【表紙2】 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップのご案内  高年齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま!令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法に基づき、高年齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  当機構では各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高年齢者に戦力となってもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム (以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) 専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組など】 事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ディスカッション など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご参照ください(令和4年7月27日現在) ※新型コロナウイルス感染症対策を講じて開催いたします。ご来場にあたり、ご理解・ご協力をお願いいたします。 ■開催スケジュール 都道府県 開催日 場所 北海道 10月14日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月18日(火) アピオあおもり 岩手 10月27日(木) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月11日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月25日(火) 秋田県生涯学習センター 山形 10月20日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウィング) 福島 10月20日(木) 福島職業能力開発促進センター 茨城 10月20日(木) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月26日(水) とちぎ福祉プラザ 群馬 11月8日(火) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月6日(木) 埼玉教育会館 千葉 10月14日(金) ホテルポートプラザちば 東京 10月18日(火) 東京ウィメンズプラザ 神奈川 11月18日(金) 関東職業能力開発促進センター 新潟 10月6日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター 富山 10月25日(火) 富山県民共生センターサンフォルテ 石川 10月28日(金) 石川県地場産業振興センター 福井 10月12日(水) 福井県中小企業産業大学校 長崎 10月27日(木) 長崎県庁大会議室 山梨 10月21日(金) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月20日(木) 長野職業能力開発促進センター松本訓練センター 岐阜 10月18日(火) じゅうろくプラザ 静岡 10月19日(水) 静岡県総合研修所もくせい会館 愛知 10月24日(月) 名古屋市公会堂 三重 10月4日(火) シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢 滋賀 10月28日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 京都 10月24日(月) 京都経済センター 大阪 11月10日(木) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月18日(火) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月26日(水) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 10月28日(金) 県民交流プラザ和歌山ビッグ愛 鳥取 10月28日(金) 鳥取職業能力開発促進センター 島根 10月21日(金) 松江合同庁舎2階講堂 岡山 10月6日(木) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月25日(火) 広島職業能力開発促進センター 山口 11月9日(水) 山口県健康づくりセンター 徳島 10月28日(金) 徳島県JA会館すだちホール 香川 10月24日(月) 香川職業能力開発促進センター 愛媛 10月7日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月18日(火) 高知職業能力開発促進センター 佐賀 10月13日(木) 佐賀市文化会館 長崎 10月27日(木) 長崎県庁大会議室 熊本 10月17日(月) くまもと県民交流館パレア 大分 10月3日(月) トキハ会館 宮崎 10月26日(水) 宮崎市民文化ホール 鹿児島 10月20日(木) 鹿児島サンロイヤルホテル 滋賀10月28日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 岩手10月27日(木) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 京都10月24日(月) 京都経済センター 宮城11月11日(金) 宮城職業能力開発促進センター大阪11月10日(木) 大阪府社会保険労務士会館 秋田10月25日(火) 秋田県生涯学習センター兵庫10月18日(火) 兵庫県中央労働センター 山形10月20日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウィング) 奈良10月26日(水) 奈良職業能力開発促進センター 福島10月20日(木) 福島職業能力開発促進センター和歌山10月28日(金) 県民交流プラザ和歌山ビッグ愛 茨城10月20日(木) ホテルレイクビュー水戸鳥取10月28日(金) 鳥取職業能力開発促進センター 栃木10月26日(水) とちぎ福祉プラザ島根10月21日(金) 松江合同庁舎2階講堂 群馬11月8日(火) 群馬職業能力開発促進センター岡山10月6日(木) 岡山職業能力開発促進センター 埼玉10月6日(木) 埼玉教育会館広島10月25日(火) 広島職業能力開発促進センター 千葉10月14日(金) ホテルポートプラザちば山口11月9日(水) 山口県健康づくりセンター 東京10月18日(火) 東京ウィメンズプラザ徳島10月28日(金) 徳島県JA会館すだちホール 神奈川11月18日(金) 関東職業能力開発促進センター香川10月24日(月) 香川職業能力開発促進センター 新潟10月6日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター愛媛10月7日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 富山10月25日(火) 富山県民共生センターサンフォルテ高知10月18日(火) 高知職業能力開発促進センター 石川10月28日(金) 石川県地場産業振興センター佐賀10月13日(木) 佐賀市文化会館 福井10月12日(水) 福井県中小企業産業大学校長崎10月27日(木) 長崎県庁大会議室 山梨10月21日(金) 山梨職業能力開発促進センター熊本10月17日(月) くまもと県民交流館パレア 長野10月20日(木) 長野職業能力開発促進センター松本訓練センター大分10月3日(月) トキハ会館 岐阜10月18日(火) じゅうろくプラザ宮崎10月26日(水) 宮崎市民文化ホール 静岡10月19日(水) 静岡県総合研修所もくせい会館鹿児島10月20日(木) 鹿児島サンロイヤルホテル 愛知10月24日(月) 名古屋市公会堂沖縄10月19日(水) 沖縄労働局大会議室 北海道10月14日(金) 北海道職業能力開発促進センター三重10月4日(火) シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢 青森10月18日(火) アピオあおもり滋賀10月28日(金) 滋賀職業能力開発促進センター 岩手10月27日(木) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 京都10月24日(月) 京都経済センター 宮城11月11日(金) 宮城職業能力開発促進センター大阪11月10日(木) 大阪府社会保険労務士会館 秋田10月25日(火) 秋田県生涯学習センター兵庫10月18日(火) 兵庫県中央労働センター 山形10月20日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウィング) 奈良10月26日(水) 奈良職業能力開発促進センター 福島10月20日(木) 福島職業能力開発促進センター和歌山10月28日(金) 県民交流プラザ和歌山ビッグ愛 茨城10月20日(木) ホテルレイクビュー水戸鳥取10月28日(金) 鳥取職業能力開発促進センター 栃木10月26日(水) とちぎ福祉プラザ島根10月21日(金) 松江合同庁舎2階講堂 群馬11月8日(火) 群馬職業能力開発促進センター岡山10月6日(木) 岡山職業能力開発促進センター 埼玉10月6日(木) 埼玉教育会館広島10月25日(火) 広島職業能力開発促進センター 千葉10月14日(金) ホテルポートプラザちば山口11月9日(水) 山口県健康づくりセンター 東京10月18日(火) 東京ウィメンズプラザ徳島10月28日(金) 徳島県JA会館すだちホール 神奈川11月18日(金) 関東職業能力開発促進センター香川10月24日(月) 香川職業能力開発促進センター 新潟10月6日(木) 朱鷺メッセ新潟コンベンションセンター愛媛10月7日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 富山10月25日(火) 富山県民共生センターサンフォルテ高知10月18日(火) 高知職業能力開発促進センター 石川10月28日(金) 石川県地場産業振興センター佐賀10月13日(木) 佐賀市文化会館 福井10月12日(水) 福井県中小企業産業大学校長崎10月27日(木) 長崎県庁大会議室 山梨10月21日(金) 山梨職業能力開発促進センター熊本10月17日(月) くまもと県民交流館パレア 長野10月20日(木) 長野職業能力開発促進センター松本訓練センター大分10月3日(月) トキハ会館 岐阜10月18日(火) じゅうろくプラザ宮崎10月26日(水) 宮崎市民文化ホール 静岡10月19日(水) 静岡県総合研修所もくせい会館鹿児島10月20日(木) 鹿児島サンロイヤルホテル 沖縄 10月19日(水) 沖縄労働局 大会議室 各地域のワークショップの内容は、各支部高齢・障害者業務課(65頁参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更がある場合は決定次第ホームページでお知らせします。 :青森、岩手、茨城、栃木、千葉、静岡、大阪、奈良、岡山、鹿児島、沖縄については、ライブ配信やオンデマンド配信等の動画配信を予定しています。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 【P1-4】 Leaders Talk リーダーズトーク No.89 承認欲求の呪縛を避けるため問題を相対化する心のゆとりを 同志社大学 政策学部 教授 太田 肇さん おおた・はじめ 1954(昭和29)年兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授および同大学大学院総合政策科学研究科教授、経済学博士。『「承認欲求」の呪縛』、『日本人の承認欲求ーテレワークがさらした深層ー』(ともに新潮新書)など著書多数。  SNS上で炎上騒動の要因となることもある「承認欲求」。だれもが持っている「他者から認められたい」というこの欲求は、ときに人を成長させ、仕事において高パフォーマンスを引き出すこともありますが、他者からの評価や期待が重荷になり、失敗をおそれて消極的になるなど、ネガティブに作用するケースも少なくありません。今回は、同志社大学の太田肇教授に、仕事と承認欲求の関係について、お話をうかがいました。 「承認欲求」は人を動機づける最強の欲求「認められたい」が成長の源 ―最近、「承認欲求」という言葉をよく耳にします。 太田 SNSで個人的な見解や体験などを発信し、「いいね!」を気にする人が増えるような世情を背景に、以前より「承認欲求」への関心は高まっています。  有名な心理学者マズローの欲求階層説※で知られているように、承認欲求は本来、人間だれもが持っている正常な欲求の一つで、自分自身を価値ある存在と認めたい「自尊」の欲求と、他人から自分の能力や個性などを認めてもらいたい「尊敬」の欲求の二つの面があります。承認欲求があるからこそ人間は努力するし、健全に成長していく。ほかの人と協力したり助け合ったりする動機も、承認欲求から生まれます。人の欲求のなかでは最強のものとさえいえます。  これまで私は、承認欲求について多くの実証研究を行ってきましたが、上司・同僚や取引相手など周囲から認められた人、自尊感情や自己肯定感の高い人は、そうでない人に比べて意欲が高く、情緒が安定し、仕事や学業の成績も高い傾向が見られます。 ―そんなプラスに作用するはずの承認欲求が、最近は負のイメージで取り上げられることが多い気がします。 太田 そうですね。数年前に、飲食店の従業員が厨房で悪さをする様子を撮影して動画をSNSに上げたり、公共の場で危険な行為や破廉恥な行いをして動画サイトに投稿するなどの事件が相次ぎました。そんな行動をする人には、「自分の存在を世間に知らしめたい」、「注目を集めたい」という動機が隠されていることがあります。承認欲求の負の側面が病的な形であらわれた例です。  そこまで極端ではなくても、容姿、仕事の業績、学歴、社会的地位など、自分が誇りに思っていることを自慢げに語る、あるいは逆に、失敗談を語るかのように見せかけて本音では武勇伝を誇示したい意図が見える言動も、承認欲求がゆがんだ形であらわれたものといえます。  それを一部の特別な人にあらわれる問題行動とは片づけられません。私たちを含めてだれもが陥りやすく、社会に広がっている負の側面があります。自分で気づかないうちに承認欲求にとらわれ、制御できなくなって苦しむ人が、特に日本社会では多く見られます。私は「承認欲求の呪縛」と呼んでいます。  人は承認欲求が満たされることで動機づけられ、成長し、その結果として昇給や昇進、好ましい対人関係の構築など、有形無形の報酬を獲得できます。まさに、いいことずくめなのですが、何かがきっかけで、今度は獲得した報酬や築き上げた人間関係を失うことをおそれ、その思いにとらわれた状態から容易に逃れられなくなります。 ―具体的には、どういうことでしょうか。 太田 ある病院で、もっとも模範になる職員をMVPとして表彰し、受賞者にはかなり高額の賞金を贈っていました。ところが、受賞者の多くが、受賞後短期間で次々と離職するようになったのです。その理由として、いくつか仮説は成り立ちますが、一番あてはまりそうなのが、「MVPとして表彰されたからには、これからも期待に応えなければいけない」というプレッシャーに耐えられなくなったという理由です。  また、ある保険会社の労働組合の幹部からも、「高い業績をあげ、表彰された社員が、それを重荷に感じて、辞めてしまうことが珍しくない」という話を聞きました。  そのほか、優秀な成績を収めた学生やスポーツ選手が、「次もよい結果を残さなければ」という重圧に苦しむ例は、数多く見聞きされます。 「承認欲求の呪縛」という不幸を避けるにはほめ方にも工夫が必要 ―優秀な人をほめてはいけないということでしょうか。 太田 いいえ。表彰制度を行っているある企業では、社長から賞状を贈られた社員が「この賞に恥じないよう、これからもがんばります」とあいさつをしました。それに対して社長は、こういいました。「あなたのいままでの実績を表彰したのであって、それを励みにこれからもがんばるかどうかは、あなたの自由です」と。  この社長は、社員の業績という具体的な根拠を示して、それを認めたわけです。つまり、事実を伝え、その事実について労(ねぎら)った。決して全人格をほめたわけではないことを伝えたのです。そうすれば、承認を与えられた側に過大なプレッシャーを与えることを避けられます。 ―叱る場合も同じですね。事実に基づいて、その問題点や改善点を指摘するという姿勢が大事だといわれます。 太田 その通りです。事実に基づくことをしないと、両者が上司と部下という地位の上下関係にある場合は、叱ることがハラスメントにつながりやすい。そもそも、「ほめる、叱る」は、上から目線の言葉ですよね。上司と部下という組織内での立場の違いは、人格的な上下関係ではありません。お互いを役職ではなく「さん」づけで呼び合ったり、敬語を使ったりするなど、特に上司の立場からは、部下の自尊感情を損ねないような言動が求められます。 ―承認欲求があるから、人はやる気になり、成長するわけですが、逆にそれに押しつぶされて不幸になる面もある。どうすれば、承認欲求の呪縛を回避できますか。 太田 承認欲求の呪縛が生じる要素の一つは、自分が思っている「認知された期待」の大きさ、つまり自分がどれほど期待されているかについての認識です。それが大きいほど、期待を裏切れないという思いが強くなります。二つめが、その期待に自分はどれほど応えることができるかという「自己効力感」、平たくいえば「自信」ですね。「認知された期待」と「自己効力感」のギャップが大きいほど、プレッシャーは大きくなります。そして三つめが「問題の重要性」です。仮に、期待に応える能力がないと思える場合でも、そのことが自分にとってさほど重要でなければ、呪縛に陥ることはありません。  認知された期待と自己効力感のギャップが大きい場合、本人にできることは、問題の重要性を小さくすること。いい換えれば問題を相対化することです。「それしかない」、「そこにしか自分の居場所がない」と自分を追い込むから、プレッシャーに押しつぶされてしまうのです。 シニアを直撃する「自尊」と「尊敬」の喪失感「もう一つの世界」を持とう ―年功を積んで地位や報酬を高めてきたシニアは、認知された期待と自己効力感のギャップに悩む場面が多いかもしれません。 太田 昇進・昇格を重ね、高いポジションを獲得したシニアは、その役割にふさわしい期待に応えたいという気持ちがあります。その一方で、自分が第一線で活躍してきたころとは仕事の環境も手法も変わり、能力を発揮できないと気づかされることが多い。そのうえ、役職定年後は力を行使できる権限がなくなり、定年後再雇用で報酬も大きく下がっている。自尊も尊敬も損なわれ、生きる意味を見失ってしまう状態に陥りがちです。  そこで企業には、長年の経験が活きるような業務で、シニアを活用してほしいですね。シニアはさまざまな経験をしています。失敗談も含めて、実際に体験した事実を若い世代に伝えるという役割をシニアにになってもらうことは、若い人や会社のためになりますし、シニアの承認欲求も健全に満たされることにもなります。  また、会社内での地位や報酬が、年功的な右肩上がりの場合、役職定年などを境に急激に処遇がダウンし、シニアの自尊や尊敬が損なわれることがあります。もっと若いころから、小刻みに賃金がアップダウンするような人事・評価制度に変えていくことが必要ではないでしょうか。  一方、本人の心構えでポイントになるのは、問題を相対化できる心のゆとりを持つことです。「会社でのキャリアが人生のすべて」と思うような生き方では、何らかの理由で会社における自分の評価や処遇が下がったり、自身が思い描いている期待に反して活躍できなかったりしたときに、人格そのものが否定されたような感覚になり、承認欲求の呪縛に陥ってしまうおそれがあります。  それを回避するには、会社以外に「もう一つの世界」を持つことです。趣味でも地域活動でも何でもよいのです。コロナ禍に加え、働き方改革が進み、会社から離れる時間が増えてきました。副業や兼業のハードルも下がりつつあります。会社とは別の帰属先、準拠集団を持つことができれば、会社で思うように力を発揮できないという問題の重要性が相対化され、過大なプレッシャーに押しつぶされることもなくなるでしょう。 (聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/安田美紀) ※ 欲求階層説…… 人間の欲求は、「生理的欲求」→「安全欲求」→「社会的欲求」→「承認欲求」→「自己実現欲求」という5段階のピラミッドのように構成されており、自己実現に向かって成長するとした理論 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2022 October No.515 特集 6 多彩な取組みで70歳超雇用を実現 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 7 審査委員長からのメッセージ 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授 藤村 博之 8 最優秀賞 株式会社 恵那川上屋(岐阜県恵那市) 12 優秀賞 株式会社 トーケン(石川県金沢市) モルツウェル 株式会社(島根県松江市) 20 特別賞 八雲製菓 株式会社(山梨県甲府市) 五條運輸 株式会社(奈良県大和郡山市) 社会福祉法人 愛誠会(岡山県新見市) 32 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 入賞企業一覧 1 リーダーズトーク No.89 同志社大学 政策学部 教授 太田肇さん 承認欲求の呪縛を避けるため問題を相対化する心のゆとりを 34 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生!