【表紙2】 助成金のごあんない 65歳超雇用推進助成金 65歳超雇用推進助成金に係る説明動画はこちら 65歳超継続雇用促進コース  令和4年4月1日以降に65歳以上への定年の引上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかの措置を実施した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 ●労働協約または就業規則で定めている定年年齢等を、過去最高を上回る年齢に引上げること ●定年の引上げ等の実施に対して、専門家へ委託費等の経費の支出があること。また、改正前後の就業規則を労働基準監督署へ届け出ること ●1年以上継続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること ●高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)の実施 支給額 ●定年の引上げ等の措置の内容、60歳以上の対象被保険者数、定年等の引上げ年数に応じて10万円から160万円 受付期間 ●当コースの受付期間は変更となりました  定年の引上げ等の措置の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初から5開庁日までに、必要な書類を添えて、申請窓口へ申請してください。 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  高年齢者の雇用管理制度を整備するための措置(高年齢者雇用管理整備措置)を実施した事業主の皆様を助成します。 措置(注1)の内容 高年齢者の能力開発、能力評価、賃金体系、労働時間等の雇用管理制度の見直しもしくは導入、法定の健康診断以外の健康管理制度(人間ドックまたは生活習慣病予防検診)の導入 (注1)措置は、55歳以上の高年齢者を対象として労働協約または就業規則に規定し、1人以上の支給対象被保険者に実施・適用することが必要。 支給額 支給対象経費(注2)の60%《75%》、ただし中小企業事業主以外は45%《60%》 (注2)措置の実施に必要な専門家への委託費、コンサルタントとの相談経費、措置の実施に伴い必要となる機器、システム及びソフトウェア等の導入に要した経費(経費の額に関わらず、初回の申請に限り50万円の費用を要したものとみなします。) 【《》内は生産性要件(※2)を満たす場合】 高年齢者無期雇用転換コース  50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主の皆様を助成します。 主な支給要件 @高年齢者雇用等推進者の選任及び高年齢者雇用管理に関する措置(※1)を実施し、無期雇用転換制度を就業規則等に規定していること A無期雇用転換計画に基づき、無期雇用労働者に転換していること B無期雇用に転換した労働者に転換後6カ月分の賃金を支給していること C雇用保険被保険者を事業主都合で離職させていないこと 支給額 ●対象労働者1人につき48万円(中小企業事業主以外は38万円) ●生産性要件(※2)を満たす場合には対象労働者1人につき60万円(中小企業事業主以外は48万円) 高年齢者雇用管理に関する措置(※1)とは(a) 職業能力の開発及び向上のための教育訓練の実施等、(b) 作業施設・方法の改善、(c) 健康管理、安全衛生の配慮、(d) 職域の拡大、(e) 知識、経験等を活用できる配置、処遇の推進、(f) 賃金体系の見直し、(g) 勤務時間制度の弾力化のいずれか 生産性要件(※2)の詳細については、以下をご覧ください。 厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137393.html 障害者雇用助成金 障害者雇用助成金に係る説明動画はこちら 障害者作業施設設置等助成金  障害特性による就労上の課題を克服し、作業を容易にするために配慮された施設等の設置・整備を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @障害者用トイレを設置すること A拡大読書器を購入すること B就業場所に手すりを設置すること 等 助成額 支給対象費用の2/3 障害者福祉施設設置等助成金  障害者の福祉の増進を図るうえで、障害特性による課題に対する配慮をした福祉施設の設置・整備を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @休憩室・食堂等の施設を設置または整備すること A @の施設に附帯するトイレ・玄関等を設置または整備すること B @、Aの付属設備を設置または整備すること 等 助成額 支給対象費用の1/3 障害者介助等助成金  障害の特性に応じた適切な雇用管理に必要な介助者の配置等の措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @職場介助者を配置または委嘱すること A職場介助者の配置または委嘱を継続すること B手話通訳・要約筆記等担当者を委嘱すること C障害者相談窓口担当者を配置すること D職場支援員を配置または委嘱すること E職場復帰支援を行うこと 助成額 @B支給対象費用の3/4 A 支給対象費用の2/3 C 1人につき月額1万円 外 D 配置:月額3万円、委嘱:1回1万円 E 1人につき月額4万5千円 外 職場適応援助者助成金  職場適応に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者による支援を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @訪問型職場適応援助者による支援を行うこと A企業在籍型職場適応援助者による支援を行うこと 助成額 @1日1万6千円 外 A月12万円 外 重度障害者等通勤対策助成金  障害の特性に応じた通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成します。 助成対象となる措置 @住宅を賃借すること A指導員を配置すること B住宅手当を支払うこと C通勤用バスを購入すること D通勤用バス運転従事者を委嘱すること E通勤援助者を委嘱すること F駐車場を賃借すること G通勤用自動車を購入すること 助成額 支給対象費用の3/4 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金  重度障害者を多数継続して雇用するために必要となる事業施設等の設置または整備を行う事業主について、障害者を雇用する事業所としてのモデル性が認められる場合に、その費用の一部を助成します。※事前相談が必要です。 助成対象となる措置 重度障害者等の雇用に適当な事業施設等(作業施設、管理施設、福祉施設、設備)を設置・整備すること助成額 支給対象費用の2/3(特例3/4) ※各助成金制度の要件等について、詳しくはホームページ(https://www.jeed.go.jp)をご覧ください。 ※お問合せや申請は、当機構の都道府県支部高齢・障害者業務課(65頁参照 東京、大阪支部は高齢・障害者窓口サービス課)までお願いします。 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.87 人生の変化を自ら起こすライフシフト会社に依存せず自分で道を選ぶ生き方を ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO 大野誠一さん おおの・せいいち 株式会社リクルートで、『ガテン』(創刊)、『とらばーゆ』、『ダ・ヴィンチ』などの編集長を歴任。その後、株式会社アクトビラ代表取締役、ローソンHMVエンタテインメント取締役常務執行役員などを経て、2017(平成29)年にライフシフト・ジャパン株式会社を設立。著書に『実践! 50歳からのライフシフト術』(共著、NHK出版)がある。  「ライフシフト」という言葉をご存じですか? 生涯現役時代の到来を受けて、数年前から注目を集めている言葉です。転職・転身の意味合いで使われることもありますが、自分の人生そのものを考え、これからの生き方を自ら選択していくことを意味しています。今回は、生涯現役時代をより充実したものとするための「ライフシフト」について、ライフシフト・ジャパン株式会社代表取締役CEOの大野誠一さんにうかがいます。 教育・仕事・引退の3ステージから人生をマルチステージで過ごす時代へ ―「ライフシフト」とはどんな意味でしょうか。 大野 リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットという二人の学者が書いた『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)という本が2016(平成28)年に日本で翻訳出版され、ベストセラーとなりました。原題は『The 100-Year Life』で、ライフシフトという言葉は、実はタイトルにも本文にも使われていません。日本語版を出すときに出版社が考え出した造語です。そのためか、この言葉は人によって異なる意味合いで用いられています。  ライフシフトを、転職や起業をすることと同じ意味で使う人もいますが、私はそのような外形的な変化がライフシフトに不可欠な要素だとは考えていません。「自分が人生の主人公として、自ら選択して生き方の抜本的な変化を起こすこと」。私はそのような意味で、ライフシフトという言葉を使っています。 ―なぜいま、それが重要なのでしょうか。 大野 まさに人生100年の時代だからです。これまで私たちは人生を教育・仕事・引退の3ステージでとらえてきました。はじめの20〜25年は教育のステージ、次の40年は仕事のステージ、そしてその後は引退のステージです。特に日本の雇用システムは、新卒採用と定年退職で区切られた、絵に描いたような3ステージのモデルです。学校を出たら、仕事中心の人生を送り、定年まで勤め上げるのが理想の人生とされ、そこから外れた人生は選択しづらい窮屈なものでした。  しかし、かつては10〜15年程度だった引退後のステージが、いまは健康寿命の延伸とともに延びており、とても3ステージでは持ちこたえることができなくなりました。  こうしたなかで、引退後の人生が10〜15年という時代に設計された公的年金制度が見直しを迫られるなど、まず社会の仕組みが変化を余儀なくされました。個人としても、若いころに20年程度受けた教育だけで、その後の長い職業人生や定年後の人生をやり過ごせるはずがありません。どこかで何度か学び直しの時間を持たなければ、長い人生を持ちこたえられないのです。  「これまでも仕事を通じて学ぶ機会はあった」という方もいるかもしれません。たしかに日本企業は、配置転換や出向など、さまざまな仕事を経験させることで、人材育成を行ってきました。しかし、これほど変化のスピードが速くなると、企業のなかだけ、あるいは企業グループのなかだけで人を動かしてゼネラリストを育てるような育成では、とても変化に対応しきれないのです。新卒採用した人材を定年まで囲い込むような、3ステージを前提とした雇用・人材育成のやり方では、会社も保たなくなってきています。  これから必要になるのは、硬直的な3ステージモデルから、柔軟に就職・転職・学び直しなどへの行き来がしやすい「マルチステージモデル」への転換です。ライフシフトは、個人の生き方への問いかけであると同時に、社会のあり方、企業や雇用システムのあり方への問題提起なのです。 ―ライフシフトについて考え、実践するため、個人にはどんな心構えが求められますか。 大野 人生の時間が長くなったからといって、ただ3ステージのうちの「仕事」の期間を引き延ばせばよいというわけではありません。社会や企業に変化が求められているのと同様に、個人としてもマインドの切り換えが必要です。  まずは、「自分が大事だと思っていることは何か」、「自分が本当にやりたいことは何か」、「幸せだと思える状態を実現するには何が大切か」、それを自問し、自覚する。私はこれを「自分の価値軸に気づく」と表現しています。これは、自分を知る、自分と出会うプロセスです。これまでの経験を棚卸しするなかから見い出せるかもしれません。一方で、ふり返るのは仕事のキャリアだけではありません。子ども時代も含めて、自分がどんなときに幸せを感じるのか、活き活きと輝いていたのは、どんなときだったのかを思い起こすことも大切です。  その問いに対する答えは、過去にだけあるのではなく、実際に何かを始めることで気づくこともあるでしょう。自分がどのような志向や特性を持っているのかを自覚しにくいのは、多くの人が会社の意向や指示を受けて働くというかぎられた経験しかしていないからでもあります。自分の価値軸を見い出して、自分がやりたいことを自分で決めて自分で実行すると、それまでは表に出ていなかった自分が引き出されるのです。  大切なのは、自分の思いとは関係のない価値に無理やり自分を当てはめようとしないこと。例えば、新しい仕事に挑戦する理由が、「成長しそうだから」、「儲かりそうだから」というだけで、自分の価値軸から離れていると、うまくいかないことが多いのです。 自分の「価値軸」に気づきやりたいことを実行しよう ―ライフシフトを始めるのにふさわしい年齢はありますか。 大野 「60代や70代になってからでは間に合わない」ということはまったくありません。何歳であってもライフシフトは可能だと思います。でも、20代、30代の人に「何歳まで働くつもりか」と聞くと、多くの人が「定年まで」と答えます。他方で、定年間近の人や、すでに定年を過ぎた人に同じ質問をすると、「働けるうちは何歳まででも働きたい」と答えます。それが実態ですから、やはり若いうちからライフシフトへのマインドを持って、早めに備えておくことが望ましいと考えます。 ―価値軸に気づくための秘訣はありますか。 大野 「時間軸」と「空間軸」で考えることができます。まずは時間軸ですが、定年をゴールと考えるのをやめること。「定年まで勤め上げる」という意識を捨て去るのです。働くキャリアは、そのずっと先まで続きます。定年=引退=老後=余生という枠組みから自由になることをおすすめします。  もう一つは「空間軸」を広げること。自分の属するコミュニティを、会社の外の空間にも広げていくことです。会社と家庭のほかに、趣味でも、地域活動でも、何でもよいので、他者との関係をなるべく多く築いていく。最近ようやく、副業・兼業を持つ働き方が市民権を得てきました。まだまだ副業・兼業する会社員は少ないですが、会社以外の職業人のコミュニティをつくる機会として注目したいです。  多種多様なコミュニティへの所属をすすめるのは、一つのコミュニティだけに閉じこもっていると、多様な価値軸に気づきにくいからです。たくさんの価値軸に出会うことで、それらのなかから自分に合うものを選び取ることができるようになります。いろいろなコミュニティとつながることを若いうちから始めていけば、例えば50代になったときに、そのなかから会社に代わって主軸となるコミュニティが見つかるかもしれないのです。  コロナ・パンデミックは、図らずも「会社へ行けない」日々を余儀なくされ、自分を見つめ直す、また、会社以外のコミュニティと出会う契機となったという意味で、ライフシフトの追い風となった面もあります。 今後増えるのはプロジェクト型の仕事出入り自由な企業が成長する ―ライフシフトには、会社に依存しない生き方が望ましいという考え方が基底にあると思うのですが、その考えを推し進めることは、会社にとってどのような意味がありますか。 大野 会社は、よい人材を引き留めたいと考えます。その会社が、社員に対して「会社に依存するな」というのは、どこか矛盾しているように思えるかもしれません。しかし、これからは、人材を囲い込み、会社に依存することを社員に求めるような企業に人は集まってこないし、社員を引き留めることもむずかしくなるでしょう。新卒で入社し、その会社で育てられ、その会社のコミュニティしか知らない、いわゆる正社員だけで事業が続けられる時代は、とうに終わっています。これからは、社内外から最適な人に集まってもらい、いろいろな発想や技術、知恵を出し合いながら事業の目標達成に向かっていくプロジェクト型の仕事が増えていきます。  そこに、正社員や非正規社員といった線引きをすることに意味はありません。何らかの事情で通勤することが困難な人、一度その会社を退職して戻ってきた人、ほかに本業を持っていながら縁あってその会社にかかわっているフリーランスや副業・兼業の人など、多種多様な人材が引き寄せられる企業、敷居の低い出入り自由な企業が、これからは成長していくのではないでしょうか。  2021年に70歳までの就業確保措置が企業の努力義務となりましたが、そこに、社会貢献活動や委託契約といった、自社での雇用以外の選択肢が加わったことは、企業と個人の新しい関係を探る意味でも注目しています。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2022 August 特集 6 SDGsと高齢者活用 7 特別インタビュー 企業の社会的存在意義が問われるSDGs次世代へシニアのスキルや経験の継承を SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬和夫 11 解説 高齢者がになうSDGs―生涯現役と生涯貢献の実現へ― ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田展弘 15 事例@ アセットインベントリー株式会社(千葉県柏市) 産業ジェロントロジーを取り入れ、シニアが活躍し続ける職場環境と社会基盤づくりに挑戦 19 事例A 株式会社松尾青果(長崎県南島原市) 高齢者をはじめとする多様な人材の活躍を原動力に新しい農業ビジネスの構築により地域に貢献 23 SDGsに関するJEEDの取組み ―だれもが安心して働ける社会の実現に向けて― 1 リーダーズトーク No.87 ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO 大野誠一さん 人生の変化を自ら起こすライフシフト会社に依存せず自分で道を選ぶ生き方を 24 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!こんなときどうする? 《第2回》 高齢社員のモチベーションが低くて困っています 30 江戸から東京へ 第117回 龍馬の夢 坂本龍馬 作家 童門冬二 32 高齢者の職場探訪 北から、南から 第122回 兵庫県 株式会社イスズベーカリー 36 新連載 生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント 【第1回】 高齢社員に期待する活躍のイメージを具体化しよう! 森中謙介 40 知っておきたい労働法Q&A《第51回》 定年退職後の契約更新と合理的期待、退職勧奨とパワーハラスメント 家永勲 44 病気とともに働く 第5回 サッポロビール株式会社 46 いまさら聞けない人事用語辞典 第27回 「社外取締役」 吉岡利之 48 労務資料 令和3年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課 54 お知らせ 高年齢者活躍企業フォーラムのご案内 地域ワークショップのご案内 56 日本史にみる長寿食 vol.346 「麦とろ」でどんどん元気 永山久夫 57 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 「生涯現役促進地域連携事業」より地域発の取組みから学ぶシニア就業 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第62回] 文章謎解き 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」、「技を支える」は休載します 【P6】 特集 SDGsと高齢者活用  生涯現役時代のキーワードの一つとして「SDGs(エスディージーズ)」が注目を集めています。「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」を意味する言葉です。SDGsの取組みとして、メディアなどでは地球環境に配慮した取組みがよく紹介されていますが、私たち一人ひとりがやりがいを持って働き続けることができる環境づくりも、SDGsで求められている取組みの一つです。そこで今回は、「SDGsと高齢者活用」と題し、人事・高齢者雇用の視点からSDGsを解説します。 【P7-10】 特別インタビュー 企業の社会的存在意義が問われるSDGs次世代へシニアのスキルや経験の継承を SDG パートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬和夫さん  SDGs(持続可能な開発目標)は、国をあげての取組みとして浸透する一方、生涯現役時代におけるキーワードの一つとなっている。企業においても、持続可能な社会の実現を目ざす一員となることが求められるなど、SDGsへの対応は避けて通れないところまで来ているといえる。  そこで今回は、企業のSDGs対応に関するコンサルティングを数多く手がけてきたSDGパートナーズ有限会社の田瀬和夫さんに、企業がSDGsに取り組むことの意義、シニア世代への影響などをうかがった。 SDGsを考えることは企業の社会的存在意義を考えること ――日本でも近年SDGs という言葉が聞かれるようになりましたが、まだまだNGOなど公共性のある組織が取り組む課題ととらえられているかと思います。企業としてSDGsに取り組む意義はどこにあるとお考えですか。 田瀬 SDGs の目的は、2015(平成27)年9月の国連サミットで、15年後の「2030年に次世代に引き渡すべき国際目標という大きな世界観を示したこと」だと私は考えています。ジェンダー平等の実現や働きがいと経済成長の両立など一つひとつの目標は重要なことですが、さらに重要な観点は、「どういった世界を次の世代に引き渡したいのか」という世界観を共有することです。  加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、まず前文があり、その後に宣言があり、17のゴールと169のターゲットが出てくる構造となっているのですが、ほとんどの方が数値目標のところしか見ていません。しかし、前文と宣言に明記された「誰一人取り残さない」ということや「一層大きな自由」などの世界観こそが重要なのです。  また、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)についてもアジェンダの極めて重要なビジョンの段落に書いてあります。地球環境に関しても、もともとは「自然を大切にしよう」ではなくて、「現在の世代と将来の世代の両方のニーズを満たす」という概念でした。  これらのことをまとめると、SDGsは「世代を超えてすべての人が自分らしく、よりよく生きられる」といった世界観を示しているといえます。そういう意味では、企業にとってのSDGsとは、国際社会のなかで、その企業が社会の一員としてどういう役割を果たせるのかを考えることといえるでしょう。いい換えれば、SDGsを考えることは経営者にとってはパーパス(社会的存在意義)を考えることと直結するのです。  もちろん企業である以上、お金を稼ぐことが大きな命題です。社会で役立つことをしながら利益を上げていく、つまり「きれいごとで勝つ」ということを本気で実現しようとするために経営者がSDGsに取り組むことに重要な意味があります。経営者が利益を生むことと社会全体の役に立つことの両立という難題を解決するには、“良くて強い事業”が必要です。そしてこれを実現するためには“良くて強い組織”でなくてはならない。これらを全部一緒に実現するために、企業経営の概念そのものを変えていく、これこそが企業がSDGsに取り組む意義だと思います。 なりふり構わぬ競争力強化からきれいごとで勝つ時代へ ――“きれいごとで勝つ”という概念は、経営者のなかにはなかなか受け入れがたい、わかっていてもふみ出せないという人も少なくないかもしれませんね。 田瀬 たしかに、昔は「まじめに環境や社会のことを考えたら損をする」、「競争力アップのためにはきれいごとは忘れなさい」といわれていた時期もありました。一方でいま、SDGsのルール形成が進んでいて、明確に環境社会への考慮を行った方が経済合理性が高くなるような仕組みになってきています。これを知らずにいままでのルールを引きずっていると、かえって損をする国際社会となってきていることに早く気づくべきです。  例えば、国際社会では間接的であっても、サプライチェーン※1全体で他人の権利侵害や地球環境破壊などをしたら、市場から排除されるというルールになっています※2。「自社が悪いことをしていなくても、サプライチェーンのどこかで悪いことが起きたらそれはあなたの会社の責任である」というルールにしたわけです。