働く広場2025年5月号
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わせて話すように意識しています。就職後半年経ったら、就労定着支援の枠組みに変更を行い、このころから少しずつナチュラルサポートに移行していけるよう、フェーディングの支援を行っていきます。具体的には、実際の職場には3カ月に1回の訪問に減らし、必要に応じ本人とは月1回、オンライン面談を行います。1回にかける時間は30~60分程度です」とし、オンラインを活用しながら継続支援(On-going Support)を提供していることを紹介してくださった。 そのうえで、今後の課題についてうかがったところ、「課題としては、就労移行支援と就労定着支援を一貫してできる専門的なスタッフの人材教育が必要だと思っています。ただ、スタッフの研修時間がサービスの現場ではあまり多くとれない現状があります」とのことで、就労支援に関する専門職自身が就職する前の段階で、大学などでしっかりと職業リハビリテーションにかかわる知識と技術を習得する必要性をあらためて感じた。  今回の取材を通して、現在の職場適応援助者(ジョブコーチ)が、今後さらに臨床心理的な知識とスキルを有し、ビジ6.まとめことで、就労定着支援を成功させるためには、企業支援を同時に行うという基本的な姿勢がうかがえる。 続けて扇さんは、定着支援として「職場の人的環境、物理的環境を把握し職場のアセスメントも行います。必要に応じ、本人の障害特性について企業側にレクチャーを行うこともあります。就職後、半年間は最低でも月1回は本人と顔を合ネスパーソンとして企業にコンサルテーションできる知識と行動力を持つための継続研修も必要であることをあらためて感じた。医療職が多いリニエグループならではの「就労支援サービスモデル」の構築にも期待が寄せられるところである。今後は職業リハビリテーションをになうプロフェッショナルの一人として、障害者職業カウンセラー、ソーシャルワーカー、特別支援教育教員等とも連携する力を備えた医療的バックグラウンドをすでに有する各種セラピストが、就労支援のプロフェッショナルとしても活躍できる体制づくりが必要である。大学や大学院といった高等教育機関での障害者雇用、就労移行・就労定着にかかわる人材育成については長いあいだ議論されているところであるが、1日も早く国レベルで行われることが期待される。加えて、今回のような医療専門職による職業リハビリテーションへの関与と連携の一つのサービスモデルとして、リニエグループによる取組みについては今後も期待を寄せている。患者従業員両者の立場を理解するために、両者の視点のポイントを踏まえ本人のサポートをする医師など医療関係者障害のある人企業担当者支援者病気の状態を安定させ生活ができるようにする人的資源として効率的に活用し、利益に貢献できるようにする図2 定着支援のポイント参考文献Rose, G. (1963). Placing the marginal worker : A lesson in salesmanship. Journal of Rehabilitation, 29(2), 11-13.八重田淳(2006). 米国における援助付き雇用の変遷,職リハネットワーク,59, 11-16.出典:リニエワークステーション中野案内資料働く広場 2025.525

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