【表紙】 令和8年1月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第1号通巻554号 Monthly Elder 高齢者雇用の総合誌 2026 1 特集 年金入門 リーダーズトーク 65歳定年、70歳までの再雇用を実現 「年齢で差を設けない」働き方を推進 カナデビア株式会社 ピープル&カルチャー本部 人的資本・ウェルビーイング推進部長 山口貴弘 【前頁】 申込不要・いつでも視聴可能! JEED CHANNELで公開中 −令和7年度− 高年齢者活躍企業フォーラム 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム  2025(令和7)年10月に開催された「高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)」と、オンライン配信で開催された「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の模様をアーカイブ配信しています。  基調講演や先進企業の最新事例発表など、お手元の端末(パソコン、スマートフォン等)でいつでもご覧いただけます。 視聴方法 EEDホームページより STEP.01 機構について STEP.02 広報活動 (SNS・メルマガ・啓発誌・各種資料等) STEP.03 JEED CHANNEL(YouTube動画) STEP.04 「高齢者雇用(イベント・啓発活動)」の欄からご視聴ください ※事前申込不要(すぐにご覧いただけます) 以下の内容を配信中です 2025年10月3日(金)開催 高年齢者活躍企業フォーラム ●表彰式 ●事例発表 ●基調講演 ●トークセッション 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム ●基調講演等 ●事例発表 ●事例発表者とコーディネーターによるパネルディスカッション 2025年10月16日(木)開催 これからのキャリア形成支援 自律的キャリアはなぜ難しい? ――ミドル・シニアの学ぶ意思をどう引き出すか 2025年10月24日(金)開催 シニア社員を活性化するための人材マネジメント 組織の活性化に貢献! ――シニア社員を活かす持続可能な人材マネジメントの仕組み お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 JEEDのYouTube 公式チャンネルはこちら JEED CHANNEL 検索 https://youtube.com/@jeedchannel2135 【P1-4】 Leaders Talk No.128 65歳定年、70歳までの再雇用を実現 「年齢で差を設けない」働き方を推進 カナデビア株式会社 ピープル&カルチャー本部 人的資本・ウェルビーイング推進部長 山口貴弘さん やまぐち・たかひろ 1994(平成6)年、日立造船株式会社入社。法務・知財部法規コンプライアンスグループ長、業務管理本部総務・人事部労働・福祉グループ長、企画管理本部法務部長を経て、2024(令和6)年より業務管理本部人事部長。2025年10月より現職。  環境プラント分野で高い技術力を誇り、国内外で高い実績を持つカナデビア株式会社。2024(令和6)年の社名変更(旧社名:日立造船株式会社)とときを同じくして、管理職制度の見直しのほか、65歳への定年延長、人事部門の再編など、人事領域においても、さまざまな改革に取り組んでいます。今回は、同社ピープル&カルチャー本部人的資本・ウェルビーイング推進部長の山口貴弘さんに、同社の取組みについてお話をうかがいました。 人事部を六つの部門に再編成し経営と連動した人材戦略を実践 ―貴社におかれましては、2025(令和7)年10月に人事部門を再編されたそうですね。さらに、管理職制度の見直しや、65歳までの定年延長など、人事制度改革にも精力的に取り組まれています。人事部門再編や人事制度改革の背景にある貴社の経営に対する考え方をお聞かせください。 山口 当社では、中期経営計画の重点施策として「人的資本の強化」を前面に掲げ取り組んでいます。企業において「人」がもっとも重要であるという認識は、当社の全社員が共有しています。そのうえで「人の成長を支援することが組織の成長につながる」という好循環が、会社の成長と企業価値の向上を促進するという考え方を掲げています。  そのための人材戦略の重点施策として、@人材の採用・確保、A適正配置・戦略的育成、B人材の定着、の三つを実現するための具体的な施策、さらにそれを支えるタレントマネジメントやエンゲージメント、ワーク・ライフ・バランスなどの人材戦略の基盤の整備にも、積極的に取り組んでいるところです。  一方で、世の中も急速に変化しています。急激で複雑な事業環境の変化に加えて、働き方に対する価値観の多様化、労働市場における人材獲得競争も激化しており、当社としてもスピード感を持って経営と連動した人材戦略を進めていく必要があります。  そこで2025年10月に人事部門を再編成しました。具体的には、ピープル&カルチャー本部(旧業務管理本部)の下に、人事戦略企画部、人的資本・ウェルビーイング推進部、人材採用部、人材開発部、人事BP(ビジネスパートナー)部、人事SS(シェアードサービス)部を設け、それぞれの領域で人事施策を推進していきます。私が部長を務める人的資本・ウェルビーイング推進部は旧人事労務の領域を担当しており、健康経営○R(★)をはじめとするウェルビーイング、働きがい向上などを含む人事制度の企画・運用を行っています。高齢者雇用についても当部の担当となります。 ―お話をうかがうと、再編というより人事部門を拡充する大胆な改革という印象ですね。人材戦略の一環である管理職制度の見直しについて教えていただけますか。 山口 2024年7月に、管理職を対象に、職能管理制度から役割等級制度に移行しました。以前の職能管理制度は、基本的に資格に基づいて処遇が決まり、どんな役職に就いていても資格が同じであれば給与も変わらないという仕組みでした。これを、になう役割の難易度や責任の大きさで等級が決まる役割基軸の処遇制度に見直しを行いました。  一方で、働き方の価値観が変わるなかで、専門性に特化したスペシャリストとしてキャリアを築きたい人もいれば、マネジメントをやりたい人もおり、キャリアの多様化に十分対応できていないという課題もありました。  そこで、管理職層を役割の種類に応じて「マネジメント職」、「エキスパート職」、「スペシャリスト職」の三つの職群に分け、それぞれ5段階の等級を設けました。エキスパート職はいわゆるプロジェクトマネジメントも含めてプロジェクトをリードしてミッションの達成をにない、スペシャリスト職は技術分野で高度な専門性をベースに一定の裁量権を持ってミッションの達成をになう役割と位置づけています。いずれの職群も本人のキャリアの希望と会社の考え方が一致すれば異動することもできます。  また、当社でもキャリア採用を増やしていますが、魅力ある報酬を提示できないという問題もあり、報酬水準を引き上げるなど報酬・評価制度も刷新しました。 年齢を理由にした処遇差を撤廃し高いパフォーマンスを発揮する人材を評価 ―そして2025年4月には、定年年齢を60歳から65歳に延長されました。そのねらいについて教えてください。 山口 従来の制度では、55歳で昇格がなくなり、58歳でベースアップ停止となるほか、55歳以降は退職金制度の積立もなくなります。さらに60歳定年後の再雇用制度では定年時よりも報酬水準を引き下げるなど、年齢を要因とする処遇差などがあり、モチベーションの低下が大きな課題となっていました。  また、高年齢雇用継続給付の支給率縮小や高年齢者雇用安定法による70歳までの就業機会確保の努力義務への対応という外部的な要因もありました。  こうした課題の解決に向けては再雇用の処遇の改善も一つの方法ではありますが、やはり定年延長により、65歳まで雇用するという安心感を与え、ベテラン社員としての能力を発揮してもらいたいと考えました。  それからもう一つの大きなコンセプトとして、年齢だけを理由にした処遇差を設けないことを前面に打ち出しました。55歳・58歳でストップしていた昇格・ベースアップを65歳まで継続し、退職金も65歳まで積み立てます。  一方、すでに退職金を受け取り、再雇用になっている人については、再雇用を継続することになりますが、処遇制度を大きく見直し、雇用継続給付金を活用せず、定年時の給与をベースに人事評価を反映する仕組みに変え、再雇用ではない一般社員と同じように、パフォーマンスを処遇に反映することで、モチベーションの維持・向上を図る形にしました。 ―65歳定年後の再雇用制度についても教えてください。 山口 従来の再雇用制度の期間は60歳から70歳でしたので、65歳定年後の再雇用期間は70歳までとなりますが、一定の要件を設けています。健康状態や人事評価による基準を設けてはいますが、標準的な評価であればクリアできますし、本人が希望すれば基本的には再雇用されます。  処遇については先ほど述べたように従来の再雇用制度では定年時よりも報酬水準が引き下がりますが、新しい処遇制度では、標準的な評価であれば65歳定年時と同じ給与になり、評価が高ければ定年時の給与を上回ることも可能です。ここでも「年齢だけによる処遇差は設けない」というコンセプトを貫いていますし、68歳や70歳でも能力を発揮してパフォーマンスを出していただければ処遇も向上する仕組みになっています。 一人ひとりの希望に寄り添ったキャリア支援と体力や家庭の事情に配慮した働き方を実現 ―管理職には役職定年を設けているのですか。山口 役職定年はありませんし、再雇用後も役割と職群は継続します。例えば部長職にあった人がなんらかの事情でそのポジションから外れた場合でも、代わりに68歳の人が部長に就く可能性もありますし、その場合の給与は前部長と一緒です。あくまでも年齢に関係なく、役割に応じて処遇します。  また、再雇用後の役割としてマネジメント職、エキスパート職、スペシャリスト職以外に新たに「アソシエイト職」という職群を設けました。これまでつちかった技能や経験、人脈などの資産を継承・活用する役割と位置づけています。組織長やスペシャリストとして最前線で活躍することもできますが、やはり年齢が高くなると体力的にむずかしいという人もいますし、そうした負担を考慮して設けた役割でもあります。もちろん再雇用でも職群間の異動もできるようにしています。 ―役職定年もなく、65歳以降の再雇用でも同じ役職で働けるという制度は画期的ですね。 山口 制度改定の効果はキャリア採用の面でも期待しています。年齢に関係なく50歳を超えた人材であっても応募することができますし、例えば55歳で入社しても60歳定年なら残りは5年しかありませんが、当社は65歳定年まで10年、その後も再雇用で働くことができ、処遇も下がらないことが、キャリア採用でのアピールポイントになっています。 ―70歳までいわば現役として意欲を持って働くためのキャリア開発支援などの取組みはいかがでしょうか。 山口 シニアにかぎらずキャリア面談など、自律的なキャリア形成支援のための施策構築に向けた検討も進めています。シニアの人もキャリアが終わったわけではありません。「今後どういう働き方をしたいのか」という本人の希望を前提に、会社の期待とマッチさせながら意欲を持って働いてもらうために、一人ひとりに寄り添った支援が重要だと考えています。  また、高齢になると体力や健康状態などそれぞれ違いますし、家族の介護の問題も発生します。当社では短日数勤務や短時間勤務など法定以上の独自の制度もありますし、再雇用の場合は契約時に働き方を決めることもできます。  今後についても病気と仕事の両立支援だけではなく、仕事をしながら介護にたずさわっている人に対する支援策も積極的に検討していきたいと考えています。 (聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博) ★「健康経営○R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙の写真:PEANUTS MINERALS/アフロ 2026 January No.554 特集 6 年金入門 7 総論 新しい時代の年金制度とライフプランニング 大妻女子大学短期大学部 教授 玉木伸介 11 解説1 2025年年金改革の概要 ニッセイ基礎研究所 主席研究員 中嶋邦夫 15 解説2 人事担当者のための年金Q&A 丹治社労士事務所 社会保険労務士 丹治和人 1 リーダーズトーク No.128 カナデビア株式会社 ピープル&カルチャー本部 人的資本・ウェルビーイング推進部長 山口貴弘さん 65歳定年、70歳までの再雇用を実現 「年齢で差を設けない」働き方を推進 18 新春特別企画1 「令和7年度 高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演 「シニアのキャリア意識の現状と課題」 小島明子 22 新春特別企画2 「令和7年度 高年齢者活躍企業フォーラム」 受賞企業を交えたトークセッション 28 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 【最終回】 ある介護福祉施設の助成金活用事例A 34 偉人たちのセカンドキャリア 第13回 日本に戒律を伝えたその陰で… 鑑真 歴史作家 河合 敦 36 高齢者の職場探訪 北から、南から 第161回 長野県 株式会社全日警サービス長野 40 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第111回 認定特定非営利活動法人 経営支援NPOクラブ 竹内一夫さん(69歳) 42 新連載 高年齢者活躍企業コンテスト 受賞企業の軌跡 【第1回】 株式会社虎屋本舗 46 知っておきたい労働法Q&A《第90回》 同一労働同一賃金と労使自治、従業員による部下の引き抜き行為の違法性 家永 勲/木勝瑛 50 諸外国の高齢化と高齢者雇用 【第2回】 ドイツ連邦共和国、フランス共和国 藤本 真 52 いまさら聞けない人事用語辞典 第63回 「労働基準監督署」 吉岡利之 54 BOOKS 56 ニュース ファイル 58 「令和8年度高年齢者活躍企業コンテスト」のご案内 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.359 表も裏も美しい 独自の両面立体刺しゅう 立体刺しゅう作家 北井小夜子さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第103回]ことわざアナグラム 篠原菊紀 ※連載「日本史にみる長寿食」は休載します 【P6】 特集 年金入門  2025(令和7)年に成立した「年金制度改正法」。読者のみなさまはどこまでご存じですか? 年金保険の加入対象の拡大や、在職老齢年金の見直しなど、人事担当者として押さえておきたい改正もありました。各種改正内容は、2026年4月より順次施行されます。  そこで今号の特集は、新しい公的年金の仕組みに焦点を当てた「年金入門」と題し、2025年の改正内容を中心に解説します。老後資産形成に向けてNISAなども注目を集めるなか、公的年金は老後生活の土台となるもの。従業員の金融リテラシーの向上に向け、ぜひお役立てください。 【P7-10】 総論 新しい時代の年金制度とライフプランニング 大妻女子大学短期大学部 教授 玉木(たまき)伸介(のぶすけ) @はじめに  公的年金の制度は、その時代の日本国民の暮らしの実態の変化への適合をくり返していかねばなりません。そのような変化とは具体的に何であるのかといえば、もっとも根本的なものは、高齢期の人々の肉体的な若返りといえるでしょう。若返りを医学の角度から科学的に研究した成果の一つが、2017(平成29)年の「高齢者の定義と区分に関する、日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループからの提言」です。  同提言においては、「現在の高齢者においては10〜20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5〜10年遅延」していること、すなわち「若返り」が指摘されています。  同時に、国民の働き方や家族のあり方も、高齢者や女性の就業が劇的に拡大するなど、最近の10〜20年できわめて大きく変化しています。加えて、インフレーションが定着する可能性も出てきました。  こういう新しい時代において、年金制度と人々のライフプランニングの関係をどう考えたらよいのでしょうか。 A高齢者と女性の就業の増加による年金制度の「若返り」  近年、生産年齢人口(15〜64歳)は年に50万人前後のペースで減少しています。2010年の8103万人から2023(令和5)年の7395万人へと、13年間で708万人減、年に約54万人の減少です※1。これに着目して「年金制度は維持できない」という悲観的な見方も出されました。  ところが、この間の就業者数は、2010年の6298万人から2024年の6781万人へと、14年間で483万人、年に約35万人も増えています※2。悲観的な見方の根拠は大きく揺らいでいるのです。  65歳以上の年齢階層別就業者数(男女計)の推移を見てみましょう。  図表1(8ページ)を見ると、2010年代前半から65〜69歳の就業が増加しています。これは、ベビーブーマー(出生率が上昇した1946〈昭和21〉年から1964年に生まれた世代。1948年生まれは2013年に65歳)が65歳を超えて多く働いたからです。2020年ごろにベビーブーマーが70代に入ると、今度は70〜74歳の就業者数が増えました。ベビーブーマーは働き続けたのです。さらに、75歳以上の就業者数は2005年の103万人が2024年には248万人へと2.4倍になっています。わが国の65歳以上の方々のありようは、かくも大きく変わったのです。  女性はどうでしょうか。図表2で女性の年齢階層別の就業率を見てみましょう。2005年のグラフを見ると、30代前半および後半の出産・子育て期の就業率のへこみがどんどん小さくなっています。30代前半および後半の就業率は2005年以降の20年弱の間に20ポイントほども上昇しました。これは劇的な変化です。 B就業増加と将来の年金  このような変化は、いうまでもなく、年金財政の基盤を強化します。わが国の年金制度は、若返ったのです。2024年の財政検証で将来の所得代替率が上昇したこの背景には、こういう事情がありました※3。  少子化の背後には、若者の不安があるのかもしれません。それが、「年金は破綻するのではないか」などという懸念で増幅されているとしたら、不幸なことです。若者には、十分に説明せねばなりません。この点、今回の財政検証では、国民への説明の道具立てにおいてイノベーションがありました。それは将来の給付額の分布推計です。  これは、人々の加入状況およびそれを反映した将来の給付の分布をシミュレーションしたもので、年金給付に関する世の中全体の姿を描いています。  このようなシミュレーションの結果、得られる年金給付の将来像は、モデル年金(夫は会社員を40年、その間、妻は専業主婦という夫婦がもらう給付)が描き出すものに比して、少なからず明るいものです。なぜでしょうか。今後は、女性が厚生年金に加入する期間が長くなって、報酬比例部分が増えるからです。  2024年財政検証における2060年度のモデル年金(2024年価格)は、成長型経済移行・継続ケースで33.8万円、過去30年投影ケースで21.4万円となっています。後者は、2024年度の22.6万円より少し減ります※4。  これに対し、いまの若い女性は、厚生年金加入期間が彼らの母親たちよりはるかに長い人生を送るので、将来の報酬比例部分が増えます。1959年度生まれの女性の平均が9.3万円のところ、2004年生まれの女性の平均は、成長型経済移行・継続ケースで19.8万円、過去30年投影ケースでも11.6万円に増えます※5。  若者への説明では、「夫が40年間厚生年金に加入して平均的な収入を得て、妻は40年間専業主婦」という前提のモデル年金は、いったん、脇に置いてもよいでしょう。彼らが結婚する場合のライフプランニングに関し、「@夫婦共働き、A45〜50年の勤労、B70歳または75歳までの受給繰下げ」という選択肢(受給額はモデル年金をはるかに超える)にも目を向けさせることが賢明ではないでしょうか。 C労働力稀少社会の到来と経済の潮目の変化  2010年ごろ、人数が多いベビーブーマーは60代前半、ベビーブーマージュニアは30代から40歳前後の働き盛りでした。つまり、当時のわが国の労働市場には、ともに人数の多いベビーブーマーとベビーブーマージュニアがいて、労働力を供給しました。さらに、女性が家庭から出て就業することが増え始めていたので、労働力の需要側の企業にとっては、選りどり見どりの天国ともいえるものでした。  ところが、いまや、状況は一変し、ベビーブーマーの引退などからどこもかしこも人手不足です。本格的な労働力稀少社会が到来しつつあります。労働市場において、最低賃金が上昇し始めました。ここ数年、年に5〜6%ずつ上昇しています。企業の間では、初任給を30万円以上にするなどの積極的な人材確保策の事例が増えてきました。5年前の2020年(コロナ禍が始まった年)は、まだ、デフレ脱却が叫ばれていましたが、いまや政治の焦点の一つは物価高対策です。経済の潮目が変わったのかもしれません。 D経済の潮目の変化と年金制度  こういう経済の潮目の変化と年金制度はどう関係するでしょうか。短時間労働者などへの被用者保険(厚生年金保険など)の適用拡大を巡る環境に変化が生じるかもしれません。  今回の年金制度改正では、適用拡大に向け、企業規模要件が撤廃されたり、個人事業所の非適用業種において適用拡大の道が部分的に開かれたりしました。しかし、企業規模要件の撤廃は2035年にかけて段階的に行うとされ、また、非適用業種の撤廃は「既存事業所は、経過措置として当分の間適用しない」という制約がついています。  しかし、労働力稀少社会とは、雇う側が雇われる側に選んでもらうべく努力する社会です。労働市場の需給関係の逆転という地殻変動が、適用拡大を巡る世論や政治の領域の風向きに変化をもたらすのか否か、注目したいところです。 Eより長生きする社会にふさわしい「45年加入」と厚生年金の所得再分配効果  現行制度では、農家や自営業主などは1号被保険者であって、月1万7510円(2025年度)の定額の保険料を40年間払うと、基礎年金を満額(年に約83万円)受給できます。会社員やその被扶養配偶者(2、3号被保険者)が受け取る基礎年金も同額です。  40年加入で満額ということは、多くの人が20〜59歳の保険料納付で終わりということです。しかし、いまや、わが国の基幹的農業従事者の平均年齢は69.2歳、65歳以上の比率は79.9%です※6。  また、基礎年金の大きさは厚生年金の所得再分配効果の大きさに強く関係しています。厚生年金では、保険料が報酬に比例しますが、給付額については、賃金に比例する厚生年金部分と、定額の基礎年金部分で構成されます。イメージとして、月給60万円の人は20万円の人の3倍払いますが、基礎年金は定額なので、20万円の人は、60万円の人の1/3しか払わずに同じ基礎年金を受給できることとなります。これが再分配効果であり、低所得者の強い味方です。  ところが、経済が好調に推移しない場合、将来の基礎年金の水準が低下すると見込まれています。その理由は少なからずテクニカルなのですが、デフレ期に、物価下落以上に賃金が下がったことが根底にあります。この結果、基礎年金を底上げすべきという議論になっていきました。  基礎年金を底上げするのにもっとも自然な方法は、45年加入です。45年加入とは、いまの40年加入を45年に延ばし、基礎年金を相似形で45/40倍にする(保険料も給付も同じ比率で増える)というものであり、80万円強の基礎年金を約10万円増やすというものでした。