【P6】 特集 高齢社員の「学び直し」を考える  高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保措置が企業の努力義務となり5年目を迎えました。実際に就業確保措置を導入ずみの企業は約3割にとどまっていますが、働く人たちの就業期間は着実に延伸傾向にあります。  一方で、就業期間が延びれば延びるほど重要になるのが「学び直し」です。絶え間なく変化を続ける現在のビジネスシーンに対応していくためには、長年の職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験だけではなく、つねにそのアップデートを図っていくことが求められます。  そこで今回は、50代を含む高齢社員の「学び直し」について考えていきます。 【P7-10】 特別インタビュー 中高年社員の“学び直し”が求められる理由 法政大学 キャリアデザイン学部 教授 廣川(ひろかわ)進(すすむ) 1 中高年社員こそ“学び直し”が必要 ―「リカレント教育」や「リスキリング」という言葉が注目を集めていますが、すでに豊富な知識や経験、スキルを持つ中高年社員にも“学び直し”が求められる背景や理由について、お考えをお聞かせください。 廣川 “学び直し”は中高年社員にかぎった話ではなく、あらゆる世代にとって必要です。「人生100年時代」は、「だれもが学び続けなければならない」ということが大前提になっています。そんななか、なぜ中高年社員の“学び直し”が特に重要になっているかというと、変化の質が大きく変わったいまの時代においては、中高年社員がこれまでにつちかってきた知識や経験、スキルが、むしろ「邪魔になってしまう」といった事態が起きているからです。  以前は「営業一筋30年」など、長く一つのことを続けることによって得られるものに価値がありました。しかしいまでは、対話型生成人工知能(AI)「生成AI」を上手に使えば、世界中の古今東西の情報が、たちどころに要領よく集められます。しかし、こうしたAIをはじめとする新たな技術によって得られることに対し、「私は経験していないから」と否定的な中高年層もいます。若い世代の人たちからすれば、非常にやりにくい状況です。  経験がありすぎるため、前の時代の経験が新しい時代を切り拓くときの邪魔になるということがあります。そこで重要となるのが「アンラーニング」です。「アン」は「解除」のような意味で、いままで学んできたことを解除して、いったん脇に置こうという考え方です。まさに、いまの中高年社員にとってはアンラーニングが必要で、コップの水を一回空けないと、新しい水が入ってきません。変化が大きすぎて、それを受けとめるのがむずかしい時代だからこそ、中高年社員には、一度アンラーニングを行い、学び直してほしいということがあるのだと思います。  もちろん、古いものがすべてダメで、新しいものに入れ替えなければならないということではありません。アンラーニングをしてみることで、昔から大事にしてきたものの価値を再発見できることもあります。例えば、オンライン化が進んだからこそ、直接対話の重要性があらためて確認されたケースもあるでしょう。そうしたことを含め、“学び直し”は重要なのです。 2 中高年社員の成長が企業にもたらすメリット ―多くの企業が、社員の“学び直し”を支援する取組みを展開していますが、中高年社員向け研修などの優先度は、若い世代などと比べ、高いとはいえないのが実情だと思います。企業にとって、雇用する中高年社員の“学び直し”を支援することには、どんな意義があるのでしょうか。 廣川 それをしなければ、「企業は生き残れない」ということだと思います。仮に、会社の中が学び直しをしない社員ばかりになってしまった場合、先ほど説明したような中高年社員の弊害が発生します。自身の経験のみで仕事をしようとする中高年社員が、会社の中でそれなりのポジションにいると、若い世代のアイデアなどを潰してしまうことになりかねません。  中高年社員の幹部や管理職の人たちに、変化対応能力を身につけてもらい、若手の提案に対して「おもしろそうだな」、「それをやってみよう」となるような風土にする必要があります。昨今重要性が指摘されている「職場の心理的安全性」なども、こうした風土から育まれるものだと思います。  「学び直し」、「リスキリング」とはそもそも、政府が旗振り役となって推し進めている側面がありますが、「やらされ感」ではなく、もっと自発的に、「やらないとどうなるか」、「やることによるメリット」のイメージを描き、具体的な目的を示しながら、進めていくべきだと考えます。  中高年社員が学び直しをしてくれて、60代以降も一人ひとりの社員が活き活きと働いていれば、それが企業にとっても大きなメリットになるはずです。「50代社員は元気がない」、「やる気がない」、「60代社員を手本にはしたくない」といった具合に、むしろ反面教師のような存在ばかりだとすれば、影響は30・40代の下の世代におよびます。「夢を持てない」、「ああはなりたくない」、「この会社にいるとあんなふうになってしまう」、「だったら転職しよう」となり、仕事ができる30・40代が辞めていってしまいます。  会社内に好循環をつくるためにも、中高年社員に成長してもらうことが必要です。50・60代社員が活き活きとして成長していることを見せることができれば、離職率が下がるなどの組織側のメリットにもつながるはずです。 3 「リスキリング」の前に「リ・デザイン」を ―中高年社員の“学び直し”はどのように進めていけばよいのか、具体的に必要なプロセスなどについて教えてください。 廣川 「リスキリング」の前に、「リ・デザイン」が必要になると、私は考えています。リスキリングというのは、まさに「スキル」なので、技術論であり、何か目標を達成するための方法でしかありません。だからリスキリングの前には、何を大事にして、何に時間を費やして、どんな人生を過ごしたいのかという、人生のグランドデザインを立てること、つまり「リ・デザイン」が必要となるのです。  人生100年時代を迎えたいま、会社を辞めたあとにも長い時間があるわけで、そこを幸せな時間にするにはどうしたらよいか。いわゆる「ウェルビーイング(Well-being)」の観点からも大きく視野を広げ、人生全体を見つめ直すことが求められます。「いま、自分に何ができるのか」、「社会とのつながりがどう得られるか」という観点に立ち、キャリアと人生のデザインを見直すのもポイントです。  私が研修などで実施している「リ・デザイン」のプロセスを紹介すると、まず、「私のライフラインチャート」というものを作成し、これまでの人生を過去から現在までの時間軸に沿って棚卸しします。印象に残っている出来事や困難を感じた出来事、あるいは人との出会いなど、人生の各々の場面を、そのときの心理状態を思い起こしながら書き出して整理し、自身のルーツや歴史を紐解いていくのです。さらに、それぞれの「危機・転機」についてまとめた表も作成してもらいます。これまでに経験した転機に焦点をあててふり返り、今後につなげていく作業です。  そのうえで、自身の今後の“未来”を見つめ、具体的な「リ・デザイン」に取り組みます。「統合的生涯設計」で知られるサニー・ハンセン氏の理論を応用したフレームワークを使っています。「Love(愛、家族、関係、絆)」、「Labor(労働、仕事)」、「Learning(学習、学び)」、「Leisure(余暇、自由時間)」の四つの“L”が統合されると、意味のある人生になるという考え方に沿い、未来を描いてもらう作業です。