【表紙2】 高年齢者活躍企業フォーラム 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム WEB配信のご案内 高齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  昨年10月に東京で開催された「高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)」、10月〜12月に東京・福岡で開催された「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の模様をオンデマンド配信します。  改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月に施行され、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務となりました。このため、本年度は企業において高年齢者の戦力化を図るために関心の高い「健康管理・安全衛生」、「自律的キャリア形成」、「シニア活用戦略」、「生涯キャリア形成」をテーマとして開催しましたシンポジウムの模様を、お手元の端末(パソコン、スマートフォン等)でいつでもご覧いただけます。  学識経験者による講演、高年齢者が活躍するための先進的な制度を設けている企業の事例発表・パネルディスカッションなどにより、高年齢者が活躍できる環境整備の必要性や今後の高齢者雇用について考えるヒントがふんだんに詰まった最新イベントの様子を、ぜひご覧ください。  各回のプログラムの詳細については、当機構ホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/index.html 視聴方法 当機構ホームページ(トップページ)から機構について→広報活動(メルマガ・啓発誌・各種資料等)→YouTube 動画(JEED CHANNEL)→「イベント」からご視聴ください。 または jeed チャンネル 検索 https://youtube.com/@jeedchannel2135 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 写真のキャプション 上:高年齢者活躍企業コンテスト表彰式の様子 下:シンポジウムの様子 【P1-4】 LeadersTalk リーダーズトーク No.93 地域の医療と健康を支える「プラチナナース」の活躍に期待 公益社団法人日本看護協会常任理事 森内みね子さん もりうち・みねこ 地方独立行政法人神奈川県立病院機構県立こども医療センター看護局長、神奈川県立平塚看護大学校校長、地方独立行政法人神奈川県立病院機構県立こども医療センター副院長などを経て、2021(令和3)年より現職。  少子高齢化による労働力人口の減少などにより、さまざまな業界で高齢人材の活用が進んでいます。公益社団法人日本看護協会では、知識や経験を活かし活躍する高齢看護職「プラチナナース」のさらなる活用・活躍に向け、『プラチナナース活躍促進サポートBOOK』を作成し、高齢者雇用の推進に取り組んでいます。そこで今回は、同協会常任理事の森内みね子さんに、看護業界における高齢者雇用の現状や課題、展望についてうかがいました。 生涯現役で活躍できる看護職 人材不足の解消に向け高齢人材のさらなる活用へ ―医療・看護業界では人材不足が大きな問題となっています。看護職の人材不足や高齢化の現状について教えてください。 森内 看護職員の就業総数は2019(令和元)年時点で約168万人です※1。戦後一貫して増加してきましたが、20代の就業者数が伸び悩み、最近は頭打ちの傾向にあります。一方で40歳以上の就業者の比率が徐々に高まり、平均年齢は2020年の推計で44歳を超えています。すでに60歳以上の就業者は20万人に迫り、全体の11.8%を占め、ほぼ9人に1人となっています※2。少子化により18歳人口が減少を続けるなかで、若い人材を看護業界に迎え入れることが、以前よりもむずかしくなると見込まれています。  また、高齢社会の進展にともない、保健・医療・福祉分野での看護ニーズが多様化・複雑化し、今後もその傾向はさらに高まる見込みです。病院完結型医療から地域完結型医療に転換されていくなかで、疾病や障害のある人が住み慣れた地域でその人らしい生活を送るには、それを支える看護が重要になります。看護の仕事は人の命を預かる責任の重い仕事です。24時間365日を通じて対象の命や健康を守り、ご家族を支えています。たいへん働きがいのある仕事ではありますが、看護職の9割が女性です。結婚、妊娠、出産、子育てなどの理由や、自身の健康を理由に退職する人も一定数います。さらにコロナ禍が拍車をかけ、多くの看護の職場は人材不足を感じています。 ―コロナ禍で、たいへん苦労をされながら職務を遂行している看護職の人たちが報道されました。働き方改革や人材不足に向けた取組みも進んでいますか。 森内 コロナ禍においても看護職員は、対象のもっとも身近なところで観察を行い、コミュニケーションをとり、体位変換や移送、身体の保清などの療養上の世話、さまざまな苦痛の緩和などに努めてきました。コロナ禍による行動制限が社会全体で緩和傾向にあるなかでも、看護職員は厳しい環境のなかで仕事をしています。  本会は使命の一つに、「看護職が生涯を通し安心して働き続けられる環境づくりを推進する」を掲げ、看護職の働き方改革を推進しています。今後、若年層の大幅な増加が見込めなくなるなかで、国民にとって安心・安全な看護を提供していくためには、看護職が健康で働き続けられる持続可能な働き方の実現と、これを支える職場環境の整備が喫緊の課題です。夜勤や交代制勤務による心身の負担を軽減する勤務のあり方についても取り組んでいるところです。  一方で、これからの看護のマンパワーの量と質、両面の確保のためには、看護職の高齢人材の活躍は欠かせません。医療が高度化、複雑化しているなかで、看護職は専門職として専門性を磨きキャリアアップすることが、とても重要なことですが、看護の現場は、活躍する領域が非常に広く、そこでの役割も多様で多彩です。年齢にかかわらず、仕事の内容や働き方を選べば、生涯現役で活躍できるのが看護の仕事の強みでもあります。 ―貴協会では、2022年3月に『プラチナナース活躍促進サポートBOOK』を作成されました。「プラチナナース」という名称に込められた思いとは何でしょうか。 森内 看護職の高齢化が進むなかで、その人たちがこれまでの経験を活かしながら、活き活きと元気に生涯にわたって看護の仕事ができるようなサポートが必要ではないかと考えました。「プラチナ」には、いつまでも色あせない輝きを放つ希少性の象徴という意味があります。そこで、これまでの経験と持てる能力を発揮し、活き活きと活躍している定年退職前後の就業している看護職員を「プラチナナース」と名づけました。  プラチナナースは、年代や働き方、そして職場もさまざまです。就業場所は、病院よりも、介護老人保健施設などで働く人の割合が高くなっています。また、これまでの経験を活かして起業して新しいサービスにチャレンジする人もいます。そうした人たちが活躍できる環境をつくっていくことが重要だと考えています。サポートBOOKでは、プラチナナース自身が働くうえでの留意点のほか、病院など事業主・管理者にプラチナナースが活躍するためにご理解いただきたいマネジメントのあり方などについてもまとめています。 積み重ねた豊かな経験とキャリアがプラチナナースの強みと魅力 ―プラチナナースが持つ強みや魅力とは何でしょうか。 森内 やはり積み重ねた豊かな経験とキャリアを持っていることです。看護職としての知識やスキルだけではなく、生活経験、人生経験がプラスされていることがプラチナナースの強みであり、魅力です。看護においては、看護を提供する人、看護を受ける人の一方向の関係では、良質な看護は提供できません。対象の背景にあるさまざまな生き方、考え方、置かれている状況などを会話や表情、態度から理解し、信頼関係のなかで看護を展開しています。プラチナナースは看護の経験を重ね、人生を重ねたからこそ、対象にとっては、親しみやすく話しかけやすい存在であり、安心感もあるのだと思います。 ―プラチナナースが活躍するために事業主や管理者に対して、どのような取組みを呼びかけているのでしょうか。 森内 まずは、安全に健康で働きがいを持って働ける職場環境づくりが重要だと考えています。一般的に、加齢にともなって身体機能が徐々に衰えてきます。転倒などによるけがの防止はもちろん、慢性的な時間外労働などがあれば、本人の健康に影響が出てくる可能性も高まります。安心して柔軟に働ける仕組みづくりなど、安全と健康に配慮した職場環境を整備する必要があります。  また、個別性に配慮して業務内容や役割を明確にすることも重要です。処遇については、業務内容や役割に応じた評価と賃金の仕組みが必要だと思います。年齢を理由に画一的に賃金を引き下げるケースはいまでもありますが、それぞれがになっている業務内容や役割、責任の程度に応じた評価と賃金決定の仕組みが必要だと考えています。  このような仕組みはプラチナナースだけにかぎりません。多様な働き方を選択した若手や中堅の看護職にも適用できると思います。実際に仕事の内容や責任と賃金が見合っていないのではないか、という理由で退職する人もいます。それぞれの病院や施設の規程があるとは思いますが、ぜひ賃金制度がどうなっているかを点検し、改善に向けた積極的な取組みをしていただくことを期待しています。それは同一労働同一賃金の趣旨にも叶っていると考えています。 多様な人材が働く組織文化の醸成に向け看護管理者の手腕にも期待したい ―看護職のなかには訪問看護をはじめ、地域のさまざまな現場で活躍されている人もいます。改めてプラチナナースに期待したいことは何ですか。 森内 最初にも申しました通り、「地域完結型医療」を展開するとともに、生活習慣病予防や重症化予防なども含めた健康支援を、積極的に推進していくことが求められています。経験豊かなプラチナナースの活躍に大きな期待が寄せられています。  また、若手看護師の育成や相談・支援など、現役世代を支える役割も期待されています。プラチナナースは働く時間が短くなり、出勤日数も少なくなるかもしれませんが、そうしたなかでも活躍してもらうための職場環境の整備や、多様な人材が働く組織文化の醸成も非常に重要です。そういった意味でも、看護管理者の手腕の発揮に期待しています。 ―プラチナナースだからこそ、できることとは何でしょうか。 森内 定年退職などを迎えても人生はまだまだ続きます。それぞれがどう生きていくのかだけではなく、看護職としての資格を活かして社会にどう向き合っていくのかを考える年代になります。看護職であれば、長いキャリアのなかでだれもが「こういうサービスがあれば患者さんや利用者、ご家族が助かるのにな」と、考えたことがあると思います。プラチナナースになって、「これまでやりたくてもできなかったことがいまならやれる」と考えて、それに挑戦する人が増えることを期待しています。  これからもプラチナナースが、生涯現役の看護師として輝くために、健康で安全に、そして安心して働き続けられるように取り組んでまいります。プラチナナースの方だけでなく、これからプラチナナースを目ざすすべての看護職のみなさま、管理者のみなさまなどに、『プラチナナース活躍促進サポートBOOK』をぜひご活用いただきたいと思います。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) 『プラチナナース活躍促進サポートBOOK』は、日本看護協会ホームページ※3からダウンロードできる ※1 『令和2年 看護関係統計資料集』(日本看護協会出版会)より ※2 『衛生行政報告例』(厚生労働省)より ※3 https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/platinum/pdf/sp_book.pdf 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のオブジェ 名執一雄(なとり・かずお) 2023 February No.519 特集1 6 技能五輪・技能グランプリを支える高齢者の底力 7 事例@ 株式会社オカムラ(神奈川県横浜市) たしかな技術力と熱い思いで選手を鍛え、入賞に導く 10 事例A 株式会社プレステージジャパン(東川町工場/北海道上川郡東川町) 基礎から理論で説き 応用力も発揮する選手を育成 13 事例B 株式会社ザニューオークラ(神奈川県横浜市) 技能グランプリで4大会連続入賞 総料理長が日本料理の伝統をつなぐ 特集2 17 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈福岡会場〉 −働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント− 18 基調講演 働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント 〜労働寿命の延伸策を探る〜 産業医科大学名誉教授 神代雅晴 22 講演@ 生涯現役に向けて産業保健から見たエイジマネジメントの課題 一般財団法人 日本予防医学協会 理事 赤津順一 24 講演A エイジマネジメント;生涯現役を目指して20歳代からの準備 福岡教育大学 准教授 樋口善之 26 講演B 地域のパートナー制度 人生100年時代における自律的なキャリア形成の支援 トヨタ自動車九州株式会社 取締役コーポレート本部長 杉山敦 28 講演C 生涯現役への壁〜 エイジマネジメントを阻むもの 株式会社健康企業 代表取締役社長 亀田高志 30 パネルディスカッション 働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント 1 リーダーズトーク No.93 公益社団法人日本看護協会 常任理事 森内みね子さん 地域の医療と健康を支える「プラチナナース」の活躍に期待 16 日本史にみる長寿食 vol.351 寒い夜にはどんがら汁 永山久夫 36 江戸から東京へ 第123回 宝を育てた人質生活 徳川家康 作家 童門冬二 38 高齢者の職場探訪 北から、南から 第128回 広島県 医療法人社団長寿会 42 新連載 高齢社員活躍のキーマン 管理職支援をはじめよう! 【第1回】高齢社員の実態と管理職に求められる役割 岡野隆宏 46 知っておきたい労働法Q&A《第57回》 定年後の再雇用合意の解除、労働組合と労働者性 家永勲 50 活き活き働くための高齢者の健康ライフ 【第3回】歩くのが遅くなってきた? 坂根直樹 52 労務資料 令和4年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課 58 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテストのご案内 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.324 装置類にも工夫を凝らし顧客からの信頼を高める 製缶・溶接・組立 渡部玲さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第68回]いいかえ問題 篠原菊紀 ※連載「高齢者に聞く 生涯現役で働くとは」、「いまさら聞けない人事用語辞典」、「BOOKS」、「ニュースファイル」は休載します 【P6】 技能五輪・技能グランプリを支える 特集1 高齢者の底力  みなさんは、「技能五輪」・「技能グランプリ」をご存じですか?  さまざまな職種ごとに、日ごろから研鑽を積んだ技能を競うことで、より一層の技能の向上を図るとともに、技能の重要性や必要性を広く一般にアピールすることを目的に、技能五輪の出場者は原則23歳以下、技能グランプリは年齢制限なしで開催されています。  これらの大会に出場し成果をあげるためには、本人の努力や向上心が欠かせないのはもちろんですが、熱意を持って指導する熟練の指導者の存在も重要です。  そこで今回は、技能五輪や技能グランプリに出場する選手を、熟年の技能と経験で指導する高齢者のみなさんを紹介します。技能継承の取組みを進める参考にしていただければ幸いです。 【P7-9】 事例1 株式会社オカムラ(神奈川県横浜市) たしかな技術力と熱い思いで選手を鍛え、入賞に導く 技能と業務経験を活かし若手を育てる技能伝承のキーマン  技能の重要性や必要性を広く一般にアピールし、技能を尊重する機運の醸成を目的に開催されている技能五輪全国大会(主催:厚生労働省、中央職業能力開発協会)。対象は国内の青年技能者(原則23歳以下)で、目ざすべき目標を与え、技能を向上させるよい機会となっているが、そこで結果を出すためには、競技者本人の努力はもちろん、技能伝承への熱意を持って指導する熟練指導者の存在も重要なカギとなる。  スチール家具や事務機、生産機械などの製造販売で有名な株式会社オカムラ。そこにある技術技能訓練センター(以下、「訓練センター」)で指導を続けている畑岡(はたおか)耕一(こういち)さんも、そんな“熱い”キーマンの一人だ。  畑岡さんは、1966(昭和41)年に入社後、製造に関する基本技能を習得し、試作や設計、企画、開発など幅広い業務にたずさわり、製造技術や技術技能訓練に関する多くの資格を取得。2013(平成25)年からは、その技能と経験を活かして技能五輪全国大会出場を目ざす選手の育成を行い、翌年の同大会では曲げ板金職種※1で入賞に導いている。  そこで、畑岡さんの技能伝承にかける思いや、指導・育成のポイントなどについて、同社の生産本部企画部で人材育成を担当している清久(きよく)彰(あきら)さん、訓練センター所長の小こ林ばやし幹もと尚なおさん、技能五輪指導員の雪田(ゆきた)大(だい)さん、そして現在指導を受けている技能五輪選手の宇田川(うだがわ)飛翔(つばさ)さんと齋藤(さいとう)竜世(りゅうせい)さんとともにお話をうかがった。 技術・技能の指導だけでなくひとづくりも重要な役割  株式会社オカムラは1945年に岡村製作所として創業して以来、ものづくりへのこだわりとたしかな技術力で、オフィスから商業施設、病院、学校、そして物流施設まで、幅広い分野へと事業を展開している。戦後に職を失った技術者たちが資金、技術、労働力を提供し合って設立したという淵源(えんげん)を持つ同社では、技術・技能の向上とその伝承に特に注力。1962年に技能訓練所を設立後、岡村工業技術学校、オカムラ技術短期大学校の時代を経て、2011年からは現在の訓練センターにおいて、新人研修やリーダー研修などを行い人材を育成している。  訓練センターの役割について清久さんは、「当社は創業直後、戦後初の国産飛行機製造や国内初のオートマチック車『ミカサ』を開発するなど、技術者の飽くなき探求心が原点にあります。当社のモットーに“よい品は結局おトクです”とある通り、われわれ生産部門の役割は、よい品質の製品をお客さまに提供することです。そして、それを支える技術者を育成するのが訓練センターであり、単に技術を教えるだけでなく、当社の理念に共鳴して世の中の役に立つ“ひとづくり”を行うことも重要な役割となっています」と語る。  実は同社では、2000年にオカムラ技術短期大学校が休校となった後、団塊世代の技術者が定年を迎え始めたため、技術・技能を次の世代に引き継いでいく場がなくなった時期がある。この事態に危機感を募らせ、ひとづくりの歴史を途切れさせないよう、訓練センターの開校を提案したのが、現在技能伝承のキーマンとして活躍している畑岡さんだった。  「いまの私があるのは、社内の訓練でしっかり技術を仕込まれたおかげです。その後もさまざまな経験を積み上げるなかで得られたものを会社に残すのが責務だという思いから、センターの立ち上げを提案しました」(畑岡さん)  同様に技能伝承のための場が必要だと感じていた当時生産部門の責任者であった現社長や、ほかの役員などを交えて社内で検討を重ね、追浜(おっぱま)事業所内に訓練センターを開校。畑岡さんは初代の所長に就任した。  所長になった畑岡さんがまず取り組んだのが技能五輪への参加だ。  「技能評価の指標として技能検定もありますが、これは絶対評価で点数によって合否が決まります。しかし、技能五輪は相対評価ですので60点で勝てることもあれば、95点で負けてしまうこともある。この考え方は、ある意味でビジネスに通じるものです。自分たちだけの判断で『何点以上の製品だからOK』ではない。それが技能五輪の一番の意味だと思います。求めてくれる人がいるのであれば『できない』といわずにやってみる、鍛錬して自分を追い込んで向上していく、というのがいまの時代には大切な考え方だと思います。そうして鍛えられた人が会社に大勢いれば会社の文化が変わります。私自身、そういう考え方を持った人たち大勢と海外で触れ合ってきましたので、特に大事だなと感じています」(畑岡さん)  現所長である小林さんは、「訓練センターとしては畑岡さんが思い描いているところへ到達できるように、バックアップしていきたい。技能五輪国際大会でも活躍できるレベルをセンター全体で目ざしていきます」と畑岡さんの思いをしっかりと受けとめている。 働き方が変わっても技能の習得には厳しさが必要  技能五輪に挑む選手たちを指導するにあたり、畑岡さんが心がけていることは、目標を明確にすること。「目標を明確にし、先を見た考え方をまず教えます。それに基づいて計画はどうすべきか、ゴールから逆算することが大切です。これは仕事と同様で、作業を『やりました』だけではだめ。やって、売って、利益が出てはじめてゴールになる」と畑岡さんは強調する。そんな畑岡さんから見て、最近の若手の気質は変化しているのだろうか。  「若手の気質というより、社会が変わってきました。技能五輪の指導を始めたころは、夜11時くらいまで特訓をして、帰れなければ近くのホテルに選手を泊まらせて、私は車中泊をしたこともありました。もちろん、いまはそういったやり方はできません。行き過ぎた指導はいけませんが、訓練なのである程度の厳しさは必要だと思います。そのあたりのバランスがむずかしく、同じような悩みを抱えている企業もあるようです」  畑岡さん自身、ふり返ってみると、技能習得や新しい技術の開発に苦労していたときは、やっていて楽しいことは一つもなかったという。その後5年、10年経って「あのときは充実していた」と思い出に変わるそうだが、やっている最中は苦しさと悔しさだけが募っていたそうだ。「その経験があったから、いまの私があります。厳しさがないと悔しさは湧かないし、楽な方へ行ってしまう」と戒いましめ続けるつもりだ。 常に選手の様子に気を配り選手自身も気づかない不調を修正  こうした指導のもとで技能五輪に出場し、銅賞を獲得したのが現在指導員をしている雪田さんだ。雪田さんが畑岡さんから学び取った一番大きなものは「熱意」だという。  「私はかなり厳しく指導された方だと思います。だからこそ畑岡さんの大きな熱意を受け取っていて、それをいまの若い選手に伝えることが自分の役割です」(雪田さん)  具体的には、普段のコミュニケーションを通じて、選手たちが「常に一番をとる」という気持ちを持てるように、「入賞する」ではなく「金賞をとる」と明確に自分の言葉で声に出すよう強く訴えているという。そしてこの思いは選手たちにもしっかり伝わっている  「漫然と大会に出るだけでは何も得られませんが、訓練のなかで表彰台に上がっている自分をイメージし、『金賞をとる』と声に出していれば、おのずと技術も上がっていきます。実際に同僚の齋藤さんが表彰台に上がったのを目のあたりにすると、やはり言霊(ことだま)というものがあるのだと思います」と話すのは宇田川さんだ。自身も2020(令和2)年の入社後、自ら技能五輪選手になることを希望し、訓練センターで指導を受け、2021年12月に技能五輪出場を果たしている。  もちろん、熱意や言葉の力だけではこうした結果に導くことはできない。技術面でも畑岡さんは卓越した指導をしてくれるという。  「訓練中に行きづまることがあり、自分ではその原因がわかリませんでした。そんなとき、畑岡さんがさりげなくヒントをくれました。それが大きな一歩となり、その後の積み重ねで動作の質がよくなり、結果的に入賞につながったと思います」と2022年大会で銀賞を受賞した齋藤さんは感謝を込めて語る。  「仕事の質は、目で見なくてもハンマーの音を聞けばわかります。打ち方がおかしくなっているときは音が乱れるのです。実際に見てみると姿勢が悪くなっています。背筋や骨格、重心がどこにあるのかを見て、そこを修正するように選手と話します」(畑岡さん)  ヒントをもらった齋藤さんは「自分でも気づかないうちにハンマーの打点がずれていました。絞り作業※2はハンマーの中心で打たないと上手に絞れないのですが、そのときは中心から微妙にずれていて、打撃面が綺麗な表面になっていなかったのです」とその言葉を裏づける。  畑岡さんの知識や技術、経験は次世代に受け継がれ、オカムラのDNAを持った人材が着実に育っている。清久さんは「畑岡さんには、雪田さんのように熱意を持って指導する次の世代の指導員をこれからも育成し続けていただきたい」と大きな信頼と期待を寄せている。 ※1 曲げ板金職種……鋼板と鋼材などから、工場で使う板金製品を模した作品を、手作業を中心に成型し、溶接して組み立てる競技 ※2 絞り作業……板金加工において、一枚の板に圧力を加える(絞る)ことで凹ませ、継ぎ目がない容器状の形を成形すること 写真のキャプション (写真後列左から)清久さん、畑岡さん、雪田さん、小林さん(前列左から)宇田川さん、齋藤さん 実例を見せながら具体的に指導する畑岡さん 【P10-12】 事例2 株式会社プレステージジャパン(東川町工場/北海道上川(かみかわ)郡東川町(ひがしかわちょう)) 基礎から理論で説き応用力も発揮する選手を育成 「家具の町」に工場を構えた新進気鋭の家具メーカー  株式会社プレステージジャパン(本社・東京都)は、完全受注生産を行っている家具メーカー。オリジナルブランドの「TIME & STYLE(タイムアンドスタイル)」は、東京を中心に、大阪、ミラノ、アムステルダムの計7カ所に店舗ならびにショールームの拠点を構えている。工場で働く従業員は30人。世代をみると20〜60代が満遍なく在籍し、大家族に近い感覚だ。定年は定めていない。  吉田(よしだ)安志(やすし)専務取締役は「創業当初は東京を拠点に旭川市にある家具メーカーに製造を任せるファブレス企業※1でしたが、『自分たちで家具をつくろう』と一念発起し、15年前に東川町に工場を立ち上げました」と説明する。  工場が所在する東川町は、旭川市と東神楽町(ひがしかぐらちょう)をあわせて一市二町で「家具の町」として知られ、150軒ほど家具製造を営む事業所がある。なかでも東川町は町の4割の世帯が木材製造や家具・木工にたずさわっているという。 人材育成のため技能五輪に参加ベテランの指導役を招聘(しょうへい)  2014(平成26)年、2019(令和元)年に技能五輪全国大会の家具職種※2において、同社所属の若手社員が金賞を受賞し、2022年の技能五輪国際大会に日本代表として出場した。同社が技能五輪に参加するようになった背景には、会社が拡大して職人が増えていくなかで、自信を持って仕事ができる若手技能者の育成と、熟練者が持つ技能を継承するための取組みが必要と考えたことがある。  「日本の木工には1400年の歴史があり、さまざまな種類の膨大な技術があります。歴史のなかで度重なる技術革新が起こり、素材が複雑化され、現代に至ってはさらに増しています。だからこそ基礎技術が重要なのです。手加工で使うノミ、カンナ、ノコといった施工具の使い方を知識として習得した人が機械を使うのと、施工具の使い方を知らない人が機械を使うのとでは、強度や仕上がりが違います。一方で、職人は年齢を重ねないと、素材の見極め、使い方、活かし(つくり)方、手での仕上げ方がうまくいかない。家具づくりには熟練の技術が欠かせません」(吉田専務)  そこで、技能検定の受検と技能五輪の出場を通して、技能習得を図ることにし、ベテランの指導役を外部から招くことにした。 教壇で家具づくりを教えてきた育成のエキスパート  吹谷(ふきや)眞一(しんいち)さん(63歳)は、技能五輪全国大会に出場する延べ28人の選手を育成し、4人を金賞に導いた実績あるベテラン指導者だ。厚生労働省「若年技能者人材育成支援等事業」において「ものづくりマイスター家具製作・建具製作」も務めている。  吹谷さんは北海道立高等技術専門学院の旭川校や帯広校の造形デザイン科で木工を教えてきたが、2020年3月に迎える定年を目前にして、その後の進路について決めかねていたという。「『技能五輪の虎の穴』を自らつくろうかと漠然と考えていた矢先、技能検定と技能五輪の指導役を探していた吉田専務に声をかけてもらい、2020年4月にプレステージジャパンに入社しました」  吹谷さんの教え子が2013年に技能五輪で金賞を受賞し、技能五輪国際大会に出場することが決まった際、ドイツ語の通訳として紹介されたのが吉田専務だった。まさに技能五輪が結んだ縁といえるだろう。 理論で教えて基礎を固める指導が教える力と応用力をつちかう  学校から工場に教える場を移した吹谷さんが初めに感じたことは、「学校で教えたことがこんなにも身についていないのか」という落胆だったという。「現場では技術を試す時間がなく、学校だとできることができないのです。基礎がおろそかになっていることを感じました」(吹谷さん)  一般的に現場のベテラン職人による技能伝承は、見て覚えるといった感覚的な手法に頼る傾向があるが、学校での指導が長い吹谷さんは座学を重視し、いかなる技術も基礎から理論で説いて教えていった。理屈で伝えるのは、教わっている彼らが次に教える側になった際、技能伝承をスムーズにするためだ。  「技能を学ぶと同時に、教える技術も学んでほしいと思っています。きちんと基礎から理論を学べばそれが可能です。また、基礎ができていれば失敗したときの対応の仕方など、応用ができるようになります。経験値が増えればより応用が利くようになり、そうして自分なりのやり方が身につきます」(吹谷さん)  吹谷さんの指導を受け、技能五輪で成果を出した若手3人に話を聞いた。  佐藤(さとう)晴南(はるな)さん(23歳)は家具職人を目ざして帯広高等技術専門学院に入学。学院では吹谷さんの元で学び、2020年にプレステージジャパンに入社した。「一緒に入社した社員は3人。そのうちの1人が吹谷先生でした。入社式に先生がいるので、心配してついてきたのかなと思いました(笑)」と予期せぬ同期関係を語る。  「学生時代、吹谷先生は怖い印象でしたが、いまは厳しい指導にも慣れました。やさしいところもあってお父さんのような存在です。指導は実際にやって見せてくれるのでわかりやすいです。技能五輪は技能を高めたいと思って挑戦ました。練習はきつかったのですが、出場して達成感を得ることができました。同世代の同業の人たちと交流を持てたことも、これからの財産になると思います」(佐藤さん)  男性が圧倒的に多い業界で、重い木材を扱う力仕事は体力的にたいへんな場面もあるが、周りのサポートを得てコツコツと努力を重ねている。  「目標は、複雑なキャビネットを製作できるようになることです。一緒に働く先輩方のような立派な職人になりたいです」(佐藤さん)  吉田(よしだ)理玖(りく)さん(22歳)は、技能五輪の存在を知って家具づくりの世界に進んだ。長くクロスカントリーに親しみ、競技の面白さを体感していた吉田さんは、技を競い合う技能五輪に惹かれたという。2年間の訓練を経て2022年の国際大会に出場した。  「吹谷先生から『基礎ができれば応用ができる』と教わりました。教えるときは、相手が理解できているところから教えなくてはいけないとも習いました。危険な作業をするときは厳しいけれど、よい出会いに恵まれたと思っています。技能五輪は国際大会に出場することができ、挑戦したからこそ得られた経験がたくさんあります。この経験を後輩に伝えていきたいです」(吉田さん)  大谷(おおたに)周平(しゅうへい)さん(28歳)も、旭川高等技術専門学院に通い、吹谷さんの指導を受けた経験を持つ。「技能五輪に出場できる」と聞いて学院に入学し、在学中の2013年に全国大会に出場し銀メダルを、翌年にプレステージジャパンの社員として出場し金メダルを獲得。そして、21歳で国際大会に出場している。  「吹谷先生は『やることにはすべて理由がある』と教えてくれました。基礎はもちろん、基礎をふまえた応用についての指導が理解しやすかったです。私が技能五輪に出場した際は、直前に課題が変更となり、基礎とともに応用力が求められたことがありました。こういう経験ができるのは技能五輪に出場した選手だけですから、よい経験になりました。いまはがむしゃらにがんばりたいと思っていますが、先生がいつもいうように、ケガだけはしないよう気をつけています」(大谷さん)  愛弟子たちは三者三様に恩師への思いを語った。 働き方を変えてこれからも会社と協力関係を  実は吹谷さんは、体調の問題などもあり2022年末をもって同社を退職した。  「会社からは指導だけでよいと引き留めてもらいましたが、現場であれこれ起これば身体が勝手に動いてしまう性分なので、スッパリ辞めることにしました。ただ、この会社が大好きですし、これからも何らかの形で事業に協力していきたいと考えています。旭川で一番よい会社です」と会社への想いを語った。  吉田専務は、今後の吹谷さんとの関係について「今後は個別に仕事を続けてもらいたいと考えています。図面を書いたり、東京のショールームで顧客への説明をしてもらったり、海外のショールームでカンナ作業の実演をしたりと、お願いしたいことはいろいろあります」と話す。  木工加工の技能を身につけるための膨大な知識と経験。若手の職人たちは技能五輪経験者を中心に、師匠から学んだ技能を後輩に伝承するサイクルを築き始めている。 ※1 ファブレス企業……生産施設を自社で保有していない企業のこと ※2 家具職種……図面をもとに、カンナやノコなどの手工具や木工機械を用いて木材を加工し、家具作品をつくる競技 写真のキャプション 指導者の吹谷眞一さん 佐藤晴南さん 吉田理玖さん 大谷周平さん 【P13-15】 事例3 株式会社ザニューオークラ(神奈川県横浜市) 技能グランプリで4大会連続入賞 総料理長が日本料理の伝統をつなぐ 横浜で創業して約半世紀 地元に親しまれる総合宴会場  横浜市港北(こうほく)区の綱島(つなしま)で、1977(昭和52)年に創業した株式会社ザニューオークラ。和・洋・中、それぞれ絶品の料理が楽しめる総合宴会場として、約半世紀にわたり、地元の人々に親しまれている。  同社の自慢は「吟味に吟味を重ねた料理」。宴会や各種パーティ、ウェディングでは、熟練の料理人が四季折々の料理に腕を振るう。最近では、希望の場所で本格的な料理を楽しむことができる、デリバリーパーティプランやケータリングも人気だ。  ザニューオークラは、「技能グランプリ」の日本料理部門において、4大会連続で入賞するという快挙を成し遂げた。副料理長の榎本(えのもと)義明(よしあき)さんが第28回大会(2015〈平成27〉年開催)で敢闘賞、第29回大会(2017年開催)で金賞、同じく副料理長の望月(もちづき)照晃(てるあき)さんが第30回大会(2019年開催)で銀賞、第31回大会(2021年開催)で金賞をそれぞれ獲得。同じ日本料理の店舗から、これだけ入賞者を連続で輩出するのは、たいへん名誉なことだという。 日本料理一筋50年の総料理長 後進の技能グランプリ挑戦を支える  技能グランプリでの快挙の立役者となったのは、総料理長を務める加藤(かとう)亨(すすむ)さん。2人の副料理長の技能グランプリ参加を後押しし、入賞するまでの挑戦を支えた。  加藤総料理長は1951年生まれの71歳。19歳で日本料理の道に入った、キャリア50年超の大ベテランだ。料理人を志したのは、静岡県内で和食料理店を営んでいた実家の影響が大きいという。熱海(あたみ)の旅館、東京の和食料理店などで修業を重ね、東京の目黒雅叙園(がじょえん)(当時)で総料理長に就任。ザニューオークラでは、2001(平成13)年の入社以来、一貫して総料理長を務めている。  現在は、全国日本調理技能士会連合会師範、神奈川県日本調理技能士会会長などを務め、日本料理業界の振興、日本料理の伝統や技の継承にも力を注ぐ。同社の技能グランプリへの参加もその一つだ。  「自分の店で、ある程度の地位をもっておりますと、ふだんの仕事には一定の枠があるものです。自分の厨房に立つだけでは味わえない経験をすることで、仕事へのモチベーションを高く持ち続けることができますから、技能グランプリへの挑戦は大きな意味がありますね」と加藤総料理長。熟練の技を持った料理人にとっても、技能グランプリを通じて、ふだんの仕事では得られない経験をする意義は大きいという。 技能グランプリの競技職種は30種 年齢にかかわりなく技能を競い合う  厚生労働省と中央職業能力開発協会、そして一般社団法人全国技能士会連合会が主催する技能グランプリは、優れた技能を有する技能士※が、年齢にかかわりなく、技を競い合い日本一を目ざす大会。1981年度に第1回が開催され、2002年度からは隔年で開催されている。「特級、一級、単一等級の技能士について一層の技能向上を図るとともに、その地位の向上と技能尊重機運の醸成に役立つこと」が、開催の目的だ。  参加資格は、「都道府県職業能力開発協会会長または都道府県技能士会(連合会)会長等から推薦された特級、一級、単一等級の技能士」。競技職種は、「繊維」、「建設」、「一般製造」、「一般」の4部門の計30職種に及ぶ。1993年に開催された第12回大会から、日本料理が競技職種に加わった。競技は1日で行われ(競技時間:3時間20分)、全国から選ばれた料理人が、四つの課題で競い合う。  四つの課題は、日本料理でもっとも重要とされているもので、第一課題が「平目(ひらめ)の薄造(うすづく)り」、第二課題が「煮物椀(にものわん)」、第三課題が「酢肴(すざかな)」。第四課題は「応用料理」で、第一課題から第三課題までに使った残りの食材を使用し、オリジナルの料理に仕上げる。基本的な技能から、料理のアイデア、盛りつけのセンスなどが問われる課題だ。  料理の評価は、見た目の美しさだけではなく、食材の取り扱い方や調理技術、衛生面なども対象になるため、料理人の総合力が問われる競技だ。「参加者はいずれも熟練の料理人なので実力は紙一重。その差はほとんどないに等しい」と加藤総料理長。入賞することが、いかに至難の技であるかが想像できる。 親方との二人三脚「ここまで真剣に仕事に向き合ったのは初めて」  「競技ではとても緊張しましたし、金賞を受賞したときは本当にびっくりしました」と榎本さんは、控えめな口調で当時をふり返った。榎本さんは現在51歳。子どものころから料理が好きで、「四季折々の表現ができる」ことに惹かれて、日本料理を志した。  「親方」と呼ぶ加藤総料理長とは前職場の目黒雅叙園時代から師弟関係にあり、ザニューオークラ入社も、同じ2001年。「親方から、技能グランプリのことを聞き、興味を持った」のがきっかけで挑戦することになった。  初出場は2013年の第27回大会だったが、このときは惜しくも入賞はならなかった。捲土重来(けんどちょうらい)、「全国にはすごい料理人がいる。自分も負けていられない」という気持ちで挑んだ第28回大会では、敢闘賞に入賞。そして、3回目の挑戦で見事、最高位の金賞を射止めた。「技能グランプリに参加するようになってからは、毎日の仕事にも大会を意識して取り組むようになりました。親方にもっとも力を入れて指導してもらったのは『盛りつけ』。くり返し指導してもらいましたので、これが金賞の決め手になったのかもしれません」と話す。  そんな加藤総料理長と榎本さんの姿を間近で見て、刺激を受けたのが望月さん。望月さん自身も、榎本さんの練習を手伝いながら、「これはすごいことをやっている」と感じ、技能グランプリへの思いを強くしたという。  望月さんも、榎本さんと同様、目黒雅叙園を経て、ザニューオークラに移った逸材で、現在47歳。「おいしい日本料理が食べたくて、料理人になった」と笑顔で話す。  加藤総料理長との練習で特に印象に残ったのが、料理人のセンスが問われる第四課題の練習で、「ここまで親方と話し合い、やり合うことはありませんでした。ものすごく勉強になった」とふり返る。そして、「とことん考え抜き、料理に真剣に向き合ったのは初めて」という望月さんは、初挑戦の第30回大会で銀賞、2回目の挑戦の第31回大会で金賞を獲得した。  「金賞を受賞した料理人としての責任をひしひしと感じながら、仕事をしています」と口を揃える2人は、さらなる成長を目ざしている。 金賞受賞者として後進を指導 店を越えた若手料理人の育成も  「技能グランプリを経験したことで、自分たちの修業時代を思い出し、料理への思いを再確認してほしい。そして、自分たちが歩んできた道を継承し、若手につなげていかなければという気持ちを持ってもらいたい」――。これが、金賞受賞者の2人に対する、加藤総料理長の大きな願いだ。  実際に榎本さんと望月さんは現在、技能五輪全国大会に出場する若手料理人の育成にあたっている。特筆したいのは、ザニューオークラの若手料理人はもとより、神奈川県内の他店の若手料理人も積極的に指導していること。「技能五輪全国大会に出場する人は、お店の代表であるとともに、神奈川県の代表でもあります。『よそのお店の方だから関係ない』というわけにはいきませんから」と加藤総料理長。オール神奈川で、若手料理人の栄冠獲得に取り組んでいるのだ。こうして、加藤総料理長の元、金賞受賞者から若手へ、技能の好循環が生まれている。榎本さんと望月さんの指導によって、ザニューオークラから技能五輪全国大会の入賞者が生まれる日もそう遠くないだろう。  一方、加藤総料理長によれば、料理人の世界も時代とともに変化し、若手育成の手法も以前とはかなり変わってきた。かつては「まずは鍋洗いから」と、長い下積み経験が普通だったが、「昔のような修業を命じれば、半年もたない」のが実情。加藤総料理長は、入社の翌日から新人に包丁を持たせ、腕を磨けるようていねいに指導する。「日々一つでも、昨日よりも今日は進歩したということを実感してほしい」と、若い料理人の育成に心を砕いている。 75歳までは現役で目標は「日本料理のよさを永遠に伝える」  ザニューオークラの定年は65歳だが、75歳までの継続雇用制度を設けており、71歳の加藤総料理長も、社員として現場を指揮している。「手に職を持つ人間は、比較的長く、現役を続けられるのがよいところ。一般のサラリーマンも、65歳、70歳と働く時代なのだから、手に職を持つ人間は75歳ぐらいまでは現役でいなくては」と語った。  一方で「75歳になったら後進に道を譲ろうか」という思いもあるという。しかし包丁を下ろし、現役を退いた後も、業界活動などで「日本料理を盛り上げていく」構えだ。加藤総料理長は「日本料理のよさを永遠に伝えていきたい」と、さらなる先を見すえている。 ※ 技能士……技能検定の合格者に与えられる国家資格 写真のキャプション 株式会社ザニューオークラの本社 左から榎本副料理長、加藤総料理長、望月副料理長 【P16】 日本史にみる長寿食 FOOD 351 寒い夜にはどんがら汁 食文化史研究家● 永山久夫 タラは大食漢の「たら腹」  タラは魚のなかではたいへんな大食漢。大きい口と鋭い歯を持っており、非常に大食いであることから、「たら腹」という言葉の由来になっています。  体長は1m、体重は20kgにもなり、体の前部が肥大していて、口、頭ともに大きいのが特徴です。  北海道や北陸などではスケソウダラと呼ばれ、その卵巣がタラコになります。また、白子はキクコとも呼ばれ、汁物、煮物、和え物、てんぷらなどに珍重されています。やわらかくて、濃厚なうま味があり、ミネラルの亜鉛が多く含まれ、仕事に対する意欲や活力を高めるといわれる男性ホルモンの原料になります。  タラにはビタミンDが多く含まれ、ウイルスなどに対する免疫力強化に役立つことがわかっています。また、人間の筋肉の原料となるアミノ酸も多く、高齢者に起こりやすい足腰などが弱るフレイル(虚弱)を防ぐうえでも効果が期待できます。  カルシウムも含まれていますから、現役のまま健康寿命を延ばす食材としては、理想的です。 どんがら汁でワッハッハー  タラは冬の代表的な食材ですが、寒くて寒くて、遠くでごうごうと海鳴り音が聞こえてくるような日、山形県の庄内地方では、寒ダラ※の「どんがら汁」をつくります。寒い日には、どんがら汁に勝るご馳走はありません。  魚屋さんから、車でないと運べないほどの大ダラを買ってきて、大鍋を用意し、まな板のうえにタラをのせ、ぶつ切りにします。「どんがら」というのは、タラの頭部や内臓のことですが、ありとあらゆる部分をすべて用いるため、よい出汁が出て美味。白菜、ねぎ、大根、豆腐に酒粕(さけかす)も入れ、味噌で味をつけると美味いのなんの。幸せホルモンのセロトニンがいっぱい出て、食べているみんなが、まるで七福神のようによい表情になるのでした。ワッハッハー。 ※ 寒ダラ……1月上旬〜2月上旬に獲れるマダラのこと 【P17】 特集2 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈福岡会場〉 −働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント−  当機構では、生涯現役社会の普及・啓発を目的とした「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を毎年開催しています。2022(令和4)年度は全4回開催し、学識経験者による講演や、先進的な取組みを行っている企業の事例発表・パネルディスカッションなどを行いました。  今号では、「働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント」をテーマに、2022年10月26日に福岡県で開催されたシンポジウムの、講演やパネルディスカッションの模様をお届けします。 【P18-21】 基調講演 働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント〜労働寿命の延伸策を探る〜 産業医科大学名誉教授 神代(くましろ)雅晴(まさはる) 暦年齢での評価ではなく労働適応能力に応じた人事評価を  本日は、労働寿命の延伸をいかに図っていくかについてお話ししたいと思います。  ご存知のように、日本は超高齢社会を迎え、2025年には団塊世代のすべてが75歳以上となり、15年後の2040年には、15歳から64歳までの人々で構成される生産年齢人口が、2017(平成29)年に比べて約20%も減少すると予測されています。そこで、労働力をどう確保していくのかという問題が出てくるわけです。  私は、二つの戦略を考えています。一つめは、働くことができる高齢者づくり。二つめは、労働生産性の高い高齢者づくりです。できれば2040年までにこれを段階的に進めていきたいと考え、具体的な取組みとして、4段階の構想と、各段階の戦術を考えました。この構想を4階建てに見立てたのが図表です。  1階部分が構想の第1段階で、ここでは「個人・企業の戦術」として、エイジマネジメントに基づく健康資源の確保を図ります。第2段階は「職場の戦術」で、職場改善による負担軽減と生産効率の確保を図ります。第1・2段階により、働くことができる高齢者づくりが進むと考えています。  第3段階からは、労働生産性が高い高齢者づくりとなります。第3段階は主として「企業の戦術」、第4段階は「行政の戦術」という構想です。  第3段階で私が企業に提言しているのは、暦年齢での評価ではなく、労働適応能力(ワークアビリティ)に応じた人事評価をしていくということです。現存のワークアビリティ評価は、健康や社会適応力などによって評価する物差しがほとんどですから、直に仕事と対面する能力に対しての評価、私はこれを「仕事対処能力」と呼んでいます。この労働適応能力と仕事対処能力の二つを評価する物差しをつくり、評価した結果、仕事とその人との間にミスマッチが起きていたら、ミスマッチの度合いを少なくしていく。そうすることが、第1段階の健康資源の確保や第2段階の生産効率の確保にもつながっていきます。  第4段階では、労働適応能力に仕事対処能力を加えた評価として、標準的な「職務能力評価」を行う物差しをつくり、広く雇用の場で使われるように図っていく。これらはやはり、国が音頭を取って行うべき戦術です。  以上が、働くことができ、かつ労働生産性が高い高齢者づくりを行っていくうえでの構想となります。 若いときからのエイジマネジメントが労働寿命に影響する  ここからは、第1〜3段階の戦術について、もう少し詳しく説明していきたいと思います。  第1段階の戦術は、「エイジマネジメントに基づく健康資源の確保」です。エイジマネジメントとは、「年齢を管理する」ということです。労働寿命の延伸を図るための策としては、活力ある高齢者として生き続けるための健康管理と、その健康資源を基盤としてより高い生産能力を持っている高齢労働者へと成長させるための仕組みと対策を、各年代に応じて創出する取組みを行うことが大事になります。  例えば、20〜30代は、運動習慣や食生活の形成、ワーク・ライフ・バランスの確立といったことが、エイジマネジメントの役割になると思います。若い世代のエイジマネジメントをしっかりと行うことが、後の労働寿命の延伸にかかわってきます。  40代のエイジマネジメントは、負荷の高い作業およびその作業環境の改善活動をきちんと行うことです。そして50代になると、平衡機能に不安が生じてきて、転倒や転落・墜落のリスクが出てきますので、このリスクを低減させていく。60代では労働適応能力を保持・増進させること、70代では元気に働くことができ、生産性が高い働き手として存在するということを自らが心がけ、過去から積み上げてきたことを保持していく。こうしたことがエイジマネジメントの役割となります。  次に、第2段階では、職場において、「職場改善による負担の軽減と生産効率の確保」を図ります。改善活動は、できれば改善対象となる職場の人を巻き込んで、チームを編成して行います。そして、現場でありのままを観察し、課題を探し出します。課題となるのは、いわゆる「三ム」(無理、無駄、ムラ)です。これらを見つけたら、排除するための改善案を出し、チームで実施します。