しかし、この案は、次期年金制度改正の議論が本格化するなかで検討対象から落とされてしまいました。5年間の国民年金保険料の約100万円の負担増というネガティブイメージが先に広まってしまったのです。  代わって出てきた案は、積立金を用いるなどして基礎年金を底上げする案だったのですが、きわめて複雑な内容で、結局は今回の制度改正では実現していません。ただ、次回の財政検証で実施する可能性をかなり残す附則が制度改正法に加えられました。  低年金の高齢者を減らすことは、間違いなく必要です。そのための自然な手段は、45年加入のほか、被用者保険の適用拡大によって、短時間労働者や個人事業所で働く方々に報酬比例部分が給付されるようにすることです。今後も粘り強く進めていく必要があるでしょう。 F注目すべき公的年金のインフレ耐性  2022年以降、インフレの状況が続いています。特に、米をはじめ食料品の価格上昇が急激なので、庶民の生活が脅かされています。多くの国民が不安を感じているところでしょう。  インフレのもとで、老後の年金はどうなるのでしょうか。年金は基本的に、物価や賃金に連動していくので、インフレ耐性は強いといえます。ただ、当面は、以下のようにインフレ連動は不完全です。  インフレで物価も賃金も上昇し、しかも賃金上昇率の方が高い(実質賃金が上昇する)場合は物価上昇率から、賃金上昇率の方が低い(実質賃金が低下する)場合は賃金上昇率から、スライド調整率をそれぞれ差し引いて給付を改定します。差し引く分だけ、連動が不完全になります。  スライド調整率※7は、現役世代の減少率と高齢者の平均余命の伸び率を元にして設定し、2025年度の給付額の設定においては▲0.4%でした。また、マクロ経済スライド※7は永久に続くのではなく、今後100年の年金財政のバランスを一定範囲内に収めることができると判断された時点で終了します。  老後資産を形成できた人も、インフレで資産の実質価値が目減りすることを完全に防ぐことは至難の業です。加齢によって認知機能が低下すれば、実質価値を維持できる運用など到底不可能になるでしょう。公的年金のインフレ耐性の強さは、ライフプランニングにおいて、注目に値します。 Gおわりに  公的年金制度を取り巻く環境は激変しています。制度自体も変化しています。少子高齢化で「年金は破綻する」、「あてになどできない」と即断するのではなく、冷静にライフプランニングに活かしていくべきでしょう。 ※1 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(2025年) ※2 総務省「労働力調査」 ※3 ただし、出生の減少は、日本社会の大問題である。もっとも極端なケースとして、出生がゼロになれば80年後の日本には80歳以上しかいないから、年金制度など機能するはずがない ※4 第16回社会保障審議会年金部会(2024年7月3日)資料1、p.4 ※5 第16回社会保障審議会年金部会(2024年7月3日)資料4−2、p.13 ※6 農林水産省ホームページ「農業労働力に関する統計」https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html ※7 マクロ経済スライド…… 公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいて、マクロ調整率を設定し、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するもの。2004(平成16)年年金制度改正で導入 図表1 65歳以上の年齢階層別就業者数(万人) 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 65〜69歳 70〜74歳 75歳以上 ※出典:総務省「労働力調査」 図表2 女性の年齢階層別就業率(%) 15〜19歳 20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60〜64歳 65〜69歳 70〜74歳 75歳以上 2005年 2015年 2024年 ※出典:総務省「労働力調査」 【P11-14】 解説1 2025年年金改革の概要 ニッセイ基礎研究所 主席研究員 中嶋(なかしま)邦夫(くにお) @働き方に中立的な制度に向けて前進  2025(令和7)年6月20日に、年金制度改正法が公布されました。この改正法には、厚生年金の対象拡大など、働き方に中立的な制度に向けた各種の見直しが盛り込まれました(図表1)。その一方で、将来の基礎年金の底上げなどは、今後の検討課題となりました。  本稿では、今回の改正内容の概要と、次回以降の改正に持ち越された内容を紹介します。 A三つの要件を撤廃して厚生年金の対象範囲を拡大  第一の改正点は、厚生年金の対象範囲の拡大です(12ページ図表2)。働き方や勤め先による違いをなくすため、厚生年金の対象範囲は、これまでも段階的に拡大されてきました。今回の改正では、@パート労働者の企業規模要件、Aパート労働者の賃金要件、B個人事業所の業種要件、の三つが見直されます。  パート労働者の企業規模要件は、現在の社員50人超から、4段階に分けて拡大され、2035年10月に撤廃されます。当初の案では、2段階に分けて2029年に撤廃される計画でしたが、企業などへの影響に配慮して、時間をかけることになりました。  パート労働者の賃金要件は、現在は月8.8万円以上で、年収に換算して「106万円の壁」とも呼ばれていますが、公布から3年以内に撤廃されます。なお、2026年4月には全都道府県の最低賃金が1023円以上になる予定で、時間要件の下限(週20時間)で働いた場合に現在の賃金要件(月8.8万円)を超える形になるため、公布の3年後を待たずに廃止される可能性があります。  個人事業所の業種要件は、現在は17業種に限定されていますが、2029年10月に全業種が対象となります。ただし、企業などへの影響に配慮して、施行時点で存在している事業所は、当分の間、厚生年金の対象外となります。  なお、パート労働者の企業規模要件や個人事業所の業種要件を満たさない事業所でも、労使が合意すれば、任意で厚生年金の適用を受けられます。  加えて、これらの拡大で厚生年金の対象になった人が保険料の負担を理由に就労を控えないよう、任意適用を含む新たな適用事業所では、適用拡大から3年間にかぎって、年収150万円程度までの人の保険料の本人負担が軽減されます。また、「130万円の壁」とも呼ばれる被扶養配偶者の認定について、給与所得者の場合は残業代を含めずに判定する運営が、2026年4月から開始されます。 B働いた場合に年金が減額される対象者を縮小  第二の改正点は、働きながら年金を受け取ると減額される仕組み(在職老齢年金)の、対象者の縮小です。将来の年金水準の低下を抑えるために、経済的に余裕がある高齢者の年金額を抑える仕組みで、現在は月あたりの標準報酬(賞与を含む)と厚生年金(2階部分)の合計が「現役男性の平均的な標準報酬相当(2025年度は51万円)」を超えると、超過分の半額が減額されます。  企業などは、高齢者の賃金が上昇していく傾向にあることなどから、制度の見直しを要望していました。他方で、基準を引き上げると、収入が高い人のみが恩恵を受ける点や、年金財政が悪化して将来の給付水準が現在の見通しよりも低下する点が、指摘されていました。  今回の改正では、将来の給付などへの影響に配慮して、検討された案のなかでもっとも低い水準への引上げになりました。具体的には、2026年4月から、減額を判定する基準が「50代の平均的な賃金で働いて一定以上の年金を受給しても減額されない水準(2024年度で62万円に相当)」へと引き上げられます。なお、具体的な基準額は、それまでの賃金変動を反映して、2026年1月に決定される予定です(図表3)。  2022年度末時点では、65歳以上で在職中の厚生年金の受給権者308万人のうち、50万人が減額の対象ですが、この改正が適用されると約20万人に減少する見込みです。 C保険料や年金の計算基礎となる月給の上限を引上げ  第三の改正点は、標準報酬月額の上限の引上げです。標準報酬月額は、保険料や年金額の計算基礎となる、月給をいくつかの等級に区分した金額です。現在の上限は、年金額の格差を抑えるために、平均額の2倍を目安として65万円になっています。しかし、上限の該当者は、給与に対する保険料の割合がほかの加入者よりも低くなる、という問題があります。2024年には、上限に該当する人が、男女合計で約7%、男性だけで見ると約10%に達しています。  今回の改正では、上限に該当する人を男女合計の4%程度に抑えるため、上限が75万円へ引き上げられます。ただし、企業への影響などに配慮して、2027年9月から段階的に引き上げられます(12ページ図表4)。 D遺族厚生年金を男女共通化(原則5年化や加算など)  第四の改正点は、現役時に死亡した場合の遺族厚生年金の見直しです。これまでは、男女の就業環境の違いに配慮して、受給の要件などに男女差がありました。しかし、近年の就業環境に合わせて、20年をかけて男女共通の仕組みに変更されます。  見直し後は、遺族厚生年金の役割が「生活を再建するためのもの」と位置づけられ、60歳未満に対しては、原則として5年間の給付になります。その際、現行制度で設けられている収入要件がなくなり、現在の遺族厚生年金の水準に加算がつきます。また、5年以内に十分な生活再建に至っていない人に配慮して、所得や障害の状態に応じた給付が、最長で65歳まで継続されます。加えて、給付期間が短縮されることへの配慮として、婚姻中の夫婦の厚生年金の加入記録を分割する形で、残された配偶者の老齢厚生年金に加算がつきます。  なお、遺族年金の対象になる子がいる受給者は、子がいる期間は現行制度と変わりがなく、子が成長するなどして遺族年金の子の要件から外れた場合には、その時点から前述した有期給付などが適用されます。また、改正時に40歳以上の女性や受給中の人には、この見直しが適用されません(図表5)。 E今後の検討課題  これらの見直しが改正法の本則に規定された一方で、次の4項目は、議論すべき課題が残っているために、附則で政府に検討などを義務づける内容にとどまりました。 ◆厚生年金のさらなる拡大  第一の検討課題は、厚生年金のさらなる対象拡大です。今回の改正で拡大が進みますが、パート労働者の労働時間の要件や個人事業所の事業所規模の要件は、今後も残ります。  パート労働者の時間要件については、所定労働時間が週20時間以上という現在の基準を、2028年に施行される改正後の雇用保険と同じ週10時間以上にすることが検討課題となっています。また、複数の事業所で勤務する場合に労働時間を通算して判定することも、検討課題になっています。 ◆基礎年金の対象期間  第二の検討課題は、基礎年金の年金額に反映する加入期間の延長です。基礎年金(1階部分)の年金額に反映される加入期間は、現在の制度では原則として20歳から59歳までの40年間ですが、これを64歳までの45年間に延長し、それに比例して給付を増額する案です。  今回の改正に向けて、審議会では賛成が多数を占めましたが、世論では負担の増加に反対する声が多く聞かれたため、政府は検討を中止しました。しかし、厚生年金は現在でも69歳までが対象で、その保険料には基礎年金の費用が含まれているため、制度が見直されても会社員や公務員の負担は増えません。むしろ、厚生年金に40年以上加入しても、基礎年金(1階部分)の年金額には40年分の加入しか反映されない点が、60代の就労が増えている現状に合っていません。次の改正に向けては、世論への説明が課題となりそうです。 ◆第3号被保険者の範囲  第三の検討課題は、国民年金の第3号被保険者の範囲です。第3号被保険者には、厚生年金加入者に扶養される年収130万円未満で日本に居住する配偶者のうち、20〜59歳の人が該当します。ただし、厚生年金の要件に該当する場合は厚生年金が優先して適用され、第3号被保険者にはなりません。  第3号被保険者は保険料を支払いませんが、厚生年金の保険料や給付(2階部分)は収入に比例するため、厚生年金加入者で世帯合計の収入が同じ夫婦では、片働きでも共働きでも、世帯合計の負担と給付が同額になります。しかし、現在は第3号被保険者の約半数が就労しており、これらの世帯では保険料の対象にならない収入が存在する点で、夫婦とも厚生年金に加入している世帯より有利になっています。  女性に占める第3号被保険者の割合は近年低下しており、政府は厚生年金の対象者を拡大することで、第3号被保険者のさらなる縮小を目ざしています。他方で、第3号被保険者を廃止して国民年金保険料を課すべきという意見があるため、状況を調査したうえで検討する規定になっています。 ◆基礎年金と厚生年金の給付抑制期間  第四の検討課題は、基礎年金の底上げ策とも呼ばれた、基礎年金(1階部分)と厚生年金(2階部分)の給付抑制期間をそろえる仕組みです。現在の制度では、保険料の引上げをやめた代わりに、年金財政が健全化するまで年金額の伸びを物価や賃金の伸びより抑え、実質的に目減りさせる仕組みになっています。しかし、デフレで経過措置が長引いた影響で、厚生年金よりも基礎年金で給付の抑制が長引き、現役時代に給与が少なく厚生年金が少ない将来世代ほど、年金額全体の目減りが大きくなる見込みになっています。  政府は、厚生年金の給付抑制期間を現在の制度よりも延長し、その財源で全加入者に共通の基礎年金の給付抑制期間を短縮して、両者を一致させる仕組みを提案しました。しかし、厚生年金の目減りが継続する点や、厚生年金の抑制分の一部が自営業などの基礎年金の底上げに使われる点、基礎年金の水準上昇にともなって国庫負担が増える点などが、批判されました。  政府は、この仕組みを除いた法案を国会へ提出しましたが、国会での修正協議を経て、次の将来見通しの結果によっては基礎年金と厚生年金の給付が目減りする期間をそろえることが、改正法の附則に盛り込まれました。しかし、具体的な実施方法は記載されておらず、今後の検討課題として残っています。  今回成立した改正は、働き方に中立的な制度に向けた内容ですが、通過点に過ぎません。実施される改正の影響だけでなく、次の改革に向けた動向にも、目を配る必要があるでしょう。 図表1 2025年年金改革のおもな項目 項目 施行時期 厚生年金の適用拡大 パート労働者の企業規模要件の段階的撤廃 2027年10月〜 パート労働者の賃金要件の撤廃 公布3年以内 個人事業所での業種要件撤廃 2029年10月(*) 適用拡大事業所での就業調整対策 2026年10月 (被扶養配偶者認定での就業調整対策2026年4月) 在職老齢年金(減額)の対象者縮小 2026年4月 標準報酬月額の上限の段階的引上げ 2027年9月〜 現役期の遺族厚生年金の男女差解消 2028年4月〜 *既存事業所は当面非適用。被扶養配偶者の認定は運用の変更 ※筆者作成 図表2 厚生年金の適用拡大 パート労働者の企業規模要件 現在:社員(*1)50人超 2027年10月〜:35人超 2029年10月〜:20人超 2032年10月〜:10人超 2035年10月〜:撤廃 パート労働者の賃金要件 現在:基本給月8.8万円以上 公布後3年以内:撤廃 個人事業所の業種要件 現在:17業種が対象 2029年10月〜:撤廃(*2) *1 パート労働者以外の厚生年金加入者 *2 既存事業所は当面非適用 ※筆者作成 図表3 在職老齢年金の見直し 在職老齢年金の減額判定基準額 (月あたり標準報酬+厚生年金) 現在: 現役男性の平均的な標準報酬(2024年度は50万円、2025年度は51万円) 2026年4月〜: 50代の平均的な賃金で働いて一定以上の年金を受給しても減額されない水準 (2024年度で62万円に相当) *実際の金額は賃金上昇率で改定 ※筆者作成 図表4 標準報酬月額の見直し 厚生年金の標準報酬月額の上限 現在: 平均額の2倍を目安 (現在:65万円) 改正後: 上限該当者が全体の4%程度になる水準へ段階的に移行 2027年9月:68万円 2028年9月:71万円 2029年9月:75万円 ※筆者作成 図表5 現役期の遺族厚生年金の見直し 遺族厚生年金の支給対象 (遺族基礎年金の対象になる子がいない場合) 現在: 女性で30歳未満=5年間 女性で30歳以上=無期 男性で55歳未満=なし 男性で55歳以上=60歳から無期 *いずれも年収850万円未満の場合のみ支給 改正後: 男女とも60歳未満=5年間+継続給付 男女とも60歳以上=無期(現行どおり) *5年間の給付には収入要件なし *現行制度よりも給付を増額(老齢年金にも) *改正時に40歳以上の女性や受給中の人は改正の適用対象外 ※筆者作成 【P15-17】 解説2 人事担当者のための年金Q&A 丹治社労士事務所 社会保険労務士 丹治(たんじ)和人(かずひと) Q1  大学卒業後サラリーマンを続け、まもなく65歳になりますが、「働くと金額が減る在職老齢年金」について教えてください。 A 減額の対象は「報酬比例部分」だけ、年収500万円を超えるような人でなければ年金が減らされることはありません。  「在職老齢年金」というのは、厚生年金加入中の人に支給される年金を調整する制度ですが、65歳以降で減額の対象になるのは、@の報酬比例部分だけです(図表1)。Aの差額加算、Bの老齢基礎年金は一切減額されません。また、65歳未満の一定要件※1に該当する配偶者がいる場合に加算されるCの加給年金は、報酬比例部分が「全額支給停止」でないかぎりは年額41万5900円(2025〈令和7〉年度)で受けられます。  報酬比例部分と給料※2の合計が51万円までは年金の減額はなく、超えると「超えた分の1/2の年金がカットされます。報酬比例部分は、在職中の給料や賞与が多く、掛けた期間が長いほど高額になりますが、大企業で定年まで勤め上げたような人でも、「月額15万円=年額180万円」になる人は稀です。月額14万円なら「サラリーマンで最高の部類」といえるでしょう。報酬比例部分が「月額14万円」なら、月収が37万円でも合計51万円で、年金は全額もらえます。37万円×12カ月=444万円くらいの年収(賞与なしとして)なら、年金額が最高レベルの人でも減額されません。この在職老齢年金のことを「働くと年金が減る制度」といういい方をするので、「年金が減るなら働くのをやめよう」という人がいるようですが、平均的な金額の報酬比例部分が10万円程度なら、年収500万円を超えるような高給取りでないかぎり、年金は全額もらえます。  年金が減り始める「支給停止基準額」は、法律には「48万円」と明記されていますが、物価や賃金変動を考慮して、2025年度は51万円になりました。今回の年金改正で、2026年4月から、法律上の金額が「62万円」になることが決まっていますが、最近の物価と賃金の上昇を考えれば、実施時の額は65万円くらいになると予想されます。  基準額が62万円に変わっても、社長や取締役などで、「いままで全額支給停止」だった人が、少しもらえるようになるだけで、多くの働く高齢者には影響がありません。また、経験や能力を買われ、65歳を過ぎても、年収500万円を超えるような高給で雇われ、昇給もあるような人の場合、給料が増えることで減らされる年金は、増えた給料の半分です。「給料が2万円増えたら、年金が1万円減る」わけですから、生活費としては確実に増えます。この在職老齢年金という制度は、マスコミがいうほど「損」ではなく、正しい情報を正確にわかりやすく伝えれば、「年金が減るから働くことをためらう」人は減るはずです。 ※1 20年以上加入の厚生年金を受けていない、前年の年収が850万円未満であること ※2 給料……標準報酬月額+直近1年間の賞与合計額の1/12で、「総報酬月額相当額」と 図表1 65歳からの年 60代前半の厚生年金(特別支給) ▽65歳 報酬比例部分…@ 差額加算………A 老齢基礎年金…B 加給年金………C ※筆者作成 Q2  社会保険の適用拡大により、当社の短時間労働者も対象となります。具体的な加入条件や、申請の手続きなどについて教えてください。 A  今後は、給料に関係なく「週20時間」以上働く人は「短時間被保険者」として加入手続きが必要になります。  2016(平成28)年10月にスタートした社会保険適用拡大は、いいかえれば、パート労働者の社会保険加入基準の強化ということになります。「いままで夫(妻)の扶養」だった人が社会保険に加入することで、@将来の年金が増える、A傷病手当金などが受けられる、と国はメリットを強調しますが、真の目的は「年金制度を維持するために、本人だけでなく会社も保険料を負担する社会保険の加入者を増やす」ことで、結果的に、以前から不公平だといわれている「国民年金第三号被保険者を減らす」ことにもつながります。  いままでは、事業所の所定労働時間の3/4未満が未加入の条件でしたが、適用拡大対象事業所で働く場合は、「週20時間未満・月収8万8000円未満・学生※3」のいずれかに該当しなければ加入義務が生じます。現在は、厚生年金被保険者数51人以上の事業所までですが、今後、徐々に小規模事業所も対象になり、10年後の2035年10月以降はすべての法人が対象になる予定です(図表2)。  よく「年収106万円の壁」といわれますが、当初は、収入要件の月8万8000円を12倍した105万6000円から、「年収106万円程度に抑えておけば加入しなくてすむ」だったものが、いつの間にか「年収106万円が収入要件」のようにいわれるようになり、「106万円を超えないように、12月にパート時間を調整する」などと、無意味な就労制限をする人を増やしてしまいました。新たに対象になった事業所への調査では、「週20時間と月収8万8000円」がチェックされるだけで、年収を確認することはありません。  ところで、時給1016円で週20時間働くと、月収8万8000円を超えます(1016円×20時間×52週※4÷12カ月=8万8053円)。2026年4月以降は、全都道府県が最低時給1016円超になるため、同年10月からは、月収8万8000円の収入要件が撤廃されることになっています。しかし、東京都や神奈川県など最低時給の高い地域は、かなり前から「実質的には、週20時間だけ」になっていたのです。  学生云々が問題になることは稀なので、今後の条件は「週20時間だけ」ということになります。「年間52週」として、週20時間を月に換算すると「20時間×52週÷12カ月=86・666…時間」になります。したがって、今後、社会保険に加入したくない人は「月の労働時間87時間未満」が目安です。そして、それ以上働く人は、家庭の事情や本人の意思などに関係なく加入手続きをしなければなりません。被保険者資格を取得する際は、予想される残業時間なども含み、総支給額で標準報酬月額が決められます。 ※3 昼間学生や専門学校生などで、夜間学生や通信制の生徒などは含まない ※4 日本年金機構は、年間52週として計算している 図表2 今後の適用拡大実施予定…人数は厚生年金被保険者 2027年10月から 36人以上 2029年10月から 21人以上 2032年10月から 11人以上 2035年10月から すべての法人。個人事業所でも、5人以上は一部の例外を除き対象になる ※筆者作成 Q3  「週の所定労働時間20時間未満」で雇用契約を結んでいる労働者が、残業により20時間を超えた場合は、加入対象になるのでしょうか? A  残業が対象外とされるのは、「たまにある」場合だけです。恒常的な残業は除外できません。  以下は、2024(令和6)年9月5日に、厚生労働省保険局保険課が出した事務連絡(通知)の一部です。 問34 就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。また、施行日前から当該状態であった場合は、施行日から被保険者の資格を取得するのか。 (答)実際の労働時間が連続する2月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いている又は続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格を取得します。なお、施行時においては、実際の労働時間が直近2月において週20時間以上となっており、引き続き同様の状態が続くことが見込まれる場合は、施行日から被保険者の資格を取得します。  収入要件の「月収8万8000円」には、通勤手当や家族手当、時間外手当など、最低賃金算定の対象外とされる手当を含まない、とされていたため、「週20時間未満・月収8万8000円未満がわかる雇用契約を締結しておけば、いくら残業をしても被保険者にならない…」という誤った情報を見かけます。厚労省が、Q&Aを出したのは、こういうパート労働者を惑わす情報が多いからです。  年金事務所が実施する社会保険調査では、通常、その時点から前2年分の賃金台帳、出勤簿を用意します。新たに適用拡大対象事業所になった場合は、対象になって以降の期間を調べられることになると思われますが、パート労働者が、その期間のうち「週20時間以上≒月87時間以上」働いた月が半分以上なら加入すべきでしょう。  残業が毎月あり対象期間のほとんどが「週20時間以上」なら加入が必要です。悪質だと判断されれば、遡って適用され保険料徴収、本来なら、在職老齢年金で年金が減額されるような場合は、時効にかからない2年分の年金返還を命じられることもあります。  厚労省のQ&Aでは、「2ヶ月続けて残業込みで週20時間を超えて、3ヶ月目も続くようなら、3ヶ月目の初日に適用する」といっています。要は、「たまにある残業」ならいいが、「恒常的な残業」は除外しない…ということになります。 【P18-21】 新春 特別企画1 「令和7年度 高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演 「シニアのキャリア意識の現状と課題」 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島(こじま)明子(あきこ)  2025(令和7)年10月3日に開催された「高年齢者活躍企業フォーラム」より、株式会社日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏による基調講演の模様をお届けします。「シニアのキャリア意識の現状と課題」をテーマに、これからのシニアのキャリア形成支援や活躍施策について具体的なお話をしていただきました。 意欲のある、就業し続けられる人たちが社会・経済を支える構造が求められている  本日は、前半でシニアのキャリア意識の現状を、後半でシニア活躍施策の現状についてお話ししたいと思います。  まず、2040年の日本の姿を国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」からみると、2020(令和2)年時点では40歳から59歳が現役世代のボリュームゾーンで、この世代の人口は約3500万人です。これが2040年になると、いわゆる「団だん塊かいジュニア」が後期高齢者、「氷河期世代」が前期高齢者となり、人口はさらに減少していくので、年齢を問わず就業意欲のある、就業し続けられる人たちが日本の社会・経済を支える構造が求められることになります。  次に、働くシニア層の現状として、総務省統計局「労働力調査」をもとに年齢階級別の就労者比率から45歳以上についてみてみると、1976(昭和51)年には全体の約4割を占めていましたが、2023年では約6割に増加しています。この割合は、今後さらに増していくことが考えられます。  高年齢者雇用安定法により、企業には、希望者全員65歳までの雇用が義務づけられています(高年齢者雇用確保措置)。70歳定年という言葉も耳にするようになりましたが、企業の高齢者雇用の現状をみると、70歳定年を導入した企業はまだまだ少ないのが現状です。  また、65歳までの高年齢者雇用確保措置の内容についてみてみると、継続雇用制度を導入している企業が大半です。60歳で定年を迎え、以降は継続雇用となると、仕事における裁量がなくなったり、仕事の難易度が低下したりするなど、要するに活躍の場が限定的になることなどが課題といわれています。いま60歳、65歳の方々は、気持ちも体も元気な方が多くいらっしゃるので、この課題はそうした現状と乖離していると思います。  次に、高齢の転職希望者と転職率についてみていきましょう。年齢を重ねても働き続けることを希望する人が増えると、いま勤めている会社で長く働ける状況があればそれもよいのですが、特に大企業においては「ずっと働く」というのはむずかしいのではないかと思います。そうなると、働く人は転職などで自分の活躍の場を探すことになります。そこで35歳以上のデータ※なのでミドル・シニアの状況ではありますが、企業規模別の転職の希望者数の2013(平成25)年から10年間の推移をみると、従業員数29人以下の企業に勤務している人たちには、転職希望者があまりいないというのが現状です。一方で、従業員数500人以上の企業に勤めている人たちは、転職に意欲的な方が増えてきています。  かつては、大企業に勤めると「定年までいたい」と考える人が多かったと思うのですが、雇用や外部の環境が変化していくなかで、自分でキャリアを構築していきたい、新たなキャリアを開拓していきたいという人が現状では増えていると感じています。  年齢層別の転職率の十数年の推移から65歳以上についてみると、転職率は大きく変化していない現状がみてとれます。ミドル世代も同様です。このデータからは、自分に合った会社や仕事を見つけたいと思ったとしても、ミドル・シニア層では実際に転職している人が少ないという状況が把握できます。背景として、企業側の受け入れ態勢が昔に比べれば多少変化しているものの、ミドル・シニアの転職はまだまだむずかしい状況にあることが想像できます。 多様な働き方と意欲が活かせる 仕事を提供することがとても重要  続いて、働くシニアのキャリア意識について、日本総合研究所(以下、「日本総研」)の調査をふまえてお話ししたいと思います。  東京圏の1000人規模以上の事業所に勤める60〜64歳の正社員(男性)を対象に実施した調査結果から、就職活動時点と現在(アンケート回答時点)を比較すると、例えば、「自分の能力やスキルを活かすために働くことが重要だ」、「自己成長のために働くことが重要だ」という問いに対して、就職活動時点の若く意欲に満ちあふれていたときと、60歳を過ぎた現在で、肯定的に回答する人の割合がそれほど変わっていないのです。つまり、「自分の能力を活かしたい」、「自己成長したい」という意欲は、年齢を経ても強いことがわかります。  一方で、「やりたい仕事であれば、仕事以外の時間が削られても仕方がない」という問いに対しては、就職活動時点に比べると肯定的な人が少なくなっています。年齢を重ねると体力的に衰えが出てきますので、時間的にも制約のある働き方でないとむずかしいと思っているシニアが少なくないということです。この結果からわかるのは、時間に制約があっても、企業としては、強い意欲を活かせる仕事を提供することが重要なのだと思います。  続いて、働くシニアの職場環境への満足度についてたずねた調査結果をみると、役職の有無で満足度が大きく異なることが結果にあらわれています。仕事を通じて「好奇心がかきたてられ、喜びや充足感が得られた」、「自分の能力やスキルが活かせている」、「自分は成長していると感じている」という問いに対して、役職のあるシニアのほうがこれらの満足度が高いという結果になっています。  これに関連して、役職定年がシニアのモチベーションの低下に大きく影響しているという調査結果もあります。役職を降りた後の「会社に尽くそうとする意欲」の変化を示した調査データから、役職を降りた経験のある人の約6割が「会社に尽くそうとする意欲」が下がっているということが明らかになっています。また、もともと役職が高い人であるほどモチベーションの下がる幅が大きくなっているという結果も出ています。  一方で、例えば「経営層・上司の相談、助言+所属部署の後輩社員の教育」を担当している人はモチベーションがそれほど下がらないという結果も出ています。経営層・上司へのアドバイザーや、教育係など、いままでのスキルや経験を活かせるような仕事が、シニアにとってモチベーション向上につながることを表していると感じています。  以上が「シニアのキャリア意識の現状」です。ポイントを整理すると、一つめは、年齢を経ても自己成長や、自己のスキルを活かしたいという意欲は高いということ。二つめは、ミドル・シニアを中心に国内では多様な働き方と意欲が活かせる仕事の提供が求められているということ。三つめは、これから就業を継続する人を増やすためには、キャリア形成支援が必要になってくることです。一度退職してしまうと、復帰はなかなかむずかしくなるので、どうしたらキャリアを途絶えさせることなく継続させられるかという、キャリア形成支援の必要性が、今後より高まっていくだろうと考えています。 シニアの活躍支援を進めていることを従業員にきちんと伝えていく  ここからは、「シニアの活躍施策の現状」についてお話しします。企業によるシニアの活用戦略をみると、定年65歳以上の企業では、「60代前半社員」の活用を強く進めている現状がみられます。活用戦略別に「60代前半社員」の活用方針を示したデータからは、活用を強く進める企業ほど、第一線での活躍への期待、全体の底上げを志向する企業が多くなっています。  次に、企業の活用戦略と活用満足度についてみると、シニア社員を活用する意向が強い企業ほど、企業側の評価は高いということが示されています。専門能力、労働意欲、技能や技術の伝承、仕事の成果、管理能力・指導力のいずれの点においても、企業側の評価が高い状況がうかがえます。したがって、企業が積極的にシニアの活躍を推進する姿勢を示して取り組むことによって、企業側にとってもじつはメリットがあることがデータから読み取ることができます。  一方で、そうした企業の施策に対する従業員の理解について目を向けると、その目的やビジョンを理解できている従業員は少ないという状況がみられます。会社側がシニアの活躍に向けて取組みを進めているというメッセージを、従業員にきちんと伝えていくことが重要です。  また、ミドル・シニアの活躍支援の施策として、ミドル・シニアを対象とした研修を始める企業が増えていますが、そうした研修プログラムの多くがキャリアに関する講義が中心となっていて、環境や役割の変化への対応について講義をしている企業は少ないのが現状です。そうした変化に対応できるミドル・シニア人材を育成するキャリア研修として、研修メニューを検討していく必要があるだろうと思います。  ただ、シニアになるほど学ばない人が増える、という現状もあります。従業員の自己啓発の実施状況を年代別にみた調査では、40歳以上は年代が上がるにしたがって自己啓発をした人の割合・時間ともに少なくなっています。リスキリングが重要といわれていますが、ミドル・シニアほど意識して取り組む必要があり、会社がサポートしていく必要があるのだろうと思います。  主体的なキャリア形成に向けて実施した取組みをみると、社内公募などの労働者の意向を重視した人員配置や、兼業・副業の推進、容認、社内兼業制度などについて、すでに取り組んでいる、あるいは取り組もうと考えている企業は2割程度ということで、この点も課題の一つかと思います。 シニアの活躍施策として、職場以外の多様な経験機会を提供することも重要  最後に、日本総研の研究成果を紹介したいと思います。当研究所においてミドル・シニア従業員に、地域の活動団体にインターンシップに行ってもらうという取組みを実施しました。53歳以上推奨として10人募集したところ15人が集まり、14人(男性9人・女性5人)が参加しました。  まず事前研修として、キャリア研修とインターン先を事前に理解するためのガイダンスを行いました。ここでキャリア研修を行ったのは、自分がどんなことの役に立てるのか、どのような地域課題に関心を持っているのかなど、問題意識を持って現地に行ってもらいたいと考えたからです。自己のスキルや経験の棚卸し、日ごろ感じている地域の課題などをグループワークで整理してもらいました。プロジェクト開始前のアンケートでは、自分のスキルが役立つか不安な人が半数以上を占めていましたが、このキャリア研修後に実施したアンケートでは、「スキルや経験の棚卸しを通じて新たな気づきを得た」という人が約9割にのぼりました。また、7割の人が「自分の関心に沿った社会課題を見いだせた」と回答しています。  インターンシップは2グループに分かれ、子育て支援や、定年後のシニアが地域で困っている高齢者を支援している団体など多様な団体のもとで実施しました。  インターンシップ後のアンケートでは、自社でつちかったスキルや経験が社会課題の解決に役立つと「非常に感じる」、「そう感じる」人の割合が、プロジェクト開始前の43%から71%まで上がりました。参加者から「仲間をつくりながら幸せな社会を目ざす働き方、高齢化が進んでいるがゆえに、人ではなく、しくみづくりが大切、仲間との話合いが最重要」、「住んでいる場所から近い場所で人の役に立つ仕事ができ、多少の収益と多くの感謝をいただけるやりがいのある仕事だと思った」などの声が聞かれました。  このプロジェクトの成果の一つは、シニアのセカンドキャリアに対する意識啓発です。「何かアクションをしなくてはいけないというスイッチになった」、「コンフォートゾーンではなく、多様な場に飛び込む勇気をもらえた」という感想のほか、地域の活動団体と直接かかわったことで「自分の本業で社会課題解決に注力したいという気持ちが高まった」という人もいました。  また、地域社会との横断的ネットワークの強化という視点から、「横のつながりがつくれたことで、新しい仕事を自発的に生み出す可能性につながっていると感じた」、「インターンシップだけでなく、参加者同士のその後の横のつながりが自己変容の後押しになっている」という声も上がっています。 シニアの活躍推進に向けた三つのポイント  本日は、「シニアのキャリア意識の現状と課題」についてお話ししましたが、今後の課題として大きく三つのポイントがあると考えています。  一つめは、シニアの意欲が活かせる職場環境づくりです。シニアの高い意欲を活かすためには、組織としてシニアの活躍を強く進めていくことが大切です。それは結果として、企業の価値を上げるというメリットもあると思います。  二つめは、環境や役割の変化に対応できるキャリア形成支援を充実させること。同じ職場内においても、今後の環境や役割の変化に柔軟に対応できるよう、いままでの経験やスキルを活かしながら、新たな学びを得られる機会を提供することが重要と考えます。  三つめは、早いうちから職場以外の多様な経験機会を提供することの重要性です。これにより、セカンドキャリアの選択肢を考える機会になることはもちろん、新たな仲間ができたことで、「みんなで新しいプロジェクトをやってみよう」という気持ちが芽生えたり、視野が広がることで本業のなかでの気づきにもつながっていくのだろうと思います。社外の、いわゆる越境学習は、企業にとっても従業員にとっても意義のある取組みだと思います。 ★「令和7年度高年齢者活躍企業フォーラム」基調講演は、JEED のYouTube公式チャンネルでアーカイブ配信をしており、こちらからご覧いただけます。 https://www.youtube.com/watch?v=1H1rklbr8us ※ 総務省統計局「労働力調査」をもとに日本総合研究所が作成したデータ 写真のキャプション 株式会社日本総合研究所 創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏 【P22-27】 新春 特別企画2 「令和7年度 高年齢者活躍企業フォーラム」 受賞企業を交えたトークセッション  「高年齢者活躍企業フォーラム」より、「令和7年度高年齢者活躍企業コンテスト」入賞企業3社と、基調講演を行った株式会社日本総合研究所の小島明子氏が登壇して行われたトークセッションの模様をお届けします。コーディネーターに東京学芸大学名誉教授の内田賢氏を迎え、年齢に縛られない働き方や若手従業員との良好な関係構築に向けて工夫していることなどについて、小島氏を交えて各社にお話をうかがいました。 コーディネーター 東京学芸大学 名誉教授 内田(うちだ)賢(まさる)氏 コーディネーター パネリスト 株式会社日本総合研究所 創発戦略センタースペシャリスト 小島(こじま)明子(あきこ)氏 グリンリーフ株式会社 取締役 開発・品質管理部長 原(はら)ミツ江(え)氏 総務部総務課主任 中島(なかじま)はるえ氏 株式会社クリーン開発(かいはつ) 代表取締役専務 蜍エ(やなぎばし)直紀(なおき)氏 株式会社マイネットシステム 代表取締役社長 小林(こばやし)利清(としきよ)氏 企業プロフィール 株式会社マイネットシステム (長野県松本(まつもと)市) ◎創業 2000(平成12)年 ◎業種 情報サービス業 ◎従業員数 82人 (2025〈令和7〉年4月1日現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  2023(令和5)年に定年制を廃止し、社員が長期的なキャリア形成を描ける環境を整備した。年齢にかかわらず、貢献・能力に応じた報酬を設定。人事評価制度も刷新し、目標管理と面談を通じて昇給に反映し、公平性と納得性を高めている。 株式会社クリーン開発 (北海道千歳(ちとせ)市) ◎創業 1975(昭和50)年 ◎業種 その他の事業サービス業 (建物管理等各種保守管理) ◎従業員数 310人 (2025〈令和7〉年10月1日現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  定年65歳。希望者全員を70歳まで嘱託社員として継続雇用。その後、希望者全員を75歳まで無期雇用のパートタイム従業員として再雇用。各雇用形態の上限年齢に達した従業員は、「元気事業部」に登録して1日単位で働くことを選択できる。 グリンリーフ株式会社 (群馬県利根郡(とねぐん)昭和(しょうわ)村) ◎創業 1962(昭和37)年 ◎業種 農業・食料品製造業 ◎従業員数 126人 (2025〈令和7〉年5月30日現在) ◎特徴的な高齢者雇用の取組み  定年70歳以降、希望者全員(年齢上限なく)自力で出勤できるかぎり継続雇用。本制度は就業規則作成委員会(各部署から非管理職の従業員を1名ずつ選出して構成)の提案により実現した。 ★ 3社の詳しい取組み内容は、本誌2025年10月号「特集」をご覧ください。JEEDホームページでもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202510/index.html#page=8 高齢者雇用を強力に推進するようになった背景 内田 まず最初に、高齢者雇用を強力に推進するようになった背景からお聞かせください。 小林 やらざるを得なかった、というところが本音です。65歳を過ぎてからも現役で活躍している人、知識を豊富に持った人がいます。そういう方々に活躍していただきたいと思い、推進を始めました。 蜍エ 当社のある北海道千ち歳とせ市は、空港と自衛隊の町として知られています。自衛隊の定年は、以前は53歳で、年金を受給するまで第二の人生として当社に来てくださる方が多くいました。そして自衛隊の定年が55歳になり、年金の受給開始年齢も上がったことに合わせて、当社の定年制を改定し、定年65歳、70歳まで継続雇用し、希望者全員75歳まで無期雇用のパートタイム従業員として再雇用する制度にあらためました。 中島 定年70歳以降、年齢上限なく勤務延長ができる当社の制度は、就業規則の見直しと改善を目的として設立された就業規則作成委員会からの提案により実現しました。委員会ではまず、「退職年齢に達する人たちが辞めてしまうと困る」という声があがり、「では、いつまで働ける制度にしたらよいだろうか」と話し合い、70歳定年制を設けていますが、自力で出社できるまでは年齢制限なく働けるという制度ができました。 小島 雇用環境が変化するなかで年金受給年齢の引上げもあり、もともとは環境の変化に対応をするという状況だったと思います。しかし、お話をうかがっていると、推進しているうちに自分の会社の価値を上げていくことにつながるといった実感などをともないながら取組みを進めてこられたのではないかと思いました。 年齢に縛られない働き方の再設計について 内田 次に、「年齢に縛られない働き方」とはどういうものなのか、お聞かせください。 原 当社では、四半期ごとに働き方の見直しを行い、働き方を選べる仕組みがあります。例えば、フルタイムで働いていた人が、家庭や子どもの事情などにより勤務時間を短くしたいという場合など、自身の現状に応じた働き方を柔軟に選択できる仕組みです。また、子育て期間終了後に再び正社員になることも可能です。 蜍エ 一人ひとりの働く環境には違いがあるということで、日々コミュニケーションを取りながら、柔軟に対応しています。高齢になっていまの作業がきついというのであれば、身体的に負担の少ない現場への異動を提案するなど、できるかぎり本人の希望に合うように、雇用の場を提供しています。  また、一線を退いたものの、「体はきつくなったけれど仕事を続けたい」という従業員のために、時間の調整がつくときに当社の業務を手伝っていただく「元気事業部」という登録制の部を創設しました。「夏場だけ働きたい」といった要望などに応えられるような仕事の受注に努め、作業計画を組みながら進めている段階です。 小林 当社では、74歳で営業職をサポートしている従業員がおり、フルタイムではないのですが、リモートワークで力を発揮しています。新しく入った社員の育成をリモートで行うケースなどもあり、さまざまな形で高齢社員が活躍しています。時短勤務制度もありますし、こうした柔軟な勤務制度により、できることが増えてきたと思います。 小島 3社の取組みには、選択できるという共通項があります。例えば、定年制を廃止したら、雇用形態や働く年齢を選べますし、リモートワークなら働く場所や時間が選べます。また、仕事内容も希望に応じて選択することも可能ですよね。経験やスキルのあるシニアの活躍をうながすには、選べる環境を提供していくことがポイントになると思います。 内田 自分の健康問題や家族の介護に直面したり、あるいは趣味の時間をつくりたいといったことから、パートタイム的な仕事に変わるなどいろいろな人々がいると思います。会社と本人とで両立できるところを探るうえで、選択肢があることが大切です。また、そういった制度のメリットは、シニアにかぎらず、子育て期間中の人たちなど多様な人たちが享受できるものになるよう工夫をすることも重要ですね。 若手従業員との良好な関係構築に向けて工夫していること 小島 若手従業員との良好な関係構築に向けて工夫されている点についてお聞かせください。 原 世代間のコミュニケーションに積極的に取り組んでいます。新年会にはお子さんも含めて社員の家族にも参加してもらい、世代を超えて隔たりなく楽しんでいます。また、部門ごとの食事会が年4回あり、若い人も年配の人もご飯を食べながら和気あいあいと会話を楽しんでいます。毎月の勉強会のグループ活動も年齢、性別にかかわりなく参加することができるのですが、多世代が積極的にかかわることを意識しています。じつは、勉強会を年代別に実施したこともあり、それはそれで同年代で話も合うのでよいのですが、多様な年代構成にすると、若い人から学ぶこと、年配者から学ぶことがあり、現在はかかわり合うよう、いろいろなことに取り組んでいます。 蜍エ 当社は従業員が約310人で、現場が70カ所を超えるので、全員で集まる機会はなかなかないのですが、従業員や家族を招いてバーベキューなどを行ったり、従業員全員を招待した忘年会を行い、コミュニケーションの活性化を図っています。