【表紙2】 助成金のごあんない 65歳超雇用推進助成金 65歳超雇用推進助成金に係る説明動画はこちら 65歳超継続雇用促進コース  令和4年4月1日以降に65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 ●労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、過去最高を上回る年齢に引上げること ●定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。また、改正前後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること ●1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること ●高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)の実施 支給額 ●定年の引上げ等の措置の内容、60歳以上の対象被保険者数、定年等の引上げ年数に応じて10万円から160万円 受付期間 ●当コースの受付期間は変更となりました  定年の引上げ等の措置の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初から5開庁日までに、必要な書類を添えて、申請窓口へ申請してください。 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(高年齢者雇用管理整備措置)を実施した事業主の皆様を助成します。 措置(注1)の内容 高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入、法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%《75%》、ただし中小企業事業主以外は45%《60%》 (注2)措置の実施に必要な専門家への委託費、コンサルタントとの相談経費、措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費(経費の額に関わらず、初回の申請に限り50万円の費用を要したものとみなします。) 【《》内は生産性要件(※2)を満たす場合】 高年齢者無期雇用転換コース  50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)を実施し、無期雇用転換制度を就業規則等に規定していること A無期雇用転換計画に基づき、無期雇用労働者に転換していること B無期雇用に転換した労働者に転換後6カ月分の賃金を支給していること C雇用保険被保険者を事業主都合で離職させていないこと 支給額 ●対象労働者1人につき48万円(中小企業事業主以外は38万円) ●生産性要件(※2)を満たす場合には対象労働者1人につき60万円  (中小企業事業主以外は48万円) 高年齢者雇用管理に関する措置(※1)とは(a) 職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、(b) 作業施設・方法の改善、(c) 健康管理、安全衛生の配慮、(d) 職域の拡大、(e) 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進、(f) 賃金体系の見直し、(g) 勤務時間制度の弾力化のいずれか生産性要件(※2)の詳細については、以下をご覧ください。 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html 障害者雇用助成金 障害者雇用助成金に係る説明動画はこちら 障害者作業施設設置等助成金  障害特性による就労上の課題を克服し、作業を容易にするために配慮された施設等の設置・整備を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @障害者用トイレを設置すること A拡大読書器を購入すること B就業場所に手すりを設置すること 等 助成額 支給対象費用の2/3 障害者福祉施設設置等助成金  障害者の福祉の増進を図るうえで、障害特性による課題に対する配慮をした福祉施設の設置・整備を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @休憩室・食堂等の施設を設置または整備すること A@の施設に附帯するトイレ・玄関等を設置または整備すること B@、Aの付属設備を設置または整備すること 等 助成額 支給対象費用の1/3 障害者介助等助成金  障害の特性に応じた適切な雇用管理に必要な介助者の配置等の措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @職場介助者を配置または委嘱すること A職場介助者の配置または委嘱を継続すること B手話通訳・要約筆記等担当者を委嘱すること C障害者相談窓口担当者を配置すること D職場支援員を配置または委嘱すること E職場復帰支援を行うこと 助成額 @B支給対象費用の3/4 A 支給対象費用の2/3 C 1人につき月額1万円 外 D 配置:月額3万円、委嘱:1回1万円 E 1人につき月額4万5千円 外 職場適応援助者助成金  職場適応に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者による支援を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @訪問型職場適応援助者による支援を行うこと A企業在籍型職場適応援助者による支援を行うこと 助成額 @1日1万6千円 外 A月12万円 外 重度障害者等通勤対策助成金  障害の特性に応じた通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @住宅を賃借すること A指導員を配置すること B住宅手当を支払うこと C通勤用バスを購入すること D通勤用バス運転従事者を委嘱すること E通勤援助者を委嘱すること F駐車場を賃借すること G通勤用自動車を購入すること 助成額 支給対象費用の3/4 重度障害者多数雇用事業所 施設設置等助成金  重度障害者を多数継続して雇用するために必要となる事業施設等の設置または整備を行う事業主について、障害者を雇用する事業所としてのモデル性が認められる場合に、その費用の一部を助成します。※事前相談が必要です。 助成対象となる措置 重度障害者等の雇用に適当な事業施設等(作業施設、管理施設、福祉施設、設備)を設置・整備すること 助成額 支給対象費用の2/3(特例3/4) ※各助成金制度の要件等について、詳しくはホームページ(https://www.jeed.go.jp)をご覧ください。 ※お問合せや申請は、当機構の都道府県支部高齢・障害者業務課(65頁参照 東京、大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします。 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.86 筋肉はより長く健康に生きるための基盤「スロトレ」で強化し、病気にも打ち勝つ 東京大学 名誉教授石井直方さん いしい・なおかた 東京大学名誉教授。東京大学大学院総合文化研究科教授、同スポーツ先端科学研究拠点長などを歴任。ボディビルダーとしても活躍し、日本ボディビル選手権大会優勝、世界ボディビル選手権大会入賞などの実績を持つ。著書に『いのちのスクワット』(マキノ出版)など。  筋肉研究の第一人者であり、高齢者が安全に行えるトレーニング「スロトレ」の提唱者としても知られる石井直方先生。かつてはボディビル日本一に輝いたこともある、まさに筋肉のスペシャリストですが、実は二度にわたってがん≠克服したがんサバイバーでもあります。今回は加齢と筋肉、健康の関係についてのお話とともに、がんを克服した経験をふまえ、生涯現役時代におけるQOLの保ち方について、お話をうかがいました。 日常生活に不可欠な「筋肉」 筋肉を維持し働かせることが健康につながる ―石井先生は、長年にわたり筋肉の研究を続けてこられ、高齢期を健康に過ごすために「筋トレ」の重要性を提唱されています。筋肉と健康の関係について教えてください。 石井 筋肉といえば「スポーツに不可欠なもの」と連想しがちですが、人間が日常生活を送ることができるのは筋肉のおかげといってもよいのです。筋肉が動かないと呼吸すらできませんし、体を動かして生命を維持する根本的な機能を筋肉は持っています。かつて、病気によって人間の寿命が制限されていたころは命に直結する心臓、肝臓、腎臓などの呼吸・血管系の器官が最優先される一方、筋肉は運動するための器官とみなされ、それほど重要視されていませんでした。ところが人間が長生きするようになると、加齢にともない筋肉が衰え、思うように動けなくなることでQOL※が下がり、さらにほかの機能、例えば認知機能の低下などが起こることがわかってきました。よりよく長く生きるための基盤として、筋肉が重要視され始めたのです。  また、筋肉の研究を進めていくと、運動器の役割だけではなく、いろいろな働きをしていることがわかってきました。例えば体温を維持する熱源の役割もになっており、筋肉が減ると体温の生産能力が落ち、低体温や冷え性になったり、さらに代謝機能障害に陥ります。筋肉が熱源として働くために、実は糖質や脂質を消費しています。しかし、筋肉が減って働きが弱くなると糖質や脂質が消費されなくなり、糖尿病や動脈硬化など命にかかわる病気の原因となってしまいます。  さらに、筋肉を動かすことで、体の健康にとって重要な物質が分泌されることが最近の研究からわかっています。筋肉が分泌する物質は100種類以上あることが報告されていますが、筋肉を維持するだけではなく日常的に動かすことが健康全般にとっても非常に重要であるという認識になっています。 ―筋肉が減り、活動が低下すると高齢期にどのような影響をもたらすのでしょうか。 石井 健康には、筋肉の「量」と、筋肉の「活動」の二つが重要です。残念ながら普通に生活していても筋肉量は加齢とともに徐々に減っていきます。上半身に比べて下半身の筋肉ほど減り、特に太ももの前の筋肉は30歳から80歳までの50年間に太さも筋力も半分まで落ちてしまいます。「半分」というのは、椅子に座った状態から片足で立ち上がるための力です。30歳で片足ですっと立てないと、80歳になったら両足で立てなくなるということです。  加齢にともなう筋肉の減少と筋力の低下を「サルコペニア」といいますが、サルコペニアが進行すると思うように動けなくなり、活動量もどんどん低下し、そのうち寝たきりになります。この寝たきりの生活に至る過渡的な状態を「フレイル」(心身の機能が大きく低下しつつある虚弱状態)と呼びます。寝たきりになる要因は筋肉だけではなく、脳卒中などの病気も関係しますが、病気になって突然寝たきりになるのではなく、多くの場合はゆるやかな坂道を下るように徐々に寝たきりになっていきます。途中の坂道がフレイルですが、フレイルになっても筋肉の機能は元に戻すことができます。無理のない範囲で筋肉を少し鍛えてあげればよいのです。 軽い負荷で効果の高い「スロートレーニング」高齢者でも筋肉を増やすことができる ―筋トレが重要になりますが、筋肉を太く強くするメカニズムとはどういうものですか。 石井 実は筋肉が太くなる仕組みはこれまであまりよくわかっていませんでした。昔はアスリートのようにジムなどで重い物を持ち上げることが筋肉強化のセオリーでした。たしかに筋肉に強い負荷をかけると、それに負けまいとして筋肉が太く強くなるので現象的には正しいのですが、大きな力を出すと血圧が急上昇し、関節や腱に強い負荷がかかりけがもしやすくなります。しかし15年ほど前から、顔を真っ赤にして重い物を持ち上げなくても筋肉を強化することが可能であることがわかってきました。さらに私たちの研究では、軽い負荷をかけることで、ねらった筋肉だけを速く鍛える(筋肉を疲れさせる)ことが可能であることがわかりました。その一つが筋肉内の血液の流れを少し制限することです。実は、筋肉は力を出すと筋肉内の血管が圧迫され血液が流れにくい状態になり、力を抜くと筋肉が緩んで血液が流れるというポンプ作用があります。つまり筋肉の血流を制限して筋トレを行うと、軽い負荷のトレーニングでも高い効果を上げることがわかったのです。  それが最初にわかったのは腕や足の付け根に専用のベルトで圧力をかけ、筋肉内の血流を制限して行う「加圧トレーニング」の研究でした。しかし外側から血液の循環を制限して運動するのは専門家がついていないと危険です。そこで自分の力で筋肉の血液の流れを少し制限できないか、という発想で生まれたのがスロートレーニング、「スロトレ」です。 ―スロトレとはどういうものでしょうか。 石井 最大の力を出さずに、その3割程度の力で血液の流れが抑制され、緩めると血液が流れ込むという状態になります。筋肉が力を出した状態を維持するにはどうすればよいかと考えたとき、空気椅子に座るように少ししゃがんだ状態にすれば下半身の筋肉に力が入ります。また筋肉は力を出して止まっているとエネルギー消費量が少なくなってしまうという特性があり、なかなか疲れてくれません。そこでゆっくり動かしながら力をずっと入れた状態にすると、手っ取り早く筋肉が疲労し、太くしようとする反応が起こるのです。筋肉の力が緩まないように同じ力を発揮したまま、ゆっくり上げたり、下げたりする動作をすると筋肉が太く強くなってくる。これは動物実験でも実証されていますし、高齢者でも効果があります。 ―高齢者でも気軽に取り組みやすいスロトレを教えてください。 石井 何か一つを選べといわれたら、太ももとお尻の筋肉を使い、ゆっくりとしゃがんで立ち上がるスロースクワットがよいでしょう。もちろんいろいろなスクワットを試してもよいのですが、どこかに痛みを感じるなど、違和感がない範囲でやり方を工夫することが大事です。私の著書『いのちのスクワット』(マキノ出版)では、4秒かけてしゃがみ、4秒で立ち上がる動作を推奨していますが、この動作を1分程度くり返すと、筋肉の疲労が強くなります。1回8秒で1分だと大体7〜8回になりますが、これを1セットとし、少し休んで計3セットやると確実に筋肉が太く強くなることが実証実験でわかっています。  3セットがむずかしい場合は1セットから始めて、慣れたら徐々に増やして3セットを目標にします。毎日行う必要はなく、むしろ間隔を置いて週2〜3回やるほうが効果があります。実際に筋肉が太くなるには3カ月程度かかりますが、2〜3週間後には「階段を上るのがすごく楽になった」、「体が少し軽くなった」と明らかに身のこなしが違うように感じてくると思います。 ―先生は二度にわたりがんを克服されました。改めて筋肉と健康についてどのように感じていらっしゃいますか。 石井 実際にがんになってしまうと、筋肉を鍛えていればがんを防げるとはさすがにいえません。しかし、たとえがんになっても、筋肉がしっかりしていて体力もあり、大きな基礎疾患を持っていないことは治療を乗り越える武器になると確信を持っていえます。治療に耐えて生き延びるには基本的な生命力が必要ですが、生命力の根源の一つはやはり筋肉なのです。 一つひとつの動作・作業をていねいに行い「スローな生き方」で人生をポジティブに ―著書では、がんを体験されて「スローな生き方」に気づかされたとも述べています。 石井 悪性リンパ腫と診断されたとき、異常なほど忙しい状態が半年ほど続いていました。ふり返ると、急ぎ足の生活のなかでストレスがかかっていたのでしょう。ストレスは免疫機能を低下させますし、がんは細胞増殖の過程で発生する異常な細胞が原因となります。当時の私の体には何らかのサインが何度も出ていましたし、ちょっと立ち止まって自分の状態に注意しておけば防げたのではないかと考えます。以前の私は仕事が終わらなければ安心して寝られず、結局どんどん引っ張ってしまうところがありました。でも病気をしてからは、仕事が終わらなくても「今日はここまで、後は明日からやればいい」と割り切れるようになり、根本的な考え方が変わりました。  また、スローな生活というのは、生活リズムを遅くするという認識ではなく、一つひとつのことに時間をかけて、ていねいにやるという発想に切り替えることです。年を重ねると動作が遅くなり、作業も遅くなりますが、それはテキパキとできないことではありません。むしろ、ゆっくりとていねいにやるようにしているのだと、ポジティブにとらえて生きていくことが大切だと思います。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2022 July 特集 6 新任人事担当者のための 高齢者雇用入門 7 総論 高齢者雇用の現状と課題 高千穂大学 経営学部 教授 田口和雄 12 解説 1. 70歳就業時代の賃金・評価制度 2. 70歳までの活躍をうながすためのミドル世代からの準備 3. 多様で柔軟な働き方の整備 高千穂大学 経営学部 教授 田口 和雄 4. 安心・安全に働ける職場づくり 福岡教育大学 教育学部 准教授 樋口善之 28 65歳超雇用推進助成金について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 高齢者助成部 30 高齢者雇用促進のためのその他の助成金 編集部 1 リーダーズトーク No.86 東京大学 名誉教授 石井直方さん 筋肉はより長く健康に生きるための基盤「スロトレ」で強化し、病気にも打ち勝つ 31 日本史にみる長寿食 vol.345 江戸老人の元気食、ウナギのかば焼き 永山久夫 32 新連載! マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!こんなときどうする? 《第1回》 若手社員が定年延長の方針に不満を抱えています 38 江戸から東京へ 第116回 ある青春≠フ話 作家 童門冬二 40 高齢者の職場探訪 北から、南から 第121回 大阪府 株式会社ヤマヒロ運輸 44 知っておきたい労働法Q&A《第50回》 退職金制度の位置づけ、公益通報者保護法と懲戒解雇 家永勲 48 病気とともに働く 第4回 株式会社アートネイチャー 50 いまさら聞けない人事用語辞典 第26回 「早期退職・希望退職」 吉岡利之 52 TOPIC 人事担当が考える中高年人材の課題 ―業務に活かせるリスキルが本人のモチベーションに繋がる仕組みづくりを― 株式会社Works Human Intelligence 56 読者アンケートご協力のお願い 57 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 「生涯現役促進地域連携事業」より地域発の取組みから学ぶシニア就業 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第61回]地名テスト(記憶力) 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」、「技を支える」は休載します 【P6】 特集 新任人事担当者のための高齢者雇用入門  改正高年齢者雇用安定法の施行から約1年が経過し、70歳就業の実現に向け、高齢者雇用の取組みを本格化する企業も多いのではないでしょうか。企業とそこで働く高齢労働者がWin-Winの関係を築いていくためには、改正法の概要とともに、改正の背景やねらい、高齢者雇用の現状・課題について理解を深めておくことが肝要です。  そこで今回は、新たに人事部門に異動・配属された読者のみなさんに、高齢者雇用の現状と課題について理解を深めてもらうための「高齢者雇用入門」をお届けします。高齢者が65歳、70歳を超えて活き活き働ける職場の実現に向け、ぜひお役立てください。 【P7-11】 総論 高齢者雇用の現状と課題 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 ※ この物語に登場する会社・人物等はすべて架空のものです 1 はじめに〜令和期に入り高齢者雇用は70歳就業時代に  現在、わが国の企業の雇用制度は「実質65歳定年制」の状況にあります。これは平成期に政府が進めた高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)の改正、そのなかでも2004(平成16)年改正の高齢法(2006年4月施行)が企業に義務づけた「65歳までの雇用確保措置」を受けて、企業で65歳までの雇用確保の環境整備を本格的に進められたことによるものです。その結果、60歳定年制と65歳までの継続雇用制度(その多くは再雇用制度です)の組み合わせによる「実質65歳定年制」の雇用制度が多くの企業でとられるようになりました。そして令和期に入り、高齢法は2020(令和2)年に改正(2021年4月施行、以下、「新高齢法」)され、「70歳までの就業確保措置」の努力義務が企業に課せられ、高齢者雇用は70歳就業時代に向かうことになりました。  冒頭のマンガに出てくる若葉さんのように、読者(新任の人事担当者を念頭に置いています)のみなさんは今回の新高齢法が高齢者雇用にどのように影響するのかを理解するのがたいへんかと思います。そこで、総論では2021年4月に施行された高齢法の概要をふり返るとともに、政府統計をもとに現在の高齢者雇用における現状を確認し、70歳就業時代に向けた課題を述べていきたいと思います。 2 高年齢者雇用安定法の概要  まず高齢法が改正に至った背景から確認していきたいと思います。わが国では少子高齢化が急速に進み、2008年の1億2808万人をピークに人口は減少に転じ、それにあわせて労働力人口の減少と高齢化が進んでいます。