改善できたら、元の状態に戻らないように注意しつつ、現状の問題点を確認します。このような改善をくり返し行い、働きやすい職場、無理なく生産性を上げられる環境をつくっていきます。 エイジマネジメントによって転倒事故を起こしにくい体をつくる  ここからは、第2段階の企業における職場改善についてお話ししたいと思います。  本シンポジウムを主催する独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が旧・財団法人高年齢者雇用開発協会だったときに中心となり、1986(昭和61)年度から2013年度までの27年間、産・学・官で高年齢者労働対策の共同研究を行いました。  当時、高齢者の継続雇用のための条件整備を行うにあたり、職務の再設計が盛んに行われていました。具体的には、職場改善に力を注ぐ企業が多く、姿勢改善、重量物取扱いによる腰痛防止、目(視力)の環境の改善に向けられていました。  そうこうしているうちに、高齢者が働いている職場がだんだんと一般的になり、労働災害の発生率も非常に高くなってきました。この対応として、現在の企業では、転倒予防、墜落・転落予防が職場改善のトップにあがってきています。  転倒、墜落・転落事故は年齢にかかわらず発生します。残念ながら高齢者の発生割合が高く、また、高齢者は若い人に比べてけがをしやすく、つまずく、あるいは転んで骨折をするというケースが非常に多くなってきています。  これらの対策としては、「階段に滑り止め加工を施す」、「手すりをつける」といった対策が行われてきましたが、現在はハード面の対策に加え、転倒、墜落・転落事故を起こしにくい体づくりをすることも必要になっています。これがまさに、第1段階のエイジマネジメントといえます。  また、スクワットなどの筋力トレーニングや、バランス能力の改善を図ることがリスクの低減につながりますが、実はこれらの要素を備えた運動が相撲の四股踏みです。この四股踏み運動習慣を、職場で行う体操のプログラムに入れていくとよいのではないかと思います。  さらに、「70歳現役時代」が謳われている昨今の職場改善では、高齢者の作業を支える支援機器の導入に取り組む企業が増えてきています。今後は、職場開発、職務の創出、そして、多様な働き方といったことが大きな課題となっていくのではないかと考えています。 運動習慣やストレスが労働適応能力に影響を与える  ここからは、第3段階の戦術についてご説明します。ここでは、暦年齢による評価をやめて、労働適応能力と仕事対処能力による評価を行うことを提言しています。  北欧を中心とした一部の国々では、加齢にともなう労働適応能力の減衰をいかに把握し、対処するかに力点を置いてきました。私は、日本でもこの方向にシフトすべきではないかと考えています。  北欧における労働適応能力評価の物差しとして、フィンランドで開発された「ワーク・アビリティ・インデックス(WAI)」が国際的に有名です。これを日本用に意訳し、企業にご協力をいただいて調査を行いました。チェックリストは6項目あり、「医師によって診断された現在の疾患数」や「過去12カ月間の欠勤状況」といった客観的データもありますが、「自己の過去の最良時と比べた場合の現在の労働適応能力」といった主観によるチェック項目がたくさんあります。  このWAIを用いて評価された労働適応能力と、疲労回復力との関係を調べてみると、「労働適応能力が低い人は疲労回復力が低い」という相関関係があることがわかりました。  次に、運動習慣と労働適応能力を世代ごとに調べたところ、いずれの世代も、運動習慣は労働適応能力を保持・増進することに大きく影響していることがわかりました。やはり、運動習慣を持つことは大事なのです。散歩やウォーキングでよいので、30分以上、週2回ぐらい続けることによって、労働適応能力が高まります。  さらに、ストレスと労働適応能力との関係を調べてみると、ストレスが多い人は労働適応能力が低く、ストレスが少ない人は労働適応能力が非常にすぐれている、ということもわかりました。ストレス増大、抑うつ反応、職場満足感低下、慢性疲労症状といったものが、労働適応能力の低下に大きく影響するということがわかったのです。 労働寿命が長い人は労働適応能力がすぐれている  その後、私はWAIを参考に、日本人向けの労働適応能力評価の物差しとして、「アクティブ・エイジング・インデックス(AAI)」を開発しました。  簡単にチェックできることに配慮し、四つの柱とそれぞれの項目、合計17項目で診断する内容です。四つの柱は、「身体機能」(6項目)、「精神的な許容能力と回復力」(4項目)、「社会的な対処能力」(3項目)、「労働意欲」(4項目)です。労働適応能力を評価すると同時に、労働寿命を推定することができます。  そこで、労働寿命も表すAAIと、労働適応能力を評価するWAIを併用して調査を実施しました。その結果、あらゆる年代層において、労働寿命と労働適応能力が相関していることがわかりました。労働寿命が長い人は労働適応能力がすぐれている、労働寿命が短い人は労働適応能力がすぐれていないほうに傾いている、ということです。  さらに、ストレス得点が低い人は、労働寿命が長くなり、労働適応能力が高くなるという相関関係があることもわかりました。  これらに基づいて、ある工場で20代から60代の働く人々の労働寿命を推定したところ、60代で、標準値とはまったく異なる傾向が現れました。四つの柱別にみてみると、「社会的な対処能力」、「精神的な許容能力と回復力」、「身体機能」にはほとんど差異はみられないのですが、「労働意欲」だけが60代で大きく低下していたのです。  その工場でなぜ60代から労働意欲が低下したのかを調べたところ、「現在の給与に満足している」という問いに対する回答が、60代で極端に下がっていることがわかりました。また、いろいろな適合度を調べると「労働意欲が健康に影響する」というモデルが当てはまってきます。つまり、労働意欲が高いから健康をつくりあげるのであって、健康だから労働意欲が高まるのではないことが、この調査データから示唆されたのです。  ということは、この工場のデータ結果から、賃金の低下によって労働意欲が低下し、それによって就業意欲も低下。そこから、労働適応能力も低下して労働寿命が短くなってきた、と考えられるわけです。まだ研究段階ですが、労働寿命の延伸が健康寿命を延伸させていくのではないか、と思われます。 労働寿命を延伸させていくと健康寿命が延伸されていく  くり返しになりますが、労働寿命を延ばすためには、まずはエイジマネジメントを導入し、働くことができる体づくりをすること。次に、働きやすい職場改善を行い、高齢労働者の健康と安全確保対策として、転倒予防や不良作業姿勢・重量物取扱い・視環境の改善、熱中症の予防などに取り組んでいくことが必要です。  次の段階では、働くことができ、かつ労働生産性が高い高齢者をつくるために、企業の戦術として、労働適応能力評価を導入すべきだという提言を行いました。労働適応能力を計る物差しは、私たちが開発したものでも使えますが、自社の業務や作業に合った自社ツールを開発するのもよいかもしれません。そして、労働適応能力のさらなる向上を目ざして取組みを進めることで、労働寿命を延伸し、さらに健康寿命の延伸も期待できます。  今後の日本では、健康な高齢者づくりだけではなく、働くことができ、かつ労働生産性が高い高齢者をつくることが必須となってきます。  いまから400年ほど前、イギリスの医師、経済学者で、地図や測量も行うなど、マルチに活躍していたウィリアム・ペティ(Sir Willi am Petty)が、おもしろい言葉を残しています。  「健康は労働から生まれ、満足は健康から生まれる」という言葉です。超高齢社会を迎えた日本の健康経営の基本思想となるような言葉ではないでしょうか。  そして、労働寿命の延伸を図ることによって、多くの人が希望するいわゆる「ピンピンコロリの人生」をつくることができるのではないか、そのように考えています。 図表 労働力確保のための4段階の構想 働くことと長くつきあうことができる方法 労働適応能力の向上と労働寿命の延伸を図る戦略 労働生産性が高い高齢者づくり 4階 行政の戦術 標準職務能力評価の設定 3階 企業の戦術 労働適応能力評価+仕事対処能力評価 働くことができる高齢者づくり 2階 職場の戦術 改善による負担の軽減と生産効率の確保 1階 企業の戦術 個人の戦術 エイジマネジメントに基づく健康資源の確保 資料提供:神代雅晴氏 【P22-23】 講演@ 生涯現役に向けて産業保健から見たエイジマネジメントの課題 一般財団法人日本予防医学協会 理事 赤津(あかつ)順一(じゅんいち) 加齢とともに高まる健康診断の有所見率65歳男性の約8割が有所見  本日は、産業医の立場から「生涯現役に向けて職場に対してどんなことができるのか」について、お話ししたいと思います。  まず、高齢者のみなさんの就業意欲に注目すると、令和元年度『高齢者の経済生活に関する調査』(内閣府)結果では、現在働いている人で「65歳以降も働きたい」という人が87%で約9割となっています。  一方で、65歳以降も働く際の基準について、2019(令和元)年の企業調査※1の結果をみると、「健康上支障がないこと」、「働く意思・意欲があること」という回答数が多くなっています。産業保健、あるいは健康管理を行う立場から、高齢者と企業をどのようにマッチングさせていくかが重要になっています。  では、高齢者が働くにあたり、どのような健康課題が考えられるのでしょうか。東京都産業保健健康診断機関連絡協議会でまとめた2019年の「職域における定期健康診断の有所見率」をみると、健康診断の有所見率は、年齢とともに高くなり、65歳以上の男性の8割近くが有所見となっています。有所見は、必ずしも病気というわけではありませんが、何らかの健康上の課題を抱えながら働く確率が、この年代になると増えるということはいえると思います。  健康上の課題としては、いわゆるメタボリック症候群や虚血性心疾患についても、年齢とともに増加していきます。がんの発生率も高くなっていきます。したがって、産業保健では従来あまり触れてきていない健康課題についても、サポートが必要になってくるといえます。  高齢労働者に対応する健康課題としては、疾病や健康課題を抱える人が加齢とともに増加してしまうということです。一方、予防可能な課題も多くあるので、それを予測して若い段階からの食事や運動習慣などの生活習慣改善の取組みにも目を向けていく必要があると思います。 50歳以上に多い転倒・墜落・転落災害 70歳以上では休業見込期間が長期化傾向  次に、職場の安全や働きやすさについて考えていきたいと思います。年齢別死傷災害発生件数の推移から、1999(平成11)年、2016年、2021(令和3)年を並べてみると、全体に占める50歳以上の比率が42%、48%、50%とどんどん高まっています(図表)。50歳以上の労働者が増えているという要素もあると思いますが、やはり、これらの年代の労働災害対策を、職場でしっかり考えていかなくてはいけません。  労働災害発生状況※2から、50歳未満と50歳以上を比べると、50歳以上では、「転倒」、「墜落・転落」の比率が高くなっています。また、ほかの調査結果から、高齢になるほど労働災害による休業見込期間が長期化していることが把握されています。70歳以上では、1カ月以上、あるいは3カ月以上となる割合も増えています。  高齢者の場合、視力の低下や骨密度の低下など、加齢にともなう機能的変化が労働災害や休業期間の長期化の要因となります。その対応策としては、高齢者自身が機能変化に対して理解を深めること、そして職場がその理解をサポートすることがあげられます。これは、生産性の確保と安全の確保、両方の観点からしっかりとらえて対応していく必要があると思います。 働き方・体調の変化とともに気持ちの変化への対応も重要  産業医としてよく相談を受けるのが、定年や役職定年後の働き方の変化と、その方の体調や気持ちの変化についてです。多くの事業所では、役職定年により、管理職から一般職への役割の変化がもたらされます。あるいは、協力会社への出向・転籍といった形で働き方が変わるケースもあるでしょう。また、新しい職場の斡旋(あっせん)、業務委託として働くなど、働き方が大きく変わる場合もあります。これらの結果として、「役職定年で気持ちが萎えてしまった」とか、新しい職場に移ったときに世代間のギャップなどにより「慣れない環境のなかで話し相手や相談相手がいない」という悩みを聞くこともあります。こうした課題への対応も必要です。  産業保健で考えるべき高齢化対応のカギは、「健康度や機能変化は人によってばらつきがあるので、ていねいに対応していくこと」です。健康管理、生活習慣病の課題に関しては、若いころからの生活指導などの取組みが必要です。作業関連の対策としては、加齢による機能変化を補完し、力を発揮できるような職場づくり、あるいは職場・作業改善の視点から対応していくことが求められます。厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」では、職場のリスクと人のリスク、両方を視野に入れた取組みが必要とされています。  60歳以上の労働者の雇用のために企業が取っている措置※3をみると、「仕事量の調整」がもっとも多く、次いで「適職への配置」などとなっています。一方で、「作業方法の改善、作業施設・作業設備の整備」、「職務の再設計、職務の開発」といったところはあまり取り組まれていません。これは今後の課題ではないかと思います。  働く人を見て、働く職場を知っているのが産業医の特徴です。労働者の体力・機能の変化に対しての支援の提案ができると思いますし、企業に対しても、加齢による変化への理解をうながし、リスクの低減など職場改善を含む対応支援ができると思います。また、ある職場において有効な施策を横展開していく提案など、高齢労働者に対しての支援は、さまざまな手を打つことができるのではないかと考えています。 ※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「令和元年高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)」 ※2 厚生労働省 2016年「労働災害発生状況」 ※3 厚生労働省 2004年「高年齢者就業実態調査」・2008年「高年齢者雇用実態調査」 図表 年齢別死傷災害の発生件数の推移 2021年 19歳以下2,611件 20代20,712件 30代20,938件 40代30,507件 50代36,576件 60歳以上38,574件 2016年 19歳以下2,607件 20代14,526件 30代18,166件 40代26,403件 50代27,603件 60歳以上28,305件 1999年 19歳以下4,247件 20代27,565件 30代22,539件 40代27,633件 50代38,017件 60歳以上21,054件 出典:厚生労働省 「労働災害発生状況」を基に作成 【P24-25】 講演A エイジマネジメント;生涯現役を目指して20歳代からの準備 福岡教育大学 准教授 樋口(ひぐち)善之(よしゆき) 有所見割合がもっとも増えるのは20代、30代(男性)  本日は、生涯現役を目ざして、20代からの準備をテーマにしたエイジマネジメントについてお話ししたいと思います。私は公益社団法人日本産業衛生学会のエイジマネジメント研究会に所属しています。最初に、エイジマネジメント研究会報告事項から、二つのお話をさせてください。  一つめは、2016(平成28)年の「健康診断の有所見割合が最も増える年代は?」という報告事項です。年齢に応じた健康管理を行っていくにあたり、どの年代あたりから有所見が増えるのかについて、約2万5000人の14年間の健診データを用いて、血圧、GOT※、総コレステロール、中性脂肪、空腹時血糖の検査項目から、一つでも所見がついた人をマークして分析を行い、いろいろなことがわかりました。  年齢階級別に基準値異常があった割合を14年間追跡してみると、有所見割合は40〜50代になって急激に増えるのではなく、実際には、20代で最初に38%に所見があり、その後の14年間でプラス16%となっています。30代では最初に51%に所見があり、14年間で17%増えています。  生活習慣病予防のため、40歳からの特定健診・特定保健指導が実施されていますが、20代は社会人になって生活環境が変わるなかで、40歳までのおおよそ20年間を過ごしていくことになります。この20年間は、すごく大切な期間ではないかということを、本日は、主に男性のデータからみていきます。  実は、産業保健の分野では、製造業系のデータがメインで、かつ、いわゆる終身雇用のなかで、男性のデータは揃っているのですが、女性の場合、追跡データがほとんどありません。女性については、ホルモンバランスの関係で急激に健康状態が悪化するということもよく聞かれますが、実態調査については手つかずの状態です。エイジマネジメントにおいては、女性のデータや、障害者の方の雇用の状態と健康状態などをみていくことも、今後の課題と感じています。  本題に戻ります。「経年変化の効果量」についてみてみました。簡単にいうと「どれぐらい年齢の影響を受けているか」をみるものです。暦年齢と有所見の増加の関係性をみていくと、男性では20〜24歳、25〜29歳がもっとも関連していました。このデータは女性もあり、女性の場合は、40〜45歳、55〜59歳のところにピークがあります。男女、年齢ごとにそれぞれの健康課題がありますので、ライフステージに応じた産業保健活動や職場での取組みも必要だと思います。 20代、30代のBMIから40歳時のメタボ判定を予測する  二つめに取り上げるのは、「20代のBMIから40歳時のメタボ判定を予測できるのか」です。これは、生活習慣病を予防するためには、メタボリックシンドロームに陥らないようにする取組みが重要である、という問題意識から研究したもので、その報告となります。  20歳のころはスタイルがよかったのに、加齢とともにだんだんお腹周りが大きくなり、体重はなかなか減らず、どんどん増えていく人は少なくありません。だからこそやはり、BMIの管理がメタボ予防につながっていると考えます。BMIは、体重と身長がわかれば計算できます。では、BMIからどれぐらいの精度でメタボを予測できるのでしょうか。  分析のモデルは、2002年から2019年の定期健康診断データで、2019年時点で40歳の男性(422人)から、初めてメタボと判定された方を抽出したところ、313人でした。この方々のBMIのデータをさかのぼり、最初の2002年度のBMIをベースラインBMIとして、3年、5年、10年後の増加量に着目し、どれぐらいの精度で2019年のメタボ判定が予測できるのかについて分析しました。  分析の結果、BMIが23.5より高い人はメタボ判定されやすくなることがわかりました。では、低ければよいのかというと、痩せていたのにメタボ判定される場合もあります。「昔は細かったのにね」という人です。そういった人に対しては、BMIの増加量に着目して、5年間のBMIの増加が1.6を超えた場合に、メタボ判定されやすくなることが予測できます。  また、40歳でメタボになりそうなことは、36歳ぐらいのときにある程度の精度で予測が可能です。これも重要な知見でしょう。太らないようにリスク管理をしていく数字としては、36歳時点のBMI25.5が境界値となります。 エイジマネジメントモデルを充実させていくことが大事  二つの報告をまとめると、健康診断の有所見割合が増えるのは、男性の場合、20〜30代です。40歳時のメタボ判定を予測するには、BMIが大事になってきます。20代のBMIから40歳時のメタボ判定を予測できるかというと、BMIが23.5以上あった場合にハイリスクであり、23.5未満の場合には5年間の増加量をモニターしていきましょう。メタボが予測された場合、私たちは「プレメタボ」と呼んでいますが、何かしらの働きかけを行っていくことが大事ではないかと考えています。  エイジマネジメント施策として、こういった研究結果をアップデートしていき、また、ストレスチェック、両立支援、労働寿命、エイジアクション100、エイジフレンドリーガイドラインなども含めて、各企業などに持ち寄っていき、エイジマネジメントモデルを充実させていくことが、これからの日本社会にとって大切なことだと思います。私たちも、研究、分析結果を積み上げていって、エビデンスを示し、見えるように努めていきますので、これからもご支援をよろしくお願いいたします。 ※ GOT…… グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(肝臓の状態を把握する際に検査する血液中の物質) 図表 本報告のまとめ ■健康診断の有所見割合が最も増える年代  →20代・30代(男性の場合) ■20代のBMIから40歳時のメタボ判定を予測できるか  →20歳時のBMIが23.5以上でハイリスク  →20歳時のBMIが23.5未満の場合は5年増加量に注意 【P26-27】 講演B 地域のパートナー制度 人生100年時代における自律的なキャリア形成の支援 トヨタ自動車九州株式会社 取締役コーポレート本部長 杉山(すぎやま)敦(あつし) シニア社員の能力を活かして地域の会社の困りごとを解決  本日は、高齢社員の活躍支援策として、弊社で2021(令和3)年から取り組んでいる「地域のパートナー制度」についてご紹介します。  弊社は、1991(平成3)年設立の自動車およびその部品を製造する会社で、福岡県内に三つの工場を展開しています。親会社は、愛知県にあるトヨタ自動車株式会社です。トヨタ自動車の九州工場ではなく、トヨタ自動車九州という別会社になっているのは、九州のみなさまと協力し、地域密着の経営でグループに貢献してほしいという、設立当時の親会社のトップの思いがありました。九州で人を採用するのですが、設立当初は自動車製造の経験者がいなかったため、移籍を希望する九州出身のトヨタ自動車社員と、九州で採用した社員とでスタートしました。そうした経緯もあり、お世話になっている地域に貢献することが、弊社の使命であり、社員みんなが意識していることです。  設立から31年が経ち、これまで会社を牽引してきたトヨタ自動車から移籍して来た社員たちが、後輩をしっかり育て、徐々にトヨタ自動車九州に入社した社員がリーダーのポストにつけるようになってきました。そこで、いままでリーダーの地位でがんばってきた社員に、ポストを後輩に譲ってもらい、譲った社員たちに新たに能力を発揮してもらう場として、「地域のいろいろな会社の困りごと解決に貢献する」という目的で創設した制度が、「地域のパートナー制度」です。  地域のパートナー制度の具体的内容は、一般的にいうと、社員の社外兼業制度です。特徴は、社外支援先と同じ目線で考え、寄り添いながら、ともに困りごとの解決や定着を目ざしていく、「伴走型支援」の社外兼業制度ということになります。課題解決に向けて一緒に取り組みながら、ゴールはその会社の社員の方が自分たちだけで解決できるようになっていただくことを目ざしています。  弊社は、60歳定年で、65歳まで再雇用する制度があります。しかし、人生100年時代と考えると、65歳からの時間も長いわけです。そうした考えや、「地域密着の経営をより進めていきたい」という思い、「そして弊社で働いてきた社員が会社を辞めた後のキャリアも考えてほしい」といった声があったことも、この制度創設のきっかけになりました。  ただ、地域の会社の困りごと解決の役に立ちたいと思ったところで、どのようなニーズがあるのか、まったく情報がありませんでした。そこで、制度の具体化にあたり福岡県プロフェッショナル人材センター※1に相談し、2021年7月、福岡県と『人材活用の推進に関する連携協定』を締結して、地域の会社の困りごとの情報を教えていただくということからはじめました。  会社の抱えている問題を解決する仕事としてコンサルタント業がありますが、コンサルタント業との違いは、大きく三つあると思います。一つめは、地域密着ならではの現地、現物での支援であること。二つめは、短期間ではなく、近くにいて長い間伴走して行うこと。三つめは、プロではないということ。ですので、できるだけリーズナブルな価格でお手伝いすることを特徴としています。 7人のシニア社員が支援先へ改善や生産性向上などに取り組む  地域のパートナー制度の概要は、主に次の通りです。契約形態は、当社と相手先企業との業務委託契約。契約期間は、原則として6カ月単位(更新あり)。想定派遣人財は、原則として、社外兼業を自ら希望する弊社のミドル・シニア層。支援業務は、事業運営や業務プロセス改善などへの助言・支援(課題問題の見える化からでも可)、特定の課題やプロジェクトなどへの参加・助言・支援などです。何でもできるわけではありませんので、いろいろいただく困りごとのなかから、できることを選んで取り組んでいるのが実情です。費用は、原則として、月額10万円の業務委託報酬プラス交通費等実費相当額。支援の頻度は、おおむね週1〜2日程度を目安(支援先と協議のうえ、柔軟に対応可能)とし、残りの週4日間ほどは社内で仕事をしています。