サプライチェーン全体できれいごと以外で勝つことは認められないルールにしたということです。  一方で世界の投資家が重視し始めているのがESG投資※3です。これは財務情報に加えて、環境や社会への貢献度が積極的に評価される仕組みです。まさにSDGsを達成するため、具体的に取り組むべき企業の指標の一つがESGですから、きれいごとで勝つためにお金を回す仕組みだといえます。欧米ではESG投資の額が年々増加しています。日本でもこれから投資額が増えていくことは間違いありません。  サプライチェーン全体できれいごと以外で勝つことは認められないルールとなり、一方でESG投資などきれいごとにお金が回る仕組みが整備されてきています。いい方は悪いですが外堀がほぼ埋まっているので、いままでのやり方では国際社会からとり残されてしまうのです。 SDGsには対症療法は通用しないビジネスのあり方と社会への役割の見直しを ――日本企業が変わっていくためにできること、手をつけるべきことはなんでしょう。 田瀬 現在、多くの企業では「何か一つの事業で社会の役に立っている」ということで社会貢献を謳っていますが、実はそれではほとんど意味がありません。図表1のように、経営理念(心)・事業(技)・組織(体)を融合させていくことが必要となります。ですから、まず重要なのは会社全体、特に経営層がきれいごとで勝つということに腹落ち感を持つことだと思います。私の世代(50代)より少し上の方に刺さるのは、「黒澤明監督の映画は裏側の見えない部分まですべて時代考証がしてある」という話です。そうしたこだわりが本物を生んで、黒澤ブランドになったわけです。実はSDGsに関して日本企業に求められるのはそういうところだと思うのです。日本企業も黒澤監督を目ざさないと勝てないということです。  例えば、見えるところでは「この製品・サービスが環境によい」といっていても、部品のサプライチェーンには「児童労働などの問題がないか」、「開発者は男性ばかりではないのか」など全部を点検して強いものにしていかないと勝てないわけです。これは対症療法的に行えばよいことではなく、もっと根源的にビジネスのあり方と社会への役立ち方をまずは経営者が深く理解する、そこから社員に浸透させていくことが重要だと思います。 ――SDGsはトップダウンでないと進んでいかないのでしょうか。 田瀬 もちろんボトムアップで進められる場合もあります。すでによい組織、強い組織を持っている企業はボトムアップが有効だと思います。  ESGのなかでも脱炭素や人権、生物多様性などは他社との比較が点数で出るので、こうした領域を扱うリスクマネジメント担当やIR担当から、客観的な数値などで提案すればボトムアップで進めていきやすいといえます。  一方で、事業の中長期的な見立てなどは経営層でないと行えませんから、トップダウンでのアプローチとなるでしょう。また、目の前にある課題の解決だけでなく、将来あるべきグランドデザインをしっかりと描いて、そこに向かって舵を切ることも、トップダウンでないと行えません。  例えば、砂浜のゴミ清掃は「ビーチクリーン」といって素晴らしい活動だと思いますが、本当はビーチクリーンをしなくてもよいビーチ、つまり、だれもゴミを捨てないビーチであればよいのです。このように、目の前にある課題を取り除いていくことも重要ですが、そもそも課題が発生しないためにはどうしたらよいのか、グランドデザインを目の前にある課題の解決と同時に考えないと、いつまでたってもビーチクリーンから進みません。ビーチクリーンという帰納法的思考※4と、ビーチクリーンがいらないビーチにするためにはどうすればよいかという逆算的思考である演えん繹えき法的思考※5を組み合わせていく必要があります。  演繹法的思考といえば最近、「バックキャスト」※6という言葉をよく聞きますが、実はバックキャストだけでは物事は動かなくて、目の前の課題を一つずつ解決していくことと、バックキャストによる思考をどうやってつなげていくかという思考が抜けているのです。これを私はSDGsサンドイッチと呼んでいます(図表2)。  日本には、目の前の課題を解決しても前へ進んでいけない会社がまだ多いと感じます。いまあるものであと何年食べていけるかといった対策だけだと、20年後、30年後に仕事がなくなってしまうのです。こういうビジョンを描けるのはボトムアップでは無理です。これは経営者、ないしは20年後、30年後に会社を本気で背負っていくと考えている事業継承者たちに必要な思考だと思います。 「欲」から「徳」への価値観の転換SDGsの意義を理解して取り組み始めたシニア世代 ――SDGsへの取組みのなかでシニア世代と若者たちのかかわり方はどのようにあるべきでしょう。 田瀬 私はこれまでのビジネススタイルを否定する気はまったくありません。1990年ころまでの高度成長期は「欲」が充足されていなかった時代だと思います。そのため大量生産と大量消費で経済が回っていました。団塊の世代の人たちはまさにこのために一生懸命働いてきたわけです。一方で冷戦の終結以降は「みんなでよくなろう」という多極主義と、「自分さえよければよい」という人たちが国際社会でせめぎ合いを続けてきました。そのなかで人々や企業が求めたものは、自分たちの安心・安全・快適だったといえます。ここまでは「欲」の追求でした。  しかし、SDGsから先は、自分らしさやウェルビーイング、パーパス、あるいは社会に対する使命感など、追求するものが「欲」から「徳」へ移行しています。「『自分さえよければよい』という価値観は許さない」という流れです。  では、いまのシニア世代には徳がないのかというとそんなことはありません。社会情勢の変化や時代の要請を受けて、そこに対応してきたシニア世代が、後に続く世代を育ててきたのです。大量消費や自分たちの快適さを追求する時代を生きると同時に、「人の役に立つ」、「社会の役に立つ」ことの重要性を、次の世代に伝え続けてきたからこそ、いまの若者は、いまの社会に必要な価値観を身につけているのです。そういう意味では、シニア世代と若者に断絶はありません。むしろどこか心の中で「人の役に立ちたい」といった徳の部分を持っているシニアの人たちもいて、そういうふうに生きられなかった時代背景がここに来て転換したので、ようやく自分たちの時代が来たと思っている方も多いと思います。  そんな方たちはSDGsの意義を理解してすでに取組みを始めています。そして若者をはじめとした次の世代の人たちはその様子をちゃんと見ています。そういう意味でシニア世代は生涯現役を貫き通して、最後まで自身のノウハウや技術をとことん次世代に教えてほしいと思います。逆に若い世代はシニア世代が身近にいるうちにすべてを学び取ってもらいたい。こうして世代間で意義のある事業や技術を承継して発展させていくことが、SDGsの達成につながる道だと思うからです。 ※1 サプライチェーン……製品の原材料や部品の調達から販売までの一連の流れをさす言葉 ※2 2011年に国連が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」、2017年のTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言により、サプライチェーンの人権侵害や二酸化炭素の排出が、自社の責任となることが示されている ※3 ESG投資……これまで用いられていた財務情報だけでなく、ESG(Environment:環境)(Social:社会)(Governance:企業統治)の3つの視点を取り入れて企業活動の良し悪しを判断する投資手法。財務情報だけでは見えにくい企業の社会的責任や環境問題対策などを考慮して、その企業が持続的に成長していくかどうかを評価する ※4 帰納法的思考……さまざまな事実や事例から共通点などをまとめて、それを基に結論を導き出す思考法 ※5 演繹法的思考……一般論や普遍的事実を基に、結論を導き出す思考法 ※6 バックキャスト……目標となる未来を定め、未来を起点に逆算してやるべきことを考える思考法 SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬和夫 たせ・かずお 1967(昭和42)年生まれ。東京大学工学部原子力工学科卒。外務省、国連事務局広報センター長などを経て、2014 年にデロイトトーマツコンサルティングの執行役員に就任。SDGsとESG投資をはじめとするグローバル基準の標準化、企業のサステイナビリティ強化支援を手がける。2017年9月にSDGsに関する講演や総合コンサルティング業、企業のESG対応を支援するSDGパートナーズ有限会社を設立して現職となる。 図表1 SDGsに必要な経営理念(心)、事業(技)、組織(体)の融合 良い組織・強い組織 じわりじわり(相関から因果関係へ) 良い事業・強い事業 利益と社会的善 お返し 恩返し フィランソロピー CSR ボランティア @経営理念視点(心とありたい姿) 何をだれに売りたいのか。どのような商売をしたいのか ACSV※1視点(技と筋力) イノベーション、SCM※2、環境配慮、品質向上、信頼性獲得、工数削減 BESG視点(体、特に内蔵) 人権・環境・ガバナンス・D&I※3などのESG配慮 ※1 CSV……共通価値の創造 ※2 SCM……サプライチェーンマネジメント ※3 D&I……ダイバーシティ&インクルージョン c SDGパートナーズ 図表2 SDGsサンドイッチの概念図 現在 現状 現状の課題を特定し、それを解決するためにはどうすればよいか論理的に考える 解決策 帰納法的思考 いま持つ資源・能力 演繹法的思考 あるべき姿からの逆算 20xx年 あるべき姿 2030年、2050年、さらにその先の理想的社会を考え、そのなかで自社がどのような役割を果たしているか想像する その場の状況に対処しつつ現状の延長線上にある成長 c SDGパートナーズ 【P11-14】 解説 高齢者がになうSDGs −生涯現役と生涯貢献の実現へ− ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員・ジェロントロジー推進室兼任 前田展弘(のぶひろ) 「SDGs(持続可能な開発目標)」と高齢者との関係性  「高齢者がになうSDGs」とは何か、これを述べるにあたり、まずSDGsと高齢者との関係性を整理する必要があります。SDGsは周知の通り、「世界と人類全体で、“誰一人取り残さない”持続可能で多様性と包括性のある社会を創る」ことを目ざした世界の開発目標です(2015〈平成27〉年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択)。経済・社会・環境問題を中心に17ゴール・169ターゲット・231指標が設定され、各国がその達成に向けて包括的に取り組むことが求められています。国連サミットで採択された際の成果文書※1にある“我々が目ざすべき世界像”には、「すべての人生が栄える、貧困、飢餓、病気および欠乏から自由な世界」、「最も脆弱な人々のニーズが満たされる、公正で、衝平(こうへい)で、寛容で、開かれており、社会的に包摂(ほうせつ)な世界」、「すべての国が持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と働きがいのある人間らしい仕事を享受できる世界」といったことがあげられています(世界像の一部を抜粋)。  こうした世界の実現に向けて、改めて高齢者がになうことは何か(期待することは何か)を考えると、次の二つのことがあると考えます。一つは、「次世代(子どもや若者)のために生きがいのある豊かな“人生モデル”を築く(実践する)」こと。もう一つは、「社会の未来のために年齢にかかわらずいつまでもあらゆる形で社会や次世代を含むさまざまな人々に“貢献”し続ける」ということです。抽象的かつ包括的な表現ですが、それぞれの目標(ゴール・ターゲット・指標)が求めているもっとも大きなことは、開発途上国や子ども・若者、および脆弱な立場にある人々の安心で豊かな「未来」を築くために何が必要か(すべきか)ということなので、このことを高齢者の役割として考え直すと、上記の2点に集約できるのではないかと考えました。  なお、この解釈は筆者の私見であると同時に、日本独自の視点といえるかもしれません。と申し上げるのは、国連の議論においてSDGsの達成をになう立場として必ずしも高齢者は位置づけられていないと思われるからです※2。ゴール・ターゲット・指標のなかで「高齢者(Older Persons)」という文字が確認できたのは、ゴール2「飢餓をゼロに」のなかのターゲット2.2、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」のなかのターゲット11.2、11.7の3カ所のみでした※3。また、前述の成果文書のなかで「脆弱な人々」を説明しているところでは、「高齢者を含む」と記載されています。つまり、世界の見方としては、高齢者は「社会が支えるべき対象」、SDGsをになうというよりはむしろSDGsの達成により恩恵を享受する対象ととらえていると思われます。多様な高齢者の一面しか見ていないという印象を持ちましたが、いずれにしても、“高齢者がSDGsをになう(社会を支える)”という視点自体、人生100年時代を迎える高齢化最先進国の日本ならではの、ある意味誇らしい発想といえるかもしれません。 人生100年時代の生き方モデルとSDGs  では、一人ひとりの高齢者が具体的にどのようなことを意識して、どのようなことに取り組んでいくのがよいのでしょうか。前述の「人生モデル」と「貢献」の二つのことを同時に考えていきます。先に結論を申し上げると、そのポイントは“生涯現役”、“生涯貢献”です。  「人生100年時代」という言葉が喧伝(けんでん)されていますが、人生100年にふさわしい生き方のモデルは、世界のどこを探しても見つかりません。現時点では「ない」のです。その理由は、これだけ長生きできる人が増えたのが近年になってからだからです。定年のある会社員を前提に話を進めれば、リタイアした後、30〜40年にも及ぶ可能性がある人生を残していますが、その間の生き方、暮らし方、活躍の仕方がよくわかりません。そうした高齢期の実態を眺める若者の多くは、長寿の人生(未来)を描けず、将来に対して希望よりも不安ばかりを募らせている状況が見受けられます。では、どのような生き方が理想なのでしょうか。モデルを考えてみます。  図表1は、会社員を前提に描いた就労モデルです。現在は、パターンA(65歳までの生計就労)が標準形だと思いますが、国の政策(70歳までの就業確保措置の努力義務〈2021年4月施行〉)などにより、パターンB(70歳までの生計就労)へのシフトが社会として模索されている状況にあると思います。パターンCは65歳までは生計就労に勤いそしみ、65歳以降は自宅のある“地域”のなかで生きがい就労を“楽しむ”モデル、パターンDは若いときからさまざまなキャリアを流動的に積み重ねながら歩んでいくモデルとして示しています。  なお、パターンAおよびBの状況を客観的に見ようとしたものが図表2になります。厚生労働省が毎年調査している「高年齢者雇用状況報告」をもとに、企業の定年制の状況などを整理したものになります。ご覧の通り、60歳定年、その後65歳まで継続雇用で活躍し続ける人が大多数(約9割)を占めていることがわかります。70歳までの就業確保措置を実施している企業も25.6%ありますが、その大半は継続雇用であり、また希望者全員に適用されるわけでもないため、現時点でパターンBを歩める会社員はざっと見積もっておそらく1割程度の人ではないかと推測します。こうしてみても、現時点では多くの人にとって65歳が人生の一つの大きな分岐点になっていることはたしかでしょうし、65歳以降、活躍の場を見い出せない高齢者が増え続けてしまうことは、いうまでもなく社会全体の労働力に大きな影響をもたらすことになります。 高齢者がになうSDGsは「生涯現役」「生涯貢献」の実現  そこで筆者として推奨したいのが、図表1で示したパターンCのモデルです(図表3)。リタイア後は、自宅のある地域のなかで活躍の場を見い出すモデルですが、特に次の二つのことを強調したいと思います。  一つは、「活躍(就労)の中身」についてです。リタイアした高齢者の就労に対するニーズは多様ではありますが、年金も相応に得ていて無理してまで働く必要がない高齢者の方々がよく口にすることは、「体は元気だし、まだまだ活躍したい、何かしたい。特に人から感謝されるようなこと、自分が役に立っていると実感できるようなことをしたい」ということです。実際、いまの高齢者は体力面での若返りが確認されていますし※4、まだまだ社会のなかでの活躍が期待されます。他方、地域(自治体)には、子育てから医療・福祉のことなどさまざまな地域課題が山積みです。人口減少にともなう「地域力の低下」は今後さらに深刻さを増していきますし、そのなかで今後「高齢者の高齢化」が進み、特に85歳以上の高齢者が急増していきます※5。当該層は独居者も多く、また認知症を患う人も多く含まれるでしょう。福祉の力(マンパワー)にも限界があるなかで、そうした高齢者をだれが支えていくのか、社会としても大きな課題です。パターンCの65歳以降の就労の場は、こうした地域が抱える課題の解決に貢献できる場が理想的です(このことに関連深い厚生労働省の政策として、「生涯現役促進地域連携事業※6」および「生涯現役地域づくり環境整備事業」がありますが、本稿での言及は割愛します)。  もう一つ強調したいことは、「生涯“貢献”」という考え方です。「生涯現役」は基本的に「就労」を前提に生涯を通じた活躍を期待するものととらえられますが、「生涯貢献」は就労にかぎらないさまざまな「貢献」のあり方を、生涯を通じて継続していくことを期待するものです。先ほど体力的な若返りのことを述べましたが、そうはいえども年を重ねていけば、いつかは体力面や健康上の理由などから就労が困難になってしまうでしょう。しかし、就労していないからその人が社会のために役立っていないかといえば、決してそのようなことはありません。例えば、80代の方が子ども世帯の家事をサポートしたり、孫の面倒をみたり、友人の話し相手になったり(互助的貢献)、自分の存在がメンターとして他人に安心感を与えたり(精神的貢献)、積極的に消費することや寄付行為を行うこと(経済的貢献)など、貢献の仕方にはさまざまなことがあります。人のため、社会のために自分が貢献できていると実感できることは、本人の生きがいにもつながります。パターンCの65歳以降においては、こうした「貢献」という意識を持って暮らしていくことも必要であり重要と考えます。なお、こうした考えを反映した「貢献寿命」という概念があります※7。今後社会に広く浸透していくことが期待されます。  以上のパターンCのモデルを一人でも多くの人(高齢者)が実践できれば、それは地域力の強化、人手不足解消、本人の健康面への寄与など多面的な効果が期待されますし、そのことこそSDGsへの貢献につながることだと思います。  今後、パターンCモデルを歩める人(高齢者)を増やしていくには、まずもって社会の側(地域や企業等)が、高齢者の活躍や貢献を“期待する”ことが必要です。そうした場・機会(選択肢)をいかに増やしていけるか、そして、高齢者を導いていけるか(マッチングシステムなど)が、今後の日本の未来に、そしてSDGsの達成のために重要だと考えています。 ※1 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(」国際連合広報センターHPより) ※2 あくまで筆者の見解です ※3 2.2「5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う」 11.2「2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」 11.7「2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する」 ※4 スポーツ庁が毎年実施している「体力・運動能力調査」結果でも、65歳以上の男女ともに体力の向上が確認されている ※5 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計人口では、85歳以上人口は2020年の約620万人から2035年には1000万人を越える見通し ※6 「生涯現役促進地域連携事業」の事例を64頁で紹介 ※7 「貢献寿命」については、筆者を含む研究メンバーにて、長寿科学振興財団「長生きを喜べる長寿社会実現研究支援プロジェクト(貢献寿命延伸への挑戦〜高齢者が活躍するスマートコミュニティの社会実装)」のなかで概念化と普及活動を進めている 図表1 人生100年時代の活躍の仕方のモデルパターン パターンA 従来型単線モデル 生計就労(〜65歳) パターンB 単線延長モデル 生計就労(〜70歳) パターンC 生計→生きがい就労モデル 生計就労(〜65歳) 地域における生きがい就労 パターンD マルチキャリア流動モデル ※「生計就労」は生計のための就労、「生きがい就労」は本人の生きがいや健康などをより重視した就労という意味で表しています ※筆者作成 図表2 企業の定年制の状況(何歳まで働ける人がどれくらいいるのか) 〈定年制の状況〉※1 65歳までの継続雇用(希望者全員) 93.0% 60歳定年 71.9% ※2 70歳までの就業確保措置実施企業割合※1 25.6% 65歳定年 21.1% 大企業 13.7% 中小企業 21.7% (66歳以上定年) 1.1% 70歳以上定年 1.9% 定年制の廃止 4.0% 65歳 70歳 70歳までの就業確保措置 【努力義務】 @定年制の廃止 A70歳までの定年引上げ B70歳までの継続雇用制度の導入 ※グループ会社(子会社・関連会社)での継続雇用を含む ※他社への再就職斡旋等を通じた雇用の継続を含む C70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 ※起業した者やフリーランスを対象 D70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入 ※事業主自ら実施する社会貢献事業 ※事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業 《2021年4月施行》 ※1 厚生労働省「令和3年高年齢者雇用状況等報告」より ※2 64歳以下の定年制企業割合(推定値) 図表3 パターンCモデルのイメージと効果 人生100年時代 20歳 50歳 65歳 75歳 85歳 100歳 生計就労 貢献活動の推進 地域における生きがい就労 地域における生きがい就労 年金・貯蓄・保険等(経済基盤) 地域で普通のシニアが活躍・貢献し続ける!(特に地域課題解決に) 地域(社会) 地域力の強化、地域経済活性化、地域財政の好転 企業 人手不足解消、シニアを活かした経営強化 個人 フレイル・認知症予防、資産寿命・貢献寿命の延伸 ※筆者作成 【P15-18】 事例1 アセットインベントリー株式会社(千葉県柏市) 産業ジェロントロジーを取り入れ、シニアが活躍し続ける職場環境と社会基盤づくりに挑戦 全国で棚卸し代行事業を展開70歳以降も働ける制度を整備  アセットインベントリー株式会社は、1990(平成2)年12月に創業。小売業をはじめとした幅広い業界の棚卸し業務の代行サービスを展開して32年。これまで約1000社に同サービスを提供し、発展してきた。  現在、全国41カ所に拠点を持ち、長年の経験とノウハウを活かして、コンビニやスーパーマーケット、ドラッグストアなどの実地棚卸、資産棚卸などに対応しているほか、「健康延伸事業」として高齢者への配食サービス、「生活支援事業」として掃除や洗濯、調理などの生活援助(介護予防・日常生活支援総合事業)、「応募受付代行サービス」として企業の採用募集にかかわる対応の代行業務を行っている。  従業員数は1250人。一般労働者派遣事業を営むグループ会社の「株式会社アセットオール」と合わせると、1570人である。  加えて、棚卸しなどの代行業務を行う現場スタッフとして、短期アルバイトを含めて、年間延べ約4000人を採用している。アセットグループの従業員は、この現場スタッフとして同社の業務に就いたことがきっかけで、正社員に登用された人が多いという。また、人材育成に注力しており、「アセットアカデミー」というアルバイトも含めた全従業員のスキルアップを目的とした教育体制を構築し、実践していることも同社の特徴の一つである。  アセットグループの定年年齢は、65歳。希望者全員を70歳まで再雇用する制度を2019(令和元)年に導入。70歳を超えても、個別の契約により働くことが可能である。 シニア人材の活躍を重要視したSDGsの取組み目標  同社では、2019年に自社の中・長期事業戦略とISOの取組みなどを統合し、SDGsに関する八つの重点施策を掲げている。また、2030年までの達成に向けた「SDGs目標達成のプログラム」も策定し、第三者評価機関から認定を受けている。  