こんなときどうする? 《第4回》 高齢社員が新しい仕事のやり方を覚えてくれません 40 江戸から東京へ 第119回 リンゴの木を植え続ける 吉田松陰 作家 童門冬二 42 高齢者の職場探訪 北から、南から 第124回 和歌山県 株式会社浜市 46 生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント 【第3回】 高齢社員が柔軟に働ける勤務制度を整えよう! 森中謙介 50 知っておきたい労働法Q&A 《第53回》 定年後再雇用と同一労働同一賃金、通勤手当の変更 家永 勲 54 いまさら聞けない人事用語辞典 第29回 「社員教育」 吉岡利之 56 お知らせ シンポジウムのご案内 58 日本史にみる長寿食 vol.348 ワカメの若返り効果 永山久夫 59 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.320 銘木の特徴を活かして美しく丈夫な仏壇を製作 仏壇製作 岩田芳樹さん、晴芳さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第64回] 送りがな問題 篠原菊紀 ※連載「生涯現役で働くとは」、「Books」は休載します 【P6】 特集 多彩な取組みで70歳超雇用を実現 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、厚生労働省との共催で、「高年齢者活躍企業コンテスト」を毎年開催しています。本コンテストは、高齢者が年齢にかかわりなく生涯現役で活き活き働くために、人事制度の改定や職場環境の改善などに、創意工夫をして取り組む企業を表彰するものです。 令和4年度は、厚生労働大臣表彰6編、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞8編をはじめとする30 編の受賞が決まりました。 本誌では、10月号と11月号の2回に分けて、コンテストの表彰事例を特集します。 今号では、厚生労働大臣表彰受賞企業事例をご紹介します。 【P7】 審査委員長からのメッセージ 新たな職域を創出し、高齢者が活躍できる多彩な取組みで70歳超の雇用を実現 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 教授 藤村博之  「令和4年度高年齢者活躍企業コンテスト」の審査が終了しました。審査委員を代表し応募いただいたすべての企業・団体関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。今回は全国から74編の応募を受け、厳正な審査の結果、厚生労働大臣表彰は、最優秀賞1編、優秀賞2編、特別賞3編、また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰は優秀賞8編、特別賞16編が入賞を果たしました。  最優秀賞の株式会社恵那川上屋(えなかわかみや)は、菓子製造・販売を通じて地域産業の活性化に貢献。自社農園を持ち、食材の栽培・研究から素材調達・加工、菓子の製造・販売まで幅広い業務を展開するなかで、多様な人材を適材適所に配置することで生産性を高め、だれもが輝ける社員主導型の会社を目ざす姿勢が高く評価されました。また、人事・評価制度の見直しや、閑散期を活用した新たな職域の創出など、時代の一歩先を行く企業として堂々の受賞となりました。  優秀賞の株式会社トーケンは、競争力強化のため、他社を定年退職した高齢者を戦力として採用するとともに、教育機関を開設して若手育成にも注力。また、IT化を推進して、高齢者が遠方の現場に技術指導できる仕組みを構築するなど先駆的な取組みが高く評価されました。  同じく優秀賞のモルツウェル株式会社は、高齢者向けの食品宅配サービス業において高齢者を積極採用。社員が自身でキャリアをデザインできる体制を整え、社員一人ひとりのモチベーションが高まり、売上げもよい結果を生み出していることが評価のポイントとなりました。  特別賞の八雲(やぐも)製菓(せいか)株式会社は、60歳以上の社員が4割を超えており、年齢に関係なく個々人の努力や実力に応じた人事評価・賃金制度を整備。また、高齢社員が作業する様子を撮影した動画を、若手への技能継承や作業の安全確保に活用していることなどが高く評価されました。  同じく特別賞の五條(ごじょう)運輸うんゆ)株式会社は、食品の一次加工や倉庫内作業など、高齢者が働ける新たな職域を創出。また、定年制を廃止し、本人の希望を尊重する柔軟な働き方に対応し、高齢者を含む多様な人材が活き活きと働き続けられる職場環境の構築が高い評価を受けました。  同じく特別賞の社会福祉法人愛誠会(あいせいかい)は、人手不足が続く介護業務において、「キッチンヘルパー」や「見守りヘルパー」など、介護職を補助する新たな職域を創出し、その業務を高齢者がになうことで、きめ細やかな介護サービスの提供につなげています。  70歳までの就業機会確保が求められているなかで、意欲的な取組みを行う企業が多く、例年になくレベルの高いコンテストとなりました。年齢の上限なく雇用を継続する企業や、再雇用後も処遇を落とさない企業のほか、ICT化の推進により高齢者の負担を軽減するとともに、それにより生まれた余裕を別の業務で活用するなど、いまの時代ならではの取組みも見られます。ぜひ、こうした取組みを参考にしていただき、高齢者が働きやすい職場づくりに取り組んでいただきたいと思います。 【P8-11】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 多様な人材を適材適所に活用しだれもがいきいき働ける職場づくりを推進 株式会社 恵那川上屋(えなかわかみや)(岐阜県恵那市) 企業プロフィール 株式会社 恵那川上屋 (岐阜県恵那市) 創業 1964(昭和39)年 業種 食材栽培、菓子製造、菓子販売 社員数 318人(2022年6月1日現在) 60歳以上 47人 (内訳)60〜64歳 21人(6.6%) 65〜69歳 10人(3.1%) 70歳以上 16人(5.0%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員70歳まで再雇用。その後は一定条件のもと年齢上限なく再雇用。現在の最高年齢者は79歳 T 本事例のポイント  株式会社恵那川上屋は、1964(昭和39)年6月に岐阜県恵那市で産声を上げた。創業以来、栗きんとんをはじめとする栗菓子中心の菓子製造販売業を展開。現在では、岐阜県内に8店舗、愛知県に2店舗、東京都に1店舗を構える。また、栗以外にも地元の農産物の特性を活かした菓子の開発に取り組むなど、地域に根ざした事業を展開してきた。  顧客、生産者、社員の三者の喜びをつなぎ、すべてにおいてそれを貫き、あらゆる人を満たして大きな喜びを生み出すという意味を込めた「環喜、貫喜、大歓喜」を経営理念に掲げ、社員のだれもが気持ちよく働ける職場づくりに取り組んでいる。 POINT 1 食材栽培から、生産、販売、運送の幅広い業務を行うなかで、多様な人材を適材適所に配置し、生産性向上に取り組んでいる。 2 高齢社員の戦力の維持・向上を目ざし、65歳定年、希望者全員70歳まで嘱託社員として再雇用、その後一定条件のもと年齢の上限なく再雇用する制度を導入した。 3 正社員に新たな職能等級制度、評価制度、賃金制度を導入し、納得性の高い制度づくりを推進。高齢者が多いパート社員は、役割遂行レベルに応じて3クラスに分け、戦力化と定着化を図っている。 4 製造部門では、最新の設備を導入し、高齢社員の負担軽減を図っている。 5 高齢社員の職域の創出を図り、閑散期を利用してトマト栽培を行っている。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1964年に創業。1978年に有限会社ブルボン川上屋を設立し、2001(平成13)年に株式会社里の菓工房への社名変更を経て、2008年7月には株式会社恵那川上屋に社名を変更した。現在は岐阜県内に8店舗、愛知県に2店舗、東京都に1店舗を展開している。  自社農園での栗の栽培・研究から、素材調達・加工、菓子の開発・製造・販売まで、自社で一貫して行い、栗の品質を追求するとともに、各生産地をネットワーク化している。  また、同社が普及・展開した超低樹高栽培法で育てられた“超特選栗”を加工・販売するなど、6次産業化の推進とともに、地産地消を進め、農家の収益改善・にない手確保などの地域産業活性化を通じた地域貢献を目ざしている。  社是である「喜び」を実現するためには社員全員の積極的な経営参加が不可欠との考えから、社員参加型プロジェクトに注力しており、このなかで若手から高齢者まで、多様な人材がそれぞれ期待される役割を果たすなど、社員全員が活躍できる職場環境を実現している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員数318人中、60歳以上の社員は47人で14.8%を占めている。最高年齢者は79歳である。2017年に正社員の定年・継続雇用制度を改定したため、新制度による嘱託社員数は現在2人のみである。  従来の制度では正社員について定年60歳、希望者全員65歳までの再雇用だったが、ほとんどの社員が再雇用を希望しており、社員の「働きたい」という要望を受けて、2017年に定年・継続雇用制度の見直しを行い、改定した。また、近年業容が拡大するなかで、人材不足感が強く、経験を積んだ高齢社員の活用が必要であったため、定年・継続雇用制度や人事評価制度・賃金制度等の見直しを進めたという背景もある。  高齢社員は商品知識が豊富で、同社の商品が贈答に用いられる慶弔にも詳しいため、お客さまの立場に立ったていねいな対応ができ、若手社員のよき手本となっている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼高齢者雇用制度の改定  2017年に、正社員について定年65歳、希望者全員70歳まで再雇用し、その後は一定条件のもと、年齢の上限なく再雇用する継続雇用制度を導入した。制度改定の背景には高齢社員の戦力の維持・向上を図るとともに、だれもがスキルや能力を発揮できる職場づくりを目ざしたいという考えがあった。 ▼正社員の職能等級制度、評価制度、賃金制度の新規導入  2019年4月に、仕事と賃金のミスマッチをなくすための、職能等級制度を採用した。この制度は、正社員がになう責任レベルを5段階の等級に区分し、それぞれの責任内容を「責任等級説明書」で定義するというもの。また、これにあわせて、評価制度と賃金制度も新規に導入した。評価制度は、人材育成・能力開発、給与、人材配置とも連動しており、会社が策定した「人事考課ガイド」で、社員に人事考課の目的や制度運用をわかりやすく説明している。また、賃金制度については、責任区分と経験習熟度に沿った号俸を組み合わせた賃金表として整理し、昇給ルールを開示することにより、社員からは将来を見通しやすいと好評を得ている。 ▼パート社員の定年制度および評価・処遇制度について  パート社員の定年は65歳。その後は年1回の面談、本人の意思、人事評価等をふまえて、再雇用の可否を判断している。  パート社員は、高齢者が多いことから、その戦力化を促進するため、2019(令和元)年に評価・処遇制度を改定。パート社員の役割・責任分担を明確にするなど、制度の見直しを行い、「クラス制度」、「人事評価制度」、「時給制度」の三つの制度を整備した。クラス制度は、役割遂行レベルに応じて3クラスにわかれ、クラス別の人事評価表に基づき評価を行い、クラス給を設けるなど時給構成の“見える化”を図り、パート社員のモチベーション向上、成長をうながしている。 ▼短日・短時間勤務による柔軟な働き方  パート社員の希望に柔軟に対応するための短日勤務・短時間勤務を取り入れているほか、製造や販売部門では高齢社員が対応しやすい早朝時刻に始業時間を設定するなど、社員の生活に配慮した勤務時間を設定している。 ▼就業規則の柔軟な運用による休憩時間の確保  栽培・製造・販売部門では、お昼休憩とは別 に、小休憩を午前・午後とも10分ずつ有給で設け、適度な休息による生産性・品質向上、安全確保を図っている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼トップの方針の共有と社員参加型プロジェクトによる事業参画  年1回行う経営計画発表会で、経営トップの方針、考え方を全社員で共有しているほか、社長が定期的に「栗人(くりと)通信」という情報発信を行っている。経営トップの思いを全社員で共有したうえで、ボトムアップ型、参加型の業務運営につなげている。  また、顧客サービス向上や営業戦術、商品開発と生産性向上を目ざし、社員参加型プロジェクトに注力。社内の風土改善や理念浸透を図る「インナーブランディングプロジェクト」、商品開発や品質向上などのための「わくわくシートプロジェクト」、地域の方にも参加してもらうイベント「工房感謝祭プロジェクト」などを実施している。経験豊かな高齢社員によるアドバイスをもとに若手社員の提案を実現することで、会社発展の両輪としたいという経営トップの考えが、プロジェクト強化のきっかけになった。 ▼販売マニュアルの作成  各店舗におけるサービスの向上を図るため、入社から3年間、販売業務にあたる社員向けに販売マニュアルに基づく教育(OJT)を実施し、技術・技能の継承に努めている。また、教育を受けた新人の業務を高齢社員がフォローすることで、教育の効果を高めている。 ▼菓子職人の育成と資格取得支援  菓子の原料の質にこだわる同社では、良質の黒糖や安納芋(あんのういも)を確保するため、鹿児島県の種子島に工房を設置し、サトウキビ収穫後の10月から3月までの約半年間社員を派遣している。種子島での砂糖づくりの技術継承のため、「砂糖杜氏(とうじ)」という資格を創設し、現在5人の有資格者がいる。また、可児(かに)工場では洋菓子製造分野での職人育成を行っているほか、今後は和菓子分野でも展開を予定している。  さらに、正社員を対象に、小型移動式クレーン運転技能講習や玉掛け技能講習の受講、製菓衛生士や栗栽培関連資格の取得などに対し手当を支給、社員のスキルアップを支援している。 ▼社内研修・社外研修によるスキルや実践力の向上  新入社員研修、階層別研修、中堅リーダー研修や、国内外への視察により正社員のスキル向上・実践力向上を図っている。なお、部署ごとの「チームビルディング研修」については、パート社員も対象としている。 ▼新職場・職務の開発  閑散期を利用した新規事業としてトマト栽培を行っている。糖度7%以上のまるでお菓子のように甘いトマトを「おかしなトマト」と命名して販売したところ売れ行きは好調で、今後は、トマトハウスの増設や栽培業務にあたる高齢者や障害者の増員を予定している。  さらに高齢社員の新しい職域として、ポリフェノールが豊富な栗の皮を粉末にして菓子に練り込んだり、農家から出た規格外の野菜をジュースやペーストにして食品や健康食品に加工する業務を2022(令和4)年中に開始する予定である。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼設備導入による高齢者負担の軽減  和菓子の製造工程では、これまでは目視で行ってきた栗の色彩を識別する機械を導入し、高齢社員の視力低下をカバーしている。また、栗きんとんの紙による包装作業を機械化した。包装は繊細な作業であり、高齢社員の疲労度も高いことから機械化にふみ切ったもので、将来的には栗を絞る作業の機械化も検討している。  なお、2020年に開設した可児御嵩(かにみたけ)の新工場はバリアフリー化するとともに、照度の高い照明を導入するなど、作業環境に配慮している。  トマト栽培においては、重い籠(かご)を持たずに座ったまま集荷して移動できる作業車を導入した。また、ハウス内は見通しが悪いため、作業場所をホワイトボードに書いて共有するとともに、リーダーが作業状況を把握・確認して労働災害防止を図っている。 ▼新型コロナウイルス対応  新型コロナウイルス感染防止について対策本部を立ち上げ、「恵那川上屋 with コロナ対応ガイドライン」に基づき、対応している。また、随時、社内グループウェアを通じ社員に注意を喚起している。 (4)高齢社員の声  和菓子製造部門で働く渡辺れい子さん(70歳)は勤続20年。毎日8時30分〜13時までの勤務を元気にこなしている。忙しいほうが性分に合っているそうで、手が少しでもあくと片づけや掃除の作業を見つけては体を動かし続けている。「和菓子づくりが大好きで、毎日楽しく働かせてもらっています。体が続くかぎりがんばりたいと思います」と笑顔で語る。 (5)今後の課題  企業理念の「環喜、貫喜、大歓喜」の精神で、お客さま・生産者、そして社員とその家族みんなが幸せになれる会社を目ざして、よりよい未来に向かって取組みを進める“フィードフォワード”の考え方のもと、社員が主役となる、ボトムアップ型マネジメントにより、社内における課題解決および社内制度・設備などの一層の充実化を視野に入れている。  また、地域の発展に寄与していくためにも雇用の拡大を図り、高齢者や障害者の戦力化を進め、ダイバーシティ経営を実現していく。若手、中堅、ベテラン・高齢者、障害の有無、性別にかかわらず社員みんなが意見を出し支え合って取り組んでいけるような、社員主導型の会社を目ざしていく。 写真のキャプション 恵那川上屋恵那峡店 トマト摘み作業では、着座して移動できる作業滑車を使用。作業時の負担を軽減している 和菓子製造部門で働く渡辺れい子さん(70歳) 【P12-15】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 高齢社員の豊かな経験と技術に学び一人ひとりが成長できる職場環境を構築 株式会社 トーケン(石川県金沢市) 企業プロフィール 株式会社 トーケン (石川県金沢市) 創業 1970(昭和45)年 業種 総合建設業(建設総合サービス業) 社員数 84人(2022年4月1日現在) 60歳以上 13人 (内訳)60〜64歳 5人(6.0%) 65〜69歳 4人(4.8%) 70歳以上 4人(4.8%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員70歳まで再雇用。その後は、希望者全員、年齢上限なく再雇用。現在の最高年齢者は75歳 T 本事例のポイント  株式会社トーケンは、1970(昭和45)年7月の創立から半世紀にわたって業容を拡大し、特にこの15年は、建設総合サービス業を通じて地域社会への貢献を目ざしてきた。  「人を大切にして企業を継続させることが社員を幸福にする」という経営信念のもと成長を続け、2008(平成20)年からは高齢者の積極的な雇用に取り組んできた。高齢者が長年つちかった経験や技術が活かせる職場づくりを進め、同時に若手育成にも力を注いでいる。「人生100年時代をいかにして元気に過ごすか」という思いのなかで、社員一人ひとりを大切にする健康経営Rを推進し、全社一丸となった活動を展開している。 POINT 1 競争力と技術力強化のため他社を退職した高度な技術を持つ高齢者を積極的に採用する「技師長制度」を整備。社員や協力会社から技術者などを推薦・紹介してもらう「リファラル採用制度」を2021(令和3)年に創設した。 2 2021年から希望者全員70歳までの再雇用制度を導入。65歳で定年を迎えた社歴が長く経験豊富な高齢社員が、再雇用後は後継者育成に注力している。 3 新卒入社の社員に入社直後から5カ月間教育訓練を実施する「トーケンアカデミー」を2020年から開設。若手の教育を徹底している。 4 建設現場のライブ映像から状況を把握・分析するなどIT化を推進し、高齢社員の移動負担の軽減や現場作業の危険回避に取り組んでいる。 5 高齢者介護施設紹介事業や障害者就労支援事業などの社会貢献につながる事業では、経験豊富な60代女性社員が中心となって活躍しており、業績と企業イメージの向上につなげている。 U 企業の沿革・事業内容  同社の前身は、1970年に地元企業の現・小松マテーレ株式会社の関連会社として設立された北陸東レハウジング株式会社であり、その後1975年に株式会社トーケンに社名を変更した。本業である建設事業(社屋や工場、商業施設、病院や集合住宅建設)をはじめ、不動産開発事業(商業店舗開発、宅地・工業団地開発)、賃貸管理事業(賃貸マンション管理)、グリーンビズ事業(屋上・壁面緑化)、高齢者介護施設紹介事業(高齢者介護施設の相談・紹介)などを展開。地域に貢献する「地域スーパーゼネコン」として地歩を固めてきた。なかでも環境に貢献するグリーンビズ事業や社会貢献を目ざす高齢者介護施設紹介事業は企業イメージの向上に大きな役割を果たしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員数84人中、60歳以上の社員は13人で15.5%を占めている。最高年齢者は75歳である。  同社は企業競争力強化を目ざして、外部からの採用を含め高齢者雇用に注力しており、現会長自らも、他社で定年まで勤めた後、社長として招へいされて同社に入社した経歴の持ち主である。現会長は社長に就任時より、さまざまな改革を行った。社員の人材育成こそ喫緊の課題だと考え、新卒採用を強化しつつ技術力をはじめとした必要な教育訓練を充実させ、地元の協力業者を率いてしっかりと工事を管理監督できる人材の育成に取り組んできた。  人材育成のにない手として目をつけたのが、経験豊富な高齢者だ。会長自身の出身会社や同業現役社員に対しては定年後に同社に入社することをかけあうとともに、すでに定年退職している人材には入社の声かけを行った。入社が実現すると彼らを技師長に任命して、機械・電気設備、品質管理等各部門の指導役とし、一人には若手を指導する企業内アカデミーの校長を委嘱した。  