TOPIC 「ミドル・シニア層の学びに関するインサイト調査」 株式会社ベネッセコーポレーション  少子高齢化などの影響による労働力人口の減少が続くなかで、企業には高齢者を含む多様な人材の活用が求められており、高齢者を戦力として活用していくための「学び直し」支援の取組みは、これからますます重要になります(今号の特集をご参照ください)。  その一方で、高齢者自身もまた、能動的に「学び」に取り組む姿勢は欠かせません。本稿では、株式会社ベネッセコーポレーションが2024(令和6)年に45〜69歳の人を対象に行った「ミドル・シニア層の学びに関するインサイト調査」の結果をご紹介します。 @ミドル・シニア層の「働き方やキャリア」と「人生やライフプラン」の見直し状況と人生観  「働き方やキャリアの見直し」と「人生やライフプランの見直し」状況を聞いたところ、どちらもほぼ半数の回答者が「見直しは検討していない」状況の「人生このままでいいや層」でした。また、「検討はしているが、見直しは行っていない」回答者が「働き方やキャリアの見直し」では27.3%、「人生やライフプランの見直し」では39.1%存在し、見直しに踏み込めていない「モヤモヤ層」と合わせるとミドル・シニアの8割以上がキャリアや人生の見直しができていないことが分かりました。特に、「人生やライフプランの見直し」は「働き方やキャリアの見直し」よりも検討をしている割合が高く、自分自身の人生について不安を抱いている回答者が多いことが見て取れます。(n=982) 働き方やキャリアの見直し 見直しは検討していない 58.7% 検討はしているが、見直しは行っていない 27.3% 見直しを行っている 14.0% 人生やライフプランの見直し 見直しは検討していない 46.4% 検討はしているが、見直しは行っていない 39.1% 見直しを行っている 14.5%  また、現代のミドル・シニア層は、社会環境の変化で「人生のゴール、モデルケース」が消失し、社会人人生のほとんどが不況であったため、希望の人生を果たせていないことが特徴として見られます。中でも、ミドル層は人生の後半に備えて自分らしい人生の基盤を固めたい傾向が強く、シニア層はただ漫然と余生を過ごすのではなく、「自分が主役の人生」を開花させたい願望が強い傾向がありました。 ミドル層・シニア層の意識比較 組織・仕事 家庭 健康・体力 視点 人生観 ミドル(45歳〜59歳) 現場のトップで若手をマネジメントし、組織を考える立場だが昇進の先行きも見え始めている。 子育てにお金のかかる時期。 親の介護も開始し、自由が少ない。 老化の兆し・更年期。老後に備えて基礎体力や健康基盤を整える。 仕事にも家庭にも立場と責任。 守っていくべき生活がある。 人生折り返し。これまでの「棚卸し」をして人生の方向性を見通したい。 シニア(60歳〜69歳) リタイア後にこれまでのように働くか、別のことを始めるか、選択が求められている。 子育ての完了。親の超高齢化・逝去と向き合い、自分自身の終末を意識。 大きな病気を経験するなど、具体的な健康対策と生活スタイルを検討する。 自己と向き合う。経験という資産。組織や家族に代わる居場所や生きがいを持ちたい。 これからこそ人生の集大成。 今までにない経験や、やり残したことを達成したい。 A性別・年代別の傾向と学びに対するアプローチ  本調査では、男性よりも女性の方が学びに対する意欲が高いという結果が分かりました。男女ともに40〜50代では「好きなことで世に役立つ」ことに対して魅力を感じる傾向が最も高く、60代では「個人裁量で社会とつながる」ことに対して魅力を感じる傾向が最も高いという結果となりました。一方、スキル習得に対する関心は、年齢が上がるにつれて低下し、60代は、「社会とのつながり」を求める傾向が強くなります。  45-49歳の男性は、「キャリアに対する不安」が強いものの、50-59歳になると大幅なキャリア変更は難しくなり、「人生の可能性」を模索し、60歳以降は「社会との新たな接点」を求める傾向にあります。自分が好きなことや興味関心を整理しながら、今後の人生の可能性を拡げ、社会とつながる接点にもなるような学びをすることで意欲的に学びを進めることができることがわかりました。  一方、女性は、男性に比べて組織への所属への関心は低く、45-49歳は「キャリアと家庭の両立」を重視し、50-59歳は「スキル習得への強い意識」を持つことが分かりました。60歳以降の「社会とのつながり」を見据え、組織の内外を問わずに活躍できるキャリアや人生設計を叶えられる学びを行うことで、自分らしく社会とつながることができるようになります。 男性年代別:バリュープロポジション(VP)※1の魅力度と未充足度※2 45-49歳のVP魅力度 50-59歳のVP魅力度 60-69歳のVP魅力度 45-49歳のVP未充足度 50-59歳のVP未充足度 60-69歳のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 54.1% 50.3% 52.3% 21.1% 23.1% 26.6% A埋蔵スキルをアップデート 51.4% 42.2% 42.6% 22.0% 26.2% 31.2% B楽々最新スキルで可能性拡張 45.9% 37.9% 41.2% 22.0% 29.7% 33.2% C組織・異世代で意識共有 36.7% 37.9% 34.7% 24.8% 33.8% 34.7% D多様な人生の選択肢を知る 48.6% 47.2% 40.7% 23.9% 23.6% 31.2% E個人裁量で社会とつながる 43.1% 44.6% 55.3% 20.2% 28.7% 26.1% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 45.9% 41.5% 45.2% 22.9% 26.7% 34.2% G旧型思考をクリーンアップ 41.3% 41.0% 35.2% 28.4% 26.7% 33.2% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 男性45-49歳:(n=109) 男性50-59歳:(n=195) 男性60-69歳:(n=199) 女性年代別:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 45-49歳のVP魅力度 50-59歳のVP魅力度 60-69歳のVP魅力度 45-49歳のVP未充足度 50-59歳のVP未充足度 