【表紙2】 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 〜生涯現役社会の実現に向けた〜 地域ワークショップ  高齢者雇用にご関心のある事業主や人事担当者のみなさま!令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法に基づき、高齢者の活躍促進に向けた対応を検討中の方々も多いのではないでしょうか。  JEEDでは各都道府県支部が中心となり、生涯現役社会の実現に向けた「地域ワークショップ」を開催します。事業主や企業の人事担当者などの方々に、高齢者に戦力となってもらい、いきいき働いていただくための情報をご提供します。  各地域の実情をふまえた具体的で実践的な内容ですので、ぜひご参加ください。 概要 日時/場所 高年齢者就業支援月間の10月を中心に各地域で開催 カリキュラム(以下の項目などを組み合わせ、2〜3時間で実施します) 専門家による講演【70歳までの就業機会の確保に向けた具体的な取組など】 事例発表【先進的に取り組む企業の事例紹介】 ディスカッション など 参加費 無料(事前の申込みが必要となります) 開催スケジュール 下記の表をご覧ください(令和5年10月1日現在確定分) ■開催スケジュール 都道府県 開催日 場所 北海道 10月27日(金) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月12日(木) デーリー東北新聞社 岩手 10月26日(木) いわて県民情報交流センター(アイーナ) 宮城 11月10日(金) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 10月19日(木) 秋田県生涯学習センター 山形 10月24日(火) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 10月17日(火) 福島職業能力開発促進センター 茨城 10月20日(金) ホテルレイクビュー水戸 栃木 10月24日(火) とちぎ福祉プラザ 群馬 10月31日(火) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 10月12日(木) さいたま共済会館 千葉 10月11日(水) ホテルポートプラザちば 東京 10月16日(月) 日本橋社会教育会館 神奈川 11月17日(金) かながわ労働プラザ 新潟 10月17日(火) 朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター 富山 10月27日(金) 富山県民会館 石川 10月13日(金) 金沢市異業種研修会館 福井 10月11日(水) 福井県中小企業産業大学校 山梨 10月26日(木) 山梨職業能力開発促進センター 長野 10月17日(火) ホテル信濃路 岐阜 10月17日(火) じゅうろくプラザ 静岡 10月19日(木) 静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」 愛知 10月24日(火) 名古屋市公会堂 三重 10月18日(水) 四日市市文化会館 都道府県 開催日 場所 滋賀 10月30日(月) 滋賀職業能力開発促進センター 京都 10月16日(月) 京都経済センター 大阪 10月12日(木) 大阪府社会保険労務士会館 兵庫 10月26日(木) 兵庫県中央労働センター 奈良 10月27日(金) ホテル・リガーレ春日野 和歌山 10月13日(金) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 10月27日(金) 倉吉未来中心 島根 10月18日(水) 松江合同庁舎 岡山 10月12日(木) 岡山職業能力開発促進センター 広島 10月27日(金) 広島職業能力開発促進センター 山口 10月26日(木) 山口職業能力開発促進センター 徳島 10月19日(木) 徳島県JA会館 香川 10月18日(水) 香川県立文書館 愛媛 10月20日(金) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 10月17日(火) 高知職業能力開発促進センター 福岡 10月25日(水) JR博多シティ 佐賀 10月17日(火) 佐賀市文化会館 長崎 10月26日(木) 長崎県庁 熊本 10月25日(水) くまもと県民交流館 パレア 大分 10月16日(月) トキハ会館 宮崎 10月31日(火) ニューウエルシティ宮崎 鹿児島 10月24日(火) 鹿児島サンロイヤルホテル 沖縄 10月12日(木) 沖縄県労働局 各地域のワークショップの内容は、各都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問い合わせください。 上記日程は予定であり、変更する可能性があります。 変更があった場合は各都道府県支部のホームページでお知らせします。 jeed 生涯現役ワークショップ 検索 北海道、青森、栃木、千葉、神奈川、石川、静岡、大阪、兵庫、奈良、岡山、福岡、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄については、ライブ配信やアーカイブ配信などの動画配信を予定しています。 【P1-4】 Leaders Talk No.101 産業ごとに高齢者活用の課題を共有し経営課題と連動した戦力化が重要になる 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策研究事業本部経済政策部主任研究員 平田薫さん ひらた・かおる 慶應義塾大学大学院商学研究科(計量経済学専攻)前期博士課程修了。雇用・労働政策、労働問題、高齢者雇用などを専門に、多くの調査・研究・執筆実績を持つ。2015(平成27)年より、JEEDの「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」の作成にたずさわる。  高齢者雇用を進めるうえでは、各産業の状況や特性に応じた取組みも求められます。そこで当機構(JEED)では、各産業団体などとの連携のもと、「産業別高齢者雇用推進事業」に取り組んでいます。今回は、同事業の調査などを担当している三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の平田薫さんに、産業ごとに異なる高齢者雇用の実態や展望についてうかがいました。 産業ごとに異なる高齢者活用の実態一方で多くの産業に共通している課題もある ―平田さんは、JEEDの「産業別高齢者雇用推進ガイドライン(以下、「ガイドライン」)」の策定にたずさわっています。産業ごとの高齢者雇用を取り巻く環境や実態について、見解をお聞かせください。 平田 私自身は2015(平成27)年から産業別高齢者雇用推進事業にたずさわり、今年で9年目になります。現在取り組んでいる産業を含めて8団体の調査にかかわりましたが、高齢者雇用の実態は産業ごとに異なりますし、企業によっても異なります。産業・企業が直面している課題も違えば、出口の解決策も違うなど、じつに多様であることに気づかされました。  一方で共通点もあります。例えば、建設現場で重機などの作業機械を使って土木工事を行う機械土工工事業界の場合、取りまとめたガイドラインのなかで高齢者雇用を取り巻く五つの課題をあげており、これはほかの産業に共通する部分も多いと思います。  一つめは経営上の課題。アンケート調査※1によると、経営上の課題のトップ3は、@若年層の採用難、A人材の量的な不足、B人材の高齢化となっています。  二つめの課題は、「働き方改革」への対応です。時間外労働の上限規制の適用開始が建設業にも迫り※2、人手不足のなかでいかに対応していくかという問題が生じています。  三つめが、ICT(情報通信技術)化への対応です。コンピュータ制御によるICT建機も増えており、日常の雇用管理もスマートフォンを使って行うなど、ICT化が進んでいます。若手社員だけではなく高齢社員も現場のICT化に対応していくことが求められています。  四つめは一部の業種に顕著かもしれませんが、パワーハラスメント防止措置の義務化への対応です。2022(令和4)年4月から中小企業においても職場のハラスメント防止対策が義務化されました。建設現場の作業は危険をともなうため、不安全行動などをベテラン社員が強く注意することがあり、それが若い人にパワハラと受け取られる可能性もあります。パワハラ防止措置の義務化に対応しながら、いかにベテランが若手に技能を継承していくかが課題になっています。  五つめが70歳までの就業機会の確保を努力義務とする、改正高年齢者雇用安定法への対応です。  以上が機械土工工事業における高齢者の活躍と若手の確保と定着に関する課題ですが、これらは多くの産業にも共通する課題ではないでしょうか。 ―では、産業ごとの違いとはどのようなものでしょうか。 平田 まずは企業規模の違いです。産業別に行った実態調査によると、機械土工工事業は回答企業の約8割が従業員数100人未満ですが、葬儀業などはさらに規模が小さく、9人以下の企業が49.7%と約半数を占めています。一方、製造業の電子デバイス産業では44.4%が100人未満の企業ですが、1000人以上の企業も13.0%あり、幅があります。  また、社員の高齢化の状況も異なります。機械土工工事業ではすでに60歳以上の人が多く、70歳を過ぎても現役と同じように現場で活躍している高齢社員が多くいます。一方、葬儀業では高齢社員も活躍していますが、60歳を超える正社員の人数がピークになる時期について、「10年以内」または「10年先」と回答した企業がほぼ半々となっており、ピークに達していない企業も多いのです。職業紹介業では、若い企業も多く人材の流動性も高いので、定年に達している人が少なく、「定年のピークは10年後以降」と回答した企業が65.1%もありました。  高齢化の実感がまだ持てない職業紹介業の場合、「いつかは社員の高齢化が始まる」という前提で早めに取り組む必要があることに気づいてもらうのが大きな課題です。逆に、すでに高齢者が活躍している機械土工工事業は、高齢者に活躍してもらうことを、若年者の確保と定着にいかにつなげていくかが課題となっています。また、電子デバイス産業では、調査企業の約4割が役職定年を導入しているという特徴があり、役職を外れた人に、いかに次のステージで活躍してもらうかなどが課題になっています。抱える課題が産業によって異なるので、高齢者の雇用推進の方策も産業ごとに大きく変わってきます。 「使えるスキル#ュ見法」でシニアのスキルと企業のニーズをマッチング ―産業ごとに抱える課題が異なるということは、どのように活躍してもらうのかという出口も異なることになります。それぞれの産業が取り組んでいる高齢者の活躍のパターンとはどういうものでしょうか。 平田 各業界の企業が集まって高齢者雇用推進委員会をつくり、2年間かけて実態調査を行い、産業の実態や課題をふまえ、どのように取り組んでいくかを考えていただき、それをガイドラインとして取りまとめ、業界内で共有します。事業では高齢者が活躍している事例を集め、各企業に活躍イメージを共有してもらうようお示しもします。  職業紹介業のガイドラインでは、活躍するシニアを複数のタイプに分けて紹介しています。例えば、営業の第一線で人脈を活用し新規開拓を行う人、同じ営業でも若手社員と組んで営業ノウハウやスキルを伝える現役世代サポート型、年齢層の高い人の転職相談をになうカウンセラー型、などです。  一方、すでに高齢者が活躍している機械土工工事業では、「いまの若い人には怒ってはいけないのではないか」、「どのように教えたらよいのかわからない」と悩んでいるシニアも多くいます。そこで、職場の対話をうながし、うまく技能を継承できるように、高齢社員と若手社員のコミュニケーションに着目した内容のガイドラインになっています。 ―電子デバイス産業などは、進化が速いイメージがあります。シニアが活躍できる余地もあるのでしょうか。 平田 たしかに技術の進歩が著しい業界ですが、レガシー分野の技術が必要とされる部分もあります。細分化される前の総合的な知識・スキルやものの見方を持つシニアが活躍できる場面もあるのです。  一方で、先ほども触れましたが、元々技術を持っていた人がマネジメント職に変わったものの、役職定年でマネジメント職を外れ、その後、どのように活躍するのかが大きな課題になっていました。そこで、ガイドラインの策定にあたり、直近のキャリアにとどまらず、高齢者がそれまでつちかってきたスキルと会社や職場が必要とするスキルをマッチングさせる「使えるスキル#ュ見法」を提案しました。  これは、会社や職場の課題をリストアップし、そのリストからシニア社員が自分が解決できると思うものを探し、その解決策と根拠を提示。シニア社員の提案をふまえて、その課題解決に必要なスキルや知識をシニア社員が保有しているかを会社が検討することで、使えるスキルを明示化します。一方、不足しているスキルや伸ばすべきスキルについて考えることで、シニア社員が活躍するために必要なことも明らかになります。 シニア社員は知識・スキルのアップデートを会社はシニアの自己啓発・能力開発の支援を ―「使えるスキル#ュ見法」は技術職にかぎらず、事務系シニアや元マネジメント職の活躍にも有効に思えますね。 平田 はい、その通りです。いずれにしても、今後は各企業が勝ち残っていくための経営戦略や、会社や職場の課題解決と高齢者の活躍をどのように結びつけていくか、高齢者を戦力化するという視点が重要になります。これまでは年金支給開始年齢までの収入の支援という側面が少なからずあったと思いますが、企業がいっそう発展していくための生産性向上や新しい商品・サービスの開発に向けた重要な戦力として、高齢者を活用していく流れが強くなっていくでしょう。 ―戦力化するにはリスキリングも必要になりますか。 平田 いままでつちかったスキルや経験のなかで使える要素はあっても、更新が必要であったり、あるいは新たな技術を習得するなどでリスキリングも必要でしょう。ただし、これまで企業は中堅・シニア層の能力開発支援に積極的ではありませんでした。本事業の実態調査では、どの産業においても「シニアに活躍してもらうことにメリットがある」と、ほぼ100%の企業が回答する一方で、「シニアの雇用推進には課題がある」と答えていますが、実際に課題解決のための取組みを実施している会社は非常に少ないのです。シニアに本当に活躍してもらいたいと考えるのであれば、自己啓発支援や能力開発支援がこれからはきわめて重要になると思います。 (インタビュー/溝上憲文 撮影/中岡泰博) ※1 出典:「機械土工工事業における高齢者活用と若者定着に関するアンケート調査(人事担当責任者票)」 ※2 建設業における時間外労働の上限規制は、2024年4月より適用される 「産業別高齢者雇用推進ガイドライン」はこちらからご覧になれますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/enterprise/index.html 【もくじ】 エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト 古瀬 稔(ふるせ・みのる) 2023 October No.527 特集 6 生涯現役で働ける仕組みや環境を整え高齢社員が活き活き働く職場づくりを推進 令和5年度高年齢者活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 7 審査委員長からのメッセージ 東京学芸大学 教育学部 教授 内田 賢 8 最優秀賞 有限会社 小川商店(島根県大田市) 12 優秀賞 社会福祉法人 フェニックス(岐阜県各務原市) 井上機工 株式会社(静岡県富士宮市) 20 特別賞 弥生交通 株式会社(東京都中野区) 株式会社 尾賀亀(滋賀県近江八幡市) 28 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト入賞企業一覧 1 リーダーズトーク No.101 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策研究事業本部 経済政策部 主任研究員 平田 薫さん 産業ごとに高齢者活用の課題を共有し経営課題と連動した戦力化が重要になる 30 江戸から東京へ 第131回 足利最後の将軍を見送る 真木嶋昭光(三) 作家 童門冬二 32 高齢者の職場探訪 北から、南から 第136回 長崎県 株式会社かとりストアー 36 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第86回 吉本興業株式会社 お笑い芸人 ピン芸人 おばあちゃん(76歳) 38 シニア社員のための「ジョブ型」賃金制度のつくり方 【最終回】 65歳定年延長とジョブ型賃金(まとめ) 菊谷 寛之 42 知っておきたい労働法Q&A《第65回》 年次有給休暇に対する時季変更、労働条件通知書の記載事項変更と定年後再雇用対応 家永 勲 46 スタートアップ×シニア人材奮闘記 【第5回】 多様なシニア人材をさらに受け入れ企業風土を形づくる 熊谷悠哉 48 いまさら聞けない人事用語辞典 第39回 「両立支援」 吉岡利之 50 日本史にみる長寿食 vol.359 猿酒こそ不老長寿の大ヒント 永山久夫 51 心に残る“あの作品”の高齢者 【第5回】 小説『真理先生』(著/武者小路実篤 1952年) 株式会社シニアジョブ 広報部部長 安彦守人 52 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 54 JEEDのご案内 55 70歳雇用推進プランナー 高年齢者雇用アドバイザーのご案内 56 BOOKS 58 ニュース ファイル 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.332 職人のこだわりが生んだ丈夫で品格のあるランドセル ランドセル職人 土屋國男さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第76回] サイコロ計算 篠原菊紀 【P6】 特集 生涯現役で働ける仕組みや環境を整え高齢社員が活き活き働く職場づくりを推進 令和5年度 高年齢者 活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、厚生労働省との共催で、「高年齢者活躍企業コンテスト」を毎年開催しています。本コンテストは、高齢者が年齢にかかわりなく生涯現役で活き活き働くために、人事制度の改定や職場環境の改善などに、創意工夫をして取り組む企業を表彰するものです。 令和5年度は、厚生労働大臣表彰5編、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞6編、特別賞15編の受賞が決まりました。 本誌では、10月号と11月号の2回に分けて、コンテストの表彰受賞企業事例を特集します。 今号では、厚生労働大臣表彰受賞企業事例をご紹介します。 【P7】 審査委員長からのメッセージ 職場環境の整備や新たな職域の創出により高齢者が働き活躍できる職場を実現 東京学芸大学教育学部教授 内田(うちだ)賢(まさる)  「令和5年度高年齢者活躍企業コンテスト」の審査が終了いたしました。審査委員を代表し、応募いただいたすべての企業・団体関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。今回は全国から63編の応募を受け、厳正な審査の結果、厚生労働大臣表彰は、最優秀賞1編、優秀賞2編、特別賞2編、また、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰は、優秀賞6編、特別賞15編が入賞を果たしました。  最優秀賞の有限会社小川(おがわ)商店(しょうてん)は、石油・食品小売・運輸事業を中心に事業を多角的に展開。地元企業や自治体とも連携し、地域のインフラを支える人材として、多くの高齢社員がやりがいを持って活躍しています。社員の高齢化や若手人材の採用難が続くなか、JEEDの企画立案サービスを活用し、定年年齢の引上げ、再雇用後の賃金見直しを実施し、高齢社員が長く働ける職場環境を整備していることが高く評価されました。  優秀賞を受賞した社会福祉法人フェニックスは、高齢職員のみならず、あらゆる世代にとって働きやすい職場環境づくりに努めています。また、介護助手という新たな職務を創出することによって、介護業務の機能分化と質の向上を図るとともに、高齢者の就労機会を提供していることも高評価を受けました。  同じく優秀賞を受賞した井上(いのうえ)機工(きこう)株式会社は、高齢社員を重要な戦力と考え、年齢にかかわらず働き続けるための職場環境整備に注力。また、他社を定年退職した高齢者を採用し、それまで外注していた作業の内製化を実現するなど、高齢社員の持つ技術、知識、経験を最大限に活用していることが高く評価されての受賞となりました。  特別賞を受賞した弥生(やよい)交通(こうつう)株式会社は、充実した研修の実施や接客接遇マニュアルの作成などにより高齢社員の活躍をうながすための取組みに注力。さらに、加齢による心身機能の変化をふまえた対策により、高齢ドライバーによる交通事故防止の徹底を図っていることなどが評価のポイントとなりました。  同じく特別賞受賞の株式会社尾賀亀(おがかめ)は、高齢社員の年齢に応じて3段階の短時間勤務制度を設けるなど、高齢社員の健康状態を考慮して勤務できる仕組みを導入しています。そのほか、高齢社員にも人事評価を行い、処遇に反映させるなど、高齢社員のモチベーションアップにつなげる取組みなどが評価されました。  今年の審査では、慢性的に人手が足りていない業界、あるいは人口が減少している地域において、高齢者を活用するとともに、長く働ける仕組みを整備している企業の取組みが目立ちました。最優秀賞を受賞した有限会社小川商店のように、地域で生活をする高齢者が、地域のインフラを守るための貴重な戦力となっている事例は、同じような課題を抱えている地域にとって、大きな励みになるのではないでしょうか。  高齢者が働きやすい仕組みをつくることは、ほかの社員にとっても働きやすいことを意味しています。受賞企業の取組みを参考に、高齢者を含むすべての社員が働きやすい職場づくりに取り組んでいただきたいと思います。 【P8-11】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 社員ファーストを合言葉に生涯現役で活躍できる職場を実現 有限会社 小川商店(島根県大田(おおだ)市) 企業プロフィール 有限会社 小川商店 (島根県大田市) 創業 1688(元禄元)年 業種 石油・食品小売、運輸、自動車整備 社員数 72人(2023年1月20日現在) 60歳以上 26人 (内訳)60〜64歳 13人(18.1%) 65〜69歳 8人(11.1%) 70歳以上 5人(6.9%) 定年・継続雇用制度 定年66歳。定年後は基準を設けて70歳まで、その後も基準を設けて75歳まで継続雇用。以降も運用により一定条件で年齢の上限なく継続雇用。現在の最高年齢者は76歳 T 本事例のポイント  有限会社小川商店は、1688(元禄元)年に島根県大田市温泉津町(ゆのつまち)で創業。以来335年という歴史を重ねてきた。古い記録によれば、かつては廻船問屋、宿場、木材問屋、底引き船団など、さまざまな“商い”を行っていたという。現在は、運送業務のほか、ガソリンスタンド、スーパーマーケット、飲食店などの事業を多角的に展開し、地域を支えるインフラ事業のにない手として不可欠な存在となっている。  地域の人口減少などの影響から、若手の採用は年々困難さを増していることに加え、社員の高齢化が進行しており、特に事業全体の中核である運送部門においては、その傾向が顕著となっていた。そこで同社では、経験を積んだ高齢社員が長く働ける雇用環境の整備を喫緊の課題として、高齢社員が活躍できる職場環境づくりを推進してきた。 POINT @(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の企画立案サービス※を活用し、定年年齢の引上げとあわせて、再雇用後の賃金の見直しを図った。 