人材育成と並行して、多柱経営と称した新事業の柱を打ち立てる経営方針のなか、地域貢献にも取り組み、2012年8月に高齢者介護施設紹介事業に進出、2021年には障害者就労支援事業にも進出した。この二つの分野には60代の女性社員をそれぞれ事業の中心をになう人材として抜擢。新しい事業への進出は、それまで建設会社としての同社の企業イメージを一新し、会社を大きく成長させた。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼定年の延長と継続雇用制度  2021年2月に就業規則を改定し、定年を65歳に延長、70歳までの希望者全員を再雇用する制度を導入した。これにより高齢期に近かった社員や再雇用者のモチベーションが向上した。高齢社員には、それまでつちかってきたキャリアを継続させて後継者育成に努めてもらうほか、適性を考えて新規事業や社会貢献事業に起用するなどしている。再雇用者の処遇は与えられた役割と貢献度をもとに経営トップの会長と社長が決定する。現在、さらなる高齢人材の活躍に向け、70歳までの選択定年制度を検討中である。 ▼多様な勤務形態  定年後の再雇用については、一般社員と同様のフルタイム勤務と、所定労働日数または所定労働時間が少ない勤務の2種類を設定しており、本人のライフスタイルに合わせた勤務形態を選択することができる。 ▼技師長制度・顧問制度  技術力と与信力向上のため、大手ゼネコンを定年退職した人材を技師長や顧問として招く「技師長制度」、「顧問制度」を2008年から導入した。技師長は週休2日もしくは3日のフルタイム勤務。顧問は常勤ではなく、週数日や月数回の頻度で若手や中堅の指導にあたる。技師長や顧問は社内研修会の講師としても活躍しており、各分野のレベルアップに貢献している。 (2)高齢社員を戦力化するための工夫 ▼社会貢献事業で高齢女性が活躍  二つの地域貢献部門を創設して地域共生社会に貢献しており、それぞれの事業で60代の女性社員が抜擢され、活躍している。高齢者介護の悩みに応えるため設立した高齢者介護施設紹介事業では、68歳の女性社員がセンター長をまかされており、相談者からの感謝の言葉が、やりがい・生きがいにつながっている。また、地域共生社会実現を目ざした障害者就労支援事業「Buddy(バディー)」では、63歳の女性社員が細やかな気配りを発揮し、「休みがちだった子が仕事を楽しみ、毎日来るようになった」という指導員の声にやりがいを感じている。 ▼胎動塾スタート  「企業が成長するも停滞するも人」という信念のもと、社員に意識改革をうながすとともに、自ら研鑽の場とする「胎動塾」を2008年にスタートさせた。社員のなかから毎月2人、年間24人が、経営のトップからテーマとともに指名されて30分の発表を行うもの。かつては集合形式で行っていたが、IT環境の充実が進み、リモート形式で各事業所や現場からも参加できるほか、動画配信も行っている。発表者はテーマに沿って学習を深めるため、知識が身につくのはもちろん、プレゼンテーションの技法も習得でき相乗効果は大きい。また、全員参加であるため業務上の体験や考え方について社内での理解が広がり、刺激となっている。若手や中堅にとっては能力向上の絶好の機会となり、また、ベテランや高齢社員にとっては経験やノウハウ伝承の場となり、世代を超えたチームワークを醸成する効果がある。  高齢社員の発表テーマはさまざまで、ある部長職は自身が担当した二つの建設現場(大きなクレームとなった失敗例と同社初の超大型工事の成功例)を披露し、それぞれの体験から得た教訓を伝え、中堅や若手社員の共感を呼んだ。 ▼トーケンアカデミーの開設  2020年に、現場技術者育成のための社内研修所「トーケンアカデミー」を開設した。これは、新入社員が現場監督として安心してスタートできるよう、入社後5カ月間にわたって研修を行うプログラム。新入社員はカリキュラムに沿って現場研修も行いながら仕事に備えていく。また、新入社員だけでなく若手社員もフォローアップの対象となる。  大手ゼネコン退職後、校長をまかされた技師長は建設関連資格を数多く持ち、建物の診断業務も担当している。受講する若手社員にとっては教わる内容が直接現場で活きるだけではなく、自身のキャリア形成の参考にもなり、技術者としての自覚や意識の向上につながる。加えて一緒に学ぶことで同期意識も醸成され、講師も含め社内につながりができることで職場や会社への定着効果も期待される。技師長は講師として自身の知識や経験を伝えるだけではなく、育成計画やカリキュラム、教材作成もになう。また、各種資格(建築士や施工管理技士)取得を目ざす若手に受験勉強についても指導を行っている。トーケンアカデミーの講師には高齢社員が登壇することも多く、校長や講師の高齢社員にとっては若手社員の育成がやりがいとなり、お互いのモチベーション向上につながっている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼IT活用の取組み  2014年から金沢本社と小松本社の2本社制とした。そのため、建設現場と本社間の情報共有の円滑化のために、2017年から本格的にIT活用を強化した。建設現場に高性能ライブカメラを設置して遠方の現場に移動せずとも本社内で状況が把握できるようにしたほか、テレビ会議システムや音声・ビデオ通話、タブレット、スマートフォンなどを活用しコミュニケーションの充実を図っている。また、現場ライブカメラのズーム機能(60倍ズーム)や高解像度、全方位確認機能などにより、高齢社員は現場映像から状況を把握・分析して現地の監督者に適切なアドバイスができるようになっている。 ▼健康経営の推進  「社員の健康が会社を元気にする」との考えのもと、2018年から社員の健康を会社でサポートするための「健康経営」に取り組んでいる。以前は、健康管理に対する社員の意識は低かったが、人間ドック受診費用を全額会社負担としたほか、定期健康診断にがん検診や歯科検診を追加するなど取組みを強化した結果、健康に対する意識が高まった。なお、このほか、さまざまな取組みも評価され、2019年から4年連続で経済産業省の健康経営優良法人認定を受けている(2021年から2年連続ブライト500認定)。 ▼福利厚生  毎月1回開かれる全社員参加の例会では、その月に誕生日を迎える社員に記念品や、資格取得や結婚・出産などの慶事の祝い金が社長から手渡され、全社員が拍手で祝福するのが慣例となっている。さらに、コロナ禍前は、お花見や温泉地での忘年会、ゴルフコンペ、ボウリング大会などのレクリエーションにも力を入れており、社員間のコミュニケーション促進の場となっている。 (4)そのほかの取組み  現場管理や設計部門では、技術者の高齢化にともない、人材確保が困難となっている。そこで、2021年より採用活動の強化を目的に、社員や関係者から知人などを紹介してもらう「リファラル採用制度」を導入した。この制度により2022年春には2人の高齢技術者が入社。技術力の強化や技能の継承につなげている。 (5)高齢社員の声  他社を定年退職した後、同社に入社し、現在は技師長を務める酢馬(すま)峯男(みねお)さん(75歳)は、「現会長から『ぜひ当社に来てほしい』と打診されて入社し、12年以上が経ちました。技術継承のために指導してきた中堅層は多くの資格取得に挑戦して会社に貢献してくれています。また、新しく入社した人にもノウハウを伝えることができ、私の働きがいにつながっています」と、仕事の醍醐味を話す。高齢社員の背中を中堅や若手社員が懸命に追いかけていることがうかがえる。 (6)今後の課題  これまで経験したことのないコロナ禍の影響もあって、時代が大きく変化しつつあるなかで、決して変化を恐れず「社員が主役の企業」を目ざし、地域の未来を牽引する役割をになっている同社。さらに、高齢社員が経験や技術を活かし、若手や中堅社員の手本となれる職場環境を創出するなかで、多様な人材が力を合わせて「しなやかな強さ」を発揮し、だれもが活躍できる職場づくりを目ざしていく。また、時代の変化を敏感にとらえながら、常に新しい事業に取り組み、地域共生社会の実現に貢献する、という目標を掲げている。 写真のキャプション 金沢本社(上)、小松本社(下) 障害者就労支援事業「Buddy」生産作業の様子 若手を指導する酢馬峯男さん(中央) 【P16-19】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 高齢社員の活躍に鼓舞されて全社員がキャリアアップに挑戦 モルツウェル 株式会社(島根県松江市) 企業プロフィール モルツウェル 株式会社 (島根県松江市) 創業 1996(平成8)年 業種 小売業(高齢者向け食品製造販売) 社員数 147人(2022年5月31日現在) 60歳以上 45人 (内訳) 60〜64歳 16人(10.9%) 65〜69歳 14人(9.5%) 70歳以上 15人(10.2%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員70歳まで再雇用。その後も運用により就業規則の解雇規定に抵触しないかぎり、年齢上限なく再雇用を行う。現在の最高年齢者は82歳 T 本事例のポイント  モルツウェル株式会社は、1996(平成8)年に弁当宅配の個人事業として創業。弁当の宅配を通じて、地域の独居高齢者の問題にかかわることになり、「高齢者を支えるためには社員も幸せでなければならない」という思いが経営方針の原点となっている。  創業以来、コミュニケーションを大切にしながら、「一人当たりの付加価値額」の見える化を行い、社員全員が会社経営に参加して、科学的に考える仕組みを構築している。 POINT 1 独自に開発した「人事評価システム」、「成長シート」により人事評価を実施。業績に応じて5段階に評価し、賞与に連動する仕組みを、定年後の嘱託社員(作業職以外)にも適用。 2 定年後の嘱託社員も含め、全社員を対象とした改善報告制度を運用し、承認された改善提案には報奨金を支給。 3 高齢入居者の煩雑な食事対応を効率化させるため、厨房から食材製造工場までシームレスにつなぐデジタル受発注システムの開発を進めている。また、AI 画像解析を用いて配膳作業の誘導支援を行う「食事サービス総合支援システム」により食事の質的向上に取り組んでいる。 4 毎月「一人当たり付加価値額」を算出し、全社員が共有して、経営の状況を肌で理解できるようにしている。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1996年に弁当宅配の個人事業としてスタートした。弁当宅配サービス事業を拡大するなかで、独居の高齢者の食事の問題が深刻である現実に直面し、高齢者向け配食事業に着手。2004年からは、高齢者施設向けの真空パック食材製造・販売を開始した。以来、全国の高齢者施設向けに調理済み食材の企画・製造・販売を行うとともに、高齢者施設給食業務の受託サービス、在宅高齢者配食サービス、買い物代行サービスなどを展開している。2022(令和4)年9月には、松江市内に新工場を建設し、生産数量の大幅な増産を予定している。  「島根県の現在の高齢化状況は2040年の日本全体の状況と同じ」※との認識のもと、地域社会の高齢化、社員の高齢化の問題にも積極的に取り組んでいる。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員数147人中、60歳以上の社員は45人で、30.6%を占めている。最高年齢者は82歳である。定年は65歳。定年後は就業規則により希望者全員70歳まで再雇用しており、70歳以降も運用により年齢上限なく働き続けることができる。  65歳定年以降の社員の配置としては、例えば長年総務業務にたずさわった人にはこれまでつちかった知識やスキルを最大限活かして活躍してもらうため、総務業務の指導役に加え、社員からの相談窓口(社会人としての生活などに関する一般的な相談に対して、社会人の先輩として対応)を担当させている。  同社は、比較的若い企業であり、事業規模を急拡大していくなかで、企業として、現場の仕事の管理だけでなく、社員管理のノウハウや、若い管理職の補佐・育成を行う人材も必要となったため、産業雇用安定センターを活用して大企業(製造業)OB を中途採用した。  正社員は、@作業職、A総合職、B監督職、C管理職に区分されるが、定年後の再雇用では、本人と面談し希望を聞きながら、「総合職相当と会社が判断すれば総合職」というように柔軟な対応を行っている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼定年の延長と継続雇用  2012年に、知識やスキルを身につけた高齢社員にさらに活躍してもらうため、定年年齢を65歳に引き上げるとともに、再雇用年齢についても「希望者全員65歳」から、「希望者全員70歳まで」に引き上げた。70歳以降についても、就業規則の解雇規定に抵触しないかぎりは、運用により年齢の上限なく再雇用を行っている。 ▼賃金の対応  2021年に「当社で働く社員は、無期雇用も有期雇用も待遇差を設けない」という考えのもと、職務内容が同じならば賃金テーブルは同じとした。これにより、定年前の正社員と再雇用の嘱託社員との待遇差を解消した。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼評価制度のシステムを開発  2018年2月に、「人事評価システム」、「成長シート」を自社開発。社員一人ひとりが目ざすキャリアを自身でデザインし、ステップアップできる制度を整備した。これは、実際に仕事をしていくうえで、「自分軸」を見すえて自身の成長について考える機会となっている。例えば高齢社員であれば、「パソコンスキルの向上」などを目標にあげる人も多く、社員からは「将来設計が考えられるようになった」と歓迎されている。この人事評価システム・成長シート導入により、3年連続で業績はアップしており、一人あたりの付加価値額も25%アップ、平均賃金も年平均で4.25%上昇している。  また、職種にかかわりなく、日々の業務で生じた課題や問題点を解決するためのアイデアや実際の改善策について申請してもらい、それが承認されると、報奨金が支給される「改善報告制度」を運用している。 ▼作業手順書の見直し  従来の食品製造過程の「作業手順書がわかりにくい」という社員の声を受け、見直しを行った。手順書の内容を工程(一つの作業)ごとに分け、写真を多用。高齢社員からは「機械操作など複雑な作業も写真がありわかりやすくなった」と好評である。この手順書は、常に社員の声に耳を傾け、定期的に改訂していくことを目ざしている。 ▼情報共有のための取組み  同社では業務中にリアルタイムで情報共有を行うため、ビジネスチャットシステムを導入している。これは、宅配だけではなく、独居の高齢の方の見守り(徘徊の発見や緊急時の救急車の出動要請)にも非常に役立っている。 ▼外国人技能実習生や障害者とのペア就労  同社では、高齢社員が、外国人技能実習生や障害のある社員の業務管理から技術支援・指導をになっている。一方で、高齢社員が対応に苦慮することの多い力仕事は技能実習生が担当するなど、相互にフォローし合うことで、それぞれのモチベーションアップにつながっている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼食事サービス総合支援システムの開発  同社の介護施設の配膳業務をになう厨房受託サービス部門の社員は、32%が65歳以上の高齢社員となっている。しかし、配膳業務は定められた時間までに間違いなく配膳を行う必要があり、厳しい業務内容が高齢社員の負担となっていた。  また、介護施設における入居者の食事は、例えば食材の切り方、味つけ、服用する薬との相性など、1施設だけで約300種類のバリエーションがある。加えて、日ごとに異なる入居者の体調も考慮する必要があり、一人ひとりの状況に応じた食事対応については、ベテラン社員の記憶と経験に頼って乗り切ってきた状況がある。そのため、後継者が育ちにくく、人材不足や社員の高齢化への対応も必要であることから、作業負担の少ない効率的な配膳業務の構築が企業経営上の課題でもあった。  そこで同社では、真空調理済み食材や再加熱キャビネットを導入し、作業の効率化を図るとともに、「食事サービス総合支援システム」開発に取り組んでいる。これは、高齢入居者一人ひとりで異なる複雑な食事情報について、介護施設厨房から食材製造工場までシームレスにつなぐデジタル受発注システムを構築し、ICチップつき食器やAI画像解析「ARグラス」を用いて配膳作業の誘導支援を行う、というもの。「だれでも楽に配膳ができるシステム」を目ざし、厨房のDX化を推進する取組みだ。このシステムは特別な知識や経験を必要としないことから、高齢社員はもちろん障害者雇用の面でも期待が高まる取組みといえる。 ▼安全衛生、健康管理  年間安全衛生計画に基づき、安全衛生委員会メンバーで各事業部を巡回し、安全衛生の観点から作業現場の危険個所の報告と「カイゼン」を行うとともに、各業務における危険予知訓練を行っている。宅配業務における無事故の実績や、経営に直結する安全確保の取組みが評価され、令和4年度に一般社団法人島根県安全運転管理者協会の優良安全運転管理者表彰を受賞している。  社員の健康管理面では、朝礼時にラジオ体操を実施するとともに、2021年にはパートナー企業であるスポーツジムのインストラクターを招き、腰痛予防セミナーを開催した。  そのほか、同社では本社横にある空き家を倉庫、打合せスペース、休憩室として活用しているが、休憩室を和室に改装するとともに階段に手すりを設置した。休憩室の環境整備においては、「相談窓口」を担当している高齢社員が中心となって社員の声を集約し、実現したものである。 (4)そのほかの取組み  同社は、経済産業省「地域未来牽引企業」・「はばたく中小企業300社」に選定され、厚生労働省「もにす認定」を受けており、企業のモットーとして、「世の中を良くし、故郷を守り、昨日より今日、今日より明日」を掲げ、少子高齢化、過疎化が進行するなかで、少しでも地域に貢献したいという理念に基づいて、日々活動している。地域貢献の一例として、2011年より「ごようきき三河屋サービス」という、高齢者などを対象とした買い物弱者支援サービスを実施しており、現在、同事業を通じて、地域の高齢者の「見守り」も行っている。 (5)高齢社員の声  宅配業務を担当してい長妻(ながつま)誠(まこと)さん(67歳)は「独居の高齢の方の見守りができていることが自分のやりがいになっています。また、評価制度が充実していて、例えば毎月『一人当たり付加価値額』が全社員に示されるため、『自分もがんばって売上げを伸ばさなければ』という気持ちになります。長期的に付加価値額を落とさないためには、宅配の安全・無事故が非常に重要だということを肝に銘じて業務にのぞんでいます。社員一人ひとりにとって、業務全般に対して問題意識が高まる仕組みだと思います」と話す。 (6)今後の課題  高齢化率の高い島根県で、高齢者が活躍できる職場を創生していくことこそ地域貢献と考え、高齢者が活躍できる職場環境を実現するとともに、年齢、性別、国籍にかかわらず、社員の一人ひとりが人生の生活設計と、キャリアアップができる仕組みを引き続き構築していく考えだ。  厨房部門の人材不足の問題は喫緊の課題であり、これを解決していくため、「食事サービス総合支援システム」の開発部門を新工場に併設する予定だ。これまで現地厨房で行っていた加工業務を製造工場で一括加工し流通させるこのシステムの活用で、島根県の第4次産業革命への寄与を視野に入れている。 ※ 2040年の高齢化率は35.3%と推定されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」より) 写真のキャプション 会社外観 高齢社員のていねいな仕事は若手社員の手本となっている 作業を効率化する再加熱キャビネット 腰痛予防セミナーの様子 会社への貢献に対して表彰。左から2番目が長妻誠さん 【P20-23】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 高齢社員の技術やノウハウとITを組み合わせ作業の効率化と技術継承を実現 八や雲ぐも製菓 株式会社(山梨県甲府市) 企業プロフィール 八雲製菓 株式会社 (山梨県甲府市) 創業 1950(昭和25)年 業種 菓子製造・販売ほか 社員数 53人 (2022年4月1日現在) 60歳以上 23人 (内訳) 60〜64歳 11人(20.8%) 65〜69歳 8人(15.1%) 70歳以上 4人(7.5%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。一定条件のもと70歳まで再雇用。その後、運用により年齢上限なく再雇用。現在の最高年齢者は78歳 T 本事例のポイント  八雲製菓株式会社は、1950(昭和25)年に山梨県甲府市で創業した。創業当初からの主力製品であるウイスキーボンボンをはじめ、甘納豆やペクチンゼリーなど、菓子製造・販売ひとすじに71年の歴史を重ねてきた。  「伝統的な菓子の味と技術を追求し、明日のお菓子文化を創造する」という経営理念をもとに、家庭的な雰囲気を大切にして事業を展開。社員の平均年齢が56歳と高いこともあり、高齢社員が働きやすい制度を整備するとともに、技能継承のために若手の育成にも力を注いでいる。また、職場のIT化を進め作業の効率化を図るとともに、全社員が健康で明るく働ける職場づくりを目ざしている。 POINT 1 2020(令和2)年に定年を65歳に引き上げるとともに、選択定年制度を導入。65歳以降は、一定条件のもと70歳まで、70歳以降も運用により、1年ごとの更新で再雇用を行う。 2 賃金制度、等級制度および評価制度を有機的・体系的に整理し、到達レベルや目標を明確化。個々人の努力や実力を適切に評価し、それに応じた給与体系を構築した。 3 2021年に業務効率改善のためにタブレット端末を導入した。このタブレットには、ベテランが作業している様子を品目ごとに撮影した動画が収録されており、若手への技能継承につながっている。 4 社長や管理職による個人面談を定期的に行い、個人の事情などについても遠慮なく相談できる体制を整備した。