60-69歳のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 64.2% 61.3% 53.9% 26.3% 25.1% 23.8% A埋蔵スキルをアップデート 56.8% 50.3% 44.0% 24.2% 32.5% 37.3% B楽々最新スキルで可能性拡張 56.8% 49.2% 42.5% 29.5% 37.2% 33.7% C組織・異世代で意識共有 42.1% 42.4% 29.5% 40.0% 34.0% 37.8% D多様な人生の選択肢を知る 55.8% 54.5% 50.8% 24.2% 24.6% 28.0% E個人裁量で社会とつながる 58.6% 55.5% 58.5% 29.5% 22.0% 29.5% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 61.1% 60.7% 49.7% 26.3% 29.3% 26.4% G旧型思考をクリーンアップ 41.1% 47.6% 36.3% 29.5% 33.0% 29.5% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 女性45-49歳:(n=95) 女性50-59歳:(n=191) 女性60-69歳:(n=193) ※1 バリュープロポジション(VP)……学びに期待すること ※2 未充足度……各VPがどの程度今の学びや、学びに関するサービスで満たされていないと感じるか B役職および定年後の傾向と学びに対するアプローチ  総じて、役職が上がるにつれて学びに感じる魅力は高く、未充足度も低くなっているのに対して、現場に近いポジションのミドル・シニア層では学びに感じる魅力は低く、未充足度も高くなる傾向が見られました。経営層・役員・部長クラスは「組織に変革をもたらす意欲」、課長クラスは「組織内での学びを重視し、異世代と意識共有をしたい意欲」が強いため、自分自身の人生や組織に変革をもたらす学びに積極的です。一方で、係長・主任・リーダークラスおよび一般社員クラスは「個人の裁量を重視」しているため、「自分の好きなこと」を深めるのが学びの第一歩になることが分かります。  定年後に関しては、現在の組織に軸足を置きつつ「新しいキャリア構築」を志向する「再雇用層」は、自分の可能性を拡げる学び、「スキルを磨く」ことへの関心が高く、学びに対して意欲的な「独立層」には実際のビジネスで役立つスキルの習得が効果的です。「セミリタイヤ層」「完全リタイヤ層」は、「個人の裁量」や「趣味」を重視しているため、「自分軸」に合わせた学びを行うことで人生をより充実させられることがわかりました。 役職別:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 経営層・役員・部長のVP魅力度 課長のVP魅力度 係長・主任・リーダーのVP魅力度 一般社員のVP魅力度 経営層・役員・部長のVP未充足度 課長のVP未充足度 係長・主任・リーダーのVP未充足度 一般社員のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 63.6% 61.0% 57.1% 50.2% 18.2% 20.3% 15.6% 27.3% A埋蔵スキルをアップデート 49.1% 45.8% 51.9% 44.6% 21.8% 18.6% 24.7% 28.6% B楽々最新スキルで可能性拡張 43.6% 49.4% 49.2% 41.6% 23.6% 23.7% 24.7% 29.4% C組織・異世代で意識共有 49.1% 50.8% 40.3% 31.6% 36.4% 22.0% 27.3% 35.9% D多様な人生の選択肢を知る 60.0% 61.0% 50.6% 42.9% 14.5% 23.7% 22.1% 26.4% E個人裁量で社会とつながる 54.5% 52.5% 56.4% 52.8% 21.8% 18.6% 22.1% 26.0% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 55.9% 54.5% 54.5% 40.7% 21.8% 15.3% 19.5% 32.0% G旧型思考をクリーンアップ 52.7% 45.8% 41.6% 37.2% 29.1% 20.3% 24.7% 29.9% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 経営層・役員・部長:(n=55) 課長:(n=59)係長・主任・リーダー:(n=77) 一般社員:(n=231) 定年後の働き方:バリュープロポジション(VP)の魅力度と未充足度 再雇用層のVP魅力度 独立層のVP魅力度 セミR層のVP魅力度 完全R層のVP魅力度 再雇用層のVP未充足度 独立層のVP未充足度 セミR層のVP未充足度 完全R層のVP未充足度 @好きなことで世に役立つ 54.5% 64.3% 59.6% 38.0% 23.4% 11.9% 28.2% 21.1% A埋蔵スキルをアップデート 47.3% 76.2% 50.0% 28.2% 25.1% 4.8% 30.8% 28.2% B楽々最新スキルで可能性拡張 43.1% 66.7% 41.7% 38.0% 24.6% 4.8% 35.9% 28.2% C組織・異世代で意識共有 44.3% 54.8% 34.0% 23.9% 28.7% 23.8% 40.4% 29.6% D多様な人生の選択肢を知る 53.5% 71.4% 41.7% 43.7% 24.0% 9.5% 30.1% 21.1% E個人裁量で社会とつながる 53.3% 73.8% 60.3% 32.4% 19.8% 14.3% 26.3% 31.0% F大切なものを見直して人生のルート探索をしたい 45.5% 69.0% 49.4% 36.6% 21.0% 9.5% 35.3% 29.6% G旧型思考をクリーンアップ 44.3% 59.5% 40.4% 26.8% 23.4% 16.7% 35.9% 28.2% 特に魅力を感じている 特に魅力を感じていない 再雇用層:再雇用を通じて働きたい/働いている(n=167)独立層:独立をする等して働きたい/働いている(n=42) セミリタイア層:セミリタイアし無理のない範囲で働きたい/働いている(n=156) 完全リタイア層:完全にリタイアし極力働かずに過ごしたい/過ごしている(n=71)