A地域のニーズに応じた多角的な経営を行うことで、高齢社員の雇用の場を創出するだけでなく、若手も含め、年齢にかかわりなく自発的・自律的に働くことが組織風土として浸透している。 B経験豊富な高齢社員と若手社員をペアで就労させ、ベテランの技術と経験の継承に取り組んでいる。 C輸送の安全確保に積極的に取り組んでいる安全性優良事業所(Gマーク)の認定を受け、安全ミーティングや朝礼などを通じて、安全運転や安全作業、法令遵守の徹底、運送部門や石油部門のドライバーに対する安全教育の徹底に努めている。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1688年に、温泉津町にて創業。当時の屋号は「たばこや」で、廻船問屋、宿場、木材問屋、底引き船団などに従事していた記録が残っている。1965(昭和40)年2月に、有限会社小川商店を設立すると、小売・雑貨店から始まり、砂利、砕石、石州瓦業(せきしゅうがわらぎょう)用粘土などの運搬、石油製品の販売へと業容を拡大。さらに、1990(平成2)年からは不動産事業にも着手し、貸しビルやマンション経営、2004年からは飲食事業もスタートさせた。事業の多角化により、すべての社員がやりたいことを実現でき、個々の能力を発揮できる場を提供するとともに、地域のインフラを支えるサービスの提供を通じて、お客さま・社員・会社・地域の4者の満足を追求し続けている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  地域の人口減少、過疎化と並行して同社でも社員の高齢化が進んでおり、10年ほど前から、特に事業の中核である運送部門において高齢化が顕著に進んでいた。現在、60歳以上の社員は全社員の36.1%に達しており、そのほとんどが運送部門に所属している。70歳以上の社員は5人で、最高年齢者は76歳。社員の高齢化と並行して、地域のスクールバスの運行やゴミ収集事業を同社が承継するという経営上の課題も浮上し、地域で役に立ち続ける会社であるために、高齢社員が長く働き続けることのできる環境整備が必要な状況となっていた。 W 改善内容 (1)制度に関する改善 ▼定年年齢の見直し  2015年にJEEDの「企画立案サービス」を活用し、再雇用後の賃金制度を含めた高齢者雇用制度の見直しに着手。2017年に定年を60歳から66歳に引き上げた。さらに、2021(令和3)年には、それまで就業規則に明文化していなかった再雇用制度を整備し、70歳までの継続雇用についてその基準を定めた。今後は、70歳定年制の導入、または定年制の廃止を視野に入れている。  現在の最高年齢社員は76歳である。また、2022年まで勤務していた75歳のクレーンオペレーターは、現在も、特定の取引先からその技術を請われて仕事の依頼があり、スポット的な業務委託で行っている。 ▼賃金制度の改定と評価制度の導入  定年年齢の引上げにともない、2018年に再雇用後の賃金制度を見直した。年齢給と職務給を導入し、職務給は従事する業務内容によって賃金を決定している。これにより社員の納得性が高まるとともに、会社が求める人材像と期待する成果が明確になったことで、社員のモチベーションが向上した。あわせて評価シートによる評価制度も導入しており、年に1回、本人と部門長で人事評価を行っている。ただし、同社は運搬作業など「仕事がシンプルである」ために、人事評価によって給与や賞与の査定を行うというよりも、自発性をうながし、現在の心身の状態に適した職務を判断する際の指標となっている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼業務のスピード感を重視し、自発的な人材づくりの方針が生む好循環  トラックによる運搬作業は、前日に仕事内容が決まることがほとんどであることなどを背景として、社員の年齢にかかわらず、同社では「業務のスピード感」を非常に重視している。意思決定のスピードアップのため、現場のマネージャーへの権限移譲を進めており、改善に経費が発生するものについては、30万円まで現場決裁が可能。スピーディーな改善とともに、社員のモチベーション向上にもつながっており、次の積極的な改善提案を生み出す好循環が生まれている。  部門長には社員との積極的なコミュニケーションの推進を徹底するとともに、部門長だけではなく、社長に直接、業務改善の提案をメールで届けることもできる。 ▼高齢社員に働きがいを提供  事業の多角化が、高齢者を含む多様な労働者の就労機会の創出につながっている。同社ではスクールバスの運行業務や不燃ゴミ・リサイクルゴミの収集運搬業務など、地域の日常生活を維持するサポート業務を受託しており、地域のインフラを支えるうえで不可欠な存在となっている。運送部門の社員が、加齢により大型車両の運転が困難になった際には、スクールバスの運転へと職務を転換することで、高齢社員の活躍の場を創出している。また、高齢社員が地域児童との触合いや、ペア就労による若手への指導役もになうなど、高齢社員の意欲の向上や働きがいの提供につなげている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼安全管理と健康管理  全社的な取組みとして安全衛生委員会を定期開催していることに加え、運輸部門では月1回の安全ミーティングや、毎日の部署ごとの朝礼を行うなかで、各ドライバーに安全意識の啓蒙を図っている。朝礼では、ヒヤリハットの事例を共有し、特にタイヤ交換に関する安全対策を徹底しており、脱輪などの事故事例などを詳しく紹介し、安全意識を浸透させるよう心がけている。石油部門では、朝礼のほか配達ドライバーによるミーティングを通して、安全運転や安全作業の徹底に努めている。  さらに、運輸部門ではドライバー適性診断を行い、自動車の運転に関する長所や短所といった「運転のクセ」を測定し、それぞれのクセに応じたアドバイスを行うことで、交通事故防止に活用しているほか、バイオリズムテストを行って体調の変化があった際などには注意をうながしている。  また、法定健康診断の受診とともに、健康状態に不安のある者に対する部門責任者からのフォローを徹底しているほか、インフルエンザワクチン接種費用の全額会社負担や、改善提案制度で要望があった、通院や家族の送り迎えのための時間休・半日休暇制度を実現している。 (4)その他の取組み  毎月開催するマネージャー会議では、事業運営方針の進捗状況の確認を行うだけではなく、社会や経済の情勢を自社との関係においてキャッチアップして議論することに取り組んでおり、この積み重ねが組織内に自発性と自律性を生んでいる。  地域貢献活動にも積極的に取り組んでいる同社では、業務上での地域とのつながりのほか、地域行事や学校行事には積極的に協賛・参加しており、地域行事の際は会場周辺の除草作業も行っている。  また、近隣の出雲(いずも)市の大雨災害時には、他社に先駆けて、交代制でトラック20台を三日三晩休まず動かし続けて災害救助支援に尽力した。地域への貢献は社員の誇りにもなり、地域からの同社に対する信頼が日々の業務のモチベーション向上につながっている。 (5)高齢社員の声  運送部門で働く花田(はなだ)和巳(かずみ)さん(73歳)は、仕事について次のように話す。  「仕事の内容はどこの運送会社で働いても同じようなものだと思いますが、小川商店は自由度が高く、家業の農作業と兼業できるのでとてもありがたいです。また、若手社員ともワイワイいいながら和気あいあいと仕事ができる雰囲気があります。私たちのように年をとって力仕事がむずかしくなっても、ゴミ回収やスクールバスの運転などさまざまな仕事があるおかげで、長く仕事にたずさわることができ、地域に役立っている実感も得られています。日々やりがいを感じながら働けることに感謝しています。健康に気をつけながら気力の続くかぎり仕事を続けたいです」  同じく運送部門で働く森岡(もりおか)耕二(こうじ)さん(71歳)は、「小川商店は本当に働きやすい職場です。特にうれしいのは、運送の仕事と家の農業の両輪で働かせてもらえることです。仕事をしながら農業にも従事させてもらうことができ、とても助かっています。また、運送の仕事だけでなく、ゴミ回収やスクールバスなど多岐にわたる仕事の選択肢があることもありがたいことです。高齢になっても、自分の体力や気力に合わせて働くことができるので、自分の可能性を広げながら、充実した日々を過ごせることに感謝しています」と笑顔で話す。 (6)今後の課題  今後は、定年年齢の70歳への引上げ、または定年制の廃止について検討していくとともに、新規事業を立ち上げる際の要員として、高齢社員の活用を考えている。同社では2021年より、クラシックカーを再生し販売する事業を開始しており、「クルマ好き」の石油部門の元部長が、その知識を活かして活躍している。社員が「好きなこと」と「できること」を業務に結びつけ、その能力を最大限に発揮できる職場の実現を模索していく考えだ。  そのほか、大型トラックや移動式クレーンなど、特殊な操作が要求される大型車両について、職人気質なドライバーが持つノウハウを若手へ継承していくため、「動画によるアーカイブ化」などにも取り組む予定だ。  創業335年という重厚な歴史に支えられながら、同社の目線はつねに時代の一歩先を見つめている。 ※ 企画立案サービス……高年齢者等の雇用管理改善や生涯現役社会の実現に取り組む事業主などに対して、高年齢者雇用アドバイザーおよび70歳雇用推進プランナーによる相談・助言の過程で発見された個別課題について、必要な条件整備(人事管理制度の整備、賃金・退職金制度の整備、職場改善・職域開発など)のための具体的な改善案を作成し提供するサービス 写真のキャプション 有限会社小川商店がY-LABと共同運営管理する温泉津ふれあい館 簡易宿泊施設を併設する「ライダーズハウス」は、社員からの提案とスピーディーな意思決定により生まれた 同社が運営するガソリンスタンド。地域にとって欠かせないインフラの一つ 運送部門の花田和巳さん(73歳) 運送部門の森岡耕二さん(71歳) 【P12-15】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 新たな職務の創出で高齢者に就労機会を提供しだれもが活躍できる職場環境を実現 社会福祉法人 フェニックス(岐阜県各務原(かかみがはら)市) 企業プロフィール 社会福祉法人 フェニックス (岐阜県各務原市) 創業 2000(平成12)年 業種 社会福祉・介護 職員数 193人(2023年4月1日現在) 60歳以上 59人 (内訳) 60〜64歳 18人(9.3%) 65〜69歳 14人(7.3%) 70歳以上 27人(14.0%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員70歳まで再雇用、以降も基準を設けて年齢上限なく継続雇用。現在の最高年齢者は81歳 T 本事例のポイント  社会福祉法人フェニックスは、2000(平成12)年に岐阜県各務原市で創業。グループの理念(クレド)「フェニックスウェイ」を掲げ、「スタッフおよびその家族は大切なファミリーであり、私たちの財産」であるとして、「スタッフの持てる力が充分発揮できるよう全力で応援・支援」している。この理念に基づいて、2015年から「ダイバーシティ型人財育成・活躍プロジェクト」を立ち上げ、職員のライフスタイル、ライフステージに合わせた柔軟で多様な勤務制度を整えているほか、事業所内保育所の設置など、高齢職員のみならず、あらゆる世代にとって働きやすい職場環境づくりに努めている。 POINT @「介護助手」という新たな職務を創出することにより、介護業務の機能分化と質の向上を図るとともに、高齢職員に就労機会を提供している。 A介護ロボットや介護補助機器を積極的に取り入れ、負担の少ない介護の現場の実現を目ざしている。 B在宅勤務やフレックスタイム制を採用し、就労意欲の向上を図るとともに、ワーク・ライフ・バランスの調和を図っている。 C内部監査と業務改善、職場のコミュニケーションを兼ねた月1回の部署間の相互訪問により、風通しのよい職場環境づくりに取り組んでいる。 U 企業の沿革・事業内容  同法人は1988(昭和63)年に有床診療所を開設以来、岐阜県各務原市を拠点として、地域ぐるみで「自立支援」と「リハビリテーション」に力を注ぎ、2000年に「社会福祉法人フェニックス」を設立。特定医療法人などを含むフェニックス・グループは、現在29の事業所で約540人の職員が働いている。近年は「スタッフよし、ご利用者よし、地域よしの“三方良し”」を経営方針として、ダイバーシティ型人財確保・育成・定着の仕組みをつくり、だれもが気持ちよく働き続けられる職場環境はもとより、利用者や地域の方々が元気に暮らし続けられるまちづくりに、グループをあげてチャレンジしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  10年前まではグループ全体で毎年10人程度の人財を採用していたが、ここ数年、若手の採用がむずかしくなってきており、職員の高齢化が進みつつあった。現在193人の職員のうち、60歳以上は約30%を占めており、最高齢の81歳の職員は環境整備や施設の清掃業務を元気にこなしている。職員の多くは地元出身者で、「地域に貢献したい」という思いが共通のものとなっている。  介護の仕事はハードであることから、介護労働者の離職率は14.3%といわれているが※、同法人では離職率10%未満を目標に掲げている。そのためにも、子育て支援・孫育て支援をはじめとした福利厚生を充実させているほか、再雇用制度の見直しを実施した。  定年後のシニア層も含めた多様な「人財」が活躍できることを目ざして、さまざま環境整備に取り組んでいる。 W 改善内容 (1)制度に関する改善 ▼定年、継続雇用制度  希望者全員70歳まで再雇用することを就業規則に定めている。さらに、70歳以降も、基準を設けて、年齢の上限なく継続雇用することとしている。また、2024(令和6)年4月からの65歳定年制の導入に向けた準備を進めている。 ▼賃金・人事評価など  仕事の内容は、定年の前後で特に変わることなく、60歳定年後も、60歳到達時の基本給を据え置いている(60歳到達まで、年齢給としての切り下げは行っていない)。定年後の賞与は、正職員の75%としている。  なお、定年後再雇用の職員については、プレッシャーなく働いてもらいたいことから、目標管理などの人事評価は行っていない。 ▼在宅勤務、フレックスタイム制の採用  ケアマネジャーなどキャリアの長いベテラン職員が多く在籍する(12人中60歳以上6人)相談部門(フェニックス在宅相談センター)では、在宅勤務を認めるとともに、フレックスタイム制を採用している。一人ひとりの生活に合わせた働き方、労働時間を自ら選択できることで、職員のモチベーション向上につながっている。 (2)意欲・能力向上のための取組み ▼介護助手制度の導入  介護業務の機能分化と質の向上、高齢職員の就労と生きがいづくりを目的とし、「介護助手」制度を導入した。  これは、2017年に立ち上げたプロジェクトで、介護業務のうち、専門知識・技術の必要性の有無や程度、それぞれの業務が発生する場面、時間帯などを現場スタッフ全員で整理して、介護の周辺業務の切り出しを行い、「介護助手」に任せることのできる仕事・役割・責任を明確化。その後、職場内のカンファレンス、研修などを重ねて職員の理解を得て職場の受入れ体制を整備し、高齢職員を対象とした「介護助手お仕事相談会」の開催などを経て、2019年8月に介護助手を採用。現在、7人の中高年職員が介護助手として働いている。  岐阜県が介護助手の普及促進のために実施した事業において、同法人のマニュアルが応用されるなど、同法人のノウハウが県内に広く展開されている。 ▼ダイバーシティ型人財育成・活躍の職場風土づくり  2015年より「ダイバーシティ型人財育成・活躍」をキーワードに、新たな組織づくりに取り組んでいる。取組みの一環として開催している「ライフデザインセミナー」では、結婚や妊娠、親の介護やダブルケア、年金のことなど、自身の大きな分岐点となるライフイベントへの理解を深めてもらうとともに、困ったときの相互協力に向けた職場風土の改善、職員の意識改革につなげる機会としている。 ▼業務のマニュアル化と職場の整理整頓  ダイバーシティ型人財育成・活躍の一環として、業務の見える化、標準化に取り組んでいる。年齢や職種、経験の有無にかかわらず理解しやすいマニュアル、ルールをベテラン職員のアドバイスのもとで随時更新。だれもが働きやすい環境がつねに整えられているかを確認するため、「環境整備チェックシート(20項目)」を作成し、月に1回、内部監査を各部署相互に行っている。この「環境整備」の取組みでは、四つの事業所エリアごとに役職者と現場スタッフから構成される約6人の「チーム」を設け、4チームが毎月1回、ほかのエリアを互いに訪問している。そこではさまざまな業務の改善提案がなされ、多くの場合チームの責任者が、その場で対応を決めることができる。内部監査と業務改善、職場コミュニケーションを兼ねたものとなっており、同法人で重視している取組みの一つである。 ▼中高年職員を対象とした教育訓練、キャリア支援の実施  中高年からのキャリア支援として、介護福祉士の受験資格が得られる介護福祉士実務者研修および介護福祉士対策講座を毎年実施し、これまでに中高年職員16人が受講している。また、ベテラン専門職のより長期的な就労に向けたキャリア形成支援として、ケアマネージャー受験対策講座を毎年実施している。 ▼スーパーバイザー制度の導入  管理職の経験があり、特に管理・指導能力に優れた高齢職員を「スーパーバイザー」に任命。直属の上司や管理職とは違う立場で気軽に相談にのってもらえる存在であり、若手リーダー層からの信頼は厚い。スーパーバイザー本人にとっても、管理職という立場から離れて後進育成にかかわることがモチベーションアップにつながっている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼介護ロボットや介護補助機器の導入  介護業務の体力負担軽減のため、各施設で介護ロボット・介護補助機器を導入している。利用者の見守り支援システムの導入は、夜間の転倒防止のために頻回な見守りをするスタッフの心身負担軽減につながったと同時に、眠りの状況をモニターしケアプランに反映させることで、ケアの質向上にもつながり、職員から高く評価されている。 ▼職員の健康管理支援  同法人では、提携医療機関への受診費用として、毎月上限5000円を補助している。また、メンタルヘルス支援として、外部の社会保険労務士への個別相談窓口を設けている。さらに、希望に応じて健康相談員(産業医、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、管理栄養士等)が随時、健康に対する不安などの相談に乗っている。  そのほか、必要に応じて健康指導、運動指導、栄養指導を実施しているほか、感染症への対策として無料でのインフルエンザ予防接種、希望により肺炎球菌ワクチン接種などを推奨している。 ▼孫のための託児サービスの充実  孫の世話をする高齢職員のために、グループ内託児所(企業主導型保育施設)および学童保育を低廉な費用(1時間150円)で利用できるようにしている。家庭の事情で孫を預かる場合にも安心して働くことができると好評で、定期的に利用している高齢職員も多い。 (4)その他の取組み  同法人で運営する二つの事業所内保育所について、職員には「託児サービス利用料のポイント制」を適用している。資格の有無や、土日・祝日勤務などでポイントを加算。高ポイントの職員ほど託児サービス利用料の自己負担額が低くなるという仕組みを設けている。  また、全職員に地元の提携店舗で使える法人オリジナルのギフトカードを誕生月に贈呈し、職員の福利厚生だけでなく、地域社会への貢献にも寄与している。  さらに、前述の通りダイバーシティ型人財育成・活躍の職場風土づくりとして、若手30〜40人を対象に「ライフデザインセミナー」を開催しているが、これらの「ダイバーシティ」、「地域共生」の理念に基づいた多彩な取組みにより、2011年には「第1回岐阜県子育て支援エクセレント企業(現『岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業)』」に選定。2013年には内閣府「子どもと家族・若者応援団表彰」で「内閣総理大臣表彰」の表彰を受けた。 (5)高齢職員の声  最高齢職員の後藤きみ子さん(81歳)は、特別養護老人ホームで入居者の居住スペースの清掃などを担当。週4〜5回の半日勤務をこなしており、「この職場に来ると、みんなに会えて楽しい。元気をもらっています」と話す。 (6)今後の課題  同法人では、2015年にスタートした「ダイバーシティ型人財育成・活躍プロジェクト」を、さらに内容を深めながら取組みを進めるという。これまでの取組み・経験から、高齢職員にとって働きやすい職場環境は、障害のある職員や外国籍の職員など、だれもが働きやすい職場環境だということがわかっており、環境・設備を整えるだけでなく、職場における各種制度の運用・表示ルールをできるだけシンプルに、わかりやすく可視化し、職員全員が理解できることを目ざしていくという。なによりも、年齢や性別、国籍、文化的背景、個人の特性など、スタッフが互いの違いを尊重し合い、それぞれの立場を思いやり、支え合いながらチーム全体としてサービスの質の向上を目ざす、いわば共生型人材育成・組織マネジメントのあり方を模索しながら、実践していきたいと考えている。グループの理念「フェニックスウェイ」を掲げ、グループ総力で新たな高みを目ざしていく。 ※ 公益財団法人介護労働安定センター「令和4年度『介護労働実態調査』」より 写真のキャプション 社会福祉法人フェニックスが運営する特別養護老人ホーム「メゾン ペイネ」 負担を軽減する介護補助機器の床走行リフト 介護助手として活躍している板津(いたづ)規矩子(きくこ)さん(75歳) 特別養護老人ホームで働く、最高齢の後藤きみ子さん(81歳) 【P16-19】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 高齢社員を戦力として活用し生涯現役で働ける職場づくりを推進 井上機工 株式会社(静岡県富士宮(ふじのみや)市) 企業プロフィール 井上機工 株式会社 (静岡県富士宮市) 創業 1966(昭和41)年 業種 空調用配管部品の製造(電気機械器具製造業) 社員数 197人(2023年4月1日現在) 60歳以上 67人 (内訳) 60〜64歳 11人(5.6%) 65〜69歳 18人(9.1%) 70歳以上 38人(19.3%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員65歳まで再雇用、その後基準を設けて70歳まで継続雇用。以降も運用により一定条件で年齢上限なく継続雇用。現在の最高年齢者は83歳 T 本事例のポイント  井上機工株式会社は、1966(昭和41)年静岡県富士宮市で創業。熱交換器用パイプ加工事業からスタートし、空調機器などの電気部品組立てなど、徐々に業容を拡大し、現在は家庭用・業務用エアコンをはじめとするさまざまな空調機器に、同社の製品が使用されている。  同社では、年齢にかかわりなく働くことができる環境を整備しており、70歳以上の社員も多く在籍している。高齢社員を戦力としてとらえるとともに、働く側のニーズに応じて短時間勤務や短日勤務などを積極的に取り入れ、働きやすい職場づくりを推進。こうした工夫は、高齢社員はもとより働く若手社員にも好評であり、女性社員の積極的な活用(58人〈全社員の約30%〉)にも力を入れるなど、だれもが活き活きと働ける職場づくりに取り組んでいる。 POINT @経験豊富な高齢社員を貴重な人材と位置づけ、他社の定年退職者、早期退職者を中途採用し、その経験や技術を最大限に活用。旧型機械を稼働できるようになり、それまで外注していた治具製作の内製化へのシフトチェンジに成功した。コスト削減と、内製化による短納期を実現し、生産性の向上につながった。 A年齢にかかわらず働き続けられるよう、職場環境や就業形態に最大限に配慮し、通院や介護など、個別の事情を抱える高齢社員のニーズに合わせ、柔軟に対応している。 B年齢にかかわらず、業務の貢献度に応じて評価し処遇に反映。社員のモチベーションの向上につながっている。 C安全対策に高齢社員の経験を活用。