また、高齢社員同士で険悪な雰囲気になることなどがあると、若手社員が間に入って仲を取り持つといったこともあります。孫のような若い人が入ることで、高齢社員が柔和になってうまくいったり、若手と高齢社員のコミュニケーションがとれていったりすることがあるので、現状として、高齢社員と若手が一緒に仕事をする機会を増やすようにしています。 小林 当社でも、年に1度、全社員を集めて懇親会を開いていますが、若い社員にはお酒を飲まないという人も少なくありません。仕事に対しても、自信がないのか、あまりチャレンジングな姿勢が見られないこともあり、ベテランの人たちからすると、「それは甘いよ」という印象を抱いてしまうこともあります。仕事の準備があいまいなまま進めてしまうこともあるので、そういったときは年上の経験者がレビューをして指南をすることもあります。実際に業務上のやり取りのなかで、コミュニケーションが生まれている、という感じです。 内田 高齢者はいろいろな経験をしていて、どこまでいったらどうなるかがわかるからこそ、事前に気をつけることができる。それを伝えていく役割は、まさに経験ある人が適任であり、大事なことはコミュニケーションなのだと思います。 学び続けるシニアを支える仕組みと動機づけについて 内田 学び続けるシニアを支える仕組みと動機づけについてはいかがでしょうか。 小林 すべてのシニアではないのですが、やりたいことを自分で考えて、どう進めるかを計画して提案してもらっています。そのテーマについて「会社で実施する」と決めた場合は、その提案者自身が取組みの主体をになうという仕組みがあります。そしていろいろな人たちと話し合い、チームをつくって取組みを進めています。 蜍エ お客さまに喜んでいただけるサービスを提供するために、高齢社員にも若手社員にも研修を通じて学んでもらいます。特に、仕事が作業にならないよう、お客さま優先で行えるよう、接遇研修も大事にしています。また、安全研修、技術研修、コンプライアンスの研修も含めて一緒に受けてもらい、徹底しています。 原 「シニアを支える」というよりは、逆に「支えてもらっている」というのが、当社の実情ですね。シニアにはいろいろな困難や苦労を乗り越えてきた人が多いですから、本当に支えてもらっていまがあると思っています。また、仕事をしていて不便に思うところ、例えば、重い物を持つといったことは、だんだんたいへんになってくると思いますので、そういったことを改善する。当社には「チョコ案」という、各社員からちょっとした改善の提案をしてもらう制度があり、出てくる改善案を取り入れています。 小島 お話をうかがって、安全管理やコンプライアンスにかかわる教育体制の整備は、シニアを雇用するうえで基本となる取組みだと思いました。一方で、グリンリーフさんの「チョコ案」の制度や、マイネットさんの自分から提案するという、シニアの主体性や自律性を活かす取組みについても、シニアの活躍をうながすために重要だと考えます。 内田 教育、あるいは職場改善について、社員が提案できる制度があることと、会社がそこになんらかのアクションをとる仕組みがあることが大事なのだと感じます。現場の声を聞いて、すぐに取り上げて解決に導く、または解決の取組みを示すだけでも、会社に対する信頼感が違うでしょうし、それを見た若手、中堅の信頼感も高まっていくのではないかと思います。 高齢者の活躍に向けた会社としての姿勢や経営層のメッセージが、従業員(おもにシニア)に理解されるよう工夫していること 小島 シニアの活躍に向けて、会社としての姿勢や経営層のメッセージを、従業員、おもにシニアに理解してもらうために、どのような工夫をされていますか。 中島 給料日に社長からの手書きのメッセージを送る、誕生日に社長夫婦から靴下のプレゼントをする、勤続年数に応じて表彰をするといった取組みのなかで、長く働いている従業員に感謝の気持ちを伝えています。また、全員に対して毎年、方針説明会を開いて、わかりやすく会社の方針を説明し、みんなが同じ方向に向いていけるようにしています。 蜍エ 全員で集まる機会が少ないため、全員への周知というのが課題ではあったのですが、12月の繁忙期前に大きな会場を借りて集合し、会社の決意表明を含む全体の研修を行っています。また、1人で働いている社員が100人ほどいますので、月1回の巡回のほか、2カ月に1回、社内報を制作して会社の状況や安全に対する資料などを盛り込んで配付しています。 小林 月に1回、Webを使った全体会議で、起こったできごとや業績を共有しています。年1回は、会社の方針を説明しています。 小島 シニアの活躍を推進していくうえでは、共通理念として、会社の経営層がきちんとメッセージを伝えていくことが重要です。従業員の方も忙しいと、会社からのメッセージをなかなか受け取ってもらえないこともあるので、3社のみなさんの工夫は、多くの企業にとって参考になる内容だと思います。 今後の高齢者雇用推進の方向や現在検討中の計画 内田 今後の高齢者雇用の推進の方向と、それを具現化するために検討中の計画について、どのような取組みをされていますか。 小林 60歳を過ぎても、70歳を過ぎても現場で稼いでいくようにならなければ生き残っていけない、厳しい時代になったと思います。60歳過ぎの方の採用もしていますが、現場に行って働ける人を優先して採用しています。定年制をなくしたことで、この先どうなるのか、将来の課題については、次の世代にお任せしたいと思っています。 蜍エ 高齢者にかぎった取組みではないのですが、清掃ロボットの導入や、軽量の資機材を使うなどして、身体にかかる負担を減らす工夫をどんどん取り入れています。また、働きたいけれど通勤手段がないとか、高齢になり車の免許を返納したという方が多くなってきたため、通勤時のサポートで送迎をしています。一人ひとりが無理なく働けるように今後も改革に取り組みたいと思っています。 原 退職した従業員とつながりを続けて、繁忙期に手伝いをお願いしています。最近も82歳で退職した方に1週間だけ来てもらいました。あるいは1カ月、2カ月の短期で来てもらう場合もあります。そういったことも大事にしています。 小島 グリンリーフさんの「つながりを断絶させない」取組み、あるいは「アルムナイ」といういい方がよいのかもしれませんが、働いていた方々とつながりを継続させて、必要に応じて働いていただけるというのは、今後の新たな働き方の一つではないかと思います。  また、中途採用をしたシニアの方にどう活躍していただくかということも今後の課題です。特に大企業から中小企業へ転職されるケースも徐々に増えてくると思いますが、仕事の仕方やマインドの部分が大きく異なり、定着しない、マッチングがうまくいかないということも、今後の課題です。社会として、教育の支援、マッチングの支援の必要性を感じました。 これから高齢者雇用を進める企業へのアドバイス 内田 最後に、これから高齢者雇用を進める企業へのアドバイス、法人へのアドバイスをお願いします。 原 人生100年時代といわれ、また、人手不足という環境のなかで、雇用年齢が上がらないのは、どうなのかなというのが正直な思いです。いまは70歳でも若々しく、昔に比べると10年は若くなっていると感じますので、70歳の雇用は不思議ではないと思います。  会社として雇用年数を延ばしていく際は、短期間でも働けるなど、自分の状況に合わせて働ける仕組みをつくることによって、より多くの方が働けるようになると思います。当社の場合もそうですし、そういう仕組みをつくっていくと、次の世代の人たちが、「働けるうちは働けるんだ」という考えを持つことができ、それによってさらに挑戦意欲が出てくるのかなと思います。そういったことを当社でも続けていきますし、同じような取組みをされる企業が増えていくことに期待したいですね。 蜍エ 高齢者の方は、人生の先輩として、いろいろな知識や経験、そしてプライドを持っています。失礼ないい方になるかもしれませんが、こだわりが強くなってくる方も多く、従業員同士で口論になったりすることもあるのですが、責任者を置いて、意見を尊重しながら、会社としての方向性をしっかりと決めて伝えていくこと。そうして、一人ひとりの得意なことを活かしてもらうような指示を出したり、作業チームをつくったりすることなどを通して、活き活きと働いていただけるのではないでしょうか。  また、健康面への配慮として、北海道でも夏場は暑い日が増えてきており、作業を中止する日もあるのですが、朝、「大丈夫かい」とたずねると、みなさんだいたい「大丈夫です」と答えるのです。責任者が顔色や体調の管理をしっかりと確認し、無理をさせないことが大切です。それでも体調を崩す人が出てきますから、日ごろの声かけも大切にしていただければと思います。 小林 当社は、IT業務を行っていることが功を奏してここまで来られたと思います。さまざまな業種のそれぞれの会社で、自社の特長をとらえて、よい方法をみつけることが必要なのかなと考えています。当社でもかなり考えて、やると決めてからは、みんなで向かっているだけです。是々非々を検討していただければと思います。 小島 本日は貴重な機会をいただき、いろいろと勉強になりました。3社のみなさまのお話を聞いて、多くの企業の方々がシニアの活躍を進めていきたいと思われたのではないでしょうか。シニアの活躍を推進するうえで、まず前提として必要なのは、トップのコミットメントだろうと私は考えています。そのコミュニケーションのとり方は、企業によって違いますし、独自の工夫が求められると思いますが、まずはシニアの活躍を進めていくことを、トップが従業員にきちんと伝えていくということが、推進のうえでは必須だろうと思います。  そのうえで、「選択できる」という仕組みについて、本日いろいろとうかがいました。さまざまなシニアが自分のスキルや経験を活かせるように、働く時間や場所、あるいは雇用形態について、選択できる環境を提供していくことが必要だと思います。そうして一歩ずつ進めていくと、いろいろな成果が出てきます。若手にとってロールモデルができて安心して働けるようになったとか、定着率が上がった、品質が改善したなど、企業にとってメリットがあることを実感することにもつながるのだと思います。  これからも課題は出てくると思いますが、多くの企業でよい成果が出た取組みに関する情報を共有し、日本全体として、シニアの活躍にすぐれた企業がより増えていくことを期待しています。 内田 みなさま、ありがとうございます。3社それぞれに、苦難の歴史もあったと思います。しかしながら、それぞれに本気になって、ポリシーを持って、だからこそシニアを活用するんだ、会社の成長のためにもシニアが必要だと本気で考えて実践し、その結果、若手、中堅の方々も含めて、会社はしっかり考えてくれているという信頼を得て、現在に至っているのだと思います。まだ課題があるなかで、解決しながら進めているという部分もあるかもしれませんが、本気で取り組んでいらっしゃるところを汲み取っていただいて、みなさまの会社での実践に役立てていただければと強く思います。ありがとうございました。 ★「令和7年度高年齢者活躍企業フォーラム」トークセッションは、JEEDのYouTube公式チャンネルでアーカイブ配信をしており、こちらからご覧いただけます。 https://www.youtube.com/watch?v=Ea8JJZDSQp0 写真のキャプション 東京学芸大学 名誉教授 内田 賢氏 株式会社日本総合研究所 創発戦略センタースペシャリスト 小島明子氏 グリンリーフ株式会社 取締役開発・品質管理部長 原ミツ江氏 グリンリーフ株式会社 総務部総務課主任 中島はるえ氏 株式会社クリーン開発 代表取締役専務 蜍エ直紀氏 株式会社マイネットシステム 代表取締役社長 小林利清氏 【P28-32】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 最終回! ある介護福祉施設の助成金活用事例A 〈前回までのあらすじ〉 エルダのアドバイスで65歳超雇用推進助成金を活用しながら、高齢者雇用の取組みを進めてきた社会福祉法人じいど福祉会。その成果を見にエルダと得太は、同法人を訪れ話を聞くが…。 ★このマンガに登場する人物、会社等はすべて架空のものです ※前回(2025 年12 月号)は、JEED ホームページからもご覧になれます。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202512/index.html#page=26 おわり 【P33】 集中連載 マンガで学ぶ高齢者雇用 解説 教えてエルダ先生! Season3 65歳超雇用推進助成金活用のススメ 最終回 ある介護福祉施設の助成金活用事例A  高齢者雇用を推進していくうえでは、就業規則の見直しおよび賃金制度や労働条件の見直し、安全・健康管理をはじめとした職場環境の改善等の検討は欠かせません。  特に就業規則の改正には、企業の実情に合わせた制度設計やコンプライアンスの観点から社会保険労務士などの専門的な支援が必要とされますが、そのための経費も発生します。決して小さくはないその負担を軽減できるのが、「65歳超雇用推進助成金」です。最終回となる今回は、前号に引き続きある介護福祉施設の助成金活用事例を紹介します。 Check1 高齢者雇用における「役割の明確化」と「評価・処遇制度」の重要性  定年延長や継続雇用年齢の延長により、業務内容や役割、職責などが変わるなかで「どうやって会社に貢献すればよいのだろう」という思いを抱いてしまう高齢社員も少なくありません。また、若手に負けないように会社に貢献しているのに、適切に評価をされる機会がなく処遇にも反映されなければ、モチベーションも下がってしまいます。高齢社員に、会社の戦力として活き活きと働き活躍してもらうためには、「役割の明確化」、適切な「評価・処遇制度」は不可欠といえるでしょう。 Check2 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース  高年齢者の雇用の推進を図るために雇用管理制度(賃金制度、労働時間制度、健康管理制度など)の整備にかかる措置を実施した事業主に対して、措置に要した費用の一部を助成します。  支給対象となる経費※は、@雇用管理制度の導入などに必要な専門家に対する委託費、コンサルタントの相談に要した経費、A雇用管理制度の実施にともない必要となる機器等の導入に要した経費。@とAの合計額(上限50万円)に60%(中小企業事業主以外は45%)を乗じた額を支給します。 ※初回に限り、50万円とみなします。 詳しくは本誌2025年9月号、本連載の解説をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202509/index.html#page=31 お問合せ JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課) ※各支部の問合せ先は65ページをご参照ください。 【P34-35】 偉人たちのセカンドキャリア 歴史作家 河合(かわい)敦(あつし) 第13回 日本に戒律を伝えたその陰で… 鑑真(がんじん) 5回の失敗、12年の歳月をかけて日本へ渡海  朝廷で「唐から高僧を招こう」と決まったのは、733(天平5)年のことでした。仏教の戒律を受けなくては正式な僧と認められませんでしたが、我が国には戒を授けられる高僧が少なく、儀式も不十分なものでした。そこで唐に留学していた栄叡(ようえい)と普ふ照しょうが帰国に際し、楊州大明寺(ようしゅうだいめいじ)の鑑真を訪ねたのです。鑑真は4万人以上に戒を授けた戒律の師として有名だったからです。二人は鑑真に高弟を日本に招きたいと懇請しました。快諾した鑑真は渡海希望者を募りますが、だれも引き受け手がいません。すると鑑真は「仏教のためではないか。なぜ身命を惜しむのか。皆が行かぬのなら私が赴く」と述べたのです。  こうして鑑真の来日が決まりますが、5度も渡海を企てながら失敗をくり返し、ようやく6度目の挑戦で日本の地を踏むことができました。753(天平勝宝5)年12月のことでした。足かけ12年の月日が過ぎ、その間、鑑真は視力を失いました。  翌年2月、鑑真一行が奈良の都へ入ると、多くの貴族や僧が出迎えました。一行はそのまま東大寺へ入り、完成間近だった盧舎那(るしゃな)大仏を目にします。案内役の東大寺別当の良弁(ろうべん)が「唐にもこのような大きな仏像はございますか」と尋ねたところ、鑑真は「ありませんね」と答えたといいます。鑑真は朝廷が建てた東大寺境内の唐禅院(僧坊)に住むことになりました。同年3月、勅使・吉備真備(きびのまきび)が鑑真のもとを訪れ、聖武上皇の次の言葉を伝えました。  「遠く荒波を越えてやって来てくださったのは、私の意に沿い、たとえることができないくらい嬉しい。東大寺を造って十年余りが経つが、ずっと戒壇を設けて戒を伝授させたいと考えてきた。今後はあなたに授戒伝律のことをすべて一任したい」  以後、僧になるためには必ず鑑真から戒を受けることになりました。翌4月には聖武上皇が東大寺を訪れ、大仏殿の前に臨時に築いた戒壇で鑑真から菩薩戒を授けられ、同じく孝謙天皇や光明皇太后など400人以上が戒を受けました。 要職に就き活躍するもじつは反対派も多かった  同年7月、聖武上皇の実母・宮子太皇太后の病が重くなったとき、鑑真は薬を調合して与え、一時、病状を改善させました。じつは鑑真は最新の医学知識も有していたのです。鑑真がもたらしたのは薬の知識だけではなく、貴重な仏具、ガラス製の瓶、唐の最新建築や彫刻技術なども伝えました。さらに書聖と呼ばれ、4世紀に活躍した王(おう)羲之(ぎし)の貴重な直筆を持参し、日本の書道に発展をもたらしたのです。  10月、東大寺に戒壇院が完成します。ただ、「戒律を受けなくとも、これまでのやり方で十分」と主張する僧侶もおり、鑑真と反対派との公開討論が興福寺で行われました。論争は反対派の惨敗に終わりますが、その後も一部の反発は続きます。例えば756年4月、朝廷は重病の聖武上皇のために鑑真らに病の平癒を祈願させました。この折、参列した僧たちに鑑真が受戒をすすめると、興福寺の法寂(ほうじゃく)は暴言を吐きました。ところがそのとたん、法寂は昏倒してしまったのです。人びとは大いに驚いたといいます。  翌5月、聖武上皇は崩御しますが、その月に僧綱(仏教を管理するために設置された組織)での人事が刷新され、鑑真は大僧都(だいそうず)となりました。  758(天平宝字2)年、鑑真は大和上(だいわじょう)の尊号を朝廷から与えられますが、朝廷の官職からは離れることになりました。すでに71歳になっていたためです。翌年、鑑真は新田部(にいたべ)親王の旧宅を与えられました。そこで思し託たくや義静(ぎじょう)ら弟子を連れてこの地に移り住み、私寺を営むようになりました。寺の名は唐律招提、のちの唐招提寺です。  ただ、寺院の運営費が国費(備前の田圃百町の収益)から出ていることに対し、非難する僧たちがあったようです。ここからわかる通り、日本の僧たちの間では、鑑真ら唐僧をこころよく思わなかった勢力が根強く存在していたのです。  そこで唐僧の思託は、師の来日の意図が後世に正しく伝わるよう、鑑真の生前にその伝記を記しました。これが、『大唐伝戒師僧名記大和上鑑真伝』です。残念ながら鎌倉時代以降、文章が散逸してその内容はわからなくなってしまいました。  現在、一般に流布している鑑真の業績は、『唐大和上東征伝』に記された内容です。これは鑑真の弟子で、日本最古の図書館をつくった人物として教科書にも登場する淡海三船(おうみのみふね)が編纂した伝記です。779(宝亀10)年の成立ですが、もともとは思託の伝記を短くまとめたものだと伝えられています。 さまざまな逸話が残る鑑真の晩年  鑑真は、数年間を唐律招提で静かに過ごし、763年、76歳で没しました。亡くなる前、弟子の忍基(にんき)が唐招提寺の講堂の梁が砕け折れる夢を見ました。お堂の梁が折れる夢というのは、偉いお坊さんが没する前兆だとされています。  そこで忍基は、鑑真の死期が近いことを知り、大勢の弟子たちとともに鑑真の像をつくりました。じつはこれが、現在国宝になっている「鑑真和上坐像」です。まさに鑑真が生けるがごとき見事な像です。  鑑真は生前、「私は死ぬとき、坐したまま死にたいと考えている」と弟子たちに語っていましたが、まさにその通り、寺の宿房で西を向いて座ったまま亡くなりました。  亡くなる前、「死んだら私のために別に御影堂を建て、いま住んでいる僧房は、僧侶たちに与えて欲しい」と遺言したので、その通りにしたといいます。  ちなみに鑑真の死に関して、先に紹介した『唐大和上東征伝』に不可思議な伝承が記されています。鑑真の遺体は死後三日経っても、頭頂部が体温を保ったままだったというのです。このため、しばらくの間、その亡骸を葬ることができませんでした。しかも遺骸を火葬にした際、辺り一帯になんとも言えぬ良い芳香がただよったといわれています。  鑑真の訃報を知らせる朝廷の使いが唐の揚州に届くと、諸寺院の僧侶たちは喪服を身につけ、日本に向かって三日のあいだ哀悼の意を捧げ、さらに龍興寺に集まって大斎会(だいさいえ)を執り行いました。その後、龍興寺は火事のために焼けてしまいますが、鑑真が住んでいた宿坊だけが焼失を免れたので、人びとは鑑真の遺徳であると噂しあったといいます。  歴史の教科書には、「高僧・鑑真は苦難を乗り越え来日して戒律を伝えた」としか記されていませんが、じつは戒律以外にもさまざまな最新の知識や技術を伝え、戒律を日本仏教界に定着させるため反対派と戦い続けて亡くなったのです。 【P36-39】 高齢者の職場探訪 北から、南から 第161回 長野県 このコーナーでは、都道府県ごとに、当機構(JEED)の70歳雇用推進プランナー(以下、「プランナー」)の協力を得て、高齢者雇用に理解のある経営者や人事・労務担当者、そして活き活きと働く高齢者本人の声を紹介します。 コンテスト受賞後も取組みが進化 生涯現役で安心して働ける環境を実現 企業プロフィール 株式会社全日警サービス長野(長野県長野市) ▲設立 1993(平成5)年 ▲業種 警備業 ▲社員数 193人(うち正社員数86人) (60歳以上男女内訳) 男性(77人)、女性(8人) (年齢内訳) 60〜64歳 27人(14.0%) 65〜69歳 27人(14.0%) 70歳以上 31人(16.1%) ▲定年・継続雇用制度 定年65歳。希望者全員70歳、基準該当者を75歳まで継続雇用。最高年齢者は警務職の82歳  長野県は海に面していない内陸県で、「日本の屋根」と呼ばれる飛騨(ひだ)山脈、木曽(きそ)山脈、赤石(あかいし)山脈は、北・中央・南アルプスの名でも親しまれ、多くの登山客に人気があります。県土が南北に長いため地域ごとに異なる気候、風土のもと、それぞれ多彩な特性を有しています。  県内産業の経済活動構成比をみると、上位から製造業、不動産業、卸売・小売業となっています。製造業は28%を占め、全国平均の20%よりも高い割合を示しており、長野県の産業をけん引しています。  JEED長野支部高齢・障害者業務課の島津(しまづ)麻衣子(まいこ)課長は、長野県内における高齢者雇用推進の取組みについて、次のように話します。  「最近の傾向としては、定年や継続雇用の年齢の引上げなどに関連して、高齢者の賃金・評価制度の仕組みづくりについての相談が増えてきているようです。プランナーによる企業への初回訪問時には、管轄のハローワークの雇用指導官に可能なかぎり同行していただいています。ハローワークとJEEDが連携し、企業の担当者に高齢者雇用についての理解を深めていただくきっかけづくりに取り組んでいます」  2011(平成23)年から同支部で活躍する小林(こばやし)和宏(かずひろ)プランナーは、社会保険労務士、中小企業診断士、ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、豊富な専門知識と経験を活かした企業支援を行っています。  小林プランナーが株式会社全日警サービス長野を初めて訪問したのは、2017年の高年齢者雇用開発コンテスト(現高年齢者活躍企業コンテスト)への応募がきっかけでした。