特集 高齢社員の強みや長所を活かし生涯現役で働ける職場環境を実現 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜厚生労働大臣表彰受賞企業事例から〜  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、厚生労働省との共催で、「高年齢者活躍企業コンテスト」を毎年開催しています。  本コンテストは、高齢者が年齢にかかわりなく生涯現役で活き活き働くために、人事制度の改定や職場環境の改善などに、創意工夫をして取り組む企業を表彰するものです。  2025(令和7)年度は、厚生労働大臣表彰6編、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰優秀賞10編、特別賞10編、クリエイティブ賞1編の受賞が決まりました。  本誌では、今号と次号(11月号)の2回に分けて、コンテスト表彰企業の取組みを紹介します。  今号では、厚生労働大臣表彰受賞企業の取組みを紹介します。 審査委員長からのメッセージ 高齢者がその能力を最大限に発揮するための創意工夫に取り組む企業を表彰 東京学芸大学 名誉教授 内田(うちだ)賢(まさる)  「令和7年度高年齢者活躍企業コンテスト」の審査が終了いたしました。審査委員を代表し、応募いただきましたすべての企業・団体関係者のみなさまに厚く御礼申し上げます。今回は全国から62編の応募を受け、厳正な審査の結果、厚生労働大臣表彰は、最優秀賞1編、優秀賞2編、特別賞3編、また、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰は、優秀賞10編、特別賞10編、クリエイティブ賞1編が入賞を果たしました。  最優秀賞を受賞したグリンリーフ株式会社は、持続可能な農業を目ざし、環境保全や農家育成にも力を注いできました。従業員同士の支え合いを重視し、現場の声を反映した就業規則の作成などユニークな取組みを展開し、多様な人材の長所を活かし、だれもが活き活きと働ける職場づくりを実現したことが高く評価されました。  優秀賞を受賞した株式会社クリーン開発は、年齢上限なく働ける登録制の「元気事業部」を創設し、高齢従業員の多様な働き方を実現。人事評価制度の導入などにより処遇面の改善を進めたことに加え、各種作業環境改善にも積極的に取り組んでいます。  同じく優秀賞を受賞した株式会社マイネットシステムは、IT業界では稀(まれ)にみる定年制廃止を実現し、60歳時点での賃金一律減額を撤廃。個人の希望に応じた多様な働き方と、貢献度・能力に見合った報酬制度により、高齢社員の豊富な経験と技術力を最大限に活用しています。  特別賞を受賞した株式会社清風堂(せいふうどう)は、「高齢者が長く安全で安心して働き続けられる」を根本思想として、定年延長や継続雇用制度、勤務時間の弾力化、資格取得支援、メンター配置、機材軽量化、健康管理体制充実など、制度面と実務面から総合的に高齢者の雇用環境を整備しています。  同じく特別賞受賞の藤田(ふじた)建設工業(けんせつこうぎょう)株式会社は、高齢化が進む地域で国家資格を有する高齢従業員に活躍の場を創出してきました。高い技術を持つ「有資格者」が不可欠であることから、全従業員の資格取得を後押しし、全社をあげて行う意欲向上の取組みが評価のポイントとなりました。  同じく特別賞受賞の光(ひかり)タクシー株式会社は、70歳以上のドライバーが約4割を占めるなかで、高齢従業員が即戦力として活躍しており、同業他社に先駆け展開している病気入院保障制度や高齢者向けの採用ホームページなどのアイデアあふれる取組みが高く評価されました。  審査を終えて、受賞企業の取組みが年々高度化していることを実感しています。その背景には、働く高齢者の年齢層が60代前半から60代後半へ、そして70歳超へと上昇していることがあると思われます。どうすれば高齢者に力を十分に発揮してもらえるのかという課題に直面し、その課題を解決してきた結果が、応募企業の取組みにあらわれているのではないでしょうか。各受賞企業の取組み自体は大がかりなものではありませんが、逆にいえば、どのような企業でも取り入れやすいという側面もあるでしょう。『エルダー』の読者のみなさまには、業種を超えて、企業規模を超えて、受賞企業の取組みから虚心坦懐(きょしんたんかい)に学んでいただければ幸いです。 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 経験と個性を活かしだれもが主役になれる「大家族経営」の職場 グリンリーフ株式会社(群馬県利根郡(とねぐん)昭和村(しょうわむら)) 企業プロフィール グリンリーフ株式会社 (群馬県利根郡昭和村) 創業 1962(昭和37)年 業種 農業・食料品製造業 社員数 126人(2025〈令和7〉年5月30日現在) 60歳以上 17人 (内訳) 60〜64歳 5人(4.0%) 65〜69歳 5人(4.0%) 70歳以上 7人(5.6%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。定年後も本人の希望があれば、自力で出勤できるかぎり継続雇用。最高年齢者は82歳 T 本事例のポイント  グリンリーフ株式会社は、1994(平成6)年にグリンリーフ有限会社として産声を上げた。そのルーツは1962(昭和37)年に創業者が農地を買い求め農業を始めたことにさかのぼる。  創業以来、有機栽培や特別栽培の農産物の安定提供を通じて地域に貢献してきた。「感動農業」、「人づくり、土づくり」を経営理念に掲げ、「大家族経営」のビジョンのもと、社員それぞれが持つ長所を活かし、それぞれの役割を果たしていくことを目ざしてきた。  多くの企業が将来の投資として若手育成を優先し中高年齢層のキャリアサポートが後回しになる傾向があるなか、高齢社員が豊かな経験を活かして活躍できる場を構築し、社員のだれもが気持ちよく働ける職場づくりに取り組んできた。 POINT @高齢社員の豊かな経験を活かした活躍の場を構築し、だれもが活躍できる職場環境づくりを目ざしている。 A現場社員が就業規則の作成にかかわれる「就業規則作成委員会」を設置したことで現場の声が就業規則に反映され、ユニークな働き方の実現につながっている。 B「働き方ポジション選択シート」の導入によって、社員が自身の状況に応じて柔軟な働き方を選択することが実現した。選択シートは四半期ごとの面談で申告・修正できる。 C正規社員(総合職・一般職)には「成長シート」、時間給社員(限定職)には「多能工シート」と呼ばれる評価シートを活用し「できることが増えると評価が高くなる」人事評価制度の実施により、仕事に対して夢が持てるようにしている。 D「手洗いタイマー」や「アルコールセンサー」など、衛生管理の徹底をうながす設備について外国籍の社員や障害のある社員などにもわかりやすいイラストつきマニュアルを作成。だれもが視覚的に理解できるよう工夫を凝らした。 E各社員の小さな改善提案を反映する「チョコ案」制度を実施。現場社員の声を拾ったこの制度が作業負担の軽減や職場環境の改善につながっている。 U 企業の沿革・事業内容  1962年に創業者が農業を始め、2年後にはこんにゃくの栽培に着手した。1994年には有限会社として法人化し、2002年に株式会社に組織変更した。創業以来、こんにゃくや漬物、有機野菜などを生産・加工・販売に至るまで一連の工程を自社で一貫して行う体制を整備、6次産業化を推進する農業生産法人として地域に貢献してきた。農産物や惣菜キット製品の開発、海外輸出、大学との共同研究など業容を拡大し、持続可能な農業を目ざし、環境保全や農家育成にも注力している。業務内容は、4部門に分類され、農場部門として本社所在地である群馬県利根郡昭和村と群馬県太田市に農場を有し、野菜の栽培を行っている。ほかに各種加工品の製造を行う製造部門と管理・運営をになう事務部門、製品の流通および販売活動を担当する販売・資材部門がある。同社では、社員が農業で働くことを通じて感動できることを目ざし、次の世代に農業の未来を託すため、さまざまな支援を通じて人材育成を推進している。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  全社員126人のうち、60歳以上は17人、そのうち70歳以上は7人で全体の約6%を占めている。これらの高齢社員の多くは、20年近く勤務しており、長年にわたる経験と知識を活かして同社に貢献している。高齢社員の活躍を推進する取組みを始めた背景には、社員が長く働き続けるなかで、だれもがいずれ高齢になるという現実がある。特に、65歳を迎えた段階で一律に退職となる一般的な制度では、元気で意欲のある高齢人材を失うこととなり、業務の継続に支障をきたすおそれがある。このため、労働力を安定的に確保する必要があるとの判断から65歳以降も働き続けられるように就業規則を改定し、これにより高齢社員が時間給社員(限定職)として勤務を継続できる制度が整備された。制度面からの支援を行うことで、高齢社員が安心して働き続けられる環境づくりを進めてきた。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @雇用形態  社員は「正社員(総合職・一般職)」、「時間給社員(限定職)」に分かれ、正社員はフルタイム勤務が基本であり、業務状況に応じて残業が発生することもある。時間給社員(限定職)は業務範囲や勤務条件が限定された職種である。また、65歳以上の社員は原則として限定職契約に移行する。  働き方は「働き方ポジション選択シート」により、社員が自身の状況に応じて柔軟に選択できる仕組みとなっている。例えば、子育て中の社員は、時間給社員(限定職)に移行することで子どもの体調不良時に速やかに帰宅できるなど、家庭環境に配慮した働き方が実現した。子育て期間終了後に再び正社員になることも可能であり、「働き方ポジション選択シート」は四半期ごとの上長との面談において申告・修正を行う。 A就業規則の改定  就業規則の見直しと改善を目的として、「就業規則作成委員会」を設置している。