【表紙1】 画像です 【表紙2】 産業別 「ガイドライン」のラインナップが増えました 高齢者雇用推進事業のご案内  高齢者雇用を進めるためのポイントは、業種や業態によって違いがあります。  そこで当機構(JEED)では、産業別団体内に推進委員会を設置し、高齢者雇用に関する実態を把握するとともに、解決すべき課題などを検討して、高齢者雇用を推進するために必要な方策や提言を「ガイドライン」として取りまとめています。これまでに、100業種の高齢者雇用推進ガイドラインを作成しています。  2024(令和6)年度は、以下の四つのガイドラインを作成しました。  いずれもJEEDホームページで全文を公開中ですので、ぜひご覧ください。 産業別 高齢者 ガイドライン 検索 1 一般社団法人 日本鞄協会 2024年版 鞄産業における 高齢者雇用推進ガイドブック 2 一般社団法人 日本ダイカスト協会 ダイカスト業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 高齢者とともに、働きやすい職場づくり 3 一般社団法人 日本計量機器工業連合会 計量計測機器製造業 高齢者の活躍に向けたガイドライン 〜はたらくすべての人々のウェルビーイング実現のために〜 4 一般社団法人 IT検証産業協会(IVIA) IT検証サービスにおける シニア人材活用についてのガイドライン 〈お問合せ〉 高齢者雇用推進・研究部 産業別雇用推進課 TEL043-297-9530 【P1-4】 Leaders Talk No.119 50代で外部の交流に積極的に参加“学び”を通じて第2のキャリアが開花 大阪大学 ダイバーシティ&インクルージョンセンター 招へい教授日高乃里子さん ひだか・のりこ 製薬会社、調剤薬局勤務などを経て、帝人株式会社に入社。2012(平成24)年より人財部ダイバーシティ推進室長。定年後、半年間の再雇用勤務を経て、2020(令和2)年4月に大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンター教授に就任、2024年4月より現職。  大阪大学ダイバーシティ&インクルージョンセンターで招へい教授を務める日高乃里子さんは、帝人株式会社のダイバーシティ推進室長などを務め、定年後再雇用を経て大学教授へ転身した異色のキャリアの持ち主。  今回は、そんな日高さんに、ご自身の経験をふまえ、キャリアの転機やキャリアチェンジのために行った“学び”などの準備についてお話をうかがいました。 キャリアを活かし大学のD&Iを推進 全国規模のプロジェクトにも参画 ―日高さんは、大阪大学ダイバーシティ&インクルージョン(以下、「D&I」)センターの教授を経て、現在も招へい教授として活躍されています。同センターではどんなお仕事をされてきたのですか。 日高 D&Iセンターは、大阪大学の教職員および学生のD&Iの推進を目的とした部署です。働き方改革や多様性の尊重と包摂に向けた取組み、そしてジェンダー平等に向けた均等支援などを行っています。具体的には、育児・介護支援、キャリアアップ支援、次世代育成支援など、さまざまな活動を展開しています。施設や職員数の規模も含め、D&I推進では国立大学のなかでは、早く取組みを始めました。東京大学をはじめ全国の大学や機関からヒアリングにいらっしゃいます。  私自身は5年前にD&Iセンターの教授に就任しました。就任時、文部科学省の補助金で大阪大学が全国の大学のダイバーシティネットワークを構築するプロジェクトを幹事校として展開しており、そちらを担当することになりました。全国180を超える大学のネットワークであり、Webページの管理やネットワークにご参加いただいている大学の理事クラスの会議の運営や、全国講演会の企画などを担当してきました。2024(令和6)年3月でプロジェクトは終了しましたが、文部科学省からは、最も高いS評価をいただきました。学内では、「ダイバーシティ&インクルージョンの世界」という新しい授業も開講し、毎年200人の学生が受講しています。65歳で定年となり、いまは招へい教授としてお手伝いをしています。 ―すばらしいお仕事と業績です。大阪大学の前は、帝人株式会社(以下、「帝人」)のダイバーシティ推進室で働かれていたそうですが、ご自身のキャリアについてお聞かせください。 日高 帝人には、33歳のときに中途採用で入社しました。大学の薬学部を卒業後、製薬会社に総合職で入社し、おもにRI(ラジオアイソトープ)検査薬のプロモーションの仕事を5年ほど担当していたころ、高校時代の同級生でもあった医師と結婚。専業主婦になったのですが、パートナーの帰りを待って毎日ご飯をつくるのが嫌になり、専業主婦は2週間で卒業しました(笑)。薬剤師の免許を活かし町の調剤薬局で働き、その後、パートナーの転勤で岡山県に引っ越し、製薬会社の営業所で管理薬剤師として働き始めました。仕事は薬の管理だけをしていればよいのですが、それではおもしろくありません。そこで、営業所の社員を相手に勝手に教材をつくって、薬や疾患について学ぶ研修会などを開催していました。  そこに1年半ほど勤務したころ、パートナーが大阪の大学病院に戻ることになり、大阪で新しい仕事を探すことになったのですが、それが新聞の求人広告で見つけた帝人の管理薬剤師の募集でした。このときは一般職での採用で、給与も一般職の賃金+諸手当のみです。何よりサポート的な仕事が多く、これもおもしろくない(笑)。もっと学術的な仕事がしたいと思い、総合職試験を受けました。晴れて総合職になったのですが、今度は妊娠していることがわかりました。出産後、半年ほど育児休職したのですが、のちに帝人での総合職の育休取得第1号だったことを知りました。  当時は学術部に所属し、営業部門の教育担当として、MR(医薬情報担当者)の資格試験の教材の開発や研修も行いました。本部は東京にあり、私は近畿圏全体を一人で担当し、研修教材作成などの会議のため月に2〜3回は東京に出張をしていました。 ―育児と仕事の両立を実践しながら、充実した日々を過ごされていたのですね。 日高 人に教えることはおもしろかったのですが、それだけではなく新薬の知識のインプットも必要です。ときには営業に帯同し、医師に対して新薬の紹介を行いました。そこでマーケットがどう考えているのかも理解することができました。介護や保険など疾患や治療以外の周辺の幅広い知識も必要になるので、自分でもかなり勉強しましたね。 50代で社内公募を利用しキャリアチェンジ 社外での学び・人脈が次のキャリアにつながる ―その後、ダイバーシティ推進室長になられるわけですが、新たなキャリアへの挑戦ですね。 日高 学術の仕事を20年近くやりました。課長職となり、最初女性は私一人でしたが、その後何人か配属され、後進の道もつくれたと思います。そのころには娘が大学進学で自宅を離れることになり、私も気兼ねなくどこにでも行けるということで、帝人の社内公募で「ダイバーシティ推進室長」に応募したのです。どんな仕事をするのか本当のところよく知らなかったのですが、それまでの実体験で「どうにかなる」と思ったのです。長く同じ部署にいたので「自分のポジションを空けなければ」という気持ちも応募のきっかけでした。  室長としては3代目です。当時の人財部は大阪にあり、1年ほどして部署ごと東京に移ることになりますが、異動後、外部の人との出会いが一挙に増えました。大阪では50社ぐらいの企業のダイバーシティ推進担当者が集まる「ダイバーシティ西日本勉強会」に参加し、仕事のアドバイスをもらったり、さまざまなことを学びました。勉強会は、もともと前任の室長が立ち上げたという経緯もあるため、帝人はダイバーシティのフロントランナーとして知られており、問合せへの対応も多く、そのたびに勉強しました。  単身赴任で東京に異動してからも、時間は自由に使えるので、ダイバーシティにかぎらず、人材開発やキャリア開発の勉強会にも積極的に参加しました。 ―まさに50代での“越境学習”ですね。当時は、どんなことを心がけて学んでいたのでしょうか。 日高 社外での交流が増えるにつれて、講演の機会がすごく増えました。「少し話をしてもらえないか」と誘いを受けたら、極力断らずに参加しました。それまで学術分野で教育業務を担当してきたので、説明会や講演会など人前で話すことに抵抗感はもともとありませんでしたし、議論することにも慣れていました。不安や怖さがないのは、これまでのキャリアの蓄積があったからだと思います。講演をきっかけに次の講演の機会も生まれますし、パネリストの重鎮の先生方など、知合いも増えます。社外の活動も厭いとわず、頼まれたことは断らないという姿勢は、50代になってもとても重要なことだと思います。 キャリアのふり返りは50代の前半で自分の方向性を決めたらそのための準備を ―そうした活動の成果の一つが、大阪大学の教授就任につながるのですね。あらためてふり返り、50代に積み重ねておくべき経験とは何でしょうか。 日高 定年の60歳になっても後任が決まらなかったこともあり、半年間だけダイバーシティ推進室に勤務し、その後は大阪に戻り、新たな自分の道を探そうと考えていました。社外の多くの友人にも半年後に大阪に帰ることを伝えていたところ、噂を聞いた知人から関西の私立大学での非常勤講師のお話をいただきました。大阪大学の仕事も知人の紹介で、大学の理事と面談し、道がひらけたという経緯があります。  あらためてふり返ると、自分の関心領域がどこにあるのかを理解し、そこに向けて勉強し知見を深めることが大事だと思います。そして人とかかわること。いろいろな人との出会いが何かを生む可能性を秘めています。人にかかわると「長くつき合わないといけない」と思いがちですが、50歳を過ぎたら好きな人だけとかかわればよいのです。薄くてもよいので、つながりを持っていれば次に進めるきっかけになると思います。 ―50代の人が新たなキャリアに目覚め、60代以降のキャリア形成に取り組んでいくために企業ができることは何でしょうか。 日高 50代の比較的早いうちにキャリア研修などで気づきの機会を与えることです。帝人では、50代前半に役職に関係なく2日間かけてキャリア研修を実施しており、私も研修を担当していました。1回30人程度のメンバーをグループに分け、お互いに幼いころにやりたかったことのふり返りから始まり、最終的に自分の10年後、20年後のキャリアマップを描き、そのマップをもとにキャリアカウンセリングを行います。研修プログラムをつくりながら、私自身もキャリアをふり返る機会になり、進むべき道が決まりました。  こうした研修は、55歳では少し遅すぎます。女性も男性も含めて50代の早い時期に研修を実施し、自分の進むべき方向性がある程度決まったら、仕事をしながら勉強し、スキルを磨いていくなど準備を始めるほうがよいでしょう。  役職を降りたら時間にも余裕ができます。昔と違い、いまは夜でも学校など勉強ができる場所はたくさんあります。60歳前に準備し、新しいスタートを切るのが理想的だと思います。 (インタビュー/溝上憲文 撮影/安田美紀) 【もくじ】 エルダー エルダー(elder)は、英語のoldの比較級で、”年長の人、目上の人、尊敬される人”などの意味がある。1979(昭和54)年、本誌発刊に際し、(財)高年齢者雇用開発協会初代会長・花村仁八郎氏により命名された。 ●表紙のイラスト KAWANO Ryuji 2025 April No.545 特集 6 高齢社員の「学び直し」を考える 7 特別インタビュー 中高年社員の“学び直し”が求められる理由 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 廣川進 11 解説 企業に求められる中高年社員への学び直し支援 株式会社ジェイフィール 代表取締役 コンサルタント 片岡裕司 15 事例1 山産業株式会社(山口県美祢市) 講演から業界外の幅広い知見に触れ マインドセットのための学びを提供 19 事例2 社会福祉法人フェニックス(岐阜県各務原市) 高齢職員の資格取得支援など多様な人財のキャリア形成を支援 23 特別寄稿 ミドル・シニアのリスキリングが進まない要因は? 株式会社ライフシフト 会長・CEO 多摩大学大学院 名誉教授 徳岡晃一郎 1 リーダーズトーク No.119 大阪大学 ダイバーシティ&インクルージョンセンター 招へい教授 日高乃里子さん 50代で外部の交流に積極的に参加“学び”を通じて第2のキャリアが開花 28 TOPIC 「ミドル・シニア層の学びに関するインサイト調査」 株式会社ベネッセコーポレーション 32 偉人たちのセカンドキャリア 第5回 精巧な日本地図をつくった偉人 伊能忠敬 歴史作家 河合敦 34 高齢者に聞く 生涯現役で働くとは 第103回 狛江市シルバー人材センター 駄菓子屋「狛もん」販売員 田中映子さん(80歳) 36 加齢による身体機能の変化と安全・健康対策 【第5回】自動車の運転適性 堀川悦男 40 知っておきたい労働法Q&A 《第82回》 高年齢雇用継続給付の改正、給与制度の変更 家永勲/木勝瑛 44 地域・社会を支える高齢者の底力 【第4回】首都高トールサービス東東京株式会社(東京都) 46 いまさら聞けない人事用語辞典 第56回 「グローバル人材」 吉岡利之 48 労務資料 第19回中高年者縦断調査 (中高年者の生活に関する継続調査)の概況 52 BOOKS 54 ニュース ファイル 56 JEEDが、企業における業務課題を解決します 57 70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーのご案内 58 高年齢者活躍企業事例サイトのご案内 59 令和6年度「高年齢者活躍企業フォーラム」 「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」 アーカイブ配信のご案内 60 次号予告・編集後記 61 技を支える vol.350 大切な写真を修整する「スポッティング」の技 写真師 坪井幸子さん 64 イキイキ働くための脳力アップトレーニング! [第94回]誤変換解読クイズ 篠原菊紀 ※連載「日本史にみる長寿食」、「高齢者の職場探訪 北から、南から」は休載します 【P6】 特集 高齢社員の「学び直し」を考える  高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保措置が企業の努力義務となり5年目を迎えました。実際に就業確保措置を導入ずみの企業は約3割にとどまっていますが、働く人たちの就業期間は着実に延伸傾向にあります。  一方で、就業期間が延びれば延びるほど重要になるのが「学び直し」です。絶え間なく変化を続ける現在のビジネスシーンに対応していくためには、長年の職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験だけではなく、つねにそのアップデートを図っていくことが求められます。  そこで今回は、50代を含む高齢社員の「学び直し」について考えていきます。 【P7-10】 特別インタビュー 中高年社員の“学び直し”が求められる理由 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 廣川(ひろかわ)進(すすむ) 1 中高年社員こそ“学び直し”が必要 ―「リカレント教育」や「リスキリング」という言葉が注目を集めていますが、すでに豊富な知識や経験、スキルを持つ中高年社員にも“学び直し”が求められる背景や理由について、お考えをお聞かせください。 廣川 “学び直し”は中高年社員にかぎった話ではなく、あらゆる世代にとって必要です。「人生100年時代」は、「だれもが学び続けなければならない」ということが大前提になっています。そんななか、なぜ中高年社員の“学び直し”が特に重要になっているかというと、変化の質が大きく変わったいまの時代においては、中高年社員がこれまでにつちかってきた知識や経験、スキルが、むしろ「邪魔になってしまう」といった事態が起きているからです。  以前は「営業一筋30年」など、長く一つのことを続けることによって得られるものに価値がありました。しかしいまでは、対話型生成人工知能(AI)「生成AI」を上手に使えば、世界中の古今東西の情報が、たちどころに要領よく集められます。しかし、こうしたAIをはじめとする新たな技術によって得られることに対し、「私は経験していないから」と否定的な中高年層もいます。若い世代の人たちからすれば、非常にやりにくい状況です。  経験がありすぎるため、前の時代の経験が新しい時代を切り拓くときの邪魔になるということがあります。そこで重要となるのが「アンラーニング」です。「アン」は「解除」のような意味で、いままで学んできたことを解除して、いったん脇に置こうという考え方です。まさに、いまの中高年社員にとってはアンラーニングが必要で、コップの水を一回空けないと、新しい水が入ってきません。変化が大きすぎて、それを受けとめるのがむずかしい時代だからこそ、中高年社員には、一度アンラーニングを行い、学び直してほしいということがあるのだと思います。  もちろん、古いものがすべてダメで、新しいものに入れ替えなければならないということではありません。アンラーニングをしてみることで、昔から大事にしてきたものの価値を再発見できることもあります。例えば、オンライン化が進んだからこそ、直接対話の重要性があらためて確認されたケースもあるでしょう。そうしたことを含め、“学び直し”は重要なのです。 2 中高年社員の成長が企業にもたらすメリット ―多くの企業が、社員の“学び直し”を支援する取組みを展開していますが、中高年社員向け研修などの優先度は、若い世代などと比べ、高いとはいえないのが実情だと思います。企業にとって、雇用する中高年社員の“学び直し”を支援することには、どんな意義があるのでしょうか。 廣川 それをしなければ、「企業は生き残れない」ということだと思います。仮に、会社の中が学び直しをしない社員ばかりになってしまった場合、先ほど説明したような中高年社員の弊害が発生します。自身の経験のみで仕事をしようとする中高年社員が、会社の中でそれなりのポジションにいると、若い世代のアイデアなどを潰してしまうことになりかねません。  中高年社員の幹部や管理職の人たちに、変化対応能力を身につけてもらい、若手の提案に対して「おもしろそうだな」、「それをやってみよう」となるような風土にする必要があります。昨今重要性が指摘されている「職場の心理的安全性」なども、こうした風土から育まれるものだと思います。  「学び直し」、「リスキリング」とはそもそも、政府が旗振り役となって推し進めている側面がありますが、「やらされ感」ではなく、もっと自発的に、「やらないとどうなるか」、「やることによるメリット」のイメージを描き、具体的な目的を示しながら、進めていくべきだと考えます。  中高年社員が学び直しをしてくれて、60代以降も一人ひとりの社員が活き活きと働いていれば、それが企業にとっても大きなメリットになるはずです。「50代社員は元気がない」、「やる気がない」、「60代社員を手本にはしたくない」といった具合に、むしろ反面教師のような存在ばかりだとすれば、影響は30・40代の下の世代におよびます。「夢を持てない」、「ああはなりたくない」、「この会社にいるとあんなふうになってしまう」、「だったら転職しよう」となり、仕事ができる30・40代が辞めていってしまいます。  会社内に好循環をつくるためにも、中高年社員に成長してもらうことが必要です。50・60代社員が活き活きとして成長していることを見せることができれば、離職率が下がるなどの組織側のメリットにもつながるはずです。 3 「リスキリング」の前に「リ・デザイン」を ―中高年社員の“学び直し”はどのように進めていけばよいのか、具体的に必要なプロセスなどについて教えてください。 廣川 「リスキリング」の前に、「リ・デザイン」が必要になると、私は考えています。リスキリングというのは、まさに「スキル」なので、技術論であり、何か目標を達成するための方法でしかありません。だからリスキリングの前には、何を大事にして、何に時間を費やして、どんな人生を過ごしたいのかという、人生のグランドデザインを立てること、つまり「リ・デザイン」が必要となるのです。  人生100年時代を迎えたいま、会社を辞めたあとにも長い時間があるわけで、そこを幸せな時間にするにはどうしたらよいか。いわゆる「ウェルビーイング(Well-being)」の観点からも大きく視野を広げ、人生全体を見つめ直すことが求められます。「いま、自分に何ができるのか」、「社会とのつながりがどう得られるか」という観点に立ち、キャリアと人生のデザインを見直すのもポイントです。  私が研修などで実施している「リ・デザイン」のプロセスを紹介すると、まず、「私のライフラインチャート」というものを作成し、これまでの人生を過去から現在までの時間軸に沿って棚卸しします。印象に残っている出来事や困難を感じた出来事、あるいは人との出会いなど、人生の各々の場面を、そのときの心理状態を思い起こしながら書き出して整理し、自身のルーツや歴史を紐解いていくのです。さらに、それぞれの「危機・転機」についてまとめた表も作成してもらいます。これまでに経験した転機に焦点をあててふり返り、今後につなげていく作業です。  そのうえで、自身の今後の“未来”を見つめ、具体的な「リ・デザイン」に取り組みます。「統合的生涯設計」で知られるサニー・ハンセン氏の理論を応用したフレームワークを使っています。「Love(愛、家族、関係、絆)」、「Labor(労働、仕事)」、「Learning(学習、学び)」、「Leisure(余暇、自由時間)」の四つの“L”が統合されると、意味のある人生になるという考え方に沿い、未来を描いてもらう作業です。研修では、四つのLに基づき、八つのゾーンに分けた「人生のリ・デザインplanning シート」に、現状について記し、そこから未来のビジョンを描くという方法で行っています。  これまでの人生をふり返り、人生そのものをリ・デザインし、人生のグランドデザインを立て直すという一連のプロセスを経て、そこでようやく出てくるのがリスキリングの話です。新たなグランドデザイン、新たな自分の生き方や働き方に向けて、何が必要かを逆算して戦略を立て、その戦略に則って行うのがリスキリングだと考えています。  目ざすものから逆算し、なぜ学ぶのか、なぜそのスキルを身につけることが必要なのか。そこを具体的に考えられるようになって、初めて納得感を持ってリスキリングに取り組むことができるのです。 4 行動変容にはグループワークが有用「危機感」を伝えることも ―中高年社員が人生をリ・デザインし、効果的なリスキリングを実践できるようにするため、企業にはどのような取組みが求められるのでしょうか。 廣川 リ・デザインには、やはり研修が必要です。個人での作業や宿題の形でワークシートを作成し、そこで気づくこともあるのですが、実際に作成されたほかの人のワークシートを見たり、意見交換をすることで効果的に行えます。  例えば、参加型の研修で、これまで仕事一筋で高い役職に就いている人と、いわゆる出世コースを外れている人が同席するケースがありました。高い役職の人の方がワークシートをうまく埋められず、出世コースを外れている人の方が、しっかりと未来のビジョンを描けており、高い役職の人にとっては「自分の方が収入は高いが、隣の人の人生の方が充実して豊かそうだ」という気づきにつながることもあります。  また、研修をしたままにせず、キャリアカウンセリングなどを随時行い、行動変容を確認することも大事です。キャリアカウンセリングは、プロのキャリアコンサルタントに依頼してもよいですし、社内にいるキャリアコンサルタントの資格を持った人が担当してもよいと思います。社内の人間の方が話しやすい人もいますし、社内では話したくないという人もいるので、どちらか選べるようにするとよいかもしれません。  リスキリングにも、個人ではなく、仲間と一緒に行おうという流れもあります。リスキリングに「共同の」を意味する「co-」を加えた「コ・リスキリング」という名称も最近は聞かれます。要するに「一人で学ぶより、みんなと学ぶ方が収穫は大きい」ということですが、これが別のコミュニティに属する人と出会うきっかけになれば、さらなる効果も期待できるでしょう。  また、中高年社員のリ・デザイン、リスキリングをめぐり、会社の重要な役割としてあげられるのが「情報開示」です。特にいまの50代社員は、時代に対応しきれていないにもかかわらず楽天的で、問題を棚上げにしている人が少なくないように感じています。現在55歳前後の社員は、バブル期入社世代で、就職活動で苦労をしていないケースも多く、会社との関係は、最初の出会いのところから「相思相愛」でした。求愛されて、選ばれて入社したというわけです。そのファーストインプレッションが強く、楽観的な状態が、ずっと続いているのかもしれません。  危機感のない50代社員については、会社にも責任があります。役職定年や定年を控え、本音では、「もうそろそろあなたの役目は終わり」と思っていても、ギリギリまでがんばってほしいから、明確なメッセージや情報を伝えない。伝えていたとしても遠回しに、やんわりというだけで、伝わっていない可能性があります。  