こうした少子高齢化社会のなかで、経済の活力を維持するには、働き手を増やすことがわが国の重要な政策課題の一つになっています。  さらに、個々の労働者の特性やニーズが多様化しているなか、将来も安心して暮らすために長く働きたいと考える労働者も増えており、高齢期になっても能力や経験を活かして活躍できる環境の整備がいっそう求められています。こうした背景のもと、高齢法は2020年に改正されました。  新高齢法のポイントは、企業が高齢者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳までの就業機会を確保(「高年齢者就業確保措置」)できるよう、改正前の高齢法(以下、「旧高齢法」)の規定(「高年齢者雇用確保措置」)に加え、企業に多様な選択肢を制度として整える努力義務が設けられている点です(図表1)。  旧高齢法の規定は次の通りです。第1に企業が定年を定める場合は60歳以上としなければならないこと、第2にそのうえで65歳までの雇用機会を確保するために企業は、図表2の上段に示す三つの制度のいずれかを「高年齢者雇用確保措置」(以下、「雇用確保措置」)として設けることが義務づけられていることです。つまり、65歳まで自社あるいは自社のグループ企業で「雇用」する場を設けることが企業に求められています。  新高齢法では、上記の雇用確保措置に加えて70歳までの就業機会を確保するため、企業に対して図表2の下段に示す五つの制度のいずれかを「高年齢者就業確保措置」(以下、「就業確保措置」)として講じる努力義務が新たに設けられました。  旧高齢法と比べた新高齢法の主な特徴は次の2点です。第1は「自社グループ外での継続雇用が可能になった」ことです。Bの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入について、雇用確保措置では60歳以上65歳未満は自社と特殊関係事業主(自社の子法人等、親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等)のみでしたが、就業確保措置では65歳以上70歳未満の高齢者に対してそれらに加えて、「他の事業主」が追加されました。すなわち、自社の高齢者が継続雇用制度で働く場が自社や自社グループにとどまらず他社や他社グループ企業に拡大された点です。  第2は「雇用によらない働き方」が可能になったことです。就業確保措置の@〜Bの制度はこれまでの自社あるいは他社で「雇用される働き方」なのに対し、CとDの制度は「雇用によらない働き方」で「創業支援等措置」と呼ばれます。Cは会社から独立して起業した者やフリーランスになった者と業務委託契約を結んで仕事に従事してもらう方法、Dは企業が行う社会貢献活動に自社の高齢者を従事させる方法です。働く人たちの多様なニーズに応えた働き方が誕生していますが、高齢者でも同様のニーズが高まることも考えられ、今回の改正で創業支援等措置が設けられました。この創業支援等措置を導入する場合、企業は過半数労働組合等※1の同意を得て導入することが求められます。  このように65歳以降は自社(自社グループ)での「雇用」に限定せず、他社での雇用やフリーランスとしての業務委託などの働く場の選択肢が示されていることから「就業」と呼ばれています。 3 高齢者雇用の現状〜雇用と就業の状況  高齢者雇用の現状を政府統計から確認してみましょう。図表3は高齢法の改正にあわせた2006年(2004年改正の「高年齢者雇用確保措置義務化」の施行)、2013年(2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の施行)、2020年(高年齢者就業確保措置の努力義務化〔2021年4月施行〕)の3時点の高年齢者の雇用と就業の状況を整理したものです。  まず企業の雇用状況を確認すると、高年齢者雇用確保措置を実施している企業の推移は2006年(84.0%)、2013年(92.8%)、2020年(99.9%)と右肩上がりの増加傾向にあります。そのなかでも2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」は実質65歳定年制に向けた転機となり、現在、ほとんどの企業で65歳まで働くことができる環境が整備されている状況にあります。こうした動きにあわせて希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合(2006年:34.0%、2013年:62.4%、2020年:76.1%)も右肩上がりの拡大傾向にあり、2020年では7割を超える高い水準にあります。  なお、今回のテーマである70歳以上まで働ける企業の割合は低い水準(2006年:11.6%、2013年:16.7%、2020年:30.0%)にあるものの、70歳就業時代に向けて着実にその割合は増えており、2020年では約3割に達しています。  次に高年齢者の就業状況を確認します。引き続き図表3をみると、60歳から64歳までの「60歳代前半層」の就業状況の推移は2006年(52.6%)、2013年(58.9%)、2020年(71.0%)と右肩上がりの増加傾向にあり、そのなかでも2013年から2020年までの7年間の上がり方(58.9%→71.0%:12.1ポイントの増加)は2006年から2013年へのそれ(52.6%→58.9%:6.3ポイントの増加)と比べて大きく、多くの企業で一般的な定年年齢の60歳をむかえた高齢者が引き続き働いている状況にあることがわかります。実質65年定年をむかえた後の60歳代後半層(65〜69歳)の3時点の就業状況の推移についても、60歳代前半層と同じ傾向(@右肩上がり増加傾向、A2006年から2013年の上がり方に比べて2013年から2020年までの上がり方が大きいこと)が確認されます。60歳代前半層の就業状況が増えているのは年金受給開始年齢の引上げがかかわっていますが、それだけではなくライフスタイルの変化もかかわっており、60歳代後半層の就業状況の推移――水準は60歳代前半層が低いものの、増加傾向にあること――を物語っています。  2020年現在、65歳以上の約4人に1人(25.1%)が、70歳以上は約5.6人に1人(17.7%)が働いている状況にあります。このように高齢者雇用は70歳就業時代に向けた対応が求められています。 4 おわりに〜65歳以降の高齢者雇用の基本戦略と65歳定年制  平成期を通して形成された実質65歳定年制のもと、60歳代前半層の約7割が就業しており、65歳まで働くことが日常の光景となりつつあります。さらに、60歳代後半層の就業状況も約5割に達しており、70歳までの就業環境の整備が企業に求められつつあります。そこで、最後に今後の高齢者雇用の課題として大きく2点を取り上げます。  一つ目は、65歳以降の高齢者雇用の基本戦略を決めることです。  高齢者雇用の歴史をふり返ると、企業では高齢者を「自社内」で「雇用」して活用する対応(自社雇用型)がとられていました。これまで改正された高齢法は企業に雇用確保措置を求めていたことが背景にあります。しかしながら、新高齢法は雇用確保措置に加えて、努力義務ですが就業確保措置を設けることを企業に求めています。すなわち、他社での雇用やフリーランスとしての業務委託などによる対応(社外就業型)が可能になったのです。そのため、実質65歳定年制のもとで企業は70歳までの就業機会を考える際には65歳以降の高齢者雇用の基本戦略を自社雇用型とするのか、社外就業型とするのか、あるいはその組合せとするのかを決めることから始めることになります。なぜなら、社内雇用型をとる場合と社外就業型をとる場合とでは、次にとる対応が異なるからです。つまり、社内雇用型をとる場合は、60歳代後半層の人事管理の整備が、社外就業型の場合には社外で活躍できるための支援の取組みが必要になります。  二つ目は65歳定年制です。  高齢者雇用は高齢法に加えて年金制度の影響も受けており、現在、年金の支給開始年齢が2013年度から2025年度にかけて60歳から65歳へ段階的に引き上げられています。こうした動きにあわせて近年、定年年齢を65歳以上に引き上げる企業が増えており、また、昨年6月には国家公務員の定年を65歳へ引き上げる国家公務員法等改正法が可決・成立しました。「実質65歳定年制」のもと、70歳就業をどう考えるかが今後の高齢者雇用の課題となるものの、これまでの年金制度と高齢法改正の歴史をふり返ると、いずれは65歳定年制の義務化が考えられます。70歳就業時代に向けて65歳定年制導入の動きが今後加速することが予想され、65歳定年制のもとでの60歳代前半層の人事管理の整備が高齢者雇用における新たな課題として考えられます。 ※1 過半数労働組合等とは、労働者の過半数を代表する労働組合がある場合には労働組合を、労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者をそれぞれさす 図表1 新高齢法と旧高齢法の比較 旧高齢法 新高齢法 高年齢者雇用確保措置 (65歳までの雇用確保措置) ○ (義務) ○ (義務) 高年齢者就業確保措置 (70歳までの就業確保措置) × ○ (努力義務) ※筆者作成 図表2 新高齢法の概要 制度 内容 高年齢者雇用確保措置義務 @65歳までの定年引上げ A定年制の廃止 B65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主(注)によるものを含む) @〜Bのいずれかの措置を講ずること 高年齢者就業確保措置努力義務 @70歳までの定年引上げ A定年制の廃止 B70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 (特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)  雇用措置 (雇用される働き方) C70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 D70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入  a.事業主が自ら実施する社会貢献事業  b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業 創業支援等措置 (雇用によらない働き方) @〜Dのいずれかの措置を講ずること (注)「特殊関係事業主」とは自社の子法人等、親法人等、親法人等の子法人等、関連法人等、親法人等の関連法人等を示す (出典)厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000626609.pdf)をもとに作成 ※筆者作成 図表3 高年齢者の雇用状況と就業状況 2006(平成18)年 2013(平成25)年 2020(令和2)年 高齢法改正の主な内容 2004年改正の「高年齢者雇用確保措置義務化」の施行 2012年改正の「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止」の施行 高年齢者就業確保措置の努力義務化(2021年4月施行) 雇用状況 高年齢者雇用確保措置実施企業 84.0 92.8(92.3) 99.9(99.9) 希望者全員が65歳以上まで働ける企業 34.0 62.4(66.5) 76.1(80.4) 70歳以上まで働ける企業 11.6 16.7(18.2) 30.0(31.5) 就業状況 60〜64歳 52.6 58.9 71.0 65〜69歳 34.6 38.7 49.6 65歳以上 19.4 20.1 25.1 70歳以上 13.3 13.1 17.7 (注)雇用状況は51人以上の規模企業。(  )は31人以上の規模企業 (出典)厚生労働省「高年齢者の雇用状況」、総務省統計局「労働力調査」 ※筆者作成 【P12-15】 解説1 70歳就業時代の賃金・評価制度 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 1 高齢社員のモチベーション低下と賃金・評価制度  多くの企業で高齢社員の継続雇用制度が採用されているにもかかわらず、マンガでは、若葉さんの会社の高齢社員はやる気に満ちあふれて(仕事への取組み意識が高く)、活き活きと働いている一方で、若葉さんの伯父さんや中田さんのお父さんが勤めていた(勤めている)会社では、高齢社員のやる気が落ちている(仕事への取組み意識が低い)状況にあります。こうした状況は「高齢社員のモチベーション低下の問題」と呼ばれて、一般に60歳の定年後、継続雇用に切り替わると仕事内容が大きく変わらないのに賃金が下がることがその背景にあります。若葉さんの会社も60歳定年でその後継続雇用となりますが、高齢社員のモチベーション低下の問題がみられない状況にあるようです。両者にどのような違いがあるのでしょうか。解説1では、賃金・評価制度の視点から考えてみたいと思います。 2 人事管理の基本原則と賃金・評価制度  まず基本原則の確認からはじめていきます。賃金・評価制度を含め企業の人事管理の個別施策(仕組み)はそれ単独で設計されているのではなく、図表1に示しているように経営方針・戦略に基づいた人材活用の基本方針に沿って整備されます。高齢社員の賃金・評価制度についてもこの基本原則に沿って展開されています。また、人事管理の仕組みを整備する際には、この基本原則に加えて労働法制を遵守することが求められます。例えば、男女雇用機会均等法は、募集や採用を行う際には性別による差別を禁じています。さらに労働基準法は、法定労働時間を超えて労働者を労働(時間外労働、いわゆる「残業」)させたり、法定休日に労働(休日労働)させたりするには、労働者の代表と時間外労働協定あるいは休日労働協定(いわゆる「36協定」)を締結し、割増賃金を支払うことを使用者に義務づけています。高齢者雇用については、総論で取り上げている高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)を遵守することが求められ、2012(平成24)年改正の高齢法(以下、「旧高齢法」)の施行以降、実質65歳定年制(60歳定年+65歳までの再雇用)の整備が推進されてきました。 3 平成期の賃金・評価制度  平成期に企業が進めた65歳雇用推進のなかでの賃金・評価制度の変遷を国の高齢者雇用政策との関連でふり返ってみたいと思います。図表2はその概要を整理したものです。国が65歳までの雇用確保に取り組み始めたのは、1990年の高齢法改正です。1990年の改正高齢法では、65歳までの継続雇用を推進するため、定年到達者が希望する場合の定年後再雇用の努力義務が企業に課せられました。60歳定年を義務化した1996年の高齢法改正を経て、2000年の改正で、定年の引上げ等による高年齢者雇用確保措置の導入が努力義務化されました。こうした一連の高齢法改正を受けて、企業は65歳までの雇用推進を基本方針に掲げ、人事管理の整備に取り組みました。65歳までの雇用確保が努力義務であったこと、また高齢社員の人数について、従業員の労務構成において大きな集団となっている現在に比べ、当時は少なかったこともあり、平成期の前半の高齢社員の活用方針は福祉的雇用(戦力として仕事の成果を出して経営業績に貢献することを重視せず雇用する考え)がとられ、それに基づいて形成される賃金の対応について一律定額の基本給、昇給なし、定額の賞与が多くの企業でとられていました。評価制度については整備されなかったり(未整備)、整備されていても正社員の評価制度とは別に継続雇用者用の評価制度が整備されたりしていました。  平成期後半になると、雇用確保措置が義務化された2004年の高齢法改正を受けて企業は実質65歳定年制に向けた人事管理の整備を進め、戦略的活用への転換が図られました。高齢者側では60歳定年後も働く希望者が増える一方、企業側も少子高齢化の進展による人手不足が深刻化するなか、長年にわたってスキルや経験などを蓄積してきた高齢社員を経営成果に貢献する戦力(つまり、戦力的活用)として位置づける企業が増加しました。ただし、多くの企業でとられている雇用確保措置が継続雇用であることから、高齢社員の戦略的活用は引き続き正社員と同じ活用(業務ニーズにあわせて機動的に活用する)とするのではなく、「いまある能力をいま活用する」方針がとられています※1。  こうした高齢法の改正にともなう高齢社員の活用方針の転換を受けて、とりわけ戦略的活用を積極的に推進する企業で仕事の成果を処遇に反映するよう賃金・評価制度を正社員の仕組みに近づける対応がとられました。具体的には、賃金制度について基本給は一律定額から定年時の職位・等級等にリンクした水準に、昇給はなしからありへ、賞与は定額から正社員と同じように人事評価を反映した決め方へとそれぞれ見直され、人事評価は正社員と同じ仕組みが用いられるようになりました。マンガの若葉さんが勤める会社でも、戦略的活用を積極的に推進する企業と同じ対応がとられているため、高齢社員のモチベーション低下の問題はみられていないのです。 1 65歳以降の賃金・評価制度の考え方  戦略的活用がとられている企業においても、賃金・評価制度が平成期前半の福祉的雇用のもとでの賃金・評価制度のままでは、マンガの若葉さんの伯父さんや中田さんのお父さんが勤めていた(勤めている)会社の高齢社員のように、やる気が落ちたままになってしまいます。それは単に高齢社員だけの問題ではなく、高齢社員と一緒に職場で働く正社員にもマイナスの影響を与えてしまうことになります。福祉的雇用時代の賃金・評価制度がとられている場合には、仕事の成果を処遇に反映するよう賃金・評価制度を見直すことが求められます。  それをふまえて、70歳就業時代をむかえ65歳以降の高齢社員の賃金・評価制度をどのように考えればよいのでしょうか。以下では、就業確保措置のなかから自社で雇用する「雇用措置」のなかでも「継続雇用」を中心に考えてみたいと思います※2。  図表1にしたがって、高齢社員の活用方針を考え、彼ら(彼女ら)に期待する役割を明確にすることです。先に説明したように賃金決定をはじめとする人事管理の個別施策は人材活用の考え方に沿って形成されています。さらに、その際には戦略的活用に沿って形成されている実質65歳定年制の賃金・評価制度のもと、こうした方針を60歳代後半層も継続するか否かを確認する必要があります。少子高齢化の進展のなか、総論で指摘している高齢者の就業状況をふまえると、戦略的活用をとることが望ましいと考えられます。その際に注意しなければならないことは、65歳以降の場合、60歳代前半層に比べ、年齢が上がることによる高齢者の個人差、特に健康面の個人差が大きくなるので、健康管理や安全管理の対策の重要性が高まることに加えて、年金の受給開始年齢に到達するので高齢者個人の働き方のニーズも多様化してきます。こうした状況をふまえた賃金・評価制度を整備することが必要になり、その際には、60歳代前半層の継続雇用でもみられた正社員と高齢社員の賃金決定の決め方の違いを、その背景にある人材活用の考え方の違い等をふまえつつ、ていねいに説明することが求められます。  こうした役割の明確化と適正な賃金・評価制度の整備の事例としてA社の取組みを紹介します。この事例の特徴は、継続雇用(再雇用)後もこれまで担当していた業務をフルタイム勤務で続ける場合、正社員と同じ賃金・評価制度が適用されている点です。 ※1 マンガで述べられている「継続雇用時の担当する仕事の内容は定年前とほとんど変わらないにもかかわらず、賃金が下がる理由」について詳しくは、本誌2021年7月号の特集「新任人事担当者のための高齢者雇用入門」の「解説2 高齢社員に高いモチベーションで働いてもらうにはどうすればいい?」(16頁)をご覧ください エルダー 2021年7月号 検索 ※2 雇用措置における「他の事業主」は除く(他の事業主の雇用措置をとる場合、高齢社員は他の事業主と雇用契約を結ぶ、つまり、これまで勤めていた会社や会社の子会社・関連会社以外に再就職することになり、再就職先の賃金・評価制度が適用されるため)。また、就業確保措置には雇用措置のほかに創業支援等措置があるが、現実として継続雇用制度、そのなかでも多くの企業がとっていた再雇用制度をとることが考えられる 印刷業A社 再雇用後も同じ業務をフルタイムで続ける場合、正社員と同じ賃金・評価制度を適用  国内に複数の生産拠点、営業拠点を展開する印刷業A社は、20年以上前から「60歳定年、希望者全員年齢上限なしの再雇用」の雇用制度を整備していますが、再雇用後の賃金水準を見直していたため、高齢社員のモチベーション低下の問題を長年抱えていました。この問題を是正するため、2018年に同社は賃金・評価制度の改定を実施し(図表3)、再雇用後も同じ業務をフルタイム勤務で続ける場合、定年時の賃金水準は見直さず、賃金・評価制度は正社員と同じ制度を適用しています。さらに、役職者は同じ職務をフルタイム勤務で続けるかぎり役職を継続させています。 