働く広場2025年5月号
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きだ」として、直接雇用での推進を図ることになったという。 堀場製作所での障がい者雇用は、採用までに三つのステップを踏んでいる。福岡さんに説明してもらった。︿ステップ1﹀本人と実習前面談を行う。本人のプロフィールや希望業務などを聴き取り、話し合ったうえで業務内容を決める。︿ステップ2﹀1回目のインターン実習は約2週間。講義で会社の考え方を理解してもらうほか、現場で業務の基本動作を体験する。最後は面談で実習全体をふり返り、双方合意のうえで2回目のインターン実習に進む。「候補の部署や業務が複数あるときは実習中にジョブローテーションも行い、最後にどの業務がよかったか、本人や部署と話し合って絞り込みます」︿ステップ3﹀2回目のインターン実習は2週間~1カ月半ほど。継続して自律的に業務を行うことを想定し、必要以上に配慮しないよう心がける。最後に再び面談で実習をふり返り、双方が合意したうえで採用に進む。「長期間一緒に働くことで、お互いに『本当に働き続けられそうか』を判断します。やや、実習期間は長い方だと思いますが、ミスマッチを防ぐための大事な過程だと考えています」 長期間のインターン実習は、特別支援学校で広がりつつある「デュアルシステム」の取組みも参考にしているようだ。ドイツのマイスター制度を参考に2004年度から全国の専門学校などでモデル事業が始まった。京都市が主導し2006年度に立ち上げた「総合支援学校デュアルシステム推進ネットワーク」 では、授業と長期実習を組み合わせて職業人の育成を目ざす内容で、堀場製作所を含め大手企業などが参画している。 一方で、実習の受け入れ部署や業務の開拓についてはトップダウンで理解を求めていったと福岡さんがふり返る。 「最初は『うちは専門部署だから』などと難色を示す部署が少なくなく、グループ人事部長が『本人に会う前から断らないでほしい』と強くアナウンスしました。ただ実際に会ってくれた現場からは『予想以上にやれそうだ』と業務を任せてくれるようになりました」 初めて受け入れる部署に対しては、管理職やチームリーダーを対象に事前研修を行う。障がい特性や仕事上での対応アドバイスをまとめた資料も配付し、実習中は随時相談を受けつける。 精神障がいのある従業員が増えてからは、京都労働局が実施する「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」も活用し、出前講座の形で多くの従業員が受講。さらに2023年からは、オムロン株式会社の主導で発足した企業・行政・有識者による「ニューロダイバーシティ (※3)京都地域連携会議」に参加し、発達障がいの能力を活かした従業員の事例などを共有している。 特別支援学校時代に3ステップのインターン実習を経験し、2019年3月に入社した小こ寺てら翔しょう太たさん(24歳)は、生産2部ボードアッセンブリチームで基板の検査業務を担当している。伊藤さんによると「当初は、周辺の補佐的な作業から始めてもらいましたが、徐々にピッキングや組立作業などを覚えてもらい、ほかの従業員と同じ内容をこなしています」とのことだ。 チームリーダーを務める村むら田た健けんさんは、「受け入れ当初は、同行の指導員からアドバイスをもらいながら対応しました。あやふやな表現が苦手ということで、普通は『置いといて』、『やっといて』と気軽にいうところを『どこに置くのか』、『何をいつまでに終わらせるのか』と具体的な指示を心がけました」と話す。もともと小寺さんがオープンな性格で、特性の改善活動リーダーに成長※3ニューロダイバーシティ(Neurodiversity):Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)を組み合わせた「脳や神経、それに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを多様性ととらえて相互に尊重し、それらの違いを社会のなかで活かしていこう」という考え方で、特に発達障害のある人が特性を活かし活躍できる社会を目ざすというもの生産2部ボードアッセンブリチームの小寺翔太さん生産2部ボードアッセンブリチームチームリーダーの村田健さん小寺さんは、基板の検査業務を担当している働く広場 2025.58

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