会社側が当人のことを本当に考えるなら、役職定年を迎える直前になって、「あなたはもうダメよ」と急に伝えるのではなく、その前の段階で、先行きの見通しなどについて情報開示を行い、「このままであと10年、会社にはいられると思いますか?」と、少し強い、ふみ込んだメッセージを出すべきです。そうすれば50代社員たちも、早い段階から危機感を持って、リ・デザイン、リスキリングに取り組むことができるでしょう。 5 「会社から自分を取り戻す」 ―最後に、中高年社員のキャリア自律や活躍をうながす観点から、企業で働く中高年社員へのメッセージをお願いします。 廣川 会社員としては、現在60代の人たちであれば、変化の大きな状況も、このままなんとか逃げ切れるかもしれません。しかし50代社員の場合、定年後の再雇用も考えれば、退職まで10年前後の期間があります。このまま自分が変わらずに、これまでのキャリアと経験で「10年もちますか?」と自らに問いかけることが必要だと思います。それぞれが少し厳しく、自分の会社内での評価や市場価値について、考えてみるべきです。  そして、大切なのは「会社から自分を取り戻す」ことです。60歳以降は、これまでのように会社の敷いたレールに乗ってはいけなくなるのですから、会社という枠組みを外し、自分が今後どんな働き方をしたいか、どんな生き方をしたいのか、「会社を離れたときに残る自分」と向き合うことが重要です。  ある人の例ですが、50歳ぐらいになったときに、親しい役員に「私は役員までいけますか?」とたずねたそうです。その役員の返答は「きみはちょっと無理だろうな」でした。その人はそこからすぐに、自分の人生の戦略を組み直し、持っていた資格に関する経験を積める部署への異動を申し入れ、さらに上位の資格を取得し、60歳以降は個人事業主として仕事をしていける道を開きました。  会社に残るにしても、残らないにしても準備は必要でしょう。まずは、自分の人生のリ・デザイン。そこから逆算し、自分を変えるため、自分の価値を高めるために必要な目標を見定め、リスキリングに挑戦できれば、活き活きと未来に希望を持つ中高年社員が増えるのではないかと思います。 〈プロフィール〉廣川進(ひろかわ・すすむ) 出版社に18年勤務後、大正大学臨床心理学科教員を経て2018年より法政大学キャリアデザイン学部教授。おもな著書に『キャリア・カウンセリングエッセンシャルズ400』(金剛出版)など。 写真のキャプション 法政大学キャリアデザイン学部廣川進教授 【P11-14】 解説 企業に求められる中高年社員への学び直し支援 株式会社ジェイフィール 代表取締役 コンサルタント 片岡(かたおか)裕司(ゆうじ) 1 はじめに  読者のみなさんの組織では、これまで中高年社員の活性化や活躍促進についてどんな取組みをされてきたでしょうか。私が多くの組織とかかわるなかで、大きく三つのパターンに分けられると考えています。  一つめは中高年社員がこれまでつちかってきた能力の陳腐化があまり進んでおらず、貴重な戦力というケースです。インフラ系の企業や食品メーカーなどによく見られます。この場合、自分たちの身につけてきた能力に気づいてもらい、モチベーション向上を主眼にしていく取組みが必要になります。  二つめは中高年社員には第一線から少し退いてもらいたいというケースです。「黄昏研修」なんていわれているものです。金融系企業で特に多く見られます。  そして三つめが中高年社員に学び直しを通じて新たな分野でチャレンジしてもらおうというケースです。IT企業や商社など、変化の激しい業界でよく見られます。  しかしこれからは、おおむね三つめのケースに集約されていくと考えられます。その背景は、生成AIの“あたり前化”という技術変化と、働き手不足という環境変化によるものです。  企業における中高年社員への学び直し支援は自己啓発から戦略へと転換していく必要があります。モチベーションだけでは今後の環境を乗り越えていけませんし、また黄昏研修などを行っている企業にはそもそも優秀な人は集まらなくなるでしょう。企業はこれまで以上に明確な意思をもって中高年社員の学び直しを実現していく必要があるのです。 2 学び直しに向けた企業文化をつくる  ちなみに生成AIにこのレポートのタイトルを入れると、七つの大項目と21の取組みが出てきました。学習機会の提供、学習を促進する制度、環境づくり、マインド醸成、感情的配慮などです。どれももっともなことが書かれていますが、それでも中高年社員の学び直しがなかなか進まないのが現実ではないでしょうか。  多くの企業では、取り組みやすいところから始めるケースが多く、キャリア研修やオンライン学習の機会を多くの企業で整備されてきていると思います。  しかし最初に行わなければならないのは、自社の「キャリアパス」の改革と、そこに向けた「経営のコミットメント」を醸成することです。だれもが受験前には勉強をするかと思いますが、働きながら学ぶことをあたり前にしていかないといけません。  キャリアの中盤から後半戦に向かっていく中高年社員にとって、学び直すことをあたり前の企業文化にしていく必要があります。私のクライアントのある会社では、50代社員にジョブ型人事制度を導入し、53歳で全社員が公募で自分の仕事を勝ち取る仕組みを導入しています。厳しい仕組みという側面もありますが、自分のやりたい仕事、処遇のよい仕事などを自分で勝ち取るチャンスととらえ、新たな学びにチャレンジする中高年社員が多くいました。  これでは組織が起点となっていて、主体的なキャリア自律になっていないといわれるかもしれませんが、中高年社員の学び直しは戦略的に取り組まないといけない環境になっているということです。各組織と個人がともにありたい姿を描き、行動しなければなりません。 3 中高年社員と知的好奇心  中高年社員が活性化しない要因として、@「自分の今後の職業人生はこんな感じだろうな」ととらえてしまい自己像を矮小化してしまうこと、A新たなチャレンジに対する好奇心の低下、B新たなチャレンジに失敗したり、新たな仕事の担当となり初心者になってしまったりする不安、があります。  これらの要因が絡まり、負のループへと入り込んでしまうとなかなか抜け出せません(図表1)。  ここであらためて好奇心とは何かについて少し考えてみたいと思います。心理学的には二つの好奇心が存在するといわれています。「拡散的好奇心」と「特殊的好奇心」といわれるものです。  「拡散的好奇心」とは、新たな情報を求める人間の根源的な動機です。しかしこの好奇心は、「新規性が高すぎるもの」、「既存の枠組みを否定する可能性のあるもの」を避ける傾向があります。中高年社員の学び直しという文脈でとらえると、新たな学びに好奇心を持たせるには、自己像を大きくとらえ、自分と新たなスキルにつながりを描いていくことが大切ということになります。  もう一つの「特殊的好奇心」とは、何か特定の領域を深掘りしていく好奇心です。これは達成可能と感じられることや自己選択が重要になってきます。また受身的な特性があり、周囲との比較や明確な目標が好奇心を刺激するといわれています。  中高年社員の仕事や学びへの好奇心を活性化させていくには、自分のキャリアや将来像を大きくとらえるように支援し、新規性の高さや、自分が否定されるわけではないという理解が必要です。また、何か深く学んでいくには指標やライバルも必要になってくるということです。 4 中高年社員の「戦略的学び直し」実現に向けた三つのポイント  これらの観点、また私の経験から、中高年の「戦略的学び直し」について三つの打ち手をお示しします(図表2〈14ページ〉)。 @学び直しに向けたキャリアデザイン支援  中高年社員本人の意識改革に向けて中核的な取組みになるのが、キャリアデザイン研修やキャリアコンサルタントによるカウンセリングです。  ただし、これまでのモチベーション向上に向けたキャリア研修とは少し視点が変わってきます。特に、強みのとらえ方を変えていく必要があります。具体的には、保有している強みそのものではなく、その強みを形成・獲得していったプロセスに新たな強みを発見していくという方法です。つまり、学ぶ力そのものを強みとして認識するという意味です。  例えば、「突然同僚が辞めてしまい、引継ぎもないまま、自分で試行錯誤して仕事をなんとかこなし、きれいにマニュアル化して後任に引き継いだ」という仕事経験があれば、この仕事経験を通じて「マニュアル化」というスキルが得られたと考えます。しかし、ここでもっとフォーカスすべき強みは、「試行錯誤しながら新しい仕事を自分のものにした」というプロセスにある強みです。この試行錯誤のプロセスをより詳細に見ていくと、独自のプロセスが見えてくるはずです。この壁を乗り越えたプロセスを強みととらえ、今後のキャリアを考えると、可能性が広がっていきます。  一方、強みを「〇〇分野での研究者としての専門性」や、「法人営業としてネットワークやスキル」ととらえてしまうと、基本的には過去からの延長線上にしかキャリアを描けなくなってしまいます。これでは学び直しのモチベーションも必要性も高まってきません。学び直しの時代では、学んできたことではなく、学びのプロセスに強みを見いださなければならないのです。 A仕事のアサインメントとサポート  次のポイントは、おもに上司が主体となって行う学び直し支援です。アサインメントは異動も含めて考えると人事部門も関係しますが、異動させるかどうかも含め、まずは上司が中高年社員にどう向き合うかということが重要になります。  新たなアサインメントは、新たなスキルを身につけたあとに実施するべきと私自身も考えます。ただ、現在の中高年社員の多くが、OJTや仕事を通じて成長してきた世代ということも事実です。つまり中高年社員にとっては、実務を通じて学び直しができることが最も効果的で近道ということになるのです。  いままでは、組織の事情と本人の強みからアサインメントを考えてきたと思います。特に中高年社員には次のステップという考えは薄く、なるべく得意な仕事をアサインしてきたのではないでしょうか。これを強みや価値観を活かしながらも、学び直しが必須のアサインメントを行っていくということが重要です。 B自己像の拡大支援  自己像の拡大支援とは、自分自身の可能性を広くとらえられるよう支援していくということです。例えば、いままで営業を長く担当してきた場合、40代、50代となると、「いまさら開発なんて無理だ」、「財務経理なんて無理だ」ととらえがちです。  しかし自分自身の可能性を広くイメージできていれば、「営業でこれまで聞いてきたお客さまの声を開発につなげられるかも」、「財務経理を知ることで、営業としてさらに経営レベルの目線が持てるかもしれない」と思えるかもしれません。  自分の可能性を広く持てるようにしていく支援はたくさんあります。いわゆる越境学習・異業種交流や社内インターンなどの機会があります。ただ、多くの組織でこのような機会は中高年社員というより、若手・中堅社員に優先的に提供されているのではないでしょうか。手あげ制のポスティングの異動制度や副業の解禁なども自己像の拡大につながります。こういった施策に中高年社員も参加できるようにしていくと、モチベーションアップにもつながり効果的です。 5 最後に  最後にあげた三つのポイントは、じつはどの世代でもあてはまる話です。キャリアのとらえ方や自己像を拡大していくこと、また適切なアサインメントとサポートを提供していくことは、だれにでも必要です。ただ、中高年社員には経験とスキルがあります。そしてその経験やスキルが自己像を狭め、そのことが好奇心の低下や新たなチャレンジを躊躇させる原因となるのです。  中高年社員の強みをリフレームし、新たな自己像に基づく学び直しを促進していきましょう。 【参考文献】 波多野誼余夫・稲垣佳世子『知的好奇心』(中公新書) 図表1 中高年社員の学びを阻害する負のループ 自己像の矮小化 今後の職業人生はこんな感じだろうととらえてしまい自己像を矮小化してしまうこと 不安 新たなことにチャレンジして失敗したときの不安 新たな場で自分が初心者になる不安 好奇心の低下 できる範囲の仕事が続き、好奇心が持てないモチベーションや活力が低下する ※筆者作成 図表2 中高年社員の学び直しに向けた三つのポイント 学び直しがあたり前の企業文化の醸成 中高年社員の学び直しの実装 学び直しに向けたキャリアデザイン支援 ・すでに獲得している強み、スキルではなく、強みやスキルを獲得してきたプロセスにフォーカスする ・中高年社員の学ぶ力に強みを見いだしていく 仕事のアサインメントとサポート ・中高年社員には得意な仕事や経験のある仕事ではなく、学び直しが必須の仕事にアサインしていく ・中高年社員の心理的不安をサポートしていく 自己像の拡大支援 ・中高年社員にもさまざまな視野拡大の経験を提供する ・越境学習、異業種交流、社内インターン、副業など刺激の高い機会を通じ、自分自身の未来に広い可能性を持てるようにする 【P15-18】 事例1 山(たかやま)産業(さんぎょう)株式会社(山口県美祢(みね)市) 講演から業界外の幅広い知見に触れマインドセットのための学びを提供 土木建設を基幹事業とする創業70年の総合建設会社  山産業株式会社(以下、「山産業」)は1954(昭和29)年に土木建設業として山口県美祢市で創業。県内の公共工事を中心に多くの土木工事を手がけてきた。工事はすべて自社の社員、自社の工事機械で行い、数々の優良工事表彰の受賞歴を誇り、直近では「令和5年度山口県優良建設工事表彰」を受賞している。また、国際的環境マネジメントシステムを構築し、国際標準化機構ISO9001・14001を複合認証取得している。  おもな事業内容として、建築部は県内・外において公共工事および民間工事を手がけ、商業建築、産業建築や集合住宅、学校などの事業所用建物をはじめ飲食店、ガソリンスタンドまでを新築。車両整備部は1966年から民間車検整備工場としてスタートし、自家用車から業務用車両まで、メンテナンスやアフターサービスを提供している。また、独自の物流システムをもって企業の資材調達から製品配送、特種貨物に対応する運輸部のほか、住宅事業、不動産事業にも参入している。  2015(平成27)年には、高速道路事業部を新設。道路・施設設備の点検および調査、清掃、植栽作業、補修、冬期の雪氷作業などの維持管理業務をになっている。山口県は全国有数の道路舗装率を誇っており、なかでも高速道路は流通やビジネス、観光レジャー産業の活性化に不可欠なインフラであるが、損耗が激しい資産であり、経年による道路構造の老朽化への対応は不可欠である。山産業は24時間365日、高速道路の安心安全を確保するとともに、資産としての健全性を永続的に確保し、高速道路のネットワーク機能を維持していくため、経験・ノウハウ・技術の蓄積に取り組んでいる。 中高年社員が主軸として活躍 65歳定年後も処遇変わらず  山産業の社員数は、101人。そのうち、10代が2人(男性2人)、20代が10人(男性10人)、30代が8人(男性6人、女性2人)、40代が12人(男性11人、女性1人)、50代が36人(男性32人、女性4人)、60代が22人(男性21人、女性1人)、70代が8人(男性8人)、80代が3人(男性2人、女性1人)となっている。中高年層が厚く、平均年齢は50歳である。  山産業では、2019(令和元)年10月、定年年齢を63歳から65歳に、継続雇用年齢を希望者全員65歳から70歳に引き上げている。以前から65歳を超える社員が元気に働いていたことから就業規則を改定し、70歳以降も健康や意欲などに問題がなければ、運用により1年ごとの更新で年齢上限なく再雇用している。  なお、年齢や再雇用者であることを理由に、給与の減額などの処遇の変更は行わない。  また、定年年齢引上げとあわせて、再雇用者が希望した場合に1〜3時間の勤務時間短縮措置を講じる短時間勤務制度を導入した。山(たかやま)正樹(まさき)代表取締役社長は次のように話す。  「再雇用者の1割が短時間勤務制度を利用しています。『定年を機に業務量を減らしたい』、『70歳を過ぎたので週休3日にしたい』、『祝日は休みたい』など、理由は人それぞれです。経験豊富な方たちですので、できるだけ長く勤めてほしいと思っていますが、加齢とともに心身機能も低下してきますから、その辺りを本人が『これ以上何かすると会社に迷惑をかける』と気にかけているところがあり、所属長や経営層が声がけをしてフォローし、できるだけ長く働き続けてもらうよう励ましています」  山産業の社員は9割が中途採用者であり、飲食業など他業種からの転向、あるいは事務職の経験しかないなど、建設業が初めてという人は多い。そうした未経験者に一から教える教育係としてベテラン社員が活躍している。特に高速道路事業部は高齢社員と若手のペア就労を「バディ方式」と呼び、刈払機など危険をともない注意を要する機械の操作をはじめ、作業全般を指導し、技術伝達に努めている。  さらに、高齢社員は緊急災害時にも存在感を発揮している。「高齢社員が運転すると安心感があります。災害時などでダンプカーが埋まりそうなほど、足元の悪いむずかしい現場も上手に運転してくれます。これは技術力の差でしょう。さまざまな現場を経験しないとできないことです。これ以上行ったらぬかるんでいて、車輪がはまることを察知するなど、熟練者はその辺りの感性が違います」と山社長も舌を巻く。 山産業の学び≠フ軸となる「安全大会」熟練者の過信を見直す学びに  山産業における“学び”の軸となっているのが、毎年開催している「安全大会」だ。厚生労働省と中央労働災害防止協会が毎年7月1日から1週間実施する「全国安全週間」は、その準備期間として6月1日から30日まで職場の巡視やスローガンの掲示、労働安全に関する活動を行っており、建設業界では「全国安全週間」にあわせ、各企業が「安全大会」を開くのが恒例となっている。建設業や工事現場で働く労働者の労働安全衛生に関する知識を深め、安全対策の共有を目的とし、講演や講話、避難訓練、消火器訓練、表彰式が行われる。  山産業では、安全大会を毎年5月末に、全社員と協力会社を対象に実施している。半日の日程で2部制のプログラムを組み、第1部は前年度の安全衛生活動をふり返り、当年度の活動計画・目標について報告し、第2部は特別講演で、来たる2025年度の講師は、交通事故の遺族で、「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」の副代表理事を招いて開催する予定である。  「私たちは業務で車を運転し、日常生活ではだれもが車を運転します。当社でも一年間で大なり小なり事故が起きており、その要因の一つに熟練者の自己過信があげられています。会社がいくら安全運転を呼びかけ、さまざまな事故の事例をあげても、『私は事故なんて起こさない』という過信があって、最終的に心に響かなかったらどうにもなりません。今回、講演を聞いて遺族の気持ちを知り、学びに変えてほしいです。自己過信をひっくり返したいと思っています。また、いま、世の中がどう動いているか、いまの自分の運転はどうなのか、よかったのか、もっと上手くできたのかを検証する場でもあります。これまで働いてきて、あらためて当社で車の運転をする業務に長く就きたい気持ちがあれば、世の中の変化を知り、自分の運転を考え直さなくてはいけません。もちろん、きちんと運転している人もいます。その人たちは講演会を確認する機会としてもらい、心に響く話をきっかけとして聞いて学びにしてもらいたいです」と山社長は話す。  そんな熱い思いから、講演の講師へのアポイントメントは、山社長自ら行っている。社員も特別講演を楽しみにしているようだ。 「心に響く講演」をテーマにし高齢社員のQOL向上を目ざす  今年度は業務上の安全に関連する講演内容であったが、7、8年ほど前からジャンルや地域にとらわれず「心に響く講演」をテーマに講師を選出するよう方向転換した。  「以前は建設に関係した話をしてもらっていましたが、テーマの幅を広げて、もっと社員のモチベーションが上がる内容にして、社員の心に留めてもらいたいと思いました。そこで、ふだんなかなか聞けない話で、違う世界に触れられるような、新しい空気を入れることで、感性を豊かに、人間性が豊かになればと考えています。私自身、さまざまな場所に行き、さまざまな人の話を聞いて、交流を持つなかで学びがあり、感性が豊かになっていくと感じているので、社員にも同じように違う世界に触れ、人生が豊かになる学びを提供したいと思いました」と山社長。  「心に響く講演」は社員のQOL向上もねらいの一つとなっているようだ。  また、講演の効果は、バディ方式で行っている若手指導にも活きていくというのが、山社長の考えだ。技術継承の場では、「見て学べ」という考え方が長く定着しており、最近ではこうした考えに基づく指導はなくなったが、まだ、「お前もこうしろ」と押しつけるような指導をする人が見受けられるという。会社は若手の環境や背景、考え方に合わせた指導を求めており、指導担当者も自分で「よくない」とわかっていても、つい過去に自分が受けてきた指導の通りにふるまってしまうこともあるようだ。「心に響く講演」から世の中の価値観の変化を学び、自分が過去に正しかった手法に固執していることに気づき、新しい方向に進む動機づけとしての学びになればと期待している。  「私自身、経営者として、学び続けなくてはいけない、足を止めてはいけない、と思っています。時代はつねに変化しており、過去の常識が通用しない場合がありますから。高齢社員には技術だけでなく、講演から得る学びによりマインドセットを変えて、生活行動や仕事によい変化をもたらしてほしいです」  講師の人選は、社員のモチベーションが上がる、心に響く話が聞けることを中心に、幅広く考えている。例えば、現役から退いて間もない県内の元学校長を招いた際は、高齢社員の世代は仕事が忙しくて子どもの入学式、卒業式など学校行事に参加できない人もいたことから、教育関係者に現在の教育現場を語ってもらい、いまの時代は家族で子どもの教育を語る時代だと知ってもらう目的で人選した。  講演後、特に高齢社員からは、「教育は奥さんに任せていたけれど、たいへんさがよくわかった」、「いまの学校のことがよくわかった」などの声があったという。ときには「社長、来年はこんな人がよいですね」と希望を出してくれる人もいる。  そのほか、宮城県塩釜市で東日本大震災に被災し経験を風化させない活動をしている方、山口県有数の酒蔵の経営者、一般社団法人日本美腸協会の認定講師などに依頼してきた。社員たちは言葉で多くを語らないが、講演会を楽しみにしていること、講話を興味深く聞いたこと、視野が広がったこと、そんな様子が感じとれている。  他方、モチベーションが低い若手に対し、講演で自発的な動機づけができないか期待している面もあるという。山産業は自治体から緊急災害対応の要請があると、経営陣以下、だれもが駆けつけることになっている。しかし、電話連絡に出ない者、あるいは「用事がある」と断る者もおり、災害対応をになう会社として若手社員の意欲の底上げは重要課題ととらえ、効果的な施策を探っている。 コミュニケーションを重視したモチベーション向上の取組み  社員全体のモチベーションアップの取組みの一つに社内表彰がある。年度末に社員総会を開催し、今期のふり返りと来期の目標を各部署が発表しており、その後に表彰式や懇親会を行っている。表彰式では「永年勤続表彰(15年以上対象)」、「モチベーションアップ表彰」、「スローガン表彰」の三つの部門を設けている。各部門で数人がノミネートされ、表彰式の壇上で受賞者が発表される。受賞者はベテランが多く、受賞のコメントが率直でおもしろいと評判だ。あるベテラン社員が受賞した際は、「社長がうるさくいってくるから見返すまで会社にいようと思っている」など、気兼ねなく話す生の声は、経営層にも、若手・中堅にも響く内容で、仕事をするうえでの刺激にもなっているようだ。  その後の懇親会を楽しみにしている社員も多く、社員同士の交流を深める場として提供するほか、同年代、同じ地域に住む人、異世代、異業種など、そのときそのとき、さまざまなくくりで開催し、エンゲージメントの向上につなげている。  山社長は最後に「技術は日々の業務で自然と身につくものだと思っています。会社が社員に働きかけなければいけないことは、『心』です。技術力にプラスして気持ちがうまく乗れば、その技術力がグレードアップしていくと思っています。高齢社員には、学びから新しいものを取り入れつつ、これまでつちかった大事なものを活かしてほしいです」と語った。  講演を通して社員の学びにつなげるなど、「社員の心に響く」人材育成に取り組んできた山産業。世間が人員不足などで景況感が芳しくないなか、堅調な黒字が続いており、取組みの成果と受けとめている。  今後も、高齢社員と顔を合わせる直接のコミュニケーションを通して、よりよく改善するための施策を模索しながら、学びを積極的に取り入れ、企業全体の発展につなげていく。 写真のキャプション 本社社屋 山正樹代表取締役社長 2024年度「安全大会」特別講演の様子 (写真提供:山産業株式会社) 【P19-22】 事例2 社会福祉法人 フェニックス(岐阜県各務原(かかみがはら)市) 高齢職員の資格取得支援など多様な人財のキャリア形成を支援 地域最大級の福祉医療関連グループ 高齢者をはじめ多様な人材が活躍  岐阜県各務原市にある社会福祉法人フェニックスは、「保健・医療・福祉サービスを通じて健康で活気ある地域づくりに貢献する」を標榜するフェニックスグループの一員として、2000(平成12)年に創業した(当時の名称:社会福祉法人暖家)。  