出典:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構『70歳雇用推進事例集2022』より、一部修正 図表1 人事管理の流れ 経営方針・戦略 《人事管理》 人材活用の基本方針 個別施策 (賃金・評価制度等) 労働法制 ※筆者作成 図表2 国の高齢者雇用政策と企業の賃金・評価制度の対応 平成期 前半 後半 国の高齢者雇用政策 65歳までの雇用確保の努力義務化 65歳までの雇用確保の義務化 企業の対応 雇用の基本方針 65歳雇用の推進 実質65歳定年制の整備 高齢社員の活用方針 福祉的雇用 戦略的活用への転換 賃金の基本方針 【基本給】一律定額 【昇給】なし 【賞与】定額 【基本給】職位・等級等にリンク 【昇給】あり 【賞与】人事評価を反映 評価制度 未整備/整備(継続雇用者用) 整備(正社員準拠) ※筆者作成 図表3 改定後の賃金・評価制度 個別施策 改定後の内容 賃金 制度 正社員と同じ 水準 見直しを行わない (正社員の水準を継続) 人事評価 制度 正社員と同じ ※(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構『70歳雇用推進事例集2022』をもとに作成 【P16-19】 解説2 70歳までの活躍をうながすためのミドル世代からの準備 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 1 変わるキャリア形成のあり方  解説1では、継続雇用で働いている高齢社員のモチベーション低下が起こる背景と仕事への取組み意識を高めるための課題について、賃金・評価制度から考えてみました。しかし、高齢社員に活き活きと一緒に働いてもらうためには、正社員と同じように彼ら(彼女ら)の仕事の成果を評価して賃金に反映させる仕組みに見直すだけではありません。定年をむかえて継続雇用に切り替わっても引き続き現場で活躍するという意識と業務に必要な知識・スキルや技術を習得してもらうことが必要になります。マンガに登場する若葉さんが勤める会社では、高齢社員が前向きに正社員と肩を並べて仕事に取り組んでいる一方で、キャリア形成の頂点である管理職を役職定年や定年退職で離れ、継続雇用により働いているものの、高齢社員に元気がみられない会社もあります。両者にどのような差があるのでしょうか。キャリア形成の視点から考えてみたいと思います。 2 キャリア形成と支援体制の変遷をふり返る  図表1はキャリア形成とキャリア支援体制の変遷の概要を整理したものです。解説1でも紹介したように、人事管理は企業の経営方針・戦略に基づいて形成されますが、その際には国の労働法制を遵守することが求められます。解説2のテーマである社員のキャリア形成については、さらに社内の労務構成も影響を受けます。昭和期は、戦後長らく55歳定年制が定着していましたが、1970年代に入ると高齢化が始まり、政府は対策に取り組み始めました。1986(昭和61)年に現在の高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)が制定され、60歳定年制の努力義務化が設けられました。高齢化が始まったといっても2021(令和3)年の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合:29.1%)に比べ、1970年は7.1%と10%を下回る水準でした。しかし、戦後の1950年(4.9%)以降、一貫して上昇が続いていたので、当時は高齢化対策が求められたのです。こうした政府の高齢化対策を受けて、企業は60歳定年制に向けた取組みを始めました。当時のキャリア形成は管理職を目ざした「のぼるキャリア」が一般的であったため、企業のキャリア支援は管理職になるための研修やサポート体制などが中心でした。高齢社員の活用方針については、定年後も引き続き仕事を続けることを希望する高齢社員が少ないため、正社員と同じように職場の戦力として仕事の成果を出して経営業績に貢献することを重視する戦力的活用ではなく、政府の高齢者雇用政策に協力するという社会的責任を果たすための福祉的雇用がとられ、高齢社員に対するキャリア支援等は積極的に行われていませんでした。  平成期に入り、政府は65歳までの雇用確保に向けた高齢化対策をとるようになり、2000(平成12)年の改正高齢法では65歳までの雇用確保措置が新たに設けられました。高齢法改正を受けて、企業は65歳雇用の推進に向けた取組みを始めたものの、65歳までの雇用確保措置は努力義務ということもあり、平成期前半の高齢社員活用の基本方針は、これまでの福祉的雇用を継続する対応が多くみられていました。高齢社員比率は高くなっているものの、キャリア形成は引き続き管理職を目ざした「のぼるキャリア」がとられ、キャリア支援も管理職になるための研修やサポート体制等が継続されました。  平成期後半になると高齢者雇用を取り巻く環境は大きく変わりました。65歳までの雇用確保を義務化した2004年の高齢法改正、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みを廃止した2012年の高齢法改正です。社員に占める高齢社員比率が高まるなか、こうした一連の高齢法改正を受けて企業は希望者全員の65歳までの雇用確保を目ざした実質65歳定年制の整備に取り組み始めました。とりわけ、人手不足に悩まされている産業、企業では高齢社員の活用方針が戦略的活用に転換される一方、大企業を中心に組織運営上の観点から役職定年制を設ける動きがみられるようになりました。そのため、キャリア形成のあり方は、定年前に管理職を離れる「くだりのあるキャリア」への転換が図られ、役職定年後も一社員(以下、「一般社員等」)になりますが、引き続き職場の戦力として活躍してもらうための研修(キャリア研修等)やサポート体制が役職定年を設けている企業で行われるようになりました。  役職定年を実施しているマンガに登場する企業では、年齢別研修や年齢にかかわりなく業務に必要な知識・スキルや技術を習得する研修が行われているため、役職定年と60歳定年の二度の定年を経験した高齢社員は、引き続き職場の戦力として活躍しているのです。 3 求められる戦略的活用のあり方〜現有能力の「活用」から「進化」へ  高齢社員の活用方針の、戦略的活用への転換が平成期後半に進められましたが、そのもとでの具体的な取組みを確認すると、実質65歳定年制が確立された際には、「のぼるキャリア」のもとで、60歳定年後の継続雇用の5年間を戦力として活躍することが高齢社員に求められていたので、戦略的活用の施策として、これまでつちかってきた経験やスキルを活かす「いまある能力をいま活用する」こと(現有能力の活用)が企業にとっても高齢社員にとっても合理的でした。  しかしながら、先に述べたように組織運営上の観点から大企業を中心に役職定年制が導入されるようになり、一般社員等としての就業期間が10年(役職定年を55歳とした場合)に延びました。「十年一昔」ということわざがあるように「10年」という期間には社会をはじめ市場や技術が大きく変化しますので、現有能力の活用を継続することが困難になりました。役職定年を実施している企業では、高齢社員の戦力的活用の修正が図られ、現有能力の更新に向けたキャリア教育や教育訓練体系の整備等のキャリア支援体制の拡充が進められました。  2020年の高齢法改正で70歳就業が努力義務化されたことにより、今後は就業期間の延伸が進むことが考えられます。そうなると、組織運営上の観点から先に述べたように管理職を目ざした「のぼるキャリア」を継続することが困難となり、大企業を中心にみられる役職定年制の導入が多くの企業で広がるとともに、それにともなうキャリア形成のあり方も「くだりのあるキャリア」への転換が予想されます。こうした70歳就業の推進と役職定年の普及により、「くだりのあるキャリア」のもとでの役職定年後の一般社員等としての就業期間を「15年」とすると、市場や技術の変化に対応した現有能力の進化が求められ、それに対応するキャリア支援体制のさらなる拡充が求められることになります(図表2)。 4 70歳就業時代のキャリア形成と支援のあり方〜経営成果に貢献する戦力として  高齢社員が企業の経営成果に貢献する戦力として活躍し続けるためには、管理職のときから準備しておくことが必要になります。例えば、役職定年や定年後のキャリアのあり方を考えるキャリア研修をはじめ、定年前に管理職を離れ一般社員等として活躍するために必要な業務スキルや知識の習得・向上です。さらに、継続雇用に切り替わっても若葉さんが働く会社の高齢社員のように職場で活躍するためには、自身の業務スキルや知識を磨いておくことが必要になります。そのため、管理職や高齢社員が業務スキルや知識の習得・向上を図るための研修を受講できる教育訓練体系に見直したり、拡充したりすること、全社員自らキャリア自律をうながし、「学び直し」や「リスキリング」などの新しい知識やスキルを身につけるための自己啓発支援の拡充や、キャリアサポートの整備・拡充が企業に求められます。  こうした従業員のキャリアの自律をうながすためのミドル社員の活躍を支援する事例としてB社の取組みを紹介します。この事例の特徴は、人事制度、職務開発、研修の3本柱により中高年社員の活躍の支援を実施している点です。 保険業B社 人事制度、職務開発、研修を3本柱に中高年社員の活躍を支援  国内外に多くの拠点を持つ保険業B社は、ダイバーシティ推進の一環として「人事制度」、「職務開発」、「研修」の三つから構成される中高年社員の活躍推進策を展開しています。研修では、@これからのワーク&ライフを考える「ワーク・ライフデザイン研修」、A今後のセカンドキャリアを考える「キャリア開発G50研修」、B「仕事と介護」・「仕事と健康」の両立を目ざして、自身のキャリア開発を考える「両立支援セミナー」、C自己研鑽や研修を通して一人ひとりの強みの発揮を目ざす「能力開発支援」の4施策が行われています。また、同社はこれら施策と連動して、社員のキャリア自律を応援する「ワーク・ライフ応援デスク」を設置して、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する取組みを展開しています。 ※本誌2020年2月号より、一部修正 図表1 国の高齢者雇用政策とキャリア形成の変遷 昭和期 平成期 前半 後半 国の高齢者雇用政策 60歳定年制の努力義務化 65歳までの雇用確保の努力義務化 65歳までの雇用確保の義務化 社員に占める高齢社員の割合 ( )は高齢化率 低 (1970年:7.1%/1985年:10.3%) やや高 (1995年:14.6%) 高 (2015年:26.6%) 企業の対応 雇用の基本方針 60歳定年制の推進 65歳雇用の推進 実質65歳定年制の整備 活用方針 福祉的雇用 福祉的雇用 戦略的活用への転換 キャリア形成のあり方 管理職 (のぼるキャリア) 管理職 (のぼるキャリア) 「定年前に管理職を離れる」への動き (くだりのあるキャリア) キャリア 支援管理職になるために必要な研修やサポート体制等 管理職になるために必要な研修やサポート体制等 役職定年後も一般社員等で活躍するための研修等やサポート体制の整備 (注)高齢化率の値は、総務省統計局「国勢調査」「人口推計」 ※筆者作成 図表2 戦略的活用の変化 平成期後半 令和期 雇用の基本方針 実質65歳定年制 70歳就業確保の推進 役職定年制 × △ ○ 定年後 (役職定年後)の一般社員等の就業期間(注) 5年 (継続雇用) 10年 (役職定年+継続雇用) 15年 (役職定年+継続雇用) 戦略的活用の取組み 現有能力の活用 現有能力の更新 現有能力の進化 (注)定年後(役職定年後)の一般社員等の就業期間は実質65 歳定年制を「60歳定年制+65歳までの再雇用」、役職定年制の定年年齢を「55歳」として計算 ※筆者作成 【P20-23】 解説3 多様で柔軟な働き方の整備 田口和雄 高千穂大学 経営学部 教授 1 求められる多様で柔軟な働き方の進化  マンガの若葉さんの会社で長年、経理部一筋で働いていた高齢社員の甲斐さんが家庭の事情(親御さんの介護)で退職を考えるまでに至ったことは会社だけではなく、働き続けたいという意識を持っている高齢社員本人にとっても残念なことです(結局、甲斐さんは「在宅勤務」となり退職せずにすみました)。少子高齢化による労務構成の変化、ライフスタイルの変化による就労ニーズの変化・多様化を背景に、解説3のテーマ「多様で柔軟な働き方」に関してさまざまな議論や取組みなどが平成期になされていました。そこで、以下では平成期に進められた多様で柔軟な働き方の取組みと、そのもとでの高齢社員の働き方をふり返り、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)改正にともなう令和期の働き方を考えてみたいと思います。 2 平成期の多様で柔軟な働き方の取組み ■平成期前半〜労働時間制度の柔軟化  図表1は平成期の多様で柔軟な働き方に関する主な取組みの概要を整理したものです。平成期の議論は主に正社員を対象にした「労働時間」の柔軟化でした。現在、正社員の標準的な働き方は、従業員(正社員)全員が同じ始業・終業時間の労働時間制度(以下、「一般的な労働時間制度」)による、労働基準法に定められた法定労働時間(週40時間)に基づいた1日8時間、週5日のフルタイム勤務です。  平成期前半は「労働時間制度の柔軟化」の取組みが進められました。標準的な働き方は1987(昭和62)年の労働基準法改正により、それまでの週48時間であった法定労働時間を週40時間に段階的に変更するとされたことがベースになっています。高度経済成長を経て先進国となったわが国の労働基準を国際的地位にふさわしい水準に引き上げるとともに、労働者の生活の質的向上を図ることを主な目的としていました。この改正で法定労働時間の短縮とともに、フレックスタイム制などの変形労働時間制度の導入が進められました。1993(平成5)年改正(週40時間労働時間制の実施、変形労働時間制度の拡充、裁量労働制の規定の整備など)、1998年改正(企画業務型裁量労働制の導入)、2003年改正(裁量労働制の改正)は経済活動のグローバル化や情報化などの進展、労働者の就業意識の変化などに対応した労働時間などの働き方にかかわるルールの整備を目的とした改正でした。こうした一連の法改正を受けて、平成期前半ではフレックスタイム制、変形労働時間制度、裁量労働制の導入などによる労働時間制度の柔軟化が進められました。  この時期の高齢社員の働き方は福祉的雇用のもと、高齢社員に求められる役割が正社員時代に求められた企業の中核人材として基幹業務をになう役割から、補助業務を担当して正社員を支援・サポートする役割に変わったため、短時間・短日勤務などの柔軟な働き方が中心でした。 ■平成期後半〜労働時間・労働日数の柔軟化  平成期後半の多様な働き方の取組みは「労働時間・労働日数の柔軟化」でした。少子高齢化にともなう生産年齢人口が減少するなか、育児や介護との両立など多様化する労働者個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会の実現を目ざした働き方改革の一環として推進されている「多様な正社員制度」のなかの「短時間正社員」の導入が進められました※1。企業は正社員に対して原則としてフルタイム勤務を求めていますが、「短時間正社員制度」は育児・介護などと仕事を両立したい社員、決まった日時だけ働きたい入職者、キャリアアップを目ざすパートタイム労働者など、さまざまな人材に、勤務時間や勤務日数をフルタイム勤務の正社員よりも短くしながら活躍してもらうための仕組みです。  この時期の高齢社員の働き方は戦力的活用が進むなかで、求められる役割が正社員に近い役割(中核業務をになう役割)に変わったため、平成期前半の短時間・短日勤務中心から正社員と同じフルタイム勤務中心、つまり正社員と同じ働き方に変わりました。もちろん、企業は引き続き短時間・短日勤務の働き方を選択できるようにしていますが、高齢社員を貴重な戦力として位置づけているためフルタイム勤務の働き方を高齢社員に求めています。マンガのなかでも高齢社員の甲斐さんは、再雇用後もフルタイム勤務で働いています。 3 令和期の新たな「多様で柔軟な働き方」〜勤務場所の柔軟化  しかし、高齢社員も多様な社員集団の一つとして、正社員と同じように就労ニーズは多様です。とりわけ、加齢にともなう身体機能の低下などが正社員よりも顕著になるため、フルタイム勤務を継続することがむずかしくなることが考えられます。そこで、短時間・短日勤務を選択することも可能ですが、マンガに登場する高齢社員の甲斐さんのように家族の介護や本人の病気治療などの健康問題の場合、短時間・短日勤務に変更してもむずかしく、退職せざるを得なくなってしまう場合もあります。退職は働き続けたい高齢社員にとっても、会社にとってもよいことではありません。  総論で紹介していますが、2021(令和3)年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法(以下、「新高齢法」)で新たに設けられた創業支援等措置により、業務委託による就業が可能となりました。業務委託の場合、勤務する場所は会社である必要がなくなりますし、労働時間も本人の裁量で決めることができるので、多様で柔軟な働き方がさらに高まります。  ここで注意が必要なのは、多様で柔軟な働き方の整備を進める場合、会社の業務特性によって可能なものと、むずかしいものがあることです。若葉さんが勤める会社を例にすると、高齢社員の甲斐さんが在籍する経理部などの事務部門はパソコンなどの勤務環境を整えつつ柔軟な働き方(労働時間と勤務場所)の整備が可能ですが、工場など製造部門の現場に適用することは基本的にむずかしいです。高齢社員を含めた社員がチームを組んで、同じ労働時間でライン業務を行うのであれば支障をきたしてしまいます。労働時間は正社員と同じにするものの、勤務日数を短日勤務にするなどの工夫が必要になります※2。  このように会社の業務特性をベースにしつつ、高齢社員の事情と会社の事情をすり合わせて多様で柔軟な働き方の整備に取り組んでいくことが求められます。特に、創業支援等措置は今回の高齢法改正で新たに設けられた措置なので、その措置を活用した高齢社員の就業制度を整備する場合には、これまで企業がつちかってきた高齢者雇用のノウハウを活かすことがむずかしいので、慎重な準備が求められます。  こうした多様で柔軟な働き方の事例としてC社とD社の取組みを紹介します。これらの事例の特徴は、高齢社員のニーズや置かれている状況にあわせて柔軟な勤務形態を実施している点です。 ※1 多様な正社員制度には、短時間正社員のほかに、担当する職務内容が限定されている「職務限定正社員」、転勤範囲が限定されていたり、転居をともなう転勤がない「勤務地限定正社員」の二つのタイプがある ※2 製造部門の場合、会社(製造職場)に来ないと業務ができないので勤務場所の柔軟化はむずかしい 図表1 平成期の多様で柔軟な働き方の取組みと高齢社員の働き方 時期 平成期前半 平成期後半 多様な働き方の取組み 概要 労働時間制度の柔軟化 労働時間・労働日数の柔軟化 主な内容 変形労働時間制度、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制の整備・拡充 短時間・短日勤務 (短時間正社員制度) 高齢社員 活用の基本方針 福祉的雇用 戦略的活用 働き方 短時間・短日勤務中心 フルタイム勤務中心 ※筆者作成 金融業C社 継続雇用制度ごとに柔軟な勤務形態の導入  県内に多くの拠点を持つ金融業C社は、希望者全員の65歳までの継続雇用制度、雇用基準を設けた70歳までの継続雇用制度の二つの継続雇用制度を設けています。継続雇用者の勤務形態については、65歳までの継続雇用制度ではフルタイム勤務(月150時間)を原則としつつ、高齢社員の希望によりミドルタイム勤務(月105時間の短時間・短日勤務)を、70歳までの継続雇用制度についてはミドルタイム勤務を原則としつつ、高齢社員の希望によりショートタイム勤務(月75時間の短時間・短日勤務)を選択することができる多様な勤務形態がとられています(図表2)。加齢にともなう身体能力の変化にあわせつつ、彼(彼女)らが活躍できる柔軟な勤務形態を同社は設けています。 出典:(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進事例集2020』より、一部修正 図表2 C社における継続雇用制度と勤務形態 勤務形態 フルタイム勤務 (月150時間) ミドルタイム勤務 (月105時間の短時間・短日勤務) ショートタイム勤務 (月75時間の短時間・短日勤務) 65歳までの継続雇用制度 ◎ ○ 70歳までの継続雇用制度 ◎ ○ (注)「◎」は原則とした勤務形態、「○」選択可能な勤務形態 ※(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構『65歳超雇用推進事例集2020』をもとに作成 運送業D社 高齢社員の希望にあわせた多様な勤務形態の導入  県内で事業活動を行っている運送業D社は、継続雇用の高齢社員の勤務形態をフルタイム勤務のほかに、@1日の勤務時間を6時間、1カ月の勤務日数は所定日数とする「短時間勤務」、A1日の勤務時間は所定労働時間(8時間)、1カ月の勤務日数を15日とする「短日勤務」を設けて、高齢社員の希望にあわせた勤務形態を選べるようにしています(図表3)。介護や本人の疾病など特段の理由がある場合、同社は@とAのほかに個別対応もしています。例えば、脳梗塞を発症した61歳の高齢社員に対して、同社はそれまで担当していた運転業務から倉庫管理業務に職種転換したうえで、勤務日数や時間を病気の回復の程度にあわせて柔軟に設定し、高齢社員の職場復帰の支援を進めました。 ※本誌2017年11月号より、一部修正 図表3 D社における高齢社員の勤務形態 勤務形態 1日の勤務時間 1カ月の勤務日数 フルタイム勤務 8時間 所定日数 短時間勤務 6時間 所定日数 短日勤務 8時間 15日 【P24-27】 解説4 安心・安全に働ける職場づくり 樋口善之 福岡教育大学 教育学部 准教授 1 業務上疾病は腰痛が多い  2021(令和3)年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、多くの企業において高年齢者就業確保措置がとられるようになりました。