2021年7月に制度を立ち上げてから、7人の社員がこの仕事に就いています。  福岡県プロフェッショナル人材センターが窓口となっていて、制度利用の希望がある場合、まずは人材センターへご連絡いただき、ご要望などをヒアリングして企業情報シートが作成され、弊社に提供していただきます。それを受けて、弊社の地域のパートナー制度事務局担当者がその企業を訪問してご要望の詳細をヒアリングし、社内の社外兼業希望者へ情報展開して支援の準備を進めていく、という流れになります。  最後に、この制度で実際に取り組んでいる三つの事例を紹介します。いずれも60歳で定年を迎えた後、再雇用となり仕事をしている社員です。制度が立ち上がってすぐですので、支援先は、経験したノウハウを活かせる製造業の会社が多く、ここに紹介する事例も製造現場です。  一つめの事例は、従業員約50人の住宅設備機器等製造業への支援です。支援内容は、作業分析・作業効率向上、品質・検査能力向上など。二つめの事例は、従業員約300人の農業用運搬車・草刈作業車等製造業への支援で、支援内容は製造工程の生産性向上、2S※2定着助言、安全対策など。三つめの事例は、従業員約110人の精密板金機械加工・製造業で、支援内容は、部品置き場・供給方法効率化、改善点の洗い出しなどです。  実際にこの制度で活躍している3人の社員に話を聞いたところ、共通していたのが「当初は、本当に役に立てるのか不安だった」ということです。こうした不安を解消するためにも、契約段階で何回か支援先に行き、経営者の方とお話ししたり、先方で一緒に課題解決に取り組んでいただく社員の方を決めていただき事前に会って話をしたりと、マッチングに時間をかけて取り組んでいます。そうして、先方の会社で受け入れていただき、3人とも6カ月の1クールが終了し、2回目の契約をして、いまでは「日々学び、職場で実践してきたことが、役に立つことを実感している」、「やりがいを感じている」という声が聞かれています。  本日は、弊社の取組みについてお話しする機会をいただきまして、ありがとうございました。 ※1 福岡県プロフェッショナル人材センター……地域に新たな質の高い雇用を生み出し、「ひと」と「しごと」の好循環を創出していくことを目的とした内閣府事業を推進する福岡県の拠点 ※2 2S……整理、整とんのこと 【P28-29】 講演C 生涯現役への壁〜エイジマネジメントを阻むもの 株式会社健康企業 代表取締役社長 亀田(かめだ)高志(たかし) エイジマネジメントを阻はばむものは会社全体のなかに存在している  本日は「壁」とか「阻む」とか、ちょっとネガティブな印象の話題を準備してきました。エイジマネジメントを阻むものは、会社全体のなかにあります。例えば、経営者の考え方、感じ方、あるいは労働者、人事部門の立場で日ごろ行っていることが、逆に支障になっていることや、組織や会社全体の視点で考えた場合にどんな問題があるかという話をしたいと思います。  事業者側の率直なご意見の例として、厚生労働省の「エイジフレンドリーガイドライン」は多岐にわたる内容をやさしくカバーしている内容ですが、事業者の方から、「これは義務でしょうか」と聞かれます。あまり手がけたくない、という率直な気持ちが含まれているように思われてなりません。細かく法令を説明すると、「努力義務とは、必ずやらなければいけないものではないですよね」という反応が返ってくるのです。  また、高齢になると病気を抱える確率が高くなることについて、「病気を抱えた高齢者を雇った場合のインセンティブはありますか」と聞かれたこともあります。  一方で、講演や研修で私の話を聞かれるのは40〜50代の管理職の方が多いのですが、「何歳まで働きたいですか」とたずねると、「60歳まで」が2割前後、「65歳まで」が半分強、「70歳まで」は1割程度で、「75歳〜生涯現役」はほぼ0です。「どんどんゴールが逃げていく感じがしていやだ」、「あまり考えたくない」という声が、現場の声としてあるのです。  人事部門の方々からよく聞くのは、職務の再設計に関して、「仕事を見直すより、熟練の技があるか、これからもそれが使えるかどうかがポイント」だといわれます。生涯現役という人事制度に対しては、「世代ごとに制度設計を変えていくのはとてもむずかしい」という意見があります。処遇や雇用を変更することについては、「個別の処遇の見直しはハードルが高い」という声が少なくありません。  高齢で働くという問題に関しては、健康管理、安全管理、人事労務管理、そして部下として高齢労働者を持つ各管理職の立場で考えると、「縦割り」組織の弊害のようなものを実感することがあります。本来、安全衛生・健康管理は一体で行うべきですが、異なる部門が行っていてコミュニケーションが取れないとか、人事労務管理と必ずしも連携しておらず情報交換ができていなかったり、各管理職も目標を設定して生産性を改善する管理業務とは、まったく別物ととらえている人も少なくありません。エイジマネジメントを共通の目標とした機能の統合について、一定規模以上の企業に導入することは、ハードルが高いといわざるを得ないことがしばしばあります。  会社組織全体で直面する問題としては、事業環境の激変と見通しが悪いなかで、高齢労働者の知識とスキルをマッチさせて、収益を生み出すハードルの高さを感じることがあります。例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大によりテレワークなどの働き方が進展しました。あるいは、デジタル化、DX、エネルギーコストの増大、顧客の購買行動の変化といった状況があるなかで、高齢労働者を活用しようとする動機と自律的な工夫の乏しさを感じざるを得ない場面が非常に多くあります。  さらに、エイジマネジメントを阻む日本社会の現状として、年功序列があります。役職定年後に部下だった人たちの配下に入ることは、心理的な抵抗が大きく、適切な場所を見つけづらい、周りも用意しづらいといったことが起きてきます。また、最近のダイバーシティ、インクルージョンの取組み、あるいは、男女平等で好きに意見をいい合える職場はいまだに多くないなか、チームで結果を出すことのむずかしさを感じることがあります。また、本音と建て前、礼儀作法が邪魔をして、フランクなコミュニケーションが取りづらいという実態もあります。それによって安全管理、健康管理、熱中症予防もそうですが、取組みがむずかしいと感じることもあります。 格差が拡大するなかでの取組みのポイントは何か  労働安全衛生管理の展開を妨げることとして、法令指針通達などの求める内容を現場で実践できる知識や経験を持った人材の不足や、生涯現役を実現できた職場と、そういった考えも及ばない職場の格差が大きくなっていることも実感しています。  また、モデルとして紹介される超有名企業で豊富な資金や専門家を抱える事例と、中小・零細企業との格差、さらに平均的な労働者といわれる人たちは産業医と会うことがない人たちが多いといった現実もあります。なかには、病気になったら退職するしかないという立場の方も少なくないですし、その差が非常に大きくなっていると感じることが多くなっています。  エイジマネジメントや生涯現役は、非常に重要であることは間違いないと思いますが、働く人たちの私的な部分でも違いが拡大しています。60歳になったときにお一人なのか、養う人がいるのかなど、統計からはわかりにくい部分もあります。エイジマネジメントでは、若いうちから適切な生活習慣を身につけることが大事になりますが、育てられた環境の違いやヘルスリテラシーの問題、産業医が身近にいるかといった社会的資源の違いも壁になります。エイジマネジメントを日本全体で展開するためには、さまざまな面から考えていかなくてはいけません。  そうした課題にどのように取り組んでいくのか。一つは、経営トップにしっかりと問題意識を持ってもらうことが重要ではないかと思います。そして、縦割り部分が解消されるように部門を横断しての会議などを行い、情報交換から始めていくことが有効であると思います。 図表 エイジマネジメントを阻むものを考えるうえでの視点と立場 日本社会 不足 格差 会社組織 阻むもの 経営者 組織 人事 労働者 資料提供:株式会社健康企業 【P30-35】 パネルディスカッション 働く高齢者の健康と安全確保のためのエイジマネジメント コーディネーター 産業医科大学 名誉教授 神代雅晴氏 パネリスト 一般財団法人日本予防医学協会 理事 赤津順一氏 福岡教育大学 准教授 樋口善之氏 トヨタ自動車九州株式会社 取締役コーポレート本部長 杉山敦氏 株式会社健康企業 代表取締役社長 亀田高志氏 四つの視点からエイジマネジメントを考える 神代 はじめに、本シンポジウムのここまでの内容をふり返りたいと思います。まず、私から総論として、働くことと長くつき合うことのできる高齢社員づくりに関してお話をしました。そして4人のパネリストのみなさまの講演については、それぞれから講演をふり返って、ポイントを簡単におさらいしていただければと思います。 赤津 私からは、産業医の立場でエイジマネジメントに取り組むにあたって、どのような視点で取り組んでいけばよいのかについてお話ししました。産業医としては健康管理の視点に加えて、職場をよく理解し、一緒に職場の課題を考えることが仕事の進め方の基本になります。  また、労働者に対しては、加齢による変化を本人に理解してもらうとともに、そのうえでダメージを補っていくことや、仕事と治療の両立支援などの取組みも重要になってきます。そのための支援を一緒に行うのが、エイジマネジメントにおける産業医の役割といえます。企業に対しては、加齢による変化について、健康の観点から整理して伝えること、そして、それらに起因する課題を乗り越えて働くための職場の課題などについて一緒に考え、その対策について、医療の立場からも支援していくことができるのではないかと思います。  さらに、役職定年などにより働くことへのモチベーションが大きく変わってくるといった課題についても、職場の方と共有しながら解決を支援していくことも必要です。このようなことが、産業保健の立場からエイジマネジメントでかかわることのできる大事なポイントではないかと思います。 樋口 私からは、生涯現役を目ざしていくうえでは、「20代からのエイジマネジメントの取組みも大事である」という点についてお話ししました。これを考える際に着目する点として、会社で実施される健康診断の有所見割合が一つの目安になります。  また、生活習慣病予防の観点から、40歳以上を対象としたメタボ健診が義務づけられ、10年以上が経過していますが、これからは、「40歳になってから痩せる」のではなく、それ以前の取組み、いわば「プレメタボ」に対する取組みが必要になるのではないかと考えています。そこで、20代のBMIから40歳時のメタボ判定を予測できるかという研究結果をもとに、20代のBMIが23.5以上の場合はハイリスクとなること、また、23.5未満であっても5年間のBMI増加量をモニタリングしていくことが必要ではないか、というお話をしました。そうした取組みを続けることが、各年代の健康意識、あるいは働く意欲といったところにつながっていくのではないかと思います。 杉山 私からは、トヨタ自動車九州の「地域のパートナー制度」について、ご紹介させていただきました。「現役時代に働いた会社でずっと働くのか」ということを考えた場合、会社視点では「変化の激しい時代に同じ人を雇い続けることができるのか」という思いもありますし、労働者視点で考えても、「ずっと働いてきた会社でその先も長く働き続けることは、果たして幸せなのだろうか」ということがあります。役職定年などでポストを降りると、その後は、後輩の部下になることになります。「それって幸せなのかな」と思うのです。そう考えると、一つの会社というより、複数の会社、あるいは会社ではなくても仕事ができる働き方ができたらよいのではないか、そのように考えました。  出向や転籍という形がありますが、いずれにしても、会社を変わることになります。環境の変化が大きいですし、新しい職場で働く不安は必ずあります。そこで、そうしたことを小さくすることができないかと考え、「地域のパートナー制度」をつくりました。 亀田 私は、ネガティブなタイトルの講演となりましたが、生涯現役の壁やハードルを考えたとき、「一つの事業体のなかの各立場で、いろいろと妨げるものがあるのではないか」ということをお話ししました。また、会社を取り巻く日本全体の環境や習慣など、例えば、年功序列といったことも妨げになっていることもあります。そして、中小零細企業では、安全衛生推進者を選んでいたとしても、ほかの仕事をしながらどこまでできるのかという問題もあります。ですが、壁やハードルのことばかり考えても道は拓(ひら)けませんので、壁を取っ払うために大事なこととして、経営者の方に問題意識を持っていただくこと、部門横断的な会議から始める、といったことをお話ししました。  杉山さんのお話にもあったように、事業環境が激変していくと、既存のやり方だけではうまくいかなくなります。労働安全衛生法は、基本的に工場内での職業病対策などからスタートしていますから、テレワークにおける問題についてはスタートしたばかりで、法律だけでは対応できないところもあります。できるだけ部門の壁を取り払って、みんなで知恵を出し合い、トライアルアンドエラーでやっていく。そういう気持ちで取り組む必要があるだろうと感じています。 トヨタ自動車九州における「地域のパートナー制度」について 神代 トヨタ自動車九州における「地域のパートナー制度」について、もう少し詳しくお聞きしたいのですが、制度をつくり上げるまで、また、運用していく際に苦労されたこと、工夫されたことはありますか。 杉山 苦労した点は主に二つあります。一つは「社員にほかの会社で働くことに関心を持ってもらう」ということです。この制度は主に55歳以上の社員を対象としており、いまは幹部社員を中心に考えています。トヨタ自動車か、トヨタ自動車九州以外で働いたことのない人たちです。弊社では継続雇用で働けるのが65歳までですから、65歳を過ぎてからのことを考えるという意味でも、選択肢を広げるために研修を行い、ほかの会社で働くということへ動機づけを行っています。  二つめは、「地域のパートナー制度」でほかの会社の支援に行くにあたり、「先方の期待に添う働きができるのか」という不安を、みんなが感じていたことです。この不安を解消するために、本制度の事務局のスタッフが行っているのは、支援先企業、支援をしてみたいという社員、そして事務局とで、支援を始める前にかなり密なコミュニケーションを図っています。人によっては3回、4回と支援先企業へ行き、先方の社長にも会い、先方の状況や課題について詳しくヒアリングをしています。そういった部分に時間をかけて取り組んできました。 神代 ありがとうございます。「地域のパートナー制度」の取組みには、制度をつくったトヨタ自動車九州、制度を利用する支援先企業、そして支援に行かれる社員の方、この三者がかかわっています。それぞれにとっての取組みの効果について、お聞かせいただけますか。 杉山 まず、支援に行く社外兼業社員についてお話しします。現在7人がこの制度を利用して社外で仕事をしていますが、全員が前向きになったと感じています。「自分が支援先の役に立っている」という実感があるからだと思います。週4日は従来通り社内で仕事を行っていますが、効果はそこにも表れていて、いままで以上に積極的に仕事をしているように見受けられます。そうなると、一緒に働く周りの人も含めた人間関係がよくなるのです。以前は、ちょっと斜に構えていたり、若い人が相談に行かなかったりしたのですが、本人が変わってくると、自然とみんなが寄っていくようになり、職場全体の雰囲気がよくなったということがあります。  この制度は、55歳以上の社員を対象にして始めたものですが、職場の先輩社員が社外で活躍しているのを見た社員のなかからは、「同制度に参加したい」と希望する者も出てきました。実際に、40歳の社員が1人、この制度で副業をしています。  支援先からは、6カ月ごとの契約が、いずれも更新されたことを考えると、成果が上がっていると認めていただけているとみています。  心配事や苦労もありましたが、7人の社員と、支援先の7社の方には、いろいろな貢献ができているのではないかと思います。 神代 互いに外を知ることによる交流の効果というものが、出てきたということですね。副業の実施に際して、派遣する社員の健康面や安全確保面に関して、何か配慮されていることはありますか。 杉山 現在は、支援先での仕事を週1日とし、週4日は社内で働いているので、いまのところ特別な配慮は行っていません。支援先企業とは、事前に綿密に打合せをしているので、働く環境に不安のある職場はないというのが実情です。 神代 では「地域のパートナー制度」から少し離れて、高齢社員の継続雇用を進めていく際、トヨタ自動車九州では、健康管理や安全確保にはどのような対応をされているのでしょうか。高齢社員にかぎらず、社員全体への対策だと思いますが、そのあたりのことも教えてください。 杉山 おっしゃる通り、高齢社員だけを対象とした対策というものはなく、全社員に対して、安全と健康が第一、その次に品質、その後に原価と考えて仕事に臨むよう呼びかけています。安全と健康が第一という優先順位は不動です。  安全の確保の具体的な取組みとしては、製造業の場合、新しい作業が発生する際は、必ずリスクアセスメントを行い、リスクの高い作業については事前に対策を行います。また、要素作業ごとに、「エルゴノミクスガイドライン(人間工学指針)」というものを持っています。例えば、重いものを持つときの重量制限を決めておくといったようなことを徹底しています。健康の維持・増進の面では、工場で働いている社員は、始業前に体操を行っているのですが、その体操の内容について2年ごとに見直しを行い、下肢の筋力を維持する体操など、年齢とともに低下していきそうな筋力を維持できるようなメニューに変えています。 65歳超の就業機会の確保と少子化時代の企業のあり方 神代 トヨタ自動車九州の「地域のパートナー制度」について、パネリストの方々からは質問はありますか。 赤津 2021年施行の改正高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会の確保が努力義務として盛り込まれました。この点について、トヨタ自動車九州ではどのようなお考えがあるのかをお聞かせください。 杉山 現在の65歳までの継続雇用制度を前提に考えると、65歳以降は社外で就業機会を提供していくことを検討しています。65歳までの直接雇用とは仕事の内容も就業場所も産業保健サービスも変わると思いますので、まだこれから考えていかなくてはという段階です。 樋口 「地域のパートナー制度」のお話を聞いて、非常に魅力的な制度だと思いました。私からは、いまの20代、30代の人たちは職業的な安定を求める一方で、離職率の高さの問題も指摘されています。そういったなかで、いまの若い世代が70歳まで働く社会に向けてのお考えや取組みがあれば教えてください。 杉山 人事を担当していると、少子化の影響を強く感じます。若い人を採用することが、これからはどんどんむずかしくなっていくと思いますし、すでに厳しくなってきています。変化が激しい時代ですので、企業としては新しいことを行っていかなくてはいけません。そのためには若い人、新しい人が必須だと思います。だからこそ、若い人から選ばれる企業でありたいと思うのです。  いまの若い人を見ていると、私たちが就職したころよりも真面目に自分の将来のこと考えているし、成長意欲も高いと思います。そのようなことを考えると、「この会社に入れば社会人として成長できる」とか、「仕事を通して、社会に対して、なにがしかの貢献ができる」と思ってもらえるような会社にしていくことが重要ではないかと思います。 亀田 杉山さんのお話で特に印象に残ったのが、この制度に応募された人たちが、自身の体験をお話しされていたり、社内のコミュニケーションがよくなったりしているということです。そうした波及効果がどれだけあるのか、今後の見込みやお考えをお聞きしたいと思います。 杉山 5年、10年と長い間続けて、成功する人が1人でも多くなれば、という考え方で進めています。10年後には、数十人の副業経験者が社内にいて、卒業していく人もいるかもしれません。地域の会社のみなさんとのネットワークができるので、まだ考えてもいないようなことがこの先できるのではないか、とも思っています。 個人、企業による健康資源の確保について 神代 ここからは、人生100年時代を見すえた個人、あるいは企業による健康資源の確保について、うかがっていきたいと思います。赤津さんにお聞きしたいのですが、高齢者個人の健康状況について、例えば、物忘れなどの認知機能や、メンタルヘルスについて、年代ごとの特徴などがあれば、教えてください。 赤津 産業医に相談に来る人は、「働いていたい」という人が中心ということもあり、実は大きな健康問題を抱えているという人は少ないのです。ただ、不調を訴えるようなケースのなかには、もしかしたらいわゆる認知症の症状を持つ人などがまぎれているケースもあるかもしれません。もし認知症の症状を持つ人がいた場合、やはり安全に通勤することを含めて、非常に課題が大きくなります。産業医や会社の一部の人だけではなく、みんなが力を合わせて対応を考えていかなければならないむずかしい問題です。ご本人の意思をどのように汲んでいくかということも非常に重要なことだと思います。  また、メンタルヘルスの問題については、いろいろな相談があります。特に高齢社員の場合は、役職定年や再雇用で職場における立場が大きく変わることもあるので、年下上司、あるいは年上部下、それぞれの立場から相談を受けることもあります。基本的には「互いにリスペクトしてやっていきましょう」ということをご提案しています。  また、なかなかむずかしいのが、定年の時点で病気を抱えられている方が、シニア社員に移行するときの支援についてです。脳血管障害などで運動機能障害、高次脳機能障害があり、定年まではがんばってきたけれど、その後の継続はむずかしく、ご本人も継続して働くことをそれほど希望されないケースもあります。そういう意味では、健康管理を早くから始めることの大切さということが気になるところです。 若手社員に対する健康管理の効果的な取組み、働きかけとは 神代 樋口さんにお聞きします。元気な若手社員に対して、健康管理の取組みを働きかける効果的な方法として、どんなことが考えられるでしょうか。 樋口 戦略の一つとしては、体重管理に関心を持ってもらうことが大事ではないかと考えています。本日私がお話ししたBMIのようなエビデンスを示して、リスクを予測する。仕事のキャリアとともに、自分の健康を見すえて関心を持ってもらえる取組みを行っていくことがポイントになると思います。また、「プレメタボ」対策といったことに興味を持ってもらえる企業がありましたら、共同研究なども可能だと思います。 エイジマネジメントの「壁」を少しでも解消するには 神代 続いて亀田さんにお聞きします。「生涯現役への壁〜エイジマネジメントを阻むもの」として、経営層や人事など、各組織の問題、会社の収益性の問題や労働者の考え方、日本の年功序列など、さまざまな「壁」を少しでも解消するには、企業はどのように取り組んでいけばよいでしょうか。 亀田 高齢になっていくなかで、モチベーションを保ち続けてもらうことが大事だと思います。それには、経営者のみならず、労働者側の意識づけも大切です。研修を通じて、仕事の内容や雇用関係が変わっていくこと、すでに受けている健康管理が変わっていくことについて早めに伝え、十分に考えていただくことが大切ではないかと思います。 神代 エイジマネジメントに取り組むにあたっては、どのような制度や資源を利用したらよいでしょうか。 亀田 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のホームページでたくさんの好事例が紹介されています。また、『エルダー』にも毎月好事例が紹介されているので、定期的にご覧になることをおすすめします。また、中央労働災害防止協会「エイジアクション100(概要版)」は、登録の必要なく活用できる職場改善ツールですので、同協会のホームページ※をご覧いただければと思います。 健康づくりと安全な職場づくりがますます大事な時代が来ている 神代 杉山さんから、パネルディスカッション全体の感想などがございましたらお願いいたします。 杉山 みなさんのお話をうかがって、企業としてまだやるべきことがたくさんあると感じました。健康管理については、専門部署があり、社員にさまざまな働きかけをしていますが、社員自らが意識して取り組めるようにしていかなくてはいけないと思いますし、長く生きていくうえでは、健康管理は非常に重要なことですので、今後も力を入れていきたいと思います。 神代 ありがとうございます。パネリストのみなさんのお話は、とても内容が濃いものでした。シンポジウム全体の結論としていえることは、社員は働くことと長くつき合うための健康づくりに積極的に励むことが要求される時代が来た、ということです。そして、組織はそれをバックアップしなければいけない、そういう時代が来ていることがわかりました。