フェニックスグループは1988(昭和63)年に有床診療所を開設して以来、岐阜県各務原市を拠点として、地域ぐるみで「自立支援」と「リハビリテーション」の分野で事業を展開するなかで、社会福祉法人のほか、特定医療法人なども開設しており、2025(令和7)年3月現在、グループ全体で31の事業所を運営し、約540人の職員が勤務する、地域最大級の福祉医療関連グループとなっている。近年は「スタッフよし、ご利用者よし、地域よしの“三方良し”」を経営方針とし、ダイバーシティ型人財確保・育成にも取り組んでいる。  同グループでは「フェニックスウェイ」という理念を掲げ、「スタッフおよびその家族は大切なファミリーであり、私たちの財産」とし、「スタッフの持てる力が充分に発揮できるよう全力で応援・支援する」ことを明言している。社会福祉法人フェニックスでも、この理念に基づき、2015年から「ダイバーシティ型人財育成・活躍プロジェクト」を推進し、事業所内保育所の設置など、職員のライフスタイルやライフステージに応じた柔軟で多様な勤務制度を整備。高齢者はもちろん、外国人や障害者も含めたあらゆる職員が働きやすい職場環境の整備に努めてきた。 希望者全員70歳までの雇用を実現し60歳以上の職員は3割超  同法人における高齢者雇用の取組みの現状について、企画室室長の吉田(よしだ)理(おさむ)さんは次のように話す。  「当法人では、グループの方針に基づき、高齢職員が活躍できる環境の整備に努めてきました。その結果、60歳以上の職員が全職員の33%を占めており、多くの高齢職員が活躍しています。定年は60歳ですが、希望者全員70歳まで働ける再雇用制度を整えており、それ以降も特定の専門職については本人の希望により働き続けることが可能です」  雇用形態としては、再雇用制度だけでなく業務委託契約で働くことも可能となっており、介護の現場を離れても、職場の環境整備や施設の管理業務など、周辺業務を担当してもらうことで、できるだけ多くの働く場所、働く機会を提供できるよう対応してきた。年齢構成は時代を反映して「若年者が少なくミドル層と高齢者層が多い」という逆ピラミッドを形成しているが、全体の雇用バランスを考慮しながら、長年勤務する職員のキャリアの持続性を確保する施策を展開している。  こうした年齢バランスになった要因について吉田室長は、「ひとつは単純に若年労働者の減少という側面があります。30年前までは福祉の専門学校から新卒者が毎年入所するといったこともありましたが、いまは若手人財の確保がむずかしくなっています。そのうえで、当施設の方針として、『一度勤務していただいた方には、定年を迎えてもずっと働き続けていただきたい』という思いがあります。この方針のもと、さまざまな仕組みをつくり続けてきました。その結果、ありがたいことに離職率が減り、勤続年数の長い方が増えてきたのです。つまり定年後も離職することなく活躍できるような環境となってきたために、全体的に年齢層が上がっているのです」と話す。 「介護福祉士実務者研修」と「ケアマネージャー受験対策講座」でキャリアアップを促進  同法人においては、職員がキャリアアップできる環境整備に注力しており、もちろん高齢職員のキャリアアップを図る取組みにも注力している。そこに高齢職員の「学び直し」がある。  その一つが国家資格である介護福祉士の資格取得を支援する、「介護福祉士実務者研修」と「介護福祉士対策講座」だ。  介護福祉士実務者研修は、専門の学校に行かなくても介護福祉士の受験資格を得ることができる制度で、同法人で働きながら受講できるプログラムとなっており、介護分野の専門知識がなく未経験からでも受験資格を取得することができる。この制度は、高齢職員だけではなく、若年層の雇用の幅を広げるための施策でもあるが、高齢職員とのかかわりについて、吉田室長は次のように話す。  「福祉の周辺業界、例えば看護師や医療関係者などが高齢となり、セカンドキャリアとして介護の世界に入ってくる例はたくさんあります。その方々に、少しでも専門性を高めてもらい、介護職として今後のキャリアを形成していってほしいという思いもあります」  介護福祉士の国家試験は毎年1月にあり、試験の前には試験本番に備えるため、外部講師を招いて介護福祉士対策講座を毎年実施して、受験する職員を支援。若手だけではなく、これまでに中高年職員16人がこの講座を受講している。  このほか、「ケアマネージャー受験対策講座」を毎年実施している。これは、ベテランとなった専門職員の、より長期的な雇用を実現するためのキャリア形成支援の取組みだ。  「ご存じの通り、介護の現場というのは、ある一定の年齢になると、身体的な負担が大きくなってきます。もちろん『現場で働き続けたい』と希望をする方もいますが、身体的な負担の少ないケアマネージャーとして、相談業務を担当したいという職員が一定数いるので、そういった要望に応える形で行っている取組みです」(吉田室長)  ケアマネージャーになると、同じグループ内のフェニックス在宅相談センターでの勤務が可能となる。同センターでは、在宅勤務やフレックスタイム制度が導入されており、職員一人ひとりの暮らしに合わせた働き方を選べるため、就労意欲の向上をうながすとともに、ワーク・ライフ・バランスの調和も図れるということで、この対策講座を受講してケアマネージャー試験に挑戦する職員は少なくない。  「最近では、配偶者の介護を自宅で行っており、『働き方が選べるフレキシブルさが魅力』と感じて、ケアマネージャー資格を取得した職員もいます。高齢職員にかぎらず、出産や子育てなどと仕事を両立するための制度、ということができると思います」(吉田室長) 「スーパーバイザー」や「介護助手」など管理職経験者や求職者に新たなキャリアを提示  一方で、管理職経験者の高齢職員のキャリア形成を支援する仕組みとして、「スーパーバイザー制度」がある。  これは長年にわたって実務経験を積み、管理職としての経験も持つ役職定年後の高齢職員をスーパーバイザーに任命し、後進の育成をになう立場として活躍してもらうための仕組み。役職定年で若い世代とバトンタッチする際、役割を明確化させるという意味もある。  「スーパーバイザーは、若手や新規採用者の指導・教育を行い、特に『ヒューマンスキル』や『コンセプチュアルスキル』を育むことに重点を置きながら、リーダー職や管理職を支えてもらいます。2025年は特に自己流やその場かぎりの対応が許されない『接遇』に関して力を入れて指導してもらう方針です」(吉田室長)  研修の企画や実施にあたっても、リーダー職をサポートしながら、OJTやチームカンファレンスを通じて現場の一体感をつくり出す役割をになうスーパーバイザーは、高齢職員の働く意欲も引き出す仕組みといえる。  また、就労を希望する高齢者の働く場を創出し、さらに幅広い働き手を確保するために導入された仕組みとして「介護助手」がある。  介護助手とは、介護職員をサポートする職種であり、食事の配膳や掃除、ベッドメイキングなど、利用者の身体に触れない範囲でのサポートを行い、直接的な身体介護が求められる介護業務に付随する周辺業務をになう。資格を有する介護職員に本来の業務に専念してもらうことで、業務の機能分化とサービスの質の向上を図り、あわせて就労を希望する高齢者などにその機会を提供するのが目的だ。  「毎年、『介護助手体験会』というものを開催しており、2024年に行った同体験会には、20代から70代の方に参加いただきました。施設の見学を含め介護助手の仕事体験、食事や清掃など関連した業務の説明などを行いましたが、『介護に関心はあるけれども、やっぱりむずかしそう』、『自分にできるかな』と躊躇されてる方に、介護助手という周辺業務でお手伝いできることがある場としてアピールしています」(吉田室長) 写真のキャプション 社会福祉法人フェニックスが運営する特別養護老人ホーム「メゾンペイネ」 吉田理企画室室長 【P23-27】 特別寄稿 ミドル・シニアのリスキリングが進まない要因は? 株式会社ライフシフト 会長・CEO 多摩大学大学院 名誉教授 徳岡(とくおか)晃一郎(こういちろう) 1 はじめに  日本の中高年のリスキリング(本稿では「学び直し」と同義とします)は惨憺(さんたん)たるものです。株式会社パーソル総合研究所の調査では、中高年で学び直しを行っている人は14.4%にとどまります※1。また厚生労働省の令和4年度「能力開発基本調査」によると、学び直しをしない理由は男女ともに、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(男性63.7%、女性48.9%)がトップです(図表1)※2。  しかし、AIの急速な発達を見るまでもなく時代はよりいっそう先へ先へと動いています。現状に埋没していては次の時代の仕事にはありつけません。いまや「仕事ばかりしていると仕事さえできなくなってしまう」時代なのです。  もちろん、これだけリスキリングが話題になっているいまですから、その言葉を知らない人はまずいないでしょうし、やらなくてよいと思っている人も少ないでしょう。  しかし、大学を出て就職することで、「勉強なんかしなくてもよくなった!」と勘違いして20数年、何もしてこなかった中高年には勉強習慣が消滅している方が多いのです。新聞は読まない、読書もしない。そんな人がなんと多いことか。50歳以上では月に本を一冊も読まない人が56%という調査もあります※3。スマートフォンを握りしめてスマホゾンビになってしまっているのでしょう。  こうしていわゆる“Knowing-Doing Gap(わかっちゃいるけど、実行できない)”を退治できずに、ズルズルと年を重ねてしまうわけです。 2 リスキリングのメリット  私はリスキリングのメリットとして三つ考えています。一つめは当然のことながら、いまの仕事のパフォーマンスアップです。「学びはOJTで十分」とか、「会社がやってくれる研修を待てばいい」(参加しろといわれるから仕方なく参加するのも含め)という風潮がある反面、しっかり自ら学びに向き合っている人たちの実感では、「仕事のパフォーマンスが高まる」、「学びが将来のキャリアに活かされる」という人が多く、学び直しを3年以上している人はやっていない人と比べ年収で30万円の開きがあるという調査もあります(前出のパーソル調査※1)。  二つめは私が主張している「青銀共創(せいぎんきょうそう)」によるイノベーションです。「青=ヤング」、「銀=シルバー」をさしますが、世代を越えて強みと弱みを補い合うことで、銀からは経験や知識・技能の伝承ができ、青からは最新のデジタルノウハウが学べ、両者が協働することで世代を越えたDXなどのイノベーティブなソリューションが生まれます(図表2)。例えば、ある大手製造業の会社では定年延長に合わせて青銀共創に力を入れており、中高年の活躍の場が広がっています。人口減少で若手が少なくなるなかで、学び続ける中高年には活躍の場が確保できるのです。そうでない人は会社の中の「粘土層」となり、お荷物化していきます。  三つめは第二の人生でのデリスキング(リスク低減)です。60歳の定年を迎えてもそこで現役生活を終えるわけにはいかないのが人生100年時代です。社会から孤立せず、そこそこの収入もキープしながら生きがいを持って人生100年を楽しむには、やりがいの持てる仕事を定年後の第二の人生で得ることが重要です。やはりそのためにはしっかり準備することが欠かせません。リスキリングで知の再武装を施し、会社の看板が外れても自立できるようにするのです。 3 リスキリングできる人には目的がある  リスキリングの学習内容について、先のパーソル総合研究所の調査では、トップが英語、次にIT、資産形成・資産運用と続いています。私の友人(40代)のKさんはいま英語のリスキリングに取り組んでいます。彼の仕事はITコンサルティングですが、デジタル技術やアプリケーションの分野では、世界レベルのデジタルの進歩からは周回遅れといわれる日本の知識だけでは、「自身の価値も弱くなってしまう」という危機感を持っているのです。英語でなければ世界最先端のナレッジは得られないのです。そこで始めたのが生成AIを活用した英語の壁打ち練習です。英語の文献を訳させるだけではなく、自分の疑問やプロンプトを英語化し、それを添削してもらいます。音声でもできるので、会話の練習にもなるわけです。こうして英語を学びながらデジタルの最新知識を得るという一石二鳥のリスキリングをしているわけです。Kさんは、自分のパフォーマンスを上げるという明確な目的を持っています。  また、国内有数のメーカーの工場長を務めあげたMさん(50代後半)は定年が間近に迫るなかで、第二の人生の生き方を考えました。工場長時代に「もっとよい工場にするためには、デジタルの力を使って業務効率を高められるはず」という問題意識を持っていたのですが、デジタルスキルがなく手がつけられませんでした。そこで定年後は工場内での脇役にとどまらずに、現役時代の思いを叶えるべく同社のDX推進チームへ移籍を希望し、ゼロからアプリ開発を学び始めました。独学でアプリ開発スキルを身につけたMさんはいまでは、工場の事務工数削減に資するさまざまなアプリを独自に開発できるようになり、工場の若手から多くのDXの注文をこなすまでになっています。青銀共創と第二の人生のためのリスキリングという目的を持って臨んだわけです。  KさんやMさんのような方々が、私の関係しているライフシフト大学や多摩大学大学院MBAで学んでいます。自分の第二の人生を組み立てる目的の50代の方々や、自社でのイノベーションに貢献するための力を身につける目的の40〜50代の方々など、みなさん自分の人生を考えるなかで、自分の生き方の目的を見いだし、そのためにリスキリングに挑戦しているのです。  このように自分の未来の目的を考えてキャリアデザインやそのためのリスキリングをすることをキャリア自律といいます。他人任せ、会社任せ、会社の看板ではなく、自分の看板を創るわけです。「Will・Can・Must」という表現はよく聞かれます。やらなくてはならない(Must)に合わせて、自分の意志(Will)や能力(Can)を調整していくキャリアの考え方ですが、これは受け身です。会社の命令に自分を合わせ重宝がられます。しかし、自身の目的を持って生きることはできません。その代わりのコンセプトが「Will・Can・Create」です。自分のやりたいこと(Will)と得意なこと(Can)を明確にして、未来を創造する(Create)のです(図表3)。受け身では学ぶ意欲は出ません。より主体的に生きると決めることでリスキリングの道が開かれるのです。 4 目的を見いだすには自分の歴史を見つめることから  では、主体的に生きるためにはどのように目的を見いだせばよいのでしょうか。本稿では三つお示ししましょう。まず一つめは、歴史をふり返ることです。ライフシフト大学では「職務波乱万丈記」という自分の歴史の描写から始めます。図表4(26ページ)のイメージです。  自分のキャリアの歴史をふり返るなかで、自分がやりたかったこと、かつて持っていた夢、自分のモチベーションが上がる理由を探っていきます。そこに自分の人生の目的を見いだせる可能性があります。二つめは未来ビジョンです。次の10年でいったい自分は何をしたいのだろうかとストレートに自分に向き合います。ライフシフト大学では「思いのピラミッド」というツールで自分の未来を描きます(図表5)。その通りに行くとはかぎりませんが、「予言の自己成就」という言葉がある通り、自分の夢を強烈に描けば描くほど実現へ向けて動き出せるものです。逆に日々の作業に埋もれていてはどこにも行けはしません。  三つめは自分らしさを考えることです。特に第二の人生を視野に入れる場合はやはり会社の束縛から離れて、自分らしく生きたいものです。自分の価値観を探ったり、私が提唱している「4S(Scenario, Speed, Science, Security)※」など、日本の弱点、すなわち多くの人が弱いところを自分の売りにできるように学ぶのです。自分の価値観や自分の売りを意識することで、自分らしさをつくり込む動機が生まれ、そこを強化するリスキリングの目的ができてきます。 5 Knowing-Doing Gap克服へ向けて  目的が見いだせたら、リスキリングの動機が生まれるので、その動機をどうドライブしていくかです。五つのポイントをあげておきましょう。 @まず小さなことから始める  MBA大学院に行くというのは後述するようにとても重要なのですが、やはりいきなりはハードルが高い場合が多いでしょう。Kさんのように生成AIをうまく使うのはどうでしょうか。いろいろな疑問を打ち込むと、いろいろな気づきを得られます。「どうやって学ぶのか簡単な方法を教えて」とプロンプトを打ち込めば、即座に答えを返してくれます。そのなかで自分ができそうなことを始めてみるのです。図表6は私が聞いた際の生成AIの答えです。 A自己投資枠を設定する  リスキリングにお金と時間をきちんとかけないと意味のあることはできません。読書するにも新聞を読むにも時間がかかりますし、本代もかかります。よい先生に習おうと思えば授業料がかかります。このような時間とお金の自己投資をケチってはダメです。一日2時間は勉強やスマートフォン以外の情報収集に使う。給与の5%は勉強代に使うなど、しっかりと自己投資枠を設定しましょう。 B仲間を得る  一人でコツコツよりも仲間を得ることで学びはずっと楽しくかつ刺激的になります。学校時代を思い出してみましょう。利害関係のない友だち同士の学び合いのイメージです。一緒に未来の日本や地域の活性化など、自分たちの子どもたちのためにどういう社会を残していくべきか、自分は何をすべきかといった中高年らしい課題について議論することもできます。学び合う仲間がいれば、目の前の仕事ばかりで忘れていた人生への情熱を呼び覚ますこともできるかもしれません。 C自分を枠組みに放り込む  少し気分が乗ってきたらしっかりした学びに入るために自分を縛りましょう。最適なのがMBA大学院です。2年間、会社と並行して夜間や週末に学ぶしかない状況に自分を追い込むのです。変化の大きくなる時代に、20年前の忘れかけた古い知識では勝負できません。新たな知見を骨太に学ぶことでしっかりとした知識基盤を再構築することが不可欠です。欧米ではあたり前の社会人大学院への再入学が日本ではできていない。このことが日本の競争力の劣化に直結しています。豊富な経験と暗黙知を持った中高年こそ、大学院で学ぶことでレバレッジが利きます。 Dビジョン達成のシナリオを描く  リスキリングの目的を持つために描いた「思いのピラミッド」を実現するための入念な作戦計画を描きます。3年間の中期計画を会社では立てますが、それと同じことです。夢がいつまでも夢で終わらないように現実に落とし込んでいくのです。  このような五つのポイントを押さえることができるように、ライフシフト大学や多摩大学大学院MBAは設計されています。自分を枠組みに放り込み、自己投資を始めざるを得なくできるのです。そして、そこには在籍期間中もそして卒業後もずっと一緒に学びあえる異業種の仲間たちがいるのです。同じ釜の飯を食べながらフラットな関係で、夢や問題意識を語りあえる仲間はご自身の組織や会社にいるでしょうか。中高年になったいまこそリスキリングをエンジョイできるのです。そんな場を見いだしてリスキリングを始めてみてください。 ※1 株式会社パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」(2023年) ※2 厚生労働省「令和4年度 能力開発基本調査」(2023年) ※3 株式会社オトバンク「ミドル・シニア世代の読書習慣調査」(2023年) ※ 徳岡晃一郎『リスキリング超入門』(2023年、KADOKAWA) 図表1 自己啓発を行う上での問題点の内訳(正社員のうち、性別)(複数回答) 仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない 男性63.7% 女性48.9% 費用がかかりすぎる 男性30.3% 女性29.7% どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない 男性21.3% 女性26.5% 家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない 男性20.7% 女性37.5% 自己啓発の結果が社内で評価されない 男性20.1% 女性17.1% 自分の目指すべきキャリアがわからない 男性17.4% 女性26.7% 適当な教育訓練機関が見つからない 男性15.7% 女性14.9% コース等の情報が得にくい 男性13.8% 女性14.0% コース受講や資格取得の効果が定かでない 男性13.1% 女性12.2% 休暇取得・定時退社・早退・短時間勤務の選択等が会社の都合でできない 男性10.9% 女性8.7% その他の問題 男性5.7% 女性5.2% 出典:厚生労働省令和4年度「能力開発基本調査」(2023年) 図表2 青銀共創 若い層と中堅・ベテランが、棲み分けし、持ち味を寄せ合って、助け合い、創造し合う ・若手 トップラインを伸ばす第一線 強み ・スピード感 ・デジタル ・若い人のマーケット知識 ・記憶力、IQ ・体力、身軽、ノリ 弱み ・経験不足、知識不足 ・クレーム対応が怖い ・先の読みがむずかしい ・ベテラン ワイズエルダーとして持続可能性を支える 強み ・経験による洞察力 ・深い技術と判断力 ・感情理解(EQ) ・俯瞰的思考 ・奉仕の心 弱み ・忍び寄る体力の衰え ・最新技術のフォロー ・健康不安 ※筆者作成 図表3 キャリア自律へ向けての発想の転換 若者主役型 Will Can Must ・若手がつねに会社の中心 ・年をとった人は脇役でいい ・ベテランの出番が減る ・余生という甘えも忍び寄る 青銀共創型 Will Can Create ・自分がいればこその価値を発揮 ・頼られる存在に ・キャリアの最後を美しく ・いつまでも夢がある ※筆者作成 図表4 人生のストーリー:職務波乱万丈記 ・モチベーションが上がるのはどんなときでしょうか? ・今後の人生でもモチベーションを高く保つために、何を自分の課題にしますか? マークを最高だったときにつけてください 年齢 30 40 50 60 人生のモチベーション・充実度 A社に入社しかし人事部配属で失望 イギリス留学合格 開発部門の人事部本社人事企画部 バブル崩壊でリストラ担当に 念願の海外出向 帰国後、再びリストラ担当になり、会社の先が見えず退職を決意 コンサルへ転職成功 大学院教授を兼務 還暦を期してコンサルを退職し、独立し起業 ※筆者作成 図表5 思いのピラミッドを利用して自分の未来への思いをあぶり出す ビジョン 背景 ストーリー 壁・しがらみ 突破するポリシー、革新的具体策 ・今後、いまの仕事以外で成し遂げたい大きな夢 ・いまの仕事あるいは将来の到達点での生きざま ・いままでの会社で教わったこと、経験 ・時代のニーズ、市場動向、技術革新 ・達成された暁のイメージ ・達成する道筋のイメージ ・自分の知識・スキル・経験不足 ・資金的制約 ・家族の問題 ・アクションプラン達成に向けた心構え ・定量・定性目標 ・強い思い・情熱を持って実現したいこと ・共通善、次世代に残したいもの ・自分の大事にしたい価値観 ・自分を突き動かす内発的動機 ・日本、次世代、子供たちへの思い ・先輩・先人の例 ・映画や小説を引用 ・社会・業界の慣習、常識、無意味な聖域 ・社会的制約 ・技術的制約 ※筆者作成 図表6 ChatGPTが考えた最速でリスキリングする方法 □@目的を決める(3 分)  :「何のために学ぶか?」を考える □A無料の学習サイトで基礎を学ぶ  (YouTube、Google の無料講座) □B短期集中のオンライン講座を活用  (Udemy、Coursera) □C学んだらすぐ実践する  (3日以内にアウトプット) □D毎日15分だけ継続する  (スマートフォンでリマインダーをセット) 1カ月でスキル習得、転職・副業・昇進に活かせる! ※Open AI「ChatGPT」生成コンテンツを基に筆者作成 【P28-31】 TOPIC 「ミドル・シニア層の学びに関するインサイト調査」 株式会社ベネッセコーポレーション  少子高齢化などの影響による労働力人口の減少が続くなかで、企業には高齢者を含む多様な人材の活用が求められており、高齢者を戦力として活用していくための「学び直し」支援の取組みは、これからますます重要になります(今号の特集をご参照ください)。  その一方で、高齢者自身もまた、能動的に「学び」に取り組む姿勢は欠かせません。本稿では、株式会社ベネッセコーポレーションが2024(令和6)年に45〜69歳の人を対象に行った「ミドル・シニア層の学びに関するインサイト調査」の結果をご紹介します。 @ミドル・シニア層の「働き方やキャリア」と「人生やライフプラン」の見直し状況と人生観  「働き方やキャリアの見直し」と「人生やライフプランの見直し」状況を聞いたところ、どちらもほぼ半数の回答者が「見直しは検討していない」状況の「人生このままでいいや層」でした。