65歳までの雇用確保に加え、70歳までの就業機会を確保することは、少子高齢化が急速に進むわが国にとって非常に重要な施策の一つであるといえます。働く意欲のある人が年齢に関係なくその能力を十分に発揮できる環境整備として、定年を引き上げたり、継続雇用制度を整えたりすることとあわせて、安心・安全に働ける職場づくりが大切になります。  冒頭のマンガにもあるように、腰痛のような労働災害が起こらないようにするためには、職場環境の改善に努めるとともに、労働災害の防止や高齢期の健康・安全に関する研修の機会を設けていくことが大切です。  2020年の業務上疾病発生状況をみますと、休業4日以上となった1万5038件のうち、5582件は腰痛症となっています。腰痛は男女かぎらず全年齢において発生していますが、特に中高齢期においては筋力の低下や疲労からの回復能力の遅れなどの要因から、腰痛が起こりやすくなります。腰痛のような運動器疾患は働くうえでの大きな支障となるため十分な対策が必要になってきます。  職場における対策としては、重量物の取扱いに関するルールづくりや腰痛予防体操の導入などがあげられます。その日の体調や忙しさなども腰痛の発症につながるので、職場での健康観察や互いに声かけをすることなどにも気を配るとよいでしょう。また、重量物を取り扱っていない軽作業であっても同一の作業姿勢が長く続いたり、姿勢の拘束性が強い職場環境(代表的なものは自動車の運転)の場合は注意が必要です。職場における腰痛予防については、厚生労働省から『職場における腰痛予防対策指針※1』も公表されているので、ご一読をおすすめします。また、後述の『エイジアクション100※2』のなかにも腰痛対策のページがあります。 2 労働災害は増加傾向  次に、労働災害の発生状況についてみていきましょう。2020年における労働災害の状況としては、死亡した人が802人(前年度から43人の減)、休業4日以上となった人が13万1156人(前年度から5545人の増)となっています。死亡例は建設業がもっとも多く(32.2%、258/802人)、休業4日以上では第3次産業がもっとも多くなっていました(51.1%、6万6959/13万1156人)。  年齢別では、50歳以上の年代で多くなっており、特に全死傷者数の4分の1を占める「60歳以上」では、前年比1213人(3.6%)増の3万4928人(全体の構成比26.6%)となっています(図表1)。事故の型別の統計では、「転倒災害」がもっとも多く、次いで「墜落/転落」となっています(図表2)。 3 転倒災害につながる要因と対策  転倒災害につながる要因として、内的要因と外的要因に分けてみますと、内的要因としては、加齢にともなう心身機能の低下があげられます。もう少し詳しくみますと、バランス能力(例としては、開眼状態での片足立ち、など)や俊敏性(例としては、スクエアステップ※3〔図表3〕)が低下すると、体のふらつきが生じやすくなったり、とっさの危機回避ができなくなったりして、転倒や転落につながります。また、視覚機能(例としては、老眼や明暗反応など)の低下があると、ふらつき感が増幅されたり、段差などを見落としたりすることにつながります。  内的要因への対策としては、定期的なセルフチェックと運動プログラムの実施が有効です。「自分は大丈夫」と考え、自身の体力に自信を持つのはよいことですが、実際に体力測定などを実施することにより、自身の体力水準を適切に把握し、気づきをうながし、体力増進に取り組むきっかけをつくりましょう。また、運動プログラムについては、厚生労働省の『アクティブガイド』※4を参考にしたり、地域産業保健センターに相談したりするとよいでしょう。さらに先進的な取組みとして、オリジナルの体操や運動プログラムを取り入れている事業所もあります。日ごろから体力増進に努めましょう。  次に外的な要因として、転倒災害につながる職場環境について考えてみます。まず注意しなくてはならないのは段差や出っぱり、滑りやすい床面など、転倒につながる不安全な環境です。職場のなかですべての段差や出っぱりをなくすことはなかなかむずかしいと思いますが、取組みの最初の段階では、よく利用する通路などを対象として安全管理者や産業医と巡視を行い、転倒につながりそうな職場環境になっていないかチェックしてみましょう。また、明るさも重要なファクターです。明るさが十分でないと段差や出っぱりなどを見落とし、転倒につながることがありますので注意しましょう。 4 職場改善に役立つツール『エイジアクション100』  職場における腰痛予防や転倒災害対策をはじめ、高齢労働者に配慮した職場改善に役立つツールとして『エイジアクション100』があります。このツールは、高齢労働者の安全と健康確保のためにどのような対策を行えばよいのかをチェックリスト形式で進めていくことを想定したアクション型チェックリスト(具体的な取組みを明示したチェックリスト)になっています。例えば、転倒防止の項は(図表4)、「通路の十分な幅を確保し、整理・整頓により通路、階段、出入口には物を放置せず、足元の電気配線やケーブルはまとめている」というチェック項目があり、項目の内容が実施・実現できていれば、結果欄に○=A実施できていない場合には×≠つけます。さらに×≠フ場合には、改善の優先度を記入する欄も設けられています。このほかにも、現場での職場改善に役立つチェック項目や改善のためのヒントが盛り込まれていますので、PDCAサイクル※5のもとで定期的・継続的に活用しましょう。 5 安心・安全につながる研修機会の確保  職場での労働災害を防ぐ取組みは、年齢にかかわらず、だれもが安心・安全に働くために大切なことです。その取組みを有効なものにしていくためには、職場の全員が労働災害の防止に関心を持ち、自分たちの職場をよくしていこうとするボトムアップ型の取組みが重要です。また、経営側においても、労働災害防止対策に取り組むことをきちんと方針化し、確立された安全衛生管理体制のもとでさまざまな取組みが有機的に行われるようにするトップダウン型の推進体制の構築も欠かせません。  そのためにも、安全衛生委員会などがイニシアティブをとり、さまざまな機会を通じて高齢労働者に配慮した職場づくりに関する研修を実施していきましょう。 ※1 厚生労働省『職場における腰痛予防対策指針』https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html ※2 中央労働災害防止協会『エイジアクション100(改訂版)』https://www.jisha.or.jp/research/pdf/202103_01.pdf ※3 スクエアステップ…… 高齢者の転倒予防・要介護化予防・認知機能向上・体力づくりをはじめとし、成人の生活習慣病予防などのためのエクササイズになっています。詳しくはスクエアステップ協会のホームページ(https://square-step.org/)をご覧ください ※4 厚生労働省『アクティブガイド』https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpr1.pdf ※5 PDCAサイクル……Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階をくり返し行い、業務を改善していくサイクルのこと 図表1 平成30〜令和2年までの年齢別労働災害発生状況 平成30年 〜19歳 2,722人 20〜29歳 15,288人 30〜39歳 18,199人 40〜49歳 27,489人 50〜59歳 30,385人 60歳以上 33,246人 令和元年 〜19歳 2,680人 20〜29歳 15,025人 30〜39歳 17,434人 40〜49歳 26,463人 50〜59歳 30,294人 60歳以上 33,715人 令和2年 〜19歳 2,527人 20〜29歳 16,410人 30〜39歳 18,082人 40〜49歳 27,089人 50〜59歳 32,120人 60歳以上 34,928人 ※厚生労働省「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況」より筆者作成 図表2 令和2年 事故の型別死傷災害発生割合 転倒24% 墜落・転落16% 動作の反動・無理な動作15% はさまれ・巻き込まれ10% 切れ・こすれ6% 交通事故(道路)5% 激突5% その他19% ※厚生労働省「『労働者死傷病報告』による死傷災害発生状況」より筆者作成 図表3 スクエアステップ 一辺が25pの正方形を並べたマットを利用し、そのマットの上で足ぶみ(ステップ)を行う運動プログラム 資料提供:スクエアステップ協会 図表4 高年齢労働者に多発する労働災害の防止のための対策 (1)転倒防止 結果 @つまずき、踏み外し、滑りの防止措置 優先度 6 通路の十分な幅を確保し、整理・整頓により通路、階段、出入口には物を放置せず、足元の電気配線やケーブルはまとめている。 7 床面の水たまり、氷、油、粉類等は放置せず、その都度取り除いている。 8 階段・通路の移動が安全にできるように十分な明るさ(照度)を確保している。 9 階段には手すりを設けるほか、通路の段差を解消し、滑りやすい箇所にはすべり止めを設ける等の設備改善を行っている。 出典:中央労働災害防止協会『エイジアクション100』 【P28-29】 65歳超雇用推進助成金について 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 高齢者助成部  「65歳超雇用推進助成金」は、65歳以上への定年引上げ等を行う事業主、高年齢者の雇用管理制度の整備を行う事業主、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する事業主に対して、国の予算の範囲内で助成するものであり、「生涯現役社会」の構築に向けて、高年齢者の就労機会の確保および雇用の安定を図ることを目的としています。  共通の要件は、雇用保険適用事業所の事業主であること、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第8条、第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこととなります。  この助成金は次のT〜Vのコースに分けられます。 T 65歳超継続雇用促進コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、次の@〜Cのいずれかを就業規則等に規定し、実施した場合に受給することができます。 @65歳以上への定年の引上げ A定年の定めの廃止 B希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入 C他社による継続雇用制度の導入 ◆支給額  実施した制度、引き上げた年数、対象被保険者数に応じて図表1・2の額を支給します。 ◆申請書受付期間  図表1・2の措置の実施日が属する月の翌月から起算して4カ月以内の各月月初から5開庁日までに「65歳超継続雇用促進コース支給申請書」に必要な書類を添えて、申請窓口まで提出してください。 U 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、高年齢者の雇用の推進を図るために雇用管理制度(賃金制度、健康管理制度等)の整備に係る措置を実施した場合に、措置に要した費用の一部を助成します(図表3)。 ◆支給額  支給対象経費(上限50万円)に60%(中小企業以外は45%)を乗じた額を支給します。なお、生産性要件を満たす事業主の場合は支給対象経費の75%(中小企業以外は60%)を乗じた額となります。初回の支給対象経費については、当該措置の実施に50万円の費用を要したものとみなします(2回目以降は50万円を上限とする実費)。 V 高年齢者無期雇用転換コース  このコースは、支給要件を満たす事業主が、50歳以上で定年年齢未満の有期契約労働者を転換制度に基づき、無期雇用労働者に転換させた場合に、対象者数に応じて一定額を助成します。 ◆支給額  対象労働者1人につき48万円(中小企業以外は38万円)を支給します。なお、生産性要件を満たす事業主の場合は対象労働者1人につき60万円(中小企業以外は48万円)を支給します。 助成金の詳細について  この助成金の支給要件等の詳細は、当機構ホームページをご確認ください。  また、当機構ホームページから、各コースの申請様式や支給申請の手引きをダウンロードできます。その他、制度説明の動画も掲載しています。  この助成金に関するお問合せや申請は、当機構の都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課、連絡先は本誌65頁参照)までお願いします。 図表1 65歳超継続雇用促進コース 定年の引上げまたは定年の廃止、継続雇用制度の導入 措置内容 対象被保険者数 65歳への定年の引上げ 66〜69歳への定年の引上げ 70歳以上への定年の引上げ(注) 定年の定めの廃止(注) 66〜69歳への継続雇用の引上げ 70歳以上への継続雇用の引上げ(注) 5歳未満 5歳以上 1〜3人 15万円 20万円 30万円 30万円 40万円 15万円 30万円 4〜6人 20万円 25万円 50万円 50万円 80万円 25万円 50万円 7〜9人 25万円 30万円 85万円 85万円 120万円 40万円 80万円 10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円 160万円 60万円 100万円 (注)旧定年年齢、継続雇用年齢が70歳未満の場合に支給します。 図表2 65歳超継続雇用促進コース 他社による継続雇用制度の導入(上限額) 措置内容 66〜69歳への継続雇用の引上げ 70歳以上への継続雇用の引上げ(注) 支給上限額 10万円 15万円 ※ 申請事業主が他社の就業規則等の改正に要した経費の2分の1の額と表中の支給上限額いずれか低い方の額が助成されます。対象経費については申請事業主が全額負担していることが要件となります。 (注)他の事業主における継続雇用年齢が70歳未満の場合に支給します。 図表3 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース 高年齢者雇用管理整備措置の種類 高年齢者に係る賃金・人事処遇制度の導入・改善 労働時間制度の導入・改善 在宅勤務制度の導入・改善 研修制度の導入・改善 専門職制度の導入・改善 健康管理制度の導入 その他の雇用管理制度の導入・改善 支給対象経費 ●高年齢者の雇用管理制度の導入等(労働協約または就業規則の作成・変更)に必要な専門家等に対する委託費、コンサルタントとの相談に要した経費 ●上記経費のほか、左欄の措置の実施にともない必要となる機器、システムおよびソフトウェア等の導入に要した経費(計画実施期間内の6カ月分を上限とする賃借料またはリース料を含む) https://www.jeed.go.jp JEED 高齢者助成金 検索 制度説明の動画はコチラ https://youtu.be/qxQxzkvsjYc 【P30】 高齢者雇用促進のためのその他の助成金 編集部  当機構の「65歳超雇用推進助成金」のほかにも、高齢者を雇用した場合の助成金として「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース・生涯現役コース)」、60〜64歳の高齢労働者の賃金の増額等を行った事業者に対し助成する「高年齢労働者処遇改善促進助成金」があります。いずれもハローワークや都道府県労働局が窓口となります。 特定求職者雇用開発助成金 (特定就職困難者コース)  高齢者や障害者などの就職困難者をハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に支給されます。この助成金の対象となる高齢者は60歳以上65歳未満の方です。  高齢者を雇い入れた場合の助成対象期間は1年間で、支給対象期(6カ月間)ごとに支給されます。支給額は「短時間労働者以外」(1週間の所定労働時間が30時間以上)と「短時間労働者」(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者)で異なり、中小企業が短時間労働者以外を雇用する場合、60万円を2期に分け30万円ずつ(中小企業以外は50万円を2期に分け25万円ずつ)支給されます。  中小企業が短時間労働者を雇用する場合は、40万円を2期に分け20万円ずつ(中小企業以外は30万円を2期にわけて15万円ずつ)支給されます。 特定求職者雇用開発助成金 (生涯現役コース)  65歳以上の離職者をハローワークなどの紹介により、1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に支給されます。助成対象期間は1年間で、支給対象期(6カ月間)ごとに支給されます。短時間労働者以外を中小企業が雇用する場合、70万円を2期に分け35万円ずつ(中小企業以外は、60万円を2期に分けて30万円ずつ)支給されます。  中小企業が短時間労働者を雇用する場合は、50万円を2期に分けて25万円ずつ(中小企業以外は40万円を2期に分けて20万円ずつ)支給されます。 高年齢労働者処遇改善促進助成金  雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を推進する観点から、2021(令和3)年4月に新設された助成金です。60〜64歳の高年齢労働者の処遇の改善に向けて、就業規則や労働協約の定めるところにより、高年齢労働者に適用される賃金に関する規定または賃金テーブル(以下、「賃金規定等」)の増額改定に取り組む事業主に助成されます。  支給額は、賃金規定等改定前後を比較した高年齢雇用継続基本給付金の減少額に、以下の助成率を乗じた額となります。 ・2021年度または2022年度  4/5(中小企業以外は2/3) ・2023年度または2024年度  2/3(中小企業以外は1/2)  なお、支給にあたっては、算定対象労働者が受給した高年齢雇用継続基本給付金の総額の減少率が95%以上であること、増額改定後の賃金規程等を6カ月以上運用していることなど、いくつかの要件を満たしている必要があります。 ★  ★  ★  それぞれの詳細については最寄りのハローワーク・労働局へお問い合わせください。 【P31】 日本史にみる長寿食 FOOD 345 江戸老人の元気食、ウナギのかば焼き 食文化史研究家●永山久夫 女性にもてた江戸の老人  本連載2022(令和4)年4 月号でも触れましたが、江戸の老人たちは、「八十の手習い、九十の間に合う」といって、高齢になっても、勉強し続けていました。八十歳になってからでも勉強しておけば、九十歳になって、新しい仕事を立ち上げようとするときに役に立つという意味です。江戸時代になって平和が続き、景気がよくなり、長生きする方たちが増えてきたのです。  当時は年金などありませんから、自力で生きるしかありません。江戸の老人たちは、生涯現役を目ざして、健康に留意し、勉強を怠(おこた)りませんでした。  寺子屋の先生になる人、川柳(せんりゅう)や俳句、絵画、それに小唄、三味線、踊りの師匠さんになる人など、みなさん多才でした。  江戸の老先生や老師匠たちは教養もあり、喋り口もうまいですから、女性にもてます。そうすると男性ホルモンのテストステロンも増えて、さらに若返り、それがまた不老と長寿にも効果をあげるのです。実にうらやましい。 長寿法の“神さま”  その老先生や老師匠さまたちが、好んでいたのがウナギのかば焼きでした。香ばしく焼き上げたかば焼きには、テストステロンの強化に役立つ成分がたっぷりなのです。その一つが生殖機能の老化防止に役に立つといわれているアルギニンというアミノ酸です。次のような川柳もあり、江戸の人たちはウナギの効果を知っていました。 うなぎ屋へ 古提灯(ふるちょうちん)を 張りに来る  老人を「古提灯」に例え、その古提灯も、かば焼きを食べると、たちまち元気になるという意味です。  ウナギは元気になるだけでなく、物忘れを防ぐ妙薬としても知られていました。「人の名前が出てこなくなったら、ウナギを食べろ」といわれてきたのです。  ウナギには記憶力アップなどの効果で知られているDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富で血液のサラサラ作用で有名なEPA(エイコサペンタエン酸)もたっぷり含まれています。  最近注目されているのがウナギに多く含まれているカルノシンという抗酸化の成分。体細胞の酸化、つまり、老化を防ぐ働きがあり、若さを保つうえで役立ちます。江戸のご老人は現代の「長寿法の神さま」ではないでしょうか。 【P32-37】 新連載! マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! こんなときどうする? 若手社員が定年延長の方針に不満を抱えています 第1回 ※ このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです 1)現状把握〜基本方針の決定 情報収集、現状把握を行ったうえで経営層の関与を得て、体制にも配慮しつつ、方針を決定する。 2)制度検討・設計、具体的検討・決定 まずは、人事部門などで定年の引き上げ方(時期、対象者など)や、高齢社員の役割などについて検討する。制度の概要が示されたら、各職場で高齢社員に担当してもらう職務などについて具体的に検討する。 