研修では、四つのLに基づき、八つのゾーンに分けた「人生のリ・デザインplanning シート」に、現状について記し、そこから未来のビジョンを描くという方法で行っています。  これまでの人生をふり返り、人生そのものをリ・デザインし、人生のグランドデザインを立て直すという一連のプロセスを経て、そこでようやく出てくるのがリスキリングの話です。新たなグランドデザイン、新たな自分の生き方や働き方に向けて、何が必要かを逆算して戦略を立て、その戦略に則って行うのがリスキリングだと考えています。  目ざすものから逆算し、なぜ学ぶのか、なぜそのスキルを身につけることが必要なのか。そこを具体的に考えられるようになって、初めて納得感を持ってリスキリングに取り組むことができるのです。 4 行動変容にはグループワークが有用「危機感」を伝えることも ―中高年社員が人生をリ・デザインし、効果的なリスキリングを実践できるようにするため、企業にはどのような取組みが求められるのでしょうか。 廣川 リ・デザインには、やはり研修が必要です。個人での作業や宿題の形でワークシートを作成し、そこで気づくこともあるのですが、実際に作成されたほかの人のワークシートを見たり、意見交換をすることで効果的に行えます。  例えば、参加型の研修で、これまで仕事一筋で高い役職に就いている人と、いわゆる出世コースを外れている人が同席するケースがありました。高い役職の人の方がワークシートをうまく埋められず、出世コースを外れている人の方が、しっかりと未来のビジョンを描けており、高い役職の人にとっては「自分の方が収入は高いが、隣の人の人生の方が充実して豊かそうだ」という気づきにつながることもあります。  また、研修をしたままにせず、キャリアカウンセリングなどを随時行い、行動変容を確認することも大事です。キャリアカウンセリングは、プロのキャリアコンサルタントに依頼してもよいですし、社内にいるキャリアコンサルタントの資格を持った人が担当してもよいと思います。社内の人間の方が話しやすい人もいますし、社内では話したくないという人もいるので、どちらか選べるようにするとよいかもしれません。  リスキリングにも、個人ではなく、仲間と一緒に行おうという流れもあります。リスキリングに「共同の」を意味する「co-」を加えた「コ・リスキリング」という名称も最近は聞かれます。要するに「一人で学ぶより、みんなと学ぶ方が収穫は大きい」ということですが、これが別のコミュニティに属する人と出会うきっかけになれば、さらなる効果も期待できるでしょう。  また、中高年社員のリ・デザイン、リスキリングをめぐり、会社の重要な役割としてあげられるのが「情報開示」です。特にいまの50代社員は、時代に対応しきれていないにもかかわらず楽天的で、問題を棚上げにしている人が少なくないように感じています。現在55歳前後の社員は、バブル期入社世代で、就職活動で苦労をしていないケースも多く、会社との関係は、最初の出会いのところから「相思相愛」でした。求愛されて、選ばれて入社したというわけです。そのファーストインプレッションが強く、楽観的な状態が、ずっと続いているのかもしれません。  危機感のない50代社員については、会社にも責任があります。役職定年や定年を控え、本音では、「もうそろそろあなたの役目は終わり」と思っていても、ギリギリまでがんばってほしいから、明確なメッセージや情報を伝えない。伝えていたとしても遠回しに、やんわりというだけで、伝わっていない可能性があります。  会社側が当人のことを本当に考えるなら、役職定年を迎える直前になって、「あなたはもうダメよ」と急に伝えるのではなく、その前の段階で、先行きの見通しなどについて情報開示を行い、「このままであと10年、会社にはいられると思いますか?」と、少し強い、ふみ込んだメッセージを出すべきです。そうすれば50代社員たちも、早い段階から危機感を持って、リ・デザイン、リスキリングに取り組むことができるでしょう。 5 「会社から自分を取り戻す」 ―最後に、中高年社員のキャリア自律や活躍をうながす観点から、企業で働く中高年社員へのメッセージをお願いします。 廣川 会社員としては、現在60代の人たちであれば、変化の大きな状況も、このままなんとか逃げ切れるかもしれません。しかし50代社員の場合、定年後の再雇用も考えれば、退職まで10年前後の期間があります。このまま自分が変わらずに、これまでのキャリアと経験で「10年もちますか?」と自らに問いかけることが必要だと思います。それぞれが少し厳しく、自分の会社内での評価や市場価値について、考えてみるべきです。  そして、大切なのは「会社から自分を取り戻す」ことです。60歳以降は、これまでのように会社の敷いたレールに乗ってはいけなくなるのですから、会社という枠組みを外し、自分が今後どんな働き方をしたいか、どんな生き方をしたいのか、「会社を離れたときに残る自分」と向き合うことが重要です。  ある人の例ですが、50歳ぐらいになったときに、親しい役員に「私は役員までいけますか?」とたずねたそうです。その役員の返答は「きみはちょっと無理だろうな」でした。その人はそこからすぐに、自分の人生の戦略を組み直し、持っていた資格に関する経験を積める部署への異動を申し入れ、さらに上位の資格を取得し、60歳以降は個人事業主として仕事をしていける道を開きました。  会社に残るにしても、残らないにしても準備は必要でしょう。まずは、自分の人生のリ・デザイン。そこから逆算し、自分を変えるため、自分の価値を高めるために必要な目標を見定め、リスキリングに挑戦できれば、活き活きと未来に希望を持つ中高年社員が増えるのではないかと思います。 〈プロフィール〉廣川進(ひろかわ・すすむ) 出版社に18年勤務後、大正大学臨床心理学科教員を経て2018年より法政大学キャリアデザイン学部教授。おもな著書に『キャリア・カウンセリングエッセンシャルズ400』(金剛出版)など。 写真のキャプション 法政大学キャリアデザイン学部廣川進教授 【P11-14】 解説 企業に求められる中高年社員への学び直し支援 株式会社ジェイフィール 代表取締役 コンサルタント 片岡(かたおか)裕司(ゆうじ) 1 はじめに  読者のみなさんの組織では、これまで中高年社員の活性化や活躍促進についてどんな取組みをされてきたでしょうか。私が多くの組織とかかわるなかで、大きく三つのパターンに分けられると考えています。  一つめは中高年社員がこれまでつちかってきた能力の陳腐化があまり進んでおらず、貴重な戦力というケースです。インフラ系の企業や食品メーカーなどによく見られます。この場合、自分たちの身につけてきた能力に気づいてもらい、モチベーション向上を主眼にしていく取組みが必要になります。  二つめは中高年社員には第一線から少し退いてもらいたいというケースです。「黄昏研修」なんていわれているものです。金融系企業で特に多く見られます。  そして三つめが中高年社員に学び直しを通じて新たな分野でチャレンジしてもらおうというケースです。IT企業や商社など、変化の激しい業界でよく見られます。  しかしこれからは、おおむね三つめのケースに集約されていくと考えられます。その背景は、生成AIの“あたり前化”という技術変化と、働き手不足という環境変化によるものです。  企業における中高年社員への学び直し支援は自己啓発から戦略へと転換していく必要があります。モチベーションだけでは今後の環境を乗り越えていけませんし、また黄昏研修などを行っている企業にはそもそも優秀な人は集まらなくなるでしょう。企業はこれまで以上に明確な意思をもって中高年社員の学び直しを実現していく必要があるのです。 