種の中分類・小分類」及び「資本金・出資額」情報を連結し、いわゆる大企業・中小企業の分類集計を行ったもの ★筆者作成 図表2 「待遇面」の具体的な見直し内容 (単位:%) 「必要な見直しを行った・行っている、または検討中」として待遇の見直し関連をあげた企業n=1,765を100として (複数回答) パート・有期社員 正社員 (制度の)新設 増額や拡充 減額や縮小 (制度の)廃止 無回答 いずれかの回答企業 基本給 基本的な賃金(賃金表を含む) 11.4 @43.4 4.4 − 2.9 64.6 昇給(評価・考課を含む) 11.7 A33.7 4.4 0.6 手当関係 賞与(特別手当) E16.2 B28.8 5.0 1.0 77.9 家族手当 7.9 7.9 1.5 4.4 住宅手当 5.6 6.2 2.2 5.0 役職手当 4.9 7.5 3.1 1.9 業務の危険度や作業環境に応じた特殊作業手当 2.7 5.2 1.1 2.2 交替制勤務等の勤務形態に応じた特殊勤務手当 2.3 4.6 1.0 2.1 精皆勤手当 3.1 3.9 1.2 4.1 時間外、深夜・休日労働に対する手当(割増率を含む) 5.0 F14.6 2.3 0.6 通勤手当(交通費支給を含む) 10.7 C19.7 2.0 0.6 食事手当 2.5 3.5 1.0 3.7 単身赴任手当 0.8 0.7 0.6 3.6 特定の地域で働く補償としての地域手当 1.2 1.1 0.3 3.6 退職金(退職手当) 7.6 9.2 1.8 1.8 それ以外の手当 2.4 2.0 0.3 1.5 福利厚生、その他 給食施設、休憩室、更衣室の利用 2.7 9.8 1.0 0.7 49.0 それ以外の福利厚生 1.9 3.9 0.7 0.7 慶弔休暇 10.1 D16.9 1.9 0.3 健康診断に伴う勤務免除や有給の保障 6.0 G14.2 1.4 0.3 病気休職 5.3 10.8 1.4 0.7 勤続期間に応じた法定外(有給)の休暇 6.3 12.4 1.4 0.5 それ以外の休暇・休職 3.0 4.5 0.7 0.7 教育訓練 3.1 9.0 1.3 0.7 その他 1.1 0.7 0.2 0.5 いずれかの回答企業 95.0 12.6 10.5 基本給 62.8 6.1 0.6 手当関係 73.8 9.9 10.0 福利厚生、その他 48.0 3.8 2.5 ★筆者作成 図表3 労使の話合いの状況別にみた「同一労働同一賃金ルール」への対応で得られた(得られると見込む)効果 必要な見直しを行った・行っている、または検討中の企業計(n=3,152) 労使の話合いは行っていない(行わない)(n=1,524) 労使の話合いは行った(行う)が、パート・有期社員は含まれていない(n=419) パート・有期社員を含めた労使の話合いを行った(行う)(n=1,050) (複数回答) 職場の公平・公正化や納得感の醸成 40.3 34.2 44.9 51.2 働く意欲や生産性の向上 39.1 35.4 43.0 47.1 人材の確保・定着(採用・教育訓練コストの減少を含む) 28.8 26.6 31.7 33.1 企業イメージの改善 8.4 7.2 9.8 10.0 訴訟リスクの低下 8.7 7.5 10.7 10.9 労働組合によるパート・有期社員の組織化(過半数代表性の確保を含む) 0.5 0.3 0.5 0.7 その他 0.6 0.5 0.2 0.9 特にない・わからない 28.5 37.4 24.8 19.8 無回答 4.3 1.2 0.2 1.0 【P55】 BOOKS 労働安全衛生法の全体像とポイントをていねいに解説 改訂版わかりやすい労働衛生管理 角森(かくもり)洋子(ようこ) 著/産労総合研究所出版部経営書院/2420円  働き方の多様化や職業人生の長期化が進むなか、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する健康経営に取り組む企業が増えている。そのうえで必要不可欠となるのが労働安全衛生法である。本書は、難解だといわれる同法の内容や仕組みをわかりやすく解説する。  まず、労働安全衛生法の全体像を理解するために、第1章では同法の体系を説明。以下、安全衛生管理体制、健康診断、過重労働対策などの全20章で構成。第11章では、高年齢労働者の安全と健康確保対策を取り上げている。  必要に応じて具体的な措置が法令・指針・通達のどこに規定されているかが確認できるように、根拠条文・通達番号を示し、指針・ガイドラインについては、インターネットで検索できるようにURLを掲載。Q&Aも盛り込んで、実務のポイントを簡潔に示している。  本書は、2015年出版の『わかりやすい労働安全衛生管理』から6年が経ち、この間の法律・省令・ガイドラインなどの多くの改正をふまえて、改訂版としてまとめられた。職場で労働衛生管理にたずさわっている担当者をはじめ、労働衛生管理をあらためて学びたい人などにとっても理解を深めやすい一冊となっている。 「変える」のではなく、「還(かえ)る」ことを支援するコミュニケーション手法が学べる コーチングよりも大切なカウンセリングの技術 小倉(おぐら)広(ひろし) 著/日経BP日本経済新聞出版本部/1760円  テレワークの開始や社内行事の自粛など、コロナ禍で職場環境が変化しているなか、よく聞かれるようになった職場の課題の一つが、社内のコミュニケーション不足である。  著者の小倉広氏は、年間300回超の管理職研修を行う講師であり、国家資格の公認心理師を有し、心理カウンセラーとして経営者や管理職、会社員らの話に耳を傾ける機会も多い。