3)説明・実施 制度導入の理由や制度の内容について、社員にしっかりと説明し、理解してもらう。そして制度を実施する際には、高齢社員に戦力となってもらえるよう、さまざまな施策も展開していくことが必要。 役割を明示し、その役割に沿って能力が発揮できるよう、意識啓発、教育訓練や健康管理支援を行うことが望まれる。 4)見直し・修正 実施後も定期的に現状把握を行うとともに、運用状況を把握したうえで修正を行う。 【グラフ@A】出典:内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度) 【グラフB】資料:平均寿命については、2010年につき厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「完全生命表」、他の年につき「簡易生命表」、健康寿命については厚生労働省政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室「簡易生命表」、「人口動態統計」、厚生労働省政策統括官付参事官付世帯統計室「国民生活基礎調査」、総務省統計局「人口推計」より算出。出典:厚生労働省『令和2年版厚生労働白書』 つづく 解説 新連載! マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! こんなときどうする? 第1回 若手社員が定年延長の方針に不満を抱えています  高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったいま、定年や継続雇用上限年齢の延長など、高齢者雇用制度を改定する企業が増えていくことが予想されます。しかし、会社や社員の将来のための制度改定も、会社からの説明や社員の理解が不足していると、今回マンガに登場した猫山産業株式会社のように、社員から不満があがってくることも少なくありません。制度改定を進めるうえでのポイント・注意点について、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。 内田教授に聞く高齢者雇用のポイント 高齢者と若手の距離を縮め、すべての世代の社員が働きやすい職場づくりを  高齢者が活き活き働いている企業のトップに共通することがあります。それは高齢者の活躍が従業員と会社双方の利益になるという強い信念を持っていることです。加えて、高齢者を含めあらゆる年齢層の従業員の話を聴き、高齢者雇用の意義と重要性を従業員にしっかり伝え、世代を超えた幅広い理解と支持を生む風土づくりに取り組んでいることです。  若者の多くは目の前の利益や不利益は理解しても、高齢者になったときの自分の姿、そのときに思うことや願うことを想像するのはむずかしいでしょう。「定年延長になれば高齢社員が自分の給料分も持って行ってしまう」と若手が誤解すれば高齢者との断絶が生まれ、若手の退職が増えてしまうかもしれません。  若者に高齢期の姿を少しでも現実的にとらえてもらうには、高齢者といっしょに仕事をしてもらい、高齢者が長く働き続ける意欲と能力を持っていることを間近で見て感じ取ってもらう機会をつくるとよいでしょう。高齢者は若手に仕事のやり方だけではなく面白さや達成感も伝えます。若手から高齢者が学べることもあり、若手と高齢者の距離は縮まります。また、成果に応じた評価制度を導入し処遇するなど、若手も高齢者も納得する仕組みをつくることも必要です。その結果、若手の退職も減るのではないでしょうか。  少子高齢化が進むわが国では、働き手としての高齢者の重要性がいよいよ高まります。そのため高齢者が働きやすい職場環境の実現も不可欠ですが、その恩恵を受けるのは高齢者だけではありません。柔軟な勤務制度は通院や介護といった事情を抱える高齢者に加え、子育て世代の社員が働きやすい制度にもなります。「働きやすさ」の視点から生まれた制度は、高齢者だけではなく若手や中堅社員の支持も集め、「この職場で長く働きたい」と思える会社が実現します。 プロフィール 内田賢(うちだ・まさる) 東京学芸大学教育学部教授。 「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「65歳超雇用推進研究委員会」委員長(2016年度〜)を務める。 【P38-39】 江戸から東京へ 作家 童門冬二 [第116回] ある青春≠フ話 沖田の死  私には一時期、テレビの時代劇脚本を書いていた時期がある。子母(しも)澤寛(ざわかん)さん原作の「新選組始末記」だ。そのことを知っている人物が一、二年前に私を訪ねてきた。  「新選組で沖田総司を演(や)らせていただいた俳優のAの悴(せがれ)です。父の最後のシーンをおぼえていらっしゃいますか?」  「トラウマになっていますよ。よくおぼえています」  「再現していただけますか。親爺(おやじ)が死んだので、思い出を集めているのです。ぜひお話をうかがいたくて」  「沖田総司の最後を再現すればいいのですね。わかりました」  私もキライではないのですぐ乗った。以下はそのシーンをシナリオ風に書く。 1 場所は沖田の病室。衰弱しきった沖田が寝ている。もう起き上がれない。病室の外の庭の塀には沖田が可愛がっている黒猫が乗っている。沖田を見てはいるが近寄らない。まもなく沖田が死ぬのを知っているからだ。 2 沖田にはそれがわかる。くやしい「猫のヤロー、オレが死ぬのを待ってやがる。恩知らずめ!」 3 にらみあいに負けた沖田は突然起き上がり、刀を抜いてヨロヨロと猫に近づいていく「このヤロー」と突然斬りかかる。 4 しかし体力の消耗した沖田にはもう猫も斬れない。猫は別の所に逃げ、沖田は空振り。ドウとその場に倒れる。刀を放り出してなげく。「畜生(ちくしょう)、もう猫も斬れねえ」。ふとんをかぶってそのなかで泣く。  ここまでが私の書いた脚本。  ドラマではこの先、すぐセットを模様替えして近藤勇との別れのシーンになる。はずなのに沖田が動かないからそれができない。  別室の調整室でディレクターがスタジオ内で動かない沖田にささやく。「沖田ちゃん、そこからどいて。セットの模様替え。ワカルよネ。どいてちょうだい。沖田はもう死んだの、ね、お願いします」 5 しかし沖田は動かない。当時はビデオテープが高くて思うように使えない。すべてスタジオからナマで放映する。だからスタッフはみんな気が気でない。ハラハラしてくる。 6 が、突然沖田が動いた。パッとふとんをハネ飛ばし、うめきはじめた。  「もうオレには猫も斬れねえ。これが京都で鳴らした新選組一番隊長沖田総司の成れの果てだ。くやしいねえ。本物の沖田さんの悲しみがゾクゾクと伝わってくるよ。そう思うと悲しくてくやしくて、とても動けるもンじゃねえ、動けねえンだよ!」  バッと布団を叩いた。 企業にも青春がある  スタッフがみな私を見た。  「あんなこと書いたの?」  私は首をふった。「全部かれ(Aさん)のアドリブだよ」  そう身ぶりしてニヤッと笑った。  (オレの脚本よりよほど名セリフだ)  口に出さずにそう告げた。 7 反応が起こった。「どうしたの」、「どうなっちゃったの」と、疑問の電話で満杯だった放送局への電話が、すべて沖田への感動と賞賛の声に変わった。  「それがすべてです」  息子さんにそう話した私は余計なことを加えた。  「あの事件は放送局員のすべてが味わった、一つの青春だと思いますよ。ビデオテープが買えないために、組織として成員のすべてが経験した、貴重な青春です」  この話を側面から応援する事実が一つある。それは猫が斬れなくてくやしかった沖田が、抜いた刀を放り投げたときに発した音だ。  普通ならセットとして組まれた病室のタタミか、庭の草の音だろう。しかし聴こえてきたのは、  「チャリン」  だった。  金属とコンクリートの床とがぶつかりあう音だ。金属音は、Aさんの息子さんの、  「そのときの親爺は本身(ほんみ)(真剣)を持って出かけましたよ」  という説明でカタがつく。コンクリートの方はいろいろと議論を呼んだ。しかし五十年も六十年も前のことなので省く。ただ私にとっては、  「これも青春≠セ」  と思っている。それも個人の経験としてでなく、組織としての経験だと思っている。 【P40-43】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第121回 大阪府 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 60歳から66歳に定年を延長 高齢者のための新たな役割を創出 企業プロフィール 株式会社ヤマヒロ運輸(大阪府東大阪市) 創業 2006(平成18)年 業種 一般貨物自動車運送業 社員数 100人(うち正社員数97人) (60歳以上男女内訳) 男性(14人)、女性(0人) (年齢内訳) 60〜64歳 10人(10%) 65〜69歳 3人(3%) 70歳以上 1人(1%) 定年・継続雇用制度 定年は66歳。基準に該当する場合は70歳まで継続雇用。平均年齢は49歳。最高年齢者は73歳で社内便配送等を担当  大阪府は北摂山(ほくせつさん)系、生駒山(いこまやま)、金剛山(こんごうさん)、和泉葛城山(いずみかつらぎさん)に囲まれており、淀川、大和川、石川の河川が大阪湾へと流れ込んでいます。大阪湾から生駒山系にかけては大阪平野が広がっています。  当機構の大阪支部高齢・障害者業務課の丸橋(まるはし)正治(まさじ)調査役は大阪府の産業について次のように説明します。「大阪府の産業のイメージとして、『ものづくりの街』、『商いの街』、『食の街』などがよくあげられますが、規模的には『中小企業の街』といえます。大阪府の工業生産に占める中小企業の割合は非常に高く、なかには独自の技術を誇り、特定分野において世界的に高いシェアを有するような企業も数多く存在しています。産業別では、医薬品、産業機械などの製造業、総合商社、百貨店などの流通業・物流業、そして、金融などのサービス業がバランスよく立地しており、さらに、バイオなどのハイテク産業、スポーツ関連産業、ゲームコンテンツ産業などのユニークな産業も集積しています」  同支部の取組みについては、「2021(令和3)年4月1日に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業に70歳までの就業機会確保の努力義務が課されたことから、高齢者が長く働くことができる制度や環境の整備をスムーズに進められるよう支援しています」と話します。  今回は、同支部で活躍するプランナー・竹本健次さんの案内で「株式会社ヤマヒロ運輸」を訪れました。 グループ一体となって運送業界に新風を吹き込む  株式会社ヤマヒロ運輸は、東大阪市を拠点とする山田運送株式会社のグループ会社として2006(平成18)年に設立されました。山田運送は約50年の歴史がある長距離運送会社で、福岡県、愛知県、千葉県、埼玉県に支店・営業所を構え、郵便局経由の郵便物や大ロットの荷物を全国に輸送しています。ヤマヒロ運輸は、山田運送が新大阪郵便局に運んだ郵便物を、近畿圏内の大きな郵便局に運ぶエリア配送をになっています。ヤマヒロ運輸ならびに山田運送の代表取締役で、山田運送グループの代表を務める安原(やすはら)信行(のぶゆき)さんは、これまで年齢や経験を問わず、やる気がある人を受け入れ、その人ができる仕事、やりたい仕事を任せてきました。「やりたいことがあれば部署の垣根を越えて仕事をすることもできます。仕事がなければつくります」と力強く話します。この方針が働く人たちの居心地のよさにつながっているのでしょう。一度辞めても復職する人も多くおり、75歳の方が復職したこともあるそうです。さらには78歳という高齢で入社した人や、84歳まで現場で荷物の収集を担当した人もいたそうです。高齢社員について安原社長は、「長く現場で活躍してきた方は、仕事のやり方やルールをきちんと理解しています。若手にそれらを教えてもらうことを期待して、若手とベテランの混合コンビを組むようにしています」と話します。 プランナーの提案を上回る「66歳」定年に改定  ヤマヒロ運輸は2021年2月に、定年年齢を60歳から66歳に、希望者全員の継続雇用の年齢上限を65歳から70歳に延長しました。さらに本人と会社の話合いによって、年齢の上限なく継続雇用する制度を整えました。定年延長と同時に、賃金制度の見直しも行い、それ以前の定年後の賃金は、年金と合わせて定年前の収入程度まで減額していましたが、定年前の賃金水準を維持する制度に改めました。  このような高齢者雇用制度の見直しは、事業の中核をにないボリュームゾーンでもある40代後半から50代の社員が、10年後、15年後にも引き続き能力を発揮し、長く働いてもらうことが同社の発展に不可欠と判断して取り組んだものです。  社員ができるだけ長く働ける仕組みを整えてきた安原社長ですが、一方で同社の多くの社員が、定年制を意識せずに働いていることを感じているそうです。  「多くの社員が定年制を意識していないからこそ、『定年』という定義はこの会社になくてもよいのではないかと感じています。年齢に関係なく働けるのであれば、同じ仕事を同じように続けてもらいたいものです。そういった意味でも、定年制はなくすのが理想だと思います」  竹本プランナーは、社会保険労務士として豊富な実績を持ち、特に賃金・人事分野におけるコンサルティングに造詣が深く、高齢者雇用制度の見直しをはじめ、組織の活性化、従業員のモチベーションアップに向けた支援を得意としています。プランナー活動にあたっては、「いつでも明るく、ていねいに、感謝の気持ちを持って、事業所訪問を行っています」と語る、真摯な人柄で謙虚な気持ちを持ち続けているベテランです。ヤマヒロ運輸には2020年11月に初めて訪問し、安原社長と面談しました。当機構のアンケート調査を例に、制度改正が高齢者のみならず企業にとってさまざまな効果を上げていることをデータで示して、65歳への定年延長と、希望者全員70歳までの継続雇用制度を提案しました。あわせて「雇用力評価ツール」を用いて、同社が高齢者の能力を発揮しやすい体制づくりについてアドバイスを行い、同規模、類似業種の先進企業の事例を紹介しました。  竹本プランナーのアドバイスを参考に、同社は2021年2月に就業規則を改定しました。  「訪問の際に渡した『65歳超雇用推進マニュアル』※に記載のある『制度改正を進める手順』の項目も参考になったようです。私が提案した65歳の定年年齢を上回って66歳定年に改定されたので驚きました。高齢者雇用に先進的に取り組んでいる会社だと実感しました。安原社長の、人を大事にする経営により、社員一人ひとりが主体的に、活き活きと働くことにつながっている会社です」(竹本プランナー)  安原社長のモットーは「先義・後利」。「義理を果たした後、利益がついてくる」という意味であり、まさにその言葉通り、働く「人」を大切にするヤマヒロ運輸の業績は増収増益で推移しているそうです。  今回は、高齢社員の活躍の場を広げるために立ち上げた新部署で働く、高齢社員の方にお話をうかがいました。 高齢社員3人のための新しい職域で働く  松本祥孝(よしたか)さん(73歳)は1年前から車検や事故時に代車を使って対応したり、社内の連絡便の配送や、郵便局に書類を届けるなどの業務を行っています。月に14〜15日ほどの勤務で、土日はお休みです。それまでは長年、郵便ポストの収集業務を行ってきました。  「16年前から別の会社で郵便局の収集の仕事をしていました。8年前に事業がヤマヒロ運輸に移ったことで、私を含めて3人が仕事と一緒にこの会社に移りました」(松本さん)  しかし2年前、同事業の落札が叶わず、担当していた松本さんをはじめ高齢社員3人の仕事がなくなってしまいました。そこで、この3人の新たな役割として、社内の連絡便を届けたり、事故や故障時のフォローを行う部署が新たに設置されました。  松本さんは新しい仕事について、笑顔で次のように話します。  「ポストから手紙を収集して郵便局に届ける仕事は365日あり、収集した郵便物は20〜30kgと重く持ち運びがたいへんです。このところは身体的に辛いと思うようになっていました。昨年、仕事がなくなったときに、安原社長に新しい部署をつくるからとすすめられて異動したことで作業の負担が軽くなり、身体が楽になりました。お正月の三が日に休めることも、とても嬉しいですね」  また、「車の運転は好きで、何時間でも運転できます」という松本さん。仕事では事故を起こさないための安全運転が大事だと話します。「三つくらい先の信号を見るようにして、前の車の動きを確認し、早い段階で車線変更するなどして対応しています」と話します。「もちろん時間厳守も大事です」と顔を引き締めて強調していました。  さらに、松本さんは社長が主催するイベントを楽しみにしており、「この会社はアットホームで本当にいい会社です。今後も働き続けたい」と話してくれました。  いつも松本さんに連絡便を頼んでいるという管理本部管理課係長の村上公美さんは、「文句一ついわずに、いつも頼みごとを聞いてくれます。急な届け物を頼めるのかどうか、こちらは心配になるのですが、そのときの仕事の状況と都合がつく時間を教えてくれ、間に合うかどうかを確認してくれます。本当に頼りになる存在です」と話します。  最後に高齢者雇用について安原社長に聞くと、「60歳や65歳で会社を退職したものの、『家にいてやることがない』と暇を持て余している人がいない世の中にしたいですよね。トラックの運転ができる高齢者がいれば『当社のトラックに乗ってください』と誘いたい。年金がもらえるまでちゃんと仕事を提供できる会社が増えるとよいと思っています。60歳はまだまだ活躍できる戦力ですし、65歳でも元気です。先輩方にはいつまでも元気に働いてほしいので、仕事がないならつくっていきます」と力を込めて語ってくれました。  今後は、郵便事業の現場で管理職を務めた経験豊富な人物に定年、あるいは役職定年後に入社してもらい、新規事業の立ち上げや若手の教育をになってもらう新しい部署の創出を実現していきたいという夢も話してくれました。  最後に、竹本プランナーは、「今後も同社の繁栄と成長に結びつくような人材活用と人事制度の改善に向けて、相談・助言、提案を行っていきたいです」と気持ちを新たに語りました。 (取材・西村玲) ※ 65歳超雇用推進マニュアル……当機構ホームページでご覧いただけますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html 竹本健次 プランナー(77歳) アドバイザー・プランナー歴:9年 [竹本プランナーから] 「プランナーの仕事は自分にとって天職と考え、自信を持って事業所訪問に臨んでいます。『必ず喜んでいただける訪問客』であるために、前向きな姿勢・意識を持って出向いています。ヒアリングは正確に行い、高齢者の活用状況、および制度改正のための課題と課題解決への阻害要因を見極めるようにしています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆大阪支部高齢・障害者業務課の丸橋調査役は、「竹本プランナーは社会保険労務士、賃金・人事コンサルタントとして活躍するなか、つちかった知識と経験をプランナー業務においても遺憾なく発揮しています。高齢者雇用の課題となる賃金・人事・年金など幅広い分野について精通していることから、その経験に裏打ちされた助言に対して『たいへん役に立った』と多くの企業から好評をいただいています。ていねいな説明と企業に寄りそう姿勢は、ほかのアドバイザー、プランナーのお手本になっています」と話します。 ◆大阪支部高齢・障害者業務課は大阪モノレール摂津駅から徒歩約7分のところにあります。所在する摂津市は都心部から約12kmの距離にあり、大阪市やその衛星都市と幹線道路や鉄道で結ばれており、大阪都市圏の核になる都市として発展しています。 ◆同課には32人のアドバイザー、プランナーが在籍し、高齢者雇用にかかわる取組みを支援しています。2021年度の事業所訪問数は約2100社、制度改善提案件数は約540件です。 ◆相談・助言を無料で実施しています。お気軽にお問合せください。 大阪支部高齢・障害者業務課 住所:大阪府摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 電話:06(7664)0782 写真のキャプション 大阪府東大阪市 ヤマヒロ運輸本社営業所 安原信行代表取締役 社内の連絡便などを担当する松本祥孝さん (左から)管理本部管理課係長の村上公美さん、安原信行代表取締役、松本祥孝さん 【P44-47】 知っておきたい 労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第50回 退職金制度の位置づけ、公益通報者保護法と懲戒解雇 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 退職金制度を導入するうえでの留意事項について知りたい  退職金制度について、制度を設計するにあたって留意しておくべき事項や、中小企業退職金共済制度の利用にあたって注意すべき点を教えてください。 A  退職金の支給に関しては、労働契約または就業規則の規定次第で、退職金請求権が発生するのか、その金額をいかなる方法で決定するのかなどが大きく変わることになるため、条文の記載は慎重に検討する必要があります。また、中小企業退職金共済制度を利用するにあたっては、自社の規定と共済からの支給に矛盾が生じないように配慮することが重要です。 1 退職金の性質  日本の企業においては、退職金制度が採用されている企業が少なくありません。退職金については、定年をはじめとする退職後の老後の資金としての側面もあり、税務上も優遇されています。  