健康づくりと安全な職場づくりが、これからの日本においては非常に大事であるということが提起されたと思います。 ※ 中央労働災害防止協会「エイジアクション100」……https://www.jisha.or.jp/age-friendly/ageaction100.html 写真のキャプション 産業医科大学名誉教授の神代雅晴氏 一般財団法人日本予防医学協会理事の赤津順一氏 福岡教育大学准教授の樋口善之氏 トヨタ自動車九州株式会社 取締役コーポレート本部長の杉山敦氏 株式会社健康企業 代表取締役社長の亀田高志氏 【P36-37】 江戸から東京へ [第123回] 宝を育てた人質生活 徳川家康 作家 童門冬二 意外な家康の人質時代  歴史で「人質」というと、城の一隅や土牢に入れられて、しめっぽく暗い印象があります。ところが、必ずしもそうではありません。例えば、今年の大河ドラマの主人公・徳川家康が例外です。  家康は八歳のときから駿河(するが)(静岡県)の実力者今川(いまがわ)義元(よしもと)の人質になりました。生家の松平家は三河(みかわ)(愛知県)の岡崎城主でしたが、まだ力の弱い地方豪族だったので、現在でいえばM&A(買収・合併)です。  ところが、当時竹千代(たけちよ)といった家康は勇気ある少年でした。三十人ほどの少年家臣を供に連れて行きました。母のお大(だい)が、  「今川家にいる間の費用は、お母さんがみるから安心して暮らしなさい」  といってくれたからです。竹千代は安心して今川家から土地と家を借り、少年たちも住まわせました。暮らしぶりは岡崎城時代とあまり変わりません。三十人の少年たちのなかには、のちに大名になって天下人の家康を支えた人物がたくさんいます。なかでも母お大の弟・水野(みずの)勝成(かつなり)は、献身的な家康ファンで、  「竹千代様にはいのちを捧げる」  という忠勤ぶりでした。お大からの差入れの受取りや、その始末を行い、日常の世話もしました。  このころの今川家は甲斐(山梨県)の武田(たけだ)信玄(しんげん)と同盟をむすんでいました。塩の買入れやその他でよく使者が往来します。そのたびに人質をバカにします。  数年後には三河少年群も加齢し、元服(げんぷく)(成人式)を迎えました。ちょうど武田家からきた使者がこのことを知ってからかいました。  「一人前になっても人質では何もできまい」  少年たちはくやしがり、くちびるをかんで家康をみました。家康はニッコリ家臣たちに笑い返し、その時いた今川家の城の廊下に立ってハカマの前をめくり、音を立てて放尿しました。  飛沫(しぶき)が武田家の使者にかかり、使者はビックリしてとびのきました。  青年になった三河少年群は手をたたいて喜びました。  「やはりオレたちの主人は勇気がある。さすがだ」  と、家康に頼もしさを感じました。 未来の宝の育成  こんな話もあります。水野勝成が供をして、家康が近くの安倍川(あべがわ)に散歩に出かけました。河原では子どもたちが石合戦(石の投げ合い)をしていました。  家康が聞きました。  「勝成、どっちが勝つと思う?」  「そうですね、やはり数の多い岸の向こう側の連中でしょう。若君は?」  「わしはこっち側だと思う」  「なぜですか?」  「数が少ない。そのために結束する。わしたちと同じだ」  「なるほど。そうですね」  家康ファンの勝成はすぐ家康のいうとおりだと思いました。結果はそのとおりになり、数の少ないこっち側が勝ちました。  「若君のおっしゃるとおりです!」  自分の推測がはずれたのに、勝成は喜びました。そういう主従だったのです。そして、そういう人質生活だったのです。  こんなありさまなので、岡崎で出入りしていた商人もやってきました。お大に頼まれた品物を届けるためです。  あるとき、オウムを持ってきた商人がいました。  「若様、この鳥は人間のマネをしますよ。おもしろいから、おそばにお置きください」  「いらない、持って帰れ」  「なぜですか?」  「わしは人マネは嫌いだ。だから鳥でもゆるさない」  まわりにいた家臣たちは顔を見合わせました。目が輝いています。  「カッコいい!」  「頼もしい!」  家康は家康なりに自分を磨いていきました。家臣の青年たちも必死に自分たちを鍛えていきました。  これがのちに天下人の豊臣秀吉から、  「徳川殿の宝は何ですか?」  と聞かれたときに、  「私のためにいつでも生命を捨てる家臣たちです」  と答える結果を生むことになります。  人質暮らしは決してミジメではなかったのです。 【P38-41】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第128回 広島県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構の65歳超雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 評価制度や学びの機会が多数あり定年以降も目標を持って働ける職場 企業プロフィール 医療法人社団長寿会(広島県広島市) 創業 1992(平成4)年 業種 医業・介護事業 職員数 372人(うち正規職員数219人) (60歳以上男女内訳)男性(30人)、女性(74人) (年齢内訳)60〜64歳 35人(9.4%) 65〜69歳 30人(8.1%) 70歳以上 39人(10.5%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員65歳まで再雇用。66歳以降、本人と法人の合意により、1年契約で雇用する慣行がある。最高年齢者は79歳  中国地方に位置し、北部は中国山地、南部は瀬戸内海を臨む広島県。県庁所在地の広島市は、原爆被害にあいながらも世界平和のシンボルとして復興し、中国・四国地方最大の都市として発展しています。2023(令和5)年5月には、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開催予定です。  当機構の広島支部高齢・障害者業務課の池田(いけだ)悟(さとる)課長は、「県人口は約275万人です。厳島(いつくしま)神社と原爆ドームという、二つの世界文化遺産を抱え、歴史と文化に加えて平和に対する意識が高い県であると感じます。また、西日本有数の工業県であり、製造品出荷額は中国・四国・九州地方で2004(平成16)年から2017年まで1位となっています」と広島県を紹介します。  2021年の改正高年齢者雇用安定法の施行を受けて、70歳までの就業機会の確保や定年後を見すえた、特に、人事評価制度および賃金制度に関する相談を受けることが増えているといいます。専門知識と経験豊かなプランナーによる事業所訪問活動では、同業他社における高齢者雇用制度導入の事例に関する情報を求められることが多いそうで、労働局をはじめとする関係機関等と連携し、情報共有にも努めています。  同支部でプランナーとして活躍する波多野(はたの)博雄(ひろお)さんは、プランナーに就任する前に同支部の生産性向上人材育成支援センターに勤務していた経験を活かし、企業に寄り添ったアドバイスを行っています。また、当機構で実施する「生産性向上支援訓練」を案内し、訓練開始につながったケースもあります。今回は、波多野プランナーの案内で、「年齢にかかわらず、体調や家庭環境など事情の許すかぎり勤務を続けてほしい」と望み、現在、高齢者雇用制度の見直しを検討している医療法人社団長寿会を訪れました。 「住み慣れた地域で自分らしい生活を」  医療法人社団長寿会は、1992年に「はたのリハビリ整形外科」を開設したことにはじまり、診療所、相談サービス、看護やリハビリなどの訪問サービス、デイサービスなどの通所サービス、介護老人保健施設などの入所サービス、グループホームなどの入居サービスの各事業を展開。医療・介護・保健サービスの複合事業体として、地域の人々に親しまれながら歩み続けています。  病気や障害があっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を自立していけるような「長寿」実現のための支援を行うことが同法人の理念であり、「長寿会」の名称の由来です。この理念を実現するために、「3つのハッピー(利用者・職員・法人)」を掲げ、例えば、自分や家族が利用したくなる質の高いサービスの提供を目ざし、職員に対して、やる気や実力が報われる評価制度や、だれでも受けられる勉強会を多数開催しています。 定年や継続雇用制度の見直しを検討  同法人の定年は60歳で、65歳まで継続して働ける制度があります。畑野(はたの)栄治(えいじ)理事長は、「実際には本人との同意により65歳以上の職員が多数在職し、専門知識や資格、経験を活かして、主戦力として勤務してもらっています」と話します。また、職員数372人のうち、65歳以上は69人(全体の18.5%)、70歳以上も39人(全体の10.5%)で、「今後も経験と技術を兼ね備えている高齢職員に頼るところは大であり、定年年齢の引上げや継続雇用制度の延長を検討しています。高齢職員の仕事ぶりは、安心感と安定感がありますので、自身の体調や家庭環境など事情の許すかぎり、勤務を続けてほしい」と語ります。  定年や継続雇用制度の見直しは、全職員にアンケート調査を行い検討しています。畑野理事長が検討を始めたころに波多野プランナーが同法人を初めて訪問しました。畑野理事長の意向をふまえ、「65歳への定年引上げ、基準該当者の継続雇用を70歳まで延長」の提案と、当機構の「雇用力評価ツール分析結果」に基づくアドバイスを行ったそうです。波多野プランナーは、この提案について、次のように説明します。  「定年延長は、1年更新の継続雇用者としての意識を払拭し、65歳まで現役で活躍するという意識へ転換することが期待できます。継続雇用延長は、65歳以降の具体的な雇用基準を設けて70歳まで雇用する制度を明文化し、全職員に周知することで、雇用の安定化が図られ、優秀な人材の確保や定着につながります」  この提案と職員へのアンケート調査結果をふまえ、制度改定へとさらに検討を重ねています。 全職員にキャリアアップ制度を導入  すべての職員にとって働きやすい職場づくりに取り組むなかで、同法人が特に力を入れてきたのが、キャリアアップ制度と面談の実施、法人内勉強会の開催です。  キャリアアップ制度は、目標ややりがいを持って働ける環境を整えるために、スキルや資格、経験などを適正に評価し、処遇に反映する制度。継続雇用の職員にも適用し、やる気や実力、協調性のある人が報われる制度となっています。二岡(ふたおか)真吾(しんご)事務長は、「『がんばったことが認められる』との声がある一方で、現在7段階の評価をもう少し細分化してほしいとの意見もあり、現場の意見を聞きながら、改善していきたいと考えています」と評価制度の効果とむずかしさを語ります。  面談は、毎年の評価時に上長が行い、同時に、職員の希望する働き方の要望なども聞いています。「グループホームはたのリハビリ」で、上司として面談にあたっている柴崎(しばさき)順子(じゅんこ)主任は、「一人ひとりに毎年自分の目標を書いてもらい、それに対して1年間をふり返り、本人と私から見た状況を話し合います。上司が働きぶりをしっかり見てくれている、職員にそう感じてもらえるように努めています」と語り、やりがいをもって働ける職場環境づくりを大切にしています。  また、人材育成にも力を入れており、毎月2回の勉強会を実施して、職員のスキルアップや資格取得を支援。勉強会の定員は15人ですが、オンライン開催や配信も行い、だれでも、いつでも見られるようにしています。また、各職場でテーマを決めて研究・発表する機会もつくっています。  今回は、定年以降もはつらつと働いている2人の職員にお話を聞きました。 「役職を降りて気が楽になりました」  米又(よねまた)初江(はつえ)さん(68歳)は、勤続25年。介護支援専門員、介護福祉士などの資格を持ち、現在、グループホームはたのリハビリの介護職としてフルタイムで勤務し、月数回は夜勤も行います。長年にわたり、このホームの管理者を務めていましたが、「65歳で役職を降りて、その分気が楽になり、余裕を持って仕事ができていると思います」と笑顔で話します。代わって管理者となった柴崎主任は、「米又さんは技術も経験もあるうえ、利用者さんにも職員にもいつも笑顔で対応していて、私も助けられています。前任の管理者ですが、やりにくいという気持ちはまったくありません。見習いたいことがたくさんあります」と話します。  グループホームはたのリハビリの職員は、20歳から74歳まで26人。米又さんは、若い職員を見守りながらも、学ぶこともあるそうで、「年齢差を感じず、話し合いながら仕事ができていることにやりがいを感じています」と話してくれました。 仕事を続けるために体力維持と勉強を大事に  兼利(かねとし)絹代(きぬよ)さん(70歳)は、長寿会に勤務して17年。介護福祉士の資格を持ち、グループホームはたのリハビリにフルタイムで勤務し、入居者に寄り添い、生活を支えています。  「できるだけその人らしく生き、その人らしい最期を迎えられるように願い、仕事をしています」と兼利さん。そのために、勉強会にできるだけ参加することを心がけています。毎日仕事をしていると少しずつ慣れが出てきてしまうため、勉強会に参加して気を引きしめているとのこと。「おさらいができたり、聞き直すことであらためて学ぶことができたりするので、『勉強会はとても大事だな』と思って参加しています」と話します。  上司の柴崎主任は、「入居者の方の生活全般に家族のようにたずさわり、いつも元気に働いています。勉強会もトレーニングもがんばっていてとてもすばらしいと思います」と兼利さんについて語ります。法人内にトレーニングルームがあり、職員も筋力トレーニングができるそうです。兼利さんは、「健康に気をつけて、少しでも長く働いていたいと思います」と今後の抱負を話してくれました。 地域の高齢者の力を活かす取組みも  長寿会は、2022年に設立30周年を迎えました。法人のこれからについて畑野理事長は、「企業理念を遂行し、『住み慣れた地域で自分らしい生活を』の支援に努め、医業・介護業にたずさわる法人として、地域で愛される存在であり続けたい。そのためにも、高齢者から若年者、そして外国人人材と団結して業務遂行を図っていきたい」と語ります。そして、ベテランの継続雇用だけでなく、今後は介護助手として元気な高齢者の採用も行い、「地域の高齢者の能力を活かす取組みも推進していきたい」と話してくれました。 (取材・増山美智子) 波多野博雄 プランナー(71歳) アドバイザー・プランナー歴:3年 [波多野プランナーから] 「プランナー活動では、訪問先企業と信頼関係を築くことが重要なため、お話をよく聞くことを心がけています。そのためにも、そして企業に寄り添った相談・助言をするためにも、事業内容や業界の状況などを事前に調査したうえで訪問するように努めています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆広島支部高齢・障害者業務課の池田課長は、波多野プランナーについて、「相手先の課題をていねいに聞き取り、相手に寄り添った提案を行っていることから企業などから厚い信頼を得ています」と話します。 ◆広島支部高齢・障害者業務課は、広島職業能力開発促進センター内にあります。アクセスは、広島駅および市内の中心部から、バスに乗るルートが一般的です。広島駅からの所要時間は30〜40分程度です。 ◆同県では、2022年4月1日現在、9人の65歳超雇用推進プランナー等が活動し、2021年度は県内423社の相談対応を行いました。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●広島支部高齢・障害者業務課 住所:広島県広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 電話:082-545-7150 写真のキャプション 広島県広島市 長寿会が運営する「グループホームはたのリハビリ」 医療法人社団長寿会の畑野栄治理事長 二岡真吾事務長 柴崎順子主任 昼食を終えた入居者と笑顔で話す米又初江さん 食後の薬の用意をする兼利絹代さん 【P42-45】 新連載 高齢社員活躍のキーマン 管理職支援をはじめよう! 株式会社新経営サービス 人材開発部 シニアコンサルタント 岡野隆宏  役職定年や定年後再雇用により、かつての上司だった高齢社員が部下となるケースなど、逆転する人間関係に戸惑いながら業務にあたっている管理職は少なくありません。しかし、豊富な知識や経験を持つ高齢社員にその能力を発揮してもらい、戦力として活躍してもらうためには、管理職の役割が重要なのはいうまでもありません。当連載では、高齢者雇用を推進するうえで重要なキーマンである管理職の支援のあり方について解説していきます。 第1回 高齢社員の実態と管理職に求められる役割 1 はじめに  ダーウィン※1の進化論に、このような一説が記されています。「生き残るのは強い者ではない。賢い者でもない。変化できる者である」。XUCA※2時代といわれるいま、企業を取り巻く環境変化のスピードは、今後ますます加速していくと考えられます。その変化のなかで、求められる要素のひとつが「適応力」です。そして企業がさまざまな適応を迫られるなか、それを実行するのはいうまでもなく「人」です。  しかし、その「人」において、近年「50代・60代を中心とした高齢社員層の戦力化が進んでいない」という問題に直面している企業が増加しています。今回は、その現状と対策の方向性について触れていきます。 2 日本の高齢化と高齢社員を取り巻く状況  まず、日本の高齢化の現状は、内閣府『令和2年版高齢社会白書』によると ・2019年時点で日本の総人口は1億2617万人、そのうち65歳以上は28.4% ・高齢化率は2036年に33.3%で3人に1人、2065年には38.4%に達し、国民の約2.6人に1人が65歳以上 ・15〜64歳人口は、1995年に8716万人(総人口の約69%)でピーク。2020年には7507万人(総人口の約59%) となっています。  また高齢化が進むなか、60歳以上の方々に対する「収入を伴う就業は何歳までと考えているか」という問いに対しては、65歳もしくは70歳くらいまで、という回答が約半数を占めており(図表1)、個人としても長く働きたいという志向が見られます。  こうしたなか、当然ながら企業における社員の高齢化も進んでいます。東京商工リサーチによると、2020年3月期決算の上場企業1792社の平均年齢は41.4歳で、近年は上昇傾向にあります(図表2)。  一方、企業では「50代の非管理職社員」、「役職定年者」、「再雇用者」など、高齢社員に関する問題が多岐にわたって表面化しています。また、高齢社員もこのような状況に個人では対応しきれず、モチベーション・ダウンを引き起こすケースが目立ちます。  しかし、このような事態に経営陣や人事部門がどこから手をつければよいかを判断できず、問題が放置されている、もしくは解決に向けた取組みが進まない、といった状況が散見されます。結果として、高齢社員の不活性化を招くと同時に、人件費の上昇や、(不活性状態による)中堅・若手層の高齢社員に対する不満の増幅などが生じ、組織運営に悪影響を与えています。  今後、高齢社員の増加が想定されるなか、高齢社員の活性化・戦力化が、企業の生産性を左右するといっても過言ではありません。 3 問題の具体例  先述のような高齢社員のモチベーション・ダウンにより、活動の量・質が上がらず、企業の成長に貢献できていないという周囲からの不満の声が上がっています。 [不満の例] ・新しい方法やアイデアを受け入れない ・頑固で、過去の経験に固執する ・自分が若かったころのやり方を通そうとする ・柔軟性に欠ける ・責任ある仕事を受けたがらない ・話しかけづらい ・積極性に欠ける ・覇気がない ・健康(体調不良)を理由に頻繁に休む など  もちろん個人差はありますが、総じて耳にする高齢社員に対するクレームの例です。  では、なぜ高齢社員のモチベーション・ダウンが生じるのでしょうか。原因としてはさまざまな要素があげられますが、整理すると、主に以下の三つが考えられます。 @制度・処遇の変化  多くの高齢社員は、役職定年や再雇用という状況を迎え、その変更にともなって役職が外れる「ポストオフ」を経験し、給与が下がっていきます。  いままでは管理職としてバリバリと働いていた第一線の立場から外れることで、「今後は会社においてどのような存在であればよいのか…」といった戸惑い、孤独、自信喪失、場合によっては屈辱感を抱くケースもあります。  実際にポストオフを経験したシニア層に話を聞くと、「仕事の責任ややりがいが失われること」の方が給与の低下以上にモチベーションに影響するという声がよく聞かれます。こうした高齢社員層の心情に対して、経営サイドは「ルールだから仕方がない」と割り切っていることが多く、十分に寄り添えているとはいえません。 A立場の逆転  幼少のころから「指示を出すのは年長者」という環境下で育ってきた高齢世代にとっては、年下上司の指示に従うことが心理的に受け入れがたく、ときに反発してしまう高齢社員も見受けられます。  このようなことから、周囲、特に年下上司とのコミュニケーション不足が生じやすく、結果として好ましい関係が構築できない状況に陥ることもあります。「高齢社員とその上司」だけの問題に留まっていればまだしも、元々組織内で強い影響力を発揮していた高齢社員が不活性化し、いわゆる「老害」的にふるまってしまうと、組織全体に悪影響が及び、若手・中堅からポスト高齢層に至るまで、当該高齢社員(年上部下)に対して、また管理職者(年下上司)に対しても大きく不満を抱くことになりかねません。 B環境変化への適応力  「人は習慣に支配される」という言葉があります。高齢社員のようなベテランになると、年齢を重ねるにつれて過去の習慣から脱却することがむずかしくなり、刻々と変わるビジネス環境への対応が困難になってきます。  特に、専門的知識の吸収やより効果的な新手法への取組み、また働き方改革を念頭に置いた社内諸制度への対応など、新たな仕組みや柔軟な対応に大きな課題が見られます。  この点については、一部の高齢社員からも「変化への柔軟性が期待されている」という自覚が見られますが、思うような行動変容が図れないのが実情のようです(図表3)。 4 年下上司のアプローチ  このような問題に対して解決のカギを握るのは、まず第一に直属上司による高齢社員への指導アプローチです。  高齢社員の直属上司は、年下の元部下がなるケースが多くあります。年下上司にとっては心理的にマネジメントしづらいことが容易に想像されますが、避けては通れないプロセスでもあります。この役割をしっかりと遂行することが求められます。 そこにおいて重要なポイントは3点あると考えられます。 @高齢社員も教育対象者≠ニいう認識を持つ  新人研修や管理職研修は行うものの、その他は手つかずになっている、ましてや高齢となれば「過去の経験で何とかなるだろう…」、「ベテランなので必要ないか…」というように、教育対象から外されるケースが多くあります。  しかし、立場や環境は変化している、また当然ながら世の中は常に変化していく、ということをふまえると、当然ながらこの段階で相応の努力が必要となります。そうとらえるなら、エネルギーをかける割合はあるでしょうが、高齢社員にも適切な教育は欠かせません。  高齢社員本人にも、過去の知恵や経験によって残して来た成果だけにこだわるのではなく、ここから新たな未来をつくる心構えが大切だと理解してもらいたいところです。  近年では「リスキリング(学び直し)」という言葉が流行してきていますが、ある調査では、大企業を中心に約8割の企業が「余剰人員の活用」が今後重要になってくると回答しています※3。そして、高齢社員はいずれの企業においても余剰人員化するリスクを抱えていると考えられるため、「高齢社員教育」はますます重要なテーマになってくることでしょう。 A会社、部門の課題共有化を図る  改めて、シニア層に対しても会社が積極的に教育の場を提供することで期待を寄せていることを伝え、そして自分が向かう今後の道筋を高齢社員自身もイメージし、それを真剣にやり切ろうとする姿勢を持たせることが大切です。  特にポストオフなどの大きな環境変化が発生するタイミングでは高齢社員として、これまでとは異なる目線から組織課題を明確にすることも重要です。会社サイドとしては、今後の市場動向の変化にどう対応していくか、といった根本的な方向性を高齢社員の上司である管理職者との間で共有し、新たな動機づけを図っていく必要もあります。  立場的に一線から外れ、会議にも呼ばれなくなった、といった状態であれば、人知れず疎外感に苦しんでいるかもしれません。そのような心理状態時に「一緒に○○という目標に向かって進んでいただきたい。そのなかで、△△の役割をになっていただき、一緒に成果を導き出していただきたい」と言葉で伝え、相互理解が促進されれば、高齢社員にとっての新たな一歩をふみ出すきっかけになるでしょう。 B年上部下との協働力を強化する  上述のような切り口をベースに、年下上司と高齢社員の関係性を強化していくことが求められます。例えば、1on1ミーティングやフィードバック強化などを日々のなかで行い、高齢社員の自己肯定感を再び醸成させることがポイントになってきます。  