2 学び直しに向けた企業文化をつくる  ちなみに生成AIにこのレポートのタイトルを入れると、七つの大項目と21の取組みが出てきました。学習機会の提供、学習を促進する制度、環境づくり、マインド醸成、感情的配慮などです。どれももっともなことが書かれていますが、それでも中高年社員の学び直しがなかなか進まないのが現実ではないでしょうか。  多くの企業では、取り組みやすいところから始めるケースが多く、キャリア研修やオンライン学習の機会を多くの企業で整備されてきていると思います。  しかし最初に行わなければならないのは、自社の「キャリアパス」の改革と、そこに向けた「経営のコミットメント」を醸成することです。だれもが受験前には勉強をするかと思いますが、働きながら学ぶことをあたり前にしていかないといけません。  キャリアの中盤から後半戦に向かっていく中高年社員にとって、学び直すことをあたり前の企業文化にしていく必要があります。私のクライアントのある会社では、50代社員にジョブ型人事制度を導入し、53歳で全社員が公募で自分の仕事を勝ち取る仕組みを導入しています。厳しい仕組みという側面もありますが、自分のやりたい仕事、処遇のよい仕事などを自分で勝ち取るチャンスととらえ、新たな学びにチャレンジする中高年社員が多くいました。  これでは組織が起点となっていて、主体的なキャリア自律になっていないといわれるかもしれませんが、中高年社員の学び直しは戦略的に取り組まないといけない環境になっているということです。各組織と個人がともにありたい姿を描き、行動しなければなりません。 3 中高年社員と知的好奇心  中高年社員が活性化しない要因として、@「自分の今後の職業人生はこんな感じだろうな」ととらえてしまい自己像を矮小化してしまうこと、A新たなチャレンジに対する好奇心の低下、B新たなチャレンジに失敗したり、新たな仕事の担当となり初心者になってしまったりする不安、があります。  これらの要因が絡まり、負のループへと入り込んでしまうとなかなか抜け出せません(図表1)。  ここであらためて好奇心とは何かについて少し考えてみたいと思います。心理学的には二つの好奇心が存在するといわれています。「拡散的好奇心」と「特殊的好奇心」といわれるものです。  「拡散的好奇心」とは、新たな情報を求める人間の根源的な動機です。しかしこの好奇心は、「新規性が高すぎるもの」、「既存の枠組みを否定する可能性のあるもの」を避ける傾向があります。中高年社員の学び直しという文脈でとらえると、新たな学びに好奇心を持たせるには、自己像を大きくとらえ、自分と新たなスキルにつながりを描いていくことが大切ということになります。  もう一つの「特殊的好奇心」とは、何か特定の領域を深掘りしていく好奇心です。これは達成可能と感じられることや自己選択が重要になってきます。また受身的な特性があり、周囲との比較や明確な目標が好奇心を刺激するといわれています。  中高年社員の仕事や学びへの好奇心を活性化させていくには、自分のキャリアや将来像を大きくとらえるように支援し、新規性の高さや、自分が否定されるわけではないという理解が必要です。また、何か深く学んでいくには指標やライバルも必要になってくるということです。 4 中高年社員の「戦略的学び直し」実現に向けた三つのポイント  これらの観点、また私の経験から、中高年の「戦略的学び直し」について三つの打ち手をお示しします(図表2〈14ページ〉)。 @学び直しに向けたキャリアデザイン支援  中高年社員本人の意識改革に向けて中核的な取組みになるのが、キャリアデザイン研修やキャリアコンサルタントによるカウンセリングです。  ただし、これまでのモチベーション向上に向けたキャリア研修とは少し視点が変わってきます。特に、強みのとらえ方を変えていく必要があります。具体的には、保有している強みそのものではなく、その強みを形成・獲得していったプロセスに新たな強みを発見していくという方法です。つまり、学ぶ力そのものを強みとして認識するという意味です。  例えば、「突然同僚が辞めてしまい、引継ぎもないまま、自分で試行錯誤して仕事をなんとかこなし、きれいにマニュアル化して後任に引き継いだ」という仕事経験があれば、この仕事経験を通じて「マニュアル化」というスキルが得られたと考えます。しかし、ここでもっとフォーカスすべき強みは、「試行錯誤しながら新しい仕事を自分のものにした」というプロセスにある強みです。この試行錯誤のプロセスをより詳細に見ていくと、独自のプロセスが見えてくるはずです。この壁を乗り越えたプロセスを強みととらえ、今後のキャリアを考えると、可能性が広がっていきます。  一方、強みを「〇〇分野での研究者としての専門性」や、「法人営業としてネットワークやスキル」ととらえてしまうと、基本的には過去からの延長線上にしかキャリアを描けなくなってしまいます。これでは学び直しのモチベーションも必要性も高まってきません。学び直しの時代では、学んできたことではなく、学びのプロセスに強みを見いださなければならないのです。 A仕事のアサインメントとサポート  次のポイントは、おもに上司が主体となって行う学び直し支援です。アサインメントは異動も含めて考えると人事部門も関係しますが、異動させるかどうかも含め、まずは上司が中高年社員にどう向き合うかということが重要になります。  新たなアサインメントは、新たなスキルを身につけたあとに実施するべきと私自身も考えます。ただ、現在の中高年社員の多くが、OJTや仕事を通じて成長してきた世代ということも事実です。つまり中高年社員にとっては、実務を通じて学び直しができることが最も効果的で近道ということになるのです。  いままでは、組織の事情と本人の強みからアサインメントを考えてきたと思います。特に中高年社員には次のステップという考えは薄く、なるべく得意な仕事をアサインしてきたのではないでしょうか。これを強みや価値観を活かしながらも、学び直しが必須のアサインメントを行っていくということが重要です。 B自己像の拡大支援  自己像の拡大支援とは、自分自身の可能性を広くとらえられるよう支援していくということです。例えば、いままで営業を長く担当してきた場合、40代、50代となると、「いまさら開発なんて無理だ」、「財務経理なんて無理だ」ととらえがちです。  しかし自分自身の可能性を広くイメージできていれば、「営業でこれまで聞いてきたお客さまの声を開発につなげられるかも」、「財務経理を知ることで、営業としてさらに経営レベルの目線が持てるかもしれない」と思えるかもしれません。  自分の可能性を広く持てるようにしていく支援はたくさんあります。いわゆる越境学習・異業種交流や社内インターンなどの機会があります。ただ、多くの組織でこのような機会は中高年社員というより、若手・中堅社員に優先的に提供されているのではないでしょうか。手あげ制のポスティングの異動制度や副業の解禁なども自己像の拡大につながります。こういった施策に中高年社員も参加できるようにしていくと、モチベーションアップにもつながり効果的です。 5 最後に  最後にあげた三つのポイントは、じつはどの世代でもあてはまる話です。キャリアのとらえ方や自己像を拡大していくこと、また適切なアサインメントとサポートを提供していくことは、だれにでも必要です。ただ、中高年社員には経験とスキルがあります。そしてその経験やスキルが自己像を狭め、そのことが好奇心の低下や新たなチャレンジを躊躇させる原因となるのです。  中高年社員の強みをリフレームし、新たな自己像に基づく学び直しを促進していきましょう。 