SDGsに対応する目標として掲げている八つの重点施策は、「環境」、「社会」、「ガバナンス」の三つの視点に区分される(図表)。 シニアが働きやすい職場づくりを追求  同社のSDGsの取組みの要となっているのが、「シニア人材の活躍」だ。洞(ほら)善康(よしやす)専務取締役は、「人生100年時代を迎えるなか、シニア人材がよりいっそう社会で活躍することで、相対的貧困率や健康な生活、働く機会の獲得、雇用側の人材不足など、さまざまな社会課題の解決を図っていくことを目ざしています」と話し、単なるシニア人材の活躍推進に留まらない取組みを目ざしていることがうかがえる。  同社の事業の中核をになっている棚卸し業務は、負荷の高い作業が多く、アルバイトなどを含むスタッフの約9割が若手人材だというが、同社ではシニア人材の活用を、創業当時から考えていたという。  「創業者がアメリカで棚卸し事業を視察し、現場でシニア人材が活躍していたことに感銘を受け、当社におけるシニア人材活用のきっかけとなりました。取組みを本格化させたのは2011年からで、最初は社員として67歳のシニア人材を採用し、人材育成のためのアセットアカデミーの設立に尽力してもらいました」(洞専務取締役)  その後、人手不足が深刻となり、シニア人材の活用についてさらに検討し、さまざまなことを学ぶなかで「ジェロントロジー(老年学・加齢学)」について知った同社では、2017年から、一般社団法人日本産業ジェロントロジー協会代表理事である崎山みゆき氏のアドバイスを受け、産業ジェロントロジーの理念に基づいた、シニアの働きやすい職場環境づくりを追求している。  ジェロントロジーを学び、日本産業ジェロントロジー協会認定インストラクターの認定を受けている洞専務取締役は、ジェロントロジーについて次のように説明する。  「ジェロントロジーは、加齢による人間の変化を、心理、教育、医学、経済、労働、栄養、工学など、さまざまな分野から学際的に研究する学問です。例えば、私たちには、過去の知識や経験を活かす『結晶性能力』と、新しいことを覚える『流動性能力』という二つの能力があります。後者は加齢によって衰えていきますが、『結晶性能力』は一生伸びる人もいるといわれています。こうした理論に基づいて、シニアの働きやすい職場環境づくりに取り組んでいます」 エイジズムの排除が重要な役割を果たす  シニアが働きやすい職場環境づくりの取組みを、同社では「エイジフレンドリーワークプレイス」と名づけて、シニア人材を採用するための求人広告から見直しを行い、労働環境についても多様な改革を実践している。  例えば、産業ジェロントロジーの視点からもっとも生産効率の上がるチームの年齢構成を研究し、若手9に対しシニア人材1の編成が最良という結果を受けて、実際の棚卸業務のチーム編成に採用している。  また作業においては、棚の上段と下段は若手、中段をシニア人材が担当するという役割分担も考案。さらに、軽量の脚立を導入したり、通常3時間ごとの休憩をシニアは1.5〜2時間ごとにこまめに取ったりするなど、研究の成果を活かした工夫を随所に取り入れている。  こうした若手とシニア人材との協働において重要になるのが、「若手とシニア人材が良好な関係を築き、チームでしっかり仕事ができるか」ということだ。そこで、SDGsの取組み目標にも掲げている「エイジズムの排除」が重要な役割を果たしているという。同社では、アルバイトを含む全従業員に対し、産業ジェロントロジーの教育機会をつくり、エイジズムの排除について伝えている。  「若い人のほとんどが『エイジズム』という言葉もその意味も知りません。まずは知ってもらうことが大事だと考えています。加齢により低下する能力もあれば伸びる能力もあると学んでもらうことで、シニア人材に対する理解が深まり、一緒に働く際の役割分担の意味についても理解することができます。知らないままでは、チームがうまくいきません。一方、シニア人材の視点で考えると、若手が多いチームに入ることに不安を感じる人もいますので、シニア人材に対する研修では、加齢による能力の変化などについて話をすることで、不安を取り除いて仕事に臨めるようにしています」(洞専務取締役)  2021年度は、約3000人のアルバイト・パートを採用し、エイジズムの排除を含む現場研修を行っている。  また、シニア人材には、シニア専属トレーナーによるフォローも行い、心理的な不安や現場でのけがの防止につなげている。加えて、全従業員を対象に株式会社リクルートが提供している「からだ測定※」を実施し、「しごと体力」、「しごと処理力」、「しごと個性」の三つの側面から現状を把握。業務の見直しのほか、自分の体力を知り、健康向上のための生活改善などに役立ててもらっている。 2030年の目標達成に向けて  同社では、シニア人材が働きやすい職場環境をさらに追求し、仕事をしながら地域コミュニティの維持・活性化の一端をになっていくことを目ざし、新規事業として2019年に健康延伸事業(配食サービス)を、2020年に生活支援事業をそれぞれスタートさせた。  新規開発部生活支援事業課の梶原(かじわら)崇志(たかし)課長は、「地元の道路に詳しいシニア人材や、バイクに乗るのが趣味というシニア人材が、お弁当の配達と利用者の方の見守りを兼ねて業務にあたっています。また、ファミリーレストランでの勤務経験があるシニア人材は、その経験を活かして配膳で活躍しています」とシニア人材の活躍を語る。  生活支援事業では、東京都江戸川区の指定を受けて、居宅要支援被保険者ができるだけ居宅で自立した日常生活を送れるよう、掃除・洗濯・調理などの生活支援を行っている。  これらの新規事業でも、シニア人材と若手がともに働いており、「休憩時間にお菓子を一緒に食べたり、とてもよい雰囲気で働いています」と梶原課長。社会経験豊富なシニア人材は、仕事に取り組む姿勢やマナーなど若手の手本になることが多く、その点でもシニアと若手のチーム編成はうまくいっていると感じるという。  大越(おおこし)健志(たけし)執行役員・オペレーション部長は、「シニア人材の活躍が、組織の活性化につながっています。世間的には、異なる世代が一緒に何かをするという機会が少なくなっているように思えますが、当社では若手からシニアまで、幅広い世代が肩を並べて仕事をしていますので、それぞれの人材がほかの世代の人材から刺激を受けながら働いています」と、多世代がともに働く職場のメリットを語ってくれた。  洞専務取締役は、「シニア人材の働く場をつくることで、働きがいや生きがいが生まれ、生活をしていくための収入が得られます。このサイクルを地域コミュニティの維持につなげていくことが、弊社のできる社会貢献でもあると考えて取り組んでいます」と同社のシニア人材活躍推進の取組みについて話す。最後に2030年のSDGsの取組み目標達成について次にように話してくれた。  「SDGsの目標達成の2030年に向けてさらに工夫を積み重ねながら、産業ジェロントロジーの理念に基づく『エイジフレンドリーワークプレイス』を、当社の賛同企業に知っていただくことに努め、シニア人材の活躍に対する理解を広めていき、各企業でシニア人材の活躍が増えていけばと考えています。さらに、官・民の各種団体・企業と連携し、ともにシニア人材の就業・活躍の機会を広げていきたい。当社ではさまざまな世代の人材が働いていますが、雇用した各世代の人材が70歳になるまで、どの年齢のときでも働きやすい職場づくりを目ざしていきたいと思います」 ※ からだ測定……体力や処理能力などを診断するためのツール 図表 アセットインベントリーのSDGs 八つの重点施策 環境 1 省エネルギー、低炭素経営 棚卸し業務用機器などのさらなる省エネ化と、シェアオフィスの積極採用などにより、事業で排出するCO2を大幅に低減。また、IT利用促進によるペーパーレス化を積極的に進める。 2 資源の節約、有効利用 社会 3 労働力確保と権利の保全 人生100年時代といわれる現代、シニア人材の活躍が重要な課題と考え、「生きがい就労事業の開発」をテーマに掲げ、ジェロントロジーの理念に基づき、就業意欲の高いシニア人材およびシニアをサポートする人材の持続可能な育成と、シニアが活躍できる社会基盤づくりを、人材派遣・請負業を通して実証する。 4 ダイバーシティ(多様性)と公正、平等な社会基盤 「シニアにやさしい就労スタイルの創造」をテーマに掲げ、シニア人材の就業機会を継続的に創造する枠組みの確立を目ざす。 セカンドキャリアを学ぶ教育機関と人材を求める民間企業のマッチングを行い、ジェロントロジー教育に基づいた職場環境、人材の整備と、受け入れ態勢の整備を同時的に進める。シニア人材が社会で活躍することでますます「健康」を維持できるために、健康データ取得と分析を行い、シニア人材の持続可能な社会基盤づくりに貢献する。 5 エイジズムの排除 「年齢を意識しない平等な環境の創造」をテーマに掲げ、働きたいと希望する人々が、年齢を理由に採用されないといった事例を撲滅するために、ジェロントロジー人材の活躍を通して啓蒙、啓発していく。まずは、価値観と認識の改革を行う観点で、2030年までに延べ4万人に対して、加齢に対する偏見(エイジズム)を無くす教育を推進する。 ガバナンス 6 企業理念のSDGsとの統合 持続可能な開発を行うためには、SDGsの達成に賛同し、自ら実践することが重要であると考え、事業戦略計画とSDGsを統合。事業を通して社会に貢献することが、経営の本質。 7 企業統治能力の向上 自ら経営を見直す機会を積極的に設けるとともに、第三者機関の評価を受けることで継続的改善を実現していく。 8 ステークホルダーとの協働 地域、政府、都道府県等地域行政、専門機関などと連携し、シニア人材の活躍を、「ジェロントロジー人材」の開発を通して、ステークホルダーと協働(エンゲージメント)し、積極的に情報公開する。 写真のキャプション アルバイト社員のためのエイジズム排除に向けた研修の様子 左から梶原崇志生活支援事業課長、大越健志執行役員・オペレーション部長、洞善康専務取締役 【P19-22】 事例2 株式会社松尾青果(長崎県南島原市) 高齢者をはじめとする多様な人材の活躍を原動力に新しい農業ビジネスの構築により地域に貢献 年齢にかかわりなく生涯現役で働ける雇用制度を整備  株式会社松尾青果は、松尾(まつお)博明(ひろあき)代表取締役社長が1978(昭和53)年に青果問屋として松尾商店として創業。地元・島原半島のジャガイモを中心に野菜の集荷・販売を生業(なりわい)とし、その後業容拡大のため、2008(平成20)年に株式会社松尾青果を設立した。  同社の特徴の一つが、生涯現役で働ける職場環境を整えていること。現在、従業員は50人で、その年齢構成は70歳以上が9人、65〜69歳が2人、60〜64歳が6人、55〜59歳が4人、50〜54歳が3人、45〜49歳が2人、44歳以下が24人となっており、60歳以上が約3割を占めている。  同社では、2015年3月に定年を65歳に延長し、65歳以降は、希望者全員を年齢の上限なく再雇用することを就業規則に明記した。就業規則の改定前は「会社が必要と認めたものについては勤務延長することがある」としていたが、実際には希望者全員を再雇用しており、制度自体が形骸化していたことから、就業規則に明文化したという。これにより、社員は将来への漠然とした不安がなくなり、安心して働き続けられるようになった。  また、定年後再雇用になっても、基本給は定年前と変わらず、働きぶりによっては昇給もあるほか、ボーナスも支給しており、年齢にかかわらずモチベーション高く働ける評価・処遇制度も整えられている。 60歳以降も長く働くためには“休みやすさ”の視点が重要に  高齢社員が働きやすい職場づくりの一つとして、「休暇を取得しやすいこと」にこだわっている。同社では、「欠勤表」で欠勤日を管理しているという。  欠勤表とは、大きなホワイトボードでつくった一覧表であり、縦軸に社員全員の名前、横軸に当月の日付が記入されており、各社員が休暇を取りたい日に所定の記号を書き込むだけで、ほぼ希望通りに休むことができる。所定の記号は5種類。「×」は風邪・頭痛、「◎」は腰痛・肩痛、「△」は腹痛・下痢、「☆」は入院、「○」は私用、という事由を示している。会社やほかの社員に遠慮をしてしまい、休暇申請を出しづらいと感じる社員でも、自身の体調不良や家族の事情を会社に伝えやすくするための仕組みだ。これにより会社は、ひと目で社員の健康状態や事情が確認できる。家族の介護や体調不良など、さまざまな事情を抱えながら働いている高齢社員が多い職場だからこその取組みといえる。  また、社員が働きやすい職場づくりの取組みとして、農地で作業をする社員を対象とするサマータイム制度を20年以上前から導入している。通常は8時から17時の勤務だが、炎天下での作業を避けるため、早朝5時から昼12時までのサマータイムを設定。作業自体は11時までに終わらせることを徹底するとともに、熱中症対策のため、凍らせた水やスポーツドリンクの携帯を必須とするなど、最大限の注意を払い、体調管理を行っている。お昼に仕事が終わるため、就業後は、涼しい自宅でゆっくり休養するなど、各自が翌日の仕事に備えて英気を養う。こうした独自の取組みが働きやすさにもつながり、体調とともに、モチベーションの維持にもつながっているそうだ。なお、毎年のサマータイムの開始時期は、現場を熟知する農産部部長の一声で決まるという。  そのほか、同社では福利厚生が充実しており、社員からの評判も高い。例えば、昼食は会社で弁当を注文することができ、会社が一日一食あたり300円を負担。基本となる500円の弁当ならば自己負担が200円に抑えられることから、若手から高齢社員まで、年代を問わず歓迎されている制度である。家事をになうパートタイムの高齢女性社員たちからは、「朝からお弁当づくりをしなくてすむので助かっている」という声が聞こえてくるそうだ。  こうした高齢者雇用の取組みが評価され、同社は2015年度高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰特別賞を受賞している。 新たな集出荷システムを考案し高齢社員を季節限定雇用から通年雇用に  松尾社長はこれまで、地域の発展を目ざし、地場産業である農業を持続可能なものにしようと、さまざまな取組みを行ってきた。根底には「地域の人々を誰一人取り残したくない」という、SDGsのスローガンにも通じる松尾社長の思いがあったという。その取組みの一つが、季節限定で働いていた高齢のパートタイム社員の通年雇用化だ。  同社の主力商品であるジャガイモの産地といえば、北海道が有名で168万6000tと全体の79%を占めており、次いで鹿児島県7万9200t(同4%)、長崎県が6万8100t(3%)と九州勢が続く(「農林水産統計」令和3年産春植えばれいしょの都道府県別収穫量より)。ちなみに、2017年まで生産量2位は長崎県だったそうだ。長崎県は、1600年ころにジャガイモが初めて日本にもたらされた土地であり、松尾青果が所在する南島原市はその一大産地である。一般的に、ジャガイモは春に作づけし、夏から秋に収穫を迎えるが、長崎県と鹿児島県はその温暖な気候から春と秋の2回、収穫を行っている。よって、端境期(はざかいき)にあたる春先に市場に出回っているジャガイモは、秋に作づけされた九州産ということになる。  長崎県内のジャガイモの出荷時期は4〜6月と、12〜1月。そのため、かつて同社では、繁忙期である年2回の出荷時期に、地域の高齢者をパートタイム社員として一時的に雇用していたという。しかし、地域で働く人たちの生活の安定、ひいては地域の安定・発展のためにも、パートタイム社員の通年雇用が必要だが、地元には農業以外に目立った産業がない。そこで、松尾社長が注目したのが、日本各地のジャガイモの収穫時期の違いだ。  例えば、鹿児島県の南に位置する沖おきの永良部(えらぶ)島は、鹿児島県本土よりさらに暖かく、冬がジャガイモの生育期間にあたり、出荷時期は2〜4月となる。逆に、気温の低い北海道での収穫時期は8〜11月。つまり、時期をずらして日本を縦断するように集出荷を行うことで、1年を通じて仕事を生み出すことができる。  これを実現するため、松尾社長は鹿児島県沖永良部島と北海道広尾郡に関連会社を設立。こうして鹿児島県の沖永良部島から北海道までをつなぐ「青果の全国リレー集出荷」を実現し、日本全国で収穫した旬のジャガイモを途切れることなく、年間を通して安定的に流通することが可能となった。これにより、同社で働く高齢のパートタイム社員の通年雇用を実現し、現在は西日本の市場をメインに年間1万2000tを出荷している。 地元の兼業農家を代行事業で支援し次世代に残すべき農地を守る  地域高齢者の通年雇用と同時に松尾社長が推進したのが、地域の農業を守るための取組みだ。1995年にジャガイモ、レタス、キャベツなどの作づけ・収穫の代行支援を手がける子会社として農業生産法人「有限会社ぽてとの里」を立ち上げた。地元にある個人農家の依頼を受けて作づけ・収穫を請け負うこの事業は、高齢者雇用の受け皿になると同時に、地域農業の維持にもつながっている。  「南島原の周辺地域は、多くの農家が後継者不足や働き手の不足、にない手の高齢化により重労働ができず、農地管理が困難になっていました。地元の一般兼業農家の依頼を受け、当社に所属する高齢社員をリーダーとしたチームが依頼者の畑に出向き、作づけや収穫作業を代行することで、農家支援を行っています。農家支援が一段落すれば、社員は社内の農作業や、工場内の選果・選別作業にあたります」(松尾社長)  農作業の代行を依頼する農家は、「いつもなら10日はかかる作業が1〜2日で完了するので、とても助かります」と話し、喜ばれているそうだ。  長崎県におけるジャガイモの生産量は2010年から2020(令和2)年の10年間で約20%、作付面積が約18%減少しているという。農家の後継者不足・働き手の不足により、農業の規模が縮小していくなかで、高齢社員も活躍している同社の農作業代行事業は、地域雇用の受け皿になっている。同時に、将来の世代に残していきたい貴重な資源である農地を守ることにつながっている重要な事業となっている。 年齢、性別、国籍の垣根なく多様な人材に“働きがい”を提供  松尾青果では、高齢者だけではなく、外国人や障害者などの多様な人材の活用にも取り組んでいる。2013年から技能実習生を受け入れており、現在はベトナムとカンボジア出身の7人が農作業に従事している。全員女性で、仕事に対して真面目で技能の習得も、日本語の上達も早い。覚えた作業を手際よく進めることができるそうだ。3年間の実習後は、さらに実習を延長する人、社員として入社する人、なかには同社の社員と結婚して日本に残った人もいるそうだ。実習後の進路からは、働く環境のよさが伝わってくる。  障害者の受け入れも積極的に行っており、いまは3人が選果などの作業にあたっている。「みなさん、びっくりするほど真面目にコツコツと仕事をしてくれます。シンプルな作業が向いているので、同じ仕事をずっと担当してもらうことが大切です。彼らは状況変化にはとても敏感なところがあり、例えばジャガイモを選別するカゴの配置を変えただけでも、あわててしまったり、気分を害してしまうこともあります。こうしたとき厳しく指導するのではなく、指導する高齢社員は彼らの特徴をふまえて気長に接し、じっくり教えることができます。指導する側に必要な資質が、高齢社員にはあると思います」(松尾社長)  高齢社員の温厚さは、若手との円滑なコミュニケーションにも活かされている。農産部の主任は25歳と若く、社内若手の出世頭。農業は天気動向を読んでどう対処するかがカギとなるが、この主任は天気の情報を収集し、要領よく作業を進めることができる。この能力を買って、農産部部長の補佐役として役職(主任)に抜擢された。部長が不在の際は、代理を務め現場をまとめている。部長と主任は、約40歳の年齢差がありながら、コンビ関係は良好で、ときには冗談をいいあい、周囲の人たちを含め、場を和ませる場面もあるそうだ。  多様な人材を受け入れている松尾青果は、社員がそれぞれ持てる能力を発揮し、働くことに満足を感じる働き方を提供している。その根底には松尾社長がことあるごとに口にする「朝は希望に目覚め、昼は努力に生き、夜は感謝と反省に眠る」という経営理念がある。「朝は今日行う仕事を考えて前向きな気持ちを胸に、仕事中は精一杯努力します。1日を終えた後、人への感謝だけですませず、ここがダメだった、あれもダメだった、と仕事のうえで成長するためには自らの行いを反省しなければなりません。若手には人としても成長してほしいですから、仕事での厳しさは必要だと思います」と、特に若手に対して、やりがいを持って働いてもらうための指導方針を述べた。 農家収入の安定化を図り地域農業の持続化に貢献する  同社の商品である農作物は、台風や水不足、猛暑などによって収穫量が大きく変わり、常に価格が変動している。農業・農家が持続的に成長していくためには、この流動的な価格設定を変えることが必要ではないかと、松尾社長は話す。  「当社はレタスを11〜3月までの4カ月間、カット野菜にするために契約した固定価格で仕入れており、レタス栽培をしている農家もこれを歓迎してくれています。近年はレタスの取扱い量が増えており、もっと増やしたいという農家もあります。レタスにかぎらず、野菜の売買を契約価格にして相場を固定すれば、農家は売上げを立てやすくなり、家業は安定します。これもSDGsにつながるのではないでしょうか」  農家を守りたいという松尾社長の思いが、農業ビジネスを持続化可能なものに変えようとしている。地域の高齢化に向き合って新しい農業ビジネスを生み出し、地域農業の持続化に貢献してきた松尾青果。気負いなくごく自然に、あたり前のこととして多様性のある人たちを雇用し、自然とダイバーシティ経営を実践して地域発展の原動力としてきた。松尾社長は「私たち松尾青果の社員は常に自然と接していて、自然の恵みをお客さまにお届けし、喜んでもらうことを生業としています」と語る。今後も農家の視点を持つ青果卸業として、地元農家の所得向上を支える取組みを進め、新しい農業振興のモデルづくりを目ざしていく。 写真のキャプション 松尾博明代表取締役社長 技能実習生を指導しながら一緒に仕事をする高齢社員 【P23】 SDGsに関するJEEDの取組み ―だれもが安心して働ける社会の実現に向けて―  当機構(JEED)においては、年齢や障害の有無にかかわらず、だれもが能力を発揮し、意欲を持って安心して働ける社会の実現を目ざしています。  このため、高齢者、障害者、求職者、事業主などさまざまな利用者の方に、総合的な支援を行っており、こうした取組みを通じてSDGsを支援しています。JEEDの支部(地方施設)のなかには、地域でのSDGsの関心の高まりを背景に、施設としてSDGsを支援していることを表明しているものもあり、本部としてもJEEDの活動がSDGsにつながることから、事業概要※1でSDGsの目標と自らの活動との関連を明らかにし、周知を図っています。  また、最近ではポリテクカレッジ※2で、社会の関心ある講演テーマとして、SDGsを取り上げたり、地域の産業界でもSDGsとビジネスとのかかわりに関心が高まってきていることをふまえ、事業活動とSDGs活動の両立をどう進めていくかなどの点を盛り込んだ「生産性向上支援訓練」を実施したり、SDGsに関する具体的な発信も行ったりしています。  SDGsの優先課題のなかに「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」があり、そこでは、@生産性向上、賃金引上げのための支援、A女性・若者の活躍促進、B人材投資の強化、人材確保対策の推進などが関係してきますが、JEEDの行う職業訓練は、こうした点に沿って、さまざまな人々の活躍が進むよう、人材育成の面から支えているものといえます。こうしたことから、引き続き、職業能力開発業務に取り組んでいくとともに、今後、DX(デジタルトランスフォーメーション)につながるデジタル技術に対応できる人材育成についても取り組んでいきたいと考えています。  また、SDGsが掲げる「あらゆる人々の活躍」のなかには、高齢者の活躍も含まれていますので、高齢者の方々が、JEEDの提供する訓練の機会なども活用しながら、社会のあらゆる場面で活躍されることを期待しています。 ※1 当機構ホームページでご覧になれます https://www.jeed.go.jp/jeed/outline/pamphlet.html ※2 ポリテクカレッジ……高校卒業者等の方を対象に、最新の技術革新に対応できる高度な知識と技能・技術を兼ね備えた実践技術者を育成しています 写真のキャプション SDGs・カーボンニュートラル等に関する記念講演の様子(四国ポリテクカレッジ)。「SDGs・カーボンニュートラルの動向」と「ロボットビジネスの最前線」をテーマに、現状や今後の展望等について、IT分野の民間企業代表取締役を招いて記念講演を実施し、別会場にも配信した。 当機構のSDGsの取組みについて(「2022事業概要より」) ポリテクセンター山梨で開催された、生産性向上支援訓練のリーフレット 【P24-29】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!