あわせて、部門ごとの会議や全社員が一堂に会した会議を開催するようにしたところ、ベテラン社員から業務改善や新商品開発に関する意見が多く出され、会社が活発な雰囲気となった。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1950年に甲府市で菓子製造・販売の事業を開始、創業71年を誇る。1978年に法人化し、現在の社名となった。創業以来、ウイスキーボンボンや甘納豆、ペクチンゼリーなどを製造し、全国各地の商社・菓子問屋・個人顧客への販売を行っている。1968年の全国菓子博覧会でウイスキーボンボンが技術優秀賞を受賞したのを皮切りに、これまで全国菓子博覧会などにおいて21件の受賞を果たしている。また、全国各地の農産物を利用した商品の委託製造なども行っている。  現社長が幼少のころから同社に勤めているベテラン社員も数名おり、社員を大切にする社風が定着率の高さにつながっている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員数53人中、60歳以上の社員は23人で全体の43.4%を占めている。最高年齢者は78歳である。  もともと高齢者が多い職場で、「高齢だから」という理由で仕事や給料を変えることがなかったこともあり、高齢者雇用について、特別な取組みはしてこなかったという。  このような「高齢社員の活躍があたり前の職場だからこそ高齢社員に頼り過ぎていた」ことを反省し、機構の65歳超雇用推進プランナーからアドバイスを受け、ばらつきがあった基本給を整えることから着手。賃金テーブルを作成し、人事考課を賞与や給与に反映させるなど、年齢にかかわりなく、役割に応じた賃金を決定する「役割等級制度」を導入した。だれもが十分に能力を発揮し、評価される制度が整備され、全社員のモチベーションが向上している。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼定年の延長と継続雇用  同社の50代の社員は20人で、全社員の37.7%を占めていることを鑑かんがみ、2020年に定年を60歳から65歳に引き上げた。また、65歳以降は、一定条件のもと70歳まで1年ごとの更新で再雇用を行う。70歳以降も、本人の健康状態や希望を優先し話し合いのもと再雇用を行っている。さらに、高齢社員のライフプランや選択の幅を広げるため、60歳以降の選択定年制も導入した。 ▼短日・短時間勤務制度  今後、高齢社員が増加することを見すえ、体力の低下や健康状態を考慮して所定労働時間を1日につき1時間から3時間の短縮または隔日勤務を希望できるよう制度化した。現在は短時間勤務を希望する社員は少ないが、家族の介護などが発生した場合に働き続けることができると、社員からは歓迎の声があがっている。 ▼賃金制度と役割等級制度  以前は基本給がそれぞれ異なり、高齢社員のなかには給与が高すぎたり、仕事のパフォーマンスに関係なく年功的に給与が上がるなど、社員のなかに不平等感があったため、技術レベルや役割の変化に応じた賃金・役割等級制度を策定した。同社は役職定年がないため、例えば定年前に係長だった者が定年後も引き続き係長を務める場合、給与は変わらない。また、定年を迎えて業務量を減らす場合、それに応じて給与も変化させることができるようになった。  賃金・役割等級制度は、一般職(T等級)、担当職(U等級)、係長(V等級)、課長代理(W等級)、課長(X等級)、部長(Y等級)の6段階あり、それぞれが1〜5級の5段階に分かれている。各級は35号に細分化され、評価に合わせて昇給させることが可能になっている。  また、「管理・専門階層」である部長・課長、「推進・指導階層」である課長代理・係長、「実務階層」である担当職・一般職は、それぞれに達成すべき要件や役割を設定。例えば担当職なら「組織的な判断力をマスターする。組織目標に参画し仕事の目標をもつ。応用動作範囲を広げる」、一般職なら「組織の基本ルールを理解し順守する。組織人としてのコミュニケーションを保つ。初歩的な応用動作をマスターする」などが定められている。 (2)高齢社員を戦力化するための工夫 ▼技能継承と人材育成  同社の高齢社員は技能継承と次世代の育成に力を発揮している。例えば、甘納豆づくりでは、「豆がどのような状態になれば次の工程に進むのか」といった熟練した感覚が大切で、それに応じてさまざまな機械を微調整しながら扱う方法などを、ベテランから若手に伝承する。また、同社では年齢に関係なく会社に必要な人材であれば、高齢者でも中途採用する方針である。例えば、以前製造業で働いていた高齢社員が経験を活かして工場内の手すりや甘納豆を煮る網をつくり、社内の営繕を担当するなど、これまでの知識・経験・技術を活かして活躍できる職場づくりを進めている。 ▼評価制度  同社では各期の会社目標、組織目標のもとで、「成果・達成」、「役割・スキル」を評価する。「成果・達成」では、個人の売上げの増加や、残業時間の削減などを目標にし、「役割・スキル」については、「課題形成」、「人材育成」、「人事管理」、「組織運営」、「業務遂行」、「リーダーシップ」などが6段階で評価される。定年後も基本的な評価方法は同じで、業績評価は賞与に、役割評価は等級・給与に反映される。 ▼IT機器の導入  職場のIT化を推進しており、2021年にタブレット端末を4台導入した。ビデオ撮影された高齢社員の作業方法や技術をタブレットでくり返し視聴して確認できるようになり、若手社員の習熟度の向上に役立っている。  一方で、一つひとつの作業状況を記録できるようになったことにより、万が一ミスが発生した場合、どの段階でミスが発生したのか追跡できるため、心身機能が低下しつつある高齢社員にとって業務のふり返りができることは安心につながっている。  また、このタブレットの情報を見ることができる65インチのモニターを工場に導入し、高齢社員がより大きな画面で作業を確認できるようにしている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼作業環境の改善 @大型エアコンの導入  甘納豆課では、創業当初から大鍋を複数使い豆を煮込む作業を行っているが、夏場の作業場の室温は40度以上になる。熱中症対策として大型扇風機を設置していたが、高齢社員には体力を消耗しやすく負担も大きかったことから、2021年にエイジフレンドリー補助金※を活用し、作業場に大型エアコンを3台設置した。 Aパワースーツの導入  高齢社員を含め重労働作業者にはパワースーツを着用してもらい、作業負担の軽減を図っている。パワースーツは30kg以上の重い材料を持ち上げる際などに起こりやすい腰痛の予防や、作業場の安全確保にも寄与している。 B事故防止対策  同社の社屋は旧小学校を改築した建物のため、構造が複雑で足場が悪い箇所が多いことから、危険箇所には「頭上注意」や「手すりにつかまってください」などのポスターを掲示し、事故防止対策に取り組んでいる。 C熱中症防止対策  ウォーターサーバーを数カ所に設置したほか、塩あめを配布し熱中症防止対策を行っている。 D休憩時間・休憩室の整備  作業にあたっては、帽子、マスク、ユニフォーム、手袋などの装着を徹底しており、社員は衛生管理に細心の注意を払っている。加えて、高温作業もあることから、コンディションや集中力を維持するため、毎日15時からの15分間を一斉休憩時間としている。また、ゆっくり体を休められる休憩室を整備している。 ▼社長面談  同社では、全社員が年に2回の社長面談を行っているが、高齢社員においては年4回実施。健康面や家庭状況、働き方に関する希望などについてヒアリングし、一人ひとりの状況把握を行っている。希望に応じて短時間勤務に変更するなど、柔軟に対応している。 (4)そのほかの取組み  同社の商品のラインナップは何十年と続くロングセラー菓子が中心となっており、新商品開発は急務でコスト削減なども喫緊の課題となっている。そこで、全社員から新商品開発案やコスト削減案を募集したところ、高齢社員から高齢者目線による新商品の提案や、知識・経験をもとにしたコスト削減案が提案された。また、社員が親しみを持てる経営理念の「標語」を募集したところ、ある高齢社員の提案が採用され、社内表彰を行った。  同社では障害者雇用にも積極的に取り組んでいる。創業当初から障害者が働いていたこともあり、障害者の「働きたい」という思いを支援することに注力してきた。現社長が理事長を務めるNPO法人を含め、複数の障害者就労施設と業務委託契約を結び、商品の梱包作業などを依頼している。また、就労施設指導員への技術指導などを、経験豊富な高齢社員がになっている。 (5)高齢社員の声  会社全体の営繕関係の業務を担当している雨宮(あめみや)四郎(しろう)さん(78歳)は、勤続45年の大ベテラン。同社社屋は1949(昭和24)年建築の小学校を改築したもので、増改築や修繕にあたっては、「高校時代に取得した建築や溶接関係の資格を活かして、安全に効率よく作業ができるよう、日々工夫をしながら業務にあたっている」という。また、「短時間勤務制度が導入され、自分の体力やライフワークに応じて出勤できるようになり、とても働きやすくなった」と話す。 (6)今後の課題  介護と仕事の両立や高齢による体力の低下に合わせ、労働時間の短縮や休日の増加を選択しながら働くことができるようになったため、心身ともにゆとりができ、高齢社員への働き方改革へとつながった。今後も全社員が健康で明るく働ける職場環境構築のため、定年廃止や再雇用年齢の引上げなども検討予定だ。さらなるステップアップを目ざして同社のチャレンジは続く。 ※ エイジフレンドリー補助金……高齢者が安心・安全に働くことができるよう、中小企業事業者による職場環境の改善等の安全衛生対策に対し補助を行うもの。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09940.html 写真のキャプション 八雲製菓で働くみなさん タブレットで、高齢社員の作業の様子を動画で閲覧することができる 熱中症対策として大型エアコンを導入 雨宮四郎さん 【P24-27】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 多様な人材を受け入れ全社員が「いい会社づくり」に挑戦 五條運輸 株式会社(奈良県大和郡山市) 企業プロフィール 五條運輸 株式会社 (奈良県大和郡山市) 創業 1970(昭和45)年 業種 一般貨物運送業・倉庫業 社員数 149人(2022年4月1日現在) 60歳以上 28人 (内訳) 60〜64歳 14人(9.4%) 65〜69歳 8人(5.4%) 70歳以上 6人(4.0%) 定年・継続雇用制度 定年なし。現在の最高年齢者は79歳 T 本事例のポイント  五條運輸株式会社は、1970(昭和45)年に創業。以来、重量物輸送を中心に資源リサイクル循環物流にたずさわり、お客さまの大切な商品を「安全・確実・迅速」にお届けするため、環境対策・輸送品質・交通安全に取り組んできた。経営理念である「お客様のベストパートナー」として、お客さまから愛される配送を追求し続け、厚い信頼を得ている。  2017(平成29)年には物流センターを新設し、食品の一次加工や倉庫内作業、倉庫管理事務などの新たな職務を創出した。1日4時間、週3日から勤務可能とするシフト体制を採用し、高齢社員はもちろん、子育て中の女性社員や、家族の介護が必要な社員が、家庭や自身の健康状態をふまえた働き方ができるよう、柔軟に対応している。 POINT 1 健康で元気な間は経営者も社員もともに「よい会社」づくりに取り組んでいきたいという考えから、2017年に定年制を廃止した。また、能力・意欲があれば、社員区分や年齢とは関係なく、抜擢して処遇する。 2 会社の方針として、社員の能力向上支援を掲げている。社員から申請があり、会社が業務上必要と認めた資格については、年齢にかかわりなく、会社が資格取得の費用を負担する。 3 経営層が社員と面談する機会を設け、本人の意欲や現在の状況、働き方の希望、キャリアプランを把握し、今後の働き方をすり合わせている。 4 日常的に経営層と社員、あるいは社員同士のよい関係が築かれているため、社員の健康管理において、体調が芳かんばしくない人をほかの社員がすぐに気づくようになった。このため、経営層や管理職が早期に必要な措置を講じることが可能になり、会社全体の安心・安全につながっている。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1970年に創業。物流業界は、近年のインターネット通販ビジネスの急速な拡大により大きく変化し、現社長が就任した2010年は、地場輸送や倉庫管理の需要における同業他社との厳しい過当競争の状況にあった。過当競争の厳しい環境から抜け出すため、「お客様からの物流ニーズに応える」という原点に立ち返り、通販物流事業の立上げと、物流アウトソーシングへの本格的参入を開始した。2017年には物流総合効率化法の認定を受けた強耐震3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)の物流センターを新設するなど急成長を成し遂げた。  現在は奈良県と愛知県を中心に6拠点の倉庫を保有し、運送業(チャーター便、貸切便、精密機械の運搬など)に加え、配送センターの通販物流事業、タイヤ用品の販売事業も行っている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  社員数149人中、60歳以上は28人で18.8%を占めている。最高年齢者は79歳である。就業規則上の社員区分は三つあり、「正社員」は期間の定めのない雇用契約で、週の所定労働時間が40時間の者、「契約社員」は期間の定めのある雇用契約で、週の所定労働時間が40時間の者、「パート社員」は期間の定めがない雇用契約であり、正社員よりも所定労働日数または所定労働時間の少ない者である。同社ではパート社員であっても優秀な人材であれば、リーダー職を任せており、パート社員から正社員に登用することもある。  職種は、「運送」、「倉庫」、「事務」の3職種があり、職種別の構成比は、運送が約2割、倉庫が約7割、事務が約1割となっている。事業拡大により、倉庫業の人員が増加している。倉庫業の場合、レンタルのみだと家賃収入しかないが、物販事業を行って付加価値が生まれ、搬入やピッキング、梱包などの作業が発生するようになった。この結果、倉庫業を担当する部門の人員が増えた。この部門の65歳以上の職種別構成は、運送1人、倉庫5人(運搬、ピッキングなど)、事務1人となっている。運送担当者の配置転換はないが、ほかの職種では社員区分を問わず、他事業所に配置転換する可能性がある。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼定年の廃止と柔軟な働き方  事業を拡大する過程で必要な人材の確保に危機感があり、2017年に定年の廃止を決めた。  背景には、業務の拡張にともない必要となる人材を適宜採用した結果、高齢社員が多くなったことがある。特に、倉庫業の業務が拡大した際に高齢社員が増加したが、だれもが経験を活かして若い人たちに指導できる「人間力のある」人たちで、働きぶりを見ても年齢を感じさせないため、顧問の社会保険労務士と相談し、定年を廃止した。  高齢社員の労働時間は、本人の希望を尊重して決定する。本人から「フルタイム勤務はむずかしい」という申出があれば、希望にできるかぎり沿うように、労働時間を変えている。退職時期は本人の希望を受けて決めるが、健康に不安があり、周囲に迷惑をかけないように身を引くケースや、自らの人生設計に沿い次の進路に向かうために退職するケースもある。 ▼昇進管理と賃金  社員区分や年齢に関係なく、能力と意欲があれば責任ある仕事をまかせており、女性管理職も積極的に育てる方針である。また、パート社員であっても、責任ある仕事をまかされる社員には、仕事に見合った賃金を支払っている。  賃金は基本給、職能手当・職務手当・運行勤務手当・役職手当からなる基準内賃金と基準外賃金、割増賃金があり、基本給は本人の能力や経験などを勘案して決定する。基本給の支給額は、人事評価結果を参考に定期的に見直しを行っている。 (2)高齢社員を戦力化するための工夫 ▼人事評価  人事評価の評価者は、一般社員の場合、リーダーや管理職となる。仕事内容が事業所によってまったく異なることから、評価方法や基準の設定も現場にまかせている。各現場では、評価シートを用いて評価し、基本給や賞与の決定に活用する。またドライバーの場合には、上司が働きぶりを観察できないため、運転記録やデジタルタコメーターの運転データ、顧客からの声をふまえて評価を行っている。 ▼面談  定期面談のほか、社員から要望があった際には、経営層との面談の機会を設けている。定期面談は半年に1回行っているが、社員が不安・不満を抱えていそうな場合はトップが声をかけて面談を行うこともある。入社間もない社員は不安を抱える人も多いため、採用の3日後、1週間後、1カ月後に状況確認の面談を実施している。 ▼能力開発  同社では、「人間はだれしも原石であり、原石を磨く努力を続ければ、必ず道は開ける」という社長の信念のもと、若手から高齢者まで、年齢に関係なく人材育成に取り組んでいる。資格・免許は本人の財産にもなることから、資格取得を奨励しており、社員から要請があり、会社が業務に必要と認めた資格については、会社が資格取得の費用を負担する。なお、現在の業務に不要な資格であっても、会社にとって将来必要になると思われる資格についても、費用負担の対象としている。 ▼世代を超えたチームワーク  物流アウトソーシング事業では、商品の保管や軽作業、ピッキング、梱包作業など、いろいろな作業があり、高齢者を含むパート社員が活躍している。保管商品や保管施設、搬入・搬出の頻度などに合わせてチームを編成。チームは、基本的に持ち場と作業範囲が割り当てられているが、必要に応じてチーム同士で協力し合い、業務がスムーズに進められるよう体制を組んでいる。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼暑さ・寒さ対策を施した物流センターの建設  3温度帯の物流センターの1階は、冷凍倉庫(マイナス30℃)・冷蔵倉庫(0〜5℃)、および食品の検品や一次加工の作業場。3階には常温倉庫を設置。社員が常時働く作業場になるピッキングエリアを2階に配置することで、作業効率を上げるとともに、外壁に特殊断熱塗装を施しており、庫内の温度が一定に保たれるため、冷房や暖房の使用を抑え、常に快適な環境を維持できる、身体に優しい作業場となっている。 ▼健康経営・健康管理  定期健康診断で再検査や治療が必要となった場合や、特定検診により特定保健指導の対象となった社員に対しては、医療機関を受診するように推奨している。また、始業時にラジオ体操を行い、健康増進に努めている。  同社は常日ごろから、社員の健康状態を気にかけており、社員の異変に対して、経営層や管理職、ほかの社員が気づける関係性(隣人に関心があるという関係)を築いている。本人が「大丈夫」といっても、ほかの社員が「何かおかしい」と気づいたらただちに、経営層や管理職に連絡する体制がとられている。この結果、会社として、社員の病気の早期発見と適切な対応(医療的処置など)が可能となっている。  こうした取組みにより、2020(令和2)年1月、全国健康保険協会奈良支部より第4回「職場まるごと健康チャレンジ」で表彰されたほか、同年3月に「健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)」の認定を取得した。これらの表彰・認定により、社員の健康管理・健康経営に関する意識は一層高まっている。 (4)高齢社員の活躍  他社を定年退職した角つの森もりまゆみさん(72歳)は、簿記1級資格を持っており、同社の経理業務の中心的な役割をになっている。同社が業務拡大をするなかで、資産管理や銀行との折衝などにおいて専門知識を活かし社長を支える人材として活躍している。現在も、月平均130時間を超える勤務を続けており、ていねいで確実な仕事ぶりでお客さまからの信頼も厚い。 (5)今後の課題  現社長は2010年に事業を継承したが、社長就任当時は社員が15人という小さな会社だった。その後の約10年間、社員とともに汗を流し、苦労を分け合いながら努力してきた結果、運送業から物流倉庫事業に参入し、総倉庫面積は2万坪を超え、社員約150人を抱える企業に成長した。今後は次世代への事業継承が重要なポイントとなっている。後継者の一人でもある副社長は自分に何ができるかを懸命に考え、奈良県初の医療・医薬関連の超低温対応メディカル物流会社を立ち上げ、発展させている。年齢や経験を超え、責任ある仕事に就かせ、まかせて経験させる同社の人材育成は、見事に結果を生み出しているといえる。 写真のキャプション 本社外観 高齢者を含むパート社員が活躍している奈良中央物流センター 毎朝実施しているラジオ体操 経理業務で活躍している角森まゆみさん 最高齢社員の榊原(さかきばら)年一(としかず)さん(79 歳) 【P28-31】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 介護業務をシェアすることで一人ひとりが無理なく働ける職場環境を実現 社会福祉法人 愛誠会(岡山県新見市) 企業プロフィール 社会福祉法人 愛誠会 (岡山県新見市) 創業 1977(昭和52)年 業種 老人福祉・介護事業(高齢者介護サービス) 職員数 132人(2022年4月1日現在) 60歳以上 37人 (内訳) 60〜64歳 17人(12.9%) 65〜69歳 13人(9.8%) 70歳以上 7人(5.3%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。運用により希望者全員を年齢上限なく再雇用。現在の最高年齢者は74歳 T 本事例のポイント  社会福祉法人愛誠会は、1977(昭和52)年9月に設立認可を取得し、1978年4月に特別養護老人ホーム唐松荘(からまつそう)を開設し業務をスタート。以来、介護事業を通じた地域貢献に取り組んできた。  職員全体の理解のもと、無資格・無経験でも介護に従事できる職務を創出することで、介護専門職の負担を軽減するとともに、職員の体調と仕事を調整する「マッチングアドバイザ−」を配置し、無理なく勤務が続けられる体制を構築している。