働く広場2025年5月号
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業療法士1名、精神保健福祉士1名)である。近年、特に高次脳機能障害者の就労支援には作業療法士(OT)の活躍が顕著であり、OT3名を擁するリニエ中野での取組みについて具体的にたずねてみた。 まず、サービスの量についてであるが、月曜~金曜日の通所時間帯は9時30分~15時30分であり、50分を一コマとすると、午前中に3コマ、午後2コマのサービスが提供されている。9割の利用者が中野区民で、食事提供もある。就労移行支援については、就職率は3~4割だが、1年間の職場定着率は92%とのことである(2023年4月~2024年3月)。提供されるサービスを可視化するために、1カ月単位でプログラムカレンダーを作成し、事前にどのようなプログラムが組まれているかを利用者に周知している。リニエワークステーション中野エリア長補佐の扇おうぎ浩ひろ幸ゆきさんは作業療法士・公認心理師であり、利用者の好きなことや得意なことを広げるための「作業療法的」なアプローチを考案している。 例えば、①インターネット販売というネットオークションを用いた取組みでは、ネット販売という「作業体験」を通して、自身の「できること」と「課題」を発見することを目的とした訓練プログラムを「ストレス対処」、「疾患や障害への対処」、「家族・保護者支援」等のサービスも提供している。これに加え、「自己理解」を促進する支援を行っている。自己理解とは、自分自身そして自分が感じている障害というものをできるだけ俯瞰的にみる「力」であり、これは職場でうまく働き続けるためにも重要な「スキル」である。 現在のリニエ中野における就労移行支援のサービス利用定員数は14名で、自立訓練(生活訓練)が6名、就労定着支援が20名であるが、リニエグループ全体としてはその事業所数はまだ少なく、今後は就労移行支援や就労定着支援サービスの拡大も期待されるところである。 これまでの就職者数36名のうち、高次脳機能障害者10名のなかには、身体障害や精神障害をともなっている方もいる。これらの利用者に対するサービス提供者は、常勤が5名(作業療法士2名、保育士1名、職場適応援助者〈ジョブコーチ〉1名、無資格が1名)で、非常勤が2名(作持・向上のための訓練や助言を与える(1)自立訓練(生活訓練)は、18歳以上65歳未満の働きたい気持ちがある人で自力で通える人を通所資格としており、利用期間は原則2年である。 次に、企業に就職したい思いのある障害のある方が訓練を行う(2)就労移行支援では、①初期評価・職業適性評価・高次脳機能評価、②病状整理・本人の意向確認・セルフケア・合理的配慮の確認、③就職活動・履歴書などの作成といったステップをふみ、就職支援から就職後の職場定着までの一貫した支援を受ける。 そして、利用者が雇用された企業などにおける就労継続を図るために、企業・事業所や関係機関との連絡調整を行い、雇用にともない生じる日常生活または社会生活上の諸問題に関する相談・指導・助言を、就労後半年~3年間で提供する(3)就労定着支援を実施している。 リニエワークステーション中野(以下、「リニエ中野」)では、利用者の個別性を重視し、生活訓練を併設することで、その方らしい働き方がみつけられるよう支援することを大切にしている。福祉的就労も含めた自分に適した職場に就職し、幸せに働き続けることを支援するためには、日常生活を安定的に過ごすことが重要である。そのために、リニエ中野では リニエワークステーション中野 作業療法士の扇浩幸さん (写真提供:株式会社リニエR)働く広場 2025.522

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