この委員会は、各部署から社員1名ずつを選出し、現場の声を反映させる形で構成されている。委員会は年に1回の開催を基本とし、必要に応じて随時開催される。委員会には社会保険労務士も同席し、法的観点からの助言を受けながら、実効性のある改定案を作成する。作成された案は、社長の了承を経て正式に就業規則として改定される仕組みである。「70歳を過ぎても本人が希望し、自力で出社できる場合は勤務を継続できる」というユニークな規定は、この委員会からの提案により実現したものである。就業規則作成委員会は、現場の実情と社員の声を制度に反映させる重要な役割をになっており、柔軟で実用的な就業環境の整備に寄与している。 B評価・賃金制度  給与体系は、職種や勤務条件に応じて差を設けており、不公平感を生じさせないよう配慮されている。特に時間給社員(限定職)は、業務内容や責任範囲に応じて時給に差を設けることで、社員の納得感を得ている。評価制度は、一般職以上の社員は「成長シート」を使用し、四半期ごとに自己評価と上司評価を実施している。時間給社員(限定職)では、業務の習熟度や対応可能な作業範囲を確認するために「多能工シート」が活用されている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @資格取得支援  社員のスキル向上と業務効率化を目的とした資格取得支援制度を導入している。パソコンスキルや簿記など業務に直結する資格は、会社から取得費用の補助を受けられるほか、取得後には資格手当の支給が行われるものもあり、社員の意欲向上につながっている。また、工場内で必要なフォークリフト、クレーン、玉掛けなどの資格は、取得費用の補助に加え、勤務時間内での講習の受講・資格の取得が認められている。これにより、業務に必要な技能を効率的に習得できる環境が整備されている。これらの制度を通じて、社員の能力開発を支援し、職場全体の安全性と生産性の向上を図っている。 A業務改善への意見の吸い上げ  社員が日常業務のなかで感じる小さな改善点を提案できる仕組みとして「チョコ案」制度を導入した。これは現場での作業効率や安全性を向上させるための「ちょっとしたアイデア(=チョコっとした案)」を社員から募るものである。現場の声を反映することで、働きやすい環境づくりを推進している。実際にこの制度を通じて、昇降台やハンドリフトの導入が実現しており、作業負担の軽減や安全性の向上に寄与している。 (3)雇用継続のための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @職場改善  2024(令和6)年稼働の新工場ではバリアフリー、床の転倒防止対策、LED照明を導入し、高齢社員が働きやすい作業環境に配慮している。 A休憩時間  製造部門においては通常の昼休憩に加え、午後3時から30分間の休憩時間を設け、作業負担の軽減を図っている。また、スポットクーラーを導入し作業環境の温度管理を行っており、社員の健康と安全に配慮した取組みを進めている。一方、農場部門では、夏季の高温対策として早朝6時から作業を開始し、日中の昼休憩を長めに設定するなどの工夫がなされている。加えて、ファンつきベストの配付や、パラソルを使用し日陰を確保してから収穫作業を行うなど、現場に即した対策が実施されている。 B衛生管理  製品加工工場に入る前の手洗い時間の個人差をなくすため、タイマーを設置し、全社員が一定時間手洗いを行うよう統一している。また、アルコール消毒をしなければトイレから出られグリンリーフ株式会社ないセンサーや、消毒をしないとエアーシャワーを通過できず工場に入れない仕組みなど、衛生管理の徹底をうながす設備が導入されている。工場に入室する前には、作業着上のホコリなどを除去する粘着クリーナーの使用方法をイラストつきマニュアルで案内しており、だれもが視覚的に理解できるよう工夫されている。さらに、衛生面および社員の負担軽減の観点から、会社が一括して作業着のクリーニングを実施し管理している。 C健康管理  同社では社員の健康維持のため、毎年、全社員に対し「健康診断」、「ストレスチェック」、「インフルエンザの予防接種」を実施している。また、筋トレや健康管理、ストレス解消を目的に「トレーニングルーム」を設置、勤務時間以外ならだれでも自由に利用できる。 (4)その他の取組み  グループ会社であるビオエナジー株式会社は、グループ会社内で働く社員の子どもを対象とした企業主導型保育施設を運営している。保育所の運営により、安心して業務に専念できると子育て中の社員はもとより、一緒に働く社員からも好評である。保育所は職場に隣接しているため、社員は子どもの近くで働き、何かあると内線で確認ができ、社員は安心して働くことができる。  また、外国籍の社員のモチベーション向上のために「インドネシア」、「タイ」、「ベトナム」、「ミャンマー」、「カンボジア」の国旗を掲げており、同社のシンボルとなっている。外国籍社員のための支援課を創設し、きめ細やかな対応を行っている。 (5)高齢社員の声  Oさん(73歳・女性)は製造工場内において検品作業を担当しており、勤続20年目を迎えた。1日7時間、週5日の勤務を元気にこなしている。「勤続10年目、20年目の節目で長期勤続表彰の記念品をいただきうれしかったです。お昼休みのほかに、午後3時から30分間の休憩時間があり、とても助かっています。長く勤められた秘訣はストレスをためないことでしょうか」  Iさん(74歳・女性)は製造工場内で出荷作業や真空パック作業、漬け込み作業などを担当しており、勤続22年目となる。Oさんと同じ勤務時間・日数であり、繁忙期は残業も行う。「ほかの会社と異なり、年齢にかかわらず働き続けることができ、経済的にも助かっています。私たちのような高齢者にやさしい職場なので働きやすく、やりがいもあります。運転免許の更新ができるかぎり、働き続けたいと考えています」 (6)今後の課題  今後の日本の農業、地域の活性化のために、農家の育成を進めていくことを視野に置いている。農業を志す者を雇用し、スキル・ノウハウを与え、また、土地の購入やその融資においてバックアップを行い、独立を支えていきたいと考える。  近年の少子高齢化・人口減少による生産年齢人口の減少をふまえ、若者、高齢者、障害者、外国人という多様な人材の戦力化を進めダイバーシティ経営を実現していくなかで、すべての社員が意見を出し合い支え合っていく企業風土をこれからも目ざしていく。 写真のキャプション グリンリーフ株式会社。敷地内には社員の出身国の国旗が掲揚されている 社内に貼り出されている「チョコ案」による改善事例 検品作業を行うOさん(73歳) 真空パック作業を行うIさん(74歳) 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 スポット勤務可能な「元気事業部」で年齢の上限なく活躍できる環境を実現 株式会社クリーン開発(かいはつ)(北海道千歳(ちとせ)市) 企業プロフィール 株式会社クリーン開発 (北海道千歳市) 創業 1975(昭和50)年 業種 その他の事業サービス業 (建物管理等各種保守管理) 従業員数 292人(2025〈令和7〉年4月1日現在) 60歳以上 177人 (内訳) 60〜64歳 52人(17.8%) 65〜69歳 41人(14.0%) 70歳以上 84人(28.8%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員を70歳まで嘱託社員として継続雇用。その後、希望者全員を75歳まで無期雇用のパートタイム従業員として再雇用。各々の上限年齢に達した者で希望者は元気事業部に登録することもできる。最高年齢者は80歳 T 本事例のポイント  株式会社クリーン開発は、1975(昭和50)年に北海道千歳市でビルメンテナンス業を主たる事業として創業。  産業廃棄物収集運搬業許可や一般廃棄物収集運搬業許可を取得し、建築物清掃業登録を完了するなど、着実に事業基盤を構築してきた。経営の根幹には地元住民および地元で働く人々にとっての「一親等」の会社でありたいという想いがある。  人手不足が深刻化するなか、高齢従業員の貢献度を再評価し、積極的な活躍をうながす方向で職場改善を進めてきた。定年年齢の段階的な引上げに加え、年齢の上限なく働ける登録制の「元気事業部」を創設し、柔軟な働き方を実現している。 POINT @定年年齢の段階的引上げ(63歳から65歳)、70歳まで嘱託社員として継続雇用、75歳までパートタイム従業員として再雇用に加え、年齢の上限なく働ける「元気事業部」を創設した。 A絶対評価による人事評価制度を導入し、従業員一人ひとりの就労意欲向上を図っている。 B全従業員を対象とした年間計画による体系的な人材育成研修を実施。特に繁忙期に備えた「安全・品質・接遇」に関する講習会は全社的な意識統一に不可欠となっている。 C情報システムの自社開発・導入により、業務負担を大幅に軽減。作業効率化と高齢従業員の働きやすさを両立した。 D温水除草やアルカリイオン電解水の採用により、環境と作業者の安全性が向上。高齢従業員も安心して働ける環境を整備している。 U 企業の沿革・事業内容  1975年に、北海道千歳市でビルメンテナンス業を柱として創業。創業と同時に産業廃棄物収集運搬業許可(北海道)および一般廃棄物収集運搬業許可(千歳市)を取得し、1982年には建築物清掃業登録を完了するなど、着実に事業基盤を構築してきた。  現在の事業内容は、ビルメンテナンス業を中心に、産業廃棄物・一般廃棄物の収集運搬業、建築物清掃業、環境整備事業、スズメバチ駆除業務など多岐にわたる。千歳市という立地を活かし、新千歳空港をはじめとする重要インフラの維持管理にもたずさわっている。  2018(平成30)年の北海道胆振東部(いぶりとうぶ)地震では、発災直後から迅速な初動対応を行い、翌日には新千歳空港の復旧作業に着手。2022(令和4)年の豪雪災害では、自社の除雪機械を投入して地域の交通維持に貢献するなど、地域のインフラを支える企業として重要な役割を果たしている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  おもな事業領域であるビルメンテナンス業は、仕事内容や不規則な勤務時間などが要因となり、特に若年層へ魅力が伝わりづらいという業界の仕組みに起因する課題を抱えている。  