こんなときどうする? 高齢社員のモチベーションが低くて困っています 第2回 ※ このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです ※1・2 出典:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構『70歳雇用推進マニュアル〜高齢社員戦力化のススメ〜』第3章「2 賃金・評価制度の整備」 つづく 解説 集中連載マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!こんなときどうする? 第2回 高齢社員のモチベーションが低くて困っています  高齢者雇用を推進するうえで避けては通れないのが、高齢社員のモチベーションの問題です。高齢社員のモチベーションの低下にはさまざまな要因が考えられます。賃金や処遇への不満もあれば、定年後の継続雇用による仕事内容や役割の変化への不満などもあるでしょう。不満がつのれば、今回マンガに登場した犬尾商事の高齢社員・芝さんのように、仕事をいい加減にするような社員が出てくるかもしれません。高齢社員のモチベーション向上のポイントについて、東京学芸大学の内田教授に解説していただきました。 内田教授に聞く高齢者雇用のポイント 高齢社員の意欲の低下は若手・中堅社員にも悪影響 適切な評価・処遇制度とともに、心理的報酬で高齢社員のやる気をアップ  年金がもらえるまでは働き続けたいと考える高齢者が増えています。今後、年金支給開始年齢は65歳となりますが、60歳定年制の企業で65歳以上への定年引上げや定年廃止が実現すれば、高齢者は安心して働き続けることができ、企業にとっては少子高齢化時代の労働力の安定確保につながります。もっとも、さまざまな事情から定年引上げがむずかしく、当面は60 歳定年をそのままに継続雇用・再雇用で対処したいと考える企業も存在します。では、定年後の継続雇用制度はいかにあるべきでしょうか。  現状の継続雇用制度は“問題なし”とはいえないようです。多くの高齢社員にとっての継続雇用のイメージは「定年前と仕事も責任も変わらない」、「給料がガクンと下がる」、「人事考課がないのでがんばってもがんばらなくても給料は同じ」というものではないでしょうか。もちろん会社のいい分もあります。「定年退職者は正社員と処遇が違う」、「役職を離れて責任は軽い」、「基本的に残業はない」などですが、会社の説明不足によって高齢社員の納得が得られないままですれ違いが生じ、意欲の低下した高齢社員の仕事ぶりが職場の若手や中堅社員に悪影響を及ぼしているかもしれません。  会社は一人ひとりの高齢社員が希望する仕事(いままでと変わらぬ仕事か負担の軽い仕事か)や希望する働き方(フルタイムかパートタイムか)を聴く一方、会社として取り組んでほしいこと(営業の第一線での業務、後継者育成やマニュアル整備など後方から支える業務など)も伝え、両者の意向のすり合わせに努めるべきです。  そして役割や負担の重さを反映した賃金制度をつくり、再雇用であっても人事考課を行って達成度を評価し、賃金や賞与など金銭的報酬だけではなく肩書や表彰などの心理的報酬も与えて処遇することが高齢社員のやる気につながります。 プロフィール 内田賢(うちだ・まさる) 東京学芸大学教育学部教授。 「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。 【P30-31】 江戸から東京へ [第117回] 龍馬の夢 坂本龍馬 作家 童門冬二 龍馬の段階的自己改革  時代の変化を敏感に察知し、それに合わせて自己改革を行ってうまく生きた人物は、やはり坂本龍馬が屈指だろう。かれはそのへんをハッキリ理論化している。生き方を大きく三時代に分けている。 ・刀の時代 武士でなければ何もできない、と観念し、剣術修業に専念した時代 ・ピストルの時代 生きる道具に科学が応用された時代  これは親友の高杉晋作が教えてくれた。晋作は上海でこのことを知った。上海は有名な国際交流港だった。晋作はここで欧米諸国の生活の科学化を知り、その例として龍馬にピストルを渡した。  「ピストルには刀もかなわないよ」  龍馬は納得し、「第二の自己変革」を行う。 ・国際法の時代 人間が一人では生きられないのと同じように、世界の国々も一国では生きられなくなった。協同、協働が必要になった。しかし、それにはルールが要る。相談して規約をつくり、これを守るようになる。  龍馬もこれに乗った。かれの銅像が高知県の桂浜にある。無刀で長靴をはき、懐に手を突っこんで何かをにぎっている。 「何をにぎっているンだ? ピストルか」  と疑う観光客もいる。が、いまでは、  「ちがうよ、万国公法だ」  というのが定説になっている。  あざやかなパフォーマンスで、一介の商人郷士の身で、幕末の国政(討幕側、幕府側の両側)に、政局打開の知恵を出した龍馬だが、そのために両側に敵を生んで、慶応三(一八六七)年十一月十五日に暗殺された。真犯人はいまだにナゾとされている。  私はかれの生き方には問題があったと思う。死に急ぎ≠ナなく生き急ぎ≠した。着想が抜群でその成功を急いだ。  日本で仕事の達成を時間短縮してくれるのは、何といっても人間関係≠ナある。それも必要なヒトとカネ≠動かせる人物に頼むのが手取り早い。実力者≠セ。エラい人≠ニ呼ばれる存在だ。  龍馬はこのエラい人ばかりをねらった。かれの人間術でこれが成功した。  そのためかれが生前交流した相手は、農工商の生活者が少ない。明治維新を必要としていたのはこの層であって、エラい人のための政治改革ではない。  龍馬には龍馬の考えがあるだろうが、この点かれの維新参加には惜しいものを感ずる。 龍馬のやりたかったこと  慶応三年の暮れ近く、討幕側ではほぼ、  「幕府打倒、新政府樹立」の目標が立った。組閣の責任者は三条(さんじょう)実美(さねとみ)(公家)や西郷隆盛(薩摩藩士)などだ。  「坂本も大臣に加えよう」  という話になった。準備局に呼ばれた。  「坂本さん、どんなポストがお望みかね」  三条がきく。龍馬は笑う。  「前から申しあげているように、私は役人には向きませんよ。わがままですからね。お断りいたします」  三条たちは顔を見合わせる。  やっぱりダメかと落胆する。西 郷がきく。  「坂本さん、おはん(あなた)、一体何をやる気かね?」  この問いには龍馬は笑い出す。  「そうですな、世界の海援隊でもやりますかな」  龍馬の夢だ。土佐で海援隊というのをすでにつくって運営している。「規約」があって第一条に、  「藩を脱する者、この隊に入る」とある。  表現がややこしいが要するに、  「海援隊に入りたければ、藩などという組織から抜け出して自由の身になってこい」  ということなのだ。  「自由人の海の集団」だ。  国内では実行している。それを世界的規模にしようというのだ。まわりにいた者は、  「また坂本さんの大ボラだ」  と笑う。しかし龍馬にすれば案外本気だったかも知れない。  「世界協同貿易会社」  の必要性は現代(いま)も高まっている。龍馬ははるか遠い未来をみていたのかも。 【P32-35】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第122回 兵庫県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 年齢にかかわらずやる気と能力を重視現場の声を聞き、より働きやすい職場へ 企業プロフィール 株式会社イスズベーカリー(兵庫県神戸市) 創業 1946(昭和21)年 業種  パン、サンドイッチ等製造販売 社員数 145人(うち正社員数49人) (60歳以上男女内訳) 男性(7人)、女性(7人) (年齢内訳) 60〜64歳 10人(6.9%) 65〜69歳 2人(1.4%) 70歳以上 2人(1.4%) 定年・継続雇用制度 定年は60歳。定年後、65歳まで希望者全員を嘱託社員として継続雇用。以降、パートタイマーとして1年更新で継続雇用する制度がある。  兵庫県は、北は日本海、南は瀬戸内海から淡路島を介して太平洋へ続き、大都市から農山村、離島まで、さまざまな地域で構成されています。観光では、日本で初めて世界遺産に登録された姫路城を筆頭に、日本書紀にも記されている有馬温泉のほか、城崎(きのさき)温泉などの複数の温泉地、多くのファンを持つ宝塚大劇場、世界最大級の吊り橋である明石海峡大橋、港町・神戸などで知られています。  産業は、県南部の阪神工業地帯、播磨臨海工業地帯における鉄鋼、造船、機械、化学工業などを根幹として発展してきた一方で、清酒、手延素麺、皮革、かばん、線香など郷土の歴史と伝統につちかわれた地場産業も盛んです。  当機構の兵庫支部高齢・障害者業務課の西島(にしじま)史剛(ふみたか課長は、「兵庫県は地域ごとに雇用環境も異なり、当支部への相談内容も多岐にわたります。郡部では若年者の人手不足が顕著で、高齢者が長く働ける労働環境づくりなどについて、また、製造業が多い神戸から尼崎地区では、技術伝承などの質問が寄せられています」と話します。  企業からの相談内容としては、高齢者の加齢にともなう体力・気力、健康などの変化への対応をはじめ、改正高年齢者雇用安定法への対応などが多く寄せられています。  今回は、同支部で活躍するプランナーのひとり、清水和也(かずや)さんの案内で、「株式会社イスズベーカリー」を訪れました。  清水プランナーは、中小企業診断士の資格を持ち、プランナー活動では、当機構の提供する就業意識向上研修について、事業所から毎年要請を受けて講師を務めているほか、2018(平成30)年と2021(令和3)年の「生涯現役社会ワークショップひょうご」の講演の講師としても活躍するなど、兵庫支部の事業を精力的に支えています。 創業76年、愛されるパンをつくり続ける  イスズベーカリーは、神戸市で1946(昭和21)年に創業しました。以来、「暮らしのなかで、永く愛されるパンを食卓にお届けしたい」の信念のもと、厳選した材料で手づくりにこだわり、小麦粉本来のうまさを引き出した山型の食パン「ハード山食」などの独自のパンを生み出しています。創業から76年、神戸市中心街に構える4店の直営店には、毎日150種類ほどのパンが並び、それらを求めて訪れる多くの人たちでいつもにぎわっています。  同社の定年は60歳で、65歳までは希望者全員を嘱託社員として再雇用しています。再雇用後もフルタイム勤務を基本とし、定年前と同じ業務を担当しますが、役職からは降り、業務に集中したり、後進の育成をサポートするなどの役割をになっています。昇給はしないものの賞与があり、大きな差はありませんが、働きぶりを賞与に反映する仕組みとなっています。  65歳以降は、希望者全員をパートタイマーとして1年ごとの契約で雇用しています。勤務時間など個々の事情に応じた柔軟な働き方が可能で、何歳まででも働ける環境があります。現在の最高齢は75歳。総務部門で同社の経営を支えています。  60歳以上の社員は全体の約1割です。最近は新卒採用を中心に若手の採用が増えており、社員の平均年齢は30歳となっています。  ベーカリーの仕事は朝が早く、製造は午前2時からスタートします。電車やバスは走っていない時間のため、職場近辺に住むか、バイクや自転車で通勤する社員が多いそうです。また、元日以外は営業しており、勤務形態は月ごとのシフト制で、休日はそのシフトにより異なります。3代目の井筒(いづつ)大輔(だいすけ)代表取締役社長は、「年齢にかかわらず、社員の健康と体調、モチベーションが大事になります。イスズベーカリーで働く意味をそれぞれが見い出し、やりがいを持って無理なく働ける環境づくりを考えています」と職場環境整備の重要性を話します。 年齢ではなく能力をみて適材適所の人材配置  清水プランナーは、2020年11月に同社を初めて訪問し、高齢者雇用の推進について、同社の経営上の効果が見込めるという観点から定年年齢の引上げなどをアドバイスしました。また、安全衛生面に関することや高齢者雇用にかかわる職場改善事例を紹介し、長く働くことのできる職場づくりの提案を行いました。  提案を受けた井筒社長は、定年年齢の引上げを今後の検討事項の一つにあげており、高齢社員の存在について次のように話します。  「パンの製造補助や包装は、年齢に関係なくできる仕事です。年齢ではなく能力をみて、適材適所の配置をすることが大事だと思います。高齢社員は総じてしんぼう強いといいますか、コツコツとがんばってくれていて、大きな力になっていますし、会社の事情もわかって仕事をしてくれます。会社としては、長く勤めてくれる社員はとてもありがたい存在です」  一方で、ベーカリーの仕事は立って行う作業が多く、大きく重量のある物を運んだり、スピードが求められる仕事も少なくないことから、社員の負担を軽減するための環境整備にも力を入れています。  「例えば、生地をミキサーボールで練ると弾力が出ます。別の容器に移すのがたいへんなのですが、工場では機械の力で移すことができます。また、持ち上げる作業は昇降機を導入することで、だれでも作業できるようになりました。今後も改善を追求し、高齢者や女性にとっても働きやすい環境を考えていきたいです」(井筒社長)  そうした改善について清水プランナーは、「今後も相談に応じて力になりたい」と話します。  今回は、「自社の商品に愛情を持ち、精力的に働いてくれている」と井筒社長が誇る60代のお2人にお話を聞きました。 期待される言葉がやる気に変わる  井上正文(まさふみ)さん(62歳)は、50歳で入社して勤続12年目。営業2課に所属して、焼き立てパンの配送、材料の準備と運搬、そして、引き合いに応じて行う営業、主にこれら三つの業務を担当しています。朝7時から夕方まで、週5日、定年を迎えてからは嘱託社員として働いています。  井上さんは、30代まで商社に勤めていましたが、バブル崩壊時に早期退職し、50歳までは清掃業に就いていました。  「清掃業は日勤と夜勤があり、年齢とともにきつくなってきたため、日中の仕事を探して、当社の求人をみつけました」と井上さん。それまでとはまったく異なる仕事だけに不安もあったそうですが、「正社員として入社できると知り、思いきって飛び込みました。ありがたいことに、定年後も同じ仕事を続けていられますし、いま私は『救われたな』という気持ちです。『日本一のパンをつくるぞ』、『みんなで広めるぞ』という一体感を感じながら仕事ができています。定年後も仕事に対する気持ちは変わりません。不安だった業務にも慣れて、倉庫の仕事や営業も手がけて世界が広がっています」と語ります。また、「井筒社長から『65歳までは働いてほしい』、『体力と相談しながら70歳までも』といっていただき、これからも会社に貢献したいと思い、昨年から体力をつけるためにジム通いを始めました」と笑顔で話します。  井筒社長は、「いつもしっかり仕事をしてくれています。病院の売店に当社のパンを置いてもらえるようになるなど、営業にも積極的です」と井上さんの働きぶりに目を細めます。  山本洋子(ようこ)さん(60歳)は、57歳のときにパートタイム社員として入社しました。  「パンが好きで、以前もパン関係の仕事に就いていたことがあるんです。ここでの仕事は、包装と、包装後のパンに日付などのラベルを貼ること。パンの種類によって包装も変わり、機械で行うこともあれば、自分の手で行うこともあります」と山本さん。コロナ禍になってからは、袋詰めにする種類が増えたそうです。勤務は朝から夕方まで、週5日。平均して、1日1500個ほどのパンを扱っています。  仕事で大事にしていることをたずねると、「もっとも気を遣っているのは、衛生面です。お客さまの笑顔を想像し、安心して、おいしく食べていただけるように、ていねいな作業を心がけています」とにこやかに話す山本さん。「楽しく仕事ができていますし、雰囲気もよく働きやすい職場です。社長と直接お話をする機会もあり、『これからも働いてください』といっていただけることにやりがいを感じています」と明るい声で語ります。  最後に山本さんは採用時のエピソードを話してくれました。「最初に電話で年齢をいったところ『ぜひ面接にいらしてください』と声をかけていただきました。50代後半で採用してもらい『がんばろう』と思いましたし、『これからもよろしくお願いします』という気持ちです」。  井筒社長は、山本さんの人柄について「元気で、まわりを明るくしてくれる存在です」と話してくれました。 創業100年を目ざして  清水プランナーは、「お2人の話から、井筒社長がしっかりとコミュニケーションを取り、期待をしていると伝えていること、そのことがやる気を引き出していることが特に印象に残りました。社長が心の底から話されているから伝わるのだと思います。人を集め、一人ひとりの人材を大切にする企業文化を育まれています。たいへん素晴らしいと思います」と同社を評価しています。  井筒社長は現在42歳。「私より年上の社員、勤務年数の長い社員もいます。社長として指示・指導をすることもあれば、私が教えてもらうこともあり、よい関係で仕事ができていると思います。私も現場で仕事をしているので、いまも現場の意見を聞くことを大事にしています。また今後の第一の目標は、創業100年を目ざすこと。無理なく成長する会社にしていきたいと思っています。高齢者雇用にはフレキシブルに対応し、年齢ではなく、やる気、能力、体調、健康を重視して雇用を継続していきます」と語ってくれました。  今年9月には新社屋が完成予定とのこと。新しく、働きやすい職場で、これからも人々を笑顔にするパンづくりを続けていく同社です。 (取材・増山美智子) 清水和也 プランナー(51歳) アドバイザー・プランナー歴:10年 [清水プランナーから] 「プランナー活動では、できるかぎり訪問先企業の課題解決に対応していくことを心がけています。経営状況から高齢者雇用状況などの情報をお話しいただくこと、多くの情報のなかから役立つ情報提供や、幅広い視点を持ってアドバイス・提案を行うようにしています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆兵庫支部高齢・障害者業務課の西島課長は、「清水プランナーは、中小企業診断士の資格を有し、多様な事業所への豊富な支援の経験を背景に、経営的な視点から高齢者の活用などについて各事業所に応じた相談・助言を行い、事業主から高い評価をいただいています」と話します。 ◆兵庫支部高齢・障害者業務課は、阪急電鉄武庫之荘(むこのそう)駅からバスで約10分、尼崎市北西部に立地する兵庫職業能力開発促進センター内にあります。 ◆同県では、15人の65歳超雇用推進プランナーと1人の高年齢者雇用アドバイザーが活動し(2022年5月現在)、2021年度は1042件の相談・援助を行いました。その場かぎりの相談ではなく、その後もつながりを持てるような信頼関係を構築する取組みに努めています。そして、事業主に寄り添い、ともに考え、悩み、歩く姿勢を大切にしています。事業主の方々からは、「また〇〇プランナーに来てほしい」といった声も寄せられています。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 兵庫支部高齢・障害者業務課 住所:兵庫県尼崎市武庫豊町3 -1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 電話:06(6431)8201 写真のキャプション 兵庫県神戸市 JR元町駅近くの「イスズベーカリー元町店」 井筒大輔代表取締役社長 パンの配送準備をする井上正文さん 包装されたパンにラベルを貼る山本洋子さん 【P36-39】 新連載 制度、仕組みづくり 生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント 株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント 森中謙介  「生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント」と題して、シニア人材が活躍し続けるために必要な制度や仕組みづくりのポイントについて解説する連載をスタートします。第1回は、「高齢社員の活躍とはどういう状態をさすのか? そのイメージを具体化する」というところから始め、徐々に自社に合った制度や仕組みづくりを考える視点やノウハウを展開していきます。 第1回 高齢社員に期待する活躍のイメージを具体化しよう! 1 企業の高齢社員活躍はあまり進んでいない  高年齢者雇用安定法の改正(2021年4月1日施行)以後、高齢社員の活躍に向けて企業の関心が高まっています。「定年延長」の議論も引き続き盛んであり、定年延長に合わせて人事制度の大幅な見直しを行う企業もあるようです。  しかしながら、スムーズに取組みが進んでいる企業は必ずしも多くありません。筆者の感覚では、「高齢社員の活躍を促進すべきだとは思うが、具体的に何から取り組んだらよいかわからない」という状態の企業が大半であり、経営トップの肝入りでスタートしたプロジェクトが早々に頓挫したり、あるいは無用に長期化している傾向があります。  なぜそうなっているのか、その原因は「現状分析ができていないこと」、「高齢社員の活用方針が明確になっていないこと」の二つに分かれます。それぞれの内容について、具体的に見ていくことにしましょう。 2 現状分析から始める  まず、現状分析から解説します。ここでいう現状分析とは、「高齢社員の活躍を推進するうえでの目標と課題を整理すること」と理解してください。  そもそも、多くの企業で「高齢社員の活躍」という言葉が独り歩きしており、  「ゴールはどこなのか(=高齢社員の活躍が成功した状態の定義と具体的な目標設定)」  「ゴールに対して、自社の現状をどう評価すべきなのか(=課題設定)」  という、前提となるべきあたり前の議論がほとんどなされていないことが大きな問題としてあげられます。  「高齢社員の活躍」という切り口は総論では非常に賛成しやすいものの、「具体的にどうする?」という各論に入った際、取組みの範囲が広く、方向性が漠然としやすい性質を含んでいるといえます。この点、周囲に参考にできる情報が豊富にあればよいのですが、各社ともまだ取組みを開始した段階であることから、実際にはマイルストーンにできるものがほとんどありません。このように手探りで行う必要のあるテーマであることから、とにもかくにも、まずは自社の実態調査からスタートすべきであると筆者は考えます。  具体的な進め方として、三つの分析手法をご紹介します。これにより、「高齢社員を取り巻く自社の課題」を総合的かつ多面的に整理することができるようになりますし、少なくとも「何からやればよいのかわからない」という状態は脱することができるでしょう※。 @人員分析  人員分析とは、将来的に高齢社員の人員ボリュームがどう変化するか、そのことにより組織でどんな問題が起こる可能性があるのかを推察するなかで、高齢社員の活躍に向けた課題抽出を行う方法です。例えば、一般的な企業の人員構成として、@30代半ばから後半の層が少なく、A40代半ばから50代前半の層が多い、という類型があげられます。筆者はこの類型を「中抜け型組織」と定義しています。そのほかに、中間層が多い「中太り型」、文字通り高齢化の進度が早い「高齢化型」という類型もあります(図表1)。  中抜け型組織の特徴について、ベテラン層が厚く安定的な組織構成が行われやすいという見方もできますが、将来的に大量のシニア層を抱えるリスクがあるととらえる視点も重要です。例えば、中抜け型組織で高齢社員の活躍を促進する際、高齢社員に求める役割を「現役の継続」とするか、逆に現役は退いてもらい、「権限移譲、後進育成の強化」をになってもらうことにするかによって、取組みのスタンスが大きく変わることがあります。  前者の場合、幹部候補となる中間層の成長が間に合わない可能性が高ければ、高齢社員に「プレイヤー」として隙間期間を埋めてもらうことへの期待は高く、現役期間を続行してもらうために定年延長を行う方針が優先順位として高くなるケースもあります。 A賃金・人件費分析  賃金・人件費分析とは、組織の高年齢化にともなう総額人件費の上昇を抑制しつつ、高齢社員の個別賃金の最適化を図ることを目的として、外部の統計データと社内の実態を照らし合わせて課題抽出を行う方法です。  まず、総額人件費の分析については前述の人員分析と同時に行います。具体的には、5年、10年といった中長期の人員予測に合わせて、一定の条件下(入退社予測、昇進昇格予測、昇給予測など)における総額人件費のシミュレーションを行います。  次に、高齢社員の個別賃金については、「対外的な競争力と社内的な公平感」の2軸から検証を行います。多くの企業において採用されている「定年再雇用制度」では、再雇用後の賃金は定年前より大幅に下がることが一般的ですが、再雇用者の担当業務は定年前と同一であるケースが多く、モチベーションダウンにつながっています。  この点、例えば前述の人員分析で紹介した「中抜け型組織」における高齢社員活用方針との関係でいえば、高齢社員に現役を続行してもらうために賃金アップを行い、同業他社水準よりも魅力的な制度設計を行うことが重要な検討課題の一つとなります。 