管理職から聞かれる多くの悩みは、部下とのコミュニケーションであり、一方で部下からは、「テレワークで上司にどう思われているか不安」といった心境が聞かれ、「職場のコミュニケーションが機能不全を起こしている」と小倉氏が感じたことが本書の執筆につながった。  「不確実で先が読めない現代は、先が読めずゴールすら描けないことを認め受け容れ、そのうえで上司と部下が二人三脚で試行錯誤を重ねていく、カウンセリングこそが求められる時代なのではないか」と小倉氏。本書では、会社員が職場で使える「カウンセリング型コミュニケーション」の技術を、マンガも用いながら具体的なケースを示してわかりやすく説いている。  社員とのコミュニケーションに悩んでいる経営者や管理職、リーダーにおすすめしたい。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P56-57】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  高年齢者活躍企業コンテストは、高年齢者が長い職業人生のなかで培ってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。  多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容 働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度(特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)の導入 A創業支援等措置(70歳以上までの業務委託・社会貢献)の導入 B賃金制度、人事評価制度の見直し C多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 D各制度の運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組み @高齢従業員のモチベーション向上に向けた取組や高齢従業員の役割等の明確化(役割・仕事・責任の明確化) A高齢従業員による技術・技能継承の仕組み(技術指導者の選任、マイスター制度、技術・技能のマニュアル化、高年齢者と若年者のペア就労) B高齢従業員が活躍できるような支援の仕組み(職場のIT化へのフォロー、力仕事・危険業務からの業務転換) C高齢従業員が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D中高齢従業員を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施(キャリアアップセミナーの開催) E高齢従業員による多様な従業員への支援の仕組み(外国人実習生や障害従業員等への支援・指導役、高齢従業員によるメンター制度) F新職場の創設・職務の開発 等 高年齢者が働き続けられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善(高年齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮、創業支援等措置対象者への作業 機器の貸出) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化(健康管理体制の整備、健康管理上の工夫・配慮) B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組み(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 U 応募方法 1.応募書類など イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラストなど、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。また、定年制度、継続雇用制度及び創業支援等措置について定めている就業規則等の該当箇所の写しを添付してください。なお、必要に応じて追加書類の提出依頼を行うことがあります。 ロ.応募様式は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京及び大阪においては高齢・障害者業務課又は高齢・障害者窓口サービス課)にて、紙媒体または電子媒体により配布します。また、当機構のホームページ(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html)からも入手できます。 ハ.応募書類などは返却いたしません。 2.応募締切日 令和4年3月31日(木)当日消印有効 3.応募先 各都道府県支部高齢・障害者業務課へ提出してください。 V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)平成31年4月1日〜令和3年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)及び「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)令和3年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和3年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)令和3年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度を導入(※)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※平成24年改正の高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 各賞 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※上記は予定であり、次の「X 審査」を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査 応募のあった事例について、学識経験者等から構成される審査委員会を設置し、審査します。 