働く広場2025年5月号
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 さらに、③パソコンスキル・事務スキルトレーニングでは、業務のスキルアップを目的とし、「タイピング練習」、「長文入力演習」、「チラシ作成」、「名刺データ入力」、「資格取得支援(情報処理技能検定やMOS:マイクロソフトオフィススペシャリストなど)」、「ラベル作成」、「ラミネート」、「複合機の利用」、「郵便物の仕分け」などに必要となる作業が作業療法士としての視点を加えて実施されている。 このほか、e-ラーニングを用いたセルフマネジメントスキル(セルフケア含む)、ビジネスマナーや社会生活技能訓練(SST)プログラムなどを活用した対人コミュニケーションスキルの自発的訓練などが提供されている。 こうした多彩なプログラムの成果をみるための場として、「プレゼンテーション」の機会も設けられている。 「1カ月前に利用者への希望調査を行い、発表をしたいという意向がある方とプレゼンテーションのテーマについて事前に話し合います。そして個別訓練の時間などに一緒に資料をつくって、人前で発表する練習をします。当日の発表は15~20分くらいの割と長い時間ですが、この発表によって随分と自信がつくようです」(扇さん)実施している。利用者は、オークションの出品作業を通して、「商品の仕分け」、「梱包」、「出品の紹介文章作成や写真撮影」、「パソコン入力」といった実務的な作業体験の機会を得ることができる。出品物が売れた場合、その7割は出品者に、2割はほかの利用者に分配、1割は手数料という形で、作業成果を共有している。 また、②コミュニケーションスキルトレーニングでは、他者とかかわることで「障害の自己理解」を深めるために、段階づけされたプログラムが実施されている。そのなかの一つの「茶話会」は、ゲーム形式で雑談するプログラムであり、利用者がお茶を飲みながら、とてもリラックスした雰囲気で行われている。職場でもこうした心の休まるひとときは大切である。扇さんは「この茶話会での雑談力は、例えば、職場での円滑なコミュニケーションをとるためにも効果的だと思います」としている。ほかにも毎月1~2回、テーマを決めたグループでの話し合いの「雑談力プログラム」、さらに、実際の職場で困るような場面をあえて取り上げて、自分だったらどう対応するか、といった意見を出し合う「職場編」というものも設定されており、「プログラムで話し合ったことは、私も勉強になります」と扇さんは話している。 この「プレゼンテーション」自体が、プログラムの効果をみるための「事業評価」にもつながると考えられる。人前で話せる力は、就職活動時はもちろんのこと、職場での同僚との会話や仕事の成果報告などにも効力を発揮するだろう。 利用者の得意分野を活かした実践としておもしろいのは、同じリニエの法人内の精神科訪問看護を利用している双極性障害の当事者がリニエ中野で、「英会話」を教えているプログラムである。これは、当事者が当事者にサービスを提供するピアサポートの一つといえるかもしれない。言葉が出にくい失語症の方から「英語だったらしゃべれる」という「能力」を引き出し、これを活用する視点はセラピストならではかもしれない。教える側の双極性障害のある当事者にとって「自分の得意な英語を教えることでこんな自分でも役に立てることがあるのだ」と自信がつくだけではなく、その「小さな英会話クラス」を受けるほかの利用者にとっても励ましになっているようである。  求職支援は、図1(24ページ)に示すような3段階で、①職業適性評価や各種の神経心理学評価アセスメントツールを4.求職支援プログラム働く広場 2025.523

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