また、「検討はしているが、見直しは行っていない」回答者が「働き方やキャリアの見直し」では27.3%、「人生やライフプランの見直し」では39.1%存在し、見直しに踏み込めていない「モヤモヤ層」と合わせるとミドル・シニアの8割以上がキャリアや人生の見直しができていないことが分かりました。特に、「人生やライフプランの見直し」は「働き方やキャリアの見直し」よりも検討をしている割合が高く、自分自身の人生について不安を抱いている回答者が多いことが見て取れます。(n=982) 働き方やキャリアの見直し 見直しは検討していない 58.7% 検討はしているが、見直しは行っていない 27.3% 見直しを行っている 14.0% 人生やライフプランの見直し 見直しは検討していない 46.4% 検討はしているが、見直しは行っていない 39.1% 見直しを行っている 14.5%  また、現代のミドル・シニア層は、社会環境の変化で「人生のゴール、モデルケース」が消失し、社会人人生のほとんどが不況であったため、希望の人生を果たせていないことが特徴として見られます。中でも、ミドル層は人生の後半に備えて自分らしい人生の基盤を固めたい傾向が強く、シニア層はただ漫然と余生を過ごすのではなく、「自分が主役の人生」を開花させたい願望が強い傾向がありました。 ミドル層・シニア層の意識比較 組織・仕事 家庭 健康・体力 視点 人生観 ミドル(45歳〜59歳) 現場のトップで若手をマネジメントし、組織を考える立場だが昇進の先行きも見え始めている。 子育てにお金のかかる時期。 親の介護も開始し、自由が少ない。 老化の兆し・更年期。老後に備えて基礎体力や健康基盤を整える。 仕事にも家庭にも立場と責任。 守っていくべき生活がある。 人生折り返し。これまでの「棚卸し」をして人生の方向性を見通したい。 シニア(60歳〜69歳) リタイア後にこれまでのように働くか、別のことを始めるか、選択が求められている。 子育ての完了。親の超高齢化・逝去と向き合い、自分自身の終末を意識。 大きな病気を経験するなど、具体的な健康対策と生活スタイルを検討する。 自己と向き合う。経験という資産。組織や家族に代わる居場所や生きがいを持ちたい。 これからこそ人生の集大成。 今までにない経験や、やり残したことを達成したい。 A性別・年代別の傾向と学びに対するアプローチ  本調査では、男性よりも女性の方が学びに対する意欲が高いという結果が分かりました。男女ともに40〜50代では「好きなことで世に役立つ」ことに対して魅力を感じる傾向が最も高く、60代では「個人裁量で社会とつながる」ことに対して魅力を感じる傾向が最も高いという結果となりました。一方、スキル習得に対する関心は、年齢が上がるにつれて低下し、60代は、「社会とのつながり」を求める傾向が強くなります。  45-49歳の男性は、「キャリアに対する不安」が強いものの、50-59歳になると大幅なキャリア変更は難しくなり、「人生の可能性」を模索し、60歳以降は「社会との新たな接点」を求める傾向にあります。自分が好きなことや興味関心を整理しながら、今後の人生の可能性を拡げ、社会とつながる接点にもなるような学びをすることで意欲的に学びを進めることができることがわかりました。  一方、女性は、男性に比べて組織への所属への関心は低く、45-49歳は「キャリアと家庭の両立」を重視し、50-59歳は「スキル習得への強い意識」を持つことが分かりました。60歳以降の「社会とのつながり」を見据え、組織の内外を問わずに活躍できるキャリアや人生設計を叶えられる学びを行うことで、自分らしく社会とつながることができるようになります。 男性年代別:バリュープロポジション(VP)※1の魅力度と未充足度※2 45-49歳のVP魅力度 50-59歳のVP魅力度 60-69歳のVP魅力度 45-49歳のVP未充足度 50-59歳のVP未充足度 60-69歳のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 54.1% 50.3% 52.3% 21.1% 23.1% 26.6% A埋蔵スキルをアップデート 51.4% 42.2% 42.6% 22.0% 26.2% 31.2% B楽々最新スキルで可能性拡張 45.9% 37.9% 41.2% 22.0% 29.7% 33.2% C組織・異世代で意識共有 36.7% 37.9% 34.7% 24.8% 33.8% 34.7% D多様な人生の選択肢を知る 48.6% 47.2% 40.7% 23.9% 23.6% 31.2% E個人裁量で社会とつながる 43.1% 44.6% 55.3% 20.2% 28.7% 26.1% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 45.9% 41.5% 45.2% 22.9% 26.7% 34.2% G旧型思考をクリーンアップ 41.3% 41.0% 35.2% 28.4% 26.7% 33.2% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 男性45-49歳:(n=109) 男性50-59歳:(n=195) 男性60-69歳:(n=199) 女性年代別:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 45-49歳のVP魅力度 50-59歳のVP魅力度 60-69歳のVP魅力度 45-49歳のVP未充足度 50-59歳のVP未充足度 60-69歳のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 64.2% 61.3% 53.9% 26.3% 25.1% 23.8% A埋蔵スキルをアップデート 56.8% 50.3% 44.0% 24.2% 32.5% 37.3% B楽々最新スキルで可能性拡張 56.8% 49.2% 42.5% 29.5% 37.2% 33.7% C組織・異世代で意識共有 42.1% 42.4% 29.5% 40.0% 34.0% 37.8% D多様な人生の選択肢を知る 55.8% 54.5% 50.8% 24.2% 24.6% 28.0% E個人裁量で社会とつながる 58.6% 55.5% 58.5% 29.5% 22.0% 29.5% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 61.1% 60.7% 49.7% 26.3% 29.3% 26.4% G旧型思考をクリーンアップ 41.1% 47.6% 36.3% 29.5% 33.0% 29.5% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 女性45-49歳:(n=95) 女性50-59歳:(n=191) 女性60-69歳:(n=193) ※1 バリュープロポジション(VP)……学びに期待すること ※2 未充足度……各VPがどの程度今の学びや、学びに関するサービスで満たされていないと感じるか B役職および定年後の傾向と学びに対するアプローチ  総じて、役職が上がるにつれて学びに感じる魅力は高く、未充足度も低くなっているのに対して、現場に近いポジションのミドル・シニア層では学びに感じる魅力は低く、未充足度も高くなる傾向が見られました。経営層・役員・部長クラスは「組織に変革をもたらす意欲」、課長クラスは「組織内での学びを重視し、異世代と意識共有をしたい意欲」が強いため、自分自身の人生や組織に変革をもたらす学びに積極的です。一方で、係長・主任・リーダークラスおよび一般社員クラスは「個人の裁量を重視」しているため、「自分の好きなこと」を深めるのが学びの第一歩になることが分かります。  定年後に関しては、現在の組織に軸足を置きつつ「新しいキャリア構築」を志向する「再雇用層」は、自分の可能性を拡げる学び、「スキルを磨く」ことへの関心が高く、学びに対して意欲的な「独立層」には実際のビジネスで役立つスキルの習得が効果的です。「セミリタイヤ層」「完全リタイヤ層」は、「個人の裁量」や「趣味」を重視しているため、「自分軸」に合わせた学びを行うことで人生をより充実させられることがわかりました。 役職別:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 経営層・役員・部長のVP魅力度 課長のVP魅力度 係長・主任・リーダーのVP魅力度 一般社員のVP魅力度 経営層・役員・部長のVP未充足度 課長のVP未充足度 係長・主任・リーダーのVP未充足度 一般社員のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 63.6% 61.0% 57.1% 50.2% 18.2% 20.3% 15.6% 27.3% A埋蔵スキルをアップデート 49.1% 45.8% 51.9% 44.6% 21.8% 18.6% 24.7% 28.6% B楽々最新スキルで可能性拡張 43.6% 49.4% 49.2% 41.6% 23.6% 23.7% 24.7% 29.4% C組織・異世代で意識共有 49.1% 50.8% 40.3% 31.6% 36.4% 22.0% 27.3% 35.9% D多様な人生の選択肢を知る 60.0% 61.0% 50.6% 42.9% 14.5% 23.7% 22.1% 26.4% E個人裁量で社会とつながる 54.5% 52.5% 56.4% 52.8% 21.8% 18.6% 22.1% 26.0% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 55.9% 54.5% 54.5% 40.7% 21.8% 15.3% 19.5% 32.0% G旧型思考をクリーンアップ 52.7% 45.8% 41.6% 37.2% 29.1% 20.3% 24.7% 29.9% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 経営層・役員・部長:(n=55) 課長:(n=59)係長・主任・リーダー:(n=77) 一般社員:(n=231) 定年後の働き方:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 再雇用層のVP魅力度 独立層のVP魅力度 セミR層のVP魅力度 完全R層のVP魅力度 再雇用層のVP未充足度 独立層のVP未充足度 セミR層のVP未充足度 完全R層のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 54.5% 64.3% 59.6% 38.0% 23.4% 11.9% 28.2% 21.1% A埋蔵スキルをアップデート 47.3% 76.2% 50.0% 28.2% 25.1% 4.8% 30.8% 28.2% B楽々最新スキルで可能性拡張 43.1% 66.7% 41.7% 38.0% 24.6% 4.8% 35.9% 28.2% C組織・異世代で意識共有 44.3% 54.8% 34.0% 23.9% 28.7% 23.8% 40.4% 29.6% D多様な人生の選択肢を知る 53.5% 71.4% 41.7% 43.7% 24.0% 9.5% 30.1% 21.1% E個人裁量で社会とつながる 53.3% 73.8% 60.3% 32.4% 19.8% 14.3% 26.3% 31.0% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 45.5% 69.0% 49.4% 36.6% 21.0% 9.5% 35.3% 29.6% G旧型思考をクリーンアップ 44.3% 59.5% 40.4% 26.8% 23.4% 16.7% 35.9% 28.2% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 再雇用層:再雇用を通じて働きたい/働いている(n=167)独立層:独立をする等して働きたい/働いている(n=42) セミリタイア層:セミリタイアし無理のない範囲で働きたい/働いている(n=156) 完全リタイア層:完全にリタイアし極力働かずに過ごしたい/過ごしている(n=71) 【P32-33】 偉人たちのセカリアドンキャ 歴史作家 河合(かわい)敦(あつし) 第5回 精巧な日本地図をつくった偉人 伊能(いのう)忠敬(ただたか) 49歳で隠居した後に 夢であった学問の道へ  伊能忠敬は、日本中を歩いて正確な日本地図『大日本沿海輿地全図(だいにほんえんかいよちぜんず)』をつくった人物です。しかもその偉業は、セカンドキャリアでなされたものでした。今回は、そんな忠敬について紹介したいと思います。  上総国(かずさのくに)小関村(こせきむら)で生まれた忠敬は、幼いときに母を亡くし、婿養子だった父は再婚してしまいます。そこで忠敬も18歳のとき、下総国(しもうさのくに)佐原村(さわらむら)の伊能家に婿入りしました。伊能家は酒造業や米の売買などを営む商家でした。学問好きな忠敬は学者として身を立てたいと考えていたのですが、大好きな学問を絶って家業に専念しました。これまでの商売に加え、炭問屋や運送業など手広く商いを広げ、巨額の財を成しました。  37歳のときに佐原村の名主に選ばれ、在任中は利根川の堤防工事に力を尽くしました。また、飢饉で苦しむ村人を私財で救ったので、人々から尊敬を集めました。  功成り名遂げた忠敬は、長男の景敬(かげたか)に家督をゆずって隠居しました。まだ49歳でしたが、当時としてはすでに老年です。隠居後は余生をゆったり過ごすのが一般的でしたが、翌年、忠敬は住居をにわかに江戸の深川(ふかがわ)へ移し、江戸幕府の天文方・高橋至時(よしとき)に弟子入りしたのです。若いころに断念した学問へ夢をかなえようとしたのです。どうしても学者になる思いを断ち切れなかったのだと思います。  天文方というのは、天文観測や改暦、測量や地誌の編纂などを行う幕府の役職です。ただ、師の至時は忠敬より19歳も年下でした。けれど忠敬は心から至時を尊敬し、だれよりも熱心に知識を吸収しようとしました。すでに老年でしたから、物覚えはよくありません。けれど、そのハンデを努力で補いました。そんな根気強さと熱意に打たれた至時は、持ちうるかぎりの知識や技術を老弟子に伝授していきました。結果、忠敬は5年ほどで至時の持つすべての学識を習得し、第一の高弟と目されるようになったのです。たとえ能力が高くなくても、コツコツ真面目にやることが大切だとわかります。  忠敬は天文学や測量学を好み、なんと、自宅に天文観測所をつくってしまいます。そしてなるべく外出をひかえ、用事も午前中ですまし、午後に準備を調え、夕方から嬉々として天文観測に励みました。  物事に入れこむ質だったようで、天文観測に凝っているときは人とあまり話をせず、師の至時と学問上の討議をしているときも夕方近くになるとそわそわし、途中で席を立って帰宅することもありました。脇差しをはじめ身の回りの持ち物を忘れていくこともしばしばでした。 私財を投げ打ち蝦夷地の測量へ その精巧さに幕府も驚嘆  やがて忠敬は、地球の大きさを知りたいと考えるようになります。同じ経度にある2点の距離と緯度の差から地球の大きさは計測できます。そこで自宅(深川)から天文方の屋敷(暦局)がある浅草の蔵前(くらまえ)までたびたび歩測測量を行いました。ただ、2点の距離は離れていればいるほど、正確な数値が算出できます。そこで忠敬は、至時を通じて蝦夷地を測量して正確な実測図をつくりたいと幕府に申し入れました。  1800(寛政(かんせい)12)年閏うるう4月にようやく許可が出ますが、測量費用は忠敬の私財があてられ、幕府はわずかな補助しか提供しないことになりました。しかし喜んだ忠敬は少人数で同月19日に深川を出発、海岸沿いを歩測しながら北へと向かっていきました。険しい岸壁もよじ登って測量したので、襟裳岬(えりもみさき)近くの岩場で草鞋(わらじ)が切れ、素足のまま立ち往生することもありました。  ただ、完成した地図を見た幕府の閣僚はその精巧さに目を見張り、翌1801(享和(きょうわ)元)年、今度は三浦・伊豆半島から房総・常磐・三陸・下北半島までの測量を命じたのです。さらに翌年の第三次測量では、費用のすべてを幕府が負担し、測量隊の人数も大幅に増員されました。  1804(文化元)年、師の至時が41歳の若さで病没してしまいます。洋書の翻訳と研究に没頭し、無理が祟って病に倒れたといわれています。記録には残っていませんが、きっと忠敬は大いに嘆き悲しんだことでしょう。  同年8月、忠敬は東日本の地図を仕上げて幕府に献上しましたが、この地図は将軍家斉(いえなり)も上覧し、忠敬は十人扶持を与えられ幕臣(小普請組)に登用されました。ただ、それからも忠敬は測量の旅を続けました。心底、地図づくりが好きだったのです。測量のためなら命も惜しくないと思っていたようで、1811年の九州とその島々を実測する長旅では、出立の際、資産分配を記した書簡を家族に与えています。このとき忠敬は66歳でした。  この旅では、右腕として頼りにしてきた弟子の坂部(さかべ)貞兵衛(ていべい)が感染症にかかり、手当ての甲斐もなく43歳で亡くなりました。ショックだったのでしょう、以後、忠敬は測量隊員たちを叱らなくなったといいます。このとき忠敬は「鳥が翼をもがれたようなものだ」と辛い心情を家族に手紙で伝えていますが、じつはこのとき、長男の景敬も病死していたのです。家族は測量に障ることを恐れ、その事実を忠敬に知らせなかったのです。 情熱を持って偉業を成し遂げた忠敬のセカンドキャリア  1816年8月、忠敬は幕府から江戸府内の地図作成を命じられ、自ら陣頭指揮をとり10月末に完了しました。これが、忠敬の最後の測量となりました。忠敬が測量に費やした時間は9年半、測量した距離はおよそ4万km。地球を一周する長さでした。  いつも測量が順調に進んだわけではありません。弟子や近親の不幸、測量隊の不和があり、さらに持病のマラリアや喘息、痔に苦しみながらの測量旅でした。  最後の測量を終えた忠敬は、持病の喘息の発作をたびたびくり返すようになり、翌年春には床につくことが多くなり、1818年、73歳で永眠しました。  臨終の際、忠敬は「このような事業を成し遂げることができたのは、高橋至時先生のお陰だ。先生の傍らに葬ってほしい」と遺言。こうして忠敬は至時が眠る浅草の源空寺の墓の隣に埋葬されました。未完成だった忠敬の地図は、至時の子・景保(かげやす)の手によって仕上げられ、1821(文政4)年に『大日本沿海輿地全図』として幕府の老中らに提出されました。  あらためて伊能忠敬のセカンドキャリアをみて思うに、「情熱さえあれば、人はいくつになっても偉業を成し遂げることは不可能ではない」ということがわかります。 【P34-35】 第103回 高齢者に聞く生涯現役で働くとは  田中映子さん(80歳)は教育畑一筋に人生を歩んできた。定年退職後、地域でさまざまな活動を展開しながら、現在は駄菓子屋の店先で子どもたちを笑顔で迎えている。店に集う子どもたちはもちろん、若いお母さんたちのよき相談相手にもなっている田中さんが、生涯現役で働くことの喜びを語る。 狛江市 シルバー人材センター 駄菓子屋「狛もん」販売員 田中(たなか)映子(えいこ)さん 多くの人に支えられ教職に邁進した日々  私は山梨県北杜(ほくと)市で生まれました。桜の名所が点在する風光明媚な土地柄です。明治生まれの両親の末っ子ですが、父は農家の長男で公務員、母は高家の娘で心豊かな母でした。  小・中学校までは地元の学校に通いました。小学校のときの女性の先生が音楽やダンスに優れ、隣村小学校との交流、ラジオ出演や県大会出場など広い世界へいざなってくれました。この楽しい経験が後の進路や趣味につながったと思います。高校を卒業後は上京し、東京学芸大学へ進みました。教員になりたい思いが強かったからです。学生運動が盛んな時代でしたが、染まることもなく、充実した学生生活を送ることができました。  大学を出て最初に赴任したのが東京都北区の小学校でした。憧れの教師になれたのですから、教壇に立ったときの喜びはいまも覚えています。その後、結婚にともなって生活拠点が世田谷区に移りました。2人の子どもを育てながら、定年まで教員生活を続けることができたのは、夫はもちろん、親戚や同僚の協力のおかげだと思っています。じつは子どもが小さいころ、預ける先を探すのがひと苦労で、自主学童保育を運営したこともあります。それが後に行政を動かして正規の学童保育施設の誕生につながっていきます。定年退職後は、私にとって恩返しの旅が始まりました。  教師が天職という田中さんもたった一度だけ退職しようかと悩んだことがある。教頭に就任したころ、夫が病に倒れた。介護に専念しようとしたら「続けなさい」と、企業戦士の夫が強く背中を押してくれた。 恩返しのために一歩ふみ出して  2歳年上の夫は54歳という若さで亡くなりましたが、仕事をする私を最後まで応援してくれたことから、定年まで教職を通じて一人でも多くの子どもたちの未来を支えていきたいという気持ちが強くなりました。学級担任をしていたころ、子どもたちによくいい聞かせてきたことが二つあります。それは「弱い者いじめをしないこと」と「失敗をしてもくよくよせず次の行動に活かすこと」です。80歳になったいま、考えてみればこれは私たち高齢者にもいえることかもしれません。  その後、校長となり、60歳で教職生活に別れを告げました。それからの10年間は世田谷区のさまざまな事業にかかわり、世田谷文学館や総合庁舎、区民講座などで働きました。70歳まで区の仕事をしてから、いよいよ念願だった地域へ足をふみ出すことになりました。  世田谷区には「学童クラブBOP」があります。BOPとはBase Of Playing(遊びの基地)のことで、つまり放課後の遊びの基地を提供しようというものです。区内小学校64校すべてにBOPがありますが、際立っているのは親が働いていない子どもにも一緒に遊べる場を開いていることです。子どもを区別しないという点では共鳴するものがあり、BOPの事務局長を5年間務めました。  もう一つ、退職の年に立ち上げた「K小寺子屋」です。毎週土曜日に教員OB、保護者、地域の協力者とともに子どもたちの学力向上を願い16年間続け、後輩に引き継ぎました。現在も続いているのは画期的です。  恩を受けた人に恩を返すということはなかなかできないものです。できることがあるとしたら受けた恩を次の世代につないでいくことだと思い、私は積極的に地域に入っていきました。  田中さんは70歳で狛江(こまえ)市シルバー人材センターの存在を知る。一緒に人権擁護委員をやっていた元校長仲間が教えてくれた。「楽しいわよ」の一言にひかれてセンターを訪ねた。「仕事を探すというより人気が高いダンスサークルにはまりました」と田中さんは屈託がない。 ユニークな活動に魅せられて  「ダンスサークルチャーミーズ」にひかれて狛江市シルバー人材センターに登録しました。事務局長を筆頭にみんなで楽しもうという雰囲気があり、自分に合った居場所を見つけたような気がしました。とにかくスタッフの方々の発想がユニークで、かつ地域への愛着がみなさんとても強いのです。教員時代は朝早く出かけ、夜遅く家に帰る生活でしたから地域に仲間がいませんでした。それが、ダンスサークルを通じて地域のみなさんと知り合ってから、地域に仲間がいることが生きがいにつながることを高齢になってから痛感しました。  狛江市シルバー人材センターでは次々に新しい試みが生まれていますが、全国初といわれるのが、私のいまの職場である駄菓子屋「狛(こま)もん」の創業です。高齢化社会が急速に進むなか、会員に就業場所を提供するため、高齢者に負担の少ない「駄菓子屋」が2024(令和6)年9月につくられました。うれしいことに「駄菓子屋で働きませんか」と私に声をかけていただき、79歳での挑戦となります。  かつての駄菓子屋はそこに集う子どもたちの賑やかな声があふれていた。子どもが握りしめて汗ばんだ硬貨を、手で数えるおばあちゃんの姿がそこにはあった。 生涯現役で子どもの明日を見続けたい  駄菓子屋という発想にまず驚かされました。駄菓子の販売という仕事は体に負担がかからないし、子どもたちやお母さんたちと楽しくおしゃべりできる地域のコミュニティの場にもなっています。もちろんまだ始まったばかりで、これからいろいろ課題も出てくるでしょうが、何よりも子どもたちが目を輝かせて買い物をする姿を見ているとうれしくなります。  マスコミに取り上げられたことで、「私でも働けますか」とたずねてこられた私と同年代の方がおり、いまは楽しく一緒に働いています。  勤務時間は月4回、1回2時間30分のシフトが組まれます。ほかの日には人材センターのいずみ支所で月7日か8日、1日3時間のシフト制で受付等事務の仕事をしています。  駄菓子屋の販売員としては子どもたちにもお母さんたちの世代にも、とにかく笑顔で明るく接することを心がけています。駄菓子の世界も新商品が出てきますから商品の知識も磨かなくてはなりません。また、お金をいただくのですからミスのないようにしなければなりません。職場で日々鍛えられていると思っています。  オフの時間もいろいろ趣味があるので忙しく過ごしています。現役で働き続けるためには健康管理が大切であり、3食をきちんと摂り、質のよい睡眠をとることを心がけています。