また、千歳市は航空自衛隊や陸上自衛隊の駐屯地を擁していることから、退職自衛官が多く、地域に定住している。そこで、自衛隊退職者を安定的な労働力として確保してきたが、近年は退職者が減少し、採用が困難になってきている。  このような複合的要因により人手不足が深刻化するなか、高齢従業員の会社への貢献度を再評価し、活躍を後押しする方向で職場改善を進めることとした。  現在、60歳以上の従業員が全体の約60%を占めており、高い就労意欲と豊富な経験を活かし、事業運営の中核をになう存在となっている。  同社では、高齢従業員が心身ともに健康な状態で、意欲と能力に応じて可能なかぎり長く活躍し続けられる職場環境を整備することを経営方針の一つとして定めている。将来的には、賃金体系を含む処遇全般の改善を推進するとともに、安定的な雇用を保障するべく、可能なかぎり正社員への登用を進めている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制度と継続雇用制度の整備  従業員が年齢にかかわらず、意欲と能力に応じて長期的に就労を継続できる環境を整備するため、2024年4月に正社員の定年年齢を63歳から65歳へと引き上げた。定年後も嘱託社員として希望者全員70歳まで勤務可能とする継続雇用制度を整備している。  さらに、70歳を超えて就労を希望する者については、パートタイム従業員として75歳まで雇用を継続することができる。 A「元気事業部」の創設  継続雇用制度に加え、個々のライフステージに応じたより柔軟な働き方を実現するため、2010年より登録制の「元気事業部」を設置した。これは、各雇用形態の上限年齢に達した従業員が、曜日や時間に縛られることなく、自身の都合に合わせてスポット的に勤務できる制度である。  同事業部は、請負・委任契約ではなく、雇用関係(日々雇用)にある点が特徴で、労災保険についても適用されるため、安心して働くことができる。登録時には個々の強みや経験を申告する書式が用いられ、各人の能力を最大限に活かす業務配分が行われている。  この制度は、高齢従業員に活躍の場を提供するだけでなく、若手・中堅従業員が育児や介護などで突発的な休暇を取得する際に、その業務を補完する役割も果たしている。この相互補完の仕組みが強い誘因となり、直近2年間で11人の退職者が再入社するという結果に結びついている。 B人事評価制度の改善  同社では従業員のモチベーション向上を目的として、絶対評価による人事評価制度を導入している。上長が「顧客からの評価」および「本人の自己評価」からの申告内容を総合的に勘案して年3回実施し、経営層へ報告される。評価プロセスの透明性と従業員の目標意識向上を目的として、役職者による「取組み計画」と「結果」の全体報告会が行われている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @体系的な人材育成研修の実施  全従業員を対象に、育成のための年間計画を策定し、階層や職務に応じた研修を計画的に実施している。研修内容は、社会情勢や市場のニーズを的確にとらえた最新の情報を組み込んでいる。特に、繁忙期に備えて毎年11月に全従業員を対象として行う「安全・品質・接遇」に関する講習会は、全社的な意識統一とサービス品質の向上に不可欠なものとなっている。  研修資料には、高齢従業員も理解しやすいようマンガを活用するなどの工夫を行い、要点が頭に入りやすいよう配慮している。 A技能継承と世代間交流の促進  各事業所の主任が年1回、取締役を含めた全従業員に対して取組み計画と結果報告を実施している。現在、72歳以上の主任が3人おり、デジタルカメラやスマートフォン、パソコンを駆使して、従業員が計画に対して真摯に取り組んでいる姿を写真撮影し、レポートにまとめて発表している。  また、近隣の専門学校の学生を対象に、送迎つきの清掃アルバイトとして採用する支援プログラムを実施している。学生と経験豊富な高齢従業員が共同で作業を行う体制を構築しており、単なる経済的支援に留まらず、世代間の技術・知識の伝承と相互理解を促進している。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境の改善  草刈り業務では、安全管理策を二段階で実施している。第一に、新規の業務従事者に対し、初期段階での安全講習を必須とし、作業の標準化と安全意識の涵養(かんよう)を図っている。第二に、2024年より作業単位を3人体制へと移行し、作業中の相互監視を可能とした。これにより、ヒューマンエラーに起因する事故を抑制すると同時に、夏季の熱中症など突発的な健康問題への即応性を高めている。  スズメバチ駆除業務では、従来、年間最大1300件に達する案件の全工程(顧客対応、現場作業や指示、報告書作成等)が特定の担当者に集中していた。このため、受付けから報告書作成に至るワークフローを包括的に管理する新システムを自社で開発・導入。情報伝達の迅速化と事務作業の抜本的な省力化を実現している。 A社屋・休憩環境の整備  従業員のウェルビーイング向上を目的とし、社屋の建替えを機に、休憩スペースの機能的・質的向上を図っている。冷暖房設備はもちろん、無料の飲料提供(コーヒーやお茶)、大型テレビやソファーの設置など、快適な休息環境を提供している。この休憩スペースは、業務終了後の自発的なコミュニケーションの場としても機能している。 B健康管理の充実  2024年に日本健康会議「健康経営○R(★)優良法人」の認定を受けるなど、全従業員に対し健康維持・増進への意識啓発に取り組んでいる。 C安全衛生対策  年3回事業所内の安全点検を実施し、危険箇所の早期発見と改善に努めているほか、2カ月に一度発行する社内報において、安全衛生に関する特集記事を掲載し、従業員の安全意識の維持・向上に努めている。また、日常で使用する保護具の改良に努めており、軽量型ヘルメットや最新型のスノースパイクを導入している。 D環境に配慮した技術の導入  温水除草は、高温水を散布することで雑草の根のタンパク質構造を熱変性させ、根本から枯死させる物理的防除法である。化学農薬を一切使用しないため、人体、農作物、家畜への影響がなく、周辺環境に対しても安全性がきわめて高い。  また、アルカリイオン電解水を洗浄液として導入し、洗浄後に有害な残留物を残さず、成分は水に戻るため、二度拭きが不要となり作業効率が向上している。人体と環境への負荷が低い持続可能性の高い清掃手法である。 (4)その他の取組み福利厚生の充実  組織の一体感を醸成するため、忘年会や従業員の家族も参加可能なバーベキュー大会などの社内イベントを定期的に実施し、コミュニケーションの活性化を図っている。また、プロ野球「北海道日本ハムファイターズ」の本拠地であるエスコンフィールドHOKKAIDOの年間シートを法人契約し、希望する従業員を毎月抽選で招待することで、従業員の満足度向上に努めている。 (5)高齢従業員の声  長谷川(はせがわ)勤(つとむ)さん(72歳)は、1984年4月に入社した社歴41年の大ベテラン。週5日、1日8時間のフルタイム勤務で働いている。入社後にビルクリーニング技能士1級の資格を取得し、複数の現場の立上げを経験。現場の責任者として活躍し、現在は、各現場の見回りおよび後進の指導にあたっている。「若い人の指導を行い、成長する姿を見られるのがうれしいですね。自分自身も新しいシステムに触れるなどして、勉強の日々です。元気なうちは、働き続けたいですね」と話す。  杉原(すぎはら)修(おさむ)さん(75歳)は、他社を定年退職後、2016年4月より元気事業部会員として登録(9年目)。環境整備事業の主要な現場を任されている。ほかの従業員が将来の目標として杉原さんの名前をあげるほど、明るく元気に勤務している。「自分の体力と身体を動かしていれば、若さを保てます。身体が動けば、いつまででも働きたいです」と話す。 (6)今後の課題  同社は今後、ロボティクスの導入や運転しやすい車両、ファンつきベストなどをはじめ、使いやすい道具や洗剤の導入、ユニフォームの見直しを行いながら、高齢従業員だけでなく全従業員が働きやすい環境を整備していく方針である。  また、時間の縛りなく、従業員が希望する時間帯で仕事ができるよう顧客先と調整を行うなど、より柔軟な働き方の実現を目ざしている。  経営理念である地元住民および地元で働く人々にとっての「一親等」の会社として、高齢従業員はもちろん、全世代が働きやすい職場環境の構築に向けた同社の取組みは今後も続く。 ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 写真のキャプション 株式会社クリーン開発 元気事業部に登録して働く高齢従業員 杉原修さん(75歳・左)、長谷川勤さん(72歳・右)。株式会社クリーン開発の創業50周年記念企画で掲げた2025年の目標を手にする2人 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 優秀賞 IT業界では稀にみる定年制廃止 多様な働き方を提供して高齢社員を戦力化 株式会社マイネットシステム(長野県松本市) 企業プロフィール 株式会社マイネットシステム (長野県松本市) 創業 2000(平成12)年 業種 情報サービス業 社員数 82人(2025〈令和7〉年4月1日現在) 60歳以上 8人 (内訳) 60〜64歳 6人(7.3%) 65〜69歳 1人(1.2%) 70歳以上 1人(1.2%) 定年・継続雇用制度 定年なし。最高年齢者は営業職の75歳 T 本事例のポイント  株式会社マイネットシステムは、業務システム開発やシステムエンジニアリングサービスなどを手がける情報サービス企業。「お客様と共に夢への挑戦をします。信頼する会社づくりを目指します。公平・公正な職場づくりに努めます。」を企業理念に掲げ、長野県松本市を拠点に幅広く事業を展開している。同社が社員に求める人物像は、会社の業績に貢献でき、会社からの指示で動くのではなく、自分で動いて仕事を行うことのできる「自律型人材」。