衛生管理者の資格保持者のなかには70歳のベテラン社員もおり、衛生管理者としての経験やノウハウが若手に伝承されている。 U 企業の沿革・事業内容  1966年創業の同社は、熱交換器用パイプ加工事業からスタートし、1974年に有限会社井上機工を設立。1979年に株式会社に組織変更を行い、近年は省エネ技術の研究開発にも取り組むなど、着々と業容を拡大し、現在は空調機配管部品、給湯器配管部品、列車用熱交換器配管部品を製造している。特にエアコンや鉄道車両向け熱交換器(ヒートパイプ)に使用される銅パイプ加工を得意とし、家庭用・業務用エアコンをはじめとする空調機器などに同社の製品が使用されており、日常生活において、同社の製品に触れる機会は多いと思われる。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  現在、同社の60歳以上の社員比率は34%で、製造部門を中心に67人の高齢社員が各職場で活躍している。希望者全員65歳までの再雇用、その後基準を設けて70歳まで継続雇用することを就業規則に明記。以降も運用により一定条件のもと、年齢の上限なく継続雇用しているため、生涯現役で働くことも可能となっている。  70歳以上の高齢社員は38人で、全社員の20%弱を占める。これは、若年者の採用および定着率が低かったことから、いち早く高齢者の活用に着目し、2013(平成25)年以降、他社の定年退職者や早期退職者を中途採用者として多く受け入れたためであり、前職の経験やスキルを発揮している。最高年齢の83歳の社員はパイプの手曲げ加工に従事し、経験を要する重要な役割をになっている。 W 改善内容 (1)制度に関する改善 ▼定年、継続雇用制度  定年60歳、希望者全員65歳まで再雇用し、65歳以降は基準を設け有期フルタイマー、あるいは有期パートタイマーとして再雇用する。65歳以降は能力、担当する仕事の比重、生活スタイルおよび健康診断の状況に応じ、希望をふまえたうえで雇用形態を個々に設定し、会社貢献度、スキルに応じて処遇が決定される。さらに70歳以降も、業務に差支えがないかぎり、年齢上限なく働くことが可能となっており、他社を定年退職した中途採用者の受入れも多い。現在、多くの高齢社員が働き活躍していることから、定年延長を検討している。 ▼賃金制度  再雇用者の賃金制度には月給制、日給月給制、時給制があり、再雇用時の面談にて、働く側の希望に応じて業務内容や役割も含め勤務形態を決定し、各人の貢献度、スキル保有状況に応じて、給与形態を決定する。以前、有期雇用者はすべて同じ時給額であったが、現在は評価により金額が決定されることで、モチベーションの維持・向上を図り、自己研鑽をうながしている。 ▼中途採用者  同社は高齢者を含め中途採用者を数多く受け入れているが、入社前に職場見学をしてもらうことが定着率の高さにつながっている。実際に仕事内容を見ることで、本人からそれまでの経験や保有資格に応じ、できることを提案されることも多く、適性に応じた配置が可能になっている。  また、高齢社員が活き活き働いている姿を見て、「年齢にかかわりなく自分らしく働ける職場である」という認識が生まれ、さらに定着率が高まるという好循環につながっている。 ▼ワークシェアリングによる多様な勤務形態の実現  同社では65歳以上の社員は、それぞれの希望する働き方を考慮し、多様な勤務形態を可能にしている。例えば、通院するために4時間勤務を希望するケースなどの場合、午前4時間勤務者と午後4時間勤務者の二人で一人分として働いてもらっているほか、5・5時間の勤務時間を希望する者が一定数いる場合は、5・5時間勤務の製造ラインを結成するなど、柔軟に対応している。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼面談実施と5段階評価制度  全社員を対象とした評価制度があり、正社員は上長と役職者、非正規社員は上長による面談をふまえて評価され、時給や手当に反映しているほか、功績が高い社員には表彰を行っている。定年後再雇用の社員に対しても、責任のある仕事を任せることでモチベーションの低下を防いでいる。また、再雇用の社員のおもな業務内容として「後進の育成」を就業規則に定めており、メンターとして生きがいを持って、日々、後輩の指導にあたっている。 ▼高齢社員の呼称  元役職者や高い技術を持った高齢社員には、「アドバイザー」、「シニアアドバイザー」の呼称を与え、部下育成に注力してもらっている。同時に現場の管理に追われる上長のサポート役もになっている。 ▼ペア就労による技術の伝承  ろう付けなど、高い技術・技能を要する業務は、高齢社員と若手社員がペアとなり、一緒に作業を行うことで、技術や技能の継承を図っている。 ▼表彰制度  全社員を対象に、品質、安全、環境に関する標語を募集し表彰しているほか、品質改善提案制度、永年勤続に対する表彰制度などを設け、一時金や記念品などを授与している。品質不良などの発見や、生産性向上のための改善提案など、表彰内容によっては処遇に反映する場合もある。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼健康への配慮  高齢者が多い職場であるため、作業前の体調確認のほか、普段から社員の体調について話を聞くなど、日ごろの確認を徹底している。また、社員間のコミュニケーションが円滑であることから、社員間で体調不良者に気づくなど、事故や病気の未然防止につなげている。 ▼作業環境の改善  高齢者や障害者は、体温調節がむずかしい場合や、体調の変化に気づかないことがあるため、空調設備を整えるとともに、熱中症予防のためWBGT(暑さ指数)指数計を各職場に設置している。また、立ち仕事が基本であるため、疲労軽減マットの活用や、加齢により立ち仕事が困難になった高齢社員、下肢に障害のある社員については、作業姿勢を見直し、座ったままで作業が可能なように改善した。なお、座り作業時にキャスターが滑りやすい状態であったため、すべてブレーキつきのキャスターに変更するなど、状況に応じた対応を行っている。  そのほか、照度不足で手元を見ようとすることによる姿勢の悪化を原因とする腰痛の予防、眼精疲労対策のため、職場照明をLEDに変更するとともに、電気代のコストダウンを実現している。 ▼安全衛生  中途採用者で衛生管理者の資格を持つ高齢社員が、それまでの経験や知識を発揮し、車両や機械との衝突事故やつまずきによる転倒を防止するため、広い通路の確保、階段への手すり・滑り止めの設置など、各所に工夫をしている。  また、毎日のラジオ体操をはじめ、月1回行われる安全衛生委員会では、各職場から代表者を一人ずつ選出し、各職場の問題点を議題に検討し、解決を図っている。 ▼IT化へのフォロー  年末調整の電子化、給与明細のウェブ化を行った際、スマートフォンを持っていない高齢社員に対して勉強会を開催するなど、だれもがIT化に対応できるよう支援を行っている。 ▼福利厚生  高齢社員が多い職場であるため、連絡事項については、スマートフォンなどの電子機器ではなく、掲示板を活用している。  また、「フレッシュ広場」という休憩所を設け、ワンコインで購入できる自動販売機を設置しているほか、夏場のシャワーミストの導入など、年間を通して快適に休憩できる環境を整備。社員間のコミュニケーションの活性化につながっている。 (4)高齢社員の声  アドバイザーとして活躍している渡辺(わたなべ)心一(しんいち)さん(66歳)は、「習得した技術や知識を活かし、後進の指導を中心に、アドバイザー的役割をになって働き続けられることに感謝しています。また、福利厚生も充実しており、働きがいがあります」と話す。  最高齢社員の吉野(よしの)文一(ぶんいち)さん(83歳)は、「採用されて5年が経ちました。83歳という高齢にもかかわらず、働く場所があることに感謝しています」と笑顔で語る。 (5)今後の課題  多くの高齢社員が活躍している同社だが、今後の課題として、男性社員の育児休暇取得の促進、そして女性の活躍推進を掲げている。男性の育休については、2023(令和5)年8月時点で2人の取得実績があるが、若手社員が仕事と家庭を両立していけるよう、取組みを強化していく方針だ。また、全社員の約3分の1が女性であり、各部署で女性がそれぞれの強みを活かして活躍しているが、今後も女性の採用を進め、さらなる活躍推進を図っていく。  高齢社員はもちろん、社員一人ひとりに寄り添った柔軟な対応により、多様な働き方を実現している井上機工。人材のいっそうの活躍に向け、新たな課題にも果敢に挑戦していく。 写真のキャプション 井上機工株式会社本社 立ち仕事メインの作業負担を軽減するため、足元に疲労軽減マットを導入 熱中症予防のため、各職場にWBGT指数計を設置 体力が低下している高齢社員や下肢に障害のある社員が座って作業できるよう改善を実施 最高齢社員の吉野文一さん(83歳) アドバイザーの渡辺心一さん(66歳) 【P20-23】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 高齢社員の安心・安全をモットーに長く働き続けられる職場環境づくりを推進 弥生交通 株式会社(東京都中野区) 企業プロフィール 弥生交通 株式会社 (東京都中野区) 創業 1961(昭和36)年 業種 一般乗用旅客運送事業(タクシー) 社員数 92人(2023年4月1日現在) 60歳以上 44人 (内訳) 60〜64歳 11人(12.0%) 65〜69歳 12人(13.0%) 70歳以上 21人(22.8%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。その後基準を設けて70歳まで再雇用、以降も基準を設けて年齢上限なく継続雇用している。現在の最高年齢者は82歳 T 本事例のポイント  弥生交通株式会社は1961(昭和36)年10月に、旅客自動車運送業として東京都中野区にて創業した。以来「お客様の足として社会に貢献すること」を企業理念に掲げ事業を展開してきた。同社では、徹底的な労務管理と事故防止に積極的に取り組み、公益財団法人東京タクシーセンターが「接客・サービス」・「安全・運行管理」・「経営姿勢」の視点から評価を行う法人タクシー事業者の評価制度において、15年以上連続で優良事業者に認定されている。安全な運行管理に注力するとともに、雇用契約更新時には視力や認知生活機能などのチェックを実施し、産業医の判断を仰ぐなど、安全性を担保している。また、加齢による変化を見逃さないよう年齢に応じて更新期間を細かく設定するなど、全社をあげて高齢者が長く働ける職場環境づくりを進めている。 POINT @2019(平成31)年に定年を65歳に引き上げるとともに、基準を設けて年齢上限なしの継続雇用制度を導入した。 A社内で雇用形態や年齢を問わず幅広い従業員が参画する賃金委員会を立ち上げて賃金制度を検討、改定することで、評価基準も細分化され、より納得性のある賃金制度とした。 B多様な勤務形態の導入により、高齢社員が長い期間働ける環境を整備した。希望すれば短時間勤務や始業・終業時刻の選択が可能で、高齢社員が自分に適した働き方ができるようになった。 C研修の実施、接客接遇マニュアルの作成、若手社員の相談役に任命するなど、高齢社員が活躍できる仕組みづくりを進めている。 D感染症対策や健康管理、メンタルヘルス対策、事故防止教育の実施、認知・生活機能対策など、徹底した労務管理と事故防止対策を実施している。 U 企業の沿革・事業内容  同社は、1961年10月30日に、一般乗用旅客自動車運送事業としてタクシー15台、ハイヤー5台で創業した。以来、「お客様の足として社会に貢献すること」を企業理念に掲げ事業を展開してきた。  1989年7月1日に、業界大手である国際自動車株式会社の業務提携会社(現在はパートナー会社)としてkmグループ※に加入した。労務管理と事故防止を徹底し、弥生交通のモットーである「安全安心な運行」に沿って、現在は51台のタクシーでサービスを提供。公共交通機関としての役割を果たすことで社会貢献を目ざしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  2023(令和5)年4月1日現在、全社員(92人)に占める60歳以上の社員の割合は44人で全体の約48%を占めている。うち70歳以上の社員は21人で約23%と、高い割合となっている。最高年齢者は82歳で、運行管理補助者として勤務している。平均年齢は59歳と高く、職種の内訳は乗務員80人、運行管理者(補助者含む)7人、整備士4人、事務職1人となっている。  少子高齢化という時代の波を受け、同社でも社員の高齢化が進み、2019年3月には社員の平均年齢が60歳を超えようとしていた。それまでも心身に問題がなければ実質的に年齢の上限なく再雇用を行っていたが、定年が60歳であったため、実情と合わない状況であった。同社は事業を継続するうえで、高齢社員の経験や知識が必要不可欠であることや、さらなる高齢化が進むことを考え、2019年4月に定年制を改定し、65歳定年制を導入した。  また、コロナ禍で仕事が減少した時期に、社員の意見を反映させた賃金制度に改定した。勤務形態についても、各社員が自分のライフスタイルに合わせて勤務形態、始業・終業時刻を選択できるよう改定するなど、働きやすい職場環境づくりの取組みは高齢社員のモチベーションアップにつながっている。 W 改善内容 (1)制度に関する改善 ▼定年制の改定  2019年4月に定年を60歳から65歳に変更、定年後は、健康状態などに問題がなければ70歳まで再雇用し、さらにその後も本人の希望や適性、心身の健康、評価などをみて、年齢の上限なく継続雇用を行っている。再雇用する際は全員に認知生活機能チェックを実施(その後は契約更新ごとに実施)し産業医に判断を仰ぐ。また、65歳以上は1年ごとに、70歳以上は半年ごとに、75歳以上は3カ月ごとに健康状態や、交通事故発生状況なども加味した面談を行いながら更新を確認している。定年年齢の引上げにより、60歳以上の未経験者を採用する窓口が広がった。 ▼賃金制度の改定  賃金制度については、弁護士や社会保険労務士などと相談を重ねるとともに、社内で賃金委員会を立ち上げた。委員会には正社員や有期雇用契約社員、短時間労働契約社員(定時制)、若手から中高齢社員まで、雇用形態や年齢を問わず幅広く人選し、全社員に委員会を発足した旨を報告、同意を得て数回の検討会議を実施した。改定にあたっては同一労働同一賃金に配慮し、より分かりやすくすることで、社員にとってより納得性のある賃金制度とした。  賞与の評価項目については、プラス査定してほしい項目、マイナス査定もやむなしと考える項目を賃金委員から募り、それを細かく分類。加点項目に表彰関係、社会的貢献度(人命救助)、お客さま評価、配車の了解率などを加え、社員のがんばりが賞与に反映される形とした。高齢社員も若手社員も同じ目線で評価し、全社員が納得のいく賃金制度となりモチベーションが向上した。 ▼多様な勤務形態・短時間勤務の導入  これまでの、隔日勤務、昼日勤勤務、夜日勤勤務の三つの勤務形態に対して、勤務形態ごとに始業終業時刻の選択肢を大幅に増やし、自分に合った時間で出勤できるようにした。また、希望すれば短時間(週30時間未満勤務)に変更することも可能としている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼充実した研修支援の実施  全社員を対象に毎月2回、全体補習教育を実施しているが、2回に分けることで全員が受講できるようにしている。また、新規・中途(kmグループ未経験)採用者を対象に、接遇や事故防止、地理実習研修など5日間のメニューで行うkmグループ独自の研修を実施。さらに、車いすに座ったまま乗車できるタクシーに乗車するドライバーには、ユニバーサルドライバー研修や、自社にて車いす取扱い研修を実施している。 ▼接客接遇マニュアルの作成、指導教育  独自のマニュアル本を作成し、社員一人ひとりが質の高い接客ができるよう指導している。 ▼若手社員の相談役に任命  ベテラン乗務員を、伸び悩んでいる若手乗務員の相談役に任命している。売上げを伸ばすノウハウなどを伝授してもらうことで、若手乗務員のレベルアップと離職防止にもつながっているとともに、高齢社員にとっても新たな役割の付与によりモチベーションが向上している。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼タクシー車内設備のデジタル化  従来はカーナビゲーションにデジタル無線システムを組み合わせたものを使用していたが、より多くのサービスを提供するために、タブレット端末に変更した。高齢社員にとって、いままでは機器操作に苦労も多かったが、タブレットにしたことで「字も大きくなり操作もわかりやすく楽になった」との声が聞かれた。 ▼感染症対策  決済端末機をタブレット画面で操作できるようにし、決済端末へのカード挿入、タッチ操作をお客さま自身が行い、やり取りがなくなるようにしたことで、感染症などの予防にもつながっている。また、運転席ガードや低濃度オゾン発生器、空気清浄モニターを設置したことで車内の空気清浄と汚染状況を確認できるようにした。感染症対策の取組みを強化することで高齢社員の業務上の不安が軽減された。 ▼健康管理とメンタルヘルス対策  点呼は毎日必ず、対面点呼と集団点呼を実施し、体調の変化をチェックしている。健康診断は年に2回、雇用形態や年齢に関係なく全社員に実施している。メンタルヘルス対策としては、健康診断実施医療機関に年1回試問と解析を依頼し、体調を把握できるようにしている。また、月に1度、産業医の健康相談を実施し健康管理に努めている。 ▼事故防止対策と認知・生活機能対策  月2回の全体補習教育では、事故防止の徹底に取り組んでいる。ドライブレコーダーの映像や年齢別の交通事故要因の分析、実際の交通事故の解説など多彩なプログラムの教育を実施し、安全・安心への気づきを喚起している。  一方、65歳以上の社員を対象に、再雇用契約更新時に、産業医から運動機能および認知症に関する質問票の提供を受けて、健康状況を確認している。これにより自分では気づいていなかったことについて考えるようになり、認知症などの早期発見につなげている。問題が発生した場合は、産業医への相談やかかりつけ医への受診をうながしている。 ▼福利厚生  休憩室や仮眠室、浴室を設置している。コロナ禍以前は、親睦会などが主催したバーベキュー大会や歓送迎会を開催していたが、現在は、研修が社員のコミュニケーションを高める場となっている。 (4)その他の取組み ▼普通救命講習  3年に1度、普通救命講習を全社員に実施している。同社には応急手当普及員がいるため、中野消防署長より自社講習の許可を得ている。管内で最初に自社講習の許可を得た事業所となった。講師は応急手当普及員が務め、講習も社内で実施するため、「楽しく真剣に学ぶことができる」と社員から好評を得ている。 ▼働きやすい職場認証制度と優良認定  同社は国土交通省が創設した、自動車運送事業者の「運転者職場環境良好度認証制度(働きやすい職場認証制度)」の審査で、二つ星基準(現在の最高評価)に合格し、15年以上連続で、公益財団法人東京タクシーセンターによる優良事業所に認定されている。 ▼救命褒賞  マタニティ・マイタクシー(陣痛タクシー)のサービスにおいて、消防署より救命褒賞を受賞している。マタニティ・マイタクシーとは、出産する病院などを事前に登録しておくことで、陣痛時の送迎講習を受けたドライバーが24時間いつでも陣痛時に迎えに行き、道案内なしで病院に送迎するサービスである。 ▼表彰制度  年に1回、年間を通して無事故、無違反者の表彰を実施し、表彰者には景品を授与している。タクシー業務を行っている社員にとっては最大の目標であり、表彰を受けることで、モチベーションの向上にもつながっている。 (5)高齢社員の声  タクシー乗務員の水谷(みずたに)進治(しんじ)さん(67歳)は、同社での仕事について「会社が安全と健康管理に重点をおき、シフトにも柔軟に対応してくれるので、自分のできる範囲で無理なく仕事ができています」と話す。 (6)今後の課題  高齢社員が長く働き続けられる環境を整備するため、健康管理と安全管理の取組みに注力するとともに、今後は定年年齢のさらなる引上げや廃止を視野に入れている。また、高齢社員の経験や知識を活用するための方策などを工夫し、目安箱の設置、休憩室やロッカー室、風呂場や脱衣所のバリアフリー化など、高齢社員はもとより、だれもが活き活き働き続けられるよう、よりよい職場環境づくりに注力していくという。これからも、同社の飽くなき挑戦は続く。 ※ km(ケイエム)グループ……国際自動車グループ(タクシー、ハイヤー、バス、整備)を中心にタクシー30社・4,800台を有するグループ 写真のキャプション 弥生交通株式会社 出庫前に必ず実施している車両点検の様子 字が大きく操作しやすい車両タブレットとメーター機 運行管理者が1台ずつ出庫を見守る様子 タクシー乗務員の水谷進治さん(67歳) 【P24-27】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 近江商人の「三方よし」をスローガンに掲げすべての社員の笑顔が輝く職場環境を構築 株式会社 尾賀亀(おがかめ)(滋賀県近江八幡(おうみはちまん)市) 企業プロフィール 株式会社 尾賀亀 (滋賀県近江八幡市) 創業 1856(安政3)年 業種 卸売業(石油製品・砂糖卸売業) 社員数 176人(2023年4月1日現在) 60歳以上 36人 (内訳) 60〜64歳 15人(8.5%) 65〜69歳 10人(5.7%) 70歳以上 11人(6.3%) 定年・継続雇用制度 定年60歳。希望者全員80歳まで再雇用。現在の最高年齢者は75歳 T 本事例のポイント  株式会社尾賀亀の前身は1856(安政3)年創業の「扇屋(おうぎや)」で、行燈(あんどん)の燃料となる油脂の販売で商いを始めた。そこから数えて創業167年という由緒ある老舗である。明治期に石油販売事業を開始し、1953(昭和28)年には、会社を大きく発展させた2代目社長「尾賀(おが)亀次郎(かめじろう)」の名にちなんで、株式会社尾賀亀商店を設立。その後、自動車産業の成長とともにガソリンスタンド事業が順調に拡大していった。  事業の柱の一つであるガソリンスタンドの運営・灯油販売事業は、地域の交通や生活を支える重要なインフラとしての役割をになっている。24時間営業を支えるのは高齢社員であることから、彼らの活躍なくして燃料の安定供給、ひいては事業の継続・発展は実現できない。古くから近江商人に根づく「三方よし※1」を具現化するために、すべての社員が活き活き働ける職場づくりを進めてきた。 POINT @本人の健康状態などに応じた勤務が続けられるように、〜70歳、70〜75歳、75〜80歳の3段階で段階的に週労働時間を短くする短時間勤務制度を設けている。 A定年後再雇用の社員に対しても人事評価を行い、時間給に反映させるなど、モチベーションのアップに努めている。 B会議や所長との1on1の面談、「社長メシ」と称した社長と若手社員の昼食会など、組織のコミュニケーションの円滑化と、それによる生産性向上を図っている。 C社内報の発行やSNSによる通達の発信など、コミュニケーションツールの活用で会社側から能動的に情報を伝え、開かれた職場づくりに取り組むことで、高齢社員の孤立感を解消している。 U 企業の沿革・事業内容  同社は1856年、滋賀県近江八幡市にて「扇屋」の商号にて創業した。当初は行燈の燃料となる油脂の販売を行っていたが、灯りが植物油から鉱物油へ転換し石油ランプが中心の時代になり、1895年に石油販売業に着手し、同時に食品卸売業も開始した。1953年5月に法人化し、「株式会社尾賀亀商店」が誕生。時代の波を受けガソリンスタンド事業は順調に拡大していった。1986年には商号を現在の社名である「株式会社尾賀亀」に変更し、自社の車検や整備工場の開設などガソリンスタンド事業は拡大の一途をたどっていく。2023年9月現在、滋賀県内に15カ所のガソリンスタンド(1日約5000人が利用)を運営するTCS事業部、県内法人向けに石油製品卸売業を営むエネルギー事業部、食品事業を営む食品事業部(子会社2社を含む)の3部門を事業の柱として、さらなる飛躍を目ざしている。 V 企業の高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  同社の社員数は176人、60歳以上が全体の約20%を占めている。