なお、応募を行った企業等または取組等の内容について、労働関係法令上または社会通念上、事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される問題(厚生労働大臣が定める「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」等に照らして事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される内容等)が確認された場合は、この点を考慮した審査を行うものとします。 Y 審査結果発表など 令和4年9月中旬をめどに、厚生労働省および当機構において各報道機関などへ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。 また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省および当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権など 提出された応募書類の内容にかかわる著作権および使用権は、厚生労働省および当機構に帰属することとします。 [ お問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号 TEL:043-297-9527 E-Mail:tkjyoke@jeed.go.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 連絡先は65頁をご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください!  当機構の「70歳雇用事例サイト」では、「65歳超雇用推進事例集」の掲載事例、「コンテスト上位入賞企業の事例」を検索・閲覧できます。  このほか、「過去の入賞事例のパンフレット」をホームページに掲載しています(平成23年〜29年度分)。  「jeed 表彰事例 資料」でご検索ください。 jeed 70歳雇用 事例サイト 検索 【P58】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「第10回 健康寿命をのばそう!アワード」受賞企業・団体・自治体を決定厚生労働省  厚生労働省は「第10回健康寿命をのばそう! アワード」において、生活習慣病予防分野で15企業・団体・自治体、介護予防・高齢者生活支援分野で14企業・団体・自治体、母子保健分野で11企業・団体・自治体の受賞を決定した。  「健康寿命をのばそう! アワード」は、左記の三つの分野に関して優れた取組みを行っている企業などを表彰する制度。各分野の内容と今回の受賞企業などは次の通り。 ●生活習慣病予防分野…従業員や職員、住民に対して、生活習慣病予防の啓発、健康増進のための優れた取組みをしている企業などから78件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞1件(味の素株式会社 野菜摂取量向上活動「ラブベジR」プロジェクト)などを表彰した。 ●介護予防・高齢者生活支援分野…地域包括ケアシステムの構築に向け、地域の実情に応じた優れた取組みなどを行っている企業などから51件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞(静岡県西伊豆町役場健康福祉課 〜ラジオ体操からオンライン帰省まで〜地域で支え合う健幸で長寿なまち)などを表彰した。 ●母子保健分野…母子の健康増進を目的とする優れた取組みを行っている企業などから38件の応募があり、厚生労働大臣最優秀賞(岐阜県健康福祉部子ども・女性局子育て支援課 双子等妊娠期サポート事業)などを表彰した。 調査・研究 ジョブズリサーチセンター(JBRC) 「シニア層の就業実態・意識調査2021(個人編・企業編)」の分析レポートより  株式会社リクルートの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター(JBRC)」は2021(令和3)年12月、「シニア層の就業実態・意識調査2021(個人編・企業編)」の分析レポートを公表した。  本レポートは、2021年3月に実施した同調査の一部をもとに作成したもの。過去調査との比較も行っており、「調査結果から得られる示唆」として、主に次の内容をあげている。 ●「2021年4月の法改正により、70歳までの就業確保が努力義務化され、企業もさまざまな取組みを開始しているが、シニアの意欲に対して十分とはまだいい難い。従業員の高齢化が加速することが予測されるなか、画一的な働き方を求めるのではなく、より個人のニーズにあった多様な働き方を準備し、定年直前ではなく、早い時点から対話を通して提供していく必要がある」 ●「60代だけでなく70歳以降の就労は増加傾向だが、『1日8時間・週5日+残業』の働き方が中心となっている企業と希望する働き方にバリエーションのあるシニアとの間にミスマッチが存在」 ●「働き方のミスマッチ以外にも職種の不一致や、ブランクによる不安がハードルになっている。