その際、同社の「まごころ警備の実践」というキャッチフレーズに深い感銘を受けたといいます。  今回は小林プランナーの案内で、その後の同社の高齢者雇用および社員に対する福利厚生がどのように進化しているかを取材しました。 「心の安らぎ」を事業理念に掲げる警備会社  株式会社全日警サービス長野は、「ピース・オブ・マインド(心の安らぎ)」を事業目的に掲げる警備会社です。1993年の設立以来、長野オリンピックや国際空港の開港時の警備、東海道新幹線での柵内巡回安全管理など、数々の大規模プロジェクトの警備を手がけてきました。同社は単なる警備業務にとどまらず、イベントの企画・立案まで行う点が大きな特徴です。  同社の浅妻(あさつま)豊(ゆたか)代表取締役社長は、「セキュリティとは、危険や事故が起きないように安全を構築していく想像力を要する仕事です。お客さまに心の安らぎを提供するためには、まず自分たちが安らぎを持っていなければなりません」と語ります。  この考えのもと、年齢や経験年数に関係なく「全員が平等」という信念を貫き、社員の健康と幸福を優先した経営を実践しています。  2017年に整備された同社の高齢者雇用制度は、定年65歳、希望者全員70歳、基準該当者を75歳まで継続雇用となっています。さらに、75歳以降も健康状態と家族の理解があれば、年齢上限なく働き続けることも可能です。実際に現在、82歳の最高年齢社員が警務職として活躍しており、浅妻社長の方針が体現されています。  また、定年後の継続雇用においては、賃金の一律減額といった措置は取っておらず、役職もそのまま維持しているほか、63歳までであれば、準社員として入社した者であっても正社員登用試験を受けることができ、他社で定年を迎えた人が同社で再び正社員として活躍することも可能です。  高齢社員の経験を若手育成に活かすメンター制度も、同社の特徴的な取組みの一つ。60歳以上の経験豊富な社員を、新卒の社員や新入社員のメンターとして配置し、仕事の技術指導だけでなく、人生経験やプライベートの悩みについても相談に乗るよう指導しています。  同社はこれらの取組みが高く評価され「平成29年度高年齢者雇用開発コンテスト」(現・高年齢者活躍企業コンテスト)で当機構理事長表彰優秀賞を受賞しているほか、経済産業省「健康経営優良法人ブライト500」の認証を受けています。 受賞後も継続して福利厚生制度を充実  コンテスト受賞後も、社員の健康と経済的な安心を担保する体制に磨きをかけてきました。2019年には、70歳まで積立てが可能な「選択制退職金制度」を導入。会社が基本部分を負担し、社員が任意に自己負担で上乗せを行える仕組みです。上乗せ額は支給前に賃金から天引きされるため、所得税の控除を受けられるメリットがあります。  さらに2022(令和4)年には、全社員を対象に三大疾病(がん、脳疾患、心疾患)の保険に加入。万が一これらの疾病の診断を受けても金銭面の理由から治療を先延ばししないよう、数カ月分の給料と同等額が保障されます。定期健康診断で再検査・要検査となった場合には、検査の実施を義務づけており、受診しない場合は会社がアポイントを取って強制的に受診してもらうそうです。  「医師には、警備業の特性を理解してもらうため、独自の勤務確認書を提出し、現場で倒れるリスクがないかを確認してもらっています」(浅妻社長)  また、24時間相談サービス、禁煙外来の全額負担、インフルエンザ予防接種費用の全額負担、マッサージ費用の補助、婦人科健診の費用補助など、きめ細かな健康管理施策を実施。2019年には全社員が利用できる「福利厚生倶楽部(宿泊、レジャー、健康、育児介護、学習関係の割引)」を導入し、余暇や生活の支援を通じてストレス解消と定着率向上を図っています。  こうした取組みが評価され、2024年に長野県SDGs推進企業の認定を取得しましたが、浅妻社長は「資格を取るだけではダメで、各種取組みを実践していかなければ、なんの意味もありません」と強調。太陽光発電や蓄電池の設置により災害時に地域住民に電力を供給できる体制を整えるなど、実態のある活動を展開しています。  また、長野県の「職場いきいきアドバンスカンパニー」の認証制度では、ワークライフバランス、ダイバーシティ、ネクストジェネレーションの三つのコースすべてを取得し、さらに上位認証の「アドバンスプラス」を取得しています。  今回は、同社で長年にわたって活躍しているお二人の高齢社員にお話をうかがいました。 経験と誠意が光る高齢警務隊員の活躍  宮澤(みやざわ)春美(はるみ)さん(72歳)は、警備の仕事を続けて24年のベテラン警備員です。自営業を経て家庭環境の変化をきっかけに警備業の道へ進み、いまでは警備の仕事を「天職」と感じており、「ほかの仕事は考えられない」と話します。現在はおもに金融機関の駐車場警備を担当し、同社の女性警備員で構成される「チームマドンナ」の一員として、警察主催のイベントにも参加するなど、幅広く活躍しています。  「人から指摘されるのが苦手なので、いわれる前に改善したり、仕事を進めたりするよう心がけています」と話す宮澤さん。長野県を代表する観光名所で、年間数百万人もの参拝者が訪れる善光寺(ぜんこうじ)の現場を担当していた際は、観光客からの質問にすぐ答えられるよう、宿坊39軒すべての名前と場所を覚えたといいます。ときには現場でストレスを感じることもありますが、「会社に戻れば担当者が話を聞き、解決策を示してくれるので助かっています。現場で『またお願いします』といわれる瞬間が一番うれしいです」と笑顔を見せます。浅妻社長も「宮澤さんはまじめな性格と笑顔での誘導で、お客さまから高い評価をいただいています」と太鼓判を押します。  数年前に大腿骨の手術を受け、いまも痛みが残ることがあるため、浅妻社長は勤務時間を短縮したり、休憩がとれる現場に配属したりと配慮を続けています。宮澤さんは空調服や防寒肌着などをいち早く支給してくれる会社の姿勢に「本当にありがたいです」と感謝し、「体力の続くかぎり、勤務時間を調整しながら1日でも長く働き続けたいです」と意欲を示していました。  宮沢(みやざわ)祐二(ゆうじ)さん(73歳)は、警備の仕事を始めてから20年。「動き回る仕事が性に合っています」と話し、おもにコンサートやマラソン大会など、イベント会場での雑踏警備を担当しています。「雑踏警備のむずかしさは、人に対して強制力がないため、車両の誘導と違って必ずしも指示にしたがってもらえない点にあります。『誠意を持って対応すること』、『お願いする気持ちで臨むこと』がなにより大切です。現場の近隣の方々と顔なじみになり、協力を得られる関係を築くことも、よい警備につながると思います」と語ります。  後輩には、警備中に感情的になりマニュアルを忘れ、言葉遣いが荒くなることのないよう指導しており、ここでも「お願いする姿勢」を重んじているそうです。仕事でやりがいを感じる瞬間は「長時間の勤務を終えた後、イベントが事故なく無事に終わった瞬間の安堵感を感じるとき」とのこと。  浅妻社長は、「宮沢さんは主任として現場をまとめ、立ち姿も動作も美しく、周囲の模範となる警備員です」と評価します。  宮沢さんは今後について、「身の安全を第一に、つねに落ち着いて対応できるよう心がけたいです。体を動かす仕事のおかげで病気もなく過ごせています。体力の続くかぎりフルタイムで働き、ゆくゆくは少しずつ勤務を減らしながら、この仕事を続けられたら最高です」と話してくれました。 高齢者も平等に輝ける職場を目ざして  浅妻社長は、高齢社員に対して特別な期待を寄せています。  「年を取ってくると体は動きにくくなりますが、その分、ちゃんと物事を考えるようになります。みなさんに建設的で経験に基づいた発想や意見を、経営層にどんどん出してもらいたいです。私自身も『80歳まで現役でいる』と宣言しており、高齢者が働き続けることを推奨する姿勢を維持していきます」と力強く語りました。  取材後、小林プランナーは「長野県の『アドバンスプラス』認証の取得はとても難易度が高いのです。浅妻社長は、『SDGsは資格を取るだけではなく、実践をともなわないと、なんの意味もない』という考え方を示されており、感銘を受けました。同社の高いレベルの取組みには勉強することばかりです」と舌を巻いていました。  株式会社全日警サービス長野は、「まごころ警備の実践」という理念のもと、コンテスト受賞後も進化を続け、社員一人ひとりの働きやすさと健康を守りながら、年齢に関係なく全員が平等に活躍できる職場づくりを実現し、警備業の新しい可能性を切り拓いていました。(取材・西村玲) 小林和宏 プランナー アドバイザー・プランナー歴:14年 [小林プランナーから] 「つねに訪問先企業に喜ばれるプラスワンの情報提供を心がけています。制度改善というよりも、明るく活気のある職場づくりのための提言を重視しています。明るく活気ある職場ができれば、自ずと制度改善は可能になると考えているからです。企業の実情をよく聞き、一つでも役立つアドバイスができるよう努めています」 高齢者雇用の相談・助言活動を行っています ◆長野支部高齢・障害者業務課の島津麻衣子課長は小林プランナーについて、「非常に目配り・気配りができる方で、同僚のプランナーのみなさんとも積極的に情報の共有と意見交換をしています。今年度の地域ワークショップでは、基調講演の講師を務め、企業の担当者の関心のあるテーマにおいて熱弁を振るってもらいました」と話します。 ◆長野支部高齢・障害者業務課は、JR 長野駅で乗り換え、しなの鉄道で一駅の北長野駅から徒歩10 分の住宅街にある、長野職業能力開発促進センター内にあります。 ◆同県では9人のプランナーが活動しており、2024年度の事業所訪問では477件の相談・助言を実施し、103件の制度改善提案を行いました。 ◆相談・助言を実施しています。お気軽にお問い合わせください。 ●長野支部高齢・障害者業務課 住所:長野県長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 電話:026-258-6001 写真のキャプション 長野県長野市 株式会社全日警サービス長野 浅妻豊代表取締役社長(写真提供:株式会社全日警サービス長野) 金融機関の駐車場で警務中の宮澤春美さん(写真提供:株式会社全日警サービス長野) マラソン大会で警務にあたる宮沢祐二さん(写真提供:株式会社全日警サービス長野) 【P40-41】 第111回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  竹内一夫さん(69歳)は、食用油関係の会社で営業や物流管理などの分野で活躍した後、現在は長年の経験を活かしてNPO法人の一員として社会貢献を目ざして働くとともに、自己研鑽(じこけんさん)に励んでいる。自分の生きがいを追求する竹内さんが、生涯現役で働くヒントを語る。 認定特定非営利活動法人 経営支援NPOクラブ 竹内(たけうち)一夫(かずお)さん 物流部門を四半世紀歩き続けて  私は東京都渋谷区(しぶやく)で産声をあげました。父はNHKのアナウンサーで、NHKの社宅で育ちました。中野(なかの)、世田谷(せたがや)と転居を重ね、中学2年生の時に町田市(まちだし)に落ち着きました。父はアナウンサーとしてニュースを読むかたわら、歌舞伎を始めとする古典芸能の番組で解説をしていました。机に向かって原稿を書いている姿が印象的でした。私はとても同じ道には進めないと考え、慶應義塾大学商学部を卒業すると同時に食用油関係の会社に就職しました。  就職がなかなか厳しい時代だったので、従業員数1000人の企業で大卒の同期はたった14人でした。入社と同時に営業の世界に足を踏み入れ、家庭用・業務用の食用油や食品原料の営業の道を歩きました。宣伝や販売管理の仕事を経て、40歳の時に物流部門に移り、65歳の定年まで物流をメインに担当したサラリーマン生活でした。最後は物流子会社に出向・転籍しましたが、一貫して同じ会社のグループで働けたことに感謝しています。物流が大きく変化する時代の到来によって、物流構造改革が求められ、改革によるコストダウンや受注・需給センターの設立などさまざまな課題に取り組んだ日々には、やりがいもありました。ふり返れば、自分にマッチした仕事だったと思います。  順風満帆という言葉が、竹内さんの職業人生にはふさわしい。もちろんさまざまな葛藤はあったはずだが、往年の慶應ボーイは、60代後半のいまでも十分にかっこいい。父と同じ道には進まなかったものの、血は争えず、竹内さんの低音ボイスはとても耳に心地よい。 中小企業について一から学んだ日々  2021(令和3)年に65歳で定年を迎えました。それから1年くらいは、いわゆる“サンデー毎日”の日々を過ごしましたが、だんだん毎日が退屈になってきました。一念発起してハローワークに出向き、いくつか仕事の紹介を受けましたが、見事にすべて不採用。少しばかりショックを受けましたが、あきらめずにハローワークに顔を出したときに、東京しごと財団が主催する「シニア中小企業サポート人材プログラム」のことを知り、応募しました。幸いなことに、2カ月間で13回の講座を受講することができました。私も含め、受講者の多くは大企業で仕事をしてきた人たちで、私たちは中小企業のマインドと会社に役立つための具体的な仕事を一から学びました。とても新鮮な時間でした。  講座の最終日に、受講者一人ひとりが、自分はどういう人間でこれからどんな仕事をしていきたいかというシートを書きました。これは「私を雇ってみませんか」というアピールなのですが、すぐに食品充填(じゅうてん)機械製造会社から声がかかりました。面談の後、採用されたのは、「総務・経理業務」という未経験の業務でした。  「シニア中小企業サポート人材プログラム」とは、大手企業などで重ねた豊富な経験とつちかってきた調整能力やコミュニケーション能力などを活かし再就職を目ざす人のために、中小企業で働く心構えや経営戦略などを総合的に学ぶプログラムだ。 経営支援NPOクラブとの出会い  人生が「おもしろいなぁ」と思えるのはいろいろな場面で縁(えん)の糸がつながっているところです。1年間の総務・経理の仕事をした後、次のステップを探っていたとき、前職での上司から中小企業のための認定特定非営利活動法人経営支援NPOクラブ(以下、「NPOクラブ」)を紹介されました。「一度遊びに来てよ」といわれて軽い気持ちで出かけてみましたが、法人の理念や方針を聞いて、私も仲間に入れてもらうことにしました。  NPOクラブは2002(平成14)年に初代理事長が20人の仲間とともに中小企業の支援を目ざして立ち上げました。企業支援だけでなく、次世代の若者支援、大きな自然災害からの復興支援などの活動を行っています。私も仲間になりたいと思ったのは、ただ社会貢献を目ざすだけではなく、新たな技術や制度に関する情報を収集し、今後の支援に役立てるために、複数の研究会を設けて自己研鑽に励もうという、この法人ならではの理念への共感でした。  NPOクラブでは、毎日決まった仕事があるわけではない。このため竹内さんは、2024年春ごろから週2回、ある工場に出入りする作業者の人たちの受付や自動車の駐車受付をする監視員の仕事をしている。「早朝7時からの勤務ですから、週2回は朝5時起きの生活です」と竹内さんは笑顔で語る。 生涯現役で社会貢献を目ざして  NPOクラブは設立当初、中小企業への支援方法についての模索からはじまりましたが、現在は地方自治体や公的支援機関などから販路開拓支援などの委託を受けています。また、商品開発・改良の助言、企画や組織運営の助言、講演や人材紹介などNPOクラブの仕事は多岐にわたります。私は「食品」と「システム、情報通信、金融、その他サービス」の二つのグループに入っており、それぞれ月に1回定例会があります。後者には物流も含まれ、私のこれまでの経験をいかんなく発揮できると自負しています。私は50代の終わりに「ロジスティクス経営士」の資格を取っており、物流会社で働いてきた経験を活かし、NPOクラブの一員として中小企業の支援に役立てればと思っています。現在、NPOクラブの会員は約260人、出身企業は200社を数え、ほとんどの業種を網羅しています。まさに「実業界の人財図書館」です。  私は現在、埼玉県内の中小企業の販路拡大の支援をしています。昨年は観光バス会社の支援を行いました。この会社は自転車をそのまま積み込む「サイクリングバス」を発案しました。中小企業はユニークなアイデアをたくさん持っていますが、それを商売に活かすルートがありませんから、ルートを切り拓く支援をしていきたいと思います。また、岡山市のアシストスーツ会社の販路拡大では、私の物流時代の人脈が活かせました。ドライバーの腰痛対策なども私が経験してきたことです。かつての経験をいまの仕事に活かせるのは、定年後の働き方として理想的ではないでしょうか。会員の平均年齢は73歳で、80代も大勢いるので、私などはまだ若手です。  長く働き続けてきて、大切にしていることは「うそをつかない」、「ごまかさない」ということです。公共放送で公平を旨として働いていた父の無言の教えであるような気もします。理念に共感したNPOクラブで先輩たちの背中を追いかけながら生涯現役を目ざしていきたい。週に1度の太極拳でリフレッシュして、自らの研鑽にも力を注ぎ、さあ、明日も朝5時起きで出かけます。 【P42-45】 高年齢者活躍企業コンテスト 新連載 受賞企業の軌跡 第1回 株式会社虎屋(とらや)本舗(ほんぽ)(広島県福山市)  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)と厚生労働省との共催で毎年開催している「高年齢者活躍企業コンテスト※」。高齢者雇用の推進に資する事例を広く募集し、優秀な事例を表彰しており、その内容は、毎年本誌で紹介しています。本連載では、かつてコンテストで厚生労働大臣表彰を受賞した企業を取材し、その後の取組みの進化・深化をレポートします。第1回は、2009(平成21)年度に特別賞を受賞した株式会社虎屋本舗を取材しました。 ダイバーシティ経営推進にともない75歳定年制を導入 1 江戸時代初期に菓子匠として創業世の中のためになる商いを継承する  広島県福山(ふくやま)市で創業400年の歴史をもつ和菓子店「株式会社虎屋本舗」(高田(たかた)海道(かいどう)代表取締役社長)は2009(平成21 )年、「平成21年度高年齢者雇用開発コンテスト」で厚生労働大臣表彰特別賞を受賞した。同社では、2008年度より定年を60歳から70歳に引き上げるとともに、高齢社員の要望をふまえた柔軟で多様な働き方を導入した。また、近代的な設備を導入することで製造工程における作業負荷を軽減したことなど、制度を改正するだけではなく、働きやすい職場環境の実現に注力し、それらが高齢社員のモチベーション向上につながったことが高く評価されての受賞であった。  同社の創業は、江戸時代初期の1620(元和(げんな)6)年。当時は「高田屋(たかたや)」という屋号の菓子匠であり、福山城築城の際に献上した和菓子が初代福山藩主の水野(みずの)勝成(かつなり)公に称賛され、同藩の御用菓子司となった。その和菓子は銘菓「とんど饅頭(まんじゅう)」として現在も継承され、福山市民に親しまれている。  1750(寛延(かんえん)3)年には、虎模様のどら焼き(現在の商品名は「虎焼(とらやき)」)をつくるようになり、屋号を「虎屋」に変更した。昭和の時代からは洋菓子製造にも取り組むようになり、和洋菓子の製造・販売事業を展開。現在、福山市を中心に直営店舗は10店舗あり、そのほか百貨店およびオンラインショップにより業績を伸ばしている。  商訓である「和魂商才(わこんしょうさい)」(同社では、「和魂」とは日本人がつちかってきたすべての知識や道徳のこと、「商才」とは、世の中のために新しいことに果敢にチャレンジしていく創造的な精神、不屈の精神のことをいう)の精神を代々受け継ぎ、伝統の技を継承しながら、時代のニーズや環境の変化をとらえて、ユニークな商品の開発やダイバーシティ経営などにも取り組んでいる。高齢社員の力を活かし、就業意欲のある人が年齢を重ねても、活き活きと働ける職場づくりを進めてきた取組みもこの精神から生まれ、育まれてきたといえるだろう。  同社のこのような取組みは、高年齢者雇用開発コンテストでの受賞をはじめ、2014年に「平成25年度ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)、2018年に「第2回ジャパンSDGsアワード、SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」(外務省)を受賞するなど各方面からも注目されている。  2025(令和7)年現在、コンテスト受賞時の2009年当時より社員数が少し増えて、役員を含め82人、60歳以上(役員3人を含む)は31人となっている。受賞時の定年年齢の70歳は、受賞から9年後の2018年に75歳に引き上げた。さらに、運用により、定年以降も働くことが可能であり、現在の最高年齢者は78歳である。ただ、60歳以上の社員が占める割合は、コンテスト受賞時の約50%に比べ、現在は約40%に低下している。その背景には、同社の事業内容や取組みに共感して応募者が増えて、ここ数年、新規学卒者が毎年入社しているからだという。現在、もっとも若い社員は19歳。10代から70代までの幅広い年代の社員がいることが同社の強みの一つになっており、業績を伸ばし成長し続けている。  高年齢者雇用開発コンテスト受賞後の同社の軌跡から、高齢者雇用の深化と社業発展の様子をみてみよう。 2 地方都市において60代は働き盛り定年を75歳に引き上げる  2008年に定年を60歳から70歳へ引き上げた背景には、60歳を間近に控えた社員から「働けるうちは働きたい」という意欲的な声や、65歳までの継続雇用制度を導入していたものの、社員の希望に配慮したといえる内容ではなかったという状況があった。  そのような課題に対して、広島県雇用開発協会(当時)の高年齢者雇用アドバイザーに相談したところ、「定年年齢を引き上げるべき」との助言を受け、制度の改定に取り組むこととなった。また、同社ではダイバーシティ経営に取り組んでおり、高齢者の知恵と技術を同社の財産であると位置づけて、高齢者雇用制度の見直しに着手。定年年齢を引き上げて、意欲と技術のある高齢者の待遇を下げることなく雇用を継続することとした。  一方で、加齢にともなう健康や安全面に配慮し、可能なところは機械化によって作業負荷を軽減するなど作業環境を改善。また、体力の衰えなどを理由にフルタイム勤務を希望しない社員もいると考え、短日・短時間勤務など社員の要望に応える働き方の導入も検討し、実現した。  これらの改善により、例えば、60歳近い職人が「定年まであと10年あるので、自分の技術を若い世代に伝えよう」と前向きになり、職場全体に活気が出たり、若手がアイデアを出し、細部の技術などはベテランが力を発揮して、「たこ焼きにしか見えないシュークリーム」など、「そっくりスイーツ」という新商品を開発して同社の人気商品が増えたりした。  このような成果をふまえて、2018年に、定年を75歳に引き上げた。同社の第17代当主として2021年より代表取締役社長を務める高田海道さんはその理由を「働いている人たちが70歳を超えても元気ですし、会社にとって必要な方々であり、まだ働いていてほしいという思いからです」と明かす。以前から高齢者の採用も行っていたが、さらに60歳以上の正社員を積極的に採用するようになり、販売や製造、出荷部門で2025年も4人を採用している。  「福山市という人口46万人ほどの地方都市においてはボリュームゾーンの年齢が上がっていて、労働力のボリュームゾーンもスライドしています。昔に比べて元気で、会社に対するコミットメントが強い方が多く、私の感覚では、60代前半は働き盛りにみえるのです。だから、働いていただく。60代から十数年働けるという選択肢として、75歳定年にしたと考えています」と高田社長は指摘する。  