これは高齢社員も同様であるため、60歳以降の社員を特別視することなく、戦力として活用している。 POINT @IT業界では、ほとんど見られない定年制の廃止を実施し、社員が長期的なキャリア形成を描ける環境を整備した。 A60歳以上の社員を対象に、毎年、働き方に関する意向確認の話合いを実施。社員のライフステージに合わせた多様な働き方を提供している。 B年齢に関係なく自発的な行動をうながすため、能力・貢献に見合った報酬制度を構築し、60歳時点での賃金の一律減額は行っていない。 C目標管理シートをもとにした人事評価制度により、高齢社員のモチベーション向上と公平な処遇を実現している。 U 企業の沿革・事業内容  2000(平成12)年に有限会社マイネットシステムとして創業。2007年、株式会社への商号変更を経て、2018年には本社を長野県松本市へ移転。これまで長野市、東京都に事業所を展開している。  創業以来、長野県を中心に事業を展開しており、業務アプリケーションのみならず組込みシステム(ファームウェア)の開発にもたずさわっている。現在では首都圏にも進出し、金融システムの開発・保守業務なども手がけている。  主軸事業は「業務システム開発」、「システムエンジニアリングサービス」、「ECサイトの構築」、「戦略策定&コンサルティング」、「プロジェクトマネージメント支援」、「システム運用・保守&ヘルプデスク」である。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  2020(令和2)年の社員数は42人であったが、中途採用者の増加により、2025年4月1日時点では82人に増加した。60歳以上は8人(約1割)、70歳以上は1人が在籍しており、高齢社員は営業・経営企画、開発・技術などの職種にたずさわっている。  同社の技術系高齢社員は、過去にCOBOL※1やFORTRAN※2などのプログラミング言語に精通した人材であり、技術革新により新しいシステムが開発された場合においても、これまでの技術力・専門力・経験から柔軟に対応でき、貴重な人材として活躍している。  2020年に経営危機に陥ったことを機に、現社長の発案により「社員が会社を好きになって、やりがいのある職場にする」ことを最上位目標に設定した。そこで、10年以上改定を行っていなかった就業規則を見直し、人事制度の明文化、処遇の改善、人事評価制度の構築、退職金制度の充実を図った。  制度改定にあたっては、経営陣と弁護士、公認会計士、社会保険労務士のプロジェクトチームを結成し、定年制廃止などに向けた検討を重ねた。専門家を交えることで、法的判断や収益構造との整合性、各社員の生涯設計の有効性を図ることができた。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制の廃止  以前は定年60歳、その後嘱託社員として65歳まで再雇用としていたが、会社の成長の根幹は人事制度にあるとの確信から、2020年に短時間正社員制度を導入し、2023年に定年制を廃止した。  短時間正社員制度、および定年制の廃止にあたっては、社員に「会社が社員に求める能力、期待している役割」を明確に説明し、企業と社員双方にとって納得性の高い制度として導入を図った。  現在、同社では高齢社員活用方針に「人それぞれ置かれている環境・事情が全く違うため、各自の選択を尊重した柔軟な就業環境を提供する」を掲げており、高齢社員に多様な働き方が可能となるよう配慮している。  60歳を迎える時点で本人と会社の間で働き方の意思確認を行い、@「いままで通り管理職を続け今後も上位職を目ざす」、A「管理職を外れて一般職としてフルタイム勤務」、B「一般職として月の出勤を半分にする」など、希望に応じた多様な働き方の選択肢を設けている。  60歳以上の社員には、働き方に関する意向の確認を毎年行っており、「個人の希望」と「会社が求める社員に期待する役割」、「社員が持つ能力や意欲」などを話し合い、会社と個人が納得したうえで働き方を決めている。 A賃金制度の見直し  制度改定前は、人事制度が明文化されていなかったため、経営再建を契機に賃金制度の見直しを行った。そして昇給・評価制度との連動を図るため、役職・等級別の月額給与バンド(上限額から下限額まで幅をもたせた帯状の賃金構造)を設定し、公平性を確保することで社員にとっての透明性を高めた。  給与バンドは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、長野県内の同業・同規模の統計資料を参考として賃金基準を設定。県内の同業他社より高い給与水準に設定するなど、社員の納得感やモチベーションを高めるための工夫がなされている。 B人事評価制度の導入  「60歳になってもマネジメント能力・技術力が落ちることはない」という考えから、60歳時点での一律の賃金の減額などは行っていない。一方で「高齢者だから」と特別視することもなく、60歳以降の管理職においては、能力や貢献度をきちんと評価し、それに見合った報酬を提供するため、人事評価制度の見直しを実施した。現在は、半期ごとに面談を設定して目標管理シートをもとに、目標設定と実績を本人と評価者で面談評価し、総合点数で評価レベルを決定しており、評価レベルは翌年の昇給に反映している。  ある高齢社員は、本人の希望により役職を外れて一般職に戻ったが、貢献度が高いことから、以前の支給額とほぼ変わらない状況である。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @資格取得の促進  高齢社員を含めた全社員に「基本情報処理技術者」をはじめとした資格取得手当を支給している。手当が支給される資格については、スキルシートに盛り込んでおり、社員が長期的な視点で取得計画を立てられるようにしている。 A知識習得機会の提供  エンジニアに必要なスキルは、担当する分野によって異なるが、基本的には、業務を通じて社員が自主的に知識を習得するよううながしている。会社は支援策として、社内ポータルサイトを活用した業務に直結するテーマの勉強会を開催している。ほとんどの勉強会に高齢社員が、講師または受講者として参加している。  高齢社員が講師を行うメリットとしては、講師と受講者がともに社員のため、コミュニケーションが活発になり、業務への円滑な活用にもつながっている。また、社内ポータルサイトを活用することにより、リモートワークの社員も参加しやすい環境が整備されている。 B対面コミュニケーションの強化  同社では、「楽しくなければ仕事じゃない」を信念として、人の意見を否定するのではなく、真剣に向き合う職場づくりを目ざしている。このため、社長が週1回、本社、東京事業所、長野事業所の3事業所を訪問し、社員との信頼関係の構築・成長支援をうながすための1on1ミーティングを実施している。  対面で話すことで、業務上の早期課題の発見、社員の感情や要望をくみ上げることが可能となり、モチベーションの向上にもつながっている。  また、社内での呼称については、「社長」や「課長」などの役職は用いず、すべて「○○さん」でお互いを呼び合うこととしている。このため社内の上下関係が生まれにくく、若手社員や中途入社の社員にとっても意見がいいやすく、風通しのよいざっくばらんな雰囲気でお互いの自主性を尊重しあう企業風土が育っている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @作業環境・作業の改善  オフィスの快適性を向上させるため、机は幅140cm(通常は120cm)のものを、いすは腰痛予防に配慮したものを全社的に配置。職場における目の負担を軽減させるため、適切な照明設備の導入(LEDの導入)、高齢社員が参加する場合は、プロジェクターの文字を大きくするなどの配慮を行っている。 A多様な働き方の導入  短時間正社員制度、勤務時間の短縮、フレックスタイム制度、1時間単位の有給休暇の制度を導入している。高齢社員からは、孫・家族の送迎、通院などのために短時間勤務を希望する者もおり、好評である。  ある高齢社員は、孫の育児サポートのため、正社員から短時間正社員に雇用形態を変更し、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら仕事を続けている。  また、リモートワークや副業を可能とするなど、多様な働き方を通じて高齢社員が安心して働ける職場環境が整備されている。現在リモートワークは約10人が活用しており、なかには大病を患った高齢社員もいるが、リモートワークの導入により通勤時の体力的な負担が軽減され、体調にあわせた働き方で勤務を継続している。 B健康管理  人間ドックを受ける社員には、55歳以降、5歳刻みで補助金を支給している。そのほか、ストレスチェックや、社員のメンタルヘルス状況の確認なども行っており、必要に応じて産業医や専門家を紹介している。 (4)高齢社員の声  営業・経営企画職として働く石井(いしい)哲也(てつや)さん(61歳)は、定年制廃止について「過去につちかった人脈を活用でき、会社の業績に長く寄与できるようになりました。また自分の持っている知識などがそのまま役立ち、会社に貢献できています」と話す。  開発・技術職として働く長村(おさむら)博(ひろし)さん(60歳)は、「やや昔のスキルでも、必要としてくれる人がおり、自分の持っているスキルがそのまま活かせていると感じています」と手ごたえを語る。 (5)今後の課題  今後は、退職金制度のさらなる充実、福利厚生制度の導入、定年制廃止にともなう役職任命制度のあり方改革、社内ベンチャー制度の創設、社員教育の充実などに取り組んでいく予定としている。  同社では、大手コンピュータ会社の特約店での勤務経験があり人脈が豊富な高齢社員、食品流通システムに精通している高齢社員などが、長年の経験を武器に顧客先の課題を掘り起こし、顧客との信頼関係の構築、顧客満足度の向上などに積極的に取り組んでいる。定年制の廃止により、社員のつちかった経験を効果的に活かせており、売上高は経営危機時の2020年と比較して、3.3倍にまで伸長した。  