また、高齢職員の優れた能力を仕事やチーム運営に活かせるよう、相互理解に基づくチームビルディングのあり方を職員全員に意識づけている。 POINT 1 介護専門職の不足に対応するため、「専門職がやるべき仕事」、「無資格・無経験でもできる仕事」を切り分け、体力に見合った介護業務に従事できるよう、介護業務のWシェアWを実施した。 2 2010(平成22)年に無資格・無経験者でも勤務可能な「キッチンヘルパー」や「見守りヘルパー」の職種を創出した。これにより、「介護業界の人手不足の解消」だけでなく、「地域の高齢者の働く場の提供」の双方が実現可能となった。 3 職員の体力・能力と仕事をマッチさせ、無理なく勤務継続できるよう調整を行う「マッチングアドバイザー」を配置するとともに、新規採用者に対しては1年間専属の「プリセプター」という指導者をつけるなど、人材確保と人材育成に注力している。 4 多床室を多人数のチームで運営するのではなく、8〜9人のチームで20人の利用者に対応することで、密に情報共有を行い、きめ細やかなサービスを提供している。 5 少人数のチームが基盤となっていることで、職員間の十分なコミュニケーションが可能となっている。会議や研修を通じて施設の基本理念を共有し議論を尽くすことで業務改善を効果的に推進している。 U 企業の沿革・事業内容  同法人は、1977年に設立認可を取得すると、1978年に特別養護老人ホーム唐松荘の業務がスタート。さらに、1989年にデイサービスセンター、1992年に在宅介護支援センター・ホームヘルプサービス事業を開始し、1994年からは地域のニーズを受けて365日夕食を届ける配食事業を行っている。また、2006年にグループホーム「心(こころ)」、2009年に小規模多機能型居宅介護施設「福の木」を開所するなど、続々と新しい事業を展開して、地域の高齢者介護サービスに大きな貢献を続けている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  職員数132人中、60歳以上の職員は37人で28.0%を占める。最高年齢者は74歳である。  「年金がもらえるまではずっと働ける」、「職員に不安を持たせない」という理事長の強い信念のもと、実質的な終身雇用を目ざし、2019年に70歳定年を導入し、運用により希望者全員を年齢上限なく再雇用することとした。なお、退職金は70歳定年時に支給する。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 ▼賃金制度  賃金については、定年となる70歳まで給与を下げない仕組みとしている。また、定年後の再雇用では日給制となり、経験年数に応じた昇給を行っているほか、賞与も支給している。年齢に関係なく昇給・賞与のある仕組みとしたことで、高齢職員のモチベーションの低下を防いでいる。 ▼評価の仕組み  介護業務における利用者個人との密接かつ繊細な関係性を、数値化して評価することは非常に困難である。チームリーダーへの昇格や役職への昇進については、専門的知識や人間関係の調整、チーム運営、事務処理などの観点から、理事長および施設長が判断している。 (2)高齢職員を戦力化するための工夫 ▼介護業務のシェアで職務を創出  介護福祉施設における業務は多岐にわたる一方で、介護業界では人材不足が続いている。そこで同法人では、@介護専門職(介護士)が本来の業務に集中することで業務を効率化できないか、A地域の高齢者に、無資格・無経験でも体力に見合ったやりがいのある仕事を提供できないか、と考え、介護専門職の本来業務以外の業務の切り出しを実施。2010年に「キッチンヘルパー」、「見守りヘルパー」という新たな職種を創出し、介護業務の“シェア”を行った。  介護士が高度なスキルを必要とする身体介護を中心とする業務を行うのに対し、「キッチンヘルパー」は利用者の食事やお茶の準備、片づけなどを、「見守りヘルパー」はリビングでの利用者の見守り、話し相手、趣味活動の支援などを行う。  介護業務のシェアを導入した背景には、同法人が一人一部屋のユニット型個室の施設運営を行っており、少人数のチームで対応していることもあげられる。介護施設に多い相部屋の多床室の場合は、食事や見守りなど同時に複数の利用者に目を配ることができるが、ユニット型個室の場合はそれがむずかしいため、介護事故などが発生しやすくなる。そこで、無資格・無経験でも対応可能な見守りなどの仕事を切り出し、地元の高齢者に担当してもらえば、人材不足も解消され利用者の安全性を確保することができる、という考えだ。介護業務のシェアの導入以降は、介護事故ゼロ・苦情ゼロを継続している。 ▼マッチングアドバイザーとプリセプター  職員の体力や能力と仕事をマッチさせるため、事務部長、指導部長を「マッチングアドバイザー」に任命し、高齢職員が無理なく勤務を継続できるように配慮している。同法人では他社を定年退職した高齢者を採用しているが、経験やスキルがなくても就労可能な業務があることから、同法人への再就職希望者は多い。  なお、人材を新規に採用した場合、年齢にかかわりなく、1年間専属の「プリセプター」(指導者)を指名し、仕事の悩みなどについて月1回以上は面談を行い、毎月のプリセプター会議において、業務の習熟度や課題などについて組織で共有し、人材育成を図っている。 ▼少人数のチームをベースとした組織体制で、研修および会議を密に実施  同法人では、10人の利用者を1ユニットとして、8〜9人のチームで2ユニット(20人)の利用者の介護を行っているが、これは国の基準よりも多い人員配置となっている。10人以下の職員構成であるため、日々の細やかな利用者の状態や、ヒヤリハットの報告、職場改善の気づきのほか、「ご利用者が喜ぶことを一生懸命に」という経営理念に沿った介護方法などについて緻密に情報共有できるだけでなく、チームリーダーによる構成員の人材育成も、無理なく十分に行えている。こうしたチーム体制内の関係があるからこそ、職員同士が、それぞれの職種の内容を認め合い、お互いを尊重し合う環境が整っている。  すべての業務について、毎週カンファレンスを実施しているが、少人数のチーム体制による緻密なコミュニケーションによって、これらの会議や研修がうまく機能しており、職員間の不満もなく効果的な業務運営を可能としている。  このような同社の体制は、多人数のチームで多人数の利用者を介護する多床室の介護施設よりも人件費はかかるが、事業運営上では大きな強みとなっている。個々の利用者に、きめ細やかに対応した介護が実現できるよう、職員の研修や会議を行うことを重視し、介護の業務フローはあえて作成せず、利用者にあわせた業務を行っている。このため、チームリーダー(最も若い職員は32歳)の運営能力が厳しく問われることになる。チームリーダーの会議は、「利用者の介護にとって何が効果的か」、ということについて学びとふり返りを行う場としている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼作業環境改善  職員の作業負担軽減のため、ノーリフティングケア(持ち上げずにスライドさせる)が可能となるよう、ベッドの入れ替えやスライディングシート、リクライニング車椅子などの導入を進めている。 ▼安全衛生、健康管理  希望する職員は産業医との面談がいつでも可能となっている。また、全国健康保険協会岡山支部が実施している「晴れの国から『健活企業』応援プロジェクト」の健活企業として、健康増進の取組みや個別相談も行っている。ヒヤリハット事例についてはきめ細かく報告してもらい、会議で情報共有し、改善策について議論し解決するようにしており、長い間、無事故、苦情ゼロを達成している。 (4)そのほかの取組み  同法人では、2009年に「くるみん」認定、2011年には第5回ワークライフバランス大賞優秀賞(主催:ワークライフバランス推進会議)を受賞するなど、職員が働きやすい職場づくりに努めている。また、障害者雇用にも積極的に取り組んでおり、障害者の個々の能力を分析し、能力に見合った業務に就かせることで、業務の創出・やりがいの向上を図っている。 (5)高齢職員の声  同法人に70歳のときに入職した安宗(やすむね)千草(ちぐさ)さん(72歳)は、キッチンヘルパーとして働いている。「自分の親を最後まで看取れなかったことを後悔しており、就職を決めました。毎日楽しく働いています。施設内のイベントのアイデアをたくさん出して、利用者に喜んでもらいたいと考えています」とのコメントに、前向きに仕事に臨んでいることがうかがえる。  同じくキッチンヘルパー今津(いまづ)営子(えいこ)さん(70歳)は、「介護の業務はできませんが、キッチンヘルパーという仕事を通じて、利用者さんから感謝されることがうれしいです。なによりも若い人たちと一緒に働けることが一番楽しいです」と話す。 (6)今後の課題  現在、同法人には職員のための託児施設の0歳児から、20代〜70代まで幅広い世代の職員、さらに106歳の利用者まで、あらゆる世代が共生しており、相互に活力を与え合う健全なノーマライゼーション社会(町)を創出している。一人ひとりが人間として充実していく、つまり、充実したワーク・ライフが送れるように、だれもが参加して楽しいと思える環境整備にこれからも力を注いでいく。  また、同法人では仕事に特化した「力」だけをスキルと考えず、人としての幅広い魅力が大切であるととらえており、そのことを原点にして、今後も高齢者雇用を推進しながら、思いやりやゆとりのある、温かい介護現場をつくっていきたいと考えている。働きやすい職場から魅力ある職場へ、同施設の視線は一歩先の時代をしっかり見すえている。 写真のキャプション 特別養護老人ホーム唐松荘 施設ケア研究発表会の様子 作業負担を軽減するためのノーリフトケアを行っている 安宗千草さん 今津営子さん 【P32-33】 令和4年度 高年齢者活躍企業コンテスト 入賞企業一覧 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 岐阜県 株式会社 恵那川上屋(えなかわかみや) 優秀賞 石川県 株式会社 トーケン 島根県 モルツウェル 株式会社 特別賞 山梨県 八雲製菓 株式会社 奈良県 五條運輸 株式会社 岡山県 社会福祉法人 愛誠会 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 茨城県 株式会社 ヴィオーラ 東京都 株式会社 NJS 東京都 株式会社 横引(よこびき)シャッター 静岡県 株式会社 セイセイサーバー 愛知県 株式会社 GFM 愛知県 合同会社 Syuhari(シュハリ) 三重県 株式会社 伊勢福(いせふく)(おかげ横丁) 鹿児島県 株式会社 南光(なんこう) 特別賞 青森県 株式会社 木村食品工業 群馬県 株式会社 上野村きのこセンター 神奈川県 株式会社 エヌ・エス 特別賞 新潟県 見附染工(みつけせん)こう 株式会社 富山県 有限会社 日和(ひより) 富山県 山田工業 株式会社 長野県 社会福祉法人 しらかばの会(たてしなホーム) 大阪府 昭和化工 株式会社 兵庫県 社会福祉法人 しらさぎ福祉会 兵庫県 株式会社 マルワ渡辺水産 奈良県 株式会社 アドスマイル 和歌山県 株式会社 花むら 岡山県 日本キャスタブル工業 株式会社 山口県 有限会社 三浦製麺 大分県 公益社団法人 あじむ農業公社 宮崎県 株式会社 セキュリティロード 【P34-38】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! こんなときどうする? 第4回 高齢社員が新しい仕事のやり方を覚えてくれません ※ このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです つづく 【P39】 解説 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! こんなときどうする? 第4回 高齢社員が新しい仕事のやり方を覚えてくれません  役職定年や定年後再雇用により、それまで務めていたポストを離れ、現場の一社員に戻る高齢社員は少なくありません。ところが、変化の激しいこの時代においては、数年現場を離れているだけでも、ICT機器の導入などにより、仕事のやり方が大きく変わってしまい、戸惑いを覚える高齢社員もいるようです。高齢社員が新しい仕事に対応していくためのポイントについて、東京学芸大学の内田賢教授に解説していただきました。 内田教授に聞く高齢者雇用のポイント 高齢社員に新しい仕事を覚えてもらうには動機づけが重要 若手とのペア就労ならチームワークの強化にも期待がもてる  タブレットやドローンなど、職場には次々と新しいものがあらわれます。その昔、製造現場の工作機械がNC(コンピュータ制御)化され、オフィスにワープロやパソコンが登場したときも、働く人たちの仕事のやり方に大きな影響を与えました。追いついていくのがたいへんと感じる高齢社員はいつの時代もいました。  もっとも、最近登場する新製品や新技術は簡単に操作できるように開発され、高齢社員にとって「思ったよりも簡単」であることが多いようです。さまざまな知識や経験を持つ高齢社員がこれらを使いこなせれば、若手の及ばない質の高い仕事ができるようになります。高齢社員が最新機器を使う気になるように動機づけることが大切です。「使えれば仕事が楽になる」、「自分の強みをもっと発揮できて評価される」と思ってもらうことです。  「いまさらやり方を変えたくない」と考える高齢社員の真の理由は、「新しいことを覚えられないのでは」という不安かもしれません。単にマニュアルを渡すだけではなく、実際の仕事の場面を想定して実演するなど、ていねいに教えてあげることが大切です。職場の若手に聞くのは恥ずかしいという高齢社員には外部研修も検討の価値があります。一方、高齢社員には「わからないことは素直にたずねて覚える」という心がけが求められます。  技能伝承の場面では、技を持つ高齢社員がまだまだ未熟な若手とペアを組みます。高齢社員が新しいものを学ぶ際も、同じように両者がペアを組んで成功している会社があります。後者は若手が先生、高齢社員が生徒ですが、やりとりを通じて高齢社員の知恵を若手が学べる機会でもあります。両者の距離を縮め、チームワークが強固になることが期待できます。  なお、高齢社員がどうしても新しいものを使いこなせない場合、使わなくともよい仕事に専念させるか、最新機種ではなく一世代前のモデルで対応している会社もあります。 プロフィール 内田賢(うちだ・まさる) 東京学芸大学教育学部教授。 「高年齢者活躍企業コンテスト」審査委員(2012年度〜)のほか、「70歳までの就業機会確保に係るマニュアル作成・事例収集委員会」委員長(2020年度〜)を務める。 【P40-41】 江戸から東京へ [第119回] リンゴの木を植え続ける 吉田松陰 作家 童門冬二 ペリーの密航の受けとめ方  現在(いま)、私の胸を占めているすばらしい言葉がある。敗戦直後、ボロボロな身心になって復員した私のこころを奪ったものだ。  「落ちこんでいる国民を励ます言葉集」  みたいな、拙速の本だったがめくって、ある一行に釘づけになった。思わず破って盗もうかと思ったが良心に制とめられた。その一行とは、  「たとえ世界の終末が明日であろうとも、私は今日もリンゴの木を植える」  というものだ。いい手は「コンスタンチン・ゲオルギュ」とある。ルーマニアの作家とあるので、別の云い方もある。このことは後に知ったがここでは略させていただく。  いいたいのは、  「この言葉が現在の世界の状況解決にピッタリだ」  ということと、  「状況はもっとヒドい」  ということだ。そしていま紹介している吉田松陰はまさしくゲオルギュのいうリンゴの木を植え続けた≠ニいうことなのだ。  「アメリカを憎み、攘夷(じょうい)(外国を日本から追い払う)を実行するのなら、相手国の実態を細大漏らさず知らなければならない」  と、師の佐久間(さくま)象山(しょうざん)(生地(せいち)ではぞうざんと呼んでいる)から教えられた吉田松陰は、下田港(静岡県)にきて、ちょうど錨(いかり)をおろしていたアメリカ艦に忍び寄った。そして、  「何だ?」  と聞く通訳に自分の志を話した。通訳は誠実な男で、  「大使に話してみる」  と、カピタン(艦長)室に行った。艦はアメリカ大統領の特使ペリー中将(日本ではペロリ≠ニ呼んでいた)を乗せていた。日本に開国を迫っていた。  ペリーは聞いた。しかし笑わなかった。逆に感動した。  「日本にそんな愛国青年がいたのか?」  とビックリし、こう告げた。  「その青年にこう話してくれ。いま私は日本と仲よくするために、日本に鎖国をやめるよう交渉にきている。成功して、もしも日本が開国したなら、私がポケットマネー(おこづかい)で、キミ(松陰)をアメリカに招待してあげるから、それまで待ってほしいと」  通訳はそのまま松陰(本当はこのとき松陰の号ではなく、ヨシダ・トラジロウと名乗っていますが、松陰で通します)に伝えた。松陰はガッカリした。  「ウソツキめ。私をダマしてペロリと舌を出しているのだろう。メリケン(アメリカ人)め」  と、ののしった。  そのまま陸地に戻り、下田奉行所に自首した。いさぎよかった。 愛国者か大罪人か  ところがペリーはそのままには済まさなかった。上級士官と通訳を呼んでこう命じた。  「日本政府にこのことを話し、吉田青年を絶対に重く罰してはならない、と告げてくれ。かれは立派な愛国者であるといってくれ」  上級士官たちはたちまち動いた。  まず下田奉行に、奉行は幕府の上司に、上司は馬をとばして江戸城のトップへと、このことはスピードをともなって、幕府上層部に伝えられた。  そしてその間に、吉田松陰は、  『国禁をおかした犯罪者』  ではなく、  『日本国を憂うる熱心な愛国者』  として扱われるようになった。つまり日本側ではホメられる存在≠ノ変わっていった。  しかし下田奉行から幕府の老中(閣僚)までは、ペリーの意志は正確に伝えられたが、長州藩に伝えられるころには、伝達内容がかなりゆがんでいた。  まず長州藩の江戸藩邸では、在勤中の重役たちが疑った。  「日本との交渉は長崎奉行が担当だから、長崎に行け、というのにペリーは行かなかった。江戸湾にガンバって、江戸城に大砲の筒先(つつさき)を向けてオドしている。そんなペロリと舌を出して嘲笑(わら)っているに決まっている」  と、松陰と同じ感想を持った。これはペリーがこの重役がいったような恫喝外交をおこなっていたのだから、そう思われても仕方がない。  結局、これが結論となって江戸藩邸からは、  「幕府かは吉田を軽い罪で扱うように達せられましたが、場合によっては藩がつぶされる危険をおかした大罪です。重罪人として処分してください」  という報告書が萩(長州藩の藩都)に届けられた。松陰も急仕立ての駕籠(かご)で藩へ急送された。  松陰が最初(ペリーの胸に植えたのを入れると二株目)のリンゴの苗を植える機会がすぐやってくる。 (次号につづく) 【P42-45】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第124回 和歌山県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 70歳以降も働ける規則の明文化を検討長く安心して元気に働ける職場へ 企業プロフィール 株式会社浜市(はまいち)(和歌山県日高郡みなべ町) 創業 1972(昭和47)年 業種 各種釣りエサの製造・卸売業 従業員数 51人(うち正規従業員数31人) (60歳以上男女内訳) 男性(5人)、女性(6人) (年齢内訳) 60〜64歳 7人(13.7%) 65〜69歳 2人(3.9%) 70歳〜2人 (3.9%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。70歳まで希望者全員を継続雇用。70歳以降は運用により継続雇用。最高年齢者は74歳  和歌山県は、紀伊半島の西側に位置し、地形は南北に長く、海・山・川の自然環境に恵まれています。一年を通して気候が温暖で、「果樹王国」といわれるほど果物の生産量が多く、主にみかん、梅、柿などが生産されています。また、マグロやタチウオなどの水産物も有名で、食品加工業が盛んです。  観光資源も豊かで、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」に含まれる熊野三山と高野山をはじめ、国宝や重要文化財などの歴史名所や温泉などがあり、昔から多くの人が訪れています。  製造業では、主に鉄鋼、繊維、化学工業が発達しています。また、長い歴史のなかで育まれ、継承されている紀州漆器(しっき)、紀州箪笥(たんす)、紀州へら竿などの伝統工芸品も息づいています。  当機構の和歌山支部高齢・障害者業務課の浜口真吾課長は、和歌山県の特徴と支部の取組みについて次のように語ります。  「高齢化率が全国平均に比べて非常に高く、2020(令和2)年国勢調査では、33.4%(全国平均28.7%)となっています。こうした状況を受け、高齢社員を戦力として活用している事業所が多いといえます。また、小規模事業所が多いことから、就業規則に明記せず運用による高齢者雇用も多く、プランナーには高齢者を雇用していくうえでの具体的な助言が求められており、専門知識と経験豊かなプランナーが、企業と信頼関係を構築して相談・援助活動に取り組んでいます」  当機構で活動するプランナーの一人、竹田哲也さんは、特定社会保険労務士の資格と経験を活かし、主に農産品加工などの製造業や観光業が盛んな和歌山県の紀南・紀中地域を中心に、企業に寄り添ったアドバイスを行い、高齢者雇用の取組みを支援しています。今回は、竹田プランナーの案内で、「健康で仕事に対する意欲があるかぎり、年齢にかかわりなく働いてほしい」という思いで高齢者雇用に取り組む株式会社浜市を訪れました。 釣人や漁師の期待に応え、よりよいエサづくりを  株式会社浜市は、1972(昭和47)年に食品加工用の水飴を製造する会社として設立されました。その納入先に琵琶湖周辺の佃煮業者があり、頻繁に行き来していたところ、「帰り荷で琵琶湖産のエビを持ち帰れないか?」