【参考文献】 波多野誼余夫・稲垣佳世子『知的好奇心』(中公新書) 図表1 中高年社員の学びを阻害する負のループ 自己像の矮小化 今後の職業人生はこんな感じだろうととらえてしまい自己像を矮小化してしまうこと 不安 新たなことにチャレンジして失敗したときの不安 新たな場で自分が初心者になる不安 好奇心の低下 できる範囲の仕事が続き、好奇心が持てないモチベーションや活力が低下する ※筆者作成 図表2 中高年社員の学び直しに向けた三つのポイント 学び直しがあたり前の企業文化の醸成 中高年社員の学び直しの実装 学び直しに向けたキャリアデザイン支援 ・すでに獲得している強み、スキルではなく、強みやスキルを獲得してきたプロセスにフォーカスする ・中高年社員の学ぶ力に強みを見いだしていく 仕事のアサインメントとサポート ・中高年社員には得意な仕事や経験のある仕事ではなく、学び直しが必須の仕事にアサインしていく ・中高年社員の心理的不安をサポートしていく 自己像の拡大支援 ・中高年社員にもさまざまな視野拡大の経験を提供する ・越境学習、異業種交流、社内インターン、副業など刺激の高い機会を通じ、自分自身の未来に広い可能性を持てるようにする 【P15-18】 事例1 山(たかやま)産業(さんぎょう)株式会社(山口県美祢(みね)市) 講演から業界外の幅広い知見に触れマインドセットのための学びを提供 土木建設を基幹事業とする創業70年の総合建設会社  山産業株式会社(以下、「山産業」)は1954(昭和29)年に土木建設業として山口県美祢市で創業。県内の公共工事を中心に多くの土木工事を手がけてきた。工事はすべて自社の社員、自社の工事機械で行い、数々の優良工事表彰の受賞歴を誇り、直近では「令和5年度山口県優良建設工事表彰」を受賞している。また、国際的環境マネジメントシステムを構築し、国際標準化機構ISO9001・14001を複合認証取得している。  おもな事業内容として、建築部は県内・外において公共工事および民間工事を手がけ、商業建築、産業建築や集合住宅、学校などの事業所用建物をはじめ飲食店、ガソリンスタンドまでを新築。車両整備部は1966年から民間車検整備工場としてスタートし、自家用車から業務用車両まで、メンテナンスやアフターサービスを提供している。また、独自の物流システムをもって企業の資材調達から製品配送、特種貨物に対応する運輸部のほか、住宅事業、不動産事業にも参入している。  2015(平成27)年には、高速道路事業部を新設。道路・施設設備の点検および調査、清掃、植栽作業、補修、冬期の雪氷作業などの維持管理業務をになっている。山口県は全国有数の道路舗装率を誇っており、なかでも高速道路は流通やビジネス、観光レジャー産業の活性化に不可欠なインフラであるが、損耗が激しい資産であり、経年による道路構造の老朽化への対応は不可欠である。山産業は24時間365日、高速道路の安心安全を確保するとともに、資産としての健全性を永続的に確保し、高速道路のネットワーク機能を維持していくため、経験・ノウハウ・技術の蓄積に取り組んでいる。 中高年社員が主軸として活躍 65歳定年後も処遇変わらず  山産業の社員数は、101人。そのうち、10代が2人(男性2人)、20代が10人(男性10人)、30代が8人(男性6人、女性2人)、40代が12人(男性11人、女性1人)、50代が36人(男性32人、女性4人)、60代が22人(男性21人、女性1人)、70代が8人(男性8人)、80代が3人(男性2人、女性1人)となっている。中高年層が厚く、平均年齢は50歳である。  山産業では、2019(令和元)年10月、定年年齢を63歳から65歳に、継続雇用年齢を希望者全員65歳から70歳に引き上げている。以前から65歳を超える社員が元気に働いていたことから就業規則を改定し、70歳以降も健康や意欲などに問題がなければ、運用により1年ごとの更新で年齢上限なく再雇用している。  なお、年齢や再雇用者であることを理由に、給与の減額などの処遇の変更は行わない。  また、定年年齢引上げとあわせて、再雇用者が希望した場合に1〜3時間の勤務時間短縮措置を講じる短時間勤務制度を導入した。山(たかやま)正樹(まさき)代表取締役社長は次のように話す。  「再雇用者の1割が短時間勤務制度を利用しています。『定年を機に業務量を減らしたい』、『70歳を過ぎたので週休3日にしたい』、『祝日は休みたい』など、理由は人それぞれです。経験豊富な方たちですので、できるだけ長く勤めてほしいと思っていますが、加齢とともに心身機能も低下してきますから、その辺りを本人が『これ以上何かすると会社に迷惑をかける』と気にかけているところがあり、所属長や経営層が声がけをしてフォローし、できるだけ長く働き続けてもらうよう励ましています」  山産業の社員は9割が中途採用者であり、飲食業など他業種からの転向、あるいは事務職の経験しかないなど、建設業が初めてという人は多い。そうした未経験者に一から教える教育係としてベテラン社員が活躍している。特に高速道路事業部は高齢社員と若手のペア就労を「バディ方式」と呼び、刈払機など危険をともない注意を要する機械の操作をはじめ、作業全般を指導し、技術伝達に努めている。  さらに、高齢社員は緊急災害時にも存在感を発揮している。「高齢社員が運転すると安心感があります。災害時などでダンプカーが埋まりそうなほど、足元の悪いむずかしい現場も上手に運転してくれます。これは技術力の差でしょう。さまざまな現場を経験しないとできないことです。これ以上行ったらぬかるんでいて、車輪がはまることを察知するなど、熟練者はその辺りの感性が違います」と山社長も舌を巻く。 山産業の学び≠フ軸となる「安全大会」熟練者の過信を見直す学びに  山産業における“学び”の軸となっているのが、毎年開催している「安全大会」だ。厚生労働省と中央労働災害防止協会が毎年7月1日から1週間実施する「全国安全週間」は、その準備期間として6月1日から30日まで職場の巡視やスローガンの掲示、労働安全に関する活動を行っており、建設業界では「全国安全週間」にあわせ、各企業が「安全大会」を開くのが恒例となっている。建設業や工事現場で働く労働者の労働安全衛生に関する知識を深め、安全対策の共有を目的とし、講演や講話、避難訓練、消火器訓練、表彰式が行われる。  山産業では、安全大会を毎年5月末に、全社員と協力会社を対象に実施している。半日の日程で2部制のプログラムを組み、第1部は前年度の安全衛生活動をふり返り、当年度の活動計画・目標について報告し、第2部は特別講演で、来たる2025年度の講師は、交通事故の遺族で、「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」の副代表理事を招いて開催する予定である。  「私たちは業務で車を運転し、日常生活ではだれもが車を運転します。当社でも一年間で大なり小なり事故が起きており、その要因の一つに熟練者の自己過信があげられています。会社がいくら安全運転を呼びかけ、さまざまな事故の事例をあげても、『私は事故なんて起こさない』という過信があって、最終的に心に響かなかったらどうにもなりません。今回、講演を聞いて遺族の気持ちを知り、学びに変えてほしいです。自己過信をひっくり返したいと思っています。また、いま、世の中がどう動いているか、いまの自分の運転はどうなのか、よかったのか、もっと上手くできたのかを検証する場でもあります。これまで働いてきて、あらためて当社で車の運転をする業務に長く就きたい気持ちがあれば、世の中の変化を知り、自分の運転を考え直さなくてはいけません。もちろん、きちんと運転している人もいます。