B職場環境分析  組織における高齢社員の現状についてダイレクトに調査・分析をしていく手法が職場環境分析であり、ソフト面とハード面に分けて実施していきます。  まず、仕事自体に対する高齢社員の満足度を調査する方法がソフト面の分析です。具体的には、仕事のやりがいや職場の人間関係といった、「日々の業務におけるモチベーション」に直接的にかかわる項目について調査を行います。  次に、社内制度や就労環境などに対する満足度を調査する方法がハード面の分析になります。賃金・評価制度に対する不満はないか、オフィスなど職務環境に対する不満はないか、能力開発・キャリアアップなどの仕組みは十分か、といった内容について調査を行います。  具体的な調査の進め方としては、高齢社員および高齢社員をマネジメントする管理職者に対して、アンケート調査(記名または匿名)および個別面談による聞き取りを中心に実施していく方法が最適です。 3 高齢社員の活用方針を明確化する  ここまで、現状分析の三つの手法について紹介をしてきました。それぞれの分析をどの程度実施するかは各社ごとの状況によって異なりますが、相互に関係しあっているため、必ず三つ同時に実施していただくことを推奨します。  現状分析を行うことにより、「高齢社員の活躍」を推進していくために何が重要か、何が障害になるのか、といった課題がある程度具体的に言語化できるようになります。また、「時間軸」で課題をとらえられるようになる点も現状分析を行うことの大きなメリットです。ここでいう時間軸とは、短期(1〜3年程度の期間)と中長期(5〜10年スパンの期間)の両軸で組織の高齢化の問題をとらえる視点と理解してください。  高齢社員の活躍に向けた取組み方針が曖昧になりがちな原因の一つとして、当該問題を時間軸でとらえられていないことがあると、筆者は考えます。前述の人員分析のテーマとも絡みますが、高齢化の進度は各社ごとに異なり、いままさに問題になっている企業もあれば、問題が顕在化するまでに時間がかかる企業もあります。高齢社員対策のフェーズを時間軸で区切ることで、より地に足のついた議論ができるようになります。  さて、現状分析の後は、いよいよ高齢社員の活用方針を検討していく段階に移りますが、その前に自社の全般的な経営環境について予測をしておくようにしてください。具体的には、市場の将来環境をどのように評価できるか(短期〜中長期視点で)、そのなかで(経営戦略として)自社はどのようなポジションを築いていくのかについて、言語化を行います。そのうえで高齢社員の活用方針について検討することで、議論に深みが増し、目標とする姿をより具体的にイメージすることが可能になります。  例えば、ある企業の現状分析の結果として、「高齢社員が急激に増加してきているなかで、高齢社員のやる気は高いのに、環境整備が追いついていないために生産性が低い状態である」という結論が導かれたとします。  これに対して、「市場全体としては縮小傾向にあるなか、高齢社員の能力・スキルが早期に陳腐化していくおそれがあり、再教育には莫大な費用がかかる」という予測が、高い精度でなされたとします。このような場合、「高齢社員活用を積極的に推進し、現役を続行してもらうことが可能なのか」ということは慎重に議論すべきですし、高齢社員に期待する役割を「現役の続行」ととらえるのではなく、「経験を活かした異なる貢献」ととらえる方が現実的(処遇もそこに合わせていく)なケースもありえるでしょう。  改めて、高齢社員の活用方針を類型化すると、おおむね三つに分かれると筆者は考えます(図表2)。これは各企業がとりうる高齢社員活用のスタンスといい換えてもよいでしょうが、スタンスが明確に定まっていれば、各種の制度や仕組みを構築していく際もスムーズに展開していくことが可能です。  もっとも、どの類型が良い悪いということではなく、各社の実態にマッチしていることが重要です。時間軸の視点も大切であり、例えば短期的には高齢社員の活躍できるフィールドを限定的にとらえたとしても、中長期的には生涯現役を実現するための取組みを計画的に行っていく必要がある、という2段階スタンスをとることも企業によっては現実的な選択肢になりえます。 4 高齢社員に期待する役割を伝達するポイント  最後に、高齢社員の活用方針から、高齢社員自身に期待する役割を伝達するポイントについて解説します。説明会などの場で会社の方針について伝えていくことは最低限必要ですが、それだけでは不十分です。これまでの仕事のやり方や考え方を転換していくことはだれしもむずかしいことですから、高齢社員に現役の続行を期待する場合も、まったく別の役割を期待していく場合も、直接対象者と面談を行って会社の意図を十分に伝えるようにしてください。場合によっては、研修のような形で高齢社員同士が期待される役割についてディスカッションし、理解・認識を深めることができればさらに効果的ですし、そうした取組みを行う企業も徐々に増えてきています。  次回は「評価・処遇制度」についてお伝えします。 ※ 現状分析の手法についてさらに詳しく知りたい方は、『エルダー』2021年2月号特集の解説「70歳までの雇用延長のポイント」、または拙著『人手不足を円満解決 現状分析から始めるシニア再雇用・定年延長』(第一法規)を参考にしてださい 図表1 企業における典型的な組織人員構成(主要3類型) 中抜け型 「中間層が少ない」 中太り型 「中間層が多い」 高齢化型 「高年齢者が多い」 ※ 新経営サービス人事戦略研究所作成 図表2 高齢社員の活用方針(主要3類型) 制度設計における主要検討論点 限定活用型 シニア社員に対しては限定的な仕事での雇用機会のみ提供し、法的な対応を最優先して活用する 柔軟活用型 正社員と変わらず高度な貢献内容を求める社員と、限定的な貢献のみを求める社員とで、メリハリをつけて活用する 生涯現役型 年齢に関係なく、積極的にシニア社員を活用する 雇用形態 基本的に再雇用(契約社員か嘱託社員等)する 引き続き正社員で雇用する 等級 等級制度(役職制度)の設計をどのようにするか 再雇用後は、等級制度を設けない(個別対応) 再雇用後のコースまたは役割等級制度を設ける 65歳、70歳まで運用できる等級制度を設計する 評価 評価制度の設計をどのようにするか? 再雇用後は、評価をしない 再雇用後のコースに応じた評価表を作成する(目標管理中心) 正社員と同様の評価を行う 賃金 給与テーブルの設計をどうするか? 個別に設定するまたは、定年時の給与基準に一定額を減額して設定(昇給なし) 再雇用後の給与テーブルを設計する 生涯賃金を考慮した賃金カーブを描ける給与テーブルを設計する 賞与の支給をどうするか? 再雇用後は、賞与を支給しないまたは寸志程度の支給 再雇用後の賞与制度を設計する 正社員と同じ賞与制度を適用する 活用 新陳代謝をどう考えるか? 貢献度の低い社員に対して新陳代謝を促す(早期退職制度) 個別ニーズ(身体的衰え等)に対応するため多様な働き方を支援する(選択定年制) 本人の志向や能力をふまえて、今後の新陳代謝や職務転換を含めた働き方についての意識教育を行う(キャリア教育等) 職務転換をどう考えるか? 職務転換を視野に入れて活用する(限定的な仕事の創出を図るとともに計画的な職能教育を行う) 担当の専門領域において活用する(これまでの能力や知見が陳腐化しないように、継続的な教育環境を整備する) ※ 新経営サービス人事戦略研究所作成 【P40-43】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第51回 定年退職後の契約更新と合理的期待、退職勧奨とパワーハラスメント 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1  定年退職後の嘱託社員の契約を更新しない場合、どんな問題がありますか  定年退職後も嘱託社員として雇用を継続している従業員がいるのですが、年齢が70歳に近くなり、業務の負担も大きくなってきている様子です。このたび、契約更新前の業務中に、交通事故を起こしたにもかかわらず、会社への報告がなかったという事態も発覚しています。これらの状況をふまえて、更新をせずに、退職してもらおうと思っているのですが、問題があるでしょうか。 A  定年退職後の契約更新についても、労働契約法第19条により雇止めに対する規制が適用されます。嘱託社員となっている労働者であっても、正社員と同視すべき事情があるか、もしくは、更新されることに対する合理的期待が生じている場合には、雇止めによる労働契約の終了が制限されることがあります。 1 定年後再雇用の法的な性質  改正高年齢者雇用安定法に基づき、使用者に70歳までの就業機会確保が努力義務とされたこともあり、多くの企業においては、定年後の労働者を嘱託社員として雇用するという形態が採用されています。  この嘱託社員という制度は、厳密には自社の就業規則次第でその内容は変わるものですが、一般的には、無期労働契約から有期労働契約に変更されるという制度として設計されています。  ところで、有期労働契約については、労働契約法第19条に基づき、雇止めの際には、一定の要件のもと保護されています。具体的には、@当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる場合や、A当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合には、正社員に対する解雇と同程度の要件(客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当であること)を充足しなければ、労働契約は終了せずに、従前と同一の労働条件のまま継続することになります。  では、嘱託社員も有期雇用労働者であるとすれば、労働契約法第19条により保護されることになるのでしょうか。60歳定年後の嘱託社員であれば、60歳から1年毎に労働契約を更新することになり、65歳になるまで雇用が継続されるとすれば、5回程度の更新があることになり、反復継続する更新はありそうです。また、65歳になるまでの間は、継続雇用しなければならないという意識から、更新の手続なども形骸化してしまいがちかもしれません。 2 裁判例の紹介  定年後の再雇用者について、労働契約法第19条を適用すべきか否かが問題となった裁判例を紹介します。  事案の概要は、タクシー運転手として勤務し、67歳での定年退職後は1年間の有期の嘱託雇用契約を結んで稼働し始め、その後、一度労働契約を更新していた労働者が、自転車との接触事故を起こしたことを、会社にただちに報告していなかったことなどを理由に、雇止めによる労働契約の終了を行ったところ、労働者がこれを無効と主張して争った事案です(東京地裁令和2年5月22日判決)。  会社は、たとえ乗務員1人の事故であったとしても、会社全体において行政処分を受けるおそれがある行為であり、会社においては、事故の不申告事案を撲滅するための指導教育を行い、違反者には厳重な処分を行う必要があるといった点を主張しており、雇止めを行うことには客観的かつ合理的な理由と、社会通念上の相当性も充足していたことを強調しています。  裁判所の判断は、「タクシー運転手が定年である67歳に達した後も、嘱託雇用契約を締結して雇用を継続してきたこと、被告のタクシー運転手のうち、70歳以上の運転手は16パーセントに上ること、…(中略)、定年退職後の嘱託雇用契約についても契約書や同意書等の書面の作成がないまま、嘱託雇用契約を一度更新したことが認められ、これらの事実に照らすと、69歳に達した原告においても、体調や運転技術に問題が生じない限り、嘱託雇用契約が更新され、定年前と同様の勤務を行うタクシー運転手としての雇用が継続すると期待することについて、合理的な理由が認められるというべき」として、定年退職後の嘱託社員についても、労働契約法第19条の適用を認めています。  そして、雇止めの相当性について、「本件接触は、左後方の不確認という比較的単純なミスによるもので、接触した自転車の運転者は、ドライブレコーダーの記録から受け取れる限り、倒れた様子は見受けられず、接触後すぐに立ち去っていることから、本件接触及び本件不申告は、悪質性の高いものとまではいえない」ことや、「警察においても、本件接触や本件不申告を道交法違反と扱って点数加算していないことも踏まえれば、本件接触及び本件不申告は、警察からも重大なものとは把握されていないこと」などを評価したうえで、労働者自身が、自ら本件接触を報告し、本件接触を隠蔽しようとはしていないこと、接触の原因や不申告の重大さなどについて注意、指導を受けた内容を記憶し、反省している様子であることなどを総合的に考慮して、雇止めが重過ぎる処分であるとして、雇止めを無効と判断しました。  注目しておいてもらいたいのは、嘱託社員であったとしても、雇止めに対して労働契約法第19条による保護が適用されることがあるという点です。紹介した裁判例では、更新回数はまだ1回だけであったにもかかわらず、更新に対する合理的期待があったと判断されている点も特徴的です。  期待を生じさせた背景事情として、70歳以上の労働者が16%もいたことも特徴ですが、さまざまな会社で共通すると思われる事情としては、定年退職後の嘱託雇用契約について契約書の作成がなされていないことに着目しておいてもらいたいところです。  労働契約法第19条の適用の前提として、契約書の作成がなされていなかったり、作成されていたとしても形式的に作成したにすぎず内容に関する説明や更新にあたっての面談または説明などが行われていない場合には、有期労働契約が期間満了により当然に終了するとはいえないことが多いでしょう。そのことは、嘱託社員の場合であっても変わりはありませんので、定年後の有期雇用の取扱いについて、更新手続きや更新するにあたっての考慮要素などが形骸化していないか、いま一度確認しておくことも重要と思われます。 Q2 退職勧奨を行う際の注意点について教えてほしい  業務において不適切な言動を顧客に対して行うなど、業務態度が不良な従業員に対して、退職をうながしたいと考えています。退職勧奨を行う際の注意点を教えてください。また、退職勧奨とパワーハラスメントの関係についても教えてください。 A  退職勧奨については、労働者の自由な意思により決定させる必要があるため、それを阻害するような場合には、違法となり、賠償責任を負うことがあります。また、退職勧奨における理由を述べる際の発言によっては、パワーハラスメントとして違法となる場合もあります。 1 退職勧奨について  勤務成績が不良である場合や、懲戒事由の改善傾向が見受けられない場合などには、普通解雇や懲戒解雇といった一方的な処分を行う以外に、退職勧奨により、労使間の合意形成により退職という結論を目ざす方法があります。  法的にいえば、労働契約の合意解約に向けた協議ということができることから、退職勧奨を行うにあたっては、懲戒事由などの理由は必ずしも必要ではありません。とはいえ、退職勧奨を行うこと自体が、労使間のコミュニケーションによって行われることが当然の前提であることから、使用者から退職を打ち出すにあたっては、何らかの理由がなければ、納得してもらうことはできませんので、退職をうながす理由を準備されていることが通常でしょう。  ここでのポイントは、退職勧奨の開始には、理由の限定がないという点であり、その結果、使用者から、早期退職をうながすために退職金の上乗せなどの好条件と合わせて提示する場合もあれば、懲戒事由に相当するような理由をふまえて退職を迫るといった場面など、使用者がいかなる振る舞いをするかについても幅広いものがあるということです。 2 退職勧奨の限界について  退職勧奨自体が、労働契約の合意解約に向けた協議ということから、その理由は制限されていませんが、その方法が不適切な場合には、退職勧奨行為自体が違法と評価される場合があります。  最高裁昭和55年7月10日判決(下関商業高校事件)において是認された内容は、まず退職勧奨のための出社命令に関しては、「退職勧奨のために出頭を命ずるなどの職務命令を発することは許されないのであつて、仮にそのような職務命令がなされても、被用者においてこれに従う義務がない」とされており、これを拒絶したことをもって不利益な取扱いもできないといえます。また、「職務命令は、それがたとえ違法であつたとしても、被用者としてはこれを拒否することは事実上困難であり、特にこのような職務命令が繰り返しなされる時には、被用者に不当な圧迫を加えるおそれがあることを考慮すると、かかる職務命令を発すること自体、職務関係を利用した不当な退職勧奨として違法性を帯びるものと言うべき」とされています。ここでのポイントは、くり返しなされるときという限定がなされていることであり、退職勧奨を開始するための呼び出し自体が違法になるわけではありません。  ただし、「被勧奨者が退職しない旨言明した場合であつても、その後の勧奨がすべて違法となるものではない」としつつも、「特に被勧奨者が二義を許さぬ程にはつきりと退職する意思のないことを表明した場合には、新たな退職条件を呈示するなどの特段の事情でもない限り、一旦勧奨を中断して時期をあらためるべき」とされており、明確な拒絶の意思表示があった場合には、退職条件の再提示などをともなう内容とする必要があります。  なお、違法と評価するにあたっては、「勧奨の回数および期間についての限界は、退職を求める事情等の説明および優遇措置等の退職条件の交渉などの経過によつて千差万別であり、一概には言い難いけれども、要するに右の説明や交渉に通常必要な限度に留められるべき」とされており、回数や期間にも注意が必要です。  この判例の事案では、約2カ月の間に11回から13回程度かつ、長いときには2時間15分におよぶ退職勧奨が行われていたというものであり、多数回かつ長期にわたっていたことから、「あまりにも執拗になされた感はまぬがれず、許容される限界を越えているものというべき」と判断されています。 3 退職勧奨とパワーハラスメントについて  紹介した判例においては、退職勧奨において告げられるべき内容に関しても「被勧奨者の家庭の状況等私事にわたることが多く、被勧奨者の名誉感情を害することのないよう十分な配慮がなされるべきであり、被勧奨者に精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げるような言動が許されないことは言うまでもない」ともされています。近年では、退職勧奨の場で行われる発言がパワーハラスメントとして違法と評価されるケースがあります。  退職勧奨の場において行われやすいパワーハラスメントの類型として、精神的攻撃および過小な要求(能力に見合わない業務しかさせないようにするなど)があります。宇都宮地裁令和2年10月21日判決では、退職勧奨中の発言や退職勧奨継続中の業務命令について、この2類型に該当するか問題となりました。  退職勧奨中に行った侮蔑的発言(「チンピラ」、「雑魚」など)について、人格非難に該当するパワーハラスメントであるかが争点となった部分については、乗客に「殺すぞ」などの暴言を吐き、そのまま乗客を威圧する態度を維持したことや不正乗車の有無を具体的に確認することなく顧客に疑いをかけたことなど、指導の必要性が高く、叱責などにおける発言に厳しいものがあったとしても、業務上の指導を超えたことにはならないと判断されています。懲戒に相当するような事由のなかでも指導の必要性が高いと判断されたことがこの判断の背景にはあるため、同様の発言が許容されるとは考えない方がよいでしょう。そのほか、本来の業務とは異なる文書作成のみを指示し、それ以外の業務を命令しなかったことは、過小な要求に該当すると判断され、違法なパワーハラスメントがあったと評価され、使用者は損害賠償責任を負担するものとされました。  この退職勧奨およびパワーハラスメントによる損害賠償責任は、60万円の支払いを命じられていますが、被害を受けた労働者に精神障害などが発症したか、その治療にどの程度の期間や費用を要するかによってもその総額は大きく左右されますので、金額の多寡ではなく、退職勧奨を実施するにあたって留意すべき点をふまえて、労使間の協議に臨むようにすべきでしょう。 【P44-45】 病気とともに働く 第5回 サッポロビール株式会社 両立支援の経験者で社内コミュニティを組織 当事者の視点を両立支援ガイドブックに大きく反映  加齢により疾病リスクが高まる一方、近年の診断技術や治療方法の進歩により、かつては「不治の病」とされていた疾病が「長くつき合う病気」に変化しつつあり、治療をしながら働ける環境の整備も進んでいます。本連載では、治療と仕事の両立を支える企業の両立支援の取組みと支援を受けた本人の経験談を紹介します。  サッポロビール株式会社の始まりは、1876(明治9)年に札幌で開業した「開拓使麦酒醸造所」にまで遡(さかのぼ)る。以来、創業時の「開拓者精神」のままにさまざまな事業への進出を行う一方、近年は働き方改革や健康経営など、社員の健康と安全を守る取組みにも力を入れてきた。  なかでも独自に作成した「治療と就労の両立支援ガイドブック」は、主にがんなどの病気の診断を受けた社員とその上司に向け、同社の支援制度や留意点をまとめたもので、「がんアライ部」※1が2021(令和3)年に発表したガイドブックのモデルとなる一方、2022年には、がん当事者の集まりであるキャンスターズ※2の意見を反映して改訂版を作成。より使いやすいものへとバージョンアップしている。  そこで、このハンドブックの作成を推進してきた人事部健康管理センターの保健師・吾妻(あがつま)美佳みか)さんと、ご自身もキャンスターズのメンバーである人事部の村本(むらもと)高史(たかし)さんに、同社の両立支援策についてお話をうかがった。 制度紹介だけでなく「気持ちに寄り添う」ガイドブック  同社が両立支援ガイドブックの作成に着手したのは2017(平成29)年。健康保険組合のデータを調査したところ、がんの検査・治療をしている人が予想以上に多いことが判明したことがきっかけだ。そこで、まずはできるところから対応しようと吾妻さんが提案したのがこのガイドブックだった。  「それまでにも、スーパーフレックスタイム制や年次有給休暇の積立制度などを導入していたのですが、いざ病気になったときにどういう支援策があるのか、どう行動すればよいのかについての情報は整理されていませんでした。また、病気になって不安なときに自分に合った制度を探すのはとてもハードルが高いと考えました」と吾妻さん。そこで、支援の必要が出たときにどのようにすればよいかをまとめたガイドブックをつくろうと動き始めたのだ。  他社のガイドブックなども参考にしながら、同じ人事部でがんサバイバーでもある村本さんにも相談し、たたき台をみせると「まずは気遣いの言葉から入った方がよいのではないか」、「会社を休むことだけを前提にせず、治療しながら仕事を続けるときのことも紹介したほうがよい」などのアドバイスがあった。  「最初は制度情報をまとめようという観点でつくったので、堅苦しくなっていました」と吾妻さんはふり返る。  その後社外で「がんアライ部」が発足したのを契機に、同社も「がんアライ宣言」を行い、これに応募する。関連する制度や社内体制、がんに罹患した社員のエピソードなどを応募書類に記載したところ、「がんアライアワード」のゴールドを受賞、以来4年連続で同賞を受賞するなど、同活動に積極的にかかわっている。 2022年にガイドブックを改訂同僚編で「一言かけることの重要性」を訴える  同社独自のガイドブックができてから5年を経た2021年には、がんアライ部に参加する各社のガイドブックのよいところを持ち寄って、モデルとなる両立支援ガイドブックが完成した。このガイドブックはホームページからダウンロードすることにより、各社の実情に合わせてカスタマイズできるという便利なものだ。  「そして、今度は逆にこのモデルガイドブックからよいところをいただいて、内容を改訂したのが2022年です」と村本さん。  改訂版の特徴は本人編、上司編、同僚編の三つで構成されている点と、がん経験者の思いをより大切にしている点にある。  「ガイドブックにとどまらず、当社の特徴として、当事者との対話を重視するという社風があります。その現れの一つが三年前に発足したがん経験者の社内コミュニティ『キャンスターズ』です。今回の改訂にあたってもメンバーの視点をできるかぎり反映しました」と村本さん。  また、「同僚ががんになったときにどう声をかけてよいかわからない」、といった声に応える形で、同僚編では「もし罹患者が出たときにどう言葉をかけたらよいのか?」という課題について、キャンスターズの経験から「こういう声をかけてもらったら嬉しかった」という参考例を掲載し、「温かい言葉をかけることの重要性」を訴えている。 他人ごとではなく当事者として情報発信を続ける  両立支援を軌道に乗せるには、「いまできることを一つひとつ重ねる」ことが大切だと村本さんは語る。同社でも、まず最初にガイドブックに着手し、その後当事者の意見を取り入れた制度を整備し、経験者の社内コミュニティをつくるなど、できることを一つひとつ積み重ねた結果がいまに至っているのだ。  