社員の60%はガソリンスタンドを運営するTCS事業部に所属。50代の社員が多く、離職率も高まってきており、若手社員数も少なくなってきたため、8年前から新卒採用を開始した。現在は20・30代が増加してきている。  ガソリンスタンド事業は地域のインフラとしての役割をになっており、高齢社員が24時間営業を支えていることから、高齢社員が安心して働き続けられる会社を目ざして、さまざまな制度を取り入れている。 W 改善内容 (1)制度に関する改善 ▼定年制の改定  60歳定年の6カ月前に、定年後の業務内容、勤務形態、時給について担当部長との話合いを行い、再雇用についての意思確認と、再雇用を希望する場合の雇用条件を調整している。定年後の不安や本人の希望などをていねいにくみ取り、60歳定年後は、「キャリア社員」として再雇用している。  また、採用難が続いているセルフのガソリンスタンドにおける夜間アルバイトは、接客機会や肉体的負担が少なく高齢者でも対応可能な仕事と考え、人材確保のために、2021(令和3)年3月に80歳までの再雇用制度を導入した。 ▼短時間勤務制度  本人の健康状態などに応じて勤務が続けられるように、70歳までの労働時間は週40時間以内、70〜75歳は24時間以内、75〜80歳は18時間以内と、段階的な短時間勤務制度としている。キャリア社員は、基本的にフルサービスのガソリンスタンドに配置して若手の指導的役割を与えているが、勤務地については、自宅に近い場所に変更するなどの配慮を行っている。 ▼賃金制度の改正  キャリア社員の賃金は時間給としているが、キャリア社員のモチベーションアップのため基本時間給を一般のアルバイトと比べ10%アップし、評価によって1年ごとの契約更新時に見直すこととした。さらに、責任感を発揮してもらうために、アドバイザー給や技術給、フルサービスのガソリンスタンドで勤務する際のフルサービス給などの手当を新設し、時間給に上乗せしている。  ガソリンスタンドを運営するTCS事業部のキャリア社員については、業務内容に応じたポイント制(車検2ポイント、カーコーティング1ポイントなど)により、賞与を考課している。2022年10月までは、人事考課の基準について各個人のがんばりを中心に評価してきたが、それに加えて店舗全体のがんばりを評価する査定に変更。店舗全体の会議や所長との1on1の面談(正社員、キャリア社員、常用アルバイトが対象)を年4回実施し、店舗での生産性向上に取り組んでいる。 ▼在宅勤務制度  疾病・傷病、そのほかさまざまな事情によって出社できない場合には、働く場所や時間を柔軟に選択できるよう、在宅やテレワークによる勤務体系を制度化し、働きやすい職場づくりに取り組んでいる。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み ▼技能承継  自動車の整備・検査に関する豊富な経験を持つキャリア社員にOJT指導係として若手の育成を任せているほか、サービス力向上のための社内研修の講師として活躍している。技術・ノウハウの承継については、会社に貢献しているという自負が芽ばえるだけでなく、教えた若手から直接感謝され、成長していく姿を見られることが喜びとなっている。 ▼職場の風土改善  腰痛などの防止のため、トラックのタイヤなど重量物の取扱いは若手社員がフォローするなど、キャリア社員がけがをすることなく、安全に長く働けるよう配慮している。 ▼安全への取組み  深夜勤務時は社員に危険がおよぶことがないよう、一人で接客しないなどのルールがある。また、労働時間についても制限を設け、深夜の長時間勤務がないように制度設計されている。 ▼就労意欲の向上  モチベーションの維持・向上や定年後の働き方に向けて、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の就業意識向上研修※2(生涯現役ライフプラン研修)を定期的に実施している。また、大規模な管理職研修を行い、会社の将来をになうリーダーとしての自覚を感じることで、就労意欲を高めている。中高年になっても「研修を受けると新しい発見があり、定年後のマネープラン、経済的な予測もできるので安心だ」と社員からは好評である。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み ▼健康経営R  2020年より、経済産業省の「健康経営優良法人」の認定を受けるとともに、全国健康保険協会滋賀支部が推奨する「健康アクション宣言」を行うなど、健康経営Rに注力。禁煙ダービー、睡眠セミナー、ウォーキングイベントへの参加など、さまざま健康維持・増進活動を社内外で実施したことで、社員自身も生活習慣を見直したり、運動を始めたりするきっかけにつながっている。  また、健康経営Rの推進により、人間ドックや予防接種のほか、社内外のスポーツ活動に対する補助制度を導入している。 ▼労働時間短縮の取組み  働き方改革の一環としてパソコン研修などを開催し、生産性向上による労働時間の短縮に取り組んでいる。また、イクボス宣言企業でもあり、代表取締役が自ら育児休暇を取得するなど、働き方改革の積極的な推進が時間外労働の減少(49%削減)と有給休暇取得率の上昇(71%上昇)につながっている。 (4)その他の取組み ▼社内コミュニケーションの促進  2022年からエンゲージメントサーベイを社員に毎月実施し、調査結果と経営層の肌感覚に乖離がないか、チェックするようにしている。社員全体に経営状況を理解してもらい、一体感を高めるため、決算状況についてオンラインも含めた説明会を実施し、説明会の終了後に懇親会を実施している。  コロナ禍以前は、「社長メシ」と称して、月1回、社長と若手社員4〜5人で食事会をとりながらコミュニケーションを図っていた。社内の風通しに寄与するとともに、ふだん社長と顔をあわせることの少ない若手社員のモチベーション向上につながっていたことから、今後再開を目ざしていく。 ▼女性の活躍推進  女性が長く活躍できる制度づくり、性別による不平などの解消を目的として「滋賀県女性活躍推進企業」の認証を取得。性別によるギャップだけでなく、年齢や雇用形態の違いを認め合い、社員それぞれが自分の能力を最大限に発揮できる風土の醸成を目ざしている。 (5)高齢社員の声  エネルギー事業部で灯油配達員をしているAさん(60歳)は、「日々の配送が無事故で無事に終えられるのも、上司と話合いができる働きやすい環境のおかげです」と同社での仕事について話す。  工業用潤滑油および燃料など、顧客の工場に納品をしているBさん(68歳)は、「自分に合った仕事があり、働くことで健康でいられます。健康の秘訣は、毎日遊びに来る孫たちと一緒に遊ぶことです」と話す。 (6)今後の課題  再雇用年齢の80歳までの引上げ、キャリア社員に対する評価とそれに連動した賃金制度、安全・健康への支援など、さまざまな施策によって、すべての社員を大切にしたい、という会社からのメッセージが浸透した。今後は、それぞれの社員が持つ「強み」を事業に還元し、高い技術やノウハウの伝承を目的としたマイスター制度の導入など、強みに特化した役割をになってもらうための制度の充実を図っていく方針だ。  近江商人の「三方よし」を精神の柱として、「よい会社をつくる」ため、全社をあげてのチャレンジが続いていく。 ※1 三方よし……「売り手」と「買い手」が満足し、「社会貢献」にもつながることがよい商売とする古く江戸時代から伝わる考え方 ※2 就業意識向上研修の詳細はJEEDホームページをご覧くださいhttps://www.jeed.go.jp/elderly/employer/startwork_services.html 写真のキャプション 株式会社尾賀亀 ライフプラン研修の様子 顧客の工場に納品をしているBさん(68歳) 灯油配達員をしているAさん(60歳) 【P28-29】 令和5年度 高年齢者活躍企業コンテスト入賞企業一覧 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 島根県 有限会社 小川商店(おがわしょうてん) 優秀賞 岐阜県 社会福祉法人フェニックス 静岡県 井上(いのうえ)機工(きこう) 株式会社 特別賞 東京都 弥生(やよい)交通(こうつう) 株式会社 滋賀県 株式会社 尾賀亀(おがかめ) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 神奈川県 株式会社マエカワケアサービス 福井県 社会福祉法人 白女林(しろんばやし) 長野県 社会福祉法人 みまき福祉会(ふくしかい) 岐阜県 株式会社 YKA(ワイケイエイ) 三重県 株式会社 石吉組(いしきちぐみ) 岡山県 社会福祉法人 天神会(てんじんかい) 特別賞 宮城県 株式会社 MAYURA(マユラ) 秋田県 株式会社 ドリームリンク 山形県 奥羽(おうう)警備保障(けいびほしょう) 株式会社 特別賞 東京都 一般社団法人シニア・環境技術支援(かんきょうぎじゅつしえん)協会(きょうかい) 山梨県 株式会社 根(たかね)運送(うんそう) 愛知県 昭和(しょうわ)土建(どけん) 株式会社 滋賀県 甲西高周波(こうせいこうしゅうは)工業(こうぎょう) 株式会社 奈良県 有限会社 あいネット 和歌山県 湊(みなと)興業(こうぎょう) 株式会社 鳥取県 特定非営利活動法人 十人十色(じゅうにんといろ) 岡山県 社会福祉法人 津山(つやま)福祉会(ふくしかい) 岡山県 株式会社 わたなべ生鮮館(せいせんかん) 愛媛県 株式会社 クック・チャム 佐賀県 野中(のなか)建設(けんせつ) 株式会社 沖縄県 有限会社 大輝(だいき)商事(しょうじ) 【P30-31】 江戸から東京へ [第131回] 足利最後の将軍を見送る 真木嶋(まきしま)昭光(あきみつ)(三) 作家 童門冬二 忠臣は二君に仕えず  足利(あしかが)義昭(よしあき)が亡くなった。死については諸説ある。京都に戻って閑居し病死したという説、鞆(とも)の津(備後(びんご)福山)から薩摩に逃れて謀殺されたという説など。  いずれにしてもその死を葬ったのは、サムライ真木嶋昭光である。  が、このときの義昭はどういう位置づけになるのだろうか。事実としては織田(おだ)信長(のぶなが)から現職のまま京都から追ん出されたのだ。したがって現将軍、前将軍、元将軍、どれでもあてはまる。  しかし、昭光にとってはそんなことはどうでもいい。主人≠フ上様(うえさま)≠ネのである。京都で貴人の葬儀は関白の所管のようだ。そこで昭光は関白の豊臣(とよとみ)秀吉(ひでよし)の所に行った。さすがに秀吉は細かいことまで知っていた。  「ごくろうだった」  昭光のいままでの努力をねぎらった。苦労人らしい温かさがあった。 「おそれいります、殿下」  昭光は素直に礼をいった。 「寺は?」  秀吉は単刀直入に訊(き)いた。昭光は 「京都の等持院(とうじいん)が菩提寺でございますので」 「下野(しもつけ)(栃木県)の方とはあまり縁がなかったな」 「はい」 「もう話は通したのか?」 「はい、殿下からもお口添えいただいたそうで、ありがとうございます」 「礼をいうほどのことはしておらぬ。それで?」 (これからは関白の仕事だ)秀吉は多少緊張した。 「はあ?」  昭光も身構えた(何だろう?)。 「話がきたか?」 (ああ、会葬者か)  昭光は答えた。 「細川様父子が」 「幽斎(ゆうさい)父子か?」 「はい」 「ほう」 「三百両のご香料を添えて」  大金だ。幽斎は号で昔は藤孝(ふじたか)といって義昭の重臣だった。途中から信長に乗りかえたのでいろいろいわれた。歌人、茶人としても名をなしている。息子の忠興(ただおき)も風流武将として名高い。妻はキリシタンでマリアという洗礼者。明智(あけち)光秀(みつひで)の娘だ。父が信長を弑(しい)したときに、藤孝は即座に髪を切り僧になって幽斎を号して隠居した。マリアを離縁して幽閉した。マリアが、 「父の所には戻りません」  というので、のちに秀吉の仲介で復縁した。秀吉も細かくいろいろ面倒をみた。秀吉がいった。 「ところで頼みの大工だが」 信長のときは木の人形  貴人の葬儀はかかわりを持つ職人はじめ関係者の職種、人数など一切を関白が管理する。義昭の棺桶造りには大工を二人頼まれていた。 「一人だ、二人はムリだ」  昭光はちょっと異議をいいかけたが、すぐ引っこめた。ずいぶんと世話になっているのでこれ以上ムリはいえない、と悟ったのである。 「おい、昭光」  秀吉が軽い調子で親しげに名を呼んだ。 「はい」 「信長様のご葬儀を覚えているか?」 「はい、殿下がお仕切りになり、大層りっぱなものでございました」 「あの時の棺桶」 「はあ?」 「中身」 「?」 「木だ、人形だ」  秀吉は笑った。昭光は笑わない。呆れた。  しかし心のなかで納得した。あの日(未明)襲われた信長は自ら本能寺に火をつけて自焼した。遺体は最後までみつからなかった。 (そうか、そういうことだったのか。殿下もなかなかやるな)  それにしても信長様を木の人形にするとは。昭光はひとりで笑った。おかげでいままでの苦労で溜まった鬱屈感(モヤモヤ)が一挙に消える気がした。 「殿下」 「何だ?」 「おかげさまで気が晴れました」 「それはよかった。わしも珍しく二君に仕えぬ忠臣に会えて、スッキリした」 「ありがとうございます。そのお言葉を家宝にいたします」 「大げさなことをいうな。義昭様のことはよろしく頼む」 「おまかせください。最後のご奉公です。精一杯務めさせていただきます」  昭光は言葉通りつつがなく義昭の葬儀を済ませた。やはり、 「信長にイジメぬかれた将軍」  ということが、京都人の同情を呼んだのだろう。  そして祭壇脇に控える昭光をみて 「あれが真木嶋(まきしま)様だ」 「本当の忠臣だ」 「ごくろうさまでした」  なかには涙を拭く人さえいた。葬儀後の昭光は前と変わりなく、地域の人々のために尽くしたという。 【P32-35】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第136回 長崎県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 定年制を廃止して生涯現役で働ける職場づくりに努める 企業プロフィール 株式会社かとりストアー(長崎県大村市) 創業 1924(大正13)年 業種 飲食料品小売業 社員数 148人(うち正社員数45人) (60歳以上男女内訳) 男性(7人)、女性(52人) (年齢内訳)60〜64歳 20人(13.5%) 65〜69歳 24人(16.2%) 70歳以上 15人(10.1%) 定年・継続雇用制度 2018年2月に定年制を廃止。多様な勤務形態、短時間勤務制度などの導入により、長く働ける職場づくりを推進。最高年齢者は73歳  九州地方北西部に位置する長崎県は、周囲を海に囲まれて、五島(ごとう)列島、壱岐島(いきのしま)、対馬(つしま)など大小の島々を有し、その数は47都道府県のなかでもっとも多いことで知られています。また、海岸線の総距離は、全国で北海道に次ぐ長さです。  自然の恩恵を受けて、観光業、農業が盛んであり、現在では「長崎と天草(あまくさ)地方の潜伏キリシタン関連遺産」、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の二つの世界遺産があるほか、農業ではビワ、ジャガイモ、ミカンなどの栽培が有名です。  JEED長崎支部高齢・障害者業務課の西島(にしじま)史剛(ふみたか)課長は、県の産業と支部の取組みについて次のように話します。  「古くから発展した造船業、それにともない成長したタービン、ボイラーなどの産業用機械製造業や金属加工業、また、工業団地が県内各地に整備され発展したCMOSイメージセンサーをはじめとする半導体デバイス、デジタルカメラなどの電子機器等製造業といった業種も、県内の産業を構成する重要な要素となっています。  高齢者雇用の相談・援助業務に注力している当課では、県内事業所の訪問活動などを通して、高齢労働者の活用に関する相談・援助や制度改善の提案を行っています」  同支部で70歳雇用推進プランナーとして活躍する徳山(とくやま)幸正(ゆきただ)さんは、中小企業診断士の資格を持ち、おもに人事労務管理、職場改善を得意分野として、専門知識と豊富な経験を活かして、県内の幅広い事業所の高齢者雇用を支援しています。今回は、徳山プランナーの案内で、「株式会社かとりストアー」を訪れました。 地域密着型スーパーマーケットを経営  株式会社かとりストアーは、1924(大正13)年に米穀店として創業し、1969(昭和44)年に法人を設立。同時に、長崎県大村市に「かとりストア原口店」をオープンして、スーパーマーケットの経営をスタートしました。その後、大村駅前の商業施設「コレモおおむら」へ鮮度にこだわった野菜や果物、肉、魚などを販売する「大きな新鮮村」を出店。経営方針に「地域社会への貢献」を掲げ、地域密着型で愛されるスーパーを目ざして邁進し、「原口店」(本店)は2019(令和元)年に50周年を、「大きな新鮮村」は2022年に10周年を迎えました。  同社では、車が運転できなくなったり、駅やバス停から離れて居住している地域の方への買い物支援として、大村市(北部地域)を巡回して店舗へ無料送迎する「お買い物バス」など、利用者のニーズに応えて業態を広げ、現在はイベント会場などに届ける仕出しサービスや、事業所向け宅配弁当サービスも手がけています。 「貴重な戦力を失いたくない」という思いから2018年に定年制を廃止  同社は、2018年2月にそれまで65歳としていた定年制を廃止。以来、柔軟な勤務形態の導入や働きやすい職場環境づくりに励み、だれもが長く働ける職場の実現を目ざしています。  代表取締役の鹿取(かとり)栄治(えいじ)さんは、「2004年に生鮮部門の内製化を行った際、社員の奮闘により当社の主力部門へ成長しました。しかし、それから10年が経過すると、当時40代で中心となって活躍してくれた社員たちの定年が迫ってきました。定年を廃止したのは、人口減少と少子高齢化がさらに進むとされるなか、貴重な戦力を年齢だけを理由に失いたくない、と考えたことがきっかけです」とふり返ります。  定年制の廃止は、店長や部門長、50歳以上の社員代表と協議やヒアリングを重ねて検討したそうです。職場からは「定年制があることで退職されてしまうのは困る」という声が多く聞かれ、50歳以上の社員からは、「可能なかぎりここで働きたい」との希望が多く寄せられました。  定年制廃止が決定した際には、鹿取代表取締役から全社員に「働けるうちは、年齢を気にせず仕事を続けてください」と説明。退職金は、中小企業退職金共済制度に加入しており、支給は本人の希望年齢や退職時点で清算することとしました。 退職するのと短時間勤務とでは大違い  定年制廃止と同時に、ワークライフバランスや病気の治療と仕事の両立、病気療養後の職場復帰などへの配慮も必須であると考え、短時間・短日数勤務といった柔軟な勤務形態を導入。安全で働きやすい職場環境づくりに取りかかりました。  高齢社員は、パートタイマーがほとんどで、正社員は現在1人。高齢を理由に時給や月給を減額することはありませんが、フルタイム勤務から短時間・短日数勤務への変更など、本人の希望に応じており、働き方や条件は会社と本人とで話し合います。  「短時間勤務の社員が増えた分は、ほかの社員でカバーしています。やってみると何とかなるもので、例えば4人の部署で、定年で一人辞めて3人になるのと、4人のまま一人の勤務時間が少し減るのとでは大きな違いです」と鹿取代表取締役。カバーをし合う体制づくりを進めることで、有給休暇が取りやすい職場に生まれかわり、ほかの会社を定年退職した方など、シニアを採用しやすくなるという変化もありました。 現場の声に耳を傾け環境改善  安全で働きやすい職場づくりについては、以前から高所に物を置かない、踏み台に乗って作業をしないことなどを徹底。さらに、現場の社員の意見を反映し、惣菜加工場では、照明のLED化や、油ですべらないための滑り止めマットなどを導入。このマットは転倒防止に加え、掃除がしやすくなったと現場から好評を得ているそうです。  また、バックヤードにおいても、カートの導入や、IT化の推進にも取りかかり、容器や材料発注のために使用している現在の端末を大きく扱いやすいものに換えることを検討。レジシステムについても、「見やすい、わかりやすい、簡単操作機能」の機器の導入を検討中です。現場の声に耳を傾けて、鹿取代表取締役は積極的に改革を進めています。  さらに、介護や通院、孫の送迎など、「高齢社員の家庭や地域社会での役割にも配慮し、日ごろから家庭のことが最優先」と話しているとのこと。「家族の看病などが必要になったとき、『家庭であなたの代わりをできる人はいませんよ』と話して、会社に事情を打ち明けてもらえるようにしています」(鹿取代表取締役)  一方で、職務遂行においては、60歳未満の社員と同様、清潔な身だしなみや迅速な行動、ていねいな接客応対を期待しており、高齢だからといって特別扱いはしていないそうです。  徳山プランナーは、2021年に同社を初めて訪問した際に、これらの取組みに触れ、「他社に先行する優れた取組みを行っており、働きやすさへの配慮はもとより、人を大切にする姿勢に感銘を受けました。高齢者雇用の積極的な推進が生産性向上にもつながっています」と高く評価。そして、「中央資本の大手量販店が市場を席巻するなかで、地域の雇用の場として重要な役割をにない、大村市の地場企業として地域密着型経営を続けている同社の存在を広く知らせたい」と思い、JEEDの「高年齢者活躍企業コンテスト」への応募を勧奨。2022年度には「ながさき高年齢者雇用推進フォーラム」にて先進取組み企業として事例発表を行い、鹿取代表取締役の発表が好評を博しました。  今回は、フルタイム勤務で活躍し続けている最高齢社員の方にお話を聞きました。 自分で定年を決められる会社  太田(おおた)永敏(ながとし)さん(73歳)は、自衛隊を定年退職後、民間企業勤務を経て、61歳のときにかとりストアーに入社しました。それから12年、青果部門で週5日、フルタイム勤務を続けています。  朝は6時半に出社して、トラックで市場へ。青果を積んで店舗へ運搬し、荷下ろしまで行います。続いて、できたてのお弁当を本店から販売先へ配送。昼休みをはさんで、午後からは保育所や介護施設などから注文を受けた食品を各施設へ届けます。  太田さんはこれらの仕事について、「玉ねぎなどは一箱の重量が20kgほどありますから、市場から店舗への運搬作業は自然と筋力トレーニングになっています。各施設への配送では、『ありがとう』と言葉をかけてもらうなど、ちょっとした会話による触合いもあり、やりがいを感じています」と明るく話します。  大型運転免許証を持っている太田さんの仕事は、おもに2tトラックで行います。「もっとも大切にしているのは、安全第一です。2022年に無事に運転免許証の更新をしました。次の更新は75歳のとき。そこを一つの目標として、仕事を続けていきたいと思っています」と、太田さんは意気ごみを語ります。  フルタイム勤務を続けられているのは、「有給休暇を取得しやすいことです。趣味で詩吟を習っていて、そうした時間も楽しめています。メリハリのある充実した生活ができているからでしょうか」と答えます。また、「定年が廃止されたことにより、自分で辞める時期を決めることができるようになりました。元気に仕事ができるうちは続けたいと考えている私にとっては、とてもよい制度です」と定年廃止を歓迎しています。  鹿取代表取締役は、太田さんの働きぶりについて、「入社時から変わらず、いつも元気に働いています。年齢を重ねている一方で、配送先を増やすなど太田さんの仕事量は増えているんです。本当に頼もしい存在です」と尊敬のまなざしを向けて語ります。長く仕事を続けてもらうために、仕事量は本人に確認しながら負担がかかりすぎないようにすること、健康診断やストレスチェック結果や日ごろの運転の様子に気を配るようにしているそうです。 地域に求められる事業を展開  かとりストアーのある大村市は、交通アクセスのよさなどから、年々人口が増加しています。  鹿取代表取締役は、「さまざまな店舗の出店が増えていますが、当社としては、地域に求められる事業展開に励み、今後も地域のみなさんの期待に応えていきたいと考えています。労働者不足も危惧されますが、引き続き、働きやすい職場づくりと働き方を追求し、だれもが長く働ける環境づくりに努めていきたいです」と今後の展望を語ってくれました。