その人たちは講演会を確認する機会としてもらい、心に響く話をきっかけとして聞いて学びにしてもらいたいです」と山社長は話す。  そんな熱い思いから、講演の講師へのアポイントメントは、山社長自ら行っている。社員も特別講演を楽しみにしているようだ。 「心に響く講演」をテーマにし高齢社員のQOL向上を目ざす  今年度は業務上の安全に関連する講演内容であったが、7、8年ほど前からジャンルや地域にとらわれず「心に響く講演」をテーマに講師を選出するよう方向転換した。  「以前は建設に関係した話をしてもらっていましたが、テーマの幅を広げて、もっと社員のモチベーションが上がる内容にして、社員の心に留めてもらいたいと思いました。そこで、ふだんなかなか聞けない話で、違う世界に触れられるような、新しい空気を入れることで、感性を豊かに、人間性が豊かになればと考えています。私自身、さまざまな場所に行き、さまざまな人の話を聞いて、交流を持つなかで学びがあり、感性が豊かになっていくと感じているので、社員にも同じように違う世界に触れ、人生が豊かになる学びを提供したいと思いました」と山社長。  「心に響く講演」は社員のQOL向上もねらいの一つとなっているようだ。  また、講演の効果は、バディ方式で行っている若手指導にも活きていくというのが、山社長の考えだ。技術継承の場では、「見て学べ」という考え方が長く定着しており、最近ではこうした考えに基づく指導はなくなったが、まだ、「お前もこうしろ」と押しつけるような指導をする人が見受けられるという。会社は若手の環境や背景、考え方に合わせた指導を求めており、指導担当者も自分で「よくない」とわかっていても、つい過去に自分が受けてきた指導の通りにふるまってしまうこともあるようだ。「心に響く講演」から世の中の価値観の変化を学び、自分が過去に正しかった手法に固執していることに気づき、新しい方向に進む動機づけとしての学びになればと期待している。  「私自身、経営者として、学び続けなくてはいけない、足を止めてはいけない、と思っています。時代はつねに変化しており、過去の常識が通用しない場合がありますから。高齢社員には技術だけでなく、講演から得る学びによりマインドセットを変えて、生活行動や仕事によい変化をもたらしてほしいです」  講師の人選は、社員のモチベーションが上がる、心に響く話が聞けることを中心に、幅広く考えている。例えば、現役から退いて間もない県内の元学校長を招いた際は、高齢社員の世代は仕事が忙しくて子どもの入学式、卒業式など学校行事に参加できない人もいたことから、教育関係者に現在の教育現場を語ってもらい、いまの時代は家族で子どもの教育を語る時代だと知ってもらう目的で人選した。  講演後、特に高齢社員からは、「教育は奥さんに任せていたけれど、たいへんさがよくわかった」、「いまの学校のことがよくわかった」などの声があったという。ときには「社長、来年はこんな人がよいですね」と希望を出してくれる人もいる。  そのほか、宮城県塩釜市で東日本大震災に被災し経験を風化させない活動をしている方、山口県有数の酒蔵の経営者、一般社団法人日本美腸協会の認定講師などに依頼してきた。社員たちは言葉で多くを語らないが、講演会を楽しみにしていること、講話を興味深く聞いたこと、視野が広がったこと、そんな様子が感じとれている。  他方、モチベーションが低い若手に対し、講演で自発的な動機づけができないか期待している面もあるという。山産業は自治体から緊急災害対応の要請があると、経営陣以下、だれもが駆けつけることになっている。しかし、電話連絡に出ない者、あるいは「用事がある」と断る者もおり、災害対応をになう会社として若手社員の意欲の底上げは重要課題ととらえ、効果的な施策を探っている。 コミュニケーションを重視したモチベーション向上の取組み  社員全体のモチベーションアップの取組みの一つに社内表彰がある。年度末に社員総会を開催し、今期のふり返りと来期の目標を各部署が発表しており、その後に表彰式や懇親会を行っている。表彰式では「永年勤続表彰(15年以上対象)」、「モチベーションアップ表彰」、「スローガン表彰」の三つの部門を設けている。各部門で数人がノミネートされ、表彰式の壇上で受賞者が発表される。受賞者はベテランが多く、受賞のコメントが率直でおもしろいと評判だ。あるベテラン社員が受賞した際は、「社長がうるさくいってくるから見返すまで会社にいようと思っている」など、気兼ねなく話す生の声は、経営層にも、若手・中堅にも響く内容で、仕事をするうえでの刺激にもなっているようだ。  その後の懇親会を楽しみにしている社員も多く、社員同士の交流を深める場として提供するほか、同年代、同じ地域に住む人、異世代、異業種など、そのときそのとき、さまざまなくくりで開催し、エンゲージメントの向上につなげている。  山社長は最後に「技術は日々の業務で自然と身につくものだと思っています。会社が社員に働きかけなければいけないことは、『心』です。技術力にプラスして気持ちがうまく乗れば、その技術力がグレードアップしていくと思っています。高齢社員には、学びから新しいものを取り入れつつ、これまでつちかった大事なものを活かしてほしいです」と語った。  講演を通して社員の学びにつなげるなど、「社員の心に響く」人材育成に取り組んできた山産業。世間が人員不足などで景況感が芳しくないなか、堅調な黒字が続いており、取組みの成果と受けとめている。  今後も、高齢社員と顔を合わせる直接のコミュニケーションを通して、よりよく改善するための施策を模索しながら、学びを積極的に取り入れ、企業全体の発展につなげていく。 写真のキャプション 本社社屋 山正樹代表取締役社長 2024年度「安全大会」特別講演の様子 (写真提供:山産業株式会社) 【P19-22】 事例2 社会福祉法人 フェニックス(岐阜県各務原(かかみがはら)市) 高齢職員の資格取得支援など多様な人財のキャリア形成を支援 地域最大級の福祉医療関連グループ 高齢者をはじめ多様な人材が活躍  岐阜県各務原市にある社会福祉法人フェニックスは、「保健・医療・福祉サービスを通じて健康で活気ある地域づくりに貢献する」を標榜するフェニックスグループの一員として、2000(平成12)年に創業した(当時の名称:社会福祉法人暖家)。  フェニックスグループは1988(昭和63)年に有床診療所を開設して以来、岐阜県各務原市を拠点として、地域ぐるみで「自立支援」と「リハビリテーション」の分野で事業を展開するなかで、社会福祉法人のほか、特定医療法人なども開設しており、2025(令和7)年3月現在、グループ全体で31の事業所を運営し、約540人の職員が勤務する、地域最大級の福祉医療関連グループとなっている。近年は「スタッフよし、ご利用者よし、地域よしの“三方良し”」を経営方針とし、ダイバーシティ型人財確保・育成にも取り組んでいる。  同グループでは「フェニックスウェイ」という理念を掲げ、「スタッフおよびその家族は大切なファミリーであり、私たちの財産」とし、「スタッフの持てる力が充分に発揮できるよう全力で応援・支援する」ことを明言している。社会福祉法人フェニックスでも、この理念に基づき、2015年から「ダイバーシティ型人財育成・活躍プロジェクト」を推進し、事業所内保育所の設置など、職員のライフスタイルやライフステージに応じた柔軟で多様な勤務制度を整備。高齢者はもちろん、外国人や障害者も含めたあらゆる職員が働きやすい職場環境の整備に努めてきた。 希望者全員70歳までの雇用を実現し60歳以上の職員は3割超  同法人における高齢者雇用の取組みの現状について、企画室室長の吉田(よしだ)理(おさむ)さんは次のように話す。  