情報セキュリティの分野で強みをもつ同社が、同氏をはじめとした視覚障害や発達障害のある社員を複数名採用していくなかで、業務指示伝達を円滑に行うための配慮や業務外の交流の推進をどのように行っているのかについて紹介がありました。 続いて辻氏からは、2024年10月に稼働を始めた同社が、障害者のテレワークを定着させるために行ってきたさまざまな取組みについて、テレワーク中の孤独感を軽減するため、つねにチーム全体がWebシステムに接続した状態を保ち、会話中心のコミュニケーションを重視していることや、従業員の不調の早期発見と対応にも取り組んでいることなどの発表がありました。その結果、これまでに24名を採用し退職は4名にとどまり、平均勤続期間は2年6カ月に達し、転職者からも前職よりコミュニケーションがよいとの評価を得ているとの報告がありました。 次に平賀氏からは、出社して業務を遂行する社員に対し「定着支援コーディネーター」が行っているさまざまなサポート支援、社内でのコミュニケーションにおける工夫・情報共有の方法について発表がありました。例えば聴覚障害のある社員 前号に続き今号では、パネルディスカッションⅠ・Ⅱの様子をダイジェストでお伝えします。 パネルディスカッションⅠ 職場でのコミュニケーションの課題について考える 近年、テレワーク等が広がるなど職場でのコミュニケーションのあり方は変化しています。他方、情報共有について障害に起因する課題を抱える障害者も少なくありません。パネルディスカッションⅠでは、このような変化の機会をとらえて、JEED障害者職業総合センター上席研究員の伊い藤とう丈たけ人ひと氏をコーディネーターとして、株式会社ラックでサイバーセキュリティプラットフォーム開発統括部開発部第三グループグループマネジャーを務める外そと谷や渉しょう氏、阪和ビジネスパートナーズ株式会社業務開拓推進部長の辻つじ敏とし彦ひこ氏、みずほビジネス・チャレンジド株式会社企画部職場定着支援チーム定着支援コーディネーターの平ひら賀が正まさ樹き氏、学校法人大阪滋慶学園滋慶医療科学大学大学院教授の岡おか耕こう平へい氏をパネリストに迎え、あらためて障害者が、職場における情報のやり取りについてどのような課題に直面し、どのような配慮を必要としているのか、職場において情報を共有するための取組みや工夫等についても意見交換を行いました。 はじめに伊藤氏から、本ディスカッションを設定した背景について、職場で共有される情報には業務に関するフォーマルなものだけでなく日常的な会話や偶発的な情報のやりとりといったインフォーマルな情報もあるため、これに参加できないことにより障害者が疎外感を抱くケースも存在することが提示されました。そのうえで、2023(令和5)年度から2024年度に行われた、「職場における情報共有の課題に関する研究」(障害者職業総合センター)から、コミュニケーションに関して企業側と障害者側に認識のずれがあること、この「ずれ」は企業側の不満よりも障害者本人がより強い困難を感じる場合があるとの報告がありました。また、勤務形態の違いによって、情報伝達課題が異なることが示されました。そのなかでも各企業は、障害者が職場で円滑に情報交換できるよう、配慮や工夫を凝らした改善策を実施していると指摘。このディスカッションでは、実際の企業事例をもとに、障害者が直面する情報伝達の課題と、出勤やテレワークなど働く環境に合わせた適切なコミュニケーションのあり方について考え直す機会としたいとの目的が示されました。 次に、各パネリストから、それぞれの取組事例や研究成果などが発表されました。外谷氏からは第32回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part2パネルディスカッションⅠ「職場でのコミュニケーションの課題について考える」Ⅱ「障害者就労支援を支える専門人材を育てる〜福祉と雇用の切れ目のない支援に向けて〜」平賀正樹氏外谷渉氏辻敏彦氏伊藤丈人氏岡耕平氏(注)コーディネーターおよびパネリストの方々の所属先・役職は開催日時点のものです働く広場 2025.528
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