並行して、安全に働ける職場づくりに注力し、配達業務をになう高齢社員の安全確保のための定期的な確認や、工場内の設備を現場の声を聞いて見直し、例えば、巻き込まれ災害や転倒災害防止などについて安全設備を随時新しいものにしていく、検品は人の手によらない金属探知機を導入するなど、安全の確保や作業負荷の軽減に努めている。 3 一人ひとりにデリケートな課題があるそれぞれにどう対応するかが大事  「各地方、各業種によって人手不足はどうしても生じるとは思いますが、当社では高齢者の働きやすい職場づくりを行うことで、人材が不足しない状況ができています。地方の中小企業ならではの最適化といったものができるということを、2009年のコンテスト受賞を通して思いました」と高田社長。  また、高田社長は制度や職場環境の改善だけでなく、社員とコミュニケーションをとることを大事にしていると強調する。必要に応じて個別に面談しており、「話すことは人によってまちまちですが、売上げ目標や生産性を上げようという話はしません。社員にも家族がいるなか、年末年始の繁忙期も働いてくれています。感謝の気持ちがまずありますから、面談でもその思いを伝えます」  ときには、自分はもっと働きたいけれど体がついていかない、頭が追いつかないといった悩みを打ち明ける社員もいるという。相談を受けた後、退職した社員がいたが、しばらくして繁忙期だけ仕事を手伝ってくれるようになった。「シンプルな仕事であればできるといってきてくれました。ありがたいです。一人ひとりに異なるデリケートな課題がありますから、そこにどう対応するのがよいのかということで、葛藤することもあります」  75歳定年制を導入してから、2025年で7年になる。「生産性をそれほど追い求めないのが当社のやり方で、2人で1人分の仕事を行うという働き方にも対応しています。1人あたりの生産性は高くはないかもしれませんが、売上げは微増ながら成長しています。そういう意味では、よいかたちでここまで来ているといえるでしょうか」と高田社長。  社員と話していると、社会とつながりができる、という言葉がよく聞かれるということで、「社会との接点として、この職場で何か世の中の役に立つことができれば、という気持ちで仕事をしている人が多く、逆に私が学ぶことが多いですね。60歳以上で採用した社員も含めて、それぞれが積み重ねてきたものを提供していただいていることに、リスペクトを持って接しています」と高田社長は高齢社員との関係性を語る。 4 63歳で正社員として入社 経験を活かしつつ新たな学びも得る  同社で働く高齢社員の一人に話を聞くことができた。福田(ふくだ)時也(ときや)さん(65歳)は63歳のときに入社して2年半。洋菓子職人として、おもにケーキなどの生地を焼く作業を担当している。  「以前はパン職人でしたが定年退職しました。雇用を継続する道もあったのですが、自宅近くで働ける職場をハローワークで探して、この会社の求人を知りました。歴史ある企業なので、知っていましたし、パンと和洋菓子は別物ですが、経験を活かせる部分もあるかもしれない、自分にない技術を学んでみたいという思いで正社員を希望して応募しました。年齢的に正社員として採用されるのはむずかしいと思っていましたが、正社員で採用していただけました。うれしかったですし、がんばっていこうという意欲がわき上がりました。週5日、朝7時から16時までのフルタイム勤務を続けています。洋菓子づくりは若い社員が多くいまは私が最高齢ですが、入社当時は75歳のベテランの方がいらして、その方が退職されるまでの約8カ月間、私にていねいに教えてくださり仕事を覚えることができました。いま、仕事が楽しいです。伝統のある会社ですし、責任と誇りを胸に、体力の続くかぎり働いていたいと思っています」と福田さんはすがすがしい表情で話してくれた。 5 芯をぶれさせず、幅広い年代の社員と一緒に地域文化のにない手になる  同社では十数年前から、福山市を中心に離島を含む瀬戸内海の地域に足を運び、子どもたちに和菓子づくりを通じて郷土の文化と日本の和菓子文化などを伝える活動を実践している。学校や地域の子ども会、最近は外国人との交流機会に呼ばれることもあり、年間1000人ほどに伝承しているそうだ。  「社内で技術を伝承するだけでなく、外に向かって技術を文化としてみせていくことも大切だと考えています。当社は福山市でもっとも古い菓子屋であり、文化を商いとしていますので、地域に根ざした事業とお菓子づくりのイベントを継続し、そのなかで新しい挑戦もして文化を創り出す会社でありたいと思っています。経済活動だけでなく、学校教育の現場など求められる役割が増えてきています。高齢社員が社会とつながる場と感じてくれることも一つの役割かもしれません。芯をぶれさせず、幅広い年代がそろう社員と一緒に、地域に愛される場として看板を掲げ続けていくことがこれからの目標です」と高田社長。地域に根づいて歩む一方で、挑戦を続ける会社に魅力を感じる人は多いだろう。今後の動向も追いかけたくなる同社である。  最後に、これから高齢者雇用を推進する会社へのメッセージをお願いすると、高田社長は次のように語った。  「60代は地方の企業にとって魅力的な世代ですから、定年年齢は早いうちに引き上げたほうがよいと私は考えています。そして、社員一人ひとりとコミュニケーションをとることが大事です。そのコミュニケーションはきっと、会社にとってよりよい影響を与えてくれると思います」 ※2020(令和2)年度までの名称は「高年齢者雇用開発コンテスト」 写真のキャプション 長い歴史を誇る名店の風格が漂う、虎屋本舗の本店(写真提供:株式会社虎屋本舗) 第17代当主を務める、高田海道代表取締役社長(写真提供:株式会社虎屋本舗) 63歳で入社した、洋菓子職人の福田時也さん 【P46-49】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第90回 同一労働同一賃金と労使自治、従業員による部下の引き抜き行為の違法性 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲/弁護士 木勝瑛 Q1 社内の労働組合と合意していた内容について、社外の労働組合に加入している労働者からの訴えがあった場合、どちらが優先されるのですか  定年退職後の処遇について、社内の労働組合と協議して合意した内容で処遇しています。ところが、別の労働組合に加入している当社の労働者から同一労働同一賃金に違反する不合理な処遇であるとして、正社員と同様の処遇が求められてしまいました。労働組合と合意をしていたとしても、同一労働同一賃金に違反することになってしまうのでしょうか。 A  労働組合との協議や合意に至ったという経緯は、裁判例でも重視されており、加入していない労働者との間でも合理性が認められやすくなる傾向にあります。ただし、賃金の項目の趣旨や目的に照らした検討は個別具体的になされるため、労働組合の合意があればすべて解決するわけでもありません。 1 定年退職後の同一労働同一賃金  現在、同一労働同一賃金に関して、パート有期労働法第8条が定められています。その内容は、「基本給、賞与その他の待遇」について、@業務の内容および業務にともなう責任の程度、A職務の内容および配置の変更の範囲、Bその他の事情を考慮して、不合理な相違が禁止されています。  また、考慮事由@からBまでについては、待遇の性質および当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものが、考慮対象になるものとされています。  定年後再雇用においては、同一労働同一賃金が問題となることが多くなっています。そもそも、定年後の継続雇用においては、有期雇用が採用されていることが通常であり、さらに、当該再雇用前には正社員であったことから、正社員と有期雇用労働者の比較という場面が必ず生じるからです。  使用者としては、自社の正社員と再雇用後の有期雇用労働者について、賃金の相違を設けるにあたっては、@からBまでの考慮事由をふまえて、合理的な範囲の相違になっていることを説明できるように準備しておかなければなりません。ただし、@およびAが同一である場合には、差別的な取扱いが禁止されているため、同一の取扱いが必要になりますので、合理的な範囲で異なる取扱いを行う場合においても、少なくとも@とAのいずれかについては相違点を設けておくことが前提になります。 2 定年後再雇用者の各種賃金に関する裁判例  福岡地裁令和6年11月8日判決(JR九州事件)においては、定年後再雇用者に対する賃金等の減額が同一労働同一賃金に違反するものとして争われました。  争われた賃金の項目等を一覧にまとめると図表の通りとなります。  いずれについても、賃金等の相違が不合理ではないと判断されていますが、判決の理由などから、使用者の取組みなどを参考にしておく点があります。 (1)労働組合との協議、合意(労使自治の尊重)  この事件の使用者は、企業内の労働組合と外部ユニオン二つとの間で、定年後再雇用労働者の処遇について協議を重ねていました。なお、企業内の労働組合には従業員の9割超が在籍しています。  定年後再雇用労働者の処遇に関しては、企業内の労働組合と外部ユニオンのうち一つとの間で合意に至っており、当該合意に則した内容で賃金等の相違が設けられていました。また、期末手当Aの支給額についても各労働組合と協議を経たうえで合意に基づき決定がされています。  これらの交渉経過および結果を個々の組合員にも伝えていたことは、相違の合理性を肯定する要素として考慮されました。 (2)業務の内容等に関する相違点  業務の内容については、定年前後で大きく相違するものではなく、転勤、転職および出向を命じることができる規定は共通していたことなど、業務内容等に相違が小さいことも指摘されています。  しかしながら、高齢者用の業務負担の軽減措置をとっていたことや、転勤等については規定を用いることなく本人の同意なく転勤等を命じることがなかったという実態をふまえて、職務内容には若干の相違が生じていたことおよび配置の変更の範囲については明らかな相違が存在したと判断されています。  配置の変更の範囲については、住宅援助金のように拠点の変更をともなうことに備えた手当の合理性との関係では特に意味が大きいものとなります。 (3)定年後再雇用に共通する事情  定年後再雇用労働者は、最高約1920万円、最低1642万円の退職手当を受給して一定の資産形成を遂げていることが考慮されており、退職金の支給額が影響することを示しています。  そのほかにも高年齢者雇用継続基本給付金や一定の条件を満たせば老齢厚生年金の受給ができることも考慮されており、これらは高齢者雇用に共通することが多い事情といえるでしょう。 (4)福利厚生関係の手当について  裁判所は、福利厚生に関する手当については、「経営判断及び団体交渉等による労使自治に委ねられる部分が大きい」としました。  例えば、扶養手当については、「将来的に直面する可能性のあるライフイベントの有無や内容、過去の資産形成の機会の有無や程度等に関する正社員と嘱託再雇用社員との相違に照らすと、両者の福利厚生に一定の相違を設けることが使用者の経営判断として許容されるべき範囲を逸脱するとはいえない」とされています。  これまでの判例においても、労使間の協議や団体交渉を考慮要素にすることは示されてきましたが、ていねいな交渉の結果が影響した事例として参考になると思われます。 図表 争われた賃金の項目等 賃金の項目 性質 減額幅 結論 基本給(期末手当B) 正社員には長期就労の誘因目的がある約 65%〜74%程度 不合理ではない 期末手当A 業務への貢献程度の反映・労働意欲向上 基準額が75%〜50%とされる 不合理ではない 扶養手当 福利厚生(家族の扶養) 再雇用者には支給なし 不合理ではない 住宅援助金 福利厚生(住宅費の援助) 再雇用者には支給なし 不合理ではない ※筆者作成 Q2 多数の部下を引き抜く行為は許されるのでしょうか  会社の役員でもあった従業員が多数の部下とともに一斉に他社に転職しました。調査によれば、在職中から部下に対して勧誘を行っていたようです。このようなことが許されるのでしょうか。 A  単なる転職の勧誘を超え、社会的相当性を逸脱する方法で引き抜き行為が行われた場合には、そのような引き抜き行為は違法と評価され、不法行為が成立することになります。もっとも、従業員には職業選択の自由があるため、違法となるハードルは相当程度高く設定されています。 1 はじめに  現在、人材の流動性は高くなってきており、人材の確保・定着が喫緊の課題となっている会社も多くあります。そのようななか、複数の従業員が、突然に一斉退職した場合、会社としては、事業の執行に多大な支障を生じることが想定されます。取引先との契約の維持も困難となる場合もあるでしょう。以下では、従業員による引き抜き行為・転職勧誘行為について最新の裁判例を紹介しつつ、解説していきます。 2 役員・従業員の義務について  会社法上、役員は、会社に対して忠実義務を負っています(会社法第355条)。また、労働契約において、従業員は、「使用者の正当な利益を不当に侵害しないよう配慮する義務」(誠実義務)を負っているとされています。そのため、役員や従業員が自身の在職中にほかの従業員に対して勧誘・引き抜き行為を行うことは誠実義務違反に該当しうると考えられています。なお、幹部社員については、その影響力の強さから、より高度な誠実義務を負うものと考えられています。在職中の役員・従業員が引き抜き行為・転職勧誘行為を行った場合には、これらの義務に反するものと判断される可能性があります。 3 従業員の権利について  引き抜き行為が行われた場合、一定の状況においては、引き抜き行為の違法性が肯定されます。もっとも、違法性が認められない範囲もかなり広くあるというのが現状です。  この判断の背景にあるのは、従業員の職業選択の自由(憲法第22条1項)です。従業員はそれぞれ職業選択の自由を有しており、原則として、会社を自由に退職することができ、転職先についても自由に選択することができます。勧誘行為をすべて違法としてしまえば、職業選択の自由が実質的に保障されないことになってしまいます。 4 引き抜き行為の違法性  では、どのような場合に引き抜き行為・転職勧誘行為が違法になるのでしょうか。裁判例では、転職先での労働条件等を提示して転職を持ちかけるといった程度では違法ではないとされています(大阪地裁平成12年9月22日判決)。  他方で、単なる転職の勧誘を超えて、社会通念上の相当な範囲を逸脱した場合には、違法な転職勧誘行為・引き抜き行為として、不法行為を構成するものとされています。転職勧誘が社会通念上の相当な範囲を逸脱しているか否かは、引き抜かれた従業員の地位、人数、退職による会社への影響、転職加入の方法、態様など諸般の事情を総合して判断するとされています。 5 アジャイル事件(東京地裁令和7年1月22日判決)  従業員による引き抜き行為の違法性が問題となった最近の事件として、アジャイル事件(東京地裁令和7年1月22日判決)があります。本件は、キャラクターなどを活用した商品企画等を主たる業とする会社Xが、Xの元役員であったY1、Y2および会社Y3(Y2が代表取締役)に対し、Yらが共謀して、Xの従業員(22人)をY3に移籍させようとした引き抜き行為が、不法行為を構成すると主張して、Yらに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案です。  裁判所は、「被告Y1らは、共謀の上、本件一斉退職によって、退職従業員らを被告会社に引き抜く行為(本件引抜行為)を行った」ものであると認定したうえで、「被告Y1らが、事前に計画のうえ、被告Y1がPM本部本部長の地位にありながら、A事業(相当多額の売上を上げていた。)を担当するPM3部の22名もの従業員(部長、グループマネージャー、チームマネージャーなど、PM3部の役職者の多くが含まれていた。)に直接又は間接に働き掛けをし、本件一斉退職をしたもので、本件引抜行為は、原告の経営に重大な打撃を与えるものであったことに加え、被告Y1らが、原告在職中からA【※Xの顧客(筆者追記)】の担当者に対し、別会社がA事業を行うことにつき、原告の了承を得ているなどと事実に反する説明をし、被告Y1及び退職従業員らの原告在職中から、退職従業員らのうち複数名に被告会社のメールアドレスを割り当てるなど、不当な方法を用いたことからすれば、本件引抜行為は、社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものである」と判断しました。  そのうえで、結論としては、「被告Y1らの本件引抜行為は、原告に対する共同不法行為を構成し、また、被告Y2の行為は、被告会社の代表取締役の職務を行うにつき行った行為と認められる」と判示し、「被告Y1らは、共同不法行為(民法719条1項)に基づき、被告会社は、会社法350条に基づき、本件引抜行為により原告に生じた損害を賠償する責任を負う」として、Xの請求を一部認容しました(なお、Xが3億円以上の請求をしていたのに対し、2900万円余の範囲で損害を肯定し、請求を認めました)。  本件は、会社の元役員らが、多額の利益を上げていた重要部署における主要メンバーの多数を一斉に引き抜くものであり、その方法も不適切であったことから、引き抜き行為の違法性が認められており、妥当な判断と思われます。 【P50-51】 諸外国の高齢化と高齢者雇用 第2回 ドイツ連邦共和国、フランス共和国 独立行政法人労働政策研究・研修機構 人材開発部門 副統括研究員 藤本(ふじもと)真(まこと)  世界でもっとも高齢化が進行している国が日本であることは、読者のみなさんもご存じだと思いますが、高齢化は世界各国でも進行しており、その国の法制度に基づき、高齢者雇用や年金制度が整備されています。本連載では、全6回に分けて、各国における高齢者雇用事情を紹介します。第2回は「ドイツ連邦共和国」、「フランス共和国」です。 年金受給開始年齢とリンクする「定年」――ドイツ  ドイツ連邦共和国(以下、「ドイツ」)には、日本のように法律で定められた「法定定年年齢」は存在しません。しかし、多くの雇用契約や労働協約において、「標準年金受給開始年齢(Regelaltersgrenze)」への到達をもって雇用関係が自動的に終了する旨が規定されており、実質的な「定年」として機能しています。ドイツのように年金の受給開始年齢と定年とを紐づける体制は、ヨーロッパのほかの国々でも見られます。  ドイツの標準年金受給開始年齢は、2007(平成19)年に制定された「年金保険の財政基盤強化のための適応法」により、65歳から67歳へ引き上げられることとなりました。この受給開始年齢の引上げは2012年に開始され、2031年の完了を目ざして現在も進行中です。引上げは急激なものではなく、受給対象者の生年に基づいて厳密に計算されたスケジュール(図表)に沿って行われています。この政策の背景には、長寿化による年金受給期間の延伸から発生する恐れのある財政負担を、就労期間の延長によって相殺(そうさい)しようとするねらいがあります。標準年金受給開始年齢よりも早く受給を開始する場合は、月あたり0.3%の恒久的な年金減額が適用されます。  年金に関連する政策としては、2017年に高齢者の就労継続を促進するために「フレキシ年金法」が施行されました。この法律は年金受給開始後の高齢者の就業継続促進を目的としています。従来は年金以外の追加収入が一定以上ある場合に年金受給額の減額が行われていたのですが、この法律により減額が実施される収入の上限額が引き上げられ、2023(令和5)年には上限が撤廃されました。  一方で、2014年には当時の連立政権(キリスト教民主・社会同盟と社会民主党)によって、長期間労働市場に貢献した人々への「配慮」として、通称「63歳からの年金(Rente mit 63)」が導入されました。この年金制度を利用するためには45年間の公的年金保険料納付期間を満たす必要があり、要件を満たせば標準年金受給開始年齢に到達する前に、減額なしで年金を受給することができます。実際に63歳で受給できるのは1952(昭和27)年以前に生まれた人にかぎられており、標準年金受給開始年齢の引上げに連動して、この早期受給年齢も段階的に65歳へと引き上げられています。  ドイツにおける60〜64歳の就業率は2013年の50%から2023年には65%にまで伸び(Destatis 2024)、年金受給開始年齢の引上げが奏功したと見ることができます。ただ2024年には「63歳からの年金」の新規申請が約30万件に達し、前年から大幅に増加するなど、早期引退の傾向も未だ根強く、1950年代半ばから1960年代半ばに生まれた「ベビーブーマー世代」が労働市場から退出していくなかで、いかに労働力確保を実現していくかという課題に直面しています。また、60代後半の定年年齢を超えて働く層の多くはフルタイムではなく、非正規雇用や「ミニジョブ」と呼ばれる短時間労働に従事しているケースが多く、貧困リスクが高い状況にあります。ンス共和国(以下、「フランス」)にも、日本のような法定定年年齢は存在しません。加齢にともなう仕事からの引退においてフランスで基準となる年齢は、@「法定年金支給開始年齢(L'age legal)」である64歳、A「満額受給年齢(L'age du taux plein)」である67歳、B「雇用主による退職勧告可能年齢(Mise a la retraite d'office)」である70歳です。@は本人が希望すれば年金を受給して引退できる「最低」の年齢です。Aは保険料納付期間が不足していても、満額で年金を受給できる年齢となります。Bは雇用主が雇用者本人の同意なく一方的に退職させることができる年齢です。多くの労働者が年金受給資格を得た段階(64〜67歳)で自発的に引退を選択するため、70歳まで働くケースは稀です。  2023年、マクロン政権による大規模な年金制度改革が実施されました。この改革は、年金財政の均衡とともに、フランスに長年根づいてきた「早期引退文化」の見直しを目的としています。具体的には、法定年金受給開始年齢が、従来の62歳から、2023年9月以降、受給対象者の生年月日に応じて段階的に引き上げられ(2030年までに64歳へ引上げ)、年金を満額で受給するために必要な保険料拠出期間の延長が2027年までに実施されることとなりました(2035年から前倒し)。  また高齢者雇用を促進するための政策として、@従業員数300人超(当初は1000人超)の企業に対し、自社における高齢従業員の雇用状況や取組み(雇用維持、研修など)に関する「シニア雇用指数(Index seniors)」の公表義務づけ、A60歳以上の長期失業者を無期雇用(CDI)で雇用する企業に対し、助成金を支給する「CDIシニア(Contrat a duree indeterminee "senior")」制度の導入が実施されています。  フランスの60〜64歳層の就業率は2001年の10.8%から2023年には38.9%にまで、4倍近くに上昇しています。この推移には2023年の年金制度改革に先行する、法定年金受給開始年齢の引上げや満額年金の受給要件となる被保険者拠出期間の延長が反映されていると推測されます。ただ、フランスの60〜64歳層就業率はEU平均より約12ポイント低く、マクロン大統領が目標とする「2030年までに65%」とはまだかなりの開きがあります(JILPT 2024)。 【参考文献】 Destatis (Statistisches Bundesamt) 2024 Erwerbstatigkeit alterer Menschen JILPT(労働政策研究・研修機構)2024「高年齢者の労働力率が50年ぶりの高水準に」 図表 標準年金受給開始年齢の段階的引上げ:ドイツ 受給対象者の生年 支給開始年齢(年齢+月数) 1958年 66歳0カ月 1959年 66歳2カ月 1960年 66歳4カ月 1961年 66歳6カ月 1962年 66歳8カ月 1963年 66歳10カ月 1964年〜 67歳0カ月 出典:ドイツ年金保険(Deutsche Rentenversicherung)ホームページ 【P52-53】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第63回 「労働基準監督署」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、「労働基準監督署」について取り上げます。