また、同社の取組みは地域にも大きなインパクトを与えている。2023年には長野県SDGs推進企業として登録され、持続可能な経営モデルの先駆例として認知された。IT業界ではきわめて稀な定年制廃止の実施は、地元メディアからも注目を集め大きく取り上げられた。これにより、長野県内の他企業にも高齢者活用の可能性を示すロールモデルとなっている。  高齢社員はもちろん、だれもが働きやすい職場環境を構築し、経営理念である「お客様と共に夢への挑戦をします。信頼する会社づくりを目指します。公平・公正な職場づくりに努めます。」の具現化を目ざして、同社の取組みはこれからも続いていく。 ※1 COBOL(コボル)……1960年ごろに開発された事務処理向けのプログラミング言語 ※2 FORTRAN(フォートラン)……1950年代に開発された科学技術計算向けのプログラミング言語 写真のキャプション 株式会社マイネットシステム 社内では、高齢社員を含む幅広い世代の社員が机を並べて働いている 石井哲也さん(61歳) 長村博さん(60歳) 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 高齢社員が長く安全で安心して働ける職場環境を段階的に実現 株式会社清風堂(せいふうどう)(北海道札幌市) 企業プロフィール 株式会社清風堂 (北海道札幌市) 創業 1984(昭和59)年 業種 その他の事業サービス業 (ビルメンテナンス業) 社員数 450人(2025〈令和7〉年4月1日現在) 60歳以上 307人 (内訳) 60〜64歳 51人(11.3%) 65〜69歳 88人(19.6%) 70歳以上 168人(37.3%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員を70歳まで嘱託社員として継続雇用。以降、一定条件のもと年齢上限なく継続雇用。最高年齢者は84歳 T 本事例のポイント  株式会社清風堂は、札幌市でビル・店舗・病院・オフィスなどの総合清掃管理サービスを手がける企業である。現在の社員構成は65歳以上がボリュームゾーンとなっており、全社員450人のうち約57%にあたる256人が65歳以上という、高齢化がきわめて進んだ企業である。ビルメンテナンス業界は深刻な人手不足と高齢化に直面しており、同社においても60代後半層の社員が事業の中核をになっている現状にある。  現在の最高年齢者は84歳の清掃スタッフで、80代の社員も4人在籍している。このような状況のなかで、同社は「高齢者が長く安全で安心して働き続けられるようにすること」を根本思想として掲げ、2022(令和4)年から段階的かつ総合的な制度改善を実施し、高齢社員が働きやすい環境づくりに取り組んでいる。  これらの取組みにより、高齢社員のモチベーションの向上、新規採用の増加、職場風土の改善などの成果を上げている。 POINT @2024年1月に定年を60歳から65歳に引き上げ、希望者全員を70歳まで継続雇用する制度を導入。さらに70歳以降も一定条件のもと年齢上限なく継続雇用を可能とした。 A55歳以上の社員を対象に、短時間勤務、夜間勤務除外、勤務日数調整などを可能とする「勤務時間の弾力化」制度を導入し、体力や健康状態に応じた働き方を選択できる環境を整備した。 B60歳から64歳までの期間を賞与支給および退職金計算の対象期間に算入し、定年延長にともなう処遇向上を実現。定年引上げ前に定年退職後、契約社員になっている場合は遡及(そきゅう)して適用した。 C掃除機の軽量化をはじめ、使用機材の見直しにより、高齢社員の身体的負担を大幅に軽減した。安全で疲労の少ない作業を実現し、高齢社員はもちろん、全社員が長く働くことができる作業環境および作業方法を整えた。 Dビルクリーニング技能士などの資格取得費用を全額支給し、現場にメンターを配置して業務および健康面で相談体制を強化した。これにより、社員の自律的なキャリア形成を可能とした。 U 企業の沿革・事業内容  株式会社清風堂は1984(昭和59)年7月4日、北海道札幌市でビル・店舗・病院・オフィスなどの総合清掃管理サービスを主たる事業として創業した。誠実で確実な仕事により多くの顧客から信頼を得ている。  事業内容は総合清掃管理を中核とし、環境衛生管理、設備保守管理、警備・施設管理業務、竣工美装工事など建物の維持管理にかかわる幅広い分野に展開している。清掃のプロフェッショナルとして、各種施設を快適な空間にリフレッシュし、安心・安全な環境づくりをサポートしている。  創業から40年を迎え、ビルメンテナンス業界における人手不足と高齢化という業界全体の課題に直面しながらも、高齢社員の豊富な経験とノウハウを活かした競争力の維持・向上を図っている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  同社の高齢化の現状は著しく、2025年4月1日現在で全社員450人のうち約57%にあたる256人が65歳以上となっている。年齢構成は、60〜64歳が51人(11.3%)、65〜69歳が88人(19.6%)、70歳以上が168人(37.3%)となっており、特に70歳以上の社員が全体の3分の1を超える状況にある。現在の最高年齢者は84歳の清掃スタッフで、60代後半層の社員が事業の中核をになっている状況にある。  社員の高齢化と人手不足は、ビルメンテナンス業界全体の課題となっており、どのように対応していくべきかが問われている。そんななかで、社員からは「高齢社員の経験やノウハウを活かして会社の競争力を維持・向上させたい」、「働くことにより長く健康を維持したい」といった要望が寄せられていた。  そこで同社では、社員が健康状態を考慮した働き方を選択できるようにするとともに、体調が悪くなった際に、社員相互の支援体制を強化することにより、長く働き続けることができる職場環境づくりを推進。あわせて安全衛生管理を充実させることで、安全・安心に働くことができる職場環境を目ざしていくこととし、2021年4月の改正高年齢者雇用安定法施行をふまえ、2022年4月に継続雇用制度の大幅な見直しを実施した。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年制度と継続雇用制度の見直し  従来の制度は60歳定年、希望者全員65歳までの継続雇用としていたが、2022年に希望者全員70歳までの継続雇用制度を導入。さらに2024年1月には定年年齢を60歳から65歳に引き上げるとともに、70歳以降も社員本人の要望・適性・評価などに応じて、年齢上限なく継続雇用を可能とする仕組みとした。これらの制度改善により、社員の労働意欲の向上や仕事へのモチベーションが高まり、70代以上の清掃業務への応募が増えている。中途採用にも好影響が出ており、この数年で採用が大幅に増加した。 A賃金制度と退職金制度の見直し  2024年1月の定年年齢引上げにあわせ、賃金規程と退職金規程についても見直しを行い、60歳から64歳までの期間について賞与支給の対象とするとともに、当該期間については退職金計算の対象期間に算入した。これには高齢社員だけではなく、若手・中堅社員からも好意的な意見が多くあがった。また、この見直しにあわせて、定年引上げ前に定年退職し身分が契約社員となっている社員については、社員の雇用継続の意思を個別に確認したうえで、定年引上げ後の正社員と同様、退職金計算の対象期間に算入する措置を講じている。 B多様な勤務形態の導入  2022年4月の継続雇用制度見直しにあわせ、「勤務時間の弾力化」を制度として導入した。具体的には、55歳以上の社員を対象に、体力の低下や健康状態を考慮して勤務時間弾力化の申請を行えば、短時間勤務のほか、夜間勤務の除外、勤務日数の調整、隔日勤務が可能となる。勤務時間の弾力化を行うことで、自分の働き方を自分で選択することが可能になり、安心して長く働くことができる職場環境が実現した。 C私傷病休職制度の拡大  2024年4月に、3カ月間の休職が認められる私傷病休職の適用範囲を「正社員のみ」から「全社員」に拡大した。正社員にかぎらず全社員が私傷病による治療のために退職を余儀なくされることがなくなり、職場復帰の機会が制度上保障されることとなった。  また、年次有給休暇とは別に月1日(年12日)のライフサポート休暇(正社員のみ)を導入した。社員からは「通院や私事などによる平日の休暇がとりやすくなった」との声が聞かれ、好評を得ている。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @資格取得支援制度の創設  全社員が自律的にキャリア形成を進められるよう、2020年4月、ビルクリーニング技能士、清掃作業監督者、建築物環境衛生管理技術者、建築物清掃管理評価資格といった、業務に必要となる資格の取得にかかる経費(講習費用、テキスト代、試験費用)を全額支給するとともに、講習時や試験時を出勤扱いとする制度を創設した。  この制度により、社員が自らの職業能力を向上させる意欲が高まり、資格取得にチャレンジする社員が毎年5〜10人程度出るようになった。制度を活用して有期雇用のパート社員2人がビルクリーニング技能士の資格を取得し、無期雇用に転換することになった実績もある。 Aメンターの配置  業務上の疑問や健康面の相談を気軽に行うことができるメンター(現場責任者)を7人配置し、日々、社員からの相談に応じている。社員は働き方の希望を現場のメンターに提出し、メンターとの対話により調整することで、双方のコミュニケーションが活発になった。希望を気兼ねなく相談できるようになったことで、ストレス要因の軽減にもつながっている。  メンターは月1回、集合会議による意見交換を実施しており、相談時の注意点や傾聴時のポイントなどを共有することで、相談の質の向上を図っている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @清掃器具の改善  高齢社員の身体的負担の軽減を図るため、従来、5〜6kgの重量があった掃除機を2〜3kgの軽量タイプに全面的に変更した。