健康に一番よいのは人と楽しく語り合うことかもしれません。  明日は、どんな顔をして子どもたちがお店にやってくるでしょうか。豊かな未来を手渡すために、もう少しがんばってみようと思います。 【P36-39】 加齢による身体機能の変化と安全・健康対策  高齢従業員が安心・安全に働ける職場環境を整備していくうえでは、加齢による身体機能の変化などによる労働災害の発生や健康上のリスクを無視することはできません。そこで本連載では、加齢により身体機能がどう変化し、どんなリスクが生じるのか、毎回テーマを定め、専門家に解説していただきます。第5回のテーマは「自動車の運転適性」です。 福岡国際医療福祉大学 医療学部言語聴覚学科 教授 堀川(ほりかわ)悦夫(えつお) 第5回 自動車の運転適性 1 はじめに  個人の移動に関しては、モビリティ(移動行動全般)に関する最近の動向から、Maas(マース)※1やライドシェアの普及促進が叫ばれ、物流においては、インターネット通販の普及による宅配需要の増加というポジティブな側面が見られています。一方、労働力人口の減少や「2024年問題」に示されるような運転者不足、特に、バス、タクシー、トラックなどの職業運転者不足が深刻化しているというネガティブな側面も指摘されています。再就職などで運転業務にたずさわる方の年齢が高くなってきている傾向も見られます。  自動車運転は、モビリティの維持においてもっとも利便性が高く普及した手段といえますが、日ごろ、何気なく行っている自動車運転を、必要な要素に分解していくと、日本では「認知」・「判断」・「操作」の過程と考えられています。また、欧米で多用されるのが、3段階モデルで、「運転方略(どこへどのような経路で行くのか、など)」、「運転操作過程(ある場面で実際にどのような運転行動を選択するか、など)」、そして「実際の操作の実行(ペダルを踏む、ハンドルを切る、など)」から構成されています。運転は、さまざまな機能を総合した高度な行動といえます。その過程のいずれかに機能低下が生じる場合には自動車の運転が危険な状態になります。 2 運転が禁止となる一定の病気  その機能低下をもたらす要因として、疲労、疾患、服薬、加齢などがあげられます。道路交通法によって、一定の病気に関する運転禁止項目が規定されており、それらは、認知症、統合失調症、てんかん、再発性の失神、無自覚性の低血糖症、そううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害などとされています。そのほか運転に支障のあるものとして、認知機能の低下、身体の麻痺、意識消失をともなうような各種疾患などが指摘されており、これらの疾患はいずれもその疾患がもとで、安全な運転能力が維持できなくなる恐れのあるものです※2。  本稿においては、急性に発症する場合と慢性的に発症する場合などに分けて、最近の研究成果の一部をご紹介いたします。 3 急性発症  国土交通省の資料によれば、運転中に発症して交通事故に至った人数は2465人(2013〜2021年の9年間)で、心筋梗塞、心不全などの心臓疾患が369人(15%)、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など脳卒中が339人(14%)、大動脈瘤および大動脈乖離が77人(3%)と報告されています(図表)。このなかには死亡に至った例があり、426人(17%)となっています。各疾患群ごとに分類した死亡事故比率は、心臓疾患55%、脳疾患、および大動脈解離などが各12%となり、運転時の心臓疾患発症の死亡率が高いことがわかります。  脳卒中は、高齢者にかぎったものではなく、壮年期の働き盛りの方にも発症の可能性がありますので就労者にとっても雇用者側にとっても重要な問題となります。意識を失う、あるいは身体の麻痺が発症すると、例えば、前方の車両に対して、ブレーキを踏まなければという認知・判断自体ができない、判断ができたとしてもアクセルからブレーキペダルに足を移動して停止させることもできなくなります。また運転中に発症し、意識消失が生じた場合には、1回の衝突だけではなく、多重事故になり複数台の車両や歩行者、そして道路標識、看板などの損害が発生することがあります。  また特定の疾患によらず、治療のために服用している薬の影響による交通事故もあります。病院からの処方薬あるいは処方箋なしに薬局で購入できる薬、いずれもが運転に影響する副作用を生じる場合があり、多くの薬剤の添付文書においても、運転を控えるべき、あるいは運転禁止というような添付文書が示されていますので注意が必要です。  では、「そのような心臓疾患や脳卒中を防止したい」、そして「運転中の発症リスクを下げたい」ということになりますが、CT、MRIなど医療機器の発達によって、われわれの脳の形態を断層撮影して可視化することがかなり鮮明にできるようになってきたものの、脳の働きを可視化することや発症の予測や事故の予兆検出の方法は未だありません。これらの疾患の発症を防ぐための公衆衛生的な知識が重要になります。  その第一は、健康診断や人間ドックで定期検診を受けていただき、脳卒中のリスクが高い方を見いだして、少しでもそのリスクを下げることが必要になります。また、要精密検査となった場合、確実に精密検査を受けていただくことが必要となり、職場での受診喚起も重要です。  運転を職業としている方々においては、9時から17時までの勤務の方、深夜勤務の方、さらには長距離を重量物を積載して運転される方など、勤務形態が大きく異なります。途中で仮眠をとってまた運転を続けるというようなことが職務の状態から必要になりますが、適切な休憩時間をとったとしても、睡眠時間の減少、生活リズムの変化、食事による栄養バランスの乱れ、そして運動不足、腰痛、肩こりなどが生じます。さらに、喫煙、飲酒習慣の良否などはいずれも心臓疾患や脳卒中の発症リスクを高める行動となります。  職場のなかで交通事故を起こさないということはもとより、働いている仲間の健康維持にも深くかかわっています。 4 慢性発症、特に変性疾患  加齢にともない、人間の心身機能は変化してきますが、特に自動車運転にかかわる注意すべき変化としては「認知機能の低下」があります。認知機能は記憶、注意などの複合的な脳機能によるものですが、これが低下してくると、運転に影響をおよぼすことは容易に想像できます。そして認知機能低下と特に関連しているのが、認知症です。認知症にはアルツハイマー病、前頭側頭型認知症、びまん性レビー小体病などが該当し、さらに脳卒中による認知症が含まれて「4大認知症」といわれています。そしてこれらの疾患の診断に至ると、症状や機能低下が進行していくこと、治療法が開発されていないことなどから運転は禁忌となります。  脳卒中による認知症は、脳卒中発作によって発症の日時を確認できますが、ほかの認知症は、次第に機能低下が進行していくなかで、複数の認知機能低下と自立した生活が困難になることなどから診断されるため、発症の時点を詳細に確認することは困難です。例えば、アルツハイマー病は、脳内のタンパク質の一種が神経毒性を有する作用に変異することなどが原因と考えられ、その進行過程は、20年程度と考えられます。  認知機能低下は各種の検査によって数量化されますが、認知症の進行による機能低下と、加齢にともなう機能低下の両面が考えられ、その峻別は専門的な知識・経験を有する医療関係者によって進められますので、受診が必要です。  認知症の症状としては、時間や場所の認識(時間見当識、場所見当識)そしてワーキングメモリー、注意機能、空間知覚などの機能低下が見られますが、ほかに怒りっぽくなった、いままでできていたことができなくなった(例:ネクタイが結べない、食事の準備がうまくできなくなる、など)といったことがあげられます。  特に運転に関しては、初めての道でもないのに道に迷う、制限速度よりかなり速い、あるいは逆にかなり遅く走行してしまう、周囲の車の走行速度が速いと感じる、悪天候や夜の運転を必要以上に避けようとする、などが指摘されています。また、運転機能低下の初期の段階では、最近、車の周囲を軽く擦ることが増えた、駐車区画に入れることがうまくできなくなってきた、交差点で緊張することが多くなってきた、などの行動変化が見られます。  受診先としては、まずかかりつけ医に相談することをおすすめします。さらに必要であれば、脳神経内科、精神神経科、リハビリテーション科のような診療科に紹介をしてもらい、より精密な検査を受け、早期の診断・治療を開始するということが求められます。 5 日常的運転行動記録の重要性  ドライブレコーダーの普及にともない、一般車両での利用に加え、企業においても“運転診断”などの機能を標榜した装置やサービスの利用が増えています。単なる交通事故の記録から保険会社の査定や裁判に備えるような“交通事故記録器”のような利用法ではなく、日常的運転行動を記録して、運転者の再教育に応用することが有用です。  先行例では、当初、運転者から「見張られているようで嫌だ」というような反応が多く出ましたが、管理者や上司が叱責しながら危険運転を指摘するような運用ではなく、 安全運転管理者とドライバーが運転行動について客観的な資料をもとに話合いをし、より安全運転へ、そして業務の効率的な遂行へつながるような改善をしていくことが求められます。「そのためのヒントを探す」というような認識で対応したほうが効果が上がりますし、特に安全運転管理者がカウンセリングマインドを持ってドライバーと接することは非常に重要です。指摘された運転行動の修正による交通事故の減少、さらには保険料の減少、そして何よりも運転者の健康維持などに多大なる効果があると期待されます。 6 運転への復帰の可能性、運転リハビリテーション  脳卒中であれば発症し治療が行われ、そしてある程度の期間のリハビリテーションを経て、機能回復を示される方もいらっしゃいます。  雇用する側にとっては、その方の専門的技能を高く評価し、職務に復帰してほしいと考えるものの、運転可否判断、そして復職の判断が容易ではない場合もあります。  脳卒中後遺症のような方々はもう復職できないのか、運転業務に戻ることはできないのか、そのような判断は一義的にできるものではありませんが、脳卒中を発症してもその後、仕事に復帰、特に運転関係の仕事に復帰されたという方もいます。  日常生活のなかで「車の運転が必要という理由」が、「収入を得るため」であり、そのため「家族を養うために職場復帰」、そして「その中心的な業務が運転である」という方が運転リハビリテーションを行うことで、復職や運転復帰が可能になったケースでは、当事者本人の希望とともに、家族の理解、そして協力が必要です。  また、医療側が「運転可」という判断に至った場合には、さらに運転免許センターなどの公的機関と相談をしながら、運転可否について総合的に判断をしてもらうということも行われています。  私たちの研究チームでは、認知機能検査、運転シミュレータ検査、そして実車運転評価を組み合わせながら、医療サイドの意見を総合して診断書や意見書を交付し、運転免許センターなどでの安全運転相談を受けて判断をしてもらうといった取組みも行っています。  脳卒中発症によって事故を起こしてしまい、免許証が取り消しになった方が、免許の欠格期間を過ぎてから自動車学校に入り直して免許を取得し、日常生活において車を中心とした移動を行っているというケースもあります。  一方、脳出血からの治療、そしてリハビリテーションがかなり進んだ方で、本人が強く希望されて、運動系の機能の低下はほとんど見られなくなったものの、視野障害があり、やむなく運転をともなう仕事への復帰を断念したというケースもあります。 7 まとめ  これまで高齢者の運転と健康の問題、特に高齢あるいは障害のある方の職務への復帰という観点からまとめてきましたが、ケースバイケースの傾向が特に強い分野でもあります。  日本老年学会では、高齢者の基準を10年伸ばし、「75歳からを高齢者とすべき」という見解を示しています。高齢者は健康を守りながら再就職して自己実現を図れる、雇用者側は技能も社会的スキルも身につけた高齢者を雇用できるということで、双方にメリットがあります。  高齢者雇用の推進においては、高齢者の健康や安全確保の視点から、各専門家や機関との情報交換をおすすめいたします。 ※1 Maas……Mobility as a Serviceの略。複数の公共交通機関やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、検索・予約・決裁などを一括で行うサービス ※2 詳細は法務省ホームページを参照 https://www.moj.go.jp/content/000107459.pdf 図表 健康起因事故を起こした運転者の疾病別内訳 (平成25 年〜令和3年) 計2,465人 心臓疾患(心筋梗塞、心不全等) 369人、15% 脳疾患(くも膜下出血、脳内出血等) 339人、14% 大動脈瘤および解離 77人、3% 呼吸器系疾患 163人、7% 消化器系疾患 117人、5% 睡眠時無呼吸症候群 2人、0.08% その他 976人 40% 不明 424人 17% 出典:国土交通省・令和4年度 事業用自動車健康起因事故対策協議会「健康起因事故発生状況と健康起因事故防止のための取組について」 【P40-43】 知っておきたい労働法Q&A  人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。 第82回 高年齢雇用継続給付の改正、給与制度の変更 弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永勲/弁護士 木勝瑛 Q1 高年齢雇用継続給付の支給率変更の影響は?  継続雇用制度に関連して、高年齢雇用継続給付の改正が行われると聞きました。改正は継続雇用制度にどのような影響があるのでしょうか。 A  改正により支給限度額が低くなるため、定年後再雇用における同一労働同一賃金へ影響すると考えられます。 1 公的給付と同一労働同一賃金  定年後の継続雇用制度を実施するにあたって、定年後の労働条件(特に賃金)をどのように変更するかは、悩ましいところがあります。  厚生労働省のQ&Aなどでは、継続雇用にあたっては、労働条件の変更がまったく許されないわけではないとされつつも、合理的な裁量の範囲内での労働条件の提示をすべきと整理されています。ここにいうところの、合理的な裁量の範囲≠ニはどういった範囲であるのか、という点については、定年前の業務内容、役職や責任の程度やそれらをふまえて設定されている賃金の額と、定年後の業務内容や責任の程度などと比較しながら決定されることになるため、ケースバイケースの判断が必要となります。  このような継続雇用の状況に加えて、働き方改革にともなって同一労働同一賃金制度が広く周知され、定年前と定年後の労働条件について、同一労働同一賃金による検討も加える必要が生じるようになりました。同一労働同一賃金については、@業務の内容、A業務にともなう責任の程度、B職務の内容と配置の変更の範囲、Cその他の事情を考慮して、労働条件の差異が合理的な範囲にとどまっているか(均衡待遇といえるか)が判断されますが、定年後の継続雇用であることは、Cその他の事情として考慮されることになっています。  最高裁の判例(長澤運輸事件、平成30年6月1日判決)では、定年後再雇用であることに関連して「定年退職後に再雇用される有期契約労働者は、定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた者であり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。そして、このような事情は、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系の在り方を検討するに当たって、その基礎になるものであるということができる」と判断しており、その他の事情として、老齢厚生年金の受給など公的給付も考慮することが想定されています。  また、現在差し戻しされており判断が確定した事件ではありませんが、名古屋高裁令和4年3月25日判決(名古屋自動車学校事件控訴審)においては「高年齢雇用継続基本給付金も老齢厚生年金(報酬比例部分)も、高齢者の低減した賃金総額の補填をも目的として給付されるものであると解されるから、一審原告らがこれらを受給したことを、労働契約法20条にいう不合理性の評価を妨げる事実として考慮することはあり得るというべきである」と判断しており、公的給付に関して長澤運輸事件での判断と同様に、老齢厚生年金および高年齢雇用継続給付の受給をCその他の事情の考慮要素としており、考慮要素として加味したこと自体は最高裁の判断においても直接否定されたわけではありません。 2 高年齢雇用継続給付制度  高年齢雇用継続給付を受給する要件は、@60歳以上65歳未満の一般被保険者であること、A被保険者であった期間が5年以上あることであり、その支給額は、2025(令和7)年3月31日までは、賃金月額が75%を下回る場合において、賃金月額の75%との差異を埋めるような金額を支給されることになり、賃金額が61%を下回らないかぎりは、おおむね賃金月額の75%程度となるように調整されていました。  2025年4月1日以降、この支給額が減少する予定です。受給の要件は変わらず、賃金月額が75%を下回る場合において、賃金月額の75%との差異を埋めるような支給額になるという制度の全体像は維持されていますが、支給率の上限が10%となり、賃金額が64%以下の場合でも、10%を超えて支給されることはありません。  適用対象は、60歳に達した日が2025年4月1日以降であるか否かによって判断されることになります。 3 今後の留意事項  前述の名古屋自動車学校事件の控訴審判決において月額賃金が60%を下回る範囲を違法と判断されていました。判決内で明言されているわけではありませんが、高年齢雇用継続給付を受給しても75%を下回る支給額になることも判断に影響していなかったとは考え難いところです。  2025年4月1日以降は、高年齢雇用継続給付の支給率が変更されることによって、64%未満の額まで月額賃金を減少させる場合には、同給付を受けることのみをもって、一定程度の補填がなされているとはいえなくなってきます。また、現在、同一労働同一賃金の制度に関する見直しの議論においては、賃金の差異に関する説明に関する見直しなども議論されています。  また、前述の名古屋自動車学校事件の上告審では、基本給や賞与に代わる一時金の性質や目的に着目した判断がなされていなかったことが高裁への差し戻し理由とされました。  これらの状況をふまえると、今後、定年後の継続雇用においては、同一労働同一賃金における考慮事項である@業務の内容や、A責任の程度、Bこれらの変更の範囲について、定年前から変更して削減または軽減することや、これらの変更をふまえた給与体系を構築しておくことで、賃金の削減にあたって合理的な説明が可能な根拠を用意しておくことが重要です。  また、高年齢雇用継続給付の支給額が減少することに照らして、64%未満の削減を行うことに対して慎重に判断することが必要になると考えられます。 Q2 給与制度を変更する場合の留意点について知りたい  このたび、各従業員に支給している精勤手当を廃止して定額残業代制度を導入することを検討しています。制度変更の方法や注意点を教えてください。 A  @労働者との合意、A就業規則の改定、B労働協約の締結のいずれかの方法で行う必要があります。労働者との合意は労働者の自由な意思に基づくものである必要があり、就業規則の改定については高度の必要性に基づく合理的な変更である必要があります。なお、導入する定額残業代制度の有効性については検証しておく必要があるでしょう。 1 労働条件の変更について  定額残業代については、固有の問題点もありますが、ここでは制度変更の点に絞ってみていきましょう。労働条件については、原則として使用者が一方的に変更することはできません。もっとも、労働条件の変更がまったく不可能というわけではなく、一定の要件を満たせば、労働条件の変更は認められます。労働条件の変更の方法としては、@労働者と使用者との合意による変更(労働契約法第8条)、A就業規則の改定による変更(労働契約法第10条)、B労働協約の締結による変更があります。以下みていきましょう。  労働契約法第8条は、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」と規定しています。そのため、各従業員との間で、労働条件の変更について合意を得れば、その従業員の労働条件は合意にしたがって有効に変更されることとなります(なお、この場合には、後述する労働契約法第10条の変更の合理性の要件を満たすか否かは問われません)。  もっとも、最高裁は、「労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、労働者が使用者に使用されてその指揮命令に服すべき立場に置かれており、自らの意思決定の基礎となる情報を収集する能力にも限界があることに照らせば、当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当でなく、当該変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである」(最判平成28年2月19日)と判示しており、更生会社三井埠頭事件(東京高判平成12年12月27日)では、「就業規則に基づかない賃金の減額・控除に対する労働者の承諾の意思表示は、賃金債権の放棄と同視すべきものであることに照らし、それが労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときに限り、有効であると解すべきである」と判示され、賃金や退職金に関する不利益変更に関する同意については実務上厳格に判断されています。  就業規則の改定による労働条件の変更については、(1)変更の合理性、(2)変更後の就業規則の周知が必要になります。そして、変更の合理性については、@労働者の受ける不利益の程度、A労働条件の変更の必要性、B変更後の就業規則の内容の相当性、C労働組合等との交渉の状況等の事情により判断されます(労働契約法第10条)。賃金、退職金などのように労働者にとって重要な労働条件を不利益に変更する場合には、通常よりも高度の変更の必要性が要求されると解されています。 2 ビーラインロジ事件(東京地裁令和6年2月19日)  Qに掲げた事案と似たものとして、ビーラインロジ事件があります。この事件は、使用者が従前支給していた手当を廃止して定額残業代の制度を新設したことにより、労働者の残業代の算定の基礎となる賃金が減少する不利益が生じたため、労働者が使用者に対して、制度変更が無効であることを前提に、未払残業代などの請求を行ったという事案になります。  この事案では、会社は、制度変更前に従業員に対する説明会を実施したうえ、口頭または書面による同意を得た従業員から新しい給与体系により給与を支給し、また、労働者からは、新給与体系を反映した労働条件通知書兼労働契約書の署名捺印をもらっていましたが、同意による変更および就業規則の変更による条件変更はともに否定されました。  すなわち、裁判所は、同意による変更が認められるかという点に関して、「被告従業員が新給与体系の変更について自由な意思に基づいて同意したといえるためには、被告従業員が新給与体系の変更に関する同意に先立って、新給与体系への変更により労働基準法37条が定める計算方法により時間単価を算定した時間単価が減少するという不利益が発生する可能性があることを認識し得たと認めることができることが必要であった」と指摘したうえで、「平成25年労働条件通知書の控えは原告らに交付されておらず、新給与体系への変更に関する説明会における説明内容、本件説明会資料の記載は前記のとおり旧給与体系における基礎賃金の範囲すら正確に把握することが困難であったと認められ、原告らが新給与体系の変更に同意した際、時間単価が旧給与体系に比して約69%から約81%の幅で減縮されるという不利益が発生することが認識し得たとは到底認められない。そうすると、原告らが自由な意思に基づいて新給与体系の変更に同意したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは認められない」と判示し、同意による変更を否定しました。  また、就業規則の改定による変更について、「分かり易い給与体系に改善する必要性があったことは否定できないが、旧給与体系における時間単価を労働契約法37条等が定める方法により算定した場合には最低賃金法違反の問題は発生せず、この点で新給与体系に変更する必要性があったとは認められない。そして、新給与体系に変更することによる従業員の不利益の内容及び程度は前記3で検討したとおり、時間単価が旧給与体系に比して約69%から約81%の幅で減縮するというものであり、新給与体系の変更に関する説明会は実施されているものの、原告らにおいて当該不利益の内容及び程度を十分に把握し得るだけの情報提供が行われたとは認め難い」と指摘し、就業規則の変更による条件変更も否定しました。  