(取材・増山美智子) 徳山幸正 プランナー アドバイザー・プランナー歴:23年 徳山プランナーから] 「2000(平成12)年に中小企業診断士事務所を開設した際、わが国の少子・高齢化、人口減少社会の進展を人口統計データなどで目のあたりにしました。プランナー活動では、高齢社会における企業経営やマーケティングおよび地域経済の一助となるべく取組みを心がけて実践しています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆長崎支部高齢・障害者業務課の西島課長は徳山プランナーについて、「今年で23年目になるベテランのプランナーです。中小企業診断士の資格を有し、さまざまな事業所への豊富な支援経験を背景とした相談・援助活動を行っています。明るい人柄と、抜群のコミュニケーション能力で、事業所の抱える悩みや課題を的確に把握し、事業所に寄り添った内容の制度改善提案を行い、長崎支部の相談・援助活動を牽引する存在です」と話します。 ◆長崎支部高齢・障害者業務課は、長崎県のほぼ中央、有明海(ありあけかい)・大村湾(おおむらわん)・橘湾(たちばなわん)の三つの海に面し県内交通の要所である諫早(いさはや)市に立地しています。長崎空港から車で約20分、西九州新幹線「諫早駅」から車で5分ほどの場所にあります。 ◆同県では、6人の70歳雇用推進プランナーが活動しています。2022年度は、404件の事業所訪問を行い、相談・助言や制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を無料で行います。お気軽にお問い合わせください。 ●長崎支部高齢・障害者業務課 住所:長崎県諫早市小船越町(おぶなこしまち)1113番地 長崎職業能力開発促進センター内 電話:0957-35- 4721 写真のキャプション 長崎県大村市 かとりストアーが展開する「かとりストア原口店」(本店) 鹿取栄治代表取締役 太田永敏さん。市場から店舗へ青果の運搬などをトラックで行っている 【P36-37】 第86回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  ピン芸人のおばあちゃん(76歳)は、古希(こき)を過ぎてからエンターテイメントの世界に飛び込み、笑顔でマイクの前に立っている。波乱万丈の人生を乗り越え、いま本当に自分がやりたかった世界で羽ばたく「おばあちゃん」が、生涯現役の醍醐味を語る。 C YOSHIMOTO KOGYO CO.,LTD. 吉本興業株式会社 お笑い芸人 ピン芸人 おばあちゃん 向学の志を忘れず  私は東京都国分寺(こくぶんじ)市で生まれ育ち、地元の中学を出ると大手企業の事務部門に就職しました。当時は、「女に学問は必要ない」という風潮が根強く残っており、私も高校進学をあきらめましたが、向学の思いは高まる一方で、学費をためて通信制高校に入学しました。  20代で結婚しましたが、結婚すると同時に退職を余儀なくされました。当時、「中卒は金の卵」といわれながらも、女性が長く働く道は開かれていなかったのです。  結婚後、夫は国内・海外出張が多く不在がちであったことや、子宝に恵まれなかったこともあり、もう一度働こうと今度は造船会社の設計部門に就職しました。結論からいうと、定年まで32年間勤めあげたのですから、ご縁があったのだと思います。  職業訓練校で製図を学び、設計や資材の仕事を担当しました。サラリーマン家庭に育ちましたが、なぜか昔から設計に興味があり、モノがどうやってつくられていくのか考えるとわくわくする変わった女の子でしたから、造船所での仕事は好奇心を満たしてくれ、楽しく働くことができました。働くなかで情報処理の勉強がしたくなり、今度は通信制の短大に入学しました。やりたいことをいつも追いかけながら今日まできたように思います。  背筋をピンと伸ばして、言葉をていねいに紡ぎ出してくれる「おばあちゃん」。時代の制約のなかでコツコツと道を切り開いてきた生き方に頭が下がる。さすが現役のピン芸人、話にグイグイ引き込まれた。 どんなときも前を向いて  通信制の短大に入学してからは、、働きながら学ぶ日々が充実していました。しかし、人生は本当に何が起きるかわかりません。  38歳のある日、突然目の前が暗くなるような出来事がありました。急に体に異変を覚え病院に行くと、医師に「すぐに、ご家族を呼んでください」といわれました。携帯電話がない時代ですから夫と連絡が取れず、とても心細かったことを覚えています。診断は乳がんのステージ4で、すぐに乳房を切除して人工胸を装着しました。命拾いしたものの、後々、卵巣や子宮への転移が見つかりましたが、闘病を続け病を克服し、こうして永らえていることにただ感謝しかありません。また、会社の上司が、治療しながら働くことに理解を示してくれたので職場に戻れました。いろんな人に支えられ、いまがあります。  乳がんの手術後一番悩まされたのは、発汗でした。人工胸周りの皮膚がかぶれてとてもつらく、同じ悩みを持っている人のために研究がしたくなり、1994(平成6)年に47歳で放送大学へ入学しました。憧れの4年制の大学です。通信制の短大を卒業した後、4年制の大学を探していましたが、1981(昭和56)年の放送大学設立が願いを叶えてくれました。3年間は必死で単位を取り、残り1年を卒業論文に費やしました。「乳がん手術後の発汗と下着について」これが私の卒業論文で、放送大学の酒井(さかい)豊子(とよこ)教授、文化女子大学の田村(たむら)照子(てるこ)教授のご指導のもと研究し、卒業後も日本家政学会で研究成果を発表しました。自分のつらい経験が同じように苦しむ人たちに少しでも役に立つことができたらという思いに支えられ、また、知識こそ困難を乗り越える力だと信じて学び続けてきました。  神様は試練に耐えうる人だけに苦労を与えるのだろうか。造船会社で定年を迎えた「おばあちゃん」。ここから真骨頂の新たな挑戦の日々が始まった。 吉本総合芸能学院との出会い  造船会社は本当は60歳が定年でしたが、人材不足もあり、64歳まで勤めました。念願の4年制の大学を卒業し、卒業論文までまとめさせてもらい、また定年まで勤めあげることができ、本当はそこで大満足なのでしょうが、胸のなかではふつふつとたぎるものがありました。漠然とはしていましたが、挑戦してみたいと思っていたのがお笑いの世界でした。同世代の人なら記憶があると思いますが、中田ダイマル・ラケットに代表される漫才の黄金期を過ごしてきた私たちにとって、お笑いの世界は憧れの的でした。クラスに面白い子がいると先生から「吉本に行け」などといわれたものです。  とはいえ、そのころ、お笑いの世界に進む方法など皆目わかりませんし、退職してからひざを手術したこともあり、2年ほどはのんびり過ごし、その後、高齢者劇団に入りました。しかし、芝居の世界は初めてのことで、基本もできていない自分に愕然(がくぜん)として、基本から学びたいとの思いが強くなり、勉強できるところを探していました。友人の協力もあって、やっと出会えたのが「吉本総合芸能学院」(以下、「NSC」)だったのです。 夢は叶う、それを信じて  NSCに思いきって電話したら、面接してくださるとのことで、東京都千代田区にある「神保町(じんぼうちょう)よしもと漫才劇場」に出かけていきました。当時、私は71歳でしたが、まず驚いたのは年齢制限がなく、入学条件も緩やかで、学費の支払いはあたり前ですが、あとはやる気があるかどうか、もう一つは神保町の6階建てのビルの非常階段を毎日元気に昇り降りできるかどうかというユニークなものでした。6階の事務所に毎朝挨拶に行くことが義務づけられており、学生はエレベータを使用できません。ひざの手術をしておいてよかったと思いました。  幸いにも入学が叶い、私はNSC24期生となりました。授業はダンスや発声、ネタづくりなど多岐にわたり、レベルが高く悪戦苦闘の連続でしたが、すべての経験が新鮮で、私は無遅刻、無欠席で卒業しました。  正直、NSCで学ぶところまでで十分だと思っていましたが、2019年4月に24期生の卒業と同時にデビューという夢のような機会をいただきました。デビューなど夢のまた夢であったので自分の芸名など考えてみたこともなかったのですが、同期の若い仲間たちが「『おばあちゃん』でよくない?」と声をあげてくれて、71歳のピン芸人「おばあちゃん」が誕生しました。  現在、デビュー5年目です。ネタを指導してくださる作家の先生からは、「自然体で自分の経験を話せばいいよ」といっていただき、経験から生まれたシルバー川柳を持ちネタにしています。作家の山田ナビスコさんがいらっしゃらなければ今日の自分はないと思います。  背丈より高く伸びたマイクを口元まで下げて「私が触ると点滴に見えるでしょう。マイクなんです」と、開口一番つぶやくと会場がどっと沸きます。たくさんのとびきりの笑顔に出会うために、たいへんな時代をご一緒に元気に生きていきましょうという思いを込めて、さあ、明日からも舞台に立ち続けます。 【P38-41】 シニア社員のための 「ジョブ型」賃金制度のつくり方 株式会社プライムコンサルタント 代表 菊谷(きくや)寛之(ひろゆき)  従来型のヒト基準の日本的人事制度が制度疲労を起こし、年齢や性別を問わず人材が活躍できるシンプルな雇用・人事・賃金制度に対するニーズが高まっています。最終回は、正社員の役割給と60歳以降のジョブ型賃金による定年後再雇用制度を実施した後の展開として、65歳までの定年延長さらには定年廃止につなげていく方法について解説します。 最終回 65歳定年延長とジョブ型賃金(まとめ) 1 定年後再雇用と定年延長のメリット・デメリット  前回まで、正社員に役割給を、60歳以降の定年後再雇用者にジョブ型賃金をそれぞれ導入することにより、異なる雇用形態の高齢者に、役割と貢献度を共通の評価軸とするシンプルな賃金待遇を適用する方法を説明してきました。  最終回は、より積極的な高齢者雇用の方策として、役割給およびジョブ型賃金を活用した65歳までの定年延長のすすめ方を解説します。  図表1は定年後再雇用と定年延長それぞれのメリット・デメリットを比較したものです。  周知の通り、大多数の企業は、これまで60歳定年後の再雇用制度によって65歳までの雇用義務に対応してきました。最大の理由は、それまでの正社員の年功的な賃金カーブの延長線上に高齢者を雇用したのでは、想定外の人件費のオーバー・コストを招き、賃金を切り下げないとそれ以上の雇用延長が難しかったからです。定年を境にいったん退職し、以降は有期雇用契約として役割・労働条件をリセットさせる再雇用制度の方が、働く方も気持ちを切り替えやすく、企業にとっても使い勝手がよかったわけです(連載第3回〈2023年7月号〉参照)。  他方、再雇用にともなう賃金待遇の切り下げは、高齢社員の仕事の質の低下、ひいては帰属意識や働く意欲を大きく低下させ、定年前の正社員にも悪影響がおよぶなどの弊害が多くの企業で問題となっています。また新パートタイム・有期雇用労働法(2020〈令和2〉年4月施行)が求める均衡待遇の規定に照らしても、安易な賃金待遇の切り下げは、法が禁止する不合理な賃金待遇差に問われるリスクがあります。  近年は人手不足の波が高齢者雇用にも押し寄せ、65歳定年延長にふみ切る会社がじりじりと増え続け、2022年6月1日現在、65歳定年の企業は22.2%に達しました(厚生労働省「令和4年『高年齢者雇用状況等報告』※1)。  定年延長を実施した企業の動向をみると、少子化で熟練技能や専門業務の承継者不足が問題となるなか、60歳以降の高齢社員の仕事のニーズが根強く、安定して働ける高齢者が増えればプラス効果が大きいという経営判断がうかがえます。  働く方も、65歳まで仕事も労働条件も途切れなく安定する定年延長のほうが、長年働いてきた組織への帰属意識と貢献意欲を保ちやすいというのは大きなメリットでしょう。  ところで65歳までは定年後再雇用または定年延長、定年廃止などの方法で希望者全員の雇用を確保する義務があります。一方、65歳〜70歳までの就業確保措置については、努力義務であることから、希望者全員ではなく、例えば「直近2年の人事評価がB以上」、「過去3年間の出勤率が95%以上」などの具体的・客観的な対象者基準を就業規則に規定することにより対象者を限定することができます(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)」IL※2)。 2 65歳定年延長のすすめ方  正社員の役割給と再雇用者のジョブ型賃金を活用して65歳定年延長を実施するパターンは、大きく2通りあります。一つは単純に全員同一基準で65歳定年延長を実施する方法、もう一つはある年齢以降の正社員は責任役職を離れる「シニア社員制度」を活用する方法です。  前者は年功的な賃金カーブがそれほど立っていない中堅・中小企業が、役割給の全面導入を前提として、65歳定年延長を実施する一般的なパターンです(図表2)。  まず、賃金カーブがそれほど立っていない企業の場合、役割等級別に範囲給を設定し、貢献度の高さに見合う賃金の上限規制を実施することにより、高齢社員の人件費オーバー・コストは目に見えて解消します。いったんその見通しが定着すれば、高齢者の雇用ニーズが高い会社は、比較的短い期間で役割給を受け皿とする65歳定年延長に移行できるようになります。  前回、ジョブ型継続雇用賃金表の運用事例を紹介しましたが、もともと1年ごとの契約更改をくり返す定年後再雇用は、役割・職務内容と働き方を見直し、ジョブ型の柔軟な賃金待遇を実践する方式に適しています。  無期雇用のメンバーシップ型の正社員には、さすがにジョブ型賃金はフィットしません。ただし、今後は正社員についても、組織のニーズ、そして働く人のニーズをふまえて役割・職務内容や働き方を見直す、より柔軟な個別の賃金マネジメントが求められることは間違いありません。  これからは人的資本経営の考え方が中小企業にも浸透し、事業戦略の見直しや環境変化に積極的に適応する企業が優位性を占めるようになります。そのような企業では、いわば戦略的な組織・人事運営があたり前になり、経営者は性別・年齢にかかわりなく役割の配置や職務内容を不断に見直し、ポジションにふさわしい実力人材を早期に発掘・登用することに注力するでしょう。  すでに多くの企業では従業員個々の役割と職務内容・成果責任を確認し、目標設定や業績評価、行動評価を行う仕事基準の評価制度が定着しつつあります。今後は、役割給を導入することにより、組織における仕事のポジションに基づいて貢献度を客観的に評価し、賃金待遇を段階的に調整する人材マネジメントが徐々に定着すると思われます(連載第4回〈2023年8月号〉参照)。 3 シニア社員制度を活用した65歳定年延長  他方、定年前の賃金カーブが大きく立っている中堅クラス以上の企業では、役割給を導入しても、人件費のオーバー・コストは完全には解消しないかもしれません。  その場合、次善の策として役職定年や進路選択制の継続雇用制度(厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A〈高年齢者雇用確保措置関係〉1−5、1−6参照※3)を応用し、正社員身分のなかでいったん高齢社員の賃金を切り下げる「シニア社員制度」を活用する方法も有力な選択肢といえます。図表3がそのイメージ図です。  これは55〜60歳前後を境目に、原則として高齢社員全員が部長・課長などの責任役職※4を離脱し、65歳までシニア社員(名称は任意)として高度専門職または非役職の一般従業員にコース変更させ、65歳まで雇用を継続する方法です。  正社員身分の間に新たな役割と職務内容に転換して賃金待遇を切り下げ、定年前の人件費のオーバー・コストを一定程度減らしておきます。そのうえで65歳以降の再雇用制度を導入すれば、正社員と定年後再雇用者との間の賃金ギャップも少なくなり、同一労働同一賃金にも対応しやすくなります。なお責任役職や通常の正社員に対しシニア社員の賃金を切り下げる根拠については、図表4の(5)(6)(7)を参照してください。  部長・課長などの責任役職に対しては、役職の任期を一定年限で区切り、事業成長のための機動的な組織運営に基づく適正配置・人材活用を徹底し、成果責任を明確にした実力主義の人事処遇を行います。  責任役職を離脱させるにあたっては、新たな役割を付与するリスキリングと再配置を進め、それまでの経験・専門知識や熟練技能、人的ネットワークを会社が必要とする専門分野やフロントラインで発揮させます。後継者の業務支援やOJTなどの後方支援にとどまらず、顧客リレーションや外部ネットワークを活かした商品開発や外部調達、技術導入、新業態開発、業務の内製化など、できるだけ具体的な成果の上がるテーマに貢献させることが肝要です。  事業戦略に連動して、具体的な成果を上げる組織運営と人事が徹底できるようになれば、現実に高齢社員の役割給がオーバー・コストにならないレベルに事業の収益力を向上させることも不可能ではありません。そうなれば、シニア社員制度に頼らなくとも、一律の役割給に基づく65歳定年制に移行することも可能になります。 4 定年制の廃止を視野に  以上のように、役割給や再雇用のジョブ型賃金が徐々に定着すれば、メンバーシップ型の雇用・人事のもとでも役割・職務内容や働き方の見直し、弾力的な賃金待遇がいわばあたり前のものに近づき、日本でもジョブ型に近い開放的な組織風土が浸透する可能性があります。  そうなれば正社員と定年後再雇用の境目も意味が薄れ、定年制を廃止し役割給を全面導入する段階に移れるかもしれません。  ご承知のように、アメリカやイギリスでは年齢による雇用差別が禁止され、日本のような定年制はありません。ただし定年がないといっても、いつまでも働きたいだけ働けるというニュアンスではなく、明確な成果責任と実績評価に基づく雇用・賃金管理が行われ、企業も外部から新たな人材を積極的に採用するので、つねに人材が入れ替わります。外部基準による雇用人事管理を通して役割・職務内容や業績に応じた市場価値による賃金待遇が浸透し、結果として職種・地域の世間相場に準拠したフラットな賃金カーブになるのです。  一般の日本企業が、アメリカやイギリスのような職務給に基づく完全なジョブ型雇用になることは将来もないと思いますが、今後は人手不足がますます進行するなかで、メンバーシップ型とジョブ型が混在した多様な雇用・人事管理へと諸制度が変化していくでしょう。  特に専門人材を外部から採用する動きは活発化し、少なくとも年功賃金を基軸とするメンバーシップ型の雇用・人事を唯一あるいは最優先とする考え方は徐々に解体されていきます。  これからは、世代やいまだ一部にみられる男女の性別役割分担を超えて、社会が必要とする仕事の機会が、広くオープンに提供され、働く人たちがいっそう活躍しやすい、開放的な雇用と賃金処遇の仕組みを探求していかねばならないと思います。 ★本連載の第1回から最終回までを、当機構(JEED)ホームページでまとめてお読みいただけますhttps://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/series.html ※1 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29133.html ※2 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000745472.pdf ※3 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/ ※4 部長・課長、グループ長、チーム長などの単位組織の成果責任をにない、部下を統括するマネジメントの責任者。役職離脱後は、直接の担当組織や部下を持たず、組織マネジメントを行わない高度専門職やスタッフ職に就くことは妨げない 図表1 定年後再雇用と定年延長のメリット・デメリット 定年後再雇用 定年延長 定年 60歳 65歳 65歳までの雇用形態 嘱託などの有期雇用契約 1年有期雇用を原則として反復更新 正社員 期間の定めなし・無期雇用 勤務形態 フルタイム勤務またはパートタイム勤務 フルタイム勤務(ただし育児・介護などの短時間勤務制度あり) 前提 ・定年前の賃金待遇に比べ高齢社員の貢献度が低く、生産性の高い仕事が用意しにくい ・定年後は賃金待遇を切り下げないと人件費のオーバー・コストを招く ・60歳以降の高齢社員が活躍できる仕事のニーズが十分ある ・定年を延長し活躍できる高齢者が増えれば経営プラス効果も大きい メリット ・定年を境に有期雇用に転換、役割・労働条件・意識をリセットしやすい ・職務内容や働き方など個別事情に対応し、賃金待遇を軽量化しやすい ・65歳まで途切れなく組織的な帰属意識と貢献意欲を保ちやすい ・高齢社員の変わらない活躍が期待できる ・複雑な制度の使い分けが不要 デメリット ・定年を境に仕事の質が低下、帰属意識も働く意欲も低下する高齢社員が多い ・正社員との均衡待遇の観点から不合理な賃金の待遇差が問題となるリスクがある ・定年まで変わらない活躍を求め、正社員として同一の労働条件を適用するため人件費が肥大化しがち ・若年・中堅層の成長機会や活躍の場を奪うリスクがある c 株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載 図表2 役割給の全面導入による65歳定年延長のイメージ (金額) (年齢) 60歳 65歳 70歳 役割給の上限・下限イメージ Y(部長級) X(課長級) 貢献の差 (SABCD) W(係長級) V(主任級) U(非役職) T(非役職) 役割の違い (役割等級) 役割給の昇給・昇格 モデルカーブのイメージ(役割と貢献度により賃金カーブが分岐) ・実力主義の人事を柔軟に行い、適正配置により組織の戦闘力を維持する ・昇降格にメリハリをつけ、属人的・身分的な待遇から脱皮する 部長モデル 役職・配置の随時見直し 課長モデル 係長モデル 主任モデル 非役職モデル 正社員と継続雇用に同一の役割給体系を適用 (対象者を限定) 定年後再雇用賃金(ジョブ型賃金待遇) 契約更改 同一労働同一賃金に抵触しない設定 定年 雇用確保措置 定年後再雇用 就業確保措置 c 株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載 図表3 役割給とシニア社員制度を活用した65歳定年延長のイメージ (金額) (年齢) 60歳 65歳 70歳 役割給の上限・下限イメージ Y(部長級) 貢献の差 (SABCD) X(課長級) W(係長級) V(主任級) U(非役職) T(非役職) 役割の違い(役割等級) 65歳まで正社員だが、高齢者はシニア社員に区分 65歳以降は再雇用制度を適用 ・役職定年等による責任役職の離脱を厳格に実施する ・シニア社員の期間は退職金増加を半減させる等の措置も可能 部長モデル 責任役職を離脱→専門職へ 旧係長モデル 課長モデル 係長モデル(標準評価) 係長モデル(低評価) 主任モデル 一定年齢〜定年までシニア社員として、役割を見直し待遇を下げる 正社員、シニア社員、再雇用ともに同一の役割給体系を適用 役割・貢献度に基づく弾力的な賃金待遇 (対象者を限定) 契約更改 定年後再雇用賃金(ジョブ型賃金待遇) 定年 同一労働同一賃金に抵触しない設定 シニア社員 雇用確保措置 就業確保措置 c 株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載 図表4 定年後再雇用と65歳定年延長の賃金待遇の取扱い 65歳までの取扱い 60歳定年・定年後再雇用 65歳定年延長 全員同一基準 (図表2) シニア社員制度 (図表3) 職務内容、役職 定年後も同一の職務内容または新たな職務内容に変更(1) 原則として定年まで職務内容は無限定 一部専門職は職務限定正社員制度あり(3) 60歳以降シニア社員は原則として責任役職を離脱し新たな職務内容に変更(5) 配置・異動 定年後も配置異動の範囲は同一または勤務地・職種などを限定(2) 原則として無限定 一部勤務地限定社員制度あり(4) 60歳以降シニア社員は勤務地・職種等を限定(6) 賃金制度 定年後再雇用賃金(本連載はジョブ型)…上記(1)(2)および「定年後再雇用」などそのほかの事情に応じて賃金を減額 定年まで正社員の賃金制度をフル適用 (3)(4)の事情に応じ例外措置あり シニア社員賃金…正社員の賃金制度に準じ、上記(5)(6)の事情に応じて減額 均衡待遇の規定 (パートタイム・有期雇用労働法第8条 不合理な待遇の禁止) 60歳定年前正社員と定年後再雇用との賃金の不合理な待遇差を禁止 65歳定年前正社員と定年後再雇用との賃金の不合理な待遇差を禁止 ・シニア社員を含め正社員同士の賃金の待遇差は均衡待遇の対象外(7) ・65歳定年前正社員(シニア社員含む)と定年後再雇用との賃金の不合理な待遇差を禁止 c 株式会社プライムコンサルタント 禁無断転載 【P42-45】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第65回 年次有給休暇に対する時季変更、労働条件通知書の記載事項変更と定年後再雇用対応 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 Q1 年次有給休暇の時季変更をする際の留意点が知りたい  シフトを組む際に、複数の労働者から有給休暇の申請を受けたところ、臨時の業務や当日見込まれる業務量からすると、すべての有給休暇を受け入れるわけにはいかなかったため、有給休暇の取得時期を変更して、シフトを組みました。