「当法人では、グループの方針に基づき、高齢職員が活躍できる環境の整備に努めてきました。その結果、60歳以上の職員が全職員の33%を占めており、多くの高齢職員が活躍しています。定年は60歳ですが、希望者全員70歳まで働ける再雇用制度を整えており、それ以降も特定の専門職については本人の希望により働き続けることが可能です」  雇用形態としては、再雇用制度だけでなく業務委託契約で働くことも可能となっており、介護の現場を離れても、職場の環境整備や施設の管理業務など、周辺業務を担当してもらうことで、できるだけ多くの働く場所、働く機会を提供できるよう対応してきた。年齢構成は時代を反映して「若年者が少なくミドル層と高齢者層が多い」という逆ピラミッドを形成しているが、全体の雇用バランスを考慮しながら、長年勤務する職員のキャリアの持続性を確保する施策を展開している。  こうした年齢バランスになった要因について吉田室長は、「ひとつは単純に若年労働者の減少という側面があります。30年前までは福祉の専門学校から新卒者が毎年入所するといったこともありましたが、いまは若手人財の確保がむずかしくなっています。そのうえで、当施設の方針として、『一度勤務していただいた方には、定年を迎えてもずっと働き続けていただきたい』という思いがあります。この方針のもと、さまざまな仕組みをつくり続けてきました。その結果、ありがたいことに離職率が減り、勤続年数の長い方が増えてきたのです。つまり定年後も離職することなく活躍できるような環境となってきたために、全体的に年齢層が上がっているのです」と話す。 「介護福祉士実務者研修」と「ケアマネージャー受験対策講座」でキャリアアップを促進  同法人においては、職員がキャリアアップできる環境整備に注力しており、もちろん高齢職員のキャリアアップを図る取組みにも注力している。そこに高齢職員の「学び直し」がある。  その一つが国家資格である介護福祉士の資格取得を支援する、「介護福祉士実務者研修」と「介護福祉士対策講座」だ。  介護福祉士実務者研修は、専門の学校に行かなくても介護福祉士の受験資格を得ることができる制度で、同法人で働きながら受講できるプログラムとなっており、介護分野の専門知識がなく未経験からでも受験資格を取得することができる。この制度は、高齢職員だけではなく、若年層の雇用の幅を広げるための施策でもあるが、高齢職員とのかかわりについて、吉田室長は次のように話す。  「福祉の周辺業界、例えば看護師や医療関係者などが高齢となり、セカンドキャリアとして介護の世界に入ってくる例はたくさんあります。その方々に、少しでも専門性を高めてもらい、介護職として今後のキャリアを形成していってほしいという思いもあります」  介護福祉士の国家試験は毎年1月にあり、試験の前には試験本番に備えるため、外部講師を招いて介護福祉士対策講座を毎年実施して、受験する職員を支援。若手だけではなく、これまでに中高年職員16人がこの講座を受講している。  このほか、「ケアマネージャー受験対策講座」を毎年実施している。これは、ベテランとなった専門職員の、より長期的な雇用を実現するためのキャリア形成支援の取組みだ。  「ご存じの通り、介護の現場というのは、ある一定の年齢になると、身体的な負担が大きくなってきます。もちろん『現場で働き続けたい』と希望をする方もいますが、身体的な負担の少ないケアマネージャーとして、相談業務を担当したいという職員が一定数いるので、そういった要望に応える形で行っている取組みです」(吉田室長)  ケアマネージャーになると、同じグループ内のフェニックス在宅相談センターでの勤務が可能となる。同センターでは、在宅勤務やフレックスタイム制度が導入されており、職員一人ひとりの暮らしに合わせた働き方を選べるため、就労意欲の向上をうながすとともに、ワーク・ライフ・バランスの調和も図れるということで、この対策講座を受講してケアマネージャー試験に挑戦する職員は少なくない。  「最近では、配偶者の介護を自宅で行っており、『働き方が選べるフレキシブルさが魅力』と感じて、ケアマネージャー資格を取得した職員もいます。高齢職員にかぎらず、出産や子育てなどと仕事を両立するための制度、ということができると思います」(吉田室長) 「スーパーバイザー」や「介護助手」など管理職経験者や求職者に新たなキャリアを提示  一方で、管理職経験者の高齢職員のキャリア形成を支援する仕組みとして、「スーパーバイザー制度」がある。  これは長年にわたって実務経験を積み、管理職としての経験も持つ役職定年後の高齢職員をスーパーバイザーに任命し、後進の育成をになう立場として活躍してもらうための仕組み。役職定年で若い世代とバトンタッチする際、役割を明確化させるという意味もある。  「スーパーバイザーは、若手や新規採用者の指導・教育を行い、特に『ヒューマンスキル』や『コンセプチュアルスキル』を育むことに重点を置きながら、リーダー職や管理職を支えてもらいます。2025年は特に自己流やその場かぎりの対応が許されない『接遇』に関して力を入れて指導してもらう方針です」(吉田室長)  研修の企画や実施にあたっても、リーダー職をサポートしながら、OJTやチームカンファレンスを通じて現場の一体感をつくり出す役割をになうスーパーバイザーは、高齢職員の働く意欲も引き出す仕組みといえる。  また、就労を希望する高齢者の働く場を創出し、さらに幅広い働き手を確保するために導入された仕組みとして「介護助手」がある。  介護助手とは、介護職員をサポートする職種であり、食事の配膳や掃除、ベッドメイキングなど、利用者の身体に触れない範囲でのサポートを行い、直接的な身体介護が求められる介護業務に付随する周辺業務をになう。資格を有する介護職員に本来の業務に専念してもらうことで、業務の機能分化とサービスの質の向上を図り、あわせて就労を希望する高齢者などにその機会を提供するのが目的だ。  「毎年、『介護助手体験会』というものを開催しており、2024年に行った同体験会には、20代から70代の方に参加いただきました。施設の見学を含め介護助手の仕事体験、食事や清掃など関連した業務の説明などを行いましたが、『介護に関心はあるけれども、やっぱりむずかしそう』、『自分にできるかな』と躊躇されてる方に、介護助手という周辺業務でお手伝いできることがある場としてアピールしています」(吉田室長) 写真のキャプション 社会福祉法人フェニックスが運営する特別養護老人ホーム「メゾンペイネ」 吉田理企画室室長 【P23-27】 特別寄稿 ミドル・シニアのリスキリングが進まない要因は? 株式会社ライフシフト 会長・CEO 多摩大学大学院 名誉教授 徳岡(とくおか)晃一郎(こういちろう) 1 はじめに  日本の中高年のリスキリング(本稿では「学び直し」と同義とします)は惨憺(さんたん)たるものです。株式会社パーソル総合研究所の調査では、中高年で学び直しを行っている人は14.4%にとどまります※1。また厚生労働省の令和4年度「能力開発基本調査」によると、学び直しをしない理由は男女ともに、「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(男性63.7%、女性48.9%)がトップです(図表1)※2。  しかし、AIの急速な発達を見るまでもなく時代はよりいっそう先へ先へと動いています。現状に埋没していては次の時代の仕事にはありつけません。いまや「仕事ばかりしていると仕事さえできなくなってしまう」時代なのです。  