本裁判例では、説明会、口頭または書面による同意の取りつけ、新給与体系を反映した契約書の締結といった対応をしているにもかかわらず、制度変更の有効性が否定されていますが、会社からの情報開示や説明が不十分であったことが重視されていると考えられます。制度変更を進める際には、制度変更の必要性を吟味したうえで、労働者に対して適切に情報を提供しているかについては最低限注意すべきでしょう。 【P44-45】 地域・社会を支える高齢者の底力 The Strength of the Elderly 第4回 首都高トールサービス東東京株式会社(東京都)  少子高齢化や都心部への人口集中などにより、労働力人口の減少が社会課題となるなか、長い職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験を活かし、多くの高齢者が地域・社会の支え手として活躍しています。そこで本連載では、事業を通じて地域や社会への貢献に取り組む企業や団体、そこで働く高齢者の方々をご紹介していきます。 高速料金を管理する公共性の高い業務 シニアの落ち着いた物腰が信頼につながる  総延長327.2km、1日あたりの通行台数は100万台を超える首都高速道路。首都高トールサービス東東京株式会社は、そのうち東東京地区内の56料金所を管轄し、料金収受とETCの監視業務をになっている。同社で料金所係員として働くスタッフは2025(令和7)年3月時点で563人。平均年齢は64歳で、60歳以上のスタッフは455人にのぼる。  同社が経営方針として掲げるのは「お客さまサービスの向上」、「安全管理の徹底」、「的確な料金収受」の三つ。通行料金にかかわる公共性の高い業務のため、「お客さまに理解していただき、信頼されるよう取り組むことが重要で、シニアの係員は落ち着いた和やかな人柄の方が多く、落ち着きのある対応が、お客さまの信頼につながっています」(総務部総務課)という。  実際に働いている係員は、中途採用者が100%。前職は公務員、サービス業、介護・福祉関係などさまざまだ。具体的な応募動機では、「社会貢献ができる」、「正社員登用制度がある」などのほか、「研修制度が整っている」、「福利厚生が充実している」、「プライベートな時間を確保できる」と、働きやすさをあげているケースが多い。  係員の仕事は、料金所ブース内での通行料金の収受とETCの監視が柱。ほぼ全員が未経験で入社するため、研修できめ細かく対応している。まずは7日間の事前研修で、現金などによる支払い対応、ETC機器などの操作の手順、トラブルへの対応、車種の判別方法などを実践的に学習。その後、各営業所に配属され、指導役の先輩係員とともに実地で勤務につき、不明な点を確認しながら業務を習得していく。  同社では研修以外でも、新入社員と役員の昼食会を開催するなど、会社に対するエンゲージメント(帰属意識、信頼度)を高めるための取組みを積極的に展開。また、社員同士で、趣味の同好会を立ち上げたり、食事会を開いたりして交流を深めており、それが業務上の助け合いにもつながっているそうだ。 接客業の経験も活かして月10日間の勤務 仕事もプライベートも充実  埼玉県東南端の八潮(やしお)市にある同社の八潮営業所は、首都高6号三郷(みさと)線全線および中央環状線の一部の六つの料金所を所管する。料金所のブースで働く料金収受係員は約70人。高山(たかやま)加洋子(かよこ)さんはその一人として、3日に1回の日夜勤務に就いている。  朝8時に出社すると、制服に着替え、朝礼で注意事項などの連絡を受けた後、料金所ブースに移動して、翌朝まで2人1組体制での収受業務にあたる。仮眠時間を含む休憩時間は計約8時間で、2人が交替で取る。翌朝は8時半ごろにブースから営業所に戻り、売上金を手渡して業務報告を行い、午前9時に退社となる。次の日は休み。またその次の日の朝8時から勤務するという「勤務」、「明け」、「休み」のサイクルで、1カ月あたりの勤務は10回ほどとなる。  高山さんは結婚をしてから、長く専業主婦だったが、子どもが高校生になったのをきっかけに、40代のころから仕事をするようになった。まずは、企業からスポットで配送を請け負う仕事に就き、「そのころはずっと運転をしており、首都高でもよく運転していました」と話す。配送の仕事を5年間ほど続け、子どもの受験をきっかけに退職。その後、大手クリーニング店のカウンタースタッフとして、約10年間接客業務にたずさわった。そして、娘の結婚が決まり同居することになったのをきっかけに、「毎日出勤するのは少しきついかなと考え、出勤日数が少ない仕事を探した」そうだ。そして、新聞の求人欄で見つけたのが、首都高トールサービス東東京株式会社の求人だった。3日に1回、月10回の働き方に魅力を感じたことに加え、「仕事でも利用していた首都高での仕事にとても興味がありました」という気持ちで応募し、2017(平成29)年7月から働き始めた。  「特殊な勤務シフトの仕事なので、最初は少したいへんでしたがすぐに慣れました。1日仕事をしたら、その後は47時間休みになるので、プライベートの予定が組みやすく、ありがたいなと思っています」と高山さん。現在、3歳のお孫さんがおり、サービス業で働く娘夫婦と休みの日をずらし、保育園の送り迎えのサポートも行っている。さらに休みの日には、会社の仲間とウォーキングや食事、カラオケなども楽しみ、充実した毎日のようだ。 「首都高の顔」として大切な存在 やりがいある仕事に「年齢への意識はない」  長く接客業も経験してきた高山さんの仕事への評価は高く、いまではベテランとして頼られる存在となっている。「現金収受はとにかく、間違いがないことが基本です。ブースでの接客は一瞬ですが、その一瞬で間違いなく対応することに気を遣っています」と高山さんは話す。釣り銭などを瞬時に間違いなくドライバーに渡すコツは、「料金収受機からお釣りが出てくる間にほんの数秒の時間があり、そこで確認すること」だそうだ。そのほか、指差し、声出しで確認することも重要だという。  「会社が求めていることを、懇切丁寧にやってもらっていて、本当にありがたい存在です」と、同営業所の田端(たばた)守男(もりお)所長は話す。実際にトラブルが発生したときなども、高山さんのやさしい対応に安心感を覚えるドライバーも多いようで、「お客さまから『ありがとう』といってもらえるのが、やりがいになっていますね」と高山さんは話す。  八潮営業所が管轄する首都高6号三郷線から中央環状線の一部は、特に交通量が多く、料金収受係員は365日24時間、ブース内で多くのお客さまからの視線を受けての業務となる。「首都圏の人、物流の大動脈である首都高速道路をご通行されるすべてのお客さまが安全、安心してご通行いただくため、料金収受係員は、首都高の『顔』として笑顔でお客さまを出迎え、ていねいで親切、かつ的確な業務を行っています」と、同社の東條(とうじょう)正樹(まさき)部長は強調した。  田端所長も、高山さんも、「高齢という意識はない。年齢は気にしない」と口をそろえる。「健康やけがに気をつけて、元気なうちに何かお役に立てるのなら、70歳を過ぎても働いていきたいですね」と、高山さんは笑顔で語った。 写真のキャプション 八潮営業所所長の田端守男さん(左)と料金収受係員の高山加洋子さん(右) 【P46-47】 いまさら聞けない人事用語辞典 株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 第56回 「グローバル人材」  人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。  今回は、グローバル人材について取り上げます。 2000年代初期に広まった用語  この用語が広まりだしたのは、2000年代初期といわれています。公的な資料で大きく扱われてきたのもこのころです。例えば、2011(平成23)年に設置されたグローバル人材育成推進会議がとりまとめた「グローバル人材育成戦略」(2012年)では、グローバル化について、「情報通信・交通手段等の飛躍的な技術革新を背景として、政治・経済・社会等あらゆる分野で「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が国境を越えて高速移動し、金融や物流の市場のみならず人口・環境・エネルギー・公衆衛生等の諸課題への対応に至るまで、全地球的規模で捉えることが不可欠となった時代状況」と定義し、わが国がこのような経済・社会のなかで育成・活用すべき人材をグローバル人材としています。  また、一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」)の「グローバル人材の育成に向けた提言」(2011年6月14日)という資料の冒頭に、「急速な少子高齢化の進展とそれに伴う人口の減少により、国内市場が縮小する中、天然資源に乏しいわが国経済が将来にわたって成長を維持するためには、日本の人材力を一層強化し、イノベーション力や技術力を高めることで、発展するアジア市場や新興国市場の需要を取り込んでいくことが不可欠」とし、グローバル人材の育成に向けた提言をしています。  引用部分が少し長くなりましたが、グローバル人材という用語が広まった背景として、1990年代のいわゆるバブル経済の崩壊にはじまる国内景気の長期低迷と国内市場の縮小に対して、企業は収益を高めるために、製品の販売ターゲットを国内から世界に広げ生産コストの低い国へ生産手段を移さざるを得ない、またインターネットに代表される技術革新により、望むと望まざるとにかかわらず国境を越えた競争に巻き込まれてしまうような社会情勢に対応できる人材の育成・活用が急務だったことがよくわかります。 グローバル人材に必要な要素  グローバル人材は一言で表現すると、「グローバル化を推進するために国境を越えて活躍できる人材」といえますが、より具体的な定義についてみていきましょう。  グローバル人材育成推進会議資料では、グローバル人材を次の要素※1を有した人材としています。 要素T:語学力・コミュニケーション能力 要素U:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 要素V:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー  また、経団連資料では、グローバル人材を「日本企業の事業活動のグローバル化を担い、グローバル・ビジネスで活躍する(本社の)日本人及び外国人人材」とすると定義しています。ここで特徴的なのは、グローバル人材育成推進会議の方では、日本人人材を対象としたグローバル人材育成をいかに進めるかに比重が置かれているのに対して、経団連の方は外国人人材にもターゲットが広がっている点です。  これらの資料が作成されたときは、グローバル人材を輩出するために教育の重要性が強く説かれ、グローバル人材育成推進会議資料では、語学(特に英語)教育の充実化や大学教育システムの改善、海外留学・留学生交流の推進がおもに提言されています。また、経団連資料ではグローバル人材育成に対する大学教育の果たす役割はきわめて大きいとして、産業界の求める人材と大学で育成する人材のマッチングを進めるための産業界と大学の連携強化や、イノベーション創出に向けた理工系教育の強化、グローバル人材育成プログラムの実施などが提言されています。  その後、2013年6月に閣議決定された「第2期教育振興基本計画※2」の未来への飛躍を実現する人材の養成としての基本施策16に「外国語教育、双方向の留学生交流・国際交流、大学等の国際化など、グローバル人材育成に向けた取組の強化」が掲げられ推進されることになります。 グローバル人材の課題は続いている  現在に目を向けてみましょう。グローバル人材という考えや存在は“あたり前”となり、一時に比べて用語としてはみかける機会が減りました※3。ただし、課題は依然として残っています。  本稿で取り上げた2000年代初期は海外に出て活躍できる日本人の育成に比重が置かれていましたが、現在は外国人が日本で働くうえでの課題も表出化してきています。日本で働く外国人労働者数は2010年約65万人から2024(令和6)年約230万人と右肩上がりに増えているなか※4、外国企業の日本への進出はそれほど増えていないといわれています。例えば、経済産業省の「第54回外資系企業動向調査(2020年調査)」をみても2015年度から2019年度の日本への新規参入企業は2015年度74社に対して、2018年度45社、2019年度48社という状態です※5。  この理由については、「令和4年度我が国のグローバル化促進のための日本企業及び外国企業の実態調査報告書」(2023年2月 経済産業省委託調査)から知ることができます。外国企業からの回答のなかで、「先進国と比較した日本のビジネス環境の『強み』と『弱み』」に対する質問として最も弱みとして回答があったのが「英語での円滑なコミュニケーション」です。このことは「日本に拠点を立地させるうえでの阻害要因」の第二位、「グローバル日本人人材を確保する上での阻害要因」の第一位にもなっています。外国企業の日本への進出をむずかしくしているのは、事業活動コストや市場の大きさなどの面もありながらも、グローバル人材の課題としてかねてからあげられている外国語でのコミュニケーションに起因する要素は非常に大きく、課題としては継続しているといえます。 ***  次回は、「産前産後休業・育児休業」について取り上げます。 ※1 三つの要素の説明の次に、「このほか、『グローバル人材』に限らずこれからの社会の中核を支える人材に共通して求められる資質としては、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等を挙げることができる」との追記がある ※2 教育基本法に示された理念の実現と、わが国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため政府として策定する計画。直近では、2023年6月16日に第4期が閣議決定 ※3 国立国会図書館リサーチで「グローバル人材」をキーワードとして含む資料を検索すると、2010年〜2014年は886件、2015年〜2019年は788件に対して、2020年〜2024年は283件と2020年以降、減少していることからもみてとれる ※4 「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」(厚生労働省、2024年10月末時点) ※5 本調査は、2020年調査をもって終了のため、本調査が最新となる 【P48-51】 労務資料 第19回中高年者縦断調査 (中高年者の生活に関する継続調査)の概況 厚生労働省政策統括官付参事官付世帯統計室  厚生労働省は、2005(平成17)年度から、団塊の世代を含む全国の中高年世代の男女を追跡し、その健康・就業・社会活動について意識面・事実面の変化の過程を継続的に調査しています。このほど、第19回(2023〈令和5〉年)の結果がまとまりましたので、その結果を抜粋してご紹介します。  調査は、2005年10月末時点で50〜59歳だった全国の男女を対象としており、第19回調査における対象年齢は68〜77歳、調査の期日は2023年11月1日(水)、調査対象は1万8634人、回収数は1万7875人、回収率は95.9%でした(編集部)。 1 世帯の状況  この18年間で、「夫婦のみの世帯」の割合は増加、「三世代世帯」、「親なし子ありの世帯」の割合は減少  第1回調査(平成17年)から18年間の世帯構成の変化をみると、「夫婦のみの世帯」は、第1回21.5%から第19回48.0%と増加している。一方、「三世代世帯」は、第1回22.5%から第19回10.0%、「親なし子ありの世帯」は、第1回39.5%から第19回23.3%と減少している。また、第1回の世帯構成別に第19回の世帯構成をみると、「夫婦のみの世帯」に変化した割合は、「親なし子ありの世帯」が47.4%、「親あり子なしの世帯」が44.2%と高くなっている。 2 健康の状況 (1)健康状態の変化  この18年間で、健康状態が「よい」と思っている者の割合は減少傾向  第1回調査から18年間の健康状態の変化をみると、「よい」と思っている者は、第1回84.8%から第19回では75.1%と減少傾向となっている。  また、第1回の健康状態別に第19回の健康状態をみると、「よい」から「わるい」に変化した割合は18.6%となっている。 (2)健康維持のために心がけていることと健康状態  第1回調査から継続して健康維持のために心がけていることについて、健康状態が「よい」と思っている者と「わるい」と思っている者を比べると、男は「適度な運動をする」、女は「バランスを考え多様な食品をとる」で最も差が大きい  健康維持のために心がけていることとして挙げられている各項目に関し、第1回から第19回の全ての調査回で当該項目を選択した者について、第19回の健康状態による差(「よい」と思っている者に占める割合−「わるい」と思っている者に占める割合)を項目別に比べると、男では「適度な運動をする」が4.6ポイントと最も高くなっている。女では「バランスを考え多様な食品をとる」が5.8ポイントと最も高く、次いで「適正体重を維持する」が5.7ポイントとなっている。 (3)社会参加活動と健康状態  第1回調査から継続している社会参加活動について、健康状態が「よい」と思っている者と「わるい」と思っている者を比べると、男は「スポーツ・健康」、女は「趣味・教養」で最も差が大きい  この1年間の社会参加活動として挙げられている各項目に関し、第1回から第19回の全ての調査回で当該項目を選択した者について、第19回の健康状態による差(「よい」と思っている者に占める割合−「わるい」と思っている者に占める割合)を項目別に比べると、男では「スポーツ・健康」が8.9ポイントと最も高く、女では「趣味・教養」が9.4ポイントと最も高くなっている。 3 就業の状況 (1)就業状態の変化  この18年間で、「正規の職員・従業員」の割合は減少、「パート・アルバイト」、「自営業主、家族従業者」の割合は減少傾向  第1回調査から18年間の就業状況の変化をみると、「正規の職員・従業員」は、第1回38.7%から第19回2.4%と減少している。また、「パート・アルバイト」は、第1回17.0%から第19回13.2%、「自営業主、家族従業者」は第1回15.2%から第19回11.5%と減少傾向となっている(図表1)。  また、第1回で「仕事をしている」者について、性別に第19回の就業状況をみると、男の「(第1回)正規の職員・従業員」では39.1%が第19回も仕事をしており、「(第19回)パート・アルバイト」が14.9%、「(第19回)労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託」が7.9%と割合が高い。女の「(第1回)パート・アルバイト」では30.5%が第19回も仕事をしており、「(第19回)パート・アルバイト」が24.8%と割合が高くなっている(図表2)。 (2)仕事をしている者の割合の変化  仕事をしている者の割合は、すべての調査対象者が60歳以上となった8年前と比べて高い  60歳以上の仕事をしている者の割合について、年齢が60〜69歳であった第11回と第19回(68〜77歳)とを比べると、どちらも年齢が高くなるにつれて減少している。  また、第11回と第19回で比較可能な68〜69歳をみると、第19回の方が、男では68歳で4.3ポイント、69歳で7.9ポイント、女では68歳で7.9ポイント、69歳で7.5ポイントとそれぞれ高くなっている(図表3)。 (3)仕事をしている理由  第19回調査(68〜77歳)で仕事をしている理由は、「健康を維持するため」が最も高い  仕事をしている者の仕事をしている理由を、比較可能な第6回と第19回とで比較すると、第6回では「現在の生活費のため」が男86.6%、女60.6%と最も高く、次いで、男は「将来の生活資金のため」40.4%、女は「現在の生活費を補うため」39.5%と高くなっている。一方、第19回では「健康を維持するため」が男53.8%、女55.8%と最も高く、次いで、男は「現在の生活費のため」52.4%、女は「社会とのつながりを維持したいから」43.4%となっている(図表4)。 (4)就業希望の状況  第19回調査(68〜77歳)で、仕事をしていない者のうち「仕事をしたい」と思っている者の割合は男は14.2%、女は10.2%  第19回の仕事をしていない者の就業希望の状況を性、年齢階級別にみると、男は14.2%、女は10.2%となっており、68・69歳で男は19.1%、女は13.2%と最も高くなっている(図表5)。 注:第19回の性別・年齢ごとの仕事をしていない者を100としたときの割合である 図表1 第1回調査からの就業状況の変化 仕事をしている 自営業主、家族従業者 会社・団体等の役員 正規の職員・従業員 パート・アルバイト 労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託 家庭での内職など、その他 仕事のかたち不詳 仕事をしていない 不詳 第1回 15.2% 4.8% 38.7% 17.0% 3.8% 2.2% 0.2% 18.1% 0.0% 第5回 15.2% 4.2% 26.2% 17.1% 7.8% 2.4% 0.3% 26.9% 0.0% 第10回 14.5% 3.9% 10.7% 17.6% 9.7% 2.5% 0.1% 40.9% 0.2% 第15回 13.1% 3.2% 4.2% 17.4% 6.4% 2.5% 0.1% 52.9% 0.2% 第16回 12.9% 3.1% 3.6% 16.0% 5.4% 2.3% 0.1% 56.3% 0.3% 第17回 12.6% 2.8% 3.0% 14.9% 4.8% 2.5% 0.0% 59.0% 0.4% 第18回 12.0% 2.6% 2.7% 14.3% 4.4% 2.3% 0.1% 61.4% 0.3% 第19回 11.5% 2.4% 2.4% 13.2% 3.7% 2.3% 0.1% 64.1% 0.3% 図表2 性、第1回調査の就業状況別にみた第19回調査の就業状況 (単位:%) 第19回の仕事の有無・仕事のかたち 総数 仕事をしている 自営業主、家族従業者 会社・団体等の役員 正規の職員・従業員 パート・アルバイト 労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託 家庭での内職など、その他 仕事をしていない 性・第1回の仕事の有無・仕事のかたち 総数 (100.0) 100.0 35.6 11.5 2.4 2.4 13.2 3.7 2.3 64.1 仕事をしている (81.9) 100.0 41.6 13.6 2.9 2.9 15.2 4.4 2.6 58.1 仕事をしていない (18.1) 100.0 8.1 2.1 0.3 0.4 3.9 0.4 0.9 91.1 男 (100.0) 100.0 44.7 15.8 4.0 3.8 12.0 6.4 2.6 55.1 仕事をしている (95.7) 100.0 46.1 16.4 4.2 3.9 12.2 6.6 2.7 53.8 自営業主、家族従業者 (18.1) 100.0 69.3 54.6 3.9 1.6 5.2 1.8 2.1 30.5 会社・団体等の役員 (8.3) 100.0 54.2 10.2 25.1 4.5 6.2 5.9 2.2 45.8 正規の職員・従業員 (62.1) 100.0 39.1 7.1 1.9 4.5 14.9 7.9 2.8 60.7 パート・アルバイト (2.0) 100.0 33.6 7.1 - 0.7 17.9 2.9 5.0 66.4 労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託 (3.7) 100.0 41.2 8.0 0.4 3.8 13.7 13.4 1.9 58.8 家庭での内職など、その他 (1.2) 100.0 35.7 10.7 2.4 1.2 8.3 3.6 9.5 63.1 仕事をしていない (4.2) 100.0 14.9 3.0 1.0 2.4 5.4 2.0 1.0 84.5 女 (100.0) 100.0 28.0 8.0 1.1 1.3 14.1 1.4 2.0 71.5 仕事をしている (70.5) 100.0 36.7 10.5 1.4 1.8 18.5 1.9 2.5 62.9 自営業主、家族従業者 (12.8) 100.0 58.6 45.9 2.1 0.8 6.4 0.6 2.5 41.0 会社・団体等の役員 (1.9) 100.0 51.5 8.6 27.0 3.1 9.8 0.6 2.5 48.5 正規の職員・従業員 (19.6) 100.0 31.8 3.0 0.6 4.0 17.9 3.1 3.2 68.0 パート・アルバイト (29.3) 100.0 30.5 2.0 0.2 0.6 24.8 1.3 1.5 69.1 