高齢社員のなかには「これ以上の成長はない」とあきらめ、停滞感を払拭できないままに過ごしている場合があります。「キャリアプラトー」という言葉がありますが、天井にまで行き着いた状態で、伸びしろがないようなイメージをさします。  しかし、立場や環境の変化に応じた視点と方法を身につけることで「次のステージ」が開かれていきます。そのためには年下上司が高齢社員のマインドセットを図り、高齢者だからこそ可能な貢献を果たすことが期待されます。  このように、年下上司に求められるマネジメントや教育の進め方についてもさまざまな手法がありますが、企業の現場ではあまり知られておらず、実践できているところも少ないのが実情です。次回以降はこうしたノウハウの具体例を織り交ぜながら解説していきたいと思います。 ※1 ダーウィン……イギリスの自然科学者 ※2 VUCA……Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を組み合わせもの。将来の予測がむずかしい時代であることを示す言葉 ※3 「『大企業人事の人材活用』に関する意識調査」(2021年11月実施/シェアエックス株式会社・ユームテクノロジージャパン株式会社)より 図表1 何歳まで収入を伴う仕事がしたいか n=1,755 全体 男性 60〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75〜79歳 80歳以上 女性 60〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75〜79歳 80歳以上 65歳くらいまで 70歳くらいまで 75歳くらいまで 80歳くらいまで 働けるうちはいつまでも 仕事をしたいとは思わない 不明・無回答 出典:内閣府『令和2年版高齢社会白書』 図表2 3月期決算 上場企業1,792社従業員平均年齢 2011年 39.8歳 2012年 40.0歳 2013年 40.2歳 2014年 40.5歳 2015年 40.7歳 2016年 40.9歳 2017年 41.0歳 2018年 41.2歳 2019年 41.3歳 2020年 41.4歳 出典:東京商工リサーチ『「従業員平均年齢」調査』(2020年) 図表3 今後、ご自身が働く上で「周囲から求められる」ことは何だと思いますか 年齢問わず、周囲との良好な関係性43.3% 判断力37.8% 自身のノウハウ(成功実績/豊富な経験)共有36.3% コミュニケーション力36.1% サポート力36.0% 変化に対する柔軟性34.6% 専門性/得意分野33.1% 自身のノウハウ(成功実績/豊富な経験)に固執しない姿勢27.0% 知識/情報のアップデート25.8% リーダーシップ19.3% チャレンジ精神15.6% 社外人脈12.3% 役割へのこだわり11.7% 成長欲求/学習意欲11.3% 上層部へのパイプ11.1% 好奇心7.6% 周囲への自己開示5.1% この中には無い9.9% 出典:サイボウズ チームワーク総研『「シニア社員の職場との関わり」についての意識調査』(2021年) 【P46-49】 知っておきたい 労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第57回 定年後の再雇用合意の解除、労働組合と労働者性 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲 Q1 定年後の再雇用について合意していた場合、その合意を解除することができるのか教えてほしい  定年後に再雇用を合意していた労働者が、定年を迎えるまでの間に懲戒処分に該当する行為を行っていたことが発覚しました。合意を解除して再雇用することなく労働契約を終了しようと思うのですが、問題ないでしょうか。 A  定年後の継続雇用においては、解雇に相当する事由または退職事由に該当する事情がなければ、原則として、雇止めすることはできません。懲戒処分対象の行為があったとしても、その行為が解雇相当といえるものでなければ、再雇用の合意を取り消すことはできません。 1 定年後の再雇用に関する合意の時期  高年齢者雇用安定法で義務づけられているのは、@定年の延長、A継続雇用制度、B定年制の廃止のいずれかですので、どのようなタイミングで、継続雇用の条件を定めるかなどは、特に規制がありません。  一般的には、定年退職する時期の直前に、定年後の再雇用に関する合意をすることが一般的でしょう。しかしながら、定年後の再雇用に関する条件や制度が整っていない場合(例えば、初めての定年後再雇用の場合など)は、定年前の段階で、ある程度再雇用後の労働条件について、協議を進めておき、再雇用後の労働条件をあらかじめ合意しておく場合もあります。  このように、継続後再雇用の合意をしていた場合、定年退職を迎えるまでに継続雇用を阻害する事情が生じることがありえますが、このような場合に、継続雇用に関する合意を覆すことができるのでしょうか。 2 懲戒処分と再雇用に関する裁判例  継続雇用対象者に懲戒事由が発覚したときに再雇用しないことが許されるか判断した裁判例をご紹介します(富山地裁令和4年7月20日判決)。  事案の概要は、コロナ禍において、自宅待機命令に反して外出し、また、会社が配布していた除菌水を、会社が配布していた以上の数量(合計80リットル)を持ち帰る行為を複数回行ったことから、懲戒処分相当と判断して譴責処分を科したうえで、継続雇用の合意を解除して労働契約を終了させたことが違法となるか争われたというものです。  当該裁判例は、「解雇事由または退職事由に該当するような就業規則違反があった場合に限定して、本件合意を解除し、再雇用の可否や雇用条件を再検討するという趣旨であると解釈すべき」と判断しました。  会社が、継続雇用合意を解除した原因は、@自宅待機命令という業務命令に違反したこと、A除菌水80リットルを会社の許可なく持ち帰るといった行為があり、B会社の備品を無断で私的に利用していたこと、C人事評価において当該会社が定める普通水準に達していなかったことなど多岐にわたります。  これらのうち、B会社設備の私的利用については、解除の判断をしたときよりも後に生じた事情であったことから、解除の根拠にすることはできないと判断されています。当然のことのようにも思われますが、実務で相談を受けていると、解除後に解除の効力による影響が生じるまでに生じた事情を考慮して有効となるよう期待するというのはよくあります。今回のケースでも、解除の判断から定年による契約終了までは3カ月程度の期間があり、その間に発覚した事情を解除の原因として考慮したというものでした。しかしながら、法的な効力の判断としては、解除や解雇の原因は、法的効力が発生するタイミングまでの事情を考慮するのではなく、解除や解雇の通知をしたときに存在していなければなりません。そのため、解除や解雇通知を行うときには、それ以降に原因となり得る事情が生じたとしても考慮することはできませんので、判断するときには解除の原因と判断した根拠資料などを整理しておく必要があります。  C人事評価を理由として定年後に継続雇用をしたくないというのも、法律相談でもよくあります。しかしながら、このような事情についても、普通解雇が認められる程度の勤怠不良や著しい能力不足がなければならないということになります。本件では、「せいぜい標準をやや下回っているという程度」と判断されており、解雇事由や退職事由に相当するほど著しく不良であるとはいえないとされました。  なお、@およびAについて、懲戒処分の程度としても譴責(けんせき)処分にとどまっており本人が事実を認めて反省の弁を述べ、始末書を提出していることや、その後に同様の行為がなかったことからも、解雇事由に相当する事由があったとはいえないと判断されています。 3 継続雇用に関する労使協定の効力  会社は、2012(平成24)年に行われた高年齢者雇用安定法の改正前に労使協定を締結していれば、継続雇用の対象となる労働者の基準を定めて、当該基準に即して判断することが可能とされています。しかしながら、これらは老齢厚生年金の受給開始年齢までの収入を確保することにあり、当該受給開始年齢までの継続雇用は求められる内容となっており、受給開始年齢に至らない労働者は対象となりません。  今回紹介した裁判例では、対象となっていた労働者が、基準年齢に達していないにもかかわらず、会社の就業規則および労使協定に照らして、継続雇用の対象となる労働者を限定できる(普通水準に達していなければならない)という主張をしていました。法律による公的な基準は、私的な合意には効力を及ぼさないといった趣旨で主張されていたものですが、裁判所は、このような主張を否定し、基準年齢に達していない労働者には、労使協定の効力は及ばないと判断しました。  就業規則等による私的な合意の効力を認めてしまうと、高年齢者雇用安定法の趣旨を没却するというのがその理由ですが、高年齢者雇用安定法が強い意味を持つことがあるという点は、留意しておくべきでしょう。 Q2 業務委託契約者が労働者に該当する場合があるのか知りたい  業務委託契約を締結しているフリーランサーが労働組合に加入し、団体交渉を申し入れてきました。契約の内容が業務委託契約である以上、団体交渉を拒否しても問題ないでしょうか。 A  労働組合法に定める労働者に該当する場合には、団体交渉に応じる必要があります。業務委託契約という形式だけではなく、労働者として保護に値するかという観点から判断されることに留意が必要です。 1 労働組合と団体交渉  労働契約を締結している労働者には、団結権(憲法第28条)が認められており、労働組合に加入したときには、労働条件などについて、団体交渉を申し入れることができます。通常、労働者は使用者と比較して立場が弱く、一対一で労働条件などを交渉することは困難であることから、労働者が団結することによって、対等または対等に近い立場となることで、使用者に誠実な交渉を遂行することをうながすためにこのような権利が認められています。  労働組合法は、労働組合による行動について、法的な保護を与えており、その一つが団体交渉の申入れであり、これを拒絶すると、不当労働行為という違法行為と評価されることになります(同法第7条2号)。団体交渉を拒絶された労働組合は、労働委員会へ救済申し立てを行うことができます。労働委員会においては、労使双方の主張をふまえたうえで、不当労働行為に該当する場合には、それを是正するための命令を行うことになっています。  とはいえ、この労働組合による保護を受けるためには、労働組合法が定める「労働者」でなければならず、その典型的な例は、労働契約を締結している労働者ということになります。 2 業務委託契約と労働者性  労働委員会は、これまでに、業務委託契約など労働契約以外の契約を締結しているような場合でも、労働者性を認めて、団体交渉に応じるように命じたことがあります。  直近の事例では、ウーバーイーツの配達パートナーたちが労働組合(ユニオン)を結成し、団体交渉の申し入れを行った事例で、配達パートナーの労働者性が認められています(東京都労働委員会令和4年10月4日命令)。  ウーバーイーツでは、アプリを用いて、配達を希望する顧客と配達パートナーを結びつけ、例えば、店舗の近くにいる配達パートナーが受託して、顧客の元へ配達することで、報酬を得ることができるという関係にあります。この関係は労働契約ではなく、各種のアプリの利用などを根拠づける合意によって法的な関係を成立させていました。ここでは、「デジタルプラットフォーム」において、運営事業者が提供するアプリを通じて、役務(労務)の提供を行う就労者の労働者性が争われています。  東京都労働委員会は、「労組法は、『労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること』を目的の一つとしている(第1条)。この労組法の趣旨および性格からすれば、同法が適用される『賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者』(第3条)に当たるか否かについては、契約の名称等の形式のみにとらわれることなく、その実態に即して客観的に判断する必要がある」として、デジタルプラットフォームにおける労働者性の判断について、「シェアリングエコノミー上のプラットフォームを提供する事業であっても、その実態において、利用者がシェア事業者に対して労務を供給していると評価できる場合もあり得る」としています。  労働者性の判断において考慮される事情として、@事業組織への組み入れ、A契約内容の一方的・定型的決定、B報酬の労務対価性、C業務の依頼に応ずべき関係、D広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束、E顕著な事業者性の有無などがあげられます。  まず、@事業組織への組み入れについて、飲食物を受領した後のキャンセルや飲食店と顧客により評価されるシステムは最低評価平均という基準を通じてアカウント停止措置が示唆されていることで、一定以上の水準を確保しようとしていること、ロゴの入った配達用バッグを使用することが多数であることから第三者に対し組織の一部として扱っているといえることなどから、労働力として組み入れられているとされています。  次に、A契約内容の一方的・定型的決定について、定型の契約書を用いて配送料などを含めて個別の交渉がなされず、プラットフォームの仕組みや運用は運営会社(以下、「ウーバー」)側が一方的に決定し、契約内容が一方的・定型的に決定されており、B報酬の労務対価性について、ウーバーが配送料を配達パートナーへ支払っており、キャンペーン中の配送料0円のときは注文者に代わってウーバーが配達パートナーへの配送料を負担しており、実態としてはウーバーが配達パートナーへ配送料を支払っているとみるのが相当であるとされました。  さらに、C業務の依頼に応ずべき関係については、配達リクエストに3回連続して応諾しないと自動的にオフラインになる設定があり、配達先を事前に示しておらず、応諾して配達先を知らされた後に拒否しづらい状況にあること、D広い意味での指揮監督下の労務提供等については、配達パートナーガイドを遵守して、一定の場合には待機することや所定の対応をするよう求められていること、トラブル発生時にはサポートセンターに連絡することが求められ一定の指示を受けることがあること、ガイドや評価次第ではアカウント停止措置があることなどから、広い意味での指揮監督はあったものといえるとされています。  最後に、E顕著な事業者性について、配達パートナーは、配送事業における損益についてリスクを負担しているとはいえないこと、他人を雇用して事業を拡大することは禁止されていることなどから顕著な事業者性があるとはいえないと判断されました。  労働委員会は、これらの事情を総合して、ウーバーイーツの配達パートナーは、労働組合法における「労働者」と認めるべきであると判断しています。 3 労働基準法の労働者性との相違について  労働委員会の判断は、労働組合法に定める「労働者」に該当するという判断であり、団体交渉に応じるなど、労働組合としての権利を認めるという内容にとどまります。このことは、労働基準法に定める「労働者」と完全に一致するわけではなく、労働時間管理をして時間外労働の割増賃金を支払う義務が生じるとか、そのほかの労働関係法令に従い安全配慮する義務が当然に生じるというものではありません。  「労働者」という同じ用語であっても、法律の趣旨や目的に応じてその範囲が異なるという現象がここでは生じており、いかなる手続きでどの法律に基づいて判断されたかによって、その法的な影響は異なるという点には留意する必要があります。 【P50-51】 活き活き働くための高齢者の健康ライフ Healthy Life for the elderly  70歳までの就業が企業の努力義務となり、時代はまさに「生涯現役時代」を迎えようとしています。高齢者に元気に働き続けてもらうためには、何より「健康」が欠かせません。  働く高齢者の「健康」について、坂根直樹先生が解説します。 坂根 直樹 第3回 歩くのが遅くなってきた? 歩行速度は6番目のバイタルサイン  生活習慣病予防のために40歳以上を対象に行われる特定健診の標準的な問診票のなかには、運動・身体活動に関する質問が四つあります(図表1)。「週単位の運動習慣」、「日々の身体活動」、「歩く速度」、「運動の習慣化の準備状態を示す変化ステージ」を示していいます。  このなかで「歩く速度」は、体力をあらわすよい指標として知られています。65歳以上の高齢者を対象(1万2901人)とした九つの研究をまとめたメタ解析※1では、歩く速度が遅くなると心血管による死亡が増え、死亡に対するリスクが2倍弱(1.89倍)になることがわかっています。オーストラリアの70歳以上の男性を対象とした5年間の観察研究※2では、被験者1705人中死亡者266人のうち、歩行速度が時速3q(0.8m/秒)より速い人は死亡率が低く、時速5q(1.3m/秒)より速い人で、観察期間中に死亡した人はいなかったことが報告されています。  これらの研究から、歩行速度は血圧、脈拍、呼吸、体温、痛みに続く「6番目のバイタルサイン」といわれています。  ただし、歩く速度が正常の人と比べて、遅い人の場合は1.66倍、速い人の場合は2.12倍、転倒しやすいことがわかっており※3、歩くのが遅い人は屋内で転倒しているのに対して、速い人は屋外で転倒しています。自分が思っているよりも足が出ていないのかもしれません。そして、せっかちな人や以前より歩く速度が落ちてきた人は要注意です。 歩く速度を測定するには?  歩く速度は、距離と時間から計算することができます(歩行速度=歩く距離(m)÷時間(秒))。臨床現場や研究では「10m歩行テスト」や「6m歩行テスト」などが用いられています。最近では、自動で歩く速度を計算してくれる便利なヘルスケアアプリもあります(図表2)。まずは、スマートフォンやスマートウォッチなどを使い、自分の歩く速度を測定してみましょう。日常生活のなかで考えると、一般的な横断歩道は、1mを1秒、つまり秒速1m(1m/秒)で渡れるように調整されています。横断歩道が時間内に渡り切れないようなら、歩く速度がかなり落ちているのかもしれません。加齢にともなう筋肉量や筋力の減少した状態である「サルコペニア」の診断の基準(『AWGS, 2019』)の一つにも「歩く速度の低下(1m/秒以下)」が取り入れられています。年代別の通常歩行速度をみると、男女とも60代に低下が始まり、70代に急激に遅くなるのがわかります(図表3)。 歩行速度を速くするには?  外来で患者さんと話をしていると「以前と比べて、歩くのが遅くなった」、「同世代の人に追い抜かれて…」という人が増え、「歩くのを速くするにはどうしたらよいですか」とたずねられることもあります。歩く速度を速くするアイデアはいくつかあります(図表4)。体重が重い人の場合には「重い荷物を持っていると速く歩けません。体重を減らすと動くのがスムーズになるかもしれませんね」とアドバイスしています。靴やインソールの選び方も大切です。あたり前ですが、サンダルやスリッパでは速く歩くことはできません。また、靴底の素材の違いで筋肉の使い方も変わりますので、靴店の店員さんからアドバイスをもらうとよいでしょう。  歩行速度は「歩幅」(ストライド)と「テンポ」で決まっています(歩行速度=歩幅×テンポ)。腕を少し速く振ると、歩くテンポは速くなります。BPM※4120前後のお気に入りの音楽を聴きながら歩くと、1秒間に2歩のテンポとなります。ストライドを広げるためには、下半身の筋力増強やストレッチが重要です。読者のみなさんの歩く速度はいかがですか。最近、歩く速度が落ちてきていませんか。 ※1 Liu B, Hu X, Zhang Q, Fan Y, Li J, Zou R, Zhang M, Wang X, Wang J. Usual walking speed and all-cause mortality risk in older people:A systematic review and meta-analysis. Gait Posture. 2016 Feb;44:172-7. doi: 10.1016/j.gaitpost.2015.12.008. Epub 2015 Dec 14. PMID: 27004653. ※2 Stanaway FF, Gnjidic D, Blyth FM, Le Couteur DG, Naganathan V, Waite L, Seibel MJ, Handelsman DJ, Sambrook PN, Cumming RG. How fast does the Grim Reaper walk? Receiver operating characteristics curve analysis in healthy men aged 70 and over. BMJ. 2011 Dec 15;343:d7679. doi: 10.1136/bmj.d7679. PMID: 22174324; PMCID: PMC3240682. ※3 Quach L, Galica AM, Jones RN, Procter-Gray E, Manor B, Hannan MT, Lipsitz LA. The nonlinear relationship between gait speed and falls: the Maintenance of Balance, Independent Living, Intellect, and Zest in the Elderly of Boston Study. J Am Geriatr Soc. 2011 Jun;59(6):1069-73. doi: 10.1111/j.1532-5415.2011.03408.x. Epub 2011 Jun 7. PMID: 21649615; PMCID: PMC3141220. ※4 BPM……テンポの単位。「Beats Per Minute」の略。BPM120は、1秒間で2拍子 図表1 特定健診の標準的な質問票より「運動・身体活動関連」 運動習慣(週単位) 1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか? 1.はい   2.いいえ 身体活動(日単位) 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか? 1.はい   2.いいえ 歩行速度 ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いですか? 1.はい   2.いいえ 変化ステージ 運動や食生活等の生活習慣を改善してみようと思いますか。 1.改善するつもりはない 2.改善するつもりである(概ね6カ月以内) 3.近いうちに(概ね1カ月以内)改善するつもりであり、少しずつ始めている 4.既に改善に取り組んでいる(6カ月未満) 5.既に改善に取り組んでいる(6カ月以上) ※厚生労働省「標準的な質問票」をもとに筆者作成 図表2 歩く速度をヘルスケアアプリやスマートウォッチで測定 図表3 年代別の通常歩行速度 年齢 歩行速度(m/分) 男性 女性 0-4 59.0 54.2 5-9 59.2 64.9 10-14 66.5 79.1 15-19 91.6 72.0 20-24 87.6 74.1 25-29 85.2 74.2 30-34 95.5 72.2 35-39 85.3 67.2 40-44 82.3 71.0 45-49 82.5 78.6 50-54 77.8 67.2 55-59 72.6 63.5 60-64 70.1 59.2 65-69 63.8 59.8 70-74 60.7 55.0 75-79 54.5 50.7 出典:阿久津邦夫『歩行の科学』(不昧堂出版) 図表4 歩く速度を速くするアイデア 方法 具体例 重い荷物を持たない 体重を減らす 手荷物を減らす 歩きやすく 歩きやすい靴やインソールにする 歩きやすい服装にする 手持ちかばんからリュックサックにする テンポを速く 腕をよく振り、テンポを速くする 速いテンポの音楽を聴きながら歩く インターバル速歩を取り入れる 歩幅を広く ハムストリング、大腰筋、スクワットなど 筋トレ、カーフストレッチなど コースの設定 平坦なコースや坂道・階段などを組み合わせる 歩行速度を確認 歩行速度を測定する(ヘルスケアアプリを用いて、距離と時間から) その他 スマートフォンを見ながら歩かない ※筆者作成 【P52-57】 労務資料 令和4年6月1日現在の高年齢者の雇用状況等 厚生労働省 職業安定局 高齢者雇用対策課  高年齢者雇用安定法では、高年齢者が年齢にかかわりなく働き続けることができる生涯現役社会の実現を目的に、企業に65歳までの高年齢者雇用確保措置を義務づけています。