また、床の拭き掃除に使用するモップを従来型の糸モップからフラットモップに変更するなどの改善を行っている。フラットモップに変えたことで、モップの洗濯作業がなくなり、以前は洗って絞る作業をくり返し行うことで、指の関節にダメージを負う社員がいたが、現在はそのような症状を発症するケースはなくなった。 A休憩室の設置  現場作業時の顧客先での休憩スペース確保のため、現場責任者が休憩室などの設置や使用の許可に関する交渉に努めている。休憩スペースの確保により、社員の疲労回復やプライバシー保護が図られるようになったほか、交渉の努力が社員に伝わることで、現場責任者との信頼関係が高まり、人間関係をより円滑にする効果も生まれている。 B健康管理の強化  2024年から特定健診の費用を会社が全額負担しているほか、健康管理の1次予防、2次予防の強化を目的に、人間ドック、脳ドック、心臓ドックのうち一つを会社が費用負担する制度を創設した。1回あたり4〜5万円の費用負担を行っている。  また、インフルエンザの予防接種率を高めるため費用の全額を会社負担とし、現場の事業担当者が社員への周知と日程調整を行っている。 C安全衛生管理の充実  年1回開催している安全衛生管理研修の内容(作業方法の注意点、心と体の健康管理の方法、感染症対策など)の充実を図っている。通勤時や作業時の転倒事故に対する注意喚起を徹底することができ、社員の安全衛生管理の知識と実践の向上につながっている。 (4)その他の取組み @高齢者の積極的な採用  70代の高齢者を積極的に採用しているほか、「札幌市就業サポートセンター」で行われている各種高齢者雇用の啓発活動に積極的に協力している。70歳超の新規採用者数は2021年の23人から、2024年には51人と大幅に増加している。 Aダイバーシティと介護・仕事の両立  国籍を問わずやる気のある人材を積極的に採用する方針であり、現在は2人の外国籍社員が在籍している。また、2022年までに育児介護休業規程を整備しており、介護と仕事の両立がしやすい環境整備を行っている。  札幌市の「札幌SDGs企業登録制度」に登録し、多様な働き方の促進や環境問題を中心に取組みを行うなど地域貢献の活動も積極的に行っている。 (5)高齢社員の声  三井(みつい)勝好(かつよし)さん(74歳)は、2018(平成30)年に入社し在籍6年。おもにマンションやテナントビルの清掃を担当している。「清掃をしてキレイになっていくのがうれしいですし、それがやりがいにつながっています。身体を動かすことが健康にもつながります」と話す。  林(はやし)功修(よしのぶ)さん(75歳)は、2010年に入社して在籍15年。マンションなどの巡回清掃を担当している。「体力や年齢にあわせて、仕事量や勤務時間を調整してもらえるので助かります」と話す。 (6)今後の課題  同社の職場改善の根本思想は、「高齢者が長く安全で安心して働き続けられるようにすること」である。高齢者は労災事故が多いといわれるが、労働災害にかぎらず、自宅などふだんの生活のなかで転倒してしまうこともある。私傷病休職の適用範囲を全社員に拡大した理由は、このようなケースでも安心して休んでもらえるよう配慮した結果である。  今後は、「定年制の廃止、または継続雇用年齢の引上げ」についても検討をしていく方針。社員が安心してより長く働き続けられる制度をつねに模索し、地道な改善に努めていきたいとしている。  高齢社員が持つ豊富な経験とノウハウを最大限に活用し、安全で働きやすい職場環境の継続的な改善を通じて、同社はさらなる高齢者雇用の推進に取り組んでいく。 写真のキャプション 株式会社清風堂 軽量タイプの掃除機(上)やフラットモップ(下)を導入し負荷を軽減 三井勝好さん(74歳) 林功修さん(75歳) 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 高齢従業員が自らの国家資格を活かし即戦力として活躍できる職場環境を実現 藤田(ふじた)建設工業(けんせつこうぎょう)株式会社(福島県東白川郡(ひがししらかわぐん)棚倉町(たなぐらまち)) 企業プロフィール 藤田建設工業株式会社 (福島県東白川郡棚倉町) 創業 1950(昭和25)年 業種 総合工事業 従業員数 173人(2025〈令和7〉年4月1日現在) 60歳以上 78人 (内訳) 60〜64歳 25人(14.5%) 65〜69歳 32人(18.5%) 70歳以上 21人(12.1%) 定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員を70歳まで再雇用。その後は運用により一定の条件のもと、年齢上限なく再雇用。最高年齢者は87歳 T 本事例のポイント  藤田建設工業株式会社は1950(昭和25)年に創業した。創業以来「仕事は仕事でとれ」を掲げて業容を拡大。この言葉は「良い仕事をすることが呼び水となり、次の仕事を呼んでくる」という思いが込められており、全社一丸となって地域に評価してもらえる会社づくりを目ざしてきた。  また、同社は福島県で最も多くの「福島県優良建設工事知事表彰」を受けており、技術力と施工品質が高く評価されている。雇用管理の面でも「仕事と生活の調和」推進企業など多くの認証を受けており、さらに、2020(令和2)年から4年連続で「健康経営優良法人」(中小規模法人部門)の認定を受けるなど、従業員の健康に対する意識の高さもうかがうことができる。 POINT @経験豊富な高齢従業員は、事業継続に不可欠な存在であり、就業規則を改定して、定年年齢と継続雇用の年齢上限を引き上げて、長く継続して働ける環境を整備した。 A高齢従業員は国家資格保有者が多いため、専門性を活かして活躍してもらうために定年後も資格手当を支給して、給与の底上げを図った。 B柔軟な勤務形態により高齢従業員の就業継続を支援。また、継続教育制度(CPDS)を活用し、中高年のスキル維持・向上を促進した。さらに、70歳以上の従業員の表彰制度や会長特別賞により、高齢従業員の意欲向上を図った。 CICT、DXの導入により作業効率を向上させつつ、高齢従業員の経験・技能を活かせる職場を実現した。 D健康講習、熱中症対策、感染症予防など、健康管理体制の強化に努め、健康経営優良法人の認定を受けた。 U 企業の沿革・事業内容  同社は創業75年を誇る総合工事会社である。創業以来、管路更生工事や、建設プロジェクトに関する調査・研究・企画・設計など幅広い事業を展開してきた。ISOの認証取得や働きやすい職場づくりにも注力し、地域と顧客に評価される企業を目ざしてきた。「良い仕事が次の仕事を呼ぶ」という精神を大切にし、信頼と実績を積み重ねている。雇用管理に関する認証も数多く受けており、とりわけ仕事と子育てが両立できる職場づくりに取り組み、2007(平成19)年に「仕事と生活の調和」推進企業、2008年に「子育て応援」中小企業、2016年に「働く女性応援」中小企業などの認証を県より受けている。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  本店を置く福島県東白川郡棚倉町は、人口減少と高齢化が進む地域で、事業継続を推進するには若年者の採用もさることながら、高齢従業員の活躍が不可欠であった。特に国家資格を有する高齢従業員の存在は、建設業における品質確保や受注維持に重要な役割を果たしていることに鑑み、高齢従業員が長期にわたり活躍できる職場環境の整備は喫緊の課題であった。  2020年に就業規則を改定し、定年年齢と継続雇用制度の年齢上限の引上げを行い、高齢従業員が長期にわたり活躍できる職場環境の整備を進めた。現在、60歳以上の従業員数は78人、そのうち70代は19人、80代は2人で、最高年齢者の87歳の従業員はこれまでの経験を活かして経営相談や福島県内はもとより、さらに広域の情報収集において活躍している。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @定年年齢の引上げ  2020年に60歳定年と希望者全員65歳までの継続雇用制度の年齢をそれぞれ5歳ずつ引き上げ、定年は65歳に、継続雇用は希望者全員70歳までとし、70歳以降も本人の健康状態と業務量により年齢上限なく再雇用している。同社には「高齢従業員には定年後も働けるかぎりは働き続けてほしい」という思いがある。同社の会長は、人生の目的・目標を持ち、社会に貢献することが元気で長生きする秘訣であり、「きょういく(教育≠今日、行くところ)」と「きょうよう(教養≠今日の用事)」を持つことを高齢従業員にすすめている。 A賃金制度・人事評価制度  定年後も安定した収入を確保できるように賃金制度を整備し、満60歳で肩書きは変わるものの、給与は同額を支給している。65歳で定年を迎えると、役職を外れスタッフ職となるが、基本給は定年前の約85%を維持し、引き続き月給制を採用している。70歳以降は日給制へ移行するが、国家資格手当は年齢にかかわりなく支給しており、高齢従業員の収入を安定させている。これにより高齢従業員の生活の安定を図るとともに、若手従業員が資格を取得する意欲の向上にもつながっている。  また、高齢従業員のモチベーションの維持・向上のため、定年後も評価制度を導入しており、上司による評価結果を専務(2人)と常務の3人による確認を経て社長が最終判断し、賞与に反映している。評価には査定用シートを使用しているが、高齢従業員は時短勤務や勤務日数が異なるので柔軟に対応している。 B勤務形態  定年後の再雇用に際しては「再就職希望申出書」を提出してもらい、本人の希望に沿った柔軟な働き方を可能なかぎり認めている。実際に、親の介護のために週3日勤務の選択、遠距離通勤にともなう時差出勤の選択、公的年金の受給に配慮した勤務日数の調整など、多様な働き方が実現しており、定年退職による知識や技能の流出を防ぐ効果を上げている。 C役割の明確化  定年年齢を引き上げたことによる60歳から65歳までの5年間に、役職者の役割として「後任への引継ぎ」や「後進の育成」を明確化し、技術・技能の確実な伝承を行うため役職名を変更し、後任者への確実な引継ぎを行っている。後進が育っていないからといって、役職を継続するのではなく、あえて役職名を変更することで、引き継ぐほうも引き継がれるほうもタイムリミットを把握し、確実に技術・技能を伝承できるようにしている。