「会社によって事情は異なると思いますが、『ウチではできない』と思っても何かしらできることはあるはずです。そこから積み重ねていけば、どんな会社でも両立支援はできると思います」と村本さんは強調する。  また、支援といっても「所詮(しょせん)他人(たにん)ごと」と思われていては社内全体で取り組んでいくことはできない。そのためにも村本さんは「私の場合、命と引き換えに声帯を取り、現在は食道発声法※3で会話をしていますが、この声や身体とは今後一生つき合っていくことになります。そういうなかで闘病体験やそこから感じた人生の意味合いといったものを語ることで、少しでも両立支援を自分ごとと感じていただけるお手伝いができればと思います」と、強く決意している。 ※1 がんアライ部……がんと就労問題に取り組む民間プロジェクト ※2 Can Stars(キャンスターズ)……がん経験者とその家族・遺族で構成されたサッポロビール株式会社の社内コミュニティ ※3 食道発声法……声帯の代わりに食道を震わせて声にする発声法 写真のキャプション 2021年から取り組んでいるCan Starsカフェ。昼休みの気楽な時間にキャンスターズメンバーの体験談を聞くことができる 【P46-47】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第27回 「社外取締役」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、社外取締役について取り上げます。この用語自体は、本連載の第16回(2021〈令和3〉年9月号)※1で触れていますが、本稿でより深く解説していきたいと思います。 社外取締役は自社にとって利害関係のない役員  社外取締役は、読んで字の通りで社外から選任した取締役のことをさします。この「社外」が何をさすかについては、会社法※2第二条で定められています。就任の10年前から現在まで当該株式会社または子会社の業務執行取締役等でないこと、親会社等の取締役等や使用人ではないこと、兄弟会社の業務執行取締役等ではないこと、当該会社の取締役等の配偶者または二親等以内の親族でないことなどです。加えて、証券取引所の定める独立性基準を満たす社外取締役(一般株主と利益相反が生じる恐れのない者)は、独立社外取締役と呼ばれます。いきなりむずかしい用語が並びましたが、ここでは「社外」の要件は厳格で、当該会社とは可能なかぎり利害関係がない社外の人材から選任した取締役であることを押さえておけばよいと思います。  それでは、なぜ利害関係がない取締役の存在が必要なのでしょうか。日本においては、1990年代までの多くの企業では、会社の業務執行に関する決議を行う取締役会が社内から昇格してきた社員中心で占められており、企業経営における監視機能がなく、不祥事や経営者の誤った判断を招いた事例が多発したことが背景にあります。従業員時代の上司・部下の関係を維持したまま役員に登用されるため、社長が客観的には誤った判断や行為をしていたとしても、ほかの取締役は指摘しづらい一方で、そのような関係性がない取締役がいれば諌止(かんし)することが期待できるからです。 社外取締役の役割は監督と助言  経済産業省がまとめた「社外取締役の在り方に関する実務指針」(令和2年7月)にも「社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督である」と記載されています。その役割の中核として、経営陣(特に、社長・CEO※3)の評価や指名・再任・報酬の決定をあげており、必要な場合には社長・CEOの交代を主導するよう求めています。このため、取締役や社長の選任や役員報酬の金額は身内でお手盛りで決める≠ェ一般的でしたが、近年は取締役の選任や解任を審議し候補者を決定する指名委員会や、役員報酬のルールを決定し、役員個人別の報酬額および決定に至るプロセスの妥当性を検証する報酬委員会の議長や参加者を社外取締役がになうことが一般的になっています。  もう一つの重要な役割として、上場企業に対して適切な企業経営のための監視・統制の原則をまとめたコーポレートガバナンス・コードの原則4―7の「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと」があります。同一の社内しか経験がない人材のみで企業経営を行うと、従来からのしがらみや成功体験、価値観から逃れられず、経営環境の変化が加速化しているなかで事業や組織風土の変革が進まないという課題は現在では広く認知されています。そこで、いままでに自社にはない経験や知見をもった多様な人材を選任し、かつては煙たがられたともいわれている社外取締役の発言を積極的にうながしている企業は増えています。社外取締役の発言の場は取締役会や指名委員会等の公式な場が一般的ですが、非公式な議論の場を設け社内取締役と社外取締役の意見交換を増やしている会社も出てきています。 社外取締役はメジャー≠ネ存在  かつて社外取締役はマイナーな存在≠ナした。日本取締役協会が発表した「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」(2021年8月)によると、2004(平成16)年では東証一部上場企業のうち、社外取締役をまったく選任していない企業は69.75%でしたが、2021年には0.05%しかありません。また、同調査によると、取締役会のうち過半数を社外取締役が占める企業は10.3%、3分の1が68.7%に上っています。経年でみると、毎年社外取締役が占める割合が増えています。このことから社外取締役は少なくとも上場企業にとっては、いまやメジャーな存在≠ニいえます。  法律やコンプライアンスの面からも社外取締役の設置を企業側にうながしています。例えば、会社法では、2021年に上場企業等の一定の条件を満たす会社に社外取締役の設置を義務づけています。また、コーポレートガバナンス・コードでは、原則4―8「独立社外取締役の有効な活用」でプライム市場上場会社では少なくとも3分の1、そのほかの市場の上場会社では2名以上選任すべきと定められています。このような背景もあり、社外取締役の延べ人数は毎年かなりの伸びを示しています(図表)。  従来、日本の社外取締役は企業経営の監督という役割から、学者や弁護士が多いといわれていましたが、近年は社外取締役に企業の中長期的な成長に向けた助言を求める企業が増えていることから、他社の経営幹部や高度な事業の実績があるビジネス人材の需要が高まっています。このような要件に合う人材が無尽蔵にいるわけではないため、一人の元企業経営者が何社もの社外取締役を兼任するのは珍しくなく、今後、社外取締役人材の獲得競争が激しくなっていくことが想定されています。  次回は、「労働組合」について取り上げます。 ※1 当機構ホームページでご覧になれます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/202109.html ※2 会社法……会社の設立や運営について定めた法律。2006年施行 ※3 CEO……最高経営責任者 図表 社外取締役/独立社外取締役述べ人数(東証1部) 2021年 社外取締役405 独立社外取締役6,925 2020年 社外取締役448 独立社外取締役6,285 2019年 社外取締役432 独立社外取締役5,717 2018年 社外取締役463 独立社外取締役5,174 2017年 社外取締役476 独立社外取締役4,723 2016年 社外取締役477 独立社外取締役4,271 2015年 社外取締役618 独立社外取締役2,970 2014年 社外取締役702 独立社外取締役1,760 2013年 社外取締役688 独立社外取締役1,349 2012年 社外取締役681 独立社外取締役1,103 2011年 社外取締役657 独立社外取締役1,019 2010年 社外取締役568 独立社外取締役1,013 2009年 社外取締役509 独立社外取締役1,043 2008年 社外取締役1,515 2007年 社外取締役1,480 2006年 社外取締役1,296 2005年 社外取締役1,164 2004年 社外取締役918 2004年〜2006年 有価証券報告書に基づく2次データ、2007年以降 東証コーポレート・ガバナンス情報サービスを利用して作成。毎年8月1日に集計。 出典:日本取締役協会「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」2021年8月 【P48-53】 労務資料 令和3年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課  高年齢者雇用安定法では、高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現を目的に、企業に65歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけています。また、2021(令和3)年4月1日からは、70歳までを対象に、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」といった雇用による措置や、「業務委託契約の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じることが努力義務となりました。  厚生労働省より、こうした高年齢者の雇用等に関する措置の実施状況(2021年6月1日現在)が公表されましたので、その結果をご紹介します。集計対象は、常時雇用する労働者が21人以上の企業23万2059社です(編集部)。 集計結果の主なポイント T 65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の状況 @高年齢者雇用確保措置の実施状況  65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は23万1402社(99.7%) ・企業規模別には大企業では99.9%、中小企業では99.7% ・高年齢者雇用確保措置を「継続雇用制度の導入」により実施している企業は、全企業において71.9% A65歳定年企業の状況  65歳定年企業は4万8958社(21.1%) ・中小企業では21.7% ・大企業では13.7% U 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況  @70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況   70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は5万9377社(25.6%) ・中小企業では26.2% ・大企業では17.8% A66歳以上まで働ける制度のある企業の状況   66歳以上まで働ける制度のある企業は8万8933社(38.3%) ・中小企業では38.7% ・大企業では34.1% B70歳以上まで働ける制度のある企業の状況   70歳以上まで働ける制度のある企業は8万4982社(36.6%) ・中小企業では37.0% ・大企業では32.1% C定年制廃止企業の状況および66歳以上定年企業の状況  定年制の廃止企業は9190社(4.0%) ・中小企業では4.2% ・大企業では0.6% 1 高年齢者雇用確保措置の実施状況 (1)全体の状況  高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」)を実施済みの企業は、報告した企業全体で23万1402社(99.7%)であった。 (2)企業規模別の状況  企業規模別の雇用確保措置を実施済みの企業の割合は、大企業では99.9%、中小企業では99.7%(31人以上規模の企業では99.9%)であった。 (3)雇用確保措置を実施済みの企業の内訳  報告した全企業について、雇用確保措置の措置内容別に見ると、定年制度の見直し(左記@、A)よりも、継続雇用制度の導入(左記B)を行うことで雇用確保措置を講じている企業が多かった(図表1)。 @定年制の廃止は9190社(4.0%) A定年の引上げは5万5797社(24.1%) B継続雇用制度の導入は16万6415社(71.9%) (4)65歳以上の継続雇用制度のある企業の状況  65歳以上の「継続雇用制度の導入」を行うことで雇用確保措置を講じている企業(16万6415社)を対象に、継続雇用制度の内容を見ると、希望者全員を対象とする制度を導入している企業は13万4710社(80.9%)であった。  一方、高年齢者雇用安定法一部改正法の経過措置に基づく継続雇用制度の対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)の割合は、報告した全企業では19.1%であったが、大企業に限ると38.5%であった(図表2)。 2 65歳定年企業の状況  報告した全企業のうち、定年を65歳とする企業は4万8958社(21.1%)で、中小企業では21.7%、大企業では13.7%であった(図表3・4)。 3 70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況 (1)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況  報告した全企業において、70歳までの高年齢者就業確保措置(以下「就業確保措置」)を実施済みの企業は5万9377社(25.6%)で、中小企業では26.2%、大企業では17.8%であった(図表5)。 (2)70歳までの就業確保措置を実施済みの企業の内訳(図表6) @定年制の廃止は9190社(4.0%) A定年の引上げは4306社(1.9%) B継続雇用制度の導入は4万5802社(19.7%) C創業支援等措置の導入は79社(0.1%) 4 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (1)66歳以上まで働ける制度のある企業の状況  報告した全企業において、66歳以上まで働ける制度のある企業は8万8933社(38.3%)で、中小企業では38.7%、大企業では34.1%であった(図表7)。 (2)70歳以上まで働ける制度のある企業の状況  報告した全企業において、70歳以上まで働ける制度のある企業は8万4982社(36.6%)で、中小企業では37.0%、大企業では32.1%であった(図表8)。 (3)定年制の廃止および66歳以上定年企業の状況  報告した全企業において、定年制を廃止している企業は9190社(4.0%)、定年を66〜69歳とする企業は2533社(1.1%)、定年を70歳以上とする企業は4306社(1.9%)で、これを企業規模別に見ると、次のとおりであった(図表9)。 @中小企業 ・定年制を廃止している企業は4.2% ・定年を66〜69歳とする企業は1.2% ・定年を70歳以上とする企業は2.0% A大企業 ・定年制を廃止している企業は0.6% ・定年を66〜69歳とする企業は0.2% ・定年を70歳以上とする企業は0.5% 5 60歳定年到達者の動向 (1)60歳定年企業における定年到達者の動向  60歳定年企業において、過去1年間(令和2年6月1日から令和3年5月31日)に定年に到達した者は、36万9437人であった。このうち、継続雇用された者は86.8%(うち子会社・関連会社等での継続雇用者は3.1%)、継続雇用を希望しない定年退職者は13.0%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は0.2%であった。 (2)継続雇用の対象者を限定する基準に係る経過措置の適用状況  経過措置に基づく対象者を限定する基準がある企業において、過去1年間(令和2年6月1日から令和3年5月31日)に、基準を適用できる年齢(平成31年4月1日から令和4年3月31日までは63歳以上)に到達した者は、5万6959人であった。このうち、基準に該当し引き続き継続雇用された者は90.9%、継続雇用の更新を希望しなかった者は7.3%、継続雇用を希望したが基準に該当せずに継続雇用が終了した者は1.9%であった。 6 高年齢常用労働者の状況 (1)年齢階級別の常用労働者数について  報告した全企業における常用労働者数(約3380万人)のうち、60歳以上の常用労働者数は約447万人で13.2%を占めている。年齢階級別に見ると、60〜64歳が約239万人、65〜69歳が約126万人、70歳以上が約82万人であった(図表10)。 (2)高年齢労働者の推移  31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約421万人で、平成21年と比較すると、約205万人増加している(図表11)。 図表1 雇用確保措置の内訳 全企業 定年制の廃止4.0% 定年の引上げ24.1% 継続雇用制度の導入71.9% 301人以上 定年制の廃止0.6% 定年の引上げ14.4% 継続雇用制度の導入85.0% 31〜300人 定年制の廃止3.3% 定年の引上げ23.7% 継続雇用制度の導入73.0% 21〜30人 定年制の廃止6.7% 定年の引上げ28.1% 継続雇用制度の導入65.2% 図表2 継続雇用制度の内訳 全企業 希望者全員65歳以上の継続雇用制度80.9% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)19.1% 301人以上 希望者全員65歳以上の継続雇用制度61.5% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)38.5% 31〜300人 希望者全員65歳以上の継続雇用制度79.9% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)20.1% 21〜30人 希望者全員65歳以上の継続雇用制度91.8% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)8.2% 図表3 定年制の廃止および65歳以上定年企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A65歳以上定年 65歳 66〜69歳 70歳以上 合計(@+A) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,190 − 48,958 − 2,533 − 4,306 − 64,987 − 232,059 − 4.0% − 21.1% − 1.1% − 1.9% − 28.0% − 100.0% − 31人以上総計 5,352(4,468) 35,036(30,250) 1,744(1,565) 2,916(2,398) 45,048(38,681) 174,257(164,151) 3.1%(2.7%) 20.1%(18.4%) 1.0%(1.0%) 1.7%(1.5%) 25.9%(23.6%) 100.0%(100.0%) 21〜300人 9,080 − 46,633 − 2,500 − 4,222 − 62,435 − 215,092 − 4.2% − 21.7% − 1.2% − 2.0% − 29.0% − 100.0% − 21〜30人 3,838 − 13,922 − 789 − 1,390 − 19,939 − 57,802 − 6.6% − 24.1% − 1.4% − 2.4% − 34.5% − 100.0% − 31〜300人 5,242(4,370) 32,711(28,218) 1,711(1,532) 2,832(2,323) 42,496(36,443) 157,290(147,081) 3.3%(3.0%) 20.8%(19.2%) 1.1%(1.0%) 1.8%(1.6%) 27.0%(24.8%) 100.0%(100.0%) 301人以上 110(98) 2,325(2,032) 33(33) 84(75) 2,552(2,238) 16,967(17,070) 0.6%(0.6%) 13.7%(11.9%) 0.2%(0.2%) 0.5%(0.4%) 15.0%(13.1%) 100.0%(100.0%) ※( )内は、令和2年6月1日現在の数値。 図表4 65歳定年企業の状況 全企業 21.1% 301人以上 13.7% 31〜300人 20.8% 21〜30人 24.1% 図表5 70歳までの就業確保措置の実施状況 (社、%) @70歳までの就業確保措置実施済み A就業確保措置相当の措置実施 Bその他未実施 合計(@+A+B) 定年廃止 定年の引上げ 継続雇用制度の導入 創業支援等措置の導入 21人以上総計 59,377 − 9,190 − 4,306 − 45,802 − 79 − 3,936 − 168,746 − 232,059 − 25.6% − 4.0% − 1.9% − 19.7% − 0.1% − 1.7% − 72.7% − 100.0% − 31人以上総計 42,661 − 5,352 − 2,916 − 34,330 − 63 − 2,988 − 128,608 − 174,257 − 24.5% − 3.1% − 1.7% − 19.7% − 0.1% − 1.7% − 73.8% − 100.0% − 21〜300人 56,355 − 9,080 − 4,222 − 42,990 − 63 − 3,689 − 155,048 − 215,092 − 26.2% − 4.2% − 2.0% − 20.0% − 0.1% − 1.7% − 72.1% − 100.0% − 21〜30人 16,716 − 3,838 − 1,390 − 11,472 − 16 − 948 − 40,138 − 57,802 − 28.9% − 6.6% − 2.4% − 19.8% − 0.1% − 1.6% − 69.4% − 100.0% − 31〜300人 39,639 − 5,242 − 2,832 − 31,518 − 47 − 2,741 − 114,910 − 157,290 − 25.2% − 3.3% − 1.8% − 20.0% − 0.1% − 1.7% − 73.1% − 100.0% − 301人以上 3,022 − 110 − 84 − 2,812 − 16 − 247 − 13,698 − 16,967 − 17.8% − 0.6% − 0.5% − 16.6% − 0.1% − 1.5% − 80.7% − 100.0% − ※「@70歳までの就業確保措置実施済み」とは、法令の定めに基づいた適正な手続きを経て、定年制の廃止、定年の引上げ、継続雇用制度もしくは創業支援等措置の導入のいずれかの措置を講ずることにより、70歳までの就業機会の確保を実施している場合を指す。なお、「定年の引上げ」は70歳以上の定年の定めを設けている企業を、「継続雇用制度の導入」は定年年齢は70歳未満だが継続雇用制度の上限年齢を70歳以上としている企業を、「創業支援等措置の導入」は定年年齢及び継続雇用制度の年齢は70歳未満だが創業支援等措置の年齢を70歳以上としている企業を、それぞれ計上している。 ※「A就業確保措置相当の措置実施」とは、「@70歳までの就業確保措置実施済み」と同様の措置を70歳未満の年齢まで導入している場合を指す。 ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、本表の「21人以上総計」「31人以上総計」「21〜300人」「21〜30人」「31〜300人」の「創業支援等措置の導入」については、小数点第2位以下を切り上げとしている。 