もちろん、これだけリスキリングが話題になっているいまですから、その言葉を知らない人はまずいないでしょうし、やらなくてよいと思っている人も少ないでしょう。  しかし、大学を出て就職することで、「勉強なんかしなくてもよくなった!」と勘違いして20数年、何もしてこなかった中高年には勉強習慣が消滅している方が多いのです。新聞は読まない、読書もしない。そんな人がなんと多いことか。50歳以上では月に本を一冊も読まない人が56%という調査もあります※3。スマートフォンを握りしめてスマホゾンビになってしまっているのでしょう。  こうしていわゆる“Knowing-Doing Gap(わかっちゃいるけど、実行できない)”を退治できずに、ズルズルと年を重ねてしまうわけです。 2 リスキリングのメリット  私はリスキリングのメリットとして三つ考えています。一つめは当然のことながら、いまの仕事のパフォーマンスアップです。「学びはOJTで十分」とか、「会社がやってくれる研修を待てばいい」(参加しろといわれるから仕方なく参加するのも含め)という風潮がある反面、しっかり自ら学びに向き合っている人たちの実感では、「仕事のパフォーマンスが高まる」、「学びが将来のキャリアに活かされる」という人が多く、学び直しを3年以上している人はやっていない人と比べ年収で30万円の開きがあるという調査もあります(前出のパーソル調査※1)。  二つめは私が主張している「青銀共創(せいぎんきょうそう)」によるイノベーションです。「青=ヤング」、「銀=シルバー」をさしますが、世代を越えて強みと弱みを補い合うことで、銀からは経験や知識・技能の伝承ができ、青からは最新のデジタルノウハウが学べ、両者が協働することで世代を越えたDXなどのイノベーティブなソリューションが生まれます(図表2)。例えば、ある大手製造業の会社では定年延長に合わせて青銀共創に力を入れており、中高年の活躍の場が広がっています。人口減少で若手が少なくなるなかで、学び続ける中高年には活躍の場が確保できるのです。そうでない人は会社の中の「粘土層」となり、お荷物化していきます。  三つめは第二の人生でのデリスキング(リスク低減)です。60歳の定年を迎えてもそこで現役生活を終えるわけにはいかないのが人生100年時代です。社会から孤立せず、そこそこの収入もキープしながら生きがいを持って人生100年を楽しむには、やりがいの持てる仕事を定年後の第二の人生で得ることが重要です。やはりそのためにはしっかり準備することが欠かせません。リスキリングで知の再武装を施し、会社の看板が外れても自立できるようにするのです。 3 リスキリングできる人には目的がある  リスキリングの学習内容について、先のパーソル総合研究所の調査では、トップが英語、次にIT、資産形成・資産運用と続いています。私の友人(40代)のKさんはいま英語のリスキリングに取り組んでいます。彼の仕事はITコンサルティングですが、デジタル技術やアプリケーションの分野では、世界レベルのデジタルの進歩からは周回遅れといわれる日本の知識だけでは、「自身の価値も弱くなってしまう」という危機感を持っているのです。英語でなければ世界最先端のナレッジは得られないのです。そこで始めたのが生成AIを活用した英語の壁打ち練習です。英語の文献を訳させるだけではなく、自分の疑問やプロンプトを英語化し、それを添削してもらいます。音声でもできるので、会話の練習にもなるわけです。こうして英語を学びながらデジタルの最新知識を得るという一石二鳥のリスキリングをしているわけです。Kさんは、自分のパフォーマンスを上げるという明確な目的を持っています。  また、国内有数のメーカーの工場長を務めあげたMさん(50代後半)は定年が間近に迫るなかで、第二の人生の生き方を考えました。工場長時代に「もっとよい工場にするためには、デジタルの力を使って業務効率を高められるはず」という問題意識を持っていたのですが、デジタルスキルがなく手がつけられませんでした。そこで定年後は工場内での脇役にとどまらずに、現役時代の思いを叶えるべく同社のDX推進チームへ移籍を希望し、ゼロからアプリ開発を学び始めました。独学でアプリ開発スキルを身につけたMさんはいまでは、工場の事務工数削減に資するさまざまなアプリを独自に開発できるようになり、工場の若手から多くのDXの注文をこなすまでになっています。青銀共創と第二の人生のためのリスキリングという目的を持って臨んだわけです。  KさんやMさんのような方々が、私の関係しているライフシフト大学や多摩大学大学院MBAで学んでいます。自分の第二の人生を組み立てる目的の50代の方々や、自社でのイノベーションに貢献するための力を身につける目的の40〜50代の方々など、みなさん自分の人生を考えるなかで、自分の生き方の目的を見いだし、そのためにリスキリングに挑戦しているのです。  このように自分の未来の目的を考えてキャリアデザインやそのためのリスキリングをすることをキャリア自律といいます。他人任せ、会社任せ、会社の看板ではなく、自分の看板を創るわけです。「Will・Can・Must」という表現はよく聞かれます。やらなくてはならない(Must)に合わせて、自分の意志(Will)や能力(Can)を調整していくキャリアの考え方ですが、これは受け身です。会社の命令に自分を合わせ重宝がられます。しかし、自身の目的を持って生きることはできません。その代わりのコンセプトが「Will・Can・Create」です。自分のやりたいこと(Will)と得意なこと(Can)を明確にして、未来を創造する(Create)のです(図表3)。受け身では学ぶ意欲は出ません。より主体的に生きると決めることでリスキリングの道が開かれるのです。 4 目的を見いだすには自分の歴史を見つめることから  では、主体的に生きるためにはどのように目的を見いだせばよいのでしょうか。本稿では三つお示ししましょう。まず一つめは、歴史をふり返ることです。ライフシフト大学では「職務波乱万丈記」という自分の歴史の描写から始めます。図表4(26ページ)のイメージです。  自分のキャリアの歴史をふり返るなかで、自分がやりたかったこと、かつて持っていた夢、自分のモチベーションが上がる理由を探っていきます。そこに自分の人生の目的を見いだせる可能性があります。二つめは未来ビジョンです。次の10年でいったい自分は何をしたいのだろうかとストレートに自分に向き合います。ライフシフト大学では「思いのピラミッド」というツールで自分の未来を描きます(図表5)。その通りに行くとはかぎりませんが、「予言の自己成就」という言葉がある通り、自分の夢を強烈に描けば描くほど実現へ向けて動き出せるものです。逆に日々の作業に埋もれていてはどこにも行けはしません。  三つめは自分らしさを考えることです。特に第二の人生を視野に入れる場合はやはり会社の束縛から離れて、自分らしく生きたいものです。自分の価値観を探ったり、私が提唱している「4S(Scenario, Speed, Science, Security)※」など、日本の弱点、すなわち多くの人が弱いところを自分の売りにできるように学ぶのです。自分の価値観や自分の売りを意識することで、自分らしさをつくり込む動機が生まれ、そこを強化するリスキリングの目的ができてきます。 5 Knowing-Doing Gap克服へ向けて  目的が見いだせたら、リスキリングの動機が生まれるので、その動機をどうドライブしていくかです。五つのポイントをあげておきましょう。 @まず小さなことから始める  MBA大学院に行くというのは後述するようにとても重要なのですが、やはりいきなりはハードルが高い場合が多いでしょう。