退職金制度自体は、労働基準法などにおいて制度の採用が義務づけられているわけではないため、各社が就業規則、賃金規程または退職金規程などを設けて、支給額の計算方法などを定めるようになっています。  一般的には、退職時の基本給に対して支給率(月数)を乗じて計算する計算方法が採用されている場合が多く、支給率が勤続年数に応じて高くなる傾向にあります。また、自己都合退職であるか、会社都合退職であるかによってもその支給率が相違するように設計されていることも多く、自己都合よりも会社都合による退職の方が、支給率が高くなるように設計されていることが多いとされています。  また、最近では、主として上場企業において、従業員の退職時に株式報酬を支給するような制度も現れており、バリエーションは広がっています。  前述の通り、法律上の義務ではないため、退職金の性質は、各社ごとに相違することもありますが、一般的には、賃金の後払い的性格があること、功労報奨としての性格があるということを前提に、法的な性格が決定されることが多いといえます。 2 退職金請求権の発生  労働者が、退職慰労金請求権を取得するためには、各社において定められた規程に沿った要件を充足する必要があり、退職すれば当然に請求することができるとはかぎりません。  例えば、過去の裁判例のなかには、退職金の上乗せ部分が支給されなかった労働者が、当該退職金の上乗せ部分を請求した事件において、請求権の発生に関する判断をしたものがあります(東京地裁平成19年12月21日判決、「ルックジャパンほか事件」)。  まず、「(事業の縮小等による解雇)又は会社の解散によって解雇される者に対する退職金は、第2条で得た退職金の額と、当該金額に100分の100を限度とした割合を乗じて得た額の合計額とする」との条項の解釈について、『支給することができる』という文言と異なり、断定的な規定の仕方をしていること」を理由に、上乗せ部分の給付を受ける権利を有することを定めたものと判断しています。  一方で、「第4条の文言をみる限り、『限度として』という文言により、100分の0から100分の100までの範囲で、使用者が定めた割合の金額を加算するという趣旨と解するほかない。したがって、第4条が定めた権利の内容は、使用者が決定した割合の金額について権利を有するというものといわざるを得ない」として、使用者による支給決定がないかぎりは、具体的な金額が定まらず、請求権が生じないという結論に至っています。  条文の末尾の記載だけで、権利が発生するのか否かが左右されたことも注目すべき点ですが、使用者の裁量の余地を広く認めていることにも着目すべきであり、退職金支給に関する規定の文言をいかなる記載にしておくのかということがいかに重要であるかを示しているといえます。 3 社外積み立ての退職金  中小企業などでは、中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」)などに加入しておき、毎月の掛け金を企業が負担することにより、従業員の退職時の退職金がその制度に基づき支給されるという場合もあります。  中退共を利用する場合の注意点としては、労働者に対する退職金の支給額は、あくまでも労使間の合意または就業規則により定まることになるため、中退共による支給予定額と矛盾が生じないように規程を整備しておく必要があります。仮に、退職金規程による支給すべき金額が、中退共により支給される金額よりも高い場合には、中退共から支給される金額に加えて不足額を使用者が負担しなければならないことになります。  それでは、逆に、中退共から支給される金額が、退職金規程に基づく支給額を上回る場合に、差額の取扱いはどうなるのでしょうか。過去の裁判例において、使用者がこの差額の返還を労働者に求めた事案があります(東京高裁平成17年5月26日判決「湘南精機事件」)。  この事案では、中退共から受領する退職金額のうち使用者の退職金規程により算出した退職金額を超える部分につき、労働者が使用者にこれを返還する旨の合意をしていました。この合意の内容が、改正前の中小企業退職金共済法の趣旨に反して、公序良俗に反するものと判断された結果、企業からの返還請求権は否定されています。類似の事件としては、中退共から支給された金額が使用者の定める退職金額を上回る部分について、不当利得に基づく返還請求をした事件もありますが、こちらでも、中小企業退職金共済法に基づき受給する権利が労働者にあること、使用者には損失がないことなどを理由に、返還請求は否定されています(東京簡裁平成19年5月25日判決)。  そのほか、中退共から受領する金額を退職金に充当することについても明確にしておかなければ、加算するのか控除するのかが不明確になることがあります。  したがって、中退共などを利用する場合においては、使用者が定める退職金規程については、中退共からの支給額と矛盾がないように定めておくこと、退職金の支給額が中退共からの支給額を上回る場合には、中退共からの支給額が退職金の支給総額から控除されることなどが明らかになるように定めておくことが重要と考えられます。 Q2 内部通報者の取扱いについて知りたい  会社の役員および責任者の取り扱った取引などについて、会社に対する背任に該当するといった通報を行ったことから、当該通報者については、企業秩序を乱した行為に該当する者として、懲戒解雇を検討していますが、問題あるでしょうか。 A  公益通報に該当する場合には、これにより不利益取扱いが禁止されているため、公益通報の該当性をまずは検討する必要があります。また、公益通報に直接該当しないとしても、解雇権濫用の判断にあたっては、公益通報者保護法の趣旨から効果が限定されることがあります。 1 公益通報者保護法について  公益通報者保護法が2020(令和2)年6月8日に改正され、今年の6月1日に施行されました。今回は、公益通報者保護法の概要をあらためて整理したうえで、公益通報にまつわる解雇に関する裁判例を紹介しようと思います。なお、詳細については、本連載第29回(2020年10月号※)でも紹介していますので、参考にしてください。  公益通報者保護法とは、簡単にいえば、社内における自浄作用を働かせて、コンプライアンス遵守の体制を整えることを目的とした法律です。自浄作用を働かせようとした内部通報者が解雇されるなどすれば、それをおそれてだれも内部通報をしなくなってしまいます。そのため、公益通報者保護法では、内部通報者を法的な不利益取扱いから保護することに主眼が置かれており、また、内部通報者が特定されてしまって、事実上の不利益取扱いを受けることも回避できるように、匿名性を確保することも重視されており、通報者の情報については秘密保持義務も重要とされています。  改正された法律では、従業員数が300人を超える企業に対して、公益通報を受け付ける窓口の設置を義務づけ、当該窓口にて従事する者を定めることが義務づけられました。また、当該窓口にて従事する者は、守秘義務を負担することが法律上明記され、罰則をもってこれが強制されています。体制が整理できていない企業においては、窓口設置とその周知や従事者が遵守すべき規程(守秘義務に関する内容を含むものが適切です)の整備などを進めておくべきでしょう。  公益通報に該当するのは、刑罰の定められた法令に関する違反として公益通報者保護法にて指定されている法令に限定されています。どのような内容でも公益通報として保護の対象になるわけではなく、内部の労働者間の純然たる個人的なトラブルなどまで対象となっているわけではありません。  また、公益通報の方法についても、内部通報(または会社が用意した外部通報)窓口が最優先とされており、行政機関への通報や報道機関などへの通報については、内部通報によっては、通報者が特定されて不利益を受けるおそれがある場合などに限定されていますので、どこに通報するかによっても保護されるかどうかが変わってきます。  適切な公益通報に該当するかぎりは、不利益取扱いが禁止されており、これに違反する解雇処分は、無効と考えられています。 2 裁判例の紹介  内部通報を行う場合には、公益通報者保護法が遵守されるべきではありますが、仮に公益通報に該当しないとしても、同法の趣旨から、解雇の効力が制限されることがあります。  通報者が、内部通報を行うことによって、通報対象となった事実に関連する当事者は、その社会的な評価が低下することなどによって、名誉棄損が生じるおそれがあります。名誉棄損に基づく損害賠償責任に関しては、その目的が公益目的であること(私利私欲のみを目的としていないこと)、当該通報した事実が真実であるか、真実であると信じるに足りる相当な理由があるときには、違法ではなくなり、賠償責任を負担しないという判断が、判例では確立されています。  公益通報に基づく懲戒解雇に関しても、これに類似するような判断が裁判例にもあります(東京地裁令和3年3月18日判決「神社本庁事件」)。  当該裁判例では、代表者や幹部職員による背任行為が通報対象事実とされていました。これについて、裁判所は、「労働者が、その労務提供先である使用者の代表者、使用者の幹部職員及び使用者の関係団体の代表者の共謀による背任行為という刑法に該当する犯罪行為の事実、つまり公益通報者保護法2条3項1号別表1号に該当する通報対象事実を、被告の理事及び関係者らに対し伝達する行為であるから、その懲戒事由該当性及び違法性の存否、程度を判断するに際しては、公益通報者保護法による公益通報者の保護規定の適用及びその趣旨を考慮する必要がある」として、公益通報者保護法の趣旨に則して、解雇の有効性を判断すると判断されました。  また、その具体的な判断基準としては、「@通報内容が真実であるか、又は真実と信じるに足りる相当な理由があり、A通報目的が、不正な利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、B通報の手段方法が相当である場合には、当該行為が被告の信用を毀損し、組織の秩序を乱すものであったとしても、懲戒事由に該当せず又は該当しても違法性が阻却される」として、懲戒解雇が無効になる要素を示しています。さらに、「@〜Bの全てを満たさず懲戒事由に該当する場合であっても、@〜Bの成否を検討する際に考慮した事情に照らして、選択された懲戒処分が重すぎるというときは、労働契約法15条にいう客観的合理的な理由がなく、社会通念上相当性を欠くため、懲戒処分は無効となると解すべき」ともしており、懲戒解雇がその社会的信用の低下と比較して相当性を欠く場合にも、無効になると整理しています。したがって、単に公益通報である場合のみではなく、その相当性を欠く場合などにおいても、懲戒解雇が無効になることが示されているといえます。  この事件では、実際に背任行為があったとは認定されませんでしたが、真実と信じるに足りる相当な理由があり(@の要件を充足している)、また、通報目的が不正な利益を得る目的、他人に損害を与える目的、その他不正の目的であるとはいえないとされ(Aの要件を充足している)、内部の職員への通報では調査が期待できなかったことから理事らへ文書を交付したこともやむを得ない相当なものであった(Bの要件を充足している)とされた結果、懲戒すべき事由がないと判断されています。  公益通報者保護法の施行にともない、内部通報や外部通報に対する関心は高まっていくと思いますが、通報者を処分するケースは限定的であり、まったくの虚偽の通報であるのみならず、それを信じる理由もないことなども求められる点にも留意する必要があります。今後は、通報が行われたときに通報者を処分する方向ではなく、通報をコンプライアンス遵守に活かすような発想がいっそう求められることになるでしょう。 ※ 当機構ホームページでお読みいただけますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.html 【P48-49】 病気とともに働く 第四回 株式会社アートネイチャー 両立支援制度以前に早期発見が大切 実体験を通じてリアルな不安と学びを発信  加齢により疾病リスクが高まる一方、近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病が「長くつき合う病気」に変化しつつあり、治療をしながら働ける環境の整備も進んでいます。本連載では、治療と仕事の両立を支える企業の両立支援の取組みと支援を受けた本人の経験談を紹介します。  東京都渋谷区に本社のある株式会社アートネイチャーは、「ふやしたいのは、笑顔です。」をモットーに、1967(昭和42)年の設立以来ウィッグを中心とした毛髪関連事業で常に業界をリードしてきた。同社では、社会に「笑顔」を増やしていくためには、社員が笑顔で活き活きと働き続けられる職場環境が必要だと考え、その整備に力を入れてきた。特に一人ひとりを大切にする企業文化のなかで、病気になっても働き続けられるための「病気と仕事の両立支援策」は時代の変化に合わせて随時進化させてきている。そこで今回は、実際にがんの治療を続けながら仕事に復帰した経験を持つ人事部の根尾(ねお)拓二(たくじ)部長に、同社の両立支援体制や早期発見への取組みについてお話をうかがった。 社員一人ひとりを大切にする社風から数々の健康経営施策を展開  同社の社員数は3798人※だが、その7割近くが理・美容師である。ほとんどの社員はウィッグを扱うという特殊な技術を習得する必要があるため、新人が技術を身につけるまで時間をかけてていねいに教育が行われる。ここから一人ひとりを大切にする企業風土が生まれ、社員の健康はまさに会社の財産=「人財」であるという健康経営の取組みへと結びついていく。  そんな同社では2015(平成27)年に「AN健康宣言」を行い、生活習慣の改善、メンタルヘルス対策の推進、がんへの取組み、禁煙対策の推進、女性の健康への取組みを重点テーマとしてさまざまな施策を行ってきた。こうした取組みの数々は、「ホワイト企業アワード」や「がんアライアワード」で表彰されるなど、各方面から評価されている。  なかでも両立支援制度については、「病気治療と仕事の両立支援ガイド」の作成、独自の「傷病休暇」制度などを柱として整備されてきた。特に休暇の取り方については2021(令和3)年に改正されたが、これには根尾部長自身の体験が大きく反映されている。  「図らずも私自身が2020年6月にがんに罹患し向き合うことになりました。会社で会議中に倒れて緊急搬送されたのです。緊急手術を受け、後から脳腫瘍であることが判明したのですが、そのときは病名が不明のままでした」と根尾部長。  その後、抗がん剤と放射線治療をすすめられるが、放射線治療は長期入院が必要になると考えて拒んでいたという。しかし治療の初期は入院が必要なものの、副作用がひどくなければ朝に治療を受けて、その後出社して仕事することができるとわかり、会社とも相談のうえ、両立支援制度を活用して時短での復職を果たす。現在は投薬治療に切り替えてフルタイムで勤務している根尾部長だが、実際に両立支援策を活用したことで、いくつかの課題に気づくことができた。  「例えば『傷病休暇』は診断書を提出すれば最長1カ月の休暇を年2回まで有給で取得できる制度ですが、同じ年度内では同一事由での取得が不可だったのです」。しかし、時間をかけて治療したいケースでは1カ月を超えることもありうる。そこで2021年の改正では、同一の事由で連続して取得できるようにしたのだ。  こうして同社の両立支援策は、より使いやすく当事者の側に立ったものへと進化している。 会社の支援制度を知り保険に加入しておくことが大切  自分ががんであるとは思いもよらず、告知されたときは相当なショックがあったという根尾部長だが、病気に対する不安以外にも、罹患してみなければわからない「リアルな不安と学び」があったという。  まず高額になると思われる手術や治療費の問題だ。突然入院したので、いくらかかるか事前に知ることができなかった。  「もちろん人事部ですので会社の高額療養費支援制度などはわかっていました。そうした制度が整備されていたことが非常にありがたかったですね」と根尾部長はふり返る。  また生命保険の内容によっても個人負担は大きく異なってくる。根尾部長自身はたまたまがん治療の補償に強い生命保険に加入していたが、そうでなかったらどれほどの負担になったかわからない。さらには最近のがん治療は長期入院となることは少ないため、入院費に手厚い保険より通院治療メインの方が時代にマッチしていることなども、患者になってはじめて意識したことだ。  こうした実体験を、根尾部長は社内外の講演会などでできるかぎり伝えるようにしているが、その反響は大きい。特に保険に関しては興味を持つ人がかなりいて、若手の社員からも「保険に入っていなかったのですが入ります」という声があがったそうだ。  根尾部長自身、病気に対する怖さを知って得た教訓としては「病気になるのは、ある日突然です。まずは社内の支援制度を覚えつつ、万が一の備えとして保険に入っておくことが大切」と強調している。  同社では両立支援以前に早期発見をうながすことが大切だという考えから、職域でオプション追加できるがん検診とその結果に基づく二次検診費用を会社が負担している。特に二次検診の受診率を向上させるため、産業保健スタッフや人事部は早期発見がとにかく大事だと強く訴える活動をさまざまに展開しているが、その決め手となるのが根尾部長の体験エピソードだ。  最近もオンラインの店長会議で、「私のような経験は二度としてほしくない」という思いを込めて、二次検診の大切さを訴えたという根尾部長。  「やはり実体験というのは、みなさんの心に響くようでした。今後も自分自身の体験と思いを伝えていくことが、私の使命だと考えています。理想は、だれも病気にならない、だれもがんにならないことです。もちろん現実としてはむずかしいですけれども、できることは確実にありますので、それを今後も着実に続けていこうと考えています」と、根尾部長は粘り強く訴え続ける決意を語ってくれた。 ※ 単体:2,256人・出向者除く・臨時雇用含まず(2022年3月末日現在) 写真のキャプション 人事部の根尾拓二部長 【P50-51】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第26回 「早期退職・希望退職」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、早期退職・希望退職について取り上げます。ここ2〜3年、新聞などのマスメディアを通して見る機会が多くなった用語だと思います。 早期退職と希望退職の違いは期間限定≠ゥどうか  早期退職と希望退職はセットで表記されることが多い用語で、両者とも「定められている定年年齢よりも前に退職する際に優遇≠キる」ことを目的とした制度です。しかし両者には大きな違いがあります。希望退職から説明したほうがわかりやすいですが、これは定められた期間内に社員が退職を申し込んだ場合に優遇される制度です。一方で、早期退職は条件を満たした社員はいつでも申し込め、優遇される制度です。要は、希望退職は期間限定≠ナ運用される制度、早期退職は恒常的≠ノ運用される制度であり、時間軸の違いが両者の違いとなります。このため、希望退職は期間限定で申込者を集めるために募集人数を提示し、満たさなければ二次募集などを行うのに対して、早期退職は特に応募人数を定めずに、応募者の条件にあえば受けつけるといった運用が多くみられます。  次に優遇≠ニはどのようなものかみていきましょう。これらの制度がある企業に最も多く設けられているのが、退職金の特別加算措置です。これは通常の退職金に上乗せした金額を支給するものです。割増退職金や退職加算金と呼ばれることもあります。一般的に年収の1年分程度が加算されるイメージが持たれていますが、希望退職応募者の一人あたりの加算金の平均額の平均年収に対する割合は全産業・規模計平均で1.02倍(『労政時報』 第4014号 労務行政研究所 2021年5月)と同等の結果となっています。  このほかの優遇措置としては、再就職支援があげられます。転職を支援する企業のサービスの活用や転職先の紹介、転職活動に向けた早退の許可や特別休暇の付与、教育訓練の補助などが含まれます。 近年の動向と実施の背景  次に、近年の動向についてみていきます。図表は主な上場企業の早期・希望退職者を募集した企業数と募集人数の経年推移を示したものです(東京商工リサーチ 2022年1月20日発表)。全期間では2009(平成21)年、近年では2020(令和2)年・2021年の数が増えています。早期退職・希望退職は別名で人員削減やリストラと呼ばれるように、企業の業績が悪化した際に人件費抑制のために実施されるととらえられがちです。たしかに、2009年はリーマンショックによる各社の業績悪化に対応して実施するケースが多かったのですが、近年の実施目的は、より複雑化しています。 @新型コロナウイルスによる業績悪化への対応  アパレル・繊維業や観光・飲食業等に代表されるように、2020年以降本格化した新型コロナウイルスは多くの企業に業績の悪化をもたらしました。これらに対応するため、特に希望退職によって一定期間で社員数と人件費を減らし、業績改善につなげていくことを目的としています。 A組織の若返りに向けた対応  社員数のボリュームゾーンが中高年齢層である企業のなかには組織が硬直化する、新規取組みへの対応が遅れる、人件費が高年齢層に集中し若年層の給与が上がらないといった事象が発生することがあります。そこで、中高年社員に次のキャリアについて社外での活躍を見すえ制度を活用してもらう一方で、若年層の採用や処遇改善による定着を行うことを目的としています。 B事業や業務の見直しに向けた対応  経営環境の変化に対応するために、既存事業を縮小・撤退し、新規事業に経営資源を配分し直すことに取り組む企業や、生産性の向上や将来の人手不足を見すえてデジタル化による人の手を介さない業務を推進する企業が増えています。