働く広場2025年5月号
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ことも周囲に伝えてくれたことで、同僚からのサポートやヘルプを得やすかったそうだ。 小寺さんは、いまの仕事について「基板ごとに検査時間が異なり、ほかの工程の進捗も読みながらなので、期限を守る見きわめがむずかしいですね。何度か間に合わず、ほかの工程に迷惑をかけたこともあります」と明かす。 小寺さんは3年前から、現場改善活動のリーダーを任されるようになった。伊藤さんによると「改善の結果も大事ですが、そのプロセスで自分が経験した気づきを、その先の成長につなげてもらうねらいもあります」とのこと。サポート役の村田さんは「本人自身もかなり勉強し、他チームに自分でアドバイスを聞きに行けるようになり、いまではすごく助かっています」。 小寺さん自身は、自分で現場改善活動の企画を考え、ほかのメンバーにふり分けたり発表したりするのが苦手だったそうだが、村田さんに相談しながら乗り越えてきたと語る。「いまではチーム内から『ここ危ないかも』と報告してくれるようになり、私の企画が役立ったように実感しています」と笑顔をみせた。 今後の目標は、工程のリーダー役になることだ。村田さんは「もうすぐですね。最近入社した後輩への教育係も含め、大いに期待しています」と激励する。 堀場製作所では、発達障がいを含む精神障がいのある従業員については、社内に常駐する臨床心理士と連携しながら支援を行っている。 「人によって、困っていることを説明しにくい、言語化しにくい特性があるので、臨床心理士と一緒にじっくり話を聞き、上司にフィードバックすることもあります。例えば『朝の挨拶は、どの程度の人までしたらよいのか』といったことですね」(福岡さん) 社内には、発達障がいのある従業員と臨床心理士からの提案を機に、自助グループの会もできた。約6人ずつ2グループに分かれて半年に1回程度、茶話会のように集まっている。毎回人事部のメンバーも同席し、ファシリテーター役を務めた。いまではプライベートでご飯を食べに行ったり、趣味や職場・生活上の工夫など情報交換をしたりしているそうだ。 2024年は、障がいのある若手従業員を対象に、滋賀県の「びわこ工場」でワークショップを初開催した。ビジネスマナー講義や工場見学なども行い、参加者から当事者グループで交流もは「コミュニティを広げるきっかけになった」、「再勉強の機会になった」などの感想が聞かれた。働くうえでの考えや悩みを話し合う場に同席した横山さんは「私たちも、どうサポートすべきかをあらためて考える機会になりました」とふり返る。 堀場製作所では今後も、多様性に満ちた従業員が働く国内外のグループ会社の中核企業として、障がい者雇用だけでなく女性活躍やLGBTQを含めたダイバーシティを推進していくという。安井さんが話す。 「DE&Iチームでは、従業員一人ひとりのために会社ができることを最大限やっていけるよう努力していきます。社内研修やイベントなどによる啓蒙活動、働き方やキャリアにかかわる関連制度の整備などにも力を入れていくつもりです」 なかでも障がい者雇用の取組みは、DE&Iを牽引する大事な柱の一つだ。福岡さんたちは「地道に社内の理解を広げていきたい」としつつ、「一人ひとりの声を吸い上げながら、可能なかぎり配慮や工夫を重ねることで、結果的に、だれにとっても健全で実り多い職場につながると考えています」と語ってくれた。自分らしく活躍できる職場にびわこ工場で行われたワークショップ。ビジネスマナーなどを学んだ(写真提供:株式会社堀場製作所)働く広場 2025.59

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