BOOKS 離職や休職はポジティブな選択肢!8人の事例からその価値に迫る キャリアブレイク 手放すことは空白(ブランク)ではない 石山(いしやま)恒貴(のぶたか)・片岡(かたおか)亜紀子(あきこ)・北野(きたの)貴大(たかひろ) 著/千倉書房/2860円  終身雇用や年功序列があたり前のように取り入れられてきた日本の企業では、離職や休職は、キャリアのブランク(空白)とされることが多かった。しかし本書は、それはブランクではなく、ブレイク(休憩)であるとして、「キャリアブレイク」と呼んで、価値を見いだしている。  キャリアブレイクとは、本書の定義によると、「今まで中心的に活動してきたキャリアの役割を手放すことによって、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめ直している期間」。本書における「キャリア」は、ワークキャリアを含む、人生全体を射程とするライフキャリアを意味している。そして、個人のキャリア選択において、仕事を手放したり、休んだりするキャリアブレイクは、その先の人生を豊かにするものだととらえ、キャリアブレイクを実践した8人の事例を通して、その価値に迫る。また、キャリアブレイクを学術的に分析している。  職業人生が長期化し、キャリアブレイクをする人は、今後増えていくことが見込まれる。本書では20代、30代男女の事例をあげているが、キャリアブレイクは広い年齢層において生じる可能性があるという。高齢者雇用を進めるうえでも、知っておきたい定義といえるだろう。 組織を前進させるために、「決断する力」を鍛えよう ビジネスリーダーのための意思決定の教科書 川口(かわぐち)荘史(そうし) 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/2750円  仕事や日々の生活において、人はさまざまな意思決定を求められる。変化が激しく、情報があふれるいま、最適な意思決定をすることのむずかしさを痛感している人は多いだろう。  本書は、精度の高い意思決定を主体的に行うための「つかみどころ」を解説する一冊。  著者の川口荘史氏は、投資銀行でのM&Aやベンチャー創業、新規事業創出などの経験を経て、2017(平成29)年に起業。「経験知に価値を与える」ことをミッションに掲げ、企業の意思決定のための情報を広く扱う事業を運営している。ビジネスの現場においてさまざまな分野での意思決定を経験するなかで川口氏は、「どんな場面にも共通して必要な『意思決定の構成要素』」を見つけた。@主体的に「決める」心がまえ、A問いと仮説を「見立てる」、B情報処理で全体が「分かる」、C選択を言語化し「伝え、動かす」の4要素である。本書は、各要素の重要性とプロセスについて、著者の体験や知見をふまえつつ、ていねいに解説していく。  経営者やリーダーシップ力を向上させたい人をはじめ、自分のキャリアや人生を主体的にコントロールしたいと考えている人にもおすすめしたい、意思決定の極意がつかめる内容だ。 産業医が伝える、安心して休職する判断から復帰までの道筋 未来のキャリアを守る 休職と復職の教科書 武神(たけがみ)健之(けんじ) 著/ディスカヴァー・トゥエンティワン/1870円  本書は、メンタルヘルス不調を予防するためではなく、不調になっても安心して「休職」という選択肢をとれるようになるために、必要な情報と実践的なアドバイスをまとめている。  著者の武神健之氏は、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施し、延べ1万人以上の働く人たちと向き合ってきた。その経験から、「自分の不調を受け入れ、向き合い、うまく制度を利用すれば、適切な『休職』は、むしろあなたの未来のキャリアを守る選択なのです」と実感をつづっている。しかし、休んだほうがよいと思いつつ、「まだ自分はできる」と考えたり、仕事を休むことに不安を抱えていたりする人が実際には多いそうだ。  「教科書」と名づけられた本書は、そうしたメンタル面の不調を抱える人の不安と悩みに答えるように、ストレスの気づき方、病院にかかるかどうかの判断やタイミング、「いい医者」のみつけ方、休職の判断、休職中の過ごし方、復職までの道筋、お金のこと、キャリア・転職のことなどについて、読みやすい文章で具体的に、さまざまなケースの紹介も交えて説明している。  メンタル不調が気になる人や、職場の上司、人事担当者にも手にとってほしい良書である。 徹底的に科学的根拠(エビデンス)にこだわった、今日から実行できる健康習慣 正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール 津川(つがわ)友介(ゆうすけ) 著/集英社文庫/682円  健康づくりにまつわる情報があふれるなか、本書の最大の特長は、「情報の正しさ」であると、著者で医師の津川友介氏は強調する。  「エビデンスの確かさに徹底的にこだわった、高度な手法で行われ、さらにそれが第三者である同分野の研究者によって厳しく検証された論文だけを取り上げた」うえ、専門性の高い分野に関しては、各分野の第一人者にも内容をチェックしてもらったことを、それぞれの第一人者の名前を紹介して示している。  とはいえ、専門用語やむずかしい表現を極力使わずに、今日から実行できる健康習慣として具体的な内容を伝えていることも特長だ。一方で、より詳しく知りたい人のために、本書の根拠とした論文のリストを巻末に載せている。  日ごろの生活習慣を少し変えることで、がんや脳梗塞などの重い病気になるリスクを下げることができる。「睡眠は質よりも時間。7時間以上眠る必要がある」、「健康に悪い食べ物・よい食べ物」、「1日1時間走ると寿命が7時間延びる」など、睡眠・食事・運動・入浴などのカテゴリー別に、エビデンスに基づく情報とアドバイスがたっぷり。知りたいカテゴリーから、気軽に読み進めてみてはどうだろう。 抗加齢医学研究の専門家が、運動や食事、歩き方を伝授。一生歩ける人になる! 百歳まで歩ける人の習慣 脚力と血管力を強くする 伊賀瀬(いがせ)道也(みちや) 著/PHP研究所/1210円  生涯現役を目ざすには、健康寿命を延ばすためにも自分でしっかり歩ける体づくりが肝要だ。  抗加齢(アンチエイジング)医学研究に長年たずさわってきた著者の伊賀瀬道也氏は、一生歩くためには「脚力」と「血管力」の両方を鍛えることが重要だという。  本書は、百歳まで歩ける人になるために、脚力と血管力を鍛える理由や、脚力を強くする方法、血管を若返らせる食事や運動、楽しく効率的にウォーキングを実践する初級・中級・上級者向けのアドバイスなどを紹介している。  脚力を強くするには、いすの背を持ち背筋を伸ばして立ち、両足のかかとを上げて、つま先立ちし、ゆっくり下ろす。ふくらはぎを意識して上げ下げを繰り返す「かかと上げ下げ」がよいという。このとき、かかとを上げる角度は20度にして、そのまま5秒間キープする方法を取り入れると、血流の改善も期待できるそうだ。  ウォーキングは、体温が上がる夕方に歩くほうが、運動効果が大きいという。高齢者の場合、食前は血栓ができやすく、食後は転倒しやすいため、ウォーキングをする時間に気をつけたいという注意もある。ほかにも日々の心がけで、いつまでも歩ける人になるための情報が満載だ。 ※このコーナーで紹介する書籍の価格は、「税込価格」(消費税を含んだ価格)を表示します