シニアの方々には、現職時代から次の仕事を探す、ブランクがある方もできそうな仕事が見つかればまず働いてみることを提案したい」 ●「これまでの経験や知識に固執しすぎず、選択肢をできるだけ広げてみることも重要」 株式会社ハルメク・株式会社キャリア・マム 「『働くこと』に関する意識実態調査」結果  女性誌『ハルメク』を発行する株式会社ハルメク生きかた上手研究所と、女性向けのコミュニティサイトを運営する株式会社キャリア・マムは、30〜79歳の女性470人を対象に2021(令和3)年9月にWEBで実施した「『働くこと』に関する意識実態調査」の結果を発表した。  調査結果から、「現在、働いている理由」のトップ3をみると、世代共通で多かったのは「社会とつながりをもちたいから」、「現在の生活のためにお金が必要だから」、「生活にメリハリをつけたいから」。これを年代別にみると、60代(回答者数82人)と70代(同24人)では、ともにトップが「社会とつながりをもちたいから」、次いで「生活にメリハリをつけたいから」となっており、3位は60代では「仕事が好きだから」、70代では「健康のために頭を使いたいから」となっている。  次に、「現在の働き方に対する満足度」についてみると、「満足している」割合は全体で63.4%。これを年代別にみると、50代以下の各年代では「満足している」割合が6割未満なのに対し、60代では78.0%、70代(※回答数が少ないため参考値)では83.3%と、満足度が相対的に高くなっている。満足度に対する回答理由(自由記述)は、「満足している」と回答した60代以上では、「自分の知識や経験を活かせる」、「人とのつながりが感じられる」などがみられた。一方で、「満足していない」と回答した60代以上では、「年齢を感じ疲れてきているから」、「もっと自由な時間が欲しいから」などがみられた。 【P59】 読者アンケート結果発表!! ご協力いただき、ありがとうございました  日ごろより『エルダー』をご愛読いただき、ありがとうございます。2021年7月号で実施しました「読者アンケート」には、みなさまから多数のご意見・ご要望をいただきました。心よりお礼申し上げます。読者アンケートの結果の一部をご紹介いたします。今後の企画・編集の貴重な資料として活用させていただき、よりよい誌面づくりに努めてまいりますので、引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。 参考になったコーナーとその理由 特集 ・高年齢者雇用安定法の改正内容が具体的に解説されており、今後の高齢者雇用の参考となった ・タイムリーかつ重要なテーマを取り上げており、非常に参考になる など 知っておきたい労働法Q&A ・解説内容が、いままさに直面している課題と合致することが多い ・判例など知らなかった情報を得られ、具体的でありがたい など リーダーズトーク ・企業経営者や団体責任者の理念、方針、経験が参考になる ・登場するみなさんもいろいろな問題に直面しており、その都度立ち向かっている姿が見られる など 高齢社員のための安全職場づくり ・高齢社員の増加にともない、安全のために必要な対応がわかった ・高齢社員にかぎらず、一般社員への安全衛生に応用できることが多い など マンガで見る高齢者雇用 ・マンガだと読みやすく内容が理解しやすい ・取り組みやすく、社内でも活用している など さらに充実を図ってほしいコーナーと理由 ・〈特集〉改正法を取り入れた活用事例も掲載してほしい ・〈マンガで見る高齢者雇用〉さまざまな業種における賃金・就業時間、労働環境などの実例を紹介してほしい ・〈高齢者のための安全職場づくり〉手軽で取り入れやすい熱中症対策品の紹介があるとよい など 今後取り上げてほしい内容などのご要望 ・高齢者を積極的に採用している企業や活用に成功している企業の事例紹介 ・高齢者の労働災害のヒヤリハット事例 ・年齢に沿ったモチベーションアップのための方策 ・法律の内容をわかりやすくまとめてほしい ・社内規定改定に関する情報やひな形 ・助成金に関する情報 など 興味・関心のあるテーマについては、当機構ホームページに掲載しているバックナンバーもご覧ください。 エルダー バックナンバー 検索 ご回答者の立場 人事総務部門責任者・担当者 57.3% 経営者・取締役(役員含) 27.3% その他(社会保険労務士、人事コンサルタントなど) 8.6% その他の管理監督者(工場長、支店長、管理職など) 5.9% 無回答 0.9% 本誌に対する評価 参考になる 64.2% 非常に参考になる 28.1% あまり参考にならない 3.9% 参考にならない 0.7% 無回答 3.1% 【P60】 次号予告 4月号 特集 高年齢者雇用安定法改正から一年をふり返る リーダーズトーク 高柳京子さん(TIS 株式会社 執行役員) 〈(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〉 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み 株式会社労働調査会までご連絡ください。 