働く広場2025年5月号
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「ユニバーサル就労」の取組み――池田さんたちが社会福祉法人生活クラブ風の村(以下、「生活クラブ風の村」)で取り組んできたユニバーサル就労支援について教えてください。池田 もともと私が長年かかわってきた「生活クラブ生活協同組合千葉」は1994(平成6)年、全国の地域生協に先駆けて訪問介護事業を始めました。1998年には社会福祉法人たすけあい倶楽部を設立し、2000年に特別養護老人ホーム「風の村」を開設。全室個室ユニットケアが注目されました。 その後2006年ごろ、千葉県市川市内にできる有料老人ホームの運営を依頼されました。せっかくなら地域に貢献しようと、自治会長さんたちと考えた事業の一つとして生み出したのが「ユニバーサル就労」です。地域の障害のある人や引きこもりの人、ホームレスを含め「働きづらさを抱えた人」を職場に迎え入れるというプロジェクトでした。 具体的に行ったのは、マッチングのワークショップです。老人ホーム内の仕事・作業を切り出してメモに書き出し、各支援団体が集まった会場の壁に張り出す。そして担当者は、利用者一人ひとりのことを考えながら、できそうな仕事に〇をつけます。後日、支援団体と個別に話し合い、必要に応じて利用者の就業訓練も行いました。その後も私たちで施設などをオープンするときには同様のユニバーサル就労を手がけてきました。障害は「働きづらさ」で考えるべき――ユニバーサル就労は、ほかの団体や自治体でも導入されていったそうですね。池田 社会福祉法人などを中心にノウハウを提供してきました。自治体では、ユニバーサル就労の推進条例を2017年に制定した、静岡県富士市や、2019(令和元)年にユニバーサル就労支援センターを開設した、岩手県陸りく前ぜん高たか田た市があります。 ちなみに2015年施行の生活困窮者自立支援法では、相談業務という形で就労支援が可能になりました。このときに盛り込まれた就労訓練事業(中間的就労)は、私たちが取り組んできたユニバーサル就労事業の実績が大きかったと自負しています。生活に困窮している相談者は、履歴書の書き方を教えてハローワークに紹介すれば就職できるという人が非常に少なく、「働きづらさは障害者だけの問題ではない」という認識も社会的に高まりました。ユニバーサル就労とダイバーシティ社会福祉法人生活クラブ風の村 特別常任顧問池田 徹さんいけだ とおる 1951(昭和26)年、富山県生まれ。1971年、生活クラブ生活協同組合東京に入職。1976年、生活クラブ生活協同組合千葉設立にかかわり、1995(平成7)年に理事長就任。1998年、社会福祉法人生活クラブ風の村設立、理事長就任。2022(令和4)年から社会福祉法人生活クラブ風の村特別常任顧問。公益社団法人ユニバーサル志縁センター代表理事、一般社団法人ダイバーシティ就労支援機構監事。働く広場 2025.52

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