障害者職業総合センター副統括研究員の春はる名な由ゆ一いち郎ろう氏をコーディネーターとして、障害者職業総合センター職業リハビリテーション部次長の市いち川かわ浩ひろ樹き氏、特定非営利活動法人WEL’S障害者就業・生活支援センターWEL’S TOKYOセンター長兼主任職場定着支援担当の堀ほり江え美み里さと氏、第一生命チャレンジド株式会社ダイバーシティ推進部課長の齊さい藤とう朋とも実み氏、特定非営利活動法人全国就業支援ネットワーク代表理事の藤ふじ尾お健けん二じ氏をパネリストとして迎え、就職前の支援と就職後の支援、障害者支援と事業主支援、医療や福祉と雇用支援といった具体的な局面において切れ目のない支援を実現できる専門人材の育成・確保に向けた意見交換が行われました。 はじめに春名氏から、ここ数年急速にニーズが高まっている先端的な障害者就労人材育成の取組みを実施できるかどうかは地域によってばらつきがあるとの指摘があり、参加者にもこのディスカッションを通じてそれぞれの地域の特性を念頭に障害者就労支援人材の育成について考える場となってほしいと望まれました。 次に各パネリストから話題の提供が行われました。市川氏からはJEEDが2025年度から実施を予定している「雇用と福祉の分野横断的な基礎的知識・スキルを付与する研修(基礎的研修)」は、福祉、教育、医療等の分野にて、就労支援を担当する初学者を対象としており、雇用と福祉の切れ目のない支援を可能とするためのスタートととなる研修であることの紹介がありました。 堀江氏からは、東京都の大規模な労働市場で障害者人口を抱えるという地域のなかに配置された地域障害者就業・生活支援センターの職員が、その専門性だけでは対処できない場面において多様な職種と連携できるスキルをもつことの重要性を指摘。そうした人材を育成するために外部のスーパーとのコミュニケーションにおいては、職場で使う専門用語にはオリジナルの手話や指文字を活用して対応しているとの報告がありました。また、聴覚障害のある社員のために行っていた工夫が発達障害のある社員にとっても有用であることがあり、障害特性にかかわらずコミュニケーションにおける工夫・情報共有の取組みを社内共有することで、職場全体のコミュニケーションの質を高めるとともに円滑化を実現することを目ざしているという報告がありました。 最後に岡氏からチャットや社内SNSの利用等におけるコミュニケーション手段の変化と多様化が進む現代の職場で、こうした変化が障害者に与える影響について解説がありました。自身の研究結果などからテレワークから除外されがちな知的・発達障害者を支援するためのテクノロジーとして「共有メンタルモデル」と「トランザクティブ・メモリー・システム」が紹介されました。 その後、伊藤氏から各パネリストに質問があり、「テレワークをしている社員がSOSを出しやすい、質問しやすい雰囲気づくりや工夫について」などに関する質疑応答が活発に行われました。 パネルディスカッションⅡ 障害者就労支援を支える専門人材を育てる 〜福祉と雇用の切れ目のない支援に向けて〜 近年の障害者の就労可能性の急速な拡大をふまえ、福祉分野の就労支援と雇用分野の職業リハビリテーションの切れ目のない支援に向け、多様な障害種類・程度の障害者と企業の双方のニーズに対して多分野連携の促進を含めて効果的に対応できる専門人材の育成が喫緊の課題となっています。パネルディスカッションⅡでは、こうした障害者就労支援の共通基盤を確認するとともに、JEEDバイザーによる個別のスーパービジョンを実施する機会を設けるなど、包括的なスーパービジョン体制の構築に力を注いでいるとの報告がありました。 齊藤氏からは、企業内で働く就労支援人材育成の役割について、①目的=「安心して働く」「活躍できる」を共有する、②それぞれの事情をすり合わせる、③関係性の構築が大切、というポイントが示され、福祉分野でつちかったコミュニケーションスキルを活かして活躍していくのが企業内で働く就労支援人材の役割であると強調されました。 藤尾氏からは、「障害者就業・生活支援センターの機能強化」について話がありました。同氏は機能強化のポイントは地域の支援資源等を知り、適切にリファーする連携拠点「総合調整機能」、「地域における最後の砦」であるスーパーバイズ、困難事例等への対応という「本来あるべき機能を果たすこと」と主張されました。 後半では「福祉と雇用の切れ目のない支援に向けた、専門人材育成の課題」と題して「就職前の支援vs就職後の支援」、「障害者支援vs事業主支援」、「医療・生活支援vs就労支援」の三つをテーマに、切れ目のない人材育成について活発な議論が行われました。齊藤朋実氏市川浩樹氏堀江美里氏春名由一郎氏藤尾健二氏★右記ホームページにて、パネルディスカッションの動画や発表資料等をご覧いただけます。https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/32kaisai.html◇お問合せ先 研究企画部企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp)働く広場 2025.529
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