電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 今野浩一郎……学習院大学名誉教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部人財部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 菊谷寛之……株式会社プライムコンサルタント代表 阪本節郎……人生100年時代未来ビジョン研究所所長 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長・労働政策部長 藤村博之……法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授 真下陽子……株式会社人事マネジメント代表取締役 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今回の特集は、2021(令和3)年に全国5都市で開催された、「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」のなかから、岐阜会場、大阪会場の模様をお届けしました。特にパネルディスカッションでは、コーディネーター(学識者)、企業、65歳超雇用推進プランナーと、異なる3者の視点でディスカッションが行われ、非常に興味深い内容となっています。事例発表やパネルディスカッションの模様は、東京・岩手・宮崎会場とともに、当機構ホームページにて動画で公開しておりますので、そちらもぜひご覧ください。 ●本号では、特別寄稿として、「同一労働同一賃金」をテーマに、(独)労働政策研究・研修機構(JILPT)が実施した調査を元に、同機構調査部主任調査員の渡邊木綿子氏に執筆していただきました。同一労働同一賃金が義務化され約2年(中小企業への適用からは約1年)が経過しましたが、本文中でも触れられている通り、未対応の企業が少なくありません。多くの産業で人手不足が課題となっているいま、人材確保やモチベーション向上の視点でみても、同一労働同一賃金への対応は不可欠です。定年後再雇用の高齢社員をはじめ、有期契約社員・パート社員の処遇の見直しに向け、取組みの推進をお願いいたします。 ●令和4年度高年齢者活躍企業コンテストの応募締め切りは3月31日です。読者のみなさまからのご応募をお待ちしております。 公式ツイッターを始めました! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー3月号 No.508 ●発行日−−令和4年3月1日(第44巻 第3号 通巻508号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部次長 五十嵐意和保 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 FAX 043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-867-8 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.317 長年の経験と熟練の技で機械の故障を未然に防ぐ 機械保全工 千葉(ちば)喜一(きいち)さん(63歳) 「故障への対処方法はケースバイケース。だからこそ、育成では単に教えるだけでなく、本人に考えさせることを重視しています」 40年以上の経験を活かして機械保全技術者の育成をになう  工場の生産現場は、さまざまな機械設備が稼働することによって成り立っている。機械に重大な故障が起きれば、生産に大きな影響を及ぼす。そうした事態を避けるために、機械を正常な状態に保つのが機械保全工の役割だ。  1993(平成5)年にいすゞ自動車株式会社に入社した千葉喜一さんは、前職を含め、40年以上にわたり工作機械の保全に従事してきた。現在は同社の藤沢工場(神奈川県)でエンジンやアクスルなどの加工・組立てをになうPT製造第三部の保全課において、機械保全に関する後進の育成と技能の伝承にたずさわっている。機械保全の総合的技能を有していることや、長年の功績などが評価され、2019(令和元)年に「(現代の名工)卓越した技能者」を、2021年には「黄綬褒章(おうじゅほうしょう)」を受章した。 五感やコミュニケーションを駆使して機械の異常を探知  重大な故障を未然に防ぐには、機械が正常か異常かを的確に判断することが求められる。そのため、定期点検や修理記録などのデータによる管理に加えて重要になるのが、人間の五感とコミュニケーションだという。  「現場に足繁(しげ)く通うことで、機械が発する音や熱などから異常を感じられるようになります。また、現場で作業するオペレーターからの情報も重要です。機械にずっと接している彼らの何げない一言から判断できることも多いです」  そのため、日ごろから世間話をして、人間関係を築くことを大事にしてきた。異常を探知して機械を調べるには、ラインを止める必要がある。その際に現場の理解を得るためにも、現場との信頼関係は欠かせないと話す。  現在、PT製造第三部保全課が担当する機械は約300台に上る。  「機械は生き物です。同じ機械でも性格は異なりますし、温度や湿度によっても動きが変化します。例えば油圧式の機械なら、油の粘度が高まる冬は動きが遅くなり、夏は逆に速くなります。また、金属は温度変化によって伸縮します。そうした機械ごとの特性をふまえて保守を行う必要があります」  保全業務に欠かせない技能の一つに「きさげ」がある。金属の平面度を高めたり、工作機械の摩擦が生じる部分に潤滑油の油だまりをつくるために、61ページの写真のような道具を使い、手作業で金属の表面を削り取る。加工する部品の精度を左右する重要な技能だ。  「機械による調整では熱が生じるため限界があります。精度を高めるには手作業しかありません」  千葉さんは「きさげ」でマイクロメートル※単位の精度を出すことができる。 