Books AI時代に必要なのは思考力!「創造的な脳」のための処方箋を示す デジタル脳クライシス AI時代をどう生きるか 酒井(さかい)邦嘉(くによし)著/朝日新聞出版/990円  デジタル機器に頼る場面が増えている。AI(人工知能)の登場により、それは高まるばかりだ。AIは、これまで人が行っていた作業を大幅に効率化したり、新しい価値を生み出したりするが、反面、リスクも潜んでいるとされる。  インパクトのある本書のタイトル「デジタル脳クライシス」は、「デジタル機器やデジタル技術の虜になった人の脳が直面する危機や岐路(クライシス)」を意味すると、著者はいう。本書は、言語脳科学者である著者が、言語と脳という視点から、「手書きかキーボード入力か」、「紙かデジタルか」のそれぞれの記憶定着の差異など、さまざまな研究の成果に基づき、デジタル機器への過度な依存は自分の脳が本来持っている力を衰えさせてしまうリスクがあると、警鐘を鳴らす。そして、脳を衰えさせず、よく働く状態を保つための処方箋を示している。  適切な思考力が身につけばITにも強くなれるが、「その逆は成り立ちません」と著者は説く。なぜなら、「初めからITやデジタル機器に頼ることで自分の頭を使わなくなるから」だ。車に頼っていると、歩くための筋力が衰えるのと似ているだろうか。便利さを享受するだけでなく、どう使うかを考えるきっかけになる一冊である。 人口減少・人手不足が加速する日本。これからどうなるのか? ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」 坂本(さかもと)貴志(たかし)著/講談社/1100円  日本の人口は、2007(平成19)年の1億2777万人をピークとして減少しはじめた。その変化は緩やかであったが、2024(令和6)年以降は速度を増して減少すると予測されていて、著者は、「私たちは人口減少経済とはどのようなものなのかを身をもって経験することになる」と日本のこれからを表現している。  本書は、労働市場の分析を専門とする著者が、労働市場の需給、賃金の動向、人々の働き方などに注目しながら、日本経済の現時点を解説。第1部では、統計データを分析して日本経済に起きている変化を概観。第2部では、少ない人手で効率よく生産するために、建設や運輸、販売、接客・調理、医療、介護の企業の現場でロボットやデジタル技術を活かしている事例を紹介。第3部では、現状分析をもとに人口減少経済の八つの未来予測を考察。一つめの予測は、人手不足はますます深刻化すること。女性の就業率が近年急速に高まっていることをふまえると、期待されるのは高齢者の労働参加であるという。また、賃金水準が上昇し、高齢であっても無理のない働き方でそれなりの労働収入を稼ぐことが可能になるだろうなどと予測もしている。 500人以上の“100歳”に会った著者が考える、幸せを感じられる「老い」とは? 100歳は世界をどう見ているのか 権藤(ごんどう)恭之(やすゆき)著/ポプラ社/990円  国内に住む100歳以上の人は9万人超だが、本書によると、長寿化はますます進み、2065年には55万人近くになるといわれているという(国立社会保障・人口問題研究所)。  しかし本書は、次のようなデータも示している。ある調査結果によると、「100歳まで長生きしたいか」という質問に対し、「とてもそう思う」と答えた日本人は8.1%で、6カ国中最低だった。理由は、「寝たきりになりたくない」、「人の世話になりたくない」からだという。  本書は、これまでに500人以上の百寿者と実際に会い、調査を続けてきた老年心理学者の著者が、加齢をめぐるデータや研究結果、出会った人々のエピソードを交えながら、「100歳は幸せか」、「幸せな100歳になるには」を考察する。出会った百寿者には、身体機能が衰えて、自由度が低くなっていても、幸せを感じる人が少なくないそうだ。その幸福感の理由を聞き、「生きていれば、駄目ながらも娘の話し相手になってあげられるから」など十人十色の幸せを紹介。そして、例えば、ピンピンコロリを目ざしながら、それがうまくいかなかった場合のことを想定した別の生き方も準備するなど、失うものが増えても幸せを感じられる老いをみつめていく。 親の介護は「自分介護」のリハーサル!自身の安心老後のテキストブック じょうずに頼る介護 54のリアルと21のアドバイス 一般社団法人リボーンプロジェクト(編)/太田出版/1760円  2040年には単独世帯の割合は約40%に達し、特に65歳以上の単独世帯数の増加が著しいと予測されている※。人生の最終盤に入るとだれかの助けが必要になるが、「介護難民」にならないためにも自分の介護は自分でデザインし、他者や制度にじょうずに頼ることが必要だと著者はいう。  本書は、親の認知症介護から完全セルフ介護まで、54の個別事例をルポルタージュ形式で掲載。親の介護と介護する側の老い、介護する側が弱ったとき、在宅か施設か、老後資金計画、墓じまいなど、親の介護から始まるリアルでさまざまな事例と、それに対する専門家からのアドバイスを収めた一冊。ケアマネジャーや看護師、ライフプランナー、精神科医など多様な分野の専門家がわかりやすい言葉で答えている。  事例は、人生の後半期を四つのフェーズに分けて構成されており、局面ごとに待ち受けるバリアをいかにクリアしていくかを考えていく。また、今後さらに増えることが予測されている一人暮らしの高齢者が、安心できる老後を準備するための情報も掲載している。介護と仕事の両立支援に取り組む、企業の担当者にも役立つだろう。 ※国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2018(平成30)年推計」(2018) 何歳からでも大丈夫。ゆるトレで楽しく筋力アップ!! 60歳からの筋トレ入門 新装版 ソネ ジュンコ著/宝島社/1210円  筋力は、何歳からでも鍛えることができるという。本書は、力を込めて行うこれまでのハードな筋トレの概念をいったん捨てて、シニアの筋トレをテーマに、楽しく筋力をアップさせるトレーニング方法をまとめた一冊。  著者のソネジュンコ氏は、ボディメイクスタジオを運営するほか、大阪市保健指導委員会講師など多方面で活躍中の72歳。本書では、筋トレのモデルも務めている。  紹介している筋トレは、これまで使えていなかった筋肉を目覚めさせることからはじめるというもので、そのためのセルフチェックから、棒などを使って行う入門トレーニング、さらに「ゆる腹筋」、「ゆるスクワット」など一日5分でできる筋トレを5日間続けるプログラムを提案。筋トレをしたことがない人、久しぶりに体を動かす人にもチャレンジしやすい内容だ。  加えて、背中やお尻など部位別の筋トレ、腰痛の痛みの緩和、転倒防止など目的に合った筋トレ方法も紹介している。シニア世代が筋トレをすると、「体幹力が増し転倒予防に」、「代謝が上がり、体脂肪が減る」などのメリットがあるという。本書を職場に置いて、社員全員ではじめてみるのもよさそうだ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します