特に経営者や人事部門の担当者には「労基署(ろうきしょ)」や「監督署」という略称で通じるくらい、行政機関のなかでも身近な存在であるともいえます。 労働基準監督署は第一線機関※1  労働基準監督署は、労働関係法令(労働基準法・労働安全衛生法・最低賃金法等)を遵守するように監督・指導する行政機関です。これらの行政機関には最上部組織として労働関係法令の制定・改廃や各種施策の企画・立案を行う厚生労働省労働基準局があり、その下部組織として都道府県労働局という各都道府県の実情をふまえた労働行政を行う機関、その下部組織として、労働条件の確保・改善の指導、安全衛生の指導、労災保険の給付などの業務を行っている第一線機関としての労働基準監督署があるという構造になっています。これらは上部組織が下部組織を指揮・監督する関係になっており、都道府県労働局が全国47カ所に設置されているのに対して、労働基準監督署は321カ所(本稿執筆現在)で、労働基準監督署ごとに定められた管轄地域※2にある事業場(工場・事務所等)の監督・指導を受け持っています。  各労働基準監督署の業務を概観するために、その内部組織をみていきましょう。署の規模等により構成が異なる場合はありますが、労働基準法などの関係法令に関する各種届出の受付や相談対応、監督指導を行う「方面(監督課)」、労働安全衛生法などに基づき、働く人の安全と健康を確保するために、機械や設備の設置にかかる届出の審査や職場の安全、労働者の健康の確保に関する技術的な指導を行う「安全衛生課」、労働者災害補償保険法に基づき、働く人の業務上の事由、通勤による負傷などに対して被災者や遺族の請求により事業主から徴収した労災保険料をもとに保険給付を行う「労災課」、会計処理などを行う「業務課」に分かれています。 労働基準監督署には大きな権限がある  ここからは方面(監督課)のおもな業務である監督・指導について詳細をみていきます。というのも、法に定める労働条件や安全衛生等の基準を事業主が遵守し、労働条件の確保・向上と働く人の安全や健康の確保を図るために調査・指導し、改善を求める重要な役割を果たしているからです。これらの一連の行為を臨検(りんけん)監督といい、厚生労働省に属する専門職である労働基準監督官がにないます。法令違反があった場合に具体的な改善まで求める立場であるため、労働基準監督官には強い権限が付与されています。これには、会社への立ち入りを行い、帳簿書類の確認や従業員への事情聴取、重大で悪質な事案については司法警察職員※3として捜査を行うといった権限も含まれます。  次に臨検監督ですが、図表に記載のチャートが一般的な流れとなっています。労働基準監督署が毎月事業場を選定する「定期監督」と労働者からの申告に基づく「申告監督」のいずれかが起点となります。いずれの場合でも次のステップとしては労働基準監督官が事業場へ訪問し、立入調査を行います。この調査は証拠隠滅等を阻止し、事業場のありのままの現状を的確に把握するため予告なしに行うことが多くあります。その調査のなかで法令違反が認められない場合は臨検監督は終了しますが、違反が認められる場合はその状態を是正し報告することを求める是正勧告書や事業場の労働条件が定める基準や条件を満たしていない場合に改善を求める指導票、労働災害につながるおそれのある設備や機械の使用停止を求める使用停止命令書などの交付といった文書指導が行われます。これらの指導に対して、事業場が是正・改善を報告しそれらが確認された場合は臨検監督は終了しますが、確認されない場合は再度の立ち入り検査(再監督)が行われます。そのうえで、重大・悪質な事案と認定される場合は送検され、場合によっては裁判にかけられ罰金刑や拘禁刑となります。また、立入調査を拒んだり、妨げたりした場合も30万円以下の罰金が科されることがあるため注意が必要です。 違反件数、再検査や送検は減少していない  最後に数値に基づき、監督の状況や傾向について確認してみましょう。厚生労働省労働基準局が公表している「労働基準監督年報」※4を参照すると監督実施状況について、2023(令和5)年は監督対象全体で17万1679件、内訳では定期監督等81.1%、申告監督11.3%、再監督が7.6%となっています。この構成比は直近5年(2019年から2023年)でも傾向が変わりません。また、定期監督等実施状況13万9215件のうち違反事業場は9万6831件で69.6%と比率としては高い状態です。これも直近5年を確認すると違反事業場比率は7割前後で推移しています。  送検結果の状況については、2023年の送検799件に対して起訴率が34.1%で直近5年では3〜4割で推移しています。うち裁判の結果は罰金がほとんどですが、2019年、2020年ともに懲役刑が1件ずつ発生しています。  このようにみていくと、毎年15万件を超える事業場に対して臨検監督が実施されているにもかかわらず、違反件数や再監督、さらには送検件数などは、全体として減少傾向にあるとはいいがたいのが実情です。企業や事業場にいっそうの法令遵守意識の向上とルールの徹底が望まれているといえます。 ***  次回は、「インターンシップ」について取り上げます。 ※1 第一線機関……直接担当し、もっとも活動する位置にある機関 ※2 例えば東京都の場合は、管轄地域ごとに17労働基準監督署と1支署がある(本稿執筆時点) 3 司法警察職員……犯罪行為に対して捜査・逮捕・送検することができる職務の者。警察官は一般司法警察職員、労働基準監督官は労働関係法令に対する違反に権限が限定される特別司法警察職員に区分される ※4 労働基準監督年報……監督活動についての実績を毎年まとめて公表するもの 図表 臨検監督の一般的な流れ 主体的、計画的に、対象事業場を選定 労働者からの申告 労働災害の発生 事業場へ訪問 事業場への立入調査 事情聴取、帳簿の確認など 法違反が認められなかった場合 法違反などが認められた場合 文書指導 是正勧告・改善指導・使用停止命令など 事業場からの是正・改善報告 再度の立入調査の実施 是正・改善が確認された場合 重大・悪質な事案の場合 指導の終了 送検 (注1)上図は一般的な流れを示したものであり、事案により、異なる場合もあります。 (注2)事業場への監督指導は、原則として予告することなく実施しています。 出典:労働基準監督署の役割 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/131227-1.pdf 【P54-55】 BOOKS 「人的資源管理」とは? 基礎理論の解説と事例紹介、統計データから学べる入門書 人的資源管理 事例とデータで学ぶ人事制度 佐野(さの)嘉秀(よしひで)・池田(いけだ)心豪(しんごう)・松永(まつなが)伸太朗(しんたろう)著/ミネルヴァ書房/3080円  人手不足が深刻化して、企業で採用や人材の定着といった問題がより重視されるなか、経営目標達成のために行う社員のマネジメント「人的資源管理」への注目度が高まっている。  本書は、人的資源管理について基礎理論からわかりやすく解説するとともに、第3章以降は人的資源管理の各領域にスポットをあてて、例えば「社員の格付け制度」、「労働時間管理」、「人事評価」、「賃金管理」、「福利厚生」などについて、先行研究の知見をふまえつつ、詳しく説明。さらに、領域ごとに、企業の具体的な事例や統計データを示して、読み進めるうちに読者が理解を深めていく内容となっている。  最終章では、「多様な人材と就業形態の管理:人々と働き方の多様性を取り込む」をテーマにかかげて、女性や高齢の社員、外国籍の社員などの多様な人材と、派遣社員やフリーランスといった多様な働き方の人材を対象とする適切な人的資源管理について考察している。  人事労務担当者やマネジメントの初任者、人的資源管理を学びたい人の入門書としてはもちろん、高齢者雇用の推進に取り組み、人事制度などの見直しを行っている企業の経営者や担当者にも役立つ一冊となるだろう。 すぐに実践できるコミュニケーション術で、上司や部下、同僚との関係が心地よいものに ハラスメント防止と社内コミュニケーション 〜誰もが安心して働ける職場を目指して〜 波戸岡(はとおか)光太(こうた)著/日本生産性本部/2200円  ハラスメント防止のカギは、「適切なコミュニケーション術を身につけること」と著者はいう。本書は、企業の顧問弁護士として数多くのハラスメントの問題に向き合い、また、人に対応し、人の問題を解決する職業である弁護士として心理学とコミュニケーションを学んだうえ、ビジネスコーチングスキルも兼ね備える著者が、ハラスメントを防ぐための考え方や具体的なコミュニケーション術、実際の職場での対応方法をわかりやすく紹介している。  第1章では、ハラスメントとコミュニケーションの関係や、知らずにハラスメントを生んでしまうアンコンシャス・バイアスについて理解し、第2章から第4章までは、パワハラを引き起こす要因や防止するためのコミュニケーションのポイント、企業が行うべき対策などを詳解。第5章では、パタハラや時短ハラスメントなど多様化するハラスメントの事例をあげて説明し、第6章では、「パワハラ言動がやまないマネジャーにどうすれば気づいてもらえるか」といった具体的なQ&Aを多数掲載。付録では、カスハラ対策に触れている。  法律の知識にとどまらず、ハラスメント防止につながる方策が身につく良書である。 労働法を実務的な観点から学べる、人事労務担当者におすすめの判例50! START UP 労働法判例50! 大木(おおき)正俊(まさとし)・鈴木(すずき)俊晴(としはる)・植村(うえむら)新(あらた)・藤木(ふじき)貴史(たかし)著/有斐閣/2200円  企業が円滑に事業を進めるためには、社員が安心して仕事に集中できる労働環境の整備が欠かせない。そのためには、人事労務担当者をはじめ、経営者や現場の管理者が労働法を学び、理解しておくことが大切になる。ただ、労働法の範囲は多岐にわたるうえ、判断の指標がわかりづらいといったむずかしさがあり、法の解釈や適用の実態を知るには、実際の判例を通じた学習が必要とされている。  本書は、労働法を学ぶすべての人が、その内容を具体的に理解するために、もっとも重要と思われる50の判例を厳選し、一つひとつについて平易、かつていねいに解説している。特徴は、事件名、判決文・決定文、解説に加えて、判決文を読むときに意識するとよい「読み解きポイント」や、この判決文・決定文が「どんな判断をしたのか」を簡単にまとめた説明もつけていること。さらに、図や写真も多く用いるなど工夫をこらしたページ構成で、50の判例の意義や内容を効率よく学習することができる。  取りあげている50の判例は、人格権の尊重、退職金、通勤災害、就業規則変更への同意、高齢者雇用など幅広い。判例から実務で使える知識を得たい人事労務担当者におすすめしたい。 日ごろの業務の幅を広げるための知識、知見が得られる中身の濃い入門書 コーポレートガバナンス入門 太田(おおた)洋(よう)著/岩波書店(岩波新書)/1166円  「コーポレートガバナンス」は、企業の不祥事を伝えるニュースでよく耳にするようになった言葉だが、その意味や、いま重要視されている理由を熟知している人は多くはないようだ。  著者は、コーポレートガバナンスについて、「その具体的な意味内容や目的に関する考え方自体が、時代に応じて絶えず揺れ動いている」としたうえで、本書では、この概念はどのように生まれたのか、各国でどのような規律が行われているかなどを概説しながら、「良い」コーポレートガバナンスは何をもたらすのか、そのような「良い」コーポレートガバナンスを実現するためにはどのようにすべきかなどを説き、ビジネスに必須の知識を提供している。  著者の太田氏は、コーポレートガバナンスやM&Aを専門とする弁護士で、日本経済新聞「2024年に活躍した弁護士ランキング」企業法務全般(会社法)分野総合第1位になるなどの人気弁護士として知られる。本書の内容は実務家としての立場から、現在のコーポレートガバナンスの諸問題を説いたという。  企業の経営者や人事労務担当者にとって、日ごろの業務の幅を広げるために役立つ知識、知見が得られる中身の濃い好著である。 晴れやかな気持ちになり仕事への活力が湧いてくる!あのベストセラーが復刊!! 仕事は楽しいかね?[新版] デイル・ドーテン著/野津(のづ)智子(ともこ)訳/英治(えいじ)出版/1980円  本書は、2001(平成13)年に発行されて以来、多くの人に親しまれてきた一冊。出版社の事情で絶版となっていたが、続編の『職場は楽しいかね?』とともに復刊された新版である。著者が加筆修正した原稿に基づき、内容にも改訂が加えられたうえ、挿絵の追加や、仕事に役立つツールも掲載された。  本書の魅力の一つは、主人公の「私」がまるで自分のように感じられて、ぐいぐい引きこまれること。読み終えるころには、主人公のように晴れやかな気持ちになり、活力が湧いてくる。  話は、深夜の空港で吹雪によって足止めされた主人公が、老人マックスと出会い、「仕事は楽しいかね?」と問いかけられることにはじまる。一生懸命働いているのに出世できない不満や会社を興したもののうまくいかなかったこと、将来への不安をぶちまける主人公。そして、老人から語られる仕事や人生にかかわる言葉と数々の事例が、ひと晩かぎりの講義のように、読者の心の扉を開き、動かしていく。「明日は今日と違う自分になる」、「違うものがよりよいとは限らない。だが、よりよいものは必ず違っている」……。老人の言葉を胸に刻んだ主人公は、昨日とは違う自分になったことを実感して歩き出す。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P56-57】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 「中高年の活躍支援」特設サイトをオープン  厚生労働省は2025(令和7)年10月、これまでの「就職氷河期世代活躍支援」特設サイトを、「中高年の活躍支援」特設サイトとしてリニューアルオープンした。バブル崩壊後の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った就職氷河期世代が50代半ばに差しかかっていることをふまえ、支援対象を中高年に広げた。  新サイトでは、具体的な不安や悩みに関する支援施策や各種相談窓口を案内するコンテンツや、安心感を持って気軽に相談窓口を利用してもらえるよう、支援事例や支援者のメッセージを集約したコンテンツなどを公開。また、家族向けの相談等の支援や、事業主向けに中高年層を採用する場合等に活用できる助成金の案内もしている。  具体的には、「経済面で将来に不安のある人」、「社会とのつながりに不安を抱える人」、「家計の状況や家族介護に不安を抱える人」に向けて、それぞれに対応した支援制度や給付金、窓口などを紹介。すぐに働きたい人をサポートする「ハローワーク」、働くための準備がしたい「地域若者サポートステーション」、生活のサポートを受けながらじっくり働く準備などができる支援機関なども案内しているほか、支援を受けて社会へ踏み出した人たちと支援者たちの想いなども紹介している。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_63838.html ◆「中高年の活躍支援」特設サイト https://www.mhlw.go.jp/shushoku_hyogaki_shien/ 厚生労働省 長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果を公表  厚生労働省は、2024(令和6)年度に実施した長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果を公表した。それによると、監督指導を行った事業場の42.4%に違法な時間外・休日労働が認められた。  この監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1カ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等にかかる労災請求が行われた事業場を対象としている。  結果をみると、監督指導を行った2万6512事業場のうち、2万1495事業場(全体の81.1%)で労働基準関係法令違反が認められた。おもな違反は、違法な時間外・休日労働があったものが1万1230事業場(全体の42.4%)、賃金不払残業があったものが2118事業場(同8.0%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが5691事業場(同21.5%)となっている。  違法な時間外・休日労働があった1万1230事業場のうち、時間外・休日労働(法定労働時間を超える労働および法定休日の労働)の実績が最も長い労働者の時間数が1カ月あたり80時間を超えるものが5464事業場(48.7%)、同100時間を超えるものが3191事業場(28.4%)、同150時間を超えるものが653事業場(5.8%)、同200時間を超えるものが124事業場(1.1%)となっている。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59983.html スポーツ庁 「令和6年度体力・運動能力調査」結果を公表  スポーツ庁は、2024(令和6)年度の「体力・運動能力調査」の結果を公表した。  調査は、同年5月から10月に実施し、「6〜79歳」の男女5万9444人(回収率80.1%)から回答を得た。  調査結果のうち、高齢者(65〜79歳)における体力・運動能力のテスト(握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行)について、1998(平成10)年ごろと2024年度を比較すると、男性では、長座体前屈以外の項目でいずれの年代でも2024年度のほうが高い結果となっている。女性では、すべての項目でいずれの年代でも2024年度のほうが高い結果となっている。合計点については、男女ともいずれの年代でも2024年度のほうが高い結果となっている。最近10年間の合計点は、いずれの年代でも男女ともに横ばいである。  次に調査結果の分析から、1998年度〜2024年度までの27回分のデータを基にした、55〜59歳、75〜79歳における体力・運動能力の総合評価A〜E(Aが最も高い5段階評価)の推移をみると、C以上の高水準の割合は、55〜59歳では男女とも70%台前半から80%台前半へ向上している。内訳をみると、AとBの割合が向上している。75〜79歳では、男女とも70%台前半から90%台程度へ向上している。内訳をみると、男女ともにAとBの割合が向上し、Dの割合が低下している。 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1421920_00012.htm 当機構(JEED)から 「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催  JEEDでは「高年齢者雇用支援月間」である10月、各都道府県支部が中心となって「生涯現役社会の実現に向けた地域ワークショップ」を開催した。このワークショップは、高齢者雇用に関心のある事業主や人事担当者を対象に、労働局からの制度説明、専門家による基調講演、ならびに高齢者雇用に先進的な企業の事例発表で構成され、各地域の実情をふまえた実践的な情報を提供している。  今回は2025(令和7)年10月10日(金)にJEED埼玉支部が主催した地域ワークショップ「高年齢者雇用管理セミナー202570歳就業時代がやってくる!」の模様をレポートする。  開会のあいさつに続き、厚生労働省埼玉労働局職業安定部職業対策課の岩田(いわた)宏之(ひろゆき)高齢者対策担当官が「高年齢者雇用安定法について」と題して報告。改正高年齢者雇用安定法のポイントとして、65歳までの雇用確保措置が義務、70歳までの就業機会確保が努力義務となっていることを説明するとともに、直近の高齢者雇用状況報告の集計結果を示しながら、企業における取組み状況を解説し、JEEDの65歳超雇用推進助成金や70歳雇用推進プランナーによる支援制度の活用を呼びかけた。  続いて、70歳雇用推進プランナーの梅津(うめづ)充幸(みつゆき)氏が登壇し、「高齢者戦力化に資する従業員満足(ES)を高める健康経営とは」をテーマに講演。顧客満足を実現させる当事者は従業員であり、従業員満足が高くなければ顧客に真の満足を与えることができないとしたうえで、健康経営の実践が生産性の向上や企業価値の向上につながると説明した。特に高齢者の健康管理については、「健康診断の受診だけでなく、事後フォローが重要。精密検査が必要な従業員を確実に医療機関につなげることが健康管理の本質である」とアドバイスを送った。  続いて企業の事例発表が行われ、令和6年度高年齢者活躍企業コンテスト厚生労働大臣表彰特別賞を受賞した、株式会社ヤオコービジネスサービスの松浦(まつうら)伸一(しんいち)代表取締役社長が登壇。同社は埼玉県を地盤とするスーパーマーケット「ヤオコー」の子会社として、店舗の警備業務や施設管理をになっている。「定年年齢を70歳に引き上げ、その後も1年ごとの有期雇用契約で継続雇用できる制度を整備した。また、無期雇用転換を法定の5年ではなく2年に短縮することで、高齢者が安心して長く働ける環境を実現している」と述べ、さらに「人事考課制度により年齢にかかわらず昇給・昇格の機会を提供し、資格取得を奨励することで、高齢社員のモチベーション向上と専門性の向上を両立させている」と取組みの成果を示した。また、シフト管理の自動化ツールなどの導入により、高齢者一人ひとりの希望に柔軟に対応できる体制を構築していることを紹介した。  休憩をはさんで、千葉経済大学経済学部の藤波(ふじなみ)美帆(みほ)教授が「人事管理から見たシニア社員の戦力化へのアプローチ」と題して基調講演を実施した。まず、日本における高齢者雇用の歴史をふり返り、1980年代の60歳定年努力義務化以降、人口構成と労働力構成に合わせて制度が変化してきた経緯を説明。現在、シニア雇用は「やるべきこと」であり、企業は覚悟を持って取り組む必要があると強調した。そこで高齢者の活用範囲と活用程度によって、企業の取組みを分類し、「60代前半層は強い活用、後半層は弱い活用というステップを踏みながら、最終的には年齢で区切らない統合型の人事管理を目ざすことが望ましい」と指摘した。シニア社員のキャリアマネジメントにおいては「役割転換の明確化、定期的なコミュニケーション、評価制度の整備が不可欠」とアドバイスを送った。特に、中高年期の45歳ごろから将来の役割について話し合う機会を設けること、人事部門に相談窓口を設置し、上司と部下の関係だけでは解決しきれない問題をサポートする体制づくりの重要性を強調した。  最後に、公益財団法人産業雇用安定センター埼玉事務所の池本(いけもと)英生(ひでお)統括参与が登壇し、キャリア人材バンクの概要を説明。経験豊富な60歳以上の人材と企業をマッチングする無料サービスを紹介し、高齢人材の再就職支援について説明した。  JEEDによる助成金の紹介もあり、参加者は熱心に耳を傾けていた。参加した各社が取組みに活かせるヒントを得る有意義なセミナーとなった。 