労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員・嘱託 (3.9) 100.0 35.8 2.4 0.6 2.1 24.5 5.7 0.3 64.2 家庭での内職など、その他 (2.9) 100.0 28.4 4.0 - 1.2 11.2 1.6 10.4 71.6 仕事をしていない (29.5) 100.0 7.3 2.0 0.2 0.2 3.7 0.2 0.9 91.8 注:「総数」「男」「女」には第1回及び第19 回の仕事の有無の不詳を含み、「仕事をしている」には仕事のかたちの不詳を含む 図表3 第11回(60〜69歳)と第19回(68〜77歳)の性・年齢別にみた仕事をしている者の状況 【男】 第11回 60歳 89.6% 61歳 85.4% 62歳 82.6% 63歳 80.0% 64歳 74.7% 65歳 62.9% 66歳 61.4% 67歳 59.3% 68歳 55.7% 69歳 50.8% 第19回 68歳 60.0% 69歳 58.7% 70歳 54.7% 71歳 47.4% 72歳 45.0% 73歳 43.1% 74歳 40.2% 75歳 37.4% 76歳 36.4% 77歳 31.3% 【女】 第11回 60歳 63.2% 61歳 54.4% 62歳 54.7% 63歳 52.5% 64歳 49.0% 65歳 44.4% 66歳 39.3% 67歳 37.2% 68歳 33.6% 69歳 31.4% 第19回 68歳 41.5% 69歳 38.9% 70歳 32.1% 71歳 32.7% 72歳 30.0% 73歳 29.1% 74歳 23.9% 75歳 21.8% 76歳 18.9% 77歳 17.0% 注:第11回及び第19回の性別・年齢ごとの総数を100としたときの割合である 図表4 第6回(55〜64歳)と第19回(68〜77歳)の仕事をしている理由(複数回答) 【男】 第6回(55〜64歳) 第19回(68〜77歳) 現在の生活費のため 86.6% 52.4% 現在の生活費を補うため 21.6% 43.9% 生活水準を上げるため 15.8% 16.9% 自分のお小遣いのため 16.8% 34.1% 借金の返済のため 25.4% 9.6% 親族等への仕送りのため 4.2% 1.7% 将来の生活資金のため 40.4% 24.6% 子や孫の将来のため 20.9% 12.3% 健康を維持するため 22.9% 53.8% 社会とのつながりを維持したいから 20.2% 40.2% 社会に役立ちたいから 16.2% 20.6% 視野を広げたいから 7.6% 8.3% 今の仕事が好きだから 25.8% 29.8% 家にずっといるのは嫌だから 11.9% 30.9% 時間に余裕があるから 5.0% 22.8% その他の理由 1.4% 2.8% 【女】 第6回(55〜64歳) 第19回(68〜77歳) 現在の生活費のため 60.6% 40.6% 現在の生活費を補うため 39.5% 42.7% 生活水準を上げるため 13.0% 12.6% 自分のお小遣いのため 25.5% 33.8% 借金の返済のため 14.1% 5.8% 親族等への仕送りのため 3.3% 2.2% 将来の生活資金のため 33.1% 25.2% 子や孫の将来のため 13.6% 11.5% 健康を維持するため 29.4% 55.8% 社会とのつながりを維持したいから 27.4% 43.4% 社会に役立ちたいから 12.5% 15.1% 視野を広げたいから 12.2% 12.3% 今の仕事が好きだから 29.4% 30.6% 家にずっといるのは嫌だから 25.6% 38.6% 時間に余裕があるから 13.9% 25.4% その他の理由 3.2% 3.5% 注:1)第6回及び第19回の性別ごとの仕事をする理由に回答のあった者を100としたときの割合である 2)「仕事をしている理由」は、第6回調査からの調査項目である 図表5 性・年齢階級別にみた第19回で仕事をしていない者の就業希望の状況 【男】 仕事をしたい 仕事をしたくない 不詳 総数 14.2% 83.4% 2.4% 68・69歳 19.1% 80.0% 0.9% 70〜74歳 14.8% 83.1% 2.1% 75〜77歳 11.7% 85.0% 3.3% 【女】 仕事をしたい 仕事をしたくない 不詳 総数 10.2% 86.4% 3.4% 68・69歳 13.2% 84.7% 2.1% 70〜74歳 10.6% 86.2% 3.2% 75〜77歳 8.4% 87.3% 4.3% 注:第19回の性別・年齢ごとの仕事をしていない者を100としたときの割合である 【P52-53】 Books AI時代に必要なのは思考力!「創造的な脳」のための処方箋を示す デジタル脳クライシス AI時代をどう生きるか 酒井(さかい)邦嘉(くによし)著/朝日新聞出版/990円  デジタル機器に頼る場面が増えている。AI(人工知能)の登場により、それは高まるばかりだ。AIは、これまで人が行っていた作業を大幅に効率化したり、新しい価値を生み出したりするが、反面、リスクも潜んでいるとされる。  インパクトのある本書のタイトル「デジタル脳クライシス」は、「デジタル機器やデジタル技術の虜になった人の脳が直面する危機や岐路(クライシス)」を意味すると、著者はいう。本書は、言語脳科学者である著者が、言語と脳という視点から、「手書きかキーボード入力か」、「紙かデジタルか」のそれぞれの記憶定着の差異など、さまざまな研究の成果に基づき、デジタル機器への過度な依存は自分の脳が本来持っている力を衰えさせてしまうリスクがあると、警鐘を鳴らす。そして、脳を衰えさせず、よく働く状態を保つための処方箋を示している。  適切な思考力が身につけばITにも強くなれるが、「その逆は成り立ちません」と著者は説く。なぜなら、「初めからITやデジタル機器に頼ることで自分の頭を使わなくなるから」だ。車に頼っていると、歩くための筋力が衰えるのと似ているだろうか。便利さを享受するだけでなく、どう使うかを考えるきっかけになる一冊である。 人口減少・人手不足が加速する日本。これからどうなるのか? ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」 坂本(さかもと)貴志(たかし)著/講談社/1100円  日本の人口は、2007(平成19)年の1億2777万人をピークとして減少しはじめた。その変化は緩やかであったが、2024(令和6)年以降は速度を増して減少すると予測されていて、著者は、「私たちは人口減少経済とはどのようなものなのかを身をもって経験することになる」と日本のこれからを表現している。  本書は、労働市場の分析を専門とする著者が、労働市場の需給、賃金の動向、人々の働き方などに注目しながら、日本経済の現時点を解説。第1部では、統計データを分析して日本経済に起きている変化を概観。第2部では、少ない人手で効率よく生産するために、建設や運輸、販売、接客・調理、医療、介護の企業の現場でロボットやデジタル技術を活かしている事例を紹介。第3部では、現状分析をもとに人口減少経済の八つの未来予測を考察。一つめの予測は、人手不足はますます深刻化すること。女性の就業率が近年急速に高まっていることをふまえると、期待されるのは高齢者の労働参加であるという。また、賃金水準が上昇し、高齢であっても無理のない働き方でそれなりの労働収入を稼ぐことが可能になるだろうなどと予測もしている。 500人以上の“100歳”に会った著者が考える、幸せを感じられる「老い」とは? 100歳は世界をどう見ているのか 権藤(ごんどう)恭之(やすゆき)著/ポプラ社/990円  国内に住む100歳以上の人は9万人超だが、本書によると、長寿化はますます進み、2065年には55万人近くになるといわれているという(国立社会保障・人口問題研究所)。  しかし本書は、次のようなデータも示している。ある調査結果によると、「100歳まで長生きしたいか」という質問に対し、「とてもそう思う」と答えた日本人は8.1%で、6カ国中最低だった。理由は、「寝たきりになりたくない」、「人の世話になりたくない」からだという。  本書は、これまでに500人以上の百寿者と実際に会い、調査を続けてきた老年心理学者の著者が、加齢をめぐるデータや研究結果、出会った人々のエピソードを交えながら、「100歳は幸せか」、「幸せな100歳になるには」を考察する。出会った百寿者には、身体機能が衰えて、自由度が低くなっていても、幸せを感じる人が少なくないそうだ。その幸福感の理由を聞き、「生きていれば、駄目ながらも娘の話し相手になってあげられるから」など十人十色の幸せを紹介。そして、例えば、ピンピンコロリを目ざしながら、それがうまくいかなかった場合のことを想定した別の生き方も準備するなど、失うものが増えても幸せを感じられる老いをみつめていく。 親の介護は「自分介護」のリハーサル!自身の安心老後のテキストブック じょうずに頼る介護 54のリアルと21のアドバイス 一般社団法人リボーンプロジェクト(編)/太田出版/1760円  2040年には単独世帯の割合は約40%に達し、特に65歳以上の単独世帯数の増加が著しいと予測されている※。人生の最終盤に入るとだれかの助けが必要になるが、「介護難民」にならないためにも自分の介護は自分でデザインし、他者や制度にじょうずに頼ることが必要だと著者はいう。  本書は、親の認知症介護から完全セルフ介護まで、54の個別事例をルポルタージュ形式で掲載。親の介護と介護する側の老い、介護する側が弱ったとき、在宅か施設か、老後資金計画、墓じまいなど、親の介護から始まるリアルでさまざまな事例と、それに対する専門家からのアドバイスを収めた一冊。ケアマネジャーや看護師、ライフプランナー、精神科医など多様な分野の専門家がわかりやすい言葉で答えている。  事例は、人生の後半期を四つのフェーズに分けて構成されており、局面ごとに待ち受けるバリアをいかにクリアしていくかを考えていく。また、今後さらに増えることが予測されている一人暮らしの高齢者が、安心できる老後を準備するための情報も掲載している。介護と仕事の両立支援に取り組む、企業の担当者にも役立つだろう。 ※国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」(2018) 何歳からでも大丈夫。ゆるトレで楽しく筋力アップ!! 60歳からの筋トレ入門 新装版 ソネ ジュンコ著/宝島社/1210円  筋力は、何歳からでも鍛えることができるという。本書は、力を込めて行うこれまでのハードな筋トレの概念をいったん捨てて、シニアの筋トレをテーマに、楽しく筋力をアップさせるトレーニング方法をまとめた一冊。  著者のソネジュンコ氏は、ボディメイクスタジオを運営するほか、大阪市保健指導委員会講師など多方面で活躍中の72歳。本書では、筋トレのモデルも務めている。  紹介している筋トレは、これまで使えていなかった筋肉を目覚めさせることからはじめるというもので、そのためのセルフチェックから、棒などを使って行う入門トレーニング、さらに「ゆる腹筋」、「ゆるスクワット」など一日5分でできる筋トレを5日間続けるプログラムを提案。筋トレをしたことがない人、久しぶりに体を動かす人にもチャレンジしやすい内容だ。  加えて、背中やお尻など部位別の筋トレ、腰痛の痛みの緩和、転倒防止など目的に合った筋トレ方法も紹介している。シニア世代が筋トレをすると、「体幹力が増し転倒予防に」、「代謝が上がり、体脂肪が減る」などのメリットがあるという。本書を職場に置いて、社員全員ではじめてみるのもよさそうだ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します 【P54-55】 ニュース ファイル NEWS FILE 行政・関係団体 厚生労働省 令和6年「毎月勤労統計調査特別調査」の結果を公表  厚生労働省は、2024(令和6)年「毎月勤労統計調査特別調査」の結果を公表した。この調査は、全国の主要産業の小規模事業所(常用労働者1〜4人以下)における賃金、労働時間などを明らかにすることを目的として毎年実施しているもの。  調査結果によると、2024年7月における決まって支給する現金給与額は20万9086円で前年と比べ2.5%増となった。男女別にみると、男性が28万2371円(前年比2.3%増)、女性が15万6787円(同2.8%増)となっている。年齢階級別では、調査産業計で男女計は25〜29歳まで上昇しているが、以降30〜59歳まではほぼ横ばいとなり、60〜64歳以降低下している。  次に、雇用についてみると、常用労働者に占める女性労働者の割合は、調査産業計が58.4%で前年と同水準となった。1日の実労働時間が6時間以下の短時間労働者の割合は、調査産業計が31.4%で前年より0.3ポイント低下となった。男女別にみると、男性は12.0%で前年より0.3ポイント低下となり、女性は45.3%で同0.3ポイント低下となった。また、年齢階級別にみると、19歳以下が67.6%と最も高く、30〜39歳が24.9%と最も低くなっている。65歳以上は、45.4%で前年より0.5ポイント低下となった。 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/tokubetu/24/r06maitoku.html 厚生労働省 「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表  厚生労働省は、今後の労働基準関係法制について検討を行うとともに、働き方改革を推進するうえでの労働基準法等の見直しについて検討してきた「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表した。  同研究会では、労働基準関係法制に共通する総論的課題(労働基準法における「労働者」、「事業(事業場)」、労使コミュニケーションのあり方について)と、労働時間法制の具体的課題を検討してきた。  報告書から労働基準法における「労働者」についてみると、労働者の実態が多様化しているなか、働く人の法的保護との関係について、「労働者性の判断基準については、受け皿となる法制度でどのような施策が行われるのかを視野に入れつつ、労働者として保護すべき者に確実に労働基準法の保護を及ぼすとの観点から検討することが必要になる」などとして、厚生労働省において継続的に研究を行う体制を整えることを要請している。  労働時間法制では、「柔軟な働き方」について、フレックスタイム制の改善やテレワークを行う際の新たなみなし労働時間制の導入など、「定期的な休日の確保」については、精神障害の労災認定基準もふまえ、2週間以上の連続勤務を防ぐという観点から「13日を超える連続勤務」の禁止、また、「勤務間インターバル制度」の導入促進や法規制の強化、「つながらない権利」について、社内ルールを労使で検討していくことを促進するためのガイドライン策定などを提起している。 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48220.html 厚生労働省 労働政策審議会建議「今後の労働安全衛生対策について」を公表  厚生労働省の労働政策審議会は、安全衛生分科会の「今後の労働安全衛生対策について」を厚生労働大臣に建議し、公表した。  同分科会では、近年の労働災害発生状況等をふまえ、2024(令和6)年4月から議論を重ねてきて、今後の労働安全衛生対策について建議をまとめた。同省では、建議の内容をふまえて法律案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定。  概要は、次の通りである。 1 個人事業者等に対する安全衛生対策の推進  既存の労働災害防止対策に個人事業者等をも取り込み、労働者のみならず個人事業者等による災害の防止を図るための対応について提起。 2 職場のメンタルヘルス対策の推進  労働者数50人未満の事業場にもストレスチェック実施を義務とすることなどを提起。 3 化学物質による健康障害防止対策等の推進 4 機械等による労働災害防止の促進等 5 高年齢労働者の労働災害防止の推進  必要な措置を講じることを事業者の努力義務とし、国が措置内容に関する指針を示すことを提起。 6 一般健康診断の検査項目等の検討  女性特有の健康課題について、一般健康診断問診票に質問を追加することなどを提起。 7 治療と仕事の両立支援対策の推進  必要な措置を講じることを事業者の努力義務とし、国が措置内容に関する指針を示すことを提起。 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00020.html 厚生労働省 動画版「これってあり?〜まんが知って役立つ労働法Q&A〜」を公開  厚生労働省は、労働法に関する疑問と解説をまとめた学習教材「これってあり?〜まんが知って役立つ労働法Q&A〜」の動画版を作成し、厚生労働省のWebサイトなどで公開している。  「これってあり?〜まんが知って役立つ労働法Q&A〜」は、就職やアルバイトをする学生・生徒向けに、労働に関する基本ルールをまとめた教材。興味を持ってもらえるように漫画を取り入れ、わかりやすさを重視して作成された。2015(平成27)年に公開されて以来、毎年全国の高校等に冊子が配付され、学校関係者を中心に幅広く活用されてきた。  今回作成された動画は、三つの章(14のQ&A)と一つのコラムで構成されている。 第1章 働き始める前に知っておきたいこと(Q1〜3) 第2章 働くときのルール(Q4〜12) 第3章 仕事を辞めさせられるとき、辞めるとき(Q13〜14) コラム:働く人のための相談窓口  全体を通して視聴できる全体版と、Q&Aごとに視聴できる分割版に分かれている https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47730.html ◆視聴先 ・厚生労働省Webサイト(全体版・分割版) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/mangaroudouhou_dougaban.html ・公式YouTubeチャンネル(全体版) https://www.youtube.com/watch?v=2-E8g_ut4uo 調査・研究 日本経済団体連合会 「2024年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」を公表  一般社団法人日本経済団体連合会(以下、「経団連」)は、「2024年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」を公表した。この調査は、1969(昭和44)年から毎年実施している。今回は、経団連会員企業(計1573社)の労務担当役員等を対象として、2024(令和6)年9〜11月に実施した(集計可能回答社数328社)。  調査結果から、60歳以降の社員(継続雇用社員含む)の教育・研修制度についてみると、教育・研修を「実施している」企業は51.2%、「実施しておらず、実施の予定もない」は35.7%、「実施を検討している」は13.1%となっている。具体的な内容(検討を含む)は、「キャリアプラン」が77.0%、「コンプライアンス・ハラスメント」が36.8%、「デジタルスキル」29.7%。高齢社員の教育・研修制度に関する今後の方針については、「現行の制度を維持」が60.7%、「制度の拡充を予定」が39.3%となっている。  次に、社員のエンゲージメント向上に向けた取組みの実施状況から、取組みを「実施している」と回答した企業が実施している施策(あてはまるものすべて)についてみると、「育児、介護、病気治療と仕事の両立支援」が最多で87.5%、次いで「企業理念・事業目的の浸透」が84.9%、「eラーニングの導入・充実」が84.2%となっている。 https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/007.pdf 日本生産性本部 「第16回働く人の意識調査」結果を公表  公益財団法人日本生産性本部は、「第16回働く人の意識に関する調査」結果を公表した。  今回は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが「5類」に移行してから約1年8カ月が経過した一方、インフルエンザの感染者数が現在の統計開始後で最多を記録した2025(令和7)年1月6日〜7日、20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている1100人を対象に実施した。  調査結果から、テレワークの実施率についてみると、前回2024年7月調査(16.3%)から14.6%に微減し、過去最低を更新した。年代別のテレワーク実施率は、20代が16.5%と前回調査より微増した一方で、30代は17.3%、40代以上は13.4%と減少している。  テレワークの大多数を占める自宅での勤務(自宅勤務制度)について、23.3%が「制度を利用できる」(「自宅勤務実施者」、「制度があり自分も利用できる」計)と回答。一方で、「制度を利用できない」(「制度はあるが自分は利用できない」、「制度がなくなった・利用できなくなった」、「以前から職場に制度がない」計)は59.3%となっている。  自宅勤務を実施していない回答者のうち、自宅勤務を「実施希望」(「そう思う」と「どちらかと言えばそう思う」計)は36.9%。一方で、「実施したくない」(「そう思わない」、「どちらかと言えばそう思わない」計)は63.1%となっており、「実施希望」を上回っている。 https://www.jpc-net.jp/research/detail/007214.html 【P56】 JEEDが、企業における業務課題を解決します  私たちは、高齢者の雇用の確保、障害者の職業的自立の促進、求職者をはじめとする労働者の職業能力の開発および向上のために、以下のような総合的支援を行っています。 従業員の高齢化が課題だ 障害のある従業員のサポート体制を整えたい 従業員の生産性を上げたい 製造現場の技能・技術を向上したい 最新の技能・技術に対応できる者を育成したい ものづくり分野の人手不足を解消したい 社内でのノウハウがない コスト面で対応できない 社内でのノウハウがない 指導できる人材がいない生産体制を止められない 研究できる環境がない育成体制がない ものづくり分野の人材採用が進まない 高齢・障害者業務課へご相談ください 70歳までの就業機会確保に向けた相談・援助障害者雇用納付金制度に基づく助成金支給など 連絡先はこちら 業務内容はこちら 障害者職業センターへご相談ください 障害者を雇用する事業主等のニーズに対応した職業リハビリテーションサービスの提供など 連絡先はこちら 業務内容はこちら 生産性向上人材育成支援センターへご相談ください 従業員の人材育成や事業主への相談・援助(リスキリング・学び直し、DX推進)など 連絡先はこちら 業務内容はこちら ポリテクカレッジへご相談ください 2年間の実学融合の教育訓練システムによる高度実践技能者の育成、ものづくり人材の採用中小企業等との共同・受託研究 連絡先はこちら 業務内容はこちら ポリテクセンターへご相談ください 標準6か月間の職業訓練を受講した求職者とものづくり人材を採用したい企業とのマッチングなど 連絡先はこちら 業務内容はこちら 【P57】 70歳雇用推進プランナー 高年齢者雇用アドバイザーのご案内 70歳までの就業機会の確保(令和3年4月より努力義務化)などに向けた高齢者の戦力化のための条件整理について、ご相談ください! なぜ高齢者の戦力化が必要なの? ●急速な高齢化による生産年齢人口の減少 人口統計によれば、今後、生産年齢人口(15〜64歳)は減少の一途をたどり、企業の人材確保はますます困難になっていきます。 ●高齢者の高い就業意欲 60歳以上への意識調査では過半数の人が「65歳を超えても働きたい」と回答しています。 70歳雇用推進プランナー・高年齢者雇用アドバイザーとは 高齢者の雇用に関する専門知識や経験などを持っている専門家です。 社会保険労務士 中小企業診断士 経営コンサルタント 人事労務管理担当経験者 など 相談・助言 無料 高齢者の活用に必要な環境の整備に関する専門的かつ技術的な相談・助言を行っています。 人事管理制度の整備に関すること 賃金、退職金制度の整備に関すること 職場改善、職域開発に関すること 能力開発に関すること 健康管理に関すること その他高齢者等の雇用問題に関すること 提案 無料 70歳までの就業機会確保などに向けた高齢者戦力化のための定年引上げや継続雇用延長などの制度改定に関する具体的な提案を行っています。 課題の洗い出し 具体的な課題解決策の提案 制度見直しのメリットを見える化 制度整備に必要な規則例などの提供 その他のサービス 無料 ◆雇用力評価ツールによる課題などの見える化 簡単なチェック内容に回答いただくだけで、高齢者を活用するうえでの課題を見出し、解決策についてアドバイスします。 ◆他社の取組みにおける好事例の提供 同業他社の取組みが気になりませんか? ほかの会社がどういった取組みを行っているのか、貴社の参考となる事例を提供します。 企画立案等サービス 有料 専門性を活かして人事・労務管理上の諸問題について具体的な解決策を作成し、高齢者の雇用・活用等を図るための条件整備をお手伝いします。 中高齢従業員の就業意識の向上などを支援するために、貴社の要望に合った研修プランをご提案し、研修を行います。 (経費の1/2 を当機構〈JEED〉が負担します) お問合せ先 JEED都道府県支部高齢・障害者業務課(65ページ参照)までお問合せください。 【P58】 高年齢者活躍企業事例サイトのご案内 ―高年齢者が活躍できる、これからの働き方― https://www.elder.jeed.go.jp 高年齢者雇用にまつわるさまざまな情報を発信しています! @企業事例検索 高年齢者活躍企業コンテスト入賞事例のほか、定年年齢、継続雇用年齢、従業員規模、業種、地域、都道府県別検索やフリーワード検索ができます。 さまざまな条件で検索できる! Aイベント情報 「高年齢者活躍企業フォーラム」など、高年齢者雇用に関するイベント情報を掲載します。 B雇用力評価ツール 自社の高年齢者を活躍させる力(高齢者雇用力レベル)を診断することができます。 C仕事生活チェックリスト 生涯現役で活躍するための仕事生活のチェックリストです。 ※ご利用は事前のお申込みが必要です D高年齢者雇用に関する資料 高年齢者雇用に関する研究報告書などが閲覧できます。 jeed elder 検索 【P59】 令和6年度 「高年齢者活躍企業フォーラム」 「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」 アーカイブ配信のご案内  2024年10月に開催した「高年齢者活躍企業フォーラム(高年齢者活躍企業コンテスト表彰式)」、10月〜11月にオンライン配信で開催した「生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム」の模様をアーカイブ配信しています。  基調講演や先進企業の最新事例発表など、お手元の端末(パソコン、スマートフォンなど)でいつでもご覧いただけます。 視聴方法 JEEDホームページのトップページより STEP.01 機構について STEP.02 広報活動 (組織紹介動画・メルマガ・啓発誌・各種資料等) STEP.03 YouTube動画(JEED CHANNEL) STEP.04 「高齢者雇用(イベント・啓発活動)」の欄からご視聴ください ※事前申込不要(すぐにご覧いただけます) 以下の内容を配信中です 2024年10月4日(金)開催 高年齢者活躍企業フォーラム ●表彰式 ●事例発表 ●基調講演 ●トークセッション 生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム ●基調講演等 ●事例発表 ●事例発表者とコーディネーターによるパネルディスカッション 2024年10月10日(木)開催 「ジョブ型」人事から考える 〜シニア人材の戦力化 2024年10月25日(金)開催 役職定年見直し企業から学ぶシニア人材の戦力化 2024年11月28日(木)開催 ミドルシニアのキャリア再構築 〜リスキリングの重要性と企業の戦略 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 普及啓発課 TEL:043-297-9527 FAX:043-297-9550 https://www.jeed.go.jp JEEDのYouTube公式チャンネルはこちら https://youtube.com/@jeedchannel2135 JEED CHANNEL 検索 【P60】 次号予告 5月号 特集 会社の成長のカギを握る「高齢社員の活かし方」 リーダーズトーク 水野由紀子さん(一般財団法人日本規格協会 主席専門職) JEEDメールマガジン好評配信中! 詳しくは JEED メルマガ 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 『有料販売終了』のお知らせ 2025年3月31日をもって、本誌の有料販売を終了いたしました。 突然のお知らせとなり誠に申し訳ございません。これまでご購入いただきありがとうございました。 本誌はホームページへ掲載しているデジタルブック等からもご覧いただけますので、今後とも引き続きご愛読のほどよろしくお願いいたします。 編集アドバイザー(五十音順) 池田誠一……日本放送協会解説委員室解説委員 猪熊律子……読売新聞編集委員 上野隆幸……松本大学人間健康学部教授 大木栄一……玉川大学経営学部教授 大嶋江都子……株式会社前川製作所 コーポレート本部総務部門 金沢春康……一般社団法人100年ライフデザイン・ラボ代表理事 佐久間一浩……全国中小企業団体中央会事務局次長 丸山美幸……社会保険労務士 森田喜子……TIS株式会社人事本部人事部 山ア京子……立教大学大学院ビジネスデザイン研究科特任教授、日本人材マネジメント協会理事長 編集後記 ●今号の特集では、「高齢社員の『学び直し』を考える」をお届けしました。「生涯現役時代」、「人生100年時代」を迎え、働く期間が延伸傾向にあるなかで、“学び直し”による知識やスキルのアップデートは不可欠です。学び直しを効果的に行い、会社の戦力として活き活きと働いていくためには、働く人たちの学びを会社が支援していくことはもちろん、本人の意欲も重要となります。生涯のキャリアを考えたうえで学び続ける環境の構築に向け、本特集をお役立ていただければ幸いです。 ●新年度がスタートしました。本誌をご愛読いただいているみなさまはもちろん、新しく人事担当者になったみなさまにとって、“身になる”情報の発信に努めてまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。 『エルダー』読者のみなさまへ  2025年5月号は、大型連休の関係から、冊子の到着が通常よりも数日遅れることが見込まれます。ご不便をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。ご不明な点は編集部(企画部情報公開広報課、電話:043-213-6200)までおたずねください。 読者アンケートにご協力ください 回答はこちらから 公式X(旧Twitter) @JEED_elder 月刊エルダー4月号 No.545 ●発行日−−令和7年4月1日(第47巻 第4号 通巻545号) ●発行−−独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 鈴井秀彦 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261-8558 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-2 TEL043(213)6200 FAX043(213)6556 (企画部情報公開広報課) ホームページURL https://www.jeed.go.jp メールアドレス elder@jeed.go.jp ●編集委託 株式会社労働調査会 〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-4-5 TEL03(3915)6401 FAX03(3918 )8618 *本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。 (禁無断転載) 読者の声 募集! 高齢で働く人の体験、企業で人事を担当しており積極的に高齢者を採用している方の体験、エルダーの活用方法に関するエピソードなどを募集します。文字量は400字〜1000字程度。また、本誌についてのご意見もお待ちしています。左記宛てFAX、メールなどでお寄せください。 【P61-63】 (写真提供:有限会社三陽会館 サンヨーフォトスタジオ) 技を支える vol.350 大切な写真を修整する「スポッティング」の技 写真師 坪井(つぼい)幸子(さちこ)さん(77歳) 「お客さまの要望をうかがったうえで修整するのが基本です。根気のいる仕事ですが、お客さまに喜んでいただけるのが、何よりの喜びです」 創業90年の老舗写真館を支える「かわさきマイスター」  七五三や成人式などの記念写真や証明写真などを撮影する街の写真館。スマートフォンでだれでも気軽に写真を撮れるようになった現在でも、照明などの機材が整ったスタジオで、プロの写真師による撮影を求める人は少なくない。  神奈川県川崎市で1936(昭和11)年に創業した「有限会社三陽(さんよう)会館(かいかん)」も、そんな写真館の一つ。顧客の8割は地元だが、残りの2割は県外からわざわざ訪れる。その理由は、2代目の坪井幸子さんが手がける和装での撮影だ。婚礼写真を撮影する会社に勤めていた経験を活かし、着物姿を美しく写真に収めることができる。特にむずかしいとされるのが、女性が婚礼衣装を着て座った状態での撮影だ。座っても着物が乱れないように、重しなどを使って整える必要がある。それができる写真師はいまでは少なく、SNSを見て海外から訪れるカップルも多いそうだ。  そしてもう一つ、坪井さんの特筆すべき技術に「スポッティング」がある。この技術が特に評価され、2021(令和3)年度「かわさきマイスター」に認定されている。 筆を使った修整により面影をきれいに再現  スポッティングとは、筆とインクを使って写真に修整を施すこと。坪井さんは極細の筆を使い、絵を描くように修整し、人物の表情をきれいに整える。シワを消すことはもちろんのこと、つぶった目を修整して“開かせる”こともできる。  パソコン上での修整が主流になっている現在でも、坪井さんのスポッティング技術が求められることがある。特に依頼が多いのが遺影用の写真だ。古い写真や小さな写真を拡大して使うことが多く、輪郭をはっきりさせるためには、パソコン上で修整するよりも、写真に直接描いたほうがきれいに仕上がる場合があるという。  「例えば、黒目の部分をよく見ると、黒いのは中心部だけで周囲はやや茶色だったりします。また、少し口角を上げて表情を和らげることもあります。そういう微細な修整はパソコンよりも筆を使ったほうがやりやすいですし、より自然な修整ができます」  スポッティングに興味を持ったのは10代のころ。家業を手伝うなかで、独学で修整した写真が喜ばれたことがうれしかったという。その後、婚礼写真を撮影する会社で働くなかでその技術が認められ、他社からも依頼されるようになった。  フィルムが使われていたころは、ネガの修整も手がけた。ネガにニスを塗り、顔のしわなどを鉛筆の芯で消していく。その細かい仕事ぶりを評価し、遠方から写真修整を依頼する顧客も多かったそうだ。  「いろいろな修整を頼まれるなかで、どうすればよりよくできるだろうと試行錯誤を重ねてきました」  使用するインクについても、修整して乾いたときだけでなく、時間が経っても変色しにくいインクを探し求めてきた。長年愛用してきたドイツ製のインクが製造中止になると、入手しやすい画材で代用できる方法を編み出した。 お客さまに喜ばれる技術を子や孫へ引き継ぐ  現在、写真館は娘の麻衣子(まいこ)さん夫婦が経営している。麻衣子さんの息子も大学で写真技術を学んでいる。麻衣子さんはこう話す。  「息子と一緒に、母が手がけた遺影写真の納品に行ったことがあります。そのときに、お客さまがその遺影を見て泣いて喜ばれて、玄関から見える場所に飾っていました。その様子をみて『おばあちゃんの仕事って喜ばれる仕事なんだね』と感動した体験が、息子が写真の道を選ぶきっかけになりました」  坪井さんは数年前に背中を疲労骨折し、一時は寝たきりの状態だった。その後のリハビリで、現在は杖をついて歩けるまでに回復。ふだんはスタジオで撮影の監修などを行っている。和装での撮影やスポッティングでは、いまも坪井さんの技術が欠かせない。その技術をゆくゆくは娘や孫に引き継ぐつもりだが、自分自身も「手の動くかぎりやり続けたい」と話してくれた。 有限会社三陽会館 サンヨーフォトスタジオ TEL:044(222)4473 https://3youkaikan.sakura.ne.jp (撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英) 写真のキャプション 極細の筆で絵を描くように修整する。元の写真にインクを馴染ませながら、輪郭をはっきりさせるとともに、よりよい表情に再現するのがポイントだ 遺影に修整を加える前(左)と後の写真(右)。元の写真は爪の大きさほどのサイズ。より明るい表情になっている フォトスタジオのある三陽会館ビル。川崎駅にほど近い繁華街にある(写真提供:有限会社三陽会館 サンヨーフォトスタジオ) 2021年度に受賞した「かわさきマイスター」の楯。横の写真は、若いころの坪井さん 記念写真や証明写真の撮影では、撮影の技術に加えて、被写体の姿勢や表情、身だしなみに気を配ることも大切な要素。撮影前にベテランの視点でチェックする 記念写真を撮影した人へのサービスとして、写真をアルバムに綴じて進呈している。家族の成長とともにアルバムが何冊にもなる常連の顧客も多い 専用の写真修整インクを用い、色味を写真に合わせて調整しながら修整を行う。写真に馴染みやすく、変色しにくいインクを一貫して追求してきた 【P64】 イキイキ働くための脳力アップトレーニング!  文字の誤変換を正しく直すとき、脳ではワーキングメモリ(作業記憶)にかかわる前頭前野が盛んに使われます。言葉の理解や処理に関連する、発話性言語野、中核性言語野、文法中枢、これらをつなぐ弓状束などの言語中枢も活発に働き、短期記憶が鍛えられます。 第94回 目標10分 誤変換解読クイズ 携帯電話の画面に間違えて変換されてしまった文字が並んでいます。よく読んで正しい質問文に直して、その質問に答えてみましょう。 @ 1954ネン似発後悔去れ、0話野原罪喪アイサre手射る得札海10英蛾nona舞え刃? 答え A 歯角濃く眠エイ予章wo受賞舌HOME欄瀬快位置タッ性の焼きュ卯船首都家場? 答え 時間を決めてルーティンにする  脳トレを、「暇があるときにやろう」とか「明日こそやろう」などと思っていると、どうしても後回しになって、結局やらないまま日にちが経ってしまうことがあると思います。そこでおすすめしたいのは、脳トレを1日のルーティンとして定着させるという方法です。  例えば、みなさんは毎日歯を磨いているはずです。これは生活のなかでルーティンになっているために、あえて「続けよう」と思わなくても、歯の健康のためにあたり前のように続けているのです。  脳トレも、脳の健康維持のためにとても大切です。歯磨き同様、ルーティンに組み込んであたり前のように続けていきましょう。  歯磨きは、起床時、食後、就寝前など、「時間帯」や「タイミング」を決めて行っていると思います。脳トレも、起床時、食後、就寝前など、みなさんが取り組みやすい時間帯・タイミングで行うようにしてはいかがでしょうか。要は毎日の「脳トレタイム」を決めてしまうということです。  毎日同じ時間に行うのが習慣になり、何カ月も続けることができれば、徐々に頭の回転が改善していくのが感じられると思います。がんばった成果があらわれると楽しくなり、意欲も湧いてくるでしょう。 篠原菊紀(しのはら・きくのり) 1960(昭和35)年、長野県生まれ。公立諏訪東京理科大学医療介護健康工学部門長。健康教育、脳科学が専門。脳計測器多チャンネルNIRSを使って、脳活動を調べている。『中高年のための脳トレーニング』(NHK出版)など著書多数。 【問題の答え】 @ゴジラ 質問文は「1954年に初公開され、令和の現在も愛されている特撮怪獣映画の名前は?」 A王貞治 質問文は「初の国民栄誉賞を受賞したホームラン世界一達成の野球選手といえば?」 【P65】 ホームページはこちら (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)各都道府県支部高齢・障害者業務課 所在地等一覧  JEEDでは、各都道府県支部高齢・障害者業務課等において高齢者・障害者の雇用支援のための業務(相談・援助、給付金・助成金の支給、障害者雇用納付金制度に基づく申告・申請の受付、啓発等)を実施しています。 2025年4月1日現在 名称 所在地 電話番号(代表) 北海道支部高齢・障害者業務課 〒063-0804 札幌市西区二十四軒4条1-4-1 北海道職業能力開発促進センター内 011-622-3351 青森支部高齢・障害者業務課 〒030-0822 青森市中央3-20-2 青森職業能力開発促進センター内 017-721-2125 岩手支部高齢・障害者業務課 〒020-0024 盛岡市菜園1-12-18 盛岡菜園センタービル3階 019-654-2081 宮城支部高齢・障害者業務課 〒985-8550 多賀城市明月2-2-1 宮城職業能力開発促進センター内 022-361-6288 秋田支部高齢・障害者業務課 〒010-0101 潟上市天王字上北野4-143 秋田職業能力開発促進センター内 018-872-1801 山形支部高齢・障害者業務課 〒990-2161 山形市漆山1954 山形職業能力開発促進センター内 023-674-9567 福島支部高齢・障害者業務課 〒960-8054 福島市三河北町7-14 福島職業能力開発促進センター内 024-526-1510 茨城支部高齢・障害者業務課 〒310-0803 水戸市城南1-4-7 第5プリンスビル5階 029-300-1215 栃木支部高齢・障害者業務課 〒320-0072 宇都宮市若草1-4-23 栃木職業能力開発促進センター内 028-650-6226 群馬支部高齢・障害者業務課 〒379-2154 前橋市天川大島町130-1 ハローワーク前橋3階 027-287-1511 埼玉支部高齢・障害者業務課 〒336-0931 さいたま市緑区原山2-18-8 埼玉職業能力開発促進センター内 048-813-1112 千葉支部高齢・障害者業務課 〒263-0004 千葉市稲毛区六方町274 千葉職業能力開発促進センター内 043-304-7730 東京支部高齢・障害者業務課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2794 東京支部高齢・障害者窓口サービス課 〒130-0022 墨田区江東橋2-19-12 ハローワーク墨田5階 03-5638-2284 神奈川支部高齢・障害者業務課 〒241-0824 横浜市旭区南希望が丘78 関東職業能力開発促進センター内 045-360-6010 新潟支部高齢・障害者業務課 〒951-8061 新潟市中央区西堀通6-866 NEXT21ビル12階 025-226-6011 富山支部高齢・障害者業務課 〒933-0982 高岡市八ケ55 富山職業能力開発促進センター内 0766-26-1881 石川支部高齢・障害者業務課 〒920-0352 金沢市観音堂町へ1 石川職業能力開発促進センター内 076-267-6001 福井支部高齢・障害者業務課 〒915-0853 越前市行松町25-10 福井職業能力開発促進センター内 0778-23-1021 山梨支部高齢・障害者業務課 〒400-0854 甲府市中小河原町403-1 山梨職業能力開発促進センター内 055-242-3723 長野支部高齢・障害者業務課 〒381-0043 長野市吉田4-25-12 長野職業能力開発促進センター内 026-258-6001 岐阜支部高齢・障害者業務課 〒500-8842 岐阜市金町5-25 G-frontU7階 058-265-5823 静岡支部高齢・障害者業務課 〒422-8033 静岡市駿河区登呂3-1-35 静岡職業能力開発促進センター内 054-280-3622 愛知支部高齢・障害者業務課 〒460-0003 名古屋市中区錦1-10-1 MIテラス名古屋伏見4階 052-218-3385 三重支部高齢・障害者業務課 〒514-0002 津市島崎町327-1 ハローワーク津2階 059-213-9255 滋賀支部高齢・障害者業務課 〒520-0856 大津市光が丘町3-13 滋賀職業能力開発促進センター内 077-537-1214 京都支部高齢・障害者業務課 〒617-0843 長岡京市友岡1-2-1 京都職業能力開発促進センター内 075-951-7481 大阪支部高齢・障害者業務課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0782 大阪支部高齢・障害者窓口サービス課 〒566-0022 摂津市三島1-2-1 関西職業能力開発促進センター内 06-7664-0722 兵庫支部高齢・障害者業務課 〒661-0045 尼崎市武庫豊町3-1-50 兵庫職業能力開発促進センター内 06-6431-8201 奈良支部高齢・障害者業務課 〒634-0033 橿原市城殿町433 奈良職業能力開発促進センター内 0744-22-5232 和歌山支部高齢・障害者業務課 〒640-8483 和歌山市園部1276 和歌山職業能力開発促進センター内 073-462-6900 鳥取支部高齢・障害者業務課 〒689-1112 鳥取市若葉台南7-1-11 鳥取職業能力開発促進センター内 0857-52-8803 島根支部高齢・障害者業務課 〒690-0001 松江市東朝日町267 島根職業能力開発促進センター内 0852-60-1677 岡山支部高齢・障害者業務課 〒700-0951 岡山市北区田中580 岡山職業能力開発促進センター内 086-241-0166 広島支部高齢・障害者業務課 〒730-0825 広島市中区光南5-2-65 広島職業能力開発促進センター内 082-545-7150 山口支部高齢・障害者業務課 〒753-0861 山口市矢原1284-1 山口職業能力開発促進センター内 083-995-2050 徳島支部高齢・障害者業務課 〒770-0823 徳島市出来島本町1-5 ハローワーク徳島5階 088-611-2388 香川支部高齢・障害者業務課 〒761-8063 高松市花ノ宮町2-4-3 香川職業能力開発促進センター内 087-814-3791 愛媛支部高齢・障害者業務課 〒791-8044 松山市西垣生町2184 愛媛職業能力開発促進センター内 089-905-6780 高知支部高齢・障害者業務課 〒781-8010 高知市桟橋通4-15-68 高知職業能力開発促進センター内 088-837-1160 福岡支部高齢・障害者業務課 〒810-0042 福岡市中央区赤坂1-10-17 しんくみ赤坂ビル6階 092-718-1310 佐賀支部高齢・障害者業務課 〒849-0911 佐賀市兵庫町若宮1042-2 佐賀職業能力開発促進センター内 0952-37-9117 長崎支部高齢・障害者業務課 〒854-0062 諫早市小船越町1113 長崎職業能力開発促進センター内 0957-35-4721 熊本支部高齢・障害者業務課 〒861-1102 合志市須屋2505-3 熊本職業能力開発促進センター内 096-249-1888 大分支部高齢・障害者業務課 〒870-0131 大分市皆春1483-1 大分職業能力開発促進センター内 097-522-7255 宮崎支部高齢・障害者業務課 〒880-0916 宮崎市大字恒久4241 宮崎職業能力開発促進センター内 0985-51-1556 鹿児島支部高齢・障害者業務課 〒890-0068 鹿児島市東郡元町14-3 鹿児島職業能力開発促進センター内 099-813-0132 沖縄支部高齢・障害者業務課 〒900-0006 那覇市おもろまち1-3-25 沖縄職業総合庁舎4階 098-941-3301 【裏表紙】 『70歳雇用推進事例集2025』のご案内  2021(令和3)年4月1日から、改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業を確保する措置を講ずることが事業主の努力義務となりました。  本事例集では、70歳以上の定年引上げ、70歳以上の継続雇用制度の導入、定年制の廃止を実施した事例を掲載しています。  各事例では、高齢社員の戦力化や賃金制度、安全衛生などについて詳しく紹介しています。 □インタビュー形式で掲載  制度改定の経緯や苦労話をインタビュー形式で紹介しています。 □検索ガイドを掲載  企業規模や業種を超えた共通の課題に対応した事例を検索することができます。 『70歳雇用推進事例集2025』はJEEDホームページから無料でダウンロードできます https://www.jeed.go.jp/elderly/data/manual.html 70歳雇用推進事例集 検索 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 高齢者雇用推進・研究部 2025 4 令和7年4月1日発行(毎月1回1日発行)第47巻第4号通巻545号 〈発行〉独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 〈編集委託〉株式会社労働調査会