と声をかけられたことが、現在営んでいる釣りエサの製造・卸売業のきっかけでした。やがて、扱うエサの種類が増え、オキアミを加工した釣りエサの需要の高まりもあり、この釣りエサの事業が拡大して本業となったそうです。  同社が本社と工場を構える日高郡みなべ町は、紀伊半島西岸の中央に位置し、目の前には太平洋が広がり、豊かな漁場として釣り好きに人気の高い地域です。同社はイワシやサバなどの原料を調達しつつ、また、ほかの産地から仕入れた原料の加工に工夫を凝らし、鮮度、品質、使いやすさにこだわったエサづくりを追求。独自の加工法や熟練の手作業を大切にして、よりよいエサの開発と製造を行い、釣り人や漁師の期待に応えてきました。現在、従業員は51人。日高郡みなべ町に加え、三重県や滋賀県にも営業所を展開しています。 さり気ない気配りが従業員に波及  同社の浜はま田だ晃平(こうへい)代表取締役社長は、「すべての従業員に長く働いてほしい、というのが私の望みです」と穏やかな表情で語ります。  同社の仕事は主に、原料の加工や選別、包装、出荷などからなり、いずれもていねいで確実、素早さが求められます。楽な作業はありませんが、従業員の定着率は高く、浜田社長と、総務をになう奥様の浜田かず代さんが従業員の気持ちや職場環境に気を配り、働きやすい職場づくりに取り組んできたことがうかがえます。  「休憩時間にお菓子を分けたり、声をかけたりして、かず代さんがいつもみなさんに細やかな気遣いをされています。そうしたさり気ない心くばりが、職場の風通しをよくして、居心地のよい職場をつくっているように見受けられます」と竹田プランナーは話します。  また、病気療養のため長く休んでいた従業員の復職に向けて支え続けたことが何度もあり、従業員を大切にする姿勢が、ほかの従業員にも根づいており、重い物は体力のある者が持つ≠ニいった従業員同士の気遣いも自然に見られる職場になったといいます。  今回は、長く活躍中の障害のある男性従業員と、70歳を超えて加工の仕事に腕を振るう女性従業員にお話を聞きました。 同じ障害のある後輩によい影響を与える  中田貞さだ生お さん(62歳)は、学校を卒業後、他社での勤務を経て25歳で入社。加工や梱包作業に就いて37年になる大ベテランです。現在は、鮮度が保たれた冷凍のアミエビなどの原料を機械でカットし、「真空包装」と呼ばれる技術でパッキングして出荷準備を整えるまでのラインを、ほかの従業員と交代しながら担当しています。  「何より安全に作業することを心がけています」と話す中田さん。特に、カットする作業では機械の操作に最大限の注意を払っています。  取材時の中田さんは、袋詰めされた商品に、機械で荷崩れ防止用のベルトをかけて、荷台へ載せる作業を担当。重量のある商品も軽々と運んでいるように見えるのは、ベテランならではのコツのある動きのたまものです。  同社にはもう一人、障害のある若手従業員が働いており、中田さんが長く仕事を続けていることがよい手本になっているとのこと。中田さんの上司である山下正文(まさふみ)本社工場長は、「しっかりした働きぶりが後輩によい影響を与えています」と中田さんの仕事ぶりを語ります。中田さんは、少し前まではフルタイムで勤務していましたが、「無理せず、長く続けてもらうため」(山下工場長)、現在は9時から15時までの短時間勤務で働いているそうです。  「何歳まで働くか、まだ考えていません」と話す中田さん。隣町から毎日自転車で通勤していることが体力維持にもつながっているようです。 最年長従業員の活躍が刺激に  橋本節子さん(74歳)は勤続26年。工場で加工作業を担当しています。勤務は、月曜日から金曜日の8時から15時まで。秋の繁忙期には、少し勤務時間が長くなるそうです。  同社では最年長となり、竹田プランナーは「橋本さんの働いている様子が周りに刺激を与えているようで、70歳を超えて働くことを希望する人が多くなっています」と、橋本さんの仕事ぶりが周囲の人に影響を与えていると話します。  橋本さんは、釣りエサのオキアミやキビナゴ、イワシなどを、大きさや身の傷みの有無で選別し、決められた分量に計測する業務を担当。「私も釣りが好きなので、使われるときのことを考えて、よい商品をつくりたいという気持ちで作業しています」と橋本さん。また、「やりがいのある仕事で、働きやすい会社です。一緒に働いている人たちもやさしくて、私の年齢を気遣って、重たい物は『持ちますよ』といってくれます。みんなで世間話をして過ごす休憩時間も楽しいんです。だから、こんなに長く働き続けることができているのだと思います」と素敵な笑顔で話します。  「年齢的に『辞めなあかんのかな』と思うこともありますが、家でじっとしていたら身体によくないですし、元気なうちはここに来て働いていたいですね」と続けてくれました。 継続雇用年齢の引上げまたは撤廃を検討  同社の就業規則は、以前は定年60歳、希望者全員65歳まで継続雇用の定めでしたが、竹田プランナーが2019(平成31)年に行った提案を受け、2022年度より継続雇用を希望者全員70歳までに引き上げました。また、70歳以降は運用により継続雇用しています。70歳以上の従業員が元気に働いていることから、竹田プランナーは、実態に即した就業規則への見直しを提案しました。継続雇用年齢の引上げ、あるいは上限年齢を定めず、一定の年齢以上の雇用に条件を設けるなどの内容です。運用ではなく、就業規則に定めることの意義について、竹田プランナーは次のように説明します。  「明文化することによって、働く人にとっては将来の不安を抱くことなく安心して働くことができ、生産性の維持・向上につながります。よい仕事をしてもらうためには、労使の信頼関係の構築は欠かせません。信頼関係の証として、法規範性のある就業規則において明文化することはとても意義深いことと考えます。同社の場合、高齢従業員の働く意欲も高いので、継続雇用年齢の上限引上げや撤廃は実態に沿った就業規則の見直しであり、それほどむずかしいことではないように思います」  提案を受けて、浜田社長はさっそく検討していきたいと答えたそうです。また、今後について、「つくったものには気持ちが表れます。これからも切磋琢磨しながら、心を込めてよいエサをつくっていきたいと思います。先代が創業してから、コツコツと努力を重ねてきて現在がありますので、これからもコツコツとがんばるのみです。従業員にとって働きやすい環境づくりを心がけ、長く働いてもらい、そのなかで、またいろいろな工夫を凝らしながら、釣りを楽しむ人々に向けて、これまで以上によいエサをつくっていきたい。目標は、それを続けることです」と語ってくれました。  竹田プランナーは、「浜田社長の周りには、サポートしてくれる人や釣りに関することを教えてくれる人が大勢います。社長の人柄が自然に人を集めているのだと思います。私もプランナーとして、今後もサポートを続けていきたいと思います」と話しました。(取材・増山美智子) 竹田(たけだ)哲也(てつや)プランナー(42歳) アドバイザー・プランナー歴:9年 [竹田プランナーから] 「まずは企業からの情報収集が大切になりますので、しっかりご提供いただける環境づくり(信頼関係の構築)に努めています。企業の現状をふまえて、高齢社員の活用促進に資する取組み、定年の延長や廃止、継続雇用年齢の上限の引上げや廃止について、より取組み可能と思われる現実的な提案を行っています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆和歌山支部高齢・障害者業務課の浜口課長は、「竹田プランナーは、当支部のプランナーのなかでは一番の若手ですが、誠実で熱心な助言に定評があり、事業所からの信頼を得ています。昨年度は、高速道路で1時間以上かかる県北部の企業の訪問活動を多数行っていただきました」と話します。 ◆和歌山支部高齢・障害者業務課は、和歌山城や県庁などがある和歌山市中心部から車で約20分。最寄り駅であるJR阪和線六十谷(むそた)駅から徒歩約30分の、和歌山市北部に位置しています。近くを紀ノ川が流れ、住宅と自然が共存する落ち着いた環境です。 ◆同県では、7人の65歳超雇用推進プランナーが活動し、県内事業所のニーズに沿った相談・助言活動を実施しています。2021年度は、コロナ禍においても195件の相談・助言訪問に取り組み、62件の具体的な制度改善のための提案を行いました。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●和歌山支部高齢・障害者業務課 住所:和歌山県和歌山市園部1276番地 和歌山職業能力開発促進センター内 電話:073(462)6900 写真のキャプション 和歌山県日高郡 本社社屋 浜田晃平代表取締役社長 総務を担当する浜田かず代さん 毎日の自転車通勤で体を鍛え、加工や梱包の仕事で活躍を続ける中田貞生さん エサの原料となるオキアミの選別作業をていねいかつ素早く行っていく最年長の橋本節子さん 【P46-49】 生涯現役時代の高齢社員活躍支援のポイント 制度、仕組みづくり 株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント 森中謙介  生涯現役時代を迎えたいま、シニア人材が活躍し続けるために必要な制度や仕組みづくりのポイントを解説。第3回は、高齢社員のニーズに対応する働き方のポイントについて解説を行います。定年後も引き続き同じ会社で雇用されるケース以外にも、改正高年齢者雇用安定法で示されている創業支援等措置における業務委託を行うケースなど、 第3回 多様な働き方について扱います。 高齢社員が柔軟に働ける勤務制度を整えよう! 1 働き方に対する高齢社員のニーズを把握する  一般的な定年年齢を60歳として想定するとき、60歳以後に継続雇用を選択する高齢社員のなかには、働き方に対するさまざまなニーズがあることでしょう。  例えば、引き続き定年前と同じ会社で働く場合でも、健康面での心配や、あるいは副業・兼業を行うためにフルタイム以外での働き方を希望する場合があります。特に地方企業では、高齢の両親から引き継いで実家の田んぼや畑を維持する必要があることから、あえてフルタイム以外での勤務を行う(専業で農業を行うほどの規模ではない)ようなケースもよく聞かれます。当連載の第2回※1で「コース別定年再雇用制度」を紹介しましたが、このなかにあった「パートタイム」で働くことのできるコースを設ける例はこうした高齢社員の働き方のニーズに配慮した取組みの一つといえるでしょう。  事実、多くの企業でフルタイム以外の働き方を選ぶ高齢社員は一定数存在しています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が2020(令和2)年に発表した調査「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」によれば、60代前半層の継続雇用者※2のなかで、パート・アルバイトで働いている社員が25.1%となっています(図表1)。 2 パートタイムで働く高齢社員の実態と処遇方法の工夫  ここからは、高齢社員の働き方に対するニーズに配慮した勤務制度の設計方法について、もう少し詳しく解説を行っていきます。まずは、先ほどに続きパートタイムで働く場合についてです。  実際に、60歳以上の高齢社員がどの程度の時間・日数勤務しているかについて調査した日本労働組合総連合会(連合)の「高齢者雇用に関する調査2020」を確認しておきましょう。同調査によれば、1日あたりの労働時間では4時間未満〜7時間、1週あたりの労働日数では1・2日〜4日と、短時間パターンも短日数パターンも幅広く活用されている様子がうかがえます(図表2)。  短時間勤務と短日数勤務のどちらをベースとするか、あるいは組み合わせるかなど、会社ごとに高齢社員の実際のニーズをふまえて柔軟に運用することができればモチベーションアップにつなげることができるでしょう。ただし、人事管理上は非常に煩雑な運用を求められるため、その点には留意が必要です。  また、賃金処遇の設計に関しては、一般的な定年再雇用制度の枠組みをベースとするのであれば、定年前の給与から20%〜30%程度引き下げたうえで、さらに短時間・短日数勤務を希望する場合には追加で賃金の減額を行う(フルタイムの賃金基準から時短分と日数減の分を控除する)方法が一般的でしょう。 3 高齢社員に関する特殊な働き方のニーズと処遇方法の工夫 @勤務地限定コースを設けるケース  定年後の継続雇用に関して、オプションとして、いわゆる「勤務地限定コース」を幅広く適用するケースがあります。例えば現役時代は転居をともなう勤務地の変更(転勤)があることを前提とした働き方をしていた社員のなかには、定年再雇用後は家族のいる本拠地での勤務を希望し転勤を望まないというニーズが一定量あります。そうした社員のために、本人の選択により「勤務地を限定する」ことが可能な制度を設けることで、高齢社員の再雇用後のモチベーションアップにつなげることが可能です。  なお、「再雇用後も引き続き転勤があってもかまわない」という高齢社員も当然いるでしょうから、勤務地限定コースを選択する高齢社員との間で処遇を分けておくかどうかについても検討が必要です。  一般的には、定年再雇用後にベースとなる賃金(基本給部分)に対して、勤務地限定コースを適用することで10%〜20%程度削減するようなケースが多いと思われますが、会社ごとの高齢社員活用方針によって、いろいろなアレンジも可能です(定年再雇用者は必ず勤務地限定コースとして再雇用し、そのことによる賃金減額は行わないとする仕組みも可能であり、勤務地限定を希望する高齢社員に対してさらに配慮した内容となる)。 A交替勤務や緊急呼出しなど、負荷の高い業務を免除できるコースを設けるケース  例えば製造業であれば工場内での深夜2交替、3交代業務、建設・工事業であれば夜間の緊急呼出しおよび待機業務など、現場作業者が担当する業務のなかでも、身体的な負荷の高い業務が発生するケースがあります。これらの業務に関しては、加齢とともに担当することがむずかしくなっていったり、高齢社員のなかには「できるかぎり避けたい」と考える社員も少なくありません。この点、定年後の継続雇用に関して、オプションとして当該業務を行う体制から除外されるコースを申請できるケースがあります。  60歳到達時点すぐであれば、59歳時と比べて急激に身体能力の低下をともなうことは少ないでしょうが、60歳を超えて以後も長く働けば働くほど、負荷の高い業務を担当することがむずかしくなることは想像に難くありません。当然、会社側としてもできるかぎりの配慮は行っていることと思われますが、当該配慮によってほかの社員の負担が増えることを鑑みると、制度的にそうした高負荷の業務を免除してもらえることで、高齢社員も気兼ねなく仕事をすることができますし、マネジメントを行う側も、そうした高齢社員が在籍していることを前提に仕事の割り振りを計画することが可能です。  なお、当該コースを選択した場合には、やはり賃金処遇面での差をつけておくことが望ましく、実際には先述の勤務地限定コースの場合と同様、定年再雇用後にベースとなる賃金(基本給部分)に対して10%〜20%程度削減するようなケースが多いと思われます。  以上の内容について、図表3にて整理しますので、参考にしてください。  なお、定年後の継続雇用に関して、給与を引き下げる場合は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第8条に抵触しないよう、留意が必要です。 4 高齢社員に対して業務委託を行うコースの運用と処遇方法の工夫  これまでは、高齢社員に対して「業務の負荷を限定する/減らす」方向での多様な働き方の選択肢について紹介してきましたが、逆にそうした措置を望まない高齢社員も一定数存在します。雇用延長の流れのなかで生涯現役を志向している社員も少なくなく、むしろ定年前と同様かそれ以上に活躍の場を求める社員に対しては、業務の負荷を限定する/減らす方向はモチベーションアップにつながりません。そこで、多様な働き方の一環として、定年前と同じ会社で正社員同等の貢献を行うだけに止まらず、改正高年齢者雇用安定法で示されている創業支援等措置の一つとして、個人事業主のような形で高齢社員への業務委託(独立)を支援して、より多くの活躍の場を設けるという事例もあります。  一例として、店舗サービス業A社における高齢社員の「独立支援制度」について紹介します。図表4をご覧ください。原則として50歳以後の社員を対象に、会社が提示する条件に合致する場合にはフランチャイズのような形で店舗オーナーとして独立することが可能になる仕組みであり、多店舗展開の業態などでは比較的利用しやすい仕組みです。  50代の優秀な社員が、自社だけで定年まで勤め上げるのではなく、幅広い経験を活かして50歳以後でも新しいキャリアを構築できるという多様な働き方のモデル事例をつくることで、高齢社員層の意識によい影響を与えることも期待できます。 ※1 第1回〜2回は当機構ホームページでもご覧になれますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/backnumber.html ※2 「継続雇用者」は、60歳に到達するまで正社員として勤続し、60歳以降も雇用され続けている従業員(正社員または非正社員)と定義されている。また、雇用確保措置としてグループ・関連会社等に継続雇用された者も含まれる 図表1 60代前半の継続雇用者の雇用形態(複数回答) 雇用形態 割合(合計) 正社員 41.6% 嘱託・契約社員 57.9% パート・アルバイト 25.1% 関連会社等で継続雇用された従業員(出向・転籍) 4.7% その他 4.0% 無回答 9.3% ※独立行政法人労働政策研究・研修機構「高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」(令和2年3月31日)をもとに、株式会社新経営サービス人事戦略研究所にて抜粋・作成 図表2 60歳以上社員の労働時間(1日あたり)、労働日数(1週間あたり)の調査 1日に何時間働いているか[数値入力形式] 対象:60歳以上 〈平均〉 全体:6.8時間 正規雇用者:8.0時間 正規雇用者以外:6.3時間 全体【n=400】 4時間未満7.5 4時間6.8 5時間9.5 6時間10.0 7時間17.5 8時間42.0 9時間3.8 10時間2.8 11時間以上0.3 1週間に何日程度働いているか[数値入力形式] 対象:60歳以上 〈平均〉 全体:4.5日 正規雇用者:4.9日 正規雇用者以外:4.3日 全体【n=400】 1〜2日6.5 3日10.3 4日19.5 5日54.5 6日8.8 7日0.5 出典:日本労働組合総連合会(連合)「高齢者雇用に関する調査 2020」 図表3 高齢社員の多様な働き方の設計における留意点(パートタイム、勤務地限定、高負荷業務の免除) コース名 コース概要 賃金処遇決定上の工夫 パートタイムコース ・定年再雇用後の高齢社員に対して、@短時間勤務A短日数勤務を複合的に認めるコース ・定年再雇用後の賃金ベース(基本給)に対して、時短分、日数減少分の控除を行う 勤務地限定コース ・定年再雇用後の高齢社員に対して、転居をともなう勤務地の変更を免除するコース ・定年再雇用後の賃金ベース(基本給)に対して、10%〜20%の減額を行う 高負荷業務免除コース ・定年再雇用後の高齢社員に対して、交代勤務や緊急呼出し業務、待機業務など、身体的な負荷の高い業務の担当を免除するコース ・定年再雇用後の賃金ベース(基本給)に対して、10%〜20%の減額を行う ※新経営サービス人事戦略研究所作成資料 図表4 A社の独立支援制度の概要と基本的な運用ルール 概要 ・原則として50歳に達した社員のうち、以下の条件を満たす人が希望する場合、フランチャイズオーナーとして独立を支援する ・例外的に上記年齢に達しない場合でも、審査により独立支援対象者として認める場合がある 条件 ・勤続10年以上で、勤務成績が優秀な者 ・エリア長(複数店舗管理)以上の役職経験者 審査方法 ・経営会議による審査(申請書を基にした審査) ・管理部長による、対象者の所属長へのヒアリング ・社長との面談により最終決定 独立支援の内容 ・既存店の譲渡(新規出店予定の店舗含む) ・金銭的支援策(出資、融資等) ・独立準備支援(在籍中からの開業準備支援、指導など) ・独立後の運営支援(スタッフ派遣、採用支援等) ※新経営サービス人事戦略研究所作成資料 【P50-53】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第53回 定年後再雇用と同一労働同一賃金、通勤手当の変更 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 定年後再雇用の嘱託社員の賃金は、同一労働同一賃金の観点から、役職定年前の賃金も比較対象になるのでしょうか  当社では、定年を60歳、役職定年を55歳に設定しており、定年後は嘱託社員として65歳まで再雇用することにしています。役職定年にともない賃金が若干低下するのですが、定年後には嘱託社員として賃金がさらに下がる設計になっています。定年後の嘱託社員の処遇について、役職定年前の状況と比較して同一労働同一賃金の観点から問題は生じるのでしょうか。それとも、役職定年後から定年前の状況と比較することになるのでしょうか。 A  役職定年後の減額の程度が小さく、定年退職後の減額幅を緩和する措置と位置づけられており、定年退職までの賃金体系において年功的性格が確保されている場合には、定年退職後に年功的性格を払拭して賃金を減額することが許容される余地があります。なお、比較対象は定年退職前の状況とされますが、定年退職後の業務内容が類似する労働者との比較も考慮されて判断されることになります。 1 同一労働同一賃金について  「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「パートタイム・有期雇用労働法」)第8条は、「不合理な待遇の禁止」と題して、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との待遇について、不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。  