役職名の変更の例としては、「執行役員」⇒「ゼネラルマネージャー」、「取締役」⇒「参与」、「部長」⇒「シニアマネージャー」などがある。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @国家資格取得の支援  建設業では、高い品質を提供するために「有資格者」の存在が不可欠であり、実務経験を重ね、国家資格の取得を希望する従業員には受験費用や教材費、講習の費用を全額会社が負担して資格取得の後押しをしている。その結果、従業員の64%が有資格者となっている。継続学習制度(CPDS)も活用しており、技能の陳腐化を防ぎながら、実務に即した知識を継続的に習得できる仕組みは、特に中高年従業員にとって有効である。 A表彰制度  70歳以上の従業員を対象に、年間を通じて無事故・無違反で業務に精励した者を「優良従業員」として表彰する制度を設けている。さらに、70歳を迎えた従業員には「会長特別賞」を贈呈、これにより、高齢従業員の安全意識や法令遵守意識の向上を図るとともに、表彰を通じてモチベーションの維持・向上につなげている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @メリハリのあるICT、DX、BIM/CIM化  国土交通省が推進する「i-Construction」や「建設DX(デジタルトランスフォーメーション)」、「BIM/CIM(3次元データを使った設計・施工)」といった最新の技術を活用し、現場の効率化や作業の高度化に取り組んでいる。特にBIM/CIMは、設計図をデジタル化し、それをもとに施工を機械で行う情報化施工である。  しかし、現場の環境や条件は異なるため、細かな調整には熟練者の知識や経験が必要となる。施工そのものは、機械化により若手でも対応可能であるが、各工程や仕組みを理解しながら進める必要がある。このため、現場では高齢の熟練者が若手に指導を行いながら、ともに施工を進めている。  高度な技術を活用したICT化などを進める一方で、同社は働き方改革の一環として、全従業員の残業時間や年次有給休暇の取得状況を一元的に管理できる電子出退勤システムを導入した。一般的に普及しているスマートフォンのアプリによる管理方法は、高齢従業員にとっては操作のハードルが高いと判断し、だれでも簡単にカードをかざすだけで出退勤情報が記録されるシステムを採用。さらに、このカードには社是や経営方針を印字し、従業員が日々の業務のなかで自然と企業理念にふれられるよう工夫されており、企業風土の醸成にも寄与している。 A作業環境改善  高齢従業員の安全と負担軽減を目的に最新技術を積極的に導入している。作業効率や利便性、安全性の向上を目的に導入したラジコン草刈機は、斜面作業の危険を回避することで身体的負担の大幅な軽減につながった。電動バックホウ(地面を掘削するために使われる建設機械)は、振動・騒音・排気ガスを抑え、高齢従業員の疲労軽減と環境負荷低減に寄与している。 B安全衛生、健康管理  高齢従業員の健康維持と安全確保を目的に、年2回の外部講師による健康講習を実施している。腰痛や眼精疲労対策としてストレッチ指導を行い、参加者からは高評価を得ている。全従業員が民間医療保険に加入しており、病気やけがへの備えも万全である。健康診断後の二次検査も徹底し、再受診を強くうながしている。  さらに、熱中症対策として電動ファンつき作業服やWBGT値(暑さ指数)の管理を徹底し、感染症予防ではインフルエンザ予防接種を全額会社負担で実施している。 (4)その他の取組み  同社は、高齢者雇用に積極的に取り組むだけでなく、すべての従業員が働きやすい職場づくりを推進してきた。温泉施設を活用した研修では世代間交流を促進し、健康経営の推進により「健康経営優良法人」に4年連続で認定されている。  また、障害のある従業員や高齢従業員には設備改修や柔軟な勤務形態を導入し、女性には育児支援や役職登用、安全パトロールなどを実施、だれもが能力次第で活躍できる社風の構築を推進している。  さらに、地域資源を活用した事業展開により、地域経済への貢献も評価され、2018年には「地域未来牽引企業」(経済産業省)に選定された。 (5)高齢従業員の声  熊田(くまだ)秋夫(あきお)さん(73歳)は社歴16年目を迎えた。営業企画部に所属し、現在も技術者として第一線で働く。数多くの資格を活かし、電気工事、太陽光発電所の維持管理および社内作業所の仮設電気設置業務を担当、取引先からの信頼も厚い。現在は、若手の電気担当者へ技術の伝承、指導教育にも注力している。  「電気工事にたずさわり53年、入社して16年間仕事に取り組むことで、充実感、達成感などの手ごたえを感じています。まだまだ日々勉強の毎日で、スキルや知識の向上に努力し、お客さまや会社に貢献できるよう、もう少しがんばりたいと思っています」  金沢(かなざわ)真(まこと)さん(66歳)は熊田さんと同じく数多くの資格を有しており、管理部の安全を担当する技術者、技能検定の講師として活躍しながら職場の安全管理に不断の努力をはらい続けてきた。現在は、後任の指導・育成に尽力し、地元の野球チームなどの地域活動にも貢献、人脈を活かしながら積極的に活動している。  「この12年間、安全管理者として災害発生防止に努めてきました。この間、災害件数が4分の1まで減少したことをふり返ると、経営方針である『安全は会社のいのち』を全従業員へ意識づけできたのではないかと感慨深いものがあります。今後も若手の技術者を教育し、引き続き、災害防止に努めてまいります」 (6)今後の課題  同社は県内企業を代表する立場として、法令を遵守し社会的要望に応えて邁進してきた。高齢者雇用に関しても検討を重ね、できることからていねいに実施してきた姿勢はこれからも維持していきたいと考えている。  一方で、昨今新たに求められている「i-Const-ruction、建設DX、BIM/CIM」などの電子化に積極的に取り組み、業務効率化、人手不足解消につなげるとともに、これらの仕組みを利用し、高齢従業員への活用や作業負荷軽減に活かし、長く企業で活躍できる風土づくりを目ざしていく。時代の一歩先を行く同社のチャレンジは続く。 写真のキャプション 藤田建設工業株式会社 熊田秋夫さん(73歳) 金沢真さん(66歳) 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 厚生労働大臣表彰 特別賞 働く意欲のある人に寄り添いだれもが自分らしく働ける職場環境づくりに挑戦 光(ひかり)タクシー株式会社(静岡県浜松(はままつ)市) 企業プロフィール 光タクシー株式会社 (静岡県浜松市) 創業 1951(昭和26)年 業種 道路旅客運送業(タクシー) 従業員数 111人(2025〈令和7〉年4月1日現在) 60歳以上 90人 (内訳) 60〜64歳 18人(16.2%) 65〜69歳 27人(24.3%) 70歳以上 45人(40.5%) 定年・継続雇用制度 定年70歳。一定条件のもと、年齢上限なく再雇用。最高年齢者は82歳 T 本事例のポイント  光タクシー株式会社は、1951(昭和26)年に静岡県浜松市でタクシー事業を開始した。以来、浜松市を拠点に地域の足となることで地域貢献を実現してきた。高齢者の雇用の受け皿になっているタクシー業界だが、中堅タクシー会社である同社は、大手タクシー会社で受け入れられなかった50代から60代のドライバーを採用することで、数年前から平均年齢が上昇していた。若年層の人材を採用できないことを悲観していた時代もあったが、活き活きと働く高齢従業員の姿に元気づけられ、高齢者を積極的に雇用するという方針に舵を切った。 POINT @ホームページ上に他業種の会社を定年退職した高齢者を対象とした採用ページを開設。同社で働いている高齢従業員の動画を掲載して、職場の雰囲気を具体的にイメージできるように工夫したことで応募者が増加に転じた。 A60歳以上の従業員を対象とした研修を実施することで、高齢従業員の役割意識やモチベーションの向上を図った。 B同業他社には導入例の少ない「病気入院保障制度」をはじめとする健康管理に対する取組みを積極的に推進。 U 企業の沿革・事業内容  1951年に、静岡県浜松市でタクシー事業を開始。以来、浜松市を拠点に事業を拡大し、デイサービスや、幼稚園などの送迎車の運行管理を請け負う事業、浜松市内と富士山静岡空港間を結ぶ乗合旅客事業を開始した。また、2021(令和3)年にはコロナ禍によって旅客運送の仕事が激減したため、食料品の輸送の仕事を始めるなど、つねに「次の一手」を考える事業を展開してきた。同年には「浜松市高齢者活躍宣言事業所認定」を取得、高齢従業員が働きやすい職場づくりにも取り組んでいる。 V 高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方  従業員数は111人、そのうち60歳以上の従業員は90人で81%を占めている。さらに、定年年齢を70歳としているにもかかわらず、70歳以上の従業員が45人(41%)に達しており、いずれもタクシードライバーとして業務に従事している。  同社では、70歳以上でも一定の条件を満たす場合には年齢上限を設けずに再雇用を行っており、経験と地域に対する深い理解を兼ね備えた高齢ドライバーは、重要な戦力として活躍している。  また、同社のホームページでは他業種の会社の定年退職者の採用を意識した採用ページを設けており、実際に勤務している高齢従業員のインタビュー動画や職場の写真を通じて、年齢にかかわりなく働くことができる環境であることをアピールしている。  こうした取組みによって、職場の雰囲気を感じてもらうことができ、同社への応募の動機形成にも一定の効果を上げ、優れた人材の確保に一役買っている。 W 改善の内容 (1)制度に関する改善 @「積算(せきさん)歩合制」の導入  従来採用していた「累進(るいしん)歩合制」に代わって、2022年から「積算歩合制」を導入した。