写真のキャプション JEED埼玉支部地域ワークショップ当日の様子 【P58-59】 令和8年度 高年齢者活躍企業コンテスト  高年齢者活躍企業コンテストでは、高年齢者が長い職業人生の中でつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業等が行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業等における雇用・就業機会の確保等の環境整備を図り、生涯現役社会の実現に向けた気運を醸成することを目的としています。  高年齢者がいきいきと働くことができる創意工夫の事例について、多数のご応募をお待ちしています。 T 募集内容 募集する創意工夫の事例の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 取組内容 内容(例示) 高年齢者の活躍のための制度面の改善 @定年制の廃止、定年年齢の延長、65歳を超える継続雇用制度(特殊関係事業主に加え、他の事業主によるものを含む)の導入 A創業支援等措置(70歳以上までの業務委託・社会貢献)の導入(※1) B賃金制度の見直し C人事評価制度の導入や見直し D多様な勤務形態、短時間勤務制度の導入 等 高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 @中高年齢者を対象とした教育訓練、リスキリングの取組、全世代で自律的にキャリア形成を進めていくための(キャリアの棚卸しなどの)キャリア教育の実施 A高年齢者のモチベーション向上に向けた取組や高年齢者の役割等の明確化(役割・仕事・責任の明確化) B高年齢者が活躍できる職場風土の改善、従業員の意識改革、職場コミュニケーションの推進 C高年齢者による技術・技能継承の仕組み(技術指導者の選任、マイスター制度、技術・技能のマニュアル化、若手社員や外国人技能実習生、障害者等とのペア就労や高年齢者によるメンター制度等、高年齢者の効果的な活用等) D高年齢者が働きやすい支援の仕組み(職場のIT化、DXを進めていく上での高年齢者への配慮、力仕事・危険業務からの業務転換) E新職場の創設・職務の開発 等 高年齢者が働き続けられるための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 @作業環境や作業の改善(高年齢者向け設備の改善、作業姿勢の改善、休憩室の設置、創業支援等措置対象者への作業機器の貸出等) A従業員の高齢化に伴う健康管理・メンタルヘルス対策の強化(健康管理体制の整備、定期健康診断やストレスチェックの実施と結果に基づく就業上の措置、体力づくり、加齢に伴い増加する病気の予防教育や健診・検診、女性の健康課題も含めた健康管理上の工夫・配慮、若い世代からの健康教育等) B従業員の高齢化に伴う安全衛生の取組(安全衛生を進めるための体制整備、危険防止の措置、安全衛生教育) C福利厚生の充実(レクリエーション活動、生涯生活設計に関する専門家への相談) 等 ※1「創業支援等措置」とは、以下の@・Aを指します。 @70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 A70歳まで継続的に、「a.事業主が自ら実施する社会貢献事業」または「b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業」に従事できる制度の導入 U 応募方法 1.応募書類等 (1)指定の応募様式に記入していただき、写真・図・イラスト等、改善等の内容を具体的に示す参考資料を添付してください。また、定年制度、継続雇用制度及び創業支援等措置並びに退職事由及び解雇事由について定めている就業規則等の該当箇所の写しを添付してください(該当箇所に、引用されている他の条文がある場合は、その条文の写しも併せて添付してください)。なお、必要に応じてJEEDから追加書類の提出依頼を行うことがあります。 (2)応募様式は、JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課(※2)にて、紙媒体または電子媒体により配付します。また、JEED のホームページ(※3)からも入手できます。 (3)応募書類等は返却いたしません。 (4)提出された応募書類の内容に係る著作権及び使用権は、厚生労働省及びJEEDに帰属することとします。 2.応募締切日 令和8年2月27日(金)当日消印有効 3.応募先 JEED各都道府県支部高齢・障害者業務課(※2)へ郵送(当日消印有効)または連絡のうえ電子データにて提出してください。 ※2 応募先は本誌65ページをご参照ください ※3 URL:https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html ホームページはこちら V 応募資格 1.原則として、企業からの応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。また、就業規則を定めている企業に限ります。 2.応募時点において、次の労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 (1)高年齢者雇用安定法第8条又は第9条第1項の規定に違反していないこと。 (2)令和5年4月1日〜令和7年9月30日の間に、労働基準関係法令違反の疑いで送検され、公表されていないこと。 (3)令和5年4月1日〜令和7年9月30日の間に「違法な長時間労働や過労死等が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長等による指導の実施及び企業名の公表について」(平成29年1月20日付け基発0120第1号)及び「裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業の経営トップに対する都道府県労働局長による指導の実施及び企業名の公表について」(平成31年1月25日付け基発0125第1号)に基づき公表されていないこと。 (4)令和7年4月以降、職業安定法、労働者派遣法、男女雇用機会均等法、女性活躍推進法、労働施策総合推進法、育児・介護休業法、パートタイム・有期雇用労働法等の労働関係法令に基づく勧告又は改善命令等の行政処分等を受けていないこと。 (5)令和7年の障害者雇用状況報告書において、法定雇用率を達成していること。 (6)令和7年4月以降、労働保険料の未納がないこと。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度等を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる職場環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 W 審査  学識経験者等から構成される審査委員会を設置し、審査します。  なお、応募を行った企業等または取組等の内容について、労働関係法令上または社会通念上、事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される問題(厚生労働大臣が定める「高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針」等に照らして事例の普及及び表彰にふさわしくないと判断される内容等)が確認された場合は、この点を考慮した審査を行うものとします。 X 賞(※4) 厚生労働大臣表彰 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 クリエイティブ賞 若干編 ※4 上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数等が決定されます。 Y 審査結果発表等  令和8年9月中旬をめどに、厚生労働省およびJEED において各報道機関等へ発表するとともに、入賞企業等には、各表彰区分に応じ、厚生労働省またはJEEDより直接通知します。  また、入賞企業の取組事例は、厚生労働省およびJEED の啓発活動を通じて広く紹介させていただくほか、新聞(全国紙)の全面広告、本誌およびホームページなどに掲載します。 みなさまからのご応募をお待ちしています 過去の入賞企業事例を公開中! ぜひご覧ください! 「高年齢者活躍企業事例サイト」 JEEDが収集した高年齢者の雇用事例をインターネット上で簡単に検索できるWeb サイトです。「高年齢者活躍企業コンテスト表彰事例(『エルダー』掲載記事)」、「雇用事例集」などの、最新の企業事例情報を検索することができます。今後も、JEEDが提供する最新の企業事例情報を随時公開します。 高年齢者活躍企業事例サイト 検索 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) JEEDでは厚生労働省と連携のうえ、企業における「年齢にかかわりなく生涯現役でいきいきと働くことのできる」雇用事例を普及啓発し、高年齢者雇用を支援することで、生涯現役社会の実現に向けた取組みを推進していきます。 【P60】 次号予告 2月号 特集 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートT〜 リーダーズトーク 吉村芳弘さん(熊本リハビリテーション病院 サルコペニア・低栄養研究センター長) 読者アンケートにご協力をお願いします! よりよい誌面づくりのため、みなさまの声をお聞かせください。 回答はこちらから 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.html であることを確認のうえアクセスしてください。 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_elder 編集後記 ●新年あけましておめでとうございます。本年も読者のみなさまのお役に立てるような情報発信に努めてまいります。引き続きご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。 ●今号の特集は、「年金入門」と題し、2025年に行われた年金改革の内容を中心にお届けしました。公的年金は、高齢で働けなくなったあとの生活を保障するためのものであり、あくまでも“退職後”のお金ではあるわけですが、生涯現役時代を迎え、さまざまな形で高齢者の就業が増えていくことが見込まれるなかで、加入対象の拡大や在職老齢年金の見直しなど、人事担当者としてもおさえておきたい内容も少なくありません。  なにより、老後の資産形成の重要性が増す現在においては、年金について従業員が正しく理解し、自分が退職したあとの生活について考えるための金融リテラシーが重要となります。  本企画が、従業員の年金知識、金融リテラシーの向上に資すれば幸いです。 ●新春特別企画として、2025年10月3日に開催された「高年齢者活躍企業フォーラム」から、基調講演、トークセッションの内容をお届けしました。YouTubeの「JEED CHANNEL」にてアーカイブ配信を行っていますので、興味のある方はぜひご覧ください。 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000 字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 月刊エルダー1月号 No.554 ●発行日−−令和8年1月1日(第48巻 第1号 通巻554号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261‐8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL 043(213)6200 (企画部情報公開広報課) FAX 043(213)6556 ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170‐0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL 03(3915)6401 FAX 03(3918)8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 【P61-63】 技を支える vol.359 表も裏も美しい独自の両面立体刺しゅう 立体刺しゅう作家 北井(きたい)小夜子(さよこ)さん(68歳) 「一針の集中がとても大事です。時間をかけて“120%”を目ざすことで、見たことのない作品を生み出すことが可能になります」 黄綬褒章(おうじゅほうしょう)受章を記念してつくった「黄綬蝶」  黄綬褒章の両脇で輝きを放つ2匹の蝶(写真上)。プラチナ糸と本金糸(ほんきんし)で刺しゅうされており、羽にはダイヤモンドがあしらわれている。羽は本物のように開閉することができ、裏側も表と変わらない美しさを保っている。  この作品「黄綬蝶」を制作したのは、「立体刺繍Sayoko」の北井小夜子さん。独学で30年以上かけて築き上げた唯一無二の技である「両面立体刺しゅう」が国に認められ、2024(令和6)年度の卓越した技能者「現代の名工」に選出。さらに2025年には黄綬褒章を受章した。「黄綬蝶」はそれを記念してつくられた。 試行錯誤を重ね ほかにない刺しゅうを実現  北井さんは趣味で刺しゅうを始め楽しんでいた。転機となったのは1991(平成3)年の毎日新聞社主催の「全国刺繍コンクール」。出品作は窓辺に止まる小鳥やパンジーの鉢植え、室内の家具類などを立体で表現した意欲作で、最優秀賞を受賞した。  「だれにも習ったことがないので、つくりたいと思うものをどうすれば形にできるかを考えて、試行錯誤しながら形にしてきました」  そんな北井さんには、以前から気になっていることがあった。  「普通の刺しゅうは、表はきれいでも裏はきれいではありません。それを自分のなかでどうにかしたいとずっと思っていました」  それから何年も研究を重ねて両面立体刺しゅうの技法を確立した。一般的な刺しゅうでは、「二本取り」、「三本取り」といわれる、数本の糸を一度に刺していくやり方が主流だが、北井さんは一度に一本しか通さない「一本取り」で刺しゅうする。その分、時間はかかるが繊細さを表現できる。  「針を布に対してまっすぐ刺し、裏側を指でしっかり押さえて、まっすぐ引き上げ、糸がとまったらそれ以上引かないという刺し方を基本とし、この動きをひと針ずつくり返しながら、表を刺すのと同時に裏側も表と同じように刺していく独自の『両面刺しゅう』を行い、両面を同じようにきれいに仕上げることができます」  この技法は糸にも生地にも負担をかけないため、毛羽立(けばだ)ちにくくゆがみもなく、洗濯してもほつれないほど丈夫だという。  刺しゅうする糸は、綿の刺しゅう糸よりも細くすべりやすいレーヨンの糸をはじめ、硬いプラチナ糸や本金糸、さらにラメ糸などを組み合わせ、糸によって引く加減を調整しながら刺すことで、光沢のある刺しゅうを実現。さらに「ぐし縫い」という独自の技法で繊細なグラデーションも表現する。  「すべて自分で考えながらつくっているので、失敗も多いです。でも失敗を重ねてきたことで、ほかのだれにもできない作品をつくれるようになりました」 病と30年つき合いながら刺しゅうに向き合ってきた  2018年に集大成として展示会を開いたところ、作品に感銘を受けたブライダルファッションデザイナーの桂(かつら)由美(ゆみ)氏から声がかかり、翌年のパリコレクションのウェディングドレスに作品を提供した。また、北井さんの作品は海外のデザインコンペでも受賞し、ジュエリーやインテリアとしても世界的に高く評価されている。  北井さんは30年間リウマチを患いながら刺しゅうを続けてきた。痛みで針に糸を通すことすらできない日もあるが、「刺しゅうに集中していると痛みを忘れる」という。  「刺しゅうだけが楽しみ。もし、病気をしていなければ、ここまで来ることはできなかったでしょう」  現在は生徒の一人が後継者に育ち、技術の継承を進めている。また、両面立体刺しゅうを一人でも多くの人に知ってほしいと、自らSNSなどを活用した情報発信にも力を入れている。  つくりたいもののイメージを思い描きながら、一針一針に心を込める。長年にわたるその姿勢が、だれも見たことのない美しさを生み出している。 立体刺繍Sayoko TEL:090(3539)4630 https://www.rittai-shisyuu.net (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) 写真のキャプション 光沢のある糸を使い分け、ていねいな刺しゅうで、繊細で美しい作品をつくりあげる。背後のタペストリーのフクロウや木の枝も、立体刺しゅうで表現したもの プラチナ糸、本金糸(24 金)、カラー金糸、ラメ糸などを使い分け、糸を引く加減を調整しながら、繊細な刺しゅうを実現する 鳥は、羽を一枚ずつ刺して立体に組み立てている。この作品を桂由美氏が気に入り、パリコレクションに参加することにつながった 森英恵(はなえ)氏が立ち上げたNDKファッションショーに出品した、刺しゅうの蝶をあしらった白無垢(しろむく)のドレス(右)。左は留めそでをリメイクしたドレス 色が徐々に変化するように刺しゅうする独自の手法「ぐし縫い」。自然なグラデーションを表現できる スケルトンのステッキのなかに、花に止まる蝶の刺しゅうを施した作品。黄綬褒章の授賞式にも持参した。「高齢の方も普通の杖には抵抗があるもの。こんな杖でおしゃれを楽しんでほしい」との思いで制作した 左右対称かつ複雑な模様を持つオオムラサキは、北井さんの作品のなかでももっともむずかしいものの一つ。左右対称になるように刺しゅうをすることは、難易度がかなり高いという 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  アナグラムのおもしろさは、できる直前の「ひらめき感」と、答えが正解だったときの「達成感」です。前者は「脳の中で何かがつながった感じ」のことで、「実際に先が見えた、ひらめき感」によって脳のさまざまな部位が一気に活性化します。同時に「できた予感」が脳内報酬系(ドーパミン神経系)を活性化して、答えが正解ならば、この報酬系がさらに活性化します。このように、ドーパミンの放出が記憶効率を高め、スキルアップを早めます。 目標 3分 第103回 ことわざアナグラム バラバラに並んだ文字は、並び替えると“ことわざ”になります。文字を正しく並び替えてください。 @ ねりにたふわ ヒント:自分にとってよい状況になること 答え A もみあとのもく ヒント:よくなったものがまた悪くなること 答え Bっかぼみずう ヒント:ものごとに対して長続きせずに飽きてしまう 答え Cからびさでたみ ヒント:自分の行いが原因で苦しんだりする 答え D ぶこねをかる ヒント:本性を隠して大人しそうに見せている 答え E びうひぼまんなし ヒント:生活のために忙しくて遊ぶ暇もない 答え アナグラムで脳を活性化! 言葉遊びが脳を鍛える  アナグラムなどの言葉系クイズを解くと、前頭前野(ぜんとうぜんや)のほか、言葉を読む機能にかかわる角かく回かい、言葉を聞く中枢(ちゅうすう)であるウェルニッケ野(聴覚性言語野)、文法の理解や言葉を発するのにかかわるブローカ野などの活動を高めます。これらの領域は、いずれも言語理解や創造的思考にかかわる重要な部位であり、アナグラムを解く過程で活発に働きます。  アナグラムは古くから親しまれている言葉遊びで、単語の文字を入れ替えて別の言葉をつくるというシンプルなルールながら、語彙力や発想力、そして柔軟な思考を養うことができます。例えば「しんぶんし」のように、逆から読んでも同じように読める“回文(かいぶん)”も似た系統の遊びであり、日本語特有の美しさとリズム感を感じさせます。  今回は問題として出題しましたが、自分でアナグラムの問題をつくることをおすすめします。お題の言葉から、どんな新しい意味やユーモアを生み出せるかを考える過程こそが、脳を刺激する最高のトレーニングです。気軽に楽しみながら、言葉の奥深さと脳の可能性を広げてみてください。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。人システム研究所所長、公立諏訪東京理科大学特任教授。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 @渡(わた)りに船(ふね) A元(もと)の木阿弥(もくあみ) B三日坊主(みっかぼうず) C身(み)から出(で)た錆(さび) D猫(ねこ)を被(かぶ)る E貧乏(びんぼう)暇(ひま)なし 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧 JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2026年1月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 令和8年度 高年齢者活躍企業コンテスト 〜生涯現役社会の実現に向けて〜 ご応募お待ちしています 高年齢者がいきいきと働くことのできる創意工夫の事例を募集します 主催 厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)  高年齢者活躍企業コンテストでは、高年齢者が長い職業人生の中でつちかってきた知識や経験を職場等で有効に活かすため、企業等が行った創意工夫の事例を広く募集・収集し、優秀事例について表彰を行っています。  優秀企業等の改善事例と実際に働く高年齢者の働き方を社会に広く周知することにより、企業等における雇用・就業機会の確保等の環境整備を図り、生涯現役社会の実現に向けた気運を醸成することを目的としています。  高年齢者がいきいきと働くことができる創意工夫の事例について多数のご応募をお待ちしております。 取組内容 募集する創意工夫の事例の具体的な例示として、以下の取組内容を参考にしてください。 1.高年齢者の活躍のための制度面の改善 2.高年齢者の意欲・能力の維持向上のための取組 3.高年齢者が働きつづけられるための作業環境や作業の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組 主な応募資格 1.原則として、企業単位の応募とします。グループ企業単位での応募は不可とします。また、就業規則を定めている企業に限ります。 2.応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこととします。 3.高年齢者が65歳以上になっても働ける制度等を導入し、高年齢者が持つ知識や経験を十分に活かして、いきいきと働くことができる環境となる創意工夫がなされていることとします。 4.応募時点前の各応募企業等における事業年度において、平均した1カ月あたりの時間外労働時間が60時間以上である労働者がいないこととします。 各賞 【厚生労働大臣表彰】 最優秀賞 1編 優秀賞 2編 特別賞 3編 【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長表彰】 優秀賞 若干編 特別賞 若干編 クリエイティブ賞 若干編 ※上記は予定であり、各審査を経て入賞の有無・入賞編数などが決定されます。 応募締切日 令和8年2月27日(金) お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 各都道府県支部 高齢・障害者業務課 ※連絡先は65ページをご覧ください。 ※詳細は本誌58ページ、またはJEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/activity/activity02.html 2026 1 令和8年1月1日発行(毎月1回1日発行)第48巻第1号通巻554号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈編集委託〉株式会社労働調査会