まず、短時間・有期雇用労働者と比較される「通常の労働者」とは、だれでしょうか。パートタイム・有期雇用労働法第2条が定める定義によれば、契約社員との比較においては、正社員が該当するというのが典型例といえます。とはいえ、単に正社員というだけでは、その範囲が広くなりすぎ、比較も困難になってしまいます。この点について、比較対象とする「通常の労働者」の範囲については、自身の労働条件と比較しようとするパートタイム・有期雇用労働者(通常、訴訟において原告となる労働者)が選択することができると考えられています。例えば、正社員全体ではなく、自身と同じような業務に従事している正社員に限定して比較するといった方法がとられます。定年後再雇用においては、嘱託社員と同様の業務を行っている労働者と比較することが考えられますが、そのような労働者がいない場合には、定年退職前の自分自身(正社員であったときの自分自身)を比較対象とすることができるかが問題となります。  次に、不合理と認められる相違は、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して」判断されるものとされています。ここでは、@業務の内容および責任の程度、A職務の内容および配置変更の範囲、Bそのほかの事情、といった考慮要素が整理されており、これらの要素を考慮して、不合理か否か判断されることになります。 2 裁判例の紹介  東京地裁平成30年11月21日判決(日本ビューホテル事件)は、役職定年を経たのちに定年退職した嘱託社員の処遇について、同一労働同一賃金の観点から不合理な賃金格差となっていないかが問題となった事案です。  まず、比較対象とする通常の労働者について、「原告が措定する、有期契約労働者と無期契約労働者とを比較対照する」と判断して、原告となった労働者が比較対象となる労働者を選択できることを肯定し、原告が主張していた「定年退職前の原告自身」との比較を認めています。ただし、「他の正社員の業務内容や賃金額等は、その他の事情として、これらも含めて労働契約法第20条所定の考慮要素に係る諸事情を幅広く総合的に考慮」する※ことも認め、最終的には、職務内容が同程度の正社員の賃金との比較をBその他の事情として考慮する方法を採用しています。  次に、賃金制度に関して、「正社員に係る賃金制度を俯瞰すると、長期雇用を前提として年功的性格を含みながら、様々な役職に就くことを想定してこれに対応するよう設計されている…、役職定年後の年俸は…、上記の賃金制度の一部を構成するものとして同様の性格を有する」として、役職定年制度後の処遇も含めて、定年までの間は年功的性格をふまえた制度とされました。他方で、「定年退職後の再雇用に係る嘱託社員は、退職金の支払を受けて退職した後に新たに有期労働契約を締結して再雇用された者であり…、長期雇用を前提とせずかつ原則として役職に就くことも予定されていない。また、…嘱託職員の職務内容等は軽減され配転等の可能性も限定されていて、加齢による労働能力の低下等を見越して年齢に応じて賃金額が漸減するものの、業績等によってはその額が変更され得るという仕組み」とされ、年功的性格が払拭されていると判断されています。  本件では、定年前は年功的性格があり、定年後は年功的性格が払拭されているという要素は、賃金の差異に関する重要な要素として考慮されています。  さらに、この裁判例では定年退職時点の賃金と比較すると約54%まで減額されていました。ただし、定年後の再雇用者について、高年齢雇用継続基本給付金や老齢厚生年金の支給開始年齢に達することを賃金決定に考慮することを認め、給付金を考慮した賃金の差異が63%であることから不合理性を否定しています。  この裁判例における業務内容の相違については、役職定年前から役職定年の際にも業務内容が変更(責任も軽減)され、定年退職後の再雇用においては営業活動のみに従事する立場に変更されています。さらに、配転についても、定年退職後の再雇用後には実施が予定されていない立場に変更されており、@業務内容やA変更の範囲についても、定年前と定年後で相違がある状態でもありました。  そのほか、役職定年が採用されていることについては、賃金が減額されるということからすれば不利益な要素に見えますが、この裁判例では、役職定年後の減額は、定年後再雇用により賃金がさらに減額されることに向けた激変緩和措置として使用者に有利な要素として考慮されています。ただし、役職定年前後の差異については、86%程度に抑えられており、役職定年後の減額幅が小さく、軽減された業務内容や責任の相違と比較して高額に設定されていることも重視されています。  定年後再雇用であることから、年功的性格の賃金体系を採用している企業は、賃金の差異に対する説明はしやすいといえますが、それだけではなく、@業務内容やA変更の範囲についても、差異があれば説明をできるようにしておくことは重要と考えられます。 ※ 有期雇用労働者の不合理な待遇差の禁止を規定していた旧労働契約法第20条は、2018年7月に公布された働き方改革関連法により、パートタイム・有期雇用労働法第8条に統合されました Q2 在宅勤務導入にともなう通勤手当の減額について教えてほしい  当社には他県から長時間の通勤をしている従業員が多数います。業務の効率化とコロナ禍の対応として在宅勤務を進めているのですが、通勤手当の取扱いに苦慮しています。原則として、通勤手当は就業規則の定めにしたがって、実費を全額支給していますが、在宅勤務となったときには全額の支給が不要ではないか、出社時のみを実費支給すれば足りるのではないかという意見があります。通勤手当の支給額を一方的に減額することは許されるのでしょうか。 A  就業規則に基づき支給される通勤手当は、賃金となるため、就業規則を不利益に変更する場合は、高度の必要性と就業規則変更の合理性が認められなければなりません。ただし、就業規則の変更をともなうことなく、解釈の可能な範囲で実費支給とすることは、問題ないと考えられます。なお、在宅勤務中の通勤手当の変更については、対象者と協議して理解を得ることが望ましいでしょう。 1 通勤手当の法的性質  まずは、通勤手当の法的な性質に触れておきたいと思います。会社と労働者の労働契約においては、労働者が労務を提供し、使用者はこれに対する対価として賃金を支払うという関係が認められます。労働基準法第11条は、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定めており、「賃金」に該当する場合には、労働者にとって重要な権利と位置づけられています。したがって、通勤手当が、「賃金」に該当するか否かによって、変更が許容されるか否かの結論も左右されることになります。  ところで、通勤手当と似ているものとして、出張旅費や業務にともなう外出時に支給される交通費などがあります。これらの出張旅費や交通費は、「業務費」として「賃金」から除外されると考えられています。これらの費用は、その性質上、業務遂行にともない必然的に発生するものであり、本来的に事業遂行を行う会社が負担するべき費用であることから、労働者による労働の対償であるべき賃金とはその性質を異にするというのがその理由です。  通勤手当については、使用者が労働者に必ず支払わなければならないという性質までは有しておらず、あくまでも会社が、労働契約または就業規則に基づき、労働者に対して支払うことを約束した場合に支払う義務が生じるものです。その意味では、結婚祝金や死亡弔慰金などと類似の性質を有しています。結婚祝金や死亡弔慰金は、「任意的恩恵的給付」などと呼ばれ、原則として「賃金」ではないと考えられています。しかしながら、これらの「任意的恩恵的給付」についても、労働協約、就業規則または労働契約などによって、支給条件が明確なものは、例外的に賃金であると考えられています(昭和22年9月13日発基一七)。  通勤手当も「任意的恩恵的給付」と類似しており、労働協約、就業規則または労働契約などによって支給条件が定められているかぎりは、「賃金」として扱われることになりますので、就業規則に基づき通勤手当が支給されている場合は、「賃金」に該当すると考えられます。 2 通勤手当の支給条件について  それでは、通勤手当について、その支給額を変更することは、法的にはどのように位置づけられるのでしょうか。労働者への影響としては、実費として通勤定期代を受領していたような場合には、労働条件が不利益に変更されるようにも見えます。  例えば、就業規則に基づき通勤手当を支給しており、就業規則の不利益な変更をする場合には、その変更の必要性や、変更内容の相当性、労働者への説明内容などに照らして、就業規則の変更が合理的なものでなければならないとも考えられます(労働契約法第10条)。  特に、賃金については、労働者にとって重要な権利とされており、不利益に変更することは、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合に、その変更の効力が生ずると考えられています(最高裁昭和63年2月16日判決・大曲市農業協同組合事件)。 3 就業規則の変更か実費の解釈か  就業規則に定められた通勤手当の支給額が、実費として定められている場合に、その実費として支給する額が変更されることは、労働条件の変更として、就業規則の不利益変更に該当するのでしょうか。  例えば、実費支給であるとしても、「通勤定期代3カ月分を実費として支給する」などの記載がされている場合には、「通勤定期代3カ月分」の支給が労働条件として約束されているといえるため、この部分の就業規則を変更する必要が生じるでしょう。  一方で、「通勤手当として、通勤に必要な費用を実費として支給する」といった記載であれば、この場合「必要な費用」がいくらであるかは解釈の余地があることになります。在宅勤務となったときには通勤に必要な費用が発生しなくなることから、通勤手当の支給をなくすことも可能と解釈できます。  そのため、企業ごとの就業規則(賃金規程)の記載によって、通勤手当の減額が可能であるか、就業規則の変更まで必要となるのか、結論が異なることになります。  なお、このように企業によって結論が相違するということは、従業員の知合いの企業は下げられなかったが、自社だけ下げられたといった不満が生じるおそれは否定できません。自社では通勤手当の減額が可能であるとしても、なぜ減額が可能であるのかについては、従業員にしっかりと説明をして理解をしてもらうことが望ましいでしょう。  なお、就業規則の変更を要する場合についての変更の合理性についてですが、通勤手当の場合は基本給や賞与、退職金などの減額と比較すると重大な影響といえるかという点には若干疑問もあります。通勤定期券を購入する必要がなくなったのであれば、支給の必要性は低下しているとはいえるでしょう。在宅勤務ではなくなったときには従前の通勤手当の支給条件に戻るようにしておき、在宅勤務中の通勤手当に不利益変更の範囲を限定すれば、労働者への十分な説明を経たうえで、変更が有効と認められる余地はあるのではないかと思われます。 【P54-55】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第29回 「社員教育」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は社員教育について取り上げます。用語解説するには、いまさら感の強い用語ではありますが、高齢者の就業確保を考えるうえで注目されているテーマでもありますので、ここで解説しておきたいと思います。 社員教育の実施方法は多岐にわたる  社員教育とは、従業員のスキル・能力の向上や成長のために企業が教育を実施する、または学ぶ機会を提供することです。まずはわかりやすく実施方法からみていきましょう。 @OJT(On the Job Training)…職場の上司や先輩が部下や後輩に対し、具体的な仕事の実践を通じて教育することです。特に新入社員に対しては近い年次の先輩をOJTリーダーに任命して、仕事の指導に加え相談役としての役割をになわせることで、新入社員のみならずOJTリーダーの育成にもつなげているケースがよくみられます。 AOFF―JT(Off the Job Training)…仕事場を離れて、研修やセミナーなどを通して知識の付与や考え方を教育することです。受講生が一堂に集まり講師と対面して学ぶ集合研修や、オンラインで動画を視聴することで学ぶeラーニングが代表的な手段といえます。 B自己啓発支援…社員の自主的な自己啓発活動に対し、時間面、経済面での援助や手段の提供などを行うことです。企業が支援する公的または民間資格の取得や研修のコンテンツの項目や手段を指定し、その条件に合致する取組みを社員自らが行った場合に支援されるものです。 Cキャリア開発支援…職務や関連する活動による経験を通して、継続的にスキルや能力の向上を図る支援をすることです。計画的に部署や職務を変更することを通して、経験や能力の幅を広げ、適性を見極めるジョブローテーションもこれに含まれます。 D内省支援…自分自身の心の動きや、自分自身が経験したことを客観的にふり返り、新たな行動へつなげる機会やきっかけを設けることです。業務に関する取組みや行動について、上司から本人に伝えるフィードバック面談が代表的ですが、短いサイクルで実施し、より対話や本人の自主性を重視した1 on 1(ワン・オン・ワン)ミーティングも実施する企業が増えています。  この五つは各々別々に実施するのではなく、OJTとキャリア開発支援、内省支援を一体として行うなど、体系立てて行うことでより一層大きな効果が期待できるといわれています。 社員教育の意義は大きい  社員教育の意義としてよくあげられるのは、主に次の三つです。 ・業務に必要な知識やスキルの習得による労働生産性※1の向上 ・社員のモチベーションの維持・向上 ・環境変化への対応力の強化  企業としては労働生産性の向上やモチベーションの維持・向上に関心を持つ傾向がありますが、多くの企業が費用をかけてまで実施するほど重要視しているかは疑問です。厚生労働省の「能力開発基本調査(令和3年度)」の企業調査をみても、OFF―JTまたは自己啓発支援の両方に支出した企業は19.7%の一方で、いずれにも支出しない企業は49.0%に上り、同調査のOFF―JTに支出した費用の労働者一人あたり年間平均額(図表)は1・2万円、自己啓発支援では0・3万円となんとも寂しい状況にあります。また、景況悪化によって最初に減らされるのが社員教育費といわれる通り、図表の一人あたり平均額でみると、2008年のリーマンショックや新型コロナウイルスの影響が色濃い時期には平均額が低下しています。  一方、政府は労働生産性の向上と、環境変化対応の強化面から、社員教育の意義について重要視しています。内閣府が発行している『経済白書(年次経済財政報告)』(平成30年)の第2章第2節に「人生100年時代の人材育成」というパートを設けています。このなかで、企業における教育の効果として「平均的には一人あたり人的資本投資※2額1%の増加は、0.6%程度労働生産性を増加させる可能性が示唆される」と数値的に示すことで積極的に教育投資することへの有効性について説いています。また、技術革新という環境変化に対応していくために、技術革新をになうための情報処理・通信にたずさわるIT人材の育成、技術革新に代替されることが困難な能力獲得、リカレント(学び直し)教育の重要性について述べています。  リカレント教育は最近メディア等でもみかけ、高齢者の就業確保とも関係の深い用語であるため、触れておきたいと思います。リカレント教育とは、学校教育からいったん離れたあとも継続的に学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことをさしています。大学等の教育機関への通学や通信講座なども含めた自己啓発による学び直しを行うことにより、従事している業務またはそれ以外の分野や最新の知識・スキルを習得していきます。これにより社内でのさらなる活躍や新たな仕事や職場への挑戦など、長い職業人生に対応しやすくなることが期待できます。高齢者雇用においては、高齢者の知識・スキルのアップデート不足や新たな業務に柔軟に対応できないといった点が課題としてあげられますが、リカレント教育はこれらの課題解決に有効な手段として注目されています。  次回は、「終身雇用」について取り上げます。 ※1 労働生産性……労働者1人1時間あたりに生み出される付加価値 ※2 人的資本投資……人材を「資本」としてとらえ、その価値を最大限引き出すために投資をすること 図表  OFF―JTに支出した費用の労働者一人あたり平均額 労働者一人あたり平均値 平成20年度調査2.5 平成21年度調査1.3 平成22年度調査1.3 平成23年度調査1.5 平成24年度調査1.4 平成25年度調査1.3 平成26年度調査1.4 平成27年度調査1.7 平成28年度調査2.1 平成29年度調査1.7 平成30年度調査1.4 令和元年度調査1.9 令和2年度調査1.5 令和3年度調査1.2 3年移動平均 平成20年度調査 平成21年度調査1.7 平成22年度調査1.4 平成23年度調査1.4 平成24年度調査1.4 平成25年度調査1.4 平成26年度調査1.5 平成27年度調査1.7 平成28年度調査1.8 平成29年度調査1.7 平成30年度調査1.7 令和元年度調査1.6 令和2年度調査1.5 令和3年度調査 出典:「能力開発基本調査(令和3年度)」厚生労働省 【P56-57】 10月は「高年齢者就業支援月間」 参加無料 令和4年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務となりました。  このため、本年度は、企業において高年齢者の戦力化を図るために関心の高い「健康管理・安全衛生」「自律的キャリア形成」「シニア活用戦略」「生涯キャリア形成」をテーマとして、4回にわたり開催します。  本シンポジウムでは、学識経験者による講演、高年齢者を活用するため先進的な取組みを行っている企業の事例発表・パネルディスカッションなどにより、高年齢者が活躍できる環境整備の必要性や今後の高齢者雇用について、みなさまとともに考えます。  なお参加費は全会場、無料となっています(事前申込みが必要です)。  みなさまのご参加を、心からお待ちしています。 福岡 「働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント」 日時 令和4年10月26日(水)13:00〜16:30 場所 JR九州ホール 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1 JR博多シティ9階 参加方法 @会場参加(100人)Aライブ視聴 ※事前申込制・先着順 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、公益社団法人日本産業衛生学会 エイジマネジメント研究会、福岡労働局/各公共職業安定所、福岡県/福岡県生涯現役チャレンジセンター 共催 福岡商工会議所、福岡県商工会連合会 後援 厚生労働省、福岡産業保健総合支援センター、公益社団法人福岡県医師会 《プログラム》 【基調講演】 「働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント〜労働寿命の延伸策を探る〜」 産業医科大学 名誉教授 神代雅晴 氏 【講演】 一般財団法人日本予防医学協会 理事 赤津順一氏/福岡教育大学 准教授 樋口善之氏/トヨタ自動車九州株式会社 取締役 コーポレート本部長 杉山 敦氏/株式会社健康企業 代表取締役社長 亀田高志氏 【パネルディスカッション】 「働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント」 コーディネーター 神代雅晴 氏(産業医科大学 名誉教授) パネリスト 講師4名 申込み方法 特設サイト(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 東京 「生涯現役社会の実現に向けた自律的キャリア形成」 日時 令和4年11月1日(火)13:30〜16:10 場所 神田スクエアホール 東京都千代田区神田錦町2-2-1 参加方法 @会場参加(100人)Aライブ視聴 ※事前申込制・先着順 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 《プログラム》 【基調講演】 「自分らしいキャリアのつくり方」 慶應義塾大学SFC 研究所上席所員 高橋俊介 氏 【事例発表】 キヤノン株式会社/ソニーピープルソリューションズ株式会社/損害保険ジャパン株式会社 【パネルディスカッション】 「生涯現役社会の実現に向けた自律的キャリア形成」 コーディネーター 今野 浩一郎 氏(学習院大学 名誉教授) パネリスト 事例発表企業3社 申込み方法 特設サイト(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 東京 「70歳就業時代におけるシニア活用戦略」 日時 令和4年11月25日(金)13:30〜16:05 場所 神田スクエアホール 東京都千代田区神田錦町2-2-1 参加方法 @会場参加(100人)Aライブ視聴 ※事前申込制・先着順 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 《プログラム》 【事例発表】 三谷産業株式会社/株式会社USEN-NEXT HOLDINGS 【先進事例の解説】 東京学芸大学 教育学部 教授 内田 賢 氏 【パネルディスカッション】 「70歳就業時代におけるシニア活用戦略」 コーディネーター 内田 賢 氏(東京学芸大学 教育学部 教授) パネリスト 事例発表企業2社、特定非営利活動法人日本人材マネジメント協会理事・弁護士 倉重 公太朗 氏 申込み方法 特設サイト(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 オンライン 「70歳までの就業機会の確保に向けた“生涯キャリア形成”」 日時 令和4年12月6日(火)13:00〜15:55 場所 オンライン配信のみ 参加方法 ライブ視聴 ※事前申込制・先着順 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省、中央労働災害防止協会 《プログラム》 【基調講演】 「高齢者を戦力化するための生涯キャリア形成」 東京学芸大学教育学部 教授 内田 賢 氏 【事例発表】 ポラスグループ/日鋼設計株式会社 【パネルディスカッション】 「70歳までの就業機会の確保に向けた“生涯キャリア形成”」 コーディネーター 内田 賢 氏(東京学芸大学 教育学部 教授) パネリスト 事例発表企業2社、中央労働災害防止協会 【生産性向上人材育成支援センターの紹介】 申込み方法 特設サイト(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html)へアクセスし、専用フォームからお申込みください。 