図表6 就業確保措置の内訳 全企業 定年制の廃止4.0% 定年の引上げ1.9% 継続雇用制度の導入19.7% 創業支援等措置の導入0.1% 301人以上 定年制の廃止0.6% 定年の引上げ0.5% 継続雇用制度の導入16.6% 創業支援等措置の導入0.1% 31〜300人 定年制の廃止3.3% 定年の引上げ1.8% 継続雇用制度の導入20.0% 創業支援等措置の導入0.1% 21〜30人 定年制の廃止6.6% 定年の引上げ2.4% 継続雇用制度の導入19.8% 創業支援等措置の導入0.1% 図表7 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A66歳以上定年 B希望者全員66歳以上継続雇用 C基準該当者66歳以上継続雇用 Dその他66歳以上まで働ける制度 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,190 − 6,839 − 21,512 − 25,698 − 25,694 − 37,541 − 63,239 − 88,933 − 232,059 − 4.0% − 2.9% − 9.3% − 11.1% − 11.1% − 16.2% − 27.3% − 38.3% − 100.0% − 31人以上総計 5,352(4,468) 4,660(3,963) 15,269(12,367) 20,309(17,891) 19,710(16,113) 25,281(20,798) 45,590(38,689) 65,300(54,802) 174,257(164,151) 3.1%(2.7%) 2.7%(2.4%) 8.8%(7.5%) 11.7%(10.9%) 11.3%(9.8%) 14.5%(12.7%) 26.2%(23.6%) 37.5%(33.4%) 100.0%(100.0%) 21〜300人 9,080 − 6,722 − 20,748 − 23,435 − 23,156 − 36,550 − 59,985 − 83,141 − 215,092 − 4.2% − 3.1% − 9.6% − 10.9% − 10.8% − 17.0% − 27.9% − 38.7% − 100.0% − 21〜30人 3,838 − 2,179 − 6,243 − 5,389 − 5,984 − 12,260 − 17,649 − 23,633 − 57,802 − 6.6% − 3.8% − 10.8% − 9.3% − 10.4% − 21.2% − 30.5% − 40.9% − 100.0% − 31〜300人 5,242(4,370) 4,543(3,855) 14,505(11,759) 18,046(16,053) 17,172(13,948) 24,290(19,984) 42,336(36,037) 59,508(49,985) 157,290(147,081) 3.3%(3.0%) 2.9%(2.6%) 9.2%(8.0%) 11.5%(10.9%) 10.9%(9.5%) 15.4%(13.6%) 26.9%(24.5%) 37.8%(34.0%) 100.0%(100.0%) 301人以上 110(98) 117(108) 764(608) 2,263(1,838) 2,538(2,165) 991(814) 3,254(2,652) 5,792(4,817) 16,967(17,070) 0.6%(0.6%) 0.7%(0.6%) 4.5%(3.6%) 13.3%(10.8%) 15.0%(12.7%) 5.8%(4.8%) 19.2%(15.5%) 34.1%(28.2%) 100.0%(100.0%) ※( )内は、令和2年6月1日現在の数値。 ※66歳以上定年制度と66歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A66歳以上定年」のみに計上している。 ※「Dその他66歳以上まで働ける制度」とは、業務委託等その他企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す。 図表8 70歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A70歳以上定年 B希望者全員70歳以上継続雇用 C基準該当者70歳以上継続雇用 Dその他70歳以上まで働ける制度 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,190 − 4,306 − 20,736 − 25,066 − 25,684 − 34,232 − 59,298 − 84,982 − 232,059 − 4.0% − 1.9% − 8.9% − 10.8% − 11.1% − 14.8% − 25.6% − 36.6% − 100.0% − 31人以上総計 5,352(4,468) 2,916(2,398) 14,590(11,705) 19,740(17,286) 19,634(15,776) 22,858(18,571) 42,598(35,857) 62,232(51,633) 174,257(164,151) 3.1%(2.7%) 1.7%(1.5%) 8.4%(7.1%) 11.3%(10.5%) 11.3%(9.6%) 13.1%(11.3%) 24.4%(21.8%) 35.7%(31.5%) 100.0%(100.0%) 21〜300人 9,080 − 4,222 − 20,048 − 22,942 − 23,243 − 33,350 − 56,292 − 79,535 − 215,092 − 4.2% − 2.0% − 9.3% − 10.7% − 10.8% − 15.5% − 26.2% − 37.0% − 100.0% − 21〜30人 3,838 − 1,390 − 6,146 − 5,326 − 6,050 − 11,374 − 16,700 − 22,750 − 57,802 − 6.6% − 2.4% − 10.6% − 9.2% − 10.5% − 19.7% − 28.9% − 39.4% − 100.0% − 31〜300人 5,242(4,370) 2,832(2,323) 13,902(11,158) 17,616(15,595) 17,193(13,726) 21,976(17,851) 39,592(33,446) 56,785(47,172) 157,290(147,081) 3.3%(3.0%) 1.8%(1.6%) 8.8%(7.6%) 11.2%(10.6%) 10.9%(9.3%) 14.0%(12.1%) 25.2%(22.7%) 36.1%(32.1%) 100.0%(100.0%) 301人以上 110(98) 84(75) 688(547) 2,124(1,691) 2,441(2,050) 882(720) 3,006(2,411) 5,447(4,461) 16,967(17,070) 0.6%(0.6%) 0.5%(0.4%) 4.1%(3.2%) 12.5%(9.9%) 14.4%(12.0%) 5.2%(4.2%) 17.7%(14.1%) 32.1%(26.1%) 100.0%(100.0%) ※( )内は、令和2年6月1日現在の数値。 ※70歳以上定年制度と70歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A70歳以上定年」のみに計上している。 ※「Dその他70歳以上まで働ける制度」とは、業務委託等その他企業の実情に応じて何らかの仕組みで70歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す。 図表9 定年制廃止および66歳以上定年企業の状況 全企業 定年制の廃止4.0% 66〜69歳定年1.1% 70歳以上定年1.9% 301人以上 定年制の廃止0.6% 66〜69歳定年0.2% 70歳以上定年0.5% 31〜300人 定年制の廃止3.3% 66〜69歳定年1.1% 70歳以上定年1.8% 21〜30人 定年制の廃止6.6% 66〜69歳定年1.4% 70歳以上定年2.4% 図表10 年齢別常用労働者数 (人) 年齢計 60歳以上合計 60〜64歳 65歳以上 うち70歳以上 31人以上規模企業 平成21年 26,357,829人(100.0) 2,159,756人(100.0) 1,554,218人(100.0) 605,538人(100.0) − − 平成22年 27,462,990人(104.2) 2,428,193人(112.4) 1,770,935人(113.9) 657,258人(108.5) − − 平成23年 27,528,148人(104.4) 2,535,656人(117.4) 1,914,058人(123.2) 621,598人(102.7) − − 平成24年 27,874,150人(105.8) 2,642,391人(122.3) 1,958,564人(126.0) 683,827人(112.9) − − 平成25年 28,181,932人(106.9) 2,719,692人(125.9) 1,933,215人(124.4) 786,477人(129.9) 179,585人(100.0) 平成26年 28,774,183人(109.2) 2,872,243人(133.0) 1,953,169人(125.7) 919,074人(151.8) 211,450人(117.7) 平成27年 29,537,468人(112.1) 3,047,422人(141.1) 1,979,923人(127.4) 1,067,499人(176.3) 242,005人(134.8) 平成28年 30,491,567人(115.7) 3,245,355人(150.3) 2,021,657人(130.1) 1,223,698人(202.1) 271,786人(151.3) 平成29年 30,804,295人(116.9) 3,474,482人(160.9) 2,043,334人(131.5) 1,431,148人(236.3) 375,122人(208.9) 平成30年 30,982,684人(117.5) 3,625,887人(167.9) 2,063,531人(132.8) 1,562,356人(258.0) 459,469人(255.9) 令和元年 31,654,879人(120.1) 3,864,572人(178.9) 2,147,609人(138.2) 1,716,963人(283.5) 574,705人(320.0) 令和2年 32,338,594人(122.7) 4,093,225人(189.5) 2,243,481人(144.3) 1,849,744人(305.5) 675,336人(376.1) 令和3年 32,334,496人(122.7) 4,209,527人(194.9) 2,271,226人(146.1) 1,938,301人(320.1) 756,536人(421.3) 21人以上規模企業 令和3年 33,799,709人 − 4,473,440人 − 2,391,478人 − 2,081,962人 − 819,669人 − ※「31人以上規模企業」の( )は、平成21年を100とした場合の比率(「うち70歳以上」は平成25年を100とした場合の比率) 図表11 60歳以上の常用労働者数の推移 31人以上規模企業 (万人) 平成21年 216.0 22年 242.8 23年 253.6 24年 264.2 25年 272.0 26年 287.2 27年 304.7 28年 324.5 29年 347.4 30年 362.6 令和元年 386.5 2年 409.3 3年 421.0 【P54-55】 10月は「高年齢者就業支援月間」 高年齢者活躍企業フォーラムのご案内 (高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)  高年齢者が働きやすい就業環境にするために企業等が行った創意工夫の事例を募集した「高年齢者活躍企業コンテスト」の表彰式をはじめ、コンテスト入賞企業等による事例発表、学識経験者を交えたトークセッションを実施し、企業における高年齢者雇用の実態に迫ります。「年齢にかかわらずいきいきと働ける社会」を築いていくために、企業や個人がどのように取り組んでいけばよいのかを一緒に考える機会にしたいと思います。 日時 令和4年10月5日(水)13:00〜16:00 受付開始12:00〜 場所 イイノホール (東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング) 東京メトロ日比谷線・千代田線「霞ヶ関」駅 C4出口直結 東京メトロ丸ノ内線「霞ヶ関」駅 B2出口徒歩5分 定員 100名(事前申込制・先着順)会場・ライブ配信同時開催 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 プログラム 13:00〜13:10 主催者挨拶 13:10〜13:40 高年齢者活躍企業コンテスト表彰式 厚生労働大臣表彰および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 13:40〜14:15 基調講演 テーマ「人生100 年時代のスマイルワークデザイン〜高齢者が快適に働くことができる職場づくり〜」 神代雅晴氏 産業医科大学名誉教授 14:15〜14:30 (休憩) 14:30〜16:00 事例発表………………コンテスト受賞企業等3社程度 トークセッション テーマ「高齢社員がいきいき働ける職場とは」 パネリスト…………コンテスト受賞企業等3社程度 コーディネーター…浅野 浩美氏 事業創造大学院大学 事業創造研究科教授 参加申込方法 フォーラムのお申込みは、以下の専用URLからお願いします。 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html 本フォーラムは新型コロナウイルス感染症対策を講じて開催いたします。 ご来場にあたり、ご理解・ご協力をお願いいたします。 参加申込締切 〈会場参加〉令和4年10月3日(月)14:00 〈ライブ視聴〉令和4年10月5日(水)15:00 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップのご案内  高年齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま!令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法に基づき、高年齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  当機構では各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) 専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組など】 事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ディスカッション など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください(令和4年7月20日現在確定分) ※新型コロナウイルス感染症対策を講じて開催いたします。ご来場にあたり、ご理解・ご協力をお願いいたします。 ■開催スケジュール 都道府県 開催日 場所 北海道 10月14日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月18日(火) アピオあおもり 岩手 10月27日(木) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月11日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月25日(火) 秋田県生涯学習センター 山形 10月20日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウィング) 福島 10月20日(木) 福島職業能力開発促進センター 茨城 10月20日(木) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月26日(水) とちぎ福祉プラザ 群馬 11月8日(火) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月6日(木) 埼玉教育会館 千葉 10月14日(金) ホテルポートプラザちば 東京 10月18日(火) 東京ウィメンズプラザ 神奈川 11月18日(金) 関東職業能力開発促進センター 新潟 10月6日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター 富山 10月25日(火) 富山県民共生センター サンフォルテ 石川 10月28日(金) 石川県地場産業振興センター 福井 10月12日(水) 福井県中小企業産業大学校 山梨 10月21日(金) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月20日(木) 長野職業能力開発促進センター松本訓練センター 岐阜 10月18日(火) じゅうろくプラザ 静岡 10月19日(水) 静岡県総合研修所 もくせい会館 愛知 10月24日(月) 名古屋市公会堂 都道府県 開催日 場所 三重 10月4日(火) シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢 滋賀 10月28日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 京都 10月24日(月) 京都経済センター 大阪 11月10日(木) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月18日(火) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月26日(水) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 10月28日(金) 県民交流プラザ 和歌山ビッグ愛 鳥取 10月28日(金) 鳥取職業能力開発促進センター 島根 10月21日(金) 松江合同庁舎 2階講堂 岡山 10月6日(木) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月25日(火) 広島職業能力開発促進センター 山口 11月9日(水) 山口県健康づくりセンター 徳島 10月28日(金) 徳島県JA会館すだちホール 香川 10月24日(月) 香川職業能力開発促進センター 愛媛 10月7日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月18日(火) 高知職業能力開発促進センター 佐賀 10月13日(木) 佐賀市文化会館 長崎 10月27日(木) 長崎県庁 大会議室 熊本 10月17日(月) くまもと県民交流館パレア 大分 10月3日(月) トキハ会館 宮崎 10月26日(水) 宮崎市民文化ホール 鹿児島 10月20日(木) 鹿児島サンロイヤルホテル 沖縄 10月19日(水) 沖縄労働局 大会議室 各地域のワークショップの内容は、各支部高齢・障害者業務課(65頁参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更または調整中の県は決定次第ホームページでお知らせします。jeed 生涯現役ワークショップ 検索 【P56】 日本史にみる長寿食 FOOD 346 「麦とろ」でどんどん元気 食文化史研究家● 永山久夫 「とろとろ」、「つるつる」、「ねばねば」  日本人は、「とろとろ」とか「つるつる」、「ねばねば」するような粘性(ねんせい)食が大好き。とろろ昆布や納豆、とろろ汁などで、いずれも古くからの長寿食、免疫力強化食としての効果をあげてきました。粘性食のトップは、何といってもとろろ汁でしょう。野山に自生している方が「山芋」や「自然薯(じねんじょ)」と呼ばれ、畑作の方が「長芋」と呼ばれていますが、いずれもとろろ汁の食材です。  カツオ節でしっかりだしをきかせた味噌汁でつくったとろろ汁が、食べ方のスタンダードですが、これをご飯にたっぷりかけてつるつるとかっこむ。うまくてうまくて、何杯も何杯もおかわりしないと食べた気がしません。  ポンポコ狸のように満腹になってようやく満足。江戸の川柳にも、次のような“満腹作品”があります。 冷や飯を四、五杯かりるとろろ汁  「いくらでも、腹に入るとろろ汁。つい隣家(りんか)から、冷や飯を借りるはめになった」という意味です。 麦めしにとろろ御鉢の底が見え  「お鉢の麦めしが底をついてしまいました。山ほど麦飯を用意したのに」。恐るべし、とろろ汁。 さよなら「便秘大国」  いまでもそうですが、とろろ汁には麦めしが定番。味の相性がとってもよいのです。味に加えて、この麦めしととろろ汁の「麦とろ」コンビは、長寿効果と病気予防効果がとても高いのです。  腸のぜん動運動が弱くなり、排便がスムーズにできない状態が便秘です。「便秘大国」と呼ばれるほど、日本には苦しんでいる方が増えているそうですが、麦めしととろろ汁は、両方とも食物繊維がたっぷりで、腸の働きを助ける力も強いのです。  全身の免疫力をになっているのも腸。その腸の元気を整えビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きをしているのも食物繊維です。「麦とろ」を食べると、食物繊維がたっぷりとれて善玉菌が増え、ウイルスなどに対する免疫力が強化されるのです。  デンプン分解酵素のアミラーゼの含有量は大根よりも多く、ご飯の消化促進にはもってこいで、少々大食しても胃もたれしません。  そのうえ、食物繊維と同じように免疫力の強化に効くミネラルの亜鉛とマグネシウムもとろろ汁には含まれており、ウイルス感染を防ぐうえでも役に立ちそうです。味噌汁の味噌には大豆アミノ酸が豊富ですから、スタミナ強化にも役に立ちます。 【P57】 BOOKS キャリア人生後半の生き方、働き方を切り拓くための指南書 定年NEXT 「繋ぐシニア」24人のロールモデルに学ぶ 池口武志 著/廣済堂出版(廣済堂新書)/1100円  働き方改革の推進や、新型コロナウイルス感染症の影響によるテレワークの拡大など、ここ数年のうちに労働環境は急激に変化している。  そのなかで2021(令和3)年に施行された「改正高年齢者雇用安定法」は、事業主に対し、70歳までの就業機会の提供を努力義務と定め、その就業について、従来の継続雇用などに加え、業務委託契約や社会貢献事業といった複数のかたちを示した。  本書は、意欲さえあれば、高齢者が生涯現役で働き続けられる時代へと移行しつつあるいま、「どう働けば、定年後の人生が充実したものになるか?」と模索するシニアや、将来に備えたいとするミドルシニアに向けて、定年後の生き方、働き方の手がかりを提示する指南書。  若い人を活かし、人と人や組織と組織をつなぐ「リエゾンシニア」という視点から、24人のシニアの生き方と仕事の選択を「転機を乗り超えて」、「誰かのために」、「地方のために」、「企業を支える」という切り口から紹介している。  特別対談として、「厚生労働省職業安定局高齢者雇用対策課長(※)の野ア伸一氏※に聞く『働くシニアと企業のこれから 〜自らの副業体験で見えてきたこと〜』」も掲載している。 ※…2022年4月出版時 副業における留意事項や活用のための要点を具体的事例を交えて説明 事例でわかる 人事労務担当者が知っておくべき副業・兼業対応の実務 佐保田(さほだ)藍(あい)、小鷹寛美、森田穣治、阿部俊彦、吉田爵宏(たかひろ)、今井礼子、吉川那央 著/第一法規/2970円  多様で柔軟な働き方の一つとして、副業・兼業が注目されて久しい。副業を解禁する企業も徐々に増えており、厚生労働省が2020(令和2)年7月にインターネットで行った調査によると、仕事をしている男女(有効回答者数は約16万人)のうち、副業をしている人の割合は全体で9.7%となっている。  副業には、法律上明確な定義はないものの、普及に向けて、厚生労働省による「モデル就業規則」や「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の改定も進められ、今後さらに多様に広がっていくことが予測される。  本書は、中堅・中小企業の人事労務担当者向けに、知っておくべき副業・兼業に関する法的なポイントとして、情報漏洩えい・利益相反などへの対応や、社会保険の適用などについて解説。また、実務上起こりやすい問題とその解決方法について、例えば「本業に支障が出る(副業による働きすぎ防止)」といった26の具体的事例をあげて、適切な対応方法を示している。  これから副業解禁を検討する企業は、制度を導入する前の検討事項確認のために、副業導入後の企業は、副業を活用するために制度の再構築などを検討する際に参考になる一冊である。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 2021年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表  厚生労働省は、2021(令和3)年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表した。  2021年における職場での熱中症による死傷者数(死亡・休業4日以上)は561人で、前年(959人)より398人減少した(41%減)。全体の約4割が、建設業と製造業で発生している。入職直後や夏季休暇明けで明らかに暑熱順化(体が暑さに慣れる)が不足しているとみられる事例や、WBGT(暑さ指数)を実測せず、その結果としてWBGT基準値に応じた必要な措置が講じられていなかった事例などがみられている。  