これら既存の事業や業務に従事していた社員の新たな事業・業務の受け持ちがむずかしい場合は、社外に活躍の場をみつけてもらうことを目的としています。  特徴的なのは、業績好調時でも早期退職・希望退職を実施する企業が多いことです。東京商工リサーチの調べでは、2021年に早期退職・希望退職を募集した企業のうち直近本決算が黒字の企業が44%にのぼり、早期退職・希望退職の目的がもはや業績悪化への対応にとどまらないことを示しています。黒字企業の多くはAやBのような目的で早期退職・希望退職の制度を実施しており、今後もこの流れは継続するといわれています。 運用に関する留意点  最後に、早期退職・希望退職の運用の留意点について触れていきます。留意点としてよくあげられるのは、優秀人材の流出です。多くの企業では、応募してきた社員を企業が承諾することで制度を活用できるとしています。制度上は特定の人材の引き留めは可能ということになりますが、実務上は恣意的に認めないことも限界があり、場合によっては応募者とのトラブルになります。また、特に希望退職のケースでは、応募人数を満たすために社員に対して退職勧奨をすることがあります。退職を勧める≠アと自体は可能とされていますが、何度も短期間で面談をくり返したり、応じない社員を意図せぬ業務に従事させたりすると退職強要と受け取られ、労務問題に発展することがあります。退職という人生の一大事にかかわる制度ですので、導入・運用に際しては弁護士などのアドバイスを受けながら進めていくことが望まれます。  次回は「社外取締役」について取り上げます。 図表  主な上場企業における早期・希望退職者の募集状況 2009年 191社 22,950人 2010年 85社 12,223人 2011年 58社 8,623人 2012年 63社 17,705人 2013年 54社 10,782人 2014年 32社 8,852人 2015年 32社 9,966人 2016年 18社 5,785人 2017年 25社 3,087人 2018年 12社 4,126人 2019年 35社 11,351人 2020年 93社 18,635人 2021年 84社 15,892人 ※募集人数で募集枠を設けていないケースは応募人数をカウントした。 ※資料は「会社情報に関する適時開示資料」などに基づく。 出典:東京商工リサーチ「2021年上場企業『早期・希望退職』実施状況」 【P52-55】 TOPIC 人事担当が考える中高年人材の課題 ―業務に活かせるリスキルが本人のモチベーションに繋がる仕組みづくりを― 株式会社Works Human Intelligence  高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。生涯現役時代の到来とあいまって、今後は就業期間がますます延伸していくことも見込まれるなかで、従業員がより長い期間働き、活躍できる仕組みづくりが、企業には求められています。こうした背景をふまえ、株式会社Works Human Intelligenceでは、特に45〜59歳の中高年人材の活用に注目し、その処遇や活躍推進を図るうえでの課題などに関する調査を実施しました。本稿では、同調査の概要を紹介します。(編集部) 本調査の背景  2021(令和3)年4月に施行された高年齢者雇用安定法では、定年引上げを含む70歳までの就業機会確保が努力義務となりました。企業の人材活用に関しては、人を資本ととらえ価値向上に努めるべきという人的資本経営への注目も高まるなかで、従業員がより長くパフォーマンスを発揮し続けるための仕組みづくりに関心が高まっています。なかでも、質・量ともに企業の中核をにない、企業価値に大きな影響を与える45歳〜59歳の中高年人材の活用は急務としてとらえられています。  そのため本調査では、中高年人材の処遇について現在企業が抱えている課題やその背景の把握を目的とし、調査を実施しました。中高年人材のこれからの働き方を考える一助になれば幸いです。 調査結果 1 人事担当が考える中高年人材の課題、1位は「自律的なリスキル(学び直し)の必要性」  中高年人材の状態変化とサポートに関する各項目に対して、課題感の有無を聞いた結果、「課題感あり」の回答が多い順に、1位「自律的なリスキル(学び直し)の必要性」、2位「教育・研修、学びの場の少なさ」、3位「キャリア支援の不足」となり、中高年人材の学びや、キャリア支援の不足に対する課題感の存在が浮き彫りになりました(図表1※5件法で聴取し、「強くそう思う」「そう思う」の合計を「課題感あり」として集計)。  「特に課題感が強いもの」について、自由回答を募集したところ、リスキルや役職定年(ポストオフ)後のモチベーションに関するものなど、以下のような回答が得られました。 ・50歳以上の方に対する教育研修の機会があまりないので充実させたい。 ・専門性やスキルが時代によって変わっているにもかかわらず、昔取った杵柄(きねづか)や過去の成功体験に引きずられている人がいる。 ・40代から50代にかけて、ライン管理職となっている者が多く、多忙のために自己研鑽の時間が取れない。 ・役職定年後の管理職のモチベーション維持が課題。特に定年延長(65歳)されれば当該期間が10年となるため、無視できない。 ・役職定年後に求められているミッションや役割を理解する機会がないまま業務に就いている状態であり、人によってはモチベーションが低下したり、事業所内のお荷物状態になってしまっている社員が出てきている。 ・滞留者のリテンション。 2 45歳以上の正社員に対してキャリア形成や学び直しのための研修制度が「ある」と回答した企業は22.2%  研修制度について、45歳以上の正社員に対してキャリア形成や学び直しのための研修制度が「ある」と回答した企業は22.2%でした。1の結果によると自律的なリスキルの必要性に課題を感じているものの、中高年人材向けの研修制度の導入はあまり進んでいない様子がうかがえます(図表2)。 3 キャリア制度に関して、45歳以上の正社員が自ら仕事を選択する仕組み(社内公募、コース選択等)が「ない」法人は77.8%、キャリアの複線型制度が「ない」法人は74.1%  キャリア制度として、45歳以上の正社員が仕事を自ら選択する仕組み(社内公募、コース選択など)が「ない」と回答した法人は77.8%、キャリアの複線型制度が「ない」と回答した法人は74.1%と、従業員自らがキャリアを選択する制度の導入はまだあまり進んでいないことがうかがえます(図表3・4)。 4 周囲の社員を巻き込む課題は、1位「スキルや知識、経験の継承」  周囲の社員への影響に関する項目に対して、課題感の有無を聞いた結果は、「課題感あり」の回答が多い順に、1位「スキルや知識、経験の継承」、2位「次世代の中高年層に対する打ち手」、3位「評価や昇格の年功化、中心化傾向」となり、中高年人材の持つ経験に由来するノウハウ継承については多くの法人が課題を感じている結果になりました(図表5※5件法で聴取し、「強くそう思う」「そう思う」の合計を「課題感あり」として集計)。  「特に課題感が強いもの」について、自由回答を募集したところ、以下のような回答が得られました。 ・熟練者から若手社員へのスキル継承が実地作業および個々人の力量に偏りがちとなり、結果的に環境(若手社員の優秀さ・定着度合いなど)に差が出やすい傾向にある。 ・経験をノウハウにするためのスキルが足りておらず、それが後進の育成、業務におけるイノベーションにつながっていない。 ・後継者の整理ができていない、次世代の管理者の育成・教育が進んでいない。 ・同一賃金がうたわれているなかでの、役  職定年者・再雇用者への業務内容。 ・役職定年者が急増していくなかで次世代の管理職候補も少なく、ポスト不足が懸念される。 コンサルタントより 株式会社Works Human Intelligence WHI総研 シニアマネージャー 伊藤 裕之  アンケート結果からは多くの企業にとって、中高年社員の自律的なリスキル(学び直し)の実現が必要不可欠と考えられているにもかかわらず、教育や学びの場所の整備、今後のキャリア形成に向けた支援については不足や課題があることがうかがえるため、対策が求められる状況といえるでしょう。 ■中高年人材の自律的なリスキルの具体的な進め方  オンラインの研修サービスなど、自主的な学びのための環境の整備や、研修や学習への参加のための金銭面、業務面のサポート、社内公募や副業、兼業といったキャリアの多様性への準備といった制度面のサポートが考えられますが、あわせて以下の3点について考慮した実施の検討が望ましいと考えます。 @リスキル・学び直しとキャリア形成に対する経営からのメッセージ  まずは、今後のキャリアを見つめ直し、リスキルや学び直しを行うことについて、これからの企業の持続的成長に不可欠であり、何よりも優先すべき事項であると、経営部門から社内外に発信することが第一です。現業が優先となりがちな管理職や従業員に対して、リスキルや本人の意思を尊重したキャリア選択が妨げられないように原則を示します。 A本人のモチベーションを加味した学びやキャリアの選択  施策の前に中高年人材のいまの仕事を整理して、各人の仕事が会社にどんな価値を生むのか、どんなスキルや経験が必要なのか、そして企業が何を期待しているのかを明確にすべきです。  そして、従業員の意識の実態と課題、ギャップを把握したうえで、業務に活かせるリスキルが本人にとってもメリットとなるような仕組みが必要でしょう。具体的には以下のような例があげられます。 ・これまでの経験、知見やリスキルの成果を活かした、社内外への発信、ナレッジの提供 ・リスキルした結果を活かすことができる、新たな業務や事業への参画の機会や社内公募、社内/社外副業など、キャリアや働き方に対する選択肢の提示 ・リスキルを活かした成果や社内へのナレッジ、知見提供に対する評価、処遇の明確化  特に、中高年人材の経験(暗黙知)を企業と次世代人材のナレッジ(形式知)に転換することを評価し、称賛することは大きなモチベーションにつながるとともに、業務の持続性に貢献するものと考えます。 B現場をカバーする制度運用の用意  中高年人材のキャリアや、本人の学び直しへの意思を尊重したことによって、現場の業務や職務に空きが生まれるのであれば、周囲の従業員にとっても業務負荷とネガティブな印象を与えかねません。該当の部門に対して次の異動時期に優先的に配置を行う、リスキルや中高年のキャリア形成にポジティブな影響を与える管理職を昇格や賞与で報いる、という形でメリットを提示し、協力をうながすことが必要となるでしょう。  以上のように、リスキル、学び直しは単なる教育施策ではなく、全社的な重要課題として捉え、等級制度、評価、処遇、配置といったさまざまな制度や運用のなかで組み込むことが、具体的な成果への第一歩になると考えます。 《注》本稿は、株式会社Works Human Intelligenceが2021年11月2日に公表したプレスリリースを元に加筆・修正したものです。 図表1 〈中高年人材の状態変化とサポート〉課題感の有無 n=56 @自律的なリスキル(学び直し)の必要性 強くそう思う13 そう思う35 どちらともいえない6 あまりそう思わない2 全くそう思わない0 A教育・研修、学びの場の少なさ 強くそう思う6 そう思う34 どちらともいえない10 あまりそう思わない5 全くそう思わない1 Bキャリア支援の不足 強くそう思う3 そう思う30 どちらともいえない16 あまりそう思わない7 全くそう思わない0 C成長意欲、チャレンジの乏しさ 強くそう思う4 そう思う27 どちらともいえない22 あまりそう思わない3 全くそう思わない0 Dモチベーション低下、周囲への影響 強くそう思う3 そう思う23 どちらともいえない18 あまりそう思わない11 全くそう思わない1 E配置、仕事の割り振りの難しさ 強くそう思う1 そう思う24 どちらともいえない23 あまりそう思わない8 全くそう思わない0 F役職定年制度によって退任する管理職のモチベーション 強くそう思う4 そう思う16 どちらともいえない27 あまりそう思わない4 全くそう思わない5 G専門性やスキルの乏しさ 強くそう思う2 そう思う9 どちらともいえない29 あまりそう思わない15 全くそう思わない1 Hコミュニケーション不足、疎外感 強くそう思う0 そう思う5 どちらともいえない25 あまりそう思わない25 全くそう思わない1 資料提供:株式会社Works Human Intelligence 図表2 キャリア形成や学び直しのための研修制度の有無 n=54 ある22.2% 検討中24.1% ない53.7% 資料提供:株式会社Works Human Intelligence 図表3 仕事を自ら選択する制度の有無 n=54 ある20.4% 検討中1.9% ない77.8% 資料提供:株式会社Works Human Intelligence 図表4 キャリアの複線型制度の有無 n=54 ある(本人選択)7.4% ある(上長・部門長が選択)13.0% ある(評価で自動決定)5.6% ない74.1% 資料提供:株式会社Works Human Intell 図表5 〈周囲の社員への影響〉課題感の有無 n=56 @スキルや知識、経験の継承 強くそう思う8 そう思う38 どちらともいえない10 あまりそう思わない0 全くそう思わない0 A次世代の中高年層に対する打ち手 強くそう思う8 そう思う23 どちらともいえない19 あまりそう思わない6 全くそう思わない0 B評価や昇格の年功化、中心化傾向 強くそう思う3 そう思う26 どちらともいえない20 あまりそう思わない6 全くそう思わない1 C年上部下を持つ年下上司のマネジメント 強くそう思う5 そう思う21 どちらともいえない20 あまりそう思わない10 全くそう思わない0 D中高年問題に対する現場管理職の理解 強くそう思う4 そう思う21 どちらともいえない20 あまりそう思わない11 全くそう思わない0 E中高年問題に対する経営の関心 強くそう思う1 そう思う24 どちらともいえない20 あまりそう思わない11 全くそう思わない0 F若手社員の45歳以上の社員への不公平感、不満 強くそう思う3 そう思う21 どちらともいえない23 あまりそう思わない9 全くそう思わない0 G役職定年者に対するキャリア支援 強くそう思う4 そう思う17 どちらともいえない22 あまりそう思わない8 全くそう思わない5 【P56】 読者アンケートにご協力をお願いします! いつも本誌をご愛読いただき、ありがとうございます。 『エルダー』では、よりよい誌面づくりを目ざし、読者アンケートを実施しています。 ぜひみなさまの声をお聞かせください。 お待ちしています! 回答方法 本号に同封した「読者アンケート」用紙にご記入のうえ、当機構までFAX にてお寄せください。 FAX番号はこちら → 043-213-6556 Webでの回答も可能です。 QRコードはこちら ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://krs.bz/jeed/m/elder_enqueteであることをご確認のうえアクセスしてください 令和3年度のアンケート結果の一部より ご回答者の立場 人事総務部門責任者・担当者57.3% 経営者・取締役(役員含)27.3% その他(社会保険労務士、人事コンサルタントなど)8.6% その他の管理監督者(工場長、支店長、管理職など)5.9% 無回答0.9% 『エルダー』は参考になっていますか? 非常に参考になる28.1% 参考になる64.2% あまり参考にならない3.9% 参考にならない0.7% 無回答3.1% 参考になったコーナーとその理由 特集 高年齢者雇用安定法の改正内容が具体的に解説されており、今後の高齢者雇用の参考となった。 知っておきたい労働法Q&A 解説内容が、いままさに直面している課題と合致することが多い。 リーダーズトーク 企業経営者や団体責任者の理念、方針、経験が参考になる。 高齢社員のための安全職場づくり 高齢社員の増加にともない、安全のために必要な対応がわかった。 マンガで見る高齢者雇用 マンガだと読みやすく内容が理解しやすい。 〈お問合せ先〉企画部情報公開広報課 TEL:043-213-6200 【P57】 BOOKS 担当者、管理職が知っておくべき知識を網羅的に解説した入門書 図解でわかる人事・労務の知識【第5版】 中田孝成(たかなり) 監修/総合法令出版/1540円  本書は、2010(平成22)年の第1版刊行以来、企業の人事・労務担当者向け入門書として、また、管理職研修のテキストとしても好評を博し改訂を重ねている書籍の最新版。  今回の第5版では、2022(令和4)年4月1日に施行された法改正(パワハラ防止措置のすべての企業への義務づけ、育児・介護休業制度など)、および多様な働き方への対応(兼業・副業の容認、個人事業主やフリーランス保護の動き)などについて加筆、修正が行われている。  本書全体を通して、複雑で多岐にわたる労働法関連の知識を整理し、企業の人事・労務担当者や管理職が知っておくべきポイントを、1項目を見開き2ページで、図表・イラストも用いてわかりやすく解説している。テーマ別に10章から構成されており、例えば、第6章「退職・解雇」では「定年退職と早期退職制度、再雇用制度」などの12の項目を解説し、第9章「多様化する雇用形態」では「高年齢者の雇用」などの15の項目について取り上げている。  最初から読み進めるほか、日常の業務のなかで確認したい事項を調べる参考書として役立てることもできる。担当者のみならず、企業の人事制度に興味がある一般社員にもおすすめしたい。 多くの人が共感する著者の日常に触れて、さまざまな気づきが得られる一冊 87歳、古い団地で愉(たの)しむひとりの暮らし 多良(たら)美智子 著/すばる舎/1430円  本書の著者の多良美智子さんは、1934(昭和9)年長崎県生まれ。27歳のとき、前妻を亡くして10歳の娘がいる男性と結婚し、2男をもうける。55年前に現在の団地に引っ越し、7年前に夫を見送ってからひとり暮らしをしている。  団地の部屋は古くなったが、居心地がよいように整えて、「最期まで過ごしたい」と考えている美智子さん。部屋で読書や裁縫、簡単でおいしい料理づくりなどを楽しむ。そんな日常を中学生の孫が動画に撮り、「Earthおばあちゃんねる」としてYouTubeにアップ。2カ月後には再生回数が160万回以上となり、登録者数が6万人を超える人気チャンネルになった。「85歳で始めたYouTubeがさまざまな人との縁をつなげてくれました」と美智子さんは綴っている。  本書には、YouTubeで紹介しきれなかったという日常が紹介されている。マイペースで行っている健康法、つかず離れずの人づきあい、お金の使い方、将来への思いなど。日々の幸せを大切にする著者の暮らし方、生き方は、これから高齢期を迎える人をはじめ、高齢の社員とともに働く人たちや管理職にもさまざまな気づきを与えてくれるだろう。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 職業能力診断ツール「ポータブルスキル見える化ツール」を提供  厚生労働省は、ホワイトカラー職種のミドルシニア層を対象に、ポータブルスキル※を測定し、それを活かせる職務や職位を提示する「ポータブルスキル見える化ツール」を開発した。2022(令和4)年3月4日から提供を開始している。  このツールでは、15分程度の入力で出てくる診断結果をもとに、自分の持ち味を活かすことができる職務や職位を確認することができる。自身では気づくことがむずかしい強みを発見し、キャリア形成やキャリアチェンジのサポートをする。  さらに、このツールの提供に合わせて、キャリアコンサルタントなどの支援者が、ホワイトカラー職種のミドルシニア層の求職者・相談者等に相談支援を行う際に、このツールを活用しやすくするためのマニュアルと映像教材を、厚生労働省ホームページに掲載した。 ◆ポータブルスキル見える化ツール(ホワイトカラーの職業能力診断ツール) https://shigoto.mhlw.go.jp/User/VocationalAbilityDiagnosticTool/Step1 ◆キャリアコンサルタント向け活用教材掲載ページは左記のWebサイトからアクセスが可能 https://www.mhlw.go.jp/stf /newpage_23112.html ※ポータブルスキル…業種や職種が変わっても強みとして発揮できる持ち運び可能な能力(一般社団法人人材サービス産業協議会(JHR)が開発)。 厚生労働省 パンフレット「令和4年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」を公開  厚生労働省は、事業主を対象としたパンフレット「令和4年度 雇用・労働分野の助成金のご案内」の詳細版と簡略版をそれぞれ公開した。  雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上、退職金制度の確立などに向けた助成金の案内と助成金の主な問合せ先を掲載している。 