また、2021(令和3)年4月1日からは、70歳までを対象に、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」という雇用による措置や、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」(高年齢者就業確保措置)という雇用以外の措置のいずれかの措置を講じることが努力義務となりました。  厚生労働省より、こうした高年齢者の雇用等に関する措置の実施状況(2022年6月1日現在)が公表されましたので、その結果をご紹介します。集計対象は、常時雇用する労働者が21人以上の企業23万5875社です(編集部)。 集計結果の主なポイント T 65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の状況 @高年齢者雇用確保措置の実施状況  65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は23万5620社(99.9%) ・企業規模別には中小企業では99.9%、大企業では99.9% ・高年齢者雇用確保措置を「継続雇用制度の導入」により実施している企業は、全企業において70.6% A65歳定年企業の状況  65歳定年企業は5万2418社(22.2%) ・中小企業では22.8% ・大企業では15.3% U 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況 @70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況  70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は6万5782社(27.9%) ・中小企業では28.5% ・大企業では20.4% A66歳以上まで働ける制度のある企業の状況  66歳以上まで働ける制度のある企業は9万5994社(40.7%) ・中小企業では41.0% ・大企業では37.1% B70歳以上まで働ける制度のある企業の状況  70歳以上まで働ける制度のある企業は9万2118社(39.1%) ・中小企業では39.4% ・大企業では35.1% C定年制廃止企業等の状況  定年制の廃止企業は9248社(3.9%) ・中小企業では4.2% ・大企業では0.6% 1 高年齢者雇用確保措置の実施状況 (1)高年齢者雇用確保措置の状況  高年齢者雇用確保措置(以下「雇用確保措置」)を実施済みの企業は、報告した企業全体で23万5620社(99.9%)で、中小企業では99.9%、大企業では99.9%であった。 (2)雇用確保措置を実施済みの企業の内訳  雇用確保措置を実施済みと報告した全企業について、雇用確保措置の措置内容別に見ると、定年制度の見直し(左記@、A)よりも、継続雇用制度の導入(左記B)を行うことで雇用確保措置を講じている企業が多かった(図表1)。 @定年制の廃止は9248社(3.9%) A定年の引上げは6万37社(25.5%) B継続雇用制度の導入は16万6335社(70.6%) (3)65歳以上の継続雇用制度のある企業の状況  65歳以上の「継続雇用制度の導入」を行うことで雇用確保措置を講じている企業(16万6335社)を対象に、継続雇用制度の内容を見ると、希望者全員を対象とする制度を導入している企業は83.0%であった。  一方、高年齢者雇用安定法一部改正法の経過措置に基づく対象者を限定する基準がある継続雇用制度を導入している企業(経過措置適用企業)の割合は、報告した全企業では17.0%であったが、大企業に限ると35.0%であった(図表2)。 2 65歳定年企業の状況  報告した全企業のうち、定年を65歳とする企業は5万2418社(22.2%)で、中小企業では22.8%、大企業では15.3%であった(図表3・4)。 3 70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況 (1)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況  報告した全企業において、70歳までの高年齢者就業確保措置(以下「就業確保措置」)を実施済みの企業は6万5782社(27.9%)で、中小企業では28.5%、大企業では20.4%であった(図表5)。 (2)70歳までの就業確保措置を実施済みの企業の内訳  報告した全企業について、就業確保措置の措置内容別に見ると、継続雇用制度の導入(下記B)を行うことで就業確保措置を講じている企業が最も多かった(図表6)。 @定年制の廃止は9248社(3.9%) A定年の引上げは4995社(2.1%) B継続雇用制度の導入は5万1426社(21.8%) C創業支援等措置の導入は113社(0.1%) 4 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (1)66歳以上まで働ける制度のある企業の状況  報告した全企業において、66歳以上まで働ける制度のある企業は9万5994社(40.7%)で、中小企業では41.0%、大企業では37.1%であった(図表7)。 (2)70歳以上まで働ける制度のある企業の状況  報告した全企業において、70歳以上まで働ける制度のある企業は9万2118社(39.1%)で、中小企業では39.4%、大企業では35.1%であった(図表8)。 (3)定年制の廃止および66歳以上定年企業の状況  報告した全企業において、定年制を廃止している企業は9248社(3.9%)、定年を66〜69歳とする企業は2624社(1.1%)、定年を70歳以上とする企業は4995社(2.1%)で、これを企業規模別に見ると、次のとおりであった(図表9)。 @中小企業 ・定年制を廃止している企業は4.2% ・定年を66〜69歳とする企業は1.2% ・定年を70歳以上とする企業は2.2% A大企業 ・定年制を廃止している企業は0.6% ・定年を66〜69歳とする企業は0.2% ・定年を70歳以上とする企業は0.6% 5 60歳定年到達者の動向 (1)60歳定年企業における定年到達者の動向  60歳定年企業において、過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月31日)に定年に到達した者は、37万9120人であった。このうち、継続雇用された者は87.1%(うち子会社等・関連会社等での継続雇用者は2.7%)、継続雇用を希望しない定年退職者は12.7%、継続雇用を希望したが継続雇用されなかった者は0.2%であった。 (2)継続雇用の対象者を限定する基準に係る経過措置の適用状況  経過措置に基づく対象者を限定する基準がある企業において、過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月31日)に、基準を適用できる年齢(令和4年4月1日から令和7年3月31日までは64歳)に到達した者は、5万9335人であった。このうち、基準に該当し引き続き継続雇用された者は91.2%、継続雇用の更新を希望しなかった者は7.2%、継続雇用を希望したが基準に該当せずに継続雇用が終了した者は1.6%であった。 6 高年齢常用労働者の状況 (1)年齢階級別の常用労働者数について  報告した全企業における常用労働者数(約3480万人)のうち、60歳以上の常用労働者数は約470万人で13.5%を占めている。年齢階級別に見ると、60〜64歳が約254万人、65〜69歳が約128万人、70歳以上が約88万人であった(図表10)。 (2)高年齢労働者の推移(31人以上規模企業)  31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約442万人で、平成21年と比較すると、約226万人増加している(図表11)。 ※この集計では従業員21〜300人規模を「中小企業」、301人以上規模を「大企業」としています 図表1 雇用確保措置の内訳 全企業 定年制の廃止3.9% 定年の引上げ25.5% 継続雇用制度の導入70.6% 301人以上 定年制の廃止0.6% 定年の引上げ16.1% 継続雇用制度の導入83.3% 21〜300人 定年制の廃止4.2% 定年の引上げ26.2% 継続雇用制度の導入69.6% 図表2 継続雇用制度の内訳 全企業 希望者全員65歳以上の継続雇用制度83.0% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)17.0% 301人以上 希望者全員65歳以上の継続雇用制度65.0% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)35.0% 21〜300人 希望者全員65歳以上の継続雇用制度84.6% 基準該当者65歳以上の継続雇用制度(経過措置適用企業)15.4% 図表3 定年制の廃止および65歳以上定年企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A65歳以上定年 65歳 66〜69歳 70歳以上 合計(@+A) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,248 (9,190) 52,418 (48,958) 2,624 (2,533) 4,995 (4,306) 69,285 (64,987) 235,875 (232,059) 3.9% (4.0%) 22.2% (21.1%) 1.1% (1.1%) 2.1% (1.9%) 29.4% (28.0%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 5,381 (5,352) 37,243 (35,036) 1,801 (1,744) 3,264 (2,916) 47,689 (45,048) 175,541 (174,257) 3.1% (3.1%) 21.2% (20.1%) 1.0% (1.0%) 1.9% (1.7%) 27.2% (25.9%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 9,138 (9,080) 49,807 (46,633) 2,584 (2,500) 4,897 (4,222) 66,426 (62,435) 218,785 (215,092) 4.2% (4.2%) 22.8% (21.7%) 1.2% (1.2%) 2.2% (2.0%) 30.4% (29.0%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 3,867 (3,838) 15,175 (13,922) 823 (789) 1,731 (1,390) 21,596 (19,939) 60,334 (57,802) 6.4% (6.6%) 25.2% (24.1%) 1.4% (1.4%) 2.9% (2.4%) 35.8% (34.5%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 5,271 (5,242) 34,632 (32,711) 1,761 (1,711) 3,166 (2,832) 44,830 (42,496) 158,451 (157,290) 3.3% (3.3%) 21.9% (20.8%) 1.1% (1.1%) 2.0% (1.8%) 28.3% (27.0%) 100.0% (100.0%) 301人以上 110 (110) 2,611 (2,325) 40 (33) 98 (84) 2,859 (2,552) 17,090 (16,967) 0.6% (0.6%) 15.3% (13.7%) 0.2% (0.2%) 0.6% (0.5%) 16.7% (15.0%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和3年6月1日現在の数値 図表4 65歳定年企業の状況 全企業 22.2% 301人以上 15.3% 21〜300人 22.8% 図表6 就業確保措置の内訳 全企業(27.9%) 定年制の廃止3.9% 定年の引上げ2.1% 継続雇用制度の導入21.8% 創業支援等措置の導入0.1% 301人以上(20.4%) 定年制の廃止0.6% 定年の引上げ0.6% 継続雇用制度の導入19.0% 創業支援等措置の導入0.1% 21〜300人(28.5%) 定年制の廃止4.2% 定年の引上げ2.2% 継続雇用制度の導入22.2% 創業支援等措置の導入0.1% 図表5 70歳までの就業確保措置の実施状況 (社、%) @70歳までの就業確保措置実施済み A就業確保措置相当の措置実施 Bその他未実施 合計(@+A+B) 定年廃止 定年の引上げ 継続雇用制度の導入 創業支援等措置の導入 21人以上総計 65,782 (59,377) 9,248 (9,190) 4,995 (4,306) 51,426 (45,802) 113 (79) 3,967 (3,936) 166,126 (168,746) 235,875 (232,059) 27.9% (25.6%) 3.9% (4.0%) 2.1% (1.9%) 21.8% (19.7%) 0.1% (0.1%) 1.7% (1.7%) 70.4% (72.7%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 46,921 (42,661) 5,381 (5,352) 3,264 (2,916) 38,185 (34,330) 91 (63) 2,995 (2,988) 125,625 (128,608) 175,541 (174,257) 26.7% (24.5%) 3.1% (3.1%) 1.9% (1.7%) 21.8% (19.7%) 0.1% (0.1%) 1.7% (1.7%) 71.6% (73.8%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 62,303 (56,355) 9,138 (9,080) 4,897 (4,222) 48,176 (42,990) 92 (63) 3,700 (3,689) 152,782 (155,048) 218,785 (215,092) 28.5% (26.2%) 4.2% (4.2%) 2.2% (2.0%) 22.0% (20.0%) 0.1% (0.1%) 1.7% (1.7%) 69.8% (72.1%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 18,861 (16,716) 3,867 (3,838) 1,731 (1,390) 13,241 (11,472) 22 (16) 972 (948) 40,501 (40,138) 60,334 (57,802) 31.3% (28.9%) 6.4% (6.6%) 2.9% (2.4%) 21.9% (19.8%) 0.1% (0.1%) 1.6% (1.6%) 67.1% (69.4%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 43,442 (39,639) 5,271 (5,242) 3,166 (2,832) 34,935 (31,518) 70 (47) 2,728 (2,741) 112,281 (114,910) 158,451 (157,290) 27.4% (25.2%) 3.3% (3.3%) 2.0% (1.8%) 22.0% (20.0%) 0.1% (0.1%) 1.7% (1.7%) 70.9% (73.1%) 100.0% (100.0%) 301人以上 3,479 (3,022) 110 (110) 98 (84) 3,250 (2,812) 21 (16) 267 (247) 13,344 (13,698) 17,090 (16,967) 20.4% (17.8%) 0.6% (0.6%) 0.6% (0.5%) 19.0% (16.6%) 0.1% (0.1%) 1.6% (1.5%) 78.1% (80.7%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和3年6月1日現在の数値 ※「@70歳までの就業確保措置実施済み」とは、法令の定めに基づいた適正な手続きを経て、定年制の廃止、定年の引上げ、継続雇用制度もしくは創業支援等措置の導入のいずれかの措置を講ずることにより、70歳までの就業機会の確保を実施している場合を指す。なお、「定年の引上げ」は70歳以上の定年の定めを設けている企業を、「継続雇用制度の導入」は定年年齢は70歳未満だが継続雇用制度の上限年齢を70歳以上としている企業を、「創業支援等措置の導入」は定年年齢及び継続雇用制度の年齢は70歳未満だが創業支援等措置の年齢を70歳以上としている企業を、それぞれ計上している ※「A就業確保措置相当の措置実施」とは、「@70歳までの就業確保措置実施済み」と同様の措置を70歳未満の年齢まで導入している場合を指す ※本集計は、原則小数点第2位以下を四捨五入しているが、本表の「21人以上総計」、「21〜300人」、「21〜30人」、「31〜300人」の「創業支援等措置の導入」については、小数点第2位以下を切り上げとしている 図表7 66歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A66歳以上定年 B希望者全員66歳以上継続雇用 C基準該当者66歳以上継続雇用 Dその他66歳以上まで働ける制度 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,248 (9,190) 7,619 (6,839) 24,988 (21,512) 27,785 (25,698) 26,354 (25,694) 41,855 (37,541) 69,640 (63,239) 95,994 (88,933) 235,875 (232,059) 3.9% (4.0%) 3.2% (2.9%) 10.6% (9.3%) 11.8% (11.1%) 11.2% (11.1%) 17.7% (16.2%) 29.5% (27.3%) 40.7% (38.3%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 5,381 (5,352) 5,065 (4,660) 17,484 (15,269) 21,898 (20,309) 20,193 (19,710) 27,930(25,281) 49,828(45,590) 70,021(65,300) 175,541 (174,257) 3.1% (3.1%) 2.9% (2.7%) 10.0% (8.8%) 12.5% (11.7%) 11.5% (11.3%) 15.9% (14.5%) 28.4% (26.2%) 39.9% (37.5%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 9,138 (9,080) 7,481 (6,722) 24,120 (20,748) 25,176 (23,435) 23,731 (23,156) 40,739 (36,550) 65,915 (59,985) 89,646 (83,141) 218,785 (215,092) 4.2% (4.2%) 3.4% (3.1%) 11.0% (9.6%) 11.5% (10.9%) 10.8% (10.8%) 18.6% (17.0%) 30.1% (27.9%) 41.0% (38.7%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 3,867 (3,838) 2,554 (2,179) 7,504 (6,243) 5,887 (5,389) 6,161 (5,984) 13,925 (12,260) 19,812 (17,649) 25,973 (23,633) 60,334 (57,802) 6.4% (6.6%) 4.2% (3.8%) 12.4% (10.8%) 9.8% (9.3%) 10.2% (10.4%) 23.1% (21.2%) 32.8% (30.5%) 43.0% (40.9%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 5,271 (5,242) 4,927 (4,543) 16,616 (14,505) 19,289 (18,046) 17,570 (17,172) 26,814(24,290) 46,103(42,336) 63,673(59,508) 158,451 (157,290) 3.3% (3.3%) 3.1% (2.9%) 10.5% (9.2%) 12.2% (11.5%) 11.1% (10.9%) 16.9% (15.4%) 29.1% (26.9%) 40.2% (37.8%) 100.0% (100.0%) 301人以上 110 (110) 138 (117) 868 (764) 2,609 (2,263) 2,623 (2,538) 1,116 (991) 3,725 (3,254) 6,348 (5,792) 17,090 (16,967) 0.6% (0.6%) 0.8% (0.7%) 5.1% (4.5%) 15.3% (13.3%) 15.3% (15.0%) 6.5% (5.8%) 21.8% (19.2%) 37.1% (34.1%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和3年6月1日現在の数値 ※66歳以上定年制度と66歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A66歳以上定年」のみに計上している ※「Dその他66歳以上まで働ける制度」とは、業務委託等その他企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す 図表8 70歳以上まで働ける制度のある企業の状況 (社、%) @定年制の廃止 A70歳以上定年 B希望者全員70歳以上継続雇用 C基準該当者70歳以上継続雇用 Dその他70歳以上まで働ける制度 合計@(@〜B) 合計A(@〜C) 合計B(@〜D) 報告した全ての企業 21人以上総計 9,248 (9,190) 4,995 (4,306) 24,201 (20,736) 27,225 (25,066) 26,449 (25,684) 38,444 (34,232) 65,669 (59,298) 92,118 (84,982) 235,875 (232,059) 3.9% (4.0%) 2.1% (1.9%) 10.3% (8.9%) 11.5% (10.8%) 11.2% (11.1%) 16.3% (14.8%) 27.8% (25.6%) 39.1% (36.6%) 100.0% (100.0%) 31人以上総計 5,381 (5,352) 3,264 (2,916) 16,796 (14,590) 21,389 (19,740) 20,203 (19,634) 25,441 (22,858) 46,830 (42,598) 67,033 (62,232) 175,541 (174,257) 3.1% (3.1%) 1.9% (1.7%) 9.6% (8.4%) 12.2% (11.3%) 11.5% (11.3%) 14.5% (13.1%) 26.7% (24.4%) 38.2% (35.7%) 100.0% (100.0%) 21〜300人 9,138 (9,080) 4,897 (4,222) 23,404 (20,048) 24,772 (22,942) 23,911 (23,243) 37,439 (33,350) 62,211 (56,292) 86,122 (79,535) 218,785 (215,092) 4.2% (4.2%) 2.2% (2.0%) 10.7% (9.3%) 11.3% (10.7%) 10.9% (10.8%) 17.1% (15.5%) 28.4% (26.2%) 39.4% (37.0%) 100.0% (100.0%) 21〜30人 3,867 (3,838) 1,731 (1,390) 7,405 (6,146) 5,836 (5,326) 6,246 (6,050) 13,003 (11,374) 18,839 (16,700) 25,085 (22,750) 60,334 (57,802) 6.4% (6.6%) 2.9% (2.4%) 12.3% (10.6%) 9.7% (9.2%) 10.4% (10.5%) 21.6% (19.7%) 31.2% (28.9%) 41.6% (39.4%) 100.0% (100.0%) 31〜300人 5,271 (5,242) 3,166 (2,832) 15,999 (13,902) 18,936 (17,616) 17,665 (17,193) 24,436 (21,976) 43,372 (39,592) 61,037 (56,785) 158,451 (157,290) 3.3% (3.3%) 2.0% (1.8%) 10.1% (8.8%) 12.0% (11.2%) 11.1% (10.9%) 15.4% (14.0%) 27.4% (25.2%) 38.5% (36.1%) 100.0% (100.0%) 301人以上 110 (110) 98 (84) 797 (688) 2,453 (2,124) 2,538 (2,441) 1,005 (882) 3,458 (3,006) 5,996 (5,447) 17,090 (16,967) 0.6% (0.6%) 0.6% (0.5%) 4.7% (4.1%) 14.4% (12.5%) 14.9% (14.4%) 5.9% (5.2%) 20.2% (17.7%) 35.1% (32.1%) 100.0% (100.0%) ※( )内は、令和3年6月1日現在の数値 ※70歳以上定年制度と70歳以上の継続雇用制度の両方の制度を持つ企業は、「A70歳以上定年」のみに計上している ※「Dその他70歳以上まで働ける制度」とは、業務委託等その他企業の実情に応じて何らかの仕組みで70歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指す 図表9 定年制廃止および66歳以上定年企業の状況 全企業(7.1%) 定年制の廃止3.9% 66〜69歳定年1.1% 70歳以上定年2.1% 301人以上(1.4%) 定年制の廃止0.6% 66〜69歳定年0.2% 70歳以上定年0.6% 21〜300人(7.6%) 定年制の廃止4.2% 66〜69歳定年1.2% 70歳以上定年2.2% 図表10 年齢別常用労働者数 (人) 年齢計 60歳以上合計 60〜64歳 65歳以上 うち70歳以上 21人以上規模企業 令和3年 33,799,709人(100.0) 4,473,440人(100.0) 2,391,478人(100.0) 2,081,962人(100.0) 819,669人(100.0) 令和4年 34,799,558人(103.0) 4,700,205人(105.1) 2,535,088人(106.0) 2,165,117人(104.0) 882,791人(107.7) ※( )は、令和3年を100とした場合の比率 図表11 60歳以上の常用労働者数の推移 31人以上規模企業 平成21年 216.0万人 22年 242.8万人 23年 253.6万人 24年 264.2万人 25年 272.0万人 26年 287.2万人 27年 304.7万人 28年 324.5万人 29年 347.4万人 30年 362.6万人 令和元年 386.5万人 2年 409.3万人 3年 421.0万人 4年 441.7万人 【P58-59】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  高年齢者活躍企業コンテストでは、高年齢者が長い職業人生の中でつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業等が行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業等における雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組の普及・促進を図り、生涯現役社会の実現に向けた気運を醸成することを目的としています。