有給休暇を変更された労働者が不満を持っているようなのですが、対応に問題があったのでしょうか。 A  労働者の有給休暇取得は権利として認められているため、原則としてそのまま受け入れなければならず、変更するためには業務の正常な運営に支障があるといえなければなりません。また、その判断にあたっては、合理的な期間内に、遅くとも有休取得日よりも相当期間前までに行うべきと考えられます。 1 年次有給休暇について  労働者には、6カ月以上継続勤務し、かつ、その出勤率が8割を超えている場合には、年次有給休暇を取得する権利が付与されます(労働基準法第39条)。所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の時短勤務である場合には、その所定労働日数に応じて比例的に付与する必要があります。  この年次有給休暇の取得については、原則として、労働日よりも前に取得する日を指定した場合には、使用者はこれに応じて、労働者に休暇を取得させなければなりません。  使用者には、例外的に有給休暇の取得日を変更することができる権利が与えられており、「時季変更権」と呼ばれています。時季変更権が認められるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」にかぎられており、この要件についても過去の裁判例においては、厳格に解釈される傾向にあります。 2 時季変更権に関する裁判例  有給休暇を取得する権利に関する過去の判例を、いくつか整理しておきます。  まず、有休取得に使用者の承認が必要かという点については、「労働者がその有する休暇日数の範囲内で、具体的な休暇の始期と終期を特定して右の時季指定をしたときは、客観的に同条三項但し書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解するのが相当である」(最高裁昭和48年3月2日判決、白石営林署事件)とされており、使用者の承認がなくとも、有給休暇の取得日を指定されたときには、そのまま労働義務が消滅するとされています。  また、有給休暇の取得に理由が必要かという点について、「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である」(最高裁昭和48年3月2日判決、国鉄郡山工場賃金カット事件)と判断されているため、利用目的によって取得を認めるか否かを決めることもできません。  また、労働者が有給休暇取得を指定した場合は、「使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる」として、使用者に配慮義務を課しており、シフトを割り当てられた日に有給休暇を取得する場合についても、「勤務割によつてあらかじめ定められていた勤務予定日につき休暇の時季指定がされた場合であつてもなお、使用者は、労働者が休暇を取ることができるよう状況に応じた配慮をすることが要請されるという点においては、異なるところはない」(最高裁昭和62年7月10日判決、弘前電報電話局事件)とされています。同事件では、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かの解釈についても、「使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である」と判断しています。 3 最近の裁判例紹介  有給休暇取得に関して、近年も最高裁判例の内容をふまえた判断がされています。  東京地裁令和5年3月27日判決(JR東海(年休)事件)においては、シフト制の勤務体制のなかで、臨時対応用のシフトを予定された労働者が有給休暇の取得を求めたところ、使用者がこれを拒んだことから、その時季変更権行使の違法性が争われました。  時季変更権における配慮が尽くされていないことが、賠償責任に結びつくか否かに関して判断しましたが、弘前電報電話局事件の最高裁判例を踏襲しつつ、「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断を誤ったとしても、それだけでは配慮義務違反がただちに債務不履行にあたると認めることはできないと判断しました。  他方で、請求した有給休暇取得の直前まで時季変更権が行使されないことが、使用者の義務違反であるかについて判断された点は、本件における特徴といえます。裁判所は、「時季変更権の行使時期について労基法その他の関係法令に特段の規定が置かれていないことを考慮しても、使用者が事業の正常な運営を妨げる事由の存否を判断するのに必要な合理的な期間を超え、指定された時季の直前まで時季変更権の行使を行わないなどといった事情がある場合には、使用者による時季変更権の行使が労働者の円滑な年休取得を合理的な理由なく妨げるものとして権利濫用により無効になる余地があるものと解される」と判断しています。  そのため、使用者の立場からすると、事業の正常な運営を妨げる事由の存否を判断するのに必要な合理的期間内に、かつ、遅くとも労働者が時季指定した日の相当期間前までにこれを行使することが必要となります。また、これが適切に行われたか否かについては、労働者の担当業務、能力、経験および職位など、並びに使用者の規模、業種、業態、代替要員の確保可能性、使用者における時季変更権行使の実情およびその要否といった事情を総合的に考慮して判断するとしています。  当該事案において、裁判所は、JRによる新幹線の運行について社会経済上の要請があることなどをふまえつつも、時季変更権の行使は、判断するのに必要な合理的期間を超えていたものとして、使用者の過失による義務違反(債務不履行)であると判断しました。  そのほか、労働者からは、恒常的な人員不足を理由とする時季変更権の行使は許されないとの主張もなされており、裁判所は、「使用者が恒常的な要員不足状態に陥っており、常時、代替要員の確保が困難な状況にある場合には、たとえ労働者が年休を取得することにより事業の運営に支障が生じるとしても、それは労基法39条5項ただし書にいう『事業の正常な運営を妨げる場合』に当たらず、そのような使用者による時季変更権の行使は許されないものと解するのが相当である」と判断され、被告が恒常的な要員不足の状態のまま時季変更権を行使したことも債務不履行に該当するものとされました。恒常的な要員不足に陥っている場合は、使用者による有給休暇に関する時季変更権を行使できなくなるおそれもあることを示しているため、有給休暇の取得が可能となる人数を確保しておくよう注意が必要です。 Q2 2024(令和6)年4月1日から施行される、労働条件通知書記載事項の変更とは何ですか  労働条件通知書の記載事項が変更になるにあたって、定年後再雇用時の記載について、留意すべき事項はあるでしょうか。 A  更新に関して上限の記載を行うか否かという点や無期転換権が生じないのであれば、その旨を記載することを検討しておくことが望ましいと考えられます。また、給与体系の変更がある場合には、その期待される役割や業務内容についても記載しておくことが適切でしょう。 1 労働条件通知書の記載事項変更  2024年4月1日以降、労働基準法において求められている労働条件通知書の記載事項が変更されます。  おもな項目としては、無期転換ルールに関する事項を含めた労働条件明示事項の追加、裁量労働制に関する改正などが予定されていますが、高年齢者雇用との関係において留意すべきポイントを整理しておきたいと思います。  追加が必要となる記載事項は、@通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限、A就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲のほか、B無期転換申込機会の明示や無期転換後の労働条件の明示となっています。  定年後再雇用を行う場合は、基本的には有期労働契約を締結することになるため、@の通算契約期間または有期労働契約の更新回数の上限を記載する必要があります。例えば、65歳定年後、70歳までを上限として1年ごとの有期労働契約を予定している場合には、通算契約期間として5年間と記載するか、更新回数上限として4回と記載しておくことが適切でしょう。  また、Bに関連して、無期転換申込機会の明示については、使用者において第二種計画認定※の手続きを終えているのであれば、無期転換申込権自体が発生しないため、その機会の明示自体も必要はないと考えられますが、労働者の立場をふまえると無期転換申込権が発生しない旨を明記しておく方が望ましいでしょう。他方、第二種計画認定の手続きを終えていない場合には、5年を超えて締結する際には、無期転換申込機会を明示する必要があります。記載例としては、「本契約期間中に会社に対して期間の定めのない労働契約(無期労働契約)の締結の申込みをしたときは、本契約期間の末日の翌日から、無期労働契約での雇用に転換することができる」といったものがモデル労働条件通知書として公表されています。定年後再雇用者が無期転換権を行使した場合、定年による労働契約の終了が生じることはなくなるため、本人の就労意思が続くかぎり、または解雇事由が生じないかぎりは、労働契約が存続し続けることにもつながる可能性があります。必要であれば、第二種計画認定の手続きを終えておくか、無期転換後65歳以降の第二定年も用意しておくなど、自社の想定している雇用維持の方法をふまえて、就業規則も整備しておくことが重要でしょう。 2 就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲  追加された記載事項としてA就業の場所および従事すべき業務の変更の範囲があります。従前から、就業の場所自体は記載事項とされていましたが、これが、当初就業する場所を意味しているのか、配置転換の可能性を制限する就業場所制限の合意としての位置づけであるのか曖昧になっており、訴訟においても争点になることがしばしば生じています。  就業場所制限の合意として認められる場合には、使用者から配置転換や転勤などを命じることもできなくなることから人員配置の柔軟性を確保することはできなくなります。一方で、転勤することをふまえて基本給やそのほかの手当などを予定していた場合には、就業場所制限の合意があるのであればそのような処遇を行う理由もなくなるといえます。  これまでは、就業場所に記載されているだけでは、特段の事情がないかぎりは、就業場所制限の合意ではなく、当初の就業場所を明示したにすぎず、就業規則に配置転換などの規定があるかぎりは、使用者が配置転換や転勤を命じることはできると考えられることが多かったといえます。しかしながら、今後は、就業場所の変更の範囲を明記することが求められるため、変更の範囲について記載がされていない場合には、使用者の配置転換などの権限はないと判断される可能性は高まるといえるでしょう。このことは、業務内容の変更の範囲にも同様のことがいえます。  定年後再雇用を行うこととこれらの就業場所および業務内容の変更の範囲について記載を要することの関連性はどこにあるかというと、定年前と定年後の働き方による同一労働同一賃金の判断要素となるという点にあります。定年後再雇用であるにもかかわらず、就業場所や業務内容を変更する余地が大きいままで正社員のときと変更されていないようであれば、賃金を減額する理由が乏しいということになります。定年後の雇用条件については、正社員であった当時の労働者自身の労働条件と比較される場合もあり、特に注意が必要でしょう。他方で、正社員との相違を明確化しておくことができれば、そのことが同一労働同一賃金でないことを説明するための合理的な理由になります。  先日、定年後再雇用における賃金減額に関して、最高裁は、名古屋自動車学校事件(最高裁令和5年7月20日判決)について、正社員と高齢者の基本給や賞与の性質の検討が不足しているとして名古屋高等裁判所へ差し戻しました。このことは、最高裁が、同一労働同一賃金の判断に関して、賃金の性質や支給の目的を重要な要素としていることを示しています。労働条件通知書における、就業場所および業務の内容の変更の範囲を明記することは、賃金の性質などを判断するにあたって重要な事情になるはずです。加えるならば、基本給の支給額に関する計算要素や手当の目的など給与体系に変更がある場合は、その説明も加えておくことで、賃金などの性質を明らかにし、合理的な説明であると労働者が理解できるように準備しておくことも視野に入れておくべきでしょう。 ※適切な雇用管理に関する計画書を作成し、都道府県労働局長の認定(第二種計画認定)を受けた事業主の下で、定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者(継続雇用の高齢者)については、無期転換ルールの特例として、その事業主に定年後引き続いて雇用される期間は、無期転換申込権が発生しない 【P46-47】 スタートアップ×シニア人材奮闘記 株式会社Photosynth(フォトシンス)取締役 熊谷(くまがい)悠哉(ゆうや)  起業したばかりのスタートアップ企業においては、はじめてのことばかりで経営や事業にはうまくいかないことや課題にぶつかることが数多くあります。そこで、「スタートアップ企業にこそ、経験豊富で実務のノウハウを持ったシニア人材が必要」という声もあり、実際に、その経験を活かしてスタートアップ企業で働く高齢者も増加しています。  このコーナーでは、スタートアップ企業に必要なシニア人材をどう見出し、活用し、活躍に結びつけていくかについて、実際にスタートアップ時にシニア人材(深谷(ふかや)弘一(ひろかず)さん)を採用し、現在も活躍中である、株式会社Photosynthの熊谷悠哉取締役に、当時をふり返りながらシニア人材活用のポイントについて語っていただきます。 第5回 多様なシニア人材をさらに受け入れ企業風土を形づくる ものづくりとは何かが、自然に身につくシニア人材の教育力  前回まで、深谷さんというシニア人材が開発や調達などの現場で、持っているさまざまな知見や高い情報感度を活かして活躍している様子をお伝えしました。今回は深谷さんをはじめとしたシニア人材が当社の人材育成におよぼした影響や、シニア人材が活躍できる企業文化などについてお話ししたいと思います。  まず人材育成の制度として定着しているのは年1回程度開催する新卒者研修で、深谷さんに日本のものづくりの歴史や文化などを語ってもらう、というものです。  創業当時のメンバーは私以外はメーカー出身ではなく、製造の現場にいた経験がありません。IT系を中心として、いろいろな業界から集まっていたのですが、当社は量産品を販売するメーカーでもありますので、「工場って何をやっているんだろう」という認識では困ります。そこでものづくりについて学ぶ機会が必要になるのですが、これまでいろいろな製品をつくってきた深谷さんの言葉で語ってもらうことには、私自身がメーカーで得た経験をお話しするのとはまた異なる重みがあるに違いないということで、お願いしています。  これはエンジニアにかぎらず営業職なども含めた新卒者全員が受講することになっていて、ものづくりに対する姿勢や考え方などについて、何か伝わるものがあるのではないかと思っています。  しかし、深谷さんにとって新卒者研修はあくまで年1回のイベントです。むしろ普段の業務を通して、いろいろと気づいたことをアドバイスしてもらったり、来社した際のちょっとした雑談でものづくりについてお話を聞いたりするなかで、「ものづくりとは何か?」が、自然に社員たちに浸透していったのではないかと思います。 気がつけば多様なシニア人材が成長を支えている  ここまで深谷さんに焦点をあてて紹介してきましたが、当社では中途採用を積極的に行ってきたので、採用当時からシニア人材として活躍している方もいれば、当社で働きながら50代になった方など、深谷さん以外のシニア人材も多く在籍されるようになってきました。なかにはいわゆる大手メーカーで長年ものづくりにたずさわってきた方や、ハードウェア設計をずっとやってきた方などもいます。そうした方々も当社のものづくりの基盤をより強固にするために、よい影響を与えてくださいました。  また、当社はものづくりにかかわっていた方にかぎらず人材を採用しています。出身業界の多様性が高く、メーカーとは異なる業界を経験してきたメンバーの比率がとても高くなっていて、法人向けのWebサービスを提供しているという特性もあることから、IT企業出身の営業やカスタマーサクセス部門もありますし、法務や財務も必要です。さまざまなスペシャリストが集まることで醸成された、企業文化があります。  メンバーのバックグラウンドが多様だからこそ、幅広い年齢層を受け入れることができるという側面もあると思います。スタートアップ時からそういう方向で進んできたので、どんなに経験豊富な方でもすんなり受け入れて、違和感を感じずに仲間として一緒に歩んでいくことで、その方の持っている知見や人脈などを十分に引き出し、当社の成長に貢献していただくことができたのだと思います。 採用はカルチャーフィットが重要  当社が幸運だったのは、創業1カ月目の20代のメンバーしかいないようなタイミングで、当時70代の深谷さんと出会えたことだと思います。  立ち上げ当初は同じ年代で同じ価値観を持つメンバーと、貪欲に学びながら何でもやってみるというスタイルで活動していました。  そこにいきなり深谷さんが仲間となり、年齢に驚く一方で、ものづくりへの情熱や新しい技術を学び続ける姿勢に深く共感しました。また、MVNO※1が提供する格安SIMを契約し、ブロックチェーン※2を使った新しいサービスを楽しみながら使いこなしている様子には共感を超えて衝撃すら覚えました。このような価値観の共通点があるからこそ、プロダクトビジョンの共感が生まれ、サービス開発中の活発な議論につながったのだと思います。  この経験から、出身業界や年齢にとらわれない多様な組織体制ができ上がり、創業10年目を迎えることができました。  数年前に中途採用で入社した40代のメンバーが、象徴的なエピソードを話してくれました。彼が初めて出社した日に、社員しか入れない執務室に深谷さんが若い社員に混じって業務を行っていて「このおじいちゃんは何なんだ?」と驚いたそうです。しかも周りの社員も何の違和感もなく、深谷さんは20代のエンジニアや40代の社員たちと仕事をしていました。それを見た彼は「スタートアップと聞いていたが、思っていたのと違って年齢層が幅広い」と感じたそうです。  同僚として重要なのは、年齢よりも、プロダクトへの価値観や仕事に取り組む姿勢といったカルチャーフィットなのだと思います。 つづく ※1 MVNO……仮想移動体通信事業者。移動体通信事業者(NTTドコモなど)からネットワークを借りて通信・通話を提供する事業者のこと ※2 ブロックチェーン……情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種 写真のキャプション 深谷さんによるものづくりセミナーの様子(写真提供:株式会社Photosynth) 【P48-49】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第39回 「両立支援」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  両立支援とは、「両方とも支障なく成り立つように支援すること」をいいます。本稿では、政府や企業が取組みを促進している、仕事と育児・介護の両立について取り上げたいと思います。 両立支援は社会・企業・個人にとってメリットがある  まず、個人の事情ととらえられがちな「仕事」と「育児・介護」について、政府や企業がなぜ両立を支援する必要があるのかについてみていきます。  「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」※1に両立支援に取り組む意義について記載があります。そのなかでは、「少子高齢化により人口減少が加速化するなかで、社会経済の活力を維持・向上させるためには、生産性の向上を図るとともに、多様な人材が働き続けられることが必要」としています。なかでも離職理由として大きい育児や介護の事情が発生しても、労働者の希望に対応しつつ就業を継続できる制度や環境整備といった両立支援を行うことで、社会や企業としては労働力の確保、本人としては望むキャリア形成ができるとしています。  政府や企業が両立支援を推進することは、出生率の減少(2022〈令和4〉年で過去最低)、生産年齢人口※2の減少(1995〈平成7〉年をピークに毎年減少)や価値観の多様化(家庭事情・年齢に関係なく働きたいなど)といった現状を考慮すると、社会・企業や本人のいずれにも大きなメリットがあるといえます。 政府の取組み  次に、政府と企業の具体的な取組み内容についてみていきます。政府としては、「関連法」、「認定制度」、「助成金」の三つの観点から両立支援を推進しています。関連法については、「育児・介護休業法」が1991年に成立していますが、2021年6月にさらに両立支援を推進する改正を行っています。おもな改正点として、男性の育児参加を後押しするために「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」が創設され、1歳までの育児休業とは別に産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて休業できるようになりました。また、育児休業を取得しやすくするために、原則1回までしか取得できなかった1歳までの育児休業についても、男女ともそれぞれ2回まで取得することが可能となりました。  認定制度については、企業に両立支援を推進する動機づけを図るために、おもに次のような認定を行っています。 ・えるぼし認定…女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度。認定の段階は3段階で、より高い要件を満たしている場合は、プラチナえるぼし認定を受けることができる。 ・くるみん認定…「子育てサポート企業」として認定する制度。くるみん・プラチナくるみん・トライくるみんの三つの認定がある。  助成金については、2023年度時点で両立支援等助成金として次のものが設けられています。 ・出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)…男性労働者が育児休業を取得しやすい雇用環境や業務体制整備を行い、産後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得させた中小企業事業主に支給。 ・介護離職防止支援コース…「介護支援プラン」を策定し、円滑な介護休業の取得・復帰に取り組んだ中小企業事業主などに支給。 ・育児休業等支援コース…育児休業の円滑な取得・職場復帰のための取組みを行った事業主に支給。 企業の施策  企業の取組みとしては、義務化されているものとして次のものがあります。 ・一般事業主行動計画の策定・届出※3…事業主が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むにあたって、@計画期間、A目標、B目標を達成するための対策の内容と実施時期を具体的に盛り込み策定するもの。 ・ハラスメント防止措置の実施…育児・介護休業法が対象とする制度の利用を理由とした解雇や不利益取扱いなどのいやがらせの言動や、制度利用を阻害する言動などに対して防止措置を講ずること。  義務化されていない取組みとして代表的なものとしては、先述の認定制度の取得(企業のイメージの向上メリットあり)のほか、テレワークやフレックスタイム制度の導入、法で定める期間を超えた休暇制度・短時間勤務制度の充実、1時間単位の有給休暇の取得など、育児や介護の事情に対応しやすい就業制度の導入があげられます。具体的な内容については、東京都産業労働局の「家庭と仕事の両立支援ポータルサイト」※4の取組事例・両立体験談が参考になると思いますので、ご参照ください。 両立支援の今後の課題  両立支援ですが、まだまだ課題はあります。一つは制度が十分に使われていない点です。例えば、「令和3年度雇用均等基本調査」結果※5によると、2021年度の育児休業取得率は女性85.1%に対して、男性は14.0%の状況です。しかも取得期間は女性は12カ月〜18カ月未満が最も多いのですが、男性は5日〜2週間未満が最も多い状況です。介護についても、「令和元年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」※6によると、直近1年間における家族の介護をおもな理由として退職した従業員の割合8.4%のうち、退職前の介護休業制度の利用者は22.8%、介護休業以外の両立支援制度の利用者は10.9%にすぎません。これらの理由としては、職場(特に上司)の理解不足、会社の周知不足、休業中の収入への不安などがあげられます。  もう一つの課題としては、介護に関する両立支援がまだまだ十分でない点があげられます。育児・介護休業法の近年の改正のメインは育児関連であり、また先述の厚生労働省委託調査でも、介護のために勤務先の制度を利用しなかった理由として、そもそも「介護休業制度等の両立支援制度が整備されていなかったため」が35.5%(現在正社員回答)と最も多い状況です。今後、仕事と介護の両立が必要となる従業員は増加していくことが想定されるため、仕事と介護の両立支援の充実が望まれます。  次回は、「HRDX」について解説します。 ※1 厚生労働省『今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書』(2023年6月) ※2 生産年齢人口……生産労働を中心となって支える15歳から64歳の人口 ※3 「次世代育成支援対策推進法」により従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務化 ※4 https://www.katei-ryouritsu.metro.tokyo.lg.jp/ ※5 厚生労働省『令和3年度雇用均等基本調査』(2022年7月) ※6 厚生労働省委託事業『令和元年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業報告書』(2022年3月) 【P50】 日本史にみる長寿食 FOOD 359 猿酒(さるざけ)こそ不老長寿の大ヒント 食文化史研究家● 永山久夫 満月の夜の猿酒うまし  日本各地の山国には、古くから「猿酒」の伝説があり、これが面白いのです。  山奥に生息する猿は、秋になると満月の夜に、よく熟した山ブドウを木の穴に詰め込んで発酵させ、次の満月の夜にやって来て、酒盛りをするというものです。  満月の明るい夜を選ぶのは、時間の目印にするためで、1カ月くらいでちょうど飲みごろになるそうです。  その天然発酵の酒を飲むと、不老長寿まちがいなしと伝えられていますが、猿に見つかると殺されてしまうというから恐ろしい酒です。  たしかに、よく熟れた山ブドウのように、甘味の強い果実でしたら、集めて木や岩の穴などに入れてつぶし、放置しておくだけで、野生の酵母が付着して自然に発酵し、アルコールになります。  事実、いまから3000 年ほど前の縄文遺跡から出土した樽型の土器の底からは、山ブドウの種子が発見されています。縄文人がブドウ酒≠つくって、楽しんでいたのではないでしょうか。 レスベラトロールで不老長寿  ブドウというと日本では山梨県が有名ですが、平安時代から栽培がはじまったという説があり、江戸時代の『本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)』には、「甲州(こうしゅう)(山梨県)のブドウが味もよく、量的にもたくさん江戸の町で販売されている」と記されており、秋になるとよく食べられていたようです。  ブドウはヨーロッパやエジプトなどでは5000年以上も前からつくられており、世界最古の栽培果実といわれています。日本には、先ほど申しましたように、平安時代に中国を経由して入ってきたようです。  猿酒のように、皮ごと発酵させる赤ワインには、抗酸化成分のレスベラトロールと呼ばれる成分が多く、これがいま世界中で不老長寿のサプリ≠ニして脚光を浴びています。  私たちの体の細胞の命を延ばす「サーチュイン遺伝子」を活性化させて、長寿に役立つという説が出てきたからです。特に、黒紫色のブドウの皮に豊富に含まれていることが分かっています。ブドウを上手に食べて人生100年時代を楽しみましょう。 【P51】 心に残るあの作品≠フ高齢者  このコーナーでは、映画やドラマ、小説や演劇、音楽などに登場する高齢者に焦点をあて、高齢者雇用にかかわる方々がリレー方式で、「心に残るあの作品の高齢者」を綴ります 第5回 小説『真理(しんり)先生(せんせい)』 (著/武者小路(むしゃのこうじ)実篤(さねあつ) 1952年) 株式会社シニアジョブ広報部部長 安彦(あびこ)守人(もりと)  武者小路実篤の小説『真理先生』には、真理先生のほか、初老から高齢と思しき人物が、語り手の「僕」(山谷(さんや))、画家の馬鹿一(ばかいち)(石かき先生)、同じく画家の白雲子(はくうんし)、白雲子の弟で書家の泰山(たいざん)と5人登場します。  真理先生は、じつは主人公ではなく、石や雑草ばかり描く才能が微妙な高齢の画家・馬鹿一が本作の主人公。デッサンなどの基本も無茶苦茶、人物的にも変人、風采もよくなく金もない。そんな馬鹿一は、山谷が真理先生に引き合わせたことがきっかけでほかの人にも出会い、石だけでなく人の美にも向き合い、自身の絵を高めます。馬鹿一だけでなく、作中ではほかの高齢男性陣、そして若い人物も何らかの気づきを得て成長しています。  登場人物がみんな誠実な善人で真摯に成長する様子は、白樺(しらかば)派らしい人間を美化し過ぎる描写にも思えますが、個人的に真理先生が述べる「真理」は、永久不変の真実ではなく「誠実な姿勢が人にとってもっとも大切」というメッセージに思えます。ずっと貫くべき人の基本姿勢だからこそ、成長のイメージが少ない高齢者の成長が描かれるのでしょう。  イメージは少ないものの、現代の高齢者の就職でも知識習得や成長は重要です。定年までに積み上げたスキルや資格も大事ですが、真摯に新しいことを学ぶ姿勢が評価される場面を、私たちシニアジョブの就職支援ではよく目にします。  本作にはもう一つ、現代の高齢者の仕事への学びがあります。真理先生も語り手の山谷も仕事らしい仕事はしていませんし、実篤作品全般でお金儲けは重要視されませんが、真理先生の自身の知識や信念を人に教え導く姿、それはコンサルタントや企業の顧問にも通じるものではないでしょうか。主要人物を引き合わせる山谷も、さながら企業の人脈構築を担当する「コネクタ」のようです。真理先生や山谷も新たな学びを得ているように、これらの職種もまた、過去の実績や知識のみでなく、新たなインプットが不可欠です。  馬鹿一の絵のモチーフは、石や雑草→人形→杉子→愛子と変化しますが、序盤で嫌がり終盤で自らモチーフとなった愛子が最高峰で、途中がステップなのではありません。真理先生が「自己も生き、他人も生き、全体も生きる、それが真理の道であります」と講じたように、馬鹿一とそのモチーフも互いやほかの登場人物とよい影響を与え合い、よい影響が循環した形といえるでしょう。 写真のキャプション 武者小路実篤『真理先生』(新潮文庫刊) 【P52-53】 令和5年度 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 高齢者雇用に取り組む、事業主や人事担当者のみなさまへ  令和3年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が努力義務化されて約2年が経過し、高齢者の戦力化について各企業の人事担当者の関心がさらに高まっています。本年度は、特に関心の高い「職場コミュニケーション」、「ウェルビーイング」、「キャリア・リスキリング」、「評価・賃金制度」をテーマとして4回にわたり開催いたします。講演や事例発表、パネルディスカッション等を実施しますので、みなさまのご参加をお待ちしています。 コミュニケーション 「人的資本経営における職場コミュニケーション〜Z世代からポスト団塊世代まで」 日時 令和5年10月12日(木)14:00〜16:35 〈プログラム〉 【総論】 亀田高志氏 株式会社健康企業代表、医師、労働衛生コンサルタント 【事例発表】 西川あゆみ氏 WorkWay 株式会社 取締役会長、CEAP, MRI、一般社団法人国際EAP 協会 日本支部 理事、NPO法人 メンタルレスキュー協会 理事 西川幸孝氏 株式会社ビジネスリンク代表取締役、株式会社物語コーポレーション社外取締役 前川孝雄氏 株式会社FeelWorks 代表取締役、青山学院大学兼任講師 【パネルディスカッション】 コーディネーター 亀田高志氏 パネリスト 事例発表企業3社 【視聴者からの質問回答】 【総括】 亀田高志氏 10月12日専用申込みページ(外部サイト) 女性社員のウェルビーイング 「女性社員のウェルビーイング向上〜エイジレスなキャリアと健康支援」 日時 令和5年10月19日(木)14:00〜16:35 〈プログラム〉 【総論】 芥川奈津子氏 さんぎょうい株式会社代表取締役社長 【事例発表】 小島玲子氏 株式会社丸井グループ取締役CWO(Chief Well-being Officer)専属産業医 東川麻子氏 株式会社OH コンシェルジュ代表取締役 【組織における課題】 亀田高志氏 株式会社健康企業代表、医師、労働衛生コンサルタント 【パネルディスカッション】 コーディネーター 芥川奈津子氏 パネリスト 事例発表企業2社 【視聴者からの質問回答】 【コメント】 亀田高志氏 【総括】 芥川奈津子氏 10月19日専用申込みページ(外部サイト) 全会場 参加方法:ライブ視聴(※事前申込制・先着500名) 参加費:無料 申込み方法 以下のURLへアクセスし、専用フォームからお申し込みください。 https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html リスキリング 「50歳からのキャリア開発・支援、リスキリング〜シニアの活躍に向けて」 日時 令和5年10月27日(金)14:00〜16:45 〈プログラム〉 【基調講演】 「50歳からの幸せなキャリア戦略」 前川孝雄氏 株式会社FeelWorks 代表取締役、青山学院大学兼任講師 【事例発表】 浅井公一氏 NTTコミュニケーションズ株式会社 ヒューマンリソース部 キャリアコンサルティング・ディレクター 岡本真治氏 旭化成株式会社 人事部 キャリア開発室長 【パネルディスカッション】 コーディネーター 大木栄一氏 玉川大学 経営学部 国際経営学科 教授 パネリスト 事例発表企業2社 【視聴者からの質問回答】 【総括】 大木栄一氏 10月27日専用申込みページ(外部サイト) 評価・賃金 「エイジレスな人材活用のための評価・賃金制度」 日時 令和5年11月1日(水)14:00〜16:40 〈プログラム〉 【基調講演】 「エイジレスな人材活用のための評価・賃金制度」 今野浩一郎氏 学習院大学 名誉教授 【事例発表】 小林 崇氏 株式会社NJS 管理本部 人事総務部長 杉浦由佳氏 日本ガイシ株式会社 人材統括部 人事部長 森田喜子氏 TIS株式会社 人事本部人事部 人材戦略部 セクションチーフ 【パネルディスカッション】 コーディネーター 今野浩一郎氏 パネリスト 事例発表企業3社 【視聴者からの質問回答】 【総括】 今野浩一郎氏 11月1日専用申込みページ(外部サイト) 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 後援 厚生労働省、中央労働災害防止協会、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会、一般財団法人ACCN お問合せ先 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)高齢者雇用推進・研究部普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp 【P54】 JEEDが、企業における業務課題を解決します  私たちは、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の促進、求職者をはじめとする労働者の職業能力の開発および向上のために、以下のような総合的支援を行っています。 従業員の高齢化が課題だ 障害のある従業員のサポート体制を整えたい 従業員の生産性を上げたい 製造現場の技能・技術を向上したい 最新の技能・技術に対応できる者を育成したい ものづくり分野の人手不足を解消したい 社内でのノウハウがない コスト面で対応できない 社内でのノウハウがない 指導できる人材がいない生産体制を止められない 研究できる環境がない育成体制がない ものづくり分野の人材採用が進まない 高齢・障害者業務課へご相談ください 70歳までの就業機会確保に向けた相談・援助 障害者雇用納付金制度に基づく助成金支給など 連絡先はこちら 業務内容はこちら 障害者職業センターへご相談ください 障害者を雇用する事業主等のニーズに対応した職業リハビリテーションサービスの提供など 連絡先はこちら 業務内容はこちら 生産性向上人材育成支援センターへご相談ください 従業員の人材育成や事業主への相談・援助(リスキリング・学び直し、DX推進)など 連絡先はこちら 業務内容はこちら ポリテクカレッジへご相談ください 2年間の実学融合の教育訓練システムによる高度実践技能者の育成、ものづくり人材の採用中小企業等との共同・受託研究 連絡先はこちら 業務内容はこちら ポリテクセンターへご相談ください 標準6か月間の職業訓練を受講した求職者とものづくり人材を採用したい企業とのマッチングなど 連絡先はこちら 業務内容はこちら 【P55】 70歳雇用推進プランナー※ 高年齢者雇用アドバイザーのご案内 70歳までの就業機会の確保(令和3年4月より努力義務化)などに向けた高齢者の戦力化のための条件整理について、ご相談ください! なぜ高齢者の戦力化が必要なの? ●急速な高齢化による生産年齢人口の減少 人口統計によれば、今後、生産年齢人口(15〜64歳)は減少の一途をたどり、企業の人材確保はますます困難になっていきます。 ●高齢者の高い就業意欲 60歳以上への意識調査では過半数の人が「65歳を超えても働きたい」と回答しています。 70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーとは 高齢者の雇用に関する専門知識や経験などを持っている専門家です。 社会保険労務士 中小企業診断士 経営コンサルタント 人事労務管理担当経験者など 相談・助言 無料 高齢者の活用に必要な環境の整備に関する専門的かつ技術的な相談・助言を行っています。 人事管理制度の整備に関すること 賃金、退職金制度の整備に関すること 職場改善、職域開発に関すること 能力開発に関すること 健康管理に関すること その他高齢者等の雇用問題に関すること 提案 無料 70歳までの就業機会確保などに向けた高齢者戦力化のための定年引上げや継続雇用延長などの制度改定に関する具体的な提案を行っています。 課題の洗い出し 具体的な課題解決策の提案 制度見直しのメリットを見える化 制度整備に必要な規則例などの提供 その他のサービス 無料 ◆雇用力評価ツールによる課題などの見える化 簡単なチェック内容に回答いただくだけで、高齢者を活用するうえでの課題を見出し、解決策についてアドバイスします。 ◆他社の取組みにおける好事例の提供 同業他社の取組みが気になりませんか? ほかの会社がどういった取組みを行っているのか、貴社の参考となる事例を提供します。 企画立案等サービス 有料 専門性を活かして人事・労務管理上の諸問題について具体的な解決策を作成し、高齢者の雇用・活用等を図るための条件整備をお手伝いします。 中高齢従業員の就業意識の向上などを支援するために、貴社の要望に合った研修プランをご提案し、研修を行います。(経費の1/2を機構〈JEED〉が負担します) ※令和5年4月より「65歳超雇用推進プランナー」から名称変更しました。 お問合せ先 JEED都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問合せください。 【P56-57】 BOOKS 「管理職」から「支援職」へ。人的資本主義に必要な上司のあり方がわかる! 部下全員が活躍する上司力5つのステップ 前川(まえかわ)孝雄(たかお) 著/株式会社FeelWorks/1254円  多様で柔軟な働き方の実現が求められるなか、コロナ禍による急激な環境変化への対応としてテレワークが一気に拡大した。また、定年延長や定年後の継続雇用に取り組む企業が増えて、かつての上司が部下になるという職場が珍しくなくなってきている。あるいは、自らのスキルアップなどのために副業を行っている部下がいるという職場もあるだろう。  本書は、このような時代に求められる「上司」のあり方を提示する一冊。部下を育て組織を活かす「上司力R」を提唱し、研修やコンサルティングなどで400社以上を支援してきた著者は、これからの上司には、命令し、管理し、評価する「管理職」から、傾聴し、支援し、フィードバックする「支援職」へと変わることが求められていると説く。そして、部下全員が育ち活躍する「支援型マネジメント」を実現するための五つのステップを紹介している。  各章の冒頭には重要なエッセンスを詰め込んだ4コママンガを添えて、ステップごとのポイントをわかりやすく説明していく。また、著者が開発した「メンバー育成計画シート」、「任用面談シート」のひな形と記入例も掲載され、現場ですぐに活用できる。 500人超を取材して見えた、豊かに楽しく「生き尽くす」ヒントが満載 75歳からの生き方ノート 楠木(くすのき)新(あらた) 著/小学館/1320円  統計的にみて、人は75歳前後から心身や社会とのかかわり方などが大きく変化するという。このため、「最後まで豊かに生き抜くためには、元気なうちに『75歳からの生き方』を考えておきたいもの」と著者は、68歳である自身の心境と本書の執筆動機を記している。  本書は、ベストセラー『定年後』(中公新書)の著者である楠木氏が、充実した日々を過ごす500人以上の高齢者を取材して見えてきた、75歳以降をより豊かに生きるための指針や方策を提案する一冊。60代、70代から新たな仕事や活動をはじめたり、80代以降も現役で働いていたりする人たちの様子や統計などから、居場所、生きがい、仕事、お金などの知識やヒントを提示。また、生涯現役という考え方は、「高齢者のあらゆる課題に対する『最強の処方箋』ではないか」として、70代以降の働き方や、若い世代との職場づきあいの心構えなども綴っている。  巻末には著者考案の「リ・スターティングノート」(「自分史」をふり返りながら「やりたいこと」が見出せるノート)、「財産増減一括表」(資産の変化の把握に活用可能)を収載。読者自身の75歳以降についての考えや、必要なデータを整理することができる。 増加する「ビジネスケアラー」。介護離職をさせない企業のあり方とは 介護離職をさせない組織づくりと職務・役割等級人事制度 西村(にしむら)聡(さとし) 監修、吉岡規子 著/日本法令/3520円  経済産業省が2023(令和5)年3月に公表した試算によると、働きながら介護にあたる「ビジネスケアラー」は増加傾向にあり、2030年には318万人になるとしている。また、ビジネスケアラー発生による経済損失額は、2030年時点で約9兆円に迫ると推計した。  本書は、企業が社員も利益も守るためには、介護離職防止への対策が急務であるとして、介護に直面しても活躍し続けられる組織づくりをはじめ、多様な働き方を支援するための「職務・役割等級人事制度」の構築、仕事と介護の両立を実現させる人事労務管理などについて解説。  全6章のうち第4章では、創業30年、社員数225人のある企業のケースを紹介している。仕事と介護の両立支援に取り組むきっかけや、家族の介護や看護が必要な9人の社員一人ひとりについて、それぞれの経緯から、両立支援の内容と具体的なやり取り、賃金、退職・復職まで掘り下げており、制度面に加えて、介護離職防止に対する企業の姿勢、介護をすることになった社員の不安感や直面したことへの対応まで多様なケースから学べる内容となっている。  規程・書式例も豊富に収録し、人事労務担当者や関心のある人にぜひ手に取ってほしい。 若さと活力の源になる食材やメニュー、おいしい食べ方を紹介 65歳から体と頭を強くするおいしい食べ方 菊池(きくち)真由子(まゆこ) 著/三笠書房/1540円  健康を保つためには、栄養バランスのよい食事を規則正しくとることが基本といわれる。年齢や運動量などによって必要なエネルギーや栄養素は異なり、成長期にある子どもと健康寿命を伸ばしたい高齢者とでは、何をどのように食べればよいのかは当然違ってくる。  本書は、加齢による老化の影響を受け始めるという65歳からの食事に焦点をあて、身体によく、おいしい食べ方を紹介する一冊。  著者は、管理栄養士として長年にわたり、ダイエットや生活習慣病予防対策など1万人以上の栄養指導にたずさわっている。本書には、厚生労働省認定健康増進施設で栄養アドバイザーを務めた際、年齢に適した食べ方をアドバイスして成果が現れた結果などをふまえ、いつもの食材、いつものメニューに少し工夫をして、若さと活力の源になる食材やおいしい食べ方をわかりやすくまとめている。  65歳からは、「『野菜ファースト』より『肉・魚ファースト』」、「『脂肪は避ける』より『いい脂肪を選ぶ』」がよいそうだ。また、免疫力を上げる、一生スタスタ歩ける、老化にブレーキをかけるなどの項目別に、おすすめの食材、食べ方を伝授。さっそく実践したくなる内容だ。 各界の「Over90歳」14人をインタビュー 100歳で夢を叶える 木村(きむら)美幸(みゆき) 著/晶文社/1760円  「老い」や「年をとる」と聞くと、「さびしい」とか「人生の終わり」といった暗いイメージが浮かんでくる。だが、視野を広くして世の中を見てみると、それとはまったく違う、楽しげな印象の先輩方の姿も見えてくる。一人や二人ではなく、いろいろな世界にたくさん、である。  著者は、老舗の保育関連図書・市販児童図書出版社に勤務し、サラリーマン生活を終えたばかり。絵本作家としても活躍している。しかし、この先の人生に迷いがあったという。そこで、仕事で長いつきあいのある詩人との会話を思い出し、その笑顔の奥に自分が探している答えのヒントが隠されているのではないかと気づき会いに行く。  本書は、そこから始まった、90歳を超えてなお生涯現役で活き活きと過ごし、周囲に活力と元気をふりまく人生の鉄人たち14人に会い、話を聞いたインタビュー集。食事、健康法、SNSとのつきあい方、最近の関心事、これからしたいことなどを、軽妙なおしゃべりをしながらたずね、返ってきた一言一句が並ぶ。心に留めておきたい言葉や、行間ににじみ出る仕事への思い、楽しく生きていくコツが見え隠れし、読んでいると前向きな気持ちになってくる。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P58-59】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 令和4年度「能力開発基本調査」結果  厚生労働省は、令和4年度「能力開発基本調査」の結果を公表した。同調査は、企業が実施した教育訓練、キャリア形成支援などについて、常用労働者30人以上の企業および事業所、またそこで働く労働者を対象としている。