働く広場2025年5月号
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ジョブコーチの歴史的変遷をみると、援助つき雇用で重要なポイントは、重度障害のあるサービス利用者(アメリカでは重度障害者の競争的雇用に重点を置いている)に対する定着支援を徹底することが謳われている(八重田、2006)。アメリカで援助つき雇用が法制度化される20年以上前に、Rose(1963)は、この就労定着を厳密に行うために大切なのは、就職直後の「最初の一時間、最初の一日、最初の一週間はスタッフ(ジョブコーチあるいはナチュラルサポートを提供できる職場仲間)の誰かをつけるべきである」としている(Rose, 1963, p.13 ; 八重田2006の文献 ; 括弧内は八重田による追加説明)。 このように、就労定着支援の期間については事業主にとっても、支援者側にとっても大切なポイントとなる。扇さんも、「最初の半年は就労移行支援の枠組みでアフターフォローを行います。職場での最初の日、最初の1カ月というのはとても重要な時期であり、そこはていねいに支援することを心がけています」とのことであった。また「もちろん面接の時点から同席はしているのですが、できるかぎり早い段階で企業訪問を行い、企業の方との信頼関係の構築を行います」(25ページ図2.定着支援のポイント参照)とのがったところ、「企業実習は、一人あたり最低2回(軽作業、事務作業)は行うようにしています。期間は、企業によってさまざまですが、おおむね3~5日程度が多い印象です。時間は、丸一日のときもありますが、半日くらいのことが多い印象です」とのことであった。 また、作業療法士としてジョブコーチ的な役割をどう果たすかについては、「実習中に作業療法士として事前に客観的にみたその方の特性を伝えたり、ジョブコーチ的な介入を行うこともあります」とのことで、図1の第二段階「実習」では、セラピストの視点で病状整理やセルフケア等の確認を行っていることがわかった。  アメリカのジョブコーチは、就労定着支援を継続的に必要なだけ提供することが奨励されている。しかし、フォローアップを徹底することで職場にうまく適応し、働き続けることで生活の質が向上し、本人も健康で幸せを感じるような支援は、一人の支援者では無理である。利用者は次々に増えてくるわけで、支援者のケースロード(担当者の負担)は重くなってくる。そのためにも、支援者数を増加させることは喫緊の課題であると思われる。5.就労定着支援用いて、基礎的な初期評価を行い、②病状整理シート、就労希望整理シート、状態チェック対応シート、障害特性・配慮希望シートなどを用いて「実習」につなげ、③「就活」として、履歴書や職務経歴書に自身の特性や対処、会社に求める配慮を明確に記入し、求職活動をしている。 企業実習の期間について扇さんにうか• ステップ制とアセスメント→自身の状態の整理をすることで障害の言語化をサポート1. 基礎【初期評価】・ 就労移行支援のための チェックリスト【職業適性評価】・GATB【神経心理学評価】 TMT、CAT、FAB2. 実習【病状整理】・病状整理シート【本人の意向確認】・就労希望整理シート【セルフケア・合理的配慮の確認】・状態チェック対応シート3. 就活【就職活動】・履歴書・職務経歴書障害特性・配慮希望シート (写真提供:リニエワークステーション中野)出典:リニエワークステーション中野案内資料図1 求職支援の3段階働く広場 2025.524

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