累進歩合制は、一定の売上げ基準を超えると歩合率が急激に上昇する仕組みで、高い売上げを達成した際には大きな報酬が得られる反面、その基準に到達するために、無理な運転を行うことがあるなど、「制度の副作用」が課題となっていた。このため、ドライバーの健康や労働環境への配慮を重視しつつ、安定した収入を確保できることをねらいとして、売上げに応じてゆるやかに支給額が上昇する積算歩合制へ制度を見直した。  この制度の見直しは、賃金に直結する制度改定であることから、従業員から納得感を得ることを重視し、浜松労働基準監督署などの外部機関とも連携しながら慎重に制度設計を進めた。その結果、「どの売上げ帯においても、従来と同等以上の支給額が確保される」点を中心に説明を行い、従業員の制度変更に対する理解と納得を得た。 A柔軟な働き方の選択  勤務時間や勤務日数を選択できる仕組みを導入しており、選択した勤務形態により、「歩合給」もしくは「固定給+歩合給」が適用される。さらに、タクシー車内の「休憩ボタン」を押すことで、好きな時間や好きな場所で休憩を取ることが可能であり、この休憩制度によって、家族との食事や通院、介護など、私生活との両立が可能になった。 (2)意欲・能力の維持・向上のための取組み @技能継承と職場定着の促進  新人ドライバーの育成において、経験豊富な高齢ドライバーを「メンター」として配置する制度を導入している。メンターには、メンタリングやカウンセリング、コーチングに関する研修を受講する機会が設けられており、その費用は全額会社が負担している。この制度により、新人の早期戦力化が図られるとともに、高齢従業員にとっても自身の経験を活かす場が提供され、働きがいの向上にも寄与している。 A無事故表彰による安全意識の向上  安全運転を重要な評価基準として位置づけ、毎年の年頭式において「無事故表彰」を実施し、表彰対象者には、無事故の累積距離に応じた「金一封」が贈呈される。売上げを重視するばかりではなく、安全運転を行う従業員の努力を正当に評価することで、従業員の安全運転に対する意識の醸成にも大きく寄与している。 B高齢者が活躍しやすい社内風土の醸成  最高年齢者である82歳のドライバーをはじめとする高齢者が第一線で活躍しており、その姿はほかの高齢従業員にとっても大きな刺激となっている。50代や60代で入社して「自分はもう年寄りだから」と自己評価が低い従業員もいるが、周囲の高齢従業員の活躍を目の当たりにすることで励まされ、働く意欲の向上につながっている。このような相互の励まし合いや競争意識が、社内全体の活力を高める要因となっており、「高齢者だから特別扱いする」という考え方が自然と排除される風土が形成されてきた。高齢者の活躍を促進するだけでなく、年齢にとらわれない公平な職場環境の構築にも寄与している。 C教育訓練制度による学びの支援  従業員の能力向上とキャリア形成を支援するため、60歳以上の従業員を対象とした「高齢者意欲能力向上研修」を実施している。外部機関による研修を全額会社負担で受講可能とすることで、高齢従業員の役割意識やモチベーションの向上を図っている。 (3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み @ICT導入による業務効率化  業務の効率化とサービス品質の向上を目的として、キャッシュレス決済の導入や業務のデジタル化を積極的に推進している。これらの取組みは、売上げ向上にも寄与するため、ドライバーにとっても大きな意義を持つ。交通系電子マネーやスマートフォンを用いた決済に対応することで、利用者との降車時の対応時間も短縮されるなど、ドライバーの業務負担の軽減にもつながっている。こうした利便性の向上は、顧客満足度の向上とリピーターの獲得にも寄与し、結果として売上げの増加が期待される。  2023年9月には、メーター連動式のクレジット決済端末を導入し、手入力による金額ミスや決済トラブルを防止した。スマートフォンを用いた決済も、従来の「お客さまが読み取る方式」から「ドライバーが読み取る方式」へ変更し、操作に不慣れな顧客への対応負担を軽減している。導入にあたっては、複数の端末を事前に用意し、ドライバーが実際に使用感を体験したうえで、最も使いやすい機種を選定するとともに、画像を多用したオリジナルマニュアルを作成して高齢ドライバーへも配慮している。  当初、ICT導入は、高齢ドライバーにとっては高いハードルになると想定していたが、売上げ向上(=収入のアップ)につながるという明確なメリットがあることから、多くの高齢ドライバーが前向きに学び、積極的に取り組んでいる。 A健康管理  従業員の健康と生活の安定を支える福利厚生の一環として、2022年より「病気入院保障制度」を導入している。対象は、正規および一定の労働時間を超えるパート従業員であり、入院時に発生する医療費の自己負担分および食事代などが補償される。加入対象者に上限年齢が設けられていないことに加えて、入社から1年が経過した従業員については、既往症による入院も補償対象となるため、就労継続への支えとなっている。毎年数名の従業員が病気により入院している現状を見てきた社長の「従業員の助けになれば」という思いが、形となって導入された。この制度は、同業他社ではあまり例がなく、同社の特徴的な取組みである。  また、そのほかの健康管理の取組みとして、有給休暇取得の奨励(取得率95%)、年に一度の面談による働き方の選択、インフルエンザ予防接種の費用を補助する制度など、高齢従業員の健康に配慮している。 (4)その他の取組み  地域の脱炭素化と環境負荷の軽減を目的として、EV(電気自動車)タクシーを導入した。EVは排出ガスがなく、静音性に優れているため、乗客にとって快適な乗車環境を提供できるほか、ドライバーにとっても長時間の運転による疲労軽減につながっている。  また、EVは給油所まで出向く必要がなく、営業所で充電が可能なため、運転業務の負担軽減にも寄与しており、高齢のドライバーにかぎらず、すべての従業員にとっての働きやすい環境づくりに貢献している。 (5)高齢従業員の声  Fさん(67歳)は新人の教育も担当している。  「毎日、いろいろなお客さまからお話をうかがえてたいへん勉強になります。一期一会(いちごいちえ)の心を大切に乗務させてもらっています。新人教育の仕事ではその人ごとに運転技術や地理の習熟度、社会経験、性格が異なるので、どのような伝え方をすればよいのか試行錯誤の連続です。新人ドライバーが気軽に話や質問ができるようにフレンドリーな対応を心がけています。また、教育期間中は理解したと思っていたことが、いざ一人で現場に出てみると抜け落ちてしまっていることも多々あるので、教育期間終了後もコミュニケーションをとるようにして、教育したことの再確認を行っています。教育担当者である自分が与えるだけではなく、新人ドライバーそれぞれの人生経験、職業経験から来る知識や、新人ならではの視点を知ることができてとても楽しいです」  坪井(つぼい)勇(いさむ)さん(82歳)は前職でもタクシー会社に勤務しており、光タクシーには77歳のときに入社した。  「タクシーは、自分が動いた分、考えた分だけ売上げが生まれ、また、その売上げが給与に反映される仕事なので、自分の性分に合っている仕事だと思います。以前の会社で車いすに乗ったまま乗降ができるタクシーの乗務経験があり、また、障害のあるお客さまに対応するためのタクシードライバーの研修を修了していたので、パート乗務員として入社したにもかかわらず障害のあるお客さまが利用するタクシーの担当にしてもらいました。ここでの仕事が人生最後の仕事になると気を引き締めて、事故を起こさないよう、しっかりとやり遂げたいと思っています」 (6)今後の課題  営業車の駐車場の路面に凸凹が生じているので、ドライバーの転倒災害を防止するために整地をし、支柱が多い古いタイプの駐車場の屋根を支柱が少ないタイプに入れ替えて、駐車時の支柱への接触事故の防止へつなげていきたいと考えている。  一方で、労働契約書などの電子化に向けた検討を進めている。高齢で電子的なものが苦手な人には、タブレットなどを使ってていねいにレクチャーを行い、デジタル機器に対する苦手意識を払拭してもらう方針だ。デジタル機器に対する苦手意識の克服を足がかりにして、地域の足として貢献し、地域とともに歩む同社ならではの未来図に向かって、全社一丸となったチャレンジが始まる。 写真のキャプション 光タクシー株式会社の本社全景 定年後の高齢者向けの採用情報の発信を強化 画像を多用したオリジナルのマニュアルを作成 高齢従業員の坪井勇さん(82歳) 令和7年度 高年齢者活躍企業コンテスト 入賞企業一覧 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 群馬県 グリンリーフ株式会社 優秀賞 北海道 株式会社クリーン開発(かいはつ) 長野県 株式会社 マイネットシステム 特別賞 北海道 株式会社清風堂(せいふうどう) 福島県 藤田(ふじた)建設工業(けんせつこうぎょう)株式会社 静岡県 光(ひかり)タクシー株式会社 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 宮城県 グローテック株式会社 山形県 社会福祉法人光風会(こうふうかい) 新潟県 大河津(おおこうづ)建設(けんせつ)株式会社 兵庫県 東洋(とうよう)ナッツ食品(しょくひん)株式会社 兵庫県 特定非営利活動法人こぐまくらぶ 岡山県 株式会社大鎧(たいがい)設計(せっけい)事務所(じむしょ) 山口県 合同会社和(なごみ)の会(かい) 香川県 社会福祉法人光志(こうし)福祉会(ふくしかい) 大分県社会福祉法人安岐(あき)の郷(さと) 鹿児島県 社会福祉法人福寿会(ふくじゅかい) 特別賞 秋田県 秋田(あきた)ファイブワン工業(こうぎょう)株式会社 茨城県 海老根(えびね)建設(けんせつ)株式会社 神奈川県 株式会社カナコー 長野県 株式会社小宮山(こみやま)土木(どぼく) 愛知県 有限会社サロンドかづみ 大阪府 株式会社斉藤(さいとう)鐵工所(てっこうじょ) 和歌山県 株式会社丸和(まるわ)食品(しょくひん) 島根県 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