お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ ※新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、開催形式に変更が生じる場合があります。 当機構ホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 【P58】 日本史にみる長寿食 FOOD 348 ワカメの若返り効果 食文化史研究家● 永山久夫 年を取っても若く見える日本人  日本人は、年を取っても若く見えるとか、“不老民族”などと呼ばれますが、世界トップクラスの長寿が、それを証明しています。  日本人は、食による健康管理が上手なのです。ほかの国の人たちが、あまり食べないようなものまで、たくみに活用して、不老長寿や若返りに役に立てています。  その一つが、ユニークな海藻の文化。日本人は、世界でも珍しいほど、海藻を日常的に食べる民族なのです。  なにしろ、縄文時代の貝塚からも海藻が出土するほど古くから食用にされてきたのです。イノシシ肉入りのワカメスープなどにして楽しんでいたのではないでしょうか。  ワカメは北海道から九州まで広く分布しており、利用しやすかったのです。 朝食にワカメのみそ汁の知恵  ワカメのヌルヌルした成分に含まれているアルギン酸やフコイダンなどは、腸内でビフィズス菌など善玉菌の餌となって、その勢力を強化し、悪玉菌を追い払い、免疫力のパワーアップに役立っています。  ワカメには、食物繊維が多く、特に健康効果などで脚光を浴びている水溶性の食物繊維がたっぷり含まれています。  食物繊維によって腸内環境がよくなれば、新型コロナウイルスなどの感染症やガンの予防、そして若返りにも力を発揮するなど、さまざまな効果が期待できます。  ホテルの朝食で和食コースを注文すると、たいてい出されるのが、豆腐とワカメのみそ汁。ワカメのみそ汁を食べると、一日をニコニコとなごやかに過ごせるからかもしれません。昔から「イライラするときには、ワカメのみそ汁」といわれてきました。  ニコニコできる理由は、ワカメ、豆腐、みそ、カツオ節のどれにもカルシウムが含まれているからなのです。カルシウムは人の体にもっとも多く含まれているミネラルで、丈夫な骨をつくるだけでなく、精神安定効果も高いといわれています。一日のスタート前にワカメのみそ汁を食べることは、仕事の能率を上げるための日本人の知恵ともいえます。 【P59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「生涯現役地域づくり環境整備事業(2022年度開始分)」の実施団体候補  厚生労働省は、「生涯現役地域づくり環境整備事業(2022〈令和4〉年度開始分)」の実施団体候補として、5団体の採択を決定した。  この事業は、高齢者雇用対策として、2021年度まで6年にわたり実施されてきた「生涯現役促進地域連携事業」に替わり、2022年度より新たに実施されるもの。働く意欲のある高齢者がその能力を発揮し活躍できる環境を整備する必要性が高まり、今後は企業内での雇用だけでなく、高齢者のニーズに応じ、地域において高齢者が活躍できる多様な雇用・就業機会を創出する取組みを促進していくことが必要とされている。そこで、地域ですでに定着している取組みとの連携を強化し、地域のニーズをふまえた高齢者の働く場の創出と持続可能なモデルづくりや、他地域への展開を推進する事業となることを目ざしている。  2022年度開始分の募集は、同年3月上旬から5月上旬にかけて行われ、有識者等からなる評価委員会により実施団体候補が採択された。  採択された5団体は次の通り。 @北広島市生涯現役地域づくり環境整備協議会 A大町市創業支援協議会 B生涯活躍のまち静岡推進協議会 Cミナミイズ人と経済活性化推進協議会 D豊前(ぶぜん)生涯活躍地域づくり協議会 ※「生涯現役地域づくり環境整備事業」の事業概要とねらいは、本誌2022年6月号に掲載 厚生労働省 長時間労働が疑われる事業場に対する2021年度の監督指導結果  厚生労働省は、2021(令和3)年度に実施した長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果を取りまとめて公表した。それによると、監督を行った事業場の34.3%に違法な時間外・休日労働が認められた。  この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働数が1カ月あたり80 時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としている(2021年度から、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に実施した監督指導結果を含めて集計)。  結果をみると、監督を行った3万2025事業場のうち、2万3686事業場(全体の74.0%)で労働基準関係法令違反が認められた。主な違反は、違法な時間外・休日労働があったものが1万986事業場(全体の34.3%)、賃金不払残業があったものが2652事業場(同8.3%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが6020事業場(同18.8%)となっている。  違法な時間外・休日労働があった事業場のうち、時間外・休日労働(法定労働時間を超える労働および法定休日の労働)の実績がもっとも長い労働者の時間数が1カ月あたり80時間を超えるものが4158事業場(37.8%)、同100時間を超えるものが2643事業場(24.1%)、同150時間を超えるものが562事業場(5.1%)、同200時間を超えるものが121事業場(1.1%)となっている。 表彰 東京商工会議所 第20回「勇気ある経営大賞」受賞企業が決定  東京商工会議所が主催する第20回「勇気ある経営大賞」の受賞企業(応募総数90社)が決定した。  本賞は、過去に拘泥することなく、常識の打破に挑戦し、高い障壁に挑み、高い理想の追求を行うなど勇気ある挑戦をしている中小企業またはグループを顕彰するもの。 受賞企業は以下の通り。 ●大賞(1社)  株式会社高山医療機械製作所(台東区)/職人の手作業による医療機器製造を高度な加工可能な機械化に転換。医療現場の生の声やニーズを把握し、高付加価値製品を開発。 ●優秀賞(2社)  東信水産株式会社(杉並区)/消費者嗜好の変化により鮮魚売上が大きく減少するなか、刺身・寿司の加工施設を新設するなどして業績を回復。フジ産業株式会社(練馬区)/大手メーカーの1代理店の状況に甘んじることなく、自社ブランド製品を開発・生産し独自路線を確立。 ●特別賞(2社)  株式会社佐藤製作所(目黒区)/高齢男性のみの町工場で「銀ロウ付け女子」の採用・定着を実現。新事業の企画も行われ、社内が劇的に活性化。  株式会社ミライロ(品川区)/300種近い障害者手帳を全種類デジタル化。DXにより、障害者の利便性向上と事業者の負担軽減を実現。 【P60】 次号予告 11月号 特集 多彩な取組みで70歳超雇用を実現 高年齢者活躍企業コンテスト 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰受賞企業事例から リーダーズトーク 山本龍生さん(神奈川歯科大学 歯学部 教授) (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 ※カメラで読み取ったQRコードのリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み 株式会社労働調査会までご連絡ください。 電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 田村泰朗……太陽生命保険株式会社取締役専務執行役員 丸山美幸……社会保険労務士 三宅有子……日本放送協会 メディア総局 第1制作センター(福祉)チーフ・リード 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●9月16日(金)、厚生労働省と当機構が主催する「令和4年度高年齢者活躍企業コンテスト」の受賞企業が発表されました。本誌では、10・11月号の2回に分けて、受賞企業の取組みをご紹介します。今号では、厚生労働大臣表彰を受賞した6社の事例をご紹介しました。  最優秀賞を受賞した、株式会社恵那川上屋をはじめ、今回のコンテストでは、70歳超の雇用を実現している多くの企業からご応募をいただきました。業種や企業規模などが異なるなかで、受賞企業の多彩な取組みを参考に、高齢者雇用の推進に役立てていただければ幸いです。 ●10月は高年齢者就業支援月間です。高齢者雇用先進企業の事例発表などを行う「地域ワークショップ」を、全国46都道府県で開催します。また、10月下旬〜12月にかけて4回にわたって開催する「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」は、ライブ視聴も可能となっています。詳しくは当機構ホームページをご覧ください。 読者アンケートにご協力お願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー10月号 No.515 ●発行日−−令和4年10月1日(第44巻 第10号 通巻515号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田 剛 編集人−−企画部情報公開広報課長 中上英二 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-923-1 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.320 銘木の特徴を活かして美しく丈夫な仏壇を製作 仏壇製作 兄 岩田(いわた)芳樹(よしき)さん(右、75歳) 弟 岩田(いわた)晴芳(はるよし)さん(左、75歳) 銘木(めいぼく)の材料を見極める力と指さし物もの・塗りなどの伝統技能を駆使して、丈夫でありながら美しく温もりの感じられる仏壇を製作 木地の特性を活かした「東京仏壇」を製作  東京都指定伝統工芸品の一つ、「東京仏壇」。その始まりは、庶民の間に仏教が浸透し、家庭に仏壇が置かれるようになった江戸時代中期にさかのぼる。木目の美しさを活かした、簡素で丈夫なつくりが特徴だ。製作の工程は、木地の選定・乾燥から始まり、50点以上に及ぶ部品の加工、彫刻、塗り、組立てと多岐にわたり、「東京の伝統工芸品の総合芸術」ともいわれている。彫刻を除き、その工程を一貫して手がけることのできる希少な職人が、岩田芳樹さん・晴芳さんの双子の兄弟である。  2人は21歳のとき、創業者である父・芳次郎(よしじろう)氏に師事し、技術を習得した。2人とも、父の働く姿を見て育ったこともあり、自然と後を継ぐ気持ちになったそうだ。1976(昭和51)年に有限会社岩田仏壇製作所を設立。その後、生産量の増加にともない東京都北区から埼玉県川口市に工房を移転した。現在は晴芳さんの息子・隆(たかし)さんと3人で、仏壇の製作に従事している。3人とも東京都認定の伝統工芸士である。 天然木の材料を見極めその特徴を活かす  東京仏壇は、材料に黒檀(こくたん)、紫檀(したん)などの唐木※や桑、屋久杉(やくすぎ)といった銘木を用いる。いずれも木目が美しく、特に唐木は硬いため、耐久性にも優れる。こうした木地の特性を活かすためには、豊富な経験が欠かせないという。  まず、木材から部品となる木地を取る「木取(きど)り」では、木目を活かしたり、貴重な木材を無駄なく使うことが求められる。また、すべてを唐木などで製作すると、コストが高くなり、重量も住居の床が沈むほど重くなってしまう。そこで、部品となる材料には、芯材に別の天然木を使用し、薄く加工した唐木材をその表面に接着する加工が施される。すべてが天然木のため、それぞれの木材の性質を見極めて加工する力も必要だ。また、唐木は硬い材質のため、釘などは使わず、指物の技法を用いる点も、熟練した技能が求められる。  「例えば、蝶番(ちょうつがい)を使ったつり込みの扉は、寸法通りつくってもうまく閉まりません。蝶番によって生まれるすき間を考慮して調整する必要があります。また引出しは、片方を押し込むともう片方が押し出されるくらい密封度が高く、カンナでの調整が欠かせません。塗装も、木材の部位によって照りの具合が異なるため、組み立てたときに均一の色合いになるようにしなければなりません。こうした調整は、いずれも経験が求められる部分ですね」(晴芳さん)  こうして手作業で丹念につくられる仏壇は、分解して傷んだ部分を修理し、再生することも可能。長年使用してきた仏壇の修理を依頼してくる人も多いそうだ。 銘木を使った伝統工芸の良さを多くの人に伝えたい  近年は工場で生産される仏壇が主流となり、伝統的な唐木仏壇のよさを知る人が少なくなりつつある。そこで岩田さん兄弟は、東京仏壇のよさを広めるためのさまざまな取組みを行っている。  その一つが、現代の住宅事情に合わせた小さな仏壇の製作。冒頭の写真にも見られるような、小型でモダンな仏壇も製作している。  また、伝統的な仏壇製作の技能を活かし、唐木材を使った箸やコースターなどの小物製作も行っている。  「伝統工芸品のイベントで消費者のみなさんに直接販売したり、体験授業で子どもたちにつくり方を教えたりしています。こうした活動を通じて、唐木細工のよさを知ってもらい、ひいては東京仏壇の存在にも興味を持っていただければと考えています」(芳樹さん)  2人は新商品の開発にも熱心だ。取材当日も、芳樹さんは位牌などを飾る厨子(ずし)や遺影を飾る写真立てを、晴芳さんは箸箱を披露してくれた。「仏壇製作の技術を活かして、これからも楽しくものづくりをしていきたい」と話す2人。今後の活躍にも大いに注目したい。 有限会社岩田仏壇製作所 TEL&FAX:048(269)3500 https://iwatabutsudan.localinfo.jp/ (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※ 唐木(からき・とうぼく):黒檀や紫檀など、熱帯地方で生産される高級木材。奈良時代に唐(中国大陸)から日本へ渡ってきたことからこの名がついた。現在、黒檀、紫檀はワシントン条約で国際取引が制限されている。 写真のキャプション 21歳のときから二人三脚で技術を磨いてきた。現在は芳樹さんが北区伝統工芸保存会の会長、晴芳さんが東京唐木仏壇工業協同組合の理事長として、業界の発展にも力を注ぐ 埼玉県川口市に工房を構えて30年以上 晴芳さんの息子、隆さん(左)が3代目として、2人の技術を継承している 扉に七宝焼の飾り板を施した小型の仏壇 唐木などの銘木を十分乾燥させ、木目や色などを活かして材料に用いる 唐木などの銘木を使ったコースターやブレスレットなどの小物も製作 木取り、削り、貼り合わせ、面取りなど、さまざまな作業を行う工房 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は送りがなの問題です。知っているようで、聞かれてみると不安になる、そういう問題では脳が過去の記憶を引き出そうとします。また、答えに対する渇望が増し、わかったときの充実感が増します。語彙力のピークは67歳といわれ、その後も急速な低下はないことが知られていますからしっかりチャレンジしてください。 第64回 送りがな問題 次の漢字に正しい送りがなをつけてください。 目標2分 1 捕 つかまえる 2 省 かえりみる 3 危 あぶない 4 訪 おとずれる 5 幼 おさない 6 必 かならず 7 汗 あせばむ 8 柔 やわらかい 9 逆 さからう 10 食 くらう 11 産 うまれる 12 短 みじかい 13 費 ついやす 14 頼 たのもしい 15 恥 はずかしい 16 栄 さかえる 書いて覚え、思い出して書く  日本に生まれ育った私たちにとって、慣れ親しんだ日本語ですが、正しい日本語を使いこなすのは、案外むずかしいものです。特に現代では、毎日の暮らしのなかで文字を「書く」ことが、めっきり減ってきました。スマートフォンやパソコンが「自筆」に取って代わったことも大きな要因でしょう。しかし、この「書く」作業そのものが、記憶の定着につながっているのです。  いくつになっても、脳は成長することが可能です。毎日少しずつ、読み書きに取り組んでみましょう。「書いて覚え、思い出して書く」という作業が、さびつき始めたあなたの脳の活性化に役立ちます。また、思い出すこと、覚えることの楽しさが、きっとあなたの脳を若返らせます。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRS を使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK 出版)など著書多数。 【問題の答え】 1 捕まえる 例 飛んできた蝶を捕まえる 2 省みる 例 我が身を省みて恥じる 3 危ない 例 危ない目に遭う 4 訪れる 例 やっと平和が訪れた 5 幼い 例息子はまだ幼い 6 必ず 例 毎日必ず運動をする 7 汗ばむ 例 汗ばむ陽気だ 8 柔らかい 例 柔らかい物腰で話す 9 逆らう 例親に逆らって家を出た 10 食らう 例強烈なパンチを食らった 11 産まれる 例 子犬が4匹産まれる 12 短い 例 彼女は短い髪が似合う 13 費やす 例 歳月を費やして完成させる 14 頼もしい 例 頼もしい仲間をもった 15 恥ずかしい 例 成績が悪くて恥ずかしい 16 栄える 例 城下町として栄えた場所 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2022年10月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内※ 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 ※2022年10月3日(月)に移転 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ  毎年ご好評をいただいている「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を、本年度も開催します。  令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、「70歳までの就業確保」が努力義務となりました。このため、本年度は、企業において高年齢者の戦力化を図るために関心の高い「健康管理」「キャリア形成」などをテーマとして、10月〜12月にかけて4回開催します。  内容は、学識経験者による講演をはじめ、高齢社員の戦力化に取り組んでいる企業や継続雇用・定年延長を行った企業の事例発表、学識経験者をコーディネーターとしたパネルディスカッションが中心です。  高年齢者が活躍できる環境整備の必要性や今後の高年齢者雇用について、みなさまとともに考える機会にしたいと思いますので、ぜひご参加ください。 開催スケジュールは、以下の通りです(主な内容は、56、57ページをご覧ください)。 なお、ご不明な点は、当機構 雇用推進・研究部 普及啓発課までお問い合わせください。 参加無料 福岡 テーマ 働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント 日時 10月26日(水曜日)13:00〜16:30 場所 JR九州ホール ライブ配信同時開催 東京 テーマ 生涯現役社会の実現に向けた自律的キャリア形成 日時 11月1日(火曜日)13:30〜16:10 場所 神田スクエアホール ライブ配信同時開催 東京 テーマ 70歳就業時代におけるシニア活用戦略 日時 11月25日(金曜日)13:30〜16:05 場所 神田スクエアホール ライブ配信同時開催 オンライン テーマ 70歳までの就業機会の確保に向けた“生涯キャリア形成” 日時 12月6日(火曜日)13:00〜15:55 場所 オンライン配信のみ お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 後援 厚生労働省 ほか 申込み方法 特設サイト(https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/moushikomi.html)へアクセスし、専用フォームからお申し込みください。 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、開催形式に変更が生じる場合があります。当機構ホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 ※シンポジウムについては、開催当日のライブ配信のほか、後日YouTubeにおいてオンデマンド配信を行います。当機構ホームページでお知らせしますので、ご確認ください。 2022 10 令和4年10月1日発行(毎月1回1日発行) 第44巻第10号通巻515号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会