多数のご応募をお待ちしています。 T 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするため、各企業等が行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度  (特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)の導入 A創業支援等措置(70歳以上までの業務委託・社会貢献)の導入(※1) B賃金制度、人事評価制度の見直し C多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 D各制度の運用面の工夫(制度改善の推進体制の整備、運用状況を踏まえた見直し) 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 @高年齢者のモチベーション向上に向けた取組や高年齢者の役割等の明確化 A高年齢者による技術・技能継承の仕組み B高年齢者が活躍できるような支援の仕組み(IT化へのフォロー、危険業務等からの業務転換) C高年齢者が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 D新職場の創設・職務の開発 E中高年齢者を対象とした教育訓練、キャリア形成支援の実施(キャリアアップセミナーの開催) 等 高年齢者が働き続けられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 @作業環境の改善  (高年齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、配置・配属の配慮、創業支援等措置対象者への作業機器の貸出) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化 B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組(体力づくり、安全衛生教育、事故防止対策) C福利厚生の充実(休憩室の設置、レクリエーション活動、生涯生活設計の相談体制) 等 ※1「創業支援等措置」とは、以下の@・Aを指します @70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 A70歳まで継続的に、「a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業」または「b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入 U 応募方法 1.応募書類等 イ.指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラスト等、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。また、定年制度、継続雇用制度及び創業支援等措置並びに退職事由及び解雇事由について定めている就業規則等の該当箇所の写しを添付してください(該当箇所に、引用されている他の条文がある場合は、その条文の写しも併せて添付してください)。なお、必要に応じて当機構から追加書類の提出依頼を行うことがあります。 ロ.応募様式は、当機構の各都道府県支部高齢・障害者業務課(※2)にて、紙媒体または電子媒体により配付します。  また、当機構のホームページ(※3)からも入手できます。 ハ.応募書類等は返却いたしません。 2.応募締切日 令和5年2月28日(火)当日消印有効 3.応募先  各都道府県支部高齢・障害者業務課(※2)へ提出してください。 ※2 連絡先は本誌65ページをご参照ください ※3 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)令和2年4月1日〜令和4年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (2)「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)及び「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)に基づき公表されていないこと。 (3)令和4年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (4)令和4年度の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (5)令和4年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度等を導入(※4)し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 ※4 平成24年改正の高年齢者雇用安定法の経過措置として継続雇用制度の対象者の基準を設けている場合は、当コンテストの趣旨に鑑み、対象外とさせていただきます。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 賞(※5) 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 ※5 上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 X 審査  学識経験者等から構成される審査委員会を設置し、審査します。  なお、応募を行った企業等または取組等の内容について、労働関係法令上または社会通念上、事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される問題(厚生労働大臣が定める「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」等に照らして事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される内容等)が確認された場合は、この点を考慮した審査を行うものとします。 Y 審査結果発表等  令和5年9月中旬をめどに、厚生労働省及び当機構において各報道機関等へ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省または当機構より直接通知します。  また、入賞企業の取組み事例は、厚生労働省及び当機構の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、本誌およびホームページなどに掲載します。 Z 著作権等  提出された応募書類の内容に係る著作権及び使用権は、厚生労働省及び当機構に帰属することとします。 [ 問合せ先 ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用推進・研究部 普及啓発課 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3丁目1番3号 TEL:043-297-9527 E-Mail:tkjyoke@jeed.go.jp ●独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課  連絡先は65ページをご参照ください。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください! 「70歳雇用事例サイト」 当機構が収集した高年齢者の雇用事例をインターネット上で簡単に検索できるWeb サイトです。「高年齢者活躍企業コンテスト表彰事例(『エルダー』掲載記事)」、「雇用事例集」で紹介された事例を検索できます。今後も、当機構が提供する最新の企業事例情報を随時公開します。 70歳雇用事例サイト 検索 【P60】 次号予告 3月号 特集 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム〈東京会場〉 リーダーズトーク 黒田真行さん(ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役) (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 メールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メールマガジン 検索 リンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み  株式会社労働調査会までご連絡ください。  電話03-3915-6415  FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人 100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 田村泰朗……太陽生命保険株式会社取締役専務執行役員 丸山美幸……社会保険労務士 三宅有子……日本放送協会 メディア総局 第1制作センター(福祉)チーフ・リード 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 編集後記 ●今号の第1特集では「技能五輪・技能グランプリを支える高齢者の底力」をテーマに、技能五輪や技能グランプリに出場する選手の指導やサポートに尽力する高齢者のみなさんをご紹介しました。豊富な知識や技術、経験を持った熟練技能者による指導は、若手社員たちの成長をうながすとともに、競技会へ出場した経験は大きな財産となります。高齢社員の活躍と若手の成長を促進する戦略の一つとして、技能五輪・技能グランプリへの挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。 ●第2特集では、10月26日に福岡県で開催された「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の開催レポートをお届けしました。3月号・4月号でも今年度開催されたシンポジウムの模様をお届けしますので、お楽しみに。 ●高齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫に取り組む企業を表彰する、令和5年度高年齢者活躍企業コンテストの応募締切が2月28日に迫っています。読者のみなさまからのご応募をお待ちしております。 読者アンケートにご協力お願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式ツイッターはこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 月刊エルダー2月号No.519 ●発行日−−令和5年2月1日(第45巻 第2号 通巻519号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 飯田剛 編集人−−企画部情報公開広報課長中上英二 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 FAX 043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp/ メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-927-9 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 技を支える vol.324 装置類にも工夫を凝らし顧客からの信頼を高める 製缶・溶接・組立 渡部(わたなべ)玲(あきら)さん(65歳) 「新しい製作の依頼がくると、まず、どうすれば安全に効率よく作業できるかを考え、必要な装置や治具をつくることから始めます」 美しい溶接技能が顧客の評判を呼ぶ  神奈川県川崎市川崎区で、製缶業として創業90年の歴史を持つ株式会社仙崎(せんざき)鐵工所(てっこうじょ)。製缶とは、鉄やステンレスなどの金属板を、切断・曲げ・溶接などの方法で加工し、立体的な製品を組み立てること。同社の強みは、一品生産が多い精密製缶。製鉄所の鋼板製造ラインで用いられる装置、水の流れる量を測定する電磁流量計、浄水するためのオゾン発生装置など、大型で高い精度が求められる製品を数多く手がけている。  高精度を支える技能者の一人が、勤続50年になる製造部グループ長の渡部玲さん。製缶の肝といえる溶接の優れた技能などが評価され、2021(令和3)年度「かわさきマイスター」に認定された。  同社代表取締役の沼りえさんは、渡部さんの溶接についてこう評価する。  「溶接は熱を加えるため変型が生じます。その変型を予測して事前に逆ひずみ※をつけたり、作業しやすい治具を自作することで効率を高めています。また、渡部さんのTIG(ティグ)溶接の仕上がりの美しさは、お客さまから高く評価されています。彼の技能を見込んで依頼される案件も多く、わが社の看板親父≠フ一人です」  TIG溶接は緻密な部分に適した溶接法で、タングステンの電極棒に電流を流してアーク放電を発生させ、その熱で溶接棒を溶かしながら溶接する。溶接部分を移動しながら電極棒と溶接棒を同時に操作するため、きれいに仕上げるには熟練を要する。渡部さんは溶接棒を均一の速度で送り出す技を習得し、美しいビード(溶接後の盛り上がり部分)を実現できる。 渡部さんにしかできない「コイル巻き」  渡部さんが指名で依頼を受ける案件の一つに、電磁流量計の筐体(きょうたい)とコイルの製作がある。  筐体は管状で、最大のものは直径2.2m、長さ3mに及ぶ。筐体は二重になっており、内部にコイルなどの計測器が組み込まれる。内側の管に取りつけたコイルと外側の管のすき間はわずか1mm。外側の管とコイルがこすれて傷がつけば、コイルが断線して使えなくなってしまう。そのため管は寸法通り真円でつくることが求められる。  「金属板を、機械を使って管状にしますが、機械だけでは真円にならないので、ガスバーナーであぶって調整します」  そして、現在は渡部さんにしかできないのがコイル製作だ。61ページの写真のように、軸を回転させる装置を使い、銅線を木の枠に約10mmの幅で四角く何重にも巻いていくのだが、たるみが出ると後で修正できないため、事前に張り具合を調整する。さらに巻き上がったコイルは、管の曲面にあわせて曲げる必要があり、渡部さんが手作業で行っている。いずれも経験と勘が求められる作業だ。 安全性と作業効率を高める自作の装置・治具の数々  渡部さんは子どものころからものづくりが好きで、目覚まし時計を分解して組み立て直したり、古いバイクのエンジンでゴーカートをつくって遊んだりしていたという。こうしてつちかわれたものづくりの力は、仕事にも遺憾なく発揮されている。工場では、溶接をしやすくする装置、タップ(穴の内側にねじを切るための治具)を自動化した装置、高さを変えられる作業台など、渡部さん自作の装置や治具がたくさん使われていた。  「新しい製品づくりを頼まれると、いかに作業を効率よくできるかをまず考えます」と、笑顔で話す渡部さん。そうした一つひとつの工夫が、精緻なものづくりを支えてきたのは間違いない。  「これからも健康に留意して、いつまでも働いてもらいたいです。体力が衰えて自分でつくれなくなっても、現場にいるだけで後輩たちが安心して働けるような存在になってほしいです」と、期待する沼社長に、渡部さんは、「元気なかぎり、働かせてもらえればうれしい」と笑顔で応えた。 株式会社仙崎鐵工所 TEL:044(333)4434 (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) ※ 逆ひずみ……溶接によって生じる変型(溶接ひずみ)を予測して、あらかじめ逆方向に与えるひずみ。逆ひずみを与えておくことで、後からひずみを取る工数を削減できる。 写真のキャプション TIG溶接では、左手に持つ溶接棒を均一の速さで送り出すことで、美しいビードを形成。腕を乗せることで溶接位置を自動で移動できる装置も自作した 製缶業一筋の仙崎鐵工所は今年創業90年を迎える コイルを巻く装置に計数機をつけ、設定した回転数で自動的に止まるように改良 製作過程で雌(め)ネジが詰まることが多いため、電動ドリルを改造して電動タップ(雌ネジを切る工具)を自作 コイルを傷めないよう、絶妙な力加減で曲げる 渡部さんが溶接したパイプの例。ビードの美しさに定評がある パイプの裏側にもきれいなビードを形成 壁にかかっているのは管やコイルの曲がり具合を測る定規 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  今回は言葉のいいかえです。まず、左側の熟語を読んで意味を考え、別の言葉にいいかえてみましょう。語彙力はさまざまな能力のなかでも、歳をとっても伸びる力として知られています。あなたの語彙力を伸ばしてください。 第68回 いいかえ問題 熟語をいいかえて、「穴埋め」で答えてください。 目標 5分 @安堵→あ□□□する A狼狽→う□□□る B揶揄→か□□う C質素→つ□□しい D回顧→ふ□□える E邪推→□□ぐる F杞憂→と□□しぐ□う G必需→□く□はなら□い H怨嗟→うら□な□く I顛末→□ちぶ□じゅ 言語野を活性化させよう  だれかと会話をしているときに、言葉をパッと思い出せなくて、「あれよ、あれ!」なんていうことが増えていませんか?  それは脳の「言語野」の働きが衰えてきたサインかもしれません。言語を理解する側頭葉のウェルニッケ野、言葉を表現するブローカ野、これらをつなぐ弓状束(きゅうじょうそく)の働きが弱まったり、つながりが悪くなると、言葉の流暢性が失われがちです。  しかし、言葉を思い出し表現することをくり返すことで、これらの言語中枢ネットワークの力は保たれます。保たれるだけではなく語彙力が豊富になり、いつまでも伸びるのです。それは人工知能のようなものです。言葉をいいかえる学習を脳内で重ねることで、記憶として定着し、言語野の働きが活発になります。  言葉を使った脳トレ問題を解いて、言語野を活性化させましょう。 【問題の答え】 @あんしんする Aうろたえる Bからかう Cつつましい Dふりかえる Eかんぐる Fとりこしぐろう Gなくてはならない Hうらみなげく Iいちぶしじゅう 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2023年2月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内※ 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 ホームページはこちら ※2022年10月3日より、上記住所へ移転 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 ご応募お待ちしています 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構  当コンテストでは、高年齢者が長い職業人生のなかでつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業などが行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行います。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業などにおける雇用・就業機会の確保等の環境整備に向けて具体的な取組みの普及・促進を図り、生涯現役社会の実現を目ざしていきます。多数のご応募をお待ちしています。 取組内容  働くことを希望する高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことができるようにするために、各企業などが行った雇用管理や職場環境の改善に関する創意工夫の事例を募集します。なお、創意工夫の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者が働きつづけられるための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業単位の応募とします。また、グループ企業単位での応募は不可とします。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度等を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞  2編 特別賞  3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞  若干編 特別賞  若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 詳しい募集内容、応募方法などにつきましては、本誌58〜59ページをご覧ください。 応募締切日 令和5年2月28日(火) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65ページをご覧ください。 2023 2 令和5年2月1日発行(毎月1回1日発行) 第45巻第2号通巻519号 〈発行〉独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 〈発売元〉労働調査会