BOOKS 「人的資源管理」とは? 基礎理論の解説と事例紹介、統計データから学べる入門書 人的資源管理 事例とデータで学ぶ人事制度 佐野(さの)嘉秀(よしひで)・池田(いけだ)心豪(しんごう)・松永(まつなが)伸太朗(しんたろう)著/ミネルヴァ書房/3080円  人手不足が深刻化して、企業で採用や人材の定着といった問題がより重視されるなか、経営目標達成のために行う社員のマネジメント「人的資源管理」への注目度が高まっている。  本書は、人的資源管理について基礎理論からわかりやすく解説するとともに、第3章以降は人的資源管理の各領域にスポットをあてて、例えば「社員の格付け制度」、「労働時間管理」、「人事評価」、「賃金管理」、「福利厚生」などについて、先行研究の知見をふまえつつ、詳しく説明。さらに、領域ごとに、企業の具体的な事例や統計データを示して、読み進めるうちに読者が理解を深めていく内容となっている。  最終章では、「多様な人材と就業形態の管理:人々と働き方の多様性を取り込む」をテーマにかかげて、女性や高齢の社員、外国籍の社員などの多様な人材と、派遣社員やフリーランスといった多様な働き方の人材を対象とする適切な人的資源管理について考察している。  人事労務担当者やマネジメントの初任者、人的資源管理を学びたい人の入門書としてはもちろん、高齢者雇用の推進に取り組み、人事制度などの見直しを行っている企業の経営者や担当者にも役立つ一冊となるだろう。 すぐに実践できるコミュニケーション術で、上司や部下、同僚との関係が心地よいものに ハラスメント防止と社内コミュニケーション 〜誰もが安心して働ける職場を目指して〜 波戸岡(はとおか)光太(こうた)著/日本生産性本部/2200円  ハラスメント防止のカギは、「適切なコミュニケーション術を身につけること」と著者はいう。本書は、企業の顧問弁護士として数多くのハラスメントの問題に向き合い、また、人に対応し、人の問題を解決する職業である弁護士として心理学とコミュニケーションを学んだうえ、ビジネスコーチングスキルも兼ね備える著者が、ハラスメントを防ぐための考え方や具体的なコミュニケーション術、実際の職場での対応方法をわかりやすく紹介している。  第1章では、ハラスメントとコミュニケーションの関係や、知らずにハラスメントを生んでしまうアンコンシャス・バイアスについて理解し、第2章から第4章までは、パワハラを引き起こす要因や防止するためのコミュニケーションのポイント、企業が行うべき対策などを詳解。第5章では、パタハラや時短ハラスメントなど多様化するハラスメントの事例をあげて説明し、第6章では、「パワハラ言動がやまないマネジャーにどうすれば気づいてもらえるか」といった具体的なQ&Aを多数掲載。付録では、カスハラ対策に触れている。  法律の知識にとどまらず、ハラスメント防止につながる方策が身につく良書である。 労働法を実務的な観点から学べる、人事労務担当者におすすめの判例50! START UP 労働法判例50! 大木(おおき)正俊(まさとし)・鈴木(すずき)俊晴(としはる)・植村(うえむら)新(あらた)・藤木(ふじき)貴史(たかし)著/有斐閣/2200円  企業が円滑に事業を進めるためには、社員が安心して仕事に集中できる労働環境の整備が欠かせない。そのためには、人事労務担当者をはじめ、経営者や現場の管理者が労働法を学び、理解しておくことが大切になる。ただ、労働法の範囲は多岐にわたるうえ、判断の指標がわかりづらいといったむずかしさがあり、法の解釈や適用の実態を知るには、実際の判例を通じた学習が必要とされている。  本書は、労働法を学ぶすべての人が、その内容を具体的に理解するために、もっとも重要と思われる50の判例を厳選し、一つひとつについて平易、かつていねいに解説している。特徴は、事件名、判決文・決定文、解説に加えて、判決文を読むときに意識するとよい「読み解きポイント」や、この判決文・決定文が「どんな判断をしたのか」を簡単にまとめた説明もつけていること。さらに、図や写真も多く用いるなど工夫をこらしたページ構成で、50の判例の意義や内容を効率よく学習することができる。  取りあげている50の判例は、人格権の尊重、退職金、通勤災害、就業規則変更への同意、高齢者雇用など幅広い。判例から実務で使える知識を得たい人事労務担当者におすすめしたい。 日ごろの業務の幅を広げるための知識、知見が得られる中身の濃い入門書 コーポレートガバナンス入門 太田(おおた)洋(よう)著/岩波書店(岩波新書)/1166円  「コーポレートガバナンス」は、企業の不祥事を伝えるニュースでよく耳にするようになった言葉だが、その意味や、いま重要視されている理由を熟知している人は多くはないようだ。  著者は、コーポレートガバナンスについて、「その具体的な意味内容や目的に関する考え方自体が、時代に応じて絶えず揺れ動いている」としたうえで、本書では、この概念はどのように生まれたのか、各国でどのような規律が行われているかなどを概説しながら、「良い」コーポレートガバナンスは何をもたらすのか、そのような「良い」コーポレートガバナンスを実現するためにはどのようにすべきかなどを説き、ビジネスに必須の知識を提供している。  著者の太田氏は、コーポレートガバナンスやM&Aを専門とする弁護士で、日本経済新聞「2024年に活躍した弁護士ランキング」企業法務全般(会社法)分野総合第1位になるなどの人気弁護士として知られる。本書の内容は実務家としての立場から、現在のコーポレートガバナンスの諸問題を説いたという。  企業の経営者や人事労務担当者にとって、日ごろの業務の幅を広げるために役立つ知識、知見が得られる中身の濃い好著である。 晴れやかな気持ちになり仕事への活力が湧いてくる!あのベストセラーが復刊!! 仕事は楽しいかね?[新版] デイル・ドーテン著/野津(のづ)智子(ともこ)訳/英治(えいじ)出版/1980円  本書は、2001(平成13)年に発行されて以来、多くの人に親しまれてきた一冊。出版社の事情で絶版となっていたが、続編の『職場は楽しいかね?』とともに復刊された新版である。著者が加筆修正した原稿に基づき、内容にも改訂が加えられたうえ、挿絵の追加や、仕事に役立つツールも掲載された。  本書の魅力の一つは、主人公の「私」がまるで自分のように感じられて、ぐいぐい引きこまれること。読み終えるころには、主人公のように晴れやかな気持ちになり、活力が湧いてくる。  話は、深夜の空港で吹雪によって足止めされた主人公が、老人マックスと出会い、「仕事は楽しいかね?」と問いかけられることにはじまる。一生懸命働いているのに出世できない不満や会社を興したもののうまくいかなかったこと、将来への不安をぶちまける主人公。そして、老人から語られる仕事や人生にかかわる言葉と数々の事例が、ひと晩かぎりの講義のように、読者の心の扉を開き、動かしていく。「明日は今日と違う自分になる」、「違うものがよりよいとは限らない。だが、よりよいものは必ず違っている」……。老人の言葉を胸に刻んだ主人公は、昨日とは違う自分になったことを実感して歩き出す。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します