また、熱中症による死亡者は20人で、前年(22人)より2人減少した。建設業において11人ともっとも多く発生しており、次いで商業3人、製造業2人、農業2人、その他2人となっている。死亡災害の発生状況をみると、5月は1人、7月は7人、8月は12人となっており、年内の死亡者数に占める月別死亡者数の割合は、2020年に比べて7月の発生割合が高く、死傷災害にも同様の傾向がみられた。死亡災害には、「休ませて様子をみていたところ容態が急変した」、「倒れているところを発見された」など、管理が適切になされておらず被災者の救急搬送が遅れた事例が含まれている。  年齢階級別の死傷年千人率をみると、65歳以上がもっとも高く0.0137となっており、もっとも低い25〜29歳(0.0047)の約3倍となっている。 厚生労働省 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について〜「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」公布〜  厚生労働省は、化学物質による労働災害を防止するため、労働安全衛生規則等の一部を改正した。  国内で、使用されている化学物質、そのなかには、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。さらに、化学物質による休業4日以上の労働災害(がん等の遅発性疾病を除く)のうち、特定化学物質障害予防規則等の特別規則の規制の対象外物質を起因とするものが約8割を占めている。本改正では、従来、特別規則による規制の対象外であった物質への対策の強化を主眼とし、国によるばく露の上限となる基準等の策定、危険性・有害性に関する情報の伝達の仕組みの整備・拡充を前提として、事業者が、危険性・有害性の情報に基づくリスクアセスメントの結果に基づき、国の定める基準等の範囲内で、ばく露防止のために講ずべき措置を適切に実施する制度を導入するもの。その他、化学物質管理者の選任による管理体制の強化などが図られている。  厚生労働省では、今後、円滑な移行に向けた周知の徹底や啓発活動に取り組むことで、化学物質による労働災害の防止を一層推進していくとしている。 ●施行日  公布日(一部2023〈令和5〉年4月1日または2024年4月1日施行) ●本改正についての詳細、または主なポイントは、左記のURLへ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25984.html 厚生労働省 不妊治療と仕事との両立を支援するツール3点を改訂  厚生労働省は、「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」と「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」(いずれも2019〈令和元〉年度作成)の改訂と、不妊治療を行う労働者と主治医と企業とをつなぐ「不妊治療連絡カード」(2017〈平成29〉年度作成)の様式見直しを行った。  不妊治療の検査や治療を受けたことがある夫婦は5.5組に1組と増加傾向にあり、2022年4月1日から不妊治療に対する公的保険の適用範囲が拡大された。仕事との両立を希望する労働者は、さらに増加することが見込まれている。  今回改訂したマニュアルなどは、次の通り。 ●「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」  企業向けの制度導入マニュアル。企業事例を増加し、具体的で実践的な内容に改訂した。  https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30k.pdf ●「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」労働者向けに、不妊治療の内容や職場での配慮のポイントを紹介しているハンドブック。  https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30l.pdf ●「不妊治療連絡カード」  治療を受ける労働者が、職場において必要な配慮事項等を企業の担当者に伝えるためのカード。 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/30b.pdf 人事院 報告書「ストレスチェックにおける職場環境改善の取組について」を公表  人事院は、国家公務員のメンタル施策の一層の推進に向けて、報告書「ストレスチェックにおける職場環境改善の取組について」を公表した。「人事院 心の健康づくり指導委員会職場環境改善ワーキンググループ」がまとめた。  同報告書では、「メンタルヘルス不調には、業務量だけでなく、仕事のやりがいやハラスメントといった質的な要素も大きく影響しており、個々のストレス対策とともに職場環境改善に取り組むことが重要である」として、次の取組みを推進することが望まれるとしている。 ●ストレスチェックの受検率等の向上を図る  現状の受検率(41府省の平均)は86.7%。一方、80%以下の受検率となっている府省は8府省、60%程度の受検率の府省もあり、対策として、受検率の低い理由(実施時期、実施機関、実施方法等)の分析などをあげている。 ●ストレスチェックの実施にあたり、職場環境改善に係る調査項目(18項目)※を追加する ●メンタルヘルス施策の推進に向けた健康管理体制の充実を図る  健康管理医に期待される業務が増加しているため、保健師や心理職等を含めた健康管理体制の強化を検討することも有益、としている。 ※ 2016(平成28)年11月に、従前の職業性ストレス簡易調査表57項目に加えて、職場環境改善の課題を明らかにするために追加した18項目。職員の仕事や職場等に対する質問で構成されている。 調査・研究 東京大学 「高齢日本の20年後」を発表  東京大学の研究チームは、60歳以上の認知症とフレイル(虚弱)の有病率と医療介護費について、2043(令和25)年までの将来推計を発表した。  本研究は、健康状態や学歴が年々向上している近年の高齢者疫学データをもとに、健康・機能状態の毎年の変化を推計し、2043年まで追跡するシステムを開発して実施したもの。  その結果、認知症患者数は、2016(平成28)年では510万人だが、2043年ではこれまでの国の予測とは異なり、465万人に減ると推計された。ただし、大卒以上の男性では減少が著しいものの、女性では大卒でも増加が予測されるなど、男女格差・学歴格差が広がる。さらに、格差の影響を受ける層では、フレイルを合併する割合が高いこともわかり、濃密な介護ケアが必要になるため、介護費総額は増加することが示唆された。  研究者は、「現在、国の認知症対策は治療・予防など医学的な技術開発に重点を置いています。本研究の結果は、併せて社会格差対策が必要であることを示唆しています」などと述べている。  同研究は、東京大学大学院医学系研究科の笠島めぐみ特任研究員と橋本英樹教授が、同大学生産技術研究所、高齢社会総合研究機構、未来ビジョン研究センターおよびスタンフォード大学と共同で行った。発表内容の詳細は、左記のURLへ。  https://www.m.u-tokyo.ac.jp/news/PR/2022/release_20220427.pdf 日本商工会議所・東京商工会議所 「人手不足の状況および従業員への研修・教育訓練に関する調査」の集計結果  日本商工会議所と東京商工会議所は、「人手不足の状況および従業員への研修・教育訓練に関する調査」の集計結果を発表した。  調査は、全国の中小企業6007社を対象として、2022(令和4)年2月に実施。有効回答率は53.6%。  調査結果によると、人手が「不足している」と回答した企業は60.7%で、前年調査と比べ16.3ポイント増加。新型コロナウイルス感染拡大直前(2020年2〜3月)の60.5%を上回り、人手不足の状況が戻ってきている。業種別では、「運輸業」の79.4%、「建設業」の75.6%が「不足している」と回答した。  人手が「不足している」と回答した企業に対応方法を聞いたところ、「正社員を増やす」が72.3%ともっとも多く、次いで、「社員の能力開発による生産性向上」(35.9%)、「IT化、設備投資による業務効率化・自動化」(35.4%)、「業務プロセスの改善による効率化」(32.1%)、「女性・高齢者・外国人など多様な人材の活用」(31.2%)などとなっている。  従業員へ実施している研修・教育訓練については、「日常業務のなかでの教育(OJT)」が75.6%ともっとも多く、次いで「外部主催の研修・セミナーの実施」(57.3%)、「業務に関連する資格の取得奨励」(51.0%)などとなっている。実施している研修・教育訓練がOJTのみ、または特に実施していない企業の割合は19.1%となっている。 【P60】 次号予告 9月号 特集 活かしてますか? 高齢者の能力・経験 リーダーズトーク 島田哲成さん(住友電設株式会社 取締役 常務執行役員) (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン検索 ※カメラで読み取ったQR コードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415  FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み  @定期購読を希望される方   雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 田村泰朗……太陽生命保険株式会社取締役専務執行役員 丸山美幸……社会保険労務士 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今号の特集では、高齢者雇用の視点からSDGsについて解説するとともに企業の取組み事例を紹介しました。読者のみなさんのなかにも、SDGsの取組み目標を掲げ、各種取組みの推進に努めている会社があるのではないでしょうか。  SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略語。2015(平成27)年の国連サミットで採択されたもので、17の目標と、それぞれの目標に対する169のターゲットが定められています。  クリーンエネルギーなど環境保護の側面から語られることの多いSDGsですが、年齢や性別に関係なく、やりがいを持って働ける環境づくりもまたSDGsで求められている取組みです。そこで高齢者はもちろん、多様な人材がやりがいをもって働ける職場環境の実現に取り組んでいただければ幸いです。 読者アンケートにご協力お願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー8月号 No.513 ●発行日−令和4年8月1日(第44巻 第8号 通巻513号) ●発行−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−企画部長 飯田剛 編集人−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 FAX 043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-921-7 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 「生涯現役促進地域連携事業」より地域発の取組みから学ぶシニア就業 観光やITなどの分野で高齢者にできる仕事を開拓 生涯現役促進地域連携鎌倉協議会(神奈川県)  厚生労働省では、地域の実情に応じた高年齢者の多様な就業機会を確保するための事業を募集し、その実施を委託する「生涯現役促進地域連携事業」を2016(平成28)年度より6年間にわたって推進してきた。その実施事例として、今回は神奈川県鎌倉市の取組みを紹介する。 古都・鎌倉で五つの重点分野で事業を展開  神奈川県の南東部に位置する鎌倉市(人口17.3万人)。鎌倉幕府が置かれた古都として知られ、人気の観光地でもある。そんな同市では、2015年前後、高齢化率が全国や県を上回る30%台に達した。  鎌倉市商工課勤労者福祉担当係長で、生涯現役促進地域連携鎌倉協議会(以下、「鎌倉協議会」の事業を統括する田中敬子(けいこ)さんは、生涯現役促進地域連携事業(以下、「連携事業」)に応募した経緯を次のように話す。  「鎌倉市には、さまざまな分野の専門知識や豊富な経験をお持ちの高齢者が多く居住されているにもかかわらず、なかなか地域で活躍する場がありませんでした。そこで、『鎌倉の一番の資源は人』という視点に立ち、高齢者の就労環境を整備するために、2016(平成28)年度に連携事業に応募し、協議会を立ち上げました」  鎌倉協議会は、連携事業の重点分野として@観光、AIT、B子育て、C介護・生活支援、D中小企業支援、の5分野を定めた。観光が重点分野に入っているのは、鎌倉ならではの特徴といえよう。また、鎌倉にはIT関連企業も集積しており、高齢者が持つ法務や会計などの専門的な知識でベンチャー企業を支援することなどが期待できる。子育てと介護・生活支援は、いずれも人手不足が常態化しており、やはりシニアの活躍が期待できる分野だ。中小企業支援は、鎌倉市が大型事業所の誘致がむずかしい土地柄であり、中小企業が多いことから、ITと同様に高齢者のスキルや経験を活かせる可能性がある分野として取り入れられた。 各種取組みを推進し年間100人を超える就業を実現  鎌倉協議会の事業は「セカンドライフかまくら」という名称で2017年度からスタート。就労を希望する高齢者への相談窓口、ホームページなどによる情報提供、事業者訪問による求人開拓、就労啓発セミナー、合同就職説明会(年3回)、就業体験会の六つの事業を柱に取組みを展開している。  協議会が特に力を入れてきたのが、高齢者にできる仕事≠増やすための取組みだ。  「事業者のみなさんもさまざまな課題をお持ちですので、シニアがかかわることで解決できることはないか、相談をしながら、仕事の切り出し方を考えて、高齢者ができる仕事を増やしてきました」(田中さん、以下同)  例えば観光分野では、鎌倉市には外国語ができる高齢者が多く在住していることから、鎌倉市に数多くできたゲストハウスにおいて、フロント業務や清掃業務などの仕事を開拓した(コロナ禍以前の取組み)。  またIT分野では、事業者と相談し、AIスピーカーを高齢者の家庭に設置する際に、同世代の高齢者が訪問して使い方を教える仕事や、シニア向けアプリなどを開発した際に、使い勝手などをチェックして感想を伝えるテスターの仕事などを生み出した。「テスターの仕事は、シニア層をターゲットにした開発をしているベンチャー企業などには、非常に興味を持っていただけました」  こうした取組みの結果、初年度の2017年度の就業者数は40人程度だったが、徐々に活動が浸透し、3年目の2019(令和元)年度には123人の就業を実現。2020年度にはコロナ禍の厳しい情勢のもと、134人が就業している。 課題は本人の希望と求人内容とのギャップ  コロナ禍で協議会の取組みも制限を受けてきたが、合同就職説明会や就業体験会などのイベントも徐々に再開しつつある。そのなかで、田中さんが一番の課題としてとらえているのが求人開拓だ。先にあげた観光・IT・保育分野で開拓した仕事は、コロナ禍でいずれも困難になった。そこで現在は、コロナ禍によって一気に進んだIT化に活路を見い出しているという。  「テレワークが増えて、自宅でも働ける時代になりました。そのため、高齢者のITリテラシーを高めることによって、時間や場所に縛られない、新たな仕事の切り出し方ができるのではないかと模索しているところです」  一方で、高齢者へのアンケートによると、事務職(デスクワーク)での就労を希望する声が圧倒的に多いという。しかし、現状で募集が多いのは、介護や清掃、マンション管理などの仕事となっている。  「現役時代の経験を活かせる仕事を望む方は多いのですが、コロナ禍以降、事務の求人は少なくなっていますし、現役世代を含めた募集の場合、高齢者の採用は厳しいのが現状です。そんななかで、考え方を柔軟に変えられる人ほど、活き活きとした生活を見つけられているような気がします」  求人の多い介護業界は、市としても高齢者の職場の一つとして力を入れていきたい分野だが、単に「介護の仕事があります」というだけでは、雇用に結びつかないケースも多い。  「シニア層のなかには、親御さんの介護経験から『いろいろ思い出してしまって介護業界はためらう』といわれる方もいます。そのため、仕事をすることによってどのような喜びが得られるのか、働く意義のようなものを、ご本人と一緒に掘り下げて考える必要があります。ご本人の興味関心や、ほかの職種への理解などを含めて、地域のなかでどのように働いていくのか相談に乗りながら、ご自身が少しでも納得のいく仕事に出会えるよう、今後もシニアのみなさんに寄り添っていきたいと考えています」  鎌倉協議会は今年度、新たな取組みとして、地域の仕事だけではなく、ボランティアや生涯学習などにも時間単位で参加できるシステムを導入する。従来通り対面でのかかわりを基本としながらも、ITを活用しながら高齢者が地域で活躍できる機会をさらに広げていく考えだ。 生涯現役促進地域連携鎌倉協議会 推進員・支援員より 仕事の意義を伝えることが大切 事業推進員 松田憲司(けんじ)さん  現役時代につちかった知見や経験を活かせる仕事はなかなかありません。そのため、仕事に対する考え方を切り替えることが大切になります。私が面談をした方に、現役時代に大手メーカーなどで活躍され、語学も堪能な方がいらっしゃいました。その方は、体を動かすことが好きだということで、それまでの経験をリセットして、ドライバーとしての送迎や庭の剪定の仕事などをされています。  シニアの方は、収入が目的ではない場合、働くことを通じた社会貢献を求めているケースが多いです。そのため、事業者さんには、仕事内容だけでなく、その仕事を通じてどのような貢献ができるのか、自己実現にどうつながるのか、といったことも説明していただくことが大切だと感じます。 できない部分より可能性に着目 事業推進員 山鹿(やまが)一実(かずみ)さん  一口に「シニア」といっても、50代から80代まで年齢層は幅広く、経歴や仕事に対する思いもさまざまなので、一人ひとりに合わせた情報提供を行っています。企業の人事の方にも、履歴書で年齢を見て判断するのではなく、できればご本人に会っていただきたいと思います。面談していると、ほとんどの方が年齢よりも5〜8歳くらい若いマインドとスキルをお持ちです。  シニア層に特化した仕事になると、あまりスキルが望まれないような仕事になるのが一般的です。しかし、「シニアだからできない」という見方ではなく、その人の可能性を見い出してアプローチしていただけるとよいのではないかと思います。 高齢者の声を商品開発に活かす 実践支援員 渡邉(わたなべ)浩美さん  事業者さんには、高齢者の社会参加の機会を、雇用にかぎらず、柔軟に検討していただけるとありがたいです。  一例として、商品やサービスを開発する際に、高齢者の方に利用してもらい意見を聞いていただくと、参考になるのではないかと思います。以前、ハンドバッグを製造販売している会社がユーザーの声を聞きたいということで、4〜5人の高齢者を集めて意見を聞いたことがありますが、とても率直な意見が集まり、商品開発に役立ったようでした。人の役に立ちたいと思っている高齢者は多いですし、実際にそういう機会があると、やりがいを感じていただけます。 写真のキャプション 鎌倉市商工課勤労者福祉担当係長の田中敬子さん 情報提供の中心的な役割をになっているWEBサイト「セカンドライフかまくら応援サイト」 観光スキルアップセミナーの様子 合同就職説明会の様子 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は空間認知力を鍛える問題です。空間的な位置関係の把握には右の前頭前野と頭頂連合野が強くかかわっています。頭頂連合野は自分を客観的に見るメタ認知※にもかかわります。冷静に、客観的に見る力も同時に鍛えてください。 第62回 文章謎解き @〜Bの文章は、A〜Cについて説明したものです。 どれを示しているか答えましょう。 目標 2分 1 すべて直線でできていて、左右対称 → 2 星が3つ描かれていて、左右非対称 → 3 丸が2つ以上描かれていて、星は3つ以下 → A B C 謎解きで脳力を鍛える  「謎解き」にはワーキングメモリ(作業記憶)といって記憶や情報を一時的に脳に保持しながらあれこれ考える、知的活動の基礎機能ともいえる力が必要です。  例えば、目的地に行くためにどの交通手段が一番早く着くかといったことを考える場合、私たちはAの交通手段は何時間かかるかを調べ、その情報を一時的に脳に保持しながら、Bの交通手段では何時間かかるかを調べます。調べた情報を比較して、どちらが早く着くかの結論を出します。このときに使用する能力がワーキングメモリです。ワーキングメモリとは日常生活を円滑に営むために欠かせない能力なのです。  しかし、残念ながらワーキングメモリの力は歳とともに衰えやすい能力でもあります。そこで大切になってくるのが「脳力を鍛える」ということです。その方法としておすすめなのが「謎解き」です。「謎解き」は、ワーキングメモリの力や想像力、洞察力を鍛えるツールとして機能します。  楽しく謎を解いて脳を活性化させ、いつまでも元気な脳を目ざしましょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 1 C 2 B 3 A ※メタ認知……自分の認知活動(考える、感じる、判断するなど)を客観的にとらえること 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。2022年8月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 ハローワーク千葉5階 043-204-2901 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 10月は「高年齢者就業支援月間」です 高齢者雇用に取り組む事業主や人事担当者のみなさまへ秋のイベントをご案内します。 高年齢者活躍企業フォーラムのご案内 (高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)  高年齢者が働きやすい就業環境にするために企業等が行った創意工夫の事例を募集した「高年齢者活躍企業コンテスト」の表彰式をはじめ、コンテスト入賞企業等による事例発表、学識経験者を交えたトークセッションを実施し、企業における高年齢者雇用の実態に迫ります。「年齢にかかわらずいきいきと働ける社会」を築いていくために、企業や個人がどのように取り組んでいけばよいのかを一緒に考える機会にしたいと思います。 日時 令和4年10月5日(水)13:00〜16:00 受付開始12:00〜 場所 イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング) 東京メトロ日比谷線・千代田線「霞ヶ関」駅 C4出口直結 東京メトロ丸ノ内線「霞ヶ関」駅 B2出口徒歩5分 定員 100名(事前申込制・先着順)会場・ライブ配信同時開催 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップ  当機構では各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいきと働いていただくための情報をご提供します。各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) 専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組など】 事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ディスカッション など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) ※各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65頁参照)までお問い合わせください。 ※新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、開催日時などに変更が生じる場合があります。当機構ホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 jeed 高年齢者就業支援月間 検索 2022 8 令和4年8月1日発行(毎月1回1日発行) 第44巻第8号通巻513号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会