教育訓練の実施状況は、計画的なOJTを実施した事業所割合が、正社員では60.2%(前回59.1%)、正社員以外では23.9%(同25.2%)となっている。  技能継承の取組みを行っている事業所の割合は85.1%となっており、産業別にみると、「建設業」(97.1%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(97.0%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(93.0%)、「製造業」(92.6%)で9割を超えている。取組み内容の内訳をみると、「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」(65.2%)が最も多く、「中途採用を増やしている」(46.4%)、「新規学卒者の採用を増やしている」(29.2%)と続いている。  また、2021年度に自己啓発を実施した労働者の割合は、34.7%(前回36.0%)となっている。年齢別にみると、「20〜29歳」(41.7%)、「30〜39歳」(41.6%)、「40〜49歳」(35.1%)、「50〜59歳」(29.1%)、「60歳以上」(23.1%)となっている。 https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001111383.pdf 厚生労働省 「令和4年簡易生命表」概況  厚生労働省は、「令和4年簡易生命表」の概況を公表した。「令和4年簡易生命表」は、日本における日本人について、2022(令和4)年1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定したとき、各年齢の者が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標で表したもの。0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したもので、保健福祉水準を総合的に示す指標となっている。  平均寿命は男が81.05年(前年81.47年)、女が87.09年(同87.57年)となり、いずれも2年連続して前年を下回っている。前年との差を死因別にみると、男女とも新型コロナウイルス感染症と心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いている。  男女それぞれ10万人の出生に対して65歳の生存数は、男8万9573人、女9万4362人となっている。これは65歳まで生存する者の割合が、男は89.6%、女は94.4%であることを示している。同様に、75歳までの割合は、男75.3%、女87.9%、90歳までの割合は男25.5%、女49.8%となっている。  生命表上で、出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される「寿命中位数」をみると、男83.93年、女89.96年となっており、男女とも平均寿命を2.88年上回っている。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/index.html 厚生労働省 「令和4年度雇用均等基本調査」結果  厚生労働省は、「令和4年度雇用均等基本調査」の結果を公表した。「雇用均等基本調査」は、男女の均等な取扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的としており、2022(令和4)年度は、全国の企業と事業所の管理職に占める女性の割合や、育児休業制度や介護休業制度の利用状況などについて、昨年10月1日現在の状況を調査してまとめている。 【企業調査】 ◇係長相当職以上の女性管理職等を有する企業の役職別の割合は、部長相当職ありは12.0%(前年度12.1%)、課長相当職ありは22.3%(同20.1%)、係長相当職ありは22.9%(同21.0%)。 ◇管理職に占める女性の割合は、部長相当職で8.0%(前年度7.8%)、課長相当職で11.6%(同10.7%)、係長相当職で18.7%(同18.8%)。 【事業所調査】 ◇2021年4月1日から2022年3月31日までに介護休業を取得した者がいた事業所の割合は1.4%(2019年度2.2%)。介護休業者がいた事業のうち、男女ともに介護休業者がいた事業所の割合は4.6%(同12.3%)、女性のみいた事業所の割合は66.0%(同54.6%)、男性のみいた事業所の割合は29.4%(同33.1%)。 ◇常用労働者に占める介護休業者の割合は、0.06%(2019年度0.11%)。介護休業者の男女比は、女性69.2%、男性30.8%。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r04.html 厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)、交付申請は11月30日まで  働き方改革関連法によって、2019(平成31)年4月から適用されている「時間外労働の上限規制」について、これまで一部の業種では適用が猶予されてきたが、2024年4月から建設業、運送業、病院等、砂糖製造業の時間外労働の上限規制が適用される。厚生労働省はこれにともない、「働き方改革推進支援助成金」(適用猶予業種等対応コース)の2023年度の交付申請を受けつけている(交付申請期限は、同年11月30日まで)。  「働き方改革推進支援助成金」(適用猶予業種等対応コース)は、生産性を向上させ、時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入や医師の働き方改革推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するもの。「支給対象となる取組」からいずれか一つ以上を実施し、「成果目標」から一つ以上を選択のうえ、達成を目ざして取組みを推進し、「成果目標」の達成状況に応じて、助成対象となる取組みの実施に要した経費の一部が支給される。助成額の上限は、建設業830万円、運送業880万円、病院等930万円。  厚生労働省は、助成内容の詳細や交付申請手続きなどについてまとめたリーフレットを作成し、公表している。 ◆建設業 https://www.mhlw.go.jp/content/001082504.pdf ◆運送業 https://www.mhlw.go.jp/content/001082505.pdf ◆病院等 https://www.mhlw.go.jp/content/001082506.pdf 総務省 「令和4年就業構造基本調査」結果  総務省は、「令和4年就業構造基本調査」の結果を公表した。就業構造基本調査は、国民の就業・不就業の状態を調査するもの。1956(昭和31)年から1982年まではおおむね3年ごと、以降は5年ごとに実施されている。2022(令和4)年の調査は、全国の約54万世帯を対象に同年10月1日現在で実施された。  2022年10月1日現在の有業者(ふだん収入を得る仕事のある人)は6706万人で前回(2017年)調査と比べ85万人増加、有業率は60.9%で5年前に比べ1.2ポイント上昇している。このうち女性は3035万4000人、53.2%で、同2.5ポイント上昇している。年齢階級別の有業率と5年前との差をみると、「60〜64歳」は72.5%で5.2ポイント上昇、「65〜69歳」は50.9%で5.4ポイント上昇、「70〜74歳」は33.3%で4.3ポイント上昇した。  15歳以上について、就業状態および介護の有無別にみると、介護をしている者は629万人(5年前は628万人)、うち有業者は365万人(同346万人)。介護をしている者に占める有業者は58.0%で、5年前に比べ2.8ポイント上昇している。男女別にみると、男性が67.0%で5年前に比べ1.7ポイント上昇、女性が52.7%で3.4ポイント上昇している。さらに、40歳以上では、男性は「50〜54歳」が88.5%で最も高く、5年前に比べ1.5ポイント上昇。女性は「50〜54歳」が71.8%で最も高く、4.4ポイント上昇している。 https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index2.html 中小企業庁 「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」と事例集を公表  中小企業庁は、「中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン」を3年ぶりに抜本的に改定した「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」を公表した。あわせて、経営戦略と人材戦略に一体的に取り組み、成果を上げた事業者を紹介する事例集を公表した。  「中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン」は、人材活用に関する課題を解消するために、特に、中小企業・小規模事業者が支援機関とともに課題解消を目ざす際に活用することを目的に作成された。ガイドラインに示される3ステップの手順を、中小企業・小規模事業者の経営者や人事責任者と支援機関が伴走しながら、経営課題の背景にある本質的な課題を見出し、人材戦略の検討の輪を従業員にも広げていくといった内容である。  事例集は、数年後を見すえて計画的に人材の採用・育成・活用に取り組み、一定の成果をあげた50社の事例をまとめたもの。地元採用を中心に行い、女性や高齢者など労働意欲のある幅広い人材を育成して働きやすい環境を整備するとともに技術力の向上を実現した事例や、定年後も年齢とスキルに合わせて継続して働くことのできる環境をつくりだした事例などが紹介されている。 ◆中小企業・小規模事業者人材活用ガイドライン https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/hitodebusoku/guideline/guideline.pdf ◆中小企業・小規模事業者の人材活用事例集 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/koyou/hitodebusoku/guideline/jirei.pdf 【P60】 次号 予告 11月号 特集 高年齢者活躍企業コンテスト 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰受賞企業事例から リーダーズトーク 石田 淳さん(株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役) JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 お知らせ 本誌を購入するには 定期購読のほか、1冊からのご購入も受けつけています。 ◆お電話、FAXでのお申込み 株式会社労働調査会までご連絡ください。 電話03-3915-6415 FAX 03-3915-9041 ◆インターネットでのお申込み @定期購読を希望される方  雑誌のオンライン書店「富士山マガジンサービス」でご購入いただけます。 富士山マガジンサービス 検索 A1冊からのご購入を希望される方  Amazon.co.jp でご購入いただけます。 編集アドバイザー(五十音順) 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 田村泰朗……太陽生命保険株式会社取締役専務執行役員 丸山美幸……社会保険労務士 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会副理事長 六本良多……日本放送協会 メディア総局第1制作センター(福祉)チーフ・プロデューサー 編集後記 ●9月15日に、厚生労働省と当機構(JEED)が主催する「令和5年度高年齢者活躍企業コンテスト」の受賞企業が発表されました。本誌では、10・11月号の2回に分けて、受賞企業の取組みをご紹介します。今号では、厚生労働大臣表彰を受賞した5社の事例をご紹介しました。今回も、最優秀賞を受賞した有限会社小川商店をはじめとした、長い歴史を持った老舗企業のほか、社会福祉法人など多くの企業からご応募いただきました。人材不足に悩む地域・産業にとって、知識・経験豊富な高齢者は貴重な戦力。受賞企業の多彩な取組みを参考に、高齢者雇用の推進に役立てていただければ幸いです。 ●10月は高年齢者就業支援月間です。10月を中心に全国47都道府県で「地域ワークショップ」を開催するほか、10月中旬〜11月にかけて4回開催する「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」は、ライブ視聴でご参加いただけます。詳しくはJEEDホームページをご覧ください。 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー10月号No.527 ●発行日−−令和5年10月1日(第45巻 第10号 通巻527号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長中上英二 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6216 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●発売元 労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 ISBN978-4-86319-980-4 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.332 職人のこだわりが生んだ丈夫で品格のあるランドセル ランドセル職人 土屋(つちや)國男(くにお)さん(85歳) 「ずっとお客さまに満足いただける製品づくりに努めてきました。お子さまやご家族のうれしそうな姿を見ると、よい仕事だなと思います」 150以上のパーツを使い300以上の工程を経て完成  色とりどりのランドセルが展示されているのは、東京都足立区にある土屋(つちや)鞄(かばん)製造所の本店。同社は「工房系ランドセル」のブランドとして知られ、本店併設の工房では、一つひとつのランドセルが職人たちの手によってつくられている。同社のランドセルは150以上のパーツを使い、300以上の工程をかけて製造されており、一つのランドセルが完成するまでに約50人の職人がたずさわるという。  創業者の土屋國男さんは、職人の手仕事を活かすことでランドセルの高付加価値化を実現したことなどが評価され、2022(令和4)年には「現代の名工」に選出された。  1965(昭和40)年、自宅内の11坪の工房で創業。「お客さまに満足いただける、品格のある製品をつくるために、材料や製法にこだわってきました」と土屋さん。納品された材料に納得できないときは、仕入れ先から「ほかではみんな使っているよ」といわれても満足できる材料に取り替えてもらうことも。そうした努力の積重ねが、消費者からの信用につながっていった。  「神は細部に宿る」といわれるが、土屋さんのこだわりも細部にまで行き届いている。その象徴といえるのが、ランドセルの角に施される「菊寄せ」という加工だ。ギャザーを均一に寄せることで、花びらのように美しく仕上げてある。また、ミシンで縫う位置や糸の太さ、ピッチにもこだわり、例えば縫い目の位置は端から4.5mmなどと細かく決められている。0.5mm違うだけでも、見た目の印象は変わってしまうという。こうした土屋さんのこだわりが、同社の職人たちにも受け継がれている。 コンテストへの出品が技能向上の転機に  土屋さんは15歳のとき、かばんメーカーに就職。ランドセルの資材担当として、材料をそろえて外注先に届ける仕事に約12年間従事した。その間に革の扱いを習得し、1年をかけてランドセルづくりの基本を学ぶと、27歳で独立。当初はひたすら数をこなし、技術を高めることに努めた。  転機となったのが、独立4年後、以前勤めていた会社の親方のすすめで参加した技術創作コンクールだった。  「1位を取るつもりでつくった作品を出品したら落選でした。そのとき初めてほかの優秀な作品を見て、それまで効率ばかり考えてつくっていた自分が井の中の蛙だったことに気づき、技術的な価値を理解することができたんです」  心機一転して臨んだ翌年の大会で入選を果たし、4度目の大会では2位を獲得。出品の機会をもらったこと、そして一番になろうという強い意志が、技能向上の原動力になったとふり返る。 後進には、よい製品を効率よくつくるためのアイデアを期待  土屋さんの工房はバブル崩壊後、厳しい状況に追い込まれたが、現社長の息子とともに、ものづくりのよさを訴えることで世間の評価を獲得。また、そのころ6年間使われたランドセルを、記念としてミニランドセルにリメイクするサービスを積極的に行ったことで、顧客に喜ばれるとともに、実際の使われ具合がわかることから、さらなる品質向上へとつながった。  21世紀に入ると、技術が失われることへの危機感から、後進の育成に注力。現在はランドセルだけで約120人の職人を抱えるまでに成長した。後進に期待するのは、優れた製品をより効率よくつくるためのアイデアだ。土屋さん自身、修業時代に革を効率よく切り抜くための型をつくったり、縫い合わせた生地を裏返して形をきれいに出すための治具を開発するなど、さまざまな工夫を重ねてきた。「普段の作業のなかに、工夫のためのヒントがいくらでもある」という。  「若い人たちが、この会社に入ってよかったと思えるようになってほしい」と、後進の仕事ぶりを温かい眼差しで見守っている。 株式会社土屋鞄製造所 TEL:03(5647)5121 https://tsuchiya-kaban.jp (撮影・福田栄夫/取材・増田忠英) 写真のキャプション 工房で職人一人ひとりの仕事ぶりを見て回り、「ここはミシンのピッチが粗いからもう少し細かく」、「おお、上手になったな」などと声をかける 土屋鞄製造所のロゴマークは、革包丁で革を裁断する様子を表している 6年間の役目を終えたランドセルをリメイクしたミニランドセルも好評 ミシンで縫われたランドセルの前側の部分を裏返し、治具を使ってきれいに形を出す。かなり力のいる作業だ ミシンで縫う位置はミリ単位で決められており、0.5oずれるだけで印象が変わるという ランドセルの角は、革を花びらのように均一に寄せる「菊寄せ」で美しく仕上げる 一つひとつのランドセルが、約50人の職人の手を経てつくられている 工房で働く職人のみなさんと。社内では「お父さん」と呼ばれ慕われている 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  動物のなかには計算能力を持っているものもいるといわれますが、ややこしい計算ができるのはわたしたち人類だけです。脳の機能で特に計算にかかわるのは、頭頂間溝(とうちょうかんこう)という頭頂葉の一部の働きです。ここが発達しているから人は計算ができるともいえます。頭の中で計算することにより、「ワーキングメモリ」が鍛えられます。 第76回 サイコロ計算 サイコロの目の数を見て計算をしてください。 できるだけメモせずに計算してみましょう。 目標7分 問題1 見えている目の数の通りに計算してください。 1 4+2−3+5+1−2+2−3= 解答 2 2+3−3+4+6−3+5−6= 解答 3 5+2−6+2+4−3+6−1= 解答 問題2 サイコロの裏側の目の数※で計算してください。 ※サイコロは、表側と裏側の目の数をたすと「7」になるようにつくられています。 4 6+3+4+5+3−6−4+5= 解答 5 1+4+6−3+5+6+4−3= 解答 6 2+5+6+4+6−3−5−6= 解答 たくさん脳トレにチャレンジしよう  人間の脳は、大きく四つの部位に分けられます。このうち前頭葉は、記憶や情報を「一時的に保存」し、必要な答えを導いていく「ワーキングメモリ」としての機能もになっています。  脳トレは、基本的にはこのワーキングメモリを働かせることで、脳の機能の低下を防ぐ効果があります。例えば、今回のような「計算問題」を解いているときには、左側の前頭葉や頭頂葉が活性化しています。前頭葉がうまく機能しないと簡単な計算にとまどったり、スムーズに解答できなかったりということが起こります。加えて、前頭葉は加齢とともに衰えていくので、年をとれば、計算が遅くなったり、たまに間違えたりといったことはだれにでもあります。  計算問題を含む脳トレに取り組むことで、前頭葉をはじめとする脳のあちこちが刺激され、活性化され、少しずつ脳が「若さ」を取り戻していきます。たくさんチャレンジして、若々しい脳をつくりましょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 @ 6 A 8 B 9 C 12 D 8 E 6 【P65】 (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2023年10月1日現在 ホームページはこちら 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 定価 503円(本体458円+税) 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウムのご案内 高齢者雇用に取り組む事業主のみなさまへ  毎年ご好評をいただいている「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」を、本年度も開催します。  令和3年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、「70歳までの就業確保」が努力義務となりました。このため、本年度は、企業において高齢者の戦力化を図るために関心の高い、以下のテーマにより、10〜11月にかけて4回開催します。  内容は、学識経験者による講演をはじめ、高齢社員の戦力化に取り組んでいる企業や継続雇用・定年延長を行った企業の事例発表、学識経験者をコーディネーターとしたパネルディスカッションが中心です。  高齢者が活躍できる環境整備の必要性や今後の高齢者雇用について、みなさまとともに考える機会にしたいと思いますので、ぜひご参加ください。 開催スケジュールは、以下の通りです(おもな内容は、52、53ページをご覧ください)。 なお、ご不明な点は、当機構(JEED)高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課までお問い合わせください。 参加無料 写真のキャプション ▲昨年度の様子 全会場:ライブ配信 テーマ 人的資本経営における職場コミュニケーション〜Z世代からポスト団塊世代まで 日時 10月12日(木)14:00〜16:35 テーマ 女性社員のウェルビーイング向上〜エイジレスなキャリアと健康支援 日時 10月19日(木)14:00〜16:35 テーマ 50歳からのキャリア開発・支援、リスキリング〜シニアの活躍に向けて 日時 10月27日(金)14:00〜16:45 テーマ エイジレスな人材活用のための評価・賃金制度 日時 11月1日(水)14:00〜16:40 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp/ 主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 後援 厚生労働省 ほか 申込み方法 以下のURLへアクセスし、専用フォームからお申し込みください。 https://www.elder.jeed.go.jp/moushikomi.html ※内容などに変更が生じる場合、JEEDホームページで随時お知らせしますので、ご確認ください。 ※後日YouTubeにおいてアーカイブ配信を予定しています。 2023 10 令和5年10月1日発行(毎月1回1日発行) 第45巻第10号通巻527号 〈発行〉独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈発売元〉労働調査会