「技術を教えるよりも盗みやすくしてあげたい」  千葉さんが駆け出しのころは、教育を受ける機会はなく、もっぱら「工具持ち」として先輩について回り、仕事のやり方を見て盗むしかなかったという。  「ですから、若いころは掃除とゴミ捨てを率先してやりました。掃除をしていると機械の異常に気づきやすく、またゴミのなかには機械保全のためのヒントがあります。そこから勉強したり、先輩に質問しながら、長い年月をかけて技術を身につけてきました」  現在は教育カリキュラムが整備されているが、「技術を教えるよりも、盗みやすくしてあげたい」と、現場での実践を重視している。  「いくら座学で学んでも、与えられた知識だけでは保全はできません。現場でやり方を見せて、本人にやらせます。失敗しても、それが経験となって身につきます」  AIなどの技術進化が目覚ましい昨今だが、保全の重要性は今後も変わらないと千葉さんはいう。  「生き物のような機械を相手にするには、人間のカンとコツがまだまだ必要です。機械は進化しますから、常に感性を磨いて新しいことに挑戦していきたい。自分の仕事がブランドになるような努力を続けながら、後進に技術を引き継いでいきたいと思います」 いすゞ自動車株式会社 TEL:03(5471)1141(代表) https://www.isuzu.co.jp (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※ 1マイクロメートル= 0.001ミリメートル 写真のキャプション 技能検定の練習用の定盤に「きさげ」をかける千葉さん(右)。その作業の様子を、千葉さんの後継者にあたる中野(なかの)一登(かずと)さんが見つめる いすゞ自動車の国内最大の工場、藤沢工場 円筒型の機械部品にきさげをかけることもある 「故障が起きたときには千葉さんの助言が頼りになります」と課長の小島(こじま)計史(かずふみ)さん(右端) 精度を高めるため手作業で、定盤の表面の凸部分を少しずつ削って平らにしていく 中野さんは「うまくいかないときは千葉さんにアドバイスしてもらいます」と話す 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  記憶には二つの方法があります。一つは音韻ループを使うもの、例えば「たまご1パック」など言葉のくり返しで覚えます。もう一つは視空間スケッチパッド、「卵1パック」を画像として形で覚えます。目に焼きつけ、言葉でくり返すのが記憶のコツです。 第57回 記憶力テスト ※問題の方を先に見ないようにしてください。 目標 3分 「買い物メモ」を1分間見て覚えたら、 メモを隠してから問題に答えてください。 買い物メモ 卵 1パック 牛乳 1本 トマト 2個 りんご 4個 ガムテープ 1個 トイレットペーパー 24ロール1パック 台所用洗剤 1本 1 りんごは何個でしたか? 2 洗剤は台所用でしたか? 洗濯用でしたか? 3 リストに牛乳はありましたか? 4 リストにきゅうりはありましたか? 記憶力をアップさせるトレーニング法  今回のような暗記トレーニングをするときに、一つ動作を加えることで、ぐっと効果がアップします。例えば、次の「8、2、7、6、5」の数字を覚えてください。  次に、この数字を見ずに(隠して)、「3+17+7+19」を暗算してください。計算し終わったら、先ほどの五つの数字を暗唱してみましょう。五つすべて覚えていたでしょうか。  このように、何かを暗記した直後に、あえて違うことをしてから、もう一度思い出す行為は、脳を活性化させるうえで、もっとも簡単にできる効果的なトレーニング法です。  この「何かを暗記した直後に、あえて違うことをする」ときは、計算問題以外に、目についた物の名称を後ろから読んでみたり、昭和世代の作家5人をいってみたり、自分なりのオリジナルのテーマをみつけて、楽しみながらチャレンジしてみましょう。 【問題の答え】 1 4個 2 台所用 3 あり 4 なし 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2022年3月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価503円(本体458円+税) 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 ご応募お待ちしています 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかで培ってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。多数のご応募をお待ちしています。 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするために、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者が働きつづけられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 詳しい募集内容、応募方法などにつきましては、本誌56〜57頁をご覧ください。 応募締切日 令和4年3月31日(木) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65頁をご覧ください。 2022 3 令和4年3月1日発行(毎月1回1日発行) 第44巻第3号通巻508号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会