Kさんのように生成AIをうまく使うのはどうでしょうか。いろいろな疑問を打ち込むと、いろいろな気づきを得られます。「どうやって学ぶのか簡単な方法を教えて」とプロンプトを打ち込めば、即座に答えを返してくれます。そのなかで自分ができそうなことを始めてみるのです。図表6は私が聞いた際の生成AIの答えです。 A自己投資枠を設定する  リスキリングにお金と時間をきちんとかけないと意味のあることはできません。読書するにも新聞を読むにも時間がかかりますし、本代もかかります。よい先生に習おうと思えば授業料がかかります。このような時間とお金の自己投資をケチってはダメです。一日2時間は勉強やスマートフォン以外の情報収集に使う。給与の5%は勉強代に使うなど、しっかりと自己投資枠を設定しましょう。 B仲間を得る  一人でコツコツよりも仲間を得ることで学びはずっと楽しくかつ刺激的になります。学校時代を思い出してみましょう。利害関係のない友だち同士の学び合いのイメージです。一緒に未来の日本や地域の活性化など、自分たちの子どもたちのためにどういう社会を残していくべきか、自分は何をすべきかといった中高年らしい課題について議論することもできます。学び合う仲間がいれば、目の前の仕事ばかりで忘れていた人生への情熱を呼び覚ますこともできるかもしれません。 C自分を枠組みに放り込む  少し気分が乗ってきたらしっかりした学びに入るために自分を縛りましょう。最適なのがMBA大学院です。2年間、会社と並行して夜間や週末に学ぶしかない状況に自分を追い込むのです。変化の大きくなる時代に、20年前の忘れかけた古い知識では勝負できません。新たな知見を骨太に学ぶことでしっかりとした知識基盤を再構築することが不可欠です。欧米ではあたり前の社会人大学院への再入学が日本ではできていない。このことが日本の競争力の劣化に直結しています。豊富な経験と暗黙知を持った中高年こそ、大学院で学ぶことでレバレッジが利きます。 Dビジョン達成のシナリオを描く  リスキリングの目的を持つために描いた「思いのピラミッド」を実現するための入念な作戦計画を描きます。3年間の中期計画を会社では立てますが、それと同じことです。夢がいつまでも夢で終わらないように現実に落とし込んでいくのです。  このような五つのポイントを押さえることができるように、ライフシフト大学や多摩大学大学院MBAは設計されています。自分を枠組みに放り込み、自己投資を始めざるを得なくできるのです。そして、そこには在籍期間中もそして卒業後もずっと一緒に学びあえる異業種の仲間たちがいるのです。同じ釜の飯を食べながらフラットな関係で、夢や問題意識を語りあえる仲間はご自身の組織や会社にいるでしょうか。中高年になったいまこそリスキリングをエンジョイできるのです。そんな場を見いだしてリスキリングを始めてみてください。 ※1 株式会社パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」(2023年) ※2 厚生労働省「令和4年度 能力開発基本調査」(2023年) ※3 株式会社オトバンク「ミドル・シニア世代の読書習慣調査」(2023年) ※ 徳岡晃一郎『リスキリング超入門』(2023年、KADOKAWA) 図表1 自己啓発を行う上での問題点の内訳(正社員のうち、性別)(複数回答) 仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない 男性63.7% 女性48.9% 費用がかかりすぎる 男性30.3% 女性29.7% どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない 男性21.3% 女性26.5% 家事・育児が忙しくて自己啓発の余裕がない 男性20.7% 女性37.5% 自己啓発の結果が社内で評価されない 男性20.1% 女性17.1% 自分の目指すべきキャリアがわからない 男性17.4% 女性26.7% 適当な教育訓練機関が見つからない 男性15.7% 女性14.9% コース等の情報が得にくい 男性13.8% 女性14.0% コース受講や資格取得の効果が定かでない 男性13.1% 女性12.2% 休暇取得・定時退社・早退・短時間勤務の選択等が会社の都合でできない 男性10.9% 女性8.7% その他の問題 男性5.7% 女性5.2% 出典:厚生労働省令和4年度「能力開発基本調査」(2023年) 図表2 青銀共創 若い層と中堅・ベテランが、棲み分けし、持ち味を寄せ合って、助け合い、創造し合う ・若手 トップラインを伸ばす第一線 強み ・スピード感 ・デジタル ・若い人のマーケット知識 ・記憶力、IQ ・体力、身軽、ノリ 弱み ・経験不足、知識不足 ・クレーム対応が怖い ・先の読みがむずかしい ・ベテラン ワイズエルダーとして持続可能性を支える 強み ・経験による洞察力 ・深い技術と判断力 ・感情理解(EQ) ・俯瞰的思考 ・奉仕の心 弱み ・忍び寄る体力の衰え ・最新技術のフォロー ・健康不安 ※筆者作成 図表3 キャリア自律へ向けての発想の転換 若者主役型 Will Can Must ・若手がつねに会社の中心 ・年をとった人は脇役でいい ・ベテランの出番が減る ・余生という甘えも忍び寄る 青銀共創型 Will Can Create ・自分がいればこその価値を発揮 ・頼られる存在に ・キャリアの最後を美しく ・いつまでも夢がある ※筆者作成 図表4 人生のストーリー:職務波乱万丈記 ・モチベーションが上がるのはどんなときでしょうか? ・今後の人生でもモチベーションを高く保つために、何を自分の課題にしますか? マークを最高だったときにつけてください 年齢 30 40 50 60 人生のモチベーション・充実度 A社に入社しかし人事部配属で失望 イギリス留学合格 開発部門の人事部本社人事企画部 バブル崩壊でリストラ担当に 念願の海外出向 帰国後、再びリストラ担当になり、会社の先が見えず退職を決意 コンサルへ転職成功 大学院教授を兼務 還暦を期してコンサルを退職し、独立し起業 ※筆者作成 図表5 思いのピラミッドを利用して自分の未来への思いをあぶり出す ビジョン 背景 ストーリー 壁・しがらみ 突破するポリシー、革新的具体策 ・今後、いまの仕事以外で成し遂げたい大きな夢 ・いまの仕事あるいは将来の到達点での生きざま ・いままでの会社で教わったこと、経験 ・時代のニーズ、市場動向、技術革新 ・達成された暁のイメージ ・達成する道筋のイメージ ・自分の知識・スキル・経験不足 ・資金的制約 ・家族の問題 ・アクションプラン達成に向けた心構え ・定量・定性目標 ・強い思い・情熱を持って実現したいこと ・共通善、次世代に残したいもの ・自分の大事にしたい価値観 ・自分を突き動かす内発的動機 ・日本、次世代、子供たちへの思い ・先輩・先人の例 ・映画や小説を引用 ・社会・業界の慣習、常識、無意味な聖域 ・社会的制約 ・技術的制約 ※筆者作成 図表6 ChatGPTが考えた最速でリスキリングする方法 □@目的を決める(3 分)  :「何のために学ぶか?」を考える □A無料の学習サイトで基礎を学ぶ  (YouTube、Google の無料講座) □B短期集中のオンライン講座を活用  (Udemy、Coursera) □C学んだらすぐ実践する  (3日以内にアウトプット) □D毎日15分だけ継続する  (スマートフォンでリマインダーをセット) 1カ月でスキル習得、転職・副業・昇進に活かせる! ※Open AI「ChatGPT」生成コンテンツを基に筆者作成