T 雇用関係助成金のご案内〜雇用の安定のために(雇用維持関係の助成金/再就職支援関係の助成金/転職・再就職拡大支援関係の助成金/雇入れ関係の助成金/雇用環境の整備関係等の助成金/仕事と家庭の両立支援関係等の助成金/人材開発関係の助成金) U 労働条件等関係助成金のご案内〜労働条件の改善のために(生産性向上等を通じた最低賃金の引上げを支援するための助成金/労働時間の設定改善を支援するための助成金/受動喫煙防止対策を支援するための助成金/産業保健活動を支援するための助成金/安全な機械を導入するための補助金/高年齢者の安全衛生確保対策を支援するための補助金/溶接ヒュームに係るフィットテスト実施のための補助金/退職金制度の確立等を支援するための助成) ◆詳細版 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000763045.pdf ◆簡略版 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf 厚生労働省 「地域活性化雇用創造プロジェクト」の採択地域を公表  厚生労働省は、2022(令和4)年度の「地域活性化雇用創造プロジェクト」として採択した15地域と事業概要を公表した。  同プロジェクトは、地域における良質な雇用の 実現を図ることを目的として、2016(平成28)年度より実施している。都道府県が提案した事業について、第三者委員会の審査を経て採択し、都道府県による事業の実施経費について、2025年3月まで最大3年間補助する。 【2022年度採択地域】(事業期間:2022年4月、7月または8月〜2025年3月) ◆ピンチをチャンスに!北海道地域活性化雇用創造プロジェクト ◆北上川バレーDX推進・高度人材確保促進事業 ◆福島県人材確保・定着プロジェクト ◆(群馬県)産業の高付加価値化とDX人材育成による良質な雇用創出プロジェクト ◆ふくい地域活性化雇用創造プロジェクト ◆長野県地域活性化雇用創造プロジェクト ◆みえの労働力不足解消・高度専門人材確保育成プロジェクト ◆京都の未来をつくる「DX人材育成×産業創発」プロジェクト ◆再生から成長へ OSAKA人材活躍推進プロジェクト ◆わかやま地域活性化雇用創造プロジェクト ◆島根県「人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根」プロジェクト ◆とくしま地域活性化雇用創造プロジェクト◆(愛媛県)ポストコロナ時代の多様な人材の活躍による産業人材確保事業 ◆福岡県地域活性化雇用創造プロジェクト ◆みやざきの強みを活かした産業と良質な雇用の場創出促進事業 総務省 人口推計(2021(令和3)年10月現在)  総務省は、2021年10月1日現在の人口推計を公表した。それによると、生産年齢人口である15〜64歳は前年(7508万8千人)と比べ58万4千人減少の7450万4千人。全体に占める割合は59.4%となり、比較可能な1950(昭和25)年以降で過去最低となった。  総人口は1億2550万2千人。前年(1億2614万6千人)と比べ64万4千人減少で、減少幅は、比較可能な1950年以降過去最大となった。総人口に占める年齢別人口の割合をみると、15歳未満は11.8%、15〜64歳は59.4%、65歳以上は28.9%、65歳以上のうち75歳以上は14.9%。前年に比べると、15歳未満と15〜64歳がそれぞれ0.1ポイント低下し、65歳以上人口と75歳以上がそれぞれ0.3ポイント、0.2ポイント上昇している。  総人口に占める年齢別人口割合の推移をみると、15歳未満は、1975年(24.3%)以降一貫して低下を続け、2021年(11.8%)は過去最低。15〜64歳は、1982年(67.5%)以降上昇していたが、1992(平成4)年(69.8%)にピークとなり、その後は低下を続け、過去最低となった。一方、65歳以上人口は、1950年(4.9%)以降一貫して上昇が続いており、過去最高となった。75歳以上人口も1950年(1.3%)以降上昇を続け、過去最高となった。  人口の年齢構造を各国と比べると、調査年次に相違はあるものの、15歳未満の割合は最も低く、65歳以上人口割合は最も高くなっており、老年化指数が200を超える唯一の国となっている。 経済産業省 令和3年度「なでしこ銘柄」「準なでしこ」を選定  経済産業省は、東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を2021(令和3)年度「なでしこ銘柄」として、各業種から数社、合計50社を選定した。加えて、「なでしこ銘柄」に準ずる企業を「準なでしこ」として15社を選定した。  「なでしこ銘柄」の選定は、2012(平成24)年度より実施されている。2021年度は、東京証券取引所の全上場企業約3700社から、企業価値向上を実現するためのダイバーシティ経営に必要とされる取組みとその開示状況について評価を行い、業種ごとにスコアが上位の企業を50社選定した。  また、全体順位上位のスコアの企業のうち、「なでしこ銘柄」として選定されなかった企業を、「準なでしこ」として業種を問わず15社選定した。  女性の活躍を後押しする特徴的な取組みについて選出した「注目企業」や各社の女性活躍推進にかかわる取組みと開示の状況を一覧化した「なでしこチャレンジ企業リスト」を含む「令和3年度なでしこ銘柄レポート」を経済産業省ホームページで公表している。「注目企業」では、「女性社員の昇進意向向上のために導入した取組と成果」や「コーポレートガバナンス・コードの改訂を受け、管理職層への女性登用を促進するために実施した取組」の二つのテーマについて、顕著な取組みを行う企業を取り上げている。 ◆「なでしこ銘柄」レポート https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/reiwa3nadeshikoreport1.pdf 発行物 JILPT 労働政策研究報告書No.221『変わる雇用社会とその活力―産業構造と人口構造に対応した働き方の課題―』  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)は、労働政策研究報告書No・221『変わる雇用社会とその活力―産業構造と人口構造に対応した働き方の課題―』を刊行した。  同報告書は、日本的雇用慣行のなかでも長期雇用に焦点をあて、今後も長期雇用が存続する可能性を検討し、存続する条件と崩壊する条件を明らかにすることを研究目的としてまとめられたもの。研究は、企業の人事労務管理を対象とした企業調査班と個人の就業行動に着目した個人調査班に分かれて行われた。  事実発見として、主に次の点をあげている。 ◆中高年期の収入、管理・育成的なタスク、グローバル化に対応した業務といった面で、ホワイトカラーは長期勤続型のキャリアが今日でも主流であるといえる。一方、ブルーカラーの運転・操作のような手仕事は50代になっても転職経験が生きる可能性がある。 ◆中高年期には、地域活動やボランティアのような社会団体活動への参加率が高まる。だが、人づき合いにおいてなるべく人に頼らず自分のことは自分でするという自立的な中高年は社会団体活動に参加しない傾向にある。  報告書は左記のWebサイトからダウンロードが可能。購入する際の価格は1210円(税込)。 https://www.jil.go.jp/institute/reports/2022/documents/0221.pdf 【P60】 次号予告 8月号 特集 SDGsと高齢者活用 リーダーズトーク 大野誠一さん(ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO) (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415  FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 田村泰朗……太陽生命保険株式会社取締役専務執行役員 丸山美幸……社会保険労務士 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今号の特集では「新任人事担当者のための高齢者雇用入門」をお届けしました。改正高年齢者雇用安定法の施行から1年が経過し、70歳超の定年制度や継続雇用制度を導入している企業も増えてきているようです。これから取組みを本格化させる予定で準備を進めている経営者・人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。  従来の高年齢者雇用確保措置が義務づけていた65歳を超えて、70歳まで働ける職場づくりを推進するうえでは、さまざまな課題があります。変化の激しい現代社会において、会社の一員として活躍し続けてもらうためには、高齢者自身が変化に対応していく意識・能力を身につけることが重要です。一方で、心身機能の低下や病気の治療、家族の介護など、加齢とともに労働者一人ひとりが抱える事情は多様化していき、それに対応する職場づくりも求められます。  新任人事担当者のみなさんはもちろん、経営者・ベテラン人事担当のみなさんも、ぜひ本特集を参考に高齢者雇用の課題・ポイントを再確認していただき、生涯現役で働ける職場づくりの推進に努めていただければ幸いです。 ●今号では「読者アンケート」を同封しています。本誌の内容に関する率直なご意見・ご感想のほか、「こんな記事が読みたい」、「あのテーマについて深掘りしてほしい」などのご要望もお待ちしています。 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー7月号 No.512 ●発行日−−令和4年7月1日(第44巻 第7号 通巻512号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 奥村英輝 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-920-0 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 「生涯現役促進地域連携事業」より地域発の取組みから学ぶシニア就業 人生経験豊富なシニアの能力を活かしサービス関連産業での雇用を拡大 豊中市生涯現役促進地域連携事業推進協議会(大阪府)  厚生労働省では、地域の実情に応じた高齢者の多様な就業機会を確保するための事業を募集し、その実施を委託する「生涯現役促進地域連携事業」を2016(平成28)年度より6年間にわたって推進してきた。その実施事例として、2016年10月にスタートした大阪府豊中市の取組みを紹介する。 高齢者が活躍できる場を増やすために  大阪府大阪市の北側に隣接する豊中(とよなか)市は、約40万人の人口を抱える住宅都市である。同市は、「生涯現役促進地域連携事業(以下、「連携事業」)」に取り組む以前から、地域就労支援センターや無料職業紹介事業などを通じて、「働きたいのに仕事が見つかりにくい」、「就職しても長続きしない」など、働くうえで何らかの課題がある人の就労支援をベースとした生活困窮者支援に取り組んでいる。その一貫として、年齢や体力などの理由で、働きたくても働けない高齢者の就労支援を行ってきた。  一方、一般的な高齢者の就労支援施策としてはシルバー人材センターがあるが、同センターで紹介しているのは軽易な仕事が中心である。豊中市市民協働部参事兼くらし支援課長の濱政(はませ)宏司(ひろし)さんは、次のように話す。  「健康寿命が延び、アクティブシニアが増えているなかで、社会に貢献したいという意欲を持った高齢者も増えており、従来の取組みだけでは、多様化する高齢者の仕事に対するニーズに十分対応できていないのではないか、という問題意識がありました」  そこで豊中市は、リーマンショック後に創設された国の「緊急雇用創出事業」を活用し、新たに「シニア層を対象とした新たな就業・社会参加の場創出事業」を開始した。農業や内職、学習支援などによる新たな就業機会の創出を目的とした事業である。例えば「タブレット講座」は、シニアがタブレットの使い方を学ぶことでQOLの改善につなげることを目的としたものだが、事前に高齢者を対象とした指導者の養成講座を行い、高齢者が高齢者に教える仕組みを設けた。指導者となった高齢者は、事業終了後も受講料を受け取りながら、高齢者にタブレットを教える活動を継続している。  「市が活動の土台を一緒につくり、その後に自立できるような取組みを行ってきました。こうした流れのなかで、高齢者がさらに働ける場所をつくっていきたいと考えましたが、当時は高齢者を採用する企業がまだまだ少ない状況でした。そこで、高齢者を雇用する会社を開拓していきたいと考えたときに、市単独では財源的にも人的にも厳しいため、連携事業に応募して事業化することを考えたのです」 高齢者と企業がマッチングしやすい環境づくり  住宅都市である豊中市には、住民の日常生活に密接なサービス関連産業が多い。そこで同市は、サービス関連産業を連携事業の重点分野に設定し、企業へのアプローチ、高齢者へのアプローチ、両者のマッチングの三つの活動に取り組んできた。  まず、企業へのアプローチとして、高齢者を活用するメリットや高齢者が活躍するためのノウハウなどを説明する「シニア活用セミナー」や企業訪問を行い、高齢者を雇用する企業を開拓。また、高齢者雇用に取り組む企業には専門家を派遣し、就業規則や職場環境の見直しなどの支援を行った。  高齢者へのアプローチの一つとして「ワークライフバランス講座」を開催した。  「収入を求めて働きたい方は自ら就職活動を行いますが、それ以外の方は、なかなか自分からは活動しません。そうした方々に、これからのマネープランや健康づくりなどの講座を開き、お金だけでなく健康維持や社会貢献のために活躍の場があることを伝えつつ、仕事への意欲を高めてもらうような働きかけを行いました」  企業と高齢者のマッチングでもっとも大規模に行っているのが、年1回の「合同説明会&面接会」。ところが2018年の実績を見ると、参加者48人中、就業人数は3人にとどまっている。  「高齢者は未経験の仕事に対して消極的な傾向があります。そのため、一般的な説明会や面接会では、会社や仕事の一部分しか伝わらず、なかなか採用に結びつきません。そこで、会社の雰囲気や仕事の内容がより伝わるようなイベントとして、『シニアのためのおしごとカフェ』、『未経験業務チャレンジ講座』を企画しました」  シニアのためのおしごとカフェは、参加した高齢者を4〜5人のグループに分け、各グループを企業の担当者が順に回って説明するスタイル。茶会形式の和やかな雰囲気で行われ、参加者は会社や仕事のことについて気軽に質問することができる。  「合同面接会の場合、最初に全員の前で説明した後はブースで待っているだけで、ブースに来てくれた人としか話すことができません。その点、『おしごとカフェ』では参加者全員と話すことができるので、企業の担当の方から『こういう機会はありがたい』と好評です」  一方、未経験業務チャレンジ講座は、業務内容を具体的に説明し、未経験業務を敬遠しがちな高齢者に「自分でもできそう」と感じてもらうことをねらいとしている。例えば「コンビニのお仕事講座」では、店舗で使われているPOSレジを体験。「スーパーのお仕事講座・体験講座」では、実際に店内を見学するなど、未経験業務のハードルを少しでも下げるような取組みを行ってきた。  こうした活動の結果、通年での取組みとなった2017年度以降、就業人数は毎年、目標の100人を超える実績を上げてきた。この人数は市町村レベルではかなり高い数値である。  豊中市では、2021(令和3)年度から国の委託費なしで自立した活動を展開している。その結果、イベントの開催数は減少したものの、それまでにつちかった企業との関係性を活かして就労支援活動を継続し、2021年度は就業人数85人、受入企業数68社の実績を上げている。また次の課題として、大手企業を退職した高齢者と地元に集積している中小企業とのマッチングにも取り組み始めている。 企業の高齢者に対する認識が変わった  連携事業の成果について、濱政さんはこう話す。  「高齢者が戦力になるということがより多くの企業に理解いただけたことは、非常に大きな成果です。以前は『65歳以上は雇えません』という会社がほとんどでしたが、『実際に会ってみて考えたい』と意識が変わった事業所が増え、高齢者雇用の間口が広がりました」  例えば、市内の大手ハンバーガーチェーンでは、それまで働いている高齢者は、ほとんど見かけなかったが、連携事業を通じて18人が働くようになった。  「採用してみると、高齢のお客さまに気さくに声かけをしたり、テーブルを片づけるなど、若いスタッフでは気づかないようなところに自ら気づいて動いてくれることなどが評価されています」  また、大手コンビニエンスストアでは、高齢者宅への宅配が多いため、単に品物を届けるだけでなく、ちょっとした声かけを行うなかで、体調の変化に気づくなど地域の見守り活動の役割をになっていると評価されているという。  「このように、いままで若者の仕事と考えられていたサービス関連分野でも、高齢者を雇用することにメリットがあることが、連携事業を通じて明らかになりました」 高齢者が持つ能力を活かせる環境づくりを  最後に濱政さんは、高齢者雇用を定着させるための二つのポイントをあげてくれた。  「高齢者は、誇り高く、これまでの経験に自信をお持ちの方が多いです。また、本人が生活に困っていない場合、自分の価値観に合わない仕事だと、働こうと思わない方が多いようです。そういう方に対しては、やってもらう仕事の価値をアピールしたり、その人に対する期待感を表すことが大切です。『人手不足だから来てください』ではなく、その仕事がどのように社会に貢献しているのか、なぜこの仕事をあなたにしてほしいのか、といったことをきちんと伝えると、採用につながりやすいと思います」  もう一つのポイントは、高齢者が能力を発揮できるような環境づくりだという。  「あるサービス関連企業の担当者は、『高齢のスタッフが生きたマニュアルになってくれる』と話していました。例えばクレーム対応など、若いスタッフではままならないような場合でも、高齢のスタッフがうまく治めてくれる場合もあります。このように、長い人生経験のなかでつちかわれた対応力は高齢者の武器です。高齢のスタッフの存在が、若手にも好影響を与えており、その企業は高齢従業員の定着率も高くなっています。こうした能力に応じた役割を与えて、それを周囲が評価するような職場環境が大切だと思います」  豊中市の事例から、サービス関連産業には高齢者の活躍の場が数多くあることがうかがえるとともに、地域社会の支え手となれる人材であることがよくわかる。 写真のキャプション 豊中市市民協働部参事兼くらし支援課長の濱政宏司さん 気軽に意見交換ができる「シニアのためのおしごとカフェ」の様子(写真提供:豊中市) スーパーで行われた「未経験業務チャレンジ講座」の様子(写真提供:豊中市) 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  漢字というのは、形に意味のある表意文字であり、発音を示す表音文字です。さらに書き順に動きの記憶も含まれてきます。そのため、アルファベットやひらがなと脳内での処理ネットワークが異なることが古くから知られています。特に比喩の理解や想像力にかかわる頭頂側頭接合部の関与が大きいので、想像力トレーニングになるのではないかと考えられています。 第61回 地名テスト(記憶力) 地名と読みに関する次の問いに答えましょう。 目標7分 1 漢字2文字で読みが4文字の地名を4つあげてください。 例 大阪(おおさか) 2 漢字2文字で読みが3文字の地名を4つあげてください。 例 博多(はかた) 非日常の体験が記憶力を強化させ  今回は記憶力を試す脳トレ問題です。記憶力を鍛える=覚えたことを記憶に残す方法の一つに「驚きや新鮮さを加える」というものがあります。  人の脳は、未知の出来事に遭遇したとき、危険を察知します。そのことを忘れてもう一度危ない思いをしないように、扁桃体の防御本能によって記憶をしっかり刻もうとするのです。  危ないことにかぎらず、「いつもと違う体験」をするときにも同じことが起こります。心から感動したり、嬉しくて心動かされたりしたときにも、扁桃体の作用によって記憶はしっかりと刻み込まれるのです。  この仕組みを利用して、何かを覚えるときは、「これを覚えたら美味しいものを食べよう」と自分なりのタスクを決めれば、暗記した事柄が嬉しい体験とセットで記憶に残ります。また、いつもの部屋からカフェに場所を変えたり、普段使わない高価なノートに書き留めたりと、いつもの行動に変化をつけることでも、消えにくい記憶となります。  毎日同じことのくり返しが多い人は、自分なりに工夫して、暗記に何かをプラスしてみましょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 1 青森、岡山、札幌、横浜など 2 秋田、高知、島根、長野など 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2022年7月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) NEW さまざまな事業所の好事例を掲載しています! 『70歳雇用事例サイト』 https://www.elder.jeed.go.jp さまざまな条件で検索できる! 132社の事例を豊富なキーワードで簡単検索 70歳以上まで働ける企業 定年が61歳以上 or 条件を変更する イベントの案内、研究資料などの関連情報をまとめて見られます! jeed elder 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.elder.jeed.go.jpであることを確認のうえアクセスしてください 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 2022 7 令和4年7月1日発行(毎月1回1日発行) 第44巻第7号通巻512号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会